1: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:36:13.52 ID:c1MFS++20
このSSはアレイスター「さあ、最後の晩餐(ショータイム)だ」後編の続きです

注意点
オリジナル・独自設定のオンパレード
清々しい程の厨二・超展開
一部登場人物が、前スレよりさらにパワーアップ

いろいろおかしいところはあると思いますが、ご都合主義ってことで見逃してくれるとありがたいです

引用元: 食蜂「本っ当に退屈ね、この街は」 

 

とある魔術の禁書目録外伝 とある科学の超電磁砲 (10) (電撃コミックス)
冬川基
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2014-07-26)
2: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:37:02.15 ID:c1MFS++20
4月

第三次世界大戦終結から約半年が経過した。
大戦直後は平和以外の何物でもなかったが、これまでに様々なことがあった。
『新入生』たちによる学園都市への大規模クーデター。
そのことにより弱った学園都市へ、魔術サイドが総攻撃を仕掛けてきたりもした。
だがそれらのことは、主にとある少年達の活躍によって事なきを得てきた。

その少年達とは、上条当麻、一方通行である。
彼らはこれまでの戦いを通して、ついに平和を手に入れる事が出来た。
その代償は決して少なくなかったが。

しかしその平和も崩壊することとなる。
とある少女の、とあるプロジェクトによって。

4: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:39:16.39 ID:c1MFS++20
とあるSSの人物紹介

上条当麻

『幻想殺し』(イマジンブレイカー)という、異能の力を打ち消す右手を持つ少年。
性質上弱点も多く、どちらかと言えば不便な能力。
その『幻想殺し』の正体は、体に宿している『竜王』(ドラゴン)の副産物。
とある高校に通っている。年度も変わったので2年生。学生寮で五和と同棲している。

夏休みの初日に禁書目録(インデックス)と言う少女との出会いをきっかけに数奇な運命を辿ることとなった。

一方通行

その名の通り『一方通行』(アクセラレータ)、簡単に言うと『ベクトル操作』能力の少年。
8月31日の出来事で脳にダメージを負い、演算能力が大幅に劣化したが、
垣根と結標の協力により能力を取り戻すどころか、以前より強化された。
『絶対能力者』(レベル6)であり、学園都市第1位でもある。
学園都市で一番の名門校と言われている長点上機学園に、2年生として通うことになった。

かつては最強であるが故に、他者との関わりを避けてきたが
上条当麻と、今は亡き打ち止め(ラストオーダー)との出会いをきっかけに変わった。

禁書目録

正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorum。
魔法名は『dedicatus545(献身的な子羊は強者の知識を守る)』。

完全記憶能力を持つ少女で、かつては10万3000冊の魔道書を記憶していたが
上条当麻に宿る真の力『竜王』によって、魔道書の知識とエピソード記憶を喰われた。
完全記憶の能力自体は健在。魔術サイドが滅亡して身寄りのない彼女は現在、月詠小萌のところに居候中である。

御坂美琴

『超能力者』(レベル5)第3位の『電撃使い』(エレクトロマスター)で
『超電磁砲』(レールガン)の異名を持つ。名門常盤台中学の3年生。

学園都市の重要人物だったためか、これまでに数々の困難にぶつかるが、
持ち前の明るさと負けん気と上条当麻との出会いにより、それら全てを乗り越えてきた。
しかし12月に起こった魔術vs科学の戦争により、
20002体のクローン『妹達』(シスターズ)を全て失い、真の絶望を味わう。

五和

天草式十字凄教の一員だった少女。数少ない魔術サイドの生き残り。武器は槍。
年齢は17歳。上条と同じとある高校に3年生として通うことになった。
様々な免許を持っており(年齢を詐称して取ったものもある)、料理の腕も達者。
学生寮で上条と同棲している。

5: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:40:53.26 ID:c1MFS++20
土御門元春

上条と同じ高校の2年生。義妹である土御門舞夏を溺愛している。
一見ただのチャラい男だが、その正体は多角スパイ。
というのは昔の話で、魔術サイドという大きい規模の勢力が滅んだので、
現在では普通に学園都市の住人として暮らしている。

『無能力者』(レベル0)の『肉体再生』(オートリバース)という能力があったが、
あえてその能力を失うことにより、本来の陰陽博士としての実力を取り戻した。
魔法名は『Fallere825(背中刺す刃)』。

青髪ピアス

上条と同じ高校の2年生。レベル5第6位の『水流操作』(ハイドロハンド)なのだが、
本人はカッコつけて『蒼竜激流』(ブルーストリーム)と名乗っている。

青色の髪の毛で、耳にピアスをつけているという見た目から、こう呼ばれている。
パン屋で下宿する日々を送っている。結標と交際中。

姫神秋沙

巫女服が似合う少女。『吸血殺し』(ディ-プブラッド)という能力を持って生まれた、
いわゆる『原石』だったが、上条の『竜王』の力によって能力を失うことに成功。

吹寄制理

上条と同じ高校の2年生。頭はもちろん、実は運動神経もなかなか良い。
黒髪巨乳おでこDXで健康志向の少女。

月詠小萌

上条のクラスの担任の先生。
身長135cmで、見た目は小学6年生程度だが、れっきとした大人。
インデックスを居候させている。酒と煙草が大好きだったが、健康の為にどちらもやめた。

6: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:42:32.90 ID:c1MFS++20
黄泉川愛穂

上条の通う高校の体育教師でもあり『警備員』(アンチスキル)でもある爆乳の女性。
一方通行の母親的役割を担っており、一方通行とフレメアと芳川と一緒に暮らしている。

芳川桔梗

黄泉川愛穂とは旧知の仲で、研究員だった女性。
念願叶って上条の通う高校の物理教師になったのだが、相変わらず黄泉川の家に居候している。

絹旗最愛

『窒素装甲』(オフェンスアーマー)の能力を宿す少女。
努力の末、レベル5の第4位までになる。

常盤台中学に2年生として編入予定。
白井や初春と同じ第177支部で『風紀委員』(ジャッジメント)も務めている。

フレメア=セイヴェルン

かつてその立場から、何の罪もないのに暗部に狙われ続けていたが、今は亡き浜面仕上と一方通行に助けられた。
現在では一方通行に引きとられ、黄泉川の家で暮らしている。

白井黒子

『大能力者』(レベル4)の『空間移動』(テレポート)の能力を宿す常盤台中学の2年生。
御坂美琴を『お姉様』と呼び慕っている。絹旗や初春と共にジャッジメントも務めている。
絹旗と初春とは大の仲良し。

初春飾利

『低能力者』(レベル1)の『定温保存』(サーマルハンド)の能力を宿す柵川中学の2年生。
ハッカーの間では『守護神』(ゴールキーパー)と呼ばれるほど情報処理が得意で、
ほぼこの一点突破でジャッジメントになった。

7: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:44:19.71 ID:c1MFS++20
結標淡希

『座標移動』(ムーブポイント)の能力を宿す少女。レベル5第1位。

霧ヶ丘女学院を退学し、上条らがいるとある高校に3年生として転入する事に決めた。
料理の腕が多少上がった。とある高校の学生寮に住み始める。

垣根帝督

『未元物質』(ダークマター)の能力を宿す少年。
一方通行に敗れ一時期は瀕死の重体だったが、魔術vs科学の戦争で復活を遂げたのち覚醒、レベル6に辿り着く。
学園都市第2位。長点上機学園に3年として通うこととなった。『心理定規』(メジャーハート)と交際中。

心理定規

常盤台中学に2年生として編入予定。能力は『強能力者』(レベル3)の『心理定規』。
寮では絹旗と同室(の予定)。垣根と交際中。

削板軍覇

世界最高の『原石』だった少年。上条の『竜王』の力によって能力を失う。
その後あえて能力開発も行っていない為、完全無欠の一般人。
上条らがいる、とある高校に3年生として通うこととなった。雲川とは幼馴染で恋人。

雲川芹亜

今は亡き学園都市前統括理事長アレイスター=クロウリーに代わり新統括理事長となった少女。
ブレインと呼ばれるほどの天才。

今まで閉鎖的だった学園都市の技術を世界に拡大するなどして、学園都市の繁栄と世界平和のために尽力している。
上条らのとある高校にも、3年生として普通に通っている。削板とは幼馴染で恋人。
長年の恋がようやく実った反動からなのか、普段の冷静沈着ぶりからは考えられないほど、削板と2人きりだと甘える。

8: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:45:53.12 ID:c1MFS++20
フィアンマ

特異な右腕を持つ魔術師。数少ない魔術サイドの生き残り。得意魔術は炎。
体の内に『神の如き者』(ミカエル)の『天使の力』(テレズマ)25%を宿している。
ミラノでヴェントと、今は亡きオッレルスらが保護した子供達と一緒に暮らしている。

ヴェント

風使いの魔術師。数少ない魔術サイドの生き残り。
体の内に『神の火』(ウリエル)のテレズマを10%宿している。
ミラノでフィアンマと保護された子供達と一緒に暮らしている。

闇咲逢魔

梓弓を用いた風の魔術と縛縄術が得意な流れの魔術師。
魔術vs科学の戦争には参加していない。かつて上条当麻に救われた事がある。

食蜂操祈

『心理掌握』(メンタルアウト)の能力を持つレベル5第5位の少女。
よからぬ野望を抱いている。

服部半蔵

今は凋落した忍者の末裔である服部家の子孫で、有名な忍者である『服部半蔵』の名を継ぐもの。
『武装無能力者集団』(スキルアウト)のリーダーを務めていた事もあったが、
今はスキルアウトも解散し、各々の道を歩んでいる。

郭の熱烈なアプローチに負けて、現在は交際中。
学園都市からは抜け、修行の日々を送っている。



伊賀出身の、くの一の末裔。現在は半蔵と交際しており、共に修行の日々を送っている。

土御門舞夏

土御門元春の義妹。メイド養成の為の繚乱家政女学校に在学している。
一定の試験を突破し、実地研修を許されているエリートメイド見習い。
彼女の作る料理はそこらの料理店に匹敵するレベル。中学生。

9: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:47:47.39 ID:c1MFS++20
学生約200万人、大人約30万人、合計約230万人で構成されている新生学園都市の新統括理事長となった雲川芹亜は、
以前のような『縛り』(学園都市を出る際に極小のチップを注射するなど)は緩くし、学園都市に入学しても、
能力開発は強制ではなく任意にするなどして自由度を上げた。
また、能力開発のイメージアップを試み、世界をよりよくするために尽力した。

しかし、今までに学園都市で起こった事件や能力開発の悪いイメージを完全に払拭する事は出来ず、
世界中から入学者が殺到するという事は無かった。

能力をあえて消去する音声プログラムが出回ってからは、主にスキルアウトがそれを使いコンプレックスから脱出。
各々の道を歩み始めた。学園都市の治安や風紀を主に乱していたのはスキルアウトだったが、
彼らが消えたあとも風紀や治安が完璧に良くなるということはなかった。

10: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:49:17.98 ID:c1MFS++20
4月1日 18:50 ジャッジメント177支部

「ただいま戻りましたの」

完全下校時刻の18:30まで、そこら辺を巡回していた白井黒子は、ようやく支部へと戻ってきた。

「おかえりなさい。あのー、今更ですけど今日の出勤時、支部の前にこんなものが」

頭に造花の花飾りを乗せている(理由は不明)初春飾利は、支部の前で拾ったという封筒らしきものを白井に渡した。

白井「一体何ですの?」

初春「中身、見てください」

白井「これは……」

封筒の中には1通の手紙があった。
そこには地図とともに、おどろおどろしい文字でこう書かれていた。

『風紀委員の白井黒子へ。19時までに第22学区まで来られたし』

白井「いわゆる果たし状というものでしょうか?それにしても、何でもっと早くに見せてくれなかったんですの?」

初春「だって今日はエイプリルフールですし、ひょっとしたらただの悪戯かもしれないと思って、
   無視しようか迷ったんですもん」

白井「初春は『ホウレンソウ』を忘れましたの?」

初春「すいません」

テヘッ。と舌を出す初春に、白井は若干の殺意を覚える。

白井「もう良いですわ。にしても、悪戯でもこんな事をするのはいただけませんわね。
   待ち構えているかは分かりませんが、ちょっと指定された場所に行ってきますの」

11: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:51:20.23 ID:c1MFS++20
19:03 第22学区 上条・五和ペアとアックアが激突した鉄橋の上

白井「ここですわね」

「ようやく来たか。3分遅刻だ」

白井「あなたは……」

完全下校時刻を過ぎている為か、前歯が1本ない男しかいなかった。

男「俺の事、覚えているか?」

白井「え~っと、わたくしには前歯が欠けた知り合いはいなかったと思うのですが」

男「お前のせいで、俺は死にかけたんだぜ?俺はあの時からお前を忘れた事はねぇ。
  徹底的にお前の事を調べ上げ、ぶっ潰す為にわざわざ挑戦状まで書いたんだ」

白井「随分熱烈に思ってもらえているみたいですが、生憎わたくし、殿方には興味がありませんので」

男「その減らず口、今すぐ叩けなくしてやるぜ!」

男が地面を蹴って駆け出した。と同時、グニャリと男の姿が歪む。

白井「!」

思わずテレポートで一旦後退する。

12: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:56:46.01 ID:c1MFS++20
男「思い出したか?」

そう言った男は、3人に増えていた。

白井「『幻想御手』(レベルアッパー)事件の時に、佐天さんを襲った方ですの?」

男「あれは襲ったんじゃなくて、あの女が勝手に割り込んできただけだっての。
  この『偏光能力』(トリックアート)様に喧嘩を売りやがって、あのビッチが」

白井「全く反省していませんのね」

男「ふん!」

男が再び駆け出す。
実際には1人なのだが、3人の男が襲いかかってくるように見える。

白井(わたくしとは少し相性が悪いですわね。さて、どうしましょうか?)

誤った位置に像を結ばせ周囲の目を誑かす『偏光能力』の前では、もはや距離感が正確とは限らない。
その上どれが本物か分からないため、カウンターを仕掛けるのにも無理がある。
ただ1つ、この男は白井が立っている地点へ突っ込んでくる事は確定している。
だから白井は真上2mにテレポートし、真下に向かってドロップキックをかました。

男「なるほど。狙いは良い。が」

ガシィ!と男の手が白井の右足をあっさりと受け止めた。

男「おらよ!」

そして地面に叩きつけようと、腕を振り抜く。

白井「くっ!」

叩きつけられる寸前で何とかテレポートを実行し、男から(多分)数mの距離を取った。

13: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:57:57.29 ID:c1MFS++20
白井(なるほど。これは一筋縄ではいきませんの。ならば)

白井はスカートの下の太腿のホルダーから、金属矢をいくつかテレポートする。
それは1本も男に刺さる事は無く、カランカランと地面に落ちただけだった。

男「どうした?動揺で演算に集中できなくなったのかな!?」

三度男が駆け出す。周囲に散らばっている金属矢を踏みながら。

白井「そこですの!」

ゴッ!と白井の右手の掌底が男に直撃した。
同時、痛みで演算に集中できなくなった男が1人に戻る。

男「がはっ!なん、で……」

白井「これで、終わりですの!」

続いて左手の掌底、最後に右手で男の手首を掴み、バランスを崩して転ばせた。
さらに残りの金属矢をテレポートして、男を地面に縫い付ける。

14: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 20:59:58.82 ID:c1MFS++20
白井「勝負アリですわね」

男「ちくしょう。何で俺に正確に攻撃を当てる事が出来た?」

白井「わたくしが最初にテレポートした金属矢。
   あれは最初からあなた狙いではなく、周囲にばらまく為にしましたの。その後はあなたの足元に集中。
   あなたがここに来るまでの間に踏んで動いた金属矢と、その音であなたの大体の位置を判断して、
   カウンターを仕掛けたまでですの」

男「ちっ。そんなこと、分かっていても出来るかよ」

白井「実際できましたの」

男「口の減らねぇガキだ。だが、まだ終わりじゃねぇぜ」

白井「何を言っていますの?あなたはもう動けない筈ですわよ」

男「ああ、動けないぜ。“俺はな”」

瞬間。ゴッ!と白井の後頭部に何かがぶつかった。

白井「ぐっ!」

不意の一撃にふらつく白井。後ろから誰かが走ってきている音が聞こえる。
なるほど、男がヤケに強気だったのは味方がいたからなのか。

白井は痛みの中演算に集中して何とかテレポートを実行し、男から数m離れる。

直後、ゴガァ!と男付近の地面が捲り上げられた。煙の中に見えるのは2つの影。

白井「協力者がいらっしゃったのですわね?」

男「まあな。俺の力だけで倒そうと思っていたんだが仕方ねぇ。
  最終的にお前をボコれりゃそれでいい。第2ラウンド開始と行こうぜ」

白井(まずいですわね。金属矢のトリックはもう通用しませんし、あそこに居るもう1人の女。
   どんな能力か分からない以上、迂闊に近付く訳にもいきませんし)

男「来ないならこっちから行くぜ!」

男は再び3人に分身して地面を蹴った。

白井(何の連絡もしていませんし、今からも出来ませんが、ここは増援が来るのを願って粘るしかありませんわね)

15: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:01:25.13 ID:c1MFS++20
それから5分の時間が経過した。連続でテレポートを実行して逃げるだけの白井も、
テレポートで逃げられ続け、攻撃が一切当たらないどころかそれなりの距離を走らされた男の方も、肩で息をし始めていた。

白井(あの女性、全く手を出してきませんが……この男がわたくしに執着しているのを分かっていて、
   あえて1対1にさせているのでしょうか?)

男「はぁ……はぁ……ちょこまかしやがって……」

白井(この調子なら、先に体力が尽きるのはこの男の方ですわね。何とかなるかもしれませんの)

そんな事を考えていた時だった。
男の体をすり抜けて、野球ボールほどの大きさのアスファルトの塊が飛んできた。

白井(――っ!)

それを白井は、何とか身を捻り回避した。

男「おい、邪魔すんじゃねぇよ!」

女「時間がかかりすぎ。増援が来ると面倒だ。これ以上やるのなら私も喧嘩に加わる」

アスファルトの塊は、どうやら女が投げたようだった。

女「かかってこいよ、ツインテール。昔からお前みたいなお嬢様、大っ嫌いなんだよね」

白井(あとでお相手する予定でしたが、そこまで言うのならお望みどおりですの!)

この後、白井は後悔することとなる。
安い挑発に乗り、どんな能力を宿しているかも分からない女のもとへ、
ドロップキックをお見舞いする為にテレポートを実行した事を。

16: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:02:19.76 ID:c1MFS++20
ヒュン!と女の後頭部付近にテレポートした白井は、ドロップキックを直撃させた。
にもかかわらず、

ゴン!と鈍い音が響いただけで、女は全く揺らがなかった。

白井「んな!?」

驚いたのも束の間、女がとんでもない握力で白井の足を掴み、そのまま地面に叩きつけた。
悶絶する白井に、女は容赦なく追撃の肘を喰らわせた。
その威力は、白井を中心にして半径1mの地面にヒビを入れるほどだった。

女「あっはっは。ジャッジメントって言っても、所詮小娘だったねぇ」

意識はあるが、言い返す気力もない白井の腹部に、女はさらに拳を振り下ろした。
ごはっ!と血を吐き悶絶する白井を見て、黙っていなかったのは男だった。

男「おいおい。そりゃあ俺の獲物だぞ。これ以上手を出すのは許さねぇ」

女「お前がチンタラしていたのが悪いんだろ。つーかこの女が絡んできただけだし」

男「うるせぇやんのかコラ!」

女「あぁ!?やってみろよ!視覚を騙すだけのトリック野郎が!」

一触即発の空気が漂い始めたが、その空気はすぐに破られた。

「超仲間割れですか?だったらそのツインテール、返していただけませんかね?」

ジャッジメント、絹旗最愛の登場によって。

17: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:04:20.56 ID:c1MFS++20
女「嬢ちゃんも常盤台でジャッジメントか」

常盤台の冬服であるベージュ色のブレザーに、紺色チェックのプリーツスカート、
右肩の下あたりについているジャッジメントの腕章を見て、そう判断した。

白井「きぬ……はた……さん……」

絹旗「白井さんを傷つけた落とし前、超つけさせてもらいますよ」

男「お前はツインテールをボコったんだ。こいつは俺がやらせてもらう!」

そう言うと男は3人に分身して絹旗を襲う為に肉迫する。

絹旗(分身!?――いや、男が3人になる一瞬、その姿が超歪んだように見えた。
   という事は多分、光を操るか何かで見せかけているだけ!どの道私に出来る事は――)

絹旗はジタバタせず、その場に仁王立ちする。
その間に肉迫した男の蹴りが絹旗の右脇腹に直撃したが、彼女は揺るがなかった。

絹旗「貧弱な蹴りです、ね!」

動揺する男の右足を掴み、そのまま女の方に投げ飛ばした。

女「ふん」

投げ飛ばされて来た男を、虫を振り払うかのように裏拳を振るう事で横合いにぶっ飛ばした。
その腕は銀色に鈍く光っている。

絹旗「仲間を超ぶっ飛ばすなんて、白状にも程がありますね」

女「仲間?冗談はよせ。ジャッジメントに復讐したいって言うから、ちょっと付き合ってやっただけさ。
  私もジャッジメントは嫌いだからさ」

絹旗「そうです、か」

地面を蹴って絹旗は駆け出す。
窒素を纏っている彼女は、3秒かからずに10mの距離を埋め、拳を繰り出していた。

ガキン!と右拳が受け止められた。構わず左拳を繰り出す。
しかしそれも同様に受け止められた。
ならばと、頭1つ分は高い女の顎目がけ頭突きを繰り出す。
対して女の方も、銀色に光る額で頭突きを繰り出した。

ゴォン!と、額と額がぶつかって鈍い音が響いた。それで揺らいだのは絹旗。
女はその隙を逃さず、銀色の拳で絹旗の顔面を殴り飛ばした。

殴られた勢いでゴロゴロと転がる絹旗だったが、すぐに起き上がった。
頭突きに拳をもらい地面を転がったと言うのに、目立った外傷はない。

18: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:05:42.15 ID:c1MFS++20
絹旗「超痛って~。嫁入り前の淑女(レディー)の顔面を躊躇なく殴るとは、神経を疑いますね」

女「大丈夫だ。お前みたいなちんちくりんは一生結婚できないし、そもそもレディーでもないただのクソガキだからな」

絹旗「かっちーん。超優しい私は、あなた達のような不良もなるべく傷つけないつもりでしたが、今のでキレました。
   ちょっとだけ本気出します」

女「小娘が。私も本気を出してやるよ」

女の体の皮膚の部分が、みるみるうちに銀色に変化していく。

絹旗「その体……」

女「『肉体鋼化』(フルメタル)。体を鉄にする事が出来る」

絹旗「いえ、そんなことどうでも良くて……超気持ち悪いですね」

ブチッ!と女の中で何かが弾けた。地面を蹴って駆け出す。
肉体は鋼と化している癖に、その速度は全く遅くなく、寧ろ速いぐらいだった。
その拳の威力はアスファルトの地面を粉砕するほどであろう。

絹旗「その程度では、この私に超勝つことは出来ません」

2人の距離はまだ数mあるにもかかわらず、絹旗は右拳を繰り出した。
馬鹿が!と女は思ったが、ゴシャア!と真正面から何かが叩きつけられ、吹き飛ばされた。

普通ならその一撃で昏倒してもおかしくないのだが、肉体を鋼鉄化していた女は地面を数mスライドして何とか踏ん張った。

19: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:07:06.54 ID:c1MFS++20
女「何が……起こった……」

絹旗「まだやりますか?おばさん?」

女「クッソガキがぁ!私はまだピチピチの高2だ!」

女は再び駆け出した。今度は何事も無く絹旗に肉迫し、その右拳を繰り出す。
対して絹旗は左拳を繰り出した。拳と拳が激突し、女の拳の方だけから血が噴き出した。

女「ぐ……ああ……!」

絹旗「私の能力は『窒素装甲』。超簡単に言うと窒素を纏う能力です。
   窒素の密度と厚さを、先程殴られた時の3倍にしました。最大、先程の10倍にまで出来ます」

また、ある程度なら大気中の窒素を操る事も出来ます、と絹旗は付け加える。

絹旗「さて、超良い子である私は、もう一度だけ選択肢(チャンス)をあげます。
   このまま大人しく拘束されるか、もう少しだけ痛めつけてほしいか」

女「『窒素装甲』……お前、もしかして元『暗部』の絹旗最愛……?」

絹旗「そんな昔の事は超どうでもいいです。どうしますか?」

女「……参った。そんな化け者に勝てる訳ない」

絹旗「超賢い選択です」

右拳を痛めてその場に跪いていた女の手首に手錠がかけられた。
絹旗はその後男にも手錠をかけ、初春に連絡したのちに白井のもとへ。

絹旗「超大丈夫ですか?白井さん」

白井「不覚でしたの。わたくしもまだまだ精進が足りませんわね」

絹旗「今初春さんに連絡してアンチスキルを呼んでもらっていますから。
   奴らを連行する10分後くらいまで見張った後、病院へ超急ぎましょう」

白井「大袈裟ですわ。支部の応急処置で充分ですの」

絹旗「本当に超大丈夫ですか?」

白井「絹旗さんは心配性なのですわね。大丈夫ですわ。こう見えて黒子は、結構丈夫ですのよ」

絹旗「そうですか。まあ、それだけ元気なら問題ないみたいですね。でも、超無茶だけはしないで下さいね」

白井「はい」

10分後、ようやく来たアンチスキルに男と女は連行され、白井と絹旗は一旦支部へ戻った。

20: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:09:22.40 ID:c1MFS++20
19:24 177支部

初春「白井さんほどの実力者がここまでやられるなんて、学園都市もまだまだ物騒ですね」

白井の脇腹などに包帯を巻きながら初春は呟く。

白井「ジャッジメントに入ろうと思った時から、このくらいの怪我は想定済みですの。
   今更どうこう言う事ほどではありませんわ」

初春「さすがです白井さん!ジャッジメントの鑑ですね。
   でも怪我とか本当に気を付けてくださいね。入院とかしないでくださいね」

絹旗「初春さんと白井さんの友情、超美しいです!」

白井「絹旗さん。初春はわたくしが傷ついて可哀想だとかは思っていませんのよ?
   わたくしが怪我や入院した場合、自分の仕事が増える事が嫌で言っていますのよ」

初春「ちょっと白井さん。私が自分の事だけしか考えていないみたいな言い方は止めてください」

白井「事実ですの」

初春「酷いです!」

白井「初春の腹黒さに比べれば、わたくしは天使みたいなものですの」

絹旗「あはははは。2人とも超仲良いですね」

初春・白井「「どこがですか(の)!」」

絹旗「息も超ピッタリですし」

あはははは!と絹旗は堪え切れずにまた笑った。


白井「絹旗さんはどこか楽観的と言うか、そんなに面白いことでしょうか?」

初春「そんなことより思ったんですけど、明日午後からいつもの4人に絹旗さん加えて遊びません?」

この空気が微妙にくすぐったかった初春は、強引に話題を変更した。

白井「いいですわね、それ。お姉様を元気づけるいい機会かもしれませんし。大丈夫ですわよね、絹旗さん?」

絹旗「私、超人見知りなんですが……いつもの4人って?」

初春「白井さんと御坂さんと私、私の中学の同級生、佐天さんの事です。
   佐天さんは超絶フレンドリーですから、全然問題ないですよ。寧ろ馴れ馴れしいぐらいです」

絹旗「……前から思っていましたが、初春さんって超甘ったるい声で毒を吐きますよね」

初春「そんなことないですよー」

ニコニコの笑顔が何か怖い。

初春「とりあえず、佐天さんには私から声かけときます。白井さんは御坂さんを誘っておいてくださいよ」

白井「誰に向かって言っていますの?わたくしがお姉様を誘惑しない日なんてありませんの」

初春「では明日13:00、いつものファミレス前に集合ってことで」

白井「分かりましたの」

絹旗「あの、いつものとか言われても、超分からないんですけど」

白井「わたくしとお姉様と一緒に行けばオールオッケーですの」

21: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:10:44.48 ID:c1MFS++20
4月2日 9:20 柵川中学 とある教室

(早く補習終わんないかなー)

頭に白い花のヘアピン、黒髪ロングで窓側の席に座っている佐天涙子は、そんな事を考えながら窓の外を眺めていた。
ちなみに補習は9:00~12:00なので、休憩を入れて、あと2時間40分ある。

佐天(ううー。そりゃあ私の頭が悪いのがいけないけどさ。一体何日に亘って補習を続けるわけーーーーー!?)

心の中で不満を叫ぶ佐天だったが、当然補習は終わらない。

佐天(早く遊びたいよー)

昨晩初春から遊びの誘いがあって、久々に御坂達と遊ぶことになった。
しかも今回は『きぬはた』なる人もいるらしい。
初春曰く、真面目で雰囲気が優しくて可愛くて佐天さんとは真逆の人です。とのことだ。
さらにレベル5の第4位でもあるらしい。

佐天(つまり、私はレベル0でありながら、レベル5の知り合いが2人いる事になる。これってすごくね?)

教師の話など少しも聞いていなかった。

22: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:13:23.77 ID:c1MFS++20
佐天はその後も退屈な補習を、楽しい妄想をして乗り切った。時刻は12:00。
初春と12:20に、この中学校の前で待ち合わせしているが、まだ少し時間がある。

佐天(あー、あと20分暇だー)

佐天は携帯を取り出し、何か面白いことないかなーと検索をかける。とそこに、

「ねぇ涙子、今日遊べる?」

アケミが目の前に来てそんな事を言った。

佐天「ごめん。今日は13:00から約束があるんだー」

「そっかー。残念」

「まーた飾利とデートですか?ラブラブですなぁ~」

アケミの隣にいたむーちゃんは少し残念がり、マコちんはからかった。

佐天「ち、違うよ。初春は好きだけど、それは友達としてであって、別に恋愛感情は///」

マコちん「何でそんなに必死になってるのー?そんな事分かっているよー」

佐天「もう!マコちんの馬鹿!」

むーちゃん「涙子はすぐムキになるからねー」

佐天「うるさいよ!」

アケミ「まあまあ落ち着いて。じゃあじゃあ、新しい都市伝説聞いたんだけど、聞かない?話のネタにもなるしさ」

佐天「マジで!?聞く聞く」

アケミ「じゃあいくよ。これは、とあるレベル4の『電撃使い』の実体験らしいんだけど」

佐天「う、うん」

アケミ「その人はね。ふと思い立ったの。夜の遊園地に入ってみたら、面白そうじゃね?って。
    で、ある夜それを実行したの。レベル4の『電撃使い』だから電子系のセキュリティは余裕で突破して、
    楽に侵入できたらしいの」

佐天はゴクリと生唾を飲む。

アケミ「それで、メリーゴーランド前に行くと、なんとメリーゴーランドの柱から人が出てきたの!」

佐天「え?もしかして、お化け?」

アケミ「違うよ。それは紛れもなく人間。で、その『電撃使い』は柱に近付いて、人が出てきた辺りを調べたの」

佐天「で、で?」

アケミ「すると柱の一部が襖みたいに開いたの。そう。その正体はエレベータだったの!」

佐天「え?意味わかんない」

アケミ「初めて聞くと、分かんないよね。それでその『電撃使い』は怖気づいて、そのまま帰ったらしいわ」

佐天「え?終わり?いや、確かにミステリアスな話ではあるけど」

アケミ「よーく考えて涙子。エレベータがあるってことは、どう言う事だと思う?」

佐天「……あー!」

アケミ「そう。エレベータがあるってことは、地下に何かあるってこと。
    これが都市伝説『学園都市に眠る!?超古代都市アトランティス!!!』だよ」

佐天「す、凄いよ!今までの『脱ぎ女』とか『どんな能力も効かない男』とは規模が違う!」

アケミ「でも規模が大きすぎて、逆に嘘臭いけどね」

佐天「でもインパクトはすごかった!いい話のネタになりそうだよ」

と佐天が感謝を表明していた時、彼女の携帯が震えた。
メールが届いたのだ。初春から『もう12:30ですよ!何やっているんですか!』と。

23: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:13:56.18 ID:c1MFS++20
佐天「やば!ごめん皆。もう行かなきゃ」

むーちゃん「待ち合わせは1時じゃなかったっけ?」

マコちん「でも場所までは聞いてないから、遠い所なんじゃない?」

佐天「そうじゃないんだ。初春と待ち合わせして行く予定だったからさ!」

アケミ「そうとは知らずに話しこんじゃった。ごめん涙子」

佐天「いいっていいって。じゃあね皆!」

そう言って、佐天は教室を後にした。

24: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:15:22.65 ID:c1MFS++20
12:50 とあるファミレス前

「皆で遊ぶのなんて久々じゃない?楽しみだなー。黒子本当に大丈夫?昨日結構やられたんでしょ?」

白井を労わったのは、御坂美琴だ。

白井「ジャッジメントを務めていると怪我なんて日常茶飯事。
   この程度の怪我でダウンしていては、ジャッジメントは務まりませんの」

御坂「そう。大丈夫なら良いけどさ」

絹旗「うぅー、超緊張しますー」

御坂「大丈夫よ。佐天さんは気さくな人だから、すぐ馴染めるわ」

御坂が呟いた、その直後だった。

初春・佐天「「遅れてごめんなさーい」」

柵川中学の冬服である、紺色のセーラー服を纏った佐天と、私服の初春が息を切らしながら走ってきた。

御坂「別に大丈夫よ。約束まであと10分あったし」

白井「休日に佐天さんが制服なんて珍しいですわね」

初春「佐天さんは午前中に補習があったので、制服のままなんですよ」

佐天「あの、そちらの方が、噂の絹旗さん?」

絹旗「は、はい!絹旗最愛と言います!超よろしくお願いします!」

絹旗はガチガチに緊張しながら、手を差し伸べる。

佐天「ぷっ、あはははは!」

初春「さ、佐天さん!失礼ですよ」

佐天「い、いやだってさ、レベル5ならもっと堂々としてればいいのにさ。
   なんか可愛いなーって思って。佐天涙子です。こちらこそよろしくお願いします」

2人はガッチリと固い握手を交わした。

25: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:16:50.55 ID:c1MFS++20
初春「気を悪くしないでくださいね。佐天さんはこれがデフォなんで」

絹旗「い、いえいえ。可愛いって言われて超嬉しかったです///」

白井「では、ファミレスで昼食を摂りながら予定を決めていきましょうか。
   というか、その為にファミレス前集合にしたんですのよね?」

初春「はい。まずは腹ごしらえからです」

佐天「コラ初春!『腹ごしらえ』なんて言い方して女を捨てない!もっと上品に『おなかを満たす』って言わないと」

絹旗「それも特別上品な言い方って訳じゃないと思いますけど」

初春「ナイスツッコミです!」

白井「早速いいコンビネーションじゃありませんか」

あはははは!と笑いあう5人。

御坂「じゃあ、入りましょうか」

5人はファミレスに入り店員に案内されている途中で、御坂と白井の目は捉えてしまった。
紺色のパーカーに、カーキ色のズボンのツンツン頭の少年と、フワフワしたトレーナーの上に
ピンク色のタンクトップを着た、濃い色のパンツの黒髪少女を。

御坂「……ごめん。私帰るね」

御坂は脇目も振らずに店を飛び出した。

佐天「み、御坂さん!?」

白井「わたくしが連れ戻します。皆さんは先に昼食をいただいて構いませんの!」

そう言うと、白井もテレポートしていなくなった。

佐天「御坂さん、どうしたんだろう?」

初春「と、とりあえず黙って待っていましょう。白井さんを信じて」

26: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:17:36.18 ID:c1MFS++20
白井「お待ちくださいお姉様」

ガシッ!と、御坂の腕を掴んだ。
今や333m、333kgまでテレポートできる白井にとって、御坂に追いつくのは容易だった。

白井「お気持ちは分かります。ですがお姉様の勝手な行動は、集まってくれた皆さんに失礼だと思いますの」

御坂「……そんなことぐらい自覚しているわ。けど、どうしても辛いの。ごめんね。今日はもうパスしたいの。お願い」

今にも泣き出しそうな声で訴えかける御坂を、白井は止める事が出来なかった。

27: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:19:15.56 ID:c1MFS++20
初春「御坂さん、本当にどうしたんでしょうか?
   最近元気がなく、何かに悩んでいる事は、白井さんから聞いていたんですが……」

佐天「何に悩んでいるかは、白井さんは知らないの?」

初春「いえ、何かを知っているみたいなんですけど、教えてくれなくて。
   プライバシーの問題なので、深く切り込めませんし」

佐天「絹旗さんは、何か知らないですか?」

絹旗「え?ええ、そうですね。御坂さんとは顔見知りではありますが、学園生活はまだ超始まっていませんし、
   寮でもそんなに会わないので、よく分からないですね」

佐天「ううむ、これは難事件だ」

初春「難事件って……」

佐天「御坂さんは、さっきまでは普通だった。様子がおかしくなったのはファミレスに入ってから……」

絹旗(そこが超疑問ですね。落ち込んでいる理由は『妹達』の件だと思ったんですが……
   ファミレスを飛び出す理由にはならないはず……何か別の原因があるのでしょうか……?)

佐天「となると、このファミレスに気まずい人物がいて、それを見つけたから飛び出した……と考えるのが妥当かな」

初春「そ、その可能性はあるかもしれません」

絹旗「超なるほどです。ですが、だとしたらそれは誰なのでしょうか?」

佐天「ううむ。さすがにそこまでは分かりませんね」

とその時、白井がファミレスの扉を開けて帰ってきた。

28: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:20:28.33 ID:c1MFS++20
初春「あの、御坂さんは……?」

白井「どうやら急に具合が悪くなったらしくて……今日はもう無理そうですの。皆さんに、ごめんなさいと言う事ですの」

佐天「そうですか。残念ですね(絶対嘘だろうけど、深く突っ込めない)」

絹旗「ま、まあ超気を取り直して、白井さんも何か注文して!4人で楽しみましょう!」

初春「そ、そうですよ!」

白井「……ええ。早く注文して、早く食べてここを出ないと」

佐天(やはりこのファミレスに何かある……!)

とその時白井は、食事を終え会計に向かう少年と少女と目が合ってしまった。
知り合いではあるが、別段親しい訳でもない為か、少年と少女は会釈だけして白井達のテーブルの横を通り過ぎた。

絹旗「あの人達は……」

佐天「何か知っているんですか!?」

絹旗「ええ。戦争の時に一緒にいました」

佐天「じゃ、じゃあ、あの人達が何か関係しているのかも!?」

初春「これ以上の詮索は止めましょうよ」

白井「いえ」

初春の制止を、白井が遮った。

白井「お姉様のプライバシーの問題ですからと、皆さんには隠していましたが……ここはやはり言っておきますの」

29: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:23:37.91 ID:c1MFS++20
そうして白井は説明した。御坂は多分あの少年に惹かれていることを。
そしてその少年の詳細の知る限りを。妹達の件は何も言わなかったが。

白井「まだはっきりと聞いた訳ではないので確証はありませんが……ずーっとお姉様を見て来たわたくしには分かりますの」

佐天「そうですね。御坂さんはレベル5であるが故に特別扱いされてきた。
   そんな時、自分を対等な1人の人間として、ただの女の子として接してくれる上条さんとやらに惚れるのは、
   十分あり得る事ですね」

初春「それで御坂さんは気まずくなって、思わず飛び出したんですね。でも私達に出来る事なんて」

絹旗「超励ますぐらいですよね。(加えて妹達の件、そりゃあ超元気も出ないってもんです)」

白井「そうなんですのよ。それで最近まで元気がなかったのに、こうして鉢合わせしたばっかりに、
   追い討ちをかけるような事になってしまって」

佐天「でもそれって、おかしくないですか?」

白井・初春・絹旗「「「え???」」」

佐天「だって、好きな人に彼女が出来たから気まずくて会えないなんておかしいですよ。直接フラれたわけでもないのに」

白井「目の前で好きだった人にイチャつかれたら、誰だって辛いと思いません?」

佐天「じゃあ聞きますけど、仮に上条さんと御坂さんがくっついたとき、
   白井さんは御坂さんに会いたくないと思いますか?」

白井「会いたくないなどとは思いませんが……きっと辛いと思いますの。お姉様を避けるかもしれません」

佐天「でももし避けられた場合、御坂さんは嫌われたと思って悲しみますよ。それにです。
   恋人とか、どうでもよくありません?大切な人が生きている。会話だって、遊んだり触れ合ったりする事も出来る。
   それって幸せな事ですよね。それでいいじゃないですか。大切な人も幸せで、自分も幸せならば」

白井「ですが、好きな人がいるなら、誰だってその人の1番になりたいはずですの」

佐天「それは傲慢ってものですよ。世の中何でも思い通りに行く訳じゃありません。
   レベル0の私が言うんだから間違いないです。それと、こんな事言うと不謹慎かもしれませんが、
   2人はいつか別れるかもしれませんし、最悪略奪という手もありますよ」

初春「りゃ、略奪って、そんな///」

なぜか頬を染め照れる初春。

佐天「とにかく!私が言いたいことは、人生山あり谷あり。七転び八起き。いい加減元気出そうぜ!ってことです!」

絹旗「あれれー?そんな話でしたっけ?」

白井「……そうですわね。まあ一部納得しましたわ。では後でそれを、お姉様に直接言いに行ってみましょう」

佐天「いや、それはちょっとハードルが高いかな~」

白井「何を言っていますの。あれだけ語っておいて、出来ないとは言わせませんわよ?」

その後注文した料理を食べ終わった4人は、遊ぶことなどほったらかしにして御坂を励ましに行った。

30: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:26:03.20 ID:c1MFS++20
4月3日 9:30 黄泉川の部屋

「一方通行、買い物に行ってくるじゃんよ」

8:00に一度起きたのに、結局この時間までソファーでだらけていただけの一方通行の腹部のあたりに、
黄泉川愛穂によってメモが置かれた。

「あのさァ、日常に溶け込めとかいちいち理由つけてよォ、いい加減俺の事パシりすぎだろ。たまには自分で行け」

黄泉川「いいじゃん。アンチスキルは春休みないんだから、それぐらい協力してほしいじゃんよ」

一方通行「今まで1人でやってきたンだろ?甘えンな」

黄泉川「だってー、1人分ならともかくー、今は4人分の食糧とか買うから大変だしぃー。
    大体、だらけてばっかりはよくないじゃんよー」

一方通行「チッ。分かったよ、分かりましたよ」

割と痛いところを突かれた一方通行は、そこで反論するのを止めた。
そうして一方通行が億劫そうにソファーから立ち立がった時だった。

「大体私も行く!」

今の今まで芳川桔梗とブラッド&デストロイを興じていたフレメア=セイヴェルンが、
ゲームのコントローラーを投げ捨て元気よく立ち上がった。

「はあ~。ようやく解放されたわ」

芳川は声を上げた。ゲーム開始からまだ1時間ほどしか経過していないが、よほどハードだったのか。
かなり疲れているように見える。

フレメア「大体芳川弱すぎてつまらない。一方通行と買い物行った方がマシだもん。にゃあ」

一方通行「ンじゃあ、さっさと支度していくぞ」

フレメア「はーい」

一方通行は灰色と白のボーダーの長袖の上に、黒い革のジャケットを羽織った。ズボンも同じ革のものだ。
一方フレメアは、ピンクの可愛らしいパジャマを脱いで『新入生』に初めて襲われた時の、
白ゴスロリ+赤タイツのRPGの姫キャラ風の装いになった。

一方通行「さっさと終わらせるぞ」

フレメア「うん。いってきまーす」

黄泉川「いってらっしゃいじゃん」

31: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:27:29.67 ID:c1MFS++20
黄泉川の隣の部屋

「ねぇねぇどう?似合う?」

常盤台の冬服を着た心理定規が、ソファーに寝そべる垣根帝督にアピールしていた。

「あー、似合うわー、可愛いわー」

心理定規「何でそんな棒読みなのよ!なんかもっと言う事ないの!?」

垣根「うるせぇな。どうせ何着たって似合うんだから、いちいち聞いてくるんじゃねぇよ」

心理定規「え?今何て言ったの?もう1回」

垣根「馬子にも衣装だって言ったんだよ」

心理定規「え、嘘!?そんなこと言ってなかったよ。確か、何着ても似合うとか言っていた気がするなー」

垣根「聞こえてたんじゃねぇか。ぶっとばすぞ」

心理定規「んもう、帝督ったら素直じゃないんだから」

垣根「そんなことよりさ……いいだろ?」

心理定規「きゃ」

ソファーから起き上がったと思えば、いきなり心理定規を押し倒した垣根。

心理定規「駄目よ。そういうことは結婚し・て・か・ら」

垣根「目の前にこんな極上の女がいて、あと2年も待てるかよ」

心理定規「っ……ど、どんなに褒めても駄目なものは駄目///」

垣根「ちっ」

これ以上は無駄だと思ったのか、垣根は大人しく引き下がった。

垣根「……なあ、お前、本当に俺の事好きなのか?」

心理定規「好きと言うより、愛しているわ」

垣根「んじゃあさ、何で俺が求めている事に応えてくれないんだよ。結婚してから。とか理由になってねぇよ……」

言いながら俯く垣根。こんなに落ち込んでいる彼は初めて見る。

心理定規「だって、そういうことは軽率にしちゃいけないというか……ごめんね。
     まさか、そんなに不安にさせているとは思ってなかった……」

垣根「お前、浮気とかしてないよな……?」

心理定規「神に誓って言える。ないわ。今までも、そしてこれからも」

垣根「そっか。なんか空気重くしちまった。悪かったな」

そうして垣根が、無言で寝室に向かって行こうとしたところで、

心理定規「待って!キスぐらいなら――」

引きとめた心理定規だったが、

垣根「やめろ。そんなことされると、止まらなくなる」

心理定規「あ……」

スタスタ歩いて行く垣根を引きとめる事が出来なかった。

32: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:28:25.75 ID:c1MFS++20
9:50

とあるスーパーで買い物を終えた一方通行とフレメアは帰路についていた。

フレメア「ねーねー、このまま帰っても暇なだけだから、大体どっか行こうよ。にゃあ」

一方通行「クソだりィンだけど。お子様は勉強しろ、勉強」

フレメア「一方通行だって長点上機に通う事になったのに、大体勉強してないじゃん」

一方通行「あのなァ、この俺は学園都市で第1位なンだ。つまり、学園都市で1番頭がいいと言う事だ。
     本来なら学校なンて通う必要ねェけど、黄泉川がうるせェから通うことにしただけだ」

フレメア「一方通行の自慢なんてどうでもいい。そんなことより、大体どっか行こうよー」

一方通行「無理。疲れる」

フレメア「……どうしても、駄目?」

必殺涙目上目遣いを繰り出すフレメア。

一方通行「駄目なもンは駄目だ。さっさと帰るぞ」

フレメア「にゃあ」

あえなく撃沈。

33: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:29:10.56 ID:c1MFS++20
それから5分ほど経ったころ。

一方通行「……」

フレメア「……」

フレメアは私利私欲の為にどこかへ行きたいと言った訳ではなかった。
平然としているが、一方通行の心に、いまだに深い悲しみが残っていることぐらい分かる。
だから、それが少しでも紛れればと考えての発言だった。
でも、一方通行が早く帰って休みたいと言うのなら、仕方ないかなとも思った。
そんなこんな考えているうちに、部屋の前に辿り着いていた。

一方通行「あー、疲れた」

フレメア「……ただいま」

芳川「お帰りなさい。ちゃんと手洗いうがいするのよ」

一方通行「はいはい」

芳川「フレメアに言ったの」

フレメア「……大体言われなくても大丈夫」

34: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:30:15.90 ID:c1MFS++20
それからさらに2時間ほど経過し、12:00。
芳川は何か資料のようなものを眺め、一方通行はソファーで寝そべって、
フレメアは特になにをする訳でもなく、カーペットの上に座ってぼっーっとしていた。
そんな静かすぎる空間で、一方通行が呟く。

一方通行「仕方ねェから、昼飯食ったらどっか行くかァ?」

フレメア「え!?大体良いの!?」

一方通行「ここにずっと居るだけってのも、退屈だしなァ」

フレメア「やったー!じゃあさ、大体どこ行きたい?」

一方通行「オマエが決めろよ。オマエのためにどっか行くンだから」

フレメア「私はー、一方通行が大体行きたいところに行きたいの。にゃあ」

一方通行「(行きたいところなンて、ねェンだが……)ンじゃあ第6学区にでも行くかァ」

フレメア「本当にそこに行きたいの?」

一方通行「……あァ」

フレメア「……嘘だ」

一方通行「……嘘だけどよォ。どこでもいいだろォが。遊べれば」

フレメア「一方通行の馬鹿!もういい!大体今日はどこにもいかない!」

フレメアは憤慨しながら、ブラッド&デストロイをソロプレイし始めた。

芳川(子供心が分かってないわね……)

一方通行(何だってンだ……ガキの考えってのはァ、よく分からねェ)

35: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:31:47.61 ID:c1MFS++20
14:00 月詠小萌のアパート

「こもえさん、今日はとうま君来てくれないのかな?」

昼御飯を食べ終わって、くつろいでいたインデックスは唐突にそんな事を言い出した。

「そうですねー。上条ちゃんも暇ではないのですよ。きっとー」

適当に返事をしているように聞こえなくもないが、月詠小萌にとっては、これがデフォの喋り方である。

インデックス「そうなのかな。私、とうま君が遊びに来るの、結構楽しみなのに」

小萌「上条ちゃんは結構な頻度で遊びに来てくれていると思いますけどねー。
   シスターちゃんも意固地にならないで、そろそろ記憶を取り戻すべきなのですよ」

インデックス「私の名前はシスターちゃんじゃないよ。今はレイチェルって名前があるんだから、そう呼んでよ。
       それに、記憶を取り戻すのは怖いよ。今は幸せだし、無理に取り戻す必要ないと思う」

小萌「そんな悲しい事言わないでくださいなのですよ。どんなにつらい記憶だってシスターちゃんのものなのですよ?
   そう簡単に取り戻す事を拒んでしまっていいのですか?それにきっと、辛い記憶だけじゃないです。
   楽しい記憶だってあるはずなのですよ」

インデックス「むー、こもえさんは、そうやってすぐに説教してくる!とうま君もそう!
       ひとしきり遊んだ後は説教してくる!2人のそういうところは嫌いかも!」

いじけてしまったインデックス改めレイチェル。
こうなってはしばらく口をきいてくれない。これでも大分マシになったほうだ。退院したての頃とか、もっと酷かった。

小萌(ま、あせらずじっくりとですよね……)

36: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:34:30.67 ID:c1MFS++20
15:00 とある学生寮

『でさー、最近寂しいなあって』

「ふーん」

電話口の結標淡希に対して、土御門元春は適当に答える。

結標『ねぇ、何でさっきから素っ気ないの?』

土御門「だってなー。彼氏が最近構ってくれないとか言われても……俺にどうしろって言うんだ」

結標『だから言っているじゃない?どうしたら構ってくれると思う?』

土御門「いやだから、俺に相談されても……」

結標『だって私友達少ないし、ダーリンの親友である、あなたしか相談できる人がいないんだもの』

土御門「そ、そうか。(自分で友達少ないとか言って、悲しくねーのか?)」

結標『ねぇ、どうしたら私に構ってくれるの?』

土御門「知らねーよ。構ってくれる方法とか自分で考えろよ」

結標『うっ、そんな、冷たい。どうしてそんなに冷たいの?あなたしかいないのよ。お願いだから、一緒に考えてよ……』

本来の結標らしく、無駄に強気な感じで『はぁ?話しぐらい聞いてよ。だからあなたは~』とか言われるなら
電話も切りやすいが、こうも弱気で儚げな様子の結標を放っておくのは、さすがに少し罪悪感がある。

土御門「そ、そうだな。アレだよ。
    プロポーズするための指輪を買うお金を貯めるために、パン屋のバイト頑張っているとかじゃねーの?」

面倒くさくなったので、適当にそれっぽい事を言ってみる。

結標『え、ほんと?でも彼レベル5だから、奨学金でお金には困らないはずよ。やっぱり浮気!?』

土御門「おいおい、彼女のくせに聞いてねーのか?
    実際、手続き上はまだレベル0だから、奨学金も相応の額しかもらえない。
    これからもレベル5である事は隠していくらしいから、極貧のままな。
    あと能力名は正式に申請したとか言っているけど、実際はされてないから。あいつがほざいているだけだから」

結標『な、なんで私が知らない事まで知っているのよ!それに何でレベル5である事を明かさないのよ!』

土御門「その理由までは知らねーよ。とりあえず言える事は、あいつは彼女を裏切るような真似はしない。
    そういうことだから、じゃ」

『ちょっと待って』と聞こえた気がしたが、これ以上は知ったことではないと、通話を終了した。

土御門「ふぅ。結標は少しヤンデレの気があるな。まあ青髪なら、それも大歓迎なんだろうが」




概ねこんな感じで、それぞれの平和な春休みが過ぎ去っていった。

37: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:36:09.04 ID:c1MFS++20
4月6日 長点上機学園 始業式の日 

教師「えー、本日からこのクラスで一緒に勉強をする事になる、垣根帝督君だ。
   彼は学園都市で2人しかいないレベル6のうちの1人だ。先の戦争でも、学園都市を守るために大活躍だったそうだ」

垣根「よろしく」

長点上機の生徒とは言え、暗部がどうのこうのとか知る人は極めて少ない。
つまり、生徒達から見れば、とんでもなく凄い奴が転入してきたとしか思わない。
男子はともかく、女子からの黄色い声援に教室は包まれた。

教師「じゃあ、そこの席に座ってくれ」

垣根「うぃーす」

教師に指で示された席、肩よりちょっと長い茶髪に、綺麗な顔立ちの女子の横に座った。
瞬間、その女子が話しかけてきた。

「はじめまして。東城瑠璃(とうじょうるり)です。よろしくね」

垣根「よろしく」

近くで見ると、やはり整った顔をしている。加えて(長点に居る時点で当然ではあるが)頭も良さそうだ。

東城「ねーねー。今日は午前中で学校が終わる訳だけど、一緒にどっか遊びに行かない?」

垣根「予定あるし、パス」

東城「じゃあ、その予定が済んだ後で良いからさー。遊ぼう?」

垣根「今の内にはっきり言っとくけどな。予定がなくても、お前みたいな完璧そうな女には興味無いから遊ばない。
   ある程度欠点があった方が、可愛げがあるってもんだ」

東城「えー。私だって欠点ぐらいあるよ。たとえば、1つのモノに夢中になると、それしか見えなくなるところとかね♡」

教師「おいそこ!早速仲良くなるのは良いが、俺の話はちゃんと聞け」

東城「はーい」

垣根「へーい」

東城「(注意されちゃったね)」

垣根「(何で笑顔なんだよ。お前のせいで注意されたんだぞ)」

東城「(私達、仲良さそうに見えたんだよ?私はそれが嬉しかったの)」

垣根「(あっそ)」

概ねこんな感じで、垣根の学校生活初日は過ぎていった。

38: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:37:29.93 ID:c1MFS++20
放課後

東城「垣根君。遊びに行こ♪」

断りも無く、東城は垣根の腕に抱きついた。

垣根「予定があるって言ったよな?分かったら離れろ」

東城「イヤ」

垣根「暑苦しいんだよ」

東城「まだ春だよ。私はあなたとくっついて丁度いい暖かさだな」

垣根「俺は暑いの。いい加減離れないとぶっ殺すぞ」

東城「なんでそんなに意地悪な事言うの?」

垣根「別に意地悪でもなんでもねーだろ。お前が馴れ馴れしすぎるんだよ」

東城「……だって、仕方ないじゃん。あなたに一目惚れしちゃったんだもん」

東城の突然の告白に、健全な男子高校生である垣根は少し揺らいでしまった。
無理もない。東城瑠璃という人間は、アイドル並の顔立ちをしていて
身長は推定170cm弱、体重は55kg弱というモデル並のスタイルを有している。
容姿端麗という言葉がふさわしい人間なのだから。
そんな人間の、大きすぎず小さすぎない胸が、現在進行形で腕に当たっている。
とても心地いい柔らかさだ。これで興奮しない男子はいないだろう。

垣根(……俺は馬鹿か……)

垣根は今まで生きてきた中で、断トツの容姿の東城に告白され、理性が一瞬でも弾き飛びかけた自分にイラだった。

垣根「離れろ。ビッチ」

東城「きゃ」

抱きつかれている左腕を思い切り振る。振り払われた東城は、その勢いで尻餅をついた。

垣根「ふん」

そんな彼女になど目もくれず、垣根は歩き出した。

39: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:39:08.56 ID:c1MFS++20
12:00 学舎の園前

心理定規(帝督のほうから誘ってくれるなんて……///)

4月3日に軋轢的なものが生じたが、翌日からは何事もなかったように垣根は普通だった。
何度かデートもしたし、寮に入る今日まで、本当に充実した日々を送れたと思う。
だがデートも会話も、全て自分からのアプローチだった。別にそれは苦ではない。
愛する人と一緒に居ることができるだけで充分幸せだった。
だって言うのに、今回は嬉しい事に垣根の方から初めてアプローチをされたのだ。

心理定規(早く来ないかなー)

待ち合わせ時刻は12:00。そろそろ来ても良いころなのだが……と、視界にようやく垣根を捉えた。

心理定規「早くこっちきてよ!」

ここで嬉しそうに走ってきてくれたりしたら嬉しいものだが、垣根はあくまでクールに徹して歩いてくる。
それが垣根らしいと言えばらしいが。

視界に捉えてから40秒後、ようやく垣根が目の前まで来た。

心理定規「お・そ・いー。待ち合わせにはせめて5~10分前には来てよね」

垣根「ああ、すまん」

心理定規「分かればよろしい。んで、今日はどこへ行くの?」

言いながら、垣根の左腕に抱きつく。同時、何か甘い匂いがする事に気付いた。

心理定規(え?この匂いは……)

垣根「今日は大事な話がある」

心理定規「な、何?」

垣根「俺達、一旦別れよう。できれば、連絡も少なめにしてな」

心理定規「え!?な、何で、そんな事……」

垣根「じっくり考えたんだけどよ。このままだと、俺はお前を襲っちまう。お前の意思なんて無視してな。
   でも俺は、彼女の意思を無視してレイプまがいの事をする訳にはいかねぇ。だから、一旦距離を置こう。
   2年後に、絶対迎えに行くから」

40: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:41:15.76 ID:c1MFS++20
心理定規「な……なんで……そんなこと……突然……言われても……」

垣根「わがままなのは承知の上だ。けど、俺とお前の事を考えたら――」

心理定規「あなた、浮気しているんでしょ!」

あまりに大きい声だった為に、通行人から注目が集まる。

垣根「どうしてそう言う結論に至るんだよ。俺は浮気なんてしない。そんな軽い男じゃねぇ」

心理定規「じゃあ……その左腕にまとわりついている甘い匂いは何?」

垣根(左腕の匂い?……まさかあの女の……なんて説明すればいい……)

何の脚色もなしに説明するとしたら「同級生に一目惚れされて、ここに来る前に左腕に抱きつかれた」
としか言いようがない。だがこんな説明をして、今の疑心暗鬼な心理定規が素直に「そうだったの安心したわ」
となるとは思えない。

心理定規「その顔は何か心当たりがあるみたいね」

嘘をついても仕方ない。ここは正直に言うしかなかった。

垣根「えっと、アレだ。
   なんか変な女に一目惚れされて、一方的に左腕に抱きつかれたりしたから、たまたま匂いがついちゃっただけだ。
   神に誓って言えるぜ。断じて浮気なんかじゃねぇ」

一方的に、の部分を強調して言った。神に誓って、とか非科学的な事まで言ってやった。
まあ先の戦争で魔術を垣間見ている2人は、オカルトが全く信じられない訳ではないが。
だがそれらがわざとらしく聞こえたのか、

心理定規「嘘ね。漫画やアニメやゲームじゃあるまいし、そんなことありえない。
     私は信じていたのに……信じていたのに!」

ヒステリックに叫ぶ心理定規。通行人の注目が一層高まる。
どうすりゃいい!?と垣根が悩んでいたところで、

「ちょっとぉ、見世物じゃないんだからぁ!」

星が入った(ように見える)瞳に、背まで伸びている長い金髪。
常盤台を卒業したのにもかかわらず、常盤台中学の冬服を纏い、蜘蛛の巣を連想させるような模様が入った、
レース入りのハイソックスと手袋を着用した『心理掌握』こと食蜂操祈が、いつの間にか君臨していた。
そして垣根達への人々の注目が逸れていく。心理定規も大人しくなっていた。

41: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:43:15.93 ID:c1MFS++20
垣根「テ、メェ、あれだけの数の人間を一瞬にして操ったのか……!」

食蜂「さぁ、どうでしょう?」

垣根「俺の女が静かになっているようだが、洗脳をしているなら今すぐ解け」

食蜂「何言っているの?私の超能力のおかげで、この子は大人しくなったのよぉ。
   能力を解けば、また騒ぎだすと思うケドぉ」

垣根「俺が自力で大人しくさせる。分かったら能力を解け。これが最後通告だ。言う事を聞かないなら殺す」

食蜂「私を殺せば、あなたはただの殺人者だよぉ」

垣根「お前は『俺の女を操る』と言う罪を犯した。お前を裁く権利ぐらいあるんだよ」

食蜂「あら、意外とおバカさんなのかしらねぇ。証拠がないじゃない?
   私が洗脳したっていう証拠がぁ。それに周囲の人達はみーんな、私の味方だよぉ」

垣根「証拠?周囲の人達?そんなもんいらねぇんだよ。
   俺が『お前は俺の女を洗脳した』って事実を観測した時点で、殺すには充分だ」

食蜂「言っておくケドぉ、私の洗脳は、私が死んでも続くのよぉ。
   つまり私が死んでも洗脳は完全には解けずに、あなたは犯罪者になる訳だけどぉ、
   そこんところ分かっているワケぇ?」

垣根「ハッ、めでてぇやつだ。そんなことで俺が止まると思うか?」

食蜂「理解力がないのかなぁ?私を殺しても、この子の洗脳も解けない訳でぇ」

口調こそ変わっていないが、声のトーンが一段階下がった。明らかにイラついている。

垣根「関係ねぇ。洗脳なんて意地でも解く。お前を殺した方がこの世の為だ」

これは冗談ではない。垣根帝督と言う男は決して善人ではない。
寧ろ長い間を『暗部』で過ごしてきた、どちらかと言えば悪人の部類である。殺すことに躊躇いなどない。

食蜂「本っ当に、君みたいな無駄に強気な男って、プチッと捻り潰したくなるわねぇ」

垣根「これ以上の問答は必要ねぇ。死ね」

直後、垣根は食蜂の後ろに回り込んで『未元物質』で生み出した刀を振るっていた。
と同時に、

垣根(――何か来る!)

背筋に冷たいものが走った。
生やしていた翼を器用に操り、その『何か』を防ぎ、食蜂から距離を取る。

42: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:44:49.84 ID:c1MFS++20
垣根(今のは一体……)

垣根自身にダメージは無いが、ガードを実行した翼がバラバラになってしまった。

「まだやりますか?」

いつの間にか、常盤台の冬服を纏った1人の少女が食蜂の側にいた。
身長は推定130cmほどでかなり小さく、痩せ細っている。
手入れされていない感じの紫色の髪の毛は肩ぐらいまであり、目は虚ろだ。

垣根「なんだテメェ」

少女「その質問に答えたところで、垣根様にメリットは無いと思われますが」

垣根「俺の名前を知っているのか。食蜂の味方をするのなら殺すが」

少女「あなたごときに、それが出来ますかね」

レベル6であり学園都市第2位でもある垣根に対して、少女がやたらと強気なのは、
先程の得体のしれない『何か』をして、彼の翼を破壊した超本人だからだろう。

垣根「俺も随分となめられたもんだなぁ」

少女「一度死にかけていますしね」

垣根「うざいな。死ね」

少女の後ろに一瞬で回り込んで『未元物質』の刀を左から右に水平に振るう。
強度は核シェルター以上、切れ味は500年もの業物を超えるレベルの一閃。それを少女は左の裏拳で迎え撃つ。

垣根(もらった!)

しかし垣根の考えとは裏腹に、何の変哲もない少女の左裏拳は『未元物質』の刀を易々と打ち砕いた。

垣根(なに!?)

少女は左裏拳からの回転の勢いのまま、右拳を繰り出す。
それは傍から見れば、何の変哲もないただの拳。しかし垣根には“視えて”いた。
少女の腕に渦巻いている、紫色のエネルギーを。

垣根(――!)

相殺――できない!本能的にそう感じ取った垣根は、迷わず後退した。

43: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:46:54.66 ID:c1MFS++20
少女「ガードでも反撃でもなく、避ける事を選択したのはさすがです。その“眼”のおかげでしょうか」

淡々とした口調で少女は喋る。なんというか、感情が無い感じがする。

垣根「一体何の能力だ?」

少女「その眼で見切ったのではないのですか?だとすれば、わざわざ説明する訳にはいきません」

垣根「生意気な女だ。どうせお前は俺に殺される。その前に話を聞いてやるって言っているんだよ」

少女「無理だと思います。レベル6とは言え、その力を使役できる時間はせいぜい5分と言ったところでしょう。
   5分間程度なら耐えきる自信はありますし、抑えてレベル5の力で来たとしても、真正面から叩き潰せる
   自信があります」

相変わらず抑揚のない喋り方だが、内容を聞く限り相手は自分の事を知り尽くしているし、自信が感じ取れる。
実際攻撃は通用しなかったし、ブラフ(はったり)とは思えない。

垣根(けどよ……)

浮気をしたと勘違いされたまま、食蜂に操られた最愛の人を放っておけるわけがない。
そんな垣根の心を読み取ったのか、食蜂が口を開く。

食蜂「大丈夫よぉ。別にこの子に何かするって訳じゃないし。あなたは後で相手してあげるわぁ。じゃぁ、帰るわよぉ」

少女「はい」

踵を返し、歩き出す2人。

垣根「ま、てよおおおおお!」

『未元物質』で即座に槍を生み出し、投げつけた。

食蜂「綾香」

少女「はい」

少女は手だけを後ろにやる。直後『未元物質』の槍は捻じ切られた。

少女「……やはり両腕ぐらいは千切っておいた方がよろしいのでしょうか?」

食蜂「そうねぇ。学習能力が無い子は、一度痛い目見ないと分からないみたいねぇ。いいわぁ。やっちゃってぇ」

少女「はい」

少女は振り返り、両手を前に出す。それで垣根の両腕は千切れるはずだった。

一方通行「なァンか楽しそうな事やってンじゃねェか、おい」

一方通行が垣根を押し退け割り込み、攻撃を反射しなければ。

44: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:48:37.55 ID:c1MFS++20
少女「くっ」

少女は後ろに飛び退き、反射された自身の攻撃をかわす。

垣根「邪魔すんじゃねぇよ」

一方通行「別に邪魔なンかしてねェよ。散歩していただけだ。
     それよりなンだよ、そのオッドアイもどき。カラコン?」

今の垣根は右目がオレンジ色に、左目が青く光っている。

垣根「んなわけねーだろ。この眼でようやく見切ったぜ。あいつの攻撃の正体」

一方通行「あァ、反射した感じ、オマエじゃあ勝ち目はないな。俺なら一捻りだが」

垣根「チッ。悔しいがそうだろうな。ここは大人しく引き下がっとくか」

一方通行「意外と物分かりが良いじゃねェか」

垣根「本当に大切な人を救うためだからな。無理して手負いになるわけにはいかねぇ。
   あとよ、土御門って奴の連絡先よこせ」

一方通行「面倒臭ェから、オマエで操作しろ」

ポケットから携帯を取り出し、垣根に投げる。

垣根「サンキュー」

少女「(さすがに一方通行様相手では分が悪いですね。)一方通行様はどうするのですか?」

一方通行「帰るよ。ガキを待たせているンでね」

少女「そうですか」

と、そこで操作を終えた垣根が一方通行に携帯を返し、帰りだした。

一方通行「女、最後に名前だけ教えろ」

少女「どうしましょうか?」

食蜂「いいわ。名前ぐらい教えてあげなさい」

少女「折原綾香(おりはらあやか)と申します」

一方通行「オッケー」

一方通行は徐に携帯を操作し、あるところに電話をかける。

一方通行「大至急“オリハラアヤカ”について調べろ。
     能力は多分、“歪曲”ってところだろうなァ。こンだけ情報ありゃ充分だろ。ンじゃあ頼むぜ」

一方的に喋るだけ喋って電話を切り、垣根と同じく、まるで何事もなかったように歩き出した。

45: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:49:56.50 ID:c1MFS++20
折原「何とか一方通行様との戦闘を回避できましたね」

食蜂「幼女が私に洗脳されないか心配だったんでしょう。ぐっ」

折原「どうしたのですか?」

よろめく食蜂を、支えながら尋ねた。

食蜂「……そこにいる垣根君の恋人いるじゃない?その子を操る時に、アレイスターが見えたの。
   そして精神攻撃的なのを喰らったの。
   それでも、精神状態がかなりブレていたから何とか洗脳出来たけど、万全状態だったら出来なかったわねぇ」

折原「……はあ」

食蜂「ちょっとぉ、理解できないなら、最初から尋ねないでくれる?」

折原「申し訳ございません」

食蜂「もういいわぁ。帰るわよぉ」

折原「はい」

46: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:52:04.03 ID:c1MFS++20
4月7日 とある高校始業式の日の朝 通学路

土御門「つーことで、昨日カッキーと一方通行から連絡があった訳だが、予想以上に俺達は追いつめられていることになる」

「やはり、拘束ぐらいは出来ないものなのでしょうか?」

土御門に疑問を呈したのは五和。

土御門「出来ないだろうにゃー。この街にいる大半の生徒は、食蜂に為す術もなく操られるだろう。
    食蜂の都合よくな。これがどう言う事か分かるか?操られていない俺達の方が“異常”になるんだ」

「俺達に為す術はないってことか」

まあ、分かってはいたけど。と言う調子で呟いたのは上条当麻。

土御門「食蜂が行動を起こすその時まで、何も出来ないだろうにゃー。
    ま、我慢するしかないんだよ。食蜂みたいな人間は、仮に拘束できたとしても反省しない。
    殺すか、真正面から説得するしかない」

上条「殺す訳にはいかないから、説得するしかないって訳だな」

土御門「そう言う訳だにゃー」

五和「でも、何かアクションを起こされるまで、こちら側は何も出来ないなんて……歯痒すぎます」

土御門「そう悲観することはねーにゃー。こっちにはレベル6が2人、『神浄』が1人いるんだからな」

上条「けど垣根でも勝てないような能力者があっち側にいるんだろ?
   しかも……『心理定規』だっけ?そいつも結局操られたんだろ?」

土御門「その2つが予想外だよなー。まあでも、1つ目については一方通行とカミやんがいるから大丈夫だ。
    問題は2つ目だ。これは多分『心理定規』の精神が揺らいでいたのもあるんだろうが、
    洗脳力が予想以上に高いという事。しかも垣根にとっては人質取られたもんだからなー」

上条「俺達だって、五和やインデックスや舞夏がセーフでも、吹寄や姫神が人質に成り得るじゃねーか」

土御門「そうなんだけど、食蜂は人質を盾にするような奴じゃない。
    基本的には叩いてつぶす、どちらかと言えばサディスティックな人間だからな。人質はあくまで保険さ」

あと舞夏って呼び捨てにすんじゃねーよ、と土御門は憤慨する。

五和「結局、私達に出来る事って何なのでしょうか?」

土御門「来たるべき時に備えて、力を蓄えておく事かな」

47: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:53:46.73 ID:c1MFS++20
とある高校 上条のクラスの教室

小萌「はーい。入学式の日にも言いましたが、我が校ではクラス替えを行っていません。
   よって1年の時と変わらないメンツ、変わらない担任なのです。これからもよろしくお願いしますねー」

「相変わらず小萌先生は可愛いなぁ。ホンマ天使やで」

と、変態丸出しの似非関西弁を話すのは、本名不明の青髪ピアスだ。

上条「はいはい。ロリコンロリコン」

青ピ「可愛いものを可愛いて言うて何が悪いんや。大体小萌先生は、年齢的には――」

その時だった。教卓の小萌から白いチョークが投擲され、青髪のこめかみを横切った。

小萌「はいそこー。早速うるさいので黙りやがれなのですよー。
   あと青髪ちゃん、調子に乗っていると『すけすけみるみる』の刑なのですよー」

上条「(こ、怖えー。つーか早速注意されちまったじゃねーか)」

青ピ「(ええやんええやん。あないなお子様に叱られるのも、また一興やで。
   ああ、小萌先生と朝まで個人授業したいわぁ)」

上条(……もう手遅れか)

そんな上条たちなどお構いなく、小萌は続ける。

小萌「ではではー、既に知っている人もいるかもしれませんが、始業式の前に、新たなクラスメイトを紹介するのです」

上条「新たなクラスメイト?(五和は3年だから、違うし)土御門、何か知っているか?」

土御門「……2年生での編入生は知らんな」

小萌「おめでとう野郎どもー。残念でした子猫ちゃん達ー。どうぞ、入ってきて下さーい」

ガラ、と扉が開かれ、入ってきたのは。

食蜂「今日から皆さんとお勉強することになった、食蜂操祈でぇ~す。よろしくねぇ☆」

土御門「な――」

上条「――に」

小萌「えーっと、食蜂ちゃんは今年、あの常盤台を卒業しました。
   よって本来は高校1年生なのですが、特例で2年生の皆さんと一緒に勉強することになったのです」

土御門「ちょ、先生、そんなのアリかにゃー!?」

小萌「食蜂ちゃんほどのエリートが、霧ヶ丘などの名門校を蹴って、我が校に来てくれたのですよ?
   これぐらいの待遇は当然なのです」

食蜂「そういうことでぇ~す☆」

上条「何だよそれ!いくら頭が良いからって、そんなVIP扱いみたいな……」

男子「いちいちうるせーぞ馬鹿2人。可愛い子が来てくれたんだからそれでいいじゃねーか。何が不満なんだよ?」

そーだ、そーだ!と次々と男子に賛同する意見で教室はざわめく。

48: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:55:21.36 ID:c1MFS++20
小萌「はいはーい。皆さん落ち着いてくださーい。レベル5ですし多少の優遇は当然なのですよ。
   それに食蜂ちゃんの学力なら、我が校の勉強についていく事は容易ですし、何も問題はありません」

上条「そう言う問題じゃなくて、頭が良いからとか、エリートだから2年生からとかじゃなくて、
   これ、逆差別なんじゃないですか?」

男子「逆差別って何だよ。この場合、区別だろ」

小萌「上条ちゃん……一体どうしちゃったのですか……先生は悲しいのです……」

上条「俺は正常ですよ。先生こそ」

青ピ「ええ加減にせぇよカミやん。食蜂ちゃんも、小萌先生も困っとるやないか」

上条「青髪……!」

小萌「もういいです!分からず屋の上条ちゃんは放っておきます!
   とりあえず食蜂ちゃんは、上条ちゃんの前の席に座ってください」

食蜂「はぁ~い」

上条「え?」

さも当然のように上条の前の席に座る事になったが、それはおかしい。
上条の席は窓側の一番後ろ。目の前には普通に女子が座っている。
空いているのは、上条の隣に座っている土御門の隣の席だ。
にもかかわらず、食蜂は女子を押し退け上条の前に座ろうとしている。
指示する小萌も小萌だ。

食蜂「どいてくれる?」

女子「はい」

上条の目の前で、そんなやりとりがごく自然に行われた。
そして当然のように、女子は席を立ち、空いている席に座った。
そして当然のように、食蜂は上条の前の席に座った。
そして当然のように、そんな異常を誰も咎めない。
そこまできて、上条はようやく悟った。

食蜂「よろしくね☆上条君」

上条「ああ、よろしくな。クソッタレ」

小萌「では、SHR後に始業式ですからねー」

49: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:57:30.06 ID:c1MFS++20
12:00

始業式やその後のHRもつつがなく終了し、上条と土御門は学校の屋上に居た。

土御門「いやいや、大胆にも乗り込んできましたねー。
    あの様子だと、ウチのクラスで正常なのは、俺とカミやんぐらいかな。いや、俺達の方が“異常”になるのか」

上条「お前はよく洗脳されなかったな。お前もアレイスターの加護的なのがあんのか?」

土御門「いや、俺は万が一の為に仕込んでおいた魔術で、自力で防いだのさ。
    ちょっと頭痛がしたけどな。多分食蜂も、驚いていたと思うぜい」

上条「ここまでされて何も出来ねーのかよ……」

と、上条が呟いた直後だった。

食蜂「そうねぇ。何も出来ないわねぇ。何せ、異常なのはあなた達の方なんだから」

突如エコーがかかった食蜂の声が聞こえてきた。そして屋上の扉が開かれる。
そこから現れたのは、やはり食蜂。

食蜂「そっかぁ。土御門君の事を操れないのは“魔術”って言うのが原因だったんだぁ。
   世の中には、操祈の知らない事がまだまだ一杯あるんだねぇ☆」

土御門「嘘つけ。詳細までは知らなくとも、盗聴か何かで聞いたことぐらいはあるだろ。
    戦争のときだって、1人ほくそ笑んで傍観者を決め込んでいたくせに」

食蜂「そんなぁ。操祈は何も知らずに避難所に避難していただけだよぉ」

土御門「そうやってどこまでも余裕かましてればいいさ」

食蜂「土御門君、何だか怖いよぉ」

上条「お前、さっきからふざけてんのか?黒い部分を見せておきながら、今更ブリッ娘に何の意味がある?」

食蜂「ブリッ娘じゃないよぉ。これが操祈の素だよぉ」

上条「皆の洗脳を解け。解かなきゃ1発ぶん殴る」

食蜂「洗脳って何のことぉ?何だか上条君も怖いよぉ」

上条「清々しいくらいのとぼけ方だな。オーケー。1発ぶん殴る」

そうして上条は駆け出そうとしたが、ガシッ!と土御門に腕を掴まれる。

上条「放せよ!ぶん殴らないと気が済まねぇ!」

土御門「駄目だ。今ここで食蜂を殴ったら、傷害か何かで俺達が悪者になって終了だ」

上条「こんな茶番が、まかり通るってのかよ……」

土御門「んで、わざわざここに来た理由は何かにゃー?」

食蜂「HRが終了した直後に、2人が屋上へ行くのを見たから付いてきただけだよぉ」

土御門「会話になんねーな。もういいわ。帰ろうぜ、カミやん」

上条「くっそ……」

2人は食蜂の横を通って屋上を後にした。

50: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 21:58:39.44 ID:c1MFS++20
13:00 とある高校学生寮

土御門の部屋に、上条と土御門、そして五和がいた。
今は五和が作った料理を3人で頂いているところである。

土御門「五和さんの料理はおいしいにゃー。これは舞夏に匹敵するレベルだぜい」

五和「ありがとうございます」

上条「で、わざわざ五和に料理作らせてまで、ここに呼んだ理由は何だ?」

土御門「実は食蜂についてなんだが、奴を止める方法が無い訳じゃない」

五和「ほ、本当ですか?」

土御門「かなり強引な手だが」

上条「もったいぶらずに早く言えよ」

土御門「能力消去音声プログラムを、食蜂に聞かせる事だ」

五和「ほ、本当にそれで解決できるじゃないですか!」

上条「何でその方法を今まで言わなかったんだよ?食蜂がいずれ何かする事は分かっていたんだろ?」

土御門「アレイスターの巻物に書かれていただけであって、食蜂が具体的に何かした訳でもないのに、
    能力を奪うなんてさすがに酷いな。と思っていたから何もできなかった。
    だが垣根の報告に今日の朝の出来事で、そんな気持ちは微塵もなくなったよ」

五和「で、では」

土御門「ああ。プログラムは既に持っている。明日にでも食蜂の能力を奪う。協力してくれるか?カミやん、五和」

上条・五和「「もちろん(です)」」

3人は決意を固めた。

51: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:00:24.83 ID:c1MFS++20
19:00 第22学区 上条・五和ペアとアックアが激突した橋の上

御坂「ここね」

人っ子1人いなかった。完全下校時刻から30分も過ぎているのだから、別段おかしい事ではない。
そもそもなぜ御坂がこんな時間にこんなところに居るのかと言うと。

御坂「何なの!?呼び出しといて誰もいないとか……」

13:00過ぎ辺りだっただろうか。寮監から一通の手紙をもらった。
内容は食蜂からの挑戦状のようなものだった。無視しても良かったのだが、上条君が云々と書かれていたので来てやった。

御坂「今まで我慢してきたけど、人のトラウマつついてきたんだし、少しぐらい黒焦げにしても良いわよね……!」

御坂の中に黒い感情が渦巻いていた。と、前方から足音。

食蜂「ごきげんよう☆御坂さん」

御坂「ようやく来やがったわね」

バチバチ、と前髪から電撃が漏れ出す。

食蜂「焦らないでぇ。あなたの相手は私じゃないよぉ☆」

青ピ「恨みは無いけど……少しだけ痛い目見てもらうで」

野太い声は後ろから。
振り返ると、戦争の時にあの馬鹿の友達だと言った、青髪の少年がいた。

御坂「な、なんでアンタが……!」

青ピ「アカンでー御坂ちゃん。僕やから良いけど、目上の人に対しては敬語を使わへんと」

御坂「……そっか。操られているのね。大丈夫。だったらすぐに正常に戻してあげるから。
   ちょっと痛いかもしれないけどね」

御坂は電撃を纏う。
それは鎧となり、同時に反射神経や移動速度なども飛躍的に上昇させる。

青ピ「僕を馬鹿にしたらアカンで。レベル5の序列って、強さだけで決める訳じゃないからね」

御坂「そんなこと分かっているわよ。それでも――」

シュン!と御坂が青髪の視界から消え去り、顔面に回し蹴りを喰らわせるまでに1秒もかからなかった。
蹴られた青髪は、ノーバウンドで橋の欄干までぶっ飛んだ。

御坂「アンタに負ける気はしないけどね」

終わった。と思った。が、それは幻想にすぎなかった。

青ピ「御坂ちゃんが蹴ったのは水分身。本物はこっちやで」

御坂の後方10mほどの位置に、青髪が平然と立っていたからだ。思わず、欄干の方を見た。
そこには確かに、水分身が崩れて出来たと思われる水たまりしかなかった。

52: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:02:05.98 ID:c1MFS++20
御坂「はは。嬉しいわね。まだ戦えるんだ。自慢じゃないけど、私と戦える人ってあんまりいないからさー。
   ストレスとか溜め込む一方だったんだけど……これなら良い感じに発散できるかも……!」

青ピ「……まだ僕の事馬鹿にしているようやな。そもそもストレスを喧嘩で発散ってどうなん?
   レベル5は人格破綻者の集まり言うけど、まさにその通りやな」

食蜂「ちょっとぉ、私はまっとうな人格しているわよぉ」

青ピ「つまらん冗談やな。あなたがレベル5で一番酷いやないか」

御坂「……」

さっきから若干の違和感がある。操られている割にはよく喋ると言うか、今も食蜂に対して毒舌だった。
だがまあ、そんなことはどうでもいいか。

御坂「ゴチャゴチャ言っているけど、その法則を当て嵌めるなら、アンタも人格破綻者ってことでしょーが」

青ピ「何言うてん。僕は正常な人間やで」

御坂「ふん!」

この男と話しているとイラつく。そう思った御坂は、割と強めの雷撃の槍を放つ。

青ピ「あまいで」

ドッパァァァン!と轟音が周囲に響く。
青髪の周囲に渦巻いた水が、雷撃の槍を防いだ音だった。

御坂「そうでなくっちゃ!」

必殺技の1つを防がれたというのに、御坂は歓喜に震えていた。
理由は1つ。久々の熱い勝負が、あっさりと終わらずに済んだからだ。
御坂はポケットからコインを取り出し、上に弾く。

青ピ「『超電磁砲』か。させへんで」

『超電磁砲』が発射されるまでの、わずかのタイムラグを狙って、青髪の周囲の水が鞭となって御坂に襲い掛かる。

御坂「ちっ!」

コインなど無視して、御坂は回避行動をとった。
その後も水の鞭の連撃が続いたが、それらを避けながら青髪に肉迫する。

御坂「こらーっ!」

御坂は精一杯のタックルをぶちかました。同時、バシャ!と青髪の体がただの水に戻る。

53: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:03:25.26 ID:c1MFS++20
御坂「これも分身!?」

驚愕した直後、弾けた水は御坂の体を球体状に覆い尽くした。

御坂(閉じ込められた!?)

青ピ「早う脱出せんと、溺死してしまうで。ま、その前に――」

青髪が何か言っていたが、御坂には聞こえていなかった。

御坂(落ち着け。大丈夫だ。こんなもの、冷静に対処すれば!)

前髪から精一杯の放電。御坂を球体上に覆い尽くしていた水が弾け飛ぶ。

御坂「っ!」

追撃の水が迫っていたが、それらもジャンプして何とか避ける。

御坂(あそこね!)

位置は既に電磁波からの反射波で分かっている。

青ピ「これはまずいかもな」

危険を感じ取った青髪は、水の鞭10本を目の前に重ねて配置する。

御坂「そんな水如き!ぶっち抜けぇぇぇえええ!」

空中を舞っていた御坂は、デコピンでコインを弾く。
音速の3倍以上で放たれたコインは、水の鞭の盾を次々と貫き――最終的に青髪の手の中におさまった。

青ピ「僕の水の密度をなめたらアカンで」

御坂「マジでか……!」

どうやら水の盾を貫くたびに威力が落ちて、青髪に届くころには、ただの溶けかけのコインになったみたいだ。

御坂「なら、これはどうよ!?」

地面に着地していた御坂の前髪から大量の電撃が溢れだす。
それは1点に集まり龍の頭蓋を象った。言うならば、雷撃の龍というところか。

御坂「喰っらぇぇぇえええ!」

青ピ「甘いで!」

青髪にも必殺技がある。それは水の竜。即座に水の竜を生み出し、放つ。

0.3秒で、竜と龍がぶつかり合った。
ドッパァァァン!という轟音と共に竜と龍は消え去った。つまりは相殺。

54: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:04:40.03 ID:c1MFS++20
御坂(これも駄目か……!)

必殺技を悉く防がれ、いよいよ楽しんでもいられなくなってきた。
しかも相手は、まだまだ余力がありそうだ。

青ピ「ようやく僕の強さが分かってきたようやな。でも、今更危機感抱き始めたところで、遅いで」

御坂(まずい!)

咄嗟に後ろを向き、雷撃の槍を放った。
それは御坂の後ろから迫っていた水の竜に見事に直撃したが、

御坂(止まらない!?)

水の竜は勢いを落とすことなく御坂に向かって、彼女を咥えた。
と言っても、全てが水で構成されている竜のため、噛みちぎられるということはない。

御坂(こんなの……!)

放電して抜け出してやる!と御坂は思ったが、

青ピ「そんな時間は与えへんで」

御坂を咥えた水の竜が、恐るべき速度で上昇し、橋の下の川面に向かって一直線に下降していく。

御坂(ヤバ――)

ドッバァァァン!と御坂は水の竜ごと川面に叩きつけられた。勝負は、決した。

青ピ「殺さないようにって言うのが難儀やったけど、任務完了やなぁ」

食蜂「何言っているのよぉ。レベル5の中でも穏便な能力じゃない。あなたほど捕獲に適した能力はいないわぁ」

青ピ「そりゃどうも」

食蜂「お疲れ様。じゃぁ次は、あの子ね」

青ピ「……分かっとるわ」

55: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:06:06.04 ID:c1MFS++20
4月8日 8:20 上条のクラスの教室

食蜂「おはよう☆上条君」

既に座っていた上条の前の席に座りながら、挨拶する。

上条「……」

食蜂「何で無視するの?操祈、悲しいよぉ」

上条「俺の右手には、異能の力なら神様の奇跡(システム)だって打ち消せる『幻想殺し』が宿っている」

上条は突然語りだした。

上条「けど効果範囲は右手のみだ。つまり、お前には俺の心が読めない事は無いはずだ。
   分かるだろ?俺が考えている事」

食蜂「ふぅん。そう言う事かぁ。で、操祈が素直に言う事聞くと思うのカナぁ?」

上条「お前さ、人を操って世界を崩壊させようなんて、ゲームの悪役みたいな野望を抱いて、何か楽しいのかよ?」

食蜂「説教?ていうかぁ、私の野望まで知っているんだぁ。こわーい」

上条「もうさ、やめにしようぜ。そんな馬鹿な野望は捨てて、普通の学園生活を送ろうぜ」

食蜂「あなたに私の何が分かるの?知ったような口を聞かないでほしいなぁ」

上条「分かんねぇよ。そんな馬鹿な野望に至る経緯なんて分かりたくもねぇ。けど、これだけは言える。
   人を洗脳して、世界を崩壊させる事が間違っているってことだけは」

食蜂「何を言われたって、私は止まらないわぁ」

56: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:08:29.89 ID:c1MFS++20
上条「そっか。なら仕方ねぇな」

ガタッ、と音を立てて上条は椅子から立ちあがる。

上条「強引に行かせてもらうぜ。
   俺の心読んだら分かると思うけど、まだ来てない青髪を除くクラス全員の洗脳は解いた。ここにお前の味方はいない」

食蜂「作戦も何も無く、ド直球で来たわねぇ。でも、1つだけ間違っている事があるわぁ」

上条「……」

どんな事を言われようが、上条含むクラスメイト全員は食蜂を取り押さえ、能力を消去するつもりだった。

食蜂「私の能力を消せば、洗脳されている人達の精神は崩壊するわぁ」

こんな事を、言われなければ。

クラスメイト達「嘘……だろ……」

上条「土御門!能力が消えても、洗脳が自然には解けないだけだよな!?」

土御門「……」

ブラフだ。と言いたい。が、そんな保証はどこにもない。
万が一言っている事が本当だったとしたら、青髪や小萌先生、他に洗脳されている人達はどうなる?

だが、もし言っている事が本当だとしても、異能の力で精神崩壊するのならば、上条の『幻想殺し』で戻るのではないか。

いや、洗脳という現在進行形ならばともかく、精神崩壊と言う完了した事象に『幻想殺し』は効くのだろうか。
『女王艦隊』には効果が無かったみたいだが。

けれども、アウレオルスの忘却は右手をあてただけで元に戻った。つまり、精神崩壊を戻せる可能性もゼロじゃないはずだ。

だがやはり、リスクが高い。
可能性という話だけで能力をあっさり消去して、取り返しがつかないほどの精神崩壊をしてしまったら。

冷静に考えれば焦る事は無い。能力消去と言う手が無くなっただけだ。
こんな危険な賭けに出る必要はない。もしかしたら他に方法があるかもしれない。
結論を言うと“とりあえず”は何もしないのがベストな選択と思える。

と、そこまで考えた土御門の心を読んだのか、食蜂が再び口を開く。

食蜂「土御門君は頭が良いなぁ。操祈も、それがベストな選択だと思うよ☆」

土御門「クソが……」

これが心理を知り尽くしたレベル5のやり口か。と、土御門は驚嘆した。食蜂の反撃は終わらない。

食蜂「そ~れっ☆」

一瞬にして、クラスメイト達は再び洗脳された。続けて鞄からリモコンを取り出し、先端を土御門に向ける。

土御門「リモコンで能力を補正するのか。そんなもの効かないぞ」

食蜂「洗脳が無理でもぉ、それより圧倒的に簡単な、記憶消去ならどうかなぁ?」

土御門「――くっ!」

どう言う訳か、土御門はぐらりと揺れ、床に倒れた。

57: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:10:35.25 ID:c1MFS++20
上条「テ、ンメェェェ!」

思わず食蜂に殴りかかるが、ガシィ!と拳は横から出てきた手に止められた。

青ピ「何やっとるんや。カミやん」

遅れてきた青髪の手だった。

上条「青髪……!」

女子「小萌先生!黄泉川先生!上条くんが暴れています!」

女子がドアから上半身だけを出して、歩いてきていた2人の先生を呼びとめる。
それを聞いた2人の先生は上条のもとへ走ってきた。

小萌「上条ちゃん!一体どうしたと言うのですか!」

上条「違う!俺はただ――」

「先生。上条は突然暴れ出して食蜂さんに殴りかかろうとしました。
 それを止めようとした土御門が、上条に突き飛ばされて、後頭部を強打しました。ここに居る全員が目撃しています」

ハキハキと、吹寄制理が嘘を言う。

黄泉川「うーん。強打したような跡はないじゃん」

「でも。私達は。目撃した」

地味目な少女、姫神秋沙も吹寄に続く。

小萌「黄泉川先生、私の生徒達は、嘘だけはつかないのですよ……」

黄泉川「分かっているじゃんよ。じゃあ保健委員は、土御門を保健室へ。
    上条は私についてくるじゃん。いいよね?月詠センセ」

小萌「はい……」

上条(なん……だよ……!)

あれよあれよという内に、上条は悪者にされてしまった。全てが食蜂の都合の良いようにできている空間。

黄泉川「いくぞ。上条」

上条「……はい」

58: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:12:04.47 ID:c1MFS++20
8:35 とある空き教室

黄泉川「正直言うと、私はお前が理由もなしに人を殴ろうとするとは思えないじゃん」

上条「え?」

黄泉川「月詠センセから、お前は不器用で不真面目だけど嘘だけは吐かない正直者だって聞いているし、
    去年の9月1日にお前と共闘したが、やっぱりお前は良い奴だと思うじゃん」

上条(黄泉川先生は、操られていないのか?)

黄泉川「何があった?正直に言うじゃん」

上条「……」

上条は迷っていた。多分、言えば信じてもらえる。
でも分かったところで何も出来ないと思うし、巻き込みたくない。

黄泉川「……正直に言わなきゃ、私はお前に罰を与えることになるじゃん。それでも、黙ったままで良いのか?」

上条「……今は言えません。ただ、殴ろうとした事に、俺なりの理由はあります」

黄泉川「……私に迷惑をかけたくないとか、そういう余計な事は考えなくて良いじゃんよ?子供は大人に頼るべきじゃん」

上条「違います。そう言う問題じゃないです。これは俺の問題ですから、俺だけで解決します」

黄泉川「どうしても言えないじゃんよ?」

上条「はい」

黄泉川「……分かった。どうしてもって時は相談してくれじゃん。私は、お前の味方だからな」

上条「はい」

59: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:13:17.72 ID:c1MFS++20
8:50 上条のクラスの教室 1時間目の授業

食蜂(特定の数人だけ、アレイスターが見えるのは何なのかしらねぇ。アレイスターの奴は、何をしたのか……)

黄泉川さえ操れれば、上条を徹底的に陥れる事が出来たのだが、アレイスターが見えて洗脳出来なかった。

食蜂(……まぁいいわぁ。別に計画自体が潰れる訳じゃないし、計画がうまくいきすぎてもつまらないものねぇ。
   多少のイレギュラーは、娯楽として受け止めないと)

よく考えるとアレイスターの洗脳妨害工作?は、
自分の計画を完璧にさせないためのものかもしれない(その意図は不明だが)。
だったら学園都市全生徒に妨害工作を仕込んでおけばいいのに。と思うが、さすがにそこまでは出来なかったのか。

食蜂(それとも、わざと特定の人物だけ妨害工作がなされているのか……)

よくよく思い出してみると、登校初日、職員室で出会った上条の恋人の五和とか言う少女、
一方通行の親代わりの黄泉川、垣根の恋人である『心理定規』、今のところ自分に対抗できる可能性のある者の
親しい人のみ、妨害工作がなされている。と、ここまで考えて、

食蜂(……はぁ、下らない。『心理定規』を操れた以上、妨害は完璧ではなかったようだし、どの道全てを掌握するし)

思考を止めた。

60: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:15:32.07 ID:c1MFS++20
一方で、特にお咎めなしで教室に戻ってきて授業を受けていた上条も深く思考していた。

上条(土御門は大丈夫なのか……?食蜂の奴は記憶消去とか言っていたが……)

土御門の頭を右手で触れば、消去された記憶は戻るのだろうか?
仮に戻ったところで、再びやられれば同じではないか?

上条(それでも、やらないよりはマシか……?)

しかし効率が悪すぎる。
1人1人頭を触って解除していく自分に対して、食蜂はノーモーションで一斉に洗脳を実行できる。
クラスメイトを戻したって、土御門を戻したって。一瞬で全てがゼロに還る。

上条(結局、俺はどうすりゃいいんだ……)

能力を強制的に消去する方法は、洗脳されている人が精神崩壊しない確証がない限り実行できない。
殺しても駄目かもしれない。一時的な拘束も駄目だ。

上条(もう……手は無いのか……)

……永久的に拘束したのち『幻想殺し』で洗脳された人々を救えばいいのではないか?
人権が云々と言われそうだが、ここまでやりたい放題の彼女には、永久に拘束しても問題ないのではないだろうか?
そんな事を考えているところに、

食蜂『物騒な事を考えているね。上条君』

食蜂の声が、脳内に直接届いた。

食蜂『君が右手で頭を触らない限りは、少しの間私と念話出来るよ。レッツ☆トライ!』

上条『一体何の用だ?人の心を見透かすなんて、趣味悪ぃぞ』

食蜂『だってぇ、授業中に私語はいけないでしょ?だから、こんな形でしか話せない訳ぇ』

上条『確かに私語はいけないな。でもそれなら、休み時間とかでもいいはずだ』

食蜂『それだと、周りの人に聞こえてしまうかもしれないでしょ?」

上条『別に聞こえたっていいだろーが。仮に聞こえてはいけない内容でも記憶を操作すればいいじゃねーか』

食蜂『あらぁ。君の口からそんな言葉が聞けるなんて意外だわぁ』

上条『何がどう意外なんだよ』

食蜂『だってぇ、君みたいな熱血漢は、記憶の操作とかダメ!ゼッタイ!とか言いそうだったからぁ』

上条『……んで、用は何だ?』

食蜂『そうねぇ。永久的に拘束した場合はぁ、洗脳している人達の精神を私の意思で壊しちゃうからぁ、
   その手段も無理だよってコトを伝えたかったの』

上条『何でわざわざ教えた?』

食蜂『君が間違った手段に走らない為だよぉ。あとぉ、今日の午後には、楽しいアトラクションが待っているかもねぇ』

後半部分が何を言っているのかが分からなかったが、面倒くさくなった上条はこう締めくくった。

上条『……そっか。じゃあやっぱり、真正面から説得するしかないな』

食蜂の返答も待たずに、右手で頭を触った。
ガラスが割れるような甲高い音が教室中に響いたが、まるで何事もなかったかのように授業は進む。

61: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:16:45.59 ID:c1MFS++20
10:00 とある高校体育館 2時間目の授業

土御門が戻ってきた。目立った外傷はなかったが、食蜂が悪い奴だと言う記憶は無くなっていた。

上条は土御門の頭を触って(正常に戻るかは分からなかったが)記憶を戻そうとしたが、
他の男子に羽交い絞めにされて止められた。食蜂の命令だろう。

食蜂『そう言うことしちゃダメぇ☆』

食蜂が再び念話をしてきた。右手で頭を触って念話を断ち切ろうとするが、それすらも男子に止められる。
異常な状況なのに、男子の体育教師、災誤は何も言わない。
女子の体育教師の黄泉川は男子の異常に気付き、上条の下へ行こうとするも他の女子に止められ、上条を助けに行けない。

食蜂『そんなに暴れないで』

上条『一体何の用だ』

食蜂『あなたさっき、私の事説得してくれるって言ったよね?』

上条『……言ったけど』

食蜂『……どうして赤の他人である私にそこまでつっかかってくるの?』

上条『お前が皆を操っているからだろうが。解放してくれるんなら、お前の事なんか知らねーよ』

食蜂『そう言う意味じゃなくて、もっと他に止める方法があると思わない?何で説得なの?』

上条『……』

一体何が言いたいのか、さっぱりわからない。

上条『拘束も駄目、能力消去も駄目、殺すなんてもっての外。じゃあ説得しかないだろ』

食蜂『……そう。ところで話題は変わるけど、実は私、こんな事をやりたくてやっているんじゃないの』

上条『は?』

またしても、言っている意味が分からなかった。

62: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:18:52.36 ID:c1MFS++20
食蜂『あのね。実は今までの事全部、御坂さんに命令された事なの』

上条『……意味が分からねぇ。御坂は関係ないだろ』

食蜂『それがあるのよ。あんまり言いたくなかったけど、御坂さんはあなたの事が好きだった』

上条『……え?』

ここで上条は、若干冷静さを失った。

食蜂『加えて、妹達を失った。分かる?好きな人とクローンを失ったのよ。
   彼女の悲しみは計り知れない。学園都市を崩壊させて、世界なんて滅んじゃえば良いって考えるのも無理はないの。
   私は御坂さんに脅されて、こんな事をやっているの』

上条『……嘘だな。御坂はそんなこと考えない。そもそも御坂が俺の事好きだなんて、そんな事ありえない。
   好きな人に電撃飛ばすか?』

食蜂『あなたって鈍感なのね。電撃を飛ばしたりするのは、彼女なりの照れ隠しに決まっているじゃない』

上条『……じゃあ好きってことでもいいさ。でも、御坂は世界滅亡なんて馬鹿なこと考えるはずがない。
   そもそもお前なら、脅されても操って黙らせられるだろうが』

食蜂『それがそう簡単にはいかないのよ。御坂さんに対しては、電磁バリアで能力が妨げられるから干渉出来ないの』

上条『お前さっき言ったよな?御坂は相当悲しんでいるって。精神が揺らぎまくっているなら、操ることも可能だろうが』

食蜂『そんな事もないわ。一方通行だって、打ち止めや番外個体(ミサカワースト)を失って悲しんでいるけど、操れない。
   相性って言うのもある。あと、黄泉川先生が何か言っているでしょう?あの人操れないのよ。
   アレイスターの加護的なものがあってね。所詮その程度の洗脳力なの』

上条『……嘘だ。信じられねーよ。百歩譲ってお前が御坂に脅されていたとしても、
   無意味にクラスメイトを洗脳し、いけすかない態度をとる理由にはならない』

食蜂『私はさっき言ったはずよ。御坂さんはあなたの事が好きだったの。
   でも、あなたはそれに応えなかった。じゃあ御坂さんの悲しみの矛先は、どこへ行くと思う?』

上条『……五和か!?』

食蜂『それもあるかもしれないわね。それと、あなた自身を苦しめるとか。
   クラスメイトを操って、とかね。あとはそう、もう1人いるわよね』

上条『……インデックスか!?』

思わず頭に血が上る。

63: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:20:20.12 ID:c1MFS++20
食蜂『分かったでしょ?私は被害者なの』

上条『……違う。どんな形であれ、お前は洗脳を実行した時点で共犯者だ。被害者面すんな』

食蜂『……ごめんなさい』

上条『っ』

意外と素直な食蜂に、上条は面食らう。

上条『でもやっぱり信じられない。御坂は、そんな奴じゃない!』

食蜂『……どうかしら?あなたもインデックスちゃんの記憶を奪ってしまった時、何もかもがどうでもよくなったでしょう?
   それが御坂さんの場合は、逆恨みの復讐だっただけ』

人の記憶やその時の心情を勝手に読み取りやがって、と思う上条だったが、言われてみれば確かにそうだ。

上条『……本当に、御坂は……』

食蜂『放課後、確かめてみれば良いじゃない。彼女に直接会って』

食蜂の嘘かもしれない。というか食蜂の嘘だろう。理性はそう歌っている。
けれども、限りなく低い可能性ではあるが、全くあり得ないと言う訳じゃない。
言葉づかいも、ブリッ娘から普通になっているところがまた真実味がある気がする。

上条『分かった。仮に御坂が黒幕だとする。けど俺はともかく、クラスメイトは関係ない。
   解放しろ。御坂の説得は俺がするから』

食蜂『駄目。そんなことしたら、私はクラスメイト達から非難される。
   それに御坂さんにも……わがままなのは分かっているけど、怖いの……』

直後に、その場で蹲りガタガタと震え出す食蜂。しかも涙目になっているように見える。
あれは演技で出来る事なのか?というかもうこっちも駄目だ。色々衝撃的な情報を聞いて、頭がパンクしそうだ。

上条『……分かった。とりあえず御坂と会ってみる。だからもう、一切余計なことすんなよ』

食蜂『……分か……った……』

その後食蜂は、他の女子生徒の手によって保健室へ連れて行かれた。

上条(食蜂の嘘だとは思うが、最近会ってないし、久々に御坂に会ってみるか……)

その後は普通に体育の授業をした。
授業終了後黄泉川に呼び出され、いろいろ聞かれたが、今は何も言えないと誤魔化した。

64: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:22:43.88 ID:c1MFS++20
15:48 学舎の園前

上条「御坂の奴遅いな」

昼休みに電話をして、15:40分にここで待ち合わせる約束を取り付けた。
電話口の御坂は、別段ご機嫌と言う訳でも不機嫌と言う訳でもなく、至って普通だった。
とても世界の滅亡を願っているようには思えなかった。

上条(……でも、もし御坂が、本当に食蜂を脅しているのなら――)

どうするべきか?と上条は考える。とそこで、ポケットの中のマナーモードの携帯が震え出した。
当然御坂からの電話だと思いディスプレイを見てみると、そこには『小萌先生』の文字が表示されていた。

上条(一体何の用だ……?)

月詠小萌も食蜂に洗脳されているが、彼女のピンチ時に、彼女に都合がよくなるように行動するだけで、
根本的な性格や行動などは変わっていない。上条が食蜂の邪魔になるような事をせず普通に過ごしていれば、
いつも通りの小萌先生なのだ。他の生徒達も同様である。

上条(まだ御坂も来てないし、とりあえず出るか)

そんな風に割と軽い気持ちで通話ボタンを押して、右耳に当てる。

上条「もしもし」

小萌『上……ちゃん!助……て……い……すよ……』

上条「もしもし?」

何かノイズのような音で小萌先生の声が聞こえにくい。とそこに、

インデックス『助けて!とうまくん!』

はっきりと、インデックスの切羽詰まった声が聞こえてきた。

上条「もしもし!?どうしたんだ、インデックス!?」

直後、キャアアア!と、インデックスと小萌先生の悲鳴が聞こえてきた。

上条「もしもし!?くっそ!」

御坂には悪いが、呑気に待っている暇などない。
今すぐにでも小萌先生のアパートに行かなければと思い通話を終了しようとした、その時だった。

御坂『もしもし当麻?御坂だけど』

上条「何でお前が……?」

御坂『何でって……そんなの、私がこのロリ教師のアパート襲って、携帯を拝借しているからじゃないの』

さも当然のことのように御坂は言い放った。

上条「お前……自分が何言っているのか分かってんのか!?」

御坂『もちろん。それより、シスターは預かったから。返してほしければ、今から送る地図の場所に来てね』

上条「ちょ、待て!」

しかし上条の制止などスルーされ、通話は終了した。直後に、URLしか載っていない一通のメールが送られて来た。
上条は一切の躊躇いなくURLを開いた。そこに表示された場所は。

65: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:25:36.38 ID:c1MFS++20
16:03 上条と一方通行が激突した操車場

急いで操車場にやってきた上条の目に飛び込んできたのは、
この季節にはまだ少し早い、Tシャツにホットパンツで帽子を被っている人間だった。
腰にはウエストポーチらしきものが巻いてある。顔は見えないが、束ねられている栗色の髪は見えていた。

上条「御坂……か?」

御坂「そうよ。待っていたわ」

上条「……インデックスはどこだ!?」

御坂「ああ、それなら大丈夫。アンタを呼び出すための口実にすぎないから、さらってはいないわよ。
   アパートを襲ったのは事実だから、気絶ぐらいはしているけどね」

上条「お前、本当に――」

御坂「私はアンタが好きだった。でもアンタは応えてくれなかった。
   だから――私の手でアンタを殺す。そして私も死ぬ。行くわよ」

ダン!と地面を蹴って御坂が駆け出す。右手には、刃渡り8cmほどのナイフが握られている。
御坂は本気で上条を殺すつもりだ。だが今更ナイフごときで、臆する上条ではない。

上条「いいぜ、御坂。そんなふざけた幻想(かんがえ)はこの俺がぶち殺して、目ぇ覚まさせてやる!」

御坂「うざい、死ね!」

右手のナイフを左から右に一閃した。
上条はそれを屈んで回避したが、それが仇となった。

御坂「ビンゴ!」

図ったように御坂の左の膝蹴りが放たれた。
上条は咄嗟に両腕をクロスしてガードしたが、地面を数m転がる。

上条(くっそ――)

立ち上がった上条の目に飛び込んで来たのは、
左手でポーチからナイフを取り出し、投げた御坂だった。

上条「っ!」

左目を狙って放たれたナイフを、上条は右に数歩移動して回避。
その間に御坂は、上条の右斜め後ろに移動していた。

御坂「ちぇいさーっ!」

御坂の回し蹴りが繰り出されたが、上条は右手の甲で受け止める。
瞬間、ガラスの割れるような音と共に、御坂の体を覆っていた電撃が解除された。
御坂の運動神経が元に戻る。

御坂「まだまだ!」

御坂は逆回転をして、既に逆手に持ちかえていた右手のナイフを、上条の側頭部目がけて一閃する。

上条はそれを再び屈んで回避。反撃の左肘を御坂の脇腹狙って繰り出すが、
それより速く、回転した勢いのままの御坂の左足の蹴りが、上条の顔面にクリーンヒットした。

上条「がは!」

またしても地面を数m転がる。立ち上がるどころか受け身も取れなかった。
そこへ御坂は、容赦なく右手のナイフを投擲した。

上条「ぐ、おお!」

顔面を蹴られて頭がまだグラグラしている。避けられない!
――ブシュ!と肉が裂け、鮮血が流れた。

66: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:27:34.18 ID:c1MFS++20
御坂「しぶといわね。伊達に不幸を味わってきたわけじゃないってことかしら」

上条の左手からは、それほど多くない鮮血が流れていた。投擲されたナイフを咄嗟にキャッチしたからだ。

御坂「さあ、まだまだこれからよ」

上条「っ!?」

グリグリと、上条の左手に掴まれているナイフが動き出した。上条は痛みに耐えかね、ナイフを手放す。
するとナイフは、御坂の手元に吸い寄せられていった。

御坂「このナイフね。柄の部分に鉄が仕込んであるの。
   だから、私の電磁力で引き寄せたり、浮かばせたり、まあいろいろできるわけ」

上条「クソッタレが……!」

これがレベル5第3位『超電磁砲』御坂美琴の本領。彼女の能力の強みは、その応用性にこそある。
それと元々持っている運動能力を最大限に活かされただけで、手も足も出ない。

上条「――でも、負けられねぇよ」

上条は立ち上がり『幻想殺し』の蓋を解放する。
御坂の周囲には10本のナイフに、操車場のレールが12本浮いていた。御坂自身も再び電撃を纏っている。

御坂「ぐっちゃぐちゃに潰してあげるからね」

ナイフとレールが、上条目がけて一斉に放たれた。上条は臆せず駆けだす。

上条「おおおおおおおおおおおおお!」

思い切りジャンプした。
迫っていたレールの1つを一瞬だけ足場にして、さらに跳ぶ。それで全ての攻撃を避けきった。
そして空中から御坂を狙って落下し、拳を繰り出す。

上条「ちょっと痛ぇぞ!」

ゴッ!と上条の拳は御坂には当たらず、地面に直撃した。
直後、上条の少し上で頭頂部目がけ繰り出された、御坂の回し蹴りがクリーンヒットした。

上条「がっ!」

グラリと揺らぎ、頭から倒れそうになる上条に追い討ちをかけるように、御坂の左足が上条の頭を踏み、跳んだ。
それで御坂は、上条を完全に伏せさせ、真上に跳んだ事になる。

御坂「チェックメイト!」

空中で一切の躊躇いなく、既に引き寄せておいたレールの1本を殴り『超電磁砲』として放った。
長さ10mほどのレールは0.00000001秒で地面に直撃し、周囲の地面を抉った。
溶けかけたレールは深さ100mほどのところまで埋もれていた。

67: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:29:22.54 ID:c1MFS++20
御坂「やったかな?」

地面に着地した御坂は呟く。周囲に上条の姿は見当たらない。

御坂「……案外、呆気なかったわね」

と御坂が纏っていた電撃を解除しようとしたその時だった。
ゴッ!と上条が地面を突き破り、御坂の顎目がけアッパーを繰り出した。

御坂「ちっ!」

体を仰け反らせ、ギリギリでアッパーを回避した御坂は、飛び出した上条の右足を掴み地面に叩きつけようとする。

上条「おお!」

上条は体を捻り、両手を地面にめり込ませ、叩きつけられるのを回避。
同時に掴まれている右足を振るい、御坂を飛ばす。

それなりの勢いで飛ばされた御坂は、しかし電磁力を器用に操り、コンテナの1つに蜘蛛のように貼り付いた。

御坂「まだ生きていたんだ。アハッ!嬉しいわ。
   私が今まで味わってきた屈辱の清算を、まだ続けられるんだもの!」

アハハハハハ!と狂気じみた笑い声を上げる御坂。

上条「御坂、お前どうしちまったんだよ……?こんなこと、やめにしようぜ」

御坂「……じゃあ、あの五和とか言う女と別れて、あのシスターとも一生関わらない事。
   そして私と一緒に居てくれるなら、もうこんなことはしないわよ」

上条「……それは、出来ない」

御坂「……交渉決裂ね。それと、気が変わったわ。五和とあのシスターも殺す。
   大丈夫。アンタを最初に殺してあげるから、2人の死に様は見なくて済むわ」

上条「……それ、本気で言ってんのか?」

御坂「本気よ。さっきまでの私を見れば分かるでしょ?私を止めたければ、本気で私を殺しに来なさい」

68: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:32:40.34 ID:c1MFS++20
上条「どうしても……戦わなきゃ駄目なのか?」

御坂「別に戦わなくても良いわよ。大切な人と、アンタ自身が死ぬのをよしとするのなら、ね!」

ナイフ10本、レール11本、コンテナ4個が宙を舞い、一斉に上条へ向かって行く。

上条「くっそがああああああああああああああああああああああああ!」

右手に『竜王の顎』(ドラゴンストライク)が顕現する。
それは大きく開き『竜王の殺息』(ドラゴンブレス)が砲弾のように発射された。

砲弾と言っても、直径10mはあろうかという巨大な球体状の塊は、ナイフ、レール、コンテナの全てを爆発で吹き飛ばした。

御坂「へぇ、やるじゃない」

煙のカーテンの向こうから声がした直後、ゴッ!と立ち込める莫大な煙を切り裂いて、
レールを媒体にした『超電磁砲』が飛んできたが『竜王の顎』で何とか受け止めた。

御坂「その竜の頭みたいなのは何なのかしら?地面から出てきたりもしたし、アンタ本当に人間?」

怒涛の攻撃と必殺技を防がれたにもかかわらず、随分と余裕綽々なように見える。

御坂「手加減しているとは思っていたけど、まさかここまで力を隠しているなんてね。
   本当、どこまで私をコケにしてくれるのかしら!」

バリバリィ!と御坂の前髪から電撃が迸る。
しかしそれは、上条本人ではなく彼の周囲の地面に向けて放たれた。
それにより莫大な煙が立ち込める。これが意味する事は。

上条(目眩ましか!?)

煙を振り払うために『竜王の翼』(ドラゴンウィング)を顕現させる。
そしてはばたこうとしたところで、

御坂「させないわよ」

上条の周囲から湧いてきた砂鉄が、竜王の翼』に巻き付いた。
上条の体に眠る『竜王』の力は、異能の力に耐性はあるものの、無効化は出来ない。
その点では『幻想殺し』に劣ると言える。
というより『幻想殺し』は『竜王』の蓋なのだから、当然と言えば当然であるが。
とにかく翼は動かせない。

上条「ちっくしょう!」

砂鉄はさらに上条の体に巻きついて行く。『竜王』の力に覆われている以上、物理的なダメージはほぼ通らず、
砂鉄はただの縄としてしか機能していないようなものだが、動きを止めるには十分だ。

上条「ぐ、おお……!」

力任せで、強引に砂鉄から脱出しようとする上条の耳に、スパン!と小気味良い音が上から聞こえてきた。
直後に、ボフッ!と、大量の小麦粉が降ってきた。
この一連の出来事は、御坂が宙に浮かせたコンテナを、砂鉄で切り裂いたことによる。

御坂「今日はいい感じで無風状態だし、ひょっとすると危険な状態かもしれないわね?」

この状況を意図的に作り出したくせに。と上条は思う。
しかしそんなこと考えている場合じゃない。一刻も早くこの状況から脱出しないと――!

御坂「ぼっかーん」

アホっぽい声を合図に、小麦粉の粉末が漂っていた、上条を中心とする半径25mの空間そのものが爆発した。
それは炎と熱風を撒き散らし、周辺を火の海へと変えた。

69: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:34:51.75 ID:c1MFS++20
御坂「はぁ……いくらなんでもしぶとすぎ……」

爆発の中心に居ながらも、上条が生きている事を反射波から感じ取った。
案の定、瞳は澄んだ青に変わって右拳を握っている上条が、超高速で迫ってきた。

上条「どらあ!」

拳に対し、砂鉄の剣に電撃を纏わせたものを即座に2本生み出して、それをクロスしてガードを試みる。
ゴキィン!と拳と剣は一瞬だけ拮抗したが、すぐに拳が剣を突き破り、顔面に迫る。

御坂「ちっ!」

しかし御坂は、首を左に動かしてギリギリで拳を避けた。
すかさず反撃の蹴りを上条の股間目がけ繰り出すが、上条の左手がそれを阻む。

御坂「ちっ!」

上条「おらよ!」

投げつけるだけじゃ、どうせ電磁力で勢いを殺される。そう考えた上条は、御坂を地面に叩きつけた。

御坂「がはっ!……このっ!」

ポーチの中からコインを取り出し、わざわざ弾かず直接放つ。
それを上条は後ろに飛び退く事でギリギリ回避。同時に、御坂の足を手放してしまった。

御坂「ごらぁぁぁあああああ!」

一度ダメージを受けたからか、激昂した御坂は実に30本のレールで上条を狙う!

上条「うおぉぉぉおおおおお!」

四方八方から来るレール攻撃を、時には避け、時には殴り蹴り、全て防いで御坂に近付いて行く。
そして御坂まであと1mというところで、

御坂「かかったわね!」

上条の左右からコンテナが迫ってくる。
このままでは挟まれてサンドイッチになってしまう。

上条「甘いんだよ!」

一度は消していた『竜王の翼』を再び顕現させ、左右から来るコンテナを弾き飛ばす。

御坂「んなっ!」

上条「終わりだぁぁぁあああ!」

射程圏内に入った上条の右拳が、御坂の顔面目がけ放たれる。

御坂「なんて、ね♡」

御坂の左足が右拳を蹴りあげる。
それに連続して繰り出された右足が、上条の顎を跳ね上げた。

上条「ぐおっ!」

5mほど宙に跳ねあげられた上条に追い討ちをかけるように、縦ではなく横になったレールが上条を叩き落とした。

強かに地面に叩きつけられた上条の下へ、更にレールが2、3本襲い掛かるが、
彼は即座に起き上がって、バク転により回避した。

70: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:35:57.72 ID:c1MFS++20
御坂「はぁ……はぁ……」

能力を全開で行使してきた御坂の体力に、限界が近づいていた。

御坂(何なのあの馬鹿。あれだけ動きまわってボコボコにされて、未だに息一つ乱してない)

一方で上条は、分身や幻と言ったまやかしの類の力を見抜く事が出来る青い瞳で真実を知った。
やはり御坂は、食蜂に操られているだけだったと言う事を。戦う理由は変わった。

上条(『竜王』の力のままじゃ、洗脳は解けない。どうにかして隙を作って『幻想殺し』で頭を触らないと……!)

御坂(もう電池切れも近い。一気に決める!)

操車場に未だ残っているコンテナやレール、あらゆる金属類が御坂の眼前に集められる。
その金属類の集まりを、大量の砂鉄で包み込み、圧縮。結果、直径30mほどの砂鉄の球体が出来あがる。

御坂「最後の勝負よ」

上条「やるしかねぇか」

右手に『竜王の顎』を顕現させる。そして大きく口を開かせ、力を溜める。

御坂「うぅぅぅぅぅらぁぁぁぁぁあ!」

ドゴン!と砂鉄の球体が『超電磁砲』として放たれる。
対して上条も『竜王の顎』から超巨大な翡翠色のエネルギー弾を発射する。

0.0000001秒で2つの大砲は激突し、爆発し、操車場から全ての音が消えた。

71: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:38:03.05 ID:c1MFS++20
上条「ふぅ……ふぅ……」

上条は息を切らしながらも、仰向けに倒れている御坂のもとに辿り着いた。

上条「あとは……頭を触れば……」

既に『竜王』の力は抑え込み『幻想殺し』を復活させている。
あとは右手で頭を触れば、洗脳は解ける。上条は少し屈んで、御坂の頭を触ろうとしたその時だった。

御坂「んぐっ!」

上条「ごは……!」

鋭く尖った砂鉄が、御坂の右脇腹と、上条の左脇腹を貫いた。

上条(砂鉄を体で隠して自分の脇腹ごと貫きやがった……!)

思わず2、3歩後退する上条に追い討ちをかけるように、起き上がった御坂は砂鉄を鞭のように振るう。

上条「くっ」

左側から来る鞭を右手の『幻想殺し』で防ぐ。

御坂「右側が隙だらけよ」

ゴッ!と御坂の左足の蹴りが、上条の鳩尾を捉えた。

上条「ご……ぉ……」

御坂「とどめよ!」

よろめき、ついには地面に片膝をつく上条の顔面に、御坂の右足飛び蹴りがクリーンヒットした。
ゴロゴロと地面を数m転がった上条には、もはや起き上がる力は残っていなかった。

72: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:40:03.62 ID:c1MFS++20
御坂「形勢逆転……ね」

仰向けに倒れている上条の体を、御坂は連続で踏みつける。
腕、脚、腹に胸に顔に――御坂の足が縦横無尽に上条の体を蹂躙していく。
貫かれた左脇腹からは、血が溢れる。

御坂「全く、さ、綺麗事、ばっか、言って、さ、何なの、かなぁ、あなたは、さぁ」

御坂の足は止まらなかったが、上条は力を振り絞って何度目かに来た足を掴んだ。

上条「お前……食蜂だな……御坂の体を……返しやがれ……」

御坂「気付かれちゃった?バレたらもうこのゲームは終了ね。なかなか楽しかったわぁ」

上条「お前が……今まで……御坂を……操って……たんだな……ゲームの……キャラみたい……に……」

御坂「そうねぇ。格ゲーのキャラみたいに操っていたわぁ。言葉とかも私が言わなきゃだから、口癖とか苦労したけどねぇ」

上条「体育の時の……あの涙は……嘘だったのか……」

御坂「嘘と言えば嘘だし、本当と言えば本当ね。恐怖の感情を自己暗示したのよ。
   だから自作自演ではあるけど、本当に怖くて涙したのよ」

めちゃくちゃだ、と上条は思った。

御坂「さて、そろそろ終わりね。御坂さんも、もう限界みたいだしね。
   お望み通り、返してあげるわよ。助かるかどうかは分からないけど、ね」

直後、御坂の体が倒れてきた。上条はそれを受け止める。傍から見れば、抱き合っているようだ。

上条「……御坂……」

一応右手で御坂の頭を触る。異能力を解除した時の独特の音はない。どうやら御坂は本当に解放されたようだ。

御坂「ごめんね……」

上条の耳元で、御坂が消え入りそうな声で呟いた。

上条「御坂……?」

御坂「私が……弱いばっかりに……操られてしまう……どころか……アンタにまで……迷惑……かけて……」

上条「気に……すんな……そんな……ことより……この状況を……何とかしないと……」

御坂「もう……いいの……私なんか……放っておいて……五和さんや……あのシスターや……ロリ教師にまで……
   迷惑かけて……私は……ただの……犯罪者……生きている意味……なんて……ないから……」

食蜂から解放されたとは言っても、操られていた期間の記憶は残るのか。
上条は朦朧とする頭で考える。だがそんなことは、一旦置いておく。

上条「ふ……ざけんな……!」

御坂「え……?」

上条「確かに……操られて……いたとは言え……お前が……やったことは……許される事じゃないかも……しれない……」

けどな、と上条は続けて、

上条「生きる意味が……ないなんて……簡単に言うんじゃねぇ……!
   お前が死んだら……白井はどう思う!?残された人達の気持ちを考えろよ!」

叫ぶように諭す上条の腹からさらに血が溢れる。

御坂「ご……めん……私……私……!」

御坂の頬に涙が伝い、上条の首まで伝った。

上条(もう……無理……)

そこで上条の意識は中断された。

73: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:41:23.39 ID:c1MFS++20
御坂「とう……ま……?当麻!」

上条の体が急速に冷えていっている。息はしているようだが、このままだとマズい。

御坂「当麻……痛っ!」

御坂も右脇腹に穴があいている重傷者だ。
実際問題、男子高校生1人を背負って病院へ行くのは無理がある。

御坂(電話……電話……)

しかし御坂は携帯を持っていなかった。上条と戦う前に、ホテルに置いてきたからだ。
仕方ないので、上条の携帯を拝借したが、指が震えて上手く打てない。

御坂(なん……で……指が……動かない……)

焦れば焦るほど番号が打てない。たった4回。
1、1、9、と通話ボタンを押すだけなのに。

御坂(うぅ……)

そもそも操車場を跡形もなくする程の激しい戦いをしたって言うのに、
アンチスキルやジャッジメントがいまだに来ないのはどう言うことか。一体何をやっているのだろうか。
しかし心の中でどれだけ不満を垂れようが、来ないものは来ない。

御坂(誰でも……いい……誰でもいいから……)

腹の底から叫ぶ。

御坂「助けてよぉぉぉおおお!」

叫んだ事により傷口が広がり、御坂の意識も中断された。

74: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:42:15.51 ID:c1MFS++20
上条は目を覚ました。状況を把握する為に、目だけを動かして辺りを見回す。
どうやらここは病室で、時間は正午を過ぎた辺りのようだ。

上条(ん……)

布団の腹の辺りにわずかな重みを感じる。
その正体を確かめるため、ゆっくりと上半身だけを起こす。
するとそこには、御坂美琴が眠っていた。

上条(そっか。俺達、生き延びたんだな)

今更ながら実感した。

上条(……あー……)

何となく手持ち無沙汰な感じがした上条は、ナースコールのボタンを押した。

75: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:44:00.87 ID:c1MFS++20
1分後くらいに、ナースと『冥土帰し』(ヘブンキャンセラー)がやってきた。そして開口一番、

「君、約3日間も眠っていたんだよ?」

そんな事を言い出した。

上条「うへ。マジですか」

冥土帰し「今回ばかりは本当に危険だったよ?あのまま失血死してもおかしくなかったね?」

上条「そう、ですか。御坂に感謝しないとな」

冥土帰し「ん?それはどういうことだい?」

上条「御坂が救急車呼んだりしたんでしょ?だから感謝しないとなって」

冥土帰し「ああ。そういうことか。でも残念ながら、彼女は君と一緒に運ばれてきたんだよ。一方通行にね」

上条「え?そうなんですか?」

冥土帰し「彼が血液をベクトルで調整しなければ、君達は出血多量で死んでいたね?感謝すべきは彼だよ」

上条「何で、一方通行は俺達の居場所が分かったんですか?」

冥土帰し「それは本気で聞いているのかい?あれだけ派手な戦いをやっていたら、誰だって気付くだろう?
     そこに1番に駆け付けたのが、一方通行だったってだけさ」

上条「そう、ですか」

と、今まで目が覚めたばかりで頭が働かなかった為、漠然と会話していた上条だったが、あるとんでもない事実に気付く。

上条「……あの、俺、3日間も眠っていたんですか?」

冥土帰し「うん。この3日間、そりゃあいろいろな事があったね?」

上条「えーーーーーーーー!」

冥土帰し「驚くのは分かるけど、病院だからもう少し静かにするんだね?」

上条「は、はい。すみません……」

と、その時だった。

御坂「あの、先生、コイツと2人きりでお話ししたい事があるので、外してもらえませんか?」

いつの間にか起きていた御坂が、そんな事を言い出した。

冥土帰し「うん。この3日間の出来事を説明したらね」

御坂「それも、私から説明しておきます」

冥土帰し「君も昨日目を覚ましたばかりじゃないか。しかもそれから彼に付きっきりでロクに眠っていないだろう?
     本当に説明できるかい?」

御坂「はい。大丈夫です。任せてください」

冥土帰し「そうかい。それなら頼もうかな」

そう言うと、冥土帰しとナースは病室を後にした。

76: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:45:17.82 ID:c1MFS++20
上条「お前、2日も眠っていたのか?しかも、その後俺に付きっきりって……」

御坂「うん。ごめんね。だからついウトウトして、アンタのお腹の上で眠っちゃった」

上条「それはいいんだけどよ……」

御坂「あの、本当にごめんなさい。アンタを傷つけるどころか、その周囲の人達まで傷つけてしまって。
   洗脳されていたとは言え、許されることじゃないわよね。そして、洗脳から救ってくれてありがとう」

俯きながら、御坂は小さい声でそう言った。

上条「もういいって。俺は、皆もお前も無事ならそれでいいんだ。
   お願いだから、そんなに気負わないでくれよ。悪いのは全部、食蜂なんだから」

御坂「ありがとう。そう言ってくれて助かるわ。……それじゃあ、本題に入るわね。この3日間の出来事を説明するわ」

77: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:46:29.58 ID:c1MFS++20
御坂「説明する前に言っておくけど、どんな事を言われても冷静さを保ってね」

上条(そ、そんなに凄い何かが起こったのか……?)

御坂「五和さんがね。
   アンタのボロボロの姿を見て激昂して、単身食蜂のところに向かって以来、帰ってきてないらしいわ」

上条「――な」

いきなりの衝撃の告白に、上条は動揺を隠せない。

御坂「落ち着いて聞いて。五和さんが単身食蜂のところに乗り込む。これがアンタと私が戦った日、4月8日の晩の出来事」

上条(食蜂の野郎……!)

怒りを隠しきれない上条の拳を、御坂の柔らかい手が包み込む。

御坂「お願い。落ち着いて聞いて」

上条「……ああ」

御坂「翌日、アンタの通っている高校の全生徒が行方不明になったらしいわ」

上条「は?」

衝撃を通り越して、もはや意味がわからない。

御坂「当然、ジャッジメントやアンチスキルが捜索に出たんだけど、
   捜索していたジャッジメントやアンチスキルは次々と行方不明になっていった。これが4月9日の出来事」

あまりにも意味不明な話を淡々と説明する御坂に、上条はある質問を投げかける。

上条「し、白井は!?」

御坂「黒子も、私の敵討ちとか言って、単身食蜂のもとへ向かって以来、帰ってきてないらしいわ」

上条「食蜂……!」

78: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:48:39.42 ID:c1MFS++20
御坂「ここからが本番よ。4月10日。学園都市が食蜂に支配されたの」

上条「……ちょっと待て。意味が分からねぇ。学園都市が支配?どう言う意味だ?」

御坂「そのまんまの意味よ。すべてが食蜂の手に堕ちたの。
   学園都市全域に、ある音声プログラムが流されたことにより、学園都市の全能力者が食蜂の手に堕ちた」

上条「ちょ、待てよ。冗談だろ?そんなふざけた話、あってたまるかよ!」

御坂「私も信じたくないけど、食蜂の演説は聞いちゃったから」

上条「演説?」

御坂「食蜂がね。学園都市のTVの回線を乗っ取って、能力者達の実演を放映したの」

上条「……全くイメージが湧かねぇ。どういうことだ?」

御坂「言葉の通りよ。TVで能力者達にただひたすら実演させる。
   そこには、黒子や淡希、他の名だたる名門校の生徒とかもいたわ」

上条「何だよ、それ……」

御坂「さらに衝撃的な事に、音声プログラムは洗脳の効果だけでなく、レベルアッパーの改良版でもあったみたいでね。
   要するに洗脳された能力者はノーリスクでレベルアップしたみたい。しかも5に」

上条「……そんな事、有り得るのか?」

御坂「TVで見たって言っているでしょ。間違いないわ。
   私の知り合いのレベル0も映っていたけど、とんでもない力を操っていた。
   それだけじゃない。脳をリンクさせることもできるらしいわ」

あまりの衝撃的な情報の数々に、上条の頭は半ば以上オーバーヒートしていたが、何とか言葉を紡ぐ。

上条「……それは、どう言う意味だ?」

御坂「ものすごく簡単に言うと『多重能力者』(デュアルスキル)の実現。
   木山春生がそうしたように、食蜂は、学園都市に居る約200万の脳を統べるつもりよ」

上条「んな事……出来ねぇだろ。脳がパンクするはずだ」

御坂「人間ってさ。脳を10%も使いこなせてないのよ。つまり、残り90%以上も空きがあるわけ」

ま、一歩通行辺りなら、50%位使っているのかもしれないけどね。なんて事を言いながら、御坂は続ける。

御坂「それを食蜂は、今までの日常生活の中で脳を使いこなせるように“慣らしといた”らしいわよ」

上条「そんなことが、出来るのか?」

御坂「多分、寿命が縮まるとか何らかのデメリットはあると思うけど、出来ない事はない……と思うわ」

レベル5第3位の頭をもってしても断言できない辺り、脳にはまだまだ謎が隠されていそうだ。

79: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:51:22.03 ID:c1MFS++20
上条「理屈は分かった。だけど、それで200万もの脳を操るのは無理だろ」

御坂「そうね。食蜂の方も、能力者達の方も、脳の負担を考えると無理ね。けど無視すれば、逆に出来る可能性もある」

上条「マジかよ……!」

御坂「というより、4月11日、つまり今日な訳だけど、午前中に実際に食蜂の脳とリンクした能力者によって、
   学園都市の大人達が捕獲されたわ。200万の脳とリンクした“慣らし”としてね」

上条「……」

意味が分からないなんて次元じゃない。これは夢なのかと疑いたくなるような、出来すぎた話。
だがそこで、いくつかの疑問が浮き出てくる。

上条「雲川先輩は?削板は?一方通行と垣根は何をやっていやがる!
   何で御坂は無事だったんだ!?それにこの病院の人達も無事みたいだし。
   そして食蜂は、それだけの力を持っていながら、何で何もしてこねぇ!」

御坂「落ち着いて。アンタの疑問はもっともよ。順番に回答していくから冷静になって」

先程からずっと御坂の柔らかい手が、上条の拳を包み込んでいる。
本当ならもう暴れてもおかしくないのに、御坂に手を握られていると、少しだけ気分が落ち着く気がする。

御坂「雲川先輩って言うのは、新統括理事長の事でしょ?彼女は、恋人の削板さんと共に出張中らしいわ。
   次に、一方通行と垣根さんの事だけど、彼らは修行しているの。レベル5軍団率いる食蜂に対抗する為にね」

上条「修行って……そんな……」

御坂「私も一方通行と垣根さんから大体話は聞いた。
   レベル6である垣根さんが、素で勝てないような能力者が食蜂側に居るんだってね。
   それに加え、レベル5軍団に対抗する為に修行しているのよ」

そんな理由で納得いかない。いくはずがない。
修行したところで簡単に強くなるなら、誰も苦労しない。少しでも多くの能力者を、洗脳から解き放つべきだ。

御坂「で、私が無事な理由だけど……はっきり言って、その真相は分からない」

上条「なんか理由があるんじゃないのか?」

御坂「多分だけど、食蜂は私を直接ブチのめしたいんだと思う」

上条「……」

御坂「この病院が無事なのは……この病院を私達の最後の砦として、あえて残しているのよ。
   ワンサイドゲームは嫌いな人だから」

上条「じゃあこの病院以外は、食蜂に支配されているって訳か」

御坂「そうなんだけど」

とそこで、御坂は上条にもたれかかった。

80: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:56:31.38 ID:c1MFS++20
上条「大丈夫か?」

御坂「うん。ごめんなさい」

無理もない。と上条は思う。
話を聞く限り、御坂もまだ病み上がりの上、こんなにも長い説明をしたのだから。

御坂「そうなんだけど、はっきり言って地上は無事なの。食蜂は地下に籠っているの」

相変わらず理解不能だが、もうちょっとやそっとのことじゃ驚かなくなってきた。

上条「それって、22学区に籠っているってことか?」

御坂「違うわ。学園都市の地下に、学園都市の面積の半分くらいの地下都市があるの。
   食蜂が地道に建設していたみたい」

上条(地下都市を建設?それって一朝一夕ではできないはずだよな……?
   つまり、かなり前から地道に建設されていた事になる。
   雲川先輩はそれに気付かなかったのか?いや、アレイスターはどうなんだ。
   待てよ。アレイスターは俺らに互角の戦いを演じてほしいだったんだっけか。
   わざと見逃していたって訳か……!)

御坂「それで、食蜂がなぜ何もしてこないのか。
   それはさっきも言った通り、今は200万の脳とリンクしている“慣らし”の段階だからよ」

上条「……じゃあ“慣らし”の段階が終われば、食蜂は――」

御坂「ええ。“慣らし”が完璧に終わる4月13日、明後日に食蜂は行動開始する。そう宣言していたわ」

上条「……じゃあ“慣らし”が終わる前に、俺達が能力者達を解放してやれば」

御坂「無理よ。アンタは病み上がりだし、そもそも食蜂には大量の人質がいる。
   大人達然り、能力者然り。食蜂は明後日より前に行動開始したら、人質を殺すって言っていたわ」

上条「……何だよそれ。食蜂は世界を滅亡させたいんだろ?ならもう“慣らし”とかいらなくないか?
   能力者操って、人質ちらつかせて、さっさと滅亡させればいい。何でこんな回りくどいんだ!?」

御坂「さっきも言ったけど、食蜂はゲームが好きで、でもワンサイドゲームは嫌いなのよ。
   分かる?明後日の決戦の日、食蜂にとっては私達をラスボスに見立てた、ただのゲームなのよ。
   ただあっさり世界を滅亡させるのもつまらないから。そんな感じじゃないかしら」

上条「完全にイカれてやがる……!」

御坂「アンタって説教が得意みたいだけど、食蜂には通用しないだろうから止めた方が良いわよ。本当に、殺すしかないわ」

上条「……駄目だ。殺せば洗脳されている能力者達の精神が崩壊する」

御坂「能力者達の命で世界を救えるのなら、それで良いでしょ」

上条「……お前、それ本気で言ってんのか?」

御坂「本気よ。だってそうでしょ?私達は“詰み”なのよ。殺すか殺されるか。もうこの2択しかないのよ」

上条「……見損なったぜ御坂。お前がそんな薄情な奴だとは思わなかったよ」

御坂「ごめんなさいね。空気悪くしたみたいだし、私は自分の病室に戻るわね」

そうして御坂は立ち上がり、上条の病室を後にした。

81: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:58:26.59 ID:c1MFS++20
御坂「私って、本当に駄目ね……」

御坂美琴は涙を流しながら、病院の屋上に居た。

御坂(もう……無理だわ……)

なんたってこうも自分は情けないのだろう。戦争の時は侍女に完敗した。
天使達相手にも自分だけの力では勝てず、たくさんの人を傷つけ守り切れず死なせ、挙句の果てには殺されるところだった。
自身のクローンも全て殺され、最愛の人を射止める事も叶わなかった。

そして今回の食蜂の一連の陰謀に関して、自分は青髪の少年に負けた。
その上洗脳され、シスターとロリ教師に危害を加え、あの馬鹿と対決させられ、双方とも死にかけた。

そのせいで眠っている間に学園都市の状況は一変。
大切な後輩である白井黒子を失い、初春や佐天などの友人達も失った。
何一つ守れていない。自分は今まで何をやっていたのだろうか。
レベル5の力が何だ。今回の場合はその力のせいで、寧ろ傷つけてしまった。

ここまでやられといて、結局は抗う事も出来ない。1万の脳を統べただけの木山春生にすら電池切れまで追い込まされた。
200万の脳とリンクした食蜂と200万のレベル5能力者達。どう考えたって勝ち目はない。
さっきあの馬鹿には2択と言ったが、実際はやられるだけだろう。己の無力さが恨めしい。

そう言えばあの馬鹿は、突然の報告で気が動転していたのか、シスターやロリ教師のことは聞いてこなかった。
まあでも、自分もその2人の行方は分からないし、そんなことはもうどうでもいい。

御坂(あの馬鹿は止めてくれたけど……死のう……)

電磁力を操って、フェンスをさも当然のように歩いていく。

御坂(どうせ世界は滅亡するし、いいよね……)

フェンスを越え、頭から落ちて行く。そして――

82: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 22:59:49.92 ID:c1MFS++20
ガシィ!と、御坂は空中で何者かにキャッチされた。

御坂(え?え?)

御坂が動揺している間に、その何者かは彼女を抱えたまま屋上へ舞い戻り降ろす。
降ろされた御坂の目の前に居たのは。

御坂「あ……くせられーた……?」

赤い瞳に、肌が白い少年だった。

一方通行「オマエ、何で飛び降りた?」

御坂「……何でって、自分の情けなさに嫌気がさしたからよ。
   妹達は失うし、あの馬鹿は傷つけるし、後輩や友人は守れないし、世界は滅亡するし、逆に死なない理由がないわ」

半ば以上ヤケクソ状態の御坂は、投げやり気味に言った。直後――

御坂「――ぐっ!」

一方通行に襟首を掴まれ、壁に叩きつけられた。

御坂「な……にすんのよ!」

前髪から電撃が迸りすぐ目の前に居る一方通行に当たるが『ベクトル操作』により、電撃はあらぬ方向へ弾き飛ばされた。

83: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:02:46.17 ID:c1MFS++20
一方通行「ふざけた事言ってンじゃねェよ。自分の情けなさに嫌気がさしたから、どうせ世界は滅亡するから、
     死ンでもいい?そンなわけねェだろうがァ!」

あまりの剣幕に、御坂は目を見開く。一方通行が昂ぶっている光景を見たことは何度かあるが、
こんなに激昂している(しかも自分の為に)一方通行は見た事がない。

一歩通行「そンなもン、ただ現実から逃げているだけだろうが。
     どンな理由を並べても、オマエが死ンで良い事には、ならねェだろうがよォ!」

御坂「うるさい!こんな辛い現実なら、逃げた方がマシなのよ!もう何もかも嫌なのよ!だから死なせてよ!」

一方通行「駄目だ。オマエは残された人の気持ちを考えた事があるのか?
     オマエが死ンで、誰が喜ぶ?オマエの後輩や友人はどう思う?あのツンツン頭のクソ野郎はどう思う!?」

御坂「その後輩や友人を守れずに、ツンツン頭のあの馬鹿は私の手で傷つけた。
   そして世界は滅亡する!だから残される人の気持ちもクソもない!
   誰がどう思うとか関係ない!私は皆より死ぬのがちょっと早いだけなのよ!」

一方通行「じゃあ今のうちに言っておく。世界を滅亡なンて、この俺がさせねェ。
     世界が滅亡しない前提でも、同じこと言えンのかよォ!」

御坂「っ……」

ついに御坂が口籠る。一方通行は構わず続ける。

一方通行「大体からして、オマエは諦めンのが早すぎる。
     後輩や友人を守り切れなかったのなら、救えばいい。
     二度と悔しい思いをしない為に強くなって、今度こそ守りきればいい。
     たったそれだけの話だろォが」

御坂「そんな事、強い人が言える理屈だわ。弱い私には、何も出来ない」

一方通行「確かに、1人じゃ出来る事は限られてくる。だが今はオマエだけじゃねェ。
     この街には、オマエ意外に3人動ける人間がいる。だったら話は簡単だ。
     4人で世界の滅亡を喰いとめ、何もかも救いだせば良い。たったそれだけの話だ」

御坂「無理よ。たった4人で、何が出来るって言うの?」

一方通行「……そこまで言うなら、賭けるか?」

御坂「え?」

一方通行「俺はこの世界を滅亡なンかさせねェし、オマエも絶対守り切る。
     ただしその賭けに失敗した場合、オマエは死ンでもいい。だから今死ぬことは許さねェ」

御坂「……何よそれ。賭けに失敗した時=私が死ぬ、世界滅亡なんだから、賭けにならないじゃない」

意味不明な論理を展開する一方通行に、御坂は思わず苦笑してしまう。

84: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:04:28.85 ID:c1MFS++20
一方通行「で、賭けに乗るのか、乗らないのか?まァどの道オマエは、手足の骨折ってでも死なせねェけどな」

御坂「何よそれ。どうせ死期がわずかに延びるだけ。今なら楽に死ねるのに、食蜂と戦って苦しんで死ねってこと?」

一方通行「だァーからァー、守るって言ってンだろォが」

御坂「……もういい。分かったわ。そこまで言うなら、守ってもらおうじゃない」

200万対4という絶望的な状況で、それでも目の前に居る少年は自分を守り抜き、世界を救うと言い切った。
もうなんか、今まで深刻に悩んでいた自分が少し馬鹿らしくなってきた。

御坂「……そろそろ手、放してほしいんだけど」

一方通行「あァ、すまねェな」

御坂の襟首から手が放される。
そうして一方通行は踵を返し――しかし振り返ってこう言った。

一方通行「オマエが死ねば、あのツンツン頭を始め大量の人間が悲しむだろう。勿論俺もだ。
     あと勘違いしてほしくねェのは、妹達を守り切れなかったから責任を感じてオマエを守ろうとしているとか、
     そう言うのは一切ねェ。俺は、オマエを守りたいから守るだけだ」

だから、と一旦区切って、

一方通行「もう二度と、死ぬとか考えるンじゃねェぞ」

しつこいが、絶対死なせねェけどな。と付け加えて。

一方通行「じゃあな」

次の瞬間、一方通行は御坂の視界から消え去っていた。

85: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:05:38.26 ID:c1MFS++20
上条の病室

上条の携帯が震えた。
携帯を取りディスプレイを見ると、『雲川先輩』の文字が表示されていた。
それを見た上条は、一刻も早く今の状況を伝えようと電話に出る。

上条「もしもし!?あのですね、今学園都市が」

『言いたい事は分かっているから、そう焦るな』

上条は雲川芹亜に予想外な事を言われ、思わずどもる。

雲川『言っておくけど、今の学園都市やお前達の状況は大体知っている。
   だから、いちいち大袈裟なリアクションは止めるべきだけど』

上条「はぁ……」

雲川『そう。そうやって大人しく聞いていれば良い。質問も面倒だから受け付けん。
   で、突然だけど明日の朝、上条の病院で作戦会議だ。
   御坂美琴や一方通行とかはこちらで呼んでおくから。じゃ、そういうことで』

雲川は一方的に喋るだけ喋って電話を切った。

上条「何なんだ一体……」

86: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:07:36.65 ID:c1MFS++20
4月12日 8:00 上条の病室

雲川によって招集がかけられた御坂美琴、一方通行、垣根帝督の3人。

御坂「ごめんなさい!」

御坂はいきなり謝罪した。

上条「え?どうした御坂?」

御坂「昨日、殺すか殺されるかしかないとか、能力者の命で世界が救われるなら、それで良いとか言っちゃったから……」

上条「ああ、そのことか。今でもその気持ちは変わらないのか?」

御坂「いえ、今は、横に居る白いのが何もかも救うって息巻いているから、それに便乗しようと思う」

上条「そっか」

一方通行「白いの呼ばわりはねェだろォが……」

御坂「別にいいじゃない。本当の事なんだし。嫌だったら名前教えなさいよ」

垣根「あ、それ俺も気になる」

一方通行「あァ面倒くせェ。それならもう白いのでいいわ」

御坂「はぁ!?いい訳ないでしょーが。名前教えてくれないと、モヤシって呼ぶわよ」

一方通行「それで結構。もォなンでもいいわ」

御坂「何よそれ!じゃあもうモヤシとしか呼ばないから!」

一方通行「どうぞ」

垣根「え?話まとまっちゃった感じ!?俺は普通にこのモヤシの本名知りたいんだが」

一方通行「教えるかボケ」

上条「……」

見た感じ一方通行と御坂の間に何かあったのだろう。
昨日はしんみりしていて、若干病んでいたような気がする御坂が、どこか吹っ切れたように見える。
垣根と一方通行も、かなり仲が良いように見える。

垣根「ま、どうしても教えたくないって言うなら、そこまで知りたくもないけど。ところで、作戦会議とやらはまだか?」

上条「ああ、それなら」

雲川『まだか?って……君達の雑談が終わるのを待っていたのだけど』

既に通話状態かつスピーカー状態の上条の携帯から声がした。

87: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:15:34.75 ID:c1MFS++20
垣根「げ。それならそうと、初めから言ってくれよ上条」

上条「そうしたいのは山々だったんだけど、いきなり御坂が謝りだしてそのまま流れで会話が続いて、
   割り込めなくなったから」

雲川『私は空気を読める女だからな』

一方通行「そンなことはどうでもいい。聞きたいことは山ほどあるンだ」

雲川『え?面倒くさいから、質問は受け付けないけど』

一方通行「ふざけンな」

雲川『ふざけてないけど。一方通行、君は何か勘違いをしていないか?
   はっきり言って、私は君より今の学園都市の事情を掌握しているつもりだ。
   つまり、私が今から話す事をちゃんと聞けば、疑問は残らない』

一方通行「ならさっさと話せ」

雲川『だから、君達の雑談を』

上条「あーあー、会話がループしているよー。もういいから。お話お願いします先輩」

雲川『そうか。まあ当麻がそう言うなら仕方ないけど』

御坂「ぶふっ!」

突然、御坂が吹き出した。

垣根「どうしたの美琴ちゃん?」

御坂「いや、だって、このバカの事を、と、当麻って呼ぶから。
   あと美琴ちゃんって呼ぶのやめてください。なんか恥ずかしいです」

垣根「えー、いいーじゃーん」

不満そうに垣根は呟いた。一方でこのバカ呼ばわりされた上条は、

上条「おいおい。俺だって一応御坂の先輩なんだぞ。
   敬語使えとまでは言わないが、せめてそろそろ、名前で呼んでくれませんかね?」

御坂「ふぇ!?そ、そうね。じゃ、じゃあアン……と、当麻も、私の事ビリビリじゃなくて名前で呼んで」

上条「おう(言うほどビリビリ呼ばわりしてないけどな)」

御坂「名前だからね!?名字じゃなくて名前だからね!?」

上条「お、おう」

88: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:24:22.75 ID:c1MFS++20
垣根「ちょい待ち。どうして上条は名前で呼ぶのオーケーで俺は駄目なんですかー?」

御坂「え?いや、駄目ってわけじゃないんですけど、なんか照れますし……」

垣根「そっかそっか。新密度の違いですね。分かります。まあいいや。
   ラフに接してくれた方が萌えると思ったけど、敬語も存外、萌えるじゃねぇか。いわゆるクーデレってやつだな」

上条「デレてはいないと思うのですが……」

一方通行「何だコイツ。気持ち悪ィな」

上条と一方通行のツッコミなど無視して、垣根の独り言は続く。

垣根「よし。じゃあ俺は御坂って呼ぶ事にする。御坂は俺の事、垣根先輩とでも呼んでくれ」

御坂「は、はい……」

雲川『……そろそろいいかな?』

上条「そろそろいいかなって……元はと言えば、雲川先輩がいきなり俺の事名前で呼びだしたとこから
   始まったんでしょーが。先輩が悪い」

雲川『そうだったな。いやーすまんすまん。つい、ね』

上条「じゃあ、今度こそお話を」

御坂「待って!最後にもう1つだけ」

言いながら、一方通行の事を指差して、

御坂「ア、アンタも、私の事名前で呼んでよね。能力名とかオリジナルとか止めてよ!?」

一方通行「オマエがそう言うなら、別にそれでもいいけどよォ」

御坂「よし。用はこれだけ。今度こそお話お願いします」

雲川『よし。ではこれから話す事は明日の為の作戦会議だと思ってほしい』

一方通行「ンなことは昨日の内に聞いた。さっさと話せ」

雲川『すまないな。いざ話すとなると、どこから話せばいいか分からなくてな。
   誰か1つだけ質問しろ。そこから話していくけど』

一方通行「使えねェな……作戦も何も、とにかく戦って能力者達を連れ戻すだけだろォが。
     だがそこで1つだけ問題がある。この病院が丸裸になると言う事だ。
     別に守ろうと思えば守れるが、正直こンな病院守る為に、戦力を割くのは痛いからな。
     そこをどうするかは、何か考えがあンのかァ?」

雲川『ナイスな質問だけど。そうだな。学園都市の協力機関と言うのがまだある。
   そいつらに頼んで、そこにいるナースやら医者やら、わずかにいる患者は学園都市外へ連れて行く』

一方通行「ンじゃあ」

雲川『おっと。もう質問は受け付けないけど。これからは一方的に私が話すだけだ』

何でそこまで頑ななのかと疑問に思う一方通行だったが、面倒なので黙って聞いて置く事にする。

雲川『確かに、作戦と言っても能力者とひたすら戦って、解放するだけだけど。
   攻略フローチャートがある。と言っても、細かいものではなく大まかにだけど』

垣根「フローチャートって……ゲームじゃないんだから」

雲川『ゲームだよ。こんなものは。食蜂にとってはだけど』

だから私も、ゲーム感覚で君達に話す。などと雲川は言う。

89: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:35:41.13 ID:c1MFS++20
雲川『本当に失望したが、まずは土御門のアホから解放するべきだけど。アイツがいれば、私の代わりは務まるだろう』

ホントにあのバカ御門め。せめて転んでもタダでは起きるなよ。と愚痴を零す。

雲川『で、土御門を戻したあとは、厄介なテレポーターを戻すべきだけど。確か約60人ほどいたはずだけど』

一方通行「58人だ。と言っても、戦争前の情報だから、ひょっとしたら増減しているかもしれねェがな」

雲川『補足ありがとう。とにかく、そのテレポーター達を優先して戻すべきだけど。
   あとは個人向けのアドバイスしかない。例えば、御坂は「電撃使い」だから同系統の能力者とは争わない方が良い。
   泥仕合になって無駄に体力を消費するだけだからな』

垣根「お、今まで本当に大まかだったけど、ようやく作戦らしくなってきた」

雲川『上条は「幻想殺し」を生かすのなら、近距離型の能力者の方がやりやすいだろうけど。
   一方通行と垣根は……まあ、好きなようにやればいいんじゃないか』

垣根「結局アバウトなアドバイスですこと」

雲川『当然だが、能力だって永遠に使える訳じゃない。セーブしながら戦うべきだけど。
   あとは、約200万の能力者がいる訳だけど、その内の約3分の1は「読心能力」(サイコメトリー)とか
   戦闘には不向きな能力者だから、そんなに気負う事はない』

一方通行「さっきから、割と当然なことばかり言ってンな。能力者を解放した後はどうする?」

雲川『出来るだけ無傷で解放すれば、逆にそのまま戦力になる。
   結構傷つけてしまった場合は……まあ頑張れ。ただ食蜂にもプライドってものがある。
   一度解放された能力者を再び洗脳することはないだろうけど。他に何か言うことあったっけ?』

御坂「約200万の脳を統べる食蜂はどうやって倒すの?」

垣根「それってさ。能力者を解放して行けば、食蜂も弱る訳だから、能力者を解放しきればいいんじゃねぇの?」

つーか直接食蜂叩けば良くね?と垣根は言い出す。その言動に溜息をついたのは一方通行だった。

一方通行「オマエ馬鹿ですか?食蜂を直接叩こうとしたって、操られた能力者達が阻むに決まってンだろ」

御坂「それに、能力者を解放しても“慣らし”終えた食蜂の脳には、
   200万の能力の情報が脳に焼き付いて、そのまま能力を使役できる。って食蜂自身が演説で言っていましたからね」

垣根「あれ?そうだっけ?あはは……」

雲川『食蜂を倒す方法なんて簡単だけど。上条の『幻想殺し』で頭を触れば一発さ。
   ま、そう簡単にいくとは思えないけど』

上条「身も蓋もないって言うか、具体的だけど、大まか過ぎて……」

雲川『私から言える事はそんなもんだけど』

一方通行「待て。オマエ、食蜂が何かやらかす事予想していたンじゃねェのか?
     だとしたら、何か対策が出来たンじゃねェのか?」

雲川『ふむ。なかなか鋭い。確かに私には食蜂が何かやらかす事は予想できたけど。
   特別な対策は出来なかった。私はレベル0ですらない、ただの一般人だ。やはり、上条の説教しかない』

一方通行「ふゥン」

一方通行は、自分から聞いたくせに大して興味もない様だった。

90: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:39:08.63 ID:c1MFS++20
雲川『それで、せめて君達の為に、助っ人を6人送ろうと思う』

御坂「助っ人?それって誰なの?」

雲川『秘密。だけど1人だけ教えてやろう。耳をかっぽじってよく聞け。我が旦那、軍覇だ!!!』

一方通行・垣根・御坂「「「は???」」」

上条「あちゃー」

雲川『は?じゃないけど。私の旦那だって言っているのだけど。削板軍覇。
   今はレベル0ですらない一般人な訳だけど、めっちゃ強いのよね。助っ人としては申し分ないはずだけど。
   その上イケメンだし、誰とでも分け隔てなく接する事が出来て優しいし、マッチョだし、飾り気がなくて、
   真面目で逞しくて、質実剛健という言葉がぴったりで明るいし、根性根性うるさいけど、困っている人を
   見つけたら損得感情抜きで助けるし、まさにヒーローって感じ。そうそう、軍覇って普段は激しくて
   荒ぶっているけど、夜は優しいのよね。不器用なくせに、私をリードしようとして、本当に可愛いわぁ♡
   でも体力は結構あるから、結局は私も満足するんだけどね。昨日もズッコンバッコンやったのだけど、
   おかげで腰が痛くて』

上条「あーあー」

適当に叫びながら、上条はボタンを押して通話を終了させた。

上条「……そう言う事で終わりみたいです。ハイ……」

反応は三者三様だった。一方通行は舌打ちをして「大した事も言わずに何なンだ」と病室を出て行き、
垣根はその場で笑い転げていて、御坂は顔を真っ赤にしながら俯いていた。

上条「ま、まあ、また明日会いましょう」

垣根「はぁー、笑った笑った。ところで、連絡先交換しようぜ。
   命を預け合う関係になるんだからな。一方通行には、俺が教えとくから」

垣根の提案により、連絡先を交換する事になった3人。2分後、連絡先交換が終わったところで、

垣根「それにしても、美琴ちゃんって意外とウブなのねー。顔真っ赤にしちゃってさー。
   可愛いなー。どうだ?今ならお兄さんが優しく手解きし」

垣根の言葉は最後まで続かなかった。御坂の蹴りが、垣根の鳩尾にクリーンヒットしたからだ。
蹴りをまともに受けた垣根は、その場に崩れ落ちる。

御坂「ふ、不潔です!止めてください!」

垣根「じょ、冗談、通じないのね……」

その場でピクピクして蹲っている垣根に、上条は声をかける事が出来ない。
と、上条の携帯が再び鳴った。ディスプレイを見ると『雲川先輩』と表示されている。
一瞬出ようかどうか迷ったが、一応出てみる。

雲川『……取り乱して済まなかったけど。もう一度スピーカーモードにしてくれ。
   上条と御坂に話したい事がある。垣根と一方通行には、出て行くよう言ってほしいのだけど』

上条「よく分かんないですけど、一方通行はもう出て行きましたよ。垣根はまだいますけど」

スピーカーモードにしながら、上条は言った。

91: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:40:15.96 ID:c1MFS++20
雲川『ふぅん。じゃあ垣根は出て行ってくれ』

御坂「よく分からないですけど、出て行って下さい。気持ち悪いし」

上条「垣根……出て行くべきだと思う。空気的に」

垣根「……なんかさっきから俺の扱い酷くね?」

雲川『いいから。早く出て行ってほしいのだけど』

垣根「へいへい。分かりましたよ」

そう言うと垣根は、愚痴を零しながらも出て行った。

雲川『これから、御坂と上条に聞いてほしい話がある。
   御坂、一応廊下に出て確かめた方が良いんじゃないか?垣根が盗み聞きしているかもだけど』

御坂「聞かれたら駄目な話なんですか?」

雲川『わざわざ2人きりにさせたことを考えたら分かると思うけど。こちらとしては、御坂が別に良いなら話すけど』

御坂「……ちょっと見てきます」

垣根(ヤベッ!)

やりとりを本当に廊下で盗み聞きしていた垣根は焦る。御坂の足音が近づく。

92: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:44:26.38 ID:c1MFS++20
御坂は扉を開け、左右を見る。誰も居ない。
反射波的に考えても廊下には誰もいないようだった。

御坂「いませんでした。どうぞ、お話してください」

垣根(ふぅ~)

垣根は息を吐いた。諦めて逃げた訳ではなかった。翼で身を覆い隠し、さらに透明になったのだ。
と言っても、ただ視覚的に消えただけでは反射波でバレてしまう。
だから垣根は、本当の意味で透明になった。つまり電磁波は垣根を通り過ぎたのだ。

御坂らは、そんなことは露知らず。病室では雲川の話が始まっていた。

雲川『初めに言っておくが、上条と御坂が戦った事は知っている。
   戦闘中に行われた会話もだ。だからいちいち大きなリアクションはやめてほしい』

上条・御坂「「はい」」

雲川「よし。戦闘中における御坂の言動だが、あれは食蜂に言わされていた訳ではない。
   食蜂の洗脳・操作は心の闇を絡め取り、個はそのままに生かす。
   つまり、戦闘の最後の方以外の御坂の言動は、御坂が思っていることそのものだ』

上条「え?でも、食蜂は御坂を操っていたって……」

雲川『それは違う。食蜂のでまかせだ。食蜂は御坂がお前を踏みつけ出した、最後の方しか直接操っていないけど。
   戦闘の前半は紛れもなく、御坂の本心からの行動だった』

上条「それって、どういう意味ですか……」

雲川『「死ね」とか「私も死ぬ」とか「五和と別れて」とか「シスターやロリ教師も殺す」とか「上条が好き」とか、
   全て御坂の本心だったって訳だけど。御坂本人にも洗脳時の記憶は残っているから、本人に聞けば分かるはずだけど』

上条「そう、なのか、御坂」

御坂「……うん。その時は、本当にそう思っていたと思う。
   でも、言わなくても良かったじゃないですか!何でそれを今言うんですか!」

電話の先の雲川に向かって御坂は叫ぶ。

雲川『上条は御坂の言動や行動の“全てが”食蜂によるものだと思っていたんだけど。
   勘違いを解いてやるのは当たり前だろ?』

御坂「そ、そんな……」

上条「先輩。俺も、そんなことは望んでないです。勘違いのままで良かったです。
   世の中には知らなくていい事もあると思います」

雲川『随分生意気な口を聞く様になったじゃないか上条。
   「世の中には知らなくてもいい事もあると思います」か。
   たかが16年と4カ月しか生きていないくせに、悟った様な事を言うね』

上条「そんなつもりはないですけど。何でこんなこと言う必要があったんですか?
   御坂が傷ついただけじゃないですか!」

雲川『傷つく?当たり前だけど。君達は一度痛い目を味わっといて、まだそんな甘い事を言っているのか?
   その調子だと、食蜂から世界を守るなんて夢のまた夢だけど』

上条「さっきから何なんですか先輩!言いたい事があるなら、はっきり言ってください!」

雲川『君達は甘いと言っているのだけど。
   たとえば上条、君は食蜂に唆されて、終始洗脳されているかもと疑ってはいたが、結局は御坂と戦った。
   御坂も多分、上条を利用されれば、あっさり堕ちる。君達は精神的に甘過ぎると言っているのだけど』

93: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:50:17.11 ID:c1MFS++20
上条「……だったら、どうしろって言うんですか?」

雲川『上条は、御坂の気持ちに対してきちんと返事をしろ。
   半端に恋愛事情を戦場に持っていくのは危険すぎるからな』

御坂「な、何で今更そんな事……五和さんがいるんだから、もう答えは決まっているのに」

雲川『とか何とか言って、本当はまだわずかでも期待しているだろう?
   私が上条の事を名前で呼んだら敏感に反応したし、ここ最近は2人きりのシチュエーションも多いからな』

御坂「さっきから何なんですか?からかっているんですか?」

雲川『からかってなどいないけど。いいか?君達は命を預け合う仲なんだ。
   そして相手は食蜂。気持ちが少しでもブレる事があってはならない。
   ここら辺りで気持ちを清算して「食蜂を倒す」という目的のみに専念できるようにしないといけない』

上条「……そうか。なら答える。御坂、俺はお前の気持ちに答える事は出来ない。“大切な人”がいるから」

御坂「……うん」

洗脳されていた時の戦闘中にも断られたが、改めて言われるとやはり辛い。

雲川『ふむ。これで両者ともスッキリしただろ?明日、頑張れよ。
   上条は制服ボロボロだろうし、御坂も制服汚したくないだろうから、協力機関に服持って行かせるから』

上条「垣根と一方通行は?」

雲川『あいつらはいい。
   長点上機の制服は防護性も動きやすさも備わっているし、汚れたって金持っているからいいだろうし』

上条「そうじゃなくて、あいつらだって気持ちに迷いがあるかもしれないじゃないですか?
   何か忠告があってもいいんじゃないですか?」

雲川『奴らは学園都市の「闇」を生き抜いてきた訳だし、気持ちに迷いなんてないけど。
   特に今の君達より遥かにブレてきた一方通行はね。そうそう。
   御坂は妹達の件で悩んでいるみたいだが、上条に励ましてもらえ。それじゃ』

ブツッと通話が切れた。

94: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:53:01.95 ID:c1MFS++20
2人の間に沈黙の時間が訪れる。

上条(先輩め、最後にとんでもない爆弾投下しやがった)

心の中で雲川に毒づいている時、御坂が口を開く。

御坂「あの、ね。実は私さ」

そうして御坂は昨日の出来事を話した。
自殺しようとした事。それを一方通行に止められた事を。

上条「自分の弱さが情けなくて、か」

御坂「怒らないで聞いてほしいんだけど、五和さんや、多分ロリ教師とシスターも食蜂の手に堕ちていると思う。
   それでさ、当麻は何とも思わないの?自分が情けないとか」

上条「思うよ。けどさ、言い方悪いかもしれないけど、もう仕方ないんだよ。妹達だってそうだ。死んだ人はもう戻らない。
   だから、落ち込んでも仕方ないと思うんだよ。大事なのは、そこからどうするかだと思う」

御坂「一方通行も、似たようなこと言っていた。立ち上がることが大事だって」

上条「俺もそう思う。だからさ、妹達の事は割り切って、白井達は一緒に救いだせばいい。たったそれだけの話だ」

御坂「……うん。頑張ってみる」

垣根(軽い気持ちで盗み聞きした話が、まさかこんな重い話だとは……けどま、俺も――)

2人の気持ちは固まり、1人は気持ちを再確認した。そしていよいよ、運命の日を迎える。

95: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:54:19.34 ID:c1MFS++20
4月13日 6:00 病院前

冥土帰し「それじゃあ、頼んだよ」

冥土帰しはそれだけ言って、学園都市の協力機関の車に乗った。
車は猛スピードで走りだし、5秒もしないうちに上条達の視界から消えて行った。
代わりにあるのは、もぬけの殻になった病院と、協力機関が持ってきた食糧と武器、服ぐらいである。

御坂「助っ人は……?てっきりここで合流するのかと思ったけど」

上条「確かに……ひょっとしたら、あとから来るのかもな」

垣根「なんだそりゃ」

一方通行「まァどうでも良いじゃねェか。4人で世界救うぐらいの覚悟でいかねェと。
     ただ、これからどう動くのかが問題だな」

食蜂と能力者達が地下に籠っているのは分かっている(TVの演説で)のだが、どうも簡単に踏み込んでいいのか迷う。
とりあえず雲川の指示に従い土御門を取り戻すため、垣根が『未元物質』を使いこなして眼球を千里眼にして
土御門の位置を看破したが、曰く食蜂のすぐ近くに居るらしく、参謀的ポジションらしい。
要するに、土御門をいきなり取り戻すことは難しいということだ。

垣根「やっぱいきなり食蜂倒せばよくね?能力者解放しながらは回りくどいだろ」

一方通行「だから、そう簡単にいくわけねェだろォが。周りから崩して行った方が確実なンだよ」

垣根「じゃあどうすんだよ。さっきも言った通り、能力者達は地下に籠りっぱなしだ。
   俺達が動かないと、事態は動かねぇぞ」

御坂「まあまあ落ち着いて2人とも」

上条(こんな調子で大丈夫か?不安になってきたぜ)

96: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:58:51.70 ID:c1MFS++20
6:10

上条達は垣根が千里眼で見つけた地下へと繋がる入口がある第6学区へ、そこら辺にあった車を拝借して向かっていた。

御坂「こんなに悠長にしていて良いのかしら……」

一方通行「良いに決まってンだろ。別に何時間以内に救わないといけないなンて時間制限はねェンだから。
     来るべき時に備えて体力も能力も温存しとくべきだ」

御坂「そっか」

上条「垣根は運転出来るんだな」

垣根「男なら、車の1つくらい運転できなきゃな」

一方通行「無免許運転が偉そうに言ってンじゃねェ」

垣根「いいじゃねぇか。誰も居ないんだし」

そんな会話をしている間に、第6学区のとある遊園地の前に到着した。

垣根「この遊園地のメリーゴーランドの中心。ここから地下に入れるぜ」

4人は車から降りる。その時だった。
音もなく垣根と御坂が、上条と一方通行の側から消え去った。

上条「――な!?」

一方通行「早速仕掛けてきやがったかァ」

理由は簡単だった。能力が上がって千里眼と化した固法美偉の『透視能力』(クレアボイアンス)で上条達の位置を特定。
あとは結標の『座標移動』(ムーブポイント)により、御坂と垣根をテレポートしたのだ。
上条は『幻想殺し』により、一方通行は反射によりテレポートを免れたと言う訳だ。

一方通行「気をつけろ。来るぞ」

一方通行が注意を喚起した直後。
上条の真上に、『グングニル』の先端を上条に向けた五和がテレポートされた。

上条「――やべ」

上条が数歩後退して槍を避けたと同時、ゴギャア!と『グングニル』が深く地面に突き刺さった。

五和「全く。当麻さんが避けるから、地面に刺さっちゃったじゃないですか。抜くの大変なんですよ。これ」

随分と滅茶苦茶な事を言う。避けなきゃ死ぬのだから避けるに決まっている。
それにしても、洗脳中の行動や言動は真実と雲川は言ったが、これもそうなのだろうか。

上条(……余計なことは考えるな。真実かどうかは問題じゃない。能力者を救いだし、食蜂を倒す事だけに集中しろ)

一度目を閉じ、深呼吸。そして目を見開く。
そんな上条を見て、五和は両手で頬を覆い、うっとりした様子で言う。

五和「キリッとした顔の当麻さんかっこいい♡服も似合っていますよ♡」

今の上条は、紫色のラインが入った黒のウインドブレーカーを着ている。パンツも同じものだ。

上条「おいおい、褒めたって何も出ねーぞ」

五和「大丈夫ですよ。今から真っ赤な血と、黄色い脂肪と、汚れた臓物をまき散らせてあげますからね♡」

今ので確信した。いくら洗脳中でも、こんなことを思っているはずがない。
まあ、真実だろうがそうでなかろうが――

上条「今すぐ洗脳を解いてやるからな」

97: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/25(日) 23:59:47.28 ID:c1MFS++20
上条と五和がそんなやりとりをしている時、一方通行は、

一方通行(どこ行きやがった!?)

黄泉川が見えた気がして、走り出し、気付いたら遊園地内に入って彷徨っていた。
辺りには大量のアトラクションがあり、隠れるには困らない。

一方通行「黄泉川ァ!出てこいやァ!」

瞬間。
大声で叫んだ一方通行に返事をするかのごとく、銃声が鳴り響いた。
1秒後、銃弾が一方通行に直撃し、上空へ逸らされた。

一方通行「銃弾なンか効かねェぞ」

ただこの戦いは、殺す戦いではなく救う戦いの為、反射では駄目だ。
ベクトルを操って、どこか違う方向に弾かなければならない。
すなわち、微々たるものではあるが、デフォルトの反射に比べ演算を余計に行わなければならない。
それが長時間続けば、どうなるのか。だがそんな事は、黄泉川を速攻で見つけ、洗脳を解けば済む話。

一方通行(ふン。いいぜェ。鬼ごっこの始まりだァ)

一方通行は不敵に笑い、地面を蹴って跳んだ。

98: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:02:04.19 ID:HgBmFR610
御坂(ここは……)

なんとなくテレポートされたのだろうと言う事は分かった。御坂は周りを見渡す。
どうやら倉庫街みたいだ。

御坂(わざわざテレポートされたってことは、何かあるのよね……)

御坂が警戒を高めた、その時だった。
ヒュン!と空気を切り裂く音が真後ろからして、背中にわずかな柔らかさと重みを感じた。
御坂はその正体を一瞬で看破する。

御坂「黒子」

白井「ご名答ですわお姉様。きっと四六時中黒子の事を思ってくれていましたのね」

喋りながら、白井の柔らかい手が御坂の体を這っていく。脇腹に胸に太腿に。

御坂「黒子。いい加減にしないと、黒焦げにするわよ」

白井「黒子を黒焦げ。つまらないダジャレはお止めになってくださいですの」

そして白井の手が、御坂の股間に向かいそうになった時、

御坂「どらぁ!」

白井の手を掴み、一本背負いを繰り出した。
しかし白井はテレポートを実行し、御坂の手から抜け出す。

白井「焦らないでくださいお姉様。黒子はいつでも受け入れオーケーですのよ」

異様に冷静なこと以外は、清々しいくらいにいつも通りの白井だ。
なんだろう。割と容赦なく黒焦げに出来る気がする。

白井「ここは学園都市外周に面している学区の中で、物資の搬入が盛んな第11学区。 陸路最大の玄関となっていますの」

御坂「いきなりどうしたの?」

白井「何も知らないのは可哀想だと思って……教えてさしあげただけですの」

御坂「……わざわざありがと。じゃあそろそろ、黒焦げにしていいわね?」

白井「やれるものならやってみてくださいな。わたくし白井黒子と」

「「「「「私達をね」」」」」

物陰から5人の少女達が現れた。柵川中学の冬服の初春と佐天、常盤台の冬服の婚后光子、湾内絹保、泡浮万彬だった。
御坂は思った。合計6人の少女は食蜂の策略により全員レベル5。
雑魚ならともかく、レベル5が6人はどう考えても分が悪い。でも――

御坂(気持ちで負けちゃ駄目だ。自分を信じるんだ)

御坂は自分に言い聞かせる。ゆっくりと息を吸い、吐く。そして、

御坂「6対1か。いいわ。教えてあげる。あなた達偽者のレベル5と、本物のレベル5の力の違いを。そして、先輩の威厳をね」

宣言した。いよいよ戦いの幕が上がる。

99: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:03:57.63 ID:HgBmFR610
垣根(この俺がテレポートされちまうとは……)

垣根は目だけを動かして周囲を見る。特にこれと言った物はない。
あるのは今立っているビルの屋上へと繋がる扉くらいだ。

心理定規「帝督♪」

不意に後ろから、心理定規の楽しそうな声が聞こえてきた。
垣根は急いで振り向く。同時。

心理定規の手の中の拳銃から発射された弾丸が、垣根の右目を貫いた。

垣根「痛ってぇな」

そう言う垣根の右目からは血が流れるどころか、傷一つなかった。
それもそうだ。弾丸は右目を貫いたと言うより、通り抜けただけなのだから。

心理定規「やっぱり拳銃程度では死なないか」

言いながら拳銃を横に投げ捨て、後ろへ手を回す。
腰の辺りから取り出されたのは、40ミリの小型グレネード砲。
心理定規は容赦なくグレネードの引き金を引く。

グレネードの弾頭は垣根に直撃し爆発したが『未元物質』の翼の前では何の意味もなかった。

心理定規「まあ、そりゃあ死ぬわけないよね」

心理定規がグレネード砲もその辺に投げ捨てた瞬間、垣根は彼女の後ろに回り込み、真っ白な翼で自分ごと包み込んだ。

心理定規「ちょ、何よ。触らないで汚らわしい!」

食蜂が言わせたことだと思いたいが、昨日雲川と上条と御坂の話を盗み聞きした時、洗脳中の言動は真実だと言っていた。
中には食蜂が言わせている時もあるとも言っていたが、食蜂に洗脳される前、精神的に傷つけてしまった以上、
言動が真実である可能性は否定できない。どの道、やることは決まっている。

垣根「俺はこの数日間、ずっとお前のことだけ考えてきた。それで分かったよ。今から俺の話を聞いてほしい」

垣根の独白が始まった。

100: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:04:36.80 ID:HgBmFR610
地面から槍を引き抜いた五和が、上条に向かって駆け出した。

五和「ふふ」

槍の先端を上条の顔面目がけ放つ。
上条は数歩後退し、顔を少し横にそらして避ける。

五和「避けないでくださいよ。私の愛の印ですよ」

連続で突きを放つ五和だったが、上条は後退しながら、それらを全て避ける。その上、考え事をしていた。

101: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:05:45.07 ID:HgBmFR610
4月7日の19:30。
晩御飯を食べ終わっていた上条と五和は寄り添いながら、ただボーッとしていた。
穏やかな時間が流れて行く中、五和が口を開く。

五和「今日、食蜂さんが当麻さんのクラスに転入してきて、クラスメイト全員を洗脳したんですよね?」

上条「そうだけど、その話はやめないか?今は、この穏やかな時間を大切にしたいな」

五和「分かっています。けど、聞いてほしい事があるんです」

上条「……分かった。話してくれ」

五和「はい。その、私にはアレイスターの加護みたいなのがあるらしいですが、
   それでも万が一私が洗脳されて当麻さんと戦うことになった場合、私が首にかけている『グングニル』は
   容赦なく破壊してください」

上条「魔術には詳しくないからよく分からんけど、それ結構貴重な霊装なんだろ?
   それに、そうやってアクセサリーにもなって、五和も気に入っているんだろ?本当に良いのか?」

五和「はい。当麻さんを傷つける凶器になるぐらいなら、いりません。
   それに、アクセサリーなら買えばいいだけの話ですし、寧ろ当麻さんとペアのアクセサリーが買えたら、
   そっちの方が良いかなーなんて///」

上条「分かった。万が一そうなったら破壊させてもらうよ」

五和「はい」

102: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:07:17.45 ID:HgBmFR610
上条「――約束、果たすぜ」

顔面に向かって放たれた槍を、上条は右手で受け止めた。
瞬間、ガラスが割れるような甲高い音が響き『グングニル』は崩れ去った。
上条はそのまま攻撃態勢にシフト。五和の頭を触るべく肉迫する。

五和「よくも……私の大事な……」

言いながら五和は後退する。しかし上条の方が速く、後退し始めてから2秒で、上条の右手が五和の頭に触れた。
同時、独特の甲高い音と共に、五和の体が揺れ前方に倒れていく。上条は彼女を優しく受け止め、抱きしめた。
その直後だった。

吹寄「上条ぉぉぉ!」

突如上条の真上に出現した吹寄制理が、かかと落としを繰り出した。
その一撃により半径20mの地面が砕け、捲りあげられた。にもかかわらず。

上条当麻は五和を抱えながら、20m先で平然と立っていた。

上条「吹寄って『風力使い』(エアロシューター)だったんだな」

吹寄「あら、上条のくせによく分かったわね。勉強を教えた甲斐があるってものだわ」

上条「まあな」

適当に言いながら、上条は考える。
五和を抱えたこの状況で、レベル5となった吹寄と戦うのは少しきつい。

上条「悪ぃな吹寄。お前はあとで絶対救うから。今は退かせてもらうぜ」

上条はそう言うと、背中から『竜王の翼』を生やし、病院へ向かって飛んだ。

103: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:08:31.69 ID:HgBmFR610
上空へと跳んだ一方通行は、黄泉川の位置を確認した直後に、隕石の如く彼女の近くの地面へ突っ込み、衝突した。
落下の衝撃で地面は震え、周囲に莫大な煙がまき散らされた。

一方通行「チェックメイトだ」

地面が揺れたことにより、尻餅をついていた黄泉川に近付く。

黄泉川「近付くなじゃん!」

黄泉川が豊満な胸の隙間からスタングレネードを取り出し、投げた。
莫大な光と音が周囲にまき散らされる。

一方通行「チッ」

一方通行は舌打ちをしながら目を開いた。
彼はスタングレネードが投げられた瞬間に目を閉じていた。
音は既に“全て”遮断済みだ。よって影響は全くない訳だが。

一方通行「どこ行きやがった?」

一方通行が目を閉じていたのは、ほんの数秒だ。
そこまで遠くに逃げられるとは思えない。

一方通行(となると、テレポーターによって逃がされたか。どうしてこう回りくどいかなァ、食蜂ちゃンはよォ)

仕方ないので、もう一度地面を蹴り、跳んだ。

104: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:09:44.40 ID:HgBmFR610
一方通行は空中から地上を見回したが、黄泉川を発見する事はかなわなかった。
仕方ないので地上に降りる。

一方通行(あァ、どうっすかなァ……)

そんな一方通行の前に、少年が突如出現した。
と思ったら、少年はクルリと向きを変え、一方通行に背を向け飛んだ。
飛びながらも、チラチラと一方通行の方を見る。まるでついてこいと言わんばかりに。

一方通行(ありゃあ映像か?まァどうすればいいか悩ンでたところだし、ついていくかァ)

105: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:12:33.96 ID:HgBmFR610
電撃を纏い、運動神経や反射神経を飛躍的に上げた御坂が最初に狙ったのは初春だった。

御坂(洗脳とか操作とか、食蜂のやっていることは結局脳内電流の操作だ。
   私はそれに干渉する事が出来る。だから、頭に触れることさえできれば――)

そんな思いで初春の頭に触れに行くが、白井により初春はテレポートされた。

御坂(そう簡単にいく訳ないわよね……!)

しかし落ち込んでいる暇はない。
『水流操作』の湾内と泡浮によって生み出された水流が御坂に襲い掛かる。

御坂(くっ!)

青髪の少年にやられた時の記憶がよみがえる。

御坂(……集中しろ!)

ここは倉庫街。倉庫の中にコンテナなど盾に出来るような物は山ほどある。
よって御坂は、それらを電磁力で集め盾にした。レベル5の水流(しかも2人分の)であったが、何とか防ぎきった。

佐天「それじゃあ甘いですよ」

声は盾にしたコンテナの向こうから。一体何が甘いのか。
疑問に思った御坂だったが、すぐに答えを知ることになる。

婚后「わたくしの能力をお忘れになりましたの?それと、佐天さんの能力も」

御坂(――そう言う意味か!)

2人の『空力使い』(エアロハンド)により噴射点が作られたコンテナが、砲弾のように発射された。

御坂(危なかった……)

白井「安心するのはまだ早いのではなくて?」

上に跳んで回避した御坂を、テレポートした白井のドロップキックが襲う。

御坂「ぐっ!」

後ろからのドロップキックを、身を捻り両腕をクロスしてガードしたが、
思いのほか威力が強く、数m先の倉庫の壁までぶっ飛ばされた。

佐天「休んでいる暇はありませんよ?」

声は背にしている倉庫の向こうから。
今この状態で、噴射点を作られればどうなるか。

御坂(まさか、倉庫ごと――)

ゴバッ!とコンテナの何倍もの大きさがある倉庫が、数百m吹き飛ばされた。

106: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:15:36.99 ID:HgBmFR610
御坂「はぁ、はぁ」

背にしていた倉庫の一撃を何とか避けきった御坂は、大量にある別の倉庫の陰に身を潜めていた。

御坂(参ったなぁ。皆本当にレベル5級の力使うんだもんなぁ)

食蜂の演説で分かっていたが、実際に対峙してみると身に沁みてよく分かる。
しかも6対1。さすがに手も足も出ない。

御坂(さぁて、どうしたものかな……)

悩んでいると、ポツリと肩に冷たい雫が当たった。
雨……?しかし空は雲ひとつない快晴だ。ということは、

初春「みーさかさーん。どーこでーすかー?出ーてきーてくーださーい」

甘ったるい声。普段は癒されるようなその声も、今は何となく怖い。

初春「出てこないならいいです。そのまま聞いてください。レベル5の力ってすごいですよねー。
   『水流操作』と『空力使い』を合わせれば、人工的に雨を降らせることはもちろん、嵐を起こす事だって
   出来るんですから。御坂さんも、これぐらいの強力な力を持っているんですよね」

一体何が言いたいのか。御坂は疑問に思う。

初春「それだけの力を持っていたんですから、きっと心のどこかで私達低いレベルの能力者を見下していたんでしょうね!」

明らかに声のトーンが違っていた。洗脳中の言動は真実だと言う。
ただし、上条と戦った時の最後の方の言動は、食蜂に言わされたものだ。
つまり、真実ではないかもしれない。
しかし、心のどこかでコンプレックスを抱えていた可能性は否定できない。
つまり、真実かもしれない。思わず、御坂は叫んでいた。

御坂「違う!私はそんな事思っていない!」

言った後にしまった!と思った。大声を出したことにより位置がバレたかもしれない。

初春「そんなムキにならなくても大丈夫ですよー。
   こんな戯言交じりの挑発を真に受けるなんて。御坂さんは素直だなあ。皆さん、あそこですよ」

御坂(くっそ!)

まずいと思った御坂はその場から離れる。その1秒後だった。
ボガァン!と、さっきまで御坂の居た場所の倉庫がまとめて吹き飛ばされた。

初春「死んでください♪」

御坂が移動した先に、初春が待ち構えていた。初春だってレベル5のはず。
確かもともとは『室温保存』だったはずだが、どんな能力になっているのだろうか。
不用意に近付くのは危険かもしれない。けれども。

御坂(ここで退いてたまるか!)

あえて一騎討ちを挑む。御坂と初春の腕が交錯した。

107: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:19:27.54 ID:HgBmFR610
御坂「くっ!」

初春「チッ!」

御坂が頭を狙って伸ばした右腕は、初春が顔を左に振ることで回避。
逆に初春が御坂の右脇腹を狙って伸ばした右腕は、御坂が着ていた薄いピンク色のウインドブレーカーに
少しかすめるだけだった。

御坂「これは……」

何か焦げ臭い。
そう思い右脇腹付近を見ると、ウインドブレーカーが少し焦げていた。

御坂「初春さん、あなたの能力は……」

初春「私は『絶対温度』(ヒートハンド)と呼んでいます。見ての通り、熱ですね。
   私が触れた個所は、もれなく熱で溶けます。
   まあヒートと言っても、冷却方向での能力も使用できますし、もっと凄い事も出来ますよ。たとえば」

初春が数mは離れている御坂に向かって右手を突き出す。ただそれだけ。
それだけだったのに、ピキピキと御坂の体が氷に覆われた。

御坂「これって……!」

初春「水分を急速に冷やして凍らせただけです。どうですか?」

御坂「どうって……」

そんな能力について評価を下している場合じゃない。
電撃を迸らせて、覆われている氷を適度に砕いていく。

初春「やっちゃってください。湾内さん、泡浮さん」

言葉と同時、2人の激流が御坂に襲い掛かる。

御坂「くっ!」

まだ氷から抜け出しきっていない。電撃をぶつけることで防御するしかない。

初春「させませんよ♪」

ジッ!と能力の発生源である前髪が焦がされた。
わずかとはいえ髪の毛が溶けたのと熱さで、演算が出来ない。

御坂(――ッ!)

2トンもの激流が、御坂を飲み込んだ。

108: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:22:27.51 ID:HgBmFR610
垣根「俺が、わがままだったんだよ。お前が洗脳されたのは、俺のせいだ」

心理定規から全く反応がないが、垣根は続ける。

垣根「俺は本当に自分勝手だった。
   俺は、お前が求めに応えてくれないだけで勝手にいら立って、お前の気持ちも考えないで、一旦別れようなんて」

心理定規「……っ、そうよ!その上あなたは浮気した!最っ低最悪の男よ!」

垣根「それは違う。なんか変な女が勝手にまとわりついただけなんだ。
   でも、信じられないよな。その状況で別れようなんて言ったから、なおさら」

心理定規「言い訳なんて聞きたくない!」

心理定規は両手で耳をふさごうとするが、垣根の手がそれを阻む。

垣根「聞いてくれ。俺は、いつかお前の気持ちを無視しそうだったから、あえて距離を置こうと思った。
   けどそれは、言い訳だった。
   俺がお前と一緒に居たら辛いから、お互いの為に一旦別れようなんて理由付けていただけなんだ。
   お前にしたら辛いだけなのに」

心理定規「帝……督……」

垣根「本当にすまなかった。だから、こんな駄目な男だけど、もしよかったら『別れよう』宣言は撤回で。
   これからもずっと、お前の側にいたい。お前を守り続けたい」

心理定規「帝……督……!」

ビクン!と心理定規の体が震えた。

垣根「どうした!?」

心理定規「う……ああああああああああああ!」

垣根の手を振り払い、両手で頭を抱える心理定規。

垣根「まさか――ん?」

苦しむ心理定規をよそに、垣根は気配を感じていた。包み込んでいた翼を開く。

垣根「……20人か」

『Equ.DarkMatter』。
『未元物質』の力を使って製造された新物質を素材とし、ありふれた物理法則を超越した性質を持つ、
白いのっぺりとした仮面をつけた人間が、垣根達の周囲に20人ほどいた。

垣根「失せろ。じゃねぇとボコボコにすんぞ」

しかし垣根の言葉を無視して『Equ.DarkMatter』は、
仮面から『未元物質』の翼を出して垣根達を襲う。

垣根「ふん」

対して垣根は、背中から20枚の翼を出し、伸ばす。
それは『Equ.DarkMatter』の翼を切り裂き『Equ.DarkMatter』すらも切り裂いた。
刹那の内に、垣根が勝利した。

109: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:24:02.37 ID:HgBmFR610
垣根「殺しはしない」

垣根の翼は仮面や体の一部を切り裂いただけであり、致命傷には至らなかった。

垣根「ただし、これ以上俺に逆らうのなら――手足の切断ぐらいはするぜ」

もちろん彼らは、食蜂に洗脳されて差し向けられただけだろう。
だからこの脅しに意味はないし、ましてや彼らに罪もない。

だが垣根は善人ではない。
たとえ彼らが洗脳されている被害者だとしても、逆らうのなら容赦はしない。
脅しは、きっと今の状況を把握している食蜂に向けたものだ。
これ以上彼らを戦わせるのなら、彼らを傷つけることになるぞ。と。

当然ながら食蜂にとっては、彼らがどれだけ傷つこうが関係ない。
寧ろ使い捨てのようなものだろう。脅しを聞く必要はない。
それでも言わないよりはマシかと、垣根はあえて脅した。

そんなダメもとの脅しが効いたのか、仮面が破壊されて使い物にならなくなったからなのかは分からないが、
『Equ.DarkMatter』は、それ以上何もしてこなかった。

心理定規「帝督……!」

戦いが終わり、垣根の腕の中には正気に戻った心理定規がいた。

垣根「お前……すげぇよ。自力で洗脳を解くなんて……」

心理定規「帝督の声が、ちゃんと届いたから。私こそごめんね。こんなに迷惑かけて」

垣根「良いよ。俺は、お前がいればそれで」

110: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:28:47.66 ID:HgBmFR610
少年の幻に導かれ、一方通行は第20学区にある、とある野球スタジアムのホームベース上にいた。

一方通行(コイツは……)

先程から若干の違和感。この違和感の正体は知っている。

一方通行(AIMジャマーか……)

AIM拡散力場を乱反射させ、自分で自分の能力に干渉させる事によって能力使用を妨害するワイヤーが、
スタジアムの隅から隅まで張り巡らされている。能力を打ち消すというよりは『照準を狂わせて暴走を誘発させる』代物。

一方通行「くっだらねェ」

吐き捨てながら、一方通行は能力を封印した。

一方通行「能力は切った。さっさと出てこい黄泉川ァ!」

息を深く吸い、腹の底から叫んだ。スタジアムに一方通行の声が木霊する。それに応えるように、

黄泉川「よく来たなぁモヤシ!私の為に来てくれたじゃん?だとしたら、止めてほしいじゃん!気持ち悪いからさぁ!」

能力を封印した一方通行には、黄泉川のエコーのかかった声はダイレクトに聞こえていた。

111: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:42:30.43 ID:HgBmFR610
一方通行「やだね。オマエがいくら嫌がったとしても、連れて帰る」

黄泉川「キモいじゃん!オマエみたいな1万人以上の人間を殺した犯罪者なんて死ねばいいじゃんよ!」

一方通行「御託は良いから出てこいよ。そンなに俺に死ンでほしいンなら、オマエが殺しに来い」

黄泉川「言われなくてもそのつもりじゃん!ただし、その役目は私じゃないけどな!出てこい!」

黄泉川の命令と同時、後ろから気配を感じた。
一方通行は振り向くが、筋肉質な女性、手塩恵未は既に彼の懐に飛び込んでおり、華奢な体にタックルをかました。

ゴロゴロと天然芝の上を転がる一方通行に追い討ちをかけるように、
熊のような男佐久辰彦が数mジャンプして、一方通行に拳を振り下ろした。

「ぐ……は……!」

しかし、悶絶したのは佐久のほうだった。

「ん?」

よく見ると、佐久の手足に穴が空いている。手塩がそう視認した時、グラリと揺れ彼は倒れた。
その先には、一方通行が超然と立っていた。手には、2丁の拳銃。その銃口を、今度は手塩へ向ける。

手塩「なるほど」

一方通行にタックルをかました時、手応えは確かにあったが何か釈然としなかった。
彼を倒すつもりでタックルをかましたのは間違いない。だが彼の体が、あまりにも転がり過ぎた気がしたのだ。

手塩(あえて、転がったな)

一方通行は手塩のタックル直撃寸前に、後ろへ跳んだのだ。
そして中途半端にタックルを受け、あえて転がる事でダメージを最小限に留めた。
それにより手塩や佐久に、わずかではあるが油断を生じさせたのだ。

あとは簡単。タックルの直後で動けないと思っている佐久の拳を避け、手足を銃で撃った。

112: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:43:46.78 ID:HgBmFR610
手塩「だが、この私を、拳銃程度で、仕留められると、思うな」

手塩は駆け出した。
同時、一方通行は拳銃の引き金を何回も引くが、上半身を振り、低く屈むなどして弾丸を全てやり過ごす。

手塩(もらった!)

そして身を低く屈めた手塩の拳が、一方通行を仕留める射程圏内に入った時、

一方通行「馬鹿だなァ、オマエ」

ぐしゃり、と。手塩の顔面に一方通行の膝がめり込んだ。

手塩「な、んで……」

低い体勢から仰け反り、ブリッジのようになった手塩の手足に、弾丸が撃ちこまれた。
もはや身動きすら取れない手塩に一方通行は答える。

一方通行「何でって、膝の前に顔面が来るほど身を屈めていたから、丁度いいと思って膝を出しただけだ。
     拳銃ばかり気にしているから、こういうことになンだよ」

手塩「そんなはずは、ない。膝蹴りなどの、反撃は、想定してある。それでも、私の拳が、先に届く、計算だった」

一方通行「だからまァ、摺り足気味に少しだけ前へ進ンで、オマエを見誤らせた。
     そしていよいよ俺の腹か顔面に拳を叩きこむ為に低く屈めた体を起こす一瞬を狙って、
     思い切り一歩前進して膝を出した。それだけの話だ」

手塩「なるほど……完敗だ。お前、アンチスキルに、なれるよ」

どォでもいい。と一方通行は吐き捨てる。

113: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:45:24.73 ID:HgBmFR610
黄泉川「ちっ!どいつもこいつも役立たずじゃん!」

声をした方を見ると、完全武装の黄泉川がいた。

黄泉川「能力も使えない。その拳銃もこの装備の前には無意味。お前はこれでおしまいじゃん!」

盾を前に出しながら、黄泉川は一方通行へ特攻する。

一方通行「オマエも馬鹿だなァ」

突っ込んでくる黄泉川に対し、一方通行は左に数歩移動する。
そして盾と足のわずかな隙間に右足を滑り込ませる。

黄泉川「へっ?」

素っ頓狂な声をあげながら、黄泉川は前のめりになって転んだ。

一方通行「オマエは眠っていろ」

黄泉川「ぐっ!」

盾が仇となり、起き上がれない黄泉川のうなじにスタンガンを当て、気絶させた。
その直後だった。

一方通行「……が!」

一方通行の後頭部に衝撃が走った。
たまらず彼は、何の確認もせずに銃口を後ろに向け引き金を引く。

「どこを狙っているのですか?」

声は真上から。今度は銃口を上に向け、引き金を引く。
しかし、ヒュン!と空気を切り裂く音が聞こえただけだった。

「拳銃如きでは、この僕は倒せませんよ」

今度は一方通行の真正面にテレポートしていた。

一方通行「……『死角移動』(キルポイント)か」

査楽「何ですかそれは。僕には査楽という名前があるのですよ」

どォでもいい、と一方通行は銃口を査楽に向けて引き金を引いた。
だが弾丸は、テレポートであっさりと避けられた。

114: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:47:28.99 ID:HgBmFR610
ヒュンヒュンヒュンヒュンと、査楽は連続でテレポートし一方通行を翻弄。
一方通行は走りながら査楽を目で追い、やたらと撃ちまくるが全て当たらなかった。

査楽は嘲笑うかのように弾丸を避け、動いている一方通行へ、時には殴り蹴り、ナイフで切り裂いたりした。
しかし一方通行は(査楽もいたぶるつもりで本気で殺そうとしていないとはいえ)致命傷は避け、
ダメージを最小限に留めた。

査楽「どうしたのですか!?超一流の悪党さん!」

一方通行「うるせェやつだ」

言いながらも、当たるはずないのに拳銃で撃ちまくる。

査楽「無駄ですよ!そんなものは当たりません!」

何発目になるかも分からない弾丸を避けつつ、一方通行の背中に拳を叩きこむ。

査楽(まただ……)

違和感。確実に手応えはあるのに何かしっくりこない。
ギリギリのところで、クリーンヒットは避けられているような、そんな気がする。
大体だ。一方通行は劣勢なはずだ。なのに。

査楽(何なんだその笑みは!?)

あまりにもふてぶてしい態度の一方通行に対して、言葉こそ強気に振る舞っていたが、心の中では若干の動揺があった。

一方通行「終わるぞ」

パンパンパンパン!と、もはや査楽を狙っていない4発の弾丸が放たれた。
先程走りながら新たな弾丸を装填していたが、今ので尽きたのか。
拳銃を持っている両手はだらりと下がっている。

査楽「何が終わりだと言うのですか!?」

一方通行の真後ろにテレポートした査楽は、持っていたナイフを突き出す。

査楽「終わりなのはあなただ!」

ナイフが一方通行の背中に当たり、ガキィン!と反射された。

査楽「な!?」

査楽が反射の反動で腕がビリビリしている間に振り返った一方通行は、
拳銃の引き金を引き彼の手足に弾丸を叩きこんだ。

115: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:49:38.05 ID:HgBmFR610
査楽「ぐ!な、んで、反射が……」

一方通行「俺は無闇やたらに拳銃を撃っていた訳じゃねェ。
     確かにオマエを狙って撃ちはしたが、外れてもAIMジャマーのワイヤーを撃ち抜けるコースに撃った。
     あとは分かるな?」

査楽「なる……ほど……それで能力を復活させたと」

一方通行「AIMジャマーはまだ少し残っているが、これだけ破壊すれば、今の俺なら暴走しねェ」

査楽「そうですか……敵いませんね。超一流の悪党には……」

一方通行「悪党とかどうとかにこだわっている内は、まだまだだな」

査楽「……そうかもしれませんね。ところで、いいことを教えてあげましょうか?」

一方通行「……」

査楽「僕がこのスタジアムの中で、能力を自由に使えた理由ですよ……」

一方通行「いらねェ。
     どうせ背中にAIMジャマーから出る特殊な電磁波をジャミング出来る装置を付けていた、とかだろ」

査楽「そうです。何だ、分かっていたのですか。そこまで分かっているのなら、僕の言いたい事、分かりますよね?」

一方通行「……」

査楽「AIMジャマーをジャミング出来る装置、あなたにあげますよ。
   これからもあなたが戦うのは、AIMジャマーが張り巡らされているようなところでしょう。
   それを妨害できる装置をあげると言っているのです」

一方通行「いらねェな。その提案、罠だろ?」

査楽「……ふふ。あなたにはつくづく敵いませんね。ですが、最後まで足掻ききって見せますよ」

言うが早いか、査楽はテレポートして黄泉川の側にテレポートした。

査楽「終わりです!」

ピーという機械音。そして――

ボッガァァァン!と、査楽が背中につけていたAIMジャマージャミング装置が爆発した。

116: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:51:06.66 ID:HgBmFR610
一方通行「チッ」

一方通行は舌打ちした。
自分が傷ついた訳でもないし、爆発の寸前に黄泉川に覆いかぶさって彼女も守り切った。
ただ爆発によって査楽に手塩、佐久が死んでしまった。

この戦争で一方通行らは1つの約束をしていた。
無傷で救えとまでは言わない。ただし死者は出来るだけ出さないようにしようと。

しかしながら正直なところ、知り合いならまだしも、他人なら動きを封じる程度に傷つけることに躊躇いはなかったし、
最悪死んでもいいとさえ思っていた。だが実際に目の前で死なれる(自分の仲間とあわよくば自分を殺すために)と、
なかなかに後味が悪い。

一方通行(暗部に居た頃は、こンなことでいちいち何かを感じる事なンてなかったが)

だいぶ日常に馴染んで、感覚が一般人よりになってきているのかもしれない。

一方通行(まァいい。最低限守りたい者は守り切った。あとは――)

救う作業が残っている。一方通行は黄泉川の頭に手を当て、脳内電流のベクトルを操る。

一方通行「――コマンド実行――削除」

要した時間はわずか2秒。黄泉川の体がビクン!と跳ねた。その直後だった。

ドゴン!と、スタジアムの天井が破壊された。

一方通行「何だ!?」

一方通行は身構える。破られた天井からは、その残骸と1人の人間。

一方通行「オマエは……!」

117: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:53:12.12 ID:HgBmFR610
泡浮「やりましたわね湾内さん」

湾内「そうですね泡浮さん。わたくし達の手で、憧れの御坂さんを葬ったなんて、夢のようですわ」

初春「まだですよ2人とも。よーく見てください」

言われて2人は、激流に流されたであろう御坂のほうを向く。
するとそこには、

絹旗「超大丈夫ですか?」

御坂「ええ。助かったわ最愛」

レベル5第4位、絹旗最愛が御坂の前で両手を水平に広げて立っていた。

初春「とんだ邪魔が入りましたね」

佐天「ま、絹旗さんも一緒に殺せばいいだけっしょ」

婚后「6対2で、優勢であることに変わりはありませんからね」

白井「油断は禁物ですわ。彼女は絹旗最愛。『窒素装甲』という能力で、窒素を纏う事が出来ますの。
   さらには、大気中にある窒素もある程度は操れるみたいですの」

一方で、御坂と絹旗は、

御坂「あなたが助っ人の1人だったのね」

絹旗「助っ人?何の事でしょうか?私はたった今出張から超帰ってきただけですが。
   この状況は一体どう言う事ですか?」

御坂「え?助っ人じゃないの?出張から帰ってきた?」

絹旗「ええ、そうです。私は4月8日から超出張に行っていたんですよ。
   それで第11学区を通って帰ってきたら、この状況です。
   もう何が何だか訳が分からなかったのですが……とりあえず御坂さんを守りました」

御坂「……ここ数日の学園都市についてのニュースを見ていないの?」

絹旗「ニュース?学園都市関連のニュースは一度もやっていませんでしたよ。この数日で超何かあったんですか?」

なるほど、道理で会話が噛み合わない訳だ。

御坂「よく分からないことあると思うけど、今の状況を詳しく説明している暇はないわ。けど、協力してほしい」

絹旗「はい。私に出来る事なら、超喜んで」

御坂「あの子達ね、食蜂に操られているのよ。しかもレベル5になっているわ」

絹旗「超マジですか……!確かにあの水流の威力はレベル4以上だとは思っていましたが」

御坂「あの子達を救いたいの。力を貸して」

絹旗「もちろんですよ。そして食蜂の雌豚を、超ぶん殴ってやります!」

御坂は既に氷を砕いて抜け出している。2人は身構えた。

118: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:55:29.60 ID:HgBmFR610
佐天「で、どうするの初春。また凍らせて水流で流すとか?」

初春「いえ、それはもういいです。一度破られた手で倒すのは何か癪なので」

婚后「破られたと言いましても、絹旗さんが助けに入ったからですし、初春さんが本気を出せば、どうとでもなるでしょう」

初春「そうですね。ですが、私の能力で勝ったら、あの人達を本当の意味で潰した事にはなりません。
   私のような凍らせるとか、熱で溶かすとか、そんなちまちましたものじゃなく、佐天さんみたいな能力で、
   力で叩き潰さないと」

白井「わたくしなら、体内に金属矢をテレポートで一発ですの」

初春「調子に乗らないでください白井さん。白井さんの座標攻撃は、動く事によって簡単に避けられます」

白井「それは初春もじゃないですの?」

初春「私はその気になれば、空間ごといけますから」

白井「初春のくせに生意気ですの。あとでお仕置きですわね」

初春「やれるものならどうぞ♪」

一方で、身構えていた絹旗と御坂は、

絹旗「なんか超喧嘩が始まりそうな空気ですが……」

御坂「どうでもいいわ。1つだけ言っておくけど、あの子達の言動には耳を傾けないで。救う事だけに集中するのよ」

絹旗「は、はい」

御坂「そして、ちょっときついだろうけど、最愛には佐天さんと婚后さん、湾内さんと泡浮さんをお願いしたいの。
   私が黒子と初春さんを取り戻すから」

絹旗「はい!」

御坂「それじゃあ行くわよ!」

6人の少女のもとへ、御坂と絹旗が先に仕掛ける。

119: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:56:26.94 ID:HgBmFR610
湾内「み、御坂さんが!」

湾内が叫んだときには、御坂は既に初春の懐に潜り込んでいた。

佐天「――っ、させませんよ!」

莫大な風を手中に収め、御坂だけに当たるように放つ。

絹旗「それは超こっちの台詞です!」

大気中の窒素を操り、風から御坂を守る。

白井「させませんわ!」

御坂の手があと少しで頭に触れるところで、初春は白井によってテレポートされた。

御坂(黒子からにするべきだったかな……!)

体勢を立て直すため、御坂は高速で後退する。

絹旗「やっぱりそう簡単にはいかないですね」

御坂「そんなことないわよ。さっきまでは手も足も出なかったけど、今は防戦にさせた。いけるわ」

120: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:58:28.08 ID:HgBmFR610
白井「全く、危ないじゃありませんの。わたくしがテレポートしなければやられていましたわよ」

初春「いらなかったですよ?寧ろ御坂さんにカウンターを仕掛けられたのに余計な事してくれやがって。て感じです」

白井「……めちゃくちゃ殴りたいですの。大体それなら、佐天さんはどうなんですか?」

初春「佐天さんはいいですよ。白井さんのような逃げではなく、前衛的な妨害ですから。
   直撃していれば、ダメージになりましたからね」

泡浮「まあまあ、お二人とも落ち着いて」

初春「呑気に落ち着いてじゃないですよ。
   湾内さんと泡浮さんと婚后さんは、御坂さんに全く反応できていませんでしたよね?
   油断している場合じゃないですよ?これだから温室育ちは……」

婚后「その言い方はないのではなくて?元はと言えば、お二人の言いあいから隙が生まれましたのよ?」

初春「油断させる為の演技ですよ。その証拠に、佐天さんはベストなタイミングで攻撃をしてくれました」

湾内「佐天さん凄いですわ」

佐天「へ?ま、まあそうですね~」

初春「お嬢様3人は気合入れてください。この調子だと、いくら6対2でも足を掬われますよ」

白井「偉そうに……」

初春「白井さんも、お嬢様3人ほどではないですけど、大した活躍してないですし、頑張ってくださいね」

婚后「いい加減にしてくださいません?初春さん感じ悪いですわ」

初春「それは悪かったですね。もともとこういう性格なので」

佐天「も、もういいんじゃないかな!?皆さん落ち着いて。初春もさ、もう煽るような事言うのやめようよ」

初春「佐天さんは黙っていてください」

佐天「むっ……」

121: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 00:59:49.06 ID:HgBmFR610
絹旗「また超口喧嘩です。ですが油断させる為と分かっていて、不用意には突っ込みませんよ。
   ここは遠距離から行きましょうかね?どう思います、御坂さん?」

御坂(何なのよ……)

初春と白井が喧嘩するのはまだ分かる。それぞれと2人きりでいるときに、それぞれの愚痴をよく聞いた。
ただ初春の態度が、面識がなかったはずのお嬢様3人組にも悪いのはどういうことか。
食蜂が言わせている?油断させる為?それにしたって、いくらなんでも無駄な会話が多すぎる。
というか会話自体が無駄でしかない。回りくどすぎる。

現状は6対2だ。単純に物量で攻めきればいい。現に油断作戦はお嬢様3人、いや、様子からして白井や佐天すらも
ギリギリ反応出来ただけで、作戦だとは思っていなかっただろう。訳が分からない。一体何がしたいのか。

御坂「ちっがーーーーーーーーーう!!」

御坂の突然の雄叫びに、その場に居る全員がビクついた。

絹旗「み、御坂さん!?」

御坂「ごめん最愛。もう大丈夫だから」

絹旗「は、はあ」

ゴチャゴチャ考えすぎていた。食蜂が言わせて遊んでいるのか、彼女達の本音なのか。そんな事問題じゃない。

御坂(最愛には注意しといて、私が忘れるわけにはいかないわよね)

洗脳中の敵と戦う時の鉄則。救うことに集中する事。

御坂(余計な事は一切考えるな。雑念を排除しろ)

パン!と御坂は自分の頬を両手で叩いて気合を入れ直す。

御坂「今度こそ行くわよ最愛!」

絹旗「はい!」

122: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:01:07.17 ID:HgBmFR610
御坂は駆けだした。今度の狙いは白井。今まではトロそうな初春を狙っていたが上手く行かないし、
まずは厄介なテレポーターを狙えと雲川に言われたのを思い出したのだ。

御坂「黒子大好き!愛しているわ!」

白井「ぬふぉおおお!?」

洗脳と言ったって、一から十まで完璧に操作している訳ではない。
ゲームで例えるなら、いつでも介入できるが、オートモードの状態。
そこを狙ってひょっとしたらと思い、ダメもとの嘘告白だったが案外効いているようだ。

御坂(チャンス!)

お嬢様3人組や佐天の妨害は絹旗が止めてくれる。ただ、もう1人いる。

初春「白井さんはほんとに!」

案の定初春が割り込んできた。
左手で白井の首根っこを掴み、右手で御坂に対抗しようとする。

御坂「初春さん調子のりすぎ!」

出来るだけ無傷で救いたかったが、やはりそれは無理そうだ。
いきなり頭を狙いに行くのでは駄目だ。確実に詰めていくほうがいい。

御坂は屈み、初春の右手を避け、逆にその腹に拳を叩きこんだ。

初春「こほっ!」

咳き込み、屈む初春の頭を触る為に、左手を伸ばす。

御坂(もらった!)

しかし正気に戻った白井がテレポートを実行し、初春と共に御坂から数m距離をとった。

123: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:03:46.39 ID:HgBmFR610
白井「お姉様の言うとおりですわ。初春は調子に乗り過ぎですの」

初春「そうですね。反省します。ということで、御坂さんは一旦放っておいて絹旗さんを先に潰しましょう」

御坂「筒抜けの作戦会議とか、私をなめているの?させないわよ」

初春「白井さんは絹旗さんのところへ行ってください。私もジャッジメントのはしくれです。御坂さんは私が倒します」

白井「分かりました。頼みますの」

テレポートを実行し、白井は消えた。

初春「いいんですか御坂さん?これで絹旗さんは5対1ですよ」

御坂「初春さんも行くならともかく、黒子だけなら仕方ないわ。
   私は最愛を信じている。それに、初春さんを救う絶好のチャンスだしね」

初春「思いあがらないでくださいよ。
   私はこの6人の中で、いえ、絹旗さんや御坂さんを合わせても1番強いですよ。
   加えて、御坂さんは電撃を使えません。雨に濡れた私を雷撃の槍で穿てますか?
   私を救うとしたら、無理ですよね?」

ニヤリと、不敵な笑みを浮かべる初春。対して御坂は、至って冷静だった。

御坂「初春さんこそ思いあがっているんじゃない?
   私としては最終的に救えれば、多少は黒焦げにしてもいいと思っているけど」

それに、と御坂は続けて、

御坂「電撃を使うまでもないわ。初春さん如き、体術だけで十分よ」

御坂も笑みを浮かべた。それは初春にとっては嘲笑に見えた。

初春「この人格破綻者が……男にも振られるし、友達も私達だけ。
   クローンは死なせる、駄目人間が調子こかないでください」

男に振られる。クローン。白井がバラしたか、食蜂が言わせているか。
でもそれは一旦置いておく。

御坂「その駄目人間に、あなたは救われるのよ。それにしても随分と毒を吐くけど、その調子じゃ友達なくすわよ」

初春「御坂さんには言われたくないです。変態の後輩がいるだけのくせに」

御坂「お洒落のつもりなのか知らないけど、頭に花飾り乗っけている変人になにを言われても」

初春「御坂さんのお子様センスに比べればマシですよ」

御坂「目上の人にそんなに失礼な態度とっちゃ駄目ね。人生の先輩として教育が必要なようね」

初春「御坂さんも目上の人に失礼だったりしますけどね」

ひとしきりの煽りあいが終わり、2人の眼光が鋭くなる。
そして――

御坂「いくわよ!」初春「いきます!」

同時に駆けだした。

124: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:06:05.80 ID:HgBmFR610
湾内「さすがレベル5第4位ですわね!」

湾内と泡浮は水流攻撃を行っているのだが、窒素を纏い操る絹旗に、まともにダメージを与えられてはいなかった。

婚后「お二人とも避けて!」

婚后と佐天の能力で、噴射点が作られた倉庫が次々と発射される。

絹旗「甘いです!」

飛んでくる倉庫に向けて、絹旗はその場で思い切り拳を前に突き出す。
それだけ。たったそれだけで、絹旗を狙って放たれたいくつもの倉庫は粉々に破壊された。

婚后「馬鹿な!?なぜ!?」

白井「狼狽している暇はありませんのよ、婚后さん!」

テレポートしてきた白井が、婚后に喝を入れつつ、太腿のホルダーから金属矢を取りだした。

それを見た絹旗はバックステップ。
直後、絹旗が先程まで居た場所に、金属矢がテレポートされていた。
そのまま突っ立っていたら、肩や心臓、ふくらはぎを貫かれていただろう。

絹旗「っつ!」

しかし、左肩と左ふくらはぎに激痛。左肩を見ると、金属矢が刺さっている。

白井「甘いですわよ絹旗さん。金属矢は、あなたの体を直接狙うモノだけではありませんのよ」

つまり、白井はバックステップするのを見越して、絹旗の後ろにも金属矢をテレポートしていたのだ。
絹旗は攻撃が来る座標に自ら跳び込んだようなものだった。

婚后・湾内・泡浮「「「今ですわ!」」」

ここぞとばかりに水流と、倉庫が襲い掛かってくる。

絹旗「さすが白井さんです……!ですが――」

絹旗は右腕を振りまわす。それだけで水流は弾かれ、倉庫は砕け散った。

125: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:08:31.63 ID:HgBmFR610
佐天「もう!何でなのーっ!」

佐天が叫んで攻撃を止める中、お嬢様3人は攻撃を止めない。
絹旗はそれらの攻撃を全て防ぎながら、白井のテレポート攻撃を避けるために不規則に動きまわっていた。
白井はその佐天の近くにテレポートする。

白井「簡単な事です。
   絹旗さんは周囲にあえて不安定な窒素の壁を作り、それに衝撃を加える事で窒素を遠距離まで飛ばしていますの」

つまり、絹旗は削板の『念動砲弾』(アタッククラッシュ)に近い事の窒素バーションをやっていたわけだ。
これは削板に教わったものではなく、絹旗が一人で生み出した技だ(削板自身も無自覚に感覚で行っていた技なので、
そもそも教わる事が出来ないが)。意外と絹旗と削板のセンスは似ているのかもしれない。

佐天「えっと、よく分からないです。つまりどう言う事なんですか?」

白井「遠距離攻撃じゃ、碌にダメージも与えられないと言う事ですわ」

佐天「ええ!?でも絹旗さんは窒素を纏ってもいるんですよね?
   だとすると、近距離も駄目、遠距離も駄目、絶対防御じゃないですか!」

白井「そうですわね。このままだと、いたずらに能力を消費するだけですの」

佐天「そ、それです!能力を消費させればいいんですよ!」

白井「それは無理ですの」

佐天「な、何でですか?」

白井「絹旗さんの防御力が、私達の攻撃力をはるかに上回っているからですの」

佐天「つ、つまり?」

白井「あそこの婚后さん派閥の3人組、あの人達の全力の攻撃を、絹旗さんは少しの力で難なく防ぐ事が出来ますの。
   先にバテるのは、こちらと言う事ですわ」

佐天「じゃあ、どうするんですか?あれだけ動きまわられたら、白井さんのテレポートも通じませんし」

白井「左肩と左ふくらはぎを痛めた状態で長い間動きまわるのは不可能ですの。いずれ疲れますわ。
   それにその気になれば、絹旗さんを中心にして半径5mは串刺しに出来るほどの金属矢は持っていますの」

佐天「そ、その手がありましたね!」

白井「ですが、あっさり終わらせてはつまらないですから、ここはじっくりといたぶって差し上げましょう」

126: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:11:19.64 ID:HgBmFR610
婚后「ああ、もう!」

もう何個目かになるか分からない倉庫を発射したが、例によって粉々に破壊された。
倉庫街とは言え、限りはある。このままだと倉庫が無くなってしまう。

絹旗(これならいけますね!)

右腕を振り回して攻撃を全て防ぎながら、左肩と左ふくらはぎの痛みを我慢して走り回る。

絹旗「ぶへっ!」

何かにつまずいて転んだ。
この私がつまずく!?一瞬動揺した絹旗だったが、答えはすぐに分かった。

金属矢が3本、地面に刺さっていたのだ。

金属矢ぐらい、つまずくどころか蹴り曲げてしまいそうだが、それは出来なかった。
絹旗は現在、窒素を20cmほど纏っているが、バランスを考えて体の随所に窒素の薄い部分が存在する。
それの一番顕著な部分が足付近。だから転んだ。

絹旗(超マズいですね!)

呑気に倒れている場合じゃない。白井が金属矢をテレポートしてくる!

絹旗(転がる!?いや――)

それじゃあ駄目だ。
白井は転がる事も予期して、金属矢を横にもテレポートしてくるかもしれない。

絹旗(ここは!)

両腕で少しだけ上体を起こして、なりふり構わず前へ転がる。
その直後だった。先程まで絹旗の居た場所とその左右の地面に金属矢が刺さっていた。

佐天「隙だらけですよ、絹旗さん」

転がり、立ち上がったばかりの絹旗の窒素に覆われた背中に佐天の右手が触れた。
背中の窒素に、噴射点が作られる。

絹旗(しまっ――)

噴射点から莫大な空気が噴き出す。
絹旗はミサイルのごとく発射され、倉庫群を突き抜け、数百mほど吹き飛ばされた。

127: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:16:46.20 ID:HgBmFR610
絹旗「超痛ってーな」

倉庫をいくつも突き抜けながら数百mほど吹き飛ばされたにもかかわらず、目立った外傷はなかった。

佐天「ほ、ほんとに無事だ……」

泡浮「驚きですわ……」

湾内「ひょっとして不死身のお方なのでしょうか……」

婚后「そんな非科学的なこと、ありえませんわ……」

白井「婚后さんの言うとおりですの。彼女は不死身でも何でもありません。
   レベル5の『空力使い』の一撃を受けても、さほどダメージにならないほどの防御力を有しているだけですの」

白井がテレポートしてきたのだろう。
5人の少女は絹旗の目の前でそんなやりとりを繰り広げた。

絹旗「あなた達の攻撃が超弱すぎるだけじゃないですか?」

婚后「何ですかその言い草は!?わたくしを常盤台の婚后光子と知っての狼藉ですの!?」

絹旗「超事実を述べただけです」

婚后「もう我慢できませんわ!」

白井「お待ちください婚后さん。絹旗さんの狙いは、挑発してあなた達に能力を使わせるつもりですの」

婚后「そ、そうなんですの?」

絹旗「さすが白井さん、超冷静ですね」

白井「随分と余裕なようですが、わたくしがその気になれば、絹旗さんなど瞬殺ですのよ?」

絹旗「そう言うのは実際にやってから言って下さいよ。
   瞬殺できるとか粋がるやつに限って、逆に超あっさりやられるような噛ませ犬のキャラですよね」

白井「その減らず口、金属矢で閉じて差し上げましょうか?」

絹旗「やれるものなら」

ギリッ!と白井の歯軋りが、全員の耳にはっきりと届いた。

佐天「白井さんが挑発に乗ってどうするんですか!」

白井「分かっていますわ。わたくしは大丈夫ですの」

128: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:20:17.13 ID:HgBmFR610
白井「絹旗さんは私を怒らせ、能力を乱発させ、金属矢のストックを失わせると同時、疲労させるつもりかもしれませんが」

そこで一旦言葉を区切ると、開いた右手を絹旗に見せつけた。
白井が何をしたいのか分からない絹旗は、眉をひそめる。

白井「その陳腐な企みは通じませんの」

ヒュン!と白井の開いた右手の指の間に金属矢がテレポートされた。

白井「レベル5となったわたくしは、直接触れていないものもテレポートできますの。
   つまり、金属矢がなくなることはありません。
   それどころか、精度は落ちますが、転がっている金属矢を絹旗さんの体にねじこむ不意打ちも出来ますしね」

さらに言うと、金属矢ではなくその辺りの瓦礫でもいい訳ですし、
絹旗さん自体を壁や地中に埋める事も出来ますしね。と白井は饒舌に語った。

白井「とにかく、絹旗さんはそんな相手に挑発しているんですのよ?喧嘩を売る相手は選んだ方が良いですわよ」

おほほほほ。と似合わない笑い方をする白井を見て、絹旗は呆れながらこう言った。

絹旗「哀れですねぇ白井さん。本気で言っているのだとしたら、ハグしたくなるぐらい超哀れです」

呆れから、わずかな笑みを浮かべながら絹旗は続ける。

絹旗「確かに、白井さんが言った攻撃方法は極めて厄介です。ですが、超完璧ではありません」

白井「なかなか大口を叩くではありませんか。一体どうやって、わたくしの多彩な攻撃を防げると言うんですの?」

絹旗「超簡単ですよ。
   私が動きまわれば、私自身のテレポート、金属矢などの異物を体にテレポートされることもありません」

白井「ですが」

絹旗「先程のように転ばせるなどして私の動きを止める。
   もしくは私とその周囲の座標に、まとめて異物をテレポートする超力技がある。と、言いたいんですよね」

白井「そ、そうです。それをどう防ぐと言うんですの?」

絹旗「そこは超逆転の発想ですよ。周りの異物を動かせばいいんです」

佐天「そ、それってどういう……」

絹旗の発言に対して言葉を発したのは、佐天だった。

129: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:22:38.07 ID:HgBmFR610
絹旗「私が衝撃を超飛ばすことで、周囲の異物を絶え間なく動かし続け、テレポートを妨げるという事です」

白井「なるほど。ですがやはり、私には勝てませんわね」

言いながら白井は、人差しと中指を立て、

白井「理由は2つ。まず1つ目は、そんなことをしていたら先にバテて能力が使えなくなるのは、絹旗さんの方ですの」

絹旗「どうでしょうか?あなた達の超全力の攻撃は、それほど力を使わずに防ぎきれますが」

佐天「そ、そうですよ白井さん!絹旗さんまだまだ余裕そうだし、先にバテるのは私達じゃないですか?」

白井「落ち着きなさい佐天さん。これからは、能力は最低限にローテーションで攻撃して行きます。
   たとえば、婚后さんと湾内さんが攻撃している間、佐天さんと泡浮さんは休む。と言う風に」

佐天「なるほど!それならいけますね!」

白井「まあ本当はそんな事する必要もないですのよ。2つ目の理由。わたくしから異物をテレポートする。
   この最も基本的な、わたくしからのテレポートを防げない限り、根本的解決にはなりませんわ」

両腕を組んで、勝ち誇ったような顔をする白井。対して絹旗も、笑みを浮かべていた。

絹旗「だから、そんな事で勝ち誇っている白井さんが超哀れだって言っているんですよ」

婚后「まだ強がりますか!」

白井「なぜ婚后さんが怒りますの?これは挑発ですわ。いちいち答えなくてもいいですの」

絹旗「挑発でも何でもありません。超単純に感想を述べたまでです」

どこまでも強気な絹旗に、白井は怪訝そうな顔をする。

絹旗「白井さんの言う通り、白井さん自体をどうにかしないと根本的解決にはなりません。
   つまり、今までのテレポートの攻略が出来る出来ないとか言う会話は、ほぼ無駄なことだったんです」

佐天「じゃ、じゃあ何で!?」

絹旗「佐天さんは体力があるのか、途中から攻撃をサボっていたからかは分かりませんが、あまり疲れていないようですね。
   ですが、そこのお嬢様3人組はどうでしょう?
   もともと超温室育ちだった上に、この激しい戦闘。体力なんて保たないんですよ」

佐天「つ、つまり?」

絹旗「この無駄な会話は、彼女達の回復の為だったんですよ」

佐天「ええ!?そうなんですか白井さん!?」

白井「なぜそれに気付いていながら、会話を無駄に繰り広げたんですの?」

絹旗「私も、超疲れていたからですよ」

白井・佐天「「え?」」

この事実に佐天はもちろん、さすがの白井も驚いた。

130: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:24:07.64 ID:HgBmFR610
絹旗「レベル5の攻撃が3~4人ですよ。いくら私が超防御に特化した能力とは言え、バテない訳ないですよ。
   特に最後の佐天さんの攻撃はヤバかったですね。いや~、白井さんがお喋りなおかげで、そこそこ回復しましたよ」

佐天「そんな……じゃあ攻め続けていればよかったの?全然苦しそうじゃなかったのに……」

絹旗「ポーカーフェイス超うまいでしょ?C級映画ならヒロイン張れますね」

白井「……ですが、結局は一時凌ぎなだけ。
   これで攻め続ければ良いと言う事は分かりましたし、何よりわたくしを攻略しない限りは」

絹旗「一時凌ぎ?超違いますよ。白井さんを攻略する為、体力回復を図っていたんです」

白井「能力や体力が少し回復したところで、わたくしを」

絹旗「超攻略できますよ。『倒す』っていう、単純な方法で」

白井「だからわたくしを」

絹旗「倒せます。一瞬で。皆さんも同時に」

絹旗の一言に、5人の少女の間に動揺が走る。

白井「ぶ、ブラフですの!」

絹旗「信じる信じないは皆さんの超勝手です。
   ただ1つだけ言える事は、一瞬で決着(ケリ)つけてやる。ということだけです」

131: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:29:23.48 ID:HgBmFR610
結論から言うと、決着は本当に一瞬でついた。右拳を上げ、下ろす。
絹旗がこの動作をしただけで、5人の少女は地にひれ伏す形となった。

白井「これは……一体……」

今も続いている何らかの圧力で地に伏せられた白井は、当然の疑問を口にした。

絹旗「超簡単な事です。窒素で皆さんを抑えつけた。ただそれだけです」

白井「そんな……事が……」

絹旗「しかしこの技は、超集中力を使います。長くは保ちません。ですから」

言いながら伏している佐天に近付き、その首にチョップをお見舞いした。
佐天の意識はそれで断絶した。

絹旗「こう言う風に、1人1人潰していきます」

婚后、湾内、泡浮の3人を次々と気絶させていく。そしていよいよ白井の番。

絹旗「テレポーターだからって、超調子に乗りすぎましたね」

白井「完敗ですわ」

そうして絹旗のチョップが白井の首に当たる直前――

絹旗「っぐ!」

右脇腹に衝撃。絹旗は横合いに数mぶっ飛んだ。

132: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:30:37.45 ID:HgBmFR610
絹旗(一体何が……)

絹旗は窒素を操り、白井達を抑えている時も窒素の装甲は解いていない。
不意打ちを受けたって、問題ないはずなのに。痛む右脇腹を抑え、白井の方を見る。
その側に立っていたのは、

「調子にのってンのは、絹旗ちゃンの方じゃねェのォ!?」

肩甲骨の辺りまで伸びている黒い髪。
小柄な身体を締め付けるように、黒い革と錨で出来たパンク系の衣装で身を包んだ、黒夜海鳥だった。

絹旗「お前……超生きていたんですか……」

黒夜「誰も死ンだなンて言ってねェけどなァ」

白井「あなたは一体何ですの!?」

黒夜「あァ?うるせェな」

黒夜の脇腹から、赤子のような機械の腕が無数に飛びだし、白井を殴りつけた。
あまりに突然すぎて、絹旗はもちろん、殴られた白井ですら悲鳴を上げる事はなかった。

絹旗「何……で……」

唐突な出来ごとの連続に、絹旗の頭はパンクしかけていた。

黒夜「落ち着け。オマエが疑問に思っている事は大体分かる。今からその答えを教えてやる」

133: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:31:41.80 ID:HgBmFR610
圧倒的速さで初春の後ろに回り込んだ御坂は、脇腹を狙って回し蹴りを放つ。

対し初春は、思い切り屈み回し蹴りを回避しつつ、反時計回りの水面蹴りで御坂の左足を払う。
そうして前のめりになって、地面に倒れそうになった御坂の顔に肘を叩きこむ。

ぐらり、と後ろに仰け反る御坂に追い討ちをかける為、氷のメリケンサックをつけた左手で殴りかかる。

しかし御坂は、踏ん張らずにそのまま背中から倒れて行く。
結果左拳が空を切り、前のめりになった初春の顎に衝撃が走った。

御坂が地に手をつき、バク転の要領で初春の顎を蹴ったからだ。

逆にフラつく初春を見て、チャンスとばかりに頭を触る為に左手を伸ばす。

しかし今度は御坂が虚を衝かれた。
何とか踏ん張った初春が左手を避け、頭突きをかましたからだ。

御坂「いっ!?」

またしてもグラつく御坂に、初春は飛び蹴りを放つ。

今までのアクションもそうだが、さすがに飛び蹴りが来るとは思わなかった御坂はモロに飛び蹴りを腹に喰らい、
地面を転がった。

134: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:34:45.77 ID:HgBmFR610
御坂「初春さんのくせに、やるじゃない」

褒め称えているのか、馬鹿にしているのか分からないような事を言いながら御坂は立ち上がる。

初春「いつまで上から目線でいるんですか?もう御坂さんの負けですよ」

初春は右手を前に出す。それだけ。
それで御坂の薄ピンクのウインドブレーカーが突如燃えだした。

御坂「あつっ!」

なりふり構わずチャックを下ろしてウインドブレーカーを投げ捨てる。
真ん中にピンクのハートがプリントされたTシャツが露になる。

御坂「くそ……!」

初春「だっさいTシャツですね。大丈夫です。ぜーんぶ吹き飛ばしてあげますから」

何を言っているのかよく分からなかったが、その答えをすぐに身を持って知る。

ボンッ!と、ステンレスのシンクに熱湯をかけたような音。
御坂の背後の空間が爆発した。

御坂「あぐっ!」

不意打ちの爆発に対応できなかった御坂は前に吹き飛び、地面に膝をついた。

初春「爆発とは、気体の急速な熱膨張を指すんですよ。私の言いたい事分かりますか?
   私の能力をもってすれば、こうして擬似的爆発を起こせるんですよ。座標や範囲、威力も思いのままに、です」

手を御坂の顔面が見えないようにかざす。
もういつでも御坂を包み込むぐらいの爆発は出来る。

初春「もう分かったでしょう?温度を操作する事によって生まれる数々の座標攻撃。
   はっきり言っておくと、電撃だって氷の盾を生み出す事によって防げます。
   私には協力者がいて、御坂さんの座標は常に把握していますから、逃げるのも無理です。
   信じる信じないは自由ですけどね。詰みなんですよ。諦めて食蜂さんの傘下に入ってください」

御坂「……ふっ」

短く息を吐き、御坂はゆっくりと立ち上がる。

御坂「お断りよ。誰があんな奴の下につくもんですか。食蜂の傘下に入るぐらいなら、黒子と1日デートの方がマシよ」

初春「……状況分かってないんですか?死ぬか従うか、御坂さんにはこの2択しかないんですよ」

御坂「それは違うわ。第3の選択が残っているわよ。あなたを殺すって言う選択がね」

135: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:37:44.78 ID:HgBmFR610
初春「私を殺す?どうやって?」

御坂「『超電磁砲』で」

初春「そうか。そういうことですか」

初春は氷の盾を生み出し、電撃を防ぐと言った。確かにエネルギーである電撃はそれで防げるかもしれない。
だが物理的なモノを媒介にして射出する『超電磁砲』なら氷の盾を貫く事が出来る。

初春「いいんですか?本当に私を殺しちゃって。佐天さんや白井さん、上条さんは幻滅するでしょうね~」

御坂「別に。仕方ないわよ。私は自分の命が可愛いし、食蜂に従うのもプライドが許さない。
   この2つを達成する為なら、軽蔑されても構わないと思っているわ」

初春「本気、なんですね?」

御坂「ええ」

初春「うわああああああああああああ!」

悲鳴。
同時、御坂がいた空間が爆発する。しかし御坂は避けていた。

初春(マズいマズいマズいマズい!)

初春は周囲に爆発を乱発していた。
初春の今までの戦略は、自分が絶対に殺されないという状況があったからだ。
だってそうだ。体術だって電撃だって、よほどじゃない限り喰らったって死にはしない。
相手は救うために戦っている。手加減される事は必至だったわけなのだから。

だが『超電磁砲』は違う。音速の3倍以上で放たれるそれは、喰らえばまず即死だ。

物理的なものだからこそ、氷の盾は無意味と化し、逆に爆発は通用するが、音速の3倍以上のそれを爆撃出来るはずがない。
結局、殺す気になった御坂の『超電磁砲』など止める術はない。否、この爆発の乱発すら無意味だった。

ドゴォォォン!とコンテナを媒体にした『超電磁砲』が爆発など突き抜けて、初春の目の前の地面に直撃した。

初春(くぅ!)

初春は即席で氷の盾を生み出し、地面の破片や余波をなんとか凌ぐ。
その間に、本当に居た協力者からの信号を受け取っていた。『コンテナの中に入った御坂がそっちに飛んで行く』と。

初春(ちょっと意味が分からないですが……)

協力者の信号通り、コンテナが飛んできた。
数は5個。どれに御坂が入っているのかは分からない。

初春(なら全部吹き飛ばせばいいだけ!)

バゴォン!とコンテナは爆発し火に包まれ、もろくも地面に落ちた。

初春「やった!?」

やってなどいなかった。ボフッ!と煙をかき分け御坂が手を伸ばす。ごく単純な話。
初春がコンテナを爆発させる寸前に、コンテナから飛び出ただけのことだった。

初春(――くっ!)

御坂(勝った!)

完全に意表を突かれた初春の様子を見て、御坂はそう思った。
しかしここで、御坂の予想を超える出来事が発生した。

ボンッ!と御坂と初春の間の空間が爆発した。
2人は爆発をモロに受け、吹き飛ばされた。

136: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:39:40.86 ID:HgBmFR610
超至近距離で爆発を喰らって、うつ伏せに倒れている御坂には立ち上がる力が残っていなかった。

御坂(くっそ……)

初春「無様ですね、御坂さん」

爆発の煽りを受けたはずの初春は、御坂を見下ろしていた。

御坂「な、んで……」

頭の花飾りはなく、柵川中学の冬服も焦げていることから、煽りを受けていない訳ではないはずだ。

初春「あの爆発と同時、咄嗟に氷の盾も生成したんですよ。
   即席だったので、おざなりなものでしたが、こうして立ち上がれるほどには防げましたよ。
   惜しかったですね~。私を殺すつもりなら勝てたでしょうに、救うために戦ったばかりに、
   こんな結末になっちゃって」

あはははは!と初春は嘲笑いながら、御坂の頭を踏みつける。

御坂「くぅ……」

拳を固く握り締め、立ち上がろうとするが、体は動かない。動いてくれない。

初春「今の私なら、触れた個所の細胞を完璧に死滅させる事が出来ます。
   つまり、一生モノの傷をつける事が出来るんです。どうしましょうか?
   御坂さんの×××に指突っ込んで、子供を産めない体にしましょうか?
   それとも死にますか?それとも、食蜂さんの傘下に入りますか?」

御坂「……どれもお断りよ。私は死なないし、食蜂の傘下にも入らない」

初春「……状況分かっています?御坂さんには選択権はないんですよ」

御坂「そうね。私は敗者。選択権なんてない。けど、アイツがいる。
   アイツが私を死なせないって、守ってくれるって約束したから」

初春「はっ!何を言うのかと思えば、結局は他人任せですか!例の上条さんですか?
   無理ですよ。戦いはここだけで行われている訳ではありません。そんな都合よく来るはずがありません」

御坂「来るわよ……」

初春「来ないですよ!そんな少年漫画みたいな展開、あるわけないんですよ!」

言いながら初春は、御坂の腹を思い切り蹴った。
その後少し離れ、極めて小規模な爆発を、御坂の体の各部位に起こす。

ボッボッボッ!と連続で爆発を喰らった御坂は額からは血を流し、全身には火傷を負った。
もはや悲鳴をあげることすら出来なかった。

御坂(私……ここで……死ぬのかな……)

薄れゆく意識の中で、漠然とそんな事を思っていた。
やっぱり都合よく助けてくれるヒーローなんていなかったのか。

御坂(私って……ほんとバカ……)

そりゃそうだ。来る訳ない。初春の言う通り、戦いは各所で行われているだろう。
だとすると助けに来る余裕はない。仮に戦いに勝利し余裕があったとしても、この場所が分かるとは限らない。
助けに来るなんて幻想を、どうして考えてしまったのだろう。

御坂(まあ……食蜂の下につく位なら……死んだ方がマシか……)

喰らった爆発は合計5発。腹部に両手と両脚だ。多分次は顔面に来る。

初春「さよなら」

御坂は死を覚悟して目を閉じた。
そして――

137: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:41:20.66 ID:HgBmFR610
初春「ぐふぅ!」

初春の悶絶した声。御坂は目を開いて初春の方を見る。
そこには。

片膝をつく初春に、彼女の頭の上に右手を置いている一方通行だった。

一方通行「――コマンド実行――削除」

要した時間はやはり2秒。
初春の体は痙攣したように動いたかと思えば、そのまま地面に崩れ落ちた。

御坂「あくせ……られーた……」

一方通行「遅くなってすまなかった」

御坂「そ、れは……春上さん?」

一方通行が左手で抱えている人間を見て、御坂は尋ねる。

一方通行「名前は知らねェけど、ここに来る途中にいたから、ついでにな。オマエはもう喋ンな。一旦病院に戻るぞ」

右手に初春、左手に春上を抱え両手がふさがった為、御坂は背負うことにした。

御坂「待って。最愛が……最愛が黒子達と……」

一方通行「さすがにこの人数を抱えて戦うのは厳しい。だが大丈夫だ。
     手は打ってある。だから、オマエは安心して眠っていろ」

御坂「信じて……いいの?」

一方通行「あァ」

とても短い返事。何の根拠も説明もない。しかし、その声には力強さがあった。

御坂「分かった……」

そうして御坂は、眠りについた。

138: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:44:12.32 ID:HgBmFR610
黒夜「まず私が死ンでない事についてだが、オマエとの戦いの後生き延びて、こうして復活を遂げた。
   ただそれだけ。次に、何で私がこのツインテールを殴ったのか。これも簡単。私は食蜂の味方ではないからだ。
   オマエを倒すという目的の達成の邪魔になる奴は、食蜂の手駒でもぶっ潰す」

そして、と食蜂は続けて、

黒夜「オマエが最も疑問に思っているであろうこと。なぜ窒素を纏っていたのにもかかわらず、攻撃を受けたのか。
   簡単だよ。私のこの機械の腕は窒素を吸収し放出する。窒素に頼っているオマエにとっちゃあ、天敵ってワケだ」

絹旗「要するに、私に対して復讐を超遂げたいってことですか」

黒夜「そうだ。だが弱ったオマエを仕留めても意味ねェ。やるなら、万全のオマエをやらねェとな」

そう言うと黒夜は、救急箱を投げた。

黒夜「それで一通りの応急処置が出来る。学園都市製の栄養ドリンクも入っている。
   それらで体調を万全に整えろ。5分待ってやる」

絹旗「……いいでしょう」

『暗闇の五月計画』で何ヶ月か一緒に過ごした絹旗と黒夜は、互いにある程度の事は知っている。
だから黒夜は絹旗の疑問を、思考パターンを推測して答えられたのだ。

それは逆にも当てはまる。絹旗も黒夜の思考がある程度分かる。
黒夜は基本的には攻撃的で、勝つために手段を選ばない。体を改造したことからも一目瞭然だ。

しかし彼女は、基本的には小細工や戦略を好まない。とにかく力で叩き潰す。
因縁があればある相手ほど、力で叩き潰す傾向は強くなる。そんな人間だ。

だから多分、5分ぐらいなら待つし、栄養ドリンクが毒薬と言う事はない。
そして機械の腕のトリックをわざわざ教えた。機械の腕について知らなかったから負けた。
という言い訳をさせない為に。完璧に力のみで叩き潰したと言う事を証明する為に。

どの道だ。左肩とふくらはぎに金属矢は刺さっているし、結構疲れていたところだ。この状況に甘んじるしかない。

139: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:47:11.87 ID:HgBmFR610
3分が経過した。
絹旗は刺さっていた金属矢を抜き、応急処置を終え栄養ドリンクを飲んだ。

黒夜「思ったより早く終わったな。しかし5分と言った以上、まだやらない。
   そっちにとっても悪い話じゃないだろ?休めるンだから」

絹旗「……ええ、超そうですね」

黒夜「相変わらず無愛想だねェ。まァいいや。もう一度言っとくが、私のこの機械の腕は窒素を吸収し放出する。
   オマエの『窒素装甲』は通用しねェからな」

絹旗「ですが、お前の『窒素爆槍』(ボンバーランス)も私には超通用しません」

黒夜「そンなこと分かってンだよ。だからオマエには使わねェ。オマエにはこの腕だけで攻撃する」

絹旗「いよいよプライドまでも超捨てましたか。能力ではなく科学の力で勝って、それで満足ですか?
   だったら安心です。そんなプライドの欠片も持ち合わせていない、からくり仕掛けのお前など軽く捻ってやりますよ」

黒夜「絹旗ちゃンよォ、オマエの考えは手に取るように分かるよ。
   そうやって挑発して私の能力を使わせまくり疲弊させ、機械の腕も極力使わせないようにする。だろ?
   残念。そンな挑発には乗りませン」

絹旗(チッ)

絹旗は心の中で舌打ちをした。黒夜の言っている事が図星だからだ。

絹旗は脇腹に痛烈な一撃を喰らっている。窒素を吸収し放出する。は多分真実だ。
だから使わせたくない。が、そんな単純な思考、読まれて当然だった。

『窒素爆槍』が効かないとはいえ、明らかに劣勢だ。機械の腕は2本とかじゃない。実に数千本はあるのだ。
いくら赤子のような腕とは言え、それを一斉に喰らえばひとたまりもない。

絹旗(どうすれば……!?)

逃げるか。いや無理だ。黒夜は『窒素爆槍』を放出して空を飛べるほどだ。
機動力では相手の方が上。逃げ切れるわけがない。背を向けた時点で負ける。

そうなると、やはり真っ向勝負しかないのか。
無理だ。1対1じゃあどうしようもない。誰か助けにきてくれないものだろうか。

絹旗が悩んでいると、黒夜はそれを見透かしたかのように口を開く。

黒夜「悩ンでるねェ。でもその時間ももうお終いだ。5分経った。いくぞ」

絹旗「ちくしょう!」

黒夜の機械の腕が絹旗に伸びる。戦いが始まった。

140: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:50:25.06 ID:HgBmFR610
絹旗「うおりゃー!」

絹旗はとにかく逃げ回り、機械の腕を潰す為に倉庫の瓦礫やコンテナを投げまくる。

黒夜「何だそりゃ」

しかし『窒素爆槍』でそれらは粉々に砕かれた。絹旗本人に通用しなくても、瓦礫などには通用する。
そして機械の腕は絹旗に迫る。

絹旗(考えろ。考えるんだ)

懲りもせず逃げながらコンテナなどを投げ、時間稼ぎをしながら考える。
しかしながら、コンテナや倉庫にも限りがある。そこまで時間はないだろう。

絹旗(『窒素爆槍』は掌から出す……って、そんな分かり切った事何の解決策にも――いや、掌……掌だ!)

ある1つの可能性に気付いた絹旗は、転がっていたコンテナの上に跳び乗り、さらに倉庫の上に跳び乗った。
そんな絹旗を追い、機械の腕が伸びてくる。

絹旗「そこです!」

絹旗は右拳を握るという動作をした。同時、グシャア!と機械の腕約100本が潰れた。

絹旗「窒素を吸収し放出するのは、掌からだけだと思いましてね。どうやら超ビンゴのようですね」

要するに絹旗は窒素を操り機械の腕の掌ではなく、腕部分を狙って破壊したのだ。

黒夜「ほォ」

絹旗「それに自分で言っていて、超気付きましたよ。吸収し放出するってことは」

言いながら絹旗は、今できる最大限の窒素を操り黒夜に“投げた”。
当然黒夜は機械の腕を出して応戦する。

ボッシュウウウウウ!という音と共に窒素は吸収され、黒夜の脇腹から出ていた機械の腕は全て砕け散った。

絹旗「吸収しきれないほどの量の窒素をぶつければ、破壊されると言う訳です」

黒夜「大正解だ」

機械の腕全てを失ったと言うのに、黒夜は余裕そうだった。

絹旗「何余裕ぶっこいているんですか。お前の負けですよ。黒夜」

黒夜「オマエはさ、いつまで経っても短絡的だよなァ。1つの攻撃手段を潰しただけで、なぜ勝ったと言い切れるンだ?」

絹旗「何が言いたいんですか?」

黒夜「オマエを潰す手段は、まだあるンだよ」

言うが早いか、黒夜は跳び、3mの高さの倉庫の上に居る絹旗の眼前に現れ、彼女の顔面に拳を叩きこんだ。
その拳で絹旗はふらつき、倉庫から落ちた。

141: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:54:52.00 ID:HgBmFR610
絹旗「まさか……お前も……」

鼻っ柱を押さえながら絹旗は呟く。

黒夜「だから言ったろ?短絡的すぎンだよ。オマエは」

バゴォ!と絹旗の腹部に蹴りが叩きこまれた。
それは人間の脚力の比ではなく、絹旗は数十m地面を転がった。

絹旗「おえぇ!」

口からは血が溢れ、悶えることしか出来ない絹旗の前に黒夜は立つ。

黒夜「オマエの読みは途中までは良かったよ。掌からしか吸収できない。
   吸収しきれないほどの窒素をぶつける。正解だよ。
   掌から吸収した窒素は、別の掌から放出しなきゃいけないからな。
   それを無視して、全掌でオマエの窒素をガードした。そりゃあ壊れるってモンだ」

だがなァ、と言いながら絹旗の腹を踏みつけ、かかとでグリグリしながら続ける。

黒夜「それを私がわざとやったということに気付かずに、勝利を確信したのは間違いだったなァ。絹旗最愛ちゃン?」

絹旗「ぐ、おぉ、が、ぁ」

痛む腹を踏みつけられ、絹旗は最早返事すら出来ない。

黒夜「オマエはいつまで経っても浅墓だ。どうして私の全てを知りもしないのに、勝利を確信したンだ?
   オマエだって成長して、レベル5にまでなったンだろ?
   じゃあ私だって成長している、他のトリックがあるかもしれない。と普通は思わないか?」

黒夜は問いかけるように喋り続けるが、当然絹旗は返事が出来ない。

黒夜「私はオマエを倒す為だけに体をさらに改造した。私の全身は、窒素を吸収し放出する事が出来る。
   さらに窒素を蓄えたり、放出の強さを自由に調節できたりだ。
   私が倉庫まで跳ンだのは、これらの機能を利用したからだ。オマエ専用のカスタマイズだよ。喜べ」

絹旗「うぅ、ぐ、ぉ」

絹旗は力の入らない手で、黒夜の足を何とかどけようとする。

黒夜「知りたがりのオマエのことだ。1つの疑問が残っているだろう。
   なぜわざと窒素を吸収し腕を破壊させたのか。その答えはこうだ。
   短絡的なオマエのことだ。腕を破壊した時点で勝利を確信し油断すると思っていた。
   私はね、オマエをただ潰すだけじゃ足りないンだよ。天国から地獄に叩き落とされる感覚を味あわせたかったのさ」

それと、と黒夜は続けて、

黒夜「オマエは私の腕を破壊するために、攻撃自体はたったの2回だったが、莫大な窒素を操った。
   つまり、能力をほとンど使い切ってしまった訳だ。でもそれで問題ないとオマエは思った。
   機械の腕さえ破壊すれば『窒素爆槍』しかない私に勝てると踏ンでいたわけだからなァ」

絹旗「つまり……何が言いたいんですか……」

腹は踏まれ続けているが、何とか言葉を紡ぐ。

黒夜「私が言いたい事は、完璧に勝ちたかったってことさ。
   私が機械の腕で肉体的にオマエをフルボッコにしても、能力自体は万全だった。これじゃあ真の勝利とは呼べない。
   能力もたくさン使って、もう使えないって状態でフルボッコじゃないと駄目だったンだ」

要するにだ。黒夜は絹旗に能力をギリギリまで使わせ、絶望を味あわせる為だけに機械の腕をあえて破壊させた。
ということだ。

完璧に勝つ為とはいえ一見無駄な行為にも思えるが、黒夜は絹旗の性格や考え方を完璧に読み切った上でそれを実行し、
結果として絹旗はこうして地面に伏し、黒夜に一切の反撃が出来なくなっている訳だから、この勝負は黒夜の完全勝利と
言えるだろう。

つまるところ、絹旗は完敗だった。

142: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:57:09.71 ID:HgBmFR610
黒夜「さァて、どう料理しようか?まずは眼を抉ろうか?
   それとも×××に掌無理矢理ぶち込ンで、『窒素爆槍』炸裂させるか?
   それじゃあ死ンじまうモンなァ。そうだ。皮膚の3割を剥がそう。3割なら大丈夫だろ。それクリアしたら5割で――」

黒夜の声など、絹旗の耳には届いていなかった。
あるのは思考など何もかも読まれ、こうして敗北した屈辱だけだ。

絹旗「……せよ」

黒夜「あァ?」

絹旗「早く殺せよ……遊ンでるンじゃねェよ。オマエみたいな劣等生に負けた時点で、生きている価値はねェ。
   一思いにさっさとやれ」

魔術と科学の戦争で対峙した時も抑えてきた、一方通行の思考が持つ攻撃性が溢れ出てくる。
口調どころか、丁寧な言葉遣いまで失われている。

黒夜「イヤだね。オマエは簡単には殺さねェ。じっくりたっぷりいたぶってから殺す」

絹旗「クソが……」

黒夜「決ーめた。まずは両手の指を千切って、入れ替えて――」

黒夜の言葉は続かなかった。
一方通行が彼女の顔面に飛び蹴りを叩きこんで、数十mはぶっ飛ばしたからだ。

一方通行「ようドチビ」

絹旗「一方通行……どうしてここに……」

一方通行「面倒臭ェから、詳しい説明はしねェ。ただ言える事は、オマエを助けに来たってことだ」

絹旗「そうですか……って、ちょ、あの」

一方通行「ハシャぐな」

一方通行はバタバタ暴れる絹旗を左手で抱えた。

絹旗「だって、こんなモヤシに抱えられるなんて超恥ずかしいです///」

一方通行「じゃあ自分で歩くか?」

絹旗「……超すいませんでした。出来ればおんぶしてください」

一方通行「仕方ねェな」

絹旗「ちょ、そこは、お尻は触らないでください!このアクセロリータ!」

一方通行「はァ?オマエが辛そうにしてっから支えてやってンだろうが。自分で歩くか?」

絹旗「……超すいませんでした。このままでお願いします。(い、意外と大きい背中///)」

黒夜「イチャついてンじゃねェぞクソコラァ!」

一方通行と絹旗が呑気なやりとりを交わしている間に、ぶっ飛ばされた黒夜が拳を固く握り締めて、
彼らに猛スピードで突っ込む。

絹旗(超やばいです!)

一方通行「ふン」

しかし絹旗の心配は取り越し苦労だった。
一方通行は左に数歩移動しただけで、黒夜の突進をいとも容易く避けたからだ。

143: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 01:59:47.74 ID:HgBmFR610
黒夜(避けただと!?)

衝撃の事実に驚愕しながらも、ズシャアアア!と地面を数mスライドして黒夜は止まった。
何もかも『反射』で済ませてきた一方通行が『避ける』という行為ができるとは微塵も思っていなかった。
だがそれは。

黒夜「やっぱり覚えていたか。私の体に木原数多の数値が入力してある事を」

自分が脅威である事を認めているようなものだ。

一方通行「あの飛び蹴りを耐えるとは、丈夫さだけはあるよォだなァ」

黒夜の言葉などまるで無視した発言だった。

黒夜「まさか避けられるとは思わなかったが、避けるという事は私を恐れていることと同義だぞ。一方通行」

発言を無視した一方通行の発言を、さらに無視して発言した黒夜。
一方通行は呆れた様子だった。

一方通行「よくもまァ下らない事をペラペラと喋りやがる。やっぱりオマエはゴミだなァ」

黒夜「あァ!?」

一方通行「しかしだ。人間やめた粗大ゴミとは言え、俺が生み出したゴミでもある。
     ゴミは責任もって片付けないといけねェよなァ」

黒夜「その言い方だと、オマエのその背中に居るチビもゴミってことになるが。
   いや、ゴミである私に負けたンだから、ゴミ以下って訳かァ!?」

絹旗(何を!?)

一方通行「何で?コイツはただのチビだろうが」

黒夜「何でだよ。オマエの言い方だと」

一方通行「あのさァ」

黒夜の言葉にわざわざかぶせてまで、言う。

一方通行「言い方もクソも関係ねェンだわ。
     チビはチビ、ゴミはゴミって言う話に、特別な意味や理由なンてねェンだよゴミ」

黒夜「ちっくしょおォォォがァァァ!」

大気中にある窒素を吸収し、足から放出。結果先程の3倍のスピードで一方通行に迫る。
彼の顔面を木原神拳で殴り飛ばす為に。

黒夜「死ねェェェ!」

体中がサイボーグ化している黒夜の膂力は人間の比ではない。
よって一発でも当てれば勝てるのだ。そして一方通行は今度こそ避けられないだろう。

一方通行「遅ェ」

しかし一方通行は黒夜の予想に反して、屈むことによって拳を回避。
そして彼は右拳を固く握り締めていた。黒夜の腹を殴る為に。

一方通行「終わりだ」

ドゴォン!とベクトルの力が乗せられた超強力な拳が、黒夜の腹に叩きこまれた。
あまりの威力の拳を喰らって、黒夜はだらりと一方通行に寄りかかった。戦いはあっけなく終わった。

144: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 02:03:06.43 ID:HgBmFR610
一方通行「邪魔くせェ」

寄りかかる黒夜を、一方通行は容赦なく払いのける。

黒夜「な……ンで……オマエ……」

一方通行「まだ意識があンのか。本当に体だけは丈夫に出来てやがるな」

黒夜「そ……ンな……風に……」

一方通行「あァ?」

絹旗「何でモヤシだった一方通行が、攻撃を2度も避け、超カウンターを決められたのか。
   って言いたいんだと思いますよ」

一方通行「何でって、そンなモン決まってンだろ。成長した。ただそれだけだ」

今の黒夜はまさに絹旗と同じだった。
一方通行の全てを知りもしないのに、木原神拳があるからと思って勝利を確信し、慢心したことが一番の敗因だった。

一方通行「さァて……どうする?」

一方通行は黒夜に向かって問いかける。そこに絹旗は口を挟む。

絹旗「どうするってどういうことですか……超殺すべきでしょう……」

一方通行「俺もついさっきまではそうするつもりだったンだがよォ。ここまで丈夫なら、無理して殺す事もねェかなァと」

絹旗「超意味わかんないです。……まさか、奴隷にでもするつもりですか?
   無理ですよ。性格が超超ちょー歪んだやつですから」

一方通行「そンなつもりはねェよ。ゴミってのは、捨てる以外にもリサイクルって言う方法もある。
     ただ捨てるよりは、再利用した方がマシだろ」

絹旗「冷酷な一方通行が、超甘い事を言うようになりましたね」

一方通行「良い傾向だろォが」

絹旗「……そうですね。殺さずに済むなら、それはそれでいいです」

一方通行「ということで、改めてどうする?」

黒夜「どうするも……何も……敗者は……勝者に……従わなければ……ならない……」

絹旗「じゃあ」

黒夜「だが……断る!」

黒夜の体が爆発した。

145: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 02:03:58.02 ID:HgBmFR610
一方通行「自爆、流行ってンのか……?」

黒夜の自爆を、一方通行は後ろに跳んで回避していた。

絹旗「黒夜……」

一方通行「悲しいか?」

絹旗「……いえ、成績コンプレックスのストーカーが居なくなって、超嬉しいです」

一方通行「……そうか」

絹旗「……はい」

そう言った声は震えていた。明らかに泣くのを我慢している。
なぜ泣くのを我慢しているのか。それは黒夜が死んだからだ。

ここで1つ疑問が浮かぶ。
なぜ黒夜が死んだからと言って、絹旗は悲しむ必要があるのだろうか。
その答えは『暗闇の五月計画』にある。

147: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 02:08:09.79 ID:HgBmFR610
そもそも『暗闇の五月計画』とは『置き去り』(チャイルドエラー)という、
平たく言うと学園都市に捨てられた子供達を使って行われた計画だ。
絹旗最愛、黒夜海鳥の2人もそうだった。2人はここで出会った。

学園都市の『闇』を知らない当時の2人は、純粋な少女だった。
『置き去り』という同じ境遇からか、はたまた相性が良かったのか、2人は親友となった。

そんな2人含む『置き去り』達は『暗闇の五月計画』で、能力開発をはじめとする様々な実験の実験体となった。
それはまさに、地獄と言っても過言ではなかった。
実験に耐えられず肉体的に崩壊していく者、精神的に崩壊して自殺をする者。
そんな掃き溜めの中で、絹旗と黒夜の2人は何とか生き延び、互いを励まし合った。
彼女達は強かった。並の実験なら『暗部』に堕ちることはなかったのかもしれない。

だが不幸なことに、この『暗闇の五月計画』は当時レベル5の第1位だった一方通行の演算パターンを参考に、
能力者の『自分だけの現実』を最適化、能力者の性能を向上させ『一方通行の精神性・演算方法の一部を意図的に
植え付ける』という最低最悪のものだった。

これにより彼女達は、窒素をそこそこ操れる程度だったが、一方通行の攻撃性を付与した黒夜には『窒素爆槍』が、
防護性を付与した絹旗には『窒素装甲』という特性が発現した。
さらに一方通行の思考パターンの一部を植え付けられた関係上、能力使用時に感情が高ぶると、
一方通行の思考が持つ攻撃性に本来の人格が引き摺られてしまうまでになってしまった。

それでも絹旗は、完全に抑える事はできなくともある程度は抑えてきた。
だが黒夜は、攻撃性が付与された事もあってか、暴走してしまったのだ。
暴走した黒夜によって『暗闇の五月計画』の研究者達は皆殺し。計画は一定の成果を上げたものの破綻した。

そして彼女達は同じ『暗部』という道に進む。
ほんの少しではあるが良識を持っていた絹旗も、そこで完全に『闇』に染まった。
黒夜はさらに加速度的に堕ちていった。親友だった彼女達は、お互いの事を気にもかけなくなっていった。

しかし転機は突然訪れた。第3次世界大戦直後、一方通行によって『暗部』が解体されたのだ。
その時絹旗は、今は亡き浜面・滝壺と出会い、良識を多少は取り戻していたこともあってか、素直にその事を喜んだ。
だが黒夜は違った。
詳しい事は分からないが、彼女は表の世界に戻るどころか『暗部』が解体されることすら良しとしなかった。
彼女達の道はそこで完全に違った。

その後彼女達は、大戦直後の11月初旬、争うこととなった。結果は絹旗の負け。絹旗は気付いた。
覚悟はしていたがもう黒夜は以前の黒夜じゃない。

それでも絹旗は黒夜の事を諦めきれなかった。たとえ性格が最悪でも、体をサイボーグ化し、人外に成り下がっても。

その後11月の下旬、黒夜含む『新入生』が学園都市にクーデターを起こした。
結果としては学園都市側が勝利したわけだが、絹旗と黒夜が直接出会う事はなかった。

さらにその後12月のクリスマス・イブに魔術vs科学の戦争が勃発。
その機に乗じて『新入生』の残党が、絹旗含む浜面達に牙をむいた。そこで絹旗と黒夜は、2度目の直接対決を迎えた。

絹旗は、もはや元には戻れそうもない黒夜を見て思った。もう黒夜の事は忘れようと。
今まで紆余曲折あったが、浜面と滝壺と麦野との平和を崩すのなら容赦はしないと。

いざ戦いが始まると、一時は黒夜に追い込まれるものの、最終的には逆転勝利。
常人なら即死級の必殺技をクリーンヒットさせた。これで絹旗としては完全に決着をつけたつもりだった。

しかし、今日4月13日。こうして黒夜と再び相まみえることとなった。
浜面達は死亡したが、今は白井や初春との平和がある。再び叩き潰す事を決意した。

結果は敗北。しかし一方通行に助けられ、逆に黒夜を追い詰めることに成功。
その時点で絹旗は、容赦なく叩き潰すつもりだった。だが一方通行は見逃すと言いだし、黒夜の方もかなり弱っていた。
絹旗はそこで希望を抱いてしまった。ひょっとしたら前のような関係に戻れるかもしれないと。
だがその思いは届かず、黒夜は自爆。そして今に至る。

148: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/26(月) 02:10:22.27 ID:HgBmFR610
一方通行は、絹旗と黒夜について詳しい事は知らない。
でも彼女達、いや『置き去り』達は自分が存在したが為の計画に巻き込まれて狂ったのであろうことは容易に想像がつく。
だから彼は、こんな事を言った。

一方通行「記憶、失ってみるか?」

絹旗「いきなり何言いだすんですか?それに、どうやって」

一方通行「俺の力を使えば多分できる。辛い記憶を失わせる事が出来る。
     今まで辛い事だらけだっただろ?記憶を無くしても、そンなに損はねェと思うが」

絹旗「……そうかもしれません。けど、超遠慮しておきます。
   辛い記憶だって私の一部で、否定するのはいけないと思いますから。
   なかったことにしては、いけないと思いますから」

一方通行「……そうか。ならせめて、俺の思考パターンだけでも消すか?」

絹旗「……どうしましょうかね。窒素の装甲がオートじゃなくなる気がしますし、超迷いますね」

一方通行「別に良いじゃねェか。オートじゃなくても。オマエが常に集中を緩めなければ、問題ねェよ」

絹旗「そうですね。じゃあ、お願いします」

一方通行「あとでな。今はゆっくり眠っていろ」

絹旗「はい」



時刻は7:00。戦いの第一局面が終了した。

154: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 09:56:33.07 ID:JDo3T/bx0
上条達は6:30に冥土帰しの病院に到着。
まず上条は、五和をとある高校の制服から学園都市の協力機関が持ってきた濃いピンクのウインドブレーカーと
濃いグレーのパンツに着替えさせた。その後今の状況を簡単に説明。ここまでで約20分経過していた。

上条「そう言う事だから、本当は巻き込みたくないんだけど、五和にも協力してほしい」

五和「分かりました。それで、その、本当にごめんなさい。操られていたとはいえ、当麻さんに攻撃するなんて……」

上条「いいよ別に。特に怪我とかないし。それよりさ、これ」

そう言って上条が五和に見せた物は、今は亡き神裂火織が使っていた『七天七刀』だった。

五和「これは、女教皇(プリエステス)の……どうして……?」

上条「よく分かんねーんだけど、学園都市の協力機関が持ってきたんだよ。
   とりあえずさ、槍も壊れちまったわけだし護身用に持っておけよ」

五和「わ、私ごときがプリエステスの得物を使いこなせるでしょうか……まして私は本来、槍使いですし……」

上条「別に使いこなせなくたっていいだろ。何もないよりはマシさ。なあに、いざとなったら俺が守ってやるからさ」

五和「当麻さん///」

上条「そう言う事だからさ、朝飯食おうぜ。協力機関が持ってきたおにぎりとかの軽食になるけど」

五和「え、そんな呑気にしていて良いんですか?」

上条「多分だけど、大丈夫だ。食蜂にとってこの戦いはゲームにすぎない。
   だから徹底的に俺らを追い詰めるとかは、まだしないはずだ。
   この病院だけは、まだあえて見逃されているはずなんだ」

五和「そ、そんな希望的観測で大丈夫ですか?」

上条「大丈夫だって。万が一能力者が攻め込んできても、俺が守るから」

五和「当麻さん///」

155: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 09:57:59.53 ID:JDo3T/bx0
そうして2人は軽い朝食を摂った。時刻は7:00になっていた。

上条「さーて、朝食も食べ終わった事だし、行きますか」

五和「あの、今更なんですけど、当麻さんは2度目の朝食だったんじゃないですか?
   もしかして、私に付き合って無理して」

上条「確かに2度目だったけど、腹減っちゃってさ。腹が減っては戦はできぬって言うし?貴重な食料食べちゃった」

五和「そ、そうですか。あはは……」

ちょっと残念だったが、食べちゃった。が、お茶目で可愛いと思ってしまった。

上条「よし。じゃあ行きますか」

五和「はい」

垣根「ちょーっと待って下さいよー」

戦場に舞い戻ろうとした2人を、病院の入口で垣根が阻んだ。
そしてその垣根の隣には、十九世紀のフランス市民に見られた格好(全身黄色)をした人物が御坂を背負って立っていた。

「はろ~」

上条「ヴェント!?と傷だらけの御坂!?」

ヴェント「詳しい説明は病院の中でする。もうすぐダーリンと、一方通行だっけ?そいつも戻ってくるからさ」

156: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:01:26.80 ID:JDo3T/bx0
ヴェントの言う通り、7:10には絹旗を背負った一方通行と、真っ赤なスーツに身を包んだフィアンマが病院に戻ってきた。
傷だらけの御坂と絹旗は、五和とヴェントと一方通行によって応急処置。
フィアンマは、上条、垣根に病院のロビーで状況説明をすることになった。

上条「聞きたい事があり過ぎて、頭がパンクしそうなんだが……」

「俺様達がここに居るのは、雲川芹亜に指示されたからだ。助っ人の6人の内の2人だ」

上条「他の助っ人は?」

フィアンマ「他も各々役目を果たしているよ。削板軍覇なんかは既に戦闘を開始しているからな」

上条「本当に大丈夫なのか?雲川先輩も頼りになる強い助っ人だって言っていたけど、正直信じられない。
   だって俺の能力で『原石』の力を失って、しかも能力開発していないから完璧な一般人。
   それでレベル5に対抗できるとはとても思えない」

フィアンマ「そう思ってやつには魔術を仕込んだ。今や俺様達でも理解不能な魔術を使う。
      それと、やつは戦闘に関しては天賦の才がある。何も心配いらん」

上条「マジかよ……」

垣根「で、他の3人は?窒素のチビガキは助っ人じゃないって聞いたんだが」

フィアンマ「戦争の時に一緒に居た服部半蔵と郭とか言う忍と、闇咲逢魔だ」

垣根「ああー、忍ね。確かに居たような気もするけど。で、やみさかおうま?誰だよ」

フィアンマ「魔術師だよ。結構使える奴だ。何せ透明になる魔術を使える。今頃はどこかに侵入しているんじゃないか?」

上条「なるほど。助っ人については分かった。じゃあ次の疑問だ。
   皆戦った能力者はどうした?フィアンマとヴェントは侵入者なんだから、当然ここに来るまでに迎撃されたんだろ?
   垣根もだ。わざわざテレポートされて、誰とも戦ってないわけがない。
   御坂に至っては傷ついて帰ってきた。まさか、逃げてきただけか?」

フィアンマ「もっともな疑問だが、それは問題ない」

そう言うとフィアンマは、右手に持っていた魔道書らしきものを上条に見せる。

フィアンマ「この本の中に能力者を回収する事ができる。
      さらに言うと、準備をしておけば本の中に居る人間を好きな場所に移動させる事も出来る」

上条「よ、よく分からんけどスゲー!……って垣根はあんま驚かないのな」

垣根「助っ人の話はともかく、本の説明は黄色いねーちゃんからもう聞いたからな」

フィアンマ「要するにだ。救った能力者はこの本の中に閉じ込める。
      またはこの本を通じて、ある場所にワープさせる事も出来る。これで救った能力者達は安全だろ?」

上条「凄いな!これで能力者の心配はいらなくなった訳だ。五和も転送してもらおうかな」

フィアンマ「俺様はどっちでもいいぞ。後で話し合ってくれ。この本は俺様の他にも、助っ人全員が持っている。
      忍ペアは2人で1つだがな」

上条「そっか。じゃあ垣根や一方通行は、救った人を転送してもらったんだな」

フィアンマ「ちなみに現時点で回収したのは、合計9名。
      今も戦っている削板と俺様達が回収したのを合わせると、65名となる」

上条「お前らどんだけ回収したんだよ!」

フィアンマ「普通だ。それより俺様達はあくまで回収したにすぎず、洗脳自体は解いていない。
      だから今から、お前の『幻想殺し』で解除する」

上条「どうやって?」

フィアンマ「こうやって」

フィアンマは手に持っていた魔道書を開く。するとそこから、56人の人間が飛び出て来た。

157: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:03:36.44 ID:JDo3T/bx0
上条「うわっ!ちょっと、おい!」

56人の人間は乱雑にばら撒かれた。全員気絶している。

フィアンマ「こう言う風に、5冊の魔道書はリンクしていて、魔道書の中身は別の魔道書に自由に移動できる。
      距離の制限は特にない。さあ早く頭を触れ」

上条「……お、おう」

上条は56人の頭に次々と触れて行く。独特の音が56回響き渡る。

フィアンマ「よし。じゃあ転送するぞ」

フィアンマは特に何のモーションも呪文らしき事も唱えなかった。
それでも56人の人間は、開いている魔道書に吸い込まれていった。

上条「すげーな。でもその魔道書、破壊されたらどうなるんだ?」

フィアンマ「中に何かが入っているときは、その入っているモノも壊れるが壊させはしないし、
      基本的に本の中に入れっ放しにはせずに、すぐに転送するから心配はいらんよ」

上条「それ超便利なんだけど、俺らにもないのかよ?」

フィアンマ「あと1冊だけある。だがこの魔道書は『幻想殺し』を持つお前はもちろん、能力者にも使えない。
      使えるのは、何の才能もない一般人か魔術師のみだ。
      土御門の為に用意したんだが、どうやら洗脳されたらしいじゃないか。
      だから、お前の彼女に持たせるのが妥当かな」

上条「そっか」

フィアンマ「さて、女の子達の治療が終わったら、軽く作戦会議だ」

158: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:04:44.56 ID:JDo3T/bx0
食蜂陣営

食蜂「で、結局今の状況は?」

土御門「侵入者3名に合計56人が奪還。一方通行には3人殺され1人奪還。
    その後御坂と絹旗の救助に向かい、1人殺され6人奪還。他は垣根に20人倒され1人奪還。
    上条に1人奪還されていますね」

食蜂「合計89の手駒が減ったわけねぇ」

折原「向こうの状況は、御坂美琴と絹旗最愛が満身創痍。一方通行様にダメージ。上条様と垣根様は無傷ですね」

食蜂「なかなか楽しいゲームねぇ。さぁて、お次はどうしましょうか……」

159: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:08:59.05 ID:JDo3T/bx0
7:20 第14学区

「おっしゃあ!これで8人目!」

これまでに『洗脳能力』(マリオネッテ)『思念使い』(マテリアライズ)の精神系能力者2名、
肉体強化の能力者1名、テレポーター1名、『量子変速』(シンクロトロン)の釧路帷子と介旅初矢の2名、
『絶対等速』(イコールスピード)の合計7名を倒し奪還。
そしてたった今、絹旗が先日拘束した『肉体鋼化』の女を、削板軍覇は奪還した。

削板「次はどいつだぁ!」

叫ぶ削板に呼応するように、9人目の能力者が削板の目の前にテレポートされた。少しぽっちゃり気味で、おかっぱの少年。
普通の制服を着ているが、首からは派手なシルバーアクセサリーがいくつもぶらさがっていた。

削板「おおう、なんか似合ってないぞ。その首にぶら下がっている銀色の奴」

「間違った昭和の番長みたいな恰好をしている君には言われたくないね」

鋼盾掬彦は若干キレ気味で返す。

削板「何だと!?俺は怒ったぞ!」

削板は地面を蹴って駆けだした。
2人の距離は10m以上開いていたが、削板はその距離をわずか2歩で埋め、時間にして1秒強で鋼盾の懐に入った。

削板「っ!」

放たれた拳は、しかし空を切った。鋼盾が右に移動したからだ。

削板「やるじゃねぇか。ガッチリした体型の割には、動けるんだな」

鋼盾「君の今までの戦いをずっと見ていたんだ。今更その程度では倒されないよ。僕には油断も慢心もない。
   次は僕の力を見せてあげるよ」

そう言って鋼盾は、首にいくつもぶら下がっているシルバーアクセサリーの1つを触った。
すると金属はウネウネと動き出し、最終的に1.5mほどの鎌になって、彼の手に収まった。

鋼盾「『金属使い』(メタルマスター)の僕は、あらゆる金属を使いこなす事が出来る。
   さっきの体を鋼鉄化するだけの脳なしじゃないからね」

削板「なるほどな。今の発言で確信したよ。お前はただの根性無しだ」

鋼盾「何だって?どうしてさ」

削板「お前は今、あの女の事を馬鹿にした。他人の事を馬鹿にするような根性無しには、絶対負けない」

鋼盾「なんだそりゃ。お前みたいな熱血馬鹿は死ねっ!」

鋼盾が駆け出す。意外と素早い彼は削板にある程度近付き、首を刎ねる為に鎌を水平に振るった。

対して削板は、その場で思い切りジャンプ。避けた鎌の刃の部分に乗り、棒の部分に1歩踏み出す。

鋼盾(コイツ……!)

このままでは顔面を蹴られる。そう考えた鋼盾は鎌をあっさり手放し、後退する。
結果削板の蹴りは空を切り、バランスを崩す。

その隙に鋼盾は、左手でアクセサリーの1つに触れて槍にして、削板に放つ。
しかし削板は、ほんの少しだけ横に移動して槍を掴み取った。

鋼盾(尋常じゃない反射神経だな……)

だが鋼盾は別段焦っていなかった。右手でアクセサリーの1つに触れ鎖を作り、落ちている鎌と繋いだからだ。

鋼盾「おらおらおらぁ!」

鎖で繋いだ鎌をやたらめったら振りまわすが、削板は涼しい顔して避ける。

鋼盾(何で……何で当たらないんだーっ!?)

削板の戦闘は見てきた。確かに彼は、なぜか攻撃を避けるスキルが高く、テレポーターですら彼を倒せなかった。
だからと言って、これだけ避けるのは異常すぎる。

鋼盾が焦り始めたころには、避けながらも少しずつ近付いていた削板が、彼の懐に入っていた。

削板「せいっ!」

鋼盾「くそっ……!」

鋼盾はギリギリで盾を作り出して、削板の拳を防いだ。防いだが、地面を数mスライドした。

160: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:10:14.27 ID:JDo3T/bx0
鋼盾(なんて威力だ……!)

避けるスキルだけではなく、攻撃の威力も半端じゃない。
削板の戦いを見ているときは、なぜ攻撃を当てられず、それどころか負けてしまうのかよく分からなかったが、
実際に対峙してみるとその強さが分かった。

削板「おらぁ!」

削板は虚空から魔法陣らしきものを出し、それを掴み取って円盤投げの要領で投げた。

鋼盾(そんなもの、僕の盾の前では!)

バカ正直に真正面から来た魔法陣を、盾で防ぎ上に弾いた。が、その威力で鋼盾は盾ごと仰け反った。

削板「終わりだ」

その隙に削板は鋼盾の前に行き、落下してきた魔法陣に拳を通す。
魔法陣を通った拳は青く輝き、盾など破壊して、鋼盾の腹部に深く突き刺さった。

鋼盾「め……ちゃくちゃだ……」

腹部に強烈な一撃をもらい、地面に崩れ落ちる鋼盾を、削板は魔道書で回収した。

161: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:12:47.99 ID:JDo3T/bx0
7:30になって、御坂と絹旗が復活した。
御坂はオレンジ色のジャケットに黄色のスカートと茶色のブーツ、絹旗に至っては上下ともジャージという出で立ちだ。

上条「御坂……服が、明るいな……」

御坂「し、仕方ないじゃない!もう服がないのよ!」

絹旗「そうです!私なんか超ジャージですよ!」

上条「す、すまん」

一方通行「仕方ねェから、服屋行くぞ」

垣根「まあ今の地上の学園都市には俺達しかいないからな。服も盗み放題って訳だ」

御坂「服を盗むなんてダメですよ!」

上条「自販機に蹴りぶち当てて、無銭で缶ジュース飲んでいた奴がそれを言うか?」

御坂「あれは私の1万円札を飲んだんだからいーの!まだ貯金ある筈よ」

一方通行「まァどうでもいい。金は俺が払ってやるから。ドチビもだ。好きなの選べ」

絹旗「うぇ?一方通行が超優しい……だと……」

垣根「あれ?ひょっとして一方通行はロリコンなんですかー?」

一方通行「そンなンじゃねェよ。服は大事だろォが」

垣根「そもそもさー。別に美琴ちゃんや最愛ちゃんはもう戦わなくてもいいんだぜ?俺達で何とかするし」

御坂「遠慮します。一方通行が守ってくれるって言っていますし、負けたままでは終われないので」

絹旗「私も、超迷惑でなければ、皆さんと一緒に戦いたいです。一方通行、いざとなったら私の事も守ってくれますよね?」

一方通行「オマエが望むのなら、守ってやる」

絹旗「という事で、私も戦いからは降りません」

上条「一方通行、お前何ハーレム築いているんだよ。羨ましいなチックショー!」

御坂「アンタ、それ本気の発言?」

上条「本気だけど。何か変なこと言った?あと名前で呼んでくれって」

垣根「つーか彼女の前でそういう発言どうなの?」

五和「当麻さん……」

上条「え、あ、いや、その、あれですよ。男だったら、誰でも一度はハーレム築きたいって願望あるし、そうだよね?」

一方通行「ねェけど」

垣根「同じく」

五和「当麻さん……」

上条「だから、その、すいませんでしたーっ!」

上条の本気の土下座が繰り出された。

162: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:15:14.39 ID:JDo3T/bx0
フィアンマ「いつまでコントをやっているんだ。少し黙れ」

垣根「全くだ」

一方通行「オマエが言うな」

御坂「一方通行が言えた立場じゃないでしょ」

絹旗「超同感です」

ヴェント「あーもう!無限ループか!」

フィアンマ「もういい。まずは、服を買う組と能力者奪還組に分かれる。
      一方通行と女の子2人、ヴェントが服組、上条と俺様と垣根と五和が能力者奪還組だ」

上条「つーか思うんだけど、服を買う暇あるか?食蜂にまたテレポートされたら」

一方通行「それは多分大丈夫だ。いくら食蜂のクソアマでも、服を買う余裕ぐらい与えるはずだ」

そんな一方通行の希望的観測に呼応するように。

食蜂「うんうん。いいよいいよ。服でも食糧でも武器でも、何でも思う存分準備しちゃってぇ~。
   やっぱりさぁ。弱りかけや不意打ちで倒してもつまらないのよねぇ。
   準備万端で『これで負けたら仕方ない』っていうレベルのあなた達を真正面から叩き潰したいからさぁ」

病院内に食蜂の声が響き渡った。

絹旗「な、なんで……」

一方通行「別に盗聴や監視されていたって不思議じゃねェ。こンなことでいちいちうろたえるなドチビ」

御坂「じゃあ何よ。着替えとかトイレとかも見られちゃうわけ?」

垣根「まだいいじゃねぇか。女の子同士なんだから。俺ら男の方が問題だっつーの」

上条「いやでも、土御門とかからも見えるんじゃないか?」

食蜂「うーん。当麻君の言う通りカナぁ。まぁ気にしないでよ」

絹旗「気にしますよ!見られるなんて、超嫌です!」

御坂「ていうか当麻って気安く呼ぶんじゃないわよ」

食蜂「なんで?当麻君の事をどう呼ぼうが私の勝手でしょ?あなたに何の権限があるの?彼女でもないくせに」

御坂「……っ」

五和「ではその彼女から言わせてもらいましょうか。不愉快です。当麻さんの事を名前で呼ぶのは止めてください」

食蜂「彼女でもないくせに。と例えで言ったのは私だけど、それを決めるのは当麻君本人だよ?」

上条「気持ち悪いから止めてくんねぇかな」

食蜂「あっそ。じゃあ止めるわ。ところで準備が完了したら『完了した』って叫んでね。
   そこから第2ラウンド開始だから。そして、これは私からのプレゼント。じゃあね~」

ヒュン!と上条達の目の前に削板がテレポートされてきた。

163: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:16:33.35 ID:JDo3T/bx0
削板「おう。久しぶり」

上条「あ、ああ。なんか、いろんな意味で大丈夫か?」

削板「おう。そんなことより、能力者4人奪還したから戻してくれ」

そうして削板が魔道書から出した4人の頭を、上条が右手で触り再びそれを回収する削板。

フィアンマ「それじゃあ、お言葉に甘えていろいろ準備させてもらいますか」

上条「そうだな。一方通行組は服だったよな。俺らはどうすんの?」

フィアンマ「武器とか、装備を強化するとか。時間はあるんだ。ゆっくりじっくり考えて準備しようじゃないか」

垣根「マジで呑気にしていて良いのか?食蜂が嘘ついているかもしれねぇぜ」

ヴェント「その時はその時でしょ。でも実際、監視や盗聴はされても、この病院は襲撃されてない。
     私達をある程度泳がせてから倒すと言うのは、嘘じゃないんじゃない?」

御坂「そうね。ドSの食蜂のことだから、万全な状態の私達を叩きのめしたいって言うのは、本当の事だと思うわ」

上条「もう食蜂の考えている事なんてわかんねーよ。あれこれ考えるのはもう止めてさ、能力者が来れば奪還。
   来なければ準備を続ける。それでいいじゃねーか」

垣根「……そうだな」

フィアンマ「意見はまとまったようだな。それでは行くぞ」

164: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:17:49.90 ID:JDo3T/bx0
食蜂陣営

折原「本当に泳がせるのですか?特に垣根様は体力を回復させると厄介なのでは」

食蜂「いいのよ。何かね。物足りないのよ。このままじわじわといたぶるだけじゃあ駄目なの。
   もっと派手に、豪快な戦いを演じてほしいからね」

折原「はあ」

食蜂「それよりも、闇咲って人と半蔵って奴と郭って奴は見つかったの?」

土御門「まだですね。盗聴した通り、闇咲は透明になる魔術を使える。
    視覚的にはまず見つけられない。他の2名も、腐っても忍。なかなか見つからないですね」

食蜂「まぁ放っておいても所詮はネズミ3匹。問題ないか」

165: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:19:36.99 ID:JDo3T/bx0
時刻は9:00。上条達、一方通行達はそれぞれ準備が終わり、病院前に集合していた。
御坂は緑色のウインドブレーカーにホットパンツ、絹旗はふわふわしたニットのワンピースという出で立ちだった。
ちなみに今更ではあるが、一方通行と垣根は紺碧色の長点上機の制服を着ている。

上条「ホットパンツ……」

御坂「何か文句ある?」

上条「いくら春とはいえ、寒くないのかなって」

御坂「ちょっとだけ寒いけど、我慢できるレベルよ」

絹旗「女の子は超強いんですよ」

上条「そ、そっか」

一方通行「寒くないのかって言うのもあるが、コイツらの脚が出しっ放しなのは、危険でしかねェ」

御坂「いいのよ。こっちの方が動きやすいし」

絹旗「そうですよ。というか脚見るとか超キモいです」

一方通行「ふざけンな。オマエらの身を案じて言ってンだよ。ジャージとかで良いから着れば良かったのによォ」

御坂「ジャージはダサすぎるわ」

絹旗「それに、いざとなったら一方通行が超守ってくれるんですよね?なら大丈夫ですよ」

一方通行「はァ……分かった。じゃあ俺から離れンなよ」

御坂・絹旗「うん(ええ)」

垣根「何で一方通行ばっかりモテてるんだ……俺も女の子に好かれたいよーっ!」

上条「垣根は彼女居るだろ」

垣根「彼女がいるのとモテたいのは別。お前だってハーレム築きたいって言っていたじゃねぇか」

上条「それはもう忘れろ」

削板「お前ら何を言っているんだ!彼女一筋が普通だろうが!その根性叩き直してやろうか!」

五和「ですよね!当麻さんに鉄槌お願いします!」

削板「よっしゃ!」

上条「何で俺だけ!?五和さん、許して下さいーっ!」

フィアンマ・ヴェント「「……」」

なんかもういろいろとカオスな空気になってきた。だいぶ前から思っていた事だが、コイツらは緊張感がなさすぎる。

フィアンマ「完了だ!」

なのでフィアンマは、合言葉を叫んだ。その瞬間、上条と一方通行以外の人間がテレポートされた。

166: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:21:00.39 ID:JDo3T/bx0
上条「またかよ……!」

一方通行「気ィ抜くなよ」

身構える2人の目の前に、8人の人間がテレポートされた。

吹寄「さーて、今度こそ勝負してよね」

「いざ尋常に。勝負」

とある高校の制服を着ている吹寄と、巫女服の姫神。

「久しぶりですね。一方通行さん」

「殴られたお礼、今果たすわ」

「えへへ。ようやくこのロリコンを嬲れると思ったら興奮するなー、ってミサカはミサカは心中を吐露してみる」

「それ私の台詞なんだけどー。ミサカもあんなところやこんなところが勃っちゃってるぅ」

芳川「あなたは危険すぎるわ。ここで処分する」

フレメア「大体そう言う事だから、死んでよ一方通行。にゃあ」

スーツの海原に、とある高校の制服の結標、水玉のワンピースに大きめのYシャツの打ち止め、
アオザイの番外個体、アンチスキルの装備の芳川に、RPGの姫キャラ風のフレメアだ。

上条「8対2か」

一方通行「俺が6人やる。オマエは巫女服とデコをやれ」

上条「初めからそのつもりだけど。本当に6人大丈夫か?」

一方通行「誰に向かって口聞いてやがる?」

上条「オッケー」

上条は『幻想殺し』を解除。『竜王』の力を解放し、一方通行は笑みを浮かべた。

167: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:22:16.31 ID:JDo3T/bx0
御坂「またここか……」

御坂は再び第11学区にテレポートされていた。先程の戦闘の名残か、倉庫やコンテナが瓦礫となって大地に転がっている。

御坂「っ!」

御坂は何の前触れもなく、横に転がった。直後、上から可視出来るほどの風の刃が伸び、地面に直撃した。
横に転がっていなければ、真っ二つになっていたところだった。

佐天「さっすが御坂さん。不意打ちもあっさり避けちゃうなんて」

声は上から。佐天はふわふわと浮いていた。

御坂「佐天さん、パンツ見えちゃうわよ」

佐天「あれ?案外驚かないんですね。私がここいることを」

御坂「逃げていたんでしょ?最愛は気絶させただけだって言っていたからね」

佐天「なぁーんだ、つまんないなー。ま、いいや。楽しみましょう。2人きりで」

御坂「お断りするわ。速攻で終わらせてやる」

168: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:24:28.41 ID:JDo3T/bx0
垣根は第23学区、より詳しく言うと、かつてオリアナと上条・ステイルのコンビの最終決戦の場にテレポートされた。
彼の目の前には、20人の女子がいる。

垣根「可愛い子ばかりじゃん。なんだこれ、食蜂は俺にサービスしてくれているのか?
   もしかしてハーレムなのか?俺の時代到来なのか?」

「shit……勘違いも甚だしい」

ギョロ目にウェーブのかかった黒髪が特徴的な、ゴスロリ服を着用している布束砥信が、侮蔑するように言った。

「私は好きだよ。あなたみたいなイケメン」

茶髪ロング、白いブラウスにホットパンツを着用している柳迫碧美が垣根をフォローする。

「私もカッコイイから好きだな。お兄ちゃんになってほしい!」

フード付きパーカーを着ている金髪ツインテール少女、木原那由他も柳迫に続いた。

「そうかぁ?私はあんなひ弱そうな男より、もっとマッチョな男が良いと思うけど」

ポニーテールで、胸にサラシを巻いた目つきの悪いサラシ女がそんな事を言った。
他16名の少女達も、垣根に評価を下す。

垣根(何なんだこいつら……ムカついてきた)

それでも垣根は、少女達が評価を下している間は何もしなかった。そして少女達が導き出した垣根の最終評価は。

垣根がイケメン派7名、そうでもない派13名、結論、垣根は大した男じゃない。

垣根「オッケー。戦争だボケェ!」

垣根は背中に『未元物質』の翼を生やし、少女達の集団に向かっていく。
少女達は炎や電撃、水流を出したりして垣根を迎撃するが通じす、突っ込まれて四方八方に吹っ飛んだ。

垣根「へぇ。お前らはやるようだな」

先程の垣根の一撃で、吹っ飛んだ少女16人は戦闘不能になった。
しかし4人の少女は平然と突進を避けていて、垣根を取り囲むように立っていた。

布束「Of course……その程度ではやられない」

柳迫「イケメン君ともっとお話したいからね」

那由他「そうだよ。垣根お兄ちゃんが、那由他のお兄ちゃんにしてください。
    って懇願するまで、やられるわけにはいかないからね」

サラシ女「お前みたいなひ弱そうな男に負けるのは、プライドが許さねぇ」

垣根「茶髪と金髪ツインテの2人は良い。ポニーテールとギョロ目女は、ムカついた」

比喩ではなく、垣根の目の色が変わる。右がオレンジ、左が青に。4人の少女も身構える。

169: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:27:56.18 ID:JDo3T/bx0
絹旗「食蜂のクソアマ、超悪趣味ですね……!」

第10学区の墓地にテレポートされた絹旗の目の前には、

「久しぶりだねぇ。絹旗」

「きぬはた、可愛くなったね」

「そうか?いつも通りチビだけど」

「結局、私達は絹旗を殺す訳よ」

明るい色のトレンチコートにストッキングの麦野沈利、ピンクジャージの滝壺理后、彼女に合わせているのか、
紺色のジャージの浜面仕上、なぜかメイド服のフレンダ=セイヴェルンだった。

目の前に広がるこの異様な光景を説明するとすれば、可能性としては4つある。
1つ。『肉体変化』(メタモルフォーゼ)能力者が彼らの姿に変身している可能性。
ただし学園都市に『肉体変化』はわずか3人しかいない。つまり、1人分説明がつかない。
もっとも、それは去年のデータであるため、増減している可能性もあるが。

2つ。クローンやロボなどの『作り物』と言う可能性だ。生前の内に、何らかの手段でDNAを採取。
そこからクローンを生み出す事も、学園都市の技術なら出来なくもない気がする。または精巧なロボットなのかもしれない。
だが4人を見た感じ、無機物ではなく本当に生きている気がする。

3つ目。精神系能力者もしくは『幻術使い』(イリュージョニスト)が、自分に麦野達の幻影を見させている可能性だ。
ここは墓地。身を隠せる墓石などいくらでもある。

4つ目。彼女達に似ている人間をコーディネートして、それっぽく見せているか。

だが、どの可能性にも1つだけ言える事がある。

絹旗(こいつらは本物の麦野達ではない)

当然のことながら、死者は蘇らない。学園都市の技術がどれだけ進んでいようが、それだけは絶対に揺るがない事実だ。

麦野「なぜだ?なぜ私達が本物ではないと言い切れる?」

麦野は絹旗の心理を読みとったような発言をした。
絹旗は一瞬動揺したが『精神感応』(テレパス)を応用すれば、難しくない事にすぐ気付いた。

麦野「私達が麦野沈利や滝壺理后、浜面仕上にフレンダのDNAや細胞から出来たクローンだとすれば、
   私達はオリジナルと細胞レベルで同じなんだ」

絹旗「何が言いたいんですか?」

麦野「細胞レベルでオリジナルと一緒な私達に、絹旗と一緒に過ごした記憶があるとすれば、それは本物とどう違うんだ?」

絹旗「それは……」

麦野「私達が争う必要なんてないんだよ。絹旗もこっちにこいよ」

絹旗「……ぁ」

目の前には、かつて仲間だった人間がいる。去年の10月、暗部抗争の時に麦野に粛清されたフレンダまでいる。
暗部の時は、なんだかんだ言って楽しかった。同年代の女の子と過ごす日々。
浜面という情けないけどやる時はやる男の存在。生まれて物心ついた時には『置き去り』で、
その後計画に巻き込まれ理不尽な人生を過ごしてきた絹旗にとって、暗部での仕事仲間にすぎなかったとはいえ
麦野達とは、『アイテム』とは唯一の自分の居場所であった。

滝壺「楽になろうよ、きぬはた」

浜面「そうだぞ。戻って来いよ」

フレンダ「結局、さっきの殺すって言うのは嘘だった訳よ」

だが、違う。目の前に居るのは確かに麦野達の姿形はしている。でも所詮は作り物の体に、記憶を入れたものだ。
絹旗と共に過ごした麦野達ではない。

麦野「共に過ごしたもクソもないわよ。私達は紛れもなく『アイテム』そのものよ」

絹旗「違います。それは、あなた達が超クローンだった時の話です。あなた達がクローンとは限りませんから」

170: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:29:19.17 ID:JDo3T/bx0
滝壺「なかなか鋭いね」

浜面「そうだよ。俺達はクローンじゃない。でも」

フレンダ「結局、絹旗には私達が『アイテム』に見えている訳でしょ?
     そして、私達は絹旗と共に過ごしてきた記憶も持ち合わせている」

麦野「それってやっぱり、絹旗から見れば私達は『アイテム』と同義ってことじゃない?
   人格とかが違うとか言う詭弁は止めてね。そんなのはいくらでも“調整”できるから」

絹旗「いえ、やっぱり超違いますよ。お前達は『アイテム』じゃない」

きっぱりと、言い切った。

絹旗「お前ら幻影の“嘘”なんて超必要(いら)ないんですよ。“本当”ならもう知っています」

フレンダ「はぁ?」

絹旗「――どっかの、超素直になれない電撃姫を助けるために駆けつけて、さらには私まで助けて、
   200万対4という絶望的状況で立ち上がった白髪のモヤシを知っています。
   それに加えて、頭に花飾りを乗っけたハッカーに、ドSツインテール。それが今の私の“本当”の居場所なんです」

麦野「詭弁どころか、支離滅裂な感情論か」

滝壺「つまり、きぬはたが言いたいことって?」

浜面「俺達はもう必要ない。いいからやろうぜ。ってことだろ」

絹旗「超そう言う事です。なんだ、浜面にしては理解が早いですね」

麦野「分かったわよ。そこまで言うなら、お望み通り叩き潰してあげるわよ」

171: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 10:29:59.14 ID:JDo3T/bx0
削板は第1学区の広い通りにテレポートされていた。

「やあ。久しぶりだね」

ダッフルコートにジーパンの好青年を見て、削板は尋ねる。

削板「お前は……誰だっけ?」

「去年の10月、学園都市でやりあっただろう?オッレルスだよ」

削板「ああ……そんな事があったような気もするな」

オッレルスが目の前に居る事は、いろいろと異常なのだが、特になにも考えず言った。

削板「まあいいや。やろうか」

オッレルス「そうだね」

2人は同時に地面を蹴った。