1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 21:48:23.68 ID:8iZC3E7O0
第一話『若奥様を斬る』



< 剣士の家 >

剣士(──とかっこつけたところで)

剣士(こんな平和な田舎町で、物騒な依頼なんかあるわけもなく)

剣士(世間は、ついに王国軍と大盗賊団の抗争が本格化したとかで大騒ぎだが)

剣士(この町にはなんも関係ないしな……)

妻「すみませぇ~ん、剣士さん」

剣士「なんですか、奥さん」

妻「あの~、スイカを切って欲しいんですけど」

剣士「はいはい」

剣士(こんな仕事ばっか……)

引用元: 剣士「依頼があれば……この剣でなんでも斬る!」 




剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!?5 (GAノベル)
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3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 21:53:28.93 ID:8iZC3E7O0
スパンッ! スパンッ!

剣士「はい、斬れましたよ」

妻「ありがとう! 助かったわぁ~」

剣士「スイカぐらい自分でも切れるでしょうに」

剣士「こないだはキャベツの千切り、その前はリンゴをウサギさんにする、でしたっけ」

妻「でも、あたしって料理が下手なのよ~」

剣士(ウソつけ……少しでも手を抜きたいだけだろう)

剣士「だったら……さっきのお代はいりませんから、俺に料理を作ってくれませんか?」

剣士「味を見てあげますよ」

妻「そんなことならお安い御用よ。台所と材料を借りるわね」

剣士「どうぞどうぞ」

剣士(ラッキー、昼飯まだだったんだよな)

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 21:58:18.02 ID:8iZC3E7O0
しばらくして、料理が出来上がった。

妻「さ、召し上がれ」

剣士(お、うまそうじゃん)

剣士「じゃ、いただきま──」パクッ

剣士「す!?」

剣士「お、おお……! なんだこれ……!? うげえええっ!」

妻「やっぱりダメ?」

剣士(ダメってレベルじゃない! どうなってんだ、これ!?)

剣士「これ……ちゃんと味見してるんですか?」

妻「もちろん。で、おかしいとこを直そうとすると、ますますおかしくなって……」

妻「でも、主人は美味しいって食べてくれるから……」

剣士(結果として、この劇薬が生まれたってわけか……)

剣士「……奥さん」

剣士「今日は帰しませんよ! 俺が徹底的に特訓します! この剣に賭けて!」

妻「ええっ、そんなぁ!」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:01:38.00 ID:8iZC3E7O0
気づいた時には、もう夜になっていた。

剣士「ハァ、ハァ、ハァ……」

妻「ハァ、ハァ、ハァ……」

剣士「まあ、少しはマシになりましたね」

剣士「とりあえず、調味料をドバッと入れるクセと」

剣士「ミスった時に砂糖の甘さを塩で相殺させる、みたいなバカなマネをやめれば」

剣士「だいぶ、よくなると思いますよ」

妻「ええ、ありがとう!」

剣士(ふう……もう剣士の仕事じゃねえよな、これ)

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:05:27.55 ID:8iZC3E7O0
数日後、町でおかしなウワサが広がっていた。

ザワザワ……

「あそこの若奥さんが剣士さんの家にずっといたとか……」

「今日は帰さない、とか声が聞こえたって……」

「二人して、息が荒くなってたとか……」

ザワザワ……

剣士(な、なんか……俺とあの奥さんが不倫したみたいになってやがる!)

剣士(しかも、小さな町だから、広がるのが早い!)

剣士(ま、まずいぞ……旦那の耳に入る前になんとかしねえと!)

夫「剣士君!」

剣士「ゲッ!?」

夫「君にいいたいことがある」

剣士「いや、その、あの……」オドオド…

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:09:31.86 ID:8iZC3E7O0
夫「あ、ありがとう……!」グスッ…

剣士「へ!?」

夫「やっと……やっとあの地獄の日々から解放された……!」

夫「君のおかげで、妻がようやく“料理”と呼べるものを作るようになってくれた!」

夫「惚れた弱みでマズくてもいえなかったんだ……なかなか」

夫「しかも、ボクは出されたものは全部食べないと落ちつかないタイプだから」

夫「本当に大変だった……!」

夫「これも、君が妻の料理下手をばっさり切ってくれたおかげだ! ありがとう!」

剣士「いやぁ~、いいんですよ」

剣士(斬るのは……なにも剣だけでなく、口でもできるってことか)

ちなみにウワサは七十五日どころか、七日で消えたという。



~おわり~

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:15:32.45 ID:8iZC3E7O0
第二話『カップルを斬る』



< 剣士の家 >

剣士「オイオイ、俺はあくまで剣を使うのが仕事なんだぞ?」

町娘「えぇ~!? でも、外の看板に『なんでも斬ります』って書いてあるじゃない!」

剣士「そりゃ書いたけどさ……」

剣士「なんで君と、今付き合ってる彼氏の縁を切らなきゃならないんだよ」

町娘「だって……イマイチ頼りないんだもん」

剣士「別れたいんなら、自分で振ればいいだろうが」

町娘「でも、彼のどこが悪いか、具体的によく分からないし……」

町娘「なんかいいだしにくくって……ね、お願い! なんとかして!」

剣士「しょうがないなぁ……」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:20:16.30 ID:8iZC3E7O0
しばらく考えた後──

剣士「じゃあ、こうしよう」

剣士「明日の夜、この町をちょっと出たとこにある森で」

剣士「君と彼氏とでデートするんだ」

町娘「うんうん」

剣士「で、俺が変質者のフリして襲いかかるから……」

剣士「そんなに頼りない彼氏なら、多分ビビりあがって、逃げちまうだろう」

剣士「そしたら、それを理由にして別れ話を切り出せばいい」

剣士「どうだ?」

町娘「悪くないわね! いいわ、それ採用!」

剣士(まったくひどい話だ……ま、別れた方が相手の男にとってもいいかもな)

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:24:38.10 ID:8iZC3E7O0
翌日の夜──

< 森 >

青年「ホ、ホントにこんなところでデートするの……? やめようよ……」

町娘「だらしないわねぇ~、こういうとこでデートするのがスリルあるんじゃない」

剣士(来たな……覆面をかぶって、と)ガバッ…

覆面「ヒヒヒ……」ヌゥッ…

青年「うわっ!?」

町娘(来たわ!)

覆面「俺は人を斬るのが大好きなんだぁ~……斬らせてくれよぉ~……」チャキッ

町娘(なかなかの名演じゃないのよ!)

青年「う、う……う……」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:27:49.19 ID:8iZC3E7O0
青年「うおおおおおっ!!!」ガシッ…

覆面「!?」

青年「町娘ちゃん! 逃げてぇっ! 早く逃げてぇっ!」

町娘「えっ……」

青年「うわぁぁぁっ!!!」

覆面(コ、コイツ……力はないが、なんて気迫だ! こっちがビビっちまってる!)

青年「ボクは死んでもいい……彼女だけは絶対守るっ!」

覆面(だけど、なんとかしてビビらせないと……!)

覆面(仕方ない……やるしかない!)ビュアッ

ビシュッ!

次の瞬間、青年の服にべっとりと血がついていた。

覆面(どうだ……!?)

町娘「!?」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:32:28.17 ID:8iZC3E7O0
町娘「な、なにやってんのよ……」プルプル…

町娘「やりすぎなのよ、アンタはァッ!」バッ

覆面「へ?」

ゴシャッ!!!

町娘のドロップキックが、覆面に炸裂した。

覆面「あがっ……!」ヨロッ…

覆面「ち、ちくしょう、覚えてやがれ!」ダダダッ

町娘(もう……ビビらせるだけっていったのに、まさか斬るなんて……!)ハァハァ…

町娘「大丈夫!? 血がついて……! どこを斬られたの……?」

青年「いや……ボクはどこも斬られてないよ」

町娘「そうなの!? でも、よかった……あなたが無事で……!」

町娘「ごめんなさい、ごめんなさい……全部あたしが悪いの……」グスッ…

青年「(なにがなんだかサッパリだけど──)いいんだよ」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:35:16.55 ID:8iZC3E7O0
剣士「いってぇ~……」ズキズキ…

剣士(相手を斬るフリして自分の腕を斬るわ、ドロップキックされるわ……散々だな)

剣士(だけど──)



町娘「行こっ!」

青年「う、うん……!」



剣士(俺の血が二人の赤い糸になったみたいだし、よしとするか)

剣士(あれはもう、俺の剣でも斬れないだろう)



~おわり~

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:41:26.92 ID:8iZC3E7O0
第三話『斬られる剣士』



ギィンッ!

ワァァァ……! ワァァァ……!

友人「ハァ、ハァ……やったぞぉっ! 俺の勝ちだぁっ!」

剣士「ぐっ……!」

剣士(正面からまっすぐ攻めたけど、まっすぐ押し切られたか……!)

剣士(これで俺が王国軍の精鋭として、剣を振るう道は絶たれた……!)



……………

………



剣士「…………!」ガバッ

剣士(また……あの時の夢か……)ハァハァ…

剣士(もし、あの試合で勝てていたなら、今頃俺はどうなってたんだろうか……)

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:44:38.04 ID:8iZC3E7O0
< 剣士の家 >

週一回、剣士の家では剣術の稽古が行われている。

剣士「みんな、木剣はちゃんと持ってきてるな?」

「はいっ!」 「はーいっ!」 「はいっ!」

剣士「じゃあ、今日は素振りからだ!」

ただし、生徒はみんな子供である。

剣士(くっ……今朝、あんな夢見ちまったから)

剣士(なんで俺が子供たちの相手しなきゃならない、とか思っちまってる)

剣士(くそっ……そんな自分にもイラついてきやがる……)

剣士(平常心、平常心……)

剣士「──ん?」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:48:26.01 ID:8iZC3E7O0
生徒の中で一人だけ、メチャクチャな素振りをしている少年がいた。

少年「えいっ、やぁっ、とおっ!」ブオンブオンッ

剣士(この子は……子供たちの中で一番才能を感じる生徒だ)

剣士(将来的には、多分だけど、俺より強くなるだろう)

剣士(だけど、こういう時は叱らないとな)

剣士「コラ、ちゃんと素振りしなきゃダメじゃないか! ふざけちゃダメだ!」

少年「ちゃんと……?」ピクッ

少年「だったら先生も、ちゃんと教えてよ。さっきからずっとイライラしてるじゃん」

剣士「なっ……!(見透かされてた……!?)」

少年「そういえば先生ってさ、むかし王国軍のエリート剣士を目指してて」

少年「いいところまで行ったけど、結局ダメだったんでしょ?」

少年「その時のことを思い出して、イラついてんじゃないのぉ~?」

剣士「…………」プルプル…

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:52:49.67 ID:8iZC3E7O0
剣士「うるさいッ!!!」

剣士「お前みたいな子供になにが分かる!」

剣士「いくら才能があったって、まだまだお前は親のスネかじりなんだ!」

剣士「親の金で剣術習ってるんだから、大人しく俺のいうとおりに練習しろ!」

剣士「────!」ハッ

シ~ン……

少年「…………」

剣士(しまった……俺はなんてことをっ! なにやってんだ!)

剣士(自分の心をコントロールできないようじゃ、剣士失格だ、俺は……!)

少年「…………」ウルッ…

剣士「(涙!?)ご、ごめっ──」

少年「ありがとう、先生!」

剣士「へ!?」

少年「おかげで新技のヒントが掴めたよ! ちょっとやってみていい!?」

剣士「いいけど……」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 22:57:20.18 ID:8iZC3E7O0
木剣を構える剣士と少年。

少年「今からボクが殴りかかるから、反撃してみて!」ザッ…

剣士「わ、分かった……」

少年「えいっ!」ヒュッ

剣士「とうっ」ブンッ

少年は体の小ささを利用して剣をかわすと──

少年「ここっ!」シュッ

ボゴォッ!

剣士のスネに木剣をブチ当てた。

剣士「うっ……うごぉぉぉっ!」ゴロゴロ…

少年「やったぁ!」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:02:37.67 ID:8iZC3E7O0
少年「このところ、なにか新しい必殺技が思いつきそうで思いつかなかったんだけど」

少年「先生のおかげで思いつけたよ! ありがとう!」

剣士「いだだ……いやぁ~」ズキズキ…

剣士(みごとな一撃だった……本物の剣だったらスネを斬られてたところだ)

剣士(さっきの変な素振りは、それを模索してたってところか)

剣士(それに全く気づけなかったことといい、怒鳴っちまったことといい……)

剣士(俺もまだまだだな)

剣士(まだまだってことはつまり、この町でも俺は進歩できるってことだ!)

剣士「みんな、稽古を再開するぞっ! 君も今度はちゃんと素振りしろよ!」

少年「はいっ!」

「えいっ!」 「はあっ!」 「でやっ!」

剣士(エリートになれなくても……剣の道を歩むことはできる……)



~おわり~

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:08:58.46 ID:8iZC3E7O0
第四話『エリートを斬る』



< 町 >

ザワザワ…… ガヤガヤ……

剣士「あの、なにかあったんですか?」

夫「今日から国から派遣された騎士が、町に駐在することになったんだ」

妻「で、みんなでどんな騎士なのか見にきてるのよ~」

剣士「へぇ~」

剣士(騎士といえば、生まれからしてちがう、エリート中のエリート……)

剣士(それが町に駐在するってことは、この町は国の保護下に入ったも同然ってことだ)

剣士(そりゃあ、盛り上がるよな……。さて、どんな奴なんだろ?)



女騎士「今日からこの町に駐在することになった。みんな、よろしく頼む」



剣士(お、女ァ!?)

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:12:29.22 ID:8iZC3E7O0
女騎士「さて……私が女ということで、不安に思っている人間も多いことだろう」

女騎士「そういえば、この町には半ば便利屋のような腕利きの剣士がいるときく」

剣士「!」ピクッ

剣士「あ……多分それは俺のことかと……(他に剣士なんていないしな)」

女騎士「フフフ……君か」

女騎士「なぁ、勝負をしないか? どちらが町一番の戦士か、この場で決めるんだ」

剣士「いや……俺は勝負なんて……」

女騎士「逃げるのか……まあいい」

女騎士「剣で戦う私と、剣で遊んでいる君では、勝負になるはずがないものな」

剣士「!」カチン

剣士「聞き捨てならないな……今の言葉」

剣士「いいだろう、受けて立ってやる!」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:16:35.73 ID:8iZC3E7O0
数十人の町民が見守る中、試合をすることになった剣士と女騎士。

剣士(こんな風に試合をするなんて、何年ぶりかな……)

女騎士「いくぞっ!」ダッ

キィンッ! ギンッ! キンッ!

剣士(速いっ! 口だけじゃないな、この女! さすがだ!)

女騎士「どうした、どうした!?」

ガッ! ギィンッ! キンッ!

剣士(あ、ヤバイ。これ以上下がったら、野次馬が危ない──)

女騎士「そこだっ!」シュッ

ピタッ……

一瞬のスキを突かれ、剣士の首筋に刃が突きつけられた。

剣士「ぐ……! ま、参った……!」

女騎士「フッ、私の勝ちだな」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:22:23.45 ID:8iZC3E7O0
< 剣士の家 >

剣士(完敗だな……)

剣士(試合は久しぶり、とか野次馬に気を取られた、なんて言い訳にもならない)

剣士(ま、元々強さをウリにしてたわけじゃないから、商売に差し支えないけど……)

剣士(やっぱへこむよなぁ……)フゥ…

剣士(それにしてもあの女騎士……)

剣士(あんなに強いのに、なんでこんな田舎町に来ることになったんだ?)

剣士(今、王国軍は大盗賊団と戦ってるハズだってのに……)

ワァァ…… キャァァ……

剣士「?」

「コソドロだァ!」 「またあいつ盗みやがった!」 「捕まえろおっ!」

剣士(またコソドロか……アイツも懲りないな)

剣士(どれどれ、俺が退治してやるか)

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:25:22.77 ID:8iZC3E7O0
< 町 >

剣士(お、いたいた)スッ…

剣士(また叩きのめしてやる)



コソドロ「へっへっへ~、オイラが捕まるもんかよォ!」スタタッ

コソドロ「──ん?」

女騎士「…………」チャキッ



剣士(なんだ女騎士がいたのか。なら任せるか……)



コソドロ「どけ、どけ、女ァ~!」タタタッ

女騎士「う、ううっ……」ガチガチ…



剣士(ど、どうしたんだ!?)

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:29:24.10 ID:8iZC3E7O0
女騎士(やはり……体が動かない! 試合であれば平気なのに──)ガタガタ…

女騎士(“本番”だと……緊張してしまって……)ガタガタ…

コソドロ「どけどけぇ~っ!」タタタッ

女騎士「ひっ……!」

ガンッ!

コソドロ「あぐっ……」ドサッ…

剣士が投げた剣の柄が当たり、コソドロは失神した。

女騎士「あ……」

ザワザワ……

「ありがとう、剣士さん!」 「コソドロめ!」 「とっつかまえろ!」

「今女騎士さん、ビビってなかった?」 「マジ?」 「エリートなのに……」

町民から、剣士への称賛と、女騎士への懐疑の声が入り混じる。

女騎士(うっ……)

剣士「…………」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:33:34.12 ID:8iZC3E7O0
剣士「女騎士さん、俺に名誉挽回のチャンスを与えるため」

剣士「わざとコソドロに手を出さないでくれて、ありがとよ!」

剣士「だがな……さっきアンタに負けた恨みはまだ残ってるんだからな!」

女騎士「!」

ワイワイ……

「なんだそういうことか」 「騎士がコソドロにビビるわけないしな」 「だよなぁ」

散っていく町民たち。



剣士「さて、帰るか」

女騎士「ま、待て!」

剣士「ん?」

女騎士「キサマ……なぜ私をかばうようなマネをした!」

女騎士「私が実戦で役に立たず、こんな平和な町に派遣されるハメになったこと──」

女騎士「キサマほどの腕なら、察することができたはずだ!」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:35:22.74 ID:8iZC3E7O0
剣士「だって……アンタはエリートだろ?」

剣士「エリートは俺の……いやみんなの憧れだ」

剣士「そのアンタがコソドロにビビったなんて知れたら、みんなガッカリするだろ?」

剣士「別にアンタのためにやったわけじゃないから、気にすんな」

女騎士「…………」

剣士「ま、これで一勝一敗ってことで……仲良く町を守っていこう」

女騎士「……考えておく」



~おわり~

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:41:29.56 ID:8iZC3E7O0
第五話『老人を研ぐ』



< 町長の家 >

町長「ふう……」

町娘「どうしたの、おじいちゃん?」

町長「年を取るというのは、イヤなもんじゃのう……」

町長「頭のキレも、体のキレも、すっかりなくなってしもうた……」

町長「そろそろワシも引退かのう……」

町娘「そんなことないわよ! 元気出してよ、おじいちゃん!」

町長「…………」フゥ…

町娘「んもう、急にどうしちゃったんだろ)

町娘(頭のキレ、体のキレ……。そうだわ、こういう時は!)

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:46:08.20 ID:8iZC3E7O0
< 剣士の家 >

剣士「──で、俺に町長さんを元気づけろ、と」

剣士「……なんで俺なんだよ!?」

町娘「だって~、頭のキレや体のキレをよくするんなら」

町娘「やっぱりよく斬れる剣を持つ、剣士さんの仕事でしょ?」

剣士「絶対ちがう……」

すると──

女騎士「受けてやれ、剣士」ガチャッ…

剣士「女騎士さん! なんでアンタがここに!?」

女騎士「なに、キサマと剣について語り合おうと思ってな」

女騎士(この間の礼をいいにきた、などとはとてもいえん……)

女騎士「だが、町長殿の悩みを解決する方が優先だろう」

町娘「さっすが、女騎士さん!」

剣士(はぁ……こんなの絶対剣士の仕事じゃないって)

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:51:07.12 ID:8iZC3E7O0
< 町長の家 >

町長「ふう……」ショボン…

町娘「おじいちゃん、剣士さんと女騎士さんが来てくれたわよ!」

町長「そうかい……すまんのう」

剣士(おおっ、ホントに元気ないな)

女騎士「町長殿、元気を出してくれ」

女騎士「この町は人口が少なく、リーダーの気落ちは皆の士気に関わる」

町長「うむ……それは分かっておるんじゃが……」

剣士(どういう励まし方だよ……軍隊じゃあるまいし)

剣士「まぁ……元気出してくれよ、町長さん」

剣士「俺たちだけじゃない。みんな心配してるんだから、さ」

町長「そうじゃな……ありがとう」

剣士(う~ん、なんかイマイチ効果ないな……)

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:55:30.69 ID:8iZC3E7O0
剣士「まぁ……顔でも洗って、サッパリした方がいいですよ」

町長「どういう意味じゃね……?」

剣士「年寄りの冷や水っていうじゃないですか」

町娘「え?」

女騎士「お、おい!」

剣士「あれ……? これって褒め言葉じゃなかったでしたっけ……ハハ」

町長「ぐ、ぐぬ……」

剣士「まぁ、残り少ない人生ですし、落ち込んで過ごすよりは笑った方がいいですよ」

剣士「あと……頭のキレや体のキレが悪くなってるんですって?」

剣士「なら、小便のキレも悪くなってるでしょ」

剣士「きちんと最後まで出さないと、ズボンとパンツがぬれて──」

町長「いい加減にせいッ!!!」

バチィンッ!

町長のビンタが炸裂した。

剣士「ぎゃんっ!」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/25(水) 23:59:34.94 ID:8iZC3E7O0
町長「ワシは生涯現役じゃ! 分かったか、この若造め!」

町長「ちょっくら走ってくる! えっほ、えっほ……」タタタッ



町娘「剣士さん、大丈夫!?」

女騎士「なぜ、あんな失礼なことをいったのだ! 怒られるのは当然だ!」

剣士「でも……元気は出ただろ?」

町娘「あっ、たしかに……!」

剣士「町娘ちゃんが、俺の剣はよく斬れるっていってたけど」

剣士「ならキレさせれば、町長さんの切れ味もよくなるかなって思ったんだ」

女騎士「なるほど……よく考えたものだ」

女騎士「ただし、あとできちんと謝罪するのだぞ」

剣士(許してもらえなかったら、どうしよ……)



~おわり~

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:07:23.07 ID:vXRbs7MT0
最終話『守るために斬る』



< 剣士の家 >

少年「先生、さようなら!」

「さよなら~!」 「またよろしくお願いします!」 「さようなら!」

剣士「おう、また来週な!」

剣士(ふう、今日も町は平和だな)

剣士(事件といえる事件は、せいぜいコソドロが悪さをやらかすくらい……)

剣士(そういや、例の大盗賊団もついに壊滅したって新聞に載ってたな)

剣士(こう平和だと、ついついなにか事件が起きないか、なんて期待しちゃうよ)

ザッ……

女騎士「……突然、すまない」

剣士「おお、女騎士さん。顔が青ざめてるが、どうしたんだ?」

女騎士「とんでもないことになってしまった……」

剣士「へ……?」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:11:46.91 ID:vXRbs7MT0
剣士「盗賊団が……この町に来る!?」

女騎士「ああ、王国軍は大盗賊団を壊滅させた……はずだった」

女騎士「しかし、奴らには分派ともいえる集団がいくつも存在した」

女騎士「奴らは散って、各地の町や村を襲い、金品を得て再起を図ろうとしているのだ」

女騎士「この町にも、その中の一団が来るという情報が入っている」

剣士「人数は……?」

女騎士「集団によってちがうが、100人程度はいると思っていた方がいい」

剣士「100人か……」

女騎士「しかも、この町は首都から遠く、国からの助力はとても期待できない……」

剣士(この町で盗賊とまともに戦える人間なんて……どのくらいいるのやら……)

女騎士「剣士、どうすべきだろうか?」

剣士「戦うのは……正直いって無謀だろう」

剣士「ならいっそ、町を捨てて、みんなで避難した方がいい」

女騎士「……たしかにそうだな。分かった、すぐ町長殿にも知らせよう!」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:15:17.00 ID:vXRbs7MT0
< 町長の家 >

町長「なるほど……それはまずいのう」

剣士「まだ時間はありますが、町長さんから公式な声として呼びかけて」

剣士「避難準備をさせた方がいいと思います」

町長「そうじゃな……。すぐ町民に避難準備をさせよう」

剣士「俺も手伝います!」

女騎士「私も協力させてくれ」

町娘「おじいちゃん、あたしも!」

町長「では……ひとまず町民を広場に集めて、状況を伝えるかのう」

剣士「分かりました!」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:20:21.00 ID:vXRbs7MT0
< 広場 >

ザワザワ…… ガヤガヤ……

町長「どうしても必要なものだけ、荷台に乗せて避難するのじゃ!」

女騎士「現在、避難場所は鋭意検討中だ。それが済み次第、全員で避難する!」

「盗賊め……!」 「ま、命がありゃやり直せるさ」 「怖いねえ……」



剣士(ふう……どうにかなりそうだな)

コソドロ「おい!」タタタッ

剣士「おう、コソドロじゃねえか。今はとてもお前にかまってるヒマはねえよ」

コソドロ「お前ら……なにのんきなことやってんだ!?」

剣士「のんきって……どこがのんきなんだよ。今、避難準備のために──」

コソドロ「オイラの情報によると、盗賊団はもう数時間もすりゃこの町に来るぞ!」

剣士「……な」

剣士「なんだとォ!?」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:25:33.56 ID:vXRbs7MT0
剣士「バカいうな。ウソなんかついたってすぐバレ──」

コソドロ「ウソなわけねえだろ! オイラだってこの町の出身なんだ!」

コソドロ「盗み常習犯のオイラを、町の人はいつも国に突き出さず許してくれてる!」

コソドロ「そんなオイラが……こんなウソをつくわけねえだろう!」

剣士(たしかに……コイツはどうしようもない奴だが)

剣士(こういうウソをつくタイプ、でもない……)

剣士「でも……どこでそんな情報をつかんだんだ?」

コソドロ「オイラみたいな人間には似た者同士の間で、ネットワークがあるんだよ」

コソドロ「なんでも、ここに来る盗賊団のリーダーは元王国軍の精鋭らしい!」

コソドロ「モタモタしてたら、みんな殺されちまうぞ!」

剣士(マジかよ……だが、それなら異常な進軍スピードもうなずける)

剣士「分かった……お前を信用しよう!」

剣士「おい、みんな! 突然だが、落ちついて聞いて欲しい!」

剣士は、事態が切迫していることを町民たちに話した。

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:31:22.57 ID:vXRbs7MT0
ドヨドヨ…… ドヨドヨ……

「あと数時間って……」 「どうすんだよ!?」 「避難場所も決まってないのに!」

町長「みんな……落ちつくんじゃ! 混乱してしまってはなんにもならん!」

剣士(やっぱこうなるよな……今、話すべきじゃなかったか……!?)

すると──

女騎士「落ちつけッ!!!」

ピタッ……

女騎士「この町には私がいる。王国騎士である私がな」

女騎士「心配するな……。私はこの程度の修羅場、何度もくぐり抜けている」

女騎士「今は冷静になって、我々の指示に従うことだけを考えろ」

「そ、そうだっ!」 「女騎士様がいたんだ!」 「よかったぁ~……」

剣士(町長でも鎮められなかった混乱を、一瞬で……これがエリートの力か)

剣士(でも……)

女騎士「…………」ブルブル…

剣士(足が震えてる……本当は怖いだろうに、よくやってくれたよ)

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:36:50.35 ID:vXRbs7MT0
女騎士の指示で、避難態勢は迅速に整った。

剣士「ありがとう、女騎士さん」

女騎士「なんの……民を守るのは、騎士として当然の務めだ」

剣士「でも……なにもかも置いて逃げたとしても、女性や子供を交えた逃避行だ」

剣士「もし、盗賊団が本気で追ってきたら……とても逃げ切れない」

女騎士「そうだな……。少しでも時間を稼ぎたいところだ」

剣士「だから……俺が時間を稼ぐ!」

女騎士「な、なんだと!? 死ぬ気か!?」

剣士「なぁに、もちろん俺だって死ぬつもりはないよ」

剣士「奴ら、ゴーストタウンみたいになってるこの町を見たら驚くだろう」

剣士「そのスキに先制攻撃をかまして、何人か斬って、すぐ逃げるさ」

女騎士「……大丈夫なんだろうな?」

剣士「逃げ足には自信がある。任せてくれ」

女騎士「…………」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:41:29.00 ID:vXRbs7MT0
そして──

< 広場 >

剣士(避難準備ができた家から、次々と町を出てるみたいだな)

剣士(町長さんや女騎士さんが、うまくやってくれたんだな)

剣士(コソドロの話じゃ、盗賊団はあと二時間もしないうちにやってくるだろう)

剣士(俺が斬り殺されるまでに、何人斬れるか……少しでも数を減らさなきゃ!)



すると、女騎士がやってきた。

剣士「女騎士さん……?」

女騎士「剣士……時間稼ぎ、私も手伝おう。人数が多いに越したことはなかろう?」

剣士「で、でも……」

女騎士「心配するな。もう以前のように、実戦で震えたりはしない」

女騎士「それにな、居残り希望者は私一人だけではないのだ」

剣士「え……」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:45:34.49 ID:vXRbs7MT0
ゾロゾロ……

妻「水臭いじゃな~い、剣士さん!」

夫「君だけに無理を押しつけるわけにはいかないよ」

青年「ボクも残らせて下さい!」

町娘「あたしも!」

少年「先生、ボクだって戦えるんだ!」

コソドロ「へへへ……一人でかっこつけんなよ」

町長「ワシも町の長として、残らせてもらうぞい」

およそ100人ほどの町民が残っていた。

剣士「み、みんな……」

女騎士「すまぬ……お前が残るというのをどこかで耳にしたらしくてな」

女騎士「ここにいる者たちが、残るといって聞かぬのだ」

剣士「……ありがとう」

剣士「実をいうと、ちょっと心細かったりしたんだ」

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:51:27.26 ID:vXRbs7MT0
剣士「だけど……仮にも戦士として、みんなを死なせるわけにはいかない」

剣士「気持ちだけで十分だ。早く逃げてくれ」

ザワザワ……

妻「そんなっ! あたしは剣士さんのおかげで料理がだいぶマシになったのよ!」

妻「まだ恩を返していないのに……」

剣士「…………」ピクッ

この時、剣士の中であるアイディアが閃いた。

剣士(ん……?)

剣士(今俺はもしかして、とんでもないことを思いついちまったかもしれない)

剣士(この100人で、盗賊団100人相手に時間を稼ぐ──だけでなく)

剣士(町を守り、盗賊団に勝利できるかもしれない作戦を!)

剣士(やってみる価値は……ある!)

剣士「みんな……話があるんだ。聞いてくれるか?」

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 00:55:34.83 ID:vXRbs7MT0
ザワザワ…… ドヨドヨ……

妻「分かったわ……。私は初心にかえって、めいっぱい料理を作ればいいのね?」

剣士「そうです。なるべく大量に作って下さい」

剣士「……で、コソドロ」

剣士「お前の役目が一番危険だが……やってくれるか?」

コソドロ「へっ……もちろんよ! オイラもたまにはやってやるよ!」

剣士「頼む……!」

剣士「さて……盗賊団がうまく罠にかかったら、一斉に襲いかかるんだ」

剣士「もちろん、俺と女騎士さんを先頭にな」

剣士「ただし、絶対に無理はしないこと!」

オ~ッ!!!

剣士(さあ、盗賊団……来るなら来い!)

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:00:13.59 ID:vXRbs7MT0
< 町の外 >

盗賊団はすぐ近くまで迫っていた。

団員A「なんだ、てめえ……」

コソドロ「へへっ……オイラはケチなコソドロっすよ」

コソドロ「アンタたち、これからあの町を襲うんでしょ?」

コソドロ「オイラが案内人になれば、より効率的に略奪できますよ?」

団員B「チンピラなんぞに用はねえ……殺されたくなきゃ失せろ」

コソドロ「ひ、ひいっ! すんません! 失せます、失せます!」ビクッ

コソドロ「ま、あいつら、今日は広場で立食パーティーなんざやってますから」

コソドロ「オイラなんぞいなくても、平気でしょうが……じゃ、さいならっ!」ダダダッ

団員A「ふん、小金目当てのチンケな小悪党が……うざってえ」

団員A「ウチのボスの剣の腕なら、あんな奴は必要ねえんだ」

団員B「だが、立食パーティーか……いい腹ごしらえができそうだな」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:06:21.71 ID:vXRbs7MT0
まもなく、盗賊団が町に侵入した。

< 広場 >

団員A「テーブルに、いっぱい料理が並んでるな。パーティーの最中に逃げたらしい」

団員B「さっきのコソドロがいってたのは、事実だったみてえだな」

ボス「逃げた町民どもは、あとで追跡して始末するぞ。いい見せしめになる」

団員A「ところでボス、この料理どうします? なかなか美味そうですぜ」

ボス「ここまで長旅だったしな……せっかくだ、食っていいぞ」

団員A「そうこなくっちゃ!」パクッ…

モグッ…… ジュルッ……

盗賊たちが、次々に料理に口をつける。すると──

「うげえええっ!?」 「なんだこりゃ!?」 「まずっ……!」

団員A「ひ、ひでえ味だ……毒か!?」

団員B「いや、毒じゃねえようだが……ある意味、毒よりひでえ!」



剣士「今だぁぁぁっ!!!」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:11:00.96 ID:vXRbs7MT0
剣士と女騎士を始めとした、広場の周辺に隠れていた町民が、一斉に飛び出した。

ウオォォォォォ……!

団員A「なんだあっ!?」

団員B「くそっ……この料理は罠だったのか! うげっ……後味が最悪だ!」



剣士「どりゃあ! せいっ! ──ふんっ!」

ザシュッ! ズバァッ! ザンッ!

女騎士「はああああっ!」

ビシュッ! シュバッ! ドシュッ!



さすがに剣士と女騎士の二人は強く、次々に盗賊を倒していく。

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:15:57.45 ID:vXRbs7MT0
団員A「ちくしょう……クソまずい料理のせいで力が……」オエッ

夫「女房の料理を吐くんじゃないッ!」ブンッ

ドゴォッ!

団員A「うげぇっ!」ドサッ…

妻「あなた、かっこいいわぁ~」



青年「町娘ちゃんは……ボクが守るッ!」ギロッ

団員B(なんだ……コイツのド迫力は……!)ビクッ

町娘「ええいっ!」バッ

ドゴンッ!!!

団員B「ぎゃふっ!」

青年の迫力に怯えた盗賊を、町娘のドロップキックで吹っ飛ばすというコンビネーション。



剣士(おお……みんな、やるじゃねえか!)

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:22:20.45 ID:vXRbs7MT0
少年「ボクだって戦えるんだ!」

団員C「このガキャアッ!」ブンッ

攻撃を転がりながらかわし、スネに木剣をぶつける少年。

ボゴォッ!

団員C「おごぉぉぉっ!」ドサッ…

少年「これがボクの“スネかじり剣”だ!」



剣士(アイツ……やっぱりとんでもない逸材だ。大人になる前に死ぬなよ!)



コソドロ「料理、うまかった?」

団員D「てめぇ……俺らをだましやがったな! ──って、あれ?」

コソドロ「へへへっ、アンタの剣はもうオイラの右手にあるよ」チャキッ

団員D「し、しまった!」ギクッ



剣士(コソドロ……今日だけはお前がやけに輝いて見えるぜ!)

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:26:30.05 ID:vXRbs7MT0
町長「やれやれ、ワシの町で略奪をしようとはのう……」

町長「久しぶりに……キレちまったわい……」

町長「生涯現役……町長の超パワーを堪能するがいいッ!」

町長「キエエエエッ!!!」

ドゴォッ! バキィッ! ゴッ! ガスッ! メキィッ!

「ぐええっ!」 「ひぎゃあっ!」 「ぐぶっ!」



剣士(町長さんつええ! さすが、あの町娘ちゃんのじいさんだ!)



町長「あ~……疲れた」ゼェゼェ…



剣士(さすがにスタミナには難があるけど……)

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:32:14.95 ID:vXRbs7MT0
女騎士「一人に対し、複数人で当たれ!」

女騎士「怪我をした者は、すぐに下がれ! 決して無理をするな!」

女騎士「この町には、この私がついているぞ!」

オオォォォォォ……! ワアァァァァァ……!



剣士(女騎士さん……やはり騎士だから、強いだけじゃなく戦術や戦略に明るいんだな)

剣士(それに、エリートとしての自分の役割をちゃんと分かってる)

剣士(いわば国の代表である彼女がいるからこそ、みんな安心して戦える!)

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:37:44.74 ID:vXRbs7MT0
女騎士の指揮と、意外な実力を秘めていた町民たちにより、

戦いは町民側有利に進んでいた。

剣士(このままいけば……みんなは大丈夫だな)

剣士(だが、相手は大盗賊団の一派……油断できない! すぐに決めなければ!)

剣士(あとは……俺がこの盗賊団のリーダーを倒せば……!)

ボス「…………」シュバッ

ガキンッ!

剣士「くっ!」ザザッ…

ボス「ふん、よく受けたな」

剣士「そっちこそ……盗賊のくせに鋭い太刀筋だ……!」

剣士「!?」ハッ

剣士「お、お前は……! なんでお前が……!?」

105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:43:16.46 ID:vXRbs7MT0
剣士「友人!?」

ボス「久しぶりだな」シュバッ

キィンッ! ギンッ! ガキンッ!

剣士「ちょ、ちょっと待て!」ザッ

剣士「なんでお前が……! 俺に勝って王国軍の精鋭部隊に入ったのに……!」

剣士「なんで盗賊になってんだよッ!?」

ボス「ま……色々あってな」

剣士「色々ってなんだよ!?」

ギンッ!

ボス「エリートってのはな、剣の腕だけじゃやっていけないんだ」

ボス「駆け引きだの派閥だの、剣以外の権謀術数に優れてなきゃ話にならねえ」

ボス「……で、そういうのが苦手な俺はすぐさま冷遇され、僻地に飛ばされて」

ボス「次第にやる気も失せて……あれよあれよと、盗賊にまで落ちぶれちまった……」

剣士「…………」

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:49:29.86 ID:vXRbs7MT0
ボス「俺もお前みたくとっととエリート街道を捨てて」

ボス「こんな田舎町で気楽に剣を振ってりゃ、幸せな人生を送れたのかもな」

剣士「ふざけんな」

剣士「お前と首都で知り合って以来、お前は……俺の憧れだったんだぜ!」

剣士「お前を妬んだり恨んだりしたこともあるけど、お前は俺の誇りだった!」

剣士「きっと今も、王国軍の中で輝かしい剣の道を歩んでるんだってな!」

剣士「なのに、俺みたいな人生を歩めばよかった、とか簡単にいうんじゃねえ!」

剣士「それにな……お前のいう“こんな田舎町”に送られたって」

剣士「やる気も誇りも捨ててない、エリートだっているんだよ!」

剣士「ゴチャゴチャと……言い訳すんじゃねえっ!」

剣士「お前はここで──叩き斬るッ!」

ボス「俺に負けた田舎剣士が……ずいぶんと偉そうな口叩くじゃねえか」

ボス「なら……お前のその憧れの剣技とやらで、お前を町ごと斬り捨ててやるよッ!」

ギィンッ!

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:53:56.72 ID:vXRbs7MT0
キンッ! ギィンッ! ギャリッ! ──ザシッ!

剣士「ぐっ……!」ブシュッ…

ボス「俺はこのとおり落ちぶれたが……剣の鍛錬はやめてない」

ボス「お前はまた負けるんだよ……あの時のようになァ!」

キンッ! ギンッ! キィンッ!

剣士(強い……! 剣はあの試合と同じ──いや遥かに鋭くなってやがる!)

ボス「俺は王国軍で磨いた正統派剣術と、盗賊生活で鍛え上げた野良剣術を融合させた」

ボス「こんな町で遊んでた、お前に勝ち目はねえよ!」

ズシャッ……!

剣士「ぐは……っ!」ガクッ

剣士(そう……。俺もこんな町じゃ、剣の腕は鈍る……そう思ってた)

剣士(だがな、どんな町だろうが田舎だろうが、剣の道を歩むことはできんだよ!)

シュバァッ! ザシッ!

ボス「ぐおっ……!(足を狙ってきただと!?)」ブシュッ…

剣士「俺の弟子が教えてくれた……必殺剣“スネかじり剣”だ」

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 01:59:35.41 ID:vXRbs7MT0
さらに──

剣士「どりゃあっ!」バッ

ドギャッ!!!

ボス「がはぁっ!」ドザッ…

剣士のドロップキックが、友人をダウンさせた。

ボス「ぐっ……どこが“剣の道”だ!」

剣士「俺はこの町で身につけた全てを──お前にぶつけるッ! 町を守るために!」

ギィンッ! キンッ! ガッ! キィンッ! ガキンッ!

ザシュッ!

ボス「ぐはっ……!」

剣士「どうした! 俺の憧れは、この程度か!?」

剣士「王国軍はもちろん、盗賊生活だってラクなもんじゃなかったろう!」

剣士「お前も全部ぶつけてこい! 全部出しきらなきゃ、俺には勝てねえぞ!」

ボス「へっ……」ニヤ…

ガキンッ!

116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 02:05:53.24 ID:vXRbs7MT0
キィンッ! ギンッ! ガッ! キンッ! ギャリィンッ!

二人の斬り合いは、全くの互角だった。

剣士「ハァ、ハァ……」

ボス「フゥ、フゥ……」

剣士(次の一撃で……)

ボス(次の一撃で……)

剣士&ボス(決めるッ!)

剣士「いくぞおっ!」ダッ

ボス「来いっ!」

剣士「うおおおおっ!」ブオンッ

ボス(うぐっ……!)ジリ…

剣士のまっすぐな剣と気迫に──友人は真正面からのぶつかり合いは避けるべきと判断し、

剣をわずかに逸らした。

ボス(この一撃をかわして、俺が勝つ……!)

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 02:11:01.94 ID:vXRbs7MT0
しかし──



ザグゥッ……!



剣士のまっすぐな一閃が、友人の肩から胸を大きく切り裂いていた。

ボス「がふっ……!」

剣士「友人……!」

ボス「俺はお前にビビって、剣を曲げちまったが……」

ボス「お前の剣はあの時と同じ……まっすぐ、だった……な……」



ドサァッ……



剣士(友人……)

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 02:17:23.71 ID:vXRbs7MT0
盗賊団ボスを倒した剣士に、女騎士が駆け寄ってきた。

女騎士「剣士、よくやってくれた! 我々の勝利だ!」

女騎士「奴が倒されたことで、盗賊団は総崩れになって、散り散りに──」

女騎士「……どうした?」

剣士「あ、いや、何でも……」

剣士「…………」

剣士「女騎士さん……」

剣士「コイツ……俺の友だちだったんだ……」

女騎士「!」

女騎士「そうか……」

女騎士「素晴らしい決闘、だった。どうか彼の分まで誇ってくれ」

剣士「ありがとう、女騎士さん」

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 02:23:29.46 ID:vXRbs7MT0
< 町 >

ワアァァァァァ……!

「無事だったか!」 「よく町を守ってくれた!」 「本当にありがとう!」

妻「あたしの料理がこんな役に立つなんてねぇ~、また初心にかえろうかしら」

夫「お願いだからやめてくれ!」

町娘「青年君もかっこよかったよ!」

青年「いやぁ~、ボクは一人も倒してないし……。君は五人くらい倒したけど……」

少年「よぉ~し、もっと稽古を頑張るぞ! いつか先生を超えるんだ!」

コソドロ「まさか、本当に町を守れるなんてな……」

町長「いやぁ~久々に暴れたわい……こりゃ明後日は筋肉痛じゃな」コキッ



女騎士「お疲れ様だ、剣士」

剣士「女騎士さんこそ、お疲れ。町民に死人が出なかったのは、あなたのおかげだよ」

剣士(これでまた平和な町に戻るんだな……。やっぱり平和が一番だ)

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 02:31:06.56 ID:vXRbs7MT0
二週間後──

< 剣士の家 >

剣士(あれから……各地に散ったという盗賊団は全て退治された)

剣士(盗賊団に襲われた町や村の対応は、戦ったり逃げたり様々だったらしいが)

剣士(盗賊団と戦うことを決意して、なおかつ死人を出さずに済んだのは)

剣士(この町だけだったらしい……)

剣士(いやぁ~、今思うと、かなり危険な賭けだったよな……あの作戦)

剣士(さぁ~て、今日はやることないし、トレーニングでも──)

ガチャッ……

剣士(──ん?)

女騎士「剣士……とんでもないことになってしまった!」

剣士「どうしたんだよ。まさか……また盗賊団が!?」

女騎士「いや……そうではない」

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 02:35:35.88 ID:vXRbs7MT0
女騎士「実は……あのおしどり夫婦に聞いたのだが……」

剣士「?」

女騎士「お前は料理も得意らしいな?」

剣士「得意ってほどじゃないけど……。まぁ、自炊くらいは……」

女騎士「頼む、料理を教えて欲しい!」

女騎士「私は普段、付き人たちに料理をやらせていたのだが」

女騎士「たまには自分でやろうと──」

女騎士「さっき自分でイモの皮をむいたら、こんなになってしまったんだ!」スッ

剣士「!?」

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/12/26(木) 02:41:37.46 ID:vXRbs7MT0
剣士(なんだこりゃ……どう見ても“食べ物で遊んでる”レベルの、イモ……!)

剣士(イモに気の毒なんて感情を抱くのは、生まれて初めてだ!)

剣士(もしかして、女騎士さんってあの奥さんを上回る料理下手なんじゃ……)

剣士(だとしたら……被害は未然に防がなきゃ!)

剣士「分かった……じゃあここで勉強してってくれ」

女騎士「助かる……」

剣士「ところで、料理の稽古が終わったら、一緒に剣の稽古でもどう?」

剣士「そういや俺、まだ試合じゃアンタに負けっぱなしだしさ」

女騎士「うむ、望むところだ!」





                                 ~ おわり ~