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 読書も趣味の一つです。

 寝る前に横になりながら読むのは最高です。
 眠くなってきたな、と思う時にしおりをはさんで本を閉じ、すっと寝る。

 最高です。

 事情により、 ずっと一般書を読むことを抑えてきたのですが、1か月前に読書を解禁してから、20冊ぐらい一気に読んでいます。
 

 その中で、アタリ本がありました。
 それがこちらです。

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 若い人は、もう名前も知らないかも知れません。
 「村上ファンド」が世間を賑わせたことも、ずいぶん昔になってしまいました。


 私が投資に興味をもち始めた頃、まさにこの村上ファンドの全盛期でした。
 本書にも出てくる、フジテレビとニッポン放送間の一連の騒動時、フジテレビが実施した大規模な公募増資にも応募し購入した記憶があります。


 このファンドが、”ある銘柄に投資している”、と世間に知れれば、その途端にその銘柄が急騰する、ということは、株をやっていればみんな知っていることでした。
 
 外資をハゲタカと呼ぶ表現もこの頃に流行った記憶がありますが、このファンドもそのようなものに例えられることもあり、とにかく、皆の印象は良くなかったはずです。
 メディアに出てきても、自分の主張ばかり言う人だな、というイメージをもったことを覚えています。

 2006年に、ニッポン放送株式の売買に絡むインサイダー取引で逮捕され、のちに有罪確定となったことで、表舞台からは姿を消しました。

 その後、久しぶりに名前を聞いたのが、2、3年前。
 村上氏の長女が、事業を継いで、ある銘柄に投資している、というニュースが流れた時です。

 まだやってるんだなあ、と当時懐かしく思いました。


 この本は、これまでの著者自身の投資活動が、どんな目的で、何を目指していたのか、を中心に描かれており、あとがきにも、それを知ってほしい、少しでも理解してほしい、と書かれています。

 世間からはハゲタカと蔑視され、さらにインサイダー取引での有罪も確定していますので、それらについての言い訳、自己弁護、責任回避的な意図があるのかもしれないですし、それは、自身の著作ですので否定は出来ないとは思いますが、そういったことも読む前から念頭に入れた上で読み始めました。


 一気に読み切りましたが、読了後、私は、スッと胸に落ちる感覚がありました。

 Amazonの評価が尋常でないことも頷けます。
 
 
 
 本書の内容をまとめて3点。
 誤解の無いように前置きしますが、私は著者の考え方を礼賛するわけではありません。



 ①2000年前後~リーマンショック前までの村上ファンド時代に、世間を賑わせたファンドの投資活動の意図やその背景が理解できる。(「東京スタイル」、「昭栄」とか懐かしい・・・)

 ②村上氏自身が公益的な信念をもって投資活動をしてきたこと、そしてその信念とは「日本経済の持続的発展には、資金の循環が必要である」ということ。
  
 ③村上氏が投資先に求めることはほぼ共通しており、それは「株主価値の最大化。株主から集めた資本を有効活用しているか、していないなら株主に返せ」。アメリカでは、このような意識が高い。そして、投資家に戻った資本は必ず別の投資先に向かう。これが資金の循環。



 著者は自身が世間からどういう評価をされているかをよく認識しているようで、本書では、努めて内省的な視点で振り返っている姿勢が伺えますが、基本的に、村上ファンドの論理で記述されているので、①の事実関係や内容については異論もあると思います。 

 また、株を買い占められた経営陣からすれば、敵意を抱くのも当然ですし、このファンドが要求する内容は、原則論の押し付け的なもので、それを素直に受け入れて実践できる経営者はそうはいない、とも思います。
 本書には、取締役の累積投票制度の導入を!という主張もありますが、現実に導入する企業が増えるとは思えないです。少数株主が全く知らない取締役を連れてくる可能性があるわけですから、社外取締役の実効性すら問われている日本企業の現状で、累積投票を可とする企業が現れるとは考えずらい。


 ただ、視点を広げると、日米の株式市場における、株価の推移や平均PBR(※)の差、というまさに結果としての現実の数字がありますので、それについての著者の説明には、納得するしかないのではないでしょうか。

 ※PBR=株価純資産倍率 その会社の1株当たりの純資産 ÷ 1株の株価
  要するに、その会社の純資産に対して、株価がどの程度買われているか(評価されているか)

  アメリカの平均 3倍程度
  日本の平均   1.5倍程度

 アメリカの会社は日本の会社よりも、純資産に対しての評価が高い、とも言えるし、実際純資産に対しての利益率も高い。

 つまり、アメリカの方が集めた資本を有効に活用しているわけです。
 それだけ効率的に資金が循環している、とも言えます。
 そして、日経平均はバブル期の半分程度を行ったり来たり、に対し、ニューヨークダウ平均は史上最高値を更新し続けています。

 要するに、これまでの結果としては、「株主価値の最大化」を追及してきたアメリカ式が評価されている、ということです。


 本書の最後には、今後の日本にとって大切なことは、資金を循環させること。これが著者の信念であり、本書で得られた収益をそのような教育・啓蒙活動に使っていきたい、というくだりで締められています。



 それにしても、「投資家」というものに対する世間の目は厳しいものです。
 安く買ったものを高く売る、という行動は、どの商売でもおなじだと思うのですが、投資家、というだけで、何か、楽して儲けた、みたいなイメージがあるのでしょう。

 本書の中に、非常に印象に残った言葉があります。


 著者が、インサイダー取引に係る裁判の中で、一審の裁判官に言われた一言。

「『ファンドなのだから、安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前』と言うが、このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない」
※『』は、公判の中で村上氏が発言した内容だと思われます。

 これが世間一般の見方なのであり、当時私たちが著者に対して漠然と抱いていた不信感のようなものを表した言葉でもあると思いました。
 
 しかし、村上氏のような投資家は、左うちわで家でピコピコ売買しているわけでなく、徹底した調査を元に投資先を決定し、それらの経営者と面談を重ね、ファンドの出資者から預かった資産の最大化を図ることに徹しているわけです。それが仕事ですから。
 これは、商売人が物を販売したりサービスを提供する中で、徹底して安く仕入れて高く売ることと、差はないはずなのですが。