1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/02(火) 21:01:10.56 ID:l1DIC0iT0
兄との死闘から数日。崩壊しきった事務所に戻るわけにもいかず、スラム街の安ホテルで次の大仕事が来るまでの束の間、ダンテは怠惰をむさぼっていた

エンツォ「よぉ、ダンテ。今日も来てやったぜ」

ダンテ「またお前かよ。できればそのだみ声、しばらく聞きたくなかったんだがな」

エンツォ「そりゃこっちだっておんなじさ。だがこっちもビジネスだ。事務所ハデにぶっ壊されたお前さんには気の毒だが払うもんは払ってもらうぜ」

ダンテ「…持ってけよ。好きなのくれてやる」

エンツォ「何が好きなのもってけだ。もうこれしか残ってねぇじゃねぇか。タチの悪いバーゲンだなおい?」

ダンテ「払うもんは払ってるだろ?それとも余計なこと言う口に鉛玉でも詰め込んでみるか?」

エンツォ「冗談に聞こえねぇよ……それはそうとなダンテ。アンタを訪ねてたボウヤがいたぜ。ウェイバーとかいう線の細いいかにもな坊ちゃんだ。聖杯がどーのこーの言ってやがったが」

ダンテ「……聞かせな」

その後、ダンテを訪ねる少年が訪れるまでそう時間はかからなかった


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1349179270

引用元: ウェイバー「最強の助っ人だ!」ダンテ「ショータイムだ」 

 

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/02(火) 21:45:37.49 ID:l1DIC0iT0
――魔塔テメンニグル。一連の事件は魔術の最高学府、時計塔でも波紋を呼び物議を醸していた。と言っても多くの生徒は所謂「遠くで起こった凄いニュース」程度にしか思っておらず、またウェイバー少年もその一人であった。ケイネスの聖遺物を持ち出し自ら聖杯戦争に参加する身となるまでは

ダンテ「御苦労なこった。わざわざこんな埃くせぇスラムまでやってくるとはな」

ウェイバー「ぼ、僕…いや私はどうしても勝ち残らなければならないんだ。聖杯戦争に」

ダンテ「そう、それが気になってたんだよ。話してくれ。なるべく手短にな、せっかくのピザが冷めちまう」

ウェイバー「――聖杯戦争。七人の英霊が集い万能の器、聖杯に至るための戦争だ」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/02(火) 22:11:29.26 ID:l1DIC0iT0
ダンテ「万能の器、ね。いきなりキナ臭ぇな。俺好みだぜ。お前は何を叶えるんだ?背でも高くしてもらうのか?」

ウェイバー「違う!僕が望むのは……正当な評価だけさ。聖杯戦争に勝てばみんな僕を認める」

ダンテ「…それだけで殺し合いか。ハハハハハ!イカれてるぜ、お前?そこらのパンクバンドが裸足で逃げ出すくらいにはな」

ウェイバー「お、おかしいかよ」ムッ

ダンテ「いいや気に入ったぜ。クレイジーとクールは紙一重さ。で、俺は何をすりゃいい?景気付に演奏でもすればいいのか?」

ウェイバー「さっきも言ったようにどうしても自分の力で勝ち残らなければならない。そのための手伝いをしてほしい」

ダンテ「過去の英雄サマと乱闘パーティーか、悪くねぇがそれは自分自身の力からはズレてねぇのか?」

ウェイバー「魔塔の事件からアンタまでたどり着いたのは紛れもなく自分自身の力さ。これ、アンタのことだろ?」
ウェイバーは一冊の本を手に取った。古くはあるが聖遺物のように何百年も前のようなものではない

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/02(火) 22:23:55.42 ID:l1DIC0iT0
ベッヘレムに救いの星の輝きし頃
冥府の深き底にて、いと猛き怪魔の興れり。
かの者、荒ぶる物怪を悉く統べて自らを魔帝と称し、
さらには人の棲する現世をも攻め取らんと欲す。
されどスパーダなる万夫不当の魔剣士、
魔帝に叛きてその兵卒を皆斬り、
遂には魔帝をも打ち負かし封印せり。
怪魔の身なるスパーダが同胞に仇なしたるは、
今儚き人の心を惜しみ慈しみたればなり。
彼は戦の後、冥府を離れ現世に住まい、
常人の女を娶り子をもうけるべし。
なれど神の使途らよ、心せよ。
呪われし魔帝は二千年の後に縛めを断ち、
再び奇しき力もて現世を侵す宿命なれば。
スパーダのもうけし半魔の子こそ
我らが護り手たらん。

ヴァチカン禁書図書館収蔵『魔界史』(年代不詳)より抜粋

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/02(火) 22:45:34.24 ID:l1DIC0iT0
ウェイバー「…これ、アンタのことじゃないか?魔塔はスパーダがきっと関係していると思うし、それにアンタは関係してる。そして並外れた戦闘能力と変な事件には関わりたがるって胡散臭いおっさんから聞いたよ。アンタがそのスパーダの子孫……違ってるか?」

ダンテ「子孫も何もスパーダは俺のオヤジだよ。おかげで昔から迷惑してるぜ」

ウェイバー「ほらやっぱり僕の予想は……ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?む、息子なのかよ!?」ガタっ

ダンテ「デカい声出すなよ。…ったくキンキン響きやがるぜ」

ウェイバー「ごめん、でもこれで僕は確実に勝てるんだ…」

ダンテ「オーライ、話は決まりだ。早いとここんなシケたホテルから出ようぜ」バッ

華麗に愛銃二丁をホルスターに収納し、リベリオン、そして父や兄の思いが詰まったフォースエッジを背中にかける。

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/02(火) 23:23:50.78 ID:l1DIC0iT0
ダンテ「ほらよ、ほぼタダ同然で行ってやるんだ。荷物くらいは持ちな」ポイッ

乱暴にネヴァンとベオウルフを放る。勿論小柄なウェイバーは受け止めきれず尻餅をついてしまう

ダンテ「過去の英雄様が相手か、最高にワクワクしてきたぜ!!」ダンっ

ハデにドアをけ破る。もはや借金のことなどダンテには見えていない。

ダンテ「レッツロックだ、ベイビー!!!」

こうして若き日の最強のデビルハンターは英霊を狩る者として夜の戦いに身を投じる


12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/02(火) 23:38:18.61 ID:l1DIC0iT0
―――空港―――

ダンテ「ここが日本か。サムライとゲイシャしかいないと思ってたんだが期待外れだぜ」

ウェイバー「あのなぁ、日本ってアジアじゃ有数の先進国なんだぞ」

ダンテ「道理でレディが偽造パスポート用意と荷物の手配してやるから借金上乗せなんて言いやがるわけだ。手間がかかるんだな」

ウェイバー「そういえばパスポートのトニー・レッドグレイブってアンタがえっと…レディって人にわざわざ頼んだんだよな?」

ダンテ「あぁ―――昔の名前さ」

ダンテ「早くこんなとこから出てこうぜ、どいつもこいつもガイジンガイジンって機械みたいに言いやがる」

ウェイバー「そう思うならもうちょっと控えめな格好にしろよな!」


13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/02(火) 23:48:18.05 ID:l1DIC0iT0
―――倉庫前―――
ダンテ「召喚できたら起こせって言ったのに早とちりしすぎだぜ。ったく日本人の真面目さでも移ったか?」

ウェイバー「もしサーヴァントが凶悪な奴だったら困るだろ、それに僕はもともと真面目さ」

ダンテ「ソレがあるってことは粗方呼び出すのはもう決まってるんだろ?何が出てくるんだ?」

ウェイバー「イスカンダル…征服王ってよばれた奴だよ。アンタも名前くらいは聞いたことあるだろう」

ダンテ「生憎俺は物心ついた時から剣ばっかふらさせられてたからな……征服王イスカンダルか、確かに狂暴そうな名前してやがる。名前負けしてないことを神に祈ってるぜ」


14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 01:11:21.90 ID:/E/+nPeE0
――――――――
―――――
―――
「告げる―――」

「汝の身は我が下に我が命運は汝の剣に、聖杯の寄る辺に従い」

「この意 この理に従うならば答えよ。」

「誓いを此処に、我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

「汝三大の言霊をまとう七天。抑止の輪より来たれ天秤の守り手よ―――!」

ズズズズズズズズズズズズズズズズズズ

ダンテ「来やがったか――――!!」

「―――問おう。貴様が余を招きしマスターか?

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 01:26:35.38 ID:/E/+nPeE0
召喚陣よりあらわれたのは威風堂々、筋骨隆々たる巨漢。その威厳溢れる姿にウェイバーは腰を抜かしダンテはハズレではなかったと僅かに口を歪めた

イスカンダル「だから訊いておろうが。小僧、貴様が余のマスターで相違ないな?」

ウェイバー「ぼぼぼ僕がいや、私が!お前のマスターウェイバー・ベルベットです!いや、なのだ!」

イスカンダル「うむ、じゃあ契約は完了。いやぁ余のマスターが『スパーダ』なのではないかと冷や汗をかいたぞ?なぁスパーダよ?」

ウェイバー「何言ってんだよ、そいつは…」

ダンテ「ちょっと黙ってな。――どういうことだ?」

イスカンダル「どうもこうもないであろうが。貴様英霊の座にもよく知られるあのスパーダなのであろう?」

うーん。と手を組みイスカンダルは何やら考え込んでいる。ウェイバーは状況が呑み込めず双方をキョロキョロと見渡す。

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 01:38:22.08 ID:/E/+nPeE0
イスカンダル「ふむ、百聞は一見にしかず、やはり矛を交え知るが早しか」

ウェイバー「はぁぁぁぁ!?お前らは今回味方なんだぞ!!戦う必要なんてないんだよ!!」

じたばたと暴れまわりながら力説するウェイバーを二人の大男がひょいと摘み上げる

ダンテ「何も殺しやしないさ。ちょっとしたオードブルみたいなもんだよ」

イスカンダル「ほぉ、余を前菜扱いとは流石は伝説の魔剣士と言ったところか」

ダンテ「昔から慣れてるが今度は英霊様が相手とはな。いいぜ、踊りなベイビー!!」

イスカンダル「征服王イスカンダルがこの一斬にて覇権を問う!」

現れたのは勇壮たる雄牛二頭が曳く戦車。それがイスカンダルがライダーたる由縁でありライダーが絶対の信頼を置く宝具の一つであった

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 01:47:52.19 ID:/E/+nPeE0
ダンテ「――戦車ね あの時以来だな。今度はスローにされるなんてのはごめんだぜ」

イスカンダル「AAAAAAAlalalalalalalaie!!!!!!」ドドドドドドドド

怒涛の疾走蹂躙。一瞬の間に閃光と火花、銃声が響き渡った

ダンテ「ッハー!!いいねぇ、これくらいしてもらわないと張り合いがいがないからな」

イスカンダル「ぬぅ、並の相手ならこれで一撃だが…流石と言ったところか」

ウェイバー「ななな、何が起こったんだ今…」

イスカンダル「最初に剣で斬れぬと判断するや神威の車輪の軌道上から身をそらし、銃で十数発…だな」

ウェイバー「今の一瞬で…」

ダンテ「説明はその辺にして続きをしようぜ。 そんなもんじゃないだろ?」

イスカンダル「無論、まだ戦は始まったばかりだ」

ダンテ「そう来ないとな。ガッツがあるみたいで安心したぜ」

イスカンダル「いざ参らん!!」

冴えわたる剣技、怒涛の疾走、華麗なる銃撃。それは観客が居ようものなら一種の劇のように完成されたやり取りだった。
何十、何百――その攻防は永遠に続くと思われた。しかし唐突にダンテが剣を置いた

20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 13:32:09.34 ID:/E/+nPeE0
>>19
英霊たちが過去に戦ってたりで英霊の座でも名前は知られてるけどスパーダの生死は謎ってことでどうか一つ

イスカンダル「む、どうしたのだ?これで終いか」

ダンテ「お遊びはもういいだろ さっさと本番にしようぜ 気は長いほうじゃねぇんだ」

ダンテから発せられる魔力は渦を巻き、今まさに真の姿、魔の権化へと変貌しようとしていた

イスカンダル「やはり来たか。もはや対抗するにはアレしかあるまいて!余の無双の軍勢、うつつの世に今憚らん!」

ウェイバー「まさか…こんなとこで宝具を使うのか!?」

時空は歪みライダーの背後にはかつて彼が従えた線を越える兵士たち、その胸に焼付いた悠久の砂丘が見えたその時だった

ダンテ「…今日はここまでだな」

短い銃声の後、ダンテはつまらなそうに呟いた

イスカンダル「使い魔か。下らん水を差しおって…まぁ最初はこんなもんだわな」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 15:03:09.08 ID:/E/+nPeE0
ガハハと豪勢に笑うイスカンダルに対しウェイバーはほっと胸をなでおろす

ウェイバー「はぁ…この先どうなるんだこいつ等…」

マッケンジー宅

イスカンダル「何!?では貴様はスパーダではなくその子孫と申すか?」

ダンテ「間違われるなんてのは日常茶飯事だがな 確かにスパーダは俺のオヤジさ」

先の不機嫌を吹き飛ばすように酒を交えながらの男同士の会話は弾んでいた。樽に満たされていた酒は半分ほどになっている。最も酒代を払った張本人は会話にも入れず酒も飲めずじまいである

イスカンダル「余はな…一度スパーダに敗れておるのだ」

ダンテ「ハッハッハ!オヤジが負けるなんて想像つかねぇよ」

そこで今の今まで会話に混ざれなかったウェイバーが口を開いた

ウェイバー「スパーダが人間界に来たのって確か二千年前だろ?で、ライダーが実在してたのはもっと前じゃなかったか?」

イスカンダル「以前にも余は聖杯戦争紛いのモノに呼び出されたことがあってな。その時らしいのだ」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 16:41:33.32 ID:/E/+nPeE0
ダンテ「その時の記憶…英霊の場合は記録のほうが正しいんだったか」

イスカンダル「余はこやつだけは倒さねばならん宿敵だと思い最終の手段に訴えた」

ウェイバー「中途半端にしか見てないけどさっきのアレ…だよな?アレが破られたのか?相手はたった一人だったんだろ」

イスカンダル「余が誇る宝具「王の軍勢」の現界時間は約30ターン。だが奴は数ターンも経たず余の軍勢を倒してしまったのだ」

懐かしむように、しかし悔しさをにじませた何とも言えない表情で征服王は続けた

イスカンダル「しかも奴は対軍宝具の類を使うことなく、その剣技のみで、な。恐らく残り半数でかかってもありゃダメだったろうなぁ」

ダンテ「なるほどな。それで俺にリベンジってワケか 筋が通るな」

イスカンダル「敗れた余に奴はこう言ったのだ。いつか魔界へ遠征へ往け。きっと貴様を満足させる。とな、あれは胸が躍ったのぅ」

ダンテ「親父らしいな。――魔界へドライブか悪くないね」

イスカンダル「あぁ、いつか行ってみたいものよな」

25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 19:00:59.01 ID:/E/+nPeE0
ダンテ「戦争には勝つんだろ?問題ないさ。軍入りはお断りだが気が向いたら手伝ってやるさ。借金もすぐに返せそうだしな」

イスカンダル「おぉ!それは頼もしいな!ぜひ頼んだぞダンテよ」

ダンテ「オーライ。ライダーの旦那期待してるぜ」

征服王と悪魔狩人。聖杯戦争でも異例のタッグはこうして結成されることとなった

鉄橋上
ウェイバー「あぁ…イギリスに帰りたい…」

イスカンダル「そう急くなと言うておろうが。状況も動き出しそうだぞ。これは一戦やらかす予感だぞ」ニヤ

ウェイバー「どうせお前は突っ込むんだろ?そんな大事な時に何でダンテはいないんだよ!」

イスカンダル「それを余にいうのは些か筋違いと言うものだろう。だが「最高にクレイジーでクールな登場してるやるから楽しみにしてな」とは言っておったのう」

ウェイバー「嫌な予感しかしないぞあぁもう!とりあえず降りる!」

イスカンダル「む、あ奴等さっそくおっ始めおったか。我らもそろそろ行くか!」


26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 21:11:18.67 ID:/E/+nPeE0
埠頭
ランサー「次こそは獲らせてもらうぞ。セイバーよ」

セイバー「それは私に獲られなかった時の話だランサー」

再び両者が剣と槍を交えようとしたとき、晴れ渡っていた空には雲が立ち込め雷鳴が響いた。雄叫びをあげながらの征服王の登場である

イスカンダル「双方武器をおさめよ!王の御前である!!我が名は征服王イスカンダル!此度の聖杯戦争ではライダーのクラスを得て現界した!!」

ランサー「先に名乗った心意気には感服だが目的はなんだ?」

イスカンダル「ものは相談だが貴様ら余の臣下となる気はないか?今や伝説の魔剣士、スパーダの直系とも盟友となった余の軍勢。もはや敵はおるまいて」

セイバー「あの…スパーダの直系が?」

イスカンダル「応とも。グータラだがアレはまさしく本物だ。まだまだ伸びるぞ」

セイバー「…だとしてもその誘いは断らせてもらう。私も王としてかつてブリテンを預かった身だ」

ランサー「右に同じく。俺が今生にて聖杯を捧げると誓ったのはマスターだけだ。断じて貴様ではないぞライダー!!」

イスカンダル「…待遇は応相談だが?」

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 22:23:50.23 ID:/E/+nPeE0
セイバー・ランサー「「くどい!!」」

ウェイバー「どうするんだよライダぁぁぁぁ……!!」

「まさか、君も聖杯戦争に参加する腹だったとはねぇ」

「ウェイバー・ベルベット君?」

ウェイバー「ケイネス……!」

ケイネス「教え子には幸せになってもらいたかったのだがねぇ。君には特別課外授業を受け持ってあげようではないか」

ウェイバー「あ…あぁ…」

ケイネス「魔術師同士が殺しあうという本当の意味。その恐怖と苦痛を余すことなく教えてあげるよ」

ウェイバー「あぁぁ…あ…」

絶望に染まるウェイバーの方を大きな手がポンと叩く。それはもはや手ではなく強大な盾で守られているような安心感がウェイバーを包み込み震えは消えた

イスカンダル「おう魔術師よ。貴様坊主に成り代わって余のマスターになるつもりだったらしいが片腹痛いのぅ」

ケイネス「……?」


28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 22:30:30.85 ID:/E/+nPeE0
イスカンダル「余のマスターは共に戦場を駆ける勇者でなければならん。闇に隠れて見を決め込むようなものに余のマスターは務まらんわ」

ケイネス「………ッ!」

イスカンダル「他にもおるだろう!闇にまぎれて見物しておる連中は!この際に及んで顔見せを尚怖じるようなものはこの征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと痴れ!!!!」

「――よもや、一夜のうちに王を語る不埒者が二匹も沸くとはな」

現れたのは黄金。圧倒的な王気を纏い華美な鎧を身に着けし深紅の瞳のサーヴァント
そのサーヴァントは二人の王、輝く貌を前に臆することなく憚った

イスカンダル「難癖つけられたところでなぁ…余は余に知れ渡る征服王イスカンダルに他ならんのだが」

セイバー「貴様は…」

ギルガメッシュ「雑種共、我はこそ天上天下唯一の王。此度の聖杯戦争ではアーチャーの座にて君臨した」

ギルガメッシュ「我が拝謁の栄に浴してなおこの面貌を見知らぬと申すならそんな蒙昧は生かしておく価値すらない!」

十―数十を超える剣、槍その他etc数えきれない宝具の数々
その一つ一つが至宝であり、そこには贋作の一つすらない

「―さて、主役の登場と行こうか ハデにかますぜ!」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 23:05:12.97 ID:/E/+nPeE0
夜の埠頭に響き渡るエレキギターの雷鳴、轟音、コンテナは演出のように次々と爆発し、華麗に宙を舞いながら、王の財を足蹴にするかのごとく弾き飛ばしながらそれは現れた

ダンテ「主役は少し遅れて出てくる完璧だな ―おいおい趣味の悪いキンピカ野郎がいるな 馴染みの服屋でも教えてやろうか?」


―悪魔は現れた

ギルガメッシュ「…な、にぃ?貴様如き雑種が王たるこの我の装飾に異を唱えるか?」

ダンテ「気に入らないね 服装もだが――態度もだ 俺より目立つ奴とお喋りな奴は気に食わない」

ダンテ「ついでに言ってやると雑種って言い方もだ ロクでもねえ親父だがこれでも誇り持ってるんでね 大体アンタも雑種だろ?混じり物の臭いがしやがるぜ」

ギルガメッシュ「吼えるな雑種が。貴様、塵芥に帰ろうとも尚王の怒りは鎮められんものと思え!」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 23:28:10.83 ID:/E/+nPeE0
バーサーカー「■■■■■―――――!!!!」

溶けた闇が形を成すように漆黒の甲冑は現れた
今までダンテに注がれていた視線は全て狂戦士に向けられる

ダンテ「――もう少し待ってればよかったな」

ギルガメッシュ「誰の許しを得て我を見ている?」

バーサーカー「……………」

ギルガメッシュ「せめて散り様で我を興じさせよ」

宝物庫から二振りの剣が投じられる
一瞬のうちに起った爆発は完全にバーサーカーを粉砕したと思われた

バーサーカー「………………………」

ギルガメッシュ「汚らわしいその手で我が宝物に触れるとは―それほど死に急ぐか狗!!」

続々と投じられる至宝の群を紙一重で華麗にかわしていく。その姿はまさにスタイリッシュそのもの。完全にお家芸を奪われてしまったダンテ


33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/03(水) 23:40:43.77 ID:/E/+nPeE0
ダンテ「こっちにも放ってこいよ。もっといいもんを魅せてやるぜ」

ギルガメッシュ「ならば貴様も纏めて吹き飛ばしてくれるわ「王の財宝」」

ダンテ「―――こんなもんか」

王の財宝が放たれ、それは確かにダンテを捕えていた。ダンテ自身も手を掲げ指を鳴らす以外の動作は何もしなかった。が、ダンテは顕在し、王は丁寧に並べられた剣を忌々しい目で見ながら憤慨している

ギルガメッシュ「――なっ!?貴様!!」

ウェイバー「おいライダー!説明しろよ!なんでアイツ怒ってるんだ?」

ライダー「フム、あの剣に秘密があるのか、どれ」

ライダー「――あぁ、成程なぁ」

上空から見ると放たれた至宝の数々は「○○○○」の字を象るように綺麗に並べられていた

ウェイバー「あんな一瞬でどうやって…」

ライダー「何にせよアイツ、まだまだ奥の手があるみたいだな」

ダンテ「―燃費は悪いが中々ゴキゲンなスタイルだろ?

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/04(木) 00:00:43.37 ID:5VlWOvEn0
―クイックシルバー。大魔術にも匹敵する時空制御の術を広範囲にやってのける荒業。通常の魔術師では数秒と持たないがダンテのその魔力はやってのける

尤も燃費が悪いのも事実であり魔人化と併用でもしようものなら流石のダンテでも十数秒が限界と言ったネックを抱えている

ギルガメッシュ「―何!?ここで引けと?―――――…ッ!まぁよい、そこの赤い雑種、貴様は我の手で直に屠ってくれる。精々有象無象を間引いておけ」

ランサー「邪魔が入ったなセイバーよ。貴公との勝負、預けておこう。ではな」

セイバー「あぁ、最後まで共に勝ち進み剣を交えること、心待ちにしているぞランサー」

ダンテ「堅い連中だな。こんなのしかいないのか?ライダーの旦那よ?」

ライダー「そうさなぁ…余はスパーダを見ておるとお前の弾けっぷりの方が異端に感じるというのもあるのだが…」

ウェイバー「そうだよ!お前はもう少し隠密にいけぇ!」

ライダー「奴の戦い方じゃそれは無理だ。坊主、お前が悪い」

ダンテ「そういうことだ これからもハデに決めてやるからよろしく頼んだぜ。雇い主様よ」



こうして聖杯戦争は幕を開けた

35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/04(木) 01:09:17.01 ID:5VlWOvEn0
翌日
―ホテル―

ケイネスは苛立っていた。自慢の生え際もストレスのせいか昨日から2cm程後退してしまっている
自らが呼ぶはずだったライダーの豪胆さ、そしてウェイバーサイドと思われる赤いコートの男。そして何よりセイバーとの戦いに呆けていたランサーに苛立ちは抑えられない

ケイネス「えぇい貴様!あの体たらくはなんだ!私の顔に泥を塗るつもりか!」

ランサー「しかし主よ…あの場でうかつに動けば私とて危険。そうなっては主を危険にさらすと判断し見に徹したのですが…」

ケイネス「ではその前のセイバーとのアレはなんだ!聖杯戦争は貴様の騎士道とやらに付き合うための遊びではないのだぞ?」

ソラウ「そこまでにしたら?もう呼んでしまったものは仕方ないじゃない?それにあなたの不注意でもあるんだし、過ぎてしまったことを感情的に叱るだなんて建設的じゃないわ」

確かに、その通りではある。が腹の虫はおさまらない。それはこのランサーを庇うようなソラウの発言こそが原因。
しかし惚れたもん負けとはよく言ったものでケイネスはソラウに頭が上がらなかった

ケイネス「…その通りだなソラウよ。ロード・エルメロイと称されるこの私がつい感情的になってしまったようだ。しかしランサーよ次からは…わかるな」

ランサー「はっ、御意にございます」

ケイネス「そうだランサー、一つ命じよう――――――」


37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/04(木) 01:42:33.91 ID:5VlWOvEn0
ランサー「―――お任せあれ。主との工房ともにこのディルムッド、見事汚名を晴らして見せましょう」

ソラウ「どういう風の吹き回し?」

ケイネス「なぁに、あのコートの男さえ倒してしまえばかわいい生徒の指導に専念できると思ってね。ランサーにここまで消耗させた状態でおびき寄せてみようと思ったまでだよ」

ケイネス「ランサーが無能だろうと、消耗した状態でこのケイネス・エルメロイの魔術工房だ。いかにあの男でも生き残れるはずがあるまいて」

マッケンジー宅
ウェイバー「あれ?ダンテは…?おいライダー知らないか?」

イスカンダル「ん?あぁ…夜のドライブだとか言って出かけおったぞ。ま、心配はいらんわな。あぁもう、良いシーンを見逃したではないか」

ウェイバー「また勝手に!動きやがってぇ!…はぁ、しょうがないよな。」

もっと僕がこう、あの二人を華麗に指揮して…と考え込むウェイバーだったがその幻想は完全に打ち砕かれていた


一方ダンテは。レディに頼んで新調してもらったバイクを華麗に乗りこなしていた
借金が法外な値段に膨れ上がり、聖杯戦争の後、数日徹夜で魔具を集めることになるのだがそんなことは今のダンテに知る由もない


38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/04(木) 02:35:31.05 ID:5VlWOvEn0
ダンテ「いい風が吹きやがるな。――と言いたいところだが瘴気っていうのか?こういうの」

海岸沿いから見える新都には微かに黒い靄のようなものがかかっている。
勿論一般人にはわからない。所謂見えちゃう人には見えるという奴である

ダンテ「折角のドライブが台無しだな 金髪美女でも後ろに乗っけりゃ気分も晴れるんだが」

期待を裏切るような鋭い殺意。間違いなくサーヴァントのものだ

ダンテ「出てこいよ?いるんだろ?」

ランサー「すまないな魔剣士よ。金髪の美女ではなく男である俺で、セイバーのほうが良かったかな?」

ダンテ「まさか、俺にそっち系の趣味はないんでね。ロリータはパスさ、出るとこ出てないとな」

手で胸や尻を丸く囲いジェスチャーする

ランサー「確かにそうだな。セイバーはお前好みではないか、ではこちらは如何か?」

手に握られているのは二本の魔槍。まぎれもなくランサーの宝具たるものだ

ダンテ「言っておくがな、俺はアンタにもムカついてるんだぜ ハンサム?」

ランサー「…身に覚えがないが?」

ダンテ「俺よりハンサムがそうそういてたまるかって話だ」

研ぎ澄まされた頭身に自分の顔を照らしうっとりと微笑む。その後角度を変え映し出された輝く貌を見た途端、それはしかめっ面へと変わった

ランサー「なぁ魔剣士よ、男の価値が顔で決まるわけでもなかろうに」

ダンテ「御託はいいんだよ。そこまで本気で思っちゃいないさ。さぁ始めようか!レッツロックだ!」

39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/04(木) 14:09:25.48 ID:5VlWOvEn0
ランサー「貴様になら名乗っても問題ないだろう。ディルムッド・オディナ!推して参る!」

ダンテ「まずはコイツで決まりだな朝飯前か?英雄サマ?」

ズガガガガガと鈍い銃声が響き一瞬の間にマシンガンの如く放たれた魔弾がランサーを襲う

ランサー「―くっ!」

華麗な槍さばきで弾いたものの総ては弾けず、頬からは一筋の赤がしたたり落ちていた

ダンテ「オイオイ、ハンサムが台無しだな。大丈夫か?」

ランサー「成程。これは心が躍るな魔剣士よ。現の世に呼び出された甲斐があったというものだ!」

ダンテ「来いよノロマ!」

誘っているようながら空きの挑発、何かがある。この男の手札の数は膨大だ。しかし武人の血が騒ぐ、罠と分かりつつもランサーは猛りを抑えることができなかった

疾走、こと脚力には自信がある。しかし、それを踏まえても浴びせれるのは一度が限度だろう
そう判断した勝負の一撃に選択したのは

ランサー「抉れ!必滅の黄薔薇!」

不治の呪いを帯びた黄薔薇の一撃だった

40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/04(木) 14:30:43.38 ID:5VlWOvEn0
この一閃がもう一本の魔槍であったなら、通常時は体内に眠り、必要時に魔具として纏われるベオウルフを切り裂き結末は違ったかもしれない

しかしランサーとて、スパーダの血族の尋常ならざる回復力は承知していた。故に必滅の黄薔薇を選択したのだ
セイバー戦のように武人としての知略が裏目に出た。それが今回はランサー側だったというだけの話

それが勝敗を分かつ一瞬だった

ランサー「―これは…!」

ダンテ「兄貴からの土産みたいなもんさ 悪魔が輝くのも乙ってもんだろ」

捉えた。手応えもあった。しかしランサーの耳に聞こえてきたのは
ガキィンと鈍い金属音。魔剣士の腕には光り輝く装甲が纏われている

ダンテ「くらいな!」

ランサー「―しまっ…!」

ダンテ「Rising Dragon!!!!」


41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/04(木) 17:22:46.32 ID:5VlWOvEn0
―ホテル―

ケイネス「何をしておるのだあの愚図が!どうせまた下らん騎士道とやらに振り回されているのではなかろうな…!!」

その時、遠方からでも分かるほどにランサーの鼓動は弱まった
大方本気で挑み返り討ちにされたのであろう。あの自信過剰め

苛立ちに拍車がかかる

ケイネス「我が僕に令呪を以て告げる――ここの位置を知らせて直ちに戻ってこい!」

ランサー「……カハっ!っぐ……申し…訳ありません」

ケイネス「当然だ!その死に体で言い訳ができるようなら態々令呪で呼び戻すこともない!」

ケイネス「…だが奴も多少なりとも手傷はおっているはず、ホテルの者も催眠術で外に出払っている。1フロアどころかすべての場所に仕掛けをしておいたのだからな。…さぁとくとケイネス・エルメロイのの魔術工房を堪能してもらおうじゃないか」

―ホテル前―

ダンテ「――ここか。ショーに水差すなんて酷いことしてくれる奴もいたもんだなオイ?」

ダンテがホテルに入ったと同時にぴしゃりと戸は閉じられ何重もの結界が戸を覆った
不快な空気が漂いここが通常の空間でないことを認識させられる

ダンテ「罠ってわけね。こっちは慣れっこだがな さぁ正面突破と行こうか!!」

44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/05(金) 00:22:34.42 ID:zEFIOLJe0
―ホテル上階―
ケイネス「結界24層、魔力炉3基、猟犬代わりの悪霊、魍魎数十体、無数のトラップ、廊下の一部は異界化させている空間もある。トラップも追加してある
ランサーもソラウの治癒を受けている。それまでにはいくらか回復していよう…ククク、完全な私の勝利だ」

ワイングラスを片手に優雅にほほ笑む
人手を払ってしまったことにより、予定より早く迫りくることとなったもう一つの魔の手などあるわけがないと未だ気付かず

ホテル中層部

ダンテ「――完全に人を殺す気だな ウェイバーならもう20回は逝っちまってるぜこれ」

確かに魔術工房は驚異的であった。魔塔の件以前のダンテなら喜んで引き受けるくらいには刺激もある
しかし今のダンテにはやや物足りないものとなっていた

ダンテ「ったくあのハンサムのマスターには舐められたもんだな 死なねぇ程度に蹴りでもブチかましてやるとするか――ん?」

音が聞こえる。悪魔の地獄耳だからこそ捉えられるそれは何かを刻むように正確に音を立てている

ダンテ「ハデにドカンって感じの爆弾でもないな ランサーのマスターって感じじゃなさそうだな――これ以上の茶々入れはごめんだぜ」

何の考えもなく引き金を引く

爆発したならそれでもいい。自分はこの程度で死にはしないし、人の気配は感じられない。
ランサーも瀕死であろうがランサーさえいればマスターも即死はまずありえないだろう。

そしてこれは鉛玉を一発くれてやれば恐らく止まる。無意識ではあるがその全てが若いとはいえ経験を積んだダンテにはわかっていた

ダンテ「――景気がいいな ジャックポットだ」

爆弾はその鼓動を止めた

50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/05(金) 19:26:41.37 ID:zEFIOLJe0
―ホテル上層部―

衛宮切嗣が仕掛けた爆弾は16基、そのうちダンテが破壊した爆弾は7つ。
本気になれば後5つ以上は捜せたのだが、決戦中に崩れ落ちるビルもクールじゃないかと考え付いたのだ
最小限の火薬でビルを崩そうとするこの策には決定的な穴が開いてしまった、

ダンテ「―クライマックスも近いな ライダーの旦那には悪いが先を越させてもらおうか」

「それは俺に先を越されなかった時の話だぞ。 魔剣士よ」

ダンテ「顔に似合わずガッツがあるじゃねぇか、見直したぜ」

ランサー「お前には敵わんさ。敬意を表すぞ魔剣士よ」

ダンテ「それにしてもアンタのマスター、酷ぇことしやがるな。人でも殺す気か?あの罠は」

ランサー「ほぼ無傷のその体で言われてもな。自らが人ではないと自己紹介しているようにしか見えんぞ」

ダンテ「オイオイ人を化け物みたいに言うなよ 今すぐシャワー浴びちまいたいくらいにはクタクタさ」

ランサー「―さて、談笑はこれにて終わりだ。行くぞ」

ダンテ「―ハッ!吼え面かきやがれ!」

剣と槍が交わったその時、ビルがぐらりと揺れた

ランサー「貴様…と言うわけではなさそうだな…」

ダンテ「半分以上放置したのも事実だがな。続けようぜ、パーティーは派手な方がいい」

ランサー「主…どうか御無事で…私もすぐに駆けつけます故、この一時だけはどうか…どうかお許しを!」

55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/05(金) 23:47:31.78 ID:zEFIOLJe0
崩れゆくホテルの中打ち合うこと百合以上、思いのほかダンテは攻めあぐねていた

ダンテ「やるじゃねぇか。見直したぜ」

先の戦いで銃弾を裁ききれなかった時点でダンテは自らより実力が劣るであろうことを確信していた。
事実、持てる力を総動員すれば現状を打破するのは容易いことなのかもしれない。だが初見の見立てでは切る手札の数はもっと少なく済むのであろう、そう思っていた

ランサー「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

しかし、この男は食い下がってくる。
手傷でいえば、連戦明けの自分より既に多く傷付き、その体は血に塗れ、甘く涼しげだった顔は獣のように猛り狂っている。しかしそれはどこか満足気な、まるでこのために生まれてきたような、どこかそんな気配を感じさせる

ダンテ「―ッ!」

体力もこちらに分がある。しかしこのままジリ貧で終わらせてしまったのでは華がない
手にしたのは氷の権化、上階にまで火は迫ってきているというのにそれを手にした途端、フロアはどこか寒気すら感じられるほど冷え込む

ダンテ「これでもくらいな!」

ランサー「ちぃっ!」

ダンテ「COOLだぜ!!」

ダンテの周りを覆う氷の壁、今度は見逃さない。槍兵が手にしたのは赤の魔槍

ランサー「破魔の紅薔薇!」

魔力で編まれた氷、そしてとっさに構えたケルベロスは一時、その形を失う
今の槍兵にとって、その刹那は百年以上の価値を与えた

ランサー「―加えて、必滅の黄薔薇!!!」

不治の呪いを帯びた一撃。それは魔剣士の心臓を穿った

66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/07(日) 00:04:48.08 ID:CMMgNOSg0
ダンテ「――折角のコートが台無しだ 高くつくぜ?」

いつもの恒例行事、さして気に留める必要などない

ランサー「心臓を貫いてまさかこの程度か―やれやれ、気が遠くなるな」

ダンテ「さぁ3ラウンド目だ」

しかし、回復が始まらない

ダンテ「―なるほどね ご丁寧に呪いのサービス付かよ」

ランサー「スパーダの血族相手では少し役不足ではあるかもしれんがな。―まぁこちらの意地と言うものだ。受け取っておけ」

心臓が停止した状態でも、魔力さえその身に満ちていれば強制的に生きながらえることはできる。
それでも、楽観視できる状況ではなくなった。悪魔は槍兵を遊び相手から敵と認めたのだ

ダンテ「そうかい―なら少し本気で行くぜ」

現れたのはまさしく影。模倣、ではなく完全に魔剣士の動きを再現している
狭い廊下に槍兵は挟み込まれる形になった

ランサー「どうやら悪運もここまでか―いや、俺自身こうして死ぬことを望んでいたのやもしれん辺り幸福と言ったところかな」

ダンテ「―皮肉なもんだな」

槍兵の冴えわたる槍は最後の輝きを見せるが如くその精度を上げていた

ランサー「はぁぁぁ!!」

当たらない。間一髪で交わされては再び現れた影に身を斬られる
斬撃が、銃撃が、拳が、演奏が、その全てが美しい


止めの一閃。身を斬り裂く痛み以上にランサーは何かに魅了されていた

ランサー「―美しい……」

ダンテ「フィナーレだ」

SSStylish!

70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/07(日) 16:41:16.47 ID:CMMgNOSg0
―アインツベルン城―

切嗣「舞弥、確かにあの男を見たんだな?」

舞弥「間違いありません。」

切嗣「―と、なるとやはり爆発が少なかったのは奴の仕業と見るのが妥当なところか。まさかケイネスに爆弾を見つけることができるとも考えられないし、見つけるなら徹底するだろうからね」

会話と言う形こそとっているものの切嗣の視線は目の前の書類に向けられており、端から見れば独り言をつぶやいてるようにすら見える

切嗣「スパーダの直系か。危険な相手だ」

衛宮切嗣と言う男は本当に危険と感じた相手にしかこの言葉を使わない
恐怖は恐怖によって塗り替えられる。恐怖を感じるからこそ、言峰綺礼以上にこの男は徹底マークしなければならない

アイリ「でも反則よね。他の助っ人頼むだなんて」

切嗣「―それを言われると、僕の立場がなくなるじゃないか、アイリ」

時間は限られている。妻がいつまで人で居られるのかも分からない
だからこそ、別れを無駄にはできない。世界の恒久的平和。その実現の為にこの冬木の地での戦いが、人類の流す最後の血でなければならないのだから


71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/07(日) 17:21:07.72 ID:CMMgNOSg0
切嗣「スパーダ、反逆の英雄様か…随分と都合のいい正義もあったものだよ」

あの男を知るためにはスパーダを知る必要がある
資料を読み漁ればあさるほど、スパーダと言う英雄は化け物じみた強さを持っているらしい

アイリ「切嗣、何を書いているの?」

切嗣「あぁ、スパーダの資料や映像、使い魔。そして僕の目で見たうえで奴のステータス、特性なんかを少し纏めてみようと思ってね。その方がセイバーも動かしやすいだろうしね」

切嗣「―とは言ったものの…」

舞弥からの報告によればランサーの消滅を確認したとのこと
ランサーははっきり言ってアタリかハズレで言えば性格面はともかく、白兵戦型では十分アタリの部類に入るサーヴァントだ。それを倒し何食わぬ顔で帰還したとなればまだ、何かあるのだろう

最初にライダーと交戦したときに放った使い魔がとらえたあの映像。
まだ、奴は底知れぬ何かを隠している以上。能力を決めつけて行動してしまうことこそ危険なのではないか?

スパーダに関して言えば英霊の枠をとっくに超えてしまっているのだから。
コーヒーを淹れなおす。もう何杯飲んだのだろうか。

切嗣「サーヴァントとの交戦の後に聖剣を叩き込む―」

ライダーのマスターを捕えて―勿論そんなことくらいは考えた
しかし、ライダーとともに行動する以上捉えるのは困難だ。捉えたところで奴は自分の能力をはるかに上回る時空静止のような能力すら持っている

切嗣「これが現状ベストか。随分生ぬるい策しか取れなくなったものだな」

72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/07(日) 19:47:01.58 ID:CMMgNOSg0
―マッケンジー宅―

ウェイバーは部屋の片隅に追いやられていた
何故かお分かりだろうか
部屋に2m前後ある大男が二人も、スペース配分を気にせず寝そべっているからである

ウェイバー「お前らぁぁぁぁ…!」

イスカンダル「何だ坊主?」

ウェイバー「昼間っからゴロゴロするなぁ!酒飲むな!食ってばっかりするなぁ!」

ダンテ「仕方ないだろ サーヴァント何か昼間からうろついてねぇしな。勝手にうろつくなって言ったのはお前だぜ?」

イスカンダル「うむ、食べるに関してはご婦人が進んで持ってきてくれるものだしなぁ。食べることは戦士の基本だぞ、坊主?」

ウェイバー「僕が言いたいのはそうじゃなくて、僕にも十分なスペースを与えろってことだ!客間くらいあったろ!」

イスカンダル「客間ではビデオが視れんではないか!それは困るぞ」

ダンテ「監視したいからここに居ろって言ったのは依頼主様だぜ?これ以上ランサーの時みたいに勝手されてたまるか!って血相変えてたの忘れたか?」

ウェイバー「―でも、本当にランサー倒したのか?そんなに弱いサーヴァントじゃなかったはずだぞ」

ダンテ「―間違いないさ 大当たり、ジャックポットだよ」

ウェイバー「そっか…ケイネスを心配するわけじゃないけどアイツ、どうなったんだろうな」

73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/07(日) 19:50:40.76 ID:CMMgNOSg0
ダンテ「さぁな。頭までノートでできてるような奴なんだろ?あたふたしてるのが落ちさ


イスカンダル「時にダンテよ。モノは相談なのだが…」

ダンテ「何だ?」

イスカンダル「お主が乗っているあのバイクと言う鉄馬。アレ余もほしいのだが」

ダンテ「オーライ、アンタが世界征服したときに出世払してくれるんならツケとくぜ。ちと依頼主様にはきついだろうからな」

イスカンダル「ガハハ!任せておけ!バイク一台分なんてけち臭いことは言わん。この国の首都くらいドーンとくれてやるわい」

ウェイバー「何とんでもないスケールで話進めてんだよ…」

ダンテ「話は決まりだ。日が暮れちまわないうちにバイク屋でも行くか 案外ここらは英語でも通じるしな。 ストロベリーサンデーが美味い店も見つかったんだぜ」

イスカンダル「ほう、たまにはご婦人の手料理以外もいいものやもしれんな!ではいざ参ろうか!」

ウェイバー「監督役だ。僕も行くからな。ちゃんと銃は中にしまっとけよ」

明らかに目立つ3人組のショッピングが始まった

80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/08(月) 01:11:35.77 ID:dofTnJUl0
―住宅街―
時刻は夕暮れ時、バイク屋での買い物を終え、一行は晩餐前にティータイムを挟もうとしていた

イスカンダル「いやぁ満足満足!バイクは明日かぁ!ワクワクして今日は寝れんな!」

ダンテ「予感はしてたが一番高いもの選ぶとはな 勝手にレディにつけといたが帰るのが怖ぇよ」

ウェイバー「で、ここ何処だよ?ストロベリーサンデーありそうなカフェなんてどこにもないぞ」

ダンテが俺に任せな、と言うのでついて行ってみれば店らしきものが見当たらない洋館立ち並ぶ閑静な住宅街へ迷い込んでしまったのだ

ダンテ「―そうだな。バイクで移動した景色と随分違うもんだ」

イスカンダル「馬だとあっという間だからのぉ。慣れん土地だと致し方ないわな」

ウェイバー「お前らみたいな体力馬鹿と違って僕は疲れるんだよ…道でも聞こう。日本語はまだ苦手なんだよな」

と言っても周りに人はいない。交通にやや難がありそうなここではマダム達は昼間に買い物を済ませてしまっているのだろう。

ダンテ「―あそこにかわいらしい道案内が居るぜ」

ウェイバー「え?どこだよ…」

ダンテが指差す100m程先に少女はいた

ウェイバー「―ってここ間桐の家じゃないか……」

イスカンダル「応、嬢ちゃんよ。道を尋ねたいのだが良いかな?」

桜「なんでしょうか」

82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/09(火) 01:49:05.40 ID:aq48jO8Q0
目の前の少女は壊れていた
正確に言うならこれ以上壊れないようにと傷ついた心に瘡蓋の様な蓋をして辛うじて生きている、そんな状態
何かを失ったその瞳はダンテに見覚えがあった。まるで母を目の前で失ったあの時の自分のような―そんな瞳

決定的に違うのはダンテには力があった。身を隠し生き抜くだけの力が、だが目の前の少女にそれを求めるのは酷だろう。放ってはおけなかった

ダンテ「なぁ旦那、ちと通訳頼んでいいか?」

イスカンダル「構わんぞ。盟友の申し出だ。無粋に断りはせんて」

英霊は現地の知識や、言語を与えられる。自分の言葉で伝えられないのがもどかしかったが、そうするよりほかはなかった

ダンテ「パパやママはいないのか?」

桜「おとうさまとおかあさまはもういません。さくらはおじいさまのこどもになりました」

ダンテ「―兄弟は?」

桜「おねえちゃんがいました。でも、もうあえません」

ダンテ「何でだ?会いたくないのか?」

桜「おじいさまにはさからえません。さくらはまとうの子です」

話はイマイチつかめない。子供に説明を期待すること自体可笑しいことなのかもしれない
でも、元凶だけはよく分かった。どうやら「おじいさま」というのをブチのめせばとりあえずどうにかなるらしい

ダンテ「―そうかい。また寄らせてもらうぜ、桜」

桜「おにいさんはだれですか?」

ダンテ「―悪魔だよ」

救いを差し伸べるはずの桜ですらぞっとするほどその顔は凍りつき、悪魔として生きた兄、バージルと同じ冷酷な悪魔の顔がそこにはあった

87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/09(火) 20:06:49.85 ID:aq48jO8Q0
―間桐邸―
陰鬱とした闇より深い闇、蟲蔵に、燃える復讐鬼、雁夜は呼び出された
今の体では屋敷に辿り着くのも一苦労だったが、奴に逆らえばもう一つの目的、桜を守ることが危ぶまれる。
重たい体を引きずり、間桐の忌々しい魔術、その権化に再び相見えた

雁夜「何だ吸血鬼。俺は聖杯を手に入れてやる、問題ないだろうが…」

臓硯「そう結論を急かすでない。何、かわいい息子に少し頼み事をしようと思ってな」

雁夜「…早く言いやがれ。こっちもそうは長く持たないんだ」

臓硯「カカ、では本題だが―ライダーのサーヴァントと共に戦場を駆けるあの魔剣士はお前も知っておるな?」

雁夜「…あぁ、アンタが奴をうまく利用しろって言ってた銀髪の奴のことだな」

臓硯「奴のことなのだが―どうやら桜をさらいたいらしいのだ」

雁夜「―何、だって?」

臓硯「こちらなりに調べたのだがあの魔剣士、面白い事件には首を突っ込んで引っ掻き回すのが趣味だそうでのぉ。資金繰りにも困っているそうな、桜ほどの才、協会にでも売り飛ばせば幾らになるやら」

後ろを振り向きニタァと笑う。
この莫迦者にはこの程度の演技で十二分だと。

雁夜「桜を狙っている―だと?あんな小さな子を…!!まだ虐げたい奴がほかにもいるってのか…?!」

臓硯「一つ力になってくれんか、―――なぁ雁夜?」

雁夜「……勘違いするな。貴様もそいつと同類だということを忘れるな。アンタからもそいつからも桜は俺が守り抜いて見せる」

青年は再び命を燃やす覚悟を決めた

88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/10(水) 00:10:56.10 ID:zwJrmf2F0
時刻は深夜。辺りは静まり、洋館と言う一種のホラーテイストな建物はより一層不気味さを増していた
門の前には盟友を置いて悪魔が一人

ダンテ「結界か、魔術師様はご用心が好きみたいだな」

ハデに門を蹴り飛ばす、ダンテなりの礼儀であり、宣戦布告である

ダンテ「―聞こえてるんだろ?ビビってるんならそれでもかまわないぜ」

鈍く軋む音を立て開かれた門からは、生気が感じられない男が出てきた

雁夜「…貴様か」

ダンテ「嬢ちゃんを渡しな。あの子にはまだ親が必要だ」

雁夜「協会が親か。笑わせるなよ外道」

ダンテ「おじいさまの手先って奴か。悪いがここを力ずくで通りたいくらいには俺も吹っ切れちまってる」

冷酷な悪魔、口調こそ粗雑だがいつもの軽薄さは成りを潜め溢れんばかりの殺気が辺りを包む

雁夜「確かに俺は臓硯の傀儡かもしれない。だがな、貴様のような外道とは訳が違う」

ダンテ「話が通じないみたいだな ―まぁいい、死んだら祈るくらいはしてやるよ」

雁夜「殺し潰せっ!!!バーサーカー!」

バーサーカー「■■■■■■■――――――ッッッッッッ!!!!!!!!!!」

89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/10(水) 02:03:16.83 ID:zwJrmf2F0
ダンテ「―ッ野郎が!」

初撃、痛手ではないがモロに受けてしまった
油断したつもりはない。だが黒き甲冑の騎士は魔人化していないとはいえ油断していないダンテの反応スピードを越え当ててきたのだ

バーサーカー「■■■■■■■■―――――!!」

先に魔弾を放ったのはバーサーカー。
大口径のガトリングガンが火花を上げる
魔剣士相手で、用意なしでは厳しいだろうと我が身かわいさに臓硯が用意したものである

ダンテ「昔モンが銃使うんじゃねぇよ!」
対抗してエボニー&アイボリーも常軌を逸脱した連射を見せる
拮抗こそして見せたが、獲物の違い―悪魔の連射に耐えうるだけの強度を誇るハンドガンと急きょ取り寄せた粗品の銃。差がつくのは当然のことだった。ガトリングガンはその寿命を終えた

ダンテ「そっちはオシャカみたいだな―行くぜ」

雁夜「バーサーカー!接近戦で応戦しろ!」

バーサーカー「■■■■■■■――――!!!」

手に取ったのはあくまでそれなりの名剣。
だが、一度バーサーカーの手に渡ればそれは宝具として魔剣に対抗しうるものとなる


ダンテ「いい腕してるよアンタ。だが英霊様が誇り捨ててどうするんだ?」

バーサーカー「■■■■―――!!」

ダンテ「―そうかい。アンタもジジイの手先ってか?」

バーサーカー「■■■■――――ッッッッ!!!」

ダンテ「どうした?もっときやがれ!」

機能美と装飾美が紙一重のバランスで保たれている甲冑と赤き華美なコートが火花を散らし夜に舞う
現代の武芸百般対古代の武芸百般。そこに入り込める者はおらず、戦いは熾烈を極めた

バーサーカー「!!?」

ダンテ「さぁ、その剣で何本目だ?」

技術は互角、しかし上級魔具と粗末な宝具の差は明確
バーサーカーが振るう剣は自分自身の技量、そして魔剣士の力には耐えきれず悉く形を失っていった

雁夜「―もう剣は…」

ダンテ「これでフィニッシュだ」

ベオウルフの鋭い手刀
確かにそれはバーサーカーの甲冑を打ち砕く

はずだった

バーサーカー「■■■■………!」

ダンテ「白刃取り―!?」

みるみると純白の装甲は黒く染まり
左手のベオウルフはバーサーカーの左腕に纏われた

90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/10(水) 02:35:34.69 ID:zwJrmf2F0
ダンテ「お気に入りだったんだがな。それは」

ベオウルフ――元はと言えば兄の物だった
フォースエッジのように家族の絆の象徴とは言えない。それでも、兄の物だった

ダンテ「○○○○!」

左足の踵落とし。今度こそは――!

バーサーカー「■■■■―――」

左足の装甲も黒く浸食されていく、狂戦士は魔剣士と同じ装具を手に入れた

ダンテ「―くらいな!」

バーサーカー「■■■■―――」

ダンテ「RisingDragon!!!!」

バーサーカー「■■■■―――ッッッッ!!!!!!!」

白と黒の龍が夜空を駆け巡る
空に跳躍してなお熾烈な殴り合いは止むことを知らない

バーサーカー「■■■■■■――――――――――ッッッッ!!!!!!!」

ここにきてややバーサーカーが優勢に事を進め始めた
技術の差でも体力の差でもない
もし父やニールが残してくれたリベリオンやエボニー&アイボリーを奪われたら―という一種の怯えである

ダンテ「行儀が悪い奴だな―あのキンピカが怒るわけだ」

雁夜「今だバーサーカー!!」

ダンテ「――悪いな、マスターさんよ。アンタの無事は保証しないぜ、怖いようなら逃げちまえ。俺は本気だ、立派な洋館も殆ど吹っ飛ぶかもな」

魔への覚醒―そうするより手はない。大事な物に触れさせる間もなくバーサーカーを葬る。
悪魔が持つべき魔具に元が人間風情がふれること自体おこがましい
今の、今夜の自分だけはバージルと同じなのだから

ダンテ「始めよう――」

口を開こうとしたその時

「AAAAAAAAAAAlalalalalalalaie!!!!!!」

疾走がダンテをさらっていく

94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/11(木) 00:11:20.24 ID:uEfsExyE0
ダンテ「おい―何しやがる!」

イスカンダル「黙って余の言うとおりにしろ。頭を冷やせ」

ダンテ「一人でやれるって言ってんだ!降りるぜ!」

イスカンダル「――――なぁダンテよ。余とお主は盟友。前もそういったな?お前のしたいことくらい余は承知しておる。なら我らと共に戦場を馳せようではないか。―相棒よ」

ダンテ「―相、棒」

ウェイバー「そういうことだ。ここからは僕たちも一緒だ。―このままだと僕の評価にもつながらなくなるしな」

相棒、そう言える存在は今まですべて失ってきた。最も近い過去だとグルーがそれに当たるだろうか。
自らと関わってしまうことでそれを失うなら全て自分で片を付けてしまえばいいのではないか、と。
英霊とは言えライダーも人の子に近しい存在だ。いつか失ってしまうのではないか
そんな不安が無意識のうちにめぐっていた

だからこそ今日だけは、目的のためには非常になりきる兄のようになろうとしたのではないか

イスカンダル「それとも余はお主と肩を並べるには不足か、ん?」

漢の肩は逞しく、幾多もの戦場を駆けぬいてきた歴戦の猛者に違いない。
今更に気付かされる。この肩を、背中を、この漢のどこに弱さを疑う余地があったのだろうか

ダンテ「―悪いな。血が上ってたみたいだ」

イスカンダル「ならばここからはCOOLに往くぞ。お主の専売特許だ。それにダンテ、攻めることばかりが戦ではあるまい?」

ダンテ「――そういうことか、オーライ旦那。Uターンだ、反撃開始と行こうぜ!!」

真の絆を得た悪魔と英霊は再び、漆黒の甲冑へと向かう

イスカンダル「いざや往かん!盟友の宿敵!!」

ダンテ「ショータイムだ!」

イスカンダル「AAAAAAAAAlalalalalalalaie!!!!!!」

95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/11(木) 02:13:30.43 ID:uEfsExyE0
―間桐邸―
雁夜「またきやがったのか…!バーサーカー!」

バーサーカー「■■■■―――ッッッッ!!!!!!!」

ダンテ「よう、戻ってきてやったぜ。第二ラウンドの始まりだ」

雁夜「武器もかまえずに貴様、舐めているのか?」

ダンテ「これが俺流さ、さっさと来いよウスノロ。」

バーサーカー「■■■■■■――――!」

暗黒に染まりしベオウルフの一撃。音速にすら迫ろうとする速さでダンテの脇腹を正確にせらう

ダンテ「―ッ!」

雁夜「―なんだ、意気揚々と戻ってきたと思ったらサンドバックにでもなりに来たのか?――バーサーカー!そのまま息の根を止めろ!」

バーサーカー「■■■■■―――――ッ!」

もし、ランスロット卿に理性があったのであれば、この異変を察知できたのかもしれない。
されど、狂戦士となった今の彼にはひたすら相手に力を与えることしかできなかった

ダンテ「――さんざんタコ殴りにしやがって、お返しだ、受け取りな」

ジャストリリース、相手の力を一時的に蓄え放出する技
先の血の上った自分では恐らく使用することはできなかっただろう

バーサーカー「■■■■■■■――!?」

ダンテ「―感謝するぜ」

イスカンダル「礼には及ばん。だが奴もなかなか丈夫だな、ならば、いざ仕上げと行こうか!」

ダンテ「ハデに決めようぜ、相棒」

砂嵐が吹き荒ぶ、かつて友たちと駆け抜けた悠久の地
反響するものなどない更地に響く声で高らかに雄叫びを上げる

イスカンダル「今宵、皆を呼び集めたのは他でもない。我が盟友を紹介するためだ!名はダンテ!我らが宿敵誇り高き伝説の魔剣士、スパーダの直系である!」

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!!!!!!!」」」

これが、時空を超え宝具と称されるまでに至った仲間たちとの絆。そこに新たな絆が紡がれたのだ

ウェイバー「僕も、なんだけど?」

イスカンダル「おっと、そうであったな。皆の者、我がマスター、ウェイバー・ベルベットも加わった。ナリは小さいが頭の切れる坊主だ!将来大物になるぞ!!しかと見届けよ!」

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」」」

ウェイバー「―へへ」

ダンテ「ここまで喧しいと考え物だが―――たまには悪くねぇな」

イスカンダル「―では、参ろうか。よいか!!!!敵はサーヴァントの一騎のみ!!だが油断するな?若き魔剣士に手柄を獲られぬよう、一騎当千の覚悟で臨め!!!!!!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」」」

イスカンダル「AAAAAAAAAAAlalalalalalalaie!!!!!!」

96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/12(金) 16:52:32.43 ID:8HRnhN8Q0
王の軍勢の中、健闘虚しく狂戦士はその役目を終えた
武功で覆せる力には限度がある。元より、自分より各上の戦士がいた上での数の不利は最初からそれだけで敗北に近いものを意味する。
幸か不幸か。間桐雁夜の命が全て吸い上げられる前に決着はついた。

雁夜「…済まない桜…俺は………」

ウェイバー「話が違わないか?どういうことだ?」

確かこいつはそう、おじいさまとやらの手先だったのではないか
この物言いでは矛盾が生じる

雁夜「……グッ…アンタらの勝ちだ。とっととあのジジイをぶっ殺して桜を持っていくがいい…きっとお望み通り高くつくよあの子は…外道が」


イスカンダル「あー、こりゃ話がズレとるな。我らはあの子を売り飛ばすつもりなど毛頭ないぞ?連れ出してどうするかも考えておらんかったようだが、のう?」

ダンテ「悪かった悪かった。これでいいだろ」

ニヤリとした視線から背を向け頭を申し訳なさそうに掻く

ダンテ「―最初からおかしいとは思ってたが、さすがにこれじゃティータイムもままならねぇか」

ガサゴソと懐を漁り光り輝く結晶を取り出す

ダンテ「悪魔用のハードな治療だ、キクぜ?」

バイタルスター、錬金術によって編み出されし星。それは魔力を補填し、傷を癒す

雁夜「―っぐ!!あっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ハッ!あぁぁぁぁぁあ……ハァ…ハァ…」

ダンテ「話せるか?」

雁夜「なん……とかな…」

体内の刻印蟲によって食い荒らされた箇所はいくらか修復され、刻印中も魔力を与えられ、満足したのか沈静化している

雁夜「アンタらは桜の敵じゃないんだな?」

ダンテ「ハナっからからそう言ってるつもりだぜ」

97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/12(金) 22:24:49.30 ID:8HRnhN8Q0
雁夜「―そうか、あのジジイ……!」

イスカンダル「あの娘が言っていたおじい様に相違ないな?」

雁夜「そうだ。―いったん場所を移そう。かなり結界や術式の損壊が激しいとはいえ、恐らくアイツはまだこちらを観察しているはずだ」

ダンテ「オーライ、後ろに乗っけてやる。振り落とされんなよ」

住宅街から少し離れた物静かなバーにて、会談は開かれた
双方誤解があったことはすぐ理解し、行わずに済んだ戦闘を引き起こさせたのも、やはり諸悪の根源は間桐臓硯であることがダンテたちに判明した

イスカンダル「拷問に近い修練か…年端もいかぬ小娘に酷なことをしおる。壊れるのも時間の問題だぞ」

ダンテ「魔術師ってのはロクなのがいねぇな」

ウェイバー「何だそれ、僕に言ってるのか?」

ダンテ「お前はマシだから無しにしといてやるよ」

人の身でありながらどこまでも何かを求め、人を殺め、人の身を超越したものを得ようとする魔術師はダンテには到底理解しがたいものだった
例えて言うならスラム街に居る、殺した人間の金品を売り、そこから放った銃弾数の金で引き算しかしないような、そんな人間の方がよりいきるために必死で理解できる。無論、許すかどうかは別問題であるが。

雁夜「―本当にそうだな。ロクな奴が居ない」

ダンテ「お前も十分ロクな奴じゃないさ――俺の奢りだ、ここのストロベリーサンデーは…」

雁夜「美味いんだった、な」

味覚など等に死滅している。今は大人しくしている刻印蟲もいつ暴れだすかわからない
馴染みと言うほどでもなかったが、道を違えることがなければまた味わうことができたのかもしれない

雁夜「俺には時間がない。俺に協力してくれるならありがたい。早速あのジジイを―」

イスカンダル「協力するとは一言も言っておらんぞ?我らは桜と言う娘を助けるのみだ。――貴様、まだ腹の中に何か持っておるのだろう?」

遠坂時臣への復讐。もはや今の自分にその力は残されていない。
それでも一矢、一矢だけでも報いねば気が済まない

雁夜「遠坂時臣――アーチャーのマスターであり、桜の父。そいつを殺さなければ俺は気が済まない」

ダンテ「次に親を殺すだなんて言ってみな、喉にドリンク用の穴ブチあけてやるよ」

雁夜にとって親とは忌むべき魔術の権化であり、ダンテにとって親とは、愛情と誇り、二つを与えられた、かけがえのない存在。意識に違いが出るのは当然の結果だった

イスカンダル「待て待て。そう気を急くなと言っておろうが、まずはあの娘を救い出してからでも遅くはないのではないか?」

雁夜「――-そうだな、恐らくアイツはまだ屋敷にいるはずだ。」

ウェイバー「そうだな。時間が進むにつれその子が傷つくならその方がいいかもしれない。修練にもよるけど拷問に近いってならきっと正規のモノじゃないんだろうし」

ダンテ「話は後だ。急ぐぜ」

―間桐邸―
全体的に罅などは入っているが術式などによる強化などもあり、十分屋敷としては形を保たれている
目立った気配は感じられない、一行は堂々と正面玄関から侵入することに成功する

桜「悪魔のおにいさん?」

ダンテ「悪いな、起こしちまったか」

ウェイバー「あれだけ派手に暴れ回っておきなかったら逆に神経疑うぞ、それ」

桜「なにをしにきたの?」

ダンテ「姫様を迎えに来たってところだ。行こうか、白馬とはいかないがイかした乗り物もある」

桜「ここからはでられない。おじいさまがいるから」

雁夜「大丈夫、このお兄さんは臓硯なんかよりずっと強いんだ」

桜「しんでしまうからいけない」

ダンテ「俺は死なないさ」

完全に油断しきった気配を察してか、闇の中からは鋭い蟲の群れがダンテの胸を貫いた

ダンテ「――このくらいじゃ、俺は死なない」

99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/13(土) 04:01:28.79 ID:GWjwh3Ep0
魔力を奪おうと体内に侵入してきた蟲に過剰に魔力を注入し破裂させる

ウェイバー「おいアンタ、この中にその臓硯とかいうのはいるのかよ」

雁夜「俺と奴じゃ術の扱いの精度が違うから断定はできないが…多分な」

ダンテ「片っ端からぶっ潰せばいいんだな?」

今更ながらに少し後悔する。アグニ&ルドラを売り払わなければ全滅はより容易かっただろうと

ダンテ「キリがねぇな」

指を鳴らすと同時に時間は静止する
大量の蟲の中にただ一匹、距離を置き攻撃態勢をとろうとしないそれはいた
再び指を鳴らし時間は元の流れへと戻る

イスカンダル「蟲の攻撃が止んだか。と言うことはそいつが親玉か」

ダンテ「多分な。勘でそれっぽいの捕まえただけさ」

蟲の群れにおいて一際小さな無力な蟲、これが桜を辱め、雁夜を地獄の淵に叩き落としていたかと思うと何とも皮肉な話である

ダンテ「お前たちにやるよ。どうするかは自分で決めな」

雁夜「もう臓硯はいない。桜、君はここから出るべきなんだ」

桜「お父さんたちに会いたい…」

少女の瞳に微かながらに光が灯る。少女のうるんだ瞳は月明かりに揺らされ、生を感じさせるものとなった

ダンテ「決まりだな。特別に貸してやるよ」

大口径のハンドガンエボニーを差し出す常人では両手持ちがやっとだ
ふらふらとした足取りだが確かにその眼は間桐臓硯だった蟲を見据えている

ダンテ「――いいか、合言葉は」

雁夜「大当たりだ!」

100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/13(土) 04:01:56.90 ID:GWjwh3Ep0
それが間桐臓硯の最後だった

イスカンダル「ひと段落だな。とりあえずこの嬢ちゃんをどうする?親の元へ届けるのか?」

ダンテ「そうするさ、だがコイツの言うとおりダメ親父なら一発ぶん殴ってやるね」

ウェイバー「この子の親って遠坂だろ?アーチャーが出てきたらどうするんだ?」

ダンテ「感動の再開を邪魔するようなら俺がスライスにしてやるよ」

アーチャーとはいずれ決着をつけるだろう。そして今がその時でないのはお互い分かっているはず。

それすら理解しえない低俗な輩だった場合は遠慮なく切り捨てればいいのだ

雁夜「…俺も行かせてもらおう。本当に長くないみたいだ…最後に奴に言っておかなければならないことがある……さっきアンタにもらった薬みたいなのも切れてきたみたいだしな…」

調子が回復したと思って動き回ったツケが来たのだろう。臓硯の支配を逃れた体中の蟲は再び疼き雁夜の肉体を蝕む、雁夜は気力だけで生きている。だからこそ、遠坂時臣と言う男には会わねば気が済まない

ダンテ「話が分かるパパだといいんだがな。―乗りな桜。今夜は君だけの王子様さ」

桜「ふふっ、変な人」

久方ぶりの笑顔はまだぎこちなかったが、自然と零れ落ちたものだった

ダンテ「いいスマイルだ こりゃ俺好みのナイスバディに育つかもな」

桜「そういえばお兄さんの名前は?」

ダンテ「――ダンテ。ダンテだ、偉大な英雄の息子さ」

104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/14(日) 02:27:48.49 ID:9JWPkiJO0
―遠坂邸―

堂々と呼び鈴を鳴らし主を呼び出す
その気になれば、結界が張り巡らされた魔力の要塞を突破することすら容易だろう。
しかし今宵の用件はそんな物騒なものではないのだから、客として上り込めばいいのだ

深夜だというのに遠坂家の当主は予め整えられた身だしなみと正装であらわれた

時臣「さて、何用かな?面子の意味が少々判りかねるのだが、決闘と言うのならこの遠坂時臣が正面より挑み来る貴殿たちの意思を尊重し――」

聞く人によれば、毅然としたカッコいい大人の対応なのだが、
聞く悪魔によればただのくどくどとメンドくせぇナンセンスな喋り方であり、思わず割って入ってしまった

ダンテ「戦いに来たわけでも、アンタみたいな奴と仲良くトークタイムしに来たわけでもないんだよ」

本題――桜、その人がダンテの足元からひょこっと顔を覗かせる

時臣「桜…?何故ここに…?」

戸惑いを隠せない。

雁夜「間桐は滅んだも同然だからな。もっと言えば間桐の名を持つ者で魔術を行使できるのも今となっては俺だけだ。この子は貴様に返す」

時臣「当主である臓硯氏は……」

雁夜「俺が殺したよ。臓硯だった虫けらは俺が始末した」

時臣「愚かな……君が魔術を忌み嫌っていた程度のことは聞き及んでいる。サーヴァントを得たのも師である父を殺し一族を滅ぼす為だというのか」

遠坂時臣と言うのはどこまでも魔術師な男である。物事をそういった視点でしか捉えることができない。
家族の絆なんてものは二の次三の次の幸せでしかない

雁夜「――まだ分からないのか貴様は!!」


105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/14(日) 03:44:30.91 ID:9JWPkiJO0
時臣「……?」

雁夜「……桜は…間桐の身に合わない魔術を身に着けるために、地獄の様な修練…
いや、あんなモノは拷問でしかない。間桐の魔術の忌々しさは今の俺を見ればよく分かるだろう」

激情を吐き出しただけで口からは鮮血が流れ、体内の蟲が疼き、皮膚を駆け巡る
真っ当な人間が見ればその姿はおぞましいの一言だ

時臣「――だが、その修練を経て、魔術師として生きれるならば桜としても本望だろう」

雁夜の様子や桜の毛の色の変化、そして間桐は蟲を使うことに長けた一族であることから、修練の内容は大方ではあるが時臣には予想することができた
それでも、それが、本心から出た言葉だった

ダンテ「クソ親父。涼しい顔ミンチにしてやろうか」

家族との絆を宝とするダンテには度し難い発言であり思わず銃を握る手に力が入る

イスカンダル「あくまでお前は第三者だ。この男の人生最後の一瞬を聞き届けてやれ」

雁夜「…今日桜がここに来たのは桜自身の意志だ。親である貴様の元に戻りたいとな」

時臣「……本当なのか、桜?」

桜「…はい」

この期に及んで時臣の顔は理解に苦しんでいる様子だ
根本より価値観が違うのだから

雁夜「貴…様は一度でも桜の声に耳を傾けたか?貴様は自分の価値観を良かれと思って押し付けただけだ!今の貴様は親ではない!」

雁夜「いいか…時…臣。俺は貴様を、殺したいほど憎んでいる。―――今も…貴様を殺したくて堪らないっっ!!!」

目からは血と涙が入り混じった水滴が零れ落ちる
とうとう立つことすらままならず、命の鼓動は終わりを迎えようとしていた
口を挟む者はいない

時臣「…」

雁夜「でもな…桜には!!桜には……まだお前や葵さんが必要なんだ……ちゃんと桜の声を聞いてやってくれ……頼…む。桜の親として…桜を…幸…せに……………………………」

間桐雁夜の最期の時を迎えた
最後までその眼は時臣への憎しみを棄てることはできなかった。それでも、桜を思う気持ちを勝らせることができたのだ

時臣「――この子は、私が預かろう」

ウェイバー「と言うより、こっちで預かるって訳にもいかないからな」

ダンテ「またどこかの魔術師に預けるってなら話は別だがな」

時臣「桜の意志を…問うてみたいと思う。――おかえり、桜」

桜「…ただいま!」

思わず父に抱き着く。時臣も戸惑いこそあったが、ただ抱きしめた
あれほど自分を憎んでいた雁夜がそこまでして自分に桜を何故託したのか。答えはまだ分からない。しかし、父である自分に抱かれる娘の屈託のない笑顔は何より幸せそうだ

それだけは理解できた

106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/14(日) 05:55:56.14 ID:9JWPkiJO0
―遠坂邸―

ひとしきり時臣に抱き着き、泣き疲れた桜を寝かしつけ、時臣はどうあるべきか考えていた
父として、魔術師としてどうあるべきか、未だに答えは出ていない

時臣「待機させておきながら申し訳ありません王よ。しかし、王の財を放つような事態には至りませんでした」

ギルガメッシュ「良い。元より奴らは最後に仕留めてやる程度の価値はある」

時臣「恐縮です」

ギルガメッシュ「……しかし全くあの男もつまらん死を迎えおったものだ。愉悦の何たるかを―いや、この場は言うまい」

時臣「間桐雁夜が如何いたしました?」

ギルガメッシュ「気にするな。今の内に娘をかわいがってやれ。それはそれで面白いやもしれんしな」
最期になるやもしれん。とは付け加えずに


呼び出してから十数分後、弟子であるその男は現れた

言峰「お呼びでしょうか、師よ」

時臣「あぁ、まぁ掛けたまえ。急に呼び出して済まないね」

言峰「…いえ、師の御身に何かあられたのでは、と思い駆けつけた次第なのですが、私の思い違いのようで」

何もないことなど知っていたが、何かあっては少し困るのだ

時臣「あぁ、娘の桜のことだが……」

アサシンの一体からすでに聞き及んでいた。愉悦の何たるかを王から聞き、どう転ぶかとハラハラしていたのだが…

時臣「凛と桜を君に時折お願いしたいと思ってね。桜に関しては、本人が嫌がる様子ならまた私に相談してくれ。何か別の方法を考えようと思っている」

どうやら間桐雁夜のおかげで時臣は未熟ながら父として目覚めたようだ
凛が尊敬する父を、桜がようやく取り戻した父をこの手で――
父を失った二人の泣き顔を想像するだけで魂は震え、自然と笑みがこぼれそうになる。笑ってはいけない。まだその時ではない

時臣「――と言うわけで、君にはこれからも遠坂と関係を密に――ガっ!?あぁぁ…グッ…!」

言峰「了解しました…師よ」

自らの歪な魂にようやく正直になることができた。
これこそが自らの求める愉悦なのだ。

ギルガメッシュ「さて、アサシンのマスターよ。我は今やマスター不在の身だ。聖堂教会に助けを乞うとしよう」

言峰「サーヴァント側からの保護依頼とはたまげたものだが…受諾しよう。すぐに席を空けよう。そうだ、募る話もあるだろう。お前たちサーヴァントで宴でも開くといい」

ギルガメッシュ「それは良い提案だ。では、貴様と契約する時を楽しみにしているぞ」

もはや暗殺者の駒などいらない。明日にでも仮面の下から聞こえる絶望の声を聞くとしよう

115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/16(火) 05:39:30.82 ID:F8miDHZG0
―翌日―
ウェイバー「なぁお前ら、次に脱落するのはだれだと思う?」

ダンテ「…さぁな」

イスカンダル「そうさな。誰でもよいわ」

ウェイバーの問いかけを余所に二人は寝そべりグータラとしている
こと戦闘においては超がつくほど鋭敏に張り巡らされている神経も私生活だとここまで緩んでしまうのかと、ため息を漏らさずにはいられなかった

ウェイバー「キャスターだってまだ残ってるし…アサシンだってお前らの見立てだとまだ生きてるんだろ?キャスターはそれなりの蓄えができてくる時期だし、アサシンだっていつ寝込みを襲ってくるかわからないんだぞ?」

ダンテは生返事すら面倒になったのか雑誌で顔をかくし寝る準備を始めた
仕方ないな、と答えたのは征服王

イスカンダル「まずはアサシンだが、暗殺者如きが忍び込んできおった所で何も恐れることなどないわ。」

ウェイバー「だったらキャスターは?」

ダンテ「ハンデだよハンデ。分かったら少し静かにしてくれ。お望みとあらば今度会った時には蜂の巣さ」

ウェイバー「ハンデってお前…ってもう寝てるし…何だよ!真面目に話し合おうってのに」

イスカンダル「良いか坊主。目先の敵にばかり捕らわれてるようでは戦というものを勝ち抜くのはなかなかに難しい。此度の聖杯戦争、恐らく勝ち上がってくるのはセイバーかアーチャーだ。そこまで見据えてこそ真の勝利はやってくる」

ウェイバー「―そっか。お前がそういうならそうなんだろうな」

イスカンダル「セイバーとアーチャーも王と名乗る者であるならばその辺りは弁えておるだろうが――ふむ、念のためどういう腹かお互いさらすのも一興かもしれんのぅ」

むくり、と巨体が立ち上がる

イスカンダル「となれば今宵は酒の席を拵えるか。坊主が言うアサシンやキャスターも出てくるやもしれんぞ?」

ウェイバー「出てこないと思うぞ、それは」

ダンテ「ジンと適当な安酒でいいからたるで買っといてくれ パーティーまで俺は寝るぜ」

「酒」と言う単語を聞き、薄れ掛けてた意識を戻し言葉を発する
眠る。と言ってもバーサーカー戦が堪えているのではなくただの怠惰である

―アインツベルン城―
セイバー「――で、二人揃ってここに来たと」

ギルガメッシュ「何、そろそろ我の在り方と言うものを示してやらんと思ってな。余興という奴だ。それに残念ながら我のマスターは非業の死を遂げてな、今日の我はサーヴァントとしてではなく客としてきただけだ」

イスカンダル「戦いも佳境であろう。お主らはどういう腹づもりなのか一度問うておこうと思ってな。」

ダンテ「―ここがパーティー会場か。女のキャストが寂しい気はするが…許容範囲内ってところか」

親交を深めるための酒の席
しかし、この宴がより深い溝を作るものだとは未だ知らない

119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/17(水) 05:10:58.60 ID:SJ+wSopL0
―庭園―

イスカンダル「では改めて問うておこう。余の臣下として共に世界を制する気はないか?」

セイバー「ない。私には聖杯に託す願いがある。」

ギルガメッシュ「愚問だな」

ダンテ「こいつら誘ったって無駄さ。アンタも分かってるだろ?」
一足先にジンをトニックウォーターで割る、ジン・トニックはダンテお気に入りの一つだ

イスカンダル「余の覇道を阻むというのなら、いずれ余に屠られるということになる。世界に王は二人と要らんからな、それで、良いのだな?」

セイバー「―!」

ギルガメッシュ「………」

イスカンダルから放たれる王気は一時、空気を凍らせる
尤も、その空気に怖じるような英霊たちでもない
イスカンダル「この話はここで終わりだ。最後に見えるのは我らが陣営のいずれかだろう。その時まで生き延びようではないか」

ジン・トニックを飲み終えたダンテが仕切り直しに、と樽の安酒に手を掛ける。
常人ではとっくに酔いつぶれているピッチだが、ダンテはまだほろ酔い程度である

ダンテ「よし、好みのタイプの話なんてのはどうだ?」

セイバー「な、何を言っているのだ貴方は!?」

突拍子もない話題に思わず飲んでいた酒でむせてしまう
酒のせいか照れか、その顔は少し赤らんでいる

ダンテ「聖杯戦争の話はもう無しだろ?ならいいじゃねぇか、減るモンじゃないぜ?」

セイバー「私は女として生きたことなどありません。――しかし、昔一度見た魔剣士スパーダは凛々しく整った顔はされていた気がします」

120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/17(水) 05:15:34.93 ID:SJ+wSopL0
イスカンダル「ならダンテはどうだ?親父殿に似ておるではないか?顔もランサーまでとはいかんかもしれんが整っておるぞ」

セイバー「彼には品がありましたから」

一度、ダンテの方を見直すイスカンダル
そして
イスカンダル「――あぁ、それもそうか」

紫の耽美的な貴族風の着衣にモノクル、そして髪は丁寧に纏め上げられているスパーダに対し、ダンテは半裸の上にド派手な赤のコート、そして髪は適当に垂れ下がっている。

ダンテ流に言えばクールでタフなスタイルなのだが、品性的なものは一切ない
また、スパーダの西洋貴族的な風貌はいわばセイバーの古い感性、時代にはドンピシャなのである

ダンテ「おいおい何もしてないのにフラれたぜ。それと旦那、アンタは一言余計だ」

イスカンダル「照れるな照れるな。しかしブリテン王の乙女らしい所を見れるとは思ってもみなんだわ」

ギルガメッシュ「俗だな。故に面白い。なら貴様はどういった女が良いのだ」

ダンテ「女と言えばブロンドで決まりだ」

ギルガメッシュ「――ほう、貴様にも金の良さが解るとはな。見所もあるではないか、だがセイバーは我の嫁にすることに決定したからな」

ダンテ「お前はやっぱりイカれてるね。どう見ても子供だろ」

セイバー「十五にもなれば立派な成人だ!」

イスカンダル「セイバーよ。ダンテが言いたいのはそういうことではないと思うぞ」

ギルガメッシュ「我が気に入ったのはそこだけでもないがな。容姿に関してはこれでも一向に構わん」

ダンテ「普通はナイスバディを選ぶもんさ。エンツォに頼んで店でも紹介してやろうか?」

イスカンダル「この前坊主が持っていた書物で見たぞ!○○○○という奴だな?」

セイバー「貴様等!!それ以上愚弄するというのなら!!」

いつの間にかその手には光り輝く聖剣が握られている
かなり本気なのかイスカンダルが必死に羽交い絞めにして対応する

ギルガメッシュ「――やはり貴様は気に食わんな」

ダンテ「あぁ、同感だね」

怒らせたセイバーをそっちのけで半神と半魔、金髪と銀髪、紅眼と蒼眼の仲はより険悪なものとなっていく

126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/19(金) 05:39:02.69 ID:+FX4ZZcY0
いくら神を嫌っているから、いくら人として生きているといったところで所詮神と悪魔は水と油なのだ

ダンテ「折角の酒が台無しだな」

自前の安酒をガブガブとまるで水のように飲み干していく
安酒自体が好きなわけではない。良い酒の味わい方も心得ているが、金銭面で必然的に安物が多くなるのと、安酒を飲むとかつて通っていたボビーの穴倉を思い出させる。
こちらの方が性に合っている。と過去を懐かしむ行為もダンテの人間らしさなのである

ギルガメッシュ「そもそもその安酒はなんだ?飲む者の格が知れるというものだ」

ダンテ「何か言ったか?」

ギルガメッシュ「まぁそう腹を立てるな。詫びと言うわけではないが特別にこの場は王の酒を振る舞ってやる」

イスカンダル「こりゃいい酒だ。お前こんなものも持っとるのか」

杯に注がれた酒は夜空に映え、芳醇な香りは飲まずともそれが極上の品であることを雄弁に語る

セイバー「これは…素晴らしい」

ギルガメッシュ「当然だな」

イスカンダル「どうだダンテ?お前も飲まんか」

ダンテ「俺はいいさ。こっちのが性に合ってるよ」

イスカンダル「そうか?ならお前の分も余が飲むが」

杯に短刀が投擲される
この状況ではほぼ自殺に近い令呪をかけられたアサシンの仕業である

イスカンダル「―全く、酒の席を荒すとは無粋な真似をしおって」

セイバー「アサシンが正面より来るなど…愚かだな」

ギルガメッシュ「全く…綺礼もタイミングが悪い。もう少し楽に葬るくらいは考慮してやったものの…アサシンよ、王の酒を無駄にしたその罪、重いぞ?」

ダンテ「野暮な奴だぜ。――踊りな」

アサシン「(マスターよ、どうしてこのような…)」

絶望。それがアサシンの最期だった
命令の内容に苦しみながらも死地へと赴くその様は主を興奮させ、また一つ、愉悦の何たるかを学んだ

127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/20(土) 02:31:21.00 ID:ZHg88Paq0
ギルガメッシュ「とんだ茶番だったな。ではな、我は行く。セイバーよ、我の嫁になる心構えだけはしておけよ?」

言いたいことだけ言い切り、ギルガメッシュは新たな主との契約に向かい姿を消した

イスカンダル「むう。実に惜しい酒だった。また飲みたいものだ。これで我ら以外はキャスターを残すのみだ。それまでに貴様の歪んだ王の在り方が治るといいのだがな」

ダンテ「じゃあな。嬢ちゃん」

こちらも言いたいことだけ言い残し夜空へと消えていく

セイバー「―貴方達に、何が、何がわかるというのだ……」


―工房―

冬木市のどこかにある、キャスターの工房内、床には元は人であったであろう肉塊が大量に散らばり凄惨な状況となっている

キャスター「アアァッ――!ようやく、ようやく見つけた……聖処女よ……」

龍之介「いきなりどうしたのさ、旦那?」

キャスター「ご覧なさい龍之介ェ!これこそ…これこそまさにッッ!!私が聖杯に託し願おうとしていた、聖処女ジャンヌなのですッッッ―――――――!!」

龍之介「……あぁ!えーと旦那が好きだとか言ってた女の子だっけ」

キャスター「如何にも!!私としたことが聖杯戦争にジャンヌと出会うことを失念していたとは……いや、そもそも私とジャンヌの絆ならばこの程度のことは必然!!このジル・ド・レェ一生の不覚―――――!!!」

元より今回の聖杯戦争でまさかジャンヌダルクに会えるとは思ってもみなかった
だからこそ、適当に潰し合わせようと軍師であるキャスターは考え、龍之介とのアートを楽しんでいたのだったが、状況は変わった

キャスター「嗚呼…ジャンヌ…私が迎えに行きます故、それまでどうか御待ちを…」

137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/23(火) 04:59:03.62 ID:OW9BIchZ0
翌日

ウェイバー「キャスターの捜索かぁ。確かにアイツらが合意してる以上見つけたら一斉攻撃できるチャンスではあるけど…」

隠遁に徹したキャスターを捜すというのは思いのほか難しく、理論の構築を得意とするウェイバーもなかなか活路を見出せずにいた

ダンテ「そんなにキャスターってのはかくれんぼが得意なのか?」

イスカンダル「取り立て魔術に特化したものが召喚される。で、魔術では我々サーヴァント相手は蓄えがない限りは分が悪いのだ。となれば隠れるのは必然と言うわけだわな」

ダンテ「―なるほどね、なら手分けしたほうがいいんじゃねぇか?単独行動なら専門分野だぜ?」

専門分野もとい、例外を除いて「人と手を取り合って何かを成す」という人として基本的なことが基本的にダンテにはできないということはウェイバーも何となく解ってきていた

ウェイバー「もうお前は好きにしろ。どこにでも行け!どうせ死なないし、見つけたらラッキーくらいに思っといてやるよ」

ダンテ「おいおい、ヒドい言い草だな?」

イスカンダル「坊主なりの信頼の証だ。余も単独で捜査に当たらせるのは選りすぐりの信頼の置けるものだけだったからなぁ」

ウェイバー「馬鹿!そういうのじゃない!」

ダンテ「そういうモンか なら、期待に応えるとするぜ」

言うが早いか、窓から飛び出しバイクに跨るように着地し、彼方へ消えてしまった

イスカンダル「坊主もまさか無策というわけではあるまいが…どう動くのだ?」

ウェイバー「魔力の反応が濃い所を虱潰しに足で探すしかないかな。あまり使いたくなかった手なんだけど」

イスカンダル「確かに下策だ。だが戦場を自らの脚で踏み、目に焼き付けるというのは良いことだぞ」

ウェイバー「…うん。とりあえずライダーは霊体化しておいてくれ。幾つか候補があるんだけど、どれも建造物の中だから、実体化するのはそこに入ってからだ」

イスカンダル「霊体化するのかぁ…う~ん、坊主が決めた策なら、あいわかった。従うとしよう。頼んだぞ坊主」

ウェイバー「僕だって、やればできるさ…」

己を鼓舞するように呟き、探索に向かった

138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/25(木) 05:16:11.79 ID:uPzwFmhU0
廃墟

町外れの陰鬱とした雑木が生い茂る林に不気味な存在感を放つ廃墟の前までウェイバーは来ていた

ウェイバー「…確かここだよな」

重く錆びたドアを開け中に入る。気配というものこそは感じられるが、そこに邪気や敵意といった類の思念は感じられない

例えて言うなら気配を殺し、じっとこちらが過ぎ去るのを待っているかのような

ウェイバー「罠…にしても静かすぎるよな」

不安定な足場によろめきながら奥へ、奥へと向かっていく。

「動くな」

物陰から不意を突かれる。喉元に突き付けられた銀色のスライム状の物が死を突きつける

ウェイバー「な…!!」

イスカンダル「そこで終いだ。余のマスターを開放してもらおうか」

「………」

ウェイバー「ケイ…ネス。アンタまだ生きてたのか……」

そこには、威厳がごっそりと抜け落ち、弱り果てたかつての師の姿があった


140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/29(月) 01:28:49.64 ID:rFrTHHm40
工房内

一方ダンテは適当にバイクを走らせた結果、魔翌力――とりわけ邪気、悪魔が放つそれに近いものをたどった結果、工房とは名ばかりの幼き者たちの処刑場と言うべき場所に到着していた


ダンテ「こういう奴の一人はいやがるとは思ってたが――えげつねぇことしやがる」

元は人だったそれは無残に飛び散り、腐乱臭放つ肉塊へと変貌している。
それはかつて身を呈し自分の身を悪魔から守った母の惨劇を思い出させる

ダンテ「祈るくらいは―いや、ド外道な野郎をぶっ潰すくらいはしてやる。――安らかに眠りな」

Rest in peace 兄が葬った者への手向けに贈るそれ同じ言葉を呟く
しかしその言葉には人としての温もりが込められていた

ダンテ「悪い意味で大当たりだ。――ったく、ハズレてくれりゃよかったんだがな。とことんツキがねぇ」

そもそも、ダンテは英霊と戦うためだけに遥々東洋の島国に出張ったわけではないのだ。
勿論、退屈しのぎ、スリルを求めてきたというのも大いにあるが、根底の部分はダンテの信条に由来している

聖杯――世界に孔を開け、根源に至る万能の器
悪魔と言うモノはとりわけ、魔翌力、霊力が集中する土地において出現しやすい。
上級の悪魔であればあるほど、その強大な力を現世に降臨させるためには、魔翌力が濃く現世と魔界の境目が曖昧で必要がある

聖杯を降ろせるほど魔翌力の濃い土地で、世界に孔を開けるという行為、それは魔界への門が開く危険性が十二分にあるのではないか

粗方、魔翌力が濃い土地の封印は父が行っていることは、幼き頃聞き及んでいた。
しかし、人間の側から開いてしまうのではどうしようもないのだ
そして今回のキャスターのように悪魔、もしくはそれに準ずる海魔の様な者を使役し人々を苦しめる輩がいるのではないか?

それが、ダンテが聖杯戦争に介入した概ねの理由なのだ


「――ッッッ!!!来賓にしては少々品性が足りないようですが…」

「何だよこれ…酷ぇよ!!あんまりだ!!」

工房内に戻りし影のうち一人は、激しく取り乱しながら泣き叫び、対する片方は、ショックを受けつつも冷静に侵入者に冷酷な殺意を向けていた

ダンテ「主のお帰りか。勝手に上がってるぜ、ついでに掃除もしといてやった」

キャスター「やれやれ……これほどの芸術を作るには手間がかかるというもの…あまり成人は好みではないのですが、それなりの罰を受けてもらわねばなりませんねェ……!」

ダンテ「ここから先はR指定だ。――来いよ外道」

141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/10/30(火) 00:32:09.93 ID:KRpRinoX0
廃墟

ウェイバー「………そんなことがあったのか」

ランサーの敗北後、難なくホテルから逃げ延びたのはいいものの、体勢を立て直し再度他サーヴァントとの契約、また召喚術式に改造を施し、新たなサーヴァントの召喚を計っていたケイネス陣営であった。

が、ランサーを失ったソラウは茫然自失、新たな工房を構えようにも、予め工房にふさわしい場所に目をつけていた魔術師殺しに先手を奪われ続けていた

単純に生き延びるため、ホテルの爆発で燃え尽きてしまった金を、顔が利く魔術師や、本土から取り寄せようにも、徹底した妨害工作

辛うじて、ソラウを守り抜きながら逃げ延びるのが精一杯だったのだ

逆に言ってしまえば、可能な限り芽は潰しておく――それが衛宮切嗣が今とれる最善の聖杯戦争に勝ち残るための策でもあった

ケイネス「―これでいいだろう。話した通りだ。殺したければ[ピーーー]がいい、私も魔術師だ。そのくらいの覚悟はできている」

ウェイバー「別に、僕はそんなこと求めちゃいない。アンタに戦う意思がないなら僕から危害を加えるつもりはない」

ケイネス「…なッッ!――何故だ、こちらは隙さえ見せればいつ襲うともしれぬのだぞ?」

ウェイバー「もしそうなったら応戦はするさ。その為にサーヴァント以外にも助っ人を呼んだんだ。僕が独自に調べ上げた…ほら、ランサー倒したアイツだよ」

ケイネス「―そうか、あの魔剣士もお前が…」

神妙な面持ちで会話を続ける二人に痺れを切らせてか、ライダーが割って入るように話し始めた

イスカンダル「良いか魔術師よ。この坊主の願いはな、ただ自分の背を伸ばしたいだけなのだ」

ウェイバー「馬鹿!何言ってんだ、そんな訳ないだろ!……僕の望みはひとえに正当な評価だけさ。原因はアンタだ」

ケイネス「それだけの為に、聖杯戦争に……」

評価を上げるため、それだけなら自分も同じだ。ロード・エルメロイの名に更なる箔をつけるため聖杯戦争に臨んだ。
ケイネスにとって、勝ち残るのは当然。神童、天才と呼ばれ続けた自分が負けるはずなどないという驕りがあった。
しかし、目の前の元教え子は、破格のサーヴァントだけでなく、さらに卓越した魔剣士を味方につけ、その魔剣士は見事自らの僕を下し今サーヴァントと共にいつでも自分を屠れる。
自分がサーヴァントとの連携を深めるのを怠ったのに対し、ウェイバーは、少々いびつな形ではあるものの確かな絆を結んでいる

これが敗北と言わずして何と呼ぼうか。
悔しさや怒りはある。だが、衛宮切嗣に追い詰められた極限の今の状況になって初めて、少し、ほんの僅か少しだけ、ウェイバーを認める気持ちが生まれた

ケイネス「私は――」

ウェイバー「?」

ケイネス「…いや、何でもない」

認める言葉を口にはしない。それが最後の彼のプライドの砦だった

142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/02(金) 04:39:07.12 ID:M4h5RCom0
ウェイバー「アンタの奥さんがそうなったのもこっちのせいなんだよな。関係ない人を巻き込むつもりはなかったのに…済まない」

イスカンダル「あのなぁ坊主。戦において敵の親族なぞ気にしておったらキリがないぞ。踏み越えていく命を無駄にせず、その先にある栄光を見てこそよ」

土台ウェイバーにそのような話は通用しない。ウェイバーは限りなく一般人に近い感覚の魔術師であり、本来たどるべき未来でも負い目を感じて、末席の娘を持ち上げエルメロイ家を立て直させたほどなのだから

ウェイバー「分かっちゃいるけど…ライダー。どうにかこっちで保護、そこまでいかなくても帰国までの警護くらいしてやれないか?厄介なのに付きまとわれてるみたいだし」

イスカンダル「そうさなぁ、そこまでいうのなら構わんが、お前はどうなのだ魔術師?」

ケイネス「……」

その時、窓が割れた音と煙がほぼ同時のタイミングで立ち込め始める

ウェイバー「なな、何だ!?」

ケイネス「彼奴め……!!」

忌々しげに呟くと、即座に水銀を展開し愛すべき妻を護衛させる

イスカンダル「行くぞ坊主!!こうも視界が悪くては相手が人間でも守りきれん!」

壁をブチ破り、神威の車輪が姿を現す。主を乗せ、離脱の準備は万端だ

ウェイバー「あぁ…、ケイネス、アンタも!」

手を差し出す。別に好きなわけでもないし、論文を一蹴されたことを忘れたかといわれればそうでもない。魔術師が殺し合いをして死ぬことも分かっている。だけど、冷徹な戦闘機械になれるほどウェイバーは振り切れてはいなかったのだ

イスカンダル「乗るのか乗らんのか、早くせんか!!」

怒気の混じった声で問いかける。その答えはウェイバーの手を叩くと同時に告げられた

ケイネス「笑止。敵である君達の加護を受ける?――最後まで笑わせてくれるな。ウェイバー・ベルベット君」

ウェイバー「そんなこと言ってる場合かよっ!?」

ケイネス「黙りたまえ。そもそも、私は君やこんな卑劣な策を行う魔術師崩れに憤りを覚えているのだ。よって私自らを罰を行わなければならない」

毅然と言い放つ。その瞳に迷いはなく、体力的には限界が見られるはずなのに寧ろ、気品溢れる力強ささえウェイバーには感じられた

イスカンダル「出るぞ!先ずはダンテと合流だ!」

ウェイバー「死ぬなよ」

フン、と一瞥をやり、ライダー組は飛び立った。
態度にこそ出さないが、戦いを前にして体力的にはもはや限界だ。
ソラウに回す水銀のことを考えれば状況は最悪に近い

ケイネス「――何故即座に攻撃に移らなかった?」

問いかけには応じないのだろう、そう思っていた魔術師殺しが静かに口を開いた

切嗣「あの場で攻撃を仕掛ければ、僕の位置がバれてライダーに攻撃される恐れがある。戦車にさえ乗ってしまえば、お前を攻撃するより先に僕がやられるからね」

ケイネス「ほう、随分と喋るではないか。魔術師崩れが」

切嗣「なに、喋ってももう構わないだろうからね。お前はここで死ぬ」

ケイネス「戯け、貴様如き奴にこのロード・エルメロイが敗北するなどとありえん」

恐らくもう数十分と持たない。誰よりも自分が解っていた。しかし魔術師としての誇りがそうさせる。元より、聖杯戦争を敗退した今、国に帰るなどと言う選択肢はない、せめてこの地で功を上げ、土産話として持ち帰る程度をせねば話にならない。負けると解っていてもほかに道はないのだ

ケイネス「Scalp!」

歪みこそあったが、誇り高き魔術師、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは最後まで愛すべき妻を守るために戦った。
悔いがあるとするならば、恥を忍んでソラウだけでも保護を頼むべきだったことだろう。

切嗣「―――手負いの獣が恐ろしいとはよく言ったものだな。……随分手こずらされた」

144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/04(日) 19:26:59.66 ID:xyQMmRbs0
工房内

戦闘は終始、ダンテが優勢に進めていた。元よりダンテ、及びデビルハンターと言われる職業の者は多対一を前提とした戦闘を得意としている

武功で覆せる数の差には限界がある――かつてそう言った軍師は、肉塊ごと滅せられ、再生、増殖を繰り返すも徐々に数を減らしつつある海魔が信じられなかった

キャスター「――この匹夫が…!貴様など貴様など貴様など――――ッッッッ!!」

キャスターの海魔召喚はほぼ全て宝具に依存している。「螺湮城教本」自体破格の宝具であるが、それ以上の敵を目の前にした時、キャスター自身の力ではどうしようもなくなるのだ

ダンテ「イカレ野郎の力ってのは、どうしてこうもグロテスクなんだかな」

かつて人の身でありながら魔に身を落とした者とよく似た力。その者は肉塊ともスライムとも言えない醜悪極まる姿と化した。そう遠くない過去のはずなのに何故か随分前のように感じる。それはこの聖杯戦争がなかなかに濃い体験だからなのかもしれない

ダンテ「終わらせてやる。それが俺の使命ならな」

一閃、キャスターへと降りかかった、悪魔狩人の一撃は、慌てふためくキャスターを一刀両断したように思えた

ダンテ「オイオイどうした?今更命乞いか?」

途端に頭を抱えながら地面にへたり込み、都合よく一閃を免れたキャスターはその眼に、大粒の涙を浮かべている

キャスター「ァァァァァ…ジャ、ジャンヌぅぅ…御労しい…」

声にならない声を絞り出し、ダンテに聞き覚えのないものを案じている。

ダンテ「とうとう狂ったか?―こいつに聞くのも野暮だな」

キャスター「このジル・ド・レェが現の世に在りながら、お守りすることすら叶わぬとは……嗚呼愛しのジャンヌよ…されど一命を取り留めたご様子で、不幸中の幸いか」

ダンテ「俺よりお喋りな奴は嫌いでね。質問に答えねぇと頬にストロー用の穴が開くことになるぜ」

キャスター「アァァァッ!?こうしてはいられません!!早くあの蛮族共を排除する手はずを整えなくては…!往きますよ龍之介、最後にして最高のクールを世界にお届けするのです」

ダンテ「待ちやがれ!」

ダンテの制止も振り払い、濃霧の奥にその姿をくらましてしまった

ダンテ「――嫌な予感がしやがるぜ」

145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/06(火) 04:36:19.51 ID:fwhyTEwC0
アインツベルン城

キャスターが工房から姿をくらました時刻から遡ること数十分。そこにキャスターが大慌てで、自身の考えうる最高の「蛮族を排する手はず」を整えることに至った理由があった。

先日、アサシンが葬られたことによる爪痕を残した庭内に、黄金のそれは威風堂々たる姿を現していた

ギルガメッシュ「宣告した通り、お前は我の物になれ。セイバーよ」

セイバー「何を世迷言を……!!」

ギルガメッシュ「お前のその破滅を愛してやれるのは、我を置いて他にはおらんだろう。現に征服王は匙を投げ、あの魔剣士も、お前を見る目は哀れみに他ならなかった」

容姿も勿論だが、それ以上に英雄王がセイバーを好むのは、一介の小娘が騎士王たらんと必死に足掻き苦しみ、身に余る待望を抱くその精神に由来している。

およそ一般人、及び大半の英霊にすら理解しえぬ感覚だが、英雄王の感覚では、愚者は愚者でも珍種の愚者であることから、愛でようがある。とか

セイバー「其れが貴様の妻になる理由になると?――笑わせるな英雄王!!私も安く見られたものだ」

毅然と言い放つ。自身の人生は迷いと後悔のものだったが、それでも、目の前の男に女として抱かれるほど自分は安くはない。貫くべき「騎士道」がそこにはあるのだ

ギルガメッシュ「――よい。従うだけの女などただの下僕にすぎん。やはり少々強引な手段で落ちる女の方が、王の妻として相応しいというもの」

セイバー「そこまで言い切ったのだ。我が聖剣によって屠られようとも、異論はないな!?」

聖剣に纏われていた風は解け、光り輝く刀身が姿を現す。

ギルガメッシュ「ふむ。本来ならば我が認めて初めてこの「エア」を抜くのだが…是非もなし、妻となる者の格ぐらい認めてやらんようではな。良いだろう、ならば受けるがいい!この「エア」の一撃を!!」

蔵から取り出したのは、一振りの「剣」の様な物、剣と言う概念ができる前から所有していたとされる英雄王の真の宝具だ

ギルガメッシュ「加減はしてやるが――吹き飛んでくれるなよ?粉微塵になってしまえばいかに我の器とて愛してやることは敵わんからな」

お互いの宝具が光を放つ。
一撃必殺、後のことを考えず、ただこの一撃のみに全てをかけ相手を滅ぼさんとする

セイバー「約束された――――」

ギルガメッシュ「天地乖離す――――」

セイバー「勝利の剣―――――!!!!!!!!」

ギルガメッシュ「開闢の星―――!!!!」

光と光は重なり合い、凄まじい衝撃を生み出す。昨夜の爪痕残る庭内は、その余波だけでさらにその美しさを崩壊させてゆく

セイバー「ぐぅっ!!…っく」

ギルガメッシュ「フハハハハハ!!セイバー、まるで女子供を相手にしてるようだぞ!――いや、相手は女子供であったか」

光の終焉と共に敗者は容赦なく、押し流されるように城壁に叩きつけられる
堅牢を誇る城壁も、ただ、人が吹き飛んだ衝撃で軋み、ひび割れ、砕け、もはやその原形をとどめない惨状となっている

セイバー「――――う…うぅ…あ」

ギルガメッシュ「虫の息とはこのことだな。―――――――次までに考え直しておけ。我も次は容赦ならん故な」

英雄王は黄金の粒子となりて姿を闇に消した
これが、キャスターの感じた異変であり、さらなる凶行へ走らせる火種となった



時刻は戻り、川の中州、のように見える海魔によって形成された足場にキャスターは降り立っている

キャスター「さぁ龍之介!ご覧あれ!私が蛮族、そして芸術を理解しえぬ愚か者どもに裁きの鉄槌を下す時が来たのです!!」

龍之介「うんうん!超期待してっからさ!旦那の最高のCOOLをお見舞いしてやってよ!!」

人気のない橋から叫ぶマスター、龍之介から狂気が滲み出た声援が送られる

キャスター「ではこれより、天から神を引きずり落としッッ!!万人が恐怖する最高のCOOLを―――――――――――――――!!!!!!!!!」

瞬く間に海魔の群は膨れ上がり、全長数十メートルは下らない恐怖の権化へと化していった。
秘匿されるべき神秘だが、今この場にそれを阻止するものはいない。制御など到底及ばない海魔は、ゆっくり、ゆっくりと確実に食事へと歩を進め始めた

150: saga 2012/11/07(水) 04:59:48.59 ID:CEOGyEI60
ヴィマーナ内

上空遥か高くに浮かぶ、神秘の箱舟ヴィマーナ内にて英雄王、そして新たなマスターは高みの見物を決め込んでいた

ギルガメッシュ「何とも、見るに堪えん醜悪なものよな」

言峰「本来ならば、あの様に神秘を衆目の場に晒すような輩は迅速に処理して然るべきなのだが――――」

以前の自分では気づかなかったであろう、河岸の民の悲鳴。
自らの手で起こさせたものでないのが悔やまれるが、それは悦の何たるかを知った言峰には甘美な演奏のように聴こえていた

言峰「空で酒を飲むと言うのも乙なものだな―――」

ギルガメッシュ「どれ、我にも寄越すがいい。あの汚物を視界に据えたままなのは毒だが――いいだろう。我も新たなマスターの晩酌に付き合ってやるとしよう」

言峰「では、より多くの不幸が降り注ぐことを、新たに生まれ出ずる海魔の誕生を祝福して―――――乾杯」

河岸

ウェイバー達がダンテと合流するに数十分を費やし、結果的にはほぼ現地合流のような形になってしまった。
それに加え互いの戦果を簡潔に話したのみだが、海魔の成長には十分すぎる時間を与えていた

ダンテ「――これだけデカくてウネウネしてると奥様もうっとりだな」

ウェイバー「冗談言ってる場合かよ!!」

ダンテ「冗談でも言わなきゃやってられないさ。これをブチのめせたとして、その頃にはもうこのコートは御釈迦だろうからな」

軽口こそ叩いてみせるが、その表情には曇りが生じている。
スパーダの直系と言えどまだダンテは若すぎる。悪魔狩人としては日が浅く、これほどの大物を目にしたことはない

イスカンダル「まずはダンテよ、お前はキャスターと刃を交えたのであったな。であれば、まずこやつのマスターを探し出すのだ。根本的な解決にはならんだろうが、少なくともこれを相手にするのは一度で済む」

ダンテ「オーライ。すぐ応援に行ってやるよ」

イスカンダル「マスターを倒したら、余の戦車まで飛んで来い。お前、飛べるようになる魔具持っとったろう」

ダンテ「欲しいお宝はよく覚えてるもんだな。これは俺のだからな、アンタにはかわいい牛さんがいるだろ?」

イスカンダル「バレとったか。――冗談はここまでだ。いつまでもこうしてはおれん。此方は行くぞ!坊主、しっかり捕まってろ!!」

猛々しい雄叫びを上げながら、イスカンダルは夜の空へ飛びだっていった。
その逞しい背中も、神威の車輪の剛脚による疾走をもってしても、足止めの役割すらひどく重荷を押し付けてしまったように思えた

ダンテ「メインキャストは大忙しだ―――モタモタしてられないな」

151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/08(木) 04:51:07.91 ID:+nnCaJbR0
ダンテの快脚をもってすれば、混乱する人ごみの中でもトリックスターによる跳躍を駆使しながら人を捜しまわることなど容易い事だった。

人目に付く場所でのスタイルの行使は普段は避けているが、少なくともそんなことを気にしなくていいくらいには人々は混乱していた。

音をも置き去りにするその脚は長距離移動の効率でこそ高性能バイクなどに劣るものの、十全に機能し元凶の一旦、キャスターのマスターである龍之介を見つけることに成功する

龍之介「――あぁ、アンタあの時の!」

ダンテ「ゲームオーバーだ。観念しな」

龍之介「見てよこれ!!超クールだろ!?なぁアンタも心躍るだろ!?そうだよな!!これからはずっとこんなのが見れるんだ」

ダンテ「英語が解ってねぇのか、単に話が通じてねぇのか。 ゲームオーバーだ」

極度の精神汚染者である龍之介に、英語が理解できたところで会話になったかは甚だ疑問だが、その場のダンテの引き金を引かせるには十分すぎた。

龍之介「――え?」

ダンテ「せめて地獄で懺悔するんだな」



「坊や……もし悪魔サンがお出まししたら、一つ殺されてみてくれない?」



数日前、青年はこんな言葉を発していた

龍之介「――やっぱ、り……悪魔は、いたんだ………アンタ、超COO――」

何かを言いきる前に短い銃声が鳴り響く。
引き金の主は、禍々しくも美しい異形の姿へと変貌していた

ダンテ「主役は遅れてやってくる――そろそろ行ってやるか」

ネヴァンの雷鳴と共に夜空へと羽ばたいた

153: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/08(木) 05:53:56.95 ID:+nnCaJbR0
ダンテ「――よお、元気か?」

イスカンダル「これが元気に見えるならな、一発拳骨でもくれてやろうか?」

その身にたぎる覇気こそ衰えていないものの、イスカンダル、神威の車輪共に傷付き、既に満身創痍となっている

ダンテ「冗談。で、どうすんだ?このデカブツ」

イスカンダル「そうさなぁ…お前、対軍宝具の様な物は持っておらんか?」

ダンテ「閻魔刀でもあれば話は別だが――魔界に落ちちまったしな」

閻魔刀―――人と魔を分かつ刀。それさえあれば魔である海魔と、人であるキャスターを斬り裂き、無力化することができたかもしれない。仮にできなかったところで絶刀を数回繰り出せばあるいは倒すこともできただろう。閻魔刀を振るったのはアーカムとの一戦時僅かな物だったが、ダンテには兄ほどではないにしろ、使いこなせる自信があった。

しかし、残念ながらこの場にはない。
元来ダンテは戦闘での駆け引きを楽しみ、重んじる面もあり、一撃必殺の様な勝負を終わらせてしまうような技や魔具はあえて習得、使わずにいた。それが今回裏目に出てしまった

イスカンダル「ぬぅ、こりゃ困ったなぁ。坊主、何か案はないか?」

イスカンダルの額には汗が滲んでいる。戦略家であり、破格のサーヴァントである彼が他人に頼らざるを得ないほど事態は切迫している

ウェイバー「お前の宝具でアイツを倒せないのか?ダンテだっているんだし…」

イスカンダル「確かにダンテが居れば余の臣下の士気も上がる。だがそれでも完全に倒すのは不可能だろう」

ダンテ「それしかないんだろ?やってやるさ」

「――どれくらい固有結界は持つ?」

ダンテ「――かわいい雨が降ってきたな」

渾身の跳躍とともに上空から現れたのは、満身創痍をはるかに通り越し、重体のセイバーであった
応急的にアヴァロンを戻されてはいるがそれでも、まともに戦闘が行えるような体ではない。その証拠に今の跳躍ですらダメージを負ってしまっている

ウェイバー「アインツベルンのサーヴァント…ボロボロじゃないか」

セイバー「それは…お互い様だ。」

イスカンダル「およそ5分だろう。何か秘策があるのだな?」

セイバー「かなり危険な賭けだが――我が誇りにかけて」

到底5分で回復する怪我ではない。聖剣を振るえば最後、消滅も免れないだろう。それ以上にキャスターの蛮行を許すということは騎士道精神に反し、決して許すことができないものだ

イスカンダル「よし、では我らは結界を展開する。セイバー、お前はどこか見晴らしの居場所に立っておれ。そしてそこから奴を一撃のもと消し去ってくれ」

セイバー「承知した」

イスカンダル「行くぞダンテ!!坊主!!出でよ我が至宝の絆!!『王の軍勢』!!!!!!」

セイバー「…頼んだぞ」

川の中央に座し、一行を見守る。
一秒でも長く、魔力を蓄えられるよう祈りながら

154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/08(木) 06:32:41.01 ID:+nnCaJbR0
結界内での死闘は想像を絶した。
軍勢の中にはダンテに迫ろうかという武芸百般も居り、ダンテから貸与された魔具により更にその武芸は冴えを見せた。
ダンテも持てるスタイル、魔具を総動員し、伝説の英雄の息子に恥じない鬼神が如く猛威を振るい、征服王による蹂躙疾走、正確な指揮により、王の軍勢だけでは足止めにしかならなかったであろう征服王の見立てを覆し、見事四割近くの海魔を削り取った

ダンテ「――さすがにキツイな」

イスカンダル「こちらも限界だ!!結界を解くぞ!!」

結界は解け、捻じ曲げられていた空間は世界の修正を受け元の時間に流れを戻す

イスカンダル「セイバー!!」

力を振り絞り、轟く声を上げる。もはや神威の車輪も通常飛行すらままならないほどに疲弊してしまっている

セイバー「――心得た」

やはり、体は戦闘を行える状態にすら至っていない。全身の感覚が殆ど戻らず。回復の兆しを見せつつある部位すらただ痛みの感覚が戻るだけで却って逆効果となっている。

それでも自分がやらねばならない
鋼の信念をもって聖剣を握る

セイバー「約束された―――――!!」

「我が傀儡に命じる。聖剣の使用は許可しない」

絶対の強制がセイバーの動きを封じる。対魔力を持つセイバーでも今の状態で抗うことは不可能だ

セイバー「―?何故だ、切嗣!!?」

「(犠牲は出るが、最終的に業を煮やしたアーチャーが処分するだろう。勝ち残るためにこの場で消えて貰うわけにはいかない)」

イスカンダル「何をしておる!?早くせんか!!!」

痺れを切らし怒声を上げる、もはや一刻の猶予も残されてはいない

ウェイバー「おいライダー!後ろ!」

イスカンダル「くっ!!捕まったか――!」

神威の車輪がとうとう海魔に絡め捕られる。電撃を帯びたその剛脚も弱り果て、抵抗するだけの力を失ってしまっている

ダンテ「クソ野郎が!!」

引き込まれまいとダンテが銃に指をかける。もはや魔人化もままならず、握る手には汗がまとわりつく
エボニー&アイボリーが火を噴く。超速の射撃も虚しく破壊はそれを上回る再生の前にのみこまれようとする

ダンテ「笑えねぇな。――少し休憩するか。寝心地は最悪だろうがな」

意識を閉じ、海魔の中へと引きずり込まれていく。仮に飲み込まれたところですぐには消化されまい。中からこいつを壊せるかもしれない。そんな淡い期待を抱きダンテは目を閉じた

セイバー「こんなところで……無念だ」

その場に倒れこむ。息を引き取るように体はゆっくりと水面へ沈んでいく


キャスター討伐に向かったライダー一行とセイバーは事実上敗北を喫してしまった。
現段階のダンテと巨大海魔の相性が最悪だったのが致命的な敗因だろう

155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/08(木) 06:59:46.08 ID:+nnCaJbR0
ギルガメッシュ「――興ざめよな。」

言峰「まだ手を加える気にはならんか?ギルガメッシュよ」

ギルガメッシュ「当然だ。我を愚弄する気か貴様は」

言峰「いや、せめてその慢心で身を滅ぼさぬようにと、新たなマスターとして今度は私からお前に進言しておこう」

ギルガメッシュ「ハッ、慢心せずして何が王か!」

言峰「それもそうか。それにしても破滅の音色を聴きながら眺める月と言うのは―――」


言いかけて異変に気付く。あんなに厚く覆いかぶさっていた雲が斬り裂かれていることに


ギルガメッシュ「――ほう」


気配に気付く。尋常ならざる魔力。それこそ巨大海魔が赤子に思えてしまうほどに

言峰「御伽噺の類だと思っていたが――現実だったとは」


影に気付く。月明かりの元、照らされる姿に


魔は現れた




二千年前

人々の平和が魔界の進攻によって砕かれた

だが一人の悪魔が正義に目覚め

闇の軍勢に立ち向かった

魔剣士………――――――



イスカンダル「…来おったか」

ウェイバー「何だあいつ…………」

セイバー「(まさか…)」

薄れていた意識がたたき起こされるほどの強力な魔力

「それは」現れた



戦いに勝利した彼は人間界に降臨し

その平和を見守った

彼の命が

伝説に刻まれるまで


世界に魔が蔓延る時、駆逐せんと、人の愛を知る伝説は現れた

ダンテ「――父、さん…………?」


彼の名は――――――――――――――――――








魔剣士スパーダ

159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/09(金) 05:11:08.44 ID:62tDxBnq0
スパーダを知る者は少ない。正確に言えば居ることには居るのだが、この世の者ではなく封印された魔界の悪魔がその大半を占める

人間界でスパーダを知っている者たちと言えば、神職に就く者や、魔術師の家系の者たちが幼き頃におとぎ話として認知しているくらいだろうか。「時計塔」レベルの書庫を漁れば、真実に迫ることもできるかもしれないが、そんなモノ好きはめったに存在しない。また、どこかの都市では彼を神として崇める教団もあるとか

一般的に知られるスパーダの歴史は魔帝を打倒した後、二千年の間、世界各地で英雄的活動をし、そして人間の妻と双子の子をもうけた

これがスパーダの伝説の粗筋である

そこからのスパーダを知る者はあまりに少ない

スパーダは双子がまだ幼かったある日、双子それぞれに自らの魔剣とアミュレットを託し、妻と幼き子を残し、忽然と姿を消したという
その後、スパーダの行方はおろか、生死すら定かではない

しかし、彼は現れた

荘厳な魔力を迸らせつつも、どこか生気を感じさせないともとれる面持ちだ
されども、その瞳には悪を憎む炎が灯っている


言峰「よもや生きた伝説に会えようとはな。神の祝福と言えばよいのだろうか」

ギルガメッシュ「戯け、神と言うものはそんなことをするような輩ではない。―――伝説の魔剣士スパーダか、そのたぎる魔力真か贋か。我が見定めてやろう」

指の弾きと共に門は開かれる。それぞれが絶対の威力と恐怖を持つ至宝の数々

ギルガメッシュ「―――――王の財宝」


対するスパーダは、その手に魔界の名銃工マキャベリーが手掛けた、光と闇の名を冠する「ルーチェ&オンブラ」が握られている

スパーダ「―――――」

振り向くこともせず、背後の剣の群れに魔弾を放つ。ある剣はスパーダを狙う軌道からはじき出され、ある剣は絶妙に軌道を変えながらスパーダの元に向かう

はじき出された剣すら、町に被害が及ばぬよう海へと落ち。スパーダに向かった剣は吸い寄せられるようにその手に収まる

スパーダ「―――――」

手に取った剣を眺め、微笑を浮かべた後、悪魔は剣と共に踊る
そこにあることこそがさも自然であるような、美しい演武。それはダンテやバージルの比ではなく見るもの全てを魅了した
「剣」の名を冠する彼にとって、剣とは手足の様な物であり、使いこなせない道理などなかった。まさしく、伝説以外の新たな担い手誕生の瞬間である

ギルガメッシュ「貴様も我が至宝に触れるか!!!!」

言峰「いかんギルガメッシュ!!」

激高と共に更なる宝具を展開させようとしたところで宙に舞い、ヴィマーナを囲むそれに気付く
幻影剣――――――言わば、悪魔流の投影魔術であり、剣の名を冠するスパーダ及びその直系バージルが使用する技である
尤も、バージルの幻影剣が青いフォースエッジ状だったのに対し、スパーダは紫のオーラを纏った魔剣スパーダ状のそれを生成する
ほぼ、ノーリスクで放てる技であるにも拘らず、並の高等悪魔や並のサーヴァントでは数発で死に至る威力を秘めている。

ギルガメッシュ「ぐ!?――――己ッ!!貴様ッッ!?」

一瞬にしてヴィマーナは跡形もなく、その黄金の煌びやかな姿を夜空の花火として打ち砕かれた

ウェイバー「お前、良くアレに挑んだな」

イスカンダル「余の時も手加減しておったのは承知していたが…これほどとはな、恐ろしい奴だわい」

知識として持っている聖杯戦争紛いのことに呼び出された時の記録ですら、圧倒的であったもののここまでではなかったらしい

今宵も、自前の剣は持っておらず、その手にはギルガメッシュから奪い取った剣に、銃が二丁。超越した武芸百般、真のソードマスターである彼にとって万全、本気からは程遠いのかもしれない

ダンテ「ホントおっかねぇよ なぁ見てるかい?母さん」

虚空に問いかける。優しかった母は、今の父に何を思うのだろうか、と

スパーダ「――――――」

それ以上ギルガメッシュを追撃することもせず、その眼は海魔、キャスターへと向けられた

スパーダ「…………………!!!!」

169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/10(土) 09:47:50.83 ID:biEeoJFg0
スパーダ「…………………!!!!」

その蝙蝠とも蟲ともつかぬ翼をはばたかせ、百mは越えようかという海魔に物怖じ一つすることなく接近する

スパーダ「―――――!」

一閃―――英雄王より奪い取りし剣の一振りは、新たな担い手の剣技により巨大海魔を横なぎに斬り裂く

イスカンダル「―今だ!坊主、ダンテ!!掴まれ!!」

一瞬の隙を見逃さず、海魔からの脱出を試みる

主人以外の二人を乗せた神威の車輪は、川岸ですら数千里の道のりを往くが如く重い足取りで空に歩を進め、弱々しく悲鳴を上げる

スパーダ「―――――」

細切れに分断された肉片は、音速を遥かに超える双銃のよって超連続射撃によって完全に無に帰り、海魔の増殖スピードに拮抗しようかという勢いだ

スパーダ「――――――」

セイバー「いったん距離をとった………?」

一方的に剣撃を浴びせながらも、一旦相手から距離をとるという行為
それが意味するのは相手の切り札に気付いた時、あるいは――――――――――

イスカンダル「――必殺の一撃か」

ウェイバー「どういうことだよ?ただ一旦立て直しただけに見えるけど…」

スパーダ「……………………」

幻影剣が出現し、宝具を取り囲むような軌道で回転を始める。その軌道の輪は徐々に小さくなり、完全に宝具と一体化を果たした

ダンテ「魔剣…スパーダ。アレは――」

アミュレットを分ち、真の姿を失ったはず――――その、父の形見の一振りは今も我が手に有しているはずなのだ。しかし、目に見えるその形はまさしく魔剣の頂点スパーダに相違ない

スパーダ「………………」

空高く飛翔し、再びその背中に月を背負う。
とられたその構えは、地上の古今東西あらゆる流儀にも属さない魔剣技オリジナルのそれだ

風は吹き荒れ、波は荒立ち、大地は震える。
この技が使用されたのは記録上、魔界及びそれに近い疑似空間でのみである。
地上で使用した場合、このような気象異常すら起こりうるほど、伝説の魔剣士から溢れ出る魔力は濃厚で凄まじさはとめどなくましてゆく

スパーダ「――――――――――――!!!!!!!!!!」

魔帝すら穿つ黒き炎竜の一撃
懺悔も、かつての栄光の光を思い出すこともなく、死という一瞬の出来事が、永遠に感じられるほどの恐怖に支配されキャスターはその最期を遂げた
害敵と見做したものに一片の情けすらかけない、非常なる悪魔の一撃は、圧倒的な威力と熱量をもって海魔を滅ぼした後も尚、大河、海を削り飛ばし、その勇姿は人々の目と心に刻まれた

スパーダ「……………………」

魔剣スパーダの形を保っていた宝具がひび割れ最後の時を迎える。元来とあまりに違った活用法で物を壊してしまうダンテのスキルはひょっとするとスパーダ譲りなのかもしれない

スパーダ「――――――」

スパーダが霞と共に薄れゆく。
彼はいったいなんだったのか。分身、抑止力、守護者、はたまた死した彼が魔力で実体化した姿か―――いずれにせよ真相は誰にも分からない

「魔」あるところに魔剣士スパーダあり
その誇り高き英雄の魂だけは今も色褪せることなく顕在していた

「息子が世話になっている」

どこからか、そんな声が聞こえた

182: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/12(月) 05:18:33.46 ID:AjOqXQMg0
荒れきった河岸に腰を据え空を見上げる。

戦いの激しさを物語るように、あちこちに海魔が浸食した跡や英雄王が放った宝具、スパーダの剣圧で河川敷が痛々しく削り取られている。

また、黒き炎竜のせいで海魔ごと本来、約束された勝利の剣の緩衝材になるはずだった舟すら跡形もなく消し飛んでしまい、橋も破片が見えなくなるまで吹き飛ばされたのか、完全に燃え尽きたのかが解らない程度には原形をとどめていない

激闘の余韻に浸っているのか、疲れ果てて動けないのか。一行はその場を離れることができなかった。
気付けば眩しい朝日が昇ってきている

イスカンダル「行ってしまったなぁ…酒の一つも酌み交わしたかったもんだが」

ウェイバー「はぁ…まだそんな元気あるのか、お前」

ため息とともに忌々しく自らのサーヴァントをにらむ。スパーダがこの場に居ようものなら本当に誘いかねない。

イスカンダル「何を言う!元気でないから酒を飲むのだ!」

ウェイバー「理屈になってないぞ。ソレ」

イスカンダル「ガハハ!そういうことをいちいち気にするから背丈が伸びんのだ。…いやぁしかし胸躍る戦だったのぅ。なぁダンテ?」

ダンテ「こちとら物心つく頃には相手させられてたモンでね、今更驚かないさ」

イスカンダル「ああ、そうだったな。失念しとったわ、――だが、あれでよかったのか?積もる話もあっただろうに」

ダンテ「話?文句の一つも言ってやりたかったさ!当然だろ!?あの親父のせいで散々苦労してるからな!―――でも」

そう、ウェイバーが知りうる限りでも、父の名のおかげで悪魔に恨まれ続け、母は幼き頃に他界し、兄とは激闘の末生き別れ、当の本人は行方不明とか。普通なら恨まれても仕方ないはずだ
それにダンテは多くを語りたがる性分ではない。きっと胸の内に悲しい物語をまだまだ秘めているのだろう

ウェイバー「……でも?」

思わず聞き返さずにはいられなかった。

ダンテ「やっぱり父さんは偉大だ。当分は勝てる気がしないね」

空を見上げて笑みを浮かべる。それは普段の皮肉屋なダンテとは違う、憧れを追いかけるまだ若い少年の目をしていた

ウェイバー「…そっか」

初めてダンテの芯の部分を知れた。そんな気がしたウェイバーであった

185: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/14(水) 02:07:42.71 ID:2TMjGr9X0
数日後

未だ巷では巨大海魔出現の噂で持ちっきりだ。多数の協会員が隠蔽工作に奔走し、テレビ報道などは殆どされていないものの、噂が噂を呼ぶ都市伝説状態になりつつある。
一方で当人たちは、束の間の休息を終え、戦いの最終局面を迎えようとしていた

イスカンダル「大方傷は癒えた。他の陣営もそろそろ出陣の狼煙を上げるころだわな。我らは今夜打って出るがダンテ、お前はどうする?」

ダンテ「2対1じゃ面白くないしな。気ままにドライブでもすればどっちかに当たるだろ」

ウェイバー「それじゃあお前を雇った意味がないだろ!」

ダンテ「前金もねぇ、チップもねぇ。オマケに女もいねぇ 自由行動くらいしたってバチは当たらないと思うんだがな」

ウェイバー「…そうかもしれないけど。セイバーもアーチャーもとてつもなく強いぞ」

その顔には不安の色が見られる。事実上スパーダが来なければ一度敗退したようなものなのだ。最善の手を打ちたい、というのがウェイバーの本音である

イスカンダル「なればこそだ。坊主よ。敵が強いほどこの体は血沸き、肉躍る!万全の布陣でなければ万全以上の心意気で臨む、それこそ戦の華というものよ」

ダンテ「いいこと言うね旦那。それになウェイバー。俺らが今日別々に勝てばゲームセットだ。早くて済むじゃねぇか」

ウェイバー「そうだけど……」

イスカンダル「なぁに心配はいらん。余の幸運値は伊達ではないわい」

ウェイバー「あーもうやめだやめだ!馬鹿二人と組んだ僕が馬鹿だったんだ!」

イスカンダル「それでは全員馬鹿ではないか」

ダンテ「あぁ、違いねぇな」

ウェイバー「そう…かもしれない…多分」

イスカンダル「ガッハッハ!!良いではないか。馬鹿にならねば世界なぞとれん!!」

自然とつられダンテとウェイバーも笑みを浮かべる

ダンテ「ハッハー!いいね、一曲アツいの弾いてやるぜ!」

ウェイバー「プッ、ふふふ。本当、悩んでたのも馬鹿みたいだ」

イスカンダル「だが、一歩間違えば普通に死ぬかもしれん道だ――――生きてまたこの場所へ戻る事をこの場にて誓おう」

陽気な表情からは一転、その瞳には覇王として世界に挑んだかつての挑戦者の炎が宿っていた

ダンテ「オーライ、まだ旦那につけてたバイク代もらってないしな」

ウェイバー「僕が元はといえば始めたことなんだ。お前らがそういうなら、生きてやるさ」

イスカンダル「うむ、ならば誓いの儀を此処に。」

手を前に差し出す。多少の差はあれどいつの時代にもある、こっ恥ずかしい習わしらしい

ダンテ「―そういうガラじゃないんだけどな」

ゴツゴツと皺の入った手の上に、一回り小さくも十分大きい手が重なる

イスカンダル「ほれ坊主、お前もだ」

ウェイバー「これでいいんだろ!これで!」

一番上には一際小さな少年の手が重なった

イスカンダル「――此度我らが臨むは死地!!されど今此処に鋼の誓いを打ち立て、戦友と再び同じ志の下!!勝鬨を上げん!!!」

空にまで届くような大声を上げ誓いを立てる。もう後戻りはできない。元より引く気などない、あるのは敵を打倒し、その前に広がる途方もない夢だけだ。

イスカンダル
「ではな、戦友よ、しばしの別れだ。行くぞ坊主!!今宵は長くなる、一騎当千の心構えで臨むぞ!!」

ダンテ「――死ぬなよ」

小さな声で呟き、アクセルを最大限まで吹かす。対悪魔用にカスタマイズされたそれは轟音と共にダンテのスイッチを切り替える

ダンテ「――さぁパーティと行こうか!!楽しませてくれよ!!」


187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/18(日) 15:51:33.67 ID:OYcKUCTD0
山道
バイクと共に走ることおよそ半刻、峠道に差し掛かったダンテは聖杯戦争ということを意識しつつも全身に突き抜ける心地よい風に酔いしれていた

ダンテ「――ただのドライブならこれほど楽しいものはないんだがな」

普段なら地元の走り屋たちが日夜、最速を競い賑わっている峠も聖杯戦争という名の連続怪奇事件の影響か、ダンテ専用コースとなりアクセルを握るその手にも熱がこもる

ダンテ「まずはアイツかと思ったが――当てがハズれたな」

バックミラーを覗き込むと、其処にはダンテの対悪魔用にカスタムされたモンスターバイクに追いつかんするV―MAXの姿が

ダンテ「――いいね、剣に槍ばっかり飽き飽きしてたところだ」

バイクを止め敵を見定める。小柄でありながらも改造を施されたV-MAXを華麗に乗りこなす。
それはダンテのライディングテクニックとは正反対の、勇壮さを孕みながらも無駄のない美しさを誇っていた。
それも律儀にダンテを目前にしその動きを止める

ダンテ「今日闘うのはキンピカ野郎だと思ってたぜ?」

セイバー「同感だ。私も今宵矛を交えるのはライダーだと思い、これを用意したのですが。だが、無駄ではなかった」

ダンテ「ラウンド1はライディング勝負だ」

セイバー「――騎乗決闘か。面白い、何を以て勝利とする?」

ダンテ「そうだな――山を先に抜けたほうが勝ち、クラッシュしたらゲームオーバーだ」

セイバー「構わないだろう。開始の合図は?」

ダンテ「コインを投げる。落ちたらスタートだ」

コイントスと同時に両者の顔は戦士のそれになる。特殊な形であれ、紛れもない純粋な決闘には違いなく、コインが落ちる1秒足らずの刹那は二人にはあまりに長く、永遠を感じさせるものだった。

セイバー「騎乗決闘!!!」

ダンテ「―ッハー!!来いよスイートベイビー!!」

192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/22(木) 17:07:56.75 ID:aR3+WaO10
轟音と共に双方のマシンが唸りを上げる。それはさながら獣のようであり、並の騎乗技術では振り落とされかねないほどの馬力を発揮して見せた

両者の走りは対照的な物だった。ダンテの走りとは若さも相まってか、言わばクレイジーであり、ただでさえ乗りこなすのが困難な対悪魔用にあらゆる面をカスタマイズされたバイクを、持ち前の器用さで限界以上のスペックを引き出している。
走行中にバイクの上に立つ、手放し運転などは序の口であり、バイクを武器として振り回す、バイクで壁を走るなどのはたから見れば明らかに無駄が多く自殺行為でしかない行いも、ダンテにとっては自らに酔いしれるパフォーマンスの一環であり、結果として敵の上に立つテクニックとして成り立っている

対するセイバーの走りは質実剛健そのものと言っていいだろう。荒れ狂うような動きも、様々な馬に跨ってきた確かな経験と自信によるものであり、セイバーにとっては基本に基づいた動きを忠実に行っているに過ぎない。

セイバー「―やるな。スパーダの血は伊達ではないということか」

ダンテ「親父は関係ないね。俺は俺さ。――酒の席で親父と違うって言ったのアンタだぜ?」

セイバー「それは済まない。そうだったな。では魔剣士ダンテよこの勝負私が頂こう」

ダンテ「俺も乗り物には自信があるんでね。特にバイクと女はお手のモンさ」

セイバー「どうかな。とても女を乗りこなすようには見えないぞ?」

ダンテ「――言ってくれるじゃねぇか。燃えてきたぜ」

皮肉を交わしあいながら、両者は並んだまま急カーブに差し掛かろうとしていた

セイバー「(さて、どう出る?)」

最小限の減速、体裁きでV-MAXと一体化したような動きで難なく急カーブを見事曲がり切って見せた。
セイバー「―振り切ったか」

Ⅴ-MAXの速度が低かったわけではない。減速したとはいえ直線に差し掛かり、十分に速度は伸びを見せていた。しかし、その後ろ、しかも壁を走り圧倒的なスピードで猛追するダンテの影があった

ダンテ「Hyahooooooooooooooooooo!!!Hahaaaaaaaaa!!!!!」

セイバー「何だと!?」

ダンテがとった走法は大きく減速したものの、ガードレールを自らの脚で蹴り、スピードを生みだし、インサイドの壁に向かい跳躍、そしてフルスロットルのアクセルと壁を下る重力を活かし、セイバー以上の伸びを見せていた。
限界を遥かに超えたマシンは排気口から文字通り炎を上げ燃え盛っている

ダンテ「クライマックスはこれからだぜ?」

セイバー「これほどに猛々しい動きは未だ見たことがない…面白い!!」

そこから、人知を遥かに超えたライディング勝負が何度も何度も繰り返された。決闘と銘打ってはいるものの両者の顔は明るく、自分と違う走法をする者と戦う面白さに時を忘れ楽しんでいた。
それでも唐突に終わりはやってくる。お互いのマシンも最早限界あり、山道も最後の直線を残すのみとなった

セイバー「残るは直線のみか……ならば―風王結界!!」

自らの鎧、そして風王結界を纏わせることで外的な力を得たⅤ―MAXはいよいよ最後の大舞台を飾るにふさわしく、進化して見せた。

ダンテ「ったくこっちは楽しんでたんだが……フィナーレといこうか!!!」

対するダンテは自分の魔力をマシンへと注ぎ込み、無理やり強化して見せた。セイバーが約束された勝利の剣や、自らの体から溢れる魔力をジェットのように噴射する「外」への強化を得意としているのに対し、ダンテは魔人化や弾丸に魔力を込め魔弾として射出するなど「内」側の強化を得意としている
相反する強化を得た二台のマシンは、共に最高速度を越え、ゴールに到達する寸前にその負荷によって崩壊し、とうとう寿命を終えてしまった

ダンテ「――勝ったと思ったんだがな」

セイバー「それはこちらの話だ。騎馬戦が本職なわけではないが、私と互角の騎乗者など殆どいなかったものだ。久々に胸躍ったぞ」

走行による決着は着かずじまい、それでもここで終わるわけにはいかない

ダンテ「―さぁ、2ラウンド目といこうか」

セイバー「望むところだ。―――アルトリア・ペンドラゴン、推して参る!!」

ダンテ「こっちも剣は嫌ってほど振らされてきたんだ。――遊んでやるよ」

194: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/25(日) 05:31:30.93 ID:kpBG/Tyu0
セイバー「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ダンテ「ッハー!!」

両者の剣がぶつかり合い火花を散らす。華麗さこそ孕んでいるが、両者の剣は洋刀の重さ、自身の力を活かし敵を打ち砕く「剛」の性質に近く、その闘気は寝静まった獣が危険を察知して逃げ去るほどであった。

ダンテ「――王様ってのは前へ出ず普通コマを動かすモンじゃねぇのか?随分と剣達者だな」

セイバー「それはお前が友とするライダーも同じ事であろう。何より「普通」の王程度であるならば、英霊として現の世に召喚されることもない」

ダンテ「なるほどね。自分で普通じゃないなんて言っちまう辺り、英霊なんて全員クレイジーってことはよく分かったよ」

セイバー「では、その英霊と渡り合うお前も十分異常ということだ。スパーダの血族、ダンテよ」

ダンテ「―――言ってくれるな。負けてやるつもりはないけどな!!」

皮肉を交えつつも両者の攻防は、更に激しさを増しつつあった。純粋な剣の腕はほぼ互角、スパーダ直伝の魔剣技の読みにくさ、ダンテが複数の魔具を担い手のレベルで使いこなせることも相まってほんの僅かにダンテが上回っているか、というところだろう。
しかし、風王結界によって隠されたリーチが不明であることから一旦距離をとり、ダンテ得意の近接攻撃に銃を交えての戦法に持ち込もうにも風王結界の風によってほぼ完璧に封じられてしまっていた。バージルのように完全に弾道を見切らずとも剣に弾がかすりさえすれば弾道は逸れる。秒間十数発を優に超える超連射を持ってしても、渾身の振りぬきで風を起こしてしまえば振り払える。ダンテにとってはやや戦いにくい相手でもあった。

ダンテ「チビッ子なのにパワーもありやがるな」

セイバー「この剣筋――魔剣士スパーダとよく似ている」

ダンテ「確かに見たとは言ってたが――アンタも親父と闘ったことがあったのかよ?」

セイバー「あぁ。――彼は誇り高く素晴らしい剣士だった。残念ながら私の遥か高みにいたようだが」

かつて、魔剣士スパーダは世界各地で英雄的活動をしていた時期、一度ブリテンの地を踏んだという。セイバーを初めとした円卓の騎士ですら苦戦する蛮族をたった一夜にて滅ぼし、是非手合せをと挑んできた円卓の騎士を無銘の剣一振りのみで一度に相手したとか。結果は聞かずもがなである

セイバー「――思えばランスロットの武芸百般に更に磨きがかかったのは、あの手合せ以来だったやもしれんな」

ダンテ「そうかい――まぁドライなふりして結構遊びが利いてるからな親父は」

セイバー「騎士の決闘を遊びというのは感心しないが、確かに彼らしい遊びの一つなのかもしれない」

元は全盛期の魔帝ムンドゥスの右腕として猛威を振るい、スパーダなくして魔帝の制覇は無いとまで言われた程の剣士である彼が、魔帝を打倒した後二千年。その剣技を持て余し、競い、ぶつける相手が欲しかったのかもしれない。尤も英霊の中でもトップクラスであるセイバーですら歯が立たないのだからきっとスパーダの退屈は凌げなかったのだろう。

ダンテ「アンタ達がもう少ししっかりしてくれればこっちはガキの時から親父にスパルタ受けずに済んだんだぜ」

ダンテが幼少の頃、兄バージルと共に日が暮れるまで魔帝を葬った剣技を叩き込まれたとか。
今でこそ知る由もないが、退屈であった日々に子と言う希望が芽吹き、所謂親バカを常識を超えるレベルでしてしまったからなのかもしれない

セイバー「スパーダとお前を混同する気はないが、今回は獲らせてもらうぞ!!」

打ち合うこと早千合を越え、二人の剣撃は大地を抉り、木々は折れ曲がり、大気は悲鳴を上げている。

ダンテ「―女神サマ、いやジョーカーは俺に微笑むもんさ」

セイバー「行くぞ!!!」

大きく距離を取り、聖剣は真の姿を現す。惜しくもキャスター戦では見せることができなかった。光り輝くその姿。
其は―――――――――――

セイバー「約束された――――――――――」

「勝利の剣―――――――――!!!!!!!!!!!!!!」

光は辺り一帯を包み、誰もがその美しさに思わず息をのむ夜空へと続く道となった。

セイバー「………手応えありだ」

196: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/26(月) 03:27:18.07 ID:uQh2cXYT0
光は影を飲み込み、激しさの余韻を残しながら収束を迎えた
もし、その場に観客が居合わせたとしたら誰もがセイバーの勝利を疑わなかっただろう。そしてセイバーも自らの勝利を疑わなかった。―――その声を聞くまでは

ダンテ「――言ったろ?ジョーカーは俺に微笑むってな」

セイバー「何故だ!?確かにお前の影は―――まさか…」

ダンテ「ビンゴ。アンタがぶっ飛ばしたのは文字通り影さ。――正直ギリギリだったぜ」

事の真相はこうだ。約束された勝利の剣が放たれた直後、ドッペルゲンガースタイルにより自らの影を生み出したダンテは、影が光にのみこまれると同時にトリックスタースタイルを用いて跳躍、それでも尚躱しきれないと判断し、ガンスリンガースタイルの魔弾で僅かに軌道をそらし、ロイヤルガードスタイルにより、見事凌ぎ切って見せた。
クイックシルバーを使わなかったのは魔力の消費が割高だというのも一因だが、それ以上に上記の方法の方がスタイリッシュであると判断したからだ。命のやり取りの中でも華を求める実にダンテらしい回避と言えるだろう

セイバー「見事だ。敵ながら天晴と言ったところか――だが、こちらにも意地がある!!」

ダンテ「――来な」

切り札を使い、最早余力も大して残っていないセイバーがとった選択肢は敢えて闘うことだった。
ダンテ自身、進んで人を殺すようなことはしない。しかし、命を賭して行う意味がある決闘を否定もしない。

―――信念にはより強き鋼の信念を

これまでも、そしてこれからも立ちふさがる信念があるならば自らの剣で斬り伏せる。普段は人を皮肉った態度を崩さないダンテがとる最大の敬意だ

セイバー「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!!!」

ダンテ「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!!!!!!!」

一閃。辺りは時が止まったかのように静まり返る。両者とも微動だにせず数秒が経過しようとしていた

ダンテ「――チッ」

先に片膝を付いたのはダンテだ。腹部からは人間と同じ深紅の血が滴り落ちている
満身創痍といかないまでも、しばらくはまともに戦える状態ではないのは明白だ

セイバー「――ぐっ……」

続いてセイバーが前のめりに倒れこむ。それは雌雄が決したことを知らせるものだった

ダンテ「――じゃあな。かわいい王様」

セイバー「あぁ……いい…戦い…だ…っ」

英霊アルトリアは役目を終え姿を失った。これから先彼女が辿る運命は違ったものになるかもしれない。生前多くのことを誤ったのではないかと苦しみ、一方的にライダーに説き伏せられてしまった。しかし、最後に剣を交えた誇り高き魂だけは間違っていなかったと、それだけを胸に、眠るように消えていった

ダンテ「――スッキリしたんだか後味が悪いんだかわかりゃしねぇ」

202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/11/28(水) 07:04:16.93 ID:BtBbHjZQ0
マッケンジー宅

激闘を終え、ようやくマッケンジー宅に辿り着く。バイクは木端微塵になってしまったため、徒歩で帰路についた結果、朝日が昇る時刻になろうとしていた

ダンテ「ジン・トニックで一杯やりたかったが…モーニングコーヒーが出てきそうだな」

シャワーでも浴びたいなどと考えながら、ウェイバーの部屋に辿り着くとそこには、真っ赤に目を晴らしたウェイバーが膝を抱えて座り込んでいた。

その横にあの逞しい巨漢の姿はない

ウェイバー「…遅かったな」

ダンテ「無茶言うなよ。バイクが壊れちまったんだ、これでも急いだほうさ――ライダーの旦那は?」

ウェイバー「ライダーは…僕の王は……死んだ。」

声は震え、一言、一言を絞り出すように呟く

ダンテ「――そうか」

短く頷く。相棒を失うのは慣れてしまっている。今回もまた一つ、かけがえのないものを失ってしまっただけだ

ウェイバー「王からの伝言だ………親友よ、バイクはまた会う時までツケておいてくれ。魔界への遠征が今から楽しみだ………そう言っていた」

ダンテ「冗談じゃないぜ!!雇い主はチップもはずまねぇ、サーヴァントは酒代やら全部俺にツケて逝っちまった!―――――馬鹿野郎が」

203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) 2012/12/01(土) 02:03:09.79 ID:McnQsNcg0
イスカンダルではギルガメッシュには勝てないだろう。ダンテには薄々分かっていた。それでもどこか甘い期待があった。二人がかりでなどと言えばそれこそ最大の屈辱以外の何物でもないだろう。

ウェイバー「…泣いてるのか?」

ダンテ「――悪魔は泣かないもんさ」

背を向け顔を上げる、矮躯のウェイバーでは確実に表情を伺われない角度を保つのが精一杯の抵抗だった

ウェイバー「これからどうするんだ?僕はもう聖杯を手にすることはできない」

ダンテ「何が言いたいんだ?」

ウェイバー「―お前との契約もこれで終わりってことだよ。今まで助かったよ、もうどこにでも行ってくれ」

自分がしてやれることなどそのくらいしかない、せめて終わってしまった戦いから部外者であったダンテを解き放つことがせめてもの詫びのつもりなのだ

ダンテ「―お断りだね」

ウェイバー「ど、どういう意味だよ?」

ダンテ「ハナから金も何ももらってねぇのに契約も何もないだろってハナシだ。それに、敵討ちなんかじゃないが俺もあの金髪とはケリをつけようと思ってたところさ」

ウェイバー「―じゃあ…」

ダンテ「―そういうことだ。ここのメシも悪くねぇしな」

ウェイバー「契約金と…ライダーつけたものは何年かかってでも払う。だから…王の仇を」

ダンテ「当然。吠え面かかせてやるよ」

ウインクをして言い切ると同時に服を脱ぎ、部屋を後にした。

ウェイバー「どこへ行くんだよ!?」

ダンテ「シャワーだよ、シャワー。ベタついて仕方ねぇ。そこからベッドでおねんねだ」

最期の時は近い。友の思いと自らの誇りを胸に、魔剣士は最後の戦いへと備えるべく束の間の安らぎに身をゆだねた

204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/02(日) 04:38:16.58 ID:418zs3XX0
翌日

早朝にも関わらず太陽を覆うような暗雲が立ち込め、瘴気が冬木を覆う。満ちた聖杯は所有者の願いを歪んだ形で叶える呪い壷としての機能を整えつつあった。
それでもなお、現時点で何も災厄が起こっていないのは、事実上聖杯戦争の勝者であるアーチャーが行動を起こしていないからに他ならない

ウェイバー「やっぱり、アイツもお前を待ってるんだな」

ダンテ「アイツも俺とはケリをつけたいらしい。行ってくるぜ」

愛剣リベリオンをその背に、二丁の愛銃を華麗にホルスターに収納し、部屋をあとにしようとしたダンテを小さな手が遮った

ウェイバー「僕も行く。王の仇もあるけど、元は僕が言い出したことだ。最後まで見届ける義務がある」

ダンテ「――好きにしな」

マッケンジー宅を後にし、バイクに跨る。ライダーが聖杯戦争に勝利した後、散々乗り回す予定であっただろう大型バイクに

ダンテ「―――さぁ、レッツロックだ」

教会

静まり返った教会には華美な甲冑の男が一人、禍々しい魔力を放つ聖杯を背に佇んでいる。紛れもなくアーチャーのサーヴァント英雄王ギルガメッシュだ

ウェイバーは対峙する二人の荘厳な圧力にただ息を殺して見守る事しかできなかった

ダンテ「――よぉ、来てやったぜ。キンピカ」

ギルガメッシュ「待ちわびたぞ魔剣士。王を待たせるとは大した男だ」

ダンテ「時間にはルーズでね―――詫びは鉛玉のシャワーで構わねぇか?」

ギルガメッシュ「そう焦るな。見よ、これが聖杯。この禍々しくも力に満ちた杯を愛でてやれるのは我しかおらんと思わぬか?」

ダンテ「趣味が悪いな。ここまで来ると医者に診てもらった方がいいレベルだ」

ギルガメッシュ「戯け。我の嫁であるセイバーを殺しおってからに、どうしてくれようと思っていたが――貴様の父には借りができたのでな。我も持ちえぬその魔剣、置いていくなら許しを乞う許可をやるが?」

ダンテ「これは俺のだ。アンタは自分のがあるだろ?」

皮肉を交わしあうが、その顔に一切の笑みはなく、冷え切った空気は、吐き気を催すほどに狂おしい旋律を奏で、異界のように歪んでいく

ダンテ「――そもそも、だ。レディの奴が冬木の聖杯はロクなもんじゃねぇって言ってたからな、アンタ倒すついでにぶっ壊してやろうと思ってたところだ。ライダーの旦那もこれ見たらたまげるだろうな」

ギルガメッシュ「みすみすコレを破壊すると?つくづく愚かな男だ。どうやら決定的な敗北でなければ自覚できんらしい―――」

ダンテ「本当にアンタとは気が合わないな。お互い混じりモンだってのに。俺はこの血に誇りを持ってる。父さんと母さんの――誇り高き魂が、の身に宿ってる!!!!」

ギルガメッシュ「――一方我は神を忌み嫌うか――皮肉なものよな」

揺れる金糸と銀糸、燃える紅と蒼の瞳。ぶつかる互いの信念。打ち砕き、斬り裂かれるのはどちらの信念か最後の決戦は幕をあけた

ダンテ「――行くぜ」

ギルガメッシュ「先ずは貴様がエアを抜くに相応しき益荒男か見定めさせてもらうぞ」

「王の財宝」

挑むは異形の姿と化した魔剣士、迎え撃つは掛け値なしの至高の財の嵐
聖杯戦争の最後を飾るに相応しい、開始早々戦いは瞬きも息も許さぬ戦いとなった

208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/03(月) 06:57:18.19 ID:RXMfoGEt0
ダンテ「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

両者の距離は五十メートル強。宝具を雨あられと放つギルガメッシュに大抵の者なら先に近寄ることなど不可能に近い。近づけたとしても、決死の特攻を以てするより方法はない。

だが、魔剣士は違った。猛る魂の赴くがまま、目の前の敵を打ち砕かんと突き進むは鋼の信念。究極、至高の贅を凝らした宝具と言えど、魂のこもっていない一撃など、何を臆する必要があろうか。

そこに敵が存在するならば、壁など関係ない。破壊し、ただ進む。
普段のスタイリッシュさはなりを潜め、残すところあと半分と言うところまで辿り着いた。

ウェイバー「これがあいつの本気…」

少年は絶句する。陽気な中にどこか影を宿し、戦闘の最中ですら皮肉屋で人を寄せ付けないダンテが、全身全霊、持てる総てを賭けて戦っている。

聖杯の破壊か、友であり新たな相棒であったライダーの敵討ちか、目の前の信念を打ち砕くためか、何がそこまで彼を駆り立てるのか、ウェイバーには計り知ることができなかった。
まさに心中は、神ではなく、悪魔のみぞ知るところだ

209: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/05(水) 05:14:57.97 ID:+A5nC0Y/0
ダンテ「―さて、もう一息だ」

ギルガメッシュ「………………………」

ありとあらゆる宝具の嵐を見事防ぎきっていることに驚きを隠せないのか、単なる様子見なのか、束の間の静寂が訪れた。

残す距離およそ十メートル。本来なら一回の跳躍で容易に到達できる距離が今のダンテには永遠の道のりように長い。
美しく手入れされた教会の庭園は、散って行った者たちの墓標のようにそびえ立つ剣の丘と化していた。その数は千を優に超えているだろう

ダンテ「――チェックメイトも近いぜ」

流石のダンテも言葉とは裏腹に息は荒く、魔人化を保つだけの余力はもはや残されていない

ギルガメッシュ「伊達に魔剣士等と大それた名を付けられるだけのことはあるということか――だが、息が上がっておるようだぞ?」

ダンテ「アンタこそ、ご自慢のコレクション切れちまわないよう注意しな」

ギルガメッシュ「戯け、この世全ての財は我が蔵にて眠っておる。この程度では終わらん」

ダンテ「安心したぜ――ブッ潰す」

宣言と共に駆け出す。迎え撃つ宝具を物ともせず、振り払い、ただ一歩、そしてまた一歩と前に進む。

ダンテ「……アンタの宝具とやらも使わせてもらおうか」

手にするは、運命の巡り会わせかギルガメッシュが保有する魔剣の一振り。

ギルガメッシュ「――ほう。それを手にするとは……中々見所がある。」

かつてのように、宝具に触れられた時の憤りは今のギルガメッシュにはない。自ら全力で葬るだけの相手であるということを意識こそしていないものの認めつつあった

ダンテ「ハァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

対するダンテも、怒りや使命を通り越した、自らの信念を以て打倒すべき相手であるということを認めざるを得なかった。

兄と対峙した時とは違う独特の高揚感、これからの人生で二度と会うことができないであろうバトルスタイル。

ここでコイツを倒さなければならない―――

全ての感情を超越したダンテは未だかつてないハイな状態に高まり、止むことのない宝具の雨の中その剣技はより一層精密さと豪快さを兼ね備えたスタイリッシュなものへと昇華されていく

意地と意地がぶつかり合う勝負が一時間を経過しようという頃、これも運命か、破魔の祈りを帯びた聖剣がダンテの脇腹を抉った

ダンテ「―――――ッッッ!?」

あまりの痛みに、一瞬動きを止めてしまう。軌道をそらしたとは言え他の宝具では当たろうが問題なく振れていた剣がその動きを止めた途端、雨は無情にもダンテと言う地に降り注いだ。

ギルガメッシュ「天の鎖よ!!!」

信頼する宝具エルキドゥによる捕縛。力なく垂れた手足は固定され、英雄王は自らの勝利を確信する

ギルガメッシュ「幕切れか―――では、手向けに我がエアによって葬ってやろう。そなたとの対峙、中々に心踊らされた」

215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/09(日) 15:02:04.72 ID:8VCFz8sm0
一突き、最早恒例ともいえる心臓への一撃を受ける。依然力なくグッタリと手足は垂れたままだ

ギルガメッシュ「エヌマ・――――――――」

構えと共に螺旋状に魔力が怒涛の渦を巻く。世界をも斬り裂くその一撃は、直撃しようものなら例えダンテでも耐えきることはおろか肉片一つ残らない威力を秘めた究極の一撃

スパーダの炎竜の一撃をも上回ろうかという攻撃がダンテを襲うと誰もが確信したその時魔は最後の覚醒を遂げた

ダンテ「ハアァァァァァッッッ―――ラァッ!!!!」

コンマ一秒以下の魔人化、されど神性を持つ者に強く作用する鎖を魔の権化であるダンテが引きちぎるのにその時間はあまりにも長すぎた

ギルガメッシュ「――何っ!?」

構えを戻し、最後の一撃を加えようとするが時は既に遅く、剣士の間合いに入られていた

ダンテ「――覚悟はいいか?」

繰り出すはダンテ流魔剣技の粋、ダンスマカブル
父から受け継いだ魔剣技に自らのスタイリッシュさ、クレイジーダンスを加え昇華させてみせたダンテオリジナルの怒涛の連続斬撃。

それは強引に黄金の甲冑を引き裂き、打ち砕き、見事英雄王ギルガメッシュをも打倒する最後の決め手となった

ギルガメッシュ「ガハッ!?」

ダンテ「―――絶望的だろ?」

ギルガメッシュ「…………敵への絶望を以て絶望を制す。か、悪魔の貴様らしいわ」

ダンテ「ソイツはどうも。誉め言葉として取っとくぜ」

ギルガメッシュ「―――最後まで気に食わん奴よな。だが不思議と憤りはない」

ダンテ「まぁコッチもスッキリしたしな。チャラにしといてやるよ」

勝者敗者の違いはあれど、皮肉りながらも互いに戦うことでしか分かり合えない友情なような奇妙な感情が芽生えていた。
口にすると安くなる。決して両者とも言葉にすることはなかった

ギルガメッシュ「お前は往け。泥には巻き込まれたくあるまい?」

ダンテ「アンタはどうするんだ?」

ギルガメッシュ「我はここでよい。この程度の呪い、飲み干せずして何が王か」

ダンテ「結構。適当にぶち壊してズラかるよ――じゃあな」

ギルガメッシュ「うむ。次に見えるまでには魔界の宝、すべて手中に収めておけ?我が宝物に加えることを許可してやろう」

最期に言い残すと、黄金の甲冑は、輝きすら覆い尽くす深淵の闇へ消えていった。最早追いかけてその姿を見ることは叶わないだろう

ウェイバー「――終わった………のか?」

ダンテ「今から聖杯を俺がぶち壊す。ハードワークだが、やれるだけやってやるさ」

ウェイバー「――うん、頼んだ」

ダンテ「それでしばらくは大丈夫だ。だが聖杯は復活する――近い内にな」

ウェイバー「そこからは、きっと僕の仕事だ。」

言い放つ少年の目に迷いはなく、イスカンダルと、ダンテと過ごした日々が少年を男へと成長させつつあった。
今はまだ頼りない少年を背に魔剣士は混沌の壷へその刃を向ける

ダンテ「お互い忙しくなりそうだな、これから」

ウェイバー「その頃にはチップも弾んでやるさ」

ダンテ「OK、頼んだぜ。―――――――ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/11(火) 17:07:26.52 ID:a9a7irXd0
――――――――――――
―――――――――
―――――――
約二十年後
DMC事務所

時は過ぎ、場所はスラム街の一角DMC事務所。いつも通り退屈な依頼はパス。

散らかりきったデスクの一角に僅かだが綺麗なエリアがあり、そこには兄に斬り裂かれてグローブ、その横にかつての親友のマントの一部分が保管されている

今日も借金の取り立てに来たレディを上手くかわしながら好物のストロベリーサンデーを頬張り、珍しく昔話に花を咲かせていた


ダンテ「――――――何てこともあったか」

レディ「そうそう。私まで隠蔽工作に付き合わされたり、現地の教会から巫女の血だからって攫われそうになったり生きた心地がしなかったわ」

ダンテ「そう睨むなよ。そっちだって手当代だとか言ってバカみたいに借金上乗せしたろ?こっちに帰ってから一週間徹夜で魔具集めさせられたときは聖杯戦争のがマシだって思えたくらいだぜ」

普段通り怠惰的な会話を交わしながら忌々しそう、もとい少し悔しげな表情で見つめる影に気付く

ダンテ「―何だ、帰ってたのかよ。随分早いな」

トリッシュ「別に、お客様のお迎えだけだしこんなものでしょう?――それより今の話は何?聞いたことがないのだけれど」

ダンテ「あぁ、そう言えばお前まだいなかったか。―単なる昔話だよ」

レディ「ひょっとして、嫉妬?」

トリッシュ「まさか。それよりお客様よ」

ボロボロの扉を開け中に入ってくる影は三人。一人は眉間に皺を寄せ不機嫌そうな顔をした長身の青年、一人はあかいあくまと形容するのがふさわしそうな東洋風控えめバストの美女、最後の一人は顔立ちこそ東洋風だが筋骨隆々の体格に赤銅の皮膚、銀髪と言うよりは色素の抜け落ちた白髪と言うべき青年

???「相変わらずアンタの周りは散らかってるな。たまには清掃でも呼んだらどうだ?」

ダンテ「そういうなよウェイバー。こっちはお前や彼方此方の借金で手いっぱいさ」

ウェイバー「そうだったな。これ以上ツケるわけにもいかないか」

20年という月日は長く、チップだギャラだと言っていたダンテへの借りはすっかり返され、いつの間にかダンテが借金をせびる立場となっていた

ダンテ「その内、な――その内」

借金の話になるとバツが悪くなったように雑誌で顔を覆い話題を逸らそうとする。

???「借金の話はともかく、貴方に頼みたいことがあってきたのだけれど」

???「遠坂の言うとおりだ。話を進めさせてくれないか」

ダンテ「――そちらさんは?」

ウェイバー「紹介が遅れたな。彼女が冬木の名門、遠坂家当主の遠坂凛だ」

凛「初めましてダンテ。貴方の噂は聞いてるわ。どこかあなたとは他人な気がしないのはなぜかしら」

ダンテ「同感だ。それに赤が好きってのも分かってるじゃねぇか、気に入ったぜ?――で、そこの兄ちゃんは?」

ウェイバー「彼は衛宮士郎。遠坂の弟子みたいなものだ。アンタとは恐らく相性がいいだろうよ」

士郎「衛宮士郎だ、よろしく頼む」

ダンテ「それは楽しみだ。期待してるぜ、シロウ」

ウェイバー「さて――ここからが本題だ。」

226: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/12(水) 17:22:28.93 ID:GzYVOojU0
ダンテ「聖杯の解体だな。ずっと待ってたぜ」

ウェイバー「そういうことは忘れない男だったな、お前は。あれは私、いや僕の仕事と言っただろう。ここの二人も志は同じだ、冬木の聖杯でえらい目にあったらしい」

ダンテ「エラい目?」

凛「誰のせい、とは言わないけれど【ダークスレイヤー】とかいうイレギュラーサーヴァントが出てきてね、そりゃあ死ぬ思いしたわよ。ねぇ士郎?」

士郎「――確かに、二度とごめんだ」

何でも二人の話によれば、初日にキャスター、ライダーが脱落。
数日後の戦闘でアーチャーが命がけの固有結界で足止めを試みるも逆に利用され完敗

最終局面ではギルガメッシュ、セイバー、バーサーカー、ダークスレイヤーの四勢力が死闘を繰り広げ森の大半が跡形もなく吹き飛んだとかなんとか

ダークスレイヤーとは、聖剣エクスカリバーに匹敵する日本刀のような魔具に始まり、瞬間移動レベルの高速移動、離れれば簡易的な投影剣で串刺し、近づけばそれが周囲に展開し、更に圧倒的な魔剣技が襲ってくる

止めにステータスを桁違いにあげる魔人化の行使、周囲を斬り裂く絶刀なる対軍宝具クラスの技、そして究極の対人宝具と言える絶界(MVCP参照)なる奥義を使ってくるまさにバケモノだったとか

士郎「生きた心地がしなかったよ本当」

トリッシュ「それってまさか―――ねぇ?」

レディ「大方そうでしょうね」

ダンテ「オイオイ、俺が悪いってのか?冗談じゃないぜ」

ウェイバー「そうは言ってない。が力は貸してもらうぞ」

ダンテ「分かってるよ。そう思ってコッチも助っ人を呼んでおいてやったぜ。扱いにくくて青いが、ガッツのある坊やだ」

ウェイバー「楽しみだな、昔のお前みたいだ」

ダンテ「――アレはどっちかっていうと兄貴寄り……言っても分からねぇか」

四次の凄惨な戦いや五次の壮絶極まる戦いの話、それぞれ複雑に絡み合う事情を話し合うこと十数分、遅れてそれはやってきた

ダンテ「噂をすれば何とやら―だ」

凛「期待していいのかしら?」

レディ「多分貴女よりは、ね」

凛「そう。ミス・レディ、貴女よりはるかに優秀な助っ人が来るなんて頼もしいわ」

レディ「……………………………………」

凛「…………………………」

トリッシュ「止めなくていいの?」

ウェイバー「私はパスだ」

ダンテ「俺に振るなよ、女同士のいざこざに巻き込まれるのはゴメンだ」

険悪な空気が漂う中、わざとなのか、悪気がないのか、会話を遮るように乱雑に扉は開けられる。姿はまだ若く十代の青年、若き日のダンテ以上に捻くれていてそっけない態度の裏には、輝く腕とその瞳には青くも筋の通った信念の炎を灯している

「遅れたな――っておい、パーティーでも開くつもりか?だったら帰らせてもらうぜ、人が多いのはゴメンだ」

230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/15(土) 04:43:49.18 ID:f29ZJ6yQ0
凛「―彼は?」

ダンテ「聞かれてるぜ、淑女からの問いは答えてやるもんだぜ?」

ネロ「―ネロだ、ネロ。まぁ、そこの椅子で踏ん反り返ってる奴と同業ってところだ」

士郎「どこかで聞いたような………」

凛「城塞都市フォルトゥナの今は無き魔剣教団、教団騎士のエース………だったかしら?」

ネロ「エース、ね…随分聞こえがいいが実際そんなモンじゃないさ。――アンタらは?」

ダンテ「そこの目つき悪い優等生がウェイバー。俺の昔の馴染みだ」

ネロ「おいダンテ。聖杯ぶっ壊すために俺を呼んだんじゃなかったのか?優等生なんかお守りしてる余裕はないぜ?」

ウェイバー「随分と言ってくれるが、お前の腕は確かなのか?」

ネロ「生憎俺は単独行動が専門でね。一人ならどうにかなるさ」

優等生とややニヒルで不良気味な二人が初対面で分かり合えるはずもなく女同士に続き、男同士にまで険悪な空気が及んでいた

凛「ところで聖杯を――ってことは今回の戦いに貴方も参加してくれるということかしら?」

ネロ「でなきゃこんなトコまず来ないね。個人的につけなきゃいけないケジメもある」

士郎「言葉を返すようで悪いんだが、今回の聖杯の件は冬木の俺達や、二十年前のウェイバーさんとダンテさんは分かる。でも君と何の関係が?戦力としてはありがたいが出来れば巻き込む人も最小限にとどめておきたい。理由を聞かせてくれ」

ネロ「魔剣教団だ」

言葉にしたのは、かつて所属し、自ら打倒した教団その名だった。

凛「聞いた話だとあれは貴方が暴走した教皇を打倒したって」

ネロ「残党が居たみたいでな。あのクソジジイをまだ崇拝してやがる連中がどうやら冬木の聖杯を狙っているらしい。冬木自体に思い入れも何もないが――奴らに聖杯が渡ればフォルトゥナにも、俺の大切な人にも危険が及ぶ。それを他人には任せておけないだけさ」

トリッシュ「素直じゃない坊や」

士郎「そうか、君が信頼に足る人物だというのはよく分かったよ。俺は士郎、衛宮士郎だ。よろしく頼む」

ネロ「あ――あぁ」

照れているのか、自分に好意的な人物が今までキリエを除きいなかったことへの戸惑いなのか、それともほかの何かかそっぽを向き黙り込んでしまう

凛「ことは厄介になってきたわね……当然魔術協会や聖堂教会は出てくるだろうと予想してたけどそこに魔剣教団が絡んでくるなんて」

レディ「彼ら自体は大したことないでしょうけれど厄介な悪魔も出てくるでしょうね」

ウェイバー「確か魔剣教団事件の資料あったよな、ダンテ。少し見せてくれ」

パラパラと流し読みをし、今やロードエルメロイ二世の名を冠したウェイバーは瞬く間に危険の可能性を示して見せた

ウェイバー「もし、だ。奴らがこの「神」の様な物を建造していたとしたら非常にまずい」

ダンテ「確かに厄介だったが――何がまずいんだ?」

ダンテたちの力量を把握したうえでのウェイバーのまずいという発言には流石のダンテも続きを促さざるを得なかった

ウェイバー「仮にだ。この神が現れたサーヴァントを倒し飲み込もうものならこいつは手の付けられない怪物になるかもしれない」

ウェイバーの仮説はこうだ。
恐らく魔剣教団はサーヴァントの魂でも神を動かせるシステムを作ってくる可能性が高い。
「神」は一サーヴァントが敵対するにはあまりに強大な相手であること。
その神がサーヴァントを打倒し、ネロのように宝具と同時に吸収してしまえば完全体となる可能性がある。
そして、打倒すサーヴァントが多ければ多いほど神はその力を増していく。最後の一体までサーヴァントを吸収すれば後は聖杯の贄としてサーヴァントの魂を開放するもよし、そのままフォルトゥナに進行するもよしと言うことだ

ネロ「考えたくもないね。アイツの相手は二度とゴメンだ」

士郎「あぁ、そんなことをさせるわけにはいかない!」

ウェイバー「今から私が最善の策を考え―――」

曲がりなりにも意見がまとまりかけた瞬間、痺れを切らしたそれがとうとうやってきてしまった

「何故だ!?何故奏者は余を除け者にするのだ!?」

ネロ「出てくるなって言っただろ!セイバー!」

先ほどそっぽを向き黙り込んでいたのは、この赤いセイバーを必死に抑え込もうとしていたためである。ネロは今回の戦い、マスターとしても参加する運命だったのだ
何の縁があってこのセイバーが出てきたかはネロの知る由ではない

247: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/19(水) 02:01:51.56 ID:BuzQp7Pj0
士郎・凛「セイバー!?」

あまりに似通った容姿に思わず声を上げ驚いてしまう。
雰囲気こそ違えど顔は殆ど彼女の物と言っていいほどに似ているのだ

セイバー「そう、余こそは最優のサーヴァント、セイバーである!!」

士郎たちの思いも知らず、赤いセイバーはエッヘンと胸を張り高らかに言い放った
マスターであるネロはやれやれと頭を抱え困り果てている

ダンテ「いいや、多分俺達の知ってるセイバーじゃないぜ」

士郎「確かに雰囲気は変わったけど…本当にセイバーじゃないのか?」

ダンテ「アレが違う。女のアレが」

胸を丸く囲うようなジェスチャーを士郎に見せる

士郎「あぁ…、なるほど」

セイバー「こうなったからには余も参加させてもらうぞ!」

ネロ「いいから引っ込んでろ」

セイバー「何故奏者は余を嫌うのだ?泣くぞ!キリエに言いつけるぞ!!」

容赦のないネロの突っ込みにとうとう泣きそうになってしまう。目は宝石のように涙で輝き今にも泣きだしそうだ。DMC事務所に来るまでの間もこうしたやり取りが何回もあったとか

ネロ「――分かった分かった。頼むから泣くな」

セイバー「本当だな!では余も会議に参加するぞ!!」

ネロ「――いいか、キリエには絶対言うなよ?」

セイバー「勿論だ!余はうそをつかぬぞ」

飴をもらった子供のようにはしゃぐセイバーに対し、ネロは諦めることを決意した表情を見せた

ウェイバー「では、今加わったセイバーも含めて簡単なチーム分けを行うぞ」

ウェイバー「まず、ネロ、そしてセイバー。お望み通り単独行動とはいかないが一番自由に動けるだろう。」

セイバー「うむ、当然だな」

ネロ「マジかよ………」

ウェイバー「次にダンテ、そして衛宮だ。衛宮の固有結界、ダンテなら十二分に使いこなせるはずだ」

ダンテ「野郎とデートか――悲しいな。まぁよろしく頼むぜ」

士郎「アンタの魔剣技、少しでも盗ませてもらうよ」

ウェイバー「続いて、私、遠坂、レディ、トリッシュだ。私たちは基本的に後方支援に回る」

レディ「私も入ってるのね、構わないけど高くつくわよ?」

ダンテ「お前だけハーレムかよ?」

深くため息をつき、本来なら説明しなくてもいいようなことを説明しなければならないことに苛立ちつつも、納得のいく説明しなければダンテはやる気を出さないであろうことを解っていたのでしぶしぶ説明を始めた

ウェイバー「まず、レディの巫女の血は聖杯の解体にも役立つ。前線に出られて死なれては困る。続いて遠坂はある程度顔が利くからバックアっプには最適。私も出るときは出るが、無闇に出ても足を引っ張るだけだ。過去の僕が一番わかっている」

トリッシュ「私は何の役かしら?クイーンでも演じる?」

ウェイバー「アンタはもしもの為の保険だ。並のサーヴァントならまず負けないだろう」

トリッシュ「そう、私もただの駒ってワケね、残念」

ウェイバー「いいか、皆―――ここまで普通に話したが、一歩間違えれば全滅も考えられる戦いだ。気を引き締めてくれ」

複数勢力から同時に攻撃される恐れすらある。そして真に対峙すべき相手すら定かではない今回の戦いは想像を絶する戦いになることは必至だろう

それぞれの運命や因縁が複雑に結びついてるとは言え、自分の役目と認識してる以上、仲間に被害を出したくないのがウェイバーの本音だった

248: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/19(水) 03:19:07.40 ID:BuzQp7Pj0
ネロ「――ハッ、優等生は自分の心配だけしてろよ」

静まり返る空気の中、口火を切ったのは若きデビルハンターとなった剣士ネロだった

ウェイバー「幾らお前が強いと言ってもだな…」

ダンテ「アイツなりの優しさだよ。察してやれ」

セイバー「奏者は素直ではないからな、余ほどの器でないと愛でてやるのは至難の業だぞ」

ネロ「――ったく、好きに言ってろ」

凛「幾らロード・エルメロイ二世が巻き込みたくないと言っても私達にもアレを止める義務があるもの。今更引く気なんてないわ」

士郎「あぁ――これ以上あんなものを放っておくわけにはいかない」

ダンテ「――決まりだな」

ウェイバー「そうだな。私としたことがお前たちの決意を甘く見ていたようだ」

レディ「男臭いやり取りの中悪いけど、お先に失礼するわ。ここに居る便利な力の持ち主達と違って、私は準備に時間がかかるから」

ダンテ「オーライ。また適当に合流してくれ―――ってオイ、トリッシュは………」

レディ「――さぁ?伝言はあるみたいだけど」

指差した先には、あるはずの父の形見、魔剣スパーダはなく

“現地集合”

と書かれている

ダンテ「見てたなら止めろよ!」

レディ「そう言われてもね?いいじゃない、いつものことだし」

ダンテ「――なるようになる、か。悪くないぜ」

ウェイバー「(王よ、行ってきます)」

ネロ「何ボケッとしてるんだ、行くぜ」

セイバー「余が先陣を切ろう。後に続け!」

凛「さ、行きましょう?」

士郎「しかし、頼もしい面々だな。敵にならなくて本当に良かった」

ウェイバー「お前達…………」

ダンテ「―いこうか、雇い主サマ?」

ウェイバー「あぁー―最強の助っ人だ!」

ダンテ「ショータイムだ」

終わり

249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/12/19(水) 03:21:26.07 ID:BuzQp7Pj0
ここからただのイメージと言うか予告的なもの

「アラストルを聖遺物として俺を呼びだすとはアンタも風流だな、何故日本人の俺が出てきたかって?それは俺がCOOLだからさ」

「奥州筆頭―――伊達政宗。推して参る。Let,s party!!!」

「サムライが相手ね。悪くねぇ――かかってきな」




「爺さん――俺の親父はアンタの父親を見てから英雄とは何かって悩んでたみたいだ」

「英雄ね―――――親父は誇り高い人だったが、きっとそんな風に自分を思っちゃいなかったと思うぜ」

「何でそう思うんだ?」

「シロウ、お前も知ってるとは思うが、地獄門ってあるだろ?アレは魔界とこの世をつなぐ門だ。封印こそしたが遂に破壊はできなかった。あの親父がだ。結局、魔界や悪魔達にも思うところはあったんだろうよ。俺達と同じ、同族を殺せば心も痛む。」

「…………」

「人の愛って奴を知っちまったがために、同族を、仕えてた主を打倒すってのは、どんな気持ちだったんだろうな」

「…………アンタに会えてよかったよ。ダンテ」

「―――お前に誇りと信念があるなら貫けばいい。英雄なんてモンは後からついてくる。それでいいんじゃねェか?……っと、クサすぎたか」

「いや………ありがとう」




「束の間だが盟約を交わしてやろう。我にとってその剣技は眩しく尊い」

「神と悪魔の盟約か。――フン、悪くない」

「ちょっと…また金銀オールバック登場って訳?今度は組んでるし…」

「驚いてる暇があったら逃げる努力でもしたら?早く乗りなさい」




「これぞ新たな神…聖杯は我らの手に!!」



「スパーダの血族よ 再び見える時が来たな」

「お前なんて知らねぇな。出てきた孔に押し戻してやるよ」

「我が名はムンドゥス 聖杯を降ろしたのは失敗だったな おかげで私の復活も早まった」

「我が真名はネロ・クラウディウス!奏者に刃を向ける不届き者よ、余が成敗してくれよう」

「何言ってんだ!お前一人で勝てる相手じゃ――――」

「そこから先は言ってはならぬ。―――キリエを泣かせるなよ」

「愛しているぞ、奏者」




「―剣の名を冠するスパーダの血に刃向うとは愚かな奴だ」

「俺もアンタも属性は剣…!だとしたら、アンタが誇り高きスパーダの血族なら!!間違った道に進んだアンタに負けるわけにはいかない!!」

「無限の剣製――――――!!」


「今度こそ聖杯を解体してみせる―――!」

「jackpot!!」

大まかなイメージでした本当に終わり