1: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:05:37.65 ID:mFUUprAA0
 夢を見た。ついこの間のようなずっと昔のことのような記憶。
森の中の花畑で、『少女』はそう笑っていたのだ。
世界中の何処を探したって、もう二度と『ジャギ』には抱きしめられない『少女』は。

ジャギ「ちっ……」(むくり)

ジャギ「妙な夢見たぜ。 なんか、胸の辺りがおも……」(ちらっ)

ジャギ「あ?」

 顔に当てた手が細い。両の胸には柔らかな膨らみが二つ。

ジャギ「え?」

 視線を巡らす。殺風景な部屋の片隅に放置された鏡に目を止める。
そこに映っていたのもが信じられず、目をこすった。
鏡の中の像も、同じ動きをする。

ジャギ「嘘、だろ」

 酷く傷を負った顔。ボサボサになった金の髪。胸に刻まれた七つの傷。
それは『ジャギ』のものだ。けれど、それ以外の部位は。

ジャギ「女になってるーーーー?!」(がびーん)


※この物語は、『北斗の拳』及び『ジャギ外伝 極悪ノ華』の設定を取り入れつつ
 オリジナル設定を混ぜ込んだ残念なSSです※

>>0�IPに立てられなかったのでこちらに※

引用元: ジャギ「女になってる……」 



2: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:07:14.04 ID:mFUUprAA0
ジャギ「えーっと落ち着け俺。落ち着いて昨日のことを思い出すんだ」

ジャギ「昨日は起きて、飯食って、人殺して、飯奪って、人殺して、飯食って、寝た」

ジャギ「うん、いつも通りの一日だったな」

ジャギ「寝てる間に妙な秘孔でも突いたか?」

ジャギ「いやそれはねぇか。筋肉を強化するならともかく、性別を変えるなんざ……」

部下A「ジャギ様ー、おはようございまーす」(バーンッ)

ジャギ「うぉっ!?」

部下A「ジャギ様?」

ジャギ「(やべえ! この姿をどう説明すりゃいいんだ!)」

部下A「珍しいですね、起こしに来る前に起きてるなんて」

ジャギ「ぬぁにぃ~?」

部下A「ひっ! でっ、出過ぎたことを言いました、すいやせん!」(バタンッ)

ジャギ「……気が付かなかった?」

ジャギ「ラッキー……なんだろうが釈然としねぇ」

3: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:08:00.53 ID:mFUUprAA0
ジャギ「(とりあえず、飯食いに降りてきてみたが)」

部下ABC「(がやがや)」「(ざわざわ)」「(ヒャッハー)」

ジャギ「(どいつもこいつも、俺の体が女になったことに気付いてねぇ?)」

ジャギ「おい、テメェら」

部下ABC「へい?」

ジャギ「あー、その、なんだ。今日の俺は、妙だと思わんか?」

部下A「いえ」

部下B「特には」

部下C「いいからとっとと略奪に行きやしょうぜー」

ジャギ「おっ、おう?」

ジャギ「(クソッタレ、どうなってやがるんだ)」

ジャギ「(……俺ぁ、とうとう、どっかイカレちまったのかよ)」

部下A「どうしたんすかジャギ様ー」

ジャギ「……今日は気分がノらねぇ。テメェらだけで好きに暴れて来い」

部下ABC「ヒャッハー!」(どたばた)

4: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:09:15.97 ID:mFUUprAA0
ジャギ「ちぃっ!」(げしっ)

ジャギ「何がどうなってこんな体になっちまってんだ!」

ジャギ「まさか……」(シュッ)

(ごしゃっ)

ジャギ「よし、壁くらいなら余裕だ」

ジャギ「北斗神拳まで使えなくなってる、なんてこたぁねぇか」

ジャギ「当然だ。俺は『北斗神拳伝承者ジャギ様』だからな……!」

ジャギ「しかし、結局理由はわからん」

ジャギ「こういう時はバイクでぶっ飛ばせばスカッとすんだろうが……」(ちらっ)

ジャギ「……この格好で表を歩いたら、ただの変態野郎だ」

ジャギ「む。今は野郎じゃなくてアマか」

ジャギ「……確認してみたのは、上だけなんだよな……」

(かちゃかちゃ…じーっ……そっ……じーっ……かちゃかちゃ)

ジャギ「……うん、下もだ下も」

ジャギ「ってぇ、何なんだこの居た堪れなさは! 俺の体だぞ!」

ジャギ「大体他の女の体だって見てきてんだ、今更どうってことねえだろ!」

ジャギ「ああくそっ、気分悪ィ! もう一眠り……」

ジャギ「ん? 待てよ、そういや今朝は妙な夢を見たんだったな」

ジャギ「あの夢に、なんか原因があんのか?」

ジャギ「あれに……出て来たのは、アイツは」

5: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:10:21.32 ID:mFUUprAA0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幼ジャギ「アンナー」

幼アンナ「なーに、ジャギ」

幼ジャギ「ボスの姿が見えねぇけどどうしたんだ? もう夜中だぞ」

幼アンナ「大丈夫だよ。ボスもアタシも、夜型だから」

幼ジャギ「そういうもんなのか?」

幼アンナ「そうそう。あ、それともジャギはお子ちゃまだから、もう眠たい?」

幼ジャギ「おっ、お子ちゃまって言うんじゃねえー!」

幼アンナ「お子ちゃまだよ。ほら、ここんとこすりむいてるじゃん」(ぺろん)

幼ジャギ「ーーーーーーーっ、舐めるなー!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


アンナ「アタシ、ココが好き」

アンナ「ジャギには、ココみたいに大切な場所ってある?」

ジャギ「あるさ! あの星!」

アンナ「星が夢、かぁ」

ジャギ「なっ、何だよ笑うなよ」

アンナ「ううん、笑わないよ。アタシも、星は好きだもの」

アンナ「太陽はあんまり好きじゃないんだ」

ジャギ「? なんで?」

アンナ「(それは言えないよ)」

アンナ「(それが言えないから。私の夢は、半分しか叶わない)」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


6: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:11:44.06 ID:mFUUprAA0

ジャギ「アンナ。そうだ、思い出した。アンナだ」

ジャギ「何で、今まで忘れちまってた」

ジャギ「アンナ。アンナ、アンナ」

ジャギ「なんでだ、何で忘れちまってた。あいつは、何処に……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「嘘」

「やだ」

「起きて」

「嘘だよね」

「目を開けて」

「名前を呼んで」

「お願いだからぁ」

 長い長い石段の途中。力尽きた姿。抱き止めたのは弟。
瞼の裏に鮮烈に甦った光景。慟哭で、憎悪で、染まる心。
その瞬間に、何かが音を立てて崩れた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


7: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:12:44.37 ID:mFUUprAA0
ジャギ「あ」

ジャギ「あ」

ジャギ「アアアアアアアアアアアッ?!」

ジャギ「そうだっ、そうだった、『アンナ』は、あの時、居なくなっちまったんだ!」

ジャギ「誰のせいだ、誰のせいだ、誰のせいで死んじまったんだっ」

ジャギ「あいつらだ、あいつらが、殺した……ッ!」

ジャギ「なのに、俺は、全部忘れちまってたっ!」

ジャギ「……女の体だとか、そんなことは、関係ない」

ジャギ「奴らを、殺してやる」

ジャギ「いいや、奴らだけじゃねえ。全部、全部、だ、全部[ピーーー]!」

ジャギ「……あぁ、俺はイカれちまってんだな」

ジャギ「だから、自分の体が女なんかに見えるんだ」

ジャギ「『アンナ』の体に見えちまうんだ。は、はは、ひゃはははは」

ジャギ「ヒャハッハハハハハハハハハハハハハ……………」

 ショットガンを手にとって、皆が出払った古いビルの中で、『ジャギ』は笑う。
己は狂っているのだ、と。そうして一しきり笑った後、その声は消えた。

8: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:15:37.87 ID:mFUUprAA0
男「…………」

男「ちっ、うるせぇ笑い声で目が覚めちまった」

男「まだ日が照ってるじゃねぇか……」

(ガシャアアン)

ジャギ「よぉ、ボスぅ」

ボス「……」

ジャギ「だんまりかよ」

ボス「……余計なことを言うな、つって俺を檻に入れたんだろうが」

ジャギ「あぁ? そうだったか?」

ジャギ「まぁ、んなこたぁ、どうだっていいんだ」

ジャギ「ちょいと付き合えよ」

ボス「何処へ行くつもりだよ」

ジャギ「アンナの仇討ちだよ」

ボス「ッ! お前、記憶が……」

ジャギ「情けねぇなぁ。アイツを殺した奴らを部下にしてたなんてよ」

ジャギ「奴ら殺して、そんで、他の人間も[ピーーー]」

ジャギ「アイツが死んだのに、のうのうと生きてるなんざ、許せねぇんだ」

ボス「馬鹿! そんなことして、アイツが喜ぶとでも思ってんのかよ!」

ジャギ「なぁ、ボス。今の俺の姿、どう見える?」

ボス「何?」

ジャギ「あんたに、いつも見えてた姿と変わらないのか、って聞いてんだよ」

ボス「……変わらない。俺が見ていた、お前の姿だ」

ジャギ「ひひっ、だろう? でもなぁ、俺ぁ違うんだ」

ジャギ「この体が、アンナの姿に見えるんだよ」

ジャギ「アンナがさ、殺せって言ってんだ、きっと」

ボス「……」

ジャギ「ついてきてくれるよな、ボス」

ジャギ「アイツを失った悲しみを分かち合えるのは、ボスだけだ」

ボス「……」

9: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:19:23.62 ID:mFUUprAA0
部下A「あべらばべばーっ!」(パーン)

部下B「げぼーっ!」(ぐしゃっ)

部下C「ひっ、ひぃーーーーーっ!」

ケンシロウ「おい待て。貴様には聞かねばならんことがある」

部下C「いっ言いますから! 何でも言いますからっ! いっ、命だけは!」

ケンシロウ「これと同じ胸の傷を持つ男の居場所を教えろ」

部下C「じゃっ、ジャギ様のことですねっ!」

ケンシロウ「ジャ、ギ?」

部下C「えっ、ええ、そうです!」

部下C「ジャギ様なら、この先のアジトに……うべらげっ!」(ぼんっ)

ケンシロウ「銃弾か」

(ドルルンドルルルン)

ケンシロウ「バイクのエンジン音?」

(ドルンドルンドルン……ブォン)

ジャギ「あぁ? 何だぁ、テメェは」

ジャギ「……ちっ、コイツら殺しちまったのかよ」

 破裂した部下共の死体を持ちあげ、地面に叩き付けた。

ジャギ「俺が、この手で殺してやろうと思ってたのに」

 手についた血を舐める。その味に嫌悪を抱かない自分に、少しだけ驚いた。
そこまで狂っているのか、とちらりと頭の片隅を過った。

ジャギ「こいつらの死に方、覚えがあるなぁ。なぁボス、そう思わねぇか?」

ボス「……『ジャギ』と同じ技じゃねえのか」

ジャギ「あぁ……そうか。これぁ、北斗神拳だ」(じろり)

ジャギ「そうだ、テメェには、覚えがある」

ジャギ「その七つの傷も、その顔も、その技も」

ジャギ「ひっ、ひひっ、ヒャハハハッ! 久しぶりじゃねぇか」

ジャギ「なぁおい、ケンシロウ!」

ケンシロウ「……」

ジャギ「ケンシロウ……! 俺の名を言ってみろぉおおおおおお!!」

10: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/29(火) 21:20:10.09 ID:mFUUprAA0
ケンシロウ「誰?」

ジャギ「えっ」

ケンシロウ「えっ」

ジャギ「えっ」

19: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/30(水) 22:17:57.42 ID:MXBZBG820
ジャギ「ふっ、ふざけんじゃねぇえええええ!!」

ジャギ「テメェ、この『ジャギ様』のことを忘れやがって!!」

ジャギ「そんなに、俺のことがどうでもいいってのか!!」

ジャギ「弟のクセに、ふざけてんじゃねぇええええ!!」

(だきゅーん)

ケンシロウ「(スッ)」

ケンシロウ「……テメェが誰かは知らん。だが、これだけは言える」

ケンシロウ「テメェは、ジャギじゃない」

ジャギ「黙れぇえええええ! そんなわけあるかぁあああああ!!」

ジャギ「俺はっ、俺は、『北斗神拳伝承者ジャギ様』だぁあああああ!!」

 指先が、ケンシロウへと一直線に伸びる。ケンシロウは何の苦もなく避ける。
再度振りかぶろうとしたその拳が、止められた。

ボス「もうやめろ!」

ジャギ「ボスっ、くそっ、離せっ!」

ボス「もう、やめるんだ」

ジャギ「離せっつってんだ! 邪魔すんじゃねえよ、ボス!」

ケンシロウ「おい、アンタ」

ボス「あ?」

ケンシロウ「そいつの動きは、確かにジャギによく似ている」

ケンシロウ「だからこそ、解らない。答えてもらおうか」

ボス「なんだよ」

ケンシロウ「……アレでも、普通の人間よりはジャギは余程強かったはずだ」

ケンシロウ「そのジャギと同じ動きをするそいつを、何故片手で止められる」

ジャギ「!」

20: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/30(水) 22:19:55.94 ID:MXBZBG820
ボス「……吸血鬼、って知ってるか?」

ケンシロウ「おとぎ話の類だろう」

ボス「表向きは、な。だが実在する」

ケンシロウ「アンタがソレだというのか」

ボス「ああ」

ジャギ「何言ってんだよボス。吸血鬼が、日の下を歩けるわけがねぇだろ」

ボス「俺達は……俺と妹は、先祖返りを起こした人間だ」

ボス「遠いジジイだかババアだかが吸血鬼だったせいで、その力を持って生まれた」

ボス「日の下を歩けるくせに、人間の血を美味いと感じる」

ボス「腕の力だって、常人にゃ負けねぇ」

ジャギ「嘘だっ、じゃあなんで、あの時奴らに負けたんだ?!」

ボス「普段はな、暗示の力で抑え込んでるんだ」

ケンシロウ「暗示?」

ボス「力を出せない、と自分へ強い暗示をかけちまったら、その通りになる」

ボス「本来は、他人へ使う催眠術なんだが、俺と妹はそれを自分に使った」

ボス「妹は優しい奴だった。誰かを傷つけたくないから、その暗示を使っていた」

ジャギ「そんな暗示かけてたせいでっ、アイツは死んじまったんじゃないか!」

ボス「違う」

ジャギ「違わない! 暗示さえかけなきゃ、力さえ、抑えてなきゃ」

ジャギ「そうしたら……っ」

ボス「もうよせ。それ以上責めるのは」

ジャギ「でも……っ」

21: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/30(水) 22:21:48.52 ID:MXBZBG820
ボス「ジャギが死んだのは、お前のせいじゃあない」

ジャギ?「は?」

ジャギ?「おかしなこと言うなよ、ボス」

ジャギ?「ジャギが死んだ? 何馬鹿なこと言ってんだよ」

ジャギ?「じゃあ、俺は、誰だってんだ。今ここにいる俺は」

ケンシロウ「……核が落ちた直後。俺は道場へ続く階段でジャギを見つけた」

ジャギ?「何を、言ってやがんだ。やめろ、やめてくれ」

 聞きたくない、と脳が叫ぶ。
けれど、ケンシロウのその悲しげな言葉に耳を防げなかった。
その悲しげな視線から目をそらせなかった。

22: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/30(水) 22:23:36.23 ID:MXBZBG820

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ケンシロウ「ジャギ……? どうしたんだ、しっかり……!」

ジャギ「父さん? 父さんなの、そこにいるのは」

ケンシロウ「?! 違う、俺は師父じゃ、父さんじゃない、気を確かに持て!」

ジャギ「父さん、ぼくね、まもりたいおんなのこがいたんだ」

ジャギ「でもね、だめだったよ。あのこ、アンナ、しんじゃった」

ジャギ「ぼくね、かたき、とろうとおもって、さ」

ジャギ「あいつらのとこに、のりこんだんだ」

ケンシロウ「(ジャギがやられた? 伝承者候補だぞ)」

ケンシロウ「(有象無象に負ける程弱いはずは……!)

ケンシロウ「お前、その傷……」

ジャギ「……ばくはつで、ほのおで、やけど、してて」

ジャギ「北斗神拳、うまく、つかえなかった」

ジャギ「ごめんなさい、とうさん、ごめんなさい」

ジャギ「つかっちゃだめっていわれてたのに」

ジャギ「とうさんの、拳で、まけたく、なかったのに」

ジャギ「ごめんなさい、とうさん、ごめんなさい、ごめんなさい……」

ケンシロウ「ジャギ! ジャギ、しっかりしろ! 俺は父さんじゃない!!」

ジャギ「ごめん、ごめん、ゆるして、アンナ。まもれなくって、ごめん、ごめん……」

ケンシロウ「しっかりするんだ! 今師父を探してくる!」

ジャギ「」

ケンシロウ「……ジャギ? おい、ジャギ、ジャギ!!」

少女「ジャギ? ジャギが、そこに、いるの?」

ケンシロウ「っ」

少女「ジャギ、私は、大丈夫だよ。頑丈に出来てるから」

少女「えっと、ちょっとひどい顔になっちゃったけどさ」

少女「死んでないから、ね。謝らなくていいんだよ」

ジャギ「」

少女「ジャギ?」

少女「嘘」

少女「やだ」

少女「起きて」

少女「嘘だよね」

少女「目を開けて」

少女「名前を呼んで」

少女「お願いだからぁ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

23: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/30(水) 22:26:22.66 ID:MXBZBG820

ジャギ?「ああああああああああああ!!」

 長い長い石段の途中。力尽きた彼の姿。抱き止めたのは彼の弟。
瞼の裏に鮮烈に甦った光景。慟哭で、憎悪で、染まる心。
その瞬間に、何かが音を立てて崩れた。

 自分の顔には、醜い傷があった。
(それはケンシロウに負わされたものだと信じていた)
(実際は、暴行された時に負った傷跡だったのだけれど)
だから、ずっとヘルメットや布で隠していた。
おかしいと思うべきだった。部屋に鏡があることを。
あの鏡に向かって、自分は毎夜何をしていた?

ジャギ?「俺の姿に疑問を持つな、って、暗示をかけてたんだ」

ジャギ?「部下にも、誰より、俺自身にも」

ボス「だが、その暗示は同じ力を持つ俺には通じなかった」

ケンシロウ「ジャギを、この腕の中で看取った俺にも」

ジャギ?「その後、こいつの腕からジャギを奪い取って」

ボス「……飲んだ」

ケンシロウ「血を、か?」

ジャギ?「一滴も、残さず」

ボス「心から思う相手の血を、死後、一滴残さず飲み干せば」

ボス「そいつの魂と肉体の記憶を全て受け継ぐことができる、っつー伝承があってな」

ジャギ?「俺は、それに賭けたんだ」

ジャギ?「そして……あの時から、俺は……『ジャギ』になった」

ボス「自分自身が『ジャギ』だと信じてるこいつに、俺の言葉は届かなかった」

ジャギ?「ようやく思い出した。俺は……アタシは、ジャギじゃなかったんだ」

ボス「そうだ。だから、もういいだろ」

24: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/30(水) 22:29:08.61 ID:MXBZBG820
ジャギ?「よくないよ」

ボス「何?」

ジャギ?「アタシの中には、ジャギの記憶があるんだ」

ジャギ?「ジャギは、ケンシロウを憎んでた」

ジャギ?「後から来たケンシロウに、居場所を奪われたって!」

ジャギ?「だから、だからアタシは、俺は、ケンシロウをこのまま見過ごすことなんて出来

ない!」

(ばしっ)

ボス「しまっ……」

ジャギ?「[ピーーー]ぇえええええええええ!!」


北 斗 羅 漢 撃 !!



ケンシロウ「むんっ!」(ドスッ)

ジャギ?「何でっ、受け止められる! ジャギの、一番得意な技をっ!」

ケンシロウ「……北斗羅漢撃は、怒りを、憎しみを、怨みを、全て無くして初めて完成する

技」

ケンシロウ「そう、父さんに習ったはずだ、ジャギは」

ケンシロウ「ジャギが俺を怨んでいるというなら、その技は、ただのスローな突きだ!」

ケンシロウ「いつまでもジャギの亡霊に囚われるな……!」

ジャギ?「うっ、うっ」

ボス「もうやめようぜ。お前が人を殺しても、ジャギは喜ばねぇよ」

ジャギ?「うっ、ううっ」

ボス「なぁ……、アンナ」

ジャギ?=アンナ「うあぁああああん、あっ、うっ、ひぐっ、あぁああああああん」

 荒野のビル街に、少女の泣き声が木霊する。
あの時から隠し続けていた涙が、悲しみが、木霊する。
少女は、元は余り泣かないタチだった。だから、今泣いてしまうのはきっと、
大好きだった『泣き虫の男の子』の魂を、その身に宿しているからなのだろう。


25: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/30(水) 22:32:17.35 ID:MXBZBG820

 古びたビルの中。ボスが紙の束をケンシロウに手渡す。
あまり丁寧とは言えない文字に、『二人とも』見覚えがあったがそれを口にはしない。

ボス「これが、攫った人間を売り飛ばした先のリストだ」

ケンシロウ「いただいておこう」

ケンシロウ「友人が、妹を『七つの傷を持つ男』に攫われて、行方を捜している」

ボス「……もしかして、アイリっつー嬢ちゃんか?」

ケンシロウ「知っているのか」

ボス「向かいの牢に入れられてた」

ボス「攫われてきたのが相当ショックだったらしい。もう何も見たくない、つってた」

ケンシロウ「それで、どうした」

ボス「あのままじゃ自分の目を潰しかねなかったんでな、暗示で目を見えなくしてやった」

ケンシロウ「暗示で、か」

ボス「ああ。だからま、ちょっと暗示を解いてやりゃあすぐ目が見えるはずだぜ」

ケンシロウ「そうか」

ボス「……ありがとよ、アンナを殺さないでくれて」

ケンシロウ「……」

ボス「アイツがやってきたことは、到底許されることじゃねぇ」

ボス「殺されたって、文句は言えなかった」

ケンシロウ「夢を見た」

ボス「夢?」

ケンシロウ「あの階段にいる夢。そこには、ジャギが立っていて、こう言われた」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ジャギ「お前が、北斗神拳を継いだんだろう」

ジャギ「お前が、俺が継げなかった、父さんの拳を継いだんだろう」

ジャギ「お前に……お前にしか、あいつを救えないんだ」

ジャギ「頼む、アイツを、止めてやってくれ」

ジャギ「お前は、世紀末救世主様なんだろう!?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ボス「そっか」

ケンシロウ「アンタらは、これからどうするんだ?」

ボス「さぁなぁ。ま、あんたが気にすることじゃねぇよ」

ケンシロウ「そうだな。では、俺はもう行く。日も暮れそうだしな」

ボス「ああ、あばよ」

26: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/30(水) 22:34:44.10 ID:MXBZBG820

 ビル街の片隅。そこで、アンナはそっとヘルメットを脱いだ。

アンナ「ジャギ」

 呼びかけて、ことり、と地面にそれを置く。
傷を隠すようにして、顔にはバンダナを巻いている。

アンナ「私の夢はね、ジャギと一緒に幸せに暮らすことだったよ」

アンナ「ジャギと一緒に、って部分は、やっぱり駄目になっちゃった」

 あの頃は、自分に流れるバケモノの血のせいで傍に居られないと思っていた。
今は、一緒に居たいと願った相手を失ってしまった。

アンナ「でもね……幸せには、暮らせるように、頑張るよ」

 細い手を、そっと胸に当てる。
服の下には、彼を忘れまいと刻んだ七つの傷が今も残ったままだ。

アンナ「血まみれの手で、こんなこと言っちゃだめなんだろうね、本当は」

アンナ「それでも……、ジャギの分まで、生きて生きて、生き抜くから」

 少女は空を見上げた。日は暮れ、空には星が輝いている。
彼が『夢だ』と言った七つ星が、キラリと瞬いた。

アンナ「あの星が輝く限り、ジャギはアタシの傍にいる」

 愛しげに己の体を、その内に宿したもう一人の魂ごと抱きしめる。

アンナ「そう思って、幸せに、なるよ」



27: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/03/30(水) 22:42:29.27 ID:MXBZBG820
以上で終了です。誰得って俺得だよ。オチはやや投げやりになったよ!
でもいいんだよ俺得SSなんだから! 感想ありがとうございました!!

わかりにくいとこ勝手にFAQ

Q:トキは? ラオウは?
A:その内適当に解るんじゃねえの?!

Q:アミバは?
A:知らん! 核の炎に焼かれて死んだりとかしてんじゃね?!
  そもそも極悪ノ華で一切出てこないからねアミバ

Q:どういう流れだったの?
A:核落ちる→※ジャギ核の炎で焼かれる→アンナさらわれる
→アンナ暴行される→※アンナ怪我をし仮死状態に→※ジャギ、アンナが死んだと思い込む
→※ジャギ、アンナをさらった奴らの下で暴れるが致命傷を負い逃げる
→※アンナ復活、ジャギ探す→※ジャギ、ケンシロウに看取られ死ぬ→※アンナ狂う
→※アンナ、ジャギの血を飲み干して記憶を全て受け継ぐ
→※アンナ、自身をジャギと信じるよう自他共に暗示をかける→※アンナ、ボスを幽閉
→※アンナ、以降『ジャギ』として悪逆非道の限りを尽くす(アイリさらったり)
→※色々あってSS冒頭部分

※印の部分がSSオリジナル設定

こんな感じでした! 以上! 終わり!

31: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/04/01(金) 21:43:03.42 ID:ZEyp90FW0
アミバ「死が、罰か」

※余韻台無し一発ネタ※

※構想・製作時間携帯でポチポチ打って50分
 どうせスレ空いてるんだし投下しちゃえ系のがっかりクオリティ※

32: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/04/01(金) 21:43:57.03 ID:ZEyp90FW0

 嘘つきには報いを。
血まみれの両手。ちぎれた両手。確かに死んだはずだった。

アミバ「……あれは、きっと悪い夢だったんだろうな」

アミバ「俺は天才でも何でもねぇし」

娘「父さん? どうしたの?」

アミバ「ああいや、何でもないさ」

アミバ「(……そうさ。俺は四十前のただの農夫で)」

アミバ「(もうすぐ死んじまいそうな、ただの哀れな男だよ)」

娘「やっぱり…具合悪いの?」

アミバ「苦労をかけるな…俺がこんな体でなけりゃ、お前を嫁に出せたのに」

娘「やだ、父さんが気にすることないわ」

アミバ「(娘も、立派に育ってくれた)」

アミバ「(あの夢の中の『アミバ』に比べりゃあ随分マシな人生だ)」

33: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/04/01(金) 21:45:00.49 ID:ZEyp90FW0
娘「……ねぇ、父さん」

アミバ「ん?」

娘「私、この間隣村に行ったでしょう?」

アミバ「ああ」

娘「そこでね、噂を聞いたの」

娘「色んな怪我や病気を治してくれる人が住む――奇跡の村の話を」

アミバ「奇跡、の、村?」

アミバ「(聞いた気がする……だが思い出せん)」

娘「ね、父さん、そこへ行ってみましょう?」

アミバ「だが、俺は歩けん…」

娘「私が背負っていくわ」

アミバ「そんな苦労は…」

娘「私は、父さんが元気になるためだったら何だってするわ」

アミバ「……すまん」

34: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/04/01(金) 21:45:47.86 ID:ZEyp90FW0
 辺りは砂漠。昼はとてもではないが歩けない。故に二人は夜を進む。

娘「父さん父さん辛くはない?」

アミバ「ああ、大丈夫だ」

娘「父さん父さん喉が乾いてはいない?」

アミバ「ああ、大丈夫だお前が飲みなさい」

 親子は二人、夜を進む。この苦労の先に、きっと幸せがあると信じて。
そして二人は、辿り着く。

35: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/04/01(金) 21:47:07.72 ID:ZEyp90FW0
娘「ここが奇跡の村…」

アミバ「(やはり…見覚えがある?)」

アミバ「(そうだ、あの夢の中で)」

男「おや、お嬢さんどうかなさいましたかな?」

娘「父さんが重い病気なんです」

男「それはいけない…どれ見せてご覧なさい」

娘「お医者様ですか?」

男「似たようなものです」

 男が、顔を覗きこむ。父は、悲鳴を上げそうになった。
喉から声が漏れる前に、男の指先が喉を突く。

男「ふむ、砂漠で体力を消耗したようだ」

娘「まあなんてこと、父さんしっかりして」

アミバ「あ…あ…(俺はいいから、逃げろ)」

男「お嬢さんも疲れているでしょう…あの建物で少し休みなさい」

アミバ「あ…ああ…(やめろ、行くな、戻って来い!)」

 娘は建物の中へ消える。そして聞こえてきたのは、悲鳴。

男「馬鹿な女だ…こんなご時世で他人を信じるなど」

アミバ「あ…あ…ああああ……」

体が動いた。身を起こし、建物へ駆け寄る。
扉を開けば、暗闇に倒れ伏す娘。

アミバ「おいっ、おいっ、しっかりしろっ!」

娘「ひどいよぉ…痛いよぉ…」

娘「助けたかっただけなのに、どうしてこんな酷いことするの?」

 腫れた瞼や頬。四肢は腐り蛆が湧いている。
娘の両手がなじるようにアミバの顔に伸ばされ…ボトリ、とちぎれてとけた。
 いつの間にか、男が再度覗きこんでいる。その口元が耳まで裂ける。

アミバ「何で……何で、こんな酷いことを……」

男「酷いこと、だと?」

男「……これが……貴様がやってきたことだろう……?」

 男のその顔は――彼とそっくり同じもの。

アミバ「ああああああああああああ!」

36: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/04/01(金) 21:49:31.23 ID:ZEyp90FW0

 嘘つきには報いを。
血まみれの両手。ちぎれた両手。
ギリギリ死体になっていない男が、地面に転がっている。
傍らに佇む少女が一人。

アンナ「全部、嘘だけどね」

 全ては彼女の見せた幻。

アンナ「自分がどんな罪を背負って、その罰として死ぬのか」

アンナ「それがわからないまんまって正直腹が立ったんだよね」

アンナ「だから、あんたに悪夢を見せてやった」

アミバ「……死が、罰か」

アンナ「……まだ生きてたんだ」

アミバ「一つ…勘…違い…して…る」

アンナ「え?」

アミバ「……娘は、いな、かった。だま、され、て、しんだ、俺の、娘は」

アミバ「それ、が、わか、た、から……安、心、して、[ピーーー]る」

アンナ「え…」

アミバ「その、程度で、改心、しや、しないさ……」

 男は瀕死のまま、不敵に笑う。

アンナ「……死が罰にならなかったんだ」

アンナ「本当は、さ。私も似たようなもんだし、罰を与える立場になんてないんだよね」

アンナ「でも、嘘をつきたかった」

アンナ「何でかわかる?」



アンナ「今日が四月一日だからエイプリルフールネタ便乗したくて」

アミバ「ああ…しがつ…ばか…」


37: 1 ◆0BdIr6WOy. 2011/04/01(金) 21:50:17.99 ID:ZEyp90FW0
……うん、正直すまんかった。