1: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:10:07.53 ID:+RRvPwf9o

紡ぐ煙が月を隠す

蛍光灯の明かりを頼りに

ブロック塀の下を猫が歩く

ぽつりぽつり、街明かりと喧騒

口元の黒子に煙草を咥えて

彼女は一人、夜風に触れた




 愛煙家の小鳥さん



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456935007

引用元: 【アイマス】愛煙家の小鳥さん 


 

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2: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:11:11.55 ID:+RRvPwf9o

燦々と照る太陽は未だ衰えを知らず

照り返す熱に、遠く地面が揺らぐ

風をよく通す薄いシャツの中を

つー、と一滴汗が伝った

「おはようございます」

返事の代わりに帰ってくるのは

籠った空気の蒸し暑さ

誰もいない事務所を横切り

古く重たい窓を開け放つ

3: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:11:40.29 ID:+RRvPwf9o

ギシリという音と引き換えに

入ってきたのは蝉時雨

それとやはり蒸し暑い、夏の空気

じわじわと鉄を焼く様な日差し

外では排気ガスが見えそうなくらいに

ぬるいタクシーとバスが列を成す

4: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:12:29.22 ID:+RRvPwf9o

直したばかりのエアコンを回すと

無音の事務所に僅かばかりの色が灯る

冷たい風の真下に陣取り

額に張り付く髪を乾かす

「まだまだ夏……ね…」

お尻に触れる事務机の冷たさが気持ちいい

5: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:14:05.07 ID:+RRvPwf9o

冷気の誘惑を振り払って

更に蒸した更衣室に足を運ぶ

ネジの弛んだドアノブをガチャリと回し

窓のない部屋の電気をつけると

巻き上がった塵がキラキラと光る

6: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:15:15.07 ID:+RRvPwf9o

汗の染みたシャツはじとりと湿り

体から剥がれると冷たく感じた

小さなポーチからタオルハンカチを取り出し

腕、脇、胸元、首元と汗を拭っていく

「タオルがいくつあっても……足りないわね…」

腕を通した制服のシャツはひんやりと心地よかったが

ハイソックスを履く頃にはもう既に湿っていた

7: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:17:35.39 ID:+RRvPwf9o

ネクタイを締めて更衣室から出ると

丁度目の前にある鏡と目が合う

少し髪を整え、笑う

「今日も一日、がんばるぞ」

小さく自分に、言い聞かせた

8: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:19:59.43 ID:+RRvPwf9o
まだ書き終えてませんが
宜しければお付き合いください

9: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:25:24.27 ID:+RRvPwf9o

ぎしり、灰色の事務椅子に座り作業にかかる

デスクの右奥には昨晩のコーヒーの残り

「……後で洗わなきゃ」

くるりと手元で黒いペンを回す

10: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:29:11.26 ID:+RRvPwf9o

右の箱から左の箱に移し替える作業

[未]の箱から[済]の箱に、淡々、黙々と

目を通して、判を押して、記入して、調べて

たまに伸びをして、また目を通す

繰り返し、繰り返し

11: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:30:47.78 ID:+RRvPwf9o


エアコンがようやく効いてきた頃
小休止と思い、コーヒマグを持って給湯室へ
すると

とん、とん、とん

誰か、階段を昇ってくる音がする

12: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:32:07.78 ID:+RRvPwf9o


毎日の密かな楽しみ
誰だろうか、耳を澄ませる

とん、とん、とん

一段飛ばしのこのリズム
真ちゃんかしら

「おはようございます」

ふふっ、正解

13: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:33:13.24 ID:+RRvPwf9o


「おはよう、真ちゃん」

給湯室から頭を出し、迎える

「おはようございます、小鳥さん」

薄めのシャツに浮かぶタンクトップの跡
真の髪を滴る汗が外の気温を表していた

「汗すごいわね……走ってきたの?」

「いえ、自転車です。それでもこれだけ汗かいちゃって」

「ほんとすごい暑さね…今、麦茶入れるわね」

14: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:37:32.57 ID:+RRvPwf9o

給湯室のテーブルに少し体重を預けて
真は麦茶を一気に飲み干す

「やっとエアコンが効いてきたの」
「外に比べたら天国ですよ」

そんな会話をしながら、真は二杯目の麦茶も飲み干す


15: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:38:09.55 ID:+RRvPwf9o


そして、三杯目
ふぅ、と一息つき、会話が途切れる
静寂の重なるエアコンの音
不意に、小鳥が切り出す

「ねぇ、真ちゃん」

「……いい?」

16: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:40:00.14 ID:+RRvPwf9o

小鳥は胸元に手を当てた
豊満な胸が少し歪む

「ここで、ですか…?」

真の声には驚きと戸惑いが

「ちょっと……疲れちゃって……」

真に甘えるように、小鳥は声を吐く


18: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:43:11.16 ID:+RRvPwf9o

そんな小鳥に対し
眉と唇を三角にとがらせて
真はぴしゃりと注意する

「駄目ですよ、ちゃんと外で吸ってください」

「あら、やっぱり?」

小鳥は胸元の煙草に手を当て、
子供っぽく笑った


19: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:44:31.38 ID:+RRvPwf9o

屋上に出ると直射日光が目に刺さった
ジリジリと肌の焼ける感触
コンクリートの床から昇る熱
柵にもたれると少しだけ、風が通って涼しかった

20: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:46:09.43 ID:+RRvPwf9o

窮屈な胸ポケットから取り出したのは
ソフトタイプの煙草と100円ライター
それと少し膨らんだ携帯灰皿
煙草とライターはどちらも昨晩丁度切らしたので
通勤時にコンビニエンスで購入したもの

21: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 01:52:08.74 ID:+RRvPwf9o

煙草がまだあるからとライターを買い
オイルがまだあるからと煙草を買い
両方なくなっても結局は煙草を吸う
ただのニコチン中毒者
駄目なオトナだなぁ
ここに出入りする若者たちを想い、鑑みる

22: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 02:08:11.69 ID:+RRvPwf9o

綺麗に整えた爪で銀紙をはぎ
片側をとんとん、と叩くと
紙巻きタバコが一本、徐々に出てくる
出てきた一本をそのまま咥えて引き抜くと
慣れた手つきで火を点けた

23: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 02:11:47.22 ID:+RRvPwf9o

口内に煙を導き、留める
その後肺に、紫煙を流し込む
肺中に煙を充満させると

「…………ふへぇ……」

そんな間抜けな声とともに煙を吐いた

24: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 02:12:33.39 ID:+RRvPwf9o

「そんなに美味しいんですかね」

いつの間にか真も屋上に上がってきていた
春香と雪歩が来たので、留守番を任せてきました
そう、真は涼しい顔で言う
柔らかな黒髪をむわっとしたビル風が揺らす
さっきまでの汗は引き、シャツも乾いている
しかしその鼻梁には既に玉の汗が滲んでいた

25: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 02:13:05.52 ID:+RRvPwf9o

「美味しくはないわよ」
「でも吸うんですか」
「そう、吸うの」

真も柵に寄りかかり
こんこんと湧く紫煙の出処を見つめる

26: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 02:14:34.47 ID:+RRvPwf9o

「止めないんですか?」
「え?」
「煙草」

薄く笑みを浮かべて、真は煙草を吸うジェスチャーをする
言ったところで小鳥が煙草を止めることは無い
そうわかっていながら、からかう様に聞いた

27: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 02:15:46.01 ID:+RRvPwf9o

「美味しくないんでしょう?」
「そうね、でも吸いたくなるの」
「美味しくないのに?」
「そう、美味しくないのに」

そう言うと小鳥はまた、煙を吸い込んだ

「変、かしら?」
「いいえ、全然」

吐いた煙は日の熱で蒸発するかのように
すぐに細かく霧散した

28: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 02:20:10.83 ID:+RRvPwf9o

真は小鳥に肩を重ねるように、擦り寄った
風下に居る真の顔に、火種で燻された煙が掛かりそうになる

「煙草、嫌いなんじゃなかった?」

先ほどの給湯室でのやり取りを思い出す

「別に嫌いじゃないですよ。匂いも、煙も」
「さっきのはマナーとして、です」
「あと」

真は1つ、付け加える

「キスが不味いってだけですから」

29: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 02:20:45.79 ID:+RRvPwf9o

からかう様にして小鳥は聞く

「煙草味のキスは嫌?」
「美味しくはないですからね。でも……」
「でも?」

小鳥にはその答えがわかっていた
私の煙草と同じ

「美味しくないけど、また、したくなるんです」

私と、同じ

30: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 02:21:16.25 ID:+RRvPwf9o

「変、ですかね?」
「ううん」

ふー、と空に煙を吐いてから、小鳥は強調するように言った

「全然、変じゃない」

にこりと笑いかけた小鳥に
真も少し、照れて笑った



33: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 16:31:24.40 ID:+RRvPwf9o

事務所に戻ると、先程よりも騒々しさが増していた
テレビの前のソファでは亜美と真美が携帯ゲーム機で火花を散らし
その騒音をものともせず、向かい側では美希が寝息を立てる

給湯室には雪歩と春香
そしてその二人に接待される伊織とやよいが椅子を並べていた
紅茶の甘い臭いが鼻孔を擽る

応接間では貴音が響とあずさに編み物を教わっていた
マフラーをするにはだいぶ早い気もするが
あずささんのペースならきっとちょうど良いのだろう

34: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/03(木) 16:32:05.01 ID:+RRvPwf9o

そして事務所の一番奥
直射日光をもろに受ける事務机群では
律子とプロデューサーがコーヒーマグを片手に文字を打ち込んでいた

「お疲れ様です。律子さん、プロデューサーさん」

声を掛けると二人とも、画面から目を離しこちらに微笑む
律子さんは伸びを一つ
「また煙草ですか?」と少し眉を困らせる
白のブラウスを肘まで捲って
珍しく出している素足を組み替えた

37: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/05(土) 00:57:44.39 ID:QQranJbwo

プロデューサーさんは涼し気な白のワイシャツに、これまた涼し気な青色のネクタイ
エアコンが効いて室温は心地良いものの
直射日光に当てられた背中と腕は、少し汗ばんでいるように見えた。
数枚を束ねたA4用紙をパラパラとめくり、手帳と重ねる

38: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/05(土) 01:54:10.53 ID:QQranJbwo

「お疲れさまです、小鳥さん」
「お疲れ様です……今日の撮影の確認ですか?」
「はい、今日はいくつか重なってるので」

小鳥の背後に掛けられたホワイトボード
端から端まで黒のペンで予定が書きこまれる

39: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/05(土) 02:18:28.59 ID:QQranJbwo

「あの、プロデューサーさん」ふと、思い立つ
「真ちゃんの送り迎え、私が行きましょうか?」

その時間は、小鳥も手が空いていた
何より、撮影現場が事務所の近くなのでその方が効率的だ

「本当ですか?助かります」

プロデューサーさんは手帳に矢印を書きこんだ



私と真ちゃんが付き合っていることは、まだ誰も知らない

41: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/07(月) 01:36:42.26 ID:e5cPrkLEo

埃っぽさの混じる社用車のエアコン
握りこぶし程の大きさに開けた窓の隙間から
吐いた吐息がゆるりと逃げる
耳に触れるのはハザードの点滅音
フロントガラスの向こう側で
信号は赤に変わり、わらわらと人が歩き出す

42: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/07(月) 01:37:11.76 ID:e5cPrkLEo

「お疲れ様」

空いたドアに声をかける
助手席に置いていた荷物を後部座席に
すし詰め状態の灰皿には、あと何本か入るだろう

「また律子さんに怒られますよ」

そう言って真は灰皿を押し込む
埃と煙草の匂いだけが、車内には残った

43: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/07(月) 01:38:35.64 ID:e5cPrkLEo

「ただでさえ街中何処へ行っても禁煙なのに」

どこから出したのか、小鳥は煙草のソフトケースを振り、出てきた一本を咥える

「車の中でまで吸えなくなったら、堪らないわよ」

コンビニで買ったガスライターの音
また一息、煙を吐いてから
小鳥は右にウインカーを出した

44: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/07(月) 01:41:02.76 ID:e5cPrkLEo

「ダメな大人ですね」
「ダメな大人じゃ駄目かしら?」
「駄目だと思いますよ」
「ふふっ……そうね」

火の点った煙草を加えたまま

「私もそう思うわ」

小鳥は鈍く、微笑んだ

45: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/08(火) 23:37:25.06 ID:Xws2kl0fo

ガチャリと鍵を回す音がして
暗闇の部屋に明かりが灯る

「ごめんね、散らかってるけど」
「たまには散らかってない部屋に案内してくださいよ」

脱いだ靴を並べながら、真は小鳥をからかった
ふと玄関を見ると、黒のパンプス
隣には一回り小さな白黒のスニーカーがある
小鳥はその光景が、何とも言えず、好きだった

47: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/09(水) 00:25:11.46 ID:PGLWBr0Eo

「綺麗な方だと思いますけどね」

コンビニの袋をちゃぶ台に置いてから、真は部屋を見渡す
独り暮らし用の小さなテレビ、ふかふかのベッド、DVDの詰まった棚
床には数冊、アイドル雑誌
息を吸うと、女性の香り。甘い香り。

「ボクの部屋なんてもっとひどいですよ」
「あんまり見回さないでもらえると助かるわ……」

小鳥は冷蔵庫にビールをしまいながら、渋く笑った

48: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/09(水) 00:28:07.26 ID:PGLWBr0Eo

しばらくして、機械的なメロディが鳴る
テレビの中では芸人が押すな押すなと喚いていた
ベッドに座る小鳥は、向かいの床に胡坐を掻いている真に言う

「先、お風呂どうぞ」
「ありがとうございます。今日は朝から早く体を流したくって……」
「汗っかきだものね、真ちゃん」
「そうなんですよね……新陳代謝が良いのも困りものです」

眉頭を少し持ち上げて、真は右の頬を掻いた


49: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/09(水) 01:26:55.27 ID:PGLWBr0Eo

流れるシャワーの音を背に、サンダルを履いてベランダに出る
ガラス戸を閉めると水の音は聞こえなくなった
代わりに背負いうのはカーテン越しの仄かな灯り
日はとっくのとうに沈んでおり、気温は少し、涼しい
金属の手すりに肘を着くと、そこもやはり、ひやりと素肌に染みた

50: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/09(水) 01:28:36.57 ID:PGLWBr0Eo
>>49
×背負いうのはカーテン越しの仄かな灯り
○背負うのはカーテン越しの仄かな灯り

51: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/09(水) 01:29:12.12 ID:PGLWBr0Eo

小鳥は一本煙草を咥えて火を点けた
安ライターの明かりに照らされる口元と手の平
空に煙を吹きかけると、東の空に月が出ている事がわかった
目を凝らせば見えるいくつかの星
東京の空にも、星は見える
いつか聞いた歌が、頭に流れた

52: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/09(水) 01:31:19.80 ID:PGLWBr0Eo

手すりに体重を預け、凭れる
咥えた煙草が、じじじと燃える

やはりベランダのある部屋にして正解だった
賃貸なので室内で煙草を吸う事を躊躇う
そういう理由もあるにはあるが
やはり空の下で吸う煙草はうまい
小鳥はそう思っていた

53: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/09(水) 01:45:16.65 ID:PGLWBr0Eo

月夜の下、夏空の下、灰色の空の下
それと、恋人の隣
"どこで吸おうと味など変わらない"
そう言う人もいるだろう
だが、私はそうは思わない


からから、戸の開く音
「お風呂、上がりましたよ」
濡れた頭に返事をする
「あら、早いのね」
吸い込んだ煙をゆっくりと吐く


ほら、ね?こんなにも煙草が美味しい

56: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/10(木) 02:22:09.84 ID:YZNuLvKeo

お風呂から上がり、下だけ履いて冷蔵庫を開ける
火照った体に涼しい風
青白い光が目に刺さる
卵、味噌、マヨネーズ、ソース
最低限の食料と、扉裏の籠に詰まった缶ビール
我ながら"女子力"というものを思い知る

57: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/10(木) 02:27:30.58 ID:YZNuLvKeo

銀の缶を一つ抓んで、柔らかな灯りの灯る部屋へ
部屋では真が片膝を立ててテレビを見ていた

「はしたないですよ、小鳥さん」
「着替え、忘れちゃって」

片眉を上げる真を横目に、小鳥は引き出しを開けた

「見たいなら見ていいのよ」
「見ませんよ」
「残念」

半袖のTシャツを一枚、頭からかぶった

60: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/11(金) 02:13:05.55 ID:147yf4yHo

特に何か祝い事という訳でもないが
自然と二人、杯をぶつける
それは片方が未成年で、杯に注がれているのが果汁100%だとしても変わらない
更に言えば、片方が杯に注がず、缶のまま口をつけていたとしても

「今日もお疲れ様」
「お疲れさまです。小鳥さん」


61: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/11(金) 02:13:57.55 ID:147yf4yHo

火照った身体に冷たい炭酸を流し込む
喉に炭酸の刺激を感じながら、缶の上半分を一度に開ける
胃に落ちていく、喉越しの快感

「ふぁああああ……」

間抜けな声が肺から抜ける

62: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/11(金) 02:14:46.60 ID:147yf4yHo

「ボクも早く大人になりたいです」
「飲みたいの?」
「あんまり美味しそうに飲むから。小鳥さんが」
「そうね、美味しいし、気持ちいいわ」

そう言ってまた、一口含む
最初の一口目とはまた違う味わい
舌の上で炭酸を踊らせる

63: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/11(金) 02:15:52.91 ID:147yf4yHo

「いいですね」
「大人になる、なんて直ぐよ」
「そうですか?」
「なりたくなくても、ならざるを得ないの」

缶を持つ手の人差し指を
小鳥は真に向けて言う
減った中身がたぷたぷと鳴る

「こんな大人になっちゃダメよ?」
「気をつけますよ。それがどんな大人を指すかわかりませんが」

真は小鳥の方を見ぬままに
オレンジジュースを啜って笑った

「ボクはまだ子供ですから」

64: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/12(土) 17:18:41.60 ID:8t9zyfLRo

静かな宴は滔々と続き
時計の針が天辺を指す頃には小鳥の頬も紅くなっていた
机の上には酒の肴の乾きものと、空いた缶が一つ二つ
そして今、もう一つ缶が空になろうとしていた
後ろ手に体重を預け、缶を煽る小鳥の隣で
真が「ご馳走様でした」と手を合わせる
ご飯粒一つ残らない弁当の容器をコンビニ袋にまた詰めて
ついでに机の上のゴミも拾って、真は袋の口を結んだ

65: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/12(土) 17:33:55.57 ID:8t9zyfLRo

「真ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」
「ついでにこの空き缶も……」
「そのくらいは自分でやってください」

ぴしゃりと言われ、小鳥は照れ笑いと共に少し、肩をすくめた

66: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/12(土) 17:36:57.31 ID:8t9zyfLRo

三つ空き缶を潰して、やおら立ち上がり廊下の台所へ
台所では真が洗いものをしていた
一度真を通り過ぎ、缶を三つ、ゴミ袋に投げてから
疼いた本能の赴くまま、真の背中に抱きついた
真の肩に顎を乗せて、ゴロゴロと猫のように首筋に頬を擦りつける

67: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/12(土) 17:37:39.90 ID:8t9zyfLRo

「重いですよ、小鳥さん」
「真ちゃん……良い匂い……」
「小鳥さんはお酒くさいですよ」
「酔っ払いだもの」
「はいはい」
「適当にあしらわないでください。きずつきます」
「面倒臭い大人ですね」

68: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/12(土) 17:38:15.31 ID:8t9zyfLRo

小鳥の相手をしつつも真は手を休めない
自分の汚した食器とコップ
それと小鳥の朝食に使われたであろう食器も一緒に洗う

「あんまりため込んじゃダメですよ」
「面倒なんだもの」
「面倒でも、です」
「うー」
「噛まないでください、小鳥さん」

69: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/12(土) 17:40:03.09 ID:8t9zyfLRo

水切り籠が食器で一杯になると真は蛇口を締め、手を振り水を切った
そして仕返しとばかりに、濡れた手で小鳥の頬をなぞった

「ひゃぅ!?」

変な声が出た。恥ずかしい

「ほら、戻りますよ。小鳥さん」

うーうーと唸る小鳥を引きずって、真はずるずるとリビングに戻った

71: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/15(火) 00:03:41.98 ID:IgAOMoYKo

真は背中にへばりつく小鳥をごろんとベッドに投げる
小鳥は抵抗することなく、整った布団の上に、仰向けに転がった

「ありがと、真ちゃん」

小鳥は横になったまま、真に両手を伸ばした

72: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/15(火) 00:17:39.45 ID:IgAOMoYKo

頬を赤らめて
口元を少し尖らせて
真の瞳をじっと、見つめて

真の影が小鳥に重なる
小鳥の潤んだ瞳だけが暗がりの中ゆるりと光る

「悪い大人、ですね」

誘われるままに
真はギシリとベットに乗った

73: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/15(火) 00:18:39.34 ID:IgAOMoYKo

小鳥の頬を指の甲で撫でる
さらりと、柔らかな髪の毛が指に触れる
こちらを誘う艶やかな唇を、真は唇で塞いだ
小鳥の腕が真の首の後ろに回される
ぎゅっと抱きしめると、真の細い身体は柔らかく、暖かかった
唇の感触を確かめるように、何度も向きを、傾きを変える

74: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/15(火) 00:26:18.89 ID:IgAOMoYKo

舌を侵入させ、歯並びをなぞる
口蓋をくすぐる、舌の裏を撫でる
舌を絡め、舌を吸い、舌を噛む
口の周りが互いの唾液に塗れることも気にせずに
目を閉じたまま、互いを貪った

75: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/15(火) 02:09:43.28 ID:IgAOMoYKo

小鳥のシャツの裾から、真は手を入れる
素肌をなぞって上へ、上へ
腕の動きに重なって、ずるり、ずるりと服がはだける
時々びくりと小鳥が反応したが、真は唇を離さなかった
互いの鼻息が荒くなる
睫毛が当たって、くすぐったい

76: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/15(火) 02:33:10.85 ID:IgAOMoYKo

柔らかく乳房を揉むと、小鳥は唇の隙間から声を漏らした
Tシャツ一枚に守られていた胸は、今はもう蛍光灯の下に晒される
真の手の中で遊ばれる胸は、手の動きに合わせて形を変える
徐々に硬くなってきた先端の紅色を抓まれて、ぞくりと背中を震わせる


77: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/16(水) 01:41:41.35 ID:EE/FCHsOo

唇を離すと蕩けた小鳥の瞳と目が合った
べたつく口の周りを拭うのは躊躇われた
躊躇われたから、舌で舐めとった
混ざった互いの唾液の味
化粧水か乳液か、少し苦く小鳥の味が混じる

78: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/16(水) 01:48:52.01 ID:EE/FCHsOo

すん、と小鳥の腕の付け根に鼻を近づけ、舐める
甘酸っぱい匂いが鼻孔にへばりつき
真の舌の先を汗の塩気が刺激する
羞恥心からか、小鳥は懸命に真の頭をどかそうとする
漏れる声、上擦る声
真は更に昂ぶりを覚えた

79: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/16(水) 01:49:23.56 ID:EE/FCHsOo

べろん、べろんと小鳥の体中を味わう
その度に小鳥は僅かに息を漏らし、肌の表面を震わせた
さらりとした肌の感触
チクチクと感じる剃り残した体毛
どくりどくりと反応する鼓動
徐々に下に、下に

真は小鳥の下着の中に、手を入れた

80: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/16(水) 16:18:50.81 ID:EE/FCHsOo

蒸せ返るショーツの中で、真の掌をチクチクと刺激する
多少の手入れはしているとはいえ、グラビア撮影の予定もないため
手入れの度合いはアイドルである真ほどではないようだ
性器の表には僅かに液が染み出る
真は生暖かいそれを掬って、小鳥の恥部全体に擦りつけた
小鳥の溝に真の細い指はぬぷりと嵌り、レールの上を往復するように刺激する
擦れば擦るほど潤滑液が分泌され、引くつく肛門を伝い、液がショーツの背側にまで垂れる

81: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/16(水) 16:23:51.24 ID:EE/FCHsOo

小鳥が声を抑えられなくなった頃
真も我慢の限界を迎え、小鳥の顔に頭を寄せた
「入れますよ」と一言耳元で囁き、十分な潤滑液を纏った中指を小鳥に咥えさせ始める
第一関節、第二関節と奥へ進んでいくたびに小鳥の中が締まり、蠢く
小鳥の中は暖かく、冷えた真の指先には火傷するほどに熱く感じられた

82: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/28(月) 01:39:51.33 ID:duL9nF2wo

真は指を曲げ、腹側を押す
小鳥は切なく、短く、声を紡ぐ
中を広げるように、ぐるりぐるりと指をまわすと
空いた隙間からどろりと白く濁った液が零れる

呆けた顔で、互いを見つめる
交わす吐息は熱を帯びる

湿った部屋の中
汗と性の混じった匂い

短く息を漏らして
小鳥は達した

83: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/28(月) 02:13:18.48 ID:duL9nF2wo



夜風に少し肌寒さを感じて、真はうたた寝から覚めた
視界の端でカーテンが揺れる
シーツを一枚纏った肢体の凹凸を
青白い月明りが影で表す
涼しさを覚える薄暗い部屋に小鳥の姿は無い
ベランダのガラス戸が少し、開いていた

84: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/28(月) 02:16:18.44 ID:duL9nF2wo

カラカラと戸を引くと、小鳥がこちらを振り向いた
「起こしちゃった?」
ベランダの柵に肘を着いたまま、口元の黒子を少し持ち上げる

右手に挟んだ煙草から
ゆらりゆらりと煙が漏れる
青黒い空を、灰色で隠す


85: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/28(月) 02:25:14.72 ID:duL9nF2wo

真も隣に肘を着く
素肌にそのまま羽織ったパーカーは、少し真には大きかった
地面の温さと月の涼しさの混じった、夜の風
今の二人には涼しく感じられた

「ちょっと、口が寂しくなっちゃって」

小鳥の咥えた煙草の先端が赤く燃える
溜息とも取れる様な吐息を、煙と共に吐いた

「ダメな大人よね」

そう言って小鳥は、自嘲気味に笑みを吐く

86: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/28(月) 02:26:26.99 ID:duL9nF2wo

「未成年の女の子を自宅に連れ込んで、性行為。酒に溺れて、煙草に逃げる」

一つ一つの言葉を噛みしめる様に
悔いるように、小鳥は呟く
瞳は何処か、遠くの空を見つめたまま

「ダメね、私」

そう言ってまた、細く煙を吐いた
そんな小鳥の横顔を、真は何も言わずに見つめていた

87: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/28(月) 02:27:35.60 ID:duL9nF2wo

「嫌でしょ?煙草臭い彼女なんっ……」

そんな小鳥の唇を
真は食むように、奪った

愛をぶつける様なキスではなく
愛を確かめる様な、優しいキスを

88: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/28(月) 02:28:07.16 ID:duL9nF2wo

最後に小鳥の黒子を舐めて
真はゆっくりと顔を離した

「好きですよ、小鳥さん」

月に濡れた真の唇
優しく柔らかく、微笑んだ

89: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/28(月) 02:29:02.77 ID:duL9nF2wo



ゆらりゆらりと流れる雲から
漏れた月明りが真を照らす

「ありがとう、真ちゃん」

白い頬に僅かに灯った紅
小鳥の涙を指で掬った

「私も真ちゃんの事、大好きよ」

狭いベランダ、柵に肘を掛けて
あなたと私二人きり

「大好きよ……」

二人を、ぬるい夜風が擽った
二つ影が重なって、ぼやけた月に浮かんだ

90: ◆b2/ys3/tgw 2016/03/28(月) 02:29:33.03 ID:duL9nF2wo

 おわり