1: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:08:54.60 ID:58E1B54qo
えっと……タイトルでわかりづらくてすいませんが
この作品はSTEINS;GATE×涼宮ハルヒの憂鬱のクロスオーバーです
シュタゲ面白かったなーでふと思いついた完全に書きたいだけの作品なので、キャラ崩壊や世界観の逸脱等あると思います
作者の力量不足が原因ですが、不快に感じられたら申し訳ありません

あと、STEINS;GATEはトゥルーエンド後の世界観を前提にしておりますので
未プレイの方はネタバレの恐れがあります。
閲覧の際は注意してください

ではそれでも大丈夫だ、という方は……どうぞ

あと、更新はたぶんかなりゆっくり……だと思うので付き合いきれん方は先にごめんなさい

引用元: 観測者のメランコリー 

 

Xbox Oneソフト「 CHAOS;CHILD 」オープニングテーマ「 非実在青少年 」【カオス・コラボ盤】
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2: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:10:39.70 ID:58E1B54qo
その日も、いつも通りだった。
銃で武装した集団がドアを蹴破ってくることなどなく、他愛もない会話で時間が過ぎてゆく……そんな日常。
たくさんの時間と、いくつもの思いの上に成り立った世界。
その日常を俺は、謳歌していた。

「まゆりってほんと器用なのね……いつみても関心するわ」

「えー、そんなことないよ?クリスちゃんだってやってみればきっと出来るよー」

「……そう、かな?」

「そうだよー。まゆしぃとしても、コスプレ仲間が増えてくれるとうれしいのです」

ソファーから聞こえてきた二つの声に、俺は振り返る。
椎名まゆりと牧瀬紅莉栖。
実に親しげに会話を交わす二人だが、実はまだ知り合って大した時間は経っていない。
いや、正確に言えばこの世界では……と言った方が正しいのだが。

3: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:11:46.03 ID:58E1B54qo
「どうしたの、岡部。私の顔になんか付いてる?」

気づくと、紅莉栖がこちらの視線に気づいたらしく怪訝そうなまなざしを向けている。

「いや、何でもない」

「……変な岡部」

「オカリンが変なのは今に始まったことじゃなくねー?」

紅莉栖の言葉に反論しようかと考えていると、部屋の奥からけだるそうな声が聞こえてきた。
声の主はパソコンの画面から顔を離すことなく、声だけで会話に参加している。

「貴様にだけは変とは言われたくないぞスーパーハカー!」

「ハカーって言うなって言ってるだろっ!」

「どんぐりの背比べです、本当にありがとうございま……ハッ」

「……」

「……」

「な、なんでもないっ!」

「……フ、フフ……フゥーハッハッハッ!」

「わ、笑うなっ!この……HENTAI!」

この不変の日常のすべてが、今の俺にとってはたまらなく愛おしい。
願うなら、この世界がずっと……

4: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:13:07.58 ID:58E1B54qo
「っ!?」

―――ドクン

視界が大きく揺れる。
自分が立っている感覚が徐々に欠如していくのが感じられる。

(バカな……これは……この感じは……『リーディングシュタイナー』!?)

そんなバカな……
この世界線には、電話レンジ以外のタイムマシンが存在するというのか?
そん……な……
意識が……く……そ……

5: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:14:50.32 ID:58E1B54qo
「……あちぃ」

うだるような夏の暑さに、俺は思わず呟いた。
べたつくTシャツが最悪の目覚めを演出してくたようだ。
ここまで酷い目醒めも久しぶりかもしれないな……

「こういう日は、クーラーをガンガンに効かせた部屋で一日を過ごすのが一番だろうな……」

という俺の呟きを待っていました、といわんが如く俺の電話が着信音を奏で始めた。
発信者は当然のごとくあいつだろう。
何コールかをスルーするために緩慢な動作で起き上がり、俺は携帯を取った。

『さっさと出なさいよ、バカ』

「そうは言うが、俺も今起きたばかりでな」

本当は電話に出るのも気が進まなかったんだがな、などとは口が裂けても言わない。
そんなこと言った日には閉鎖空間で神人たちのゲリラライブが始まっちまうだろうからな。

6: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:15:45.17 ID:58E1B54qo
『まぁいいわ。その様子だとどうせ暇なんでしょ?』

こいつがこういう風に言うときの次の言葉は大体予想が付く。
だから俺は電話を片手に外へ出かける準備を始めているわけなのだが。

『駅前の広場に集合ね、時間は今から一時間後。もちろん遅刻は厳禁よ』

「……一応聞くが、拒否権は?」

『あ、あとお金は十分に持ってきなさいよー。あんたいっつも財布ギリギリじゃない』

「……オーキードーキー」

俺の返答が聞こえたかどうか知らんが、ぶつっと通話が切れた。
人の財布の中身の惨状を、誰のせいだと思ってんだあいつは……
まったく、呆れ返るほどのマイペースさについため息が出る。
まぁ、なんだかんだで従ってしまう俺も、なんだかんだで楽しんでるのかもしれないが。

7: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:17:13.98 ID:58E1B54qo
「……っぁ!?」

激しい耳鳴りと頭痛に思わず嗚咽が出てしまった。
前のめりに倒れてしまいそうになる体をすんでのところで支える。

(懐かしい感覚だな……出来れば一生味わいたくは無かったが)

ぼやけた視界が明確になるにつれて、辺りの異様さが明らかになっていく。
さっきまで俺はラボにいたはずなのだが、今は強い日差しが俺を射している。

(どうやら屋外……のようだな)

とりあえず冷静に辺りを見回してみる。
以前の俺ならあわてふためいているところだが、人間の慣れというのは怖いものだ。
しかし、リーディングシュタイナーが発動したということは……

(……認めたくないが、ここは以前とは別の世界線ということになる)

冷静を装ってはいるが、喉の奥が乾ききっていることが分かる。
あのループする時間の中で見たものが、フラッシュバックしてきて、胃が痛くなる。

(なんで……どういうことなんだよ……っ!)

8: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:18:38.88 ID:58E1B54qo
「……大丈夫?オカリン……」

叫びだしそうになる俺を、聞きなれた優しい声が引き留めた。
自分でも驚くような勢いで振りむくと、心配そうなまゆりが俺の顔を覗き込んできた。

「……ま、ゆり……」

「ちょ、オカリン大丈夫なん?顔真っ青じゃん」

まゆりの隣でコーラを一気飲みしていたらしいダルも、俺の異変に気づき声をかけてきた。
どうやら、少なくともダルとまゆりはいつも通り……らしいな。

「……」

しかし、ここはいったいどこなんだ?
ダルとまゆりの正常さが、逆に周りの環境の異常さを際立たせていた。
見たこともない町並みを行き交う人々。
タイムリープを繰り返していたときとまったく違う明らかな『改変』
本当に違う世界に、迷い込んでしまったような……そんな感覚。

「オカリン……今日は止めにしとく?」

俺の異様な雰囲気を察したのか、まゆりが心配の色を強めて言う。
今日は止めにしとく、ということは……今から何か予定があるということなのだろう。
正直、全く持って気が進まなかったが、この世界での自分の状況を知るためにもここで折れるわけにはいかない。

9: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:19:05.56 ID:58E1B54qo
「……これから、俺たちはどこへ行くんだ?」

俺の質問に、まゆりの目が丸くなる。
ダルはまゆりよりは軽く、だが少し心配の色を表情に出しながら答えてくれた。

「今日はオカリンが行こう、って言い出したんだお?まぁ僕としては、あんまり気が進まなかったけど……」

普通ダルが気が進まない、と言えば全く行動しないはず……それが橋田至、という人間なのだ。
そんなダルが気が進まないと言いつつもついてきているということは、よほどダルにとって魅力的な『何か』があるのだろう。

「……オカリン、やっぱり変だよう」

まゆりの心配そうに揺れる視線がまっすぐに俺を捕えた。
これ以上この二人に不信感を与えるのはまずいかもしれない。
この町のことや、他のラボメンのの存在も気になるところだが……
今はその『何か』を確認する方が先に感じた俺は、携帯をポケットから取り出し耳に当てる。

「……俺だ。どうやらこれから機関の機密情報を持つ者たちと情報交換するらしい」
「……気を付けろ、だと?誰に向かって言ってるんだ……俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だぞ?」
「……あぁ、分かっている。そちらも気を付けてくれ。では、エル・プサイ・コングルゥ」

10: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:20:07.63 ID:58E1B54qo
携帯をしまい、二人に向き直る。
ダルは、「いつものオカリンじゃまいか……」と小さくつぶやきため息をついている。
まゆりはというと相変わらず心配そうだったが、俺がそれ以上何も言わないところを見ると再び歩き出した。
そのあとに俺とダルも続く。
二人の歩みに合わせていれば、そこまで違和感も感じさせなくて済むだろう。

(……この状況をあいつに説明したら、なんというだろうか?)

今ここにはいない、凛々しい表情の少女を頭に思い描く。
あの時のような親密な関係には、まだなっていないが……それでも協力してくれるような気がする。
あの繰り返す時間の中で、くじけそうな俺の背中を毎回押してくれたのは、彼女だったのだから。
……こうやって一時的にでも離れることで改めて思い知らされる。

俺にはやっぱり彼女が必要なのだと。

11: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:21:53.32 ID:58E1B54qo
急いで自転車を走らせて、集合場所へ急ぐ。
腕時計を確認すると、ハルヒの電話から五〇分ほど時間が過ぎていた。
時間に余裕を持たせて出てきたはずなのだが、そういう時に限って予想以上に信号で足止めなどを食らってしまう。
その結果が、この有様だ

「間に合う……か?」

金には一応余裕を持たせておいたが、こう毎回財布扱いされてはたまったものではない。
まぁ間に合ったからといって財布扱いされないかというとそうでもないのだが。
などと考えているうちに、あっさりと集合場所に着いていた。

「おっそーっい!何考えてんのよ、キョン!」

そう言って俺を指さすハルヒは、言葉の割には少し上機嫌に見える。
これでも上機嫌な方なんだ。察してくれ。

「集合時間には間に合っているはずだぞ?それにお前以外はまだ来てないじゃないか」

そう言って少しの違和感。
ハルヒ以外にまだ来ていない……?
喉元まで何かが出かかっているのに、それがなんなのか分からない言いようのない不安に襲われる。

12: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:22:19.39 ID:58E1B54qo
「団長の私よりも遅れてくるっていうこと自体が、ナンセンスなのよ!考えを改めなさい!」

そんな思考が、ハルヒの大声によって中断される。
いい知れぬ不思議な感覚に、脳の奥深くのあたりがチリチリと痛む。

「あ、あのぅ……すいませぇん……」

半ばにらみ合うように対峙する俺とハルヒの後方から、控え目な声が聞こえた。
この弱弱しい感じは、どこか聞き覚えがあるようで、まったく違う声のような気もする。
あぁもう、なんなんだこの感じは。

「遅れて……しま、って……すいま……せん……」

振り返ると、首筋を伝う汗と弱弱しい息遣いが劣情を誘う……美少女が立っていた。
しかし、重要なのはそこではない。

――こいつは……一体、誰だ……?

13: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:23:03.90 ID:58E1B54qo
「あ……あの……その……」

俺の視線にそいつはモジモジと視線を泳がせ、上着の裾を引っ張っている。
その仕草は10人の男に聞けば9人が「いじめたい!」と思うだろう。
今の俺はそういう意味で視線を向けているわけではないのだがな。

「ちょっとキョン……おい……こら、HENTAI!」

「ぐおぅっ!?」

どうやらよほど視線を奪われていたらしく、背後に迫るハルヒの存在にも全く気付けなかった。
軽く締め上げられる形となった喉からひゅうと小さく音が漏れる。

「あんた……そういう趣味があったわけ?」

ハルヒの口調が、少し咎めるようなものに変わっているのに気付いた。
まぁ確かに不躾な視線を向けていたのは事実だが、なによりハルヒはこの少女のことを知っているようだ。
それについて聞いておくとしよう。

「そういう、というのがどういう趣味なのか気になるが……こいつはいったい誰だ?」

14: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:24:26.88 ID:58E1B54qo
俺の質問に、ハルヒがあっけにとられた表情で固まった。
まるで何が言いたいのか分からない、とでも言いたげに。
首の拘束が緩まったので首を少し傾け視線をずらすと、視線の先の少女も俯いてしまっている。
なんだ、この空気は……俺はおかしなことを言ったか?

「あんた……ギャグでも言っていいことと悪いことは弁えたほうがいいわよ?」

ハルヒの表情は、冗談が消え真剣そのものだ。
だからこそ、俺にはこの状況が異様なものとしか思えないのだ。
ギャグ?いったい何がギャグだって言うんだ……

「いや、だって普段のメンバー……が……」

と言いかけて、俺の頭に電流が走る。
バラバラになっていたピースの数個が、かろうじて繋がるような感覚。
そうだ……長門に朝比奈さん、そして古泉……
なぜその存在を今まで忘却していたのか、それは不思議でならないが……今はそんなことを考えている場合ではない。

15: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/09(木) 17:25:25.99 ID:58E1B54qo
「おいハルヒ……長門と朝比奈さん、それに古泉は……どうしたんだ?お前より遅れてくるなんて、珍しいじゃないか」

首の拘束は緩んだとはいえ依然強く、かすれた声が出てしまった。
俺の質問にハルヒはさらにあっけにとられたように顔を呆けさせた。
……なぜそんな顔をするんだ、ハルヒ。

「あんた、何言ってんの?」

頼む、ハルヒ。
そんな疑問に満ちた表情をしないでくれ。

「長門、朝比奈、古泉……?それこそ、いったい……誰なの?」

頼むから……勘弁、してくれよ……


21: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/10(金) 15:09:01.12 ID:TSaJXMUco
「……お、あれハルヒ氏じゃね?」

まゆりとダルと連れ添って歩くこと数分、駅前の広場らしき場所の前でダルが声を上げた。
ダルの視線の先には、勝気そうな顔立ちの少女と、その少女に射止められるような視線を向けられている少年。
そしてその奥にいるもう一人は、忘れもしない少女、いや少年……

(あれは……ルカ子……っ!)

なぜここにいるのか?という疑問が一瞬浮かんだが、すぐに消える。
今回の待ち合わせにルカ子も呼ばれていた、というだけのことだろう。
待ち合わせに急いできたのだろう、首筋を伝う汗が妙に艶めかしく光っている。

だが男だ。

22: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/10(金) 15:13:17.65 ID:TSaJXMUco
「あ、あのぅ……涼宮さん……いいんですよ……」

涼宮、と呼ばれた女はなにやらご立腹らしく、ルカ子に制されてもなお目の前の少年の胸ぐらをつかんで離さない。

「そうはいうけどね、漆原さん。ギャグにしてもこれは……許すわけにはいかないわよ」

そんな様子に、ルカ子の瞳の潤みが増していく。
どこへ行っても、ルカ子は相変わらずなのだな……

「ハルヒちゃん、ちょっと落ち着いてー」

気づくと、俺の横にいたはずのまゆりが涼宮と少年の間に割って入っていた。
まゆりがこういう風に突然ふらりと行動を起こすのは昔からなのだが、やはり一瞬まゆりがいなくなる感じは慣れることが出来ない。
涼宮はまゆりとルカ子の顔を一瞥し、フンと鼻を鳴らすと男の胸ぐらを離した。
納得は出来ないが仕方ない、と表情が物語っている。

23: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/10(金) 15:18:42.83 ID:TSaJXMUco
「今回は漆原さんとまゆりの顔に免じて許してあげるけど……次は容赦しないわよ?分かったわね、キョン!」

キョン、とはおそらくあだ名なのだろうが、そう呼ばれた男は考え込むように俯いたままだ。
一見すると涼宮の詰問に対して反省しているようにも見えるが……何か違うような気がした。

(……まゆり達は、どうやらこいつらのことを知っているようだな……)

「ハルヒちゃん、もうちょっとキョンくんに優しくしないとダメだよー?」

「うーん……今回のはちょっと目に余るものがあったから」

「みんな仲良くしてくれないと、まゆしぃは悲しいのです……」

「……その表情は反則よ……」


涼宮とキョン。無論そんな名前に心覚えは無いし、顔を見るのも初めてだ。
だが……会話と反応を見る限り、こちらの世界ではまゆり達と親密な関係にあるらしい。
あまりの世界の変わりように、頭がどうにかなりそうだった。
俺の全く知らない相手と、見知った仲間がフレンドリーな会話を繰り広げているなんてな。
世界線変動などという言葉では言い表せられないような、何か大きな力が働いたかのように感じる。

24: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/10(金) 15:19:27.13 ID:TSaJXMUco
「……で、そこに立ってる人が?」

突然涼宮の視線が、茫然と立っていた俺の方へ向く。
視界の隅ではルカ子がキョンに「大丈夫ですか?」と駆け寄っているのが見えた。

「そう、オカリンなのですー」

「ふーん、へぇー……」

じろじろと品定めするように向けられる視線は、正直今の俺には不快でしかなかったが、平静を装う。

「なるほどねぇ……思ってたよりは普通なのね。マッドサイエンティストって言うからもっと奇抜な人かと思ってたわ」

この口ぶりからすると、どうやらこの涼宮という女とは初対面らしい。
正直、初対面であることが分かったのはかなりありがたい。無駄に話を合わせたりする必要もないわけだ。
状況から考えるに、まゆりが俺を紹介して会うことになった……と言ったところか?
いやしかし、ダルは『俺が』誘ったと言っていたな……
いまいち状況を掴めない俺が黙っていると、涼宮は右手を差し出してきた。

「私は、SOS団団長の涼宮ハルヒよ。よろしく、岡部倫太郎さん。いや……鳳凰院凶真さん、のほうがいいかしら?」

25: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/10(金) 15:20:34.52 ID:TSaJXMUco
「なっ……」

ニッコリと無邪気に微笑むその少女は、同じ年であろうまゆりやルカ子よりも、だいぶ幼く見えた。
しかし、初対面で俺の真名を知っているとは……まゆりのやつめ余計なことを。
いや、それよりも……SOS団、団長?
唐突に少女から発せられた単語の意味を考えている俺に、まゆりが答えを差し出してくれ……

「あのねー、ハルヒちゃんはSOS団の団長さんなんだよー。すごいよねー」

……いや、まったく答えになっていなかった。
SOS団……字面から考えるとボランティア団体のように思えなくもない。
だが、女子高生がボランティア団体の団長……なのか?

「んで、そっちにいるのが雑用係のキョンよ」

指差した先にいた男は、先ほど問い詰められていた時と同じく、依然なにか考え事をしているようだ。
しかしそんな様子を気にする様子もなく、涼宮はそのまま話を続けた。
……というか、団という割には二人しか団員がいないのか?
そんなもの、団とは呼べないのではないか……

26: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/10(金) 15:21:29.23 ID:TSaJXMUco
「んで、今日は未来ガジェット研究所の責任者であるあなたにお願いがあるんだけど……」

どうやら、未来ガジェット研究所のことも知っているらしいな。
まゆりよ、いったいどこまで話しているんだ……
……ん?未来ガジェット、研究所……?
街そのものが変わってしまっていたので、全く考えていなかったが……まさか!?

「ダル、未来ガジェット研究所はどこにある?」

「え?何言ってんのさオカリ「答えてくれ、ダルッ!」

俺の突然の発言に、ダルだけでなく他の全員が呆気に取られている。
いや、一人だけ……一人だけは俺にまっすぐ視線を向けていた気がしたが、必死な俺に確認する余裕はない。

「いや……今日は街ブラブラした後、研究所に招待する予定っしょ?場所はっつーと……」

そう言って、俺の知らない住所をダルは告げた。
どうやら、住所は違えど一応この世界線にも研究所はあるらしい……な。
そうなると、やはり気になるのは『アレ』の存在だが……

27: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/10(金) 15:21:56.34 ID:TSaJXMUco
「……え、えと……」

さっきまでの勢いがすっかり無くなったハルヒが、気まずそうに漏らした声が、俺の意識を現実へ連れ戻す。
さっきまで明るかったまゆりの表情がまた心配で曇り、奥に立つルカ子も心配そうに見つめている姿が目に映った。
……いかんな、もっと冷静にならねば。さっき不信感を与えないようにと思ったばかりではないか。
こういう状況には慣れている、と自慢げになっていた自分が恥ずかしい。今の俺のどこが冷静だと言うのだろうか?
落ち着け、とりあえず落ち着くんだ……こういう時は……っ
俺はポケットから携帯を取り出し、耳にあてた。
大丈夫、きっと大丈夫だ。
マッドサイエンティストの鳳凰院凶真に、不可能などないのだから―――

32: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/12(日) 12:31:58.48 ID:UWv5HdaSo
最初は、タチの悪いドッキリかと疑った。
朝比奈さんの知り合いか、古泉の関係者を使って俺を驚かせようとしてるのではないか、と。
だって、普通誰も思わないだろ?
朝起きたら世界が全く違う形に変化してしました、なんて安っぽいファンタジーじゃあるまいし。
……だが、今俺の目の前で起きているそれは。

「ハルヒちゃん、落ち着いてー」

少なくとも俺にとってはファンタジーなどではなく、形を持った現実で。
目の前の少女は、俺のよく知っている少女のはずなのだが。
突然現れた見知らぬ少女と親しげに会話をするそいつが、記憶の中にある少女と同じ形をした別の存在に見えてしまう。

33: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/12(日) 12:32:24.53 ID:UWv5HdaSo
(これは一体……どういうことなんだ……?)

想像以上に冷静な自分に、自分でも驚いてしまう。
宇宙人に命を狙われたり、トンデモ異空間に飛ばされたりしたせいでこういうのに慣れてしまったのだろうか……
普通なら、大声で騒ぎたてて狂乱しているだろう。
いや、あるいはそうやって狂ったように見せれば周囲も感づいてくれるのではないか?

(以前にもこんなことがあったような……?)

いや、そんなはずないだろ……
こんな異様な状況に既視感を感じてしまうとは、どうしちまったんだ俺は。
そこまでして自分を落ち着かせたいのか?

34: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/12(日) 12:33:04.43 ID:UWv5HdaSo
「だ、大丈夫、ですか?」

自分に向けられた心配そうな声に、思考が中断され意識がそちらへ向かう。
潤んだ瞳に華奢なライン、男ならば思わず抱きしめてしまいたくなるような出で立ち。
なんだか朝比奈さんに似てるな……盛り方以外は。
などという思考が出来るぐらいに冷静さを取り戻すには十分の癒しであることを伝えておこう。

35: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/12(日) 12:33:30.81 ID:UWv5HdaSo
……冷静さを取り戻したついでに、今の状況を可能な限りまとめみるか。
と言っても、はっきりしているのは隣にいる少女の名字が『漆原』であることと今ハルヒと俺の間に割って入った女が『まゆり』という名前であることぐらいか。
あとは飄々とした白衣の男と、その隣にいかにも暑そうな体型と恰好の帽子を被った男が少し離れた場所でこちらを見ている。
年齢的には女二人は同い年ぐらい、男二人は年上に見える。
どうやらその男二人とハルヒは初対面らしく、ハルヒは自己紹介を始めていた。
というか2人しかいないのに団を名乗っているのか?ハルヒよ。
ハルヒの会話を聞く限り、飄々とした男の名前は岡部倫太郎、または鳳凰院凶真という名前らしい。
どちらかが本名でどちらかが偽名、ということか?今の状態じゃよくわからないが。

36: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/12(日) 12:33:58.97 ID:UWv5HdaSo
(しかし……改めて、異様な状況だな)

……だが
俺は、こんな状況をどうにか出来る奴を一人だけ知っている。
こういう時にばかり頼ってしまうのは、あいつを都合のいい道具のように考えているような気がして癪だが……
こういう時に頼れるのはあいつしかいない。
窓辺に立たずむ小柄な少女の姿が、脳裏に一瞬映る。
今すぐにでもあいつの住むマンションへ走り出したかったが、おそらくハルヒが許してくれないだろう。
この世界でも、お前だけはいつも通りでいてくれよ?長門……

37: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/12(日) 12:36:02.55 ID:UWv5HdaSo
世界線変動率  unknown   観測者のメランコリー

43: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/16(木) 18:56:36.32 ID:BNWJ+kGBo
◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「流石オカリン、初対面の女子高生相手でも厨二病全開!そこに痺れる憧れ……ねぇお」

横を歩くダルの嘲笑まじりの声を、俺は華麗にスルーしながら言葉を返す。

「なーらばダルよ、女子高生をメイド喫茶に誘うことは恥ずべきことではないのかぁ?」

そう、今俺たちが向かっているのは本来ならば秋葉にあるはずのメイド喫茶『メイクイーン+ニャン2』なのだ。
ダルから聞いた情報によると、少ないながらもこの辺には秋葉にあるような店があるらしく、普通の町にほんの少し秋葉を混ぜたような場所らしい。
そしてダルの興奮具合を見る限り、どうやらいるらしい。

(人物に大きな変化はない、のか?……だが、まだ存在をしっかりと確認するまで安心は出来ないがな)

44: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/16(木) 18:58:18.15 ID:BNWJ+kGBo
「べ、別に恥ずかしくなんかな、ないんだからねっ!……てか、オカリンだって乗り気だったじゃん?」

「む、まぁ……それは……」

正直、こんな状況になってかなり疲れていた俺にダルの提案を否定する気力は残っていなかった。
フェイリスのことを確認したいという気持ちももちろんあったが。

「メイド喫茶なんて初めてだわ……なんか閉鎖的なイメージ強いのよね、そういうとこって」

少し後ろを歩くハルヒが、まゆりの方に声をかける。
確かに、普通はメイド喫茶に友人を誘うなんてことはせんだろう。
しかし……まゆりとダルの場合は話が別だ。

45: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/16(木) 18:58:44.41 ID:BNWJ+kGBo
「そんなことないよーハルヒちゃん。まゆしぃだってそこで働いているのです」

「……え?」

「えへへー、驚いたー?」

まゆりとハルヒの会話に、思わずこの世界が異常であることを忘れてしまう。
もしもこの世界の萌郁や紅莉栖が無事だったら……?
危険な世界線移動などせず、この世界にこのままいてしまえばいいのではないか。

(……何をバカなことを。歪んだ世界線は元に戻さなければ、何が起こるか分からないってことぐらい分かってるだろ)

頭の中に浮かんだバカな考えを消すように、頭を大きく振る。
歪んだ世界線は何を引き起こすか分からない、そのことを俺は嫌というほど知っている。
だから例え今が平和だったとしても……歪んだままでいいなどと、思っていいはずがない。

46: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/16(木) 18:59:13.82 ID:BNWJ+kGBo
「あの……おかっ……凶真、さん?大丈夫、ですか?」

いつの間にか俺の歩く速度は遅くなり、大分列から離れてしまっていたようだ。
そんな俺の横にルカ子は連れ添って歩いていたらしく、じっとこちらを見ている。
俺の表情を覗き込もうとして身を乗り出してきたルカ子の白い肌に、目が一瞬奪われてしまう。

だが男だ

47: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/16(木) 18:59:40.17 ID:BNWJ+kGBo
「案ずるな、ルカ子よ。我が灰色の脳細胞でいかにしてこの世界を混沌ヘ導くか考えていただけだ!フゥーハッハッハ!」

「……ふふっ」

俺の高笑いに、ルカ子も釣られて少し笑った。
普段泣きそうな顔が多いルカ子だが、だからこそ不意に見せる笑顔の破壊力は相当なものだ。
道行く男を10人中9人は振り返らせることが出来そうな、そんな笑顔。

だが男だ

48: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/16(木) 19:00:19.37 ID:BNWJ+kGBo
「……普段の岡部さんに戻ったみたいで、よかったです。なんだか、暗い顔してましたので……」

「ルカ子よ、俺は岡部ではない……鳳凰院凶真だっ!」

「あ、す、すいません凶真さ…… 「オカリーン、なにしてんー?早く行くおー」

遠くから呼びかけられた声に、俺とルカ子は会話を中断してそちらを向く。
短いようで結構立ち止まっていたらしく、ダル達との距離はかなり空いていた。

49: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/16(木) 19:00:47.27 ID:BNWJ+kGBo
「ルカ子よ、急いだ方がよさそうだな」

「は、はい、凶真さんっ」

走り出した俺の後に、ルカ子が続く。

(感謝するぞ、ルカ子……お前のおかげで大分肩が軽くなった)

難しく考えるのはやめにして、この世界線で自分に出来ることをしよう。
それがきっと、『運命石の扉』の選択だろう……
エル・プサイ・コングルゥ―――

57: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/22(水) 15:05:51.10 ID:lDj3gFjCo
(メイド喫茶、ねぇ……)

会話の流れを聞いていると、とりあえずそこで昼飯を食べてから本格的に行動ということらしい。
この道筋を考えると、おそらくいつも集まっていた喫茶店に向かっていると思うのだが……

(いつからあそこはメイド喫茶になったんだ?)

ハルヒにも感じた言いようのない『違和感』が、街を歩くことで更に深くなっていく。
見慣れている街のはずなのに、見たことない建物が点々としており、待ちゆく人の雰囲気も微妙に異なっている。
感覚的には、二つの異なる街を出来るだけ違和感のないように無理やりつなげた……そんな感じ。

58: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/22(水) 15:06:32.33 ID:lDj3gFjCo
(……本当にこれを全部ハルヒが起こしたのか?)

ハルヒに大それた力があるのは確かなのだが、今回は勝手が違う感じがする。
前回閉鎖空間に飛ばされた感じとは全く別の……言うなれば今回はハルヒが中心ではなく、ハルヒも巻き込まれるような形のような……

「なーに神妙な面してんのよ、キョン」

突然、ハルヒが横から俺に声をかけてきた。
どうやら、考え事をしているのを表情に出してしまっていたようだな。

59: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/22(水) 15:06:58.47 ID:lDj3gFjCo
(……ハルヒに相談してみるか?)

ちらりと浮かんだ発想を、俺は表情に出さずに揉み消す。
こいつが俺の話をまともに聞いたことがあったか?答えは無論言うまでもない。

「……別に何も」

「ふぅん……あっそ」

質問への答えが不服だったのか、俺から視線を変え不機嫌そうにハルヒは歩きだした。

60: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/22(水) 15:08:10.16 ID:lDj3gFjCo
(……こいつはほんと呆れるぐらいにいつも通りだな)

まぁだがそれのおかけで多少俺も平静を保てているのかもしれん。
それこそ周りに知り合いが誰もいなくなっていたら……ここまで冷静ではいられなかっただろうな。

「さて、着いたおー」

帽子を被った男が立ち止まり、看板を見上げながら言った。てか名前知らないなこの人の。
歩いた距離的には、普段の距離と同じ……つまりこの喫茶店は普段の行きつけと同じ喫茶店のはず……なのだが

61: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/22(水) 15:09:24.84 ID:lDj3gFjCo
(……こりゃなんだ?)

辺りの空気と明らかに違う店先の飾りに、掲げられた看板の文字は、『メイクイーンニャン+2』
俺の記憶ではもちろんそんな名前ではなかったはず。
ちらりと見える店内は、そこまで広くは無いながらも客の受け入れ人数は多いように見えた。
そして極め付けは店内を歩くネコ耳メイド達…… もはや元の面影もない。

62: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/22(水) 15:09:50.27 ID:lDj3gFjCo
(メイド……か)

ふと頭に浮かんだのは、我が部室専用の専属メイドであるあの方の姿。
あの人がここにいればきっと、『わぁー、すごいですねー。参考になりますー』なんて言ってそのまま手伝いなぞ初めてしまうのではないだろうか?

「ここで立ってても暑いだけだし、さっさと中に入るおー」

一人が入ると、その言葉に続くように皆が店内に入っていく。
暑いってのには、同感だし俺も続くとするか……
ドアが開くと、レジ横に二人のネコ耳メイドが……っ!?

「おかえりニャさいませ、ご主人様ーっ!」「お、おかえりニャ、さいませ……」



この時の俺に、もしも一言伝えることが出来るなら……カメラでも持参しとけ、と言いたいな。

66: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/26(日) 05:10:55.38 ID:AsP8/K8wo
突然の出来事に、空気が一瞬固まってしまった。
先ほどまで一人で考え事をして塞ぎ込んでいた少年が、突然行動を起こしたのだ。

(キョン……とかいう名前だったか?)

フェイリスの隣に立っているメイドの肩を掴み、詰め寄るその表情には、何か切羽詰まったものを感じる。
もちろん、フェイリスの隣に立つメイドは俺の知らない女なのだが……そこにいるのがあたかも当然のように存在している。
しかし今はそのことより……

67: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/26(日) 05:11:54.60 ID:AsP8/K8wo
「あ、朝比奈さん!?」

本人は焦って気づいていないようだが、掴まれてる方は大きく目を見開きたじろいでいる。
少なくとも友好的には思っていないようにしか見えない。

「えっ?あの……ひっ、ちょ……」

「聞いてください、朝比奈さん、それがっ……」

68: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/26(日) 05:12:25.25 ID:AsP8/K8wo
「ハイハーイ、その辺でストップニャーン」

突然の状況に俺たちが動けずにいると、フェイリスがいち早くその間に入って制した。
半ば強引に引き離すように割って入ったので、「痛っ」と見知らぬメイドが声を上げた。
目には涙を浮かべ、本当におびえているらしい……当然と言えば当然だが。

「当店ではー……メイドさんへのお触りは厳禁だニャン☆」

口調こそ普段通りのフェイリスだが、その目を猫のように細めて目の前の男を睨みつけている。
そしてその視線をそのまま俺たちへと向けた。
『これはどういうことなのか?』と無言で聞いてきているのだろうが……それはこっちが聞きたいというものだ。

69: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/26(日) 05:13:21.15 ID:AsP8/K8wo
「え……あ、いや……その……朝比奈さん……ですよね?」

「な、なんで私の名前……知ってるんですかぁ……っ」

カタカタと小さく肩を揺らしながら返された言葉に、キョンの表情が青ざめる。
焦点が揺れ、まるで死刑宣告でも受けた囚人のような……

(というか、さっきの言動……)

まるで知り合いに話しかけたのに知り合いじゃなかった……ように感じられた。
普通ならばただ錯乱していただけのようにしか見えないかもしれないが……俺には分かる。

70: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/26(日) 05:14:10.89 ID:AsP8/K8wo

(こいつ……まさか……?)

ルカ子やフェイリスが、世界線変動前の記憶を少し持っていたことを思い出す。
『リーディングシュタイナー』は決して俺だけにある力じゃない。
大小の差はあるようだがほぼすべての人が持っていて、たまたま俺の力が強かったという話なだけ。
それはつまり、俺以外にもそういう人物が絶対いないわけではない、ということ。

71: ◆rVDRt1VsVI 2011/06/26(日) 05:14:36.81 ID:AsP8/K8wo
(確認してみる価値は、ありそうだな……)

「あんた…… 「おい、キョンとか言ったな貴様」

放心状態から気を取り直し、キョンを咎めようとして動き出したハルヒを遮る。
邪魔されるわけにはいかない。これはいち早く確認しておきたいことなのだ。
ビシッと指を突き刺し、鳳凰院凶真で言葉を繋ぐ。

「貴様……『この世界以外の世界』を……知っているな?」

79: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/04(月) 13:20:59.55 ID:2BNbP2nho
(ハハ……冗談、だろ?)

目の前にいるその人は、俺を見て明らかに怯えていた。
知り合いへ向けられるそれではなく……赤の他人を見るような瞳。
間に入ってきたおかしな口調でしゃべる女に、妙に神経を逆撫でられ苛立ちがつのる。
いや、おかしいのは俺だ、分かってる。
この状況を見れば、どっちが悪いのかは一目瞭然だろう。

80: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/04(月) 13:21:25.63 ID:2BNbP2nho
(考えが纏まらん……いや、纏まるはずもないだろ)

この状況を理解できる奴がいたら俺の前に来て説明してくれ。
正座で小一時間聞いてやってもいいぞ、今なら。
だが、こういう時に頼れるあいつの所在は全くつかめてないわけで……

「おい、キョンとか言ったな貴様」

真っ白になりかけた頭に、聞きなれぬ男の声が入ってきた。
岡部倫太郎……とかいう名前だったか?
ハルヒが呆気にとられる奴がいるとは、なかなか面白いもんを見させてもらったぜ。
だが、見知らぬはずの男が俺に何の用だ……?

81: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/04(月) 13:22:06.73 ID:2BNbP2nho
「貴様……『この世界以外の世界』を……知っているな?」

指を突き付けながら、何かを知っているように自信満々に男は言った。
ハルヒも何か言おうとしてたようだが、予想外の言葉に口をポカーンと開けている。
周りは突然の台詞に訳が分からないといった様子だが……俺にとっては願ってもない台詞だった。
この男なら……このわからない世界について、ほんの少しでも何か知っているかもしれない。

「……あんた……なにか知ってる、のか?」

しっかり返答したつもりが、言葉は自分で思ったより掠れ、弱弱しかった。
そんな俺の言葉に、岡部はわざとらしく髪を掻き上げ大声を上げた。

「当たり前だろう……このマッドサイエンティスト鳳凰院凶真に分からぬことなどない!フゥーハッハッハ!」

82: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/04(月) 13:22:32.72 ID:2BNbP2nho
「……鳳凰院、凶、真……」

岡部の言葉に、少し朝比奈さんが反応する。
知り合いなのかと思ったが、その警戒する視線は俺へ向けられていたのと同じものだった。
どういう関係なのだろうか……

「色々言いたいことがあるし、そっちにも聞きたいことがあるだろうが……まずは落ち着け。焦っても状況が悪くなるだけだ」

「とりあえず……ダル、お前たちは先に席についていてくれ。少し二人で話をしたい」

さっきまでは全く思わなかったが、岡部の言葉は余裕に満ちているようで、なにか切り詰めたものが合間に垣間見える。
きっと……向こうも俺と同じような状況なのだろうな。

83: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/04(月) 13:23:53.79 ID:2BNbP2nho
「ちょ、オカリン?」

「ダルくん……今はオカリンの言うとおりにしよ?」

「僕は別に……るか氏やハルヒ氏はどうなん?」

「ぼ、ボクは構いません……」

「……なんかよく分かんないけど……説教は戻ってきたあとにしてあげるわ」

ハルヒの言葉には溜息が出るが、とりあえずは今の状況を打破できるかもしれない提案に乗らない手は無いだろう。
というか……それ以外に選択肢がない。
改めて考えると、つくづく選択肢が無い日常送ってるな……俺。
そんなことを考える余裕が出来たことに少し感謝しながら、俺は店を出る岡部の背中を追った。

88: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/10(日) 21:54:36.67 ID:qAm+MnLfo
「……というわけだ」

「……なるほど」

岡部からの説明を受けたキョンが、小さく相槌を打つ。
もちろん納得など出来る説明ではなかったが、かと言ってキョンには反論するような素材があるわけでもない。
というか、ところどころ変な建物が混じった町並みを見れば、納得せざるを得ないと言った方が正しいかもしれない。

89: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/10(日) 21:55:14.92 ID:qAm+MnLfo
「しかし……別の世界、か」

「俺もにわかに信じがたいことだ……今までこんなことは無かったからな」

岡部の世界には世界を改変することの出来るようなスゴイマシーンがあり、恐らくそれが原因の一つと考えられるとのことだ。
そしてそのマシーンはこの二つの世界が重なった世界にも存在している可能性があるらしい。
そんなトンデモSF設定……とキョンは思ったが、こっちにはこっちでもっとトンデモないSF女がいることを思い出す。
そのことを岡部に説明すると

「一人の人間の気ままな意思で改変される世界か……科学的に、などという考えがバカらしくなるな」

と、岡部は肩をすくめて見せた。
まぁ岡部の話にはところどころ難しい部分が混じっているし、科学的に考えないでくれたほうがキョンとしてはありがたいのだが。

90: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/10(日) 22:00:28.05 ID:qAm+MnLfo
「しかし、この町を見る限りは……そちらの世界がベースになっているようだ」

岡部が街の建物を振り仰ぎ言う。
確かに、街の様子はキョンの世界の街に岡部の世界の建物を出来るだけ違和感なく混ぜたような作りになっている。
そのおかげで異変に気付くのが遅れてしまったわけだ。

「そうなるとやはり、世界改変の力の優先度は涼宮ハルヒの方が上と考えるのが自然だろう……しかし、とんでもない力だ」

岡部が額に手を当てて考え込んでいる。
自称マッドサイエンティストを語るだけあり、岡部はキョンが聞いたこともないようなたくさんの事を知っていた。

91: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/10(日) 22:00:55.52 ID:qAm+MnLfo
というか、ハルヒのついてまともに考えてくれる人に出会ったのは、初めてではないだろうか?
うさん臭いスマイル男や、肝心なことは伝えられない先輩、そして何も語らない無口宇宙人。

(まさかハルヒのことについて初めてまともに会話出するのが別の世界の人間だとはね……)

そんなことを考えているキョンに構わず、岡部は続ける。

「何はともあれ、今は大きな行動に出るのは避けたほうがいいだろう」

バタフライ・エフェクト
岡部はかつての自分が起こしてしまった過ちを思い起こし、表情を歪める。
あんなことは二度と、起こしてはならない……そう、二度と。
ましてや二つの世界が重なっているのだ、一つの事象がどれほど大きな影響を生むのかは考えたくもない。

92: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/10(日) 22:01:38.22 ID:qAm+MnLfo
「さて、そろそろ戻るとするか。いつまでも待たせてはよくないだろう」

岡部はそう促すと、先に歩き出した。
その背中に、キョンがふと浮かんだ小さな疑問をぶつける。

「あ、そういえば」

「?」

「そっちの方が素なんですね、しゃべり方」

「……」

93: ◆rVDRt1VsVI 2011/07/10(日) 22:03:40.96 ID:qAm+MnLfo
終わり

みじけぇ

pixivの漫画読んだよ、あれ面白いネ

みんなも読んでみるといいよ、んじゃ