2: えんぽ 2011/04/29(金) 07:11:40.89 ID:/0vcgqHAO
【ルリ「アキトさん。今晩だけ。】

ぱられるナデシコ

(あれは、アキトさんに艦長?)
(ここは?あっ、結婚式。)
ミナト「ルリルリ、どうしたの?ぼーっとしちゃって。まぁさか、嫉妬?かっわいい。」

ルリ「違います。艦長が綺麗だなって思ってました。」
事実、ウエディングドレスに包まれた艦長は綺麗で、世界中の幸せを一身に纏っている様だった。

ミナト「そんな顔には見えないけどなぁ。ま、そぅ言うなら信じましょ。」

引用元: ナデシコSS 



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3: えんぽ 2011/04/29(金) 07:15:28.91 ID:/0vcgqHAO
アキト「ルリちゃん。祝ってくれてありがと。」

不意に声をかけられ上手く言葉が出ない。笑わなきゃ。祝わなくちゃ。
でも、喉も表情も金縛りにあったかの様に動けない。
アキトさんが、にっこり笑って。
アキト「緊張しなくていいんだよルリちゃん。」
その言葉でようやく。
ルリ「おめでとうございます。」
上手に笑えているだろうか?
もっと気の利いた台詞を言えれば良いのに。
でも、これは私らしい。

4: えんぽ 2011/04/29(金) 07:18:47.53 ID:/0vcgqHAO
アキト「それじゃ、みんなに挨拶に回るかな、またね。」
にっこり微笑んで、隣のテーブルへ向かっていく。


しばらくの間を開け。
ユリカ「ルリちゃん。今日は来てくれて有難う。遠慮せずに飲んで食べてね。」
感情が、そのまま顔に出るという言葉が、これほど相応しい人もいないだろう。恋焦がれた人と、遂に結ばれるのだから、笑顔に一点の曇りすら無い。
(私も、こんな笑顔が出きるかな?)そんなことを思わせる。

5: えんぽ 2011/04/29(金) 07:23:36.00 ID:/0vcgqHAO
表情と言葉に嘘偽りが無い。
それは爽やかなまでの正直さと捉えるか、うざったさを感じるかは、受け取る人や時によって違う。ただ、今は、その全身から滲み出る幸せを祝福したいと思う。
ルリ「艦長。おめでとうございます。」

ユリカ「うん。ルリちゃん有難う。じゃ、またね。」

艦長が足早に立ち去る。
そこからは、頭がぼーっとする。
『認めん、認めんそぅ。』『ユリカ、ユリカ。僕じゃダメなのか。』『あたしだってね、本当ならアキトくんと、アーダコーダ……』『結婚式に血まみれ血痕。あは、あは。』
雑音の様に様々な声が流れていく。

6: えんぽ 2011/04/29(金) 07:26:36.04 ID:/0vcgqHAO
気付けば二人が新婚旅行に向かう艇に乗り込んで行く。

(止めなきゃ。)
頭とは裏腹に声も体も動かない。二人は【無事】乗り込んでいった。

艇が飛び立つ。
ここから先、どうなるかを知っているのは私だけ。
そう。(1・2・3)心の中で数える。

ドォン、轟音と共に艇が弾ける。
分かっていても「あっ」と声が出る。

『え!?』『いや。』『きゃあぁ。』
轟音から遅れて、何処彼処から悲鳴があがる。

7: えんぽ 2011/04/29(金) 07:32:02.42 ID:/0vcgqHAO
~~~~~~~~
そこで、目が覚める。
ルリ「夢か。」
一人ぽつり呟く。
何度目だろう?最近同じ夢、しかも悪夢ばかり見る。
体がうっすら汗ばんでいることに気付く。
顔を洗い鏡を見る。(顔色、良くないな。)
ふぅと溜め息を吐き、シャワーを浴びて服を着替える。

8: えんぽ 2011/04/29(金) 07:32:59.07 ID:/0vcgqHAO
悪夢を見たなんて、一つも滲ませず、オペレーター席に向かう。
アキト「ルリちゃん。おはよ。」
微笑む顔に先程の悪夢を思い起こし、顔が苦みそうになる。それをじっとこらえて。

ルリ「テンカワさん。おはようございます。」
いつもと抑揚が変わらない様に意識しながら。

すると横から。
ユリカ「ルリちゃん、おはよ。あ!アキトぅ。」

アキト「げ、ユリカ。」
目の前で、毎日の【ドタバタ】が繰り広げられる。
この様子を見ると、夢で見た結婚式なんて、有り得なさそうだけど、ゆくゆくは落ち着く所に落ち着くと思ってしまうのは何故だろう。
オペレーター席で、一息つき。(じゃあ、あの艇が弾けるのは何なんだろうか?)考えても答えが出ない。
(予知夢?)あまりに非科学的過ぎる。でも何で毎日同じ夢を?

9: えんぽ 2011/04/29(金) 07:38:23.38 ID:/0vcgqHAO
結婚式から爆発まで細かい台詞に差異はあれど、同じ夢を見出したのは一週間くらい前。最初は【へんな夢】程度だったけど、あの轟音だけは最初から耳にへばり付いて目が覚める。
メグミさんと付き合い、別れたりした直後なアキトさんが、真っ直ぐ結婚するとは思えないけど。あの夢には嫌なくらい真実味がある。

その日は大きな事件も無く勤務は終わり、床に着く。(今日は夢を見ません様に。)祈る様な気持ちで眠りについた。

~~~~~~~~
あ、また、夢。頭がぼーっとする。
結婚式だ。一通り同じ流れが続き、………ドォン。

~~~~~~~~
ルリ「また、あの夢。」
時計を見る。(一時間も寝てないな。)
けど、もう寝る気にはなれなかった。また、同じ夢を見る恐怖と、好きな二人を夢でも失うのは嫌だった。
廊下に出て、何も出来ず歩く。

10: えんぽ 2011/04/29(金) 07:40:13.94 ID:/0vcgqHAO
アキトさんが、部屋に向かって歩いている。(生きてる、良かった。)ふと、涙が溢れる。

アキト「どうした?ルリちゃん。」
声が慌てている。涙を見られたみたい。

ルリ「なんでも無いです。」

アキト「なんでも無いって、目に涙を浮かべて。」

ルリ「あの。怖い夢を見て。」

アキトさんが、ほっとしたのか、にっこり笑って。
アキト「怖い夢か。ルリちゃんにも子供っぽいところがあるんだな。」
アキトさんは、私の中にある子供っぽさを嬉しそうに笑う。
(アナタとユリカさんが死んじゃう夢なんですよ?これが言えたらどんだけいいか。)
(子供っぽい夢なら、楽に済ませれますよ。)同じ夢の苦しさを話すわけにもいかない。こんな夢を間違っても他言出来ない。夢が、その人の意識下というなら、私は二人の結婚直後の不幸を望んでいるのだろうか?(そんな筈ない。)心で呟く。

11: えんぽ 2011/04/29(金) 07:41:30.17 ID:/0vcgqHAO
私の深刻な表情を読み取ってか。
アキト「ルリちゃん。悪夢を見たんならホットココアで落ち着くのが一番だよ。俺が作るから部屋においで。」
優しく微笑むアキトさんは、夢の中と同じに見える。
その笑顔に導かれる様に無言で頷き、アキトさんの部屋へと入った。

アキト「ルリちゃん。適当に腰掛けて。」
頷く。

綺麗とは違うが適度に整理された部屋。生活感が漂っている。(アキトさんを感じる。)部屋にはアキトが充満していた。他人の領域。だけど心地良いのは何故だろう?


12: えんぽ 2011/04/29(金) 07:42:52.60 ID:/0vcgqHAO
アキト「熱いから気を付けてね。」

ルリ「有難うございます。」
取手付きの白い大きなマグカップに入った茶褐色のそれは、美味しそうな湯気を立てている。甘い匂いもする。(美味しそう。)ゆっくり一口すする。
(美味しい。優しい味がする。アキトさんみたい。)

アキト「熱くない?美味しい?口に合うかな?」

ルリ「大丈夫です。凄く…美味しいです。」

アキト「良かった。」
(この笑顔、独り占めしたいな。)ふと、心によぎる。

アキト「落ち着いた?」

ルリ「はい。」

13: えんぽ 2011/04/29(金) 07:43:59.75 ID:/0vcgqHAO
アキト「子供の頃、怖い夢を見た時に、ホットココアを作ってくれてたんだ。」
アキトさんは凄く悲しそうな目をして、遠くを見つめてる。
(御両親のことを思い出させちゃったかな?)申し訳なく思う。

息を呑み。
ルリ「あの、お願いがあります。」

アキト「なんだい?ルリちゃん。」

ルリ「アキトさん。今晩だけ。今晩だけは、ここで寝させてもらえませんか?」

アキト「えっ!?」
声が裏返っている。


14: えんぽ 2011/04/29(金) 07:46:03.76 ID:/0vcgqHAO
ルリ「最近、同じ夢ばかり、しかも怖い夢を見るんです。今日もついさっきまで。」

アキト「なるほど。それは辛いのは分かるけど、ここで寝るのは、まずいよ。ミナトさんとかユリカに頼んだら?」

ルリ「テンカワさんしか、アキトさんしか頼れないんです。」
(私って卑怯だ。)こんな時に、子供であること、女であることを利用してる。

ルリ「違うベッドなら、違う夢を見られるかもしれません。」
アキトさんが悩みながらポリポリ頭を掻く。


15: えんぽ 2011/04/29(金) 07:47:11.19 ID:/0vcgqHAO
アキト「よし、分かった。俺のベッドで良ければ使ってよ。布団もシーツも新しいからさ。」

ルリ「有難うございます。」
(使い古しでも構わないのに。)

ルリ「眠りにつくまで、手を握ってもらえますか?」
甘える子供の様に。

アキト「分かったよ、ルリちゃん。」
私はベッドに潜り込んだ。いつもと違う感触の枕、いつもと違う感触の布団、いつもと違う部屋の空気に何故か、今日はゆっくり眠れそうな気がする。


16: えんぽ 2011/04/29(金) 07:48:21.48 ID:/0vcgqHAO
~~~~~~
チュンチュン(実際は鳴いてません。)
(朝?夢、見なかったな。)
手に感触を覚える。アキトさんが、ベッドにもたれかかる様に寝ている。(そっか、昨日は一緒に過ごしたんだ。)
手はしっかりと私の手を握り締めている。(有難うアキトさん。)
私は握られてない手で、アキトさんの癖っ毛を撫でた。
アキト「ん、ん。」
(起こしちゃったかな?)

17: えんぽ 2011/04/29(金) 07:49:31.31 ID:/0vcgqHAO
アキト「る、ルリちゃん。あ、そうか。昨日は。」

ルリ「ご迷惑をおかけしました。」

アキト「迷惑なんかじゃないよ。ルリちゃんは、もっと俺達に甘えて良いんだよ。それより良く寝れた?」

ルリ「おかげ様で。助かりました。」

アキト「なら良かったよ。」

ルリ「変な体勢で寝てますけど、大丈夫ですか?」

アキト「これくらい平気さ。それより、ルリちゃんが悪夢を見なかったことが嬉しいよ。」

ルリ「アキトさん。変なことを言いますけど、落ち着いて聞いて下さい。」

アキト「なんだい?」
アキトさんが身構える。


18: えんぽ 2011/04/29(金) 07:50:52.92 ID:/0vcgqHAO
ルリ「もし、何かあれば、自分で解決しないで下さい。私達、ナデシコクルーを信用して下さい。迷惑だなんて絶対に思いませんから。どんなことになろうとアキトさんはアキトさんで、ナデシコはナデシコです。
その代わり、私もちゃんと甘えますから。」
なんか、これを伝えとかないと大変なことになる気がする。抱え込みやすいアキトさんを案じる不可思議な危惧。不確定な自信。

アキト「分かった。約束するよ。ルリちゃんも甘えていいんだからね?」

私はアキトさんの眩しい笑顔を見ながら来るべく、何かに手は打てた様な気がする。
少し胸のつかえが取れた。きっと明日から悪夢は見ないだろう。
(それでも、たまには一緒に寝たいな。)なんて思った。

~~~終わり~~~