暦の上では冬が始まり、外仕事では防寒着が恋しくなってきた今日このごろ。まぁ、何とか仕事は続いている。細かいところでは気になるところが少々あるものの、時給の高さと【12月迄の短期派遣契約】という気安さもあって通い続けている。(今の状況だと12中旬頃には現場の仕事は無くなりそうなのだが、派遣会社からは年内いっぱい迄の契約更新を告げられている。杜撰な仕事をする派遣会社なので言うことはアテにならない)


労働の対価としての給料日も近づき、早くも黒紳士の脳内は【お買い物モード】になっている。


対求人面接用にスタイリッシュ・スーツ が欲しい】というのが欲しいものリストの筆頭にあるべきなのだがあたりを付けたお店のスーツ店頭価格は38K!黒紳士買い物評議会の評議長曰く、


「今年は面接を受ける予定は無いのだから、今回の給料日には買うことはなかろう」評議長の言うことは尤もだ。冬時期にスーツを買ってしまうと厚手のスーツになってしまい、通年着用は厳しいのではないか。最近はとんとスーツを新調することもなかったから、古い知識かもしれんが。やはり、春先に購入するのがベターか。


欲しいもの評議会の審議は続く。(無論、黒紳士の妄想脳内空間で開会されている)



「議長、最優先購入品があります!」と発議の声が上がる。見ると服飾委員が挙手をしている。この服飾委員、評議長の娘婿という縁石関係にあり議長の覚えがめでたい。



"足元をみる"ということわざがあるように、チープな靴を履いていては黒紳士はいつまでたっても英国紳士には近づけません。今後、どれだけお食事会や飲み会があるかは分かりませんが、ここは、オシャレな靴を新調するべきです!」敢然と言い放った。(社交委員が肩身が狭いように居住まいを正す。社交関係は彼の担当なのだ)


反論しようと芸能委員(映画や音楽分野担当。CDやDVDの購入には彼が采配を振る)が立ち上がりかけるが、評議長に制止される。「服飾委員、詳しく聴こうではないか。諸君、彼の言い分を聴いてみよう。」評議会の評議長(黒紳士の物欲)が持つヒエラルキーは絶大である。不服そうな芸能委員を始め、給食委員、租税委員、社交委員、動物委員達も固唾を呑んで服飾委員の発議を見守る。


「私が購入するべきだと思うのは、黒紳士の心を今、捉えて離さないDr.Marten Core1460 8EYE BOOTです。このブーツを装着すれば、ダサ男の黒紳士のはんか臭さ(格好悪さ)も軽減されます!パンク・ロッカー達の持つ反骨精神をこの優男にも注入すべきなのです!!」


議場からは一様に驚嘆する声が上がった。他の委員達も黒紳士の弱々しく、消極的な姿勢には手を焼いていたのだ。自分よりも他人を優先してしまう自己犠牲精神は、よく言えば【良い人】悪く言えば【主体性の無さ】を如実に現していた。服飾委員の提言はあまりにも的を射ていたのだった。


「なるほど。君の言うことは確かに理にかなっている。どうだろう、他の委員で異論のある者はいるかね?」


日和見主義の多い委員達。お互い、顔を見合わせるが異議を唱える者はいなかった。買い物評議会の実権は評議長と服飾委員に掌握され、唯一、芸能委員だけが「そうはさせじ」と孤軍奮闘していた。とは言え、今回の動議には鉄板の説得力があった。これに対抗するキラーコンテンツを芸能委員は持ち合わせてはいなかった。


「では、ドクマの購入を許可する!給料が入り次第、速やかにこれを入手するように!!」評議長の採決が下され、オークション・ハンマーが高らかに打ち下ろされた。買い物評議会は閉会となった。


と、いうことでお許しも出たところで、このブーツを買うのを楽しみに指折り数えて、給料日を待ち望む黒紳士だった。