前回 上条「ソードアート・オンラインか、やってみたいな」アルゴ「その5ナ」 前篇

361: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/10/26(日) 23:36:01.02 ID:KIJo6yPV0


5分も掛からずに吹き抜けに出る。
感覚からして島『トルトゥーガ』の中心部だと2人は考えた。それはあたってる。
その吹き抜けを上から下へ目線を下すと、戦ってるプレイヤーが2人。そう


キリト「ハアアアアアアアアアアア!!!!」


ケイタ「オオオオオオオオオオオオオ!!!!」


この2人だ。


番外個体「何あれ、キリトと…幹部?」

一方通行「だろォな」

番外個体「でも、キリトが押してるじゃん」

一方通行「そォ見えるか…」

番外個体「?」

一方通行「終わってるンだよ」


引用元: 上条「ソードアート・オンラインか、やってみたいな」アルゴ「その5ナ」 

 

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362: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/10/26(日) 23:37:11.10 ID:KIJo6yPV0


ケイタ「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


確かに、傍から見たらHPはキリトが上の様見える。
が、ケイタ事セフィロスが使うカタナ長刀『正宗』の属性、『サクリファイス』によって通常より多くなる。
現に、今繰り出してる『横水平切り』は、この逃げ場のない横から飛び出た結晶柱の上に居るキリトを確実に捉え


キリト「ノオッ!!?」


彼の腹部に切り傷を与える。赤く光る線が入ったキリトの体。それに伴いHPが減る。
バトル開始直後、この結晶柱に移動したケイタの作戦は当たりの様だ。キリトに近づける隙を与えない。
が、無論『サクリファイス』の影響で自身のHPも危うい。次に『平手撃ち』をキリトに喰らわせたら合い撃ちだろう。


キリト「そう言う事か…」


そして、その内を読み取ったかのように呟くキリト。
その言葉が聞こえたのか、聞こえてないのか、ケイタは『平手撃ち』の構えに入る。


ケイタ「これで終わりだ…」

キリト「あぁ…終わりだ」


363: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/10/26(日) 23:37:53.43 ID:KIJo6yPV0


先にキリトが動く。
逃げ場に少ない結晶柱の上、先に動く場合ほぼ賭けである。その賭けに


ケイタ「ハアアアアアアアアアアアアア!!!」

キリト「ッツ!?」


ケイタは的中させた。
ジャンプしたキリトの右肩に見事に命中する『正宗』、そのまま突き刺し彼のHPを0にし、自分もろとも死ぬはず。



…だった。

364: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/10/26(日) 23:43:27.99 ID:KIJo6yPV0


ペキン


ケイタ「へ?」


あの何とも言えない金属音を聞くまで。
生き残ってるプレイヤーのうち、何人が聞いたことがあるだろうか?そんなに多くないはずだ。武器が折れる瞬間の音など。
ましてや戦闘中に。その音聞いた場合、その場から逃げるか、あるいは死だ。
わざわざ、自身の攻撃を有利にするために逃げ場の少ない結晶柱に移動しての結果がこれだ。
しかも、折れた場所は先まで、キリトが掴んでた場所。ダメージを蓄積してた場所。
それは、ケイタの怠慢だったのかもしれない。
が、無情にも


キリト「…」


無言でスキルを発動しながらこちらに来るキリト。
この空中からの攻撃を避けるのは、今の彼には不可能だ。
彼の、右肩にキリトの『エリュシ・データ』が振れる。

365: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/10/26(日) 23:44:20.29 ID:KIJo6yPV0


次の瞬間、彼の目にする光景は帰りを待つ父と母の若かりし日だった。

そして、それぞれの両親の祖父母との出会い。

始めて褒められたこと。

始めて叱られた事。

始めて風邪ひいたこと。

始めて幼馴染に出会ったこと。

友達が出来た事。

ありとあらゆる、光景がフラッシュバックした。

その光景は、かつて見たアメリカ映画で男が命と引き換えに隕石から地球を救ったシーンの様だった。
走馬灯と言う奴だろうか?長い時間のように感じた。


366: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/10/26(日) 23:45:25.89 ID:KIJo6yPV0

気が付くと彼は柱から落下してた。下半身も無い。理解した。
彼はキリトに切り裂かれたのだろう。見上げるとキリトが見える、


ケイタ「見たくねぇんだよ…」


彼は独り言のようにつぶやき目を閉じた。そして


ケイタ「サチ…」


その1言を呟くと、彼は光の結晶となって消えた。


392: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/09(日) 22:24:00.88 ID:DhzBqisx0


一方通行「おィ」

番外個体「大丈夫、黒いの?」


数分も立たないうちに、一方通行と番外個体の2人がキリトの元に来る。
そこにはアイテム欄を開いたままで立ち尽くすキリト。


キリト「あぁ…」


声に生気がない。彼が戦っていた幹部を殺したことを確認してから2人は降りてきた。それは


一方通行「気にするな、慣れろ。…と言いたいが」

番外個体「前のギルドのメンバーだったんだっけ?」

キリト「うん」


彼をフォローするためだ。
理由はどうであれ、彼は初めての人殺しを経験した。しかも顔見知りを


キリト「…殺す気はなかったんだ」

一方通行「ア?」


何を甘ったれた事を言ってるのかと一方通行は思った。
彼と番外個体も見たが、あの太刀筋は間違いなく、殺意全開だった。


キリト「『還魂の聖晶石』で生き返らせて、力を見せつけたうえで説得しようと思ったんだ。…けど、アイテム欄に無くって。
今思い出したけど、この前整理した時に家に置いといたんだよな。…なんで、余計な事してるんだよ、俺。…都合よく考えてたんだな」


番外個体「うん、都合よく、甘ったれた考えだね。ミサカ、あほらしくてこれ以上聞いてられないよ」


彼の話をぶった切る番外個体。


393: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/09(日) 22:26:08.60 ID:DhzBqisx0


番外個体「どう考えても、その考えは甘ちゃんだよ。…黒いの、アナタは誰に言い訳してるの?」

キリト「俺は…」


この時、俺は解っていた。俺への言い訳だ。
あの時、俺は明確な殺意を込めてケイタを斬りかかり、手に掛けた。
それは、殺意全開のケイタに対抗するため、あの短時間で導き出した答えだった。
だが、その答えが正しかったのか、俺には


一方通行「悩んでも答えなンか出ねェよ。それに出す時間も無い。それだけだ」

番外個体「そう言う事、悩んでる時間も余裕も、今は無いことぐらいわかるでしょ?」

キリト「…ああ」


内心、この2人でありがたかった。
彼等のこの口調で俺は自分に鞭うてる。
俺は表情を作り一方通行達の方を向く


キリト「行こう、この先に通路がある。そこに行けば上に行ける。上条やPohもそこにいるよ」

番外個体「…そうだね」

一方通行「…なら結構」


一瞬の間、表情は変えてないが目で分かる。
ああ、SAOの感情再現ソフトの完成度に驚かされるのはよくある事だ。
…2人は歩きだし、俺を抜いて奥の通路へ歩き出した。その抜きざま


一方通行「オィ」


一方通行が俺に声をかけた


一方通行「本当に大丈夫なンだな?」


俺は彼に笑顔で答える。嘘の回答。


キリト「あぁ、大丈夫に決まってるだろ?」


そりゃ頬に涙が伝っていたら嘘だと直ぐに解る。
俺自身、涙が伝わる感触が頬に生暖かく感じる。
高性能なゲームだと、俺は改めて実感した。


一方通行「そうかァ…なら結構」


しかし、その事を触れることなく2人と共に俺は足を動かしだした。

ただ、この妙に冷めた言葉は、彼等の経験からなのかと思った。

割り切る事は大事だ。……辛い事だけど。


402: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 21:31:02.08 ID:Gh/GyUB70


うらやましかった


「おい!なにしてるんだよ!?」


なつかしかった


「また、けんかした」


2人といた時間


「オイ!―――缶けりしようぜ!!」


「大丈夫。一緒にあそぼ」


もどりたかった。



だけど


カダージュ「へああああああああああああああ!!」

浜面「ッツ!!」


無理だよな。


403: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 21:33:06.27 ID:Gh/GyUB70


浜面「ッツ!?」

カダージュ「どうしたァ?かくれんぼばっかで、お兄さん超飽きちゃったぞう?…」


物陰に隠れてる浜面。情報の少ない『弓』と言う遠距離武器に対して、正しい戦法だ。
先ほどと違い、破壊不可能の物なので壊される心配もない。が、カダージュが優勢なのは変わらない。


カダージュ「早く出てこいよ~超暇なんだよ~」


言葉に余裕を持たせて、まるで隠れ鬼の様に浜面を挑発するカダージュ。
実際、浜面はHPは高いが『バトル・ヒーリング』スキルは無く、回復アイテムも無いが、彼にはどちらもある。
この戦い、長期戦になればなるほど浜面に勝機は無くなるだろう。


カダージュ「おいおい。俺の女に手を出した罪、とかドヤ顔で言ってたのは何処の金髪ですかあ?超はったりですかァ?」

浜面「なら、御望みどおりにッ」

カダージュ「ッツ!?」


が、この状況、少なくともカダージュ自身は圧倒的有利とは思っていない。それはこの男の


浜面「ドオオオオオォォォォ!!!」


泥臭い根性による物なのかもしれない。

404: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 21:44:14.61 ID:Gh/GyUB70
腹の底からの叫び声と共にカダージュに斬りかかる浜面。
『ソニック・アロー』で受け止めるが、彼の力と気迫が合わさり通常よりも重く感じる。
『ソニック・アロー』は両端が刃になっており、『ダガー』のスキルが発動できるトリッキーな武器だ。
無論、弓矢のスキルも使える。この場合、『零距離』で『弓矢』のスキルを放つのもいいが


カダージュ(超残矢が!?)


そう、『弓矢』最大の弱点。それは『残矢』 、つまりは残りの弾数を気にしながら戦闘を進めなくてはいけない事だ。
そして、『ダガー』『弓』の両方を使える『ソニック・アロー』のデメリット、全てのスキル威力が半減がある。


浜面「弾数は、常に気にしながら戦うのが常識だぜぇ…女顔ォッ!!!」


彼の心を読んだかのように、更に力を入れ斬り込んだ浜面。
『ソニック・アロー』は破壊できなかったが、カダージュに太刀傷を負わせることは出来た。


カダージュ「ヌヴッ…調子にのんなッ!!」


彼はそのまま後退しながら、矢を2発放った。
1発目は牽制…と言うより斬られた直後なのでまともに照準も合わせられなかったが


カダージュ(マジか!?)


2発目は幸運にも浜面の顔面に命中コースだった。嬉しい誤算…だったが


浜面「よっ」

カダージュ「え!?」


その誤算は、嬉しくない誤算になった。
あろうことか、浜面は弓をまるで夏に跳ぶ蚊の様に握り掴んだのだ。
これには、後方にてカダージュと同じ武器『ソニック・アロー』で雑魚無双をしてた土御門も


土御門(うっそーん…)


驚愕の表情。


浜面「1回やってみたかったけど、案外簡単にできるんだな」

カダージュ(いや、超簡単って何だよ!?)


まるで、始めて逆上がりをして出来た時のような感想を口にしながら、掴んだ矢を投げ捨てる浜面。


浜面「さーて、いい加減にしたらどうだ?」


405: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 21:45:46.10 ID:Gh/GyUB70


カダージュ「ッツ!?」

浜面「俺は殺してもいいんだが、こっちの大将的にはお前らをなるべく拘束したいんだ。解るよな?で、滝壺の場所を言え」

カダージュ「…そうか」


浜面「こちら側の最大限の譲歩だ。
本来はお前をこの場でぶった切ってしまいたいが、冷静に考えれば、聞きたいことが山ほどあるしな。そして滝壺の場所を言え」


カダージュ(…あぁ。そうか)


彼はそう遠くない昔の記憶を思い出していた。
あの日、鴨川の河原で大喧嘩したあの日。親友と大喧嘩したあの日。デジャヴだろうか?
デジャヴだろう。それはこの男が似てるから、そして喧嘩の原因となった女が


浜面「滝壺は何処だァ!!」


この男の彼女に似てるから。

現実世界に残してきた親友2人に。

汚れすぎて、合わせる顔がない2人に。


カダージュ(ゴメンな…幸せになってくれよ)

406: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 21:47:28.05 ID:Gh/GyUB70


カダージュ「知るかァァァァァァァァ!!!!」


アバター全体を振るわせながら突っ込んでくるカダージュ。それはまさに


浜面「特攻かよ!?」


浜面の言葉も無理もない。
今のカダージュには余りにも隙が多く、自爆ともいうべきものだった。
その瞬間、浜面はカダージュと理解できない解り合えないと判断した、殺意全開で突っ込んでくるカダージュに浜面も全力で答える。


浜面「ッツ、オオオオオオオオオオオオ!!!!」


彼も走り出し、その叫びを空間に響かせながら。


407: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 21:49:39.11 ID:Gh/GyUB70


土御門「なんだ!?」


雑魚を片付け終えた所に響く剣劇音。
土御門は振り向くが、先程より浜面たちと離れてしまったため様子が解らない。


「つちみかど!!」


そんな中、女の声が響いて彼を呼ぶ。


土御門「滝壺か!?」

滝壺「うん」


ひょっこりと岩陰から顔を出す彼女。
走ってきたのか、肩で息をする彼女は不自然であった。


滝壺「はまづらは!?」


そして、真っ先に浜面の事を気にするところは彼女そのままだと、土御門は内心思った。


土御門「すぐそこだ。行けるか?」


滝壺「もちろん」


408: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 21:53:25.44 ID:Gh/GyUB70


土御門と滝壺が、浜面とカダージュが戦っていた空間にたどり着く。そこで見たのは


浜面「ふぅ…」


息を吐きながらゆっくりと納刀してる浜面と


カダージュ「…」


そこに立ち尽くしたカダージュだった。


土御門「何が…」

滝壺「…もしかして」


状況が理解できない土御門に対し、滝壺は理解してしまった様子だ。
そしてその答えを納刀し終え、冷めた表情で浜面が


浜面「…『九頭龍閃』」


そのスキル名を呟く。


次の瞬間、カダージュの頭、肩、胴、小手、膝等合わせて九つの場所がめり込み始めた束の間、アバターは九つに弾け飛んだ。


409: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 21:58:54.56 ID:Gh/GyUB70


カダージュの爆散する音を背中で聞き終えた浜面。
その顔は知る者が見たら、ロシアから帰還直前の時の表情そのままだろう。そう、知る者が見たら


滝壺「はまづら…」


その知る者の1人が声を掛ける。
そう、彼の大切な思い人。彼は振り返って己の目で確認する。


滝壺「大…丈夫?」

浜面「たきぃぃぃぃぃぃぃぃつぅぅぅぅぅぅぅぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


彼女の姿を確認した瞬間、彼は涙と鼻水を盛大にこぼしながら滝壺へ飛んで行った。比喩ではなく。
仮に、この光景を初春や佐天が見たら「白井さんみたい」とドン引きしながら例えてただろう。
先ほどまでの、自分の女の為に殺しあってた男は何処に行った?


浜面「大丈夫か?何もされてないか?AVみたいなことされてないか?汚されてないか?あ、俺が汚したんだ。
脅されてないか?元気か?宿題忘れてないか?結婚しないか?幸せ家族計画!子供作ろう!!無事か滝壺!?」


滝壺「お、おおぅお」

土御門「きもい」


心配してた気持ちがストレートに出て来たのか、とんでもない早口で支離滅裂な言葉を滝壺に送る浜面。
土御門がこぼした感想など、彼の耳に入ってないだろう。
そして、肝心な滝壺に至っては、その早口を処理できていない。


滝壺「はまづら。落ち着いて」

浜面「わん!」

土御門「えぇ…」


410: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 22:03:16.55 ID:Gh/GyUB70


さほど時間を掛けずに浜面は落ち着いた。そして、フレンド登録や、来ていたメッセの読み込み、アイテム装備関連を整えながら、滝壺はカダージュに拘束されてる間の話をした。


浜面「つー事は、マジで何もされてないと?」


滝壺「うん。むしろ高待遇だったよ?」

浜面「なんだよ…」


肩の力が抜けた。カダージュが言ってきた言葉を鵜呑みしてた浜面は、滝壺が上の階でエロ同人のような目にあわされてるのかと本気で心配してた。が、実際は謎の高待遇であった。ひょっとしたら、滝壺が浜面を心配させない為にウソをついてる可能性も十分に考慮されるが、彼女との付き合いがこの世界では1番長く、尚且つ特別大切な存在の浜面だからこそ分かる。彼女は嘘をついていない。そして、空気の読める土御門はその様子を浜面の態度で察した。そして思う


土御門「しかし、何故カダージュは滝壺を高待遇で拘束したんだ?
つか、話を聞くと、悩み相談を受けてたんだろ?自分語りを聞くだけの?」


滝壺「うん…」

浜面「で、その内容は何だったんだよ?」


彼女はカダージュとの会話の内容はほとんど話してなかった。
何故なら、あまりにも重くて不幸な事実だからだ。


滝壺(きぬはたと…兄妹だったなんて…)


そう、彼女がカダージュから聞いた、問われた話。
それは、彼が絹旗と双子の兄妹である可能性がある事だ。…いや、事実であろう
。彼女はカダージュに対し、生年月日、血液型などを問いた。それらは見事に絹旗最愛と一致したのだ。そ
して彼の顔、それは仮に絹旗が男だとしたら、そのまんまであろう顔だった。その声質も、何処となく絹旗に近い物だった。


浜面「…滝壺?」


黙り込んだ彼女を心配そうに覗く浜面。
彼女からしてみたら言えるわけがない。
同じ『アイテム』の仲間である絹旗の兄妹であった可能性のあるカダージュを殺したのは、彼女の大切な人である彼だ。が、


滝壺(言おう)


彼女は決心した。


411: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 22:06:29.86 ID:Gh/GyUB70

滝壺「はまづら…」

浜面「ん?」

滝壺「落ち着いて聞いてね?」

浜面「お、おう」

滝壺「………………………………………………………………かだーじゅって」

浜面「あの女顔が?」

滝壺「…………………………………………………………………きぬはたの…兄妹だったんだって」

土御門「なっつ!?」


驚愕する土御門。
同じ暗部だが別組織『グループ』に所属していた彼でも知っている。だが、当の浜面は


浜面「…なぁ?」


反応が違う。滝壺はこの後「嘘だろ?」みたいな反応を取ると思っていた。土御門もだ。
が、彼の反応は全く違う。…いや、アリエナイ言葉が返ってきた。


浜面「絹旗って…だれ?」

滝壺「え?」


ジョークか?いや、この状況で言う意味が無いし、先の言葉にジョークで返すのはあまりにも無神経すぎるし、
何より彼がジョークを言ってる素振りが何もなかった。純粋に聞いていた。

412: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/16(日) 22:10:19.86 ID:Gh/GyUB70



今思えば、私は御坂さん達の事を全て理解できてなかった
。一方的に、その時の状況『血盟騎士団、副団長』の立場を優先させたのだと思う。
あの時の決断を、私は未だに正しかったのか、わからない。
ただ、自分に弁解するなら、あの時私はこれしかない。と考える余裕しかなかなかった。
仮に御坂さん達の様に大切な後輩、親友と瓜二つの人物が目の前に敵対する形で出てきたらどうなるか?
残念だけど、SAOに居る時点での私には考えられなかった。
母親の言う通りに生き、結果を残し、学校でも周りの人たちとはある程度のコミュニケーションを取りつつも、
自分の中身をすべて出した事は無かった。
そう、SAOに閉じ込められて、キリト君、美琴さん、リズベット、上条君、ワーストさん。
私はこの世界で出逢った彼等のおかげで生まれて初めて自分を好きになれた。素直になれた。

だけど、ふと考えた事もあった。みんなと出逢ってなかったらどうなっていたか?
あの時、兄の『ナーヴギア』を使わなかったら、あの洞窟でキリト君に出逢っていなかったら。
どれも、納得いく答えが出なかった、出るはずも無かった。
けど、その1例はこの日、思わぬ形でその例に遭遇した。
いや、『SAOタイムス』本社を強襲した際に手に入れた情報で解ってたのかもしれない。どうなるかを。
その結果が目下にいたから。

その前に、その結果と戦うことになる私の友達に、事実を指摘されて動揺してる私の友達に。


「な、なんのこと?」

「とぼけないでッ!!」


激を飛ばした。空間を木霊する私は冷たい声で。

問いただされてる彼女の声は動揺を隠しきれてない。


「何で、今そんな事したの!?」

「そ、それは…」


言葉が詰まる。その答えは既に本人も解ってるからだ。そう


アスナ「答えてよ!御坂美琴さん!?」

御坂「ッツ!?」


美琴さんには。

何時思い返しても、この時の私はとても冷たくて嫌な人だったと思う。


だけど、その時の私は美琴さんの友人のアスナではなく。『血盟騎士団』副団長のとしてのアスナとしてだった。


422: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/30(日) 21:36:53.96 ID:r6gbFbuJ0


アジト中心部。
キリトがケイタと死闘を繰り広げた場所の下で、同じように『結晶柱』が生える空間にて、響く凛としたアスナの声。


佐天「ち、ちょっと、アスナさん」

アスナ「あなたもよ!?佐天さん!!」


その声は地上にて気絶したユフィを抱える佐天にも向けられる。
その声はいつもの友人としてのアスナの声ではない


アスナ「今の状況解ってるの!?」


『血盟騎士団』副団長としての声だ。


アスナ「…もう1回質問するわね」


そして、先程の問いをもう1回、御坂美琴へ投げつける。


アスナ「何で手を抜いてるの?」


この問いが、先程アスナの声が木霊した理由だ。


423: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/30(日) 21:38:36.51 ID:r6gbFbuJ0


御坂「だからどこを抜いてるのよ!?答え次第ならアスナさんでも」


アスナ「さっきの攻撃。『バーチカル』よね?何であのタイミングで発動させたの?おかしいよね?
何時もならいったん後退して『スイッチ』するのに」


御坂「そ、それは状況がたまたま」

アスナ「他にも、佐天さん。何であんなに大振りなガードなの?」

佐天「それは…この『ウータイ』から出る液体から守るために…」


トーンが落ちている。図星を突くべきか?


アスナ(…時間が惜しい)


突くことにした。しかし、それは不毛な衝突になるだけかもしれない。
だが、必要だと彼女は思った。それは、この世界での1年以上生き抜いてきた経験からである。そう、共に生き抜いてきた仲間だから。


アスナ「あなた達はユフィさんに、シライクロコさんを重ねてるだけ!
傷つけないようにできるだけ攻撃を避けて、スタンさせようとしている。違わない!?自分たちのエゴで!!」


御坂「違が」

アスナ「違わないよね!?」


美琴の反論の前に、ドスの効いた声で更に念押しするアスナ。
更に、視線でも美琴に釘指す。美琴も視線だけはやり返してるが、その瞳は正直だった。
だがそれ以上に、アスナの瞳には美琴以上に複雑な感情が折り重なっていた。


424: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/30(日) 21:40:14.50 ID:r6gbFbuJ0

御坂「…ルノヨ」


アスナ「何?大声で!?」

御坂「アスナさんに何が解るのよ!その娘は黒子に似ていて、声も同じなのよ!?」

アスナ「だから何なのよ!その子はシライクロコさんじゃないでしょ!?」

御坂「姿形、声まで一緒の人が目の前に現れてもアスナさんは動揺せずにいられるの!?親友そっくりの!?」


アスナ「そんなの居なかったわよ!!
今までに私に、私に居たのは…私に居たのは、お互いを…競争相手としか見ない人たちだけ!親友と言える人はいなかった!!
この世界であなた達に出逢うまで!!」


御坂「そんな…」

佐天「アスナさん…いきなり何を?」


彼女の唐突な自分の現実での話をされて動揺する2人。それもそうだ、あまりにも唐突過ぎる。
が、それは2人とアスナとの立場の違いから、そうギルドの違いからだ。何故なら


アスナ「…ねぇ、知ってる?今『血盟騎士団』で何人亡くなったか?」

御坂「へ?」


彼女の問いに2人は答えられるはずもない。
それは2人は『ヒーローズ』所属なのに対し、アスナは『血盟騎士団』所属だからだ。


アスナ「もう10人超えてるのよ…知ってる?アサヒやシキシマも…」

佐天「嘘!だって…って!?」


彼女の言葉で慌てて自身のフレンドリストを確認する佐天。
そこには間違いなく登録されてた『血盟騎士団』の2人、しかも隊長2人の名前が無かった。


アスナ「美琴さん。…あなたが最初に誘拐されたのは確かに不意打ちだったかもしれない。
…けど、けど!貴女が自分の持てる力を最大限に使わないと、被害は増えるだけなのよ!
今の私は確かに『血盟騎士団』として、副団長として言ってるから美琴さん達には受け入れられないかもしれない!
けど、あなたが彼女をシライクロコさんに重ねてる上で、そんな手を抜いてたら、多分、シライクロコさんは!」


「ものっそい、不機嫌になるやろうなぁ…。ウチみたいに」


425: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/30(日) 21:42:17.64 ID:r6gbFbuJ0


ゆらりと、薄暗い声が響く。そう、ユフィの声。彼女はゆらりと立ち上がる。
無論、傍にいた佐天は慌てて距離を離す。美琴やアスナが言い争いをしてる時間。
常識的に考えれば目が覚め、更に『ダメージ・ヒーリング』のスキルでHPも回復できる。


アスナ「あら、お早いわね。…で、何処から聞いてたの?」


が、それを狙ってたかのような態度のアスナ。
いや、狙っていたのだろう。


ユフィ「…最悪や」

アスナ「全部ね。…で、狸寝入りまでして、話を盗み聞いてた感想は?」

ユフィ「同じ言葉を2回も言わすきかいな?」

御坂「そう…よね」


美琴が呟く。考えてみたらそうだ。
仮に、黒子と美琴が敵対関係だとしてぶつかった場合、手を抜いたらどうなるか?黒子は気を悪くすることは目に見えている。
それはまるで、学園都市にて、部活の試合で自分より低いレベルの能力者、無能力者チームに手を抜いて挑むのと同じような事。
彼女はその様な事をしないように接してきた。が、結果はコレだ。


佐天「何してるんだろ…私」


同じように、ユフィよりも高レベルの佐天も自己嫌悪に走る。
彼女は現実にて、それは1番わかってた事だ。
『レベルによる絶対的な違い』、何より、美琴や黒子と会った時にはそれを意識してたのは佐天自身だ。


ユフィ「何でなん…」


立ち上がったが、力なく崩れ落ちるユフィ。
その声、態度にはやはり力がない。抵抗する意思、姿勢も。


426: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/30(日) 21:48:06.14 ID:r6gbFbuJ0


アスナ「…抵抗する意思は?」


近づいてきたアスナが高圧的にユフィに問う。
彼女はその問いに、しばらく俯き


ユフィ「…あらへん」


答えた。投降である。


アスナ「ならば、現時点で『血盟騎士団』副団長、アスナの名のもとに、ユフィ、貴女を拘束します。いいですね?」

ユフィ「ほな」


彼女は武装、それにギルドの所属も自力で解除していく。あまりに素直で不審に思う。
『血盟騎士団』副団長として、先程まで上から目線全開の態度だった彼女だが、ユフィの素直さに作っていた表情が崩れそうになる。


アスナ(なんで?…何を考えてるの!?)


そんな彼女にユフィは視線を送る。
アスナにとって経験した事ある、嫌な目線。


アスナ「ッツ!?」


理解して送ったのか、はたまた偶然なのか。
彼女達にユフィの真意は、今の時点では謎のままだった。


御坂「アスナさん?」

佐天「何したの!?」


アスナの表情の僅かな変化に直ぐに気が付くが


アスナ「…何でもない」


再び、彼女は副団長の表情に戻る。


ユフィ「それより、はよウチを早くあのガレオン船『インターセプター号』に連れてってーな。連行するんやろ?
…あ、ウチこれでも幹部やさかい、護衛3人の高レベルプレイヤーで言った方がええやろうなぁ。
自分ら、『回廊結晶』の類は数が少ないんやろ?」


引っかかる言葉。
なぜ、彼女は船の名前を知っているのか?何故、『回廊結晶』が少ないのを知ってるのか?
疑問に思うがここは置いておこう。何故ならば


ユフィ「時間、無いんやろ?余裕、無いんやろ?仲間がしんどるんやろ?急がな、あかんなぁ?副団長はん」


そう、先程アスナが言った通り、時間も余裕もない。


アスナ「…美琴さん、佐天さん」

佐天「…いいですよ」

御坂「やるわよ…」

427: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/30(日) 21:49:04.33 ID:r6gbFbuJ0


アスナは2人に彼女を『インターセプター号』まで送る間の護衛を頼んだ。しかし、煮え切らない。
まるでユフィの手の上で踊らされてる様だ。


御坂(仮に、黒子だったらこの状況でも諦めない。それは結標淡希の時もそうだった。…だったら何、この余裕?)


考えるが答えを導き出せない。佐天やアスナも表情を見る限り何かを考えてる。が、答えが出る雰囲気ではない。
ひょっとしたら…考えたくもないが、最近、黒子の事を思い出せなくなってるのに関係あるのか?


ふとその時、美琴は、アホな展開で彼女は認めたくないが、システム上結婚してしまった上条当麻のステータスを見る。


御坂(へ?)


見た瞬間、彼のHPは既にレッド、更には状態異常でもあった。
が次の瞬間、彼のHPは全回復した。


御坂「何が…」


素直な感情を、彼女は口に出してた。


428: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/11/30(日) 21:50:14.89 ID:r6gbFbuJ0


上条「ナッ!?」


そんな上条当麻だが、彼は絶句していた。何故ならば


ホウジョウ「グワッ!」


自分と会い見えてたホウジョウが、『ラフィン・コフィン』のNo.2のホウジョウが背中から攻撃されたからだ。
別に彼が強いから背中から不意打ちしかない、と言う訳でない。
彼は正直、上条から見てもかなり弱い。ユフィの方がよっぽど強い。
そう、彼位なら高レベルのプレイヤーなら堂々と倒せる。
そう

上条「なん…」

ホウジョウ「何で…何で、あなたが!?」

「何故?…そうだな」


この妖艶な七色の声質の持ち主なら尚更だ。
その主は、有るはずのない血液を振り払うかのように、大型のダガー『友切包丁』を振るう。
しかし解らない。


Poh「やはり、あなたの美的感覚と私の感覚、解り合えない。…いや、理解できないからだ」


『ラフィン・コフィン』ヘッド、Pohが何故、ホウジョウを攻撃したか。
その時の上条当麻には解らなかった。

いや、今の状況を正確に把握できる者は、この世界には1人しか居なかった。


436: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 21:56:59.19 ID:mEIuRVXj0


理解できない状況。彼は何度経験した事があるだろうか?
このゲームに閉じ込められて1年近く。そして、記憶を無くしてからの1年近く。
いや、あの日、病院のベットの上で目を覚ましてから上条当麻は何度、理解できない状況に遭遇しただろうか?
古い記憶だけでも、カエル顔の医者に告げられた自身の状況、自分が守ったらしい銀髪のシスター。
数えたら限がない。そう


ホウジョウ「言ってる意味が、解らッ!!?」


この男が斬りつけられながら叫んでる言葉を、彼も頭の中に多々浮かべる。何故ならば


Poh「先にも言った。私とあなた、価値観が全く違う。そうは思わないかね、カミジョウトウマ君?」


彼にも、この男の考え、行動が全く理解できないからだ。


437: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 21:58:47.18 ID:mEIuRVXj0
『ラフィン・コフィン』のヘッド、Pohと、
旧『神羅』のリーダーで現『ラフィン・コフィン』の幹部ホウジョウなら、上条はPohの方がかかわりは長い。
と言っても、友好関係ではなかったが。ホウジョウについては、先程まで戦いながら向こうの主張を聞いてた。
バトルセンスについては、とてもではないが上条の足元にも及ばない。
が、そこは『状態異常』を起こす武器では最強レベルの武器『バズビーズ・ソード』を所持してるだけの事はある。
HPをかなり削られたが、『イマジン・ブレイカー』で防具に関しては破壊した。


ホウジョウ「そもそも何故、何故彼に『治癒結晶』を使った!?
あと1歩、あと1歩で彼を倒し、この戦の流れを、大義を、我らの物に出来たと言うのに!?」


そう、彼ホウジョウをPohが背中から斬りつけホウジョウがよろけると、上条を治療したのだ。
これだけでも訳が分からない状況。HPは回復したが、まだ痺れが取れておらず言葉は出るが動けない。


上条(どうする、静観するか?いや、どう考えてもPohの一方的な戦いになる。けど、ホウジョウは)

Poh「助けようと言うのかね?この男を?」

上条「ナッ!?」


考えを読まれる。


Poh「…君は、目の前で助けを求めてる人間、助けが必要だと判断した人を助けられずにはいられないようだね。
優しい者だそう、彼と同じか」


上条「ハァ!?」


Pohの言葉に驚愕する上条。彼は何と言った?ホウジョウと同じ?自分が?ありえない。
正直、上条はここ数十分彼の目的を探るために、彼の攻撃を受けながら彼の言葉に耳を傾けていた。
が、とてもではないがホウジョウはかけ離れた存在だと現時点では思ってた。


ホウジョウ「その子供が、その少年が、私と根っこは同じだと言いたいのですかアナタは!?」

Poh「…少なくとも、私にはそう見える。彼が、若き力のある者なら、アナタは老いた力なき者だ」

ホウジョウ「それは『学園都市』と言う実験場にて、国家権力や知識欲に溺れた科学者たちの実験のはてのモルモットだから!!」


Poh「言ったであろう。私は、彼は他の学園都市の青年たちと違う物を感じる。
…この、電子の世界でもな。少なくともこの少年が今思う目的は叶えられるだろう。…この世界ではな」


背筋を舐められるような不思議な感覚に陥る上条。
Pohの声、雰囲気。7色の声とはよく言った物だ。
その七色の声を引き立たせるかのように、Pohは舞うようにホウジョウの攻撃を避ける。
その妖艶な舞は、剣の光も相まって、この男の底知れない狂気を表しているものだ。その踊りをPohは止める。


Poh「そして、私は同志への手向けの言葉を贈らなければならない…そして、彼に私の作品を見せてあげよぅ」

ホウジョウ「は?」

上条(何を言って…ッ!?)

438: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:04:09.12 ID:mEIuRVXj0


その時、上条は今更ながら気が付いた。ホウジョウの体には極細だが線が引かれてる。
赤黒く光る線、『太刀傷』だ。先までPohはホウジョウの攻撃を舞うように避けてた。
光る剣がその動きをより…光る剣


上条(スキルが発動してた!?でもホウジョウのHPは!?)


減っていない。
そう、彼は先ほどPohが後方から斬りつけられてから、彼の攻撃を喰らっていない。


ホウジョウ「こ、この線は!?」


ホウジョウも、気が付いたのか己の体を見回す。
だがその時、フードから僅かに見える口元は笑ってた。Pohが。


Poh「…イッツ・ショウ・タイム」


その口から放たれた言葉の直後、ホウジョウの体は弾けた。
…いや、分離したの方が正しいだろうか?


上条「…あッ」


そこにホウジョウ?は立っていた。
いや、ホウジョウと認識できる物が立っていた。
それにはしっかりと『Hojo』と表示されてるからだ。では何が立ってるのか?

赤黒く、光る人型の物。それはアバターを包丁などで丁寧に皮膚の部分を剥いたような物だ。


Poh「…どうかね?私の作品。この『スキル』を使って製作したのはアナタが初めてですよ、ホウジョウさん。
そして、観覧者第1号のカミジョウ君。是非とも感想を聞きたいね」


よほど自分の思い描いた作品が出来て上機嫌なのか、双方に感想を求める製作者のPoh。
だが、当事者のホウジョウは勿論、上条も答える事が出来なかった。理解の範疇を超えてるからだ。
外見の急変は勿論、HPも先までグリーンだったのが、レッドになってる。
この間、1分もかかってない。まさに一瞬。


Poh「ん?おっと、私としたことが、仕上げを忘れてた」


そして、彼は仕上げに入るために『友切包丁』を握る右手に力を入れた。


上条(アイツ!?)


この動きに上条は気が付くが、ホウジョウは気が付いてる様子は全くない。
おそらく、まだ頭の中の整理が出来てないのだろう。


上条「ヤッメェェェェ!!!」


叫びながら上条当麻は飛び出た。
この時、まだ『状態異常』は治って無かったのは誰もが知らない。
上条自身はホウジョウを完璧な芸術作品にしようと、仕上げを行おうとしてるPohを止める事だけしか考えてなかった。


439: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:06:10.24 ID:mEIuRVXj0


結果、作品は完成してしまった。

Pohの行った仕上は、ホウジョウのアバターの胸部に5連続切りにて、星の形を模した切り傷を入れる事だった。
それを見れたのはPohと上条だけであった。


上条「フェアッ!!!」


が、上条はその作品を凝視することなく、がむしゃらにPohに拳を向けた。


Poh「ふん…」


無論、スキルも何も発動させてない、がむしゃらな右ストレートを避けるのは容易い。
ふわりと後方にジャンプし、上条と距離を取る。
部屋に、ホウジョウの絶叫と彼を構成してたアバターの光が舞う。


440: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:08:16.13 ID:mEIuRVXj0


Poh「…少しは心に余裕を持たせられないのかね?素晴らしい芸術作品ではなかったか?」

上条「何が芸術作品だ!人を殺して…人が目の前で死んで心に余裕も何もあるわけねえだろ!!」


Poh「なぜかな?私は無様に生き遅れた彼を最高の芸術作品にしてあげたのだよ?
題名はそうだな…『スペクター・オブ・ソーシャリズム』どうかな?」


上条「ふざけてるのか!?」


Poh「ふざけて作り、人々を感動させるのも、また芸術作品の1つだ!!
ちなみに気に入らないのなら、腹案として『ファントム・レッド』もあるのだが?」


仮に高貴な芸術家が聞いたら、ブチ切れそうな事を言いながらPohが斬りかかってくる。
それをグローブ『ドラゴン・ナックル』の装甲部分で受け止める。
偶然なのか、それはキリトからこの第25層で受け取った物だ。そのグローブで受け止める


上条「グウッ!?」


が、その長年付き添ってきた相棒から聞こえる嫌な音。それは


上条「あっ!?」

Poh「ふん。長い間強化してきた君の芸術品みたいだが、所詮、私の芸術感性の前では追いつかないと言う事だ!!」


『武器破壊』。彼のグローブ、『ドラゴン・ナックル』は砕けてしまった。


441: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:09:21.47 ID:mEIuRVXj0

Poh「ふふっ」


そんな中、Pohが嬉しそうに息を漏らす。


上条「な、何なんだよ!?」


ストレートに思いをぶつける。


Poh「うれしい、嬉しいのだよ。私はこの世界で深く知りたかった人物が3人いる。そう、3人だ」


興奮の抑えきれないのか、先よりも歯切れのいい口調で『友切包丁』を振り回しながら喋る。
が、そこには薬物中毒者のような下品な感じはない。


Poh「1人は君、もう1人は剣士、そして最後1人は創造主」

上条「創造主!?」

Poh「ほう、流石に剣士は誰か解るか。…が、解るはずだ。創造主の名も」

上条「……茅場…晶彦」

Poh「Exactly」


442: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:10:54.78 ID:mEIuRVXj0


上条「なんで…何でだよ!?少なくとも剣士はお前らは関わりあるはずだろうが!!」

Poh「…君は、彼がどこにいるのか知らないのかね?」

上条「当たり前だろ!!いたら俺は」

Poh「残念だよ」


がその言葉を境に、彼のテンションは先の興奮状態が無くなっていく。
興ざめしたように。いや、興ざめしたのだろう。
彼は、上条当麻にとある行動を求めていたのだろう。そして、その行動を見届けようとしたのだろう。そう、とある知識があれば。
が、彼にその知識があるように思えない。無知を装ってるふうにも思えない。そんな彼が次に言った言葉は。


Poh「不幸だよ」


皮肉にも、上条当麻の口癖だった。


443: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:13:27.42 ID:mEIuRVXj0


Poh「不幸だよ。まさか、私の作品となったホウジョウ君の考えが、私の求める作品に1番近かったとは…」

上条「おい!自分で納得してるな!!訳分かんねえよ!!」

Poh「君の、君たちの全ての理解を求めてない。そう、彼の…彼が求めた『天使の世界の革命』と同じようにね!」

上条「何がしたいんだよ!そんな訳の分かんないのに『ラフィン・コフィン』のメンバーを巻き込んだのかよ!?」


Poh「そうだ!彼、ホウジョウに関してはそうだ。
『神羅』に共感した者達を『この世界を新たに生きる世界として決意した者達を守り抜く』と言う、
綺麗ごとで仲間を集め洗脳した、解るか!?」


上条「お前らと同じじゃねえか!?」


Poh「違う。違うよ。…そう、我らの『ゲームを愉しみ殺すことはプレイヤーに与えられた権利』とは全く違う。
我らは権利を主張しただけで、彼等の様に『革命』を求めた物ではない」


上条「『革命』!?」


Poh「そう『革命』だ。彼は、現実で生きてる時から『革命』を求めた。
この国を平等で平和な世界を目指すための『革命』を!が、現実はそれを拒否した。
それに絶望し、世捨て人の様に生きてきたようだがな。…なぜ、私が彼の『革命』を話してるのかな、ここまで気持ちを込めて」


上条「…お前は、その『革命』をどう思ったんだよ?」


Poh「時代遅れの、頑固者の考えだ。…少なくとも、今を生きる人間には古い。それだけだ
。……随分、認めたくない格好だが、君とも話せたな」


上条「は!?」

Poh「お別れだ」


彼はその言葉を言うと、ゆっくりと『友切包丁』を向けた。それと同じように叫び声が聞こえてきた。


「おおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


その声は、Pohが会いたかった男の、剣士の叫び声。

黒の剣士の声。


その声に、上条とPohは直ぐに反応した。

多くのプレイヤーが雄叫びを上げるときは突進してくるときだ。
無論、キリトも突進して来てる。声のトーンで分かる。だからPohは『友切包丁』を動かしガードの体制に入った。
上条は動揺した、彼がカウンターに巻き込まれるのではないかと。


それは無駄な心配だったと、結果論で言えた。


444: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:17:47.04 ID:mEIuRVXj0


2人の予想通り、声の主はキリトで


キリト「ゼアアアアアアアアアアアアアア!!」


剣を突き刺して突進してきた。そしてPohの『友切包丁』でガードされた。


Poh(フッ)

上条(アッ)


『友切包丁』にガードされた剣が2人の視界に入る、黒い剣先、彼の愛刀『エリュシ・データ』だ。

この時、2人とも思った。キリトがカウンターを喰らうと。そう、そう思った。銀の、鉄の刃先が見えるまで。


Poh(な!?)


それに気が付いたのはPohだった。ガードしたはずなのにHPが減り、斬られてる。

二刀流で無ければあるはずのない剣先、剣。

だが、現に切られてる。斬られてるのだ。2個目の剣で。


キリト「ヘアッ!!」


キリトはPohの左肩を切断した。


上条「キリト!?」


その動きに反応できた上条がキリトに声を掛けるが


キリト「わり、答える時間がもったいない」


詳しくはその時には答えなかった。
次の瞬間、彼は星の様に早く思い16連続の攻撃をPohに叩き込んでいたからだ。そう、『二刀流』の。


445: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:19:48.99 ID:mEIuRVXj0


『二刀流』そう、このSAOにて誰もが憧れるスキルで、あるはずがないと思われてたスキル。
そう、あるはずがないと思われてた『スキル』。だが


キリト「はぁ、はぁ、はぁっつ」


目の前の黒の剣士は何をした?両手に持つ剣を其々光らせスキルを発動し、Pohを斬ったではないか?


上条「お、お前?」


キリト「ハア、ハァハァハァ、ッツッヲ!」


嗚咽のような声を出すキリト。それが、彼が今行ったスキルについてけない事を表してる。
そして、嘘のように彼が左手に装備していた剣が耐久出来なくて消滅する。
そう、耐久率では現在の所『アインクラッド』最高と言われた『バスターソード』が。


Poh「ナッ…なにを」


そして、そのスキルを喰らった男が黒の剣士に問う。


Poh「何を・・したあ?」

キリト「…俺にも、今はまだ解ってないんだよ。……だけど、だけど!!」


残った剣『エリュシ・データ』をPohに向け剣士は叫ぶ。


キリト「お前に聞くことは決まってる!!!ケイタ…セフィロス、サチの事だ!!」


凛とした声に表情、それに似合わない怒りと憎悪に満ちた眼で問いただすキリト。


Poh「…答えよう。だが、ここではない。この世界ではない。電子の世界でない」

上条「なら、俺の問いに応えろ!お前は、お前は何がしたいんだ!?」


感情全開の問いに対し


Poh「…その答えはカミジョウトウマ君、君には言えぬ。黒の剣士に、今後答えよう。今は」


言葉の途中で彼はキリトが飛び出してきた通路の方を見る。そこからは、男女の声が聞こえる。


「ゴラァ黒いの!!ミサカの『バスター・ソード』パクって何し飛んじゃァ!?」

「少しはこっちの事を考えろや、三ン下がァ!!」

「アナタの方が下だろうがァ!!」

「ンだとォ!?」


痴話喧嘩の様に聞こえるがこれでも援軍だ。そして。


Poh「私は表舞台から消えるとしよう。そう、表から。…いや、戻るのか?どちらにせよ、カミジョウ君とは二度と会う事は無い」

446: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:21:03.28 ID:mEIuRVXj0

上条「ちょっと待て!?」

キリト「どういう事だ!?」


彼等の疑問に、答えぬままPohは話を進める。しかし、それは何とも言えない方向だった。


Poh「その代り、私からのお詫びはこれだ」


そう言うと、彼は『アイテム欄』からとある物を実体化させた。


Poh「『アルティマ・ウェポン』。この島の支配の為に必要な両手剣だ」

上条「は!?」


唐突な行動に動けない2人。


Poh「そして」


彼は自身のネーム欄を巨大化させる。


Poh「私の答えはこれだ!」


彼の答え。それは直ぐに解った。それは彼の所属してたギルドマークの消失。すなわち


Poh「『ラフィン・コフィン』の解散だ」


なのだが展開が速すぎる。ついて行けない。


Poh「ではまた」


キリト「おい!?」


畳みかけるように、Pohは持っていたアイテムを発動させた。『転移結晶』


447: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/07(日) 22:23:30.54 ID:mEIuRVXj0


一方通行「ヒーロー、キリトォ!!」

番外個体「Pohは!?」


彼等の問いに応えられる者がいるか?


上条「いや…」

キリト「わかんねぇよ。本当に、何が何だか……教えてくれよ。何なんだよ、何なんだよォォォォォ!!!!」


そこに響いたのはその場に居た者全員の思いだろう、黒の剣士が叫んだのは。
しかし、言えることがある。『ラフィン・コフィン』の反乱はこの時に終わりを迎えた。



納得できる者など、皆無であった。

461: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/23(火) 21:25:41.82 ID:ZgabYjBS0


上条当麻は思い出していた。
ここまでスッキリしない戦いはあったかだろうか?
敵対する相手が明確に死亡した例は、左方のテッラがいた。ホウジョウもそうなるだろう。何処から整理すればいいか?


土御門「カミヤン!!」

上条「ほ!?」

土御門「ほ!?じゃねーよ。ほ、じゃ。…耳がバグったかにゃ~?」

キリト「少なくとも、コイツはさっき『治癒結晶』つかってるよ」


視界に土御門とキリトが入る。現在、彼等がいるのは『インターセプター号』の甲板。でその船は今まさに


番外個体「ちょっと野武士面、ぶつかるって!!」

クライン「しょうがねーだろ、船操縦するの生きててこれが2回目だぞ。無茶言うなよ!」


ヒースクリフ「いや、ここまで来たら後はシステムのアシストでオートでやってくれる。
アクセラレータ君、岸壁に居るエギル君たちに縄を」


一方通行「へいへィ…チンピラァ!!」

浜面「あいよッ!!」


第25層『フィッシャーマンズ・ホライズン』の北部の港に接岸するところだった。


エギル「受け取ったぞ。ここに結べばいいのか?」

浜面「光ってる場所に持ってけだってさ」

リズベット「…普通、こういうのは男の役目だろ?重くないけどさ」



462: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/23(火) 21:27:53.68 ID:ZgabYjBS0


接岸すると上条とキリトはヒースクリフに呼ばれる。


上条「…何だよ?」

ヒースクリフ「フフッ、役目だよ。お互い『ギルド』の長としてのね?」

キリト「俺はギルドには属してねえぞ?」

ヒースクリフ「でも、君は今回の『英雄』の1人であることは間違いない」

キリト「『英雄?』…何かの間違いだろ。俺は」


その言葉の続きは上条にも予測できた。『人殺し』。
確かに、彼はセフィロスこと『ケイタ』を含め複数人を殺したのは事実だ。
上条はその場にいなかったが、明らかに雰囲気が違うのは合流した時から感じていた。


ヒースクリフ「だからだよ」

キリト「は!?」

ヒースクリフ「君はヤル事が出来た。それだけでも『英雄』だよ。ねえ、カミジョウ君?」

上条「ッツ!?」

一方通行「おィ!降りれるぞ」


そこに舷梯を接続させたことを伝える声が響く。
上条は内心、タイミング的によかったと思った。
一方通行の声が無かったらヒースクリフの胸倉をとっ掴まえてたところだ。


ヒースクリフ「悩む事もあるだろう、言いたい事もあるだろう。が、この場は素直に歓喜の声を受け止めようではないか?」

キリト「歓喜…の声?」

ヒースクリフ「おや?君たちがよく使う表現なら『耳がバグった』だったかな?聞こえないかね?」


そう、先程から聞こえる


ヒースクリフ「恐怖から…『ラフィン・コフィン』と言う名の恐怖から解放された人々の声だよ」


それはヒースクリフたちが降り立つ前から聞こえてた声。
『歓声』だ。何処から噂を聞いたのか、夕闇が明るくなり始める時間に多くのプレイヤーが港に詰めかけていた。
凱旋とはまさにこの事だろう。その多くのプレイヤーの声は彼等をたたえる物だ。
中には楽器を出し、歌い始めたり踊りだす者や花火を打ち上げてる者もいる。そんな中を彼ら討伐組は歩いて行く。
それだけ、『ラフィン・コフィン』の存在は多くの者に恐怖と閉塞感を与えてたのだろう。
そして、帰還した英雄たちに次々と声が送られる。知人がいたら尚更だ


463: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/23(火) 21:30:27.56 ID:ZgabYjBS0


佐天「初春ーーっ」

初春「佐天さん!!御無事で!!御坂さんも!!滝壺さんも!!」

御坂「うん、何とかね…」

アルゴ「…本当カ?」

滝壺「心配かけて、ごめんね。ういはる、しりか、りずべっと、あるご」

シリカ「本当ですよ!心配…心配したんですよ!!」

リズ「泣かないの。喜ぶところでしょ?」

シリカ「うれし泣きです!!ピナも泣いてるんです!!」

初春「だからピナちゃんにお花食べるのやめさせてくださいよ~」

滝壺「ふふっ。帰ってきた感じがする」

佐天「そうですね~初春のパンツを見たら元気が出てきましたよ~」


そこで何を思ったのか、初春のパンツをめくる佐天。
…いや、いつもの事だが場所が場所だ。
先にも言ったが、ここには彼等『討伐組』の帰還を祝うために多くのプレイヤーがいる。
同じ討伐組の4隊長の生き残りヤマトとヤマザクラ、クライン率いる『風林火山』のメンバーはボタボタと鼻血を垂らしてる。
…うん、彼女たちにはいつもの事だ。
それでも、一応文句を言おうと振り返り


初春「ちょっ、佐天さん何やって!?」


が、そこで見たのは佐天のHPが回復してるところだった。


初春「なんで!?」


佐天「ふふん。これが私が習得した『ユニークスキル』よ、初春。
初春のパンツを見ることで私は急速にHPを回復することができる。そう、その名も『初春のオパンツ――』」


御坂「いや、単に『回復結晶』つかってもらっただけでしょ?滝壺さんに」

佐天「ちょ、御坂さんネタバレするの早や――」

初春「なーんだ」

リズ「つか、リコさんもルイの悪乗りに乗らなくてもいいじゃないですか?」


滝壺「大丈夫。このくだりはさっき船で私が考えた」

シリカ「…何が大丈夫なのか、私にはさっぱりです」

アルゴ「おう、安心しロ。オネーさんもさっぱりダ。(…無理してるナー)」


この様に、明るく答える『討伐組』の面々だが、何処となく無理してる感はあった。
浮かない表情してるから。そして、明らかに人数が減っているから。



464: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/23(火) 21:33:23.37 ID:ZgabYjBS0


出迎えてくれた人々の輪を抜けると、『討伐組』の面々はいったん第55層の『血盟騎士団』本部へ向かった。そこで今後の事を決める会議。


ヒースクリフ「さて、今後の事だが、眠いだろうが聞いてくれるかな?2つ今のうちに」


流石に時間が時間で、更にあの激戦の後だ。無理もない。


ヒースクリフ「…まず1つ、今後のフロア攻略については大幅に予定を修正する必要がある。ので、私は少しの間の休息を提案しよう」


少しの間の休息。これが意味することが直ぐにこの場にいる者には理解できた。
それはフロア攻略の休止。


ヒースクリフ「反論があるのなら是非とも言ってほしい。無論、立場は気にしない」


最初に口を開いたのは『風林火山』のクラインだった。


クライン「反論もクソもねえよ。確かにあんた等『血盟騎士団』は今回の討伐で1番被害が出てて、直ちに戦力に影響が出るレベルだ。
そう言いたいのも理解できる。が、攻略組は俺達だけじゃない。
エギル達もいるし、何より『聖龍連合』が聞いたら我先に攻略するぜ?レアアイテム独占できるしな」


彼の見解は正しい。
レアアイテムの為ならオレンジになる事も辞さない『聖龍連合』が聞いたらどう出るか?火を見るより早いだろう。
だが、クラインの発言で理解力の速い2人がヒースクリフの意図に気が付く。


キリト「…なるほど。だから、ここにいる面子でいったん話を纏め、その案を『聖龍連合』にその提案を持ちこむ。こういう事だろ?」

一方通行「で、断れば俺達が武器を片手にご質問に参ります。ってか?」


ヒースクリフ「理解が速くて助かるよキリト君、アクセラレータ君。
無論この案にこの場にいる者が賛同してくれたら、『聖龍連合』には私がこの案を持ちこもう」


一方通行「ご丁寧な恫喝だなァ」

ヒースクリフ「何とでも言ってくれ。…あぁ、君には」

一方通行「『ジェノヴァ』とやらのシャブ中みたいな奴らのケアに解析。って所かァ?」

ヒースクリフ「助かるよ。…で、君たち『ヒーローズ』の見解は?」

浜面「だとよ、大将」

一方通行「俺らの意見は、ヒーロの意見でイィ」

上条「…反対する理由もないし、俺達もそれに賛同だ」

土御門「正直、ウチもボロボロだしな。良い機会だろ」

浜面「…お嬢、ヤバそうな顔してるもんな」


零れるように呟く浜面。が同時に彼を心配する視線がある事に気が付いてない。
それは1つはサングラス越しに、もう一つは何時も見てるからだ。


滝壺「…」


465: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/23(火) 21:35:26.11 ID:ZgabYjBS0


ヒースクリフ「もう1つは…アスナ君」

アスナ「…はい」


ヒースクリフ言われ、アスナが何故か手錠をはめられてるフードをかぶった『血盟騎士団』の女性団員を前に連れてくる。
そして、ヤマトが同じような格好の『血盟騎士団』を連れてくる。こちらは男。其々前に連れてくる。
気のせいか、先程まで目蓋の重そうだった者達の姿勢がよくなる。
…いや、殺気全開になる。アスナの小さな合図と共にフードを捲る。


ヒースクリフ「さて、知っての通り、今回我々は『ラフィン・コフィン』の幹部8人のうち3人を捕縛することに成功した。
残り4人は死亡、1人Pohに関しては行方をくらました。そして、この2名は幹部『ユフィ』と『ザザ』である。間違いないかね?」


裁判官が被告人に生年月日を問うかのようにユフィとザザに問う。2人に抵抗する様子は見られない。


ヒースクリフ「…沈黙は肯定とさせていただこう。皆も知ってる通り、幹部2人だがこの様にして連れてきたのには理由がある。それは」

上条「先に言っとく」


会話の途中で話を切る上条。


上条「俺達はその案には乗らない」

ヒースクリフ「ほう…」

佐天「ちょ!?」

浜面「流石に聞こうぜ、大将!?」

アスナ「え!?」


無論、この3人と同じように驚く者が大半だ。が、何人か理解できる、できた者は


一方通行「まァそうなるな」

番外個体「そうだよね~」

土御門「カミヤン解ってるぜい」

浜面「え、なにが?」

滝壺「はまづらはだまってて」

キリト「…理解できた自分が嫌になるよ」

クライン「な、なあ?自己完結しないで教えてくれよ!?」


理解できない1同代表のクラインの問いに


御坂「簡単よ…」


美琴が応える。


466: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/23(火) 21:36:46.77 ID:ZgabYjBS0


御坂「けじめをつけさせるのよ」

佐天「けじめって…まさか!?」

御坂「…古くから、争いの後の相手側の大将や側近の末路。処刑よ」

アスナ「処刑って…ウソですよね、団長?」

ヒースクリフ「…いや、間違っていないよ。私はそう考えてたからね」


『処刑』その言葉をあっさりと認めたヒースクリフ。まるで既定路線の様に


ヒースクリフ「そもそも、彼らはカミジョウ君、ミコト君、私、そして、君の首を狙っていたのだよ?
ならば、同じことを彼等がされないと思っていたのかね?」


アスナ「で、ですが?」


土御門「この手の主義主張を掲げた集団は、指導者が死ぬと下手に神格化してたちが悪いぜい。
それに、ウチのギルドはカミヤンが言った通り全員が反対だぜい」


佐天「そ、そうですよ!」

番外個体「アナタもそうなの?」

一方通行「…さっき言ったろ。俺の意見は上条と同じだと」

番外個体「ふーん…(ヒーロさんの名前ちゃっかし呼んでるし)」

御坂「まさかこの不機嫌そうな雰囲気で、私が賛成だと思わないわよね?」

ヒースクリフ「なるほどな。では、クライン君達『風林火山』は、どうかね?」


467: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/23(火) 21:38:00.43 ID:ZgabYjBS0


クライン「は、反対に決まってるだろ!確かに、俺達はあの戦いの中でいっぱい切ったし、…ぶっちゃけ殺しもしたよ。
けどさ、それは…なんて言うか…自衛だったじゃないか。
そうしないと俺達も死んでたし、何より他のプレイヤーの命も危なかったかもしれないんだぜ?
それに…考えたくないけど、立場ひっくり返したらこいつ等だってある意味自衛だろ?」


キリト「俺も同じ意見だ。あの戦場で、きっかけは何であれ生きるためには双方斬るしかなかった。
殺されそうなら、殺す気で…。そうしないと、止められなかったんだ。止められなかったんだよ…。」


苦虫を噛み潰したかのような顔でフォローするキリト。
正直、彼はあの時、Pohと接触した時なのを思ったか?
『月夜の黒猫団』、サチの仇を前に何を思ったか?
仮に、3日前にあの島に突入してたら彼は間違いなく『ラフィン・コフィン』メンバーを選別することなく、切り殺してただろう。
そう、そこに『月夜の黒猫団』のケイタがいることを知る前だったら。身内が居なかったら。


468: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2014/12/23(火) 21:40:48.46 ID:ZgabYjBS0


ヤマト「自分は賛成です」

浜面「ちょ!?」

アスナ「ヤマト!!」

ヤマト「おかしいですか、アスナ様?俺おかしいですか!?」


4隊長の生き残り2番隊隊長ヤマトが吠えるように反論する。
そう、今まで感情を抑えてきたのだろう。


ヤマト「俺なんでシキシマやアサヒの仇を警護しなくちゃなんないんですか!おかしくないっすか!コイツは」

アスナ「抑えなさい!!自身を」

ヤマザクラ「落ち着けヤマト!!」


彼を羽交い絞めるように押さえつけるヤマザクラ。
他の団員達も過激な発言の罵声をザザ達に浴びせ始める。
特に、シキシマとアサヒが指揮してた1番隊と3番隊が


ヤマト「アスナ様は悲しくないんですか、悔しくないんですか!
シキシマ達の無残な最期を、アサヒの最期を!悲しくないんですか!悔しくないんですか!?」


アスナ「悔しいに決まっているでしょ!!」

ヤマト「ならこいつ等を――」

ザザ「…シキシマ~アサヒ~」

ユフィ「ん、どないしたん?」


そんなのどこ吹く風、自分の世界に入り、口笛の様にシキシマとアサヒの名前を呟く。


ザザ「あぁ、『ジェノヴァ』に、食われた、2人か」

ヤマト「そうだよ!!お前らの気持ち悪い鰻野郎に――」

ザザ「あの時の顔、ヘッドに見せたら、何点、貰えた、かな」


煽ってるのか、天然なのか。ただ言えるのはこの場にいた者の琴線に触れたのは確かだ。
そして、次の瞬間。ザザは壁に激突していた。そう


土御門「悪いにゃ~こいつら含め、シキシマとアサヒは俺達の弟子みたいなもんなんだぜい。わかったか、ガキ」

浜面「弟子の面汚されるのは、いい気がしねえからな…解ってるよな?」


この2人だ。それもそうだ。偶然なのか、必然なのか、『血盟騎士団』が結成されて、
初めて『ヒーローズ』の面々と友好的になったのはシキシマ達4人で、1番親しくしてたのはこの2人だった。
そして、第25層フロアボス討伐後、2人に話しかけてきたのは、シキシマとアサヒ。


キリト「…ヒースクリフ。今日はもう開こう。この状況で決断するのは無理だ」


彼の意見に反対意見は無く。皆、首を縦に振る。


ヒースクリフ「その様だな。…では、後日、この件について決めよう。この2人は本部の倉庫を監獄代わりにしてくれたまえ。
…監視は、アスナ君とアクセラレータ君でいいかね?」


アスナ「…はい」

一方通行「へいへィ」


これにて会議は終了した。だが、『ザザ』と『ユフィ』の処遇を決める会議は開かれなかった。

480: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 15:49:46.00 ID:BVxDzmnx0


第55層・カフェ


キリトと上条は会議の後、早朝からもやっているカフェ&バーに朝食に来ていた。
第55層の雰囲気がどことなくドイツ風だからか、店内は朝食に来ているNPCで溢れており、茹で上がったヴルストの臭いが食欲を誘う。

普段なら。


キリト「眠くて食欲ねえよ…」

上条「なら寝ろよ」

キリト「その言葉カウンターで返すよ」


身体のだるさが残る中、口にザワークラフトと農夫の朝食を運ぶ。


キリト「納得いかないんだよ」

上条「そりゃ俺もだよ。…つか、Pohの件から話が進み過ぎて訳分かんねえよ」

キリト「うーん…」


するとキリトは自身の『アイテム欄』から紙とペンを出す。


キリト「本当は一方通行がいたらいいけど…とにかく整理しよう。時系列順に箇条書きしていく」

上条「ちょっと上条さん的に気に食わない事言ってたけど。それに対しては賛成だな。すんませーん!ビール」

キリト「こんな時間から飲むのかよ。あ、俺白ビールな」


481: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 15:53:49.04 ID:BVxDzmnx0


酒を飲みながらであるが、彼等は流今までの流れをまとめ始めた。
彼等の箇条書きを見てみよう。


◎Pohが消息を絶ち、『ラフィン・コフィン』が解散すると多くのメンバーは武器を地に落とし、投降した。
この時数名が逃走するも、多くは何の反抗もせず『監獄エリア』まで送られる。


◎ただし、洗脳状態である『ジェノヴァ』だけは攻撃をし続け、彼等を操れる『ザザ』は投降するも『ジェノヴァ』を停止させるのを拒否。


◎結果、『血盟騎士団』を中心に死者を出しながらも『ジェノヴァ』を拘束。『ジェノヴァ』に関しては『血盟騎士団』本部に送られる。


◎『フィッシャーマンズ・ホライズン』へ凱旋。直ぐに『血盟騎士団』本部へ移動。


◎先の会議。当分の攻略は延期を決定。『ザザ』『ユフィ』の処遇は未定。



上条「で、今になると」

キリト「だな」


482: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 15:54:45.57 ID:BVxDzmnx0


一連の流れを書き終えると同時にジョッキを飲み終える2人。


キリト「改めて書くとあっさりしてるな…」

上条「あぁ。納得できない奴が多いのも分かるよ」

キリト「で、ミコトやアスナ達は本部に残って警護と監視」

上条「『ジェノヴァ』と『ザザ』達のな。…で、暇になったお前と上条さんがこうやって飲んでると」

キリト「クラインや土御門、ヤマトもな。尤も、最後の1人は『頭冷やせ』って意味だろうけど」

上条「つか、エギルの店に行くとか言ってたけど、やってるのか?」


キリト「アイツは結構早くから店開いてるし、アルゴやシリカ達がいるってさっき連絡あったから大丈夫だろ。
…それにあいつ等も話聞きたいだろうし。納得はしないだろうけど。あ、どもー」


キリトが話し終えると同時にNPCが2杯目のビールを持ってくる。
調子がいいのか、勢いよく飲んでも酒がまわってる感じはない。むしろ冴えて来てる。


キリト「なあ?」

上条「ん?」

キリト「Pohってどんな奴だったと思う?」


483: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 15:55:39.99 ID:BVxDzmnx0


アスナ「それを私に聞くの!?」

ユフィ「せや」


同じような質問を『血盟騎士団本部』の1室で問われてた。
ただしこれは『ラフィン・コフィン』の幹部から、『血盟騎士団』幹部への質問。


アスナ「馬鹿にしてるの?」

ユフィ「してへんし、する必要があらへん。今現在はな。後、具体的に頼むわ」


正直言って質問もPohも意味不明、と即答したいアスナ。
現在彼女は捕縛した『ユフィ』に対して食事を与えていた。
マッシュポテトと玉ねぎのスープの簡単な粗食。


アスナ「…多分、第5層で遭遇した時から変わってないわよ?
『何考えてるか解らない』『気味悪い美声』。仮に狂気と言う名の銅像があるとしたらあのままでしょうね」


ユフィ「なんや、ウチと同じ感想かいな」


零す様に笑うユフィ。その笑い仕草は何処となく上品で、思い出したくない懐かしさだとアスナは思った。


アスナ「アナタ、一応『ラフィン・コフィン』の」


ユフィ「『幹部』や。けどな、ウチが忠誠を誓ったのは『ホウジョウ様』だけや。
絶望の淵から、死のうと思っていた時に救ってくれた生きる希望をくれた『ホウジョウ様』だけや!」


だんだんと口調が荒く熱くなるユフィ。だが、その話を聞いてアスナは


アスナ(やっぱり…)


484: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 15:56:52.29 ID:BVxDzmnx0


一方通行「似てるか…やっぱお前もそう思うか」

ザザ「気づく奴は、気づく。ここの、副団長と、あのツインテ、どっちも、似ている」

一方通行「隠しきれない上品さがなァ」


同じく本部内の部屋でアスナ達と同じような状況の一方通行にザザ。ただ、こちらの会話の内容はアスナとユフィが似ていると言う話題。


ザザ「俺は、アイツが、苦手、だった。
何でも、積極的に、参加して、教員、からも、評判が、よくて、自分で、何も、決めたことが、無かった、ような、奴。
親の、敷いた、レールの、上を、走ってる、だけの、奴」


一方通行「で、このデスゲームでそれらがパーになり、ある種刹那的で自暴自棄になって所をホウジョウと接触して自分を再構築した。
結果は言うまでもないがな」


485: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 15:58:23.64 ID:BVxDzmnx0


ユフィ「せやから見たかったんや、ホウジョウ様の隣に立ってこの城の『城主』の座を奪い取り、この世界で生きることを!」

アスナ「だからって、意見の対立する人たちを次々に襲っても、それは」

ユフィ「憎しみの連鎖?ふん、そないな事解りきってた事。…けどな、それをわかった上での行動や、分かるやろ?自分も」

アスナ「分からないわよ!少なくとも、あなた達がやろうとしてた『革命』と言う言葉を最大限に利用した『殺人』よ!!」


ユフィ「それはPohたち『ラフィン・コフィン』の連中や!
ウチ等は違う、この世界で新たに生きて行くことにしたんや!
それを『討伐』と言う名の言葉を最大限に使ってウチラを弾圧したのは、自分ら『攻略組』やろが!!」


アスナ「…ッ」

ユフィ「…言い過ぎた。すまんな」


お互いに、拳が出そうになった所でブレーキを掛ける。
無論、本当は1発でも入れたいが。手を出したら止まらないだろう。お互いに。


ユフィ「…ただな」


が、ユフィはどうしても伝えたいことを彼女に伝える。それはなぜか?
感覚としか言いようがない。遠くを見るように、彼女は話し出す。


ユフィ「ウチも含め、現実世界に帰ることが正解とは思えないんや。分かるか?」

アスナ「…分からないわよ」


ユフィ「…ウチは、なんとなく察しが付くやろが、家柄的にも上、エリートコースに位かなアカン。けど、もう無理や。
この時期に1年以上学校に行かないのはどういう意味か、アンタでもアンタ以外でも解るやろ?学校だけやない、会社でも何でも。
…そして、現実世界に絶望したウチを含めた人々。
それらの人々が絶望から希望への道標がホウジョウ様であり、『この世界を新たに生きる世界として決意した者達を守り抜く』と言う言葉。
そして、それを実現するための力、それが『神羅』。
そしてその力は名を変え『ラフィン・コフィン』になった」


言いたいことは解る。だが、


アスナ「…まるっきり子供のダダコネよ。そんなの、怒られるのが嫌な子供が理由をつけて逃げるだけじゃないの」


素直な感情がアスナの口から零れた。
が、それがユフィの琴線に触れた事は言うまでも無かった。


486: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 15:59:28.06 ID:BVxDzmnx0


一方通行「ンあ?」


ザザ「ベット、から落ちて、暴れ始めた、かな?」

一方通行「ハッ、それこそ子供じゃねェか」


隣の部屋から聞こえた物音に反応するザザと、ケタケタと笑いながらコーヒーを入れる一方通行。
アスナ達とは違い、こちらには緊迫感はない。と言うより、ザザは明らかに抵抗する意思がない。
まるで『処刑』を望んでるかのように、死に対して全くの恐怖感がない。
いや、何かを知ってるかのように。が、彼が何を知ったかは、一方通行は薄々感ずいてる。


ザザ「…不思議に、思った」

一方通行「ア?」


ザザ「アクセラレータ。お前は、俺達の、処刑に、真っ先に、賛成すると、思った。
だが、お前は、反対の、立場を、取った。いや、むしろ、処刑に、賛成、だと思った。
ここに、運ばれてくる、途中、ヤマト、とか言う奴が、言ってた。
『ジョニー・ブラック』を捕縛、したのは、オマエ、だと。何故、殺さなかった?」


一方通行「…現実であのチビに聞け。オマエラはどうせ、現実でも交友関係できそうだしな。
それに、俺が懸念してた事はあの金髪グラサンが言ったことだけだ。
テメェみたいな生え抜きの『ラフィン・コフィン』連中ならともかく、
『旧神羅』の連中は下手に『処刑』したら、テメェ等を神格化しそうな勢いと危なさがある。それだけだ」


ザザ「すごいね。ジョニー・ブラックが、憧れてた、だけ、あるよ。けど、それに、納得する、人間の方が、少ないよ」


一方通行「それは、この現状も含めてもな」


487: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:01:18.33 ID:BVxDzmnx0


リズ「あたしだって、考えたけどいやだもん」

土御門「まあ、そうなるにゃ~」


一方、第50層アルゲードのエギルが営む店には、リズや土御門、初春にアルゴ、シリカにヤマト、クラインがいる。
ここまでの経緯を説明しようとしたのだが、感情的になってつヤマトの愚痴と思い出話をさんざん聞かされ、
当の本人は酒に酔って寝ていて、朝まで頑張ったシリカも疲れたのか寝てしまって、何か気になったアルゴもどこか行ってしまった。


エギル「ここまでこじれた話しになるとはなあ…」

クライン「仕方ねえよ。仮にも人間同士での最大の戦闘だろ?今の所」

土御門「だにゃ~。今の所最大で最悪な戦いだぜい」

リズ「今の所、じゃなくて二度とゴメンよ。参加するしないにしても友達があんなところで戦うなんて、待つ方も正気じゃないわよ」

エギル「だな。…まあ、参加しなかった俺が言うのもあれだが」

クライン「エギルは自分の価値観に従ったんだ。誰も責めねえよ。それに、あんなの参加しない方がいいんだよ。よかったんだよ…」


声を小さくしながら、スコッチを飲むクライン。その言葉には今現在のクラインの気持ちが入ってるのかもしれない。現在瓶5本目。


エギル「飲み過ぎだ。いくらSAOだからと言って体に悪いぞ」

クライン「イイじゃねえかよ。…忘れたいんだよ」

エギル「忘れたいってなぁ…」


クライン「分かってるよ。本当は忘れちゃいけないんだろうけど、俺はもう思い出したくないんだよ…なんか、夢に出そうでさ。
…俺なんかはまだいい方だけどよ、そこでぐーすか寝てるヤマト、キリトにアスナやミコトの方が辛い筈だしな。
特にキリトは…斬った相手が相手だ。何ともない方がおかしい」


リズ「知り合い…だったんだっけ?」


土御門「ああ。だが、詳しい事はまだ知らん。本人も言わないし、何よりこれを聞いたのは、近くにいた一方通行と番外個体からだからな。
2人も直接聞いたわけじゃない」

488: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:16:53.17 ID:BVxDzmnx0


沈黙する。正直、今現在は話すことしかできず、結論を導き出すには情報が明らかに足りないのだ。
無論、それは『討伐』に参加してないエギルやリズベットにとっては更に答えを出せるはずがない。
が、逆に言えば参加してないからこそ気が付く疑問もあったりする。


リズ「ん!!おかわり!!」

エギル「お、おう」


それは、今エールを一気飲みし、おかわりを頼んだ少女からだった


リズ「ねえ?」

土御門「ん?」


リズ「私なりに話を整理してたんだけどさ、
『ラフィン・コフィン』ってのは元からの『ラフコフ』と『神羅』ってのが合わさって『ラフィン・コフィン』になったんだよね?」


クライン「そうだな」


リズ「で、『ラフコフ』はPohが率いていて『ゲームを愉しみ殺すことはプレイヤーに与えられた権利』とか言ってて、
『神羅』はホウジョウが率いていて『この世界を新たに生きる世界として決意した者達を守り抜く』って言ってたんでしょ?」


土御門「そうだぜい」


リズ「けど、ツッチーの言い分だと後者のホウジョウは建前で、本当は『革命』を起こしたかったと?これ本当?」


土御門「直接聞いたのはカミヤンだが、間違いないと思っていい。
『討伐』以前の情報から推測したり、現実での奴の思想は『革命』しか求めていなかった生粋の過激派テロリストだ」


リズ「ならさ、Pohにも本音があるんじゃないの?本当にやりたいことが」


489: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:19:37.93 ID:BVxDzmnx0


浜面「やりたい事だあ?」

アルゴ「ああ、何か心当たりないカ?」


同じころ、第25層の激戦の地『トルトゥーガ』にて何かを探すプレイヤー4人の姿があった。
浜面、アルゴ、初春に番外個体だ。彼女達は何故、この地に戻ってきたのか?


初春「それが『トルトゥーガ』に戻ってきたことと何か関係あるんですか?」

アルゴ「ある…いや、あってほしくないんダ。それの確認ナ」


喋りながらも『トルトゥーガ』の『ラフコフアジト痕』を捜索する4人。
ここにいるのは、アルゴの感で何か良くない物を感じたから。根拠なんてない。


番外個体「次が、ミサカがいた階だけど、本当に最上階じゃなくていいの?」

アルゴ「ああ、奴の性格ダ…」

浜面「おいおい、それがPohがやりたかった事とどう関係があるんだよ!?」

アルゴ「…本当に物わかり悪いナ。だから再開してからリコリンの機嫌が悪いんじゃないカ?」

浜面「んだと!?」


アルゴ「ホウジョウが『神羅』を作るにあたっての大義は『この世界を新たに生きる世界として決意した者達を守り抜く』
と言ったが、実際は自身の願望の『革命』の為」


番外個体「ショボイおっさんの戯言だったけどね。ギャッハ☆」

アルゴ「で、Pohは『ゲームを愉しみ殺すことはプレイヤーに与えられた権利』を元に『ラフコフ』を作り上げた。もう分かるナ?」

浜面「…奴の本音。だとすると!?」

アルゴ「アァ。カミジョウが言ってたよナ?奴がホウジョウを斬った後、何か名前を付けたってナ」

初春「芸術作品…でも、それは直ぐに」

アルゴ「アバターは消えた。けどこの考え、…イヤ、これは前にもあったよナ?ハル。だからルイを連れてこなかったんだヨ」


初春「…それって」


そう、そうだ。彼女達は最初に遭遇した時の事を忘れてる。イヤ、忘れようとしてたのかもしれない。
かつて第5層のヨラバタイ樹の元で、Pohの一行に襲われた時、奴は佐天を嬲るように切り刻んだ。
その時、彼はとても楽しそうだと、のちに佐天は語ってた。そう、まるで彫刻を掘るかのように。
思い出しただけでも、背筋が凍るような記憶。初春の顔が曇る。


アルゴ「すまないナ」

初春「…いえ。でも、それが」

番外個体「当たってたみたいだね。この部屋」


490: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:20:41.38 ID:BVxDzmnx0


探索してて番外個体が覗き込んだ部屋。そこに入る。
長方形の部屋でそこまで大きくなく、学校等の部室部屋の様だ。
其々の辺に戸が閉めてある窓がある。


浜面「…んだよ、コレ」


そこには『石』や『木材』で出来た彫刻に、『絵画』が飾られてた。よく言えば『アトリエ』。だが、


アルゴ「とても、趣味がいいとは言えないナ」


そこにあるのは人の彫刻や絵画であるが、人と言っても穏やかな表情の物は1つも無い。
とてもではないが、まともな人間なら最初に来るのは嫌悪感しかないだろう。異質な部屋。


番外個体「全部『憤怒』の感情か『絶望』に満ちた物だね。まるで死ぬ瞬間みたい♪」

浜面「ってか、そうだろうな」

初春「っつ」

浜面「大丈夫か、お嬢ちゃん?」

初春「えぇ…」

アルゴ「仕方ないヨ。オレッチだっていい気分はしないサ」


アルゴの言う通り、この部屋にある物を見て嫌悪感を抱かない物がいるとしたら、それはこの部屋の持ち主と誓い感受性を持つことになる。
そう、Pohと同じ。


491: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:21:52.89 ID:BVxDzmnx0


暫く部屋を検索すると気が付く。


番外個体「これらって、独立した作品じゃないんだ」

アルゴ「そうみたいだナ。いや、独立した作品でもあるナ」


部屋にある彫刻や絵画。
それらは1つ1つが褒めたくはないが、1つの作品として立派な完成系だ。


浜面「俺の気のせいじゃないのか。重ねてみると違った見方がするよな?」

初春「浜面さんが言うなら、私の勘違いじゃないようですね」

アルゴ「だナ」

番外個体「うん」

浜面「オイコラ」


馬鹿にしたように浜面を弄るが、実際そうであるから仕方ない。
少女の泣き叫ぶ木彫りの彫刻を後ろの泣き叫ぶ男の絵画と重ねると、それは切り刻まれて命乞いをする男女の姿になる。
不思議としか言いようがない。…いや、奇怪としか言いようがない。


492: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:23:07.61 ID:BVxDzmnx0


3分もしないうちに。


アルゴ「…戻ろうカ」


彼女達は部屋を出て、戻る事にした。収穫が無かったのではない。
これ以上いるとPohと同じような精神面に落ちてしまいそうだからだ。
だが


浜面「ちょっと待ってくれ!」


この男は納得いかないようだ。


アルゴ「なんだヨ!!なんか引っかかるのカ!?」

浜面「ああ、そうだよ!引っかかるんだよ!!」

番外個体「チンピラさんの気のせいじゃないの?」

初春「…窓開けてみません?」


浜面の疑問に初春が乗る。彼女も心残りがあった方。
誰の同意も取らず、初春は窓の1つを開く。


493: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:24:43.05 ID:BVxDzmnx0


アルゴ「これは…」


閉ざされた窓が開き、光が入る部屋。そこに浮かんだ光と影は、そこにいた者達の身近な人物の表情を浮かべる


番外個体「アータン?ガチギレの?」

浜面「だな…」


開いた窓から取り入れられた光源によって、反対側に浮かぶ影絵。
それは間違いなく『憤怒』の表情のアスナだった。言うなれば、『光のカラクリ』



アルゴ「何で…いや、必然?」

初春「ワーストさん!!こっちを閉めますので、反対側の窓を!!」

番外個体「分かった!もちろん、『記録結晶』で記録でしょ?」


初春はそれに頷くと、それぞれが動く。そして反対側の窓を開くと


初春「やっぱりキリトさん…」


そこには『憤怒』の感情全開のキリトの顔。
正直、影絵でここまで再現できるのかと思う。
影に重なった絵画が、アスナ、キリトの其々の『憤怒』の表情をより強調させる。
だが


浜面「まだ」

アルゴ「足りないナ」


2人の意見に初春と番外個体は頷く。それらは絵としては素晴らしい完成系だった。
だが、何かが足りない。そう、何かが。


浜面「俺…解ったかも。Pohがやりたかった事…残りのカラクリも」


494: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:25:35.85 ID:BVxDzmnx0


上条「なんだよ、解ったって!?」

キリト「Pohがやりたかった事だよ!!」


男たちが第55層の鉄の道を走る。


上条「だから何だって!!?」


キリト「全部奴の掌の上だったんだよ!!
『ラフィン・コフィン』を解散することも、幹部が何人か捕まる事も、俺達がそいつらの『処刑』に悩む事も!!」


正直、ここまでの理解力について行けない上条。つい1分前に店を飛び出してこの状況だ。
『血盟騎士団本部』へ急ぎ、鉄でできた道を金属音を響かせながら走る2人。


キリト「やりたかった事…じゃない。見たかった事だ!!」

上条「何をだよ!?」

キリト「顔だよ!!」

上条「は!?」

キリト「顔、表情だよ!奴は表情を見たかったんだよ!!アイツの」


495: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:27:43.57 ID:BVxDzmnx0


浜面「これで…」

番外個体「何なんさ?」


部屋の中心部にあった作品をを番外個体達にに手伝ってもらい移動させた浜面。
彼女達にはさっぱりだったが


浜面「よしっ。お嬢ちゃん、そこの窓開けて」

初春「は、はい!」

アルゴ「何なんだヨ?」

浜面「分かる。はらな?」


そこには先ほどと同一人物、アスナの影絵が浮かぶが表情は『憤怒』ではない。どちらかと言えば


番外個体「『絶望』…」

初春「あ、この顔!?」

アルゴ「あぁ、見たことあるナ。しかもこの層でナ」


そのアスナの表情。
それはかつて彼女を賭けた『デュエル』にて、『ヒーローズ』が惨敗した時、彼女が『降参』と叫んだ時の表情だった。

496: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:29:06.80 ID:BVxDzmnx0


ヤマザクラ「悪いな、警備に付き合わせて…」

「いえ…」


ヤマザクラは『本部』の入り口近くを部下と共に警備してた。それは本来、彼がやる仕事ではないが。


ヤマザクラ「イイじゃないか?みんなが疲れてる時こそ、上官が働くもんだろ?」

「ですね…けど、隊長は?」

ヤマザクラ「俺は大丈夫だよ!大丈夫だよ…うん」

「全く大丈夫に見えません」


この兵士が言った通りだ。どんな素人が見ても、彼が無理してるのは解りきってる。


ヤマザクラ「俺が無理するのは当たり前なんだよ。…なんて言うか、上司?
だからな。みんなで頑張らないと、アサヒとシキシマがいないんだ。だから、俺らで引っ張らないと」


そこにあるのは、上司と部下の光景だけであった。が、それは


「いずれ、君を壊すよ?」


その通りなのだが、問題は声の主が主だ。その玉虫色の声。


ヤマザクラ「ッツ!?」


振り返るとそこには居た。そう、現在『討伐組』が追ってる男。
それが、まさかの『血盟騎士団本部』正門前に、その男は現れた。


497: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:29:45.08 ID:BVxDzmnx0


ヤマザクラ「おい!お前は――」


逃げろ。そう言いたかった。ヤマザクラはそう思った。だが言えない。何故なら


「『逃げろ』って、叫ぶと大きな口が開きますよね…」


彼の口に一緒にいた『血盟騎士団』団員の剣が入ってるから。


「甘いんですよッ!!」


その剣がそのままヤマザクラの体を斬る。
その流れに、突然の来訪者であるPohは賞賛を送る。彼の名前と共に。


Poh「全く、素晴らしい太刀筋だよ。…クラディール君」


クラディール「それほどでも…自分はこいつ等があまり好きではなかったですから。あの脳筋集団と共に…」


498: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/04(日) 16:30:40.38 ID:BVxDzmnx0


ヤマザクラ(おま!?)


クラディール「裏切った?違いますよ。自分はあの女を手に入れたいだけですよ。邪魔者を排除してね…」


あの女。それが誰か分かる。わざわざ『血盟騎士団』に入って、も手に入れたい女。
ヤマザクラ自身もその女性を尊敬してる。
だからこそ、この場を一刻も早く離れ、彼女や他の団員に伝えなければならない。


Poh「心配しなくてもいい。私は、既に彼女の欲しいものを獲てる。私の狙いも女だが、彼とは被らない…」


が、この殺人鬼の目的はヤマザクラの思った女、『アスナ』ではない。


Poh「科学の…電気の姫。…彼女の『絶望』した顔が見たいと、私の芸術感性が疼くのだよ」


彼の心を読み取ったかのような言葉を発しながら、この狂気の芸術家は赤黒く光る『友切包丁』を彼に見せつける。
こんなのを眺めてるのなら、早くこの場から離れなくては。がそれが出来ない。
麻痺の状態異常。クラディールの剣に何か仕込んでいたのか?
それらの答えは出なかった。


Poh「ふふっ。君の表情も、なかなかいい物だよ」


Pohが彼の表情を気に入った時、ヤマザクラは絶命してたからだ。
しかし、それを『狂気の芸術家』が知る事は無かった。
そんなのお構いなしに、彼は10数年前に流行った曲の流行曲の鼻歌を歌いながら建物内部に入る。

512: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:14:16.02 ID:TIbt7NlP0


佐天「アスナさん!アスナさん!!」


乱暴に戸を叩く佐天。後方には『血盟騎士団団員』が何人かいる。


ヒースクリフ「何事かね、騒々しい…」


そこへ、隣の一方通行とザザがいる部屋からヒースクリフが出てくる。


「団長、侵入者です!」


団員の1人が報告する。
表情こそ変えてないが、動揺するヒースクリフ。


ヒースクリフ「確か、門の守りはヤマザクラ君のはずだったが…」

佐天「ヤマザクラさんは…」


悲痛そうに事態を伝えようとする佐天。その目頭には液体が浮かんでる。
この空気を感じ取れないほどヒースクリフは鈍感ではない。


ヒースクリフ「みなまで言わなくていい…。私の部下の為に流してくれた涙、無駄にはしない」

御坂「おーい!!」


そこに、他の団員を引き連れた美琴と


アスナ「何があったの!?」


部屋から出てきたアスナと、この本部に居る強者がそろった。


513: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:15:00.58 ID:TIbt7NlP0


事態を説明しあう。ここまでPohを見たのは負傷したクラディールだけだ。
が、ヤマザクラが死んだのはネーム欄から確認できる。


ヒースクリフ「…本来、このゲームのシステム上このような事は起こりえない筈だが、現に起きてしまってる。
兎にも角にも、この事態の打開だ。作戦はアスナ君の指示」


アスナ「…解りました」

ヒースクリフ「ミコト君達には、今回は私達の配下に下ってほしい」

御坂「解ってるわ」

ヒースクリフ「で、だが――」


作戦を説明しようとした時、響く音。
その音に、皆が注目する理由を説明する必要は無いのではないのだろうか。


514: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:15:30.17 ID:TIbt7NlP0


佐天「指パッチン?」

アスナ「だよね…」


『血盟騎士団本部』内部に響く指音に動揺する一同。余裕と挑発の念が込められた、指音。


ヒースクリフ「どうやら、彼は誘い出してる様だね」

アスナ「ッツ!行動は『3人1組の探索型』、団長と2番隊ランサー7人はこの部屋前で待機!」


慣れたように指示するアスナ。
『3人1組の探索型』とは、入り組んで見通しの効かないダンジョンなどで、分散して探索する際の陣形。


515: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:16:38.36 ID:TIbt7NlP0


『鉄の街・グランサム』そこに聳える『血盟騎士団本部』の城。
街の雰囲気に合わさった重厚な内装が、最強ギルドの本部に相応しかったが。


御坂「いざとなると厄介ものね」

アスナ「見栄で決めなければよかった」


重厚な雰囲気を醸し出すための光源の少なさが、どこにいるか解らない『狂気の芸術家』への警戒心を増大させる。
無論Pohが『索敵』スキルで探せない事もあるが。


佐天「またッ!?」


時折響く、指音が更に見えない彼への警戒心を増大させる。
彼女達は先ほどの階の2つ上を探索してる。
指音がするたびにその音源へ急行するが、空振りか他の団員達と鉢合わせるだけ。


アスナ「こっち!!」


しかし、確実にこの建物内に居る。
『ラフィン・コフィン』のリーダーにして、『アイングラット』の殺人鬼Pohが。その事を1番感じてるのは。


御坂「こっちよ!!」


彼女だった。


佐天「またですか!?」

アスナ「何もなってないのに!?」


が、美琴が言う方向からは何の音も聞こえない。無論、空振りばかりなのだが。


御坂「こっちなのよ、とにかく!!」


何故か彼女は自信たっぷりだ。


御坂(なんなの?この感覚。ねっとりするような嫌悪感。全方向から温いヘドロを叩きつけられるよう。視線!?)


彼女もこの感覚に戸惑ってる。仮に、ストーカーの被害に遭うとしたらこんな感じだろう。
しかし、彼女が思った『視線』はあながち間違っては無い。
『狂気の芸術家』の欲求を満たしたい思いが混ざり込んだ視線は、彼がこの建物に入り込んでから常に美琴に向けられてるのだから。


516: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:17:53.87 ID:TIbt7NlP0


「アスナ様!!」

アスナ「いた!?」

「いえ…」


10分もかからないで本部内の検索は終わるが、Pohを発見できてない。1同は本部玄関に集まる。


佐天「赤い影とかは見るんだけど…」

アスナ「ワザと見せてるのね。おちょくってるのよ」

佐天「そう言えばユフィさんは?」


ふと思ったことを聞く佐天。


アスナ「縛ってきた。…あまり言いたくないけど、彼女と解り合う事は無理だと思う」

佐天「え?」

「なぁ、団長たちと連絡取れたか?」

「いや?」


何気ない会話から気が付く。ここ10分近く、ヒースクリフ達と連絡が取れてない。


アスナ「あれ、御坂さんは!?」

佐天「へ!?」


更に、美琴の姿が見えない事にも気が付く。


517: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:18:43.13 ID:TIbt7NlP0


御坂「気になる…」


1人美琴は、アスナと佐天から別れ、先程のユフィ達を拘束してる部屋へ向かってた。
その前にはヒースクリフ達がいるはずで、そこの角を曲がればいるはずだ


御坂「なっ!?」


しかし、そこには確かにヒースクリフ達はいた。倒れた状態で。


御坂「ちょっと、しっかりしなさいよ!!」


慌てて駆け寄る。HPはイエローだが、死んでる者はいない。


ヒースクリフ「ウッ…」


かろうじて、ヒースクリフだけが意識があるようだ。
この状況、最強と言われるプレイヤーがこの状況。


ヒースクリフ「奴は…」


振り絞った力で指差すヒースクリフ。そこはユフィが軟禁されてる部屋。
美琴は、勢いに任せて扉を開ける。


518: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:20:11.95 ID:TIbt7NlP0


部屋には赤黒いポンチョを被った男が1人いた。そう、1人だけ。が、この部屋は何だ?
そう、『ラフィン・コフィン』の幹部、『血染めのユフィ』を拘束してた部屋だ。
この騒ぎが始まる前はアスナも監視要員としていたが、部屋を出たのは美琴も知ってる。
ならばユフィが縛られていなくてはならない。そう、彼女の大切な後輩にそっくりなユフィが。
しかし、この部屋には先に述べた通り、ポンチョを被り右腕にダガーを持った男しかいない。
その答えは何なのか?この男、Pohは何をしたのか?
それを問い質す事は無い。
何故なら、彼女の頭の中で何か弾け、美琴はこいつに体当たりしたからだ。


519: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:21:22.71 ID:TIbt7NlP0


上条「みんな!!」

キリト「何か起きてる…よな!?」

アスナ「キリト君、上条君!」


同じ頃、上条とキリトが本部に着く。彼等が予想してた事が現実になったと改めて認識し


上条「御坂は!?」

佐天「ちょっと目を離した隙に。あと、ヤマザクラさんが…」

キリト「なん…だと…」


そして、予想してたよりも最悪な状況だと確信する。更に


「アスナ様ァァァァァ!!!団長達がァァァァァ!!!!!!」

アスナ「エッ!?」

上条「嘘だろ、ヒースクリフもやられたのか!?」


ヒースクリフの様子を見に行った数人のうちの1人が会談を叫びながら駆け下りてくる。
その報告にその場にいた全員が動揺し、ネーム欄を確認する。
死んではいないが、無事とも考えにくい。


キリト「今度は!?」


続けて聞こえるガラスの割れる音。それは外からだ。
砕け散ったガラス片が地面に叩きつけられるのと同じタイミングで何かも地面に叩きつけられる。
人だ。しかも2人。


アスナ「Poh!?」


1人は侵入者であるPohであるのに対し


佐天「御坂さん!?」


もう1人は美琴であった。


520: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:22:49.10 ID:TIbt7NlP0


叩きつけられた?いや、叩きつけた、の方が正しい表現だろう。
何故なら、それは彼女の次の行動が物語ってるからだ。


御坂「ハッ!!」

Poh「ッ!?」


『狂気の芸術家』に馬乗りしながら、彼女は特にHPを気にする仕草も無くPohの顔を殴りつけた。
『体術』のスキルが発動してる訳でもない、がむしゃらな拳が殺人鬼の顔面に入る。
無論、それが1発で終わるわけもなく


御坂「アア!アアッ…ゼアッ!!」


短く叫びながらも何発も拳を叩きつける。
フードで表情が分からないPohに対し、美琴の顔ははっきりと分からないが雰囲気である程度予測ができる。
いい意味で男前、と言われる少女の爽やかな顔つきは見る影もない。
彼女の雰囲気に、上条と佐天を含む取り巻きはただただ驚き、たじろぐしかなかった。


アスナ「何してるの!みんなPohが逃げないように取り囲んで!!」

キリト「最低でも3mは距離を取れ!!」


そんな中でも、この2人は『血盟騎士団』の団員に指示を出す。
状況が把握できなくても、最低限やるべき事『Pohの捕縛』は達成しなければ。
美琴とPohの動きを注視しながら、2人を囲んでいく団員達。
だが、そんな事を気にしない、いや気が付いてないのか、美琴の拳は止まらない。
止めようとしない。誰も止めることができない。


521: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:24:31.70 ID:TIbt7NlP0


御坂「ウアッ!!!」


重い拳がPohの顔面にまた入る。
彼女は感情的であるが、冷静に、確実に、顔面の弱点を殴りつける。
無論、それは現実での話で、SAOで、ましてやスキルの発動しない拳などほぼ意味が無い。
そう、HPを削ることなどレベルが高かろうが意味が無い。
そう、HP的には無為だ。だが


Poh「ッツ」


精神的には意味がある。この時、Pohは美琴の拳を避けた。
その動きは『恐怖心』による物だとその場にいたプレイヤーは全員が思った。


御坂「ぐうッ!!」


彼女の拳は無論そのまま地に叩きつけられ


上条「拳と腕が砕けた!?」


力強く地面を殴りつけられた彼女の拳と腕は、まるで骨が飛び出たかのように破損する『部位破損状態』になる。
改めて『SAO』の世界に感謝するデフォルメされた生々しい表現。
しかし、Pohが美琴の拳を避けたからこのような事態になる


キリト「そっちに行ったぞ!!」


美琴の拳を避けるのと同時に、転がるように離れようとするPoh。
足元がつたないのは、やはり顔面を何回も殴打された影響からだろうか?
この男にも、恐怖を感じることがあるのだろうか?


御坂「逃がさなッ」

上条「落ち着け御坂!」

アスナ「美琴さん、冷静になって!」

御坂「放せッ」


殴りかかろうとした美琴を後ろから抱き抑えるように抑え込み止める2人。
それでも、美琴は殴りかかろうとする。
が、このままでは、Pohを捕縛することができない。
しかし、この状況はPohにとっては逃げる絶好の機会なのだが


キリト「逃げるチャンスだと思うなよ?
美琴が何であんなにブチ切れてるのかは知らないが、お前を殴ったり切り刻みたい奴は俺を含めてここにはたくさんいるんだ。
話を聞きたい奴も、殺したい奴もな」


キリトを先頭に『血盟騎士団』団員が剣を向け取り囲む。キリトは冷静に見える。
が、彼の剣の持ち方はそのまま『片手剣』最大連続攻撃を仕掛けれる位置にある事に『狂気の芸術家』は気が付く。
恐ろしく冷静に、確実にPohを殺す手順をキリトは頭の中で作ってあるのだろう。


522: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:26:09.86 ID:TIbt7NlP0


御坂「言え!何であの子を殺した!?秘匿?気まぐれ?あんたのそのイカレタ『芸術性』って奴か!?言え!何でユフィを殺した!?」


感情が抑えきれない美琴が叫ぶように問い質す。


佐天「そんな…ユフィさんを?」

Poh「…誤解しないように言っておくが、私は彼女から何も奪っていない。…そう、奪っていないのだよ」


この状況で命乞いは無いだろうが、ユフィを殺めた事を否定するPoh。
しかし、その言葉を信じる者はいない。


御坂「嘘だ!私は見た!部屋に入った瞬間、残った粒子の光とアンタのその醜い包丁がね!!あの光の粒子は間違いなく」

Poh「なぜ、断言できる?君は見ていないのだろう…」


御坂「自分が殺されそうになったら命乞い?ハッ見っとも無いわね。
あんた達が作ったイカレタ『カルトギルド』の信者が今のアンタを見たらどう思うかしらね!?」


Poh「幻滅するだろうね。そう、本当に命乞いならばね。が、私が言ってるのは『事実』だ」

御坂「どこを根拠に信じ」

キリト「美琴!!」

御坂「何よ!!話を遮るな!!」

キリト「コイツが言ってるのは嘘ではない」

御坂「はあ!?何処を根拠に」

アスナ「あ、カインズさんとヨルコさんの!?」

キリト「そうだよ」

上条「え、誰?」

佐天「第57層で『圏内事件』の騒動を起こした2人ですよ」


『圏内事件』
最初は『安全地帯』である圏内にて殺人事件が起きた。
と言う一報だったが、後に殺人ではなく、かつてあったギルドの内輪揉めとザックリ説明できる事件。
ちなみにこの時、『ヒーローズ』はとある謎解きクエストに挑戦中で、あまり知らないのだが、それはまた別の話。
ちなみにクエストは失敗し、そのクエストは『SAO3大難解クエスト』の1つ。
話を戻す。『圏内事件』と言われた事件、それに関わったプレイヤーはこの場に居るのは、キリト、アスナ、そして


キリト「お前も関わってたよな…」

Poh「そうだったかな?」


この男もだ。

523: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:27:16.51 ID:TIbt7NlP0


キリト「こいつは俺が見張ってる!ミコトとアスナ達はユフィを!!」

アスナ「ええ!解ったわ!!」

御坂「ちょっと!?」

上条「状況が解んないんだけど!?」

佐天「移動しながら説明してくださいよ!!」

アスナ「するから!!急がないと、ユフィさんが!!」

御坂「ッツ!?」


アスナの言葉に動揺する。が、彼女の雰囲気からは嘘をついてる気配はない。
只々、急かすことしか考えてない。それが吉と出るか凶と出るか、この時の彼女には解らない。
しかし、何時導き出された答えがある『ユフィはまだ生きていて、逃亡しており。アスナとキリトには見当がついてる』と。


御坂「逃したら殺すわよ?」


が、彼女を含む上条とアスナ、佐天はその場から離れた。


524: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:29:01.14 ID:TIbt7NlP0

キリト「殺す、か…」

Poh「フフッ、ならば殺されないように、私を監視しないとな?」


キリトを茶化すPoh。吹っ掛けてるのか?


キリト「解ってる。が、1つ聞きたい」


しかし、キリトは彼自身が思う事を問い質す。


キリト「セフィロス…ケイタは、何故お前らと行動を共にした?何で、サチ達の仇であるお前達と!?」

Poh「それは君が1番理解してるであろう、そう、君ならば…いや、彼等と接触する前の君ならば?そして君のパートナーも」

キリト「パートナー?」

Poh「へぇ…君はそちら方面に疎い…認めたくないのかな?」

キリト「…何が言いたい?」

Poh「…解っているだろうテッ!!」


振り回す様に『友切包丁』を振り回してきたPoh。些か、彼の行動に疑問はあるが、彼がしようとしたことは分かる。


キリト「ミコトの『絶望』した顔を拝ませるかよッ!!」


そう、Pohがここに来た理由は美琴の何かしらの表情を見るため。
キリトの予測は『憤怒』と『絶望』。正解だ。
そこへ行かせまいと、彼は『片手剣連続スキル』『ハウリング・オクターブ』で斬りつける。


「下がれッ」


周りを囲んでた団員達がさらに距離を取る。ド派手に舞い散るスキルの光と斬撃音。


「…おかしくないか?」


しかし違和感に気が付く。Pohが反撃してる様子がないのだ。HPはしっかり減り続けてるのに、


キリト「ハアアッ!!」


剣劇を終えるキリト。が、その表情には余裕はない。
何故ならば、彼の目の前に奴は立っている。HPをレッドまで減らし、不敵な笑みを浮かべ。
その瞬間、その場に居た者全員が『キリトが斬られる』と思った。キリト自身も思った。
連続攻撃直後の硬直時間、先程の『スキル』ならば約1分はある。どのような馬鹿でも斬りかかるだろう。
そう、常識の範囲内なら。が


Poh「あの剣劇でないとダメか…答えはまた今度…」


そう言って『狂気の芸術家』は懐から取り出した『転移結晶』でキリトの目の前から姿を消した。


525: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:30:35.91 ID:TIbt7NlP0


「あ、あの…」


心配そうに近寄る『血盟騎士団団員』。
あの扱い、屈辱以外なんでも無い。


キリト「…あの『スキル』を使いこなせていれば」

「え?」


が、キリトは悔しそうなそぶりはない。


キリト「何でもない。…誰か、『転移結晶』貸してくれないか?」


それよりも、彼は『結晶』を強請る。手近な団員から受け取る。


「あの…何処へ?」

キリト「土御門が言った言葉、ホウジョウの死に場所。それらを纏めて導き出された場所さ。きっと『血染めのユフィ』が逃亡した場所。」


そう、そこは


キリト「…『転移、フィッシャーマンズ・ホライズン』!」


彼はその場所を叫び、『転移結晶』を使用した。


526: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:31:59.80 ID:TIbt7NlP0


第25層・フィッシャーマンズ・ホライズン


転移門から離れた海沿。
人の通りは少なく、NPCやクリチャーの『シーク』がうろつく『圏外』のこの場所に、
1人のツインテール少女が沖に浮かぶ島『トルトゥーガ』を眺め。


ユフィ「はぁ…」


ため息を漏らした。風になびくツインテールと何処とない儚さが彼女の魅力を押し上げる。
足元には何かを使用とした痕跡がある。


ユフィ「夢で高く飛んだ・・・そないな歌詞やったかな」

「飛べるわよ!!」


彼女が1番好きな曲をのワンフレーズを謳ってると、後ろから声がかかる。


御坂「夢は叶える物なんだから」


美琴だ。ユフィを探して全速力で走ってきたのか、肩で呼吸をする。
本当ならば、そのままユフィを拘束したいが、何故か先へ進めない。
おそらく何かしらの『クエスト』が発動してるのだろう。何時かの様に、見えない壁があるようだ。


御坂「ねぇ…あなたがしようとしてるのは」

ユフィ「関係あらへんやろ?ウチの勝手や」

御坂「勝手じゃない、勝手じゃないわよ!!残された人たちに」

ユフィ「自分に関係あらへんやろ、改造人間が!!」


激しい口調で叫ぶユフィ。が、彼女の言ってる事は正しい。
人が何かをしようとしてる時にどうこう言われる筋合いはない。しかし


御坂「だからと言って、目の前でMPKで自殺しようとしてる人に『はいそうですか』って引き下がれる訳ないでしょうが!!」


これも正論である。目の前で自殺しようとしてる人を、まして知り合いなら止めない方がおかしい。
そして、彼女は見過ごすことができないタイプだ。


527: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:33:01.70 ID:TIbt7NlP0


「…年下のあんたに教えといたる!」


「え?」


「世の中には、どうしても受け入れられない解り合えない奴らがおる。元に戻れない事もある。
そして…汚れた自分を絶対に見せとうない人がおるんや!!」


「…それって!」


「……………………お姉様」

528: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:33:59.87 ID:TIbt7NlP0


その時、彼女が言った言葉は美琴の中で完全に重なった。
ツインテール大切な後輩に。
しかし、美琴の目の前にいたその後輩を少し成長させたかのような少女は、その時には美琴の視界からは消えてた。


御坂「あッ!?」


その瞬間、ユフィを大型の口が襲った。大型魚のモンスター『バハムート』。

『バハムート』は普段は第55層以降に居るモンスターで第25層には絶対に出るはずのない。
だが、特定の日時、アイテムを使用することで第25層に出現する。
特にこの層に出る『バハムート』の特徴で、水中から浮上してくる時、海岸近くのプレイヤーなどを襲う。
この時、体当たりで『バハムート』の体に当たるとフルHP換算の4割を削られる。
そして、捕食された場合はフルHP換算で8割である。
尤も、とろいので気をつけてればまず当たる事は無い。
がユフィの場合はどうなるか?

彼女が『血盟騎士団本部』から脱出した時、彼女のHPは抵抗する可能性があったので半分だった。


結論から言おう。


御坂「待ッ!!」


彼女は死んだ。敬愛する、『お姉様』に似ても似つかない。
いや、似てると認めたくない少女の目の前でモンスターに喰われて死んだ。

529: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:34:56.30 ID:TIbt7NlP0


御坂「…」


その時、美琴は己がどのような表情をしてたかは解らない。
無表情。そうだったとしか言えない。
そんな美琴に、『バハムート』は視線を移す。次の獲物は彼女だ。
そんな彼女へ向け、『バハムート』はその大きな口を限界まで開いて威嚇する。
層全体に響く、大型モンスターの咆哮。


御坂「汚い口…」


美琴はその口を見て素直な感想を言う。
SAOのモンスターやプレイヤーの口内は、正直恐ろしいレベルでリアルで生々しい。美琴の感想も頷ける。
が、本当に生々しいのなら、そこには食べ滓がないから。なんの食べ滓かは、言うまでもない。
いい加減聞き飽きた『バハムート』の咆哮に対し。
彼女は腰にマウントした『約束の思い出』を掴みながら


御坂「うるさいのよ」


言葉をこぼした。


530: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:36:09.49 ID:TIbt7NlP0

キリト「何で『転移門』の近くにいたんだよ!!?」


上条「探してたんだよ!!」


その頃、転移門付近を爆走するキリトと上条。
2人が出会ったのは偶然だ。そして事情を確認する前に聞こえたモンスターの咆哮。


キリト「とにかく、今のは『フィールドボスクラス』の咆哮だ。それに、方向的にも『トルトゥーガ』の方だ!」

上条「…だけどな、まさかユフィの目的が『自殺』だなんてな」

キリト「Pohの目的がミコトの『憤怒』と『絶望』の表情が見るのが目的、それでユフィは」

上条「ホウジョウを失って、この世界で生きる目的がない。ならば」

キリト「土御門が言った通り、イカレタ教祖様の居る世界への片道旅行だよ!!」

上条「…」


止めさせなければ。そう、上条当麻は彼らしい考えをしていた。
が、どうにも止まらない悪寒。

531: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:37:44.97 ID:TIbt7NlP0

海沿いの道に2人が出ると


アスナ「キ、キリト君…上条君…」

佐天「あ…」


アスナや佐天、それに土御門やエギル、ヤマトにアルゴ達の姿が見える。
他にも多くのプレイヤーが集まってきてる。それらの人々は、陸に上がった


エギル「『バハムート』?」


の巨体に釘づけだった。釘づけだったプレイヤーの多くは、高レベルプレイヤーである。
それは、通常『バハムート』がプレイヤーの目の前で大人しくなるわけがないからだ。
そう、死ぬ直前で無ければ。
次の瞬間、『バハムート』の体が膨れる。鱗が逆立ち、まるで腐った水が入ってる風船のようだ。


ヤマト「膨らんだ!?」
クライン「やべ!?」


アルゴ「逃げろ、『クジラの爆発』だゾ!!」


それは、『バハムート』特有の現象で、コイツは死ぬ直前に破裂し体液を辺りにぶちまける。
その現象自体に正式な名前はないが、誰が言ったか『クジラの爆発』と言う。生臭さが同じみたいだ。
なので、コイツから得られる素材は少ない。だが、経験値は嘘のように得られる。


土御門「誰ダにゃ~こんな迷惑なのに挑んだのは!?」

番外個体「ミサカ達じゃないよ!!」


常人ならば1人では挑まない。
それほど『バハムート』が強いと言う事もある。


リズ「爆発したッ!?」

初春「く、臭いです…」


弾けるように破裂し、『バハムート』の体液が辺り一面に、腐敗臭と共にぶちまけられる。


アスナ(この臭い…)

佐天(ユフィの…)


しかし、この臭いを嗅いだら分かる事もある。
そう、ユフィの武器『ウータイ』はこのモンスターから偶にドロップする物の1つ。


浜面「お、おい」

シリカ「あ…あれは?」


そんな中、『バハムート』がいた所に立ち尽くす人影。
体液や逆光で確認できない。
しかし、そこはSAO。ネーム欄で直ぐに確認できる。


上条「美琴…」


鮮血を全身で浴びた御坂美琴が、力なく『約束の思い出』を握りしめ立っていた。


532: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:38:17.83 ID:TIbt7NlP0


彼女を立ち尽くす意味を理解できたものはその場には居なかった。だが


キリト「花火!?」


その瞬間上がった花火の音、色合いは直ぐに理解できた。


御坂「…また呼んだの?」


533: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:39:49.15 ID:TIbt7NlP0


「行こう!!」

「ホウジョウ様の元へ!!」

「ユフィ様の元へ!!」

「桃源郷への道は開かれた!!!」


何処からともなくプレイヤー、しかも低級の連中がぞろぞろ湧いてきた。考えなくても分かる。
彼等だろう、先程の『花火』を上げたのは。この場所で花火を上げる意味。
それはこのフィールドのモンスター『クザ』『ムド』『フグ』『クッゴンゾ』『ダツ』等、MSモンスターを呼び押せる効果がある。
先ほどの数ならば百近くは下らない。
そう『MPK』だ。


ヤマト「『元神羅』の奴らかよ!?」


そう、彼等の言動から『旧神羅』のメンバー、若しくはその考えに同調、狂信した者達だ。


「現実に戻るのなんかいやだ!!」

「僕はこの世界で生きるんだ!!」

「苦労しなくてもいいんだもの!」

「神羅万歳ー!!ハレルヤー!!」


クライン「クッソ、このくそ忙しい時に」

番外個体「自殺志願者たちなんだから、見捨てちゃえばいいじゃん」

アスナ「ダメ!!いいみんな、誰も死人を出さないでェェェェェェェ!!!!」


澄んだ声の少女の叫びが当たりに響いた。


534: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:40:59.94 ID:TIbt7NlP0


結果から言うと、この時の戦いは死者は0だった。
それは、ただの自殺志願の集合だった低レベルプレイヤーの集まりと、今更集まった第25層のMSモンスターの集まりだったこともある。


しかし、討伐組…いや、攻略組へのダメージは甚大だった。
特に最強ギルド『血盟騎士団』は多くの人員、その中でも4大部隊長の3人の死は大きく組織再編に時間を取る事になった。
そして、多くの攻略組面子の心の『ダメージ』は甚大であった。
それは、人の友人の死から来るものだった。

その後、捕縛した『ラフィン・コフィン幹部』、ザザ、ジョニーブラックの処刑は却下され。
全ての攻略行為が、最低でも2週間禁止となった。
これを犯したグループは他のグループにより殲滅すると言う厳しい罰と共に。


535: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:42:13.86 ID:TIbt7NlP0


SAOクリアから数年後。この時の事を事細かく書いた『黒雪』氏著の本、『仮想世界の内乱』からの抜粋である。


この戦いで勝者は3通りある。
 1つは軍団、討伐組である。また述べる事も無いが、戦略的にもこの戦いは彼等の勝利であることは間違いない。
しかし、見方を変えれば彼等は敗者だ。
 2つ目に『狂気の芸術家』であるPohだ。彼は己の目的を、己の思うがままに達成した。
それは前述で紹介した彼の残した作品で分かるだろう。
 そして最後にホウジョウ。彼はこの内乱の途中で死んだ。だが、彼が建前として掲げた理想は確実に攻略組に侵食してた。
その様子は、またの機会に著すとしよう。
ここからは私の意見だ。
この『仮想世界の内乱』そこに勝者は1人もいなかった。そうとしか思えない。
そして、この内乱に関わった多くの者が今でもそう思い、悩む日々を送ってる。

536: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/18(日) 22:44:46.41 ID:TIbt7NlP0
今回はここまでです。


今回にて、SAOラフコフ討伐編は終了です。

次回からは、皆さん忘れてるかもしれない、魔女たちの正体編をお送りします。

うだうだ続けてるこのSSですが、今年もよろしくお願いします!


御質問、ご指摘お承ります!!


ではまた

543: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/25(日) 23:31:16.98 ID:y+9PGdVa0


 その日、とあるテレビ局が『SAOなどVRMMOを含む、フルダイブ技術の問題性』
を主軸にした報道特集番組を生放送と言う形で放送していた。
尤も、内容としては少し知識ある人間ならば『酷い』の一言で済む番組であり、
この番組に専門家の1人として出演した菊岡誠二郎氏は
「まるで20年前に自分がタイムスリップしたか、僕以外の人たちがタイムスリップしてきたのか、と思った」
彼が述べた通り、その番組はとてもではないが『問題提議』してるのではなく
フルダイブ技術』と言うよりネット全般への『言われの無い中傷と八つ当たり』と言っても差支えなく、
後に起こる事件によって、更に批判が相次ぐことになった。


 その番組の1つのコーナにて起こった。
そのコーナーは女優も務めるキャスターが、SAO事件被害者が収容されてる都内の病院からの中継だった。
目線や身振りで事の大きさをネットリ伝える。
そして、VTRに入り後に医療関係者、被害者家族、その『被害者家族支援連絡会』と続けて現場からのインタビューだった。
が、病院からの中継開始から数分


「ちょっと、まッ」


とある病室から10代後半ぐらいの少女の声が聞こえた。
安定してない声色で、動揺してるのは誰でも解る。次の瞬間、ブザー音が響いた。
この時に、この番組の未来は決まっていたような物だ。
それは『ナーヴギア』がプレイヤーの脳を焼き焦がす約1分前にだけ響く2段階の警告音。
音が聞こえたと同時に、病院のスタッフが慌しく動く。無論、テレビクルーも当該病室の方へ移動するが。


「ここまでです!」


スタッフに制止される。そのまま病室を壁越しに撮影し続ける。
中からの音だけで動かない画、だが生々しさは圧倒的だ。


「君、離れなさい!!」

「い、イヤや!嘘や、だって!!?」

「危ないから!!」


中から響く声。
おそらく少女が被害者から離れようとせず、スタッフに力づくで引きはがされてるのを抵抗してるのだろう。
無論、その気持ちは理解できなくもないが、この『電子処刑装置』が作動する時にそばにいて負傷した遺族もいる。
安全の為でもある。が、それは目の前でただ死ぬだけの光景を、その少女に見せるだけである。
しかし、こうなっては誰もが何もできない。目の前で患者が被害者が、友人が、親族が、愛する人が、死ぬのを黙って見てるだけである。


「や、ヤバいって。カメラ」


を止めよう。ディレクターが提案しようとした瞬間。
弾ける音と先ほどと違うブザー音。何時聞いても生理的に嫌悪する音だ、人間の頭が弾ける音など。


「なんでやああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


次の瞬間、少女の悲痛な叫びが病院に響き渡った。それらの様子は、在京キー局を通して全国へ生放送された。


後に分かったことだが、その日は『大量死』が起きた翌日だった。
その番組は前日の報道特別番組からの続きであった。何も、この局だけが生放送していただけではない。
そもそもその『大量死』の原因が定かではなく、『強力なモンスターとの戦い』『プレイヤー同士の殺し合い』と意見が分かれてる。
 そして、その少女は遥々、大阪から自分の後輩の見舞いに来ており、週末はほぼ来ていた少女であった。


それから3カ月の月日が過ぎた。


544: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/25(日) 23:32:57.70 ID:y+9PGdVa0


大阪市内から私鉄特急で数十分のとある町のお寺。
そこにあの時絶叫した少女の姿があった。
柄杓と花を入れた桶を右手に持ち、左手に紙袋を抱え境内の墓地を歩く。
目的は言うまでもない。その場所に近づいた時


「え…」


1人の少女が後輩の墓標の前で祈ってた。何故、その少女がいるのか?分からない。
が、ここは素直に彼女の気持ちを受け取る事にした。手を合わせてた少女がこちらに気が付く


「あ…お、こ…」


罰が悪いのか、それとも自分と会うのは想定外だったのか、その立派なツインテールを揺らしながら動揺する少女。本当に似ている。


「別にええって。自分もウチも目的は同じや」

「…怒らないんですか?」

「怒る?理由があらへんやろ。…それに、ここで怒ったら他の寝とる仏さんに迷惑やさかい、な?」

「…そうですの」

「ふふっ…ねえ、こん子磨くんやけど手伝ってくれへん?えーっと、名前…」

「白井…白井黒子ですの」

「黒子ちゃん…手伝って」

「…もちろんですの」


どこか懐かしく、また別物の空気をこの白井黒子と言う少女から感じた彼女だった。


545: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/25(日) 23:34:31.43 ID:y+9PGdVa0


麦野(ったく…)


一方、京都のとある講堂前にてスマホをいじってる麦野。
ここに来たのは、任務と言うより絹旗の私用であるが。


麦野「どうして、自分から辛い事に向き合うのかねぇ…」


彼女はどうしても理解できない。いや、最初から今回の近畿行きは反対であった。
どう転んでも、いい事がないからだと踏んでたから。しかし、絹旗は『超どうしても』と懇願した。


麦野「ま、いいけど…って」

絹旗「…」


彼女が呟いてると絹旗が講堂から出ていた。感想を聞こうと絹旗に話しかけようとしたら


麦野「終わっ」

絹旗「ッツ」

麦野「って、絹旗ぁ何処へ行くんだ!!?」


彼女は全速力でどこかへ走って行った。いや、『逃げ出した』に近いのか?


「もあいちゃ~ん!!まって~お母さんから離れないで~」

「何してるんだ!新聞やテレビを呼んでるんだぞ、早く見つけ出せ!!」


中から数人の男女が出てくる。
女は絹旗の事を『もあい』と呼んで自身の事を『お母さん』と言ってる。
黒髪に地味なメイクだが、にじみ出るけばさは本性なのか?
そして、男は『SAO被害者遺族連絡会』と書かれた腕章をつけてる。
この日、この講堂にて行われるのはSAO事件に対する政府対応の抗議集会だ。
この人々はその関係者であろう。


「あ、あんた!?」

麦野「あん?」


その関係者の1人が麦野に話しかける。


「あんたさっきのもあいちゃんの知り合いか?」

麦野「…悪いな、もあい、って奴は私の知り合いにはいないよ」


そう言うと、彼女は絹旗が走り抜けて行った方向へと歩み始めた。


546: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/25(日) 23:35:52.56 ID:y+9PGdVa0


麦野「いくらなんでも、娘の漢字ぐらいちゃんと読めよ…確かにあまりない名前だけどよ」


ブツブツ文句を言いながら路上を歩く彼女。絹旗の位置は端末にて確認してるが


麦野「どこまで行くんだよ。新幹線超えてるじゃないかよ!!」


彼女のあまりにも走った距離と速さに驚愕する。


麦野「だから反対だったんだよ」


「しかし…結局の所、君も同伴する前提で許したのだがな…」


麦野「木山…」


偶然か、それとも待ち伏せたのか、木山春生がそこには居た。


木山「すまないな…余計な事を言ったか?」


麦野「…いや…いいんだ」


零す様に答えると、麦野は手近にあったバス停のベンチに腰を下ろす。


木山「人様の事情に余り踏み込むのは主義ではないが…これに関しては彼女に任せるしかないよ」

麦野「解ってるよ…解ってるんだよ」


項垂れる。


そもそも、今回の京都訪問は麦野と木山の2人だけで十分、いやもっと末端の人員でいいぐらいだった。
目的は『レクト京都支社(旧アーガス本社)』への訪問と、結城家本家付近の探索。
この2つだ。1つ目は前回同様、茅場晶彦及び『ナーヴギア』の関連物証の確保。
そして2つ目は結城家本家への盗聴器の設置。
これは現在『ナーヴギア』及び『SAO』関連の資料を保有してる『レクト』が、何らかの実験を画策してるとの情報があったゆえだ。
が、どちらも現時点では彼女達側にはさほどの脅威、問題点ではなかった。

そう、『大量死』までは…


547: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/01/25(日) 23:37:02.58 ID:y+9PGdVa0


あの日、『大量死』にて発覚したのは絹旗最愛の親族が死亡した事、そして両親の所在の発覚だった。
そう、絹旗の親族。『置き去り』の1人である彼女だが、親がいることは人間である以上、当然である。が


木山「いくらなんでも酷過ぎるね…これは」

麦野「だろ?」


来たバスの車内にて資料をもう1回見ながら言葉に詰まる木山。
麦野もこの資料だけは何回見ても絶句、あるいは不憫に思う。
この資料は警察から得た物だが、そこには絹旗の家族構成等が記されてる。
死亡したのは絹旗と双子の少年であり、絹旗は幼少のころ養子に出されたことになっている、彼女が面識も記憶も無い事も納得できる。
そして、両親だが…いや親とは呼べる人物ではない。


麦野「で、そんなクソ親の所からついて来てるそこのカワイ子ちゃんは、何なのかにゃ~ん?」


「やべッ?」


「しかたないよ。バレルって」


人気のないバスの最後部席からひょこりと飛び出る2つの影。年齢は絹旗と同じぐらいだろうか?しかし、その容姿は


木山「おやおや…」

麦野「ったく、この町は何なんだよ…。絹旗と言い、白井と言い」

木山「君も、含まれるね…それらには。…正直、病院行くたびに2人の顔を見るが、ここまで…」


「え…なんかダメっすか!?」


麦野「いや…いいんだ。イインだよ、ボウズ」


2人の反応に焦る若き追跡者。いや、追跡者ごっこだろう。麦野が言いたいことは


麦野「女連れで何やってんだよ!!?」


「ヒッ!」

「まって。彼は悪くない。私も同罪だから」


麦野「…そうかい」


彼女はあきれていた。
前回、京都に来た時に彼女は絹旗から報告を受けてた。
が、実際遭遇すると嫌な気分になる。


麦野(似すぎだろ…浜面と滝壺に…)

553: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/01(日) 22:10:35.78 ID:PJ2GZQPF0


「ありがとうね、手伝ってもろうて」

白井「いえ、これも何かの縁ですの」


所変わって、黒子は先ほど再開したこの少女と彼女の後輩のお墓を掃除してお寺を後にするところだ。


黒子「マシロさん…と言う方でしたの?」

「何で名前…ああ、見たんか。そう、『クロヤ マシロ」。それがあそこで眠ってるウチの後輩の名前や」


不思議な縁。それは1個あるとトコトン続くものだ。
まさか自分の名前をひっくり返したかのような名前あるのか。
が、この場合この少女が理解したのと現実は違い、事前に入手した情報である。まあ、言う事でもないだろう。
彼女に会うために彼女の個人情報を調べ上げたのは、なので


「せや、ウチの名前マダやったな」


彼女の本名を既に黒子は知ってる。


「火野コトミ、それがウチの名前や」

白井「コトミさん…ですの」

「まあ、あの子は『お姉様』と言うとったけどな。…まあ、自分の好きに呼んでや」

白井「えぇ…」


火野「…まあ、長居する場所じゃないさかい、駅の方にウチがバイトしてる店があんねん。
『ひやしあめ』位奢ったるから行かへんか?…ウチ、自分ともう少し話したいねん」

554: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/01(日) 22:12:07.95 ID:PJ2GZQPF0

確かに、境内で立ち話するのは今日はあまりいい日和ではない。
それに彼女が言う通り、黒子も話したいことは事実だ。その為に再び近畿にやってきたから。


白井「分かりましたの。『ひやしあめ』とやらを頂きたいので、お邪魔させていただきますの」

火野「よっしゃ。あ、借りもんなんやけど…」


そうこうしてると寺の外の駐輪場に着く。そこには1台の原付が止まっている。
言葉から察するに、彼女のではなく誰かの借り物で、頻繁に使っているのだろうか慣れた手つきでエンジンをつける。


火野「2ケツ、したことある?」


黒子を気遣ってか、2人乗りしたことあるかを問いながらスペアのヘルメットを軽く投げ渡しながら問う彼女。


白井「い、いえ・・」


無論、友人には原付はおろか免許すら持ってる人もおらず、
ましてや常盤台中学と言う校則が厳しく、尚且つ『風紀委員』の彼女が2人乗りした経験など皆無である。
尤も、彼女は普段の遠出の移動なら『瞬間移動』で補うが、ここでは使う訳にはいかない。


火野「マジか…まあ、運痴みたいではなさそうやし、何とかなるやろ。ウチの腰のあたり後ろから軽く抱きしめればええよ」

白井「だ、抱きしめッ!!」

火野「うお、ナンや!?」


『抱きしめる』と言うワードに反応する黒子。
1年半前まで毎日のように美琴に対してやってた行為。
無論、時と場所によったら黒焦げか鉄拳制裁だった。そう御坂美琴から。
が、彼女を抱きしめた場合、どうなるか?


火野「けったいな娘やなぁ…ほら、はよしいや」


原付に乗りながら黒子を急かす彼女。胸の鼓動が高まる。彼女は御坂美琴ではない。
それは分かる。が、容姿は彼女を3年成長させた姿であり、性格も現在評価だがかなり近い。
これでミコトニウムを検出してしまった場合、黒子は暴走モードに入るだろう。いや、確実に理性が無くなる。


白井「で、では…」


自然体を装いながら彼女に近づく。彼女の頭は煩悩に支配されそうになってる。
普段から黒子を知る人が彼女の今の姿を見たら確実に「今すぐそこの寺で煩悩捨ててこい」と言う。
ゆっくりと黒子は腰を下ろし、両手を彼女の腰に回す。


火野「ええか?」

白井「…ええ」


が、彼女の理性は保たれた。
どことなく、寂しそうな黒子の返事を聞くと彼女はアクセルを入れ、寺を去った。


555: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/01(日) 22:14:03.80 ID:PJ2GZQPF0


彼女がバイトしてると言う店は、駅前なら昔からあるようなごく平凡的な喫茶店だった。
店内も汚れても無く綺麗でもなく、ほのかな煙草のにおいが漂う。
カウンターには店長だろうか、煙草を吸いながら新聞を読む女性が1人、他に客の姿は見えない。


火野「ママ~、ウチの知り合いナンやけどひやしあめ2つエェ?」

「あのなー、何時も言ってるやろ。ツレやったら自分でやりい…」


面倒くさそうに、新聞を閉じながら彼女に話しかけようとした女性が振り向くとあり得ない物を見たような目で何か言おうとしたが


白井「ほげええええええェェェェェェェ!?」

「え!?」

火野「ほげェ、って」


黒子の渾身のリアクションでその言葉が頭から消えてしまう。正直、淑女がするリアクションではない。


「…おもろい娘だな。そのリアクションに敬して、ウチの自慢の1品をプレゼントしよう。コトミ、手伝え」

火野「は、はいー…」


556: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/01(日) 22:15:45.89 ID:PJ2GZQPF0


1人、店内にいる黒子。おいおい、営業大丈夫なのかと聞きたくなるが。


白井(やっちまったー、やっちまったですの…)


そんな事を気にする余裕は今の黒子に無い。
それは先ほどの淑女にあるまじきリアクションもあるが。


白井(何で寮監に似てるんですの!?声まで!!朝会ったばかりですの!!)


そう、先程彼女が『まま~』と言った人物、おそらくはこの店の店長なのだろう。
しかし、その容姿は彼女が住む寮の寮監に恐ろしいほどに酷似している。
センター分けのセミロングの黒髪、ピシッとした雰囲気、凛とした声。恐ろしいほどに似ている。


白井(まさか、これが『魔術』と言う物ですか!?そっくりサンを大量生産する『魔術』ですの!?)


彼女の推測は少しあってる。黒子が推測した魔術に近い物なら『御使おろし』があるが、残念ながら違う。しかし、黒子に分かるわけもなく


白井(そ、そうですの。こんな時こそインデックスさんにご意見を窺ってててて)


テンパりながらも自身の端末を出し、インデックスにメールで確認を取ろうとする。しかし


白井(しまったー!今インデックスさんは飛行機の中ですの!!絶対にALOやってますの!!)


そう、インデックスは所用でステイルと共にイギリスに戻っていて、現時刻ならば日本に戻る飛行機の中。
しかも、飛行機内にてALOをプレイすると豪語してたので間違いなくメール等にはステイル共々出ないだろう。


白井(こうなったら、私1人で事態の対処を)


憶測が憶測を呼び、先程のような恥ずかしい行動を仕掛けた時に


火野「分かってるッつうの!!」


奥の厨房から声。彼女だ。声色や台詞的にあまり穏やかではないのは確かだ。


557: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/01(日) 22:18:06.77 ID:PJ2GZQPF0


火野「おまちど~。この店の名物やでぇ」


何事も無かったかのように厨房から出てくる彼女。
その手にはサンドイッチが乗った皿を持っている。作っていたのだろう。


火野「って、ひやしあめ全然飲んでへんやん。口に合わんかった?」

白井「あ、ああ、違いますの?ちょっと、考え事を…」

火野「あ、ひょっとしてさっきの『ほげぇ』?大丈夫、大丈夫。最初ビックリしたけど、今となって…ップ」


思い出したのか、プルプル震えながら笑うのを我慢する彼女。
黒子への配慮だろうが、目の前で我慢されるのも辛い。


白井「ちょ、ちょっと、目の前で笑うのを我慢しなくても!!」

火野「せ、せやかて…ほげぇよ、ほげぇ?笑うなッちゅうのが無理やろ」


本当は全力で大笑いしたいのだろう。
しかし、ネタにされ弄られてる黒子の顔は恥ずかしさらか真っ赤だ、無理もない。


火野「ま、まあ、とにかくこれ食べて」


プルプルしながらテーブルに皿を置く。


火野「タマゴサンド。おっと、その辺のタマゴサンドと比べたらアカンで」

白井「比べるも何も…」


これは本当にタマゴサンドなのか?いい意味で。
見ただけでも解るふわっとした大きな卵焼きが自己主張してる。
それは、黄色と表現していいのか?否、黄金色と表現するべきであろう。


火野「さ、食べてみ」

白井「い、いただきますの」


黒子の反対側に座った彼女が進めてくる。
穏やかな表情で自分を見てる、仮にお姉様と結婚したらこのような新婚生活が続くのだろうと一瞬思う。
それはさておき、黒子はその自慢のタマゴサンドを1つ手に取り口へ運ぶ。


白井「こ、これは!?」

火野「どや!?」

558: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/01(日) 22:18:59.42 ID:PJ2GZQPF0

美味い。
見た目以上の柔らかさ、がただ柔かいでなく程良い触感。
絶妙な感覚で混ざった卵液と空気が素晴らしい。


白井「と、とてもおいしいですの!!」

火野「ホンマに!?」

白井「ええ、本当ですの!!ウソ偽りありませんの!!」

火野「めっちゃうれしいわぁ!!ありがと~」


そこまで嬉しいのか、彼女は黒子を胸に当てるように抱きしめ始める。


白井「ちょ、おお、ま、まだ、食べ、食べてますの!!」

火野「かわいいやんな~」


黒子の事を聞きもせず抱きしめ続ける、よほどうれしいのか?
しかし、黒子は嬉しそうであるが、複雑そうにも見える。
それは、彼女が美琴よりも年上だからか?ちがう

559: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/01(日) 22:21:13.09 ID:PJ2GZQPF0


白井「ふぅー、美味しかったですの」

火野「お粗末様」


タマゴサンドを食べ終え口を拭く黒子。
正直、ただのタマゴサンドだったが、黒子が生きてきた人生の中でも1、2を争う美味しさのサンドイッチだった。
が、引っかかる。


白井(なんですの?)

火野「あ、口直しのひやしあめのおかわり持ってこよ」

「コーヒー入れといた。飲むやろ?」

白井「え、ええ」

火野「ママ……」


タイミングを窺ってか、店長がコーヒーを持って来た。
しかし、あまり顔を見たくなかったのか、彼女の表情が曇る。店長もそれを知ってるかのよう。
何があったか聞くタイミングが無かったが、先程キッチン内にて揉めてた2人。しかも、


「…無様やな」


彼女を煽る。


火野「…何がです?」

「ハッ、耳も逝かれてもうたか?無様と言った」

火野「あ?」

白井「ちょ、ちょっと」

火野「黒子ちゃんは黙っといて!!」

「そうだな。その子はお前の後輩である『マシロ』ではない。それを1番自覚してるのはオマエ自身だろ?」

火野「黙れ言ってんのが聞こえへんのか、ワレェ!!」


激昂してテーブルをひっくり返す勢いで立ち上がる彼女。
しかし、そんな彼女に対しても冷静に言葉を続ける店長


「聞こえないな。そうやって、憑りつかれたように死者に固執した哀れな小娘の戯言なんざな」

火野「もう一回言ってみろ!!『あの子の名誉』にかけて顎引っこ抜いたる!!」


「やれるものならやってみろ。だがお前の言ってる『あの子の名誉』とはお前が自分勝手に創り出した幻想だ。
まやかしだ。現実を受け入れられない、お前自身の甘えた思い込みのな!」


火野「コンノォォ」


そのまま彼女が店長目がけ拳を振った時、


「は?」


彼女は店内から姿を消した。
それはまるで神隠し、いやテレポートと言うべきか?そうテレポートだ


白井「…」


黒子がいるのだから。

560: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/01(日) 22:22:14.50 ID:PJ2GZQPF0


白井「ごめんなさい。本来であるならば、部外者である私が仲裁するのはどうかと思ったのですが…」

「いや…」



唐突な事に動揺する店長。その時、ふと壁に掛けてあるコルクボードの写真の1つを見る。
数ある写真の中の1つ。そこれは去年のハロウィンで彼女がコスプレで虎柄のビキニを着て、とある男と弾ける笑顔の2ショット写真。
何故彼女は虎柄ビキニを着ているか?それは彼女が髪の色は違えどとある人物にそっくりだからだ。
そう電気を操る超能力者、御坂美琴と。


「なるほどな…」


全て理解したのか、メガネを軽く上げる店長。


「運命であり必然か、残酷な物だ。…すまない、取り乱してしまったな。片づけるの手伝ってくれないか?」

白井「えぇ…ですが」

「あの子は1人にさせとき、今は頭冷やした方がええんや」


561: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/01(日) 22:23:29.09 ID:PJ2GZQPF0


店舗の裏側。そこには先ほど使った原チャとビックスクーターがある。
一般的な光景である、そしてそこで休憩で煙草を吸う店員がいてもおかしくない。そう


火野「フゥー…」


彼女もだ。気の抜けた表情でしゃがんで、空を見ながら煙草をふかす。
数本目なのか、彼女の足元には吸殻がある。再び口にしようとした時


火野「へ?」


唐突にその煙草の火元とフィルターの間に現れる紙。この店の名詞だ。
切断された火種はそのまま地に落ちる。彼女の日常でこの様な事はあるはずがなかった。
が、今日だけで2度目だ。空間移動


火野「ほんま、なんでもありやな…」

白井「そんなことありませんよ。色々と条件がありますの。…それ以前に、煙草は美容と健康によろしくなくてよ。無論」

火野「未成年はダメ。…しっとるわ」


白井黒子がいつの間にか彼女の後ろにいた。テレポートしてきたのか?
偶々彼女が気が付かなかったのか?それは解らない。
が、黒子が能力を使って煙草を切断したのは事実。
ゆっくりと立ち上がる。


火野「…聞いたんやろ?ママから」

白井「えぇ…結構、おキツイ事を」

火野「ええんや。…けど、黒子ちゃんのおかげで吹っ切れた」


彼女が何を言われてきたのか、それは


火野「忘れるわ。あの子の事…『マシロ』の事」


575: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/16(月) 00:56:59.03 ID:ryLMEefU0



忘れる。死者を忘れる。それは同意味なのか?黒子が疑問に思ってた時。


「何でだよ!!?」


隣の府である京都でも同じような事を言われた少年が憤怒してた。


麦野「だから言ったろ。君には『ハチ』君の事を案ずるのは荷が重すぎるんだよ」

「でも、だからって!!」

木山(ストレートに言いますね…)


麦野と木山は先ほどバスにて会った少年少女と喫茶店にいた。
新幹線の時間までの時間潰しのつもりで2人に話を聞いてた、すると2人はかつて絹旗と黒子と遭遇してたようだ。
しかもその時、絹旗は2人に銃口を向けてるのだが、結果はこの様に麦野の目の前で憤怒するぐらい元気だ。
これほど少年が憤怒するのは。


「だから言ってるだろ!!ハチの親の事を、つかあの時の姉ちゃんハチの家族かなんかだろ!?」


そう、絹旗とその家族の事だ。
彼の言うハチとは絹旗の家族であり、死亡してしまった双子の兄妹の事。


麦野「…それに関しては、私が言う事ではない。絹旗が言う事だ」

「…そこまで言うと認めてる事になりますよね」


そして、この少年のガールフレンドは雰囲気に反して中々鋭い。
つくずく、あの2人に似てると麦野は内心思う。
本当によく似ている。浜面と滝壺に。


木山「…まあ、この短時間で君たちはこのお姉さんがキツイ性格だと言う事は理解できたろう」

麦野「おい!」


麦野のツッコミを無視し、手元の単語帳をいじりながら話し始める木山。


木山「が、言ってる事は事実だ。…君たちの話を100%信用したとして話を進めると、確かに絹旗君のご両親
…親と言っていい物か解らないが、いい人ではない事は確かだ。…しかし、君たちが抱え込める、介入できる大きさの問題ではない」


彼女の言葉は2人は麦野達に絹旗の両親の事を説明を聞いたからの言葉。
無論、この情報は事前に調べてたが近しい人から聞くと更に胸糞悪い。
そして、事前に調べた事によりもう1つ分かった。


「いいさ…いざとなったら」


この少年がある力を使おうとしてる事を。
『力なき者が力ある者に贖うための力』、言い換えると
『才能のない人間が才能ある人間と追いつくために作られた技術』
を習得しようとしてる事に。不確定な情報だったが。


「あいつ等を、『ハチ』に変って人誅を下せる力、『魔術』を――」


彼のこの言葉で、2人が『魔術』を習得しようとしてる事は明白になった。


576: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/16(月) 00:58:20.74 ID:ryLMEefU0


木山「やはり…ですか」

「へ?」


木山は少年の言葉からあるワード。
『魔術』の言葉を聞くと手元の単語帳の1ページを破る。


「な――」


少女が反応した時には手遅れだった。
その瞬間、2人は光の球体に囚われ、意識を失ってしまう。
その球体には何らかの模様、いや魔方陣が描かれてる。


麦野「これが『速記原典』と言う奴か、ここまで便利だと私も使いたくなるな…って、使えないのか」


木山「ええ、あなた達『超能力者』には。…それに、これは私の知り合いの魔術師の物とはかなり異なります。
これを『速記原典』と言ってはイイのか…そもそも『魔術』は」


先程までの眠そうな声から一気に若返ったような声になる木山。


麦野「何回も聞いたが理解できん」

木山「…麦野さんが理解しようといないだけでは?…まあ、いいです。5分位で終わるのでアナタはこの機械端末を」

麦野「へいへい解りましたよ木山、じゃなくて神裂さん」


ダルそうに返事しながら2人のスマホを受け取る麦野。
彼女は木山の事を神裂と言ったが、間違いではない。それに答えるように


神裂「…やはり自分の名前を呼ばれる方がいいですね」


神裂は護符をはがす。そう、木山に扮してたのは神裂火織だ。


麦野「とっとと、そのバカップルの『魔術』に関わる記憶を消せ。こっちは端末内の怪しげな情報を消すからよ」


『記憶を消す』
今回、絹旗とSAO関連で京都に訪れたのが『化学側』の理由だとしたら、
2人の『記憶を消す』のに来たのが『魔術側』神裂火織の目的だ。


麦野「…後」

神裂「…何です?」

麦野「悪かったな」


唐突に謝る麦野。それは彼女の経歴からによる物なのか?
いや、この状況でのその言葉、そう思うのが正しい。


神裂「同情されたくはありません。それに方法も全く違います。状況も」


ただ、彼女はそれを受け付けなかった。


577: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/16(月) 00:59:44.99 ID:ryLMEefU0


神裂「ただ、この2人を思う根本は同じだと思います。
私は不用意に術式の拡散を防ぐため、あなたは2人をあの屑親に近づけさせない為」


麦野「何が言いたい?」

神裂「2人共、甘ちゃんなんですよ。…ええ、甘ちゃんです」

麦野「…チッ、そうかい」


不満そうに舌打ちをし扉に手を触れる直前に


麦野「おい」


彼女が神裂へ自身の中の質問をぶつける。


麦野「あの時私は2人に、死んだ『友達であるハチの事を忘れろ』と言った。
これは私の経験での言葉だし、どちらかと言えば本能で言ってたに近い。…で、本来ならば何が正しかった?
私は宗教とは程遠い人間だ、頼むよ…」


神裂「…私は麦野さんの言葉を肯定します。
死者を忘れることは、死者の為でもあり残された生者の為でもあります。…忘れることなどできませんからね。
だから、麦野さんの言葉は正しい、と言っておきます」


その言葉を聞くと麦野は外へ出て行った。


神裂「…さて、慣れないやり方ですが始めますか」


578: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/02/16(月) 01:00:42.77 ID:ryLMEefU0


「…あれ?」

「何してたんだろ…私達?」


数分後、少年と少女が目覚める。
しかし、何故この店に居るのかが分からない。
モヤモヤするのが分かる。が、分からない。


「あ、親父の弁当」

「届けに行こう?」


とりあえず、2人は京都駅で新幹線の駅員である少年の父への弁当を届けることにした。

588: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:08:34.90 ID:x+iL7Vvl0


同じころ、黒子は


火野「大丈夫?さっきのよりスピード早いけど?」

白井「大丈夫ですの。…こちらのタイプなら1回ありますの」


彼女のビックスクーターで京都駅に送ってもらってた。


火野「ねえ、黒子ちゃんやったらウチの考えどう思う?」


『ウチの考え』それは彼女の後輩『マシロ』を忘れる事だ。それに対し黒子は


白井「私が口出すことではありませんの。…ですが、私もお姉様が…考えたくもありませんしあり得ませんが、もしもの時は…解りませんの」


何も言えない。『死者を忘れる』残酷に思えるがそれが正しいのか今の黒子には分からないし、考えたくもない。
が、考えなくてはいけない事でもある。現に、今だSAOカラの帰還の可能性は低い。


火野「黒子ちゃんはあの子に似てるぶんもある。ひょっとしたら『御坂美琴』もこないな――」

白井「似てませんよ。あなたとは…『マシロ』さんとも」


少しキツメの口調で言う。
そうだ、彼女は姿、声こそ黒子が敬愛する御坂美琴に似てるが。今日、京都に来て再び再開して確信した。全くの別人だ。
そして、彼女の後輩である『マシロ』と言う名の少女も黒子に容姿が近かったのだろう。


火野「ふっ…せやね。あの子が自分のそっくりさんが『超能力者』って聞いたら、泡吹いてひっくり返るやろな」


その様子を思い浮かべたのか、笑い声をこぼす。
彼女達の通ってる女子高では、『反超能力』の教育が活発で、多くの生徒が『超能力者』を毛嫌いしてる。
無論、生徒会を務めてた『マシロ』はその学校の模範的な生徒の1人だった。
そんな学校で、彼女は大丈夫なのかと黒子は思ったが。


火野「ま、ウチは変わりもんやからな」


大丈夫みたいだ。このメンタルの強さは美琴に通ずるものがある。


火野「…ひょっとして、『御坂美琴』も結構独特なんちゃう?」

白井「黙秘しますの」

火野「肯定してるやん」


それどころかカマ掛ける余裕もある。
しかし、逆に考えると2年前の美琴の様に黒子を安心させるための空元気なのかもしれない。
しかし、その真相は分からない。


白井「とにかく、私は最悪な状況を考えたくありませんですし、あなたの考えを否定しません。ですが、『わすれる』事については、正直理解できませんの」

火野「せやろな。ウチも誰かに理解してもらおうと思わへん。これはウチ自身の問題や。…ぶっちゃけ、他人の黒子ちゃんに聞いたのがアカンかったわ」

白井「…ですね」

589: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:10:04.73 ID:x+iL7Vvl0


暫く走ると橋の上で渋滞に捕まってしまう。


火野「…アカン」

白井「ま、まあ時間はまだありますので何とかなりますの…多分」

火野「調子悪いなぁ…」


凹んでる彼女を励まそうとする黒子。
話題探しに周りの風景を見るが、そこは橋の上。車やトラック、そして緩やかな淀川の風景。
黒子の住む街にも多摩川があるが、その風景はおなじ河川でもどこか違う。そんな河原に


白井「あれは…」


何かを見つける。


火野「お、動いたでー」


それと同じタイミングで渋滞が動き出す。が


白井「すみません。この橋渡った場所で待っててほしいですの!!」

火野「へ?チョッ!?」


その時には黒子は彼女のバイクの後ろには居なかった。

590: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:11:03.54 ID:x+iL7Vvl0
「ハッ、ハッ、ハッ」


どれだけの距離を全力で駆け抜けてきたのだろうか?
小刻みに呼吸をし、肩を上下に動かす小柄な少女が河原に1人。絹旗最愛だ。


絹旗「ハッ…ッ」


乱れた息を強制的に整え、拳を握る。


絹旗「チキショウ…チキショウ…チキショウ、チキショウチキショウチキショウチキショウチキショウチキショウチキショウ!!!」


すると彼女は河原の小石だらけの地面を殴り始めた。
がむしゃらに、乱暴に、何かを発散させようと全力で殴り続ける。


白井「絹旗さん…」


そんな彼女を見守るように黒子が少し離れた場所に現れる。
『空間移動』で音なく現れたからか、それともそれほど自分の世界に入ってるのか、絹旗は気が付いてない。
そして黒子が心配して近寄ってる事にも気が付かない。河原の小石を踏む音が聞こえるのに。

591: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:13:22.93 ID:x+iL7Vvl0


新幹線の時間まではまだあるので、ある程度放置しようと思った黒子。
原始的だが、それで彼女の理不尽な今までの人生を消すことができるのなら目を瞑ろうと。
それに、彼女の能力『窒素装甲』なら怪我をする心配もない。そう、能力が展開していれば。

白井「って!?」


黒子が見た絹旗の拳は赤黒く染まっていた。そう、血と泥で赤黒く。
導き出される答えは、彼女の『窒素装甲』は展開していない。


白井「絹旗さん!!?」


慌てて絹旗を止めに入る黒子。


絹旗「放して、超放してください!!」


後ろから羽交い絞め状態になる絹旗、無論抵抗するがいくら『暗部の人間』と言えど、
海原認識で能力なしで強いゲテ物女TOP3に入る黒子の拘束を解けるわけがない。
しかし、この時点でかなりおかしい。
絹旗の『窒素装甲』は彼女の意思関係なく常時展開されてる代物、なのでいくら黒子が筋力があろうがこの状況はありえない。
そして、黒子自身も絹旗の能力を知っているのでこの状況に驚き、動揺している。


白井(まさか!?)

絹旗「超放せって言ってンだろうがァ!!」

592: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:14:50.92 ID:x+iL7Vvl0


叫ぶように大声で黒子を振り払う絹旗。
しかし、その力が何時もの力でないことぐらい黒子にも分かる。


絹旗「ハァ…ハァ…」

白井「絹旗さん…」

絹旗「超無様ですかァ!?」

白井「えっ!?」


絹旗「超ォ無様ですよね、私!…『置き去り』で『暗部』で、しかも『暗闇の五月計画』の実験体になってさァ!今まで超クソな人生と自覚してましたよ!!
ですが、超ォ何なンですかァ!?生まれた時から超クソ親に売り飛ばされてよォ!
存在も知らなかった弟ってなンですかァ!超虐待されて、生活費の為に超生かされてた存在なンてよォ!
しかもSAOで死んだってさァ!で、『自分だけの現実』の超崩壊ですかァ!?何ですか、超ォ私の人生はクソなンかよォォォォォォォ!!!」


魂の叫びだ。

確かに、彼女の人生で超能力者になってからの人生は、社会の裏側での人生だ。正直、胸を張って言える事をやってなかった。
それでも『アイテム』の仲間たちとある程度の日常を送ってきた。
その『アイテム』も1度崩壊したが、あの男によってもう1度皆が集まり、小さな仲間も加わり彼女なりの日常を送ってきた。
『SAO』に2人囚われても彼女は黒子や神裂インデックス等、新たに知り合った仲間と共に今日まで来た。
が、それでも生立ちの事を知ったのは彼女の『自分だけの現実』を崩壊させるほどには十分だったのだろう。

593: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:15:57.10 ID:x+iL7Vvl0


絹旗「何なンだよその眼!?」

白井「へ?」


コンビニの前で屯してるチンピラの様に黒子にイチャモンを付ける絹旗。
そして、テンプレの様に


絹旗「超ォ気に入らないンだよッ!!」


黒子に殴りかかる。
無論、黒子ならば能力を使わなくても避けられる。だが


白井「ッツ!」


彼女は避ける事はしなかった。
『窒素装甲』が展開してないとはいえ、筋の通った絹旗の拳は黒子が大きめによろけるには十分だった。


絹旗「何ン!」


更に殴り続ける絹旗。しかし、黒子に避ける雰囲気はない。
何回も何発も絹旗の拳を喰らってはよろける。
2人が動くたびに河原特有の小石がザクザクと音をたてる。


火野「青春やなぁ…」


そんな2人を土手の上の道に止めたビックを背によっかかりながら煙草を吹かし眺める彼女が呟いた。

594: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:16:46.98 ID:x+iL7Vvl0


絹旗「こンのォォォ」


流石にふらふらになった黒子に止めを刺す為か、大きめに拳を振るおうとする絹旗。


白井「ッ!」


しかし、そこに出来た隙を黒子は見逃さなかった。


白井「いい加減に、しなっさいッ!!」


絹旗「ッブ!」


一瞬の隙をついた黒子は絹旗の頬に1発ビンタを加えた。
その乾いた音が響いた時、川の流れる音、橋を渡る車の音などが一瞬消えたかのように感じた。


白井「いい加減にしなさい絹旗最愛!貴女がやってるのは、ッブ!」


黒子が話そうとした瞬間、再び黒子に拳が入る。


絹旗「見っとも無い?だらしない?無様?そンなの超ォ承知してますよ!
だけど…だけども、それ以上に納得できないんですよ、心が!!超解りますか、白井にップ!」


そしてまた黒子の平手が絹旗に入る。

595: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:17:52.00 ID:x+iL7Vvl0


白井「ええ解りませんとも!!所詮私と絹旗さんは『他人』ですし、解り合えませんですッブ!」

絹旗「それを超堂々と言いますか、この状況でッボ!」

白井「言いますとも、言いますとも!ただ叫んで急にいちゃもん付けてきましたアナタにですからね!ッブ!」

絹旗「白井のその見下したかのよゥな目つきが超気に入らないんですよ!ッベ!」

白井「それを、いちゃもんと言ってるんですの!『スキルアウト』と同じような事言ってますの。ヴェッ!」

絹旗「だからどうしろと!?超どうすればいいんですか!!?」

白井「だっ、かっらァァァ!!」

596: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:19:00.45 ID:x+iL7Vvl0


言葉と同時に、黒子の全体重を乗せたストレートが絹旗の顔面に入る。その拳を受けた絹旗は


絹旗「オボロロロロロ」


ズザザと小石の音をたてながら倒され、転がり込む。
1連の行動で疲れたのか、立てる気力は無い。
仰向けにになり、夕焼けを見ながら小刻みに呼吸をする。黒子も膝を地に着ける


白井「ハッハッ、ハッ…解りませんの、そんなの」

絹旗「ハッハッハッ…超そうですよね、私自身も分からないんですから…」

白井「こんな事言うのもあれですが…」

絹旗「今更超なんですか…」


白井「私は身内や友人に幸福な事に不幸はありませんでした。…ですので、絹旗さんの今の心情を100%理解できません。
…特に、今回の様に疎遠になってた身内の状況を知っての状況など、私は想像もできません。ですが、今の絹旗さんは――」


絹旗「超子供みたいですか?ええそうです、超そうですよ子供ですよ。白井と同い年の超餓鬼です。だから超分からないんですよ。
…仲間を失った時、その時は『暗部』だから。そう思って納得しました。
…けど、例え超クソでも、超疎遠だったとしても、肉親は響きますよ…まじで」


白井「そうですか。…このような言葉――」

絹旗「超決めました!」

597: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:20:07.85 ID:x+iL7Vvl0


黒子が言葉を送ろうとした時、絹旗はハッキリとした声で空へ叫んだ。そして、思いがけない言葉を口にした。


絹旗「超忘れます!!この事を」

白井「へ?」


その言葉は黒子が1時間ぐらい前に聞いた言葉だ。そしてその続きも


絹旗「超勘違いしないでくださいよ?『忘れるんです』、と言っても、記憶の中から消すわけでもありません。
超消えることはあり得ませんからね!今は忘れるんです」


それは、先程から土手の上で何本も煙草を吹かしてる彼女が言った決意表明とほとんど同じ内容だった。


絹旗「正直、今の私には超受けきれません。理解しようにも、仕事と超違って感情が前面に超出てしまいます。
だから『時間』に任せようと超思います。…超変ですか?」


本当に同じ内容だった。そんな『偶然』に


白井「フフッ…」


黒子は笑みがこぼれた。


絹旗「な、笑う事無いじゃないですか!?」

白井「いえ、私が言おうとしたこと、絹旗さんが全部言ってしまうんですもの。何か、『偶然』過ぎてビックリしてしまいましたの」

絹旗「ふ~ん~…」


仰向けながらも土手の方を向く絹旗。その視線には彼女が映ってるだろう。


絹旗「あそこで超スパスパしてる人ですか?」

白井「ええ」

絹旗「…超『偶然』ってあるもんなんですね。フフッ」


そんな『偶然』に絹旗も笑みをこぼした。

598: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:21:09.10 ID:x+iL7Vvl0


絹旗「よっ…ホッ!!」


ふんぞり返るように飛び起き上がる絹旗。
最後の声がかわいい。


絹旗「超ごめんなさいね白井、いきなり超喧嘩ふっかけて。立てますか?」


黒子に近づくと手を差し伸べ立ちあがるのをアシストする。


白井「これでも『風紀委員』が全盛期の時同様、鍛練は疎かにしてませんですの。大丈夫ですわよ」


絹旗の力を借りて立ちあがる黒子。
どちらかと言うと顔の痣が痛々しい。


絹旗「本当、超すみません。…ですが、白井にも超謝ってほしいですね?」

白井「え?」

絹旗「さっき殴り合ってる時、白井は『他人』って超言いましたよね?あれ、超傷つきましたよ?」

白井「あはは、言いましたね…」


言った。本心ではないだろうが勢いで言ったのは確かだ。
それを訂正するために黒子は絹旗の手を深く握った。


白井「ごめんなさいね、『友達』の絹旗さん」

絹旗「『友達』?ノンノン、私達は『超親友』ですよ!」

599: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:22:58.02 ID:x+iL7Vvl0
火野「あんな、河原で大喧嘩してその後に『私達を駅まで載せてってください』、何て言うやつおらんで?。普通」

絹旗「ですよね~」

白井「絹旗さん」

絹旗「超ごめんなさい…」


先程の河原での大喧嘩から2人は、彼女ののバイクで京都駅へ向かっていた。
乗り方は御愛嬌。街中に入り、生暖かい風が3人の頬を触れる。


火野「そろそろ着くで、駅に」


彼女が言うとおり、バイクは京都駅南側の入り口に着いた。
反対側の『これが古都の玄関口か?』と問いたくなるような建物と違い、こちらはよくある新幹線の止まる駅の雰囲気。
ロータリーの一角に止める。


白井「ありがとうございました。突然押しかけて、色々と」

絹旗「傷の手当、超ありがとうござす」

火野「かまへんって、ウチも黒子ちゃん達と会って頭の中スッキリしたから。お互い様や」


彼女にヘルメットを返しながらお礼を言う2人。


火野「…あんな、もしよかったらまた」

白井「ええ、解ってますとも。時間が出来ましたらまた来ますわ」

火野「うん…あ、そや」


思い立ったかのように彼女はポッケから自身のバイト先の名刺を取り出すと、ペンで自身の電話番号等を書いて黒子に渡した。


火野「来るときは連絡してな。ウチもこっちにいたら会いに行くから」

白井「ええ、…その時までには是非とも禁煙しててくださいまし」

火野「あはは…前向きに善処します」

絹旗「それ、、超やらないパターンじゃないですかー」


罰の悪そうに笑ってごまかす彼女。そんな仕草がどことなく美琴を連想させると思う黒子。
この人物は『御坂美琴』ではない、『偶然』出会ってしまっただけの『ソックリ』さんだ。
そう認識しようと思っているのに、煮え切らない。
そんな黒子の考えが表情に出てたのか、彼女は


火野「黒子ちゃん、多分ウチの事やさっき言った『わすれる』って事が引っ掛かってるんやろ?」

白井「…ふふっ、本当に御見通しなのですね」


火野「ホンマ『ソックリ』やもん、あの子『マシロ』が思い悩んでる時と。まあ、ウチが悩んでる時もそんな顔してるかもしれへんし、今もね。
…せやから、黒子ちゃんのモヤモヤが晴れた時はウチにも教えてな?」


白井「はい、ご参考になるか解りませんが、その際は是非」


彼女は黒子の返事を聞くと再びエンジンを吹かし


火野「じゃあ、ウチは帰るから。絹旗ちゃんも元気でな」


そのまま後にした。

600: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:23:47.81 ID:x+iL7Vvl0


絹旗「白井ー?」

白井「なんですの?」

絹旗「やっぱり『御坂美琴』に超似てましたか?白井目線で」

白井「…全然似てませんわ…そして、すごく似てますの」


答えになってない答えだが、その言葉に妙に納得した絹旗。自身もそうだからか?


絹旗「なんか、京都に来ると超煮え切らない事ばかりですね」

601: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:24:34.42 ID:x+iL7Vvl0


京都駅・新幹線改札口


夕刻の改札には各方面へ帰る出張のサラリーマンが多く、所々で1杯飲み始めてる人もチラホラ。


麦野「ったくよ。絹旗ちゃんに白井ちゃんよォ!!」

絹旗「超すんません」

白井「言い訳の言葉もありませんの」

神裂「ちょちょっと、御三方」


そんなホームにて青筋立ててご立腹な麦野と頭を下げる黒子に絹旗、それをたしなめる神裂。とても目立つ光景だ。
と言っても、麦野が怒ってるのは2人と連絡がつかず、新幹線に遅れ、更には傷だらけでの御帰還。心配から来るものだ。


麦野「…はぁ。ま、こうなるかも知れないとは思ってたけどよ。少しはこっちの身になれ」


最もな意見だが、彼女はこの言葉を言った時ふと思った『自分がこのような言葉を言うようになったとわ』と。

602: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:25:17.91 ID:x+iL7Vvl0


お説教が済んだ後、絹旗は1人ホームのベンチに座っていた。絹旗と黒子が遅れたので予定してた新幹線に乗り遅れ、更に時間が時間だったので空席を取るのに8本もの電車を見逃すことになった。しかもグリーン車、代金は勿論2人持ち。ちなみに3人は駅弁やお土産を買いにコンコースへ行ってる。


絹旗「そう言えば、この前も新横浜に超遅れましたね。私達」


ため息を吐くように呟きながら引っ切り無しにやって来る、蒼と白のストライプの車体をベルやアナウンスなどのBGMで見つめる彼女。その表情は『煮え切らない』と言う言葉が1番似合う。その理由は彼女が『わすれる』事にしたこと、自分の親族関連の事。黒子にはああ言ったが、やはり簡単にできる事ではない。


絹旗「何か超キッカケが…」


そう、キッカケがあれば彼女は少なくとも表面上『わすれる』事が出来る。そして


「ねえ!」


その『きっかけ』のほうが彼女の方へ来た。


絹旗「あ、アナタは…」


その少女との出会いは『偶然』であるが、再会は『偶然』だったのか『必然』だったのか。おそらく後者だろう。運動が苦手そうな雰囲気の少女だが、肩で大きく呼吸し軽く汗を掻いて。滝壺理后と『ソックリ』な少女が再び絹旗の目の前に。


603: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:26:22.00 ID:x+iL7Vvl0


正直言うと、絹旗は彼女と浜面に『ソックリ』な彼女のボーイフレンドに会いたくなかった。
それはあの日、任務中であるが2人に銃口を向けた事による後ろめたさ。
そしておそらく彼女も知っている、いや友人だったのだろう。死亡した絹旗の兄妹を


絹旗「えっとー…」


言葉が思いつかない。何を言ったらいいのか分からない。
絹旗が考えるより、彼女の行動の方が速かった。


絹旗「おぅ!?」


絹旗が言葉に悩んでる間に、彼女ほうから絹旗を抱きしめてきた。


「大丈夫…」


その言葉、またしても『偶然』か?
しかし、この言葉が彼女の本心であることは間違いない。
確証はないが、絹旗はそう理解し抱きしめ返した。


「おい」


男の声に反応するとそこには彼女のボーイフレンド、浜面の『ソックリ』がいた。
若干であるが絹旗を警戒してる。
しかし、絹旗は自分が敵意は無いと目線で語りかけると彼も応え警戒心を解くと握りしめていた紙切れを絹旗に渡す。


絹旗「…これは?」

「あいつ、『ハチ』の墓がある寺だ。…時々でイイから、兄貴に線香でもあげてくれよ」


ぐしゃぐしゃな紙にぐしゃぐしゃな文字。急いで書いたのがよく解る。
そして、どうしても伝えたかった事も分かる。ゆっくりと彼女を離すと、絹旗はその紙を受け取った。

604: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:28:21.12 ID:x+iL7Vvl0


麦野「絹旗ぁ?」


麦野の声が聞こえて周りの状況に気が付く。
麦野達は既に新幹線に乗り込んでいて、ドアからこちらを見ている。
よく聞こえる電子音の発車ベルにアナウンスがホームに響く。彼女はそのまましっかりとした足取りで車内へ向かう。
その様子を寂しそうな視線で送る2人など簡単に想像できた。本当ならいろんなこと『ハチ』と言われてた絹旗の兄妹の事を聞きたかった。
しかしそんな余裕、双方心にも時間的にも無い。それでも、彼女は最低限の事だけを伝えたいと思い、デッキに入り立ち止まると振り返る。


絹旗「1つだけ超言わせて下さい。…私の方が超姉です」


彼女が言葉を言い終えると同時に、新幹線の扉は閉まった。




「…絶対に『ハチ』の方がアニキだよね?」

「だな。で、どっちが兄かで毎回喧嘩してそうだよな」


絹旗の言葉を聞いた2人が新幹線を見送りながら突っ込みを入れる。
本当ならば、青春映画よろしくな追いかけようとしたが、外部製で10年前の車両でも約1分で160キロ近くになる車両には追いつかないし、
何より絶望的に絹旗が小さいので乗降口の窓からは見えなかったからだ。


「やっぱ言ってたね。『超』って」

「本当な。…報告していくか?」

「うん」

605: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/01(日) 23:33:49.88 ID:x+iL7Vvl0


車中


京都で、様々な事があり過ぎたのか絹旗と黒子は発車後すぐに眠りについてしまった。


麦野「よくもまあ寝てよ」

神裂「お疲れになったのは明らかですからね。仕方ないですよ」


そして2人は、駅弁をつまみに酎ハイを飲んでる。まるで引率の先生だ。


麦野「で、何であの2人の記憶が戻った?」

神裂「そうですね…」


唐突に仕事モードに入る2人。
話題は神裂が持ってる単語帳『速記原典』モドキ。
確かに、神裂はこれを使いあの2人の記憶、自分達に関わる事を消させたのに2人は覚えていた。


神裂「慣れてない、と言ったら話は終わりです。しかし、私なりに考えるとやはりあの2人だったから、とでも言えましょうか」

麦野「もしくは、その『速記原典』とやらがお前らの知ってる物じゃなくて『ヘブライ魔術』が入ってる、だからか?」


神裂「それもあります。…ですが、SAO関連の技術を『旧アーガス本社』で探索した際には、木山春美と意識を共有できました。
ですので、このように『化学側』の資料をこうして持ってこれたのです」


彼女がカバンの中を見せるとそこにはファイルに挟まった資料や、神裂が使えるはずのないタブレット壊れてないで入ってる。


麦野「今回の京都行と『偶然』、そしてその『速記原典(仮)』。
これらから導き出される答えは、その専門家とやらに会いに行ったインデックスとステイル待ちか…」


611: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/15(日) 23:52:15.61 ID:betkFO+Y0

麦野達が自身の街に着いたのは京都を出てから3時間半は経っており、夜空を繁華街の雑多なネオンが照らす。
都市部の乗換駅などではよく見る光景であるが、その光景に違和感を覚える人がこの地域には多くいる。そして


麦野「あれ?」


彼女もその1人。しかし、その違和感が何なのか今は解らない。
いや、そこまで気に留めるほどでもないと麦野は脳内で処理してた。


神裂「どうしたんですか?」

麦野「いや、エセ神父を探そうと思って喫煙所探そうとしたんだけどよ、何処だっけなーってさ」

絹旗「麦野ォ…超更年期には早いと思っていましたが」

麦野「き ぬ は た ちゃん。オマエ少しこっちが気を使ってるからってな」


そう、疲れによる些細な違和感だと。


神裂「あそこの看板に書いてあるマークの方向じゃないですか?」


しかしそんな違和感、もとい度忘れは街中にある案内標識、情報端末ですぐに何とかなる。


白井「多分そうですわね。私も度忘れしてましたが…それよりも麦野さんはステイルさんをお探しなんですよね?」


麦野「仮にも『風紀委員』だったんだから忘れるなよ…そうだよ。
あのニコ中ならどう考えても十数時間の機内や成田だから電車で2時間半煙草我慢できる訳ねえし、
だからと言って空港や駅構内の狭い喫煙所だとあの目立つ図体だから下手すると駅員とかに声かけられてNG。
なら、こういう外の喫煙所で吸うと思ってな」


神裂「ステイル…まあ、その予想は大方当たりでしょうけど」


1番付き合いの長い神裂があきれたように肯定する。
実際、ステイルがこの街に来て煙草関連でイライラすることは神裂も知っている。
そして、彼が安心して喫える場所が少ない事も知ってる。
厄介な事だと神裂はいつも思ってた。が、その予想は大きく外れる。


絹旗「いいえ、超はずれですね」


黒子の端末を覗いてた絹旗が否定する。そこに何が映ってるのか


麦野「見せろ」

白井「イイですけど。…フフッ、アホ臭いですわよ」


笑を堪えながら端末を渡す黒子。
よく見ると絹旗も今にも吹き出しそうなのを我慢している。
そんなにステイルが関わってる面白い画像なのか?


麦野「ブッ!」

神裂「グッ!」


とても面白い画像である。
大人びた美女が噴き出すほどに。

612: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/15(日) 23:55:50.79 ID:betkFO+Y0


『飛行機内では電場の出る物は電源を切る』
離陸前のくどいアナウンスや説明ビデオや席のポッケに入ってるしおりにも書いてあるお願いだ。
それは飛行機の計器類の誤作動を防ぐための処置であり、1度起きれば大事故になる航空事故を防止するためでもある。
しかし、技術革新で2010年代前半から特定の業者との契約さえすれば、飛行機内にてのインターネット接続が可能になった。
初期こそ程々の通信しか出来なかったが、2024年代現在大容量通信が可能であり、長編映画、リアルタイム通信などをしながら空の旅を楽しむことができる。
無論、そこにVRゲーム機が加わるのは言うまでもない。
ワザワザVR系ゲームを機内でやるようなのはネットゲーマーの廃人の部類。と、普通は思うだろう。
だが考えて欲しい。狭い機内、例え大型機だろうとしてもその中で体を動かすのはスペース的にも限られる。ならばどうする?
そう、そこでフルダイブゲームである。肉体的『エコノミークラス症候群』などの根本的な解決にはならないが、精神的にはかなり効果があり。
今までフルダイブゲームをやらなかった人々にも受け入れられるようになり、『ナーヴギア及びSAO事件』にて評判を落としたフルダイブゲーム機の名誉挽回にもつながった。
 さて、話をステイルの方へ戻す。先述の通り、ステイルはヘビースモーカーであり1日1箱は喫わないと落ち着かない体である。
なので飛行機等の公共交通での移動は大の苦手であり、特にロンドンからの直行便は苦行の他なんでも無い。そこで『アミュスフィア』の登場である。
『魔術側』の人間の中では機械に強いステイルなので問題なく使えるので、彼は販売以降飛行機内では必ずと言っていいほど『ALO』にダイブしている。
理由は勿論、煙草を吸うためである。しかし、国際線は搭乗する前にチェックインや荷物検査、出国手続き等時間がかかり、先述の通り空港内では喫えない。
ゆえに、ログインして喫ってるのだが


絹旗「そんな超噴き出したら…ブッホ!!」

白井「ブフウウウ!!」


その光景はあまりにもシュールでアホ面である。

613: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/15(日) 23:57:19.41 ID:betkFO+Y0

ここまでの無駄に長い文章はこの為の前フリだ。画像の正体は『ALO』内にて取られた写真だ。
ステイルは『ALO』内では『サラマンダー』になるが、現実での容姿が若干ゲーム臭いので違和感はない、
そこに映ってるステイルは平たく言えば『煙草を吸ってる』この1言で説明できるのだが、問題は本数である。
1度に6本もの煙草を吸う姿は『アホ面』以外の説明がつかない。
それを真顔で若干カッコつけて「僕は煙草吸ってるだけなのに、なぜ君たちはそこまで笑うのだ?」と表情で語りかけるのがツボを誘う。
更にその後ろで『ウンディーネ』のインデックスが顔をそむけて笑いを我慢し、この画像の送り主の『シルフ』リーファも笑ってるのもイイ。
人々を笑顔にする実にいい写真ではないか。


麦野「いい写真撮るじゃねーか、リーファの奴ッ。今度ヒマな時に何か手伝ってやるか」

神裂「そ、そうですね」


笑ながらも事態を理解できた4人は、ステイルがいるであろう『冥土返しの病院』へ向かう事にした。
インデックスとステイルは1時間前にこの街についてる様だ。

614: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/15(日) 23:58:30.98 ID:betkFO+Y0


そんな自分の表情を笑われてると知らないステイルは


ステイル「フゥー…」


『冥土返しの病院』内のベンチにて煙草を吹かしてた。
本来、院内は全面禁煙だがそこは目を瞑ってもらってる。
バーチャルではないリアルの世界での雑味と煙さ、1本目特有の根拠のない旨さにヤニクラが心地よい。


「そしてこれがあればその臭い嗜好品は更に美味しくなると聞きました、とミサカは昭和時代のドラマで見た知識を元にこれをあなたに送ります」


特徴のある口調と共にステイルに近づく、胸元からのハートのアクセサリーをかけてる御坂妹。


ステイル「その知識はあってるし、君の持っている飲料は今僕がとても飲みたいものだと思ってた物だ。…しかし聞きたい。
何故この街の、しかも『純粋な科学側』の人たちは僕にくれる飲み物は全部『ミルク入り』なのかな?ケンカ売ってるのかい?」


御坂妹「嫌だなステイルセンセ。高確率で眉間にしわを寄せてたり変に重く考えるからリラックスしろと言う意味と、お子ちゃまだからミルク入りなんだよBoy☆
と、ミサカは60年代メリケン映画に出てくる陽気なオッサンとムギノンから教わった煽り文句をミックスしながらあなたを煽ります。Hey Boy!」


挨拶がてらにステイルをおちょくりながらも缶コーヒーを手渡す御坂妹。
しかし、冬は超えたが、まだ夜は寒い時期。あたたかい飲み物は嬉しい。
そう思いながら黄色い缶コーヒーの蓋を開ける。

615: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/16(月) 00:00:45.62 ID:6y2PWGWG0


御坂妹「どうでしたか、1カ月ぶりの母国と言うのは?と、ミサカはとりあえず掴みの会話をしてみます」


ステイル「…君たちの話し方には慣れたつもりだったが、その言い方はあんまりだろ。気を遣わせてるみたいでいい気分じゃない。
で、その問いの答えなら相も変わらず、霧と雑多な街だったよ。ただ、久しぶりに食べたイールゼリーと向こうのコテージパイは美味しかったね」


御坂妹「自分で言うのもアレですが、食い意地があるミサカですが前者に関しては全く持って興味が湧きません、つかロンドンに居る個体が拒否反応を起こした時のMNWの荒れ具合が忘れられません、とミサカはその時に共有してた味覚を忘れるためにコーヒー一気飲みします。
しかし、後者に関しては凄く興味があります、とミサカは自作したコテージパイとの違いがすごく気になり早く調理したい心情を漏らします。腹減った」


ステイル「空腹なら何か食べてきたらいいじゃないか。あの子もお腹空いてるしね」


御坂妹「そのつもりでしたが、あなたが此処にいると言う事は彼女はあの人の所で何時ものでしょ、
とミサカは何とも言えない気分であの人の部屋の前の廊下の明かりを見ます。あ、出てきた」


ステイル「…察しがいいよ。本当」


続けてステイルも彼女と同じように2階の廊下を見上げる。
そこには銀髪の少女が盥に入ったぬるま湯とタオルを交換しにナースセンターに向かってる様子がよく解る。
その少女の日課の1つ。その病室で寝たきりの少年の身体を拭く事だ。かれこれ1年以上は続いてる。


ステイル「君は良いのかい?」


御坂妹「あの子が不在の時や遅い時はミサカがいつもやってますので。
と、ミサカは余裕ぶりながらも若干悔しい思いをにじませます。そう言えば、あなたの同僚は」


ステイル「さっき顔見て唾掛けてきた。ま、後で義妹が拭き取ってくれるだろうさ」

麦野「その隙に、お互いチャンスがある者が何かやらかすと。…あーあ。」

神裂「言わせませんよ。天草式の何チャラと!?」

ステイル「言ってないよ!!」

御坂妹「言ってませんよ!!それ以前に居るなら声かけてくださいよ、とミサカは唐突に後方に現れた2人に驚愕します。いつからいた」

616: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/16(月) 00:03:23.14 ID:6y2PWGWG0



2人の会話に唐突に入ってきた麦野と神裂に突っ込みを入れながら驚く2人。
麦野たちも御坂妹達の会話をはっきり聞いて無かったのか、会話がかみ合ってない。


神裂「あ、京都お土産です」

ステイル「八橋か…僕はあまり好きではないが、あの子のためだ」

麦野「礼ぐらい言えよな偏食野郎」

ステイル「…ありがとう」


御坂妹「この神父と違い、ミサカは素直に早急に感謝の言葉を御2人に送ります。ありがとうございます、とてもうれしいでごわす。
と、ミサカは本音だと八橋よりもお漬物類がよかった心情を吐露します」


麦野「本当、素直な人間がいないなここは!!」

神裂「あなたが言いますか!?で、あなた達が此処にいるのは…」

ステイル「同じだよ、君たちと」


そうだ。2人共、ステイルや御坂妹と同じだ。
神裂は御坂妹に近い立場で、ツンツン頭に用があったがあの娘がいるため諦めた。え、同僚のグラサン?
安眠した顔見た瞬間ぶった切りたくなるので無し。
麦野も仲間と馬面に会いたがったが、今日は絹旗が京都でのことを1人で伝えたいと言ってたので無し。黒子は言わずもがな。

617: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/16(月) 00:04:28.43 ID:6y2PWGWG0


麦野「つか、表のワゴンやマイクロバスは何なんだよ?撮影かなんかか?」


彼女が質問した通り、『冥土返しの病院』の駐車場にはこの時間には珍しく車が多く止まっており、それらの車種はワゴンやマイクロバスである。
そして、その周りではテレビスタッフが慌しく仕事をしている。


御坂妹「忘れたのですか?今日はテレビ番組の撮影で、夜間医療の現場を撮影すると言ってたではないですか?
と、ミサカは今日の日程を忘れたムギノンに伝えます。痴呆かよ」


麦野「真顔でナチュラルに喧嘩売るな、オマエ。…ま、忘れてたのも事実だけどよ」


そう、今日は番組改編期の『真夜中の仕事』と言う特番の撮影で、その1つが病院の救急医療である。
番組はよくあるひな壇形式でワイプに芸能人の表情が写る典型的な物。
その中のコーナーで、出演者の数人が実際の現場に行くVTRの撮影が今日この病院なのである。
どう考えても病院関係者からしたら邪魔であるが、院長の『冥土返し』が「1回ぐらいならいいかもね?」との事で今日に至る。


麦野「物好きだね~先生も」

ステイル「人間、歳を取ると好奇心が余計な位に旺盛になるんだよ。どこの国の人間でもね」

神裂「本当、そう思いますよ」

御坂妹「何か実体験からの言葉のようで、重みが感じれます。と、ミサカは中間管理職のような哀愁を醸し出してる御2人に同情します」

神裂「ありがとうございます」

麦野「つか、流石に私ら団体がいたらまずいだろ?絹旗達が来たらどこかに行こうぜ」

618: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/16(月) 00:05:58.01 ID:6y2PWGWG0


白井「そうだったんですの。ですからこの様な時間でも人が多かったんですのね」


病室から戻ってきた黒子達が合流すると。先ほどまでの流れを軽く説明する。
で、一行は黒妻の店か、服部の店か、どちらに行くか決めようとしたが。


絹旗「歩きながら超決めませんか?どちらに行くにしても乗るのは『多摩センター』行の超バスですし」


と、ごもっともな意見が出る。しかし、ここで一同に違和感が生まれる。
この面子で彼女がいると絶対に必要な考慮だ、が普段は彼女から申して来るので気にしないが。


麦野「おいインデックス、調子悪いのか?」

インデックス「へ?だ、大丈夫なんだよ」


そう、彼女がいつも問う事。
それは『~が食べたい。~量が多い方がいい』等、それらの言葉がない。
それ以前に、ここ最近の彼女は様子がおかしい。


ステイル「本当に大丈夫なのかい?やっぱり、飛行機で移動した疲れが…」

インデックス「大丈夫なんだよ!!」


ステイルや神裂も同じように彼女の変化。何かを隠し空元気のような態度が気になっていた。
そして、今日のインデックスは輪をかけて様子が変だ。


白井「…もしかして」


しかし、黒子は以前彼女と同じような雰囲気の者を間近で見ていたことがある。


白井「誰かから観られてると感じるのですか?」


そう、彼女の雰囲気は2年前に御坂美琴が訴えていた『誰かの視線』と同じ雰囲気だ。黒子の問いに対し、インデックスは


インデックス「…半分、当たってるかも」

619: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/16(月) 00:09:08.77 ID:6y2PWGWG0
インデックス「視線…と言うより『プレッシャー』に近いかも」

御坂妹「『プレッシャー』ですか?」

神裂「重圧みたいなものですか?それをここ最近常に感じてると?」

インデックス「そっちは違うかも。…『プレッシャー』は今日、『学園都市』に帰ってからで」


微妙な肯定だが、それでも引っかかる。


麦野「…つか、流石に言え。お前の様子が変だとこちら側も困るし、お前を心配するのも私やステイル、いっぱいいるんだ。
向こうの世界に行っちまったお前の『ヒーロー』さんもな。つか、いつも思うんだがお前はこの辺りの街の愛称が好きだな」

インデックス「ッ!?」


インデックスが麦野の言葉に素早く反応する。
麦野からしてみたら、飯の事に反応しなくて先の言葉に反応したのに驚く。


麦野「…とにかく。今から行く店で話せ。こっちが気が付かないうちにお前の癇に障る事があったら謝るし、悩み事があったら真剣に聞く。
…頼むよ、仲間に心配かけさせんなよ」


麦野の心からの言葉と優しい表情に、インデックスは何かが壊れそうになった。しかし、今はまだ壊れると木で無い事は彼女にも解る。


インデックス「解ったんだよ」


安心した表情で答える。流れ的にこのまま夕食に向かおうとした時。


「一一一さん入りまーす!!」

絹旗「超うっせ!?」

ステイル「雰囲気ぶち壊しだね」


響くテレビスタッフの声。内容から察するに、男性アイドルの一一一が現場入りしたのだろう。
夜の病院なのだから空気読んでほしいものである。しかし、仮にも特番に売れに売れまくってる一一一が出るのである。

神裂「なにかの番宣なのでしょうか?」

白井「あー、そう言えば今度恋愛青春映画やるんですよね」

絹旗「爆死しそうな超A級映画に出るみたいですね」

ステイル「何とも、ウチの女性陣が興味なさそうなジャンルな事だよ」


御坂妹「エセ神父に忠告しときますが、そのような映画の1本や2本見とかないと普通な年頃の異性との会話が弾みませんよ?
と、ミサカは自身が興味ない映画を観ることを薦めます。ツカ観てこい」


ステイル「…遠慮しとくよ」

麦野「あれ、その映画のヒロインはーって、インデックス!?」


と、そのまだ見ぬ映画の事を軽く貶してる1同をよそに

インデックス「ッツ、ッツ!!?」


インデックスが目を見開いて顔を真っ青にし、首を絞められたかのごとく冷や汗を噴き出し震えていた。
そしてインデックスの状態を一同が認識した瞬間、再びスタッフがもう1人の出演者を紹介する。
そう、一一一と映画で共演するアイドル。

「アルミンさんはいりまーす!!」

「どうも~♪」


金髪で小柄なアイドル『アルミン』が現場に入ってきた。
まさかと思う。そうだ、この状況だとインデックスが言う『プレッシャー』を発する相手が彼女だと言うことになる。
どう見ても『魔術側』『化学側』でもなさそうな『アイドル』。

620: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/16(月) 00:11:57.03 ID:6y2PWGWG0
麦野「い、インデックス?」


確認を取ろうと麦野が代表で聞こうとし瞬間


「キャッ!?」

「なんだ!?」


御坂妹「チャフ!?」


乾いた破裂音。次の瞬間、辺りに『白い何か』が舞う。
最初その場にいた者は消火器等が破裂したのかと思った。
マネージャだろうか、一一一とアルミンを素早くガードする。
怪我をさせないように自らの身で守るマネージャーの鏡だが、その『白い何か』が一一一の髪の毛に付着すると彼はそれを手に取った

「…鳥の羽?」


そう、『白い何か』は鳥の羽だ。
更にその羽には何か粉末が塗してあるが、それが何は彼が知る事は無かった。

「眠りなさい!!」


その場で男女の数人の言葉で響く凛とした声。
その声を聴いた羽まみれた者達はまるで力尽きたかのように倒れていく、無論一一一も例外ではない。


絹旗「チョォーー…zzz」

御坂妹「またですか、絹旗さん?」


そして、またもや絹旗が眠ってしまう。
そう、これで麦野やステイル達が理解した。


麦野「これって、前回京都で海原が使った」


「そうです。アステカの子守りの術式ですよ」


陰から出てくる青年、海原ことエッツァリだ。
そう、先程のは彼が使用したアステカの術式で、トウモロコシの粉末と鳥の羽をぶちまけその地の言葉で『眠りなさい』と言うと皆眠ってしまう術式だ。
尤も、本来は彼が述べた通り『子守り用』の物である。


海原「ですが、この術式はおなじアステカの『護符』を使用し姿を変えてる者には別の効果が出るのですよ」


説明するように響く声で眠ってしまった人々の間をよけながら、ある少女の元へ向かう。同じように麦野達も近づく。
そこにはある少女が、右手で顔を抑えながら立ちあがろうとしてた。


海原「簡単に言えば『護符』の無効化ですね。2度とその札は使えませんよ。」


「そうみたいだな、しかしお前も…いや、予備の培養させた護符があるのだろう」


先程までの人々から愛される声は何処に行った?人々を引きつける声には変わりないが、妖艶と言う言葉が近い。
何故、アイドルから言えるか?答えは簡単だ。


インデックス「でもね、あなたはさっきまでのスラブ系の顔よりもそっちのゲルマン系の顔が良いよ。ね、時の魔女『アルティミシア』」


ばらばらと護符が割れながら現れる顔。
忘れもしない、現時点でこの街の最大の問題事項であり首謀者でもある人物。


アルティミシア「久しぶりであるな。…こう言ったらいいのかな?ご先祖様に1st世代の方々」


『魔女』

627: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:12:37.87 ID:BJXjh+1b0


敵地への単独強襲。
物語の終盤でよくある展開だが、それには仲間と共に戦いながら時には犠牲を出して行くものだ。

そう、だからこそ


アルティミシア「おい、せめてコーラぐらい出せ。でないとボッタクリピザの美味しさが半減してしまうだろうが」

インデックス「その意見には賛成かも。ケータリングピザにはコークが必須なんだよ。それにアメリカ式のならタバスコもね」

冥土返し「ふん、間違えてXLサイズ2枚頼んじゃったけど、結果オーライだったかもね?」

ステイル「最近はローマの奴らのせいで食べれなかったけど、やっぱ僕はこっちのタイプのピザがいいや」

麦野「ゴラ」


こんな意味解らない展開にツッコミが1人しかいないのが異常である。
しびれを切らして麦野が質問を入れる


麦野「おい魔女!」

アルティミシア「なんだ、食事中に無粋な」

麦野「食事続けたかったら私の質問に答えろ。何故ここに来た、目的はなんだ、今まで何してた、お前らは何なんだ!?」


本当に食事を続けさせる気はあるのか、4つの質問を一気にぶつけた。
しかし、どれも麦野達なりにはある程度推測を立ててるが、確信的な答えはない。


アルティミシア「さっきの通り、テレビの仕事でここに来た。今までお前たちも知ってる通り『アイドル』として仕事してた。私達は私達だ。
さて、質問には答えたぞ。私は目の前のピザを頬張るので忙しい」


インデックス「あ、人のてりマヨ勝手に食べないでほしいんだよ!!」

アルティミシア「うるさい!お前こそ人様のハワイアンさっきから何枚食べてる!?」


求めてた内容とは程遠い回答を即答され。
剰え、目の前で喰い意地シスターとの小学生のような食った喰わないの言い合いを始める始末。


麦野(そう言えば、コイツ等と初めて遭遇した時もホテルのバイキングでインデックスとの食い意地張ってたな…)


いつぞやの、ホテルでのバイキングにて遭遇した時の事を思い出す。
あの時もそうだ、インデックスと寿司を巡って言い争いをしてた。そう、あの日から彼女たちの攻勢が始まった。
しかし、ここ最近はどうだ?とある高校にての騒動、いや麦野たちがSAOへ潜入した日の翌日からの目立った活動は見られない。


麦野(仕方ない、神裂たちが『捕虜』の様子を見終わってからでもいいだろう。どの道、ピザを食い終わるまで話にならなそうだな)


628: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:14:20.98 ID:BJXjh+1b0


『冥土返しの病院』の地下


病院の地下、と聞いてまず好印象を持つ人間の方が圧倒的に少ないだろう。
『解剖用の検体保管庫』『発電施設』など、知らない者からしてもいい印象はない。
無論この病院の地下にもそれらはある。しかし、この病院の特殊な施設として『能力者重病人隔離区画』と言う物がある。
それは本来、能力開発の過程にて何らかの重大な障害が発生した場合にのみ使用されるが、その風景は『監獄』と言っても差支えない。
が、そのような事態の大方は研究所等にある施設と大差なく、この病院の施設は使われたことは無かった。
そう、彼女が搬入されるまでは。


「…ふん」

神裂「あ、アナタは!?」

白井「おや、ここに誰かがいると言う事は先生のお知り合いで?と、思いましたが神裂さんのお知り合いのようで」

絹旗「うお、超マッチョ」

白井「そして溢れ出す、紳士な雰囲気」

海原「何故あなたが此処に!?」


『魔術側』のリアクションが無ければ、彼は絹旗達の反応通り大柄マッチョの紳士で『冥土返し』の知人だと認識されてたであろう。
しかし、彼は『魔術側』の人間なら知らぬ人などいない存在、『神の右隻』の1人にて『二重聖人』『後方のアックア』。
しかし、今ではそれらの肩書は過去のもの。


アックア「…『偶然』ではあるが、あのシスターや君の話を聞いてな。…話が本当ならば興味を持たない方がおかしいのである」


白井「それなら、私もインデックスさんの話を聞いた時には『その事』にとても興味を持ちましたし、今でもあります。
…ですが、些か無理が大きすぎますし、それに『その力』はあなた達の方でも」


海原「『神話レベルの術式』です。…ですが」

神裂「各国の神話を調べれば調べるほど、彼女達の行動は『それ』にとても近いです。しかし…その中には」

アックア「『科学側』の論理が入ってる。のであるな?」

白井「その様なのですが…」


不確定な要素の情報を聞くと、アックアは胸ポケットからUSBとカードの記録媒体2つを出す。
どちらもユニバーサル企画の品。


アックア「私なりに試したいことがあるのである。だが、私は機械に疎いのである。そこでアステカの魔術師と化学側の人間1人を貸してほしい」

海原「自分ですか!?」

アックア「ああ、で能力者だができれば音感がある方がいいのである。それに、何やら嫌悪感を示す存在が来てるようであるな。そこの少女と同じように」


と軽く振り返るように後のガラス越しにベットで拘束され、目を見開いたまま横になってる少女を見る。
絹旗や白井と変わりない少女であるが、彼女は何御力を持たない人間だった。そう、あの京都での夜までは。
彼女が捕えられた時の名前は『リノア』。魔女の元で暗躍した『原子崩し』である。

629: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:15:10.25 ID:BJXjh+1b0


廊下


白井「いいのですか、唐突に現れましたあの紳士に任せても?」


神裂「彼は信頼できる魔術師です。仮に力を無くしても知識は無くなりません。
アックアの考えに賭けてみることで、『魔女』との交渉にカードが増えるかも知れません」


廊下を話ながら応接室へ向かう2人。アックアの指示通り絹旗と海原を置いて来てきた。


御坂妹「御二方」


後方から物静かに御坂妹が声をかける。そして


神裂「ヨ、よろしいのですか」

白井「作戦としては解りますが、…やはりち、その娘を同席させるのは」

御坂妹「リスクは承知の上です。と、ミサカはミサカはこの子の口調をまねてこの子の決意をミサカの翻意を2人に伝えます」


無表情ながらも力強い視線。そして、幼さが1年半前と比べてやや薄くなった顔。


麦野「どういう意味だゴラァ!!」


しかし、そんな空気を断ち切るかのように麦野の怒号が響く。
状況を確かめるために4人は急いで応接室へ向かう


アルティミシア「やあ、ここで3人追加とはとてもいい。この3方にも決めてもらおうではないか?」

630: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:15:49.89 ID:BJXjh+1b0


応接室へ入ると『会談』が始まったのか、アルティミシアが麦野達の反対側のソファーに足を組みながら余裕の表情で神裂達を向かいいれた。
本来、拳の1発でも飛んでもおかしくないが、麦野達は此処に彼等がいるから。
アルティミシアも薄々此処にリノアが拘束されてるのを推測してるのだろう。
そして、何らかの発言が麦野の勘に触ったのか?


インデックス「かおり…」


インデックスも神裂の方を向く。彼女も険しい顔をしている様子を見ると、他のメンバーも同じであろう。


神裂「…状況を説明していただけると、ありがたいのですが。あ、この臭いは説明しなくていいです」


流石に、ピザ特有のチーズの油臭さは説明抜きで構わない様だ。

631: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:17:20.67 ID:BJXjh+1b0


冥土返し「…僕から説明してもイイかな?彼女はピザを食べ終え食後のコーヒーを飲み終えてこう言ったんだね?」

白井(いなくてよかったんですの。突っ込み疲れしそうでしたの…)

御坂妹(ああ、だからむぎのんは他の人よりも機嫌が悪いのでしたか)


冥土返し「つまりね?

◎彼女の仲間である例の少女を解放してほしい。

◎今後、我らに干渉するな。こちらもしない。

かなり要約したけど、こうかな?」


アルティミシア「流石だ、歴史に名を残す名医なだけはある!」


落ち着いた声ながらも、その表情は自分の言いたいことを纏めてくれた親への感謝の気持ちでいっぱいの子供のようだ。
が、そのころころ変わる表情を誰1人凝視する者はこの場にはいない。
見下すように見るか、直視しないか、とにかく『魔女』から視線を逸らす。


白井「要求だけでそちら側からの提案の一切ない無理強いな要求ですの。これは麦野さんが声を荒げる理由も解りますの」


御坂妹「何より、名前を知らない者が勝手にミサカたちのピザを全部食べた時点で、あなたの提案は受け入れる物ではありません。
とミサカは夜食を食べたであろう『魔女』に遺憾の意を示します。くたばれ」


アルティミシア「おお、そう言えば面と向かって名乗って無かったな。
…普段なら、自身の持つ情報をベラベラと喋るなと言う私だが、今回はピザのお礼とこちら側の条件も飲んでもらいたいのでな」


そう言うと、彼女はゆっくりと立ちあがりスカートの裾を軽くつかんでお辞儀をし名乗った。





「『アルティミシア』だ。そちらの名医は初対面だが、マネキンとは1度ホテルにて遭遇したが、名乗らなかったかな?」



632: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:18:22.75 ID:BJXjh+1b0



御坂妹「…人様の事を侮辱するような方の名前を覚えるつもりはさらさらありません。
と、ミサカはミサカの事を侮辱した魔女に向かって自分の意思を伝えます。生意気…」


麦野「生意気な餓鬼には、私は厳しい躾が必要だと思うんだがな…」

神裂「奇遇ですね。私もそう思ってました」

ステイル「と、言うより。そろそろみんな、限界でしょ」


魔女が名乗ると、麦野達はしびれを切らしたかのように、原子の光球を、刀を、炎を、自動小銃を構える。


インデックス「…だね」


それらを確認すると、インデックスはアルティミシアを見下す様に睨みつけると、右手で指を『パチン』と弾く。
それはまるでマフィアのボスが部下に目の前の『ゴミ』を掃除しろと合図するかの如く。
無論、この場合での『ゴミ』は邪魔者、即ち目の前の『魔女』


白井「チョッ…」


その事に気が付いた黒子が止めようとしたが、時すでに遅し。光線、斬撃、火炎、弾丸が目の前の小柄な少女に無数に襲い掛かった。
硝煙の臭いと弾丸の轟音が響き、火炎と光線の影響で温度が、斬撃による風圧等がが応接室で暴れ狂う。


白井「耳が、耳がァァァァァァァァァァァァァ!!!」


この様な事態になる事を予想できなかった白井、爆音にのた打ち回る。


冥土返し「ふう、駄目だよ?サングラスと耳栓位用意しとこうね?」


白井「何で私だけぇぇぇぇぇぇ!!!!」


この対応は年の功と言う物か?

633: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:19:25.18 ID:BJXjh+1b0


数分間続いただろうか、それぞれの攻撃が終わり。皆目の前の煙を覗く。


御坂妹「この時点ですでにおかしいですね。と、ミサカはマガジンを交換しながら疑問点を述べます」

ステイル「確かに、焼け焦げた跡がない時点でおかしいね」


そう、少なくともおかしい点は最低でも1つはある。それはこの部屋の状況だ。
先ほどまでの攻撃は『応接室』の室内で行使された。
そうすれば当然、家具の1つ2つ、と言うより後方の壁が崩壊してない時点でかなりおかしい。


麦野「結構本気で撃ったんだけどなぁ、『原子崩し』」


そう、少なくとも彼女の能力は平たく言えば『すべてを貫くビーム』だ。
こうして壁際まで歩いて窓を開けることなどありえない。と言うより、窓があるはずもない。


麦野「それがどうして窓や壁があるんだか…教えてくれないかアルティミシアさんよォ?」


窓を開けると煙が外へ勢いよく出て冷たい空気が入れ替わるように入ってくる。
晴れてくると、そこに麦野が質問した相手がネイルを見ながら退屈そうに平然と座ってた。


アルティミシア「あのような事をして平然と質問する神経は、『図々しい』や『面の皮が厚い』と、この時代のこの国では言うのではないか?」


不機嫌そうにも応える魔女。


インデックス「…やっぱり効かない」


麦野「そりゃ未来の歓迎作法なんか私達には解らないからなぁ。正しい作法があるなら是非とも教えて欲しい物ですよ。
『時の魔女』…いや、『未来人』さんよぉ?」


『時の魔女』『未来人』まるで漫画やゲームなどのフィクションの中でしか聞かない言葉だが、その言葉に驚く者は今現在この部屋にはいない。

634: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:20:32.40 ID:BJXjh+1b0


アルティミシア「ホウ…いつ、気がついた?」

インデックス「最初に疑ったのはあなた達がルーマニアに現れた後なんだよ」

神裂「ルーマニアのあの村。生活配管を見ましたらとある伝説の魔術の陣の形でした。『時の術』」

ステイル「それに、過去内戦で破壊されたはずのモニュメントが再生されてたのもヒントの1つだった」


御坂妹「こちらからはこの『演算兵器』です。
とミサカはどこぞの推理物語の謎解き役が犯人に証拠を突きだすかのように袋に入った銃を『魔女』に突き出します。バーロー」


何処からともなく捜査の証拠品の様に『演算兵器』を取り出した御坂妹。


御坂妹「こちらの銃は試作段階で、試作量産品を含めてすべてが研究所にあります。
また、これの製作に関わった全ての関連項目、また情報漏洩の点からも洗いましたが、全て白でした。
つまり、この銃を手に入れるには何処からか持ってくるか、作り方を知っている人物がこの時代で製作するか」


麦野「それにお前らはベラベラと情報を話さない主義らしいが、同じような意味の言葉を言い過ぎてる。
現に、さっきお前の正体がばれた時も言ってたよなァ?例えば『1St世代』とかなぁ?」


冥土返し「現時点で能力者の区分に採用されてる言葉の中に『1St世代』はないね?けど、提案されてる言葉にはあるね?たとえば」


アルティミシア「現時点では、『能力者の生んだ子孫が、能力者として目覚めた場合』、定義は現在未定だが『レベル5の後任』だったかな?
提案された冥土返し先生?」


冥土返し「…そうだね?」

白井「すらすらと、私にも知らない情報を…」

アルティミシア「当たり前だ。『1St世代』の基準が決まるのは少なくとも数年後だ。…その時に、目の前の彼女は無論『1St世代』になるがな」

麦野「ほう。その言草だとお前らは『未来人』として認識を確定していいんだな?」


アルティミシア「今更どうしろと?」


認めた。彼女は自らを『未来人』と認めた。

635: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:22:28.45 ID:BJXjh+1b0
麦野「『未来人』ねぇ…未来人は精神体かウィルスかなんかの御仲間ですかぁ?その体はルーマニアのドイツ系少女…イデア、だったかな?」

神裂「ええ、イデアで間違いないです」

麦野「そう、イデアの身体だろうが。気が付いてると思うが、お前のその飲みかけのコーラが入ったコップについてる――」

アルティミシア「私の唾液をお前がつけてるネックレスの『カメラで撮影しDNA鑑定』したのだろう?」


『カメラで撮影しDNA鑑定』、そのまんまの意味だ。
これは暗部が持つ情報端末の1機能である。カメラで唾液血液等の体液を撮影すると、約30秒でDNA等を解析できるアプリ。
特徴はカメラを問わない事だ。それこそ玩具のカメラ画像でも解析できる代物。実用化されたのは半年前。


アルティミシア「それ以前に、お前たちは『リノア』で散々できる限りのことを凌辱めいた方法で調べただろう?
基本的に私の身体はリノア達と変わらない。
それに、私はその『アデル』の容姿をたいそう気に入ってるからな。護符は仕事以外使わない」


白井「…私が理解しやすい方法で解釈すると、その『アデルさん』のなかにあなたがいる。と?」

アルティミシア「もっとわかりやすく言えば、PC等のファイルの上書きだ。…そう、『ジャンクション』と言えば解り易いかな?インデックス」


『ジャンクション』聞き慣れないワードを言うと魔女はゆるりとインデックスの方を見る。場の者も一斉にインデックスに視線を集める。


インデックス「…だろうね。『ヘブライ魔術』、それにネイティブアメリカンの術法で死者の魂や『精霊』をその身に宿して行使する魔術があったのは間違いないんだよ。ただ、どちらもとても不安定な物であるし、そもそも『天使』と同等の『精霊』を身に宿すのは――」


アルティミシア「聖人ぐらいでないと無理…いや、そこまで追い詰められた者でないと使わないな。今の時代では」


インデックス「それに、『ジャンクション』は行使するたびに、術者の記憶、魂に影響を残していく。
例えば死者の魂なら、行使しすぎれば術者の魂が上書きされ死者と入れ替わり、『精霊』なら記憶がすべて消えるか、精霊に体を取られ怪物になる」


アルティミシア「抜けてるぞご先祖様。
前者の場合、今現在の主な方法は『不老不死』の為に老いた体から自身の魂を抜き出し、新たな体に定着させ生きながらえる方法。だろ?」


ステイル「更に付け加えると、その術を行使しようとする物なら、
僕たち『必要悪の教会』が術者の『ジャンクション』の知識量に沿った警告、制裁を加えてるね」


神裂「貴女の言葉から読み取ると、貴女の時代ではかなり一般的な魔術のようで。
実際、貴女は精霊の1つ『セイレーン』を手下の身体を媒体に召還しました。…かなりとち狂った御時代に住んでるようで」


アルティミシア「…かもしれんな」


寂しそうに、神裂の話を聞く『魔女』。


御坂妹「…つまり、『精霊』がどうこうの件を抜いて考えますと、あなた達はこの時代に来るのに『身1つ』、ではなく『魂1つ』でやってきたのですか?
と、ミサカは『魔術側』の話を自分なりに整理してまとめてみました」


そう、御坂妹の言う通りになる。彼女達の『時の魔術』、仮に『ジャンクション』と言うのならば、
その術式は何らかの方法で未来で術式を発動させこの時代へまで遡り、この時代の人間に強制的に乗り移る事だ。


白井「そして、あなた達が辿り着いたのはルーマニアの村であり、その村人の身体を使い『この街』で暗躍してたと?」

アルティミシア「…正解だ」


つまらなそうに肯定するアルティミシア。
しかし、彼女から発せられる『オーラ』ともいえるのか、いや、この場にいる者が解っている。
『そんな事を聞きたいのか?』と、無言の言葉を。

636: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:24:26.58 ID:BJXjh+1b0


インデックス「…なら」


そんな中、インデックスが口を開く。
それはアルティミシアが聞いてほしい、インデックス達が聞きたい言葉。そう


インデックス「あなた達がこの時代に来たのは何の目的で?
…正直、『科学側』の事の多くは解らないけど、あなた達の『魔術』はデタラメとしか言えないんだよ」


麦野「それを言うなら科学、いや『超能力』についてもデタラメだ。『リノア』、アイツの能力は間違いなく私と同じ『原子崩し』何か最たるものだ」


アルティミシア「デタラメに感じるならデタラメで認識するがいい、この時代の常識ならな。
…私とて、時代を遡れば遡るほど常識が崩れて行った。本当に…。話がずれたな。
で、私達の目的だが…そこのツインテールの彼女はどう思う?」


白井「私ですの!?」


唐突に名指しされる黒子。
無論、『魔女の軍団』の目的について、彼女なりに何度も考えた。
が、その答えはどう考えても、どう向こう側の立場に立ってもその考えは1つの結果に集約される。
おそらく、麦野やインデックス、この場にはいないが絹旗に結標、そして御坂美琴もこの件に首を突っ込んでたら黒子と同じ考えに至ってただろう。
そう、至ってシンプルな考え。


白井「…この時代、過去に遡って、あなた方の目的、未来に戻って貴女の望む世界を作り上げるために、特定の人物、建物の破壊。
つまり『歴史の改竄』ですの」


アルティミシア「正解だ…ま、流石にここまで正体をばらすなら解るか」


そう、『歴史の改竄』。
多くの者が『時間遡行』などの能力があったら行使したい望み。願い。そして


麦野「チープな願望だな」


そう、チープだ。
その願いは、あまりにも一般的でありふれた願い、古来からある人々が思う願い。
そして、古今東西様々な創作物の題材になる願い。


アルティミシア「しかし、そのチープな願いに人がどれほど思いを託すか…どれほど代価を払うか
…その事に対しては『魔術』としては先程ご先祖様や聖人達が熱弁しただろうし、お前もある程度解っているのだろう?」


そうだ、『歴史の改竄』、いや『時の魔術』がどれほどの代価とそれを行使するのに用意が必要か。
そもそも、『科学側』で『魔術』など、麦野は明確な接点としてはあの日、インデックスと野球スタジアムで出逢った時からだ。


麦野(あれ、球場ってどこにあったっけ?東京ドーム?)


アルティミシア「我らは、そのチープな願い。『歴史を改竄』するために時を遡り、この時代へやってきた。が、我らの旅路はまだ途中だ。
だから安心しろ、我らはじきにこの時代から姿を消す。だから、先の要望2つを出した」



だそうだ。彼女が麦野達に出した提案。

【仲間である『リノア』を解放してほしい】

【今後、我らに干渉するな。こちらもしない】

確かに、このままだとその話2つは真実であろう。

637: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:27:30.73 ID:BJXjh+1b0


御坂妹「…解せませんね。と、ミサカは素直な意見を吐露します。正直、貴女は『魔術』素人のミサカが見ても大物だと思います。
それはそこのシスターとポニテとは別のベクトルですが貴女ほどの力があれば、貴女の時代で貴女はそれ相応の地位を、あなたの望む物を手に入れられたのでは?
とミサカは疑問を魔女にぶつけます」


アルティミシア「それはまるで、この時代なら『レベル5』やそこの『聖人』ならば全ての願望をかなえられるような言い方だな。
が、そうでないのだろう?
同じだ。我らの時代とて不穏分子は

『量産化された『幻想殺し』や『レベル6』『聖人』』に駆逐されるだけだ」


麦野「まてや」

神裂「ちょっと待ってください!」

アルティミシア「えっ、なんだ!?」


麦野と神裂の反応に驚いた表情で話を止めるアルティミシア。
その反応からすると彼女の時代では当然なのだろう。
が、彼女はとんでもない事をさらっと言った。
彼女の発言に驚いたのは何も麦野と神裂の2人だけではない。
が、その言葉にどのように反応すればいいのか解らないのだ。


冥土返し「…もしよかったら、君たちの時代の事を話してくれないかな?当然だけど、僕たちは君たちの情報が少ないからね?」


そんな中、年長者である冥土返しが提案してきた。
『自身の事を敵にベラベラ喋るのは愚か者のする事』と言う彼女が


アルティミシア「…いいかもな」


まさかの承諾だった。しかし、それは何処か寂しそうで…いや、今回遭遇してからどこか『魔女』は情緒不安定だ。が、


インデックス「少し、温かい物のみたいかも…」


それは先ほどから『魔女』から『御先祖様』と言われてる彼女もだ。
麦野や神裂達も聞くことは無言で肯定した。正直、相手の事情など知ったことか!
と言いたいが、攻撃が通じず、更に情報があるようで無い相手が自身の事を話すと言うのだ。黙って聞くことにした。

冥土返しがインデックスが所望した温かいコーヒーと一緒にアルティミシアにもコーヒーを持って来た。
彼女はそれをゆっくりと口に含むと、目を閉じて語りだした。

この時、彼女の脳裏には遠い未来の記憶が、影絵のように映りだされた。

638: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:29:02.81 ID:BJXjh+1b0




「私の生まれた時代、…いや世界は、風俗、技術的にはこの2020年前後とそう変わりはない。…そう首を傾げるな、そうだったからしかたない」

「イイから、続けろ」




「その世界を言葉で言い表すなら、

――人々が争い合い、憎しみ合い、騙し合い奪い合い殺し合い、孤独になることなく、
自由で博愛に満ち、差別なく平等に己を邪魔されることなく、人生を全うできる世界――

そんな世界。だった」




「その言葉を聞く限り、私にはとても『時間を遡る』理由が見つからないですの」

「そうだな。確かに、この時代の価値観ならそうだな。…実際、科学と魔術、国家、宗教、民族、思想による血で血を洗う対立は私の時代には無かった」


「やはり、先程白井さんがおっしゃったとおり、『時間遡行』する理由が見当たりません。
私達…いえ、この時代の考えならば貴女の時代は『誰もが辿りつっけなかった、人々が望む理想的な世界』私にはそう思います」


「ああ、私も時間を遡れば遡るほどそう思った。あの世界が、国家、民族、宗派、科学と魔術、それらに其々属する人間の多くが望み夢見る世界だと。
…あの未来での出来事が無ければな」


「出来事ね…僕からすると、君のいた世界はこの国で言う『ぬるま湯に浸かってる』ような物だね。
多少の『不満』など、少し我慢すればいい。僕は15…もうすぐ16年の人生の間、どれほど自分の願いを…塞いできたことかッ!」


「そう力むな魔術師。が、お前の気持ちは分かる。とでも言っておこう」

「君の性格なのか、それとも配慮なのか、解らないけどその言い方はよくないね?」


「気にしなくていいよドクター。癇に障ったのは事実だけど、今の僕…いや神裂や麦野でも攻撃が通じない相手なんだ。
手を出さないよ。何より、この殺気の中でケロッとしてる彼女が気味悪い」


「病院で殺気はやめてほしいね、この場にいる皆も?病院だからね?後、君は煙草を吸うなとは言わないから、本数を考えてね?」

「すまない名医。…そこの神父。お前は『多少の不満なら我慢すればいい』と言ったな?が、それが吐き出せないならどうする?」


「…君の質問を、僕的な解釈で言えば『構わず吐き出せ』。それだけだ。
しかし、その言草だと、『本音』は言えなかった。違うかな?…いや、『不満』が言えない社会、だったのかな?」

639: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:30:28.68 ID:BJXjh+1b0

「なるほどな。大体わかった。…お前たちの未来だと『不満』を少しでも漏らすと、強制的に社会からドロップアウト
…そうだな、例えるならソ連などの東側国家にあった『思想教育』みたいなものか?お前が言った世界、どう考えても無理があるからな」


「ほう、『1St世代』の『原子崩し』様はそこまで当てるか。流石、歴史上の偉人の1人であるな」


「その言い方はスンゲームカつくな!…で、お前はその社会の落伍者になって、自分を弾いた社会、いや世界への逆襲、革命の為に『時間遡行』してこの時代に来たのか?
随分とまあ、苦労人な事だなあ!そんな手間をかけるぐらいなら、真っ当に立ち向かって社会復帰した方がよかったんじゃいんですかァ!?
なんなら、この街の社会復帰施設の1つや2つを――」


「皮肉全開の御節介とてもありがたいが、それは無理だったな。私が不満を持った時点であの世界での私の平和な生活は終わった。
…『不満』の原因は何だったのか、未だに分からないが」


「…で、その後どうなったか気になるかも」


「そのまんまだよ、ご先祖様。終わったんだ。私の普通の日常が。
…目が覚めたら私は培養槽の様な中に全裸で身動きが取れない状態でいた。
体中に開いたプラグに入った電極、頭を覆うようなヘッドギア。それら全てをうっとおしく気持ち悪いと感じるのに時間はかからなかった。
そうは思わないか?同じことを経験してるマネキンよ」


「きっとそれはミサカの調整の事を指してると思いますが、気持ち悪いには賛同できますがミサカには全身にプラグは無いのでうっとおしさには同意できません。
と、ミサカは決してマネキンと言う言葉に反応してその言葉を訂正するために『電波魔女』に反応したのではないと言っておきます。ウザイちび餓鬼だ」


「人形に…いや、私達の世界を作り上げた技術の結晶の1つのお前に言われたくない。
…戻そう、私達の世界は、今まで生きていた世界は『電子仮想世界』だった。そう、この時代に出来た、VRMMOの技術が種のな」


「それはつまり、茅場晶彦が作り上げたあのゲームの技術が元に?」

640: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:32:46.60 ID:BJXjh+1b0

「そうだツインテール。…私が生まれた世界、生きた世界は『仮想世界』だった。
…笑うだろ?『真実の世界は~』、なんて台詞、フィクションの話だけと思っていたが、いざ実際に話すと、滑稽でアホらしく思う。今の私がそうだ」


「それは、同情してほしいのかな?」

「そんな事は無いぞ御先祖。私はそのまま処分されることになり、そのまま排水管へ流された。が、その時、私は出逢った。『魔女イデア』に」

「また魔女ですか。と、ミサカは呟きます。ネタ切れの作家かよ」


「仕方ないだろ?事実は物語の様にスリルある展開ばかりではない。
…で、そこで出会った『イデア』に私は初めて聞いた概念の知識を叩きこむための教育が始まった。『超能力』と『魔術』初めて聞いた概念だった」


「ちょっと待ってください!!『魔術』『超能力』が初めて聞く概念!?なら、どうして貴方達はその2つを!?」


「知らんぞ聖人。
…そもそも、我らの生きていた『仮想世界』ではそれらの概念は確かに無かった。
が、『現実世界』は逆にあった。…使いこなさなければ死ぬ世界。そもそも、我らは『仮想世界』の住人、そして動力源の元だった。
現実世界は何処までも薄汚い廃墟の世界だ。培養槽のタワーだけしか光ってない、無機質な世界。それだけだった。
…そして、私のような者は処分されるだけだった、先に述べた『量産化された『幻想殺し』達にな』」


「それも、ミサカ達の影響だと言うのですか?」


「ああ。…実際、『レベル6シリーズ』の1つはお前の元、行方不明の御坂美琴がモデルだ。
以前仲間だったゼル、セルフィが命と引き換えに持ちかえった情報にそう記されてた。…正直、今の所それを信じるしかない」


「曖昧な情報だな。まるでお前らの存在そのものだな」


「そんなの解ってる『1St原子崩し』。……だから、駆逐された。理由は言うまでもないだろう?私達のような社会のはみ出し者は不必要。それだけだ。
…逃げ回った後、私は『一方通行』によって暴行された、死ぬ直前の『イデア』から『魔女』の力を引き継いだ。その時だ、私の今の力が発芽したのわ」


「そうなんだね?…君と君たちの世界がどれほど悲惨か解ったよ?
だけどね、君の言う言葉を全部聞くと、君たちは元の時代に戻れない事になると思うんだ?ちがう?」


「ああ。そうだよ!…我らは元の世界には戻れない、私達がいた時代がどうなってるか、確認もできない。
お前らが言った通りデタラメで中途半端な存在だ。だが、だけども、我らはそれを承知の上で行動してる。
人が愛し合い、憎しみ合い、語り合い、罵倒しあい、抱き合い、殺し合い、人間が人間として血を見て痛みを感じる、過剰な理性を、過剰な倫理が無い、欲求を制限することなく発散でき、本能を出しあえる世界の為に行動してる。
その為に、我らは命など惜しまない!…お前らに分かるか、欲望を、本能のままに発散できるこの時代のありがたさが!!?
過去の人間…いや、経験した事のない人間が解るはずも、無いがな。
当然。経験したこといからな。…理解できてるとは思えない。いや、理解できるはずがないだろう。
だから、あえて高圧的な言葉で締めさせていただこう」




641: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/03/30(月) 01:33:32.23 ID:BJXjh+1b0



                    「我に従え!!」

647: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/03/30(月) 23:53:14.87 ID:BJXjh+1b0
それだと、流れ的に一方通行もレベル6になりそうなんですけど

654: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:16:13.76 ID:8Bygm0us0

アルティミシアが自分語りを終え、これまたチープな言葉で話を閉める。
その言葉は彼女の行動原理、『願い』と同じく、チープだからこそ伝わる。
しかし、その言葉は古今東西多くの者が言葉1つで断るのも事実。


麦野「お断りだバーカ」


とこのように、断られるのが殆どだ。無論、魔女も


アルティミシア「流石に先の言葉を鵜呑みにされたら私も驚く」


聞き入れると思ってなかったようだ。
しかし、彼女の話で幾分か未来の状況が解ってきた。


神裂「つまりあなた達は、貴女方の時代で『革命』のような物を起こそうとしたが、絶対的な力の前に敗走し、この時代へと逃げてきたと?
そう言う話になりますよね?確かに『幻想殺し』『レベル6』が量産化されて、兵として襲いかかるそれと対峙するのは絶望的でしょう。ですが」


御坂妹「だからと言って、貴女方の理想の為にミサカ達を…この時代を巻き込むのはやめていただきたいです。と、ミサカは率直な感想を魔女にぶつけます」


ステイル「そもそも、君は僕たちに危害を加えないと言ってるが、『時間遡行』、それを行えば僕らには当然何らかの影響が出るよね?
それを黙って見る訳にもいかないんだよ、言っただろ、僕と神裂は『必要悪の教会』だと?その役割も」


ステイルの言った通りだ。先にも述べたが『必要悪の教会』の任務の1つに『時の魔術』の監視もある。
そもそも、『神の右席』ですら使えるかどうか危うい『時の魔術』を、
行使するたびに人的被害と犠牲が多い『ヘブライ魔術』で使おうとするならばどれほどの犠牲が出るか。
それは、過去数回の戦闘でその一片を見ているから解る。


神裂(戦った…何回?)



655: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:17:21.44 ID:8Bygm0us0

しかし、魔女はそれを承知のようで


アルティミシア「だからどうした?この場で力づくで私を止めるか、止められるか?十数分前に私へ何をしたのか、お前はもう忘れたのか」


そうだ、現状この魔女への攻撃は現状、超能力・魔術・銃火器は通じないのは少し前の麦野達の攻撃で証明済みだ。


白井「ですが、これからあなた達の行動を阻害することは可能ですの。例えば、『魔術』には下準備が必要と聞きましたの、それを妨害すれば――」

アルティミシア「お前たちは、我らが既に準備が終わってると考えないのか?既に術式が発動してると思わないのか?」


この言葉。


麦野「何言ってんだ?仮に、お前らがその『時の魔術』とやらを発動させる条件が何だか知らないが、
その強大な力を行使するのに準備なしで行使できるのか?」


ステイル「あり得ないね。確かに、君たちの行使する魔術はデタラメであるが『ヘブライ魔術』。僕たちの十字教の方式とは異なる。けどね」

神裂「だからと言って、私達が全く持って無知だとは思わないでほしいです。そもそも、貴方達が私達と現れて1年近く、私達が何も対策を――」

アルティミシア「取れてない。と、言わざる負えないなぁ…なあ、ご先祖様『禁書目録』さん?」


ゆっくりとインデックスの方を見る魔女。
それに対し、インデックスは


インデックス「…」


無言だった。それはまるで


麦野「う…嘘だろ?」


魔女の言葉を肯定してるも同然だった。
そう、『時の魔術』が発動してる事実を知ってたかのように。誰にも言わずに。

656: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:18:20.96 ID:8Bygm0us0


彼女の反応に驚く1同。


ステイル「な…な!?」


その中でも特に反応が良かったのは彼だ。


ステイル「何で言わなかったんだ!?言ってたら!!」

神裂「ちょ、ちょっとステイル、落ち着いて!」

インデックス「…言ったんだよ」


胸倉をつかんで勢いのままに問いただそうとするステイルを制止させよとする神裂。
しかし、とうのインデックスは零す様に言葉を放つ。
その言霊には『疲労』と言う言葉がピッタリのトーンだ。


麦野「待て、私も初耳だ。正直、記憶力に関してはお前ほどでもないけど自信がある。例え酒を飲んでる状況でもな」

御坂妹「そうです!仮に、そこの『外見で年齢確認する時に損ばかりしてる3人』が外見通りど忘れしていても」

神裂「喧嘩売ってるんか!!」


御坂妹「ミサカは記憶をMNWでクラウド保存できます。ですので、今現在MNW内を検索してますが、貴女がその様な事を言った、相談した記録はありません。
と、ミサカは検索完了して出た事実を言わせていただきます。そして、老け顔御三方はミサカを睨みつけないでください」


白井「そうですの!インデックスさん、何も虚構で相手に威勢を張らなくても私たちは――」

インデックス「何回も言ったし、相談したんだよ。…何回も、何回も!!けど、そのたびに」

アルティミシア「時が過ぎれば忘れてしまってた。…そうだろ?」


魔女が間に入る。が、その言葉に対し、インデックスは悔しそうに睨みつける。涙を滲ませながら。


冥土返し「どうやら、そのようだね?俄かには信じられないけどね?」

657: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:20:55.52 ID:8Bygm0us0
唖然とする。それもそうだ、いや、どのような反応をすればいいのか解らない、が正解だろう。
先の話と同様あまりにも実感がない。が、実感がない変化だからこそ、それはとてもも恐ろしいものである。


アルティミシア「何のために、我らがこの地で1年近くも、この時代で1年近くも暗躍してたか?
それはお前らが言った通り『時の魔術』の、準備・発動に時間を要するからだ。そして多くの魔術同様、失敗は許されない。
その為にその時代時代で実験をしてきた。そう、あの日の晩『とある高校』で最終実験したようにな?覚えているだろう、聖人」


神裂「ええ、あなたの行使した『魔術』の対処に手こずったのは覚えてます」

アルティミシア「どのように対処した?」

神裂「え?」

アルティミシア「どのように、何の魔術に対処した?と聞いた。覚えてるだろう?」

神裂「何の…魔術…」


言葉が詰まる。頭から脳からその時の記憶が下りて来ない。
いや…そもそも『とある高校』とは何処だ?学校名は?


インデックス「…とうまやもとはる、あいさにこもえの居る学校だよ」

ステイル「後者の僕の知らない友人ならともかく、土御門に上条当麻の学校を忘れるのは――」

インデックス「ねえステイル。あいさにこもえ、知らないの?」

ステイル「…何を言ってるんだ、君は」

インデックス「ねえ、くろこ。くろこは『警察官』目指してるんだよね?」

白井「そうですが…なぜこの場で?」

インデックス「ねえクールビューティー。とうまに買ってもらったネックレス――」

御坂妹「そんな物があるのなら、ミサカは毎日見せびらかす様につけています。とミサカは多少図々しく言います。…ですが、その言い方だと」

インデックス「ねえしずり。…この街の名前は?…ううん、この病院の住所は?」

麦野「住所って…」


まるで何回も、何回も同じことを聞いたかのようにスラスラと質問を続けるインデックス。
しかし、どれも彼女が求める回答でないのか寂しそうに次の質問へ流れる。
麦野も彼女の質問の意図が解ったが、彼女の知識だとインデックスの質問にはこう答えるしかない。


麦野「東京都多摩市…」


そう、この病院の住所。確かにあってる。が、インデックスの表情は「やっぱり…」と寂しそうに変え俯く。
麦野は彼女の表情を見るとこの病院の住所を全部言うのをやめる。


アルティミシア「『実感のない変化』…それが自己に不利益な場合、その変化を実感できると、とても怖くはないか?なあ、ご先祖様」


そして、彼女達を挑発するように魔女が言葉を乗せてくる。
『実感のない変化』が、それ以前に何がどう変化してるか麦野達には解らない。そう、彼女を除いて。


アルティミシア「ご先祖様、この病院の住所、冒頭だけでも教えてくれないか?」

インデックス「…『学園都市』『第7学区』の」

アルティミシア「正解」


白井「待ってほしいですの!『学園都市』と言う名は、この辺りが再開発された時に着けられた愛称で、
『学区』と言うのはかつてあった、独立都市計画の――」


アルティミシア「ほう、そうなってるのか…しかし、疑問に思わないのか?何故、この特に一帯で超能力開発が盛んか?万が一を考えたらとても脆弱な地域になるのではないのかね?『警察官』を目指す御嬢さん」


そうだ、仮にすぐ横にいる麦野が暴走した場合、一般人に被害が出るのは火を見るより明らか。


麦野「お…つ、つまり。お前たちは『学園都市』とやらを」

アルティミシア「直接的ではないが…事実上、消してしまったな。なあ、そうだろう、インデックス」

658: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:21:58.15 ID:8Bygm0us0


インデックス「そうかもね…」


インデックスが肯定する。つまり、魔女達はの『時の魔術』は


麦野「発動してるのか?」


アルティミシア「そうだ。と、ここは力強く言わせていただこう。
そもそも、時の流れで異質な我らがこの時代に来た時点で、時間への干渉は始まってる。
例えるなら、1つ水の流れのある場所に、異物である石を置いた場合、その下流はどうなるかな?
素直に考えれば、乱れるであろう?それだけの話だ」


神裂「つまり、貴女方。…いえ、あの日、京都に現れた『リノア』と言う少女がこの時代に現れた時点で」


アルティミシア「『時への干渉』は始まってる。尤も、偶然もある。
交わる事の無かった物語がどこかで交わった。誰かが交わらせてしまった。と言うかな?」


その内容は恐ろしい物だ。
1年近く前あの日、麦野達が京都に行った時に『魔女の軍団』の1人リノアが現れた、そして彼女が現れてた時に『時の魔術』が発動してたと言う事だ。
しかし、魔女の言草から推測するに彼女自身も『魔術の範囲』と自身で補足できてないのだろう。あまりにも迷惑だ。
そして、そのあまりにも迷惑な力と、迷惑なチープな願いの為に、『学園都市』を人々の願いを改竄してしまったのだ。

インデックスを除いて。


659: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:23:04.63 ID:8Bygm0us0


神裂「ちょっと待ってください!!なら何で、インデックスの記憶は何の影響もないんですか!?
仮に、私達がその術式に影響されて『記憶が改竄』されたとして、何でインデックスは!?」


アルティミシア「『特異な存在』、そうとしか言えないな。他にも『電撃使い』もそうだったな。
…おそらく、『幻想殺し』も『時の魔術』の干渉を受けないだろう」


御坂妹「しかし、ミサカも影響されてる可能性を含めると『電撃使い』でも高レベル、おそらくお姉様レベルでないと…。と、ミサカは推測を立てます」

ステイル「なら、逆に考えると、『電撃使い』や上条当麻はのような存在は君たちへの有効的な切札になると。そう言うことになるね…」

白井「しかし、貴女方がこの時代まで遡れた事を鑑みると、貴女達への阻害は無かった。…なぜなら」


麦野「今の私達みたいに周りの記憶を改竄、干渉して孤立させる。もしくは、本人から孤立していったのだろう。
…最悪な場合、お前たちにとって最高の場合は『自害』」


アルティミシア「そう言う事だ♪」

インデックス「…」


プルプルと震えてる。そう、インデックスは相談できなかった。
仮に相談しても、麦野や神裂達は1日2日で記憶が無くなってしまう。
それ以前に、インデックスの周りの変化、いや悪夢は悪化した。
姫神が消え小萌が消え、気が付くと『上条当麻』と出逢った当時、二年近く前、七月二十日に彼女が知り合った人物の多くが学園都市からいなくなっていた。
それどころか、上条当麻とインデックスが出会ったあの部屋、あの学生寮は今はない。

660: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:24:06.34 ID:8Bygm0us0


ステイル「ック!!オマエなァ!!」


唐突にステイルが机を勢いよく叩く、感情が爆発したかのように。
いや爆発したのだ、彼女を、インデックスへの魔女の対応に。
『魔女』の胸倉をつかみ持ち上げようとするが、つかめない。
何か『結界』のような物が張ってるかのように。
この感覚、覚えてる。SAOに潜入した際に、上条当麻を殴ろうとした際に現れた壁と同じ感覚だ。


ステイル「何故その子を追い詰める!何故その子に執着する!?時間遡行?
この時代に執着は無い、僕たちに危害は加えない?全く言葉と行動が合っては無いだろうが!!
そもそも『記憶』であの子を追い詰めることの意味をしっててやっているのだろ、『時の魔女』!!!」


アルティミシア「ああ知っている。お前たち2人が、無知ゆえに禁書目録の記憶を定期的に消してたことぐらいはな」


激昂するステイルに容赦なく油を注ぐ魔女。ルーンの魔術師の中でも炎属性を得意とする。


ステイル「君はねぇぇぇぇ!!!」


彼の感情が燃え盛るのは言うまでもない。


神裂「ステイル!!」

麦野「よせ、エセ神父!!」

ステイル「ナッ、放せ!!」


そんなステイルを止める2人の女性。彼女達もステイル同様魔女を殴りたい。
が、それをできないこと、今の時点で無駄な事を理解したくないが理解してる、理解せざる負えない状況。

661: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:25:02.38 ID:8Bygm0us0


アルティミシア「アハハッ」


この状況で唐突に歳相応の声で笑いを零す魔女。まるで、この状況を楽しんでるかのようだ。


白井「随分と楽しそうですね。私たちの醜態がそんなに面白いですか?」


アルティミシア「面白いのではなく、嬉しいのだよ。
やはり、我らが求めてた世界は過去にあったと言う事を、時間を遡れば遡るほど確信できるからな。
例え、干渉を受け、細かな歴史が変わろうとも、その時代の風俗は変わらないと言う事だ。
この喜び、本来ならご先祖様も消え去り、『幻想殺し』と『超電磁砲』、『一方通行』が見つかればなおいいのだがな」


麦野「欲を言えば?」

アルティミシア「『茅場晶彦』、奴を含めた数人と先の3人も消し去れれば、この時代での障害物は無くなる」

冥土返し「だけど、現状だと君たちは圧倒的な力があるかも知れないけど、不安材料がある。と言うことになるね?」


アルティミシア「ああ、そうなる事になる。が、それ以上に絶対的な力がある。
『時の魔術』『ヘブライ魔術』『賢者の石』。そして、我にこの場でコイツ等が傷1つ与えられないのも事実であるからな。
誰も止められない」


そう、この状況で『魔女』を『時の魔術』を止められる者はいない。

662: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:25:56.96 ID:8Bygm0us0


だが、傷を与えられる者はいる。


その人物はただ1人、『魔女』に対して物理的に攻撃を加えてきた。
まるで異能の存在の塊である『魔女』への対抗策として。
その人物は、常に守られてきた。神父に聖人に。そして、『幻想殺し』に。


乾いた音が、応接室に響いた。



663: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:27:03.59 ID:8Bygm0us0



インデックス「…痛いよね?」

アルティミシア「ッツ!?」


インデックスの平手打ちを喰らったアルティミシア。一瞬呆ける。
すぐに睨み返すが、その時には少女の右手の拳が目の前に迫っていた。


アルティミシア「ウゴッ!!?」


その時、余裕を全面的に出し、常に上から目線で対応していた魔女から素っ頓狂な声が発せられた。
少女の拳に吹き飛ばされた魔女は、吹き飛ぶとまではいかないが、その場に倒れ込む。


インデックス「っふぅ。…忘れたのかな?ホテルでも、とうまの学校でも貴女は私の手や足には無反応だったんだよ。
それは、ノーマークだったかもしれない。けどね、今日、貴女が言った言葉で確信したよ。
貴女がいう『特異な存在』、私みたいな存在からの物理的、ひょっとしたら魔術的な攻撃は防げないのかもね」


麦野「う、嘘だろ?」

インデックス「半分賭けだった。…けど」

アルティミシア「くっ…」

インデックス「そこで私を睨みながら立ちかがる『魔女』を見たら事実っぽいかも」


664: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:27:31.24 ID:8Bygm0us0

ゆらりと立ちあがる魔女。インデックスが言ってる事が本当なのか、先程までの余裕は皆無だ。


インデックス「無様だね。本来ならば圧倒的な力で、圧倒的に制圧できる魔術なのに、中途半端なあなた達のせいでこんなにもろいなんてね。現にほら!」


インデックスが自信にあふれた言葉を放つと、空間が一瞬ゆがむ。次の瞬間、テレビの砂嵐のような現象を皆を襲う。


白井「な、な、なんですの!?」

665: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:28:20.93 ID:8Bygm0us0


アルティミシア「な、何が起こったのだ!?」

インデックス「あなたが1番わかってるんじゃないの?何が起こったか?確認してみたら?」


その瞬間、アルティミシアを含め場にいる者達が一斉にそれぞれの方法で状況を確認する。
そして、すぐに変化を理解できた。


麦野「ま、街が、『学園都市』に戻ってる!?」

アルティミシア「『リバウンド』しただと!?」

インデックス「そうなるかもね。『時の魔術』、不完全ゆえの『リバウンド』。しょうがないかもね。だって―――」


インデックスが言葉を続けようとした瞬間、重い発砲音と共にインデックスの頭をかすり切るように何かが通過する。
銃弾、『魔女』の愛銃M1911だ。


アルティミシア「それ以上喋るな。…やはり、私はお前が嫌いだ。
『御先祖様』、そう私と同じ『10万冊近くの魔道書』を持つお前を我が陣営へ引き込みたかった。
が、やはり、お前は葬り去る。私が全身全霊でな!!」


インデックス「できるならやってみた方がいいかも。けどね、私も決めたの。
私は『あなたの、そのフザケタ過去への幻想をぶち壊す』事をね。
この時代を、とうま達の街を守るから!」

666: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:28:59.44 ID:8Bygm0us0


お互い見つめる、魔道書を持つ少女たち。
話は平行線、なのだろうか?話の筋など、この場の誰もが正確に解らない。


アルティミシア「…さて、私は帰らせていただこう」


諦めたのか帰る事を宣言したが、どのように?
少なくとも、現状では付けられるそれだけだが


御坂妹「伏せてください!!!」


御坂妹が唐突に大声を出す。
その声に反応し御坂妹はインデックスを、ステイルと神裂は冥土返しを、麦野は何かを守るように覆いかぶさった。
次の瞬間、壁が爆発した。


白井「ちょっと!!何で私は守られないんですの!!!」

667: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:30:04.91 ID:8Bygm0us0


ぱらぱらと破片が床に落ちる音がする。
そんな中、ひた、ひた、と足音がする。おそらく、10代の人間の足音。


「飛んできた保線車両にゲコ太缶バッチを守って意識は途絶えたはずですが」


その人物の声だろう、乙女の声だ。
が、その声は多くの者が直前に聞いた声。言うなれば、「伏せろ」と言った人物と全く同じ声色だ。


御坂妹「そ、そんな…」


その人物を見て、先の声色の人物、御坂妹が驚愕の表情と共にその者を見る。それはありえない存在だ。
何故ならば、彼女は彼女の死ぬ間際の記憶を共有してるからだ。


「ですが、再び生を享受できることに感謝と不思議な気持ちでいっぱいです。と、ミサカは全裸で宣言します。痴女じゃないよ?」

御坂妹「9982号!?」


それはかつて、第九九八二次実験にて一方通行に圧殺された固体、9982号だからだ。


アルティミシア「何を驚く?『賢者の石』を所有する私にとって、人1人の組成など造作もない事だ」

9982号「あなたが、ミサカを蘇生し先ほどから頭に声を送ってる人物ですか?…いえ、そのようですね」

アルティミシア「理解が速い娘は、私は好きだ。それに、私の頼みも叶えてくれたようだな」

9982号「ええ」


右手に抱えた物を魔女に見せる。


神裂「それは捉えていた少女!?」


『リノア』だ。


9982号「何やら大柄な紳士と、胡散臭い青年、小柄な少女がいましたが、適当に意識を刈り取っときました。
と、ミサカはできる範囲での事をしたとアピールします」


アルティミシア「フフッ。さて、帰ろうではないか。その背中に背負った物は、役に立つのだろう?」


9982号が背負ってる物。それは軍用兵器の試作品で『妹達』で試験をしていた代物。
『ランドセル』次世代演算兵器Cの1つである。名前の通り、背負う物であり、バックパックと繋がってるロングライフルのような物が特徴。


9982号「役に立ちますよ」


アルティミシア「フフッ、それはありがたい。では」


その瞬間、アルティミシア、9982号、リノアが光だす。まるで『ゲームの転移』のごとく。


「今度は、我らが過去へ飛ぶとき。特等席へ招待しよう」

668: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/13(月) 01:30:56.24 ID:8Bygm0us0

魔女たちが消えた後、インデックスが倒れ込んだ。
無論、その瞬間周りの者が駆け寄り、すぐにインデックスは治療を受けた。
心労が原因だと冥土返しは言い、見な心を下した。



インデックスが目を覚ました3日後。

インデックスが入院してた理由を知る者はいなかった。

677: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 00:41:49.20 ID:2v6tvv9o0


3日後


「ん、ん…」


1人の少女が目を覚ました。どれほど寝ていただろうか…。いや、意識を失っていただろうか?


「あの時…どの時?」


まだ脳が覚醒してないのか、無意識に見知らぬ天井に問いかける少女。
場所を確認しようと起き上がろうとするが


「あっ…」


全身に電流が走るような感覚と変な声が出る。痺れた。


「しかし少女は、その時感じた感覚に不快感を感じなかった。『もっと…』少女は顔を赤らめながら再び体を動かす。
『あ…あっ』、その感覚、前にも感じていた、が。
『…違う』そう違うのだ、その感覚をもっと感じれる場所を、少女は知っている」


「何回も想像した。『ミサ…私は、違う』誰に言ってるのか、否定の言葉を言うが少女の手はしっかりと下腹部へと進んでいた。
だんだんと近づくと鼓動が大きくなるのを感じる。何をしてるんだ。
そう思う少女だが、肉体は、本能は欲望に忠実なようだ。そう、もっと激しい刺激がほしい。だんだんと近づく快感のスイッチ。
と、ミサカはモノローグを――」


「いい加減ツッコんでいいですよね。アルティミシア様にそこの」


「おや、『突っ込む』と言う単語が出るとは、道具があった方がよかったかな?リノア」


「やはり欲求不満でしたか。と、ミサカは女戦士のお目覚め妄想のモノローグ語りが出来ない事を寂しく思います。チェッ」

「あのねえええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

678: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 00:44:16.84 ID:2v6tvv9o0


少女、リノアの叫びが建物に木霊した。
…いや、寝起きにこの様なボケに対しツッコめる彼女も彼女だが。


アルティミシア「あっはは。そこまで大声が出せるのなら、問題は無さそうだな」

9982号「そうですね。ツッコミはかなりのエネルギーを必要としますからね。と、ミサカは『学習装置』に何故か入っていた知識を披露します」

リノア「はぁ…って、ここは?」

アルティミシア「私の家だ」


そこは大学生が多く住む『第5区』のマンションの1つだが、どう見ても学生向けではない。


リノア「まだ、アイドルの仕事やってるんですか…」

アルティミシア「無論だ。私が芸能界で仕事してることの1つが、目的のためのだと言う事をお前は意識失ってて忘れたのか?」


9982号「『レベルアッパー』を応用した原理とサブリミナルによる暗示、後者は古くからある技法ですが興味が湧きますね。
と、ミサカは『魔術』の片鱗に好奇心が抑えられない事をお伝えします。ミサカも使いてー」


アルティミシア「案ずるな、時期にお前も使える」

9982号「やった」


リノア「あの…ちょっと待ってくださいアルティミシア様。誰ですか、その無表情女?
ってか、私はどの位寝ていたのですか?今状況はどうなってるのですか?」


矢継ぎ早に質問をするリノア。当然のことだ。
現時点にて、彼女は状況を把握できているわけも無く、また9982号の事など聞きたいことがあるが。


アルティミシア「おっと」


奥の方から、ピューカタカタカタと音が聞こえてきた。察するにお湯が沸いた音。


アルティミシア「詳しい話はコーヒーを飲みながらしようではないか。リノア、お前は練乳だったな?」

リノア「は、はい…」

9982号「ミサカはアルティミシア氏にお任せします。と、ミサカは社交辞令的な物を言いつつ、本音は――」

アルティミシア「とりあえず砂糖とミルクを用意してくれ。そう言いたいのだろ?解っているよ」

リノア「な…馴染んでる」

679: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 00:46:48.98 ID:2v6tvv9o0


アルティミシアがコーヒを入れ戻ってくると、魔女はリノアが拘束されてる間の事を説明しだした。
それは9982号への説明を含める物でもあり、若干長かった。


リノア「『サイファー』は…」

アルティミシア「すまない。お前があの戦いで意識を無くした後、奴は自爆した」

リノア「オダインの方は?」

アルティミシア「相も変わらず、よくやってくれてる。奴は裏方だからな、人形の能力も相まって計画の土台を作ってくれてるよ…。今は、探し物だ」

リノア「まだ見つかってないと…」

アルティミシア「そう言う事だ。…我ながら、『魔女』と呼ばれてるが、実際はそうでもないことにつくづく実感する」

リノア「そんな事!!?」


弱気な事を言おうとした『魔女』をフォローするリノア。だったが


9982号「あ」

アルティミシア「お」


タイミングよく、お腹から可愛い音がする。空腹の音。


リノア「ッツ」

アルティミシア「ハハッ、そう言えばまだ何も食べてなかったなリノア。そうだ、私の仕事前に何処かに食べに行こうではないか、お前のリハビリついでだ」

リノア「で、ですが…」

9982号「そんな乙女な顔をしても腹の虫の暴走は収まりませんよ?と、ミサカは顔を真っ赤にしてお腹を押さえてる貴女をにやけな。ッ!?」


言葉を遮る。理由は彼女もお腹が鳴ったからだ。
が、音がどう聞いてもどうフォローしても可愛くない熊の鼾みたいなものだったからだ。


リノア「私をにやけながら。どうしようとしたのかなぁ?」


形勢逆転とばかりに、攻め返すリノア。
9982号は顔を赤らめ小声でグゥと言いながら顔をそむける。


アルティミシア「と、とにかく。支度しよう」

680: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 00:48:29.18 ID:2v6tvv9o0


十数分後、彼女達は『第5学区』の街中を3人は歩いていた。
其々、軽くギャルが入った平均的な服装で、9982号はサイドテールである。
3人が目指すのは『第5学区』の繁華街で、夜にもなれば居酒屋やバーにカラオケなどに人があふれ、雑多で混沌な雰囲気になるが。
昼間と言う事もあって、何処もランチ営業でありただ雑多なだけである。
で、多くの飲食店は収益増加の為に昼間はランチ営業をしているのだが、学生の街だからか量も多く。食べ放題の店も豊富にある。
良くも悪くも、学生向きなのだが。


「すみません。本日のランチ営業はちょっとー…」
「ごめんねー。材料切らしちゃってさー」
「これ以上やると、夜営業出来なくてねー」
「空腹の白い悪魔が来てやってらんねェよ!!」
「アイヤー。お客さん残念だったアルな。今ちょうど、お客さんみたいな女の子が我の店の冷蔵庫空にしたところアル。
20分待てば食材公園で調達してくるアルが、待つか?」


まさかの連続NG。


9982号「リノア氏。やりました」

リノア「何が?」


9982号「ミサカにも魔術が使えるようになったみたいです。アルティミシア氏の周りにどす黒いオーラが見えますよ。
と、ミサカは自身の視覚情報を大雑把にリノア氏に伝えます」


リノア「違うから。魔術じゃないから。私にも見えてるから。…つーか、アイツかよ…ホテルバイキングの時もあったよな」

アルティミシア「あんの…腐れご先祖がァァァァァァァァァァ!!!!」


空腹に苛立った『魔女』の咆哮が『第5学区』に響いた。

681: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 00:50:33.90 ID:2v6tvv9o0


結局、3人は近場にあったパブで昼食を取る事にした。
無論、アルティミシアはこれからアイドルの仕事があるし、残り2人は病み上がりのような物だ。お酒は飲まない。
メニューは1ポンドステーキ。席は表のテラスのような場所で本当は店内の席に座りたかったが、
店内ではどこぞのヤンキーよろしくな集団が馬鹿騒ぎしながら飲んでる。
その中でもリーダー格の1人は上半身裸でスパイダーのタトゥーを見せながら、ムサシノ牛乳とウォトカを交互に一気飲みし、
もう1人は彼女らしき人物に抱きしめられながら手裏剣を投げるものまねをしている。中に入るのは最小限にしたい。


9982号「分厚い肉に溢れだす肉汁。グリルで焼き色を付けた後オーブンで焼いたのか、食感を残しながらもとても柔らかく。
また、和牛にはない血肉の味がしっかりと口の中に広がり、粒マスタードの風味を残した酸味のあるソースで口の中に脂っこさが残りません。
GJな仕事だと、この店のマスターに伝えたいですが今は遠慮しときます。と、ミサカは肉を頬張りながらレポートします」


リノア「何故食レポ!?」

アルティミシア「フフッ。なら、こちらのソースならどうだ?」


9982号「むむっ。こちらはバルサミコ酢に甘い洋酒でしょうか?
煮詰めて酸味を飛ばしたバルサミコ酢に洋酒の甘さと風味とコクが加わり、それらが肉本来の甘みを押し出しています。
と、ミサカはこれはお酒があった方がおいしいんだろうな~と想像してみます」


9982号のリアクション1つ1つが面白いのか、アルティミシアはくすくすと笑いながら9982号に餌付けする。
傍から見ればどこにでもある光景だ。が、リノアは少々顔が浮かない。警戒してる、と言う表現が正しいだろう。
無論、それに気が付かないアルティミシアや9982号ではないが。


アルティミシア「ほれほれ~、食べろ~」

9982号「にゃ~」


気にする様子は皆無である。その時、リノアは1つ確信した事がある。
これから頭を痛めることが増えるのだな、と。

682: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 00:52:11.23 ID:2v6tvv9o0


アルティミシア「さて」


2人が食べ終えた事を確認しアルティミシアが一息つく。
代金については、パブによくある前払い制で、アルティミシアが既に払っている。


アルティミシア「私は仕事に行くが、お前たちはどうする?」


リノア「どうすると言われましても…今の状態でしたら、この時代の住民からの襲撃は無いでしょうからアルティミシア様の護衛はいらなそうですし。
マネージメントもアルティミシア様がやっておられるのでしょう?」


アルティミシア「無論だ。うーん、お前はどうしたい?」

9982号「ミサカ、ですか?」


問われる9982号。考える間もなく、バックから携帯端末を出す。


9982号「ミサカは此処に乗ってる店のグルメめぐりに行きたいです。と、ミサカはチェックしてた店の一覧を御2人に示します。はしごだぜ」


画面に出されたのは自作したグルメマックなのか、クレヨン仕様で書かれた地図だ。
9982号がマップの所々の動物マークをタッチすると、店の詳細が表示される。
どうやら、料理の種類で動物を分けてる様だ。これを見たリノアは


リノア「お、多くない?」

9982号「何を言ってるのですか、これでもかなり絞りましたよ。と、ミサカは昨日の悩みの種をリノア氏に披露します。ま、全部行けると思いませんが」


確かに、この四方2キロのマップの中にはかなりの動物マークがある。
常識的に考えれば行けるはずがないが、9982号の無表情ながらも「全部行きたい!」と主張が顔に出ている。


アルティミシア「おお、いいではないか。金銭面は心配するな、私のカード使え」


安心したのか、アルティミシアは自身の財布からクレジットカードを出すとリノアに預ける。ブラックカード。


リノア「あ、アルティミシア様!?」

アルティミシア「じゃ、楽しんでくるんだぞ~。あ、帰りは解らん」


リノアの意見を聞くことなく、アルティミシアはその場を離れタクシーを捕まえて行ってしまった。嵐のごとく。


リノア「あ…」

9982号「ま、人生こんな事もあるんですよ。と、ミサカはリノア氏の肩に手を置きながらグッジョブサインを送ります。おっと、ため息は幸せが逃げまっせ」

リノア「ハァ…」

683: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 00:53:09.81 ID:2v6tvv9o0


近くの駅に移動してる2人だが、会話と言う会話が全くない。
考えてみれば、知り合ってから数時間程度の付き合い。
しかも9982号については正直、リノアは良い思いは無い。
パッと入りの新人なのに、アルティミシアと距離を縮めすぎている。
と言うより、アルティミシアの態度も何処かしら違和感がある。


9982号「リノア氏」

リノア「何!?」


9982号「改札…引っかかってますよ?と、ミサカはリノア氏が上の空でまさかそんなボケをするとは思わなかった事を告げます。ついでに視線がイタイです」

リノア「ハッ!!?」


考え事をし過ぎてた。改札に引っかかり、改札機から警報音が鳴り響く。
周りの客、駅員からの冷たい目線が彼女に集まる。
顔を真っ赤にし、リノアは急いで現金をチャージし改札を抜けた。

684: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 00:57:04.28 ID:2v6tvv9o0


9982号「大丈夫ですか?と、ミサカはリノア氏を気遣います」

リノア「大丈夫よ…ありがと」


ホームに降りた2人。ホームには通過待ちの各駅が止まってるが、目的の駅には隣に来る速達電車に乗るのが一般的だ。
しかし、それ以上に気になる事がある。アルティミシアの態度だ。
元々、リノアを振り回すのが趣味の1つだが、今日は何処か距離感がある。
自身が監禁された間、何かあったか?それとも9982号の影響か?
どうとしても、いい気分ではない。


9982号「あー、ミサカあっちのでんしゃにのりたーい」

リノア「は!?」


唐突な棒読みでリノアの腕を掴み各駅に引き入れる9982号。
あまりに唐突過ぎたのと、軍用クローン特有の腕力であれよと言う間に電車内に引き入れられ、車端部のボックスシートに連れ込まれる。


リノア「何なのよッ!!」


流石に訳が分からなくなり腕を振り払う。
それを見越してたかのごとく、9982号は流れるようにアウターのポッケから情報端末とある物を取り出す。
『速記原典』だ。


9982号「意味、解りますよね?これで合ってますよね?」


この2つの意味は、定時連絡以外で『速記原典』を用いた連絡。


リノア「解るし、合ってる」


うんざりした声で、自身の『速記原典』を取り出し、1ページ千切り耳にかけ髪で隠す。
9982号も慣れたように耳にかける。おそらく、1度やっているのだろう。


685: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 00:58:53.41 ID:2v6tvv9o0


《リィィィィィノォォォォォォォォォアァァァァァァァァサァァァァァァァァァンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!》

リノア「ウルセエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」

9982号「どっちもだあああああああああああああああああああああああああ!!!!」


通信開始した瞬間、鼓膜を破るような。
いや、頭蓋骨を破裂させそうな音量でネチッコイ嘆き声が2人の頭に響いた。反射的に2人も叫ぶ。
その声は普通に叫んでるので周囲の人々からの冷たい目線が再び2人に集まるが、そんな事を気にする状態ではなく悶えてる。

数分後

リノア《…いきなり大声で喋らないでよ、失聴するかと思ったわよ》

9982号《全くですよ。と、ミサカはオダインさんに文句を言います》

オダイン《そんな事言われましてもぉ。心配してたのですよぉ、リノアさん》


ねっちこい声の主は、リノアやサイファーと共にこの街に潜入した1人。オダインである。
リノアやサイファーと違い、基本的に表には出ない人物。


リノア《それはアリガトウなオダイン。アンタのネチッコイ声聞くと、もーっとイライラしそうでね》

オダイン《そんなぁ、これは私の地声ですよぉ?それに、何故イライラしてるのですかぁ?そんな時は私の操折ちゃんの声胸キュンボイスをぉ》

リノア《お前の人形の声なんざ聞きたくねぇんだよ、気持ち悪い!!》

オダイン《残念ですねぇー。せっかく今最高の状態なんですがぁ…》

リノア《おい、切るぞ。脳が腐る》

9982号《はい、ミサカもただならぬ気色悪さを感じたので自己保身の為に切ります》

オダイン《ちょっと!?》


一方的に通信を切る2人。夏場で冷房が掛かって無い筈ないのにうすら寒いのは気のせいでは無いはずだ。
気が付くと、電車は動き出していた。



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