2: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 07:08:17.30 ID:Q8kB+RM9O

執務室


曙「突然呼び出して何の用よクソ提督」

提督「…………」

曙「…………」

提督「…………」ジィー

曙「……何の用もないなら戻るけど」

提督「冷たい!!!」

曙「は?」

引用元: 提督「あけぼのちゃんはツンドラ」 

 

3: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 07:11:58.18 ID:Q8kB+RM9O

提督「反応や言葉遣いや目線やなにやらに至るまで諸々が冷たい! 冷たいぞあけぼのちゃんよ!」

曙「そこまで冷たく感じるのならいっそ凍死してしまえば苦しまずに済むんじゃない?」

提督「一理ある」

曙「なら有言実行、Let's凍死」

提督「冷たい!!!」

4: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 07:20:58.46 ID:Q8kB+RM9O

提督「俺ね、こないだ用事でよその司令部に行ったんだけどさ、そこにも曙がいたんですよ」

曙「"曙"を司令部に置いとく物好きが他にもいるなんてね」

提督「でもそこの曙はウチのあけぼのちゃんと違ってたんですよ……!」

曙「どの辺が? まつげ? 目付きならどの曙よりも悪い自信があるわよ」

提督「そこの曙と提督の間ではハートフルウォーミングなやり取りが交わされていたんですよ!!」

曙「ハートフルウォーミング」

提督「そこの提督がそこの曙の頭を撫でてたら顔真っ赤にして人前で何やってんのよクソ提督! って言ってた」

曙「それをハートフルウォーミングというアンタの感性を疑う」

提督「あけぼのちゃんだったら、俺が頭撫でたらどうする?」

曙「撫でられる前に鳩尾に一撃」

提督「知ってる、これまで十回くらいやられてるし」

曙「訊く意味とは」

5: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 07:26:37.57 ID:Q8kB+RM9O

曙「至極真っ当な反応だと思うけど? 親しくもない男に頭なんて触らせないでしょう、普通」

提督「百理あるけど過剰防衛だと思うんだ?」

曙「仕方ない、これからはビンタで妥協してやるわ」

提督「精神へのダメージが強くなりそう」

曙「ビンタされた時にありがとうございますって言えば良いんじゃない? そういう業界もあるって漣から聞いたわ」

提督「天才かよ」

提督「でもあけぼのちゃんに変なこと吹き込んだ漣には今度お仕置きしよう」

6: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 07:32:33.56 ID:Q8kB+RM9O

提督「というか本題はそこじゃないんだよワトソン君」

曙「アンタがホームズとか笑わせるわ」

提督「心を抉るツッコミはやめて」

提督「じゃなくてさ、あけぼのちゃんは他の曙と比べて明らかに人への接し方やツッコミ、言動が冷たいって言いたいんですよ!」

曙「風当たり強くしてるのはアンタに対してだけなんだけど。 他の子達にまでそう強く当たるわけないじゃない」

提督「衝撃の事実」

7: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 07:38:49.82 ID:Q8kB+RM9O

提督「衝撃の事実はいいとして……せめて他の曙みたく柔らかくなったりしないのかなあと……いや、この冷凍庫に入れっぱなしの剣山みたいなあけぼのちゃんもいいんですけど」

曙「身体は柔らかい方よ」

提督「じゃなくて」

曙「分かってる分かってる。 でも性格なんて変えようがないじゃない?」

提督「その通りではあるんだけどもなあ」

曙「他の曙みたいに、ねえ。 他の曙のことでよく耳にする言葉があるんだけど……なんだっけ、一昔前に流行ったとかいう」

提督「ツンデr」

曙「ツンドラ?」

提督「ツンドラ」

8: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 07:46:35.80 ID:9/piGk3O0

提督「ツンドラなのはあけぼのちゃんだけだと思います」

曙「そうかしら」

提督「でもノリはいいよね」

曙「まあね、でないとアンタの話なんか聞かず一発鳩尾にぶち込んで帰ってるかも」

提督「ノリ良くて本当良かった」

曙「でもベタベタ引っ付かれるのは嫌いだから」

提督「ノリだけに?」

曙「物理的なツッコミを入れるターンかしら」

提督「余計なこと言ってごめんなさい」

9: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 07:54:53.72 ID:9/piGk3O0

提督「しかしあけぼのちゃんがツンドラであることが発覚した以上打開策を練らねばならない」

曙「別に何もしなくていいと思うけど。 というか何かされるのは面倒」

提督「だって折角だし仲良くしたいじゃん? 同じ釜の飯を食う上官と部下の関係じゃん?」

曙「なんだかんだで突き放してたのにへこたれないことだけは素直に凄いわ」

提督「なのであけぼのちゃん氷解大作戦を今後実施していきます」

曙「意味がわからないんだけど」

提督「あけぼのちゃんに対して様々なアプローチをかけることでツンドラぼのやんを別の属性に書き換えようという魂胆よ!」

曙「それ本人に言ったら駄目な奴じゃないの?」

提督「とりあえず今日は何にも考えてないから安心していいよ、明日から覚悟しな!」

曙「明日には忘れといたげるから普通に仕事しろ」

10: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 08:02:09.00 ID:9/piGk3O0

第七駆逐隊の部屋


漣「お、ぼのちゃんお帰りウィッシュ! ご主人様の呼び出しって何だったの?」

曙「身にも為にもならない話だったわ」

漣「ふーん……その割にはなんかさ」

曙「何?」

漣「前途多難マジヤベって顔してる」

曙「……明日からが思いやられる」

漣「マジでなんの話しとったん……?」



曙「そうだ、アンタその内お仕置きされるかもよ」

漣「なんでや!漣ちゃんなんもしとらんやろ!」

19: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 21:28:42.77 ID:9/piGk3O0

翌日——


曙「すう……」

漣「インド人を右に……ムニャ……」

潮「すー……」

目覚まし時計『ピッ、ピッ、ピッ、』5:59

目覚まし時計『ピッ』6:00

目覚まし時計『ナカチャンダヨー!! ナカチャンダヨー!! ナカチャンダヨー!! ナカチャンダヨー!!』

朧「えいっ」ポチー

目覚まし時計『ナカチャ』

曙「んん……」

潮「ふわあ……」

漣「うう……今日もまた那珂ちゃんに起こされてしまった」

朧「あ、みんなおはよう」

潮「おはよう、ございます……」

漣「おあよ、那珂ちゃん時計もおあよー」

曙「目覚ましにコレ使うのどうにかなんないの?」

朧「一応貰ったものだし……それに、なんだかんだでコレが一番効果あるから」

漣「那珂ちゃんの音声内臓目覚まし時計……使ってるの朧ちんくらいだよね」

曙「目覚ましよか早く起きてちゃ世話ないけどね」

20: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 21:58:50.30 ID:c+gCc501O

潮「朧ちゃんもう着替えてる、ランニング?」

朧「日課だからね、朝食までには戻るから」

潮「うん、いってらっしゃい」

漣「ほほほ、若い子は元気ですのう」

曙「アンタも一緒に走ればボケ防止になるんじゃない?」

漣「HEY!まだまだ漣はピチピチだぜ!」

朧「それじゃいってきま」ドアガチャ

朧「ひぃいいいいい!?」

潮「ええっ!?」

漣「ちょ、何ご」

提督「」ピ~ヒャラ~

漣「と……!?」

漣(キ、キタキタ……提督……)

21: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 22:50:01.74 ID:9/piGk3O0

曙「フッ」

漣(朧ちんが腰を抜かし、潮ちゃんが訳が分からずあわあわしている中、ぼのやんはご主人の懐に潜り込み、その行動の早さは正に電光石火)

提督「!? 早——」

曙「破ァ!」テツザンコー

提督「どゅふん!」ドガァァ

曙「フン」

朧「あれ、よく見たら提督……あれ? いいのコレ?」

曙「あー、私が始末つけとくからアンタはランニングでもなんでも行きな、ホラ」

朧「え? うん……」

<ナンノサワギー?
<タオレテンノダレ?

提督「あいだだだ……」

曙「お仕置き」

提督「えっ」

曙「昨日言った業界の話、なんだったっけ? ごちそうさまでした? とりあえず今言えてなかったし一発」

提督「ちょ、ちょっと待って色々状況が違」

曙「Let's try!!」ビターン

提督「ごちそうさまでしたァ!!」


潮「ええと、ええと」

漣「なんだこれ」


22: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 23:25:55.87 ID:9/piGk3O0

食堂


提督「全身のあちこちが痛い」

曙「自業自得を体現してるわよね」

提督「くそう、元凶に言われても言い返せねえ!」

曙「この場合の元凶はアンタじゃないの?」

漣「ていうか朝っぱから何してんですかご主人様、鎮守府外だったら事案通り越して音速で通報から猥褻物陳列罪で現行犯逮捕の黄金コンボですよ」

提督「腰ミノの下に海パンはいてたからセーフ」

漣「アウトなんだよなあ」

提督「ちなみにブーメランパンツ」

漣「聞いてねえし」

提督「それはそれとして、アレはあけぼのちゃん氷解大作戦の一環なんだよ」

漣「なんぞそれ」

曙「なんか私がツンドラ?だからって違う何かに変えていくつもりみたいよ」

漣「ああ、なるへそ。 ぼのやん完全に氷属性だもんね」

潮「あの、ツンドラって気候ですよね……?」

漣「潮ちゃんは分からなくていいよ、純粋なままの君でいて」

朧「言わんとするところは分かりますけど……それがどうしてアレに繋がるんですか」

提督「朧はどうして遠巻きなのかな」

朧「暗がりの中、真顔であんな格好して気持ち悪くくねらせた蛇のようなポーズをしていた人に対していつも通り接しろと言う方が無理だから」

漣「無理もない」

23: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 23:41:07.67 ID:9/piGk3O0

提督「まあ、氷解と言っても具体的にどうしたもんかってわけで」

提督「そこでシンプルに笑わせる方向性で行ってみようかと」

漣「アレじゃ恐怖体験だっつーに」

曙「方向性はともかく行動が正気じゃない」

朧「正直提督のこと人間として軽蔑しそうにはなりました、というかしてます」

提督「Oh、ツンドラが感染していく」

曙「でも私、元々そんなに笑わない方なのよね、そのやり方は無理があると思うけど」

漣「そうかな?」

曙「えっ」

漣「まあぼのやんが言うなら、ぼのやんの中ではそうなんだろうね」

曙「ちょっと待って、私そう言われるほど笑ってる?」

漣「さあにー」

提督「なるほど、方向性は間違っていないみたいだな。 別のアプローチも考えつつ攻め込んでみるか」

朧「あの格好はなしでお願いします」

潮「みんな食べないんですか? 冷めちゃいますよ?」

24: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/07(土) 23:52:48.35 ID:9/piGk3O0

曙「そう言えばクソ提督、気になってたんだけど」

提督「なんじゃらほい」

曙「今朝はどうして食堂で食べてるの? 普段は毎週ごとに変わる秘書艦がアンタの食事用意するんでしょ?」

漣「えっ」

潮「えっ」

朧(たくあん美味しい)

提督「おう、そうなんだけどな。 どうやらその秘書艦がそのことを忘れてるみたいで」

曙「愛想尽かされたんじゃない? 今朝の不審者めいた姿見られてさ」

提督「いや、単に忘れてるだけらしい」

曙「? どうしてそんなことが……」

潮「えっと、曙ちゃん」

漣「今週の秘書艦はぼのやんだぜ……?」

曙「…………」

曙「マジで?」

漣「マジでジマ」

潮「昨日、提督がダーツで決めてたよね?」

曙「う、そう言えば」

27: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/08(日) 00:04:41.60 ID:tS/2UY3B0

曙「その、言い訳するのも悪いけど今朝の衝撃が大き過ぎて完全に忘れてた。 ゴメン」

提督「あんま気にしてないよ、こっちでも時々食べるし、大勢の方が楽しいからな」

曙「ならいいや」

提督「貴重なしおらしさが!!」

漣「何激レアシーン逃してんですかご主人様ァ!! もうちょい鬼になって引っ張りゃええものをなー!!」

曙「やかましい」

提督「はい」
漣「はい」

潮「曙ちゃん、お母さんみたい」

曙「手のかかる子供の面倒見るのも大変よ」

提督「ママー! おやつ買ってー!」

漣「お母さーん! 漣にはモバコインカード買ってー!」

曙「調子に乗るな」

提督「育児放棄だ」

漣「ネグレクトやで」

曙「あ……? ちょっと待って」

漣「何? 買ってくれちゃうの?」

曙「違うから」

29: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/08(日) 00:15:43.13 ID:tS/2UY3B0

曙「私さ、今週秘書艦当番なのよね」

漣「せやで」

潮「大変だと思うけど、頑張って!」

曙「今週ってことは今週中よね」

潮「……? うん」

曙「秘書艦ってさ、常にってわけではないにせよ長い時間はクソ提督と共に過ごす訳よね」

提督「まあ、そうなるな」

曙「…………」

曙「今週ずっとこのテンションに付き合わされるの……!?」ゾッ

潮「が、頑張って……」

漣「強く生きてください」

提督「かくしてあけぼのちゃん氷解大作戦の舵が切られたのであった!」

曙「氷解し過ぎて悪辣なまでに辛辣になっても知らないから」

提督「サバンナぼのやんか」

漣「お前それサバンナでも同じこと言えんの?」

曙「今すぐサバンナに送りつけてやろうかなコイツ」

漣「視線がめっちゃツンドラだわ」


朧「ごちそうさまでした」パチンッ

36: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/08(日) 23:27:28.72 ID:gjx+5e0xO

執務室


提督「さて仕事をしてもらうわけなんだけど」

曙「なんだけど」

提督「あけぼのちゃんは今日何か他に予定は?」

曙「午前中いっぱいは講義があるわね、悪いけどそっち優先させてもらうから」

提督「そうか、元々そっち優先させるつもりだったけどな」

曙「ところで秘書艦って具体的に何すればいいのよ? アンタの普段の仕事自体よく知らないのよね」

提督「ん? そうだな、片時も俺のそばから離れることなく寄り添い尽くし、そして人目のつかないところでムフフな」

曙「マジメにやれ」

提督「はい」

提督「でも俺に着いてきてもらうことは変わらないかな。 普段の業務の補佐なんかをしてもらうくらいだ」

曙「その普段の業務が訊きたいんだけど」

提督「日によるからな……大淀さんの眼鏡拭いたりお偉いさんの靴舐めたり」

曙「アンタの舌に靴磨きを塗り込めばいいのね」

提督「比喩! 比喩だから! 流石にこんな露骨なことしちゃいないけど!」

提督「あ、あとご飯楽しみにしてます。 あけぼのちゃんの手料理!」

曙「めんどくさいからなんか買って食べといて」

提督「そんな倦怠期の妻みたいな冷たさまで見せなくても」

37: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/08(日) 23:56:00.01 ID:tS/2UY3B0

曙「茶番はここまでにして、私は行ってくるから」

提督「はい、いってらっしゃい。 なんか歳の離れた妹が学校に行くのを見送る気分だなあ」

曙「アンタが血縁者なんて御免こうむる」ドアガチャ

提督「反抗期っぽい」

提督「…………」

提督「さて……今曙が出て行ったドアの裏。 いるんだろう、漣?」

漣「気付かれてましたか」カサカサ

提督「いると思ってなかったってかなんちゅう現れ方してんだお前」

漣「比叡さんリスペクト」

提督「どういうことなの……」

38: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 00:09:47.01 ID:vfQwRPhc0

漣「それはそれとして、わざわざ呼んだってことは何か用ですかご主人様?」

提督「皆まで言わずとも分かるだろう?」

漣「このやり取りも含めて様式美という奴ですよ」

提督「なんか違う気がする」

提督「まあいいや、呼んだのは他でもない、あけぼのちゃん氷解大作戦についてのことだ」

漣「知ってた」

提督「自ら様式美を台無しにしていくスタイル」

漣「常識に囚われちゃあいけませんぜ」

漣「もち、大作戦には協力させてもらいますよ」

提督「乗り気だな。 激レアとかどうとか言ってたから乗ってくるかなと思っていたが」

漣「そりゃあね? 初めて会った頃と比べたら随分マシになったけど、あの氷結鉄仮面を剥いでみたいよね?」

提督「当初はツンドラどころか絶対零度だったよな」

漣「うっぜーな近寄んじゃねーよって感じのバリア張ってたし」

漣「でも性根はいい子だったんだろね」

提督「駆逐艦"曙"あるあるだな」

39: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 00:34:34.35 ID:vfQwRPhc0

漣「でも昔のことなんざどーでもいーんですよ!」

漣「あの抜けてるところもあるけど基本冷静で感情の振り幅が小さい彼奴の腹筋か涙腺か表情筋をブレイクしてやりたいっつーだけやねん!!」

提督「お、おう、落ち着け」

漣「なんやねんあの鉄仮面!! 鉄面皮!!」

提督「落ち着けっちゅうねん」デコピーン

漣「いでっ、ハァ……こないだね、漣らの部屋に黒きGが出たんですよ」

提督「G? ああ」

漣「潮ちゃんは全身鳥肌立てて朧ちんの後ろに隠れて、朧ちんはハエ叩き持ってぼのやんの裏に隠れまして。 ちなみに漣はベッドの上で威嚇してました」

漣「で、案の定あの鉄仮面ぼのやんは全く動じずに『こんなんたかが虫一匹じゃない、普段から化け物相手にしてんのに何ビビってんのよ』、なんて余裕かましてたんですよ」

漣「そして殺虫剤を持ってGに吹きかけた瞬間ね、Gが急にぼのやんの顔面目掛けて飛んだんですよ。 ていうか顔面着地してた」

提督「うわぁおっかねえ。 それで、あけぼのちゃんはどうなったんだよ」

漣「流石に取り乱すかと思ったんだけど……全く動きやしなかったのよ」

提督「なんだと」

漣「Gはそのまま逃げてっちゃったけどさ、それでも動かないからあれー? と思って呼び掛けたりしたのよ」

漣「そんで気付いたんだけど、フリーズしてたのよあの子」

提督「声をあげるでもなく慌てふためくでもなく思考停止及び遮断とは……Gですら敵わないのか」

漣「引き分けみたいなもんだけどね」

40: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 00:46:48.82 ID:vfQwRPhc0

漣「で、要はぼのやんが笑い転げたり慌てふためいたり感動の渦に包まれるためなら漣はなんでも考えますよということなのです! 実行犯はご主人様!」

提督「俺のと趣旨が微妙に違ってかお前は何もしないのかよ!」

漣「ブレーンは必要でしょ?」

提督「策を練るのも仕事な俺に対する挑発か何か?」

漣「まあまあそう言わずに旦那様」

提督「時代劇か」

漣「あーれーってする? したいならいいですよこのケダモノ」

提督「上げたいのか落としたいのかどっちなんだよ」

漣「まあそんなわけでシクヨロ! なんかあったら呼んでクレメンス!」

提督「呼んどいてなんだけど呼ばなくてもよかったかもしれない」


提督「ところで漣、お前講義受けないの?」

漣「……漣は将来プロゲーマーで食っていきますし」

提督「やめとけ」

47: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 21:52:00.36 ID:vfQwRPhc0

正午過ぎ


曙「戻ったわよ」ドアガチャ

ラジカセ『恋ーは、スリル、ショック、サースペンス』

提督「」パラッ パラッ

ラジカセ『見えーない力たよーりに』

提督「」パラッ パラッ

ラジカセ『ここーろの扉閉ざさーずに、強くー強くー』

提督「」パラッ パラッ

曙「昼食、買ってきたのここに置いとくから」

提督「ゴミを見るような目すらせずにスルーしないで」

48: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 22:01:42.55 ID:vfQwRPhc0

提督「定番ネタすら通用しないとはやはりぼのやん城の牙城を崩すのは容易ではないな」

曙「アレのどこがどう定番なのか」

提督「漣なら速攻吹き出すか一緒に踊りだすかしてくれるもんかと」

曙「同じ綾波型だからっても、ツボは違うし知識も同じなわけないでしょ」

提督「一理ある」

曙「分かったらとっとと食べて仕事しなさいな」

提督「そしてやっぱり買い弁なんですね」

曙「有言実行よ」

提督「まあ先週よりは遥かにマシなんだけど。 ところで何買ってきたの?」

曙「パスタ。 私のはカルボナーラでクソ提督のは明太子」

提督「パスタ! なんか女子っぽい!」

曙「サラダもあるわよ」

提督「女子だー!!」

曙「アンタの中の女子って何?」

50: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 22:11:07.46 ID:vfQwRPhc0

曙「ん? 先週よりは、って言った?」

提督「おう、言ったな」

曙「先週の秘書艦の手料理か買ってきたのがよっぽど酷かったってこと? 誰だったっけ」

提督「ながもん」

曙「ながもん」

曙「ながもん……じゃない、長門が料理してる姿はちょっとイメージ出来ないわね」

提督「本人はやる気だったんだよ、やる気勢だった。 自信満々だった」

提督「料理とか苦手そうなイメージがあったからな、意外に思いつつも期待してたんだよ。 初日の朝の前の晩までは」

曙「当日ですらない」

提督「料理は生まれてこの方したことがないが、このビッグセブンに不可能はないさ、なんて言われたらそりゃあね?」

曙「ここまで包丁を任せられないビッグセブンもそうはいないわ」

51: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 22:29:37.05 ID:vfQwRPhc0

提督「ながもんの意のままに任せたら俺の胃袋が大惨事大戦の危機を迎えると思った俺は、ながもんにリクエストを出したんだ」

提督「そうしておけば人参丸々一本のサラダとか、鱗も取らない三枚下ろしにもなってないアジフライとかみたいのは出ないだろう、とな」

曙「防衛線が分厚過ぎない? まあ賢明な判断だろうけど」

曙「ところで何をリクエストしたのかしら」

提督「豆腐とワカメの味噌汁、白米、納豆とシンプルに収めた」

曙「具材まで指定したのね、どこまで警戒していたのやら」

提督「正直やり過ぎだとは思ったさ、料理したことがないからって壊滅的なことになるのはマンガやアニメくらいなもんなハズだしな」

曙「ハズだしな、ということは」

提督「見事に期待通りだったよ」

提督「何故か甘い味噌汁の中には半分乾燥したままのワカメ、豆腐は原型をとどめていなかった」

提督「白米はやる気、もとい力を入れ過ぎて研ぎ過ぎたのかなんかもう凄い粒」

提督「納豆もさ……いや、納豆は失敗しようがないけど、失敗じゃないんだけど……出てきた時は市販のパックの納豆だったんだけど……」

提督「私が混ぜてやろう! とながもんが意気揚々とやる気勢らしく混ぜ始め、パックがすっぽ抜けて納豆の半分くらいが床に落ちた」

曙「なんというか、うん」

曙「ドンマイ」


54: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 22:58:45.68 ID:vfQwRPhc0

提督「ながもんも納豆を含め、想像以上の出来に気を落としていたよ」

提督「予防線のためとはいえ、リクエストをした手前俺も責めることは出来なかったしな」

曙「流石に味音痴ではないのね……いや、甘い味噌汁ってなんなの、白味噌?」

提督「味噌辛かったから、砂糖と蜂蜜を入れたんだと」

曙「味見しろと」

提督「で、朝食ですらコレだから以降が思いやられてな。 流石に昼は外食にしたよ」

提督「でも夜は逃げ切れませんでした、朝の雪辱を晴らさせてくれとか言って来られちゃって」

曙「女としての矜持……いや、ビッグセブン的な矜持なのかしらね」

提督「朝食とは逆に、何が食べたいかって訊かれたからここもシンプルにカレーを作ってもらうように頼んだんだ」

曙「アンタ毎週カレー食べてるって聞いたけど」

提督「作る人によって味が違うのが楽しいからな、加賀じゃないけどここは譲れない」

提督「でも正直このチョイスは失敗した。 余程じゃなければ融通無碍なカレーだけど、だからこそダメだった」

曙「なんとなく察しはつくわね」

55: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 23:08:03.35 ID:vfQwRPhc0

提督「ながもん曰くの試製ビッグセブンカレーは俺の中にあったカレーという概念を大らかにしてくれたよ」

提督「人がカレーだと思ったもの、それがカレーなんだって」

曙「あ、話さなくてもいいわよ。 パスタが不味くなるかもしれないし」

提督「安心せい、こんなことこそ言ったがちゃんと食えたものだったよ」

提督「しかしな……」

曙「わざわざ溜めることなの?」

提督「どちゃくそ甘かった」

曙「どちゃくそ」

提督「どちゃくそ」

59: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 23:25:36.14 ID:vfQwRPhc0

提督「朝のこともあって無知は無恥ではなく恥である、とかなんとかということで料理、というかカレーについては調べたらしくてな」

提督「それでまあ出てきたのがどちゃくそ甘口なビッグセブンカレーでした」

曙「暁なら喜んで食べそうよね」

提督「俺は辛口派だったから違和感もビッグセブン級だったよ」

提督「具材も違和感が壮絶だったよ、なんせフツーのカレーだったら入ってそうなタマネギ、人参、じゃがいもが入ってねえの」

曙「なんか嫌な予感が」

提督「カボチャ、リンゴ、パイナップル、マンゴーが主な具材でした」

曙「甘っ」

提督「更にここでも蜂蜜先輩が登場」

曙「100エーカーの森のクマさんもビックリ」

提督「そして何故か入っているトンカツ」

曙「なんでそこで足柄成分が入るのよ」

提督「カレーと言えば足柄だろうと言うことで話を訊いたんだってさ……」

提督「いやまあ甘いカレーも別にいいか、フルーツカレーとかあるかもしれんしね、と表面に見えた具材だけで判断したんだけどさ」

提督「イチゴジャムとか練乳とかまで入れてくれてたらしいのよね」

曙「正直料理に関しては長門のこと馬鹿にしそうだわ」

60: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 23:40:42.04 ID:vfQwRPhc0

曙「というか明らかに食べれたもんじゃないわよねそれ、アンタ食べれたものだったって言ったじゃない」

提督「胃に収まれば全て同じなのです……」

曙「ダメだコイツ、甘味で脳と胃袋がやられてしまったのね」

提督「いやもうさ、食べれることに感謝しちゃうよね」

曙「ところでその馬鹿甘カレーを作った張本人はどうだったのよ」

提督「改良の余地があるな、って言ってた」

曙「改善でしょうが」

提督「で、ここで思い出して欲しいのがこの時の夕食はまだながもんの秘書当番初日の出来事ってこと」

曙「一寸先が混沌」

提督「正直胃が持たないと思った、だから明日以降は俺が作るって言おうと思ったよ」

曙「アンタなんかが料理出来るの?」

提督「料理ってのは時間とレシピさえあれば誰にだって作れるのさ」

提督「でもさあ……面と向かってお前料理の腕壊滅的だから作るのやめてとか言えないだろ?」

曙「多少はオブラートに包めばいいのに」

提督「お前が言うか」

提督「それにな……ながもんてば楽しそうに調理してるんだよ……」

提督「初めてって言ってたしな……それもあってか失敗も含めていい顔してたよ」

提督「俺には……あの顔を曇らせることが出来なかった」

曙「……つまり」

提督「俺は胃袋にこう言ってやったよ」

提督「共に逝こうぜ……業火が渦巻く地獄の果てまでよ……! ってな」

曙「道理で先週ずっと顔色が悪かったわけね」

提督「気付いてたのなら胃薬くらいくれ」

曙「なんでアンタの心配しなきゃいけないわけ?」

提督「そういうことアッサリ言えちゃうぼのやん凄え」

62: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/09(月) 23:59:49.24 ID:vfQwRPhc0

提督「というわけで今の俺提督にとってはこの愛情の欠片もない明太パスタでもお茶漬けのようにホッとする食べ物なのです」

曙「アンタにくれてやる愛情もないからね、募金した方がマシよ」

提督「俺に愛情募金してくれてもいいんだよ?」

曙「カルボナーラに入ってたベーコン一欠片あげる」

提督「わーいぼくベーコンだいすきー」

曙「ところで、長門の料理の腕が馬鹿なんだったら陸奥が黙ってなかったんじゃないの?」

提督「ああうん、初日以降はむっちゃんが手伝うからーってキッチンに入ろうとしたんだけどさ」

提督「ここは私に任された戦場だ! ってながもんが譲らなくてむっちゃん追い出されてた」

曙「矜持って面倒ね」

提督「むっちゃんさえいれば煮込みハンバーグ(しかし半生)ラーメンなんて食べなくて済んだのに」

曙「素人の創作料理の危険度を身を以て知れて良かったわね」

提督「いくない」

63: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 00:15:29.75 ID:OXd0gK9s0

提督「まあそんなわけでごちそうさまでした」

曙「お粗末様」

提督「ところでお母さん、晩御飯は決めてるの?」

曙「その辺で弁当でも買ってこようかしら」

提督「作れよ……」

曙「だって面倒くさいじゃない」

提督「流石に今まで俺の食事を全部店で買ったもので済ませた奴なんて……あ、いたわ」

曙「いるんだ? 誰?」

提督「漣」

曙「よりにもよってアンタか、漣」

提督「経費で落とすからって出前ばっか取ってた」

曙「人の財布に対して遠慮なさ過ぎでしょ」

提督「もちろん通らなかったから俺の財布が薄くなったよ」

曙「ドンマイ」

64: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 00:25:58.84 ID:OXd0gK9s0

提督「でもなんであけぼのちゃん料理作ってくれないんですか? お高いの?」

曙「旧帝国海軍の酸素魚雷3本分くらいの値段があるわ」

提督「バリ高え」

曙「手作り料理なんて愛情表現の定番もいいところじゃない、私の愛情はアンタの安月給で買えるほどお安くないのよ」

提督「とかなんとか言っちゃってさー、実は料理出来ないからって逃げてるだけなんじゃないの?」

曙「バレたか」

提督「チョロいぜ」

提督「って思わず台詞間違えたじゃんよ!? マジで!?」

曙「そこまで言うのならやってやろうじゃないのよ、なんてこともなく私も料理はしたことがないの。 だからしない、それだけよ」

提督「うっそだろお前……ぼのやん料理が出来て当たり前みたいなキャラクターしてるのに出来ないのか……」

曙「鮮血にまみれたカレーが食べたいならそうするけど」

提督「こえーよ、スプラッタだよ」

65: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 00:37:18.22 ID:OXd0gK9s0

提督「ってーかそれ単にぶきっちょってんだよ、さっき言ったけどレシピさえありゃあな」

曙「チッ、適当に嘘をついても諦めないか、しつこいなあ」

提督「嘘なのかよ」

曙「面倒なのは本当だけど。 そもそも秘書艦てだけでどうしてアンタの食事の面倒まで看なきゃいけないのよ」

提督「これまで誰1人として疑問に思っていなかったというのに!」

曙「というかアンタ料理出来るんでしょ? だったら自分で作ればいいじゃない」

提督「ぐっ、言い返せねえ!」

曙「いっそのこと私の分も作れば完璧でしょ」

提督「天才かよ」

提督「だが断らせてもらおう! こーなったら意地でもぼのやんの手料理食べてやるからな!」

曙「作らないって言ってんでしょうに」

74: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 17:31:48.85 ID:OXd0gK9s0

提督「片付けも済んだところで」

曙「そうね」

提督「昼寝しよう」

曙「仕事しろ」

提督「あけぼのちゃんが代わりに仕事しといて」

曙「逆、私が昼寝するからアンタが仕事するの」

提督「秘書艦の言うことじゃないよソレ」

曙「そういう常識に囚われている限りアンタは万年少尉よ」

提督「一応もっと上なんだけどな? これでもまあまあ偉いんですよ?」

曙「所詮、佐世鎮支部の中のクソ提督よ」

提督「否定は出来ない」

75: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 17:45:37.39 ID:OXd0gK9s0

曙「茶番は程々にして、と」

提督「茶番で既に傷付いてる俺の心はスルーなのね」

曙「結局私は何をしたらいいのかしらね。 アンタのしてることがよく分からないから補佐のしようもない」

提督「仕事がないわけじゃないんだけど、出撃任務が立て込んでいない限りは結構暇なんだよね、暇ってことは平和ってことだからいいんだけどさー」

曙「本営からは任務の連絡来てるみたいだけど? 補給線の破壊とか潜水艦の殲滅とか」

提督「だりい」

曙「おい」

提督「冗談、後で適当に見繕って南西方面にでも出てもらうよ。 あの辺は深海棲艦の補給艦の目撃情報が多いからな」

曙「大規模ってわけでもないのね。 OK、見繕うのは私がやっとくわ」

提督「そう? なら任せちゃおうか」

曙「任された」

76: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 17:55:06.67 ID:OXd0gK9s0

曙「ん……何これ、漁船の護衛依頼? 本営からじゃなくて民間からの依頼?」

提督「ああ、良くあるんだよそういうの」

提督「俺の管轄の部隊はさ、ここの近海警備ばっかやってるからかな、市民の皆様的には割と身近な存在らしいんだよね」

提督「海でグラビアの撮影するから警備お願いしますとか、海水浴のシーズンだからーとか、ね」

曙「へーえ。 意外とマメなことしてんのね」

提督「まあお陰で遠方の海域に艦隊を繰り出せる権限こそあれども持ち腐れ状態だよ。 平和っていいね」

曙「気が緩んでるところを敵機動部隊に爆撃とかされなきゃいいわね」

提督「怖いこと言うなよ……夜トイレ行けなくなっちゃうだろ」

曙「怪談じゃないっての」

77: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 18:25:43.75 ID:OXd0gK9s0

提督「ま、近所付き合いは良くしといて悪いことはない。 年端も行かぬ女の子達を戦わせるなんてどういう了見だ! みたいな団体も存在してるくらいだからなあ。 少しでも世間様の目を良くしとかないと」

曙「フン、アンタらに心配してもらう程私らはヤワじゃないってんのよ、そんな綺麗事を言うだけで世界が救われるわけないでしょうが、馬鹿な話よねえ?」

提督「お、おう」

曙「大体私達が戦う事を無理強いされてると思ったら大間違いよ、徴兵制だなんて時代錯誤なこともないしこっちゃなろうと思って艦娘になってんのよ、自分らの勝手な正義に酔って出てきたような言葉に貸す耳も道理も義務もありゃしないっての! これだから自分で相手の事を考えて作り出した像だけで決め付けて話を進める有象無象の馬鹿は嫌いなのよ!! なぁにが艦娘人権保護団体よ! 初めっから人権持ってるつーのバーカ!!」

提督「あ、あの、曙さん落ち着いて」

曙「なんでもかんでも私のせいにしやがったクソ共全員ドラム缶に詰め込んで東京湾に沈めてやるう!!」

提督「もう死んでる! もう大体死んでるから!」

曙「ゼェ、ゼェ、ハー……」

曙「…………」

提督「落ち着いた……?」

曙「ごめん、なんか変なスイッチ入った」

提督「そんなこともあるさ。 しかしぼのやんでも声を荒げることあるのね……」

曙「理不尽なのは、嫌いだからね。 前世のせいかもだけど……」

提督「正しく感情の振れ幅が氷解した瞬間でもあったけどな……俺が望むのとは違うから、ノーカンかな」

曙「そう」

曙「でもカウントしといた方がいいんじゃない? 私がアンタに対してラブラブハートキャッチウォーミングなんてことは望めないわよ?」

提督「ぼのちゃんがデレるかデレないかなんだ、やってみる価値はありますぜ」

提督「ていうかよくそんなこっぱずかしいこと言えるな、聞いてる方が恥ずかしいぜそれ」

曙「ラブラブハートキャッチウォーミング特盛り、今ならなんと定価の4割増しで10兆円」

提督「愛が金額的に重い」

78: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 18:37:53.35 ID:OXd0gK9s0

提督「ていうか仕事しよう」

曙「まったく、誰かのせいで仕事が進まないんだから」

提督「鏡ならそこに置いてあるよ」

曙「やだどうしよう、鏡の向こうに性犯罪者が泣いて土下座するレベルの男がいる」

提督「美少女がいる、とかじゃなくてそっちかよ、俺が泣くよ?」

曙「まあ仕事上の理由で女子に囲まれる男なんて見たら、普通の性犯罪者だったら羨ましくて更生しそうよね」

提督「性犯罪者じゃなくっても羨ましいと感じると思うけどなあ」

曙「アンタはどうなの? 毎日毎日女子に囲まれて戯れて」

提督「ん? 毎日が楽しくはあるよ」

曙「楽しい、だけ? 女子と戯れたいが為に提督になろうと猛勉強する人もいなくはないって話だけど」

提督「うーん、そういう気持ちがなかったわけでもないが、別に結婚相手とかを探しに来たわけでもないしなー」

曙「結婚て」

提督「それに、いざ提督やってみるとそんな目で艦娘をあんまり見ないんだよね、友達のような同僚のような、妹のような娘のような」

曙「なるほど、同性愛者だったと」

提督「今証明してやろうかぼのやんよ」

曙「きゃーたすけてーおかされるー」

79: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 18:52:04.56 ID:OXd0gK9s0

提督「ていうか仕事しよう?」

曙「アンタが話を逸らさなければいいのよ」

提督「ぼのやんも悪乗りしてるじゃねーか」

曙「出来ない上官を持つとダメになるわね」

提督「はい! もういいから! とりあえず南西方面の補給線破壊する艦隊組むから適当に召集して! そこにマイクあるから!」

曙「はいはい」

曙『えー、マイクチェック、1、2。 よし、こんにちは、私霧島です。 なんて言われなくたって声聞いたら分かるわよってツッコミたい曙よ』

提督「ぼのやん霧島になんか恨みでもあるの? 可哀想だからやめたげてよ」

曙『クソ提督がやかましいので手短かに。 でっちー、イムヤ、ろーちゃんの3名は急速に執務室まで出頭されたし。 以上』ブツッ

提督「誰1人として正式名で呼んでねえ!」

曙「分かればいいのよ、分かれば」

提督「ところでなんであの3人なん?」

曙「なんか最近暇そうだったし。 それに補給艦をちょっと叩くくらいならそんな大艦隊にしなくてもいいでしょ? 何か文句でも?」

提督「いや……なんか、よく分からないんだけどとてつもなく罪悪感のようなものを感じる編成だな、と……」

80: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 19:12:35.06 ID:OXd0gK9s0

曙「で、この後は?」

提督「とりあえず3人が来てから任務の説明と作戦会議、資料は……必要あるかなあ、うーん」

曙「呼ぶ前に作るべきだったわね、とりあえずちゃっちゃとそれなりのを作ればいいんでしょ? パソコン借りるわよ」

提督「なんだこのぼのやん有能だぞ」

曙「他司令部の偵察機の情報によると南西方面は特に目立った異変は見られないとの事だし、特筆事項はないが緊張を持って臨めってくらいかな」

曙「まあ行かせるならオリョールの方でしょ、資源の入手も望めて一石二鳥ね」

提督「ねえなんでこの子有能なの? 秘書艦やるの初めてなんだよね?」

曙「はい印刷完了、簡素だけどこんなもんでいいでしょ?」

提督「もうずっと秘書艦やってくれよ……」

曙「やなこった」

<ゴーヤハデッチージャナイデチー!!

曙「あ、来たわね」

提督「みたいだな、不満は垂れてるが」

提督「それじゃ作戦会議でもしますかね」

87: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/10(火) 23:33:39.10 ID:OXd0gK9s0

夕暮れ————


曙「…………」モクモク

扉<コンコン

曙「ん、どーぞ」

漣「ちょりーす」ドアガチャ

曙「妖怪遠慮知らず、と潮か。 なんか用? クソ提督ならいないわよ」

潮「曙ちゃん、お疲れ様」

漣「なんやねんその呼び方……」

曙「聞いたわよ、アンタ秘書艦やった時料理作らずに出前ばっか取ったんだって?」

漣「経費で落ちるんだしいいじゃん? じゃんじゃん?」

曙「落ちたのはアイツの財布の中身だったそうよ」

漣「マジで」

曙「大マジ」

漣「ご主人様からはなーんも言われなかったんだけど……」

潮「さ、漣ちゃんそれはちょっと……」

曙「半端に優しくするとつけあがるからザックリ切り捨てちゃって」

漣「潮ちゃんに言わせるんかい、ぼのやんはなんも言わんの?」

曙「見限った」

漣「つらい」

潮「ご飯はちゃんと、自分で作らないとダメだと思う……ます!」

漣「そっちかい!」

曙(あ、これ自分の首絞めたかも)

88: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 00:01:29.13 ID:eSEzeZEXO

漣「そーだ、ぼのやんはお昼何食べたん? ってーか何作ったん?」

曙「」

潮「あ、私も少し気になるかな」

曙「ところでアンタらは何しに来たの? 冷やかしならお断りよ」

漣「へーいご名答、クリスタル漣ちゃんあげちゃう」

潮「訓練も済んだし、近海の定期哨戒も終わって、時間が空いたから曙ちゃん頑張ってるかな、って様子見に来たんだけど……邪魔しちゃったかな」

曙「あーいや、資料に目を通してただけだから、うん」

漣「なんじゃこら、目を通してただけって量じゃないでしょ」

曙「まあね、先週の秘書艦……長門が先週末まで手を付けていた仕事の引き継ぎ?をしてるだけよ」

潮「こんなにたくさん……長門さんって秘書艦としても凄いんだ……」

曙(料理の方はからきしだけど)

漣「アイドルによる艦娘のイメージアップ政策……訓練の効率化……限界突破改装の促進……」

漣「なんか思ってたのと違うような仕事が多いんだねえ……」

曙「資料の大半はクソ提督が会議に出た時に配布されたものだって聞いてるけどね。 長門がしてるのって空いた箇所に走り書きしてるくらいじゃない?」

潮「あ、ケッコンカッコカリという名称は如何なものかって書いてある」

漣「長門さんや、アイドルはアイドルでも那珂ちゃんのことじゃないでよ……」

曙「ポンコツなとこばかり引き抜かないでやんなさいよ」

89: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 00:13:04.28 ID:Hrace1lm0

漣「ところでぼのやん、めっちゃフツーに話逸らしたね」

曙「は? なんのこと?」

漣「ここまで白々しいと逆に潔いね」

潮「? 曙ちゃんが何を?」

漣「チッチッ、誤魔化されちゃあいかんぜ潮ちゃんや」

漣「ぼのやんがご主人様に何を振る舞ったかをまだ聞いてないではあぁりませんか!」

曙「チッ」

漣「うっわ凄え嫌そうな顔」

潮「ああ、そういえば。 曙ちゃん、何作ったの?」

曙「………………パスタ」

漣「スゥパゲットウィ!! オサレ!! 勿論歯応えはアルデンテ!! でもアルデンテって何?」

潮「へえ、パスタかあ。 いいなあ」

曙「…………違う」

潮「え」

漣「おん?」

曙「作っては、ない、買ってきたやつ」

潮「」

漣「」

曙「……サラダも買った」

潮「」

漣「」

90: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 00:20:44.31 ID:Hrace1lm0

漣「ぼのやんよ」

曙「何か?」

漣「いや何かじゃないっしょあーた、漣にゃ遠慮知らずの汚名着せといて自分はそれかい」

曙「ハッ、妖怪料理無精でもなんでも呼ぶがいいわ」

漣「開き直るこっちゃねーぜ戦国武将さんや」

潮「ほ、ほら、曙ちゃんは講義があったから……時間がなかったんだよね? うん」

曙「良いわよ、自分に言い聞かせなくても」

潮「この後のお夕食はちゃんと作るんだよね?」

曙「いや、作らないけど……」

潮「」

漣「マジかよ」

91: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 00:31:55.85 ID:Hrace1lm0

潮「曙ちゃん」

曙「な、何?」

潮「提督のこと……嫌いなの?」

漣「突然ぶっこんできたね!?」

曙「前提が破綻し過ぎでしょ……」

潮「だって……頑なに作らないって言うんだったらそれしか思い付かなくて」

曙「好き嫌いの話ではないでしょ……アレのことはそんな風に考えたこともないわよ」

漣「おや? つまり考えるまでもなくいて当然的な?」

曙「装備ひん剥いてサーモン沖に放り出してやろうか」

漣「焦ってるところが尚更怪しいのう、フヘヘ」

曙「決め付けないでよ……別に、好きなんかじゃない。 寧ろちょっと嫌いな方だし。 漣並にウザいし」

潮「そ、そうなんだ……」

漣「ねえそれって間接的に漣のことも嫌いって言ってません? ねえ?」

92: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 00:44:22.05 ID:Hrace1lm0

曙「……だけど」

漣「お?」

潮「だけど……?」

曙「…………」

曙「……借りを作りたくない」

漣「……借り?」

潮「借り……ですか?」

曙「そーよ、だってアイツ料理作れるらしいのよ? だったら自分で作りなさいよってなるじゃない?」

漣「え、おっおう」

潮「確かにそれはそうかも……」

曙「でしょう? 自分で作れるというのに作らないなんて甘えもいいところだわ、だから戒めも込めて最大限に手ぇ抜いてやってんのよ」

漣「う、うーん?」

曙「私は今週のアイツの食事当番みたいなもんだからね、1週間テキトーなもんばかり食べさせられて誰かに作ってもらえる幸せと喜びを感じいるがいいわ」

潮「曙ちゃんはそれでいいの……?」

曙「勿論よ、私が腕を奮ってやる義理もないし? 普段ふざけてばかりだからやり返す良い機会よ」

漣「いや、ぼのやん結構激しいツッコミとかいれてるじゃん? 今朝とか今朝とか」

曙「アレは正当防衛だから」

93: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 01:00:54.52 ID:Hrace1lm0

潮「でも……後悔、しない?」

曙「後悔? するわけないでしょそんなもん」

潮「分からないよ、今は平和でも明日はそうじゃないかもしれないんだから」

漣「潮ちゃん、話が重いぞい」

潮「あまり言いたくないけど、私達の、艦娘の命は他の人達よりもずっと脆いものだよ、明日は来ないかもしれない程に」

曙「こら潮、どこまで沈む気よアンタ」

潮「提督だってそう、例え無事過ごせたとしても私達が退役したらもう赤の他人。 特に私達、駆逐艦娘は一緒に過ごせる時間がそう長くはないんだから」

曙「どうしよう、引っ込みつかなくなってるんだけど」

漣「落ち着けぼのやん、こうなったら漣達で軌道修正を」

潮「真面目に聞いてっ!!」

曙「ハイッ!?」

漣「ひゃいっ!?」

漣(心底ビビった)

曙(制御効かなくなってるわね、コレ)

94: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 01:22:07.83 ID:Hrace1lm0

潮「心の中で思ってるだけじゃ何も伝わらない、想うだけじゃ自己満足で終わっちゃう」

潮「そして、それを伝えられないまま終わったらきっと後悔する。 私は大好きな友達にそんな風に感じて欲しくない」

漣(潮ちゃん、過去に何があったんじゃよ……めっちゃ重いよ……)

潮「ねえ曙ちゃん、よく考えてみて。 提督に対して何か……大切な想いはないの?」

曙「…………いやあのさ、私が料理を作るか否かって話がなんでここまで」

潮「話を逸らさないで」

漣(逸らしてんのは潮ちゃんやで……って言っても聞く耳持たなさそうだよねえ)

漣(ぼのやん、なんとかしてクレメンス……重い空気で真空パックにされそう)

曙「はあ……潮の言い分も分かるけど、悪いとも思うけどやっぱり後悔とかはないかな」

潮「…………」

漣(あ、プリン食べたくなってきた)

曙「アンタの思う程、私は情に厚くないし、クソ提督に思い入れもないから」

潮「……本当に?」

曙「本当」

潮「……そう、分かった……お仕事頑張ってね」ガチャッ


漣「……おおう」

曙「なんか、気まずい終わり方よね……」

漣「ぼのやん、嘘でもなんでも潮ちゃん喜ばせといた方が良かったんじゃ……」

曙「それは悪手でしょ、とりあえず漣は潮のとこ行ってあげて」

漣「うぃっす……大丈夫、だよね? 朧ちんは自主トレしてるけど、部屋戻ったら気まずい空気でどうしたのコレとか勘弁だよ」

曙「単なる喧嘩なら良かったんだけどね……思想の違い、小さな宗教戦争みたいなものだから、いや本当どうしよう?」

漣「知らんよ……そんじゃま、行ってくる」ガチャッ

95: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 01:33:04.81 ID:Hrace1lm0

曙「…………」

曙「……思ってるだけじゃ何も伝わらない」

曙「百も承知よ」

曙「いやでも何も思うことがない相手に何を伝えろってのよ……無理難題でしょ……」

提督「何をブツクサ言ってんだ?」ドアガチャ

曙「うわわ、いきなり入ってくんじゃないわよ」

提督「俺の部屋だし……ところで、潮が今にも崩壊しそうな顔してたんだが、何かあったか?」

曙「えー、あー、いやその」

曙「……カップ麺作ってくる」

提督「まだちょっと早くないか?」

曙「私のやけ食い、悪いけど付き合え」

提督「顔むくむよ……?」

103: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 16:54:32.92 ID:Hrace1lm0

夜・第七駆逐隊の部屋——


曙「…………」

漣「…………」

朧「…………」

潮『…………』

曙「あの、潮のベッドの上の布団の塊は何」

潮『布団です』

曙「布団が喋った」

潮『私のことはいないと思って気にしないでください』

朧「私が戻った時には既にこうなってたんだけど」

漣「右に同じだったりする、あの後すぐコレやねん」

潮『私はただの布団です』

漣「ところでほのやん、仕事は?」

曙「クソ提督によく分からないけど潮がキレた話をしたら、よく分からんけど話し合ったら?って早上がりさせられた」

漣「よく分からん会話しとんね」

104: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 17:25:50.35 ID:Hrace1lm0

朧「漣から大体話は聞いたけど……曙も大概頑固だよね、料理くらい作ってあげたらいいじゃん」

曙「えええ」

朧「そんな露骨に嫌な顔する程嫌なの?」

曙「嫌って言うか、理由がないじゃないのよ、アイツにわざわざ作ってやる理由が」

漣「料理当番だからってだけでいいじゃんね」

曙「出前オンリーで済ませたアンタが言うか」

漣「それは言うでない」

朧「そこまで意固地になって反抗してると逆に何かありそうって周りに勘繰られるんじゃ」

曙「う、それはそれで嫌ね」

朧「特別な感情が無いなら無いで、料理当番になったから作った、くらいドライな方が私らの知る曙らしいよ」

曙「それは、そうなんだけど」

曙(愛情だのどうのだのとかクソ提督が言うからそういう意識を拭い切れない、それに)

105: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 17:44:14.86 ID:Hrace1lm0

潮『心がこもってない料理なんてダメです』

朧「わっ」

漣「布団が喋った」

曙「……コレがいるのよねえ」

漣「いないものとして扱えって言ったやん……」

潮『私は布団です』

曙「…………」

漣「ぼのやん今めんどくせえって思ったっしょ」

曙「え、まあ流石に少しは」

曙「ところでさ、私としては潮がここまで拗れた理由が分からないんだけど」

潮『私は布団です』

漣「割と唐突だったしねえ、漣もそー思ってこの妖怪フートンに訊いてみたんだよ。 もしかして昔に何かあったりした?って」

曙「それで、何かあったの?」

漣「いやなーんも。 別にそんな感じのトラウマはないし家庭環境も特に問題ナッスィングだって」

曙「えっ」

漣「それ以上は口割ってくれなかったけど、推察はしてみた」

漣「ウチら艦娘って一応はいつ死ぬとも知れぬ身の上じゃん? 他の鎮守府での訃報を聞かない月はないしねー」

漣「まあこんな危うい日常を過ごして行く内に潮ちゃんの中でそういう考えが芽生えたのかなーって。 アレだよ、御涙頂戴なドキュメンタリー見て影響を受けるよーな感じ?」

曙「なんか、余計めんどくさくなったわね」

漣「言っちゃえばただの自論だもんね。 もっとザックリ言うと同意してもらえなくて駄々こねてるだけ。 こんな子供っぽいところあったんだねえ」

曙「私以上にどストレートなアンタに少し恐怖を覚える」

107: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 18:02:16.99 ID:Hrace1lm0

漣「でも漣的に言わせてもらえば、今回はぼのやんサイドにも問題がある」

曙「うぐ、私のだってワガママではあるしね」

漣「ちっ、がぁう!!」

曙「おおう!?」

漣「いや違わねーけど!? つべこべ言ってねーで作れよぼのやんってのも確かにありますけど!? そうじゃねんですよボノエッティ!」

曙「もはや誰それ」

漣「あーたね! 潮ちゃんにあんだけどうこう言われて押し付けられてどー思ったよ!」

曙「え? 潮の言うこともまあ分からなくもないけど、って」

漣「それやねん!!」

曙「えー」

漣「何理解示しちゃっとんねん!! 『は? 何自分の考え押し付けてくれてんのよ、誰もがアンタと同じ思考回路なわけないでしょ常識考えなさいよ』くらい言ってしまえばええねん!!」

朧「今の凄い曙っぽかった」

曙「自分が喋ってるのかと錯覚したわ」

潮『布団もそう思います』

漣「モノマネ大会しとんのとちゃうわ!!」

108: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 18:22:19.73 ID:Hrace1lm0

曙「いやでもさ、流石にそんな辛辣にはなれないでしょ……友達なんだし」

漣「なんでそんな思いやりがあるねん! だからファッションツンドラなんよ!!」

曙「ファッションツンドラて」

漣「ぼのやんは口悪いけどさー! 気遣い利くしホントに人が傷付くようなことまではしないしなんかもう色々!なんなの! すっごく良い子か! こんなんデースデース言ってばっかの金剛さんなんかかないっこねーよ!!」

朧「おーい、夜なんだしもう少し声量落として」

漣「どーせ夜戦大好き馬鹿さんが騒いでるでしょ!! ぼのやんがいっそ絶対零度時代のように近付いただけで凍傷になりそうだったらさー! 潮ちゃんもそこまで押し付けがましくはなかったと思うんすよ!! こえーし!」

曙「私そんなにだったっけ……」

朧「私は知らないんだよね」

漣「でーもさー! 今は優しいやん! ええ子やん! 理解示してくれるやん! 全然怒らねーじゃん! 甘えちゃうよね!? なんか大体暴走とかしても許してくれそうじゃん!? なんでやねん! 同年代やろが!」

曙「これ貶されてんの? 褒められてんの?」

潮『布団には分かりません』

漣「なんかもー半端に大人やねん! もっと自分を出してけよ!! そんなぼのやんが大好き漣15歳でーーーーす!!!」

ドアガチャ

叢雲「…………」

漣「」

曙(マジでキレる5秒前の顔)

朧(ああ、吹雪型の部屋近いから……)

潮『…………?』

潮「どうしたの漣……あ、叢雲ちゃん」カオダシ

叢雲「……これ以上騒いだら沈めるわよ」

漣「ウィッス」

バタン

漣「イキテルッテスバラシイ」

110: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 18:35:27.11 ID:Hrace1lm0

曙「一度感情が振り切れると暴走するのは綾波型、というか私らの特徴か何か?」

朧「さあ……個人個人の問題だと思うけど」

漣「うん、流石に騒ぎ過ぎた。 許してヒヤシンス」

曙「球根を装填して主砲で撃ってやろうか」

漣「そんな……求婚を装填するだなんて……」

曙「テンション落ち着いた途端うざったくなったわね、こっち来んな」

漣「にゃはは、これくらいがちょーどいいってことで」

漣「でもさ、ぼのやんももうちょい素を
出して……本心を見せてってよ」

曙「は? これ以上ないくらい素を曝け出してると思うんだけど」

漣「いやまあそうだと思うけど、そうなんだけど何かまだ隠してるというか……遠慮してるというか?」

曙「何よそれ」

漣「よく分かんないけどそう感じるんだよねー、漣ちゃんの第六感でも目覚めちゃったのかな?」

曙「手を使わずにスプーン曲げるくらいしてから言いなさいよ」

漣「主砲ぶっぱすれば確1」

曙「それは違う」

111: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 18:52:23.42 ID:Hrace1lm0

漣「まあ未来の超能力者様なんかよりもさ、先にそっちの生首女と話したげなよ」

曙「ん」

潮「あっ」

曙「……えーと」

潮「…………」スゴスゴ

潮『私は布団です』

漣「オイコラ」

朧「かたつむりみたい」

曙「……私はさ、怒ってるとか許さないとかじゃないからどうしようもないんだけど……顔出してよ潮」

潮『私は怒ってます、ぷんすか』

曙「うー…」

漣「頑固さだったらぼのやんとタメ張れるなあ……いや、これまで漣が騒いでただけで実は何も解決してないんだけどね」

朧「本当だよね、何がしたかったの?」

漣「やめて、朧ちんのナチュラルトーンは一番心に刺さるからホンマやめて」

112: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 19:17:55.36 ID:Hrace1lm0

曙「流石にこのままじゃ平行線なんだけど……ねえ潮」

潮『話をしたって平行線じゃないですか』

曙「そんな子供みたいな理屈こねてないでさあ」

潮『どうせ私は子供です、曙ちゃんみたいにはなれません』

曙「本格的にめんどくさいな……」

漣「ぼのやんが匙を投げたらダメやで……」

潮『……だけどこのままじゃダメなのは分かってる、だから私許します』

曙「……潮」

漣「おお!? なんか大逆転ktkr!?」

潮『だけど、条件として曙ちゃんは提督にちゃんと料理を作ってあげてください』

曙「え、それはやだ」

潮『』

漣「」

朧「」

曙「……あれ」

漣「台無しだぜボーニィッ……!」

115: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 19:38:26.74 ID:Hrace1lm0

潮『……分かりました』

曙「あれ」

漣「あれ、じゃねーじゃろがこのっ……なんや! 天然か! 天然ツンドラか何かか! おばかー!」

朧「また叢雲が来るよ」

漣「コワイ」

曙「そう言われたって……」

潮『曙ちゃんが愛を知らぬと言うのなら』

曙「あ?」

漣「おん?

朧「何か始まった」

潮『私が!』バサー

潮「愛を教える伝道師となりましょう!!」

漣「どうしてそうなった!?」

曙「開いた口が塞がらないってのはこの事よね」

潮「考えを押し付けるのではなく、教え説くことが必要なのだと私は気付かされました」

潮「だけど私はまだ未熟者、だから金剛さんや浦風ちゃん、雷ちゃん達に話を訊きそこから学んだことを曙ちゃんに伝えます!」

潮「ゆくゆくは曙ちゃんが彼女達のように愛の化身のごとく……!」

曙「やめてそれだけはやめてマジで」

潮「そういうわけで曙ちゃんは第一歩として提督にちゃんと料理を作りましょう!!」

曙「だからそれは」

潮「返事はハイしか聞きませんっ!!」

曙「えええええ」

潮「そうやって逃げているからダメなんだよ曙ちゃん! ただ考えて、思って理解するだけじゃなくて、実際に行動して理解することが必要なんだから!!」

曙「そうかもしれないけどってかまた押し付けてるわよアンタ」

漣「あの、そこで叢雲様がスタンばってるから、あの潮ちゃん、ああもうダメだこれ漣は知らないもう寝る」

朧「潮、曙、おやすみ」

121: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 23:31:12.54 ID:Hrace1lm0

翌朝・執務室——


曙「そんなわけで今朝は愛の欠片も無いトーストを焼いてやったわ」

提督「愛以外の話が重い」

曙「バターでもこんもり塗りたくろうか?」

提督「胃まで重くしにかかるのはやめて」

曙「しかし潮には驚いたわ、ああまで我が強いとこっちが妥協するしかないじゃない」

提督「あけぼのちゃんも充分我が強いと思いますけどねえ……」

曙「そうかしら」

提督「それにしても、流石にトーストだけじゃ腹減らない?」

曙「減るわね、しかしこれ以上譲歩するわけには……」

提督「何がぼのやんをそこまで意固地にさせるのか」

提督「まあいいや、ちょいと待ってな」

122: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 23:39:09.39 ID:Hrace1lm0

提督「ヘイお待ち、ベーコンエッグだ」

曙「2品揃うだけで朝食っぽくなったわね」

提督「牛乳もあるでよ」

曙「……コーヒーじゃないの? そっちの方がなんか、らしいと思うけど」

提督「馬鹿野郎! 朝は牛乳でしょうがぼのやん! 身長伸びませんよ!」

曙「別に身長伸ばしたいわけじゃないし」

提督「それに俺、カフェオレは飲むけどコーヒーはあんま飲まないんだよ」

曙「子供舌」

提督「お黙りっ」

提督「まあいい、冷めない内に食べよう」

曙「そうね、いただき……て、アンタ何してんの? トーストにベーコンエッグ乗せて」

提督「こーして折り畳んで食うのが美味いの」

曙「食べ方までなんか子供っぽい」

提督「子供っぽいことを平気でするのが大人の特権なんですぅー!」

126: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 23:48:54.40 ID:Hrace1lm0

曙「ご馳走様」

提督「お粗末さん。 しかし俺に作るのは嫌でも、俺が作ったものを食べるのはいいんだな」

曙「食べ物に罪はないし。 粗末にだってしたくないしね」

提督「その言い方だと俺がギルティに聞こえるんだけどな?」

曙「数十人もの女子を侍らせてることはギルティじゃなくて?」

提督「言い方に悪意しかない」

提督「しかし逆に考えよう、俺の手料理を食べるのは別にいいと言うのはこれはあけぼのちゃんの胃袋をキャッチ出来るということなのでは?」

曙「よし、吐き戻してくる」

提督「冗談! 冗談だから!」

曙「アンタ私を氷解させたいのか氷河期にさせたいのかどっちなのよ」

提督「そんな恥ずかしいこと……言えないよっ」

曙「全力で気持ち悪い」

提督「流石に今のはご先祖様にも申し訳が立たないと自分でも思った」

曙「未来永劫同じことをしないと誓って」

127: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/11(水) 23:56:32.11 ID:Hrace1lm0

曙「で、今日の仕事は? 今日は講義も休みだし一応フルタイムで働けるけど」

提督「ない」

曙「ない」

提督「ない」

曙「……ない?」

提督「ないの」

曙「あんだけ書類あるのに?」

提督「上のクソジzお偉方が話を進めてくれないとこっちも進められないような案件が多いからな」

曙「アンタそこそこ偉いんじゃなかったっけ」

提督「発言力はないよ、なんか困ったらコイツんとこにやらせときゃーいーだろ的な便利役にしか思われちゃねーだろーし」

曙「出世欲とかないのね」

提督「今ぐらいが一番楽。 昔は所詮昔だ」

曙「それには同意する」

128: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 00:05:25.10 ID:vo1tOALk0

提督「……いや待った。 やっぱしよう、仕事」

曙「なんで? 無いんでしょ? 存分に生まれた空き時間を使って映画でも見させなさいよ」

提督「いいのかぼのやん、暇が出来ていいのか?」

曙「何、その思わせ振りな。 何があるっての?」

提督「さっき聞いたぼのやんの話からすると、何故か愛の伝道師に目覚めた潮が暇してるぼのやんに愛を布教しに来ると思うけど」

曙「さ、流石に潮でも時間とかはわきまえるでしょ……訓練とかだってあるんだし」

提督「いやあどうだろう、突拍子もないことを始めた奴は突拍子もなく行動するぞ……」

曙「うげえ、何かないの? 仕事」

提督「今考えてるから」

曙「……ん? でもアンタ的には私が潮の餌食になって洗脳された方がいいんじゃないの?」

提督「洗脳て……別に、俺はあけぼのちゃんの味方ってだけだぜ」

曙「はあ」

提督「でも困ってるのを見るのも楽しそう」

曙「アンタって一言多いわよね」

130: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 00:21:47.20 ID:vo1tOALk0

提督「……アレもダメ、コレもダメ」

曙「そんなに仕事思い付かないもんなの? というかどんだけ仕事ないのよ普段」

提督「ないっていうか、ぼのやんやってくれなさそうなのばかりだもん」

曙「言う前から諦めてんじゃないわよ」

提督「再来月発売する雑誌のグラビア撮影の企画、誰に出てもらうか決めてないんだけど出てくれんの?」

曙「出るわけないでしょ、ってかそんな仕事まであんの? あ、そういやあったな」

提督「便利屋呼ばわりは伊達じゃないぜ」

曙「私達ってなんなのかしらね」

提督「よろず屋ぼのちゃんでも始める?」

曙「即日廃業してやるわ」

131: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 00:36:22.63 ID:vo1tOALk0

提督「……うん、コレにしよう、俺が仕事と言えば仕事なんだ」

曙「やっと決まった? 数十分も部屋の中歩き回られててこっちは気が落ち着かなかったんだけど」

提督「というかよく潮来なかったな?」

曙「あんまり考えたくないけど話を訊いて回ってるのかも。 今日1日潮と遭遇しなかったとしても、部屋は同じだし……あー、頭が痛い」

提督「うん? そうなると別に仕事しなくてもいい?」

曙「いや、私が暇を持て余してるとなると1日中アンタの食事の時以外は潮に振り回されるのが目に見えてる」

提督「そこまでかよ……半分冗談で言ったのに」

曙「我の強い潮は知らないからどうなるか私にも分からないわ、それはいいからとにかく仕事、なんなの?」

提督「ん、ああ、食材の買い出し」

曙「買い出し」

提督「買い出し」

133: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 00:49:14.25 ID:vo1tOALk0

曙「それ仕事? 仕事じゃなくて雑用じゃないの?」

提督「俺が仕事って言い張れば仕事」

曙「でも食材って毎日届いてるでしょ? トラックか何かで」

提督「うん、だから買うのは俺のやつ。私用の食材」

曙「……アンタの」

提督「冷蔵庫の中身はもう卵と牛乳くらいしか残ってねーしな、先週ながもんにアレもコレもと使われちゃったから」

曙「ええと、つまり」

提督「言い換えればあけぼのちゃんに作ってもらう料理の材料を買いに行こうってお話でーす!」

曙「職権濫用じゃない」

提督「まあまあ、お固いことを言うでないよ」

提督「それに外出許可、は取るとしても休日以外で鎮守府外に出る機会ってあんましないだろ? 役得って言っときな」

曙「アンタと2人じゃあねえ。 行かないって選択肢も考えようかしら」

提督「HAHAHA、言ってくれるわ」

134: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 01:00:01.28 ID:vo1tOALk0

曙「……そういえばさ」

提督「ん?」

曙「艦娘に志願してここに来てから私、鎮守府の外に出たことなかったわ」

提督「マジで」

曙「うん」

曙「それどころか、鎮守府の外の街のこともよく知らなくて」

提督「Oh……」

曙「……なるほど、良い機会じゃない。 いいわ、行ったげる。 鎮守府外の空気を味わい尽くしてやるわ」

提督「あんま美味くないと思うよ、ってかメインは買い出しだからね? ね?」

曙「んなもんついでよ」

提督「ついで」

曙「さあ、さっさと準備しなさいよクソ提督。 私の前を阻む者は全て蹴散らしてやるわ!」

提督「キラキラしだしちゃってまあ……ま、目的は果たせそうだし良しとしようか」ボソリ


提督「あ、そうだ。 俺免許持ってないから歩きだよ」

曙「それじゃ帰りはタクシーね」

提督「容赦ねえな?」

145: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 17:29:42.93 ID:vo1tOALk0

鎮守府正門前——


提督「…………」

提督「ぼのやん遅え」

提督「女の準備は1時間とは言ったものだな」

曙「待たせたわね」テクテク

提督「悪びれもせずやってき」

曙「はいはい悪かった悪かった」

提督「」

曙「……何? 人のことジロジロ見ちゃって。 通報する?」

提督「いやその、買い出しに行くだけなのにめかし込んできたなと」

提督(ベージュのダッフルコートの下に白地のセーター、暗いベージュのスカートに黒タイツと来て茶色っぽいキャスケット。 全体的にセピアっぽい)

曙「あー? めかし込んだ、ってこんなん全然そんな内に入らないわよ、さっさと出なきゃいけないからパッと見て速攻で合わせただけ、即席麺より即席よ」

提督「はあ……にしたって気合い入ってるな」

曙「初めて街に繰り出すのよ、ならそれなりの見た目にはしないといけないに決まってんでしょうがこのトーヘンボク」

提督「トーヘンボクて」

曙「アンタこそ何よそれ、黒いコートに黒いスーツて」

提督「……私服置いてないの忘れてたの」

147: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 17:43:42.96 ID:vo1tOALk0

曙「あ、そういえば執務室空けてて大丈夫かしら」

提督「俺がいない間の業務はむっちゃんに一任するって普段から言ってあるしな。 ついでに執務室の扉にそう張り紙しといた」

曙「なんで陸奥?」

提督「ながもんよりはなんか安心して託せる。 面倒見もいいしなー」

曙「ふーん、信頼してんのね」

提督「ウチで信頼してない艦娘なんていないからな。 ながもんの料理の腕以外は」

曙「そうねー、私も実力はありますから」

提督「ちっ、揺るがねえな」

曙「そうアンタの思い通りになってやるもんですか」

提督「まあいつまでも立ち話するのもなんだ、行くとしよう」

曙「そうだ、街まで歩いてどのくらいなの?」

提督「大体30分くらい」

曙「うへえ」

提督「なので近くにタクシー呼んだから、来たらそれでひとっ飛びよ」

曙「あれ、帰りじゃなくて行きの時点でタクシー使うわけ?」

提督「時間も惜しいしな」

曙「はあ、せっかちなのね」

148: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 18:07:27.84 ID:vo1tOALk0

都会——


バタン ブロォォン…

提督「やー、文明の機器って素晴らしいもんだよなあ」

曙「」ボーゼン

提督「しかし、便利を知ってしまうとダメだな……免許取ろうかなあ、俺」

曙「」ボーゼン

提督「ところであけぼのちゃんはどうしたんですかね、ボケっとして」

曙「どこここ」

提督「街」

曙「高い建物がいっぱい」キョロキョロ

提督「都会だし」

曙「なんなのここー!?」

提督「だから都会やっちゅうねん、あんまり騒ぐと周りに注目されるぞ」

150: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 18:24:56.04 ID:vo1tOALk0

曙「ま、街ってこう、商店街みたいなの想像してたんだけど」

提督「いつもここまで買い出しに来てるからなあ俺」

提督「てかさ、ぼのやんはホントに都会とか来たことも見たこともないの?」

曙「うん」

提督「アメイジング……!」

曙「あっ! なんか建物にでっかいテレビがついてる!」

提督「電光掲示板だな」

曙「あっちにはよくわからない何かが!」

提督「よくわからないモニュメントだな」

曙「というか人がめっちゃ多い!!」

提督「都会だからな」

曙「変なカッコしてんのがいるー!」

提督「いやアレは都会特有のじゃないから無視していい」

曙「さっきのテレビで映画始まったー!?」

提督「CMだな……しかしここまでとはな」

提督「……あけぼのちゃんや、どうせならあちこち適当に歩き回ってみるか?」

曙「いいの!? そのつもりだったけど! よっしゃー! 行くわよー!」

提督「1人で突っ走ると迷子になるっちゅう……聞いちゃいねえ! 落ち着けぼのやん!」

152: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 18:37:53.88 ID:vo1tOALk0

曙「何あれ?」

提督「コンビニ。 いや、コンビニは知ってるだろ」

曙「見たことないとこだったから」


曙「ここは?」

提督「芸能プロダクション。 ウチの艦娘もたまーにグラビアの撮影でここ使ってる」

曙「へー」


曙「何あの車?」

提督「移動販売車……いや、販売移動車だっけ? まあそんなもん。 クレープねえ」

曙「チラッ」

提督「金持ってるだろ……?」


曙「何あの変わった船?」

提督「屋形船だな、あの中で宴会したりするらしいぜ」

曙「屋形船の艦娘……船娘とかいたりしないのかしらね」

提督「飛鷹型が大体そんなもんじゃないか?」

曙「あ、なんか塔が見える」

提督「なんたらツリーだな、行ったことないけど」


曙「おお、これは絶景ね。 なんたらツリーすごい」

提督「思い立ったらすぐ行動するんだもんな」

155: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 18:46:47.32 ID:vo1tOALk0

曙「なんか神殿みたいね、国会議事堂だっけ?」

提督「緊急時には変形して戦う国会議事堂ロボになるんだぜ」

曙「いや、流石にそれは」

提督「ふふふ、この世には知らなくてもいいことがいくつもあるんだぜ」


曙「さっきから同じコンビニばかり見る」

提督「都会あるある」


曙「何あのでっかいボウリングのピン」

提督「ゲームセンターだけど、いざとなったらアレ対空迎撃砲になるんだぜ」


曙「お腹すいた」

提督「もう昼過ぎだしな、どっか適当にファミレスでも行くか」

曙「高級フレンチ的なのがいい!!」

提督「真昼間からんなもん食べる馬鹿がいますか!!」

曙「いいじゃない! 都会の人間は毎日そうなんでしょ!!」

提督「日本人はみんな毎日寿司食ってる並の理論を展開するでない!!」

156: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 18:58:29.55 ID:vo1tOALk0

曙「結局ファミレス」

提督「文句言うんじゃない」

曙「財布の紐が硬い男は頭まで硬いのよ」

提督「いやだから君お金持っとるでしょうが」

曙「お財布にあんまり入ってなかったからさっきのクレープで限界よ」

提督「マジかよ……じゃあここ俺の奢りやん……」

提督「それはともかく、ぼのやんくらいの歳の子はハンバーガーとかホットドッグとかみたいなジャンクフードでも歩き食いしてる方が似合ってんの」

曙「偏見だー、差別だー、男尊女卑だー」

提督「何とでも言ってろい、ほらさっさと決めな」

曙「……何このボタン?」

提督「あー、それ押すと店員が来る」

曙「何? 電波でも出るの? 店員はロボットなの?」

提督「なわけないでしょ……俺は決めたけど、ぼのやんは?」

曙「ああ待って。 私が押す」ベー

店員「お待たせしました、ご注文をどうぞ」

曙「スペシャルハンバーググリルとフライドポテトとオニオンスープに日替わりサラダ、ドリンクバーと食後に特盛りスイーツパフェをお願いしまーす」

提督「少しでも遠慮したらどうかねぼのやん!! 君らホント他人の財布に容赦ねーな!?」

158: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 19:18:45.74 ID:vo1tOALk0

曙「むふぅ、満足満足」

提督「わーいさいふがかるくなったー」

曙「で、この後は? まだどっかあるの? 何かあるの?」

提督「何……あんだけ食べておいてまだどこかで買い食いでもするんですか……ていうか入るのかよ……」

曙「にひひ、買い食いが似合うって言ったのはアンタでしょ」

提督「チクショウ! 丸々と肥え太ってしまえ!」

曙「ちゃんと運動してますから大丈夫ですぅー」

提督「くそう……でもただ街を散策するのもな……あ、ここからなら動物園が近」

曙「動物園!!」

提督「いぃ!?」

曙「決まり! 動物園! さあ行くわよ!」

提督「即決かよ……そんなに動物園好きなの?」

曙「小学生の頃1度行ったきりなのよねー、ほらボサッとしてないでキビキビ歩く! というか走れ!」

提督「食後に激しい運動させるのは控えてください……」

166: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 23:23:58.39 ID:vo1tOALk0

動物園——


曙「意外と来客は多くないのね?」

提督「平日で昼間だからな。 連休や休日には家族連れがわんさか……というほどでもないか」

提督「遊園地だとか水族館だとか、行こうと思えば他にもあるからな」

曙「なんにせよ人数が少なければストレスフリーで臨めるわ、出撃よ!」

提督「君今んとこどこでも誰がいてもフリーダムですやん」


曙「キリン! きりん!」

提督「でけえもんだよなあ……ってのわー! ツバ吐いたー!?」


曙「ゾウよ! 鳴かないの!? 鳴かないの!? ねえ鳴かないの鳴かないの!?」

提督「ゾウに訊いてくれ」

曙「あっ鳴いた!」


提督「ゴリラだ」

曙「意外と短足」

提督「お前それジャングルでも同じこと言えんの?」

曙「でも結構可愛い顔してるわよね」

提督「マジで言ってる?」

168: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 23:41:24.38 ID:vo1tOALk0

曙「ハシビロコウ」

提督「目付きの悪さはぼのやんと引けを取らないよな」

曙「ハシビロコウの場合は顔の造形でそう見えてるだけなのよね、角度を変えて見てみると」

提督「こっちに角度合わせてきやがった」

曙「うわ、白目剥いて口開けた、こわっ」


曙「ニホンザルだ」

提督「個体差ありすぎて見るのも一苦労だよなあ」

曙「あ、あのサル休みの時の漣みたい」

提督「そんなのいるわけ、うーわマジだやる気ゼロのツラして死んだように倒れてんのは漣だ」

提督「お、アレなんかリンゴ丸かじりしてる雪風みたいじゃないか?」

曙「そんな限定的な雪風を見たことないんだけど何故かその情景が目に浮かぶ」

提督「で、あそこに風格漂わせて座ってるのは……」

曙「…………」

提督「…………」

曙「該当者がいないわ」

提督「うん」


提督「カバですよぼのやん」

曙「可愛いなー、でもキレたらライオンをも葬るって話はあまりにも有名よね」

提督「そこまで壮絶な話でしたっけ」

曙「あと汗がピンクなんだっけ」

提督「可愛いって言うならもう少し可愛い話題にしなよ……」

曙「えーと、カバの牙には小鳥が止まる?」

提督「俺の持ってる漫画を読んだな?」

170: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/12(木) 23:54:42.45 ID:vo1tOALk0

曙「ついにきたわ、パンダよパンダ」

提督「意外と落ち着いてる」

曙「初めこそ荒ぶったけど、テンション配分は考えてあるのよ。 本命はまだ残っているの」

提督「へー? まあいいや、今はパンダですよ」

曙「パンダって笹を殆ど消化出来ないのよね? その話知ってからパンダって進化を怠けた馬鹿なんじゃないの? って思うようになったわ」

提督「動物園のパンダが何食ってるかは分からんけど、そんなパンダ全体を貶すようなこと言わんでも」

曙「あそこのパンダ、笹食べてる」

提督「動物園サイドにも問題があるのかもしれない」

曙「あ、転がった。 可愛い」


曙「ペンギン! ペンギンよペンギン! こーてーぺんぎん!」

提督「ここが勝負どころ?」

曙「違うわよ、まだ準決勝。 でもコウテイペンギンの何考えてるか分からない顔超好き」

提督「それはなんか分かるな」

曙「見た目もTHE・ペンギンって感じだし!」

提督「雛も大人とのギャップがあるのが面白いところだよなあ」

曙「抱きしめたいなあ」

提督「あーなんかわかる、羽毛なのか表面ザラザラなのか知りたい」

曙「経費で買おうよ、コウテイペンギン」

提督「買えるか! 突然冷蔵庫にコウテイペンギンが入ってることでもお祈りしてなさい!」


提督「大体見終わったかな」

曙「まだよ、メインステージはこれからなんだから」

提督「おいおい、そんな1人で行くと迷子に、ん? ふれあい広場?」

171: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 00:05:04.15 ID:RTpzVwZC0

提督「うさぎだ」

曙「〜〜〜〜ッ!」

曙「ふぅ……」ガクッ

提督「おおうぼのやんどうした!?」

曙「ふ、ふふ」

提督「あの? 曙さん?」

曙「うさぎ」

提督「は?」

曙「うさぎうさぎうさぎうさぎうさぎ&うさぎぃ! うさぎよ! うさぎ超いっぱい! こんないっぱいいると思わなかった! きゃー!」

提督「あ、うん、そうだね」

曙「こっちおいでー! きゃーホントに来たー! かわいい! 悶え死にそう!」

提督「すげえ変わり様……あっこら裾を噛むな!」

曙「そーだ! 写メ撮って私に送ってよクソ提督!」

提督「ちょっ」

周りの客(クソ提督)

周りの客(クソ提督って言った)

周りの客(どういうプレイだよ)

提督(ああ! なんて痛い奴だって目線が痛い!)

曙「ほーら! 早く早くー!」

提督「……まあいいか!」ティロリーン

172: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 00:19:15.17 ID:RTpzVwZC0

曙「えっとーこれも買ってー」

提督「あ、あの、あけぼのちゃん」

曙「潮達にはそうね……あ、丁度良くアイツらの色っぽいうさぎぐるみがある! 値段はまあ……大丈夫ね」

提督「良くないよ! 良くないよね!? お土産買ってもいいとは言ったけど俺にも限度がありますよ!?」

曙「そーだ、昨日騒がせちゃったし叢雲にもなんか見繕ってあーげよ」

提督(オギャアアアアア!!)


店員「合計22,080円頂戴します」

提督「……オギャア」

提督(カードさん使うか……)

曙「んーと、ちょっと待って……」ゴソゴソ

曙「はい、3万で」

提督(諭吉が出てきただとぉ!?)

店員「7,920円お返ししますー、ありがとうございましたー」

曙「はー買った買った」

提督「ちょっと待ったあ!? 財布空っぽなんじゃなかったんかい!!」

曙「ん? 財布は見せた通り空っぽよ? でもポケットに手持ちのお金突っ込んでたの」

提督「」

曙「ふふん、残念でした。 こんな子供騙しに引っかかっちゃ世話ないわね」

提督「この小娘め……いいだろう、覚悟するがいい! ギャフンて言わせてやる!」

曙「今時そんなん言う奴いないって」

173: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 00:29:13.50 ID:RTpzVwZC0

高級レストラン——


曙「ぎゃふん」

提督「即堕ち漫画か何か?」

曙「無理もないでしょ……なんか、凄い、場違い感が」

提督「堂々としてれば様になるって」

曙「け、料理の値段の桁が、ひとつ多い気がするんだけど」

提督「ファミレス行った後だと無理もないな」

曙「アンタお金大丈夫なの……?」

提督「心配無用。 遠慮せず好きな物を頼むといい。 でも食べ過ぎははしたないぞ?」

提督(ぶっちゃけ見栄張ってるけどな)

曙「流石にそんなことしないわよ……」

曙「でも……うう、ここにいるだけで緊張してきた、緊張で味が分からなくなりそう……」

提督「肩の力抜きなって」

曙「ううう」

174: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 00:40:49.77 ID:RTpzVwZC0

曙「美味っしい! あはっ、同じハンバーグでも昼に食べたのと全然違う!」

提督「はは、また即堕ちしてら」

曙「はぁ……ほっぺたが落ちるって正にこの事よね……」ウットリ

提督「まあ安くてもそれなりの物は食えるけどさ、高いけど美味い物を食うのもいいだろう?」

曙「そうよねー、毎日は無理でも月に1度……半月に1度でもいいから食べたいくらいね」

提督「流石にそれは多過ぎだっての」

曙「いいじゃない、それくらい」

提督「よくないっちゅうに」

曙「……くふ、あははははは!」

提督「はは……やれやれだ」

175: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 00:55:00.17 ID:RTpzVwZC0

曙「……すっかり、夜ね」

提督「ああ、10時近いな」

曙「だけど街はこんなに明るい」

提督「そうだな、街が眠りを迎えるのはまだまだ先だ」

曙「眠らない街か……不思議な感じ」

提督「そうだな……なんだか異世界にいる気分だ」

曙「異世界?」

提督「俺達は普段、こうして鎮守府の外には出ないだろう? まあ休みの日には出てる奴もいるけどさ、鈴谷とか」

提督「だからこうして鎮守府って世界から抜け出して、ここにいることを不思議に思う。 ……けどいつか、いることを当たり前にしないとな」

曙「…………」

提督「ふ、柄にもないことを言ったな。 タクシーも来たし帰るとしようか。 あ、佐世保鎮守府関東第2支部までで」

曙「……そうね」

176: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 01:01:47.21 ID:EeQhgM3lO

ブロロォン…オォン…


提督「かぁーっ! 鎮守府見るとなんか安心するなあ」

曙「あー、すっごいよく分かる。 こっちから鎮守府見たことってなかったけど凄い安心感ね」

提督「でも明日からまた仕事ですよー、気を緩めた分しっかり引き締めねえとな」

曙「言われるまでもないわ、私はオンオフちゃんと出来るからね」

提督「頼もしい秘書艦様よ」

曙「でも雷みたく頼らせはしないわよ?」

提督「はっは、尚更頼もしいってもんだ」

提督「それじゃ今日はここまでだ。 荷物多いけど転ぶなよ?」

曙「大丈夫よ、艦娘の平衡感覚舐めないでよね」

提督「それもそうだな、それじゃおやすみあけぼのちゃん」

曙「おやすみ、クソ提督」

177: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 01:07:35.56 ID:RTpzVwZC0

曙「——と言ったものの、流石に重いわね、ぬいぐるみ5つは買い過ぎだったかな……」

叢雲「あれ? アンタ曙? 1日中どこに、ってかその格好、いやそれよりも」

曙「あ、叢雲! 丁度良かったわ、ハイこれ!」

叢雲「どわっ、何よコレ……うさぎ? ぬいぐるみ?」

曙「昨日騒がせたお詫び! それじゃーねー、ほっつき歩いてないで寝なさいよー!」

叢雲「……何あれ、曙?」

178: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 01:20:11.64 ID:RTpzVwZC0

第七駆逐隊の部屋——


曙「たっだいまー!」ドアガチャ

朧「曙!?」

潮「曙ちゃん!」

漣「ぼのやん! 今日1日どこに、って何その荷物、ってかカッコってか、ぼのやん……?」

曙「ゴメンごめん、とりあえずこれお土産! アンタらの!」

潮「お土産……? わ、うさぎのぬいぐるみだ」

朧「カニじゃないんだ……」

漣「うさぎだのカニだのはおいといてさ……ぼのやんどこ行ってたんよ? ぼのやんどころかご主人様もいないしさ、プチパニックだったんだよ? ぼのやんは無事っぽいけどさ」

朧「出掛けるから陸奥よろしくって置き手紙があるだけだったしね……というか提督は? 一緒じゃないの?」

曙「そんなことなってたの? ゴメンゴメン、クソ提督に付き合わされて街まで行ってたのよ、あー疲れたー!」

漣「ぼのやんが」

朧「提督と」

潮「街に……?」

179: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 01:33:06.43 ID:RTpzVwZC0

曙「そーそー、街中をぶらぶら歩いたりー、なんたらツリーに登ったりー、動物園行ったりー、レストランとかも、ふふ、色々付き合わされたなあ」

朧「」

潮「ええと」

曙「ん? ああ!?」

漣「な、なんじゃらほい」

曙「買い出しするの忘れてた……」

漣「買い出し……て」

曙「アイツのご飯用の食材……アイツも忘れてんじゃないわよ! もー!」

朧「」

潮「ええと、ええと、ええと」

漣「あー、あのさ、ぼのやん? 一言、いい?」

曙「? 何?」

漣「それ完全にデートじゃね?」

曙「え?」

曙「あ」

曙「」




曙「あ゛あ゛!?!!?」ドギャーン

183: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 01:49:46.47 ID:RTpzVwZC0

曙「あ、あ、あ、え」

漣「すげー、顔が赤くなるどころか青ざめていってる、ってか指摘されるまで気付かなかったのかよ」

潮「私が訊き集めた愛の秘伝書第1章は必要なさそうかな……」

朧「本当にやってたんだ、それ」

漣「にしても凄いなご主人様、ぼのやんめっちゃ嬉しそうな笑顔して帰ってきたし。 初めて見たよぼのやんの満面の笑み」

曙「え、嘘」

朧「本当。 微笑とか含み笑いくらいなら見たことあるけど、ああまで満たされたかのようなのは初めて見たかな」

潮「凄く自然だったし、曙ちゃんがこんな風に笑えるなんて思わなかったなあ……素敵だったよ」

曙「そんな、私いつから、アイツ黙ってたの……!?」

漣「言ったら意識しそーだしね……もしかしたら買い出しってのも嘘か、ぼのやんを連れ出す口実だったりして」

曙「なっ」

潮「策士……だね」

漣「ん、噂をしたらご主人様からメールが」

曙「何!?」

漣「件名、ぼのやん。 わ、超いい笑顔だぼのやん。 何ここ? うさぎカフェ?」

曙「わああああああ!? あの馬鹿何をうわあああああ!!」ドアガチャ-

叢雲「うわ、ビックリした……行っちゃったし」

漣「あや、叢雲様。 騒ぎの元凶は今行っちゃったぜよ」

叢雲「知ってるわよ……どうしたのアイツ? さっき会ったけど、あんな嬉しそうな曙は初めて見たわ」

潮「それは……」

朧「経緯は分からないけど、あの反応を見る限りミイラ取りがミイラになった、ってところかな」

184: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 02:00:00.79 ID:RTpzVwZC0

曙「あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿!!!」ダダダダダ

曙「絶対殺す百回殺す千回殺す万回殺す億回殺す!!!」ダダダダダ

曙「クソ提督ーッ!!!」ドアガチャァァァ


提督「」

陸奥「言い訳は以上かしら」ゴゴゴゴゴ

曙「」

陸奥「あら曙ちゃん。 ここは私に任せて今日はもう寝なさい」

曙「えっいや、私もそこの馬鹿に用が」

陸奥「また明日ね、今は私のターンだから」

提督「お、俺のターンは……」

陸奥「来るわけないでしょ?」

185: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/13(金) 02:16:55.20 ID:EeQhgM3lO

陸奥「業務を放り投げて曙ちゃんと外に遊びに行くだなんて、まあ貴方はそういう奔放なところもあるし一応皆も理解してる」

陸奥「けど、この紙は何」

提督「で、出掛けるから後のことはむっちゃんよろしくっていう……」

陸奥「そうよね、そういう意味よね。 私も普段から貴方がいない時の指示は聞いてたから、この紙を初めに見つけた雷ちゃん達に連れて来られて見た時は別に驚きもしなかった」

陸奥「でもそこからよ」ゴゴゴゴゴ

提督「な、何か……」

陸奥「雷ちゃんが私の世話をすると言い出したわ」

曙「」ブフッ

提督「なんでやねん……」

陸奥「出掛けるから陸奥、の・こ・と・をよろしくって受け取ったみたいでね」

陸奥「そうじゃないって言っても聞かないし、私の世話をしようという波は更に広がって行ったわ」

陸奥「挙げ句の果てには長門まで名乗りを上げてくる始末」

陸奥「今日1日、至れり尽くせりされてどれだけ居心地が悪かったか分かるかしら?」

提督「……俺あんまり悪くないような気」

陸奥「貴方がテキトーな文章にしなければこうはならなかったのよ」

陸奥「そもそも業務をサボってると言うのに反省の色も見えないし、今夜は私も徹夜覚悟でみっちり絞ってやるわ」

提督「し、絞るって何をデスカ……」

陸奥「貴方の性根をよ」

提督「ええ……何されるの俺……ぼのやん助けて……」

曙「……明日は私のターンだから」プイッ

提督「俺のターンはぁ!?」

曙 「ない!!!」
陸奥「ない!!!」

197: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/14(土) 06:43:33.32 ID:Rc9Jp7naO

翌朝・執務室前——


曙「……昨日の今日で律儀に秘書艦業しに来る私ってクソ真面目ね」

曙「……とりあえず入ろう」ドアガチャ

 躊躇いがちに執務室の扉を開けた私を迎えたのは朝日を後光にし、十字架に磔にされているクソ提督——しかもスーツ姿のまま——だった。
 予想だになかったそれは、私の視線と思考を奪うには充分過ぎるほど気味が悪く、腹が立つ程神々しく朝日を浴びている。
 刹那とも永遠ともとれる間から意識を戻した私は何故このような——

曙「——って、何詩的になってんだ私。 こんなんに構ってる時間が無駄よ、無駄」

提督「」

曙「……生きてるのかしらこれ」

提督「ぐう」

曙「磔にされてるのに寝てるし。 肝据わり過ぎじゃないのコイツ」

198: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/14(土) 06:50:24.22 ID:Rc9Jp7naO


提督「う……あ、ぼのやんだ……おはよう……」

曙「そのまま朝日浴びて浄化されろ」

提督「朝から辛辣さがキレッキレやで……とりあえずここから下ろして……」

曙「自ら望んで磔にされてるのかと思った、寝てるくらいだし」

提督「どんな体勢でも眠気には抗えなかったってだけよ……とにかく下ろしてくださいあけぼのさま……」

曙「普段調子乗り過ぎだし丁度いいんじゃないの、しばらくそうしてりゃいいのよ」

提督「仕事出来ないんですけど……」

曙「アンタの手なんか必要ないわよ無能」

提督「すごい、何もしてないのにあけぼのちゃんの中の俺の存在価値が磨耗していってる」

199: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/14(土) 07:02:09.19 ID:Rc9Jp7naO

曙「フン、手間のかかる」

提督「ぼのやんが絶対零度期に戻りそうで怖い」

曙「何があったかはどうでもいいわ、大体察しはつく」

提督「訊かないでね、思い返したくないから」

曙「何があったわけ?」

提督「傷口にアイスピックを打ち込んでいくスタイル」

曙「ちなみに言わないと私の好感度が下がる」

提督「言ったら?」

曙「内容次第で下がる、どのみち下がる」

提督「デメリットしかないクソイベントじゃねーかコレ」

200: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/14(土) 07:13:00.06 ID:2heKMBiE0

提督「すげー端的に言うと、むっちゃんに愚痴られ文句言われ愚痴られ文句言われ、最終的にストレス発散だとか言って俺を十字架に磔にしてそのまま帰って行きました」

曙「最後だけが本当に謎でしかない」

提督「誰もがきっとわけわからんことをしたい欲求があるんだと思う、むっちゃんは磔にした後なんか違うなコレって顔してから帰ってったけど」

曙「アンタが夜道を歩いてたらこのドロボウ猫ーって陸奥に刺されるかもね」

提督「俺がドロボウ猫かよ」

曙「ドロボウ猫かよりもアンタが刺されることのが重要」

提督「ぼのやんは俺になんか恨みでもあるのかな?」

曙「けっ」

提督「こわい」

曙「とりあえず朝食、今日も愛の欠片も無いシリーズ」

提督「なんだろなー? 予想つくけど」

曙「卵かけ御飯」

提督「TKG」

201: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/14(土) 07:19:01.50 ID:2heKMBiE0

提督「TKGは別にいいんだけどぼのやんが俺からめっちゃ遠くね?」

曙「私遠視だからこれくらいが丁度いいのよ」

提督「初耳なんですけど」

曙「嘘だし」

提督「騙す気があるのかないのか」

曙「物理的に距離置きたいだけ」

提督「なんかべたべたし過ぎてて距離感が分からなくなったカップルみたいだな」

曙「それ以上ふざけたこと言ったらアンタの目玉を私の箸が貫くから」

提督「ツンドラ絶好調過ぎる、本日は絶賛猛吹雪」

207: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/14(土) 16:35:48.65 ID:2heKMBiE0

提督「それで、本題は?」

曙「は? いきなり何のことよ」

提督「なんか牽制するだけして踏み込んでこないように感じるからな」

曙「アンタに私の考えてることが分かるっての?」

提督「そう感じたって話をしただけだ、気に障ったのなら謝るさ。 別に言いたくなければ言わなくてもいい」

曙「チッ……」

提督「ああそうだ、普段買い出しに行ってるスーパーは歩いて20分くらいのとこにあるんだ、後で行ってくれる?」

曙「……アンタも人のこと言えないわね」

提督「なんのことやら」

曙「とぼけんな、アンタこそ言いたいことがあるなら言えばいいじゃない」

提督「昼ご飯はチャーハン食べたい」

曙「このクソ提督」

208: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/14(土) 17:21:00.97 ID:2heKMBiE0

曙「……昨日、嘘をついてまで私を連れ出したのはどういう魂胆よ」

提督「嘘をつきたかった訳ではないが、嘘になっちまったな。 買い物に行くのをすっかり忘れてたんだ」

提督「どういう魂胆かってーと、魂胆って言うほど大したものではないな、ぼのやん氷解大作戦の一環として君に楽しんでもらいたかっただけ」

曙「は? 私に?」

提督「おう、それ以上でもそれ以下でもない」

曙「ふざけてんの?」

提督「これでも大真面目。 実際どうだった? あれだけはしゃいでいて楽しくなかったとは言わせんよ」

曙「……否定はしないけど」

提督「ならば良し。 だけど2度と通用しない不意打ちみたいなもんだからな、普段の中でも昨日のような笑顔を拝むにはまだ遠いな」

曙「馬鹿なんじゃないの」

提督「大真面目と言った」

209: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/14(土) 17:52:46.84 ID:2heKMBiE0

曙「なんとかかんとか言って、結局私に何か求めてんじゃないの?」

提督「別に、そんな意地の悪いこと考えちゃないって」

曙「嘘、何かをして見返りを求めない奴なんていやしない、無為の善意を他人に施せる人なんているわけないでしょ」

提督「拗れてんなあ……あーやって連れ出したことそのものが俺のエゴだよ。 で、連れ出した先で君は我を忘れてはしゃいだし俺も楽しかった。 それでいいだろ?」

曙「……納得いかないんだけど」

提督「普段も昨日みたいにもうちょっと素直になりなって。 周りにも、自分にまでも遠慮することないだろ」

曙「別に私は」

提督「と、ゆっくりし過ぎたな、さっさと食い終わろう。 後で金渡すから買い出し行ってきて」

曙「……昨日あれだけ使わせといてなんだけどアンタ金持ってるの?」

提督「……カード渡すから」

217: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/15(日) 21:18:39.37 ID:X4hJ1ZAK0

第七駆逐隊の部屋——


漣「ありー、ぼのやん今日も出掛けんの? でも昨日程オサレしとらんね」

曙「買い出しに行くだけ、着飾る必要もない。 コートだけで充分」

漣「買い出し? あー、言ってたねえ、ふーん? じゃ漣もご一緒しちゃおうかなあ」

曙「アンタ訓練とか色々あるでしょうが、それに外出許可証だってそんないきなり」

漣「固いこと言わんの言わんの、ご主人様にぼのやんと一緒に行っていーか訊いてみるねー」

曙「メールて……許可だって降りるわけが」

漣「オッケーだってさ」

曙「おいクソ提督」

漣「そんじゃま行きまっしょい! 闇鍋しよーぜ闇鍋!」

曙「なんで買い出しだけでそんなテンション高いのアンタ」

218: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/15(日) 21:52:39.22 ID:X4hJ1ZAK0

漣「ククク、無事脱獄成功よ」

曙「まだ鎮守府の目の前なんだけど」

漣「さあ行くぞぼのやん! 我々の目的地、スーパーは紅く燃えている!」

曙「火事じゃん、それ」

漣「あ、見てあの雲、うさぎみたい」

曙「アンタ何なの? 散歩に出てテンション狂ってる犬か何かなの? 付き合い切れないってーかウザいから帰れ」

漣「自覚はあるZE」

曙「タチ悪っ」

漣「まーまー、鎮守府にいたんじゃおとなしく話も出来ないからねえ」

曙「どういうつもりよ」

漣「いや、鎮守府にいたら伝道師モードになってる潮ちゃんが絶対突っ込んで来るじゃん? そーなると話にならなさそうだから」

漣「朝食ん時にぼのやんにはぼのやんのやり方があるんだから外野があんまし口挟んでやりなさんなって言っといたけどねー」

曙「ねえ、その言い方だとまるで私が」

漣「わーってるわってる、とりあえずでも潮ちゃんに釘刺しといただけだから」

曙「……というか、話をするっていうのにどういうつもりだって」

漣「あーそっち? 話ってのはまー、色々?」

曙「何それ」

漣「へへ、とりまスーパー行きましょうや。 歩きながらでも話は出来るからにー」

219: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/15(日) 22:30:21.98 ID:X4hJ1ZAK0

漣「さて、しりとりでもしましょうか」

曙「会話の始まり方が既におかしい」

漣「いいじゃんそんなこと」

曙「とっとと本題に入りなさいよ、遠回りから攻めようとして回りくどい」

漣「いー、だ。 漣より回りくどいというかめんどっちいぼのやんには言われたくないですー」

曙「すいませんね、面倒臭くて。 でも今更それを知らないとは言わせないわ」

漣「分かってますよっと、何年一緒だと思ってんのさ」

曙「さあ、3年くらいじゃない?」

漣「いー、いー……」

曙「…………」

漣「駄目だ、出てこね。 負けたぜ」

曙「自分からしりとり始めといて」

漣「こんな風に乗ってくるとは思わんでしょうが」

220: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/15(日) 23:38:59.86 ID:X4hJ1ZAK0

漣「しりとりにも負けたことだし率直に訊こうか、ぼのやんてご主人様のことどー思ってんの?」

曙「率直どころか飛躍してる気がするんだけど、って一昨日くらいに言った気がする」

漣「改めて、というかよう分からんなったから訊いてるわけですよ? ほれ、見んさいコレを」

曙「ケータイ? ……昨日の私ね」

漣「普段笑わない子のこんないい笑顔見れたらなんもかんも吹っ飛ぶってもんよ」

漣「でもさー、ぼのやんはご主人様のことはどっちかってーと嫌いだと来た。 嫌いな人に向かってこんな風に笑えるもん?」

曙「……頼んだのよ、これは、私が撮ってくれ、って」

漣「あ、そう。 ああそうだ、別に何か責めてるわけじゃないから、あんま気にせんでね」

漣「そんなに嫌いでもないけど嫌いだってのは多分嘘じゃない。 昨日のぷんすこ具合を見たらまあ、分かる」

漣「だけど、ああまでなって怒るような事でもないと思うんだけど。 ご主人様とのデートになってたってのがそんなに嫌なん?」

曙「……そうじゃなくて」

漣「じゃなくて?」

曙「……あんな写真、見せびらかされたら、恥ずかしいでしょうが」

漣「……は?」

曙「こっちの身にもなりなさいよ、あの馬鹿……私からしたら変顔撮られたようなもんよ」

漣「え? 待って、昨日部屋飛び出してったのって、それ? ご主人様とのデートがじゃなくて?」

曙「そうよ、それによくよく考えたらデートなんてもんじゃないわよ、私が一方的にどこ行きたいそこ行きたいって好き勝手してただけなんだから」

漣「好きとか嫌いとかそーいう感情は」

曙「皆無」

漣「……あれ? うーん、なんか腑に落ちるようなないような……?」

漣「でもまあいいや、変なこと訊いてゴメンねぼのやん」

曙「責めてないとか言ったけど、凄んどいていう言葉じゃないわよホント」

漣「ナハハ、おっしゃる通りで……」

221: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/15(日) 23:52:10.04 ID:X4hJ1ZAK0

漣「そんなわけでスーパーだぜぼのやん! なんか滅多に来ないスーパーってwktkしない?」

曙「テンションの上下激しいわよねアンタ」

漣「オンオフ機能のついたデキる女ですもんで、にょほほ」

曙「デキる女がそんな笑い方するかしらね」

漣「漣はコレでいいんですぅー、とりまテキトーにカゴに突っ込んでくんねー! 闇鍋しよーぜ闇鍋!」

曙「まだいってんのそれ、ってか待ちなさいよ!」

漣「あーばよー、とっつぁーん!」ダバダバ

曙「ったく……あんなんついていけないわ」

曙「まあ、一世一代の名演技してやったんだ、あれくらい大目に見てやろうかな……」

曙(漣、アンタに言ったことは殆どが嘘なんだ)

曙(だけど分からないこともある)

曙(私が何に対して怒っているのか、それが分からない)

222: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 00:27:54.48 ID:tmhwTCKf0

 そもそも、怒っているのかどうかも分からないのだけど。 怒りで結論付けるのは少し暴力的な気がする。
 楽しかったから怒る? 訳が分からない。
 嘘をつかれたから怒る? もっともらしいけど違うと思う。
 一緒に過ごしたのがアイツなのが気にくわない? そんな理不尽な怒りをぶつける程嫌いじゃない。
 嫌いじゃないなら、好きなの? それが一番ない。 そういう対象として見てないし、見られてもない、と思う。 アイツ自身、私達のことをそういう風に考えていないっぽいし。 あれが本心なのかは分からないけれど。
 それは私達だってそうだけど。 いや、金剛はどうなんだろう。 アプローチは凄い熱烈なんだけど、所謂キャラ付けとしての行動じゃないかとたまに思う。 艦娘の金剛を10人並べたら10人共同じようにアプローチするのだろうか。 十人一色。

 ——思考が逸れた。 何だったろうか、私がアイツをどう思っているか?
 これは漣との問答で半分は既に決している。 嫌いだけど好きじゃない、けどちょっと嫌い。 少し前に流行った調味料の名前みたい。
 だけど、嫌いだ嫌いだと言うほど嫌いではなかったりする。 そういう事にしておけばアイツをクソ提督と呼んでもあまり誰にも咎められない。 実際、クソだと思ってこう呼んでいるわけでもないし。 クソ提督呼びで浦風と悶着を起こしたこともあるけど、それは今は関係ない。

223: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 00:47:16.01 ID:tmhwTCKf0

 嫌いでも好きでもなくクソでもなければその先にある感情は無関心だろうか。

 それも違う。 本当に無関心なら、こうして悩むこともないはずだ。

 なんだか自分のこと自体、分からなくなってきた。 胸の扉を開けて心に直接問い掛けてみたい。 開けてもそこにあるのは心臓だけど。 扉だってないし。

 それともなんだろう、昨日は感情が昂ぶったままだったから脳の感情を司る機能が上手く機能しなくて暴走したのかな。 そういうことにしとけばこれ以上、不毛な思考を巡らせることもないし。

 それでもまだ少しだけスッキリしない。 何で怒ってんの? とかはこの際どうでもいい。 いや、怒ってたのは何かしらの感情が制御し切れなくてそれが怒りとして出ただけ。 もうそれでいい。

 私はアイツのこと、どう思っているんだろう。 なんだかそればっかりだ。

 嫌いでもない、好きでもない、無関心でもないけど、クソ野郎ってわけでもない、たまにウザいところもあるけど。

 これらの先に何かある、気がする。 それが何かは分からない、もしくは気付かないフリをしているのだと思うけど、それを見つけるにはどうしたら——。

224: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 00:56:22.75 ID:tmhwTCKf0

漣「買い物カゴジーーーッと見つめて何してんだべぼのやん」

曙「うぃええ!?」

漣「うぃええじゃねーべさあーた、奇声挙げたいのこっちですがな。 カゴを見つめても商品はそこにゃ入らねーですよオクサマ」

曙「あっ、え、私何してたの?」

漣「知らんがな、ずっと立ちぼうけてただけでしょ。 それとも何? 精神だけ異世界にでも行って大冒険してた?」

曙「そんなんじゃないけど……ってアンタ、何そのカゴの中身? ってか、量」

漣「あー、闇鍋の材料」

曙「キムチ、豚肉、白菜、人参、ソーセージ、カレールー、うどんその他etc……無難なのばっかじゃない」

漣「食べ物で冒険する勇気、漣にはなかったぜ……!」

曙「ていうか、作るの私なんだけど」

漣「闇鍋しよーぜ闇鍋」

曙「アンタの持ってきたのだとただの鍋からキムチ鍋とか普通なのになりそう、何が闇鍋やら」

漣「うるへー!」

225: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 01:12:10.34 ID:tmhwTCKf0

執務室・昼——


提督「わー、なにこの量」

曙「文句はこっちに言ってよね」

漣「ええやろ! 色んな材料があったほーがぼのやんも作り甲斐があるってもんじゃろ!」

提督「一理ある」

曙「面倒だしそんな手の凝ったもん作るわけないでしょ」

漣「愛を込めないと妖怪ラブ宣教師がやってくるでよ!」

曙「…………」

提督「……ん?」

漣「……え? 何?」

曙「あるわけないでしょ、そんなもん」

漣「え、何今の間」

提督「昨日の一件でまさかぼのやんのハートが一気に氷解したとでも言うのかーっ!?」

曙「馬鹿じゃないの」

漣「あ、そーだご主人様、昨日のデートどーだったの? ぼのやんに感想聞きそびれたし」

提督「昨日のデートぉ? あれデートって言うのかなあ?」

漣「男女が外出して遊んでりゃーそれをデートと呼ばずして何と言うか! 傍目から見てもデートでしょーが! おらー答えろー!」

提督「そんなこと言われてもなー、昨日の主役はあけぼのちゃんだったわけだし、どうだったよぼのやん?」

曙「ばーか」

提督「ぼのやんが馬鹿としか言ってくれねえ!」

漣「クソッ、こうなったらぼのやんの口を割るのは容易じゃない! ご主人様とっとと答えなんし!!」

提督「そう言われてもー! 俺は楽しかったけどー!」


曙「……昼ご飯何作ろう」


233: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 16:50:50.25 ID:tmhwTCKf0

執務室・夕方——


潮「曙ちゃん! 今暇ですか!」ドアガチャ-

曙「暇じゃない」

潮「…………」

朧「こら潮、ノックくらい……」

曙「そいっ」

潮「…………」

朧「……何この紙飛行機の大量撃墜現場」

曙「見ての通り私は紙飛行機作りとその後始末で忙しいから」

潮「暇なんだ」

曙「暇じゃない」

朧「暇なんじゃん」

曙「暇じゃない」

234: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 17:01:15.04 ID:tmhwTCKf0

朧「ん、この紙飛行機って資料の紙なんじゃないの?」

潮「あ、ホントだ。 いいの曙ちゃん? こんなことして、というか良くないよね?」

曙「いーのよ、開いて日付見てみなさいよ」

潮「日付? ……半年前のだね、コレ」

朧「こっちは去年のだ……っていやいや。 だからってこんな雑にしたらダメでしょ」

曙「いーでしょ別に。 資料っても、もう解決したり済んだ話なんだからどうだっていいでしょ。 机の上に山積みにしといて大半がこれじゃあね、提督ってのはどーいう仕事してんだか」

朧「でも後になって過去の資料が必要になることだって……たぶん」

曙「パソコンの中にも大体同じのがまとめられてたわよ、あーあークソ提督も外出してるし、秘書艦ってのは案外暇を持て余すもんなのねー」

潮「やっぱり暇なんだ」

曙「暇じゃない」

235: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 17:26:28.85 ID:tmhwTCKf0

朧「提督、いないと思ったら出掛けてるんだ。 何処に行くって?」

曙「ウチの那珂のライブステージを見に行くんだってさ。 まあなんか、いわゆる地下アイドルらしいけど」

朧「那珂ちゃんの……頑張ってるからね、那珂ちゃん」

潮「曙ちゃんは一緒に行かないの?」

曙「なんで私が……」

潮「だって昨日は提督と一緒に出掛けてたでしょう? でもどうして今日は、って」

曙「昨日と今日とでは事情が違うのよ、今はあまり私に考え事をさせないで」

潮「? それってどういう……」

曙「う、それはその」

金剛「ボノエッティー! テートクとデートしたっていうのはどういうことネー!?」ドアガチャァアア

曙「朧、閉めて」

朧「え、うん」ドアシメ

金剛「あっちょっ」バタン

金剛「これでfinishにはさせませんヨー!」ドアガチャ-

曙「ホント、特にウザいのが来たわね」

金剛「ボノエッティはモー少し歳上を敬うべきではないでスカ……?」

曙「ネタキャラを敬えって言われてもねえ?」

金剛「ワタシはそんなcharacterじゃないデース!」

236: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 17:56:50.87 ID:tmhwTCKf0

朧「金剛さん、どうどう」

金剛「アポロン! ワタシは馬でもないネ!」

朧「朧です」

潮「人参、ありますよ?」

金剛「ウッシーまで! というかどーして2人して馬路線で攻めてくるんでスカ!?」

曙「金剛、お手」

金剛「ン? ハイ」ポム

金剛「って唐突にナニやらせるネー!?」

曙「これだけ良いように弄ばれるようじゃ敬うも何もありゃしない」

金剛「ウグッ」

曙「やっぱり、戦艦足るもの威厳がないとねえ?」

金剛「sit……今のワタシではpower不足ということデスカ……」

朧「親しみ易いとは思いますけどね」

金剛「慰めはノーセンキューネ、アポロン……」

朧「朧です」

潮「わ、私は金剛さんは素敵だと思いますよ」

金剛「フ、フフ、ありがとうネ、ウッシー」

金剛「でもワタシはまだまだnoviceのようデース……but、いつの日かボノエッティをギャフンと言わせてあげますヨ」

曙「はいはい精々期待せずに待ってる」

金剛「ではまた……good bye」ドアガチャ

237: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 18:16:48.46 ID:tmhwTCKf0

潮「…………」

朧「…………」

曙「…………」カギガチャ

曙「さ、掃除でもしようか」

朧「そうだね」

潮「えっ? あの、金剛さんはいいの?」

曙「別にいーわよ、あんなの」

潮「そんなぞんざいに……グッバイなんて言ってたし、もしかして辞めちゃうんじゃ」

曙「どっちかって言うと、ワタシこれからブシシュギョーの旅に行こうと思いマース、とかじゃないの?」

朧「ウチの金剛さんって何人なんだろう」

潮「……? 武士修行って、武者修行じゃないの?」

曙「そこは気にしなくてもいいの」

金剛『——、何当たり前のよーに話終わらせっ、アレッ、開かな、あっ鍵ッ、ボノエッティィイー!! 開けるデース!! Open the door!!』ガチャバタドタガチャ

朧「……日本人?」

曙「チッ、流石にそこまでネタキャラじゃなかったか」

潮「せめて話だけでも聞いてあげよう……?」

金剛『Open bean!!!』

曙(豆かよ)

239: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 19:24:27.49 ID:tmhwTCKf0

金剛「ぐすん……まさか開けゴマが言えるまで開けてくれないとは思いもしなかったデース」

曙「それで話って何、私とクソ提督がなんだって?」

金剛「ハッ、そうデス、仕事をsabotageしてテートクとデートしたってどーいうコトヨ!」

曙「デートなんかしてないけど」

金剛「えっ」

潮「えっ」

曙「私を連れ出したのはクソ提督だけど、その後は私が好きなようにあちこち回って、アイツを引きずり回したよーなもんよ。 それでもデートって言えるのかしら」

潮「でも漣ちゃんが」

曙「アレの言うことを真に受けちゃいけないから」

金剛「NO!断じてNO! 男女が一緒に出掛けていればそれは既にデートネー!」

曙「アンタまで漣理論展開するんかい」

金剛「ワタシはテートクにapproach、many、manyしているというのに! 一度も! 誘われたコトないデース!」

曙「ドンマイ」

金剛「ヌァアアアア!! What!? それは正妻! ワイフのヨユーとでもー!?」

曙「何素っ頓狂なこと言ってんのよアンタは」

朧「これは確かに威厳ないね」

240: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 20:36:18.03 ID:mfOaFANSO

金剛「大体何ナンデスカテートクは! approachしてるワタシはthroughで何もしてないボノエッティとはデートしてー!」

曙「だからデートじゃないっつう」

金剛「ちょっとはコッチになびいてくれたっていいデショー! ンモー!」

曙「一理ある」

金剛「ハ、ひょっとしてテートクはボノエッティにゾッコンだとかそーゆー……」

曙「それはないと思う……ないわよね?」

朧「さあ?」

潮「そんな風には見えないけど、見ようと思えば見えなくもない……よね?」

曙「いや見えないでしょ」

金剛「ン?」

曙「とりあえずアンタに話すことはもうないから、行った行った」

金剛「NO! 話はまだまだ続きが!」

曙「アンタ相手にしてると本当キリがないから。 やって、朧」

朧「はいはい、金剛さんボッシュートでーす」グイグイ

金剛「ちょっとー!? やめるネアポローン!」

朧「朧です」ドアガチャ

241: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/16(月) 20:58:29.12 ID:mfOaFANSO

潮「結局、金剛さんは殆ど話させて貰えてなかったね……」

曙「どうせ同じようなことしか言わないだろうし、不毛よ。 文句があるなら私じゃなくてクソ提督の方行けっつうの」

潮「提督にも物を言うつもりで執務室に来たんじゃないかな?」

曙「それもそっか」

潮「……どうなんだろうね、提督は」

曙「あん?」

潮「昨日、曙ちゃんは提督に連れ出されたけどその後は曙ちゃんの自由だったって言ってたよね?」

潮「それって提督がどうこうしたいとかじゃなくて、曙ちゃんに自由を与えたんじゃないかなって思うけど」

曙「……アイツは私に楽しんでもらいたかったって言ってたけど」

潮「脈アリ、なのかな」

曙「私側の脈がないんだけど」

曙「というか、アイツが私達にそういう考えを持つとは思えない、そういう距離感でもないし……」

潮「それは確かにそうかも……」

潮「……愛の伝道マニュアル第1章、読む? どうせなら曙ちゃんから攻めに行くとか」

曙「遠慮しとく」

248: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/18(水) 14:14:48.50 ID:KDhNz+w70

ライブハウス・夜——


<ミンナアリガトー!

<ワーナカチャーン!!

提督「……頑張ってんなあ」

漣「ホントにねー。 しかもそこそこ人気あるっぽいし」

提督「結構長いことやってるらしいからな、固定客もボチボチいるんじゃないか?」

漣「へー? そーいや艦娘アイドルなんたらかんたらって資料あったけど、アレって那珂ちゃんのこと?」

提督「ああ、それと那珂ちゃんは全く関係ないぞ。 アイドル業は那珂ちゃんのプライベートというか、本人がどっちも頑張るからって言うからやらせてる」

漣「どっちも、って艦娘業と? 出来んのそれ?」

提督「一応今までは。 だけど出撃して毎回無傷ともいかないから、怪我とかしてよくこっちの方に支障が出てるらしいけどな」

漣「ですよねー、単純な骨折くらいなら3日もあれば治せてしまうっても、やっぱし」

提督「アイツは気を遣わなくていいって言ってるが……大丈夫って言っても大丈夫じゃないことも多いし、どうしたもんだか」

漣「艦娘辞めさせちゃうとか?」

提督「ダメだろそれは……ところでさ、話は変わるけど」

漣「なんでしょ」

提督「なんでここにいるの君、独り言だったのに自然と会話始まって驚く暇もなかったんだけど」

漣「なんか面白そうかなーって思ってコッソリついてきました、2度とトランクになんか入りたくない」

提督「忍者か何かか」

249: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/18(水) 14:31:14.57 ID:KDhNz+w70

提督「で、本音は」

漣「ぼのやんだけ楽しんでズルいと思ったので漣ちゃんにも同じ待遇を所望する!」

提督「300円やるから安いハンバーガー屋でも行っといで」

漣「やだ! 高い方がいい! ってーか対応が雑過ぎじゃありませんかねご主人様」

周りの客(ご主人様)

周りの客(ご主人様って言った)

周りの客(主従プレイかな)

提督「鎮守府の外でご主人様って呼ぶのはやめて」

漣「んじゃダーリン」

提督「なんで」

漣「お兄ちゃんが良かった?」

提督「そういう問題じゃないよ?」

漣「口答えすんな愚弟」

提督「オラこんな姉さ嫌だ」

漣「分かりましたよ、その辺の高級フレンチで妥協しますよ師匠」

提督「お前らの要求レベル大差ねーな」

漣「ところでフレンチってなーに」

提督「知らねえのかよ!」

漣「叫んだら周りの人の迷惑になるでしょ! ママとのお約束でしょ!」

提督「最初に叫んだの君でしょうが……とりあえず外行こう外」

漣「高級フレンチゲットだぜ」

提督「なわけねーだろ」

250: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/18(水) 14:52:19.21 ID:KDhNz+w70

漣「結局ファミレス」

提督「凄い既視感」

漣「ご主人様の財布の紐硬いんですね、財布が硬い人は頭も硬いって偉い人も言ってますよ」

提督「やかましいわ、頼んでいいのは2品までだからな」

漣「マジで硬くて笑う」

提督「前科と前例があるからな」

漣「うぐ、過去なんか水に流しちゃいましょーぜご主人様、ザバーって」

提督「しでかした本人が言うことじゃないんだよなあ」

漣「けちんぼ!」

提督「厚かましいわ!」

257: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/19(木) 21:29:49.47 ID:X6DPHV3T0

漣「ハンバーグウマー!」

提督「美味そうに食べるなあ、見てるこっちも腹が埋まりそうになる」

漣「何いきなり口説いてんですかねこん人は」

提督「率直な感想を言っただけだって」

漣「ところでそういうご主人様は何も食べないの? 漣をおかずにしてなら水だけでもご馳走だぜ! とか言っちゃうの? そういうのやめてくだし」

提督「何言ってくれてんだお前、俺には鎮守府で待つ晩御飯がちゃんとあるんですぅー」

漣「愛の欠片も感じさせないぼのやんシェフの手抜き晩御飯かな? 昼はお茶漬けオンリーだったし晩はもやし炒めだけかもねー」

提督「ヘルシーじゃないか」

漣「そんなん続くと腹減るやろjk……」

提督「そこは気合で」

漣「やっぱり足りてないんじゃねーか」

258: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/19(木) 21:51:04.20 ID:X6DPHV3T0

漣「でまあ、散々ふざけといてだけど漣の目的は別にあるのね」

提督「帰りに何かスイーツ買ってーとかなら聞き入れませんよ」

漣「ちゃいますよん。 まあ少し下世話ではあるんだけどー、皆がいない方がご主人様も話し易いだろうしーってことでついてきたわけ」

提督「下世話って……ってか呼び方」ミズノミ

漣「ぶっちゃけご主人様てぼのやんのことどう思ってんの? 女として」

提督「ゴボッフゥ」

漣「きちゃない! えんがちょ! ポマード!」

店員「どうかされましたかお客様!?」

提督「う、あいや平気す、大丈夫です、むせただけなんで」

漣「ンモー、人様に迷惑かけちゃあダメでしょご主人様」

提督「誰のせいだと……」

店員(ご主人様て)

259: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/19(木) 23:35:21.77 ID:X6DPHV3T0

提督「いきなり何を言い出すんですかね、こやつは……」

漣「で、どーなん?」

提督「どうもこうもないだろ……そんな風に見ることなんて出来ないって」

漣「何ー? 数年共に過ごしたら家族みたいに感じて恋愛対象じゃなくなったみたいなー?」

提督「それで言うと俺めっちゃ家族多くなるな?」

漣「でもさー、だったらどーしてぼのやんのデートとかしたのん? ねえ?」

提督「まーたその話か、デートじゃないったろうが、謎理論も聞かないぞ」

漣「でもさでもさ、漣達とご主人様って言っちゃえば所詮、部下と上司みたいなものじゃん? そういう関係で済ますには説得力がない感じなんだけどどうなのかにゃーって。 そこまでしなくね? って」

提督「それもそうだけど……そうじゃないんだよ、俺が多分、世話焼きだからじゃないかな」

漣「世話焼き? それっぽい覚えはあんましないけど」

提督「俺もないよ、もしかしたらそうなんじゃねーのかなっていうifの話」

260: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/19(木) 23:52:55.09 ID:X6DPHV3T0

提督「……曙さ、今では着任当初からは想像もつかないくらい打ち解けてるだろ? それでもまだ微妙に距離があるというか、容赦はないけど遠慮はあるみたいな。 それをもう少し解消したくての氷解大作戦なんだけど」

漣「別にいいんでないの? そのくらいの距離感でも。 それ以上は過干渉になるかもしんないじゃん?」

提督「まあな。 俺だって深入りはされたくないから分かる。 距離を縮めようとしてる奴の言うことじゃないがな」

漣「そーなの? ちょっと意外」

提督「まあそれはおいといて、お前の言うデートをしたのだって遠慮をなくさせるため、曙に楽しんでもらうためなわけだ」

漣「結果的にはなんか、より凍り付いたっぽい感じだけどね、も少し程々にしといた方がいいんじゃないです?

提督「それもそういかないんだな、これが」

漣「ってーと?」

提督「曙の写メ、送っただろ?」

漣「ん? ああ、あの笑顔ぼのやん」

提督「あれをさ、もう一度見たいって思ってしまってるんだ」

漣(……んん?)

提督「こうなると単なる俺のエゴだな、というか大作戦含めて俺のエゴなんだけど」

漣(ん? うん?)

提督「せっかくいい笑顔が出来るんだからさ、もっと笑って欲しいわけですよ。 不意を突かれて笑うんじやなくて、自然に。 どうしたらいいかなーってわけでもあるけど」

漣()

提督「まあ過干渉になることもあるだろうけど、色々と模索してくつもりだよ、ツンドラが相手だから簡単じゃないだろうけど」

漣「……振り出しに戻っていい? ぼのやんのことどう思ってる?」

提督「あー? そういう風には見てないって言っただろ?」

漣「本気で? マジで?」

提督「マジだけど……何をそんなに噛み付くことがあるんだよ」

漣「先が思いやられる、マジヤベって顔していい?」

提督「よく分からんが、どうぞ? まあ実際思いやられる感じはあるよなあ、どうやって氷解させたもんか」

漣(そっちじゃないんだよなあ)

262: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/20(金) 00:39:57.59 ID:rbYwndtN0

提督「っと、そろそろ帰ろうか。 そこまでじゃないがあんまり遅くなってもな」

漣「ソーデスネ、はよ帰って冷えた愛妻夕食でも食べてやるがいいのです」

提督「なんか投げやりになってないか?」

漣「そうさせた張本人に言われたかーない」

提督「はあ? 話を振り始めたのはそっちだろうに」

漣「うるせーです、天然物のニブチン天然水なご主人様はアルプス山脈にでも行けばいいんです」

提督「また訳の分からんことを……」

那珂「やっほー! 二人ともお待たせー!」パタパタ

漣「へっ、え? なんで那珂ちゃんがここに」

提督「ああ、どうせなら一緒に帰ろうかと思ってな、ライブが終わった後に予定がなければこっち来るようにメールしといたんだ」

那珂「ところでさ、二人とも来てたよね? ステージから見えたもん、どうだった? 那珂ちゃんライブどうだった?」

提督「あーいうのには疎いんだが、身内贔屓するわけでもなく良かったと思うぞ? 楽しそうだったし」

那珂「やったあ! 漣ちゃん、は、てどうしたの? 凄い顔してるけど」

漣「え? あー、はは、この先どーなるんだろうなって」

那珂「う、確かに険しい道のりだけど! 艦娘アイドル那珂ちゃん! 二足のわらじで頑張ります!」

漣「あ、ごめん、そっちじゃない」

263: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/20(金) 00:52:08.24 ID:rbYwndtN0

鎮守府・執務室——


提督「いやあアイドルってのは凄いもんだよな」

曙「戻ってくるなり開口一番がそれ?」

提督「いや本当凄いと思ったもんよ。 規模こそ大きくはないけどさ、何人もの観客を沸かせて笑顔にさせるってのは、俺には凄いとしか言い様がない」

曙「ボキャ貧は辛いのね」

提督「論点そこじゃないよ! ぼのやんならどう言うってのさ!」

曙「私には到底出来やしないわ、それだけ那珂が魅力的に映るんでしょ」

提督「俺のよりも強そう」

曙「はい、アンタのターン」

提督「えっ」

曙「添削するから」

提督「ええと、えー」

提督「ぼくにはとてもできない」

曙「添削するまでもないわ、不合格」

264: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/20(金) 01:03:02.01 ID:rbYwndtN0

提督「まあそれはおいといてさ、晩御飯ある? ってか作ってある?」

曙「一応、あるにはあるけど」

提督「やったぜ、もやし炒めかな!」

曙「……ちょっと待ってて、持ってくる」

提督「ん? おう」


提督「ば……馬鹿な……」

曙「……呆然としてないで食べたらどうよ」

提督「豚の生姜焼きにキャベツの千切り、ポテトサラダに味噌汁と白米だと……!? これはまさしく晩御飯という奴なのでは……!?」

曙「誤解されないように言っておく、コレなんだと思う?」ピラッ

提督「ん? レシピか……印刷した奴?」

曙「潮がコレ持ってきたの」

提督「ああなるほど、納得」

265: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/20(金) 01:20:08.21 ID:rbYwndtN0

曙「まったく、アンタがいなかったから好き勝手されたわよ。 いい迷惑」

提督「ははは、でもよく出来てるじゃん、美味いぜぼのやん」

曙「そりゃそーよ、レシピ通りに作ったらそうなるわ」

提督「ま、どうせなら一緒に食べたかったけどな」

曙「何言ってんの、人と一緒に食べて味が変わるわけないでしょ」

提督「気分の問題さ、誰かと同じ時間を共有することが楽しいんじゃないか」

曙「……!」

提督「まあ流石に全く知らない他人とかでもいいってわけじゃないけどな! 俺もそこまでは強くないし」

曙「アンタは……」

提督「ん?」

曙「……いや、いい、なんでもない」

提督「なんだ? なんでもないなら、ないでいいけど……」

266: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/20(金) 01:35:49.95 ID:rbYwndtN0

提督「ああそうだ、明日は俺夜遅くまでいないから」

曙「え、そうなの」

提督「ツキイチの戦果報告会とかあるんだよ、それで本営まで向かわなきゃだしそこでどーせ会議に巻き込まれるし、鎮守府に戻っても上のクソジzお偉方らが反省会議みたいなん開くだろーしで面倒尽くしだ」

曙「……私は、というか秘書艦はついてかなくていいの? それ」

提督「秘書と来てる人もいるが、眠くなるような話しかしとらんよ、だから俺は誰も連れてったことないし連れてく気もないな。 不毛な会議なんて面倒だろ?」

曙「それはそうだけど……そういう面倒な仕事をするのが、負担を軽くするのが秘書艦じゃないの?」

提督「いーのいーの、どうせ適当に流しときゃすぐだすぐ」

提督「ってなわけで明日は1日よろしくな。 また陸奥にも頼んどくし余程のことがなければ大丈夫だろ」

曙「だと思うけど、って大丈夫なの? 昨日の今日で」

提督「……だいじょばないかもだから必死で頼む」

曙「陸奥が呆れるのが目に見えるわ」

275: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/21(土) 06:40:43.84 ID:CWcUM2ZUO

第七駆逐隊の部屋・深夜——


漣「スヤァ……」

曙「…………」

潮「んー……」

朧「すー……」

曙「…………」

曙「…………」ゴロン

曙「…………」ゴロン

曙(思考が目まぐるしく回って全く寝付けない)

漣「馬鹿め……そっちはメロンパンだ……スヤァ」

曙(大体コイツと金剛や潮、あとアイツのせいか)

漣「身体が動かねえぜ……むにゃ」

曙「いつも思うけどアンタどんな夢見てんの?」

漣「ちくわ音頭」

曙「……起きてる?」

漣「スヤァ……」

曙「寝言だったんだ、それ……」

277: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/21(土) 07:13:24.85 ID:5K1vKkl00

 頭の中を巡り回ってる議題の内容は今日の出来事の蒸し返し。 私がクソ提督をどう思っていて、クソ提督が私をどう思っているのか。 それが飽きる事なく無限に走り続けてる。

 クソ提督が私をどう思っているかなんて、他人が考えている事なんて知りようがないから自分の中で結論付けても、それは憶測の域を出ない以上するだけ無意味だと思ってる。 思っているけど止められない。 制御不能になった暴走機関車のよう。

 反対に、「私がクソ提督をどう思っているのか」の列車はというと「分からない」の一点張り。 マトモに進みすらしない。

 あの道はどうだ、この道はどうだと道を示してもそっちじゃない、それでもないの繰り返し。 じゃあどこに行きたいんだと言うと「分からない」に戻るのだからどうしようもない。

 自分の事が分からないんじゃあ、相手の事も知りようがないよね! という解が出たのは数え始めて4回目。 無論、ただの逃避には不正解のバツ印をくれてやる。そうじゃない道がある気がするから、その道が分かるまで進もうとしていないんだ、多分。

 その道が分かって、行先が開けたらもう1つの暴走機関車もあるべきレールに乗って本来の速度で進み始める、気がする。

 もっとも、その道の見つけ方から分からないのだけど。 そういえばなんで怒ってたんだっけ? あ、また「分からない」だ。 もう、これについて問うのは止めようかな。

 ——こうやって客観的に考えるのも何度目だろう。 暗闇は目が効かないから思考が働いて仕方がない。

 あ、また機関車が走り始めた。

278: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/21(土) 07:31:52.11 ID:5K1vKkl00

<ナカチャンダヨー! ナカチャンダヨー! ナカチャンダヨー! ナカチャンダヨー! ナカチャンダヨー! ナカチャッ

朧「ふ、わああ……今日は熟睡しちゃったなぁ」

潮「んん……おはようみんな……」

漣「おはウィッシュ……那珂ちゃんがまだ頭の那珂ちゃんでこだましてるぜ……なんだ頭の那珂ちゃんて」

朧「……あれ、あけぼ」

曙『…………』

朧「のは……?」

潮「ど、どうしたの曙ちゃん……曙ちゃんだよね?』

漣「凄い見た事のある布団の塊があるんだけど」

曙『私は布団よ』

漣「いやいやいやいや、朝っぱらからボケの切れ味鋭過ぎでしょぼのやん」メクリーノ

曙「…………」

漣「おぎゃーお……すげー顔してるぜぼのやん、乙女のしていい顔じゃあない」

潮「ど、どうしたの曙ちゃん……」

朧「クマが凄い……もしかして寝てないの?」

曙「……寝付けなくて」

朧「それはまた……どうして?」

曙「色々と、ね……ははは」

漣「虚ろな目で笑わんでよぼのやん、軽くホラーだよ」

279: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/21(土) 07:50:05.32 ID:5K1vKkl00

執務室・朝——


提督「…………」

曙「…………」

提督「……普段の3倍くらいは目付き悪いな」

曙「いいじゃん、見たら泣く子もギャン泣きよ」

提督「ダメじゃないのかなそれ」

曙「ていうか朝御飯、作るの私じゃなくて良かったわけ? アンタに追い出されちゃったけど」

提督「目線がまな板の上じゃなくてナイジェリアの方向いてそうな奴に包丁握らせらんねえよ……」

曙「別になんとかなるでしょ、多分」

提督「ならないよ? 朝から流血スプラッタとか勘弁して欲しいな?」

提督「ていうかそんなんで今日1日大丈夫かよぼのやん……」

曙「陸奥がなんとかするでしょ」

提督「THE・人任せ」

曙「ところで、陸奥に頼むっていう話はついてんの?」

提督「これからするの、上手くいくよう祈っといて」

曙「アンタも大抵見切り発車よね」

282: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/22(日) 06:33:13.57 ID:ucSHAcZSO

————
——


提督「——かくかくしかじかという訳でよろしくお願いします」

陸奥「……肝が据わっているというか、厚顔無恥というか、貴方も大概よねぇ」

提督「こうでもなきゃこんな仕事やってられんからな」

陸奥「誰彼構わず絡んだりからかったり一緒にふざけたり、果てには連れ出してデートするような仕事がそんなにハード?」

提督「むっちゃんまでデートって言うー」

曙「弁解するのもそろそろ面倒になってくる頃合ね」

陸奥「まあいいわ、引き受けてあげる」

提督「やったー! むっちゃんは懐の広さまでビッグセブンだぜ!」

陸奥「そ・の・か・わ・り」

提督「うん?」

陸奥「私ともデートしてもらおうかな?」

曙「うえっ」

提督「なんですと」

陸奥「だって曙だけ羽を伸ばしただなんてズルいじゃない? そうしてくれたら諸々のこともチャラにしてあげるっ」

曙「その条件ってどうかと思うんだけど……」

提督「そんなんでいいのなら別にいいけどさ……?」

曙「…………」

提督「む、なんだぼのやん?」

曙「あ、いや、いいんだ、って。 それだけ」

陸奥「ふふ、やった。 何買ってもらおうかなーっと」

提督「もしかして俺、体良くむっちゃんの財布にされただけなんじゃねえ?」

曙「陸奥のみぞ知る、ね」

283: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/22(日) 06:55:42.61 ID:ucSHAcZSO

提督「ってと、準備も済んだし行ってくる。 後は任せたぞ2人共」

陸奥「安心して行ってらっしゃい」

曙「お土産ショボかったらはっ倒すから」

提督「観光じゃないっちゅうねん! そんじゃ!」ドアガチャ

陸奥「……行ったわね、それじゃ何からしようか?」

曙「え、それを私に振るの?」

陸奥「言わば私は今日1日提督代理、そして曙は提督の秘書艦だから今は私の秘書艦でもある、そうでしょ?」

曙「いやまあそれはそうだけど……何って言われても」

陸奥「その反応を見る限り、急ぎの仕事や任務はないみたいね。 それじゃ少しサボっちゃおうか」

曙「サボる、ってアンタそれでもビッグセブンなの?」

陸奥「それは戦艦陸奥の話、私は私よ。 そういう訳で曙には提督とのデートについて洗いざらい喋ってもらうわ!」

曙「なんでどいつもこいつもその事についてばかり食ってかかってくるのよ……」

陸奥「人様の色恋沙汰に食い付かない女子がいる訳ないじゃない? それが身内ともなればより盛り上がりは増すのよ!」

曙「私がそんなのと縁あるわけないでしょうが、他当たれ他」

陸奥「だからこそじゃないの、そんな冷徹で恋の欠片もなさそうな曙が提督とデートしたって言うから皆驚いてるのよ?」

曙「……ねえ、すっごい今更なんだけどどうしてアンタ達がそのこと知ってるわけ? 金剛の時に気付くべきだったわ」

陸奥「え? ああ、私は漣ちゃんがそんな話をしていたのを聞いただけよ。 私は言いふらしてないけれど、他の誰かが聞いては言いふらしたりしたんじゃないかしら? 漣ちゃん自身も色んな子に話してたし」

曙「漣をシメなきゃ」

284: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/22(日) 07:28:11.33 ID:D+RIo1SQ0

陸奥「さ、そういう訳で遠慮なくどうぞ! なんならボイスレコーダーも用意しちゃう!」

曙「私に恋の欠片もないって言うなら、そういう感情も特にないって分かるでしょうが……こんなん聞くだけ無駄よ」

陸奥「分からないわよ? 恋心は突然生まれるものだもの、昨日はなくても今日にはあっても不思議じゃないわ」

曙「……アンタは潮と話してる方が楽しいと思う」

陸奥「とにかくはぐらかしてないで! いいのよ!」

曙「……人に話させる前に自分が話したらどうなのよ」

陸奥「んー?」

曙「デートしろ、ってアイツに言ってたけどアンタはアイツのことどう思ってんのよ」

陸奥「あら、それ訊いちゃう? それに質問を質問で返すなんてズルいのねぇ」

曙「さっそくはぐらかしてくれちゃって。 そんなんじゃ私も答える理由がないわね」

陸奥「うーん、でもいいのかしら? つまり私が貴方の質問に答えたら、貴方も私の質問に答えてくれるって事よね?」

曙「えっ」

陸奥「どうしようかなぁ、あんまり話すような事でもないのだけどー」

曙「ちょ、今の無し! 無しだから!」

陸奥「せっかく大義名分を与えてくれたんだし、乗っからないと損よねぇ? それなら曙の質問に答えちゃおう!」

曙「無視すんな! それでもビッグセブンかってのー!」

287: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/22(日) 22:01:43.35 ID:D+RIo1SQ0

陸奥「そうね、提督のことをどう思ってるかというとー、好きよ? うん」

曙「い、言い切ったわね」

陸奥「だけど曙の思うのとは多分違う。 あくまで人として、ね」

曙「どういうことよ?」

陸奥「男女の恋愛的な好きじゃなくて、彼を上官としては慕っているの。 それだけよ」

曙「いやでも、アンタデートって、それは」

陸奥「羽を伸ばしたいのは本当のこと、その口実に貴方を使わせてもらっただけよ。 使えるものは使わなきゃ、ね?」

曙「え、ええ……?」

陸奥「あら、何やら納得していないみたいね?」

曙「私でもよく分からないんだけど……好きでもないのにデートて」

陸奥「頭が硬いのね、それに貴方が言えたことかしら?」

曙「うぐ、それはその」

陸奥「デートだなんてのは言葉のあやくらいに考えておけばいいのよ、そんな深く考えるようなことじゃないわ。 そういう風に囃し立てられるのが嫌なら気にしなければいいじゃない」

曙「……大人の余裕があればこそなせる技ね」

陸奥「貴方もまだまだ子供ってことね」

288: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/23(月) 00:29:37.14 ID:CXhZg3+20

曙「あ、慕ってるとか言ってたけど、アイツのどこに慕えるようなところがあるのさ」

陸奥「ん? そうねぇ、何をしても許してくれるところかしら?」

曙「」

曙「いやいやいや、どうなのよそれは」

陸奥「凄く大雑把に言ったら、ね。 そうでもないとあんなことしないわよ」

曙「あんなこと……? ああ……」

陸奥「さっきも言ったけど彼、普段から
おちゃらけていてばかりでしょう? 他の司令部、というか他所の司令官を見たことは何度もあるけれど、ウチほど空気は緩んでないし、彼ほどテキトーなちゃらんぽらんは見たことないわね」

曙「アンタ、怖いもの知らずね……」

陸奥「そっくり返したげる。 で、ふざけてばかりの彼だからとでも言うのかな、彼のふざけている範囲内でなら私達が何をしても許してくれるというかね」

曙「買い被り過ぎでしょ、あんなんその場その場で刹那的に生きているだけよ」

陸奥「手厳しいのね? だけど貴方も彼の寛容さの恩恵に預かっている。 身に覚えがないとは言わせないわよ?」

曙「それは、まあ……」

陸奥「私はこの司令部が好き。 長門や曙、他の皆のことも。好きな皆と笑い合えるこの場所が好き。 こんな場所を作り上げてくれた彼のことも。 今更他の司令部には行けないわね」

曙「よくもまあ好き好き言えるわね……聞いてるこっちが凄い恥ずかしいんだけど」

陸奥「だって本当のことだもの?」

曙「いやそれにしたってどうかと」

289: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/23(月) 03:24:40.56 ID:CXhZg3+20

陸奥「さ、私は洗いざらい話したんだから今度は曙の番よ!」

曙「うげえ、話すことなんて何もないってえの」

陸奥「そんなこと言ったって逃がさないわよ? 貴方の口が割れないのなら望むところではないけれど、漣ちゃんに訊いたって良いわけだしー」

曙「うっわ、卑怯だこのびっくりビッグセブン」

陸奥「ホラ、大人しく口を割れば良いのよ! 単純に好きか嫌いかでもいいからー!」

曙「しつこいなあ! 私にとってアイツはそんなんじゃないのよ! なんかもうもっとめんどくさいの! フン!」

陸奥「あら、どこ行くのって、宿直室?」

曙「見て分かる通り寝不足、ってか寝てない、だから少し寝る、他に用が出来たら起こして、おやすみ!」ドアガチャ-

陸奥「おかんむりねぇ。 はねっかえりな妹がいたらこんな感じなのかしら」

陸奥(まあいいか、洗いざらいは話してないからこれ以上つっつくのは勘弁してあげる)

陸奥(私の立ち入る隙も無いからね、彼。 だからさっさと攻略しちゃいなさいな)

301: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/24(火) 07:39:43.37 ID:x1DtKNXO0

 赤色は私を疎み、嫌い、攻撃する敵。

 灰色は私を歯牙にも掛けず、叩きも守りもしない、無関心な存在。

 青色は偽善者も含め、私の側に立とうとする奇特な奴。

 本当にそう見えていたわけではないけれど、少し前の私にとっての世界はその3色だけで構成されていた様に思う。

302: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/24(火) 07:53:44.42 ID:x1DtKNXO0

執務室付属宿直室・昼——


陸奥「あ・な・た、早く起きて? もう時間なんだから、遅刻しちゃうわよ?」

曙「…………」

陸奥「あ、起きた。 おはよう曙、目覚めはいかが?」

曙「すっごい妙な気分……ていうか何してんのアンタ」

陸奥「様々な世代の男性に訊いた、妻や彼女に求めるシチュエーション100選。 雑誌に載ってたの」

曙「どうしてそれを私にやるのよ……起こしたってことは何か用なの? 今何時よ」

陸奥「丁度お昼よ。 眠いにしても、お昼ご飯くらい食べたらどうかなって」

曙「……ん、それもそうね」

陸奥「それじゃ、曙の手料理を堪能させてもらおうかしら」

曙「何言ってんの、作るわけないでしょ? 食堂行くわよ食堂」

陸奥「えー? 今の私は提督代理よー?」

曙「いい大人が・膨らませてワガママ言うんじゃないの」

曙(そう言えば陸奥が何歳かは知らないな……)

303: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/24(火) 08:10:17.45 ID:x1DtKNXO0

執務室前——


曙「それにしても昔の夢を見て寝覚めが悪い」ドアガチャ

陸奥「昔の夢? 前世の方?」

曙「現世の方。 前世の方も見て気分のいいものじゃないけどね」

陸奥「へえ、昔の曙ねぇ。 でも貴方の歳で昔って言うと、小学校に通ってた頃くらいしかないんじゃない?」

曙「まさしくその頃よ。 ま、人に話す様なことでもないから話さないけれど」

陸奥「へーえ? どんな夢だったの?」

曙「話さないって今言ったわよね?」

陸奥「いいじゃない? 秘密にするから、ねっ」

曙「……赤か、灰色か、青か。 それだけの夢よ」

陸奥「……? それってどういう意味?」

曙「さあね。 で、アンタは多分青かな。 というか、この司令部だと殆どが青かもね……」

陸奥「ますます謎が深まるわね……」

曙「いいのよ、わけなんて分からなくて。 そんなに世界は単純でもないし」

曙「さ、突っ立ってないで行こう、食堂で食事したら昼の業務よー」

陸奥「ああもういけず。 教えてくれたっていいじゃない」

304: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/24(火) 08:32:05.77 ID:x1DtKNXO0

食堂——


<テートクトデートシタンダッケ

<アケボノチャンダ

<ボノエッティー! ツモルハナシハヤマノヨウニアルデース!

<サワガナイデクダサイオネエサマ

<ヒトハミカケニヨラナイワヨネェ


曙「あっはっは、おとなしく食事作って執務室に引きこもってた方が良かったかしら」

陸奥「目が笑ってないわよ」

曙「……正直、好奇の視線が集中してるのは耐えられない」

陸奥「あらあら、汗が滝みたい」

漣「お、ぼのやんとむっちゃんさんじゃーん? ご一緒してもいいー? しちゃうよーしちゃいましたー」ガタン

陸奥「あら、七駆勢揃いで。 丁度お昼?」

潮「そうなんです、訓練も終わったので」

朧「それで昼ご飯を食べに来たら何かざわついてるなって……曙、クマもあいまって不審者の様相を成しているけど、大丈夫?」

曙「あー、うん、多分」

漣「呼んだクマ?」

曙「似てない」

漣「酷いクマ」

球磨「呼んだクマ?」

曙「呼んでない」

球磨「分かったクマ」

305: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/24(火) 08:45:56.10 ID:hz5Xm3NDO

陸奥「うーん……まあ、皆の視線がこっちに集中してるのは流石に居心地が悪くないかしら? って、訊くまでもないと思うけど」

曙「でも、1度来てから逃げたらそれはそれで何か、負けな気がする」

朧「何と戦ってるんだか」

陸奥「でもいいの? 今朝も言ったけど、他者の色恋沙汰で盛り上がらない女子はいないし、ましてやここは女の園みたいな場所なんだから、質問やら何やらの集中爆撃を受けても知らないわよ?」

曙「全員が潮状態……!?」

潮「曙ちゃん、どういう意味かなそれ」

球磨「皆でこぞって曙に何を訊くつもりだクマ?」

漣「多分球磨型の皆さんにだけは無縁そーなこと、ってまだいたんだ」

球磨「無縁とは失礼クマね、わざわざ訊いてもしょうがないことを訊いてどうするつもりだってことクマ」

漣「お、おう? 意外と意外なところから意外な意見が」

306: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/24(火) 09:09:48.37 ID:x1DtKNXO0

球磨「大体、曙から話を聞いてどうするクマ、聞いても曙にはなれないし全く同じことは出来ないし、全く同じことが出来たとしたらそれはそいつじゃなくて曙クマ、まるで意味がないクマよ」

曙「あの、球磨……?」

潮「つ、続けてください」

球磨「勿論誰かの良いところを真似ることに意味がないとは言わないクマ、だけどそれよりも確実なのは自己を高めることに他ならないクマ!」

朧(何かズレてる気がする)

球磨「己が未熟なまま誰かを真似たところで猿真似にしかならないクマ! どうせ真似るのなら真似るのではなく吸収してしまえばいいクマ! 吸収することが出来るほどになるまでには自己鍛錬あるのみクマよ!」

<ナ、ナルホド

<ナンカソンナキガシテキタヨ

<ヘーイシスターズ! コレカラベリーベリートックンハジメルネー!

<ゴコーセンノコタチニハマケラレマセン

漣「な、なんかよく分かんないけど球磨さん凄い説得力というか迫力……!」

陸奥「……ねえ球磨ちゃん」

球磨「なんだクマ?」

陸奥「皆が曙に何を訊くつもりだったか、分かってる?」

漣「へ?」

球磨「む? 曙が提督に稽古をつけてもらったって話じゃないのかクマ?」

潮「えっ」

朧「そんなことだろうとは」

曙「……何それ。 誰から聞いたの?」

球磨「木曾が天龍から聞いたって言ってたクマ。 その天龍は長門から聞いて、長門は雷から聞いて、後は知らないクマ」

曙「……伝言ゲームみたいね、なんか」

漣「どこで捻じ曲がったのやら」

311: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/25(水) 22:55:26.03 ID:osFZeABR0

漣「球磨さんや、真相はかくかくしかじかで」

曙「それも語弊があるんだけど」

球磨「……マジクマ?」

漣「大マジッスよセンパイ」

球磨「確かに色恋沙汰は無縁、というか専門外クマ……ハッ! 適任がいるクマ!」

曙「却下で」

球磨「せめて話だけでもさせて欲しいクマ」

曙「聞くまでもない、そもそも周りが勝手に盛り上がってるだけで私とクソ提督には何にもないし」

球磨「何にもなかったらデートなんてしないはずだクマ」

曙「元々ただの買い出しのはずだったの。 それにアイツだってデートじゃないみたいなこと言ってたし」

球磨「当人らがどう思おうとも、男と女が2人連れ添って出歩いていればそれをデートと言わずに何と言うクマー!」

曙「ねえ、この鎮守府って漣理論流行ってんの?」

漣「理論ってーかね」

陸奥「割と一般的な認識だと思うわ」

313: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 04:54:59.99 ID:kZ47dMbx0

曙「漣理論の蔓延はどうでもいいとしても、私の口からは何も話すことなんかないから。 I don't speak.OK?」

球磨「ふむ、無理に口を割ることもないクマね、分かったクマ」

曙「話の分かる子は好きよー」ナデナデ

球磨「えへへー、歳上は可愛がるんじゃなくて敬えクマ」

曙「説得力のない顔しといて何を言うか」

漣「球磨さんは皆のマスコットだよねー」ナデナデ

曙「……どうして私が撫でられてるわけ?」

漣「こーすればぼのやんもデレるかと思って」ナデナデ

陸奥「なるほど、そういう手もあるわね」ナデナデ

潮「あ、じゃあ私も」ナデナデ

朧「なら私も乗っかろうかな」ナデナデ

球磨「球磨も撫で返すクマー!」ワシャワシャ

曙「ちょ、アンタら」

漣「よいではないか、よいではないか」ナデナデ

潮「曙ちゃんが素直になりますように」ナデナデ

朧「撫でてれば物理的に柔らかくなるかもね」ナデナデ

球磨「曙の髪はなんかいいニオイがするクマねー、口は悪いけどやっぱり女の子クマ」ワシャワシャ

陸奥「ほーんと、ちょっと本気を出せばすぐなのにねぇ」ナデナデ

曙「」ナデワシャナデワシャサレーノ

曙「だーもう! いい加減鬱陶しいわアンタらー!」

314: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 05:37:55.61 ID:kZ47dMbx0

漣「あんまりキレると小ジワが増えるぜ奥さん」

曙「誰が奥さんだ、アンタの顔面物理的にシワクチャにしてやるわよ!」

漣「家庭内暴力だー! 助けてママー!」

陸奥「ホラホラ、お姉ちゃんなんだからあんまりいじめちゃダメよ?」

曙「誰が姉だー! 陸奥も悪ノリしてんじゃない!」

球磨「フッフフ、それにしても曙は随分変わったクマ」

曙「は? 何よいきなり」

陸奥「あら、球磨ちゃんもそう思う?」

球磨「もちろん。 前と比べて表情がコロコロ変わるようになってるクマ。 それも感情の波が大きいのが分かるくらいに」

潮「そうですね、あんまり大声出したりはしなかったかも」

曙「そう……かな」

球磨「ま、司令部の皆がこーやって曙に構うからほぐれたのかもしれないクマねー」ホッペムニー

曙「やふぇんかい」

朧「私は皆の言う冷たい曙を知らないけどさ、こうして皆と一緒にいる曙は楽しそうにしてるよね、そう見えるよ」

漣「ビミョーに遠慮されてる感はあるかもだけどねー」

陸奥「そうなの? ママには遠慮なんてしなくてもいいのよー?」

球磨「陸奥がママなら球磨がお姉ちゃんになるクマ! 今更1人増えたところでどうとでもなるクマ!」

潮「え、じゃあ私はええと、何がいいかな曙ちゃん!」

曙「何がいいって……調子狂うな、もう」

漣「漣はちょっとよろしくない悪ダチポジションでシクヨロ!」

朧「その話はもういいから」

315: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 06:21:27.40 ID:kZ47dMbx0

曙「……皆、味方だって気付けたから、かな」

球磨「クマ?」

潮「味方?」

陸奥「それって何が、どういう?」

曙「だからっ、私が、変わったってのは……」

曙「もう、やだ! 言えっこないよこんなこと!」バタバタ

球磨「あっ、逃げたクマ!」

漣「顔面真っ赤ぼのやんは無事漣の脳内フォルダに保存されました」

朧「何かそんな恥ずかしいことでもあったのかな、一昨日の夜と同じくらいだったし」

潮「今の話の流れでそういうこと思い出すかな……?」

陸奥「照れ臭くって本心を言えないパターンかしらね」

瑞鶴「ねえ、曙どうしたの? 顔真っ赤で走ってったけど……」

漣「おや、ずいずいに叢雲様。 どったの?」

瑞鶴「私のその変なあだ名はどうにかなんないのかな」

叢雲「様付けよりマシでしょ……曙に訊きたいことがあったんだけど、まあ、アンタでもいいか」

漣「おん? なんじゃらほい」

瑞鶴「……耳こっちに寄せて」キョロキョロ

漣「はいな」

陸奥「はーい」

潮「なんなんでしょうか……」

球磨「きっとよからぬ話クマ、漣で言うワカチコって奴クマ」

瑞鶴「いやアンタらはいいから」

叢雲「別に構わないわ、コイツらは話知ってそうだし」

漣「何なのさーもう、勿体ぶらずにはよ」

朧(数人が寄せ集まって、変な光景だなあ)

叢雲「……曙が提督と夜戦したって本当?」

漣「…………はあ?」

321: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 15:00:55.24 ID:kZ47dMbx0

おまけ話「斯くして噂は広まった」

322: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 15:21:43.27 ID:kZ47dMbx0

——————
————
——

第七駆逐隊の部屋・早朝


<ナカチャンダヨー!ナカチャンダヨー!

朧「グッモーニン那珂ちゃん」チョップ

<ナカチャンダッ

漣「んんーっ、と。 今日も那珂ちゃんか……明日も明後日もずっと那珂ちゃんだろうけど」

潮「う……おはようございますー」ゴシゴシ

朧「おはよう、2人共」

漣「……あれ、ぼのやんは?」

朧「秘書艦の仕事だ、ってもうとっくに起きて行っちゃったよ」

漣「ち、昨日のことについて根掘り葉掘り訊こうと思ってたのに。 まーいいや、後でも訊けるもんねー」

潮「昨日の、って?」

漣「ぼのやんとご主人様がデートしたことに決まってるっしょ! こんなぼのやんはウルトラレアだよ!」

朧「ケータイの待ち受けにするってどうなのそれ」

潮「ああ……いい笑顔してるねえ、やっぱり」

漣「不肖漣、ぼのやんの口を割ることに身命を賭す覚悟よ!」

朧「なら同じくらい勉強も頑張ろうか」

漣「さーて着替えて朝御飯食べに行こーぜ皆の者ー」

朧「逃げた」

潮「逃げちゃダメだよ漣ちゃん」

323: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 16:40:16.76 ID:kZ47dMbx0

食堂——


漣「それにしてもビックリだよねホント」

朧「何が? ああ、味噌汁に豆腐が入ってないってことかな」

漣「ちゃいますがな、ぼのやんだよぼのやん」

潮「え、でもお味噌汁にお豆腐は必要だよ?」

漣「話の肝そこじゃないから。 漣ちゃん的には豆腐の有無はどーでもいーし」

朧「どうでもよくはないよ、豆腐の良さを分からない人とは一緒にいられないかな」

漣「そーゆーどーでもいいじゃないよ! どーでもいーけど! 漣ちゃんをツッコミに回させんなし!」

朧「まあ冗談はそこそこにしておいて、曙のことでしょ? 別につつくようなこともないんじゃないかな」

漣「何言っとりますのん! あのぼのやんがだよ! あの子がデートだっちゅーてそのまま素直に従いますかいな!」

朧「だからだって。 素直に従うような性格じゃないから、提督もデートとは言わずに別の要件で呼び出して、って感じじゃないの? 昨日の様子からしてもこうだと思うけど」

漣「そんな気はするけどそれを気にしてちゃ始まんないぜ、それに双方に話を訊かにゃあとなー」

朧「はあ、野次馬根性も程々にしとかないと嫌われるよ」

漣「漣とぼのやんはズッ友だからだいじょぶ!」

朧「何それ」

324: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 17:53:17.31 ID:kZ47dMbx0

潮「デート、デートって言ってるけど、提督の方はどうなんだろう?」

漣「んあ?ご主人?」

潮「曙ちゃんを連れ出したのは提督でしょう? その提督は曙ちゃんのことどう思ってるのかなって」

漣「そら氷解大作戦ーとか言ってるくらいだからそれなりの気はあると思うけど、どうなんだろね。 未だにイマイチ分かんねーぜあの人。 特定の誰かに色目向けてるような素振りがあるわけでもなしだし」

朧「まあ、この狭い閉鎖空間で何かしようものなら即行で知れ渡るし、内容によっては村八分待ったなしだよね。 女の敵は女とも言うし」

漣「n角関係で潰れた司令部もあるって噂もあるしねー。 まあ漣らのご主人様は誰でもバッチコイ絶倫大魔王とかじゃなくてよかったよかった」

潮「漣ちゃん、まだ朝だよ」

朧「夜なら言ってもいいってわけでもないからね?」

325: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 18:15:23.62 ID:kZ47dMbx0

浦風「何やら賑わっとおね、お邪魔してもいい?」

朧「浦風、それと浜風。 珍しいね」

漣「浦風先生おはよーさーん。 かげやん達はどったの?」

浦風「なんや、課題がまだぎょうさんある言うて徹夜でやっとる最中なんよ。 日頃から口を酸っぱくして早よ終わらし、言うとるのにコレよ」

朧「漣も見習いなよ」

漣「それはまあ、またの機会に……」

潮「浜風さん、おはようございます」

浜風「おはようございます」

潮「…………」

浜風「…………」

浦風「…………」

朧「…………」

漣「駆逐艦娘の中でも屈指の胸部装甲を持つ3人が揃いおったわ……!」

朧「そこじゃないよね」

326: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 18:32:25.66 ID:kZ47dMbx0

浜風「申し訳ありません、話を繋ぐというか、苦手でして」

朧「それはもう知ってるから平気だよ、悪気があるわけじゃないのも皆知ってるからね」

浦風「そうなんよねぇ、自分からグイグイ喋らんといけんって環境じゃないから浜風もずっとこの調子でのう」

浜風「面目ない、皆の好意というか優しさについ甘えてしまって……」

浦風「どうせなら漣ちゃんくらいに喋ってくれたら心配もいらんのじゃけど」

漣「おーう? 漣ちゃんのマシンガントークスキルは盛者必中、唯我点睛、焼肉定食の秘伝だぜ? それを学びたいってんならまず世界中に散らばる108人の煩悩の権化を揃えてからじゃにゃーと教えらんねえな?」

浦風「ほら、話を振っただけでこうよ?」

浜風「なるほど、焼肉定食……」

朧「コレを参考にするのは間違ってるってことは教えておく」

潮「四字熟語がめちゃくちゃだよ漣ちゃん」

漣「支離霧中ってね」

327: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 19:46:55.02 ID:kZ47dMbx0

浜風「本当は、皆と会話が上手く交わせればと思うのですが、いざとなると話題も思い付きませんし、相手にとってつまらない話題かも、と思うと」

朧「うーん、眉間にシワ寄せて考えることでもないと思うんだけど」

浜風「う」

浦風「小難しく考えんでええよって言うてもこう、じゃからなぁ」

漣「漣も意識してるわけじゃないからにぃ、アドバイスはちっと難しいね」

浜風「そうですか……」

潮「うーん、話せる話題があればいいんですよね?」

浜風「え、まあ、端的に言えばそうなります」

潮「だったら、とっておきの話題がありますよ!」

漣「え、潮ちゃんにそんな十八番的な話題があったっけ? おっぱいでかい?」

潮「そんなのじゃないです! それに、今話していたことですよ!」

朧「今? それってまさか」

潮「曙ちゃんと提督がデートした話です!」

328: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 21:57:59.48 ID:kZ47dMbx0

浦風「——あの曙ちゃんが、ねえ」

浜風「デート、ですか。 ですが、この話が一体私と何の関係が」

潮「話題ですよ」

浜風「話題?」

潮「つっけんどんで提督にすら一撃を入れるあの曙ちゃんが提督とデートしたという話に食い付かない人は、この司令部には多分いません。 言わばこの話題は会話を始めるためのスタートダッシュなんです」

潮「会話を始めてからは浜風さんの好きなように展開してもらっても構いません。 どう思ったとか、どう思うとか、これからどうなるんだろう、とか色々自由に引き出してください!」

浜風「どう思った、どう思う……なるほど! 素晴らしく参考になります!」

潮「もちろんこの話題以外にも、いつもと髪型が違うなあくらいでもいいんですよ? 会話のきっかけなんて人それぞれです」

浦風「へーえ、潮ちゃん詳しいんじゃねえ」

潮「えへへ、つい最近色んな人に訊いたことの総括の一部なんですけどね」

浜風「御教授ありがとうございます。 鬼に金棒とまでは行きませんが、釘バットくらいにはなれた、気がします!」

浦風「物騒な例えはやめとき、な?」

漣「ねー朧ちん、すっげーナチュラルに友達のあんまり言い触らされたくないであろう話を売られた光景を見てどう思う?」

朧「悪意のない善意が一番恐ろしいね」


陸奥「ふうん、デートねえ……」チラッ

長門「ん、なんだ?」

陸奥「別に? 貴方に女子力をお裾分けしてあげて欲しいなって思っただけ」

長門(女子力……?)

330: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/26(木) 23:18:17.88 ID:kZ47dMbx0

————
——


浦風「いやあ、それにしても驚きじゃねえ」

浜風「何度言えば気が済むのですか、それ」

浦風「そりゃあだって、あの曙ちゃんじゃけん、驚くのも無理はなかろ?」

浜風「まあ、クールな印象はあるけれど」

浜風「それよりも曙と言うと、浦風と決闘騒ぎまで起こしていたことの方がすぐに思い出せる」

浦風「ちょ、そげなこと思い出さんでいいやんね、いらんこと言わんの」

浜風「曙が提督のことをクソ提督と呼ぶのが気に食わないという口喧嘩からまさかあそこまで発展するとは思いも」

浦風「皆まで言わんでええわ! 早よ講義行きんさい!」

浜風「分かった、分かったから押さないの。 浦風もこの後の遠征、気を付けて」

浦風「まったくもう……そんにしてもデートかぁ。 隅に置けん奴じゃねぇ、ふふっ」

336: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/27(金) 11:09:42.86 ID:3+ufr6Js0

浜風side・講義室——


<ワイワイガヤガヤ

浜風(潮から人と話すための話題を提供してもらえたのはいいけれど、話の切り出し方が分からない)

浜風(既に会話を始めている人達のところに行くのも、邪魔しては悪いし)

浜風(それに、講義は別の司令部と共同ですし見知った人でも別人という可能性も……まったく同じ顔でないにしても似た顔立ちをされると紛らわしいものです)

浜風(難しく考えることではないと言われたけれど、私にはハードルが——)

大井「ごめんなさい、隣、いいですか?」

浜風「わ」

大井「あら、驚かせてしまったかしら」

浜風「ああ、あの、いえ、どうぞ」

大井「ふふ、そんなにかしこまらなくていいですよ」

337: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/27(金) 11:35:06.19 ID:3+ufr6Js0

浜風「あの、何故私の隣に……」

大井「言うほどの理由なんてないですよ? 手頃な席がここだっただけですし」

浜風「そうですか」

浜風「…………」

大井「…………」

浜風(会話が途切れてしまった……)

浜風「…………」ジーーーッ

大井(なんかすっごい見られてる……)

浜風(この大井さんは私の知る大井さんだけども、何か普段と違うところは……)

浜風(いきなりあの話をするのは突拍子もないし、まずは何か牽制が出来れば)ジーーーッ

大井(言いたいことがあるならとっとと言ってくれた方が気が楽なんだけど……それとも隣に座られたのが気に食わなかったの?)

浜風「あ」

大井「え」

浜風「服、違いますね、その制服は改仕様の物では……」

大井「ああ、改二のだと寒いですから。 ほら、お腹出てるでしょ? それに今日は出撃任務もありませんからいいかなーって」

浜風「なるほど……」

浜風(我ながら上出来なのではないでしょうか、今のは。 この調子で畳み掛けよう)

大井(あれだけ凝視しといて言いたかったのはコレだけなのかしら)

浜風「時に、大井さん」

大井「はい? なんでしょう?」

浜風「デートをしたことはあるでしょうか?」

大井「……はい?」

338: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/27(金) 12:08:24.45 ID:3+ufr6Js0

大井「急に話が飛びましたね……」

浜風「いやその、そうではなくてその実は曙がかくかくしかじかということらしく」

大井「え、曙さんが? 嘘でしょ?」

浜風「信じ難いとは思いますが、友人である潮から聞いた話ですから信頼に足るかと」

大井「それでもちょっと……胡散臭いとまでは言わないけれど」

浜風「そこまでの話、ですか?」

大井「そりゃそうですよ、普段の彼女の提督への言動を見聞きしていればね」

大井「私の知る中では、『汚物にまみれて死ねヘドロゾウリムシ』と提督に言っていたのが堂々1位の悪態です」

浜風「むしろ提督が何をして曙にそれを言わせたのかが気にかかるところなんですが」

大井「まあ、最近はすっかり丸くなりましたけどね。 ドラム缶に詰め込んで沈めてやるって言ってたのが最新かしら?」

浜風「それもどうかと」

340: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/27(金) 13:25:02.53 ID:3+ufr6Js0

大井「そんなこんなで、彼女が提督とデートしたなんて到底想像も、信じることも、ね。 それくらいのレベルなんです」

浜風「本当の話だと思いますが……漣にそのデートの時であろう写真を見せてもらいましたし」

大井「彼女と提督の仲を考えると過程をいくつも飛び越えてますけどね。 一体何がどうしてそうなったのやら」

大井「と、そろそろ講義、始まりますよ。 お喋りはここまでにしときましょうか」

浜風「あ、はい。 そうですね」

浜風(浜風、やりました。 助言があったとはいえ独力で会話を繋ぐことに成功しました)

浜風(これも全て潮の、いえ、潮先生のお陰です。ありがとうございます)

大井(デート……デートかあ)

341: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/27(金) 14:46:57.81 ID:3+ufr6Js0

————
——


大井「チッ、今回もまた課題てんこ盛りにしてくれちゃって。 私達艦娘がそんな簡単に課題こなす時間作れるわけないってのに、どこの教師か教授か何か知らないけど少しは考えろっつーの」

浜風「大井さん、どうかしましたか?」

大井「はっ、いいえ! 別になんでもありませんよ! おほほ」

浜風「そうですか……? 私は他の講義がまだありますから、失礼します」

大井「ああ、はい! お疲れ様です」

浜風「ではまた」

浜風(この調子でどんどん行こう……!)

大井「ええ、また」

大井「……勉強熱心ねぇ。 にしてもあんな風に話をする人だったかな」

北上「よっほー大井っち、暇だから来たよー」

大井「北上さん! 迎えに来てくれたんですか?」

北上「いんや、訓練飽きたし暇潰しにブラついてただけ」

大井「ああんもう、北上さんったら♪」

342: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/27(金) 16:28:12.38 ID:3+ufr6Js0

大井「そうだ北上さん! 私達もデートしましょう!」

北上「おおう、えらく唐突だね? ってか、も、ってどゆこと?」

大井「何やら曙さんと提督がデートをするほどの仲になっているらしくて」

北上「うぇ、あの曙が? マジで?」

大井「大マジです、さあさ早くプランを建てに行きましょ」

北上「ついでに諸々の話を聞かせてもらおうかなー」

北上「でも私らの場合デートって言わなくない? 男女じゃないしこの近辺あんまり行くとこないしー」

大井「細かいことはいいんです! ほら善は急げです、2人には負けられませんよ!」

北上「どーゆー勝ち負けなんだかなあ」


足柄「」コソッ

足柄「提督と曙が? 本当に?」

343: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/27(金) 17:11:57.99 ID:3+ufr6Js0

甘味処「間宮」——


足柄「——とゆーわけよもー、先越されたぁー」グビー

那智「そう腐るな、あの2人はお似合いだと思うがな」

間宮「あのー」

足柄「似合う似合わないじゃないのぉー、私だっていちおー提督のこと狙ってたんだからー」

足柄「ビジュアルまあよし、職業安定、人柄も悪くはなしでぇ。 せっかく身近にいたそこそこ良条件の人だったのにー」グビー

那智「そうは言うがな足柄、貴様は提督に対してアプローチか何かはしたのか?」

足柄「してない……」

那智「だろう? そんな体たらくで愚痴を吐くのは2人に対して筋違いじゃないのか?」

足柄「わかってますぅー、わかってるんだけどー」グビー

間宮「あのー」

足柄「はぁ……逃した獲物は大きいにゃあ……」

那智「何、星の数だけ男はいるさ。 同じ星は無くとも次を探せばいいだけだ」

足柄「その次はいつ見つかるってえのよ」

那智「……いつか見つかるさ」

足柄「あーもう! ヤケ酒よヤケ酒ー! 飲まなきゃやってらんないわー!」グビー

間宮「あのー」

足柄「おかわり!!」

間宮「オレンジジュースをビールみたいに飲むの、やめてもらえません? ジョッキまで持ちこんで……」

那智「茶番の舞台にして申し訳ない」

足柄「おつまみー!」

那智「貴様もいい加減にしておけ」

344: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/27(金) 21:13:47.99 ID:oHi5ImzLO

那智「む、もう昼か。 どうせ食べるならまともな食事にしておけ」

足柄「どうせ行くなら鳳翔さんとこで朝までホンモノの酒浸りコースで……」

那智「寝言を言うな、これからまだ仕事もあるんだぞ」ズルズル

足柄「やーん、まだ飲み足りないのぉー!」

間宮「……酔っ払いの相手も大変そうね。 鳳翔さんは凄いわねぇ……」

電「あっ、間宮さんなのです」

間宮「あら、電ちゃん。 六駆の子達と阿武隈ちゃんに浦風ちゃんも。 遠征帰り?」

阿武隈「はい、南方海域の方に輸送任務で」

暁「まったく、しれーかんってばレディの扱いが雑なんだから! あんなにドラム缶持たせて……」

浦風「文句言わんの。 皆頑張ったけぇ、何か奢っちゃるき」

雷「ホント!? やったあ!」

響「Большое спасибо……じゃない、ありがとう」

暁「あ、暁はそんなんじゃなびかないけど、どうしてもと言うなら……」

電「浦風さん、ありがとうなのです!」

阿武隈「浦風ちゃんは相変わらず面倒見がいいよねぇ」

浦風「阿武隈さんがね」

阿武隈「え゛っ、アタシ!?」

暁「」チラッチラッ

響「」キラキラ

雷「」キラキラ

電「」キラキラ

阿武隈「……奢るケド」

浦風「もちろんウチにも、ね」

阿武隈「前言撤回しようかなぁ……」

355: ◆1VwSTfn.DM 2015/11/30(月) 13:34:16.53 ID:UvJEjJZS0

六駆「「「「いただきまーす!」」」」

阿武隈「あはは、嬉しそうで何より……」

浦風「阿武隈さんは食べんの?」

阿武隈「お昼ご飯まだだし、先に甘いもの食べるのもって感じで」

浦風「ふうん? 几帳面なんやねぇ」

阿武隈「浦風ちゃんは意外にルーズというか自由というかそんな感じだよね……バッチリ食べてるし」

浦風「んー、他者の厚意に甘えるべき時には甘えとかんとね」

阿武隈「甘え過ぎだと思う」

電「そういえばさっき、足柄さんが那智さんに引きずられていたのです」

暁「それ私も見たわ、何だったのかしらアレ」

響「ダメな大人の典型」

暁「そういうことじゃなくって」

雷「ねー間宮さん、何か知ってる?」

間宮「え? そうね、確か提督を取られたとかなんとかって」

雷「しれーかんを取られた? 誰に?」

響「そもそも司令官は誰のものとかではないけど」

電「しれーかんは皆のものなのです!」

響「まずものと言うのをやめよう」

間宮「確か……なんでも、曙ちゃんが提督とデートしただとかお似合いだとか、そんな話をしていたわね」

浦風「あらま、その話? ウチのおらん間に広まっとるんじゃねぇ」

浦風(漣ちゃんか、もしかしたら浜風かのう)


次回 提督「あけぼのちゃんはツンドラ」 後編