P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2 その1

229: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:13:02.65 ID:KJBDXc7gO

やよい「そんなの、ぜったいにおかしいです!」

やよい「だって、小鳥さんは……ぐすっ……いづも、やざじくでっ……!」ポロポロ

やよい「ごんなの、わだじ……しんじられないですっ……うぅっ!」グスッ

雪歩(やよいちゃん……)


コトリマインド(う……ちょっとコレ、罪悪感が振り切っちゃったわね……)

コトリマインド(でも今さらよ、小鳥。あなたは決めたはず。ラスボスはラスボスらしく……)

コトリマインド(諸悪の根元として、華麗にこの役を演じきってみせるって!)


コトリマインド「泣いたってダメよ、やよいちゃん。自分の身は自分で守らないとね?」

コトリマインド「そうしないと……」ブゥン


やよい「……こ、小鳥さん、何を……?」グスッ


コトリマインド「……フレア!」


ブゥゥゥン…


ババババババババッ!!


やよい「っ……!」


引用元: P「ゲームの世界に飛ばされた」FINAL2 



230: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:17:00.46 ID:KJBDXc7gO
コトリマインド「………」

コトリマインド(……もう、後には引けないわね)

コトリマインド(やよいちゃん、耐えてくれたかし……)


雪歩「……!」ジッ


コトリマインド(……ら?)


やよい「ゆ、雪歩さん……!」


コトリマインド「雪歩ちゃん……!」

コトリマインド(雪歩ちゃんがやよいちゃんの盾になった……?)

コトリマインド(でも雪歩ちゃんって確かギルバート役……吟遊詩人よね? 全キャラの中でもかなり弱い方だったはずだけど)

コトリマインド(……いえ、違う。あの鎧に何か秘密があるのね)

コトリマインド(きっと相当良い装備なんだわ)

231: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:19:57.10 ID:KJBDXc7gO

雪歩「……正直、どうしていいか分からないです」

雪歩「小鳥さんの事は大好きですし、こんな風に戦わなきゃいけないなんて、私、耐えられませんっ……!」


コトリマインド「雪歩ちゃん……」


雪歩「……でも、一番イヤなのは」

雪歩「ウジウジ悩んでいるだけで何もできないで、結局大切な人を守れない事ですぅっ!!」ガシャン


コトリマインド「!」ズキューン


やよい「……!」


コトリマインド(か……かっこ可愛い! これが雪歩ちゃん……?)

コトリマインド(すごい……すごいわ……!)ゾクゾク


雪歩「フレア……でしたっけ? さっきの魔法」

雪歩「ちょっと熱かったですけど、効きません。今の私には」ガシャ

雪歩「この『アダマンアーマー』がある限り、私にはどんな攻撃も通用しないんですぅ!」ガシャン


コトリマインド「そっかー、アダマンアーマーじゃしょうがないわねー」



コトリマインド「……って、ええええっ!!?」ガタッ

232: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:23:22.88 ID:KJBDXc7gO

コトリマインド「あ、アダマンアーマー!? ほ、本当に!? 都市伝説じゃなかったのアレって!?」


雪歩「は、はい、よく分かりませんけど、プロデューサーや真美ちゃん、亜美ちゃんに教えてもらったんです……」

雪歩「そういえば、すごいレアアイテムだって言ってましたね」


コトリマインド「レアアイテムもレアアイテム、超絶激レアアイテムよぅ!!」

コトリマインド「私なんてもう、プリンを何億匹屠ったか分からないわ」

コトリマインド「それでも、巡り会えなかった……。それだけ貴重なのよ、その鎧は」


雪歩「そ、そうなんですかぁ……」


コトリマインド「……でも、丁度いいハンデかもしれないわね」


雪歩「えっ?」


コトリマインド「律子さんですら私の相手にならなかった。あなたが全てを弾き返す最強の鎧を纏って、ようやく私と同じ土俵に立てるって言ってるのよ」


雪歩「っ……!」


コトリマインド「かかって来なさい。死にたくなければ、ね」


やよい「ゆ、雪歩さん!」

律子「ゆき…ほ……」

雪歩「………」

雪歩「わ、私が……みんなを守りますぅ!」


コトリマインド「いいわ……! 返り討ちにしてあげます!」


コトリマインド(……あれ、でももし本当に雪歩ちゃんにどんな攻撃も通じないなら、私詰んでるわよね……?)

コトリマインド(ま、ラスボスだしなんとかなるかしら)

233: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:26:24.93 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館への道 ー


スタスタ…

春香「ごめんね、真。美希を背負ってもらっちゃって」

真「気にしないでよ。ボクもいいトレーニングになってるし」

美希「……zzz」

春香「そっか」

春香「うふふ、えへへ……」ニコニコ

伊織「何ヘラヘラ笑ってんのよ、気持ち悪いわねぇ」

春香「うぐっ……相変わらずだなぁ、伊織は」

伊織「なによ、悪い?」

春香「ううん、全然悪くないよ。……ただ、嬉しくって」

伊織「……は?」

春香「こうしてみんなでいつも通り変わらずにいられるってさ、当たり前なのかもしれないけど、すごく大事な事なんだなって」

春香「私、今回の事で学んだよ」

真「………」

千早「春香……」

あずさ「うふふ♪ 」

美希「……zzz」

伊織「いつも通り変わらずに、ねぇ。……もしかしたら、変わっちゃってる子もいるかもしれないわよ?」

伊織「いろいろあったもの、この世界へ来て」

春香「……そうだね。うん、そうかもしれない」

春香「でも、きっと肝心なところは何も変わらない。心の奥でみんな同じ想いを抱いてる」

春香「今はね、根拠もないけどそう信じられるんだ!」ニコッ

伊織「……!」ドキッ

伊織「……まったく、相変わらず能天気なんだから」

234: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:30:11.40 ID:KJBDXc7gO

P「ところで、他のみんなは元気なのか?」

真「はい、今のところ特にこれと言って大きな問題もないですし」

あずさ「そろそろ響ちゃんたちも起きた頃かしらねぇ。帰ったら賑やかになってそうね〜」

伊織「ホント、律子の苦労が目に浮かぶわ」

千早「ふふっ」

伊織「……ああそうそう、律子と言えば」

伊織「あいつ、いくら言っても休もうとしないのよ。アンタからも少し言ってやってちょうだい」

P「そうなのか。うん、分かったよ」

春香「………」



真「……ん、館が見えてきたね」

あずさ「ようやく到着ね〜」

伊織「アンタたち、館に着いたら少し休みなさいよ。疲れてるんでしょ?」

千早「ありがとう、水瀬さん」

春香「えへへ、やっぱり伊織は優しいな♪ 」

美希「……でこちゃん……」ムニャムニャ

235: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:35:29.57 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館 図書室 ー


伊織「……みんな、帰ったわよ!」


亜美「あー! いおりんたちやっと帰ってきたー!」

真美「もー、こっちはタイヘンなんだよー!」


伊織「何かあったっていうの?」

P「っていうか、亜美と真美だけか? 他のみんなは?」

真美「それが、かくかくしかじかでーー」




真「ーー雪歩とやよいがいなくなった律子を探しに?」

真美「うん……」

千早「四条さんは?」

亜美「まだなんだよー」

伊織「……どうするのよ?」

P「そうだな……」

春香「………」

春香「……私、お姉ちゃんを探してくる!」スクッ

伊織「ちょっと待ちなさいよ! アンタ、律子がどこに行ったか分かってるわけ?」

春香「それは、分からないけど……」

春香「でも、お姉ちゃんに危険が迫っているかもしれないのに、私、見過ごせないよ!」

千早「春香、気持ちは分かるけど……」

P「………」

P「亜美、俺を元に戻してくれないか?」

亜美「えっ? いいけど……」

亜美「……トード!」


…ボンッ!

236: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:39:32.89 ID:KJBDXc7gO

P「もし本当に音無さんが相手だとしたら、律子だけでなくやよいと雪歩も心配だ」

P「音無さんの強さは未知数だからな」

P「でも、こっちにはジュピターの三人にもらった回復アイテムがまだ残ってる。律子を探しに行こう」

春香「プロデューサーさんっ……!」

P「大丈夫、俺が援護するよ」ニコッ

春香「あ、それは嬉しいんですけど……///」モジモジ



春香「…………その、服、着てくれませんか?」



P「…………あ、素っ裸だった」



伊織「……まったく、何もかも台無しよ」

真「はは、まあ、そういうところがプロデューサーって感じもするけどね」

P「す、すまん」ゴソゴソ

237: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:44:05.94 ID:KJBDXc7gO

P「……それで、誰が律子を探しに行くかなんだが……」

あずさ「あの、私も行ってもいいですか?」

千早「春香が行くなら私も行きます」

P(オールマイティのあずささんに前衛の千早か。結構バランスが取れているかもしれない)

P「うん、分かった」

P「あとは……」

伊織「……どうせ貴音を待ってる人間が必要なんでしょ? 船を山に登らせるわけにもいかないし、私が残ってあげるわよ」

真「ボクも残ります。小鳥さんに会ったらよろしくって伝えてください」

亜美「……ま、亜美たちもひびきんを待ってなきゃならないし」

真美「真美たちみんなでフルボッコじゃ、ピヨちゃんもカワイソーだしね!」

P(亜美と真美が残ってくれるなら、うまい具合に魔道士が別れるな)

P「すまないな、みんな。美希の事をよろしく頼む」

伊織「了解。文句のひとつでも言ってやりなさいよね。あのバカ事務員に」

P「ああ、わかった。……それじゃ、行こうか」

春香・あずさ・千早「はい!!」

238: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:47:59.62 ID:KJBDXc7gO
ー 月の民の館 クリスタルルーム ー


ヒュッ…!

ガキィン!!


やよい「雪歩さんっ!」


雪歩「……だ、大丈夫、ちょっとびっくりしちゃったけど、なんともないよ」

雪歩「やよいちゃんは律子さんをお願いね?」


やよい「うぅ、でも……!」

律子(すごいわね。小鳥さんのあの恐ろしく重い一撃をまったく通さないなんて)


雪歩(……うん、平気。怖いけど、この鎧が私を、みんなを守ってくれる……!)


コトリマインド(なんともない……かぁ。流石はアダマンアーマーね)

コトリマインド(でも、それじゃ面白くないわねー)



コトリマインド「……雪歩ちゃんが鉄壁なのは分かったわ。でも、守りに徹しているだけじゃ私は倒せないわよ?」


雪歩「わ、私は別に、小鳥さんを倒したいわけじゃないですから……」


やよい「雪歩さん……」

律子「雪歩……」

239: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:50:36.28 ID:KJBDXc7gO

コトリマインド「優しいのね、雪歩ちゃん。でも、その甘さは致命傷になりかねないわよ?」

コトリマインド「………」ブゥン


雪歩「えっ……?」


律子(あれは……!)

律子「逃げなさい雪歩! あれは危険だわ!」


雪歩「……いいえ、逃げませんっ!」グッ

雪歩(私が逃げたら、やよいちゃんと律子さんを守る人がいなくなっちゃいますから!)


やよい「………」

やよい「……!」グッ


コトリマインド「いくらアダマンアーマーといえど、無属性の、しかも召喚魔法最強の攻撃を完全に防ぐのは不可能、と私は見てるわ」

コトリマインド「……覚悟はいい?」


雪歩「うぅっ……!」ガシャン


コトリマインド「……メガフレア!!」



ブゥゥゥン…


ーーカッーー!


ドドドドドドドドドッ!!

240: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:53:24.47 ID:KJBDXc7gO

雪歩「うぅああああっ!?」


律子「ゆ、雪歩!?」


雪歩(身体が、熱い……! 溶けちゃいそうなぐらい熱いよ……!)

雪歩(……でも、ここで私が逃げたら……!)

雪歩「うぅっ……!!」グッ


コトリマインド「頑張るわね、雪歩ちゃん。でも、いつまで耐えられるかしら……?」ググッ


ゴオオオォォオオ!!


雪歩「ああああっ!」フラッ


やよい(ど、どうしよう!? このままじゃ雪歩さんが……!)

やよい(でも、小鳥さんをきずつけるなんてわたしには……!)


律子「……やよい」ギュッ

やよい「! ……律子さん」

律子「あの小鳥さんは、小鳥さんであって小鳥さんではない、偽物よ……」

律子「だから……雪歩に、力を貸してあげてちょうだい」

やよい「で、でも……」

律子「あの人を倒さなければ、本物の小鳥さんに会いに行くのは不可能なの。お願い……!」

やよい「うぅ……」

やよい「……わ、わかりましたっ!」

241: ◆bjtPFp8neU 2016/05/29(日) 23:58:27.49 ID:KJBDXc7gO

やよい「いふりとさん、出てきてくださいっ!」バッ


イフリート「……っしゃあああっ!! 地獄の火炎っっ!!」


ボオオォォオオ!!


コトリマインド「……む、火の召喚獣『イフリート』ね。でも、それで私のメガフレアに対抗しようなんて……」


やよい「……しるふちゃん! 出てきてくださいっ!」バッ


コトリマインド「…………え?」


スゥゥーー…


シルフ「……はぁ、やっとこさ私の出番ですか。待ちくたびれたんですよ〜?」

シルフ「……風の囁きっ!」


ブワッ…!


コトリマインド「召喚獣を……」


律子「同時に二体……!」

242: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:01:02.17 ID:qk5HBLGYO

雪歩「や、やよい……ちゃん……」ヨロッ


やよい「火は、風を受けるとごぉーっ!! ってもっとはげしくもえるんです!」


ボオオオオォォオオ!!


コトリマインド「なるほど、考えたわね……!」

コトリマインド「でも、それくらいじゃあ私のメガフレアは押し返せないわよ?」


やよい「だったら……」

やよい「お母さん、しばさん、出てきてくださいっ!!」バッ


スゥゥーー…


ミストドラゴン「……ミストブレス!」


シュゥゥ…! キラキラキラ…!


シヴァ「……絶対零度」


コォォォ… パキィン!!


コトリマインド「っ!? 霧と氷で、身動きが取れない……!」


雪歩「……ぅあ……」ドサッ

律子「ゆ、雪歩!」ダキッ

律子「体温が上がり過ぎてる……! 早く回復しないと……!」

律子(……でも、今のやよいの攻撃で小鳥さんのメガフレアを止める事ができたみたい)

律子(やよい……強くなったわね)

243: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:05:51.43 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「……驚いたわね、立て続けに4体も召喚するなんて」

コトリマインド「やよいちゃん、いつからそんな事できるようになったの?」


やよい「えっと、わかりませんけど、なんとなくできそうな気がしたんです」


コトリマインド(複数同時召喚か。ちょっと厄介だなー。召喚魔法は一番攻撃力が高いのよねー)

コトリマインド(まあでも、どうせ私は分身だし、やよいちゃんの本当の強さをここで見極めるのもいいかもしれない)


やよい「小鳥さんのにせものさん、わたしが相手になりますっ!」ビシッ


コトリマインド「ふふふ、やよいちゃんひとりで大丈夫かしら……?」

ズズズ…



律子「! 小鳥さんの身体が消える……! やよい、気をつけて!」


やよい「は、はいっ!」


やよい「えっと、えっと……」キョロキョロ



コトリマインド「……後ろよ、やよいちゃん」

ヒュッ…


やよい「はわっ!」ダッ


コトリマインド「あら、うまく避けたわね。でも……」

ドゴォ!


やよい「あぅっ……!」ヨロッ


律子「や、やよい!」


やよい「うぅ……いたいです……」


コトリマインド「ふむ……」


244: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:09:34.62 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「4体召喚なんてやってみせた後にそれだけ動けるのはすごいと思うけど……」

コトリマインド「もともと召喚士は前衛で戦うタイプじゃないものね。近接戦闘に関しては話にならないわ。律子さんの足元にも及ばないわねぇ」

コトリマインド「召喚魔法さえ使われなければ、やよいちゃんは私の敵じゃない」

コトリマインド「あなたは、他の誰かに守られていないと自分の力が発揮できないのよ」


やよい「!」


コトリマインド「どうする? まだ戦う意思はある?」

コトリマインド「律子さんは怪我で動けないし、雪歩ちゃんも戦線離脱。やよいちゃんひとりで私に勝てるのかしら?」ニヤリ


律子(私の時もそうだったけど、小鳥さん、かなりこちらを煽ってくるわね。精神攻撃のつもりなのかしら……)

律子(……ん? 精神…攻撃……?)


やよい「こうさんなんてしません!」

やよい「だって、わたしがこうさんしちゃったら、小鳥さんの遊ぶ相手がいなくなっちゃいますから」


コトリマインド「へぇ……」


やよい「なんだか、今の小鳥さんは浩司みたいです」


コトリマインド「……えっ?」

245: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:13:17.72 ID:qk5HBLGYO

やよい「うちの浩司も、さみしくなるとよくダダをこねるんです」

やよい「小鳥さん、この世界でずっとひとりぼっちでさみしかったんですねよね? だから、誰かにかまってもらいたかったんですねっ」

やよい「わたし、やっと分かりました!」


コトリマインド「あ、あの、やよいちゃん?」


やよい「だから……わたしでよかったら、相手になります!」


コトリマインド「え、えーっと……なんか誤解してないかしら?」


やよい「いえ、だいじょーぶです! わたし、よく弟の相手をしてますから、こうゆーのなれてるんです!」キリッ


コトリマインド「いや、確実に誤解してるみたいなんだけど……」

コトリマインド「……まあいいわ。とりあえず逃げないで戦ってくれるみたいだし」

コトリマインド「それじゃあ、遊びましょう!」


やよい「はいっ!」


やよい「……!」ゴゴゴ


コトリマインド「うふっ、召喚する隙なんてあげないわよ?」ダッ


ガラッ…


コトリマインド「きゃあっ!?」

ドサッ!


コトリマインド「いたた……。もう、なんでこんなところに落とし穴が空いてるのよぅ!」

コトリマインド「…………はっ!?」


雪歩「はぁ、はぁ……!」チャキッ

雪歩「やよいちゃん、あとはお願いっ……!」

ドサッ


コトリマインド「ゆ、雪歩ちゃんいつの間に!?」


やよい「雪歩さん、ありがとうございますっ!」


やよい「うっうーーーーーーー!!」パァァ



コトリマインド(さっきやよいちゃんと話しているわずかな隙に落とし穴を掘ったっていうの?)

コトリマインド(やられたわ……!)

246: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:17:31.32 ID:qk5HBLGYO

スゥゥーー…


コトリマインド(次は何が来るの……? ラムウ? それともまたイフリート?)



「……クク、ようやく私の出番か! 待ちわびたぞ、高槻やよい!」

「……数少ない出番だ、私も微力を尽くそう」


コトリマインド「!!」



「……エンジェルちゃんたち、回復してあげるよ☆」

「……ケアルダ!」

シャララーン! キラキラキラ…


雪歩「あ……ありがとうございますぅ」


コトリマインド「ど……」

コトリマインド「どういう事ですか!? 私、こんなの聞いてないですよぅ!」

コトリマインド「高木社長に黒井社長、ジュピターのみんなまで!!」


高木「どうもこうもない。今起きている事が現実だよ、音無君」

黒井「フン、妙な事に巻き込まれたが、それももう終わりだな」

冬馬「あいつが765プロの事務員か?」

翔太「つまり、ラスボスってわけだね」

北斗「………」



コトリマインド「そ、そんな……社長たちまで私の敵だなんて……」ガクッ


律子「小鳥さん……」

冬馬「なんつーか、女をよってたかってってのは性に合わねーな……」

北斗「ああ、さすがにこの状況はな」

翔太「でも、あの人を倒さなきゃ元の世界に帰れないんだよね?」

高木「音無君、こんな事になって私もなんと言っていいかわからない。しかし、何か方法はきっとあるはずだ」


コトリマインド「……ステキですっ!!」


高木「……は?」

247: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:21:08.24 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「ステキ過ぎますよぅ、こんなの!」

コトリマインド「そりゃそうよね。私がこっちへ来ているんだもの、社長たちも呼ばれる可能性だって充分にあったのよね!」

コトリマインド「うふふ、まさか社長たちとも戦えるなんて! ああもう、私、嬉しくて嬉しくて……」


冬馬「な、なんだよあいつ、やる気満々かよ!」

北斗「思ったより逞しい人なんだなぁ」

律子「ったく、あの人はもう!」

高木「………」



黒井「御託はいい。さっさと始めるぞ」ゴゴゴ


コトリマインド「そうですねっ」

コトリマインド(……さっき伊集院君が回復魔法を使ってた。つまり、ジュピターは三人揃ってアスラ。そして高木社長は大っきな剣を腰に差してるから、多分オーディンね)

コトリマインド(って事は黒井社長は……)


高木「……黒井」

黒井「なんだ? まさか私の邪魔をするつもりか?」

高木「いや、そうではないんだが……」

黒井「元の世界へ戻るためにヤツを倒さねばならんのだろう? いい加減にお前も腹を括るんだな!」

高木「……そう、だな」



黒井「クク……!」

ザァァ…


雪歩「水が、黒井社長の周りに集まって……!」

律子「もしかして、津波……?」

やよい「あの、黒井社長、あんまりいたくしないであげてください!」


黒井「バカも休み休み言え! そんな器用な真似ができるか!」

黒井「覚悟はいいか、音無小鳥……! 私の津波の藻屑にしてやろう!」


コトリマインド(幻獣王、リヴァイアサン……! 相手にとって不足なし!)



黒井「……大海衝!!」


ザァァァァ…!!


コトリマインド「うふふふ……メガフレア!」


コォォ…



…ドッゴオオオオォォオオン!!!

248: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:27:16.64 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「………」


黒井「………」

黒井「……ち、相殺したか」


コトリマインド「さすがリヴァイアサン……いえ、黒井社長ですね! まだ本気を出してないとはいえ、私のメガフレアと相討ちなんて」


黒井「……フン」

高木「黒井、今のはわざとか?」

黒井「妙な勘ぐりをするんじゃない。私の大海衝とヤツの魔法が同程度の威力だったというだけだ。高槻やよいに言われたからといって私が手加減などするわけがなかろう!」

高木「ふふ、そうか」

高木「……さて、それでは次は私の番だな」スッ


コトリマインド「高木社長……」


高木「心中を察するよ、音無君。本当ならば私が君と代わってあげられれば良いのだが……」


コトリマインド「あら? もう勝ったおつもりなんですか? 勝負はまだ始まってもいませんよ?」


高木「………」


コトリマインド「それに、社長の剣は私には通用しません。残念ですけど、それがこのゲームのルールですから」


高木「……そうなのかね?」


コトリマインド「ええ。ボスキャラにはボス耐性っていうのが設定されていて、中ボスの私にはあなたの斬鉄剣……即死攻撃は効かないんです」


高木「そうか……それは困ったねぇ」


雪歩「ほ、本当に効かないんでしょうか? 社長、すっごく強そうなのに……」

律子「このゲーム関しては、今この場で小鳥さんが一番詳しいでしょうから、きっと小鳥さんの言う通りなんでしょうね」

やよい「社長……」ギュッ

249: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:31:54.36 ID:qk5HBLGYO

高木「………」チャキッ


コトリマインド「無駄だと分かっていてもやるんですね? 社長、あなたはもう少し賢い方だと思っていました」


高木「……彼の話だと、このゲームのストーリーは展開が大きく変わってきているらしい」


コトリマインド「……えっ?」


高木「だったら変わるんじゃないかな? ……そのルールとやらも」

高木「悪く思わないでくれたまえ」スッ


高木「……斬鉄剣!」ビュンッ


…ズバァン!!



コトリマインド「……っ!」

コトリマインド「………」

コトリマインド「………」

コトリマインド「…………ほっ」

コトリマインド(社長が変な事言い出すから少しドキドキしちゃったわ)

コトリマインド(でも、なんともない。斬鉄剣はやっぱり不発だったわね)


冬馬「……おい、あの事務員、無傷だぜ」

翔太「そう……みたいだね」

北斗「高木社長も手加減したのか……?」

250: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:36:39.08 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド「ふふっ、だから言ったでしょう? 社長の剣は私には効きませんって」

コトリマインド「今度はこちらの番ですね。覚悟してください!」

コトリマインド「……メガフレア!」



ーシーーン…ー



コトリマインド「……あれ? 」



雪歩「小鳥さんの魔法が発動しない……?」

やよい「どうしちゃったんでしょーか……?」

律子(まさか……そんな事があり得るの……?)

律子(でも、このタイミング、『そう』としか考えられない)

律子(もし本当にそうだとしたら……まるで手品ですね、社長)



コトリマインド「……メガフレア!」

コトリマインド「………」

コトリマインド「な……なんで!? なんで出ないのよぅ!」


高木「それはそうだろうね。私が斬ったのは……」



高木「…………君の、魔力だから」



コトリマインド「…………はい?」


251: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:43:18.76 ID:qk5HBLGYO

コトリマインド(魔力を、斬る? そんな技聞いた事ないわよ!)

コトリマインド(でも、現にメガフレアが発動出来なくなってる)

コトリマインド(全てのMPを奪われたわけではなさそうだけど……)

コトリマインド(やられた。まさか社長にそんな事が出来るなんて……)


黒井「フン、やはり自分の部下に傷は付けられないか。甘いな、高木よ」

高木「ああ。……そうかもしれないな」

高木「律子君、萩原君、高槻君。彼女を、よろしく頼んだよ」

黒井「音無小鳥、貴様の本体に伝えておけ。次は地獄を見せてやる、とな」

冬馬「高槻、負けんなよな!」

翔太「じゃあね〜」

北斗「チャオ☆」


やよい「みなさん、ありがとうございました!」


スゥゥーー…


雪歩「消えちゃいました……」


252: ◆bjtPFp8neU 2016/05/30(月) 00:46:01.76 ID:qk5HBLGYO

律子「とにかく、これで形成逆転ね。やよい、雪歩、行くわよ!」

雪歩「はいっ!」

やよい「は、はい……」ヨロッ

ドサッ

雪歩「や、やよいちゃん?」ダキッ

やよい「す、すみません……だいじょーぶです……」

律子「無理もないか。あれだけ立て続けに召喚魔法を使ったんだもの。やよいは休ませておくしかないわね」

律子「雪歩、やよいのことお願い」

雪歩「はい、わかりました!」


律子「……さて」チラ


コトリマインド「ふりだしに戻る、って感じですかね?」


律子「そんな事はないです」

律子「最初よりもあなたの体力は削れた上に、メガフレアを撃てる魔力はもう残っていない」

律子「対してこちらは私と雪歩の体力は回復した。やよいのおかげで私たちがかなり有利に立てましたよ」

律子(私ももうメテオを撃てる魔力は残ってないけど、充分だわ)


コトリマインド「それじゃ第二ラウンド、行きますか?」


律子「……望むところですっ!」グッ

257: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 18:48:14.00 ID:A+/1OrpMO

律子「……と思ったけど、小鳥さん。第二ラウンドを始める前にもう一度聞かせてください」

律子「どうしても私たちは戦わなくてはならないんですか?」

やよい「!」

雪歩「………」


コトリマインド「………」


律子「雪歩も言ってましたけど、たとえゲームの世界とはいえ、自分の手で仲間を傷つけるのは正直心が痛みます」

律子「もしも戦う以外に元の世界へ帰れる方法があるなら、私はそれを試したい」

律子「これは私だけじゃなくて、多分みんなが考えている事なんです」


コトリマインド「………」

コトリマインド「そうですね。まあ、普通ならそういう考えになりますよね」

コトリマインド「でも、きっと無理です。私たちが元の世界へ帰る方法は、『このゲームをクリアすること』。つまり、ラスボスである私を倒すしか道はないんです」


律子「確かに、プロデューサーによればそういう話でしたけど、でも」


コトリマインド「律子さんちょっと待ってください」

コトリマインド「今気になったんですけど、プロデューサーさんって何の役なんですか? 味方キャラはアイドルの子たちで埋まってるし、他に重要なキャラはいなかったと思うんですけど」

コトリマインド「社長たちみたいに召喚獣だとしても、あと私が見ていない召喚獣はラムウだけ。……まさかラムウの役って事はないですよね?」

258: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:09:34.89 ID:A+/1OrpMO

律子「あー……」

やよい「あの、小鳥さん。プロデューサーはらむさんじゃないですよ?」


コトリマインド「じゃあ、いったい何の役なの? 彼もこの世界へは来ているのよね?」


律子「そういえば、小鳥さんには結局隠したままでしたね。実はプロデューサーは、べろちょろなんです」


コトリマインド「? ……べろ…なんです?」


律子「だからべろちょろですよ。ほら、やよいのポシェットの」


コトリマインド「あー、あのかえるの……」

コトリマインド「って待ってください。FF4にべろちょろなんて出てこないんですけど?」


律子「彼曰く、『自分は演じる役の無かったイレギュラー』らしいです」

律子「なんだか複雑な事情があったみたいですけど、私も詳しい話は知らなくて」

律子「とにかくプロデューサーはべろちょろで、普段は誰かの首にぶら下がってます」


コトリマインド「ええぇ……でもべろちょろって。ポシェットって。それじゃあ何にもできないじゃないですか?」


雪歩「あ、あの、一応亜美ちゃんの魔法で時々人間になったりはしてるんですけど……」


コトリマインド「魔法? いったい何の魔法で?」


律子「トード、でしたっけ。人間をカエルにしたり、カエルから人間に戻したりするアレです。亜美しか使えない魔法なんですけどね」


コトリマインド「………」


259: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:13:49.76 ID:A+/1OrpMO

コトリマインド(なんで私は今の今まで忘れていたんだろう、プロデューサーさんの事)

コトリマインド(そっか。プロデューサーさんはずっとみんなと行動していたのね)

コトリマインド(私がゼムス役だって事も、もう知っているわよね)

コトリマインド(どう思ったかな、私の事)

コトリマインド(調子に乗りすぎだろあの事務員、とか思われるてるのかなぁ……)

コトリマインド(はぁ~あ……少しはっちゃけ過ぎちゃったかしら)

コトリマインド(……でも、これを利用しない手はないわ)

コトリマインド(私と刃を交えたとはいえ、今ひとつ煮え切らない律子さんたちの態度。それはおそらく、まだ私を倒す覚悟がちゃんとできてないから)

コトリマインド(それなら、みんなを焚きつけてあげなきゃね)

コトリマインド(イヤでも私と戦いたくなるように)


律子「あの、小鳥さん?」


コトリマインド「……ああ、ごめんなさい。少し考え事をしてました」

コトリマインド「さ、始めましょう、律子さん」スッ


律子「……どうしてもやらなければならないんですか?」


コトリマインド「道は、一つしかありませんよっ!」ダッ


律子「!」


260: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:19:10.25 ID:A+/1OrpMO

コトリマインド「えいっ!」ブンッ


律子「きゃっ!」ズサッ


律子「く……聞き入れてもらえませんか」


コトリマインド「私たちが戦う以外に道なんてありません。ですから律子さんも早く覚悟を決めてください!」


律子「………」

やよい「こ、小鳥さん……」

雪歩(覚悟……)


律子「……わかりました。私も本気を出す事にします」チャキッ


コトリマインド「あら、やっとその気になってくれましたか?」


律子「仲間にこんな事はしたくなかったけど……」ゴゴゴ


やよい「はわっ、律子さんのまわりになんだか黒いもやもやが出てきました!」

雪歩「あれって、春香ちゃんが暗黒騎士だった時と同じやつだ……!」


コトリマインド(……ようやく使う気になりましたか、暗黒剣)

コトリマインド(前にゾットの塔で私が律子さんを操って使った時はことごとく春香ちゃんに防がれちゃったけど、果たしてどの程度の威力なのかしら)


律子「……行きます! ……暗黒剣ッ!!」ブンッ


ズオオォォ…


コトリマインド(! ……これは……!)


ズドドドドドドーーン!!!


261: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:23:31.82 ID:A+/1OrpMO

律子「………」


やよい「り、律子さん、すごいです……!」

雪歩(こんなだったっけ……。春香ちゃんの使っていた暗黒剣はもっと普通の感じだったような……)

雪歩(律子さんの暗黒剣……なんだか、怖い)


律子(つい力が入っちゃったわ。本当はこんな事したくないのに)

律子(まあでも、今の小鳥さんならこのくらい耐えるんでしょうね)




コトリマインド「……いたたた……」ヨロッ

コトリマインド「さすがにききましたよ、今のは……」


律子「効いてくれないと困ります。私だってここまで魔物と戦って来たんですから」


コトリマインド「ふ、ふふふ……」

コトリマインド「やっぱり私に傷を付ける可能性があるのは、律子さんですね」

コトリマインド「さあ、次はこちらの番です」スッ


律子「………」チャキッ

律子(さて、次は何をしかけて来る?)

律子(社長が小鳥さんの魔力を奪ってくれたおかげでメガフレアはない。フレアなら耐える自信はある。近接戦闘も、伊集院北斗に体力を回復してもらったし、まあついていけない事はないと思う)

律子(大丈夫、私一人でもなんとかなりそうね)


262: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:28:48.17 ID:A+/1OrpMO

コトリマインド「……はっ!」ダッ


律子(まっすぐ来た!)


コトリマインド「ちぇすとぉ!」ブンッ


律子「ふっ!」ヒョイッ

律子(右ストレートはきっとフェイントで……)


コトリマインド「……はいっ!」クルンッ


律子(左上段後ろ回し蹴り! これを防いで反撃する!)


コトリマインド「……って考えているんでしょう?」ピタッ


律子「えっ?」


コトリマインド「……コンフュ」バッ


律子「あ……」ガクッ


やよい・雪歩「律子さんっ!!」


コトリマインド「うふっ♪ 接近戦は全部囮でしたー♪ 」

コトリマインド「いつまでも煮え切らない律子さん、ずるいですよ」

コトリマインド(私は、とっくに覚悟を決めたっていうのに……)


263: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:34:53.46 ID:A+/1OrpMO

やよい「律子さん、だいじょーぶですかっ!?」ガシッ

律子「ぅ…ぁ……!」

雪歩「何か様子が変だよ。さっきの小鳥さんの魔法のせいかも!」

律子「ぅう……!」

やよい「えっとえっと、それじゃなにかおくすりを……」ゴソゴソ

律子「……ぅあああぁぁっ!」ブンッ

ザシュッ!!

やよい「あうっ!?」ヨロッ

ドサッ!

雪歩「や、やよいちゃんっ!?」



コトリマインド「あら、一気に形成逆転ねぇ」



律子「ぅううう……!」チャキッ

雪歩(律子さん、正気を失っちゃったんだ……!)

雪歩「………」チラ

やよい「うぅ……」グッタリ

雪歩(やよいちゃんは負傷しちゃってる……)

雪歩(やよいちゃんを守りつつ、律子さんを元に戻さないと)

雪歩(私が、なんとかしなきゃ!)グッ


264: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:40:09.62 ID:A+/1OrpMO

律子「がああぁぁあっ!」ブンッ


ガキィン!

雪歩「うぅっ……!」ググッ

雪歩(すごい力……!)

律子「うあぁぁうっ!」ブンッ

バキッ!

雪歩「っ!?」

雪歩(……大丈夫、アダマンアーマーのおかげであんまり痛くない)


コトリマインド「……私がいるのを忘れちゃダメよー」ブンッ

ドゴォ!!


雪歩「うっ……!」ヨロッ


雪歩(……そ、そうだ、小鳥さんにも注意しなきゃいけないんだったよ……!)

雪歩(とにかく、小鳥さんの攻撃に耐えながら律子さんを……)チラ


律子「うぅ……!」クルッ

タタタタ…


雪歩「……あっ、律子さんがやよいちゃんの方に!」


265: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:44:19.51 ID:A+/1OrpMO

雪歩「り、律子さん待ってくださいぃ!」タタタ


律子「がああぁぁっ!」ブンッ



やよい「り、律子さん……!」



雪歩「やよいちゃんっ!」

雪歩(ま、間に合わないっ……!)



…ガキィン!!



やよい「…………えっ?」

266: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:50:32.14 ID:A+/1OrpMO

春香「っ……!」ギリッ


律子「ううぅぅ……!」ググッ



雪歩「……は、春香ちゃんっ!?」

やよい「春香さんっ!」


春香「やよい、雪歩、ごめんね、待たせちゃって! お姉ちゃんの事は私に任せて!」



雪歩「う、うん、ありがとう!」



コトリマインド「来たわね、春香ちゃんっ……!」

コトリマインド(……おいしいところを持ってくなー)



コトリマインド「雪歩ちゃん、これで私との戦いに集中できるわね?」

コトリマインド「こっちも楽しみましょう?」ダッ


雪歩「ううっ……!」チャキッ


コトリマインド「きえーーーっ!!」ブンッ


「ーーはっ!」


ガキィン!!


雪歩「!」


267: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 21:55:19.57 ID:A+/1OrpMO

千早「萩原さん、私も手伝うわ!」ググッ


雪歩「千早ちゃん!」



コトリマインド「……いらっしゃい千早ちゃん。お久しぶりね……!」ググッ

千早「……そうですね、音無さん。お変わり無いようで安心しました」ググッ

コトリマインド「なんだかずいぶん余裕なのね……?」

千早「別にそういうわけではありませんが……私は萩原さんのようにあなたと戦う事を躊躇したりはしません……!」

コトリマインド「!」

千早「…………はっ!」タンッ

…フワッ


コトリマインド「『ジャンプ』! 竜騎士の固有アビリティキターーーー!!」


千早「…………ふっ!」

ザシュッ!!


コトリマインド「ごはぁ!!」



…スタッ

千早「………」

千早「あの、音無さん。真面目にやってもらえませんか? 今の攻撃、避ける事くらいできましたよね?」ジト


コトリマインド「ぐふ……うふふふ……」

コトリマインド「ハンデよハンデ。千早ちゃんがいくら強くっても、一人じゃ私には敵わないでしょうし」


268: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:00:05.26 ID:A+/1OrpMO

千早「そうですね。私一人なら敵わないと思います。でも、もともと音無さんは萩原さんと戦っていたのでは?」


コトリマインド「それはそうだけど……」

コトリマインド「……あら? そういえば雪歩ちゃんは……?」キョロキョロ


ズズズ…


コトリマインド「……ん?」


ザバァッ!!


雪歩「小鳥さん、ごめんなさいっ!」ブンッ

バキィ!!


コトリマインド「うわらばっ!?」ヨロッ



雪歩「て、撤退ですぅ!」タタタタ



千早「萩原さん、大丈夫?」

雪歩「うん、アダマンアーマーのおかげでなんとか……」

雪歩「それよりありがとう千早ちゃん。律子さんが変な魔法にかかっちゃってどうしようって思ってたところだったんだぁ」

雪歩「あっ、そういえばやよいちゃんが律子さんに斬られて怪我しちゃって!」

千早「高槻さんなら心配いらないわ」チラ


269: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:04:08.02 ID:A+/1OrpMO

あずさ「ケアルガ~」

シャララーン! キラキラキラ…

やよい「う……!」

P「やよい、大丈夫か!?」ゴソゴソ

P(最近全然使ってなかったけど、一応『いやしの杖』を持ってて良かったな)

P(ケアルガの回復量に比べたら微々たるものだけど)

P「それっ!」シャン

シャララーン! キラキラキラ…

やよい「……うぅ、あずささん、プロデューサー、ありがとうございます……」





雪歩「あずささん、プロデューサー!」

千早「さあ、私たちは小鳥さんを迎え撃ちましょう」

雪歩「う、うんっ!」チャキッ



コトリマインド(新たに合流したのは春香ちゃんに千早ちゃん、あずささんか……)

コトリマインド(ゲームには無いパーティ編成だけど、プロデューサーさんの考えかしら……)

コトリマインド(ともかく、今の私はプロデューサーさんを手に入れる事を考えないといけないわね)

コトリマインド(人数が増えてちょっと大変だけど、やるしかない)

コトリマインド「……さあ、行くわよ!」


千早「望むところです!」チャキッ

雪歩「っ……!」ギュッ


270: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:10:22.40 ID:A+/1OrpMO

律子「ぐぅっ!」ブンッ


春香「えいっ!」ガキィン

春香「やあっ!」グイッ


律子「う……!」ヨロッ


春香「お姉ちゃん……」

春香(意識がないみたい。まるでゾットの塔で戦った時みたいな……)

春香(……もう、あんな思いはしたくない!)グッ




P(律子はまた音無さんに操られてしまったのか? まるでさっきまでとは別人みたいだ……)

P「あずささん、律子にエスナをお願いできますか?」

あずさ「は~い」

タタタタ…


あずさ「エスナ~」

シャララーン!


律子「………」

律子「あああぁぁあっ!」ブンッ

春香「わあっ!」ガキィン


あずさ「ごめんなさい、ダメだったみたいです……」

P「エスナが効かない? そんな無茶苦茶な!」


春香「プロデューサーさん、私に任せてくれませんか?」


P「春香? ……どうするつもりなんだ?」


春香「私ならきっとお姉ちゃんを元に戻せると思うんです」

P「え……?」

春香「大丈夫です。『ヤミちゃんが千早ちゃんを元に戻した』のを、私は見てましたから!」

P「……分かった。律子の事は任せる。ただし無茶はするなよ!」

春香「はい!」


271: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:16:41.08 ID:A+/1OrpMO

コトリマインド(プロデューサーさん……)

コトリマインド(ついにお会いできましたね。こんな形ですけれど)

コトリマインド(私の計画にはあなたが必要です。一緒に来てもらいますよ!)


千早「はっ!」ビュンッ

コトリマインド「おっと!」ヒョイ

コトリマインド「えいっ!」ブンッ

千早「……ふっ!」ガキィン

コトリマインド「……強くなったわねぇ、千早ちゃん……!」グッ

千早「いえ、私なんてまだまだです。これまでいろんな人たちと戦ってきて、それを思い知らされました」ググッ

コトリマインド「真面目ねぇ……!」クルンッ

ドガッ!!

千早「くっ……!」ヨロッ


雪歩「千早ちゃん!」

雪歩「えいっ!」ブンッ

コトリマインド「ふふっ♪ 」ガキィン

雪歩「うぅ……!」ググッ

コトリマインド「まさかスコップで戦う吟遊詩人がいるなんて。雪歩ちゃんらしいわねー」

雪歩「………」



千早「萩原さん、避けてっ!」

千早「……ホーリーランス!」バッ


キラキラキラ…!


雪歩「!」

コトリマインド「千早ちゃん! 上手く自分の武器を使っているわね……!」



…ドゴゴゴゴオオォォオオンッ!!



272: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:21:55.71 ID:A+/1OrpMO
ー 月の民の館 1F 図書室 ー


真「……ふっ、……ふっ」ググッ

亜美「………」

真美「………」

伊織「………」

美希「……zzz」

真「……ふっ、……ふっ」ググッ

伊織「……うるさいわね」

真「……ただ待ってるだけじゃヒマだし、筋トレぐらいしたって別にいいだろ?」グッ

真「それに余計な事を考えずにすむし、身体動かすと気持ちいいよ?」グッ

伊織「考える事が脳筋のそれなのよねぇ」ヤレヤレ

真「うるさいなあ、ボクの事をバカにするのはいいけど、脳筋をバカにするのは伊織でも許さないぞ!」

伊織「意味わかんないわよ」

亜美「のーきんって言われた事には怒らないんだね」

真美「まこちんはかわいいなぁ」

真「なんでもいいよ、もう」

真「……ふっ、……ふっ」ググッ


273: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:28:06.87 ID:A+/1OrpMO

真美「……ねえ、もしも今りっちゃんとピヨちゃんが戦ってるとしたらさ」

亜美「うん」

真美「どっちが勝つのかな」

亜美「えっと、それは……」

真美「どっちかが勝ったら、どっちかは負けるんだよね?」

伊織「そんなの当たり前でしょ。勝者が二人なんてあり得ないわよ」

真美「じゃあその、負けた方って……どうなるのかな?」

亜美「………」

伊織「………」

美希「……zzz」

真「…………よっと」スタッ

真「真美、心配かもしれないけど、今は黙って待つしかないよ」

真美「でも……」

真「大丈夫、きっとなんくるないさっ!」キリッ

真美「……ふふっ」

亜美「まこちんぜんぜん似てなーい」

真「い、いいだろ別に!」カァァ

伊織「………」


274: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:32:57.85 ID:A+/1OrpMO

伊織「……はぁ、しょうがないわね。真、私も付き合うわ、筋トレに」

真「えっ?」

伊織「アンタの言う通り、じっとしてたら余計な事ばかり頭に浮かんでくるもの」

伊織「ほら亜美、真美。アンタたちもやるのよ!」

亜美「うぇぇえ~!?」

真美「真美たちも~!?」

真「へへ、わかったよ」ニコッ

真「じゃあまずは軽めに腕立て500回、いっとこうか!」


伊織・亜美・真美「」


美希「……zzz」


275: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:37:30.61 ID:A+/1OrpMO

伊織「ぐぐ、このっ……!」ググッ

亜美「ひぃ~、キツイよ~!」ググッ

真美「真美たちこんなことしてたら、プロレスラーみたいになっちゃうよ~!」ググッ

真「だらしないなぁみんな。まだ200回もいってないじゃないか」

真「本当はこれを全部で20セット続けるんだけど、今日は5セットくらいにしておこうか?」ググッ

亜美「うあうあ~、5セットでも2500回じゃん! そんなのゼッタイムリだよ~!」ググッ

真「えっ、そう?」ググッ

真美「まこちんの鬼! 悪魔! モンク僧!」ググッ

伊織「……脳筋の、考えに、合わせた、私が、バカだったわ……!」ググッ

美希「……zzz」



ガタッ



真「……ん?」チラ




「…………ようやく、ここまで辿り着きまし…た……」

ドサッ



伊織「あ、アンタ……!」


276: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:43:29.61 ID:A+/1OrpMO

貴音「………」グッタリ


真・伊織「貴音っ!」タタタタ

亜美・真美「お姫ちんっ!!」タタタタ


真「どうしたんだよ? すごいボロボロじゃないか!」ダキッ

貴音「少々、修行を……」

亜美「しゅぎょー?」

貴音「はい。最後の決戦に向けてわたくし自身のぱわぁあっぷを図るため……」

貴音「それと、小さき者たちの尊い意思を継ぐために」

貴音「ぅ……」

真「た、貴音!?」

伊織「真美、頼むわよ」

真美「オッケー! ……ケアルガ!」

シャララーン! キラキラキラ…



貴音「……ふぅ、ありがとうございます、真美」

伊織「修行って、そんなに激しい修行だったわけ?」

貴音「そうですね。……ですが、これでわたくしも少しは皆の役に立てる様になったかと」

真「そんな事気にしなくても、今までだって貴音はすごい活躍だったじゃないか」

貴音「……いえ、小鳥嬢を侮ってはなりません」

貴音「恐らく小鳥嬢の力は、わたくしたちの総力を集結してやっと五分の戦いができるかどうか。各々の持てる力を今よりさらに高めるのは無駄ではないとわたくしは考えます」

伊織「……そういえば、私たちの中で小鳥と直接会った事があるのは貴音だけだったわね」

真「その貴音が言うんじゃ、きっとズレてない見立てなのかな」


277: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:48:36.77 ID:A+/1OrpMO

亜美「ねね、それよりやっとお姫ちんもとーちゃくしたんだし、亜美たちもみんなのトコに行かない?」

真美「だよね。もしかしたらホントにピヨちゃん来てるかもしんないし」

貴音「……ええ、どうやらその様ですね」ジッ

伊織「貴音、アンタ分かるの?」

貴音「すぐ近くに、小鳥嬢のものに限りなく近い邪悪な気配が一つ感じられます」

亜美「やっぱり!」

貴音「しかし、似てはいますが、恐らく小鳥嬢本人ではないでしょう。以前わたくしが対峙したものほど威圧感を感じません」

真「じゃあ、さっき亜美と真美が言ってたみたいに本当に小鳥さんの分身だったりするのかな」

貴音「分身ですか。……なるほど、そう例えるのが近いかもしれませんね」

真「……どうする?」チラ

伊織「そんなの決まってるじゃない。私たちも行って、小鳥に文句言ってやりましょ!」

亜美「よし、決まりだね!」

真美「そんじゃ行きますか!」

貴音「……待ってください」

亜美・真美「えっ?」

貴音「わたくし、実は大変お腹が空いております」キリッ

伊織・真・亜美・真美「ですよねー……」

美希「……zzz」


278: ◆bjtPFp8neU 2016/06/30(木) 22:54:38.84 ID:A+/1OrpMO


響「ふっふーん! そんな事だろうと思ってちゃんと用意しておいたぞ!」



真「響! 今までどこにいたのさ?」

響「完璧な自分は、今まで貴音のために食事を作ってたんだ!」ドヤッ

亜美「おお、そーだったんだね!」

真美「ひびきんかしこい!」

伊織「こんな状況で単独で動いてたのは問題だと思うけど、まあ結果オーライね」

響「さ、貴音。自分と月の民で作った特製料理だぞ!」スッ

貴音「響……恩に着ます……!」

ガツガツモグモグ…



真美「あ、そーいえばそろそろミキミキ起こしたほーがいいかな?」

亜美「そだね。もうけっこー長いこと寝てるし」

伊織「寝かせときなさいよ。美希は春香を救出するために大活躍だったみたいだし」

真美「んー、でも……」

伊織「多分必要な場面になったら自分で起きるんじゃないかしら。それに、運搬にはうってつけの脳筋がいるから心配はいらないわよ」チラ

真美「それもそっか」

真「なんか、かなりヒドイこと言われてる気がするなぁ。別にいいけどさ」

貴音「お待たせしました。それでは参りましょうか」フキフキ

伊織「食べ終わるの早すぎでしょうが!」ビシッ

貴音「伊織、今は一刻を争います。つっこみを入れている暇など無いかと」

伊織「なんで私が咎められなきゃいけないのよっ!」

響「よし、みんながいつもの調子に戻ったところで、行くか!」

亜美・真美・真「おー!!」

伊織「はぁ……」


282: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:08:11.40 ID:5d0dgUrZO
ー トロイアの町 パブ『迷宮』 ー


高木「……『彼女』と戦った感想はどうだい?」

黒井「……お前はどうなんだ、高木よ」

高木「そうだな……」

高木「正直なところ、私はあれが彼女の全力だったとは思えない。まだ実力を隠している気がするよ」

黒井「同感だ。『あれ』はただの前座に過ぎんのだろうな。まるで手応えが感じられかった」

高木「その割には、お前も音無君の力に合わせて技を使っていたようだが?」

黒井「フン……」グビッ

高木「やはり手加減したのか」

黒井「お前に言われたくはないな。……何が『魔力を斬った』だ」

黒井「お前も彼女を傷付ける勇気が無かった。そうだろう?」

高木「………」グビッ


高木「私は不安でならないんだ。彼女たちが争う事が」

高木「なぜ、あんなに仲の良い彼女たちが争わなければならないのか」

黒井「今さらそんな事を考えているのか? 方法は一つしか無いのだろう? だったら進まねばなるまい」

黒井「後ろ向きな考えなど、お前には似合わんぞ」

高木「はっはっは! まさかお前に慰められるとは思わなかったよ」

黒井「っ……ば、バカも休み休み言え! なぜこの私がお前を慰めなければならない!?」

高木「いや、気持ちはありがたく受け取っておくよ、黒井」

黒井「取り消せ! 今すぐその言葉を取り消せ!」

ギャーギャー…



翔太「あの二人、なんだかんだ言って仲良しだよねぇ」

北斗「そうだな。見てて微笑ましいよ」

冬馬「あれが男の友情ってヤツなのか?」

翔太「あれ? 冬馬君ひょっとして『そっち』方面も興味あるの?」

冬馬「んなワケねーだろ!」ガタッ

翔太「わ、ちょっと! ゴメンって! 急に立ち上がらないでよー!」ヨロッ

北斗「二人とも、オレたち一心同体だって事忘れてないか?」フラッ

ギャーギャー…



マスター(うーん、どう見ても人間じゃないよなー、あのお客さんたち……)


283: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:13:03.30 ID:5d0dgUrZO
ー トロイアの城 受講室 ー


長老「……というわけで、火と水は相反し、風と土もまた然りじゃ」

長老「この属性の関係性は黒魔法の基礎となる。しっかりと頭に叩き込むようにな」


「はーい!!!」


生徒1「うあうあー、むずかしくてゼンゼン覚えらんないよー」


長老「!?」


生徒1「ねえねえおじいちゃん、こんなお勉強なんかよりさ、ジッセンで教えてくれたほーが早いって思うよ?」


長老「………」


生徒2「お、おい、あんまり先生を怒らせんなよ?」

生徒1「なんでー? 別に怒らせるつもりはないんだよー」

生徒2「あのな、先生はすごく偉い人なんだ。あの『あいどる大戦』で人類のピンチを退けた英雄の一人なんだぞ?」

生徒1「えっ? マジ!? うひゃー、おじいちゃんってすんごい人だったんだねー。私、見直しちゃったよ!」


長老「お主……」


生徒1「ん? なーに?」


長老「………」

長老「……いや、なんでもない。今日の講義はここまでじゃ」


284: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:15:18.95 ID:5d0dgUrZO
ー トロイア城 東の塔 屋上 ー


長老「…………ふぅ」

長老(ワシは何を期待したのじゃ)

長老(アミとマミはすでに月へと旅立ってしもうた。もう、会う事など叶わないというのに……)

長老(ワシに出来る事は、あの娘たちが残してくれたこの平和を守る事)

長老「ゴホッ、ゴホッ!」

長老(……残された時間は、あまり長くはないようじゃな)



「…………あら?」



ものまね士「おじいさんじゃないですか!?」

長老「そなたは……」

長老「久しいのう。元気でやっとるか?」

ものまね士「ええ、おかげさまで!」


285: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:17:28.14 ID:5d0dgUrZO

ものまね士「あの人もようやく仕事に慣れてきたみたいで、家に帰ってくると私たちに色んな話を聞かせてくれるんですよ?」

長老「ふふ……幸せそうで何よりじゃ」ニコッ

長老「…………ん? 私『たち』?」

ものまね士「えへへ、実は……」ナデナデ

長老「……まさか、やや子が出来たのか!?」

ものまね士「はい……///」

長老「なんとまあ……めでたいのう!」

ものまね士「えへへ、ありがとうございます!」

長老「……うん? でも、計算すると……」

ものまね士「や、ヤボな事は考えちゃダメですよっ!?」ガシッ

長老「ひゅ、ひゅまんはった……」



タタタ…



トロア「……はぁ、はぁ……やっぱりここにいた!」


287: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:19:36.71 ID:5d0dgUrZO

ものまね士「あっ……」

長老「おお、トロア殿。お勤めご苦労じゃな」

トロア「これは長老殿、ご無沙汰しております」ペコリ

トロア「……と、今はそれどころでは無いのです」

トロア「ものまね士殿! そのような身重の体でこんなところまで来て! 子供に何かあったらどうするおつもりですかっ!?」

ものまね士「すっ、すみません、トロアさん。でも私、最近じゃ薪割りもさせてもらえないし、このままじゃ身体が鈍って仕方ないんですよぅ……」

トロア「出産とは、そういう心の緩みで失敗してしまうのですよ!?」

長老「トロア殿の言い分が正しいのう。さ、ものまね士殿、自宅に戻られた方が良いぞ」

トロア「最近魔物も大人しくなりつつあるとはいえ、まだまだ一人歩きは物騒です」

トロア「私が肩をお貸ししますから」スッ

ものまね士「うぅ、すみませんでした……」



…キラーン!



長老「…………む?」

ものまね士「何でしょう、あれ? 何かがこっちに向かって……」

トロア「ものまね士殿、私の後ろへ!」サッ


ヒュー…



ズドオオオォォン…!!



長老「……どうやら町の方へ落ちたようじゃな」

トロア「はい。何か胸騒ぎがします。姉上たちに知らせなければ!」

長老「その役目はワシが引き受けよう。トロア殿はものまね士殿を安全なところへ」

トロア「長老殿、どうかお気をつけて!」

長老「うむ」


288: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:23:30.23 ID:5d0dgUrZO
ー トロイアの町 広場 ー


「なんだ? すごい音がしたぞ?」

「見ろよ、でっかい穴が空いちまってる!」

「いったい何が空から落ちてきたんだ……?」

ザワザワ…



「……ぐ……痛たたた……」



カイナッツォ「……まったく、お前は着陸の仕方も知らんのか! 私をこんな目にあわせおって!」

スカルミリョーネ「……う、運動神経悪いのがいけな…い……」

カイナッツォ「なんだとっ!? ゾンビの分際で生意気な口を~!」

バルバリシア「スカルの言う通りよ。あなた、最近太ったんじゃない?」

カイナッツォ「バルバリシア、お前まで!」



「まっ……魔物だぁ~!」

「魔物が攻めて来たぞぉ~!」

「なんで魔物が!? 英雄たちによって平和がもたらされたんじゃないのかっ!?」



ルビカンテ「……注目されているな」

バルバリシア「それはそうでしょう。こんな派手な登場をしたんだもの」

カイナッツォ「ルビカンテ、ちゃんと上手くいくのだろうな? お前が言い出した事なんだぞ!」

ルビカンテ「ああ、問題ない……はずだ」

カイナッツォ「なんだその煮え切らない言葉は!」

スカルミリョーネ「……向かって来る…ぞっ……!」


289: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:27:01.18 ID:5d0dgUrZO

「魔物め、成敗してくれるっ!」

「オレたちだって戦えるんだ!」

「この国は守るぞっ!」

「うおおおおぉぉお!!」

ドドドド…



バルバリシア「まったく、品の無い連中ねぇ……」

バルバリシア「ふーっ……」


ビュオオッ…!



「うわあああっ!!」


ドサドサッ!



「お、おい、自警団がやられちまったぞ……!」

「と、吐息が、突風になった……!?」

「クソ、魔物め……!」



「待ってくださいっ……!」



「あれは……」

「ユキコ様だ……!」

「うおおおおお! ユキコ様、どうか我々をお守りください!」



ユキコ「………」



バルバリシア「あら? あなた、私とやるつもり?」

バルバリシア(フライパン……? 妙なものを武器にするのね、人間って)



ユキコ「あの、私はあなたたちと戦うつもりはありません。でも、これ以上人々を傷付けるっていうなら……」

ユキコ「わ、私が相手になりますぅっ!」チャキッ


290: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:30:01.30 ID:5d0dgUrZO

バルバリシア「相手になるって……あなた、震えてるじゃない」

ルビカンテ「おい、バルバリシア」

バルバリシア「わかっているわよ」

バルバリシア「ただ、人間と接するのは久しぶりだから、楽しくってつい、ね」



ユキコ「ううっ……!」



長老「ユキコ殿っ!」



ユキコ「長老さん!」

長老「魔物か……」チラ

長老(嫌な予感は的中するものじゃの)




バルバリシア「……あの老人は少し厄介そうね」

カイナッツォ「あの程度の死に損ないに臆したのか? ならば私が……」

スカルミリョーネ「……そ、そういう予定じゃな…い……」ガシッ

カイナッツォ「ふんっ……」



長老「この様な人里に、お主ら魔物が何用じゃ?」



ルビカンテ「………」



長老「返答次第では……」ポワ…

長老(四人ともかなりの手練れのようじゃ。ワシ一人ではちとキツいが……)



ルビカンテ「待て、お前たちと闘り合うつもりはない」



長老「……ならば、何をしに来た?」



ルビカンテ「……話がしたい」


291: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:33:25.31 ID:5d0dgUrZO
ー トロイア城 謁見の間 ー


アン「……どうぞ、お掛けください」


ルビカンテ「ああ」

バルバリシア「なんだかセンスの無い部屋ねぇ」キョロキョロ


アン「我が国は宗教国家ですので、あまり俗的なものは」


バルバリシア「……ふーん、ま、いいけれどね」

カイナッツォ「クソ、私だけ椅子に座れん!」ジタバタ

スカルミリョーネ「……す、少し大人しくしてなさ…い……」


トロア「魔物め……!」チャキッ

ドゥ「待て、トロア。姉上に任せるんだ」

トロア「し、しかし……!」

ドゥ「先の戦いで姉上も成長なされた。それはお前も分かっているだろう?」

ドゥ「それに、ヤツらが望んでいるのは『話し合い』だ。ここで手を出してしまっては、こちらから喧嘩を吹っかけるようなものだぞ」

トロア「く……」スチャ

長老「………」


292: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:35:55.92 ID:5d0dgUrZO

アン「自己紹介が遅れました。私はこのトロイアの国の第一の神官、アンと申します」ペコリ


ルビカンテ「……火のルビカンテ。訳あって今は魔物たちを纏める立場にいる」


アン「そうですか、あなたが……」

アン「それで、話というのは?」


ルビカンテ「……停戦協定を結びたい」


アン「まあ……!」

ドゥ「……ほう」

長老「ふむ……」

トロア「騙されてはなりません、姉上! きっとヤツらは油断した隙に我々人間を滅ぼすつもりなのです!」

ドゥ「トロア!」


バルバリシア「……だ、そうよ?」

ルビカンテ「信じるも信じないもそちらの自由。我ら魔物は、これまでにお前たち人間を数えきれないほど殺してきたのだからな」


アン「………」


293: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:39:21.06 ID:5d0dgUrZO

ルビカンテ「だが、こちらにはもうお前たちと殺し合うつもりは無い。お前たちが望むなら、この星の全ての魔物たちに伝令しよう」

ルビカンテ「『今後一切人間を襲うな』と」


トロア「そのような言葉が信じられると思うのかっ!?」


カイナッツォ「あの人間め、こちらが下手に出てるというのに……!」

スカルミリョーネ「……お、落ち着…け……」

バルバリシア「単細胞ってやぁねぇ」

ルビカンテ「さっきも言ったはずだ。信じるも信じないもお前たちの勝手だ。だが……」



ルビカンテ「この話を断ると言うのならば……その先は分かっているな?」ギロッ



アン「っ……!」ゾクッ


トロア「おのれ、魔物! 本性を現したな!」チャキッ



バルバリシア「……どうやら交渉決裂になりそうね」

カイナッツォ「ふん、最初からこうなる事など分かっていたはずだぞ!」

スカルミリョーネ「……や、やはり、無理があっ…た……?」

ルビカンテ「………」



アン「………」


294: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:42:33.65 ID:5d0dgUrZO

『……私、本当は、あんたと戦いたくなんてなかったのよ!』


ルビカンテ「………」

ルビカンテ(憎しみの無い世界。イオリの望んだ世界をつくってやりたかったのだが……)

ルビカンテ「……止むを得ん、か」スクッ



「……待ちたまえ!」



ルビカンテ「…………ん?」



ミニ助「魔物の中にもなかなか話の分かる者がいるんだな!」バーン



ルビカンテ「小人……?」



アン「あ、あなたは……!」



「おいミニ助、勝手に出て行くなって!」

「ちょ、ちょっと押さないでくださいよぅ!」

ドサドサッ!



店主「痛ててて……」

ものまね士「うぅ……」



アン「店主さんにものまね士さんまで!」


店主「す、すまん、盗み聞きするつもりはなかったんだが……」

ものまね士「どうしても、気になっちゃって……」テヘヘ


トロア「まったく、あなたはまたこんな無茶な真似を!」


295: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:46:21.45 ID:5d0dgUrZO

ミニ助「……とにかく、その話、喜んで受け入れよう!」


アン「ちょ、ちょっと!?」

ドゥ「相変わらず自由だな、あの小人は……」

長老「………」


ものまね士「これで本当に平和になるならいいじゃないですか。私もミニ助さんの意見に賛成です」

店主「オレとしては複雑な気持ちもあるけど……」

店主「こんな世の中だ。人間も魔物も手を取り合って生きていくべきなんじゃないか?」


アン「し、しかし……」


ルビカンテ「………」



店主「それにさ、もしここにあいつらが……」

店主「ハルカたちがいたら、きっとミニ助と同じ事を言っていたと思うんだよな」

ものまね士「私も、そう思います!」


ルビカンテ「……お前、ハルカを知っているのか?」


店主「ああ。ハルカはオレたちの恩人で……」

店主「……大切な、仲間だ」


ルビカンテ(仲間……)

バルバリシア「へぇ、妙な繋がりがあるものねぇ」

カイナッツォ「またヤツか……」

スカルミリョーネ「……か、かなり有名…人……?」


296: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:51:29.14 ID:5d0dgUrZO

店主「……なあ、神官さん。オレは受けてもいい話だと思うぜ? そりゃ、すぐに仲直りってわけにはいかないかもしれないけどさ」

ものまね士「きっとハルカ様たちは、この星全ての生物が仲良くする事を望んでいたんじゃないでしょうか?」


アン「………」

ドゥ「姉上……」

トロア「姉上……!」


アン「………」

アン「……分かりました。お受けいたしましょう」


ルビカンテ「……そうか」

バルバリシア(ハルカ……ドジっ娘のクセに、なかなかやるじゃない)


トロア「姉上っ!」

アン「憎しみに囚われるのはもうやめましょう。これからは新しい世界が始まるのです」

アン「人間も魔物も、全てが平和に暮らす事のできる、新しい世界が」

トロア「………」


アン「先ほど店主さんも仰られていましたが、簡単にはいかないと思います」

アン「私たちは、血を流し過ぎました」


ルビカンテ「……こちらも、できる事はするつもりだ」


アン「ありがとうございます。それでは、友情の印に」スッ


ルビカンテ「?」

バルバリシア「シェイクハンドよ。知らないの?」

ルビカンテ「なんだそれは?」

カイナッツォ「まったく、これだから戦闘馬鹿は……」ヤレヤレ

スカルミリョーネ「……て、手と手を、握り合…う……」

ルビカンテ「妙な習慣があるのだな、人間とは」スッ


…ギュッ



297: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 10:56:12.64 ID:5d0dgUrZO

店主「へへ、まさか魔物と人間の握手が見られる日が来るとはな。さすがはハルカたちってとこだな!」

ものまね士「ホント、ハルカ様やミキさんにも見せたかったですね……」


バルバリシア「……ちょっとあなた、ミキとどういう関係なのかしら?」

ものまね士「あ、はい。ミキさんにはたくさんお世話しましたけど、同じくらいたくさんお世話になったんです」

ものまね士「うーん、言ってみれば私の妹のような存在ですかね?」

バルバリシア「聞き捨てならないわね。ミキは私の妹よ!」

ものまね士「はぁ!? なんであなたみたいなオバサンの妹なんですか!?」

ものまね士「ミキさんは私のかわいい妹なんですっ!」

バルバリシア「きぃーっ! 誰がオバサンですってぇ!?」

バルバリシア「あんたみたいな小娘には勿体無いわよ!」

ものまね士「そんな事ありませんから!」

ギャーギャー…!


店主「お、おいものまね士、少し落ち着けって!」オロオロ



ルビカンテ「……すまないな、見苦しいところを見せてしまって」

アン「いえ。……あれも一つの平和の形なのかもしれませんね」

ルビカンテ「平和の形、か……」



長老(……これで、この青き星の全ての命がここに団結した事になる)

長老(もちろん、すぐに平和が訪れるというわけでもないが)

長老(しかし、恐るべきはハルカの……)

長老(いや、あいどるたちのカリスマじゃの。まさか魔物まで味方につけてしまうとは)

長老(ハルカよ。この平和は紛れもなくお主らあいどるたちが勝ち取ってくれたものじゃ)

長老(お主らにはこの平和な世界を見届ける義務がある)

長老(絶対に、無事で帰って来るのじゃぞ……)



298: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 21:43:31.09 ID:5d0dgUrZO
ー 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー



律子「うあああっ!」ダッ


律子「があっ!」ブンッ


あずさ「テレポ」ヒュンッ


律子「……ぐ?」キョロキョロ


あずさ「うふふ、こっちですよ~」フリフリ


律子「ぐうっ……!」チャキッ

律子「あああっ!」ダッ




春香「………」ジッ

春香(……すみません、あずささん。あと少しだけお姉ちゃんを引きつけておいてください)

春香(もう少しで、完成しますから)パリッ…



ーーーーーー

ーーー

299: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 21:48:37.46 ID:5d0dgUrZO
ー 回想 ー


あずさ「……じゃあ、私が律子さんを引きつければいいのね?」

春香「はい。お願いできますか?」

あずさ「ええ、もちろんよ。少しでも春香ちゃんの役に立てるなら、私も嬉しいわ」ニコッ

あずさ「それに、律子さんを元に戻せるのは春香ちゃんしかいないんでしょう?」

春香「正確には私だけってわけじゃなくて、月の民だけが使える技で元に戻すんです」

あずさ「その、精神波……という技を使うのね?」

春香「はい。ただ『私』が使うのは初めてだから、上手くできるかどうか……」

あずさ「信じてるわ、春香ちゃんの事」

春香「あずささん……」

あずさ「それじゃ、行って来るわね」フリフリ

タタタタ…


春香「………」


301: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 21:52:50.49 ID:5d0dgUrZO
ーーーーーー

ーーー


春香「………」

春香(あずささんのためにも、失敗はできないよね!)

春香(精神を集中させて……)

春香(確か、ヤミちゃんが千早ちゃんに向かって使ってた時は……)


春香「……!」パリッ

春香「あ、出た……!」

春香「よし! ……あずささん、お姉ちゃんをこっちへ誘導してもらえますか!?」


あずさ「は~い」

あずさ「さあ律子さん、春香ちゃんのところへ行きましょう?」


律子「うあああっ!」ブンッ


あずさ「きゃっ!」ヨロッ

あずさ「危なかったわ~……」

あずさ「律子さん、言うことを聞いてもらえませんか~?」


律子「………」チャキッ


あずさ「あら……?」


律子「ぅ……!」ゴゴゴゴ


あずさ「あらあら……」

あずさ(暗黒剣……だったかしら。律子さんはそれをやろうとしているのね)

あずさ(春香ちゃんややよいちゃんを守らないと)


律子「ああああっ!」ブンッ


あずさ「えいっ!」ダッ


春香「あずささんっ!」



ズオオォォ…


ドゴゴゴゴオオォォオンッ…!!


302: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 21:58:02.74 ID:5d0dgUrZO

あずさ「………」

あずさ「う……ん……」

あずさ「…………あら、私……」キョロキョロ


あずさ「! ……は、春香ちゃんっ!?」



春香「……はぁ、はぁっ……!」ダキッ

律子「………」グッタリ


あずさ「春香ちゃん、もしかして私を庇って……?」


春香「……えへへ、気にしないでください。私、暗黒剣には慣れてますから」ニコッ


あずさ「春香ちゃん……ごめんなさいね」

あずさ「そういえば、律子さんは?」


春香「大丈夫です。無事に精神波が成功しました!」ブイッ

あずさ「まあ、さすがは春香ちゃんね~♪ 」


やよい「春香さん、あずささんっ!」タタタ


春香「やよい!」

あずさ「やよいちゃん」

やよい「すみませんでした! わたしもたたかいますっ!」グッ

春香「……うん、わかった!」

P「俺たちも小鳥さんのところへ行こう!」

春香「はいっ!」

あずさ「は~い」


303: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 22:04:11.10 ID:5d0dgUrZO

雪歩「はぁっ、はぁっ……!」

千早「くっ……!」


コトリマインド「ふふ……。二人ともどうしたの? もう終わりかしら?」


千早(強い……。やはり、私と萩原さんだけでは音無さんには勝てないの……?)


雪歩(本当に私たちがやってることは正しいことなのかな……)

雪歩(みんなが傷付くのは嫌だけど、小鳥さんが傷付くのも嫌だよ……)


コトリマインド(……なーんて、ホントは私、結構追い詰められてたりして)

コトリマインド(雪歩ちゃんには攻撃はほとんど通らないみたいだし、千早ちゃんのジャンプもかなり厄介だし……)

コトリマインド(私のHPも残り12000ってところかしら)

コトリマインド(社長にMPを削られたのが痛かったわね。メガフレアさえ使えれば敵はいないんだけどなぁ)

コトリマインド(なんとか、プロデューサーさんを連れて帰りたいけど……)



…ザッ



春香「小鳥さん」

あずさ「お久しぶりです、小鳥さん」ニコッ

やよい「小鳥さん、悪いことはめっ! ですよ!」



コトリマインド「春香ちゃん、あずささん、やよいちゃん……」

コトリマインド(春香ちゃんたちがここにいるってことは、律子さんの洗脳はもう解けちゃったのね)

コトリマインド(メガフレア無しでこの人数を一度に相手するのは私でも辛い)

コトリマインド(一応手段が無いわけじゃないけど、『アレ』は最後の最後まで取っておきたいし)

コトリマインド(……どうしようかな)



P「……音無さん」



コトリマインド「!」

コトリマインド「……プロデューサーさん」


304: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 22:12:35.04 ID:5d0dgUrZO

コトリマインド「ご無沙汰してます、プロデューサーさん」ペコリ


千早「プロデューサー、危険です、下がっていてください!」

P「ありがとう、千早。でも大丈夫だ」スッ


P「ようやく、ここまで来れました。みんなで帰りましょう、元の世界へ」


コトリマインド「………」


P「みんな音無さんを心配していたんです。……さあ」


コトリマインド「プロデューサーさん、私はラスボスです」


P「………」


コトリマインド「私たちが元の世界へ帰るための条件、忘れたわけじゃありませんよね?」


P「それは……」


コトリマインド「みんなとっても逞しくなりましたね。これもプロデューサーさんのおかげかもしれません」


P「音無さん……?」


コトリマインド「そんなみんななら、きっと私を倒す事ができるはずです」


P「……!」


コトリマインド「プロデューサーさんには敢えて言うまでもないと思いますけど、『本体』は地下渓谷の最深部にいます」

コトリマインド「待ってます。みんなが私に会いに来るのを」クルッ

スタスタ…


P「お、音無さん、待ってください!」


コトリマインド(プロデューサーさんを連れて帰るのは無理そうね。ここは引きましょう)



…バタンッ!



「……待ちなさいよ、小鳥!」



コトリマインド「…………あら」クルッ


305: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 22:17:56.79 ID:5d0dgUrZO

伊織「逃がさないわよ!」


春香「伊織! みんな!」


真「ふぅ、ギリギリ間に合ったかな?」

美希「……zzz」

亜美「うわー、ホントにピヨちゃんだー!」

真美「ホントのホントに、ピヨちゃんがラスボスなんだね……」

響「ピヨ子……」

貴音「………」



コトリマインド「うふふ、これで全員集合ね」

コトリマインド(……うん、本格的に万事休すかな)




伊織「聞かせてもらうわ。なんでアンタがこんな事をしたのかを」


コトリマインド「………」

コトリマインド「それ、律子さんにも訊かれたわ」

コトリマインド「もう一度言うわね。『みんなを楽しませたい』からよ?」


一同「!?」


伊織「意味わかんないわよ! なんで私たちを楽しませるのが、このゲームの世界をめちゃくちゃにする事と繋がるのよ!?」


コトリマインド「伊織ちゃんはゲームとかやらないから、ピンと来ないかもしれないわね」


306: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 22:24:04.57 ID:5d0dgUrZO

コトリマインド「そうねぇ、亜美ちゃんや真美ちゃんなら分かってくれるかしら?」


亜美「……うん、まあ……」

真美「ピヨちゃんの言うこと、わからなくもないよ」

伊織「亜美、真美、アンタたち……!」

亜美「ちょ、ちょっと待ってよいおりん! さすがに亜美でもピヨちゃんのはやりすぎだって思うよ?」

真美「……でもね、真美たちは、ホントにゲームの世界で冒険したり、色んなことができて楽しかったって思うところもあるんだ」

真美「だから、ピヨちゃんのキモチがゼンゼンわかんないってわけじゃないんだよ」

P「真美……」


伊織「だからって、ゲームの世界の人たちの命を奪ったのは、許される事じゃないわ」

響「それに関しては、自分も同感だぞ」

真「………」


コトリマインド「……そう、ね」

コトリマインド(全員を相手にしたら、今の私には正真正銘確実に勝ち目は無い)

コトリマインド(引き時ね。プロデューサーさんが手に入らなかったのは痛かったけど)


307: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 22:30:11.95 ID:5d0dgUrZO

コトリマインド「残念だけどここまでね」スゥ…


千早「! ……音無さんの身体が、消えていく……!?」

伊織「待ちなさい! 逃げる気なの!?」


コトリマインド「みんなの力を確認するっていう目的は果たせたわ」

コトリマインド「さよなら、みんな。地下中心核で会いましょう」


スゥゥ…



「……待ってください」



コトリマインド「……ん?」ピタ



貴音「勝てないから逃げるのですか?」

響「た、貴音!?」



コトリマインド「………」



貴音「律子嬢ひとりならどうにかなった。しかし、わたくしたち全員が揃っては勝ちは望めない」

貴音「だから、尻尾を巻いて逃げるのですね?」



コトリマインド「………」ピクッ


308: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 22:35:22.54 ID:5d0dgUrZO

春香「貴音さん? ちょっと言い過ぎなんじゃないですか?」

貴音「そうでしょうか?」

貴音「春香。あなたは姉と慕う律子嬢を傷付けられて、黙っていられるのですか?」

春香「そ、それは……」

P(貴音……?)



貴音「小鳥嬢。わたくしと手合わせを願います」


コトリマインド「……貴音ちゃん一人で? ずいぶん余裕ね?」


貴音「ええ」

千早「四条さん、さすがに一人では危険なのでは?」

貴音「いえ」



貴音「今の小鳥嬢には、恐らくわたくしが負ける事はないでしょう」



一同「!?」



コトリマインド「……分かったわ」

コトリマインド「貴音ちゃんにとっては『あの時』の雪辱戦ってところなのかな?」

コトリマインド「そこまで言うなら、その提案に乗ってあげる」


309: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 22:40:03.51 ID:5d0dgUrZO

貴音「……やよい」

やよい「は、はいっ!」

貴音「えぇてるたぁぼはありますか?」

やよい「あ、はい。ちょっと待ってくださいね!」

やよい「えっと……」ゴソゴソ

やよい「はい、どうぞ!」スッ

貴音「ありがとうございます」

貴音「……小鳥嬢」


コトリマインド「えっ?」


…ヒュッ!


コトリマインド「……おっと」パシッ


貴音「飲んでください。どうやら今のあなたは魔力を消耗しているようですから」


コトリマインド「………」

コトリマインド「……舐められたものね、私も」ゴクゴク

コトリマインド(これでまたメガフレアを使えるようになる。もう私に隙は無いわ)

コトリマインド(残念だったわね、貴音ちゃん……!)


310: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 22:49:04.73 ID:5d0dgUrZO

真「貴音、本当に一人でやるつもりなの?」

貴音「心配はいりません。わたくしは必ず勝ちます」

雪歩「四条さん……」



コトリマインド「さあ、行くわよ、貴音ちゃん……!」ゴゴゴ



貴音「………」



雪歩「小鳥さん、メガフレアを使う気だ……!」

真「メガフレア?」

雪歩「私がさっき小鳥さんと戦ってた時に受けた魔法なんだけど、このアダマンアーマーでも防げなかったすごい魔法なんだよ……!」

真(貴音、本当に勝算はあるのかい……?)



コトリマインド「右手にフレア……」ブゥン

コトリマインド「左手にフレア……」ブゥン

コトリマインド「併せて、メガフレアーー!!」バッ



貴音「………」


312: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 22:55:37.62 ID:5d0dgUrZO

響「貴音っ……!」

美希「大丈夫だよ、響。この勝負、きっと貴音の勝ちなの」

響「美希、いつの間に起きたんだ!?」



貴音「………」バッ

貴音「小鳥嬢、あなたに教えて差し上げます。本物と付け焼き刃の違いを」ゴゴゴ



貴音(……あの子たちの想いは、今、この胸に!)


貴音「……メガフレア」バッ



コトリマインド「!!」



ゴゥゥ…ン…


ババババババババッ!!


ドゴオオォォオオ…ン!!



313: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 23:03:12.64 ID:5d0dgUrZO

貴音「………」

貴音「…………く」ガクッ


響「貴音っ!」タタタ

やよい「貴音さんっ!」タタタ


響「大丈夫か!?」ガシッ

貴音「……すみません、大丈夫です。慣れない魔法を使ったので、その反動が少々大きかっただけです」

やよい「ぽーしょん、のんでください!」スッ

貴音「ありがとうございます、やよい」


あずさ「貴音ちゃん、すごかったわ……」

真「まさか同じ技であの小鳥さんに勝っちゃうなんてね」

貴音「いえ、決して同じではありません。小鳥嬢のそれは、ただの模倣ですから」

伊織「……それより、小鳥は?」

亜美「ピヨちゃんなら……」

真美「あそこだよ」スッ



コトリマインド「………」グッタリ



雪歩「こ、小鳥さん」

千早「……勝負はあったみたいね」

亜美「でも、ピヨちゃんへーきかな……」

真美「………」

真美「……真美、ピヨちゃん回復してくるっ!」ダッ

春香「待って、真美!」ガシッ

真美「はるるん! なんで止めるのさ!?」

春香「あれを見て」スッ


314: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 23:09:50.42 ID:5d0dgUrZO

シャララーン! キラキラキラ…

コトリマインド「……う」ピクッ

P「………」



真美「兄ちゃん!?」

真美(いやしの杖、持ってきたんだ……)



P「音無さん、立てますか?」スッ

コトリマインド「ぷ、プロデューサー…さん……」

コトリマインド「なぜ……?」

P「仲間が傷付いていたら助ける。当たり前の事じゃないですか」ニコッ

コトリマインド「わ、私は、みんなにヒドい事をしたんですよ? みんなだけじゃない、この世界の人たちにも……」

P「何があろうと、あなたが俺たちの仲間だって事は変わりませんよ」

コトリマインド「プロデューサーさんっ!」ブワッ

コトリマインド(私……もう死んでもいいかも……)


315: ◆bjtPFp8neU 2016/07/03(日) 23:19:13.45 ID:5d0dgUrZO

P「……貴音、すごかったぞ。まさかお前がメガフレアを使うとは思わなかったな」ニコッ


貴音「あなた様……?」


P「みんな、すまん」ペコリ


春香「プロデューサーさん、どうして謝ったりするんですか……?」



P「……俺、音無さんと一緒に行く事にした」



亜美「えっ!?」

真美「に、兄ちゃん……?」

伊織「……な、何考えてんのよアンタ!? 正気なの!?」



P「ああ、俺は正常だよ」

コトリマインド「プロデューサーさん……?」


響「プロデューサー、なんで……?」


P「音無さんを真の意味で救えるのは、俺しかいないと思ったんだ」


真「……それ、どういう意味なんですか?」

雪歩「真の意味って……」


P「今はまだ言えない。でも、必ず音無さんは俺が救ってみせる。だから安心してくれ」


千早「……本気なんですね?」


P「……ああ」コクリ


P「みんな。……地下中心核で待ってる。また会おう」

P「……さ、音無さん、行きましょう」ダキッ

小鳥「すみません、プロデューサーさん」


スタスタ…



春香「プロデューサーさん……」

千早「………」

美希(ハニー……)



321: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 17:23:55.27 ID:cqJZ38jz0
ー 月の地下中心核 ー


小鳥「……お待ちしてました、プロデューサーさん!」

P「えっと……本物の音無さん、ですよね?」

小鳥「はいっ!」ニコッ



P(俺は月の民の館のクリスタルルームでみんなと別れ、音無さんの分身に導かれて月の地下中心核へとやってきた)

P(そこでようやく本物の音無さんと会うことができたわけだけど……)


小鳥「プロデューサーさん、どうかしましたか?」

P「ああ……いえ、なんでもないんです」


P(本物の音無さんは、クリスタルルームでのみんなとの戦いをここで『視て』いたらしい)

P(つまり、クリスタルルームに現れた音無さんの分身の行動も全て音無さん自身の意思だったわけだ)

P(やはり彼女は、最後までラスボスを演じきるつもりなんだ……)



小鳥「あのー、プロデューサーさん。本当にこちら側へ来ちゃって良かったんですか?」

P「今さら何を言ってるんですか。俺がそうしたいと思ったから来たんです」

P「それとも、もしかしてお邪魔でしたか?」

小鳥「お、お邪魔だなんてとんでもないっ! むしろ嬉しすぎて、私としてはひゃっほう! って感じなんですよぅ!」

P「………」

小鳥「あ……」


322: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 17:27:36.23 ID:cqJZ38jz0

小鳥「う、嬉しいって言ってもあれですよ? 私の事を心配してくれてプロデューサーさんは優しいなーと」

P「良かった」ニコッ

小鳥「!」ドキッ

P「あなたの事が心配だったのは本当です。でも今はそれだけじゃなくて……」

P「……音無さん」ズイッ

小鳥「え? はっ、はいっ!」ドキドキ

小鳥(ぷ、プロデューサーさん、どうしちゃったの!? ち、近いんですけど!?)

小鳥(……はっ! もしや、ここに来てまさかの音無小鳥メインヒロインフラグが!?)

P「………」スッ

小鳥(プロデューサーさんの手が私の頭を、だ、抱いて……!)

小鳥(…………南無三っ!)ギュッ



P「……っと、取れました」

小鳥「…………えっ?」

P「ほら、髪に糸くずが付いていたみたいですね」

小鳥「………」

小鳥「はぁぁぁぁぁぁ……」ガクッ

P「ど、どうしました!?」

小鳥「い、いえ、なんでもないんですっ」


小鳥(何の罰ゲームかしら、今のは)


323: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 17:30:18.92 ID:cqJZ38jz0
P「それにしても……ここが月の中心核ですか」キョロキョロ

小鳥「はい。今や私の家みたいなものなんですよ?」

P(月の中心核。ゲーム通りなら、確かここは地下12階に当たるはず)

P(床や柱、壁などは全部クリスタルのようにキラキラ輝く素材で出来ていて、とても神秘的な風景だ)

P(音無さんはここで生活してきたのか)

P(……ずっとひとりぼっちで、さみしくはなかったんだろうか)



クルーヤ「……コトリさん、お客さんですか?」



小鳥「あ、クルーヤさん!」

P「えっ……? く、クルーヤ……!?」

クルーヤ「おや、あなたは……。お久しぶりです。またお会いしましたね」ニコッ

P「な、なんであんたがここにいるんだ?」

クルーヤ「えーっと……まあ、いろいろありまして」

小鳥「あれ? プロデューサーさん、クルーヤさんとお知り合いなんですか?」

P「ええ、彼とは試練の山で一度」

小鳥「へぇ……」

小鳥(P×クルーヤか……アリかもしれないわね)


324: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 17:33:08.83 ID:cqJZ38jz0

クルーヤ「それにしても、まさかハルカの婚約者がコトリさんの知り合いだったとは、世の中って狭いものですねー」

小鳥「……うん? 今なんて?」

P「な、なんでもないですよ!」

クルーヤ「ああ、コトリさんには言ってませんでしたね。彼はハルカと未来を誓い合った仲なんです」

小鳥「ええぇぇええええっ!!?」ガタッ

小鳥「どういう事なんですかプロデューサーさん!! ついにハーレムから脱却しちゃうんですか!?」ユサユサ

P「だ、だから誤解ですって! クルーヤもある事ない事言うのはやめてくれ!」

クルーヤ「うーん、僕としては二人の仲は大賛成なんだけどなー」



クルーヤ「……と、ジョークはここまでにして」

クルーヤ「なぜあなたがここに? あなたはハルカたちと行動を共にしていたはずではなかったんですか?」

P「………」

P「こっちにもいろいろ事情があってな。ま、お互い様ってところだ」

クルーヤ「……なるほど、分かりました。これ以上は追求しません」

P「そうしてくれると助かる」




ダークバハムート「……ほう、このような僻地に来客とは、珍しい事もあるものだ」



小鳥「バハムートさん、ちょうど良いところに! 紹介しますね、こちら私の同僚のプロデューサーさんです!」

ダークバハムート「………」

ダークバハムート(なんだ、この人間は……? 否、人間ではないのか……?)

ダークバハムート(コトリをも凌ぐでたらめな生命力。奇妙ないでたち。そしてこの我が思考すらも読めぬとは)

ダークバハムート(クク……コトリの知り合いか。ぷろでゅうさぁ……只者ではなさそうだ)


325: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 17:35:29.94 ID:cqJZ38jz0

P(これがバハムート……。貴音の友達……)

P(ここにいるって事は、敵……なんだろうな、きっと)

P(クルーヤの立ち位置もイマイチ分かりかねるが、きっとみんなの敵として立ちはだかるつもりだろう)

P(なぜ、あの子たちにはこうも試練が降りかかるのか)

P(だけど、俺はもう無力な自分を嘆くだけじゃない)

P(俺は見届けなければならない。この戦いの行く末を)



クルーヤ「さ、新しい仲間が増えたところで!」ドン

小鳥「親睦を深めましょうか!」ドン

P「もしかしてそれ、酒ですか?」

小鳥「はいっ」ニコッ

P「音無さん、みんなが頑張ってた時にまさかずっと酒飲んでいたんじゃないでしょうね?」

小鳥「そ、そんなわけないじゃないですかぁ! 今日はたまたまですよ、たまたま!」

P「本当かなぁ……」ジト

クルーヤ「ま、まあまあ、楽しく行きましょう、楽しくね?」

ダークバハムート「クク……ぷろでゅうさぁよ。そなたも用心しておいた方が良いぞ。この二人、酒を呑み出したら止まらぬからな」

P「はぁ……」

P(まあでも、どうやら音無さんは一人さみしくラスボスやってたってわけでもなさそうだ)

P(それが分かって良かったかもな)


326: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 17:37:55.73 ID:cqJZ38jz0
ー 月の民の館 1F 図書室 ー


…ガチャ


千早「………」


真「千早」

千早「真……」

真「律子の具合は?」

千早「ぐっすり眠っているわ。春香と真美がついていてくれているし、今は二人に任せましょう」

真「うん……そうだね」



貴音「離してください、響!」

響「ちょっと貴音、落ち着いてよ!」



千早「……何かあったの?」

真「うん、なんていうか……」

真「プロデューサーが小鳥さんと一緒にいなくなった事で、みんな少し混乱しちゃってるみたいでさ」

千早「そう……」



貴音「ぷろでゅうさぁはわたくしが助けねば! ばはむーと殿の二の舞にさせてなるものですか!」

響「だから、それには律子が起きるのを待ってからじゃないとダメだって!」

貴音「律子嬢の事は皆に任せます。わたくしは一人でも行かねばなりません!」

やよい「た、貴音さん……」オロオロ


伊織「……あーもう、うるさいわね! 静かにしなさいよ!」

貴音「………」

伊織「不安なのはみんな同じなのよ! それに、アンタ一人が行ってもどうにもならないでしょうが!」

貴音「……それでも」

貴音「それでもわたくしは、もうこれ以上犠牲者を増やしたくはないのですっ……!」ウルッ

貴音「ぷろでゅうさぁまで失ってしまったら、わたくしは……!」ガクッ

亜美「うぅ、お姫ちん……」グスッ

伊織「私だって……今すぐにでもあいつを助けに行きたいわよ……!」ウルッ

あずさ「伊織ちゃん……」

雪歩「みんな……!」グスッ



美希「………」


327: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:01:14.10 ID:cqJZ38jz0

美希「………」スクッ


真「……美希、どうしたの?」

美希「ミキ、ちょっと律子の様子見てくるね?」

真「え? でも、律子には春香と真美がついてるって千早が……」

美希「真クン、ミキだって白魔法使えるんだよ? 二人の足手まといにはならないって思うな」

真「そうだったね、ゴメン」

美希「真クンと千早さんは、みんなの事をお願い」

千早「美希……?」

美希「みーんな、ハニーがいなくなって心が弱くなっちゃってるカンジなの。だから、比較的冷静な真クンと千早さんがみんなをなだめてあげて?」

真「……別にボクも冷静ってわけじゃないんだけど、分かったよ」

千早「私にできるかどうか分からないけれど、やってみるわ」

美希「お願いね?」

スタスタ…



真「………」

真「ねえ、千早。美希はなんであんなに落ち着いているのかな」

真「失礼かもしれないけど、ボク、プロデューサーがいなくなって一番騒ぐのは美希だろうなって思ってた」

千早「………」

千早「私、この世界へ来てから比較的美希の近くにいる事が多かったのだけど」

千早「美希はこの世界へ来て、私たちの中で一番大きな成長をしたのかもしれない」

千早「あの子を見ていると、そう思えるのよ」

真「…………そっか」

真「じゃあ、ボクたちも負けていられないね」

千早「……そうね」


328: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:20:07.09 ID:cqJZ38jz0
ー 月の民の館 2F 寝室 ー


律子「……zzz」


春香(お姉ちゃん……)

真美「………」


春香(一人で小鳥さんを迎え撃って、勇敢に戦って……)

春香(でも、結局小鳥さんの魔法で操られてしまって、みんなに刃を向ける事になってしまった)

春香(辛いだろうな……)



真美「……りっちゃん、真美たちのために休まずにずっとガンバってくれてたんだよね、きっと」

春香「うん……」

真美「ピヨちゃんとの戦いだって、真美たちがあぶない目に合わないようにって……」

春香「……今は、ゆっくり休ませてあげよう」

真美「そーだよね……」



…ガチャ



真美「……あれ、ミキミキ?」


美希「律子の具合はどう?」

真美「ケガとかは真美たちの魔法で治したし、今はぐっすり眠ってるよ。つかれがたまってたのかもしんないね」

美希「……そっか」


329: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:22:36.75 ID:cqJZ38jz0

美希「………」

真美「………」

春香「………」


真美「……兄ちゃん、なんでピヨちゃんの方に行っちゃったのかな……?」

春香「………」

真美「まさか、兄ちゃんまで真美たちの敵になっちゃうってことじゃないよね?」

美希「ハニーはきっとそんなつもりじゃないと思うな」

真美「……じゃあ、どんなつもりだったの?」

美希「んー、そこまではミキも分からないの」

美希「でもね、ハニーが『任せろ』って言ったんだから、きっと正しいことだと思うの」

美希「ミキたちは、それを信じるべきじゃないかな?」

春香「………」

真美「でもさ、なんてゆーか……ここまで一緒だった兄ちゃんがいないのが、ちょびっとだけツラいってゆーか……」

美希「きっとみんなも真美とおんなじような気持ちだと思うの」

美希「不安で、さびしくって……それで、ちょっとだけイライラしてるカンジ?」

真美「………」

美希「だから、そんなみんなを元気付けるのは……」


美希「春香の役目だって、ミキ、思うな」


春香「えっ……?」


330: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:24:56.99 ID:cqJZ38jz0

春香(たまに……)


美希「今までだって春香は、ずっとずっとみんなを元気にしてきたでしょ?」


春香(分からなくなってしまう)


美希「辛くって、苦しくって、どうしようもなくて。今までそんな場面になるたびに、春香は誰よりも自分を奮い立たせて」


春香(目の前にいるこの子は、本当に私より年下なんだろうかって)


美希「そんな春香なら、きっと今のみんなを導くことができる」

美希「……でしょ?」ニコッ


春香(普段の態度は素っ気ないけど、ふとした時に思いがけない言葉をくれる)

春香(……不思議だよね、美希って)


春香「……うん、わかった。私、やってみるよ!」


美希「あは☆ さすがは春香なの」ニコッ

真美「ガンバって、はるるん! 真美たちのリーダーだってとこ、バシーっと見せちゃってよ!」

春香「う、うん、あんまりプレッシャーかけないでね?」



美希「……そーいえば春香」

春香「なに?」

美希「ミキ、この前春香のこと助けてあげたから、これで貸しひとつだよね?」

春香「……あ、うん。助けてくれてありがとね、美希。私、すごく嬉しかったよ」

美希「どーしよっかなー。何おごってもらおっかなー?」

春香「あ、あんまり高いものじゃなければ……」

美希「あっ、いいこと思いついたの! これを機に、春香がハニーから手を引くっていうのはどうかな?」

春香「……ええぇええっ!? だ、ダメだよそれは!」アセアセ

真美「いやー、ナイスアイディアだと思うよ、真美は」ウンウン

春香「ちょっと、真美までー!」

美希「真美もハニーのこと狙ってるみたいだけど、ミキ、ハニーだけはゼッタイに譲れないからね!」ビシッ

真美「ぬう……さすがは強敵(とも)よな……」


331: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:28:26.70 ID:cqJZ38jz0
ー 月の民の館 1F 図書室 ー


貴音「……そこをどいてください、伊織」


伊織「イヤよ。今のアンタを行かせられるわけないじゃない」

伊織「どうしても行くっていうなら……」



伊織「……私を倒してからにしなさい!」スッ



貴音「……!」


響「い、伊織……」

あずさ「……ちょっと落ち着きましょう、伊織ちゃんも貴音ちゃんも。焦って行動してもいいことなんてないと思うわ」

貴音「あずさ……」

貴音「なぜそのように落ち着いていられるのです? ぷろでゅうさぁが魔の手に落ちてしまったというのに」

亜美「ま、魔の手って……お姫ちん……」

貴音「彼女は律子嬢や雪歩、やよいを傷付けた。小鳥嬢を敵と見なすにはそれで充分では?」

貴音「それに、わたくしはこのげぇむを『そういった類のげぇむ』と認識しておりましたが」

あずさ「貴音ちゃん……」

貴音「……いいでしょう」



貴音「水瀬伊織……。あなたを倒して、わたくしはぷろでゅうさぁを助けに参ります!」ザッ



伊織「! ……小鳥の分身に勝ったからって調子に乗るんじゃないわよ……!」

伊織「アンタなんかに遅れは取らないわ!」


やよい「い、伊織ちゃんダメだよっ!」


伊織「いいえ、やよい。アンタは黙ってて」

伊織「頭に血が昇って周りが見えていないバカに、少しお灸を据えてあげなきゃ……!」スッ…


332: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:31:19.57 ID:cqJZ38jz0

貴音「……覚悟」バッ


伊織「……来なさい!」バッ



亜美「ちょ、ちょっと二人とも……!」

雪歩「こ、こんなのおかしいよぅ……!」



貴音「……!」ボゥッ…


伊織「……!」ゴゥッ…



真「ーー待ったっ!!」ザッ


貴音「!?」



千早「水瀬さんも、そこまでよ」スッ


伊織「…………ふん」




響「千早……真……」


伊織「いきなり飛び出して来るなんて、どういうつもりよ」


貴音「あなた方まで邪魔をするつもりですか。真、千早……」


真「こんなところで暴れちゃダメだよ、貴音も伊織も」



伊織「………」


貴音「………」



真「らしくないじゃないか、二人とも。こんな思慮の浅い行動をするなんて」

伊織「……うるさいわね。私は間違ってないわよ! そこのバカが勝手な行動をしようとしたから……!」

千早「今は、仲間うちで争っている場合ではないわ」

伊織「………」

真「貴音。プロデューサーが心配なのは分かるけど、一人で小鳥さんのところへ行くなんて無茶だ」

真「それは君自身だって分かってるはずだよ?」

貴音「しかし……!」

真「ボクだって、本当は今すぐにでもプロデューサーのところへ駆けつけたいって思ってる」

真「でも、プロデューサーは何か考えがあるような事を言ってたから……」

真「だから今は、それを信じるしかないと思うんだ」

貴音「………」


333: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:33:32.69 ID:cqJZ38jz0

貴音「くっ……」ガクッ

貴音「…………申し訳ありません。わたくしは過去の過ちに囚われ、ぷろでゅうさぁの意に背くような真似を……」

貴音「そればかりか、道を誤ったわたくしに手を差し伸べる友に、刃を向けてしまうとは……!」

伊織「………」

伊織「……私も悪かったわ」

伊織「ああでもしなきゃアンタは止まらないと思ったから」

貴音「申し訳ありません、伊織。全てはわたくしが……」

伊織「ううん、私も悪かったわ。……ごめんなさい」

真「どっちが悪いとかじゃないよ」

千早「ええ。二人のどちらの気持ちも分かるから……」

千早「……とにかく今は、みんなで律子が目を覚ますのを待ちましょう」

伊織「……そうね」

貴音「はい……」

やよい「えっと、えっと……これで伊織ちゃんも貴音さんも仲直り……ですよね?」

貴音「ええ」

やよい「うー、よかったですー」



響「はぁぁぁ……。何事もなくて良かったぞ……」

あずさ「真ちゃんと千早ちゃんのおかげね」

雪歩「でも、小鳥さんと戦わなきゃいけないっていう事実は変わらないんですよね……?」

亜美「だよね……」


一同「………」


334: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:37:36.86 ID:cqJZ38jz0

春香「……大丈夫だよ、みんな」

真美「………」

美希「………」



響「春香たち、いつの間に……」

真美「りっちゃんはぐっすり眠っちゃったから」

美希「ミキたちも、春香のありがたいお話を聞こうってことになったの」

春香「ちょ、ちょっとミキ、変な言い方しないでよぅ……」

響「ありがたいお話って、どういうことだ?」

春香「えっと……」チラ



春香「貴音さん」

貴音「……はい」

春香「なぜ、小鳥さんは私たちに対してヒドいことをするんでしょうか?」

貴音「何故……? それは、小鳥嬢がこのげぇむの真の黒幕だからではないのですか?」

春香「はい、私もそう思います。小鳥さんはこのゲームのラスボスです。だから、ラスボスになりきってくれているんだと思います」

貴音「……? そのような分かり切った事を訊いて何の意味が?」

春香「私、思うんです。私たちがここまで来れたのは、小鳥さんのおかげもあるんじゃないかな……って」


一同「……?」


335: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:40:30.50 ID:cqJZ38jz0

春香「今まで、本当に本当にいろんな事があったよね。嬉しい事も、悲しい事も」

春香「嬉しい事があるたびにみんなで笑って、悲しい事があるたびにみんなで泣いて……」

春香「そうして私たちは、ここまで来た」

春香「最近みんなの目を見てるとね、思うんだ。『ああ、すごく頼もしいな』って」

春香「それはたぶん、この世界でいろんな事を経験して一人ひとりが成長していってるからなんだよね」

春香「その成長は、もちろん本人の頑張りによるところが大きいって思うけど……」

春香「小鳥さんがラスボスの役をしっかり演じてくれているから……だから、私たちは強くなれたんじゃないかな?」


一同「………」



貴音「……しかし、それとこれとは話が別。小鳥嬢のした事は許される事ではありません」

伊織「私も同感よ。魔物との戦いで結果的に私たちは強くなったけど、あいつは仲間を平気で傷つけた。それは忘れてはならない事よ」

春香「………」

春香「……小鳥さんはさ、私たちに向かって何度か『みんなを楽しませるために』って言ってたよね?」

春香「それはきっと小鳥さんもプロデューサーさんと同じ気持ちって事なんじゃないかな?」

響「ピヨ子が、プロデューサーと同じ気持ち……?」

春香「みんな、思い出して。もともとこのゲームは、プロデューサーさんが『みんなで楽しめるように』って持ってきてくれたゲームだよ」

亜美「……そーいえばもうすっかり忘れてたけど、兄ちゃんが事務所にスーファミ持ってきたのが始まりだったんだよね」

春香「うん」


336: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:43:38.82 ID:cqJZ38jz0

春香「いきなりゲームの中に入っちゃって、最初は右も左も分からなくて」

春香「でも、みんなで頑張って進んで、いろんなお友達もできて」

やよい「わたし、しばさんやらむさんたちとおともだちになれて、とってもうれしかったです!」

春香「そう。苦労もたくさんしたけど、嬉しい事もたくさんあった。この世界で、ここにいるみんなと、そしてこの世界の人たちと一緒に笑い合えて、私もすっごく嬉しかった」

春香「……でも、もし配役が違ったら、どうなってたかな?」

真「配役が違うって……今の自分の役と最初から違ったらって事?」

春香「うん。もっと言うと、『小鳥さん以外の誰かがラスボス役になってたら』どうなってただろう?」

春香「みんなは、考えた事あるかな?」


一同「………」


春香「私は、もし自分がみんなと敵同士の役だったら悲しいし、きっとどうしていいか分からなくなっちゃうと思う」

春香「もしかしたら、自暴自棄になって大変な事をしちゃうかも」

伊織「………」

春香「でも、小鳥さんはそれを完璧に演じてくれてる」

春香「もちろん、あの人の事だから自分自身が楽しんでるっていう部分もあるかもしれないけど」

貴音「………」



春香「小鳥さんの『みんなを楽しませる』っていう言葉、私は信じてるよ」

春香「だって、小鳥さんはいつも私たちの事を心配してくれていて、いつも私たちの知らないところで頑張ってくれている人だから」

春香「そんな小鳥さんと、そしてここにいるみんなと、私はこのゲームを最後まで楽しみたい」

春香「最後まで笑って、笑顔でこの世界とお別れしたいんだ」

春香「……みんなはどう?」



一同「………」


337: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:48:21.32 ID:cqJZ38jz0

雪歩「…………あ、あのっ」

雪歩「私も、楽しみたい。魔物さんと戦ったりするのは恐いけど、私も、みんなともっと一緒にいたいって……そう、思う」

春香「雪歩……」



真「……そうだね」

真「元の世界に戻ったら、もうこんな不思議な体験は二度とできないんだよね」

真「それに、みんなには引かれちゃうかもしれないけど、ボク、小鳥さんと戦うのはちょっとだけ楽しみなんだ」

春香「真……」



亜美「……まこちんは相変わらずバトルマニアだねぇ」

亜美「でも、せっかくのゲームだし、ピヨちゃんもガンバってくれてることだし、亜美もまだまだカツヤクしたいし……」

亜美「モチロン亜美もみんなと一緒に行くよ!」

真美「だね。せっかく兄ちゃんが持ってきてくれたゲームなんだから、楽しんでやんないとだよねっ」

真美「あ、成長うんぬんに関しては真美も同感ってカンジだよ。みんなが強くなってるのを、真美もジッカンしてるよ!」

春香「亜美も真美も、たくましくなったよね」ニコッ



響「…………自分は」

春香「響ちゃん……」

響「自分、エン太郎とお別れする時、めちゃくちゃ悲しかった。ピヨ子はなんでこんなイジワルするんだろうって思った」

響「でも、春香の言う通りだ。もし自分がラスボス役だったとしたら、どうしていいか分かんなくてずっと泣いてたと思うぞ」

響「みんなと一緒だったから。自分にはみんながいるから。だから自分はあの時悲しみを乗り越えられたって思う」

響「……うん。今なら、ピヨ子は自分たちのためにラスボスを頑張ってくれてるんだって……」グスッ

響「だ、だから、自分もっ……!」ウルッ

春香「……うん、響ちゃんも一緒に行こう?」


338: ◆bjtPFp8neU 2016/07/30(土) 20:53:09.04 ID:cqJZ38jz0

千早「私も……」

千早「私も、みんなと一緒にいたい。たとえ残された時間はもう僅かだとしても、最後の瞬間まで、みんなと笑っていたい」

千早「……今なら、そう思える」

春香「千早ちゃん……!」

やよい「わたしたちだけじゃなくて、高木社長や黒井社長、じゅぴたーさんたちもいっしょですっ!」

春香「やよい……うん、そうだね!」

あずさ「……みんなが一緒なら、きっと何も恐いものはないわね」ニコッ

春香「はい、あずささん、もちろんです!」



伊織「…………はぁ。アンタの話はきれいごとなのよねぇ」

春香「えっ……」

伊織「アンタみたいに能天気な考え方ができる人間ばかりじゃないってことよ」

春香「うん…………そう、だよね」

伊織「……ま、でも、嫌いじゃないわ、そういうの。私も、小鳥に負けないくらいこの役を演じ切ってみせる!」

春香「伊織!」

伊織「春香。私たちはどこまでもアンタについて行くわ。だから、アンタは光になって私たちの道を照らしなさい!」

伊織「アンタが走り続ける限り、私たちもアンタの横を走るから」

春香「うん、任せてっ!」ガッ

春香「……っとっとと……うわあ!?」ヨロッ

ドンガラガッシャーン!!


339: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:06:07.67 ID:uFHmjAGF0

伊織「ったく、なんでこのタイミングで転ぶのよ……」

真「でも、春香らしいじゃないか」ニコッ

亜美「ですな。これがないとはるるんってカンジがしないよねー」

春香「うぅ……せっかくかっこ良く決めようと思ったのに……」



貴音「……春香」スッ

春香「あ、貴音さん。ありがとうございます!」ギュッ

貴音「過去の自分に囚われるのは、もうやめる事にしました。わたくしも、残りの時間を皆と笑って過ごしたい」

春香「貴音さん……」

貴音「……共に連れて行って頂けますか?」

春香「もちろんですっ!」ニコッ

貴音「ありがとうございます、春香」ニコッ



美希「うんうん、やっぱり春香に任せたミキの目に狂いはなかったの!」

春香「美希……」

春香「ありがとう、美希」

美希「ミキ、お礼を言われるようなこと、してないよ?」

春香「ううん、美希のおかげだよ。美希が私を頼ってくれたから……だから」

美希「春香。そーゆーのは、全部うまくいってからにするの」

春香「うん……そうだね」



美希(……でも、さっきの春香、ちょっとカッコよかったな)

美希(やっぱり春香がリーダーなんだなって思ったの)

美希(ミキのライバルで、親友で……大切な、仲間)

美希(負けないよ、春香。ミキ、春香よりもっともっとキラキラしてみせるからね!)


340: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:10:20.55 ID:uFHmjAGF0


律子「……良かったわよ、春香。今の演説」


春香「お姉ちゃん!」

亜美・真美「りっちゃん!!」

あずさ「律子さん、もういいんですか?」

律子「はい、ご迷惑をおかけしました」ペコリ

あずさ「いえ、そんな」

律子「………」


律子「みんな、もう覚悟は出来ているのね?」



伊織「何を今さら。覚悟なんてとうの昔にできてるわよっ」

貴音「ええ。もう、迷う事など何もありません」

あずさ「春香ちゃんに勇気を貰いましたからね~」ニコッ

亜美「亜美のホンキ、ピヨちゃんに見せてあげるんだから!」

真美「そうそう、ピヨちゃんには真美たちを敵に回したことをコウカイしてもらわないとねー!」

真「どこまでやれるか分からないけど、ボクもやれるだけやってみるよ」

雪歩「わ、私も、足手まといにならないように頑張りますぅ!」

響「自分も、みんなと一緒に戦うぞ!」

やよい「最後まで、はりきって行きましょうっ!」

千早「私たちはもう大丈夫。……だって、最初から不安に思う必要などなかったのだから」

美希「律子…さんも、ミキたちと一緒だよ?」


律子「……ありがとう、美希」ニコッ


真「で、律子。どうする? さっそく小鳥さんのところへ乗り込むかい?」

律子「いいえ。あなたたちは戦いを終えたばかり。だから、今夜はしっかり休んで出発は明日にしましょう」

真「うん、分かった」


341: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:15:16.98 ID:uFHmjAGF0
ーーーーーー

ーーー



律子「……『音無さんを真の意味で救えるのは俺しかいない』? 本当にプロデューサーはそんな事を言ったの?」

春香「はい。きっとプロデューサーさんには何か考えがあるんだと思います」

律子「どういう意味なのかしら」

真美「んー、たとえば、兄ちゃんの持ってるいやしの杖でピヨちゃんがケガしたら治す、とか?」

律子「それはどうかしらね……。あの杖ってそこまでの回復力はないんでしょ?」

春香「そうですね。確か回復量はケアルより少し多いくらいだったかな?」

律子「いくらプロデューサーが無敵だからって、ケアルラにも満たない回復量じゃ追いつかないでしょう」

伊織「ま、こっちは13人もいるんだし、立て続けに攻撃したら確実に向こうの回復は間に合わないでしょうね」

真美「それもそっか」

千早「だったら、物理的にではなく精神的に音無さんを助けるという事かしら」

真「つまり……プロデューサーが小鳥さんの心の支えになるって事?」

千早「ええ」

千早「いくら音無さんがこの世界を楽しんでいるとはいえ、最終的には一対十三の戦いになる」

千早「その状況を見兼ねてプロデューサーは音無さんの心の支えになろうと決意した」

律子「……なるほど、あり得るわね」

律子「とにかく、プロデューサーや小鳥さんの真意が分かった以上、私たちも二人の期待に応えた戦いを見せないといけないわね」

春香「そうですねっ!」


342: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:19:27.62 ID:uFHmjAGF0

伊織「でも、小鳥の前に親衛隊とかいうヤツらが待ち構えてるわよ? その辺りはどうするのよ」

響「……強かったよね、あいつら」

雪歩「うぅ……怖いけど、やるしかないんだよね……」

律子「ああ、そこらへんはあまり心配していないわ」

伊織「えっ?」

律子「厄介ではある。けれど、あなたたちだって決して負けてない」

律子「この中の誰ひとり欠ける事なく小鳥さんのところへたどり着ける。私はそう確信しているの」

春香「お姉ちゃん……!」

真「へへっ、そう言われたらやるしかないよね!」

伊織「律子にしては珍しいわね。精神論に流されるなんて」

律子「あら、ちゃんとした論理的根拠が必要かしら? あなたたちは強い。それだけで証明にならない?」

伊織「……ぜんっぜん論理的じゃないわよ、それ」

あずさ「うふふっ♪ 」

亜美「まーまー、むずかしいコトはいいじゃん。ほら、よく『どんより正午』ってゆーっしょ?」

律子「論より証拠ね」

伊織「……そうね。やらなきゃ結果が出ないのは確かよね」


343: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:23:36.29 ID:uFHmjAGF0

貴音「律子嬢。一つだけお願いがあるのですが」

律子「どうしたの? 改まって」

貴音「親衛隊と共に、恐ろしく強い竜の神がわたくしたちの前に立ちはだかるでしょう」

貴音「その方の事は、わたくしに任せて頂きたいのです」

律子「竜の神……」

やよい「貴音さん、それって……」

響「もしかして、バハムートってヤツの事か?」

貴音「……はい」コクリ

律子「貴音の知り合いなの?」

貴音「……わたくしの越えねばならない、壁です」

律子「………」

律子「あなたにもいろいろ事情があるみたいね」

律子「本当は全員で当たった方が安全なんでしょうけど……」

律子「……わかったわ。そのバハムートっていう竜のことは貴音、あなたに任せるわ」

貴音「ありがとうございます」



千早「律子、そろそろ休んだ方がいいんじゃないかしら。明日ここを発つんでしょう?」

律子「そうね。じゃあ、とりあえずご飯にしましょうか」

やよい「はい! じゃあわたしが……」


真美「ーー待ったッ!!」


真美「ここは真美にまかせてもらおうか……!」ゴゴゴ



一同「…………えっ!?」



344: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:39:49.19 ID:uFHmjAGF0
ー 月の民の館 キッチン ー


伊織「…………で、なんで私まで巻き込まれなきゃいけないのよ」

真美「しょーがないじゃん。やよいっちやあずさお姉ちゃんはしょっちゅうゴハン作ってくれてるから頼みづらいし、お姫ちんは料理させたらキケンぽいし、亜美はしっちゃかめっちゃかにしそうだし……」

真美「火の魔法使える手頃な人がいおりんしかいなかったんだもん」

真美「あと、イガイに料理できそうなまこちん」

伊織「消去法で選ばれたのがイラッと来るわね……」

真「ねえ、早く作っちゃおうよ。きっとみんな待ってるよ?」

伊織「わかってるわよそんなこと。ていうかアンタ、料理なんかできるの?」

真「うーん、出来なくはないと思うけど……。ここには魚とかないんだよね」

真美「なんで魚?」

伊織「仕方ないわね、やっぱりここはこの伊織ちゃんが先導していくしかないみたいね」

真美「いよっ、さすがいおりん! 料理作らせたら『見た目はアレだけどすごくおいしい』って言われるだけあるねぇ!」

伊織「それ、褒めてないでしょ!?」

真「ねぇ、早くやろうよー。ボク、お腹ペコペコだよー」

伊織「うっさい! わかってるわよバカ!」

真「なんですぐにバカとか言うんだよ! 先にバカって言った方がバカなんだからね!」

伊織「じゃあ何度でも言ってあげるわよ! バカバカバカバカバカバカバカ……」

真「言い過ぎだよ!」

真美(人選ミスったね、こりゃ)


345: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:48:50.49 ID:uFHmjAGF0
ー 月の民の館 1F 図書室 ー


亜美「……で、真美さんや」

亜美「このぐちゃぐちゃの茶色いカタマリは何かね?」

真美「今は昔、まだこの世界に文明も発達していなかった頃……。人はそれをたまごやきと呼んでいたという……」

律子「つまり、卵焼きを作ろうとして失敗したわけね」

響「じゃあ、この……ええと、なんかいろいろ入ったちゃんこみたいなのはなんだ?」

真「おじや!」

響「ふ、ふーん……ずいぶん具沢山なんだな。具が大きすぎて煮物みたくなってるぞ……」

春香「で、でも、なんか個性的でおいしそうだよね! ほら、この肉野菜炒めとか」

伊織「それはカルパッチョよ」

春香「えっ?」

伊織「カルパッチョ」

春香「あ、うん……」

千早(大丈夫かしら)




律子「……まあ、とりあえず冷めないうちにいただきましょうか」



一同「いただきまーーす!!!」



347: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:51:41.46 ID:uFHmjAGF0

春香「………」

雪歩「食べないの? 春香ちゃん」

春香「ゆ、雪歩こそ」

雪歩「えっと……うん、食べるよ。せっかく真ちゃんたちが作ってくれたんだもん」

雪歩「……あむっ」パクッ

雪歩「もぐもぐ……」

雪歩「あ……これ、結構おいしいかも」

春香「ホント? じゃあ私も……」パクッ

春香「…………ん、ホントだ。おいしい、このおじや!」

真「そ、そう? へへ、苦労して作った甲斐があったよ」



美希「もぐもぐ……」

美希「……あれ、このたまごやき、中に何か入ってる?」

真美「さすがはミキミキ、よくぞ気づいてくれたね!」

真美「このたまごやきの中には、さまざまなアイテムを入れてあるのだよ!」

響「アイテムって……ねえ、入れたのは食べられるモノなんだよね?」

真美「もちろんだよー。どくけしにー、乙女のキッスにー、うちでのこづちにー……」

響「……ちょっと待て。うちでのこづちって?」

真美「ああそうそう、そーいや月の民ぴょんに金のりんごとかソーマのしずくとかもらったから、それも入れてみたんだよー」

亜美「さすがは我が姉。空腹を満たすだけじゃなくて、ステータス異常に耐性をつけてさらにステータスアップも図ろうって作戦だね!」

真美「もっちろん! これぞ一石三鳥さくせんなのだ!」

美希「ふーん……なんか、新食感ってカンジなの」

響「大丈夫なのかなぁ……」


348: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:54:33.01 ID:uFHmjAGF0

千早「モグモグ……」

伊織「どう? おいしい?」

千早「……ええ、とてもおいしいわ。ちょっと見た目からは想像できない味だけど」

伊織「ぐっ……」

あずさ「うふふ、見た目なんて気にしなくても大丈夫よ~? この冷しゃぶ、本当においしいから」

伊織「カルパッチョね」

あずさ「そ、そうだったわね~」

やよい「えへへっ、見た目はかわってるけど、伊織ちゃんたちのお料理とってもおいしいよ!」

伊織「そ、そう?ありがと、やよい」



真美「うーん、みんなおいしいって言ってくれるんだけど、なんだかなー」

伊織「私たちじゃ力不足だったって事を認めるしかないみたいね……」

真「そうかな? おいしいって言ってくれてるんだから別にいいんじゃない?」

伊織「私が納得できないのよ。このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんの作る料理は、見た目も、味も、全てがパーフェクトでなければならないの!」

真「こだわるなぁ」

真美「んでも、マズイものができなくてよかったよね」

真「うん。やよいや響、あずささんの凄さが身に染みて分かったよ」

貴音「ふふ、真に重要なのはそこに込められた想い」モグモグ

貴音「相手を想って作ったものならば、どのような料理であろうとご馳走になり得ますよ」モグモグ

伊織「アンタ、ものを食べながらよくそんなセリフが言えるわね……」



349: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 13:58:43.65 ID:uFHmjAGF0
ーーーーーー

ーーー


律子「…………さて」

律子「食事もお風呂も終わってあとはもう寝るだけだけど、その前にもう一度みんなに確認しておきたいの」

春香「確認……ですか?」

律子「ええ」

律子「私たちは明日、地下渓谷に潜る。小鳥さんに会うために」

律子「夕食前のみんなの話を聞いてみんなの覚悟は分かったわ」

律子「でも、もう一度各々よく考えて欲しいの。小鳥さんと戦うっていう事の意味を」


一同「………」


律子「私からの話は以上よ。さ、ゆっくり休みましょう」



一同「はーーーい」



350: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 14:10:49.53 ID:uFHmjAGF0
ー 月の地下中心核 ー


P「ところで音無さん。最後の戦いについて何か考えているんですか?」

小鳥「え?」

P「ほら、音無さんには親衛隊がいるじゃないですか? その魔物たちをどう使うのかなーと」

小鳥「うふふ、気になります?」

P「もちろんですよ。まあ、直接戦うのは俺じゃなくてあの子たちなわけですけど」

小鳥「そうですねぇ……。ついに私のアイドルたちとプロデューサーさんのアイドルたちが戦う時が来たんですね……」

P「えっ? 音無さんのアイドル?」

小鳥「あっ……ええと、気にしないでください。深い意味はありませんので」


小鳥「私が考えたのは、よくあるパターンです。あの子たちそれぞれに持ち場を決めて、春香ちゃんたちを迎え撃ってもらうんですよ」

P「なるほど。確かにラスダンとかでよくあるパターンですね」

P「で、配置はもう決まっているんですか?」

小鳥「いえ、それはあの子たち自身に任せているので。今頃はみんなで話し合ってるんじゃないかなぁ」

P「ふーん……」


351: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 14:15:55.18 ID:uFHmjAGF0
ー 月の地下渓谷 B10F ー


クルーヤ「……というわけで、クジを用意しました。覚悟が決まった子から引いてね」


リルマーダー「よーしっ! んじゃまずはオイラが……」

レッドドラゴン「待て待て。ここは特攻隊長であるオレ様がだな」

リルマーダー「特攻隊長はオイラだかんな!」

レッドドラゴン「なんだとこのクソチビ!」

ベヒーモス「こらこらこら、ケンカするんじゃないよ」

プリンプリンセス「そうですわ。たかがクジ引きではありませんか」

月の女神「でも、これで誰がどの階を守るか決まるんだよね?」

レッドドラゴン「そうだぜ。だから重要なんだ。こーいうのは一番最初に引いた方がいい階をゲットできるに決まってんだよ」

プリンプリンセス「理解に苦しみますわねぇ……。所詮は運ではありませんか」

リルマーダー「運なんかじゃねーよ! 選ばれし者は、選ばれし運命を背負ってるんだ。このオレ様みたいにな!」

リルマーダー「だから一番にクジを引くのはこのオレ様だっ!」

ブルードラゴン「……いや、その理屈だとそなたはどの順番で引いても結果は変わらないはずなのではないか?」

リルマーダー「あっ……そっか」

金竜「しかし、地下1階を引き当てることが出来れば確実にあいどる共と戦えるのも事実。彼女たちは上から降りてくるのだからな」

銀竜「うむ。下の階へ行くほどあいどる共との遭遇率は下がるわけだな!」

レッドドラゴン「地下1階はオレ様が引き当ててやんぜ!」

リルマーダー「いいや、オイラだっ!」

金竜「否、我である!」

月の女神「うーん……だったら私も上の方の階がいいなぁ」

ワイワイガヤガヤ…



ベヒーモス「………」



352: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 14:18:11.85 ID:uFHmjAGF0

クルーヤ「クジを引く順番で揉めるとか、これじゃいつまで経ってもそれぞれの持ち場が決まらないなぁ……」

ベヒーモス「すまないね、クルーヤ。これでも親衛隊結成当初よりはケンカも減ったんだが……」

クルーヤ「うん。それは見ていてなんとなく分かるよ」ニコッ

ベヒーモス「……とはいえ、これじゃ話が進まないのも事実」チラ



レッドドラゴン「一番はオレ様だ!」

リルマーダー「いいやオイラだっ!」

金竜「いや我が!」

ギャーギャー…



ベヒーモス「……仕方ないね」


ベヒーモス「野郎共、静かにしないか!!」

ベヒーモス「ここはリーダー権限でアタイがクジを引く順番を決めさせてもらうよっ!」

リルマーダー「ちぇっ」

レッドドラゴン「マジかよ……」

月の女神「でもベヒーモスちゃん、どーやって順番を決めるの?」

ベヒーモス「五十音順だ」

レッドドラゴン「あ? なんだそれ?」

プリンプリンセス「読んで字の如く、ですわ。名前の頭文字が五十音順で早い方からクジを引いていくんですのよ?」

リルマーダー「じゃあ、一番は……」

魔人兵「あ行で始まる名前の人だから……」

ベヒーモス「一番手はお前だ、暗黒魔道士」

暗黒魔道士「……っ!」ビクッ



353: ◆bjtPFp8neU 2016/07/31(日) 14:21:20.60 ID:uFHmjAGF0

クルーヤ「…………で、みんなにクジを引いてもらったわけだけど」


レッドドラゴン「っしゃああああ!! 見たかこのヤロー! オレ様が地下1階だせっ!!」

リルマーダー「くそぅ……なんでオイラがこんなに深い階なんだよぅ……」

プリンプリンセス「わたくしの持ち場は地下5階ですわね。ちょうど良かったですわ!」

月の女神(私は地下7階かぁ……。誰か私のところまでたどり着いてくれるといいなぁ)

ブルードラゴン(これで後は時を待つのみ、か)

金竜「我が弟よ、地下4階とはなかなかではないか?」

銀竜「うむ。流石は兄者!」

魔人兵「とにかく、コトリ様のためにも頑張らないとな!」

暗黒魔道士「………」


ベヒーモス「これでそれぞれの守護階は決まった。あとはそれぞれがめいっぱい暴れるだけだ」

ベヒーモス「気合い入れな! 野郎共!!」


魔物たち「おおおーー!!!」



クルーヤ「ふふ、なんだかんだ言ってまとまってるよね、この子たち」


クルーヤ「さてと、僕もそろそろ自分の持ち場へ行かないと」

クルーヤ「ーーっ!」ピクッ



ダークバハムート「………」ゴゴゴ



クルーヤ(……おお恐)

クルーヤ(こっちも気合い入ってるなぁ。よっぽど嬉しいんだね、タカネちゃんと戦えることが)

クルーヤ(これは僕も負けていられないな)



358: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 17:45:14.11 ID:VRt3rZWL0
ー トロイアの町 パブ『迷宮』 ー


黒井「…………なに? 月へ向かう手段がないだと?」

北斗「予想のつかない展開になっているのではっきりとは言えませんが、すでにやよいちゃんたちが魔導船で月へと渡ってしまっているので、それ以外に方法はないかと……」

高木「つまり、我々は置いてきぼりを食ってしまったのか」

黒井「……ちっ、765プロめ。この私をのけ者にしおって!」

翔太「まあまあ黒ちゃん、今さら言っても仕方ないでしょ。やよいちゃんが僕らを召喚してくれれば、やよいちゃんのために戦えるんだからさー」

黒井「そもそも、なぜ私が高槻やよいにいちいち呼び出されなければならないのだ! 私は召使いなどではないのだぞ!」

翔太「いや、もともとそーいう契約だったし、黒ちゃんも結構ノリノリで戦ってたじゃん……」

黒井「まったく、この世界は間違っている! 何もかも!」

高木「はは……まあ、ここは実際には存在するはずのない世界だからねぇ……」


冬馬「……見苦しいぜ、黒井のおっさん」


黒井「なに……!?」

冬馬「翔太の言う通り、俺たちは高槻と契約を交わしたんだ。ルールは守るのが大人だろ?」

冬馬「あんたは俺たちの王だ」

冬馬「王だったら王らしく、いつもみたいに余裕ぶって構えてればいいじゃねえか」

黒井「む……」

冬馬「それに、黒井のおっさんは高槻の最終兵器でもあるんだ。……切り札ってヤツだな」

冬馬「だからきっと高槻も出し惜しみなんてしないと思うぜ?」

黒井「………」

黒井「…………フン、分かったような口を聞きおって」

黒井「だがお前の言う事も一理ある。私に頼らなければ事務員一人も倒せない765プロめ、せいぜいこの王に泣きつくがいい!」

黒井「クックック……!」


359: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 17:49:25.96 ID:VRt3rZWL0

北斗(……冬馬。お前、なかなか黒井社長のコントロールが上手くなってきたな)

冬馬(まあな。伊達に長い時間を一緒にやって来てねーよ)

翔太(ま、御し易いのは冬馬君も同じだけどね~)

冬馬(お前は一言余計だこのやろ)



「…………それは、本当ですか!?」



冬馬「…………あん?」チラッ



トロア「このような時勢にミシディアへ戻られるなど……。しかもお一人でなんて危険です!」

長老「世界を背負って戦うあの子らのために、この老いぼれのできることなど一つしかないからのぅ」

長老「……もう、決めたことじゃ。ワシは祈りの館へ入る」

トロア「し、しかし……!」



冬馬「……なんだあの爺さんは」

翔太「うーん……セリフから察するに、重要なキャラっぽい気もするよねー」

冬馬「まあ、俺たちにゃカンケーねぇか」

北斗「………」

冬馬「……おい北斗。どうかしたのか?」

北斗「……冬馬。俺たちのやるべきことが見つかったかもしれない」

冬馬「…………え?」


360: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 17:53:35.51 ID:VRt3rZWL0
ー ミシディアの村 ー


長老「……すまんの、二人とも。ジジイのわがままに付き合わせてしまって」

技師1「いえ、とんでもないです!」

技師2「飛空艇の操縦は我々の仕事ですから」

技師1「それに……」

技師1「オレたちも親方たちのことはずっと心配してました。気持ち的には長老さんと一緒です」

技師1「ですから、その……オレたちも共に祈ります!」

長老「気持ちは嬉しいが、そなたらにはそなたらの務めがある。そなたらはトロイアへ戻るんじゃ」

技師2「長老さん、しかし……!」

長老「祈りの館へ篭るとなれば、長い時間自由がきかないことになる」

長老「ファルコン号を動かすことの出来るそなたらがいなくなってしまっては、アン殿をはじめとするトロイアの人々に迷惑がかかってしまうじゃろう」

技師1「………」

長老「なに、ワシのことは心配するでない。それよりも、アン殿を手伝ってやってほしいんじゃ」

技師2「……分かりました。でも、定期的に様子は見に来ます」

技師1「あと、何か必要な物資があったら、なんなりと言ってください!」

長老「……ありがとう」ニコッ




ババババババ…


技師1「それでは長老殿、お体に気をつけて!」

技師2「また……来ます!」



長老「うむ」


361: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 17:58:43.33 ID:VRt3rZWL0

長老「……さて」クルッ


長老(村は相変わらずひどい光景じゃ。バロンの者が攻めて来た時とは比べものにならんほどの……)

長老(皆……すまんの。しばらく待たせてしまって)

長老(祈りの館へ入る前に、まずは形だけでも弔いを済まさねば)

スタスタ…



ザッ… ザッ…

長老「………」ザクッ




翔太「……ねえ、こっそりついて来たはいいけど、あのおじいさん、何かはじめちゃったみたいだよ?」

冬馬「穴掘ってるみたいだけど……いったいなんのために掘ってんだ?」

北斗「……きっと、死者の為の墓なんだろう」

冬馬「死者……?」

翔太「それってもしかして、魔物にやられちゃった人たちの?」

北斗「おそらくな」

高木「酷いものだ。村ひとつ丸ごと滅んでしまうとは」

黒井(……これが力無き者の末路、か。惨めだな)

黒井「………」


362: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:01:04.20 ID:VRt3rZWL0

黒井「……北斗、どうするつもりだ。あの老人を追うと言ったのはお前なのだぞ」

北斗「まずはあの人と接触しようと思ったのですが……。すみません、機会を逸したみたいです」

翔太「……確かに、今はちょっと声かけづらいよね」

黒井「……仕方がない、ほんの少しだけ時間をやろう」

翔太「えっ? 黒ちゃん本気?」

黒井「私とて鬼ではない。無様なあの老人に後悔する時間くらいはくれてやる」

北斗「社長……」

翔太「へぇ~、黒ちゃんいいとこあるじゃん! 僕、見直しちゃったよ!」

黒井「……フン」プイッ

高木「ふふ……」ニコッ

高木「…………ん?」チラッ

冬馬「………」

高木「鬼ヶ島君、どうかしたのかい?」

冬馬「いや……」

冬馬「この村ってさ、こないだ会った月から来たっていう魔物に滅ぼされたんだよな?」

高木「……!」

冬馬「俺、あの時はとっさに魔物を助けちまったけどさ。……もしかしてこの世界の人間のためにならねー事をしたんじゃないかって……」

翔太「冬馬君……」

北斗「冬馬……」

黒井「………」


363: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:04:35.65 ID:VRt3rZWL0

黒井「だからなんだというのだ?」

冬馬「……黒井のおっさん……?」

黒井「いっとき魔物の味方をしてしまった。だから敵対関係にある人間とは接触できない」

黒井「……そう言いたいのか?」

冬馬「いや、そうは言わねえけど……。俺たちがした事は正しい事だったのか、って分からなくなっちまってよ」

黒井「くだらん。この世界にいちいち感情移入してどうする」

黒井「そんな事を考える暇があるなら、次に高槻やよいに召喚された時のために作戦でも考えておくのだな!」

冬馬「………」

高木「鬼ヶ島君。『正しい事』の定義なんて人の価値観次第だ。それこそ人の数だけ正義がある」

高木「誰かの正義と自分の正義が矛盾することは度々あるだろう」

高木「だが、我々はお互いに歩み寄ることができる。歩み寄り、価値観を近づけることができる」

高木「君の尊い価値観を理解してくれる者は、きっと現れるだろう」

冬馬「………」

黒井「……それはただの妥協だがな」

高木「む……」

翔太「もうっ! 黒ちゃんは一言余計だよー」

黒井「冬馬。私はお前のように後悔などしたりしない。後悔とは、弱者のすることだからな」

冬馬「………」

高木「鬼ヶ島君、君はまだ若い。悩む事もあるだろうが、悩んだ事は必ず君の力になる」

高木「だから、たくさん悩むといい」


黒井「高木、お前は何も分かっていない」ゴゴゴ

高木「分かっていないのはお前だ、黒井」ゴゴゴ


翔太「ちょ、ちょっと二人とも、こんなところでケンカはダメだってば!」



長老「……ワシの村で暴れんでくれんかのぅ。召喚獣たちよ」



黒井「!」

高木「!」

翔太「……ほ~ら怒られた」


364: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:08:08.51 ID:VRt3rZWL0

長老「……幻獣が揃ってこんな廃村に何用じゃ?」

翔太「おじいさん、僕たちの事知ってるの?」

長老「もちろんじゃよ。アスラにオーディン、そして幻獣王リヴァイアサン」

長老「まさかこの様な豪華な面子に会う事になるとはな」

長老「お主ら、トロイアからずっとワシを追って来たのじゃろう?」

高木「おや、気づいておられたのか。なかなか鋭い勘をお持ちのようだ」

長老「ワシとて月の民の端くれ。気配を読む事ぐらいは出来る」

長老「じゃが、この村は見ての通りすでに滅んでおる。幻獣であるお前さんたちの求めるものなど何も無いと思うのじゃがのぅ」

冬馬「………」

黒井「……おい、北斗」

高木「ここは伊集院君の判断に任せるよ」

北斗「はい、分かりました」



北斗「……長老さん。俺たちも祈りの館へ入れてもらえませんか?」



長老「………」

長老「なぜ、お主らのような幻獣が? 詳しい話を聞かせてもらえるかの」

北斗「はい」


365: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:10:42.65 ID:VRt3rZWL0
ーーーーーー

ーーー


長老「……そうか。お主らもまた、ハルカたちの仲間じゃったのか」

北斗「はい。もう月へ行く手段はありませんが、あなたの力をお借りすれば俺たちの『想い』を彼女たちへ届ける事ができると思ったんです」

長老「ふむ……」

長老「お主らの気持ちは分かった。本当ならワシひとりで祈るつもりじゃったが……」

長老「こうしてここにお主らが訪れたのも、何かの縁じゃろう。共に来るがよい」

北斗「はい、ありがとうございます」

長老「少し待っていてくれ。すぐにやることを終わらせてくる」

スタスタ…



冬馬「……なあ、じいさん、待ってくれ」



長老「……ん?」クルッ



冬馬「何人分の墓を作るつもりか知らねえけど、あんたひとりじゃ大変だろ? 俺にも手伝わせてもらえないか?」



長老「………」

長老「不思議じゃな、お主は。幻獣が召喚士でもないワシの為に力を貸すなど」

長老「ありがとう。ならば、頼んでも良いかの?」

冬馬「おうっ!」


366: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:14:59.53 ID:VRt3rZWL0
ー 地下水脈 ー


カイナッツォ「……と、いうわけなのだ」

オクトマンモス「ふーん、人間と魔物が和解かぁ。オレの知らない間にいろいろあったんだなー」

カイナッツォ「今後人間を見かけても襲わぬようにな」

オクトマンモス「カイナッツォの旦那が言うんじゃ従わないわけにはいかねーな」

オクトマンモス「よし、ここいらの魔物にはオレから伝えておくぜ!」

カイナッツォ「うむ、さすがは私の部下。もの分かりが早くて助かる」

オクトマンモス「じゃあ、オレはまたダラダラと寝て過ごすからよ。じゃあな、旦那!」

ズズ…


カイナッツォ「……まったく、ぐうたらな奴だ」




ー アントリオンの巣 ー


アントリオン「……えっ、マジかよ! じゃあ、バトルとかもダメなのか?」

スカルミリョーネ「……だ、ダメ。人間を傷付けることにな…る……」

アントリオン「ちぇー。オレ様の唯一の楽しみだったのによー」

スカルミリョーネ「……ひ、ヒマな時にオレが相手になってやるか…ら……」

アントリオン「ホントだぞ! 絶対だかんな!?」

スカルミリョーネ「……ぞ、ゾンビ、嘘つかな…い……」

スカルミリョーネ「……ちゃ、ちゃんとみんなに知らせておくんだ…ぞ……?」

アントリオン「……了解」

アントリオン「ところでスカルミリョーネ様、砂漠の光、持ってくか?」

スカルミリョーネ「……い、いらな…い……」


367: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:17:03.98 ID:VRt3rZWL0
ー バロンの町 ー


マグ「バルバリシア様……!」

ドグ「お会いしとうございました……!」

ラグ「こうして再びその美しいお姿を拝見する事ができて、我らは感激にございますっ!」

バルバリシア「良かった、無事だったのね、三人とも」



バルバリシア「ところで、こんな場所でいったい何をしていたの?」

マグ「それが……。ゾットの塔の爆発から命からがら逃げ出したのは良かったのですが……」

ドグ「目が覚めると、見知らぬ土地に横たわっておりまして……」

ラグ「歩けど歩けど仲間の魔物や人間すらも見つからず、途方に暮れていたのです……」

バルバリシア「大変だったのねぇ、あなたたちも」

バルバリシア「ま、この町にもう人間はいないみたいだし、ここを根城にするのもいいんじゃないかしら?」

マグ「いえ、せっかくこうして再び出会えたのです。我らもバルバリシア様と共に行きます!」

バルバリシア「その前に、他の魔物たちに伝えてもらいたいのよ」

バルバリシア「もう人間と争う事はない、って」

ドグ「……それは、本当なのですか? ルビカンテ様ともあろうお方が人間と手を結ぶなど、にわかには信じられませぬ……」

バルバリシア「ひと昔前のあいつならそうだったかもね。でも、あいつは変わったわ」

ラグ「そうなのですか?」

バルバリシア「ええ。これからは魔物も人間も争いの無い、新しい時代が来るわよ」

バルバリシア「全てが終わったら、どこかいいところを見つけてみんなで暮らしましょう」

マグ「……分かりました。それを楽しみに、私たちは言いつけを果たして来るとします」

マグ「行くぞ、ドグ、ラグ!」

ドグ・ラグ「はっ!!」

タタタタ…



バルバリシア「……新しい時代、か」

バルバリシア「その前に、ミキたちに頑張ってもらわないとね」

バルバリシア「……さて、あいつはしっかりやっているかしら」


368: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:26:22.58 ID:VRt3rZWL0
ー バブイルの塔 1F ー


…ザッ

ルビカンテ「……酷い有様だな。崩れていないのが不思議なくらいだ」

ルビカンテ「ここももうアジトとしては使えまいな」

ルビカンテ(あれだけ激しい戦いがあった後だ。それも仕方ない、か)



「…………ルビカンテ様」



ルビカンテ「……生きていたか、ルゲイエよ」

ルゲイエボーグ「はっ。このルゲイエ、こうしてルビカンテ様に再びお会いできるのを待ちわびておりましたぞ!」

ルビカンテ「…………そうか」

ルビカンテ「このバブイルの魔物はどれだけ残っている?」

ルゲイエボーグ「数は半分程に減ってしまいましたが、戦力として使えそうな者もまだおりますじゃ」

ルゲイエボーグ「人間を攻めるのですかな?」

ルビカンテ「いや、人間とは和平を結んだ。もう憎しみ合う事もないだろう」

ルゲイエボーグ「なんと……」

ルビカンテ「残っている者たちに伝えてくれ。これからは平和に生きるのだと」

ルゲイエボーグ「それが、ルビカンテ様のお望みとあらば」

ルビカンテ「頼んだぞ」クルッ

スタスタ…


369: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:28:55.75 ID:VRt3rZWL0







ルゲイエボーグ(……なーんて素直に従うと思うなよ? この木偶がぁ!)


ルゲイエボーグ「……死ねぇ、ルビカンテっ!」ブンッ


…ザシュッ!!


ルビカンテ「! ……ルゲイエ、貴様……」


ルゲイエボーグ「お前さえいなければ、ワシは四天王になっていたんじゃあ!」

ドゴォ!! ズバァ!!

ルゲイエボーグ「お前のせいで、お前のせいでっ!!」

バキッ!! グシャァ!!


ルゲイエボーグ「っ……はぁ、はぁっ……」

ルゲイエボーグ「ど、どうじゃ、思い知ったか!」


ルビカンテ「………」

ルビカンテ「……やはり、お前だけは生かしておけんようだな」


ルゲイエボーグ「なっ……!? ワシの攻撃が効いてないだと……!?」


ルビカンテ「私利私欲の為にしか動かないお前は、弱い」

ルビカンテ「オレは本当の強さというものをあいどるたちから学んだ」

スタスタ…


ルゲイエボーグ「ひっ、く、来るなっ!」ズサッ


ルビカンテ「お前がイオリにした事を、今度はオレがお前にしてやろう」ポキポキッ



ルゲイエボーグ「お、お助けぇ~~!!」



ドカバキベキグシャ!!



ルゲイエボーグ「」



ルビカンテ「……地獄で反省するんだな、ルゲイエよ」


370: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:32:38.70 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館の外 ー


亜美「……ちぇすとぉ!!」

ゴオオオオォォ!!


ドサッ

魔物1「」


亜美「もいっちょ!!」

ゴオオオオオ!!


ドサッ

魔物2「」


亜美「ラストっ!!」

ゴオオオオォオオ!!


ドサッ

魔物3「」



亜美「…………ふぃ~」



真美「おつかれ亜美ー。ほい、エーテル」スッ

亜美「さんきゅ、真美」

亜美「んく、んく……」

真美「なかなか板に付いてきたカンジじゃない? 亜美の『れんぞくま』も」

亜美「……いや、まだまだっしょ。亜美ひとりじゃ使える魔法は限られてるし、お姫ちんやミキミキの火力には届いてないよ、きっと」

亜美「それに連続じゃなくていちおー同時に出してるんだよ? 真美だって同じっしょ?」

真美「おっと、こりゃしっけい」

真美「でも、火力が足りないからなん個も同時に魔法出して撃ってるんだよね?」

真美「それでもまだあの二人にかなわないって、ツラいねー」

亜美「だって……ミキミキは最初っからホーリー使えたみたいだし、はるるん助けに行った時なんかはアルテマ使ったっぽいし……」

真美「ねー。それを聞いた時は真美もチョーびっくりしたよー」

亜美「お姫ちんはお姫ちんでいつの間にかメガフレアとか覚えてるし……」

亜美「もうね、くやしいを通り越して笑いが出てくるよね……」ズーン

真美「ま、まあホラ、あの二人はいろいろとキカクガイだからさ」

亜美「でもさー、ウチらの中でキッスイの黒魔道士は亜美だけなんだよ? やよいっちの火力にはかなわなくても、せめてミキミキやお姫ちんの火力には追いつきたいよー……」

亜美「……あーあ、亜美も二人みたいにすんごい魔法が使えるよーにならないかなぁ」

真美「たいへんだねぇ、黒魔道士も」



貴音「…………精が出ますね、亜美、真美。このような夜更けに」



亜美・真美「……お姫ちん?」


371: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:37:58.44 ID:VRt3rZWL0

亜美「どったの? こんな時間に」

真美「お姫ちんもしゅぎょー?」

貴音「いえ、そうではありません」

貴音「明日、わたくしたちは中心核を目指してここを発ちますが、その前にこの光景をしっかりと目に焼き付けておこうと思いまして」

亜美「この光景って、月の?」

貴音「ええ」

真美「そーいえばお姫ちんって、いっつも月を見てたよね」

貴音「わたくしにとって月とは、無くてはならないものですから」

真美「ふーん……」



貴音「……時に亜美」

亜美「……ほぇ?」

貴音「何やら自分の魔法の威力に自信が持てないようですね?」

亜美「…………まあ、ね」

亜美「てか、お姫ちんのせいでもあるんだよ?」

貴音「……なんと、そうでしたか。それは申し訳ない事をしてしまいました」

亜美「いや、マジにあやまらないでよ……。なんか自分がミジメに思えてきたよー……」

真美「亜美……」ナデナデ

貴音「………」

貴音「亜美。もう少し自分に自信をお持ちなさい」

亜美「えっ……」

貴音「わたくしが保証します。あなたのその力は決して誰にも引けを取ってはいません」

亜美「………」

亜美「うーん……お姫ちんが言うと、なーんかホントっぽく聞こえるんだよねぇ」

貴音「……はて? わたくしは真実を申し上げているつもりですが?」

亜美「……ホント、その自信はどこからくるんだろ」

貴音「ふふ……」ニコッ


372: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:42:00.27 ID:VRt3rZWL0

貴音「では、僭越ながら、わたくしから一つ助言を差し上げます」

貴音「亜美。あなたはわたくしや美希に魔力が劣っていると思い込んで焦っている……」

亜美「………」

貴音「ですが、それは大きな間違いです」

亜美「……え、なんで? だってお姫ちんもミキミキも、亜美が使えない魔法とか使えるじゃん」


貴音「……例え話をしましょう」

貴音「白魔道士である美希は『けあるが』や『へいすと』、『ほーりー』などが得意ですね」

亜美「あと、アルテマもね」ムスー

貴音「片や、同じ白魔道士の真美は『れびてと』や『ぷろてす』、『しぇる』、『ぶりんく』などを好んで使用します」

真美「……ん、そーいやミキミキってあんましサポート魔法使わないんだね」

貴音「ええ。全く使用しない、という訳でもないと思いますが、美希は回復や攻撃、真美は自身の強化や仲間のさぽーとが得意なのだと感じました」

真美「へー……真美、そんなのゼンゼン気にしてなかったよー」

亜美「……んじゃあ、他のみんなは?」

貴音「そうですね。あずさは特に『てれぽ』の魔法が得意なようです」

真美「あれは、得意ってゆーのかなぁ……」

貴音「わたくし自身は白黒併せて大体の魔法を使う事ができますが、それでもその中で得手不得手というものがあります」

貴音「『ぶりざど』系の魔法は得意ですが、『さんだぁ』系の魔法はあずさに、『ふぁいあ』系の魔法は亜美に威力で劣るでしょう」

亜美「えっ、そーなの?」

真美「知らなかった……。しょーげきのジジツってカンジ」

貴音「それに、『とーど』や『ぶれいく』の魔法を使えるのも亜美、あなただけです」

貴音「それ以外にも、あなたには魔法を同時に複数発動するという特技も持っています」


373: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:45:21.46 ID:VRt3rZWL0

真美「……あれ? なんか、お姫ちんの話を聞いてたら亜美がそこまでダメダメってカンジはしなくなってきたよ?」

貴音「魔法というものも一つの個性。使用者によってその力は様々な形に変化します」

貴音「つまり、わたくしにはわたくしの、美希には美希の……」

貴音「そして、亜美には亜美だけの戦い方というものが必ずあるはずなのです」

貴音「それはもちろん真美、あなたにも同じ事が言えるでしょう」

真美「………」

貴音「他人を真似するのではなく、あなた方にしか出来ない自分だけの戦い方を見出してください。二人の柔軟な発想力ならば、きっとそれを見つけることが出来ると信じていますよ」

亜美「………」

真美「お姫ちん……」


亜美(亜美だけの戦い方、かぁ……)

亜美(……そーだね。誰かのマネして強くなっても、きっとイミないよね)


亜美「……ありがとね、お姫ちん」

亜美「亜美、自分がどーすればいいかがなんとなくわかった気がするよ!」ニコッ

貴音「……共に精進致しましょう、亜美、真美」ニコッ

真美「うーむ……。さすがお姫ちんってカンジだね。カユいところに手が届くっていうか」

亜美「あ、そんじゃあお姫ちんはマゴの手ってコトだね!」

真美「おお、そーだね! マゴの手ちんだね!」

貴音「あ、あの……それは果たして褒め言葉なのでしょうか?」



真美「……っと、そうだ」

真美「そーいえば真美、ピヨちゃんと戦うに当たってお姫ちんに言っておかなきゃいけないことがあるんだった」

貴音「わたくしに……ですか?」

真美「うん。すっごく大切な話なんだよ」

貴音「……分かりました。拝聴致しましょう」


374: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:49:02.71 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館付近の丘 ー


真「…………せいっ!」バッ



…ドガアアァァアアン!!




雪歩「わぁ……山が一つなくなっちゃった……!」

雪歩「やっぱりすごいね、真ちゃん」


…スタッ

真「そんなことないさ。気の流れを上手く操ることができれば、こんなの誰にだってできるんだ」

真「特に、今までずっとボクの修行に付き合ってくれていた雪歩なら、もう気の流れっていうものを理解しているはずだよ?」

雪歩「で、でも私、まだよく分からなくて……」

真「……うーん」



真「……いいかい雪歩。気っていうのは誰だって自分の体の中に持っているものなんだ」

真「大切なのは、どうやってそれを外へ出してやるか」

雪歩「体の外へ……?」

真「うん。頭で考えるんじゃなくて、感じるんだ。自分の中に揺らいでいるエネルギーを解放するイメージを思い描くんだよ」

雪歩「自分の中の、エネルギー……」

真「そのエネルギーを……」ユラ…


真「…………拳に込めて、撃つッ!!」ブンッ


ドゴオオオオォォオン!!!



真「……まあ、雪歩にはアダマンアーマーと伝説のスコップがあるし、あんまり必要ないのかもしれないけどね」

雪歩「……ううん、そんなことないよ。真ちゃん、私に教えて!」

真「……へへ、分かったよ」ニコッ

真「ただ、明日にはもう出発だ。時間的に教えてあげられるのは簡単な事だけになっちゃうけど、それでもいいかな?」

雪歩「よ、よろしくお願いします、師匠!」

真「し、師匠?」

真「……ま、まぁいいや。それじゃ、もう一度ボクの動作をよーく見ててね?」スッ

雪歩「お、押忍っ!」


375: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:52:10.00 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館 1F 図書室 ー


やよい「………」

やよい「………」

やよい「………」

やよい「………」

やよい「………」



やよい「……………うー」



伊織「…………やよい、眠れないの?」


やよい「あ、伊織ちゃん……。ごめんね、起こしちゃった?」

伊織「ううん。ちょうど私も眠れなかったところよ」

やよい「そっかぁ……」

伊織「………」

やよい「………」

伊織「……考え事でもしてたの?」

やよい「……うん」

伊織「………」

やよい「………」

やよい「えっとね……」

やよい「ちょっと、小鳥さんのことを考えてたんだ」

伊織「…………そう」

やよい「わたし、あんまりよくわからないままここまできて、今までずーっとおかしいなー、なんでだろーって思ってたことがあって……」

やよい「でも、春香さんが『小鳥さんのおかげでわたしたちが成長できた』って言ったときに、思ったの」

やよい「小鳥さんは、やっぱり小鳥さんでいてくれたんだなーって」

伊織「………」

やよい「だから、わたしもちゃーんと小鳥さんにお礼をしなきゃって思って」

やよい「わたしも最後までしっかりわたしの役をえんじて、小鳥さんを……」

伊織「……やよい」


376: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:54:43.87 ID:VRt3rZWL0

伊織「アンタの決意は分かったわ。だから、無理しなくてもいいの」

やよい「えっ? わたし、ムリなんかしてないよ?」

伊織「嘘よ。……だったらなんでアンタは泣いているの?」

やよい「わ、わたしっ……こ、これは泣いてるんじゃなくて……!」ゴシゴシ

伊織「………」

伊織「……お願いよ、やよい」ダキッ

やよい「い、伊織ちゃん……?」

伊織「私の前では無理しないで。本当のあなたを見せて」

やよい「っ……ううっ……!」ポロポロ

やよい「伊織ちゃん……わたしっ……!」

やよい「ほんとうは、小鳥さんと戦いたくないよっ……!」ポロポロ

伊織「やよいっ……!」ギュッ

やよい「ほんとうは、ごわぐでっ……かなしくてっ……えぅ……!」ポロポロ

伊織「ええ……そうね……」ナデナデ


伊織(『自分の役を最後まで演じきる』。春香の言葉は確かに聞こえはいいけれど、小鳥との戦いをそういう風には考えられない子だってもちろんいる)

伊織(やよい……。アンタはどこまでも優しいから、割り切ることができないのね……)

伊織(でも、だからこそアンタは今より強くなれる。やよいなら、その優しさを強さに変えることだってできるわ)

伊織(乗り越えるのよ。……それはアンタが自分の力で越えなければならない、壁なんだから)



やよい「……ぅうううぅぅうううぁああん……!!」


377: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 18:57:46.78 ID:VRt3rZWL0
ー 深夜 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー


律子「………」



律子(春香のおかげで、あの子たちも小鳥さんと戦う覚悟を持つ事ができた)

律子(でも、それはきっとみんながいるから。自分は一人じゃないって思う気持ちから来るもの)

律子(地下渓谷ではどんな戦いになるか分からない)

律子(もし、一人になってしまった時。誰からも助けてもらえなくなった時)

律子(その時にこそ、あの子たちの真価が試される事になる)



律子(それにしても、プロデューサー殿の言葉が気になるわね)

律子(小鳥さんを真の意味で助ける……。心の支えになるっていうのは確かにそれっぽく聞こえるけど、イマイチしっくりこない)

律子(プロデューサー殿には何か別の思惑がある。……そう思えて仕方がないのよね)



美希「……あれ、律子…さん?」



律子「美希……」

律子「……眠れないの? 早く寝ないと明日に響くわよ?」

美希「えーっとね、寝すぎて寝れなくなっちゃったの」

律子「あのねぇ……。明日起きなかったら置いて行っちゃうわよ?」

美希「それはへーきなの。ミキ、こー見えて自分の睡眠時間はちゃーんと調整できるんだよ?」

律子「……本当に大丈夫なんでしょうねぇ?」

美希「あ、ヒドいの! 律子…さん、ミキのこと信じてないんだ」

律子「そういうわけじゃないけど……」

美希「………」

律子「………」


…キラーン!


美希「……キレイだね、クリスタルって。見てるとなんだか不思議な気持ちになってくるの」

律子「そうね……」


378: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:00:17.21 ID:VRt3rZWL0

律子「……美希、あなたに訊きたいことがあるんだけど」

美希「なーに?」

律子「その……プロデューサーがいなくなってさみしくないの?」

律子「あなたっていつもプロデューサーにベッタリだったし、どうしてそんなに落ち着いているのかなって気になってね」

美希「んー…………」



美希「じゃあ、律子…さんは?」

律子「えっ?」

美希「ハニーがいなくて、さみしい?」

律子「えっ…と……」

律子「……そりゃあ、誰にも相談せずにいきなりいなくなったのはどうかと思うけど……」

律子「まあ、どこにいるのかは分かっている訳だし、小鳥さんのお守をしてもらってると思えばいいし」

律子「……それに、彼には彼なりの考えがあるみたいだし」

美希「そう!」

美希「ハニーにはハニーの考えがあるんだよ」

美希「ミキも、ハニーがどうするつもりなのかまでは分からないけど」

美希「……でもね、『信じて』ってハニーが言った以上、ミキはそれを信じて、自分にできることをガンバるだけなの」

美希「だから、ミキもさみしがってるだけじゃダメって思ったんだよ?」

律子「………」

律子「強いわね、美希は」

美希「? ……別に特別なことじゃないと思うな」

律子「いいえ、特別よ」

律子「仲間の言葉を信じるのはとても大切な事だけど、簡単じゃないわ」

律子「心のどこかで不安を抱いてしまう。疑心暗鬼に陥ってしまう」

律子「ただ真っ直ぐにそれができるのは、美希、あなたが本当に純粋に強い人間だからよ」

美希「……ミキはよく分からないけど、律子…さんが言うなら、そうなのかな」


…キラーン!


379: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:02:59.58 ID:VRt3rZWL0

律子「……ねえ、美希。あなたは不安に感じない? 小鳥さんと戦うことを」

律子「春香はああ言ったけど、仲間と戦うというのはやっぱりそう簡単に割り切れる事じゃないわ」

律子「それに、小鳥さんはどうやら本当に本気みたいだし……」

美希「……あは☆ なんだかおかしいの」

律子「えっ……」

美希「これじゃ、いつもと逆だね」

律子「逆? ……どういう意味?」

美希「だっていつもは、分からない事をミキたちから質問することが多いのに、今日の律子…さん、ミキに質問してばっかりだよ?」

律子「あ…………」


律子(そうか…………そうだったのね)


美希「みんな、難しく考えすぎなの」

美希「小鳥と戦うことになったからって、別にミキたちのカンケイが変わっちゃうってわけじゃないでしょ?」


律子(質問ばかりするのは、不安の裏返し)

律子(みんなの事を心配しつつも、その実は……)


美希「戦って、小鳥を倒して、それで元の世界に帰って。でも、元の世界に帰っても小鳥は小鳥だし、ミキはミキだよ?」

美希「それはこの世界にいても同じだって思うな」


律子(私自身が一番、小鳥さんと戦う事に不安を……いえ、恐怖を抱いている)


美希「戦う過程で痛い思いや苦しい思いもするかもしれないけど、それはみんな同じなの」

美希「ミキ的には、全部終わって元の世界に戻ればまたみんなで楽しく過ごせるって思うなっ」ニコッ


律子「美希……」


律子(……ここがクリスタルルームだからそう思うのかしら)

律子(今は、目の前のこの子が眩しくて仕方ない)


380: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:05:13.47 ID:VRt3rZWL0

美希「えっと、こーいうのなんて言うんだっけ? 喉元過ぎれば……」

律子「……熱さ忘れる、ね」

美希「あは☆ さすが律子!」

律子「さん、でしょ?」

美希「むー……ごめんなさいなの」


律子(喉元過ぎれば……か)

律子(私は美希みたいには考えられない。でも、この子たちの強さには、本当に勇気をもらえるわ)

律子(私も、もっとしっかりしないとね)



美希「ミキね、地球の……ばろん、っていう国でみんなで集まった時に、誓ったの」

美希「ハニーと離ればなれになっても、もうゼッタイに弱音は吐かないって」

美希「だから、もう何があっても恐くないよ。どんな壁だってきっと乗り越えてみせる!」

律子「………」


律子「……はぁ……」

律子「やっぱり大物だわ、あんたは」

美希「そう?」

律子「さ、そろそろ戻りましょう。眠れないって言っても、横になって目を閉じてるだけでも体は休まるから」

美希「あ、じゃあじゃあ、今夜はミキと一緒に寝る?」

律子「そうね、たまにはそれもいいかもしれないわね」ニコッ

美希「えへへ、やったぁ!」


381: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:07:40.59 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館付近の洞窟 ー


響「……はっ!」ブンッ

ドゴッ!

ドサッ

魔物1「」


響「…………ふぅ」



響「……えーと、これで何体目だっけ。50体までは数えてたんだけどなー」

響「なんか、魔物を倒しすぎて気持ち悪くなってきたかも……」

響「でも、まだまだだぞ。こんなのじゃ全然足りない」

響(みんな、最初の頃に比べてすっごく強くなってる)

響(それぞれに得意な分野があって、それをちゃんと自分で理解してて)

響(今のみんななら、きっと魔物なんかに負けたりしないって確信できるぞ)



魔物2「グギャァー!」


響「………」

響「……たぁーーっ!」ブンッ

ドゴォ!

ドサッ

魔物2「」



響(……でも、じゃあ、自分は?)

響(体術では真に敵わないし、伊織や千早みたく得意な武器があるわけでもない)

響(それに、自分は魔法も使えない)

響(エン太郎もファル子もいない今の自分に、何がある? 何ができる?)

響(……みんなの足手まといにだけは、絶対になりたくないぞ)グッ



「……ーー♪ 」



響「……あれ、この声……」


382: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:09:39.30 ID:VRt3rZWL0

…ザッ

響「……千早?」


千早「……我那覇さん? どうしたの? こんな夜遅くに」

響「それはこっちのセリフだぞ。……こんなところで歌の練習?」

千早「なんだか落ち着かなくて。眠れないから、歌えば少しは気が楽になるかも、って思って」

響「そっか。やっぱり千早も落ち着かないのかー……」

千早「我那覇さんも眠れないの?」

響「自分は……」



響「自信が持てないんだ」

響「自分、真みたいに強くないし、魔法が使えるってわけでもないし……」

響「この先ちゃんとみんなについて行けるのかな……って」

千早「……珍しいわね。そんなに弱気な我那覇さんは初めて見たわ」

響「そりゃ、自分だって自信をなくすことくらいあるよ」

響「こないだ戦った親衛隊の魔物たちはすっごく強くて、自分は攻撃をよけることで精一杯でさ」

千早「………」

響「よく考えたら自分、今までみんなほど魔物と戦って来なかったんだ」

響「エン太郎やファル子、それにまど香。飛空艇のことだったら、誰にも負けない自信はあるつもりだけど……」

千早「……ええと、ごめんなさい。まど香って誰の事だったかしら?」

響「も~、まど香は魔導船の名前だぞ。千早、忘れちゃったのか?」

千早(いつの間に決まったのかしら)


383: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:11:41.60 ID:VRt3rZWL0

千早「……まあ、それはともかく」

千早「我那覇さんは、魔物との戦いにおいて自分に秀でているものがないから悩んでいるのね?」

響「うん……」

千早「そうね……。だったら、発想を変えてみてはどうかしら」

響「発想を変えるって?」

千早「あなたの得意分野ーーつまり、飛空艇で戦うの」

響「えっ、でも、ファル子は地球に置いてきたし、まど香も今は近くにいないし……」

響「……エン太郎は、ずっとずっと遠くに行っちゃったし……」

千早「遠くにいるのなら、地球にいた頃みたいに呼びかけるのよ」

響「いや、宇宙を越えられるのはまど香だけだぞ?」

響「それに、エン太郎はもう……」

千早「………」



千早「……私ね、今だから言うけれど、最初はあなたとエン太郎の仲を疑っていたのよ」

千早「飛空艇なんてどれも同じじゃないか、たかが乗り物と人間が心を交わす事なんて本当に出来るのか、って」

響「ちょ、ちょっと千早、いきなり何を言い出すんだ?」

千早「……でも、あなたたちの絆は決して偽物なんかではなかった」

千早「エン太郎を操縦している時の我那覇さんは本当に楽しそうだったし、一度カイポではぐれてしまった時だって、エン太郎はちゃんとあなたの元へ戻って来た」

千早「それに……私はその場にいたわけじゃないけれど、最後の最後までエン太郎は命がけであなたを守り抜いた」

千早「その話を聞いた時、私、心の奥底が震えるような気持ちになったの」

響「………」

千早「だから、エン太郎がもうこの世にはいないとしても、遠く離ればなれになってしまったとしても……」

千早「きっと、心の深いところで我那覇さんと繋がっているんじゃないかしら」

千早「姿は見えなくても、遠い空で見守っていてくれている……」

千早「そう思う……いえ、そう信じたいの」

響「千早……」


千早(……なんて、まるで私自身に言い聞かせているみたい)

千早(なんだか自分が滑稽ね)


響「!」

千早「……我那覇さん、どうしたの?」

響「……魔物だ!」


384: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:16:34.37 ID:VRt3rZWL0

魔物3「グルル……!」



千早「……!」チャキッ

響「千早、ここは自分に任せて」

千早「でも……」

響「自分、試してみようと思うんだ。千早が言ったみたいに」

千早「えっ?」

響「行くぞっ!」ダッ

タタタタ…


魔物3「ガアア!」ブンッ


響「……っと」ヒョイッ

響「そんな攻撃、食らわないぞ!」


魔物3「グアアア!」ダッ


響「………」


響(千早の言う通りだ。自分には自分の得意分野がある)



響(……エン太郎)



響(お願い、力を貸してっ……!)



魔物3「グアアアッ!」ブンッ



千早「我那覇さんっ!」


385: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:17:34.01 ID:VRt3rZWL0

ゴオオ…



響「……これが、自分の戦い方だぁっ!!」

響「ナンクル砲っ!!」バッ


ズドオオオオンッ!!



千早「!」





…ドサッ

魔物3「」


響「…………よしっ!」



千早「我那覇さん、今のは?」

響「ナンクル砲は、飛空艇の砲撃。エン太郎の武器だったんだ」

響「きっと、天国からエン太郎が自分に力を貸してくれたんだ」

千早「そう……」

響「ありがとね、千早。千早のおかげで自分なりの戦い方を確立できたぞ!」

千早「いえ、お礼を言われることではないわ」

千早「その力は、きっと我那覇さんとエン太郎の絆の証だと思うから」

響「うん……そうだな!」



響(……ありがとう、エン太郎)

響(自分、頑張るからな。天国でちゃーんと見ててよねっ!)


386: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:19:09.71 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館 屋上 ー


キラキラ…


春香「はぁ……」

春香「宇宙ってホントにキレイだなぁ……」ボーッ

春香「数えきれないくらいたくさんの星が瞬いていて……」

春香「……ふふっ、まるでサイリウムみたい」


春香(……こうして悠然とした宇宙を見上げていると、なんだか不思議な気持ちになる)

春香(ゲームの世界へ飛ばされて、いろんな場所を旅して、慣れない武器を持って魔物と戦って)

春香(普通のアイドルだった私たちは、今まで知らなかったことを知ったり、考えもしなかったことについて考えさせられたり)


『……お前たちアイドルが、物語を紡ぐんだ』


春香「………」



春香(プロデューサーさん、私たちはしっかりできているんでしょうか?)

春香(この物語は、ちゃんとハッピーエンドへと向かっているんでしょうか?)

春香(演劇やドラマのお仕事みたいに……ううん、今までやってきたどのお仕事よりもリアルで、現実味に溢れていて)

春香(ここは本当ならあり得るはずのない世界だから、今まで起こったことは全部夢なんだよって言われても、信じられないかもしれません)

春香(私たちの向かう先には、いったい何が待っているんでしょうか……)



あずさ「…………春香ちゃん?」



春香「……あれっ? あずささん?」

あずさ「もしかして春香ちゃんも眠れないの?」

春香「えっと、はい。最後の戦いの前で、少し緊張してるのかもしれませんね」

あずさ「うふふ♪ その割にはずいぶん落ち着いて見えるわよ?」

春香「そ、そうですか?」

あずさ「ええ」ニコッ

あずさ「なんだか春香ちゃんがいつもよりも大人っぽく感じられるわ~」

春香「そう、ですか……。えへへ、嬉しいなぁ」ニコッ


387: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:22:11.38 ID:VRt3rZWL0

あずさ「……綺麗な空ね」

春香「そうですねぇ……。家に持って帰りたいくらいです」

あずさ「もしもこの宇宙を家に持って帰ることができたら、プラネタリウムは必要なくなっちゃうわね~」

春香「ふふっ、ホントですねっ!」

あずさ「………」

春香「………」



春香「……あの、あずささん?」

あずさ「……なぁに?」

春香「あずささんって、今は……腕とか再生したりとか、回復魔法が効かなかったりとか……」

春香「なんていうか、その……」

あずさ「えーっと、ゾンビっていうことかしら?」

春香「す、すみません、変な事言って」

あずさ「いいのよ、気にしないで? もうだいぶこの体にも慣れたし」

あずさ「スーさんが私のために分けてくれた命ですもの。私、とても大切に思っているのよ?」

春香「………」

春香「あずささん。私、あずささんに謝らないとです」

あずさ「あら、それはどうして?」

春香「今日、みんなの前で私は、自分の役を最後まで演じきりたいって言いました」

春香「でも、私たちの中で一番大変な役を与えられたのは、あずささんだったんですよね」

春香「それなのに私、あずささんの事も考えずに軽はずみな事を……」

あずさ「……そうねぇ」

あずさ「私も、まさか自分が死を体験するなんて思ってもみなかったけど……」

あずさ「うふふ。でも、これも貴重な体験よね?」

春香「……なんでそんなに軽く話せるんですか? あずささん、怖くなかったんですか……?」

あずさ「う~ん……」


388: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:27:05.47 ID:VRt3rZWL0

あずさ「……少し前に、ドラマの撮影で知り合いになった役者の方がいてね」

春香「えっ……?」

あずさ「その方が仰っていたの。『自分には主人公を張る器はない。でも、脇役として主人公を引き立てることならできる。だから、自分は自分にしかできないやり方でドラマを良くしていきたい』って」

あずさ「その方の言葉を聞いて私、思ったのよ。ああ、そういう考え方もあるんだなぁ、って」

春香「あ、あの……?」

あずさ「私ね、今までお仕事で与えられた役に対して特に疑問を持ったりしたことはなかったんだけど、その方の言葉を聞いてから、少しだけ考え方が変わったわ」

あずさ「主人公だけが主人公じゃない、どんな脇役にだってちゃんとした意味があるって」

あずさ「それからは私、どんなお仕事でも楽しくって。……ううん、楽しくやらなきゃ損よねって思えるようになったのよ」

春香「あずささん……何の話を?」

あずさ「私が一度死んだことも、きっと物語を盛り上げる何かしらの意味があった」

あずさ「……物語を盛り上げるのは、役者の務めよ?」ニコッ

春香「あずさ…さん……」


389: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:28:13.34 ID:VRt3rZWL0

あずさ「さあ、春香ちゃん。終わった事は忘れて、今は前を向きましょう?」

あずさ「主人公の春香ちゃんが後ろを振り返っていては、物語が先に進まないわ」

あずさ「春香ちゃんには、この物語を終わらせる使命があるんだから」

春香「………」

あずさ「…………ねっ?」

春香「……はい、分かりました。私、もう絶対に後ろを向いたりしません!」グッ

あずさ「うふふ♪ それでこそ春香ちゃんよ」ニコッ



春香「あの……ちなみにあずささんって、スーさんのこと、ちょっと気になったりしてるんですか?」

あずさ「あらあら……」

あずさ「スーさんは私にとっていいお友達よ? でも、私の運命の人は別にいるのかなって思っているわ~」

春香「で、ですよね。……あはは、私ったら何言ってるんだろ」

あずさ「うふふ、心配しなくても、春香ちゃんの大切な人を横取りなんかしないわよ~?」

春香「えっ!? い、いやいや、何を言ってるんですか! プロデューサーさんの事は今は関係な……」

春香「…………あっ」

あずさ「春香ちゃんは本当に楽しいわね~」ニコニコ

春香「も、もう! からかわないでくださいっ」カァァ


390: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:30:29.98 ID:VRt3rZWL0
ー 翌日 月の民の館 1F 図書室 ー


月の民「……もう、行かれるッスか」

貴音「ええ」

貴音「あなたには本当にお世話になりました。わたくしのいない間この館を守ってくださったり、快く皆を迎え入れていただいたり……」

貴音「それに、このようなお弁当まで頂いて……感謝してもし足りません」ズッシリ



響「……ていうか、貴音のお弁当だけ大きすぎだよね。自分たちの3倍くらいあるぞ」ヒソヒソ

春香「それは仕方ないんじゃないかな。月の民さんもさすがにもう貴音さんが食いしん坊だっていう事実に気づいてると思うし……」ヒソヒソ



月の民「自分、信じてるッス。タカネ様やみなさんがきっとこの世界に光をもたらしてくれるって」

月の民「だから……きっと、無事でまた……!」

貴音「……はい、約束します。誰も欠けることなく、無事に帰ってくると」ニコッ

月の民「タカネ様っ……!」ウルッ



貴音「……それで、相談なのですが、もう少しお弁当の量を増やしていただけないかと思うのですが……」

月の民「……えっ?」



律子「……感動の旅立ちのワンシーンが台無しね」

伊織「ま、予想はできたけどね」




貴音「……それでは、行って参ります」ペコリ

月の民「はい! 行ってらっしゃいッス! 自分、ここでみなさんのご無事を祈っているッス!」



貴音(……思えば、わたくしがこの世界へ来て途方に暮れていた時、最初に声を掛けてくれたのがこの方でした)

貴音(わたくしたちは、本当にたくさんの方の想いを託されています)

貴音(これは最早、わたくしたちだけの戦いではありません)

貴音(げぇむの世界を救う戦いでもあるのです)


391: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:33:29.93 ID:VRt3rZWL0
ー 月の民の館 B1F クリスタルルーム ー


律子「……さて。みんな、準備はいい?」


響「いつでもいいぞ!」

春香「準備万端ですよ、準備万端!」

千早「行きましょう、律子。プロデューサーと音無さんが待っているわ」

律子「……よし」

律子「ここには、全部で13のクリスタルがある」チラッ

律子「各自クリスタルの前に立って、クリスタルに向かって祈るのよ」

律子「想いを受けたクリスタルは、きっと私たちに応えてくれるわ!」



アイドルたち「……はいっ!!!」



春香「えっと……」

春香(……お願いします、クリスタルさん。私たちをどうか地下渓谷へ連れて行ってくださいっ……!)

春香「っ……!」ギュッ


……



…………チカッ




春香「……わっ、プロデューサーさんにもらったクリスタルの首飾りが、光ってる……!」



…パァァーー!



真「……春香の前にあるクリスタルも赤く光った!」

貴音「まるで、クリスタルが首飾りの輝きに共鳴しているかのようですね……」

雪歩「プロデューサー、もしかしてこの事も想定してたのかな?」

伊織「もしそうだとしたら、あいつにしてはなかなかいい仕事したわね」

千早(……よし、私も……)



千早(私にできるのは、前に進む事だけ。みんなと同じ方向を向いて、ただ一つの結末へ向かって)

千早(そこへ辿り着く為に必要な道は、自分の力で切り開くっ……!)

千早「……っ!」グッ



…パァァーー!!


392: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:44:45.65 ID:VRt3rZWL0

亜美「おおぉ! 今度は千早お姉ちゃんのクリスタルが青く光ったよー!」

真美「やるね、二人とも!」

やよい「春香さんも千早さんもさすがですっ!」




亜美「真美、亜美たちもいくよっ!」

真美「りょーかいっ!」ビシッ


亜美(……いでよ、クリスタル!)

真美(そして、真美たちの願いをかなえたまえー!)



…パァァーー!!




伊織「………」

伊織(……さあ、このスーパー忍者アイドル伊織ちゃんのために、しっかり輝きなさいっ!)



…パァァーー!!



伊織「……よしっ」

伊織「やよいは大丈夫かしら……」チラッ




やよい「……!」グッ


…パァァーー!!



伊織(……問題はないみたいね)

伊織(前に進むことができたのね、やよい)


393: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:46:56.68 ID:VRt3rZWL0

律子「赤、青、黄色、桃色に橙……」

律子「順調みたいね」



あずさ「律子さ~ん♪ 」フリフリ


…パァァーー!!



雪歩「わ、私たちもなんとか……」


…パァァーー!!



真「準備できたよ!」


…パァァーー!!



律子「……これで9人分。あとは……」チラッ



貴音「モグモグ……」


…パァァーー!!



美希「……あふぅ」


…パァァーー!!



響「うぎゃー! 二人とも、大事な場面なんだからちゃんとやるさー!」


…パァァーー!!




律子「……これで12人。残りは私だけか」

律子「……よし!」グッ



律子(お願い、クリスタル。私たちを導いて……!)



……



…………



……シーーン



律子「あれっ……な、なんで?」


394: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:49:09.09 ID:VRt3rZWL0

真「律子のクリスタルだけ光らない……?」

響「なんでなんだ……?」

伊織「……とにかくもう一度よ、律子!」



律子「え、ええ!」

律子(クリスタル……私の願いを聞き届けてっ……!)

律子「……っ!」グッ



……



…………



……シーーン……



律子(……また、ダメ……。いったい何がいけないっていうの?)



雪歩「ど、どうしちゃったんでしょう……?」

あずさ「律子さん……」

やよい「ううっ……律子さん、がんばってくださいっ……!」グッ

美希「律子…さん、もう一回やってみるの!」



律子「………」コクリ


395: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:50:16.89 ID:VRt3rZWL0

律子(……こんなところで止まっている暇はないの。私たちには会わなければならない人がいる)

律子(お願いだから、言うことを聞いて……!)



……



…………



……シーーン……



千早「また……光らない? なぜ、律子のだけ……」

亜美「……ねえ、真美」

真美「うん……。もしかしたら、クリスタルはゲーム通り、暗黒騎士には使えないんじゃ……」

千早「そんな……。それじゃ、どうすればいいの?」

亜美「わかんない。でも、これって全部のクリスタルを光らせなきゃダメなんだよね?」

真美「もし、このままりっちゃんのだけ光らなかったら……」

千早(律子……)

春香「………」


396: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:53:19.99 ID:VRt3rZWL0

律子(私はやっぱり、小鳥さんの言っていた『ゴルベーザ』って人と同じ運命を辿るというの……?)

律子(それが私の運命だっていうなら私はどうなってもいい。でも、せめてあの子たちだけは……)


……ギュッ


律子「えっ……?」クルッ


春香「私も一緒です。一緒に祈りましょう、お姉ちゃん!」

律子「春香……」

律子「…………わかったわ!」



律子(お願いします……!)


律子・春香(私たちを、地下渓谷へ連れて行ってくださいっ……!)



……



…………



………………



……パァァーー!!



響「……やった! 緑色に光ったぞ!」

亜美「ナイスはるるん、さっすが妹!」

伊織「これで全員分よね?」

真美「うん。そしてたぶん、クリスタルの光が集まったところが……」チラッ



…………カッ!!



真「なんだ? 部屋の中央の床が……!」

貴音「ええ、一際激しく輝いております……!」

やよい「はわっ! まぶしーですー!!」ギュッ



パァァーーーーッ!!



397: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:55:53.15 ID:VRt3rZWL0

千早「……凄まじい光だったわね」

雪歩「うん……。私たちの光が、全部あの床に集まって……」

美希「色とりどりで、すっごくキラキラだったの!」

亜美「これで道ができたよ!」

真「道って……あの床が?」

亜美「あそこがワープゾーンになってるんだよー」

伊織「ってことは、あのワープを抜けた先が……」

あずさ「地下渓谷、ということなのね~」

真美「あとは、勇気だけっぽいよ!」



律子「ありがとう、春香。あなたのおかげで道が開けたわ」

春香「いいえ、どういたしまして」ニコッ

律子「………」

春香「……お姉ちゃん、気にしてるんですか? クリスタルが輝かなかった事」

律子「……昨日、小鳥さんの分身に言われた事をちょっと思い出しちゃって……」

律子「今まで暗黒騎士として闇に手を染めていた私じゃ、やっぱりダメなのかもって……」

春香「そんなことありませんっ!」

春香「お姉ちゃんが何者だろうと、お姉ちゃんは私のお姉ちゃんです」

春香「それに、お姉ちゃんにはみんながついてます!」

春香「だから、不安に思う必要なんてないんです!」

律子「春香……」

律子「ふふっ。なんか、あなたにお姉ちゃんって呼ばれるのにも慣れてきたわね」

律子(まるで、本物の妹みたいな……)

律子(……って、ただのゲームの設定よ。深く考えちゃダメ、私)ブンブン


398: ◆bjtPFp8neU 2016/08/28(日) 19:57:12.60 ID:VRt3rZWL0

律子「……それじゃ、先へ進みましょうか」

あずさ「あの~、ちょっとだけ待ってもらえませんか~?」

律子「あずささん……どうしたんです?」

あずさ「いえ、こういう時は、みんなの気持ちを一つにしてからの方がいいんじゃないかな~って思って」

あずさ「……ねっ、春香ちゃん?」

春香「みんなの気持ちを……? あっ!」

真「そうだね。戦いの前にひとつ気合入れておくのもいいかもね!」

美希「あは☆ なんだかライブが始まる前みたいにわくわくするの!」

やよい「うっうー! わたしも、めらめら~ってもえてきましたー!」

律子「それじゃ春香、号令かけてもらえる?」

春香「はいっ!」



…スッ



春香「ついにここまで来たね」

春香「……長い長い旅だった」

春香「でも、ここまで来たらあとはひたすら前に進むだけだよ」

春香「私たちの旅、私たちの手で決着をつけよう!」


一同「……!」コクリ




春香「いくよっ……!」スゥー




春香「765プローーーー!!」




春香「ファイトぉぉーーーーっ!!!」





一同「おおーーーーーーッッ!!!!」



402: ♯はるるん 2016/09/23(金) 01:17:20.40 ID:97jAJlAtO
ー 月の中心核 ー


P「……それで音無さん、バハムートが音無さんに味方しているっていうのは、まあ洗脳ってことで理解できるんですけど」

小鳥「ゴクゴク……」

P「クルーヤはなぜ音無さん側にいるんです? 彼はこのままだと自分の娘たちと戦うことになるんですよ?」

小鳥「……ぷはぁ!」

小鳥「も~う、そんなのしりませんよぅ~。しりたいんだったらほんにんにちょくせつきけばいいじゃないれすかぁ~」ヒック

P「いや、本人に訊いても答えてくれなかったから……ってああもう、バッカスの酒のビンが倒れちゃってるじゃないですか」

P「まったく……」フキフキ

小鳥「……どーせわたしはわるものですよー」ゴクゴク


P(俺がここへ来てからというもの、飲んでいる音無さんしか見ていない気がする)

P(こんなんで本当にラスボスが務まるのだろうか。ちょっと不安だ)


小鳥「……ふぅ」

小鳥「プロデューサーさん、私を悪役にしておけばぜーんぶ丸く収まるって思ってるんでしょう?」

P「い、いや、そんなことは思っていませんよ。音無さん、飲み過ぎじゃないですか?」

小鳥「……ふんだ」

404: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 01:35:09.78 ID:97jAJlAtO

…コトッ

小鳥「……わたしだって……」

小鳥「私だって、本当は正義の味方がやりたかったです」

P「えっ……」

小鳥「……ひっく」

小鳥「そりゃあ、私は聖人君子なんかじゃありませんよ?」

小鳥「朝起きて身体がダルかったりすれば『あー、仕事行くのしんどいなー』とか思いますし、たまーにアイドルのみんなの若さに嫉妬しちゃう時もありますし……」

小鳥「律子さんのお説教を無心で聞き流したり、なかなか有給をくれない社長にムカッとする時だってあります」

小鳥「でも私、こう言ったら驚かれるかもしれませんけど、みんなの事、本当はは大好きなんです」

P「………」

小鳥「私だってこんな役、イヤなんです」

小鳥「こんな風に……みんなを苦しめて……」ウルッ

小鳥「みんなを傷つけたりヒドいことしたりなんてもう、イヤなんですよぅっ!」

P「音無さん……」

小鳥「もう……やだ……」

小鳥「はやく、かえりたいよぅ……!」ポロポロ

P「音無さんっ……!」ダキッ

小鳥「ううっ……!」グスッ

小鳥「わたしをなまえでよんでくれないプロデューサーさんなんて……きらいですっ」プイッ

小鳥「……うぅぅううあああぁぁんっ……!」ポロポロ


405: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 01:42:36.33 ID:97jAJlAtO

P(俺は……勘違いをしていた)

P(『音無さんならきっとラスボスをどこか楽しんでやっているんじゃないか』)

P(そう軽く考えていた)

P(でも、誰だってこんな嫌われ役よりは、仲間たちと手を取り合って光に満ちた道を進む方がいいに決まってる)

P(この人は、優しいから)

P(いつでもみんなを陰から支えてくれる、優しい人だから)

P(きっと、ずっと一人で抱え込んでいたんだろう)


P「……大丈夫、俺があなたの側にいます」ギュッ

小鳥「うええぇぇええっ……ううっ!」





小鳥「…………うぇっぷ」

P「………」


406: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 01:45:24.74 ID:97jAJlAtO
ー 月の地下中心核 コトリの部屋 ー


小鳥「……zzz」


407: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 01:55:19.63 ID:97jAJlAtO
ー 月の地下中心核 コトリの部屋 ー


小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……うーん……プロデューサーさ~ん……」

小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……zzz」

小鳥「……もう、違いますよぅ……。高木社長が攻めの方が絶対にステキですってばぁ……」ムニャムニャ

小鳥「……zzz」

小鳥「…………zzz」

小鳥「………………zzz」



小鳥「………………はっ!」ガバッ

小鳥「……あれ、私、どうしてたんだっけ……」

小鳥「えっと確か、あの子たちが自分の持ち場について、クルーヤさんやバハムートさんも行っちゃって……」

小鳥「それから……プロデューサーさんと二人きりで飲んで……」

小鳥「うぅ……頭がガンガンするわ……」

小鳥「水でも飲もうっと」スクッ



小鳥「…………あっ」



P「……zzz」


408: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 02:07:09.84 ID:97jAJlAtO

小鳥(プロデューサーさんが私のベッドにもたれかかるようにして寝てる……)

小鳥(そういえば、自分でベッドに移動した記憶がないって事は、プロデューサーさんが私の事を運んでくれたのよね、きっと)

小鳥(飲んでいる時の記憶がさっぱり抜け落ちちゃってるけど、私、またプロデューサーさんにたくさん迷惑をかけちゃったのかなぁ)

小鳥(すみません、プロデューサーさん。迷惑かさるのはもうこれっきりにしますから)


P「……音無…さん……」


小鳥「ひょへっ!?」ビクッ

P「……だいじょうぶ……です……」

小鳥「えっ……」

P「……みんなまとめて……トップアイドル……音無さんも……」ムニャムニャ

小鳥「……なぁんだ、寝言ね。びっくりしたぁ……」

小鳥「ふふっ、プロデューサーさんったら私までトップアイドルにするつもりなのかしら」

P「……zzz」

小鳥(プロデューサーさんの寝顔、かわいいなぁ)


小鳥(私はともかく、みんなをトップアイドルにするには早く元の世界へ帰らないと)

小鳥(でも、その前にやる事がある)

小鳥(避けては通れない必須イベントがあるわ)

小鳥(さあ、小鳥。一世一代の大舞台よ!)


409: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 18:47:40.86 ID:5Q4MvESvO
ー 月の地下渓谷  B1F ー


…ザッ

春香「……ここが、月の地下渓谷……」キョロキョロ

春香「広ーい……! しかもすごい眺め! ねえ見て、千早ちゃん!」

千早「……そうね。神秘的というか、不思議な雰囲気が漂っているわね」

真「なんか、言葉を忘れちゃうくらい絶景だなぁ!」

春香「ホントだよね!」

亜美「なんてったってラスダンだからねー。プログラマーの人とか、チョー気合い入れてグラフィック作ったんだよ、きっと!」

響「いや、それってゲームの中の話でしょ? 今自分たちがいるのは本当のゲームの世界なんだから、ゲームの世界の話をされても……」

響「……ってあれ? 亜美の言ってるのが合ってるのか? なんかよく分からなくなってきたぞ」

あずさ「でも、地下っていう割にはそれなりに明るいのねぇ。私、もっと真っ暗なのかと思っていたんだけど~」

伊織「もしかして、この見たことない壁や地面が自発的に光っているのかしら」

律子「他に光源らしきものは見当たらないし、そうかもしれないわね。この調子なら暗闇で視界が遮られるってことはなさそう」



貴音「ここ、地下渓谷は、月に空いたとても巨大な空洞です。そこかしこに崖があり、最下層まではかなりの深さもあります」

貴音「誤って谷底へ落ちてしまわぬよう、用心して進むべきでしょう」

真美「ちなみに、いちばん下は地下12階だよー」

雪歩「そんなに深いんだ……」

美希「落ちたらきっとぺしゃんこなの」

やよい「うぅ、なるべく下を見ないようにしなきゃ……」

春香「やよい、頑張ろ!」

やよい「はいっ!」グッ


410: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 18:55:36.59 ID:5Q4MvESvO

千早「地下12階……。そこで音無さんが私たちを待っているのね」

真美「そゆこと。長い長いダンジョンだから、回復アイテムとかセツヤクしていかないとだね!」

律子「真美の言う通りね。ジュピターの三人からもらったポーションやエーテルも、さっきみんなで分けたのが最後よ。大事に使っていきましょう」


アイドルたち「………」コクリ



春香「それじゃお姉ちゃん、出発しましょうか」

律子「ええ。貴音、先導お願いね?」

貴音「承知しました」




伊織「……雪歩、何してんのよ?」

雪歩「うん、ちょっと地質を確かめてるんだよ」

コツコツ

やよい「雪歩さーん、出発しますよー?」フリフリ

雪歩「あ、はーい」

タタタタ…


411: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 19:10:21.45 ID:5Q4MvESvO

スタスタ…

貴音「…………む」



魔物たち「………」

ワラワラ…



真「……お、さっそくお出迎えだね」

千早「結構な数がいるみたい」

春香「やっぱり、簡単には進ませてくれないんだね」

伊織「魔物たちからすれば私たちは侵入者ってことになるもの、仕方ないわよ」

伊織「ま、私たちの相手になるかどうかは別としてね」チャキッ

響「よーしっ! 一番乗りは自分だぞっ!」ビュンッ

タタタタ…

亜美「むっ! 亜美も行くよっ!」ダッ

タタタタ…



響「とりゃーー!!」ブンッ

ドゴッ!!

…ドサッ

魔物1「」

響「こんなザコ、ナンクル砲を使うまでもないぞ! 次、かかって来るさー!」ビシッ




亜美「んっふっふ~、亜美たちの前に立ちはだかるなんて10億万光年早いっぽいよ!」ゴゴゴ

亜美「右手にファイガ、左手にファイガ……!」ボゥッ

亜美「くらえーーっ!!」バッ

ゴオオオォォォオオッ!!

…ドサドサッ

魔物2「」

魔物3「」

亜美「……うむ、ぜっこーちょー!!」v



律子「みんな、二人に続くわよ!」

アイドルたち「はいっ!!!」


412: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 19:24:28.86 ID:5Q4MvESvO

魔物4「ギギィ!」ガバッ

ガキィ!!

雪歩「っ……き、効かないですぅ!」チャキッ

雪歩「ごめんなさいっ!」ブンッ

ガコンッ!!

…ドサッ

魔物4「」

雪歩「……ふぅ」



魔物5「ウウゥウ……!」

魔物6「アアア……!」

伊織「………」チャキッ


ーーシャキィンッ! ズバシュッ!!


…ドサドサッ

魔物5「」

魔物6「」

伊織「………」スチャ

伊織「三下に用はないわ。私たちを止めたいのなら、もっと強いヤツを出しなさいっ!」



春香「……やぁぁぁぁっ!」タタタタ

春香「…………たぅあっ!?」ズルッ

ドンガラガッシャーン!!

ザクッ

魔物7「」

春香「……うぅ、いたたた……」

春香「……え、えーと、よしっ!」



魔物8「オアアアー!!」

真美「うあー! 真美んとこにきたー!」

真美(あんましMPのムダ使いはできないから、ザコ相手にホーリーとかはやめたほーがいいかな。真美の唯一の攻撃手段だけど)

真美(えーっと、そんじゃ……)

真美「……ポーキー!」バッ

…ボンッ

ブタ「フゴフゴ」

真美「……ふぃ~、あぶないあぶない」


413: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 19:39:51.86 ID:5Q4MvESvO

魔物9「ガアウ!」ブンッ

美希「……~~♪」ヒョイッ

魔物10「ウアウッ!」ブンッ

美希「……あは☆ 見えてるよ?」ヒョイッ

美希「ごめんね、ミキたちのジャマするなら容赦はしないの!」ギリッ

ヒュンヒュンッ!!

ドスドスッ!!

魔物9「」

魔物10「」

美希「ん~、なんだか物足りないってカンジかな」



ヒューー…

千早「…………はっ!」

ーーザシュッ!!

…スタッ

千早「ふっ……!」ブォンッ

ズシャッ!!

…ドサドサッ

魔物11「」

魔物12「」

千早「……まだまだ出てくるわね」チラッ
 


あずさ「……コンフュ」


魔物13「ガア…ァ……?」

魔物13「ガアアアッ!!」ブンッ

ビシュッ!!

魔物14「ウ……!」

…ドサッ

魔物14「」


あずさ「本当に数が多いわね~」


414: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 19:58:19.32 ID:5Q4MvESvO

…ドガッ!! バキッ!!

ドサドサッ

魔物15「」

魔物16「」

真「……ふぅ」

真「ところで律子、ここを攻略するにあたって何か作戦はあるの?」ブンッ

ドゴォ!!

魔物17「ァ……」

ドサッ



律子「作戦? 特にこれといってないわよ?」ブンッ

ズバッ!!

…ドサッ

魔物18「」

律子「なるべくみんなで協力し合って下を目指す。何かトラブルがあったら各自臨機応変に対応ってところ……」チラッ

魔物19「……グアアッ!」ヌッ

律子「……かしらねっ!」ブンッ

ドスッ!!

魔物19「グ……!」

…ドサッ



真「そっか」

真「ま、こっちは完全にビジターだし、親衛隊の出方も分からないし、仕方ないのかな」

真「……せいっ!」ドゴォ

真「やぁっ!」バキィ

…ドサドサッ

魔物20「」

魔物21「」




亜美「……ねえ、見てよ真美。あの化け物ふたり」

真美「まるで呼吸をするように戦っているね」

亜美「りっちゃんとまこちんがラスボスじゃなくてホントよかったよねー」

真美「ねー。もしもあのふたりのどっちかがゼロムスだったら、真美が100人いても勝てる気がしないよー」

伊織「こら、亜美、真美。ぼさっとしてんじゃないの。次が来るわよ!」

亜美・真美「いえっさー!!」ビシッ



ドゴォン!! ドカァン!!

ドンガラガッシャーン!!

ギャーギャー…


415: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 20:12:18.75 ID:5Q4MvESvO

貴音「……ぶりざら」

コォォ…パキィン!!

魔物22「」

貴音「………」チラッ



魔物たち「………」

ワラワラ…



貴音「はて……まるで数が減っている気がしませんね」

貴音(以前わたくしがばはむーと殿とここを訪れた時は、魔物の数もここまで多くはありませんでしたが……)

貴音(それだけ小鳥嬢も全力で来ている、ということでしょうか?)

貴音(しかし、これでは時間ばかり取られて一向に先へ進めませんね)


貴音「……律子嬢、このままでは消耗戦になってしまいます。魔物共を一挙に片付ける方法を考えねば」

律子「確かに、一体ずつ相手してたら日が暮れちゃうわね」

律子「亜美、真美、何かいい手はない?」

亜美「そりゃー魔物を一気にやっつけるっていったら……」

真美「ここはやよいっちセンパイの出番っしょ!」


やよい「うっうー!!」ピョコン


やよい「律子さん、わたしにまかせてくださいっ!!」

律子「そうか、やよいの召喚魔法なら……」

やよい「うー……!」ゴゴゴ



やよい「高木社長、おねがいしまーすっ!!」バッ


スゥーー…



416: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 20:22:31.39 ID:5Q4MvESvO

高木「……やあ、みんな頑張っているようだね」



律子「社長!」


高木「ここは私に任せたまえ」チャキッ


高木「…………斬鉄剣!」

ーーズパァンッ!!

…ドサドサドサッ



亜美「出たー! FF名物斬鉄剣!」

春香「あんなにたくさんいた魔物が、一瞬で……!」

伊織「社長もなかなかやるわね」

真美「でも、ゲームだとあんまり使うキカイはないんだよねー」



高木「とうとう音無君の近くまで辿り着いたのだね?」

律子「はい。ここまで来るのに時間はかかりましたが、もうあと少しです」

高木「……すまないね、君たちにばかり大変な思いをさせてしまって」

高木「私にはこれくらいしか出来ることはないが、声をかけてくれればいつでも力になるよ」

律子「ありがとうございます!」ペコリ

やよい「社長、ありがとうございましたー!!」ガルーン


高木「うむ。みんな、また元気な顔を見せてくれたまえよ!」


スゥゥーー…



417: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/23(金) 20:32:16.13 ID:5Q4MvESvO

春香「……ふぅ、やっとひと段落ついたね」

千早「ええ。高槻さんのおかげよ」ニコッ

やよい「えへへっ、そんなことないですよー。社長のおかげですから!」

伊織「その社長を従えてるのがアンタなんだから、やよいはもっと胸を張っていいのよ?」

やよい「うー、そーなのかなー?」

雪歩(私、初めて見たけど、やよいちゃんに呼び出される社長ってなんかすごくシュールかも)

亜美「ねえ、これもうやよいっちって完全に社長より上だよね?」

真美「ってことは、やよいっち会長だね!」

亜美「やよいっち会長バンザーイ!!」

真美「バンザーイ!!」

律子「いや、そういう問題じゃないと思うけど」



律子「……ま、それはそれとして」

律子「みんな、進軍を再開しましょう」


アイドルたち「……はいっ!!!」


スタスタ…


420: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 22:21:05.04 ID:MBd2/upBO

スタスタ…

亜美「……ふぅ、ふぅ……」パタパタ

亜美「ちょびっと歩いただけなのに、なんでこんなにあついんだろ……」ダラダラ

真美「亜美、汗ふいてあげよっか? すんごいことになってるよ?」

421: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 22:34:44.69 ID:MBd2/upBO

亜美「うん……。でも、そーいう真美こそつゆだくってカンジだよ?」

真美「えっ、マジ?」

春香「……そういえば、なんだか気温が上がってるような気がするね」

千早「……そうね」

千早「亜美、真美。少し水分を取った方がいいと思うわ。……はい」スッ

亜美「ありがと~千早お姉ちゃ~ん」

真美「千早お姉ちゃんもちゃんと飲んでね?」

千早「ええ。……高槻さんもどうぞ」スッ

やよい「ありがとうございます、千早さん。でも、わたしはへっちゃらです!」

亜美「やよいっちは元気だねぇ」

律子「………」


422: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 22:43:20.19 ID:MBd2/upBO

律子「みんな、平気?」

春香「私たちはなんとか大丈夫ですけど……」

真「亜美と真美が辛そうだね。あと響も」チラッ

亜美「あっぢ~……しぬ~……」ヨロヨロ

真美「さっきまでひんやりしててカイテキだったのに、なぜこんなことにぃ……」フラフラ

響「うぅ……ダメだー……。自分、頭がクラクラしてきたぞ……」フラフラ

伊織「なんでいきなりサウナみたいになってんのよ……。この近くに溶岩でも湧いてるわけ?」

貴音「いえ、溶岩などはなかったはずですが……」

雪歩「この暑さは異常だよね。進めば進むほどヒドくなってる気がしますぅ」

春香「そういう雪歩は平気なの? 一番暑そうな格好してると思うんだけど……」

雪歩「うん、私は特になんともないよ。アダマンアーマーが熱気も遮断してくれているみたい」

春香「ホントにすごいんだね、その鎧」






423: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 22:53:57.73 ID:MBd2/upBO

美希「ん~、あずさがひんやりしてて気持ちいーの~♪」ピトッ

あずさ「あらあら、美希ちゃんったら~」

律子「あ、そうか。今のあずささんは……」

あずさ「ええ。おかげさまで私はみんなのように暑さに苦しむ事はないですね~」

あずさ「……それより律子さん。私、この先に魔物さんが待っているような気がするんです~」

律子「魔物って……さっき社長に片付けてもらった魔物とは別にですか?」

あずさ「はい。……え~っと……。あら、あの魔物さんたちは何ていったかしら~」

律子「……もしかして、小鳥さんの親衛隊ですか?」

あずさ「はい、そうです。その親衛隊の方だと思いますよ~?」

貴音「……なるほど、この異常な暑さはその魔物が原因、ということですか」

あずさ(私、なんとな~くその魔物さんのこと知っている気がするのよね~)


424: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 23:08:33.88 ID:MBd2/upBO

スタスタ…

…ピタッ

律子「……広間に出たわね」



「……よう。待ってたぜ、あいどるども!」



律子「! ……出たわね!」

真「あいつは確か……こないだハミングウェイの住処で見たヤツだね」



レッドドラゴン「オレ様はコトリ様親衛隊の特攻隊長、レッドドラゴンだ!」

レッドドラゴン「さっそくでわりーが、お前らここで全員死んどくか?」メラメラ



春香「うわぁ、めちゃくちゃ燃えてるよ……」

亜美「うえぇ……あれじゃあついわけだよ~」グッタリ

あずさ(あらあら、やっぱりそうだったのねぇ……)


律子「……私たちも黙ってやられるつもりはないわ」

律子「あなたが邪魔をするっていうなら、無理やり通らせてもらいます!」チャキッ

タタタタ…

春香「あっ、お姉ちゃん!」


律子「……はっ!」ブンッ

レッドドラゴン「うおっと!」ガキィン


響「律子、自分も手伝うぞ!」ダッ

響「くらえ、ナンクル砲っ!!」コォォ

…ドゴオオォンッ!!


レッドドラゴン「……ってーなてめえ!」

レッドドラゴン「熱線っ!!」ゴォォ


響「ふふーん、そんな攻撃よけ……」ガクッ

響「あっ……!」フラッ


あずさ「……響ちゃんっ!」ガバッ


ズドオオォォォン!!


425: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 23:16:31.49 ID:MBd2/upBO

律子「あずささん、響!」



響「……うぅ、いたたた……」

響「ご、ごめんね、あずささん……」

あずさ「良かった……。響ちゃん、無事なのね?」ボロッ

響「あっ、あずささん、腕が……!」

あずさ「心配しないで? 私は再生できるから」ニコッ

…ニョキニョキッ

響「うげ……ホントに腕が生えてきたぞ……」



レッドドラゴン「出やがったな、ゾンビ女!」



あずさ「うふふ、またお会いしましたね~」



千早「律子、私も戦うわ」チャキッ

春香「私も!」チャキッ

律子「……ええ」


あずさ「……待って、みんな」


律子「あずささん……?」


426: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 23:25:36.18 ID:MBd2/upBO

あずさ「律子さん、みんなを連れて先へ進んでください」

律子「えっ、何言ってるんですか!」

あずさ「私はこの前あの魔物さんと戦ったので分かっているんですけど、さっきのあの攻撃、触れたものをみんな溶かしてしまうんです」

律子「!」

あずさ「……多分、この中であの攻撃に耐えられるのは、私しかいないと思います」

律子「で、でも……」

あずさ「お願いします、律子さん。私、みんなを危険な目に遭わせたくないんです」

律子「あずささん……」

春香「………」



『……物語を盛り上げるのは、役者の努めよ?』



春香「………」グッ


春香「行きましょう、お姉ちゃん!」

律子「春香……?」

春香「あずささんなら、きっと大丈夫です!」ニコッ

律子「………」

律子「……分かりました。その代わり絶対に無茶はしないでくださいね?」

あずさ「は~い、任せてくださ~い♪」


427: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 23:32:05.25 ID:MBd2/upBO

亜美・真美「あずさお姉ちゃんっ……!」

真・響「あずささん!」

雪歩「あずささん……!」

貴音「あずさ……」

やよい「うぅ、あずささん……!」

美希「………」

千早「………」

伊織「……頼んだわよ、あずさ!」



あずさ「……ええ!」ニコッ

あずさ「………」チラッ


春香「………」コクリ


あずさ(……ありがとう、春香ちゃん)



律子「駆け抜けるわよ、みんな!」


タタタタ…


428: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 23:38:03.68 ID:MBd2/upBO

レッドドラゴン「……獲物が一匹になっちまったか」


あずさ「あの~、なんでみんなを行かせてくれたんですか?」

あずさ「あなたが本気を出したら、私たち、大変なことになっていたと思うんですけど~」


レッドドラゴン「おう、まあな! オレ様にかかりゃお前らを全滅させるのは簡単だ」

レッドドラゴン「だがよ、仕方ねーんだ。これはリーダー命令だからな」

レッドドラゴン「『獲物はみんなで仲良く分けろ』ってな」


あずさ「まあ……」


レッドドラゴン「オレ様の熱線に耐えたのはあんたが初めてだからな」

429: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 23:43:33.74 ID:MBd2/upBO

レッドドラゴン「本音言うとリーダー命令なんて関係ねぇ。もう一度あんたと戦って決着をつけたかった」

レッドドラゴン「……ただそれだけだ」



あずさ「……それじゃ、私もしっかりしないといけませんね」


レッドドラゴン「本気で来いよな。オレ様も全力で行くからよ!」


レッドドラゴン「行くぜおらあああああっ!!」


あずさ「うふふ~♪」



430: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/24(土) 23:56:12.38 ID:MBd2/upBO
ー 月の地下渓谷 B2F ー


スタスタ…


律子「………」


春香「……お姉ちゃん、あずささんのこと、気になってるんですか?」

律子「………」

伊織「アンタまさか、あずさの言ったことが理解出来なかったわけじゃないわよね?」

律子「……あずささんの言う通り、あの熱線って攻撃は生身の身体にかすりでもしたら致命的なダメージになる」

律子「逆に言えば、生身の身体ではないあずささんはあのレッドドラゴンと相性がいいってこと」

律子「かなり合理的な判断だったと思うわ」

伊織「……何よ、ちゃんと分かってるじゃない」

伊織「あずさは犠牲になったんじゃない。あの場面で考えうる限りの最良の選択をしたのよ」

春香「だから、お姉ちゃんが気に病むことじゃありません」

律子「……ええ、それは分かっているんだけど……」


律子(やはり、こうなってしまったか)

律子(あの時ハミングウェイの洞窟で別れた響たちの話も総合すると、親衛隊の数は10体)

律子(それに貴音と因縁があるっていうバハムートとかいう竜も合わせて、敵は全部で11体)

律子(こちらが数で上回っているとはいえ。あの魔物たちは地球で戦った小鳥さんの四天王よりも強い)

律子(本当なら何人かずつでフォローし合いながら撃破していくのが理想だったんだけど……)

律子(でも、あずささんの判断は間違っていない。いえ、伊織の言う通り最良の判断だったと言える)

律子(……もう、信じるしかないわね)


431: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/25(日) 00:07:19.85 ID:qLn1JxLyO

…ピタッ

律子「……あら? 行き止まり?」

千早「おかしいわね。ここまで分かれ道なんて無かったと思うけど……」

貴音「………」

スタスタ…


響「あ、どこ行くんだ貴音、そっちは壁しかないぞ?」


貴音「……いえ、一見なんの変哲もない壁ですが、実は不可視の通路があるのです」

貴音「確か、この辺りに……」ペタペタ

…ヌルッ

貴音「……ありました。ここの壁は通り抜けることが出来ます」

千早「壁の中に道があるのね」

響「なるほどな、隠し通路かー」

真美「お姫ちん、ダテにここに来るの二回目じゃないねぇ」 

貴音「この地下渓谷には、こういった目に見えない道が幾つか存在するようです」

貴音「わたくしも全てを把握しているわけではありませんので、亜美、真美、もし見落としがあったらふぉろーをお願いします」ペコリ

亜美・真美「りょーかい!!」


432: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/25(日) 00:20:50.95 ID:qLn1JxLyO

スタスタ…

千早「……不思議な感じね。壁の中を通っているなんて」

春香「本当だねー。なんだか忍者になった気分だよ」

真「あ、そういえば伊織は使えたよね、壁抜けの術」

伊織「使えるけど、あれはダメよ。一度に抜けられる人数に限りがあるもの。……せいぜい4、5人が限度ってところね」

真「ふーん……便利なんだか不便なんだか微妙なところだね」 

亜美「まあ、FF4のパーティの最大人数はホントなら5人だから、ちかたないね」

響「そっか。自分たち、今はあずささんが抜けたけど、それでも12人パーティだもんなー。実際のゲームからするとだいぶ多いことになるのかー」

雪歩「……それも、プロデューサーのおかげだよね。本当なら物語の途中で脱落してたはずの私たちを助けてくれたんだもん」

亜美「……兄ちゃん、元気にやってるかなぁ」

やよい「だいじょーぶ、プロデューサーならきっと小鳥さんと仲良くやってるよ!」

亜美「あ、そっか。考えてみれば兄ちゃんって今、ピヨちゃんと『二人っきり』なんだね」


春香「………」ピクッ

美希「………」ピクッ

真美「………」ピクッ


真「……あれ、どうかしたの? 三人とも」


貴音「……律子嬢、少し先を急ぎましょう」

スタスタスタスタスタスタスタ…


律子「えっ……ちょ、ちょっと貴音?」


436: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 20:56:42.07 ID:aKjI7yjuO

律子「……ふぅ、ようやく壁を抜けたわね」

春香「ちょっとした広間に出たみたいですけど……」キョロキョロ

春香「先へ進む道が見当たりませんね。貴音さん、次もまた隠し通路ですか?」

貴音「はい。確か、そこの壁に……」スタスタ



貴音「!」



貴音「……はっ!」クルンッ

…スタッ

ーーズドオオオオンッ!!


春香「貴音さんっ!」

響「貴音! 大丈夫か!?」

貴音「……問題はありません」

貴音「しかし……」チラッ



ベヒーモス「……なかなかいい反応してるじゃないか。ま、今のはほんの挨拶代わりだけどね」ニヤリ


437: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 20:58:11.36 ID:aKjI7yjuO

律子「出たわね、親衛隊……!」チャキッ

律子「みんな、行くわよ!」

真「……待って」

律子「真……あんたまさか……」

真「……ここは、ボクが出る!」ザッ

律子「ダメよ! これ以上バラバラになったら……!」

真「自分でもわがまま言ってるっていうのは自覚してる」

真「でも、あいつとはこないだの決着を着けたいんだ」

真「……頼むよ、律子」

律子「真……」

伊織「……やらせてやりなさいよ。この戦闘バカには何を言っても無駄よ、きっと」

律子「………」

律子「……分かったわ。その代わり絶対に勝ちなさい、真!」

真「律子……! ありがとう!」パァァ


438: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 21:00:25.88 ID:aKjI7yjuO

律子「みんな、ここは真に任せて行きましょう!」

春香「はいっ!」

亜美「まさか亜美たちの最終兵器の出番がこんなに早いとは……」

真美「戦力ダウンは否めないケド……ちかたないね」

雪歩「ま、真ちゃんっ……!」

千早「……とはいえ、先へ進む道はあの魔物の後ろよ。どうする?」



ベヒーモス「あんたたちはこの先へ進みたいのかい?」

ベヒーモス「……ふふん、だったらアタイが『道』を作ってやろうか?」



千早「えっ?」



ベヒーモス「……そおらっ!!」ブンッ

ゴオオオォォオオッッ!!


真「! ……気を、飛ばした!?」


…ドゴオオオォォオオンッ!!



…ガラッ



春香「わわっ……あ、足場が……!?」ヨロッ

響「く、崩れるぞっ!」

雪歩「ひぃっ!」

やよい「はわわっ、こ、こわいです~!」

伊織「やよい、私に捕まりなさい!」

千早「まさか、私たちを地面に叩きつけて殺す気なの……!?」

貴音「………」

美希「……あふぅ」

律子「みんな!」

亜美・真美「おちるううううぅぅーーーー!!」


ヒューーーー…


真「みんなーーーーッ!!」


439: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 21:02:20.92 ID:aKjI7yjuO

真(みんな……)


ベヒーモス「……下に落ちた仲間たちが心配かい?」


真「………」


ベヒーモス「ま、この程度でやられちまうようじゃ、所詮はそこまでだったってことさ」


真「……!」グッ

真「気を飛ばすなんていつの間に覚えたんだい? この前戦った時は使ってなかったよね、確か」


ベヒーモス「あんたの真似をしてみただけさ。人間に出来てアタイに出来ないはずがないからね」


真(簡単に言うけど、素人があんなにすんなりと気を操るなんてまず無理だ)

真(……いい格闘センスを持っているんだろうな、きっと)


真「……ボクは、みんなを信じてる」

真「ボクの仲間たちは、きっと君の仲間たちを倒して小鳥さんの元へ辿り着くって」

真「だから、不安なんて何もない!」


ベヒーモス「……そうかい」

ベヒーモス(本当に一ミリの迷いも無い……いい表情だ)


ベヒーモス「……だったら、アタイも信じようじゃないか」

ベヒーモス「アタイの仲間たちはあんたの仲間たちに負けたりしないって」


真「!」

真「……へへっ!」


ベヒーモス「ふふっ……」


真「じゃあ、勝負だ。ボクの信念と君の信念、どちらの方が強いのか!」


ベヒーモス「ああ、望むところだ!」


真「はああああぁぁぁああっ!!」ゴゴゴ


ベヒーモス「うおおおおおおおっ!!」ゴゴゴ


ズドオオオオォォォオンッ!!


440: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 21:05:50.80 ID:aKjI7yjuO
ー ミシディアの村 祈りの館 ー


翔太「ふーん、ここが祈りの館かぁ」キョロキョロ

高木「なんだか雰囲気のあるところだねぇ」

長老「微弱ながら魔力を巡らせておるでの。ここだけは魔物たちも破壊出来なかったようじゃ」

冬馬「………」

北斗(祈りの館……)

北斗(確かゲームでは、最終決戦に望むセシルたちのために仲間たちが集った場所だったはず)

北斗(そして、ゼロムスの力に屈しようとしていたセシルたちに、仲間たちは想いをパワーに換えて月にいる彼らの元に届けた)

北斗(ゲームとは違って今は俺たちしかいないけど、そんなことも言っていられないだろう)


北斗「それじゃあ、早速始めますか?」

長老「そうじゃの。少しでも強い祈りを届けられるよう、早めに始めた方が良いじゃろう」


黒井「………」



黒井(あの時……)

黒井(音無小鳥と戦ったあの時、ヤツは全力ではなかった)

黒井(もちろん私とて手の内を全て晒したわけではない)

黒井(……が、あの時の『アレ』は単なる分身。本体はもっと強大な力を持っていると思っていいだろう)

黒井(高槻やよいやその他の連中は、本当に音無小鳥に勝てるつもりでいるのか?)

黒井(……フン、叩いても叩いても雑草のように這い上がってくる連中だ。勝ち目が薄いことなど承知の上だろうな)


441: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 21:10:12.24 ID:aKjI7yjuO

黒井(『絆』とやらが信条の765プロが、仲間であった人間を倒す、か)

黒井(ゲームの世界とは、まったく不条理な世界だ)

黒井(……もちろん、私は高槻やよいなど関係なく、私自身のために音無小鳥を倒す)

黒井(しかし……私がすべき事は本当にそうなのか?)

黒井(私は、この世界で何をして来た?)

黒井(この世界で何を見て来た?)

黒井(私は……)




冬馬「なあ黒井のおっさん。これからお祈りとやらが始まるみたいだけど、あんたはどうするんだ?」

黒井「………」

冬馬「どうせおっさんはお祈りなんか興味ないだろ? 自由に行動してても構わないけど、あんまり遠くに行くなよな。迷子になられても困るからよ」

黒井「………」

黒井「お前たちの力だけで足りるとでも思っているのか?」

冬馬「え?」

黒井「王たるこの私の力無くして音無小鳥に勝てるはずがあるまい」

高木「黒井……」

黒井「いいか、決して765プロと力を合わせるのではない。あくまで力を貸してやるのだ」

冬馬「おっさん、じゃあ……」

黒井「おい、老人。やるならさっさと始めるぞ」

長老「幻獣王リヴァイアサンの力を借りられるとは、これ程心強いことはない」

長老「さ、皆、こっちじゃ」

スタスタ…



黒井(勘違いするなよ、765プロ。私はお前たちと馴れ合うつもりなどない)

黒井(今までどんなことがあろうともしぶとく生き残ってきたお前たちがこの状況をどう乗り越えてみせるのか)

黒井(ただそこに興味が湧いただけなのだ)


442: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 21:14:48.21 ID:aKjI7yjuO

ー 月の地下中心核 ー


P「………」ソワソワ

小鳥「ズズッ……」

P「………」ソワソワ

小鳥「……ふぅ。お茶がおいしいわぁ」

P「………」ソワソワ

小鳥「………」


小鳥「プロデューサーさん、みんなのことが気になってるんですか?」

P「そりゃそうですよ。地下渓谷は最大のダンジョン。敵も強いですし」

P「みんなが負けるなんてことは思ってませんけど、痛い目にあったりしていないか心配で……」

小鳥「あのー、ここまで来て今さらだと思うんですけど……」

小鳥「今までだってみんなは辛い事をたくさん乗り越えて来たんですよね?」

小鳥「だったらあとはもう、信じるしかないと思いますよ?」

P「それは、そうですけど……」

小鳥「そんなに心配なら、見てみますか?」

P「見るって、何をです?」

小鳥「みんなの様子ですよ。みんなの姿を実際に見ればプロデューサーさんも少しは気持ちが落ち着くんじゃないですか?」

P「え? そんなこと出来るんですか?」

小鳥「うふふっ♪ 任せてくださいっ!」

小鳥「……えいっ!」バッ

パリッ…!


P「おお……! なんか壁にテレビみたいなのが現れた!」

小鳥「精神波を応用すればこのくらいわけありません!」ドヤッ

P「なんて言うか……もうなんでもアリですね」

小鳥「このくらいのハンデがあってもいいじゃないですかー! 私一人でみんなと戦うんですからー!」

P「……まあ、それもそうか」

小鳥「さてさて、それでは……」

小鳥「このリモコンをポチッとな」ポチッ


…ブゥン


P「あ、テレビが映った」


『……うぎゃあああああぁぁぁーー!!』


P「! あれは……響!?」


443: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 21:20:39.15 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B5F ー


「…………ぅぁぁぁぁああああああーーーー!!」


クルンッ

スタッ

響「……っとと」ヨロッ

響「……ふぅ、なんとか着地成功だぞ……」

響「まさか地面を割られるなんて思ってもみなかったなー」

響「………」チラッ

響「ずいぶん下まで落とされちゃった……。もう真も魔物も見えないぞ」

響(真とあずささん、大丈夫かな。ちょっと心配だな……)

響「……ってダメダメ。自分がそんなに弱気でどうするんだ!」ブンブン

響「真もあずささんもきっと大丈夫。二人とも魔物なんかに負けないさー!」

響「……あ、そういえば他のみんなはどこへ行ったんだ?」キョロキョロ



響「おーーーい!! 貴音ぇーーー!!」

響「律子ぉーー!! 春香ぁーー!!」

響「どこにいるんだーーーー!!」



響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「うぅ……返事がない……。みんな違う場所に落ちちゃったのかなぁ……」


響(……ひとりぼっち、か)


響「……べ、別にさみしくなんかないもんねっ! 自分だって一人で戦えるってこと、魔物に教えてやるんだ!」

響「さあかかってこい、魔物ー! 完璧な自分が相手になるぞー!」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「………」

響「……魔物すら出てくる気配がないぞ……」シュン


響「とりあえず、ピヨ子は一番下の階……地下12階で待ってるって言ってたっけ」

響「ここが何階なのか分からないけど、さすがにここから飛び降りるのは危険だな」

響「上に戻るわけにもいかないし、下に降りる階段を探すか」

響「もしかしたらもうみんなは下へ向かっているのかもしれないし」


響(……はぁ。さっきから自分、ひとり言ばっかりだぞ……)


トボトボ…


444: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 21:24:12.95 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B3F ー


ズズ…



ズズズ…



ズズズズ…



…ザバァ!


雪歩「………」キョロキョロ

雪歩「ここにも誰もいない……」

雪歩「やっぱりみんな、もっと下の階に落ちちゃったのかなぁ」

雪歩(魔物さんに地面を破壊されて落ちる瞬間、私、咄嗟に横穴を掘って自分だけ逃げちゃったけど……)

雪歩(みんなを助ける余裕がなかったよ……)

雪歩「……きっと大丈夫だよね?」

雪歩「みんな、私なんかよりずっと強いもん」



雪歩「それより、これからどうしよう……」

雪歩「真ちゃんの助太刀に行くべきかな?」

雪歩「ここってたぶん、真ちゃんのいた階からそんなに離れていないと思うんだけど……」チラッ


雪歩「………」

雪歩「ううん、違う。真ちゃんはそんなこと望んでないよね」

雪歩「真ちゃんならきっと『ボクに構わず先に進んで』って言うはず」

雪歩「それに、みんなと約束したもん。どんなことがあっても中心核へ辿り着こうねって」

雪歩「ひとりは怖いけど、今はそんなこと言っていられないよ……!」

雪歩「私も、下を目指そうっ!」グッ



雪歩(……それにしても)

ザクッ ザクッ

雪歩(ここの地面って見たことない鉱石で出来てるんだよね。いったい何で出来てるんだろう?)

ザクッ ザクッ

雪歩(キラキラ輝いているから、宝石か何かなのかな?)

ザクッ ザクッ

雪歩(すっごく硬いけど、私にはククロさんに鍛えてもらったスコップがあるから大丈夫)

ザクッ ザクッ

雪歩(……なんだか掘ってるうちにテンション上がってきたかも。今ならこのまま小鳥さんのところまで掘れそうな気がするよ!)

ザクッ ザクッ



雪歩「よーし、どんどん掘っちゃいますぅ!」シャキーン


445: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 21:25:40.99 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B4F 大部屋 ー


…ヒョコッ


亜美「むむむ……」チラッ


亜美「むむむむっ……」チラチラッ


亜美「……視界良好、敵影なし、っと」

亜美「……ふーむ」

亜美「ここに落ちてきたのはどーやら亜美ひとりっぽいね」

亜美「みんな大魔道士亜美とはぐれるなんてツイてないよねー」



亜美「っと、そーだ。今のうちに体力回復っと」ゴソゴソ

亜美「んく、んく……」

亜美「……ふぅ」

亜美(ま、こんな時のためにみんなでポーションとエーテル分けたし、なんとかなるよね?)



亜美「……さってと!」スクッ

亜美「まずはこのフロアをさくっとタンサクしちゃおっかな。なーんかいいアイテムがありそうなフインキだし」

亜美「できれば魔物に出会う前に手に入れたいね!」

亜美「あと、みんなのことも早く救出したげないとね」

亜美「特に真美は亜美がいなくてさびしがってるだろーし」

亜美「………」


亜美「よーし! 亜美、出撃だよっ!」

タタタタ…


446: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/02(日) 21:29:20.05 ID:aKjI7yjuO
ー 月の地下渓谷 B4F 外部 ー


スタスタ…

真美「うーん……」

真美「やっぱ誰もいないかー」

真美「真美たちをバラバラにして戦力がダウンしたところをカッコゲキハ、というわけですな」

真美「敵さんもいろいろ考えてるねぇ」


真美「ふーむ」キョロキョロ

真美「それにしても真美、この地形なーんか見覚えがあるんだよねー」

真美「確か、この階にチョー貴重な武器があったよーな」

真美「……ん? あっちに階段がある」

スタスタ…



真美「!」



真美(やっぱそーだよ……!)

真美(階段があって、なんかミョーに広々としてて……)

真美(真美のキオクが確かなら……ここは地下ケーコクの地下4階!)

真美(てことは、ここにある武器は『アレ』だね)

真美(『アレ』が手に入れば確かに楽になる。けど、今は亜美が心配だな)

真美(亜美、さっきの戦いでじゃんじゃん魔法使ってたよね。あの調子だとすぐにMPなくなっちゃいそう)

真美(もし魔物と戦ってる最中にMPゼロになってエーテルも切れたら、ウチら魔道士にとってはチメーショーだもんね)

真美(……ん、待てよ? それならなおさら『アレ』が重要になってくるのか……)

真美(……うん。やっぱここはちょっとムリしてでも『アレ』を探すべきっぽいよ!)


真美「よーし! 真美、突撃だよっ!」

タタタタ…


449: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 19:50:59.04 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B1F ー


レッドドラゴン「おらあああああっ!!」


ズドドドドドドッ!!


あずさ「うふふ~、こっちですよ~」ヒョコッ


レッドドラゴン「ンにゃろ!!」


ドゴオオンッ!!


あずさ「は~い、今度はこっちです~」フリフリ


レッドドラゴン「こんのっ!!」


ドドドドドドッ!!


あずさ「ほらほら、頑張ってくださいね~」ヒョコッ



レッドドラゴン「……はぁ、はぁ……」

レッドドラゴン「……おい、ゾンビ女! てめーやる気あんのかよ! さっきから逃げてばっかじゃねーか!」


あずさ「あらあら……」

あずさ「だって、あなたの攻撃は少しでも当たったら大変なんですもの」

あずさ「それに私、逃げないなんて一言も言ってませんよ~?」


レッドドラゴン「それじゃ勝負になんねーだろが! てめーも攻撃して来いよ!」


あずさ「あら、よろしいんですか~?」


レッドドラゴン「たりめーだ! 一方的なのは勝負って言わねーからな!」


あずさ「では、お言葉に甘えますね~」ゴゴゴ


レッドドラゴン「!」


450: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 19:58:23.27 ID:VsHkcvNIO

レッドドラゴン「……けっ、持ってやがるじゃねーか! こんな大層な魔力をよ!」


あずさ「……時は、来た」ゴゴゴ


レッドドラゴン「ビリビリ来やがる……! やっぱ勝負はこうじゃなきゃな!」


あずさ「赦されざる者の……」


あずさ「………」


あずさ「………」


あずさ「………」


レッドドラゴン「…………?」


あずさ「……え~っと」


あずさ「すみません、詠唱、ど忘れしちゃいました~」モジモジ


レッドドラゴン「ふざけんなアホぉ!!」


レッドドラゴン「てめーはオレ様を倒してコトリ様のところへ行くんだろーが! そんなんでどーすんだよ!」


あずさ「そ、そうですよね……」シュン


レッドドラゴン「……ったく、今のはてめーの決め技なんだろ? しっかり詠唱呪文思い出せよな!」


あずさ「な、なんとか頑張ってみますね~?」


レッドドラゴン「ってわけで、戦いの続きやんぞ!」


あずさ「は~い」


あずさ(……どうしちゃったのかしら、私。『あの時』はちゃんと使えたはずなのに)

あずさ(それに、貴音ちゃんのお家の図書室で『あれ』について書かれた本まで読んだのに……)

あずさ(『あれ』が使えないときっと勝てないわよねぇ)

あずさ(……あら? そもそも『あれ』ってなんていう名前の魔法だったかしら?)

あずさ(覚えていたはずなのに、思い出せない……)

あずさ(困ったわね~)


451: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:01:31.40 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B2F ー


真「はあああっ!」タタタ


真「せいっ!!」ドゴォ


ベヒーモス「……ふん、軽いねぇ」

ベヒーモス「うらあっ!!」ブンッ

ドガァン!!


真「うわっ!」

…スタッ



真「……ふー」コキッ


ベヒーモス「何を出し惜しみしてるんだい? そんなんじゃアタイに傷ひとつ付けられない。それはこないだの戦いで分かってもらえたと思ったがねぇ」


真「……うん、そうだね」


ベヒーモス「全力で来な! じゃないと面白くない」


真「いいの? 全力出したらきっとボクが勝っちゃうよ?」


ベヒーモス「口の減らないヤツだ。どっちが上か思い知らせてやるよ……!」ゴオオオ


真(気を……開放した!)

真(それも、無茶苦茶な量の気だ!)


ベヒーモス「うらああああっ!!」ブンッ


ゴオオオォォォ!!


真「……覇王……」バッ

真「……翔煌拳ッ!!」


ゴオオオォォォ!!


ベヒーモス「……くっ、押し返されるか!」


ドゴオオオオォォォオオンッ!!


452: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:05:34.06 ID:VsHkcvNIO

ベヒーモス「ぐっ……ふふ、やるじゃないか」ニヤリ


真「気に関しては一応君よりボクの方がセンパイだからね。簡単には負けられないさ!」ニコッ


ベヒーモス「格上の余裕か。だが、いつまでその余裕が持つかねぇ?」バッ


真「!」


ベヒーモス「確か、こう……」ゴオオオ


真「えっ!? ま、まさか……!」


ベヒーモス「覇王……翔煌拳!!」


ゴオオオォォォ!!


真「う、ウソでしょ……?」


ドゴオオオオォォォオオンッ!!



真「……ぐっ……!」ヨロッ


ベヒーモス「どうだい? 自分の技を食らった感想は?」


真「……はは、いい気分ではないね」

真「驚いたよ。気を覚えたてで覇王翔煌拳を真似するなんてさ」


ベヒーモス「なに、今のはほんの余興だよ。勝負の決め手になりはしない」

ベヒーモス「最後の最後で勝敗を分けるのは……」


ベヒーモス「……圧倒的な、パワーだ……!」ゴゴゴ


真「……!」ゾクッ


真「……ごめん、君を見くびってた。ボクも全力で戦うよ」


ベヒーモス「ああ、そうした方がいい……」ゴゴゴ


ベヒーモス「あんたほどの人間を、アタイもみすみす殺したくはないからね……!」ゴゴゴ


真(うーん、ちょっと計算外……かな?)


453: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:08:42.96 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B6F ー


フワフワ…


伊織「……一時はどうなるかと思ったけど、助かったわ」

やよい「ありがとう、しるふちゃん!」


シルフ「私の主人にこんなところで落下死されても困りますからね~」

シルフ「ま、落下の最中にとっさに私を喚び出したのは正解だったと思いますよ~?」

シルフ「それでは、頑張ってくださいね~」フリフリ

スゥゥーー…



…スタッ

伊織「やよい、ありがとね。アンタを守るつもりが逆に助けられちゃったわね」

やよい「ううん、わたしもうわー! ってなってて、なにがなんだかよくわかってなかったから」

伊織「……それにしても、ここは何階かしら」キョロキョロ

伊織「かなり下まで落ちてきたと思うんだけど……」

やよい「伊織ちゃん、ほかのみんなはどこへ行ったのかな?」

伊織「そうね。とりあえずみんなを探しましょうか」

やよい「うんっ!」

スタスタ…


454: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:11:06.64 ID:VsHkcvNIO


伊織「みんなーーーー!!」

やよい「どこですかーーーーっ!!!」



伊織「……見つからないわね。他の階に落ちたのかしら」

やよい「うーん……」

伊織「とにかく、律子たちの無事を確かめないと」

やよい「………」

やよい「伊織ちゃん、見つからないならわたしたちだけでも先へ進んだほうがいいんじゃないかなーって」

伊織「やよい?」

やよい「あずささんも真さんも、わたしたちのためにまものさんとたたかってくれてるでしょ?」

やよい「それをむだにしないためにも、今は全力で進むことがたいせつだと思うんだ!」

やよい「きっと春香さんたちも小鳥さんのところへむかってるはずだよ!」

伊織「やよい……」

伊織「……ったく」ムニッ

やよい「い、いおりひゃん!?」

伊織「その様子だと、もう完全に迷いはないみたいね?」ムニムニ

やよい「うん! わらひひほいあいふまへおあひひっはっへへお……」

やよい「もー! ほっへあひいれひゃうよー!」プンスカ

伊織「にひひっ♪ これはアンタが私を心配させた罰よっ」

やよい「うー、伊織ちゃんがいじわるですー」

伊織「やっぱりやよいにはウジウジ悩んでる姿は似合わないわ」

やよい「……うん」

やよい「わたしも小鳥さんとちゃんとたたかって、みんなで元の世界にもどるってきめたんだ!」グッ

伊織「……お帰りなさい、やよい!」ニコッ

やよい「えへへっ、またせてごめんね、伊織ちゃん!」ニコッ


伊織「……さて、そうと決まればとっとと下に降りる階段を見つけましょ」

やよい「うんっ!」


455: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:15:37.84 ID:VsHkcvNIO

スタスタ…

伊織「……ん、扉があるわね」

やよい「下にいくかいだんがあるといいねー」

伊織「ええ。……開けるわよ」


…ガチャ




リルマーダー「やっと来たかー! 待ちくたびれたぜ、ホントによー!」




伊織「……出たわね!」

やよい「あれってたしか、貴音さんのおともだちの家にいた……」


リルマーダー「オイラはずーっとここでお前らが来るのを待ってたんだ。楽しませてくれよな?」チャキッ


伊織「………」チャキッ

伊織「……ここは私が引き受けるわ。やよい、アンタは先へ進みなさい」

やよい「えっ?」

伊織「今のアンタなら一人でも大丈夫。だから行きなさい」

やよい「伊織ちゃん……」

やよい「うん、わかった!」


リルマーダー「せっかくの獲物を逃がすかよっ!」ダッ


伊織「……遅いっ!」ビュンッ

ガキィン!!


リルマーダー「このやろっ……!」ギリッ


456: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:19:05.75 ID:VsHkcvNIO

リルマーダー「行かせないぞっ!」

ヒュンッ


やよい「はわわっ!」ピタッ


伊織「ムラサメ、やよいを護りなさい!」



…パキィン!!



やよい「伊織ちゃん、ありがとう!」

タタタタ…



伊織(……しっかりやるのよ、やよい)





リルマーダー「……ちぇっ、一人逃がしたかー」

リルマーダー「でも、お前らはコトリ様の元へ辿り着くことはできないんだぞ!」

リルマーダー「なんたって地下10階にはバハムート、地下11階にはクルーヤがいるからな!」


伊織(弱い犬ほど……ってヤツなのかしら。訊いてもいないのにベラベラしゃべってくれるわね)

伊織(ま、情報は有り難く受け取っておくけれどね)

伊織(それにしても、バハムートってのは貴音から聞いていたけど、クルーヤっていう名前は初めて聞いたわ)

伊織(そいつも私たちの敵ってことなのね)



リルマーダー「それにしてもお前、あの召喚士を先へ行かせたことを後悔すると思うぞ?」

伊織「は?」

リルマーダー「この下の地下7階はじいさんが守ってるんだ。きっとあいつ、じいさんに簡単にやられちまうだろうなー」


伊織「……聞き捨てならないわね。やよいがやられるですって? そんなことあるわけないじゃない!」

伊織「今のやよいに敵うヤツなんていないわ!」


リルマーダー「ふーん……ま、どっちでもいいけどよ」

リルマーダー「とりあえず……始めようぜ!」チャキッ


伊織「そうね。さっさと終わらせるわ!」チャキッ


457: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:21:34.88 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B7F ー


テクテク…

やよい「………」


やよい「………」チラッ


魔物「グゴオォ!」


やよい「……しばさん」スッ


スゥゥーー…


シヴァ「……絶対零度」


コオオオ…パキィン!!


魔物「」


やよい「……ごめんなさい、まものさん」ペコリ



やよい(あずささんも……)

やよい(真さんも……)

やよい(伊織ちゃんも……)

やよい(あと、ほかのみなさんも……)

やよい(わたしもふくめて、みんなひとつの大きな流れの中にいる気がします)

やよい(そしてその流れのまんなかには、きっと小鳥さんがいるはずですっ)

やよい(春香さん……。わたし、春香さんのことばのいみがやっとわかりました)

やよい(その流れにさからわないで、びゅーんってまっすぐすすめばいーんですよね?)

やよい(そーすれば、ぜんぶうまくいくんですよねっ!)


やよい「よーしっ、がんばるぞー!!」


458: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:24:32.94 ID:VsHkcvNIO

テクテク…

やよい「……ここが~ぼくの~いるべきせんじょ~♪」

やよい「かくごのかち~を~きめるばしょ~♪」



やよい「……あっ、とびらがあります!」

やよい「もしかしたら、あの先に下におりるかいだんがあるかも!」



「……あるにはある。しかし、お主がそこへ辿り着くことは叶わんじゃろう」



やよい「はわっ!?」



スゥゥーー…

ブルードラゴン「……また会ったのう、小さき召喚士よ」


やよい「あ、あなたはこないだの……」

やよい「こんにちはっ!」ガルーン


ブルードラゴン「本音はあの銀髪と戦ってみたかったが……仕方あるまい」

ブルードラゴン「じゃが、このカードはハズレじゃ。ワシにとっても、お主にとってもな」


やよい「う?」キョトン


ブルードラゴン「なに、時期に分かる」


やよい「あのっ、ここを通してもらえませんかっ!」

やよい「わたし、小鳥さんのところに行かないといけないんですっ!」


ブルードラゴン「その前に、お主に問おう」


ブルードラゴン「真の『安らぎ』とは何か?」


やよい「…………えっ?」



459: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:33:02.38 ID:VsHkcvNIO
ー 月の地下渓谷 B8F 西側 ー


「……春香。春香、大丈夫?」


春香「……う~ん……プニョデューサーしゃん……」ムニャムニャ


「春香、起きて」


春香「……そんなにたくさん入りませんよぅ……」


「……もう。春香、起きなさい!」


春香「んっ……」

春香「う~ん……」ムクッ

春香「……は……れ?」

千早「良かった。やっと起きたのね」ホッ

春香「千早ちゃん……? ここは……」キョロキョロ

千早「私たち、魔物に足場を崩されてここまで落ちてきたのよ。あなたは落ちている途中で気を失ってしまって……」

千早「でも、なんとか着地に成功したのは幸いだったわ」

春香「ああ、そっか。そういえばそうだったね」

春香「あれ? ……もしかして、千早ちゃんが私を助けてくれたの?」

千早「………」

千早「私、春香を守るのに精一杯で、他のみんなを気にしている余裕がなくて……」

春香「……ありがとう、千早ちゃん」

春香「きっと他のみんなも大丈夫だよ!」ニコッ

千早「春香……。ええ、そうね」ニコッ


460: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/12(水) 20:36:14.08 ID:VsHkcvNIO

春香「ここ、何階くらいなんだろうね? なんだかさっきいた階とはずいぶん雰囲気が違うような……」キョロキョロ

千早「そうね。体感的には地下7、8階といったところじゃないかしら」

春香「ええぇえっ!? 私たち、そんなに下まで落ちてきたの!?」

千早「勘だけど、おそらくそんなにズレてはいないと思う」

春香「はー……。千早ちゃんがいなかったら私、どうなっちゃってたんだろ……?」

春香「千早ちゃん、ホントにありがとうっ!」ダキッ

千早「え、ええ……///」



千早「……ともかく、先へ進みましょうか」

春香「そうだね」

千早「それじゃ、行きましょう」クルッ

スタスタ…


春香「あ、待って、千早ちゃん」

千早「……どうしたの? どこか痛む?」

春香「そうじゃないんだけど……」

春香「その……手、つないでもいいかな?」

千早「えっ……」

千早「そ、そんな……こんな時にそんなことをしている場合ではないと思うわ」カァァ

春香「それはそうかもしれないけど……」

春香「でも、千早ちゃんも分かってるでしょ?」

春香「私たち、この先ずっと一緒にはいられないかもしれない。いつ親衛隊が襲ってくるかも分からないし」

千早「………」

春香「少しの間だけでいいの。ねっ? お願い」

千早「……仕方ないわね」スッ

春香「えへへっ、さっすが千早ちゃん!」ギュッ


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