瑞鶴「……あの、提督さん」

提督「どうした」

瑞鶴「信じがたいんだけどさ……あれ、艦娘と人みたい。艦娘に背負ってもらって……」

金剛「ホワッツ!?」

川内「な、なんでそんな事になってるの?」

神通「普通じゃないですよね……」

提督「救助しに行くぞ。全員、私に続け」

金剛「行かせませんよ?」

瑞鶴「提督さんはここで待機してて。海に出たらそれこそ救護妖精さんに睨まれるわよ?」

提督「……分かった。川内、神通はあの二人を救助。金剛と瑞鶴は護衛をしてくれ」

全員「はい!」

……………………。

引用元: 金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 二隻目 




4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 03:53:07.34 ID:xBU8Dc6k0
川内「大丈夫ですか!?」

神通「もう安心して下さい。すぐ近くの母港まで私達が運びます」

瑞鶴「二人共ボロボロ……。特に艦娘の子なんて半分沈んでるじゃないの……」

金剛(……見間違えかと思いましたが、当たったみたいですね)

榛名「あり、がとうございます……。私よりも……この方を……」

元帥「いやはや……助かったよ……」

金剛「……ご無事で何よりデス。元帥殿」ピシッ

川内「え!?」

神通「げ、元帥!?」

瑞鶴「!!」

瑞鶴(この人が……提督さんの言っていた元帥……)

元帥「挨拶は構わない……早く、早く陸へ上がらせてくれ……」

……………………。

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 03:57:29.74 ID:xBU8Dc6k0
元帥「ああ……ここは君の鎮守府だったかね……」

提督「……元帥殿、よくご無事で」ピシッ

金剛・瑞鶴・川内・神通「…………」ピシッ

提督「まさか、あの日からずっと海へ?」

元帥「ああ……そうだよ……。もうダメかと思ったよ……」

提督「瑞鶴、急遽水分を用意してくれ。川内は担架を二つ持ってきてくれ。神通は救護妖精へすぐに検査ができるように手配してくれ。金剛はここで敵が来ないか警戒だ」

全員「はいっ!」

元帥「ははは……。手際が、良いな」

提督「喋らないで下さい。お身体に障ります」

元帥「くく……。面白い奴め……こんな儂を形式上でも労われるとは……」

提督「…………」

元帥「まあ良い……。一休みをしたら、礼に良い事を話してやろう……」

……………………
…………
……

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 12:54:57.53 ID:4VdnLa6t0
救護妖精「──ん。元帥さんは危なかったね。あと数時間も水分が取れなかったら死んでたと思う。あと、意地でも海水に浸かっていなかったのが不幸中の幸いだね。長時間浸かっていたら今頃、その部分を切り落としていたよ。他にも色々と身体に気を遣ってたみたいで、流石は海の軍人さんといった所かね」

救護妖精「それにしても、艦娘は驚きだね。戦闘もこなして三日三晩、ほとんど休まずに動いていたんだろ? それで衰弱程度で収まるなんて、人間じゃ到底無理だよ」

救護妖精「元帥さんは点滴による栄養補給と絶対安静。艦娘は食欲があるなら、消化の良い食べ物を食べてゆっくり休んだら問題ないと思うよ」

提督「そうか。助けてくれて感謝する」

救護妖精「感謝ならあの二人にされたいなぁ。それに、医者が人を助けるのは当たり前でしょ?」

提督「感謝の言葉は素直に受け取っておくものだ」

救護妖精「へいへい」

榛名「あの……助けて頂きまして、ありがとうございます……」モゾ

救護妖精「あれ、もう起きたの?」

榛名「はい……榛名は大丈夫ですから、どうか提督を……」

救護妖精「あっちも大丈夫。今はぐっすり眠ってるよ。充分に身体を回復させたら問題なく動けるようになるんじゃないかな」

榛名「そうですか……良かった……」ホッ

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 13:19:24.19 ID:4VdnLa6t0
榛名「貴方が……ここの提督さんですか?」

提督「そうだ」

榛名「重ねて、お礼を申し上げます。貴方が助けて下さらなければ……提督は……」

提督「礼は構わん。当然の事をしたまでだ」

榛名「ですが……」

提督「もし本当に感謝しているのなら、早く元気になって、その姿を元帥殿に見せてやるんだな」

榛名「…………」

榛名「……はい。そうさせて頂きます」ニコッ

提督(……ほう)

提督「では、私は提督室へ戻る。何かあったら救護妖精を通じて私に連絡をしてくれ」

救護妖精「えー……面倒臭いなぁ……。まあ、なんでも言ってよ。私は伝えるだけしか出来ないけど」

榛名「はい、ありがとうございます」ニコリ

コンコン──ガチャ──

瑞鶴「提督さん、そろそろ休まないと身体に障るわよ?」

提督「ふむ、そうだな。ではそろそろ戻るとしよう」

金剛「出来ればここは私達に任せて休んで欲しかったくらいですけどね」

提督「そうもいかん。この鎮守府での責任者は私だ。元帥殿とその艦娘のご様子を把握しておかなければな」

金剛「それは……そうですけど……」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 13:58:27.68 ID:4VdnLa6t0
提督「お前達が心配してくれているのは良く分かっている。今後も私の監視を頼むよ」ポンポン

金剛「あ……はい!」ニコニコ

瑞鶴「…………」

提督「瑞鶴も、頼んだぞ」ポンポン

瑞鶴「──うん!」ニコニコ

榛名「…………」

金剛「えーっと、榛名」

榛名「──あっ……は、はい! お姉様、どうかなされましたか?」

金剛「……違う鎮守府とはいえ、貴女は私の妹です。仕事の合間に顔を覗きに来ますね?」

榛名「で、でも……それは、お姉様の提督さんに許可を貰わないといけないのでは……」チラ

金剛「え? テートク、そうなのデスか?」

提督「そんな制限を設けたつもりはない。仕事以外は基本的に自由だ」

金剛「ですよね? では、これで正式に榛名と面会できますね!」

榛名「…………」

金剛「……榛名?」

榛名「あ……ごめんなさい。ちょっとボーっとしてしまって……」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 14:24:42.40 ID:4VdnLa6t0
救護妖精「まあ無理もないよ。ゆっくり休みな」

榛名「はい。そうさせて頂きます……」

金剛「それでは、また来ますね!」

榛名「はい。お姉様、お姉様の提督さん、そして……えっと、瑞鶴さん、救護妖精さん、今回は本当にありがとうございます」

榛名「榛名は、とても幸福です」

提督「…………」

提督「また来た時に、何があったのか話してくれ」

榛名「はいっ」

……………………
…………
……

18: 短かったのでもう一個 2013/10/29(火) 14:25:14.09 ID:4VdnLa6t0
~提督室~

提督「…………」

金剛「…………」

瑞鶴「あ、あれ……どうしたの二人共。なんだか暗いけど……」

金剛「……榛名、何をされてるのでしょうか」

提督「分からんが、普段は良くない扱いなのだろうな」

瑞鶴「え……元気が無いのはそっちが理由なの?」

提督「そうと見てまず間違いないだろう。あの寂しそうな目がそう語っていた」

金剛「…………提督。カウンセリングという名目で、榛名から何をされているのか聞いた方が良いのでしょうか」

提督「それはしない方が良い。彼女は元帥側の艦娘だ。下手に聞き回ると元帥にも話が渡ってしまう」

金剛「そう、ですよね……」

瑞鶴「困ったわね……」

提督「方法が無い訳ではない」

瑞鶴「そうなの?」

金剛「……榛名と元帥はここに来ていない、という事にする訳ですね?」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 14:43:15.88 ID:4VdnLa6t0
提督「そうだ」

瑞鶴「え……それって……」

提督「監禁、または必要な情報を手に入れてからの殺害だ」

金剛「…………やりますか?」

瑞鶴「ちょ、ちょっと金剛さん!? 何を言ってるのよ! そんな酷い事……いくら相手があの元帥だからって……」

提督「考慮はしておく」

瑞鶴「提督さん!?」

提督「あの二人を殺しておく方が何かと都合が良いのは事実だ」

瑞鶴「でも……でも、それは……」

提督「それに、例え放っておいても──」

コンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

救護妖精「やあ」

提督「そろそろ来る頃だと思っていたよ」

金剛・瑞鶴「え?」

救護妖精「ああ、じゃあ提督は私の素性を知ってるんだ?」

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 15:09:46.75 ID:4VdnLa6t0
提督「素性も何も、この鎮守府の妖精達の経歴を見れば分かる事だ」

救護妖精「それもそうだよねー」

金剛「……どういう事ですか?」

救護妖精「んー? あたしは元々、あの元帥の鎮守府に勤めていたのさ」

瑞鶴「え……だったら、どうしてここに……?」

救護妖精「嫌気が差したから異動させてもらっただけだよ。あんな所でずっと働くなんて無理だよ無理」

金剛「……何があったのですか」

救護妖精「あの元帥さ、艦娘を道具としてしか見てないんだよね。だから救護室はいつも満員。おまけにその状態でも構わず、何をやってるのか知らないけど死に掛けにさせている。そのまま解体させるなんて事も日常茶飯事だったよ」

瑞鶴「……死に掛けてる時に解体したら、どうなるの」

救護妖精「死ぬ。例外なく」

金剛「…………」

救護妖精「艦娘は普通の人間よりも強いんだよ。だから、普通の人間なら即死でも大抵の事なら耐えれる。流石に神経系統をやられたら人間と同じだけど、大体は人間より丈夫だよ。でも、その艦娘が死に掛ける程なのに普通の子に戻したらそりゃ死ぬよね」

救護妖精「で、提督さん。アレどうするの? 私としては麻酔を過剰投与したいくらいなんだけど」

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 17:28:03.95 ID:4VdnLa6t0
提督「どうするかはまだ考えている途中だ」

救護妖精「ふぅん。まあ、私にとって良い返事であれば良いんだけどね」

提督「医者が人を助けるのは当たり前と言っていたのはどこの誰だったか」

救護妖精「あたしは助けられない命まで助けようとは思ってないんでね」

提督「……そうか」

瑞鶴「……助けれない命? さっき身体を回復させたらって……」

救護妖精「アレはもう助からないよ。内臓が死んでる。悪党は長く生きるとは聞いたが、本当にしぶといねぇ」

金剛「では、大丈夫と言ったのは榛名を安心させる為ですか?」

救護妖精「そうだよ。起きているのは分かってたし、艦娘の方はまず助かるからね。変に精神を弱らせて死なせるのは嫌だよ」

救護妖精「それに……いくら悪党でも苦しんで死んでいく姿は見たくないからねぇ……」

提督「だから麻酔で、か」

救護妖精「そうだよ。眠るように死んでいく。一番苦しくない殺し方さ」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 18:01:37.69 ID:4VdnLa6t0
救護妖精「どれくらい生き延びるのかは知らないけど、必要な事を聞き出す時間くらいは待ってやるよ」

提督「感謝するよ」

救護妖精「あたしはやりたい事をやる主義なんでね。……どっかの提督さんはそれに優しさが混じってるみたいだけど」

提督「では似た者同士というわけか」

救護妖精「やめとくれ。あたしはこれから人を殺すんだ。提督は人を生かしてやってくんないかい」

提督「私もこれから艦娘を殺すんだ。似た者同士だよ」

金剛「っ……」

瑞鶴「こ、殺すの……?」

提督「精神的に死ぬ。あれだけ主人想いの子だ。事実を話せばいずれ衰弱して死ぬだろう」

救護妖精「榛名って艦娘は皆そうだよねぇ。主人想いって言うか依存しているって言うか」

金剛「榛名……」

提督「現実だ。辛いだろうが、受け入れてくれ」

金剛「…………もし、榛名が亡くなったら……その時は……提督、私を助けて下さい」

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 18:27:13.51 ID:4VdnLa6t0
提督「約束しよう」

提督「しかし……元帥が死ぬ、か。必要な情報が手に入る前に死なれたら困るな」

救護妖精「そこはアレに任せるしかないね」

瑞鶴「…………」

救護妖精「さてと、それじゃあ私は帰るよ。──ああ、艦娘の子から総司令部へ、アレが生きているって伝えてくれと頼まれたけど、どうするよ」

提督「伝える準備をしている最中だと言ってやってくれ」

救護妖精「……本当に、優しい悪党だね提督」

提督「お互い様だ」

救護妖精「んじゃ、アレが起きたらまた来るさ。またねー」

ガチャ──パタン──

提督「方針は決まったな。元帥から情報を聞いた後、安楽死させる。元帥の艦娘は……そうだな、二つの方法がある」

提督「私はあの子も助かるとは思っていない。だが、万に一つというものもある。時間を掛け、ゆっくりと事実を知らせるか、ハッキリと伝えてしまうか」

金剛「…………」

提督「お前の前でこんな話をするのは酷だと思うが、現実だ。すまない」

金剛「いえ……戦争をしているのですから……当たり前です……。榛名があの人の下へ来てしまったのが最大の不幸だったのです……」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 18:45:02.28 ID:4VdnLa6t0
提督「おまけに艦娘は一人の提督にしか主人と認めない。生かしてやれるかは分からないが、やるしかない」

瑞鶴「……どうにもならないの?」

提督「自白剤でも打って、無理矢理にでも私が提督だと刷り込めばなんとかなるかもしれないが、前例が無いから可能性は限りなく低い」

瑞鶴「なんで自白剤?」

提督「自白剤は脳の働きを鈍くする薬だ。朦朧としている中で何度も何度も『榛名の提督は私だ』と語れば、いずれそれが真実だと思い込む可能性もある」

金剛「でも、自白剤って効くのでしょうか……。提督への刷り込みがとても強い艦娘が刷り直しが出来るとは思いにくいのですが……」

提督「私も同意見だ。だが、可能性がゼロという訳でもない。短時間に何度も語られると、その言葉が本当に聞こえてくるようになるものだ」

提督「やらずに死なせてしまうのなら、やって死なせてしまう方が精神的に楽だろう」

金剛「……そうですよね。でも、それって物凄く悲しい事です……」

提督「殺すか洗脳か……どちらか一つなら、私は洗脳を選ぶよ」

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 18:59:16.52 ID:4VdnLa6t0
瑞鶴「洗脳……」

提督「あの手のタイプはいくら説得をしても無駄だろう」

金剛「私もそう思います……。あの子、依存しちゃう子ですから……」

瑞鶴「どうしようもないのかなぁ……」

提督「すまない。私には刷り込ませる以外、思い付かない」

金剛「……もし、刷り込むとして、それをより確実に近付ける方法はないのでしょうか」

瑞鶴「うーん……」

提督「……ふむ」

金剛「あるのですね、提督」

瑞鶴「え?」

提督「……本当にお前には隠し事がしにくいな」

金剛「教えて下さい。その方法を」

提督「…………」

金剛「提督……」

提督「……より正常な判断が下せず、より強い朦朧状態で刷り込む。それぐらいだろう」

51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 21:57:25.71 ID:1xfb9nzb0
瑞鶴「より強い朦朧状態……? 薬を増やすの?」

提督「それが一番手っ取り早いが、自白剤も大量に与えれば死んでしまう。艦娘だから人間の致死量程度では死なないだろうが、それでも危険なのは変わりない」

瑞鶴「じゃあ、どうするの?」

提督「……理性をほぼ壊れた状態にし、尚且つその理性の部分も私を対象とさせての刷り込み」

金剛「ごめんなさい提督……。私達にも分かるように説明して下さい……」

提督「…………自白剤と瑞鶴の持っている●●剤を使って彼女の理性を崩壊させた上での刷り込み」

瑞鶴「ぁー……」

金剛「…………」

提督「できればやりたくない」

瑞鶴「……でも、確かにあの状態で何かを言われたら、それをそのまま受け入れちゃうかも」

金剛「そうなのですよね……。でも、榛名と●●●は……その……」

瑞鶴「ねー……」

提督「何もすると決まった訳ではない。現に、私はするつもりがない」

金剛「……その時が来るまでに、覚悟をさせて下さい」

瑞鶴「私も……。金剛さんなら良いけど、他の人だと……」

提督「二人の意思に任せよう。それでは、職務に──」

金剛「私達がやるので寝ていて下さい」
瑞鶴「私達がやるんだから寝ててよね」

提督「……分かった。大人しく寝ておくよ」

……………………
…………
……

53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 22:28:26.62 ID:1xfb9nzb0
金剛「テートク、テートク」ユサユサ

提督「む……」

瑞鶴「提督さん、起きた?」

提督「ああ。何かあったか?」スポ

救護妖精「アレの目が覚めたよ」

提督「分かった。すぐに行く」

救護妖精「まったくあのジジイめ……提督が休めやしないじゃないか……」

……………………。

提督「二人で話とは、何があったのでしょうか?」

元帥「死に行く儂から、最後に君への礼をしようと思ってな……」

提督「ご冗談を。回復すればいつものように──」

元帥「既に儂は目が見えていない。自分の身体だ。何が起こっているのか分かっておる」

提督「……左様ですか」

元帥「だから、今の海軍では二人しか知っていない情報を君に言おうじゃないか」

提督「良いのですか、そのような機密情報を……」

元帥「君にだから言う必要がある」

提督「…………」

54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 23:07:23.15 ID:1xfb9nzb0
元帥「くく……。少しは礼をせねば人として終わってるというものだ」

元帥「時間が無いので簡潔に言おう。まず、ドクターという名前を覚えておけ」

提督「ドクター?」

元帥「彼が、君に関する最大の、秘密を知っている……。まず……君の所有している瑞鶴、恐らくだが……あれは、君の──か……」

提督「……元帥殿?」

元帥「ぉ…………く……だ…………」

提督「元帥殿、お気を確かに」

元帥「…………」

提督「……………………」スッ

提督「……脈が止まったか」

提督(なんと言おうとしたんだ……。私と瑞鶴の最大の秘密……?)

……………………。

61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/29(火) 23:32:22.82 ID:1xfb9nzb0
救護妖精「……うん。完全に死んでるね」

提督「…………」

救護妖精「話は出来たかい?」

提督「重要な事を言う時に逝かれたよ。手掛かりが一つ手に入っただけだ」

救護妖精「……そうかい。呆気ないもんだね、死は……」

提督「…………」

救護妖精「幾度となく人の死は見てきたけど、中々慣れないもんだよ……」

救護妖精「せめて、私がこの手で殺したのなら、慣れたのかもしれないというのに……」

提督「殺さなくて良い。その手は命を救う手だ。殺す為の手ではない」

救護妖精「……そうなんだけどねぇ。救える命も限りがあるんだよ……」

提督「…………」

救護妖精「──さ、早く行きな。ここからは専門家の仕事だよ。提督もこうならないようにしっかり休みを取りな」

提督「……ああ。──そうだ。『ドクター』という名前に聞き覚えはあるか?」

救護妖精「うん? 私と一緒にコレの下で働いていた医者だよ」

提督「他に何か知っているか?」

救護妖精「いいや。特に接点が無かったから他に何も知らないよ」

提督「そうか……。ありがとう」

救護妖精「何か分かった事があったら教えてやるさ」

提督「期待しないで待っているよ」

救護妖精「ああ、あの子にはなんて言えば良い?」

提督「危険な状態だったが一命を取り留めたと言ってくれるか」

救護妖精「あいよ。……まったく、私達は悪党だね」

提督「ああ……」

……………………。

62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 00:04:33.72 ID:/W1Sw00T0
ガチャ──パタン

榛名「あのっ! 提督は大丈夫なのですか!?」

提督「少し危ない状態らしい。私も途中から追い出された」

榛名「入る訳には……いきませんよね……」

提督「救護妖精が出てくるまで待っていた方が良い。邪魔をして大変な事になったら取り返しが付かなくなる」

榛名「はい……」

提督「私もここで待つとしよう」

金剛「……提督?」

瑞鶴「ちゃんと寝てないとダメよ」

提督「上官が命の危機だと言うのにのんびり眠っている者は居ないだろう」

瑞鶴「だけど……」

提督「…………」チラ

金剛「!」

金剛「瑞鶴、私達はここを離れまショウ」

瑞鶴「金剛さん……?」

金剛「私達はまだ仕事が残っていマス」

瑞鶴「え、ちょ……え?」

金剛「ほらほら、行きますヨー」

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 00:12:59.92 ID:/W1Sw00T0
提督「……すまないな。煩くしてしまった」

榛名「いえ……大丈夫です……」

提督「…………」

榛名「…………」

提督「………………ふぅむ……」

榛名「あの……何か悩んでるようですが、どうかなさいましたか?」

提督「ん……ああ……すまない。気を遣わせてしまったな」

榛名「いえ……」

提督「……さっきの元帥との会話で気になる事があってな」

榛名「気になる、こと……? あの……お二人で話されていた……?」

提督「そうだ。私にだから話す必要があると仰っていた」

提督「…………」チラ

榛名「え……私……に何か関係が……?」

提督「ああ……」

榛名「え、あ、あの! 提督はなんて!?」

提督(──食いついた)

提督「洗脳の技術、というのを聞いた事はあるか?」

榛名「洗脳……? いえ……」

提督「そうか……」

榛名「…………」

提督「…………」

榛名「あの──」

提督「聞かない方が良い」

64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 00:31:11.91 ID:/W1Sw00T0
榛名「え……?」

提督「世の中には、知らない方が良い事もある」

榛名「え……? え…………?」

榛名「洗脳……? え…………わた、し……?」

榛名「あの……ど、どういう……」

提督「…………」

榛名「お、お願いします!! 話して下さい!」

提督「だが……」

榛名「覚悟はします……だから……だか、ら…………」

提督「…………」

提督「……時が来たら、話そう」

榛名「今、では……ダメですか……?」

提督「……ダメだ。今のお前は精神が不安定だ」

榛名「不安定、だと……ダメなのですか……?」

提督「…………」

榛名「あの……」

提督「この話はここで終わりだ」

65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 00:41:55.66 ID:/W1Sw00T0
榛名「あ、あの……!」

提督「…………」

榛名「い、嫌な、考えが……だか、ら……おねが……しま、す……」

提督「………………いずれ、必ず話す」

榛名「でも……で、も……!」

提督「……寝よう。今の状態は良くない。それでは元帥殿が元気になられた時に困られる」

榛名「そ……ですけ、ど…………」

提督「こういう時は、一度頭を冷やしなさい」

榛名「は、い……」

提督「良い子だ」ナデナデ

榛名「ッ!!」ビクッ

提督「……すまない」

榛名「ぁ…………!」ビクビク

提督「……部屋に案内する。立てるか?」スッ

榛名「ひっ……!」ビクッ

提督「…………仕方が無い。抱き上げるが、少し我慢してくれ」ヒョイッ

榛名「────っ!!」カタカタ

提督「…………」

榛名「ッ…………!」カタカタ

提督「…………」ナデナデ

榛名「あ、あぁ……!」ビクビク

……………………。

67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 00:54:34.09 ID:/W1Sw00T0
提督「ここが君の貸し部屋だ。自由に使って良い。この部屋の鍵とこの鎮守府の地図はこれだ」スッ

榛名「…………」

提督「ゆっくり寝なさい。そうすれば、少しは落ち着くはずだ」

榛名「あ、の……」

提督「なんだ」

榛名「ひっ……!」ビクッ

提督「……すまない。この口調は怖がらせてしまうようだな」

榛名「ごめん、なさい……! ごめんなさい……ごめんなさい……!」ビクビク

提督「また、明日にでも話そう」スッ

榛名「…………!」カタカタ

提督「では、失礼する。鍵はちゃんと閉めておくように」

ガチャ──パタン

榛名「!」タタタ─カチャッ

榛名「……はっ……はっ…………!」

榛名「たたか、れなかった……? どうして……?」

榛名「あの人、は……叩かない人……?」

……………………
…………
……

104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 17:56:07.73 ID:/W1Sw00T0
ガチャ──パタン

救護妖精「今入ってくるんじゃないよ。帰りな」

提督「私だ。相談があって来た」

救護妖精「ん? ああ、提督。なんだい?」ヒョコ

提督「その死体と、あとは榛名についてだ」

救護妖精「ふぅん。この死体はどこに捨てる気なんだい?」

提督「海にでも流すさ。魚の餌くらいにはなるだろう」

救護妖精「自然葬ってやつかい。珍しいね。だけど、それって大丈夫なの?」

提督「死体の捜索なんてされていない。もし見つかっても、海へ逃げ出したが途中で力尽きたと判断されるだろ

う」

救護妖精「あたしが言ってるのはそうじゃないよ。誰がどうやって海へ流すかだよ」

提督「私が担いで流す。幸い、沖へ流れている海流が近くにある」

救護妖精「……呆れた。安静にしてろって私は言わなかったっけ?」

提督「危険な橋を渡るんだ。これくらいの危険は冒さなければな」

救護妖精「まったく……この自殺志願者が」

提督「死ねない理由があるんだ。死なんよ」

救護妖精「……何を言っても無駄みたいだね。だけど、あの子にはどう説明するのよ」

提督「海へ流してくれという遺言があったと言い包めておく」

救護妖精「そんなので納得するのかねぇ……」

提督「するかどうかではない。させるんだ」

救護妖精「……提督、何をする気?」

105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2013/10/30(水) 18:13:28.50 ID:/W1Sw00T0
提督「勘が良いようだな。私は、一度あの子を壊す」

救護妖精「…………」

提督「壊れた心を騙し、私が本当の提督だと刷り込む」

救護妖精「一筋縄じゃいかないよ」

提督「百も承知。助けれる可能性があるならば、私はそれに賭けるだけだ」

救護妖精「……残酷だね」

提督「なんとでも言うが良いさ」

救護妖精「解体して普通の女の子にする気は?」

提督「解体報告をしなければならない。特にあの元帥の艦娘だ。解体した艦娘を無断で所持しているとバレた時

はどうなる事か」

救護妖精「匿っても同じじゃないか」

提督「新たに仲間に加わったと報告すれば良い事だ」

救護妖精「バレる可能性もあるよ」

提督「問題ないように刷り込ませる」

救護妖精「……そこまでして死なせたくないか」

提督「ああ」

救護妖精「……分かったよ。私も腹を括る」

提督「すまない」

救護妖精「そこはありがとうと言って欲しいね」

提督「……ありがとう」

救護妖精「似合わないねぇ」

提督「自覚している」

106: 余ってたのでもう一個 2013/10/30(水) 18:14:20.71 ID:/W1Sw00T0
救護妖精「それじゃあ、そういう風に動くさ。ヘマするんじゃないよ」

提督「お前もな」

救護妖精「職業柄、人を騙すのは得意なんでね」

提督「それは怖いな。いつか色々と教えて欲しいものだ」

救護妖精「時が来たらね」

提督「楽しみにしているよ」

……………………
…………
……

107: ちょっと実験 2013/10/30(水) 18:26:57.36 ID:/W1Sw00To
提督「──説明は以上だ。巻き込んでばかりですまないが、協力してくれ」

金剛「本当にやるのですね……」

提督「依存先を失った者を救うなら、新たに依存先を作ってやるのが一番だ」

瑞鶴「平たく言うと、死なせたくないから自分がその依存先に買って出るって事よね、提督さん」

提督「そう言うと聞こえは良いが、やってる事は心を壊して都合の良いように作り直すだけだ。悪党のやる手段だよ」

瑞鶴「でも……私は、提督さんのやる事は悪だと思わない」

提督「そう思ってくれる人が居るだけで、私の心も少しは楽になる」

金剛「…………」

瑞鶴「金剛さん」

金剛「──あ……なんでしょうか」

瑞鶴「私は、覚悟を決めたわ」

金剛「…………」

瑞鶴「後は金剛さんの同意で、この小瓶を提督さんに渡す──けど、金剛さんが望まないのなら、これは私が預かったままにする。勿論、まだその段階じゃないから考える時間はあるわ」

金剛「……………………」

108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 18:41:58.12 ID:/W1Sw00To
提督「……一先ず、この話はここで終わろう」ツカツカ

瑞鶴「そうしましょ。──って、ほらほら、提督さんは寝てなさい」グイグイ

提督「む……。当然のように机へ足を運べばバレないと思ったのだが……」

瑞鶴「そんな事はお見通しですよーだ」

提督「有能過ぎる部下も考え物か」

瑞鶴「もう慣れましたっ。提督さんはすぐに働こうとしちゃうんだもの」

金剛「…………」

金剛(私は……どうすれば良いのでしょうか……)

……………………
…………
……

109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 18:57:59.36 ID:/W1Sw00To
提督(……夜も深くなったな。行くか)

……………………。

コンコン──ガチャ

救護妖精「ん? ああ提督、流すのかい?」

提督「ああ。遺体はどこに?」

救護妖精「奥の部屋に置いてるよ」

提督「そうか。そこの窓から外に出るが構わないか?」

救護妖精「提督が良いのならあたしは構わないよ」

提督「助かる。……迷惑を掛けるな」

救護妖精「だったら今度、奢ってくれるかい?」

提督「良いだろう。アイスクリームでも牛肉でも、好きな物を奢ってやる」

救護妖精「太っ腹だねぇ」

提督「私が完全に巻き込んだ形だ。このくらいしてやらないとな」

救護妖精「くっくっ。巻き込んだ、か」

提督「おかしいだろう?」

救護妖精「ああ、おかしいねぇ」

111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 19:10:38.84 ID:/W1Sw00To
提督「いずれ、話してくれるのを期待しているよ」

救護妖精「おや、期待していなかったんじゃ?」

提督「確信を持ったからな」

救護妖精「人を騙すのは得意なんだけどねぇ」

提督「充分だろう」

救護妖精「まあ、あたしの事は置いておいて、さっさと行ってきな」

提督「そうだな。見つかったら大変だ──っと」

救護妖精「いってらっしゃい。死ぬんじゃないよ」

提督「私が死ぬように見えるか?」

救護妖精「見えるね」

提督「そうか」

救護妖精「……私には、そう見える」

提督「一人称」

救護妖精「おっと。危ない危ない」

提督「何回目だろうな。気を付けた方が良いんじゃないかね?」

救護妖精「仰るとおりで」

提督「では、一時間もしない内に戻ってくる」

救護妖精「あいよ」

救護妖精(……無理して『あたし』って言ってるのも分かってた? まさかね……)

……………………。

112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 19:24:13.30 ID:/W1Sw00To
提督「……ここら辺りだったな」ソッ

ぱしゃっ──

提督「……哀れだな、元帥。だが、これもお前が進んだ道の末路だ。そのまま海を漂って還れ」

戦艦ル級「…………」チャポン

提督「!! こんな時に沸いて出て──!?」

深海棲艦群「…………」ザバァァァ

提督「ちっ………………私もここで海に還る末路か」

戦艦ル級「…………」ジッ

提督「…………?」

戦艦ル級「…………」フイッ

提督「襲ってこない……?」

ジャキン──ドッ──パァアアンッッ!!

提督「……おいおい。そんな物で人を撃ったら粉になるぞ」

戦艦ル級「…………」チラ

提督(来るか……?)

戦艦ル級「…………」フイッ

提督「……行ってしまった。どういう事だ……? 深海棲艦は人も襲うと聞いたが……」

……………………。

113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 19:39:28.64 ID:/W1Sw00To
提督「よっ──と。今帰った」

救護妖精「ん、おかえりー」

提督「冷や汗を掻いたよ。まさか深海棲艦の群れが沸いて出てくる所に出くわすとは思わなかった」

救護妖精「…………へぇ。よく生きて帰って来れたね」

提督「なぜか襲われなくてな」

救護妖精「運が良いね。いや、正しい判断だったというべきかな?」

提督「その先は秘密、か?」

救護妖精「まだその時じゃないと思ってるからね」

提督「ふむ。いつになったらその時が来るのやら」

救護妖精「たぶん、すぐじゃないかね」

提督「ほう。楽しみだ」

救護妖精「あたしは怖いね。──ところで、アレ、ちゃんと流れていったのを確認したんだろうね?」

提督「流れる前に粉になったよ」

救護妖精「粉……? 砲撃でも撃たれたの?」

提督「先程言った、深海棲艦によってな」

救護妖精「ふぅん……」

救護妖精「まあいいや。それよりも早く寝な。病人がいつまでも起きてるんじゃないよ」

提督「厳しいな。また来るよ」

救護妖精「またねー」

……………………
…………
……

115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 19:54:35.43 ID:/W1Sw00To
提督「ん?」

榛名「あ……」

提督「どうした、こんな時間に」

榛名「あの……一度眠ったのですが、起きてしまいまして……」

提督「それで私の部屋へ?」

榛名「はい……。心も落ち着いてきたので、夕方のお話を聞きたいと思って……」

提督「なるほど。……確かに落ち着いてきているようだ。入りなさい」

榛名「は……はい……」

ガチャ──パタン──パチッ

榛名「…………」ビクビク

提督「さて、そこのソファに腰掛けなさい」

榛名「え……?」

提督「うん? どうした?」

榛名「あ、いえ……よろしいのですか……?」

提督「何を遠慮しているのか分からないが、私は私だ。元帥殿とは違う」

榛名「…………はい……」

提督「そうだな、喉が渇いた。紅茶を淹れよう」

榛名「は、はい!!」ビクッ

提督「いや、君は座っているように。客人にお茶を淹れさせる訳にはいかない」

榛名「そう、なのですか……?」

提督「うむ」

榛名「…………」ホッ

提督(まったく……普段はどんな扱いをされていたというんだ……)

提督(……人の事を言えないな。これから、この子を壊すのだから)

……………………。

131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 21:03:29.83 ID:/W1Sw00To
榛名「美味しい……!」

提督「そうか。喜んでもらえたようで嬉しいよ。スコーンもある。早めに食べておかないといけないから、好きなだけ食べてくれ」

榛名「あ……えと……」

提督「うん?」

榛名「……………………」コクン

榛名「こ、これって……どのように食べるのでしょうか?」ビクビク

提督(ああ、本当は『食べても良いのか』と聞こうとしたのか)

提督「これはクリームとジャムを付けて食べるものだ。イギリスでは紅茶に欠かせない茶菓子らしい」

榛名「イギリス……金剛お姉様の?」

提督「うむ。金剛も顔を綻ばせて口に運んでいたよ」

榛名「お姉様も……」

提督「特にクリームが濃厚らしく、たっぷりと乗せていたな」

榛名「…………」オソルオソル

提督「…………」ズズッ

榛名「…………こ、このくらいですか……?」チラ

提督「さて……実は、私は適量を知らないんだ」

榛名「そう、なのですか?」キョトン

133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 21:23:34.24 ID:/W1Sw00To
提督「私は甘い物が苦手でね。金剛はそれよりも多く付けていたと記憶しているよ。自分が丁度良いと思える量で食べると良い」

榛名「は、はい……」サクッ

榛名「────!! こ、これ! 凄く美味しいです! 甘くて、なめらかで、とても濃厚で、スコーンもサクサクしていて!!」

提督「ははは。はしゃいでしまうくらいに美味しかったようだ」

榛名「あ……ご、ごめんなさい!」ビクッ

提督「いや、喜んでいる姿を見るのはとても気分が良い。嬉しい時は嬉しいと言っても良いんだよ」

榛名「……はい」ニコッ

提督「私はこういうお菓子が作れないから、作れる人は凄いと思うよ」

榛名「お菓子は作るのが難しいと聞きます。分量や工程を少し間違っただけで、すぐにダメになってしまうようです」

提督「少し間違うだけで、か」

榛名「はい。私は一度シュークリームを作った事があったのですが、うまく膨らまなくて、とてもシュークリームとは言えない物が出来てしまいました……」

提督「ふむ……。料理よりも難しいのか?」

榛名「そうですね……。一概には言えませんが、私はお菓子の方が難しかったです」

提督「……私は永久に作れそうにないな」

榛名「そんな事はありません! きっと、作れるようになります!」

134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 21:41:03.31 ID:/W1Sw00To
提督「私は卵と塩で、ドス黒い虹色をした玉子焼きを作ってしまう」

榛名「え?」

提督「勿体無いので食べてみたが、表現できない味がし、気付いたら一時間も時が進んでいたよ。野良犬に食わせてみたら泡を吹いて痙攣していたな」

榛名「え、えーっと……」

提督「なに、気にする事はない。それ以降、劇物は作らないようにしている」

榛名「げ、劇物ですか……」

提督「それ以外に当て嵌まる言葉は無かったな。実際に食べていたら、間違いなく私と同じ事を言う」

提督「ん。手を止めずに話を聞きながら食べても良いぞ?」

榛名「えっ──あ、良いの、ですか……?」

提督「ここまで幸せそうに食べる子も珍しくてね。見ていてこっちも幸せになった。もっとあの笑顔を見せてくれ」ニコ

榛名「──ありがとうございます!」

榛名「~~~~♪」サクサク

提督「美味しいかい?」

榛名「はい♪ とっても!」ニコニコ

提督(なんだ。ちゃんと明るい子じゃないか)

提督(これからこの子を壊す……か。心が痛むな……)

……………………。

136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 21:58:46.69 ID:/W1Sw00To
榛名「ご馳走様でした。ありがとうございます」ペコ

提督「良い顔だった。私も楽しめたよ」

榛名「……本当、ですか?」

提督「うむ」

榛名「良かった♪」ニコニコ

提督「……すっかりと落ち着いた所で悪いが、本題に入ろう」

榛名「あ…………はい……」

提督「その前に、燭台に火を付けよう」ヒョイ

榛名「燭台に……?」

提督「蝋燭程度の光なら、もし泣いてしまっても分かりにくいだろう?」シュッ

榛名「あ……」

提督「さて、電気を消すよ」

パチッ──

榛名「……暗いですね」

提督「だが、光はある」

榛名「はい。優しい光だと、思います……。不思議と落ち着きます……」ボー

提督(蝋燭の揺らめきは心を開かせやすい状況を作る。……本当に悪党だな、私は)

提督(それにしても、既に薬の効果が出ているな……が、もう少し待つとしよう)

提督「では、話そう」

榛名「……はい」

138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 22:21:12.80 ID:/W1Sw00To
提督「……聞く覚悟はあるか?」

榛名「……はい」

提督「艦娘の洗脳……いや、刷り直しと言おう。洗脳という言葉は生々しい」

榛名「…………」

提督「君は、鳥の雛の刷り込みを知っているか?」

榛名「いえ……」

提督「一部の鳥の雛は、初めて目に映った動く物を親だと思い込む習性があるらしい。艦娘が、初めに提督と認めた者を絶対の主人として見るように」

榛名「…………」

提督「…………」

榛名「…………」

提督「蝋燭の火を見詰めろ」

榛名「…………」ボー

ゆらゆら……。

提督「君の提督を答えてくれ」

榛名「元帥様……です……」

提督「間違いないか?」

榛名「はい……」

提督「…………」

提督「元帥は、君の本当の提督ではないと仰っていた」

榛名「…………」

提督「言っている意味が分かるか?」

榛名「はい……」

139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 22:34:42.17 ID:/W1Sw00To
提督「まず、元帥殿は洗脳について語られた。詳しくは仰られていないから推測になってしまう箇所もある」

榛名「…………」

提督「榛名の提督は元帥ではない」

榛名「…………」

提督「榛名の提督は元帥ではない」

榛名「ちが……います……」

提督「繰り返せ。榛名の提督は元帥ではない」

榛名「ち、がいま……す……」

提督「繰り返せ。榛名の提督は元帥ではない」

榛名「ち、が……い──」

提督「繰り返せ。榛名の提督は元帥ではない」

榛名「ち…………が……」

……………………。

提督「繰り返せ。榛名の提督は元帥ではない」

榛名「は、るなの……提督は……………………」

提督「榛名の提督は元帥ではない」

榛名「はる…………なの……提督、は…………………………」

……………………。

提督「榛名の提督は元帥ではない」

榛名「榛名……の、ていと、くは……元帥……では、な、い……」

提督「榛名の提督は元帥ではない」

榛名「はる、なの提督は……元帥、では……ない……」

……………………。

提督「榛名の提督は元帥ではない」

榛名「榛名の、提督は……元帥では、ない……」

提督「榛名の提督は私だ」

榛名「榛名の……提督は……貴方…………?」

提督「榛名の提督は元帥ではない」

榛名「榛名の提督は……元帥で、はない……」

提督「榛名の提督は私だ」

榛名「はる、なの提督は……貴方……」

……………………。

144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 22:48:24.34 ID:/W1Sw00To
榛名「榛名の提督、は……貴方…………」

提督(そろそろ薬の効果が薄まる頃か)

提督「目を閉じろ」

榛名「…………」スッ

提督「身体を楽にするんだ」

榛名「…………」クタッ

提督「そのまま、意識が遠くなる」

榛名「…………」

提督「寝よう。おやすみ、榛名」

榛名「おや……すみ…………」

……………………。

145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 23:01:31.85 ID:/W1Sw00To
榛名「う……」

榛名(なんだろう……頭がボーっとする……)

提督「ん……起きたか」モゾ

榛名「え……? あれ……ここは……」

提督「なんだ、寝惚けているのか? 私とお菓子の話をしている途中で眠ってしまっただろう」

榛名「え……でも………………あれ……毛布…………?」

提督「風邪を引きそうだったから掛けておいた」

榛名「あ……ありがとうございます……」

榛名「…………」

榛名「あの……」

提督「うん?」

榛名「怖い、夢を見ました……」

提督「夢?」

榛名「身体が揺ら揺らしていて、頭の中で、ずっと呟いているんです……」

榛名「榛名の提督は、元帥ではない……と……」フルフル

提督「…………」

榛名「あの……これってどういう事なのでしょうか……?」

提督「……まだ寝惚けているようだな。寝た方が良い」

榛名「え、でも……」

提督「ほら、目が半開きだ」ヒョイ

榛名「あ…………」

146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 23:13:14.21 ID:/W1Sw00To
提督「部屋まで送ろう。このまま歩かせると転びそうだ」スタスタ

榛名「あ、あの……」フルフル

提督「うん?」

榛名「……一緒に、眠っても……良いですか?」フルフル

提督「……どうした?」

榛名「とても……とても、不安なんです……。心が……壊れてしまいそうなくらいに……」フルフル

提督「…………」

榛名「お願い……します……」フルフル

提督「……分かった」スタスタ

提督「──よいしょ」ソッ

榛名「あ…………」

提督「うん?」

榛名「い、いえ……なんでもありません……」

提督「そうか。じゃあ、私はこっちのソファで寝る」

榛名「え……? 一緒に、ではないのですか?」

提督「……榛名がそうしたいのなら、構わないが」

榛名「……………………お願い、しても良いですか……?」フルフル

147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 23:22:50.20 ID:/W1Sw00To
提督「分かった」

榛名「ありがとうございます……」ホッ

榛名(あれ……なぜでしょうか…………凄く安心します……)

提督「では、失礼する」モゾモゾ

榛名「…………あれ?」

提督「どうした」

榛名「あ……い、いえ……なんでもありません」

榛名(後ろを向いてるのは、私を気遣ってくれてるのでしょうか……?)

榛名「…………」ソソッ

榛名(大きな背中……それに、温かい……)

提督「…………」

榛名「……ありがとうございます。おやすみなさい……」

提督「おやすみ」

榛名(なぜでしょうか……なぜ、こんなに落ち着くのでしょうか……)

榛名(な、ぜ……)スゥ

提督(…………痛いな、心が)

……………………
…………
……

149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/30(水) 23:23:31.73 ID:/W1Sw00To
キリが良いのでちょっと休憩してきますね。

158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 00:52:43.33 ID:aXgtiOSGo
コツッコツッ──

提督「入れ」

カチャ──ソッ

金剛「おはようございマス、テートク」コソッ

提督「おはよう、金剛」

金剛「あの……ノックや扉の開閉、会話は静かにと書いていましたケド、どうしたのデスか?」

提督「ああ、榛名がまだ寝ているからな」

金剛「榛名が?」チラ

榛名「…………」スゥ

金剛「……あの、もしかして──」

提督「ヤっていないから安心してくれ。ゲシュタルト崩壊と暗示のようなものを掛けただけだ」

金剛「げしゅたると……?」

提督「そうだな……例えば、この漢字を見てくれ」

金剛「粉、ですか? これが何か……」

提督「凝視するようにずっと見ていろ」

金剛「…………」

金剛「……………………」

金剛「…………?」

金剛「………………………………?」

提督「どうだ」

金剛「あの……えっと…………これ……『こな』って読むんですよね……?」

提督「そうだ。『こな』で合っている」

金剛「あれ……『こな』ってこんな漢字でしたっけ……」

提督「これがゲシュタルト崩壊だ」

金剛「認識が弱くなる、というものですか?」

提督「正確には認識できなくなるというものだ。他にも、淡々と同じ言葉をずっと聴かされていたら、その言葉の意味が分からなくなるという事もある」

159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 01:11:09.21 ID:aXgtiOSGo
金剛「それを榛名に?」

提督「ああ。昨日、私を訪ねてきたので薬で朦朧状態にして、ニ、三時間ほどずっと同じ言葉を掛け続けた」

金剛「それって……効果はあるのでしょうか?」

提督「あまり無いかもしれん。一種の暗示が掛かる状態で語り続けたが、どうなるかは賭けだ」

金剛「…………」

提督「これで生きる意味を持ってくれたら良いのだが……」

金剛「……ホント、提督が生きる意味となってくれたら良いです。そうすれば、榛名の笑顔が見れます」

提督「ああ……。私も頑張るよ」

榛名「ん……」

提督「起きたかもしれない。この話は終わりだ」

金剛「…………」コクン

榛名「ふぁ……あれ…………ここは?」

金剛「起きましたか?」

榛名「あ、れ……? 金剛お姉様……?」

金剛「ほら、寝惚けていてはいけませんヨー? ほら、顔を洗ってきなサイ」

榛名「──あ、そうでした。私、提督さんと……」

金剛「────」ピクッ

金剛「提督と?」

160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 01:32:32.91 ID:aXgtiOSGo
榛名「紅茶とお茶菓子を頂いてる時に、眠ってしまったようで……」

金剛「紅茶とお茶菓子?」

提督「クリームティーだ」

金剛「なるほど。あれデスか!」

榛名「お姉様もお喜びになられたのですよね?」

金剛「ハイ! 私の大好物デース!」

榛名「私も、あのお茶とお菓子は好きになりました」ニコ

金剛「ワオ! 本当デスか!? ネ、ネ、どうでした?」

榛名「甘くて、なめらかで、クリームなんて凄く濃厚で、スコーンはサクサクしていました!」

金剛「うんうん! 榛名は分かってくれるのですネー!」ギュー

榛名「あっ、お、お姉様」

金剛「これからは一緒にティータイムを楽しめそうデース!」

榛名「……はい」ニコッ

金剛「それより、提督」

提督「どうした?」

金剛「なぜお仕事をしているのですか?」

提督「…………」

金剛「まだ、救護妖精から許可を貰っていないはずですよね?」

提督「……ダメか?」

金剛「ダメです! ほら、早く横になって下さい!!」

提督「自然と仕事をしていればバレないと思ったのだが……」

金剛「最初に違和感が無かった私を叱りたいです。まったく……油断も隙もありませんね!」グイグイ

161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 01:46:56.25 ID:aXgtiOSGo
提督「む……」

金剛「はい! 病人はしっかりと休んでください!」グイグイ

提督「分かった分かった……」スッ

金剛「~♪」ナデナデ

榛名「なんだか凄いですね、お姉様……」

金剛「体調が良くないというのに、ちょっと目を離した隙にお仕事をしようとする困った提督です」

金剛「イジケますよ、提督」ヂー

提督「さすがにこうも身体を動かしていなかったら動きたくなる……」

金剛「それは分かりますけど、身体は大事なのですよ?」

提督「せめて朝だけでも仕事をさせてくれ。何もかもお前達に押し付けたままでは私の心も痛む」

金剛「むー……では、ちょっとだけですよ?」

提督「うむ」

榛名「仲がよろしいのですね」

金剛「この鎮守府で提督がライクでない人は居まセーン! 何人かは提督ラブですヨー」

榛名「わぁ……」

提督「なぜここまで好かれているのか」

金剛「好きだからですよー♪」ギュッ

提督「こら、妹の前だろう」

金剛「むー……」

榛名(お二人共、幸せそうです……)

……………………
…………
……

162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 01:58:23.27 ID:aXgtiOSGo
提督「身体を動かしたい」

金剛「ダメです」

瑞鶴「ダメよ」

榛名「…………」

提督「ちょっとだけ仕事を──」

金剛「頭を使うのもダメです。糖分を使います」

瑞鶴「書類は私達が片付けるから休んでてよね」

榛名「…………あの……」

提督「なにかね……」

榛名「どうして動いたり仕事をしてはいけないのでしょうか?」

提督「私が低血糖だというのが二人に知られてしまってな……。訳あって糖分摂取がほとんど出来ないので運動や仕事を取り上げられてしまった……」

金剛「それだけではありません。今朝、慢性的な疲労と診断されましたよね」

提督「どうやっても原因が掴めないからそう診断されただけだろう」

瑞鶴「提督さんはすぐに無理をしているじゃないの。出撃も一緒にするし」

榛名「出撃を!? え……海の上をどうやって……? 船などでは置いていかれますよね……?」

金剛「提督は信じがたい事に海の上を滑るのです。まるで凍った水の上を滑るように」

瑞鶴「それどころか、島風よりも速く動いたり十メートルくらいは上に跳んだりするわね」

金剛「十メートルって何ですかそれ……。初耳ですよ……」

瑞鶴「島風が建造された日、あの子を追い詰める為に窓に跳び移ったのよ……」

金剛「…………もしかして、あの工廠の高い位置に付いている窓ですか?」

瑞鶴「うん……」

榛名「……あの、提督さん。失礼ですけれど、お聞きします。…………本当に人間なのですか?」

169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 02:15:31.12 ID:aXgtiOSGo
提督「間違いなく人間だ」

提督「この話は以後禁止……とまでは言わないが、なるべく控えてくれ。思ったよりも精神的疲労が溜まる」

金剛・瑞鶴「はーい」

榛名「…………」

提督「榛名も、しないでくれよ?」

榛名「え……は、はい」

榛名(……そういえば私、ここでのんびりしていて良いのでしょうか。元帥様が危ない状態なのに……)

榛名(…………あれ……『元帥様』? あれ……?)

榛名「──あ、あの! 私、提督のご様子を窺ってきます!!」

金剛・瑞鶴「!」

提督「そうか。ならば私も一緒に行こう」

瑞鶴「えっ……ちょ、ちょっと……」

金剛「…………」

金剛「提督ー、ダメですよー? ちゃんと安静にしていて下さい」

提督「寝ていてばかりでは治るものも治らなくなる。適度な運動が大事だ」

金剛「むぅ……仕方が無いですね……。救護室までの往復だけですよ?」

瑞鶴(ああ、なるほど……)

瑞鶴「無理はしないでよね、提督さん」

提督「分かっているよ」

榛名「…………」

提督「大丈夫。あの元帥殿だ。そう簡単にお亡くなりになられる訳ないだろう?」

榛名「はい……」

……………………。

173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 02:36:43.40 ID:aXgtiOSGo
救護妖精「ダメ」

榛名「ダメですか……」

救護妖精「今は無菌室で絶対安静の状態。そう簡単に入れさせる訳にはいかないよ」

提督「……そんなに悪いのか」

救護妖精「普通だったら死んでてもおかしくないんだよ。むしろ、ここに運び込まれた時に喋ったりしていたのが異常なんだって。そんな事があったから回復するだろうけどさ、刺激を与えずに絶対安静させておくべきなのには変わりないんだよ」

榛名「という事は……もしかしたら…………」

救護妖精「勿論、貴女が考えてる事態もあるよ。というか、人は風邪でも死ぬ時は死ぬんだ。可能性だけで語るなら私が今ここで死ぬ可能性だってある。そこまで考えてたらキリがないよ」

救護妖精「そんなにネガティブに考えるくらいなら、前向きに色々と考えた方が良いと思うよ?」

榛名「前向きに、ですか」

救護妖精「そう。前向きに。病は気からっても言うしね。健康な人が酷く落ち込むだけで免疫力が下がって病気になる事だってある。逆に、どう考えても死に掛けなはずなのに医学をフルシカトの良い意味の化け物だって居る」

提督「そんな人は居るのか……?」

救護妖精「あたしの目の前に居るね。今」

榛名「え?」

救護妖精「本当に提督は何者なの? 気合どうこうでどうにかなるとは思い難いんだけど」

提督「ただの負けず嫌いだ」

救護妖精「はぁ……。提督の人体に関する論文を書くだけで、学会が血眼になって提督へ実験の協力をお願いするだろうね……」

榛名「……そんなに凄いのですか?」

救護妖精「凄いなんてものじゃないよ。現代医学の敗北。人体の知られざる神秘を体現しているって言っても良いくらいだ」

175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 03:06:56.84 ID:aXgtiOSGo
榛名「そうなのですか……」チラ

提督「…………」

救護妖精「こんな人外染みた人だって居る。あたしも最善を尽くすんだ。昏睡状態くらい元帥さんならなんとかするだろうさ」

榛名「──そうですよね。ありがとうございます」ペコ

救護妖精「あたしは医者として当然の事を言ってるだけだよ」

提督「医者なら人を化け物呼ばわりしないと思うが」

救護妖精「なんだい、医学フルシカト提督」

提督「…………」

榛名「♪」クス

榛名「あ、それと……救護妖精さんにお聞きしたい事があります」

救護妖精「なんだい?」

榛名「えっと……」チラ

提督「私は外に出ておくよ」

榛名「ごめんなさい……」

提督「そこは『ありがとう』と言ってくれ」

榛名「? あ、ありがとう、ございます……?」

提督「どういたしまして」

榛名(──あ…………暗い気持ちが少しだけ無くなりました……。そういう意味なのですね)

176: ついでにもう一個 2013/10/31(木) 03:08:06.13 ID:aXgtiOSGo
提督「それでは、私はこれで失礼する」

救護妖精「早く元気になりなよー」

提督「私も早くなりたいものだ」

榛名「…………」ペコ

ガチャ──パタン

救護妖精「──さて、提督に聞かれたくない話ってなんだい? 子供なら出来ないから諦めな」

榛名「ちっ違います! そういうのではありません!!」

救護妖精「分かってる分かってる。冗談だよ」

榛名「うぅ……」

救護妖精「……で、本当はなんなんだい?」

榛名「……刷り込みの事についてです」

救護妖精「うん? それは艦娘の?」

榛名「はい……。お医者様である救護妖精さんなら何か知ってるかと思いまして……」

救護妖精「まあ、普通の人よりかは知ってるよ。これでも艦娘相手に処置とかしてたしね」

救護妖精「それで、刷り込みがどうしたの?」

榛名「あの……艦娘の刷り込みを上書きする事って出来るのでしょうか……?」

救護妖精「上書き?」

榛名「はい……。ちょっと、心配になる事がありまして……」

救護妖精「なんだってそんな。自分の提督を提督だって思えなくなったの?」

榛名「う……。まだ……ですけど、今日……提督を提督と考えず『元帥様』と思ってしまいました……」

救護妖精「んー、ちょっと分かりにくかったけど、仕える者じゃなくて一人の人として見ちゃったって事?」

榛名「はい……。こんな事、あってはいけない事ですのに……」

救護妖精(ふぅん。刷り込まし易くする為に、まずこの子の『提督』とは何かをあやふやにさせたか。やる事が外道だねぇ)

177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 03:19:26.67 ID:aXgtiOSGo
榛名「何かご存知ではないですか?」

救護妖精「うーん……」

榛名「…………」

救護妖精「……あるには、あるんだよねぇ」

榛名「! そ、それは……どういうものなのですか……?」

救護妖精「んっとねー。とある科学者が、問題を起こしたんだよね」

榛名「問題……?」

救護妖精「そ。艦娘の認識している提督を刷り直すって問題」

榛名「そ、そんな事、できるのですか……?」

救護妖精「これは機密事項。貴女みたいな状態になった子にしか話してない事だよ。それは頭に置いておいて。あと、絶対に人に言っちゃダメ。それが例え提督相手でも。良い?」

榛名「…………」コク

救護妖精「じゃあ話すよ」

救護妖精「……その科学者は、提督が死んだ後の艦娘の再利用を考えたんだ」

榛名「再利用……ですか?」

救護妖精「そう。艦娘は一人の提督にしか言う事を聞かない。だから提督が死んだ場合、その艦娘は全員解体される。でも、この資源の少ない国じゃそんな贅沢なんて出来ないよね。だから、艦娘の再利用を考えたんだ」

榛名「…………」

救護妖精「簡単に言うと、洗脳。前の提督の事を忘れさせて、新しい提督へ刷り直す。こうする事で、少ない資源でも解体をさせずに再利用させれるようになったんだ」

178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 03:27:13.16 ID:aXgtiOSGo
救護妖精「だけど、それにも問題があった」

榛名「問題……ですか?」

救護妖精「なかなか洗脳できないんだよねこれが。まだ実験段階だったらしいしさ。だから、洗脳できた艦娘は一部の提督にしか渡されてないよ──」

救護妖精「──当時の大将とか、元帥とかにしか」

榛名「!!」

救護妖精「で、その洗脳された艦娘だけど、洗脳が完全って訳でもないんだよね。急に洗脳が解けたり、違和感が生まれて本当の提督を思い出す艦娘とか居るみたい」

榛名「違和感が生まれて……」

救護妖精「そう。貴女みたいにね」

榛名「…………では、私は……」

救護妖精「まだそうとは決まった訳じゃないよ。ただ単に疲れてる可能性もあるんだし」

榛名「…………」

救護妖精「まあ、本調子に……は、もうなってるか。何日かしたらすぐにその疑問も分かるでしょうよ」

榛名「……はい」

救護妖精「それだけ? だったら早く帰って休みな」

榛名「あ、それともう一つ。提督さんが海の上を滑るそうなのですが、人間ってそんな芸当できましたっけ……?」

救護妖精「はぁ? 何言ってるの一体」

榛名「ご、ごめんなさい……変な質問してしまって……」

救護妖精「──ねえ、今滑ってるって言ったよね」

榛名「え? は、はい……。私は直接見た訳ではありませんが……」

救護妖精「じゃあこれだね」ヒョイ

榛名「……靴?」

救護妖精「そう。建造妖精と開発妖精の共同制作した一品。艦娘を参考にした水の上に浮けちゃう靴」

榛名「…………」

救護妖精「あ、信用してないなその顔。だったら試してみなよ。洗面器に水を張るからさ」ジャー

救護妖精「艦娘は海には浮けるけど水には浮けなかったよね。ほれ、海の上に立つように乗ってみ」プカー

榛名「…………」オソルオソル

榛名「!!! ほ、本当に立てました!!」プカプカ

救護妖精「でしょ?」

榛名「こんな凄い物があるなんて……」プカプカ

救護妖精「使ってる人はほとんど居ないから知らないのも無理はないねー。だって、普通の提督は一緒に出撃なんてしないもん。自殺行為だし」

179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 03:28:08.33 ID:aXgtiOSGo
榛名「……技術って凄いですね」

救護妖精「それを言ったら艦娘なんてどうなのさ。そのコンパクトな身体で弾さえあれば鉄の塊の戦艦を落とせるんだよ? おまけに海の上を高速で移動できるし。人間や妖精じゃ到底真似できないよ」

榛名「それはそうですけれど……」

救護妖精「まあ、提督が海の上を滑れるのはそれを使ってるからだよ。じゃないと今頃、人体実験する為に捕まってありとあらゆる実験をされてるよ」

榛名「……怖いですね」

救護妖精「それが人間ってものさ。全員が全員そうじゃないけどね」

榛名「謎が解けました! ありがとうございます」ペコ

救護妖精「良いって良いって。じゃあ、私も仕事に戻るよ」

榛名「はい! ありがとうございました!」

ガチャ──パタン

救護妖精「…………」

救護妖精「危なかったぁ……もう綱渡りはしたくないよ……」

……………………。

提督「ん、話は終わったか」

榛名「あれ? 提督さん、待っていらしたのですか?」

提督「ああ。一人で帰っても寂しい」

榛名「なるほど……確かにそうですよね」

提督「それじゃあ、一緒に帰ろうか」スッ

榛名「!」

榛名「……はい!」ギュ

榛名(そういえば、こうして誰かと手を繋ぐのは初めてですね)

榛名「──温かい」

提督「うん?」

榛名「いいえ、なんでもありませんよ♪」

……………………。

180: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 03:28:35.97 ID:aXgtiOSGo
コンコン──ガチャ──パタン

提督「今帰った」

榛名「ただいま戻りました」

金剛「おかえりなさ──むっ」

瑞鶴「二人共おかえ──む……」

提督「どうした金剛、瑞鶴」

金剛・瑞鶴「手」

榛名「──あっ!」パッ

金剛「むー……」ジー

瑞鶴「…………」ジー

提督「……二人共、こっちへ来なさい」

金剛・瑞鶴「…………」トコトコ

提督「留守番ご苦労だった」ナデナデ

金剛・瑞鶴「!!」ナデナデ

瑞鶴「ん~~……♪」トロン

金剛「あはっ……♪」トロン

榛名「…………」

榛名(……なでなで…………)

金剛「……榛名も欲しいですか?」

榛名「えっ! あ、あの……その…………」

金剛「私は構いませんよ」

瑞鶴「うん、私も。すっごく気持ち良いものねー」

榛名「え、ええと……そのぉ……」チラ

提督「うん?」

榛名「……………………お願いします」

提督「うむ」スッ

榛名「っ!」ビクッ

榛名「…………?」ナデナデ

榛名「あ……」ナデナデ

榛名(これ……凄く、幸せです……)ナデナデ

榛名「…………癖になってしまいそうです」トロン

瑞鶴「うんうん」

金剛「この気持ち良さには逆らえないねー」

榛名(……幸せって、とっても気持ちの良い事なのですね)ナデナデ

提督「…………」

……………………
…………
……

181: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 03:33:56.88 ID:aXgtiOSGo

金剛と瑞鶴さんを嫉妬させたかった。反省はしていない。後悔なんてある訳がない。

響「最近、私達の出番が少ないないかい?」

あ、えっとそれは……その──ちょちょちょ待って待った待ってください吊るさな──ぎゃああああああああああ!!!!!

200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 17:42:47.49 ID:aXgtiOSGo
榛名「救護妖精さんが言うには、これが提督の秘密らしいです」

瑞鶴「……何これ? 靴? なんで水の上に浮かせてるの?」

榛名「お姉様、ちょっとこの靴の上に立ってもらってよろしいですか?」

金剛「……え? 床が水浸しになるじゃないデスか……。それに、私たち艦娘は海の上でしか浮けませんヨ……?」

榛名「海の上に立つ感覚で乗ってもらえれば分かります」

金剛「むぅー……分かりました。可愛い妹の頼み事デス!」

金剛「よっ──ホワット!?」プカプカ

瑞鶴「え、えええええええ!? う、浮いてる!?」

金剛「……なるほど。テートクはこうして私達と同じように海の上を滑っているのデスね」

榛名「そうみたいです」

瑞鶴「へぇ……こんなカラクリがあったなんて……」

金剛「確かに、普通の人が海の上を平然とスケートしていたら大問題ですよネ」

瑞鶴「でも、どうして提督さんはこれを持ってるのかしら」

金剛「将校で習うのではないデスか?」

瑞鶴「ああー、なるほど」

金剛「……でも、テートクだったら」

瑞鶴「うん……これ無しで滑っててもおかしいって思えないわね」

榛名「お二人は提督さんにどういうイメージを持っていらしてるのでしょうか……」

203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 18:02:15.08 ID:aXgtiOSGo
金剛「まず、お仕事には厳しいデスね」

瑞鶴「叱る時も怖いわよねー……」

金剛「吊るされますものネ……」

榛名「つ、吊るされる!?」

瑞鶴「吊るされると言っても、痛くないわよ。ただ恥ずかしいだけ」

榛名「…………?」

金剛「毛布で包んだ状態で吊るされるのデス。傍目から見ても痛そうに見えませんヨ」

瑞鶴「だけどその代わり、皆が見てる前でも平然と吊るすし、何よりもスカートの中が見えそうになるし……私なんて皆に見られたし……」ズーン

榛名「と、とても怖いのですけれど……」カタカタ

瑞鶴「でも、ちゃんと謝ったら下ろしてくれるくれるわよ。謝らなかったらいつまでも続いたけど……」

榛名(瑞鶴さんはいつまでも吊るされたのですね……)

金剛「ですが、優しさが溢れ出ていマス! さっきも言いましたケド、お仕置きも痛くありまセンし、本気で嫌がっているのを見たらすぐに止めマス」

瑞鶴「思いやってくれるし、頼りになるし、親身になって悩みを聞いてくれるし……本当に優しいわよね。色々な意味で逆らえないわ」

金剛「うんうん……。本当に色々な意味で逆らえまセーン」

榛名「色々……」

榛名「…………────────ッッ!!?」ビクン

榛名「あ、ああああの、あのあの……そ、そそそれってもしかして……?」アワアワ

206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 18:19:45.58 ID:aXgtiOSGo
瑞鶴「あっ……え、えーと…………」

金剛「榛名の考えている通りデース」

榛名「はぅ!?」

金剛「あははっ。二人共、顔が真っ赤ですヨ~?」

瑞鶴「こ、金剛さんには羞恥心が無いの?」

金剛「ありますヨ?」

榛名「お姉様……全然説得力がありません……」

金剛「──だって、提督に抱かれるのは幸せです。掛け替えのない、とても大切な人ですから」

金剛「なので私の心は、恥ずかしいよりも、温かい気持ちで一杯なのです」

榛名「わぁ……」

瑞鶴「私は恥ずかしい気持ちが先に出ちゃうなぁ……」

榛名「え? ……と、ということは……瑞鶴さんも?」

瑞鶴「……………………」コクン

榛名「ま、まさかこの鎮守府の皆さん全員という事も……?」

金剛「それはノーだと思いマス。……たぶん」

瑞鶴「なんだかんだで提督さんを異性として好きになってそうな子、居るものねー……」

207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 18:29:28.14 ID:aXgtiOSGo
金剛「島風とかー」

瑞鶴「響ちゃんもねー」

金剛「あと、龍田もそんな感じがしマス」

瑞鶴「電ちゃんや雷ちゃんもなんだか隠れて好きそうな気がするわ」

金剛「暁は……ちょっと分かりにくいですけど、なんだか本人が認めていないだけで好きそうなイメージがありマス」

瑞鶴「龍田さんを除いた軽巡組は提督として好きって感じよねー」

金剛「という事は、可能性だけで考えたら……私達を入れて七人ですか……」

瑞鶴「うわー……競争率すっごい高い……。というか、そんな人数に●●●な事をしてるのかと思うと……」

金剛「そうデスかね? そこは違うと思いマス」

瑞鶴「え、なんで?」

金剛「テートクの事デスから、まず駆逐艦の子達には『まだ早い』とか言っていそうデス」

瑞鶴「……たしかにそう言いそう。●●とか●●●とは何かとか、そういう事を教えてそう」

金剛「龍田も自ら迫るというより、テートクから来るのを待っていそうデスよね」

瑞鶴「そう? 私の中じゃ自分から取りに行くイメージなんだけど」

金剛「ほら、龍田はテートクに絶対服従していそうじゃないですか」

瑞鶴「……言われてみれば」

金剛「だから、自分から求めるのではなく、相手が求めてきたら応えるというスタンスではないでショウか?」

瑞鶴「……否定できないわね」

208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 18:30:48.71 ID:aXgtiOSGo
あかん。間違った。

金剛「という事は、可能性だけで考えたら……私達を入れて七人ですか……」

金剛「という事は、可能性だけで考えたら……私達を入れて八人ですか……」

に脳内修正お願いします。

210: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 18:42:27.64 ID:aXgtiOSGo
榛名「…………凄く好かれているのですね、提督さんは」

金剛・瑞鶴「勿論!」

榛名「提督さん、ですかぁー……」

金剛(……提督に良いイメージを持たせる為とはいえ、かなり心が痛みますね)

瑞鶴(私達も立派に共犯よね……。印象操作して、提督さんを求めるように仕向けてるんだもの……)

金剛「──さて、そろそろティータイムは終了しまショウ。瑞鶴、お仕事に戻りますヨー?」

瑞鶴「じゃあ、私は食器を片付けるわね」

……………………
…………
……

提督「急に集まってもらって悪い。だが、皆に伝えておかなければならない事がある。緊急電報がやってきて、私は今晩からこの鎮守府を空けなければならなくなった」

提督「帰りは明後日の朝の予定だ。それまでの間、この鎮守府を守ってもらいたい。頼めるか?」

全員「はいっ!!」

提督「良い返事だ。私が留守の間、金剛と瑞鶴が私の代行としようと思うが、異論がある者は手を上げて発言してくれ」

提督「……………………無いようだな。では、残り数時間で私はこの鎮守府から離れる。頼んだぞ」

……………………。

219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 20:24:56.20 ID:aXgtiOSGo
金剛「随分と急ですネ……」

提督「上はいつも急に面倒事を言い渡してくる。困るよ」

瑞鶴「本当よね……。計画性が無いっていうか……」

提督(急なのはこの状況もそうだと言って良いのだろうか?)

雷「司令官、あーん」

提督「すまない。私は甘い物が苦手なんだ」

雷「あれ、そうなの? ごめんね?」

提督「言っていないから知らなくて当然だろう。気にしなくて良い」

響「じゃあ、プレーンだったら良いのかな?」スッ

提督「それならば問題ない」

響「あーん」

提督「…………」サクッ

響「…………」ニコッ

島風「いいなー響! 提督、私もやって良い?」

提督「あまり食べれないんだ。夕食後というのもある。そろそろ勘弁してくれるかな」

島風「小食だよね、提督って。ざんねーん……」

提督「……あと一口だけだぞ」

島風「やったー!」

響「…………」サクサク

響(……司令官と間接キス)テレ

227: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 22:53:18.97 ID:aXgtiOSGo
暁「ひ、響ったら大人じゃないの……!」

電「なんだか、かっこいいのと可愛いのと二つが混ざっていたようなのです」

龍田「じゃあ提督さん、紅茶を飲みますか?」

提督「流石にそれは危ないから止めておこう」

龍田「は~い」

天龍「あーあ。フラれてやんの」

龍田「天龍ちゃん?」ニコォ

天龍「な、なんでもねーよ!!?」ビックゥ

那珂「余計な事を言っちゃうからよーだ」

龍田「少し黙りましょうか」

那珂「なんで私もー!?」

川内「はいはい。落ち着こうか」

神通「川内も、夜中は静かにね?」

川内「ま、まだうるさいかな?」

龍田「結構起きちゃうわね~」

川内「ごめん……」

龍田「良いのよ~。わざとじゃないのでしょう?」

川内「うん……」

神通「寝言が酷いだけだもの……。そのうち治ると思うわ」

那珂(あれ……何この扱いの違い……)

龍田「普段の行動の違いね~」

那珂「なんだか心を読まれてる!?」

229: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 23:15:34.64 ID:aXgtiOSGo
響「ところで司令官。そちらの方は?」

提督「榛名という名前の戦艦だ。詳しい事は言えないが、この鎮守府で預かる事となった」

榛名「金剛型戦艦三番艦、榛名と申します」ペコ

雷「金剛さんには皆がお世話になってるわ! 良いお姉さんよね!」

響「なるほど。どことなく同じ雰囲気がすると思った」

島風「戦艦なのに速いよね! 私びっくりしたもん!」

榛名(お姉様は、この鎮守府でとても愛されているのですね……)

榛名「それより……私はあちらのお二人が気になるのですけれど……」

戦姫「…………」ピキピキ

ヲ級「♪」パクパク

榛名「あの……どう見ても深海棲艦ですよね……? それに、どうして少し離れているのでしょうか……」

提督「彼女達は私に協力してくれる関係だ。今回の、総司令部へ赴く時に一緒に来てもらう事になっている」

提督「少し離れているのは、艦娘と一緒に居ると憎しみが抑えきれなくなると言っていたからだ」

榛名「……色々と例外な事情がこの鎮守府にやってきているのですね」

提督「そういう訳だ」スッ

瑞鶴「提督さん?」

戦姫「む?」

230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 23:29:48.39 ID:aXgtiOSGo
提督「無理をして来てもらってすまない。ありがとう」ナデナデ

全員「!!!!」

戦姫「はにゃぁ……はっ!」

全員「…………」ジッ

戦姫「な、何を見て──はぁぅ……」ナデナデ

戦姫「く、くぅ……!」ナデナデ

電(なんだか物凄く可愛いのです……)

雷(それに、どことなく●●いわね)

龍田(良いなぁ……)

金剛(やっぱり気持ち良さそうですね~)

瑞鶴(むぅ……)

戦姫「や、やめろぉ……見るなぁ! こ、この──はにゃ……」ナデナデ

戦姫「はっ! う、うぅ……」ナデナデ

ヲ級「♪」ニコニコ

……………………
…………
……

235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/10/31(木) 23:50:30.73 ID:aXgtiOSGo
コンコン──。

……………………。

コンコン──。

──ガチャ

金剛「失礼します」

──パタン

金剛「…………」

金剛「行ってしまわれたのですよね……」

金剛「なぜでしょうか。昨日はあんなにも騒がしかったこの場所が、とても寂しく見えます」

金剛「……榛名の事を言えませんね。私、すっかり提督に依存しちゃってます」

コンコン──。

金剛「! ……どうぞ」

ガチャ──パタン

瑞鶴「おはよう、金剛さん」

金剛「おはようございマス、瑞鶴」

瑞鶴「今来たところ?」

金剛「ハイ」

瑞鶴「……気持ちは分かるけれど、元気が無いわね」

238: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 00:11:54.32 ID:PHrDHr2qo
金剛「なんだか、静かデスよね。ここ」

瑞鶴「……うん。捨てられた廃墟の一室って雰囲気」

金剛「テートクが居ないだけで、ここまで変わるとは思ってもみませんでシタ」

瑞鶴「うん……」

金剛「…………帰って、きますよね」

瑞鶴「……………………」

金剛「瑞鶴……?」

瑞鶴「嫌な予感、するのよね……」

金剛「……瑞鶴もですか」

瑞鶴「うん……。ねえ、私達ってさ」

瑞鶴「──提督さんを送り出して良かったのかな」

……………………
…………
……

241: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 00:38:52.70 ID:PHrDHr2qo
提督「ここが総司令部だ。降りよう」スッ

戦姫「やっとこの真っ黒な窓から解放されるのですね……」スッ

ヲ級「…………」スッ

提督「仕方があるまい。深海棲艦を連れていると目撃されたら大問題だ。裏から入るのもそれが目的だ」

戦姫「面倒ですね……」

提督「しかし、まさか車を用意するとは……こんな高級な物、よく使わせてくれたよ」

戦姫(なぜこの方は運転できたのでしょうかね……?)

大将C「……待っていたよ」

提督「おはようございます大将C殿」

大将C「まさかまた顔を合わせる事になるとはな」

戦姫「余計な事は言わなくて良い。今の貴様の役目は案内役だろう」

大将C「ふん。その案内役のヘソを曲げさせて構わないのかな? 困るだろう」

提督「私はそれでも構わない」

大将C「何?」

提督「お役目ご苦労、大将C殿。私はこれから自力で大将A殿と大将B殿がいらっしゃる部屋を探す。お前が自らの役目を放棄した事はしっかりと伝えておくよ」

大将C「ぐっ……! こっちだ。ついて来い!」

戦姫「阿呆め」

……………………。

242: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 01:02:12.48 ID:PHrDHr2qo
提督「大将C殿はいつもこちらへ?」

大将C「それをお前が聞いてどうする」

提督「ただの雑談ですよ。こう歩いているだけだと暇で暇で」

大将C「ふん。変わったやつめ」

提督「よく言われます」

大将C「……普段はここに居らん。大将以上の極秘会議の時のみここに来ている」

提督「そうですか。私も道を憶えないといけませんね」

大将C「一度で憶えろよ!!」

提督「大将C殿の教え方が上手かったら一度で憶えれますよ」

大将C「…………ちっ」

提督「それにしても、こんな道を通って大丈夫なんでしょうか? 外の様子が見えますけれど」

大将C「ここを外から見るには裏へ来なければならん。裏は閉鎖してあるからまず見つからんわ」

提督「そうですか」

提督(……屋外消火栓? あんな場所にも……表にも三箇所あるのは知っているが、やけに厳重だな。まあ、それはこの施設の重要性を考えたら当然か)

提督(! ほう……なるほどな)

……………………。

249: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 01:23:38.80 ID:PHrDHr2qo
大将C「ここだ」

提督「ありがとうございます」

大将C「入る時はノックを一回と三回に分けるんだ。そうすれば中に居る者が鍵を開けてくれる」

提督「ふむ」

コン──コンコンコン──。

大将C「……本当に肝が座っているな、お前」

提督「そうですか?」

戦姫(やはりよく似ていらっしゃる)

ガチャ──パタン

提督「おはようございます、大将A殿、大将B殿」ピシッ

大将A「うむ。遠い所をご苦労」

大将B「いきなりの呼び出しで悪いな。色々と問題点が出てきたので緊急的に会合する事となったのだ」

大将A「あの場所から一晩で来てくれるとは思わなかった。いやはや、自動車というものは便利だな」

提督「私達の為にあのような高級の物を使わせて頂き、感謝しています」

大将B「なに。君にはそれだけの価値がある。──掛けたまえ」

提督「初めての会合ゆえ至らない点があると思いますので、お手数ですが色々と教えて頂いても宜しいでしょうか」

大将B「うむ。だが、何もそんなに固くなる必要はない。海軍の道筋を我々で立てるのが目的だ。何か提案があるのならばどんどん言ってくれるか」

提督「畏まりました」

大将A「大将Cは何か粗相をしなかったかね?」

大将C「!!」

提督「いいえ。あのような出来事があったにも関わらず、実に親切に案内してくれました」

大将B「ほう?」

提督「また、窓の付近を通った際も『危険性があるのでは』という質問に、実に納得のいく回答を示してくれて安心しました」

大将C「…………」

大将A「ふむ。どうやら身を弁えているようだ」

大将B「うむ。では、会議を始めよう──」

……………………。

251: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 01:38:14.50 ID:PHrDHr2qo
提督「──ですので、大鑑巨砲主義を貫くのではなく、周辺機器にも目を向けるべきだと思います。特に我々の軍は潜水艦を相手にするのが弱い。ソナーの開発にもう少し重視するのも良いかもしれません」

大将A「ふむ。確かに。次の開発は威力ではなく補助的な分野を開拓するとしよう」

大将B「この案も固まったな。では次で最後だな」

提督(やっと終わりか。国へどれだけの情報を流していいかだの新しい建造だの開発だのと下らん事を……。私が居なくても良かっただろう。いや、対潜水艦への危機感などを再認識されたのは私にも得があるか)

戦姫(内容も良く分からんし退屈だ)

ヲ級「…………」スヤスヤ

大将B「深海棲艦を艦娘に戻す方法だ」

提督・戦姫「!!」

提督「何か進展があったのでしょうか」

大将B「明確な進展ではないが、君のおかげで可能性の一つが出てきた」

提督(余計な事をされたら面倒なんだが、なんだ? 何が分かった?)

大将B「研究者によると、特定の深海棲艦と縁の深い者が、その深海棲艦の亡骸を使って建造すると艦娘へ戻せるのではないだろうか、という説が浮かんできた」

大将B「現に、君のあの瑞鶴。……君の母港だが、記録によると海底から浮かび上がってきた所の深海棲艦をすぐに沈めたようだ」

大将B「──そして、あの場所で沈んだ艦娘は君のお父上の瑞鶴だけだ」

提督「…………」

254: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 02:05:20.86 ID:PHrDHr2qo
戦姫「言っておくが、私や私達の仲間を沈めたらこの総司令部へ一斉射撃する。この場所なら海からでも充分に届くからな」

大将A「ほう。海が近くにあると分かるのかね」

戦姫「元は艦娘だ。それくらい分かる」

大将B「なに。安心したまえ。私達も命は惜しい。その手段を取って殺されるのはゴメンだ」

提督「では、どのように?」

大将B「そこで、そこの戦姫に聞きたい事がある」

戦姫「なんだ?」

大将B「君の仲間で、沈んだ深海棲艦は居るかね?」

戦姫「それがどうした」

大将B「彼は君の提督だった者と似ているのだろう? 縁があるのかもしれん。君の沈んだ仲間で彼が建造に関われば、もしかしたら艦娘に戻れるかもしれない」

戦姫「……なるほど」

大将A「ではその場所を──」

戦姫「残念だが、私の仲間は深海棲艦になってから誰一人として沈んでいない」

大将A「……そうか。それは残念だ」

戦姫「また、生きたまま建造の材料にするなどと言った場合も……」ジャキッ

大将B「分かっておる。我々もそこまで考えれないほどではない。……一人を除いてな」

大将C「ぐ…………」

戦姫「また貴様か。懲りないな」

255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 02:17:26.87 ID:PHrDHr2qo
大将A「しかし、進展がないとなると、どうしましょうかね?」

大将B「うむ……これには困ったな。何か提案などはあるかね?」

提督「…………。いえ……残念ながら。何か思い付きましたらご連絡致します」

大将B「うむ。ではこれにて会議は終わりとしよう」

大将A「くれぐれも情報を漏らすのではないぞ」

大将C「はっ!」

提督「ご安心を」

提督「ところで、私は夜深くにここを出発しようと思っています。どこか部屋をお貸しして頂けませんか?」

大将B「む? どうしてかね」

提督「いくら黒い窓といっても、日中に車を走らせるのには不安が残ります。もし止められて事情聴取を受ける可能性を考えると、人の少ない時間、闇夜に紛れて動くのが吉でしょう」

提督「それと、お恥ずかしながら睡眠を取っておりませんので、事故を防ぐ為にも一度、疲れと睡眠を取ろうと思っています」

大将A「なるほど。分かった。部屋を一室用意しよう」

提督「感謝します。では、マルヒトマルマルに出発します」

大将B「うむ。裏口の者には伝えておくので好きな時間に帰るが良い」

……………………。

280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 18:27:34.71 ID:PHrDHr2qo
ガチャ──パタン

提督「…………」チラ

戦姫「広いお部屋ですね。これなら快適に眠れそうです」

ヲ級「♪」

提督「…………」チラ

戦姫「どうかなされましたか?」

提督「なに。部屋を見渡していただけだ」シッ

戦姫(…………? 内緒話ですか……?)

提督(盗聴されている可能性が無いとは限らない。少し協力してくれ)

戦姫(! はい)

ヲ級(…………)コクコク

提督(まずは……)

提督「──ところで戦姫。この建物ならばどのくらいで破壊し尽くせる?」

戦姫「そうですね。大体……三十分といった所でしょうか」

提督「三十分か……。少し時間が掛かるな」

戦姫「申し訳ありません……」

提督「いや、折角ここまで侵入できたのだ。今すぐ準備に取り掛かれ」

戦姫「はい」

提督「お前も、逃げる準備をするんだぞ?」

ヲ級「!」コクコク

戦姫「しかし……宿はどうするのですか?」

提督「この総司令部の裏は山だ。野宿になってしまうが、一夜を過ごすくらいならばなんともないだろう」

戦姫「逃走ルートはどうなさいますか?」

提督「私達ならばこの高さから飛び降りても平気だろう」

戦姫「そうですね。では、準備に取り掛かります」

提督「うむ」

戦姫「…………」

ヲ級「…………」

提督「……………………どうやら盗聴されている心配はしなくて良いようだな」

戦姫「本当だったら大慌てでこの部屋に飛び込んでくるでしょうね」

戦姫「しかし、なぜこのような事を?」

提督「調べたい事がある。……暗くなるのは三時間後のヒトキュウマルマルだったな。その頃に起きて調べる物

があるから起こすぞ」

戦姫「はい!」ピシッ

ヲ級「!」ピシッ

……………………。

281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 18:43:08.86 ID:PHrDHr2qo
提督「…………」スッ

戦姫「ん……」スッ

ヲ級「…………」スヤスヤ

提督「…………」ソッ

ヲ級「!」ピクン

提督「起きたか?」

ヲ級「♪」

提督「よし。では行こう。くれぐれも大きな声を出すんじゃないぞ」

戦姫「!」ピシッ

提督(今からでなくても構わなかったのだが……まあいいか)

……………………。

提督(あった。あの屋外消火栓だ。……下も電気は付いていないな)

提督「…………」チラ

戦姫「?」

提督(ここから飛び降りるぞ)ヒソ

戦姫(何を言っているんですか!? ここ五階ですよ!?)

提督(無理か……)

戦姫(当たり前です!)

提督(では、静かにしていろよ)

戦姫(え、ちょ、ちょっと──ひゃん!)ヒョイ

提督(絶対に声を出すな)タンッ

戦姫(~~~~~~~~~~~~!!?)ビクン

284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 19:04:35.13 ID:PHrDHr2qo
スッ──。

戦姫(あ、あれ……降りた音がしなかった……?)

提督(念の為に、建物から見えないように窓の下で隠れていろ)タンッ

戦姫(……本当に人間ですか、あの方。なんで跳んで届くのですか……?)

提督(待たせた。行くぞ)

ヲ級「♪」ギュ

提督(良い子だ)タンッ

スッ──。

戦姫(……ところで、どうして外へ?)

提督(目の前にある消火栓だが、おかしいと思わないか?)

戦姫(…………いえ、特に……)

提督(昼間だから分かりやすかったが、こうも暗いと建物からでは非常に見えにくい。それと、明らかに奥行きがありすぎるんだ。人間一人くらいなら余裕で入れるくらいの奥行きがな)

戦姫(と、いう事は……地下ですか?)

提督(その可能性がある。調べてくるから少し待っててくれ)スッ

カパッ──スルスル──。

戦姫(……なんとも思わなかったけど、私は言われてから消火栓に気付いたのに、どうしてあの方は見えたのでしょうか)

提督「…………」クイクイ

戦姫(ん……あれは、来いという意味でしょうかね……?)スッ

提督(当たりのようだ。この壁を下ろす、っと)ガリガリ

戦姫(梯子……)

提督(降りるぞ。すまないが戦姫、降りる時に扉は閉めてくれ)

戦姫(はい!)ピシッ

……………………。

289: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 19:22:05.42 ID:PHrDHr2qo
提督(思ったよりも深いな。──む、地面か)

戦姫(普通の扉、ですね……)

提督(開けてみよう)

スッ──ソーッ…………。

提督(……気配がない。誰も居ないようだな──ッ!?)

提督「なんだ、これは……」

戦姫「ど、どうかなさいまし──なっ!?」

ヲ級「!!」

戦姫「これは……人間……ですよね……? なんですか、この奇妙なカプセルの群れは……緑色に光ってて気味が悪いです……」

ヲ級「…………」

提督「……二人共、私はこのカプセルの中に入っている人を見知っているんだが」

戦姫「…………奇遇ですね。私も見た事があります」

ヲ級「…………」コクン

提督「やはりか……私の見間違えではないようだな……この子はどう見ても──」

提督「──金剛、だよな」

293: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 19:41:07.97 ID:PHrDHr2qo
戦姫「ええ……。間違いありません。──こっちは電と言っていた子のようです」

ヲ級「!!」ビシッ

提督「こっちは瑞鶴か……」

戦姫「これは……」

提督「ああ、間違いない。艦娘の本体は、ここからやってきているようだな」

提督「詳しい事は調べてみないと分からない。何か資料がないか探してみよう」

パッ──!

提督「!」バッ

研究員「な、なんだお前達──ぐっ!?」ガシッ

提督「抵抗しなければ殺さない。分かったなら両手を上に上げろ。変な動きを見せたら殺す」ギリッ

研究員「!!」バッ

提督「そのまま私の質問に答えろ。嘘を付いていたら目を見れば分かる。その時は腕を一本貰う」

研究員「わ、分かった!」

提督「お前はここの関係者か?」

研究員「そうだ!」

提督「証拠を見せろ」

研究員「右ポケットだ! 私の白衣の右ポケットに証明書がある!!」

提督「…………」ゴソ

提督(……艦娘建造開発総責任者。ほう、良い情報源だな)

295: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 19:55:49.93 ID:PHrDHr2qo
提督「手荒な真似をしてすまなかった。私はつい最近、大将になった者だ」

研究員「はっ……! はっ……! あ、ああ……貴方があの……?」

提督「その証拠に深海棲艦も連れてきているだろう」

戦姫「…………」

ヲ級「?」

研究員「それは分かりましたが……どうしてここへ?」

提督「少々暇になったので、話に聞いていたこの場所へ足を運んでみたのだ。彼女達も一緒に連れてきたら何か新しく分かるかもしれなかったのでな」

研究員「ああ……」

提督「くれぐれも内密にしてくれ。実は許可を取っていないんだ」

研究員「そ、それは困りますよ! 勝手に入ってきては!」

提督「貴方は総責任者ですからね。この事がバレてはお互い困る。秘密としましょう」

研究員「む、むう……。分かった……」

提督「それにしても、素晴らしい施設ですね」

研究員「は?」

提督「見た所、これが艦娘の元ですか」

研究員「あ、ああ……そうです」

提督「宜しければ、色々と教えて頂けませんか? 深海棲艦を艦娘に戻す参考にしますので」

研究員「そ、それは……」

提督「なんだったら今ここで死体を一つ作っても宜しいのですが」

研究員「ほ、本当に貴方は海軍なのですか!?」

提督「勿論。特に今は亡き元帥殿には良くして頂いていました」

研究員「ぐ……! そういう事か……」

提督「理解が早いようで助かります」

研究員「……ここで話すのも疲れる。奥の部屋へ行こう」

……………………。

298: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 20:13:32.27 ID:PHrDHr2qo
研究員「……何が聞きたいんだね」

提督「とりあえずは、艦娘の詳細を。特に、表に出ていない情報が欲しいですね」

研究員「…………」

提督「…………」

研究員「……これから話す事は、私が漏らしたとは言わないでくれ」

提督「勿論です。ご安心ください」

研究員「…………艦娘とは、ここに置いてある少女達を原典に存在している……らしい」

提督「らしい?」

研究員「何せ当時の人や資料がほとんどが無くなっているんだ! 私達も試行錯誤なんですよ!」

提督「ふむ。それはどうしてですか?」

研究員「詳しくは分かりません……。今でも真実は闇に葬られたままです。突如、当時の研究員全員が殺され、重要な資料がなくなったと聞いています」

提督「ふむ。では、あのカプセルは何ですか?」

研究員「人体の老化、腐敗を止める装置だと思います……。どうやらあのカプセルに、適合した少女を入れると艦娘の原典として機能するようです……」

提督「それ以上の詳しい事は」

研究員「まだ分かっていません……。ただ、ここの少女達の魂を引用する事で、艦娘が建造で生れ落ちるという事は分かっています」

提督「なぜ少女なのですかね」

研究員「それもまだ詳しくは分かっていません……。ただ、男性の肉体ですと処置をする際に拒絶反応が起きるようで、女性しか使えないんです。少女だけという訳でもなく、大人の女性もあります」

提督「処置?」

研究員「所謂、人体改造です……。男性にやると悉く死んでしまうので、女性だけにしかしていません……」

提督「…………」

299: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 20:22:51.96 ID:PHrDHr2qo
提督「ふむ。では、深海棲艦については何か分かった事はありますか?」

研究員「いえ……残念ながら深海棲艦はほとんど何も分かっていないんです……。貴方が知っている事以上の情報は無いと思います……」

提督「そうですか」

研究員「日々、研究に研究を重ねているのですが、どうにも難解で……。処置の方法についても、本棚の下にあったメモ書きを参考にしてなんとか出来たのです……」

提督「ふむ……その資料を拝見させて頂いても良いですか?」

研究員「そ、それは……」

提督「ふむ……」ジッ

研究員「な、なんですか……?」

提督「いえ、どこから斬れば止血するだけで命だけは取り留めれるか──」

研究員「み、見せます!! 渡します!! だから、止めてくれぇ!」

提督「はい。よろしくお願いします」ニコ

戦姫(こいつらも外道だが、この方もとことん悪魔ですね……)

研究員「これです……」

提督「ふむふむ……」

提督(意味は良く分からんが、全体的な肉体の強化と痛覚の鈍化、後は特定の記憶を植え付ける……か……)

提督「この資料は複写ですか?」

研究員「え? あ、ああ……そうですけど……」

300: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/01(金) 20:23:17.65 ID:PHrDHr2qo
提督「頂いてもよろしいでしょうか」

研究員「こ、困ります!! この情報が外に出回ったら大変な事になります!」

提督「これが有れば私の実験も捗ると思ったのですが……仕方がありませんね」チラ

研究員「!!」ビクッ

提督「右と左……あと上と下、選ばせてあげます」

研究員「ひっ!! わ、分かりました!! 差し上げます!!!」

提督「お優しいですね。感謝します」ニコ

戦姫(さすがに同情する……)

研究員「ほ、他に何を聞きたいんだ! もう艦娘に関する事は何も知らないぞ!」

提督「……おや、本当のようですね。では、私はこれにて失礼します」

研究員「…………」ホッ

提督「ああそうそう。ここで私と会った、話した、知ったという事は全て忘れてください。もし、この事を誰かに伝えた時は……」

研究員「つ、伝えた時は……」

提督「有刺鉄線を血管に通して引き抜きます」ニコ

研究員「あ、悪魔め……!」

提督「お互い様です。では、また機会がありましたらお会いしましょう。見知らぬお方」

……………………。

321: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 00:14:12.56 ID:qCrR2zLOo
ガチャ──パタン

提督「さて……やっとここまで戻ってきたな」

戦姫「はぁー……車の中も盗聴を考えないといけないのは疲れましたぁ……」

ヲ級「…………」グッタリ

提督「よくやってくれた二人共。ありがとう」ナデナデ

戦姫「はにゃ……」トロン

ヲ級「♪」ギュー

提督「色々とあって疲れただろう。ゆっくり休んでくれ」

戦姫「はい!」ピシッ

ヲ級「!」ピシッ

ガチャ──パタン

提督(……私も少し疲れた。あと一時間もすれば金剛が来るだろうが、それまでの間は寝ておくとしよう)

……………………。

324: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 00:30:54.35 ID:qCrR2zLOo
金剛「提督……?」

提督「ん……」

金剛「良かった……起きてくれました……」ペタン

提督「いかん……寝過ぎてしまったようだ」スッ

金剛「!」バフッ

提督「おぉ……?」

金剛「ダメです。寝ていて下さい」

提督「何も上に乗ってまで押さえつけなくても良いだろう……」

金剛「……寂しかった」スリ

提督「…………」

金剛「寂しかったです……」ギュ

提督「……そうか」ナデナデ

金剛「ん……」スリスリ

提督「やけに甘えるな」

金剛「一日以上、提督と離れ離れでした。だから提督分を充電しています」

提督(いつから私は成分と同じ括りに……)

金剛「ちゃんと提督が居ない間の報告をするので、その前に充電させて下さい……」

325: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 00:43:44.61 ID:qCrR2zLOo
提督「……分かった」ギュ

金剛「んっ」

提督「…………」

金剛「わ、わざとではありません……。本当に出ちゃった声です……」

提督「なら仕方がないか……」

金剛「あと……キスが欲しいです……」

提督「……本当に甘えているな」

金剛「キスをして下さったら、充電が終わります……」

提督「…………仕方がないな」

金剛「あはっ♪」スッ

金剛「ん……」

ちゅ……ちゅぴ…………ちゅぅ、ちゅく………………。

金剛「んっ……はぁ……」

金剛「は、ぁ……痺れるように、幸せです……」

提督「…………そうか」ナデナデ

金剛「本当に、幸せ……」スリスリ

……………………。

326: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 00:53:25.61 ID:qCrR2zLOo
金剛「──で以上です」

提督「ふむ。問題なくこなしてくれたようだな」

提督「……さて、そろそろ皆が来る頃だろうか」

金剛「そうですね……名残惜しいです……」スッ

提督「まったく……キスだけでは充電が終わらなかったな」

金剛「提督と肩を寄せ合うの、凄く心が温まりました」

コンコン──。

提督「ほら、離れて」

金剛「はーい」スッ

提督「入れ」

ガチャ──パタン

救護妖精「やあ提督。生きてるかい?」

提督「幽霊に見えるか」

救護妖精「ゾンビに片足突っ込んでるだろうに」

提督「検査か?」

救護妖精「そだよ。朝礼が終わったらするから、今日も提督は一日安静」

提督「……いつになったら働けるようになるのか」

金剛「元気になったらです」
救護妖精「元気になったらね」

提督「…………」

……………………。

327: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 01:09:04.11 ID:qCrR2zLOo
救護妖精「さあ、検査を始めるよー」

提督「…………」

救護妖精「いやー、凄かったねぇ。あんなに艦娘に囲まれる人は初めて見たよ。まず脈から計るねー」

提督「今日ばかりは言う事を聞いてくれなったな……」

救護妖精「整列の一言でビシッとしていたじゃないか」

提督「あそこまで言わなければならなかったのが問題だ」

救護妖精「良い事じゃないか。それだけ心配していたという証さ。んー、やっぱり脈が弱いね」

提督「…………」

救護妖精「それで、提督の事だ。何か話したい事があるんじゃないかい? はい、ちょっと眩しいよー」

提督「そうだな。聞きたい事がある」

救護妖精「なんだい? うーん。ちょっと疲れ気味っぽいねぇ」

提督「原典」

救護妖精「…………次は血液を抜くよ」

提督「カプセル」

救護妖精「……………………」

提督「無くなった資料と人」

救護妖精「………………………………」

提督「さて、そろそろ教えてくれても良いんじゃないか、ドクター」

救護妖精「……もう隠し事はできないようだね」

提督「やっと話してくれるようになったか」

救護妖精「できれば、ひっそりと暮らしたかったからねぇ。手詰まりになるまで話す気はなかったよ。はい、ガーゼ押さえてて」

328: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 01:20:12.29 ID:qCrR2zLOo
提督「という事は、これ以上はドクターでなければ分からないと?」

救護妖精「止めとくれ。私はドクターじゃないよ。……当時の研究者は私を除いてもう居ないし、資料も根こそぎ私がかっぱらった。死んだと錯覚させる量の血もばら撒いたし、他にも行方不明者も出しておいたが……まさか元帥は勘付いてたとはね。正直驚いたよ」

提督「一人称」

救護妖精「今は良いだろう? 『あたし』って言い難いよ」

提督「それにしても、よくバレなかったな」

救護妖精「一人称は違うし髪型も違う。当時は声がもっと暗かったし、喋り方もこんなにぶっきらぼうじゃなかったよ。気付かれなくて当たり前じゃないかいね。人間にとって妖精なんざ誰も似たようなもんだろ?」

提督「なるほどな。では、なぜ施設の人間を皆殺しにして資料を全部奪ったんだ?」

救護妖精「あれ以上、犠牲者を出したくなかったのさ。どうせ知ってるんだろう? 艦娘の素体は人間だっていうのを」

提督「ああ。素体にする為の資料も手に入れてきた」ガサ

救護妖精「……まだ残っていたのかい、その資料」

提督「本棚の下にあったメモを元に作られたそうだ」

救護妖精「ああ……無くしたと思ったメモ、そんな所にあったのかい……失敗したなぁ……」

救護妖精「ちょっと見せとくれ。…………ダメだね。完全に復元されてる。これじゃあ私のやってた研究も、全部元通りにされるのは時間の問題か……まいったなぁ……」

提督「今の所、その資料の内容くらいしか進んでいないそうだ」

救護妖精「ふぅん……案外遅いもんだね」

329: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 01:34:23.92 ID:qCrR2zLOo
提督「あと、なぜ施設自体は破壊しなかった?」

救護妖精「……可哀想だったからだよ」

提督「可哀想?」

救護妖精「まだ生きてるんだよ、あのカプセルの中に入ってる子達は」

提督「…………」

救護妖精「今更何を言ってるんだって話だけど、あの子達はなんの罪も無い普通の子達なんだ。カプセルから出すには意識が戻るまでに時間が掛かる。だけど殺したくない。……こんな中途半端な気持ちだからあのままにしちまったのさ」

提督「…………」

救護妖精「調整や精神面の管理は私がしていたから、全員、私が診ているんだよね。その時に色々と話したりもした」

救護妖精「そんなある日さ、いつものようにあの培養液へ入れようとしたんだよ。普通の子は嫌がったり怖がったりするんだよ。本能で分かるんだろうね。でも、その子だけは別でさぁ……なぜか、にっこり笑ってきたんだよ。まるで疑う事もなく、私を信用してるかのように……」

提督「…………」

救護妖精「初めてだったよ。自ら進んであの培養液に入る子なんてさ。私はそれで壊れちまったんだろうね……。その出来事で、私はあの施設を事実上のブラックボックスにすると決めた」

提督「職員全員を殺したのはなぜだ?」

救護妖精「全員、その出来事をなんとも思わなかったそうだ。手間が省けた程度の認識だったそうだよ」

提督「そうか……」

救護妖精「……私には、あの子達を生かすにはあれしかないと思った。現状、艦娘は必須だからね。殺される事はないから出来た」

330: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 01:46:21.53 ID:qCrR2zLOo
救護妖精「そっかぁ……ここまで解明されちゃってるのかぁ……」

救護妖精「……という事は、もう既に新しい犠牲者が?」

提督「……ああ」

救護妖精「はぁ……。何の為に私は逃げたんだか……」

提督「確かに犠牲者は出てきているが、それが最小限に抑えられているのもまた事実だ」

救護妖精「気休めは結構さ……」

提督「そして、これからその被害を無くす事もできる」

救護妖精「……何を言ってるんだい提督」

提督「あの研究者と資料、そして海軍の黒い部分を根絶やしにすれば、艦娘の技術は永遠に闇へ葬られるだろう」

救護妖精「何を馬鹿な事を……。どうやってそんな事をするんだい」

提督「あの大将共を殺すのは容易い。昨日でそれは充分に分かった。研究者共も全員集めてしまえばこっちのものだ」

救護要請「……正気かい」

提督「勿論」

救護妖精「……………………」

提督「…………」

救護妖精「はぁ……ダメだねこりゃ。本気の目だ」

救護妖精「──さすがだね、ホムンクルス」

335: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 02:08:38.87 ID:qCrR2zLOo
提督「……やはりか」

救護妖精「おや、気付いていたのかい」

提督「その資料を見ればなんとなく、な」

救護妖精「それもそうか。それじゃあ提督──」

救護妖精「真実を話そうじゃないか」

提督「頼む」

救護妖精「艦娘を造る前に、私達は人造人間と強化人間の両方を研究していたのさ。常人よりも優れた肉体を持ち、主人に逆らわない……そんな人間をね」

救護妖精「想像がつくだろうけど、人造人間は全くと言って良いほど進展がなかった。そりゃそうだよね。なんせ魂が無いんだ。どれだけ頑張ってもあれじゃあ肉の塊だよ」

救護妖精「そして、私が所属していた強化人間は、少しずつだけど確実に進んでいた。強靭な身体を持つ所までは大体順調に進んでいったよ。そこから海の上を滑れるような副産物も手に入った」

救護妖精「でも、大きな問題が残っていた。強化された人間はすぐに死んでしまうんだよ」

救護妖精「例え戦艦を沈めるとしても、一日やそこらで死んでしまうようじゃあ使い物にしにくい。だから、強化の度合いを下げていった。勿論、それに比例するように寿命は伸びた。けど、結局は数日で死んでしまう。試行錯誤を繰り返した結果。問題はあるけれど死なない素体が一人、出来上がった」

救護妖精「提督、貴方だよ」

提督「…………」

338: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 02:18:30.28 ID:qCrR2zLOo
救護妖精「身体能力は今までと比べて充分に良い結果が出た。けど、死に掛けの状態でないと糖分が摂取できない、身体が不安定といった問題を抱えていた。そこら辺りだったかな、人造人間側と一緒に研究を進めるようになったのは」

救護妖精「提督が見た培養液に提督を入れて、未完成ながらの成功例として様々なデータを取った。結果、私達のやり方は女性になら安定するという事が分かった」

救護妖精「確かに程々に安定して強化人間が作れるようになったけど、問題は強靭さだった」

救護妖精「人類としてはかなり上の方に位置するけど、提督には足元にも及ばない。どう調整してもそこから先に進まなくなった。けど、そこで人造人間側が面白い事をしていたんだ」

救護妖精「機械を人間の身体に取り付けて動かせるようにしていた。もうね、最悪な事にピンと来たよ。これらを組み合わせれば、兵器を身に付けた人間を作り出せるって」

救護妖精「本当にあいつらはやってくれたよ。失敗は結構したけど、兵器を扱える人間が誕生した。原理も仕組みも良く分からなかったけど、とにかく海の上で戦える人間が出来たんだ」

救護妖精「確かに不安定だったけど、成果は上々だったね。船としての駆逐艦を、人間サイズの女の子が撃沈したんだ。充分だったよ」

救護妖精「まさに生きた兵器。動かすのにロスが生まれる軍艦と、自分からノータイムで動かす軍艦、どっちが強いかなんてすぐに分かるもんさ。おまけに、兵器も実物と同じ性能だった」

救護妖精「だけど、そこにも問題は生まれる。素体が人間ベースだからね。身体をやられたら死んじまう。そこで、どうしようかと頭を捻った結果、ベースとなる人間は隔離して、その魂を原典に無機物を動かすのはどうかってね」

救護妖精「ここも私はあまり関われなかったけど、あのカプセルにベースの子を入れて、その子の魂を人工的に複製して、最終的には今と同じ造り方で生きた兵器が造れるようになった」

救護妖精「そこで、提督は要らなくなったんだよね。だって、艦娘は完成しちゃったんだもん」

340: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 02:31:32.02 ID:qCrR2zLOo
提督「だが、私はここで生きている」

救護妖精「そう。間抜けな話、ちょっとだけ情が沸いちゃって、それで逃がしちゃった」

提督「逃がした?」

救護妖精「今思えば、提督を逃がした時には壊れるちょっと前だったのかもしれない。だから逃がしたんだと思う」

提督「……元帥は気付いていたんだな」

救護妖精「気付いてたんだろうねぇ。あの人だけ施設に入り浸ってたから、顔を憶えてたんだと思う」

提督「ちっ。どうりでスムーズに士官学校を卒業できて早々と提督になり、今の地位にもなれた訳だ」

救護妖精「たぶん、使えると思ったんだろうね」

提督「……あの元帥のおかげでここまで来れたのも事実だから腹が立つ」

救護妖精「ああそうそう。艦娘に怪しまれてたよ。海の上を滑れる事について」

提督「…………どう誤魔化したんだ?」

救護妖精「あの靴を履いたら水に浮かべるよって実践させたら納得したよ。ただ浮かべるだけで、滑る事なんて出来ない靴で」

提督「感謝する」

救護妖精「良いさ。罪滅ぼしにもなりやしないんだ」

救護妖精「……あと、言わないといけない事がある」

提督「なんとなくは想像がついている。話してくれ」

救護妖精「…………提督さ、家族がどうだったか憶えてるかな」

341: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 02:49:39.30 ID:qCrR2zLOo
提督「いや、過去の事についてはほとんど思い出せない。父が私の父というのもいまいち実感できないくらいだ」

救護妖精「そっか……ごめんよ」

提督「構わない。そう思ってくれるだけで充分だ」

救護妖精「……じゃあ言うよ。提督の家族構成は、両親と提督、そして妹が二人だったんだ」

提督「…………」

救護妖精「ん、もう分かったようだね。……そう。あの瑞鶴って子、提督の妹だよ」

救護妖精「本当にさ、びっくりしたよ。深海棲艦を材料に艦娘が造れたっていうんだから。今でも信じられないくらいさ」

提督「なぜ造れたのか、分かるのか?」

救護妖精「さあね。そこら辺の詳しい事情は人造人間側の分野だ。私には良く分からないよ」

救護妖精「だけど……チラッと聞いた話によると、艦娘を造るには強い絆が必要だって言ってたね姉妹が多いのはそういう事なんだよね。例外はちらほらあるけど」

救護妖精「そして、提督の肉親に当たる艦娘は三人。大和、翔鶴、瑞鶴。この三人だよ」

救護妖精「だから、提督に魂が惹かれて深海棲艦から造れたんじゃないかな。記録によると、あの沈んだ深海棲艦からは艦娘の人工魂が出てこなかったみたいだし、深海棲艦に人工魂が残ってたのは確かだと思うよ」

提督「その人工魂が出てこなかった場合は、いずれまた深海棲艦として現れる可能性があるのか」

救護妖精「そうだと思うよ。じゃないと、今頃この海から深海棲艦なんて居なくなってるはずだし。あの国ももう滅亡寸前って話だし」

提督「あの国とは、大国の?」

343: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 03:08:18.73 ID:qCrR2zLOo
救護妖精「うん。何をやったんだろうか、艦娘の建造方法をうっかり外に持ち出した馬鹿が情報を盗まれたみたいだよ」

提督「そこの話は本当だったのか……」

救護妖精「どうやらちょっと知ってるみたいだね。じゃあ簡単に言うけど、大国だけじゃなく、この国以外はほとんど滅んでるよ」

提督「……どういう事だ」

救護妖精「どうやらさ、失敗続きの末、大事故が起きたみたい。敵の通信を傍受していた無線に、いきなり暗号も何も無しにメッセージが届いたのさ」

救護妖精「『これ以上この実験に手を出すな。これは我々を殺す──』ここでメッセージが途切れた。ほとんど直訳だけどね。物凄い速度で打ったモールス信号だったらしいよ」

救護妖精「その後、各国の通信が途絶えた。電波が悪いとかそんな話じゃないよ。まったく無くなったのさ」

救護妖精「まだ深海棲艦が少なかった頃さ、周辺の国を調査したみたいなんだけど、どこの国も人が消えてたみたい」

提督「…………」

救護妖精「神様なんて信じないけど、これは天罰だろうね。命を弄んだんだ。命を失って当然さ。この国も実は、結構な人が居なくなってるんだよね。神隠しって事で迷宮入りした大規模行方不明事件があっただろう?」

提督「あれか……」

救護妖精「それで、大混乱が収まってきた頃、深海棲艦がありえないくらい出現した。これは私の予測だけど、消えちゃった人みーんな深海棲艦になったんじゃないかな」

344: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 03:28:00.90 ID:qCrR2zLOo
提督「待て。それだとさっき言っていた人工魂の出てこない深海棲艦は全員それなのではないか?」

救護妖精「それは違うと思うよ。ありえないくらい出現した深海棲艦から結構な数の人工魂が出たみたいだから」

救護妖精「みんな、みーんな深海棲艦になっちゃった。そう考えても良いと思う」

提督「では……私たち海軍が戦ってる理由は三つになるのか」

救護妖精「かな? 一つは国民の不安をこれ以上大きくしない為。一つは深海棲艦を駆逐する為。もう一つは……」

提督「広大な土地と資源を手に入れる為……だろうな」

救護妖精「人類がほとんど居なくなった今なら、文字通り世界征服も実現可能だろうしね」

提督「おまけに、残っていれば技術も手に入る」

救護妖精「やる事がえげつないねぇ」

救護妖精「おっと、話が逸れちゃったね。提督の親父さんさ、なんで殺されたと思う?」

提督「やはり殺されたと見て良いのか……。なぜだ?」

救護妖精「提督の親父さんってさ、ものすっごい正義感の強い人だったんだよね。で、そんなだから艦娘の詳細を一切教えなかったんだ」

救護妖精「でも、そんなのいつかバレちゃうよね。しかも、よりにもよって自分の家族が艦娘にされたって知っちゃったんだ」

提督(ああ……だから戦姫は抱き付いて泣いていたと言っていたのか……。戦姫の事だ。愛していたという表現もどうせ家族のように愛してもらっていたという事だろう。翔鶴や瑞鶴も特に懐いていたという理由も分かる。母の写真だけだと思っていたが、本当はあの二人も映っていたのだろうな……)

345: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 03:40:18.81 ID:qCrR2zLOo
救護妖精「で、当たり前だけど直訴したみたい。だけど、脅された。なんだったらカプセルごと素体を破壊してやろうかって。そんなこんなで親父さんは言う事を聞いてたみたい。……けど、沖ノ島海域の大規模戦闘の時、交換条件を出された」

提督「この海戦に勝てば三人は生きて返してやろう。といった所か」

救護妖精「正解。それで親父さんは艦娘全員を連れて……や、一隻だけ残ってたんだっけ──まあ、戦闘にいったんだよね。支援艦隊を結成し、向かわせて援護をしてやるからって言って」

提督「やる事がとことん下衆だな」

救護妖精「本当にね……。可哀想だよ……提督の親父さんは家族を取り戻したかっただけなのに……」

提督「戦艦一隻と空母二隻だ。もし成功させられたら損失は大きい上に、父がどう出てくるかも分からない」

救護妖精「理由はそんな所だったよ……。あの元帥から話を聞いていて、当時の私は大して興味を持っていなかったのが恥ずかしい……」

提督「それに関してはなんとも言えない。だが、今は違うだろう」

救護妖精「そりゃね……」

提督「だったら、協力してくれ」

救護妖精「……何にだい」

提督「さっきも言ったとおり、海軍の黒い部分──現在の大将共と研究員を皆殺しにする。そして、艦娘のベースとなっている人々を助ける」

救護妖精「……なに言ってるのさ。何を言ってるのさ!? 艦娘のベースとなった人を助ける!? それ、どうなるのか分からないんだよ!?」

救護妖精「まず間違いなく現存する艦娘は全員消える!! もしかしたら深海棲艦も消えるかもしれないけど、それは保障できない! もし深海棲艦が消えなかったら誰も深海棲艦に勝てない! この世は終わっちゃうのよ!?」

347: saga入れ忘れてた。 2013/11/02(土) 03:42:34.73 ID:qCrR2zLOo
提督「その可能性も考えてある。まず重巡を全員解放する。もしそれで深海棲艦から重巡が消えれば全員を解放すれば良い。もし重巡が一隻でも出てきたら、深海棲艦を全員駆逐してから解放すれば良い」

救護妖精「……なんで重巡なのさ」

提督「一番は私に付き従ってくれる艦娘に重巡が居ないという事。次に、空母や戦艦ほど火力は無いが、駆逐艦や軽巡のように小回りが利く訳でもないから、解放するのであればまだ重巡が一番マシという事だ」

救護妖精「…………もし深海棲艦が消えなかった場合、大将達はどうするの」

提督「アレらはどっちにしろ殺す。どう転んでも邪魔だ」

救護妖精「どうやって殺すのさ。バレるでしょ」

提督「バレない方法がある」

救護妖精「…………」

提督「…………」

救護妖精「……なんとなくやる事が分かったよ、悪党」

提督「ああ。私は悪党だよ」

救護妖精「まったく……反逆罪だよ?」

提督「バレなければ罪に問われんよ」

救護妖精「……それもそうだねぇ」

救護妖精「そっちは分かったけど、研究員はどうするのさ」

提督「アレらが死ねば、あの研究員達を動かせるのは私だけになる。地下にでも集めて皆殺しにすれば良いだろう」

救護妖精「……言う事が恐ろしいねぇ」

提督「悪党だからな」

救護妖精「オッケー。私はその案に乗る。もう既に何人も殺してるんだ。今更、殺しの片棒を担いでもなんともないさ」

提督「では、早速計画を開始しよう──」

……………………
…………
……

371: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 17:48:09.02 ID:qCrR2zLOo
開発妖精「おお? 提督さん、金剛さん、また何か作ってくれるの!?」ワクワク

金剛「ソーリー……今日は違うのデース」

提督「すまないが、今回は頼みがあって来た」

開発妖精「え、頼み? 珍しいね」

提督「物を造る事には変わりないが、少々特殊でね」

開発妖精「ふーん? でも物を造れるんでしょ!? いいよいいよ~何でも言って~!」

提督「電波を妨害する機械を造って欲しいのだが、できるか?」

開発妖精「へ? 電波を妨害する機械? たぶん造れるだろうけど、どうしたの一体」

提督「必要になってな」

開発妖精「ふーん……。使う場所と効果範囲とかはどのくらいが良いの?」

提督「使うのは何も無い海の上だ。効果範囲は……そうだな……できれば広い方が良いんだが、どのくらいなら造れる」

開発妖精「半径100メートルくらいなら」

提督「最低でも500は欲しい」

開発妖精「な、何気に難しい事を言ってくれるね……500かぁ……うーん……造れない事はないと思うけど……。でも、そんな物を使い続けてたら身体にどんな影響が出るか分かんないよ?」

提督「使用時間は三十分も無く、使うのは一度切りだが、ダメか?」

開発妖精「うーん……それだったらなんとか……」

提督「無理を言ってすまない」

開発妖精「良いって良いって。ただ、造った事が無い分野だからちょっと時間が掛かると思うよ?」

提督「三日以内に造ってくれるとありがたいのだが」

開発妖精「あ、そなんだ? それくらいなら余裕だねー」

金剛「装備でしたら一瞬で造っちゃいますものネ」

開発妖精「ふふん。そこは自慢なのだ!」

提督「では、良い品を期待しているよ」

開発妖精「はいよー!」

……………………
…………
……

374: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 18:00:13.97 ID:qCrR2zLOo
~提督室~

金剛「テートク」

提督「なにかね」

金剛「どうして電波妨害装置が必要なのですか?」

瑞鶴「電波妨害装置?」

提督「ああ、瑞鶴はその場に居なかったな。どうしても必要になってな」

瑞鶴「でも、そんなもの何に使うの? 使い道が全然思い浮かばないんだけど……」

提督「…………」

金剛「……テートク?」

瑞鶴「?」

提督「……今はまだ話せない」

金剛「いずれ、話してくれるのデスか?」

提督「ああ」

瑞鶴「もー……私達にまで秘密って何なのよ……」

金剛「今回ばかりは私も予想すらできまセン……」

提督「時が来たら、必ず話す」

金剛「……もう、仕方がないですね」

瑞鶴「ちゃんと話してよ?」

提督「ああ。ちゃんと話すよ」

提督(……その時は、お別れの時かもしれないがな)

提督「……ところで、今やっている仕事を半分だけ──」

金剛・瑞鶴「ダメ」

提督「……本当に、私はいつになったら仕事が出来るんだ」

……………………
…………
……

380: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/02(土) 18:08:34.66 ID:qCrR2zLOo
コンコン──。

提督「入れ」

ガチャ──パタン

響「…………」

提督「どうした、響」

響「………………っ」

提督「響」

響「!!」ビクン

響「っ」ピシッ

提督「話しなさい」

響「ぅ……はい……」

響「その前に司令官……聞いても引かないでもらえると……嬉しい……」

提督「…………分かった。言ってみろ」

響「……独りは、終わると寂しかった」

提督「……………………」

響「な、何か言ってくれるかな司令官……」

提督「いや……どうしてやったら良いものかと思ってな……」

響「……できれば、なんだけど」

提督(嫌な予感しかしない)

響「司令官……お願いして、良いかな……」

提督「……………………」

響「指で……指で良いから……」

提督「……本当は、良くないと知っていて言ってるのか?」

響「分かってるさ……でも、司令官が鎮守府から離れて寂しかったんだ……。だから、その寂しさを埋めようとしたのに……胸が痛くなるくらいに寂しくなって…………」

提督「…………」

響「我侭を言ってるのは分かってるよ……でも……抑えきれないんだ……」

提督「……仕方がない、な」

響「────! ありがとう、司令官……」

……………………。

442: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 21:27:36.22 ID:Ah3KN2S/o
響「ただいま」

雷「あ、おかえりなさい!」

暁「もう、どこに行ってたのよ」

電「心配したのです……」

島風「おかえりー。どこに行ってたの?」

響「外だよ。夜の海を見たくなって、あちこち動き回ってた。何も言わずに行ってしまってごめんよ」

島風「あれ? 外なら私も行ったよ?」

響「ん、そうなのかい? じゃあ行き違いになってたのかな……」

島風「そっかぁ」

響「司令官にはこってり叱られてしまったよ。同じ部屋の人に何か言ってから出掛けるようにってね」

暁「とにかく、無事で良かったわ」

電「ふぁ……安心したら眠くなってきちゃったのです……」

島風「それじゃあ、もう寝よっか」

電「はいなのです」

雷「…………んー」

響「ん、どうしたんだい雷」

雷「…………」ジー

響「?」

雷「大人になったわね、響」ヒソ

響「ッ!?」ビクン

雷「大丈夫よ、誰にも言わないから!」ヒソ

響「…………」コクン

響(雷……。初めて雷が怖いって思ったよ……)

……………………
…………
……

444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 21:38:08.72 ID:Ah3KN2S/o
コツッコツッ──

提督(ん、こんな時間に誰だ? 響か島風……もしくは金剛か瑞鶴か?)

提督「入れ」

ガチャ──パタン

榛名「夜分遅く、失礼します」ペコ

提督「榛名か。どうした」

榛名「あの……眠れないので散歩をしようと思ったのですが、いつのまにかここへ……」

提督「ふむ……」

提督(暗示を掛けるのには丁度良いか)

提督「分かった。明かりを点けてくれ」

榛名「はい」

パチッ──

提督「ありがとう。──眠くなるまで雑談をしよう。私も寝付きが悪かった所なんだ」

榛名「提督さん、ありがとうございます!」

……………………。

445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 21:54:50.14 ID:Ah3KN2S/o
提督「待たせた」カチャ

榛名「いえ、本当ならば私が淹れるべきですのに……」

提督「せめてこのくらいはさせてくれ。何もしてはいけないというのは苦痛だ」

榛名「はい……」

提督「今日はいつもと違う茶葉を使ってみたが、どうかね」ズズッ

提督「……………………」

榛名「そうなのですか? では、いただきますね」コクコク

榛名「──あっ、なんだかほんのりと柔らかい甘みがあります! 色はほとんど変わらないのに、茶葉でこんなに

変わるなんて──って、提督さん?」

提督「……………………」

榛名「え、え? ど、どうかしたのですか? そんなにうな垂れて……」

提督「甘かった……」

榛名「え……? 甘い……あっ!」

提督「甘いのは苦手なんだ……」

榛名「そういえば、提督さんは甘い物がダメでしたね……大丈夫ですか?」サスサス

提督「甘みも少なく……糖分は入っていないようだからなんとか……背中、さすってくれてありがとう……」

榛名「え、えっと……何か袋をお持ちしましょうか……」サスサス

提督「いや、だいぶ楽にはなってきた……。だが、水を持ってきてもらって良いかな……」

榛名「は、はい!」

……………………。

446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 22:06:30.42 ID:Ah3KN2S/o
提督「……うむ。もう大丈夫だ」

榛名「良かった……。でも、あんなに仄かな甘みでもダメなのですね……」

提督「二度とこの紅茶は口にしないようにしよう」

榛名「その方が宜しいですね……こんなになるのですから……」

提督「手を貸してくれてありがとう」スッ

榛名「っ…………」ピクン

提督「…………」ナデナデ

榛名「はぅ……」ホッコリ

提督「最初と比べて、だいぶ怖がらなくなってきたようだな」ナデナデ

榛名「あ…………そういえば……」

榛名「あ、その……ごめんなさい……ほとんど反射的なもので……」

提督「いや、構わない。それだけ怖くなくなっているという事ではないか」ナデナデ

榛名「────ありがとうございます」ニコ

提督「……ここに居る限りは、もう怖がる事はない」ナデナデ

榛名「…………本当に、そうなのでしょうか」

提督「勿論だ」ナデナデ

榛名「ですが……提督が……いらっしゃい、ます……」

提督「榛名?」ナデ

榛名「あれ……頭が……ボーっと……」

榛名「して…………………………?」

榛名「……………………」

提督(薬が効き始めたか。では、始めるか──)

……………………。

447: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 22:17:11.11 ID:Ah3KN2S/o
提督(そろそろ薬が切れてくる頃だな)

提督「目を閉じろ。──おやすみ、榛名」

榛名「おやす、み…………」スッ

提督(さて……この子はベッドに寝かせて、私はソファで寝るとしよう)ヒョイ

榛名「…………」

提督(よいしょ……っと)ソッ

提督(さて……寝るか)スッ

榛名「──やだ」ガシッ

提督「む」

榛名「やだぁ……」

提督「……榛名?」

榛名「独りは……やだ……」

提督(……起きている、という事はなさそうだな。では、夢か何かか?)

提督(…………離してくれそうにないな……仕方がない……)

提督「…………」モゾモゾ

榛名「…………」ギュ

提督(……完全に逃げれなくなったな。もう諦めるか……)

提督「……おやすみ、榛名」

榛名「…………」スゥ

……………………
…………
……

448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 22:29:49.54 ID:Ah3KN2S/o
榛名「ん…………」スッ

榛名(あれ……真っ暗……? ここ、どこ……?)モゾ

榛名「…………?」

榛名(私、何かを抱き締めてる……? なんだろう、これ……温かいけど、なんだかゴツゴツしてる)

提督「む……起きたか」

榛名「──え!? え、ええ!? ど、どういう事ですかこれ!? なんで、私……え……?」

提督「何も憶えていないのか?」

榛名「えっと…………。なんだか、寝惚けて抱き締めた記憶が……」

提督「それが私だ」

榛名「……えっと、つまり……眠ってしまった私を運んで、こうなったのでしょうか……?」

提督「正解だ」

榛名「ご、ごめんなさい!」バッ

提督「いや、構わんよ。カーテンを開けてくる」スッ

榛名「は、はい……」

シャッ──!

榛名「ん、眩しい……」

提督「簡単に説明すると、前と同じように眠ってしまった榛名をベッドへ寝かせたら抱き付いてきて離してくれな

かった。……不本意かもしれないが、一緒に眠らせてもらった」

榛名「ごめんなさい! 迷惑を掛けてしまって!」ペコ

提督「いや、構わんよ」

榛名「ですが……」

449: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 22:38:35.01 ID:Ah3KN2S/o
提督「……このまま…………」

榛名「え?」

提督「いや、なんでもない」

榛名(提督さんは、何を隠しているのでしょうか……)

コンコン──。

提督「入れ」

ガチャ──パタン

金剛「グッモーニング! テートクー!」

提督「おはよう金剛」

金剛「あれ、榛名も早いデスね。グッモーニング!」

榛名「おはようございますお姉様」

提督「機嫌が良いようだが、何かあったのか?」

金剛「ふふーん。とっても良いドリームを見たのデス!」

提督「ほう」

金剛「テートクと結婚して、子供を授かって、幸せな家庭を築いている夢でシタ!」

提督「…………」

榛名「…………」

450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 22:48:55.94 ID:Ah3KN2S/o
金剛「なーんで黙っちゃうのデスか二人共!!」

提督「いや……驚いて何も言葉が出てこなかった」

榛名「私もです……。艦娘は子供を宿しませんよね……?」

金剛「ぶー。夢の中くらい良いじゃないデスか」

金剛「まあ、私としては子供が出来なくても、それはそれで色々と楽しめそうデスけどネ?」チラ

提督「朝から何を言っているんだ……」

榛名「お姉様……」

金剛「ふふっ。私はいつでもウェルカムですヨ?」

提督「いい加減に夢から覚めろ」コツッ

金剛「アウッ! ぅー……ごめんなさい……」

提督「分かれば宜しい」

榛名「…………?」

金剛「? どうしました榛名?」

榛名「いえ……。あ、あの……提督さん、変なお願いをしても良いでしょうか……」

提督「内容によるが、まずは言ってみろ」

榛名「先程お姉様を叩きましたけど、私にも同じように叩いてください」

金剛「…………?」

提督「何か悪い事でもしたのか?」

榛名「いえ……ちょっと気になってしまって……」

提督「…………不思議な子だ。──いくぞ」コツッ

榛名「…………? ……………………?」

451: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 22:59:50.29 ID:Ah3KN2S/o
提督「どうした」

榛名「いえ……まったく痛くなかったので……」

提督「当たり前だ」

金剛「提督は痛い事を絶対にしないデスよ?」

榛名「…………?」

提督「何やら大きく誤解されているようだ」

榛名「怒っているのに、痛く……しないのですか?」

提督「私は怒っていない。叱っている。感情的に人を傷付けるなんて事はせんよ」

榛名「……………………」

提督「本当だ。信用できないか?」

榛名「いえ……こんな世界もあるのですね、と思いまして……」

提督「ここは私の城だからな。私のやりたいようにやらせてもらっている」

金剛「そんなテートクが大好きデス!」ギュー

提督「……とうとう金剛も吊るされる事となるか」

金剛「えー……愛の表現もダメなのデスかー……?」

提督「時間と場所を弁えろと言っている」

金剛「はーい……」

提督「金剛」

金剛「はいっ!」ピシッ

提督「返事は延ばすな」

金剛「ごめんなさい……」

452: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 23:08:36.36 ID:Ah3KN2S/o
提督「まったく……良い夢を見て気分が良いのは分かるが、そろそろ皆も来る。いつものようにしていなさい」

金剛「はいっ」

榛名「……………………」

榛名(優しいのですね、提督……。────!)ハッ

榛名(あれ……今……?)

提督「ところで金剛、手に持っている書類を見せてくれ」

金剛「仕事をしてはいけませんヨ?」

救護妖精『洗脳が完全って訳でもないんだよね。急に洗脳が解けたり、違和感が生まれて本当の提督を思い出す艦娘とか居るみたい』

榛名(……もしかして)

提督「私宛の機密書類があるかどうかの確認だ」

金剛「それなら……。はい、どうぞ」

救護妖精『洗脳できた艦娘は一部の提督にしか渡されてないよ──当時の大将とか、元帥とかにしか』

榛名(私の、本当の提督は……)

提督「……ふむ。特に無いようだな。残念だ」

金剛「もう……提督はしっかりと身体を治してくだサイ」

提督『世の中には、知らない方が良い事もある』

榛名(このお方……?)

……………………
…………
……

453: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 23:09:17.66 ID:Ah3KN2S/o
提督「──との事で本日は進める。異論がある者は手を上げてくれ…………居ないようだな。それでは、か……くじ……────」

ガクン──

金剛「提督!?」

瑞鶴「提督さん!?」

金剛「──島風! 救護妖精を呼んできて!!」

島風「はい!!」

金剛「瑞鶴は砂糖を!!」

瑞鶴「分かったわ!」

金剛「他の人は救護妖精が来た時に邪魔にならない場所へ移動!!」

全員「はい!」

金剛(後はベッドへ運んで、いつでも寝かせれるようにしておけば……!!)

……………………。

救護妖精「……うん。低血糖だろうね、これ」

金剛「やっぱりですか……」

救護妖精「んー、これ以上できる処置が無いね。やったの誰?」

金剛「私ですが……」

救護妖精「適切な処置だと思うよ。提督は良い秘書を持ったねー」

金剛「ありがとうございます。それより……提督は大丈夫なのでしょうか」

救護妖精「本当に良い秘書だねぇ……。問題ないよ。このまま起きなかったら同じように口に砂糖を突っ込んだら良いさ」

救護妖精「まあ、起きるまで私が側に居るから安心していな」

金剛「はい。お願いします」ペコ

全員「…………」ペコ

救護妖精(本当に好かれてるねぇ。どっかのしぶとかった誰かとは大違いだ)

……………………。

454: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/03(日) 23:09:50.15 ID:Ah3KN2S/o
提督「ん……」

金剛「!! 提督、起きたのですね!」

提督「…………どうやら皆に迷惑を掛けてしまったようだな。すまない。そしてありがとう」

金剛「良かった……目を覚ましてくれて……」

提督「そう簡単に死なんさ。だから泣くな」

金剛「はい……はい……っ!」

救護妖精「んー……良い雰囲気のところ悪いんだけどさ、提督、一つ良いかな」

提督「なにかね」

救護妖精「寝不足と疲労と糖分不足が原因っぽいんだけどさぁ……なんでなのかな?」ニコ

提督「…………」

救護妖精「疲労はまだ分かるんだけどさぁ……? どうして寝不足っぽい症状も出てるのかなぁ……?」

提督「……なぜだろうな」

救護妖精「ちゃんと休めやこらぁぁあ!!! どーせまたなんか個人的な理由で寝不足になったんでしょうが!!」

響(わ、私のせいなのかな……)ビクビク

榛名(私が昨日、遅くに押しかけたから……)ビクビク

提督「……すまん」

救護妖精「こんなんじゃいつまで経っても治りやしないよ!!」

提督「善処する……」

救護妖精「信用できないね! 監視役が必要なんじゃないかな!?」

金剛(秘書として監視役を……)

瑞鶴(監視役になったら私もずっと一緒に……)

響(監視役になれたら、司令官ともっと長く……)

榛名(その役に私がなると、あの疑問も解けるのでしょうか……)

提督「冗談はやめてくれ。それこそ心労が溜まる」

救護妖精「それもそうだよね」

四人「!!」ガーン

救護妖精「まあとにかく、一日中寝るくらい休みなよ」

提督「なんとかしてみるよ。ありがとう」

救護妖精「はいよ。じゃあまたね~」

……………………
…………
……

473: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 19:40:55.92 ID:LxWjxs4Oo
コンコン──

救護妖精「はいはーい。どうぞー」

ガチャ──パタン

榛名「あの……こんにちは」

救護妖精「うん? あーこんにちは。どしたの?」

榛名「あの……元帥様──提督の容態はどうなのでしょうか……。あれから結構な時間が経ちましたけど、何も音沙汰がありませんでしたので……」

救護妖精「あー……」

救護妖精(そろそろ限界かねぇ……)

救護妖精「んー……なんて言ってやったら良いかなぁ……」

榛名「……もしかして、もう目を覚まさない、とか……」

救護妖精「…………あながち間違ってないね」

榛名「え……」

救護妖精「無理だね。あれはもう」

榛名「そんな……。ど、どうしてですか……?」

救護妖精「衰弱しきってたから、かね。本当は生きてる事自体がおかしいくらいだったんだよ」

榛名「……………………」

救護妖精「……遺言を貰ってるけど、聞くかい?」

榛名「遺言…………はい……お願いします……」

救護妖精「『お前の主は別に居る。それは自分で見つけろ』だってさ。無責任な最後だったよ」

474: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 19:53:45.91 ID:LxWjxs4Oo
榛名「…………それ以外には何か、仰っていましたか……?」

救護妖精「いや、その言葉を最後にポックリと。遺体も本人の希望で海に還したよ」

榛名「そんな……死に目にも会えないだなんて……」

救護妖精「……貴女みたいな艦娘はいくらでも見てきたけど、幸運だとは思うよ」

榛名「幸運……? なぜ……? なぜですか……! 私は、提督を失ったのに……!!」

救護妖精「遺言で言ってただろう? 自分の提督を見つけろって。それってつまり、本当の提督は生きてるって事じゃないか」

榛名「でも……それでも……私が今まで付き従っていた提督は……提督が…………」

救護妖精「こればっかりは特殊過ぎて、あたしもアレコレとは言えないけどさ……。落ち着いたら自分の心を見つめてみると良いよ。そこに答えはきっとあるからさ」

榛名「自分の……心…………?」

救護妖精「前にも言ったけど、あたしが知っている洗脳は完全じゃない。貴女みたいに、違和感が生まれるんだったら心のどこかに本当の提督の姿があるんじゃないかな」

榛名「本当の…………提督………………」

救護妖精「心を落ち着けたいんだったらこれを飲むと良いよ」スッ

榛名「…………これは……?」

救護妖精「精神安定剤。効き目は強くないけど、今の貴女ならこれでも充分だろうね。摂り過ぎてもあんまり支障はないけど、一日に服用は一回のみ。心が不安定の時以外は使わない事。あと、間違っても他の人に渡さない事。良いね?」

榛名「……はい」

救護妖精(まあ、本当は砂糖と小麦粉の粉なんだけどね)

476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 20:06:58.09 ID:LxWjxs4Oo
救護妖精「今飲むと良いかもしれないね。はい、水」スッ

榛名「…………はい」ソッ

榛名「……………………」コクン

救護妖精「すぐには効果は出ないけど、だからと言って二回も飲んじゃダメだよ?」

榛名「はい……。…………? ……甘いですね、これ?」

救護妖精「飲みやすいように砂糖も混ぜてるからね」

救護妖精「それじゃあ、ゆっくり休んでな。貴女は私らの提督と違って精神が弱ってるんだ。理由は違えど、休まないとあの提督みたいに治るもんも治りやしないよ」

榛名「……はい」

救護妖精「──ああ、そうだ。良い事を思いついた」

榛名「良い事……ですか?」

救護妖精「榛名さんや、提督と一緒に寝てくれるかい?」

榛名「寝る…………。────っ!?」ビクン

榛名「な、なな! 何を!?」

救護妖精「そっちの寝るじゃないよ。何を想像してんだい……」

榛名「ぅ……」

救護妖精「どうせあの提督の事だ。まともに寝やしないだろうから、一緒に寝てやってくれって事だよ」

榛名「……でも…………」

救護妖精「今は一人になりたいっていうのならそれで構わない。けど、心の傷を癒すのは人の温もりだっていう事を憶えておくと良いよ」

榛名「人の……温もり、ですか……」

救護妖精「そ。医学的にはちょっと意味分かんないんだけど、なーんでか人って、心を許してる相手に抱き締められると心の傷が癒えるの早いんだよねぇ」

榛名「そう、なのですか…………」

救護妖精「そういう事。なんだったらここで休んでっても良いから、後は好きにしなー」

榛名「はい……。ありがとうございます……」ペコ

榛名(人の…………あのお方の、温もり……)

……………………
…………
……

477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 20:23:25.11 ID:LxWjxs4Oo
コンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

榛名「失礼します……」

金剛「……榛名、どうかしまシタか? 顔色が悪いデス」

榛名「……大丈夫ですよ、お姉様」

瑞鶴「本当に大丈夫なの? 声にも元気が無いじゃない」

榛名「ご心配、ありがとうございます」

榛名「……今回は、皆さんにお願いがあって来ました」

金剛「榛名がお願いなんて珍しいデスね? 何デスか?」

榛名「あの……提督さんと寝させて下さいませんか……?」

金剛「なぁっ!?」

瑞鶴「ちょ、ちょっと!? 何を言ってるのよ!」

榛名「あ、あの……睡眠という意味ですよ……?」

金剛「ああ……そういう意味だったのですね……」

瑞鶴「うーん……」

金剛「私は構いませんよ?」

瑞鶴「え? そ、それなら私も……」

提督「……そもそも、どうして私と一緒に寝たいと思った」

榛名「少し、心が不安定になる事がありまして……。救護妖精さんが、休むなら提督さんと一緒に寝てくれないか、と……」

金剛「なるほどネー。榛名、私からもお願いしマス。テートクを寝かし付けて下サイ!」

提督「…………」

478: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 20:34:12.51 ID:LxWjxs4Oo
金剛「提督、さっきから寝る気が無いみたいですし」ジッ

提督「だからなぜ分かる……」

瑞鶴(寝てなかったんだ……)

金剛「耳栓を付けていないじゃないですか! これを機に、しっかりと寝てください!!」

提督「……分かった」

金剛「あ、でも……●●●な事はいけませんよ?」

榛名「し、しません!!」

提督「信用されていないのかね……」

瑞鶴(……本当に凄いわ、金剛さん)

金剛「ジョークですヨー♪ ほらほら、二人共寝ちゃって下サイ!」

榛名「は、はい……あの、提督さん、失礼しますね……?」モゾモゾ

提督「……ああ」モゾモゾ

瑞鶴(羨ましい……)

金剛「~♪」

榛名「あの……」コソ

提督「なにかね」コソ

榛名「抱き締めてもらっても……構いませんか……?」

提督「…………分かった」ソッ

榛名「ぁ……」

榛名(温かい…………。刺さった氷の棘が溶けていくみたい……)

榛名「もっと……」ギュゥ

提督「…………」ギュッ

榛名(こんなに温かい気持ちになるのは……なぜでしょうか……。薬のおかげ……?)

榛名(それとも……本当に、このお方が……私の提督だから……?)

榛名(ダメ……眠くて頭が働かない……)

榛名(心地良い、です…………)

提督「……………………」

……………………

479: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 20:47:22.57 ID:LxWjxs4Oo
榛名「ん……」

提督「起きたか」

榛名「ぁ…………おはようございます……」

金剛「よく眠れまシタか?」

榛名「ん、くぁ……。はい……とても心地良かったです……」グシグシ

瑞鶴「顔、洗ってくる?」

榛名「はい……そうします……」

提督「こけないように」

榛名「はーい……」トテトテ

金剛「ふふっ」ニコニコ

瑞鶴「やけに機嫌が良いわね。どうしたの?」

金剛「榛名も、テートクの良さが分かってくれたのカナ、と思いまして」

瑞鶴「そうだろうけど……なんだか私は微妙な気分……。金剛さんは嫌じゃないの?」

金剛「私ですか? 私はこんなに素敵な人が、色々な人に知られるのは嬉しいデス! ──あ、でも簡単に譲る気はありませんけどネー?」

瑞鶴「私は逆だなぁ……。独り占めしちゃいたくなる……」

金剛「ンー……。そこは人によって違いますからネー……」

480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 21:06:35.89 ID:LxWjxs4Oo
提督「私のどこが良いのやら」

金剛「優しい所」

瑞鶴「頼れる所」

金剛「格好良い所」

瑞鶴「大事にしてくれる所」

金剛「というより、全部です」

瑞鶴「うん。金剛さんと同じ」

提督「…………」

榛名「ふぅ……。提督さんは好かれていますね」

提督「不思議なくらいだよ」

榛名「でも、気持ちは良く分かりますよ。私も、凄く素敵なお方だと思っています」

提督「……………………」

榛名「……こう言うのは、本当はダメなのですけど……私の本当の提督が、貴方だったらって思ってしまうくらいに……」

提督・金剛・瑞鶴「!」

榛名「……なーんて。ごめんなさい、冗談です」ニコ

提督「…………そろそろ昼時だな。食堂へ行こう」

金剛・瑞鶴「はいっ」

提督「行くぞ、榛名」スッ

榛名「──はいっ」ギュ

瑞鶴(ぅー……)

……………………。

481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 21:30:00.17 ID:LxWjxs4Oo
コンコン──。

提督「入れ」

ガチャ──パタン

榛名「榛名、出頭しました」

提督「うむ。今日は重要な話があって呼んだ」

榛名「重要なお話……ですか?」

提督「……以前、時が来たら話すと言っていた内容だ」

榛名「!」

提督「そろそろ、話しても大丈夫だろうと思ってな」

榛名「……はい。覚悟は出来ています」

提督「単刀直入に言おう。榛名は、本当は私の艦娘だ」

榛名「…………っ! やっぱり、なのですね」

提督「……鎮守府の提督となった暁には、艦娘が一隻、総司令部より送られる制度を知っているか?」

榛名「噂程度には聞いた事があります……けど、実際に見た事はありません」

提督「それも無理はない。普通はその送られてきた艦娘しか知らない事だ。詳しい事は電に聞くと良い。あの子がその艦娘だ」

提督「そして、榛名は手違いで私の所へ来た艦娘だ」

榛名「手違い……ですか?」

提督「総司令部に所属している妖精が、間違って戦艦を造ってしまった。これはたまにある事なのだが、その場合は特に功績を挙げた提督へ送られる事となるのだが……その送り先をここへしてしまったそうだ」

榛名「──確かに元帥様が仰っていました。総司令部の建造妖精は腕は良いがたまに大きなミスをする、と」

487: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/04(月) 22:22:12.55 ID:LxWjxs4Oo
提督「そして私は正直、混乱した。士官学校では不真面目にしていたが、駆逐艦だと聞いていたのに戦艦が来ている事。少ない資材でどうやって戦艦を運用するのか、と悩んだ。それとも、不真面目にしていた私に対する罰なのかと思うくらいにな」

提督「何かの手違いかと思って総司令部に問い合わせてみると、その通りだったよ。初期に戦艦を動かすのは難しいだろうという事でお前は総司令部に引き取られる事となった。……その時の榛名は嫌々だったな。その後、何があったのかは分からないが……元帥殿の手に渡っていたようだな」

榛名「……救護妖精さんが仰っていました。艦娘の刷り込みを、洗脳によって刷り直す技術があると……」

提督「なるほど。総司令部で記憶を消され、そして元帥殿に送られた、か」

榛名「確かに、元帥様にお会いした時の事がほとんど思い出せません……。きっと、その洗脳によるものなのでしょうね……」

提督「……元帥殿から、お前が私の初めての艦娘だと聞かされた時は驚いたよ。まさかこんな偶然があるのか、と」

榛名「本当に、凄い偶然です」

提督「これも運命なのだろう」

榛名「運命……」

提督「提督と艦娘は何かしらの絆があると聞いた事もある。もしかしたら、今回はその絆によって再び巡り会えたのかもしれないな」

榛名「絆……」

提督「私から話せる事はこれだけだ。後は、榛名の思ったように行動すると良い。──もし、私の艦娘として一緒に戦ってくれるというのであれば、手厚く歓迎する」

榛名「お願いしても、よろしいでしょうか」

提督「……私が言うのもおかしい話だが、即答か」

榛名「いけませんでしたでしょうか……」

提督「いや、嬉しいよ。戻ってきて欲しいと願っていたからな」

榛名「はい! 私も嬉しいです!」

榛名「──その言葉だけでも、私は救われた気持ちになります!」

提督「……………………」

……………………
…………
……

494: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 01:23:34.97 ID:ZOhB3/SKo
提督「ダメか?」

救護妖精「良いよ」

金剛・瑞鶴「!!」

提督「やっと出撃の許可が下りたか……」

救護妖精「糖分もこの間ので摂取してたし、疲労も結構取れてるみたいだしね。そろそろ動かないと、上にどやされるでし

ょ?」

提督「分かってくれているようで助かるよ。昨日、催促の書類も来ていた」

救護妖精「出撃するのは良いけど、病み上がりなんだから無茶しちゃダメだかんね」

提督「善処する」

救護妖精「本当に善処してくれたら良いんだけどねぇ」

救護妖精「まあ、ほどほどにねー。あたしも効率良く糖分が摂取できる方法を探してみるよ」

提督「ありがとう。頼んだ」

救護妖精「これがあたしの仕事だからねー」

金剛「お願いします」ペコ

瑞鶴「お、お願いします」ペコ

救護妖精「あいあい。じゃあ、お大事にねー」

ガチャ──パタン

救護妖精「……そろそろ、か。私も何か出来たら良かったんだけどね……」

495: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 01:35:26.10 ID:ZOhB3/SKo
コンコン──

救護妖精「うん? はいはいどなた?」

ガチャ──パタン

榛名「こんにちは」

救護妖精「やあ。どうしたんだい」

榛名「刷り込みの事でお世話になりましたので、お礼を言いに来ました」

救護妖精「んー? ああ、あの事ね。そんなに気にしなくて良いのに」

榛名「いえ、本当にありがとうございました」ペコ

救護妖精「まあ……あの時の貴女って死にそうな顔してたしね。助けれたのならあたしもやった甲斐があるってもんさ」

榛名「死にそうな……。そんな顔でしたか?」

救護妖精「うん。もうね、世界の終わりだー死んでやるーって顔だった」

榛名「……確かにそうだったかもしれません」

救護妖精「と、まあ、もう大丈夫みたいだね。目が全然違うよ」

榛名「はい!」

救護妖精「それじゃあ、貴女もお大事にね」

榛名「ありがとうございました」ペコ

救護妖精「あいあい」

ガチャ──パタン

救護妖精「……これで、本当に良かったんだよね」

……………………
…………
……

496: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 01:45:43.51 ID:ZOhB3/SKo
戦姫「──珍しいですね。提督が私達を呼ぶなんて」

ヲ級「♪」ギュー

提督「ああ。準備が整ってきたからな。そして、お前達に汚い仕事を頼みに来た」

戦姫「なんでしょうか?」

提督「以前会った、あの大将共を残らず駆逐してほしい」

戦姫「……それは、文字通りの意味でしょうか」

提督「ああ。言い換えると殺してほしい」

戦姫「理由をお聞きしても宜しいでしょうか」

提督「艦娘を──いや、艦娘のベースとなった者を救う為だ」

戦姫「……あの地下で見つけた子達ですね」

提督「ああ。そして、二度とこのような事が起こらないように、関係者と施設を全て消す」

戦姫「しかし、どうやって助けるのですか?」

提督「あのカプセルから解放してやれば助かるらしい。そして、それと同時のその艦娘は消えるそうだ」

戦姫「! それは、深海棲艦もでしょうか」

提督「そこは分からない。消えるか留まるか、運試しに近い。だが、もし留まるというのであれば、私が海軍の指揮を執っ

て駆逐する」

戦姫「……私達も、駆逐されるのでしょうか」

提督「そこはお前達次第だ。もし私達に牙を向けるのであれば、人々は排除する為に動くだろう。だが、共存してくれるの

であれば危害を加える事もない」

戦姫「…………」

497: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 02:00:10.77 ID:ZOhB3/SKo
提督「甘いというのは分かっている。だが、解体するという手もある」

戦姫「解体……?」

提督「あくまで憶測だが、深海棲艦は艦娘と比べて性能の優劣程度しか違いがない。という事は、解体を施す事で普通の人

間になる可能性だってある訳だ」

戦姫「……盲点でした。確かに、解体する事でどうなるかは分かりませんね」

戦姫「ですが、もし解体できない場合は……」

提督「その時はその時だ。残った者で静かに暮らすという選択肢もあるだろう」

戦姫「貴方も一緒、ですよね?」

提督「……恐らくそうなる」

提督「私は、これが終われば独りになる。それは間違いないだろうからな」

戦姫「それはありません。世界が貴方を独りにするというのなら、私達は貴方の傍に居ます」

ヲ級「!」コクコク

提督「……ありがとう」

戦姫・ヲ級「!」ピシッ

戦姫「貴方の目的に、私達は力を貸します。存分にお使い下さい」

ヲ級「!」

提督「本当に、ありがとう……」

提督「──早速で悪いが、出掛けよう。お前達の母港へ行って、作戦指示を与える」

……………………
…………
……

498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/05(火) 02:14:57.32 ID:ZOhB3/SKo
大将A「沖ノ鳥島海域……一体どれほどの艦娘が沈んだというのか」

大将B「うむ。まったくもって静まる気配もない」

大将C「しかし、あの新参には困ったものだ。こんな時に体調不良で倒れているなどと……」

大将A「だからお前を呼んだのだ。あの数を相手にするのには数か質が必要だ。その条件を満たしているのはお前しか居ない」

大将B「私が総司令官を務める。大まかな指示は出してやるから、それでなんとかしてくれるか」

大将C「……畏まりました」

加賀「全艦隊の配備が終了しました」

大将B「宜しい。では、出撃だ」

……………………。

羽黒「た、大破しました……も、もう……耐えれません……!」

加賀「……撤退命令が出されなかったわ。ごめんなさい」

羽黒「そんな……そんなぁ……!」

ドッ──!

羽黒「加賀さん!! 危ない!」

ボゴンッ!

羽黒「っぁ……ぁあ…………し、ずむ……」

加賀「────」

羽黒「加賀さん……大丈夫だったかしら……? ああ……もう何も……何も見えない…………」

チャプン…………。

加賀「……十五隻目」ギリ

……………………。



次回 金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 二隻目 後編