暦は進み4月。東京はもう桜が散ってしまったというニュースが流れていたが、秋田の気候は寒い日が続いていて、桜前線は停滞している模様。

3月中旬に応募した臨時職員に採用が決まり、2日から新しい職場に通うことになった。面接時に女面接官から散々にダメ出しをされ、かなり印象が悪かった職場だったが、家計の苦しさと「仕事が決まった!」ことの母の喜びようを曇らす訳にはいかず、ダメ元で勤務することにした。


蓋を開けてみたら、自分の直感に間違いは無かった。結果、勤務4日目にして女課長に辞意を告げ、ベストな形で即日退職の運びとなった。


どこがどう合わない職場だったかというと、まずは女課長。こいつは当初の印象どおり、ヒステリー持ちで四六時中、機嫌が悪い。発言の95%がクレームなのだ。勤務初日から「電話を取れ!」との業務命令が下り、取り次ぎの電話を知らせに行ったら、『わざわざ知らせに来るな!内線で転送してよこせ!』と早くも毒蛇の洗礼を受けてしまった。


根本的にこの女は、自分が「県の課長級という大したことのない役職」であることを勘違いしていて、一般市民や臨時採用の人間を自分より下級の賤民扱いをしている。薹の立ったババァの癖に若い男は好きなようで、20代と思しき今流行り風ルックスの男性臨時職員を愛玩用として可愛がっていて、席割りにも強権を発動し、自分の席の真横に配置している。


どうやら黒紳士の採否には面接時に同席していたもう一人の専務肩書の男性の意向が強かったようで、それがこの女には気に食わなかったのだろう。自分は嫌いなタイプの人間はとことん嫌いなので、この馬鹿女課長とは水と油の関係だったのだろう。


仕事自体も旧態然とした不効率がまかり通っており、とにかく猥雑で上意下達が慣例となっているお役所仕事そのもの。黒紳士に4日間仕事を教えてくれた先輩臨時職員は、この職場に4年も勤めているそうだ。悪い人では無かったが、完璧にこの職場に洗脳されているといってもよい。農場にいる羊のように飼いならされてしまっている。


ここの体質が如実に現れていたのが、昼休憩の時間。居住性皆無の事務室では事務をするのも、飯をたべるのも同じ机。まるでウチで飼っているクサガメと一緒ではないか!キッキは水の中で餌も食べるし、糞もするし水も飲むし、寝るのも一つところで一緒だ。こんな職場はごまんとありそうだが、個人情報を扱う職場だというのに、文書管理や名簿管理はあまり徹底されていない。個人情報が机の上とかにポンと置かれている。帰宅時には引き出しとかにしまうが、その引き出しとて施錠はされない。


「こんな個人データ管理をアバウトにしていていいんかいな?」と開いた口が塞がらなかった。他にも挙げればキリがないが、とにかく一般の民間企業とは一線を画している有様だった。


昼食時とは、和気あいあいと同僚達とランチをしたいところだが、ここの職場はシーンと静まり返り私語をする者は誰一人いない。仕事中よりもひっそりとしてしまう。ただ箸を使う音と、カップ麺を啜る音しか聞こえてこなかった。「アンタ達、こんなので楽しいの?」他にも帰りは全員、廊下に集合してから建物を出て、外に出てからも玄関前に集合し挨拶をしてから帰る、という変なローカルルールもあった。


そんなだから、幼稚な黒紳士は平等主義者なのでカースト制度の組織には合わない、と思って4日目の朝イチに女課長に直談判をし、即日退職という花道を勝ち取った。なんせ、1日目の前夜から4日目の朝までロクロク夜も眠れず、(平均睡眠時間1時間弱)食欲もまったく湧かず(空腹を感じることが無かった)ノイローゼになりそうだったから。人間的レベルの低い人間と過ごすとこっちまで毒されてしまうから。そう、俺はSickBOYなのだから・・・


話は少し戻り、3日目の夜。


元職業訓練仲間の食事会が催された。


少し前に懇意だった元受講生仲間のTさんからメールが入りTさんと仲の良かった「Mさんが飲食店を始めるにあたって食事会をやるんだって!」と知らされていた。それがまだブラック職場に勤める前のこと。四方やこんな憂き目に合っているとは思っていなかったので、出席を快諾していたのだ。


会場は自宅から歩いて行けるお店だった。「社会人たる者、常に時間前に行動をする!」が黒紳士の信条。食事会開始10分前にお店に入る。まだ誰も到着しておらず一番乗りだった。出迎えてくれたのは発起人のMさん。食事会という事で、今宵はプレ・オープン。我らの為に貸し切りにしてくれたようだ。


久しぶりの再会だったが、Mさんに変わりはない様子だった。彼女は一度は念願の事務職に就いたのだが、折り悪く、入った会社が少しして廃業する予定であることが発覚したのだ。へこたれることが無いMさんは一念発起して、独自の交友ネットワークを使い飲食店共同経営という新事業に乗り出すことにしたのだ。


食事会の事を教えてくれたTさんと事前に申し合わせて準備した開店祝いの観葉植物が飾られていて、Mさんから「気を使わせて悪かったね。ありがとう!」と言われた。忘れないうちにとMさんに「これ、少ないけど。」と会費を渡す。


「いいって、いいって、受け取れないよ」というMさん。やはり赤字覚悟の大盤振る舞いだったか。そのMさんの厚意に甘えてしまっては、人として男として格好が悪い。半ば強引に少額ではあったが会費を受け取ってもらった。何人がやって来るか不明だが、それでも数人前の料理を出すとなれば安い材料費であがるはずはない。少額で申し訳なかったが、少しでも赤字分の足しにしてくれれば気が晴れる。


三々五々、懐かしい顔がやって来て近況報告に花が咲いた。音信不通になっていたK社長やシロミちゃんがやって来たのは少し以外だった。結果、20人いたクラスの半分、接待役のMさんや黒紳士も含め10人が集まった。


微妙だったのは、以前の記事に度々登場したOさん。色ボケ黒紳士、Oさんには一方ならぬ好意を持っていたのだ。Oさんは到着が後からだったので、着席したのは黒紳士の対面!


馬鹿な黒紳士。この食事会が催されることを知ってから、Oさんのことを夢に見ることもあった。まだ引き摺っているようだ、この恋心。照れ隠しから、席から離れ他の元受講生に話しをしに行くフリをしたりした。


半年以上ぶりに会うOさんだったが、変わらず快活で食欲も旺盛で可愛らしかった。お仕事も頑張っているようで、充実していることが伺い知れた。彼女には幸せに過ごして欲しい。こんな素敵なお嬢さんに黒紳士のような冴えないオッさんが釣り合うはずが無い。おまけに自分の職場の事で色々と思い悩んでいる状態だったので、彼女があまりにも眩しく見えて積極的に話しかけることが出来なかった。


久しぶりに会うかつての学友達だったが、やはり半年以上も離れていると皆、微妙な距離感を感じられた。今日は食事会という事でアルコールの都合はつかなかった部分もあるだろうが。料理すら食べきれないほど用意してもらっていて、アルコールを要求してしまっては我侭というもの。 


講習時から仲の良い人、そうでない人のグループみたいな感じがあったが、この食事会でもそういった空気が現れていた。半年以上も離れていれば、もはや親しさも薄れてしまうだろうし、今の生活の方に比重を置くのも分かるというものだ。K社長もシロミちゃんも受講時は気安く話し合う仲だったが、この時は変によそよそしい感じだった。


懐具合も寒いし、翌日のクソ課長からのプレッシャーも気になり(毎夜の寝不足でクタクタだった)21時にもなると帰り支度を始めたK社長とシロミちゃんに乗っかり、自分も戦線離脱することにした。Oさんとも、もっと話をしてみたかったし、二次会に期待している部分もあったが、Oさんは黒紳士の事を何とも思っていなさそうな感じするし、これ以上彼女のお目汚しになることは本意では無かった。可憐な花は遠くから見るだけにしよう。(SUPER FLYも歌詞の中でそう言っている)


皆に分かれを告げ、後ろ髪を引かれる思いで夜の暗い道をトボトボと帰路に着いた。Oさんが元気そうだったこと、充実した毎日を送っていることを確認出来ただけでも良かった。あれだけ「もう一度逢いたい」という願いを叶えてくれた今日のイベントがあっただけでも自分にとっては幸せだった。


と、この記事は無職になったみそらで書いている。あのまま働いていても萎縮してしまって、馬鹿女の顔色ばかり伺う下僕に成り下がるだけだっただろう。そういう生き方はしたくないから仕方がない。


いいんだ、これで。