1: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:03:25.57 ID:ruMvvuue0
むかーしむかし。とはいっても、そう遠くない昔のお話。

とあるお茶の名産地、うなぎパイが有名な地方に、一人の女の子がいました。

彼女は自信もなくて、性格も暗い女の子でした。

女の子らしいセンスもなくて、オシャレもよくわからない……

そんなやぼったくて、どこにでもいる普通の女の子でした。


でも、そんな彼女があら不思議!


たった一つのきっかけと

たった一つの道具が彼女を彩ったその瞬間に

見える世界は彩度を増して、クリアになって輝き始めました。

硝子の靴を履いたシンデレラが人生を変えたように、彼女の人生は、眼鏡によって変わったのです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457010205

引用元: モバP「まほうのメガネ」 


 

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3: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:05:42.77 ID:ruMvvuue0
「え~!? このコスメチョ~良くなぁい?」

「うん、アタシもそう思う~」

「ってか、このコーデも良い~、アタシもこんなのしたいな~」

クラスメイトの女子はみんなでファッションやコスメの話をして盛り上がっていました。

しかし、彼女はそれらにはあんまり興味がなく、別のことばっかり考えてしまう女の子でした。

考えているのは好きなお茶のことと、猫のこと。

なんのとりえや特徴もないと思っていた彼女は、ぼーっとしたままで

「今日は縁側にいつものミケちゃんが来るといいなぁ」

そんなことを考えながら、放課後の教室からは足早に退散していました。

彼女はどこにでもいる、普通で、気弱で、無個性な女子高生だったのです。

4: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:07:44.22 ID:ruMvvuue0
彼女は基本的に勉強は嫌いじゃないので、成績は悪くありませんでした。

勤勉さはどこかの誰かによく似ている、そんな気もします。

ただ、勉強のせいかはわからないけれど、視力は落ちてしまい……。

彼女は、ある問題を考えなくてはいけなくなりました。



眼鏡 or コンタクト



視力の悪い人なら誰もが直面するこの問題を。

「これ以上私がやぼったくなるのは流石に良くないよなぁ……」

オシャレやコスメに興味がないのは自覚していたけれど、それを開き直ってはいけないとも思っていた彼女。

一応、女子高生としては真剣に考えなければいけない問題だとは思っていました。

「コンタクトでもいいかもな、眼鏡はやぼったいし、うん」

彼女がそう思ったときでした。

5: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:08:21.22 ID:ruMvvuue0
「……の中、書きかけのラブレター まだ見ぬあなたに 思いを馳せる♪」

何気なくつけていたテレビの音楽番組から、不意にアイドルソングが聞こえてきました。

「なんてかわいらしい歌なんだろう。こんな女の子に私もなれたらなぁ……」

歌っているアイドルが気になって、彼女は近づいて画面をよく見てみました。

しっかり観ないと一生後悔する! とまで思っていたみたいです。



「そっと、瞳を閉じるから……

―――魔法をかけて!」

6: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:11:25.12 ID:ruMvvuue0
テレビ越しでも伝わる、熱気に満ちた歓声の中心にいたのは、眼鏡をかけた有名アイドルでした。

そのアイドルは彼女とほとんど歳が変わらないはずなのに、きれいでのびやかで、とてもエネルギッシュでした。

そして何より、今まで見たどんな女の子よりかわいかったことに彼女は驚きました。

「かわいい、眼鏡があるのにかわいい! いや、眼鏡があるからかわいい!」

彼女は、思わず力をこめて叫んでしまっていました。

今でも彼女の母親は、その日の彼女の眼の変わり方は、今まで見たことがないものだったと語っています。

8: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:14:11.20 ID:ruMvvuue0
翌日、さっそく彼女は眼鏡を買いに行きました。

「どんな眼鏡が似合うかな?」

そう思い試着を延々と繰り返すうちに、眼鏡を選ぶ手が止まらなくなりました。

どの眼鏡にも個性があって、かけるたびに新しい自分に出会えたからです。

10: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:16:23.43 ID:ruMvvuue0
シンプルな黒縁、大胆な赤、知性を感じさせる青、オトナのヒョウ柄……

都会風のボストン、まじめなスクエア、落ち着きのあるウェリントン……



眼鏡をかければかけるほど世界の見え方は増えて、彼女の魅力も変わっていって。

クラスの女子が持ってる雑誌の服もコスメも光輝かせることが出来なかった彼女の世界を、眼鏡はきらきらとさせました。

「どんな私にもなれる! なれますよ!」

ピンク色の、オーバル型の眼鏡を買ったその瞬間に

今までの世界も、これからの未来さえも、くっきりはっきり見通せるような気がしました。

11: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:17:31.55 ID:ruMvvuue0
それからの彼女は、見違えるように明るくなりました。

積極的に人と話し、いろんなことにチャレンジしたいと思うようになりました。

この前向きさは、フレームとレンズでできた、魔法の道具のおかげです。

あと、眼鏡の魅力を教えてくれた、どこかのアイドルのおかげかな。

12: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:18:46.16 ID:ruMvvuue0
高校三年生になり、18歳の誕生日を迎えた彼女は将来についても考え始めました。

「眼鏡のような存在になりたい」

誰かの人生に彩りを加えられたらどんなに幸せだろう、と思うようになりました。

もちろん、あの時テレビで見たアイドルへの憧れもありました。

彼女は今まで振り絞ったことのないほどの勇気を出して、履歴書をアイドル事務所に送ったのです。

そして現在

彼女は好きなものを好きでいる人の味方となり、多くの人を笑顔にするアイドルになりましたとさ。



めでたしめでたし

13: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:19:30.19 ID:ruMvvuue0
「どうだ、これでもオファーを受けてはくれないか? 眼鏡の似合うカワイイアイドルさん」

「……負けました。ここまで言われてダメなんて言えませんよ」

「ニヤニヤしてんぞ、アイドルさん」

「もう! そういうことは言わなくてもいいじゃないですか!」

14: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:20:27.09 ID:ruMvvuue0
―――346カフェ

比奈「っは~。たまには太陽の下、お昼からコーヒー飲むのもいいっスねぇ」

春菜「比奈ちゃんはもっと自分の体をいたわるべきですよ! あと眼鏡をもっと愛するべきです!」

比奈「いやー……春菜ちゃんにはかなわないッスよ……」

春菜「いいから、さ、この眼鏡なんてどうですか? ちょっと大人なデザインでですね!」

比奈「いや、アタシは楽だから眼鏡ってだけで……」

P「お~、いたいた。春菜はそのへんにしとけよ、先生が困っていらっしゃる」

春菜「プロデューサーさん! 今日も眼鏡が似合ってますね!」

P「ありがとな。ちょっと隣を失礼するよ」

比奈「助かった……でもプロデューサー、先生って呼ぶのはやめてほしいッスよ」

15: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:21:58.98 ID:ruMvvuue0
P「夏の祭典に向けた原稿づくりを理由に俺のスカウトを適当にあしらっただろ、先生」

比奈「過去のことをどんだけ根にもってるんスか!」

P「過去は消せないからな、仕方ない」

春菜「私はただ眼鏡の良さをわかってもらうための活動をしていただけですからね?」

P「春菜はもうちょっと自重しなさい……他の事務所さんにも噂が広まってるくらいだからな」

比奈「そうなんスか! 春菜ちゃんすごいッス!」

春菜「えへへ、ありがとうございます! それはそれで恥ずかしい気もしますが、眼鏡のためですからね、仕方ありませんね!」

P「褒めてもいないし、仕方なくもないぞ……」

16: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:22:40.96 ID:ruMvvuue0
P「と、そんな硝子の靴ならぬ、フレーム付きの眼鏡をかけたシンデレラさんに仕事のお話がある」

春菜「ありがとうございます! 眼鏡を布教できるお仕事ですか?」

P「眼鏡が布教できるかはわからないけどな……俺が様々なツテやらなんやらを使ってなんとかひっぱり出した人との共演だ」

比奈「やるッスね、プロデューサー」

春菜「引っ張り出したとは?」

P「ああ、なかなかやると言ってくれなくてな。でも、とあるおとぎ話をしたら快く引き受けてくれたよ」



P「フルリムの、オーバル型メタルフレームがな」

17: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:24:55.62 ID:ruMvvuue0
春菜「ほ、本当ですか!? え、え、本当に本当ですか!?」

P「当たり前だ、嘘をついてどうする」

比奈「おとぎ話ってまさか」

P「とあるシンデレラの話をちょっとだけ」

春菜「まさかプロデューサーさん、私のことをどう話したんですか!? うう、恥ずかしい……」

18: ◆ji5zpvWQ2s 2016/03/03(木) 22:25:47.35 ID:ruMvvuue0
P「話してしまったのは申し訳ない。でもこうでもしないと出ると言ってくれなかったんだ。最初は『もう私はアイドルじゃないので無

理です』の一点張りでなぁ……苦肉の策だったんだ、理解してくれ」

春菜「うう……でもそれで出ていただけるようになったから、プロデューサーさんには感謝です!」

P「俺の力というよりは、お前だったから実現したんだぞ、春菜」

春菜「ありがとうございます! これからも私は人生において、眼鏡のために全力をつくしますよー!」

P・比奈「あくまでアイドルが本業だからな(ッスからね)!?」

おわり