収益向上に貢献する物流コスト改善のコツ

会社の収益を圧迫しかねない物流コスト。会社の中で目に見えづらい物流コストを可視化し、今日からでも改善できるポイントをやさしく解説します。一緒に物流改善に取り組み、物流改善のプロとして収益向上に貢献しましょう。

2008年01月

輸送料率について(2)

輸送料率をどう定めるかによって物流コスト改善に影響が出てきます。前回は車建て契約と個建て契約の違いについて説明しましたが、今回は車建て契約の特性についてお話させていただきます。

車建て契約はトラック1台あたりいくら、という契約を指します。従って、そのトラックを満載にして運べば積荷1単位あたりのコストは下がりますし、積載率が低ければそのコストは上がることになります。

この契約では積載率をコントロールするのはユーザー(荷主)側になります。輸送業者にとっては理屈上、積載率が低い状態で何度も使ってもらった方が収入は増えることになります。

つまり、車建て契約のリスクはユーザー側が負担する、とも言うことができるかもしれません。これを言い換えると、ユーザーに極力満載の状態に改善しようという気を起こさせる契約形態だと言えます。

輸送業者と契約する前提として、一定の積載率を設定するでしょうから、その値を実績が上回ればユーザーにとってコストメリットが出ます。逆の場合には損が出ます。

輸送業者にとってみると、リスクが小さい契約と言えるのではないでしょうか。トラックは契約の相手に借り切られているので、自ら探してきた別の荷主の荷を積むわけにはいきませんが、よほど契約前提の積載率が低くない限り、損は発生しにくいと言えるでしょう。

もちろん、契約料率交渉時に、車建てにするからということでユーザーから価格を抑えるように要求されるプレッシャーはあると思いますが、そこは交渉力の問題と言うことになるでしょう。

輸送料率について

輸送の対価、すなわち輸送料率をどう定めるかによって物流改善に対する考え方が変わってくることがあります。今回からはその定め方についてお話したいと思います。

タクシーと路線バスの例がわかりやすいと思います。
我々がタクシーに乗ると、メーターがあり、基本料金、距離加算、時間加算で料金が決まりますね。また、通常タクシーには4人までの客が乗ることができます。料金の要素は先ほどの3要素で人数による変化はありません。1人で乗っても4人で乗っても同じ料金です。つまり、タクシーは1台に対して料金を払うことになります。

一方路線バスはどうでしょうか。路線バスの場合は1人ひとりが目的地までの料金を払います。また、大人と子供で料金に差がつきます。バス会社にとっては、少しでも多くの乗客に乗ってもらう方が収益効率は良くなります。

輸送の場合も同じことが言えます。
契約時にトラック1台借り切って契約する方式があり、これを車建て契約と言います。トラック単位に目的地別に料率を設定します。そのトラックを満載にしようと、3分の1しか積めなかった場合でも、ユーザーが払う料金は同じです。まさにタクシー方式です。

一方で、個建て契約というものがあります。例えば、1㎥あたりいくら、とか1kgあたりいくら、とか料率を決める方法です。宅配便は1箱あたりの料金が決まっていますので、個建て料率の一種だと言えます。路線バス方式に似ていますね。

ではどちらのパターンを採ったほうがよいのでしょうか。これは製品特性や輸送パターンによって違ってきますので、一概には判断できません。
ただし、それぞれのパターンに特性がありますので、それを参考にしながら決めると良いと思います。

次回以降に車建て、個建ての特性についてお話したいと思います。

改善とは何か?

今回は物流改善のテーマからややそれますが、そもそも「改善とは何か?」ということについてコメントしたいと思います。

・ 今の状態を一歩でも良くしていく活動
・ 企業存続のために終わりの無い活動
・ 現状から少しでも変化させること

等々、この質問をするといろいろな答えが返ってくると思います。皆さんは「改善とは何か?」と問われたら何と答えるでしょうか。

私は15年以上前に、改善のコンサルタントの先生について主に生産現場の改善の指導を受けたことがあります。まず改善理論について座学で学び、その後実際に生産現場で改善実習を行いました。その後数ヶ月に渡るフォロー教育を受け、今でもその時の経験が大変役に立っています。

ところで、初日の改善理論の学習に先立ち、先生が受講生に先ほどの質問を投げかけました。皆さんは「改善」とは何を意味するのかわかりますか?と。
これに対する答えは上記に示したような回答がほとんどでした。

一通り受講生の回答をお聴きになった後、先生がこうおっしゃいました。
「改善とはすぐやること」だと。

我々が改善をやろうとすると、時間をかけてデータを集約し、分析を行い、改善案の検討を行い、さらに関係者で論議を行い、それから案についてトライアルを実施する、といったステップを踏むのが一般的かと思います。これはこれで間違った進め方ではありません。

ただし、改善にはスピードが必要です。
現場で問題だと感じたことはすぐに改める必要があります。すぐに行動に取り掛かれることこそが「真の改善」だと言えるのです。

私は今でも「改善とはすぐやること」という言葉を胸に、日々改善に取り組んでいます。

輸送改善の進め方(7)

前回は船の活用による物流改善についてお話しましたが、今回は「鉄道」の活用についてお話させていただきます。

「鉄道」の特性として、大量の貨物を一気に運べる、品質が確保しやすい、環境にやさしいといったメリットがあります。ただし、JRにコントロールされていることから、コストのコントロールが難しいかもしれません。

そうはいっても、昨今の燃料費上昇や道路通行料を考慮すると鉄道を活用するメリットは大きいといえるのではないでしょうか。
納期を定めて確実に届ける場合、鉄道はそれに応えることのできる有効な手段です。

鉄道も船と同様、長距離大量輸送に適しています。北米ではあの大きな大陸の中を輸送するために、鉄道は欠かせない手段となっています。日本でも長距離を輸送するケースで、ぜひ検討してみたいものです。

例えば関東と九州の間を輸送する手段として、船と鉄道の2パターンで実施してみると良いかもしれません。
自動車産業ではこの2つのモードで輸送することにより、コスト競争力の確保と環境への対応といった目標を達成すべく活動していると聞いています。

今までお話してきましたように、トラック、船、鉄道をうまく組み合わせながらQCD目標を達成すべく輸送を考えていきましょう。
航空輸送はコストがかかりますので、利用の際には慎重な判断が必要です。新鮮な食物を輸送し、販売価格に反映できる場合は有効かもしれません。

輸送コストとリードタイムはトレードオフの関係になりがちなので、それぞれの製品について、コストとリードタイムの目標を定めましょう。その上で適切な輸送モードの選択をやっていけば良いでしょう。

輸送改善の進め方(6)

今回は船の活用による輸送改善についてお話したいと思います。

船の活用メリットは、一度に大量の貨物を運べる、輸送品質が安定している、コストが安い、環境にやさしい輸送モードであるといったことが挙げられます。一方で、輸送リードタイムが長くなるため、急ぎの輸送には向きません。

現在トラック中心の輸送を実施されている場合には、コスト面での効果がありますので、まずは可能性について検討してみましょう。リードタイムについてはどこまでが許容範囲なのか、社内で論議してみると良いと思います。

定期的に一定量の貨物を輸送する、その際時間がかかっても問題ない場合に有効な輸送方式だといえるでしょう。
そもそも日本は島国ですので、輸出入は原則として船による輸送になります。また、国内でも各地を結ぶ貨物船やフェリーもありますので、このような内航輸送にも着目してみる価値はあります。

一方、季節によっては注意が必要です。特に台風のシーズンは船のダイヤは大幅に乱れる可能性があり、また、欠航となることもしばしばあります。
通常月は船を利用し、台風シーズンは陸上輸送に切り替える手もあると思います。

また、途中までトラックで走り、ある地点から船で輸送するといった、「ランド・ブリッジ」という輸送方法もあります。
繰り返しになりますが、船は環境にやさしい手段ですので、時流には乗っているはずです。うまく使う方法は無いか一度検討をしてみることをお勧めします。

輸送改善の進め方(5)

前回はトラック輸送における「ミルクラン方式」の説明をしました。この方式で混載することで、積載率を高め物流改善するというアイテムでした。
今回は同じく混載を行うための「クロスドック方式」についてお話させていただきます。

クロスとは、多方面の荷が行きかうことを示します。ドックとはその名のとおり、トラック(トレーラー)の着く場所を示します。
クロスドックと呼ばれる貨物ターミナルを設置し、そこに多方面からの貨物を集め、集められた貨物を特定の方面に向けて混載して運ぶ方式です。

例えば、千葉県の千葉市にターミナルを設け、千葉県のA市、B市、C市から集められた貨物を、仙台市に輸送するといったイメージです。

郵便貨物や宅配貨物では一般的な手法ですが、一定の規模が前提となります。
クロスドックは方面別の貨物仕分け場ですから、基本的に「在庫」は発生しません。到着した貨物は一定の時間を経過した後に特定の方面に向けて発送されます。

ここで注意が必要なのは、いったんクロスドックで貨物が滞留するため、リードタイムが伸びることです。
このリードタイムを考慮したうえで輸送計画をたてる必要があります。

独自にクロスドックを設計する場合には、効率的なレイアウトを作成することがキーポイントになります。
将来を見据え、必要面積を確保し、極力貨物の動線上に節ができないように注意しましょう。

また、貨物の仕分けミスはクロスドックにとって致命傷になります。作業標準をきちんと作ることと、ポカよけの設置などの工夫をしましょう。

輸送改善の進め方(4)

物流改善の中で特にコストのかかる輸送改善、今回も引き続きトラック輸送についてお話させていただきます。

トラックの能力を目いっぱい活用するために「混載」を実施すべきことは以前お話させていただいたとおりですが、その手法の一つである「ミルクラン方式」についてご説明します。

この方法は、かつて北米の農場でいくつかの農家を巡回してミルクを集めて回ったことに由来します。
つまり、一箇所の貨物だけではトラックがいっぱいにならないので、複数の荷主を回ることにより積載を高める手法です。

イメージとしては、空港リムジンバスがわかりやすいのではないでしょうか。
成田空港で、まず第二ターミナルの2箇所の停留所で客を乗せ、次に第一ターミナルの2箇所で乗せる、その後銀座地区の3箇所のホテルに停車し、客を順次降ろしていく。非常に理にかなった運び方です。
この例では、両端末ともに複数個所を巡回しますが、片方だけ巡回する方法が一般的かもしれません。

ミルクラン方式は、北米やヨーロッパのように非常に長距離を走行するケースの場合に活用されています。日本でも長距離輸送の場合でかつ複数拠点が途上にある場合には、大変有効な方式だといえるでしょう。

この混載方式をとる場合には、積載順序、荷卸順序を考慮してトラックの荷台のどこに積むかを決めておきます。
荷卸時に余分な作業が発生しないよう、工夫することが必要です。

また、混載を行う場合は、貨物の荷姿データをきちんと把握しておく必要があることは言うまでもありません。荷の特性や荷姿条件が大きく異なる等で、混載に行った先で貨物が積めなかったということが発生しないよう、事前準備はしかっりとやっておきましょう。

輸送改善の進め方(3)

物流改善の中でコストを多く占める輸送について、今回も話を続けます。

トラック輸送で混載を実施して積載率を高めることと同時に、もう一つ重要なことがあります。それは「回転率を上げる」ということです。

トラックはモノを輸送していくらの設備です。それを停止させておくほどもったいない使い方はありません。

よく工場の軒先で長い時間停車しているトラックを見かけます。その理由として、荷捌き場が混雑していて荷卸できない、荷卸貨物の仕分け作業に時間がかかっている、荷卸のためのフォークリフトが空かない等々いろいろな事情があると思われます。

まずこのトラックの滞留を撲滅する活動に取り組んで見ましょう。
前記の理由も「なぜなぜ」を繰り返していくと真の要因が見えてくると思います。

荷捌き場の整備は重要です。安全を確保した上で、決まった時刻にトラックが入ることができ、一定の時間で荷卸・荷積ができ定時に出発ができる、といった目標を掲げて荷捌き場の整備をしましょう。

作業手順も十分な検討が必要です。荷卸しながらの仕分けは思わぬ時間を食うことが考えられますので、荷卸作業と仕分け作業を分離することも考えましょう。

トラックを滞留させることはコストを発生することと等しいですから、トラックの滞留時間を一つのマネジメント指標としてそれを日々低減させる改善に取り組みたいものです。

輸送改善の進め方(2)

物流改善で多くのコストを占める輸送の中で、今回はトラック輸送を中心にお話させていただきます。

小回りが効くし、比較的調達もしやすく便利なトラック輸送ですが、道路通行料や燃料代が課題であることは前回お話したとおりです。

まずはトラックの能力を目いっぱい活かす方法について考えて見ましょう。
トラックにはいろいろなサイズがあります。まず自社の製品の輸送に適したサイズを選定します。その上で、そのトラックの能力を最大化することを考えます。

今回は、10トントラックを例にとって考えて見ましょう。
メーカーにより多少差はあるものの、通常10トントラックは重量的には10トン、容積的には50㎥の貨物を積載することができます。
かさばる貨物中心の場合には、まず50㎥まで荷をまとめる工夫が必要でしょう。客先の要求量が50㎥あれば問題ありませんが、もしこれに満たない場合はどうしたらよいでしょうか。そもそも自社の輸送に適したサイズが10トントラックでしたので、大きな空間はないものの、一部トラックに隙間ができてしまうことがあります。

ここで混載の工夫が必要になってきます。同一方面の貨物を探し、少しでも隙間を埋める工夫を行います。
仮に他の貨物が見つかって、容積的に満載になったとします。まずは輸送改善合格といえるでしょう。

ただし、もっと工夫をしている会社がいます。彼らは容積的にも満載、重量的にも満載を目指して日々輸送改善を実施しています。
つまり、かさばる貨物と重量のはる貨物とを組み合わせ、極力トラックの能力目いっぱいで輸送できるよう考えています。

この改善をよく「鉄綿混載」と呼びますが、これは重量物である鉄と軽量だがかさばる綿を形容しています。輸送改善のちょっとしたコツです。

まずは毎日の輸送量の容積と重量およびトラック台数のデータ集約から始めてみましょう。改善ネタが見つかることと思います。

輸送改善の進め方(1)

物流改善を進める上で、物流コストが最もかかるであろう「輸送改善」についてしばらくお話させていただこうと思います。

最初に輸送モード(輸送手段)とその特性についてお話します。

まず一番ポピュラーな輸送手段といえばトラックが思い浮かぶと思います。日本の国土は狭いので、大抵の輸送はこのトラックで可能であると言えるでしょう。特徴として、小回りがきく、調達しやすい、納期に対する確度が高いといったメリットをあげることができるでしょう。一方で、最近の燃料油の高騰の影響を受けやすく、日本の道路通行料が高価なことを考えると、必ずしもコスト競争力が高い輸送機器とはいえないでしょう。

次に鉄道はどうでしょうか。大量の貨物を一気に運べる、品質が確保しやすいといったメリットがありそうです。また、環境に良い影響を与えることもメリットといえるでしょう。一方で、JRにコントロールされていることから、コストのコントロールが難しいかもしれません。

大量に輸送できる代表的な手段として船があげられます。品質も確保しやすい上、大量輸送によるコスト削減も可能です。環境問題にも良い影響を与えます。ただし、リードタイムが他の輸送手段に比べかかることが課題です。

緊急の輸送に適した手段として航空機による輸送があげられます。スピードが速い上、確度も高いと思われます。一方でコストは高くなりますし、燃料油コストの影響をまともに受けてしまいます。物流コストを販売価格に転嫁できる競争力のある製品には適しているかもしれませんが、緊急時に利用することが一般的でしょう。

これらの輸送手段を製品の特性に応じて使い分け、適正なコストで輸送する工夫を考えて見ましょう。
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