とある根性の旧約再編 前編

317: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:13:27.48 ID:GuFbb15DO

-数分後、駅前大通りラーメン屋



店長「ご注文お決まりですかぁ!?」

原谷「あ、じゃあ味玉ラーメンで」

横須賀「富士山盛りドデカラーメン。」

削板「富士山盛りドデカラーメン!」

インデックス「富士山盛りドデカラーメン!」

店長「味玉1丁と富士山3丁! ってお嬢ちゃん富士山挑戦するの?」

インデックス「当然なんだよ!」

店長「やめた方がいいよ? ウチ食べ残しは1・5倍の料金もらうことになってるから」

インデックス「失敬なんだよ! 神の恵みである食物を残すなんて冒涜をするはずないかも!」

削板「そうだ! インデックスはそんな腐った根性してないぞ!」

店長「……後悔しても知らないよ?」

原谷「すいません、それわりとこっちのセリフです」

横須賀「いいから持ってきてくれ。」

店長「……味玉1丁と富士山3丁入りまーす!!」



引用元: とある根性の旧約再編 

 

新約 とある魔術の禁書目録 (13) (電撃文庫)
鎌池和馬
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318: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:14:50.08 ID:GuFbb15DO

削板「まったく! インデックスの根性をナメてるな!」

原谷「親切から出たリアクションなんでしょうけどね」

横須賀「たしかにな。」

インデックス「……ねえ、やぶみ、よこすか」

原谷「ん?」

横須賀「なんだ?」

インデックス「ちょうどいいからちょっと質問していい?」

原谷「質問?」

削板「……昨日のことか?」

インデックス「うん」

横須賀「ふむ、いいぞ。一体なんだ?」




319: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:17:22.69 ID:GuFbb15DO



原谷「仲直りはできるか?」

インデックス「うん……」

横須賀「魔術師どもと、か?」

インデックス「そうだよ」

原谷「んー、できないことないんじゃない?」

インデックス「!」

削板「ほう……」

横須賀「だな。俺も同じ意見だ。」

インデックス「で、でも、どうやって?」

原谷「やっぱ話し合い? かな? 僕と横須賀さんもそれで和解したし」

インデックス「!?」

横須賀「ああ、そうだったな。」

インデックス「2人は……ケンカしてたの?」

原谷「ケンカっていうか……初対面がカツアゲした側とされた側だからね」

インデックス「え!? それってよこすかがやぶみをってこと!?」

横須賀「逆があり得ると思うか? まあ、正しくはカツアゲしてたのは俺の舎弟たちだが。」

原谷「そこを削板さんが助けてくれて、それから削板さんとよく遊ぶようになったんだけど、なぜか横須賀さんも入ってきてさ」

横須賀「やられっぱなしでは気が済まんからな。」

原谷「僕としては顔怖いし身体デカいしカツアゲしてきたスキルアウトのリーダーだしで恐怖の対象でしかなかったんだけどね」

横須賀「俺もヒョロい学生としか思ってなかったな。」

原谷「でも、意外と話してみたら気が合ってさ」

横須賀「1時間半に渡る討論の末『メインヒロインはドロシー』という結論に達し、俺がカツアゲの件を謝罪して和解した。」

インデックス「ドロ……だれ?」

原谷「1番の乙女だね」

横須賀「戦闘面でも確実にメインヒロインだったな。」

インデックス「?」



320: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:20:03.04 ID:GuFbb15DO

削板「……」

原谷「ま、インデックスの件はもっと複雑で深い問題だけどさ、本質は一緒じゃないかな。
   とりあえずお互いに顔突き合わせて話し合ってみれば少しは分かりあえるんじゃない?」

横須賀「無論、話せる状況になってからだがな。」

インデックス「うん……うん! そうだね! 分かったんだよ!」



店長「ヘイ、味玉1丁と富士山3丁お待ち!」

原谷「お、きたきた」

横須賀「一旦固い話は終了だ。かっくらうぞ!」

削板「……だな! なかなか根性あるサイズだ!」

インデックス「うん! 美味しそうなんだよ!」

店長「それでは今から20分です! はりきってチャレンジしてくださーい!」


原横イン削「「「「いただきます!」」」」












-10分後



原谷「ごちそうさまでした」

横須賀「おかわり!」

削板「おかわり!」

インデックス「おかわり!」

店長「ファッ!?」




321: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:24:31.79 ID:GuFbb15DO

-英国、『ランベスの宮』



ステイル「く…そ……っ!」

神裂「分かってはいましたが……ここまでとは……っ!」


戦いはじめてから何時間が経過しただろうか。

もはや『ランベスの宮』にかつての荘厳さはない。

あちこちが割れ、砕け、焼け焦げてしまっていた。

その中で二人の魔術師はいたるところから血を流し、膝をついていた。

対して、彼らの相手は


ローラ「んふふ。この場で私を相手にしてまだ生きているとは流石なり」


多少なりとも息を切らしているが未だ健在。

彼らの前に立ち、右手に長い金色の杖を持ち、たっぷりと余裕を見せて彼らを見下ろす。


ローラ「いい加減諦めたらどうなの? 今なら極刑を勘弁してあげるくらいなら考えてやってもよくてよ」

神裂「……誰が! 諦めるはずないでしょう!」

ステイル「……この程度で音を上げるほど弱い精神は持ってないんだよ。誰かさんたちに拳で鍛えられたおかげでね!」


二人の目に再び闘志が灯る。

刀に手をかけ、炎をその手に生み出し、身構える。

世界に20人といない【聖人】である神裂火織の戦闘能力。

『ランベスの宮』で万が一戦闘が起きた場合に備え、警護役であったステイル=マグヌスが元来配置していたルーン術式の数々。

これらを同時に相手取り、勝てる者などまず存在しない。



322: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:27:55.62 ID:GuFbb15DO

ただし、ここが『ランベスの宮』で相手が【最大主教】ローラ=スチュアートであれば話は別だ。


ローラ「無駄だと言っておろうに」


ローラ=スチュアートがその左手を振るう。

たったそれだけで刀に置いた手は弾かれ、炎は消失する。


神裂「っ、また…」

ステイル「くそっ!」


ステイルのルーン術式以上に、ここはローラ=スチュアートの領域で、彼女を守るために作られた場なのだ。

【最大主教】として『イギリス清教』を統率し『必要悪の教会』のトップとして君臨する者が150%の力を出せる場で戦っている。

むしろ、神裂とステイルでなければとうの昔に塵芥となっているだろう。



323: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:33:26.83 ID:GuFbb15DO

ローラ「今一度冷静になりや。お前たちはここで時間を無駄に費やしてよいのかしら?」

神裂「……」

ローラ「こうしている今ですら、刻一刻と【禁書目録】のリミットは迫っている。刻限に遅れた場合、二度とアレは目を覚まさない」

ステイル「……」

ローラ「勝ち目のない戦いを挑み、そのせいで【禁書目録】はその命を失う。
    ……救われぬ者に救いの手すら差し伸べずに何が【聖人】だというの?」

神裂「……あなたが、それをっ……!」

ローラ「……それに、気付かぬの? ステイル」

ステイル「……!」


瞬間、ステイルの顔が青ざめる。

目を見開き、絶望した表情で扉の方向を振り向く。


神裂「ステイル……?」


相方の豹変ぶりに、神裂は思わずそちらに目を向ける。

長髪のせいであまり見えはしないが、血ではなく冷や汗が彼を頬を伝った気がした。


ステイル「……『人払い』の術式が破られた。小規模集団がこちらに向かってきている!」

神裂「なっ!?」


そして、ステイルの判断を裏付けるようにバタバタという音が扉の向こうからどんどん近づいてくる。

万事休す。『人払い』を破られたなら今に『イギリス清教』の人間が続々と押し寄せるだろう。

そうなれば二人は捕らえられ、まず幽閉は間違いない。

すなわち、インデックスを救うことはかなわない。


ローラ「……終わりなり。学園都市には新しい人材を派遣しけるにつき、たっぷり責め苦にあいたまへ」



324: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:34:33.57 ID:GuFbb15DO

バコォン! と扉が吹き飛ぶ。それとほぼ同時に見えたのは三又の槍の矛先だった。


神裂「え?」


しかし、その矛先はステイルたちに向くことはなかった。


???「でやあああああああああああああ!!」


槍の持ち主は足を止めずに【最大主教】ローラ=スチュアートへと突き進む。


ローラ「なっ?」


一瞬にしてローラ=スチュアートは狐につままれたような、呆気に取られた表情になった。

しかし、それでも一直線に突き進む少女を躱すことは容易く、ひらりと身を翻した。


???「ああああああぁぁぁぁぁぁ……!?」


すると、槍を構えて突き進んでいた少女は勢い余って部屋の奥まで突っ切ってしまい、盛大に壁に激突した。

どぉん、と音がこだまする中で、先ほどまで激しい戦闘を繰り広げていた3人は訳が分からず硬直していた。


ステイル「彼女は…確か……?」


3人の目はその少女に釘付けとなる。

全員が全員無防備だというのに、戦闘が再開される気配はまったくなかった。



325: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:35:50.92 ID:GuFbb15DO

???「遅れを取るな! 五和に続けぇ!!」


男の声が『ランベスの宮』に響き渡る。

次いで間髪入れずに武器を携行した十人前後の老若男女が、一斉に扉があった場所からローラに向かって突撃していく。


ローラ「……なるほど、そう来たりけるか」


スチャ、とローラ=スチュアートが杖を構える。

それでも老若男女の集団は止まることも怯むこともなかった。


神裂「そんな……なんで……!」


その光景を神裂は今にも泣き出しそうな顔で見ていた。


???「おう、無事かい? ご両人」


先ほどの声の主が遅れてゆっくりと室内に入り、血を流して膝を着いていた二人に声をかける。

その男はかつての神裂の仲間。クワガタ頭の元教皇代理。


建宮「おーおー情けないツラしちまって。何やってんのよな」


『天草式十字清教』の正式な【教皇】。建宮斎字。



326: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:38:08.31 ID:GuFbb15DO

神裂「建宮、あなた、なんて馬鹿な真似をしてるんですか!!」


神裂が立ち上がり激昂する。

当たり前だ。これではなんのために自分が『天草式』に警告したのか分からないではないか。


建宮「はっ、こっちのセリフなのよな。たかだか一介の魔術師が【教皇】相手になんて口の利き方だ」


しかし、クワガタ頭の方はまったく悪怯れた様子はない。

呆れた様子でとんとんと自分の肩を巨大なフランベルジェの面で叩いていた。


建宮「『天草式』の現在の正式な【教皇】は俺。その座を放棄して出ていった馬鹿に俺の指揮について口出しされたくないのよなぁ」

神裂「それは……ですが……!」

ステイル「……『人払い』を破ったの君たちなのかい?」

建宮「ん? おお。だが、破った直後にここにいない天草式のメンバー全員でルーンを張り直した。
   誰にもバレてないし、お前さんがこれ以上『人払い』に魔力を割く必要もない。安心してほしいのよな」



328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:40:31.63 ID:GuFbb15DO

ヒュッ、と何かが建宮の前に現れる。


建宮「むおっ! とぉ……!」


ギィン!! と金属がぶつかり合う音が響く。

建宮のフランベルジェとローラの杖がぶつかったのだ。


ローラ「一体どういうつもりなりや? 建宮斎字」

建宮「お、おお。まさか【最大主教】に顔を覚えてもらっていたとは。光栄なのよな」


ギギギ、と二人はそのままつばぜり合いに移行する。

だが、あらゆる魔術と霊装で強化され、保護されている彼女の力に建宮が勝てるはずもない。

一瞬にしてつばぜり合いの均衡は破られる。


神裂「このっ!」


しかし、ローラに押し切られる前に神裂が横から刀を振るう。

【聖人】の刀を避けるべくローラは建宮のフランベルジェを弾き、大きく後ろへ飛び退いた。


ローラ「……『イギリス清教』への謀反。その結末がどうなるか分からぬほど馬鹿ではなかろうに……」

建宮「当然です。だが、ここであなたに立ち向かわなければどのみち『天草式十字凄教』は潰れちまうのよな」

神裂「え…?」

ローラ「ほう…?」

建宮「我ら『天草式十字凄教』はとあるお方の教えを教義として掲げております。
   その教義に反してしまえば、我々はもはや『天草式十字凄教』でなくなってしまう」



329: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:45:57.65 ID:GuFbb15DO
 

建宮「『救われぬ者に救いの手を』
   ……目の前にこんなにも救われない馬鹿が二人もいんのに! 見て見ぬフリをする訳にはいかんのよなぁ!!」


神裂「建宮っ……!」

ローラ「……威勢のよきこと。だが、この惨状を前にしてよくそんなセリフが吐けたものなり」


ス、とローラが杖を壁に向ける。

その先にはすでにやられた『天草式十字凄教』の面々がぐったりと横たわっていた。


ローラ「お前たちは助太刀に来たのかも知れねど、戦力的に見ればどう見てもマイナス要因。
    そこのお優しい【聖人】様はお前たちが死なぬように身を挺するだけで戦闘にすらならぬ。
    お前たちが来たせいで戦力差は逆に大きく開いてしまいにけり。ここからどうやって私に勝つと言うの?」


見下すようにローラは淡々と言葉をぶつける。しかし、その分析は正確だ。

現に『天草式』の信徒だけでは足止めにすらなっていない。

まだ息こそあるが、その気になればとどめをさすことなどいつでもできる。

それをしないのは神裂の動きを止めるため。彼女は仲間が目の前で殺されることを許さない。許せない。

だからこそ敵を討ち取るよりも仲間を守ることを優先するだろう。


ステイル「くっ……」


そうなれば実質的な戦力はステイルのみ。彼一人でローラ=スチュアートを討ち取ることはまず不可能だ。

【聖人】という強大な戦力がいてようやく対等、否、それでもローラ=スチュアートには及ばないのだから。



330: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:50:34.58 ID:GuFbb15DO

だが、建宮は動じない。むしろ、クツクツと笑いをこらえていた。


ローラ「……何がおかしい」

建宮「御生憎様、なのよな。俺はそこまで感情で動くような馬鹿じゃない。
   しっかりとした勝算がなきゃ、こんな場違いな戦場にノコノコ顔を出したりしないのよな」


ぐ、と建宮は自分の首にかけられている細い鎖をつかんだ。

それを引っ張ると彼のTシャツの中から何かが出てきた。


ローラ「!」

建宮「コイツぁ【女教皇様】じゃ決して使えない。『天草式十字凄教』の【教皇】、かつ、男子にのみ許された霊装」


鎖につながれていたものは、古びたカラフルなガラスの杯。

その杯には通常のものよりも少し大きな卵がいれられていた。

杯から上半分が見えるほどの大きさであり、杯の大きさはワイングラスほどある。



331: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:53:46.44 ID:GuFbb15DO

ピシリ、と卵にヒビが入る。

それから数瞬遅れてふいにどこか遠くから歌声が聞こえてきた。


建宮「戦力差が出ることはむしろ俺の狙い通り。圧倒的な戦力差があってはじめてこの霊装は力を発揮する」


最初は遠い歌声。しかし次第に歌声は声量を増し、膨れ上がっていく。

聞こえてくる歌声は老若男女数百人による大合唱。

その歌声に優美さはまったくない。ソプラノやテノールにパート化されている訳でもない。

だが、その代わりに泥臭さが、明るさが、力強さがこれでもかとばかりに伝わってくる。



332: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/23(日) 22:55:07.24 ID:GuFbb15DO

ステイル「!」

神裂「これは……!」


その歌声を聞いた瞬間、ステイルと神裂に異変が生じる。

死闘の末、二人の身体はすでに満身創痍だ。その傷を一瞬で治すことはどんな魔術でも不可能。

しかし、身体ではなく代わりに心が回復していく。

心の底から気力が沸き上がってくる。痛みも疲れも脳内から吹き飛んでいく。

まだ動ける。まだ立てる。まだ頑張れる。まだ戦える。まだ何も終わってはいない。



まだ、救える。



建宮「『天草式十字凄教』教祖、天草四郎時貞が生み出した卵。
   その奇跡は更なる奇跡を生み、押し寄せる大軍の猛攻に耐え続け、ついには総大将を討ち取った」


むくり、むくり、と倒されたはずの『天草式』の信徒が次々に立ち上がる。

その全員の目には闘志と希望が宿っていた。


建宮「さあ! 500年前の奇跡! 異国の地にて再び起こしてみせるのよなあ!!」




333: 訂正 2013/06/23(日) 22:56:29.22 ID:GuFbb15DO

ステイル「!」

神裂「これは……!」


その歌声を聞いた瞬間、ステイルと神裂に異変が生じる。

死闘の末、二人の身体はすでに満身創痍だ。その傷を一瞬で治すことはどんな魔術でも不可能。

しかし、身体ではなく代わりに心が回復していく。

心の底から気力が沸き上がってくる。痛みも疲れも脳内から吹き飛んでいく。

まだ動ける。まだ立てる。まだ頑張れる。まだ戦える。まだ何も終わってはいない。



まだ、救える。



建宮「『天草式十字凄教』教祖、天草四郎時貞が生み出した卵。
   その奇跡は更なる奇跡を生み、押し寄せる大軍の猛攻に耐え続け、ついには総大将を討ち取った」


むくり、むくり、と倒されたはずの『天草式』の信徒が次々に立ち上がる。

その全員の目には闘志と希望が宿っていた。


建宮「さあ! 400年前の奇跡! 異国の地にて再び起こしてみせるのよなあ!!」




352: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 22:41:06.17 ID:a4S5OK7DO

-学園都市、第七学区駅前大通り



削板「はっはっは! さすがに腹いっぱいだな!」

インデックス「あんなにいっぱい食べたのに 『お代はいりません』 なんて本当に気前がよかったね!」

横須賀「新記録更新どころか殿堂入りらしいからな……うぷ、食い過ぎた……。」

原谷「当たり前ですよ。食没でも極めてたんですかアンタら。
   つーかよくインデックスは箸であんなパクパクいけたね」

インデックス「? チョップスティックで食べてもフォークで食べても食べる量は変わらないよ?」

原谷「イヤ、そうじゃなくてイギリス生まれでよくそんな簡単に箸で食べれたねって話」

インデックス「……?」

横須賀「そりゃ1年も日本で生活していれば自然と身につくだろう。っぷ、気持ちわりぃ。」

削板「どうしたモツ! あの程度の量に音を上げるような根性しとらんだろう!」

横須賀「だから吐いてないだろう。まだ俺の胃袋は負けとらんぞ。」

原谷「限界ギリギリじゃないですか。【内臓潰し】が自分の内臓潰してどうすんですか」



353: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 22:43:06.77 ID:a4S5OK7DO

<ワスレテタマルモンカヨ! ボクガボクジャナクナッタラ-♪


インデックス「? 誰か歌ってる?」

原谷「じゃなくて、ケータイの着信だね。横須賀さんですか?」

横須賀「俺じゃないな。削板だろう。」

削板「お、先生からだ。もしもし?」

教師『おう、軍覇か? 例の件、グラウンドだけならなんとかなったぞ』

削板「! 本当か!? 先生!」

教師『ああ、お前やっぱ男連中には人気あるみたいでな。野球部もサッカー部も陸上部も了承してくれたぞ』

削板「ありがてぇ! あとでちゃんと礼を言わんとな!」

教師『ただ、お前なぜか女子からはそうでもないみたいでな。
   女バスと女バレが了承しないから体育館は使えない。ソフト部もダメだったからグラウンドも午前中は半面しか使えないぞ』

削板「そうか……無理言ってんのはこっちだからな。仕方ないか」



354: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 22:45:00.84 ID:a4S5OK7DO

教師『そうだな。だが、校長の方にも了承とれたからグラウンドの方は問題ない。
   それとお前の話聞いた限りだと、夜にその問題の手術を始めるんだよな?』

削板「ああ、その通りだ」

教師『お前それだと次の日まで機材やらなんやらグラウンドに置きっぱなしだろ? 1日だけでいいのか?』

削板「……あ」

教師『だろうと思ったよ。陸上部の女子がちょっと文句言ってたが、一応次の日の午前中も借りておいたぞ』

削板「ホントか!? さすが先生!」

教師『生徒が人助けしたいっつってんだ。全力でバックアップしてやんのが教師の務めだろ』

削板「はっはっは! やっぱり見本のような根性してるな! 先生!」

教師『ま、お前の人望のおかげで全部上手くいったからこんな大口叩けるんだけどな。
   実際は俺は仲介になっただけで、ほとんどお前の手柄と言っても過言じゃないぞ』

削板「そんなことないだろう! この件は完全に先生のおかげだ!」

教師『はっは。嬉しいこと言ってくれるな。……しっかりあの女の子の面倒みてやれよ』

削板「おう! 任せろ!」


355: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 22:46:07.43 ID:a4S5OK7DO

原谷「なんでしたか?」

削板「先生の交渉が上手くいった! これで場所は確保できたぞ!」

インデックス「! 本当!?」

削板「おう! さすが先生だ!」

横須賀「これで第一関門は突破か。業者の手配などがあるだろうから早目に伝えた方がいいだろう。」

削板「だな! 病院に行くぞ! モツは病院の先生に連絡とっておいてくれ!」


356: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 22:55:27.51 ID:a4S5OK7DO

-数十分後、第七学区とある病院



冥土返し「そうか、あそこ学校か」

削板「ああ! グラウンドだが大丈夫か?」

冥土返し「構わないよ。搬送する機材が少し増えるだけだ」

原谷「先生の方はいいんですか?」

冥土返し「うん? 僕かい?」

横須賀「理論に対する裏付けが欲しいとか言っていただろう。」

冥土返し「ああ、そのことか。一応裏付けはとれたよ。とある専門家に聞いてきた。方法としては悪くないそうだ」

インデックス「え? この街に魔術の専門家がいるの?」

冥土返し「ああ。信用できる人物だと僕は思っている。ただ……」

削板「ただ?」

冥土返し「その人の話だと、やっぱり万が一が起きた時が厄介な事態になりそうでね。できることなら周りに人がいない方がいいそうだ」

原谷「……つまり、関係ない人を学校周辺に近付けるなってことですか?」

冥土返し「そうなるね?」

横須賀「……厄介だな。人海戦術で辺り一帯を封鎖するのがベストだが……
    俺の舎弟たちでは夜に集まった時点で警備員が騒ぎかねん。そもそも通路の封鎖など上の権力がなければできんぞ。」

冥土返し「まあ、これはできることならって範囲だからね? 無理なら無理でかまわないよ」

インデックス「……『人払い』ができればいいんだけど……この中に魔術を使える人はいないし……」



357: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 22:56:15.97 ID:a4S5OK7DO

削板「うーん……」

冥土返し「とりあえず、午前中はグラウンドの半分だけだったね?
     その間に粗方の搬入を終わらせて、午後にセッティングを終わらせよう。君たちは5時までにグラウンドに来てほしい」

原谷「分かりました。何から何までありがとうございます」

冥土返し「何度も言うけど、僕は医者だからね? 当然のことだよ」

インデックス「それでもやっぱり、ありがとうございます。なんだよ!」



358: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 22:57:48.71 ID:a4S5OK7DO

-数分後、病院施設脇スポーツ公園



横須賀「さて、これで準備はほぼ万端なわけだが……」

原谷「だが? なんです?」

横須賀「何を難しい顔をしているんだ? 削板」

削板「……イヤ、さっきの周りに人を、ってのでな……」

インデックス「……でも、魔術も使えないのに人を寄せ付けないようにするなんてできるの?」

原谷「ダメ元で警備員に頼んでみますか? 門前払いがオチな気もしますけど」

削板「イヤ、そうじゃねえんだ。もっといい方法があるんだが……」

横須賀「ほう? ならなぜためらう。」

削板「……権力に頼るってのがな……どうも根性なしみたいで好きじゃねえんだ」

インデックス「権力?」

原谷「Level5の特権でもあるんですか?」

削板「Level5にそんなものはない。もっと別なものだ」



359: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 22:59:06.35 ID:a4S5OK7DO

横須賀「ふん。そんなもの、とっとと頼みこむべきだろう。」

削板「モツ……?」

横須賀「その判断のせいで巻き添えを食う人間がいるかもしれんのだぞ?
    なんの関係もない一般人の日常をお前の好き嫌いのせいで奪うのか?」

削板「……そうか、そうだな。そんなわけにはいかん」

横須賀「なら、とっとと頼みこめ。打てる手はすべて打っておくべきだろう。」

削板「ああ」

原谷「……ホント、たまにスゴいいいこと言いますよね」

横須賀「たまにか?」

インデックス「でもぐんは、誰に頼むの?」



360: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 23:00:32.10 ID:a4S5OK7DO

-1時間後、第五学区ファミレス



削板たちは第七学区と隣接している第五学区に向かい、とある人物と待ち合わせた。

また、とある人物の指定により広い個室のあるファミレスに入って待ち合わせることとなった。

そのとある人物とは


雲川「で、私に泣き付いてきたわけか」


学園都市統括理事会のブレインを若くして務める女子高生。雲川芹亜。



361: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 23:01:27.06 ID:a4S5OK7DO

削板「そういうことだ」

雲川「教会がどうこう言っていたからもしかしたらとは思っていたけど……なんでもかんでも顔を突っ込むな、お前は」

原谷(……横須賀さん、誰ですか? アレ)ヒソヒソ

横須賀(知らん。だが、超高校生級だな。)ヒソヒソ

原谷(? そりゃまあ削板さんが権力に頼るって言って出てきた人ですから)ヒソヒソ

横須賀(……なるほど、権力に取り入ることも可能だろうな。)ヒソヒソ

雲川「おい、そっちのテロリスト。どこ見て何を考えている?」

横須賀「うお!?」ビクッ

雲川「私はこれでも統括理事会のブレインだ。貴様のような本能で膨らませた下衆な妄想を私に当てはめるな」

原谷「へ? イヤ、僕と横須賀さんはそんなこと……」

横須賀「……」

原谷「……僕はそんなこと考えてませんよ」

雲川「そうだろうな。お前の目線はちゃんと顔に来ていた。そっちのテロリストはもっと下に来ていたけど」

インデックス「」ジトー

削板「おい」

横須賀「……その、なんだ。スマンかった。」



362: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 23:03:59.12 ID:a4S5OK7DO

雲川「で、こっちが件の魔法少女か」

インデックス「え? えと、私は魔術を使えないからその表現は……」

雲川「なんでもいい。休日出勤の元凶め」

インデックス「へ?」

雲川「お前がこいつのもとに辿り着いたせいで私のところにも妙なヤツが来ていたけど。
   ウケを狙ってんのか新たなエロスの境地を開拓したいのか分からんヤツがな。おかげ代休すら落ち着いて休めなんだ」

インデックス「……ぁぅ」

削板「お、おい! インデックスは何も悪くないだろ!」

雲川「黙れ。お前もお前で何をしている。魔術サイドへは不干渉って通達が出ていたのだけど」

削板「知るかそんなもん! 困っているヤツを放っておけるはずないだろう!」

雲川「だからと言って街を破壊する規模で暴れるヤツがあるか。結構な被害額だったけど」

削板「う……それは……」

雲川「やっぱりお前か。第七学区の裏通りでも大通りでもビルに穴空けた馬鹿は」

削板「え?」

雲川「おい、入ってこい。案の定引っ掛かったぞ」



363: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 23:05:21.69 ID:a4S5OK7DO

ヒョコ、と個室の入り口に背広姿の初老の男が顔を出した。

人の良さそうな顔でニコニコと笑っている男の正体は

貝積「よ、久しぶりだな。軍覇」

削板「貝積のおっさん!?」


学園都市統括理事会の1人、貝積継敏。


原谷「え? 貝積って……」

横須賀「……統括理事会か。本人ともパイプ持ってたのか、削板のヤツ。」

インデックス「? 誰?」

原谷「学園都市で1番偉い人の1人だよ」


364: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 23:07:37.39 ID:a4S5OK7DO

削板「おい、貝積のおっさん! こんなところに1人で来ていいのか!?」

貝積「1人じゃないさ。最低限の人員は配備してある」

原谷「え?」

雲川「魔術サイドへ不干渉の通達が出ていると言っただろう。なのにこんな真っ正面から持ち込みおって。
   これでもしもバレたりしたら我々の立場がいったいどれだけ悪くなるか分かったものじゃないけど。」

インデックス「……ごめんなさい」

貝積「なあに、君は悪くないよ。さて、軍覇。やっぱり第七学区の件はお前だな?」

削板「ああ、俺とモツが」

横須賀「ばっ!」

削板「ん?」

貝積「そうかそうか。じゃ、お前たち2人にプレゼントだ」

原谷「プレゼント?」

貝積「ほら、これだ」バサッ

インデックス「……紙の束?」

削板「なんだこれ?」

貝積「反省文。400字詰原稿用紙20枚で勘弁してやろう」

削板「」

原谷「あー……」

インデックス「え? ま、待ってよ! ぐんはたちは私のために戦ってくれて」

貝積「それとこれとは話が別だ。むしろだからこそこの程度なんだがね」

横須賀「……ハァ、そんなことだろうと思っていた。で、他にはなんだ? いくらで足りる?」

雲川「たった今20枚分と言ったはずだけど」

横須賀「そっちじゃない。賠償金だ。結構な被害額なのだろう?」

貝積「金なんて取るはずないよ。少女を助けようとする勇者から金をせびるなんておかしいだろう?」

横須賀「いいのか?」

貝積「いいとも。貰うべきところからきっちり貰う。苦学生からむしり取るほど鬼じゃない」

削板「8000字か……当然と言えば当然だな……」ハァ



365: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 23:09:57.37 ID:a4S5OK7DO

貝積「さて、本題に入るか。軍覇の学校付近の通路の封鎖だったな?」

インデックス「!」

削板「! 協力してくれるのか!?」

貝積「しないなんていつ言った?」

原谷「取りつく島もない態度だったんでてっきりダメかと……」

貝積「それとこれとは話が別だ」

雲川「と言いたいところだけど」

横須賀「む?」

貝積「さっきも言った通り理事会全体にわざわざ通達が来ている状態だ。
   我々がおおっぴらに彼女に関わることはできない。下手するとイギリスと国交断絶になるレベルだ」

原谷「国交断絶!?」

横須賀「何者なんだお前……」

インデックス「……きっと10万3000冊のせいだよ。私がスゴいわけじゃないかも」

貝積「そんなわけだから、私の方から警備員を動かすことはできない」

削板「……貝積のおっさん、まさかそんな根性なしだっ

366: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 23:11:21.83 ID:a4S5OK7DO

雲川「と、言いたいところだけど……」ハァー

原谷「え?」

貝積「困っている女の子をほったらかすなんて鬼畜外道な真似はできん。
   お前の学校付近に研究所があっただろ? あそこで野外実験を行うとか適当な理由をつけて警備員を配置しておこう」

削板「! さすがおっさん!」

雲川「やれやれ、相も変わらず甘すぎる」

貝積「その甘さでお前たちを救ったんだけどな」

雲川「その件は感謝している。いつもそれが通用するわけではないと言いたいのだけど」

貝積「ふふ、本当にマズかったらもっと本気で止めてくるだろ?」

雲川「……私とて鬼畜外道ではない。そういうことだけど」



367: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/26(水) 23:16:59.43 ID:a4S5OK7DO


貝積「さて、そろそろ戻る時間だ。これ以上空白の時間はマズいからな」

雲川「警備員には通行止め以外の仕事はさせられない。何が起きても実験の産物だと思うだろう。
   もしも本当に何かが起きたとしたら、お前たちだけで対処するしかないということになるけど」

削板「十分だ!」

原谷「よろしくお願いします」

横須賀「反省文は投書しておこう。」

インデックス「……いろいろ迷惑をかけてごめんなさい」

貝積「気にすることはない。止められる悲劇が1つ増えたんだ。喜ぶべきことだよ」

雲川「すべてが上手くいくよう、祈ってはおく。あとは……そうだな、根性でなんとかしろ」



382: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:16:46.91 ID:reeJvLLDO

-夜、削板宅



貝積らによる協力を得た削板たちは、その日は解散し、また次の日に集まることにした。

神裂・ステイルら魔術サイドからの解除法の捜索、【冥土返し】の協力、削板の学校からの場所の提供、貝積らによる交通規制。

考えつく策はすべて打った。

神裂らが明日の夕方までに帰ってくれば、魔術サイドの方法でインデックスにかけられている術式を解除するだろう。

仮にその方法が大掛かりなものであったとしても、グラウンド規模の広さがあれば大抵のことはなんとかなるだろう。

神裂らが間に合わない場合は【冥土返し】の執刀に賭けるしかない。

【冥土返し】も裏は取れたと言っていたが、やはり魔術の問題は魔術で解決した方が無難だろう。

そして、今削板の家では消灯の時間が迫っていた。


383: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:19:54.50 ID:reeJvLLDO

削板「うし、そろそろ寝るか」

インデックス「うん……」

削板「? なんだか元気ないな。晩メシ食いたりなかったか?」

インデックス「……ううん、明日のことを考えると緊張しちゃって……」

削板「……はっはっは、心配するな。きっと上手くいく」

インデックス「……分かってはいるんだけどね」

削板「魔術師どもはともかく、先生もお前も立派な根性持ってんだ。恐れることはない」

インデックス「うん」

削板「じゃ、電気消すぞ」



384: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:20:48.02 ID:reeJvLLDO

インデックス「……」

削板「……」

インデックス「……」

削板「……」

インデックス「……ぐんは」

削板「ん?」

インデックス「ぐんはの話、聞かせてくれる?」

削板「俺の?」

インデックス「うん」

削板「なんで俺の話なんか聞きたいんだ?」

インデックス「いっぱいお世話になったから、少しはぐんはに恩返ししてあげたいんだよ」

削板「……?」

インデックス「ぐんはも過去に辛いことがあって、それでまだ悩んでるんだよね?」

削板「!」

インデックス「寝てるとよくうなされてるし、地獄の底も経験してるって何度も言ってた」

削板「……ああ」

インデックス「私はシスターだから……迷える子羊のお話は聞いてあげたいんだよ」



385: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:23:02.79 ID:reeJvLLDO

削板「……」

インデックス「……話したくないなら、無理には聞かないけど……」

削板「イヤ、話そう」

インデックス「!」

削板「……ずっと前、まだモツや原谷と会うよりも前の話だ。俺は学園都市に来てからずっと施設暮らしをしてたんだ」

インデックス「……うん」

削板「そこは『置き去り』がいっぱいいて……早い話が孤児院だな。そこに研究所が合体したような施設だ。
   生活資金がなかったりまだ自立できない連中が研究に協力する代わりに
   生活面の面倒を見てもらう。俺は自立できてたんだが、珍しい能力だからってことでそこにいたんだ。
   さっき会った雲川も同じ施設にいた。アイツ自身はともかく、妹がまだ幼いから離れたくなかったらしい」

インデックス「……」

削板「だが、その研究所は出ていくやつらと入ってくるやつらのサイクルが早かった。
   不思議に思ってこっそり研究所を調べてみると、違法な人体実験のデータがごっそり出てきたんだ」

インデックス「!」

削板「最初は信じられなかった。世話をしてくれた大人たちはみんな頼りになった人だからな。
   だが、いざ夜中の研究室に入ってみれば、今まさに人体実験が行われようとしていた。
   普段はなかった巨大な試験管に脳ミソがぷかぷか浮いてる異様な光景を背景にしてな」

削板「裏切られたショックと仲間を殺された怒りと見抜けなかった腑甲斐なさで頭ん中がぐちゃぐちゃになった。
   次に気付いた時には施設の子どもを全員引きつれて脱走していた。どうやら俺は研究所を全部破壊していたらしい」

削板「そこからは地獄の底だ。逃げる先の当てもない。まともなメシも屋根もない。大人は血眼で俺たちを追ってくる。
   我慢の限界に達した幼いやつらは泣きじゃくり、体調を崩す。仲間もストレスでいつ誰に八つ当たりしているかも分からない」

削板「そして、俺たちはバラけてしまった。何人かが俺についていけないと言って別行動をとった。
   つまりは守るべき仲間と対立したんだ。俺が頑なに自分の考えを押し通したせいでな。
   ……その直後、俺たちは全員捕まった。俺たちは貝積のおっさんに。別れたやつらは別の理事会の外道にな」


386: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:24:32.64 ID:reeJvLLDO

インデックス「外道……?」

削板「……そいつは裏で人身売買や非人道的な薬物投与実験なんかをやってる根性なしだったんだ」

インデックス「……」

削板「貝積のおっさんは俺たちをちゃんと扱ってくれたが、あっちは実験台が増えたとしか思わない。
   かつての仲間を助けるべく、俺は貝積のおっさんと雲川の協力のもと、そいつから仲間を奪い返したんだ」

インデックス「……そっか。その人たちは今どうしてるの?」

削板「知らん。その時からずっと絶縁状態だからな」

インデックス「え? どうして?」

削板「……俺たちが逃げ出した研究所はその外道の管轄下の研究所でな。
   俺の仲間はそこで実験の全体像を把握した。その実験の目的も当然知った」

削板「その実験の名前は『プロデュース』。
   その目的は『既存の能力者の法則に当てはまらない削板軍覇の脳の解明及びサンプルとしての半永久的な保存』」

インデックス「!?」

削板「それを実行するため、学園都市の能力者で片っ端から実験したんだ。
   どうやったら脳ミソだけで能力を完璧に発動でき、その脳ミソを保存できるかをな」

削板「俺が奪い返した仲間の言い分はこうだ。
   『お前がいたからあんな実験が行われ、何人も死んだ。
   もう恨むことすらできない連中に代わって、俺は学園都市とお前を恨み続ける』」

インデックス「そんな……」

削板「最初は腹も立ったが……死んだ人間の遺志を受け継ぐことがそいつなりの根性なんだ。
   文句はつけられん。アイツの言い分も分からなくはない。……この一連の騒動は俺にとってトラウマになった」

インデックス「……」

削板「だから、もうこんなことが起きないように、もし起きたら全部まるごと救ってやれるように
   俺は自分の身体と根性を徹底的に鍛えることにした。仲間を死なせることが何よりも根性なしだからな。それで……今に至るわけだ」


387: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:29:30.10 ID:reeJvLLDO

インデックス「……」


電気を消した削板の部屋では沈黙が流れていた。

ベッドと布団で横になっている2人はずっと天井を見つめていた。


削板「……長くなったな。これが俺の過去だ」

インデックス「そっか……」

削板「ああ。だからお前が魔術があるって言った時は嬉しかったぞ。
   すべての元凶だったこの能力が魔術などという突拍子もないもんかも知れないと思ったからな」

インデックス「……」


いちばん最初に削板がインデックスから魔術の話を聞き、それを認めた時、削板は大爆笑した。

それもそのはずだ。かつて多数の犠牲のもとに行われた実験でも分からなかった能力の正体が分かるかもしれなかったのだから。

ましてそれが魔術などというふざけたものだというのなら、大爆笑もしてしまうというものだ。


削板「だが、この能力は魔術じゃない。
   この能力を使う時、俺は根性を入れるからそれが魔力かもしれんと思ったが
   それであの根性無しの魔術師どもが魔術を使ってるとは思えん。だからこれはまったく別のものだ」


388: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:30:55.40 ID:reeJvLLDO

インデックス「……うん。ぐんはのは魔術じゃないよ。もっと別なもの」

削板「! 知ってんのか……?」


インデックスの言葉に削板が少し驚く。

この少女は削板の知らない世界を見せてくれる。


インデックス「きっとぐんはのチカラは【原石】のチカラ……私たち魔術師の目標だよ」

削板「【原石】……」

インデックス「もともと私たちの魔術っていうのはぐんはみたいなチカラを持った人に対抗するために生み出されたチカラなんだよ。
     私たち魔術師は宗教的奇跡や神話なんかをベースに異世界のチカラを無理矢理こっちに引っ張ってくるの。これが魔術」

削板「異世界……って、ホントにそんなもんあんのか?」

インデックス「そう言われてる。それには複雑な術式が必要だから、ぐんはみたいな曖昧なチカラの出し方で出せるはずがないんだよ」

削板「……やっぱりか」

インデックス「この街の人たちはぐんはみたいなチカラを人工的に作りだしてるみたいだね。これが超能力。
     だからこの街の人たちは天然で作られたぐんはの能力を科学的に証明して、半永久的なサンプルにしようとした。ってことでしょ?」

削板「……たぶん、な」

インデックス「それなら、私が胸を張って言ってあげる。ぐんはは間違ってる」



389: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:31:58.11 ID:reeJvLLDO

削板「……え?」


はっきりとした口調でいきなりの話題転換。

思わず削板は聞き返してしまった。


インデックス「ぐんはは悪くない。それこそ、誉められるべきなんだよ」


再びはっきりとした口調でインデックスは言い切る。

その言葉に不思議と力強さを感じるあたり、やはり彼女はシスターである。


削板「違うだろ。俺の能力が元凶だ。それがすべてだ」

インデックス「なんで? 神から与えられたモノそのものが元凶なの?」

削板「そうだ」

インデックス「そんなはずない! 悪いのはそれを悪用しようとする意思なんだよ!
      それを正しく人のために使ってるぐんはが悪いわけない! そんなのおかしいんだよ!」

削板「だが、現実に俺のせいで被害者が出てんだ」

インデックス「ぐんはのせいじゃないって言ってるでしょ!?
     そんなの通り魔の元凶は包丁だって言ってるようなもんなんだよ!」

削板「お前がそう思っても向こうがそう思ってんだから関係ないだろ!
   だいたいなんだってそんなに噛み付いてくるんだ! お前がどうこう言う問題じゃないだろ!」

インデックス「違う! 私の問題でもあるんだよ!」



390: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:34:07.73 ID:reeJvLLDO


インデックス「私の恩人の悪口をこれ以上言わないで!」


削板「!」

インデックス「……ぐんはは悪くないもん……」

削板「インデックス……」

インデックス「地獄の底に飛び込んでまで私を助けてくれた人が、悪いわけないもん……」

削板「……」

インデックス「……うぅ~……」


インデックスから嗚咽の声が聞こえてくる。

彼女にしてみれば自分のヒーローを真っ向から否定されたようなものなのだ。

彼女が誰よりも純粋だからこそ、彼女はそんな理由で泣き出してしまうのである。


削板(……、そうか、俺は)

削板(今、試されてんのかもな)


むくり、と起き上がり、削板はベッドに近づいた。

そこでは、身体を丸めたインデックスが細々と啜り泣いていた。


削板(こいつがシスターってことは、死んでいったやつらからの挑戦状かもな)


シスターの存在理由なんて大雑把にしか知らない。

ただ、神に仕える存在だというのなら、一足先にあの世に行った連中が運命的に巡り合わせたのかもしれない。

本当にお前が修行して全部救えるというならやってみろ、と。

恐ろしく身勝手で、根拠などどこにもない。その上科学の街で育った人間らしかぬ考え方だが、なんとなくそんな気がした。

そう思ったとき、削板は背中から何かがフッと消えた気がした。




391: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/08(月) 18:35:13.43 ID:reeJvLLDO

削板「インデックス」

インデックス「グスッ……なに?」

削板「賭けてみるか?」

インデックス「え?」

削板「これでお前を救えたら俺は悪くない。救えなかったら俺が元凶だ」

インデックス「……なんで?」

削板「なんでもだ」

インデックス「……フフ、いいよ。それならぐんはは絶対悪い人じゃないって証明できるから」



402: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:47:55.53 ID:fC5Xd2gDO

-翌朝、第七学区地下街



原谷「で、今日が運命の執刀日なんですが」

横須賀「夕方17:00まではひまなので」

削板「遊ぶぞ!」

インデックス「おー!」

原谷「てことでまずは地下街から攻めましょう」

横須賀「地下街で遊ぶところと言えば……ゲーセンか。」

削板「天気がいいから外に行かないか!?」

インデックス「こっちのが涼しいからいいんだよ! てゆーかげーせんって何?」

原谷「ゲームセンターだよ。科学の街の定番娯楽スポット」

横須賀「格ゲー音ゲーシューティングレーシングUFOキャッチャーなんでもアリだ。」

削板「あとはパンチングマシーンとかな! ちなみに俺はレコードホルダーだ!」

インデックス「……よく分かんないから行ってから理解するんだよ!」



403: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:48:41.13 ID:fC5Xd2gDO

-地下街、ゲームセンター



インデックス「!? み、耳がおかしくなる! 何この騒音!」

横須賀「パチ屋よりマシだ。」

原谷「行くんですか?」

横須賀「ときどきな。」

削板「ハッハッハ! 相変わらずここは豪快だな!」

インデックス「うるさいんだよ! なんなのここは!?」

原谷「音量が売りのゲーセンだよ。心配しなくてもすぐ慣れるよ」

横須賀「さて、何からいく?」

削板「なら格ゲーいくぞ!」


404: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:50:05.65 ID:fC5Xd2gDO

-鋼拳



削板「むおっ! 原谷きさま卑怯な手を!」

原谷「引き寄せてからハメるまでが一連の作戦です! 毎度毎度負けてたまるかってんですよ!」

削板「なんの! 緊急回避!」

原谷「あっクソ! まだまだぁ!」


インデックス「」バン! バン!

横須賀「違う違う、そうやって闇雲に押すんじゃなくてボタンとスティックを組み合わせてだな……」



405: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:50:50.14 ID:fC5Xd2gDO

-Pap′n



横須賀「」ズダバダバダバダバダバダバ

インデックス「す、すごい! よこすかの手が見えないんだよ!」

削板「意外と上手いからな! モツは!」

原谷「それは分かるんですけど……」

横須賀「」ズダバダバダバダン! ダバダバダバダバダバダバ!

原谷「なんで決まって曲がアイドル系なんですか?」

削板「モツの趣味だな!」

横須賀「」ズダバダダン!

横須賀「……フッ」

インデックス「おー! パーフェクト!」



406: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:51:29.68 ID:fC5Xd2gDO

-TIME DANGERS



削板「大尉ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」ズガガガガ!

原谷「何度見ても面白いなあの人」

インデックス「わ、わ、虫! 虫が!」ダン! ダン!

横須賀「ショットガンを使え!」

削板「大尉ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」ドガガガガガガガガガ!

原谷「でた! ショルダースルー!」

インデックス「ひぃ! くっついてきたんだよ!」ブンブン!

横須賀「マシンガンを使え!」



407: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:52:23.37 ID:fC5Xd2gDO

-頭文字G



インデックス「~♪」ヒャァァアア!

原谷「くっ、インデックスホントに初心者!?」ズシャァァァァ!

横須賀「……立派に峠を攻めてるな」

削板「さすがインデックス! 根性が違うな!」

インデックス「『完全記憶能力』があれば一週しただけでコースのコツは十分分かるんだよ♪」ギャァァァァ

原谷「なんで一週しただけで進入角度やギアチェンジまで覚えられるんだよ! クソ、負けられない!」ビィィィィィ!

横須賀「デッドヒートだな。……おい、ミゾ落としはやりすぎだろう!? どうやって再現したんだ!?」

削板「ハッハッハ! さすがインデックス!」



408: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:53:03.30 ID:fC5Xd2gDO

-UFOキャッチャー



横須賀「……」ウィーン

横須賀「ココだ。」ピタッ

原谷「もうちょい奥じゃないですか?」

横須賀「もう遅い。」ウィーン

インデックス「お、いける! いけるんだよ! 今度こそ――あ」スカッ

削板「チクショウ! 相変わらず根性ないなコイツ!」

原谷「そりゃアームに根性あったら入れ食いですからね」

インデックス「うー、取れそうで取れない。コレが科学のトラップか……」

原谷「あながち間違ってもないね」

横須賀「……」チャリン

原谷「ああやってみんなお金を投入していくから」



409: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:53:52.50 ID:fC5Xd2gDO

-パンチングマシーン



インデックス「ていっ」ペチン

<30kg!


原谷「せいっ!」バコン!

<100kg!


横須賀「ヌン!!」ドゴン!

<300kg!


原谷「うわ、スゴ」

横須賀「どうだ削板! 今度こそ俺の」




削板「よっこいせーっと」ズドゴシャ!

<係員を呼んでください


原谷「」

横須賀「」

インデックス「すごーい! さすがぐんはだね!」

削板「むぅ、筐体ごといくつもりだったんだが……」

原谷「ベジータか!!」



410: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:54:52.15 ID:fC5Xd2gDO

横須賀「さて、あらかた遊び尽くしたな。」

インデックス「楽しかったね! 科学もなかなか面白いかも!」

原谷「ハハ、伊達に科学の総本山を謳ってないよ。そろそろメシ時ですし次で最後にしませんか?」

削板「そうだな! なら次は……アレにするか!」

横須賀「アレ、って……プリクラか?」

インデックス「プリクラ?」

原谷「んーと、要するに写真撮影かな? ちょっと違うんだけど。それにしてもプリクラ撮りたいなんて意外ですね」

削板「あー……まあな。アレだ、記念と思い出としてって意味でな」

横須賀「……なるほど。」

インデックス「?」

原谷「……いいですね。撮りましょうか」



411: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:56:02.68 ID:fC5Xd2gDO


<お金を投入してネ☆


インデックス「へー、このお部屋で撮るの?」

削板「ああ」チャリンチャリン


<注意事項を説明するネ☆ カバンなどの荷物は……


インデックス「なんだか狭いね。撮影って基本的に屋外とか広いところでするものだと思ってた」

原谷「そう? まあ、プリクラはわざと狭くして密着させるって狙いもあるから」


<撮影の方法を選んでネ☆


インデックス「? 密着させることに意味があるの?」

横須賀「そっちの方が仲良く見えるだろうってだけだ。」ピッ ピッ


<撮影の種類を選んでネ☆


インデックス「ふーん。それで、誰が撮るの?」

削板「自動で撮影してくれるんだ。根性あるからな」


<この設定でいい?


インデックス「そうなの!? じゃあプリクラではカメラみたいにタイマーをセットしたあとに
     慌ててみんなのところに戻ろうとしたけど慌てすぎて転んでやり直しになるなんていう悲劇は起きないんだね!」

原谷「何そのベタベタな展開。ベタすぎて逆にレアケースだよ」ピッ


<それじゃあ撮影するネ☆


インデックス「え? 普通のカメラ撮影ってそんな危険性が孕まれてるモノだよね?」

横須賀「ないこともないくらいだろう。ほら、撮るぞ。」


<3、2、1☆



412: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:57:16.45 ID:fC5Xd2gDO

原谷「で、何枚か撮ったあとは裏で落書きができるんだ」

インデックス「落書き?」

削板「しなくてもいいんだがな。雰囲気は出るぞ」

インデックス「せっかく撮ったのに落書きするなんておかしいかも」

横須賀「たぶんイメージしているのと違うな。そもそもプリクラの補正自体が高度な落書きみたいなもんだと思うが。」

インデックス「補正?」

原谷「実物より可愛くなったりイケメンになったりするように作られてるんだ。ここに入って見れば分か……!?」

インデックス「え……、……!?」

削板「お、おいどうした? 中で一体何が……!?」

横須賀「」

原谷「……こ、コレが補正だよインデックス」

インデックス「よ、よこすかの顔が……」

削板「オカマテロリストだと!?」

横須賀「どういうことだコラァ!!」



413: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:57:57.00 ID:fC5Xd2gDO

-第四学区、バイキング料理店



削板「昼メシはここだ! ピークも終わりごろだからすいてるぞ!」カランカラン

従業員「いらっしゃい、ませ」

原谷「あ、4人で」

従業員「か、かしこまりました。ご案内します」

横須賀「ふむ、ここも久しぶりだな。」

インデックス「ここはどういうお店なの?」

削板「食べ放題の店だ! どれだけ食べてもかまわんぞ!」

インデックス「ホント!?」

原谷「そうだよ。ほら、前に食べ放題の店に行くって言って結局行かなかったでしょ? あの時行こうとしてたのがこの店だよ」

従業員「こちらになります。ごゆっくりどうぞ」

横須賀「む、なら取りに行くか。」

インデックス「いっぱい食べるんだよ!」



414: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:59:00.01 ID:fC5Xd2gDO

-厨房



従業員「緊急事態! コードレッド! セブン一行が来店!」

料理人「なに!? 昼のピークが終わりかけたところなのにか!?」

従業員「間違いない! しかも1人増えてる!」

店長「なんと……噂は本当だったか」

従業員「店長! 何かご存知なのですか!?」

店長「……最近、セブンに彼女ができたらしい。その少女はセブンに負けず劣らず食べまくる、と」

料理人「!? バカな! セブンと取り巻きで精一杯だってのにセブンがもう一人!?」

店長「現実に第7学区でファミレスが閉店に追い込まれている」

従業員「そんな……ピーク終わりとはいえ、まだお客様はたくさんいらっしゃるのに……」

店長「わたしも厨房に立とう。ピーク終わりでは調理が間に合わないかもしれんが、なんとしても乗り切るぞ!」



415: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 15:59:44.64 ID:fC5Xd2gDO


削板「お、なんだコレ?」

原谷「……食品にあるまじき色してませんか? 赤紫?」

インデックス「やめた方がいいよぐんは! 完全に威嚇してる色なんだよ!」

横須賀「原材料ならともかく完成品が威嚇してるのはおかしいだろう。
     東南アジア系のメシはアタリとハズレの差が激しいんだ。食ってみたらどうだ?」

削板「たしかに食わず嫌いは根性なしのすることだな! こいつもらってくぞ!」ドサッ

原谷「あーあーまたそんなごっそり……」

インデックス「私は堅実にOSUSHIにするんだよ!」

横須賀「板で持っていくな。皿に取れ、皿に。」



416: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:00:29.99 ID:fC5Xd2gDO

-厨房



従業員「サイドテーブル全滅!」

料理人「クソッ、そっちから手ぇ出してきやがったか! 完全に予想外だ!」

店長「かまわん! いずれ今作った料理も食いはじめる! むしろ補充が済んでラッキーだ!」

従業員「運んでおきます!」

料理人「まかせた!」

店長「気を抜くな! 次はサイドテーブルの補充だ!」



417: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:01:09.19 ID:fC5Xd2gDO


削板「相変わらず網が狭いな」ジュー

原谷「どう考えても供給過多です。あ、いただき」ヒョイ パク

横須賀「原谷きさま! 俺のハチノスだぞ!」ガタッ

インデックス「」ガツガツガツガツ

原谷「モツがモツにモツ詰め込んでどうすんですか。てかインデックスはそんなに肉食べていいの? 宗教的な意味で」モグモグ

インデックス「主に与えられた食べ物を粗末にする方がダメなんだよ!」ガツガツガツガツ

削板「そうだ! 食べ残しは根性なしのすることだ!」ヒョイ パク

横須賀「人が丹精籠めて焼いた肉を横取りすんのはどうなんだ! 俺の牛タン!」



418: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:02:06.23 ID:fC5Xd2gDO

-厨房



従業員「牛タン、ハラミ、ハチノス、牛ロース、豚カルビ、豚トロ、豚タン、鳥モモ、砂肝、鳥皮、サンチェ、レタス撃沈!!」

料理人「いっぺんに持っていきすぎなんだよチクショー!」

店長「早く肉を解凍しろ! 間に合わなくなってもしらんぞ!」

従業員「鳥皮の在庫切れました! レタス流水にさらしておきます!」

料理人「手ぇ洗ってからしろよ!」

店長「テールスープ煮込んでおけ! すぐ消えるぞ!」



419: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:02:52.62 ID:fC5Xd2gDO


削板「ほらモツ。さっきの詫びだ」

横須賀「む、黒烏龍茶か。」

インデックス「スゴいね、ジュースも飲み放題なんだ」

原谷「別料金なんだけどね。僕は緑茶でいいや」

削板「うし、次は地中海だな!」

横須賀「地中海か。パスタあたりいくか。」

インデックス「ブイヤベースなんだよ!」

原谷「僕はそろそろペース落とそうかな」



420: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:03:22.24 ID:fC5Xd2gDO

-厨房



従業員「地中海ゾーンに一斉に入りました!」

料理人「今の内だ! クレープ生地とデザートの補充を急げ! フルーツをカッティングしろぉ!」

店長「ドリンクバーは大丈夫かね!?」

従業員「カルピスと黒烏龍茶が瀕死です! 大至急補充します!」

料理人「ちげぇよ! リンゴじゃなくてマンゴーだ!」

店長「混乱するな! 落ち着いて迅速に動け!」



421: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:04:24.96 ID:fC5Xd2gDO

削板「こうして麻婆豆腐をご飯にかけてだな」ドロリ

インデックス「おぉ……日本人はなんでもかんでもご飯に乗っけるっていうのは本当なんだね」

横須賀「否定できんな。」ガツガツ

原谷「チャーシュー丼食べてる最中ですもんね。あ、コレおいし」モグモグ

削板「そんでここに醤油をひとかけすると削板流中華丼の完成だ!」ドン!

インデックス「美味しそうなんだよ!」

横須賀「ふぅ。さて、そろそろ締めに入るか。」カチャ

原谷「すいませーん、お手拭きくださーい!」



422: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:04:59.94 ID:fC5Xd2gDO

-厨房



従業員「白米もうすぐショートします!」

料理人「くっ、あと5分! あと5分なんだ!」

店長「まだデザートに移らないのか! 化け物どもめ!」

従業員「もうその状態で出すしか……」

料理人「それはできねぇ……それが料理人としての俺のプライドだ!」

店長「クソッ、負けるな! みな奮起せよ!」



423: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:05:37.30 ID:fC5Xd2gDO


インデックス「アイスクリーム……よりどりみどり……」キラキラ

削板「ハッハッハ! さすがだな! 全種類制覇するぞ!」

インデックス「合点なんだよ!」


原谷「♪」ジュー

横須賀「相変わらずクレープ作るの上手いな。俺にも一枚頼む。」

原谷「了解です。生クリームたっぷり入れときます」

横須賀「……食いまくったあとにそれは勘弁してくれ。」



424: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:06:24.59 ID:fC5Xd2gDO

-厨房



従業員「セブン一行、全員締めに移りました!」

料理人「ようやくか! 半数は洗い物と夜の仕込みに移れ!」

店長「最後まで気を抜くな! 相手はセブンだ!」

従業員「洗い物急いでください! 食器が下げられません!」

料理人「食洗機のキャパ越えてるんだ! 下げたらその辺に置いとけ!」

店長「割るなよ! フリじゃないぞ!」



425: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:07:08.95 ID:fC5Xd2gDO


インデックス「ん~♪ 濃厚ティラミス!」

削板「見ろ! 巨大わたあめだ!」

横須賀「む……く……」モグ…モグ…

原谷「なんでそんな状態になっても食べ続けるんですか。せっかく生クリーム控えめにしたのに」ズズズ

インデックス「ああ……ここが天国だったんだね」

削板「ハッハッハ! 大げさだな!」

横須賀「天……国……?」プルプル

原谷「正反対の顔してますね」



426: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:07:45.55 ID:fC5Xd2gDO

-厨房


従業員「セブンの取り巻き沈黙!」

料理人「ようやくか! ざまあみやがれ!」

店長「やめんか! お客様だぞ!」

従業員「ですが、セブンの彼女の勢いが衰えません! なぜか感涙してます!」

料理人「感涙!? そうか……知らぬ間に俺はシェフからパティシエにジョブチェンジを……」

店長「お前が作ったデザートじゃないだろ! なんにしてもコレが最後の戦いだ!」



427: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:08:29.06 ID:fC5Xd2gDO


削イン横原「「「「ごちそうさまでした!」」」」パン

削板「ハッハッハ! 昨日のラーメンより食ったな!」

インデックス「いろんな味が楽しめたもんね!」

横須賀「」チーン

原谷「……昨日より食いましたもんね」

削板「うし、食ったらとっとといくか! 会計行くぞ!」

インデックス「よこすか大丈夫?」

横須賀「ふっ……こ、この程度で……俺が……」プルプル

原谷「限界じゃないですか。【内臓潰し】って自虐的な意味だったんですか?」



428: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:09:23.49 ID:fC5Xd2gDO

-厨房



<アリガトウゴザイマシター


従業員「終わった……」クタッ

料理人「乗り切ったか……」フゥ

店長「戦争だったな……」

従業員「……やっぱり夜もお店開くんですかぁ?」グテー

料理人「当たり前だろ……とっとと仕込みしねぇと……」

店長「その前に一休み入れよう。みんな、よく頑張ってくれたな」

従業員「ああ、店長の優しさが身に染みる……」

料理人「……じゃあお言葉に甘えて」

店長「19:00から外部の団体客の予約入っているからな。150人規模だそうだ」

従業員料理人「「」」



429: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:10:26.96 ID:fC5Xd2gDO

-第四学区、大通り



原谷「んー……ビミョーな時間ですね。今から第七学区に戻ってもけっこう時間ありますよ」

削板「ゲーセンで時間使いまくったからな……」

横須賀「1度第七学区に戻ってから時間を潰せばいいだろう。」

インデックス「……そうだね。万が一遅れたら大変だもん」

原谷「じゃあそうしますか」

削板「……それなら俺の家に寄ってもいいか?」

横須賀「? なんか忘れ物か?」

削板「イヤ、今思ったんだがお前ら魔術師たちの連絡先聞いたか?」

インデックス「あ……」

原谷「聞いてませんね、そういえば……」

削板「だったら、まず俺の家に来ると思うんだ。俺がインデックスを匿ってるのを知ってるはずだからな」

横須賀「なるほど。なら、まずは削板の家に行くか。もしかしたらすでに来ているかもしれん。」



430: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:12:01.21 ID:fC5Xd2gDO

インデックス「……」

削板「どうした? インデックス」

インデックス「……もしも」

原谷「うん?」

インデックス「もしも、あの人たちがなんの解決策も見つけられなくて、私の記憶を消そうとしてきたら……?」

横須賀「……その時はまた叩き潰す。心配するな。」

インデックス「でも……」

削板「そこまで根性なしだったらいよいよ救いようがない。次は容赦せん。地獄の底まで送ってやる」

インデックス「……」

原谷「それにほら、【冥土返し】の先生もいるしさ。他にちゃんとした解決策があれば記憶を奪いにかかってきたりしないよ」

インデックス「うん……そうだよね」

横須賀「よし、じゃあ行くぞ。」



431: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:13:22.39 ID:fC5Xd2gDO

-第七学区、削板宅前



削板「……いないな」

原谷「もしかしたら部屋の中にいるんじゃないですか?」

インデックス「……」

横須賀「入っていいか?」

削板「おう。今鍵を開ける」


<ガチャ、ギィ……


原谷「……いないみたいですね」

インデックス「ほっ……」

横須賀「この分だとアイツらの解決策は期待しない方がいいな。」


432: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:14:24.05 ID:fC5Xd2gDO

原谷「どうしますか? 時間ギリギリまで待ちますか?」

削板「俺たちの居場所と連絡先を書いた紙でもドアに貼っておけばいいだろ」

横須賀「アイツらケータイ持ってんのか? なんとなく何かしらの魔術で連絡を取り合っている気がするが……」

インデックス「どうだろう……携帯電話に魔術的な回線を繋げる魔術師はいるけど数ある連絡手段のひとつでしかないんだよ」

原谷「だったらなるべく詳細な地図を書いた方が良さそうですね」

インデックス「でも、私を1年も追いかけ回してたくらいだから探索魔術には長けてるかも」

削板「それが地図を書かない理由にはならん。お前の命が懸かってんだ。
   念を入れといて損はないだろう。紙とペン探すからちょっと待ってろ。トイレ行きたいやつは今のうち行っておけよ」

横須賀「スマン、ならトイレ借りるぞ。」

原谷「僕たちはリビングで待ってよっか」

インデックス「うん」



433: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:15:23.51 ID:fC5Xd2gDO


削板「それでここの信号を……」キュー キュキュッ

原谷「目印になるものも書いた方がいいですよ。土地勘ないでしょうから」

インデックス「……」キョロキョロ

横須賀「はー、すっきりした。……どうしたインデックス。そんなに部屋を見回して。」

インデックス「え?」

削板「ん? 今さら気になるものでもあったか?」

インデックス「……ううん、ちゃんと覚えておこうと思って。もしかしたら見納めになるかもしれないから」

原谷「……」

横須賀「縁起でもないことを言うな。」ズビシ

インデックス「あぅ」

削板「お前の記憶は消えたりせん。心配するな。ちゃんと形のある思い出も作っただろ」

インデックス「形のある思い出?」

原谷「ほら、みんなでプリクラ撮ったでしょ? それで証明できるよ。僕たちは仲間だって」

インデックス「……でも、あの人たちも写真撮ったけどダメだったって」

横須賀「縁起でもないことを言うなと言っているだろう。」ズビシ!

インデックス「あぅ」



434: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:17:10.34 ID:fC5Xd2gDO

原谷「ちょっと、何回インデックスにチョップするんですか。言ってるそばから記憶飛びますよ」

削板「おいモツ!」

横須賀「平気だろう。お前の渾身の拳もらって無傷なんだぞ?」

インデックス「……まあね。『歩く教会』に防げないものなんてほとんどないんだよ!」フフン

原谷「……たしかに。ホントにそれどういう素材なの?」

インデックス「『ロンギヌス』に貫かれた【聖人】を包んだ『トリノ聖骸布』を完璧にコピーしたものだね!
     それだけじゃ『歩く教会』にはならなくて、完璧に計算された刺繍や縫い方によって魔術的意味を持たせることで法王級の魔術結界を」

削板「つまりどういうことだ?」

インデックス「『歩く教会』は完全無欠の最強の防護服なんだよ!」

横須賀「うらやましいな。こちとら炎ひとつ防ぐためにクソ暑くてクソ重たいコートを汗だくになって着てたってのに……」

インデックス「ふっふーん! これで魔術の優位性が証明されたんだよ!」ドヤァ

原谷「……そのなんとかの布のコピーと計算された刺繍と縫い方が必要なんでしょ?
   それだけならデータさえあれば学園都市の織り機とミシンのコンピューター任せで量産できる気がするけど」

インデックス「えっ!? ム、ムリに決まってるんだよ! 科学はよく分かんないけど!」

削板「ハッハッハ、科学と魔術が交差すればとんでもない革命が起きるかもな。……よし、書けた」

横須賀「……時間もちょうどいいな。行くぞ。」



435: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:18:22.72 ID:fC5Xd2gDO
 
-第七学区、某高校グラウンド



冥土返し「やあ、待ってたよ」

削板「おお! なんかよく分からんがウチのグラウンドのど真ん中にスゴいものがあるな!」

横須賀「……なんかアレどっかで見たことあるな。なんだったか……」

原谷「アレですよ、中学生の時に図書館で読んだブラック・ジャックの屋外用手術室」

横須賀「それだ。」

冥土返し「大きさとかの細部は違うけど、似たようなものだね?
      あとはオペに必要な機材と空調設備なんかだ。繋がってるのは簡易滅菌室」

削板「おおー、スゴいな! なんかスゴいな!」

冥土返し「興味津々で何よりだね?」



436: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:19:23.67 ID:fC5Xd2gDO

インデックス「……」

冥土返し「不安そうだね?」

インデックス「……あなたを疑ってるわけじゃないけど、緊張しちゃって……」

横須賀「無理もない。自分の記憶が懸かっているのだからな。」

冥土返し「何も心配することはないね? 眠って起きたらすべて終わっている」

削板「そうだ! お前と先生の根性なら何があっても大丈夫だ!」

インデックス「うん……うん、分かってる」

原谷「その意気だよ。僕たちもついてる」



437: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:20:48.57 ID:fC5Xd2gDO

冥土返し「さて、もう一度だけ確認しよう。これから彼女の喉を切開し、その奥に刻まれているルーンを切除する。
     この方法が有効であることはボクの方で裏付けは取った。それに、キミたちのおかげで一般人は近寄れないようになっている。
      仮に何かの魔術が暴発してもキミたちのおかげで被害は最小限に抑えられる。……何も起きないのが一番だけどね?」

インデックス「……」

冥土返し「……さて、質問はあるかい?」

削板「どのくらいで終わるんだ?」

冥土返し「やること自体は単純だからね? 切開してから縫合するまで、ボクなら1時間もあればお釣りがくる」

横須賀「……さすが先生だな。インデックスの声はどうなる?」

冥土返し「今の状態と何ら変わりない声が出せることを約束するよ。
     喉にも傷跡ひとつ残さない。少しだけ入院が必要だけどね?」

原谷「……今さらですけど、費用は?」

冥土返し「キミたちが気にする必要ないね? 理事会の1人が負担してくれるそうだ。
     なんでも『どうせ立て替えるだけだ。あとでしかるべきところからむしり取る』だそうだ」

削板「……貝積のおっさんか」

原谷「みたいですね」

冥土返し「おや、知ってたのかい?」

横須賀「ああ、実はコレに1枚噛んでいる。」



438: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:21:33.47 ID:fC5Xd2gDO

冥土返し「さて、そろそろ時間になる。校舎のどこかでこの手術依に着替えてきてくれるかい?」

インデックス「うん……」

削板「付き合うぞ、インデックス。女子更衣室まで案内しよう」

インデックス「え?」

原谷「僕も行くよ」

横須賀「同じく。俺も準備がある。」

インデックス「みんな……ありがとう。……覗かないでね」

削板「そんな根性のない真似するか!」

原谷「このタイミングで覗きするってどんなKYだよ!」

横須賀「そんな口が叩けるなら安心だな。落ち着いたようで何よりだ。」



439: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:22:48.70 ID:fC5Xd2gDO

-十数分後、体育館棟女子更衣室前



インデックス「着替え終わったんだよ」

削板「……なんか新鮮だな」

原谷「いつも修道服でしたからね」

インデックス「ふふ、似合う?」

削板「ああ、バッチリだ!」グッ

原谷「似合ってるかどうかはあんまり関係ないけどね」

インデックス「あれ? よこすかは?」

削板「隣の男子更衣室でなんか準備してるらしい」

原谷「またなんか着替えてるんじゃないかな。前みたいに」


440: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:24:42.34 ID:fC5Xd2gDO

<ガチャ


横須賀「お、もう着替え終わってたか。」

インデックス「うん。何してたの?」

原谷「着替えてたんじゃないんですか?」

横須賀「服装はこのままだ。だが、身体の方に細工してきた。」

削板「身体に?」

横須賀「『発条包帯』というテーピングを貼ってきた。不良品だが、身体能力が飛躍的に上がる。」

原谷「不良品なんですか?」

横須賀「ああ、動きすぎると肉離れが起きる。」

インデックス「ええっ、なんでそんなの貼ってきたの!?」

横須賀「万が一に備えてだ。何が起きるか分からんなら小回りの利く機動力を確保した方がいいだろう。」

削板「大丈夫なんだろうな。いざって時に肉離れじゃ話にならんぞ」

横須賀「任せろ。根性でなんとかする。」

インデックス「よこすか……」

横須賀「他人の心配する前に自分の心配をしろ。何もなければそれで終わりだ。」

インデックス「……分かった」



441: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:25:37.91 ID:fC5Xd2gDO

-数分後、グラウンド



冥土返し「ん。バッチリだね?」


屋外用手術室の前ではカエル顔の医者が柔和な笑顔で待っていた。


インデックス「うん!」


医者の問いかけに対し、インデックスは明るく力強くうなずく。

彼女なりに迷いも恐れも振り切れたようだった。


冥土返し「なら、すぐにはじめようか。スタッフは全員中で待機している。準備万端だね?」

インデックス「分かったんだよ」

横須賀「俺たちは外で待機している。邪魔になるだろうからな。」

原谷「頑張ってね、インデックス。先生、よろしくお願いします」

インデックス「うん!」

冥土返し「任せたまえ」

削板「退院したらまた根性メシ作ってやる! 期待してろ!」

インデックス「ホント!? 楽しみなんだよ!」



442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:26:32.16 ID:fC5Xd2gDO

冥土返し「……じゃあ、滅菌室へ」

インデックス「うん」


カエル顔の医者に促され、インデックスは簡易滅菌室へと歩いていく。

しかし、扉の前までいくとピタリとその足を止めた。

そして、勢いよくクルリと振り返った。


インデックス「ぐんは! やぶみ! よこすか!」

削板「お?」

原谷「うん?」

横須賀「なんだ?」


スーッ、と息を吸い込んだあと、インデックスはとびきりの笑顔で3人に声をかけた。


インデックス「ありがとう! また明日! なんだよ!」


その言葉を受け、3人はニッと笑ってこう答える。


削板「おう!!」

原谷「もちろん!」

横須賀「当然だ!!」


すると、インデックスはより一層明るい笑顔を見せ、カエル顔の医者と共に一思いに滅菌室へと入っていった。


443: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:28:09.78 ID:fC5Xd2gDO

原谷「はー、ヤバい。緊張してきた」

横須賀「お前が緊張してどうする。」

原谷「そんなコト言ったって……」


そこまで言って原谷は口を動かすことを止めた。

目の前で削板が険しい顔をしていることに気付いたからだ。


削板「……結局、アイツらは来なかったな」

横須賀「……」


インデックスにかけられている魔術の正式な解除法を得るべく、イギリスへ渡っていった魔術師たち。

インデックスの親友だと言っていた2人はついぞ姿を現さなかった。


削板「根性なしめ」


ギリリ、と削板は歯軋りする。

親友だというのに1年も追いかけ回した挙げ句、インデックスが不安な時に駆けつけもしない。

削板にはあの2人がとてつもなく不義理で根性なしに思えた。


原谷「……向こうは期限が深夜だと思ってますから。限界まで粘ってるのかもしれませんよ?」

削板「それで間に合わなかったらどうするつもりなんだ。
   まさか短時間で終わらせられるようなお手軽な解除法だってのか?」

横須賀「さあな。だが、言っても始まらん。俺たちができるのはインデックスを見守るだけだ。」

原谷「ですね。ちょっと離れたところで座って待ってましょう」

削板「ちっ……」



444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:29:58.01 ID:fC5Xd2gDO

数十分ほど経過しただろうか。

削板らはグラウンドの隅で地べたに座って待機していた。

太陽は完全に沈み、代わりに明るい月と街灯、そして手術室の灯りがグラウンドを照らしていた。


原谷「順調……なんですかね」

横須賀「さあな。」


蒸し暑さが3人にまとわりつく。

7月の下旬ということもあり、虫たちも元気にあちらこちらを飛び回っている。

外からでは半透明の手術室の中は見えやしないので、手術室に目をやっては飛び交う虫を目で追ったりというのを繰り返していた。


削板「……大丈夫だ。インデックスと先生の根性なら。今にでも先生がひょっこり顔を出してくるにちがいない」


辺りはこの時間帯にしては静かだった。

室外機が高速で回る音、遠くで車が走っている音、あとは削板たちの会話しか聞こえない。

【冥土返し】曰く、1時間もあればお釣りがくるとのことだ。

ここまで何もないのなら、このまま無難に手術は終了。

悲劇は何も起きず、ハッピーエンドを迎えるだけだ。


445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:31:44.69 ID:fC5Xd2gDO





―――――そのはずだった。





ドギャアア!! と轟音を上げて手術室が弾けとんだ。


削板「!!」

原谷「うわあ!?」

横須賀「何事だ!!」


それと同時に削板たちは跳ねるように立ち上がる。

グラウンドには四方八方に機材や医療スタッフが飛散していた。

機材はぐちゃぐちゃだが、幸い医療スタッフに死者はいないように見える。

全員が動いており、何人かはあわてて走り回り、倒れこんだ同僚のもとへ駆けつけていた。

そして、爆発の中心にいたのは





インデックス「―――けィコ…、第3……2節。I……ex-Lib…rum-Pr……to…m……【禁書目録】…『首輪』……だイ3ま……ゼん結界ノ貫通……にン。再生…ンび」


ワイヤーに吊されたかのように不気味に宙に浮かぶインデックスだった。



446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:33:37.67 ID:fC5Xd2gDO

喉を切り裂かれてまともに声は出ない。

そのはずなのに3人の耳にはしっかりとインデックスの声が聞こえていた。


横須賀「……どういうことだ、アレは。」

原谷「……要するに作品が違ったみたいですね。
   エレンじゃなくてリオン皇子だったみたいです。……今ならまだ倒してしまえば本人は救えると思いますけど」

削板「つまり、アレが『イギリス清教』がインデックスに植え付けたラスボスか。
   アイツを根性でぶちのめしてもっかい先生に診せればハッピーエンドってことだな」

横須賀「そこまで冷静に観察できるってことは十分落ち着いているな。
    原谷、先生たちを校舎に誘導して一緒に避難しろ。どうやら一筋縄ではいかん雰囲気だ。」

原谷「お2人は?」

削板「アイツをぶちのめす」


バシン、と削板が右の拳を左の掌に叩きつける。


横須賀「わざわざ『発条包帯』を買い付けた甲斐があったというものだ。」


コキリ、と横須賀が首を曲げて骨を鳴らす。


原谷「……僕がいても足手まといですね。ご武運を!」


ダッ、と原谷はインデックスを迂回するように走りだした。



447: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:35:22.74 ID:fC5Xd2gDO



インデックス「――再生完了。10万3000冊を狙った侵入者を排除するため『自動書記』を起動します」


開いたはずの喉が縫合もなしに完璧に閉じてしまう。

その様子をカエル顔の医者は地面に腰を落とした状態で忌々しげに見ていた。


冥土返し「やれやれ、何が科学的に最も有効な方法だ」


吹き飛ばされた際に少し腕を擦り剥いたが、そんなことはこの医者にとって些細なことだった。


冥土返し「よくも適当なことを言ってくれたね―――恨むよ? アレイスター」


怒りを噛みしめながら小声で恨み言を呟く。

自分の患者の予期せぬ暴走に無力な自分を悔やんでいた。


原谷「先生! こっちです!」


遠くからメガネの少年がよびかける。

少年は負傷した医療スタッフに肩を貸しながら他のスタッフも引き連れ、小走りで校舎の方に向かっていた。


原谷「体育館に避難します! インデックスは向こうの根性バカ2人に任せて! 早く!」


こんな大惨事を学生に任せるわけにはいかない。

しかし、事はすでに医療分野で済ませられる問題ではなかった。

ならば、否応なしに少年たちに託すしかない。


冥土返し「……恨むよ? アレイスター」


恨み言もそこそこに、カエル顔の医者は体育館へと走り出した。



448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/11(木) 16:36:58.85 ID:fC5Xd2gDO

インデックス「『書庫』への侵入方法は科学的な医術と断定。周囲を検索し、該当者を排除――」


ピタリ、と機械的なインデックスの声が止まる。

それもそのはず。医者よりももっと強大な敵が闘志を剥き出しにして近づいてきたのだから。


削板「おいテメェ、散々インデックスを苦しめたうえになにインデックスの身体を乗っ取ってやがんだ。根性なしが」


ぐるり、とインデックスの身体が空中で高さを変えずに削板と横須賀の方向を向いた。


インデックス「――警告、第12章第13節。これ以上近づくのであれば、脅威とみなし、優先的に排除します」

横須賀「フッ、こっちはハナから貴様をぶちのめすつもりだ。脅威以外のなにものでもないぞ?」


豹変したインデックスを前にしても、2人はまったく怯まない。

己の信念と根性を貫き、『自動書記』の前に立ちはだかる。


インデックス「―――優先事項を確認。『聖ジョージの聖域』を発動、脅威となる存在を破壊します」

削板「上等だ『イギリス清教』!! その根性を叩き直してやっから覚悟しろ!!」




460: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:00:57.15 ID:SwC35kKDO


キン、と大きな魔法陣が鮮やかな深紅の輝きを放って展開される。

その大きさは直径でインデックスの身長の1・5倍はあった。


横須賀「……あの妙なマークもルーンというやつか?」

削板「イヤ、どっちかっつーと女の魔術師が使ってたやつに似てるな」


一定の距離を保ち、2人は身構える。

さすがに『歩く教会』すら着ていないインデックスの身体を直接殴るのは抵抗があった。


インデックス「―――発動、『竜王の殺息』」


バキン! と魔法陣の中心部が大きく裂けた。

その先には見たこともない異世界の空間が覗いていた。


横須賀「おい、なんだア


461: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:01:55.33 ID:SwC35kKDO

ドッ!! と光の柱が削板らを目がけて射出される。

紅い閃光のような巨大な光の柱は削板らを貫こうと襲い掛かる。


削板「スゴいパンチ!!」


とっさに削板が反応し、光の柱目がけて不可視の力を殴り飛ばす。

人類最先端の更に先をいく学園都市の科学力を以ても解明できない強大な力。

何もかもを理屈抜きで吹き飛ばしてきた力が光の柱に真っ向から立ち向かう。



462: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:02:59.50 ID:SwC35kKDO

だが、


削板「!」


削板が放った不可視の力は光の柱を吹き飛ばすには至らなかった。

激突した瞬間、ほんの一瞬光の柱が止まったと思うと光の柱が膨れ上がり、不可視の力を弾け飛ばした。


削板「スゴいガード!」


ボゥン! と赤青黄の煙が削板の前で吹き上がる。

その煙が強固な盾となり光の柱から削板らを防ぐ。


削板「ふ、ぐ、おおおおおおおお!!!」


ドウッ! 光の柱が削板の盾に激突したが、光の柱はそれでも勢いを失わない。

煙の盾を押し切り、煙の盾ごと突き進む。

寸でのところで削板が煙の盾の裏から直接腕を突き立て、盾を支える。


削板「がああああああああああああああ!!!」


ようやく煙の盾は止まったが、光の柱はそれでも力を失わない。

次から次へと暴力的な波動が押し寄せ、煙の盾を突き破ろうとする。



463: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:03:48.73 ID:SwC35kKDO

横須賀「とんでもない光魔法だな。シスターなのに嘘吐いてるじゃねえか、インデックス。」


ダッ、と横須賀が煙の盾を迂回してインデックスへと近づく。

1対多数は根性なしのすることだが、相手がオーバーキルも辞さない武力で命を狙ってくるなら話は別だ。

このまま放っておけば、最悪第七学区が吹き飛びかねない。


横須賀「これも魔術なら」


『発条包帯』で強化された横須賀の肉体は常軌を逸して加速し、インデックスへと肉薄する。

そして、そのまま横須賀は巨大な魔法陣の左半円目がけてふりかぶる。


横須賀「こいつを壊せば消えるだろう!!」


ブン!! と横須賀の拳が放たれる。

ただでさえ【内臓潰し】という異名を持ち、人体を宙に浮かせるほどの拳だ。

それが『発条包帯』で強化されたとなれば、その破壊力は計り知れない。



464: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:04:50.70 ID:SwC35kKDO

横須賀「!?」


横須賀の顔が驚愕の色に染まる。

振り抜いた拳は途中で止められていた。


横須賀(なんだ……これは……!?)


そして、それは横須賀が経験したことのない止められ方だった。

横須賀の拳から『力』という概念が消えていた。

自分が振るった拳の破壊力はもちろん、拳に返ってくる衝撃すら消えていた。

故に反発力すら起きず、横須賀の拳は魔法陣に触れたと同時に静止している。

どんな衝撃吸収素材であろうとこんなことは起きたりはしない。

力を吸収するのではなく消失させるなど聞いたことがない。


465: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:05:42.54 ID:SwC35kKDO

横須賀「インデックス……!?」


次いで横須賀が何かに気を取られる。

それは魔法陣越しに見上げたインデックスの眼だ。

遠くでは見えなかったが、インデックスの眼には今インデックスの前に展開されている魔法陣と同じものが描かれていた。

そして、その異様な眼に気を取られたことが命取りとなる。


インデックス「第6章第9節『殉教者が血の復讐を求める』。即時発動」

横須賀「しまっ」


バン!! と黒い閃光が短く乾いた音とともに弾ける。

それと同時に横須賀の身体が空高く吹き飛ばされた。


466: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:06:38.97 ID:SwC35kKDO

削板「! モツ!?」


煙の盾で前は見えない。光の柱の轟音でほとんど何も聞こえない。

それでも横須賀が移動したことは分かったし、何かの爆発音は聞こえた。

そして、自身の後方で横須賀がとてつもない速さで為す術もなく地面を転がっていった音も。


削板「モツ!! 返事しろ!! モツ!!」


それでもあれは横須賀だ。

何度倒しても何度死にかけても不死鳥のように舞い戻り、立ち上がる根性を持った漢だ。

たった一度相手の攻撃をもらった程度でやられるはずがない。


削板「おい!! モツ!!」


しかし、後方からはなんの声も音もしない。

気配すら感じるコトはできなかった。


467: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:07:32.07 ID:SwC35kKDO


そして、とうとう煙の盾が限界を迎える。

光の柱が煙の盾を貫ぬき、煙の盾は霧散する。


削板「ああああああああああああ!!!」


それでも削板は抵抗する。

不可視の力を、根性を右手にすべて集中させ、光の柱を食い止める。

傍から見れば右手一本で光の柱を食い止めているように見えた。


削板「く、そおおおおおおおおおお!!!」


しかし、それも長くはもちそうになかった。

光の柱の圧力と不可視の力圧力で右手に激痛が走る。

そもそも不可視の力自体が光の柱に押されている。



468: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:08:55.23 ID:SwC35kKDO

削板(……何をしてんだ、俺は……)


必ず助けると言いながら、こんな状況に陥っている。


削板(結局、あれから何も変わってねぇってのか……)


1人よがりの根性で周りを巻き込み、救うことすらできず、敵対される。


削板(それどころか……)


また、自分のせいで死人が出た。


削板(俺には何も救えないのか……!)


もはや周りに仲間は誰もいない。


削板「……それに、こんなことを考えている俺が1番根性なし、だな」


ビキ、と嫌な音が右手から鳴った。

もはや押し切られるのは時間の問題だ。

長時間継続して全力を出し続けたせいで頭痛もしてきている。

右手の痛みが薄れる。

目の前が真っ白に染まる。

圧倒的な暴力に飲み込まれるように、意識がホワイトアウトしていき、世界が消えていた。






469: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:21:31.24 ID:SwC35kKDO







???「あだだだだだだだだだだだだだだだだ!!」


だが、目の前が真っ白になったというのに意識ははっきりしている。

痛みは薄れたというのにそれ以外の感覚はしっかりとある。

そこで削板はようやく気付く。

目の前が真っ白になったのも痛みが薄れたのもホワイトアウトしたからではない。

白い衣服を着た誰かが目の前に出てきたのだ。

その誰かとは


原谷「な、なにが最強の護身服だよインデックス! これすげぇゴリゴリくるじゃん!!」


自身には小さすぎる『歩く教会』を無理矢理身に纏ったメガネの少年。

削板の親友であり、削板と同じく呆れるほどの根性バカ。

原谷矢文が頼りないその身ひとつで圧倒的な暴力から削板を護っていた。


削板「原、谷……?」


思わず呆気にとられた削板は目の前の人間の名前をつぶやいた。

すると、痛さのせいか涙目になった少年は苛立ちながら、キッ、と削板に顔を向ける。


原谷「とっとと行ってこいよ根性バカ!! アンタが救わなかったら誰があの娘を救うんだ!!」



470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:23:11.61 ID:SwC35kKDO

???「削板ァ!!」


続いて低い声が魔術の轟音を制して響き渡る。

その声の主は先ほど魔術にやられたはずの大男。

並み居るスキルアウトの中でも最強の一角。


削板「!! モツ! 無事なのか!?」


暗がりの中でうっすら見えるシルエットには見覚えがある。

筋骨隆々の巨体を誇る【内臓潰し】横須賀。


横須賀「俺がこの程度でくたばるはずがあるか!! とにかくあのマークをブッ壊せ!!」

削板「マーク?」


インデックスの方を指さしながら大男は叫ぶ。


横須賀「近くで見たらインデックスの目に同じものが描かれていた! アレを破壊すればインデックスも止まるはずだ!!」


確かにワイヤーか何かに吊られているようなインデックスの目の前には複雑な模様が描かれた、直径約2mほどの大きな魔法陣が展開されている。

そして、その円の中心部分から圧倒的な破壊力をもつ光の柱が出ている。

その円とインデックスの眼球が連動しているのなら、あるいはこのふざけた魔術を止めることも可能なはずだ。


削板「な…お前、あの一瞬で…」

横須賀「救ってこい! お前の根性で! すべてにケリをつけてやれ!!」



471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:23:57.32 ID:SwC35kKDO


削板「……ハハ」


まったく、どいつもこいつも……


削板「ハッハッハ……」


我が仲間ながら……


削板「ハ――――ッハッハッハ!!」


天晴れな根性だ!!



472: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:25:33.89 ID:SwC35kKDO

インデックス「戦場の再検索、完了。削板軍覇の前に遮蔽物を確認。該当する霊装の検索、完了。『歩く教


フッ、とインデックスの前に白ランの男が現れる。

腰を落とし、右の拳を地面ギリギリまでにおろしている。


削板「おう!!」


ドゴム!!!! と、あろうことか削板は拳をマークの下にぶつけ、そのままカチ上げた。

そして、3色の光がその拳の軌跡としていつまでも空間に輝く。

削板が行った行為は単純だ。ものすごくモーションの大きいアッパーカットを魔法陣の下から放つ。

ただ、その動作を音速の3倍の速度で行ったのだ。

カチ上げられたマークはインデックスの身体を基点に四半円を描くように上を向く。

それに連動してインデックスの眼が、身体がマークとの平行を保ちながら上を向く。

放たれていた【竜王の殺息】はまるで大剣を振り上げるかのように上空に角度を変えて放たれる。

無限の射程を誇るその光は宇宙空間にまで届き、人工衛星すら破壊したかもしれない。



473: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:26:57.03 ID:SwC35kKDO

ピシリ、と数瞬遅れて巨大なマークに亀裂が入る。

そして、人ならざるモノから発せられた魔術は魔法陣の損傷によりかき消される。


インデックス「……特異な攻撃により『聖ジョージの聖域』の損傷を確認。術式の再構築を

削板「させるかぁ!」


バキィ!!! と、3色の光をまとった拳を以て、今度は更に踏み込んでから上を向いた魔法陣を横からフック気味に殴る。

すると今度はインデックスの身体はその場に留まらず、空中を転がるようにきりもみ状に吹き飛ばされる。

そして、吹き飛ばされた先で待ち構えているのは【ナンバーセブン】削板軍覇。

あろうことか殴り飛ばしたインデックスよりも速く動き、インデックスを待ち構えていた。


削板「上っっ等だ『イギリス清教』!!」


ズドム!!!! と常にインデックスの前に張られていた魔法陣のど真ん中に、三度削板の拳がたたき込まれる。

しかし、何が起きているのか分かる者はいない。

当然だ。超音速で短距離を反復移動する物体を見切る人間などいるものか。

インデックスの魔法陣にのみ正確に打撃を与えている削板が常軌を逸しているのだ。



474: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:27:59.32 ID:SwC35kKDO

カウンターの要領でさらに斜め上空へとインデックスの身体は吹き飛ばされる。


削板「テメェらがなんでも思い通りにできるってんならぁ!!」


ゴガン!!! と、今度は削板の脚が魔法陣を蹴り上げる。

もはや魔法陣は半壊している。

いたるところにヒビが入り、かろうじて型をなしているだけだ。

そして蹴り上げられたインデックスの真上には当然、誰よりも熱く、誰よりも愚直なヒーローが待ち構える!


削板「まずは!! その根性を叩き直す!!!」


ドッッパァアン!!!!! と魔法陣は豪快に四散し砕け散る。

そして、インデックスの解放を祝うかの如く盛大に赤青黄の3色の煙が地表から吹き上がり、夏の夜空を華やかに彩った。



475: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:36:01.29 ID:SwC35kKDO



横須賀「むおっ……、と」


トサリ、と横須賀は空から落ちてきた幼いシスターをしっかりキャッチした。

インデックスに衝撃がいかないように全身をクッションのように柔らかく使い、彼女の全身を静かに自身の腕の中に抱き入れた。


横須賀「……あの煙の中に叩き込んで落下速度を減速させた、か? 多分。」


少なくとももう少しマシな、というかせめて優しさあるやり方はないのか、と大男は軽くため息をついた。


横須賀「……それで?」


クルリ、と横須賀は首だけ右に回した。


原谷「……」

横須賀「……何してんだ? お前は」


先ほどまでかっこよく削板の盾となって身体を張っていたはずの原谷に冷たい視線を送る。

なんでここに戻ってきたんだ、などと咎めるつもりはさらさらない。

ただ、今の原谷は地面を転げ回った挙げ句、頭頂部を地に付け、腰を高々と上げ、脚の間から横須賀を覗くという体制をとっていた。

例えるなら前転を途中で止めたような体制だ。


原谷「そりゃあね、音速で動く物体があんな至近距離を通り抜ければソニックブームのひとつやふたつ直撃しますよ。
    断言しますけど、この服なかったら僕の身体今ごろバラバラですよ。アンタたちと違って人間の身体してんだから」

横須賀「失敬だな。人を化け物みたいに言うな。」

原谷「ちゃっかりインデックスの落下点に間に合ってるヤツが何言ってんだバカヤロー」


よいしょ、と原谷は起き上がり白い修道服についた土を軽く払った。


原谷「うへえ、背中のとこボロボロだよ。あとでインデックスに怒られる」


ふ、と横須賀は軽く笑いながらインデックスを抱えたまま原谷へと歩み寄る。


横須賀「ボロボロにしたのはインデックスだ。どちらかと言えばお前が勝手に着たことに怒るかもな。」

原谷「シスターの心がそんなに狭かったら泣きますよ」


476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:36:57.26 ID:SwC35kKDO

そして、むちゃくちゃな力技で囚われのシスターを救ったヒーローがスタッと横須賀の近くに着地した。


横須賀「……何をしたんだ?」

削板「拳を4発と蹴りを1発! 叩き込んできた!」

原谷「最初の1発すらよく分かりませんでしたよ。地面転がってたから」

横須賀「俺は何かが連続で爆発したとしか思わなかったな。」

削板「根性の赴くままに動いたからな!」

原谷「相も変わらずむちゃくちゃだよこの人。……しっかしまあ、そんな目にあったっていうのに……」


そう言って原谷は横須賀の腕に収まっているインデックスへと顔を向ける。


横須賀「……よく眠っているな。疲れていたのだろう。」


横須賀と削板も同じく顔を向ける。

そこには何事もなかったかのようにすやすやと寝息を立てているインデックスの寝顔があった。

その寝顔はあまりにも純粋無垢で、あまりにも安らかだった。

まるで母親に抱かれた赤子のように、すべてに安心し切ったその表情に、3人は気付いたら微笑んでいた。

ぐちゃぐちゃになったグラウンドやさっきまでの轟音とのギャップを生み出している静寂が、より3人に安らぎを与えていた。



477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:37:41.14 ID:SwC35kKDO

削板「お? なんだアレは」


そして、さらにその場にいる者たちを癒すかのように、淡く光る無数の羽根が幻想的にひらひらと降りてきた。


原谷「きれーだなー……でもインデックスが横須賀さんの腕の中ってのがなぁ……」

横須賀「ああ、我ながら適役にはほど遠いと思っている。」

削板「ハッハッハ! 何はともあれ! これで一件落着だな!」



478: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:43:46.92 ID:SwC35kKDO


カッ、とインデックスの眼が見開かれる。


原谷「え?」


そして、その瞳には消え失せたはずの複雑なルーンが描かれていた。


横須賀「なっ」


ブアッ!! とインデックスの身体から見えない衝撃波が発せられる。


削板「ぐおっ!?」


その衝撃波で3人は別々な方向に十数メートルほど吹き飛ばされる。

削板と横須賀は受け身を取り、原谷は為す術もなくさらにゴロゴロと転がっていった。


削板「まさか……」

横須賀「……ちっ、カンが外れたな……」


二人は起き上がると同時に、前方に広がる光景に絶望した。


原谷「な、何が……って、え?」


少し遅れて原谷も起き上がる。そして、同様に絶望する。

3人が目にした光景。それは


インデックス「『聖ジョージの聖域』修復完了。
    警告、第6章第13節。攻撃対象、削板軍覇から3㎞半径に生存するすべての生命体に変更。
     『書庫』の保護を最優先し、魔導書の知識を略奪する可能性があるすべての要因を徹底的に排除します」


『自動書記』を覚醒させた、【魔神】インデックス。


479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:45:53.67 ID:SwC35kKDO

ワイヤーに吊り上げられたかのように宙に浮くインデックス。

まさに絶望的な展開だ。

仮にあのマークを破壊してもまた再生してしまうのなら終わりがない。


削板「……本当に見上げた根性だな、インデックス。だが、俺は根比べなら絶対負けんぞ!」


しかし、その程度で【ナンバーセブン】は絶望しない。

信頼できる仲間と己の根性さえあればこんな状況はいくらでも跳ね返せる。


だが、


インデックス「特異な攻撃の解析、完了。ローマ神話における【軍神】マールスの類似系統の力と断定。
     『歩く教会』への対抗術式、検索完了。前述の攻撃への対抗術式との融合、可能。術式の再構築を始めます」

横須賀「……!」

原谷「え、こ、これってまさか……」

インデックス「対ローマ神話用の術式と対十字教用の術式を融合中。
     第1式、第2式、第3式、第4式。命名。『底知れぬかぎと大きな鎖』。
     半径3Km圏内の生命体への術式を構築。第35章第18節『硫黄の雨は大地を焼く』。同時展開。完全発動まで20秒」

削板「!!」


キン、キン、とインデックスの前に先ほどと同じように魔法陣が、そしてインデックスの上空を中心に巨大な魔法陣が展開される。

インデックスの前に展開された魔法陣は先ほどよりも複雑になっており、鮮やかな深紅からドス黒い血のような色に変わっていた。

上空に張られた巨大な魔法陣に至ってはもはや全体図が分からない。

インデックスの言っていたことが本当ならば、3Km先までこの魔法陣が広がっているはずだ。



480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:47:21.64 ID:SwC35kKDO

そして、さらに削板たちを絶望させる要因は続出する。


原谷「ちょ、ちょっと! アレ!」


ボコリ、ボコリ、とインデックスの周りに1m大のクレーターができていく。

その原因は先ほど空から降ってきていた無数の羽。

それが地面に触れた瞬間、物理的にあり得ない破壊力を生み出し、クレーターを作っていた。


原谷「ヤバいですよ! インデックスは今『歩く教会』を着てないんですから! あんなのが当たったら!」

削板「クソ! 次から次へと!」

横須賀「とにかくまずはインデックスの位置をズラすぞ! 俺が気を引く! その隙に―――!?」


ふいに、横須賀の声が途切れる。


削板「!? おい! どうしたモツ!」


削板が横須賀の方を向くと、横須賀は左の膝を付き、その表情は苦悶に満ちていた。


横須賀(――嘘だろう!? もうか!?)


その原因は魔術ではない。

自身の身体を無理矢理強化するために身体中に貼りつけた『発条包帯』。

その副作用が出てきてしまっていた。


横須賀(肉離れ……! こんな時に!!)


恐らく、普通に動くだけならまだ肉離れなど起きていなかっただろう。

だが、インデックスの攻撃により2度も吹き飛ばされ、その度に無茶な体勢を強いられていたのだ。

普段は使わない筋肉。普段とは違う筋肉の使い方。

それが『発条包帯』を巻いた横須賀の肉体にただならぬ負担を与えていた。



481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:48:02.09 ID:SwC35kKDO

そうこうしているうちにもインデックスの魔術は進行していく。


インデックス「完全発動まで10秒」


バギン! とインデックスの前に展開されている魔法陣の中心部分が裂ける。

天空に広がった巨大な魔法陣はより強烈に光り始める。


削板「くっ、原谷! モツを連れてけ!」

原谷「連れてけったって…!」

横須賀「かまうな!! まだ動ける!」

インデックス「カウント、7、6、5」


これ以上はマズい。

数秒後に始まるであろう大殺戮を止めるため、【ナンバーセブン】は駆け出した。



482: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:48:53.06 ID:SwC35kKDO







ズドドドドドド!! と、空から光の矢が降り注いだ。

インデックスのカウントダウンが終わるよりも早く、巨大魔術が発動した。







483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:52:24.40 ID:SwC35kKDO

そして、それは奇跡だった。


原谷「……あれ?」

横須賀「ぬ……?」

削板「……インデックス?」


巨大魔術が発動した範囲はほんの一部だった。

光の矢は学園都市に存在する誰をも傷つけなかった。

放たれた光の矢が貫いたモノはグラウンドと空中を舞っていたすべての青い羽のみだった。


インデックス「―――外部からの命令を受信。命令に従い、『自動書記』を終了します」


フゥッ、と魔法陣が霧のようにあっさりと消える。

それとほぼ同時にインデックスの身体がゆっくりと地面に降りていく。

そして、そのままぐちゃぐちゃになったグラウンドの上で静かに横になった。



484: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:53:12.55 ID:SwC35kKDO

原谷「……終わった、んですか?」

横須賀「知らん。だが、外部からの命令?」

削板「いったい誰が……」


命令などという簡単な理由で大殺戮は中止された。

未曾有の危機が一転して呆気ない幕引きを迎えたことに対して、現場にいた誰もがついていけなかった。

そもそも誰がインデックスに命令を下せるというのだ。



485: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:55:04.27 ID:SwC35kKDO

だが、その答えは簡単に見つかった。


???「どうやら……」

???「間に合ったようだね……」


削板たちの後ろからかすかに声が聞こえた。

その声は聞き覚えのある声だった。

3人が一斉に振り向くと


神裂「くっ……」

ステイル「……」


すべての力を使い果たし、血まみれの状態で倒れこむ魔術師たちがいた。

男の方は女に背負われてきたらしく、女が倒れこむと同時に女の背から滑り落ち、地面に吸い込まれていった。

そして、2人の手には杖のようなものが握られており、2人は決してそれを離さなかった。

それは『イギリス清教』と『英国王室』がそれぞれ1つずつ保有している『遠隔制御霊装』。

インデックスを救うために魔術師たちが命懸けで『イギリス清教』から強奪してきたものだった。



486: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:56:42.24 ID:SwC35kKDO


ステイル「インデックス……」


ズズ……、とステイルが右手を杖から放してその手で地面を掴み、その地を這う。


ステイル「待ってろ、インデックス……いま助ける……!」


息も絶え絶えに、満身創痍の身体を懸命に引きずり、地面を這いながらステイル=マグヌスは少しずつインデックスに近づいていく。


原谷「ちょ、ちょっと……」


その様子を見ていた原谷がステイルに駆け寄る。

最も近くにいたからなのか見ていられなかったのか、立ち上がることすらできない魔術師を不審に思ったのか、理由は分からないが。


原谷「っ!?」


思わず原谷は息を飲む。

自分が近づいた理由を理解した。違和感を覚えたからだ。

魔術師の身体は物理的に立ち上がることができなくなっていた。

―――彼の右足は太ももから先がなくなっており、彼の左腕は二の腕の途中から消えていた。



487: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 16:57:56.46 ID:SwC35kKDO


神裂「待って、つっ……!」


地面に倒れこんだ神裂火織がなんとか上半身を起こすが、それと同時に頭を抱え込んだ。

彼女の身体は五体満足ではあるが、彼女の頭はとてつもない激痛に襲われていた。

『自動書記』を操ることすらできる『遠隔制御霊装』が無条件で使えるはずがない。

一度それを使えば【原典】における知識汚染が始まってしまう。

もちろん、神裂は【原典】の知識を覗くのではなく『自動書記』を強制終了させるために使った。

しかし、発動寸前の魔術が彼女の脳に悪影響を与えていた。

それでもその痛みを無視し、血まみれの身体で神裂は同僚に向かって叫ぶ。


神裂「待ってください! ステイル! そのままでは、あなたの命が!!」

ステイル「かまうものか!! 彼女のために死ねるなら本望だ!!」


しかし、それでもステイルは止まらない。

右腕一本でゆっくりと、確実にインデックスに近づいていく。


ステイル「ハッ……ハッ……イン、デックス……!」



488: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 17:01:50.53 ID:SwC35kKDO


ザ、と2本の足がステイルの目の前に現れた。


ステイル「ハッ………ハッ………」


見上げると、かつて立ちはだかった白ランの超能力者が再び立ちはだかり、無表情でステイルを見下ろしていた。


削板「……」

ステイル「……どいてくれ」


しかし、削板は動かない。

無表情のままステイルを見下ろし続ける。


ステイル「っああ、大丈夫だ。彼女の記憶を消すつもりはない。ハッ、彼女のノドに刻まれているルーンが原因なんだ。
     ボクが診れば彼女は助かるんだ。ッハァ、ルーンのことでボクの右に出るヤツなんてこの世にいない。っく、必ず解析してみせる……!」


息を切らしながらも一気にまくし立てる。

自分たちが持ち帰った値千金の情報を叩きつける。



489: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 17:03:19.44 ID:SwC35kKDO

しかし、それでも削板は動かない。


ステイル「―――どけよ!! 超能力者!!」


憤怒の形相になりながら弱々しい渾身の力で、ステイルは削板の左足を握った。


ステイル「今までボクがどれだけこんな展開を待ち焦がれていたと思っている!!
     彼女の敵にならず、彼女だけのヒーローになってかっこよく彼女を救い出す!! そんな都合のいい展開を!!」


ゴボリ、とステイルの口から血の塊が吐き出される。

それでも彼は叫ぶことをやめない。


ステイル「ゲホッ、ゼェ、ボクのこの手で、彼女を救うんだ!! 彼女のために生きて死ぬと誓ったんだ!!
     ようやく悪役から主人公になれるんだよ!! 手を伸ばせば届くんだ!! ボクの安い命1つで救えるんだ!!
     彼女はもう苦しまなくていいんだ!! 彼女はもうこれ以上死ぬ必要はないんだ!! 彼女は!!! 救えるんだ!!!」



490: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 17:04:36.77 ID:SwC35kKDO





ステイル「だから……」


ステイル「だからどいてくれよ……超能力者……」






491: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 17:06:34.86 ID:SwC35kKDO

ふぅ、と削板は軽くため息をついた。


削板「俺もまだまだ修行が足りんな」


ガシリ、とステイルの右腕を掴み、引き起こす。


ステイル「ぐああっ!!」


あまりの激痛にステイルは大声をあげる。

満身創痍の身体を無理やり動かせば全身に痛みが走るのは当然だ。

だが、削板はそこからは丁重に、敬意を持ってステイルの腕を自身の首に回した。


ステイル「ハァ……ハァ……?」

削板「お前ほどの根性の持ち主を根性なしだと思いこむとは」


そして、そのままインデックスのもとへと歩いていく。

超能力者が魔術師に肩を貸し、共に歩んでいく。

科学と魔術が交差した瞬間だった。


削板「たがな、インデックスに謝りもせずに死んでいくなどという根性のない真似は許さん。
   ちゃんとインデックスに頭下げて謝れ! 今から何をするのか知らんが、根性で生き延びろ!! 魔術師!!!」

ステイル「……ハァ……ハァ、っ上等だ!! 超能力者!!!」



492: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 17:07:28.33 ID:SwC35kKDO



冥土返し「盛り上がってるところ悪いんだけどね?」


ヒョコ、と削板とステイルの前にカエル顔の医者が現れた。


削板「先生……?」

ステイル「……? 誰だい? キミは」

冥土返し「ボクかい? ボクは医者だね?」


瞬間、ステイルの表情が変わる。


ステイル「医者だと!? キミたちは彼女をこの街の医者に診せたのか!?」

削板「あ? ああ。それが

493: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 17:09:06.69 ID:SwC35kKDO

ズドン!! という音が後方から聞こえた。

ズザザザザザ、という音が削板たちのすぐ後ろで止まった。

振り返ると神裂の突進を横須賀が腰を落として左肩を神裂の腹に入れる形で止めていた。

おそらくはずっと後ろで神裂を止めようとし、ここまで押し切られたのだ。


横須賀「~~~っ!! これ以上俺の身体を酷使させてくれるな。いい加減限界だ。」

神裂「だったら大人しくしててください!!」

横須賀「ふざけるな!!! テメェ今先生に何しようとしやがった!!!」


よくよく見ると、神裂は手に刀をかけていた。

それを横須賀が肩と胸を使って抜かせないようにしていたのだ。


ステイル「ええい放せ!! やはりキミたちにインデックスを任せたのは間違いだった!!」


次いでステイルが削板を振り払おうと暴れだす。


削板「お、おい! なんだってんだ!」

ステイル「キミは彼女が何者か理解していないのか!?
     10万3000冊の魔導書を記憶した脳を持っているんだぞ!? それをこの街の医者に診せればどうなるか分かるだろう!!
      貴重なサンプルとして脳を奪われ!! 知識を吐き出すための存在として半永久的にホルマリン漬けにされるのが関の山だ!!」

削板「なっ、先生がそんなことするはずないだろ!」

ステイル「そんな確証がどこにある!!
     魔術を知りもしないこの街の医者が目の前に広がる未知の知識の山を見て何もしないはずがないだろう!!」



494: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 17:10:43.49 ID:SwC35kKDO

冥土返し「ちょっと失礼?」


ぐちゅり、とカエル顔の医者がステイルの左腕の断面に指を突っ込んだ。


ステイル「ぐわあああ!?」

神裂「ステイル!」

削板「お、おい、先生!?」


ステイルが叫び、神裂が案じ、削板が困惑する。

しかし、それらをすべて無視して【冥土返し】は真剣な表情で触診を進めていく。


冥土返し「ふーむ、キミたちはどうやら慌ててここにきたようだね?
     身の回りにあったモノに魔術的な意味を持たせて回復魔術を行い、応急処置を施したのかな?」

ステイル「!?」

神裂「えっ……」


495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 17:12:40.60 ID:SwC35kKDO

冥土返し「イヤ、応急処置にしては精度が高すぎる……これは自分でかけたのかい?」

ステイル「……」

神裂「……いえ、私と、私の仲間が……」

冥土返し「そう……ああ、そうだったね。日本には迫害を逃れるために身の回りのモノを使って魔術を行う
     魔術結社が400年もの間存在しているとか。たしか結社の名前は『天草式十字凄教』。キミはその構成員の1人ということかな?」

神裂「はい……」

ステイル「キミは……魔術を……?」

冥土返し「ボクは患者を救うためならどんな知識でも吸収する。
     ……魔力を練るのがド下手なのと、科学の方が無理なく患者を救えると信じているから科学医療しかしないけどね?」


困惑する魔術師2人に対し、【冥土返し】はにっこりと笑ってみせた。


冥土返し「さっきのオペではルーンの周りにメスを入れるところまでは問題なかった。
     つまり、切除の瞬間だけさっきのように彼女の暴走を抑えれば彼女の魔術を科学的に解ける。
     切除の段階だけなら、ボクは最速で2分で済ませられる。
     とはいえ、ボクはただの脇役だ。キミたちが彼女を救う。その救出劇を、どうかボクにも手伝わせてくれ」


そう言って【冥土返し】は2人の魔術師に深々と頭を下げた。



496: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/13(土) 17:15:15.39 ID:SwC35kKDO

神裂「……」

ステイル「……答えてくれ」

冥土返し「うん?」

ステイル「彼女はもう、記憶を消さなくて済むのか?」

冥土返し「ああ」

神裂「……うぅ」

ステイル「ボクたちは、もう、彼女の記憶を消さなくて済むのか?」

冥土返し「ああ」

神裂「うぅぅ、ヒッグ、うあああ……」

ステイル「ボクたちは、もう、彼女を、殺さなくても、いいのか?」

冥土返し「ああ」

神裂「うあああああ、グズッ、うあああああああ」

ステイル「彼女は、救われるのか?」

冥土返し「ああ。約束する」

神裂「うわああああああん!! うわああああああああああ!!」

ステイル「ああ……! よろしく、お願い、します……!!」




521: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 21:59:15.05 ID:Ru06+pUDO

-学園都市、第七学区『窓のないビル』



冥土返し『よくも適当なこと言ってくれたね? アレイスター』

アレイスター「はて、なんの話だ?」

冥土返し『キミを信用して執刀してみたらえらい目に遭った。危うく死人が出るところだ』

アレイスター「だが、結果として死者は出ていない。万が一のことも伝えたはずだが?」

冥土返し『結果論だね?』

アレイスター「幸運を一手に受け続ける【聖人】が削板軍覇に諭され、真相を知り、
       『【禁書目録】の記憶消去』でなく『【禁書目録】の救済』を望み続けた。
       この結果以外は起きえない。もしも現場に『幸運をも消し去る何か』があったら話は別だが」



522: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:01:12.82 ID:Ru06+pUDO

冥土返し『……これもキミの『プラン』のうちかい?』

アレイスター「ああ、もちろん」

冥土返し『……ボクは患者の望むモノはなんでも用意する。
     だが、その望みが他の患者を害するのであれば、キミと対立しなければならない。
     たとえば、今回のような『プラン』なんかはボクとしては認められない範囲だね?』

アレイスター「何を言う。今回の件はこの段階に限定すれば数ある『プラン』候補の中でも最小限の被害、最大限の利益だ。
       誰も記憶を失わず、誰も死んでいない。加えて、全員が全員救われた。他の『プラン』ではこうはいかない」

冥土返し『これが最善だったって言うのかい?』

アレイスター「いかにも


冥土返し『……いいだろう。だが、さっき言ったコトを忘れないでほしいね?
     もしもキミの『プラン』がボクの患者に大きな実害を与えるようなら、ボクも相応の対応をとる。いいね?』


523: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:02:45.20 ID:Ru06+pUDO

<ブツン


アレイスター「……とはいえ、【聖人】が強く望んだ願いは『【禁書目録】の救済』のみ」

アレイスター「科学・魔術の両サイドで人的被害0という数字は、実際は『プラン』を大きく上回った」

アレイスター「相変わらず私の『プラン』の上をいく男だ」

アレイスター「……Level5【幻想殺し】【虚数学区】『AIM拡散力場』……。
       中でもLevel5の序列は『プラン』における重要性の度合いをも表している……が」

アレイスター「第七位削板軍覇はむしろ『プラン』の後にこそ必要だ」

アレイスター「すべてを破壊し、すべてを創造した世界で、ヒトが生きていくチカラ」

アレイスター「すなわち『根性』。……どこまでヒトが絶望に逆らえるか。
       そして、どこまでヒトに可能性があるのか。『プラン』を進行させるとともに見させてもらおう」




524: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:05:16.65 ID:Ru06+pUDO

-英国、???



ローラ「あらあら、英国王女に騎士団長」

エリザード「……」

騎士団長「……」

ローラ「【王室派】と【騎士派】のトップが揃ってかようなところにまで見舞いに来てくれるとは。身に余る光栄なり」

エリザード「……」

騎士団長「本当に見舞いに来たと思っているのか?」

ローラ「……」

騎士団長「【禁書目録】と『遠隔制御霊装』の2つが科学サイドの総本山、
     【最悪の魔術師】が潜伏している可能性がいちばん高いところの手に渡った。
      これがどれだけの失態で、どれだけ英国に不利益で、どれだけ科学と魔術のバランスを崩すか、分からぬ頭ではあるまい」

ローラ「……」

エリザード「それにな、たとえ当世一のルーンの天才と【聖人】を同時に相手取り、
      『天草式十字凄教』が秘宝まで持ち出そうとも、お前が『ランベスの宮』で敗北するなんてことはあり得ないんだよ」

ローラ「!」

エリザード「責任問題どころの話じゃない。お前は『わざと』敗北し、魔術サイド全体を危険においやったんだ」


525: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:07:09.59 ID:Ru06+pUDO

ローラ「……それで? いったい何が望みなりや? 私の職務的な首? 私の物理的な首? 両方かしら?」

騎士団長「いい覚悟だ」

エリザード「待て待て騎士団長」

騎士団長「……はっ」

エリザード「まったく。別にお前を葬るつもりなんかありゃしないさ」

ローラ「なに?」

エリザード「以前、私が時の内閣の行き過ぎた『懸け橋外交』を御し切れず、中東の混乱を招いた。
      その時、お前は私がある事実を黙認することを条件に私の退陣を追及しなかった。その借りを意趣返しで返そう」

騎士団長「我々【騎士派】は反対なのだがな。王女の寛大な処置に感謝しろ」

ローラ「……本当なりや?」

エリザード「【清教派】にお前以上の手腕の持ち主がいるのか? この非常事態に対処できる人間が」

ローラ「……」

エリザード「それに、まあ、なんだ。私とて人の親だ。お前の気持ちも分からなくはない」


526: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:09:51.17 ID:Ru06+pUDO

ローラ「……そう。して、条件は?」

エリザード「なに、簡単だ。学園都市側から請求書がきてる。コレを全部【清教派】が負担しろ」ピラッ

ローラ「請求書?」

エリザード「学園都市で起きた戦闘での被害総額だそうだ。即払いを希望してる。
      えー、ビルの壁、ビルの窓、ビル内の備品、ビルに入ってた企業の業務上の損害金、コンクリート道路延べ60m×10m分、グラウンドの修繕費、
      医療機器多数、【禁書目録】の治療費、学園都市生徒の治療費、ステイル神裂両名の治療費、高性能義手義足、その他諸々に対する慰謝料、etc……」

ローラ「」

エリザード「はー、やはり学園都市製の医療機器なんかは高価だな。
      見ろコレ、被害総額全部あわせれば地方都市の上半期予算くらいあるぞ」ヒラヒラ

ローラ「こ、この、何が寛大な処置だというの!? 【清教派】を弱体化させる魂胆が丸見えなりや!?」

騎士団長「十分寛大で、おまけに幸運な数字だ。報告では『竜王の殺息』が空に向かって放たれたという。
     これで学園都市製の衛星か何かに『竜王の殺息』が直撃していたらこんな数字では済まなかったぞ」

エリザード「ま、もしかしたら我々には言えないような衛星に直撃していたかもな。
      それに安心しろ。ちょっとくらいなら国家予算で立て替えてやらんこともないぞ」

ローラ「……それで【清教派】から優位に立ちけると?」

騎士団長「これだけのコトを起こしておいて何を言っているのか」

エリザード「どのみち、こちらの切り札が学園都市にある段階で学園都市と不仲になるのは非常にマズい。
      多少の無茶は道理を引っ込めてでも通さんとならん。
       おそらく向こうもそれを見抜いた上で実際よりも大きい金額をふっかけてきてるな。頭のいいヤツだよ」

ローラ「……見抜いているのはお前の思惑もだろうに」

エリザード「お? 何か言ったか大戦犯!」

ローラ「分かりにけり。3割を立て替えてくれるならば払いたむる」

エリザード「そうかそうか。いい判断だ!」

騎士団長「……では、交渉成立ということで」

ローラ「ええ」

エリザード「じゃ、達者でな! 養生しろよ!」


527: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:11:01.21 ID:Ru06+pUDO

<バタン


ローラ「……やれやれ、これでしばらくは【王室派】の言いなりなり」

ローラ「……人の親、か。ふふっ、申してくれる」

ローラ「あの子が自由になれる可能性があるのなら……
    あんな姿になってもあの子を救わんとしてくれる友がいるなら、封じていた情も湧くというもの」

ローラ「【清教派】のトップである前に、私も人でありにける、か」

ローラ「ねえ、かわいいかわいい私のインデックス」



528: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:16:47.71 ID:Ru06+pUDO

-学園都市、第七学区とある病院



時刻は昼過ぎ、第七学区にあるとある病院のとある病室のベッドの上で、身体にチューブやコードをつけられた右足と左手がない人間がもぞりと動いた。


ステイル「う……」


それと同時に手足が片方ずつない人間――ステイル=マグヌスはうっすらと目を開ける。


神裂「ステイル! 起きましたか!」


彼を見舞いに来ており、近くの丸イスに腰をかけていた神裂火織は少し驚いたように、そして安堵したように声を上げた。


ステイル「神裂……。……そうだ! 彼女は! っつ!」


ガバリ! と掛け布団をはねとばして起き上がろうとすると同時にステイルは顔を歪める。

未だに完治していない身体を急に動かしたせいで全身に激痛が走っていた。


神裂「落ち着いてください! 彼女なら無事です! 無事ですから!」


その様子を見た神裂が慌てて丸イスから立ち上がり、ステイルを押さえ込む。

押さえ込むことで余計に激痛を与えることになるが、このまま身体を起こさせるよりはマシだと判断したのだ。


529: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:18:07.62 ID:Ru06+pUDO

そして、神裂の言葉を聞いた瞬間、ステイルの動きがピタリと止まった。


ステイル「……本当かい?」

神裂「ええ。少し入院しましたが、とうの昔に退院してます」


うなずきながら神裂が答える。

その答えに嘘はないと確信すると、ステイルは全身から力を抜き、すべてをベッドに預けた。


ステイル「よかった……」


心から安堵した表情を浮かべるステイル。

それを見て神裂もホッとしたように微笑み、掛け布団をステイルにかけ直してから丸イスに再び腰を掛けた。



530: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:19:51.90 ID:Ru06+pUDO

ステイル「……ボクはどれくらい眠っていたんだい?」

神裂「ざっと一週間ほど……あの医者曰く、疲労とダメージがあり得ないほど蓄積されていた、と」

ステイル「そうかい。その間に『必要悪の教会』の追っ手は? 彼女には彼らがついているから大丈夫だとは思うけど……」


今回の一件で『必要悪の教会』はおろか『イギリス清教』からも追放される身になったことは間違いない。

ステイルと神裂がやったことは完全に反逆罪だ。

となれば、いつ『イギリス清教』の対魔術師用の実働部隊である『必要悪の教会』が2人を捕らえにくるか分からない。


神裂「今のところは特に……。あの日、彼女は私たちの予想以上に大暴れしていたみたいです。
    さすがに表向きは隠ぺいされてますが、この街の上層部は事情を把握しているようです。
    あの医者の話ではすでに上層部が『イギリス清教』と『英国王室』にクレームをいれたとか。
    その状況でさらに魔術サイドの兵を投入すれば学園都市との関係の悪化は必至です。しばらくは向こうも様子見かと思われます」


イギリスにとって友好関係にある学園都市との関係をこじれさせるのは好ましくない展開である。

おまけに【禁書目録】が『遠隔制御霊装』で操れる状態で学園都市にいるのだ。

イギリスの人間が学園都市で散々暴れた上にさらに学園都市で暴れるとなれば学園都市も黙ってはいない。

【禁書目録】を人質として使うことも、場合によっては無理やり兵器として使うこともできるのだ。



531: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:20:57.90 ID:Ru06+pUDO

ステイル「……なるほどね、うっすらとした大局は理解したよ。
      しかし、一週間か。それにしては一緒に行動していたキミはピンピンしてるみたいだけど」

神裂「私も入院しましたよ? すでに退院しましたが」

ステイル「ハハ、さすがは【聖人】様だ。凡夫たる自分が惨めに思えてくるよ」

神裂「……あなたが私よりも身を呈して彼女を救った。そう捉えることはできませんか?」

ステイル「ああ、ならそういうことにしておこうか」


と、ここまで話してきて神裂はふいにステイルに違和感を覚えた。


神裂「……なんだか少し明るくなりましたか?」


先ほどから皮肉っている割には声質も顔色も明るい。

皮肉っているというよりはおどけているという方が正しい表現だった。


ステイル「彼女が救われたんだ。暗いままでいろという方がムリだろう?」

神裂「……ふふっ、そうですね」


あまりにも納得のいく答えを受けて【聖人】神裂火織は顔と肩の筋肉を緩めた。


ステイル「ハハハ、どうやらキミも同じようだね。キミのそんな顔を見たのは久しぶりだ」



532: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:23:34.80 ID:Ru06+pUDO

ステイル「その様子だと『天草式』の面々も無事なのかな?」

神裂「ええ、全員無事にイギリスを脱出して日本に帰国しています。逃げに撤した彼らを日本国内で捕えることは難しいでしょう」

ステイル「そうか。彼らにも世話になった。いずれ礼をしたいんだけど……」

神裂「まずは身体を治してからです」

ステイル「ああ、そうだね」

神裂「科学医療は不得手ですのでこれらのチューブやコードが
    どんなものなのかは分かりませんが、あの医者が施したものならば間違いはないでしょう」

ステイル「ちがいない。ボクもかろうじて点滴が分かるくらいで他はさっぱりだけど」


ステイル(……うん? ボクは一週間寝たきりだったのだろう? その間の排泄とかはどうなってたんだ?)

ステイル(栄養接種の方は点滴だろう? 液体に養分を混ぜて補給したとして、水分はどうなる?)

ステイル(状況が状況だけに何もノドを通らなかったからそっちはいいとして、水分だけはどうしようも……)モゾ…

ステイル「」

神裂「? どうかしましたか? ステイル」

ステイル「……ボクの下腹部のあたりからチューブが伸びてないかい?」

神裂「はい? ……ええ、掛け布団で詳細な位置は分かりませんが、それとおぼしきものはあります」

ステイル「そのチューブは何に繋がっている?」

神裂「密封された真空パックのようなものですね。中に黄色い液体が入ってます。これも何かの薬用液でしょうか?」

ステイル「……数世紀前の消毒液だよ。まったく、これだから科学は……」ハァー…

神裂「?」



533: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:25:01.18 ID:Ru06+pUDO

ガラリ、と病室の扉が開かれ、誰かが病室に入ってきた。


冥土返し「おや、起きたみたいだね?」


その人物はこの都市で一番の腕を誇るカエル顔の名医だった。

白衣を纏い、いつもの柔和な顔でステイルの病室を訪れていた。


ステイル「おかげさまで。今は科学医療を満喫していますよ」

冥土返し「それはなにより。科学医療も悪くないだろう?」

ステイル「ええ、これらのチューブやコードが誰の手によってつけられたかを想像すると色々複雑な感情に駆られますよ」

神裂「?」

冥土返し「起きてすぐにそこまで喋れて精神的に余裕もあるなら大丈夫そうだね?
      ちなみに、それらをやってくれたのはボクのイチオシのナースだ。キミの担当にしたから外すのも彼女だね?」

ステイル「」

神裂「???」



534: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:26:32.58 ID:Ru06+pUDO

冥土返し「さて、ちょっと真面目に聞こうか。身体の調子は?」

ステイル「全身に鈍い痛みがある上にダルさがとてつもないですね。頭もぼんやりしてます」

冥土返し「ふむ、順調な経過、というところだね?
      一応ボクの方で診断した時、呪いの類いはかけられてないと判断したけど、専門家の目からはどうだい?」

ステイル「……、おそらくは大丈夫かと。今まで洗脳されていたことに何年も気付かなかったこともあるので自信はありませんが」

冥土返し「結構。それと、キミの右足と左手の件だけど、ボクの方で義足と義手を作らせてもらってもいいかい?」

ステイル「いいんですか? 下手すると口座が凍結されている可能性があるので大したお支払いはできないかと思いますが」

冥土返し「ああ、金銭面は考えなくていい。補助金がかなり出てるから問題ないね?」

ステイル「補助金?」

冥土返し「当然だね? キミたちは見方よっては学園都市をも救ったヒーローなのだから」

神裂「そんな、私たちが元凶のようなものですのに……現にこの街の上層部はクレームを入れているはずでは?」

冥土返し「この街の上層部にも色んな人間がいるからね? それで、作ってもいいかい?」

ステイル「ええ、それならばお願いします」

冥土返し「うん。なるべく魔術の行使に影響のないものを作ってみせるよ」



535: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:28:49.20 ID:Ru06+pUDO

ステイル「では、今度はこちらから質問です」


ベッドで横になったまま、今度はステイルの方が問いかける。

その内容はステイルがいちばん気になっていたことだ。


冥土返し「うん?」

ステイル「インデックスについて、あなたの口から聞きたい」


それはインデックスの容態。

神裂の口から安否は聞いていたが、やはり担当の医者の口からしっかりと聞いておきたかったのだ。


冥土返し「ああ、何も問題はないね? 手術は無事に成功したし、経過も良好。
      退院して普通に食事をとれるまでに回復しているよ。声の方も以前となんら変わりない」


その問いに対して、カエル顔の医者はにっこりと笑って返答した。

そして、ステイルの方も再び安堵したように笑顔になった。


ステイル「そうですか……はじめて会った時には散々疑ってしまった。
      にもかかわらず、ボクや彼女の命を救ってくれた。いくら謝罪しても感謝してもしたりません」

神裂「私からももう一度、非礼のお詫びと感謝の念を言わせてください。
    本当に申し訳ありませんでした。そして、本当にありがとうございました」


そう言って、魔術師の2人は深々と頭を下げた。


冥土返し「気にすることはないね? キミたちの判断は正しい。ボク以外の人間だったら……
      特にボクの嫌いなあの一族だったら迷うことなく彼女を文字通りの『図書館』にしていただろう」


カエル顔の医者は苦笑する。

現に学園都市には魔術師が考えるような医者や科学者が大勢いるのだ。

ヒトを人間として扱わず、実験材料や進歩のための生け贄としか見ない者たち。

しかし、そういった科学者たちがいるからこそ学園都市が周りを置き去りにして科学の最先端を走ることができるというのも事実なのだ。

魔術の存在と知識をすでに把握しており、患者を第一に考えるこの医者でなかったら、最悪の結果が待っていたにちがいない。


537: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:30:29.32 ID:Ru06+pUDO

冥土返し「それにあの時も言ったけど、彼女の命を救ったのはキミたちだね? ボクは手を貸しただけにすぎないよ」

神裂「……」

ステイル「そうですかね……」

冥土返し「そうでなければ、キミのお見舞いに来たりしないね?」

ステイル「お見舞い? 彼女がですか?」


きょとん、とステイルは呆気に取られた顔になった。

1年も追いかけ回した少女に恨まれる覚えはあっても気を使われる覚えはなかった。


神裂「……ええ、昨日彼らと一緒に来てましたよ。……あの娘は私を見るなり彼らの後ろに隠れてしまいましたが」


昨日のことを思い出し、【聖人】の顔が暗くなる。

昨日も神裂はステイルの見舞いに来ていたのだが、途中でインデックスを含む削板ら4人がステイルの病室を訪れたのだ。

しかし、神裂の姿が目に入った瞬間、インデックスは削板の後ろに反射的に隠れてしまった。

すぐに出てきたが、それでもどこか少しおどおどとしており、落ち着かない様子だった。

結局その日はステイルの容態を確認して解散となってしまったのだ。


ステイル「……それはそうだろう。ボクたちはそれだけのことをしてきたんだ。
      ボクのお見舞いに来たというのも最低限の義理としてだろう。今さら昔のような関係に戻れるなんて思ってはいないよ」


それまで明るい表情だったステイルの顔にも影が走る。

見舞いに来たのはインデックスの救出に微力ながら貢献した2人に筋を通すため。

あの連中はとにかく曲がったことが大嫌いなのだ。こういったことにはちゃんと礼を尽くしたいのだろう。

しかし、だからといって2人の罪が消えるわけではない。

昔のように仲良くなれるわけではない。

その記憶は彼ら自身が消したのだから。


神裂「……ええ。分かっています」



539: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:34:29.76 ID:Ru06+pUDO

冥土返し「いいや、分からないよ?」


柔和な笑みを崩さず、カエル顔の医者は魔術師たちの考えを穏やかに否定した。


ステイル「……分かりますよ。彼女にしてみればボクらはトラウマそのものでしょうから」

冥土返し「だが、本意ではなかった。それは向こうも知ってるはずだね?」

神裂「本意ではなかろうと事実ではあります」


しかし、魔術師たちは譲らない。頑なに自分たちの考えを曲げなかった。

というよりも、自分たちで自分たちの罪をうやむやにするのを嫌がっているようにも見えた。


冥土返し「……ふむ。なら、手っ取り早い方法があるね?」


そう言って、カエル顔の医者はクルリと魔術師たちに背を向け、扉の方を向いた。


冥土返し「おうい、いるんだろう? 入ってきてくれるかい?」


ガラリ、と再び病室の扉が開いた。


神裂「!」

ステイル「……」


入ってきたのは白ランを着てハチマキを巻いた超能力者、メガネをかけた学生服の少年、テロリストのような強面の大男。

そして


インデックス「……」


白い修道服を着た銀髪のシスターだった。



540: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:35:48.34 ID:Ru06+pUDO

原谷「……あー……取り込み中だと思ったんですけど……」

冥土返し「もうボクの用事は終わったね? このあとも予定が詰まってるから失礼するよ」

横須賀「そうか。相変わらずの激務だな。」

冥土返し「好きでやってる仕事だからね? なんの苦もないよ。それじゃ、お大事にね」

ステイル「……ええ、ありがとうございました」


最後にステイルの声を受け、カエル顔の医者はにっこりと笑ってから病室を後にした。


削板「……ようやく起きたか」

ステイル「ああ、ついさっきだよ。ボクの身体はキミたちほど頑丈にできてないからね」

原谷「あれ? 僕も入ってます?」

神裂「『竜王の殺息』を受けたんですよね? それでピンピンしているなら当然かと」

原谷「へ? ……ああ、あのビームのことですか。あんなの生身で受けてたらチリになってますよ」

横須賀「さすがに俺も同意見だ。」

インデックス「……」



541: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:37:06.85 ID:Ru06+pUDO

削板「……約束、覚えてるだろうな」

ステイル「ああ、もちろん。だからこうして生き延びてる」

削板「うし、いい根性だ。……インデックス」

インデックス「……」


スッ、とインデックスが前に出る。

それと対比して、削板らは壁ぎわに移動した。

ベッドで横になっているステイルとベッドの前で座っている神裂がインデックスと向かい合った。


ステイル「……」

神裂「……」

インデックス「……」


しばし、気まずい沈黙が流れる。

お互いに何をどこから話すべきか迷っていた。

しかし、その沈黙を破ったのはインデックスの意外な言葉だった。


インデックス「えっと……」




542: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:37:56.31 ID:Ru06+pUDO





インデックス「ありがとう。それと、ごめんなさい」






543: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:39:35.57 ID:Ru06+pUDO

神裂「……え?」

ステイル「……どういうことだい?」


神裂とステイルの表情が固まる。

インデックスの表情とその行動は2人がいちばん見たくないものだった。


インデックス「言葉の通りなんだよ。助けてくれてありがとう。友達だということを忘れてしまってごめんなさい」


心底申し訳なさそうに謝罪する。

その行為はかつてインデックスの記憶を2人が消した時に必ずインデックスが見せた行為だ。


神裂「インデックス……」

ステイル「違うだろう? キミが本当に言いたいことはそんなことじゃないだろう?」


その行為をやめさせるべく、ステイルはわざと強い口調で言い放った。


インデックス「え?」

ステイル「キミが筋を通して礼を言いたいというならボクらは甘んじて受け入れよう。
     だが、キミの本音は違うだろう? 心配しなくてもボクらは罵詈雑言を浴びせられたところで何もできやしないよ」


もはや神裂とステイルが何を言われようと覚悟ができているという心理的な面。

ほんの数メートル離れたところに【魔神】を力技で一時停止に追い込んだ一味がいるという戦力的な面。

どんな面から見てもインデックスの安全は約束されている。

建前などを言う前にいっそ本心を全部ぶちまけてもらいたい、というのがステイルの正直な気持ちだった。


544: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:40:57.80 ID:Ru06+pUDO

インデックス「……何を言わせたいのか分からないけど、さっき言ったことが私の一番言いたいコトなんだよ」


しかし、インデックスの意見はブレない。

感謝と謝罪が本心であり、建前でもなんでもない、と。


ステイル「本当にかい? なんの慈悲もなく1年もの間追いかけ回して、何年もの間記憶を消し続けた相手に恨み言の1つもないのかい?」

神裂「……」

インデックス「それは、説明もなしに恐い顔して迫ってきたコトにはちょっと怒ってるよ?
     最初から事情を説明してくれればもっと早く分かり合えたはずだし、あんな辛い思いもしなくてよかったし。
     でも、それとこれとは別問題かも。あなたたちが必死になって、そんな身体になってまで私を救ってくれたことには変わりないんだよ」


545: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:41:48.91 ID:Ru06+pUDO

ステイル「それを言うなら」

インデックス「もう! わからず屋!」


ダン、とインデックスが一歩踏み出してステイルらに迫る。


ステイル「う……」

神裂「ですが……」


そのあまりの剣幕に2人の魔術師は思わずたじろぐ。

こんな風に迫ってくるインデックスを見たのはもう何年も前で、すぐには対応できなかった。


インデックス「そもそも! 私がなにもかも忘れたと思ったら大間違いなんだよ!」



546: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:43:21.42 ID:Ru06+pUDO

神裂「え?」

ステイル「……そんなはずはない。キミの記憶は確実に消したはずだ」

インデックス「ふふん、知ってる? 脳の記憶分野には『意味記憶』と『エピソード記憶』があるんだよ」


そう言ってインデックスは得意げに脳の構造について解説をはじめる。


インデックス「『意味記憶』は知識、『エピソード記憶』は思い出について記憶してるんだよ。あなたたちがこの内の『エピソード記憶』のみ」

神裂「……?」

ステイル「そう、なのかい?」

インデックス「あなたたちは私の脳の魔導書の知識以外の記憶を消してたつもりだったんだよね?
     でも、本当にそうなら私はきっと歩き方から覚えないといけなくなっちゃう。でも、私は走って逃げることすらできた。
     ってことは、実際にあなたたちが消した記憶は『エピソード記憶』のみってことになるんだよ。
     たぶん【最大主教】は『意味記憶』の方に10万3000冊が記憶されてるから『意味記憶』を傷つける魔術を教えなかったのかも」

神裂「……たしかに。過去にあなたとの思い出を全部消した時、次に目覚めた後も日常生活は送っていました」

ステイル「だが、それがどうしたんだい? キミとボクらの思い出はボクたちが全部消した。
      キミというヒトの人となりを壊した。そんなのはもはや殺人だ。やっていいことではない。どんな事情があってもだ」




547: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:45:51.83 ID:Ru06+pUDO



インデックス「かおりは私にお箸の使い方を教えてくれた。きっとお蕎麦か何かで。
     すているは3人で外で写真を撮った時にタイマーをセットしたあとにころんじゃった。きっと慌てすぎたんだね」



神裂「!?」

ステイル「な!?」


思わず2人は身体を跳ね上がらせるほどに驚愕した。

それもそのはず。消したはずの思い出をインデックスが覚えていたのだから。


インデックス「ふふ、やっぱりね。思った通りなんだよ!」


そう言ってインデックスはこれでもかとばかりに胸を張った。


インデックス「ぐんはややぶみ、よこすかたちと生活してはじめて疑問に思ったんだよ。
     イギリス人の私がなんで教えられたこともないのにスムーズにお箸を使えるのか。
      なんで私はカメラについてちょっぴり間違ってる知識でこれまで覚えていたのか」


全員でラーメン屋に行った時、インデックスは削板・横須賀と変わらないペースでラーメンを平らげた。

全員でゲームセンターでプリクラを撮った時、インデックスはカメラについての微妙に間違った知識を指摘された。


インデックス「答えは簡単。かおりとすているが私に知識を与えてくれたから。
     ストーリーはなくなっても、2人との記憶がなにもかもなくなっちゃったわけじゃないんだよ。
     2人との記憶は私の中でしっかり生きてる。だから、私がなにもかも忘れたと思ったら大間違い、って言ったんだよ」




548: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:48:58.14 ID:Ru06+pUDO

インデックス「ね? だから2人がこれ以上気に病むことなんか……」

神裂「……違う」

インデックス「え?」

ステイル「おかしいだろう……?」


先ほどと変わらず、驚愕した表情で固まったまま、神裂とステイルは声を漏らした。


インデックス「え? え?」


その異様な光景にインデックスはたじろぎはじめる。

自分で考えた時は完璧だと思ったのだが、なにか間違えていたのだろうか。


神裂「なんで……練習した食べ物が蕎麦だと分かったんですか?」

ステイル「なんで……カメラを撮ったのも転んだのもボクだと分かったんだい?」


たしかにインデックスの考えたストーリーは当たっていた。

箸の使い方を教えたのは神裂だし、カメラを撮る時に転んだのはステイルだ。

ただ、当たりすぎているのが問題なのだ。


イギリスにいる日本人で箸の使い方まで教えてくれる者=友人であった神裂、と想像するのは分かる。

だが、なぜ箸の練習をした食べ物が具体的に蕎麦だと言い当てるコトができたのか?

箸の使い方を練習するなら、蕎麦のよりもよく練習に使われる食べ物はいくらでもあるというのに。


思い出を作るために写真を撮ったという話はした。

そのため3人で撮ったというコトは予想できる。

カメラの間違った知識からタイマーを押した人間が転んだというのは予想できる。

しかし、なぜ撮った人間がステイルだと分かったのか?

そもそも今までの人生の中で写真を撮ったと考えられるタイミングはたくさんあったはずだ。

なぜカメラについて微妙に間違えた知識を得た時がステイルらと一緒にいた時期だと特定できた?



549: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:51:21.50 ID:Ru06+pUDO

インデックス「……?」


その問いかけにインデックスはきょとんとした。

インデックスにしてみればなんとなく、本当になんの根拠もなくただそう思っただけなのだから。


神裂「あなたの先ほどの脳の仕組みの解説でも、私たちがあなたの思い出を完全に消したのは間違いないはず……」

ステイル「それなのになんで……どこに記憶が残っているっていうんだい?」


そう言われてインデックスは少しだけ考えこんだ。

そして、すぐに ニッ、と笑った。


インデックス「そんなの、決まってるんだよ!」


ドン、と小さな右の拳で自分の胸を叩く。




550: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:52:23.27 ID:Ru06+pUDO





インデックス「――――根性に、なんだよ!」






551: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:53:51.89 ID:Ru06+pUDO

インデックス「だから2人とも、ってうわあ!?」


ガバリ、ガバリ、とインデックスの親友はそろってインデックスを抱き締めた。


神裂「ヒッグ、ごめんなさいインデックス! 本当に、本当にごめんなさい!!」

ステイル「すまなかった……! ああ、本当に、グズッ、すまなかった……!!」


そして、今までため込んで懺悔の言葉すべて吐き出しはじめた。

涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして、嗚咽で声をとぎらせながら。


インデックス「な、なんで泣いてるの? そんなに泣かれたら私も……うぅ、私、私だってぇ……」

神裂「ああ、ごめ、んなさい、イン、デックス、うあああん!!」

ステイル「本当に、ボクは、グズッ、うぅ、本当に、すまなかった!」

インデックス「うわあああああん! うああああああああああ!!」




552: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:55:50.61 ID:Ru06+pUDO



原谷「……なんで号泣してんですか」グスッ

横須賀「ずばん……おでこういうどだべだんだわ……」ダー

削板「ハッハッハ!! どいつもこいつも!! 本当に天晴れな根性だ!!」


魔術師たちの和解に立ち合った面々は、ある者は泣き、ある者はもっと泣き、またある者は笑っていた。

呪われた運命にことごとくあらがい、何度絶望が訪れても決して諦めず、遂に彼らは大団円を迎えた。



仮に少しでも歯車が狂っていたらどうなっていただろうか。

もしも、インデックスがすぐにステイルに捕まっていたら。頼った医者が『木原』だったら。

横須賀がステイルにやられてしまったら。削板が神裂に倒されたら。原谷が避難した先に『歩く教会』がなかったら。

ステイルたちが【最大主教】に敗北していたら。『天草式』がかけつけなかったら。あと一本飛行機の便を遅らせていたら。

一体どんな結末を迎えていたか。

もちろん、ハッピーエンド決まっている。

どんなに逆風が吹き、絶望が現われようとも、彼らにはそんなものをものともしない気概、すなわち『根性』を持っているのだから。

この先何が訪れても、彼らにバッドエンドはあり得ないだろう。

彼らが誇るべき『根性』を失わない限りは。




553: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/23(火) 22:56:47.94 ID:Ru06+pUDO





とある根性の旧約再編


これにて終幕。

573: エピローグ 2013/07/25(木) 22:24:44.26 ID:IehFwmXDO


-第七学区、『窓のないビル』



アレイスター「……ふ、なるほど。そうくるか……」

アレイスター「『プラン』になんら影響はないと思い放置していたが……」

アレイスター「こんなイレギュラーな駒だったとは。嬉しい誤算だよ、吹寄制里」



Level5

第1位 【一方通行】 『絶対能力者計画』9900体撃破

第2位 【未元物質】 『学園都市下克上』暗部組織『スクール』結成

第3位 【超電磁砲】 『乱雑解放解決』 テレスティーナ・木原・ライフライン撃破





574: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/25(木) 22:27:33.39 ID:IehFwmXDO




第7位 【ナンバーセブン】 『禁書目録救出』 禁書目録『首輪』破壊




Special 【幻想殺し】 『対魔術師戦闘』 三沢塾入会←New!



アレイスター「まさかこのタイミングで学力向上を勧めてくるとは……」




~To be continued~