上条恭介「幻想御手?」 その2

425: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 22:35:44.21 ID:MP+sbPTio
マミ「……好きになさい」

杏子「なんかマミはうまくこいつを使ってねえな。わざわざ不利にしてねーか」

マミ「佐倉さん、想像してみてちょうだい。

   最悪半径100kmの街にワルプルギスによる被害が出るのよ」

杏子「んー、まあそうだけどさ。もっと上手く利用するというか……、

   たとえばさやかの持ってる剣の鞘が持ち主のケガを治すじゃん。

   恭介に持たせたら左手のケガも治って周りの街の人間もケガが治るじゃん」

さやか「そうだよね……」

恭介「それはいい考えだ。左手を治すついでに半径100kmの人の傷病を治すのもいい。

   キリストよろしく演奏旅行のついでに、

   世界中の人に治癒奇跡を起こしまくるのもやぶさかじゃない」

杏子「……」

恭介「でも王様の剣はそんなことのために貸してくれたのかな。

   私物化していいのか僕には分からないし、分からない内は使いたくない」

杏子「……そうか」

恭介「(スス…タン)巴さん、もうおいとまするよ。練習しなきゃ」スク…

マミ「気をつけて」

恭介「鹿目さん、お茶ありがとう。美味しかったよ」スタ

まどか「あ、どういたしまして……」

スタ スタ…


――
―    

~~路上~~


スタスタ…

恭介(ちょっと嫌な言いかたしたな。あとで佐倉さんに……)

――ヒュルルルル スコーン!

恭介「イテッッ」

コロン… ヒョイ

恭介「(サスサス)テテ……これはさやかのソウルジェム?」


引用元: 上条恭介「幻想御手?」 

426: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 22:39:44.75 ID:MP+sbPTio

――

~~マミの部屋~~


杏子「(フン…)機嫌を損ねちまったか」

さやか「いや……杏子、ありがとう。つか、ごめん。

    あいつも杏子が提案してくれたことは嬉しかったはずだけど、

    自分がそうできたらって思ってるから反発したんだと思う。あとで怒っとくよ」

杏子「気にすんな。こっちの言い方も悪かったんだし」    

さやか「(ニコ)……あたしも思いついていたんだ。

    でもあいつ変に義理堅いとこあるからさ……。

    いや、あたし自身、恭介が話したように考えて言い出せなかった」

杏子「あいつも案の定、って反応か」

ほむら「それに杏子も前に言ってたでしょう。

    条理にそぐわない奇跡を起こすと歪みが生じるって」

杏子「ま、そうだな。それだけ広範囲に影響が出るとなると、

   いま予測できなくても思わぬ災厄を招く。

   そいつを飲み込むつもりはねえんだろ、恭介は」

さやか「……ありがとう、杏子。

    それでも一度はこうして話し合って、それでやめる、ってほうがスッキリするもん」

杏子「なっ……ああたしは簡単にあいつの左手を治せるんだったらさやかもラクになるし、

   やっちまったほうがいいんじゃね、って言いたかっただけだからな!」

ほむら「それツンになってないわよ……」

杏子「う、うるさい!」

まど・マミ「クスクス…」

杏子「ほら、続き。恭介の左手の使い道を考えようぜ!

   魔力を強化するってんならあたし達のソウルジェムに使えばパワーアップできるとかさ」

QB「面白いアイデアだけど左手に載せる時間に気をつけたほうがいいね。

   ソウルジェムを輝かせている『祈り』という魔力だって増幅しすぎると、

   ソウルジェムそのものが耐え切れず爆散して君達は肉体と魂のリンクを失うだろうから」

杏子「はは、そりゃ笑えねえな。

   これだけの魔力のカタマリだからそりゃ爆発させたらすげー威力だろうけど、

   自分も巻き込まれないようにしなきゃいけねえし、

   死ななかったとしても今さら魔法少女じゃなくなったら何かと不便だよな」

QB「いや、ソウルジェムが砕ければ君たちはその瞬間に死ぬよ」

まど・ほむ・さや・マミ・杏子「え?」

427: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 22:43:45.93 ID:MP+sbPTio
杏子「何でソウルジェムが爆発するのと死ぬのと関係あるんだよ」

QB「なぜってソウルジェムは君たちの魂そのものだよ。破壊されれば当然君たちは命を失う」

マミ「この」ス

ほむら「ソウルジェムが?」ジッ

さやか「何じゃこりゃーーー!!」

まどか「(チラ)ほ、ほむらちゃん……じゃあ」ハシッ ブルブル…

ほむら「(ダキッ)か、鹿目さん……わたし達の身体は……」ギュッ… ガタガタ…

杏子「てめぇ、あたし達に何をした!?」グイッ

QB「契約時に君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変えただけだけど。

   その反応はまさか……今まで気がつかなかったのかい?

   グリーフシードを破壊されればその魂を閉じ込めていた殻を失って魔女は終わる。

   魔女にとってそうなら、魔法少女の急所はソウルジェムに決まってるじゃないか!?」

杏子「――魔法少女やめる方法ってあんのか……?」ブルブル…

QB「魔女にならずにかい?

   僕としてはそうなってほしくないけど、死んだらいいんじゃないかな」

杏子「ふざっけんな!! 今すぐあたし達を元に戻せッ!」ギュウ…ッ

QB「(ギュゥ…)無理だ。それは僕の力の及ぶことじゃない」ブラーン

ほむら「そんな……」

さやか「ちくしょう……」ピッ ウイイーン…スタスタスタ

マミ「(ハッ)美樹さん、駄目よ!」

さやか「こんな物ーーっ!」ポーン

ほむら「あっ!」フワァッ

まどか「さやかちゃん……何てことをッ」タタッ

ほむら「くっ――」サッ

さやか「」クランッ

ほむら「!?」

まどか「(ハシッ)さやかちゃん!? ねぇ、ちょっと……どうしたの?」ユサユサッ

QB「君たち魔法少女が身体をコントロールできるのは、

   せいぜい100メートル圏内が限度だからね」

杏子「こいつ100メートル以上投げたのかよ!?」ポイッ タタフワァフウウ…  バシュッ

428: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 22:47:46.61 ID:MP+sbPTio
――


~~10分後、マミの部屋~~


マミ「……」

杏子「……」

さやか「……」

ほむら「……」

恭介「…あのさ……」

まどか「上条くん。わたしたち大事な話があるから、

    悪いけどキュゥべえと先に帰ってくれるかな」

恭介「あ、うん……」

スタスタ… トコトコ ガチャ バタン…

さやか「……まどか。ありがと」

まどか「……」フリフリ…

ほむら「……はっきり言ってしまうと、わたしたちゾンビになったようなものね……」

さやか「これがソウルジェムの最後の秘密だったのか……」

マミ「美樹さん……ごめんなさい」

さやか「な、なんでマミさんが謝るんすか?」

マミ「あなただけでも契約させるべきじゃなかった。

   わたしは止めるどころかこの道にあなたを引き込んでしまったわ」

まどか「そ、それならわたしも同じですよ! マミさんだけじゃないです」

ほむら「わたしだって」コク

マミ「いえ……。あなたたちよりわたしは長く務めているわ。

   魔女にグリーフシード。魔法少女にソウルジェム……。

   こんなふうに符号していることに気づ……いえ。心のどこかでわかっていて、

   それをキュゥべえに確かめるのが怖かった。そうじゃないって逃げてたのよ……」

ほむら「マミ……」

429: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 22:51:47.17 ID:MP+sbPTio
まどか「マミさん……」

さやか「どっ――」バッ

まどか「(ハッ)っっ」

マミ「――ッ」ギュッ…

さやか「――んまいっ」シュチャッ

まどか「!?」

マミ「……?」ユル…

杏子「……だってさ」ポン…

まど・ほむ「(ニコ…)」

マミ「……」

杏子「なっちまったもんは楽しまなきゃ損だよな。まあこれはこれで便利だし。

   どうりでケガの程度のわりに痛みをあんまり感じねえわけだ」

ほむら「……ええ。戦いに適していると言えるし、魂の在りかはどうあれ、

    わたしも体調はいい。恩恵は受けてるわ」

まどか「――うん、そうだね。これはこれでよかったね」ティヒヒ

マミ「……(コク)作戦会議、続けましょうか」


~~路上~~


QB「恭介。君もショックを受けているのかい」

恭介「……魔女から分裂した使い魔が成長して魔女になるなら、

   分裂した魔女も元の魔法少女の魂を持っているということか?」

QB「どうしてそんなことが気になるのか分からないけど。

   君たち人間は、僕らと違って魂と肉体は一対一対応だから、恐らく違うだろう。

   最初にソウルジェムから孵化したオリジナルの魔女のグリーフシードにのみ、

   その魔女……元魔法少女の魂は繋ぎとめられていると考えられる。

   君たちの目に映る魔女の霊体は呪いという感情エネルギーの発露だからね。

   分裂していく魔女のグリーフシードもそれを効率的に運用すべく生成され、

   いわば呪いがコピーと自己組織化を繰り返しているに過ぎないものと推測される」

恭介「(フゥ…)……そっか。……ソウルジェムが、彼女たちの魂……」

QB「このことを告げると魔法少女たちは決まってああいう否定的な反応をする。

   余計なことをしてくれたとかね。恭介、君も芸術家に分類される人間だろう。

   それだけ繊細なら彼女たちの感情を僕に分かるように説明してもらえるだろうか」

恭介「繊細だって? ああ、繊細だとも。

   自分のことばかりでいっぱいいっぱいになって、

   人に対して無神経で傷つけるようなことを口走りかねないほどにはな。

   ああ、ごめん。でも僕に彼女たちの今の気持ちを説明しろったって、

   そんなの当事者にしか分からない。想像することしかできないんだ」

430: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 22:55:48.24 ID:MP+sbPTio
QB「ではその想像でいいから教えてほしい」

恭介「まず、限界があるにしても自分に置き換えて考えてみてくれ。

   感情がないという君にどこまで理解できるか、想像できるか分からないけど――、

   一つ僕からも問いたい。君は生まれたときからその姿だったのか?」

QB「そうだよ」

恭介「人間は違う。生まれてから死ぬまで大なり小なり成長、老化する。

   君の言うように体はもろくて、

   この左手みたいにヘタをすると一生使い物にならなくなったりもする。
  
   けどそうやってどうにも止めようもない体の変化とつきあってるからこそ、

   自己同一性そのものといっていいくらいに、

   身体ってのはかけがえのない自分の構成要因なんだ。

   自分をこの世に繋ぎとめる基礎認識と言っていいかもしれない」

QB「体の成長を止めたわけではないよ。

   あくまで魂の在りかが変わっただけで、

   彼女たちの肉体はこれから成長もするし老化もする。それは不変の事実だ。

   むしろ肉体の苦痛から精神活動を阻害されず、

   より安全に効率よく魔力を運用できるのさ」

恭介「確かに便利だろうし、急所が絞られれば安全性は高まるだろう。

   けどこの状態はこうも言えないか。

   外部からの制御で生命活動をさせられているだけのカラダだ、って」

QB「肉体に着目するならそうとも言えるね」

恭介「いま鹿目さんたちの目には、

   自分たちが生命維持装置をとりつけられた患者みたいに映ってるんじゃないだろうか。

   戦いの場においてはこの上ない効率性を発揮する反面、

   人生は効率のためにあるんだと言ったら、

   手段と目的が反対だと返す人は結構いるはずだよ。

   ことに、効率主義の人間は魔法少女になって戦いの人生と引き換えにしてまで、

   何か願いを祈ったりするだろうか。

   朝起きるたび、鏡を見るたび、事情を知らない友達と何気ないことを話題にするたび、

   彼女たちのこれからの人生に通奏低音のようにこの事実は横たわりつづけるんだ」

431: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 22:59:48.87 ID:MP+sbPTio
QB「残念だがやはり僕には理解できない。

   生命維持装置が必要なほど損傷した個体など処分してしまったほうが早いからね」

恭介「……そうだろうさ。死に近づくほど、つまりいちばん尊厳が求められるときに、

   いちばんモノみたいに扱われるんだ。……いったい僕は彼女たちに何ができる?」

QB「グリーフシードを量産し強化して彼女たちの役にたってるじゃないか」

恭介「それは君にとっては邪魔な行動なんじゃないか?」

QB「大局的には君の『幻想御手』は僕らにとっても有益だよ。

   呪いという感情エネルギーの塊を集めることもまた僕の役目だからね。

   僕からも問いたいんだが、これまでの話を聞いて僕を敵だとみなすかい」

恭介「君が魔法少女と契約してる理由は正しいし、多くの労を払っていることも聞いた。

   キュゥべえを非難はしない。でも人類の一員として、

   宇宙のために少女たちだけにその犠牲を払わせようというのは、

   君が言うのは正しくても僕が言うのは間違っている」

QB「前にも言ったように第二次性徴期の少女にターゲットを絞るのは、

   あくまで効率を求めた結果だ。たまたまそうなっただけで、

   君が責を感じることではないよ」

恭介「繰り返すけど、君がそれを言うのは間違っていなくても、

   僕がそれを認めてはいけないんだ。

   たとえば僕や、人類全体から搾取する方向へシフトするのはどうだ?」

QB「僕たちの労力に見合わないんだ。

   ただ君の同意が得られるならそれに越したことはない。

   『幻想御手』を量産できるものかどうか、データを取らせてくれるかい?」スウ…

恭介「君が触っても大丈夫なのか?」

QB「それも含めての確認さ。この1個体程度の変化なんてどうとでもなる。

   まあ、さやかの願いのため君の左腕に探りを入れたときに、

   その観測波自体が増幅される等の変化はみられなかったけどね」

恭介「じゃ、どうぞ」

ジジ…

QB「個体変化なし。観測波変化なし。

   ……というよりケガをしてる他は全くもってただの左腕としか言いようがない。

   これがなぜ願いという『祈り』を叶えるとなると作用してしまうんだろうね。

   ちょっと君のDNAを元に左腕部分をそこのベンチの上に複製させてもらうよ」

ポン

恭介「うわ!」

432: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:03:49.88 ID:MP+sbPTio
QB「大丈夫、周囲に人はいない。

   生体としての機能を維持させたままで(カパッ コロン)このグリーフシードを……、

  (トン…)……何も変化が起きないね。クローンの量産は無駄に終わる可能性が高い」フリフリ…

恭介「改めて君たちの科学技術力というのか……すごいな」

QB「この程度のことは地球上なら比較的容易にできるよ。

   ただクローンを作るまでもなくこの惑星にははじめから少女がいるからね。

   初期投資の必要がない」

恭介「……少女以外から感情エネルギーを回収してくれないか」

QB「何度言われても割りに合わないとしか答えられない。

   そもそも何十億もの数のうちの少数個体の生き死にを取り沙汰するのが分からないけど、

   少女以外にだって戦争や飢餓で死ぬ人間は大勢いるだろう?

   人類の一員ならそちらのほうから考えるべきじゃないか」

恭介「……君のいうとおりだ」

QB「魔法少女の大勢も君にとっては見も知らぬ他人だろう。

   そこまで肩入れすることはないはずだよ」

恭介「訂正するよ……僕は彼女たちが好きだ。だからできるだけのことはしたい」

QB「『好き』、か。なら仕方ないね。僕としては現状何も対応を変えようがないけど、

   なるべく君や魔法少女と友好的な関係でありたいものだ」

恭介「僕など君たちにとっては取るに足らない存在だろうに、

   こうして対話に応じてくれてることは感謝するよ。

   僕は君ほど労力も払っていないし、

   彼女たちの問題を根本的に解決することもできない……」

QB「マミたちは君が『幻想御手』を使って貢献していることに感謝していたよ」

恭介「……いったい何なんだろう、この『幻想御手』って」

QB「これはあくまで仮定の話だが、すべての魔法少女の怯えと願いが、

   バランスブレイカーとして形をとったものではないかと僕らは考えている。

   これまで幾多の魔法少女たちが祈り、それとほぼ同じ数の魔女が呪ってきた。

   すべて希望と絶望が差し引きゼロになるという枠の内でね。

   君の左手はその理を破壊する特異点というわけだ。

   しかもほむらがいた前の時間軸においての上条恭介が、

   幻想御手を有していないらしいことから、

   限定された時間軸の君にしかそれは存在しないものだともみえる」

恭介「特異点? 点だろ? 線でも面でもない。

   すべての魔法少女の延命するのに人材不足にもほどがある。

   しかも僕がやっていることと言ったら、

   かつての魔法少女たちをいまの魔法少女たちのために利用しているだけじゃないか」

QB「魔女は人間ではないよ」

恭介「…っっ」

433: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:07:50.58 ID:MP+sbPTio
QB「議論はともかく少なくとも君の周りの魔法少女はその犠牲に比して、

   より多くの呪いを集めることに成功している。結果として、

   宇宙にとっても魔法少女にとってもその寿命を延ばすことに役立っているんだ。

   それは分かるよね?」

恭介「ああ……しかし希望を願った対価として戦いの運命を背負ったのなら、

   それで十分じゃないか。なにも魔女にならなくたって……」

QB「君は魔女の否定的な側面しか見ていないんじゃないかい」

恭介「君たちのいう宇宙のエネルギー問題を解決できたり、

   ……魔法少女は魔女を倒したときに得られるグリーフシードによって魔力を回復できる。

   それ以外になにかあると?」

QB「視野をもっと広げてごらん。そうだね。一般的に市街地において、

   もっとも穢れの溜まる場所はどこだかわかるかい」

恭介「穢れって……ソウルジェムを濁らせるもののことか?」

QB「それも含むけど、ほんらい穢れとは量の多寡は別として、

   人の世のどこにでも発生するものだ。

   マミが言ったろう、穢れは絶望と言いかえてもいいと」

恭介「……歓楽街かな」

QB「そのあたりも濃度が高いけど、正解は神社や寺院、教会などの宗教的施設だ」

恭介「!?」

QB「不思議でもないだろう、同じ場所で人々が欲や執着にまみれた願い、

   自らの罪の許しを念じるんだよ。

   当の本人はさっぱりとした顔で帰っていくだろう、自分の穢れを置いていくんだから」

恭介「でもそれじゃ日本中で――」

QB「ところがどういうサイクルなのかその穢れが浄化されているんだ。

   この自浄作用の仕組みは分からない。

   だが、管理者やいわゆる信仰に篤い人々によって清掃が行き届いていたり、

   祭典が頻繁に行われているところに限るけどね」

恭介「……何が言いたいんだ」

QB「この世の穢れが最終的に行き着く先はどこか、誰によって浄化されるのかってことさ」

434: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:11:51.50 ID:MP+sbPTio
恭介「いま、宗教的施設って……」

QB「世の中の人すべてが宗教的建造物まで積極的に足を運ぶとは限らないだろう」

恭介「魔法少――」

QB「彼女たちがその魔力で打ち消せるのは呪いだよ。

   むしろ凝縮されて呪いとなる以前の穢れに対しては抵抗するすべはない」

恭介「……」

QB「ヒントを出そう。さっき場の穢れの濃度について述べたけど、

   正確にはソウルジェムやグリーフシードに集積するレベルほどに濃度が高くない限り、

   穢れは僕らにも不可視でありその検出は困難だ。

   だが魔女の出現がひとつの指標であると言える。なぜなら――」

恭介「魔女は穢れを巻き込みその魔力に変えるから、か」

QB「彼女たちは穢れを絶望として人間に植え付けるのにも使用する。

   結界まで誘導し、捕獲した犠牲者の生命力のほうが魔力への変換効率が高いのだろう。

   さて、さきほどの問いの答えはもう出たね」

恭介「魔女がこの世の穢れを浄化する存在……浄化って言えるのか?

   穢れが呪いに変わるだけだろ?」

QB「場の穢れを減少させる存在であることには変わりない。

   穢れ――絶望を撒き散らすと言っても標的はちゃんと選んでいるから、

   一度巻き取った穢れが場そのものに還元されることはないんだよ」

恭介「そうじゃなくて、呪いのほうが穢れよりパワーアップしてて危険なんじゃないか?」

QB「だからこそ、宇宙のエネルギー源のひとつになりうるのさ」

恭介「……魔法少女の、魔女化以外に……」

QB「それよりは少ないけど。穢れの溜まったグリーフシードを僕は回収するだろう?

   あれはポケットのなか、インキュベーター共有の異次元空間に保管しているんだ。

   時間をかけて、グリーフシード内の穢れがすべて呪いにまで熟成されるのを待って、

   そのエネルギーを回収しているんだ」

恭介「魔女の……元魔法少女の魂はどうなるんだ」

435: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:15:52.14 ID:MP+sbPTio
QB「それは分からない。僕の専門外だからね。

   僕らが彼女たちの身体から抜き取ったのが魂らしいこと、

   その過程で魂というものが宿り主の願いに関連する祈りを発揮すること、

   魔女化についてさえ、すべて結果を積み重ね理論づけたにすぎない。

   魂の本質や来し方行く先についてはむしろ君たち人間の専門分野じゃないのかい」

恭介「彼女たちの身体から魂を抜き出した君たちこそ知ってるはずじゃないのか?」」

QB「僕らのテクノロジーで魂を抜き出してソウルジェムの形態に変える。

   これは知的生命体の感情をエネルギーに変換する技術の応用だ。

   この熱力学の法則に縛られないエネルギーには魔力と呼ばれるべき概念が関わっている。

   希望という感情は祈りの魔力に関係し絶望という感情は呪いの魔力の大きさを左右する。

   そこまでは分かっているが、一連のプロセスを経れば人間の魂を抜きとり、

   さらにそれに形を与えることも可能だけど、

   それ以降の原理については僕らのテクノロジーをもってしても未解明であり、

   恐らくはそこに科学と魔法の境がある、という言い方が妥当だろう。

   魔法とは、また魔力とは人間の精神ないし感情と密接に関わりがあり、

   理のうちにありながら同時に理を凌駕する矛盾の存在だね。

   もっとも僕らにとっては魔法少女が魔女に変わる瞬間に、

   残骸と化そうとしているソウルジェムから放出される希望と絶望の相転移……、

   つまり僕らのテクノロジーで把握できる感情エネルギーだけ回収できればいいんだけど」

恭介「……」

436: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:19:53.15 ID:MP+sbPTio
~~その日の夜、マミの部屋~~


マミ「そんな……それでは安全を保証できません!」

詢子『巴ちゃん。親同士で話し合って決めたことなんだよ』

マミ「無謀すぎます。顔も知らない他人と肉親とでは彼女たちも……」

詢子『あんたの口からそんな言葉を聞くとはな』

マミ「……」

詢子『そこらへん、いいかげんに腹くくらないといけないんじゃないか。

   あたし達はあんたに娘の命を預けてるんだ。脅迫としては妥当なモンだろ?』

マミ「……ッ」

詢子『……あたしたちはいつ変えてもいい。あんたが――』

マミ「――いいえ、承りました。繰り返しますが、安全は保証できません」

詢子『……わかった』

437: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:23:53.67 ID:MP+sbPTio
~~ほむらの実家~~


知久『――では、くれぐれも当日はお越しにならないよう――』

ほむら母「ご返答できかねます。鹿目さん、むしろそちらが避難されるべきでは?」

知久『……はい。そうですね』

ほむら母「はっきり申し上げてあなたがた夫婦は息子さん娘さんに対して無責任です」

知久『僕らは娘が戦うために街に残ることを止められませんでした。なので――』

ほむら母「ならばどうしてわたしたち夫婦が娘のいるところへ向かうのを止めるんですか!!」

知久『勝手なお願いであることは承知しております』

ほむら母「……」

知久『……娘は小さいころから本当に手のかからない子でした。

   弟が生まれてさびしい思いもさせたのでしょうが僕らを困らせるようなことはなかった。

   そんな娘ですから……ここでいちど手を離してしまうと、

   二度と戻ってこないような気がするのです』

ほむら母「……」

知久『もしもの場合、なにとぞ娘のことをお願いいたします』

ほむら母「……娘さんにじゅうじゅう言い聞かせておいてください。

     あなたの生死がうちの娘の一生にかかわっているのだと」

知久『確かに伝えておきます。それでは、夜分に失礼しました』

ほむら母「鹿目さん」

知久『はい』

ほむら母「こちらもたびたび非礼な物言いをしてすみませんでした」

知久『そんなことは――』

ほむら母『こんど、みなさまでこちらに泊まりにいらしてください。

     ひごろ娘が世話になっているお礼をしたいので』

知久『ありがとうございます。息子がまだ小さいので妻と娘だけでもうかがえれば――』

ほむら母「そちらの都合がよければどうぞ遠慮なさらず、家族みんなでお越しください。

     主人もわたしも元気なタツヤくんと会えるのは楽しみですから」

知久『――はい。ありがとうございます』

ほむら母「お電話ありがとうございました。おやすみなさい」

知久『失礼いたします。おやすみなさい』

ピッ

ほむら母「……」

ほむら父「……ママ」   

ほむら母「……っっ」

ほむら父「……」ソッ


438: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:27:54.53 ID:MP+sbPTio
~~次の日、学校の渡り廊下~~


まどか「(チラ…)あっ、エイミー!」

タタ…

まどか「ふふ、今日も元気かな(ニコ…)」

ほむら「……」スタ…

まどか「ほむらちゃんにはまだ話してないっけ。

    前に言ってた、上条くんが助けてくれた子ってたぶんあの子なの」

ほむら「ええ。そうですね……」

まどか「?」

ほむら「――鹿目さんが魔法少女になるときに願ったことって……」

まどか「そういえばそれもまだ言ってなかったね。

    わたしはね、パパやママ、それにタツヤがずっと幸せでいられますように……、

    ってお願い事をしたの」ティヒッ

ほむら「!? そ、そう、ですか……よかった……」

まどか「?」

ほむら「あ、あの、そういえば。鹿目さんのお家では月末までのこと、どうなさるんですか?」

まどか「うん。パパとママがね……」

・・・

ほむら「……やっぱりわたしの家と同じですね。

    ワルプルギスと戦うのにしてもで危なくなったらすぐ逃げること。

    だけど鹿目さんのご家族は避難所に残られるって……危険だと分かってて」

まどか「わたし達が撃退できなければその連絡を受けて、

    大勢の人に危険を叫んで知らせるつもりだって」

ほむら「タツヤくんは……」

まどか「ママのほうのおじいちゃんとおばあちゃんの家に預けておくって」

ほむら「でも……」

まどか「『その“でも”は絶対に起こらないと約束しろ、でないと認めない』って」

ほむら「……」

まどか「それからほむらちゃんのご両親がほむらちゃんのことをすごく心配してるんだって。

    ほむらちゃんはわたしが無茶をしたらわたしが思ってるよりずっと傷つくから、

    そのことをよく考えなさい、って」

ほむら「ご、ごめんなさい……きっと母が……」

439: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:31:54.96 ID:MP+sbPTio
まどか「ううん、謝るのはわたしのほうだもの。

    でもほむらちゃんのママもパパもきっと、

    わたしが考えるよりずっとほむらちゃんのことを心配してるんだなって考えて。

    ほむらちゃんは何か言われなかった?」

ほむら「……いえ、無茶をするなとは言われましたが。

    それより当日、見滝原に来ないように言ったら、

    意外なほどすぐに聞き入れてもらえました」

まどか「心配してるけど、ほむらちゃんの考えを尊重してくれたんだね」

ほむら「そうなの……かしら…」

まどか「そうだ、一番大事なことを忘れてた。

    わたしまだほむらちゃんにお礼言ってなかったね」

ほむら「え……?」

まどか「わたしを守ろうって。そのために魔法少女になってくれたこと。

    ……ありがとう、ほむらちゃん」ニコ…

ほむら「わたし……全然守れてないよ……」

まどか「何を言ってるの。わたしがほむらちゃんにどんなに助けられてるか。

    ちょっと頼りすぎちゃってるかも……ずるいよね、わたし。

    前の時間に会ったのをいいことにほむらちゃんに無理ばっかり言って」

ほむら「たとえそうだって鹿目さんのためならかまわないよ。

    第一、わたしは隠してて鹿目さんはそのことを知らなかったんだから」

まどか「知らなかったんだから、なおさらだよ。

    前のわたしと今のわたしとじゃ聞いたことや話したことが違うはずだし、

    そのことでほむらちゃんを傷つけたこともあったんじゃない?」

ほむら「そんなことない。鹿目さんは鹿目さんだよ。かわりなんかない……」

まどか「ほむらちゃん、やさしいね。

    でもこれからそんなことがあったら一人でしまいこまないでいいんだよ。

    ……でもね、ずるいけどとっても嬉しいの。わたしのためにそこまでしてくれること。

    大好きだよ、ほむらちゃん」

ほむら「――ッ」

まどか「(コツ)ダメだな、これじゃ。わたしも頑張らなきゃ」ウェヒヒッ

ほむら「……鹿目さん。あのね」

まどか「うん」

ほむら「わたし、約束するわ。あなたが大切な人たちと一緒に笑顔でいられるようにするって」

まどか「ありがとう。ほむらちゃんも、だよ?」

ほむら「っ……」

まどか「だいじょうぶだよ、みんなで力を合わせれば。ね?」

ほむら「うん……」

440: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:35:55.81 ID:MP+sbPTio
~~ある日~~

ドカーン!

まどか「さやかちゃん!!」

まどか「だいじょうぶ!?」タタ…

さやか「おお、もう…」プスプス…

杏子「大丈夫に決まってるだろ。こいつの回復力からしたら」

まどか「でもっ!」

さやか「もうほむらとは組みたくない」

まどか「えぇ!?」

ほむら「……」

さやか「まどかやマミさんは飛び道具だから平気だろうけど、いきなり目の前で爆発とか、

    ちょっと勘弁してほしいんだよね。何度巻き込まれたことか」

マミ「美樹さんには、バット以外の武器ってないのかしら?」

さやか「(ガーン)ひどいっ。今さら遠距離に切り替えとか無理っすよ!!」

杏子「とりあえず轢かれたカエルみたいに伸びたまま話すな。

   あたしはちゃんと避けてるぞ。考えずに突っ込みすぎ」

さやか「そ、そんな! 杏子はあたしよりちょっと距離とれるじゃん!

    まどかなら分かってくれるよね?」ニギッ

まどか「いま、人のせいにしてるときじゃないよ。さやかちゃんも工夫したほうがいいと思う」

さやか「あんたもか……」ガク

ほむら「別にわたしが他の武器に変えてもいいんだけど」

さやか「な、何だその上から目線は!? もともとあんたが原因なんじゃないか!」

ほむら「上から……、って相性の問題をわたし一人に押しつけないで!」

杏子「おい二人とも。得物を動かせないなら戦術を変えるしかないだろ」

ほむら「だからわたしが他の武器を考えるって!」

マミ「暁美さん。その武器はどこから調達するつもりなの?」

ほむら「……」

マミ「魔女を狩れるほどの殺傷能力のあるもので、扱いやすい武器なんてそうそうない。

   前に魔法の使い方を提案したわたしも責任があるけど、

   今でさえけっこう危ない橋渡ってるわよね。

   ワルプルギスさえ倒せれば後のことはどうでもいいなんて考えてない?」

ほむら「……そんなこと……」

マミ「ここは佐倉さんの言うとおりだと思う。

   美樹さん、どうしても暁美さんと組むのはいや?」

さやか「いやです」

マミ「わかった。ならいい方法があるわ――」ニコッ

さやか「え?」パァ

マミ「――合宿よ!」ピッ

441: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:39:56.47 ID:MP+sbPTio
~~さやかの家~~


ほむら「というわけでよろしくお願いします」ペコリ

さやか母「いらっしゃい。気を遣わないで自分の家だと思ってね」

ほむら「ありがとうございます。お世話になります」

さやか母「さあどうぞどうぞ。いまお茶いれるから」スタスタ

ほむら「あ、おかまいなく……」

さやか「……」

ほむら「お邪魔するわね」

さやか「来なよ」スタ


~~さやかの部屋~~

ガチャ

さやか「荷物、適当に置いといて」

ほむら「えっと……いいのかしら」

さやか「合宿なんだからこうしなきゃ意味ないじゃん」

ほむら「合宿と言ってもこれじゃわたしが一方的にあなたのお家にお邪魔……」

さやか「だあっ。マミさんがこうした方がいいって言うんだから間違いないんだよ!」

ほむら「……」ポカン

さやか「…何さ」

ほむら「……いくら巴さんが言ったことでもあなたは従わないと思ってたわ。

    少なくともしぶしぶだと……なのに巴さんは間違ってない、とまで」

さやか「ああ、すっごくしぶしぶだったよ。あたし意地張ってたし。頭に血が上ってたし。

    だからマミさんは正しくて、自分は間違ってるんだって信じたの。

    むしゃくしゃするけどその先にある結論だけは正しいってわかった、決めたから、

    こうしてむしゃくしゃしながら決めたことを実行してるんだよ。

    その、何か……あんたとあたしに見つけられるように」

ほむら「(クス)そう。じゃ、遠慮なく」ドサ…

442: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:43:57.14 ID:MP+sbPTio
――


~~さやかの家の居間~~


さやか母「ねえあなたたち、ゴーヤのただの炒めととチャンプルとどっちがいい?」

さやか「チャンプルー」

さやか母「じゃあ卵買ってきて」

さやか「ただの炒めるのでいい」

さやか母「言いだしっぺでしょ。面倒臭がらずに行ってらっしゃい」

さやか「ああもう、お腹減ってるのに」ガタッ…

ほむら「……」スクッ…

さやか「(スタ)いいよ。あたしチャリ飛ばしてくるから。豆腐はあんだよね?」クルッ

さやか母「ええ。あとでほむらちゃんと食べるお菓子も買ってきていいから」

さやか「おし! じゃあほむら、適当にチョイスしとくね。行ってまいります」タタッ

さやか母「もう作り始めてるから早くね」

さやか「はーい」ガチャッ

バタン カチャリ…

ほむら「手伝います」

さやか母「いいのよ疲れてるのに」

ほむら「参考にしたいので」シャバシャバ フキフキ

さやか母「そうかぁ。ほむらちゃんはいいお嫁さんになるね」

ほむら「は、はぁ……」

さやか母「それじゃあ(コト ドサッ… ジャババ… ガチャ パシ カパン)、

    (カタン)ここにお豆腐を小さくちぎって入れてくれる」

ほむら「はい。(チョイ)このくらいでいいですか」

さやか母「そうそう。ひと口の大きさでね」サッサッサッ

ほむら「わかりました」チョポ チョポ

さやか母「最近あったかくなってきたわねえ」タン タン クリクリ

ほむら「そうですね。夜でも過ごしやすいくらい」チョポ チョポ

さやか母「毎年ね、ツバメが巣を作ってるお家があるの。

     その前を通るときに見るのが楽しみで」トントントン

ほむら「わかります。ヒナがたくさん顔を並べて待ってたり。

    お父さんお母さんも上手く飛んでエサを与えてるし。

    次はどうしましょう」チョポ

さやか母「(トポポポ… カチッ)それじゃあー? お味噌汁、たまねぎも入れよっか」ゴソ

ほむら「じゃがいもとわかめのですね……おいしそう」

さやか母「やっぱり二人だとはかどるわ。そこのお肉、食べやすく切ってくれる?」トン

ほむら「はい」ビリ モソ トン

443: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:48:16.23 ID:MP+sbPTio
さやか母「……そのツバメの子たちが最近電線の上に止まるようになってね。

     相変わらずそこで親からエサをもらってるんだけど」ムキムキ

ほむら「(スッ スッ)ああ、そういえばそういう時期なんだ。

    早くちゃんと飛べるようになるといいですね……」

さやか母「(トントントン)ええ。……あの子とつきあってると疲れるでしょう」ボロボロ

ほむら「はい……?」スッスッ

さやか「ほら、思い込みが激しいしすぐ突っ走るし」トントン

ほむら「あ、いえ……。洗っていいですか」

さやか母「ああ、ちょっと待って」ヒョイ タン タン

ほむら「わたしはまっすぐではっきりしたとこ、好きです」ジャババ ゴシゴシ ジャバッ トン タン

さやか母「ふふ。お父さんとも話すの。

    『さやかが男の子だったらいいのにな』、って」タン カチッ…

ほむら「確かに元気ですけどとっても女の子らしくて素敵ですよ」フキフキ

さやか母「(ガチャ)あら、あの子はやっぱりいい友達に囲まれてるわね。

     ほんと口ばっかりなのに」ツゥー

ほむら「そんなことは……。アク取ります?」

さやか母「お願い。(サッ ジュー…)小さいころからそうなのよ。

     そこの神棚だって『あたしん家もぱんぱんしたい!』てねだるからこしらえたのに。

     毎日のお供えは結局親に任せっきりだし」ピラ ピラ

ほむら「ああ、それは大変ですね……」スイ スイ

さやか母「今じゃテストの前くらいにしか手を合わせてる姿を見ないのよ。

     最近はお供えするの杏子ちゃんが買って出てくれるけど」ジュージュー 

ほむら「(クス)そういえば杏子……佐倉さんは?」スイ スイ

さやか母「しばらく巴さんの家に泊まるって」ジュージュー ピラ ピラ

ほむら「……すみません。まるで美樹さんのお宅を駆け込み寺みたいに」スイ スイ

さやか母「それはいいのよ、あなたたちは赤の他人ってわけじゃないもの。

     じゃがいも火が通ってるかな」ガララ パシ スッ

ほむら「(パシ)はい。(スプ)大丈夫みたいです」グツグツ

さやか母「それじゃたまねぎを入れてね」パシ ドササ ジャカジャカ

ほむら「(カタン)わかりました」パシ チョパパ

さやか母「(ジャカジャカ)……娘の大切な友達だから、

     お父さんとも力になれることがあればいつでもと話してるんだけどね。

     杏子ちゃんだけでなくほむらちゃんも、

     一人暮らしで寂しいときはいつでも来てちょうだい。お構いなしでよければ」フフ…

444: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:52:40.45 ID:MP+sbPTio
ほむら「……そう言っていただけるだけで」グツグツ

さやか母「あら、真面目な話、この年頃の友達って一生の財産よ。

     遠慮なんかしないでね?」パシ ドササ ジャカジャカ

ほむら「ありがとうございます。……さやかさんも口ばっかりじゃないというか。

    そのときそのときで真剣に考えてくれてます。お味噌入れましょうか」グツグツ クイ…

さやか母「ありがとう。(ガチャ ゴソ パタン トン)お願い。

     ……飼ってた犬だけは最後まで面倒みてたわね、あの子」ジャカジャカ

ほむら「(ジャジャー フキ)犬を……?」カパ スイ 

さやか母「(ジャカジャカ)ええ。あの子が拾ってきたの。

     本当に家族みたいによく可愛がってた。

     さやかに一番懐いてたわね」カパ ガチャ ゴソ パタン

ほむら「そうですか……」グツグツ コショコショ

さやか母「あとはわかめを。ありがとう、楽だったわ」ジャカジャカ

ほむら「いえ、こちらこそ」パシ ヌサ

さやか「ただいまー」ガチャ


――



~~さやかの部屋~~


さやか「ふぃー、食った食った」パーンパン

ほむら「ゴーヤチャンプル、ちょっと苦かったけどおいしかったわね」

さやか「それなら食べ慣れるともっと好きになると思うよ。

    最初にこの料理を教えてくれた人のだともっとおいしかったんだけどなあ」

ほむら「お母さん、料理教室に通ってたの?」

さやか「いや。近所の人が作って持ってきてくれたんだ。沖縄の人でさ。

    もっと豆腐がしっかり焼けてて、お肉がコンビーフなの。

    母さん手抜きというか手早くやっちゃいたい人だからなー」

ほむら「ならあなたが再現してみせればいいじゃない」

さやか「さやかちゃんは出されたものをおいしくいただく主義なのだ。

    ほむらも好き嫌いないんだな」

ほむら「体のために、ってしつけられたせいかしら」

さやか「そいえばほむらも作ってくれてたんだね。ごちそうさまでした」パチ

ほむら「(シャキーン!)わたしはアクとりをしていただけよ」

さやか「……」

ほむら「……」

445: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/30(金) 23:56:42.95 ID:MP+sbPTio
さやか「赤くなるようなことをどうして自分からやるかなあ……」

ほむら「そ、そうね……」

さやか「……まあ気を遣うよね。

    あたしたち仲良くないのに仲良くしなきゃいけない、

    って目的でここに泊まりに来てんだもんね」

ほむら「はっきり言うわね……」

さやか「だってそりゃ、思ったこと言わなきゃ始まらないから。

    あんたはぶっちゃけあたしに何か言いたいことってある?」

ほむら「……あなたはわたしを殺そうと思えば殺せるのになぜそうしないの」

さやか「加減ゼロかよ! どこの猛獣なんだよあたしは!?」ガーン

ほむら「あなたは強すぎる。正直言って、ちょっと怖いわ」

さやか「そっか……。なあ、ほむら。いつかあたしたちが殺し合うことってあるのかな」

ほむら「……」

さやか「魔女になったわけでもなく魔法少女どうしでさ」

ほむら「……わからない。けど……」

さやか「人ってけっこう簡単に人を殺すんだな、って思う。訳のわからない理由がそろえば。

    そういう部分ってあたしにも……多分だけどある……と思う。

    あんたも、逆にあんたがあたしより強ければ、

    あたしを殺すかもしれないってことにならない?」

ほむら「……」

さやか「だけどあたしはあんたとそうはなりたくない。殺されたくないし殺したくない。

    仲良くなれなくてもわりと好きだから、ほむらのこと」

ほむら「……わたしは……。……」

さやか「じゃあ、あたしがあんたに思ってること。

    あんたはさ……真面目だし勉強もがんばってるし、

    きっと大人になったら頭を生かした仕事についてるんだろうなあ……と思う」

ほむら「将来のことなんていまそれどころじゃないわ。

    頭なんて鹿目さんを助けられるのに必要な方法も思いつかないし。

    ……真面目だっていうのも良く言ってるくれるのは嬉しいけど、

    ただラクしてるだけよ」

446: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:00:43.61 ID:sjSXlkcCo
さやか「ほう、ラクとな」

ほむら「ええ。あなたみたいに辛いときでも明るく振る舞うとかできない。

    思ったことがそのまま顔にも行動にも出るし。

    まだ人見知りの癖が抜けずに独りでうじうじ考える、そのほうがラクで、

    人の気持ちとか空気を読んで相手の立場に立つ努力を放棄してる」

さやか「人の気持ちを考えられないやつでもないでしょ。依怙地でネクラなだけで」

ほむら「うっ…」

さやか「なんだっけ、人を心配すると書いてやさしい?

    ほんとに困ってる誰かのためになろうとか考えたら暗さも必要じゃん。

    逆に言ったら暗さがなきゃ優しくないじゃん。

    明るく積極的で前向きな子って人からもらうことばっか考えてるのが多いし」

ほむら「……わたしは優しくはないわ」

さやか「まどかを生き返らせたいと願えばいいところをわざわざ自分で守りたいとか」ハン

ほむら「ううっ……」

さやか「……まどかにしてもマミさんにしても、

    街じゅうがめちゃめちゃになってるのに自分だけ生き返っても喜ばなかっただろ。

    それくらいはあんた考えてたんじゃないの」

ほむら「ちがう。わたしはただ、

    光を差しいれてくれた人さえ無力に見送るだけの自分に耐えきれなくて……、

    情けない悔しい思いをするだけの自分を変えたかっただけ……」

さやか「(フン…)自己チューだなァ」

ほむら「……」

さやか「でもあんたの心の種火は死んでなかった」

ほむら「…」

さやか「きっとあたしの知らないいろんなことがあんたにはあったんだろうけど」

ほむら「……種火?」

さやか「なんて言ったらいいのかなぁ。(ボリボリ)
  
    あたしってバカだからさ。口が上手いヤツにはもう何度も騙されたことがあるんだ。

    でもあんたは自分の都合を隠そうとしない。そこはまず好きだよ」

ほむら「……」

447: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:04:45.36 ID:sjSXlkcCo
さやか「言葉のうえだけで、いやきっとそれ自体は人として正しい道があるとするじゃん。

    正しいから相手に反論しようにもできないでさ。

    その正しい道を人を奴隷みたいにコントロールする道具として利用するのがいる。

    そういう奴にかぎって、自分の都合は決して表に出そうとしないんだ。

    自分は欲望に忠実に生きます、って宣言してる奴のほうがまだ分かりやすいでしょ」

ほむら「そう……。でも、いちがいに言えないんじゃない。

    誰にでもバカ正直な態度を取り続けると自分のほうが危うくなるでしょう」

さやか「うん。だからまどかのママは凄いな。

    きっとあたしなんかが考えるよりずっとズルい手だって使いこなしてるはずだし。

    でもそんな自分に自分が喰われないで……種火が消えてないんだ」

ほむら「種火って、人間らしさのことかしら」

さやか「うーん、少なくとも正しい、ってこととは別のことだと思う。

    ほんとの意味での自信っていうか、何があっても揺るぎない、静かで熱いの。

    たぶん正義ともちがうんだ……。もっと個人的に、

    自分が生きる方向はこっちだって教えてくれる道しるべプラス点火~! みたいな」

ほむら「いちおうわたしにもそれがある、って買ってくれてるのね」

さやか「うん」

ほむら「ありがとう。

    でもわたしは何でもかんでもあなたに自分の都合を話してるとは限らないけど」

さやか「応とも。

    いやだから、種火イコールあたしに自分の都合を話してくれる、じゃないよ?

    あんたがいけ好かないことすりゃあたしは敵になるだろうし」

ほむら「やっぱりあなたの言ってることがわからないわ……」

さやか「そう深刻に考えなくていいよ。

    最近つくづく思うんだけど人間って変わるんだな…って。

    前はノリ良かったのに、急にツンとしたやつになったとかさ。

    おとなしい子だったのになんかある日からハッキリ物を言う子に変身したり。

    何があったのか知らないけど」

ほむら「それで?」

さやか「あ、ほむらのことじゃないよ。小学んときから知ってる他のクラスとかの子の話」

ほむら「わかってるわ」

さやか「(気難しいなぁ…)あー、だからそう言ってるあたしもあの子がいいだの悪いだの、

    勝手に決めつけてるってんでほめられたもんじゃないわけ。

    よくまどかは一緒にいてくれるよなー、って思うくらい。…だからさ」

ほむら「…? …?」

さやか「仲がいいとか悪いとか。そりゃあいい方がいいに決まってるけど。

    それより相手とどれだけ本気で関われたか、って思い出のほうがその…、

    あとになって大きい気がする。

    ぶつかることになってもそれは相手を分かろうとするからで」

448: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:08:46.66 ID:sjSXlkcCo
ほむら「…」

さやか「だからっていつもケンカ腰なのも考えものなんだけど。

    まどかはどうしたら仲良くなれるか、ってことに本気だし。

    ……それがあの子の気の弱さから来てるんだとは言いたくない。

    あの子がいちばんたたかってるところをズケズケ言うやつがいたらぶんなぐるよ」

ほむら「好きなのね、鹿目さんが」

さやか「うん。……あんたとあたしと仲が悪くなることがあっても、

    あたしがここであんたに言ったことは本当にいま思ったことだよ。

    責任はとらないけど」

ほむら「うん、分かる。……で、けっきょく種火ってなんなの」

さやか「あんたの場合、すべてがまどかに向かってるというか……」ウーン

ほむら「(コク)」

さやか「わかりやす。けど言っとくぞ。まどかはあたしの嫁になるのだ」

ほむら「旦那を取るのか嫁を取るのかはっきりしたら?」

さやか「悩むなあ。まどかはかわいいからなあ」ヒヒヒ

ほむら「まああなたが誰を好こうが勝手だけど」

さやか「そうつれないこと言わないで。参考にアルバムでも見ようではないか」スタスタ パシ

スタスタ ドサ パラリ…

さやか「ねえ、ほむらも見てくれよ。(ゴソ)お菓子でも食べながらさ」パカッ…

ほむら「(チラ)もう……そんなことしてる場合じゃ可愛いわ鹿目さん」ズイ

さやか「でしょでしょー」ビリ

ほむら「……この犬、可愛がってたんですってね。お母さんから聞いたわ」

さやか「(ポキッ…)……ああ。いい犬だったよ」スッ

ほむら「(チョイ)……そう」ポキッ…

パラ  パラ

449: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:12:47.39 ID:sjSXlkcCo
・・・

ほむら「――鹿目さんのもっと小さいころの写真ないの?」パラ…

さやか「ないよ。これが一番古いのかな」

ほむら「え……?」

さやか「あの子、小五のときにここに越してきたんだもん」

ほむら「……」

さやか「そんな顔しなさんな。

    ほら、まどかん家で見るほうがありがたみが大きいってもんよ。ね?」

ほむら「そうね……前にすこしだけ見せてもらったわ」

さやか「なあんだ。ならわざわざここで見なくてもいいじゃん」

ほむら「さやかのところなら、また違った鹿目さんの写真があると思ったから。

    でもないなら……いいわ。ええ」

さやか「よし。それなら修行に行くか!」スクッ

ほむら「修行?」

さやか「うん! ほら、山奥とかにこもってさ、

    ひたすら厳しいトレーニングとかすんの。合宿ってそういうことでしょ?」

ほむら「(ハァ…)確かに巴さんはわたしたちの信頼関係を深めろと言ったけど。

    ……山籠もりのあいだの見回りはどうするのよ。みんなに任せっぱなしにする気?」

さやか「あ、そうか……」

ほむら「これは提案なんだけど。

    魔女結界の中でならどんなに暴れようと物的被害は出ないし、人目にもつかないわ。

    あくまであなたとのペア固定のうえで今までどおり見回りに行けばいいんじゃない?」

さやか「この子も嫁にしようかな。(なるほど、そうしよう!)」

ほむら「それじゃ早速行きましょうか」パタン スクッ…

さやか「(ブブブ…ブブブ…)ん、ちょっと待って。……はい、もしもし。

    ええ、大丈夫っす。はい、…はい。じゃあ言いますよ。090…XXX5…4X31。

    …いえ、それじゃあたしたちこれから見回りに行ってきまーす。

    はい(ピッ)よし、……どこ行こうか」

ほむら「巴さんも鹿目さんも今日はお休みだから、杏子たちは見滝原を回ってるはずだわ。

    わたしたちは見滝原をざっと回ってから風見野に行ってみない?」

さやか「うん、さあ出発!」

450: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:16:48.13 ID:sjSXlkcCo
~~まどかの部屋~~


まどか「さやかちゃんたち、どんな感じでした?」

マミ「思ったよりうまくやってるみたい。声色が明るかったわ。

   さあて、こちらは順調かしらね」

ピッピッピッ…

マミ「……もしもし上条くん? 巴マミです。番号、美樹さんから聞いたの。

   今、大丈夫? 佐倉さんと一緒かしら。ええ、お願い」

杏子『マミか! 何の用だ!』

マミ「……あなたたち二人での見回り、どうしてるかなって……」

杏子『ああ、そうだとも! どうもこうもねえ! いま女と男の問題で忙しいんだよ!』

マミ「それってついさっき見回りをしていたら駅のホームから女性が飛び込んだのを目撃して、

   電車の接近に気づいた上条くんが後先考えず自分も線路に飛び込んで助けようとして、

   結局あなたが二人ともひっつかんで助けだしたところが、

   その女性が魔女の口づけを受けていて、行きがかりで身の上相談に乗っていたら、

   悪いホストに騙されてお金を巻き上げられていたっていう内容だったとか?」

杏子『当てずっぽうで適当なこと言うな!

   全然違うぞ、本人に騙されてるって自覚がねえんだよ!

   用がないならもう切るぞ!』

マミ「邪魔して悪かったわ……がんばってね」

ピッ…

まどか「……マミさん?」

マミ「ワルプルギスとの戦いに備えて今日くらいは英気を養おうと思っていたけど……、

   みんなが頑張ってるのを聞くとうずうずしてくるわね」ウーン

451: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:20:52.98 ID:sjSXlkcCo
まどか「あ、それじゃあ……いまから見回りにいきますか?」

マミ「もっと……、そうね。

   ワルプルギスの夜が来るまでに鹿目さんの必殺技をひとつ開発してみない?

   前に見せてくれたノートあったでしょう」

まどか「必殺技……、ですか…」スタスタ スッ

スタスタ… ストン…

まどか「(パラパラ…)これ……ですよね」ピタ

マミ「ええ。魔力のコスパから考えるとちょっとロマンすぎる。

   反面、この規模の魔力を最大値にもってくれば、

   今より余裕のある出力調整が可能になるわ。

   あなたの実力の底上げに貢献してくれるんじゃないかな」

まどか「あの、じつはこれやめようかな、って思ってて……」

マミ「技じたいは完成しなくていいのよ?、と最初から言ってしまうのはなんだけど。

   開発を目的とした訓練が結果的にあなたの強化メニューも兼ねて――」

まどか「ご、ごめんなさい、マミさん……」

マミ「……」

まどか「……他の方法はないでしょうか」

マミ「――この技の誤作動が怖いのね」

まどか「(ハッ)えっ…」

マミ「あなたは既に、かなり前……魔法少女になったばかりで、

   わたしにノートを見せてくれた頃から、

   いままでに時間を見つけては独りでこの技の練習を重ねてる。

   それこそ魔女の討伐に疑問を感じているときでさえ止めなかった。

   でもキュゥべえから魔法少女がやがて魔女になると聞かされたあたりから、

   その頻度がさがってる」

まどか「‥どうして……」

マミ「あなたのソウルジェムの穢れの溜め具合。

   シフトに入ってる日でもないのにけっこう魔力を消費していたり、

   戦いで消費したはずの量より明らかに濁っていたり。

   鹿目さんはあまり日常生活に魔法を使う子でもない割りにね。

   わたし達への負い目からか、回復もあまりしなかったようだし」

まどか「……」ポカーン

マミ「魔女のなりたちを知る以前から……魔法少女の仕事に疑問を持ちながら、

   そんななかで努力していたこと、尊敬するわ。

   星明かりだけの闇夜のもとでゴールも分からず駆け続けるようなものだったでしょうに」

まどか「……っっ」

452: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:24:54.77 ID:sjSXlkcCo
マミ「もういちど、やってみようよ」

まどか「…でもっ、‥でもっっ…!」

マミ「うん」コク…

まどか「何回やっても撃った矢がひとつ、自分のほうに飛んできて……。

    他のはねらった場所に当たるのに…、なんで…っ、

    あたし、みんなに当たったりしたら……っ!!」

マミ「――それは何も不思議じゃないの。

   あなたはすべての魔女を消し去りたいと願ってるから。

   ……ソウルジェムが魔女を産むなら、魔法少女を一掃すればいい。

   あなたのこころがそう選択して……、

   極論ではあるけどわたしも肯ける、ごく自然な結論よ」

まどか「でもあたし、みんなと生きたい!

    いつかは魔女にならなくちゃいけなくても……、

    だから、それまではみんなといっぱい……っっ!」

マミ「ならあなたのその想いをこの技に織り込みなさい。

   あなたの正しさが導きだした当然の結論に対抗して、

   あなたが皆とともに生きたいと希求する想いを認めさせるの。

   魔法は決して冷たい正しさだけで構成されてるものじゃない。

   祈りのもつ純粋さは決して無垢な心だけが生むものじゃない。

   矛盾を認めて、欲を認めて、それでもなお正しさから目を逸らさない。

   魔法はあなたの祈りの顕現よ。

   あなたが強く願えば、ソウルジェムはきっと応えてくれる」

まどか「……」

マミ「理論上はね。あとは実践あるのみ」スク…

スタスタ ボシュ スタスタ ソッ

まどか「(ペコ チーン)……どうやるんですか」

マミ「目のまえに実験台がいるじゃない」

まどか「…………」

マミ「安心なさい。そう易々とあなたにソウルジェムを砕かれたりはしないから。

   わたしが信じられない?」

まどか「…」フリフリ…

マミ「なら決まりね。それはそうと……ちょっと技名が長いわね……」フム

まどか「そ、そうですか?」タハハ…

453: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:28:55.66 ID:sjSXlkcCo

――

~~操車場~~


ギュオオ…… カツン ヒョイ

杏子「(スタッ)これ、頼む」トン

恭介「(コオォォ…)おつかれ。……この人の首についてた印、消えたみたいだね」スッ

杏子「(パシ)だとしても、あんたがしっかりしなきゃまた魔女に取り憑かれるぞ」

アケミ「ごめん……以前にもあんた達みたいな子に助けてもらったことがあるんだ。

    あたし、もう駄目かも……」

杏子「なんだって? ちょっと詳しく聞かせてみろ」

アケミ「うん……」

――


恭介「はあ。お話をうかがった限りその男はあなたを利用してるだけだと思うんですが……」

アケミ「会ったこともないのに悪く言わないでよ。彼が成り上がりたいって。

    いつか自分のお店を持つって夢をあたしは応援したいんだ。

    そしたら一緒になってくれると思うし」

恭介「あなたがそれで幸せになってくれればいいにしてもですよ。

   なんか今の段階でボロボロになってるのを見過ごしてる人間というか……佐倉さん?」

杏子「……ちょぉムカツク……」ギラギラ

恭介「落ち着いて。(ブブブ…ゴソ)ん? (ピッ)はいもしもし。……あ、どうも。

   ええ、大丈夫です。はい、代わります。…佐倉さん、巴さんから」スッ

パシ

杏子「マミか! 何の用だ!」

・・・

杏子「(ピッ)……」スッ

恭介「……」パシ ゴソ

杏子「――フン。それにしてもあんたも助けがいのねえ奴だな。

   別にアタシに関係があるわけじゃないけどさー、

   あんたが仕事で稼いだ金を何の苦労もせずにせしめてる男がいるってのが面白くないね」

恭介「……魔女に憑かれる心の隙というか元凶を断てれば大丈夫なんだよな」

杏子「ああ、とりあえずな。でもアケミ、って言ったか。

   あんたその男の本性と向き合う覚悟があるか?」

アケミ「……うん。あの人こと、確かめられるならそうしたい」コク

杏子「(ニヤリ…)いいだろう。あたしに考えがある。会ってみようじゃねえか、そのホスト」

454: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:32:57.79 ID:sjSXlkcCo
――


~~駅前通り~~


ガヤガヤ…

さやか「なんか二人でこう夜の街歩いてるとさ、デートしてるみたいだねっ」スタスタ

ほむら「ちょっと違うわね。

    デートの相手を今探し回ってるところって言ったほうがいいかも」スタスタ

さやか「つれないなあ、ほむらちゃん」スタスタ

ドン

さやか「あわわ、ごめんなさい! よそ見してました!」ペコ

怖いおじさん1「おお、すまんな」スタスタ

ホストB「……」ブルブル…

怖いおじさん2「(チラ)……っ」スタスタ

ほむら「怖い雰囲気の人たちだったわね」

さやか「……?」

ほむら「どうしたの?」

さやか「いや、今の人、左手だけ妙に華奢だったというか……」

ほむら「よく見てるわね、すれ違っただけで……驚いたわ」

さやか「あたしも。なんでそんなとこに気づいたんだろ……変な感じ……」

ほむら「まさかあなた、事情も知らないのにあの人たちを追おうとか考えてない?」

さやか「いや……考えてない。行こう、電車出るよ」クル スタ

ほむら「……?」スタスタ


ス…

杏子(やれやれ……)フゥー…

455: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:36:58.32 ID:sjSXlkcCo
~~河川敷、高架橋下~~


ダダダッ

バシュシュシュシュ……ッッ

マミ「くッッ」バッ

ボシュシュ

マミ「ッッ」キュルッ

ヂッッ

マミ「ぐッ!!」トッ 

フラ…

マミ「(ハッ)」クルジャキッ

パアキュウウウゥゥンンッッ……

マミ「ハァッ、ハァッ……」シュゥゥ…

まどか「マミさん、だいじょうぶですかッ!?」

マミ「(ゴソ)集中しなさい、次!!」シュッ

まどか「(パ、パシ)は、はい!」カチ フゥゥ…ゴソ キリリ…

マミ「(ポゥ…)(鹿目さん……やはり。

   美樹さんに及ばないとはいえ、潜在的な素質にはすさまじいものがあるわね……)」

ダッ


――


~~ホストクラブの事務室~~


杏子(これがこいつの履歴書か……。筆跡ついでに指紋も拝借しとくか)スッ ポゥ…


~~歓楽街、廃ビルの一室~~


ホストB「ひいいっ、や、やめろよォっ……」ビクビク

怖いおじさん1「あの女の借金代わりに払ってくれたら何もしねえよ」

怖いおじさん2「あな…お前に貢ぐために借りたんだとよ。

        だったらお前が利息の分まで返すのが筋ってモンだよなあ?」

ホストB「し、知らねえよ、関係ねえし!

     くそ、アケミのやつ俺の足を引っ張りやがって……!」

怖いおじさん1「自分の店持つんだって? その金は貯めてあるんだろ?」

ホストB「そ、そんなの車とかにさ……。

     ほら、アンタ達も男なら分かるだろ?」ニヘラ

怖いおじさん2「……男なら分かるのかもね」ボソ

怖いおじさん1「で、どうしてくれるの。

        今後きちんと稼いで返してくれるってんなら待ってやってもいいぞ。

        モチロンその分の利息もいただくけどな」

456: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:40:59.53 ID:sjSXlkcCo
ホストB「だから、俺は関係ねえって! あいつが勝手にアンタ達から借りたんだろ!」

怖いおじさん2「……ほんとうにそのアケミのために払う気ないの?」

怖いおじさん1「お前さんが払わねえとなりゃ、

        アケミちゃんの親きょうだいに押しかけるしかねえんだけどなあ。

        男なら惚れた女の家族まで泣かせたくはねえだろ、え?」

ホストB「最初から惚れてなんかいねえよ! 

     スジっていうなら家族に払わせるのがスジだろ!? 

     なんで俺がこんな目に遭わなくちゃいけねえんだよ!!」

怖いおじさん2「……」

怖いおじさん1「……」クイッ スタ…

怖いおじさん2「…」コク スタ…

ホストB「オ、オイ……。どこ行くんだよ」スタ…

怖いおじさん1「(ギロッ)」

ホストB「ひっ」ビクッ

バタン …カチャリ

ホストB「(ガチャガチャドンドン)おい出せよ、出してくれよお!!」

怖いおじさん2「……」

怖いおじさん1(佐倉さん。プランBへ移行しろ)      

457: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:45:02.49 ID:sjSXlkcCo
~~ホストクラブ~~


ニヤリ…

ホストB「ハイ! ハイ! 注目注目~~っ」パチパチパチ…… ピランッ

ホストA「どうしたんだよ突然ってそれ何?」

ホストB「絶賛キャリーオーバー中の宝くじでーす。(ササッ)

     ハイ、ここでサイトに出てる当選番号をショウさんに読み上げてもらいまーす!」

ホストA「……21」

ホストB「(ニコッ)このくじの番号にあったら言ってくれるかな?」ピラ

女性客「21……えまさか?」

ドヨ…

ホストA「8……!」

女性客「えと、8……!?」

ザワ…ザワ…

・・・

ドッ ガヤガヤ…

ホストA「うおおお8億当たってんじゃん!!」

女性客「これマジ!? 初めて見たわ!」

ホストB「(ピラッ)こんな運が回ってきたのもひとえにここにいる皆さんのおかげっす!

     ショウさん、俺ちょっと今日は調子乗っていいっすか?」

ホストA「いいよいいよ乗りなよ調子!」

ホストB「今日は全部俺が持ちます! じゃんじゃんおろしてください!」バッ

女性客「(パチパチパチ…)おおーっ。ここ来たことない友達呼んでいい?」

ホストB「どんどん呼んで! 俺を上げると思ってお願いしまっす!!」ニコッ

ホストA「俺お前は絶対成り上がる奴だと思ってたわ正直」

ホスト「いや、ショウさんにはずっと敵わないっすよー」

ガヤガヤ…

458: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:49:03.44 ID:sjSXlkcCo
――


ワイワイ ガヤガヤ…

内勤の男性「ちょっと」クイッ

ホストB「はい」スタスタ

内勤の男性「(ヒソ)おいお前、大丈夫なのかよ……」

ホストB「そうっすね。自分もちゃんとしときたいので紙、あります?」

内勤の男性「俺もそこまでは言わねえけどさ……」

ホストB「いえ。迷惑かけたくないんで、お願いします」

内勤の男性「わかったよ。悪いな。おい、ちょっとここ見といてくれ」スタスタ…

ホストB(恭介。そろそろだ)

・・・

ホストB「(カキカキ…)これでよし。金額はお店のほうで書いといてください」スッ…

内勤の男性「(パシ)本当にいいのか……つってもあんだけおろしちゃもう遅いけどな」クス

ホストB「ハハハ……、俺ちょっとトイレ行ってきます」スタ…

内勤の男性「あんま無茶すんなよ」

ホストB「ハーイ」

スタスタ…


~~歓楽街、廃ビル~~


カチャリ ガチャッ

怖いおじさん1「もう行っていいぞ」

ホストB「チクショー、何なんだよクソ……」ダダッ

ダダダッ… 

怖いおじさん1「……大丈夫ですか」

怖いおじさん2「……」


~~歓楽街、路上~~


スタスタ…

ホストB(そろそろ幻惑を解くか……路地にいったん隠れてっと)ヒョイ フゥゥ…

タタタタタタッ

ホストB「くそ、遅刻だわー」タタタッ

ヒョイ

杏子(急げよ。美しい勤労生活がアンタを待ってるぞ)チラ

スタ…

杏子(……魔法にかけられたままが幸せだったってことは、ないよな……)スタスタ

補導員「ちょっとあなた」スタスタ

杏子「(ビシッ)こんな時間までお疲れ様です!」ペコッ

補導員「はい。あなたも頑張ってねー」スタスタ

杏子(……少なくともこんな魔法を使うのが板についちゃいけねえわ、あたしも)カキカキ スタスタ

459: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:53:05.08 ID:sjSXlkcCo
~~歓楽街、廃ビルの一室~~


アケミ「……」

恭介「……君がこの辺りに詳しくて助かったよ」

杏子「このビルはたまたまさ。

   マミと一緒に戦ってたころ、ここに魔女が出たことがあってな。

   廃墟で肝試しみたいな気分で浮かれててね。

   置きっぱなしのカギを使って一部屋ごとドアを開けてはあたしだけで盛り上がってさ、

   マミにたしなめられたっけか。

   あとはマミと別れてからちょいとここらで遊んだし」

恭介「さらっとすごいことを言うね」

杏子「そうでもねえよ。何より肌に合わなかったし、マミと鉢合わせでもしたらばつが悪い。

   その頃は今みたいに魔法を使いこなせなかったってのもあるから、

   色々と都合が悪くて早々に撤退したけどな。

   いずれにしろあたしみたいなお子様には良さの分からねえ街だったってことさ」

恭介「ふーん…」

杏子「さやかに会ってからかな。なんか初心にかえったのか、

   本来の魔法が戻ってきてさ……。あ、あいつには言うなよ! 調子に乗るから!」

恭介「わかった」

杏子「(フゥ…)……アケミ、落ち着いたか?」

アケミ「……うん。もうバカバカしくて、逆にスッキリしたわ」

杏子「……あたしみたいなガキが言うことじゃないけどさ。

   誰かの幸せを願って頑張ったってことは誰もバカになんてできねえと思うよ。

   それがどんな結果に終わったとしてもさ……」

恭介「……!」

アケミ「うん、うん……。ありがとね。

    あんた達よりずっと年上なんだから、いい加減しっかりしなきゃね」

杏子「一応確認すっけど本当に借金してるってことは……」

アケミ「ない。なんかそこだけ変なプライドがあってね」

杏子「よかった。にしても人が良すぎねえか。貢いだ分くらい返してもらっても……」

アケミ「(フリフリ…)もういい。新しく出直したいから」

恭介「佐倉さん。何も盗ってきてないよね?」

杏子「ああ、アケミがそうしろつったんだから余計なことはしてねえよ。

   奴のスマホもちゃんと店に置いてきたぜ。……出直すって、これからどうすんだ?」

460: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 00:57:05.52 ID:sjSXlkcCo
アケミ「うん、もうあがるかな。地元に帰って」

杏子「そっか。あんたなら幸せになれるよ。行くなら早いほうがいいな。

   ……ここが消し飛んでなけりゃの話だが、何かあったらまた来いよ。

   あたしは相変わらず、見滝原か風見野でウロチョロしてるだろうから」

アケミ「あはは、本当に親身になってくれるんだね。嬉しい……。

    でも大丈夫。ここからはキミたちに頼らずになんとかするよ。

    あたしもあんたに負けないようにいい男捕まえなきゃいけないし」

杏子「いい男ならあんたをほっといたりはしないだろ。

   ところでこいつの彼女とはあんた、駅前ですれ違ってるぞ。

   お下げ髪のメガネじゃないほうだ」

アケミ「ああ、あの時の。そうなんだ。キミもありがとうね。役者さんになれるよ、あの演技」

恭介「いえ。半分演技じゃありませんでしたから」

アケミ「ふふ。……あのお下げの子にもよろしく伝えておいて。わたしはもう大丈夫だって。

    前にあの子とあともう一人、別の子に助けてもらったんだ」

杏子「わかった。伝えとくよ」


~~歓楽街の外れ~~


スタスタ…

恭介「あの人、また魔女に取り憑かれたりしないかな」

杏子「もう大丈夫だよ。まあ終わったこととはいえ、ロクでもねえ男がいるもんだな。

   お前みたいな人畜無害なのも考えもんだけどさ」

恭介「ははは」

杏子「……それでいいのかもしれねえな。

   下手に正しいと信じたことを貫こうとして、周囲まで巻き添えにしちまう男よりは……」

恭介「……親父さんのこと?」

杏子「……」

461: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:01:06.42 ID:sjSXlkcCo
恭介「佐倉さんは父親に対して怒ってる?」

杏子「いや。むしろ親父があたしに対して怒るのは無理もないさ。

   実際あたしは大勢の人間の心を操っちまったんだからな。

   ただ話を聞いてくれるだけでよかったのに。

   聞いたうえでならその人の意志で入信するしないでよかったのにな。

   そりゃ説教するたびに真面目に話を聞かなきゃならなくなる願いなら、

   完全に操られてるのも同然さ。

   結局、親父の説いた教えの正しさで人が集まったんだって証明はできてない。

   親父に申し訳ないし、あたしも悔しいまんまだよ……」

恭介「本当に自分の意志で集まったのかどうか分からない信者の人たちにもね」

杏子「……ああ」

恭介「――もしかして君のお父さんが人々に説いてたのって、

  『神が人を赦すように人も神を許せ。神が人を信じるように人も神を信じよ』。

   そんな教義だったんじゃないか?」

杏子「…………まさか、親父と会ったことあるのか」

恭介「いや。今の君を見ていたらなんとなくそう思ったんだ。

   だって、君は親父さんを許してる。最後まで君を信じてくれずに勝手に死んだ父親を。

   それが出来るのは一人の人間としての弱さを持った存在なんだって認めてるから……」

杏子「さあな。でも合ってるよ。親父の説教はそんな内容だった」

恭介「子どもが親から自立するように、

   どうしようもなく理不尽なこの世の中を神様のせいにしたりしない。

   神は全知ではあっても全能ではない、って。

   本部からすれば脅威以外のなにものでもない。

   神に救いを求めてすがる信者に、

   本来の教義と現実を擦り合わせた指針を与えることで成り立ってる組織なんだから。

   その財政基盤を揺るがしかねない教えを当の所属している牧師が説こうというのだから、

   神を人と対等の存在とみなすとは何事かとでも言って破門する以外なかったろう」

462: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:05:07.43 ID:sjSXlkcCo
杏子「でも親父はこうも言ってたんだ。

   『希望を持ちましょう。希望を持つことこそが大事なのです』って……」

恭介「すごいと思うよ。

   本当に何もかもすがる対象を取り払ったうえでそこにあるのが希望だというのが。

   だけど本当に信仰を持つってそういうことなのかも。

   神様が何かしてくれるから信じるんじゃなくて、

   ただ愛をもって見守ってくれるから信じるんだと。

   人はよく神様がいる証拠を出せというけど、神様がいるなら証拠なんて残さないと思う。

   だって、証拠がないのに信じるってことが信じるってことだから。

   助けてくれないのならいっそ神などいないと言ってしまったほうが楽かもしれない。

   そこは各人の捉えかた次第だと思うけど、ただ、もし神様がいるとしたら、

   証拠がないからいないと決め付けるのは悲しいことだと思う。

   それだと自立じゃなく孤立になってしまう。

   たとえこの世の親は根っからの人でなしでひどい仕打ちをするやつだったとしても、

   神様がそんな存在ではないんだ」

杏子「そう思えるのはお前が恵まれた家庭に生まれたからだろ」

恭介「ああ、そう思えることに感謝する。

   迷妄と言わば言え、改宗する気はないけど、

   僕は君の親父さんの言ってることは間違いじゃないと思うぞ。

   たとえ間違ってても正しい」

杏子「(ポリポリ…)あたしも親父に文句言うつもりはないけど。

   親父自身、最後はどう思ってたのかな……」
   
恭介「……」

杏子「あたし思うんだけどさ、

   親父って人間は信じられないくらい神と縁が薄い人間だったんだな」

恭介「結果から見たら?」

杏子「ああ。まああたしの言動は棚に上げるとしてな。

   神と縁が深くて不思議と何かにつけ助けられ幸せに導かれるような人に比べたらさ。

   同じ努力をしてても運がいい、ていうのか、そんな人間だっているだろ。

   努力の方向を間違えたんだなんてあたしは言いたくねえし、言う資格もねえ」

恭介「縁が薄いからこそ求めるんだ。いま親父さんならそう言うと思う」

杏子「(クス)なるほどね」

463: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:09:08.25 ID:sjSXlkcCo
恭介「……さて、用も済んだし場違いなとこから離れようか」

杏子「ああ。…(チラ)…――ンッ!?」ピタッ

恭介「どうした?」

杏子「まどかとマミが戦ってる」ジッ…

恭介「(ジリ…)応援に――」

杏子「いや。二人がぶつかってるんだ。‥かなり離れてんのに」

恭介「それって…、模擬戦とか?」

杏子「まどかが殺しにかかってる」

恭介「――」

杏子「それをマミが捨て身の一撃でかろうじて相殺してる。この状態が続いてんだよ」

恭介「‥そんなことまで分かるもんなのか?」

杏子「お前……何も感じないのか」

恭介「いや……ってか止めにいかなくていいの?」

杏子「…………あたしは音楽のことはわかんないんだけどさ。

   コンクールで他の演奏者と競いあってるときとか、

   ソロでオーケストラと取っ組みあってるときに他人が止めにきていいもんなのか?」

恭介「……」

杏子「そりゃ魔力の気配があったから気づいたんだけどさ。

   うまく言えねえけどそれに乗ってるもんがもっと細やかっつか、

   それでいて気を張ってねえとこの距離でも呑まれかねねえ感じがするっつか……」

恭介「……たぶん分かるよ。喜怒哀楽みたいな日常的でのっぺらした感情じゃなく、

   愛とか憎しみとか恐怖とか欲望みたいに人を捕らえる根源的な本能でもなく、

   それらを昇華させたもの。およそ生物のなかで人間だけが削り出せる何かだ」

杏子「あー…いやうん。その何かを、マミだけならともかくだな。

   まどかがすげー出しまくってんだよ。あいつあんな…へえ……」

恭介「お互い、命は大丈夫なのか?」

杏子「マミがミスらなきゃな。まどかはいったい何なんだ、これは……?

   マミがずっとぎりぎりまで追い詰められてる。んで最大級の攻撃でやっと防御できてる。

   たぶんまどかは全然考える余裕ねえだろうからそれも計算に入れながら、な」

チカッ チカッ…

恭介「佐倉さん」

杏子「(ニヤリ)……おや、ここにきたかいもあったぜ。

   さやかとほむらも悪戦苦闘して頑張ってんだもんな。

   突っ立ってないで仕事すっか」ジャリ…
   
恭介「(コク)」

スタ…

464: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:13:10.23 ID:sjSXlkcCo

~~ラーメン屋~~


さやか「うまいっ!

    いやー、杏子にはいい店教えてもらったわー」ズズズ

ほむら「そうね」ズズ

さやか「ここはギョーザも絶品なんだよ。ほむらもどう?」

ほむら「わたしはもうやめとくわ」

さやか「よし! ギョーザ1人前追加お願いしまーす!」

店主「あいよ、ギョーザ1人前ね!」ジャカジャカ

ほむら(……こんなことしてていいのかしら)ズズ 

465: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:17:10.92 ID:sjSXlkcCo
―――
――


~~数日後、ほむらの部屋~~


マミ「では、美樹さん、暁美さんコンビ結成記念パーティーを始めます!」グッ

パカパカパカーン!

杏子「(チャッ)っしゃあ、食うぞ!」

さやか「(ピッ)こら、あんた何も準備の手伝いしてなかったでしょ!」

杏子「いーや? ここに来る前にまどかのリハーサルに付きあ」モゴッ…

まどか「(ピタッ)きょ、杏子ちゃん! えへ、へへへ……」ヒシッ

ほむら「?」

マミ「(コホン)。その前に二人から成果報告と今後の抱負を語ってください」

さやか「えーと、あたしたち、まあ……ね?」チラ

ほむら「(チラ)とりあえずまとまったわ、臨機応変にいける程度には。

     巴さんも一つのユニットとしてわたしたちを使って」

杏子「(チャッ)っしゃあ、食うぞ!」

マミ「佐倉さん、そろそろ祝砲を打ち上げてもいいかしら」ニコ

ほむら「やめてマミ主にわたしが怒られるわ」

マミ「(フゥ…)言ってみただけよ。……二人とも頑張ったのね。

   今後どんな戦況が訪れるかわからないから、その言葉は心強いわ」

さや・ほむ「(ニコ…)……」

まどか「杏子ちゃん、ほら……。ごちそうの前にアレを……」

杏子「ああ。マミ、でもここさ。音が……」

マミ「(スタ…)任せてちょうだい」スッ シュルル…… フゥゥ…

まどか「あ、リボンが消えた……?」

マミ「大丈夫、思い切り歌ってくれて構わないわよ。はい」カチャッ…

まどか「(パシ…)? マミさんがマイク持ってたほうが……」

マミ「鹿目さんがずっと持って歌うのよ」

まどか「そんな……、杏子ちゃん?」クル

杏子「ああ、お前ひとりでな」ニヤリ

まどか「え、ええ~~っ!?」

ほむら「……?」

466: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:21:12.60 ID:sjSXlkcCo
さやか「ひとりじゃないぞ。ほい、ほむらも」カチャッ…

ほむら「(パシ)さやか。鹿目さんもわたしたちと……?」

さやか「(ニコッ)ごめん。あたし歌わなーい。そらっ」ポンッ

ほむら「(グイグイッ…トットット…)ちょっと……っ。(クルリッ)まさかあなた達……!?」

マミ「(ニコ…)ごめんね。美樹さんたってのお願いで……」

さやか「すまん。あたしという女はまどかを主に据えねば気がすまんたちらしいのだ……ッ。

   (チラチラッ)というわけでふたりともよろしくー」ポンポン

まどか「で、でもわたしクララさんのとこしか歌えないよ!?」チラッ

ほむら「(チラ)あ、わたしはカレンさんのパート……」

まど・ほむ「……」

さやか「はい、ミュージック、スタート!」カチカチッ


467: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:21:47.58 ID:sjSXlkcCo


Clear Sky

ClariS、作詞・作曲・編曲:丸山 真由子


468: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:26:08.88 ID:sjSXlkcCo

パチパチパチ……ッ

まどか「(クル…)……」ニコ…

ほむら「(クル…)……」ニコ…

さやか「あーもう満腹ですわ……」

マミ「あら、宴はこれからよ」

ほむら「ええ、さやか。この借りは必ず返すわ」スタスタ…

さやか「ありゃほむらさん、いずこへ?」

ほむら「ちょっと夜風に当たってくるわ。鹿目さん、ありがとう」

まどか「わたしもありがとう。ほむらちゃん、気をつけてね」

パタン… カチャッ…

まどか「ふぃ~~っ、それにしてもさっきはびっくりしたなあ」

さやか「いやいや、お二人とも息ぴったりでしたぞ。それとも嫌だったかな」

まどか「(フリフリ)わたしはいっしょに歌えて嬉しかったよ。

    ほむらちゃんはどう思ってるかわからないけど……」

マミ「それは心配しなくていいわ。彼女も楽しんでたに違いないから」

まどか「そうだったらいいんですけど」

杏子「さあ、食おうぜ!」チャッ

さやか「ほむらは待たなくていいかな?」

マミ「大丈夫でしょう。でも佐倉さん、ちゃんと残しておいてよ」

杏子「ほいほい」パクパク

469: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:30:10.98 ID:sjSXlkcCo
・・・

さやか「……こうしてるとなんかあたしたちってさ、

    会ってひと月も経ってないなんて思えないね」

杏子「月末にワルプルギスが来るってのも実感が湧かないねえ」

マミ「駄目よ、心づもりはしておかないと。そのための準備がおろそかになるわ」

杏子「そりゃそうなんだけどさ……。

   ワルプルギスを倒したとしても、いつかあたしだって魔女になる。

   そしたらまああんた達、バッサリ頼むぜ」

マミ・さや・まど「……」

杏子「だはっ! おいおいそこは互いに了解済みだろ?」

マミ「……ええ、そうね」

まどか「ねえ、キュゥべえ。誰かが『この手ですべての魔女を、産まれる前に消し去りたい』、

    って願って魔法少女になったらどうなるのかな」

QB「『すべての魔女』とは、今現在いる魔女の総数という意味かい?

   それとも、すべての宇宙、過去と未来のすべての魔女、という意味かい?」

まどか「とにかく多いほう」

QB「後者の意味での願いなら、叶うとすればたとえばこの宇宙は再編されるよりほかない。

   その子がもたらした新しい法則に基づいてね。

   文字通りすべての魔女の孵化がその子の手によって阻止されるだろう。

   無論、それだけの因果をすべてその子が受け止めることになるけどね。

   因果とはすなわち希望に始まり絶望に終わる――祈りの終着点は呪いでしかない。

   そしてまた、この宇宙に起こる現象として観測が可能とするなら、

   一つの宇宙を終わらせるほどの絶望から背負うことになった呪いで、魔女が孵化する。

   その自分自身という魔女さえも浄化して消し去ることになるね、その願いによって」

杏子「意味がわからねえぞ」

マミ「――もはや人間としての個体を保てなくなるってことよ。

   未来永劫に終わりなく、魔女を滅ぼす概念として、この宇宙に固定されてしまう。

   だって、いったんその子は他の魔法少女の子の因果、

   つまり呪いを背負い魔女として必ず孵化するわ。

   その魔女を自分自身が願いによって消し去ろう、

   いえ、産まれる前に消し去ろう、受け止めようというのだから、

   それはもう時系列も因果をも超える祈りを、いいえ、

   その子自身が祈りも呪いさえも包括する概念になるほかない」

杏子「もっと意味がわからねえぞ」

マミ「その子の人生の始まりも終わりもなくなる。

   誰もその子の存在を知る由もないし、

   その子が自分の存在を誰かに知らせることもできなくなるわね」

杏子「恐えーな、それは……」

マミ「でももしかしたら――、

   魔法少女たちにとっては語り継がれる神話上の存在になるかもしれない」

470: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:34:11.66 ID:sjSXlkcCo
さやか「神話……すか?」

マミ「ええ。

   ほら、世界のどこに伝わる神話でも荒唐無稽で想像力に満ちた世界ばかりじゃない。

   おどろおどろしかったり、欲望をむき出しにしたりの場面もあるけど、

   登場する神様や人々に思いを巡らせてみると、すごく純粋で素朴で微笑ましかったり、

   ……切なく感じられたりもするでしょう」

さやか「んー。幼稚っちゃ幼稚だなって思ったりもするけど憎めなかったりもするよね」

まどか「とても勇ましかったりもしますね」

杏子「今生きてる人たちよりも原始的でスケールがでかいのは確かだな」

マミ「そうね。今生きてる人たちよりずっと昔の人たちが……、

   きっと確かめようもなく古い時代に誰からも忘れられた世界の秘密のひとかけらを……、

   自分もやがては誰からも忘れられるせつなさを……、

   その想いのたけを振り絞ってもしかしたらきっとこんな気高さを持って、

   こんな情熱をもって、先人はその生を生ききったんだって、

   何の証拠もない真実を創りだした。

   それらが紡がれていってできたのが今の神話じゃないかって思うの」

杏子「まどかの話、魔法少女としての祈りは肯定されてるわけだな?」

まどか「うん」コク

杏子「……確かにソウルジェムが呪いで砕けちまいそうな奴が、

   いまわの際にそいつを見たとしたら安堵の表情を浮かべるだろうな。

   その光景を目にした他の魔法少女も、終わりは決して悪いもんじゃねえ、

   わかんねえけどきっと誰かが救いの手を差し伸べてくれるんだって思うだろうさ。

   ……けど、それじゃ呪いは結局どこに行くんだよ。浄化されるっつっても……」

マミ「まず魔女になりそうな子ごと、『その子』が受け止めることになる。

  『その子』という概念の一部に加えられることで魂と呪いとが分離される。

   そして魔女になるほどの呪いをそのまま魔力として消費するなら、加えられた子は、

   魔法少女のまま魔女の魔力を行使することだって可能かもしれない(ジッ…)」

さやか「な、なんすかマミさん……?」

マミ「なんでもないわ」

杏子「(フ…)すべての魔女を、か。……悪くねえな。

   (チラ)そうなったらお前も困ったりするんじゃねーか」ニヤリ

QB「確かにありえないほどの数値の因果を背負いこんだ子がそれを願ったとしたら、

   僕らの使う計算式のうえでは魔女化のさいにも期待できるという結果が出るだろうから、

   システム的に叶ってしまうだろう」

471: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:38:12.28 ID:sjSXlkcCo
杏子「つまりその願いを叶えられるやつがこの世界に存在するってことがありえねえんだな」

QB「そういうことだね」

杏子「ま、そんな願い事するやつがが今までもこれからもいないってのは確かだわ。

   まどかには悪いけどその内容からいくとさ、

   今あたしたちが戦ってる魔女だっていないってことになっちまう」

まどか「そうだね……」シュン

マミ「(ニコ)鹿目さん。そんな恐ろしい願いを叶えた子がいなくてよかったと思うわ」

まどか「……はい」

カチャ ガチャッ… バタン カチャリ

恭介「お邪魔しまーす……」

ほむら「どうぞ。音漏れの対策は巴さんがしてくれてるから」

恭介「ありがとう。素敵な部屋だね」

さやか「へ?」

スタスタ…

マミ「けっこう時間かかったわね」

ほむら「それが……」

恭介「ちょっと使い魔と一戦交えてまして」ゴト ジー… ゴソ…

杏子「お前どっか病んでんのか。そういえばお前と歩くとやけに魔女に当たる」

恭介「自分では分からないけど」キュッ…

マミ「心が弱ってるようには見えないわね。魔女に好かれる体質とか?」

恭介「それは光栄ですね」ヒラ カムッ キー… ギー… 

杏子「まあ、風見野と違って見滝原には魔女が多いせいかもしれないか」

クイ… ギーキー

まどか「わぁ……間近で聴けるんだね、上条くんの演奏」

さやか「ちょっとちょっと」

マミ「楽しみだわ。あなたが作曲したそうね」

恭介「はい。『魔法少女さやかの曲』です」

杏子「wwwwwwwwwwwwwww」

マミ「静かにしてくれる?」チラ

杏子「――わかったわかった。いいぜ、聴いてやるよ」

472: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:42:13.01 ID:sjSXlkcCo
・・・

パチパチパチパチ……

恭介「……」ペコ… ゴソ ゴト キュキュキュ…

マミ「素敵な演奏だったわ。ありがとう」

まどか「きれいな音色だったね」

ほむら「ええ」

杏子「フン。浅いっていうか安っぽい曲だったな」

マミ「上条くん、気にしないで。この子照れ屋さんなのよ」

杏子「ち、違えって!」

マミ「(スタ…)――お礼と言ってはなんだけどね。

   このリボン、あなたも持っていてちょうだい。

   一人で魔女に襲われたとき、なんとかして結び目を解いて。

   それであなたのいる場所が分かる。すぐに駆けつけるから」ス…

恭介「助かります。ありがとうございます」ハシ… ゴソ

さやか「……恭介。もう帰ろう」スッ…

まどか「え?」

ほむら「……あなたに内緒にしてたこと、怒った?」

さやか「(フリフリ…)ううん。みんなの気持ちは嬉しい。けど今ちょっといっぱいいっぱいでさ。

    先帰っちゃって悪いけど、恭介と話したいんだ」

ほむら「……」チラ

マミ「(コク)二人とも、気をつけて帰ってね」

恭介「はい。じゃ、お邪魔しました」

スタスタ… ガチャ

まどか「さやかちゃん……」スタ…

ほむら「……」

さやか「ほんと怒ってないって。むしろあんたが気を悪くしたらごめんね」

まどか「(フリフリ…)……」

さやか「あーもう、ほら」ツン

まどか「(プニッ…)わわっ」

さやか「ほむらも悪いね。せっかく一緒に用意したのに」

ほむら「気を遣わないで。事情は分からないけど、そういうときだってあるわ」

さやか「またしみいることを言ってくれるなあ」ツン

ほむら「(プニッ…)明日、ちゃんと学校来るのよ」

さやか「だから心配することないって。おやすみ! じゃなかった、楽しんで! バイ」

恭介「……」ペコ…

バタン…

473: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:46:13.99 ID:sjSXlkcCo
ほむら「……」カチャリ…

まどか「……」

スタスタ…

杏子「二人とも、さやかも言ってたろ。こっちはこっちで楽しもうぜ。

   おおかた、あいつの演奏に感動したんだろ」

マミ「あら、やっぱり認めたわね」

杏子「だから違う!」

まどか「(クスクス…)だといいんだけど。やっぱり上条くんってすごいんだね。

    左手と右手を持ち替えても弾くことができるんだもん」

ほむら「そうだね……」ニコ


~~帰り道~~


スタスタ…

さやか「(ピタ)恭介。早くアメリカに行ってその左手を治してもらおう」

恭介「ああ。突然どうした?」

さやか「――ダメだ。全然ダメ。技量がやろうとしてることに追いついてないよ。

    持ち替えてから初めてあんたの演奏聴いたけど、あんなもんじゃないよ、あんたは」

恭介「はっきり言ってくれるなあ。さやかに頼んでよかったよ」

さやか「え?」

恭介「あれだけ古今東西の名演奏を聴きこめば嫌でも演奏の良し悪しがわかってくるからね。

   今さらだけど謝るよ。

   気がねなしに批評してくれて、しかも僕の演奏がどんなものだったか誰より知ってる。

   君しか適任者がいなかったんだ」

さやか「そのためだったの、あのCDの曲をプレイヤーに入れて聴いとけって。先に言ってよ」

恭介「悪い。言えなかった」

さやか「ふん……」スタスタ…

恭介「(スタスタ…)あのさ、お詫びに治ったら――」

さやか「(クルッ)そういう気を回さないでいい! 絶対に治れ! それがお詫びだ!」クルッ スタ…

恭介「(クス)……」スタ…


474: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:46:56.03 ID:sjSXlkcCo
 
Pieces

ClariS、作詞・作曲・編曲:丸山 真由子

475: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:50:57.90 ID:sjSXlkcCo


スタスタ…

さやか「あのさ……、『死刑になりたくて人を殺した。誰でもよかった』、

    そんなことを言う人間を、あんたはどう思う?」

恭介「理由があれば人を殺していいってわけはないけど、理不尽すぎるよ」

さやか「あたしは憎かった。一人の人に死ぬほどの痛みと苦しみを与えて、

    築いてきた人生を無理やり終わらせて、残された家族に苦しみを与えて、

    その人が築いてきた周りの人との関わりを終わらせようだなんて。

    災害ですらなくて、よりもよって勝手な理由の人間だって」

恭介「……」コク

さやか「……でもあの男がそうなってしまったのはなぜなんだ、って考えて」

恭介「どんな環境で育ってきたとしてもだからって罪もない人を殺していいわけじゃないだろ」

さやか「うん。でも、それだけじゃそこで終わってしまう。

    また同じような自暴自棄な人間が通り魔になっても、

    そのコメントだけでけりがついて、いつまでたっても似た事件が起き続ける。

    だって、あの男みたいに魔女に憑かれてなくても自分の衝動だけで、

    しかも明確な理由もなく人を殺せるやつがいるんだから」

恭介「……」

さやか「……だからあたしは結局どうしたらいいのか、って考えてもわからない。

    でも、すくなくともこう考えたんだ。

    あたしはまず自分の人生をどう生きたいか考えて生きなきゃいけない。

    それと同時に、この世の中をどうしたいかを考えて生きなきゃいけないって」

恭介「世の中を……、変える……?」

さやか「(フリフリ…)結局行動に移せるか、そもそもそんなビジョンが視えるかもわからない。

     でも両方が要るんだ。

     自分のことだけじゃなくて、世の中こうあるべきで自分はどうすべきって哲学が。

     そうじゃなきゃ、明日自分が誰かに刺されて倒れたとき、

     ただのその場にいたばかりの運の悪い被害者で終わってしまう。

     世の中の、自分が起こしたものを含めた色んな因果が廻りまわって一周して、

     あたしに返ってきたものなんだとすら考えも及ばず終わってしまう。

     あたしはね……、勝手な都合の良い思い込みだって分かってるけど、

     あの人がそんな風にただの被害者として倒れたんだって思いたくない。

     良いとか悪いとかじゃなく、ささやかな行為に見えても、

     これまでがそうであったように自分の人生の総決算をぶつけた結果で、

     刺されたんだって。

     自分の大事な仕事を目の前にして心を乱したくないのに時間を割いて、

     見るからに目つきの悪い男にさえ勇気をもって諭したんだ。

     結果がどうかじゃなく、それがあの人の生き様だったんだって……」

恭介「僕はむしろ、自暴自棄な男を諭そうとしたその人を止めるべきだったんだって思う」

476: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:54:58.66 ID:sjSXlkcCo
さやか「あの人は間違ってたって言うの?」

恭介「正しいからさ。正義を信じて行動する人がいる。けど、きっと正義はその人を滅ぼす。

   それが分かってても貫こうとするに決まってるから、

   他の人間が何としてでも止めなくちゃいけないんだ。

   まず、どんな正しいことを説いたとしても現実には人を変えることは無理だ。

   誰しもそれまで生きてきたなりの考えが染みついているもんだし、

   いきなり改めなさいというのは否定してるのと同じだもの。

   自分が変えられる対象はまず自分自身だけだ、と思ったほうが生産的だよ。

   そうだな、身を以て示すというか、言ってることを実行し続けていれば、

   もしかしたら共感や賛同してくれる人が出てくるかもしれないけど。

   それには時間が必要だし、残念だけど相手を見ないといけない部分もある。

   世の中には相手の言葉が全く耳に入らない人間だっている。

   いや、果たして人間と呼んでいいのか。

   小さいころから愛情を注がれずに育ってきたために歪んだ性質をもってて、

   周囲の人間に攻撃して傷つけることしか頭にない人の皮をかぶった何か、だよ。

   とにかくそういうのには極力関わってはだめだ。

   どこにでもいい人がいるのと同じように、こういうのもどこにでもいる。

   恐らくあの男も当てはまる。

   あの亡くなった男性が君の言う通りの行動をとったのだとしたら、

   関わったことが間違いだよ」

さやか「それこそその人の生きざまを否定してるのとおんなじだよ。

    その人がその人でなくなっても生きてさえいればいいってわがままじゃん」

恭介「そうだよ。生きてさえいればいい」

477: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 01:58:59.51 ID:sjSXlkcCo
さやか「ひとかけらの自分への憐れみももたずに正義に殉じることがその人の生き方だった、

    それを生に引き止めたことで却って歪んで本人も、

    あんたも周りの誰もかれもが不幸になったとしても?」

恭介「医療的な意味で苦痛が増し長引いて、本人や家族がそう望むのは別問題として。

   正義という概念は己の内にあるものじゃなく、究極的には本人が報われるものでもない。

   自分と直接的な利害を共有しない社会的に困ってる誰かのためになることを指すだろ。

   それを行動理念にしようなんて人に比べたら僕はずっとか甘えん坊だ」

さやか「なら、あんたにその人を止める資格なんて――」

恭介「あろうがなかろうがその人の正義と同じ強さのエゴで僕は止めてみせる。

   否定してるのと同じと言われようが否定するつもりはないけど、こちらも否定させない。

   甘えん坊だからこそ僕は信じる、人生は甘いと。

   岐路に立つとき、己の意志で行き先を決めるとき。

   100%正しい選択など無いように、100%間違ってる選択もない。

   それが人生、人間ってもんだ。

   その人を止めるか見過ごすか、僕にとっては大きな岐路だ。

   大きな岐路だからこそ自分の心に従う。エゴを貫き通す。

   だから少なくとも僕は不幸にはならないね。

   ……世の中、生きていてほしい人物から先に死んでいってしまうのに比べたら」

さやか「……そっか。やっぱあたしとあんたじゃ、考え方が違うんだね。

    いや、うん。恭介らしくて好きだよ、それ」ニコ

恭介「……」

さやか「……あの人を殺した男のこともね。

    理不尽な理由でも、理不尽な人生を歩んできた者なら当然だったのかもしれない。

    仕事もお金もなきゃ死ぬか殺すかってとこまで追い込まれてたのかもしれない。

    だからってあたしも殺されたくないけど、

    そんなふうに追い込まれてる人間がいるって知ろうともしてない以上、

    あたしもあの男を追い込んだ世の中の一部なんだよ。

    確かにあんたの言うとおり、殺されるべきはあの人じゃなくて……」

恭介「……僕は君が持ってる可能性を阻まずに、引き出すことができるのかな」

さやか「えっ!?」

恭介「僕はそんな風に考えたことなかった。自分のこと、自分のための友人のこと……。

   それしか考えたことがない」

さやか「いや、いや。あんたはヴァイオリンしか能がないんだからそれだけやってりゃいいの」

恭介「(クス)そうかい」

さやか「そうさ。……能がない人間のほうがよっぽど多いんだから。

    あんたはそれを無駄にしちゃいけない」

恭介「プレッシャーに弱くてですねえ」

さやか「(フン)言っとけ。……でも、あの人の家族はどうしてるんだろう」

478: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:03:00.84 ID:sjSXlkcCo
恭介「親父が言ってたんだけど……。

   どんな楽器や機材を使用するにしても、音楽やるってけっきょく腕いっぽんだから、

   人間関係がものすごく大事だ、こういうときのために仲間同士暗黙の了解があって。

   ましてや、音楽に情熱を注ぎこみながらも周りの人を大切にするような人間なら、

   残されたご家族だってほっとかれるはずがないから……」

さやか「あたしにそう伝えろって?」

恭介「まあね。実際、遺族を支援するサイトを友人の方々が立ち上げていたし」

さやか「そっか。ありがとね」

恭介「伝えとくよ」

さやか「あんたにも。おじさんやおばさんに相談してくれたんでしょ?」

恭介「…」

さやか「それはそうと、おじさんやおばさんは魔法少女とか、ワルプルギスのこととか、

    あんたがどうすんのってこと、何か言ってるの?」

恭介「とりあえず親父には殴られた」

さやか「また……」ペシ…

恭介「それから『絶対にさやかちゃんとふたりで無事に戻って来い。それ以外は許さん』って」

さやか「そうですか…」

恭介「じゃ、おやすみ」

さやか「おやすみ」

恭介「…」クル スタスタ…

さやか「送ってくれてありがとう」

恭介「……」ス スタスタ…

さやか「ヴァイオリンがんばれよ!」

恭介「……。(ボソ)哲学か」スタスタ…


479: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:07:02.68 ID:sjSXlkcCo
~~数日後、まどかの家~~


ゴト…

マミ「ほんとうにこれだけでよかったんですか? まだ開栓してないものもあったんですが」

詢子「いや、これがいいんだ。わざわざありがとう」

マミ「いえ。あの家に置いてあっても……ですから」

詢子「……いつかまたこいつを一緒に飲もう」

マミ「あ、あの……」

詢子「大人になってから、だよ」ニコ

マミ「それなら……はい」

詢子「まあそんな先の話はともかく近いうちに買い物に行かない? よかったらさ」

マミ「はい、喜んで」

詢子「よかった。そうそう、紅茶のことも教えてくれるかい?」

マミ「わたしもまだ勉強中なんです。母の趣味だったものですが今ごろ影響を受けて」

詢子「先達がいるなら茶器一式も間違いのないものだろ?

   あたしもどうにもせっかちな性分だから、最近になってやっと興味が出てきてさ」

マミ「紅茶に興味がおありでしたら、ハーブティーもおすすめしますよ。
 
   茶葉やハーブも色々と種類があって、一人の趣味として吟味するのもいいし、

   気が置けない友達とおしゃべりしながら味わうのも楽しめますね」

詢子「特におすすめのお茶ってあるかな?」

マミ「わたしがいま好んで飲んでいるのはカモミールです。

   ご存知のように寝る前に飲むと安眠できますからね」

詢子「受験生には切実な問題だもんなあ」ハハ…

マミ「寝床に入ってから、考えても仕方ないと分かっていることなのに、

   考えまいとしても頭をぐるぐるしてしまうことがあって。

   そんなときに高ぶった神経を鎮めるのにはてきめんだと実感しています」

詢子「ありがとう、参考になるよ。

   長丁場の戦いだと、適度な睡眠と休息は大切だよな。

   カモミールに限らず、お茶ってだけで何かほっとするものね」
   
マミ「はい。それに紅茶だと、本場英国のアフタヌーンティーの雰囲気に浸れるんです」

詢子「あ、そういや飾り棚のリリパットレーンもお母さんのコレクション?」

マミ「ええ、イギリスの田園風景が特に好きだったみたいで。

   わたしもためつすがめつしてます。ありがちな、西洋文化への憧れですね」フフッ…

詢子「好きなことがあるっていいもんだよ(……なあ、巴ちゃん)」ニコ…

マミ(? なんでしょう)

詢子(首を縦に振るか横に振るかで答えてくれ。……魔法少女はいつか魔女になるのか?)

480: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:11:03.55 ID:sjSXlkcCo
マミ「(ギョッ…)…………」

…コク……

詢子「…。ちょっと。トイレ」ス スタ スタ

マミ「…」

……

スタ スタ

タツヤ「ママー、ほら、くーべえおもちー」ミヨーン

まどか「タツヤ、それはだめだって」アワワ

知久「うーん。僕には見えないのに不思議だな」フーム

詢子「(ニコッ)」スタ スタ

トサ…

マミ「……」

詢子「さて、と。物は相談なんだけどさ」

マミ「はい」

詢子「ほむらちゃんの話だと、巴ちゃんのマンションは開幕早々に全壊するそうだな」

マミ「ええ、彼女が同じルートを辿るとしたら」

詢子「……違うルートだといいな」

マミ「もし今回そうなったとしても財産関係は、

   後見人になってくれている親戚に相談して打てる手は打ちましたから……」

詢子「抜かりないな。……まあいずれにせよ家が残ってたらの話だけど、

   巴ちゃん、うちの書生さんにならないか?」

マミ「書生って……下宿させていただけるってことですか?」

詢子「ああ。息子が大きくなったときのための部屋が物置になっててさ。

   そこを片付けとくから、あ、家賃食費光熱費等々は取らない。

   代わりに娘の勉強を見てほしいんだ」

マミ「ありがとうございます。……まどかさんさえよければ。家事も何でもやります」

詢子「まどかー、いいってよ」

まどか「ホント! (グッ)やった、マミさん、よろしくお願いします!」ウェヒヒ

481: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:15:04.75 ID:sjSXlkcCo
詢子「よし、その親戚のかたと話をつけりゃいいんだな。あとで連絡先教えてくれる?」

マミ「はい。何とお礼を言っていいか……」ペコ…

詢子「(クス)そうかしこまらないでいいよ。

   旦那が家事は受験の差しさわりにならない程度でいいからって言ってたし、

   まどかのことだってそれでいいから。

   その、巴ちゃんの家が無事な場合でもさ。前から考えて知と話してたんだよ」

マミ「いえ、大丈夫です。勉強を教えることは復習になるので。

   それにお父さんは家事の達人だとうかがっていますし、わたしも参考にしたいんです」

詢子「そいつはちょいと妬けるな……」

マミ「……」

詢子「まあいい。あたしも腹に一物ないわけではないからな」ニヤリ

マミ「?」

詢子「……ほんとはみんなで街から避難できればいいんだが」

マミ「戦いもせずに放棄はできません。

   わたしたち5人が力を合わせれば被害を最小限にとどめられる可能性はあります」

詢子「無茶だけはすんなよ」

マミ「はい」


~~その日の夜、ほむらの部屋~~


マミ『――あなたに話しておかなければと思って』

ほむら「うらやましいかぎりね。わたしのアパートも壊れたら寄せてもらおうかしら」  

マミ『だめよ。ほむらは両親がちゃんと生きてるんだから。……大事にしなきゃ』

ほむら「……ところで、引っ越しの準備しなきゃならないのよね。手伝いにいく?」

マミ『助かるわ。正式には今度、親戚と改めて鹿目さんのお宅にうかがってからの話だけど。

   賛成してくれてるから多分あいさつ程度だと思う』

ほむら「色々と運ばなきゃいけないわね」

マミ『ええ。でも大半は置いていこうと思う』

ほむら「……そう。今度ワルプルギスが逸れたとしても受験生だから、

    環境が整うに越したことはないんじゃない」

マミ『うん。寂しくないだけ本当にありがたい』

ほむら「わかるわ……」

マミ『分かってないって。受験生のプレッシャーって相当なものなのよ』

ほむら「そう? 涼しい顔してるからそうでもないと思ってたわ。成績だって優秀なんだし」

482: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:19:09.71 ID:sjSXlkcCo
マミ『当てにならないわよ、そこそこぐらいじゃ。本番で下手をしたらおしまいなんだから』

ほむら「それでもグリーフシードを浪費してないところを見ると、

    やはりあなたは強くてたくましい人ね。わたしならもっと歪みそうだわ」

マミ『(クス)頼りになる後輩たちに囲まれてるせいかしらね。

   あなたたちが最初にシフト制を申し出てくれたこと、感謝してる。

   ほむらだって大丈夫。それこそ集中力があるんだし、

   美樹さんや鹿目さんが同級生として互いの励みになると思うわ。

   でも今も楽しんで。

   あなたに見破られちゃったけどわたしもなんだかんだで今を楽しんでる。

   生活するなか心のどこかで、現在を楽しむ部分があってもいいなって最近思うの。

   ……それはそうと佐倉さんがいちばん大きい問題を背負ってるのよ』

ほむら「ええ、あの子……。でも差しせまってることをなんとかしなきゃね」

マミ『いよいよ“その日”が近づいてきたわね』

ほむら「マミ。生きなきゃだめよ」

マミ『みんな一緒にね』

ほむら「‥そうね」

マミ『そろそろ切るわ』

ほむら「ちょっと待って。下宿の話、よかったわ。気になってたの。日程が決まったら教えて」

マミ『分かったわ。……ありがとう、ほむら』

ほむら「おやすみなさい」

マミ『おやすみ』

…ピッ…

ほむら「……ありがとう、マミ」

483: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:23:11.01 ID:sjSXlkcCo
―――
――


~~“その日”の前夜、さやかの部屋、窓辺~~


ヒュオオッ… ヒュウー…

QB「さやか、休まないのかい?」ピョコ

さやか「おや。(‥ちょっと寝付けなくてね。

    べえさんこそ、こんな夜更けにいかがなすった?)」

QB(マミからしばらく部屋で寝るなと言われていてね)

さやか(ああ…そりゃ無理もないわ……)

QB(ワルプルギスとの戦いをひかえた君たちの様子はどうだろうかと見にきたんだけど)チラ

杏子「zz…」

QB(さすが杏子はベテランの戦士といったところかな)

さやか(いやあんたの気配で目が覚めなきゃいけないでしょ)ナッハハ…

QB(僕に殺気はないだろう。今夜は十分に休息をとることがベストだ)

さやか(うん…)

ヒュウウ…

さやか(ねえ、ワルプルギスの夜もまえは魔法少女だったんでしょ。どんな子だったの?)

QB(すくなくとも今のワルプルギスについては、その問いにひとことで答えるのは難しい。

   彼女、というより彼女たちと呼ぶべきかもしれない。

   もともとは一人の魔女だったものが、

   後に他の魔女の波動を集めることで現在の姿となったからだ。最初の子については――)

さやか(いや、ごめん。いいわ。色んな子たちの想いが渦巻いてるってことね……)

ゴゥッ ヒュウゥ…

さやか(キュゥべえ。みんなへの遺言をお願いしてもいいかな)

QB(ワルプルギスと刺し違えて死ぬつもりかい。

   最初からそういうつもりでは勝てるものも勝てなくなるよ?

   覚悟も重要だとはいえ、希望や夢というプラスの可能性を見込むからこそ頑張れる、

   という側面も人間にはあるんじゃないかな)

さやか(わかってる。でも……頼むよ)

QB(わかった。それで君の気が済むならね。

   ただ、無駄になることを僕は望むし皆もそうだろうけど)

484: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:27:36.56 ID:sjSXlkcCo
……

さやか(――悪いね、手間かけさせちゃって)

QB(かまわないよ。その悲壮な決意と自己保存の欲求とのはざまで、

   心の勁さの最後のひとつぶが挽き潰される瞬間を僕は待ってるんだから)

さやか((クス)あんたのそういう正直なところ好きだわ。

     でもあたし、もう魔女になることは恐くない)

QB(これは意外だ。よかったら理由を聞かせてくれるかい)

さやか(理由もなにもあたしが魔女になったところで、

    まどかや恭介たちがなんとかしてくれるに決まってるもん)

QB(ワルプルギスを凌駕する可能性を持っている君をあの子達が抑えられる?

   論理的に合わない話だよ)

さやか(それでも信じてる。みんなならきっとあたしを止めてくれるから)

QB(信仰のカテゴリーか……。僕にはそうとしか理解できない)

さやか((ニコッ)うん。あたしはまどか教の信者、第1号なのだっ。

     …ところであんた、マミさんのとこへ帰りなよ。

     あんただって寝ないといけないでしょ)

QB(さっきも言ったようにマミの部屋には寄れないんだ。

   この部屋で休ませてくれないかい)

さやか(あんたいちおう男でしょ)

QB(僕に性別はないし、君に危害を加えるつもりはないよ)

さやか(あんたがよくてもあたしがだめなの)

QB(ではほむらかまどかの……)

さやか(そんなのあたしが許さない)

QB(それじゃ他の子の勧誘に向かうことにするよ)

さやか(いまこの街に誰か候補がいるの?)

QB(いや、見つかっていない。いつも君たちのことと並行して探している)

さやか(なら今はあんたの居場所は魔法少女のとこしかないじゃない。

    ユートピアだかなんだか分かんないけど明日はあんたにだって大事な日でしょ。

    マミさんに泊めてもらうよう頼みなよ)

QB(しかしマミは……)

さやか(つべこべ言わず、ほら行った行った!)サッサッ

QB(わかったよ)ピョン

485: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:31:38.47 ID:sjSXlkcCo
~~~~~~~~~~~


ワルプルギスの夜「ギャアアアアアアア!!」ギュオオオ…

ほむら「倒した……!」

さやか「よっしゃ! やりましたね、マミさん!」

杏子「見ろよ、このグリーフシードすげえぜ!」

まどか「みんなも街も全部無事だよ!」

マミ「こ、こんなにうまくいくなんて――」

486: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:32:44.64 ID:sjSXlkcCo
~~嵐の日、マミの部屋、夜明け前~~


ヒュウーーッ ゴオオ…

マミ((パチ…)……そうよね)

ムク…

QB「予定より早いよ。どうしたんだい?」

マミ「……今日は身支度に魔法を使わないわ」モゾ トッ

スタ スタ シャッ…

ビュウッ ヒョオオオーーッ

マミ(きっときょう誰かが死ぬ)

スタ…

487: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:36:46.82 ID:sjSXlkcCo
――


マミ(叶わない夢――ならせめて、誰もわたしを置いていかないで……)

スタ… カタッ ハシ 

マミ「お父さん。お母さん。ありがとう、って言えなかったね」ゴソ…

クル…

マミ(そう。こんなとき思い出すのは、

   楽しげに家族で笑い合ってた絵に描いたような団欒じゃなくて)

――トントントントン…  ジュージュー… カチャ…

マミ(お母さんが台所で料理してる)

――ジーージーーッ

マミ(お父さんが洗面所で髭を剃ってる)

マミ(……そんな何気ない日々のことばかり)

スタ…

マミ(こんなときに思い出せるのが何でもないことだから幸せだったんだ。

   立派な教えでも、生きていく心構えでもなくただ愛をくれた。包んでくれた)

スタ… 


~~玄関~~


ゴソ… タン  ゴソ… タン

マミ(だから――)

ガチャ スタ クル…

マミ「お世話になりました」ペコ…

ガチャ カチャリ…

スタ…

マミ(わたしも死んではいけないんだ)

488: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:40:49.13 ID:sjSXlkcCo
~~集合場所への道~~


ゴオオーッ ザンッザザッ…

マミ(けっこう風が強くなってきたわね)スタ スタ

アナウンス『本日午前7時、突発的異常気象に伴う避難指示が発令されました。

      付近にお住まいの皆様は速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします。

      こちらは見滝原市役所広報車です。本日午前7時……』

QB「来たね、ワルプルギスが」

マミ「……」スタ スタ


~~集合場所~~


スタスタ

マミ「おはよう」

まど・ほむ・さや「おはようございます」

杏子「おっす」

マミ「みんなもう来てたのね」

杏子「ああ、珍しく。ていうかまだ集合時刻前なんだけどな」

マミ「確かにね。どうしたの?」

まどか「それが話してみたらなんだかみんな早く目が覚めちゃったみたいで」ティヒヒ

ほむら「(ニコ)……」コク

杏子「(フアア~…)早く目が覚めすぎて眠いわ。あたしはさやかに起こされたんだよ」

さやか「あんた、自分で起きてこなかった?」

杏子「あんだけ物音立てたら気づくだろ!」

さやか「そりゃ悪かったな」

マミ「(クス)そう」

ヒュオオ… ゴゥ… ――サアァ…

さやか「うおっ、あっちだけ日が射してきた!」

まどか「ほむらちゃん、あれ見て! すっごく長い……あっちからあっちまで伸びてる!」ワクワク

ほむら「ええ…、凄い東雲……」

まどか「しののめ?」クル

ほむら「あ、字でしか見たことなかったんですけど、確かそう言うみたい」

まどか「へえ……、(クル…)名前があるんだ。なんだか、いいね」

ほむら「(コク)名前をつけた人も同じ気持ちで見上げてたのかしら」

さやか「早起きしたかいがありましたなあ」

杏子「にしてもこんな雲、見たことねえぞ。まるで竜だな」

マミ「オーストラリアだと似たような雲が連なって浮かぶことがあるって、

   テレビで観たことがあるわ」

まどか「(クルッ)なっ何本もですかッッ!?」

489: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:44:51.93 ID:sjSXlkcCo
マミ「ええ。でも名前が思い出せないのよ。確かモーニング……」ウーン

ほむら「(クル)モーニング・グローリー!」

マミ「(クル)そうそれ! 暁美さんも観たの!?」

ほむら「NHKのドキュメンタリー!」

マミ「グライダーがプロペラを止めて雲の上スレスレを滑空するのよ!!」

ほむら「下に朝日が広がって!」

マミ「雲が道みたいで!」

ほむら「そう、そう!」コクコク

マミ「ああ、こんなときじゃなかったら……」

ビュウウッ…

さやか「ほんとにね。マミさんとほむらのまた新しい一面が見られるってのに」

まどか「……」

ヒュオオーーッ

杏子「…そろそろか?」

マミ・まど・さや・杏「……」

ほむら「――“Still, still with Thee, when purple morning breaketh,”…」

マミ・まど・さや・杏「……?」

ほむら「“When the bird waketh, and the shadows flee,”…」

ほむ・杏「“Fairer than morning, lovelier than the daylight,

      Dawns the sweet consciousness, I am with Thee.”――」

ttps://www.youtube.com/watch?v=jwW8YdW-3H8


490: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:48:53.79 ID:sjSXlkcCo
――


ほむ・杏「――“Shall rise the glorious thought, I am with Thee.”…Amen」

パチパチパチ…ッ

まどか「きれいな歌だね…」

マミ「(フム)あなたたたちが歌う様子もいいわね」

さやか「なんだ今日はほむほむ祭りか!?」

杏子「お前が賛美歌歌えるとはな…」

ほむら「いえ、これだけ覚えてたから…、その、なんとなく」

ゴオオヒュウッ…

まどか「あっ…」

ほむら「せっかく陽が射してたのに…」

マミ「でも雲の向こう側にはあるわ。今見れてよかった。この歌が聴けてよかった」

杏子「ところで歌詞どんな意味なんだ?」

さやか「分からずに歌えるってのもすごいな……」

杏子「ちんまいころから何度も耳にしたからな」

マミ「かいつまんで言うとね。しじまの朝より清らかな、日の光より美しい――、

   そう形容したい考えとゆかしい想いとが心の奥底から昇り始めるのに気付く。

   ひとことで表現するなら――」

杏子「――わたしは神様と共にいる」

マミ「…」コク

まどか「あれ、お日様が神様じゃなかったっけ?」

杏子「それは神道だろ」

ほむら「分類だと違う宗教になってしまうけど。

    捉え方――概念として、言葉で明確にしようとすると、体系にしてしまうと、

    分かれていくだけで。こんな日の出を目にして、最初に感じることってきっと――、

    素朴で、この詞を書いた人も同じなんじゃないかしら」    

マミ「ええ。朝が清らかだから、日の光が美しいからこそ。

   そして、目に見えるだけのことでおわらずに、尊いなにかを感じる。

   そこまでいったら、おなじでも、ちがっててもね」

まどか「うーん、わたしはお日様が神様って言ったほうがなじみがあるなあ」

杏子「曇りや雨の日はどうすんだよ。あたしはいつだって…」

まどか「ええと…、雲の向こう側は、晴れてるんだよ」コク

491: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:52:59.68 ID:sjSXlkcCo
杏子「受け売りかい! 沈む夕日でも拝むのか?」

まどか「それは…、朝早いほうが元気が出ていいよ!」

杏子「……お前がいいんならいいんじゃね。日本人なんだし」

さやか「あたしにはまどかが神様だけどなあ」

まどか「またまたご冗談を」

杏子「oh my God...」

さやか「いい感じにひどいよ君たち」

ゴオオッ ザザッ

さやか「うお、降ってきたっ!」

ビュゴオオーーーッ  ゴロゴロッ ドォォン…

マミ「……みんな、そろそろ配置に――」

フワ…

ほむら「……?」

スウウー…

ほむら「きゃっ…」バタバタ

マミ「っっ」パシッ

杏子「何だ……体が宙に吸い上げられるぞ!?」キイィ…

マミ「なんとか姿勢を保持して。きっともう間もなく現れるわ」キィィ…

まど・さや「はいっ……」キィィ…

ピョコピョコ……

ズン ズン パオーン… ズン… ズン… ドンドンヒャララ

杏子「(フワァッ)こいつらいつの間に……」チキッ…

ゾロゾロ パカパカ…

マミ「(フワァッ)まずいわ、分断されたわね……」

ほむら「時間を止める?」

マミ「こうも混み合ってちゃあまり意味がない」

492: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 02:57:02.00 ID:sjSXlkcCo
チンドンチンドン

さやか「マミさーん、何か言いましたー? こいつらは倒さなくていいんだよねーー?」

ドンヒャララ

まどか「あわわ……。おーい、みんな大丈夫ーー?」

ビュウウ ゴオオオ… ゾロゾロ…

マミ(使い魔のパレードよ。こちらから仕掛けない限りこの使い魔のほうからは襲ってこない。

   各自刺激しないように気をつけながら群れの外に出て)

杏子(さすがワルプルギスのだけあって強いな。

   どいつも気配が大きすぎて親玉の場所がつかめねえ)ヒョイヒョイスタスタ

マミ(目視で捉えるしかないわね。この群れの発生源が彼女の具現化する地点だわ)スッスタ

ほむら((フワァッ)どこから来てるかその終端を辿れば。

    ……方向が違うわ。前回の場所とは)キョロ スタ

さやか((フワァッ)落ち着いて探そう)トッ クルッ ピョン

まどか((フワァッ)……この子たち、ここから出てきてませんか?

    (スッ)この運動会の飾りみたいな綱も――)

杏・マミ・ほむ・さや「(ハッ)」クルッ

アハハハハハハハハ……ッッ

493: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:01:02.62 ID:sjSXlkcCo
杏子「真上……っ」

マミ「(バシュッ トッ)散、全力で離れて!!」ガシッ

ほむら「っっ」グイ

バッッ

ドゴッ… ユラララアアア……

さやか「建物が……!!」ヒュオ…

使い魔「ウフフッ」パッ

まどか「!?」

パシ パシ

まどか「あうっ…」ズシッ…

ほむら(鹿目さんが……建物の落下に巻き込まれる!)サッ

使い魔「キャハハッ」パッ パシッ

ほむら「!?」ズシッ

マミ「放しなさいっ」シュル

ザシュッ

使い魔「ギャアッ…」

ゴッ ズドオ ゴドドドオオオオンッ……!!! モウモウ…ッ

ほむら「鹿目さぁあああん!!」

トッ タタタタッ…

ほむら「鹿目さん、鹿目さんッッ ゲホッ…ゲホッッ」

さやか「(バサッ…)くっ……、まどかーーっ! 返事しろーーっ!!」

アハハハ… ユラユラ…

ゴソ ピッピッ…

マミ「――すぐにそこから逃げてください。抑えられませんでした」スタスタ

詢子『そうか。皆無事か?』

マミ「はい。今から――」スタスタ

詢子『こっちのことはいい。皆が落ち着いて避難できるような精神状態じゃないからな。

   旦那とも覚悟はしてた。まどか達のことを――』

マミ「ではそちらに向かいます。待っていてください」スタスタ

詢子『いや、おいちょっと待』

ピッ ゴソ

さやか「マミさん!! 電話してる場合じゃないよ! まどかが……」

494: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:05:03.67 ID:sjSXlkcCo
マミ「大丈夫よ」チャッ…

グラッ ガララドドッ…

さやか「ほむら!!」バシュッ

ほむら「(ハッ)」クルッ

マミ「ティーロッ!!」パゥンッッ

ゴッッ         ズズウゥゥンンンッッ……

さやか「……悠長に構えてる場合じゃないって! まどかのどんくささなめないでよ!」

マミ「なめてなんかないわ。わたしは後輩それぞれの得意不得意に関しては把握してるつもり」

さやか「だからまどかはこういう時に――」

杏子(まどかまどかってちったあ人のことも心配しろっつの)

ほむら「(バッ)杏子! そっちにいるの!?」ドタッ タタッ…

杏子(近寄んなよ。ケガしたくなけりゃな)

ほむら「!」ピタッ

ミシッ… パラパラ… 

ザゴオッッ!! ドンガララ… ゴロッ…

杏子「(ザラララ フゥゥ…)ペッペッ…、口ん中入っちまった」スッ…

ほむら「鹿目さぁん! 無事!?」タタッ ガラッ…

まどか「う、うん。杏子ちゃんが庇ってくれたの」パラ…

杏子「使い魔を潰すまでまどかの身体が石みたいに重かった。

   あのサーカスの奴らとちがってすばしこいうえに、

   子泣き爺みたいな能力を持ってるみたいだぜ」

タタッ ピョーン

さやか「(ガバッ)杏子おーっ。あんたならまどかを助けてくれるって信じてたよ!」オイオイ

杏子「よく言うぜ……」フン

まどか「杏子ちゃん。助けてくれてありがとう……」

杏子「(チラ)いちど殺めようとした命に感謝される筋合いはねえ。足元気をつけろよ」

さやか「またまた硬派なんだからっ」バシッ

杏子「(ズキッ)つっ…」

さやか「っ。ケガしてるのか!」

まどか「ご、ごめん…杏子ちゃん……」

杏子「いちいち騒ぐな……大したことねえから……」

さやか「あるよ! マミさん……!」クルッ

マミ「鞘の力を使えない?」

さやか「杏子! プライスレスだっ」パシッ…

杏子「(フゥ…)……助かる」シュゥゥ…

ほむら「あの一瞬でよく……杏子、ほんとにあなたがいてよかったわ……」

495: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:09:09.56 ID:sjSXlkcCo
杏子「お前も危なかったんだぞ。マミがいなかったら」
   
マミ「あら。わたしは最初から佐倉さんが鹿目さんを助けてくれるって思い込んでたから、

   暁美さんを抱えて飛んだのよ」

杏子「おいおい……互いに任せようと思い込んでるときに限ってミスが出るもんなんだけど」

さやか「(ニヤリ)マミさんなら杏子にまどかを任せるって思い込んだとか」

杏子「そりゃマミが最初からほむらをつかまえてたから……、

   テレパシーなりで打ち合わせはしたほうがよかったか」ポリポリ

ほむら(テレパシー……以心伝心か……)ニコ

マミ「――っと。それこそ悠長にしてられない。(スッ)ワルプルギスは学校の方へ向かってる。

   鹿目さんのご家族に連絡したけど混乱を起こしたくないから周りにも知らせない、

   自分たちも体育館から離れるつもりはないって」

まど・ほむ・さや「……っ」

マミ「先回りして避難所の前で防衛するしかない。暁美さん、頼むわよ」

ほむ・杏・さや・まど「(コクッ)」

マミ「……そういえばキュゥべえは? みんな知らない?」

ピョコピョコ…

QB「呼んだかい、マミ」

マミ「よかった、無事だったのね。みんな早く――」

QB「いや。君と直接契約した個体は損傷が激しかったので処分したよ。
 
   僕が引き継いだから問題はない」  

マミ「――」

杏子「……お前は永らくマミと暮らしてた奴とは別人ってことか。クローンみたいなもんか」

QB「それよりもっと上等さ。僕らは全個体で意識だって共有している。

   これからもコミュニケーションをとるのにまったく不都合はないよ」

マミ「……」

まどか「……っ」

QB「マミ。僕はなぜ君が涙を流すのか分からない。僕の代わりなんていくらでもいるのに、

   どうして単一個体の生き死にに感情を動かされるんだい」

ほむら「……あなたたちはそういう考え方をするのね」

さやか「マミさん……」

マミ「(ズッ)‥みんな暁美さんにつかまって。時間を無駄にできない」クルッ

496: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:13:11.38 ID:sjSXlkcCo
――


~~学校の体育館前~~


カシン ピタ

まどか「マミさん……! このままだとあのビルが避難所に!」ヒュオオ

マミ「なんとか前に回りこまないと!」

カシン ザザッ

アハハハハハハハハハハハハ……ッ

ゴオオオン

杏子「マミ、落とせるか!?」

マミ「(ジャコンッッ)あの大きさだとこちらも加減ができないっ。

   力負けはしなくても貫通するだけになるかも……!」ジイッ…

杏子「手をこまねくよりマシだ! あたしもやるだけやってみるッ」ザララララ……ッッ

さやか「……!」クルッ

ほむら「……」コク

さやか「マミさん、ここはあたしとほむらに任せて!」

マミ「(クルッ)え?」

ほむら「(ニコッ)」カチ フゥゥ…

さやか「ほむら、特訓の成果を見せるぞ!」スチャッ

ほむら「はい!」バッ

ゴオッ

さや・ほむ「「元気ですかーーーッッ!!」」

まど・杏・マミ「!?」

ほむら「元気があれば!!」サッ

さやか「隕石でも打ち返せる!!」グッッ

ほむら「1!!」

マミ「これは――」

さやか「2!!」

杏子「おいまさか――」

ほむら「3!!」カシン

―――

まどか「え?」

497: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:17:12.30 ID:sjSXlkcCo
さやか「だあああああああああああああああっっっ!!!!!」ゴッッッッッ

ギッ キキッ メリリ…!!

マミ「佐倉さんッ、ビルと地面がもたない!!」ギュッ コオオ……!!

杏子「分かってるッ!! バットの強化に集中しろ!!」パシッ ザラララ…

杏子「(クルッ)まどかッッ!」ギリュウッッッ

まどか「は、はいっ!」

杏子「ほむらを手伝え! さやかを支えろ!!」ギュ… ギチッチキキキキワワワア……ッッ

まどか「はいっっ!!」バッ ガシ ギオオオオ…

さやか「……ッッッ」グググオオ…ッ

杏子「そっちに立つな! 振り切った瞬間しばかれるぞ!!」ミミミイイイン……ッ

まどか「かまわない!! いま……、さやかちゃんを支えなきゃ……ッ!!」グググ…ッ

さやか「……ッ!」ググ…!!

ほむら「さやか、信じて!!」ギオオオ…

さやか「!……(グッッッ!!!!!)いっ―」オッ

マミ(振り切――)

ほむら「ッ」ガバッ カシン バッ

まどか「っ」 ドザザッ… カシン

杏子(――ったァ!!)

ほむら「(ダッ)ッッ」カシン

さやか「けええええええええええええええッッ!!」オオオンッッ

マミ・杏・まど・ほむ「……!!」

ギュオオッッッ――  アハハハ…    ゴッッッ  オオオオオオォォ……

ドドドドドドオオオオオオオオオオオンンンンンンンッッッ!!!!!!!!!


ほむら「(ハァハァ)鹿目さん、(ハァハァ)だいじょうぶ?」ドキドキドキ

まどか「(ハァ)……うん。(ハァ)ほむらちゃん…」サス… 

マミ「(ハァハァ…)……ナイスバッティング」

杏子「(ゴソ カチ フゥゥ…)つかこんだけ大騒ぎしてピッチャー返しかよ……」ドシッ… ポイ

マミ「(パシ)ええ(ハァ)、投手ごと(ハァ)河まで落としてくれたわね……」カチ フゥゥ… ポン

QB「(コロン)…きゅっぷい。なかなかいい連携だったよ。

   打ち合わせもしてなかったんだろう?」

杏子「(ハァ)うるせー、傍観者。(クルッ)さやか、ほむら!

   前もって言ってくれてもよかったじゃねーか」

498: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:21:13.28 ID:sjSXlkcCo
さやか「(カキカキ)いやー、あたしたちもとっさに考えたんでさ、アレンジを」

ほむら「(ムク…)もともとはパイプ爆弾をさやかがノックするの」ノサ…

杏子「それはそれで恐ろしいな」

マミ「着水の直前に起爆するよう計算して、ビルにタイマー付きの爆弾を仕込んだのね」

ほむら「ええ。まぐれだったけど」

マミ「謙遜はいらないわ。ふたりの特訓の成果、見せてもらった」ニコ

ほむら「(コク)みんなのおかげです」

さやか「特にマミさんに鍛えられたこのでんせつのバットで――」スチャッ

杏子「おい」

さやか「(パン)わかってるよ杏子、ありがとう!」パチ

杏子「フン…」

まどか「あの――」

さやか「(クルッッ)」ギロッ スタ スタン ジッ

まどか「…」ビクッ

さやか「だー(コッ)かー(ツッ)らー(ンッ)、心臓に悪いことすんなってえの。

    ほむらにはしゃれにならないだろ」

まどか「ごめん、ごめん……」ギュッ…

さやか「感謝はしてるよ。あんな風に支えてくれなきゃ振り抜けなかったし。

    でもあんたにバットが当たろうものなら」

ほむら「だいじょうぶよそんなことはさせないから」

さやか「(ニコッ)分かってたよ、ほむら」

ほむら「(ニコッ)信じてくれてありがとう、さやか」

まどか「…?…?」


杏子「あいつら仲良くなった……のか?」

マミ「仲良くしなくていい、って気づいたんじゃないかしら。

  (チラ)今のわたしとあなたみたいに」ニコ

杏子「(チラ)……ふん」

499: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:25:14.11 ID:sjSXlkcCo

まどか「ほむらちゃん……。わたし……」ギュッ…

ソッ

ほむら「鹿目さん。わたし、鹿目さんに無茶なことはしてほしくない」

まどか「……ッ」ギュウウ…ッ

ほむら「(ニコ)だけどあなたが誰かのために無茶をしなきゃならないなら、

    そんなあなたをわたしは守る」ソッ…

まどか「……っ」

ほむら「だって約束したもの。

   『鹿目さんが大切な人たちと一緒に笑顔でいられるようにする』って。

    わたし、あなたが無事でさえいればいいって思ってた。

    でもそれはわがままだったんだよね。

    あなたは大切な人のためなら自分のすべてだって差し出してしまう。

    そうしないほうがずっと辛い人だもの」

マミ「……」コク…

ほむら「だから笑って。あなたを愛する人のために。

    鹿目さんが愛する人たちはもうわたしが守らなきゃいけない人なんだから」

杏子「……」クス…

まどか「うん……」コク…

――ハラハラ…

ほむら「あ…」

さやか「おや。すまなんだ」

ほむら「(チラ)だいじょ――」

シシュ パラ…

ほむら「か、鹿目さ――」

ソッ アミアミ…

まどか「(ニコッ)わたしはひとつあればだいじょうぶだから」アミアミ

ほむら「……ありがとう」

アミアミ… キュ…

500: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:29:14.98 ID:sjSXlkcCo
杏子「マミ、ひとつ言い忘れてたんだが。(クル)……やったか?」

マミ「(フリフリ…)あれでは足止めが関の山でしょうね……。とりあえず今は――」ハッ

クルッジャキッバンッッ

杏子「なっ!! マミ!?」

まどか「えっ!?」

さやか「何やってんすか!? つか、それ何すか!?」

ほむら「(ジッ)……。(ハッ)――まさか!」バッ

マミ「(ゴソ ピッピッ…)――はい。確認しました。無事ですか?

   よかった。…はい。すぐ参ります」ピッ ゴソッ カチ フゥゥ…

まどか「マミさん…、避難所で?」

マミ「(ポイ)ご家族は無事よ。みんな、ソウルジェムを確認してすぐ中へ!」タ…バシュッッ

ほむら「はい!」タッッ

QB「っぷい…」トタタッ…

杏子「……(ハッ)ワルプルギスの波動と違う……!?

   なんだこの気配の数は…、魔女の巣窟になってんのか!?」バシュッ

さやか「母さん…、恭介!!」バシュッッ

ヂカヂカヂカッ……

まどか「(シシュ サッ)……(ゴクッ…)」キュッ…

タッ バシュッ



~~学校の体育館~~


ワーワー キャーッ ギャーー ヒイイーッ

さやか「みなさん、落ち着いて!! 

    なんで、魔女は目に見えないはずなのになんでこんなにみんな騒いでるの!?」

杏子「魔女は見えなくても目の前にいた人が消えたらそりゃパニックになるだろ。

   しかし一体全体……どんだけ魔女が集まってるんだよ!?」

QB「奇妙な状況だね。ほんらいワルプルギスが通る間は彼女に巻き込まれないように、

   他の魔女たちは鳴りをひそめるものなんだが」

杏子「ああ……ワルプルギスの波動に紛れてまったく気がつかなかったぜ……」

マミ(鹿目さん、着きました。この状況になったのはいつからですか?)

詢子(ついさっきだ。端っこのほうに座ってた人の家族が消えたって声が上がってから、

   連鎖するようにあちこちからな)

マミ(わかりました)

マミ「魔女が現れはじめたのはついさっきだそうよ。

   集合した理由は分からないけど、捕まった人も今すぐに救助すればまだ間に合うわ」

501: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:33:15.66 ID:sjSXlkcCo
ほむら「でもこれじゃ手分けして結界に入っても全員は助けられないわ……!」ギュッ…

まどか「……マミさん」スタ…

マミ「(コク)……暁美さん。グリーフシードをひとつ用意して。どれでもいいから」

ほむら「は、はい」ゴソッ

まどか「(スゥーッ)……ッ」キリキリ…

ポゥ…  

さやか「(クルッ)まどか……?」

まどか「これが、わたしの――アルティマ・シュート!!」

パシュウゥゥ…ン

杏子「天井に撃ってどうすんだ――ってあの魔法陣は!?」

ほむら「――円形の――放射状に広がって――(どこかで見た……?)」

キイィィン…… バシュバシュバシュバシュバシュ……ッッ

ほむ・さや・杏「……!!」

住民「……?」ストン…

子ども「おかあさーーんっ!」ガバッ…

さやか「捕まってた人たちがみんな戻ってきた……?」

杏子「結界の外から魔女を仕留めたってのか!? この場の魔女全部を……!」

まどか「うぐっ……」ガクッ…

ほむら「鹿目さん!」クルッ ストン

杏子「これはヤバいぞ! ほむら、強化グリーフシード出せっ」

ほむ「は、はい」ゴソッ

まどか「う…っ、ほむらちゃん……!」フリフリッ

マミ「(チラ)まだ通常のグリーフシードで間に合うわ。

   よく見極めて、無駄遣いしないで」

ほむら「……っ」スッ カチ フウゥ…

まどか「(ハァハァ…)……ありがとう、ほむらちゃん…」グッ ヨロ

ほむら「鹿目さん」ハシ

まどか「(ニコ)もう、大丈夫だよ……。みんなは?」

杏子「館内の魔女の気配が全部消えて、結界に引きずりこまれた奴が戻ってきてる。 

      間に合ったんだよ、あんたのおかげで」

502: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:38:34.18 ID:sjSXlkcCo
まどか「よかった……」

さやか「わ、避難所から出ようとしてる人たちがいるよ?」

マミ「(スタ…)みなさん落ち着いて。避難所から出ないでください。外は大変危険です。

   今、目に見えない敵が目に見えない世界へ皆さんを引きずり込もうとしています。
 
   わたしたちがそうならないようにみなさんを守ります。

   ご自分のスペースに戻ってください」

シーン… ザワ… ジロジロ

杏子「(ヒソ)おい…!」

詢子「巴ちゃーん、助かったぞーーっ。ありがとーー」フリフリッ

知久「(タハハ…)……」フリフリ…

さやか母「さやかーーっ、みんなのこと考えて行動するのよーー!」

さやか父「……」

さやか「アチャー」ナッハハ…

スク…

恭介父「……」ペコ…

恭介母「(ペコ…)……」ニコ…

マミ「(ペコ)……ソウルジェムの反応はとりあえず収まったわね」

杏子「ああ。……相変わらずワルプルギスの気配は残ってる」

恭介「みんなーー。(スタ)ごめんなさい、失礼します。(ヒョイ)すみません、通ります。

  (トトッ…)ごめんなさい、ありがとう。(スタ)おはよう。今、どうなってる?」

503: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:42:26.36 ID:sjSXlkcCo
さやか「あんた、無事だったの」

恭介「結界の中で往生してたのを助かったよ、ありがとう。あれ鹿目さんの矢だろ?」

まどか「うん。よかった、間に合って」

マミ「ちょうど今の状況や今後の作戦を話し合おうとしてたところよ。

   場所を変えましょうか」スタ…



さや・ほむ・まど「クスクス…、アハハ…」スタ スタ スタ

杏子「しっかしなんつー無茶苦茶な技を……魔力の消費も半端なかったし」スタ

恭介「ずいぶんたくさんの魔女が集まってたようだけど、全部倒したのか」スタ

マミ「ええ。とりあえず体育館内にいた魔女は一掃したわね」スタ

杏子「(チラリ)……マミが教えただろ。まどか一人で完成できるレベルじゃねえ」スタ

マミ「未完成よ。……『アルティマ・シュート』。

   本来、散在を好む魔女には使いどころのないせん滅タイプの技。

   全ての魔力と引き換えに、

   その場にいる全ての魔女のグリーフシードを撃ちぬき消し去る」スタ

杏子「つまり完成品を実装すると、

   使用者がその場で魔女化しちまう文字通りの最終兵器ってわけか」スタ

マミ「相手がワルプルギスでも例外ではない。恐らく彼女の素質では完成は無理だけど」スタ

杏子「(ニヤリ)マミ……そうと見込んでこの技の開発に踏み切ったろ」チラ スタ

マミ「……何発か当てれば撃退程度なら可能かもしれないわ」スタ

恭介「……!」スタ

マミ「ワルプルギスの強さが今のままなら」スタ

杏子「あれを何発も撃てば魔力を回復したって心身にかかる負担は相当なもんだろうな。

   素質を測る力はあんたの方が上だ――それをあたしに教えていいのか?」スタ

504: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:46:28.24 ID:sjSXlkcCo
マミ「――ええ。

   鹿目さんは“その”選択肢が視野に入れば一択問題になる子だってこともね」スタ

杏子「……ふん。ところであの技って未完成の状態ですら、

   あれだけ魔女がいたのにぜーんぶ撃ち抜いて、

   グリーフシード1個も拾えなかったんだけど?」スタ

マミ「(タタッ)さすが鹿目さん!」

まどか「?」クルッ

マミ「『すべての魔女を産まれる前にこの手で消し去りたい』とまで願う鹿目さんの強い祈り、

    それが魔女の輪廻を断ち切る形となって現れたのね!」ポンッ

杏子「おい師匠おい」スタ

恭介「(クスクス…)」スタ

さやか「あのまどかがここまで育ってくれたと思うとさやかちゃんうれしいよ」ウンウン スタ

ほむら「――」ピタ

まどか「ちょっとさやかちゃん……。ほむらちゃん、どうしたの?」ピタ…

ほむら「あ、ううん」スタ…

杏子「大丈夫か?」スタ

ほむら「ええ、心配しないで」スタ

恭介「?」スタ

ほむら(思い出した……すべて……っ)ギュ…

スタ…


~~体育館前の渡り廊下~~


杏子「まず言いたいんだけど、マミ。こんだけ大勢の前で正体バラしちまいやがって。

   マッチポンプだの騒がれたらもうあたしたちの居場所なくなるぞ?」

マミ「それでもいい。外に出た人が死ぬよりはね」

さやか「もうここまで来たらマミさんについてくしかないね」ニコッ

杏子「ったく……」

まどか「でもどうしてあんなにたくさんの子が体育館に集まったんだろ?」

マミ「そういえばキュゥべえも言ってたわね。

   ワルプルギスが滞在する間にほかの魔女が現れることじたいが珍しいって」

QB「そうだね。だが今まで君たちの身のまわりで起こった事象を整理すると、

   どうやらひとつの答えとなる仮説が導き出せそうだ」

さやか「なに? 分かりやすく教えてよ」

QB「そもそもグリーフシードやソウルジェムに溜まる穢れも、

   この場に溜まる穢れも同じものだと言ったらわかるかい」

さやか「わからん」

505: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:50:29.14 ID:sjSXlkcCo
QB「体育館の外から伝わる衝撃音や、

   ニュースの実況中継が刻々と伝える災害の絶望的規模。

   種々の不安やストレスを体育館に集まった住民に与えるには十分だ。

   それはこの場に穢れを急激に生成・蓄積させ、

   最終的にその量は日常ではありえないほどになったと考えられる。

   しかも、この街の魔法少女が総出でワルプルギスを迎えているから、

   自分たちの養分となる穢れも人間もビュッフェのように揃えられている。

   魔女にとって好ましい条件が揃ったと言えるね」

マミ「じゃあ、他の場所の避難所も――」

QB「いや、見滝原周辺の魔女がすべてこの体育館に集まったはずだ」

杏子「なぜそう言い切れる」

QB「日常的に排出される穢れの量をちょっとくらい上回っているからといって、

   それだけではわざわざ自身がワルプルギスに巻き込まれる危険を冒してまで、

   魔女は集まってはこないさ。ただでさえ多くの魔女は集合する性質をもたないのに。

   しかもその程度の量の穢れならこの街に彼女が具現化した時点で巻き上げられる。

   先ほど言及したようにこの避難所に溜まった穢れの量はありえないほどのものだった。

   それはこの避難所だけ場の穢れが増幅されたからなんだよ」

恭介「(ハッ)――」

QB「『幻想御手』はグリーフシード内の穢れを増幅させることは、

   病院裏でのことから実証済みだよね。恭介、君がここにいたからさ」

マミ「そんな……場の穢れを幻想御手が増幅するなら……」ハッ

QB「今まで見滝原が周辺の街と比較して現れる魔女の数が多かったことにも説明がつく」

さやか「だったら学校や恭介が他に過ごしてる場所だって魔女が集まるはずじゃない」

QB「恭介はフラフラと出歩くような人間ではないからね。

   穢れがもともと比較的溜まりやすい場所で、“偶然”魔女と出くわしたってことが、

   やけに頻繁に起こらなかったかい。それも恭介が隣にいるときに」

ほむら「……学校は? 上条くんは退院してからずっと通ってるわ」

QB「魔法少女が何人も通学しているとあらかじめ分かっている場所は、

   魔女にとってもリスクが大きい。

   不在時であれ学校へ寄り付こうとする途中で魔法少女のソウルジェムに探知され、

   狩られていた可能性が大きい。何せ君達の住居は学校を中心に点在しているからね」

ほむら「それじゃ、穢れは増幅されていくいっぽうで……」

506: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:54:29.96 ID:sjSXlkcCo
QB「君たちの学校は比較的環境の整った施設といえるが、

   だとしても日々、僅かずつでも場に穢れは生成されていく。

   それに拍車がかかったうえに、穢れを巻き取るはずの魔女が役目を果たせなかった。

   あの『魔獣』は穢れが蓄積し瘴気となって発現した『呪い』と見るべきだろう」

杏子「こいつの自宅は? 寝込みを襲われたとか聞いてねーぞ」

QB「恭介の家には、簡易的な穢れの浄化装置があったからね」

さやか「穢れの……何だって?」

杏子「(ハッ)――神棚か」

QB「その通りだ。でも街じゅうに設置するわけにはいかないよね。

   幻想御手がある限り、恭介の周りにある穢れは増幅され、

   結果として魔女を呼び寄せることになるだろう」

マミ・まど・ほむ・杏・さや「…………」

ガクッ…

恭介「……なんでそんな人間が……今までのうのうと生きていたんだ……?」

さやか「……っ」

マミ「望まれて生かされていたからよ。だからあなたには生きる責任がある」

ほむら「……あなたが死んだところで幻想御手が消滅する保証もないわ」

杏子「お前が魔女を集めてくれるなら探す手間が省けるじゃねえか。

   人を襲う前にあたしたちがグリーフシードを回収してやるよ」

さやか「恭介。希望が幻想だっていうのなら絶望だってきっと幻想なんだよ。

    あたしたちのために立ち上がってよ。あんたはそれができる男じゃないか……!」

恭介「……」

スタ ト…

ポタ   ポタ

恭介「……?」ツイ

まどか「……」ジッ…

恭介「――」

――スクッ…

恭介「鹿目さん」スッ

まどか「うん……」パシ スク…

507: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 03:58:31.02 ID:sjSXlkcCo
恭介「(クル…)……みんなの言うことは間違ってないけど。けど。

   いや、いまはうずくまってる場合じゃなかったな」

マミ・ほむ・杏・さや・まど「(ニコ…)」

――ズオ

マミ・杏子「(ハッ)」

まどか「な、何か気配がものすごく重くなった……?」

さやか「あたしも感じる……これって……?」

ほむら「わたしにも分かるわ。前は察知することすらできなかった、

    ワルプルギスの気配が……禍々しい……っ」ブル…

杏子「……そのはずだよ。さっきとはケタ違なんだ、

   いま話してる間にもどんどん魔力が強くなっていってる」タラ…

マミ「(シュル カチャ)――キュゥべえ……あなたに頼むのは初めてだけどお願いできる?」スタ…

QB「言ったろう、あらゆる局面において、

   君の知っている個体と同等の扱いをしてくれていいと」ピョコン

カチャ… タム

まどか「マミさん…」

さやか「さっきもですけどその望遠鏡みたいなの……」

マミ「生きて帰れたら紅茶とケーキ付きで何でも答えるわ」キチチ

さやか「(ニヤリ)わかりました。絶対ですよ。

    いつものマミさんと違いますけど正直バリかっこいいっす」

ほむら「時間を止める?」

マミ「大丈夫、わたしとキュゥべえに任せて」クリリリ

ほむら「……」コク

マミ「――佐倉さん。ワルプルギスのグリーフシードの回収、できなくなってもいい?」

杏子「へっ……。こんな機会、一生にあるかないかだから惜しいはずなんだがな。

   今は全力でイエスと言わざるをえない状況だぜ。

   はっきり言って一つの街の危機ってレベルじゃねえ……」

恭介「……」ゴク…

QB「マミ、分かってると思うけど、この技は格下の相手にしか通用しない。

   君にとってワルプルギスはただでさえ――」

マミ「(ポゥ…)そうね。上条くん、ちょっと」

恭介「はい」スタ

スッ

マミ「あなたの幻想御手でこれを強化して」トン…

508: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:02:31.63 ID:sjSXlkcCo
まど・さや・ほむ・杏「――!!」

恭介「……何を言ってるんですか。ソウルジェムが爆発するかもしれないし、

   さっきも聞いたでしょ? ソウルジェム内の穢れだって完全にゼロじゃないんだ、

   増幅して呪いに変わったらあなたは――」

マミ「早くしてちょうだい。こうしている間にも成功確率はどんどん下がっていってる。

   元からわたしは犬死にするつもりなんてないわ。

   あなたは世界で一番繊細な楽器を操る技量の持ち主でしょう。

   こんな石ころの魔力だの穢れだの分別して加減しながら増幅することくらい、

   わけないことのはずよ」

恭介「(グッ…)……二度と石ころだなんて言わないでください」スッ…

トン…

マミ「文句は後で聞――――ッ」ギュウゥ…ッ

コオオオオ…

杏子「マ、マミ……」

ほむら「……!」

マミ(キュゥ…べえ――彼女の周りを――使い魔が群れ…て舞ってる…)ギチチッ ガタガタ…

QB「タイミングは任せてくれ。それよりもその状態で撃てるかい?」

マミ(……O…………K…ッ)ブルブル……ッ 

恭介「……ッッ」コオオオオオ…ッ

まどか「……っ」ギュウ…

さやか「……ッ」グッ…

QB「――――――今だ」

ピタ バスッ‥!!

マミ「――」ドサッ…

まど・さや「マミさん!」ガバッ

恭介「暁美…さん」ヨロ… ヒョイ…

ほむら「!」パシッ ギュ… カチ フゥゥ…

恭介「……(ハァ、ハァ…)」フラリ ドシン…

まどか「起きて、マミさん! キュゥべえ、マミさんはどうなったの!?」

QB「幻想御手によって強制的に魔力のレベルを上昇させた結果、

   意識に影響が及んだようだね」

さやか「だから大丈夫なの? 目は覚めるのかって!?」

QB「そのソウルジェムの状態次第じゃないかな。

   どうやら穢れの増幅を可能な限り抑制して祈りを選択的に増幅させたようだけど、

   マミに制御しきれるレベルの魔力ではないということだね」

ほむら「そんな……マミにできないなら誰が……」

恭介「暁美さん……もういちど僕に巴さんのソウルジェムを」ムク…

509: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:06:33.42 ID:sjSXlkcCo
ほむら「上条くんは大丈夫なの?」

恭介「……」コク

ほむら「……」スッ トン

恭介「……」パァァァ…

マミ「……」ポゥ… シュルルル フワァァァ…

まど・さや「!」

QB「なるほど、増幅を極力抑制しながら、

   段階的に魔力を解放してソウルジェム内の祈りを相対的に減圧させるのか」

恭介(取って、暁美さん)

ほむら「っっ」パシ

マミ「……うっ……」

まどか「マミさん!」

さやか「目を覚まして!」ペチペチ

QB「過度な負荷により肉体と魂のリンクが一時的に切れたんだよ。

   同調には時間をかけて――」

杏子「悪いがそうしてるヒマがない。活を入れるぜ」スタ… ト

ヴォン

マミ「あぐっ……!」バタッ

さやか「うお、杏子!」

マミ「――……弾着は?」パチ…

QB「命中はしたが弾かれた。残念だ」

マミ「(クス)……ごめんなさい。抜け駆けはできないものね……」

まどか「……ッ」ギュ…

さやか「マミさん……ッ!」ギュゥッ…

杏子「発想は間違ってない。奴が強すぎんだよ。あんたも、恭介もよくやった」チラ…

恭介「……」グタ…

杏子(蒸気機関技師にいきなり原発の臨界制御を任せたようなもんか。

   世紀の壁をこの数瞬で超えた――ぶっつけたマミもマミだがそれに応えやがった。

   ……これが天才ってヤツか)

510: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:11:28.40 ID:sjSXlkcCo
ほむら「(スタ…)マミ。もう手放さないで、お願いだから」トン…

マミ「(スッ ポゥ…)ええ。みんな、心配かけたわね。起きなきゃ……」フワァッ

――ゴォアッ

QB「(ピョンッ)ワルプルギスが炎を吐いた! あと3秒でこの体育館は焼かれる」

マミ・まど・杏・さや「(ハッ)――ッ」

ほむら「ッッ」カシン ピタ

ほむら「……ど、どうしよう」

トントン

ほむら「(ビクッ)ひっ!」クルッ

恭介「驚かせてごめん」ムク…

ほむら「上条くん……」パシ…

恭介「(スタ)ありがとう。君が時間を止める前に間に合ってよかった」

ヨロ スタ…

ほむら「もうすぐ時間を止めていられなくなるわ。どんな手をつかっても……」

恭介「(スッ)この手があるさ。(クル…)……僕から離れてから解除してくれ」スッ…

ほむら「でも、幻想御手は……」

恭介「(チラ)大丈夫。任せて」ニコッ クル…

ほむら「……」コク スッ 

恭介「」ピタ

スタ スタ

カシン

ゴオオオオオ…ッ

杏子・マミ「(ザララララララ  シュルルルルル)ッッ!!」ハッ

ほむら「……ッ」ガバッ

まどか「――」ムギュ

さやか「(ハッ)恭す――」

ドガシャ ゴッッ

恭介「ッッ」ド オオオオオオ……ッ

杏子「受け止めた!?」

マミ「それだけじゃない、これは――」

511: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:15:30.39 ID:sjSXlkcCo
ドシュウウッッ――… パラパラパラ…

恭介「……」ユラ ドサッ…

まど・ほむ「上条くん!」タッ

さやか「(タンッ)恭介!」ギュッ

恭介「……空の方は無事かな……」

杏子「こんな天気で飛んでる飛行機とかねえよ」

恭介「……そういやそうだ」ムク… スタ…

マミ「……今の、炎の向き……だけでなく魔力の質も変えたわね。

   ワルプルギスの拡がる炎が収束していたわ……手のほうは火傷してないの?」

恭介「巴さんからのレッスンのおかげで、

   とりあえず左手への影響はゼロに収束、炎は逸らしたってとこです」

マミ「わたしは思ったことを言っただけ。とにかく助かったわ、ありがとう。

   欲を言えばもっと早くできるようになってほしかったけど」

恭介「(ハハ…)申し訳ありません」カキカキ…

マミ(……やさしさが己を解き放つブレーキになってる。そんな子はときどきいるけど、

   この子の場合、生まれ持った才能が凡庸に収まることを許してくれないでしょうね)

杏子「助かったかどうかまだ怪しいぜ。……見ろ」

アハハハハハハ… ゴゴゴゴゴ…

QB「これはまずいよ。ワルプルギスが正位置になっている」

マミ「――暁美さん、時間を止めて」

ほむら「はい」カシン

――

ほむら「ワルプルギスが正位置って……、

    逆さになってた人形が上になったのがそんなにまずいの?」

マミ「ええ。こんなこと起こらないと思って話さなかったけど。キュゥべえ、説明をお願い」

QB「もはや見滝原の街だけの問題ではなくなった。

   ワルプルギスが飛行を開始すれば、この地表の文明は全て滅び去るということさ。

   それも数週間以内にね」

杏子「なんとか総がかりで叩き落とすしかねえってことか……」

QB「君たちでは恐らく敵わないだろう。彼女は強さにおいて上回っているだけでなく、

   その飛行速度たるや秒速100メートルに達するほどのものだ。

   戦う以前にとても追いつけやしないだろう」

まど・ほむ「……!」

512: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:19:31.56 ID:sjSXlkcCo
マミ「だとしても考えなければ。何か彼女を倒す方法を……!」

杏子「おい、さやか」

さやか「……うん」

杏子「その剣、ここで抜けなきゃ話にならないぞ。なんとしてでも抜けろ」

さやか「杏子、ちょっとこれ持ってて」スッ

杏子「ああ」パシ

スッ グッ…

シィィー… ィィ‥ン……

まど・ほむ・マミ・恭「抜けた!」

杏子「よし! ……って刀身がないじゃん」

マミ「いえ、目には見えないけど確かにそこにあるわ……」ジッ…

さやか「いつもはこの状態なんだって言ってる」

ほむら「だれが?」

さやか「分からないけど聞こえるんだ。待ってて。あたしも慣れないから相談してみる」フゥ…

シュオオオオ…  コオアアアアアアア

マミ・杏子・まど・ほむ・恭「!!」

513: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:20:13.16 ID:sjSXlkcCo

true blue

ClariS、作詞:町田 紀彦、作曲:町田 紀彦・吉松 隆、編曲:湯浅 篤

514: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:21:23.78 ID:sjSXlkcCo

杏子「なっ…、お前……この魔力の波動……今までが封印状態だったていうのかっ!」

マミ「それに波動の色が……真夏の夕闇に覆われる無辺の天頂のよう。

   まるで空に湛えられた大気の深海‥、どこまでも淡く深く霞む碧。

   偏見も惰性も妄執も私欲も…ひとの世の哀しみをただそのままに認容するような茫洋…、

   ……魔法少女の魔力なのに……こんな色の波動があるなんて」

QB「横溢する波動だけじゃない。

   これは――、一点の輝きもない状態でソウルジェムの形態を安定保持してるなんて、

   僕も見たことがない」

マミ 「(ハッ)(彼女の『祈り』には初めから――)」

ほむら「ごめん。いったん時間停止の効力が切れるわ」

カシン

さやか「恭介、今すぐ左手でこの刀身に触れて、って」

恭介「え? でも」

さやか「何も考えずに早く」

恭介「…」スッ パシ

サアッ……

まどか「あっ…」

ほむら「空が一瞬で……嘘みたいに晴れたわ」

マミ「(カチャッ スイー…ッ)……半径100kmにわたって。まさかこれは……」

さやか「この剣には周りの風を操る力があるんだって」

杏子「ワルプルギスの魔力が起こす嵐を抑えるほどなのか……」

アハハ… 

まどか「あっ、飛び始めた!」

ほむら「まずい……剣の力の及ぶ範囲外に出られたら!」

恭介「もっと強化することはできるのか? そうでなければ……」

マミ「キュゥべえ、あなたの見立ては?」

QB「今のこの強化状態を続けられるのは15分が限界だろう。

   さらに強化するならばもっと短くなるはずだ」

恭介「強化効果が切れたらもう一度触ればいいのか? 爆発の危険があるのか?」

QB「この剣はソウルジェムやグリーフシードのように魔力を蓄積するようにはできていない。

   幻想御手による強化の連用は負担がかかりすぎて、

   刀身が爆発はせずとも破損する恐れがある。元も子もなくなるよ」

515: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:25:25.38 ID:sjSXlkcCo
ほむら「つまりあと15分以内にワルプルギスに追いついて倒さなければ……」

まどか「っっ」サアッ キリリ…

マミ「やめなさい。あなたの力でもワルプルギスは撃ちぬけない。第一もう届かないわ」

まどか「それなら上条くんにソウルジェムを強化してもらって――」

杏子「ダメだ。マミでさえああなったんだ。お前なら多分死ぬ」

まどか「でもっ……」

杏子「……恭介だってもう神経がもたねえよ。

   友達の命がかかってる超難易度の手術をやれってけしかけてるようなもんだぞ」

まどか「っっ」チラ

恭介「…………」ジッ… フリ…

まどか「……っっ。(クルッ)……お願いさやかちゃん!

    すっごく早い乗り物に変身してみんなを運んでくれないかな?」

さやか「まどか。悪いけどあたしには無理だわ……。ごめん」

まどか「……っ」フリフリ…

杏子「…お前ら、その発想は」

マミ「(ハッ)――捨てたものじゃないわ!」

まど・さや・杏・恭・ほむ「えっ!?」

マミ「でも美樹さんと同行できるのは1人が限界」

まど「わた―」ス

恭介「僕が行きます」

マミ「(チラ)みんな、いいわね?――二人とも肩を組んで」シュルシュル…

――

杏子「――マミさ、その剣まで縛り付けてどうすんだ?」

マミ「いいえ。これはジェットエンジンよ」

さや・まど「???」

杏子「お前さやかをスラストSSCにでもするつもりか!?」

さや・ほむ「???」

マミ「確かにまっすぐなのは美樹さんの持ち味だけど、直線番長では駄目なの。

   今、求められるのは三次元を制する機動性――。それはこの剣でしか実現できない」

516: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:29:27.06 ID:sjSXlkcCo
スタ…

マミ「大事なことを説明する。急激な加速や減速はひかえて。

   猛烈な慣性力に上条くんが耐え切れなくなるから。

   飛行中はお互いテレパシーで会話しなさい」

さやか・恭介「はい」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「ん」クル…

まどか「……あたしも、頑張るね」

さやか「(ニカッ)おう!」スッ

まどか「(ニコ…)」スッ

パチッ

マミ「急ぎなさい。秒単位の勝負よ」

さやか「(コクッ)行ってきます」タッ チラ

ほむ・杏「(コク)」

さやか「…」チラ

恭介「(コク)行こう」タ…

さやか「うん」

タッタッタッ スゥーーーー……ッ


マミ「……キュゥべえ、追いつけそう?」

QB「ちょっと待って。……大丈夫だ。間に合うよ」

マミ「そう。(ボソ)…お願い」グッ…

スタ…

杏子「……マミ、ちょっと気になったんだけど今のさやかの武器ってなんだっけ?」

マミ「バットが――」クル

杏子「(ヒョイ)……」ペコ…

マミ「あらら」

まどか「さ、さやかちゃん……っ」クルッ

杏子「(ブンッ)まどか。あたしたちはあたしたちの仕事をするぞ」スタ

まどか「でも…」

杏子「(クル…)大丈夫だ。今のあいつなら独りでも隕石を場外ホームランできるさ」

ほむら「バット…」

杏子「(ビッッ)元気があれば何でもできるっ! ほら、避難所にまた魔女がきてるぞ」スタ

517: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:33:27.89 ID:sjSXlkcCo
~~上空~~


ヒュオオ

さやか(あ、今さらだけどあんたを連れて飛んでも大丈夫なんだっけ)

恭介(浮力が上がりすぎないように抑えてる。君こそよく気を遣ってくれて助かってるよ)

さやか(気を遣ってる?)

恭介(ほら、例えばこんな高さなのに寒くないだろ。

   いま分かってるだけでも風防は言うまでもなく他に空調、

   エアバッグ、酸素マスク、対Gスーツ……、

   ここまで快適に調整してくれるならもっと加速してもいいくらいだよ)

さやか(ああ……そのお礼は背中の剣に言って。

    あたしは『恭介がなるべくケガしないように』ってお願いしてるだけだから。

    ホントに体だいじょうぶ? 折れたりしない?)

恭介(正確には実物のエアバッグより高性能だ。

   ほら、重い物を持ち上げるときに、

   背中が反らないように腹筋に力を入れながらやると腰を痛めないだろ。

   あんな感じに瞬間的な衝撃だけじゃなく持続的にかかる力も絶妙に殺してくれてる)

さやか(よかった。んじゃ、ちいっと飛ばすよ)グァ

恭介(んがが)ギゴゴ


~~魔女の結界~~


カシン  ドカーン!

ゾゾゾ…  

ほむら「倒してもこんなすぐに使い魔が増えるなんて……!」

まどか「マミさん! この気配って……」クルッ

マミ「(コク)……一つの結界に複数の魔女がいる」

ほむら「2人も魔女が……? 

    倒すのに時間をかけてる間に体育館に別の魔女が来るかもしれないのに」

杏子「固まって歩いてくれてりゃあたし一人でもやれるんだけどな。

   仲がいいのか悪いのか分かんねえ連中が同居してるみたいだぜ」チラリ

ほむら「なによ?」

杏子「別に。マミ、あたしたちが侵入する前にこの結界にさらわれた住人はいなかったよな?」

マミ「ええ、確認したわ」パウッ

杏子「なら急ごう。あたしとマミはあっちの魔女に向かう。

   まどかとほむらはもう一匹の相手をしろ。それでいいか?」

マミ「――わかった。(クルッ)暁美さん、鹿目さん、無理はしないで!」タッ パウッッ

ほむら「あ、ちょっと!」

杏子「急げよ、この結界だけに構ってられねえぞ!」ダッ

まどか「行こう、ほむらちゃん」バシュッ

ほむら「は、はい!」タッ

518: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:37:28.57 ID:sjSXlkcCo
――

ザアッ ビシッッ

ほむら「っ!」

まどか「ほむらちゃん!」バシュッ ズバッ

ほむら「ありがとう!」

まどか「だいじょうぶ!?」スタッ

ほむら「うん! でもこの魔女、強い……!」

まどか「(キリ…)マミさんが『無理するな』って言うだけあるね――」

ほむら「(サ…)そうだね。でも何とか――……鹿目さん?」チラ

まどか「(バシュッ)……ほむらちゃん、大変。またこの結界に魔女が増えちゃった……」

――

杏子「予感的中! 

   けど2匹の中間地点――出入り口付近にお出ましとはやってくれるなァッ」バシュッ

マミ「キュゥべえ、佐倉さんについていって! 頼むわね!」ジャキッ

QB「わかったよ」トトッ

マミ「佐倉さん! 引き込まれた人がいたらそちらを優先して!」パウッ

杏子(あいよっと)ダダダ

――

杏子(まどか、ほむら、ボチボチやってるか!)

ほむら(杏子、無事!? また新手が――)ポーン  ドカーン

杏子(わかってる。つかソイツの相手してる)

まどか(ごめん杏子ちゃん。わたしたちだけでこの魔女を倒すのは難しいかも)キリリ…ッ

杏子(マミもあたしも予想より苦戦してる。

   何とかもちこたえろ、あんたたちならできる)

まどか(わたし、さっきの技を――)バシュッ

杏子(待て、まだ使うな。……よし、あんたたちの場所は大体分かった)

ほむら(場所……?)

杏子(「ロッソ・ファンタズマ!!」)パシュン スタッ

ほむら「!?」

まどか「杏子ちゃん!」

ザアッ  ヒョイッ

杏子「いい動きすんなあ、コイツ」スタッ

ほむら「あ、あなた別の魔女と戦ってるんじゃ…」ス…

杏子「ちょい待ち。時間止めるなよ。万が一マミの勘が狂うといけないからね。

   あたしもこの状態、そうはもたないからな」タタッ

ほむら「え?」

杏子「現状維持で頑張れ、ってこと!」ヒュッ スタッ

まどか「わ、わかった!」キリリ バシュッ

519: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:41:29.33 ID:sjSXlkcCo
――

杏子「(スタッ)――そろそろ決めてくれるかい、マミ先輩」クル…

マミ「(ジャコンッッ)」グッ

QB(2秒後にライン成立、暁美ほむらの射線上からの除去は標的の動きに影響しない)

――

杏子(ほむらを抱いて飛べ!!)

まどか「(タッ)――」ギュッッ  バシュッッ

ほむら「(ムギュ…)!?」ヒュオオ…ッ

――

魔女「ガアアアッ」ゴウッ

マミ「――(ドパズゥッッ‥)ティロ・フィナーレッ!」

――

ドオオオッ   パアアンッ…

杏子「うん」

――

ドオ  シュゥッッ!!   パアアアン……ッ


まど・ほむ「……!」スタッ


~~体育館~~


ギュオオ… 

杏子「魔女の結界層ブチ抜くとか、あんたもえげつない進化してんなあ。

   わかってたけどグリーフシード1個も回収できねえし」

マミ「(タハハ…)自分でお膳立てしといてよく言うわね。

  (……あの魔女たちってわたしたちみたいな関係だったのかもね)」ゴソ カチ フウゥ… スッ

杏子「(パシ)…フン」カチ フゥゥ…

マミ「結界に引き入れられた人はいなかったのね?」

杏子「ああ」ポイ

QB「(コロン)……きゅっぷい」

トコ トコ

子ども「おねえちゃん……」ヒック

スタ…

マミ「(ナデ…)大丈夫、みんなわたしたちが守るから。いい子で待っててね」ニコ…

母親「お願いします……頑張ってください」

マミ「はい」

520: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:45:30.03 ID:sjSXlkcCo
ガンバレ…  ガンバレー  ガンバレーー!

まどか「よかった……みんな信じてくれたんですね」

マミ「(……本当は魔女のことは知らないほうがいいんだけど。)

   美樹さんたちも頑張ってる。ここを守り抜きましょう」

まど・ほむ「はい!」

杏子「おう。つかまだ魔女はここに来るのか?

   魔法少女が張ってれば大丈夫なんじゃなかったか」

QB「この場にはまだ大量の穢れが残存していて、近辺から魔女が押し寄せているみたいだね。

   ワルプルギスが去ったいま、一時的に見滝原全体で穢れが巻き取られてしまい、

   結果的に魔女から見てここが目立っている状況だ。

   君たちがその強さを知らしめることでほどなくあきらめて去っていくんじゃないかな。

   その頃には見滝原各所における場の穢れも現在より平均化が進んでいるだろうし、

   それに伴って魔女の出現頻度も通常パターンに収まっていくはずだ」

杏子「要するにもうちょいここでガンバレってことか。

   いつもなら大漁って喜ぶんだけどな。さやかの方も気が気じゃねえし」クル…

ほむら「(クス…)」

まどか「じゃあもう一度、アルティマ・シュートで……」

杏子「お前の腕じゃ効果範囲が狭すぎる。それは切り札にとっとけ」

まどか「う、うん……」

マミ「体育館に入ってきた魔女から地道に戦っていきましょう」

まど・ほむ「はい!」


~~上空~~


サアアアアア――…

恭介(……ところでそれ、何?)

さやか((フフン)よくぞ聞いてくれました! 

    鞘に封印されしさやかちゃんの魔力が、王様の剣を抜くことによって解き放たれ、

    さやかちゃん本来の武器である剣が使えるようになったのだ!)

恭介(そうなんだ)

さやか(驚くのはまだ早いっ。

    この柄にあるトリガーを引くことで何と刀身を発射できるっ)カシュン

シュルルル…

さやか(呪いを探知して魔女や使い魔を自動追尾し命中すると炸裂するという優れモノなのだ!

    さらにあたしの魔力によって刀身はまた装填でき何発でも撃てる、どうよコレ!?)

恭介(すごいね。あとで暁美さんに教えてあげよう)

さやか(それは勘弁して! あたしも剣が抜けてから初めて気づ――)

ドオオン!

使い魔「ギャアアッ」

恭介(もう使い魔がいるぞ!)

さやか(行くよ恭介!)チキッ

521: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:45:56.57 ID:sjSXlkcCo

Fighter's Honor (Flying Remix)

作曲/編曲:椎名 豪

522: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:46:47.18 ID:sjSXlkcCo

ギュオア

使い魔「キャハハッ」パキュキュキュ

さやか「ぐっ」シュン

恭介「ッッ」ギイイッ…

さやか(くのッ)カシュン

ヒュン ウフフッ

さやか(避けられた!? 追尾してるはずなのに!)

パキュキュ

さやか「!!」ギュオ

恭介「ぐ……」ギイッ…

さやか(恭介、大丈夫!?)

恭介(気にするな、集中しろ)

ギュオオ

さやか(でも当たらないんだよ、こっちの弾が)ヒィィ…

恭介(使い魔は霊体だから物理法則に縛られないぶん、こちらより機動性に優れてる。

   ミサイルの誘導性能だけに頼らず、しっかり引きつけてから撃つんだ)

さやか(わかった!)グオ 

グググオオッ…

使い魔「アハハッ」キュンキュン

さやか「……ッ」ギイイイ… シュオ ルン

恭介「ぷっっ」ゲポッ 

さやか「(ハッ)ッッ」チラ

恭介(撃たれるぞ、前を見ろ!)ガチ‥

パキュキュ

さやか(ッッ)シッッ ギュオ

カシュン    ドオン!

さやか(よし!)

恭介(8時と1時の方向)

さやか(続々とお出ましか……道をあけてもらうよ!)シュン

パキュキュ…

…ドオン  

523: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:50:48.55 ID:sjSXlkcCo
――

恭介(もう1体、後方に出現したぞ)

さやか(OK!)グ

ゴオンゴオン…

さやか((ハッ)あの飛行機なに!?)

恭介((チッ)――自衛隊の戦闘機だ。

   あんまり空が賑やかだからスクランブル発進してきたんだろう)

さやか(このままだと2機とも使い魔にやられるよ、知らせなきゃ!)

恭介(いや、まずい…)

――

小林三尉(何なんだアレは……人が空を……? ありえない、化け物か!?)

管制官『コントロールよりディアボロⅠ、状況はどうだ?』

仰木一尉「こちらディアボロⅠ、視認で得られた情報をありのままに報告する。少――」

――パキュキュ ヂッッ

仰木一尉「(クルッ)被弾した!?」

小林三尉「発砲をやめろ!」

さやか(ちょっと聞いて! 今すぐここから――)

小林三尉(あ、頭の中に声が――!!)ブルブル

パキュキュキュッ

仰木一尉(ハッ)ヒュン

小林三尉「攻撃を受けた! 交戦開始!!」ギュルオッ

仰木一尉「小林、待て! 弾の来た方向が――」

――

グオオ

さやか(?)

恭介(避けろ、さやか!!)

さやか(えっ?)シュオ

ヴォオオオオオッッ

ツッッ

恭介(大丈夫か!?)

さやか(ああ、マントにかすっただけ……ときになんであたしは機関砲撃ちまくられてんの!?)

恭介(パイロットに使い魔は見えない。

   流れ弾がかすめたからこっちが向こうを撃ったと思われてる)

さやか(そりゃまたハイパーな状況に……)ギュン

524: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:55:14.91 ID:sjSXlkcCo
――

仰木一尉「戻れ小林!」

小林三尉「こんな連中、野放しにさせられるか!」

ブオオオーッッ

恭介(この速度域だとついてこられるな。機動性だけは優れてる)

さやか(恭介、あたしたちばかり追って使い魔に気づいてないなら余計にまずいよ!

    使い魔はどっち!?)ギュルン

恭介(さやか。この2機にはおとりになってもらおう。君が本気を出せば引き離せるはずだ。

   使い魔を任せてワルプルギスに向かってくれ)

さやか(そんな……見殺しにしろって言うの!?)

恭介(客観的に考えてみろ、パイロット数名の命と全世界の命と、

   いったいどっちが大事だっていうんだ)

さやか(いま避けるのに忙しい!! 頼むからあの人たち説得して!!)ゴオオ ヴンッッ ヴヴンッ

恭介(……それならあの機に思いっきり寄せてくれ。 攻撃してくるほうの陰になるように)

さやか(オーケー! ありがとう!)ギュル

グク…

仰木一尉「……」グ…ッ

小林三尉(クソッ、位置取りを……)グオ

恭介(いいか、このタコ!!)

さやか(…)アチャー

恭介(ワルプルギスの夜っていう魔女をさやかは倒さなきゃならない。 

   あと10分で崩れ落ちる世界に出来ることがないっていうんなら、

   せめてさやかが救いに駆けつけるのを妨げるな!!)

さやか(…いや元はといえばあたしがあの子をひっくり返したような……)

恭介(君は黙ってろ!)

さやか(はい)

恭介(常日頃国の防衛の前線に立ってるあなた方でも理解できないかもしれないが、

   人知れず魔女という不可視の敵性存在から国民を守ってる子たちがいる。

   理解できなくてもいい、こちらからあなた方に危害は加えないから元の任務に戻れ)

仰木一尉(……君たちは、いったい……)

小林三尉「フォックス・スリー!」ギュオ

使い魔「キャハハッ」パキュキュッ…   

さや・恭「あっ…」

525: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 04:59:31.03 ID:sjSXlkcCo
ビシビシシッ… ドグヮアッッ

小林三尉「ゴハアッ…」ドォッ…

仰木一尉「小林ーーーー!!」

恭介(くっ…)

さやか「(ギュル)まだ生きてる!!」グンッッ

ピタッッ

さやか「アヴァロン!!」

キインッ…

仰木一尉「!?」

恭介(パイロットも機体も…元に戻った!?)

管制官『ディアボロⅠ! ディアボロⅡの機影が一瞬レーダーから消えたぞ、どうした!』

仰木一尉「……異常、なし…」

小林三尉「…………」チラ…

さやか「……」ニコ…

恭介(正面からさっきの使い魔が戻っててきたぞ……後方も――挟撃だ!)

さやか(……ッ)カシュン

使い魔「ウフフッ」キュン

恭介(後方へのミサイル、回避された)

さやか(それでいい、この人たちから距離をとってくれれば。もいっちょ)カシュン

使い魔「キャハハッ」ヒュオオ

恭介(前方の使い魔、接近!)

小林三尉(前……? どっちに避ければいいんだ?)

さやか((ヒュオ)あたしが防ぐ。信じて)ヒュオォン…

小林三尉(……!)

仰木一尉(小林、動くな! もう一匹とやらは俺が引き付けるッ)キアアッ

小林三尉(仰木さん無理だ! 相手はレーダーにも映らないし見えないんですよ!?)オオ…

カシュン カシュン…

仰木一尉(新婚ホヤホヤのお前を墜とされる俺の身にもなってみろ!

     相手が見えなくても追尾するミサイルの動きを見ればおおよその位置は推定できる、

     あとはこちらが撃たれる瞬間の――)グッ…

――パキュキュッ

仰木一尉(うおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!)ギュワァン ッヅッ――

小林三尉「仰木さんッッ!!」

526: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/31(土) 05:03:35.72 ID:sjSXlkcCo
恭介(向こうもあまりもたないぞ)

さやか(分かってる)

恭介(――来る!)

パキュキュキュキュッ

シャッ カカカカンッ ギュオ

ザシュッ

使い魔「ギャアアアッ…」

恭介(……あと1体)

さやか((ヒュゥゥ…)……この剣があんたを護ってくれてるんだよね)グクク…

恭介(ああ)

さやか(今から本気出す)

グオ キュル キュルルル…

恭介(……ッッ)グググォ…

仰木・小林(なんて挙動だ……ッ!)

カシュ ドオン!

さやか(――もう時間がない、はやくワルプルギスに追いつこう!)ギュル

仰木一尉(君たち、どこへ行くんだ)

チラ…

さやか(あっちへ、あと10分もないうちに行かないといけない。そうしないと世界がやばい)

仰木一尉(私たちにできることは……)
 
恭介(この時間制限のなかで魔法少女以外に対応できる者はいない。

   あなた方二人の無事と脅威は去ったとの報告をしてください。さやか、急ごう)

さやか(じゃあ、あなたたちも気をつけて)クル シュオオッ

オオ…      ――バアアアアアアアアンッッ…

仰木・小林「……」

管制官『ディアボロⅠ、両機とも無事か? 応答せよ』

仰木一尉「――こちらディアボロⅠ、

     他国からの領空侵犯および攻撃は受けていない。

     繰り返す、他国からの領空侵犯および攻撃は受けていない。

     ディアボロⅠ、ディアボロⅡともに問題なし」

管制官『了解した。先ほどの交戦開始したとの通信について説明されたし』

仰木一尉「ああ――空で溺れたところをイルカに助けられた」

管制官『何だって?』

仰木一尉「ディアボロⅠの機体が一部破損したのをディアボロⅡが誤認した。

     破損の原因は不明」

管制官『それを早く言え。空域に異常はないな?』

仰木一尉「目視確認する限り異常なし」

管制官『了解。ディアボロⅠ、ディアボロⅡ、直ちに帰投せよ。無事で何よりだ』

仰木一尉「ディアボロⅠ、帰投する。通信終わり」



次回 上条恭介「幻想御手?」 その4