1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:10:38.53 ID:A/3rfYC8o
騎士「なあなあ、女騎士」

女騎士「なんだ?」

騎士「これ、なにか分かるか?」ヒョイッ

女騎士「鶏卵だろう? バカにしているのか」

騎士「じゃあさ……この卵を道具を使わずこのテーブルに立てられるか? もちろん縦にだぞ」

女騎士「!?」

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引用元: 女騎士「くっ、コロンブスの卵……!」 


 

女騎士、経理になる。  (1) 鋳造された自由
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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:13:21.18 ID:A/3rfYC8o
女騎士「……ちょっと貸してみろ。私が挑戦しよう」

騎士「どうぞ」スッ

女騎士「どれ……」

女騎士「……」スッ コロン…

女騎士「……」スッ ゴロン…

女騎士「……」ソーッ… ゴロン…

女騎士「無理だ、できるわけがない」

騎士「無理、か……」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:16:26.32 ID:A/3rfYC8o
騎士「じゃあもし、俺がこれからこの卵を立てたら……今日の昼飯おごってくれ」

女騎士「ふん、いいだろう」

女騎士「ただし、できなければ貴様が私に昼食をご馳走するのだぞ」

騎士「オッケー」

騎士「じゃ、やるぜ」スッ…

女騎士(鶏卵はいびつな楕円形で、非常にバランスが悪い……絶対に不可能だ)

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:19:30.71 ID:A/3rfYC8o
騎士「よっ」パキッ

騎士「はいっ、立ちましたーっ!」

女騎士「なっ!?」

女騎士「ふ、ふざけるな! 卵の下の部分を割って、ムリヤリ立てただけではないか!」

女騎士「こんなものイカサマだ!」

騎士「イカサマ? 俺は卵を割っちゃダメなんてルールは設けてないぜ?」

女騎士「くっ……!」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:24:45.78 ID:A/3rfYC8o
女騎士「く、くそっ……そのことに気づいていれば、私だって……!」

騎士「そう! それなんだよ!」

騎士「タネが分かれば誰でもできることでも、最初に発見するってのはとても難しいことなんだ」

騎士「ちなみに、こういうことを遠い遠~いどこかの世界にいたらしい偉人の名にちなんで」

騎士「“コロンブスの卵”っていうらしいぞ」

女騎士「くっ、コロンブスの卵……!」

騎士「タネを明かしちまうと全部、昨日たまたま読んだ書物の受け売りなんだけどな」

騎士「ま、そういう知識で昼食をゲットするアイディアを思いつくのもまた、コロンブスの卵ってこったな!」

騎士「今日は久々にリッチなランチといくかぁ~!」

女騎士(なんという屈辱だ……!)

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:28:24.92 ID:A/3rfYC8o
……

……

女騎士(うむむ……さっきはまんまと騎士にしてやられた……!)

女騎士(できれば私も誰かに同じことをしてやりたいが……)

女騎士(もし相手がコロンブスの卵を知っていたら、返り討ちにあう可能性がある)

女騎士(誰か、いい相手はいないだろうか……)

女騎士(私の知り合いで、到底本など読みそうもない者といえば――)

女騎士(――そうだ!)

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:32:00.74 ID:A/3rfYC8o
女騎士「オーク、よく来てくれたな」

オーク「おう! こんなところに呼び出して、なんの用だ?」

女騎士「貴様、これがなにか分かるか?」ヒョイッ

オーク「? ……卵だろ?」

女騎士「そう、そのとおり」

オーク「当たってんのかよ。てっきり引っかけ問題かと思ったぜ」

女騎士「じゃあ……この卵を道具を使わず、テーブルの上に立てることはできるか? もちろん縦に」

オーク「!?」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:35:52.98 ID:A/3rfYC8o
オーク「ちょっと貸してみろよ。オレがやってみる」

女騎士「よかろう」スッ

オーク「……」スッ コロン…

オーク「……」スッ ゴロン…

オーク「……」ソーッ… ゴロン…

オーク「だーっ! 立ちそうで立たねえ! こりゃ無理だろ!」

女騎士「無理、か……」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:39:33.66 ID:A/3rfYC8o
女騎士「じゃあもし、私がこれからこの卵を立てたら……今夜は私に夕食をご馳走しろ」

オーク「いいぜ! 高級レストランに連れてってやるよ!」ブヒッ

オーク「ただし、できなかったらお前がオレに晩飯おごれよな!」

女騎士「もちろんだ」ニヤッ

女騎士「では、やるぞ」スッ…

オーク(どんなにそーっと立てたって卵は転がるし、絶対無理だ!)

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:42:48.84 ID:A/3rfYC8o
女騎士「よっ!」グシャッ

オーク「え?」

女騎士「あっ……」ベチャッ… ドロッ…

オーク「あの……なにやってんすか、女騎士さん?」

女騎士「くっ……ち、違うんだ! これは違うんだ!」

オーク「なにが違うの?」

女騎士「そっ、そうだ! 鶏卵はまだ持ってきている! 頼む、もう一度チャンスをくれ!」

オーク「いいけどさぁ……」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:46:50.33 ID:A/3rfYC8o
女騎士「てやっ!」グシャッ

女騎士「でいっ!」グチャッ

女騎士「どりゃっ!」グシャァッ

女騎士「あれぇぇぇ……? どうしてぇぇぇ……!?」

オーク「お、おい……卵もったいねーぞ……。食べ物で遊ぶギャグって、オレはあんま好きになれねーな……」

女騎士「違うっ! 私は遊んでるわけじゃないんだ! 本当に!」

女騎士「頼む、あと一回だけやらせてくれ! 今すぐ卵を取ってくる――」ダッ

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:50:27.18 ID:A/3rfYC8o
ズデンッ!

女騎士「いたたたた……!」

オーク「大丈夫か!? 急に走り出したりするから……!」

女騎士「くっ、コロンブスの卵……!」

女騎士「私はコロンブスになれなかった……!」

女騎士「どうせ私なんか“転んだブス”なんだ! ううっ……うううっ……!」グスッ…

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/05(火) 20:56:45.26 ID:A/3rfYC8o
オーク「女騎士、立てるか? ほら、手ぇ貸してやるよ」スッ

女騎士「……!」

オーク「お前はブスなんかじゃねーよ、可愛いよ」

女騎士「えっ……」

オーク「オレにはお前が何をやりたかったのか、さっぱり分からなかったけど……」

オーク「せっかく割れた卵が四つもあるんだ! このテーブルキレイだし、まだ食えるだろ!」

オーク「これからオレがスクランブルエッグでも作って、お前にご馳走してやらぁ!」

女騎士「オーク……!」



女騎士(卵は立てられなかったけど……オークの優しさを発見することができた……)

女騎士(こういう“コロンブスの卵”もあるのだな……)







― おわり ―