1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:09:21 ID:BjbV0PBs
青年剣士「ソニックウェーブソード!」ビュオアッ

魔剣士「魔空斬……」ビュオオッ

サムライ「飛空居合でござる!」シュバァッ





剣士「ったく、近頃の剣士ときたら……どいつもこいつも斬撃を飛ばしやがる」

剣豪「まったくだな」

引用元: 剣士「斬撃を飛ばす技は邪道の極みだ」 

 

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2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:12:31 ID:BjbV0PBs
剣士「鍛えた肉体で間合いを詰め、自分が握った刃で敵を斬る!」

剣士「これこそが剣士の強みであり醍醐味だろうが!」

剣士「あんな魔法じみた技で、間合いをごまかしたって強くなんかなれるか!」

剣豪「そのとおりだ」

剣豪「結局、戦いでモノをいうのは純粋な剣技に決まっている」

剣豪「我々だけでも、今までの剣士の流儀を貫き通していこうではないか」

剣士「ああ、もちろんだ!」

3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:14:32 ID:BjbV0PBs
雑誌『月刊ソードマスター』のインタビューに対し、剣士はこう答えている。



剣士「飛ぶ斬撃? ふん、あんな技は邪道の極みだ」

剣士「なぜなら、剣士にとって最良にして最強の戦術とは――」

剣士「自分の足で踏み込み、間合いを詰め、自分の剣で敵を斬る、これに尽きるからだ」

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:17:23 ID:BjbV0PBs
剣士「あのような技では強くなれた気になれても、真に強くはなれん」

剣士「剣士が強くなるには、ひたすら剣を振り、間合いを体で覚え、場数を踏む」

剣士「これしかないのだから!」

剣士「斬撃を飛ばすなどという技で楽をしたところで、いずれ必ず限界がくる!」

剣士「はっきり申し上げておこう。私はここに断言する」



剣士「私は斬撃を飛ばす技は絶対に使わないと!」

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:20:07 ID:BjbV0PBs
ところが――

<病院>

剣士「剣豪!」

剣豪「……やぁ」

剣士「闘技場での若い剣士との立ち合いで敗れたと聞いたが、本当なのか!?」

剣豪「ああ……やられたよ」

剣豪「飛んでくる斬撃を避け切れず……こんなザマになってしまった……」

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:21:56 ID:BjbV0PBs
剣士「お前ほどの剣士がどうして……油断したか?」

剣豪「いや、油断じゃない……」

剣豪「むしろ、斬撃を飛ばす技の性能が……私の想像以上に進歩していた……」

剣士「…………!」

剣豪「スピードも、威力も……そして連射性能も……」

剣豪「もはや、従来の剣術で太刀打ちできるようなシロモノではない……」

7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:24:28 ID:BjbV0PBs
剣豪「今のうちにいっておく……」

剣豪「退院したら、私も斬撃を飛ばす技を会得しようと思う」

剣士「な……!」

剣豪「そして……お前も私のようなことにならぬ前に、会得すべきだ」

剣豪「大怪我してからでは遅いのだから……」

剣士「…………」

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:27:14 ID:BjbV0PBs
病院を出た剣士。

剣士(剣豪の奴め、見損なったぞ!)

剣士(俺たちだけでも従来のスタイルを守っていくんじゃなかったのか……!)

剣士(俺も……今度、闘技場で試合をすることになっている)

剣士(おそらく相手は斬撃を飛ばす技を使ってくるだろう)

剣士(そこで、俺が従来の剣術の強さを皆に知らしめてやる!)

剣士(そうすれば、剣豪だって気持ちを変えてくれるかもしれないしな!)

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:30:08 ID:BjbV0PBs
数日後――

<闘技場>



ワァァァ…… ワァァァ……



金髪剣士「ほれっ、ほれっ、ほれっ!」ビュオッ ビュオッ ビュオッ

剣士「ぐううっ……!」

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:33:00 ID:BjbV0PBs
金髪剣士「そらっ!」ビュオッ

剣士「わわっ!」サッ



剣士(くそっ……なんて速さとスキの無さだ……全然近づけない!)

剣士(切れ味も、俺が知ってる飛ぶ斬撃とはケタ違いだ!)

剣士(こんなのまともに剣で受けてたら、剣がダメになってしまうかもしれない!)

剣士(くそう……斬撃を飛ばす技がここまで進歩していたなんて!)

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:36:05 ID:BjbV0PBs
<森>

剣士「…………」

剣士(どうにか勝てたが……薄氷の勝利だった)

剣士(相手のスタミナが尽きたところで間合いを詰め、かろうじて勝利……)

剣士(こんなんじゃ、斬撃を飛ばす技に正面から打ち勝ったとはとてもいえない……)

剣士(しかも、今日の相手は剣士としての格は俺よりずっと下だった)

剣士(もし、俺と同じぐらいの格の相手だったら……俺は負けてただろう)

12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:38:44 ID:BjbV0PBs
剣士「――くそっ!」

剣士「俺が必死で鍛錬してきた剣術とは、こんなもんなのか!?」

剣士「やっぱり俺も飛ぶ斬撃を会得しなきゃ勝てないのか!?」

剣士「ちくしょう……」

剣士(試しに一度、俺も飛ぶ斬撃とやらが出せるかやってみようか)

剣士(あくまで試しだ! 試しなんだからな!)

13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:41:45 ID:BjbV0PBs
剣士「たしか……こうやって……こう!」ビュオッ



シュバァッ!

スパパパパパッ! ズズゥゥン……



剣士「で、できた……。できちゃった……」

剣士(あんな軽くやったのに、木が数本切れてしまった……)

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:44:23 ID:BjbV0PBs
剣士(自分でやってみて、やっと分かった気がする)

剣士(こんな技、便利すぎるだろうが!)

剣士(一度覚えたら、こればかり使いたくなるに決まってるだろうが!)

剣士(自分の足で間合いを詰めて斬るなんざ、バカバカしくなるに決まってるだろうが!)

剣士(それこそ、自分の足で走るのと馬に乗って走るぐらいの違いだ!)

剣士(いや……それ以上かもしれないな)

15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:47:46 ID:BjbV0PBs
剣士(だけど――)





剣士『私は斬撃を飛ばす技は絶対に使わないと!』





剣士(俺はこう宣言してしまってる)

剣士(もし斬撃を飛ばす技を使ったら、バッシングは免れないだろうなぁ……)

剣士(結局お前も斬撃を飛ばすのかよ、ってヤジが飛んでくるに決まってる)

剣士(どうすりゃいいんだ……)

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:50:19 ID:BjbV0PBs
剣士(とりあえず、今の要領でゆっくり剣を振ってみるか)

剣士(そうすりゃ飛ぶ斬撃の弱点が見えてくるかもしれないしな)

剣士(……多分見えないだろうけど)

剣士「そーっと……」ユル…

斬撃「…………」

剣士「うわっ! なんだこれ!?」

剣士(斬撃を飛ばす振り方でゆっくり剣を振ったら――)

剣士(斬撃が出来上がって、しかも止まったままになってる! どうなってんだこれ!?)

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:53:33 ID:BjbV0PBs
斬撃「よう!」

剣士「わっ!?」

剣士(斬撃が……しゃべった!?)

剣士「お前、いったいなんなんだ!?」

斬撃「オレか? オレは斬撃さ」

剣士「えぇと……魔物なのか? それとも召喚獣みたいなもんなのか?」

斬撃「どっちでもない。斬撃“そのもの”さ」

剣士(もうなにがなんだか……)

18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:56:23 ID:BjbV0PBs
斬撃「しっかし驚いたよ」

斬撃「まさか、オレを出す境地にまで達する人間が現れるとはねえ」

剣士「お前を出す境地……?」

斬撃「オレを出すには、いわゆる斬撃を飛ばさない剣技を限界まで鍛え」

斬撃「なおかつ、斬撃を生み出す剣の振りをゆっくりと行う必要がある」

斬撃「こんな条件満たせるような酔狂な奴、いるとは思わなかったよ」

剣士「はぁ……」

剣士(ようするに、早いうちから斬撃を飛ばす技を覚えて)

剣士(それに頼りきりになってる奴には絶対出せないってことか)

19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 22:59:14 ID:BjbV0PBs
斬撃「さて! オレを出したからにはもうアンタに敵う剣士はいないだろうよ!」

斬撃「オレはどんなものだって斬れるし、射程も無限、頭だって冴えてるからな」

斬撃「アンタもだいぶ苦労しただろ? だが、やっと報われる時がきたんだ!」

剣士「せっかくだけど……そうもいかないんだ」

斬撃「どうして?」

剣士「実は俺、斬撃を飛ばす戦術を否定しちまってるんだよ。あんなのは邪道だってな」

剣士「だから、お前を使ってやるわけにはいかないんだ」

斬撃「なるほど……」

20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 23:07:33 ID:BjbV0PBs
剣士「……すまないな」

剣士「だけどお前を出せたことで、逆に決心がついた」

剣士「俺はこれからも斬撃を飛ばさずにやっていくよ」

剣士「そう遠くないうちに、飛ぶ斬撃にやられちまうだろうけどさ」

斬撃「…………」

斬撃「アンタいいねえ……その頑固さ、気に入っちまったよ」

斬撃「オレは意地でもアンタの力になってやりたくなった!」

剣士「え、だけど……」

斬撃「ようはオレを飛ばさなきゃいいんだろ? だったら――」

21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 23:09:56 ID:BjbV0PBs
……

……

……



<闘技場>

ワァァァ…… ワァァァ……

実況『ベテランと若手の有望株の一戦! 勝つのはどっちだ!?』

解説『新旧世代の代表同士の一戦です。勝敗が読めませんな』



剣士「…………」

若手剣士(このおっさん、たしか斬撃を飛ばす技は使わないって宣言してたはずだ)

若手剣士(だったら……この距離から一方的に切り刻んでやるぜ!)ニヤ…

22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 23:12:58 ID:BjbV0PBs
審判「始めっ!」バッ



若手剣士「今日で引退させてやるぜ、おっさん!」サッ



剣士「斬撃っ! ――俺を投げろっ!」

斬撃「オーケー!」ヒョイッ



斬撃が剣士を持ち上げる。

23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 23:16:03 ID:BjbV0PBs
斬撃「だりゃっ!」ブンッ



剣士「うおおおおおっ!」ギュンッ

若手剣士「うわぁぁぁっ!?」



ザシュッ!



若手剣士「うげっ……!」

若手剣士「ま、まさか……斬撃が、剣士を飛ばすなんて……」ドサッ

24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/01/25(月) 23:25:51 ID:BjbV0PBs
剣士「俺の勝利だ!」ジャキーン

斬撃「やったな!」



ワァァァ…… ワァァァ……



実況『みごとです! 剣士がベテランの風格を見せつけ、圧勝いたしました!』

解説『昨今の飛ぶ斬撃偏重の剣技を堂々と否定する、王道な剣術を見せてくれましたな』







                                   ― 完 ―