1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 20:50:40 ID:YA5vSoo.
悪人「ひ、ひいいっ! ま、待ってくれぇ……命だけはっ!」

悪人「命だけは助けてくれぇっ!」

ヒーロー「……」

悪人「ほ、ほら、このとおりだ! ――なっ、頼むよ!」ペコペコ

悪人「なんなら、あんたの靴の裏だってなめるぜ! だ、だからぁぁっ!」

ヒーロー「……いいだろう」

引用元: 悪人「命だけは助けてくれぇっ!」ヒーロー「……」 


 

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2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 20:52:20 ID:YA5vSoo.
ヒーロー「ただし、二度と悪さをするな」

ヒーロー「もし今度お前が悪さしてるのを見かけたら、次は容赦しない」

ヒーロー「いいな?」

悪人「へ、へへへ……ありがとうございやす! ありがとうございやすぅぅぅ!」

ヒーロー「……」クルッ



悪人「……」ニヤッ

3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 20:53:00 ID:YA5vSoo.
ヒーロー(この手の悪党の行動パターンは嫌というほど熟知している……)

ヒーロー(どうせ背を向けた私に、卑劣にも攻撃を仕掛けてくるんだろう?)

ヒーロー(さぁ、来るがいい。その時がお前の最期だ!)

4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 20:54:26 ID:YA5vSoo.
悪人「助かったぁぁ……」ホッ



ヒーロー(――来ない?)

ヒーロー(何故だ!? いったいなにをしている悪党!)

ヒーロー(お前が飛びかかってきた次の瞬間、私のパンチはお前を粉砕するだろう!)

ヒーロー(なのに何故飛びかかってこない!?)

5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 20:57:53 ID:YA5vSoo.
女「トドメを刺さないなんて優しいわね」

仲間「奴はしょせん口だけの小悪党だし、トドメを刺す価値もなかったってことか?」

ヒーロー(いや……違う! そうじゃないんだ!)

ヒーロー(私が今までに出会った命乞いする悪党は、私が許してやったとたん)

ヒーロー(全員不意打ちを仕掛けてくるタイプだった)

ヒーロー(なのになぜ、今回のあいつは仕掛けてこないんだっ!?)

6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:01:32 ID:YA5vSoo.
ヒーロー(そうか……分かったぞ!)

ヒーロー(きっとこの場では不意打ちせず、後で奇襲を仕掛けてくるに決まってるんだ!)

ヒーロー(その方が奇襲の成功率は上がるだろうしな……)

ヒーロー(なかなか考えるじゃないか……悪党! 悪党らしい賢くゲスな考えだ!)

ヒーロー(となれば、これからは一瞬たりとも油断できん!)

7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:03:04 ID:YA5vSoo.
怪人「てりゃあっ!」バキッ

ヒーロー「ぐっ……!」

怪人「へっ、この程度かよ、ヒーロー!」

ヒーロー(さぁ来い! 奇襲をかけてこい! 今がチャンスだぞ! ほれ!)キョロキョロ



仲間「最近のあいつ、どこか集中力が欠けてないか?」

女「うん……どうしたのかしら?」

8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:04:39 ID:YA5vSoo.
ヒーロー(あれから一ヶ月ぐらい経ったが、あの悪党はまだ仕掛けてこない!)

ヒーロー(私の強さに恐れをなし、奇襲を諦めたか?)

ヒーロー(いや……そんなはずがない! そんなわけないんだ!)

ヒーロー(たっぷりと準備期間を設けて……きっととんでもない攻撃を……!)

ヒーロー(いっそ、こちらから奴に対して攻撃するか?)

ヒーロー(ダメだ! 許してやった手前、こちらから仕掛けることはできない!)

ヒーロー(ええい、早く仕掛けてこいよ! グズグズしやがって!)

9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:07:00 ID:YA5vSoo.
TV『半年前、ヒーローに敗れ改心した悪人さんが、ボランティア活動……』

TV『福祉事業にも意欲的に取り組む姿勢……』



ヒーロー(なんだと!?)

ヒーロー(バカな! あいつが改心するはずがない! 100%ありえない!)

ヒーロー(こうやって人の支持を集めて、壮大な復讐をたくらんでるに決まってる!)

ヒーロー(もうこいつがどんな攻撃をしてくるのか……想像すらできねえ!)

10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:10:17 ID:YA5vSoo.
仲間「ヒーロー! どうしたんだ!?」ドンドン

女「ドアを開けてよ! 家にひきこもっちゃってどうしたの!?」



ヒーロー「うっ、うるさい!」

ヒーロー「帰れ、帰れぇ! もう誰もこの家にはいれねえぞ!」

ヒーロー「怖い、怖いよぉ……酒だ……酒だぁっ!」グビグビグビ…

ヒーロー「ひいいいいっ! いくら飲んでも恐怖心が消えねえよおおお!」ガシャーンバリーン

11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:13:45 ID:YA5vSoo.
悪人「たああっ!」ドカッ

テロリスト「ぐぎゃあっ!」ドサッ



キャーキャー… ワーワー… ステキー!



悪人「ふうっ……」

悪人(ヒーローさんにやられてからというもの、私は自分を見つめ直し――)

悪人(善行と修行を積み重ね、ヒーローさんの真似ごともできるようになった)

悪人(しかし、私と入れ替わるように、ヒーローさんは活動をやめてしまった)

悪人(彼はどうしてしまったんだろうか……?)

12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:15:40 ID:YA5vSoo.
ヒーロー「見いつけた……」ニタァ…

悪人「!」

ヒーロー「へ、へへへ……もうひきこもるのは……やめだぁっ……!」

ナンダアレ! キャーキャー… ニゲロー…

悪人「……!?」

悪人(この人は……姿形こそ変わりきっているが……ヒーローさん!?)

ヒーロー「こっちから……てめえを、ぶちのめしてやるぅぅぅぅぅ!」タタタッ

悪人「だっ!」バキッ

ヒーロー「ぶげぇぇっ!?」ドサッ

13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:18:43 ID:YA5vSoo.
悪人「ヒーローさん!? あなた、なにやってるんですか!?」

ヒーロー「いでぇ……いでぇよぉ……」ゲフッ

悪人(酒臭い……! 顔は真っ赤で、足もともフラフラだし……)

悪人(この人にいったいなにがあったっていうんだ!?)

ヒーロー「ま、まいった……許してくれえ……」

ヒーロー「頼む……このとおりだぁ……」ペコペコ

悪人「わ、分かりました。話は見えませんが、許しましょう。とりあえず手当てを――」

ヒーロー「……なんちゃってなぁ!」グオッ

悪人「!」

14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:22:02 ID:YA5vSoo.
ドゴォッ!



ヒーロー「ひ、ひゃひゃひゃ! あーたった! あーたった!」キャッキャッ

悪人「ぐっ……!」ガクッ

ヒーロー「ひゃ~ひゃっひゃ! あひゃひゃっ! ……ひゃっひゃっ」キャッキャッ

ヒーロー「ひゃっ……ひゃっ……」

ヒーロー「……おい」

ヒーロー「今の一撃程度……てめえならよけれたはずだぞぉ!?」

ヒーロー「なぜよけなかったぁぁぁぁぁ!? バカにしてんのかぁぁぁん!?」

15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:27:34 ID:YA5vSoo.
悪人「なぜって……さっき私はあなたを許したんですよ?」

悪人「たとえ攻撃してきても、なにかの間違いだと思うのが……当然じゃないですか」

ヒーロー「……!」

ヒーロー(そうだ……そうだった……)

ヒーロー(俺も初めはこうだった……。敵の命乞いに見事にだまされた……)

ヒーロー(なのにいつしか……許しを乞う敵を、ウソと決めつけるようになり……)

ヒーロー(それどころか……トドメを刺すこと前提で許すようになっていった……)

ヒーロー(もはやそれって許してるっていわないだろ……)

ヒーロー(そしてこうして、疑心暗鬼になり……ハハ……とんだヒーローじゃないか……)

16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:30:11 ID:YA5vSoo.
ヒーロー「……なぁ」

ヒーロー「私も……やり直せるかな……? お前みたいに……」

悪人「ええ、やり直せますよ! 私でさえやり直せたんですから!」

ヒーロー「ありがとう……!」

悪人(何がなんだかさっぱりだが、相当辛いことがあったんだろうな……)



………………

…………

……

17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/03/15(火) 21:35:49 ID:YA5vSoo.
悪人「ヒーローさん、お願いします!」

ヒーロー「とりゃあ!」ドカッ

妖怪「ぐえええっ! ゆ、許してくれぇぇぇ!」

ヒーロー「いいだろう! 立ち去れ! 許す時はきっちり許す!」ビシッ

妖怪「へっ、バカな人間めぇぇ!」グワッ

悪人「だけど、倒す時はきっちり倒す!」バキィッ

妖怪「ぎぃやぁぁぁぁぁ……」

ヒーロー「大切なのは、メリハリということだな!」

悪人「はい、そういうことです!」





                                   ― 完 ―