前回 上条「ソードアート・オンラインか、やってみたいな」アルゴ「その5ナ」 中編

686: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:00:54.72 ID:2v6tvv9o0

9982号「…すみません。古い御仲間と話せば元気になると思っていたんですが、当てが外れました。と、ミサカは先ほどの恐怖の変態に戦慄を覚えます」

リノア「あれはマジキチの変態だから関わっちゃダメ。仕事以外だと5分関われば脳が腐るから…って、私を元気づけようと?」


9982号「ええ。正直、ミサカはコミュニケーションは『学習装置』で学習した知識、そして死ぬ前の一時しかありません。
そんなミサカでも、貴女が不安に思いイライラしてる事は解ります」


リノア「…何で、私が不安を感じてると思うの?」


9982号「あなたが囚われ意識を失ってる間、何がどのようになっているのか人の話等の伝搬でしか解りません。
変化が多すぎてついて行けない、と言うのが正解でしょう。ミサカもです。
ミサカはかつて死にました。約2年前です。そして生き返れば、どうでしょうかこの変化。ついて行けません。
知ってるかと思いますが、ミサカ達はMNWで繋がっており、記憶をクラウド形式で共有できます。読み込み、理解は数分もかかりません。
様々な個体の記憶が流れ込んできました。
そして、とある個体の記憶。ミサカは理解不能でした。
ミサカを殺した相手と抱き合ってるのです。解りますか、この屈辱のような記憶!!」


激昂する9982号。その記憶は番外個体の記憶であり、相手は一方通行である。
無論、リノアには誰と誰かは解るはずないが、彼女の『周りに置いてかれたが故の孤独』は理解できる。今の自分がそうだから。
が、その孤独の重さは天秤に乗せ比べる必要は無かった。


リノア「…そっか」

9982号「理解できないですよね?」

リノア「うん、アナタじゃないもん。…けど、アナタがこの時に反逆する理由は解ったよ。その記憶の」

9982号「抹殺です。…いえ、あの事実を消し去るために、ミサカ達その物を歴史からの抹消です。…チープですか?」

リノア「『歴史の改竄』自体がチープな願望だもん。…それに、記憶の抹消は私も同じだから」

引用元: 上条「ソードアート・オンラインか、やってみたいな」アルゴ「その5ナ」 

 

687: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:01:47.70 ID:2v6tvv9o0


リノアが話し終えると同時に、対向電車が警笛を鳴らしながら猛スピードですれ違う。
車内のほとんどの乗客がそれに驚くが、ただ1人9982号は違う。


9982号「驚きました。皆がアルティミシア氏と同じ願望の為に行動してるのかと思いました。
と、ミサカは驚愕の表情で初耳の情報を聞きます。決して、電車の警笛に驚いたわけではありません」


リノア「そうだよ。みんなそれぞれ願望はあるし、無論アルティミシア様の理念に共感してるの。
…いや、その理念の元ならば私達の望みをかなえられるし、その世界ならばみんなの希望をかなえられる」


9982号「ひょっとして…あなたの記憶とは」

リノア「…初恋だよ。何となく、感じてたでしょ?」

688: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:04:02.45 ID:2v6tvv9o0


第15学区、学園都市でも最大級の繁華街を誇る学区である。
彼女たちはその中で外部大手メディアも入る複合ビルの一角の店舗のテラスに居る。
9982号リストの中でも上位の店なのだが


9982号「失敗しました。と、ミサカは頭を抱えます」


不味かったのか、違う、料理は抜群の味だった。
雰囲気も申し分なかったのだが


9982号「どーすんだよ、コレ」

リノア「グスン…スコール」


彼女の目の前にはブッ潰れ、テーブルに頭をつけ眠っているリノアの姿があった。


本来、お酒を飲む予定は皆無で、9982号の提案でリスト上位のこの店に入った。
店に入り料理のオーダーすると店員がお勧めでこの様な物を紹介してきた。『自家製サングリア』。
2人はまだ未成年である。大学生の格好だからだろうか、バイトの店員の怠慢だろうか。そこまでは解らない。
が、『1杯ぐらいはイイかな?』という甘い考えで頼んだ。
『サングリア』果実を漬け込んだ甘いお酒であり、ワイングラス等で飲む物お洒落な物である。そう、『雰囲気に飲まれた』。
ちなみにこの時、リノアは「私強いから大丈夫だよ~」と言ってた。が


9982号「結果はコレだよチキショウ」


コレである。

ちなみに、9982号は元が元なので酒が弱いと思っていたが全く何ともない。
この特性は他の妹達(番外個体、打ち止めを除く)も同じである。
更に補足すると、リノアは普段は全く弱くないのだが、恋愛トークの時に酒が入ると冗談みたく弱くなる。
最終的には初恋の相手の名前を泣き叫び、唐突にスイッチが切れて寝落ちる。迷惑極まりない。


9982号「どうしましょう。と、ミサカは対策を思案します」


さて、彼女を運ぶ方法だが、どうするか。
誰かに頼みたいが9982号が彼女達の知り合いで頼みやすいのはオダインかアルティミシアになる。
が、オダインは対象外であり、アルティミシアは


「さて、今日は今夜7時からのバラエティーのゲストである、アルミンさんがスタジオに遊びに来てくれましたー!!」


アルミン「こんばんは~」


目の前の巨大な街頭ビジョン映ってる生放送の夕方ニュースに、アルミンとして番宣で出演中だ。

689: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:06:15.41 ID:2v6tvv9o0


《お困りのようですね。と、ミサカは生き返った個体に救いの手を差し伸べます。プギャー》


その瞬間、9982号の脳内に会話が入ってくる。魔術ではない。そう


9982号《まさか、まだMNWが使えるとは思いませんでしたよ。と、ミサカは驚きの声を貴女の脳内に送ります。10032号》


ミサカ・ネットワークだ。
が、彼女が言う通り使えないと思っていた、いや使えなかった。


御坂妹《ごく近距離ならば使えるようですね。と、ミサカは弾き出されたあなたとMNWできることを分析します。
で、どうしますか9982号。ミサカはその手の泥酔者の的確な対処法を知ってますが?とニヤケナガラ言ってみます》


9982号《何処からともなくミサカ達を見ながらニヤついてるアマに助けられたくありません。とミサカは貴女の提言を跳ね飛ばします。不潔な奴らめ》


御坂妹《あらそうですか。と、ミサカは救いの手がいらない事を残念に思います。
ですが、最後の言葉は気に入りません。
そもそも、貴女は誤解してます9982号。
一方通行の犯した罪は許されるものではありません、ですがそれに対し彼は》


9982号《聞きたくありません!そのような言葉が出て他の個体が言わない時点であなた達は穢れたも同然です。
と、ミサカは10032号の甘ったるい言い訳に反論します。そもそも、『一方通行』は何処ですか、『番外固体』と言う大馬鹿野郎は何処ですか》


御坂妹《…》


9982号《何とか言ったらどうですか、10032号》

御坂妹《……を殺してどうするのですか、それで貴女のその感情は収まるのですか?ミサカ達を抹殺しようとする考えろやめるのですか?》


9982号《考えをやめる?貴女は考えることを放棄することで記憶が抹消できると思っているのですか、貴女の『学習装置』は壊れてたのですか。
…やはり、2年近い溝は埋めることはできないようですね》


御坂妹《思考がデジタルすぎます。極端ですよ。貴女も妹達であるならば、そのようなデジタル思考は》


9982号《もういいです。さようなら!》

690: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:10:29.98 ID:2v6tvv9o0


御坂妹「9982号。もしもし、9982号!!」


離れたビルから『光学迷彩』を被り、双眼鏡で先ほどまで9982号がいたテラスを覗いてる御坂妹。
視線の先では酔っ払い2人がそそくさと会計を済ませ、出るところだった。どうやら、9982号がおんぶして帰るようだ。


御坂妹「…結果。『ナーヴギア』というワードを含ませて会話をすると、文節ごと向こうには認知されない
…いえ、あの時『魔女』が来た時に確認できました。
彼女達は『ナーヴギア』を認識できないと、目の前に『ナーヴギア』を被った上位個体のチビがいたのに」


そう、彼女がここへ来た目的は9982号を監視することも1つだが、どちらかと言えばこちらが主目的。
あの時、『魔女』の目の前には打ち止めがいたが、アルティミシアどころか9982号も認知できていなかったのだ。
『ナーヴギア』を被った9982号を


御坂妹「先ほどミサカは9982号の会話の中でこの様に喋りました。

【『ナーヴギア』を被って入院してますよ?】

【『ナーヴギア』のせいで意識不明の一方通行と番外個体を】

この様にミサカは話しましたが、彼女には通じなかったようです。…いえ、認知できなかったと言う方が正しいでしょう。
と、ミサカはぶつくさ独り言を喋りながら自身のノートに記録します。…しかし、何故このようなアナログな方法で?」


筆が止まる。そうだ、そもそも記録ならば紙のノート等ではなく、端末の方が楽である。
それ以前に、彼女達ならばMNWに記憶を保存すればいいのだ。


御坂妹「そもそも、何故あのシスターは入院してたのでしょうか?と言うか、最初にこの事を指摘した腹ペコシスターが確認すればいい物を、
しかもとっとと退院して外食ですか!?ふざけてますね。
と、ミサカは腹ペコシスターへの不満を募らせます。こちとら朝からウィダーインなのに…お腹すきました」


子猫のような腹の音が彼女の腹部から聞こえる。立ち入り禁止の屋上で誰もいないのが幸い。


御坂妹「…帰りにイヌのエサでも買って帰りましょうか。
…スフィンクスのも買いましょう、どうせシスターが入院してたのですからお腹すかせてるでしょう。…あの人も居ませんし」


決して、自身の空腹音で思い出したわけではないが、愛猫とスフィンクスのエサと最近お気に入りのパン屋でパンを買おうと思う彼女。
しかし、そこの青髪関西弁の青年は気にらない。

691: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:11:29.58 ID:2v6tvv9o0


第7学区行の電車が出る駅へ向かう道中、信号待ちの最中ふと巨大な街頭テレビに視線が行く。


御坂妹「アイドルと言う物はいいですね。と、ミサカはOLのようなどうでもいい愚痴をこぼします。あ、アルミンは今は殆ど女優か」


愚痴をこぼしてると、信号が変わり人波が動き出す。
彼女もつられて歩き出すが、歩きながら考える。彼女的にはどうでもいい事だと。


御坂妹(しかし、ミサカは彼女にアルミンに会ったことがあるような気がします。それもごく最近に。
そして、なにか重要な事を知ったと思うのですが何でしたっけ?と、ミサカは自身の記憶の曖昧さを思慮します。
…いけません、何か残念なストーカー思考になっています!やめましょう。
今はイヌへのご飯と、あのシスターと低血圧さんと合流を考えないと)


そう、今の彼女にはどうでもいい事だ。いや、覚えていない。


『魔女』が誰であり、彼女達の目的など、今の彼女は覚えていないのだから。


692: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:13:19.16 ID:2v6tvv9o0


「まるで、この街…いや、君の城の住民はセーブ機能が壊れてしまったゲームのようだね」


「しかし、セーブさえしなければそのゲームはクリアできるのではないかな?ゲーマーと言うのはそう言う類が好きな者が多いと聞く。
特に、君の城のプレイヤーはそうではないかな?」


薄暗い部屋に強大なビーカーがオレンジ色に照らされてる。
中には逆さに入った人が1人アレイスター・クロウリー。そして、もう1人の声の主、茅場晶彦。


「それに君も、城で内乱を起こさせたようではないか。君の目指す理想の為に」


「かつて君は此処に『魔女』を招待した時に、この街の現状を『麦踏』と例えた。同じだよ。そして私の方は成果は出た。
後は彼が使いこなしてくれればいい事だが、その点は問題ないだろう」


「『黒の剣士』か…。私が言うの何だが、物好きだよ、君は」

「もの好きでなければ城主などやってないよ」


静かに零す様に笑う2人。それは互いが似た者同士だと認識してるからだろう。そう、似た者同士。


「アレイスター。君は魔女の目的を薄々感付いてるのではないかね?
何故君を狙わないか、何故『時間遡行』とやらの魔術にとって絶対的な障害になるこのビルを消さないか」


「ほう…」


そこに瞬時にいくつもの画像が表示される。それは『窓のないビル』を様々な場所から撮影したものだ。
が、『窓のないビル』以外の建物、風景に違いがある。
『学園都市』を外部と隔てる壁が、時にはその姿を誇示してたり、時には消滅してたりする。壁の有り無しは街の雰囲気にも影響してくる。
ある場合は以前同様洗練された近未来都市なのに対し、壁が無い時には、郊外の雑多な繁華街となってる。
そして、1番新しい画像は以前の『学園都市』に多少外部の雑多さを混ぜたような雰囲気。
『SAO事件発生後半年』辺りに1番近い。
そして、変わらずこのビルはその姿を変えず存在してる。


「このビルが『魔女』の魔術に干渉してると思うなら、それは少し違う。
このビルは『何事にも干渉せず干渉しない』それだけさ。ただ、君の言う『魔女』の狙いは当たってるよ。私にも心当たりがある」


「だが、それは教えてくれないのだろう?こ事象の顛末を君に問いた時同様」

「そして私はこうも言った。『君の城、君の物語が終えた時に話す』と」


アレイスターの言葉をこの場で第三者が聞いても解るであろう。そう、茅場晶彦がどのような顛末を送るのか。


「ふっ、酷いなアレイスター。まるで答えを先に言ってるようではないか」

「重々承知の上、だろう?君が行動を起こしたのも」


が、2人にはそれは当然だと言う雰囲気が流れる。悟りの境地とでもいうのだろうか?

693: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:14:47.51 ID:2v6tvv9o0


「そろそろ戻らせていただくよ。何分、ウチの副団長が君の所のクローンと一緒に団員をしごいてるからね。あまりサボり気味だとドヤされるのでね」

「そうかね。…ここに来る者も少なくなってね、寂しい限りだよ。『偶然』にも定期的に来る1人が君の所にいるからね」

「『偶然』か…」


その瞬間、仮にここに茅場晶彦が実体であるとしたら足を止め思慮してる風景があったであろう。
その時の表情はきっと、『疑心』。そして、彼はそれをアレイスターに問いかける。


「不思議に思っていた。何故彼らなのか」

「彼等、とは?」


「人が悪いな。何故君の城でもキーマンである彼等が『偶然』にも私のゲームにログインしたのか。何故、私の目を付けた剣士とここまで交流を深めたか。
疑問に思っていた。そしておそらく『魔女』も方向は違えど、同じことを思っているだろう。何故彼等だけ見つけられないか?」


「さあね。それは『偶然の結果』としか言えないだろう。
君は知らないかもしれないが、過去…いや、つい最近には天使を召還する大魔術が『偶然』発動したこともある」


「そうか…『偶然』とはすごいのだな。
…『偶然』にも、私の作り上げた『ナーヴギア』が、『魔女の軍団』にも認知されないのも、それを被ったプレイヤー達も認知されないのもかね?
そして、VR技術が彼女達『遥か未来の世界』を根幹を成す技術だとしてもか?」


「ああ。君の城に居るクローンの技術が『遥か未来の世界』で人間を安定して培養させるのも。
この街に彼女達が求める物があるのも、『偶然』だ。そう、『偶然』なのだよ」


「まるで『偶然』のバーゲンセールだな。…とでも言ってほしいのか?君ならば、『偶然』を生むことぐらい容易いと思うが」

「ふん…なるほど。面白い見解、と言っておこう。そして、否定も肯定もしないと言っておこう。言っただろう?『君の城、君の物語が終えた時に話す』と」

「そうか、残念だよ。…では、私は行くよ」

「またの機会を楽しみにしておくよ。…そして、私のアバターを用意してくれて感謝するよ」

「造作もないことだ…」

694: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:16:12.22 ID:2v6tvv9o0

完全に人気が無くなった部屋。アレイスターは1人寂しそうにため息をつくと、誰かに語りかけるように呟き始める。


「寂しいものだ…友の多くが私より老け死に絶え、更には生きてる時点でもその先が見えるのは、寂しいものだ。…ああ分かってる。それが、私だよ」

697: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/04/26(日) 01:40:21.31 ID:2v6tvv9o0
新キャラ紹介


9982号

2年近く前、1番最初に御坂美琴と遭遇した『妹達』。その時、食レポしながらのグルメ旅と美琴からプレゼントをもらう。
一方通行との実験で足をもぎ取られ保線車両に押しつぶされ死亡。
そして、この物語にて『魔女』アルティミシアにより蘇生される。
身体能力は生前と変わらず、魔術も現在の所そこまで使えない。
ここ2年間と言うタイムラグを他の個体の記憶を読み取ることで知ったが、あまりにも自身の認識する状況とかけ離れてる事に嫌悪し離反。
アルティミシアの『魔女側』に附くことになる。
性格は10032号が評価した通り、かなりデジタルな性格。仲間の事を○○氏と呼ぶ。

武器は強奪した、次世代演算兵器C『ランドセル』。
これは名前の通り背中に背負う物でバックパックが主体で、
これに接続されたシールドと一体化されたロングライフル『オモチャの兵隊MK-Ⅱ』が特徴。
ブースターを介した跳躍機能と、『超電磁砲』なども打てるが、エネルギーカードリッジの数の影響で回数が制限されてる。
いわば、フルアーマーミサカMK-Ⅱ

※モデルは、ガンダムビルドファイターズに出てきたビルドブースターMK-Ⅱ

703: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/10(日) 10:57:34.91 ID:F0AAOhE60
SAO開始、約2年。


『日常』。俺キリト事、桐ケ谷和人がこのデスゲームに巻き込まれる前のそれは単調な物だった。
いや、単調で毎日の事だからこそ『日常』なのだろう。
そう、ただ単に学校と家を往復し、部屋に帰ればゲーム。
休日ともならば寝ずにゲームをプレイすることはザラだった。

あの日まで。

あの日、茅場晶彦が一方的にデスゲーム宣言し約1万人のプレイヤーの日常が崩壊した。無論、俺も含まれる。
それからはモンスターと戦い、第100層を目指して攻略の毎日。
戦って戦い抜いて、俺は生き残った。

その結果


キリト「ちょっと待ってくれ…」

御坂「ああん?私の酒が飲めないのか、ああ!?」

上条「毎度のことだけど御坂さん、飲み過ぎですよ。つか、キリトにアルハラすんなよ!!」

エギル「それ以前にお前ら俺の店を荒らすな」


俺は、現実とは180度違う『日常』の中に身を置いてた。平和?な方向で。

704: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/10(日) 11:00:27.70 ID:F0AAOhE60


その日、夕方になり俺達は予定も特になくなりエギルの店に転がり込んでた。
昼間はシンカーたちと『野球』をしていたのだが、試合終了後広場で『交流会』と言う名の宴会が模様され現在に至る。
ちなみに、俺と上条、美琴が助っ人に入ったチームの監督クラインとギルドメンバーは未だにこの層の広場にて飲んでいるだろう。


エギル「しっかし、お前たちもよくもまあウチの店に来るよな。俺は大歓迎だけどさ、ここだと」

キリト「SAOだと自動会計だから飲み逃げできないからだろ?」

上条「それ以前に、エギルのつまみ料理美味いからさ。来たくなっちゃうんだよね」

エギル「嬉しい事言うじゃないの。どれ、この前お前に教わった『手羽の素揚げ』でも食べるか?」

上条「マジか!欲しい!!」

キリト「小腹が減ってきたし、俺も」

御坂「私もォォォォォ!!」

エギル「わかってるよ!全員分あるからよ!!」


この様に、俺達がいるとエギルは俺達3人分の料理をサービスしてくれる。
ここ最近は俺と上条、美琴との行動が多い。
無論、アスナや他のメンツとの交流を疎かにしてる事は一切ない(俺基準だが)。

705: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/10(日) 11:02:37.30 ID:F0AAOhE60


俺の『日常』はあの日から確実に変化した。
1つはこの世界での出会い。アスナやエギルといった友人たちもそうだが、上条に美琴、そう『学園都市』の住人との出会いだ。
特に御坂美琴は俺が知る限り、そう現実でも名の知れた有名人だ。『
学園都市』と言う超能力者を養成する場所でのある意味アイドルのような存在。
雲の上のような存在だと思っていたが、


御坂「キリトォ…あんたペース遅くなってるわよ?」

キリト「今の言葉を数個借りてこの言葉を贈るよ。美琴、あんたペース落とせよ」

御坂「全ン然ン借りてないじゃぁーん!!」

上条「痛った!何で俺を叩くんだよ!!」

キリト「…何時もながらご愁傷様」

上条「不幸だ」


お判りいただけるだろうか?
酒が入ると『学園都市のアイドル』こと美琴はたちの悪い酔っ払いになる。何でも遺伝だそうだ。
と言うか、ここで出逢った『学園都市』の人間はよく言えばキャラが濃い。
オブラートを取り除けば性格がぶっ飛んでる。
例えば上条も


上条「ホグオッ!?」

キリト「椅子が壊れたァ!?」

御坂「えー何尻餅ついてんのよー?」

上条「しらねーよ!急にぶっ壊れたんだよ、おいエギル!!」

エギル「あ、ワリ。それ『耐久値』ヤバいの忘れてた、ゴメンなー」

上条「…またまた不幸だ」

キリト「あはは…」


お判りいただけただろうか?
こいつの不幸属性は尋常じゃない。何かしらのスキルかと思うぐらいだ。
尤も、これはこいつの現実での能力の弊害だと聞いたが。
やっぱりよく解らない。

兎にも角にも、俺の此処での『日常』はこんな感じだ。
良くも悪くも、ここでの出会いと経験に俺は複雑な気持ちで感謝している。

706: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/10(日) 11:04:19.76 ID:F0AAOhE60


キリト「やっと電池切れたか…」

上条「長かった…」

エギル「本当だよ…」


2時間ぐらいたつと美琴はスイッチが切れたかのようにテーブルに突っ伏して爆睡し始めた。
ここまでキリトに上条、エギルがどれほど飲まされたかは語るまでもない。


キリト「お…ップ」

上条「大丈夫か?」

エギル「ダメな感じだな。今日はもう開いたらどうだ?」

キリト「そうしたいんだけど…久しぶりに番外個体とかが…この後来るみたいだからさ」

エギル「いや無理だろ。無理なパターンだよ、それ」

上条「俺が謝っとくから今日は帰れ、な?」

キリト「うっ…ウッ」


蒼白と言うのが正しい感じの顔色になるキリト。
彼の胃には現在4種類の酒がたまってる、俗にいう『チャンポン』状態。
主犯は横で爆睡してる美琴と、自らゲームを仕掛け自爆したキリト自身。


キリト「な、なら…頼む…よ」


流石に観念したのか、自身の愛剣を杖代わりにして店を後にした。
彼の背中を見送った上条とエギルは「よく道に迷わず帰れるな」と、心の中で思った。

707: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/10(日) 11:07:47.39 ID:F0AAOhE60


エギル「で、このお嬢様はどうするんだ?」

上条「んー」

御坂「こぉぉぉぉぉぉ」


確かに、このまま電池の切れた美琴を此処に置いとくのはよくない。
が、番外個体のメッセージ通りならもう間もなく来るだろう。


上条「『回廊結晶』はさっきキリトから預かった『スペイン』しかないしなー」

エギル「また悍ましい場所の奴だな、『イタリア』なら欲しいんだが…しかたない」


そう言いながら自身のメニュー欄を操作し始めるエギル。
ちなみに『スペイン』や『イタリア』とは『回廊結晶』に記憶された場所の暗号で他に、
『アメリカ』『日本』『イギリス』『中国』『ロシア』『フィンランド』等がある。
さて、エギルが自身の『回廊結晶』を実体化させる。
記録されてる転移先は彼等のギルドハウスだ。


エギル「色々世話になってるからな、今回は1割引きだ」

上条「…そこはタダにしてくれよ。ま、ありがたいけどさ」


何やかや、文句を言いながらもエギルに代金を払う上条。動きや言動から察するに、よくある事なんだろう。


上条「じゃあ、俺達も帰るよ。アスナと番外個体の事は」

エギル「わかってるよ。『疲れたOL』のような2人のお相手なら任せろ、本職だ」

上条「…なあ、まだ引っ張るか、そのネタ?」

エギル「いや、あれは俺もやっちまった、と思ってるしな?…アスナ『ガチ泣き』だったし」

708: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/10(日) 11:09:03.94 ID:F0AAOhE60


『疲れたOL』とは、先日この店にてふと上条がアスナに言ってしまった言葉で、
それに対しその場にいたエギル、アルゴ、番外個体も面白がって悪乗りしまったことだ。
無論、言われたアスナは『ガチ泣き』した。当たり前だ。
尤も、このところのアスナは『血盟騎士団』の仕事でほぼ徹夜、疲れがたまってる事は周囲の心配の種の1つだ。
が、あまりにもデリカシーの無い発言と3人のフォロー、17歳の少女にはかなりキツかったのは言うまでもない。
言うまでもないが、そこで4人が土下座を含めた強烈な謝罪をしたのは言うまでもない。
しかし、アスナが許したかどうかは分からず終い。

さて、美琴をおんぶした上条が店を出る準備を終える。


上条「まあ…明日のイベントがあるから、俺達はここで」

エギル「おう、じゃあな」


展開した『回廊結晶』の中に上条と美琴が消えていくと、間接照明に照らされた店内に静かに流れる街の喧騒と言う名のBGMが聞こえる。
エギルは一息吐くと自身の飲み物を飲み


エギル「さて、お嬢様2人のお気に入りの飯でも作りますか」


アスナと番外個体のお気に入りのメニューを作り始めた。
2人が来たのはそれから間もなくだった。

713: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 22:50:35.12 ID:iUzak4Ju0


【あなたのSAOでの『日常』は何ですか?】

この様な問いかけに対し、多くの者は【攻略】と答えるだろう。
現に、『本来の日常』へ戻るにはこのゲームを命がけでクリアしなければならない。それがこの世界の真理である。
が、今現在その『攻略』は数人と協力しなければ成せない事実もある。
なので、『攻略』の日程が組まれてるのが今のこの世界である。
さて、その『攻略』が無い場合多くの者は何をしてるか?


キリト「フェアァァァァァァァ…」


この気のぬけた欠伸をしているソロプレイヤーの1人『黒の剣士キリト』を中心に辿ってみて行こう。

714: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 22:52:09.36 ID:iUzak4Ju0


キリト「ぼー…」


誰に説明する必要もないのに自身がボーっとしてる事を示すかのような言葉。
決してすこぶるよいとは言えない日差しを浴びながらゆっくりと頭を覚醒させる。
今日の彼だが、本当にやる事がない。
レベルも現在の最前線ではかなりの余裕がある、なのでレベル上げに何処かの迷宮区へ赴く必要もない。
そして、求めてたアイテムも先日リズベットの協力で得ることが出来た。つまり


キリト「何しよ…」


本当にやる事がない。

715: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 22:53:34.40 ID:iUzak4Ju0


形だけの洗顔と歯磨きを終え、キリトは自身のホームタウンである第50層の街中へ出た。
彼の現実の家がある街とは違い、雑多で込み入った雰囲気が西欧ファンタジーをベースにした世界観の中でどこか東洋的な雰囲気を醸し出す。
ある程度年齢を重ねてる者は『かつての秋葉原』に近いと言うが、
キリト達の年代にはピンとこないのが現状で『都心の繁華街』の方が彼等はしっくりくる。


キリト「エギルもう店開いてるかな」


ラフな服装で『アルゲード』の路地裏を歩くキリト。
『アルゲード』は街全体が『圏内』なので武装を外していても特に危険はなく、
この街に住んでいるプレイヤーの多くもちょっとした外出ならばラフな格好で出回ってる。
さて、朝起きて洗顔、歯磨きを終え、多くの者が次にやる事はそう、朝食だ。ここで何故家で食わないのかと疑問が湧く。
何かしらのイベントがありそこで食べるとアイテムがもらえる、若しくはちょっとお洒落に外食したいから。
答えはどちらもNOである。


キリト「昨日ちゃんと買っとけばよかった、パン…」


物事は何時だってシンプルである。

716: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 22:56:06.89 ID:iUzak4Ju0


「こんなにたくさん、嫌味ったらしい量の原稿ありがとうございま~す。は~今日は忙しくなりそうねー」

「金貰っといて、その言草はねェだろ」

「大丈夫。あくせられーたがイヤミ抜きで用意した原稿の量が嫌味ったらしい量になるのはみんなしってる」

「…それ、フォローなンだよな?」

「他に何か?」

キリト「あ」

一方通行「ン?」

滝壺「あ、きりと、おはよー」


街中のプレイヤーが営む印刷所から出てきたのは一方通行に滝壺という珍しい組み合わせだった。


キリト「滝壺は新聞関連なのは分かるけど、お前は?」

一方通行「徹夜で仕上げた論文だ。たかが20であンな嫌味ったらしィ事言われるとわよ」

キリト「俺は書いたことないんだけどさ、普通論文って1日で20個も書けるのか?」

一方通行「当然だろ。こンなの朝飯前だ」

キリト「なるほど、普通は無理か」

一方通行「オィ!!」

滝壺「大丈夫。きりとの判断は正しいよ」


SAOではプレイヤーは執筆した物を創刊できる。無論有料だ。
創刊に際してはNPCが営む店とプレイヤーが営む店の2種類があるが、
困ったことにNPCの店は2割の確率で持ちこんだ原稿を紛失してしまうと言う謎仕様がある。
速さは断然NPCの方が速いのだが、この紛失を避けるため、多くはプレイヤーが営む店に出す。
が、一方通行の様に膨大な量を出す者が居たりするので創刊までには日数がかかる。
ちなみに一方通行は趣味の一環で、自身が過去に読んだ『論文』を書きだしている。
それは膨大な量で更に美琴も加わり、現在SAOにて創刊されてる書物の量は下手な大学の図書館が裸足で逃げ出すほどである。
まさにレベル5の有効活用。


一方通行「で、お前は何してンだ?」

キリト「これからエギルの店で朝食でも食いに行こうと思ってさ」

滝壺「ちょうどよかった。私達も朝食まだ」

一方通行「今日は朝食作らねェ日だったからなァ。俺達も行くか」

717: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 22:57:06.54 ID:iUzak4Ju0


エギル「んんッー・・・」


自身の店の前で背を伸ばすエギル。
その様子から、開店までの下ごしらえが終わった事を察することが出きる。


一方通行「よォエギル」

滝壺「おはよ」

キリト「昨日ぶり」

エギル「おう、朝から早いな。朝飯か?」

キリト「そんな所だ。何時のも頼むよ」

718: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 22:59:21.45 ID:iUzak4Ju0


薄暗いのには変わりないが、昨夜の雰囲気とは違うのは日差しの影響だからだろうか。
『アイングラッド』はその形から日中になると日差しが直接入る事がまずない。
しかし、朝や夕方は層の間から入る日光は昼間の明かりとは違う雰囲気を醸し出す。
現に『ダイシー・カフェ』の店内の雰囲気も朝特有の爽やかな空気である。
そして、エギルの作る料理の臭いも相まって3人の空腹度は増加した。


エギル「へい、お待ち」


その空腹度が限界に達したころを見計らったかのタイミングでメニューが運ばれてきた。
香ばしく焼かれたパンにカリカリベーコン、ポーチドエッグに滑らかなオランデーズソース、エギルお得意の故郷の味。


エギル「エッグベネディクトだ!」


皿にはそれが2個にちょっとしたサラダ。
ヘビーゲーマーの多いこの世界のプレイヤーからは、縁もゆかりもなさそうなお洒落料理だが。


キリト「何時もながら旨そ~!!」

滝壺「今日こそ味を盗む」

一方通行「グダグダ言ってねェで早く食べねェか?」

キリト「そうだな!いっただきーます!」


評判はかなりいい。理由はソースだ。
オランデーズ・ソース、普通に生活していたらあまり聞かないソースだが、一口食べるとあの味を思い出す。


キリト「やっぱり、このオランダソース?は、何処となくマヨネーズの味がするな」

一方通行「オランデーズ・ソースな。確か、材料は確かマヨネーズとあんま変わらないンだよな?」

エギル「おう、手間はかかるが大体同じだ。ちなみにオランダってのも当たらずとも遠からずだな」

719: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:02:21.36 ID:iUzak4Ju0


そう、この料理にかかってるソース『オランデーズ・ソース』は何処となくマヨネーズに似ているのだ。
具体的に言うのならば、『濃厚でリッチなマヨネーズ』とでも言おう。
現実世界と大きく異なり、現代日本に当たり前に有る調味料の多くが無いSAO。
特に醤油が無いのは多くの者が嘆き、更に若者が多いのでマヨネーズが無い事にも嘆く者が後絶たない。
自身で調合する者も多いが、成功した者は今のところいない。
現在、プレイヤーによって作り出された調味料は、味噌、味醂、日本酒、のみである。
しかし、現代の料理を無理に再現しなければ美味な料理を作る事はさほど難しくない。
簡単に言えばSAOがベースにしてる中世欧州にあった素材、調味料は手に入りやすいのである。


滝壺「そんな雑学より、私はこのソースのスキルを習得したい」

エギル「そんなに難しいか?料理スキルならお前の方が上だろ?」

滝壺「ピンとこない。なかなか」

キリト「スキルが高くてもそう簡単にはいかないんだな」

滝壺「うん。料理は簡単で難しく、奥が深い」

キリト「へー・・・」

一方通行「コーヒー」

エギル「はいよ!しっかし、お前も解り易いな」

一方通行「あァ?」

エギル「旨いものは黙って黙々と食べる。コーヒーもな」

一方通行「・・・御馳走さン」


何かに触れたのか、お代わりしたコーヒーを一気に飲み干すと立ち上がる一方通行。
尤も、普段から掴み所のない奴だと認識してるエギルは特に動揺することはない。
それに、この後彼が何するかも大体見当がついてる。


エギル「お迎えか?」


一方通行「あンの馬鹿、20年前に流行った謎言語で真夜中にメッセージを送ってきたからな。説教もかねてだ。
あ、キリト。ついでにそいつ送ってくれないか?じゃねェと三下にウダウダ言われてウゼェからよォ」


キリト「いいけど、よく女の子の家に行けるな」

一方通行「何回かあるし、今更な」

キリト「えっ!?」

エギル「マジか!?」

一方通行「じゃ、ごちそォさーン!」


鮮やかに爆弾発言を残して去る一方通行。
この後この店にいたら何が起こるのか、きっと彼のキライなネチッコイ追及であろう。


滝壺「…あのね、冷静に考えてあくせられーたはわーすと、と一緒にあすなの家に行ってるからね」

キリト「…だよな!?」

エギル「まあ、アイツを家に招き入れるメリットがないもんな」

キリト「ホッ…」


何かに安心したのか、ほっとするキリト。
それをバレ無いようにニヤつきながら見るエギルに、何か言いたげそうな滝壺。


滝壺「ん」


それを打開するかのように滝壺は空になった皿を差し出す。


エギル「お、ご馳走様か?」

滝壺「違う。おかわり」

720: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:04:25.79 ID:iUzak4Ju0


暫くして、2人は『ヒーローズ』のギルドハウスがある第19層の村を歩いていた。
流石にキリトもここではいつも通りの装備。


キリト「なんか、滝壺と2人ってのはめずらしーな」

滝壺「そうかもね。大体はまづらと一緒だし、そうじゃなかったら誰かいるから考えると新鮮かも」


ここ2年で会話下手がだいぶ改善されたキリトにとって、彼女は基本的にあまりしゃべらないのでそこまで気を使わなくてもイイが、やはり気まずい。
ここまでの道中、買い出しや転移門でも会話は無い。
しかし、見方を変えれば特に会話をしなくてもいい仲ととらえることもできる。


滝壺「あ」


しかし、その雰囲気をぶち壊すかのような武器が、村の『武具屋』で無造作に売っていた。


キリト「『スリーピング・ソード』…」


それは、クリティカルを出せば対象を『睡眠状態』にすることができる代物。
かつてキリトが孤独を決めてた時に、『ヒーローズ』を襲った時に使った片手剣。
そして、その時に最初に切ったのは浜面。


滝壺「大丈夫。気にしなくてもいいよ。あの時はそうだった。それだけだよ」

キリト「け、けどさ」

滝壺「きりとは真面目なのは分かったよ。大丈夫だから。はまづらも気にしてないよ。…ただ、きりとの気持ちは」

キリト「あ、あぁ…」


どうにも収まりそうにない様子。
本人たちは気にしてないと公言してるが、キリト自身は思い出してしまい中々…。


滝壺「なら」


そこで滝壺はとある提案をする。


滝壺「奥に『釣竿』あるでしょ?」

キリト「『釣竿』?」


『武具屋』の中を覗くと老いたNPCがいるあたりの上に剣ではなく、槍のような物が飾ってある。『釣竿』だ。
遠目でも解るが、金が装飾されており、さしずめ『きんのつろざお』と言った所か?お値段も、何処となく想像できる。


滝壺「あれが、きりとのお気持ちと言う事で…」


お気持ち、そう言えばなんだか聞こえが良いように見えるが。
ぶっちゃけこれが滝壺ではなく浜面や強面の女が言ってたら、丁寧な恐喝になっていただろう。
つまり買ってくれと。


キリト「…滝壺ってさ、いい性格してるよな」


滝壺「抜け目ない、と言っていただこう」


本当に抜け目ない。ちなみに『釣竿』の値段は3万したとか。

721: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:06:37.19 ID:iUzak4Ju0


浜面「お、滝壺ー、キーリトー」

土御門「おー、早く手伝え!!

初春「早く手伝ってくださいよ~!!」

佐天「初春―、ギブするのはやいよ~」

リズ「休憩してる私達が言ってもね~」


『ヒーローズ』のギルドハウスに近づくと、目の前では畑で農作業をする面々がいた。
『農業』これもSAOに搭載され多機能の1つである。
5人とも農作業着とでもいうのだろうか、動きやすく汚れてもいいような恰好をしている。
そして、麦わら帽子や布を巻いてたりする。
朝からやってたのか、既に収穫を終えた物が自分たちが食べるもの用と売りに行くもので分けられてるのもが何個かある。
『ヒーローズ』が育てるのは基本的に『香味野菜』などのSAOプレイヤーで『農業』を勤しむ物が育てる物や、『豆類』と少しの葉物だったりする。
ここに来て彼等『ヒーローズ』事、学園都市出身者が気が付いたのは、どうも学園都市の料理は『豆類』を使用する物が多いらしい。


キリト「うーっす。って、手伝え?」

滝壺「あ、ごめん。言い忘れてた」

キリト「…それは素で忘れたんだろうな」


先程の『釣竿』の件を考えるとワザと言わなかったかに思えてしまうが、考えすぎだろう。
キリトには断る理由もないし、何よりこのヒマな日の時間潰しにはもってこいだ。


キリト「ま、いいか」

浜面「何がだ?」

キリト「何でもない。…で、俺は何したらいい?」

浜面「そうだな…『白にんじん』の『よさげなのを』頼むよ」

キリト「おいよ!!」

722: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:10:16.53 ID:iUzak4Ju0

十数分後


キリト「ふぅ…」


『農業』のスキルは無いが、適度に疲労感がたまる。
『白にんじん』ことバースニップの収穫を終えたキリト上に伸びている葉の部分をカマで斬る。
『鎌』のスキルが無いのでなかなか難しい。


リズ「って、下手すぎでしょ!?」


そこへ何やら様子を見に来たリズベットが来た。
今日は『農業』だからなのか、いつものアスナが薦めてくれたの格好ではなくオーバーオール。
お手本を見せるのか、『白にんじん』を1本手に取り。


リズ「こうやって、こう!」


サクッと『白にんじん』の刃の部分を切り落とす。
無論、キリトと同じく『鎌』のスキルを使わず。


リズ「力み過ぎなのよ。軽く自分の方に斜めに引く感じで」

キリト「しょ、精進します…」

リズ「ふふん、よろしい」


悪戯な笑みでほくそ笑むリズ。少しムッとした顔になるキリト。
まあ、教えてもらったのは事実なのでそこには感謝しつつ作業に戻ろうとしたら。


佐天「リズさーん!!こんなもんでイイ!?」

リズ「今何箱?」

佐天「2箱!!」

リズ「ありがとうー!もういいよ~!!出来たらさっき言ったことお願いできる~?」

佐天「いいですよ~!!」


片手で掴めるほどの大きさの箱を持ちながら大声で会話する佐天。
もう片方の手には、菜箸ぐらいの長さの棒を掴みながら、それこそ菜箸の様に使ってる。
何をつまんでたのか?


キリト「お、おい・・・」


引き攣った、いやドン引きしてる顔でキリトがリズベットに訪ねる。


キリト「あれさ、佐天の持ってる容器からさ何か見えるんだ…『触手』的な。しかも動いてるし」

佐天「ほれほれ~初春~」

初春「やめてください佐天さん!!まだスカート捲られる方がいいですから、お願いですから見せないでください!!お願いしますから!!!」

キリト「な、なぁ。初春がめっちゃ泣いてんだけど。めっちゃ泣きながら嫌がってるんだけど?」

リズ「さーて、マスクマスク」

キリト「う、嘘だろォ!?」


何処となく予想はしてた認めたくない事実をリズベットに確認したキリト。
が、明確な答えは無かったが、彼女の行動と他のメンツの行動で確信した。
何かを予防するために慌ててメニュー欄を操作し、『濾過マスク』を顔に着ける。
慌てるキリトをよそに、畑の端で直火で水を沸かしてた鍋に近づいて行く佐天。


佐天「ヨシッ!」


鍋の中で煮えたぎる何かを確認すると、勢いよく箱の中身を鍋にぶちまける。

723: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:11:59.32 ID:iUzak4Ju0
この時、浜面に『結婚』のメリットである『アイテムの共有』がデメリットに働いた。


浜面「あれ、俺の分のマスクは?」

滝壺「はまづらごめん、買い忘れちゃった」

浜面「うそ、って臭せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」

土御門「うるさいにゃ~。虫の悲鳴と同じレベルだぜい」


虫と浜面の悲鳴のコンチェルトが辺りに響く。
さて、佐天が持ってた箱の中身のは察しの通り『害虫』である。
大人の人差し指ぐらいの大きさで触手が2本生えたピンク色のそれを菜箸でツマミ箱の中に入れてたのだ。何の目的か?


キリト「これって、何か武器に必要な奴か?」

リズ「そう、注文受けた奴でね。アレを煮詰めた物を丁寧に塗っていくのよ、何回も刃先にね」


その様子をジェスチャーで伝えるリズベット。


キリト「それは理解できたが、何でここでやるんだよ」

リズ「アタシの鍛冶場でやれと?この悲鳴と臭いの混沌を周囲にまき散らせと?」

キリト「ですよね~」


確かに、こんなの家の傍でやられたらひとたまりもない。
と言うより、武器片手に乗り込むのが常識だろう。意識があれば。


浜面「オゴ」

初春「浜面さんが気絶した!?」


この臭い、高レベルのプレイヤーでも気絶してしまうほどの恐ろしいもの。
意識を保てるのは、本当に耐性スキルをフルにしてる者だけだが、この臭いはトラウマもの。

724: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:14:15.53 ID:iUzak4Ju0


「くっせええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

キリト「うお!?」


今度はギルドハウスの方から男の悲鳴が聞こえてきた。


土御門「あ、部屋の窓開けっ放しだったぜお」


その悲鳴はハウス2階にある男の共同部屋からだ。
窓を開けるのは換気の為だが、こんな臭いが蔓延してる中で開けるのは自殺行為に等しい。
そして、今現在も1人、部屋にて寝てる。
『ヒーローズ』男性メンバーにて、一方通行、浜面、土御門が起きてるのは存じの通り。残るは


キリト「上条か…」

リズ「相変わらず『不幸』スキル半端ないわねー」

佐天「なんか、悪い事しちゃった気分…」

滝壺「大丈夫。その場合は起きた時に2段ベットに上の部分に思いっきり頭ぶつけるか、1階に下りる梯子で足踏み外すから」

初春「もしくは、御坂さんと何かしらトラぶりますね」

土御門「やれやれだぜい」

725: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:17:34.37 ID:iUzak4Ju0


上条「ったくよ。今まで散々な起こされ方したけどさ。何んだよ、さっきの臭い?」

佐天「ごめんなしゃ~い」


数分してから上条当麻がバルコニーに出てきた。
畑作業してたのも今は休憩でお茶を飲んでる。


リズ「アタシが頼んだんだよ。ごめんね!」

滝壺「でも、その後ベットの底に頭をぶつけて、梯子から落下してシャツが破けたのはかみじょうの不注意だと思うよ」

上条「…不幸だ」


何ともまあ、上条当麻らしい朝を迎える。
さて、滝壺が述べた通り現在彼はシャツが破け上半身裸である。なら、予備のシャツを着ろと?


初春「何で全部洗濯に出しちゃったんですか?シャツ」

上条「俺に聞くな、御坂に聞いて!?」

そう、昨日帰宅した際に、酔っぱらった美琴により何故か彼の予備の服が全て選択に出されてたのだ。

リズ「ホウホウ、これが『結婚』の弊害の1つか」

上条「いやだから何回も説明したじゃん!あれは『トルトゥーガ』での緊急時の措置で、システム上は『結婚』だけど実際は何ともなくて!!」

佐天「へぇ~」

土御門「ふぅん~」

上条「そのグラサン越しのにやけ面ヤメロ、腹立つ」


にやけ顔でいじるの大好きな3人が上条を温かい目で見る。
この場合「何で早く離婚」しないんだよと言えばいいが、上条も美琴も「いや、便利だし」と真顔で言ってその後ゴニョゴニョ理由を付け足してくる。
まあ、ほぼテンプレな回答になるのでキリトが話題を戻す。


キリト「つかさ、流石に誰かに借りてなんか着たらどうだ?」

浜面「それがよ、俺も洗濯中でよ」

土御門「右に同じく。洗濯中だぜい」

滝壺「運が悪かった」

上条「不幸だ」

佐天「キリトさんの貸したらいいじゃないですか」

キリト「サイズが違うし、パッツンパッツン上条嫌いだろ?」

上条「そうですよっと。仕方ない、待つか」

初春「今日の天気なら後1時間ぐらいで乾きますよ!」


こうして、上条は後1時間上裸が決定した。
ふと思うかもしれないが、SAOの場合通常のMMOやRPGと違うのがシャツ等の下着類だ。
コートやガウン等の防具類は男女共用で、装備することで違いが出るが、下着類はサイズが事細かに決められてる。
これはフルダイブゲームと言う事もあるのか、β時代から改善された点だ。特に、女性陣は下着に関しては概ねよしとしている。

726: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:19:10.61 ID:iUzak4Ju0


浜面「さて、仕事に戻りますか」

初春「そうですね、私も載せる花を吟味しなくちゃいけませんからね」

キリト「お、おう」


乗せる花。初春が言ってるのは無論頭の事だが、誰も突っ込まない。
突っ込んだら負けと言うのがまかり通ってるからだ。
まあ、お互いが其々の事をやればいいだけ。


上条「じゃあ俺はあのデカい蕪か?」

土御門「デカい蕪?」

佐天「そんな大きな蕪育ててましたっけ?」

上条「いやあれ」


彼が指差す方向に目を向けると。


浜面「へ?」

リズ「あ?」


こんもりと。育った『おおきなかぶ』が目に入った。


滝壺「…私の身長の3,4倍はあるよ。葉っぱだけで」


記者魂が騒いだのか、すぐさま近くに行った滝壺。
彼女が言った通り、葉っぱだけでもその巨大さが分かる。
そして土から覗かせてる部分を見ても、その強大さが分かる。


土御門「おっかしいにゃ~。さっきまでは普通の蕪だったぜい?」

キリト「これ…抜けるのか?」

727: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:20:31.33 ID:iUzak4Ju0


第61層・セルムブルグ


白亜の花崗岩で作られた城塞都市に、街の雰囲気とかけ離れたようでにあってる男が1人歩いてる。


一方通行「ったくよォ。何ンで俺がパシられないといけないンですかァ?」


ブツブツぼやきながら、凶悪犯面の一方通行が血盟騎士団副団長の家に向かう。
パシられる、と言ってるが実際はそんなたいそうな事でもなく、副団長の部下であるヤマトからの言伝。
尤も、それに関しては最近決まった副団長の護衛であるクラディールがすればいいのだが。


一方通行「つか、アイツ本当に番外個体ォの事嫌いなンだな。まあ、あそこまで言われたら仕方ないけどよ」


そう、番外個体とクラディールは結構前だが攻略会議の前に、殺し合い手前の大喧嘩をしている。
その時の原因は些細な物だが、今までのクラディールの態度や番外個体の言動など積もり積もった物が噴火したと言う形だ。


一方通行「まァ、何時かはなると思ってたけどよ。対策考えるかァ…」


世界最高の頭脳を持つ彼だが、いかんせん対人関係はどちらかと言うと得意ではない。
そんな悩み事が増えたことにため息を吐きつつ歩き続けると目的地に着いた。

728: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:22:48.26 ID:iUzak4Ju0


一方通行「オーィ。いるかァ?」


気の抜けた声で呼び出しながらノックする。
この街ではごく普通の豪邸。最低でも2千万はする代物。
さて、そんな豪邸の玄関をノックしてると、トコトコと足音が中から聞こえてきて扉が開き家主が顔を出す。


アスナ「おはよ~一方通行くん」

一方通行「お、おゥ」


そこから顔を出した栗色の髪の美少女。と言いたいが、現在の彼女は完全なる寝起き。
軽く寝癖が付いて目も半開きで、いかにも今起きましたと言う事が分かる。


アスナ「ごめんね~寝起きで。ふぁー…」

一方通行「…邪魔するぞ?」

アスナ「うん…」


未だ重そうな目蓋を擦りながらも一方通行を招き入れるアスナ。
仮に彼女のファンがこれを見たらどうなるか?
『阿鼻叫喚』と言う4字熟語がピッタリな展開になるだろう。
尤も、それを防止するために一方通行は付近の『索敵』をしたが特に誰かいると言う事は無かった。


アスナ「ワーストさんならリビングで寝てるから。…私顔洗ってくるね」

一方通行「あいよ」


慣れた対応をする2人。
ぶっちゃけ、女子力の高いアスナが此処までダレた所を見せる相手は皆無だ。
それこそ気になる相手には絶対に見せない姿。
本当に気を許してるからこそ見せられるのだろう。

729: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:24:26.24 ID:iUzak4Ju0

番外個体「すぅー…」

一方通行「マジカ…つかまたか」


リビングに向かうとソファーにて番外個体が体を丸めて猫の様に寝てた、高確率である腹を出して大鼾をかくことなく整った顔で寝てる。
が、その光景に一方通行は良い顔をしない。


一方通行「オィ、こうなってたから俺を急かしたのか?」

アスナ「何の事かな~♪」


顔を洗い部屋に戻ってきたアスナに問う。
それに対して彼女はわざとらしく恍けるが、そうしたくもなる。
元々、一方通行は『血盟騎士団本部』の用がありそのついでに番外個体を迎えに行こうとしてたのだが、アスナからのメッセージで早めに来た経緯がある。
で、その理由だが、語るまでも無く番外個体だ。
御坂美琴のクローンである番外個体だが、彼女の親である御坂美鈴の酒癖を美琴同様キッチリ継いでる。
特に最近、この様に猫の様に丸まって寝てる時に起こすと誰だろうが拳2発は最低でも喰らう。


一方通行「チッ!」


無論、この事は一方通行やアスナ等、2人に関わりがある者は知っている。
そして、この現象の1番の被害者は一方通行と上条当麻である。
さて、この厄介な状態を数回経験してる一方通行である。
仮にも自分の女なので優しく被害を出さない。


一方通行「『デスソース』まだあったかな?」

アスナ「え?」


なんて、紳士な事をこの男がやるはず無かった。
ましては身内である。手を抜かないわけない。メニュー欄からボトル1つを実体化させる。
おそらく白ワインが入ってただろう透き通った薄緑のボトルだが、不透明な液体が入ってる。
薄緑越しにも分かるあの毒々しい黒ずんだ赤色。
色を見ただけでアスナの口の中にあの味覚、いや痛覚が広まる。


一方通行「さァて、どうやって飲ませるかなァ?」


ドスの利いた嬉しそうなハスキーボイスに軽く引くアスナ。
無論、これで終わるわけではない。
数分も立たないうちに少女の甲高い悲鳴が響き渡ったのは語るまでも無かった。

730: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:26:07.39 ID:iUzak4Ju0


番外個体「グッソォォォォオォォオォオォォオォォォ!!!!!」


知らない人が聞いたら『迷宮区』限定のクリチャーが何かしらのクエストで街中に出たのかと勘違いしそうな叫び声。
仮にプレイヤーだとしても、その声の主が美貌ならアイングラッドの中で5本の指に入るプレイヤーだとは、
そしてその少女がアイングラッド1の美少女の自宅にいるとは誰も思わないだろう。


アスナ「ねえ、本当に大丈夫だったの?」

一方通行「いィンだよ。普段の行いの慣れはてだ」


リビングにてアスナのお気に入りの花茶を飲みながら番外個体を待つ2人。
アスナは正直やり過ぎだと思うが、あえてそこには踏み込まないことにする。


アスナ「そう言えば」


唐突に思い出したかのように、彼女は自身のアイテム欄から本を数冊実体化させる。


アスナ「面白かったわ『ファイナルファンタジーVIII』。何か不思議な作品だったね」

一方通行「ほゥ、そりゃよかった。元々人気ゲームのノベライズだからな、賛否もあるンだよ」


少し、表情が緩む一方通行。
この世界に来て、多少なりとも歳相応の表情をするようになった一方通行。
特に、自身の趣味や考え方を共感出来そうな相手が見つかるとその傾向が顕著になる。


アスナ「でも『魔女』が終始寂しそうだったなー」

一方通行「ハァ?」


が、アスナの感想はイレギュラー中のイレギュラーだった。

731: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/05/24(日) 23:29:05.16 ID:iUzak4Ju0


アスナ「え、そんなに驚く事!?」

一方通行「…俺の知る限り、あの作品で『魔女』に共感できる奴は2人目だ。ラスボスの方だろ?」


アスナ「うん。…そんなにおかしいかな?
確かにやってる事は悪だけど、仮にそれが本人なりの『善意』だとしたら?そう思ってね。
…だけど、いくら善意だからと言って歴史改編しようとしたら反発を受けるのは必至だけどね」


一方通行「ふーン」

アスナ「あなたはどうだったの?」

一方通行「所詮はゲームのノベライズ。それだけだ。…オィオィ、ムッとすンなよ」

アスナ「しますよ!好みの作品を目の前で一刀両断されたら!」

一方通行「最後まで聞け。だが、そんな考えも浮かべるし、仕事に疲れてる人間1人の表情に生気を戻せる。ってなァ?」

アスナ「へ?」

一方通行「お前のこと心配してるのは、山ほどいるって事だ。俺みたいな奴もな」

アスナ「あ、ありがとう」

一方通行「さて、そろそろ番外個体が上がりそうだし準備するか。…そゥだ、その本に共感した『黒の剣士』が言葉に出してないが、かなり心配してたぜ」

アスナ「へ!!!!?」

一方通行「早く風呂にでも入って気合い入れてメイク直してして来い。今日は何の日か、仕事に追われて忘れたとは言わせねェぞ?」


珍しい一方通行の優しさかから来る悪戯な笑み。
そんな貴重な笑みを目の前にいる『閃光』と呼ばれる少女は気が付きもせず、もう1回風呂場へ直行する。それは何故か?
攻略や仕事以外で『黒の剣士』と会うからであろう。そうキリトと。


一方通行「平和だねェ~」


老人のような1人ごとを呟くと、彼は空になったマグカップを持ってキッチンに向かう。
今度はアスナお気に入りの花茶ではなく、自身の好みであるコーヒーが飲めそうだ。


740: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:01:14.84 ID:DxQ2Gp5L0

「せーのッ!」

「うんとこしょ!!」

「どっこいしょ!!!」


第19層の乾いた高原地帯に響く掛け声。何とも気の抜けるような文言だが


キリト「抜けねー。つか、この掛け声変えね?」

佐天「ダメですよ!『大きなカブ』を抜くときの掛け声はこれに決まってるんです!」

初春「そうですよ!文句ならロシア民謡を和訳した人に言ってください」


との事。しかし、かれこれ1時間近く数人で格闘してるが抜ける気配はない。
『体術』などの『スキル』を応用したりして抜きたいが。


浜面「けど、『スキル』使うと葉っぱが千切れるし」

上条「そして純粋な『体力』だけで格闘し…」

リズ「おっかしいなー、『原作』は3人と3匹で抜けたのになー…」

滝壺「大丈夫。実写化は『原作』通りにいかないのはお約束」

土御門「コレ実写化かにゃ~?」


との事。ちなみに『原作』とはロシア民謡の『大きなカブ』で、この状況のまんまである。
無論人数等の違いはあるが、物語は猫が鼠を誘ってやっとこさ抜けるのだが。


アルゴ「オメーら何やってるんダ?『エンデュミオン』まで声響いてたゾ?」


面白いタイミングで来るものだ。
情報屋アルゴ、通称『鼠』が来ると彼等は「ネズミ、キタァーーーーーー!!!!」と大きな歓声を上げる。


アルゴ「え、ちょ、ナナナナナ、なんなんだヨ!?」


彼女が全く持って状況を把握できてない現状。

741: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:02:32.60 ID:DxQ2Gp5L0

土御門「よし鼠、俺を引っ張れ!」

アルゴ「は!?」

キリト「いいかアルゴ!みんなの掛け声に合わせて引っ張るんだぞ!」

アルゴ「ちょ、キー坊!?」

リズ「グダグダ言ってないで早く位置に着けよ!!」

アルゴ「何なんだヨ~」


文句を言いながらも土御門の後ろに付くアルゴ。
ここまで来ても彼女は先ほどの掛け声と言い、歓迎っぷりの意味がまだ解ってない顔をする。

742: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:03:41.31 ID:DxQ2Gp5L0


キリト「行くぞ~!!」


1番先頭のキリトの掛け声が通る。
ちなみに何故彼が音頭を取るかと言うと、ギルド頭の上条や『農業』にかなり取り組んでる浜面や初春達よりも声が通るから。


「うんとこしょ!!」


「どっこいしょ!!!!!」


再び第19層に童話通りの掛け声が響く。
アルゴもやっと何のことか理解できたのか、顔がゆるむ。そして


リズ「動いた!!」

上条「手ごたえあったよな!?」

佐天「これはこれはひょっとして!?」

キリト「いけるぞ、あと1回!!せーの!!」


アルゴが加わった途端に動き出す『大きなカブ』。
間違いなく次で抜ける。皆、期待と興奮で腕に力が入る。


「うんとこしょ!!」


「どっこいしょ!!!!!」


アルゴ「抜けたァ!!!?」


抜けた。突如出現した『大きなカブ』は見事に抜けたが、あり得ない抜け方をした。


浜面「うえええええぇぇぇぇぇ!!!???」

リズ「飛んじゃってーーー!!!???」

743: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:05:10.65 ID:DxQ2Gp5L0


文字で表現するなら「すぽーん」という擬音が最も合うだろう。
そう、すぽーんと勢いよく抜けた蕪は、風船よりもはやい速度で真上に飛んで行った。
SAOの『農業』は現実の『農業』と同じようで全く違う。例えばこのように


初春「言葉が見つからない、ってこんな状況なんですね」

滝壺「うん。訳が分からないよ」

土御門「高く飛んでったにゃ~」

アルゴ「お、オレッチのせい?」


何とも言えない状況に、1同上を見ながらポカーンとする。


御坂「何してんの?」


そんな状況に、寝起きの美琴が歯磨きしながら声をかける。
部屋着とでも言おうか、かなりラフな格好。
無論、彼女は今何が起きたか知らない。

744: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:07:41.77 ID:DxQ2Gp5L0


佐天「あー御坂さん、えーっとですね」

キリト「何から説明したらいいやら…とりあえず、おはよう」


何とも言えない状況でテンプレな挨拶から始まる。この状況を説明する?


浜面「とりあえず土御門」

土御門「えっ!?」

リズ「説明よろしく」


とここでこの中で幾分か大人だと認識されてる土御門を浜面とリズベットが美琴の前に出す。
滝壺や初春も土御門だと大丈夫だろうなと納得した表情だが。


上条「えぇ?」


この中で1番付き合いが長い彼納得してない。
そもそも、土御門が上手いのは『なるべく重要な事を抜かして説明する』か仕事モードの時であって、このような状況だとあまりよろしくない。
無論、本人は自覚してて目線で上条に「フォローしてくれにゃ~」と訴えてるが、上条は「いやだ」と目線で答えた。


土御門「えーっとだな…」


諦めて何から話すか考えようとふと上を見上げる土御門。
グラサン越しに見える目は全力で「めんどくさいにゃ~」と言ってる。
流石にそれを口に出すことはないが、次に土御門が出した言葉と行動は


土御門「ほあああああああああああ!!!」


悲鳴とその場から全力で走り出すことだった。


御坂「え、っちょ!?」

初春「何です!?」

滝壺「…うえ?」


美琴を含め状況を理解できてない1同だが、滝壺の言葉聞いた先ほどからいた面子は上をチラと見上げると。


キリト「にげろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

佐天「走れ走れ走れええええええええええええええええ!!!!」

リズ「ゲームかなんかカアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

浜面「ゲームの中ですよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

滝壺「はまづらに抱っこされて楽ちんラクチン」

初春「佐天さんおんぶありがとうございます~」

アルゴ「何でオメーモおぶられてんだヨォォォォォォォォ!!!!」


一斉にその場から走り出して逃げ出した。
正直、全く状況が理解できない美琴。


御坂「な、何よ。今日はお酒全然残ってないからいきなり暴れないわよ、バカァッ!!?傷つくでしょ!!」

745: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:08:16.94 ID:DxQ2Gp5L0

と若干涙目で自身の原因を分析したうえで叫ぶ。
が、原因はそれではない。


上条「御坂ァ!!!上見ろ上ェ!!!!」


流石に上条は気を使ってか美琴に注意を促す。
全力で走りながら。


御坂「なによ、もぅ…」


朝っぱらから理不尽なダメージを心に負いながらも上を見上げる美琴。が、時すでに遅し。


御坂「ちょ!?」


次の瞬間、美琴の頭上には白く巨大な球体が目前に迫っていた。
おそらくそれは巨大化した根菜類だと、数分後の美琴は実感し感想を漏らした。


御坂「不幸よ…」

746: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:10:37.10 ID:DxQ2Gp5L0


数分前・第19層・エンデュミオン


一方通行「結局、いつも通りのメイクに落ち着きますか」

アスナ「試行錯誤って、やり過ぎはよくないって事よ。うん」

番外個体「にっひっひ。ミサカはアーちゃんの面白い顔見れてのがよかったもんねー。ギャッハ☆」

アスナ「消したよね!ちゃんと『記録結晶』で取った写真消したよね!もう一回チェックさせて!!」

一方通行「おうおゥ。ちゃんと調べろよ、コイツ隠し撮りは天才的だからよォ。なンなら素っ裸にしても」

番外個体「調子乗ってんじゃねーぞゴルァ白モヤシ!!寝起きの1っ発忘れてないからな!!」


エンデュミオンの転移門から出てきた3人はふらりと歩きながら『ヒーローズ』のギルドハウスへ向かっている。
アスナは久しぶりにキリトと会うために気合を入れようとしたが、いかんせん空回りだったのでボツ。
ちなみにその時のボツメイクは番外個体が写真撮ったが、アスナに力づくで消された。


一方通行「しっかし番外個体ならロングカーディガン見慣れてるが、お前だと新鮮だな」

アスナ「ううっ、変かなー?」

番外個体「ミサカとおそろだし、アーちゃんなら何でも着こなすから大丈夫っしょ!!!」


薄地のロングカーディガン、番外個体からのプレゼントで彼女とは色違いの優しい白色。
緩いカットソーにパンツの組み合わせた今日の格好からは、普段の清楚と可愛さに大人っぽさがプラスされる。
ちなみにお気づきであると思うが、この様にファッション優先の場合、防御やそれに伴うスキル等は皆無である。
尤も、それはここ19層や22層等のモンスターが比較的出ない層だからこそできる格好。
そして仮に出たとしても、何とかなってしまう面子だからこそだ。


一方通行「お前はそのまンまビッチっぽさが溢れ出てるけどな」

番外個体「自分の彼女によくそんな事言えるなコンチキショー」

一方通行「が、悪くねェ。俺は好みだ」

番外個体「ナッ!?」

一方通行「お前はアオザイみたいにロング丈が似合うンだな。それにホットパンツも悪くねェ」

番外個体「な、ななななな、何言ってんのモヤシ!!べべべべべべ、別にそんなこと言われてもみみみみみみい、ミサカは!!?欲情してんの!?」

アスナ「えーっと、たまやーだから逆から読むと」

番外個体「アーちゃんも何か言ってよ!!」

アスナ「えー…」


心底どうでも良さそうに番外個体を見るアスナ。
この2人といると時たまある事象で、正直慣れた。
ちなみにこのくだりは番外個体のリアクションをニヤニヤ見てる一方通行曰く「番外個体の反応が面白いから」との事。
それを聞いた時、納得し、他でやれよと思い、自分も恋人が出来たらやるのかなー?と思った彼女。


番外個体「つか、たまやーの逆って何さ!?」

アスナ「ほら、何か白い球が落ちてるじゃん」


彼女が指差す方を見ると何やら球体が垂直に落下するのが見える。
厳密に言えば球体ではなく、何かしら青色の物が飛び出てる。まるで花火の逆再生。
で、それが落下する場所は。


番外個体「家の方じゃん!!?」


そう、彼女達のギルドハウスの方。番外個体の言葉を聞くと3人は走り出した。
この時、アスナと番外個体は1分でもいいから物陰に隠れて普段の動きやすい服装に戻りたかった。が、そんな暇はない。
なにせ、この層はギルドハウスを手に入れた時みたいに月に1回、強力なモンスター『ラヴァ・ドラゴン』が出るのである。
何事も無い事を祈りつつ、改めてファッションの難しさを痛感する2人だった。

747: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:12:12.43 ID:DxQ2Gp5L0


一方通行「ッツ!?」


ギルドハウスの前に付くと一方通行が臨戦態勢に入る。


「モアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


そう、そこには強大なカブが頭の人型モンスター?がうろついてたのだ。
が、ボスクラスモンスター特有の雰囲気が無い。
あまりにも不思議なモンスター?で警戒するが、もう1つ一方通行にとってよくない状況がある。


番外個体「ジャ、ジャ…」

アスナ「え、あ…」


今日の大人っぽい服装とはギャップがありすぎる反応を見せる2人。
冷静ではない…と言うか、泣きそうである。何故か?
それは目の前の『カブ人間♀?』の頭部、巨大なカブには傷だろうか窪みが3つあり、それはまるで


番外個体「ジャック・オー・ランタン!」

アスナ「違うわよ、カブだからジャッコランタンよ!!」

一方通行「どっちでもいィィィィ!!!」


そう、それは季節外れの『ジャック・オー・ランタン』である。
蕪使用なのは、『アイングラッド』が何処となくケルト文化が多めだからだろうか?
しかしそれはどうでもいい。みよ、目の前にアンバランスな体系の蕪人間を。


「オアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


何かもがくように叫びながら目を光らせる。
それはアンデット系モンスターそのものであり、これがカボチャなら一方通行が連れた美少女2人は今頃状況を把握してただろうが。


一方通行「やっぱり気絶したよ…しかも抱き合って!?」


ロングカーディガンを羽織った美少女2人は、抱き合い立ったまま気絶してた。
顔はとても説明してはならない。が、状況は察した。


一方通行「何ンで超電磁砲がこンな風になってるか説明しやがれ、三下共がァァァァァァ!!!」

上条「ごめん、分からない」

御坂「もがああああああああああああああああああああああ!!!」

748: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:14:07.80 ID:DxQ2Gp5L0


一方通行は自身がこの世界に来てツッコミ役に多々なる事を理解してた。
そう、理解しなければならなかった。何故ならば。


浜面「滝壺、滝壺!滝壺さぁぁぁぁん!!ねえお願い、いきなり「実家に帰ります!」的な事言って離れないでよ!!」


滝壺「大丈夫はまづら。はまづらがソレなんとかしたら出るから。
…時にはまづら。この『スペイン』やら『フィンランド』『アメリカ』と記されてる『回廊結晶』は何?」


浜面「いや経緯見てたでしょ。お願いだから出てきて、開けて!ねえ!!後その結晶類は見ちゃダメ!!」


情けなくギルドハウスの玄関にてコントをやるバカップル。
コント名は『妻に締め出された旦那』だろう。


アルゴ「キー坊!動くなよ、絶対に動くなヨ!!」

リズ「動いたらあんたがこの前見せてくれた『アレ』を喋るから。大声でアルゲードで喋りまわるから。わかった!!」

アルゴ「何だそれ気になる!オ、オ、オ、オ、オレッチはキー坊の情報投げ売りするからナ!!」

キリト「2人同時にスキル全開で俺を盾に動きを止められてて動けるかよ…つか、俺の個人情報の扱いひどくないか!!?離してくれよ!」


リズベットとアルゴにスキル全開で止められてるキリト。
彼のレベルならば2人を離すことは容易だが、流石に身内の女の子でこの状況にビビりまくってる2人を無下に出来るほどの鬼畜度はない。


初春「ははん。流石のアルゴさんやリズベットさんも『お化け』前にはたじろぐんですね。
この科学の結晶みたいな世界でよくもまぁ。ま、ファンタジーの世界だからいいんじゃないんですか、怖がっても?ねえ」


佐天「すごやこの子、私達を盾にしながら自分の自己紹介な事を言ってるよ。初春って『ブーメラン使い』になったんだっけ?」

土御門「うんにゃ、なってないにゃ~。どちらかと言えば、俺ら2人を盾にして、今の美琴ちゃんを観ようとしない為のスキル使いを見ると。
『体術使い』かにゃ~。と?」


こちらは初春が佐天と土御門の2人を使って肉壁を作ってる。『攻略組』2人を拘束できるほどの力は何処から来るのか?

そして


上条「…解ったか?」

一方通行「死ねよ、詳しく状況説明してから」

御坂「ガッツガッツガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

749: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:15:48.43 ID:DxQ2Gp5L0


一方通行「大方、中で超電磁砲が『咆哮』のスキルで叫んでんだろ?」

上条「やっぱり?」


何処となく状況は理解できた。
つまり畑に『大きなカブ』が出現し、それを引っこ抜くと美琴の頭にすっぽりハマったと言う事だ。
それに対して美琴は、モンスターの威嚇や特定の物を破壊することができる『咆哮』で対応しようとしたが、
結果は『咆哮』の際に発生する光が窪みから出ることによって、より『ジャック・オー・ランタン』に近くなってしまった。


一方通行「すっげー納得したくねェ…。つか、この状況になるまで、ここにいる女ども見てたンだろ?」

アルゴ「怖いんだよ!!何なら、お前の彼女とアータン起こせヨ!」

一方通行「よし、対策は…」

アルゴ「流すなゴルァ!!」

キリト「あれだ、『捕食系植物モンスター』と同じ」

一方通行「理解した」


『捕食系植物モンスター』これらはプレイヤーを襲う時にまず頭部から襲ってくる。
ちなみに、3時間以内に頭部から離せば死ぬ事は無い。困ったことに、『農業』していて『B級食材』を育てるようになると雑草として出てくる。
話を戻そう。襲われ頭部を捕食された場合、対処する方法は2つある。
1つはモンスターの撃破だが、これは『大きなカブ』が粉々になってしまう。
なので『プラン2』。3人がかりで引っこ抜くのだが、この場に自由に動けるプレイヤーは上条と一方通行の2人しかいない。
このようなタイミングで来客など


シリカ「あの~…」


来てくれる。

750: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:16:39.31 ID:DxQ2Gp5L0


一方通行が大体の事をシリカに説明すると3人は位置に付く。
一方通行とシリカは葉の方で、上条は突きだした美琴の方。


上条「なあ、何で俺が『御坂の方』なんだ?」

一方通行「質問は後だ」


嘘だ。本当は答えるのが、只々めんどくさかっただけだ。何が起こるか解りきってたから。
それが解ってる一方通行は表情に出るが、隣にいたシリカはその後の掛け声で悩んでた。


シリカ「え、えっとですね。本当に私が考えた掛け声でいいんですか!?」

上条「大丈夫だって!!俺、その掛け声好きだし!」

一方通行「早く抜かねーと、アイツが死ぬぞ?」

シリカ「…行きますよ!!」


無論嘘であるが、事を早く進める方便である。

751: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:17:16.96 ID:DxQ2Gp5L0


さて、この救出手段はタイミングが命である。下手こくと美琴の首が抜けしまう。
なので掛け声によるタイミングが重要だ。3人が意気込む。なのだが


一方通行「かつ丼!!」


上条「天丼!!!」


シリカ「親子丼ンンンンン!!!」


この掛け声センスは如何な事かと思ってしまう。

752: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:18:08.18 ID:DxQ2Gp5L0


御坂「いっててててて・・・」

上条「大丈夫か、御坂!?」


スポーン、とカブから抜けた美琴を見てキリト達から「やった!」等の歓声が上がる。
が、考えて欲しい。
この時、上条は美琴側を担当してた。美琴がカブに頭をすっぽりと入って状況で力を込めて抜くことを考えると、その格好は


御坂「へ!?」


上条「あ」


考えるまでも無い。少し前に、一方通行が美琴の方を譲ったのはその為である。2
0秒以内に上条の「不幸だー!!」と言う叫びが響いた。

753: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:19:04.34 ID:DxQ2Gp5L0


他のメンバーが上条に抱きしめられたことによっての美琴の大暴れをしてる最中、その後ろで


シリカ「え…何でですか、アルゴさん!?」


アルゴ「だから…言ったじゃねーカ」


一方通行「聞こえてない部分の方が多かった。ハッキリ言ェ」


その時、アルゴは体を震わせていた。何故か?それは次の彼女の言葉に表されてる。


アルゴ「もう一回言うからナ!!お前ら今日の47層の『花祭り』には絶対位に行くナ!!心の底から後悔するゾ!!」

754: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/08(月) 01:20:35.64 ID:DxQ2Gp5L0
今回はここまで。

前半は童話『大きなカブ』をベースで、後半はハロウィンベースでした。


ではまわ

759: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/21(日) 23:37:32.69 ID:NLcWGKhW0


第47層


キリト「なんだったんだ?」

土御門「さあ?」

一方通行「あンなネズミ初めて見た。『祭り』だよな?」

シリカ「そうですけど…」


先程のアルゴの忠告に首をかしげる4人。『祭り』、それは第47層だと年1回行われてるイベントだ。
他の層にもあり、其々『鎮魂祭』や『収穫祭』とうあり、数回も行う層もある。
とてもアルゴが忠告するほど危険な物とは思えない。


ヤマト「へー、そんなアルゴさんだったら1度見たかったかも」

一方通行「仕事しろ『警備団』」

ヤマト「いや『警備団』じゃなくて『血盟騎士団』。…まあしょうがないけどさ」


『警備団』と影名がつけられてる『血盟騎士団』の現状を認めてしまう、1番隊隊長ヤマト。と言ってもしょうがない。
本来『圏内』では戦闘行為は発生せず安全なのは確かなのだが、それは一般プレイヤーのHP、即ち『生命』である。
が、現状壊滅状態である『ラフィン・コフィン』のヘッドであった『Poh』を含む幾数人が行方知れずであり、
確保し生存してる幹部『ジョニー・ブラック』『ザザ』も確信的な事を吐こうとはしない。
ので、また『Poh』が一般プレイヤーをオルグする可能性は否定できない。その為に


クラディール「隊長、『検索』終わりました」


『検索』つまりは『祭り』等の攻略組以外のプレイヤーが多数来るようなイベントでは、『血盟騎士団』が中心となり、警備警戒に当たってる。
これらの行為が『警備団』と揶揄されるゆえんであるが、必要な事なので致し方ない。

760: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/21(日) 23:40:35.75 ID:NLcWGKhW0


『検索』を務めてたクラディールを含める血盟騎士団1番隊の面々が集まる。
1番隊と言っても2番3,4番隊はあの日『ラフィン・コフィン』との内戦で隊長を含め壊滅し、現状1番隊しか残っていない。


クラディール「隊長?」

ヤマト「いや…」


考える。仮にアルゴの忠告が本当だった場合、さらなる検索が必要になる。
それにボスクラスのモンスターが出るクエストが発生しようものなら、『祭り』どころではない


キリト「念のためにもう1回やってみたらどうだ?」

土御門「そうだって。何なら、俺らも手伝うぜい」

クラディール「あなた達には聞いてません。こっちは『警備団』のヤマト隊長に聞いてるのですから」

シリカ「ムッ」


空気が若干淀む。
後に『仮想世界の内乱』と呼ばれるようになった『ラフィン・コフィン』の討伐。
1番の犠牲を出した『血盟騎士団』、その影響の1つがコレである。
あの時、犠牲になった多くの者は『ヒーローズ』やキリトには親交的な者が多かったが、現在の多数派はクラディールの様に彼等を快く思っていない者が多い。
もっと言えば、アスナを絶対的に崇拝してる者が多数派だ。話を戻す。
『検索』を終え報告を聞いたヤマト。何をするかと言うと。


ヤマト「…もう一回『検索』をする。今度は『ラフコフ残党』の警戒もそうだが、NPCや石板、クエスト等にも注意を払いながら細心の注意を払え」


もう1回の検索だ。が、その決断は先ほどキリト達から聞いたアルゴの謎の忠告話を聞いての判断だと誰もが理解できる。
団員たちがどよめき、その中の中心核であるクラディールが物申す。


クラディール「隊長!そんな与太話を!?」

ヤマト「言葉が違うぞクラディール。俺は命令した。その場合の最初に口から出す言葉はそんなんじゃないよな?」

クラディール「りょ、了解…」


苦虫を飲んだ表情で敬礼をし命令を受け取るクラディール。
他の隊員もクラディール程でないが、似たような感じで敬礼をし、各々の持ち分の場所へ散っていった。


761: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/21(日) 23:44:07.28 ID:NLcWGKhW0


シリカ「何なんですかあの反応!!」

キリト「仕方ないって、本来であればこれが正しい反応なんだよ」

一方通行「それに、嫌われてるのは慣れてる」

シリカ「違いますよ、誤解されてるんですよ!」

土御門「それも慣れてるにゃ~」

シリカ「そんなぁ…」


クラディール等の反応に憤るシリカ。
そりゃ、こいつ等の事をよく知り理解してる者達からすると納得できない反応である。


キリト「それに、俺達の事を全く知らない人だらけになった訳じゃない。シリカみたいにな」

シリカ「へ?」

一方通行「そォだな。全くいなくなった訳でもねェ、お前やピナみたいにな、なァピナ?」

シリカ「ほ?」


キリトと一方通行的には自分達は慣れてると言いたいんだろうが、


土御門「このタイミングで言うかにゃ~」

ヤマト「ですよね~」


キリトと一方通行の趣旨は伝わってないだろう。その証拠にシリカの顔は面白いぐらいに真っ赤になってる。
受け取り方によっては、「君だけ真実を知っていれば、俺は大丈夫だ」とも捉えられる文言をさらっと平然と言える2人。


シリカ「…ズルいです」


シリカが絞り出す様に呟いた言葉など、キリトと一方通行に聞こえるはずもないだろう。
そして聞こえた土御門とヤマトは「くたばれ」と心の中で叫んだ。


762: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/21(日) 23:45:25.59 ID:NLcWGKhW0


さて、ヤマト達血盟騎士団が『検索』の間、正直言ってヒマだ。
この層は彼等のレベルからしてもレベル上げするには不足してるし、だからと言って他の層に行くあてもない。


浜面「だからって、表で本読むのはどうよ?」

キリト「いいんじゃねーか?」


てなわけで、流れで各々が持ち歩いてる本を交換して読むことになったのだが。


一方通行「で、なンで俺が意識高ィ系推理小説なンですか!?」

キリト「渡してきた土御門にいえ」


皆が好みの物を読んでる訳でなかった。
ちなみに一方通行は物語の主人公が、冒頭で問題提議してるところからイライラしてた。


キリト「それを言うなら、お前は何で俺にお前が絶対読まなそうな、『恋愛小説』渡してきたんだよ」

一方通行「足りない『スキル』に必要だと思ったからなァ」

キリト「そのニヤつきがウゼェ・・」

浜面「オイコラキリト。それだと、お前は何故『プログラミングなんちゃら』みたいな本よこした!?」

キリト「初級だったが、難しかったか?」

浜面「さっぱりだ!!」

キリト「こりゃ滝壺も頭抱えるわけだ」

浜面「んだと!?」


が、この流れで分かるの事がある。
土御門、一方通行、キリトが渡したのは其々相手に嫌味を含めたタイトルをチョイスした。の結果だが。


浜面「真面目に渡した俺は何なんだよ・・・」

シリカ「よかったですよ!次のも貸してください!!!」

キリト「この子ヤンキー漫画ハマっちゃったよ」

浜面「いや面白いじゃん!」

シリカ「そうですよ!!」

763: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/21(日) 23:46:51.61 ID:NLcWGKhW0


が、その中で一人黙々と読む土御門。


一方通行「おィ、何渡した?」

シリカ「え、アクセラレータさんの描いた『魔法解読』のを…」


『魔法解読』と言っても、『魔術』とは何ら関係ない。
そう、SAOの中での設定である『遥か昔に地上の部族との争いに使われた秘術、そしてこの城を浮かべる技術』等である。
が、所詮設定。このゲームに『魔法』が無いのは常識だ。しかし


キリト「土御門…?」


それを読んでる彼の顔はキリトが見た事無いぐらいに真剣な顔だった。


浜面「ど、どうした?」


同じように、土御門と同じ暗部であった浜面も見たことがない。
裏サイドの顔であるが、学園都市の裏サイドでは無い。学園都市暗部とはベクトルが真逆の存在。


土御門「オィ、一方通行」

一方通行「…アァ?」


その空気を1番に感じたのは同じ暗部組織に属しており、更には彼が読んでる本を執筆した一方通行だ。


土御門「ちょっと顔貸せ」


いつぞやぶりの仕事モードの声に、一方通行は黙ってうなずく。


土御門「言わなくても分かってると思うが」

浜面「行かねえし、聞き耳も立てねえ」

キリト「ヤマト達には俺が言っとく」

シリカ「で、です!!」


ドスが聞いた、とは別に重く湿った声に対し、残された三人は各々の反応で2人を見送る。

764: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/06/21(日) 23:47:53.86 ID:NLcWGKhW0


キリト「浜面…」

浜面「俺もあんなの見た事ねーよ。ただ」

シリカ「ただ?」

浜面「似たような雰囲気の奴とどこかで会ったんだ。滝壺の為に命を懸けた時に。…どこだった?」


モヤモヤが浜面の中に広がる。それは決して忘れてはいけない記憶。しかし、彼の言葉を聞いてさらにモヤモヤした者がいた。


キリト「何で忘れてんだよ?」


彼だ。そう、彼は浜面の話を聞いた事がある。
その時の浜面どれほど誇らしく、自信たっぷりと話したか?今でもキリトは覚えてる。
忘れるはずがない。浜面もだ。そう、ロシアでの話を。

が、この事はキリトは自分の胸にしまう事にした。それはこの話を聞いてしまった滝壺を守るため?ちがう。


シリカ「そう言えばリコさんもその辺りが曖昧だって前に言ってましたね」


これだ。等の滝壺もこの辺りの事を忘れてる。
第3者であるキリトがこの話を聞いても、とても忘れるような話ではない。
なのになぜ?


キリト「最近…奴ら、忘れすぎだろ…」


774: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/06(月) 01:26:59.41 ID:b0y16+100


19層


佐天「見ただけで死ぬ本ですよ!!」

初春「また都市伝説ですか?」

御坂「せめて『即死スキル』があるモンスターが出てから言ってよ…」

上条「つか、『目が腐る』の方がまだ現実味あるだろ」


一方、こちらは悠々と噂談義しながらお祭りに持って行く料理を作ってる。
無論、先程収穫した野菜などがメインであり、4人はラビオリを包んでる真っ最中だ。


リズ「つか、こっちの2人を起こすのを手伝ってよ!!」

滝壺「大丈夫りずべっと。そこまで必死になんなくても起きるから」

リズ「いやけどさ」


リズベットが先ほどから必死に仰いで起こそうとしてる番外個体とアスナ。


御坂「見ちゃだめだよ」

上条「分かっておりませう」


上条に見ないように釘をさす美琴。それもそうだ。
なんたって美少女2人は白目を向けて気絶してるのだから。


初春「あの姿をキリトさんに見られなかったのも救いですよね~」

佐天「アスナさんの事だから、見られたら引きこもっちゃいますよね~」




あの時、2人が気絶した直後、キリト以外のメンバー全員が連携しキリトを第47層へ仕向けたのは経験だからか?
無論、キリトが気絶したアスナを見る事は無かったが。


御坂「そんなに怖かった?」

初春「そりゃぁもう」

リズ「ミコトの『咆哮』のスキルで怖さ倍増だよ!!」

御坂「うぅ…」

上条「んー…」

佐天「そして上条さんは「あれが怖いのか~?」的な表情ですねー。同意ですけど」

初春「そりゃ男の人と女の人だと価値観違いますが、あれは…」

御坂「え、番外個体が気絶するほど怖かったんでしょ!?」

滝壺「大丈夫みこと。すごく怖かったから」

リズ「えぇー…あれ位でビビるのも何かね~」

初春「そうですよね~結構可愛いかったですよね~」

上条「オイコラ、鏡見て自己紹介の練習でせうか?『ファントム系』のモンスターの討伐」

御坂「え、そんなのあったっけ?」

初春「初耳何ですけど?」

佐天「もっしもーし。私の防具。ね、防具」

リズ「あれ、私が作ったの変えちゃったの~?ショックなんですけど~」

滝壺「あれはわたしが買ってあげた。それに『ファントム系』とされるモンスターが存在するなんて、そのような事実はない」


775: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/06(月) 01:28:32.28 ID:b0y16+100


一斉に現実逃避に入る彼女達に対しあきれた目で見る上条と佐天。
ご覧の通り、SAOには偶然なのか『お化け嫌い』の女性がかなり多い。
無論、これが現実なら笑うか可愛いとか、やれやれで済むが、この世界だとそうはいかない。
どんなRPGゲームにも必ずと言っていいほどいる『ファントム系』ことお化けモンスター。
それがフィールド・フロアボスに居る事などプレイヤーなら誰もが悟るだろう。ましてやここにいる攻略組の面々なら尚更。
しかし、彼女達はそれを頭の中から削除してきた。そう、見ないふりをしてたのだ。
の、結果がコレである。


リズ「だいたい、新聞にすら書いてなかった事だよ?そんな迷信」

滝壺「そうだよ。そんな記事書いてないし、あるごからも情報貰ってない。しかし、何故売上部数が落ちたのだか…」

佐天「それ1番の原因で迷惑したんですけど!!」

上条「情報皆無でどんだけ苦労したと思ってんだよ!?つか、報道しっかりしろ!!」


2人の悲痛な叫びに対しても全く反応しない。
そう、『ファントム系』モンスターがメインの層が連続であった。
しかし、その層の間では攻略組のマストアイテム『SAO新聞』にて情報が皆無だったのだ。
発行してのは事実だが、中層などの攻略には関係ないクエストばかり。使い物にならなかった。
なので、攻略組面々は各自で情報を集めたのだが、『鼠』が使えない状況なので、攻略が大幅に遅れたのは語るまでも無い。

776: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/06(月) 01:29:48.69 ID:b0y16+100


余りの状況に、上条と佐天が耳を寄せて話す。


佐天「ってか、アスナさんやリズベットさん、アルゴさんも駄目だとは思いませんでしたよ。特にアスナさんは重傷だし」

上条「御坂に初春、滝壺に番外個体が嫌いなのは知ってたけどなぁ…」


ちなみに上記4人がお化け嫌いなのを認知できたのは、
前に上条と土御門が洒落でお化けドッキリをした結果、タコ殴りにされたことが由来だ。


上条「能力者って、『お化け』だめなのかな?」

佐天「いやそれだとアスナさん達や一方通行さんはどうなるんですか?」

上条「…関係ないか」


「ん、んー…」


そうこうしてると、吐息が零れる。


番外個体「いやー、ミサカ寝ちゃったよ」

アスナ「ふわ~本当、寝ちゃったよね~」

滝壺「おはよう2人共」

御坂「気持ちよさそうに寝てたじゃないの」

アスナ「えっへへ~」


まるで気絶などしなかったかのように自然な流れで2人が昼寝してた事になる。
上条と佐天も「ああ、そう言う路線ですか」と目で言って、番外個体の部屋に行く2人を見送った。
何でも着替え込みの何かの経験談を聞くのだと。

777: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/06(月) 01:30:58.32 ID:b0y16+100


御坂「だからさ!ラビオリを餃子の変りにするのは無理だと思うのよ!!」

上条「いや、俺もそうだと思ったんだけどさ、意外と行けるのよ。そのままだと」

佐天「確かに、種を生地で包むのは餃子も同じですから行けそうですねー…。そのままなら。…ええ、いけましたよ」

初春「流石にラビオリを酢味噌にペペロンオイルつけるのは…」


気まずい空気を変えるにはメシの事がいい!と聞いたが、結局はこれだ。
番外個体やアスナが部屋に向かってからアイングラッドで流行ってる男子の食べ方を語ってたが、ここにいる面子には評判はよろしくないようだ。


滝壺「美味しいのに」

上条「御坂が言ってるのは、マズイタレをつける事だから」

滝壺「不味くなかった」


彼女の感想に対して、残りの者は反応こそしなかったが心の中では「嘘だろ?」と言った。
無論、滝壺自身は4人の本心を読む事など朝飯前だが、これについては流した。
それが、日常だから。
我慢するとこは我慢し、ハッちゃける所ははっちゃける。
それがこのギルド、いや『アイングラッド』の平和な日常だ。
だからこそ


土御門「かみや~ん!!」


疑問が湧いた。
少しでも学園都市の裏の世界に浸った物なら分かる裏の声からわかる真逆のベクトルの…。そして、


上条「土…御門?」


彼は懐かしい気分になった。いやな意味で。

778: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/06(月) 01:31:54.63 ID:b0y16+100


上条は「ごめんにゃ~ちょっと用事だぜい!!」と土御門に強引に廊下へ連れて来れれた。
土御門と一緒に、一方通行も来てたがその顔には疑問の数々が書いてある。
その中の1つを読み取ると「早く話せ」との事。
どうやら彼にも何も内容を離さないままここへ来たようだ。


土御門「…一方通行」


ある部屋の前に付くと土御門が一方通行に促す。番外個体の部屋だ。


一方通行「俺だァ」


部屋をノックし、中にいる番外個体へと扉を開けるように促す。
中から番外個体以外にもアスナの抵抗する声が聞こえた。
おそらく、2人で何かしらの会話か着替えをしてたのだろう、がそんな事は関係ない。


一方通行「早くしろ」


この声を発してから30秒で戸は開いた。

779: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/06(月) 01:33:16.63 ID:b0y16+100


部屋に入った1番乗りは土御門だった。


土御門「悪いな、2人共!!」

番外個体「何なのさ!?」


土御門は此処へ来る途中に一方通行から聞いてたのか、お目当ての本がある棚へ一直線だった。
このギルドの女部屋である個室は6畳ほどの部屋で、番外個体の部屋は一方通行が『書斎』としても使うので本などの資料で埋まってる。
尤も、この世界ならば収納は容易いのだが、『アイングラッド』の物書きに共通し「実体化したほうが探すのに解り易い」とのこと。
なんだか、と思うが


土御門「これか…」


彼が見つけたあたりあながち間違ってないのかもしれない。


アスナ「な、なに!?」

上条「さぁ?」

一方通行「知らン」


この場に状況を正しく解ってるのは土御門しかいないだろう。と言うか、他はパニックに近い。だからこそ


アスナ「ねえ、御坂さんと滝壺さんは解る!?」

一方通行「は?」


黙ってはいったであろう2人に声かける。
いや、あえて土御門の出方を見たのか?


御坂「全然反応無い…」

滝壺「事故かとっさの判断か解んないけど、ありがとうあすな」


戸を閉めながら滝壺がアスナに言う。そう、土御門は


土御門「嘘だろ…この秘術は…」


資料を読み漁ってた。そう、一方通行が集め、未だ解読できてない物を。

780: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/06(月) 01:35:01.16 ID:b0y16+100

土御門「はぁ…」


彼は1分近くで資料を読むのをやめた。
…いや、絶望したからこれ以上読みたくないという表情をしてた。
一方通行たちは、彼が今までまともに本を読み漁る事を見た事無かったからか、その光景をかたずをのんでみるしかなかった。上条を除いて。


上条「な…なあ?…」


彼が問い掛ける。
本来ならば、上条は言葉を続けたかったが。


土御門「…そうだ。…ここにいる奴らに関係…あるか」


その言葉の間の間は途中で訂正しようとした雰囲気だったが。


アスナ「どんな?」


彼女を見てすべてを話すことにした覚悟だ。
そう、これからの話をしたら結果的にアスナにも降りかかる絶対的な事実。


土御門「『魔術』の事だぜい」




『魔術』この言葉を聞いたら、多くの者は『魔法』と言う単語に置き換え『あり得ない』と思うだろう。そう


番外個体「何言ってんのグラサン?」

一方通行「続けろ」

アスナ「え!?」


驚くアスナ。いや、本気で驚いてるのは周りを見ても彼女だけだ。
先ほど茶化した番外個体も一方通行の反応を見て空気を読んでる。『魔法』は本当にあると。…いや。


アスナ「え、ちょっと待ってよ!!それが現実にはあるのは知ってるよ!!だけどこの世界だと…」

土御門「使えない。そう、『能力』と同じように使えないな。が、覚えてしまうんだよ」

滝壺「何を?」

土御門「『術式』だ」



781: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/06(月) 01:35:58.26 ID:b0y16+100

上条「いや、意味わかんねーよ。それは」

土御門「世の中には『魔術』知識皆無でも発動できる術式がある事ぐらいあるの、カミヤンは忘れたのか?お前の父親の様に…」


上条は思い出した。
それはかつて、上条の父親が息子の為に買ってきたお守りが起こしたとんでもない騒動。
もう、あのインデックスは見たくない。だが納得はできた。


上条「そう言う事か…」

土御門「そう言う事だ」

御坂「はぁ、意味わかんないんだけど?」

上条「つまり」


誰もが疑問に思ってる事を、上条は目の前にある本を掲げて説明する。そう


上条「一方通行が今日、出した本さ」


まさかのである。


アスナ「意味わかんないんだけど?」


土御門「前にも言ったが、魔法…いや、魔術はある。
そして、その中には『禁書』になるほど強力な物もな。…早い話が、これは禁じられた魔道書、『禁書』だ。インデックスの頭の中にもない
『時の魔法』を記した」

782: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/06(月) 01:37:23.66 ID:b0y16+100


アスナ「『禁書』?」

土御門「簡単に言えば、俺みたいな平凡な魔術師が見たら重症になる本だ」


この時、上条は「お前が平凡?」と、表情で言ってたが毎度の事だから逃す。が、他は違い。


一方通行「俺らはどゥだ?『魔術』なンざ、知識だけしかねェぞ?」

土御門「死ぬな。…死んで無いのは『アイングラッド』だから。としか言えない…」


絶句した。その回答に、美琴、一方通行、滝壺、番外個体は顔を強張らせた。読むだけで能力者が死ぬ本。


アスナ「けど…内容を忘れたら?助かるの?」

土御門「記憶ってのは、忘れる事は無いんだ。ただ思い出せないだけだ。それについては、カミヤンは分かるよな?って、知らないか」

滝壺「記憶ってのは、思えだせないだけであって。忘れる事は無いんだよ、あすな」

土御門「仮に、思出せないほどここで過ごすのはナンセンスだ。…特にアスナ。…いやみんなも」

アスナ「何でよ!?だって、仮にそれでみんなが助かるなら…」


そこから先の言葉を濁すアスナ。が、それは『血盟騎士団』副団長が決して言ってはいけない言葉。


アスナ「私は…攻略ペースを落としてもいいと思う…」





攻略のペースを落とす。
それは、攻略組のプレイヤーとしては言ってはいけない言葉に等しいが、それほどアスナが美琴達を心配してる事になる。が


御坂「…だめよ」


彼女が発するが、その内容を『ヒーローズ』は薄々理解してた。何故ならば、それは彼等が最初に調べたことの1部。…そして、今まで言わなかった事。


御坂「そんなことしたらアスナさん…キリト、リズとかみんな死んじゃうもん」

アスナ「えッ!?」

番外個体「あーたん…あーたん達にはミサカ達と違ってタイムリミットがあるの。
…多分、グラサンの雰囲気からするとすぐ近く。来たら…言った方がいい?」


アスナ「…ウソでしょ?」

794: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/21(火) 01:42:02.28 ID:tXihCO5Y0



美琴達の発言に、アスナは驚愕の表情を隠せないでいた。
それはこのデスゲームにタイムリミットがある事だけではない。
その事に関しては頭の片隅に不安材料としてあったが、医療知識が並にしかない彼女にとって、それは憶測の域を出る事は無かった。
が、仮に目の前の『学園都市の人間』、その中でもトップレベルの頭脳を持つ彼等の発言ならばほぼ事実のだと言う事を理解できる。
が、一番ショックだったのは


アスナ「いつから…いつから知ってたの?」


その事実を隠された事だ。彼女は彼等『ヒーローズ』の事を心から信頼してる、それはかつての自身が所属してたからではなく、自身の心からの感情だ。


一方通行「超電磁砲は?」

御坂「第1層…」

アスナ「何で…何で…」


彼女の身体が小刻みに震えだす。
その理由はここにいる誰もが分かるが、一方通行はあえて空気を読まず説明し始める。


一方通行「簡単に言えば『床ずれ』や薬の限界だ。寝過ぎは体に悪いって言ゥだろォ?それに、オゥ」


が、それに対してアスナが怒りを爆発させるのは誰もが予想できた。
彼女は自身のレイピアを鞘から抜くこともせず、粗雑にスキル『スピアー・ダウン』で床を叩く。
無論、『圏内』なので床が破壊される事は無いが、音は部屋に響く。
しかしその音は番外個体が『夜の事情』で壁紙を遮音性の優れる物に変えてたので、リビングに居る佐天やリズベットには聞こえない。


アスナ「そんなの、大体は想像つきますし大方は予想、理解してました!私が聞いてるのは!!」

番外個体「何で話さなかった?じゃーさ、アーちゃんはミサカ達が素直にその事を話したとして、どうしたの?」

アスナ「そんなの!!…ッ」


みんなに広めて、生き残ったプレイヤー全員で攻略スピードを上げる!。
そう、そう言おうとした。が、できなかった。


土御門「お前にキリト、理解が速いってのは助かる」

一方通行「ちなみに、どう思った?」


アスナ「…仮に『タイムリミット』がある事を広めたら、積極的に攻略に参加する人も出てくる。
けど、絶望して自殺したり、進んでレッドプレイヤーになって暴虐の限りを尽くす人も確実に出てくる。
…そう『ラフィンコフィン』に入ったり」


番外個体「大正解~☆」


そう、彼女は見ていた。絶望した人間がどうするか、どうなるか。
それは彼女自身もそうだったから、絶望し何をどうしたか。経験談でもある。
その『絶望』が行き過ぎ『狂気』と変り果てた人々が何をしたか?
忘れるはずがない、第25層の『トルトゥーガ』で『ラフコフ』が起こした『仮想世界の内乱』を。
その果てに起きた悲劇を。

795: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/21(火) 01:43:09.86 ID:tXihCO5Y0

アスナ「なら…どうしたら」

一方通行「こっちが聞きたいなァ…本当に」


この場にいる者たち全員の本音だろう。
仮にこの状態を一言で表すならば『詰んでる』と言う言葉がピッタリだ。


アスナ「つ、土御門さん?」

土御門「俺の見解が間違ってるかどうか、だろ?間違いであってほしいぜ…本当にな」


無気力に床を殴る土御門を見て察した。
仮にこのまま攻略し現実に戻れば美琴達は死が待っており、だからと言ってズルズルこの世界に残れば自分たちが死ぬ可能性もある。


アスナ「そんな…」


とてもでないが代案が浮かばない。
もう1度言うが、この状態を『詰んでる』以外の言葉で表せるのもなら表してほしい。
この絶望と言う『幻想』が支配する現状を打ち砕いてほしい。


上条は「あのな…」


そんな事出来るのは彼しかいない。

796: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/21(火) 01:45:10.73 ID:tXihCO5Y0


上条「何へこたれてるんだよ?」

土御門「は?」

番外個体「いや、グラサンが説明した」

上条「だから何なんだよ?」

御坂「アンタ聞いてたの!?」


唐突に口を開いた彼に対して美琴が問いかける。何故か?
それは、彼の発言が理解できなかったから、そして聞きたかったからだ。
彼の言葉を。


上条は「聞いたよ。一方通行が趣味で収集した設定の内容が、『魔術』で言う『禁書』レベルだと言う事は解った」

土御門「カミヤン!!」


土御門が怒号交じりに上条の会話を遮る。


土御門「言った筈だ『禁書』レベルだと!それがこいつ等御坂美琴を含める能力者にどれだけ影響があるかと!どんな結末がある事かと!
確かに、俺みたいな魔術師が本当に『時の魔術』を理解できてるかと言えば疑問はある。
だがな、それ以外にも、一方通行が書いた本には」


上条「だから、発動する前に俺がみんなの頭に触れて術式を解除すればいいんだろ?」

滝壺「…かみじょう。もうちょっと現実的に」

上条「だから、俺がお前らも救って見せるって言ってるんだよ」


開いた口がふさがらない。上条と1名を除いた物の表情だ。
どこから来るのか解らない自信が怖く思える。ふと、現実に戻った上条が下手に話し始める。


上条「だからその…ほら、ゲームクリアしたら俺がいち早く目を覚まして、みんなの頭に触ったりすれば、『術式』が解除されるかも…ってな?」

番外個体「すっごく不安なんですけど、ミサカ」


上条「だから…あーっ、もう!!だから、上条さんが言いたいのは、お前たち全員救って見せる言いてるんだよ!!
どんなことがあっても!北海の海に沈んで生きてた上条さんが言うんだぞ!!!」


土御門「アイングラッドでそんなフィールドあったか?」

御坂「あ」


上条「…と、とにかく、全員を救って見せる!!もう『仮想世界の内乱』のような何も出来なかったのは嫌なんだよ!!
ここで立ち止まっても何も変わらないんだよ!信じろ、俺を!!」


彼の言葉を聞けば、感情論丸出し『暴論』以外の何物でもない。だが


一方通行「…ッフ、そうだなァ」

土御門「カミヤンは、カミヤンか」

番外個体「でも、嫌いじゃない…かな」

滝壺「かもね」


その言葉を聞いた『学園都市組』の表情からいい意味で力が抜けた。
それは、彼が奮起することを、彼の力強い言葉を聞きたかったかのごとく。
ひょっとしたら、彼の力強い言葉、姿勢こそが『ヒーローズ』を纏めるものかもしれない。
そう、アスナは思った。良い解釈だと。

797: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/07/21(火) 01:46:12.39 ID:tXihCO5Y0


先の4人は上条の肩に軽く手で叩きながら番外個体の部屋を後にする。
奥から佐天たちに、「花祭りにいくぞ~!!」小気味よく替えをかけてるのが聞こえる。
それに対して彼女達も乗りよく答えたり、何があったのかと尋ねるのも聞こえるが真面目に答えてる様子はない。


御坂「あ…あんた?」


未だ残ってる美琴が上条に問いかける。
その声にはすべてを理解したうえでの問いだと言う事がアスナには理解できる。
ただ理解できないのは、彼等が開いた扉側にいて逆光で表情が見えない事だ。だからこそ。


御坂「…な、何でもない!!」


美琴がこの時飛び出して行った事が解らなかった。
だが、すぐに解った。上条が心配になり、近づくと逆光で見えなかった表情が分かるようになる。


上条「どうしたんだ、アスナ?」


その表情を見て、美琴が飛び出したことについて無理ないと思った。


アスナ「上条くん…」


彼の顔には『無茶』と言う字が所狭しに書いてあった。
そして、皆を救わなくてはいけないと言うプレッシャーが目に浮かんでた。
ふと思った、きっと先の言葉は上条が上条自身への言葉だったではないかと。


上条「行こうぜ?」


アスナ「う…うん」


この時、アスナは再びこの怖さを味わった。
それは、きっと別のベクトルであってほしいいが、それらに近かった。
そう、『神羅』と。


アスナ「『花祭り』か…」

806: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:06:25.86 ID:Ur2dUh6h0
『花祭り』

それはプレイヤー達が解り易くつけた名前であり、本当の名前ではない。
本来の名前はプレイヤーならば、一方通行か御坂美琴、ヒースクリフならば発音できる古い言語みたいだ。
だが、今日、この場にいるプレイヤー多くはこの祭りの趣旨をNPCの格好雰囲気から既に察した。
それはキリト事、桐ケ谷和人も。


キリト「『鎮魂祭』か…」

807: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:07:50.05 ID:Ur2dUh6h0


『鎮魂祭』

その場にNPC達が話す古い言語を理解できる物がいないのが悔やまれるが、それ間違いない。
そこには各々の部族の喪服であろう、漆黒、純白、黄金等、それぞれの色に統一された落ち着いた格好のNPCが集まっていた。
キリトは『鎮魂』いわゆる死に関わる催しごとへの参加経験は喜ばしい事に少ない。
祭祀であろう老いたNPCが何やら話し始める。
無論、それを分かるプレイヤーはこの場にはいない。
なので各々考察するが、それはほぼ同じ論調だった。


シリカ「あの動きと喋り方だと…この層の花々は…」

浜面「死者の花々か…特に、この桜っぽいのは」

キリト「その通りなんだと思う。木は神々、草は人、それを表してるんだと思う」

クライン「祭りと聞いて酒飲んでいたが、ちと場違いだったな」

エギル「仕方ない、情報が無かったんだからよ。つか、ヤマトは?」

キリト「本部に物取りに行ったんだとよ…アスナ?」


キリト達も考察しながら祭りを見守ってたが、ゆらりと『ヒーローズ』面々が場に入るのが見えた。が、おかしい。
彼等は、各層にある『祭り事』には空気を読まずテンションMAXで乱入するのだが、


クライン「流石に空気読んだか」

キリト「んな訳ない」

浜面「滝壺!?」


後から合流した『ヒーローズ』面々は各々1人2人に慣れそうな所へ散っていった。おかしい。
普段ならば、真っ先にこちらに来る。
だが、向かってるのはリズベット、初春、佐天だけだ。

808: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:08:44.81 ID:Ur2dUh6h0


キリト「ちょっと行ってくる」

浜面「俺も!」


シリカが「え、ちょっと!」と制止したが男2人はその場を飛び出し各々の思う人の元へ向かって行った。
人混みが迷惑そうなのが遠い目でも分かる。


リズ「オッス!」

初春「ごめんなさい、お待たせして」


タイミングを読んだかのように3人の少女が食べ物を持って来た。
彼女等もシリカ達が疑問に思ってる事を聞いてほしい事を聞いてほしいと言わんばかりの表情をしてた。


エギル「何があったんだ?」


ある意味大人である、エギルが問うと。


佐天「分かんないんですよ。家出てから普段通りの会話してるんですが…偶にくろこ、とか知らない名前出してきますし・・」

エギル「隠してる?」

リズ「それ臭い。アスナも正直、余裕が全く皆無だったし」

シリカ「何があったんだろう…」

809: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:09:28.09 ID:Ur2dUh6h0


キリト「ごめんなさい!」


彼は人混みの中をすり抜けるように走ってた。
人々は祭りに集中してて動かない。下手な戦闘より難しい。
唯一救いなのは、今日に限って、この場は『安全圏内』だと言う事だ。
なのでアスナ達が襲われる心配はない。しかし、襲われないが


「…キリト」


あり得ない声を聴いてキリトの足は止まった。そう、あり得ない声。


キリト「…へっ?」


詰まった声が出る。そう、その声が聞けるはずがない。
何故ならば、その声は約50層前に2度と聞くことが出来なくなったからだ。


「久しぶり」

810: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:10:15.88 ID:Ur2dUh6h0


浜面「滝壺ッ!」


同じころ、浜面も愛妻滝壺の後ろに追いついてた。
周りに人気がない場所に、滝壺は浜面に背を向けて佇んていた。
特に周りに人気も無く、障害も無いのを確認してから浜面は滝壺へ声をかけようとした。が


滝壺「…ふれ…んだ?」


彼女の発した台詞に止まった。
彼女はきっと、特定の人物の名前を言ったのだろう。だが


浜面「誰だよ…」


今の浜面にそのような人物の面識はない。
それ以前に、フレから始まる外国人との接触があったら、浜面の美少女図鑑に永遠に記録されるはずだ。


滝壺「ふれんだ、何で…。え、ふれめあが!?」


更に続く嫁の言葉に、浜面の頭は早くもフリーズ寸前になっていた。

811: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:11:06.21 ID:Ur2dUh6h0


御坂「はぁ…」


時を同じくして、御坂美琴は群衆と離れた場所から『鎮魂祭』を見守っていた。
祭祀の言葉通りならば、草花が発する花粉が木々の花へ受粉する事がこの地の鎮魂への形だと言う事だ。


御坂「桜みたい」


美琴が言った通り、『鎮魂祭』でメインに扱われる草木の花は桜に瓜二つだ。
そこへ、この時限定なのか、木々が光り、幻想的な光景を演出してる。
きっと、溢れる光の粒子が『魂』に見えるから、鎮魂祭の象徴をこの木々にしたのだろうと彼女は心の中で結論付けた。
尤も、同じように考えるプレイヤーは多いようで、泣いて帰りたいと叫んだり、死んだ友の名を叫んだり、地元の桜自慢をするプレイヤーがあちこちにいる。
それは『桜』と言う多くのプレイヤーの心に響くものだから、そうであると結論付けてた。


「やっぱ、櫻は日本人の心の安定剤なんやろうなぁ…」

御坂「そうですね…って、アンタは!?」

812: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:11:32.96 ID:Ur2dUh6h0


同じころ、上条当麻も


上条「う、嘘だろ?」


アスナも


アスナ「何で!?」


同じような現象に遭遇してた。

813: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:13:28.61 ID:Ur2dUh6h0

桐ケ谷和人の場合



「キリト!」


キリト「な、何で…」


キリトは震えてた。何で?彼の周りから暗闇が消え、桜と純白な空間へ変わってた事など、今の彼が疑問に思う余裕がないくらいに。


キリト「さ…サチ…」

ササマル「俺らも忘れるなよ~」

サチ「久しぶり…キリト」


彼の目の前にいたのは『月夜の黒猫団』彼等だった。
キリトが思い出せる姿の彼等。夢か・そう思い、ほっぺに手を伸ばすが。


ダッカー「いや、痛覚無いからな、ここ!」

テツオ「相変わらず、天然は健在ってか~」

サチ「大丈夫なの~?」


それを弄るように指摘し、笑う彼等。そうだ、前にも会った光景。


キリト「お、俺…」

ケイタ「死んでる訳ないだろ。俺を殺したんだからな」

キリト「ッツ!?」


そして、キリトの目の前に現れた少年。
最後にあったのは、不恰好にな黒のコートで殺し合いをした。


キリト「ケイタ…」

ケイタ「違う、俺はセフィロ、ッブ!!!?」

ササマル「はいそこまで!!」

テツオ「遅れてきた中二病がよぉ~」

ダッカー「あ~あ。見てたけど、そうとうコンプレックスあるんだな~」

サチ「フフッ、そうかもね」


ケタケタと笑われながら弄られる『月夜の黒猫団』の団長ケイタだ。
今現在、キリトの心の中で最も枷になってる人物。
しかし、そこには、友人同士の独特な空気で弄られる彼の姿があった。


キリト「な、なぁ」


そんな中、キリトは自分自身の心の中に抱えてた物をぶつけようとした。
自分が、ギルドに入ってよかったか?が、言葉を遮られた。


サチ「言わなくても分かるから。嬉しかったよ」

ササマル「そうだよ、キリトのおかげで俺ら強くなれたんだ!」

ダッカー「そこまでないけどな。けど、楽しかったのは事実だ」

テツオ「こんな状態になったからこそネタバレできるが、キリトお前…ッヒ!?」


何か言おうとしたテツオの言葉を遮るサチ。その表情はキリトが見えない角度からだと確認できたが、とても悔しそうだった。

814: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:14:17.08 ID:Ur2dUh6h0


ケイタ「…時間だ」


ケイタノ言葉と共に、名残惜しそうにその場を離れようとする各々。これを見て。


キリト「ちゃんと、リーダーはやれてるのか」


キリトは彼がこのギルドのマスターであることを確認し安心した。
しかし、彼の言葉が入ったケイタは。


ケイタ「ッツ!?」


激昂する。コンプレックス全開の。


ケイタ「いいか!!この状態になったのは間違いなくお前の責任だ!!3割な!!
けどな、けどよ!!それ以上に羨ましいんだよ!!お前の未来を見たら余計にな!!」


ササマル「ハイハイ」

ダッカー「男の嫉妬は見苦しいですよ~」

815: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:15:11.79 ID:Ur2dUh6h0


サチ「キリト」

キリト「へ?」


その瞬間、目の前にあったサチの顔がキリトの既にあった。
無論、キリトに避ける余裕はない。
が、キリトは奥で暴れてるケイタの表情を見て、彼がどうしてああなったか理解できた。
だが、今の接触を感じることは出来なかった。


サチ「…やっぱり、こうなったら触れられないか…」


寂しそうにつぶやくサチ。
その言動から、キリトは彼女の気持ちを朴念仁ながらも理解できた。


キリト「あ、あのさ」


誤解を生まないように、本心を言おうとした。


サチ「イイの」


しかし、サチはキリトの口寸前で言葉を塞ぐように指を置いた。


サチ「私はキリトの『鞘』になれないけど、だれがなるか知ってる。そして、それゆえの運命を知ってる、今はあなたみたいなチーターな存在だからね。
…だからこそ言える。その『鞘』を大事にしてね。…キリト」


そこで、キリトの意識は途絶えた。


816: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:16:39.19 ID:Ur2dUh6h0


御坂美琴の場合


「なんや、おかしいか?」

御坂「は…」


美琴の混乱は頂点に達してた。それは先の『ギルドハウス』の事もそうだが、隣にいる人物。


御坂「何であんたがいるのよ!!!?」

ユフィ「その世界線だから出ないかと?」


そこにいたのは、彼女の目の前で死んだ『神羅』の戦士ユフィ、白井黒子と瓜二つな存在。

817: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:17:35.14 ID:Ur2dUh6h0


ユフィ「はーあ、ホンマあんたにはトコトン愚痴言いたかったんですが、後が詰まってるようで」

御坂「は、何言ってるの?終わらせないでよ!」

ユフィ「ウチの今の居場所の前に自分の後輩が来たんや。それだけで理解せいや」


その言葉、解釈するならば彼女の居場所。つまりは『墓』に。


御坂「黒子が来たの!黒子が!?」


と言う結論になる。
そして、実際に白井黒子は彼女の墓に来てる。彼女の敬愛する先輩とと共に。


ユフィ「ああ、キタで。…おっと時間や。クリア後、墓の前で話そうや」

御坂「ちょっと!?」


呼び止めようとしたが、彼女の意見も聞かずユフィは消えて行った。そして、入れ替わるように


「すみませんお姉様、どうしても伝えたくて。とミサカは緊急であることを伝えます」


818: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:18:29.96 ID:Ur2dUh6h0


少し前


「お久しぶりです。と、ミサカは本屋前以来の挨拶をあなたにお送りします」

上条「本屋前って…お前は?」

「はい」


上条の目の前に現れたのは懐かしい制服の少女だった。
何回も見たことある、そう近くにいるから。
2年はその服装を見てないが。


「10031号が感動の再開をした。と、ミサカはRPG風な説明をします」

上条「ドラクエ!?いや、いいから。つか!?」


数字がおかしい。『妹達』の生き残りは上条の知る限り10032号こと、御坂妹からだ。
それ以外は考えたくないが、死んでいる。


10031「何を難しく考えてるんですか、これは『鎮魂祭』の影響で死者の国と繋がったのですよ?と、ミサカは頭がウニ並に固いあなたを馬鹿にします」

上条「誰がウニだ!!っじゃなくて…」

10031「ごめんなさい、本当は急を要するのです」


そこから真剣に彼女は外の事を話し始めた。

819: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:19:38.77 ID:Ur2dUh6h0


上条「つまり、9982号が肉体を獲て蘇り、悪さをしてると?それ以外にも学園都市は大変だと…」

10031「はい、そうです。と、ミサカは敵を示す○○が言えない事を後悔します!」


10031号の説明に頻繁に登場した○○。
どうやらこの状態だといくつかのワードが発せない様だ。


上条「…俺が居れば」

10031「オムライスが出来る時間で問題は解決します」

上条「そうか…」


力なくうなずく上条。現在の所、いくら力を振ろうがクリアまでには数カ月かかると言うのが攻略組の認識であり、彼の認識だ。
学園都市に何が起きてるか、それは理解できた。
だが、今の彼に出来るのか?
そもそも、早急にクリアしたらどうなるかと、数時間前に話したばかりだ。


10031「大丈夫!…とまでは言いませんが、ここ2カ月は頑張ってみてもいいんではないでしょうか?とミサカはフォローします」

上条「はぁ?」

10031「シスターさんからですよ」

上条「インデックスからか!?」


10031「はい。ミサカは未来が見える立場です。なので、その言葉を実践するのもイイかと?と、腑抜けなヒーローさんに言います。
折れるなアホ。
…救ってください、助けてください」

820: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/03(月) 02:20:50.67 ID:Ur2dUh6h0



後日、俺は『鎮魂祭』の意見を聞いたがそこまで理解できてない。
あの日、俺を含めた、アスナ、上条、美琴、一方通行に番外個体、滝壺に佐天が同じような現象を味わった。
しかし、これと言った変化はない。心、までは分からない。
佐天は「心霊現象キターーー」と騒ぎ、一方通行と番外個体は2人で納得し適当にあしらわれた。是非とも爆発してほしい。
滝壺はいつも通り聞けなくて。
上条と美琴は聞ける空気で無かった。
アスナは…「分からないよ」とだけ言ってた。


キリト「分かるかッ!!」


俺は自分自身の感情を叫びながら目の前のクリチャーを切り刻んでた。

ここは74層迷宮区。
そろそろ切り飽きて剣を収め、俺は迷宮区を後にした。
腹の減り具合から、シチューでも食べたい気分だ。S級食材の。
ラビット系のなんか特に。


そんな俺の目の前に


「マジか!?」


S級食材である『ラグーラビット』がいる。
ああ、今日上条が居なくてよかったことを、次の俺の言葉で分かるだろう。


キリト「ついてるッ!!」

829: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/19(水) 04:10:51.11 ID:Yqj+wwpF0



学園都市


その日はいつもと変わりのない休日だ。
普段早起きな学生も、今日ばかりは遅く起き、遅めの朝食を情報端末片手に食べ、身支度を終え家を出る。
多くの学生は繁華街を目指す、友人との待ち合わせ、ショッピング、アイドルのイベント。
目的は様々だが、それらの人々が一堂に街中に出て、街は活気で溢れてる。
そう、ここ第7学区、セブンスミストの前も。なのだが、
.

「外部との交流活性化と融和を!!争いの無い世界を目指し!!戦う意思を示そう!!!シュプレキコォォォォォォォル!!」


普段の喧騒とは真逆の声がセブンスミスト前の道路に響く。
『デモ行進』何らかの政治的主張を掲げ広める集団。学生団体のの主催した物のようで学生らしき姿も見えるが、多くはとてもではないが学生には見えない。
そう、『学生』ではない

830: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/19(水) 04:13:02.31 ID:Yqj+wwpF0


「何時からこうなったか?」
この問いに対して堪えられる『学園都市』の住民は皆無であろう。
何故ならば、多くの者はこの状況を「何時もの事」ととらえてるからだ。
かつての学園都市ならば、部外者、及びそれに協力する学生の検挙。
いや、それ以前にこの様なデモ行進を許可しない、若しくは何らかの圧力でデモの計画自体を潰してただろう。だが


麦野「ここと同時に、この主張と正反対のデモ等4か所」

海原「ついでに室内外音楽フェスが2つ催されてます。『混沌』と言う言葉がピッタリですね」

麦野「その音楽フェス、っつーのはどちらかと言えば1つだろ?アレ」


歩道橋の上でデモ隊を観察するかのように眺めてる大学生のような男女。
麦野沈利に海原事、エツァリ。
彼女が指差す先に、道路上にある電光掲示板がある。
『イベントによる交通規制』その趣旨が大きな文字で書かれてる。
そう、『音楽フェス』はクライマックスにアーティスト達や客が踊り歩くパレードが計画されてるのだ。


海原「とても警察組織が対応できそうにないですが、軍も治安維持活動に出てるようなので大丈夫…」

麦野「じゃないみたいだな」


目の前でデモ参加者数人と、警備してた警察関係者が揉めている。
無論、どちらも火が入っており、あと数分でデモ参加者は警察官を殴り検挙されれうだろうと麦野や海原は予測した。
そう、今日のデモや大規模イベントの数はどうしても警備の人員が足りてない。


海原「あまり、大きな障害でないですが、目の前のデモを主催してる学生団体を辿りますと『過激派団体』に繋がるんですがね…」

麦野「あまりにもショボクて学園都市に何ら影響なかったからな。今も大したことないが」

海原「ショボイからこそ、自分達『暗部』も動きにくいんですよね。あ、パクられましたね」

麦野「予想通りってか?ま、あの手の団体は暴れなければ馬鹿な不穏分子の溜り場として、監視が楽だからな。面倒くさいけどよ」

海原「腑に落ちませんね」


あからさまに納得してない海原。


麦野「何がだよ?」

海原「いえ、自分の中で『学園都市ならばこのような事態にならない。なる前に如何なる方法を使ってでも対策する』という感じなんですが?」


そう、仮に過去に学園都市に訪れたことがある外部の人間が今の学園都市を見たらどうなるか?
おそらくは彼と同じ事を思うだろう。


麦野「安心しろ、お前以外の学園都市の住民も同じことを思ってるよ。私を含めてな」


しかし、その思いは昔からいる学園都市の住民も同じだ。どうも今の街の空気は違う、そう違和感があるのだ。


麦野「そんな時は『トランキライザー』でも」

海原「『デジャヴュ』じゃないんですから!」

麦野「ンだよ、洒落も分からないのかよ。これだからナニが小さい男は…」

海原「失礼な!自分はズル剥け…じゃなくて、誤解を与える言い方をしないでくださいよ!!」


どうにも解りづらい洒落を言う麦野。
しかし、海原の反応が面白かったのか笑っているが、その笑い声は、何処か乾いた無気力な物であった。
別に彼女だけではない。学園都市の住民、とりわけ学生等の現状だ。


何時からだろうか、学園都市がこうなってしまったのは?

831: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/19(水) 04:13:39.55 ID:Yqj+wwpF0


菊岡「軍時代の僕の駐在武官やっていた上司が言ってたよ、今の学園都市は約30年前の英国だって」

木山「『英国病』と言う奴だったかな?…確かに、それに近いような気も否定できないが」


そんな学園都市の現状を車の中から観察する、菊岡裕次郎と木山春未。そして


神裂「私が向こうに拠点を構える前の話ですか?確か、人々が希望を見いだせず堕落していったと言う」


聖人の彼女だ。


木山「そんなもんだ…が」

神裂「違いますよね?専門外ですが、あれは発展しすぎた社会福祉や重税等の影響による物で…」

菊岡「やっぱり違うか。…僕も、そう思ったんだけどね、けどこの街の現状を表現するのに適当な言葉が見つからないんだよ」

832: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/19(水) 04:14:22.12 ID:Yqj+wwpF0


禁書「みんなの元気がなくなってる。そんな風に言われてるけど、それは違うんだよ」 


同じころ、第7学区にある冥土返しの病院にて神裂と同じようにインデックスと冥土返し、御坂妹がお茶をしながら、この街の現状を話してた。


御坂妹「分かっています。分かっていますが、現状についての何かしらの理由が欲しいんです。と、ミサカはほうじ茶を啜りながら自身のモヤモヤを話します」

冥土返し「この街の性質上、科学者やそれになろうとする学生が多いからね?どうしても答えが出ないような事象は好まない人が多いんだよね?」


同じようにお茶をすすりながら話す冥土返し。
彼の言う通り、この街の住民の多くは現状について、何かしらの答えを出そうとしてるが、その答えが万人に受け入れられるかと言うとそうでもない。
なにせ、出した自分が納得しない場合が殆どだからだ。
これは学歴や年齢、レベルに関係なくである。


禁書「…でもね」


彼女を除いて。

833: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/19(水) 04:15:53.48 ID:Yqj+wwpF0


禁書「その答えはきっと今日出るんだよ。うううん、必ず出る」

御坂妹「何故言い切れるんですか?と、ミサカは水羊羹を頬張りながら問います。おいしい」


飲み終えた茶碗を机に置き、座ってたソファーから立ち上がるとインデックスは窓の方へ歩き出す。
懐からある物を取り出すと、思い出したかのように冥土返しが今日は何の日か呟く。


冥土返し「そう言えば、今日は『日食』だったね?すっかり忘れてたよ?」

御坂妹「あまり興味はありませんが、忘れてた事については少し残念です」

禁書「仕方ないんだよ。『日食』を忘れてた事も、この街の現状も、同じ原因のせいでこうなってるんだから」


心なしか語彙を強めるインデックス。
まるで覚悟を決め、今日にでも決着をつけるかのようだ。
それは彼女の服装にも出てる。ここ最近、シスター服以外にも絹旗や麦野の影響や勧めで様々な服装を着るようになったが、
今日の格好はシスター服を意識したかのようで、尚且つ、動きやすさも意識してる。


禁書「その原因の『魔女』が動くんだよ」

御坂妹「はぁ?」


また意味不明な事を、と表情で言う御坂妹。
科学側の人間である御坂妹や冥土返しにとって、時々出るインデックスの魔術用語は理解の範疇を超える。
だが、今日は直ぐに理解できた。


冥土返し「地震?」


小刻みに建物…いや、空気を含めた街全体が揺れたかと思った次の瞬間、日常が変わる。


御坂妹「これは!?」


街全体が『妖艶な紫』とでも表現するしかない色に照らされる。
嫌悪感。それは特に能力者である御坂妹が特に感じてる。


禁書「始まったんだよ」

838: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/31(月) 06:01:02.82 ID:HOFyUmW70


少し前・第7学区・都市交通外環状線駅・【LⅡ-10】学舎の園


麦野「よう!」

海原「御学業お疲れ様です」


先程までセブンスミスト前のデモを観察していた2人。
移動してここまで来た。その理由は、


白井「まったくもう、ほとんど学校なんざ登校しておりませんのに…」


白井黒子、彼女と合流するためだ。
特にイベントがあるからとか、休日に登校する彼女をあざ笑うためでもない、いや特に理由はない。
どちらかと言えば、今日は黒子が予定を立てた方だ。学校については予定外と言った所だろう。


海原「仕方ありませんよ。この国ではあなたの歳まで、そう中学校までは義務ですからね」

麦野「それに今年度から常盤台は高等部が開校したんだろう?素直に其処に行けば進路相談でワザワザ呼び出される事は…」

白井「私は!…行きたくありませんの」

海原「御坂さんがいないから…ですか?」


海原の言葉に言葉を詰まらす黒子。
そうだ、彼女の憧れである御坂美琴達は今は動かぬ身。
現在、高1であるはずだが、その学籍は宙に浮いたまま。
無論、その事を知らない2人ではない。海原は「やってしまった顔」だ。
そこから特に言葉はなく電車へ向かった。

839: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/31(月) 06:02:42.51 ID:HOFyUmW70


都市交通局の鉄道車両は、基本的構造は外部鉄道業者とほぼ同じであり、ここの場合は狭軌、1両約20メートルの典型的な車両だ。
尤も、この外環状線は旧来のJR、1分を除いた私鉄路線を繋ぐ計画もあった故でもある。
sustina【サスティナ】シリーズの車内にあるLCD画面には、様々な広告動画が一定の間隔で流れる。


麦野「あー、広告うぜー」

白井「仕方ないですの、あの不快な広告を出すことによってお金を獲る人々もおらっしゃるのですから」

海原「どちらかと言うと、麦野さんはこの混雑によって機嫌を損ねてそうですが」

白井「ま、その混雑も広告に出てるイベントの影響ですから、あながち間違っていませんの」

麦野「お前らなに人の機嫌を観察してるの?」


軽く突っ込みを入れるが、あながち間違ってないから否定できない。
広告がウザイのもそうだが、人混みにイラついてるのも事実だ。
今日、会場2つで開催されてる『音楽フェス』、ちょうどその離れた会場を移動するのにこの外環状線がピッタリなのだ。
なので、出演アーティストのグッツなどを身に着けたファンが多く乗っている。
各々、一一一や『アルミン』、その他外部のグループなど様々だ。
おまけに大規模なデモによって道路は渋滞うんざりな休日だ。しかし、それ以上に。


麦野「何か引っかかるんだよ。今日と言う日に」

白井「同じですの」

海原「自分もです。結標さん達もそうみたいですが」

麦野「あと一歩、あと一歩で出てくるんだが、ここで止まってるんだよなー」


麦野が解りやすい様に喉元に掌を軽くトントンと当てる。
その表現にはおおむね2人も納得だ。が、答えを導くに至らない。


麦野「つっても、この車内に流れる音楽でまともに思考できないがな」

白井「麦野さん、声出てますの!」

麦野「あ…ワリ」

海原「すみません、何でもありません」


周りからの視線に謝る海原。
それもそうだ、フェス参加者が周囲を気にせず音楽を垂れ流したり、車内の広告動画からの音声が煩わしいほどに流れてるのだ。
無論、麦野の意見は正しいが、気分が最高潮に高揚してる集団の前に正論は時に暴論以上のトラブルの種になる。
これに関しては、麦野も困った顔だ。そして、聞きたいことが増える。

840: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/31(月) 06:03:18.36 ID:HOFyUmW70


白井「そう言えば、この後の店ですが!!」


気まずそうな麦野をフォローしたのか、黒子が情報端末の画面を彼女に見せながら話題を変えようとする。
尤も、そのタイミングで、乗り換えのある駅について、乗客が入れ替わったのは幸いかもしれない。


白井「郭さんに教えてもらったアメリカ料理のお店で…」


古き良きアメリカ南部の雰囲気の内装が黒子の端末を通じて評される。
『アメリカ料理』聞いた瞬間マズそうと思ったが。1番聞きたいのは。


麦野「何で、私と海原を飯に誘ったんだ?どっちも誕生日は離れてるだろ」


言葉を遮るように問い質す。尤も、理由は解ってる。


海原「嫌だなぁ。どこで漏れたか、それとも自分達が無意識に漏らしてたか、解りませんが…お気持ちを貰いたいと思いませんか?僕たちの『送別会』を」

白井「まあ、まさか御2人が警察、軍へ出向なさるとは夢にも思いませんでしたが」

841: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/31(月) 06:04:07.57 ID:HOFyUmW70


耳を疑いたくなるような発言だが、これは事実である。麦野と海原は警察と軍へ出向が決まったのだ。


麦野「あ、『裏方』の私達を派遣して、何が目的なのやら」

海原「ある程度の裏仕事が出来て、一応街の機関所属、で能力者」

白井「それですと、海原さんは何故選ばれた突っ込みたいですが、それ込でと言う事でしょう」


そう、仮に能力者で警察、軍事、裏方の知識がある者ならば、『風紀委員』が機能停止してる現在、彼等暗部所属の者はまさにうってつけだ。
そして海原事、魔術師『エツァリ』が選ばれたのは、魔術側の知識も欲しいと言う事であろう。

842: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/31(月) 06:05:16.33 ID:HOFyUmW70


麦野「まあ、明日からの所沢でリーファの兄貴の情報取集任務を終えてからだけどな」

白井「それを含めた日程の調整に苦労しましたの、他にも神裂さんとかの日程を合わせたり…」

海原「御苦労様です。ですが麦野さんは区内、市谷か渋谷方面へ派遣でしょうが、自分はおそらく『学園都市』内ですよ?」

白井「まあぶっちゃけ、『何かを口実にみんなで超集まりたかった』と主催者が仰ってますし」

麦野「あの馬鹿主催か…」

海原「のようですね」


麦野は軽く頭を抱え、海原は何処かしら楽しそうだ。
尤も、ここ最近、皆が各々で予定があり顔を合わせる機会が無くなってきてる事もある。
海原なんざ、この前までインデックスと『エジプト』へ赴いてた。
やはり、知人と久しぶりの再会は嬉しいものだ。

843: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/08/31(月) 06:05:55.78 ID:HOFyUmW70


麦野「…悪くねえ」


そんな温い、やさしい空気に2年前の彼女ならば言わないようなセリフを呟きながら外の車窓を何となく見た。
2年前とは変わってるようで変わらない『学園都市』の風景だ。


麦野「は?」


その時までは。

その瞬間、街の空が『妖艶な紫色』に変化した。

850: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/14(月) 04:51:12.24 ID:Y8RwOGpR0


十数分後・学園都市・北東ゲート


澄み切った青空の元、パトカーのサイレンが響き渡る。


「こちら石神井4、現着」

「了解。石神井4、状況せよ」


1年半前に交流活性化に一環として新規に開かれた学園都市との接続部。
旧来あった物と違い、検疫等の過程が廃止されたことによって、片側3車線の余裕を持った広い通りで作られてる。
『ゲート』と呼ばれてるが、短いトンネルと言った方が速い。


「こちら石神井4、通報通り信号赤のまま。都市側に人影等確認できず」


そして、『ゲート』には信号が付いており、何かしらあった時に赤になる。
『トンネル信号』みたいなものだ。
が、最もおかしいのはこの警察官が後者に言った『人影等確認できず』だ。


「石神井4、人影等を全く確認できないとは、言葉の意味そのままか?」

「こちら石神井4、そのまま、都市内人影確認できず」

「…了解、石神井4は『ゲート』前にて誘導整理されたし」

「石神井4、了解」

851: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/14(月) 04:51:48.26 ID:Y8RwOGpR0


同じように、学園都市との接続部『ゲート』を含め各方法での都市内部との交信は不能になっていた。
それは、魔術、外部軍事力の偵察でも内部を窺う方法は今のところ無かった。そ
して、『ゲート』近くの人々も都市内部へ赴こうとしなかった。
別に検問とかが面倒くさいわけでもない、そもそも検問は廃止されてる
。では何故?…解らない。
それは、『ニンゲン』と言う生物の本能かも知れない。


852: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/14(月) 04:53:24.60 ID:Y8RwOGpR0


同時刻・官邸対策本部


「状況は?」

「過去数回同様、都市側との連絡取れません、官房長官」

「総理が国賓を京都へ招いてる時に…おまけに来日の遠因は彼等の尻拭いで」


現在、対策本部トップは官房長官である。
総理は今述べた通り、国賓である『ロシア大統領』を京都とうの関西方面へ案内しており、副総理は英国へ飛んでいる。
これらは2年半前の『第三次世界大戦』が遠因である。


「兎にも角にも、今は情報収集、及び関係閣僚の招集、総理への連絡は密とせよ」


官僚に指示を出す官房長官。約2年前までは何度か学園都市関連での対策本部設立はあったが、ここしばらくは何もない。
それどころか、今回の『ロシア大統領』来日にはロシア正教の重鎮も非公式に来ている。
それは、学園都市との和解を意識したものであり、学園都市側も親船氏を筆頭に使節団が既に関西入りしている。
学園都市としては融和路線を強調したいので、何かしらの事案を起こすメリットはない。天災、はありえない。


「過去、学園都市との通信が遮断されて時の情報を全てくれ」


官房長官は薄々気が付いてたが、立場上言えなかった。
彼が覚えてる記憶の中で明確に近かった事例。約3年前の9月30日の事例を。

ただ、それは近いようで遠い、鏡に映った事例だった。そんな中。


「緊急、大阪ロシア領事館にて!!」

853: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/14(月) 04:54:43.41 ID:Y8RwOGpR0


外部が静かな異常事態を窺わせてる最中。


「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


麦野「はぁ!?」


現在、学園都市能力者最高位である麦野沈利の前では狂乱の雄叫びが繰り広げられていた。

それは、別に彼女の目の前の人物だけではない。


「グララガア、グララガア!!」


間に大きな足音をたてながらステップする少年少女。
それは学園都市で流行ってる、あるアイドルの曲のサビ。
それは有名な短編童話を元に作られた曲だ。
が、その声と力強いステップは、まさにとち狂ったゾウの行進そのものだ。


白井「何なんですの!?」


その様な光景、電車の中でいきなり来る広げられて混乱しない人間はいないだろう。そう。


海原「自分らだけではないようで」


彼等だけではない。同じように踊りだした人々に全くついて行けない物は彼女達が乗車している電車に4割ほどいる。
反応は麦野達みたいにドン引きしたり、踊りをやめさせようとする者が少数いるが、やめるはずもない。


麦野「『どっちだ』…何が起こっている!?」


『どっちだ』。それは、魔術、科学の事だ。
この事象の原因を考え始める、科学側での火種を数個憶測できたが、魔術側については下手すると無限に出てくる。


海原「少なくとも、自分達の『アステカ』ではありませんよ!」


そこに、海原が自分なりの見解を示す。
海原事『エツァリ』は自身の魔術母体である『アステカ』の知識でこの事象は関係ないと結論付ける。


「惜しいけど、少なくとも今のあなた達の知識ではこの事象を理解するには時間かるか、無理だろうね。あ、あのシスターさんがいたら出来るか…」


白井「誰か!?」

854: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/14(月) 04:55:42.61 ID:Y8RwOGpR0


とち狂ったようにステップを踊る少年少女の中から声をかけてきた少女。
18歳ぐらいの女子高生で、制服を見るとそれは白井が通う常盤台と同じ『学舎の園』の女子高だが、制服の着方を見る限り真面目とは言い難い。


「何回も経験してるけど、その時代にいる最後辺りになって関わった人たちの記憶が消えていくのは色んな意味で辛いのよね~」

麦野「関わった…」


余りにも目の前の少女が麦野達を知ってる前提で話を進めるので、不信感が増大していく。
3人は各々、警戒しながら戦闘態勢に入っていく。
無論、3人は目の前の少女を現時点では知らない。


「まあいいや、それは仕方のない事だし。今は『アルティミシア』様のファンに任せるか…」


そして、少女も何かを諦めたかのように両手を広げ始め、


【ねえみんな!次は『星の王子様』!周囲1000マイルの孤独の中から私達と出逢う事の出来た人を、バオバブの木の元へ案内してあげましょう!】


まるでミュージカルの1シーンのように何かを訴えた。理解不能。
しいて言うなら、それはきっと『星の王子様』を題材にした作品の何かであり、
ここ最近『学園都市』で『星の王子様』と言えば、とあるアイドルの楽曲のモチーフの1つ。
次の瞬間、踊り狂ってた人々が、そのアイドルの名を叫びながら麦野達や無反応だった人々に襲い掛かった。


「アルティミシア様ー!!」

855: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/14(月) 04:56:49.50 ID:Y8RwOGpR0


周囲から悲鳴が電車内に響く。


白井「お止めない!!」

海原「なっ、この人達、この力を鑑みても何かしらの能力に!?」


彼女達は襲い掛かった人たちを何とか抑える。
素手で襲い掛かる人だが、その筋力は常人の力量ではない。
が、元は一般人。完全に落とすことはできない。


麦野「なんなんだ、お前は!?」


麦野はこの事象の多くを知ってるであろう少女に問いかける。
少女は一瞬物悲しそうにしながらも、答える。
顔の端に手をやりマスクを脱ぐようにしながら。


海原「『護符』による変装!?」


そう、それはアステカ魔術の1つ、皮膚で作られた『護符』による擬態。
今の彼女達は混乱するが、仮に1年前の彼女達ならすぐに誰かわかった。


リノア「お久しぶり、ご先祖様。最後の再開がこんな物で寂しいよ。けどね、薄ら私がどのような存在か理解できるでしょう?
あ、名前は『リノア』。ちゃんと記憶した?」


右手に眩い光球を生成しながら自己紹介する彼女。
その瞬間、その光球の正体に気が付いたのは彼女と同じ能力者レベルである、

『麦野沈利』だけだった。

861: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:19:16.86 ID:oX4S4Pwf0

神裂「急いでください!!」


木山「分かっている…が、現状はな」

菊岡「少なくとも、今日はデモやらイベントで交通規制だらけだから車が少なくてよかったけどね、っと!!?」


都市内の大通りを爆走する『青のガヤルド』。
都市内の3車線道路は『解放』されて以降、都心部の交通とさほど変わらない交通量で渋滞も慢性化してた。
が、今日は菊岡の述べた通り、デモ等、路上を塞ぎ行われる催しが都市内で多々計画されてた為、車の交通量はいつもの7割減である。
尤も、学園都市は名前の通り学生、即ち車を所持していない住民が多数を占める前提で都市開発し、
鉄道等の公共交通機関が発達しているのでそこまで大きな混乱は無い。
仮に暴動が起きたら話は別だが、では今回はどうなるか?

862: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:20:32.95 ID:oX4S4Pwf0


菊岡「またッツ!!?うおっ」

木山「どうと言う事は無い…と、言えないな」

神裂「!!」


路上に飛び出た学生、その衝撃で何かをいじってた菊岡がよろけた。ちなみに現在、木山のガヤルドはオープンカーになってしまってる。路上に出てきた学生集団へ突っ込む神裂、足元に狙いを定めると。


神裂「ハアアアアアアアアッ!!!!」


彼等の足元を何の躊躇なく切り裂く。
足を切断された学生はその場に倒れ込む。
それを確認せず、再び木山の車に飛び乗る。
そう、一部の学生や住民等の暴徒化し、彼女達に襲い掛かってきたのだ。
無論、その学生たちは。


「はぁぁぁぁ・・・・・」


力なく声を漏らす。神裂の攻撃が強力だったので虫の息なのではない。


菊岡「やっぱりゲームの中みたいだよ!まるで」

木山「…呼び名は古今東西様々あるみたいだが…私も同意見だと言っておこう。あれはゾンビとしか言いようがない」


そう、 暴徒になってる者の多くがまるで生気がなく、獣のように周囲の人々を襲い掛かってる。
その状態を見て多くの人は『ゾンビ』と答えるだろう。


木山「で…神裂君の見解は?」


しかし、それは普段から『魔術』に接点がない木山、菊岡視点であって、実際の魔術師である神裂の意見が欲しい。


神裂「それに近い存在。とでも言いましょうか…あれは『ゴーレムの類』です。そう…死者を」

木山「引っかかるのか…」

863: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:22:14.85 ID:oX4S4Pwf0



御坂妹「疑問点を問い質したら限がないですが、何故あなたはそのような知識を!?とミサカは包帯抱え走りながら銀髪シスターに問いただします」

禁書「だから覚えてるからって、何度も言ったんだよ!」

打ち止め「だからって、それだと意識共有ができてるミサカ達が覚えてないのはおかしいって、ミサカはミサカはさっきからの疑問を再びぶつけてみる」

禁書「もーう!!!」


冥土返しの病院の廊下を荷物抱えながら走る少女たち。
彼女以外にもスタッフが慌しく移動する。

864: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:23:52.54 ID:oX4S4Pwf0


19090号「防弾壁、及びその他の籠城設備の構築が終わったことを報告しますと、ミサカは伝令を先生に伝えます」

冥土返し「うん、ありがとうね?…で、ネットワークの方はどうかな?」

19090号「相も変わらず…『日食』が始まってから同じです…」

冥土返し「ふん…」


現在、仮呼称『日食』が始まってからミサカネットワークが異常が発生してる。
主な異常は、他の個体との通信不可。
都市内の個体とは集中すれば微かにできるレベルで、それ以外とは不可である。
しかも、都市内の個体と通信する時には息を止め集中しないと出来ない。この異常時には使えない。
そしてもちろん、都市内での電波を用いた通信は不可であり、この院内の様々な対策済み施設にも多大な影響が出てる。
が、それでもある程度までに影響を抑えてる。
それは冥土返しの経験だそうだ。


冥土返し「…ユーゴスラビアの経験が役に立つとはね?」

19090号「えっ!?」


はっきりと聞き取れなかった冥土返しの言葉に反応すると、窓外に赤い赤色灯が見えた。
そして、雑音の中からはっきりと冥土返しを呼ぶ声が聞こえる。


冥土返し「呼ばれてるから行くね?」


その声に応えるように彼は部屋を後にした。
が、その彼の呟いた言葉は確と彼女の耳に入っていた。


19090号「…察するに、『ユーゴスラビア紛争』?でもなんで。…でも」


納得できる。彼女はそう思った。
そして、それより酷くなると思い、また冥土返しも認識してるだろうと思った。
それは、この第7学区の陸軍駐屯地、消防所からあるはずない『解り易い4色の色が付いたのタグ』が大量に運ばれた時点で気が付いてた。
この異変がどのような物になるか。

865: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:25:21.57 ID:oX4S4Pwf0


神裂「やはり…」


若手「ああ、最悪だ。
…アンタの前で言うのもなんだが、俺には十字教が行った『魔女狩り』や『ユーゴスラビア紛争の民族浄化』を足したような、イヤ、それ以上かもしれん」


その頃、神裂達は近場の警察署に合流し水を分けてもらっていた。
尤も、警察署と言ってもかつての『警備員』の施設、外部の警察署よりも頑丈であり、万が一の為に避難所になってる。
なので、この異変に怯えた人々が多く逃げ込んできてる。
そこで菊岡の陸軍時代の友人士官の『若手』に現状を聞いてるが状況は最悪のようだ。
そして、現時点でも多くの人々がこの警察署へ避難してくる。


木山「そりゃ、あんな光景は『ユーゴスラビア紛争』では無かったし。何より聞いたことも無い」

神裂「少なくとも。イギリスにも天草にも、あのような気狂った術式はありません」

866: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:25:52.70 ID:oX4S4Pwf0


「止まりなさい!!」


機動隊車両の上からスピーカーで叫び制止を命令する機動隊、そんなの何のそので対象は地を揺らしながら迫る。


「歌と踊りを止め、我々の指示に従いなさい!!」


その軍勢の前に機動隊員は必死に呼びかける。
が、反応がないどころか。歌い踊りだす。ねっとりと、妖艶に力強く。

867: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:26:18.20 ID:oX4S4Pwf0


♂『きらきらひかる』

♀『おそらのほしよ』

♂『まばたきしては』

♀『みんなをみてる』

♂♀『きらきらひかる』

868: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:29:33.05 ID:oX4S4Pwf0



アルティミシア『おそらのほしよ…』


パッ、パチ、パチパチ…


アルティミシア「寂しいわね。あなたの拍手だけとは」

「そうか?君と言う偶像【アイドル】を崇拝し、盲目に手を振る信者が私には星の数ほど見えるが?」


熱狂的に手を振るファンに冷たい目線を送る魔女。
確かに、今日の野外フェスは大盛況で2時間前のカウントでは6万人を超えてた。
そして、今や知る人のいないと言っても過言ではないアイドル『アルミン』のステージ。
蝋と貝殻と宝石に純金をで出来たようなステージに、ファンは熱狂的な崇拝の念を込めて歓声を送っていたのであろう。
が、学園都市内に設けられたその会場に、もはや歓声は聞こえない。
いや、そこにいたであろう人々は1人もいない。


アルティミシア「来るとはね…。あなたのお城を汚した苦情かしら?」

「…いや」


そのステージで歌っていた歌姫が、来訪者へ問う。そう、来訪者であり。


アルティミシア「私が可能であれば殺したい人が目の前にいるなんて。残酷で…この城の城主に」

アレイスター「その諦め現実を受け入れた表情。今後の経験になろう」


経験も容姿も判別できない声元の人物、アレイスターである。


アレイスター「それに、このような宴を開いてくれた魔女に『感謝の意』を伝えるのは城主とやらとして当然なのではないのかな?」


余裕を持ち高みから彼女を見下す表情。
それこそ、城主である王が下等の舞子に対して接するかのような態度。
その城主を喜ばす為でないが、華やかな黄金色の糸を指先から四方に張り巡らせ、何やら作業を始める『魔女』。
しかし、その行為に対してアレイスターは、まるで花の開花を安らかな気分で見てるかのごとくで、気にも留めてない。

869: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:31:09.65 ID:oX4S4Pwf0

アルティミシア「流石…城主、と言うべき所か」

アレイスター「君の公演を是非とも家でやってみないかと、イギリスやローマから来てるが?どうかな?」

アルティミシア「知っておるのだろう、この術式が何か。であるならば、それは無理だ。その事を是非2つの十字教にお伝えしてほしいな」

アレイスター「無論、伝えてあるさ。君たちの臆病…動けない事情もね」


魔女の目じりがピクリと反応する。それを知ってか、確信犯的に話を続ける。


アレイスター「本来であれば、君たちの手に入れた『鬼灯石』【龍卵・賢者の石とも言う】は支那地域での内戦でたっぷりと魂を吸ってる。
そう、仮に君が手さぐりではなく本当に魔術を学んでいたら、このような原始的で大がかりな術式を行使せず過去へ飛べたであろう」


アルティミシア「なんとでも言え。幾ら非効率とは言え、既に『時』の術式は始まっている。
邪魔されることを含め、様々な不安要素を考慮して構築した、私なりに最大限に効率化したのだ。今更どうこうするつもりはない」


アレイスター「が、君たちは思ってないかもしれんが、重要な人物2人を見過ごしている」

アルティミシア「は?何を言っている」

アレイスター「…『茅場晶彦』、『桐ケ谷和人』この2人を」

アルティミシア「すまないな城主!そのような人物は知らん、私は次の演目の準備に忙しい!」

アレイスター「解っている。気のすむまで宴を催すがいい…」


その時、『魔女』の後ろから強大な気配が消える。そして魔女は、天空の術式の操作を止める。


アルティミシア「…嫌がらせに来た…のか。…が、その『塩を送った』気分なのか」


苦虫を噛み潰したかのような表情で話す魔女。
それもそうだ、アレイスターが姿を消した瞬間、この『時の魔術』の術式は改良されていた。
そう、彼女が更に使いやすい風に。それは、『魔女』にとって屈辱以外の何物でもない。


アルティミシア「ならば存分に使わせていただこう」


870: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/09/29(火) 01:32:12.39 ID:oX4S4Pwf0

アレイスター「とでも…思ってるのかな?この魔法少女は?」


その時、アレイスターは久しぶりに魔術を行使していた。
その影響か、彼の横には硬直したアルティミシアがいる。


アレイスター「『時の停止』。…本来であれば『鬼灯石』を手に入れたらこの様に簡単な物を…」


そう、アレイスターは現在『魔女』ことアルティミシアの横にいる。
と言っても、彼は停止した時の中にいる。


アレイスター「…わかっている。君の側もいよいよ、創造主として『2刀流の黒の剣士』との決闘なのだろう?」


唐突に誰かと会話し始める。
そう、まるでどこかの世界にいる城主との会話。


アレイスター「後、君の推測通りだったよ。彼女達は自身にやられたことを街の民にやっている。知ったら、どうなるか」


その声を聴いたら誰かと思うか?悪戯っぽい声は誰だ?と聞きたいような声。


アレイスター「まあ、お互い。『最終決戦』とやらをお互いの立場で関わろうでないか。それに…」


西の方を見るアレイスター。


アレイスター「ロシア成教から来訪者だ。…もっとも、彼女はついでだな、10777の方が本命のようだ」


876: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/12(月) 03:47:26.13 ID:BZ2ZmWaY0

麦野「くっそ!!」

白井「早く、後ろの車両へお逃げになって!!」


妖艶な空色の中を走り抜ける環状線電車内で繰り広げられる騒動。
まだまともであろう客を後方に退避させながら。


海原「押されてますよ麦野さん!!」

麦野「分かってる!!」

リノア「隙があるッ!!」


原子と光子の曖昧な状態を保った物体による格闘戦。
解り易く言えば『原子崩し』を応用させた『ビームサーベル』による戦闘だ。


「FUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!!!!!!!!!!」


そして、麦野と相対するリノアの後方から獣のように叫び戦闘を煽る狂人の集団。
雰囲気も相まって、クラブでのダンス対決のようだ。


麦野「しばらく行ってなかったな…」

リノア「年齢確認されなそうだもんね、ご先祖様ッ!!」

麦野「ッ、うるせぇ!!」


一番言われたくない外見の事に触れられ、『原子崩し』のビームを、


白井「麦野さん!!」

麦野「しまった!?」


放ってしまった。
確かに、麦野が感情のままに『原子崩し』を撃てばこの場の勝負はつく可能性があるが、電車の脱線は避けられない。
現在、編成後方には彼女の見立てでは120人近くが避難してる。無論、その多くは学生である若者。


リノア「馬鹿先祖!!」


だがそれには、リノアの方が余計に反応してた。
麦野から放たれた『原子崩し』に干渉し、細くさせて電車の外へ弾き飛ばした。


海原「守った!?」


そう、結果的にこの電車の脱線転覆から守ったことになるが、それが彼等を守ることで無い事など火を見るより確か。何故だ?


877: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/12(月) 03:51:52.35 ID:BZ2ZmWaY0


麦野「なるほどな…海原ァ!『魔術』ってのは何かしらの流れが必要な場合もあるんだよな!?」

海原「はあ!?そうですが…って!?」

リノア「前にも言ったよね!!」


麦野の口を塞ぐためかのようにリノアが突っかかってくる。
基本的に彼女の剣は『麦野からしてみたら軽く』攻撃を守るのは簡単である。


リノア「戦ってる最中にベラベラ喋るのは嫌いだって!」

麦野「そりゃ悪かったな、何分記憶がないみたいでなぁ。が、素直で暴力的な子孫の反応で分かっちまったからなぁ?」

リノア「ッツ!?」


素直に表情がゆがむと、彼女は操り人形の前面に繰り出し、後方へ下がった。
 

麦野「図星か…」

海原「のようで。ですが」


リノアに後押しされたのかは定かではないが、狂乱してた人々が麦野や海原、気を保った人々へ寄ってくる。
仮面をかぶったかのような作られた無表情と狂乱の奇声でより不気味さが増す。
正直言って、リノア1人と対峙してた方がよかったと思うのが本音だ。
何故ならば、彼等は操られただけで生きている。


麦野「どうする?」

878: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/12(月) 03:53:50.14 ID:BZ2ZmWaY0


《でぇ。計画通りに『第4位』を足止めできてますかぁ~?》

リノア「やってる。思ったより『アルティミシア様の歌声に見入れらた愚か者』が多くて助かった」


人がいない先頭車で着替えながら『速記原典』の護符で通信するリノア。
ネチッコイ声色の持ち主は彼女と同じ先遣隊の1人であった『オダイン』。
彼女敵には仕事仲間であるが、聞きたくもない会いたくもないタイプ。


リノア「ただ、この環状線の意味は悟られた。この先何らかの手段で止められるかも」


《それは大丈夫ですよリノア氏。既にアルティミシア様は術式の構築を9割終えてますので、後は時が満ちるのとあれらの足止めだけです。
と、ミサカ9982号は主な状況を報告します》


そして生き返り『魔女側』へついた『妹達9982号』も会話に入る。
そもそも、この環状線はノンストップで電車を走らすことにより、術式を行使するためのエネルギーの1つ。
これ以外にも様々なタイプのエネルギー源を確保している。言うなれば『予備電源』である。
そしてその『予備電源』は『賢者の石』を含め多数ある。
それほど『時を遡る』のは強大で危険が伴い、そしてそれほど彼等が望む物であるのだ。
そして、それをチャラにしてしまう物もあるのが事実。


リノア「とにかく、『不安要素』である『幻想殺し』や『禁書目録』等を見つけ次第処置しろ」

オダイン《わかっていますよ~。が、こちらは聖人や軍隊がいますがはずれのようですね。ま、私のミサちゃんとドール派閥で適当にやっときますよぉ~》

9982号《こちらがビンゴだったようです》

リノア「なんだって!?」


879: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/12(月) 03:55:32.27 ID:BZ2ZmWaY0


9982号「ええ。…ええ、そうです。…はい、リノア氏もお気をつけて」


通信を終え、こめかみから護符を離すと突き向けた銃口の先にある施設を睨みつける9982号。


「その様な紙切れで通信できるとは。やはり、貴女はそちら側へ行ってしまわれたのですね。と、ミサカ10032号は貴女に最後に問いかけます」


9982号「最後?言ってる意味がさっぱり解りません。とミサカは銃口をあなた達の病院へ向けながらあざ笑います。
ハハッ…やはり、『灯台下暗し』、ここにその銀髪シスターがいることは、『幻想殺し』もいるようで。
これほどの『機械人形』を連れて検診に来たかいがありました」


彼女の後ろには数百体の『駆動鎧』軍団が来ていた。
『機械人形』と9982号が言ってるがあながち間違いでない型式。


絹旗「次期輸出モデル…超完成してたとは…」

「カラシニコフ的な物であるか?」


見た目通り小さな少女の横に聳えるように立つ男、ぴっちりとしたゴルフウェア。
偶然であるが、この街に来てた傭兵、『アックア』。無論、この状況に黙ってる性分ではない。


絹旗「超以外ですね。魔法使いの超ムキムキ大男が知ってたとは…ええそうです、技術力の低い後進国でも生産運用ができることを念頭に開発された物です」

アックア「なるほどな。単純で生産性がある物で、尚且つ効果もはっきりしてると」

御坂妹《御託はイイですから、状況を説明してください。と、ミサカは説明口調の2人に説明を求め突っ込みます》


絹旗とアックアが会話してる最中、2人がつけてるインカムから会話が入る。
現在病院地下にてある物を調整中の御坂妹だ。


御坂妹《それと信号弾『赤玉3発』》

絹旗「へ?」

アックア「戦の始まりである」


彼の言葉通り。冥土返しの病院に金属弾の雨が降り注ぐ。
『日食』の薄暗い状況の中、病院の周囲は炎に照らされたかのごとく明るくなる。爆音のおまけつきで。
そして、アックアの言葉から1分以内に戦闘開始を意味する信号弾赤色3発が空に舞った。

880: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/12(月) 03:57:06.17 ID:BZ2ZmWaY0


冥土返し「頼むから僕の手の届く範囲での戦闘はやめてほしいかな?仮に彼等が負傷したら命ある限り、僕は救うよ?」


禁書目録「いい、さいあい!あの『鉄鎧』の中に人が入ってるみたいだけど絶対に殺しちゃダメなんだよ!
彼等が死ぬとその肉体が合さる事によって単体なら『ゴーレム』、複数なら何かしらの使役獣になっちゃうんだよ!」


打ち止め「でも早く街の中心部に行かないとダメみたい。って、ミサカはミサカはインデインデックスの主張を噛み砕いて伝えてみる~」

御坂妹「そして此方も調整に時間を食ってます。ですので、絹旗さんにはよりいっそうの活躍をご期待します。と、ミサカは丁寧な無茶ぶりをします」

禁書「あ、そうそう!短時間で終わらせるのも駄目なんだからね!!これからおおさかから…」


絹旗「あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」


戦闘経過中に絹旗の耳元のインカムから断続的に入る通信。
正直言って、それらを実行しようものなら絹旗が確実に死ぬだろう。
そんな憤りを表すかのように、絹旗は戦場のど真中で『駆動鎧』を振り回して暴れてた。


絹旗「ハァハァハァ…インカムなんざ超付けなければよかったでした」


それ以前に、このインカムは離れた麦野や木山達と連絡目的の物。しかし現状はこうだ。

881: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/12(月) 03:58:11.07 ID:BZ2ZmWaY0


9982号「上手くいきませんね。と、ミサカは病院への立て籠もられた現状にやきもきします。面倒くさい」


しかし、相手の方も上手くいってない様だ。
本来であれば、一方的な力で『禁書目録』を回収し、この病院ごと吹き飛ばして『幻想殺し』等を処分したい。
が、それはこの状況をsべて崩壊させる可能性があるので、アルティミシア直々に禁じ手とされてる。
歯痒い様子で『ランドセル』で宙に浮いてる9982号。


9982号「物理的攻撃にても禁じ。ミサカ以外の個体ほぼすべてにフラグを立てたあのツンツン頭はそれほどなのでしょうか?」


疑問に思う。排除対象には彼女を殺した第1位と彼女の元となった第3位が入っており、これは当然である。
どれほど力があるのかと?そして、『銀髪のシスター』。
アルティミシアの先祖と言われ、その知識が今回の術式を邪魔する可能性はかなり高い。
なにせ、この術式を完全に解けるのはアルティミシアとインデックスだけである。
ジョウカーとして上条当麻がいるが。


9982号「どのみち、現時点であのシスターはツンでいます」


そう、仮にこの術式を正当に解除するには『1人なら最速でも3日、3人の高度な魔術知識を持つ者を用意できても2日』それほどかかる。
が、現状この街で記憶の維持は最長で1日半である。それも、この街に長く滞在してるほどその記憶は消えやすくなっていく。
現時点でインデックスがこの現状を打破するのは『メモリ機能が壊れた長編RPGをミスなしでクリアする』様なもんだ。
そう、何処頭のバックアップが無ければ。


「お馬鹿さんですね。憎しみの余り自身の仕組みを知らないとは。
ま、おかげでチーターにチートアイテム『記憶(メモリー)』を渡しに来ることが出来ました。とミサカは目の前にいる間抜けを笑いながら挨拶します」


9982号「え!?」

882: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/12(月) 03:59:03.05 ID:BZ2ZmWaY0


戦略を練ってると目の前から自身と全く同じような声が聞こえたかと思いきや。


10777号「挨拶ついでにプレゼントも生き返った姉に渡します。と、ミサカは水道官を握りしめます」


姿も現れる。『光学迷彩』?いや違う。
なら魔術?疑問点が一気に浮かぶ。そもそも何だこれは?


「…聞かれてませんが問いに答えます。第1の解答ですが、あなたの思った通り魔術です。ロシア式ですが。
第2の解答ですが、貴女方は記憶を全ての個体で共有できるようですね。第3の答えですが、衝撃に備えた方がいいですよ」


目の前の何とも形容しがたい服を着た、翼の生えた飛んでる少女が警告したと思った次の瞬間。


10777号「コールしたッ!!」


10777号の水道官フルスイングが9982号の後頭部に炸裂する。
一見ギャグのように見えるが、『ランドセル』装備状態のでの欠陥の1つである。
そう、彼女はノリではなく的確に弱点の1つを狙ったのだ。そして、ギャグ漫画のようにクルクル回転しながら近場の建物に墜落する9982号。
その様子を確認すると10777号は。


10777号「準備できました。そちらは?」

「…第1の解答、問題ない」


呼吸を合わせる。

883: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/12(月) 04:01:40.91 ID:BZ2ZmWaY0


打ち止め「はわわわ、10777号が唐突にお空に現れただけでも意味解らないのに、
翼の生えた『ホット・リミット』な格好した金髪少女にまたがってると思ったら、
水道管で9982号を地面に叩き落としたんだよって、ミサカはミサカは~!!!」


アックア「おおおぉ、落ち着くので、ああある」


地上ではその光景に突っ込みを入れる面々だが。


禁書「ロシアンくーるびゅーてぃー!サーシャ!!ありがとうなんだよー!!」


彼女は知ってる様だ。無論、その事に対してツッコミが入る。


結標「え、ちょっとインデックス?誰!?どうなってるの!?」

御坂妹「10777号はロシアに居る個体なのですが、何故あなたが彼女と交流を!?」


無論答えるが。


禁書「…それは直ぐに記憶に書きこまれるかも」


意味が解らなかった。と思った瞬間、彼女達は理解した。
そしてそれはアルティミシアにも察知された。


アルティミシア「おのれ先祖がああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


それがどれほど彼女達の『時間遡行』へ影響あるのか理解した魔女は、歌手が出してはいけないレベルの雄叫びを吠えた。
聞こえたか聞こえてないのか、インデックスはアルティミシアの方へ向くと何かを確信したかのようにほくそ笑んだ。
まるで、ゲームで『約束された勝利』と言う名のチートアイテムを手に入れた時のプレイヤーのように。

889: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/28(水) 02:09:58.76 ID:2Y8ZD/k80

「まったく!わらわを監視しても状況は改善しなくてよ?」

「知っている。僕だって、お前みたいな狸女の監視に警護なんざしないで、今すぐにヒースロー空港に行きたいけどね」

「…大西洋のど真中、どのようにしてヒースローへ?『氷具』の影響で如何なる術式を効せば『タイタニック』の惨劇になるって?」


 大海原、静かなる大西洋のど真中で男女2人の会話が繰り広げられる。親密であるが愛色は全く感じられない。
仮に前文を男ステイルに見せたら眉間に煙草を押しつけられるか、女ローラならば嫌味をさんざん聞かされることになるだろう。
兎にも角にも、この2人が親密とは思えない。

890: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/28(水) 02:10:59.54 ID:2Y8ZD/k80


「諦めたら、ステイル?貴方は貴方のやるべきことをやる。今はそれしかなく、あの子も喜ぶっってよ?」

「ま、歳に全く合わないようで合ってるあの話し方が無くなった点で、最大教主と一緒にいる苦痛は軽減されたがな。『土御門みたいなキャラ』と言われてたけどね」

「ナッ!?」

「ま、僕らの事情に付き合わせて無くしたんだ。何かしらのお礼は上条当麻がするさ」


隠れたローラ=スチュアートの評価をぶっちゃけながらも、内心ステイルは安心してた。
実際、この女にはさまざまな点で協力をしてもらってる。ロシア正教やまさかの『ヘブライ教』『ムーンレイス』との交渉までもしてもらってる。
その報酬は、ステイルが永久に使えても返せないだろう。が、見返りを求めていない。
自身のキャラである似非古文風な日本語が治ったのにだ。


(見返りを求めない。…いや、求める必要がない?)


 正直、件の『魔女』の対応については『魔術』『科学』のどちらについても上層部は全く対応してこなかった。
無論、その程度の軍団だと思っているのだろうが、相手は紛いなりにも『魔術側の聖人』や『科学側のレベル5』を術を行使し、その影響化へと組み込んだ。
彼自身も、学園都市に滞在し続けたらそのようになっていただろう。彼が学園都市にいないのはその為。
話を戻す。
『魔女』が現れてから1年半。
元来、『魔女』は十字教最大禁忌だったので触れないのも分かるが、科学側も全く対策してないのが向こうの暗部こと麦野との接触で解った。


「それはそうと、インデックスの仕込が発動したようね。これで彼女達が大幅にことを薦めるわ」

891: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/28(水) 02:11:44.41 ID:2Y8ZD/k80


「『大幅に有利』ではなく『勝利が確定した』だろ?消された記憶が戻りさえすれば、
現在学園都市に居る神裂や彼女達だけでも、あんなエセ魔女は消える」


どうやって、インデックスが仕込んだ秘策が発動したのかを知ったのか疑問に思ったが、彼女の手元が光ってるのを横目で確認すると、情報端末が握られてるのを見て納得した。
そして安堵した。これで『未来から来た異邦者』達は駆逐される。そ
う思い、今日まですぐにも駆けつけたい気持ちを抑え、女狐の付き人をやってたのだ。
次の言葉は彼の努力を砕くかのような物だった。

「まるで『魔女』を倒せばすべてが終わると、そのような決めつけね。真逆なのに」

892: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/28(水) 02:12:29.42 ID:2Y8ZD/k80


「インデックス!!」

「かおり!?」


場所は戻って学園都市。大通りに乗り捨てられた車を避けるように走るハマーに沿うように、
神裂は沿って走りながら車内のインデックスに声をかけた。


絹旗「超すげぇ…」


同じく車内にいる絹旗がドン引きしてるが、


アックア「あまり直視したくない現象であるな…」

結標「うっ…」


その絹旗を含めた全員が車の前方の光景を見た。


神裂「ちっ!!…これは!?」

893: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/28(水) 02:13:18.12 ID:2Y8ZD/k80


そこには人々の群衆がいる。
「はあああ・・・・・」
うめきながら辺りの物を貪ってる。無論、まともな物は食っていない、路上にある物全てを。


絹旗「車を…超食ってます…」

結標「そして、当たり前のように共食いもね…これって?」


かつて、とある高校にて同じような事象が起こった。
生徒が操られ、姿を変え彼女達を襲ってきた事象。


神裂「…私が行きましょう」

禁書「かおり!シェリーが構築した対策法はね!!」

神裂「解ってます!!…それも含めて思い出しました。ここは任せてください。1人の方が『彼等を解放し救う』術式を構築しやすいです…」


静かに拳に力が入る神裂。それもそうだ。
まるでゾンビのようになってしまった彼等を救う方法、そんなもん無いからだ。


神裂「アックア。…彼女を」


アックア「…心得てるのである」


少ない言葉だが、そこから何をするのかは伝わってる。
『切札』を持って早く魔女の元へ。アックアがギアを切り替え、その場から離れようした時。


禁書「かおり!!」


少女からの声。

894: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/10/28(水) 02:14:06.31 ID:2Y8ZD/k80



神裂「行きましたか…」


車を見届ける。彼女にかけられた言葉をふと思い出し呟く。


神裂「ぜったいに忘れない!ですか…そうなんですよね、私、記憶を消されて…あの子の記憶を消してたのに…」


そう、彼女はかつてインデックスの記憶を騙されてたとは言え、1年おきに消していた。
そして、新たに目覚めたインデックスに声を掛けられるときの恐怖。その事はインデックスには絶対に経験させたくないと思っていた。
が、自身の知らないうちに彼女に経験させてしまっていたのだ。
彼女は周りが記憶を無くし孤独だったとしても、彼女が泣いてるところは見ない。それは彼女に支えがあるからか?


神裂「早く帰ってきてくださいよ、上条当麻。…あの子の枷は貴方しか外せそうにありません。…それにステイルも」


振り返ると、先程まで全てを貪り尽くしてた集団の姿が消えてた。
そして、温度が急上昇した気がする。それもそうだ、神裂の目の前には炎を纏ったクリチャーが複数鎮座し、今にも神裂に襲い掛かりそうに睨んでた。
それは放つ炎で周囲に影響が出始める。おそよ400度。


神裂「確か、『イフリート』。炎の魔人と言った所でしょうか?…ステイルが見たらどのような突っ込みを入れるか…あ、ALOで既に突っ込みいれてましたね…」


ヴォオオオオオオオオ!!!


1人でぶつくさ呟いてる神裂にしびれを切らしたのか、1体の『イフリート』が吠え襲い掛かってきた。


神裂「黙れ獣!!!」


が、それに対し、神裂は一振りでその1体を真っ二つにした。


神裂「早い所片づけてあの子に合流します!」

902: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/09(月) 06:19:28.49 ID:oPpM/dc30


19090号「これで全員でしょうか?と、ミサカは最終点呼を取ります」

冥土返し「うん、全員のようだね?」


場所は変わり、冥土返しの病院では患者たちを含めた、大規模な避難が始まろうとしてた。


若手「周囲の『駆動鎧』すべて反応がありません。行くなら今しかありません院長」

冥土返し「うん?」


 陸軍の若手が冥土返しに判断を求める。尤も、これは避難命令で拒否はできないのだが、冥土返しが冥土返しであるが故の特別措置でもある。
そして、避難先の施設にもある程度の医療設備があるが、この病院施設にしかない物も確かにある。
だが、周囲位で固まってる『駆動鎧』がまたいつ動き出すかも分からない状況。ここにいるデメリットは計り知れない。


冥土返し「…背に腹は代えられないね?いこう、僕は手術車に居るからたのんだよ?」

若手「ハッ!」


 冥土返しの判断を聞くと各々が所定の位置に着く。
若手は高機動車に乗り込むと無線で指示を出す。


若手「前へ!!」


 若手の指示を聞いた隊列はゆっくりと退避先である23区へ向かい始めた。

903: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/09(月) 06:21:21.38 ID:oPpM/dc30


隊列の後部に位置するトラックの中にはとある高校の生徒3人が乗っていた。


「しっかし、えらい事になってしもうたな~」

「言うな。正直、アホみたいな事が続いて頭が破裂しそうなんだ」

「…仕方ない。また。ゲームのような体験するなんて」


 友人のお見舞いに来ていた青髪、吹寄、姫神の3人である。
本来であるならば、今の時間には入院中の友人の両親や担任の外見幼女教師と共に食事を23区でとる予定だった。
その23区へ避難と言う結果になったのが、何とも皮肉である。


「いいんちょ、大丈夫か?前の学校での…その、災誤センセのあの…」


気を使う青ピ。そうこの3人はこの状況に近い物を体験してる。
1年近く前、学校の教師災誤に扮してた魔術師よっておこされたサバトのような事象。
今回は規模を拡大させたそれのような印象だと3人は感じた。特に吹寄は災誤に何かしらの魔術のに巻き込まれそうになった。


「気を使うな。…とまでは言わないが、素直に感謝する。…心配してくれてありがとう」

「お、おう」

「…ラブコメの波動。」

「あいさ」「ないわ~」

「ジョーク、おっと」


ふと、珍しく場を和ませた発言をした姫神。
その様子を見たら未だ眠る友人2人はどんな表情をするか、ふと見てみたくなる。そんな思いが3人の顔から伝わる。



「ビックリして、何時もみたいな気が利かないフォローすると思うぜ」



「へ?」

 誰が発した疑問符と言うのならばほぼ3人同時だが、3人の頭に響いた男の言葉。


「い、いまの?」

「だよな!?」


青ピと吹寄が確認し合う。この声は彼しかない。


「かみじょう…くん?」


しかし、姫神は疑問に思った。
彼女の知ってる彼の声とは少しトーンが違うから。同じ声なのに別人のように思った。

904: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/09(月) 06:23:00.03 ID:oPpM/dc30


菊岡「しかし、けが人等の重傷者が多いとはいえ、走れる軍警察『警備員』はフル装備で車列に沿って走らせるとは…しっかり鬼教官の魂を継いでるねぇ」

若手「他に方法があるのならば是非とも聞きたいね。…俺だって、こんなバターン死の行進紛いな事したくないよ」

19090号「どちらかと言うと、1993年のソマリア『モガディシュの戦闘』における米軍の撤退に近いかと?と、ミサカは分析します」

若手「『ブラックホーク・ダウン』か。…懐かしいな。『第2入管占拠事件』の時に俺がシオニーちゃんや黄泉川さんにボソッと言ったやつだ。
あれが1年半ぐらい前か…長いようであっという間だ」


菊岡「SAO事件も発生して今日明日で2年。俺も歳とるわけだ。」

19090号「そうですね…」


離れる病院を見続ける19090号。


19090号「…頼みましたよ、10032号」

905: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/09(月) 06:24:34.85 ID:oPpM/dc30


御坂妹「頼まれました」

打ち止め「へ?」

御坂妹「何でもありません。ネットワーク内での会話です」


打ち止めは首を傾げた。
何故ならばMNN内での会話ならば彼女にも分かるが、10032号がさっき使った形跡はない。


御坂妹「10777号、リンクできそうですか?とミサカはロシアから態々おいしい所を取りに来た舎弟に訪ねます」

10777号「やってます。が、新しい物のインストールは時間がかかります。とミサカ10777号は愚痴ります。…学園都市在住は口が悪い」


 現在彼女は脳内に直接『ランドセル』の使用方法をインストールしてる。
『ランドセル』はその性質上、複雑な制御を必要とするが、彼女達の能力を応用し、インカムを通し脳波で直接操作することで簡単で複雑な運用をこなすことができる。
先ほど、9982号が頭部を物理的に殴打され墜落したのも、不意打ちであるが頭部を水道管で強打された故。
ちなみに10777号をMNN経由で覗こうもんなら、口の悪い御坂妹のせいだろうか、「コルコルコルコルコル…」と長く続く怨念のこもった呪文が見えてくる。
見たら目に毒だ。


フレメア「大丈夫かにゃ?」

打ち止め「う、うん!大丈夫って、ミサカはミサカは大汗かきながら答えてみる~!!」

フレメア「とても大丈夫には見えないにゃ~ふぇ!?」


その時、病院から約5キロ離れた場所で火柱が上がった。
幸い、それが先ほどの隊列ではないと言うのは方向からわかる。
そして、火柱の中から出てきた2匹の飛翔体が向かってくる。

906: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/09(月) 06:25:27.28 ID:oPpM/dc30


9982号「…『ケツァクウァトル』アルティミシア様が言ってました。この時代だからこそ呼び出せると」



声元に視線を向けると、そこには叩き落とされた9982号が立っていた。
武装の『ランドセル』も目立った外傷はない。


サーシャ「…第1の自身への解答。あれが『ヘブライ・ゴーレム』か。…嫌な物が材料だ」

9982号「流石ロシアの魔術師。解りますか?しかし材料は言わないでください。答えるのは貴女です」


銃口を御坂妹に向ける。


御坂妹「…死んでいった、ミサカ達シスターズ個体の魂」



9982号「そうです。あの『白い悪魔』に殺された固体の魂、怨念です。と、ミサカは戻ってきた2匹を手懐けます」


 彼女が答えを示したのにタイミングを合わせるかのごとく、2匹の怪鳥が舞い降りた。
翼や全身には羽が無く、オリーブ色の全身からはその属性を顕示するかの如く電光が走る。
9982号が述べた通り、『ヘブライ・ゴーレム』の術式の元に組成されたクリチャー。肉体の構成材料はの1つは圧縮された魂、死んでいった妹達である。
何処となくであるが、その鳴き声が、積み重なった女のうめき声のように聞こえるのは偶然であってほしい。

907: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/09(月) 06:26:46.35 ID:oPpM/dc30


サーシャ「…笑止」

10777号「千万」

御坂妹「散会!!」


タイミングを合わせたかのように、3人が攻撃を始める。
10777号は『ランドセル』のマニュアルのインストールが終わってないため、『カラシニコフ』で『ケツァクウァトル』1匹を牽制しながら物陰に。
サーシャも残る『ケツァクウァトル』に体当たりし場を離す。そして


御坂妹「上位個体、中に!!」

打ち止め「うん!!」

フレメア「おお、スターウォーズかと思いきや、ガンダムだにゃ~!!」


『ランドセル』に搭載されてる『ビームサーベル』を抜き、ブースターに任せ突っ込むように9982号と剣を交わす御坂妹。
当然、9982号も『ランドセル』を背負ってるので、『ビームサーベル』で対応する。
その光景は、フレメイアが述べた通り、人間同士ではなくロボット同士の斬り合いのようである。

908: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/09(月) 06:28:12.96 ID:oPpM/dc30


9982号「っつ!!」

御坂妹「弾かれボァ!?」


御坂妹のサーベルを弾くと、9982号は『ランドセル』についてる『おもちゃの兵隊Mk-Ⅱ』でアッパーのごとく御坂妹を宙に舞い上げた。
そのまま踏み込みジャンプすると、サーベルを御坂妹に突き刺す様に向ける。
それは仮想世界のレイピア使いの女剣士のようでもあった。


御坂妹「残念です!とミサカはサーベルを器用に坂手に持ったサーベルでガードします」


そして、彼女自身が述べた通り、器用にもサーベルでガードしながら9982号の反対側に回り込む御坂妹。
その動きはそれこそ今は仮想世界にいる、彼女の『お姉様』その物だ。その特徴的な得物の坂手持ちも。

909: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/09(月) 06:29:18.61 ID:oPpM/dc30


9982号「剣の勝負。…高揚しますね、CQCではない古き良き格闘術を思います」

御坂妹「そうですか、ミサカはそんな事よりも目の前の愚妹を早く空から叩き落としたいと思いつつ。ミサカは貴女との間合いを調整します」


御坂妹と9982号の距離。それは御坂妹がやってるVRMMOで彼女が得意な空中での距離である。
偶然ではあるが、御坂美琴が得意とする距離も同じである。


9982号「その剣劇、1度会い見えてみたかったですが時間のようです」

「ひゃあああ!!」

御坂妹「上位個体!?」


悲鳴のした方を見ると、そこにはフレメイアに首を絞められてる打ち止めの姿があった。いや、それ以外にも。


10777号《10032号、まずいです》

御坂妹「どうしました10777号、って!?」


ハッキリ見える。10777号とサーシャがいつの間にか『ケツァクウァトル』と群衆に囲まれてるのを。
その群衆、間違いない、先程この病院を去った団体。

910: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/09(月) 06:30:20.07 ID:oPpM/dc30


9982号「1度でも、時の改変による記憶の改竄の影響を受けると、例え1時的に解放されようが再び配下になります。
あ、ミサカ達『電気能力者』はあまり影響を受けなのでこの様なタイムラグが出ます。それに、アルティミシア様は手に入れたようで」


御坂妹「手に入れた…まさか!?」

9982号「…あなた達の、最後の希望」


そう言い終えると、彼女のはるか後方で呪いがかったかのような黄金の光が、妖艶な紫色の空に刺さり始めた。
それは溶けた黄金が注がれる光景を逆にしたかのような光景だった。そして、その光源には『学園都市』には無かった宙に浮かぶ西洋の城がはっきり見える。
そして、その城の頂上、まるで踊り台の様な場所に人影。御坂妹は自身のトレードマークの1つである軍用ゴーグルで最大倍率で拡大した。
金髪の少女に首から掲げられた銀髪の少女。彼女はその少女の名前を叫んだ。


「インデックス!!」


919: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 21:37:54.29 ID:b2bJIho60



時は少し遡る


都市高速道路を走るアックアの運転するハマーから見えたのは学園都市にはあるはずがないものだった。
いや、規模が小さく形を模したものならばあるが。

アックア「これほど見事な形で大規模な魔術を行使してる物は初めて見るのである」

そう、それはアックア達ならば見た事のある物であるが、今は彼等の故郷に行ってもその殆どには魔術的意味合いならば残っているが、魔術的霊草と仕掛けが生きてる物は皆無である。
周囲2キロほどの地面はまるで何かに抉り取られたかのように窪み、その上に浮いてる質量の塊。

結標「…ざっと計算したけど、仮にこの中の建物が浮いてたとしたら、これと同じぐらいの大きさね」

 この建物の周囲を車で回りながら端末で計算した結標。
能力の性質上、質量把握が絶対的に必要な彼女にとって、これ位は朝飯前だ。

絹旗「つまり超こいつは、この辺の建物を全て超一色単に混ぜ合わせてできた…」

アックア「そう言うことになるであるな。…もっとも、補足するのであるならばこの中に居たであろう人を含めた生物もな」

彼の言葉を強調するかのようにそれの外壁には所々、人の顔のような模様が浮かび上がってる。

禁書「まさに、魔女の城なんだよ」

920: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 21:42:17.39 ID:b2bJIho60


『城』その言葉しか当てはまらないとしか言いようがない。
西洋スタイルの城が反重力か浮遊術式か解らないが地から浮きその姿を顕示してる。
その地表と城の間は巨大な鎖で結ばれており、城が空へ飛んで行かないようにしてるのか、はたまたこの城を尋ねる者の連絡手段か。
どちらにせよ、この城の城主へ会うにはこれを通らなくてはいけないだろう。その中の1本の前で止まる。

アックア「しかし、あの鎖を通って中を通るのはリスクが大きいのである」

絹旗「どう考えても、超ラスボスダンジョンですよね?絶対コマンド超封印されて、それを超解除するために超体重を気にしてパーティー超分散させられて、
超めんどくさい場所にある鍵を超探してクリチャー倒して、超何気ない絵画に隠されてる暗号を超解読して、超シャンデリアを落として移動したり、超隠しボスと戦闘して超微妙なエンブレム貰うんですよ!!他にもあったっけ!!?」

禁書「気にしすぎかも…って、ALOやった後だと言えないかも。ジャパニーズ、ロールプレイングゲーム、難しくて捻くれてるから」

結標「あれ基準にしちゃダメ、90年代PSエッセンスにが結構出てるから。
けど、周りに飛んでるのはワイバーンかしら?ミスマッチさが際立つわね」

彼女の述べたとおり、城の周りには翼竜が旋回してる。それは城の警備か、はたまたそれ以外か。
どちらにせよ、『学園都市』、いや現実とはかけ離れた光景だ。

アックア「言ってる内容は理解できないが、あの城の中には大量の仕掛けや罠がある事は間違いないな。そして、戦闘も予想できるのである」

結標「ラスボス前、最後のセーブポイントと言った所ね…さて」

 現状の戦力を確認する。仮にこの城の中で戦闘が発生するのであるならば、合い見えるのは絹旗とアックアの2人だ。
自身とインデックスは護身用の小銃しかなく、そうでなくてもインデックスは対魔女用の切札。
自分の能力は?歯痒くなる結標。…いや、ある。

結標「ねえ、私に考えがあるの!」

彼女が自身のアイディアを伝えようとしたら、3人は見開いた目で彼女を見た。それは彼女が言ってはいけないフラグワードを言ってしまったからだ。

921: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 21:44:53.69 ID:b2bJIho60


結標「ガンガン行くわよーー!!!」

上部から体を出しながら、テンパった声で出発の合図を出す結標。先ほどの言葉がまだ響いてる様だ。
さらに作戦開始の信号団赤3発を打ち上げる。

「オーーーッ!!」

 気を使ってか、3人も結標同様に声を出し答えた。それと同時に勢いよく発進し、鎖の上を全速力で渡っていく。
しかし、ガチムチのオッサンも一緒に「おー!!」言ってるのがシュールである。
更にシュールなのは、巨大な鎖の上を全速力で走り抜けるこのハマーに作戦である。

絹旗「本当に超大丈夫なんですか?テレポートで直接、魔女の目の前に超出るなんて?」

結標「ええ、私を誰だと思ってるのよ?『座標移動』よ?」

 絹旗がザックリ説明した通り、結標の能力で魔女の目の前に転移し、中の仕掛けを全てスルーする、
ある意味チートな手段を選択した。
尤も、現戦力ならば致し方ない状況であり、増援も期待できない。

絹旗「ですけど、結標さんて、超精密な…」

結標「餅は餅屋、貴女はインデックスに巻く物巻いて。あ、アックアさんスピードこのまま」

アックア「わかったのである」

922: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 21:46:10.25 ID:b2bJIho60

モチベーションを上げ、前方を見る。学園都市にそぐわない城に、紫色の空を舞うクリチャー。
仮想と現実が交わったこの世界を、仮想世界で戦う仲間が見たらなんというだろう?あと少しで、ポイントである。

結標「インデックス!」

禁書「ほえ?」

車内で絹旗からある物を巻いてもらってる禁書の様子を見る。
正直、この子がそれを巻くのはに使わなく、彼女の役目とも思えない。
だが、彼女はやると言った。その為に反術式の方法を作ったのだと。今なら神裂の心情が解る。

結標「度胸は?」

禁書「抜群!!」

結標「よろしい!!・・・さ、気合い入れッ」

禁書「あわき?」

インデックスが振り返ると、そこに結標の姿が無かった。

絹旗「…超まさか!?」

 嫌な予感がした。直感だが、絹旗は窓を下げる外を見ると。

絹旗「結標さん!!」


当たってほしくない感が当たる。車とは逆の方向に飛んでいく物、おそらくワイバーンの類だろうか?
そのワイバーンが何かを咥えてる。人型の…いや、結標だ。

923: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 21:48:34.40 ID:b2bJIho60
結標「あぐっ!!…まずっ…た!」

今にも噛み千切られそうな左肩に喰らい付く、ワイバーンの何とかしようとするが力が入るわけがない。

結標「こんな奴らに噛まれたら悲鳴あげると思ったけど…ALOやり過ぎたかしら?」

悲鳴を上げて喚き散らすかと思っていた彼女だが、ALOで死にまくったからか意外と冷静だ。
痛みも度を超えて脳が処理できないのだろう、今のところない。
どちらかと言えば、ワイバーンの口臭や唾液、下の感触が気持ち悪い。
特にこのワイバーンは、噛み千切って食べようとせず、彼女の左腕を舐め手繰ってる。本当に気持ち悪い、が。

結標「チャンス!!」


その瞬間、結標は自身の身体をワイバーンの上空へ転移させた。

924: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 21:52:12.17 ID:b2bJIho60
結標「うげっ、気持ちわる!!」

十数メートル上に転移すると、涎と血で濡れた左腕に風が当たった感触を率直に吐く。感覚は無い。

結標「インデックス…」

階下、鎖の上を爆走するハマーが見え、その上に開いた窓から禁書がアックアに結標を助けるように言ってるのが見える。
2年前まで、銀髪のシスターとは居候先で会う程度だった。大食いシスター。それだけだと思った。
が、それがいつの間にか、彼女といることは日常になった。結標だけでない。
絹旗、海原、神裂、服部、打ち止め、フレメア、御坂妹、白井、麦野。接点の無かった皆も今や彼女がいることが当然になってる。
それは、『魔女』の影響下で記憶が改竄された時でも変わらなく。そして、そのシスターが何を願ってるか。当然。

結標「きっと、また来る。…だからっ!」

彼女はハマーと転移させる目標を正確に上空から見極める。

結標「ハッ!!」

 詰まる息を吐き出す様に狙いを定め、ハマーを飛ばした。
実際に城の中に入ると距離感があやふやになったのは気のせいだと思いたい。そして、涙ぐんでこちらを見ていたシスターの姿も。

結標「…前から思っていたけど、貴女の髪は銀じゃないわ…っよ」

転移させ一言つぶやくと、痛覚がやっとこさ反応してきた。
その痛みはおそらく、前の能力による事故や一方通行に負わされた拳よりも痛い事が解る。
が、それでも彼女は達成感による物なのか、度を越した負傷による脳内麻薬の過剰分泌か、安らかな表情だ。
そして下からワイバーンがせまる。

結標「…物語の登場人物ね」

自身の死を悟り、その最後を分析した。
その最後はファンタジー作品の登場人物最後のように、魔女との戦いの最中ワイバーンに食され死ぬなどありえるか?
SAOやALOの中ならあるかも知れないが。そんな事を思いながら、彼女は目を閉じた。


「結標さあん!!!!」

 そんなとき、さわやかな男の声で彼女を叫び呼ぶのが聞こえた。その展開はそれこそ王道物語の展開だが。


結標「なんでさ」


 本人はいけ好かないようだ。

925: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 21:59:39.78 ID:b2bJIho60

「どわっつ!?」

「にょわ!?」

「ぐぬうっ!!?」

結標のテレポートの座標が悪かったのか、頬りだされる禁書達3人。
後方乗っていたハマーがあるが、爆発の様子はない。
固く柔軟な金色の広場、いや黄金の絨毯のダンスフロアか?しかしその前に。

禁書「あわき!!」

先ほど翼竜に捕食された結標を心配する禁書。

「大丈夫。あの『座標移動』は死んではいない。そちらの同志が助けたのであろう。
…それにしても、ずいぶんと賑やかな凱旋だ。今まで見た事無い組み合わせ…散り散りであろう?」

 見下すような妖艶で、幼い声が3人の耳に入る。その舞台のために用意されたような服装を着た少女ような外見の女。
いや、この城の主。

「その前に。…ようこそ我が『はじまりの城』へ。城主である私『アルティミシア』が貴殿らを迎えよう。
そう、始まりの城へ…。好意の意を伝えよう。同胞を気に掛けるその優しさに意志を貫く頑なな意思。
私の血と魂の源流であるそなたが、私の思考と全く同じとは感服だ。なあ、ご先祖様。
…いや、インデックスと呼ばせてもらおう。…そして、言わせてもらおう。遅かったな、と」


その小さき城主がインデックスの名を呼ぶと、その黄金の空間はよりいっそう眩く光り始める。
そして、それに応えるように空に一筋の線が走る。
その長さはこの城と同じ2キロぐらいであるが、まるで鉛筆で引いたかのようにスッととまる。
止まるとその線は中心から幅を広げ始める。

926: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 22:01:46.46 ID:b2bJIho60

絹旗「なんか超グロイ」

 絹旗の率直な感想だが、それもそうだ。あの線、その形は女性器を模してるのだから。だが、問題はそこじゃない。

禁書「そんな!『時間素行の門』は最低でも開くのに2時間は!」

「その術式は『十字教』や『ファラオ』の物だろう?これは私が作り上げた『時間素行』…
『時間圧縮』だ、いちいち否定しないでもらいたい。それと」

アックア「フン!!」

禁書「アックア!?って」

絹旗「超なんですか!?」

アックア「その…ようである。が、彼女は!」

アックアに体長2Mはあろう人型の何かが獲物を用いて襲い掛かってる。
顔は穴が開いてるのか目などがないのか分からない、が、その容姿を見た瞬間アックアにインデックスは、それが何か気が付く。
業火に焼かれ涙を流してる女性のような風貌のそれ。

「そう、かつて祖国のために立ち上がり祖国を勝利に導いた。しかし、彼女は『魔女』として処断された。そして、そなた達を取り囲んでる彼らも」

次々に現れるそれら。中にはどう考えても未来から来たかのような存在もいる。

「これが本来の私の力だ。古今東西、すべての時間軸の『魔女』を使役として現出させる。それが、私の力。言っておくが、これがすべてではないぞ?」

その数は両手で数えるほどだが、顔の写ってない人型。怪物のような魔女を従える『アルティミシア』。

927: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 22:06:07.23 ID:b2bJIho60

禁書「その代り、解放できるのは『あの門』が開いてる時だけ。そうでしょ?」

だが、すぐにそのデメリットを禁書目録に見抜かれると子供のように表情を濁らせ舌打ちをする。

「つまらぬことをいちいち、いちいち。言わせてもらうが、ここの人間は話を聞かぬのが――」

「多いんだよ!!」

荒げた女の声、その荒っぽい声と共にマフラーの音。振り返ると宙に浮かんだレーシングバイクが、魔女の視界を覆い。

「ご挨拶だ!」

何か光るものが燃料タンクを貫いた瞬間、そのバイクは轟音と共に爆散した。

絹旗「ちょ、超なんですの!?」

「絹旗さん!『ALO・ガーデン』!!」

黒煙の中、絹旗にかけられるのは何かの暗号のような声、黒子だ。
が、記憶が戻ったからと言って、彼女らに暗号を作る時間はあったか?いや、なかった。

「小賢しい。このような爆炎は目くらましにも――」

「いいんだよ、言葉1つ伝えるだけで。そうだよな、インデックス!!」

禁書「そうなんだよ、しずり!」

「スイッチ!!」

928: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 22:11:17.15 ID:b2bJIho60


「何を入れ替え、ッツ!?」


絹旗「どおおおおおおおおおおおお!!!」

がむしゃらに正面から突っ込んでくる絹旗。彼女の能力から考えれば攻撃方法としては無難である。単純であるが。

「それが権勢のつもりか?」


 彼女が言葉を発すると柔く光る『アルティミシア』。
その瞬間、魔女の内、何体かが絹旗、そして左後方から来てた麦野の『原子崩し』を防ぐ。

アックア「何の所作もなしに!?」

「それが私の術式。」

麦野「『能力』かよっ、ってそうだったな!」

魔女を避けながら戻った記憶でたどる。
そうだ、アルティミシア達が使う『魔術』と呼ばれる麦野たちにとっての異能の力、それは『ヘブライ魔術』というもの、らしい。
大雑把に言えば、『超能力のような魔術』だ。
実際、科学側能力者は『ヘブライ魔術』の概要を魔術側から聞いたときに真っ先に思ったそうだ。だからこそ。
  
絹旗「対策超考えてたのに!!ウオッ」

白井「だからこその、『記憶を忘却させる』荒業での自衛でしょうって!?」

先から召喚された『魔女』から連発される物理攻撃を避ける麦野や絹旗たち。
結局のところ、魔女が彼女たちの記憶を消したのは黒子の推測通りだ。

「その荒業が1番効率的なのだよ。…そう、条件を満たせば。」

禁書「その条件を満たしたのは私たちが先なんだよ!!」

インデックスに麦野、絹旗に黒子。彼女ら4人が定位置についたかと思うと、それらを結ぶように光が走る。
その光はちょうどアルティミシアのところで十字に交わる。

絹旗「超これって!?」

 最初に見た時、それは十字架と思た。が、それはゲーム内『ALO』での話。
その中での『束縛魔法』で詠唱が難しく、インデックスしかできないものだった。
が目の前のこれはなんだ?そうだ、ALOでインデックスしかできなかった。それを現実でやったのだ。

白井「何語!?」

アックア「少なくともラテンではないッ!」

周りの魔女数体を蹴散らしながらインデックスの唱える詠唱がラテンでないことを伝えるアックア。
それもそうだ、彼女の発してる言葉は解読できない言語。それを見たものは絵と思うか東洋人ならば漢字と思うだろう。


929: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 22:16:10.52 ID:b2bJIho60


「『ヒエログリフ』…なるほど、ヘブライ魔術が生まれる大本の1つ、エジプト『ファラオの力』を行使したか。この十字も『アンク』ということか」

顔をしかめるインデックス。事実この術式は『ファラオの力』と呼ばれた失われし異能。
才能ある者が絶対的に支配する能力。それこそが古代エジプト王の力。しかし。

「魔術に関わる人間が何をミスしてる…かおり!!」

その言葉の最後の名前を呼ぶ声。それは間違いなくインデックスの声だった。その直後。

禁書「ぐあっ!!」

吹き飛ばされた。…いや。


麦野「何やってんだ神裂!!?」


切り飛ばされた。味方であるはずの彼女に。


930: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 22:17:29.39 ID:b2bJIho60


神裂「何って、私は魔女に不意打ちを…え」


「ありがとう、かおり!!…これでこの時代のインデックスは手に入った」

絹旗「もしかして、超初遭遇の時の!?」

そう、アルティミシアが使ったのは初遭遇の時に絹旗たちに使った魔術の応用術式。
しかし、それ以上に神裂の精神にダメージを与えたのはインデックスを背中から切ったことだ。
それは3年前にこの学園都市で誤って切ってしまった時と同じ、いやそれ以上。
いくら発条包帯を巻いてようが意味がない。ぐったり倒れたインデックスの首を掴み挙げ空に掲げる。

「始めよう…部外者にはそれ相応の」

その瞬間、アルティミシアの元から数千の魔女が湧き出る。無限に出る魔女。
その洪水のような魔女の軍団に神裂や黒子はインデックスの名前を叫びながら流されてしまう。


麦野「インデックスウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!」

とりわけ彼女の声は町全体に響くような音量だった。
 だがそれと共に街中が妖艶な紫から深紅な紅い光に包まれる。悲鳴の1つでも聞こえそうだが全く聞こえない。

「これで最後のジャンクションだ…」

目的が達せられた安堵からか、安らかな声がこぼれる『魔女』アルティミシア。その優しさがインデックスに向かう。嫌味という形で。


「安心しろ。…本来『時間素行』発動までの間、お前のような存在は周囲との記憶による差異で、多くが孤立し多くが自ら命を絶った。
人間という生き物の習性の果てにな。だがご先祖!あなたはそれを耐え、乗り切った。…時の狭間で永遠の孤独眠りにつくことを…」


最後の言葉をインデックスに投げかける魔女。

931: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 22:18:50.10 ID:b2bJIho60




――右手を前に出すんだ!!!――





932: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 22:20:37.56 ID:b2bJIho60

「誰か!!?」


アルティミシアにも聞こえた声元をたどろうとする。少年の声だった。
しかし、周囲にいた神裂達はすでに払っており、さらに今現在この街で声を出せるほどの生命活動をしてるものはアルティミシアの配下しかいない。
どこだ?目線を感じ、振り返る。

インデックスだ。

ありえない、彼女は聖人神裂による全力の斬撃を受けてるのに。


禁書「ふっ!!」


なのに禁書は右手を前にだした。その瞬間、彼女の右手から白金の粒子が、吹き出すかのように出て魔女を貫いた。
アルティミシアの体を貫いた瞬間。あの音が学園都市に響いた。

933: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/11/29(日) 22:22:49.23 ID:b2bJIho60

「ゴフッ」

白金の粒子に吹き飛ばされる転がるアルティミシア。体を貫かれたと思ったが、その肉体に欠損は見られない。

「何なんだ!?門は?」

天を見る。そこには白金の粒子が時に天使のように時にドラゴンのように咆哮しながら天を舞ってた。
そして、ある形になりながら、粒子は白金の髪の少女の元に。

「それは…」

少女の右手にはハッキリと表れる得物。それは数多の神話で人々に希望と力を与え切り開いてきた。
そして魔女にはわかる、アレ自体が異能であり、異能の存在を打ち消す物だと。

「…剣(ソード)」

 少女にはいささか大きすぎる剣のデザインは龍と天使、材質は白金のような物。
そして感じる、その剣はこの街の能力者を感じる。

禁書「この街のみんなと…ひょうかと…とうまがくれた」

呟きながら、白金髪のシスターは力強く剣を両手で握りしめながら構えた。

「最後の希望!!インフィニティー!!!!」


940: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/20(日) 23:48:27.24 ID:ehOqNWS50


消えそうな意識の中、インデックスは振り返る。現世なのか涅槃なのか、インデックスにはわからなかった。
ただ言えるのは、雲の隙間から何層も積み重なった大地がのような物、いや、『浮遊城』が見える。

「わからないけど、死後の世界じゃないよ?」

「ひょうか!?…それに」

「いやーまさか会えるとは上条さんも思っていなかったよ」

そこにはあの少年がいた。自身と一緒に地獄の底までついてきて、いつも身を挺して誰かを救ってきたツンツンヘアーの少年。
そして、彼女が1最初に出会ったころの幼さがある。

「と…とうま?」

「久しぶりだな…インデックス」

 そうだ、彼女を幾度も救てくれた少年、上条当麻だ。再開、なのだが違和感がある。
何と言ったらいいのか、適切な言葉が見つからない。言葉にできない感情が表情に出たのか。

「顔に出てるよ、インデックス」

「やっぱ分かるよな。ヘヘッ」

照れくさそうに鼻をかきながら笑う彼。その表情は彼女が知る上条当麻の中でも初期の、本当に数日しか見れなかった表情。
どことなく幼さがあり、今の彼の風貌からは想像できない。
…いや、今の彼の顔を見せたら彼はどのような反応するだろうか?小さないたずら心が芽生えるが。

「知ってるよ。今もあいつは戦ってる」

「えッ。ってまさかあの城で!?」

その先に見える浮遊城で剣がぶつかる金属音が聞こえる。
その城が何か、その城の名前が何か、彼女の直感という第6感に電流が走るのを感じる。いる。


「とうまッ!!!」


941: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/20(日) 23:50:09.01 ID:ehOqNWS50


そうだ。その先にいるのは上条当麻、そう、上条当麻がその先にいる。確信なんて皆無だ。
が、彼女にはわかる。2年越しの感覚…。いつも自分のことを顧みない少年があの城にいる。

「当麻君はあの戦いに勝てば解放されて元の世界に戻る。」

「だけど、それだと遅いんだ。その前にお前や『学園都市』は滅びる。それはインデックスが1番」

「…それに、あそこに行くことも」

助けに行くこともできない事実を悟る禁書目録。
そこは彼女の戦場ではない、少年にあの短髪少女もいるであろう、ハンバーガーを奢ってくれた白髪の少年を含む同じ病院にいた者たちも。
そして、彼らの帰還を待っている時間もない。『時間遡行』、魔女曰く『時間圧縮』が行われた場所はどうなるか?
記録が完全に残ってない事実から考えると、生存者はいない。

「だから私はあそこに…」

はるか雲の下、海の中に浮かぶ列島の1番大きな島、その中に塀に囲まれた円状の都市を見る。

「とうま達が帰ってこれる場所を守るために…」

身体に力が入る。そうだ、自分がいる場所はここではない。

「力を貸すよ」

そんなシスターの心情をくみ取ったのか、風斬氷華は優しく声をかけた。そしてもちろん。

「インデックス…そんな時は――」


その直後、インデックスは彼に言われたことを実践した。


そう、右手を前に突き出した。


942: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/20(日) 23:52:48.63 ID:ehOqNWS50


「あら、こんなに早く見れるなんて。アレイスターもかわいそうね~不在時に」

 ホワイトハウス。
2025年現在でも大国であるこの国の中心部に、この国の言語と同じようで違う言語の女性の声が響く。

「だが都合がいい。俺達の大義名分がさらに増えた。それだけのことさ」

そしてワイルドな男の声も、興奮してるのは紅茶のせいではなさそうだ。ローラ=スチュワ-ト、ロベルト=カッツォ。
共に紅茶を飲みながら目の前のモニターに映し出された映像見る。そこに映るのは剣を持つシスター、インデックスである。

「時差は無いんだな?」

「ハッ。日本の防衛省経由のリアルタイムです」

大統領、ロベルトの問いに答える部下。この映像は防衛省、つまり学園都市目線で言う『外部』、日本国政府からの提供だった。
その意味が示すのは。

「つまりぃ、『学園都市』の『小さな覗き虫さん』を向こうの政府が使えるようにしたと?」

「そういうことだ、レディ」

凝った体を解したいのか、立ち上がり背を伸ばしながら傍の窓辺に行くロベルト。
ローラの言った通りだ。学園都市に無数に飛んでるナノサイズの飛翔体、『滞空回線』のハッキングに成功したことになる。
そして、その情報は米国に漏れ、いや、共有してるという表現が正しいだろう。何故ならば。

「しかし我が国の同盟国も気の毒だ、こう何度も『災害』に見舞われるとは…そうは思わないか、英国正教最大教主殿?」

そう、今回の1連の騒動は『学園都市外部』では『学園都市にて大規模災害発生』という題目で発表されてる。

「ええそうね、合衆国大統領。で、その同盟国から『救援要請』が来てるのでしょう?」

「ああ、すでに我が軍、無論日本の軍も学園都市周囲に展開してる。後は、状況の確認次第だ」

そして、その『災害救助』の為に米国、言うまでもなく日本も動いてる。
決して威力偵察や軍事侵攻ではない、災害救助である。此方からは見れば。

「我らも最大限の救援を出来るように女王陛下にお伝えしたところで。あくまで『人道的』にね。街にいる人々、子供たちを救わないと。ローマやロシアより先に」

紅茶を優雅に飲みながら当たり前のことを言う。そう、こちらにとって当たり前の建前。最後は本音であるが。
ロベルトは聞き流すように鼻で笑いながらもう1度インデックスの写るモニターを見、ポツリと感想を述べる。


「…美しい剣だ」



943: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/20(日) 23:55:33.38 ID:ehOqNWS50



「イン…フィニ…ティ…」

『魔女』は困惑した。インデックスが持つ剣、それは古代バビロニアの天と地を分けた無名の剣に匹敵するのではないかと思う。
それはあながち間違いでない。だがその前になんだ『禁書目録』の雰囲気は?
白金の粒子を浴びたシスターは『白金の剣』を構え、背中ら大量の粒子を放出させてる。
その姿は『白金の剣を持つ天使』、いや『聖女』である。まさに『魔女』である『アルティミシア』に抗うための。
『禁書目録』、そう言われることもある彼女にしても初めての現象。

「っ…」

足を引き、たじろぎそうになる。
が、その瞬間『魔女』の身体に無数の何かが突き刺さった感覚になる。何回もある経験。
自身の心が折れそうになるたびに突き刺さる。
アルティミシアと共に、ディストピアである彼女たちの時代を破壊するために共に時を遡り命を落としていった者達の視線。
彼らが死んだ時、その悲鳴、様々な物がフラッシュバックする。
『純粋な世界を作り、人間らしく険しい世界に生まれ変わりたいと願って死んだ者達』の重圧。
止まるわけにいかない。引くわけにもいかない。
『時間圧縮』の行使の為に集めた膨大なエネルギーを制御しないといけないために、あまり大に動けないのが悔やまれる。
特に、先ほど貫かれたときから『制御系統』の様子がおかしい。

「時の狭間にいるお前が、今さら何を出来ようと」

 腕を振り上げ召喚した、『時の魔女怪人態』をインデックスの元へ向かわせた。
脂っこいうめき声と共にインデックスに押し寄せる、腐敗色の魔女達。だが。

「フッ!!」

何が起きた?アルティミシアは確かにシスターを抑えるために魔女数体を襲わせた。が、なんだ?

「…久しぶりに聞いたかも。この音」

そうだ、召喚した魔女怪人態は彼女の出鱈目に振った剣が当たった瞬間、砕け散ってしまった。
そう、それは水晶が砕けるような音で。あの少年の右手が異能に触れた時のような。

そして感じる。それは、未来のディストピア支配者、純白と偽善の存在と同じ存在。
アルティミシアはこの時代にで初めて絶望感を感じ顔を歪めた。


944: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/20(日) 23:57:53.39 ID:ehOqNWS50


「過去を決別しない、あなたはッ!!」

がむしゃらに突っ込んでくるインデックスを避けるアルティミシア。
特に『インフィニティー』には絶対に触れないようにする。先に呼んだ2人が来るとして3分。
何としても攻撃を避けなければいけない。特に、召喚した魔女を一瞬で消したあの剣は。

「喋ろうとするなぁぁ!!!」

何か自身に訴えかけようとするインデックスに、適当な魔術を打ち込むアルティミシア。
特にその喧しい口、頭部を中心に打ち込む。こんな動揺してる時に相手の口車に乗りたくはない。
幸い時を超える為の『門(ゲート)』は無事だ、インデックスさえなんとかすれば『時間圧縮』は数秒で再開できる。
そう、インデックスさえなんとかできれば。

「なん…だと!?」

だがそうはいかない。彼女は自身の『禁書目録』から使え適当な魔術をインデックスに当てたが、それがいい加減に選んだものではないのは確かだ。
『聖人だろうが捻挫する威力』の魔術なのだから。しかし、現状はこれだ。
アルティミシアは上下左右から魔女をインデックスに当てるが、ずべてあの剣で遮られる。

「効かないんだよ。…もう分かってるかもしれないけど」

「聞く耳持たん!!」

 足止めなのか、混乱したのか先ほどと同じ術式を打ち込む『魔女』。
あまり効果的でないのは先ほど証明している。
魔術はインデックスの持つ『白金の剣』に当たると、水晶が砕け散るような音と共に消滅する。
そう、いつの時代に遡ったら真っ先に存在を物理的に消していた。

「『幻想殺し』と同じ効果だというのか!?」

《アルティミシア様!!》

「リノアか!?」


 脳内に直接聞こえる自身の部下、『原子崩し』リノアの声。それが異能での会話なのはわかるが。


「弾着!!」


次には口頭でだった。
耳を塞ぎ、数メートルほど後方にジャンプすると同時にだった、爆炎が眼前で起き、風切り音と爆音が周囲に轟きシスターを覆った。


945: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/20(日) 23:59:42.75 ID:ehOqNWS50


《砲弾での援護になることをお詫び申し上げます。と、ミサカは次弾を装填しつつ10032号の対空砲火を避けます。この状況でよくできる》

続いて御坂9982号の通信が頭に入る。
彼女の通信から察するに、9982号が装備してる『ランドセル(次世代演算兵器C)』の『トイソルジャーMK-Ⅱ』による砲弾だ。

「援護が遅れて申し訳ありません。実体弾の判断は私と9982号で」

「適切な判断、と言っておこう。おかげで聴覚も損傷がない…」

リノアの報告を聞きながら状況を整理する。
先ほどまでの攻撃効果を見ると、『白金の剣』が『幻想殺し』と同じ効果を持つのは確定してもいいだろう。
リノアは未来で何回か『幻想殺し』の処分を行ってきた関係で、その弱点が『異能を使わない実体攻撃』ということは理解してる。
なので砲弾による攻撃は理に適ってる。
着弾した場所は黒煙に覆われわからないが、インデックスに傷1つないことはあり得ないはずだ。


「まて。9982号、どんな状況だと!?」


 だが、アルティミシアは先の通信で気になることを問いただす。


《どんなって》


 これに9982号は多少驚いた声色をしながらも答える。


《10032号等の小賢しい抵抗に合っています。とミサカは、現状を報告します。自動小銃ごときで対空砲火のつもりか、ウザったいッ!!纏わりつく》 


淡々と説明しようしたつもりだったのは分かる、そしてその向こうで10032号と戦闘中なのもわかる。今頃『MNW』とやらで「ミサカを相手にしながら脳内通信?ずいぶんと甘く見られたか、それともあなたはニュータイプに進化したのですか?と、ミサカはあなたの脳内に問いかけます。落ちろギャプラン」とでも言い合ってるだろう。そう、その時点でおかしいのだ。


「何故、奴らは動ける?」


946: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/21(月) 00:03:52.06 ID:TgqyuJ770


『時間圧縮』その術式は発動すると『術者』であるアルティミシア、その付随する彼女ら以外は動けない。
それが通例だった。術式は空に開いた門を見ればわかる、現在も発動中だ。

「疑問が顔に出てるんだよ!!!」

その表情を読み取ったかのように声、そして斬撃が魔女とリノアの間を裂く。

「何故動けるの!?100ミリ越えの弾頭、言うなれば戦車の砲弾と一緒よ!?」

 驚愕の感情が色濃く表れてる声色を表しながら距離をとるリノア。
そう先ほど9982号のからの砲弾がもろに直撃したはずのインデックス、なのにどうだ?
何事もなかったかのように立っているではないか?
いや、よく見ると彼女の前面には白金の粒子の舞い具合が濃い。

「盾にしたとでもいうのか!?」

咄嗟にだった。自身が頭の中で整理してたことが口から出たのは、それは生物的な本能によるものだろう。
そして、本能的に感じる。
目の前でアルティミシアに立ち向かうシスターは『魔女』の攻撃を、その使い慣れてない『剣』で振り払いながら着実に距離を縮める事の意味。今、自身が援護しないと!!

「図に…」

 空間に無数の眩く光を展開させるリノア。そう彼女の能力、『原子崩し』。

「乗るなアァァァァァァァァァァァ!!!!」

 感情に任せ、最大数の『原子崩し』をインデックスに打ち込む。
『原子崩し』彼女たちの時代で、それは『ゲームで扱うようなビーム攻撃』と同じなのかもしれない。
だからこそ、その『原子崩し』知り、今の時代の『原子崩し』は。

「お前がな」

 冷静に『未来の原子崩し』の攻撃を最大限の原子崩しで共にかき消した。彼女の右腕と共に。

「何故だ!?」

 3メートルほど離れた場所にいる『現代の原子崩し』麦野沈利を睨み付ける。
そしてそばにはツインテールの少女、白井黒子の姿も見える。
何故だ、本来彼女は『足かせ』として暴走する環状電車内に閉じ込め人命救助にしてるだろうと計算してた。
最速でもあと20分は時間を稼げるはずだった。だがどうだ、そこにる。
彼女が何かを割り切ったのか?『正義』を捨てたのか?疑問が脳内に交錯する、だが。

「違う!!」

本来の目的に戻るかのように振り返る。そして見た。

「アッ!…」

声にならない声でリノアが叫び始めた。
アルティミシアの小さな体の中心、腹部にインデックスの『白金の剣』が突き刺さってるのだから。


947: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/21(月) 00:05:56.19 ID:TgqyuJ770


腹部に違和感。仮にこの剣が鋼鉄の剣であるならば、冷たい感触に金属の異物感、そして激痛が全身を駆け巡るだろう。
だが、この剣はなんだ?

「くっ…」

インデックスがこれでもかと、剣を捻じ込んでくる。だが、違和感しかない。

《あえて言うなら、それが『幻想殺し』よ?『魔女』のお嬢さん》


脳内に声が響くのと同時に、自身を含めた周囲が静止してることに気が付く。
すぐに気が付く、この魔術は彼女のジャンル。だが、こうもたやすく。

《本来の『時間静止』はこんな感じに簡単にできるのよ~。それは貴方が要領悪いだけよ~》

まるで脳内を読まれてるかのような気分だ。現在、アメリカホワイトハウスにいるはずのローラ=スチュワートに。

《何しに来た英国正教最大教主》

《あなたの健闘を称えにね?そう、あなたたちはよくやったわ。この時代の発展に寄与したわ》

《ほう…》

《…そのリアクションだと、未来で言われてきたのね。貴方たちの存在はその時代時代での変革の境界線。だからこそ》

《世界の『麦踏』として…『起爆剤』として我らを排除する事はなかった》

《だけど目の前にいる彼女、そうあなたの祖先はどうなんでしょうね?貴方たちとは違うやり方で『科学と魔術』を合わせた》

そうだ、インデックスの持つ『白金の剣』それは科学の象徴である風斬氷華、異能を打ち消す上条当麻、そして魔術の象徴である彼女が合わさったものだ。
 ひょとしたら、彼女がアルティミシアの先祖だというのは間違いないかもしれない。


《さて…時間よ。最後に―――貴殿は過去へ行ける》

「フッ!?」


急に時が動き始めた。と同時に、腹部から圧迫感。何かが弾けるような。



948: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/21(月) 00:10:52.46 ID:TgqyuJ770


「インデックス!?」

「へ!?」

 意識を戻すと、視界には神裂の顔が入った。
それは何かのトラックの荷台だろう、近くで負傷した麦野を案ずる声も聞こえる。
そして、右手に『白金の剣』は無く、それを確認するかのように天に右手を掲げる。
喪失感は無いように見える。すると。

「『竜王の殺息』!?」

 天から無数の光が無作為に地に降り注ぐ。インデックスは咄嗟にそれを『竜王の殺息』と見抜く。

「やはり…」

それと疑っていた神裂が複雑な感情でそれを見る、それはあまりいい感情ではない。そう、それはあの時、3年前の夏の。

「まるで『噴火』だな」

 まったく知らない麦野が光景をストレートに表現した。
そう、まさに火山の『噴火』という表現が当てはまる。
『時間圧縮』を行使するために自身の体を中心に膨大なエネルギーを圧縮してたのが、
インデックスに貫かれた事により体内から黄金色の粒子として放出し、様々な魔術を無作為に発動させてた。
彼女の『自動書記』が制御された暴走であるならば、アルティミシアのは完全なる暴走である。

「でも、あと数分。…ううん、2分もかからないんだよ。鎮火するかも。もっとも、『時間圧縮は』発動しちゃってるから」

だがインデックスはその暴走が直ぐに収まること宣言した。
ハッキリと言い張る姿を見て、麦野に神裂はインデックスの成長を素直に喜んだ。それもあの少年の影響だろうと。
 その少年が眠ってる冥土返しの病院へと向かうさなか、それはおきた。

「うそ!?」

天から注ぐ『竜王の殺息』が病院を飲み込んだのだ。
轟音を立てながら注がれる光により、同じく轟音を立てながら建物が崩れる。
まるでその少年の持つ属性『不幸』によって、最後の最後におきた偶然。

「浜面ァ!滝壺ォ!!」

「一方通行ァァァァァァァァ!!!」

「土御門ォ!!」

「お姉さま!!」

各々が中にいる者たちの名前を叫ぶ。いや、叫ぶだけしかできなかった。
仮に魔女がその光景を見ていたらさぞ嘲笑ったであろう。特に。

「と…」

彼女の泣き出しそうな顔を…今まで魔女と対峙してきたときには見せなかった、弱り切った顔。

「とうまああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

そんなインデックスの絶叫が周囲の轟音に打ち消されることなく響いた。

949: 1ZIMA” ◆5OdiFuFGeA 2015/12/21(月) 00:11:35.05 ID:TgqyuJ770


そして響いた、あの音。あの音だ。その音が響き渡ると降り注がれた『竜王の殺息』は砕け散った。
そして瓦礫は雷音と何かに動かされるように周囲に消えた、誰1人傷つけず。




「オィオィ、ゲーム終わったンだよなァ?」


「ミサカも分かんにゃい~ギャハ☆」


「あ、むぎのが近くにいる」


「いや~この感じ、ゲーム内だぜ?」


「ですよね~空が紫…」


「佐天さん、たぶん現実ですよ。空が見えますから。…たぶん」


「にゃっはっは~学園都市はいつもスペクタルだからにゃ~笑えないぜい」


「本当マジ笑えない。え、現実だよね?まだボス戦続いてる?」


「とはいえ、上条さん敵にはうれしさの前に一言言いたいのですよ」


最後の少年が締める。
すると2年間苦楽を共にした少年少女たちはお約束のように、ある言葉を叫んだ。



「不幸だーーーーーーーー!!!!」