P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL 中編

492: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 02:42:17.42 ID:+qGkE/eeO

ルビカンテ「はぁ……はぁ……っ!」ポタポタ

ルビカンテ「クク……!」



伊織「な、なんなのよあいつ……! なんで笑ってられるのよ……?」



ルビカンテ「戦いとは、こうでなくてはな。……クク、楽しいぞ……!」ニヤリ



伊織(…………正直、あれはキモいわ)



伊織「…………はぁ」

伊織「要するに、あんたは戦闘狂って事なのね」

伊織「だったら、私にも考えがあるわ」スチャ


ルビカンテ「……ほう?刀は使わないのか?」


伊織「あんたの1番得意な技で来なさい!」ビシッ


ルビカンテ「!」


伊織「あんたの得意分野で勝負してあげようじゃない!」


ルビカンテ「面白い……!」ゴゴゴゴ

ルビカンテ「やはりお前は最高だ、王女よ……!」スッ


伊織「ふん……」スッ


伊織(肉体的なダメージでは、あいつは怯まない。だったら、精神的ダメージを与えるしかない!)

伊織(多分赤い悪魔は、あの『火炎流』とかいう技を使うわよね)

伊織(私の炎の方が上だって事、教えてあげる)

伊織(同じ土俵で、あいつに勝ってみせるっ……!)


引用元: P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL 



FINAL FANTASY LOST STRANGER 2巻 (デジタル版ガンガンコミックスSUPER)
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493: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 02:46:08.81 ID:+qGkE/eeO

ルビカンテ「全身全霊の力を以って応えよう……。勝負だ、王女よ!」ゴオォォ


伊織「私が……勝つ!」ゴオォォ


ルビカンテ「全てを灰燼と化せ…………火炎流!!」バッ


伊織「お父様、お母様、ジイ、みんな。私に、力を貸して! ……火遁っ!!」バッ



ゴオオオォォォォオオッ!!



ルビカンテ「おおおおおおっ!!」ググッ



伊織「はあああああっ!!」ググッ



ゴオオオォォォォオオッ!!



ルビカンテ「! ……エブラーナ王の火遁とは比べものにならない威力っ……!」ググッ



伊織「や、やっぱりすごいわね、あんた……!」ググッ

伊織(気を抜いたら、確実に骨も残らない……!)



ゴオオオォォォォオオッ!!



ルビカンテ「クク……!ここまでやるとは……!」ググッ



伊織「ぐ……!」ググッ

伊織(な、何よあいつ……まだ余裕なワケ?こっちは最初っからずっと全力だってのに……!)



ゴオオオォォォォオオッ!!



ルビカンテ「ふ……どうやらこの勝負、見えたようだな」ググッ

ルビカンテ(やはり……)



伊織「こん…の……っ!」ググッ

伊織(や、やっぱり、私じゃあいつに勝てないっていうの……?)



ゴオオオォォォォオオッ!!



ルビカンテ「……さらばだ、王女よ!」グッ



伊織「ま…け…る……かあっ……!」ググッ



ドッゴオオオォォォン…!



494: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 02:50:08.86 ID:+qGkE/eeO

ボロ…


ヒュゥ…



…ガタッ



伊織「……うっ……!」

伊織「はぁ、はぁ……!」フラッ

伊織「私……生きてる……?」



伊織「……はっ!赤い悪魔は!?」キョロキョロ




ルビカンテ「………」



伊織「赤い…悪魔……」



ルビカンテ「さすがだな……王女よ……」ヨロッ

ルビカンテ「ぐ……!」ズサッ

ルビカンテ「オレに膝を付かせたのは、お前とリツコ様くらいだ……」



伊織「あんたまさか……」

ルビカンテ「手を抜くわけがないだろう?そんな無粋な事はせん」

ルビカンテ「正真正銘の全力だった」

ルビカンテ「だが、それでもお前には、敵わなかった」

ルビカンテ「お前の勝ちだ、イオリ」

伊織「………」


495: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 02:53:14.40 ID:+qGkE/eeO

ルビカンテ「……どうした?嬉しくないのか?お前は恨みを晴らしたんだ。胸を張ればいい」

伊織「……嬉しくなんか、ないわよ」

伊織「だってこれは、私の意思じゃないもの」

ルビカンテ「……どういう事だ?」

伊織「あんたは確かに、エブラーナを滅ぼして、私の両親の命も奪った」

伊織「それは許しちゃいけない事だわ」

ルビカンテ「………」

伊織「だけど……」

伊織「あんたは私たちを助けてくれた。意外といいヤツだって、わかったの」

ルビカンテ「………」

伊織「それでも私があんたと戦ったのは、ジイたちに顔向けができないから」

伊織「私は、自分の気持ちを騙して、周りに流されて……」

伊織「それが王女の務めだって、自分に言い聞かせて……」

伊織「………」

伊織「でも……ホントは、私っ……」ウルッ




伊織「……あんたと戦いたくなんて、なかったのよ……!」ポロッ




ルビカンテ「イオリ……」


496: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 02:55:33.11 ID:+qGkE/eeO

伊織「ねえ、なんで?なんでこうなったの?」グスッ

ルビカンテ「………」

伊織「教えてよ、赤い悪魔っ……!」ガシッ

ルビカンテ「……ひとつ、言える事は……」

ルビカンテ「トドメを刺すまでが仇討ちだ。……違うか?」

伊織「っ……!」

伊織「イヤよ……!イヤっ……!」ブンブン

ルビカンテ「………」

ルビカンテ「オレは、お前にやられるならば、本望だ」

伊織「ば、バカな事言わないでよっ……!」

伊織「できるわけ、ないじゃない……!」

ルビカンテ「しかし……」







「……あーあ、がっかりだなー」







伊織・ルビカンテ「!?」


497: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 03:00:22.93 ID:+qGkE/eeO

プレイグ「こーんな、誰かを殺す覚悟も持ってない人たちに、ルナたちはやられちゃったのかぁ……」フワフワ




伊織「な、何、こいつ?」

ルビカンテ「忘れたのか?こいつが巨人を操っているヤツだ」

伊織「! こいつが……!」




プレイグ「途中までは面白かったよ?君たちのお芝居」ニコッ




伊織「まさかあんた、ずっと見てたわけ?」




プレイグ「うんっ!」




伊織「と、とんだストーカーね、まったくっ!」

ルビカンテ(全然気づかなかった。戦いに集中し過ぎたか)



伊織「赤い悪魔。さっきの話は一旦保留よ。まずは、こいつを片付けないと!」チャキッ

ルビカンテ「……いいだろう」スクッ




プレイグ「ん〜……」




伊織「さあ、覚悟しなさい!さっさとあんたを倒して、この巨人を止めさせてもらうわ!」ビシッ

ルビカンテ「………」スッ




プレイグ「…………よし、決ーめたっ!」

プレイグ「悪いけどお姉さん、死んでね?」ゴゴゴゴ




伊織「…………は?」

ルビカンテ「あれは、まさか……!」




プレイグ「行くよ……!」ゴゴゴゴ


498: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 03:04:52.81 ID:+qGkE/eeO

ルビカンテ「……聞くなっ!イオリっ!」ガバッ

伊織「きゃっ!?ちょ、ちょっと、いきなり何すんのよ変態っ!」ジタバタ




プレイグ「ーーーーー!!」



…ズゥン




伊織(あれ?あいつ、今何か言った……?)



伊織「……あんた、何かしたの?別に何ともないけど……?」キョロキョロ



プレイグ「うーん、残念。そこの魔物に救われたみたいだね、お姉さん」



伊織「え?何言って……」チラ



10ルビカンテ「………」



伊織「ちょっと赤い悪魔。何よ、その頭の上の数字は?ふざけてるの?」

9ルビカンテ「イオリ、時間がない。よく聞け。ヤツの言葉……『死の宣告』には、絶対に耳を貸すな!」

伊織「死の、宣告……?」

伊織「…………あっ!」



『……うん。ゲームでも、回避はできない攻撃だし、死の宣告を受けたら……』

『やはり、死んでしまう、という事ですか』



伊織「ま…さか……!」



499: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 03:08:58.48 ID:+qGkE/eeO

伊織「ね、ねえ!なんとかならないの!?」ユサユサ

8ルビカンテ「何ともならんな。……だが、悔いはない。もともとお前の手で終わるはずの命だったのだから」

伊織「そ、そんなっ!」

伊織「ダメ!なんとか……なんとかして生きなさいよ!」ユサユサ

7ルビカンテ「ふ……相変わらず無茶苦茶言うな、お前は」

伊織「なんで……!なんでこんな理不尽な終わり方なのよっ!」ウルッ

伊織「こんなの、ひど過ぎるじゃないっ……!」グスッ

6ルビカンテ「そうでもないぞ?……最期に、仲間を守る事ができたんだからな」

伊織「っ……!」ウルッ

5ルビカンテ「オレは、お前たち人間に、仲間とは何なのかを教わった」

4ルビカンテ「仲間……か。ふふ、今のオレならリツコ様といい勝負ができるかな」

伊織「ダメ!死んじゃダメっ!伊織ちゃんの命令よ!生きなさい、赤い悪魔っ!」ユサユサ

3ルビカンテ「すまんな……イオリ」ポン

伊織「なんで、謝るのよっ……!?」

2ルビカンテ「お前たち人間と出会えて良かった。こういう強さもあると、知る事ができたのだから……」

伊織「いや……!いやぁ……!」

1ルビカンテ「イオリよ。お前は自分の信じた道を行くのだ。お前の気高き生き様は、誰にも止める権利など無い!」

伊織「ま、待ちなさい! 待って……!」ガシッ





0ルビカンテ「……生きろ、イオリ…………」





ルビカンテ「………」ガクッ




伊織「ーーっ!!」


伊織「いやぁーーーーーーーっ!!!」



503: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 18:39:28.47 ID:fLTNZOQzO

伊織「………」



ルビカンテ「」



伊織「………」ダキッ

ルビカンテ「」



伊織「ねえ、赤い悪魔……」

ルビカンテ「」



伊織「目を、開けなさいよ……」

ルビカンテ「」



伊織「いつもみたいにクールぶって、『まったく、お前は面倒だ』とか言いなさいよ……」

ルビカンテ「」



伊織「いつもみたいにカッコつけて、『ふ……おもしろい』とか言いなさいよっ……!」

ルビカンテ「」



伊織「っ……」ウルッ



プレイグ「無駄だよ、お姉さん。その人は死んだんだ。お姉さんを庇って、ね」



伊織「ウソよ……!そんなの、ウソ……!」



プレイグ「ウソじゃないよ。だってその人、全然動かないでしょ?」



伊織「………」ギュッ

ルビカンテ「」


504: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 18:41:10.82 ID:fLTNZOQzO

プレイグ「寂しがる事はないよ。すぐにお姉さんも後を追わせてあげるから」



伊織「………」

ルビカンテ「」



伊織(赤い悪魔の後を……じゃあ、私は死ぬのね)

伊織(こんな、わけのわからない世界で)

伊織(どうして、こうなったんだろう……)



プレイグ「大丈夫だよ。恐怖も苦しみも、すぐ終わるから」ニコッ



伊織(そう、なのね)

伊織(良かった。死ぬのは恐いもの)

伊織(これで赤い悪魔に謝りに行く事ができるかも……)




プレイグ「さようなら、お姉さん」



プレイグ「……死の宣こーー」




やよい「……らむさんっ!」バッ



ラムウ「……裁きの雷!!」


ズガガピシャァァン!!



プレイグ「うわぁっ!?」ビリビリ



やよい「伊織ちゃんは、わたしがまもりますっ!」グッ


505: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 18:43:51.18 ID:fLTNZOQzO

伊織「やよ…い……?」



春香「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん!」

春香「無双……稲妻突きっ!」



ビュンッ…ズガッ!!


プレイグ「あぐっ……!」フラッ




美希「……ケアルガ!」バッ


シャララーン! キラキラキラ…


美希「デコちゃん、平気?」


伊織「春香……美希……」



春香「良かった、やっと追いついたよぉ!」

美希「デコちゃん、ひとりでガンバり過ぎなの!」

やよい「わたしたちの事も、もっとたよってほしいかなーって!」

P「心配したんだぞ、伊織!」



伊織「プロデューサー……」


伊織(みんな……)

伊織(助けに来てくれた……のは嬉しいけど……)



伊織「私……私は……」

伊織(私のせいで、赤い悪魔を死なせてしまった)



伊織「ダメ……逃げて……!」

伊織(みんなは……みんなだけは死なせたくないっ!)



P「伊織……?」



伊織「……私の側にいたら、みんな死んでしまうっ……!」

伊織「私は……ひとりで死ぬべきなのよっ……!」


春香「………」


506: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 18:46:46.04 ID:fLTNZOQzO

春香「…………ダメだよ、そんなの」


伊織「はる…か……?」


春香「ダメだよ、そんなの!」


春香「……ねえ、伊織」

春香「伊織の背負ってるもの、私たちにも背負わせてほしいな」

春香「そりゃ、私じゃ頼りにならないかもしれないけど……さ」

春香「みんなで考えれば、きっといい考えが浮かぶと思うんだ!」

春香「だって私たち、仲間でしょ?」


伊織「っ……ひぐっ……ぅ……」ポロポロ


春香「伊織…が死ぬなんっ…て、いやだもんっ!」グスッ

春香「絶対、伊織も一緒に…帰るんだもんっ……!」

春香「うぅ……えっぐ……」ポロポロ


美希「そうだよ!こんなところでウジウジしてるなんて、デコちゃんらしくないの!」

美希「ミキの知ってるデコちゃんは、とっても強くてカッコいいんだよ!」


伊織「み…き……!」


やよい「思い出して、伊織ちゃん。伊織ちゃんはわたしのじまんのおともだちなんだよ?」

やよい「わたしのそんけーする伊織ちゃんは……」



やよい「ぜったいに、あきらめたりしないかなーって!」



伊織「やよいっ……!」


P「伊織!一緒に帰るぞ!」


伊織「プロ…デュ…サ……っ!」



プレイグ「痛たた……」フラフラ

プレイグ「うぅ、あとちょっとだったのになぁ」



春香「!」

春香「美希、やよい!」チャキッ

やよい「はい!」

美希「デコちゃんに手出しはさせないの!」



伊織(みんな……!)



プレイグ「ふぅ……」

プレイグ(さっきの攻撃、意外と痛かったなぁ)


507: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 18:51:25.18 ID:fLTNZOQzO

プレイグ「……こっちも、仲間を増やすか」

プレイグ「みんな、出ておいで!」スッ



ワラワラ…

機械兵「………」

鉄騎兵「………」

巨人兵「………」

機械竜「………」



やよい「まものさんが、たくさん……!」

春香「それでも……!」チャキッ

美希「やるしか、ないの!」スッ



バルバリシア「待ちなさい!」

スカルミリョーネ「……ざ、雑魚は、オレ達に任せ…ろ……!」



春香「バルバリシアさん、スーさん!」

美希「シアちゃん、よろしくなの!」

やよい「うっうー!まものさん、悪い事はダメですよっ!」



プレイグ「あはは……!」

プレイグ「殺してあげるっ!」ギラッ



春香「たあぁぁーーっ!」ダッ

美希「ミキの矢、くらえなの!」ギリッ

やよい「しばさん、おねがいしますっ!」バッ





伊織「………」



508: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 18:55:50.75 ID:fLTNZOQzO

伊織(春香もやよいも美希も、勇敢に戦ってる……)

伊織(私も、加勢しなきゃ……)

伊織(戦わなきゃいけないのに、身体が、動かないっ……!)



伊織(結局私は、みんなの仇も討てず、赤い悪魔を守る事もできず……)

伊織(……こんな私に、生きる価値があるの……?)















『……生きろ、イオリ…………』















伊織「っ……!」ドクン


伊織「赤い…悪魔……」


510: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 19:21:34.87 ID:fLTNZOQzO


『お前は自分の信じた道を行くのだ。お前の気高き生き様は、誰にも止める権利など無い』



伊織「生き様…………」


伊織「そう、か…………」


伊織「………………そうね」



伊織(みんなの仇は、討てなかった)

伊織(それはあとで謝ればいい。ジイと、みんなに)

伊織(赤い悪魔は、死んでしまった)

伊織(それは、今さら変えられない事)

伊織(いくら悔やんでも、過去が戻るわけじゃない)

伊織(だったら、いつまでも落ち込んでても、仕方ない)



伊織(もう、迷わないわ)

伊織(私の行く道は、私が決める!)

伊織(誰も、私の邪魔はできない!)






伊織(…………そうでしょ? 赤い悪魔…………)ニコッ







『ふ…………いい面構えだ』


511: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 19:24:37.45 ID:fLTNZOQzO

ビューン…


ドガッ! バキッ! ドゴッ!


春香「くぅ……!」

美希「む〜……ちょろちょろとすばしっこいの〜!」

やよい「うー、いたいですー……」



プレイグ「よしっ!」

プレイグ「じゃあ、一気に片付けちゃおうかな」スッ



ヒュンッ…ザクッ!



プレイグ「痛っ……!」

プレイグ「これは、手裏剣……?」スッ




伊織「あんた、私の大切な仲間になんて事してくれてんのよ!」



春香「伊織!」

美希「デコちゃん!」

やよい「伊織ちゃんっ!」



プレイグ「お姉さん、確か戦意喪失してたはずじゃ……?」



伊織「あら、そうだったかしら?」

伊織「もうそんな昔の事は忘れちゃったわ」

伊織「それよりあんた……覚悟はできてるでしょうね?」



伊織「ここからは、このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんのターンなんだからっ!」ビシッ


512: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 19:27:55.18 ID:fLTNZOQzO

プレイグ「へぇ。さっきまでいじけてた人に、何ができるのかな?」

プレイグ「確かめてあげるっ!」ビュンッ



春香「速い!」



伊織「ふん……」ヒョイッ

伊織「はっ!」ザシュッ



プレイグ「痛っ……!」



伊織「遅過ぎてあくびが出ちゃうわ。あんた、本気出してるわけ?」



プレイグ「く、この……!」



美希「デコちゃんの方が全然速いの!」

やよい「伊織ちゃん、さすがですー!」



伊織「ズタズタに斬り刻んであげるわ!」チャキッ



プレイグ「さっきとはまるで別人だ……!」

プレイグ「仕方ない。ボクも本気出すよっ!」バッ



伊織「来なさい、化け物っ!」



513: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 19:34:42.41 ID:fLTNZOQzO

プレイグ「……ヘイスト!」

カタカタ…シャキーン!


…ッビュンッ!




伊織「っ……!」ガキィン

伊織(速っ……!?)



伊織「……このっ!」ブンッ


プレイグ「遅いよっ!」ヒョイッ


伊織「はっ!」ダッ

タタタタ…



春香「助太刀するよ、伊織!」

タタタタ…



春香「はああああっ!」ダッ

春香「えいっ!」ブンッ



プレイグ「ふんっ!」ヒョイッ



伊織「そこっ!」ビュッ


ズバァン!


プレイグ「……っく、かすった!」ヨロッ



美希「スキありなのっ!」ギリッ


ヒュンッ…ドスッ!



プレイグ「うっ……!」



やよい「いふりとさん、おねがいしますっ!」バッ


スゥゥ…


イフリート「うおおおお!!地獄の火炎んんんん!!」



ゴオオォォオオ!!



プレイグ「うあ……っ!」ヨロッ


514: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 19:36:38.37 ID:fLTNZOQzO

春香「はぁ、はぁ……!」

伊織「ふぅ……」

美希「………」ギリッ

やよい「よーしっ!」グッ



プレイグ「く……やるね、君たち。ボク、ここまで追い詰められるとは思わなかったよ」

プレイグ「こうなったら、確実に君たちを殺すよ……!」ゴゴゴゴ



伊織「!」

伊織(多分、さっきのあれが来る……!)

伊織「みんな、絶対に聞いちゃダメよ!」



プレイグ「死の……」


515: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 19:40:16.49 ID:fLTNZOQzO




「……泣くことーならたやすいけれど〜♪ 」

「悲しみにーは 流されーない〜♪ 」




プレイグ「宣……えっ?」



春香「この歌声……!」

春香「千早ちゃんっ……!!」

P(千早……!)




千早「恋したーことこのわかーれさえ♪ 」

千早「選んだのーは 自分だーから♪ 」




プレイグ「ちょ、ちょっと黙ってよ!ボクの声が……」



千早「群れをはーなーれたーとーりーのように〜♪ 」



P(……そうか!圧倒的な声量で相手の声を飲み込んでしまえば……)

P(千早、考えたな……)


P「みんな、今がチャンスだ!」

春香「えっ?」

伊織「そうだわ! ……千早の歌声のおかげで、あいつの声はこっちまで届かない!」

美希「じゃあ、シノセンコクってやつ、使えないんだね!」

やよい「春香さん、今のうちに!」

春香「うん!行くよ、みんな!」ダッ


516: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 19:42:25.02 ID:fLTNZOQzO

春香「鬼神の居りて、乱るる心……」

春香「……されば人、かくも小さな者なり!」チャキッ

春香「乱命……割殺打っ!」ブンッ



…ドゴォン!!



プレイグ「がっ……!」ヨロッ



美希「ミキのキラキラ魔法、くらえなのっ!」

美希「……ホーリーっ!」バッ


キラキラキラ…


ドゴオオォォォン!!



プレイグ「うあああっ!」ガクン



やよい「まものさん、ごめんなさい!」ペコリ

やよい「お母さん、おねがいしますっ!」


スゥゥ…


ミストドラゴン「邪悪なる者よ、消え去りなさい!ミストブレス!」


ブオォォ!!



プレイグ「うぐ……!」ガクッ



伊織「観念しなさいっ!」ダッ

伊織「雷迅っ!」スッ



ズガガピシャァーン!!



プレイグ「う…ぁ……!」


517: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 19:45:43.22 ID:fLTNZOQzO

プレイグ「く、くそー……!死の宣告さえ使えれば……!」チラ



千早「蒼いー鳥ー♪ もし幸せ♪ 」

千早「近くーにーあっても〜♪ 」チャキッ

千早「あのそ〜らへ〜♪ わたぁしは…………とぶっ!」ダッ

…フワッ



春香「わ!ホントに跳んだ!」

伊織「千早、まさかシャレのつもりじゃないでしょうね?」



千早「あなたをー♪ わ〜すれない〜♪ 」チャキッ

千早「……でも昨日には帰れない〜♪ 」


ビュンッ…ザシュッ!


…スタッ



プレイグ「く、そ……!」フラフラ



春香「千早ちゃんっ!」

千早「みんな、遅くなってごめんなさい」

伊織「千早、あんたも無事で良かったわ」

やよい「これで、全員集合ですねー!」

美希「やっぱり、千早さんの歌はいつ聴いてもほれぼれするの!」



カイナッツォ「うおおおお!!なんという切ない歌だ〜!」ポロポロ

バルバリシア「カイナッツォ、ちょっとうるさいわよ。……ま、確かにチハヤの歌は良かったけど」

スカルミリョーネ「……こ、こういう戦い方も、あるんだ…な……」


518: ◆bjtPFp8neU 2015/09/23(水) 19:49:02.59 ID:fLTNZOQzO

プレイグ「う……ぅ……」フラフラ



春香「魔物さん……」チラ

春香「降参してください」



プレイグ「っ……な、何を言って……」



春香「もう、二度とこんな酷い事はしないって、約束してください!」

春香「そうすれば、私たちはもうあなたに危害を加えません」



プレイグ「っ……で、できないよ、そんな事っ!ボクは、みんなのタメに、コトリ様のタメに、人間をっ……!」



伊織「状況をよく見なさいよ」

伊織「あんたまさか、この状況を覆せるとでも思ってるの?」



プレイグ「ぐっ……」



「……もういいのです、プレイグ」



プレイグ「…………えっ?」クルッ



白竜「プレイグ。あなたに負担をかけ過ぎてしまった様です。申し訳ありません」

ルナザウルス「プーちゃんは充分やってくれたッス!」

タイダリアサン「ここは潔く、降参してしまいましょうか〜」



プレイグ「み、みんな!?なんで?」


522: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 19:15:56.57 ID:HdNVU79cO

白竜「とある親切な方々に出会ったのです」

ルナザウルス「捨てる神あれば、拾う神もいるッス!」

タイダリアサン「まあそういうわけで、私たちは助かったんですよ〜」



プレイグ「そ、そう……だったんだ……!」ウルッ

プレイグ「うえぇぇん!!良かったよぉぉ!!」ポロポロ



ルナザウルス「あーあーよしよし。大泣きしちゃって……」

タイダリアサン「可哀想に。ひとりで相当気を張っていたんですねぇ」

白竜「プレイグ……」



春香「あ、あのー……」



白竜「……ご心配なく。私たちはもう、あなた方に敵対する気はありません」


千早「そんな言葉が信じられるとでも?」

春香「千早ちゃん、ちょっと待って」ガシッ


白竜「信じてもらえないのも、仕方のない事。……好きにすると良いでしょう」


千早「ええ、そうさせてもらうわ」チャキッ

春香「千早ちゃん、落ち着いて!」

千早「気を許してはダメよ、春香。魔物たちは、私たちが油断したところを狙っているのかもしれないわ」

千早「聞くだけで死ぬ言葉を操るくらいだもの。どんな攻撃があってもおかしくない」

春香「で、でも……」


白竜「ちなみに、もし今あなたが刃を振るったら、無抵抗の者を襲う事になりますが?」


千早「くっ……」

伊織「さんざん無抵抗の人間殺してきたあんたが偉そうに言えた事じゃないでしょうが」

伊織「それに、そもそもはそっちから仕掛けてきたんじゃない」


白竜「………」

ルナ「こりゃ、一本取られたッスね」


523: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 19:22:11.01 ID:HdNVU79cO

伊織「……ま、でも、ここら辺で痛み分けにしてあげても、私は別にいいわよ?」

千早「水瀬さん、なぜ?」

伊織「必要以上に叩いても、余計な恨みを買うだけ。千早もわかってるでしょ?」

千早「………」

伊織「もう、うんざりなのよ。恨みだとか仇だとかは……」

春香「じゃあ……」


白竜「ええ。あなた方さえ良ければ、和平を結びましょう」


千早「仕方ないわね」

やよい「うっうー!仲直りですね!」

美希「仲直りするなら、最初からケンカなんてしなきゃいいのに」

春香「ともかく、これで巨人は止まったね!」


プレイグ「ううん、まだだよ」


春香「え?」


プレイグ「心臓部にある、『制御システム』。それを破壊しない限り、巨人は動き続ける」


春香「あ、そっか。そういえば私たち、そのナントカシステムを壊しに来たんだったね」

千早「じゃあ、心臓部へ行きましょう」


プレイグ「待って」

プレイグ「これ、使ってよ」スッ


春香「これは……?」


プレイグ「コトリ様から預かったホーリーランスっていう槍だよ。君たちが持つのがいいって思ったから」


春香「えっと……」チラ

P「あれは千早専用の武器だ。もらっておいた方がいいぞ」

春香「だって、千早ちゃん?」

千早「ええ」スッ


キラーン!


千早(ん……? なんだか、心が洗われるような……)

千早(……不思議な槍ね)

千早「………」チャキッ

春香「うん。千早ちゃん、似合うよ!」

やよい「千早さん、カッコいいです!」

千早「そ、そうかしら」

伊織「へぇ、千早用の武器もあったのね」


524: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 19:26:07.81 ID:HdNVU79cO

プレイグ「じゃあ、ボクたちはもう行くね。お姉さんたち、どうか気をつけて」

プレイグ「あと、いろいろヒドい事しちゃってごめんなさい」

春香「いえ。それはお互い様ですし!」

伊織「………」

白竜「あなた方なら、制御システムを破壊する事も容易いでしょう」

春香「あの……あなたたちは、これからどうするんですか?」

白竜「さて……どうしましょうか。人目に付かない場所で、ひっそりと暮らすとしましょう」

春香「………」

春香「もしよろしければ、人間のみんなと一緒に……」

白竜「私たちは、あなた方人間を滅ぼそうとした魔物。簡単にあなた方の厚意に甘えるわけにはいきません」

春香「でも……」

伊織「春香、あんまりわがまま言わないの。私たちが和解したからって、いきなり人間が魔物を受け入れられるわけないでしょ?」

春香「……うん。そう……だよね」

美希「ねーねー、早くせーぎょシステムってやつを壊しに行こうよ!」

やよい「律子さんたちも、きっと待ってます!」

千早「そうね」



プレイグ「さよなら……」フワフワ

ビュー…


525: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 19:30:33.52 ID:HdNVU79cO

バルバリシア「ミキ……あなた、強くなったわね」

美希「シアちゃん」

美希「あは☆ ミキ、もっともっと強くなるよ?」

バルバリシア「そう、ね。あなたたちにはもう、私たちの力は必要ないのかもしれない」

美希「え……?」

バルバリシア「助けているつもりが、足を引っ張っていただけかもしれないわね」

春香「そんな!バルバリシアさんたちに手伝ってもらえて助かりましたよ、私たち!」

やよい「そうです!とってもうれしかったです!」

千早「皆さんには、感謝しています」

スカルミリョーネ「……し、正直、今のお前たちには敵う気がしな…い……」

カイナッツォ「ふん!人間のクセに、化け物じみた強さになりおって!」

バルバリシア「でも、それは私たちにとって嬉しい事よ」

ルビカンテ「そうだな。戦い甲斐がある」

伊織「!?」

春香「でも、やっぱり私たちがここまで来れたのは、四天王さんたちのおかげもありますし……」



伊織「はいちょっとストーップ!」



春香「? どうかしたの?伊織」

伊織「今の会話に、明らかにおかしい部分があったわ!」

春香「おかしい部分?」

美希「よくわからないの」

やよい「伊織ちゃん、気のせいじゃないかな?」

ルビカンテ「ああ、俺もそう思うが」

伊織「なんであんた、生きてんのよっっ!!」スパーン

ルビカンテ「痛っ!」



伊織「赤い悪魔! あんた、死の宣告で死んだはずじゃなかったの!?」

ルビカンテ「ふ……ボスキャラに即死攻撃は効かん。RPGの常識だぞ?」

伊織「いや、知らないわよそんなルール! それに、あんた思いっきり『さらばだ、イオリ』とか言ってたじゃない!」

ルビカンテ「いや、それは少しでも雰囲気を出そうと……」

伊織「ナルシストのクセに、何余計な気を使ってんのよ!」

春香「ま、まあまあ。落ち着こうよ、伊織」

伊織「落ち着いていられるか! 私の涙を返せー!」プンスカ








ルビカンテ「…………と、とにかく、だ。制御システムへ向かうぞ」ボロッ

バルバリシア「随分ハデにやられたわねぇ、ルビカンテ」

伊織「ふん! 因果応報よ!」

春香「えっと……じゃ、じゃあ行こうか、みんな」



526: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 19:42:01.67 ID:HdNVU79cO
ー バブイルの巨人 心臓部 ー


制御システム「………」

防衛システム「………」

迎撃システム「………」




春香「ついにここまで来たね……!」

千早「ええ」

伊織「さあ、さっさと倒してみんなのところに帰るわよ!」

やよい「はりきっていきましょー!」

美希「ハニー、ここはどう戦えばいいの?」

P「あの3つの球体を倒せばこの戦いも終わりだ。だけど、ここは倒す順番がある」

千早「順番、ですか」

P「ああ。一番後ろに控えている大きい球体が制御システム、その前にあるのが迎撃システムと防衛システムっていうんだ」

P「制御システムさえ破壊すればほぼこっちの勝ちなんだが、迎撃システムの攻撃がなかなか厄介でな」

P「だから、まずは迎撃システムから倒し、制御システム、防衛システムの順番で倒してくれ」

春香「えーっと……つまり、2つある小さい球体のうち、どっちかが迎撃システムなわけですよね」

春香「それでプロデューサーさん、その迎撃システムっていうのは、どっちですか?」

P「それは……」



制御システム「ビー! ビー!」

制御システム「機関内ニ複数ノエネルギー反応アリ! 侵入者ト見ナシマス!」



やよい「はわっ!? な、なんかしゃべりましたよ!」

春香「コンピュータ、かなぁ。なかなか賢いんだねぇ」

伊織「にひひっ♪ 春香よりも頭良かったりしてね?」

春香「もうっ! ヒドいよ伊織ー!」プンスカ


527: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 19:45:50.44 ID:HdNVU79cO

制御システム「迎撃システム、防衛システム、起動」


防衛システム「………」ブゥン

迎撃システム「………」ブゥン



制御システム「両システム作動率……15%……28%……54%…………100%!」

制御システム「迎撃システム、エネルギー充填開始!」


迎撃システム「………」コオォォ




千早「……つまり、あっちが迎撃システムって事ね」

伊織「OK、わたしが行くわっ!」ダッ

春香「伊織、私も行くよ!」ダッ



伊織「はあああっ!」

春香「やぁーーっ!」


春香「…………っとっと、うわぁ!」ズルッ

伊織「きゃっ!」ヨロッ

ドンガラガッシャーン!



春香「痛たた……」

伊織「もう! 何やってんのよ! 私まで巻き込まないでよ!」

春香「ご、ごめん……」



千早「2人とも、伏せて!」



春香・伊織「えっ?」


528: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 19:49:15.37 ID:HdNVU79cO

制御システム「迎撃システム、エネルギー充填完了! 発射!」

迎撃システム「透過レーザー」



ビュイィィィィィィ!!



春香「わあああっ!」ガバッ

伊織「ちょっ……」



ズドーーーン!!




春香「………」チラ


ボロッ


春香「うわぁ……壁が、溶けてるよ……」

伊織「あれは、食らったらヤバいわね」



美希「っていうか、あのまま春香が転ばないで攻撃してたら、タイミング的に2人ともあのビーム食らってたって思うな」



伊織「えっ……」チラ

春香「えっ……」チラ

伊織「………」

春香「………」

伊織「…………その、助かったわ、春香」

春香「…………う、うん。たまたまだけど」



千早「…………はっ!」ザシュッ


迎撃システム「………」ピシッ



…スタッ


P「そして千早はいつの間にか攻撃してるし」

美希「千早さんはマイペースだね」


529: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 19:55:15.28 ID:HdNVU79cO

美希「ねえ! デコちゃんも春香も、一旦戻った方がいいって思うな! きっとまたさっきのやつ、来るよ?」


春香「そ、そだね……」タタタ

伊織「納得いかないけど……」タタタ





P「迎撃システムのレーザー、思ったより厄介だな」

伊織「ええ。まさかあんな破壊力だとはね」

P「うーん、近接戦専門の春香と伊織にはちょっと厳しいかなぁ」

伊織「なっ! 近接戦だけしかできないわけじゃないわよ! 忍術だってあるし!」

春香「わ、私だって遠くの敵に攻撃する技はあるんですよ?」

美希「ねえハニー。あれって遠くからミキの魔法でやっつけちゃダメかな?」

P「確かに美希の魔法は強力だけど、さっきの戦いでかなり魔法使ってたろ? お前の魔力はできれば温存しておきたいところなんだよなぁ」

美希「ぶ〜! ミキ、まだやれるのに〜!」

P「……ん? あ、そうだ」

春香「どうしたんですか?プロデューサーさん」

P「千早、さっき貰った槍を使ってみてくれないか?」

千早「使う……とは? どういう事ですか?」

P「えーと、俺もうまく説明できないんだけど、千早のその『ホーリーランス』をどうにかすれば、魔法が発動するはずなんだ」

千早「どうにかって言われても……」チラ

千早「まあ、一応やってみます」

春香「千早ちゃん頑張って!」

やよい「千早さん、ファイトですっ!」


千早「………」スッ

千早(と言っても、何をどうすればいいのか……)

千早(でも、何かしなきゃ始まらないわね)

千早「………」チャキッ

千早(お願いします、何か出てくださいっ……!)


…ポヮ


春香「あっ……!」

やよい「光りましたー!」

美希「この光って……」


パァァァーーーー!


千早(えーと……なんだか行けそうかも)


千早「…………やっ!」ブンッ



キラキラキラキラ…


ドゴゴゴオオォォン!!


530: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 19:59:21.50 ID:HdNVU79cO

迎撃システム「」



春香「やったぁ、千早ちゃんっ!」ダキッ

P「うまく行ったな、千早」

千早「ええ、なんとか」

やよい「千早さん、すごいですっ!」

伊織「あれが、千早の武器の力なのね」

美希「ふーん……千早さんもキラキラ魔法、使えるようになったんだね〜」


千早(なるほど……ああいう攻撃もできるのね)





P「よし、みんな。あとは制御システムを集中攻撃だ!」


春香「よぉ〜し! 頑張ろう、みんな!」

伊織「あんたは転ばないように気を付けなさいよ?」

春香「わ、わかったよぅ」

美希「あれ? でもさっき、春香が転んだおかげでデコちゃん助かったんだよね?」

伊織「あ、あんなの、偶然に決まってるじゃない!」

伊織「今度は私のエレガントな攻撃を見せてあげるわ!」

千早(さっきの魔法のような攻撃もいいけど、私にはやっぱり、跳んで攻撃する方がしっくり来るかも)

やよい(そろそろ、呼んでみようかなぁ……)


春香「みんな、行こう!」


4人「………!」コクリ


532: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:08:03.86 ID:HdNVU79cO

バルバリシア「本当に強くなったわ、あの子たち」

バルバリシア「やっぱり、私たちの出番は無さそうね」

ルビカンテ「今は、な。だが、最後は……わかっているな?」

スカルミリョーネ「……な、名残り惜しいが、お別…れ……」

カイナッツォ「……結局、最後までルビカンテに振り回されっぱなしか」

ルビカンテ「……カイナッツォ」

カイナッツォ「わかっている。最後まで付き合ってやる。安心しろ」

ルビカンテ「お前……大分丸くなったな」

カイナッツォ「…………ふん」

ルビカンテ「みんな、オレの目的のためにすまない」ペコリ

バルバリシア「いいわよ、別に。面白そうだし」

スカルミリョーネ「……や、やっと『あれ』が試せ…る……」

カイナッツォ「ま、私も『あれ』には興味がないわけではない。今はその時を待つのみ、だ」

バルバリシア「さあ、そろそろ戦いも終わるかしらね」チラ


533: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:13:18.65 ID:HdNVU79cO

伊織「マサムネの威力、見せてあげるわ!」スッ


伊織「……ふっ!」ビュッ


…ズバァッ!



制御システム「………」ガクンッ



春香「すごい! あんなに離れたところから、刀一振りで……!」

やよい「な、何にも見えませんでしたー……」

千早「さすがね、水瀬さん」

伊織「ま、ざっとこんなもんよ!」

P(居合……っていうのかな、あれ。確かにすごいけど、あれじゃ忍者っていうより侍だな)



制御システム「……エネルギー供給回路ニ損傷。防衛システム、発動」

防衛システム「本体修復開始」



シャララーン!



美希「あっ、回復しちゃったみたいだよ?」


伊織「」



春香「まあまあ、次は私に任せて!」チャキッ

春香「命脈は無常にして、惜しむるべからず……葬る!」


春香「不動……無明剣!」ブンッ


ズドオォォン!



制御システム「………」グラッ



伊織「む……春香もなかなかやるわね」



千早「畳みかけるわ!」タンッ


ビュンッ…ズドッ!



…スタッ



春香「出た! 千早ちゃんの水平ジャンプ!」

伊織「水平……なるほど、縦だけじゃなくて、横に跳ぶ事もできるのね」


千早「高槻さん、トドメをお願い!」


やよい「わかりましたー!」


534: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:15:52.61 ID:HdNVU79cO

やよい「うっうー! 社長、出て来てくださーい!!」バッ


スゥゥー……



「…………おっ? なるほど、呼び出されるというのはこういう感じなんだねぇ」

「ふははは! ようやくこの私の出番が来たか……!」



春香「……あれ? 2人……?」

千早「『社長』って、まさか……」

伊織「『両方』呼び出したのね」

P(同時召喚とか、アリなのか……)



高木「やあ、みんな。久しぶりだねぇ。元気そうで何よりだ」


春香「 はい! 社長も!」

美希「あはっ☆ 社長、相変わらず変なカッコしてるの!」


高木「はは。私は気にいっているんだがねぇ」

黒井「高木。のんびり話をしている場合ではないだろう」

高木「……おっと、そうだったね」

高木「あれを破壊すればいいんだね?」チラ



制御システム「………」



やよい「はい! よろしくお願いしまーす!」



高木「……よし!」チャキッ

黒井「ふふふ。高槻やよい! 私の力をよく見ておくのだ!」バッ


高木「君に恨みは無いが、運が悪かったと諦めてくれ」ゴゴゴゴ

黒井「高槻やよいの敵に回った事、後悔させてやろう……!」ゴゴゴゴ



高木「……斬鉄剣!」

黒井「……大海衝!」



ザァァァー…


ザッパアァァァン!!


ズバジャキーン!!


535: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:20:34.75 ID:HdNVU79cO

制御システム「……ガガ…ガ……」

制御システム「中枢回路大破……制御不能……」

制御システム「システムダウン……」


ブゥン…



制御システム「」




春香「…………やったぁ!」

千早「すごい……! これが社長たちの力……」



防衛システム「………」



黒井「ん? まだいたか」ブンッ


ドゴォン!


ドカァァァン!



防衛システム「」



伊織「尻尾一振りで……。メインキャラじゃないくせに、なんか腹立つわね……」

美希「あー! ミキの分も残しておいてくれてもいいのにぃ!」

春香「みんな無事だったんだからいいじゃない」

美希「ぶ〜。ミキだけ見せ場が無かったの」プクー


536: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:26:58.98 ID:HdNVU79cO

やよい「社長! 黒井社長も、どうもありがとうございましたー!」ガルーン

黒井「どうだ、私の力を見たか!」

やよい「はい! とーってもカッコよかったですー!」

黒井「ククク……!」

黒井(高槻やよい……。この私が、もっとお前を満足させてやる……!)



高木「高槻君、如月君、水瀬君、星井君……そして、天海君」

高木「よく頑張ってくれたね」

高木「もちろん、戦いはまだこれで終わりではないが……」

高木「君たちには、私や黒井、ジュピターの子たち、765プロのみんな以外にも、たくさんの仲間がついている。それを、忘れないでくれたまえ」

春香「社長……!」

千早「社長……」

美希「うん!」

伊織「仲間……そうね」

やよい「みーんな、おともだちです!」


春香「黒井社長も、ありがとうございました!」ペコリ

黒井「ふん。私は高槻やよいに従っただけだ。礼を言われる筋合いは無い」

美希「でも、黒井社長もとってもすごかったの!」

伊織「ま、敵だったとはいえ、一応感謝してあげるわ」

千早「………」ペコリ



高木「……それでは、また会おう」



スゥゥー…


537: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:30:50.27 ID:HdNVU79cO

やよい「………」ガクンッ


春香「わっ……」ガシッ

千早「高槻さん!?」

伊織「やよい!」

春香「やよい、大丈夫?」

やよい「あぅ……すみません、春香さん……」

やよい「わたし、ちょっとだけつかれちゃいました……」


美希「ケアルガ!」


シャララーン! キラキラキラ…


やよい「うー……」

美希「えー? なんで効かないの?」

P「もしかしたら、魔力を使い果たしたのかもしれない」

P「やよい、ずっと頑張ってたし、最後は2体同時召喚とかやったしな」

美希「魔力…………あっ」

美希「春香、ジュピターの人からもらったお薬!」

春香「あ、そっか!」

春香「えーっと……」ゴソゴソ

春香「やよい、これ飲んで」スッ

やよい「はい……んく、んく……」

やよい「…………ふぅ」

やよい「ちょっとだけ楽になりましたー」ニコッ

P「そうか、エーテルやらポーションやら、たくさんもらったんだったな」

伊織「大丈夫、やよい?」

やよい「うん、だいじょーぶ」

千早「念のため、高槻さんは私がおぶって行くわ」スッ

やよい「すみません……千早さん」

やよい「少し……ねむい……かも……」

やよい「……zzz」

春香「……寝ちゃったね」

千早「ええ」

美希「やよいの寝顔、とっても可愛いの」

伊織「千早、やよいに変な事しないでよね?」

千早「わ、わかってるわ」ゴクリ


538: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:32:36.23 ID:HdNVU79cO


…ドゴォン!



伊織「な、何? まさか、また魔物……?」



グラグラ…



美希「ねえ、もしかしてもうここ、崩れるんじゃないかな?」

P「そうだ。制御システムを破壊した以上、巨人はもう……」

春香「じゃあ、早く脱出しないと!」

美希「うん。みんな、美希につかまって!」スッ



美希「行くよ…………テレポ!」バッ




…シーーン



美希「あれ? なんで?」

P「テレポが使えないのか……。仕方ない、もと来た道から脱出するしかないな」

伊織「はぁ……また延々歩くわけね」

千早「仕方ないわ。早く行きましょう」



ガラガラ…


ドサドサッ!



美希「あっ!」

春香「道が、瓦礫に…………」

千早「塞がれた…………」



…ドゴォン!



春香「ど、どうしましょう、プロデューサーさん!」

P「お、落ち着け! まずは瓦礫をどかして……」





「…………この時を待っていた」




春香「……えっ?」クルッ


539: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:37:00.70 ID:HdNVU79cO

ルビカンテ「邪魔者はいなくなったな」ゴオォ



伊織「赤い悪魔……? あんた、何のつもりよ?」



バルバリシア「ようやく、私たちの出番ね……!」ビュオォォ



美希「シアちゃん、ミキたち、早くここを出なきゃならないの!」



スカルミリョーネ「……お、お前たちとも、お別れ…だ……!」ゴゴゴ



春香「ど、どうしちゃったんですか、スーさん!」



カイナッツォ「最後くらい、派手に暴れさせてもらうぞ!」ザァァ



千早「ゴンザレスまで……。いったい何だっていうの?」



四天王「はああああああっ……!」ゴゴゴゴ



伊織「あんたたち、まさか……こんな時に裏切るつもり!?」

美希「ねえ、どうしちゃったの? シアちゃん!」

春香「四天王さん……?」

千早「所詮は、人間と魔物。分かり合えるはずがなかったっていう事なの……?」


540: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:40:24.97 ID:HdNVU79cO

ルビカンテ「火の力よ……!」


ボオオォォオオ!


バルバリシア「風の力よ……!」


ビュオオォォ…!


スカルミリョーネ「……つ、土の力…よ……!」


ボコボコボコッ!


カイナッツォ「水の力よ……!」


ザァァァァ…!



伊織「何なのよあいつら! この非常時に!」

美希「なんで……?」

千早「とにかく、今は脱出より先にあの人たちをどうにかしないと……!」

春香「………」



春香「……違う」

伊織「えっ……?」

千早「春香?」

春香「こんなの、間違ってる」

春香「四天王さんたちと戦うなんて、間違ってるよ!」ダッ

美希「あっ、春香!」


541: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:44:29.57 ID:HdNVU79cO

春香「ねえ、みなさん! 何かの間違いですよね?」

春香「みなさんみたいないい人たちが、最後に、こんな……!」




ルビカンテ「………」

ルビカンテ「そこをどけ、ハルカ」



春香「どきませんっ!」バッ



ルビカンテ「どけ、と言ってるんだ」ブンッ



春香「きゃっ!」ヨロッ


ドサッ!


千早「春香っ!」タタタ


伊織「あんたたち……今まで私たちを騙してたの……!?」



ルビカンテ「騙してた……か。それも間違いではないのかもな」

バルバリシア「でも、勘違いしないで。私たちはあなたたちと戦うつもりじゃないの」

スカルミリョーネ「……あ、穴を、開け…る……」

カイナッツォ「私たちがお前たちの脱出口を作ってやろうというんだ。感謝するがいい!」



春香「脱出…口……?」



四天王「反する四元の力たちよ、ここに結び合いて、光となれ!!!」



四天王「エレメント・バースト!!!」



ゴオオオォォォォオオオ!!



カッーーーー!!



春香「す、すごい……!」

千早「光の、筋が……」

美希「とっても、キラキラしてるの……!」

伊織「あいつら、こんな力を持ってたなんて……」

P(こんな技、ゲームにはない。でも……)

P(四元素が合わさるって……もしかしてこれは、春香たちの影響なんじゃ……?)




ドゴオオォォォォ…ン!!



543: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 20:57:55.71 ID:HdNVU79cO

ヒュゥゥ…



伊織「壁に……!」

春香「穴が……!」

美希「空いたの!」



ルビカンテ「……道は通じた」

バルバリシア「さあ、いきなさい、人間たち」

スカルミリョーネ「……お、お前たちの行く道は、光溢れてい…る……」

カイナッツォ「光の戦士たち。出会えた事に、感謝しよう……」

























カイナッツォ「…………って、なんだこの歯の浮くようなセリフはっ!?」

ルビカンテ「ん? 俺が考えたんだが、お気に召さなかったか?」

バルバリシア「あら、いいじゃない。私は好きだけど」

スカルミリョーネ「……る、ルビカンテ、中2くさ…い……」

カイナッツォ「こんなセリフ、恥ずかしくて言ってられるかっ!」

バルバリシア「その割には、結構ノリノリに見えたけど?」

カイナッツォ「う、うるさいっ!」カァァ


544: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 21:01:54.64 ID:HdNVU79cO

春香「え、えーっと……?」

美希「え、何? 今のってドッキリ?」

千早「どういう事なの……?」

やよい「……すぅ、すぅ……」

伊織「ちょっとあんたたち、説明しなさいよ!」



ルビカンテ「だから言っただろう? 道は通じた、と」

ルビカンテ「制御システムをダウンさせれば、巨人の機能がストップし、退路が塞がれる事は予想がついていた」

バルバリシア「だから、私たちがあなたたちの逃げ道を作ったってわけ」

スカルミリョーネ「……れ、練習では失敗してばかりだったけど、うまくいって良かっ…た……」

カイナッツォ「お前たち人間を見習い、我々も力を合わせた、という事だ!」



春香「みなさんっ……!」ジーン

千早「そういう事だったのね」

伊織「……もう。それならそうと早く言いなさいよね。まったく」

美希「あは☆ みーんな、仲良しさんなんだね!」


545: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 21:06:10.61 ID:HdNVU79cO

ルビカンテ「仲間と力を合わせる事。それを教えてくれたのは、お前たちだ」

ルビカンテ「だからこれは、せめてもの礼だ」




春香「ルビカンテさん!」


春香「あの時の答え、出たんですね?」



『リツコ様は、オレにも「仲間」というものが理解できれば、まだ強くなれると言った』

『オレにはまだ「仲間」というものがわからないが……』

『お前は………その答えを持っている』

『そんな気がしたんだ』



ルビカンテ「ふ……。さあ、な」



バルバリシア「さあ、リツコ様たちが待ってるんでしょう? 早く行きなさい」

バルバリシア「早くしないと、ここも危ないわ」



春香「そ、そうだった!」

春香「みんな、行こう!」

千早「ええ」

やよい「……zzz」

伊織「はー、やっと帰れるわね……」

美希「……レビテト!」


…フワッ


546: ◆bjtPFp8neU 2015/09/25(金) 21:09:16.45 ID:HdNVU79cO

伊織「じゃあね、赤い悪魔」

ルビカンテ「ああ」

美希「ばいばい、シアちゃん!」

バルバリシア「さようなら、ミキ」

春香「スーさん、いろいろありがとうございました!」

スカルミリョーネ「……た、達者で…な……」

千早「ゴンザレス……強く生きるのよ」

カイナッツォ「だから私はゴンザレスではないっ!!」





アイドルたち「さようならーーー!!!」





ビューーーーン…






550: ◆bjtPFp8neU 2015/09/27(日) 22:00:48.93 ID:HheV0pDlO
ー 月の地下中心核 ー



小鳥「………」

小鳥「………」

小鳥「………」

小鳥「…………うん。上出来よ」



小鳥「蛇君たち……お疲れ様。ゆっくり休んでね」

小鳥「もうあの子たちとのリンクは切って、と」



小鳥「やっと、ここまで来たのね……」

小鳥「ついにみんなも、私の四天王の子たちを超えるほどになった」

小鳥「こちらも、『準備』を急がないといけないわね」

小鳥「みんなに最高のおもてなしができるように」

小鳥「さて、親衛隊の訓練の方はどうなってるかなー」

スタスタ…


…ガチャ



551: ◆bjtPFp8neU 2015/09/27(日) 22:04:40.74 ID:HheV0pDlO
ー 月の地下中心核 訓練場 ー


クルーヤ「はいみんな頑張ってー」

クルーヤ「この足運びを身に付ければ、一人前のあいどるに近づけるってコトリさんが言ってたからね!」

クルーヤ「はいワンツー、ワンツー……」



タタッ… タッ…

キュッ… キュキュッ…



レッドドラゴン「よっ、ふっ……! なんだ、こんなの簡単じゃねーか!」タタン

プリンプリンセス「足運びは踊りの基礎。踊りでわたくしに敵う者などいなくてよ!」クルッ スタッ

月の女神「あはは! これ、結構楽しーかもっ!」タンッ タタン

ベヒーモス「元レディースのヘッドの身のこなしを舐めるんじゃないよっ!」タッ タンッ



小鳥(……ふむふむ。あの4人はなかなか才能がありそうねー。飲み込みが早いわぁ)

小鳥(対して……)チラ



リルマーダー「よっ、とっ…………あ、あれ?」ヨタヨタ

暗黒魔道士「っ……」オドオド

魔人兵「ほ、ほ、ほ……」ガシャン ガシャン



小鳥(この3人はダンスは苦手みたいね。ま、得手不得手があるのは仕方ないか)

小鳥(あとは……)チラ



ブルードラゴン「………」ボーッ



小鳥(全くやろうとしない人と……)



銀竜「兄者……我は悔しいぞ!」

金竜「堪えろ、銀竜。我々には足が無いのだっ……!」



小鳥(やりたくてもできない人、か)

小鳥(基礎の段階でこれじゃ、形になるまで時間かかりそうね)

小鳥(うーん、やっぱりちょっと無謀だったかなー)



ーーーーーー

ーーー


552: ◆bjtPFp8neU 2015/09/27(日) 22:08:15.63 ID:HheV0pDlO
ー 回想 ー



小鳥「えー…………と、いうわけで」


小鳥「今から私が、みなさんを鍛えます!」ドーン



月の女神「え〜!そんな事よりもっと楽しい事しようよ〜!」

暗黒魔道士「………」オロオロ

レッドドラゴン「ま、何もしないのも退屈だしな!」

リルマーダー「へへ、オイラ、どんな辛い修行だって、耐えてみせるぞ!」

金龍「腕が鳴るぞ!」

銀龍「だが兄者、我らには腕など無いようだ!」

ブルードラゴン「………」

プリンプリンセス「コトリ様の仰せのままに!」

魔人兵「ま、仕事だから仕方ないよな」

ベヒーモス「……で、コトリ様。アタイたちに何をやらせようってんだい?」



小鳥「ずばり、レッスンです!」ビシッ



魔物たち「れっすん……?」



小鳥「ええ、そうよ」

小鳥「これから私が、あなたたちを一人前のアイドルにするためにビシバシ鍛えますから、覚悟してね?」



ざわざわ…

「コトリ様直々に……」

「どんな訓練なんだろう……」

「あいどるってなんだ……?」



クルーヤ(あいどる……)

ダークバハムート(コトリのやろうとしている『れっすん』とやらを見ていれば、あいどるとは何かを知る事ができるかもしれぬな……)


553: ◆bjtPFp8neU 2015/09/27(日) 22:10:58.73 ID:HheV0pDlO

小鳥「で、さすがに私ひとりでみんなを見るのは厳しいので、クルーヤさんとバハムートさんにもお手伝いをお願いしたいと思います」

クルーヤ「えっ? でも、僕もバハムートも、あいどるなんて全然わかんないし……手助けにはなれないんじゃないかなぁ」

小鳥「いいえ。たぶんお2人なら大丈夫だと思うんです。私の言う通りにやってもらえればいいですから」

ダークバハムート「良かろう。コトリよ、そなたの言う通りにしよう」

クルーヤ「……ま、バハムートがやるなら、僕もやるしかないかぁ。コトリさん、フォローはよろしくね!」

小鳥「ありがとうございます、お2人とも!」




小鳥「じゃあみんな、景気付けに円陣組みましょう。さ、輪になって」



ゾロゾロ…



小鳥「じゃ、行くわよ?」

小鳥「コトリ親衛隊、ファイトーーーー!!」



魔物たち「めざせ、トップアイドルーーー!!!!」



554: ◆bjtPFp8neU 2015/09/27(日) 22:13:58.74 ID:HheV0pDlO
ーーーーーー

ーーー



小鳥「……ま、なんとかなるわよね?」




クルーヤ「はいワンツー、ワンツー……」

クルーヤ「ほらそこ、タイミングずれてるよー」




小鳥(蛇君たちのプロデュースはもうできないけど、今度はこの子たちをプロデュースするわ)

小鳥(そして、私のプロデュースしたアイドルたちとプロデューサーさんがプロデュースしたアイドルたちが、この、月の地下渓谷で戦うの)

小鳥(うふふ、素敵〜♪ )

小鳥(感動のフィナーレはもちろん……)


ダークバハムート「コトリよ」


小鳥「うひゃあ!!?」ビクッ

ダークバハムート「む? また妄想中だったか。すまぬな」

小鳥「あ、い、いえ……」

小鳥(いかん、また集中し過ぎたか……)

小鳥「ど、どうしたんです?」

ダークバハムート「ひとつ、尋ねたい事があってな」

小鳥「はい、なんでしょう?」

ダークバハムート「お主、此奴らをあいどるにする、と言っていたが、あいどるとはそう簡単になれるものなのか?」

小鳥「うーん……」

小鳥「簡単ではないですね。それに、誰でもなれるわけでもないですし」

ダークバハムート「では、此奴らにはあいどるの素質があると?」

小鳥「素質でアイドルになる人もいれば、努力でアイドルになる人もいるんです」

小鳥「あの子たちは……正直、まだわかりませんね」

小鳥「でも、導いてみせますよ、みんなを」

小鳥「それが私の使命ですから!」

小鳥(そして、プロデューサーさんと結ばれるのは、私ですから!)


ダークバハムート「……決めたぞ」

ダークバハムート「我も、あいどるになろう」

小鳥「わあ、頼もしいです! そのいきですよ、バハムートさん!」

小鳥「ビシバシ行きますからね!」

ダークバハムート「うむ。頼むぞ」


555: ◆bjtPFp8neU 2015/09/27(日) 22:17:21.72 ID:HheV0pDlO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー


ババババババ…



技師2「……ん? あれは……」

技師1「……見えました! トロイア城です!」


長老「ふむ。到着か」

店主「はー……。ようやく帰ってこれたなぁ」

ミニ助「長く、辛い戦いだった。が、結果はボクらの勝利だ。大手を振っての凱旋だな」

ピョン吉「まあ、ほとんどはヒビキさんたちの活躍のおかげなんだけどね」

ブタ美「ヒビキさん、大丈夫かな……」

ものまね士「大丈夫ですよ。グッスリ寝てるだけですから」

響「……zzz」



亜美「でも、はるるんたちがいきなり空から降ってきた時はビビったよ、ホント」

長老「うまい具合に合流できたのは僥倖じゃったのう」

長老「今はみんな、疲れて眠ってしまっておるが」

亜美「だいじょーぶなんだよね? はるるんたち」

長老「心配ない。ワシは白魔法の方が得意じゃ」

店主「……本当に巨人を倒しちまったんだなぁ、ハルカたち」

店主「すごいヤツらだとは思ってたけど……なんか、ホントすごいヤツらだな」

ものまね士「ふふふ。すごいしか言ってないじゃないですか」

店主「いや、だってよ。それしか思いつかないんだよ」

亜美「ま、亜美たちはアイドルだかんね! アイドルにフカノウはないんだよ?」

店主「あいどる、かぁ」

ものまね士「すごいんですね、あいどるって」

亜美「うん、すごいんだよホント。歌って、踊って、キラキラしてさ」

亜美「みんなで楽しくすごす時間が、台風みたくガーってやって来て、気づいたらシーンってなってて」

亜美「でも、歌い終わったあとは、空が晴れたみたいにスッキリしてさ」

亜美「なんか、そーゆーカンジ?」

店主「……ん〜、わかるようなわからないような」

ものまね士「吟遊詩人や踊り子も兼ねてるんですかぁ。見てみたいな、皆さんの歌や踊り」

亜美「あ、いいね、それ! 亜美もライブやりたい! みんなにソウダンしてみよっかなー」

長老(あいどる、か)

長老(この戦いは『あいどる大戦』とでも名付けて、後世まで語り継ぐとするかの)



技師1「間も無く着陸しまーす!」



556: ◆bjtPFp8neU 2015/09/27(日) 22:22:09.97 ID:HheV0pDlO
ー ドワーフ戦車 ー


キュルキュルキュル…


ジオット「アン殿、城まではあとどのくらいかな」

アン「ええと……もうそろそろ見えて来ると思いますが……」

ジオット「我が戦車の燃料も装甲も、ここまで持った事は奇跡だな」

アン「申し訳ありません。このような事態になってしまって」

ジオット「いや、すまぬ。アン殿を責めているわけではないのだ」

老婆「奇跡、ねぇ」

老婆「本当に巨人を倒しちまうとはね。いやはや、大した娘たちだ」

ルカ「お婆様。みんなの力、ですよ!」

老婆「……そうだね、ルカ。みんなの気持ちがひとつになったからこそ、成し遂げられた」

老婆「ところで小娘。城に帰ったらどうするんだい? やる事はたくさんあるんだろう?」

アン「そうですね。今の今まで妹たちに任せきりでしたし」

アン「国土の拡大、開拓。引き続き生存者の回収。医療設備や住居の増設に、難民への対応……ああでも、その前に現状を把握しなくては」

トロア「姉上。奥方殿がおっしゃっているのはその事ではないのでは?」

トロア「この戦いに多大な貢献を果たした『彼女たち」の処遇についてだと思いますが」

アン「ああ……」

老婆「何か考えがあるのかい?」

アン「うふふ。あいどるの方々には、もちろん相応の対処をさせていただきます」

ユキコ「あ、あのっ!」

ユキコ「私も、何かお手伝いさせてください! 私じゃ、役に立たないかもしれませんけど……」

ルカ「もちろん私も手伝いますよ!」

アン「そうですね。お願いしますわ!」


557: ◆bjtPFp8neU 2015/09/27(日) 22:24:32.08 ID:HheV0pDlO

真「……zzz」

シルフ「……zzz」

雪歩「ふふっ。シルフちゃん、真ちゃんにべったりだね」

雪歩「お人形さんみたいで可愛いなぁ」

真美「まー、口を開くとなかなかドクゼツだけどねー」



雪歩「………」

雪歩「終わった……んだよね?」

真美「全部じゃないけど……地球編はもう終了ってカンジじゃないかな?」

真美「あとは、月に行って、ピヨちゃんに会って……」

雪歩「……うん。でも、今は、ちょっとだけお休みしたいかも」

真美「だよねー。真美たち、もう何時間寝てないんだって話だよー」




「…………おーーーーい!!」




真美「……ん?」

雪歩「今何か……」




律子「……そこの戦車、止まって〜〜!!」




雪歩「あっ、あれって……!」

真美「りっちゃんじゃん! それにお姫ちんにあずさお姉ちゃん! ……と、あと知らないじーちゃん」


真美「おーい、ドワーフのおっちゃん! ちょっとストップー!」


558: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 06:47:11.14 ID:+N6a9FZtO
………………

………



律子「……はぁ、助かったわ……」


真美「なんでりっちゃんたち、そんなにボロボロなの?」

貴音「あずさいずが、反乱を起こしたのです」

雪歩「あ、アズサイズ、ですか……?」

あずさ「私の操縦が良くなかったのかしらねぇ……」

律子「いえ、きっとあずささんのせいじゃありませんよ」

真美「何があったの?」

律子「私たちが乗ってた巨人が、いきなり動かなくなったのよ」

律子「おかしいなって思ってたら、今度は爆発するし……」

雪歩「そ、それは……大変だったんですねぇ」

真美「あ、そっか。たぶん、はるるんたちがホンモノの巨人を壊したから……」

律子「ええ。恐らく、連動する形でこっちの巨人も機能停止したんでしょうね」

律子「まったく、散々な目に遭ったわ」

貴音「……ともあれ、作戦は成功したようですね」

真美「だね! さすがはるるんたち!」

雪歩「みんな無事で、本当に良かったですぅ」

あずさ「安心したら、ちょっと眠くなっちゃったわね」

真美「うんうん。それに、おなかもすいたし、シャワーも浴びたいし……」

律子「トロイアに戻ったら、少し休みましょうか」


559: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 06:55:18.85 ID:+N6a9FZtO
ー トロイア城 謁見の間 ー



アン「本当に……」

アン「本当に皆さん、よく戦ってくれました!」

アン「誰ひとり欠ける事なく、こうしてまた皆さんにお会いできた事を、心より嬉しく思います」

アン「特に、あいどるの方々。あなた方は、身の危険も恐れず、利益も求めず、ただ、正義の名の元に悪を打ち破ってくださいました」

アン「英雄とは、まさにあなた方あいどるのためにある言葉」

アン「あなた方の戦い、そしてかけがえのない『絆』は、生涯この国に伝えられてゆく事でしょう」



アン「……もう一度、この国を代表してお礼申し上げます」

アン「本当に、ありがとうございました!」ペコリ



春香「えへへ、なんだか照れちゃうなぁ」

千早「まだ、全てが終わったわけではないけどね」

伊織「でも、さすがにこれで地球の平和は安泰かしらね」

亜美「んっふっふ〜! これも全て大魔道士亜美のカツヤクがあればこそ!」

真美「いやいや、この超大魔道士真美のおかげに決まってるっしょー!」

貴音「勧善懲悪。正義が勝つのは、必然なのです」

響「うぅ……起きたら全部終わってて、自分、何がなんだかさっぱりだぞ……」

真「ボクもだよ。はぁ……なんか損した気分……」

雪歩「だ、大丈夫だよ。真ちゃんも響ちゃんも、すごかったと思うよ?」

あずさ「うふふ。やっぱり平和が一番ね〜」ニコニコ

やよい「はい! 平和が一番です!」ニコッ

美希「ん〜、ミキは、ハニーの言う通りにしただけなの。……あふぅ」

律子「そうね。私たちの目的が、たまたまこの世界の平和と繋がったってだけなのかも」


560: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 06:59:05.58 ID:+N6a9FZtO

アン「それで、なんですが」

アン「我が国の誇りにかけて、あなた方に是非お礼をさせていただきたいのです」

春香「ええっ!? い、いいですよぅ、別に……」

アン「いえ、ですが、それではこちらの気が収まりません」

春香「ええ〜……」

春香「どうしよう、千早ちゃん」

千早「私は、何でもいいわ」

春香「……うん、言うと思ったよ」

亜美「はるるーん。何かもらえるんだったらもらっとこーよ!」

真美「そーだよ。せっかくのコウイを無にするのもシツレーっしょ!」

律子「春香、どうするかはあなたが決めてね」

春香「わ、わかりました」

春香「うーん……」

貴音「………」グゥゥ

春香「ええと……」

貴音「………」グゥゥ

春香「何かあるかなぁ……」

貴音「………」グゥゥ


春香「………」チラ

貴音「………」


貴音「すみません」

春香「あはは……ガマンできなかったんですね?」

貴音「恥ずかしながら」



春香「すみません、アンさん。何か食べ物をもらえたらありがたいなーと……」

アン「あら。それは当たり前の事として用意させていただいてますよ?」

アン「食事だけでなく、衣食住全てこちらでお世話させていただきます」

アン「あなた方には、何日でも何ヶ月でもこの国に滞在していただきたいと思ってますから」

春香「そ、そうなんですか……。なんかすごい扱いだなぁ」

千早「でも、そんなにこの国にいる暇は無いと思うわ」

春香「そう、だよね」



アン「他には何かありませんか? 金銀や名誉勲章など、何でも欲しいものをおっしゃってください」

春香「いや、別にそういうのは特に……」

春香「あっ……」

春香「すみません。じゃあ、ひとつだけお願いがあるんですけど……」

アン「はい。何なりと」

春香「多分、これに関してはみんな満場一致だと思うんだけど……」




春香「おフロ、貸してもらえますか?」



561: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:22:07.44 ID:+N6a9FZtO
ー トロイア城 大浴場 ー



春香「わぁぁ……!」

やよい「広いですー……!」

伊織「ふぅん……」キョロキョロ

雪歩(おフロ、かぁ。なんだか久しぶりな気がするよ……)



チャポン…


春香「ふぅ……気持ちい〜♪ 」

伊織「当たり前だけど、やっぱりシャワーとかは無いのね」

春香「仕方ないよ。ゲームの世界だもん」

雪歩「でも、こういうのもなんだか風情があって好きだなぁ」

伊織「ま、悪くはないかもね」



やよい「うっうー! 高槻やよい、行っきまーすっ!」

ザボーン!

バシャバシャ…



春香「あははっ、やよいったらまた泳いでる」

雪歩「なんだか、ダムシアンのおフロを思い出すね」

春香「うん! あそこのおフロも良かったよねー!」

伊織「ダムシアン……雪歩の国、だったかしら?」

雪歩「……今はもう、なくなっちゃったけど……」

伊織「……そうだったわね

雪歩「あ、でも確か、伊織ちゃんのお城も……」

伊織「………」

雪歩「あっ……ご、ごめんなさい……」

伊織「………」

雪歩「………」

春香「ふ、2人とも、元気出そ。ね?」


562: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:24:53.83 ID:+N6a9FZtO

チャプン…


雪歩「ねえ、春香ちゃん」

春香「ん? なぁに?」

雪歩「あの時ダムシアンのおフロでさ、頑張ろうねって話、してたよね?」

春香「そうだね。あの時は、私と雪歩とやよいの3人しかいなかったんだっけ」

伊織「………」

雪歩「本当に、みんな集まったね。……小鳥さん以外、だけど」

雪歩「正直言うと私、あの時はまだ、みんなでまた笑い合えるなんて想像できなくて……」

雪歩「全部、春香ちゃんのおかげだよ。ありがとう、春香ちゃん!」

春香「そ、そんな、私なんて全然……」

春香「…………うん。これはやっぱり、みんなのおかげだと思う」

春香「私たち一人ひとりが諦めなかったから、私たちはまた、こうしてみんなで集まる事ができた」

雪歩「そっか……」

雪歩「うん、そうだね!」

伊織「にひひっ♪ 雪歩もなかなか前向きな考え方ができるようになったじゃない?」

雪歩「あ、あぅ……///」



バシャーン!


やよい「……っぷはぁ!」

やよい「高槻選手、一着でゴールです! いぇいっ!」ブイッ



伊織「ふふ、やよいは元気ね」

やよい「えへへ、みんなでおフロなんて、なかなかないかなーって」ニコッ

伊織「まあ、そうね」


やよい「それにしてもー……」チラ

やよい「やっぱり雪歩さんのお肌って、キレイですよねー」

やよい「真っ白で、本当の雪みたいかなーって」

雪歩「そ、そんな事ないよぉ……」

雪歩(……あれ? なんか、デジャヴ?)

やよい「さわっても、いいですかー?」

雪歩「や、ちょっと、恥ずかしいかなっ……」バシャバシャ

やよい「あ、雪歩さん待ってくださいー!」バシャバシャ

伊織「やよい、手伝うわ!」バシャバシャ

雪歩「ふ、2人とも、恐いよぅ!」


春香「………」

春香(こんなやり取り、前にもあったね)

春香(なんだかもう、遠い昔の事みたいで、不思議だなぁ)


563: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:28:27.91 ID:+N6a9FZtO

…バシャッ

千早「ふぅ……」



千早「………」スッ

千早「………」ゴシゴシ

千早(まともにおフロに入ったのなんて、いつ以来かしら)

千早(やっぱり、気持ちいいわね)



4位「わたっしのめがね♪ ふふんふ〜ふふ〜ん♪ 」ゴシゴシ

4位「……あら?石鹸がどこかに行っちゃったわ」キョロキョロ

1位「あ、律子さん。こっちにありますよ〜」ドタプーン

4位「あ、ありがとうございます」プルンッ

千早「………」ゴシゴシ

千早(……ふふ。こんな包囲網くらいでヘコむ私じゃないわ)

千早(もう、以前の私とは違うのよ)


ヒタヒタ…


3位「あー、千早さんなの!」

3位「ねえねえ千早さん、ミキが背中流してあげるね?」

千早「い、いえ、私は別に……」

千早(ゆ、油断した……さらに包囲網が……!)

3位「も〜、ミキと千早さんの仲でエンリョしちゃヤ、なの☆」ブルンッ

2位「わたくしも手伝いますよ、美希。2人で洗う方が効率的でしょう」ボヨンッ

2位「それに千早は、此度の戦いの立役者。労うのが仲間というものです」ニコッ

3位「うん、そうだね! 千早さん、くすぐったかったりしたら言ってね?」ゴシゴシ

千早「え、ええ……」

千早(なぜ、上から順に私の周りに……)



千早「…………くっ」ズーン


564: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:33:59.71 ID:+N6a9FZtO

響「うわぁ、広いぞー!」

真「ホントだ……! なんかホテルのおフロみたいだね!」

響「これだけ広いと、ただ普通に入るだけじゃもったいない気がするなぁ」



響「ねえねえ真。どっちが向こうまで速く泳げるか、競争しない?」

真「いや、気持ちはわかるけど……おフロってそういう場所じゃないだろ? みんなに迷惑になるし」

響「うーん、そっか」

響「あ、じゃあ、潜水勝負ってのはどうだ?」

真「潜水かぁ。うん。それならいいよ!」

響「ふふーん! うちなーんちゅの潜水力、見せてやるぞ!」

真「へへっ! ボクだって、この世界でたくさん修行したんだからね! 負けないよ!」

響「よーし、じゃあ行っくぞ〜!」


響・真「せーーーのっ!!」


ザブーン!!




春香「……はー、極楽〜♪ 」

雪歩「あれ、そういえば……」キョロキョロ

春香「どうかした?」

雪歩「うん。亜美ちゃんと真美ちゃんを見ないなぁと思って」

伊織「おかしいわね。あの2人なら、こういうとこは真っ先に来てはしゃぐと思うんだけど……」

やよい「あ、そーいえば亜美と真美、忘れものを取りに行くって言ってましたよ?」

春香「忘れもの……なんだろ?」

伊織「何か企んでるのかしら」

雪歩「考え過ぎじゃないかな?」

春香「いや、なんとなーく、私も何かあるような気がするなぁ」



やよい「あ、それよりも雪歩さん!」

雪歩「な、何かな?」

やよい「お肌、さわらせてくださーい!」バシャバシャ

雪歩「はぅ〜! やよいちゃんが恐いですぅ〜!」バシャバシャ


565: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:36:43.26 ID:+N6a9FZtO

アハハッ…

バシャバシャッ…

ヒィーン! ウマッテマスー!




亜美「んっふっふ〜♪ みんな、いいカンジにはしゃいでんね!」

亜美「この楽園が、すぐにビバ教官の地獄絵図になるとも知らずに……」

真美「ねえ亜美、やっぱやめない?」

亜美「えぇ〜! ここまで来てビビったの?真美」

亜美「これは前から2人で計画してたことじゃんかー」

真美「そ、そーだけどさ。やっぱりその……はずかしーってゆーか……」モジモジ

亜美「そんなのみんな同じだって! 気にしてたらキリないよ?」

真美「う、うん……」

亜美「さあ、行こう。我々の持つこのバクダンで、パラダイスにカクメーをもたらすのだ!」スッ

ガサガサッ

真美「う〜、ちかたない。こうなったら、真美も女になるカクゴを決めるしかないか!」

亜美「おっ! さすが我が姉! 勇気りんりんだね!」



亜美「では行くぞ、同志よ!」

真美「OK、ボス!」

タタタタ…


566: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:39:28.32 ID:+N6a9FZtO

亜美「へーい! れでぃーすえーん、じぇんとるめーん! 楽しんでるかーい?」

真美「プリティ・エンジェル、アミ&マミの登場だぜっ!」


やよい「あっ、亜美、真美! やっと来たんだー」

春香「もう、待ってたんだよ?」

伊織「あんたたち、ここにはレディースはいても、ジェントルマンは一人もいないわよ」

亜美「お、さっすがいおりん、いいとこに気づいたね!」

真美「実は……いるんだよね、じぇんとるめーんが一人だけ!」

伊織「……は?」

雪歩(っていうか亜美ちゃん、手に何持ってるんだろう……?)

亜美「それでは紹介しよう。今日のゴキゲンなゲストは〜……」

亜美「こいつだぁっ!」

バサッ…



「〜〜! 〜〜!」ジタバタ




やよい「あっ、べろちょろ……」



春香「あれっ……? っていう事はあれは……」



春香・伊織・雪歩「ぷ、プロデューサー(さん)っ!!?」



P「モゴ〜〜!!」ジタバタ



567: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:42:36.29 ID:+N6a9FZtO

伊織「あっ……あんた達! 何持って……いや、連れて来てんのよっ!?」

春香「そ、そうだよ! いくらなんでもやり過ぎでしょ!」

亜美「心配ないって! ちゃーんと目かくしはしてあるからさ!」

雪歩「そ、そういう問題じゃないんじゃ……」

真美「でも、さすがにかわいそーだから、口のやつは外してあげよっか」

スルッ…

P「……っぷは!」

P「お、おい亜美、真美! どこに連れて来たんだよ!? まったく、俺が動けないと思って無茶して……」


チャプン…


P「……あれ、水の音? っていうか、この石鹸の香りはまさか……!」

亜美「うん、せーかい! ここはお城のおフロだよん!」

P「え? フロ? な、なんで……?」

伊織「この変態っ!」バシャッ

P「ぅわぷっ!?」

春香「ぷ、プロデューサーさん、セクハラですよ、セクハラっ!」

雪歩「うぅ〜! 恥ずかしいですぅ〜……///」

やよい「プロデューサーもおフロですか?」

P「こ、この声 ……まさか、みんないるのか!?」

真美「そーだよ。みんなでおフロ入るのに、兄ちゃんだけ仲間はずれはかわいそーだと思って」

亜美「765プロの合言葉は『団結』っしょ? だから何にも問題ないよね?」

P「いやいやいや、問題あり過ぎだろ!」


568: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:47:07.38 ID:+N6a9FZtO

P(巨人戦がようやく落ち着いて安心してたら……なぜこんな事に?)

P(やばい、やばいぞこの事態は!)

P(まあ、俺はべろちょろだし目かくしもされてるから、何も間違いは起きないとは思うけど……)

P(……俺、今、この世界へ来てから最大のピンチなんじゃないか?)




亜美「でも、まだこれじゃダメだよね。だって兄ちゃんの背中流してあげらんないもん」

真美「……///」

亜美「だからここは、亜美の魔法で……」

伊織「え? 背中流す? ちょっと亜美、どういう事か説明……」

春香「あ、亜美、ダメ! それはさすがにシャレにならな……」



亜美「……トード!」バッ


…ボンッ


伊織「しなさ………………あ」

春香「いから……って……」

雪歩「はぅっ……///」ボッ

やよい「はわっ!? プロデューサーが人間に!」




ズルッ

P「………………あ、目隠しのタオルがズレた……」





亜美「さ、これで兄ちゃんの背中流してあげられるね!」





春香・伊織・雪歩「…………きゃあああああああああっっっ!!!」



569: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:49:52.42 ID:+N6a9FZtO

美希「〜〜♪ 」ゴシゴシ

貴音「千早の肌は、とても綺麗ですね」ゴシゴシ

千早「そ、そんなは事ない、です……///」

千早(この拷問はいつまで続くのかしら……)

千早(いえ、2人の優しさだというのはわかっているのだけど……)




イヤァーー!!

コノヘンタイ! ドヘンタイ!

ウワァ!? ツチノコガマエヨリセイチョーシテルー!?




千早「……ん?」

美希「なんかにぎやかだねー」ゴシゴシ

貴音「ふふ。皆で入浴など滅多にない機会ですから、気分が高揚しているのでしょう」ゴシゴシ

あずさ「うふふ、みんな楽しそうねぇ」

律子「もう、あの子たちったら。他に誰もいないからいいものの……」

律子「ちょっと注意して来ようかしら」スクッ

スタスタ…



美希「……はい、終わりなの!」

千早「あ……ありがとう。美希、四条さん」

貴音「礼には及びません。これが本当のすきんしっぷ、というものでしょう」ニコッ

美希「ねえ千早さん。ついでに前も洗ってあげよっか?」

千早「えっ、遠慮しておきますっ!」カァァ

美希「ちぇー、つまんないの」




アンタタチー! イイカゲンニ…

…ッテ、ギャァーーー!!




貴音「おや? 今度は律子嬢の悲鳴が……」

あずさ「あらあら、律子さんまで楽しんでいるのね〜」

千早「律子が悲鳴上げるなんて……何かあったのかしら?」

美希「…………はっ!」ビクッ

美希「この気配は!」バッ

千早「美希? どうしたの?」


570: ◆bjtPFp8neU 2015/09/28(月) 16:52:09.79 ID:+N6a9FZtO

ザバァッ!!


響「……ぷはっ!」

真「……ぷはぁ!」


響「今のは自分の方が長かったな!」

真「いいや、響の方がちょっと先に顔上げたよ、絶対!」


ボオオォォオオ!


響「うわぁっ!?」バシャッ

真「わわっ!」バシャッ

響「な、なんでおフロに火が……?」

真「さ、さあ?」




伊織「死ね! 死ね! あんたなんか焼け死んじゃえっ!」

伊織「火遁! 火遁! 火遁〜〜!」

ボオオォォオオ!

P「わっ! ちょ、ちょっと落ち着け伊織! 危ないって!」

亜美「いけいけいおりーん!」

真美「うわー、兄ちゃんへーきかなぁ」

春香「い、伊織待って! おフロで火なんか出したら危な……」

春香「……って、きゃあっ!?」ズルッ

ドンガラザッパァーン!!

雪歩「は、春香ちゃん大丈夫!?」

やよい「プロデューサー、わたし、お背中流しますよー!」

美希「だ、ダメ! それだけはやよいでも譲れないの!」

千早「あ、だったら私は高槻さんの背中を……」

律子「」ブクブク



貴音「……まさに、混沌としていますね」

あずさ「うふふっ♪ 私も混ざって来ようかしら〜?」




真「…………ねえ、響。いったい何が起こってるのかなぁ……?」

響「自分にもサッパリわかんないぞ……」


572: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 22:25:36.46 ID:HlXMP2ShO
ー トロイア城 客室1 ー


律子「…………と、いうわけで、罰として亜美はこの国にいる間はトード禁止! それ以外の魔法も控える事! 真美もよ! わかった!?」

真美「え〜? でも、それじゃ兄ちゃん持ち運ぶの不便になるじゃん」

亜美「そーだよ。亜美がいないと兄ちゃんは変身できないんだよ?」

律子「わ・か・っ・た・か・し・ら?」ゴゴゴゴ

亜美・真美「い、イエッサー!!」

亜美(くっ……すげえ暗黒闘気だ……!)

真美(味方とは思えない殺気だぜ……!)


律子「プロデューサーの運搬云々は、まあ、人型ならとりあえずは問題無いでしょ」

亜美(なんか、兄ちゃんの扱いが……)

真美(うん。もう普通の人間のそれじゃないよね……)



律子「まったく、久々の再会だっていうのに怒らせないでよ……」

亜美「ごめんねりっちゃん」

真美「ごめんなさーい」

律子「………」

律子「ま、反省してるようだから、ここらへんでやめておくわ」

亜美「……えへへっ♪ 」

律子「な、何よ?」

真美「いや〜、こうしてりっちゃんに怒鳴られるのも久しぶりだなーって」

律子「確かにそうねぇ」

亜美「りっちゃ〜ん!」ダキッ

真美「会いたかったよりっちゃ〜ん!」ダキッ

律子「こ、こら、離れなさいって!」


573: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 22:28:41.25 ID:HlXMP2ShO

P「………」

P(結局、お風呂の事件は亜美真美が全ての責任を被り(当たり前だが)、2人には久々の律子の雷が落ちた)

P(伊織の火遁で風呂場が損傷しているかもと心配したけど、意外にも無傷だった。案外、伊織が加減してくれたのかもしれない)

P(ケガ人も出なかったし、まあ良かったんだけど……)

P「………」チラ



P「……なあ、律子」

律子「……ななな、なんですか、プロデューサー?」ビクッ

P「いや、なんかすまなかったなぁと思って」

律子「き、気にしないでください! べ、別にあんなの見たくらいで私……あっ」

律子「〜〜っ!」カァァ

P(律子は何かを見てショックを受けたみたいだ)

P(なんか、俺もちょっとショックかも)



P「ところで、みんなは今何をしてるんだ?」

律子「あ、はい。しばらくしたら夕食らしいので、春香、やよい、あずささんは厨房に手伝いに行ってます」

律子「響はファルコン号のメンテナンス。真、雪歩は響の手伝いに」

律子「他のメンバーはちょっとわかりませんね。美希はたぶん隣の部屋で寝てると思いますけど」

律子「夕食の時間は伝えてあるので、その頃にはみんな集まるでしょう」

P「そっか。ありがとう」

律子「プロデューサーは食事までどうするんです?」

P「とりあえずまた人間になれた事だし、ちょっと話をしに行って来ようと思ってる」

律子「話って……誰のところに?」

真美「あ、ひょっとして兄ちゃん、長老っちのところに行くの?」

P「うん。巨人と戦う前にさ、長老に『話したい事がある』って言われてたのを思い出してな」

律子「長老って……ああ、例の、プロデューサー殿の姿が見えるっていう?」

P「数少ない、この世界での俺の友人だよ」

P「律子も来るか?」

律子「え? いいんですか?」

P「もちろん。律子にも話を聞いておいてもらいたいし」

律子「わかりました。じゃあ、お供しますね」


574: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 22:31:29.89 ID:HlXMP2ShO

亜美「……ねえねえ兄ちゃん。今後の事って、もしかして魔導船の事かな?」

P「ああ……いや、どうかな。魔導船はもう手に入ったわけだし。何か別の事なんじゃないかな」

P「……あれ? そういえば魔導船って今どこにあるんだっけ?」

律子「ありませんよ?」

P「…………は?」

律子「響から聞いてないですか? 私と貴音でバブイルの塔にあった魔導船を動かそうとしてる時に、巨人に襲われたんです」

P「それは聞いたけど……。じゃあ、魔導船は……」

律子「そのまま大破、です。動力源であるクリスタルも粉々になってしまったし……」

P「そ、そうなのか?」

律子「てっきりプロデューサー殿はこの事、知ってるものだとばかり……」

P(まずいな……。月へ行く手段が無くなった)

律子「すみません。私のせいで……」

P「ああ、すまん。律子も貴音も悪くないよ。いきなり巨人に不意打ちされたんだ。誰が相手しても勝てなかっただろ」

律子「あの、他に月へ行く手段は無いんですか? 例えば、次元エレベータとか」

P「次元エレベータか……。一応試してみる価値はあるかもな」

亜美「っていうかさ。真美とも話したんだけど、そもそも魔導船ってそんなカンタンに壊れちゃうもんなの?」

P「え?」

真美「ほら、普通、RPGの重要アイテムとかってさ、絶対なくならないようになってるじゃん? だから、変だねーって2人で言ってたんだー」

P「ん……言われてみれば確かにそうだな」

P「けど、だったらあの魔導船はなんなんだ?」


575: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 22:34:24.47 ID:HlXMP2ShO

律子「じゃあ、乗って来た本人に聞いてみます?」

P「乗って来た本人? ……ああ、貴音か。うん、貴音なら何か知ってるかもしれないな」

P「……って、どうした、2人とも?」

亜美「んー……」ショボショボ

真美「ゴメン、兄ちゃん、りっちゃん。真美たち、ちょっと眠いかも……ふわぁ」

律子「……そうよね。あんなに長い戦いがあったばかりだもの」

律子「あんたたちは夕食まで少し休んでなさい。この部屋のベッド使っていいから」

亜美・真美「うん。わかったー」

ノソノソ…



P(そっか……そうだよな。みんな疲れてるんだ)

P(何も今すぐ行動を起こさなきゃいけないわけじゃない。少しくらい休みがあったって、いいよな)



律子「プロデューサー? どうしました?」

P「やっぱり長老のところへ行くのは別の日にする。律子も今日はゆっくり休んでくれ」

律子「そんな、いいですよ私に気を遣わなくても。もう子供じゃないんですし」

P「でも、律子だって疲れてるだろ?」

律子「疲れてません!」

P「そ、そんなに怒鳴らなくても……」

P「ちょっとくらい休みは必要だろ?」

P「正直、律子の事が心配なんだよ。なんか、いろいろ無理しそうだし」

P(律子はたぶん、暗黒騎士として春香たちと敵対した事を負い目に感じてるだろうし)

P(だから、なるべく無理はさせたくない)


律子(…………とかプロデューサー殿は考えてるのかしら)

律子(まあ、だいたい図星だけど)


律子「……わかりました。今日のところは引き下がります」

P「うん。ゆっくり休めよ」





律子(……でも、本音は)

律子(久々にプロデューサー殿と行動できる〜〜って思って、浮かれてただけなのよねぇ)

律子(はぁ……まだまだ修行が足りないわ、私も)


576: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 22:40:51.61 ID:HlXMP2ShO
ー トロイア城 厨房 ー


店主「ふんふーん♪ 」トントントン

店主「ほい。一丁上がり!」

ものまね士「じゃあこれ、持って行きますね!」スッ

スタスタ…

店主「ああ、ものまね士。ついでにあれも持って来てくれ」

ものまね士「わかってますよ〜」

ものまね士「あ、店主さ〜ん! それ終わったらあっちお願いしますよ?」

店主「わかってるって!」



やよい「ほぇー……」

やよい「なんで店主さんとものまね士さんは、『あれ』とか『それ』でわかっちゃうんでしょう?」

春香「んー、それだけ通じ合ってるって事なのかなぁ」

あずさ「そうねぇ。まるであの2人、夫婦みたいにお互いを理解しているのね〜」

春香「夫婦……」

春香(そういえばあの2人、その後どうなったんだろう。ものまね士さん、店主さんに告白とかしたのかな)

春香(うー、気になるなぁ。あとでそれとなく聞いてみようっと)



店主「しかし、ハルカやヤヨイの料理の手際の良さは知ってたが、アズサもなかなかやるもんだなぁ」

あずさ「うふふ。ありがとうございます〜」トントントン

ものまね士「む……」

ものまね士(私だって料理くらいっ……)


ものまね士「フンッッ!!」ビュッ

スパーン!

ものまね士「フンッッ!!」ビュッ

スパーン!



やよい「わー! ものまね士さん、手刀でお野菜を切るなんて、すごいですー!」

店主「いや、普通に包丁使えよ……」

春香「あはは、ものまね士さんらしいですねぇ」

春香(ひょっとして、あずささんに嫉妬してたりして)



…ガチャ



577: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 22:43:46.57 ID:HlXMP2ShO

春香「…………ん?」クルッ

春香「あれ? プロデューサーさん?」



P「ごめん。今、忙しいかな?」



春香「そうでもないですけど……どうしたんですか?」

P「いや、貴音探してるんだけど、見なかったか?」

春香「いえ、私はおフロ上がってからは見てないですね」

やよい「わたしもわからないですー」

あずさ「すみません、お力になれなくて」

P「そうか。……ありがとう。他を当たってみるよ」

P「頑張ってな」

春香「は〜い」フリフリ



…バタン



店主「なあ、今のって……」

春香「あ、はい。プロデューサーさんです」

店主「姿が見えない身としては、誰もいないのにいきなり扉が開くのは気味が悪いな……」

春香「あはは、まあ、そうですよねー」



やよい「〜〜♪ 」グツグツ

あずさ「やよいちゃん、もうそろそろかしら〜?」

やよい「はい! いい具合にだしが取れたと思います!」

あずさ「あとは〜」チラ



ものまね士「フンッ!」バシーン

ものまね士「おりゃッ!」バシーン

ものまね士「ちぇすとー!」バシーン



あずさ「麺が完成するのを待つだけね♪ 」

やよい「えへへっ♪ もやしもたーくさん入れちゃいますよー!」

店主「しかし、オレも知らない料理があったとは……世の中広いなぁ」

春香「これは、私たちのせか……じゃなくて、故郷に伝わる料理なんです」

春香「きっと、皆さんにも気に入ってもらえると思いますよ?」


578: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 23:00:16.93 ID:HlXMP2ShO
ー トロイア城 客室2 ー



伊織(今回の戦いでわかったのは……)

伊織(私はまだまだ弱いっていう事)

伊織(みんながいなければ、私は何もできなかった)

伊織(それじゃ、ダメ。スーパー忍者アイドル……ううん)

伊織(……水瀬伊織という人間は、もっと強くなきゃダメなのよ)



千早「……考え事?」



伊織「……千早」



千早「お茶、淹れてみたの。萩原さんみたいにはいかなかったけど。……飲む?」スッ

…コトッ

伊織「……いただくわ」

伊織「ズズ……」

千早「………」



千早「水瀬さんが何を考えているのか私にはわからないけれど……」

千早「もし良かったら、私たちにも相談して欲しい」

伊織「……へ?」

千早「その……いろいろ大変だったんでしょう? プロデューサーに聞いたわ。あのルビカンテという方が、水瀬さんのご両親の仇だって」

伊織「あいつ、なんで知って……」

伊織(……って、当たり前か。ここはあいつが持ってきたゲームの世界だものね)


千早「私では力不足かもしれない。けれど、みんなで知恵を出し合えば、きっと……」

伊織「ぷっ……何よそれ。春香のマネ?」

千早「い、いえ、そういうつもりは……」

伊織「らしくない事言うのね」

千早「………」

千早「やっぱり、そうよね……。前に我那覇さんや真にも言われたわ」

伊織「あ、その……」

伊織「き、気持ちは、まあ……嬉しかった……わよ」

千早「水瀬さん……」


伊織(らしくない、か……)

伊織(どっちが、って話よね)

伊織(シャンとしなさい、私)



伊織「ありがと、千早」

千早「いえ。私は、何も……」


579: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 23:05:10.18 ID:HlXMP2ShO


…ガチャ


P「……お? 2人だけか?」




千早「プロデューサー?」

伊織「ええ、そうだけど」

P「あのさ、貴音、どこ行ったか知ってるか?」

千早「すみません。わかりませんね」

伊織「貴音に何か用事?」

P「ああ、ちょっとな。……ったくどこ行ったんだ貴音のやつ」

千早「四条さんを探すのは大変そうですね」

P「だよなぁ……ま、気長にやってみるよ」

P「邪魔したな」フリフリ


伊織「……あ、ちょっと待ちなさい」


P「……ん? どうした?」

伊織「あの……この間は、酷い事言ってごめんなさい」

P「この間?」

伊織「ほら、巨人の中であんたに言った事よ」

P「……あー、もしかしてあれか? 『あんたはいいわよね。お気楽で』」

伊織「そう、それよ」

P「別に気にしてないぞ?」

伊織「私が気にするの!」

伊織「とにかく、謝ったからね!」

P「ああ。わかったよ」

P「じゃあ、後でな」



…バタン



伊織「……ふぅ」

千早「余計な心配だったかもしれないわね」

伊織「えっ?」

千早「水瀬さんはちゃんと周りが見えている。私の出る幕は無かったかも」

伊織「………」

伊織「そんな事はないわよ」

伊織(私が自分を取り戻せたのは……あんたたちと、赤い悪魔のおかげだもの) 

582: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 23:14:16.66 ID:HlXMP2ShO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー


カーン カーン カーン…


響「んっ……」グイッ

響「これでよしっと!」


真「響ー。こっちの荷物はどうすればいい?」

響「あー、そこにあるのは全部船室に持って行ってもらえるか?」

真「オッケー!」

真「よっ……」ガシッ


雪歩「んしょ、んしょ……」フキフキ


響「真も雪歩もごめんな。手伝わせちゃって」

真「なーに言ってんのさ! これ全部響ひとりでやったら大変だろ?」

雪歩「うん。私たちだって力になるよ、響ちゃん」

響「でも、おフロ入ったばっかなのに、また汚れちゃったし……」

真「それなら、帰ってからまた入ればいい事じゃないか」

雪歩「それに、船の修理なんてあんまりやらないから、私は結構楽しいよ?」

響「うぅ、2人とも……!」ジーン

真「さ、早く終わらせて帰ろう?」

響「うん!」




「…………おーーーい!!」



響「ん? ……あれ、プロデューサー? なんでこんなところにいるんだ?」

P「なあ、貴音来なかったか?」

響「来てないけど……」

真「探してるんですか?」

P「うん。ちょっと聞きたい事があったんだけど……ここにもいないのか」

雪歩「あ、もしかしたら、我慢できなくて厨房でつまみ食いしてる……とかはないですか?」

P「俺もそう思って、さっき厨房を覗いたんだけど、いなかったんだ」

雪歩「そうですか……」

響「……あれっ?」

P「? ……どうかしたのか?」

響「いや、気のせいかな……」

P「……ま、いいや。他を探してみる事にするよ」

P「暗くならない内に戻って来いよー?」


真「はーーい!!」

響「うーん……」

雪歩「響ちゃん、どうかしたの?」

響「いや、なんでもないぞ」

響(プロデューサーからほんのちょびっとだけ貴音の匂いがした気がするんだけど、気のせいだよね……?)


585: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 23:16:33.05 ID:HlXMP2ShO
ー トロイア城 客室3 ー



P「貴音、見つからないなぁ……」

P「ま、無理に今見つけなくても、夕食の時にでも聞けばいいんだけどな」

P「……よし、捜索終了!」



「……おや、それは残念です」



P「えっ?」クルッ



貴音「ふふふ……」スッ



P「た、貴音!? どこから湧いて出た?」

貴音「それは、とっぷしぃくれっとです」スッ

P「ああ……ですよね」

P「まあ、この際どこにいたかはいいや。それより、お前に聞きたい事があるんだ」

貴音「『お前の乗って来た魔導船は本物なのか?』……ですか」

P「な、なんでそれを?」

貴音「実はわたくし、先程あなた様と律子嬢が話しているところに出くわしまして」

P「なんだ聞いてたのかよ。だったら一声掛けてくれればいいのに」

貴音「すみませんでした。しかし、あなた様がわたくしを求めて彷徨う姿があまりにも可愛らしく、影から観察していたのです」

P「…………それ、あんまり趣味良くないと思うぞ?」



P「ともかく、どうなんだ? さっきの質問」

貴音「ええ……」

貴音「恐らくは、わたくしの乗って来た魔導船は、本物ではないと思われます」

P「やっぱりそうなのか!?」

貴音「恐らく、です」

貴音「わたくしにもまだ、『本物の魔導船』の定義がわかりませんので」

P「ん……なるほどな」

P「じゃあ、自分が乗って来た魔導船が本物じゃないかもしれないって貴音が考える理由は?」

貴音「………」

貴音「あなた様。少し、わたくしの話を聞いて頂けますか?」

貴音「月で何があったのかを」

P(そういえば俺、貴音が月で何してたかとか、何も知らないんだな……)



P「ああ。聞かせてくれ、貴音。月で何があったのかを」


貴音「はい……」



590: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 23:19:49.56 ID:HlXMP2ShO
………………

………


貴音「……こうして、わたくしはこの地球に降り立ちました」

P「………」

P「そんな事があったのか……」


P(貴音は俺に、月で経験した事を話してくれた)

P(月には、貴音にとって友と呼べる人物(?)、バハムートがいた事)

P(バハムートと共に音無さんに会いに行った事)

P(自分の力が足りないせいで、バハムートと音無さんの争いを止められなかった事)

P(そして…………バハムートに、未来を託された事)

P(伊織が1番ハードだと思ってたけど、貴音も大変だったんだな……)


貴音「ばはむーと殿は仰っておりました。『クルーヤのやつが造ったのを真似ただけの、駄作だがな』と」

貴音「この言葉は、『くるーや』という方が造った魔導船の方が本家、とも取れます」

P「うん。確かに」

貴音「つまり……」

P「クルーヤが造ったっていう魔導船を探せばいいって事か」

貴音「はい。そういう事になりますね」

P「でも、クルーヤの魔導船は一体どこに……」


P(うーん、何かを思いつきそうなんだけどな)


貴音「本物の在り処については、あなた様が一番ご存知なのでは?」

P「俺が?」

貴音「あなた様は仰いました。わたくしが皆と合流するのは、本来ならばまだまだ先の事だったはずだ、と」

貴音「そうなると、わたくしが仮の魔導船と共に登場する事で、本物の魔導船の存在が忘れられてしまった可能性もあります」

貴音「つまり本物は、あなた様が良く知る場所……げぇむ通りの場所に在る、とわたくしは考えました」

P「なるほど……」

P「貴音の言う通りかもしれない。確かに、ゲーム通りに行くと、巨人と戦う前にミシディアの祈りの館で復活させるはずなんだけど、巨人を倒したっていうのにまだその魔導船の話は出て来てない」

P「すっかり忘れてたよ」



P「ありがとう、貴音。お前のおかげで、これからどうすればいいのかわかった」

貴音「ふふ、お力になれて嬉しゅうございます」ニコッ

貴音「ですが、少々残念です」

P「えっ?」

貴音「用が済んだのであれば、あなた様と2人きりの時間も終わってしまう、という事ですから」

P「あ、いや……」

P「まあ、別に俺はもう少し話しててもいいんだけど」

貴音「では、もう少しお側にいてもよろしいですか?」

P「うん。構わないよ」

貴音「ありがとうございます、あなた様」ニコッ



596: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 23:41:40.99 ID:HlXMP2ShO
ー トロイア城 食堂 ー


亜美「うわー! めっちゃおいしそー!」

真美「ねえねえ、これ全部はるるんたちが作ったの?」

春香「ううん。さすがに私たちだけで短時間でみんなの分は用意できないよ」

春香「これ、ほとんどはお城のコックさんが作ったやつだよ」

真美「そーなの? じゃあはるるんたちは何してたのさ?」

春香「えへへっ♪ それはね……」チラ



やよい「うっうー! お待たせしましたー!」


ドンッ!


亜美「なん…だと……!?」

真美「バカな!? 『これ』がここに存在するはずが……」

あずさ「うふふ♪ アンさんにお願いして材料を用意してもらったの」

あずさ「さすがに元の世界のものをそっくりそのままっていうのは難しいけど、かなり近い材料を使っているから再現度は高いと思うわよ〜?」

春香「さ、貴音さん!」


貴音「この、香ばしい香り……」

貴音「こくのある濃厚なすぅぷ……」

貴音「自分を主張し過ぎず、主役を引き立てるとっぴんぐたち……」

貴音「そして……」

貴音「何回も何回も、丹念に打ち込まれてできた、こし、食感、太さ、いずれも申し分の無い、麺……」

貴音「これは、まさしく……夢にまで見たっ……!」ワナワナ




貴音「…………らぁめんっ……!!」




春香「この世界には、ラーメンは無いっていうのは聞いてたんですけど、じゃあ、ラーメンが大好きな貴音さんは苦労してきたんじゃないかなって思って……」

やよい「あずささんと春香さんと相談して決めたんですよー!」

あずさ「好きなものを食べられないのって、悲しいわよねぇ。貴音ちゃんの気持ちはすっごくわかるから……」

貴音「春香……やよい……あずさ……」

貴音「わたくし、今日ほど嬉しい日はありませんっ……!」ズルズルー

響「食べながらそんなセリフ言うなんて、貴音は器用だな……」

春香「喜んでもらえて、私たちも嬉しいです!」


貴音「とても……とても、美味しゅうございます……!」ズルズルー


律子「もう、貴音だけ先に食べ始めちゃって……」

P「まあまあ、いいじゃないか、嬉しそうだし」

律子「ま、そうですね」

律子「それじゃ、食べましょうか!」



全員「いただきますっっっ!!!!」



598: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 23:47:30.77 ID:HlXMP2ShO

春香「モグモグ……」

春香「ん〜♪ おいしー!」

千早「ええ、本当に」


貴音「まこと、美味しゅうございますっ……!」ズルズルー


春香「………」

春香「なんか、あんなにおいしそうに食べてるのを見ると、私もラーメン食べたくなっちゃうなぁ」

千早「海外に長期滞在した時に、日本食を食べたくなるみたいな感じかしら」

春香「あー、そんな感じかも」


真「なんか、ボクもラーメン食べたくなってきちゃった」

響「あー、自分も」

あずさ「あらあら、ラーメンはまだまだあるから、真ちゃんも響ちゃんもどうぞ〜」

真美「あ、あずさお姉ちゃん真美もー!」

亜美「亜美もー!」



やよい「伊織ちゃんは食べないの? ラーメン」

伊織(あんまり得意じゃないんだけど……)

伊織「せっかくやよいが作ってくれたんだものね。食べるわ」

やよい「えへへっ♪ はい、どーぞ!」スッ


伊織「……ズルズルッ……」

伊織「モグモグ……」

伊織「!」

伊織「……へぇ、なかなかいけるじゃない、コレ!」

やよい「うっうー! 良かったですー!」


599: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 23:50:42.89 ID:HlXMP2ShO

雪歩「モグモグ……」

雪歩(私は焼肉が食べたいなぁ……)

雪歩(でも、トロイアのコックさんの作ってくれた料理もおいしいかも)



美希「あはっ☆ おにぎりおいしーの〜♪ 」モグモグ

美希「ミキ的にはラーメンなんかよりおにぎりの方が断然おいしいって思うな!」


貴音「……ほう? あなたはらぁめんを侮辱するつもりですか、美希」


美希「だって、お米は炭水化物の王様だよ? 麺なんか目じゃないの」

貴音「なるほど……」

貴音「そういえば、あの時の決着が付いていませんでしたね……」

美希「……そうだね」

美希「いいよ。全力でかかって来なさいなの」

美希「二度とミキに逆らえないように、そのハラワタを喰らいつくしてやるのっ!」ビシッ


雪歩「ふ、2人とも……?」


貴音「ふふふ……!」ゴゴゴゴ

美希「あはっ☆」ゴゴゴゴ


雪歩「あ、あのっ、私はラーメンもおにぎりもどっちもおいしいと思うよ? だから落ち着いて、ね?」


貴音「雪歩、黙っていてください」

美希「雪歩は黙ってて欲しいの」


雪歩「あうぅ……やっぱりぃぃ」


600: ◆bjtPFp8neU 2015/10/02(金) 23:54:40.20 ID:HlXMP2ShO

真美「……おろ? 何やらミキミキとお姫ちんがおもしろそーなヨカン……」

亜美「いいぞー! やれやれー!」

春香「と、止めた方がいいんじゃないかな?」

真「平気じゃない? 2人とも加減くらいするでしょ」

響「ていうかあの2人、また食事中に争ってるのか……」




貴音「美希。あなたには命を助けていただいた恩があります。……が、それとこれとは別の話です」バッ


美希「うん。気にする事じゃないって思うな」バッ



美希「汚れ無き天空の光よ……」


貴音「血にまみれし不浄を照らし出せ!」


美希「ホーリー!」

貴音「ほーりー!」



キラキラキラキラ…




律子「やめなさーーーーーいっっ!!!」



ドゴゴゴオオォォォン!!!




美希・貴音「!!?」




真美「こ、これは……!?」

亜美「2人の魔法を、りっちゃんの暗黒剣が打ち消した……!?」




律子「……ったく、大人しく食べられないの、あんたたちは!」

美希「り、律子!」

律子「さんを付けなさい!」

美希「さん!」

律子「あんたたちの魔法もシャレにならない強さなんだから、ホイホイ使わないの!」

律子「っていうか、食事中に魔法使う必要なんか全くないじゃない」

律子「大体あんたたちは……」

律子「ガミガミ……」


美希(ねえ貴音。ミキたち結構本気だったよね?)

貴音(ええ。恐るべきは、律子嬢の暗黒剣の威力でしょう)



P(……ホッ。律子のおかげで食堂を破壊せずに済んだな)



601: ◆bjtPFp8neU 2015/10/03(土) 00:00:34.63 ID:75yWjpnlO
ー トロイア城 通路 ー


律子「……それじゃ、遅くまで起きてないで早く寝るのよー」



「はーーーい!!!」


…バタン


律子「………」



P「……どうだ?」

律子「一応、みんなベッドには入りました」

P「ようやくか」

律子「ええ。とりあえず肩の荷が下りましたね」

律子「全力で魔物と戦って、全力でお風呂ではしゃいで、全力で食事中もはしゃいで……」

律子「丸2日くらい起きないんじゃないんですかね? この子たち」

P「はは、そうかもな」

P「さ、もう遅いし、律子も休めよ」

律子「プロデューサー殿は寝ないんですか?」

P「ん、考えたい事もあるし、少しブラブラしたら寝るよ」

律子「そうですか…………ふわぁ」

P「さ、寝た寝た。起きたら長老のところへ行くんだからな」

律子「は〜い……って、あれ? そういえば貴音とは話できたんですか?」

P「うん、バッチリだ」

律子「そうですか。それは良かったです」



律子「それでは、お休みなさい」

P「ああ、お休み」



…バタン



P「………」




P(…………夕食前の貴音との話)

P(貴音のおかげで、魔導船についてはどうすればいいのかわかった)

P(あとは、何日かこの国で休んで、みんなの疲れを癒す)

P(そして、準備が整ったら魔導船を復活させて……)



P(…………目指すは、月だ)

P(待っててください、音無さん)



605: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 18:59:49.99 ID:B2uWHiicO
ーー夜中、トロイア城 客室1



響「………」

貴音「スヤスヤ……」

美希「……zzz」





響「………」ムクッ




響「………」ボー

響「………」

響「………」

響「………」ゴシゴシ

スタスタ…

ガッ

ガッシャァン!


響「!!?」ビクッ



響「………」キョロキョロ



美希「……ん……はにぃ……」

美希「……zzz」

貴音「すー、すー……」



響「……ホッ」


スタスタ…

ガチャ…バタン
















貴音「………」パチ

貴音「響……?」


606: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:03:29.32 ID:B2uWHiicO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー


響「いい子にしてたか?ファル子」ナデナデ

響「あはは、そっかそっか。うん、自分もさみしかったぞ?」




コソコソ

貴音(…………飛空艇? こんな夜明け前に、一体何を……?)





響「………」チラ

響「………………貴音、か?そこにいるのは」




貴音「!!」



貴音「…………気配は殺したつもりでしたが」スッ

貴音「流石は響。人間離れした第六感ですね」

響「……ごめん。悪いけど自分、今は冗談に付き合う余裕はないんだ」

貴音「響……?」

響「………」

響「あのさ、貴音。もうそろそろ出発したいんだけど」

貴音「どこへ行くつもりなのですか?」




響「………………墓参りだぞ」




607: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:06:11.15 ID:B2uWHiicO


ババババババ…



貴音「なんと……えん太郎殿が……」

響「うん」

響「本当に急なお別れでさ。自分、エン太郎に何もしてあげられなかったから……」

響「せめてお墓でも、って思ってさ」

貴音「そう、でしたか……」

響「あっ、でも別に心配いらないからな? 自分、もう吹っ切れてるから!」

響「エン太郎は自分の笑顔が好きだって言ってくれたし、最期は、笑ってお別れしようって!」

響「だから、もう全然へい」


貴音「響」ダキッ


貴音「わたくしの前で無理などしないでください」

響「た、貴音っ?」ドキドキ

貴音「友を失う悲しみは、わたくしとて理解しております。辛いならば我慢せずに、どうかわたくしの胸で泣いてください」ギュッ

響「た…かね……」

響「うぅっ……!」ポロッ




響「うあぁぁぁーーーー!」




608: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:09:45.62 ID:B2uWHiicO
ー トロイア南の森 ー


スタスタ…


響「えーっと……」キョロキョロ



響「……うん。この辺りでいいかな」

響「んしょ……っと」ザッ

貴音「何か手伝いましょうか?」

響「んーん、平気。ありがとな、貴音」

響「でも、これは自分ひとりでやりたいんだ」

貴音「……わかりました」



ザッ…ザッ…


響「……よし、こんなもんか」

響「あとは……」ゴソゴソ

響「………」スッ

貴音「それは?」

響「今までエン太郎の修理に使ってた、油差しととんかち。お墓に供えるものが何も無いのも、可哀想かなって」

貴音「確かにそうですね」

響「最後に土を軽く払って……」サッ サッ

響「……ふぅ。とりあえず形だけできたな」

響「ごめんな、エン太郎。ホントはもっとちゃんとしたお墓を作ってあげたいんだけど……」

貴音「………」



響「じゃあ……」チラ

貴音「ええ」コクリ


609: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:14:50.84 ID:B2uWHiicO

響「………」スッ

貴音「………」スッ


響「………」

貴音「………」


響「………」

貴音「………」


響「………」

貴音「………」


響「………」

貴音「………」



響「……………………よしっ」スクッ

貴音「……もう、良いのですか?」チラ

響「うん」

響「一応別れは済ませてたし、あんまり遅くなってみんなに心配かけるのも悪いしな」

響「じゃ、帰ろっか」

スタスタ…

貴音「………」



貴音「わたくしも……」



響「…………えっ?」クルッ



貴音「わたくしにも、『友』と呼べる方が居ました」

貴音「今は、その方の生死すら不明ですが」

響「貴音……?」

響「珍しいな。貴音が自分の事を話すなんて」

貴音「あなたを見ていて、ふと、思い出したのです」

貴音「響。どうやらわたくし達は似たような境遇の様です」

響「そうなのか……」



響「……ねえ貴音。もっと聞かせてよ。その、貴音の友達の事」

貴音「ええ、喜んで」ニッコリ

貴音「では、座って話しましょうか」

響「うん!」


610: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:21:55.44 ID:B2uWHiicO
ーー翌朝、トロイア城 東の塔 頂上



千早「……二人過ごしたとーおい〜日々 ♪ 」


千早「記憶の中のひーかり〜とかげ♪ 」


千早「いーまーもーまだ ここーろーのー迷路 さーまよう〜♪ 」


千早「………」




千早「誰、ですか?」




トロア「っ……すみません! 驚かせるつもりなどなかったのですが……」ガサッ




千早「あなたは……」



トロア「『その節』はどうも」ペコリ

千早「………」ペコリ


トロア「………」

千早「………」


トロア「………」

千早「………」



千早「あの」

千早「……以前は失礼な態度を取ってしまい、すみませんでした」

トロア「いえ、お気になさらず」

トロア「あの時は何か事情がお有りだったのでしょう? リツコ殿にも、あなたにも」

千早「そう言っていただけると、助かります」

トロア「……不思議なものだ。あの時クリスタルを奪いに来たあなた方と我々が、今回は手を取り合って戦ったのだから」

千早「私は、大した事はできませんでしたが……」

トロア「謙遜しないでください。あなたの活躍は、私も聞いていますよ」

千早「………」


611: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:26:01.48 ID:B2uWHiicO

トロア「歌、お上手なんですね。聴き惚れてしまいました」

千早「あ、ありがとうございます」

トロア「そういえば、ユキホ王女にも素晴らしい歌を聴かせて頂いた覚えがあります」

トロア「ひょっとして、あなた方『あいどる』は歌に精通しておられるのですか?」

千早「精通……と言えるほどかどうかはわかりません」

千早「でも、私たちは自分たちの歌に誇りを持っています」

千早「私たちの歌を聴いて、少しでも幸せな気持ちになってもらえたら……嬉しいですね」ニコッ

トロア「!」ドキッ

トロア(何とも可愛らしい笑顔。チハヤ殿にも、こういう一面があるのだな……)

トロア(あいどる……。チハヤ殿の……いや、皆さんのこの人を惹きつける魅力はなんなのだろう)

トロア(一緒に居るだけで、こっちまで笑顔になってしまう。本当に、不思議な人たちだ)



春香「…………ちーはーやーちゃんっ♪ 」ダキッ



千早「…………春香」


612: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:30:52.00 ID:B2uWHiicO

春香「こんなところにいたんだー。もう、探したんだよ?」

千早「ごめんなさい。少し、風に当たりたくて」

春香「そっか」チラ

春香「あ……あなたは確か、トロアさんでしたよね?」

トロア「ハルカ殿とチハヤ殿は、本当に仲が良いのですね」ニコッ

春香「えへへっ♪ そうなんです!私と千早ちゃんは、とーっても仲良しなんですよっ!」ギュッ

千早「っ……///」モジモジ

トロア「では、邪魔者は退散するとしましょう」スクッ

春香「あっ、わ、私、別にそういうつもりじゃ……!」アセアセ

トロア「ふふ……」

トロア「お二人とも。この世界を救っていただき、本当にありがとうございました」ペコリ


スタスタ…



春香「行っちゃった……」

千早「………」



春香「ねえ、千早ちゃん。トロアさんと何を話してたの?」

千早「大した事じゃないわ」

春香「あー、隠すつもりなんだ」

千早「そういうわけじゃ…………って、きゃっ!?」

春香「私にも教えなさーい!」コチョコチョ

千早「はっ……春香!? わ、私……脇腹は……くふっ、くふふっ!」

春香「問答無用だよ、千早ちゃん!」コチョコチョ

千早「や、やめっ……ひっ……ん……はんっ……ほ、ホントに……んふっ!」ビクン

春香(千早ちゃん可愛い!)

春香「私、滾って来ちゃった!」

千早「あっ、ひゃっ、や、やめ……は、はるっ……」



千早「ああ〜〜〜〜〜〜!!」



613: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:34:33.83 ID:B2uWHiicO

千早「………」ムスッ

春香「ごめんね千早ちゃん。千早ちゃんがあんまり可愛いから、私ついやり過ぎちゃって……」

千早「………」

春香「それに、千早ちゃんとこうして過ごすのも、久しぶりだし」

千早「………」

春香「私、嬉しいんだ。千早ちゃんとまたこうしておしゃべりできて」

千早「春香……」

千早「別に、怒ってないわ」

春香「……ホントに?」

千早「その……私も、こうしてまた春香と過ごせて、嬉しいから」

春香「千早ちゃん……!」



千早「……そうだ」ゴソゴソ

千早「……はい、これ。返すわね」スッ

春香「これ……」

春香(ヤミちゃんのリボンだ)

千早「ごめんなさい。私の判断で一時的に預かっていたのだけど、春香には誤解させてしまったみたいで……」

春香「う、ううん! 私の方こそごめんね! このリボンについて話さないといけなかったんだけど……」

春香「伊織にも心配かけちゃったみたいだし。改めてみんなにちゃんと話すよ」

千早「ええ」

春香「ねえ、千早ちゃん」

千早「……なに?」

春香「お話、しようよ」

千早「話? どういう話がいいかしら」

春香「何でもいい。私、何でもいいから千早ちゃんとお話したいな」

千早「………」

千早「……私も、春香と話がしたい」

春香「えへへっ♪ じゃあーー」


614: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:40:04.66 ID:B2uWHiicO
ー トロイア城 客室2 ー


亜美「……巨人の攻撃に、なすすべも無く立ちつくす亜美とひびきんっ!」

真美「ふむふむ!」

亜美「んで、亜美とひびきんに巨人の凶刃ーーシャレじゃないよ!ーーがせまった時!」

真美「ど、どうなるんだ……?」ゴクリ

亜美「えんたろが、亜美たちを守ってくれたんだYo!」

真美「おお、マジか!」

真美「……あり?でもえんたろって飛空艇じゃないっけ?」

亜美「そだよ。ひびきんにおせわになった恩返しだーって。あ、ちなみにそん時は、亜美もえんたろの言葉がわかったんだー」

真美「えー、いいなー!」

亜美「巨人のはどーほーでバラバラになっちゃうえんたろ。ひびきんも亜美も、シツイのドン底に……」

真美「oh……」

亜美「だがしかーし!人間たちはまだ負けていなかったのだったー!」

亜美「亜美とひびきんのもとに仲間たちが集い、やがて、悪はほろびるのだったー!」

真美「うわー、チョーカンドーもんじゃんか!」

亜美「ってワケで、今回の戦いのMP3は間違いなく亜美とひびきんっしょ!」

真美「ぬぅ、ちかたないか……」


真美(うらやましーなー、亜美。真美も、もうちっとカツヤクしたかったなー)

真美(む〜、このままじゃ真美の姉としての立場がヤバいっぽいよ〜)


615: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:42:20.08 ID:B2uWHiicO

真美「……ってワケなんだYo!」

美希「ふーん……」

真美「反応うすっ」

真美「キンキュージタイなんだよ、ミキミキ! このままじゃ真美の姉としてのイゲンがっ!」

美希「だってミキ、妹だし。姉のイゲン? とか言われても、よくわからないの」

美希「……あふぅ」

真美「そーかもしんないけどっ。ヒマそうなのはミキミキしかいなかったんだもん!」

真美「頼むよミキミキ〜!姉より優れた妹なんて存在しちゃいけないんだよぉ!」ユサユサ

真美「キョーリョクしてよ〜!」

美希「えぇ〜……」


美希(真美も人を見てお願いすればいいのに。ミキじゃどう考えてもそーゆーのは役不足なの)

美希(それにミキ、お昼寝したいんだけどなー……)



美希「…………あっ!」ティン



616: ◆bjtPFp8neU 2015/10/04(日) 19:45:34.43 ID:B2uWHiicO

美希「ねえ真美。だったらミキのお願い、聞いてくれる?」

真美「へ?なんでそーなるの?」

美希「だって真美は、姉としてのイゲンを取り戻したいんでしょ? それなら、真美は頼れるお姉ちゃんになればいいって思うな!」

真美「おお、なるほどー!」

真美「でも、具体的にはどーすればいいの?」

美希「ミキ、思うんだ。いいお姉ちゃんは、妹の言う事を聞いてくれるのが必須条件だって」

真美「うんうん、そんで?」

美希「だから真美、ミキにひざまくら、して?」

真美「えっ……そんなんでいいの?」

美希「うんっ!」ニコッ





美希「……zzz」

真美「………」

真美「ホントにこんなんで姉のイゲンが取り戻せるのかなぁ」

美希「……ん……はにぃ……」モゾッ

真美「ま、いっか。ミキミキかわいーし」

真美(これが、頼れる姉のほーよーりょくってやつなのかもしんないね!)



真美「んっふっふ〜♪ 」ナデナデ



618: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:21:59.83 ID:oCiU3AQPO
○月×日 晴れ


巨人を倒してから、何日かが過ぎた。

あれから私たちは、まだトロイアの国にお世話になっている。

充分休息も取ったし、そろそろ行動を起こすべきかと思うんだけど、彼曰く、『長老が忙しいらしくてまだ捕まらない』との事。

まあ、あんな事があった後だもの。忙しいのは仕方ないわよね。



この世界の人たちも大変ね。

国という国はほとんど滅びてしまったなんて。

うちの子たちにも、できる事があれば世界の復興を手伝うように言った方がいいのかしら。



それにしても、みんなバラバラだったけど、なんの運命か巨人と戦っているうちに全員合流できていた。

何か見えない力に導かれたんじゃないかしら。

……なんて考えると、ちょっとロマンチックかもしれない。

でも、誰ひとり欠けずに集合できたのは、本当に嬉しい事。

みんな大きな怪我もなく(あっても魔法で治癒できるみたいだけど)元気そうでホッとした。

元気が有り余ってはしゃぎ過ぎ(特に亜美真美)な気がしないでもないけど。



あとは、あの子の事が気がかりね。


619: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:24:38.89 ID:oCiU3AQPO
ー トロイア城 客室4 ー


律子「………」カキカキ



…コンコン



律子「…………はーい。どうぞー」カキカキ


ガチャ



あずさ「失礼しますね〜」


律子「あずささん。どうしたんですか?」

あずさ「ちょっと律子さんとおしゃべりしたいなーと思いまして」

律子「そうなんですか……っていうか、よく迷わず私の部屋に来れましたね」

あずさ「も、もう、律子さんったら。私だっていつも迷ってばかりではないんですよ?」

律子「あはは、ごめんなさい」



あずさ「……あら? 律子さん、何を書いているんですか?」

律子「ええ。日記というか、雑記というか……」

律子「私たちの現状を整理してました」

あずさ「几帳面な律子さんらしいですねぇ」

あずさ「でも、少し休憩してお茶でも行きませんか? お茶の美味しいお店があるんです」

律子「ふ〜む……」

律子「そうですね。それもいいかもしれません」

あずさ「うふふ〜♪ じゃあ、行きましょうか」


620: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:28:15.89 ID:oCiU3AQPO
ー トロイアの町 パブ『迷宮』ー


律子「へぇ、ちょっと変わった造りだけど……」キョロキョロ

律子「なかなか雰囲気があっていいお店ですね」

あずさ「はい♪ 前にプロデューサーさんたちと来た事があるんですけど、その時はゆっくりできなかったので〜」

律子「あずささん、何か飲みます?」

あずさ「ええっと……」スッ

あずさ「そうねぇ。それじゃ、このバッカスの酒というのを……」

律子「何言ってるんですかもう! 真昼間からお酒なんてダメに決まってるでしょう!」

あずさ「あら〜……残念」

律子「まったく。普通に紅茶とかでいいですよね? ……あ、すいませーーん!」



マスター「……は〜い」

スタスタ…



律子「あの、注文いいですか?」

マスター「承りますよ〜」

マスター「……おや、君たちはもしかして……」

あずさ「あの〜、私たち、どこかでお会いしましたっけ?」

マスター「ああ、いえ。こちらが一方的に面識があるというか」

マスター「この国で君たちを知らない人はいないと思うよ。なんたって広場には、君たちの像が祀られているからねぇ」

律子「像……?」

マスター「まだ見てないなら、見に行ってみたらどうかな? 広場にあるから」

マスター「……っと、ああそうだ。注文でしたね」

律子「えーと、これとこれを」

マスター「かしこまりました〜」

スタスタ…


621: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:31:44.28 ID:oCiU3AQPO

あずさ「ウフフ、私たちが像になって祀られているなんて、なんだか不思議な気分ですね〜」

あずさ「……あ、もしかしたら雪歩ちゃんの像みたいになっているのかもしれないですね」

律子「おそらくそうでしょうね」

律子「アンさんってば、また人の許可も取らないで……」

あずさ「まあまあ。みんな一緒ならいいじゃないですか。雪歩ちゃんの像も、これでひとりぼっちじゃなくなりましたね」



マスター「お待たせしました〜」

…コトッ


マスター「どうぞごゆっくり〜」

スタスタ…


あずさ「……あら、いい香り。ミルクは……う〜ん、どうしようかしら」

律子「入れないんですか?」

あずさ「いつも迷ってしまうんですよ〜。一つにするか二つにするか」

あずさ「その……衣装が入らなくなったら困りますし」

律子「確かに。ミルクは脂質が、ね」

あずさ「うーん……」

あずさ「…………えいっ」ポチャン

律子「結局二つ入れたんですね」

あずさ「はい。今回だけはいいかなって」

あずさ「コクッ……」

律子「ズズッ……」

律子「………」コトッ

律子「ふぅ……」

あずさ「うふふ。のんびりできていいですね〜」

律子「ええ」


622: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:34:21.86 ID:oCiU3AQPO

律子(ゆったりと時間が流れていく)

律子(非日常的な世界で、非日常的な体験をしてるっていうのに、このとてつもない日常感はなんだろう)



あずさ「ん〜、美味しいわ♪ お茶請けがあればもっといいわね〜」



律子(まあ、もしかしなくても、このほのぼのとした空気はあずささんのおかげなんでしょうけど)



あずさ「律子さん。何か食べ物も頼みませんか?」

律子「あ、はい。別にいいですよ」

あずさ「……すみませ〜ん」



律子(プロデューサーや春香たちに聞いた、信じられない話)

律子(あずささんはこの世界で『一度死んだ』らしい)

律子(それこそ映画みたいな話だけど、ゾンビみたいに蘇ったって)



マスター「お待たせしました〜」コトッ

あずさ「あら、美味しそう♪ 」



律子(しかも、死んだ原因はどうやら私にあるみたい。もちろん、私は身に覚えがないから小鳥さん絡みなんでしょうけど)



律子「………」


623: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:37:01.41 ID:oCiU3AQPO

あずさ「モグモグ……」

あずさ「うふふ、とってもサクサクね。春香ちゃんのクッキーみたいにどんどん食べれちゃうわ〜」

あずさ「律子さんも食べません?」スッ

律子「あ、はい。いただきます」



律子(…………ねえ、あずささん)



律子「モグモグ……」

律子「ホントだ。美味しいですね、これ」

あずさ「でしょう? 手が止まらなくなってしまいますよね〜」



律子(あなたは、なぜ笑っていられるんですか?)



あずさ「……あ、でも、あんまり食べると……体型が……」ゴニョゴニョ



律子(とっても損な役回りなのに、なぜいつもみたいに笑っていられるんですか?)



あずさ「あの、律子さん? 今度のライブの衣装の事なんですけど〜……」

律子「ダメです。頑張って今の体型を維持してください。これからおやつを減らしていけばいいじゃないですか」

あずさ「そ、そんなぁ〜」ガーン



律子(あずささん……)



律子「仕方ないですね。私も付き合いますから。ダイエット、2人で頑張りましょう?」

あずさ「り、律子さ〜ん! ありがとうございます〜」ダキッ

律子「わ、ちょっと! 紅茶がこぼれちゃいますから!」




律子(私の側にいてくれて、ありがとう)

律子(…………あなたと同じ時間を過ごす事ができて、良かったです)



624: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:42:38.13 ID:oCiU3AQPO
ー トロイアの森 ー


真「むっ……!」ギリッ

雪歩「ひぅっ……!」ググッ


パキンッ!

…スタッ



真「っ……せいっ!」ダッ


雪歩「っくぅ!」

ガキィン!


真「ほっ!」グルンッ

ブワッ…


雪歩(わわ、そんな器用な攻撃……!)

雪歩(よ、避けられないよぅ……!)

雪歩「っ……!」


…ピタッ


真「…………へへっ」ニコッ

雪歩「ま、真ちゃん……」

雪歩(す、寸止め……)

雪歩「はぅぅ……」ヘナヘナ

真「おっ……と。平気? 雪歩」ガシッ

雪歩「う、うん。大丈夫だよ。ありがとう、真ちゃん」


625: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:44:07.45 ID:oCiU3AQPO

真「…………ふぅ」

真「うん。雪歩もなかなかいい感じになってきたね!」

雪歩「そ、そう……かな」

雪歩「私なんてまだ、真ちゃんの動きについていくのがやっとで……」

雪歩「真ちゃんには全然敵わないよぅ」

真「いやいや。雪歩も自信持っていいと思うよ?」

真「トロアさんとの修行も頑張ってたし、ボクとの組手でもいい動きをするようになってきたし」

真「雪歩は真面目だから、上達も早いんだね」

雪歩「う、ちょっと恥ずかしいな……///」

真「大丈夫。確実に強くなってるよ、雪歩は」ニコッ

雪歩「…………えへへ」ニコッ



真「………」

真(本当にすごいな、雪歩)

真(毎日トレーニングしてるボクの動きに、もうついて来れるようになったなんて)

真(『強くなりたい』って真面目な顔して言われた時は、どうなる事かと思ったけど)

真(どんどん強くなっていく雪歩を見てると、ボクもいい刺激になる)



真(……ボクと雪歩は、黒と白)

真(それぞれが対極にあるから、お互いの事がよく見えるし、よくわかる)

真(今までは、自分に無いものをお互いに羨ましがるだけだった)

真(でも、今のボクたちはもう違う)

真(自分に足りないものを持ち寄って、補い合う事ができる)

真(雪歩には、強さを。そして、ボクには……)


626: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:51:11.26 ID:oCiU3AQPO
ー トロイアの町 防具屋 ー


シャッ…



真「一応着てみたけど……」

真「……どう……かな?」クルンッ



雪歩「うんっ。とっても可愛いよ、真ちゃん!」ニコッ

真「そ、そう? 変じゃないかな?」ヒラッ

雪歩「全然そんな事ないよっ!」

雪歩「真ちゃんはカッコいいお洋服もすっごく似合うって思うけど……」

雪歩「そういう女の子らしい服だって似合っちゃうね!」

雪歩(…………度が過ぎてなければ)



真「ボク、この世界ではずっと稽古着しか着てなかったからなぁ」

真「雪歩のセンスのおかげで、こういう可愛い服が着れて嬉しいよ!」

真「へへっ。ありがと、雪歩!」ニコッ

真「まあでも、ボク的にはもう少しフリフリでヒラヒラな服でもーー」


627: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:55:19.72 ID:oCiU3AQPO

雪歩「………」

雪歩(やっぱりすごいな、真ちゃんは)

雪歩(ただ強くてカッコいいだけじゃなくて、ちゃんと女の子の可愛さも持ってるんだもん)

雪歩(私なんかが助言しなくたって充分……)

雪歩(……ううん、違うね)

雪歩(真ちゃんがせっかく私を頼ってくれたんだもん。私にできる事を精一杯やらなきゃ!)



雪歩「ねえ真ちゃん。次は小物も見てみようか?」

真「うん、いいね! よーしっ、可愛いアクセサリーを見つけるぞーっ!」



雪歩(私と真ちゃんは、白と黒)

雪歩(それぞれが対極にあるから、お互いの事が気になるし、すごく理解できる)

雪歩(今までは、自分に無いものを相手の中に探しているだけだった)

雪歩(でも、今の私たちはもう違う)

雪歩(自分に足りないものを持ち寄って、補い合う事ができる)

雪歩(真ちゃんには、女の子らしさを。そして私には……)



雪歩「ーーあ、真ちゃん見て見て。綺麗な髪飾りがあるよ!」

雪歩「えーっと……『金の髪飾り』っていう名前みたいだね」

真「わ、本当だ! 金色に光ってて、キラキラだなー」

雪歩「ねえ真ちゃん。これ、ちょっと付けてみない?」

真「うーん、ボクに似合うかなぁ」

雪歩「大丈夫。私は今の真ちゃんにピッタリだって思うよ?」

真「……うん。雪歩がそう言うなら……」

真「よっ……」スチャッ

真「…………どう?」

雪歩「うん、バッチリだよっ♪ 」

真「…………へへ〜♪ 」




真・雪歩(ボク(私)たちは、お互いに助け合って、成長できる)


真・雪歩(自分に足りないものを理解したボク(私)たちは、きっと無敵なんだ!)


628: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 10:59:11.39 ID:oCiU3AQPO
ー トロイアの町はずれ ー


シルフ「ホントにあなたが召喚士なんですか〜?」

やよい「うんっ! よろしくね、しるふちゃん!」ニコッ

シルフ「ふ〜む……」ジロジロ

シルフ(なんか弱そうですねぇ。威厳が感じられないというか)

シルフ(こんなので大丈夫なんでしょうか?)

伊織「ちょっとあんた。まさかやよいの言う事が信じられないわけ?」

シルフ「当たり前です。私が信じるのは、マコトさんだけですから!」

やよい「あぅ……」

伊織「ちっ……こいつも真の取り巻きなのね」

伊織「まったく、あんなヤツのどこがいいんだか」

伊織「ていうか真も、こうなるってわかってるならしっかり説明しときなさいよね、まったく!」

シルフ「むっ。マコトさんの悪口は許しませんよっ!」

伊織「何よ、思った事を言っただけじゃない!」

シルフ「………」

伊織「………」

シルフ「これは、どちらが立場が上かはっきりさせておいた方が良さそうですね〜……」ブワッ

伊織「いい度胸じゃない。『真の取り巻きその2』の分際で、このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんに楯突く気なのね!」メラメラ

やよい「あ、あの、 2人ともケンカはダメだよぉ」オロオロ


ポワ…


やよい「……あれ? イヤリングが光って……」



シルフ「むむ〜っ!」

伊織「ふんっ!」




スゥーー…

ラムウ「…………やめるんじゃ、シルフ」


629: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 11:03:32.97 ID:oCiU3AQPO

シルフ「えっ……?」

伊織「あら? あんた、やよいの下僕の……」

シルフ「ラムウ…おじいちゃん……?」

ラムウ「久しぶりじゃの、シルフ」

やよい「えっ? しるふちゃんとらむさんはおともだちだったんですかー?」

ラムウ「まあ、そんなところじゃ」

シルフ「………」



ラムウ「シルフよ。ヤヨイさんの力になってあげておくれ。お前の風の力は、貴重なんじゃ」

シルフ「………」

伊織(風の力、か……。そういえば私、風の忍術って知らないわね)

ラムウ「ヤヨイさんたちは、月を目指しておる」

ラムウ「この戦いは、新しい世界を迎えるために、必要なものなんじゃ」

シルフ「新しい、世界……?」

ラムウ「うむ」

ラムウ「シルフよ。ワシはずっとお前の事を案じておった。しかし、幻獣王として忙殺されるワシには、お前を探す暇はなかった」

シルフ「………」

伊織(……そういえば、真が言ってたっけ。確かこの子は、幻獣界で暮らしてたけど、幻獣たちが人間と交流を持つようになってから、居場所がなくなったって)

伊織(………)

ラムウ「あの頃の罪滅ぼしというわけではないが、全てが終わったら、ワシらはまたお前と暮らしたいと思っておる」

ラムウ「お前さえ良ければ、じゃが」

シルフ「おじいちゃん……」

ラムウ「戦いを終わらせるためにも、どうかヤヨイさんの力になってあげておくれ」

シルフ「………」


630: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 11:06:37.61 ID:oCiU3AQPO

ラムウ「ヤヨイさん、すまんかったの。いきなり出てきてしまって」

やよい「いーえ、気にしないでください」

やよい「らむさんとしるふちゃんが仲良しなのは、わたしもうれしいですし!」ニコッ

ラムウ「ヤヨイさんは優しいのぅ……」

シルフ「………」



ラムウ「では、またの……」

スゥゥー…



伊織(……消えたか)

伊織(相変わらず不思議よね、やよいの力は)

伊織(忍術でも魔法でもなく、生物を呼び出すなんて)

伊織(ま、だからこそあのシルフって子には、やよいに協力してもらいたいんだけど……)



やよい「……あの、しるふちゃん?」

シルフ「………」

伊織「あんた、真が来るまでずっとひとりだったらしいわね」

シルフ「………」

伊織「種族や習慣が違うから迫害されるっていうのは、普通に人間の世界でもあるけれど……」

伊織「あんたはひとりで戦い抜いてきたのね」

シルフ「……え?」

伊織「味方がいなくても、自分の戦いを貫き通した。結果、あんたには頼もしい仲間がこんなにたくさんできた」

シルフ「仲…間……?」


631: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 11:10:58.47 ID:oCiU3AQPO

伊織「なんとなーく、あんたは私とキャラが被ってて、いい気はしないんだけど……」

伊織「あんたのその生き様は、嫌いじゃないわよ?」

シルフ「……!」

やよい「さみしいのはもう終わりだよ。だってもうしるふちゃんは、わたしたちの大切なおともだちだもん!」ニコッ

シルフ「………」



シルフ「あの、これを」スッ

やよい「!」

伊織「ふーん。『それ』があんたの……」

シルフ「私が力になってあげるんです。さっさと終わらせますよ、こんな戦いは」

シルフ「………」クルッ

フワフワ〜



やよい「行っちゃった……」

伊織「生意気なヤツねぇ。根は悪いやつじゃないんでしょうけど」

やよい「えへへ♪ 伊織ちゃんと同じだねっ」

伊織「や、やよい? それは遠回しに私の事を生意気って言ってるの?」

やよい「ううん。伊織ちゃんもしるふちゃんも、とってもやさしいなって」

伊織(……ホッ)



伊織「……にしても、かなりごちゃごちゃしてきたわね、やよい」

伊織「ブレスレットにイヤリング、ネックレスに指輪、アンクレット、マント……あ、髪留めもか」

伊織「で、あいつがくれたこのチョーカーを付けてっと…………はい、できたわよ」

やよい「ありがとう、伊織ちゃん!」

伊織「そのチョーカーはなかなかいい感じね。やよいのイメージカラーと同じオレンジ色だし」

伊織「一番浮いてるのは、やっぱりマントよね。もっとマシなのは無かったのかしら」



やよい「………」ゴゴゴゴ



伊織「……っ!?」ゾクッ



やよい「どうしたの? 伊織ちゃん」

伊織「う、ううん、なんでもないわ」

伊織(気のせいかしら。今、一瞬やよいからとんでもない威圧感が……)



伊織「ま、とりあえずこれでやよいの戦力アップはできたわね」

やよい「うっうー! わたし、今までよりもっともーっとガンバるからね!」

伊織「にひひっ♪ 期待してるわよ!」



伊織(……でも、いざという時は、何があってもやよいだけは……)



やよい(なんだか、力がわいてきます! もう、みなさんに守られてるだけのわたしじゃないかなーって!)


632: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 11:15:50.55 ID:oCiU3AQPO
ー トロイアの町 商店街 ー


律子「……さて、そろそろ戻りましょうか」

あずさ「そうですね〜」



「…………おーーーい!!」

タタタタ…



あずさ「……あら?」チラ



P「探したぞ、律子。あずささんも一緒でしたか」



律子「プロデューサー殿!」

あずさ「プロデューサーさん、おはようございます〜」

P「はい。おはようございます」ペコリ

P「っと、それはとりあえず置いといて」

P「すみません、あずささん。ちょっと律子を借りていってもいいですか?」

あずさ「あらあら、プロデューサーさんったら大胆ですねぇ。デートのお誘いですか?」

律子「あ、あずささん!?」

P「い、いえ、そうじゃないんですけど……」

P「今後の事で、少し相談したい事がありまして」

律子「あ、もしかして長老さん、手が空いたんですか?」

P「うん。そうみたいだ」

あずさ「まあ……。うふふ、そういう事なら仕方ないですね〜」

あずさ「律子さん、お貸しします」

あずさ「その代わり、ちゃ〜んとエスコートしてあげてくださいね〜?」ニコニコ

P「あ、あはは……そういうアレじゃないつもりなんですけどね……」

律子「あ、あずささんったら……変な事言わないでくださいよ、もう!」カァァ



あずさ「それでは、私はお先に戻ってますね〜」ルンルン

スタスタ…




P「あずささん、なんであんなに楽しそうなんだ?」

律子「さあ……」



律子「じゃあ、私たちは長老さんのところへ行きましょうか」

P「ああ、そうだな!」


633: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 11:18:07.66 ID:oCiU3AQPO
ー トロイア城 執務室 ー


長老「おお! 久しいのぅ!」



P「ご無沙汰しております、長老!」ペコリ

律子「どうも初めまして! 私は……」

長老「リツコ殿じゃな? 存じておるよ」

長老「暗黒騎士ながら、此度の戦いで多大な戦果を上げたとか」

律子「いえ、私はそんな……」

長老「それに、そなたの事はアミマミからいやというほど聞かされておるでな」

律子「そうでしたか」

長老「なんでも、怒ったら手が付けられない……なんじゃったか……おにぐんそう? じゃったかな」

律子「あはは……」ピクピク

律子「後で亜美と真美にお礼を言っておかなきゃ」ゴゴゴゴ

P「ほ、ほどほどにな? 律子」

長老「?」



長老「すまんの。すぐにでもそなたたちに会いたかったんじゃが、ワシもアン殿の手伝いで忙しくての」

P「いえ、気にしないでください」

P「ちなみに、何をなさってたんです?」

長老「まあ、こんな老いぼれにできる事など限られておる。少し、若手の育成をな」

P「若手の育成、ですか」

長老「民の中から魔道士希望者を募り、ワシとアガルトの老婆殿とで魔法を教えておるんじゃよ」

P「……なるほど。長老にピッタリのお役目ですね」

長老「…………アミとマミは、そなたに取られてしまったからのぅ」チラ

P「あ、いや、取ったつもりは……」

長老「ふふふ、すまんすまん」

長老「心配などしておらんよ。そなたに任せれば、アミとマミはきっと幸せになれる。ワシはそう判断したんじゃ」

P「長老……」

律子(ふーん……長老さん、いい人みたいね)

律子(それに、プロデューサー殿もなんだか嬉しそう)

律子(なんとなくこの2人、親子みたいに見えなくもないわね)


634: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 11:21:07.72 ID:oCiU3AQPO

長老「……で、本題なんじゃが」

P「魔導船、ですよね?」

長老「うむ。そなたに聞こうと思っておったのじゃ。魔導船を復活させなくて良いのかと」

P「すみません、俺の勘違いでした」

P「本来なら、貴音が魔導船でこの青き星へ来る、なんてシナリオは無いはずだったので、貴音の乗って来た魔導船を本物だと勘違いしてしまって」

長老「なるほど。未来が見えるそなたにも、失敗はあるのじゃな」

律子「未来が、見える……?」チラ

P(方便だよ。俺の立場上、そういう風に言っておいた方が都合がいいと思って)

律子(あ、なるほど)

長老「それで、タカネの乗って来た魔導船は……」

P「残念ながら、航行不能になってしまいました」

長老「そうか。それでようやく本家の出番、というわけか」

P「はい」

律子「あの、それで魔導船はどこにあるんですか?」

長老「うむ。これは彼に聞いた話なんじゃが、なんでもミシディア近海に沈んでおると」

P「おそらく、そこは間違いありません」

長老「じゃが、どうやら復活にはワシひとりでは力不足のようでな」

長老「そなたらの力を借りたいと思っておったんじゃ」

律子「私たちの力を?」


635: ◆bjtPFp8neU 2015/10/10(土) 11:24:56.70 ID:oCiU3AQPO

長老「リツコ殿。人の想いとは、叶うものだと思うかの?」

律子「それは……想いの種類にも依るんじゃないでしょうか?」

律子「あんまり突飛な願いだと、無理な場合もあるとは思いますけど……」

長老「現実的じゃのぅ。が、間違ってはおらん」

長老「良いか、リツコ殿。ひとりの想いでは届かぬ願いでも、二人、三人と同じ事を願う者が現れたら、どうなる?」

律子「え……?」

長老「そなたらには、強い信念を持った素晴らしい仲間がおる。皆の想いをひとつにすれば、必ず道は開けるじゃろう」

律子「想いを、ひとつに……」

P「それで、具体的にはどうすれば?」

長老「ミシディアの祈りの館。微弱ながら魔力を張り巡らせた建物じゃ」

長老「あそこなら、想いを魔力で増幅できる。きっと皆の想いも届くじゃろう」

長老「本当はすぐにでもミシディアへ向かいたいんじゃが、ワシは明日の式の準備で忙しくてのぅ」

P「式、ですか?」

長老「うむ。大切な式じゃ。もちろんそなたらにも参列してもらいたいと思っておる」

P「はぁ……」



長老「ところで……」

長老「リツコ殿。そなた、雰囲気がハルカに似ておるのぅ」

律子「そうですか?」

長老「うむ。まだ暗黒騎士だった頃のハルカにそっくりじゃ」

律子(そうか。春香が暗黒騎士から聖騎士になったのは、この人の助言があったからって言ってたっけ)

P「あ、言ってませんでしたっけ? 律子は春香の姉なんですよ」

長老「なんと、そうじゃったか。道理で……」



律子「……………………はい?」



P「そういえば律子にはまだ言ってなかったな。律子と春香は、(この世界では)姉妹なんだ」

律子「プロデューサー……」

P「どうした?」キョトン



律子「どうして! あなたは! そういう大事な事を! 今頃になって言うんですか!!」グリグリ



P「痛い痛い痛い痛い痛い! うめぼしやめてぇ〜〜!!」



長老「仲が良いのぅ」ニコニコ


642: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:05:07.25 ID:bIwZOdeQO
ー トロイア城 客室1 ー


春閣下「……まあ、そういうわけで」

春閣下「このリボンは、私と『わたし』、2人の春香を繋ぐ架け橋なんだよ」



千早「………」

伊織「なるほどね……」

響「普段の春香のイメージと全然違うなぁ」

春閣下「そりゃそうだよ。今は私がベースだから。『わたし』にはちょっと大人しくしてもらってるんだ」

千早「その、ちゃんと元に戻るのよね?」

春閣下「心配しなくても大丈夫だよ、千早ちゃん。私が表に出てくるのは、あくまでこのリボンを付けた時だけだから」

千早「なら、よかったわ」



亜美「まさか、リボンがはるるんの専用装備とはねぇ」

真美「うんうん。でもまあ、ある意味ヒツゼンと言えなくもないかもね」

貴音「それで、春香のもう一つの人格であるあなたは、なんとお呼びすれば良いでしょう?」

春閣下「好きに呼べば? 私は別になんでもいいんだけど」

春閣下(私はあなたたちと仲良くするつもりは無いし、ね)

春香(や、ヤミちゃん……!)


真「………」

643: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:07:31.49 ID:bIwZOdeQO

春閣下「……あ、そういえば『わたし』は私の事を『ヤミちゃん』って呼んでるよ」

雪歩「ヤミちゃん、かぁ」

やよい「よろしくお願いしますね、やみさん!」

美希「……あふぅ」



春閣下「ねえ。ところでプロデューサーさんはどこにいるの?」

あずさ「プロデューサーさんなら、さっき律子さんとお出かけしたわよ〜?」

春閣下「そうなんだ……。つまんないの」

春閣下「じゃあ、特に用も無いし、私はそろそろ戻ろうかな」

春閣下「じゃあね〜」

シュルッ…



パァァーーー!


644: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:10:27.08 ID:bIwZOdeQO

春香「………」

春香「……ふぅ」

春香「えーっと、こんな感じなんだけど、わかってもらえた……かな?」


千早「ええ。なんとなくだけど」

亜美「よくわかんないけど、合体はるるんは暗黒騎士ってことでいーの?」

春香「一応聖騎士でもあるみたい。でも、ヤミちゃんの意識の方が強いから、暗黒騎士メインかな」

真美「で、そのリボンは、ポ○ラみたいなモンなんだね」

春香「あー……まあ、似たようなものかなぁ」

伊織「じゃあ、結局今のあんたは半人前って事?」

春香「ち、違うよぅ。リボンを付けたら力が2倍になるの!」

雪歩「ねえ、春香ちゃん。その、2人の春香ちゃんが合体? してる時は、ホントの春香ちゃんはどうなってるの?」

春香「うん。私の意識は普通にあるよ」

春香「でも、普段の私の時はヤミちゃんの意識は出て来ない分、合体した時はヤミちゃんの意識が全面に出て来る感じみたい」

真「大丈夫なの? それ。気づかないうちに乗っ取られたりとかしないよね?」

春香「そ、それは大丈夫……だよ、きっと」

春香「ヤミちゃんも、私には逆らえないって言ってたし」


645: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:14:09.75 ID:bIwZOdeQO

響「でもなー。さっきの春香、自分はあんまり好きじゃないな」

春香「ヤミちゃんは、私の闇の部分だからね」

春香「ちょっと感じ悪いかもしれないけど、悪い子じゃないよ、多分」

春香「……あれ? 闇の部分だから悪い子なのかな……?」

春香「うぅ、わからなくなってきた……」

伊織「もう、しっかりしなさいよ。自分の事なんだから」

春香「だ、だって……」


貴音「わたくしは、あまり油断はしない方が良いかと思います」

春香「貴音さん……」

貴音「誰もが抱える闇の部分。その集合体という事は、やみ殿は文字通り悪意の塊であるという事」

春香「で、でも……」

貴音「春香が主導権を握っているのならば、さほど問題は無いのでしょうが……」

貴音「やみ殿とは、うまく付き合っていく必要があると思います」

美希「ミキも、貴音の意見に賛成かな」

春香「み、美希まで……」

美希「響も言ってたけど、さっきの人、友達になりたいとはとても思えなかったの」

美希「ミキは、あんまりそのリボンは使わない方がいいと思うな」

春香「ん……そうだね。気をつけるよ」

千早「大丈夫よ、春香。私たちがついてるから」

春香「うん。ありがとう、千早ちゃん」


646: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:17:30.33 ID:bIwZOdeQO

あずさ「……ところでみんな。これからちょっと広場に行ってみない?」

春香「広場ですか?」

あずさ「ええ。なんだか素敵な事になってるらしいのよ〜」

響「素敵な事……? 何があるの?」

あずさ「うふふ。それは行ってのお楽しみよ♪ 」

真「特に用事もないし、ボクは行ってみようかな」

雪歩「私も行きますぅ」

真美「なんかおもしろそー」

亜美「ちょうどお城の中もタイクツになってきたとこだしね!」

やよい「みんなで行きましょー!」

あずさ「うふふ♪ 決まりね」



ゾロゾロ…



伊織「………」


春香「……あれ? 伊織は行かないの?」

伊織「私は、他に用事があるから。悪いわね」

春香「そっか。じゃあ、また後でね」

伊織「ええ」


647: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:25:07.90 ID:bIwZOdeQO
ー トロイアの町 広場 ー



女神像たち「………」



亜美「うっわー! 亜美たちが石像になってるYo!」

真美「すごーい! これ、真美たちにチョーそっくりじゃん!」

あずさ「そうねぇ。みんなとっても可愛いわ〜♪ 」

真美「ねえねえ亜美、みんなの像を片っぱしから見てみようよ!」

亜美「うん! 楽しみ〜」




春香像「………」



春香「わぁ……私にそっくりだ〜」

春香「えへへっ♪ なんだかカッコいいかも♪ 」ニコニコ

亜美「ふむふむ。はるるんの像は、これといってとくにツッコミどころがありませんな」

真美「ん〜、しいて言えばリボンがかわいーね、ってカンジかな」

春香「ひどい! ひょっとして私の像はリボン以外に特徴が無いって言いたいの!?」

亜美「ふつーが一番むずかちい」

真美「うんうん」

春香「むー、なんか釈然としない……」




真像「………」キリッ



真「もー、なんでボクの像だけファイティングポーズなんだよ〜……」

亜美「おお、まこちんの像は例外なくイケメンですな〜」

真美「これを見たら、世の女性もワンキルですな!」

真「ちぇっ……どうせなら、もっと可愛く造って欲しかったなぁ」




雪歩像「………」



雪歩(なんで私の像が真ん中なんだろう)

亜美「あり? ゆきぴょんがセンターにいる? って事は……」

真美「ついに、はるるんの時代も終わったか……」

雪歩「うぅ、なんか恥ずかしいですぅ……///」


648: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:28:22.43 ID:bIwZOdeQO

伊織像「………」ピカー



亜美「おやおや〜? いおりんの像は、一ヶ所だけヤケにみがきがかかっておりますな〜?」

真美「んっふっふ〜♪ やっぱわかる人にはわかるんだね! いおりんのスペシャルハイビーム!」



美希像「………」zzZ



美希「むー! ミキ、寝てばっかじゃないもん!」

美希「これを造った人からは悪意を感じるって思うな!」プンスカ

亜美「……ミキミキのやつは予想通りだね」

真美「うん。これでおにぎり持ってればパーフェクトだったね」



やよい像「………」ウッウー



やよい「はわわ、すごいですー! わたしがもうひとりいるみたい!」

亜美「やよいっちの像は天使ですな〜」

真美「世の中のロリコンさんたちがほっときませんな」



響像「………」



響「………」じーっ

真美「どったのひびきん?」

響「んー、どうせなら、自分たちだけじゃなくてエン太郎の像も造ってもらいたかったなって」

亜美「ひびきん……」

真美「ひびきんはええ子や……」


真美「……お、あっちには千早お姉ちゃんたちがいるよ」

亜美「行ってみよー!」

スタスタ…



あずさ像「………」ドタプーン

千早像「………」ペターン

貴音像「………」プルルーン



あずさ「これ、本当によくできてるわね〜」

貴音「ええ、本当に」

貴音「しかし、よもや自分が銅像となって祀られる日が来るとは、思いもしませんでした」

千早「…………くっ」ガクッ

千早(またしてもこんな配置……)


亜美「これは、なんと言うか……」

真美「千早お姉ちゃん……ドンマイ」


649: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:33:54.93 ID:bIwZOdeQO

P「……あれ?」

律子「あんたたち、こんなところで何してるのよ?」



春香「あ、律子さん、プロデューサーさん!」

響「自分たち、この像を見てたんだ!」

P「像って……うわ、すごいな、これ!」

律子「ああ、カフェのマスターが言ってたやつね」

律子「……って、うわ!? 私の像まであるし」


律子「でも、前までは雪歩の像だけだったけど、みんなの像が集まると、なかなか華やかね」

貴音「お2人共、ここにいるという事は、長老殿とのお話は終わったのですか?」

P「ああ。これからの予定は決まったんだが、今すぐには動けないんだ」

P「とりあえず、行動を起こせるのはあさって以降になるかな」

律子「各自、それまでにちゃんと準備しておくのよー」



アイドルたち「はーーい!!!」



P「あ、そうだ。明日は結婚式があるんだけど、お前たちにも是非参加してもらいたいらしい」

P「よろしく頼むな」

春香「結婚式、ですか?」

美希「ひょっとして、ミキとハニーの?」

P「そんなわけないだろ? 結婚するのは、店主とものまね士だ」

春香「ああ、なんだ。店主さんとものまね士さんですかぁ……」



春香「……って、ええぇぇぇええっ!!?」



650: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:38:19.36 ID:bIwZOdeQO

春香「それ、本当なんですか!? プロデューサーさん!」

P「うん。長老の話だと、巨人との戦いが始まる前にはもうプロポーズは済ませてたらしい」

春香「ぷ、プロポーズ……」

美希「ねえ春香!」

春香「うん!」

春香「なんか展開が急な気もしなくもないけど、あの2人、ちゃ〜んと結ばれたんだね!」

美希「あはっ☆ ファンの人が号泣してる姿が目に浮かぶの!」

P「あれ? 美希と春香は知ってたのか?」

春香「あ、はい。私と美希は、ものまね士さんから相談を受けた事がありまして」

P「へぇ、そうだったのか」

美希「いいな〜。ミキも早く結婚したいな〜」



真「ものまね士さんと店主さんが結婚かぁ……」

雪歩「みんなでお祝いしてあげたいね」

貴音「ええ。あの2人にはお世話になりました。皆で盛大にお祝い致しましょう」ジュルリ

響「貴音……披露宴の料理が楽しみなんだな?」



律子「あら? そういえば、伊織は?」キョロキョロ

あずさ「伊織ちゃんなら、何か用事があるって言ってましたよ〜?」

律子「用事?」


651: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:42:54.12 ID:bIwZOdeQO
ー トロイア城 客室1 ー


P「みんな、忘れもの無いようにな。ここを出発したら、もう戻って来れないから」

亜美「そういや、もうあとは月に行くだけだもんね」

真美「なんか、月日がたつのはあっという間だね。まさに、強引はイヤン♪ のごとし、ですな!」

P「光陰矢の如し、な」

やよい「小鳥さんに会いに、月に行くんですよね! わたし、すっごく楽しみですー!」

P「……ああ、そうだな」



春香「………」

春香(そっか。月に行ったら、私たちはもうここには戻って来れないんだ……)

千早「? ……春香、どうかしたの?」

春香「……あ、うん」

春香「この世界ともとうとうお別れかーって思うと、ちょっと寂しいなって」

千早「……そうね。辛い事もあったけど、少しだけ名残り惜しい気持ちもあるわね」

春香「うん……。それにね」

春香「この世界では、本当にいろんな事があったけど、私たち、たくさんの人たちにお世話になったよね?」

千早「ええ、確かに」

春香「だから私、思ったの。この世界のみんなに、お礼がしたいなって」

千早「お礼、か。……そうね。それはいい考えかもしれないわ」

千早「でも、どうやってお礼をすればいいかしら?」

春香「……一応、後でみんなにも相談するんだけどさ」

春香「私、ちょっといい事思いついちゃったんだ♪ 」ニコッ

千早「?」


652: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:50:50.61 ID:bIwZOdeQO
ー トロイア城 客室3 ー


コンコン


家老「……どうぞ。開いておりますじゃ」


…ガチャ


伊織「ジイ……」



家老「おお、これはお嬢。お待ちしておりました! ……ささ、こちらへ」スッ

伊織「………」

スタスタ…



家老「良くぞご無事で。ジイは心配で眠れませんでしたぞ?」

伊織「悪かったわね、顔を見せるのが遅くなっちゃって」

家老「良いんですじゃ。こうしてまたお嬢の元気なお姿を見る事ができた。ワシはそれで満足なんじゃ」

家老「それにしても、お嬢が世界を救う英雄になられるとは……。このジイも鼻が高い!」

家老「これを期に、エブラーナの名も世界に轟きましょうぞ!」

伊織「………」

家老「……お嬢、どうされた? まだ疲れておられるのか?」

伊織「大丈夫よ。心配いらないわ」

家老「……?」

伊織「ジイ、あんたに話さなきゃならない事があるの」

家老「話……ですか。いったいどんな……」



伊織「私……あの巨人の中で、赤い悪魔に会ったわ」



ジイ「! ……なんと……!」

ジイ「そ、それではお嬢。我らが悲願は……?」

伊織「………」

伊織「私は……」

伊織「赤い悪魔を、殺さなかった」

ジイ「な、なんですとっ!?」ガタッ

伊織「……ううん、『殺せなかった』が正しいわね」

ジイ「お嬢、何故……!」


653: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 21:54:56.55 ID:bIwZOdeQO

伊織「ジイ、私ね……」

伊織「私たちは、赤い悪魔に何回も助けてもらっているの」

家老「!?」

伊織「今、私がここにこうしていられるのは、もちろん春香たちのおかげもあるんだけど……」

伊織「赤い悪魔や、他の四天王たちの助力があったからなの」

家老「……そ…んな……」ヨロッ

伊織「聞いて、ジイ!」ガシッ

伊織「あなたたちの恨みを晴らせなかったのは悪いと思ってるわ」

伊織「でもね。私、気づいたの」

伊織「恨みや憎しみからは、何も生まれない。仇を殺したところで、その先にあるのは、自分も等しく命を奪ったという事実だけ」

伊織「……いいえ、それだけじゃない。その先の人生を、ずっと悔やんで生きなければならない」

伊織「誰かの命を終わらせた、という枷を、ね」

家老「しかし、だからと言って彼奴を許すわけには! 散っていった先代や王妃、仲間たちに顔向けが……!」

伊織「わかってる! エブラーナのみんなは、許してくれないかもしれない」

伊織「でも……!」

家老「お嬢……なぜ、そのように臆病になってしまわれたのじゃ?」

伊織「っ……!」

家老「あなたは紛れもなくエブラーナ王家の血を引く王女じゃ。その務めを果たす義務を、あなたは持っておる!」

伊織「わ、わかってるわよそんなの!」

伊織「何回でも謝るわ! みんなが許してくれるまで。それが、王女としての務めを果たせなかった私の罪だもの!」

家老「違うんじゃ。甘い。あなた甘い! 国を背負うという事をまるでわかっておらん!」

家老「……お嬢ができんのなら、ワシが行く」チャキッ

伊織「じ、ジイ!?」

家老「無念を晴らせませんでした。では通らんのじゃ」

家老「じゃが、お嬢はまだ若い。その責を負わせるのは酷なのかもしれん」

家老「やはり、はじめからワシが行くべきじゃった!」スクッ

伊織「ま、待って! ……待ちなさい!」ガシッ

家老「ええい、離しなされ!」グイッ



…バタンッ!



「待ってくださいっ!」


654: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:00:38.41 ID:bIwZOdeQO



春香「話は聞かせてもらいました!」



伊織「は、春香!?」


春香「おじいさん。もう、やめてください! 戦いは終わったんです!」

春香「もう、誰も傷付ける必要はないでしょう?」

家老「どきなされ! これは我々エブラーナの民の問題。あんたには関係のない事じゃ!」チャキッ

春香「いいえ、どきません!!」バッ

伊織「春香!」

春香「関係ない事、ないです。伊織は大切な仲間ですから。仲間が悩んでいるなら、力になりたい!」

伊織「………」

家老「……確かにあんたたちはお嬢の仲間なのじゃろう。それを否定はせん」

家老「じゃが、お嬢とあんたたちでは、背負っているものが違う。何もないあんたらに、我々エブラーナの民の面子をどうにかできるのか?」

春香「………」

家老「住む世界が違うんじゃ。……そこをどきなされ」

春香「いいえ、どきません」フルフル

家老「くっ……この……!」チャキッ

伊織「やめなさい、ジイ!!」

家老「我々の邪魔をするなら、まずはあんたから……!」ブンッ

伊織「ダメーーーッ!!」

春香「っ……!」



…ザシュッ!!


655: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:05:34.90 ID:bIwZOdeQO


「…………つぅ……!」



家老「……む!?」

春香「…………えっ?」

春香「り……」

伊織「律子!?」


律子「……だ、大丈夫よ。このくらい、かすり傷だから」


春香「律子さん! 今、回復魔法を!」

律子「待って」スッ

律子「おじいさん、すみませんでした」ペコリ

家老「な、なぜあんたが謝るんじゃ? 謝らなければならんのはこちらの方じゃ」

家老「関係ないあんたを傷付けてしまった……すまん」

律子「聞いてください」



律子「ルビカンテを遣ってエブラーナを滅ぼしたのは……」

律子「……私、なんです」



家老「なっ!?」

伊織「ちょ、ちょっと律子!」

春香「でも、それは律子さんの意思じゃ……!」

律子「ううん。いいの、2人とも。隠してたっていずれはこういう事が起きると思っていたから」

律子「全ての原因は、この私です。どうぞあなたの手で私を裁いてください」

家老「あんた……ワシを騙していたのか……?」

律子「ええ……結果的にそういう事になりますね」

律子「……ごめんなさい」ペコリ

家老「ジジイだとバカにしおって……!」


656: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:11:18.15 ID:bIwZOdeQO

伊織「やめなさい、ジイ!」

家老「お嬢、邪魔をしないでくだされ! 諸悪の根源たるこの女は、今この場でワシが斬り捨ててくれるっ!」チャキッ

伊織「律子を斬るなら、私を斬ってからにしなさい!」バッ

家老「邪魔をしないでくだされっ!」

律子「伊織、ダメよ! ここは私が……」



伊織「もう、嫌なのよっ!!」



家老「お、お嬢……?」

伊織「もう、誰かを憎むのは、うんざりなの!」

律子「伊織……」

伊織「エブラーナのみんなには、私が頭を下げるわ。仇を取れませんでした、ごめんなさいって」

家老「しかし、それでは王家の威厳が!」

伊織「そんなの関係ないわ。許してもらうまで、何度でも謝る」

春香「私も謝ります!」

家老「は!?」

春香「私が出しゃばっても、あんまり意味がないかもしれません。でも、仲間が困ってるのを、私は黙って見過ごせません!」

伊織「春香……」

家老「い、いや、しかし、あんたに謝ってもらっても……」

律子「あんたたちはいいの。ここは私に任せておきなさい」

春香「そんな! 律子さんひとりに責任を押し付けるわけにはいかないです!」

伊織「そうよ! ここは私が!」

春香「いいえ、私が!」

律子「私に任せればいいって言ってるの!」

ワイワイ ギャーギャー…



家老「………」


657: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:17:23.39 ID:bIwZOdeQO

家老「…………わかった。エブラーナの皆には、ワシから話そう」



伊織「ジイ!」

家老「お嬢の苦労も考えず、ワシは国の事ばかり……」

家老「本当に、申し訳ないですじゃ」ペコリ

伊織「いいのよ、別に」

伊織「でも、みんなには私から話すわ。これは、王女としてのけじめだもの」

家老「……わかりました。お嬢の言う通りにしましょう。ワシも、共に行きますぞ」

家老「それからあんたも」チラ

家老「諸悪の根源、などと言ってすまんかった。思えばワシは、海に落ちた時にあんたに命を救われているんじゃったな」

律子「いいえ。諸悪の根元っていうのは、まあ、割と当たってますし」

家老「良い仲間に恵まれましたな、お嬢」

伊織「……ええ!」ニコッ



春香「ふぅ……」

春香「なんか、一件落着みたいだね」

伊織「ま、なんとかね」

伊織「っていうか春香。あんた、なんでこんなところにいるのよ?」

春香「え? ……ああ、そうだった!」

春香「ねえ伊織、律子さん……」




春香「……ライブ、やりませんか?」




律子・伊織「…………は?」



658: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:21:59.32 ID:bIwZOdeQO
ー トロイア城 客室1 ー


律子「プロデューサー、どういう事なんです? いきなり、ライブをやるだなんて」

P「ああ。春香の立案なんだけど、話してみたらみんなも結構乗り気でさ」

P「レッスンもご無沙汰だし、肩慣らしも兼ねてやってみようか、って事になって」

律子「それはいいです。でも、この国には音響機材とか、ライブに必要なものなんて何もないじゃないですか」

春香「それなら心配いりませんよ! ミニ助さんが言ってました。ミスリルの村にはライブに使う機材が揃ってるって!」

律子「え? そうなの?」

響「それは本当だぞ。自分、前にミニ助たちと一緒にミスリルの村で踊ったんだけど、結構機材も本格的だったさー」

律子「ふーん。それならまあ、なんとかなりそうですね」

P「で、だ。律子に頼みがあるんだ」

律子「改まって、なんです?」

P「ミスリルの村に、機材を取りに行ってくれないか? 亜美たちと一緒に」

律子「え? なんで亜美たちと?」

響「本当なら自分がファル子で取りに行きたいとこなんだけど、自分、伊織のじいちゃんをエブラーナまで送り届けなきゃいけないんだ」


亜美「そ・こ・で!」

真美「久々のフタミ号の出番ってわけなんだよ、りっちゃん!」

P「2人のお目付役としてさ。頼むよ」

律子「うーん……まあ、仕方ないですね。亜美と真美だけに任せるわけにはいきませんし」

律子「その代わり、遊びで行くんじゃないんですからね? わかってるわね?」

亜美・真美「わかってるYoー!!」



659: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:30:19.00 ID:bIwZOdeQO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー



響「……それじゃ、じいちゃんをエブラーナに送ってくるぞ!」

P「うん。響、よろしくな」

響「ふふん! 自分とファル子に任せておけば、なんくるないさー!」



春香「伊織、本当にひとりで行くの? 私たちも行こうか?」

伊織「大丈夫よ。あんたたちはライブの準備をしっかりやってなさい」

春香「……うん、わかった!」



アン「お気をつけて。本当は、あなた方エブラーナの民も、このトロイアに招待したかったのですが……」

家老「それには及ばぬよ。ワシらエブラーナの民は、忍の一族。簡単に他の民と馴れ合う事はせんのじゃ」

家老「それに、ワシらにはエブラーナ城があるのでな。今は魔物に滅ぼされてしまっておるが、必ず皆で復興してみせる」

アン「わかりました。ですが、文化は違えど、私たちは皆この世界のために戦った仲間です。もしもの時には、必ず駆けつけますわ!」

家老「……ありがたきお言葉、感謝じゃ」



伊織「響。そろそろ行きましょ」

響「うん、わかったぞ!」



響「ファル子、出発だ!」グイッ



ブワッ…


ババババババ…


660: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:34:06.69 ID:bIwZOdeQO

P「…………さて、と」

亜美「んっふっふ〜。次は亜美たちの出番ですかな?」

真美「久々のフタミ号のカツヤクだね!」

P「気をつけて行くんだぞ?」

律子「大丈夫ですよ。ちょっと行ってくるだけですから」

P「まあ、律子がついてるなら心配はないと思うけど」


ミニ助「それでは行こうか、諸君」

ピョン吉「久しぶりに村に帰れるね!」

ブタ美「みなさん、よろしくお願いします……」

真美「よーしっ! 誰が飛空艇まで早く着けるか、きょーそーだよっ!」

亜美・真美「それ〜〜!!」

タタタタ…


律子「あ、こら! 待ちなさーい!」

タタタタ…



P「……よし。残りのメンバーは城に帰ってライブの打ち合わせをしようか」



アイドルたち「はーーい!!」


661: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:43:35.28 ID:bIwZOdeQO
ー ミスリルの村 ー


律子「……で、一瞬にして到着したわけだけど……」

律子「ここがその、ミスリルの村?」

ミニ助「いかにも。僕らミスリルブラザーズの故郷だよ」

亜美「ふぇ〜、ホントに家とかちっちゃいんだねー。面白ーい!」

ピョン吉「君たち人間からすればそうだろうねー」

真美「んで、そのサマーソルトホールってやつはどこにあるの?」

ブタ美「コンサートホールは、この先にあります……」



律子(小人やカエルが住んでるだけあって、何もかも小さくてミニチュア模型みたいで可愛いわね)

律子(…………ん? 何もかも小さい……?)



真美「……そういえば気になったんだけどさ。ミニちゃんたちはいつも何食べてるの?」

ミニ助「そうだな。アリのステーキとか、ハエのムニエルとか……」

ピョン吉「ボクはミミズのソテーかな」

ブタ美「わ、私は、草を……」

真美「ふ〜ん……」

ミニ助「そうだ。今度君たちにアリのステーキをご馳走しよう。なかなかイケるぞ?」

真美「あ、う、ううん。真美、あんましアリとか好きじゃないから……」

ミニ助「そうか……。残念だ」



真美(真美、人間に生まれてきてホントよかった)


662: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:49:10.30 ID:bIwZOdeQO
ー ミスリルの村 コンサートホール ー


ミニ助「これが機材だ。さあ、運ぼうか」スッ


律子「…………やっぱりね」

亜美「ちっちゃ! 機材ちっちゃ!」

亜美「こんなのじゃ、ライブできなくない?」

真美「わ〜ん! どうしよりっちゃん!」

律子「うーん、困ったわね……」

ミニ助「問題あるのか? これでもちゃんと使えるんだが」

律子「この広さのホールなら、こんなに小さくても充分なんでしょうけど……」

ピョン吉「……あ、そうか。君たち人間が使うとなると、もっと大きなサイズじゃないとダメなんだ」

ブタ美「うぅ……すみません……」

律子「ちなみに、機材はここにあるので全部よね?」

ミニ助「ああ。……すまない。力になれると思ったんだが……」



亜美「どーする、りっちゃん?」

律子「せっかくだから、ライブはやりたいけど……。この際、アカペラでやるとか?」

亜美「ええ〜!? それはさすがにキツいっしょ〜!」

律子「そうよねぇ……」

真美「せめて、もうちっと大きければなぁ……」


663: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 22:51:49.81 ID:bIwZOdeQO

真美「………」

真美「…………あれ? もしかして……」

スタスタ…


亜美「とりあえず、これ全部持って帰ってみる? 手のひらサイズだから持ち運びはラクちんだけど」

律子「そうね。ダメもとで持っていってみましょうか」

真美「ちょっと待って」

律子「え?」



真美「…………ミニマム」

…ボンッ



亜美「……あっ!」

律子「あ」

ミニ助「おお!」

ピョン吉「機材が……」

ブタ美「大きくなっちゃいました……!」



真美「小人にしたりもとに戻したりする魔法なら、イケるかな〜? って思ったんだけど……」

真美「んっふっふ〜♪ どーやら問題カイケツですな!」

亜美「なるほどねー! 真美あったまいい!」

律子「そういう魔法もあるのね。真美、お手柄よ!」

真美「へへ〜♪ 」ニコッ

亜美「よく思いついたね?」

真美「亜美がトードで兄ちゃんを人間にしたりべろちょろにしたりしてるの思い出してさ」

亜美「あ、そっかぁ」

ミニ助「君はなかなか機転が利くんだな。……ともかく、機材を運んでしまおうか」

亜美・真美「は〜〜い!!」


664: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 23:07:56.35 ID:bIwZOdeQO
ー エブラーナの洞窟 ー


スタスタ…

響「……ねえ、この不気味な洞窟が伊織の国なの?」

家老「左様じゃ。城はほぼ壊滅状態じゃからな。皆、この洞窟に避難しておるんじゃ」

響「そうなのか……。伊織、苦労したんだな」キョロキョロ

伊織「………」





家老「……着きましたぞ」

伊織「ええ」

響「ねえ伊織。自分は行かない方がいいかな?」

伊織「ううん、あんたもいてちょうだい、響」

響「へっ? ……珍しいな。伊織からそんな事言うなんて」

伊織「い、いいでしょ、別に」

伊織「あんたは私の、大切な仲間なんだから」

響「……うん、わかったぞ!」ニコッ

家老「………」


伊織「……さ、行くわよ」




伊織「みんな、ただいま!」



「……おお! 王女だ!」

「イオリ王女が戻られたぞ!」

「よくぞご無事で! お待ちしておりました!」

「王女! 王女! 王女!」

「うおおおおおおお!!」

ザワザワ…



響「へぇ……伊織、すごい人気者だな!」

家老「もちろんじゃ。お嬢ほどカリスマを持つ者もなかなかいないじゃろう。この国の民は皆、お嬢に心から忠誠を誓っておる」

家老「逆に、皆お嬢無しでは生きてゆけないかもしれん」

響「それはちょっと大げさな気がしなくもないけどなー」


665: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 23:10:50.04 ID:bIwZOdeQO

伊織「心配かけたわね。でも、この通り、私は無事よ!」



兵士1「さすが王女です!」

兵士2「我らの王女は無敵だ!」

兵士3「イオリ王女ばんざーい!」

ザワザワ…



伊織「みんな、ちょっと聞いて」

伊織「今日、私がここに帰ってきたのは……」

伊織「あんたたちに、話さないといけない事があるからなの」



兵士1「話ですか……?」

兵士2「どんなお話でしょうか?」

兵士3「王女のお話ならば、何があってもお聞きします!」

ザワザワ…



伊織「ありがと、みんな」



伊織「私は、エブラーナのみんなの仇を討つために、この国を旅立った」

伊織「そして、旅の途中で私はついに、私たちの宿敵、赤い悪魔……火のルビカンテに会ったわ」

伊織「でも私は……ルビカンテを殺せなかった。みんなの仇、討てなかったの。それどころか、ルビカンテにピンチを助けられたりもした」

伊織「巨人が人間を滅ぼそうとしてたのは知ってるわよね?」

伊織「ルビカンテたちがいたから、私たちは巨人を止める事ができたのよ」



兵士1「お、王女……」

兵士2「そんな……」

兵士3「なぜ……?」

ザワザワ…


666: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 23:13:49.76 ID:bIwZOdeQO

伊織「みんなの仇、取れなくてごめんなさい」

伊織「……ううん、謝っても許されない事だって、わかってる」

伊織「だから……」

伊織「わ、私を、あんたたちの好きなようにしていいわ!」

伊織「それで許してもらえるかはわからないけど……」



兵士たち「!!!」



家老「お嬢……」

響「ね、ねえ、伊織、あんな事言っちゃてるけどいいの?」

家老「心配無用じゃ。……多分」

響「多分て……」

家老「お嬢の覚悟に水を差すような真似は、なるべくしとうない」

響「うーん……。大変な事にならなきゃいいけどな……」


667: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 23:20:01.77 ID:bIwZOdeQO

兵士1「では、王女。私どもからお願いがあります」スッ


兵士2「お、おい……」

兵士1「止めるな。お前だって気持ちは同じだろう?」

兵士2「し、しかし……」

兵士3「言ってやれ。それは……オレたちの悲願だ!」

兵士2「ぐっ……!」

伊織「言ってみなさい。私にできる事ならなんでもやってみせるわ!」

兵士1「その言葉に、ウソはありませんね?」

伊織「あ、当たり前じゃない! この伊織ちゃんに二言はないわよ!」

兵士1「失礼しました」ペコリ

兵士1「それでは王女……」




兵士1「どうか、踏んでください!」




伊織「……そうよね。王女としての務めを果たせなかったんだもの。踏むくらいは……」

伊織「………………え?」

伊織「踏むって、何を?」

兵士1「『私を』です、王女!」キリッ

伊織「キリッ! じゃないわよバカっ! 何よそれ!? 頭おかしいんじゃないの!?」

兵士3「王女! 私には思いつく限りの罵詈雑言をお願いします! できれば虫ケラを見るような目で!」ズイッ

伊織「は!? ちょ、ちょっと……!」

兵士2「な、ならばっ! 私は、王女の靴を舐めさせてください! ずっとそれを夢に見ていました!」ズイッ

兵士1「王女、お願いします!」ズイッ

伊織「お、おかしな目で私を見るなぁーっ!」ゲシゲシ

兵士1「ああっ! もっと、もっと蹴ってくださいっ!」クネクネ




響「あれ? なんか思ってた展開と違うぞ……?」

家老「心苦しいが、これがお嬢が乗り越えなければならない咎なのじゃ」

響「ふ、ふーん……。よくわかんないけど、みんな変態で伊織は大変だな……」


668: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 23:22:29.14 ID:bIwZOdeQO

兵士4「王女! ムチで私を!」

兵士5「私にはロウソクを!」

兵士6「どうか我々を、王女のオスブタとして調教してください!」

兵士たち「さあ、王女!!!」

ワイワイガヤガヤ…



伊織「こ、この変態ども〜〜っ!!」

伊織「ええい! こうなったらもう、ムチでもロウソクでもやってやるわよっっ!!」



兵士たち「ありがたき幸せッッ!!!」




669: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 23:25:48.35 ID:bIwZOdeQO
ーーーーーー

ーーー


伊織「………………はぁ」ゲッソリ


響「お疲れ伊織ー。災難だったなー」

伊織「災難なんてもんじゃないわよもう! なんでこの国は変態ばっかなのよっ!」

響「でも、ちゃんとみんなに許してもらえたんだから、良かったさー!」

伊織「まあ、そうなんだけど……なんか納得いかないわ」

家老「皆、お嬢を慕っておる、ということですじゃ」

伊織「それはいいけど、もっと違う慕い方があるでしょうに……」

家老「まあ、それはともかく」

家老「行きなさるのか?」

伊織「……ええ」

家老「そうか」

伊織「止めないの?」

家老「ワシが止めたところで、お嬢は行くのをやめるのか?」

伊織「そりゃまあ、ダメって言われても行くつもりだけど」

家老「ならば行かれよ。ワシらの事は気になさるな」

家老「お嬢とワシらには、海より深い絆があるでな」チラ



兵士1「も、もっと……踏んで……」ピクピク

兵士2「ああ、王女の靴、美味しいですぅ……」グッタリ

兵士3「ごめんなさい……ウジ虫以下でごめんなさい……」ボロッ



伊織「こんな絆、すっごく嫌なんだけど……」


670: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 23:32:26.98 ID:bIwZOdeQO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー


響「そっかぁ。じいちゃんたち、ここに残るって事は、自分たちのライブ見てもらえないんだなー」

家老「申し訳ない。ワシはこの国に骨を埋めると決めておるのでな」

伊織「問題ないわ。どんなに遠く離れてたって、きっと私たちの声をこのエブラーナまで届けて見せるもの!」

響「伊織……」

響「うん、そうだな!」



伊織「それじゃあね。私がいなくても、国のためにしっかり働くのよ?」


兵士1「はい! 任せてください!」

兵士2「必ずみんなでエブラーナを復興してみせます!」

兵士3「王女も、どうかご無事で!」

家老「ワシらはこの地で、お嬢の旅の目的達成を祈っておりますぞ!」


伊織「にひひっ♪ まっかせなさい♪ 」




伊織「………」

家老「……お嬢? どうされたのじゃ?」

伊織「………」

伊織「……あのね」

伊織「私……もしかしたらもう、ここへは戻って……」


671: ◆bjtPFp8neU 2015/12/04(金) 23:36:25.69 ID:bIwZOdeQO

家老「……行きなされ」

家老「弱気な言葉など、お嬢に似合いませんですじゃ」

伊織「ジイ……」


家老「優秀な忍者とは、クールに、そしてスタイリッシュに任務を遂行するものですぞ?」ニコッ


伊織「っ……!」ウルッ



家老「イオリ王女、ばんざーい!」

兵士たち「ばんざーい!!!」



伊織(みんな……っ!)



伊織「……行って、響」

響「もう、いいのか?」

伊織「ええ。……問題ないわ」グッ

響「……わかった」

響「よーし! 行くぞ、ファル子!」


ブワッ…



伊織(ーーこの国は、魔物に城を滅ぼされ、王や王妃、たくさんの民たちが命を落とした)



伊織「ジイ……お父様、お母様……みんな……」



伊織(でも、きっともう大丈夫)



伊織「…………行ってきます!」



伊織(だってここは、私の国だもの。当たり前よねっ! )






















兵士1「王女ーー! またいつか蹴ってくださいねーーー!!」



伊織「二度とするかバカーーーーっ!!」


675: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 22:42:59.20 ID:IP4Jgx/tO
ー 月の地下中心核 ー


魔物たち「ぜぇ、ぜぇ……」


ダークバハムート「……どうした。うぬらの実力はその程度か?」

魔物たち「………」

ダークバハムート「この程度で音を上げるとは、コトリの親衛隊が聞いて呆れるな」

ダークバハムート「これならば、まだ我の眷族の方が気勢があるぞ?」

リルマーダー「ま、まだだ! まだ終わってないんだからな!」

レッドドラゴン「……くそったれ! 根性見せてやらぁ!」

魔人兵「……せっかく採用もらったんだ。オレだって諦めたくない!」

ダークバハムート「クク……。そう来なくてはな」ニヤリ

ダークバハムート「さあ、もう一度だ! ゆくぞ!」




ダークバハムート「……ら〜ら〜ら〜♪ 」



魔物たち「ら〜ら〜ら〜♪ 」



ダークバハムート「うつけ者が! 半音ずれておるわ!」

ドガァ!


魔物たち「ぐはぁっ!!」


ドサッ


676: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 22:46:28.14 ID:IP4Jgx/tO

ダークバハムート「コトリから許可は貰ってある。少々厳しく教えても構わぬとな」

ダークバハムート「この機会に、うぬらの音感を我のれっすんにて徹底的に鍛え上げてくれるぞ!」



月の女神「うわぁ、あの先生超恐ーい」

クルーヤ「あーあ……。バハムートのやつ、スパルタだなぁ」

月の女神「ねえおじさん。おじさんは歌の先生やらないの?」

クルーヤ「おじ……」

クルーヤ「お兄さんはね、身体を動かす方が得意なんだよ」

月の女神「ふーん……」

ベヒーモス「だからあんたがダンスの先生って事なのかい?」

クルーヤ「そうそう。人には誰でも得意不得意があるものだから」

プリンプリンセス「うふふっ♪ わたくしは歌もダンスも両方得意ですわよ!」



暗黒魔道士「………」シュン

ブルードラゴン「ダンスも歌も出来なくて落ち込んでおるのか?」

暗黒魔道士「………」コクリ

ブルードラゴン「なに、今は出来ずとも、いずれものにできる。お主のように真面目な者ならば、な」

暗黒魔道士「……!」パァァ

ブルードラゴン(……そう。時間をかけさえすれば、手に入れられる)

ブルードラゴン(ワシは、何かを欲しがるには遅すぎたのじゃ)


金竜「ふふふ……! だんすとやらは出来ぬが、歌ならば自信があるぞ!」

金竜「ら〜らら〜♪ 」

銀竜「おお、流石は兄者! 月に金竜あり、と言われただけはある!」

金竜「さあ、我の歌声を聴けいっ!」



ダークバハムート「……ふむ。それでは、今宵のれっすんはここまでにしておくか」



金竜「あっ…………」

銀竜「兄者ぁ……」


677: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 22:53:35.37 ID:IP4Jgx/tO
ーーーーーー

ーーー


ダークバハムート「コトリよ。いつまでこの様な事を続けるつもりだ?」

小鳥「それは……みんながこの月へ来るまでですよ」

ダークバハムート「そうか」

小鳥「……あの、もしかしてバハムートさん、レッスンなんて無駄なんじゃないかって思ってません?」

ダークバハムート「そうは言っておらぬ。我もそなたのあいどるになると言った身だ。約束は果たそう」

ダークバハムート「しかし、あいどるというものが何なのか分からぬ事には、目指すものも目指せぬのではないかと思ってな」

小鳥「うーん……」



小鳥「実は私、アイドルって一言では言い尽くせないと思ってます」

ダークバハムート「……何?」

小鳥「人それぞれ形が違うっていうか、捉え方の問題っていうか……」

小鳥「……でも、そうですね」

小鳥「私にとってのアイドルは、『憧れ』ですかね」

ダークバハムート「憧れ……」

小鳥「キラキラ輝くステージで、歌って、踊って、たくさんの人から声援をもらって……」

小鳥「私、そういう人になりたいなって憧れてた事があったんです」

ダークバハムート「……? 何故、過去形なのだ?」

小鳥「あっ……い、いえ、今のは別に深い意味は……」

小鳥「……って言っても、バハムートさんには心を読まれちゃうんですよね」

ダークバハムート「我とて、そこまで無粋な事はせぬ。胸に秘めておきたいというならば、無理に暴こうなどとは考えぬよ」

小鳥「うふふっ♪ ありがとうございます」


679: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 22:56:58.00 ID:IP4Jgx/tO

小鳥(……でも、冷静に考えてみると、バハムートさんの言葉ももっともよね)

小鳥(私、ラスボスなのに、こんなに遊んでていいのかな)

小鳥(こんなにふざけた私に、バハムートさんやクルーヤさん、親衛隊のみんなが命を預けてくれてるっていうのに……)

小鳥(蛇君たちの事もそうだし……)

小鳥(みんな、後悔してないのかな。私なんかについてきたりして……)

小鳥(もしかしたら、私は……)


クルーヤ「……どうしたんですか、コトリさん? またお得意の妄想ですか?」ヒョコッ

小鳥「……へっ? あ、ええと、その……」

クルーヤ「ひょっとして今、『私はみんなに迷惑かけてるんじゃ……』なーんて考えてませんでした?」

小鳥「………」

クルーヤ「……ボクはね、コトリさんみたいな明るい悪の化身がいてもいいんじゃないかって思うんです」

小鳥「えっ……?」

クルーヤ「そりゃまあ、悪っていったらもっとこう、性格が悪かったり、おぞましい姿だったりするのが普通なんでしょうけど」

クルーヤ「あ、そうそう、こういうやつとか」グイッ

ダークバハムート「む、なんだ?」

小鳥「……確かに、バハムートさんはそれっぽさ満載ですねぇ」

クルーヤ「でしょう?」


680: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:01:01.10 ID:IP4Jgx/tO

ダークバハムート「莫迦な。我らを纏めるのはコトリだ。我はコトリに従うまでだ」

クルーヤ「うん、そうだ。コトリさんがボクらの大将なんだ。それは誰にも代わりはできない」

小鳥「………」

クルーヤ「でもね? ボクは良かったです。コトリさんがコトリさんで」

小鳥「?」

クルーヤ「とっても面白くて、美人で、気がきいて、優しくて……」

クルーヤ「妄想癖とか、変わった事を考えるところとか、全部含めて、ボクはコトリさん側に来て良かったなぁって思います」ニコッ

小鳥「クルーヤさん……」

ダークバハムート「まあ……そうだな。もう少し威厳を持ってもらいたいという想いはあるが、我もそなたを特に不服に感じた事は無いぞ?」

小鳥「バハムートさん……」

クルーヤ「だから、いいじゃないですか。今まで通り楽しくいきましょうよ。ねっ?」

小鳥「わ、私……私っ……!」ウルッ

クルーヤ「ほらほら、泣かないで」



小鳥「美人で可愛くて女子力高くて結婚したい女性No.1だなんてそんな!」クワッ



クルーヤ「いや、そこまでは言ってないかなぁ……」

ダークバハムート「これが人間の女の性か……」

小鳥「お2人とも、ありがとうございます! なんか、元気出てきました!」

クルーヤ「お、じゃあ、今日は久々に呑みますか?」

小鳥「わぁい! 喜んで♪ 」

ダークバハムート「つい一昨日も呑んだばかりだと思うがな」


小鳥「さぁ、呑むぞーー!!」


681: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:05:35.56 ID:IP4Jgx/tO
ー トロイア城 客室2 ー


P「はあああ……!」

…ポワ

P「……おお、光が出た!」

P「こないだ見たのと同じ光だな!」



P「…………ふぅ」

P(やっぱり、あの時真美の傷を治したのは俺の力だったんだ)

P(よし、これなら俺もみんなの役に立てるぞ!)


P「…………っと」フラッ

P「あれ……少し眩暈がする。もしかして、力を使ったせいなのかな……」


『ーーそうじゃ。それは、たゆたうそなたの生命力を放出しているのじゃ』


P「えっ? だ、誰だ!? どこにいるんだ!?」キョロキョロ


『ワシじゃよ。妖精じゃ』


P「妖精? えーっと……どちらの妖精さん?」


『む……すっかり忘れ去られてしまったのう。ワシは、ゲームの妖精じゃ。そなたの持って来たゲームのな』


P「ゲームの……?」

P「……………………ああ! スーファミの!」


『本当に忘れてたんじゃな、まったく。出番がほとんどないから仕方ないとはいえ、ワシだって拗ねるぞい』


P「いや、悪かったよ。あと、あんたが拗ねても誰も得しないからやめてくれ」


『酷い扱いじゃのう』


P「そりゃそうだろ。いきなり出てきて、ゲームの世界へ行ってもらう、なんて言われて……」

P「ここまで大変だったんだぞ、俺たち」


682: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:13:22.88 ID:GXldtRWzO

『じゃが、充実した時間を過ごせているのではないか? 現実の世界では、なかなか皆が集まる機会はない様だったではないか』


P「それは……」


『あの娘たちにも、良い経験になっていると思うんじゃが』


P「……うん。そういえば、あんたは最初にそう言ってたよな」

P「確かにあんたの言う通りだったかもしれない。色々あったけど、みんな、なんだかんだで上手くやってるし」

P「あの子たちの楽しそうな顔も見られたしな」

P「まあ、そこは感謝するよ」


『うむ。我が主のお役に立てて光栄じゃ』


P「あのさ、確認なんだけど……。本当に現実世界に戻っても、この世界の出来事は何も影響しないんだよな?」


『最初に言った通りじゃ。この世界で起きたどんな出来事も、現実世界にはまったく影響しない』


『…………そなた以外は、な』


P「……えっ? どういう事だ?」


『忘れておるかもしれんが、そなたはこのゲームの世界では異質な存在なんじゃ』


P「ああ、それは覚えてるよ。俺だけ演じる役がなかったんだよな、確か」


『そうじゃ。それによって、そなたにだけ不都合が生じる事になる。今回ワシは、忠告に来たんじゃ』


P「忠告……?」


683: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:17:59.01 ID:GXldtRWzO

『演じる役がないそなたは、あの娘たちとは違い、このゲームの世界でも現実世界の身体のままじゃ』


P「? ……それだと、どんな不都合があるんだ?」


『わかりやすく説明しよう』


『まずワシは、あの娘たちに対しては、意識のみをこのゲーム世界に飛ばし、本来のこの世界の登場人物と融合させる形にした』

『あの娘たちにしてみれば、夢を見ているのと同じような状態じゃな』

『だから、この世界で何があろうとも、現実世界のあの娘たちの肉体や精神にはなんら影響はない』


P「なるほどな。そういう仕組みなのか」

P「……あれ? じゃあ、俺は?」


『さっきも言ったが、そなたは生身の肉体そのままがこの世界へ来ておる。……正確には、あのカエルのポシェットと融合している状態なんじゃが』

『この世界で過ごしてみてわかったじゃろうが、そなたは基本的にゲーム世界からのどんな干渉も受け付けない。あの娘たちからは別じゃがの』

『しかし、そなたがトードの魔法でカエルのポシェットから人間の姿になった事により、そなたが干渉を受ける可能性が出てきた。月の民が良い例じゃな』

『ゲームの世界というものは、現実世界と比べて非常に希薄で脆弱な世界なんじゃ』

『生身の人間であるそなたは、この世界の人間に比べると、何百倍もの生命力に溢れておる』


P「……そういえば、試練の山でクルーヤがそんな事言ってたような……」


『そして、そなたの生命力は、この世界では常に飽和状態にある。膨大過ぎて、溢れておるんじゃ』

『そなたが少し意識する事で、生命力を任意であの娘たちに分け与える事もできる』


P「それが、さっきの力なのか」


『うむ。じゃが、そなたは生身の人間である事を忘れてはならぬ。他人にエネルギーを分け与えれば、その分そなた自身の生命力が減る事になるのだから』


P「えっ? じゃ、じゃあ、もし俺が生命力を使いきったりしたら……」


『……もう一度言うが、そなただけはこの世界での出来事がそのまま現実世界へと引き継がれる。あの娘たちと違ってな』

『この世界でそなたが力尽きるような事があれば……』


P「………」


『まあ、そう悲観するでない。少なくとも、この世界の人間や魔物にそなたが殺される事はまずないからの』

『そもそも、この世界でそなたを認識できる者、そなたに対して影響力を持つ者など、ごくわずかしかおらんし、そなたが生命エネルギーを分け与える事ができるのも、この世界では特殊な存在であるあの娘たちに対してだけじゃ』


684: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:23:40.49 ID:GXldtRWzO

P「えーっと……要は、俺が力を使いすぎて自滅しなければ死ぬ事はない、って事でいいのか?」


『まあ、ざっくり言うとそんなところじゃの』


P「でも、なんで今さら……。そんな重要な事なら、最初に言ってくれたっていいじゃないか」


『そなたがずっとポシェットの姿のままでいれば、他人に生命エネルギーを分け与える事などできるようにはならなかったんじゃ。ポシェットには生命力など無いからの』

『ワシもこの可能性は考えんかった。……すまん』


P「………」


『案ずるな、我が主よ。そう簡単にそなたの生命エネルギーは尽きることはないのじゃ。なぜなら、先ほども言ったが、現実世界の存在であるそなたは、このゲームの世界では桁はずれの生命力なのじゃから』


P「ああ……」


『ゲームも残すところあと少しのようじゃな。あの娘たちが心配なのはわかるが、あまり無理はせんようにな』

『では、さらばじゃ。ワシはエンディングで、無事なそなたたちに再び会える事を願っておるぞ……』


P「あ、おい! 待ってくれ! あんたに聞きたい事はまだあるんだ」

P「………………」

P「……声がしなくなったか」



P「………」

P(なんか、妙な感じになったな。俺だけは生身の身体、か)

P(でも、力を使い過ぎなければいいんだよな)

P(あの子たちもかなり頼もしくなってきたし、俺の出番なんか、もうそんなに無いだろうな、きっと」


春香「……誰の出番が無いんですか?」


P「うわっ!?」ビクッ


685: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:27:29.04 ID:GXldtRWzO

P「は、春香か。おどかすなよ……」

春香「ご、ごめんなさい。でも私、さっきからずっと呼んでたんですよ?」

春香「プロデューサーさん、私に気づかないでずーっと独り言言ってるし……」

P「いや、独り言じゃなかったんだけどな」

春香「えっ? じゃあ、誰とお話してたんですか? 私には誰かがいるようには見えませんでしたけど……」

P(……どうしようか。内容は言えないけど、誰と話してたかくらいなら言っても平気だよな)

P「……妖精だよ。俺たちをこのゲームの世界へ飛ばした張本人のな」

春香「妖精……さん、ですか?」

P「ほら、俺たちがこの世界へ来る前に、変な爺さんがいたろ?」

春香「おじいさん……?」

春香「…………あー! そういえばいましたねー、そんな人」

P「まあ、春香が忘れてるのも、無理ないよな。俺だってすっかり忘れてたんだから」

春香「それで、何を話してたんですか?」

P「ん……大した事じゃないよ」

P「それより、俺に何か用があるんじゃないのか?」

春香「あ、はい」


686: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:31:21.70 ID:GXldtRWzO

春香「ええと……」モジモジ

P「……どうした?」

春香「………」

春香「プロデューサーさんと、ちょっとだけお話したいなぁ、って思いまして……」

春香「その、ダメですか?」チラ

P「いや、全然構わないけど」

春香「ホントですか!? やったぁ!」パァァ

P「なんだ、大げさだな。言ってくれればいつでも話し相手になったのに」

春香「でも、最近のプロデューサーさん、いろいろ忙しかったみたいじゃないですか? ほら、長老さんのところへ行ったりとかで」

P「……ああ、言われてみればそうかもしれない」

春香「それに……」

春香(2人っきりでお話する事に意味があるんですよ!)

春香(……って、これはさすがに恥ずかしいから言えないよ)

P「……春香?」

春香「あっ……な、なんでもないです!」



春香「久しぶり、ですよね」

P「え?」

春香「こうしてプロデューサーさんと2人きりでお話するの、いつ以来でしょうね」

P「ああ……そういう久しぶりか」

P「そうだなぁ。前に春香と2人きりで話をしたのは確か……バロンの宿屋だったっけか」

春香「わぁ、覚えててくれたんですね! そうです!」

春香「確かあの時はプロデューサーさんに、『春香は政治家や思想家が向いてるのかもなー』なーんて言われたんですよね、私!」


687: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:36:48.84 ID:GXldtRWzO

P「はは、そうそう! ……懐かしいな。あれからもう結構経つんだなぁ……」

春香「はい。あれから何日も経ちました。いろんな事があって、どうにかみんな集まりました」

P「そうだな。……春香のおかげだよ」

春香「私だけじゃないですよ? みんなすっごく頑張ってましたもん!」ニコッ

春香「私たちは、苦しい事もありましたけど、お互いがお互いを信じてた。だから、こうしてまたみんなで集まれたんだと思います」

P「うん。みんなが頑張ってくれたからだな」

P(でも……)

P「春香。俺はさ、やっぱり春香が主人公をちゃんとやってくれたから、ここまで来れたんだと思うんだ」

春香「プロデューサーさん……」

P「ありがとな、春香」ナデナデ

春香「あっ……」

春香「……えへへっ……///」モジモジ

春香(プロデューサーさんに頭撫でてもらうの、本当に久しぶりだぁ……)



P「ところで、明日の結婚式で何を歌うか、もう決めたのか?」

春香「はい! やっぱり、この世界の人たちに感謝を伝えるには、『あの歌』しかないかなって」

P「そっか。まあ、俺も『あの歌』がベストだと思ってたけど」

P「練習時間は少ないけど、大丈夫そうか?」

春香「大丈夫ですよ! 若干ブランクはありますけど、私たち、プロですから!」

春香「今も、みんなで練習してるところなんです」

P「そっか。じゃあ俺も後で見に行くよ」

春香「そうですね。みんな喜ぶと思います!」


688: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:42:15.13 ID:GXldtRWzO

春香「……でも、なんだか嬉しいですね」

P「何が嬉しいんだ?」

春香「この世界に来る前の私たちって、結構みんな忙しかったから、みんなで集まったりとかはなかなかできなかったけど、今はこうやってみんな揃って練習できたりして……」

春香「まるで、昔の私たちに戻ったみたいで、私……」ウルッ

春香「あっ……」

春香「……ご、ごめんなさい! 私、もう行きますね?」

P「……うん。また後でな」



春香「……プロデューサーさん!」

春香「こうしてみんなで集まる機会を与えてくれて、ありがとうございます!」ニコッ



…バタン



P「………」

P(本当に嬉しいんだな、春香)

P(みんなも、喜んでくれているのかな。もしそうだとしたら、この世界で過ごした事も、みんなの大切な思い出になるよな……)



P(……待っててくださいね、音無さん。もうすぐ、あなたも迎えに行きますから)


689: ◆bjtPFp8neU 2015/12/17(木) 23:56:25.29 ID:GXldtRWzO
続きは明日の夜投下します。
そして明日の投下後に次スレへ移行します。
FINALとはなんだったのか。

692: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 21:28:39.48 ID:3oh66YOuO
ーー翌日、トロイア城 新郎控え室


店主「……えーと」ポリポリ

店主「ど、どうかな? オレ、今まで生きてきて、こんな洒落たカッコなんてした事なくてよ……」


響「おー、タキシードかぁ! なかなか似合ってると思うぞ!」

亜美「うんうん! マゾにもヒストってカンジだね!」

真美「ちがうよ亜美ー。それを言うならマゾにもイショウっしょ!」

店主「ははは……どっちも違うしそもそもそれ、褒め言葉じゃないけど、ありがとな」



店主「はぁ……」ソワソワ

響「店主、ひょっとして緊張してるの?」

店主「まあな。なんたって、ついに今日は人生の一大イベントの日だからなぁ」

伊織「もう、しっかりしなさいよね。今日はあんたたち2人が主役なのよ?」

店主「あ、ああ、わかってはいるんだけどな……」

響「緊張し過ぎて、式の途中で失敗しないようにな!」

店主「ぷ、プレッシャーかけるなよ、ヒビキ……」

あずさ「それにしても、羨ましいわ〜。ちゃ〜んと運命の人、見つけたんですねぇ」

店主「運命の人かぁ。そういう事はあんまり考えた事はなかったけど……」

あずさ「これから、ものまね士さんの事、しっかり守ってあげてくださいね?」

店主「……うん。わかってる」


693: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 21:31:34.95 ID:3oh66YOuO

真美「………」

真美(ケッコン、かぁ……)

真美(もし真美と兄ちゃんがケッコンしたらどーなるのかな……)

真美(ん〜……まだ先のことだからわかんないけど……)

真美(……でも、きっと楽しいよね)


亜美「……ねえ真美。真美ってば!」

真美「ふぇっ!?」ビクッ

亜美「もー、何ボーっとしてんのさ?」

真美「あ、あれ? 真美、ボーッとしてた?」

亜美「うん、かなり」

亜美「どーせ、兄ちゃんとケッコンしたらーとか、考えてたんでしょ?」

真美「そそそ、そんなコト考えるわけないじゃん!」カァァ

亜美「え? そーなの?」

亜美「んじゃ、兄ちゃんは亜美がもらっちゃおっかな〜♪ 兄ちゃんとケッコンしたら、楽しそーだし!」

真美「そ、そんなのダメっしょー! 真美が兄ちゃんとケッコンするんだから〜!」

亜美「ダメ〜! 兄ちゃんは亜美のだかんね!」

真美「ぐぬぬ……!」

亜美「ぐぬぬ……!」

あずさ「2人とも、ケンカはダメよ〜?」



…ガチャ



トロア「……失礼致します。新郎殿の準備は整いましたか?」



あずさ「は〜い。バッチリですよ〜♪ 」

トロア「では、新郎殿は先に礼拝堂の方へお願い致します」

店主「うぅ……ヤバい、心臓がヤバい……」ドキドキ

伊織「もう逃げられないわよ。さ、行った行った♪ 」グイッ

店主「わわっ、お、押すなよ!」ヨロッ

響「店主〜! ちばりよー!」

あずさ「行ってらっしゃ〜い♪ 」


694: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 21:35:10.79 ID:3oh66YOuO
ー トロイア城 新婦控え室 ー


ものまね士「………」ドキドキ



雪歩「ええっと、ここをこうして……」ゴソゴソ

雪歩「あ、春香ちゃんと真ちゃん、ちょっとそっちを持っててもらえるかな?」

真「うん、わかった!」

春香「は〜い!」

雪歩「ここで結んで……っと」ゴソゴソ

雪歩「……はい、ドレスの着付け、なんとか完了しましたぁ」

雪歩「美希ちゃん、そっちはどうかな?」チラ


美希「〜〜♪ 」ゴソゴソ

美希「……うん!」

美希「ヘアメイクもバッチリなの☆」ブイッ


雪歩「あの、ものまね士さん、もう目を開けてもいいですよ?」

ものまね士「は、はい……」ソ〜ッ



ものまね士「……!」キラキラーン


ものまね士「こ、これが……私……?」ボーッ



真「すっごくキレイですよ、ものまね士さん!」

春香「うんうん! どこかのお姫様みたいですっ!」

ものまね士「そ、そう……ですか……? な、なんか、照れちゃいますね……///」モジモジ

真「くぅ〜、いいなぁ〜。ボクもウェディングドレス、着てみたいなぁ〜」

美希「ねえ、ファンの人。もっと自信持っていいって思うな。今日はあなたが主役なんだよ?」

ものまね士「う、うん。わかってるけど……」

ものまね士「なんだか、本当に全部夢みたいで……」

雪歩「夢なんかじゃないですよ。今日、ものまね士さんと店主さんは、神様に認められて夫婦になるんですから」ニコッ

ものまね士「夫婦……」

ものまね士「ううっ……!」ウルッ

真「ああ、泣いちゃダメですよぉ」

春香「ほらほら、せっかくのメイクが落ちちゃいますよ?」フキフキ

ものまね士「うぅっ……すみません……」


695: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 21:40:53.85 ID:3oh66YOuO

春香「……ところでものまね士さん。バージンロードの付き添いは誰にするんですか? 普通、新婦のお父さんとかですよね? 確か」

ものまね士「はい。でも、私は天涯孤独の身ですから」

春香「あっ……ご、ごめんなさい。私ってば、余計な事聞いちゃって……」

ものまね士「いえ、気にしないでください」

真「でも、それじゃあ誰が付き添えばいいのかな?」

雪歩「うーんと、ものまね士さんと縁の深い人、とかかなぁ」

ものまね士「一応それは考えてあります」

春香「そうなんですか?」

ものまね士「はい。ミキさんにお願いしようかなと……」

ものまね士「あの、ミキさん。引き受けてもらえる?」

美希「え? ……ミキで、いいの?」

ものまね士「ええ。いろいろ考えたけど……私がここまで来れたのは、一番最初にあなたに出会ったからだって思うから」

ものまね士「皆さんは私にとって特別な人たちだけど、その中でもミキさんは、さらに特別な人なの……///」

美希「そっか……。うん、わかったの! ミキに任せて☆」ニコッ

真「ものまね士さんより目立っちゃダメだよ、美希?」

美希「む〜、ミキだってそのくらいわきまえてるの!」プンスカ



…コンコン



真「……あ、どうぞ!」


…ガチャ


ドゥ「新婦の準備はできたかい?」


ものまね士「あ、は、はいっ!」ガタッ

ドゥ「ほう……見違えるほどキレイになったね。これは君たちが?」

雪歩「は、はい、一応……」

美希「あは☆ミキたち、伊達にアイドルやってないの!」

ドゥ「ふふ、そうか」

ドゥ「さあ、新郎が礼拝堂で待っている。行こう」

ものまね士「わわわ、わかりましたっ!」



春香「……ものまね士さん!」

春香「絶対、幸せになってくださいね!」

ものまね士「ハルカ様……」

真「ちゃ〜んと、店主さんに守ってもらうんですよ?」

ものまね士「マコトさん……」

雪歩「あの、お幸せに!」

ものまね士「ユキホ様……」

ものまね士「ありがとうございます、皆さん!」ニコッ

美希「じゃ、行こっか?」スッ

ものまね士「うん。よろしくね、ミキさん!」ギュッ

スタスタ…

696: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 21:44:17.05 ID:3oh66YOuO
ー トロイア城 礼拝堂 ー


ザワザワ…

「つい最近、巨人が攻めてきたりして大変だったけど、こんなタイミングで結婚する人がいるなんてな……」

「いやぁ、今日はめでたい!」

「花嫁はどんな人かなぁ……」

「ウワサによると、素手で薪を割るような人らしいぞ?」

「ええっ!? そんな人と結婚するなんて、あの人勇気あるなぁ」




店主「………」ソワソワ

長老「……おい、ちょっとは落ち着かんか」

店主「わ、悪い」

長老「心配せんでもワシがちゃんとフォローしてやるからの」

店主「うん、助かるよ」

店主「しかし、爺さんが神父役で良かったよ。知らない奴だったらオレ、もっと緊張してたかも」

長老「ま、乗りかかった船じゃからな」




P「春香たち、ちゃんと花嫁の補助はできてるかな」

律子「大丈夫ですよ、あの子たちなら」

貴音「しかし、遅いですね。花嫁の準備はまだ完了しないのでしょうか?」

千早「よくわかりませんけど、新郎はともかく、新婦の準備はいろいろ大変なんじゃないでしょうか?」

やよい「そうですよねー。わたしもお手伝いに行けばよかったかも」

P「まあ、みんなで押しかけたら、それはそれで迷惑かもしれないしな」



アン「……ご来場の皆さま、静粛にお願い致します。新婦の準備が整ったようですわ」



…シーーーン



697: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 21:49:14.90 ID:3oh66YOuO

アン「……それでは、新婦の入場です」



…ガチャ



ものまね士「……うぅ、緊張するぅ……」ドキドキ

美希「そういう時は、あんまり余計な事を考えない方がいいの。リラックスして行こ?」

ものまね士「う、うん……」

スタスタ…



店主「!!」

長老「ふむ……」



P「へぇ……」

やよい「わぁ、ものまね士さん、とってもキレイですー!」

貴音「ええ。まるで純白の天使が舞い降りたかのようですね」

律子「よしよし。なかなか上手く出来てるわね」

千早(花嫁のエスコートは美希なのね。……やっぱり、ものまね士さんと一番仲が良いからかしら)



ユキコ「わぁ、ステキですぅ……!」

ルカ「きれい……!」

シルフ「まあまあですね〜」

ミニ助「うん。今日という日に相応しい艶やかさだな」

ピョン吉「人間って、夫婦になるのにこんな面倒な事するんだなぁ」

ブタ美「わ、私たちも参加して良かったんでしょうか……」

ジオット「うちのルカもいずれ、立派な婿を取らねばならんな」

少年「ねえ、ぼくがおとなになったら、おねえちゃんをおよめさんにしてもいい?」

ヒビキの娘「うーん、そうだね。君が大人になったら、ね?」

老婆「坊や、それはちょいと気が早いんじゃないか?」

ファブール王「ほっほっほ! こんなところでも未来の夫婦が生まれたのぅ」




ものまね士「うぅ〜……みんなに見られてるぅ〜……///」

美希「それはそうだよ。だってファンの人、すっごくキレイだもん!」

ものまね士「そ、そうかな……」

美希「うん! くやしいけど、今日のファンの人は、ミキよりキラキラしてるって思うな!」

ものまね士「ミキさんより……」

ものまね士「えへへ、そっかぁ……」

スタスタ…


698: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 21:53:35.99 ID:3oh66YOuO

店主「よ、よう……」ドキドキ

ものまね士「あ、は、はい……。お、お久しぶり……です……」ドキドキ

美希「無事にとーちゃくだね!」

美希「それじゃあ店長さん。あとはよろしくお願いしますなの」ペコリ

店主「う、うん……」

ものまね士「ミキさん、どうもありがとう」



店主(あ、あれ? おかしいな……。ものまね士ってこんなに可愛いかったっけ……?)

ものまね士(ど、どうしよう……。店主さんがカッコ良すぎてまともに見れない……)


長老「これ、2人とも」

店主「お、おう!」ビクッ

ものまね士「は、はいっ!」ビクッ

長老「そろそろ式をはじめるぞ。心の準備は良いか?」

店主「あ、ああ! よろしく頼むぜ、爺さん」

ものまね士「よ、よろしくお願いします!」




春香「うわぁ……2人とも、ガチガチに緊張してるみたいだねぇ」

響「ホントだ。2人ともロボットみたいな動きになってるぞ」

P「お、春香に響。みんなも、間に合ったのか」

あずさ「はい、なんとか間に合いました〜」

美希「ハニーの隣は、ミキの指定席なの!」

亜美「んじゃ、亜美は反対側のとなり!」

真美「あっ、亜美ズルい!」

伊織「ま、このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんが祝ってあげた方が、あの2人も嬉しいでしょうしねっ」

真「そんな事言って伊織、さっきは式に間に合うかどうか焦ってたクセに」

伊織「う、うるさいわねぇ!」

雪歩「ふ、2人とも、結婚式の最中にケンカはダメだよぅ……」オロオロ

伊織・真「雪歩は黙ってて!!」


長老「……そこの2人、静かにしてくれんかのぅ」


伊織・真「……ご、ごめんなさい」



699: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 21:55:54.17 ID:3oh66YOuO

長老「……コホン。ではこれより、2人が夫婦になるための神聖な儀式を行う」

長老「……とは言っても、難しいことはない。ワシが口上を読み上げるから、そなたらはそれに答えればいいだけじゃ」

店主「わ、わかった」

ものまね士「わ、わかりましたっ」

長老「えー、ではいくぞ」



長老「……新郎、店主よ。そなたは今日この日よりものまね士を妻とし、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しい時も、此れを助け、敬い、尊重し、生涯変わらぬ愛を捧げる事を誓うか?」

店主「あ……ち、ち、ちか……っ」




響(店主、めっちゃどもってるぞ……)

伊織(ったく、だらしないわねぇあいつ)

あずさ(店主さん、頑張って……)

律子(もう、いいとこなのに……!)

亜美(ねえ、ケッコン式ってやっぱキンチョーするもんなのかな)

真美(ん〜……わかんないや)

千早(………)




店主「ちか、ちがっ……」

ものまね士「………」ドキドキ

店主「ああもうっ!」パシンッ

ものまね士「て、店主さん!?」

店主「誓いますっ……!」

長老「……うむ」


700: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 21:59:43.18 ID:3oh66YOuO

長老「……では、新婦、ものまね士よ。そなたは、今日この日より店主を夫とし、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しい時も、此れを助け、敬い、尊重し、生涯変わらぬ愛を捧げる事を誓うか?」

ものまね士「………」



真(……あれ? ものまね士さん、どうしたんだろう?)

雪歩(まさか、ここにきて迷ってるんじゃ……)

貴音(神の御前での誓いの言葉……。やはり、普段の愛の囁きとは、その重みが違うのでしょう)

春香(ものまね士さん……)

美希(心配いらないって思うな)

やよい(………)ドキドキ



ものまね士「………」




『ん……? あんただれだ? お客さんなら、ちょっと下に……』



『オレの秘蔵の……バッカスの酒が、無い! 楽しみにしてたのに……』



『誰が王子様だって?』



『……薪割り役がさ、欲しいと思ってたんだ』



『オレさ、ガキの頃から、飛空艇を操縦するのが夢でさ……って、こんな話、どうでもいいよな』



『おーい、ものまね士ー!片付け手伝ってくれよー!』



『オレ達は、もう少しお互いの事を知ってもいいのかもしれない』



『 ま、飛空艇に乗る機会なんて一生に一度あるかないかだもんな!』



『それに、困った時はお互い様だろ?』



『死んじまったみんなの為にも、オレは村の代表として、その会議ってやつに出なきゃいけない気がするんだ』



『……そんなヤツが女房になってくれたら、人生楽しいだろうなー』





ものまね士「………」グッ

ものまね士「はい…………誓います」




701: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:04:03.59 ID:3oh66YOuO

「おお……!」

「言った……!」

「新たな夫婦の……!」

「誕生だ……!」

ザワザワ…




長老「皆の者、まだ式は終わっとらんぞ。静かに」

長老「……では、指輪の交換を」

店主「よ、よしっ……」スッ

店主「ほら、ものまね士、手を」ドキドキ

ものまね士「は、はいっ」ドキドキ

…スルッ

ものまね士「は……入った!!」

ものまね士「よ、良かったぁぁぁ〜〜……」ヘナヘナ

店主「お、おいっ!」ガシッ

ものまね士「す、すみません……」

店主「指輪のサイズは直前に確認したろ? なんで不安がる必要があるんだよ」

ものまね士「ほら、私って素手で薪割りとかしちゃうじゃないですか? だから、こんな太い指に本当に指輪が入るか、不安で不安で……」

店主「そうだったのか……」

ものまね士「ううっ……ぐすっ……!」

ものまね士「ホントに、良かったです……!」ウルッ

店主「わ、わかったから、泣くなよ」

長老「まだ泣くには早いぞ。次は新婦が新郎の指にはめるんじゃ」

ものまね士「あっ……は、はい」ゴシゴシ



春香(ふふっ♪ やっぱり仲がいいね、あの2人)

美希(うん! とってもお似合いなの!)

春香(良かったですね、ものまね士さん!)


702: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:09:34.57 ID:3oh66YOuO

長老「無事、指輪の交換も終わったな」

長老「では最後に、神の見ているこの場で、誓いの口づけを交わすのじゃ」

店主・ものまね士「!!!」

長老「それを以って、2人は晴れて夫婦と認められる」

店主「お、おう……」

ものまね士「うぅ……///」




亜美(ついに……!)

真美(この時が来たッ!)

春香(キスですよ、キス!)

響(ほ、ホントに……しちゃうのか……?)

真(うわ〜! ボク、恥ずかしくて見てられないかも……///)

雪歩(こ、これは、絶対に見逃せないですぅ……!)

律子(人前で、き、キス……とか、絶対私にはムリだわ)

貴音(……わたくし、胸の高鳴りが止まりません)ドキドキ

あずさ(うふふ♪ 将来のために、とっても勉強になるわ〜)

伊織(ふ、ふん。キスぐらいで騒ぐなんて、みんな子供よね)

美希(ミキも、いつかは……)

千早(………)ゴクリ

やよい(ちかいのくちづけ、ってなんだろう……?)



長老「どうしたのじゃ? さあ、誓いの口づけを」

店主「わ、わかった」

店主「い、いくぞ……?」ドキドキ

ものまね士「よ、よろしくお願いしますっ……!」ドキドキ


店主「………」

ものまね士「………」

店主「………」

ものまね士「………」

店主「………」

ものまね士「………」

店主「………」

ものまね士「…………あ、あの、店主さん?」チラ

店主「わ、悪い、少し待ってくれ……」

店主「すぅ……はぁ……」

店主「………………よしっ」グッ


703: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:17:20.08 ID:3oh66YOuO

店主「…………ものまね士」

ものまね士「は、はいっ」

店主「愛してる……」ボソッ

ものまね士「……えっ?」


…チュッ


ものまね士「っ……!!?」

店主「……ふぅ」





春香「…………ふ、不意打ち!?」ガタッ

美希「わ……て、店長さん、なかなかやるの!」ドキドキ

亜美「亜美、生チュー、はじめて見ちゃったよ……///」

真美「ま、真美も……///」

真「す、すごかったね……///」

雪歩「す、すごかったですぅ……///」

やよい「はわわっ、なんだかはずかしくなっちゃいます……///」

律子「な、なかなか勇気あるわね、店主さん……///」

伊織「ふ、ふん。ま、まあまあかしらね……///」

貴音「こ、これは……思っていたよりも衝撃的でした……///」

あずさ「とってもステキだったわ〜♪ 」

千早「……///」ドキドキ

響「うぎゃー! 自分、よそ見してて見れなかったぁーー!!」


704: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:19:09.90 ID:3oh66YOuO

長老「……うむ。しかと見届けた! きっと神も、2人を認めてくださったじゃろう!」

長老「これでそなたらは、名実ともに晴れて夫婦となったのじゃ。今日この場で誓い合った気持ちを忘れずに、末永く仲良く暮らすのじゃぞ?」

店主「……ああ!」

ものまね士「……///」ボーッ



アン「皆様。新たに誕生した夫婦に、盛大な祝福をお願い致します!」



「おめでとー!」

「おめでとうございます!」

「感動した!」

「幸せになー!」

ワァァァァ!!

パチパチパチパチパチパチ…




店主「ま、まあその、なんだ。これからもよろしくな!」

ものまね士「……///」ボーッ

店主「……あれ?」

ものまね士「……///」ボーッ

店主「おーい、ものまね士ー?」ペチペチ

ものまね士「……///」ボーッ

店主「……ダメだ。完全に意識が飛んでる」

ものまね士「えへへ〜……///」


706: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:24:37.73 ID:3oh66YOuO
ー トロイア城 大広間 ー


アン「さあ、ここからは新たな夫婦誕生のお祝いパーティです。皆様、本日は楽しんでくださいね!」



ワイワイガヤガヤ…



ルカ「本当に、おめでとうございます!」

ユキコ「ものまね士さん、とってもキレイですぅ」

ものまね士「えへへ、ありがとうございます!」

ヒビキの娘「幸せいっぱい、って感じですね」

ものまね士「それはもう♪ 」

ルカ「いいなぁ。私も早く結婚したいなぁ……」

ものまね士「あら、ルカさんほど可愛いかったら、引く手数多じゃないですか?」

ルカ「それが、そうもいかないんですよぉ〜」

ルカ「私、つい最近までお父様とケンカしてたんです。で、和解したのはいいんですけど、今度は過保護過ぎちゃって……」

ルカ「『私の眼鏡に適う者以外は認めん』って。このままじゃ私、いつまでたっても結婚できませんよ〜」

ものまね士「うーん、王女様って大変なのねぇ」

ヒビキの娘「そういえば、ユキコさんは結婚してるんですよね?」

ユキコ「あ、はい」

ヒビキの娘「旦那さんはどんな方なんですか?」

ユキコ「ま、マコトさんです、一応……///」

ヒビキの娘「……えっ?」

ルカ「あ、あれ? でも、マコトさんって確か女性なんじゃ……?」

ユキコ「あ、愛さえあれば、性別なんて関係ないんですぅ!」

ものまね士「そ、そうですよね! 人それぞれでいいと思いますよ、私も」

ヒビキの娘「お、女の子同士で……」

ルカ「ユキコさん、どうやってマコトさんと結婚したんだろう。……謎だなぁ」


707: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:27:30.57 ID:3oh66YOuO

ジオット「守るべき者ができた感想はどうだ?」

店主「うん……なんかこう、身が引き締まる思いだな!」

ファブール王「ふふふ。若いと勢いがあって良いのう」

ジオット「本当に、大切にするのだぞ? 大抵の場合は、いなくなってから初めてその者の大切さに気づくものだ」

店主「あ、ああ……?」

ファブール王「……ジオット殿は、奥方に先立たれたそうじゃ」

店主「そうだったのか……なんか、すまん」

ジオット「そなたが謝る事ではない。……悔いの無いようにな」

店主「うん、もちろんだ!」

長老「……で、つかぬ事を聞くが、そなた、仕事はどうするのじゃ?」

店主「あっ……すっかり忘れてた! カイポの宿屋はもう無いし、ど、どうしよう!?」

長老「そんな事だろうと思って、ワシがアン殿に掛け合っておいたぞ。そなたをコックとしてこの城で召し抱えたいそうじゃ。良かったの」

店主「ま、マジかぁ! 恩に着るぜ、ジイさん!」




トロア「良い式になりましたね」

ドゥ「そうだな。この幸せが、良い形で他の民にも広がってくれればいいな」

アン「うふふ、そうねぇ」

トロア「ところで、アン姉上はご結婚なさらないのですか? 22ともなれば、そろそろ……」

ドゥ「ば、バカ、トロア……!」

トロア「……はっ!」

アン「あらまあ、私が気にしてる事を……」ゴゴゴゴ

トロア「あ、姉上! い、今のはその、口が滑ったというか……姉上の事を心配して……!」

アン「うふふ〜♪ まだまだあなたに心配されるほど落ちぶれていなくってよ?」ゴゴゴゴ

トロア「す、すみません、姉上!」

ドゥ「……まったく」


キャトル「あら〜? ドゥお姉様、どうかなされたのですか〜?」

ドゥ「いや、トロアのやつが懲りずに姉上の地雷を踏んだのだ」チラ


トロア「お助けを〜!」タタタタ

アン「ダメよ〜? 悪い子には、お尻百叩きの刑よ〜♪ 」タタタタ


サンク「禍々しいオーラを感じたと思ったら、またアン姉様だったのですね」

セット「あはは♪ こりないねぇ、トロア姉も」

ユイット「ねえ、シスおねえちゃん。アンおねえちゃんたち、かけっこしてるのー?」

シス「う、うん、そうみたいね」





ものまね士「……そういえば、ハルカさんたちがいないですね」

ルカ「あ、ホントだ」

ユキコ「どこに行ったんでしょう?」

ヒビキの娘「みんなそろってトイレですかねー?」


708: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:33:39.59 ID:3oh66YOuO

ーーーあーゆーれでぃ あいむれいでぃ〜♪ はーじめーよーう〜♪



ヒビキの娘「あっ……!」

ユキコ「皆さん……!」



やればできる〜♪ きっと〜♪ ぜったーい〜♪




ルカ「歌……?」

ものまね士「すごい迫力……!」




わたしNo.1〜♪


チャッチャラッチャ〜♪




ザワザワ…

「……おい、あれ、広場の英雄像の子たちじゃないか?」

「ほんとだ! 実物もめっちゃ可愛いなぁ!

「それに、動きもピッタリだ。まるでプロの踊り子だぞ!?」

「オレ、なんかテンション上がってきたぁ!」



スタートはじまる〜今日のステージ〜♪ ……



老婆「ほう……」

ジオット「これは……」

長老「なんと、このような催しを用意していたとは……」

店主「みんな、すげぇ……」

ファブール王「なかなかに華やかじゃのぅ」


ー 舞台裏 ー

P「……良かったのか? 律子。みんなと一緒に行かなくて」

律子「いいんです。私はもうプロデューサーなんですから」

P「そうか……」

律子「それより、よろしく頼むわよ、あなたたち!」

ミニ助「任せてくれたまえ!」

ピョン吉「最初はどうなる事かと思ったけど」

ブタ美「なんとかなりましたね……」

ミニ助「うん。たまにはこうして僕らで裏方をやるのもいいものだ」



行けばなれる〜♪ もっと〜♪ ぜんたーい〜♪

みんなオンリーワン〜♪


チャラッチャ♪ チャ〜♪


709: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:40:17.84 ID:3oh66YOuO

春香「…………ふぅ」



春香「……皆さん、突然驚かせてしまって、ごめんなさい!」

春香「まずは、今日この良き日にご結婚された、店主さんとものまね士さんに、お祝いの言葉を贈らせてください!」

春香「本当に、おめでとうございます! お2人で末長く仲良く、楽しく暮らしてくださいね!」




ワーワー…!

オメデトー!

パチパチパチパチ…!



ものまね士「えへへ……///」

店主「なんか、改めて言われると照れるな……///」




響「あのね、今日、いきなり自分たちがここにお邪魔したのは、この世界のみんなに感謝の気持ちを伝えたいって思ったからなんだ!」

真「皆さんと出会えて、ボク、とっても楽しかったです! 本当に、ありがとう!」

雪歩「でも、残念ですけど、私たちは明日、旅立たなければいけなくなってしまいましたぁ」




「ええっ!?」

「そうなのー!?」

「行かないでユキホ様ぁ!」

「マコト様〜〜!!」

ザワザワ…


710: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:44:04.46 ID:3oh66YOuO

亜美「だからね、亜美たちみーんなで考えたんだ!」

真美「真美たちがお世話になったみんなに、どーやってカンシャすればいいかって!」

貴音「……それで、月並みですが、こうしてわたくしたちの歌を皆様方に聴いて頂こうという事に相成ったのです」




ルカ「そっか。そういう事だったんだね……」

ユキコ「本当の、お別れなんだ……」

ヒビキの娘「お母さん……」

ものまね士「うぅっ……」ウルッ



ジオット「なんと健気な……」

ファブール王「礼を言うのは、こちらの方だというのに……!」

店主「ハルカ……お前たちは……やっぱり……」

老婆「……あの娘たちがなぜ他人を惹きつけるか、その理由がわかった気がするね」

長老「………」



やよい「今日はみなさんに楽しんでもらえるように、わたしたち、せーいっぱいガンバりますっ!」

伊織「最後まで楽しんでくださいねっ♪ 」



「ヤヨイちゃん天使ー!!」

「イオリ様踏んでーー!!」



美希「それじゃあそろそろ、次の曲に行くの!」

あずさ「千早ちゃん、準備はいい?」

千早「……はい!」



千早「それでは、聴いてください……」

千早「すぅーー……」




……かーぜーはー天をかけーてくー♪


光ーはー地を照らしてくー♪


ひーとーは〜夢を〜抱く そう名付けた〜ものがーたりー♪



ーー♪ ……アルカディーアー♪ ……




ザワザワ…

「……!」

「なんてきれいな歌声なんだ……!」

「なんか、泣けてきた……!」



711: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 22:59:13.86 ID:3oh66YOuO
ー 月の地下中心核 ー


クルーヤ「はいワン、ツー、スリー、フォー……」パンパン


キュッキュッ


クルーヤ「そこでターン!」


…ドガッ!


リルマーダー「……いてて」

レッドドラゴン「ってーな、てめ!」

リルマーダー「なんだよ! そっちがぶつかってきたんだろっ!?」

レッドドラゴン「あぁン!? 今のはおめーがトロいのがわりーんだろーが!!」

リルマーダー「お前がデカいから邪魔なんだよー!」

レッドドラゴン「うるせえクソチビ!!」

リルマーダー「オイラが小さいからってバカにしてるのかっ!?」

レッドドラゴン「やんのかコラ!?」

ギャーギャー



クルーヤ「……あーあ、ケンカはじめちゃったよ」

プリンプリンセス「まったく、エレガントさに欠ける方たちですわね!」

暗黒魔道士「……っ」オロオロ

ベヒーモス「呑気に言ってる場合じゃないよ。さっさと止めないとレッスンが進まないじゃないか」

ブルードラゴン「やらせておけばいい。感情をすぐ表に出すのは、無能のやる事だ」

ベヒーモス「あんた、冷たいねぇ」

クルーヤ「とにかく、ベヒーモスちゃんの言う通りだ。ケンカを止めないと」

金竜「ふふふ……我に任せろ! 諍いなどこの金竜が鎮めてくれようぞ!」

銀竜「さすがは兄者! 風格の違いを見せつけるのだな!」

クルーヤ「そうだね。ボクが何か言うよりも、こういう事は君たちで解決した方がいいかもしれない」


712: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:03:51.97 ID:3oh66YOuO

金竜「そこの2人! この金竜の顔に免じて争いをやめるのだ! 争いは何も生ま」

レッドドラゴン「てめーがわりーんだクソチビィ!」ブンッ

リルマーダー「チビって言うなああ!」ブンッ

バキ!! グシャァ!!

金竜「へぶぁっ!?」

レッドドラゴン「あ」

リルマーダー「あ」



金竜「……ふ、ふ」ヨロッ

金竜「この程度で腹を立てる我ではない。さあ、争いをやめ」

レッドドラゴン「いきなりなんだてめーは!! 熱線っ!」

ズドオオ!!

リルマーダー「邪魔するなよっ!! サンダガッ!」

ズガガピシャァーン!!


金竜「ぬわーーー!?」


銀竜「兄者ああああああ!!?」


ズゴーン!! ドゴーン!!…



ベヒーモス「あいつ、全然止められてないじゃないか……」

プリンプリンセス「口だけですわね」

クルーヤ「ははは、みんな血の気が多いんだなぁ。ねえコトリさん?」

小鳥「………」

クルーヤ「……あれ? コトリさん?」

小鳥「………」ゴゴゴゴ



小鳥「あなたたち、やめなさーーーい!!!」



ドゴオオオォォン!!




レッドドラゴン「っ……な、なんだ、今の……?」

リルマーダー「お、オイラ、ちょっとチビっちゃった……」

金竜「」



小鳥「ちょっとぶつかったくらいでいちいちケンカしないの! 仲良くしなきゃダメよ!」

レッドドラゴン「だ、だってよ、このクソチビが……」

リルマーダー「お、オイラのせいじゃないぞ!」

金竜「」

銀竜「兄者ぁ! 目を開けるのだー!」ユサユサ

小鳥「うーん……」

小鳥「いい機会だから、みんなに少しお話をしようかしら」


713: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:09:19.55 ID:3oh66YOuO

小鳥「いい? あなたたちは、私のアイドル。プロデューサーさんのアイドルたちをこの月で迎え撃たなければいけないの」


魔物たち「………」


小鳥「でも、プロデューサーさんのアイドルたちは、とても強いわ。今のあなたたちじゃ、敵わないかもしれない」


ベヒーモス「アタイたちより強いって? また大きく出たねぇ」

レッドドラゴン「けっ! そんなヤツら、オレが溶かちつくしてやらあ!」


小鳥「ダメよ。あなたたちを無駄死にさせたくないもの」


魔人兵「……だから、オレたちは強くなるためにれっすんをしているという事ですね?」


小鳥「ええ。でも、レッスンだけでは、あなたたちはあの子たちに『絶対に』勝てない」


魔物たち「……!!!」


ブルードラゴン「……どういう事かの。何か特殊な力でも持っておるのか? あいどるとやらは」


小鳥「特殊……そうね。あの子たちが持っているのは、ある意味特殊なパワーだと思うわ」

小鳥「そしてそれは、時に圧倒的な実力差をも覆す、恐るべきパワーよ!」

小鳥「……その強さの秘密とは……」



小鳥「…………『団結』よ!」



魔物たち「!!!」ガビーン



クルーヤ(…………へぇ、さすがはコトリさん)


714: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:12:04.29 ID:3oh66YOuO

リルマーダー「……って驚いてみたけど、だんけつってなんだ?」

レッドドラゴン「バッカおめー、そんな事も知らねーのかよ?」

リルマーダー「う、うるさいなあ! じゃあお前は知ってるのか?」

レッドドラゴン「あーそれは……あれだ、ほら、よくルナザウルスのやつが使ってたろ。死のダンケツってやつ」

リルマーダー「あれ? そうだっけ?」

小鳥「全然違うわ、レッドドラゴン君」

レッドドラゴン「う……」

小鳥「団結とは……」

ベヒーモス「つまり、みんなの力を合わせるって事かい?」

小鳥「……ああ、そうか。ベヒーモスちゃんはレディースの総長さんをやってたのよね」

ベヒーモス「一応ね。ライバルチームに勝つには、チームの連中の力を総動員する事が必要だった事も、あったからねぇ」


金竜「一本の矢は容易く折れようとも! 三本の矢は折り難しっ!」ガバッ


魔人兵「な、なんだ急に?」

金竜「我ら13本からなる矢を固く結束すれば、如何なる者も折れぬであろうっ!!」

金竜「」ガクッ

銀竜「兄者ああぁ!」


715: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:23:30.63 ID:3oh66YOuO

ダークバハムート「……そこの金竜の言う通りだ。人間は、他者と力を合わせる事ができる。それ故、人間は強い」

ダークバハムート「人間に……いや、あいどるに対抗するには、我ら魔物も力を合わせる必要があるのだ」

ダークバハムート「そうだな? コトリよ」


小鳥「ええ、仰る通りです」

小鳥(……金竜君、13本って私の事も数に入れてくれたのね。ふふっ♪ )

小鳥「だから、あなたたちには仲良くしてもらいたいのよ」

小鳥「大丈夫、私はあなたたちが本当はとってもいい子たちだってわかってるもの。きっとできるわ!」


レッドドラゴン「マジかよ……。こんなクソチビとなんてやってられっかよ」

リルマーダー「オイラだってお前なんかお断りだからなっ!」


小鳥「……で・き・る・わ・よ・ね?」ゴゴゴゴ


魔物たち「は、はーい!!!」



小鳥「ところでバハムートさん、今までどこにいたんですか?」

ダークバハムート「なに、少々この娘の実力を計っていたのだ」

月の女神「ふぃ〜、疲れたよぉ〜」グッタリ

小鳥「あら、そうだったんですね」

月の女神「あのね、コトリ様。私、超頑張ったんだよ!」

小鳥「そう。偉かったわね〜」ナデナデ

月の女神「えへへっ♪ 」

ダークバハムート「コトリよ。そろそろ本格的に親衛隊を鍛えねばなるまい?」

ダークバハムート「よもや、あいどるがここへ攻めて来るまでこのような児戯を続けるつもりではあるまいな?」

小鳥「……わかってます。今までのレッスンは、言わば基礎編。体力づくりみたいなものですからね」



小鳥「……それじゃみんな。そろそろちゃんとしたレッスンをやるわよ!」

魔人兵「ちゃんとした……とは、いったいどういう?」

小鳥「その名も、実戦編です!」

レッドドラゴン「っしゃあ! やっと暴れられるぜ!」

ベヒーモス「ま、そうこなくちゃ面白くないね!」

プリンプリンセス「わたくしの華麗な姿を見せる時ですわね!」

月の女神「え〜、また戦うの〜? やっと休めると思ったのにぃ〜」

暗黒魔道士「……!」グッ

リルマーダー「よーし、ガンバるぞー!」

金竜「弟よ、我らの連携を見せる時ぞ!」

銀竜「おう! 兄者!」

魔人兵(上司に実力をアピールするチャンス!)グッ

ブルードラゴン(なんでも良いぞ。ワシに終わりをもたらす者が現れるならば、な……)



小鳥「さあ、はじめましょうか!」



魔物たち「うおおおおおお!!!」


716: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:32:53.19 ID:3oh66YOuO
ー トロイア城 大広間 ー



ワアアァァァァァァ…!!



春香「……皆さん、次が最後の曲になります!」



エエーー!!

モットウタッテクレーー!!



春香「ふふ、ありがとうございます♪ 」



春香「最後の歌は……」

春香「どんなに離れていても、どんなにケンカしても、世界中の人と人とは繋がっている」

春香「……そんな、絆の歌です」



ウオオォォォォオオ!!



春香「………」

春香「世界には、国境や、人種、考え方、性別……大きいもの、小さいもの、色んな壁があって」


春香「時にそれは、とても高い壁で、乗り越えるのが、結構大変で」


春香「私たちは、隔たりの向こう側にいる人に気持ちがうまく伝えられなくて、ケンカしちゃったりする事も時にはあると思います」



シーーン…


717: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:35:42.68 ID:3oh66YOuO

春香「……でも、本当は違うんです」


春香「私たちが臆病になってしまっているだけで、壁なんてホントはそこにはなくて」


春香「顔が見えないくらい遠くにいても、たとえ言葉が通じなくても……」


春香「ほんのちょっとの勇気を出せば、必ずその人と仲良くなる事ができるんです!」


春香「えーっと……」


春香「えへへ……すみません。私、こうして言葉で伝えるのは、実はあんまり得意じゃなくて……」



ハルカチャーーン!!

カワイーーー!!



春香「……とにかく、ありったけの気持ちを込めて歌います。聴いてくださいっ!!」



…チャ〜〜♪ チャ〜〜♪

チャッチャッチャチャッ♪



「空見上げ♪ 手ーをつなごう♪ この空は〜輝いてる〜〜♪ 」


「せーかい〜〜じゅーうの〜〜手っをっとっりっ♪ 」


「ザ ワールド イズ オールワン!!」


「ユーニティマインっ♪ 」



ワアアアアァァァ…!!

オオオオォォオオオオオオ!!



718: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:39:07.93 ID:3oh66YOuO
ーーーーーー

ーーー



響「……ねえ、この世界で♪ 」


美希「ねえ、いくつの出会い♪ 」


貴音「どれだけの 人が笑ってるの♪ 」




「うおおおおおおお!!」

「ミキちゃんかわいーーっ!!」

「ヒビキちゃん最高ーー!!」

「タカネ様ーー!! お慕い申しておりますーー!!」




技師1「親方ぁ……カッコよ過ぎですっ!」グスッ

技師2「親方にこんな才能があったなんてな……」

ヒビキの娘「お母さんすごいっ!」

ものまね士「あら、ミキさんやタカネさんだって負けてませんよ?」

ものまね士「うふふ♪ みんなすっごい楽しそう!」


719: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:42:04.51 ID:3oh66YOuO
ーーーーーー

ーーー


亜美「ねえ、泣くも一生♪ 」


あずさ「ねえ、笑うも一生♪ 」


伊織「ならば笑って 生きようよ 一緒に♪ 」



「アミちゃんプリティィィィィ!!」

「アズサさーーーーん!! 結婚してくれーー!!」

「くぎゅうううううううううう!!」




老婆「ふむ。なんだかこの3人は、特に息が合っているように見えるねぇ」

ものまね士「アズサさん、やっぱり色っぽいなぁ……」

長老「アミも負けておらんぞ!」

ルカ(なんで変な叫び声上げてる人がいるんだろう?)


720: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:45:44.53 ID:3oh66YOuO
ーーーーーー

ーーー



真「顔を上げて みんな笑顔♪ 」


雪歩「力合わせて 光目指し♪ 」




「きゃああああああっっ!!」

「マコト様ああああっっ!!」

「カッコいいーーーーー!!」



シルフ「むぅ……その他大勢に負けてられません!」

シルフ「さあ、私たちも声援を送りますよっ!」

シルフ「きゃーーー!! マコトさーーん!!」

ユキコ「ま、マコトさぁーーんっ!!」

ファブール王「マコトおおおおおっ!!」



「ユキホちゃあああんっ!!」

「きれいだーー!!」

「さすが元祖救世主様!!」




ドゥ「……あの子も変わったな。最初にこの城に来た頃とは、まるで別人のようだ」

アン「そうね」

アン「でも、ユキホさんはもともと、こんな風に強いものを持っている方だったのかもしれないわ」

アン「……私たちが知らなかっただけで」

ドゥ「そうか。……私たちはまだ、あの子たちのほんの一部しか知らないんだな……」

トロア「ユキホ王女……!」


721: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:50:06.38 ID:3oh66YOuO
ーーーーーー

ーーー



やよい「世界には ともだち♪ 」


真美「一緒に生きるトモダチ♪ 」




「ヤヨイちゃんマジ天使!!」

「マミちゃん妹になってくれーー!!」

「ロリコンビ最高!!」




店主「うんうん! やっぱりヤヨイは元気が似合うなぁ!」




翔太「……ねえ、冬馬君はやよいちゃんに声援送ってあげないの?」

冬馬「いいんだよ別に。俺たちがここにいるなんて、高槻たちは知らねえだろうし」

翔太「あ、そっか」

北斗「それにしてもエンジェルちゃんたち、またパフォーマンスが上がってないか?」

北斗「ブランクがあるとはとても思えないな」

翔太「確かに。お姉さんたち、この世界でもレッスンしてたのかなぁ?」

冬馬「へっ……上等だぜ765プロ! いつか絶対に、俺たちが追い抜いてやるからな!」ビシッ




ジオット「あの娘、我が軍の司令官に欲しかったな……」

長老「ん? マミはワシの可愛い孫じゃ。そなたには渡さんぞ?」

ジオット「はい、承知しておりますよ」

ジオット「……しかし、元気な娘だ。あのエネルギーはいったいどこから来るのか」

長老「あの子には、仲間がおるからのぅ」

ジオット「仲間、ですか……」



722: ◆bjtPFp8neU 2015/12/23(水) 23:56:39.82 ID:3oh66YOuO

春香・千早「いる事を 忘れないで♪ 」



ウオオォォォォオオオォォ!!




一人では 出来ない事♪


仲間となら 出来る事♪


乗り越えられるのは ユニティ ストレングス♪




ルカ(ハルカさんもチハヤさんも、すっごく楽しそう)


ルカ(……仲間、か)

ルカ(ハルカさんたちは、どんな時だって仲間を信じてた)

ルカ(私は、そんなみなさんの強い信頼関係が羨ましいなって、ずっと思ってたけど)

ルカ(一人じゃない。みんな、誰かとどこかで繋がっている)

ルカ(それを、私に……ううん。この世界の全ての人たちに、教えようとしてくれてる……?)





…世界中の 手を取り The world is all one!


The world is all one!



…Unity mind!!




ワアアアァァアアアア!!!





727: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 20:50:44.66 ID:EQxw4ZEsO
ーー翌日、トロイアの町 入口


アン「……本当に、行かれるのですね」

春香「はい。お世話になりました!」ペコリ

アン「それはこちらのセリフです。この世界は、あなた方がいなければ滅んでいたでしょうから」

春香「そんな! 私たちなんて、何も……。みんなで頑張ったからですよ! 大切なのは、みんなで力を合わせる事ですから」

アン「……そうですね。私たちは、あなた方に何度もそれを教わりました」

トロア「これからは、世界の皆で手を取り合い、この世界の為に尽力していくつもりです」

店主「オレたち一人ひとりの力は大した事ないけど、力を合わせれば、できない事なんてないもんな!」

ものまね士「ええ! ハルカさんたちの深い絆を、私たちも見習います!」

ジオット「我々の事は気にするな。それより、お前たちの事が心配だ」

老婆「月の魔物は、はっきり言ってこの青き星の魔物と比べものにならないほど強い。気を抜くんじゃないよ!」

ミニ助「本当ならば、ボクらも君たちに同行したいところなんだが……」

ファブール王「ワシらは、そなたたちの無事を祈る事しかできぬ。どうか、達者でな」

春香「はい! ありがとうございますっ!」ニコッ



ユキコ「ううっ……ぐすっ」

真「ユキコ……ごめんね。夫婦らしい事は何もしてあげられなくて」

ユキコ「そ、そんな……わ、私は……マコトさんの妻で、本当に良かったと思ってますっ……!」

真「ありがとう、ユキコ」

真「大丈夫。離れていても、ボクは君のすぐ側にいるよ」

真「さみしくなったら、月を見上げるんだ。ボクたちは、そこにいるから」

ユキコ「マコトさんっ……!」ギュッ

真「シルフ。ユキコの事、よろしく頼むよ。君にしか任せられないから」

シルフ「マコトさん……」

シルフ「……わかりました! マコトさんの頼みなら……」

シルフ「っ……ううっ!」ポロッ

ユキコ「マコトさぁんっ……!」

真「2人とも、ありがとう」ギュッ


728: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 20:53:02.27 ID:EQxw4ZEsO

ヒビキの娘「お母さん。今まで私のお母さんでいてくれてありがとう」

ヒビキの娘「私、絶対にお母さんの事、忘れないっ!」

響「ううぅうっ……!」ポロポロ

ヒビキの娘「だから、そんなに泣かないで?」ナデナデ

響「だっで、自分っ……!」

ヒビキの娘「お母さんは……私の、最高のお母さんだったよ!」

響「うわああぁぁああんっ!!」

ヒビキの娘「……大好き、お母さん」ホロリ



トロア「あなたには、優しさを、そして、本当の勇気というものを教えてもらいました」

トロア「それに……」

トロア「無骨で、武術しか取り柄の無い私が、こんな気持ちになる事ができた……」

トロア「ユキホ王女。私は、あなたと出会えた事を神に感謝しますっ!」ウルッ

雪歩「トロアさん……!」ポロッ

トロア「ユキホ王女。あなたの事を……と、友と呼んでも、いいですか……?」

雪歩「も、もちろんですぅ! トロアさんは、私にとって、大切な……っ」ポロポロ

雪歩「っ……ご、ごめんなさい、私……!」

トロア「ぐっ……!」ポロポロ


729: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 20:56:50.31 ID:EQxw4ZEsO

美希「……ホントに、今までありがとうなの、ファンの人」ギュッ

美希「ミキ、事務所のみんな以外でこんなに仲良しになった人は、初めてなの」

ものまね士「ううっ……ミギざあああぁぁん!」ポロポロ

美希「心配しないで。ミキたちの思い出は、きっとみんなの胸の中に残るから」

美希「……だから、ね。そんなに泣かないで欲しいの」ナデナデ

ものまね士「だっで、わだじっ……ミキさんに、何のお礼も……!」

美希「そんなの、もうたくさんもらってるの……」ウルッ

ものまね士「ミキ、さん……?」

美希「もう……そんなに泣かれたら、ミキまで悲しくなっちゃうよ……!」グスン

ものまね士「ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃ……!」

美希「んーん。いいの」ブンブン

美希「こうやって、胸がジワジワ〜ってあったかくなるの、ミキ、イヤじゃないもん」

美希「……えへ♪ 」ニコッ

ものまね士「……ふふっ♪ 」ニコッ


美希(……ありがとう)

美希(それから、ばいばい。この世界の、2人目のお姉ちゃん)




春香「ルカさん、このリボンなんだけど……」

ルカ「それは、ハルカさんに持ってて欲しいな。私もハルカさんのリボンをずっと付けるから」

ルカ「そうすれば、ハルカさんを近くに感じられるし」

春香「……うん、そうだね」

ルカ「あーあ、さみしいなぁ。せっかくお友達ができたのに、もうお別れなんて……」

春香「………」

ルカ「……ご、ごめんなさい。私……」

春香「……ううん。私も、さみしいよ……」

春香「でも、私は笑っていたいかな。ルカさんたちに出会えた事は、悲し事なんかじゃないから」

ルカ「ハルカさん……」

春香「お別れはさみしいけど、悲しむより私は、みんなに出会えた事を、感謝したい」

春香「この世界のみんなと出会えて良かったって思うもん」

春香「だから、笑顔でお別れしたいなぁ」

ルカ「ハルカさん……。うん、そうだね!」


730: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 21:00:14.28 ID:EQxw4ZEsO

店主「……あーあ、とうとうハルカやヤヨイの顔も見られなくなっちまうんだなぁ」

春香「店主さん……」

やよい「ほんとーに、今までおせわになりましたー!」ガルーン

店主「はは、ヤヨイのお辞儀は相変わらず鋭いなぁ」



店主「……なあ、ハルカ、ヤヨイ。覚えてるか? オレたちが初めて出会った時の事」

春香「はい。私とやよいが砂漠で行き倒れているところを、店主さんに助けてもらったんですよね」

店主「ああ」

やよい「うー……わたし、気がついたらベッドの上にいて、実はその時のこと、あんまりおぼえてないんですよねー」

春香「あの時は、やよいもいろいろ大変だったからねー」

春香「何を隠そう、私もちょっとだけやさぐれちゃってた頃だったんだー」

店主「そうだったな。2人とも、体力的にも精神的にも参ってたみたいだった」

店主「でも、お礼に2人は宿屋の仕事を手伝ってくれたんだよな」



店主「……思えば、あれが全ての始まりだった」



店主「その後、ミキがやって来て、ものまね士がやって来て……」

店主「オレの生活は、一気にめまぐるしく変わっていったよ。……いい意味でな」

店主「わかるか? お前たちが、オレの人生を素晴らしいと思えるものに変えてくれた」

店主「もちろんオレだけじゃない。お前たちが出会った人たち、ものまね士や長老の爺さん、ドワーフの王様にトロイアの神官さんたち……」

店主「みんな、お前たちに出会って、変わって、元気をたくさんもらった」

店主「……幸せを、もらったんだ」

やよい「そ、そんな、わたしは何も……」

春香「……店主さん」

店主「ん?」

春香「それは、私たちの力じゃありません。店主さんが、みなさんが勝ち取った幸せですよ?」ニコッ

店主「……!」

店主「ハルカ……」

春香「誰かに影響を受けたりする事も、確かにあると思います。でも、最後に決めるのは自分ですから」

春香「今の幸せは、誰が何と言おうと、店主さんが自分で選んで勝ち取った幸せです!」

店主「ぐっ……!」ウルッ

店主「……く、クソぉ……まさか、オレが泣かされるなんて……」ポロッ

春香「店主さん、笑ってください」ニコッ

やよい「せっかくのかわいい顔が、だいなしですよっ!」ニコッ

店主「……はは……こりゃ、一本取られたなぁ……」ニコッ


731: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 21:03:47.35 ID:EQxw4ZEsO
ー 飛空艇 ファルコン号 ー


響「ううっ……!」ポロポロ

技師1「親方、大丈夫ですか?」

技師2「もし操縦ができないようなら、我々が……」

響「……ううん、へーきだぞ。ファル子とももうすぐお別れだから、自分が操縦したいんだ」

技師1「親方……」



長老「それでは、そろそろミシディアへ向かうとするかの」

P「そうですね。すみません、長老。魔導船を復活させるために、もう少しだけ力をお借りします」

長老「ああ、構わんよ」

P「響。行けるか?」

響「……うんっ!」ゴシゴシ



響「じゃあ……出発するぞ!」



ブワッ…



「さようならーー!!」

「お元気でーー!!」

「あなた方の事、一生忘れません!!」



アイドルたち「さようならーーー!!!」



ババババババ…



ビューーーン…



732: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 21:10:18.06 ID:EQxw4ZEsO
ー ミシディアの村跡 祈りの館 ー


長老「……良いか。皆の想いをひとつにするんじゃ。強い想いを祈りに変えれば、必ず魔導船は応えてくれるじゃろう」

長老「それでは、始めるぞ」



一同「………」コクリ



春香(みんなの想いを、ひとつに……)



「……」


「…………」


「………………」



真美(…………)

真美(んー……なんかこーしてると、兄ちゃんのために祈ってたのを思い出すなー)

真美(あの時は、亜美と2人で兄ちゃん起こすのに必死だったっけ)

真美(なつかしー)

真美(……っと、集中集中。よけーなこと考えてたら、りっちゃんとか長老っちのゲンコツがとんでくるもんね)

真美(えーっと……いでよ、魔導船。ボクらの願いを叶えたまえー! ……こんなカンジかな?)


亜美(…………真美、真美)


真美(亜美? どしたの? 今はお祈りに集中しなきゃおこられちゃうよ?)

亜美(へーきへーき。りっちゃんも長老っちも目つぶってるから気づかないって)


長老「………」

律子「………」


733: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 21:13:42.49 ID:EQxw4ZEsO

亜美(それよりさ、魔導船の名前、もう考えた?)

真美(名前? 別に考えてないよ?)

亜美(ちょっとの間だけど、いちおー亜美たちの船になるんだから、カッコいい名前つけたくない?)

亜美(じゃないと、ひびきんが……)

真美(あー……たしかに。ひびきんにダサダサな名前つけられる前に、真美たちでなんとかしたいかも)

亜美(でしょ? 亜美、考えたんだけどさ、『宇宙戦艦フタミ』とかどうよ?)

真美(いいね! チョーいけてるよそれ! 目指すのはイスカンダルじゃなくて月だけど、もう宇宙戦艦フタミでけってーだね!)

響(ダメだぞ! 魔導船の名前は『まど香』にするんだから)

亜美(…………ほらね?)

真美(…………ふっ)

響(な、なんで鼻で笑うんだよ!? 自分、一生けんめい考えたのに!」

亜美(わわっ、ひびきん、声、声!)

響「えっ? …………あ」

真美「小声で話さないと、マジメにお祈りしてないってりっちゃんと長老っちにバレちゃうじゃんか!」



律子「………」ゴゴゴゴ

長老「………」ゴゴゴゴ



真美「あっ……」



律子・長老「あんたたち(お前たち)!! いい加減にしなさい(せんか)!!」



亜美・真美・響「……ご、ごめんなさーい……」ズーン


734: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 21:18:56.49 ID:EQxw4ZEsO

長老「まったく、お前たちは相変わらずジッとしてられんのじゃな!」

律子「本当よ。遊ぶ事ばっかり考えて!」

長老「少しの間くらい我慢せんか! これはお前たちのためでもあるのじゃぞ!」

律子「ちゃんとやらないと、暗黒剣食らわせるわよ!」

亜美「うあうあ〜! 鬼軍曹が2人に〜!」

真美「お説教が2倍で、フンババ、ケット・シーってカンジだよ〜!」

響「それを言うなら踏んだり蹴ったりだと思うぞ」

律子「響、あんたもよ!」

響「うわぁん! ごめんってば〜」



春香「ま、まあまあ、律子さんも長老さんも、そんなに目くじら立てずに……」

長老「むぅ……」

あずさ「そうですよ〜。楽しくやりましょう、ねっ?」

伊織「あのね、お祈りってそういうものじゃないでしょうが」

千早「とにかく、このままじゃ先に進まないわ」

やよい「美希さんなんて、まだひとりでおいのりしてますよー?」スッ

美希「……zzz」

真「いや……爆睡してるだけだよこれ」ヤレヤレ



貴音「亜美、真美、響」ヌッ

亜美「うわぁ!? ……な、何? お姫ちん」

貴音「魔導船の名前ですが、月に因んで『朧丸』というのはどうでしょうか」

真美「なぁんだ、お姫ちんも名前考えてたのかー」

響「悪いけど、『まど香』は譲らないぞ!」

亜美「だからー、『宇宙戦艦フタミ』だってばー!」

貴音「いえ、『朧丸』……」

雪歩「ね、ねえ、亜美ちゃんたち。律子さんと長老さんが……」スッ


律子・長老「………」ゴゴゴゴ



律子・長老「いい加減にしなさーーい(せんかーー)!!!」

ドゴーーーン!!


735: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 21:24:44.21 ID:EQxw4ZEsO

長老「……とにかく、もう一度じゃ。心を落ち着かせ、精神を集中させるのじゃ!」


一同「………」コクリ



「……」



「…………」



「………………」



亜美(…………そりゃね、亜美たちだってわかってるよ)

真美(マジメにやんなきゃいけない時くらいは、ね)

貴音(魔導船を復活させねば、月へ行く事はできません)

真(ボクたちは、月にいる小鳥さんを迎えに行かないといけないからね)

響(ピヨ子、きっとさみしがってるだろうなー)

律子(小鳥さんに会ったら、一言文句言わなきゃ)

あずさ(みんなで一緒にお祈りすれば……)

雪歩(きっと、想いは届くはずですぅ)

やよい(だから、まどーせんさん!)

伊織(さっさと出てきちゃいなさいっ!)

美希(そして、ミキたちを……)

千早(音無さんの元へ、連れて行ってください)



春香(……お願いしますっ!)




ゴゴゴ…


長老「!」


ゴゴゴゴ…


春香「じ、地震……?」



…ガチャッ



技師1「み、皆さん! 村の外の入江に巨大な物体が……!」

技師2「おそらく、魔導船だと思います!」


736: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 21:28:33.97 ID:EQxw4ZEsO
ー ミシディアの村 入江 ー



魔導船「………」ドーン



春香「これが……魔導船……」

真「うわー、大きいなぁ……!」

貴音「わたくしの乗って来たものとは、規模も風格も違いますね」

雪歩「宇宙を渡る船……素敵な響きですぅ」

美希「ちゃんとベッドとか付いてるかなー?」

やよい「あ、どうなんでしょうねー? おフロとか台所とか、あるのかなー?」

P「そういうのが付いてたら、あの厳かな雰囲気が損なわれる気がするなぁ」



響「よろしくな、まど香!」ナデナデ

亜美「ちがうよー、宇宙戦艦フタミだってば!」

貴音「いえ、ですから朧丸と先ほどから……」

伊織「もう、何だっていいじゃないの。名前なんて」


千早「………」


春香「……どうしたの? 千早ちゃん」

千早「ゴン……いえ、なんでもないわ」

春香「?」



律子「……あら? そういえば、あずささんは?」キョロキョロ

響「あれ? さっきまでそこにいたのに……」

真「あずささんなら、ほら、あそこだよ」スッ




あずさ「…………うふふ、みんな〜〜♪ 」フリフリ




律子「あっ……あずささんったら、いつの間に魔導船に」

真美「む〜、真美が一番に乗り込もうと思ってたのに〜」

P「じゃあ、俺たちも乗り込むか」

律子「そうですね」


737: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 21:33:17.40 ID:EQxw4ZEsO

長老「行くのか?」

P「……はい。いろいろ、お世話になりました!」ペコリ

長老「なに、世話になったのはワシの方じゃよ」

律子「ほら、亜美、真美。あんたたちが一番お世話になったんだから、ちゃんとご挨拶しなさい」

亜美・真美「………」



亜美「長老っち……」

真美「真美たち、長老っちにたくさんあやまらなきゃ……」

長老「……アミ、マミ」



長老「楽しく、濃密な時間を、ありがとう」ニコッ



亜美・真美「っ……!」

長老「お前たちのおかげで、ワシの人生は、素晴らしいものになった」

真美「……で、でもっ! 真美たち、長老っちにたくさんめーわくかけちゃったしっ!」グスッ

長老「それも含めて、じゃ。本当に、ありがとう」

亜美「ず、ズルいよぅ! 亜美たちの方が、長老っちにたくさんお礼言わなきゃいけないのにぃ!」ポロポロ

長老「その気持ちだけで、充分ワシは嬉しい」

長老「……欲を言えば、もう少しだけ、お前たちの成長を見届けたかったがのぅ」

P(長老……)

亜美・真美「……長老っち〜〜!!」ダキッ

長老「これこれ、そんなに泣くでない」ナデナデ



春香「……ぐすっ……」ポロ

雪歩「っ……」ホロリ

やよい「ううっ……亜美、真美……!」ウルウル

響「ひっく……ぐすっ……いい話だぞ〜!」ポロポロ

あずさ「亜美ちゃんと真美ちゃん、本当に辛そうねぇ……」

美希「なんだか、亜美と真美があんなに大泣きするの、久々に見た気がするの」

貴音「本当に、良き家族に恵まれましたね……」ニコッ

伊織「……まったく、あの2人もまだまだお子様ねぇ」

響「っ……うぅ、そんな事言って、伊織だってエブラーナでみんなと別れる時、泣きそうだったクセに!」

伊織「な、泣いてなんかないわよ!」カァァ


千早「私たちは、私たちが思ってた以上にこの世界の人たちにお世話になっていたのね……」

真「うん……そうだね」



亜美・真美「うえぇぇえええぇん!!」

738: ◆bjtPFp8neU 2015/12/24(木) 21:37:58.80 ID:EQxw4ZEsO
ー 魔導船 ー


亜美「んじゃね、長老っち」フリフリ

真美「真美たち、行ってくるから」フリフリ

長老「うむ」

亜美「カエルばっかりじゃなくて、他のものも食べるんだよ?」

真美「寝る前には、ちゃんと歯をみがかなきゃダメだよ?」

長老「ふふ、そうじゃな」

亜美「えーっと、あとは……」

真美「………」


真美「……ゼッタイ、ゼッタイに長生きしなきゃダメだよ! 長老っち!」


長老「!」

亜美「うん。真美の言う通りだよ! あと500年くらい生きなきゃダメだかんね!」

長老「…………ああ!」



響「弟子たち、今までホントにありがとう……!」

技師1「ううっ……親方ぁ……!」ポロポロ

技師2「こちらこそ、お世話になりました……」ホロリ

響「うん……ぐすっ」

響「ファル子と長老のじいちゃんの事、よろしく頼むぞ!」ゴシゴシ

技師1「はいっ、任せてくださいっ……!」

技師2「親方、どうかご武運を!」



亜美「……よし! はるるん、みんな、お待たせ。行こっか!」

春香「もう、いいの?」

真美「あんまし長居しても出発しにくくなっちゃうし」

春香「……うん、そうだね!」

律子「それじゃあ、行きましょうか!」

P「ああ!」



一同「いざ…………月へっ!!!」



ゴゴゴ…


ブワッ…


ビューーーーン…





技師1「さようならーー!!」

技師2「お元気でーー!!」

長老「………」

長老「さらばじゃ。光の戦士たちよ……」

次回 P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2 その1