京介「ただいま」 桐乃「おかえり」 前編

463: ◆IWJezsAOw6 2013/07/21(日) 23:30:23.78 ID:O8T45POS0
ソファーの上では桐乃が座り、ファッション雑誌を眺めていた。 特に変わった様子は、やはり無い。

リビングの時計を見ると、時刻は23時40分。 ふむ……残り20分か。

麦茶で喉を潤し、桐乃に声でも掛けてみようか。

京介「桐乃」

桐乃「んー?」

やはり俺の方には顔を向けず、だがそれでも返事はあった。

引用元: 京介「ただいま」 桐乃「おかえり」  


464: ◆IWJezsAOw6 2013/07/21(日) 23:32:01.36 ID:O8T45POS0
京介「……また、ゲーム貸してくれよ」

桐乃「お、なに? 京介もやっと良さに気づいた?」

京介「まーな。 おすすめの今度でいいから、頼むぜ」

桐乃「おっけ! ひひ。 何本か貸したげるね」

……うむ。 こいつ、多分忘れてるな。 まあ、それはそれで良いんだけどさ。

京介「んじゃ、俺は寝るわ。 おやすみ」

桐乃「ん。 おやすみ」

言い、俺は自室へと戻る。

465: ◆IWJezsAOw6 2013/07/21(日) 23:32:27.58 ID:O8T45POS0
その途中、なんとなく歩きながら携帯を開いた。

……ん?

ちょっと待てよ。 これって……。

ベッドの上に座り、確認。

間違いねえ。 あいつは忘れていたわけじゃなかったんだ。 ってことは、俺の考えが当たっているとするならば。

部屋の時計を確認。 時刻は23時55分。

……来るな、あいつ。

そう思ったと同時、部屋がノックされる。

466: ◆IWJezsAOw6 2013/07/21(日) 23:32:53.87 ID:O8T45POS0
京介「んー」

返事をするとドアは開き、姿を現したのは俺の予想通り、桐乃だった。

京介「どした? なんか用事か?」

俺がいつもの様にそう返すと、桐乃は口を開く。

桐乃「……あの、さ」

桐乃「一応……ゆっときたくて」

京介「なんだよ?」

467: ◆IWJezsAOw6 2013/07/21(日) 23:33:21.19 ID:O8T45POS0
桐乃「あたし、その……あんたのこと、京介のこと……まだ、好きだから。 あの時と、気持ちは変わってないから」

桐乃はすっかり顔を赤く染め、そう言った。

俺はしっかりと、その言葉にこう返す。

京介「どうしたんだよ、急に。 俺だって一緒だぜ。 お前のこと、好きだから」

桐乃はそれを聞き、先ほどまでとは違い、馬鹿にする様に笑って言う。

桐乃「ぷ。 あははははは!! 京介ぇ、今日って何月何日ぃ? ひひ」

468: ◆IWJezsAOw6 2013/07/21(日) 23:34:07.70 ID:O8T45POS0
京介「ん……ああ、それか」

桐乃「反応うっす! もっと面白いリアクションとってよ」

京介「……悪かったな。 まあ、なんとなくそんなことだとは分かってたからさ」

桐乃「ふうん。 ま良いや。 そうゆーことだから、おやすみ~」

満足したのか、ドアを閉めようとする桐乃に、俺はひとつの言葉をプレゼントする。

469: ◆IWJezsAOw6 2013/07/21(日) 23:34:37.00 ID:O8T45POS0
京介「ところで桐乃」

京介「時計、しっかり直しとけよ」

その言葉を聞くと、桐乃は目を見開き、声にもならない声をあげながら勢い良くドアを閉めた。

やれやれ。 どうやらまだ眠れそうには無いらしい。 桐乃とは話さなければならないことが出来てしまったから。

俺は小さく溜息を吐き、桐乃の部屋へと向かうのだった。


4月の一日 終

487: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:15:44.00 ID:UaKVgmeV0
京介「ほら、お前の分」

桐乃「ん。 さんきゅ」

神社に行く階段の途中、そこに俺たちは居た。

あれから随分と色々周り、少々疲れた俺たちは飯を食う事にして、案の定、俺が焼きそばを買って来いとのお使いを頼まれたってことだ。

正しく言うと、桐乃にパシらされただけだけど。

488: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:16:20.85 ID:UaKVgmeV0
そんな俺をパシった桐乃は満足そうな表情をしながら、買ってきたばかりのお茶を飲んでいる。

つうかだな、桐乃をここに一人で残すってのが俺にとっちゃすげー不安だったんだが、それを伝えたところ「あたしだったら大丈夫だから早く行ってきて」だとか「なに~? そんな心配なのぉ? シスコンすぎっしょ(笑)」だとか言ってくるから、渋々俺は一人で買ってきたってことなんだ。

……それだけ言われても、行ってから桐乃の顔を見るまで心配で心配で落ち着かなかったけどな。 仕方ねえだろ。 桐乃は俺の妹で、俺は桐乃の兄貴なんだからさ。

桐乃「ね? 大丈夫だったっしょ?」

ひとしきりお茶を飲んだあと、桐乃は俺の方に顔を向けながら言った。

489: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:17:05.68 ID:UaKVgmeV0
京介「結果的にだろ……。 次からは付いて来いよ? お前になんかあったら嫌なんだよ」

桐乃「……別にいいケド。 ふん」

こいつもこいつで、俺が行ってから後悔してたんじゃないのかな。 俺の顔を見たとき、一瞬だけだがすげー嬉しそうな顔してたし。

京介「そういやさ、花火見て行くだろ? ここからでも見えるのかな」

桐乃「さー? てか、良い場所くらい調べといてよ。 見れなかったら許さないから」

京介「……すいませんでしたね」

490: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:17:42.67 ID:UaKVgmeV0
落ち着け。 桐乃は口ではこう言っているが、多分……。

そう思いながら、横に座る桐乃の顔を見つめる。

桐乃「なによ。 そんなじっと見て。 あ~、もしかしてぇ。 あたしが可愛すぎてとかぁ?」

ケラケラと笑いながら、桐乃は言う。 そんなこいつに、俺はこう返すことにした。

京介「でも、俺は別に見れなくたっていいけどな」

桐乃「はぁ? 折角、お祭りに来てるのに花火見なくて良いとか、意味分からないんですケドぉ」

491: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:18:11.14 ID:UaKVgmeV0
ははは、馬鹿め。 掛かったな。

京介「いや、俺は桐乃だけ見れればいいや」

と、真っ直ぐと桐乃の顔を見ながら言ってやる。

数秒間を置いて、桐乃は耳まで真っ赤に染めながら、ようやく口を開いた。

桐乃「ばっばばばばかじゃん!! な、なにゆってんの……そういうの人が居るところでやめてよ」

言葉の終わりは小さく、辺りが静かでなければ耳には入っていなかっただろう。

492: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:18:56.99 ID:UaKVgmeV0
京介「ここは居ねーじゃん」

桐乃「でも! いきなりやめてっつってんの……」

京介「いきなりじゃないとお前の反応楽しめねーじゃん」

桐乃「う、うううう……!」

手で膝をぱんぱんと叩き、桐乃は呻き声にも似た声を漏らす。

そして、顔をあげ。

桐乃「京介!」

493: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:19:32.85 ID:UaKVgmeV0
こいつはそう言うと、俺の肩を掴み、顔を近くに寄せてきた。

……え、ええええっと? な、なんだよこいつ。 意外にも、マジで怒ったとか……?

京介「き、桐乃?」

桐乃「そこまでゆーなら、あたしだけ見て。 他の子とか見ないでよ」

言いながら、更に顔を寄せる桐乃。

494: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:20:04.13 ID:UaKVgmeV0
お互いの息が掛かりそうな、そんな距離。 桐乃はじっと俺の目を見つめ、俺も逸らす事はせずに、桐乃の綺麗な目を見ながら答える。

京介「……当たり前だろ」

それを聞いた桐乃は小さく笑い、目を瞑る。 何を望んでいるのかなんて、もう考える余地すらない。

そのまま桐乃の頭に手を回し、ゆっくりと抱き寄せて。

495: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:20:50.57 ID:UaKVgmeV0
加奈子「んだよー、先客いるじゃねえかー」

京介「うわぁあああああああああああぁあああああああああ!!!!!!」

加奈子「うおっ! な、なんだ……京介じゃん! 何してんの? お前」

あ、あぶねえ! あぶねえっつうかタイミング悪すぎんだろこいつ! このチビが!

桐乃「あ、あああ……」

桐乃は顔を真っ赤にしてそっぽを向いている。 今更そうしたってもう大分遅いと思うけどな。

496: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:21:20.45 ID:UaKVgmeV0
加奈子「ん? 桐乃じゃねーか! んんん?」

加奈子「あー。 そういうことか! お前らこんなとこでエロいことしようとしてたのかよ? うへぇ」

京介「してねーし、しようとも思って無い!! ばっかじゃねえの!?」

そうだ。 俺がしようとしてたのは、恋人と純粋な気持ちでキスをしようとしてただけだし……?

桐乃「……」

未だに桐乃はそっぽを向いていて、ひと言も話す気は無いらしい。 ほんと、想定外の事態に弱い奴だ。 俺も人の事を言えるほどでは無いけどさ。

497: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:22:20.45 ID:UaKVgmeV0
京介「て、てか……お前はどうしてここに居るんだよ。 もう子供は帰って寝る時間だぞ?」

加奈子「加奈子は子供じゃねえっつうの!! てかぁ、そこ加奈子の席なんだけどぉ」

京介「……そうなのか? 悪いな、なんか」

加奈子「まいーや。 イチャイチャしてるの邪魔するほど、空気読めない馬鹿じゃないし~」

加奈子「ってことで京介。 が、ん、ば、れ、よ」

京介「何をだよ! とっととどっか行けっつーの!!」

498: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:22:50.36 ID:UaKVgmeV0
加奈子「はいはい。 あ、てかさ。 一応その特等席譲ってやってるんだから、今度なんか奢れよ、京介」

京介「あ? 特等席?」

加奈子「はぁ~? 知らねえの? 毎年そこからが一番良く花火見えるんだよ。 去年は彼氏と来たんだけどぉ。 今年はあのクッソガキと一緒ってのがなあ」

京介「クソガキって……ブリジットか」

加奈子「なーんで加奈子があんなクソガキの面倒見なきゃいけねーのって話じゃね? まそんなのはドーでもいいや」

加奈子「んじゃ、京介またな~」

手にしっかりとワタアメを二つ持っているのには突っ込まない方がいいか。 めっちゃ突っ込みてえけど!

499: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:23:28.35 ID:UaKVgmeV0
京介「……おーい、桐乃? 加奈子ならもう行ったぞ」

桐乃「え? そ、そう? ばれなくて良かったぁ」

何を根拠にばれなかったと思ってるんだ!? こいつすげえな!!

京介「は、ははは。 あー、てかさ。 ここから花火見れるらしいぜ」

桐乃「マジ? 加奈子情報?」

京介「そうそう。 あいつの特等席らしい」

桐乃「ふーん。 ならここでいっか」

桐乃は言うと、優しく笑いながら夜空を眺める。

500: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:24:08.86 ID:UaKVgmeV0
なんつうか……こう言うのもあれだが、今日の俺めっちゃ格好悪いな。

前からそうだろと言われればそうなんだけど、人頼みが多いっつうか、そんな感じになってるよなぁ。

桐乃はそんなので文句は言わないだろう。 でも、俺はどうしても気になってしまう。

黒猫は、かつて……俺に「頼れ」と言った。 もっと、頼れと。

だけど、それはどうしようも無くなったときだけ。 些細なことを全て仲間に頼っていたら、そいつはただの怠け者だ。

501: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:25:26.69 ID:UaKVgmeV0
……今日、今日のことだ。

今日、黒猫の件や加奈子の件。 それらは本当に、あいつらに助けて貰わないと駄目だったのだろうか。

加奈子は正確に言えば助けたって意識は無いんだろうけど……結果的には、そういう形になっている。

これらのことは、俺だけでもどうにかできたことじゃねえのか?

そんな風に、思ってしまう。

502: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:25:54.41 ID:UaKVgmeV0
桐乃「花火って何時からだっけ?」

京介「ん? えーっと……時間的にはもうすぐだと思う」

桐乃「そかぁ。 えへへ」

桐乃は笑いながら、俺の顔をじっと見つめる。

京介「……んだよ? なんか顔に付いてるか?」

503: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:26:20.81 ID:UaKVgmeV0
桐乃「ううん。 そうじゃなくて」

桐乃「良かったなって、思って」

京介「……ここから花火が見れて?」

桐乃「それもそうだケド、色々」

桐乃「思い出を振り返る……とかじゃないケドさ。 なんか、幸せってカンジなのかな? 自分でもちょっと分からないや」

京介「ふうん?」

504: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:28:43.23 ID:UaKVgmeV0
桐乃「あたしさ」

桐乃「-------、-------。 ---------------」

その後、桐乃が口にした言葉は聞こえなかった。 突然の大きな音によって、桐乃の声がかき消された所為で。

大きな音とは爆発音で、辺りが一瞬照らされる。 音の方に顔を向けると、夜空が綺麗に彩られていた。

桐乃「お、始まったじゃん」

京介「みたいだな……。 つかお前、今なんて言ったんだ?」

桐乃「秘密~。 もう今日は言う気分じゃないし、いつかね」

505: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:29:38.39 ID:UaKVgmeV0
京介「そか。 じゃ、楽しみにしとくわ」

桐乃「うんうん。 よろしい」

空を見上げる桐乃の顔はとても幸せそうで、俺も多分、同じ様な顔をしていたと思う。

京介「なあ、桐乃」

桐乃「ん? どしたの?」

京介「俺、お前のこと……大好きだから」

その声はやはり花火の音で、かき消される。

506: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:30:24.18 ID:UaKVgmeV0
桐乃「え? 聞こえなかったんだケド」

まあ……良いか。 そんな言葉は聞こえなくても、気持ちはしっかりと伝わるはずだから。

京介「なんでもねーよ。 お前と一緒で秘密にしとく」

桐乃「……するときは別にどうでもよかったケド、されるとムカつくんですケドぉ」

京介「お前がそれを言ったとき、俺も伝えるわ。 それで良いだろ?」

言いながら、桐乃の頭に手を置き、ゆっくりと撫でる。

桐乃「……うん。 よろしく」

憎まれ口を叩く事も、話を逸らす事も、嫌がる素振りを見せる事も。

全てせずに、桐乃は俺に笑って顔を向けた。

507: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:33:26.96 ID:UaKVgmeV0
京介「……終わったかぁ。 なんか、あっと言う間だったな」

桐乃「だね。 また、どっかでお祭りやらないかなぁ」

花火が終わり、しんみりとした気分になりながら、俺と桐乃は座って話す。

京介「そんなしょっちゅう祭りばっか行ってられねーよ。 たまには良いけど」

桐乃「言ってみただけじゃん。 でも花火はまた見たいカモ」

508: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:34:36.65 ID:UaKVgmeV0
京介「じゃ、今度二人でやるか? 適当に買ってさ」

桐乃「お。 京介もたまには良いことゆうね? 賛成~」

京介「お前はそういうこと言わなきゃ、可愛いんだけどな」

桐乃「はぁ? それでも充分可愛いっしょ?」

京介「……まあな」

そうなんだよなぁ。

いくら口が悪くて、俺に理不尽だとしても、どうしようも無く可愛いんだよな、こいつ。

全く。 自慢の妹で、自慢の彼女だぜ。

509: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:35:24.01 ID:UaKVgmeV0
京介「うっし。 んじゃあ帰るか。 桐乃」

言い、俺は立ち上がると桐乃に手を差し出す。

桐乃「う、うん……」

しかし、桐乃はどこか浮かない顔をする。 もうちょっとここで話して居たかった……わけじゃあねえよな? 花火ももう終わっているし、あんま長時間居て補導でもされたら笑えないし。

京介「どした?」

桐乃「あー。 実はさ、足」

えへへ、と照れ隠しするように笑う桐乃。 俺は桐乃の顔から視線を外し、その足元へと移した。

510: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:36:11.31 ID:UaKVgmeV0
京介「……わり、全然気付かなかった」

指の辺りは赤くなっていて、少しだが血も滲んでいる。 見ただけでも、痛そうなのが伝わってくる。

そうか。

俺が食べ物を買いに行ったとき、付いて来なかったのはこれが原因か。

桐乃「良いって。 ゆっくり歩けば大丈夫だし」

そんなことを言いながら、立ち上がる桐乃。

……無理してるよな、こいつ絶対に。

511: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:36:38.20 ID:UaKVgmeV0
京介「とりあえず、ほら」

俺はそう言うと、桐乃に持ってきておいた絆創膏を手渡す。

何の準備もせずに俺が祭りに行くと思うか? ははは。 俺を舐めるんじゃねえぞ。

桐乃「……驚いた。 持ってきてたんだ」

京介「一応な。 あっても困らないし」

桐乃「ふうん。 検索履歴に色々あったケド?」

京介「お前そういうのは言うんじゃねえよ!! 知ってても黙ってるだろ普通!!」

512: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:37:05.62 ID:UaKVgmeV0
桐乃「ひひ。 ヤーだねっ」

くっそ! 俺がそういうので下調べしてたのばればれじゃねえか!

桐乃「祭りで彼女を喜ばせる方法。 とかぁ?」

京介「やめろ……頼むから、やめてくれ」

桐乃「あはは」

腹を押さえながら笑い、絆創膏を貼り終えた桐乃は立ち上がる。

513: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:37:45.47 ID:UaKVgmeV0
そして先程までとは違い、微笑むように笑うと、桐乃はこう言った。

桐乃「ありがとね。 京介」

桐乃「でも、そんなことしなくても、京介と一緒なら楽しいから」

京介「……おう」

桐乃「なに? 照れてる? ひひ」

京介「うっせ。 ほら、行くぞ……つっても、足大丈夫か?」

514: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:38:43.78 ID:UaKVgmeV0
桐乃「多分だいじょぶかな。 家に戻るまでなら全然我慢できると思う」

そっか。 それじゃあ駄目じゃねえかよ。

京介「……とは言っても、ここからじゃあれだよなぁ。 わり、桐乃。 とりあえず少し歩こうぜ」

桐乃「だから最初からそーいってるんだケド? ヘンなの」

こうして、俺と桐乃は帰路に就く。

515: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:39:11.34 ID:UaKVgmeV0
しばらく歩くと、やがて人気の無い通り。 その辺りはやはり田舎だなぁ、なんて思ってしまう。

京介「おし。 この辺か」

桐乃「なに? 急に止まらないでよ」

京介「桐乃、ちょっと目瞑ってろ」

桐乃「はあ? 別にいーケド……」

大人しく目を瞑る桐乃。 俺は桐乃の近くまで行くと、桐乃の体を抱き上げた。

勿論、お姫様抱っこで。

516: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:39:43.53 ID:UaKVgmeV0
桐乃「ちょ、ちょおおおおっと待ったぁあああ!! 降ろしてよ!!!」

京介「へへ、却下だ。 お前に我慢はさせたくねーんだよ。 足痛いんだろ?」

桐乃「だからこのくらいは何でも無いっての!! 誰かに見られたらどーすんの!」

京介「別に見られてもいーじゃん。 付き合ってるんだしよー」

桐乃「それとこれとはちがーう!!」

そんな文句を言いながらも、決して暴れはしない桐乃。

517: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:40:13.39 ID:UaKVgmeV0
京介「とにかく後で文句ならいくらでも聞いてやるから、大人しくしてろって」

桐乃「……う、うう。 マジで許さないから」

絞り出すように言い、背中に手を回すと、桐乃は顔を俺の服に沈めてしまう。

京介「最後くらい格好付けさせてくれよ」

桐乃「……そんなことしなくて良いっての」

桐乃「……京介、前にいってたよね。 前にあたしがからかったときに「そういう部分も好きだ」って」

518: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:40:40.98 ID:UaKVgmeV0
京介「ああ、言ったな」

桐乃「……それ、あたしも一緒だから」

京介「……桐乃」

そっか。 そうだよな。

桐乃の言っていることは、俺の心にしっかりと伝わった。

こいつは、俺のそういう中途半端な部分だとか、良いところでうまく出来ない部分だとか。

そういうのを含めて、好きだと言ってくれているんだ。

519: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:41:30.64 ID:UaKVgmeV0
俺が思っていたことなんてのは、こいつに言わせればただの杞憂という訳で。

それすらも多分、桐乃は分かっていたんだろう。 だからこそ、言ってくれた。

京介「お前には本当に、頭が上がらねーな」

桐乃「じゃ、帰ったらお風呂作ってね」

京介「……へいへい」

そんで、俺もお前のそういう部分が好きだぜ。 そんなのは言わずとも、伝わっているだろう。

520: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:42:18.24 ID:UaKVgmeV0
京介「おっし、着いたぞ」

桐乃「……それなら早く降ろして欲しいんですケド」

京介「あ、ああ。 はは、そりゃそうだな」

意外とこれって楽しいんだけどな……次にしてやれるのは、一体いつになることやら。

京介「そうだ。 なあ」

桐乃「なに? てゆうか降ろしてからでよくない?」

少しだけ怒りながら桐乃は言う。

521: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:42:55.73 ID:UaKVgmeV0
そんなこいつに、顔を近づけ、キスをした。

勿論、抱き抱えたままで。

京介「ありがとな、桐乃」

桐乃「あ……あ、え? な、なにすんのいきなりっ!」

京介「何って、さっきは途中で邪魔されたから?」

桐乃「それでも……!! あああああっ! ムカつく!!」

522: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:43:41.43 ID:UaKVgmeV0
京介「……そんな嫌だったか?」

桐乃「そんなワケ無いでしょ! ……あ、じゃなくて! イヤとかイヤじゃないとかじゃなくて!」

京介「じゃあ何だよ?」

桐乃「雰囲気考えろって言ってんの! もっとさ……いや、なに言ってんのあたし!? 良いから早く降ろして!」

面白いなこいつ。 一人でテンパってやがる。

京介「俺的には今のも結構良い雰囲気だったんだけどなぁ」

言いながら、俺はようやく桐乃を降ろす。

523: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:44:08.99 ID:UaKVgmeV0
桐乃「チッ……ばかじゃん」

そうは言いつつも、頬が緩んでいるじゃねえか。 分かりやすい奴だ。

桐乃「あーあ。 あんたとくっついてた所為で汗掻いたし~。 最悪なんですケドぉ」

ぶつぶつと文句を垂れながら、桐乃は部屋の鍵を開け、扉を引く。

京介「あ、そういやさ……ちょっと良いか?」

その背中を見て、俺は再び声を掛けた。

524: ◆IWJezsAOw6 2013/07/22(月) 13:44:39.86 ID:UaKVgmeV0
桐乃「なによ?」

言いながら、振り向く。

俺はもう一度。

……何をしたのかは、言わずとも分かるだろう。

良いだろ、別に。 良い雰囲気だったんだから。

俺のしたことの所為で顔を更に真っ赤に染めた桐乃は、その顔を伏せながら部屋の中へとそそくさと入っていくのだった。


夏の一夜 後編 終

560: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:12:51.49 ID:XVfxVGqR0
さて、そろそろこの話をしようと思う。

えっと、確か俺と桐乃が二人で暮らす事になって、その日の夜にした話だっけか。

まぁ、色々と各自のすることを決めた訳なのだが……あれの最後。 布団が一つしかないという件について、話そうと思う。

かなりドキドキしながら毎日を過ごさないといけなかったのは今となっては良い思い出にもなりつつあるけどな。 布団を買うまでの話を今更ながらにしてみよう。

561: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:14:23.52 ID:XVfxVGqR0
頬に衝撃。 俺起床。

目を開けると、やはり目の前には桐乃。

俺の中ではもう、寝ているときに衝撃が走り、痛みと共に目が覚めたらイコール桐乃だという方程式が出来つつある。 というか出来ている。 学校では習えない、役に立つ方程式だぞ。

ある日、妹が部屋に入ってきて寝ている兄を引っ叩いて起こしたら、それはフラグだ。 覚えとけよ。

京介「おま……なんだよ」

562: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:15:05.07 ID:XVfxVGqR0
心地よく眠っていたのを叩き起こされて、良い気分の人間は恐らくいないはずだ。 俺も勿論、例に漏れずといった感じ。

少しばかり不機嫌な声色でそう言いながら、窓の方に視線を移す。

カーテンの隙間から朝日が……差し込んでいない。 明らかに真っ暗。

当然、スズメの爽やかな鳴き声も聞こえない。

つまり、夜中って訳だよな。

563: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:15:44.32 ID:XVfxVGqR0
桐乃「なんだよじゃないんですケドぉ。 あんた寝相悪すぎ」

なるほど。 なんとなく分かった。 俺が寝返りでも打って、桐乃を起こしてしまったのだろう。

それでこいつは俺を叩き起こしたってことね。 得心いったわ。

京介「仕方ねえだろ……一緒の布団で寝てるんだし」

桐乃「あんたはちょっと酷すぎるって話をしてんの。 あたしを少しは見習ってくれない?」

京介「いやいやいやいやいやいや。 お前だって十分酷いからな!?」

564: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:16:24.84 ID:XVfxVGqR0
桐乃「はぁ? あたしは眠る時の姿勢と、起きた時の姿勢が一緒ってくらい寝相いいんだケド?」

京介「自然に嘘を吐くんじゃねえよ! お前なぁ……俺は何度お前の抱き枕にされたことか……」

桐乃「ちょ、な、なに言ってんの!! も、もしかしてそれであたしの匂い嗅いでた……とか?」

京介「だーかーらー! なんでそんな考えになるんだよ!? 俺は首を絞められて死にそうだったっつうのに!」

若干の嬉しさと、匂いといえば良い匂いはめちゃくちゃしたけどな。 そんなこと言えるか馬鹿野郎。

565: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:17:06.57 ID:XVfxVGqR0
桐乃「あたしに殺されるなら幸せじゃない?」

……なんか今、すげえ台詞が聞こえたぞ。 ヤンデレ通り越してない?

京介「な訳あるかっ!! あーくそ……なら仕方ない。 桐乃」

桐乃「……なに?」

京介「布団、そろそろ買おうぜ」

566: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:17:41.14 ID:XVfxVGqR0
翌朝。

京介「おし。 今日で快適とは言えない睡眠生活ともおさらばだ。 喜べ桐乃」

桐乃「確かに快適ではなかったからねぇ。 夏とか暑いし」

朝食を取りながらの会話。 しかしこいつも、本当に料理上手くなったよなぁ。 朝からこんな美味い飯が食えるなんて、幸せだぜ。

京介「……てか、今更だよな。 これって。 普通だったらもっと早く買ってるべき物だろ」

桐乃「あたしはずっっっっと我慢してたんですケドぉ? 感謝してほしいくらいだって」

567: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:18:23.83 ID:XVfxVGqR0
京介「お、お前な……言っておくが、お前だって酷かったからな!?」

京介「りんこりんだとか、メルルだとか、そんなこと呟きながら俺に抱き着いてたじゃねえかよ!」

桐乃「なっ! あたしはあんたに抱き着いてたワケじゃないっての! 夢の中のりんこりんとメルルに抱き着いてたの!!」

どんな解釈だよ!? 俺からすればそんなのはどーでも良いんだよ!!

……つうかだな。 これはさらさら言う気なんてのは無いが、こいつは「きょーすけぇ」って言いながら抱き着いてきたこともあるんだよ。 言ったら間違いなく殴られるから言わないけど!

568: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:18:56.25 ID:XVfxVGqR0
桐乃「て、てゆうかぁ……抱き着いた抱き着いたゆってるケド、あんただってあたしに抱き着いてたし!!」

京介「はぁ!? 俺が? お前に? 寝てる間に?」

桐乃「そうだっつってんの! 「桐乃ぉ」って言いながら、抱き着いてきたの覚えてないの!?」

……俺も一緒だった。

569: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:19:31.08 ID:XVfxVGqR0
京介「別に良いじゃねえか! 起きてるときだって抱き着いてるんだしよ!」

桐乃「開き直るなっ! それとこれとは別じゃん!? 寝てるときに急に抱き締められるあたしのことも考えてよ!!」

でも、その場合は俺を叩き起こさないんだな。 と、なんとなく思う。 理由は考える必要なんてあるまい。

桐乃「てか、それならあたしが抱き着いてるのも良いってことになるよね? 違う?」

京介「あ、ああ……確かに。 言われてみれば……」

桐乃「じゃあ問題ないじゃん。 ふん」

570: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:20:06.01 ID:XVfxVGqR0
京介「そう、だな?」

……あれ?

京介「いや、でもそれだと布団を買う必要無くねえか?」

桐乃「……確かに」

京介「でも、買った方が良いんだよな?」

桐乃「……うん」

京介「どっちだよ!?」

571: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:20:44.98 ID:XVfxVGqR0
桐乃「じゃ、じゃあ……こうゆうのはどう?」

桐乃「とりあえず布団は買って、一旦別々で寝るの」

京介「結局そこだな……」

桐乃「で、まだ続きがあるんだケド」

桐乃「ふ、冬とか……寒いじゃん? だ、だから。 その時は……一緒に寝る、みたいな」

桐乃の攻撃。 京介に致死量寸前のダメージ。 危ない、死にかけた。

572: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:21:18.52 ID:XVfxVGqR0
京介「お、お前がそれで良いなら……俺は別に構わないけど」

なんつうか、改めてそう言われると結構恥ずかしいぞ。 一緒に寝るって。

桐乃「じゃあそれで決定! ってワケで布団を買いにいこ、京介」

京介「おう。 ま、あっても困る物ではないしな」

とのことで、俺と桐乃はその日、布団を買いに行くのだった。

573: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:21:53.79 ID:XVfxVGqR0
で、夜。

京介「んじゃ、おやすみ」

桐乃「うん。 おやすみ」

一人分程のスペースを空けて、俺と桐乃は横になる。 この位置関係を決める話合いで既にかなりの労力を割いた訳だが……。

いや、俺としては並べるような形にしたかったんだけど、桐乃がいつもの恥ずかしさからか、それを断固として拒否したってこと。

つい昨日まで一緒の布団で寝てた奴の行動とは思えないぜ。 マジで。

574: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:22:20.90 ID:XVfxVGqR0
ま、無理にそうする理由も無いし、俺も大して強制はしたくない。 桐乃がギリギリ許容したこの距離感ってことだ。

辺りは静かで、桐乃の方を見るとどうやら俺に背中を向けている。 俺の方を見ていてもびっくりするけど。

しかし……なんだろうか。 この、喪失感は。

ま、まあ良い……今日はとりあえず、寝るとしよう。

少しの寝苦しさと、多大な疲れと、ほんの少しの物足りなさを感じながら。

そうして、俺は眠りへと就いた。

575: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:23:12.41 ID:XVfxVGqR0
結局のところ、眠りに就けたのは数時間で、もぞもぞと布団の中で動く感覚に俺は目を覚ますことになる。

その感覚の正体を暴くべく、俺はぼやけた視界で隣を見ると……そこには見慣れた影。 見慣れた奴。

京介「き、桐乃? なにしてんの?」

桐乃「チッ……なんでもない」

なんでもなくねーだろ!? なんで別々の布団で寝てるのに俺の布団に入ってくるんだよ!

576: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:23:57.83 ID:XVfxVGqR0
桐乃「ふん……」

桐乃は言いながら、少し距離を取る。 そこだと殆ど布団の外じゃねえか。

床に寝ている様な状態だし……ああくそ、それを放っておける馬鹿はいねえっつうの。

京介「ほら。 俺は別に良いから、こっち来いよ。 しっかり入らないと風邪引くぞ」

桐乃「……ありがと」

577: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:24:31.25 ID:XVfxVGqR0
怖い夢でも見たか、寒かったのか。

それとも、寂しかったのか。

それは聞くことでは無いだろう。

結局その日、俺と桐乃は同じ布団で寝る事になった。

578: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:25:07.56 ID:XVfxVGqR0
そして、次の日の夜。

桐乃「今日はあたしだけで寝るから。 おやすみ」

京介「なんの宣言だよ、それ……まぁ良いけどよ。 おやすみ」

昨日のこともあり、今日も桐乃と寝ることになるんじゃないかとは思ったが……どうやら今日は大丈夫らしい。 少しだけ、期待してたのかもしれんが。

ま、桐乃も桐乃で今日の顔付きを見る限り心配いらなさそうだし、問題は起こらないはずだ。 うむ。

579: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:25:34.50 ID:XVfxVGqR0
正直、いきなり布団に入ってこられると相当びびるしな。 予めとは違って、あれは心臓に悪い。

いつかのあれもそうだったっけか。 起きたら俺の隣で桐乃が寝てた時。 前の家での、お布団デート。

……あれはマジでびびったなぁ。 今の俺なら、多分……優しく抱き締める選択肢を取りそうなのが怖いが。

いやいや、だってさぁ。 いきなりそういうことした時の桐乃の反応、めちゃくちゃ可愛いんだぜ。 本当に。

そりゃあまあ、普段通りでも充分可愛いけどね。 笑ってるときも、怒ってるときも、寝ているときも、驚いているときも、全部均等に可愛いんだ。 だが、恥ずかしがってるときの表情はやべえ! あれは癖になっちまうって。

580: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:26:03.60 ID:XVfxVGqR0
例えば……そうだな。 大学から帰ってるとき、たまたま桐乃と会ったりすることがある訳だ。 方向は似たような物だし。

で、偶然会ってあいつは最初すげー嬉しそうな顔をする。 本人はばれてないと思ってそうだが、俺は気付いているんだぜ。 その後すぐに「お、京介じゃん」とか何食わぬ顔で言ってくるのもまた可愛い。 俺がそんなことを考えているとも知らずに「あんたと会えても別に?」と振舞う桐乃を見てニヤニヤしているのは当然のことだ。

そんで俺は、いきなり桐乃の頭を撫でる訳だ。 「今日は良い日だぜ」とか言いながら。 そうすると決まってあいつは顔を真っ赤にして俯いてしまう。 外じゃなかったら間違いなく抱き締めてるっつうの! あいつはそういう仕草で俺を殺そうとしてくるからな……危険だ。

だがしかし、あいつもあいつで最初はされるがままって感じだったんだけど、最近は地味に反撃をしてくるから、勢力では均衡になりつつある。 そうだなぁ。

581: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:27:08.90 ID:XVfxVGqR0
ああ、あれだ。 俺がアパートに向かって歩いているときのこと。

その日は桐乃からメールが来ていて、少し帰るのが遅くなるってのが来てたんだよな。 で、俺は少しテンションが落ちるのを感じながら、歩いてたんだ。

マジで驚いたぜ。 しばらく会えないと思っていた桐乃が、いきなり後ろから腕を組んできたからな……。

あいつは意地悪く笑いながら「なにぃ? そんな顔して? ぷ。 寂しかったのぉ? ひひ」とか言ってきやがって、俺は勿論「そんなことはねえよ!」と言ったが、桐乃は全てお見通しだったらしく、その後散々いじられたりした。

しかしだな、その意地悪い笑い方でもすんげー可愛いから困るんだよ。 俺は当然嬉しくて、そのまま一緒に帰ったんだが。

582: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:27:42.95 ID:XVfxVGqR0
……ああ、腕は組んだままな? 桐乃は腕を解こうとしたが、俺はそれを許さなかった。 したらあいつ、案の定恥ずかしがりやがって……自分からしたことなのにな。

ふむ。 でもそれを考えると、勢力としては俺の方がやや優勢じゃねえのか? とは思う。

でもなぁ、俺がちまちまちまちま攻撃しても、あいつの一発の破壊力はぶっちゃけヤバイ。 かなりの物だ。

シスカリで例えると……俺が通常攻撃でHPを削っているのに対して、桐乃は必殺技を撃ってくる感じ。

頻度は少ないが、威力は絶大だぜ。

583: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:28:23.16 ID:XVfxVGqR0
……さて、いつまでも思い出を振り返っていないで俺もそろそろ寝るとしよう。

その前に一応、時刻を確認。

……ええっと、確かおやすみって言ったのが、0時くらいだっけか? で、今は。

さ、3時だと!? ええ!? 俺どんだけ寝れてない訳!? 時計ぶっ壊れてる……なんてことはないよな。 さすがに。

いや、つうかここまで寝れないとは思わなかったんだが……。

584: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:29:18.14 ID:XVfxVGqR0
原因は。

なんとなく、分かっている。

昨日感じたあれだ。 喪失感みたいな奴。 多分、それが原因。

……ちくしょう!

解決する策はある。 後は実行するだけ。

585: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:29:59.16 ID:XVfxVGqR0
考えてからの決断は早く、結局俺はのそのそと桐乃の布団に入ることにした。 寝れなくて仕方ないからだからな。 勘違いするなよ。

入って数分。 案の定、桐乃が目を覚ました。

桐乃「な、なにしてんの!?」

京介「……なんでもねー」

桐乃「なんでもないワケないじゃん……ったく」

言いながらも、桐乃は俺の方に体を近づけ、布団を一緒に被せる。

586: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:30:36.65 ID:XVfxVGqR0
桐乃「……ねえ、京介」

京介「……ん?」

桐乃「……やっぱり布団一つで良いかなって思うんだケド……どう?」

京介「……俺も、同じこと思ってたわ」

こうして結局、新しく買った布団は押入れに眠ることになったのだった。

587: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:32:15.39 ID:XVfxVGqR0
ちなみに、これがつい先日の話。

俺はひと言も大分前の話なんてことは言ってないんだぜ。 つまり俺と桐乃はあの日から昨日までずっと一緒に寝てたって訳だ! だからどうだってことでもないけどな。

ドキドキしながら寝たのも良い思い出って言うのはあれだぜ? 今だと前よりも安心して眠れるからってだけ。 少しドキドキはするけども。

そして、そんなどうでも良いことを考えながら、俺は今日も隣に居る桐乃に言う。

588: ◆IWJezsAOw6 2013/07/23(火) 13:32:53.30 ID:XVfxVGqR0
京介「……んじゃ、おやすみ。 桐乃」

桐乃「……うん、おやすみ。 京介」

俺と桐乃は今日も今日とて、同じ布団で寝るのだった。

今日の日付は、8月20日。


お布団デート 終

618: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 12:59:49.69 ID:at5W9l6p0
少し前の話。

運というのは思いがけない場所で使われてしまう物で、使おうと思って使える物じゃあ無い。

それは場合によっては悪い方向にも動くし、良い方向に動くこともある。

それもまた、運の内なのだろう。

でもさ、そう考えると悪い方向に動いた場合は「運が悪かった」と言って、良い方向に動いた場合は「運が良かった」というのはおかしくないか?

619: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:00:17.03 ID:at5W9l6p0
結局はそのどっちも運のおかげな訳だし、その運自体を悪いだの良いだの言うのは少し違うと思うんだよ。

正直に言おう。 俺は軽々しく「運が良い」とか「運が悪い」という奴は嫌いなのだ!

この前置きをしたのには特に深い理由は無い。 つまりだな、何が言いたいかと言うと。

「おめでとうございます! 一等の温泉旅行、ペアでご招待です!」

商店街のくじ引き。 俺は目の前で笑顔でそう言う人に、こう言った。

京介「おおお! マジっすか! 俺、運良いな!!」

620: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:00:44.52 ID:at5W9l6p0
そう言う訳で、俺と桐乃は温泉旅行へと行くことになった今日。 こういう形では珍しく、ツアーとかでは無いらしい。 時間で縛られることも無く、ゆっくりと満喫できる。

京介「……で、なんでお前は若干不機嫌なんだよ」

俺と桐乃は今、旅館へと向かって歩いている。 ここに来るまで少々新幹線での旅があったのだが、その時のこいつときたら、すっげえ楽しそうにしてたんだけどな。

ええと、確か「ねね、京介。 お弁当作ってきたから一緒に食べよ?」とか言ってきたんだぜ!? その時の仕草と来たらもう……!

よし、よし、ちょっと待てよ。 今説明するからな。

621: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:01:12.63 ID:at5W9l6p0
まず、ここに桐乃が居るとするだろ? すぐ横に座る感じだ。 桐乃が窓側で、俺がその隣ってことね。 んで、それでだ。

窓の外では景色が流れていて、それをバックに桐乃はカバンから取り出した弁当を両手で持ち、俺に「一緒に食べよ?」って言いながら頭をちょこっとだけ傾げる訳だ。 ポイントとしてはそのちょこっとの部分だぜ。 この……こう、絶妙な角度。 俺は一瞬意識があの世へ行ったのかと錯覚するほどの衝撃を受けたね。 温泉旅行に行く前に死んでどうするって話だけども。

しかし俺があの世に意識が飛びかけている時間、桐乃に待たせるのはどうしようもなく嫌だったので、俺は頑張って意識を引き戻し「おう!」と答えたんだ。 そうしたら桐乃は「えへへ」と超嬉しそうに笑いやがった。

多分、寿命が一年は縮んだと思う。 今思えば軽く五年くらいはいっているかもしれんが。

622: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:01:40.64 ID:at5W9l6p0
で、そんな上機嫌だった桐乃が今はこれ。

桐乃「こんな歩くことになるなんて思わなかった」

苛立ちを隠すこともせず、素っ気無く桐乃は言う。 まあな、確かに俺もこんな歩くとは思わなかったけどさ。

目的地は山に入って少々歩いたところ。 不便なことにバスは無く、タクシーを呼ぼうにも近くにタクシー会社が無い所為で、来るのに時間が掛かるとのこと。

それに、来たとしても行けるのは途中までで、結局は歩かなきゃいけないと知って、それならばと二人で歩いているってこと。

ちなみにだが、駅から歩き始めて既に一時間が経とうとしている。 桐乃が不機嫌になるのも仕方ないか。

623: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:02:38.24 ID:at5W9l6p0
これがツアーじゃないってのも少しだけ納得行ったぜ。 俺みたいに男だとか、桐乃みたいに陸上とかやってるのなら別だが、ちっとばかし年を取った人にはキツイだろうよ。 その点、この招待券が俺に当たったのは幸いなことだ。

京介「ごめんな。 ちゃんと調べとけば良かった」

桐乃「京介の所為じゃないでしょ。 だから謝らないでよ」

……いっそのこと、俺にきつく当たってくれた方が気が楽なんだが……桐乃は桐乃で、そうしないしなぁ。

京介「じゃあさ、なんかしながら歩こうぜ。 しりとりとか、グリコとか、そういった遊びしながらさ」

桐乃「……んー。 それより、もっと会話っぽいのが良いカモ」

624: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:03:07.00 ID:at5W9l6p0
京介「会話っぽいの……? えっと、例えば?」

桐乃「うーん。 そだ。 良くあるヤツやろーよ。 お題を決めて、それに「はい」か「いいえ」で答えて、当てるってヤツ」

京介「あー。 聞いたことあるな。 面白そうじゃん。 試しに一回やってみようぜ」

桐乃「じゃーあ、質問は五回までで、最初はあたしが質問する側ね。 いい?」

京介「オッケーオッケー。 っていうと、俺はお題を一個考えれば良いんだよな」

桐乃「そ。 最初だし、ぱっと頭に浮かんだヤツで良いんじゃない?」

625: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:04:57.91 ID:at5W9l6p0
頭に浮かんできたヤツね。 なるほど、それならすぐ出来そうだし、最初にするゲームとしては良いかもしれんな。

そう思い、俺は頭に一つ浮かべる。

京介「五回だしな、俺も桐乃も知っている様なのにしておく」

京介「……よし。 良いぜ、桐乃」

桐乃「じゃ、最初はどうしよっかなぁ」

機嫌も少し治ったのか、唇に指を当てながら、桐乃は視線を上に向ける。

桐乃「よし。 じゃあ一つ目の質問」

626: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:05:55.40 ID:at5W9l6p0
桐乃「それは、生物?」

……おお、さすがの成績優秀者か。 まずは大体のところから責めてくる訳ね。 参考になるぜ。

京介「答えは「はい」だ」

桐乃「……ふむ」

腕を組み、しばし思考する桐乃。 頭を咄嗟に撫でてやりたくなる衝動に駆られるが……ここは我慢しておこう。

627: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:06:21.86 ID:at5W9l6p0
桐乃「じゃあ次。 それは、動物園にいそう?」

……この場合ってどう答えれば良いんだろうな? でも、まぁ居るっていうのとは違うが……いるかいないかで言えば、居るになるのかな。

京介「多分……「はい」だな」

桐乃「多分?」

京介「ちょっと難しい質問だったから、多分ってことだ」

桐乃「……あー。 そーゆうことなのかな」

628: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:06:50.06 ID:at5W9l6p0
桐乃「次の質問。 それは人間?」

さすが俺の妹だなぁ。 この妹にしてこの兄があるという訳だな。 ははは。 言ったら殴られるからやめておこう。

京介「そういうことだ。 答えは「はい」」

桐乃「よっし! でも後二回かぁ……ね、ちょっと回数増やさない?」

京介「後から増やすんじゃねえよ……後二回で頑張れ。 お前ならきっと出来る!」

桐乃「ムカつく励ましの言葉ありがとう。 う~~~ん」

629: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:07:25.63 ID:at5W9l6p0
視線をあちらこちらに動かしながら、桐乃は思考する。

桐乃「……それは、京介と交友関係がある人?」

ここまで来れば、大体答えは分かっているだろう。 俺が考えたのは、桐乃だ。

京介「「はい」だな」

桐乃「ふむ。 次で最後、だよね」

京介「おう。 核心的な質問をしねえと、辿り付けないぞ~」

俺がそう煽ると、桐乃は恐る恐るといった感じで口を開く。

630: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:07:52.64 ID:at5W9l6p0
桐乃「……そ、それって、京介の好きな人……とか?」

よりにもよってそう聞いてくるのか、こいつは。

まあゲームだしな。 俺は胸を張って答えてやろう。

京介「超好きだぜ! マジで! これでもかってくらい好きだ!」

桐乃「……「はい」か「いいえ」で答えてよ」

京介「あ、あー。 そうだったな。 答えは「はい」だ」

632: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:09:04.20 ID:at5W9l6p0
桐乃「……」

なんで黙るんだよ。 答え言えって。

京介「で、桐乃。 答えは分かったか?」

桐乃「……あ、あたし」

京介「おう! さっすが桐乃! 正解だぞ!」

桐乃「なんであたしを思い浮かべてるのよっ! 変態っ!!」

なんでキレてるんだよ!

633: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:09:40.21 ID:at5W9l6p0
京介「仕方ねーだろ!? 最初に浮かんできたのがお前だったんだからさ!」

桐乃「……最初に?」

京介「うん。 一番最初だ」

桐乃「そ、そか」

若干嬉しそうじゃねえか。 それならそれで良いけどな。

京介「っつう訳で、次は桐乃の番だぜ。 なんか思い浮かべてくれよ」

634: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:10:08.10 ID:at5W9l6p0
桐乃「え? あ、あたしか。 ……うん。 オッケ」

さて。

さてどうしよう。 俺はすごいことに気付いてしまったかもしれない。

今思い浮かべたときの桐乃の表情と仕草、それでなんと答えが分かってしまった。

……どうすんの、これ。

いや、待てよ。

635: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:10:45.88 ID:at5W9l6p0
この状況、もしかしたら逆に利用できるんじゃないだろうか? 要はこのゲームは「はい」か「いいえ」で答えなきゃいけないってことだよな。

それはつまり、俺がどんな質問をしても桐乃は「はい」か「いいえ」で答えるって訳だ。

……すごい良い状況じゃね? これって。

桐乃「なに黙ってんの? 質問しないと終わらないんですケドぉ」

京介「お、わりい。 んじゃあ質問だ」

俺は答えをまずは確定させるべく、聞くことにした。

636: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:11:43.34 ID:at5W9l6p0
京介「それは桐乃の兄貴か?」

桐乃「ぶっ! ちょっとタンマ!!」

京介「なんだよ?」

桐乃「あんた分かって聞いてない!? 絶っ対、答え分かってんでしょ!!」

京介「いやいや、俺は知らないぞ? ある程度決め付けて聞いてはいるけど、そんなの分かる訳無いじゃねえかよぉ」

637: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:12:29.18 ID:at5W9l6p0
桐乃「う、うう……」

京介「で、返事は?」

桐乃「チッ……「はい」だケド」

俺はそれを聞き、桐乃に向けてわざと笑い、口を開く。

京介「おお、そうかそうか。 なるほどなぁ」

桐乃「……もう答え合わせでいいっしょ?」

京介「なんでだよ? まだ四つ質問が残ってるし、俺は全然答えが分からないんだよなぁ」

638: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:12:56.76 ID:at5W9l6p0
桐乃「は、はぁ!? 嘘吐くなっ!」

京介「そーいうゲームじゃん。 ってことで次の質問な」

と言っても、何を聞くべきかな、これは。

普段なら100%否定するであろう桐乃が、今は二択で答えてくれるんだよな……。

京介「よし。 じゃあ、桐乃はそいつのことが好きか? 勿論、恋愛的な意味で」

桐乃「あ、あんたねえ……」

肩をぷるぷると可愛らしく震わせ、桐乃は俺の顔を睨む。

639: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:13:23.16 ID:at5W9l6p0
京介「「はい」か「いいえ」だろ~? ほら早く言えよ~」

桐乃「あーもうっ!! 答えは「はい」! 文句ある!?」

……いや、文句はねえけど。

京介「そうかそうかぁ……桐乃はそいつのことが好きなのかぁ」

桐乃「……後で覚えとけ」

こ、こわ。 桐乃さんちょっと今の声は大分怖かったんですけど。

640: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:14:23.33 ID:at5W9l6p0
だが! ここで退くことはできねえ……。 ここで退いたら、俺は激しく後悔することになるだろうしよ!

京介「は、はは。 つ、次の質問な」

声が少し震えてるのに情けなくなりながら、俺は勇気を振り絞って口を開く。

京介「桐乃は、そいつが居なくなったら死にそうになるほどに、そいつが好きか?」

桐乃「ばっ! は、はぁああぁあああ!?」

京介「お、大きな声出すなよ」

641: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:14:53.91 ID:at5W9l6p0
桐乃「あんたがそんな質問するからでしょ!?」

京介「まだ答えが分からないんだから仕方無いだろ? ほら、それで返事は?」

桐乃「こ、答えなきゃダメ?」

上目遣いで俺のことを見ながら、懇願するように言う桐乃。 ま、マズイ。 心が動いてしまいそうだ。 世界一可愛い生き物だろ、こいつ。

京介「……お、おう」

よし! 良く言った俺!

桐乃「……答えは「はい」」

642: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:15:21.97 ID:at5W9l6p0
すっげー可愛い! マジですっげー可愛い! 桐乃が可愛すぎて俺若干壊れ始めて無いか!?

京介「そ、そっかぁ……はははは」

桐乃「……次は?」

なるようになれと思ったのか、桐乃は俺にそう尋ねる。 ほ、ほう。 上等だぜ。

京介「……よし」

俺は意を決し、質問をすることにする。 これは場合によっては大変なことになるが……それでも、今日の俺はやる! やると言ったらやってやるんだ!

643: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:15:54.79 ID:at5W9l6p0
京介「桐乃はそいつと……エッチしたいか?」

桐乃「死ねっ!!」

見事な蹴りが鳩尾に命中。 蹲る俺。 その上から鞄で俺を引っ叩く桐乃。

京介「ごめん! 今のは悪かった!! 許してください!!」

桐乃「うっさい! 変態っ! 死ね死ね死ね!!」

許しを請う俺に攻撃を加え続ける桐乃。 その攻撃はその後しばらく続くのだった。

644: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:16:22.95 ID:at5W9l6p0
京介「……なぁ、マジで悪かったって」

桐乃「チッ……」

教訓としては、調子に乗りすぎるのは良くないってところだろう。 先ほどから俺の言葉に舌打ちで返事をする桐乃を見て、切実にそう思う。

京介「言う事一回必ず聞くからさ……な?」

俺が言うと、桐乃はようやく逸らし続けていた視線を俺に向け、口を開いた。

桐乃「……三回」

桐乃「三回聞くなら、許してあげてもいい」

645: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:16:48.15 ID:at5W9l6p0
京介「わ、分かった! 三回だな? それで良いぜ」

超必死だぜ。 桐乃に無視されるのは辛いから。

桐乃「じゃ、いーよ」

京介「お、おう。 ありがとな、桐乃」

桐乃「別に……あたしも、さっき叩き過ぎちゃってごめん」

京介「良いって良いって。 もうあんなのは慣れて心地良いくらいだぞ?」

646: ◆IWJezsAOw6 2013/07/24(水) 13:17:14.21 ID:at5W9l6p0
俺が言うと、桐乃は冷めた目で俺のことを見ながら言う。

桐乃「……キモッ」

言うだけ言い、すたすたと歩調を早める桐乃の後ろ姿を眺めながら、一人思う。

……うん。 確かに今のは失言だったかもしれない。 聞き様によってはな。

こんな出だしで、俺と桐乃の旅行は始まるのだった。

視界にはようやく、旅館が見えてきた。


温泉旅行 前編 終

673: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:09:21.56 ID:KHH+e1jG0
チェックインをして、現在は旅館の一室。

京介「にしても、ほんとかなり歩いたな」

桐乃「足いたーい。 疲れたぁ」

時期が時期なのか、それともこんな山奥だからか、決して豪華とは言えないが、それでも結構立派な旅館だが、あまり繁盛している様子では無い。

先ほど仲居の人に聞いた限り、俺たち以外には数人のみしか宿泊客はいないらしく、悪く言えば寂しく、よく言えば伸び伸びと過ごせそうではあるけどもな。

674: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:09:49.30 ID:KHH+e1jG0
京介「早速だけど、温泉入るか? 入浴時間は自由って言ってたし」

桐乃「うん。 そーしよっかなぁ。 一回すっきりしたいかも」

京介「んじゃ、行こうぜ。 俺も入ってみたいからさ。 今なら誰も入って無いって仲居さんも言ってたから貸切だぜ」

桐乃「お、マジで? やった!」

そうして俺と桐乃は温泉へと向かって行くこととなった。

ちなみに言っておく、混浴では無いからな。 ちゃんと別々だ。

675: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:11:23.41 ID:KHH+e1jG0
……どうせならそっちの方が良かったけど! でもそうだとしても、桐乃は間違いなく一緒に入ってくれないんだろうな。 嫌とかじゃなくて、恥ずかしがって。 そう考えるとやはりあいつは可愛い。

京介「んじゃ、俺はあっちだから、また後でな」

桐乃「うん。 またね~」

珍しく素直に笑顔を俺に向け、特に毒も吐かずに桐乃は脱衣所へと入っていく。 俺はその姿を見送り、別の脱衣所へと入って行った。

676: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:11:55.67 ID:KHH+e1jG0
桐乃「ふうう……」

ここに来るだけでも大分歩いたから、シャワーのお湯がとても気持ち良い。

中は随分と広々としていて、京介も言っていた様に居るのはあたし一人だけ。 なんだか贅沢すぎて悪いことをしている気分になっちゃうよね。

桐乃「……あっちはどうなってるんだろ?」

そう思って、高い壁を眺める。 同じ様な作りにはなっているんだろうケド……ちょっとだけ気になる。

677: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:12:26.16 ID:KHH+e1jG0
……覗かないよ? そ、そうゆうのって男の人がやりそうなことだし……。

ま、まさか京介はそんなことしないよね? で、でもするかも……しれない、よね?。

だってあいつ変態だし……シスコンだし?

桐乃「きょ、きょーすけ?」

少し声を大きくして、壁の向こうにいる京介に話しかける。

678: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:12:52.25 ID:KHH+e1jG0
程なくして、返答があった。

「んー? なんだよ、どうした?」

向こうも多分、人は居ないんだと思う。 だからこそ、こうして会話が出来るってワケだケド。

桐乃「あんた、覗かないでよ!?」

「は、はぁ!? 意味わかんねーんだけど!! なんでいきなりキレてんの!?」

桐乃「なんでも無いっつーの! ばーか!」

679: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:13:26.14 ID:KHH+e1jG0
こうやって予防しておかないとヤバイよね。 京介っていつもはそれなりに格好良いケド……覗いてきてもおかしくないしね。

よし。 これで大丈夫。 あたしはゆっくりと温泉に浸かろう。

頭と体を洗い終わり、広々とした温泉にあたしは身を沈める。 少し熱いけど、それがまた疲れを癒してくれる。 そんな温度だった。

桐乃「てか……これから何するんだろ?」

ふと思う。 この辺って殆ど何も無いし……暇になっちゃうんじゃないのかな?

今回はさすがにエロゲーとか持ってきてないしなぁ。 やること無くなっちゃうんじゃない?

680: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:13:53.11 ID:KHH+e1jG0
京介だったらどうするのかな……。 うーん。

て、てかさ。 冷静に考えると京介と二人で旅行ってかなりすごいシチュエーションじゃん?

もしエロゲーだったら、間違いなくそうゆうシーンになるよね……そ、それはマズイって!!

な、なんの準備も出来てないし? 心の準備なんて全くしてないし!!

……京介もいきなりはしてこないよね? 大丈夫だよね?

681: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:14:23.59 ID:KHH+e1jG0
桐乃「き、キモッ!! キモすぎるんですケドぉ!!」

うう。 恥ずかし。 だ、だけど……もし本当になったらどうしよ。

京介があたしのことを「桐乃、ちょっと来てくれないか?」って呼んで、あたしは行くじゃん?

んで「なに?」って聞くと、あいつはいきなりどうせ変態だからキスするじゃん?

うはあ! その時点でヤバイって! あいつマジキモイって!!

682: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:15:20.45 ID:KHH+e1jG0
桐乃「え、えへへへへ!」

それで、それでその後はぁ……。 頭撫でたり、顔を触ったりしてくるじゃん? どうせしてくる、間違いないって!

もうこの時点でかなり恥ずかしいんですケドぉ! キツイキツイキツイ!!

で、あいつはあたしを抱き締めて。

桐乃「ヤバイって! それは京介マズイって!!」

これ以上はムリ! ムリムリ! あたしが死んじゃうからっ!

683: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:15:55.61 ID:KHH+e1jG0
……本気だったらどうしよ? そ、そーいえばさっきヘンなこと言ってたよね、あいつ。

エッチしたいかどうとかって。 マジありえないって! フツーそんなこと聞く!? ああああああ!!

桐乃「変態! 変態変態変態!!」

ふう。 思いっきり言ったらすっきりした。 で、ちょっと冷静になったことだし考えてみよっかな。

あいつは一体、どうゆう心境でそれを聞いたのだろう? ううん……。

た、単純に考えれば……そうなのかな? ま、マジで?

684: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:16:28.80 ID:KHH+e1jG0
桐乃「ふ、ふひひ。 それはマズイよぉ!」

さすがにまだマズイって! で、でも……京介がそうしたいってゆうなら……あたしは別に?

ってなに考えてんの!? ないない!

……そーいえば。

この前のお祭りのとき。 あいつ、なんか言ってなかったっけ。

子供が欲しいとか、言ってたような?

……だとしたらマジじゃん!? や、ヤバすぎるって!! ど、どんな顔をして京介の顔を見れば良いワケ!?

桐乃「もームリ!! キモイキモイキモイよぉ!!」

685: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:17:04.88 ID:KHH+e1jG0
京介「……あー。 疲れが取れるぜ」

なんだか年寄りみたいな台詞を呟きながら、シャワーを浴びる。

広々とした空間で、そこを独占するのはちっとばかし気後れする物はあるが……。

まあ、快適っちゃ快適だ。 大分疲れが回っていた体にも、このシャワーは気持ちが良い。

京介「これだけ良いところだと、歩いてきた甲斐があるってもんだなぁ」

置かれているシャンプーを手に取り、頭を洗う。 そんなとき、女子風呂と思われる壁の向こう側から声が聞こえてきた。

686: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:17:32.18 ID:KHH+e1jG0
「きょ、きょーすけ?」

ん? 桐乃か? 何かあったんだろうか。

目を瞑りながら、恐らく声がしたであろう方向に顔を向け、俺は答える事にする。

京介「んー? なんだよ、どうした?」

「あんた、覗かないでよ!?」

京介「は、はぁ!? 意味わかんねーんだけど!! なんでいきなりキレてんの!?」

687: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:18:00.05 ID:KHH+e1jG0
「なんでも無いっつーの! ばーか!」

意味が分からんぞ!? なんで俺はいきなり覗くことが前提で話を進められているんだ!?

もしかして、俺ってそんな風に桐乃から見られているのかな? だとしたら、ちょっと反省しなければいけないんだが。

いや、でもそれよりもいきなりそれを言うかよ……。 まあ、別に良いけどよお。

だが、桐乃の顔が見れないってのは少し損した気分になるぜ。 声だけってどんな焦らしプレイだよちくしょう。

688: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:18:26.42 ID:KHH+e1jG0
……覗いてみるか?

それは駄目だ! それをしたら桐乃の想像通りの人間になってしまう! それは駄目! 絶対!

……でも、あいつの体綺麗だしなぁ。

京介「へへへ」

いかんいかん。 こんなことを想像していると桐乃に知られたら多分あいつはぷりぷりと怒るはずだ。 怒りながらも、嬉しさを隠しきれていないのだろう。 ああ、やっぱ可愛いぜくそ。

689: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:18:52.49 ID:KHH+e1jG0
京介「……温泉入るか」

なんだかそんなことを考えているのが馬鹿らしくなり、俺はのそのそと歩き、温泉へと入る。

京介「……はぁあああぁああ」

やっぱり良いよな。 来て正解だわ。 これだけでも充分、価値はあると思う。

山の中腹にあるってことで、景色もかなり良いし。 緑に囲まれて、気分はどこか旅人の様な、そんな感じ。

690: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:19:18.95 ID:KHH+e1jG0
「き、キモッ!! キモすぎるんですケドぉ!!」

な、なに? どうしたの? 一気に現実に引き戻されたんだけど。

あいつ……なにしてんだ?

いきなりあんな大声あげて、どうしたっつうんだ。

「え、えへへへへ!」

……なんで笑っているのだろうか。 やべ、純粋に俺の妹が心配になってきたぜ。

691: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:19:55.66 ID:KHH+e1jG0
でも、あいつの笑い声可愛いなぁ! いっつも顔ばっかみてたけど、声だけでも充分可愛いな! へへへ。

「ヤバイって! それは京介マズイって!!」

俺がどうしたの!? 何がマズイの!? ちょ、ちょっと待てよ桐乃! あいつ、何を想像してんだ……?

俺の名前が出てきたことによって、不安度がすげー上がったんだが……杞憂に終わると良いけど。

「変態! 変態変態変態!!」

俺の名前が出てきて、次は変態連呼か。 少し悲しい気分になるぜ。 全く。

692: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:21:01.72 ID:KHH+e1jG0
……声色が嬉しそうなのは気のせいということにしておこう。 マジで。

「ふ、ふひひ。 それはマズイよぉ!」

……無心無心。 俺は何も聞いてないし、何も知らない。

聞こえて来るのは風の音と、鳥の鳴き声。 そしてセミの鳴き声だ。 それだけ。

「もームリ!! キモイキモイキモイよぉ!!」

うるせえセミだなぁ! あっはっはっはっはっはっは。

これを聞いた俺は、一体どんな顔をして桐乃に会えば良いんだよ。 参っちまうよ、マジでさ。

693: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:21:30.14 ID:KHH+e1jG0
それからようやく声は聞こえなくなり、俺は一人風呂場を後にする。 脱衣所で服を着て、外へ。

タイミングが良いのか悪いのか、丁度桐乃も出てきたところだった。

桐乃「サイテー! この変態シスコンっ!」

京介「は、ははは」

理不尽な怒りの理由も俺には分かってしまう。 それを突っ込めばこいつは多分面白いことになるんだろうが……。

694: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:22:01.48 ID:KHH+e1jG0
軽く、言ってみるか。

京介「……お前、声かなりでかかったぞ」

桐乃「き、聞いてたの!?」

京介「聞いてたというか、聞こえたというか」

さて、こいつはなんと言ってくるのだろうか。 それとも、手を出してくるのだろうか。 どっちだろう。

695: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:22:58.72 ID:KHH+e1jG0
桐乃「……ばーか」

しかし桐乃は小さくそれだけ言うと、足早に先ほどまで居た部屋へと向かい、歩いて行った。

想像していた反応と違い少し驚いたが……あいつ、一人で戻りやがった。

一人残され、どうした物かね。

……何か冷たい飲み物でも買って行ってやるか。

696: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:23:29.60 ID:KHH+e1jG0
ヤバイ。

ヤバイ。 聞かれてた。 どうしよう!?

桐乃「あ、ああああ。 ヤバイヤバイって」

冷静に考えればそうだよね。 普通に会話できるくらいなんだし、聞こえていても不思議じゃないのか。

……どうしよ。

部屋に戻り、座り込む。 てゆうか、京介置いてきちゃった……。

で、でも。 恥ずかしすぎてなんかふわふわするし、ぼーっとするし。

697: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:24:55.89 ID:KHH+e1jG0
仕方ない! うん!

どこまであいつが気付いたのかは分からないケド……あたしが多分、勢いで言った言葉は全部聞こえてたんだよね。 あの様子だと。

きょ、京介を殴って記憶を飛ばそうか……。

いやいやダメでしょそれは! さすがにそれはダメ!

でもそうは言っても、あいつって本当に何も手を出してこないんだよね。 前にそんな感じのことは言ってたケド、それでももうちょっとスキンシップ取ってくれても良くない? キスはたまーにしてくるケドさ。

なんか……良く考えたらちょっと失礼じゃない? こんだけ可愛い彼女がいつも近くに居るってのに。 魅力無いとか不安になっちゃうじゃん。

よし。

よし、よし! 良いこと考えた。 京介がそうならあたしにも考えがあるっつうの。 これならうまく行くはず。 そうと決まったら、早速作戦開始! よ~し。

698: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:25:28.09 ID:KHH+e1jG0
京介「ほら」

言いながら、部屋の床に座る込んでいる桐乃の頬に自販機で買ってきたお茶を当てる。

桐乃「あ、ありがと」

素直にそう言うこいつを見て、なんだかいつもと違い、またしても少しの違和感。 まあ、気にする程の物では無いと思うけど。

京介「俺は別に気にしてねーから、お前もそんな気にしてるなよ」

桐乃「…………うん」

699: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:26:01.06 ID:KHH+e1jG0
やはりどこかぼーっとしたような、そんな目をしている。

のぼせている訳でも、酒を飲んだって訳でも無いと思うんだが……どうしたのだろうか。

京介「……大丈夫か?」

桐乃「あ、あたし? 大丈夫、うん」

……どう見たって大丈夫じゃねえんだけど。

そう言おうとした時、唐突に桐乃が口を開いた。

700: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:26:34.29 ID:KHH+e1jG0
桐乃「あ~。 なんかこの部屋暑いな~」

京介「……そうか? クーラー効いてるけど」

桐乃「あっついなぁ!」

ちなみにこの時の桐乃の服装。 風呂上りの為か、ゆったりとした服を着ている。 いつもの様なビシッと決まったのとはまた違う。

そして、桐乃は突然それを脱ぎ始める。

701: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:27:01.78 ID:KHH+e1jG0
京介「おまっ! 何してんだよ!!」

必死に顔を逸らしたが。

い、一瞬だが見てしまった。 桐乃の下着姿を。 あ、あぶねえ。 いや、アウトか!?

つうかこいつは何でいきなり服を脱ぎだしているんだよ!!

桐乃「な、なにって。 あ、暑いし?」

京介「だからって服を脱ぐんじゃねえよ! 俺が居るんだからさあ!」

702: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:27:30.11 ID:KHH+e1jG0
桐乃「べっつにいーじゃん。 あ、もしかしてぇ。 妹の下着姿見てコーフンしてるとかぁ?」

京介「無くは無いけどな! でもそれより良いから服を着ろっての!! 部屋着の浴衣があるだろ? それ着とけよ!」

桐乃「わ、分かったわよ……ふん」

ま、全く……折角温泉に入ったのに嫌な汗をかいちまったじゃねえか。 突然何をしてんだ、こいつは。

桐乃「……もういいケド」

未だに顔を逸らし続ける俺に、桐乃からそう声が掛かる。

703: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:27:56.78 ID:KHH+e1jG0
ようやく桐乃の方を向き。

京介「……お前、やっぱそれでも似合うんだなぁ」

なんて、感心してしまった。

桐乃「そ、そう? ……じゃなくて!」

一瞬嬉しそうな顔をした後に、頭をぶんぶんと振り、桐乃は俺に詰め寄ってくる。

壁に背中を預けながら座る俺に、這うように桐乃は近づく。

704: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:28:25.73 ID:KHH+e1jG0
京介「な、なんだよ?」

桐乃「い、いまあたし、浴衣だから下着着けてないんだよねぇ~」

京介「なんの情報だよ!?」

桐乃「べ、べつに。 ただ言ってみただけだし」

京介「お前、マジでどうしたんだよ? なんかおかしいぞ?」

桐乃「……そんなことないもん」

無くはねえだろ……。 いくら俺でも、お前の考えが全部分かる訳じゃないんだから言ってくれるとありがたいんだが。

言わないだろうなぁ。 このままだと。

705: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:29:11.43 ID:KHH+e1jG0
京介「なあ、そうなってんのは俺の所為か? いつも通りだとは言わせないぞ」

桐乃「違う! 違う違う違う! あたしはいつも通りだっての!」

両手を振って、桐乃は俺の体を叩いてくる。

京介「お、おい! やめろって! マジで!」

桐乃「うっさいうっさい!」

数十秒、それは続いて、その後のことだった。

706: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:29:41.19 ID:KHH+e1jG0
俺は腕で必死に攻撃を防いでいた訳だが、攻撃がやがて、止まる。

不審に思い目を開けると、桐乃は悲しそうな顔をし、項垂れていた。

京介「……桐乃?」

そう聞いた瞬間、桐乃の腕が俺の首に回り。

桐乃は俺に、キスをしてきた。

……何が起こってるんだ!? ちょ、ちょっと待てよ!

慌てて桐乃の肩に手を置き、距離を取ろうと思ったが、俺はこれ以上後ろにいけない。 つまりは、桐乃を押し返さないといけないのだが……。

なんて、少しだけ迷ってしまったのがいけなかった。 桐乃の次の行動は予想外で、想定外すぎたから。

707: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:30:08.56 ID:KHH+e1jG0
口の中に柔らかい感触。 暖かく、俺の口の中へと入ってくる。

桐乃は未だに俺と距離を置くことはせずにいる。 それもそうだ。 桐乃の舌が、俺の口へと入っているのだから。

……やべ、頭がぼーっとして、思考が鈍ってきた。 宙に浮いているような、そんな感じもする。

未だに口の中ではそれが動いて、俺はその度にどんどんと眠気にも似た感覚に溺れてしまう。

708: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:30:34.98 ID:KHH+e1jG0
……マズイ。

そうじゃない、このままじゃマズイ!

最後の最後で正気を取り戻し、桐乃を押し返す。 思ったよりも簡単に桐乃は俺から離れ、床に倒れ込んだ。

俺が押し倒した様な形になってしまっているが……この際、話すとしたらそっちの方が都合は良いだろう。

京介「どうしたんだよ、急に。 桐乃」

桐乃「なんでも……無いって」

709: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:31:00.92 ID:KHH+e1jG0
京介「なんでも無くはねーだろ。 俺に出来ることならなんでもやってやるからさ、言ってくれよ」

桐乃「……じゃあ、聞くケド」

桐乃「京介が、あたしに手を出さないのはなんで?」

そのひと言で、全てが分かった。

……この馬鹿。 最後のあれは強硬手段って訳か。 実際かなり危なかったけどな。

710: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:31:35.83 ID:KHH+e1jG0
京介「それはだな……」

桐乃「あたしが妹だから? 京介と、兄妹だから?」

桐乃「……なんでも三つ聞いてくれるって言ってたよね。 なら、あたしの質問に答えて」

ったく。 まさか旅行先でこんな話し合いをするとは思ってなかったぜ。 それもまた意外っちゃ意外で、桐乃らしいっちゃ桐乃らしいんだけどさ。

京介「前にも言っただろ、お前が大切だからだ」

桐乃「……あたしは京介じゃないからわかんないケド、そうやって逃げてるだけじゃないの」

711: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:32:01.29 ID:KHH+e1jG0
京介「ちげーよ。 つうかだな、俺がどれだけ頑張って我慢していると思ってるんだお前は……」

これ、真面目な話ね。 一日一回は桐乃に襲いかかりたい衝動に駆られているから、俺。

京介「もしお前に手出して、それでもし子供でも出来たらどうすんだよ。 今の俺じゃ、お前とその子供を支えることはできねえんだ」

京介「……そうなればお前を悲しませちまう。 泣かせるかもしれない。 だから、俺は絶対に手は出さない」

桐乃「……うん」

712: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:32:43.35 ID:KHH+e1jG0
京介「俺はお前が悲しそうな顔をしてんのが見たくねえ。 だから、今の顔も見たくねえ。 悲しい想いをさせないように頑張ってるけどさ、こうやってうまくいかねえこともある」

京介「でも、今はまだ無理なんだ。 お前がそれで俺に怒ったとしても、だ」

京介「俺はお前が一番大切なんだよ、桐乃」

京介「……ごめんな。 分かってくれると、俺すげー嬉しいわ」

俺が言い終わると、桐乃は自身の肩にある俺の手を退け、俺の顔を両手で挟む。

713: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:33:10.06 ID:KHH+e1jG0
桐乃「……分かったよ。 そんだけ言われて、分からないワケにはいかないじゃん」

桐乃「でも、抱き締めるくらいはしてくれてもいいよね?」

桐乃は先ほどまでの押し倒された格好のままで言う。

俺の頬に触れている手は暖かく、桐乃の顔は今すぐにでも壊れてしまいそうなほどに儚かった。

……ここで断れる男が居たら、そいつは多分、どうしようもねえ馬鹿だろうな。

714: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:33:36.69 ID:KHH+e1jG0
俺が言う台詞なんて、それを聞いた瞬間にもう決まっていた。

京介「おう。 任せとけ」

そう言い、優しく、力強く桐乃を抱き締める。 普段ならここで桐乃は満足するんだが。

桐乃「……好きって言って」

京介「……好きだ、桐乃」

715: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:34:07.98 ID:KHH+e1jG0
桐乃「もーいっかい」

京介「す、好きだ」

桐乃「もーいっかい」

京介「……まだ言うのか?」

桐乃「はやくして。 はやくはやく」

京介「わーったよ……好きだ、桐乃」

716: ◆IWJezsAOw6 2013/07/25(木) 13:34:37.11 ID:KHH+e1jG0
桐乃「ふひ。 もーいっかいいって」

別にいくらでも言うのは良いんだけど、言う度に足をばたばたとするのはやめて頂きたい。 俺の主に下半身が攻撃を受けているから。

京介「好きだ、桐乃」

桐乃「えへへへ。 もっかいもっかい」

約一時間ほど、この状況は続くのだった。


温泉旅行 中編 終

746: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:03:34.87 ID:wpY9u+d00
京介「うし。 行くぞ、桐乃」

桐乃「行くってどこにー? この辺なーんも無いじゃん」

京介「何も調べなかった訳じゃねえんだよ。 ここに来るまでの道のりは見落としてただけだって。 小さいけど祭りあるみたいだしさ。 また行きたいってお前言ってたろ?」

桐乃「へえ。 ほんと、重要なとこ見落としてるよね」

京介「ほっとけ。 で、行くの? 行かないの? ちょっと歩くみたいだけどな」

桐乃「……いくケド」

747: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:04:00.78 ID:wpY9u+d00
あの後、桐乃がいつもの調子を取り戻すまでに結構な時間を使い、今はもう夕方。

夏といえば……祭り、海、旅行。 色々あるが、俺は桐乃と過ごせればそんなのは割りとどうでも良かったりする。 こいつが楽しければ俺も楽しいし、こいつが幸せならば俺も幸せだ。 つまりはそういうこと。

少し前に祭りには行ったから、目新しさなんてのは無いと思うが、それでも別に良い。 俺はただ、こいつの笑っている顔が好きなのだ。

748: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:04:38.08 ID:wpY9u+d00
桐乃「ふひひ」

屋台が並ぶ中、俺と桐乃は歩いている。 隣を歩く桐乃の表情は言葉通りの物で、それを見て俺は自然と声を掛けた。

京介「……嬉しそうだな」

桐乃「はぁ? そんなこと無いんですケドぉ。 暑いし~。 虫ウザイし~」

京介「でも千葉よりは涼しくねえか? 虫は仕方無いとは思うけど」

桐乃「まあね。 でもさー、花火やらないってどーゆうこと? 意味わかんない」

749: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:05:10.93 ID:wpY9u+d00
京介「小さい祭りだししょうがないだろ。 でもお前嬉しそうじゃねえかよ」

桐乃「だ、だって……メルルのお面とかヤバくない? ふひ」

さっきそんなこと無いって言ってなかったっけ? こいつ。 良くある事だから突っ込まないけどさ。

しかしだな、祭りに行く度に俺と桐乃が住んでいる小さな空間にメルルグッズが増えて行くのはどうにかしねえとな……。

アキバに行く度にも増えていくし、早急に手を打たないと俺の居るスペースさえ無くなってしまいそうだ。

いっそのこと、沙織や御鏡みたいにそういうの専用の部屋があればいいんだが……無理だよなぁ。

750: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:05:36.61 ID:wpY9u+d00
ま、まあまだ許容範囲内ではあるし、あまりにも増えて行く様だったらその時考えれば良いか。 思考放棄じゃないぞ。 俺は桐乃を信じているだけだからな!

……本当に大丈夫かな。

桐乃「あ、そーだ。 京介」

京介「ん? どした」

桐乃「あたし、十月に三日間くらい家空けるから」

751: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:06:05.30 ID:wpY9u+d00
京介「……どういうこと?」

桐乃「だから、修学旅行があるの。 それで三日間居ないって話」

京介「そ、そっか」

三日もかよ! けどもうそんな時期か。 時が経つのは早いなぁ。

桐乃「……ひひ。 もしかしてぇ、あたしに三日会えないだけで寂しいのぉ?」

京介「……んだよ。 わりいかよ」

桐乃「べっつにー。 そかそか。 ひひ」

752: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:06:35.43 ID:wpY9u+d00
そりゃあ寂しいっちゃ寂しいけどな。 だけど別に耐えられないって程でも無いだろ……多分。 仮にも一応一人暮らしをしていた訳だしな。

桐乃「ま、寂しく無いように黒猫とか沙織には言っておくからさ。 適当な遊び相手になってあげて~って」

桐乃「でも、ヘンなことしたら殺す」

京介「しねえよ……。 そんな信用無いか? 俺」

桐乃「信用はしてるって、一応。 だって」

そこまで言うと、桐乃は何故か途中で言葉を止める。 何かを口にしようとして、止めた?

754: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:07:02.16 ID:wpY9u+d00
京介「だって、なんだよ?」

桐乃「な、なんでもないっ! 気にすんなっ!!」

京介「そ、そうか……? お前がそう言うならそれ以上は聞かないけど」

桐乃「……ふひひ」

な、なんだ……。 何故こいつは、今笑っているんだ……。

755: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:07:35.82 ID:wpY9u+d00
桐乃「あーヤバ! マジヤバイ!」

京介「ど、どした?」

桐乃「だからこっちのハナシ!! ちょっと思い出しただけだっつーの!」

京介「……おう?」

桐乃「ま、まぁ? 京介のことは信用してるから。 それだけ」

京介「……そうかい。 ありがとな」

756: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:08:01.99 ID:wpY9u+d00
どこでどの様にこの信頼を得られたのかは不明だが、桐乃がそこまで言うのなら信用してくれているってことだろうな。 理由が不明で、ちっと怖いが。

桐乃「ね。 なんか食べ物買ってさ、ちょっと座って話さない? 前みたいに」

京介「おっけ。 んじゃあ買いに行こうぜ。 一緒に」

桐乃「うんっ」

今回は、桐乃はしっかりと俺の手を握っている。 それがなんだか、少しだけ嬉しかった。

757: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:08:29.38 ID:wpY9u+d00
京介「しっかし、もう夏も終わりだなぁ」

桐乃「だね。 どうだった? 今年の夏」

俺と桐乃は手頃な場所にあったベンチに座り、しばしの休憩。 距離はいつもより近い気がする。

京介「決まってんだろ。 楽しかったよ。 桐乃が居たしな?」

桐乃「……ふん。 ばーか」

758: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:08:56.70 ID:wpY9u+d00
言いながら、桐乃は俺の肩に頭を預ける。 その頭を俺は、自然に撫でる。

俺に寄り掛かったまま何も言わない桐乃を見て、ふと思う。

京介「長かったな」

桐乃「……なにが?」

京介「色々とだよ、色々」

桐乃「……そっか。 そうだね」

759: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:09:23.02 ID:wpY9u+d00
桐乃「これから、大変だろうね」

京介「そりゃあな。 お前と居るといっつも大変なことしか起きないからなぁ」

笑って、桐乃の顔を見る。 桐乃も自然と、笑っていた。

桐乃「いいっしょ、別に。 可愛い妹の為なんだから」

京介「仰るとおりで。 昔はそれだけだったけど、今は彼女でもある訳だし」

760: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:09:49.11 ID:wpY9u+d00
桐乃「……ストップ。 今の台詞もっかい言って」

京介「……今は彼女でもある訳だし?」

桐乃「……よし。 オッケ。 いいよ、続けて」

なんかの撮影でもしてんのか、これ。

京介「……一回止められてからもう一回始めろって言われると、すげー言い辛いんだけど」

761: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:10:14.84 ID:wpY9u+d00
桐乃「うっさい。 いいから続けるの。 早く」

京介「へいへい……」

京介「ええっとだな、それで」

京介「可愛い妹でも、可愛い彼女でもねえな。 超可愛い妹で、超可愛い彼女だ」

桐乃「……そ、そう?」

京介「おう」

762: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:10:41.57 ID:wpY9u+d00
桐乃「ちょ、ちょっと待ってね……よし」

桐乃「も、もっかい言って。 今の」

京介「またかよ……」

桐乃「はやくする! ほら、いって」

京介「えーっと……超可愛い妹で」

桐乃「待ったストップ!!」

763: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:11:08.48 ID:wpY9u+d00
京介「なんだよ!? お前が言えって言ったんじゃねえか!」

桐乃「よ、予想以上だったから、やっぱいい。 あたしが危ない」

京介「……お、おう」

桐乃「……」

京介「……」

しばしの無言。 それはなんだか、心地が良い物だった。

764: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:11:47.84 ID:wpY9u+d00
桐乃「え? 終わり?」

それはどうやら、俺だけだったらしい。

京介「……まだお前を褒めなきゃいけねえの?」

桐乃「一日一回あたしを褒めないといけないってルールがあるんだけど、知らなかった? 遅れてるなぁ」

どんなルールだよ。 そんでそのルールはいつ決まったんだよ。 つか遅れてるって言うが、流行もしてねえだろ。 むしろ今日だけで何回褒めたことか。

765: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:12:21.80 ID:wpY9u+d00
京介「じゃあ、一日一回桐乃は俺に好きだって言わなきゃいけないルール知ってるか?」

桐乃「そんなの知らないし、知りたくもないっつーの」

ふいっと顔を逸らす桐乃を見て、昔の面影をちょっとだけ感じる。

いや……今も昔も変わりはしないし、桐乃は桐乃だけどな。 それで、俺は俺だ。

京介「なあ、桐乃」

桐乃「んー?」

京介「そろそろ戻ろうぜ」

766: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:12:49.22 ID:wpY9u+d00
桐乃「もう? まだ全然楽しめてないんですケドぉ」

京介「いいからいいから、ほら。 早く行くぞ」

桐乃「……京介がそーゆうなら、別に良いケド」

不満が残る表情をしている桐乃の手を引き、俺は旅館へと足を向ける。

知ってるぜ。 お前が物足りないと感じているのも、もう少し俺と遊んでいたいと思ってくれてるのも、知っているさ。

767: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:13:21.90 ID:wpY9u+d00
桐乃「持ってきてるなら、先に言えば良いじゃん……」

俺は密かに花火を持ってきていて、旅館のすぐ横にあった空き地で二人で花火をしようと声を掛けたのだ。 んで今、桐乃は片手で花火を見ながら、そんなことを呟いていた。

京介「あ、京介花火持って来てくれたんだ。 さすがあたしの彼氏っ! 超格好良い! ってことか?」

桐乃「ば、ばかじゃん! そんなこと思ってないし! ばかばかばか!」

……結構大袈裟に言ったのだが、こいつの反応を見る限り……マジか。

768: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:13:48.01 ID:wpY9u+d00
や、やめよう。 今、これ以上桐乃の考えを予想していたら全て当たってしまいそうで、若干気まずくなりそうだし。

京介「俺が馬鹿なのは分かったから花火振り回すのやめようぜ!? 普通に危ないから!!」

明言しておくと、俺の心配度的には桐乃9の俺1って割合。 お前の綺麗な肌が火傷でもしたらどうすんだ! へへへ。

……なんか変質者の思考みたいになってんな、俺。

桐乃「あ、あんたがヘンなことゆうからでしょ! チッ……」

769: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:14:13.29 ID:wpY9u+d00
京介「変なことって言うけど、俺は言わないだけで頭の中でもっと変なこと考えてるかもしれないぜ? 桐乃さんよ」

桐乃「は、はぁ!? キモッ!」

京介「んだよ。 これでもお前の兄貴だぞ」

桐乃「そんなの知ってるし。 で、その兄貴はなにを考えてたワケ?」

聞くのかよ、結局。 どうすっかな、勢いでああは言ったが、俺は大して変なことなんて考えて無いし。

770: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:14:49.48 ID:wpY9u+d00
京介「……うーん」

京介「桐乃は今日も綺麗だな。 肌を舐めまわしたいくらいだぜ。 とか?」

桐乃「……それはちょっとマジメにキモいかも」

京介「じょ、冗談だぞ。 さすがの俺でもそこまで思っちゃいねえって」

桐乃「さすがのって自分でゆうんだ。 ま、良かった。 本当にそんなこと思ってたらちょっと引いてた」

京介「お前はどれだけ俺のことを変態だと思ってんだよ……」

771: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:16:18.21 ID:wpY9u+d00
ショックだぜ。 一度本気だと思われていたしな。

てか、ドン引きじゃなくて「ちょっと」なんだな。 そんな突っ込みはしねえけど。

桐乃「あはは。 だってぇ、妹に結婚してくれってゆうくらい変態じゃん?」

京介「……うっせ」

お前だって「はい」って返事したじゃねえかよ! 棚に上げやがって。

桐乃「……でもまあ、嬉しかったケドね」

京介「知ってるよ。 そんなのは」

772: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:16:51.10 ID:wpY9u+d00
桐乃「多分、京介が思ってるのとはちょっと違うかな。 あたしが言ってるのは」

桐乃は線香花火に火を点け、言葉を続ける。 パチパチと火花を散らすそれを見ながら。

桐乃「……あたしはね、京介。 その初めての台詞をあたしに言ってくれたのが、嬉しかった」

京介「……そか」

桐乃「あたしは初めてのデート相手でもないし、初めての彼女でもないし、京介が初めて好きになった人でも無いケドさ」

桐乃「京介が初めてプロポーズした人になれて、良かった。 嬉しかったよ」

773: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:17:22.83 ID:wpY9u+d00
こいつは急にこういうことを言うからな。 聞く俺側からしたら恥ずかしいし、照れるし、まあ、嬉しいんだけどさ。

京介「桐乃」

俺は桐乃のすぐ隣にしゃがみ込み、同じように線香花火に火を点け、話し掛ける。

京介「確かにお前の言うとおりだよ。 桐乃はそうじゃなかった。 だけどよ」

774: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:17:58.91 ID:wpY9u+d00
京介「俺はお前のことをずっと知ってて、お前も俺のことをずっと知ってる。 お前は俺のたった一人の妹で、一緒に居た時間は誰にも負けねえよ。 そんで今は」

京介「俺が初めて一生一緒に居たいって思った奴で、俺が初めてこいつのことだけは他の全てを捨てても守ってやりたいって思った奴で、俺が初めて絶対に幸せにしてやりたいって思った奴だ」

京介「それじゃ、駄目か?」

桐乃はずっと黙って聞いていて、花火を見つめていた視線を俺に移し、首を振る。

桐乃「ううん。 充分。 充分すぎかも。 えへへ」

775: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:18:37.32 ID:wpY9u+d00
京介「そうか。 なら、良かったよ」

京介「一応、言っとくか」

京介「桐乃。 何か悩むことあったら、すぐに相談しろよ。 お前がどんなことを言っても俺は馬鹿にしねえし、どんな相談でも真面目に聞く」

京介「もしもお前が悩んでいることを笑う奴が居たら、俺がぶっ飛ばしてやる。 お前のことを悪く言う奴が居たら、俺が言い返してやる」

桐乃「うん、うん」

京介「……ま、そういうことだ。 何語ってるんだろうな、俺」

776: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:19:17.23 ID:wpY9u+d00
桐乃「いいじゃん。 京介らしくて、良いと思うケド」

桐乃「……ふう。 なんかすっきりしたかも。 ってことで相談あるんだケドぉ~」

……これはあれだ。 嫌な相談だ。 このパターンは間違いねえぞ。

桐乃「あたしぃ、喉渇いちゃってるんだよね~~。 あーあ、飲み物飲みたいなぁ~。 冷たいお茶飲みたいかも~」

京介「自販機あそこにあるぞ。 良かったな」

俺が指差す先には自動販売機。 距離にして約50メートル程だろうか。

777: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:19:42.91 ID:wpY9u+d00
桐乃「知ってるし。 でもいっぱい歩いて疲れてるんだよね~」

京介「……ふむ」

京介「ああ、分かった。 お姫様抱っこして欲しいってこと?」

桐乃「ちがーう!! それは違う!!」

京介「えっと……それはって言うと」

778: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:20:54.67 ID:wpY9u+d00
桐乃「な、なんでもない! 良いから早く買ってきてよ!!」

記憶を辿っても思い当たることは一つしか無いが……。 ま、まあ行くか。 俺に見える範囲内だし、な。

……ていうか金渡されてねーけど、これって俺が奢らないといけないのかね。 別に奢るのはいいけどな。

京介「分かった分かった。 ちょっと待ってろ」

779: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:22:38.23 ID:wpY9u+d00
で、自販機の前に到着。

京介「うお、すげえ。 このクソ暑い中、あったかい飲み物売ってるぞ……」

……間違えた振りをして温かいのを桐乃に渡してみようか。

その場合、どうなるのだろう。 少し考えてみるとするか。

780: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:23:05.72 ID:wpY9u+d00
「桐乃、買ってきてやったぞ」

「さんきゅ」

「……ってこれなんで温かいヤツなの!? 冷たいのが飲みたいって言ったんですケドぉ!」

「ははは。 ちょっと意地悪したくなっただけだって。 俺の方飲むか? 飲みかけだけど」

「あ、あんたねえ……分かった。 あやせに言いつけてやる」

「あやせに言ったってどうにもならんだろ……」

781: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:23:32.15 ID:wpY9u+d00
で、後日。

「お兄さん。 桐乃に何をしたんですか?」

「え、え? 別に、何もしてないけど……」

「桐乃が冷たい飲み物を飲みたいと言ったのに温かいのを買ったらしいじゃないですか。 何故ですか」

「いや……それは、少し意地悪をしたくなったというか……」

782: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:24:25.39 ID:wpY9u+d00
「はい? それで桐乃が自殺したらどうするんですか!」

「自殺するの!? 俺が買った飲み物が温かかったから!?」

「そうです。 お兄さん、この場合どうなるか分かりますか」

「……」

「死刑です」

783: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:24:53.51 ID:wpY9u+d00
俺は黙って冷たいお茶を買うことにした。 危うくあやせに殺されるところだったぜ。 あの女、なんてことを考えてやがるんだ。 まさかこんな場面でバッドエンド直行の選択肢があるなんてな……。

俺の人生、これから先も苦労は絶えなさそうだ。

てか、こういうのを死亡フラグとかいうのかな。 なんてことを思いつつ、桐乃の元へと戻る。

京介「買ってきたぞ。 冷たいお茶」

桐乃「さーんきゅ。 なんかやたら時間かかってたケド、どうかしたの?」

784: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:25:20.19 ID:wpY9u+d00
京介「いや、何でも無い。 大丈夫」

桐乃「ふうん? あ、お金後で渡すね」

京介「ああ、良いよ奢りで」

桐乃「でも、なんか悪くない?」

京介「お前が言うと軽く感動する台詞だな……。 けど、良いよ。 お礼でもあるし」

桐乃「お礼……って、なんの?」

785: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:25:47.73 ID:wpY9u+d00
京介「ん? キスのお礼」

桐乃「な、ななななああ!? わっ忘れろ!!! 忘れろ忘れろ忘れろっ!!!」

京介「……あれを忘れろってのは無理な話だと思うけど」

桐乃「良いから忘れなさいって! 妹とキスしてそれのお礼とか変態すぎだし!!」

京介「お前がしてきたんじゃねえかよ! しかも舌まで----------」

言いかけたところで、桐乃の拳が顔寸前で止まる。

786: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:26:13.45 ID:wpY9u+d00
桐乃「ふう……! ふう……!」

京介「わ、分かった。 言わない。 これ以上は言わない。 は、ははは」

後で恥ずかしがるくらいなら、最初からやめておきゃいいのにな。 まあ、俺も今になってこの冷静さを取り戻している訳だけど、あの瞬間は正直ヤバかったけども。

桐乃はしばらく俺の顔を見た後、ようやく拳を下ろし、口を開く。

桐乃「……そんで、どうだったの」

京介「……どうだったって、何が?」

787: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:26:45.36 ID:wpY9u+d00
桐乃「……あ、あたしとキスした感想、どうだったかって聞いてんの」

馬鹿じゃねえのこいつ!? なんで忘れろって言ったことの感想を俺に聞いてんの!? ていうか素直に感想とか言える訳ねーだろ!! どんな質問だっつーの!!!

京介「い、言わないと駄目か……?」

桐乃「……当たり前じゃん」

俺の顔を見れない程に恥ずかしがり、明後日の方向を見ながら桐乃は言う。

788: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:27:17.03 ID:wpY9u+d00
京介「え、ええっと……なんというか、やばかった。 桐乃からすげえ良い匂いしたし……? 実際、普通のキスでも俺結構緊張してんだけどな。 今日はなんていうか……ぼーっとしてきて、何も考えられなくなりそうだったっつうか……そんな感じ?」

何で俺は妹の前で妹とそういうキスをした感想を言ってるんだよ!? 訂正しておこう。 俺変態かもしれん。

桐乃「ふ、ふ~ん。 そうなんだ~」

桐乃は言いながらどんどん俺から顔を逸らす。 言い終わる頃には、俺に背中を向けていた。

桐乃「……う、嬉しかった?」

京介「……まあ」

789: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:27:43.74 ID:wpY9u+d00
気まずっ! 何だよこの羞恥プレイ!? 今すぐ逃げ出したいんですけど!

桐乃「そ、そかそか。 ふうん……ふうん」

なんか一人で納得されてるってのも嫌だな……後ろ姿だけでも、どんな表情してんのかは想像付くけど。

京介「だ、だからってまたするなよ……?」

桐乃「す、するワケないでしょ!! 変態!」

……警戒はしておくべきだな。 そう何度もやられたら、いつ我慢できなくなるか分かった物じゃねえし。

790: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:28:14.61 ID:wpY9u+d00
京介「……そんで、お前はどうだったの?」

桐乃「あたしが……って、なに?」

京介「いや、お前は俺とキスしてどう思ったのかって聞いてるんだけど」

桐乃「は、はぁ!? ふつーそれ聞く!? ゆうワケないっしょ! ばかじゃん!」

言いながら、桐乃は俺の横を通り過ぎて旅館へと向かっていく。

791: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:28:45.22 ID:wpY9u+d00
数分前のお前にその台詞を聞かせてやりたいんだけどなぁ。

ま、その反応の一つ一つが、多分俺の中では宝物なのだろう。 宝物で、思い出で、大事な物だ。

どんどん先を進む桐乃の後ろ姿を見て、俺はこう思う。

やれやれ、仕方ねえなぁ。 全く世話が焼ける妹で、世話が焼ける彼女だぜ。 なんてな。

792: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:29:12.35 ID:wpY9u+d00
よし、最後も決まったことだし俺も部屋に戻るとしよう。

夏もこれで終わりか……なんつうか、ちょっとだけ切ないな。

そんな時間の経過に少しの間だけ思い耽り、振り向き、夏の景色を眺める。

京介「……俺も戻るかな」

向き直り、一歩。

一歩進み、足を止めた。

793: ◆IWJezsAOw6 2013/07/26(金) 13:29:50.76 ID:wpY9u+d00
京介「……いや、つうかあいつ片付けしてねえじゃん」

京介「……マジか」

そんなこんなで俺は蚊に刺されながら、花火の後始末をするのだった。

今回は、そんなオチ。


温泉旅行 後編 終

839: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:05:42.86 ID:aRmYB5mg0
夏も終わり、9月。

夏は終わったと言った物の、未だに残る暑さは厳しい物がある、そんな日。

桐乃「きりりん大勝利ーーー!!! ざっまああ!!」

目の前で大喜びをする俺の妹でもあり俺の彼女でもあるこの女を見て、俺はこう思う。 この煽りに殆ど冷静に返せてる黒猫は偉大だと。

あいつも頭に血が上っている場合はあるけども。

桐乃「なになにぃ? もしかして欲しかったのぉ? でもぉ……あんたじゃんけんで負けたじゃん? だからむ~~~り~~~」

京介「んなことは知ってるわ! 良いから勝ったんだからとっとと食えよ!」

840: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:06:09.12 ID:aRmYB5mg0
簡単に状況を説明しよう。 桐乃がモデルの仕事でどうやらケーキを貰ってきたらしく、夕食後のデザートとして食べていたんだ。

それだけならまだ良い。 二人で仲良く分けて、めでたしめでたしだからな。 だけど誰が狙ったのかケーキは3つあったんだ。

普通ならどうなると思う? そりゃあまあ、どっちかが譲るかその残ったケーキを半分にするかってところだろうよ。 だけどな、俺たちの場合はそうは行かなかった。 想像通り取り合いになったってこと。

後は分かるよな。 流れでじゃんけんになって、流れで俺が負けただけの話。

841: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:07:03.16 ID:aRmYB5mg0
桐乃「う~ん。 どーしよっかなぁ! 取っといて明日食べようかなぁ? う~ん!」

京介「……」

桐乃「そんな黙って見られても困るんですケドぉ? だってぇ、これあんたのじゃないし~。 ふひひ」

京介「……」

桐乃「あ、もしかしてぇ。 食べたかったの? このケーキ美味しいもんね~。 ムリもないか! あははははは!」

京介「……あー。 だから最近、お前若干太ってきたのか」

842: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:07:43.76 ID:aRmYB5mg0
ついには耐え切れなくなり、ぼそっと小さく言う。 勿論、そんなことは無いけど。 苦し紛れの反撃ってだけだ。

強いて言うとするならば、若干……本当に注意してみなきゃ分からないレベルだが、腹の辺りが以前に比べると柔らかくなっている気がしなくもないってレベル。 ぶっちゃけ変わらない。

なんでそんなことを知っているかって? そりゃ毎日同じ布団で寝てれば、間違えて触ってしまうこともあるしな? 間違えてだぞ、間違えて。

桐乃「……い、今なんて?」

桐乃は今の今まで嬉しさのあまりか、過剰になっていた動作をぴたっと止めて、聞きなおす。

843: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:08:17.69 ID:aRmYB5mg0
京介「いや、だから……桐乃が最近、若干太ってきてるんじゃないかなって」

桐乃「…………マジ?」

ケーキが乗った皿をテーブルの上に置き、俺のすぐ目の前まで来ながら、真剣な眼差しで桐乃は言う。

……マジじゃないんだが、どうしよう。

つ、ついさっきまで散々言われ放題だったしなぁ!? 少しくらい仕返ししても良いんじゃね!?

京介「……お、おう」

俺は真っ直ぐと見てくる桐乃の視線に耐えられず、目を逸らしながら答える。

844: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:08:45.88 ID:aRmYB5mg0
いつもなら嘘だと見破られていそうな物だが、桐乃にとってその事態は深刻な物だったらしい。

桐乃「う……」

明らかに焦っているのが分かった。 二の腕や腹を触り、確認を取っていたから。

桐乃「京介!」

京介「は、はい?」

桐乃「……明日、ちょっと出掛けるから付いて来て」

京介「……明日は赤城と約束しちゃってるんだけど」

845: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:09:16.35 ID:aRmYB5mg0
桐乃「せなちーのお兄さんだっけ?」

京介「おう。 そうだ」

桐乃「あたしと……あたしとその人、どっちが大切なの?」

目を潤ませながら、桐乃は俺に這いよりながら言う。

……すまん赤城! 俺桐乃の方が大切だわ!

846: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:09:48.70 ID:aRmYB5mg0
いや、勿論友達も大切だけどな。 赤城には今度何かしらの形で埋め合わせはするとして、明日は仕方ないが諦めて貰おう。 どうせあいつのことだしアダルトショップに行こうとか言い出すだろうしな。

つうか、こいつはこの前の温泉旅行以来、こんな感じで男心をくすぐる仕草を多用してくるようになったんだよ。 正直、俺の余命は後10年もある気がしなくなってきているぜ。

京介「分かった分かった。 明日はお前の為に使うよ」

桐乃「そ、そう? ひひ」

俺が答えると、桐乃は嬉しそうに笑っていた。

847: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:10:25.12 ID:aRmYB5mg0
そして次の日。

朝の講義を終えた後、俺は帰宅。 桐乃はテスト絡みで午前授業となっていたらしく、午後からのデートとなっている。

京介「そんで、どこ行くの?」

桐乃「決まってるでしょ。 プール」

京介「……今日少し寒いけど」

桐乃「屋内に決まってんじゃん。 温水プールだって」

848: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:10:54.99 ID:aRmYB5mg0
京介「ふうん。 まあそれなら良いけどよ。 なんで急に」

言ってから気付く。 昨日のことか……こうなるんだったら正直に言っておけば良かった。

でも待てよ。 これってつまり桐乃の水着が見れるってことだよな!? そ、そう考えるとこの選択は正解だった可能性が大……! 良くやった、俺!

桐乃「……ふん。 別に気が向いただけ」

京介「はは、そうかい」

俺はそう答えるのと同時に何か忘れている様な気がしていた。 まあそんな大事なことでは無い気もするし、いいか。

しかし恥ずかしそうにしているこいつを見ると、なんだか言ってやりたくなってくる。 ううむ……この葛藤。

849: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:11:27.03 ID:aRmYB5mg0
京介「……まぁ。 別に俺はお前が太っても気にしねーぞ?」

桐乃「な、ち、違うっての!! なに言ってんの!?」

京介「それなら良いけどよ……」

桐乃「……そーゆうケド、もしあたしがテレビに出れるくらいに太っても良いの?」

なんでそんな段階まで行く事が前提になってんだ!? こいつ!?

ま、まあ一応想像してみるか。

850: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:12:04.09 ID:aRmYB5mg0
京介「……は、はは。 それはちょっと」

桐乃「ほらほらぁ! なら決定! さっさと準備してよね!」

京介「でも、俺はお前の腹の感触好きだけど」

桐乃「……いつ触った?」

京介「あ、えーっと……」

桐乃「いつ触った?」

これ言う必要なかったな。 桐乃にばれない様に間違えて触ってるのがばれてしまったじゃないか。

851: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:12:31.48 ID:aRmYB5mg0
京介「き、桐乃が寝てる時に間違えて……とか?」

桐乃「……変態」

京介「あと、あれだ。 大分前にメルルの一番くじの件でお前の部屋に行った時、くすぐったときとか」

桐乃「……あ! それ今になって思い出してなんか腹立ってきたんですケド!」

京介「なんでだよ!?」

桐乃「だってあんたあたしの布団の中でもぞもぞ動くし……あたしのことくすぐるし」

852: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:13:02.28 ID:aRmYB5mg0
京介「お前がいつまで経っても大丈夫だって言わないからだろ!? そうしてれば俺もあんなことはしなかった!!」

京介「つうか、なんであの時お前は俺を出さなかったんだよ?」

桐乃「そ、それは! ……その、なんとなくだし」

京介「……なんとなく?」

桐乃「……うん、なんとなく」

京介「……そうか」

853: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:13:29.58 ID:aRmYB5mg0
京介「ええっと、全く関係無い話だけど、その日はぐっすり眠れたか?」

桐乃「……だいぶ」

す、素直に答えてるんじゃねえよ。

桐乃「そ、そんなハナシはどーだっていーの!! いいから早く行くんだから準備してよね!」

京介「お、おう。 分かった分かった」

こうして俺と桐乃は平日の午後、ちょっとだけ離れた場所にある施設へと向かう事となった。

854: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:14:00.91 ID:aRmYB5mg0
桐乃「はーやーくー」

プールの中から桐乃が言う。 ちなみに髪は縛ってあり、走るときのスタイルとでも言うべきか。

京介「いやちょっと待て、俺は別に元から入るつもりも泳ぐつもりもねえんだけど……」

桐乃「はぁ? ならなんで付いて来たの?」

京介「お前が付いて来いって言ったからじゃねえかよ!?」

桐乃「なに。 京介って妹が付いて来てって言ったらどこにでも付いて行くの? シスコンすぎじゃん?」

855: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:14:32.82 ID:aRmYB5mg0
京介「おーまーえーなあ!!」

折角俺が来てやってるのに、この言い方は酷すぎるだろ!! い、良いぜ……お前がその気なら、俺にも手はあるんだからよお!

京介「……分かった。 入れば良いんだろ、入ればよー」

桐乃「最初からそうしろっての。 チッ……」

俺は黙ってプールの中へと入る。 ふ、ふふ。 隙だらけじゃねえか、こいつ。

856: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:15:07.56 ID:aRmYB5mg0
京介「桐乃」

桐乃「なに?」

京介「あれってなんだ? さっきから気になってたんだけどさ」

俺は言い、適当な方向を指差す。 勿論そっちには何も無い。

桐乃「えーっと……どれ?」

桐乃はつられて視線を移し、俺はその背後に回りこみ、桐乃の腰の辺りを掴み持ち上げた。 プールの中なので、足が浮く感じではあると思うけど。

桐乃「ちょ、ちょっとどこ触ってんのよ!! やめてって!!」

857: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:15:50.35 ID:aRmYB5mg0
手をぶんぶんと振り回し俺に攻撃を加えようとしてくる妹を俺はそのまま放り投げる。 ははは! ざまあみろ!!

豪快な音を立てながら、桐乃は水の中へ。 あーやべえ、楽しい。

京介「今ので少しは痩せたんじゃねえの~? 感謝しろよ~!」

桐乃は項垂れたまま、何も言わずにしばらく黙っている。

桐乃「ふ、ふふふふふふふ」

ようやく声を出したと思ったら、恐ろしい笑い声だった。 あれ、これちょっとまずくない?

858: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:16:24.85 ID:aRmYB5mg0
桐乃「じょ、上等じゃん……あんた、誰に喧嘩売ってるのか分かってんでしょうね?」

京介「あ、ええっと……桐乃さん?」

桐乃「なあに? 京介」

京介「……なんで少しずつ近寄ってくるんですか?」

桐乃「さぁ? なんでだと思う?」

京介「……逃げた方がいいですかねぇ?」

859: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:16:52.58 ID:aRmYB5mg0
桐乃「もし逃げたら帰ってから殺す」

つまり、黙って今からされることを受け入れろってことか? 嫌だよ俺はまだ死にたくねえし!

京介「落ち着け桐乃! 目的は違うだろ!? そんなことしてる場合じゃねえって!」

桐乃「あたしにとって今、一番最初にするべき目的が変わっただけだから大丈夫だよ。 京介」

言い方こわっ。 つうかこいつは何をする気なんだよ!!

京介「そ、そっスカ。 はは」

860: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:17:51.08 ID:aRmYB5mg0
桐乃はやがて俺の目の前までくると、怒りも混ざっている笑顔を向け、水の中へと潜っていく。

……な、なんでこいつは潜ったんだ。 あまり良い予感がしねえんだけど。

結局その予感は見事当たり。 桐乃はそのまま俺に近づき、あろうことか俺の水着に手を掛けた。

京介「ちょっと待て!! お前何しようとしてんだよ!! それはマズイから!!!」

ざばん、と音を立てながら桐乃は潜るのを止め、上がる。 ちなみに手は未だに水着に掛かったままだ。

861: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:18:24.14 ID:aRmYB5mg0
桐乃「なに? なんかいった?」

京介「なんかいったじゃねえええええええよ!! お前それはヤバイだろ!?」

桐乃「ヤバイって何がどうヤバイの?」

京介「お前の言ってた目的が達成されたら俺は間違い無く捕まるじゃねえか!! だからやめてください!!」

桐乃「大丈夫大丈夫。 あんたが捕まってもあたしはあんたの味方だから。 前に言ったっしょ?」

京介「確かに言ったけど、明らかに味方のすることじゃねえからな!? つうかこの場面でその台詞を言うんじゃねえよ!!」

862: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:19:06.13 ID:aRmYB5mg0
桐乃「チッ……うっさいな。 いいから黙って大人しくしてろっての」

この数十秒の会話の最中、桐乃は延々と俺の水着を引っ張ってくる。 それを必死にガードしながらの会話という訳だ。

京介「ここで俺が「分かった」って言ったらただの変態じゃねえか! てかお前も大分変態だよな!?」

桐乃「は、はぁ!? あたしのどこが!? あたしは純粋でチョー可愛い女子高生だかんね!!」

京介「それは知ってるけど、お前のやろうとしてることは普通にマズイから!」

863: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:19:32.99 ID:aRmYB5mg0
そんな言い合いを続けながら、いつこの言い合いが終わるのかと思ったとき。 後ろから声が掛けられる。

「あの、他の方の迷惑になりますので……」

必ず居るであろう監視員の方だった。

京介「あ、あははは……すいません」

864: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:20:02.50 ID:aRmYB5mg0
桐乃「チッ……あんたの所為で怒られたじゃん」

京介「……俺の所為か?」

その後少し泳ぎ、今は休憩中。 設置されている椅子に俺たちは並んで座っていた。

桐乃「京介があたしを投げなければ、あたしもあんなことしなかったし」

京介「いや、お前がプールに行くとか言わなければ、あんなことしなかったし」

俺が言い返すと、桐乃は肩をぴくっと震わせる。 大方、俺が素直に謝るとでも思ったのだろう。 俺だって言いたいときくらいあるんだっての!

865: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:20:41.50 ID:aRmYB5mg0
桐乃「ほ、ほ~う。 それなら京介があたしを太ったとか言ってなければ、あたしは行くとか言わなかったし」

京介「な……! き、桐乃がじゃんけんで勝ってケーキ貰わなければ、俺はそんなこと言わなかったし」

桐乃「……っ! 京介がじゃんけん弱くなければ、そうはならなかったし!?」

京介「そこまで言うかっ!? なら、桐乃がケーキを持って帰ってこなければ、じゃんけんする必要も無かったし」

桐乃「は、はぁああぁあ!? そ、それならあたしと京介が同棲してなきゃ持って帰ることなんて無かったし!」

866: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:21:09.14 ID:aRmYB5mg0
京介「へ、へえ。 ならお前が俺に惚れてなきゃ同棲なんてしてなかったし!」

桐乃「一緒でしょ! あんたがあたしに惚れてなかったら同棲してなかったし!」

京介「うっせ! 桐乃が妹じゃなかったら俺はお前に惚れてなかったし!」

桐乃「それも一緒だっつーの! 京介が兄貴じゃなかったらあたしは京介に惚れてなかったし!」

京介「……マジ?」

桐乃「……わかんないケド」

867: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:21:39.06 ID:aRmYB5mg0
桐乃「てか、あんたのはマジ? あたしが妹じゃなかったらっての」

京介「……わかんね。 でも妹じゃなかったとしても惚れてたかもしれん。 会えてたら、だけど」

桐乃「……ならよし」

京介「そうじゃなくてだな! 今はどっちの責任かっつう話だよ!」

桐乃「だから、京介の所為でしょ?」

868: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:22:05.14 ID:aRmYB5mg0
京介「いやだから、俺たちが兄妹じゃなかったらこうはなってなかったかもしれん」

桐乃「……まあ、確かに」

京介「ってことはだな、桐乃。 お互い様じゃね? これ」

我ながら、中々良い結論に辿り着いたんじゃないか。 全員が納得しそうな結論だぜ。

桐乃「ふん。 それでも京介が悪いから」

一人納得しない奴がいたな。 ここに。

869: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:22:32.04 ID:aRmYB5mg0
京介「……はぁ。 分かった。 俺が悪かったよ、桐乃」

そして結局俺はこう言ってしまうんだけども。

桐乃「分かればいいよ。 許してあげる」

いやあ、良かった。 許してもらえた。 だけどなんか嬉しくないな。 なんでだろうな。

桐乃「あ、でもぉ。 帰りになんか奢ってよ。 アイスとか」

京介「……へいへい」

桐乃「ひひ。 やった!」

870: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:23:26.73 ID:aRmYB5mg0
そういえば。

最近になって気付いたことが一つ。

桐乃は俺に、何かをねだることが多々ある。 それは今日みたいにアイスだったり、はたまたどこかへ連れて行ってくれだったり。

俺が気付いたのは前者の方で、何かしら買ってくれと頼む時のことだ。

桐乃は自分の金を使うのが嫌という訳じゃあない。 俺も結構、こいつには奢ってもらっているしな。 で、それだとどうしてかって話なんだけど。

こいつは俺に何かを買ってもらうのが、嬉しいのだろう。 それがどれだけ小さい物でも、たとえばコンビニに売っている10円のお菓子だとしても……こいつにとってはそれは重要なことじゃない。

桐乃にとって重要なのは、俺が買ってくれたという事実ということだ。 それに俺は、最近気付いた。

871: ◆IWJezsAOw6 2013/07/29(月) 13:23:53.95 ID:aRmYB5mg0
そして。

そして、思い出したことが一つ。

俺はある一つのことを忘れていたのだ。 すっかりと抜け落ちていて、忘れてはならないことを忘れてしまっていた。

しかしそれは、もう手遅れ。 今更悔やんでも悔やみきれない。 後戻りは、出来やしない。

そんなことを今になってようやく思い出した。

俺は顔を上に向け、天井に付いている照明を見ながらこう呟く。

やべえ、赤城に今日行けないって言うの忘れてた。


ダイエット計画 終

894: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:00:42.69 ID:BIV3Nzb40
桐乃「ふひ。 ふひひひ」

10月。 大学から家に戻ると、部屋の中では桐乃がエロゲーをやっていた。 珍しい光景では無い。 いつも通りの光景。

そんな桐乃の背中を見て、俺は後ろから抱き締める。

桐乃「んっ……へ!? な、なにしてんの!?」

京介「なにって……別に?」

桐乃「べ、別にじゃないし……ばか」

895: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:01:08.90 ID:BIV3Nzb40
これが、俺と桐乃の間で最近流行っていること。

意味も無く相手を驚かせるというゲーム。

始まりがいつだったかは分からない。 気付いたら、何故か始まっていた目的も理由も不明のゲームだ。

京介「へへ。 驚いたか?」

桐乃「驚かないほうがどうかしてるっての……」

桐乃「えっと……おかえり、京介」

京介「ああ、ただいま」

896: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:01:36.88 ID:BIV3Nzb40
桐乃の体に触れている腕から、鼓動を感じ取れる。 いつもより早く感じるそれは、驚いた所為だけでは無いかもしれない。

しかし、こいつに後ろから触れたときはあまり良い思い出が無いんだよね。 ふっつーに殴られるからな。 誰か分からないからってのもあったのかもしれないけど。

でも今は、そういうことも無くなった。

京介「で、またエロゲーやってたのか?」

ようやく腕を解き、桐乃の隣に腰を掛け、俺は尋ねた。

897: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:02:33.53 ID:BIV3Nzb40
桐乃「ん。 まあね。 今回のはすごいんだよ! 妹達が立体的に描かれてて、表情もすっごい豊かなの! 可愛いよねぇ……」

だらしない顔をしながら、桐乃はPC画面を眺めている。

……なんつうかあれだ。 妹ゲーの妹キャラに嫉妬しそうな感じだぜ。

京介「……ふうん」

桐乃「んで、でね! 今回は主人公が女の人なんだよ! すごくない? チョー感情移入できちゃうんだ~」

京介「そ、そうなの? でもそれだと、お兄ちゃんとか呼んでくれないんじゃねーの?」

898: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:03:02.01 ID:BIV3Nzb40
桐乃「その辺はだいじょーぶ。 設定で変えられるから。 男勝りな女の人だしね」

京介「へえ。 つうか、お前って女同士とかでってのに興味あるのか……?」

桐乃「な、ち、ちがうっての! たまたまそうだっただけ!」

京介「そか。 危うく俺はどうすれば良いのか分からなくなりそうだった」

桐乃「ベツに問題ないっしょ? あたしの中じゃ、男の人って京介だけだから」

京介「ご、ごほっ! ごほっ!」

早速反撃を食らってしまった。 こいつ、その気になるとマジで容赦ないからな。 恐ろし過ぎる。

899: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:03:43.49 ID:BIV3Nzb40
桐乃「なに? 嬉しかった?」

京介「……嬉しくない訳ねえだろ。 馬鹿が」

桐乃「ひひ。 しすこーん!」

京介「うっせえブラコン」

桐乃「ふん。 あんたの方がヒドイし。 あたしは全然まだまだだし~」

京介「はぁ? どこがだよ」

900: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:04:12.40 ID:BIV3Nzb40
桐乃「だってそうじゃん? 京介お兄ちゃん」

京介「な……な!?」

京介「き、桐乃……今の、今のもう一回言ってくれ」

桐乃「ほらぁ! あんたのがシスコンじゃん!」

京介「いやもう俺の方がシスコンってことでいいから、もう一回……頼む!」

桐乃「そう頼まれるとちょっと恥ずかしいんですケドぉ……ベツにいいケド」

901: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:04:46.38 ID:BIV3Nzb40
桐乃「きょ、京介お兄ちゃん」

京介「お前のことマジで愛してるわ!!」

言いながら、俺は桐乃を抱き締める。 抱き心地が良い奴だぜ、全く。

桐乃「ば、ばかじゃん」

京介「……でも、お前もやっぱ結構ブラコンだよな?」

桐乃「は、はぁ!? なんでそーなるワケ!?」

902: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:05:13.64 ID:BIV3Nzb40
京介「だってよ、お前だって俺のこと、抱き締めてるし」

俺の背中側にはしっかりと小さな桐乃の手。 俺の服を掴んでいる。

桐乃「ち、ちがっ! これは……その、シスコン兄貴が嬉しいかなって思って……ってだけだし」

京介「なるほどなぁ。 ありがとな、桐乃」

桐乃「……ふん」

そうやって顔を逸らす桐乃の頭を俺はゆっくりとした動作で撫でてやるのだった。

903: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:06:09.71 ID:BIV3Nzb40
京介「ふううう。 疲れが取れるわあ」

湯船に浸かり、今後の作戦をまずは構築。

脳内で一人会議ってことだな。 議題は勿論、どうやってあの妹様に一矢報いるか、だ。

正直言って、抱き締めるのは嬉しいし楽しいし桐乃とくっつけるしですげー良い方法ではあると思うのだが、あまり続けていて耐性でも付けられた日には最悪だ。

904: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:06:37.21 ID:BIV3Nzb40
俺はあいつの恥ずかしがっている顔が結構好きだからな……。 当然、それがなくなったからと言ってあいつを好きじゃなくなるなんてことはあり得ないけど。

だから、他の桐乃を驚かせる算段を立てなければならない。

それが、今俺がやるべき事。

これについては俺よりも詳しい可能性がある黒猫にも相談したんだが……その時の話を少ししよう。

905: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:07:06.77 ID:BIV3Nzb40
京介「お、黒猫か? 学校終わってると思って電話したんだけど、大丈夫だったか?」

「ええ。 大丈夫よ。 それよりどうしたのよ、いきなり」

京介「ちょっとお前に相談したいことがあってさ。 桐乃のことなんだけど」

「……あなたの相談、イコール桐乃よね。 毎回だけどいい加減鬱陶しいわ……」

京介「わ、悪い」

906: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:07:33.35 ID:BIV3Nzb40
「まあ良いわよ。 それで、今度はどんなバカップルの悩みなのかしら」

京介「俺たちは別にバカップルじゃねえっての……」

京介「でさ、今桐乃と相手を驚かせるゲームをやっているんだよ。 で、あいつってどんなことで驚くのかなって思って」

「ちょ、ちょっと待ちなさい。 今の台詞、もう一回言って御覧なさい」

京介「え? 相手を驚かせるゲーム……か?」

「そうじゃなくて、それより前よ」

908: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:07:51.41 ID:BIV3Nzb40
京介「ええっと……俺たちは別にバカップルじゃない、か?」

「そう、それよ。 で、それをもう一度言ったところで聞くわね。 あなたはわたしにどんな相談をするのかしら?」

京介「いや、だからだな……桐乃と相手を驚かせるゲームをやっていて」

「……もう手に負えないわ。 大分手遅れね」

京介「……何が?」

909: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:08:17.56 ID:BIV3Nzb40
「いえ、こっちの話よ。 それでその相談内容だけど……簡単な方法が一つあるわ」

京介「お、マジか! 是非教えてくれ!」

「こう言うのよ。 聞いておきなさい」

「お、桐乃。 ちょっと用事あるんだけどさ、いいか?」

「俺たち、一緒に暮らしてから結構経つのにそういうのって今まで無いじゃんか。 だから桐乃」

「セ◯クスしようぜ」

910: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:08:47.44 ID:BIV3Nzb40
京介「言わねーよ!!!! 馬鹿かお前!!!!」

「……つまり、もうしたということ?」

京介「ちげえ! それについては俺にはしっかり考えがあるんだ! ってか何でお前にこんな話しないといけねえんだよ!」

「……ま、まあ良いわ。 でも、それが駄目だとするのなら、もう他に方法なんて無いわよ?」

京介「そ、そうなのか? でも、キスとか抱き締めたりとか、いきなり愛してるとか言えば、あいつ驚いていると思うんだが」

「……そろそろ本気で気持ち悪いけど、仕方ないから答えてあげるとするわね」

911: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:09:26.38 ID:BIV3Nzb40
「あなたは知らないでしょうけど……桐乃は心の中ではそんなのでは全然驚いていないわ」

京介「……マジで?」

「そうよ。 どうせあのビッチのことだから「あーあ、いつまでもそんなソフトなことじゃなくて、とっとと襲ってくれないかな」とか思っているわよ」

京介「お前本当にあいつの友達か!? それとそっち系の話はするんじゃねえ!」

「でもどうかしらね。 いくら驚いたりすることでも、何度も繰り返されては次第にそれは薄れていくでしょう?」

「あなたの言い方だとまだ大丈夫かもしれないけれど、いつ桐乃が飽きるか分からないわよ」

912: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:10:02.78 ID:BIV3Nzb40
京介「た、確かに……言われて見れば、可能性はあるよな」

「だから普段と違うことをするのよ。 そうね、例えば」

「桐乃、大変だ! 沙織が亡くなった!!」

「とか、どうかしら」

京介「……お前、沙織を殺すんじゃねえ」

913: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:10:30.00 ID:BIV3Nzb40
「嘘に決まっているでしょう。 妄想でいくら人を殺そうと罪には問われないのよ……ふふ」

京介「お、おう……一応聞いておくけど、俺を殺したことは?」

「約三回ほど」

京介「……いつかは聞かないでおこう」

「賢明ね。 それで、それも厭だと言うのなら……そうね」

「もう、諦めなさい」

京介「……りょーかい」

914: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:11:32.15 ID:BIV3Nzb40
と、全く役に立たない電話だった。

分かったことと言えば、黒猫が妄想の中で俺を三回ほど殺している事実だ。

……あいつとは友達関係を改めて考えないと危ないかもしれない。 あやせの次は黒猫か。 俺の苦労は絶えない様で安心したぜ。 はは。

その時、突然、ガラガラと音がする。

聞きなれた音で、毎日聞いている音。

それは、風呂場のドアが開く音。

915: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:12:31.44 ID:BIV3Nzb40
湯船に浸かっている俺の視界に入る位置にドアは設置されていて、つまりそれが開けばその奥が見えると言う訳で。

そして、このアパートのこの部屋に居るのは俺と桐乃で。

俺は今、湯船に入っていてドアには当然手が届かない。 開けられる可能性がある奴は一人だけ。

風呂場のドアを開けるということは風呂に入るということで、それら全てを考えると。

そこに居たのは、桐乃ということ。

しかも、タオルなんて巻いておらず。 全裸。 一応腕で隠してはいるが。

916: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:13:31.24 ID:BIV3Nzb40
京介「お、お前っ! 今俺入ってるから!!」

言い、俺は視線を壁に向ける。

桐乃「……知ってるし。 別にいーじゃん」

やべえ! 桐乃の体を大分まじまじと見てしまった気がするぞ! いつ以来だよこれ!?

桐乃「てか、昔リアがきたときにあたしの裸見てるじゃん……あの時は何とも思わないとか言ってたのに?」

未だに桐乃に視線は向けられず、シャワーの音が聞こえて来る。 恐らく、頭を洗っているところだろう。

917: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:14:03.47 ID:BIV3Nzb40
京介「……な訳ねーだろ。 お前って、その……スタイル良いし。 何とも思わない訳ねーだろ」

桐乃「ふうん? なら良いんだケド」

良い? 良いって、何がだ。

京介「お前、ひょっとしてあの時怒ってたのって」

桐乃「……それもある。 あと、照れ隠しと嫉妬」

京介「……そか。 悪かったよ」

918: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:14:29.41 ID:BIV3Nzb40
桐乃「今更言って欲しくなんてないし~。 で、今はどうなの?」

京介「……め、めっちゃ意識する」

桐乃「キッモ~! えへへ。 シスコンすぎっ!!」

京介「わりいかよ……ちくしょう」

桐乃「良いよ。 あたしだってそんなシスコン兄貴と付き合ってる妹だしね。 ひひ」

今日の桐乃はやたら攻撃加えてきやがるな……。 何か、反撃できない物か。

919: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:16:48.44 ID:BIV3Nzb40
京介「……そうだ。 前は確か、お前に背中流してもらったよな。 今日は俺が流してやろう」

桐乃「い、いいっていいって!! 自分でできるし!!」

京介「日頃のお礼だよ、お礼。 良いから大人しくやらせとけって」

桐乃「……分かった。 じゃあ、別に良いケド……見ないでよ」

京介「みねえよ……つうか見るなっていうなら、タオル巻いてくりゃよかったのに」

桐乃「ふん。 あんたが何も思わないとかゆーから、そうしたってだけだっつうの」

920: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:17:15.48 ID:BIV3Nzb40
可愛いなぁおい! こいつ、考え方が一々可愛すぎる!

京介「じゃ、じゃあ……えっと、とりあえず今そっち見ても大丈夫か」

桐乃「う、うん。 背中向けてるから、だいじょぶ」

その言葉を受け、俺はようやく壁との睨めっこをやめる。 次に視界に写ったのは、桐乃の後ろ姿。

……こ、これはヤバイ。 大分エロいぞ。

921: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:17:46.06 ID:BIV3Nzb40
俺は桐乃に聞こえないように、唾を飲み込む。 以前と違ってお互い裸だからな……すげえ緊張するんだが。

以前と違うといえばそうか、今はもう……ちゃんと付き合ってるのか。 別れるのが前提ではなくて、関係を有耶無耶にした状態でもなくて。 しっかりと、俺と桐乃は付き合っているんだ。

京介「えーっと……」

この場面ってなんか褒めた方が良いのか!? 初めてすぎて分からないんだけど!

京介「肌、綺麗だな」

桐乃「……変態」

京介「……悪かったな」

922: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:18:24.83 ID:BIV3Nzb40
どうやら褒めたのは正解だったらしい。 桐乃の声色からして、嬉しそうなのが伝わってくる。

桐乃は俺が後ろに座るのを感じたのか、黙ったまま、前を向いたままでボディソープを俺に渡す。

それを受け取り、何回か押し、手に溜めて泡立て、桐乃の背中へ。

……こいつの肌、めちゃくちゃ触り心地いいな。 陸上やってるのもあり、しっかりとはしているけど柔らかい。 それにすべすべしてるし……。

これだけ触ったのってもしかして初めてじゃね? 寝ている時に間違えて触る時も、起きないように気を付けているしな。

いや、ていうかだな。 なんか、この光景エロくねえか!? 大丈夫か俺!?

923: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:18:57.71 ID:BIV3Nzb40
桐乃「ね、ねえ」

京介「……どした?」

桐乃「出来ればタオル使って欲しいんですケド……」

なるほど。 なんでこんなエロいことになっているか理由が分かった。 そういうことか。

京介「……わ、悪い」

桐乃「べ、別に手でもいいけどね……?」

京介「ま、マジで!?」

924: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:19:27.26 ID:BIV3Nzb40
桐乃「ちょ、なんでそんな嬉しそうにするワケ!? キモいんですケドぉ!」

京介「だってお前の肌めっちゃ触り心地いいんだもん! お前の肌触った男は絶対嬉しそうにするって!」

桐乃「あ、あたしが触らせるのは京介だけだし……でも、そんな嬉しそうにされるとなんかヤダ。 やっぱタオル使って」

京介「……マジ?」

桐乃「マジ」

京介「……分かった」

925: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:19:54.80 ID:BIV3Nzb40
桐乃「その落ち込みっぷりが怖いんだケド……」

京介「よし桐乃。 明日も一緒に風呂入ろうぜ」

桐乃「なんでそうなるッ!? 一年に一回だけだから!」

京介「一年に一回しかねえの……?」

桐乃「う、うう……じゃあ、半年に一回……でどう?」

京介「そこをなんとか!」

926: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:20:22.92 ID:BIV3Nzb40
桐乃「ま、まだゆうの? なら……ひと月に一回……とか」

京介「おし、そうしようぜ桐乃。 月に一回は一緒に風呂な」

桐乃「……なんか騙された気分」

京介「んなことねーよ。 ほら、背中洗い終わったぞ」

桐乃「ん。 ありがと」

927: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:21:21.11 ID:BIV3Nzb40
京介「うっし。 じゃあ俺は出るぞー」

ぶっちゃけ、これ以上桐乃と触れ合っていたら俺がヤバイ。 こういう時はさっさと出るに限る。

しかし、俺はすっかり忘れていた。

一年とちょっと前に、似たようなことがあったのを。

928: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:21:48.53 ID:BIV3Nzb40
桐乃「待って」

腕を掴んだりはされていない。 それでも桐乃の声はそれだけで俺の動作を止めるには充分な物だ。

俺は開き掛けた扉から手を離す、そして振り返り、背中を向けたままの桐乃に対して尋ねる。

京介「……どうした?」

桐乃「あたし湯船入るから、あんたも入れ」

……何故に命令形? いやいやいや、つうかだな、それはまずいだろうが!

929: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:22:16.37 ID:BIV3Nzb40
京介「い、いや……俺もう、のぼせてきてるし……さっき湯船入ったし……」

桐乃「ふ~ん。 嘘吐くんだ。 そんなの嘘ってことくらい分かるんですケドぉ」

京介「う……で、でもなあ!」

桐乃「なんでも命令三つ聞いてくれるって言ったよね? あれまだ一個しか使ってないし、これが二個目ってことで良いよ」

あれってその日限定じゃなかったんすか。 桐乃が言うならそうじゃないことになってしまうけどよ。

930: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:22:48.49 ID:BIV3Nzb40
まあ、でも。

京介「……なら、仕方ないか」

自分の意思とは裏腹に、俺はそう答えてしまう。 違うか。

多分それは、俺の意思通りだったのだろう。 そしてそれは桐乃の意思通りでもある訳で。

俺と桐乃は背中合わせで、湯船に入ることとなった。

931: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:23:23.62 ID:BIV3Nzb40
桐乃「……面白い話どーぞ」

京介「すげえ振りだな……じゃあ一つ、面白いかどうか分からない話でもすっかな」

桐乃「お。 てっきりなんも話さないかと思っちゃった。 ヨロシク」

京介「……おう。 んじゃあ話すぞ」

俺は語り出す。 昔のことをゆっくりと思い出しながら。

932: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:23:51.22 ID:BIV3Nzb40
京介「ある所に馬鹿な男が一人居て、そいつにはすげー妹が居たんだ」

京介「勉強も出来て、容姿も良くて、運動だって出来る。 そんな、妹が居た」

本当に、何でも出来る妹だ。

京介「男はずっと思っていた。 なんでこいつはこれだけ才能に恵まれているんだろうってな」

同時に、どうしてこいつばっかりってな。

933: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:24:21.04 ID:BIV3Nzb40
京介「そんなことを思っていたのも……他にも色々とあり、妹とはしばらく会えない生活を送っていた。 会おうと思えば会えたのに、その男は会おうとしなかった」

妹はずっと、その男を見ていてくれた。 避けていたのは、その男で。

京介「だけど……ひょんなことから妹と知り合う切っ掛けを得て、それで話すようになったんだ。 少しずつな」

切っ掛けはすげえ物だったんだろうよ。 だって何年も会ってなかったのに、普通に話せる様になってたし。

京介「そしてある日、気付いた。 気付いたというか、気付かされた」

934: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:24:47.77 ID:BIV3Nzb40
京介「その妹は天才なんかじゃねえって。 全部、努力して得た物だったんだって」

京介「勉強も頑張って、自分も磨いて、必死に走る練習して」

京介「今まで才能だと思っていた物は、そいつが必死に頑張って、一生懸命努力して、得た物だったっつう訳だ」

天才では無く、全て努力して得た物。 才能では無く、そいつの得た結果ってことだ。

京介「その時からずっと、男はある一つの事をずっと想ってる。 なんだと思う?」

935: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:25:20.09 ID:BIV3Nzb40
俺のその質問に、妹は少しの間を置いて応える。

桐乃「……ちょっと分からない、かな」

俺もまた、少しの間を置き、口を開いた。

京介「俺は全然駄目だけど、いつも周りの奴に助けてもらってばかりだけど。 それでも一つだけ、誰にも負けないって思えることがある」

絶対に、どんな奴にも負けないことが、一つだけ。

936: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:25:48.64 ID:BIV3Nzb40
京介「その妹はその男の誇りで、自慢の妹なんだ。 それだけは絶対誰にも負けないってな」

桐乃は俺の誇りで、自慢の妹で、そんで。

俺が世界一好きな、奴で。

京介「ま、そんな話だ。 つまんねー話だけどな」

桐乃「……そか。 それで、その人は妹とどうなったんだろうね?」

桐乃はそんな事を言い、頭を俺の肩へと預ける。 すぐ横を見ると、桐乃はちょっとだけ嬉しそうに笑い、天井を見つめていた。

937: ◆IWJezsAOw6 2013/07/30(火) 13:26:17.44 ID:BIV3Nzb40
京介「さあな? 今頃どっかで妹と仲良く一緒に風呂でも入ってるんじゃねーの?」

桐乃「ひひ。 かもね」

言いながら、桐乃は俺の手を掴む。 俺も、桐乃の手をしっかりと掴んで。

それからしばらくの間、俺たちはそうしていた。

俺も桐乃も落ち着いてたさ。 伝わってくる鼓動から分かるのは、二人とも落ち着いてたってことだろうしな。

ああ、そうそう。 最後に桐乃はこう言ったんだ。

桐乃「ね、京介。 来月も楽しみにしてるから」


背中合わせ 終

954: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 12:58:02.87 ID:qb8o4Hly0
10月下旬。

桐乃「じゃ、行って来ます」

京介「おう。 行ってらっしゃい。 お土産忘れるんじゃねえぞ?」

桐乃「え~。 どーしよっかな。 考えといてあげる」

京介「そうかいそうかい。 気をつけてな」

桐乃「はいはい。 あ、そーいえば」

玄関扉に掛けていた手を一度降ろし、桐乃は俺の方へと向き直る。

955: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 12:58:33.55 ID:qb8o4Hly0
京介「ん? 忘れ物か?」

肝心なところで抜けてるしな、桐乃は。

桐乃「そんなとこ。 ひひ」

笑いながら言って、桐乃は顔を俺に近づけ、そのまま……キスをした。

京介「お、おま!」

桐乃「これで忘れ物な~し。 じゃ、またね」

桐乃はそれだけ言うと部屋を後にする。 俺は一人残され、唇に残された桐乃の感触に、少しの切なさを感じていた。

今日から三日間、桐乃は修学旅行へと行くことになっていたのだ。

956: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 12:59:09.03 ID:qb8o4Hly0
京介「……さて」

今日は金曜日なので、えーっと……金、土、日、だな。 帰って来るのは日曜の夕方で……それまでこのアパートには俺だけってことか。

京介「一人ってのも随分と久し振りな気がするな」

そう思うのも無理はないか。 去年の終わりから今まで、ずっと桐乃と暮らしていたし。 どっちかが出掛けていて一人ってのはあったけど……これだけ長い期間一人ってのは、二人で暮らし始めてからは初めてだよな。

京介「……ううむ。 いきなり一人になると広く感じるな」

今日の予定としては、午前中は赤城と遊ぶ予定。 この前の埋め合わせも兼ねて。

957: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 12:59:54.47 ID:qb8o4Hly0
で、赤城はどうやら午後には瀬菜と遊ぶらしく、俺はその後、黒猫や沙織と合流することになっている。

つうか、そう考えると一人っきりではねえよな。 折角伸び伸びと満喫しようと思っていたのに。 ま、明日もあることだし……別に良いか。

京介「えーっと、とりあえずはアキバか」

赤城からは「一人でずっと待ち合わせ場所に居るのは悲しいから、今回はドタキャンするんじゃねえぞ」と釘を刺されている。 うむ。 申し訳ない限りだ。

時間を確認する為、近くに置いてあった携帯を開く。 すると、新着メールが一件。

958: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:00:23.06 ID:qb8o4Hly0
From 桐乃
一応警告。 浮気したらマジ許さない。


京介「する訳ねえだろ……って、添付ファイル?」

見たところ、画像ファイルの様だ。 俺は大して迷いもせず、それを開く。

画面いっぱいに映し出されたのは、笑顔のあやせ。

959: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:01:16.96 ID:qb8o4Hly0
ふむ。 普段なら喜ぶべきところだろう。 美少女を見れて喜ばない男はいないからな。 それは仕方無いことだ。

念の為言っておくと、桐乃が一番。 それだけ言えば分かるだろ。

……で、だ。

今、この俺の携帯に表示されている画像。 これと桐乃からの本文を合わせると……出てくる答えは一つ。

京介「……あいつ、脅すにしてももっとマシな方法があるだろ」

960: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:01:43.51 ID:qb8o4Hly0
なんだよこの恐ろしすぎる警告は! マジで、俺今鳥肌たってるからね。

俺は恐る恐る、メールを返信。


To 桐乃
当たり前だろ。 それより俺は可愛い妹の画像が見たいんだが。


さて。 俺もそろそろ行かないとな。 今回時間に遅れたら、赤城に何を言われるか分かった物じゃねえし。

961: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:02:12.47 ID:qb8o4Hly0
そう思い、携帯をポケットに入れようとしたところで着信音。

京介「……桐乃か。 相変わらず返信はっええな」


From 桐乃
今回だけだかんね。


またしても添付ファイル一件。 来たか……!!

962: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:02:39.56 ID:qb8o4Hly0
京介「これで今日も一日頑張れそうだぜ。 へへ」

思いながら画像を開くと、そこには桐乃では無くりんこりんが居た。

京介「あ、あの野郎……!」

確かに可愛い妹なのかもしれんが、俺が言っているのはそうじゃねえ! あいつ、絶対分かっててやりやがったな……。

若干泣きそうになりながら、俺は待ち合わせ場所へと向かうのだった。

963: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:03:30.69 ID:qb8o4Hly0
赤城「おーう。 ドタキャン高坂! 元気してたかあ!?」

京介「悪かったって……頼むからそのあだ名で呼ぶのをやめてください赤城さん」

いきなり呼ばれたぞ。 顔を見た瞬間そう言ってくるって、赤城の中では結構恨みが募っている可能性があるぜ。

赤城「ははは! 次やったらマジで許さねえからな! 一人ずーっとお前のこと待ってたんだぜ。 恋する乙女でもあるまいし! ははは!」

京介「……なんでお前、朝からそんなテンションたけえんだよ」

964: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:04:00.32 ID:qb8o4Hly0
赤城「いやいや、それがさー。 今日めっちゃ良いことあったんだよね、俺」

京介「ふうん。 で、今日はどこに遊びに行くわけ?」

赤城「おまっ、そこはあれだろ? 「どんな良いことがあったんだ?」って聞く所じゃねえかよ!」

京介「別にお前の身に起きた良いことなんて聞きたくねえよ……」

赤城「実はさ、朝飯食った後のことなんだけど」

965: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:04:53.59 ID:qb8o4Hly0
なんでこいつは勝手に語り始めてるんだ。 ひと言も俺は聞きたいなんて言ってなくね?

赤城「俺は今日ここに来るために着替えなきゃいけなかったから、でもちっと自分の部屋で着替えるのが面倒でリビングで着替えてたんだよ。 風呂あがりだったしな」

多分、聞いても聞かなくてもどうせこいつは全部話すんだろうよ。 なら大人しく聞いてやるか。

京介「はぁ……それで?」

赤城「そしたらよ……瀬菜ちゃんとばったり会っちゃってさ!」

……そういう系ね。 なるほどなるほど。

966: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:05:24.07 ID:qb8o4Hly0
京介「そりゃ家の中だしな。 会うだろう」

赤城「んでよー。 瀬菜ちゃんってば「お兄ちゃん筋肉前より付いてるね」って言って体触ってくんの! 朝からテンション上がっちまったぜぇ!」

京介「そりゃ良かったな……」

京介「でも、瀬菜って確か彼氏が」

赤城「高坂ッ!!! お前今何を言おうとした!?」

京介「あ、ああ……いや、なんでもない」

967: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:05:50.23 ID:qb8o4Hly0
赤城「分かれば良い。 俺の前では二度とその台詞を出すなよ。 分かったな」

京介「……へいへい」

そして、赤城は最後にこう締める。

赤城「いやぁ、それにしても……やっぱり瀬菜ちゃんが世界で一番可愛いよな。 マジでさ」

968: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:06:17.43 ID:qb8o4Hly0
京介「……あ?」

赤城「ん? どした、高坂。 その目は? 前に勝負して分かったろ?」

京介「お、お前な……桐乃は」

京介「……いや、なんでもねえ」

赤城「あん? まあ良いけどよ。 そろそろ行こうぜ」

京介「ああ、そうだな」

969: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:06:51.12 ID:qb8o4Hly0
多分……多分だが、ここが俺と赤城の違いなのだろう。

昔は一緒だったかもしれない。 俺も赤城も、妹のことを自慢していて。

だけど今は、俺は言いたく無かった。 桐乃との話を……思い出を。

自慢する様な物では無いと思ったからかもしれない。 しかしそれよりも、俺は二人だけの物にしておきたかったのかもしれない。

赤城「しかしよ、高坂」

970: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:07:18.37 ID:qb8o4Hly0
横で歩く赤城が話し掛けてくる。 俺はそれを聞いて一旦思考を止め、赤城の方に顔を向けた。

赤城「お前、なんか今日はテンション低いっつうか、顔色悪いっつうか、そんな感じなんだけど、なんかあったのか?」

……やっぱそうかよ。 自分でも分かっちゃいるが。

原因も大体検討は付いているけどな。 でも、そんなのは多分些細な物だろう。 その些細なことでも気付くほどに、こいつとは仲良くやっている訳だけど。

971: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:07:49.38 ID:qb8o4Hly0
京介「別に、なんでもねーよ。 つっても、良いことならあったかもしれんが」

赤城「ふうん。 どんなの?」

言われ、朝のやり取りを思い出す。 桐乃が行って来ますと言って、俺が行ってらっしゃいと返して。

その後のこと。

赤城「……なんでお前ニヤついてんの?」

972: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:08:19.17 ID:qb8o4Hly0
京介「はあ!? ニヤついてねーし!! 何言ってんだお前!?」

赤城「明らかに動揺してますよね高坂さん! てかどう見たってめっちゃ嬉しそうにしてたじゃねえか!? 正直ちょっと引いたぞ!!」

京介「そりゃあれだ、気のせいだな。 俺はいつも通りにお前と居る時はニヤつくことなんて滅多にない」

赤城「なんかそう言われると、俺と遊んでる時すげーつまらないみたいな言い方で嫌なんだけど……」

京介「え? 違わないけど?」

赤城「ひどっ! さすがに今のはひでーぞ! 高坂ぁ!」

973: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:08:53.95 ID:qb8o4Hly0
京介「……冗談だっつうの。 良いからとっとと歩けよ。 瀬菜のお使いとかもあるんだろ?」

赤城「まあな。 さて、お前もいつも通りになったことだし、気合い入れていくか!」

俺は最初からいつも通りだっつうの。 そんで、そんな気合い入れて俺たちはどこに行くんだ……?

京介「ちなみに、だが。 赤城」

赤城「ん? なんだ?」

974: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:09:38.51 ID:qb8o4Hly0
京介「瀬菜のお使いってどこ行くの?」

赤城「決まってるだろ。 ホモゲーとか、色々だよ」

そうだよなぁ。 俺の友達の妹のお使いが普通なわけがない!

……少しの寒気を覚えながら、俺と赤城は町中へと繰り出していった。

975: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:10:05.79 ID:qb8o4Hly0
その後、昼頃までは赤城と遊び、午後からはいつものメイド喫茶。

遊んだというよりは買い物に付き合わされたといった感じだが。

……内容は割愛させてもらおう。 ひと言で済ませるなら、察しろ。

そんで、今居るメイド喫茶で昼飯も一緒に済ませている俺の正面には黒猫と沙織。 俺の友達でもあり、桐乃の友達でもある奴らだ。

黒猫「それで、あなたは寂しくてわたしたちと遊んでいるという訳ね。 厭になってしまうわ」

976: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:10:33.56 ID:qb8o4Hly0
京介「そりゃあちっとは寂しいけど、そんな大袈裟に言う事でもねえだろ。 一応言っとくが、桐乃の代わりでとかじゃないからな?」

黒猫「分かっているわよ、一々言われなくとも。 それにもしそうだとしても無理よ。 あの女の代わりなんて、あなたにとっては誰も居ないのでしょう?」

京介「……まあ、そうだけど」

沙織「ふむふむ。 お熱いですなぁ」

京介「うっせ、ほっとけや」

しかしそんなことを言ったとしても無駄であろう。 この二人は俺のことを見ながら、ニヤニヤと嫌味な笑いを浮かべているからな。 全く嫌になるぜ……。

977: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:10:59.22 ID:qb8o4Hly0
京介「あー、それで。 今日はなんか決めることがあるとか言ってなかったか?」

そんな視線に耐え切れず、話題を変える。 我ながらナイス機転だとは思う。

沙織「良くぞ聞いてくれました! 京介氏!」

おおう。 すげえ反応だな……どれだけこの話題を待ち侘びていたんだよ。 どうやらこの話題は当たりだったらしいな。

黒猫「あら、わたしもそれには少し興味があるわね。 今日くらいしか出来ない話……と言っていたし」

978: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:11:25.73 ID:qb8o4Hly0
それは俺もなんとなく聞いていたな。 今日くらいしか……正しくは、ここ最近では今日だけ予定が合ったので。 というのもあるけども、それでもその言い方をするってことは。

京介「桐乃が居ない時に決めたいこと。 で良いんだよな?」

沙織「ふっふっふ。 さすがは京介氏。 良く分かってらっしゃる」

沙織「ずばりですな。 拙者が企画しているのは……クリスマスパーティでござる! にん」

そういえば……もう10月か。 そんな計画を始める時期なのかね。 もう。

979: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:11:52.69 ID:qb8o4Hly0
京介「クリスマスパーティか……なるほど」

黒猫「……あなた「今年は桐乃とデートだから」とかほざくのは無しよ? 去年も一昨年も二人で過ごしたのでしょう。 今年くらいは」

京介「分かってるよ。 今年は皆で楽しくやろうぜ?」

ん? でも、それだとどうして。

京介「なあ沙織。 それならどうして桐乃抜きで話さないといけないことなんだ?」

980: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:12:19.83 ID:qb8o4Hly0
沙織「聞いてくださると信じていましたぞ。 京介氏」

沙織「実はですな。 これはお礼でもあるのですよ」

京介「……お礼?」

沙織「簡単に言えば、いつものお礼という訳ですな。 良くも悪くも、きりりん氏にはお世話になっておりますので」

京介「悪くの部分が大半だと思うけど……」

981: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:12:45.27 ID:qb8o4Hly0
ていうか、良くもの部分って殆ど皆無だと思うんだけど。 こいつには迷惑掛けっぱなしだしな。

沙織「細かいことは良いでは無いですか。 京介氏は大分前に、プレゼントを貰っていますし……黒猫氏は去年、同人誌製作を手伝って貰っておりますし。 きりりん氏にも何か、と思いまして」

京介「……お前は?」

沙織「はっはっはっ。 何を仰るかと思えば。 拙者は皆さんに会うたび、頂いておりますぞ」

……そうだな。 お前はそういう奴だったよ。

982: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:13:12.53 ID:qb8o4Hly0
黒猫「……そういうことね。 それで今日決めるのは、どんなサプライズをするか。 ということで良いかしら?」

沙織「その通りですな、黒猫氏。 拙者だけではどうにも考えが及ばず……皆さんの知恵を借りようかと思った所存で」

京介「と、言われてもな……あいつが喜びそうなサプライズねぇ」

黒猫「……その点については、わたしに良い考えがあるわよ」

京介「お。 黒猫はあいつと仲良いしな。 聞かせてくれよ」

黒猫「分かったわ。 ふふ」

983: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:13:40.47 ID:qb8o4Hly0
黒猫は咳払いを一つすると、その内容を語り出す。

黒猫「まず、レンタルルームを借りるというのは大前提で良いかしら?」

沙織「ですな。 今年はそうしようと思っていますので」

黒猫「そう。 ならまずはここに桐乃が居るとするわね」

言いながら、黒猫はテーブルの中心に携帯を置く。

984: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:14:06.39 ID:qb8o4Hly0
黒猫「で、わたしと沙織がここよ」

次にコップを一つ取ると、今度はテーブルの隅にそれを置く。

桐乃と黒猫と沙織の位置関係は分かった。 うん。 この時点で嫌な予感がすげえするぜ。

京介「……俺は?」

黒猫「あなたはここよ。 当然でしょ」

黒猫は言うと、中心に置かれた携帯の上にコップを置いた。

985: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:14:38.34 ID:qb8o4Hly0
京介「……一応聞くぜ。 どういう意味だ、それ」

黒猫「あなたが桐乃を押し倒しているという図ね。 で、わたしと沙織はそれを遠巻きに見ている」

京介「なんで押し倒さないといけねえんだよ!! しかもお前らの前でとか嫌すぎるわ!!」

沙織「……つまり、拙者たちの前でなければ良いと言う事ですかな?」

京介「あん!? なんか言ったかぁ!?」

黒猫「でも、桐乃はそれで喜ぶのでは無いかしら?」

そ……そうか? ううむ。

986: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:15:08.72 ID:qb8o4Hly0
京介「桐乃」

桐乃「な、なに? 急に後ろから声掛けないでよ」

京介「ちょっとこっち向いてくれ」

桐乃「……うん」

桐乃は頷くと、俺の方に向き直る。 俺はそのまま、桐乃の唇に自身の唇を重ねた。

987: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:15:35.60 ID:qb8o4Hly0
桐乃「んっ……ちょ、いきなり……」

言いながらも決して抵抗はしない桐乃。 それがどうしようもなく可愛く、俺は優しく、桐乃を押し倒す。

京介「……お前、やっぱり可愛いよな」

桐乃「や、やめてって……」

988: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:16:02.34 ID:qb8o4Hly0
京介「……へへ、えへへへ」

黒猫「……沙織、この不審者を置いてとっとと帰りましょう」

沙織「京介氏……妄想の世界の住人になっておりますな……」

黒猫「本当にこういう所まで兄妹そっくりね……」

沙織「はは……ごもっともで」

989: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:16:30.00 ID:qb8o4Hly0
黒猫「ちょっとあなた、いつまでニヤけているのよ。 本当に通報するわよ」

京介「やめて! やめてくださいごめんなさい!!」

京介「……ん、ああ。 黒猫か……あやせかと思った」

びびった。 ていうか、黒猫とあやせが仲良くなり始めてから、なんだか二人が重なることが多いんだが……余計な影響を与え合っているんじゃないか、こいつら。

京介「つうかお前が変なことを言うからじゃねえかよ! キスしながら押し倒せとか!!」

990: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:17:06.20 ID:qb8o4Hly0
黒猫「キスについてはひと言も言ってないわよ……?」

京介「そ、そうだっけ?」

黒猫「そうよ」

京介「……とにかく! もっと違う方法にしようぜ! 皆に何かしてもらった方があいつも絶対喜ぶって!」

991: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:17:33.29 ID:qb8o4Hly0
沙織「ですな。 折角ですから、皆さんで何かをしたいというのには、同意見でござるよ」

黒猫「さすがに冗談よ……だけど、実はもう一つあるわ。 聞きたい?」

京介「……次変なことを言ったらお前の信用度は底辺まで落ちるからな」

黒猫「ふ。 心配ご無用ね。 わたしが提案するのは-----------」

992: ◆IWJezsAOw6 2013/07/31(水) 13:18:22.96 ID:qb8o4Hly0
結局、その黒猫の案は桐乃が喜びそうで、沙織はそれに賛同した。

俺はまあ……少し恥ずかしいのもあるが、あいつが喜ぶならそれはそれで良いわけだし、渋々だが賛同となったんだけど。

しかし、なあ。 でも決まった物は仕方ない。 桐乃にはクリスマスパーティだと言って、連れて行くとすることにしよう。

その日、俺は少しの期待と少しの不安と、多大な楽しさと、膨大な寂しさを感じながら……一人、アパートの一室へと帰って行った。


修学旅行 前編 終



次回 京介「おかえり」 桐乃「ただいま」 前編