1: メニュー 2014/04/05(土) 07:59:12.58 ID:cYsA9Bbw0
須田「このスレを担当及び、今回相棒役の須田でやんす。 以下にこのスレの説明を書いていくでやんす」

・このスレはパワポケオリジナルSSでやんす

・設定年代はパワポケ14の終了から二年後、主人公は高校三年生でやんす

・このSSの話を理解するにはパワポケをやったことあるだけじゃなくて、
 正史考察WIKIで正史をある程度把握する必要があるのと、このSSのみのぼくの考えた正史があるので注意でやんす

・今回は彼女三人分彼女のデータを投下するだけでやんすだけでやんす。

・主人公のポジションは捕手固定でやんす

・メタ発言自重しないでやんす

・パワポケは面白いでやんす

須田「それじゃあ、まったりいくでやんす」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396652352

引用元: パワポケ「私立NIP高校?」(彼女全データ版) 



パワプロクンポケット13
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2: プロローグ 2014/04/05(土) 08:02:54.04 ID:cYsA9Bbw0
 主人公は小さいころから野球を頑張ってきた。
 そのおかげで中学生の頃にそこそこの成績をあげ、さらにその活躍が認められ、高校は地元の野球強豪校に進学。

「ここが天下の名門、私立NIP高校か……」

「あんたも、もしかして野球部でやんすか?」

「そうだけど……どうしてわかったんだ?」

「野球のユニフォームを着てサッカーをする人はいないでやんす」

「……それもそうか。それよりあんたもって」

「そうでやんす! オイラも野球部でやんす。ちなみにポジションはピッチャーでやんす」

「そうなんだ。俺はキャッチャーなんだ。もしかしたら俺たちバッテリーを組むことになるかもね」

「そのときはよろしくでやんす」

「うん。一緒に甲子園目指して頑張ろう!」

 この時彼の道は光り輝いていた。少なくともこの時は……

3: プロローグ 2014/04/05(土) 08:04:54.68 ID:cYsA9Bbw0
 8月4週目、NIP高校は甲子園の決勝まで駒を進めていた。

「それにしても先輩たちすごいね。甲子園に行ったと思ったら、あっという間に決勝だよ」

「今年は歴代最強とまで言われているでやんす。今まで苦戦はほとんどなしでやんす。
 まあその分オイラたちはベンチにすら入れないでやんすし、来年も熾烈な争いになりそうでやんす」

「なんの、来年こそは俺たちがあそこにいるさ」

「パワポケ君はポジディブでやんすね……それにしても先輩たち遅いでやんす」

「たしかにそうだね。敵のチームはもういるのに」

『皆様にお知らせがあります』

「ん? なんか放送が始まったぞ」

『今日の甲子園決勝、NIP高校対花丸高校の試合ですがNIP高校の棄権により、花丸高校が第XXの甲子園優勝校に決まりました』

「な、なんだってー!?」

 突然のNIP高校の棄権。
 それはエースの持ち物からアルコール飲料が見つかったことによるものだと後から聞かされた。

4: プロローグ 2014/04/05(土) 08:06:47.36 ID:cYsA9Bbw0
「まさか甲子園への挑戦があんな結末で終わるなんて……」

 いろいろと不良消化で終わった夏休みが終わって新学期。
 パワポケは憂鬱な気分で登校していた。

「た、大変なことになったでやんす!」

 学校に来るとバッテリーの相方が血相を変えて近寄ってきた。
 そして彼に促されるように学校の掲示板を見ると。

「なになに、『野球部今後一年間公式非公式に問わず試合の禁止 by校長』……って、なんだよこれ!」

「しかも今後一年ってどうやら九月からまるまる一年らしいんでやんす」

「ちょっと待てよ。まるまる一年って……」

「そうでんす。来年の夏の予選も出れないでやんす……」

「そんな馬鹿な」

「さすがに二年生が可愛そうだって監督と顧問がかけあっているそうでやんすけど、望みは薄いでやんす。
 それにオイラたち一年でもどうせ一年間棒に振るんだったら何もできないここよりも練習試合はできる他の高校に行く人もいるでやんす」

「そんな……」

 ガクリと肩をおとす主人公。

「……スクルメタ君、ショックなのはわかr」

「うがーっ!」

「うわっ!? ど、どうしたでやんすか?」

「絶対に諦めない。俺は甲子園に行くぞ!」

 こうして主人公の挑戦が始まった。

5: 1.出会い 2014/04/05(土) 08:09:51.48 ID:cYsA9Bbw0
小波「今日は身体測定の日だ」

 身体測定のため授業は自習になっている中、呼び出しを受けた俺が保健室に向かうと保健室前には多少の行列があり、その中に須田君がいた。

須田「小波君、知っているでやんすか?」

小波「何を?」

須田「今まで担当していた保健の先生は去年いっぱいで退職して 今年から新しい先生が入ったそうでやんす」

小波「へえ、知らなかったよ……少しさみしいね」

須田「小波君は優しいでやんすね。おいらはあのおばちゃんは保健室でのずる休みをさせてくれなかったから、嬉しいでやんす」

小波「あはは。それで新しい先生ってどんな人なんだい?」

須田「それはおいらも知らないでやんす。どうやら新学期が始まってから着任したみたいでやんす」

小波「新学期が始まってからって、辞めてからそれまで保健の先生はいなかったのか?」

須田「そうみたいでやんす」

小波「大丈夫かこの学校……」

須田「そういうわけで、詳しいことは誰も知らないみたいでやんすが、毒島って名前だけは聞いたでやんす」

小波「毒島か……珍しい苗字だね。どんな先生なんだろう」

須田「名は体を表すっていうし、期待しない方がいいでやんす」

「おーい、須田。次はお前の番だぞ」

小波「須田君、呼ばれているぞ」

須田「じゃあ小波君、また後ででやんす」

6: 1.出会い 2014/04/05(土) 08:15:16.31 ID:cYsA9Bbw0
小波「そろそろ俺の番かな」

 ようやく行列の先頭にきたころ、須田君が出てきた。

小波「あ、須田君、どうだった?」

須田「……綺麗なお姉さんだったでやんす」

小波「はあ?」

 俺としては純粋に身体測定の結果を聞いたのだが、須田君はどこか上の空だった。

須田「決めたでやんす! おいらはこれから保健室に通いまくるでやんす」ダダダッ

小波「あ、行っちゃった……いったい、なんだったんだ……?」

・・・・・・・・・・

「……次の人、入って」

小波「あ、はい」

 ようやく出番が来たと思って中に入るとそこにはたしかに美人といえる人物がいた。

毒島「まずは身長。ここに来て」

 だけど保健室の先生である彼女のその口元には煙草が咥えられていた。

毒島「……どうかした?」

 先生は立ち止まっていた俺の様子を不審がってきた。

小波「あ、えっと……」

A.どうして煙草をすっているんですか?
B.毒島先生ですか?
C.先生に見惚れていました。
D.すみません。なんでもないです。

7: 1.出会い 2014/04/05(土) 08:17:40.03 ID:cYsA9Bbw0
A
小波「どうして煙草を……?」

毒島「吸ってない、咥えている。……大丈夫。火もついていないし」

小波(そういう問題じゃないと思うんだけどな……)

小波「そ、そうですね。すみませんでした」

毒島「別に謝らなくていい」

 毒島の好感度が3上がった。


B
小波「毒島先生ですか?」

毒島「そうだけど、どうして名前を知っているの?」

小波「実は友達から聞いて」

毒島「そう。こっちに来て」

小波「あっ、はい」

毒島「それと私は人のいないところでいろいろ言われるのは好きじゃない。良い意味でも、悪い意味でも」

小波「……すみませんでした」

 毒島の好感度が3下がった。

8: 1.出会い 2014/04/05(土) 08:18:56.99 ID:cYsA9Bbw0
C
小波「先生に見惚れていました」

毒島「そう。こっちに来て」

小波「あっ、はい」

 毒島の好感度が1下がった。


D
小波「すみません。なんでもないです」

毒島「そう。ならこっちに来て」

小波「はい」

 毒島の好感度が1上がった。

9: 2.仮病 2014/04/05(土) 08:21:00.12 ID:cYsA9Bbw0
小波「今日は保健室に行ってみるか」

 スタスタスタ

小波「すみませーん」

毒島「……どうかした?」

 保健室に行くと毒島が出迎えた。もちろんその口には煙草が咥えられている。

小波「実は……」

A.ちょっと気分がすぐれなくて
B.怪我をしてしまって
C.先生に会いたくて

10: 2.仮病 2014/04/05(土) 08:22:44.63 ID:cYsA9Bbw0
A
小波「ちょっと気分がすぐれなくて」

毒島「……薬いる?」

小波「いえ、それはけっこうです。ちょっと横になれば治ると思うんで」

毒島「そう。一番奥のベッドが空いているからそこ使って」

小波「はい」

 毒島の好感度が3上がった。


B
小波「怪我をしてしまって」

毒島「どこ?」

小波「足をちょっと……」

毒島「……嘘はよくない」

小波「えっ!? う、嘘じゃないですよ!」

毒島「さっき普通にあるいてた」

小波「えっ? あっ……それは」

毒島「嘘はよくない」

小波「……はい、すみませんでした」

 毒島の好感度が1下がった。


C
小波「先生に会いたくて」

毒島「……十人目」

小波「えっ?」

毒島「なんでもない……不純な動機でここにこないで」

小波「は、はい……」

 毒島の好感度が1上がった。

11: 3.呼び出し 2014/04/05(土) 08:24:43.51 ID:cYsA9Bbw0

小波「須田君、部活の時間だよ」

須田「頑張るでやんす!」

 ピンポンパンポーン

小波「あっ、校内放送だ」

毒島『……2年のモブA』

須田「毒島先生の声でやんす!」

毒島『至急保健室に来るように。以上』

 パンポンピンポーン

小波「毒島先生のしゃべり方ってちょっとそっけないよね」

須田「そこがいいでやんす!」

12: 3.呼び出し 2014/04/05(土) 08:25:22.85 ID:cYsA9Bbw0

 別の日

 ピンポンパンポーン

小波「あっ、また校内放送だ」

毒島『……1年のモブ子C、至急保健室に来るように。以上』

 パンポンピンポーン

須田「また呼び出しでやんす」

小波「なんかちょくちょく呼び出すよね。どうしてだろう?」

須田「呼び出された人に何をしたのか聞いても特に何もなかったそうでやんす」

小波「不思議だなあ」

 毒島の好感度が1上がった。

13: 4.呼び出し真実 2014/04/05(土) 08:27:16.71 ID:cYsA9Bbw0

小波「今日も練習頑張るぞ!」

 カキーン!

須田「小波君、キャッチャーフライでやんす」

小波「任せろ」

 ダダダダダダダ

小波(よし! 捕れる)

須田「小波君、危ないでやんす!」

小波「あっ、目の前に人が!」

A.避けろと叫ぶ
B.全力でかわす

14: 4.呼び出し真実 2014/04/05(土) 08:28:57.72 ID:cYsA9Bbw0
A
小波「避けてくれー!」

一年部員「えっ、うわー!」

 ドンガラガッシャーン!

須田「二人とも、大丈夫でやんすか?」

小波「……俺のほうはなんとか大丈夫」

一年部員「……っ、俺のほうも大丈夫です」

 ピンポンパンポーン

毒島「……一年部員、至急保健室に来るように。以上」

 パンポンピンポーン

須田「呼び出しでやんす」

小波「一年部員、本当に大丈夫か?」

一年部員「大丈夫です。呼び出されたんでいってきますね」タッタッタ

須田「……大丈夫そうには見えなかったでやんす」

小波「悪いことしちゃったなあ」

15: 4.呼び出し真実 2014/04/05(土) 08:29:36.18 ID:cYsA9Bbw0

 練習後

須田「あっ、一年部員が戻ってきたでやんす」

小波「一年部員、大丈夫か?」

一年部員「はい? 何がですか?」

小波「いや、さっきの接触……」

一年部員「何の話ですか?」

小波「えっ!?」

一年部員「あ、片付けしないといけないので行ってきますね。失礼します」タッタッタッ

小波「ど、どうなっているんだ……?」

 毒島の好感度が1下がった。

16: 4.呼び出し真実 2014/04/05(土) 08:31:10.91 ID:cYsA9Bbw0
B
小波(向こうは俺に気付いていない。全力で避けなければ!)

 シュタタタタ、グキッ!

小波「グッ……だ、大丈夫か?」

一年部員「は、はい。大丈夫です」

須田「小波君は大丈夫でやんすか?」

小波「うん、なんとかね……」

小波(ちょっと痛いけど、まだ練習はできるかな?)

 ピンポンパンポーン

毒島「……小波、至急保健室に来るように。以上」

 パンポンピンポーン

須田「小波君、呼ばれているでやんす」

小波「なんだろう。ちょっと行ってくるよ」タッタッタ

17: 4.呼び出し真実 2014/04/05(土) 08:32:57.29 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・・

 保健室

小波「すいませーん。呼ばれたので来たんですけど」

毒島「……待ってた」

小波「それで俺に何か用ですか?」

毒島「……うん、脱いで」

小波「……えっ?」

毒島「早く」

小波(まさか、たびたび皆を呼び出していたのはそういうわけだったのか!?)

毒島「……」

小波(だけどこんなに綺麗な先生ならかまわないけどなあ)デレデレ

毒島「?」

小波「わ、わかりました。すぐに脱ぎます」ヌギヌギ

毒島「何をしているの?」

小波「へ?」

18: 4.呼び出し真実 2014/04/05(土) 08:34:31.75 ID:cYsA9Bbw0

毒島「怪我をしているのは足のはず……靴下、早く脱いで」

小波「は、はい」ヌギヌギ

小波(勘違いだったのか……なんで怪我しているの知っているんだろう。見てたのかな?)

毒島「……痛くない?」ソッ

小波「は、はい。特に痛みは……」

小波(医療行為とはいえ、先生の触れ方はなんか変な気分になりそう)

毒島「うん、やっぱり。ちょっと腫れてる」

小波「大丈夫ですよ。これくらい」

毒島「無理は禁物。下手したら長引く」

小波「だからって練習を休むわけには」

毒島「心配いらない。これなら30分で治る」

小波「30分? それはさすがに……」

毒島「ちょっと待ってて」ゴソゴソ

小波(本気なのか……?)

19: 4.呼び出し真実 2014/04/05(土) 08:36:03.36 ID:cYsA9Bbw0

 数分後

小波(沈黙に耐えられん……!)

小波「あ、あの先生」

毒島「何?」

小波「先生が日ごろ放送で呼び出している人ってもしかして怪我をしている人ですか?」

毒島「そう」

小波「それなら」

A.「先生はどうしてわかったんですか?」
B.「どうしてそのことが広まらないんだろう」

20: 4.呼び出し真実 2014/04/05(土) 08:38:05.55 ID:cYsA9Bbw0

A
小波「先生はどうしてわかったんですか?」

毒島「…………見てた」

小波「え? で、でもそんな都合よく……」

毒島「見てた」

小波「そ、そうですか……」

 毒島の好感度が1上がった。


B
小波「どうしてそのことが広まらないんだろう」

毒島「忘れさせたから……あった」

小波「ああ、それならたしかに広まらないですねって……え?」

毒島「……」

小波「あ、あのどうして無言で近づいて来るんですか?」

毒島「……大丈夫。痛みはない」

小波「ち、ちょっと先生、目が血走ってますけど!? ……う、うわあああああああ!」

 毒島の好感度が3上がった。


21: 4.呼び出し真実 2014/04/05(土) 08:39:56.45 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・・・

 その後

須田「小波君、小波君」

小波「ん? 須田君どうかした?」

須田「どうかしたはこっちのセリフでやんす。
   呼び出しから帰ってきたらと思ったらぼうっとしているし、何か保健室で何かあったでやんすか?」

小波「いや、特に何もなかったよ?」

須田「ところで、小波君さっきの怪我は?」

小波「怪我? 何の話だい?」

須田「え?」

小波「あ、もう休憩終わりだよ。行こう須田君」

須田「……どうなっているでやんすか?」

22: 5.注射器 2014/04/05(土) 08:42:24.16 ID:cYsA9Bbw0

パワポケ「今日は調子が悪いな。保健室に行こう」

 保健室

パワポケ「すみませーん……あれ? 先生がいない……」

 決してしゃべるような人ではないが、毒島先生がいない保健室はいつもよりどこか寂しさを漂わせていた。

パワポケ「ベッド勝手に借りても大丈夫かな……ってなんだこれ……?」

 中に入るとの目に入ったのは机の上に書類や保健室の器具の数々が散乱していた。

パワポケ「こ、これは……どうしよう?」

A.見て見ぬふりはできない。片付けるか。
B.休みに来たんだから寝よう
C.ここにいたら俺が荒らしたと思われるんじゃ……逃げよう

23: 5.注射器 2014/04/05(土) 08:46:01.78 ID:cYsA9Bbw0

B
小波「まあ、俺は休みに来たんだし、素直に寝よう」

 その後

小波「ふわあ……よく寝たぞ。そろそろ部活の時間だな、行こう……あれ? 机が片付いているぞ? なんだったんだ?」


C
小波「疑われるのは困るぞ。ここは一時退却だ!」タッタッタ

毒島「ん? ……あれは小波?」

 毒島の好感度が1下がった。

24: 5.注射器 2014/04/05(土) 08:48:43.04 ID:cYsA9Bbw0
A
小波「見て見ぬふりはできないな。片付けよう」

 器具は取扱いがわからないので書類から片付け始めることにする。

小波「ん? これは……」

 ある程度書類が片付くと注射器を発見した。
 ここは保健室であるのだから注射器があること自体はそこまでおかしいと思わないけど、

小波(注射器内部と針に水滴がついてる……)

毒島「……何をしているの?」

 保健室の入り口に部屋の主が立っていた。

小波「わっ、毒島先生。こ、これは違うんです俺がやったんじゃなくて」

毒島「知ってる」

小波「し、信じてください!……って、え?」

毒島「それ、私がやったから」

小波「そ、そうなんですか……」

毒島「どうして小波はここに?」

小波「ちょっと気分が優れなくて」

毒島「……そう」

 先生はいつものように火のついていない煙草をくわえて悠然と立っていた。しかし、

毒島「!」バッ

 部屋の中のあるものを見た瞬間、珍しく焦った顔でそれを隠す。

小波「あの……先生?」

毒島「……見た?」

小波「え?」

A.何をですか?
B.それはもう、ばっちりと

25: 5.注射器 2014/04/05(土) 08:50:41.01 ID:cYsA9Bbw0

A
小波「何をですか?」

毒島「……見ていないのならいい。気分が悪いなら奥のベッド使って」

小波「はい」

・・・・・・・・・・・・

小波「ふわあ……よく寝たぞ。そろそろ部活の時間だな、行こう」

毒島「……小波君」

小波「なんですか?」

毒島「机片付けてくれてありがとう」

小波「いえ、途中まででしたし……あ、先生」

毒島「ん?」

小波「初めて名前で呼んでくれましたね」

毒島「! …………バカ、早く行け」

 毒島の好感度が3上がった。


B
小波「それはもう、ばっちりと」ニヤニヤ

毒島「……そう」ガチャ

小波「せ、先生!? そんなもの取り出して何を……?」

毒島「大丈夫。痛みは一瞬」

小波「いや、明らかにそれっ……う、うわああああああああ!」

・・・・・・・・・・・・

小波「ふわあ……よく寝たぞ。そろそろ部活の時間だな、行こう……何か忘れているような……」

 毒島の好感度が1上がった。

26: 5.注射器 2014/04/05(土) 08:53:24.98 ID:cYsA9Bbw0
小波「保健室に行こう」

・・・・・・・・・・・・

 保健室

小波「すみませーん……って、あれ? また先生いないのかな?」

 ゴトン

小波「ん? 誰か倒れているぞ!」

毒島「……だ、れ?」

小波「せ、先生!? 大丈夫ですか?」

毒島「……君、は……」

小波(すごい汗だ。これはただごとじゃないぞ)

毒島「……カバン」

小波「え?」

毒島「机にある、私のカバン……とって」

小波「そ、そんなこと言っている場合じゃ……!」

毒島「……はや、く」

小波(ど、どうする?)

A.安全第一、救急車を呼ぼう
B.俺だけじゃどうしたらいいかわからない。助けを呼ぼう
C.カバンをとる

27: 6.注射器真実 2014/04/05(土) 08:55:38.94 ID:cYsA9Bbw0
A
小波「俺、救急車呼んできます」

毒島「それ、は……だめ……」

小波「でも、こんな状況の先生を放っておけません。行ってきます」ダッダッダ

毒島「まっ……」ガクッ

 その後呼んだ救急車のおかげで、先生は一命をとりとめたらしい。
 だけど先生がNIP高校に戻ってくることはなかった。

 攻略失敗 

B
小波「俺、他に助けを呼んできます」

毒島「それ、は……だめ……」

小波「でも、こんな状況の先生を放っておけません。行ってきます」ダッダッダ

毒島「まっ……」ガクッ

 その後呼んだ助けのおかげで、先生は一命をとりとめたらしい。
 だけど先生がNIP高校に戻ってくることはなかった。

 攻略失敗

28: 6.注射器真実 2014/04/05(土) 08:58:13.78 ID:cYsA9Bbw0

C
小波「先生、これでいいんですか?」

毒島「あり……うっ」

 バックを受け取った先生は震える手でカバンの中に手を入れた。

毒島「あっ……た……」

小波(あれは注射器!? しかも前に先生の机を片付けた時にあったのと同じやつだ)

毒島「はぁ……はぁ……」

 ぷすっ

毒島「んっ……ふぅ……」

小波「せ、先生……」

毒島「あっ……」

 苦しげな表情がなくなり、いつものようにほぼ無表情になった先生だったけど、状況を認識すると困ったような顔をした(気がする)。

毒島「…………おもちゃ」

小波「……はあ?」

毒島「これ、おもちゃだから……」

小波「え、えっと……」

A.そ、そうですか……
B.そんなの信じられるわけありませんよ!

29: 6.注射器真実 2014/04/05(土) 08:59:43.88 ID:cYsA9Bbw0

A
小波「そ、そうですか……」

毒島「そう」

小波「……って信じられるわけありませんよ!」

毒島「やっぱり……だめ?」

小波「駄目というわけじゃないですけど……ちゃんとした説明はしてほしいです」

毒島「……」

 先生は少し考えると立ち上がり、置いてあった記録用の紙に何かを書き始めた。

毒島「ん」

 それをこっちに渡す。中には住所が書かれていた。

毒島「……私の住所」

小波「えっ?」

毒島「ここでは話せない。だから日曜日に来て」

小波「いや、別に先生の家じゃなくても……」

毒島「来なくてもかまわない。だけど、このことは話さないで……お願い」

小波「……わかりました」

毒島の好感度が1上がった。

30: 6.注射器真実 2014/04/05(土) 09:01:06.29 ID:cYsA9Bbw0
B
小波「そんなの信じられるわけありませんよ!」

毒島「やっぱり……だめ?」

小波「駄目です」

毒島「じゃあ、どうすればいい?」

小波「ちゃんとした説明がほしいです」

毒島「……え?」

小波「理由はわからないですけど、悪いことしているわけではないぐらいわかりますから」

毒島「……」

 先生は少し考えると立ち上がり、置いてあった記録用の紙に何かを書き始めた。

毒島「ん」

 それをこっちに渡す。中には住所が書かれていた。

毒島「……私の住所」

小波「えっ?」

毒島「ここでは話せない。だから日曜日に来て」

小波「いや、別に先生の家じゃなくても……」

毒島「来なくてもかまわない。だけど、このことは話さないで……お願い」

小波「……わかりました」

毒島の好感度が3上がった。

31: 7.先生の家 2014/04/05(土) 09:03:37.84 ID:cYsA9Bbw0
小波「日曜日になった。どうしよう……」

A.約束通りに先生の家に行く
B.怖いからいかない
C.練習する


B
小波「……怖いし、行くのやめよう」

 攻略失敗


C
小波「……最後の大会が近いし練習しよう」

 攻略失敗。

32: 7.先生の家 2014/04/05(土) 09:06:12.55 ID:cYsA9Bbw0

A
小波「約束は果たさないとな……行こう」

・・・・・・・・・・

小波「ここが先生の住所だよな。よしインターホンをお……」

 ガチャ

毒島「……待ってた」

小波「へっ?」

毒島「……入って」

小波「は、はい……」

小波(インターホンを鳴らしてないのに……足音が聞こえたのかな?)

 スタスタスタ

 初めて入る女性の部屋に俺はドキドキしていたけど、先生は相変わらず無表情で煙草を咥えていた。

毒島「この部屋」

小波「うわっ、すごい数の機械がある」

 招かれた部屋にある所狭しとある機械の数々は俺が予想していた先生のイメージとは少しかけ離れていた。

毒島「……で、何を聞く?」

小波「え?」

毒島「? ……聞くんじゃないの?」

小波(質問しろというわけかな? 向こうから話してくれるんじゃないのか)

小波「えっとじゃあ……」

A.この部屋っていったいなんですか?
B.ずばり先生の正体を教えてください
C.あの注射器はなんだったんですか?
D.先生っていつも煙草咥えていますよね

33: 7.先生の家 2014/04/05(土) 09:10:35.76 ID:cYsA9Bbw0

A
小波「この部屋っていったいなんですか?」

毒島「……五感」

小波「へ?」

毒島「私の目であり、耳であり、鼻、口、手。これで全てを監視してる」


B
小波「ずばり先生の正体を教えてください」

毒島「……アンドロイド」

小波「へ?」

毒島「複数の遺伝子と成長剤でつくられた第二世代型人造人間。
   生身の人間が機械化してなるサイボーグとは違うから注意」

34: 7.先生の家 2014/04/05(土) 09:12:40.02 ID:cYsA9Bbw0

C
小波「あの注射器はなんだったんですか?」

毒島「……ハピネスY・改」

小波「へ?」

毒島「超能力をなくさせるハピネスYを私用に改良させたもの」


D
小波「先生っていつも火のついていない煙草を咥えていますよね」

毒島「煙草じゃない、ナノマシン増幅器」

小波「へ?」

毒島「日々失われていく体内のナノマシンを増やす機械。他にも体内のナノマシンをコントロールしてる」

35: 7.先生の家 2014/04/05(土) 09:14:36.21 ID:cYsA9Bbw0

小波「え、えっと……」

 とても信じられないことを真顔で言われ、返答に詰まった。

毒島「……冗談」

小波「そ、そうですよね、はは……」

小波(真顔で言われたから焦ったぞ)

毒島「私は生まれつき体が弱い。体が弱いからこれで補う必要があった」パサッ

小波「! 先生これって……」

毒島「しあわせ草」

小波「先生、これって違法薬物じゃ……!」

毒島「一般的にはそう。でも医療方面に関しては使用が認められてる」

小波「そ、そうなんですか?」

毒島「ただ、危険なものだから医療関係で使う人はほとんどいない……でも私はこれがないと生活できない」

小波「じゃあ、あの注射器って」

毒島「しあわせ草から抽出したもの……ちなみに自作」

36: 7.先生の家 2014/04/05(土) 09:17:40.00 ID:cYsA9Bbw0

小波「そうだったんですか……」

毒島「……信じてくれるの?」

小波「はい」

毒島「どうして?」

小波「たしかに話の内容はちょっと信じられないことですけど、先生の言葉ですから。疑うより信じたいんです」

毒島「! ……ありがとう…………ごめん」

小波「? 最後何か言いました?」

毒島「ううん、なんでも……そろそろここを出た方がいい。今日もこの後練習があるはず」

小波「そうだった! って、あれ? どうして先生が知っているんですか?」

毒島「……内緒」ニコッ

小波「! じゃ、じゃあ俺行ってきますね」

小波(先生の笑った顔初めて見た)

毒島「あ、ちょっと待って……これ、あげる」

 ヒョイ、パシッ

小波「これなんですか?」

毒島「しあわせ草のドリンク」

小波「えっ?」

毒島「……大丈夫、副作用はない…………はず」ボソ

小波「……ありがとうございます」

 毒島の好感度が1上がった。

37: 8.菜園しあわせ草 2014/04/05(土) 09:21:15.74 ID:cYsA9Bbw0

小波「ふう、今日も練習頑張ったなあ」

須田「今日も疲れたでやんす……ん?」

小波「どうかしたの須田君?」

須田「何か地面に落ちてるでやんす」ヒョイ

小波「あ、本当だ……ってあれは!」

須田「注射器でやんすね」

小波(まずいぞ、あれは先生が以前使ってたやつだ)

須田「どうしてこんなところに落ちてるでやんす? 拾っておいてなんでやんすが先生に届けるのはめんどくさいでやんすね」

小波「お、俺が先生に届けてくるよ」

須田「え? いいでやんすか? 悪いでやんすね小波君」

小波「う、ううん。気にしないでいいよ」

小波(あの先生は何をやっているんだ?)

38: 8.菜園しあわせ草 2014/04/05(土) 09:23:28.95 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・

 その後、毒島宅前。

小波「保健室に先生がいなかったからここまで来てしまった」

毒島『……入って』

小波「あいかわらず、なんで俺が来た瞬間がわかるんだ?」

・・・・・・・・・・

小波「失礼します」

毒島「……待ってた」

小波「待ってた……?」

毒島「! 間違えた……失言、待たなかった」

小波(……つっこんだほうがいいのか?)

小波「先生、グラウンドのほうに注射器落としてましたよ」

毒島「……知ってる。わざとだから」

小波「まったく、俺いないところで拾われていたらどうなって……わざと!?」ガーン

 俺としたらけっこう危ないところだったと思ったから注意しようとしたのだが、わざとと言われて一気に勢いをなくす。

39: 8.菜園しあわせ草 2014/04/05(土) 09:27:04.45 ID:cYsA9Bbw0

小波「ど、どうしてそんなことを?」

毒島「私のかっこう、どう……?」

小波「どうって……動きやすそうな服ですね」

毒島「山登りするから……高さ的には丘」

小波「……もしかして今からですか?」

毒島「うん」

小波「どうしていきなりそんなアクティブになったんですか?」

毒島「いきなりじゃない……私にとっては」

小波「俺にとってはいきなりなんです! そもそもどうして山になんか……」

毒島「しあわせ草」

小波「え?」

毒島「……私の薬、自作だから材料も自分でそろえないといけない。
   だいたいは市販や通販で買えるけどしあわせ草はそう簡単に購入できないから、自分で栽培してる」

小波「じゃあ、山登りってしあわせ草を取りに行くんですか?」

毒島「そう」

小波「事情はわかりました。でもどうして俺を?」

毒島「行こう」

小波「へ?」

毒島「一緒だと助かる……だから行こう」

小波「そ、そんな急に言われても」

毒島「いや?」

A.いいですよ行きましょう
B.無理です
C.ただではちょっと……

40: 8.菜園しあわせ草 2014/04/05(土) 09:30:18.58 ID:cYsA9Bbw0

A
小波「いいですよ。行きましょう」

毒島「ありがとう……先に下にある車に行ってて」

小波「はい」

 毒島の好感度が1上がった


B
小波「さすがに今日いきなりは無理です」

毒島「……」

小波「明日だって練習あるし……だから、すみません」

毒島「……ううん、こっちも悪かった」

 先生の顔は明らかに沈んでいた。

小波「えっと……それじゃあ失礼しますね」

毒島「ばいばい……小波」

 ガチャ

小波「……これで良かったんだよな?」

 攻略失敗

41: 8.菜園しあわせ草 2014/04/05(土) 09:31:48.84 ID:cYsA9Bbw0

C
小波「ただではちょっと……」

毒島「……意外にげんきん。何がほしい?」

小波「それはやっぱり、もらったら元気になるようなものをいただけたら」デレデレ

毒島「げんきになるようなもの……? …………! わかった、はい」ポイ

小波「えっと、これは?」パシッ

毒島「しあわせ草のドリンク。げんきになる」

小波「た、たしかにそうですけど……」

毒島「先に下にある車に行ってて」

小波「……はーい」

小波(ちぇ、やっぱりそう上手くいくわけないか)

 スタスタスタスタ

毒島「……さすがにそれはまだ……ちょっと早い」

毒島の好感度が3上がった。

42: 8.菜園しあわせ草 2014/04/05(土) 09:34:03.22 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・

 その後

小波「ここがしあわせ草畑か。よし、頑張ろう!」

・・・・・・・・・・

毒島「……もう大丈夫」

小波「え? でもまだあまり取ってませんよ?」

毒島「取りすぎはよくない。使う分だけとる」

小波「たしかにそうですね」

毒島(……それにまたここに来る口実ができやすい)

小波「先生?」

毒島「かえろう」

小波「はい」

 山からの帰り道

小波「それにしても地元の近くにあんなところがあるなんて初めて知りましたよ。先生はここをどうやって見つけたんですか?」

毒島「見つけてない。つくった」

小波「へ? ど、どうやって……」

毒島「……聞く?」

小波「……やっぱりいいです」

毒島「……賢明」

43: 9.ヒーロー登場 2014/04/05(土) 09:36:37.39 ID:cYsA9Bbw0
毒島「……今日もしあわせ草とりに行こう」

小波「わかりました」

・・・・・・・

小波「今日もとりましたね」

毒島「……豊作」

小波「それにしても……」

毒島「どうかした……?」

小波「いえ、最初は見つかったときがちょっと怖かったんですけど、この道なら見つかりそうにないですね」

毒島「……見つかったことならある」

小波「へ?」

毒島「……正確にはしあわせ草をとって帰るところを見つかった」

小波「それってどうなったんで……」

「見つけたぞ!」

 俺の言葉を遮るようにして何かいや、誰かが草むらの陰から現れた。

44: 9.ヒーロー登場 2014/04/05(土) 09:40:20.43 ID:cYsA9Bbw0
レッド「広い銀河の地球の星にピンチになったら現れる! タフでクールなナイスガイ! レッド参上!!」

小波「な、なんだこいつは!?」

 そいつはテレビで見るようなヒーロー衣装を着ていた。

毒島「……出たな、悪党」

レッド「それはこっちのセリフだ。今度は仲間まで連れて来やがって。 しかし今回こそ逃がさないから覚悟しろ!」

小波「せ、先生。話についていけないんですが……」コソコソ

毒島「……以前、山登りの帰りに襲われた。突然だったからしあわせ草を捨てて逃げるしかなかった」コソコソ

小波「……先生が言ってた『一緒だと助かる』ってもしかして……」コソコソ

毒島「うん、この状況のため。助けて」コソコソ

小波「やっぱりそうですか……」トホホ

レッド「こら、目の前に人がいるのにコソコソ話をするな!」

毒島「……作戦会議中。もう少し時間がいるから待って」

レッド「そう言われて待つとでも思うか?」

毒島「悪党じゃないなら待てるはず」

レッド「む……早くしろよ」


45: 9.ヒーロー登場 2014/04/05(土) 09:43:19.33 ID:cYsA9Bbw0
毒島「……時間稼ぎ成功」コソコソ

小波「……先生、あの人とは話し合いでなんとかなりそうな気がします」コソコソ

毒島「見た目に惑わされちゃだめ」コソコソ

小波「いや、見た目というか行動でも……」コソコソ

毒島「戦場では最悪の状況を想定することが大事……」コソコソ

小波「たしかにそうかもしれませんけど……俺、体は鍛えてますけど喧嘩はほとんどしたことありませんよ?
   というより、喧嘩自体まずいです」コソコソ

毒島「大丈夫。今回は秘策がある」コソコソ

小波「秘策?」コソコソ

毒島「これ」パサ

小波「え?」

レッド「なっ!?」

 先生が出したのは悪党(先生曰く)と同じヒーローの衣装、と思ったけどよく見ると色が違う。微妙に意匠も違うような……

レッド「オレンジ……いや、『特性スーツ』か……お前たち何者だ?」

小波「先生、なんか空気変わりましたよ。これ出さない方が良かったんじゃ」コソコソ

毒島「どうせ生身じゃ逃げられない。……これを着て」

A.着る
B.着ない
C.先生に着させる

46: 9.ヒーロー登場 2014/04/05(土) 09:46:08.99 ID:cYsA9Bbw0
A
小波「もう話し合いできる空気じゃなさそうですね……わかりました。
   でもどうすればいいんですか? 上下あるからすぐに着替えるってことはできなさそうですけど」

 毒島の好感度が3上がった

毒島「……これを押して」


B
小波「さすがにいきなり渡されたものを着るのはちょっと……」

 毒島の好感度が1上がった

毒島「わかった……じゃあ代わりにこれを押して」


C
小波「……先生が着てくださいよ」

毒島「え?」

小波「こんなのいきなり渡されて着れるはずないじゃないですか!」

 毒島の好感度が3下がった

毒島「……わかった私が着る。代わりにこれを押して」

47: 9.ヒーロー登場 2014/04/05(土) 09:50:03.50 ID:cYsA9Bbw0

小波「こうですか?」ポチ

 カッ

オレンジ「う、うわあ!? スーツがいきなり俺についた!」

毒島「……変身完了」

オレンジ(変身したのは俺なんですけどね……)

レッド「……それを着れば俺に勝てるとでも?」

毒島「……勝てないのはわかってる。ブルーのスーツを着たジオットでも勝てなかった」

レッド「! そっちのやつはともかく、お前は本気で捕まえる必要がありそうだな」

毒島「……無理」

 ガシッ

オレンジ「せ、先生なんで俺に抱き着いているんですか?」

毒島「プットオン」

 シュー

オレンジ「へ? って、わあ! なんだこれ!?」

 俺の体、というより衣装がどんどん膨らんでいく。

48: 9.ヒーロー登場 2014/04/05(土) 09:53:53.43 ID:cYsA9Bbw0
レッド「な、何を?」

毒島「……近づかない方がいい。これは爆弾。下手に刺激すると爆発する」

レッド「なんだと!?」

オレンジ「へっ? せ、先生……冗談ですよね?」

 シュー

毒島「…………」

オレンジ「な、なんとか言ってくださいよ!」

 衣装はどんどん膨らんでいき、直径五メートルほどの球体ができる。俺と先生はその上部にいるのでもはや足はついていない。
 やけに冷静なのはもう生きている心地がしなかったからなのだが、

毒島「……冗談」

 この時だけは心底ホッとした。

小波「心臓に悪い冗談はやめ……」

 ゲシッ

小波「え? 何を……」

 先生は木の幹を蹴る。 もともと体が弱い先生だから木は枝葉が少し揺れただけだったがこちらはそうはいかない。
 蹴った反動で体が傾いていく。

毒島「……ばいばい」

 山の斜面で球体が傾いていくとどうなるかなんて言うまでもない。辞世の句は何がいいかなあ。

小波「うわああああああ!!」

レッド「ま、待て!」

 ゴロゴロゴロゴロ

49: 9.ヒーロー登場 2014/04/05(土) 09:56:50.97 ID:cYsA9Bbw0
・・・・・・・・・

 ゴロゴロゴロゴロ

 山を走る球体はまさに下る勢いで転がる。

小波「目が回る―――!! って、あれ? 回ってない……ここどこだ?」

毒島「……球体内部」

小波「先生!」

小波(そういえば転がり始めに中に引っ張られたような)

毒島「……これでもう大丈夫」

 ゴロゴロゴロゴロ

小波「……俺たちというか、この球体って回っているんですよね?」

毒島「……うん」

小波「どうして俺たちって回ってないんですか?」

毒島「……聞く?」

小波「ちょっと気になるので、教えてくれるならぜひ」

50: 9.ヒーロー登場 2014/04/05(土) 09:59:58.57 ID:cYsA9Bbw0

毒島「……球体は外側の球体と内側の球体の二段構造。
   外側の球体と内側の球体は直接は繋がってなくて二つの間には濃度の高い液体が入っている。
   だから外側の球体の運動は内側の球体の運動に伝わらない」

小波「え、えっと……」

毒島「……簡単に言うと車のタイヤとボディ。タイヤがいくら回転しても車のボディ自体が回ることはない。
   だけど車の移動はタイヤの回転で行われている。 それと似たようなもの」

小波「……その例えだけはわかりました」

毒島「……よかった」

小波「ところで今の状況って本当に大丈夫なんですか?」

毒島「……どうして?」

小波「なんかあの人転がり始めても追いかけてきてましたし、転がり落ちるだけじゃ振りきれないかもしれませんよ?」

毒島「……平気。近づけないよう外側の球体は途中から煙を噴出してる」

小波「でもそしたら今度はその煙を追ってくるんじゃ」

毒島「煙は途中で止まって、代わりの煙玉を別方向に送ってる」

小波「あの人から逃げられてもこれがどこにつくかわかりませんよ?」

毒島「これは車と通信して車のあるほうに曲がるよう設定した」

小波「そ、そうですか……」

小波(ただのびっくり衣装かと思ったけど、想像以上にハイスペックそうだぞ)

51: 9.ヒーロー登場 2014/04/05(土) 10:04:53.09 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・

ピピーピピー!

小波「な、何の音だ?」

毒島「ついた……キャストオフ」

 シュン

小波「あ、スーツが脱げた」

毒島「帰ろう……車に乗って」

小波「はい……先生はあの男の人と知り合いだったんですか? このスーツもあの人のかっこうによく似ているし……」

毒島「……彼とは知り合いじゃない……正確には彼らを私が知っているだけ」

小波(彼ら? 複数いるのか?)

小波「それってどういう……」

毒島「……ごめん。それ以上は言えない。もう終わったことだけど、言ったら巻き込まれるかもしれない」

小波「……」

毒島「もし我慢できないのなら、もう付き合わなくていい……今までありがとう。ただ……」

小波「……わかりました」

毒島「……え?」

小波「事情はわかりません。けど先生が俺のことを危険に巻き込ませたくないことはわかりました。
   それと、それでも俺に助けを求めないといけないほど先生の事情がひっ迫していることも……だからこれだけは約束してください」

毒島「……約束?」

小波「今日のことで下手に責任感じて俺から距離をとろうとしないこと……次も一緒にしあわせ草を取りにいきましょう」

毒島「! ……わかった約束する」ニコッ

52: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:08:01.59 ID:cYsA9Bbw0
小波「今日はしあわせ草を取りに行く日だ」

・・・・・・・・

ブロロロロ、キキーッ!

小波「ふう、今日も頑張りましょう、って先生! 大丈夫ですか?」

毒島「……大丈夫……心配ない…………」

 先生はそう言うが顔色は明らかに悪いし、まだ登ってもいないのに汗をかきはじめている。

小波(体が弱いとは言ってたけど、最近よく体調を崩しているな)

小波「……先生、今日は俺一人で行きます」

毒島「それは……危険」

小波「大丈夫ですよ。前回は先週のやつも来なかったですし」

毒島「でも……」

小波「それに今回はオレンジの衣装を着ていきますから。もし見つかったとしても逃げられます」ポチ

 カッ

オレンジ「それじゃあ、行ってきますね」

 シュタタタタ

毒島「あっ……せっかくのデートなのに」

53: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:13:58.98 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・

 一方

レッド「……ピンクどうだ?」

桃井「ええ、来たわ……たしかにオレンジのスーツね…………」

レッド「どうしたピンク? 元気がないな……そういえばオレンジとお前は一緒に暮らしていたんだったな」

桃井「っ!」

レッド「たしかにやり辛いのはわかるが……」

「な、なあレッド」

レッド「ん? どうした新入?」

「どうして今日はブラックが来てないんだ?」

(レッドも悪気はないんだよな。真実を知らないだけで)

レッド「ああ、ブラックはあいつが今日はオフらしいからな。休むらしい」

レッド「シーズン中でなかなか休みが取れないとはいえ、ヒーローが仕事をほっぽり出すのはよくないが、これは別に急ぐ案件でもないしな。
    まあ、ジオットを止めてからそれなりに平和だし許可した」

54: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:17:38.25 ID:cYsA9Bbw0
桃井「……どうせブラックに脅されただけでしょ」

(ピンク!?)

桃井「姿だけならともかく、気配まで完全に消せるあいつにはさすがのあんたも隠し事は無理よ。あたしも知ってるんだから」

レッド「な、何の話だ?」

桃井「あんたが以前、そして現在進行形でヒモだってこと」

「ええっ!? そうなのか?」

レッド「そ、そんなわけないだろ! 馬鹿なこと言うな!
    たしかに昔は旅をしていたが、今はちゃんと警備員として働いているぞ。なんなら証拠を見せてもいい」

桃井「警備員ってたしか、NOZAKIグループの前社長よね?
   どうしてただの警備員がそんなお偉い人の警備を専属でしているのかしら?」

レッド「さ、さあ……? 詳しい人事の話は俺にはわからないな……
    やっぱり俺たちヒーローの実力が買われたんじゃないか?」

桃井「似たような境遇のブルーは会社の一警備員だったのに?」

レッド「うっ……ざ、雑談はこれくらいでやめよう。ヒーローに遊んでいる暇はないんだ」

(逃げたな)

桃井(逃げたわね)

55: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:21:16.50 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・

オレンジ「ふう、これくらいとれば十分かな?」

 前回、前々回と手伝っていたのでしあわせ草の収穫に関してはだいたいの要領をつかめていた。

オレンジ(初めて着たときは動かなかったからわからなかったけど、この服かなり身体機能を上げているよな。どういうつくりなんだ?)

 スタスタスタスタ

オレンジ「それに作業が簡単になるのはいいけど、この服を着ても勝てないってあいつどれだけ強いんだ……?」


・・・・・・・・・

「……どうしてまだ手を出さないんだ?」

レッド「菜園の位置を把握する必要があるからな。それに向こうだって荷物があるほうが動き辛いだろ」

「だからって、もし今回も逃したら被害が増えるんじゃないか?」

レッド「……おそらくそれはない。調べてもらったが、現実でもネットでも最近しあわせ草の取引を匂わせるようなことは起こってないようだ。
    まあ、まだ新薬の実験段階という可能性もあるが」

桃井「あんたがそんなまどろっこしいことをするなんて意外ね」

レッド「無知の正義がどれほどの悲劇を生むか習ったからな。
    まあ、調べてもらうのにあの悪魔に頼んで心がかなりえぐられもしたが……そろそろだ。作戦通りにいくぞ」ダダダダ

「俺たちも行くか」

桃井「……」

「ピンク?」

桃井「……大丈夫だから」

「え?」

桃井「いくら相手がオレンジのかっこうしてたって……いや、たとえオレンジ自身だって、私は迷わないわ。今の私にはあなたがいるもの」

「ああ……じゃあ、いこうか」

「「変・身!」」

 カッ!

56: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:24:06.09 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・・

オレンジ「今日も会わなくてすみそうだな」

レッド「それはフラグというやつだ」

オレンジ「で、出た!?」

レッド「悪いが今度こそ逃がすわけにはいかない。三度目の正直だ」

オレンジ(やばいな、今日は最初から本気っぽいぞ)

レッド「ところでもう一人はどうした? どこに隠れている?」

オレンジ「聞かれてからって答えるとでも?」

レッド「聞いてみただけだ。しかしやはり中身はお前のほうか。
    そのスーツ相手じゃ苦戦はさけられないだろうし、先にあちらのほうをあたるか」

オレンジ「! やめろ! 先生には手を出すな!!」

レッド「先生? 前見たときもしやと思ったが、お前本当に高校生なのか?」

オレンジ(あ! しまった!!)

レッド「……一つ聞きたい。お前たちはなんのためにそのしあわせ草を栽培している?」

オレンジ(やけに話すな。そういえば前あった時からなかなか話がわかりそうなやつだった気が……ここは話してみるか?)

A.事情を話す
B.話さない
C.逃げる

57: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:27:57.59 ID:cYsA9Bbw0
A
オレンジ「薬をつくっているらしいんだ」

レッド「薬? そのしあわせ草でか? どんな薬だ?」

オレンジ「えっと……俺も詳しくは知らないんだけど、たしかハピネスなんとかって……」

レッド「ハピネスXだと!?」

オレンジ「知っているのか?」

オレンジ(でも名前が微妙に違うような……)

 ゾワッ

オレンジ「へ?」

レッド「……事情が変わった。お前を拷問かけてもあいつのもとに連れていかせる」

オレンジ「ええー!?」

オレンジ(しまった間違えたか? 逃げないと!)


B
オレンジ「言うわけにはいかない」

レッド「そうか。ならお前を洗脳してでも聞き出そう」

オレンジ「ええー!?」

オレンジ(しまった間違えたか? 逃げないと!)


C
オレンジ(いや、下手に対応するよりさっさと逃げよう)

レッド「だんまりか。しかたない、少々痛めつけて話したくしてやろう」

オレンジ(逃げないと!)

58: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:31:16.71 ID:cYsA9Bbw0

レッド「新入! ピンク! やれ!」

 ガシッ!

オレンジ(後ろから色違いのやつがもう一人!? やばい、羽交い絞めにされた!)

ピンク「ピンク! いまだ!」

桃井「オッケー。脳に情報フル送信~♪」

オレンジ「え? その声どこかで……ぎゃああああ!!」

 バタリ

桃井「……案外あっけなかったわね」

「下手に強いよりかは良かったんじゃないか?」

レッド「ご苦労だ。ピンク、新入。
    しかしその能力、触れた相手の頭に情報を送り込んで気絶させるらしいが、便利な能力だな」

桃井「まあね。私たちにかかればこんなもんよ」

「それよりレッド、さっきお前物騒なこと言ってなかったか?」

レッド「あれはただの脅しだ。それにさっき確信した。こいつは悪い奴ではない。利用されている可能性はあるけどな。
    それよりもう一人のほうは?」

「ああ、見つけた。ふもとのちょっと離れたところにいたよ。一人みたいだったな」

59: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:34:56.99 ID:cYsA9Bbw0

桃井「それにしてもおかしなやつらよね。待ち伏せも罠も一つもない。こいつら本当にジャジメントの残党?」

レッド「少なくともあの女の方はそうだった。お前らも確認したなら、見ただろ?」

「ジャジメントの元研究員にしてスーツ開発主任。そしておそらく第二世代サイボーグ……だよな?」

桃井「カズもあいつにスーツつくってもらったって言ってたわね」

「そんなやつがしあわせ草を使っていったい何を?」

レッド「それは今からだな」

「こいつはどうする?」

レッド「もちろん連れて行く。念のためスーツは脱がすけどな。よし、行くぞ……」

 ピピピピピピピ

桃井「……レッド、電話なってるよ?」

レッド「む、無視だ。無視!」

60: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:37:36.74 ID:cYsA9Bbw0

 ヒモ男、ダメ男、無職、旅ガラス

桃井「……レッド、携帯が悪口言ってるよ?」

レッド「……お前たちは先に行け。すぐに追いつく」ダダダダ

『ジュン、人の携帯の着信音を勝手に悪意のある着信にするな! え? 維織さんが? 
 いやいや、こっちにも事情が……はい、そうです。この携帯もあなた様の温情でいただいたものです……』

桃井「……ブラックも言ってたけど、あいつ本当に変わったのね」

「いい方向に変わったみたいだからいいんじゃないか? それにピンクも変わったんだろ?」

桃井「……それもそうね。で、スーツのやつはどうする? 私が運ぼうか?」
   
「いや、ピンクはスーツを頼む。中身は俺が運ぶ」
   
桃井「わかった」
   
(それにしても中身は誰だ? さっき羽交い絞めした感触からそれなりに鍛えているのはわかったけど……)

「な、こいつは……!」
   
桃井「え? どうかした?」

61: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:42:07.62 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・

毒島「……遅い。やっぱり無理してでも一緒に行くべきだった」

レッド「待たせたようだな」
   
毒島「! ……お前を待ってなんかいない」
   
レッド「知ってる。お前が待っていたのはこいつだろ?」
   
 ドサッ
   
小波「うぅ……」グテ
   
毒島「!! 小波……!」

レッド「どうする? 頼みの綱のスーツもこっちにあるぞ?」

レッド(さあ、どうでる?)
   
毒島「……」

レッド「誤解しているようだが、俺はお前らがジャジメントだからって問答無用で邪魔しようというわけではない。
    ……ただこれだけは教えろ。しあわせ草を使って何をしようとしている?」
   
毒島「……」
   
レッド(無言を貫くか。それなら……)

毒島「……それを言えば彼は助けてくれる?」
   
レッド「!?」
   
毒島「私の目的を話す。しあわせ草も全部渡す。私はどうなってもかまわない……だけど彼には手を出さないで。
   彼は超能力者でもなければ、サイボーグでもアンドロイドでもない。もちろん、ジャジメントの関係者とも違う」
   
レッド「……いいだろう約束しよう。こいつには手を出さない」

レッド(まあ、こいつに関しては安全が確認済みだけどな)

レッド「その代わりこちらからも条件がある…………」

62: 10.ヒーローの恩師 2014/04/05(土) 10:46:25.06 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・
   
 とある木の上
   
ピンク『なーんだ。本当にあっさり終わっちゃいそうね。つまんない』

ピンク「平和なのはいいことだろ。それよりお前、あいつのこと覚えておいてやれよ」

ピンク『はあ? そんなの無理に決まってるじゃない! 毎年何人いると思ってるのよ。だいたい私は直接的にはつながりないんだし』

ピンク「はあ、お前なあ……」

・・・・・・・・・・
   
(きょうか) 
杏香「! ……『幽霊の正体見たり枯れ尾花』とは言うが、まさか桃の木の精の正体がこんなのだったとは。
   ……合点はいくが、誰にも言わないほうがいいな。
   しかし、街で見かけられるピンクのヒーローの中身が男だというのは本当のことだったのか……」

・・・・・・・・・・
   
「……君、小波君」
   
小波「ん? 須田君? どうして?」
   
須田「それはこっちのセリフでやんす。どうしてこんなところで立ち尽くしているでやんすか?」
   
小波「こんなところって……あれ? ここって俺たちの寮の前?
   どうしてこんなところに……たしか今日夕方に練習が終わって、終わって……あれ? 俺それから何をしていたんだ……?」
   
須田「そんなの知るかでやんす」

63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/05(土) 10:48:45.98 ID:cYsA9Bbw0
ちょっと休憩でやんす
ペース的に一人百ぐらいだからだぶん三人で三百ぐらいになりそうでやんすね

64: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 15:53:00.48 ID:cYsA9Bbw0

小波「はあ……」

須田「小波君このごろ元気がないでやんすね。どうかしたでやんすか?」

小波「そ、そうかな? いつもどおりだよ?」

小波(最近、毒島先生に避けられている気がする。しあわせ草を取りに行こうと誘ってもまだ大丈夫って言うし……俺なんかしたかな)

須田「それならいいでやんすけど……あっ、小波君携帯が光ってるでやんすよ」

小波「え、本当? ……あっ、監督からだ」

須田「監督って、あの監督でやんすか?」

小波「うん。俺たちが中学のころ、お世話になったあの監督。懐かしいなあ……」

須田「なんてきてるでやんすか?」

小波「ええっと、なになに……『今日の十時に速報公園に集合』……なんだこれ?」

須田「……何か約束したでやんすか?」

小波「い、いや……そんな覚えはないけど……」

須田「どうするでやんすか?」

A.行く
B.行かない
C.何の用か聞く

65: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 15:55:30.52 ID:cYsA9Bbw0

A
小波「監督からの呼び出しだし、とりあえず行ってみようかな」

須田「チャレンジャーでやんすね。頑張るでやんす」


B
小波「気味が悪いしやめとこうかな……」

須田「姐さん」

小波「!」ビクッ

須田「……の呼び出しじゃないといいでやんすけど、そうでなかった場合……」

小波「や、やっぱり、行こうかな」

須田「……頑張るでやんす」


C
小波「とりあえず返信してみよう。もしかしたら間違いかもしれないし。『監督どうかしたんですか?』っと」

須田「まあ、そうでやんすよね」

ピピピ、ピピピ

小波「あっ、かえってきた。なになに……『監督? 違うよボ~ク。ピエロ』ってなんじゃこりゃ!?」

 その後も送ったが監督からまともな返信がかえってくることがなかったので結局いくことにした。

66: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:02:17.96 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・

 速報公園

小波「言われた通りにきたぞ。監督はどこだ……あっ、いた。姐さんもか……か、監督ー!」

監督「お、来たか。久しぶりだな」

小波「お久しぶりです、監督。それと姐さんも」

桃井「あっ……う、うん。久しぶり」

監督「『姐さん』……? ちょっと待て、ピンク。お前こいつに姐さんって呼ばせているのか?」

小波「いや、俺だけじゃなくて監督に教わった野球部は皆、姐さんって呼んでいますよ?」

小波(ピンク? 監督は姐さんのことを桃井って呼んでいたような……)

監督「……どうしてだ?」

小波「それは……」

桃井「あ、アタシは止めたのよ? でもこいつらがどうしてもあたしをそう呼びたいって……」

小波「いや、これは姐さんが……」

桃井「そうよね?」ゴゴゴ

小波「は、はい」

桃井「そういうわけだから。ま、まあいいじゃない。
   あんたが監督って呼ばれているんだから相棒のアタシは姐さんって呼ばれるのが妥当でしょ?」

小波(それは違うと思うけど……言わないでおこう)

67: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:05:06.98 ID:cYsA9Bbw0

小波「それより監督、急に呼び出して俺に何か用ですか?」

レッド「……それは俺が話そう」

小波「お、お前は!?」

監督「お、おいレッド。お前がいきなり出てきたら……」

小波(えっ? 監督はこいつのことを知っているのか?)

レッド「いや、こっちのほうがおそらく手っ取り早い。おい、お前。俺とは何回会ったことがある?」

小波「えっと……まだ一回しか会ってないだろ? それがどうかしたのか?」

レッド「……やはりそうか」

桃井「どういうこと?」

レッド「おそらくあの日の記憶を消されたんだろう。これで昨日こいつが来なかったのに納得がいく」

小波「何の話だ?」

レッド「俺が話してもいいが、張本人から話させた方がいいだろう」

小波「張本人?」

68: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:07:30.37 ID:cYsA9Bbw0

 キキ―! バタン

毒島「……」

小波「先生!?」

毒島「! どうして……?」

レッド「待っていたぞ」

毒島「……約束が違う。彼には手を出さないはず」

レッド「約束を違えてなんていないさ。こっちにいる新人はこいつと知り合いでな。今日はそのツテで呼び出してもらった。
    それに約束を破ったのはそっちだろう?ふられたと嘘までつきやがって。こいつの記憶を消した……いや、薄めたというべきか」

毒島「……」

レッド「こいつの記憶を戻せ。話はそれからだ」

小波「えっと、話がまったくわからないんですが……」

毒島「……ごめん」

 ミョミョミョミョーン

小波「えっ? う、うわああああああ!!」

69: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:11:16.78 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・・・

回想

レッド『その代わりこちらからも条件がある』

毒島『条件……?』

レッド『おい、起きろ』ユサユサ

小波『ううん……ここは……? あっ、先生! それとお前は!』

レッド『……レッドだ』

小波『へ?』

レッド『俺とお前はたしかに知り合いではないが、お前呼ばわりされるのは好きじゃない。
    だから俺のことはレッドと呼べ』

小波『……わかったよレッド。俺は小波、こっちの人は毒島だ』

レッド『小波か。いい名だな。
    そして毒島、こちらからの条件だが約束通りお前には話してもらう。俺と小波の前で』

毒島『!』

レッド『ことらとしてはしあわせ草を没収するつもりも、お前をどうこうするつもりもない。
    だがお前のやろうとしていること、お前の正体。その二つについては話させてもらうぞ』

毒島『……話すのはかまわない。でも彼を巻き込むのは』

レッド『ここまでさせといて、今さらそれはないだろ。それに小波、お前も聞きたいだろ?』

小波『え? そりゃあまあ、聞けるなら聞きたいけど……』チラッ

毒島『……』

70: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:13:23.38 ID:cYsA9Bbw0
レッド『何もここで話せというわけではない。俺のほうもこの後に他の用事がつっかえている。緊急のな。
    だから今週末、速報公園に十時に来い……二人でな』

小波『……レッド、お前ってもしかしていいやつ?』

レッド『ふっ……俺はいいやつでも正義でもない。ただ一人のヒーローだ。今週末、待っているぞ』ダダダダダ

 そう言い残してレッドは去った。
 なぜか去り際の走りがポーズではなく余裕のない全力疾走に見えたのは気のせいだろうか。

小波『な、なんかいろいろとすごいやつでしたね』

毒島『……小波』

小波『先生、すみません……けどやっぱり知りたいんです。だって俺、先生のことが……』

毒島『……ごめん』

 ミョミョミョミョーン

小波『へ? う、うわああああああ!!』

 回想終了

71: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:15:42.98 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・

小波「ぜ、全部思い出したぞ。たしかあの後ぼうっとした状態で寮に帰ったんだった。
   レッド、先生。約束の今週末って昨日だったんじゃ……」

レッド「どうやら本当に思い出したようだな。昨日はお前がいなかったから今日に延期した。
    毒島はお前が逃げたみたいに言ってたけどな」

毒島「……」

小波「先生……」

毒島「……邪魔。どっか行って」

小波「!!」

毒島「……あなたに会ったのは失敗だった。あなたのせいで私はヒーローに捕まったし、オレンジのスーツもとられた」



桃井「ちょっとあんた、それはあんまりじゃ……」

 ガシッ

監督「ピンク、落ち着け」

桃井「でも……」

監督「大丈夫だよ。あいつは」

72: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:18:00.20 ID:cYsA9Bbw0

毒島「……記憶を消せば大丈夫だと思った。けどまたこうして迷惑している。
   だから記憶を戻した。これ以上面倒かけさせないで」

小波「……」

毒島「……どうして……どうして、何も言わないの?」

小波「……そんな泣きそうな顔で言われたって信じられませんよ」

毒島「!」



桃井「泣きそうな顔って全然そうは見えないけど……」

レッド「……顔で見える表情が全てじゃない。
    特に彼女たちの世代のサイボーグの過去は悲惨だし、これまでずっとオオガミやジャジメントに振り回されっぱなしだったからな。
    感情を面に出す経験なんてないだろうさ。
    だが、彼女たちは泣けないことはあっても、泣かないわけではない」

桃井「……リーダー、やけに同情的ね。 何かあったの?」

レッド「……昔のちょっとしたロマンを思い出しただけだ」

73: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:21:35.72 ID:cYsA9Bbw0

小波「……先生はどう思っているかは知らないですけど、俺、初めて先生の部屋に行ってしあわせ草を見たときすごく迷ったんですよ?」

小波「いくら事情があるとはいっても薬を自作するなんて怪しすぎますし、
   オレンジのスーツなんてあきらかに普通の人が持っているようなものじゃないですか。
   それでも俺は不思議と通報したり、他の人に相談したりする気になりませんでした。だって……」

 ここでいったん言葉を区切る。次の言葉を言うのはすごく緊張するし、とても怖い。
 しかしここでこれを言えなければ男ではない。

小波「だって……俺、先生のことが好きだから!
   好きだから先生と一緒にいたかったし、先生に他の誰かを頼って欲しくなかったんです……先生は俺の気持ち迷惑ですか?」

毒島「そんなわけない……でも、私は普通の人間じゃない」

小波「そんなことぐらいとっくに気付いてますし、気にしませんよ」

毒島「……アンドロイドだし」

小波「えっと、たしか前によくテレビのニュースで流れてたやつですよね。
   たしかに天然と養殖で価値の違いを言う人はいるかもしれないですけど、俺はどっちでもその命に違いはないと思います」

毒島「……元悪の組織の研究員だったし」

小波「で、でも今はもう違うんですよね?」

毒島「うん」

小波「だったら大丈夫です。それとも先生は俺のこと嫌いですか?」

毒島「…………」

 チュッ

小波「・・・・」

毒島「……これが返事」

74: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:24:34.17 ID:cYsA9Bbw0

桃井「うわっ人前であんなことする? うう……また恋愛映画が苦手になりそうな気がする」

監督「おそらく二人の世界に入っているんだろうな。
   まあ、かくいう俺もさすがのあれは……あれ? レッドは平気そうだな?」

レッド「ん? まあ、これくらいはな」

桃井・監督「「『これくらいは』……!?」」

レッド(えっ? 維織さん相手だとこれぐらいしょっちゅうなんだが、もしかして普通じゃないのか?)

監督「……なあピンク、俺たちももう少し……」

桃井「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ! そんなことしてらブラックにどれだけいじられるか……って、あれ?
   そういえば昨日もだったけど今日もブラック来てないわね」

監督「そういえばそうだな

桃井「さすがにプロのあいつがそう何日もオフのわけないし……ねえ、レッドは何か聞いてる?」

レッド「い、いや。俺は何もしらないぞ」

75: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:27:32.44 ID:cYsA9Bbw0

桃井「聞いてるって言ったのにそれじゃあ知ってますって言ってるようなものじゃない。
   まったく、ブラックからレッドがリーダーに代わってようやくなれてきたと思ったら最近ブラックの集まりが悪い……最近?」

監督「ん?」

桃井「……え? いや、それは……嘘でしょ? でも……第一、アタシたちの体って……」

監督「おい、ピンク?」トン

桃井「ひゃ、ひゃあああああ!!」ビクッ

監督「うおっ!? ど、どうかしたのか?」

桃井「ど、どどど、どうもしてないわよ!」

監督「いや、でも顔が赤いし」

桃井「な、何を言っているのよ! アタシはピンクよ! レッドなんかじゃないわ!」

監督「お前こそ何を言っているんだ? とりあえず落ち着け、な?」

レッド「……お前たちは何をやっているんだ?」

76: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:30:17.24 ID:cYsA9Bbw0
小波「あ、あの……」

レッド「そっちはすんだのか?」

小波「あ、ああ。それでこれからのことなんだけど……」

レッド「ああ。さすがに時間は遅いが次に持ち越すのは……」

 無銭飲食者、甲斐性ナシ、浮気モノ、カブトムシ臭

レッド「……次に持ち越しだ」

小波「え? でも……」

レッド「うるさい! お前に何がわかる! 彼女が急に社長が辞めたという愚痴を延々と聞かされたことはあるのか!
    しかも、前はメイド一人だけだったのに新社長が加わって二倍になったんだぞ!」

小波「いや、たしかにそれはわからないけど……」

小波(なんか性格変わってないか?)

レッド「というわけで俺は帰る。次の日の日程は新人に聞け。あいつが一番時間とれないからな。じゃあな」ダダダダダ

 クッソー! なんでジュンのやつ微妙にレパートリー増やしてんだよー…………

毒島「……ヒーローの仕事も大変」

小波「いや、あれはヒーローの仕事じゃないと思います……」

77: 11.恩師の呼び出し 2014/04/05(土) 16:32:13.74 ID:cYsA9Bbw0

監督「……まあ今日は途中から聞く雰囲気じゃなかったからしょうがないかもな」

小波「監督」

監督「じゃあ次もこっちから連絡するから。しかし良かったよ。今日の連絡がちゃんと出来てて。
   実はちょっと携帯置き忘れてメールを他の人に頼んでたからさ」

小波「やっぱりあれは監督じゃなかったんですね……」

監督「なんかあったのか?」

小波「いえ、あはは……そういえば、ずっと聞きそびれてましたけど、どうして監督がレッドと知り合いなんですか?」

監督「ああ、それは……ピンク来てくれ」

桃井「はいはい」

小波(どうして姐さんを呼ぶんだ?)

監督「よし、やるぞ!」

監督・桃井「「変・身!」」

 カッ!

ピンク「こういうことだ」

小波「……ウソ―――!!」

 閃光の後に現れたのはレッドそしてオレンジスーツの色違い……いや、やっぱり微妙に意匠も違うピンクのスーツ。
 あの日、俺を羽交い絞めにしてなんかすごい頭痛をおこさせたやつだった。

78: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 16:34:52.76 ID:cYsA9Bbw0

小波「今日は監督に呼び出された日だ」

・・・・・・・・・

 風来坊カシミール(個室)

 どうやら今回は外ではなく店の個室を借りているらしく、店の従業員に案内されるとすでに四人はそろっているようだった。

小波「すみません、遅れました……練習が長引いて」

監督「……来たか」

桃井「ちょっと、中学校の恩師を待たせるってどういうつもりよ」

毒島「……大丈夫。待ってない」

レッド「お、おお……久しぶりだな」

 部屋に入ると四者四通りの反応を受ける。
 あまり心配はしていなかったものの、険悪の雰囲気はなかったので少し安心した。

79: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 16:38:22.58 ID:cYsA9Bbw0

小波(どこに座ろうかな)

毒島「! ……ここ」

 机の四辺に一人づつ座っていたので席を探していた俺に先生は少しずれて横にくるように促す。
 ちょっと恥ずかしいが素直に甘えることにした。

毒島「……練習、お疲れ様。はい、おしぼり」

小波「ありがとうございます」フキフキ

毒島「はい、お冷」

小波「あ、ありがとうございます」ゴクゴク

毒島「はい、メニュー」

小波「……ありがとうございます」 パシ

毒島「はい……」

小波「だ、大丈夫です。自分でできます!」

 先生の献身してくれるのはありがたいが、さすがに次々こられると困るので止めに入った。

毒島「……迷惑だった?」シュン

小波「いや、そういうわけではないですけど……」

80: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 16:41:20.80 ID:cYsA9Bbw0

桃井「はあ、あの二人相変わらず甘々ねえ。砂糖はきそう」

監督「俺的には恋人の甘々というより、一生懸命雛鳥に餌をやっている親鳥って感じだな。
   ……レッド、どうしたんだ? ここに来てからなんかそわそわしてないか?」

レッド「そ、そうか? 気のせいだろ……?」

桃井「ていうか、レッドは店にいるときくらい擬態しなさいよ。
   個室だからまだいいけど、明らかに浮いてるじゃない」

レッド「……俺の勝手だろ…………なあ、どうしてこの店にしたんだ?」

監督「いや、ピンクがカレー食べたいって」

桃井「ここの店、ちょっと前にできて美味しいし安いから通ってたことがあったの。
   まあ、一昨年の夏あたりからなんか急に人が増えてきて来れなくなってたんだけど。
   最近ようやく落ち着いてきたからこの機会にってことで来たんだけど……レッドってカレー嫌いだった?」

レッド「そういうわけじゃないが……人気があるってことは従業員が複数いるってことだよな?」

桃井「当たり前じゃない」

レッド「そうか……それなら良かった」

 バッ

風来坊「……ふう」

81: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 16:44:17.75 ID:cYsA9Bbw0

 ガラッ

奈津姫「失礼します。注文を伺いに参りました。当店副店長の奈津姫といいま……!」

風来坊「なっ……」

桃井「あー! 奈津姫さん。アタシが来るといつも注文を聞きに来てくれてありがとう」

奈津姫(はっ……!)

奈津姫「……桃井さんはここができたときから通ってくれたお客様ですから当然ですよ」

桃井「さすが奈津姫さん。今までちょっとこれなかったけど、またここに通うからよろしくね」

奈津姫「ありがとうございます。注文はなんになさいます?」

桃井「ビクトリーズカレー五つで!」

監督「なんで五つも頼んでいるんだよ」

桃井「どうせここの店初めてのあんたたちじゃ何がいいかわからないでしょ?
   だから常連客のアタシがあんたたちの分も頼んでいるのよ」

監督「でもビクトリーズカレーってなんか……」

奈津姫「変わった名前でしょう?」

監督「い、いえ。そんな……」

奈津姫「大丈夫ですよ。こちらもわかっていますから。
    ……息子が名づけたんです。たとえ今はもうなくても、思い入れのある名前はなにかに残したいって……」

82: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 16:47:25.68 ID:cYsA9Bbw0

風来坊「……」

奈津姫「すみません。わけわからないこと言っちゃいましたね。
    ビクトリーズカレー五つですね。すぐに準備してきます」

風来坊「……カレーを」

奈津姫「……え?」

風来坊「カレーをください……つけるものはなしで」

奈津姫「……わかりました」

 スッ

監督「……レッド、この店に来たことがあるのか?」

風来坊「いや、この店にはない……この店、には……」

 その後、運ばれてきたカレーに俺たちは舌鼓をうった。
 姐さんが勧めるだけあってカレーはたしかに美味しかった。
 ただなぜかレッドのカレーだけは種類違いとはいえあきらかに具材が少なく、姐さんがそのことを言おうとしたがレッドはこれでいいと言ったので結局言うことはなかった。

83: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 16:53:38.97 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・

風来坊「……さて、そろそろいいだろう。毒島、話してもらうぞ。お前について」

毒島「……わかった……とは言っても、だいたいはあなたたちが調べている通り」

毒島「私は第二世代型アンドロイドでオオガミ、ジャジメントに所属している間研究をしていた。
   主な専攻は防護面。オオガミでは装甲を、ジャジメントではスーツの防御機能を開発していた」

風来坊「どうしてお前がオレンジのスーツを持っていた?
    あれはお前らにとってはそれなりに価値があるものだと思うが持っていて大丈夫なのか?」

毒島「あれは試作品の一つ。ジャジメント解散のごたごたに紛れて一つもらっていった。
   他のはおそらくオリジナルを含めて燃えたし、念のため今も身の回りには気を付けている」

桃井「なんでオリジナルじゃなくて試作品をだったの?」

毒島「オリジナルがあるとまた複製品が生まれる。
   私のあれは改造しているし、そもそも素材が別なものだから防御面にしか特化できないつくりになってる」

小波「……監督、話についていけないんですけど」ヒソヒソ

監督「安心しろ。俺もだよ」ヒソヒソ

毒島「……簡単に言うと人気ブランドの服は人気があって皆がほしがる。
   だけどその服を真似ただけの劣化品なら誰も欲しがらない」

毒島「だからあえて本物じゃなくてつくった偽物を持って行ったって話」

小波「あ、ありがとうございます……」

 それからも主にレッドと姐さんが中心になって先生に質問を続けた。
 その中には知らない名前や聞いたことのある名前、大企業などいくつもでてきて、とうてい俺が理解するのは無理だった。
 ただその中で先生はたしかに悪い組織にいたけれど直接的に誰かを傷つけたことがないということに安心してしまうのは勝手だろうか。

風来坊「……なるほど、お前のだいたいの事情はつかんだ。
    で、本命の話に入らせてもらうが、お前の目的はなんだ? なぜしあわせ草を栽培している?」

毒島「……」

 そしてこれまでの話は終わり、これからの話になる。
 今までもわりと真剣な雰囲気にだったがここにきてより空気が張りつめたきがした。

84: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 16:57:41.96 ID:cYsA9Bbw0

毒島「……私たち第二世代型サイボーグは本来なら死んでないとおかしい」

小波「!」

毒島「これは処分とか、処理とかそういう問題じゃなくて寿命の問題。
   ……基本誰かの細胞からつくられている私たちは細胞をそのまま受け継いでいるからテロメアが短い」

監督「テロメア?」

桃井「細胞にある染色体のことね。細胞が分裂するたびに短くなるけど、これがあるから細胞は分裂をさせられる。
   ある意味これの長さは寿命の長さに直結するわ。そしてよくあるクローンの寿命が短いってのはこれが理由よ。
   100歳まで生きられる細胞の人が20歳のときの細胞でクローンをつくったら、そのクローンは80歳以上生き続けることはないわ」

監督(そういえば、ピンクは情報戦が主だったな)

小波「え? じゃ、じゃあそんな感じで先生の寿命も普通の人より少ないってことですか……?」

風来坊「……少ないですめばいいがな。
   『第二世代型サイボーグは本来死んでないとおかしい』と言ったな? それはどういう意味だ?」

毒島「テロメアがもともと短いのに加えて、私たちはさらにテロメアが短くなるように処置されている」

毒島「上司たちは早くに能力を上げるためと言ってたけど、おそらく私たちアンドロイドを押さえつけるため」

毒島「私たちは使い捨ての道具であり、人を支配することはあってはならないと考えていたからだと思う」

風来坊「短い……とは具体的にはどれぐらいだ?」

毒島「だいたい普通の人の五分の一。16歳から20歳の間にだいたい死ぬ」

小波「そ、そんな……」

85: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 17:02:10.42 ID:cYsA9Bbw0
風来坊「ならどうしてお前は生きている? 単にまだ寿命がきていないだけか?」

毒島「……その理由がこれ」スッ

小波(あっ! 先生が前に保健室で使っていたやつだ!)

風来坊「その注射器の液体はなんだ?」

毒島「しあわせ草から抽出した液体……ハピネスY・改」

監督「ハピネスって、あの超能力者を生み出すという薬だったけ?」

桃井「それはハピネスXね。あんたちゃんと覚えておきなさいよね。
   ……でも、X、ZならまだしもYって聞いたことないわね。どんな薬なの? っていうか、改って?」

毒島「ハピネスYはハピネスXの後追いで開発された薬」

毒島「ハピネスXが超能力に目覚めさせる薬ならハピネスYは超能力を眠らせる薬。
   もしハピネスYを超能力者が摂取すればその超能力者は超能力をなくす」

風来坊「それは便利そうな薬だな。しかしどうしてピンクでさえも知らなかったんだ?」

毒島「ハピネスYは結局完成しなかったから」

毒島「ハピネスYが完成する前にハピネスXが生産中止になったこともあるけど、一番の理由はESPジャマーが先に完成したから。
   効率を考えるとハピネスYをつかうより、ESPジャマーをつかって殺したほうが早いって結論が出た」

小波(なんか物騒な単語が聞こえたような……)

毒島「そして未完成のハピネスYをジャジメントにいる間に私用に完成させたのがこのハピネスY・改」

毒島「本来、超能力を眠らせるようにはたらく成分を細胞分裂を抑制させるようにはたらかせる。
   その結果、残りの寿命を延ばすことができる。おそらく二倍ぐらい」

桃井「寿命を二倍に延ばす……って、よく考えなくてもすごい発明じゃない!」

86: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 17:06:50.97 ID:cYsA9Bbw0

風来坊「……だが、それを個人でつくっているってことはノーリスクってわけではあるまい」

風来坊「もしそれがただの夢のような薬だったら喉から手を出すほど欲しがる企業なんていくらでもいる。
    自身でも使うなら尚更生産ラインを確立させたほうがいい……しかし、それができない理由があるはずだ」

毒島「……材料がしあわせ草であること。細胞の活動を遅らせるから怪我が治りにくい体質になってしまうこと。
   そもそもこれはナノマシンでコントロールしないと体の全ての細胞が動かなくなって死んでしまうから普通の人間には使えない」

毒島「私自身、この煙草型ナノマシン制御装置で細胞を日常生活をおくれる最低レベルには活動するようにしている」

小波(あの火のついていない煙草にそんな機能があったなんて。
   ……というか、先生が常に煙草を咥えていることをすっかり忘れていたような気がする。なんでだろう?)*SSだから*

毒島「だけどその辺はあくまで理由のうちの一つ……本当の問題は中毒性」

毒島「ハピネスYもXと同様、一回使用すると定期的に摂取し続けなければ一年以内に確実に死ぬ。
   そしてその中毒性はこのハピネスY・改でも改善されていない」

小波「!?」

毒島「それでもおそらくこの薬を欲しがる人はたくさんいる」

毒島「ナノマシンがないと使えないといってもサイボーグ手術すればいい話だし、
   中毒性があるといっても、逆にいえば定期的に摂取すれば二倍生きられると考えてしまうから」

風来坊「お前のようにか……?」

毒島「……」コクリ

小波「せ、先生じゃあ保健室のあれは……」

毒島「……中毒症状。 薬の効力がきれて活発な細胞とまだ効力がきれてない細胞とで体がバランスをとれなくなって苦しみ始める」

小波「そ、そんな……」

毒島「この薬が市場に出まわれば確実に買い占めが行われる……」

桃井「そしてこの薬を手に入れた国、企業、団体が第二のジャジメントになってしまうってわけね」

87: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 17:09:26.30 ID:cYsA9Bbw0

監督「ええと、まとめると……?」

桃井「短い寿命だからそれを延ばす薬をつくったけど、中毒性があって危険なの。
   下手に世に出すと買い占めた誰かが力を持つことになるから個人で栽培しているって話。

桃井「あんたって今の話についていけないほど頭悪かったっけ?」

監督「いや、たぶん説明が下手でわからなくなった話を整理するための犠牲というか……」

桃井「はあ? 何を言っているのよ?」

監督「いや、気にしないでくれ……」


88: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 17:14:30.63 ID:cYsA9Bbw0

桃井「……でも、意外ね。あんたみたいなのが世の中のことを気にかけているなんて。
   元悪の組織なんだし、そういうの気にしないと思ってた」

毒島「……私だって好きでいたわけじゃない。ハピネスY・改を開発するにはあそこしか……」

桃井「けど結局は悪事に加担していたわけでしょ?」

監督「お、おいピンク……? ……! 小波、メニューを渡してくれ!」

小波「は、はい」ヒョイ

桃井「あんたたちの作った兵器であたしたちは何回も死にかけたのよ? オレンジやブルーなんて解剖されたじゃない!
   そんなあんたがいましゃらいい人づらしようたって……」

風来坊「……ピンク、それぐらいでやめろ」

桃井「……なによ?」

風来坊「『誰もがアンタみたいに強いわけじゃない・・・ずっと正しくなんて生きられない人の方が多いんだ』
    昔、俺にそう言った人がいたよ」

桃井「……それがなに? だからみのがせってぇいうの? うらみやもんくをいうにゃっていうの?
   そうするのが正しいから? せいぎの味方だから? アタシたちがつよいから?」

風来坊「……そうじゃない。俺たちは正義の味方なんかじゃないし、強くなんてない。
    しかし俺たちはヒーローだ。ヒーローの役割はそんな正しく歩けない弱者を守ることだ! そうだろ?」

風来坊「……少なくとも、これから正しくあろうとする者に八つ当たりをすることじゃないはずだ」

毒島「……」

桃井「……アタシだって、自分のしていることがやつあたりだっていりゅわよ」

桃井「でもしょうがないじゃない……アタシ、ブルーはともかく、オレンジにはあやまろうと思ってた。
   それが自分のうしろめたさを消したいだけのさいていなこういだとしても」


桃井「だってそうじゃにゃいと、あたし……あたし…………」

89: 12.辛い(からい)真実 2014/04/05(土) 17:20:41.67 ID:cYsA9Bbw0

監督「……ろくにメニューを見せなかったと思ったら、そういうわけだったんだな。
   ビクトリーカレー、ラッキョウが使われているじゃねえか」

レッド(何!? ラッキョウだと……?)

桃井「ちょっと、いいところなのにじゃましにゃいでよ」

監督「一人酔っぱらって何がいいところだよ……付け合せには気を付けていたが、まさかきざまれてつかわれているとは」

桃井「ふん。じだいはじょうほうせぇんよ」

監督「偉そうに言うところじゃないと思うぞ。はあ……レッド」

レッド「やはりビクトリーカレーのほうを頼めば……な、なんだ?」

監督(お前もかよ……)

監督「ピンクがこんな状態だし、俺たちもう帰ってもいいか?
   彼女がこれから悪さするつもりも悪い奴らに狙われているわけではない以上、問題はなさそうだし」

レッド「ああ、俺のほうも話すことは少ないし、そろそろお開きにしようと思ってたところだ……ただし、メシ代は置いておけよ?」

監督「……ヒーローのくせにお前ってケチだよな」

レッド「うるさい! お前に何がわかる! 人のことをヒモだと言う癖に一切財布のヒモを握らせないメイド見たことあるのか?
    って維織さん、なんであなたまで財布渡してんだよ! 『お金の管理がめんどくさい』って元社長のあなたが言ったら駄目だから!!」

小波(やっぱり性格変わってる……)

監督「しまったな。地雷だったか」

毒島「……やっぱりヒーローって大変」

小波「これはヒーローの大変さじゃないと思います……」

90: 13.選択 2014/04/05(土) 17:23:46.82 ID:cYsA9Bbw0

小波「今日はしあわせ草を取りに行く日だ」

・・・・・・・・・・

小波「先生の家の前まで来たぞ……あれ? おかしいな。いつもは声が聞こえるかドアを開けてくれるのに」

 ピンポーン

小波「……返事がない。どこかにでかけているのか?」

 ガチャ

小波「あ、鍵は開いてる……先生、いますか?」

 シーン……カタ

小波(! 物音がしたぞ入ってみようかな?)

A.入る
B.入らない


B
小波「さすがに勝手に入るのはよくないよな。今日は帰ろう」

 タタタタタ

「……うっ……ぱわ……ぽけ」ガクリ

 攻略失敗

91: 13.選択 2014/04/05(土) 17:26:27.64 ID:cYsA9Bbw0

小波(気になる入ろう)

小波「失礼します……せ、先生!?」

毒島「はあ……はあ…………」

 部屋に入ると先生はあの日のように床に倒れ、息を荒くしていた。

小波(これはきっと中毒症状だ! 注射器は……あった!)

小波「せ、先生!」

A.注射器をうつ
B.注射器を渡す


A
小波「……注射器持てますか?」

毒島「……だいじょうぶ、ありがとう…………」


B
小波「お、俺が……!」

毒島「そこまではしなくていい……かして」

小波「は、はい……」

92: 13.選択 2014/04/05(土) 17:30:27.82 ID:cYsA9Bbw0

 プスッ

毒島「…………はぁはぁ……ふぅ」

小波「大丈夫ですか?」

毒島「……大丈夫。いつものことだから……心配いらない」

小波「……」

毒島「……? どうかした?」

小波「すみません。けど俺、そんな状態で心配いらないと言われても信じることができません。
   だって最近ずっと体調が悪いみたいですし。今だって俺が来てなかったら……! 」

小波「……先生、俺にまだ隠していることありますよね? 教えてください」

毒島「……聞いてもどうしようもないこと。だったら聞かない方が君には…………」

小波「俺のためと言うのなら……言ってください!」

毒島「……わかった」

 俺と先生は目を合わした。
 真夏の屋根の下、一つの部屋に男女二人という状況だが、今はやましい気持ちなんて全くわいてこない

93: 13.選択 2014/04/05(土) 17:35:35.22 ID:cYsA9Bbw0

毒島「……今までより薬が効かなくなってきた。おそらく体が耐性をつけてきている」

小波「!」

毒島「今はこの薬をとり始めたころより二倍摂取しないといけないし、それでも二倍の早さで効果がきれる」

小波「じゃあ、先生はそれで……」

毒島「……けどそれは他の薬を併用したりすればどうにかなる問題。本当のどうにもならない問題は他にある」

小波「えっ……?」

 背筋がゾクリと悪寒がはしった。
 その言葉の続きを聞きたくない。そう心がさけんでいるものの、自ら聞くことを選んだ手前、従うことはできない。そして、

毒島「……細胞そのものが死に始めている。おそらく寿命……私の命はそう長くない」

 ある意味予想通り、しかしとても耐えられない衝撃が俺を襲った。

毒島「体調を崩しているのもそのせい。前は起きた細胞と眠っている細胞の二つだけだった。
   でも今は起きた細胞と眠っている細胞、死にかけの細胞でバランスがとれなくなってきている」

 先生は俺の要望通りに教えてくれる。いつも通りに、無表情で、包み隠さず。

小波「…………本当にどうにもならないんですか?」

 その淡々とした説明に腸が煮えくり返りそうなほどむかついたのと、

毒島「どうにもならない……むしろどうにかしてきたほう」

 本当に俺にはどうすることもできない事実に悲しくなった。

94: 13.選択 2014/04/05(土) 17:37:55.90 ID:cYsA9Bbw0

小波「後どれくらい一緒にいられるんですか?」

毒島「私の寿命は長くて一年……おそらく後半年だけど、学校のほうは二学期前に辞めることになる」

小波「っ……」

毒島「だから君には選んでほしい……私との記憶をどうするかを」

小波「……えっ?」

毒島「君と出会えて私は幸せだった……
   けれど、それが君の未来に陰をおとすのなら、幸せを阻もうとするのなら、君から私との記憶を消さなければいけない」

小波「そ、そんな!?」

毒島「……だから選んでほしい。私との記憶を消すか、私との記憶を思い出にして次の幸せを探すか」

小波「……次の幸せを探します」

毒島「言葉だけじゃだめ……次に私に会うときは彼女を連れてくること」

小波「む、無理ですよ!」

毒島「大丈夫……甲子園にいけば皆のヒーロー、よりどりみどり…………約束できる?」

A.約束しない
B.約束する

95: 13.選択 2014/04/05(土) 17:39:28.18 ID:cYsA9Bbw0

A
小波「……約束します」

毒島「よかった……今日はもう帰った方がいい」

小波「え? でもしあわせ草は……?」

毒島「以前レッドに没収された分がかえってきたから大丈夫……」

小波「そうですか……じゃあ、失礼しますね」

 ガチャ スタスタスタスタ

毒島「……これでよかった……これで…………」

 バッドエンド


B
小波「……そんなの約束できるはずありません!」

 ガチャ ダダダダダッ!

毒島「…………ばか」

96: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 17:43:26.53 ID:cYsA9Bbw0

小波「先週は勢いで先生の部屋を飛び出していっちゃったけど、これでいいわけないよな。どうしよう……」

A.自分でなんとかする
B.レッドに相談する
C.監督に相談する
D.須田君に相談する


A
小波「これは俺と先生の問題だ。誰かを頼るわけにはいかないよな……」

 しかし、その後もいい案が浮かぶことはなく月日は流れていった。



B
小波「レッドに相談しよう……と思ったけど、そういえば俺レッドとの連絡方法知らないな。
   しかたない、自分で考えるか……」

 しかし、その後もいい案が浮かぶことはなく月日は流れていった。




D
小波「須田君、相談があるんだけど」

須田「なんでやんすか?」

小波「毒島先生のことなんだけど……」

須田「……それはおいらに対するあてつけでやんすか?」

小波「い、いや、そんなつもりじゃ……ていうか、須田君知ってたの? 俺と毒島先生の関係?」

須田「うるさいでやんす! 夕方からいなくなって夜な夜な帰ってこられたら馬鹿でもわかるでやんす!
   リア充爆発しろでやんすー!!」

 その後もいい案が浮かぶことはなく月日は流れていった。

97: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 17:47:43.98 ID:cYsA9Bbw0

小波「……監督に相談しよう」

・・・・・・・・・・・

 速報公園

小波「監督、こっちです」

監督「おお。待たせたな」

小波「いえ……姐さんは?」

監督「来てない。言われたとおり教えてもないが、いったいどうしたんだ?」

小波「実は……」

・・・・・・・・・・・

監督「そうか……ピンクに教えないように頼んだのもそういうわけか?」

小波「はい」

監督(酔った勢いみたいなものだから心配する必要もないと思うけど……まあ、しかたないか)

小波「……監督、俺どうしたらいいんでしょう? 本当にどうすることもできないでしょうか?」

監督「……はっきり言うと、おそらく彼女の寿命に関してお前にできることはほぼない。
   せめてしてやれるのは最後まで彼女と一緒にいてやることぐらいだ」

小波「そう、ですよね……でも今先生に会いに行っても、記憶を消されるだけだろうし……
   はは……本当に、俺は……無力なんですね…………」

監督「……だが、彼女の寿命のほうは何もできないわけではない」

小波「えっ……?」

98: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 17:50:45.60 ID:cYsA9Bbw0

監督「二、三年前、魔の三時間という事件があったのを覚えているか?」

小波「はい、たしか全世界に架空の怪獣や妖怪が表れたんですよね?
   俺はそのとき入試の勉強でいっぱいいっぱいでしたから詳しくは知らないですけど……」

監督「その事件、俺たちはカタストロフと呼んでいたが、原因は『具現化』って力の暴走なんだ」

小波「具現化……?」

監督「詳しくは俺も知らないが、簡単に言うと想像したことが現実になる能力らしい。
   つまり、あの怪獣たちの正体は誰かの想像ってわけだ」

小波「そんな……まさか」

監督「信じられないか?」

小波「……いいえ、ちょっと驚いただけです」

監督「そうか。それで、その具現化はいろんなことに応用できるらしい。
   たとえば怪獣を呼んだり、魔球を投げられるようになったり、死にかけの負傷者を一瞬で治したり」

小波「! じゃあ、具現化を利用すれば先生も!」

監督「ああ……だが、カタストロフの一件で具現化に必要なエネルギー、
  これはマナと呼ばれているらしいが、それが地球にあるぶんは一気に消費されたらしい」

小波「で、でもそのマナってやつが回復すれば」

監督「再び具現化を可能にするまでマナを溜めるにはだいぶかかる。少なくともここ数年でどうにかなるレベルじゃない。
   まあこれも全て受け売りだけどな」

小波「……それじゃあ、何の意味も……!」

監督「まあ落ち着け。地球にある分って言っただろ?」

小波「えっ?」

99: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 17:52:07.44 ID:cYsA9Bbw0

監督「話は変わるが、一番最初に魔球を投げた少年って知っているか?」

小波「は、はい。テレビにも取り上げられてたし、世界大会とかにも出てましたよね?」

監督「あの子が今どこにいるか知っているか?」

小波「たしか火星でしたよね? ……まさか!」

監督「ああ、地球のマナがないなら火星のマナを頼ればいい」

小波「で、でも魔球はなくなったって……」

監督「一般的にはそうなっているが、どうやらあの子だけは投げられるらしいぞ。
   ちなみに俺はその子とは一度話したぐらいだが、その子との知り合いとは知り合いだ」

小波「そ、そんな都合のいい話があるんですか?」

監督「まあ、ご都合主義だけど、そんなことは問題じゃないだろ?
   俺は可能性を教えただけだ。さあ、お前はどうする?」

小波「お、俺は……」

100: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 17:55:22.41 ID:cYsA9Bbw0

レッド「……俺は反対だな」

小波「れ、レッド!?」

監督「どうしてここに……?」

レッド「たしかに具現化を利用すれば小波、お前の彼女を救うことができるかもしれない。
    だが勘違いしているのかもしれないが具現化は想像を現実にする力であって、決して願いを叶える力ではない」

 レッドは最初に会った時の威圧感を発しながら俺に近づいてくる。

レッド「・・・人間の創造するものなんて良いものばかりじゃない。いいや、不安や恐怖こそ形になりやすいものなんだ。
    あの日世界中で起こったことを思い出してみろ! 世界中が大混乱におちいったんだぞ!」

 カレー屋や公園であったときの親しみやすさはなかった、そこにいたのは俺の知らないヒーローであり、敵だった。

レッド「たしかに彼女には同情できるし、お前の気持ちも痛いほどわかる。
    だが、思い病を患わっているのは彼女だけじゃないし、お前より辛い境遇の人なんて星の数ほどいる」

レッド「そんな中、自分たちだけが奇跡の恩恵を受けていいと思っているのか?
    ……第一、彼女は受け入れているだろう。自分の死を、運命を。その彼女の決意をお前のエゴで捻じ曲げていいのか?」

A.その通りだな
B.それでも

101: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 17:57:17.95 ID:cYsA9Bbw0

A
小波「……その通りだな。その通りだよ……わかっているんだよ……ちくしょう」ポタポタ

監督「小波……」

小波「……監督、教えてくれてありがとうございました。……レッド、お前が正しいよ、じゃあな」

 ダダダダダダダ

監督「……ヒーローは弱い者を守るんじゃないのかよ」

レッド「守っているさ。今回弱かったのは小波じゃない、彼女のほうだ」

監督「……だったら、なんでお前が泣きそうになっているんだ?」

レッド「泣きそうになどなっていない!」

 そして月日は流れた

102: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 17:59:50.70 ID:cYsA9Bbw0

小波「……それでも、それでも! 俺は先生を助けたい!」

小波「たしかにそれは正しいことじゃないかもしれないし、自然に背いていることしれない。
   でも、だからって助かる可能性があるのに先生を見殺しにすることなんてできない!」

レッド「彼女の意思はどうなる?」

小波「そんなの知ったことか! 先生はいつも俺を勝手に振り回してきたんだ!
   たまには俺のほうから振り回してやる!」

レッド「……そうか、それがお前の答えか。……ならば私と戦う覚悟があるというわけだな?」

 レッドから威圧感が増す。 喧嘩の経験なんてないし、そもそも山での体験から生身でレッドに挑むなんて無理なことはわかっていた。
 けど、ここで引くわけにはいかない。

小波「それが先生を守るために避けられないなら、当然だろ!」

レッド「ならば、私も弱い者を守ろう。お前のエゴのせいで世界中で危険にさらされかもしれない弱い者を守るためここでお前を倒す!」

 夜の公園を静寂が包んだ。
 ただの人間とヒーロー、勝敗などわかりきっているが対峙している互いに一切のふざけはなかった。

103: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 18:02:57.41 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・

小波「はあはあ……」

レッド「どうした? その程度か?」

小波「まだまだ……」

 余裕なレッドに対し、俺はすでに満身創痍だった。だけど諦めるわけにはいかない、先生を救うためなら俺は……!

監督「……試すのはもういいだろレッド。認めてやれよ」

小波「……え?」

監督「小波の覚悟を試すために聞いたんだよな?」

小波「……そうなのか?」

レッド「お、おい! 新入、勝手なことを……」

監督「半端な覚悟じゃさっきこいつが警告したように世界がまた危機になりかねない。
   だからお前の気持ちを確認したかったんだよ」

小波「じゃあ……!」

監督「ああ、合格だ。後で魔球を投げた少年の知り合いの番号送ってやるからお前はもう帰れ。
   今週末には甲子園をかけた試合があるんだろ? こんなところで無駄な時間使っている暇はないはずだ」

小波「あ、ありがとうございます監督! お言葉に甘えて失礼します」

 ダダダダダダ

104: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 18:06:54.16 ID:cYsA9Bbw0

レッド「……おい、どういうつもりだ?」

監督「それはこっちのセリフだろ。お前はたしかに真剣だったけど、小波に敵意や殺意は向けてなかった。
   ……いや、むしろお前はそれらを自分に向けてなかったか?」

レッド「……なぜそう思う?」

監督「多少なりとも今まで数年間ヒーローをしていたからそれくらいはな」

レッド「戦闘のほうはピンクがいないとからっきしだがな」

監督「俺はピンクのパートナーだからそれでいいんだよ。
   ……ピンクが一時期オレンジのことを探していたとき、女の子と二人旅をしている風来坊の情報を手に入れたことがある」

レッド「!」

監督「結局オレンジとは関係なかったから最近までずっと忘れていたけど、カレー屋行った後で思い出したよ。
   その風来坊ってお前のことだろ? 姿変わってないし」

レッド「……ずいぶんと都合よく思い出したものだな」

監督「そう言われればたしかにそうだけどさ、引っかかりはあった」

監督「お前毒島を初めて見つけたとき俺たちにパトロール中に偶然って説明してたよな?
   けど、どうして山を、高くはないといえ、パトロールをしてたんだって疑問に思ってたんだ」

レッド「たいした記憶力だよ」

監督「ああ、ダークスピアとの戦いも無駄なことを覚えておいたおかげで助かったよ。
   ……なあ、もしかしてあの山には…………」

レッド「……ああ、女の子が眠っている。そして彼女もアンドロイドだった」

監督「……そうか」

レッド「もし彼女が生きている間に具現化のことを知っていたら、カタストロフが起こっていたら……
    俺はきっと小波と同じ選択をしていただろうな。そして他の誰かに今俺が言ったことを言われているはずだ」

監督「ヒーローらしくない発言だな。弱い者を守るんじゃないのかよ?」

レッド「守るためにだ。俺自身のささやかなロマンを、な……」

105: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 18:13:32.49 ID:cYsA9Bbw0

監督「……ところでレッド、どうして今日のことがわかったんだ?」

風来坊「ああ、それは……」

「……ところでアタシから質問なんだけど、どうして魔球少年がまた魔球を投げたことをあんたが知っているのかしら?
 あの子はずっと火星にいるはずよね?」

監督「ああ、それは火星ロケットに搭載されたレンちゃんが教えてくれたって漣が……へ?」クル

桃井「へー、漣ってたしかクリスマスにあんたと一緒に歩いていた子よね?」ピキピキ

監督「ぴ、ピンク!? どうしてここに……?」

風来坊「……ピンクが『お前が開田に呼び出されたって言ってたのに開田がうちに来て聞いてみればそんな覚えない』って言われたらしい。
    しかたなく俺も一緒に探してまわっていたらお前とパワポケを発見したんだよ」

監督(それを早くいえよ!)

監督「ぴ、ピンク、誤解するなよ? 漣と会ったのは別に浮気とかそういうわけじゃないぞ……?
   あくまで世間話として聞いたわけであって……」

桃井「……どうせ」

監督「えっ?」

桃井「どうせアタシの顔はそばかすだらけで汚いわよー!  いいわよ! ヒーローなんて一人でやってやるんだからー!!」ダダダダダダ

監督「ちょっと待てよ! ピンクー!!」

 このあと滅茶苦茶ラッキョウをくわせた。


106: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 18:16:40.00 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・

小波「監督からもらった番号。さっそくかけてみよう」

 プルルルルル

「はい、もしもし? 知らない番号だけどどなたかしら?」

小波(女? いや、声は男だけど……どっちだ?)

小波「もしもし、初めまして。俺は小波っていいます。
   監督にこの番号を教えてもらったんですけど、ホンフーさんであってますか?」

ホンフー「監督? ……ああ、あの人のことね。ええあっているわ、私がホンフーよ。何か用かしら?」

小波「はい、じつは……」

・・・・・・・・・・

小波「……というわけなんです。お願いします! 力を貸してください!
   かわりに俺ができることだったらなんでもしますから!」

ホンフー「そうね……いいわよ。力になってあげる。
     あの少年を紹介するだけじゃなくて火星に行く方法もこちらでなんとかするわ」

小波「えっ? ほ、本当ですか!?」


107: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 18:21:37.59 ID:cYsA9Bbw0

ホンフー「……ただし、条件があるわ」

小波「……なんでしょうか?」

ホンフー「あなた、明日甲子園をかけた試合があるでしょう?」

小波「は、はい」

小波(どうして知っているんだ? 野球のことは話してないのに)

ホンフー「そこでわざと負けなさい」

小波「え……」

ホンフー「別に他のチームメンバーには話さないでいいわ。
     チームの支柱であるあなた一人が手を抜けば負けるのは十分」

小波「ど、どうしてそんな条件を……?」

ホンフー「そうねえ。私のコードネームがバッドエンドだったからかしら」

小波「?」

ホンフー「わからなくていいわ。それでどうするのかしら?
     まあ、もちろん答えは決まっていると思うけど」

A.……わかりました。言うとおりにします
B.……すみません。それだけはできません


A
小波「……わかりました。言うとおりにします」

ホンフー「・・・いいでしょう。ではまた後日こちらから連絡します」

 プッ、ツーツー

小波「……これで良かったんだよな?」

 その後、俺は約束を守りNIP高校が甲子園にいくことができなかった。

 バッドエンドへ

108: 14.ヒーローとの対決 2014/04/05(土) 18:25:10.37 ID:cYsA9Bbw0

小波「……すみません。それだけはできません」

ホンフー「……どうしてかしら? あなたにとって野球はあくまで手段。目的は別にあるはずでしょ?」

小波「たしかにそうかもしれません。でも、それだけはできないんです」

ホンフー「それはチームメイトへの義理? それとも彼女の命自体、あなたにとってはそれほどの価値はないのかしら?」

小波「どちらでもありません。たぶん、意地だと思います。
   だって俺、目的はどうあれ野球が好きでやってますから」

ホンフー「……それはいいけど、じゃあ彼女のほうはどうするの?」

小波「大会後にあなたを探します」

ホンフー「今ここでそれを言ってしまったら警戒されると思うものなんじゃない?」

小波「そちらの条件を蹴ったのはこっちですから。でも、絶対に見つけ出してみせます」

ホンフー「……そう、わかったわ。条件を変えてあげる。わざと負けなくていいわ。その代わり、甲子園を優勝しなさい」

小波「え? それでいいんですか?」

ホンフー「嬉しそうね。明らかに前の条件のほうが楽だと思うのだけど?」

小波「俺は負けるとわかっていても負ける気でするつもりはありません。
   それにいくら楽でも好きじゃないことをするよりかは、たとえ困難でも好きなことをしたいです」

ホンフー「……それもそうね。ではまた後日こちらから連絡します」

 プッ、ツーツー

ホンフー(一流の気を持たず、手段が目的と化している者。人はそれを愚者と呼ぶけれど……ふふ、結果が楽しみだわ)

・・・・・・・・・・・・

小波(明日の試合頑張ろう。先生のために……何より、自分のために!)

109: 15.毒島エピローグ 2014/04/05(土) 18:28:00.78 ID:cYsA9Bbw0

小波「やった! 勝ったぞ! これで甲子園だ!」

 その後も俺たちは破竹の勢いで勝ち進めた。

 そして、

小波「……やった。やったぞ! 甲子園優勝だー!!」

須田「ぐすっ、おいら野球やってきて良かったでやんす」

小波「俺もだよ須田君」

 こうして俺の最後の夏は最高の結果で終わった。

110: 15.毒島エピローグ 2014/04/05(土) 18:31:50.17 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・

 甲子園優勝の翌日

小波「約束は果たした。さっそく、ホンフーさんに連絡しよう」

ホンフー「その必要はありませんよ」

小波「えっ? あなたは……?」

ホンフー「はじめまして。私がホンフーです」

小波「あなたが……あの、俺、甲子園優勝しました!」

ホンフー「ええ、昨日の試合見させていただきましたよ。おめでとうございます」

小波「じゃあ……!」

ホンフー「はい、約束を果たしましょう。というか、もう果たしました。彼女を火星まで送りましたよ」

小波「え?」

ホンフー「信じられませんか?」

小波「いや、そういうわけじゃないんですけど……火星にそう簡単に行けるなんて」

ホンフー「まあ、普通ならそれなりの訓練を受けるか冷凍装置で眠らせて宇宙船で行くのが正しいのでしょうけどね。
     そんな私利に宇宙船を使うわけにはいかないのでちょっと裏ワザ使わせていただきました」

小波「そうですか、ありがとうございます……でも見送りぐらいしたかったなあ。
   あ、そうだ。何年後に帰ってくるかわかりますか? せめてむかえぐらいしたいので」

ホンフー「その必要はありません。もう帰ってきていますよ」

小波「……え、いくらなんでもそれはさすがに……」

ホンフー「私としても火星まではちょっと遠かったのでちゃんと運べるか心配でしたけど、うまくいって助かりました」

小波「ちょっとというレベルじゃないと思いますけど……」

111: 15.毒島エピローグ 2014/04/05(土) 18:34:18.07 ID:cYsA9Bbw0

ホンフー「あなたには何も言わずに進めたのは悪かったですけど、なるべく早いほうがいいと思ったので事後報告という形にしました。
     ちなみにあなたの彼女もここに来ていますよ。出てきたらどうです?」

 ガサガサ

毒島「……」

小波「せ、先生!」

 物陰から先生が表れた。再会するのはいついらいだろうか。相変わらず無表情で、澄ました顔。

ホンフー「さて、邪魔者はさりましょうかね。それではまた、機会があったら」

 スタスタスタ

毒島「……久しぶり」

 しかしそこには一つだけ変化があった。

小波「先生、煙草が……」

 先生はいつも咥えていた火のついていない煙草を咥えていなかった。

毒島「必要なくなった。薬はもういらないから」

小波「じゃ、じゃあ……!」

毒島「うん。治った……正確には意図的に縮められてたテロメア細胞の長さを取り戻しただけだけど」

小波「……良かった…………本当に良かった」ポロポロ

毒島「……」

小波「はは、やっぱり先生は相変わらずですね」

112: 15.毒島エピローグ 2014/04/05(土) 18:38:38.45 ID:cYsA9Bbw0

毒島「……ありがとう。君にもらったこの恩は何をしても返せない」

小波「恩なんてありませんよ。先生がいつも俺を振り回しているように、俺も先生を振り回しただけです。
   それより先生、これで俺の記憶を消す必要はないですよね?」

毒島「それはそうだけど……本当に私でいいの?」

小波「今さら何を言っているんですか?」

毒島「……君は甲子園優勝チームのキャプテン。プロ入りも確定している。
   これから君にふさわしい女の子がいくらでもよってくる。それなのに……」

小波「俺は自分にふさわしい女の子なんてわかりません。だけど、先生にふさわしい男は俺ぐらいしかいませんよ。
   先生に振り回されることが嬉しく思えるなんて俺ぐらいでしょうし」

毒島「……わかった。じゃあこれから君を振り回す」

小波「えっ?」

 タッタッタッタッ、ドシーン

小波「ちょっと、先生ここでは……!」

毒島「……いや?」

小波「…………白衣汚れちゃいますよ?」

毒島「……かまわない。服を買う機会も時間もこれからいっぱいある………………」

113: ハッピーアルバム 2014/04/05(土) 18:43:17.73 ID:cYsA9Bbw0

毒島「……ハンカチ持った?」

小波「持った」

毒島「……ティッシュ持った?」

小波「持った」

毒島「……財布もt…」

パワポケ「持った」

毒島「……」

小波「無理に考えなくていいから」

 高校卒業後、プロ入りした俺は先生と一緒に暮らし始めている。
 先生と俺の様子を知っている人たちは恋人関係というより子離れできない親とその子供みたいと言うが、
母親との思い出があまりないせいか俺には実感がわかない。

毒島「……しあわせ草のドリンクいる?」

小波「……んー、いいや」

 薬はもういらなくなったものの、しあわせ草をそう簡単に捨てるわけにはいかず、
なるべく法に触れないような活用で残りを減らし続けている。

小波「あ、そういえば今日レッドたちが来るって言ってたんだけど……」

毒島「……そう。わかった、準備しておく」

 ちなみに先生がレッドを嫌っていたのは残り少ない寿命をジャジメントで過ごすつもりだったのに放りだされたことが主な理由らしい。
 じゃあ今はどうなのかと聞くと感謝していると言っていた。

小波「それじゃあ、いってきます」

 寿命が延びたけど、先生は相変わらず基本無表情だし、泣くことはできないらしい。
 でもそれでいいのだ。先生に泣き顔なんてさせたくないし、

毒島「いってらっしゃい」ニコッ

 無表情なのは彼女の笑顔を独占できるのが俺だけという証明なのだから。

114: バッドアルバム 2014/04/05(土) 18:46:19.50 ID:cYsA9Bbw0

「あ、あれ毒島先生じゃない?」

小波「毒島先生……?」

 夏が終わって二学期が来て、俺は彼女と一緒に街に出していた。

「ほら、一学期まで保健室の担当していたじゃない」

小波「ああ……そういえばそんな先生もいたような……」

「いたようなって、薄情ね」

小波「しかたないだろ。ろくに話したこともないから。それよりその毒島先生はどこだよ」

「ほらあそこ……あれ、いない。ていうか、あんたあの人の顔も忘れたの?」

小波「忘れてたんだから当然だろ。それよりどうして声あげたんだよ。
   街中で先生を見つけたって普通にスルーしないか?」

「いや、だって泣いてるように見えたから……」

小波「涙流してたのか?」

「そういうわけじゃないけど」

小波「じゃあ気のせいだろ。早くあそこにいこうぜ」

「う、うん……ていうかあんた煙草やめなさいよ。あんた未成年じゃない」

小波「うるさいなあ、しかたないだろ。ときどき無性にこれが恋しくなるんだから……」

115: アルバムホンフー 2014/04/05(土) 18:51:38.98 ID:cYsA9Bbw0

監督「ありがとうな。こっちの勝手なお願いを聞いてくれて」

ホンフー「いいえ。こっちも興味深いものを見れたからよかったですよ。それにあなたの彼女の件に対する罪滅ぼしもありますし」

監督「言っとくが、ピンクの件に関してはまだ許してないからな。カタストロフが終わった後、さっさといなくなりやがって」

ホンフー「私は悪人ですからね。ヒーローに協力することはあっても馴れ合うとまずいんですよ。それくらいはわかるでしょう?
     それとも今ここで殴りますか?」

監督「……やめとくよ。今お前を殴ったら俺のほうが悪者だ」

ホンフー「賢明です……しかし、直接会って確認してみましたが、やはり彼は一流じゃないですね」

監督「おいおい、まだ一流二流って言っているのかよ」

ホンフー「当然です、私のアイデンティティですから。しかし彼は見事に私の予想を覆した。
    地区大会の決勝は相手のほうが一流の気を感じていたのですが……」

監督「はあ、お前あの日に学んだだろ?
   ジオットを止めたのはレッドだったけど、カタストロフをなくしたのはどこの誰でもない。そこら辺の誰かだ。
   理想の一流より、現実の二流が勝ったからこそカタストロフは失敗したんじゃねえか」

ホンフー「! ……そういえばそうでしたね。忘れていました。
     あなたには貸しをつくったつもりでしたけど、これで返されてしまいましたね。
     貸しはまたいつかつくるこにしましょう」

 スタスタスタ

監督「……行くのか?」

ホンフー「ええ、私は悪人ですから。また誰かをバッドエンドにさせないといけません」

監督「そのときは俺たちが止めてやるよ」

ホンフー「ふふ、期待していますよ……ではまた」

 そう言い残して男は消えた。これからも彼は悪の道を突き進み、血に染まり続け、彼自身の最後もおそらくバッドエンドになるだろう。

 しかし彼はそれで後悔はしないはずだ。なぜならそれは彼自身が納得できる一流のバッドエンドなのだから。

116: アルバムピンク 2014/04/05(土) 18:57:28.67 ID:cYsA9Bbw0

監督「まったく、なんでこうなるのわかっててラッキョウを頼むかなあ」

 カレー屋に行った帰り、ラッキョウで酔っぱらった彼女をおぶって帰る。

桃井「なによぉー、なんか文句あるわけ?」

監督「むしろ文句しかないんだが」

 呂律のまわってない女の子を連れて帰るこの様子をはたから見たら危険だと思うかもしれない。
 だがそれは半分あってて半分間違っている。
 危険なのは酔っぱらっている彼女じゃない、俺のほうだ。

桃井「はあ? 文句があるならいいなさいよぉ」

監督「言っていいのか?」

桃井「うっ……」

 ピンクは酔っぱらうと本音が出やすくなる。
 このさいだ、言ってしまおう。

監督「じゃあ言うぞ」

桃井「や、やっぱだめ。ちょっと言うのきん……」

監督「オレンジの件で自分だけを悪者扱いするのをやめろ」

桃井「……えっ? な、なに、なんのこと……!?」

117: アルバムピンク 2014/04/05(土) 19:00:27.98 ID:cYsA9Bbw0

監督「お前は数年間、オレンジに養ってもらってもらったのに自分はオレンジのことが好きになれなかった。
   そのことが今は俺と一緒に暮らしていることに負い目を感じているのと、自分に嫌悪感がある……違うか?」

桃井「なによ、じゃあ私は悪くないって言いたいわけ?」

監督「そうじゃない。お前がしたことわ確かに悪いし、罪悪感を感じるのも当然だ。
   だけどそれは一人で背負うものじゃないだろ、俺たちはパートナーなんだから」

桃井「……ずいぶん知ったふうな口をきくじゃない」

監督「知っているさ、お前のことならなんでもな。
   ピンク、俺は前に言ったよな? 俺はお前のスキマをうめるって」

桃井「ふん……あんたじゃ役不足よ」

監督「おいおい、それ力不足の間違いじゃないのか? 役不足だと褒め言葉だぞ」

桃井「……間違いじゃないわよ」ボソ

監督「ん? 何か言ったか?」

桃井「なんでもないわよ! この、甲斐性なし!」

監督(本当に聞かれてないと思っているのか?
   お前のことならなんでも知ってるって言ったのになあ……まあいいや)

 そうして彼らは帰る。
 また明日、二人で正義をなすために。

118: アルバム奈津姫 2014/04/05(土) 19:04:32.57 ID:cYsA9Bbw0

風来坊「……ごちそうさま」

 その男は今日も一人カレーのみを食べて帰る。一番安いカレーだけを頼むのはべつにお金がないわけではない。
 ただの未練である。

奈津姫「今日もいらっしゃてたんですね」

風来坊「……今日もおいしかったですよ」

 店の暖簾をくぐると一人の女性が立っていた。
 だが待ち合わせしたわけではない。彼女と彼はただの店の副店長兼料理人とその客である。

風来坊「しかし、カレー屋なのに暖簾とは珍しいですね」

奈津姫「おかしいですよね。でもあの子がどうしてもって。この店の名前も。
    ……苗字が変わってもあなたがすぐわかるようにって」

風来坊「そうでしたか……ご結婚おめでとうございます。いい旦那さんそうですね」

奈津姫「旦那を見たんですか?」

風来坊「いいえ。でもあなたの様子からなんとなく……」

奈津姫「……そうですね。旦那は本当にいい人です……私にもったいないくらい。
    彼のおかげでカレー屋も前みたいなことをしなくても経営できるようになりました……」

 世間話を続ける二人であるが、それはあくまで見せかけであって本意ではない。腹のさぐりあいである。

奈津姫「カンタとは会われないんですか?」

 そしてしかけてきたのは女性のほうだった。

風来坊「……カンタ君が自分から俺を探しに来るって言いましたからね。
    俺から会いにいっちゃったら台無しでしょう」

 おそらくこれは釣り玉だ。この次にくる渾身のストレートのための。男はそう予想する。

119: アルバム奈津姫 2014/04/05(土) 19:07:50.41 ID:cYsA9Bbw0

 そしてその予想はみごとに当たった。

奈津姫「……風来坊さんは今までずっと一人で旅をなされていたんですか?」

風来坊「…………いいえ、今は旅をしていませんし、ちょっと前までは一人でした。
    ……だけど、その前は二人で旅をしていました。ケラケラとよく笑う女の子と一緒に」

奈津姫「……やはり、そうでしたか」

 彼女は俺をどういうふうに思っているだろうか。
 普段は他人からの評価なんて気にしない男であったが、そのときばかりはそう思った。

 突如現れては街をかき乱し、挙句のはてには去り際に親友をさらった男。
 彼女にとって自分はそういうやつだろうと男は評価していた。
 だから彼女から責められるのは当然だし、今一緒にいないことを咎められるのは当たり前だと男は思った。

 しかし、

奈津姫「……あの子の最後は笑っていましたか?」

風来坊「!?」

 男は驚く。なぜなら彼女は親友の秘密を知らないはずなのだから。

奈津姫「……知っていましたよ。あの子が普通じゃないことぐらい。
    だって昔からの親友なのに、その昔の写真がまったくないんですもの」

 彼女は笑っていた。風来坊の反応から自分の予想が当たった悲しみを隠すように。

風来坊「…………泣かせてしまいました。最後の最後に、悔しいなあって言い残して……」

 おそらく男が隠していることなんて全てお見通しなのだろう。男は素直に真実を伝えることにした。

奈津姫「そうですか……よかった……あの子強がりですから。
    最後にその言葉を聞けたってことは、あの子もきっと幸せだったんですよね」

風来坊「……もう少し長く生きられれば、もっと長生きできる方法があったとしてもですか?」

奈津姫「ふふ、それこそあの子はロマンがないって言いますよ」

風来坊「……そうですね。ではまた」

 全て話し終わり男は去った。
 これからもこのカレー屋は末永く受け継がれていくだろう。
 月日が流れ、人々の記憶が薄れればこのカレー屋の名前の意味もまた、すべて忘却の彼方へと去っていく。

 一人の風来坊と母子の物語も失われる物語のエピソードのうちのほんの一部にすぎない。

120: アルバム風来坊 2014/04/05(土) 19:18:36.23 ID:cYsA9Bbw0

「あたしも一緒に旅しちゃいけないかな?」

 1月1日、元旦。
 遠前町を出ようとした俺を一人の女の子が待っていた。

武美「風来坊さんも一人じゃ寂しいでしょ? それにあたし、役に立つと思うよ?」

風来坊「……恩返しのつもりなら断る。恩があるのは俺のほうだ」

 大切の人を縛りつけている鎖に気付かず、のうのうと過ごしていた俺は彼女がいなくなってからその鎖の存在を知り、うちのめされた。
 その人が残してくれた手紙には家をそのまま住んでいていいと書かれていたが、
あのころから何も変わっていないと思い知らされた俺は家を出て、彼女に拾われ、そして救われた。

風来坊「だいたい自分の居場所があることがどれほど幸せなのかわかるだろう?」

武美「……それぐらい知ってる」

風来坊「だったら……」

武美「でもね。駄目だったみたい。あたしはあそこにいちゃいけないんだよ」

風来坊「! そんなことないはずだ! 寿命は延びたんだろう!? それともあれは、あのクリスマスの騒いでたのは嘘だったのか?」

 俺は動揺を隠せず大声で叫んだ。

 俺は彼女と過ごしていくうちに彼女の正体を知り秘密を知った。
 そして今度こそ俺は誰かを縛る鎖を引きちぎったはずだった。 

122: アルバム風来坊 2014/04/05(土) 19:22:20.47 ID:cYsA9Bbw0

武美「ああ、ごめんごめん。勘違いさせちゃったね。寿命のほうは大丈夫だよ。この通りピンピンしてるし」

風来坊「じゃあ、どうして?」

武美「大神の連中に場所が感づかれ始めたんだ。

武美「さすがにおおっぴらには捜査はしてないけどこの町にいたら捕まっちゃいそうだし。
   そうなったら、皆にも迷惑がかかるでしょ?」

風来坊「そして俺は大神においかけられると」

武美「・・・・・・・そういうの、イヤ?」

風来坊「いいや、むしろ大歓迎だな」

武美「やったあ! そうこなくっちゃ!」

風来坊「さて、旅の連れができたところで・・・次はどっちの方角に行こうかな」

武美「東!」

風来坊「・・・どうして?」

武美「日が昇る方向だから!」

風来坊「・・・ああ、なるほど」


123: アルバム風来坊 2014/04/05(土) 19:24:30.10 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・

風来坊「……夢か」

 朝のまどろみの中、ゆっくり目を覚ました。
 なんだか懐かしい夢を見ていた気もするが、もう思い出せない。

維織「……ん」

 隣で今俺が守るべき女性が寝返りをうった。
 彼女にはそろそろ年相応の落ち着きを持ってほしいがそれは敵わないだろう。

維織『……久しぶり』

 数年前、再び遠前町で会った彼女は出会ったときと変わらない姿で、俺の前にあらわれた。
 それは間違いなく良かったのだが、ほぼ10年ぶりにあったのに外見が全く変わってないのはさすがに驚いた。
 もしかして彼女はエネルギーをまったく使わないからその反動じゃないかと思ったが、
エネルギー使いまくりのメイドもほとんど変わってなかったし、人間というのは本当に不思議だ。

 変われない俺が言うことではないかもしれないが……

124: アルバム風来坊 2014/04/05(土) 19:26:44.66 ID:cYsA9Bbw0

武美『……さん……泣いて、るの……?』

 最後の日、俺と彼女はある小さな山の朝日が見えるところにいた。

風来坊『……泣くわけないだろう。旅に別れはつきものだ。いまさらそれに感傷を覚えるほど若くはない』

武美『でも、涙が……』

風来坊『泣けないお前の代わりに涙を出しているだけだ。ロマンがあるだろう?』

武美『あはは……そうだね…………じゃ、あ……あたしは、泣けた…………の……かな?』

 水の粒は彼女の頬に落ち、その軌跡を残しながらまた流れていく。

風来坊『ああ、泣けてるぞ。嬉しいか?』

武美『…………ううん、くやしい……』

風来坊『そうか』

武美『……くやしいなぁ、くやしいなぁ……最後に泣かされるなんて…………くやしいよぉ』

風来坊『……それなら良かった』

125: アルバム風来坊 2014/04/05(土) 19:28:45.13 ID:cYsA9Bbw0

武美『……さ……ん』

風来坊『なんだ?』

 彼女の体から最後の力が抜けていくのがわかる。もう長くない。直感的にわかった。

武美『…………ん』

風来坊『なんだ?』

 何かを伝えようとしているのか、それとも無意識に俺の名前を呼んでいるのかはもはやわからない。
 ただ彼女を安心させるために、彼女の好きなビターエンドのために普通を装う。
 そして、

武美『……………』

 彼女は何かを言った。

風来坊『ああ、俺もだ』

 そう返すと彼女は笑顔を旅立ちの日と同じ笑顔を見せ、やすらかに眠りについた。

126: アルバム風来坊 2014/04/05(土) 19:30:56.03 ID:cYsA9Bbw0

奈津姫「ここに武美が眠ってるんですね……」

風来坊「……はい、すみません。こんな通いにくいところで」

奈津姫「いえ、あなたがここを選んだなら間違いないと思います。
    それに武美はさびしがり屋でしたけど、一緒なら誰とでもいいってわけでもないですし。
    大勢と一緒におかれて放置されるよりかもたとえ一人でもあなたが時々来てくれるなら武美は喜びますよ」

 奈津姫さんは持ってきた花を墓石に添えた。
 墓石と言ってももちろん自作で不格好極まりないしろものだが。

 その後俺と奈津姫さんは墓周りを掃除し、お供え物を添え、
俺は最近の近況を、奈津姫さんは俺たちが遠前町を出てからの様子を武美に話しかけるように語った。

奈津姫「今日はありがとうございました」

風来坊「いえ、礼を言うのはこちらのほうです。武美も喜んでいましたよ」

 死んだ者に対して生きている者が何かするのを偽善や自己満足という人もいる。
 だが、その思いから生まれ、その思いの強さも怖さも知っている俺はとてもそうとは思えない。

武美『……………』

 武美の最後の言葉を思い返す。
 あのとき武美がなんと言ったのか、本当は聞き取れたわけじゃない。

風来坊『ああ、俺もだ』

 だけどあの瞬間確実に俺はわかっていた。どうしてかなんて理由はなくていい。
 だってそのほうがロマンがあるのだから。

127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/05(土) 19:33:49.82 ID:cYsA9Bbw0
ちょっと休憩するでやんす
次は須田杏香編を投下するでやんす

128: 1.再会 2014/04/05(土) 20:22:36.93 ID:cYsA9Bbw0

碇「今日は新しい新入生が入ってくる日だ」

・・・・・・・・・・

 ザワザワ

碇「新入生の諸君、NIP高校野球部にようこそ。俺はこの野球部のキャプテンをしている碇といいます……」

 俺は昨日考えた挨拶を言う。
 カンニングペーパーを見ながらだったから一年生一人一人の顔は見れず、まあ所詮彼らはモブだしと思っていたがそれは軽い失敗だった。

碇「……じゃあ、俺たちの紹介はこのくらいにして、次は一年生から自分のことを紹介してもらえるかな?」

一年生部員A「はい! 一年N組の部員Aと言います。ポジションは……」

・・・・・・・・・・

一年生部員α「……これからよろしくお願いします」

 そして新入部員のうちこれから一緒に切磋琢磨していく選手たちの挨拶が終わった。
 だけど今年はなんとマネージャーが新しく入ってくると聞いていたので俺はひそかに楽しみにしていたのだ。

碇「次はマネージャーの人、お願いできるかな?」

杏香「はい」

碇「……え?」

 だけどその嬉しさもあっという間に驚きに変わった。

杏香「? なにか?」

碇「い、いや……なんでもない。ごめん、続けて……」

 慌てて平静を取り繕って須田君を見る。須田君は目をそらしていた。

129: 1.再会 2014/04/05(土) 20:24:57.04 ID:cYsA9Bbw0
杏香「マネージャー志望の須田杏香(すだ きょうか)だ」

杏香「はじめに言っておくと、そこにもう一人須田という人物がいるが、彼と私は兄妹だ。
   マネージャーとしての経験がないからいたらないところがあると思うが、兄もろともよろしく頼む」

碇(杏香ちゃん、相変わらずだなあ)

 須田君とおそろいの分厚いレンズの眼鏡に綺麗に垂れ流された赤みがかかった茶色の髪。そして尊大なしゃべり。
 一応、俺の中学時代からの知り合いともいえる人物がそこにいた。

碇(この高校に来ることもそうだけど、まさか野球部のマネージャーになるなんて……
  正直、杏香ちゃんはちょっと苦手なんだよなあ)

 別におかしなところはなかったものの、そのしゃべり方と雰囲気から間違いなく彼女が一番印象に残る自己紹介をして一年生歓迎会は終わった。

・・・・・・・・・・・

碇「練習までちょっと時間あるな、どうしよう……」

A.杏香ちゃんと話す
B.須田君と話す
C.そんなことより練習の準備だ

130: 1.再会 2014/04/05(土) 20:27:46.31 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「せっかくだし、杏香ちゃんと話そう」

・・・・・・・・・・

碇「杏香ちゃん!」

杏香「ん? キャプテン、何か用ですか?」

碇「いや、そういうわけじゃないんだけど……」

杏香「? なら今話しかける必要ないと思いますが……
   いくら時間があってもキャプテンなら早めに準備して他の部員に手本をとなる行動をとるべきでは?」

碇「そ、そうだよね。ごめん……」

 杏香の好感度が1下がった。


B
碇「須田君、杏香ちゃんがマネージャーに入ってくるの黙ってるなんて酷いじゃないか」

須田「……おいらだって、さっき知ったでやんす」

碇「え?」

須田「あいつ、自分のことは基本しゃべらないから、聞かされるのはいつも事後報告なんでやんす」

碇「そうなんだ……変わってないんだね」

須田「やんす」

杏香「……人のいないところで陰口とは感心しませんよ、兄、キャプテン」

碇・須田「わっ!?」

 杏香の好感度が3下がった。

131: 1.再会 2014/04/05(土) 20:28:44.22 ID:cYsA9Bbw0
C
碇「……新入生が入ってきたんだし、キャプテンらしい行動をとらないとな」

・・・・・・・・・

碇「何か手伝うことある?」

杏香「あ、キャプテン……どうかしましたか?」

碇「いや、さすがに初日から全部任すのは悪いと思ってさ、手伝いにきたんだ。
  何かわからないことがあったら今のうちに言ってほしいんだけど……」

杏香「そうですね……これに関してなんですけど……」

 杏香の好感度が3上がった。

132: 2.名前 2014/04/05(土) 20:33:14.45 ID:cYsA9Bbw0

碇「今日も練習頑張るぞ」

・・・・・・・・・・

杏香「キャプテン、お疲れ様」

碇「あっ、杏香ちゃん。ありがとう」

杏香「……」

碇「ん? どうかした?」

杏香「……その、少し言いにくいことなのだが、私のことを『杏香ちゃん』と呼ぶのはやめてもらえないだろうか?」

碇「えっ? どうして?」

杏香「さすがに高校になってもちゃん付けで呼ばれるのは子供扱いされてるようで気分がよくない」

碇「俺としてはそんなことないんだけど……」

杏香「私としては気になるんだ……計画の障害になるかもしれないし」

碇「計画?」

杏香「なに、べつに大したことじゃない。それに呼び方を変えるのは健全性を保つためだ」

碇「健全性?」

杏香「同じ部活のキャプテンがマネージャーにそういう呼び方をすれば良からぬ噂が立つやもしれん。
   たとえそれが本当でなくても、噂だけで人は簡単に疑心暗鬼に陥る」

杏香「囚人だって黙秘するにしろ、自白するにしろ、それが嘘の罪であるなら咎められるいわれはないはずだ。
   だからそれを未然に防ぐ必要があるとは思わないか?」

碇「うーん。それじゃあ……」

A.杏香
B.杏香ちゃん
C.須田
D.須田さん

133: 2.名前 2014/04/05(土) 20:36:58.81 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「杏香」

 バシッ

碇「イタッ!」

杏香「キャプテンは人の話を聞いていなかったのか? はあ、しかたない私が決めよう。そうだな……無難に須田さんでいこう」

 杏香の好感度が3下がった

B
碇「杏香ちゃん」

杏香「……キャプテンは人の話を聞いていたか?」

碇「聞いていたさ。でもさ、二人の関係が変わったならともかく、まわりの目を気にして呼び方を変えるってのもおかしくない?」

杏香「……関係も変わったと思うが?」

碇「変わってないさ。俺にとって杏香ちゃんは友達の妹だし、杏香ちゃんにとって俺はお兄ちゃんの友達だ。そうだろ?」

杏香「……そうかもしれないな」

碇「じゃあ!」

杏香「だが駄目だ」

碇「えー」

杏香「キャプテンが引退するまで最低限の距離は保っておかないとお互いが不幸だ。
   しかたないから私が決めよう。そうだな……無難に須田さんでいこう」

 杏香の好感度が3上がった。

C
碇「須田」

杏香「……たしかにそれらしくなったが、兄も同じ苗字だからややこしいな。 そうだな……無難に須田さんでいこう」

 杏香の好感度が1下がった。


D
碇「須田さん」

杏香「うん、それなら文句ないな。今後はそう呼んでくれ」

 杏香の好感度が1上がった。

134: 2.名前 2014/04/05(土) 20:38:47.77 ID:cYsA9Bbw0

碇「うーん、でも今さら須田さんって呼ぶのは違和感を感じるなあ」

杏香「少なくとも人前ではそう呼んでもらわなければ困る。
   私だって今はこうして話しているが、誰か他にいるときは少し変えているだろう?」

碇「わかったよ……人前でってことは二人きりなら杏香ちゃんでいいの?」

杏香「ちゃんと使い分けできるのならな。相手打者によってピッチングの組み立てを考えるようなものだ。
   先輩はキャッチャーなんだし、それくらいできるだろう?」

碇「う、うん。頑張るよ。その代わり杏香ちゃんも二人のときはキャプテンじゃなくて前みたいに碇先輩って言ってよ」

杏香「どうしてだ?」

碇「なんかずっとそう呼ばれるのはむず痒いし」

杏香「……まあ、それくらいなら大丈夫かな? よし、わかった。そうしよう」

135: 3.理由 2014/04/05(土) 20:41:27.97 ID:cYsA9Bbw0

碇「そういえば杏香ちゃんって入部したときにマネージャー初めてだって言ってたよね?」

杏香「ああ」

碇「中学生のときは何をしていたの?」

杏香「……なぜそんなことを聞くんだ?」

碇「いや、単純に気になってさ。
  杏香ちゃん、マネージャーの経験ないって言ってたわりにテーピングとか手馴れているし」

杏香「そうか? 私としてはまだまだだと思うんだが……
   まあ、その理由はあれだ。私はバスケ部に所属していた」

碇「ええっ!? バスケ部!?」

杏香「そうだ。私のイメージに合わないか?」

碇「い、いや、そういうわけじゃないけど、どうして高校でバスケを続けなかったのかなって」

碇(バスケ部って俺たちの中学で強かったけど一番評判の悪かった部活じゃないか)

136: 3.理由 2014/04/05(土) 20:44:01.70 ID:cYsA9Bbw0

杏香「それは……事故で指を怪我してしまってな、スランプになった」

碇「えっ?」

杏香「大きな後遺症が残るほどの大怪我というわけではなかったが、感覚が少し鈍ってしまってな。
   以前のようにはプレーできなくなった」

杏香「碇先輩もわかるだろう?
   球技において使う指先の感覚が狂えばそれはほぼ引退に近い」

碇「たしかにそうだけど」

杏香「引き止められたし、マネージャーをやるという手もあったが気をつかわれるのは嫌だったからやめた。
   もともとなんとなくで始めた部活だったがあのときは思ったより辛かったよ」

碇「……ごめん。辛いこと思い出させちゃって」

杏香「いや、いいんだ。怪我したのも私のミスが原因だし、あのころの私は幼かった。
   力がなくても正しい行いをすればわかってくれると思っていた、いや願っていたのかもしれん」

碇(……ん? 何の話だ?)

杏香「湿っぽい話になってしまったな……まだ聞くか?」

A.バスケについて聞く
B.マネージャーになった理由を聞く
C.聞かない

137: 3.理由 2014/04/05(土) 20:47:50.86 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「バスケに未練はないの?」

杏香「ない、というわけではないが、あれはあれで満足してる。
   明確な目標ができたという面では良かったのかもしれない」

碇「目標?」

 須田の好感度が3上がった。


B
碇「どうしてマネージャーになったの?」

杏香「私の目標を達成するためには一番都合がいいと思ったからな」

碇「目標?」

 須田の好感度が3上がった。


C
碇「もういいかな」

杏香「そうか」

 須田の好感度が3上がった。



須田「碇君ー! 部活監督が呼んでるでやんすよー!!」

杏香「お呼びしてますよ、キャプテン」

碇「……うん、行ってくるよ」

138: 4.目的 2014/04/05(土) 20:51:31.21 ID:cYsA9Bbw0

碇「今日は昼飯も早く食べ終わったし、学校をうろついてみよう」

・・・・・・・・・・

碇「あっ、杏香ちゃんだ。おーい」

杏香「ん? ああ、碇先輩か」

碇「何をしてるの?」

杏香「見ての通りだ。頼まれた書類を運んでいる」

A.誰に頼まれたの?
B.そっか、じゃあね
C.手伝おうか?


B
碇「そっか、じゃあね」

杏香「……ああ」

 杏香の好感度が1下がった。


C
碇「手伝おうか?」

杏香「いや、けっこうだ。自ら引き受けた仕事だし」

碇「でも……」

杏香「気持ちだけ受け取っておくよ。碇先輩、ありがとう」

 杏香の好感度が1上がった。

139: 4.目的 2014/04/05(土) 20:52:36.13 ID:cYsA9Bbw0

碇「誰に頼まれたの?」

杏香「誰にっていうか、生徒会だな」

碇「ええ? どうして?」

杏香「生徒会に入るためにさ。こういうポイント稼ぎは地道にやらないとな」

碇「……杏香ちゃんは生徒会長になりたいの?」

杏香「なりたいというよりかは……話し過ぎたな。昼休みが終わってしまう。
   碇先輩、手伝ってくれるか?」

碇(あきらかに話をそらしたな。どうしよう……)

A.追及する
B.追及しない

140: 4.目的 2014/04/05(土) 20:54:22.89 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「……話を途中でそらすのはよくないよ」

杏香「……勝手に話しかけてきたのはそっちだ。私がどうしようと勝手だろ。
   もういい、碇先輩には頼まない」

 タッタッタッタッ

碇「まだ、早すぎたかなあ……」

 杏香の好感度が3下がった。


B
碇「わかった。手伝うよ」

杏香「すまない」

碇「違うよ」

杏香「え?」

碇「こういうときに言う言葉はありがとうだろ?」

杏香「! ああ、たしかにそうだな」

 杏香の好感度が3上がった。

141: 5.何が悪い 2014/04/05(土) 20:58:39.91 ID:cYsA9Bbw0

杏香「三年生先輩、使った道具はきちんともとの場所にもどしてほしいのですが」

三年生先輩「……今度から気を付ける」

杏香「二年生先輩、休憩はもう終わりのはずですよ」

二年生部員「あ、ああ……そうだな」

杏香「一年生部員、三塁側のラインが消えかけていたぞ。早く書き直したらどうだ?」

一年生部員「はいはいわかったよ……チッ」

・・・・・・・・・・・・

二年生部員「キャプテン」

碇「ん? なんだ?」

二年生部員「あのマネージャーどうにかならないっすか?」

碇「マネージャーって、きょ……須田さんのこと?」

二年生部員「はい、そうっす」

碇「須田さんが何かしたのか?」

二年生部員「そうじゃないっすけど……キャプテンもわかるでしょう?
      いちいち口うるさく言ってくるからやる気がなくなってしょうがないっす」

碇(たしかに杏香ちゃんの言動は正しいけど、窮屈すぎて不満が出てくるんだよな)

二年生部員「このままじゃチームの志気にかかわるっす。ここはキャプテンが一つビシッと言ってやってください」

碇(このままじゃ問題かも……)

碇「わかった。ちょっとマネージャーと話してみる」

142: 5.何が悪い 2014/04/05(土) 21:01:21.05 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・・

 練習後

杏香「……で、練習後に私を呼び出したと思えばそんなことか」

碇「そんなことじゃないよ。チーム間の仲が悪いのは問題だ」

杏香「たしかに同じチーム内での不仲はあまりよろしくはないが……
   ではキャプテンに聞くがこの場合、私が悪いのか? 私が謝ればそれでことが解決するのか?」

碇「そ、それは……」

A.悪いよ
B.悪くないけど
C.誰が悪いという話じゃないよ


A
碇「悪いよ」

杏香「そうか……わかった。明日謝ろう。それでいいんだろう?」

 ガラッ、タッタッタッタ

 次の日杏香ちゃんは本当に謝ったらしく、さらにその日以降、杏香ちゃんへの不満を聞かなくなった。
 ただそれ以来、俺は杏香ちゃんに碇先輩と呼ばれることはなかった。

 攻略失敗

143: 5.何が悪い 2014/04/05(土) 21:02:48.56 ID:cYsA9Bbw0

B
碇「悪くないけど」

杏香「だったらなぜ私が謝らないといけない?」

碇「謝れって言ってるんじゃないよ。杏香ちゃんならもっと上手く立ち回られるはずだろ?」

杏香「…………そんなの、無理だ」

碇「杏香ちゃん?」

 杏香の好感度が1上がった。


C
碇「誰が悪いという話じゃないよ」

杏香「……よく聞くよな『誰が悪いというのではない』と、私はその言葉が大嫌いだ。
   私が悪いなら悪いとはっきり言えばいい」

碇「でも杏香ちゃんは間違ったことを言っているわけじゃないんだし」

杏香「ではなぜ碇先輩はわざわざ私を呼び出して話しているんだ?」

碇「そ、それは……」

 杏香の好感度が1下がった。

144: 5.何が悪い 2014/04/05(土) 21:05:31.65 ID:cYsA9Bbw0

杏香「だいたい私の悪口でチームの結束が保たれるならいいんじゃないか?
   しょせん私はチームの一員ではないんだし」

碇「そんなことない! 杏香ちゃんだって立派なチームの一員だよ」

杏香「本気でそう思っているのか?」

碇「当然だろ」

杏香「では聞くが、もし私の言ったことを部活監督やコーチが言ったとしたらどうなる?
   不満は出るだろうが、今のように碇先輩が直接コーチに談判することがあるか?」

碇「それは、ないだろうけど……」

杏香「つまりそういうことだろ? 私が年下のマネージャーだからいろいろ言われるのが気にくわないんだろ?」

杏香「はは、笑わせる。だいたいどこの部活でもマネージャーもチームの一員と言っておきながら、
  結局のところチームの雑用係程度にしか思ってないんだろうさ」

碇「そんなこと……」

杏香「……だが、私に何の変化もなければ碇先輩の印象が悪くなって本当にチームが不仲になりかねんか。
   しかたない、碇先輩、協力してくれ」

碇「え?」

145: 5.何が悪い 2014/04/05(土) 21:07:45.64 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・・・

二年生部員「ふう……あの口うるさいマネージャーも最近はようやく礼儀を覚えてきて、
     これでのびのび野球ができるってもんだ……って、キャプテン?」

碇「ん? どうかしたか?」

二年生部員「な、なにやってるんすか?」

碇「いや、ここらへん土がちょっとデコボコしてて、イレギュラーバウンドが起こったら危ないからな。
  トンボかけてるんだよ」

二年生部員「キャプテンがそんなことしなくても……おい! 一年!
      キャプテンがトンボかけてるんだぞ。さっさとかわらんか!」

一年生部員「は、はい!」

・・・・・・・・・・・・・

碇「……これで良かったの?」

杏香「ああ。しかし郷に入れば郷に従えというのは偉大な言葉だな。
   私はこの言葉はあまり好かないが使い勝手が良くてなかなか便利な言葉だ」

碇「……」

 杏香の好感度が2あがった。

146: 6.観察眼 2014/04/05(土) 21:10:05.42 ID:cYsA9Bbw0

碇「ふう……納得いかないところの自主練習してたらすっかり暗くなったな。
  あれ? 部室にまだ電気がついてる」

A.誰かの消し忘れかな?
B.きっとまだ誰かいるんだろうな


B
碇「きっとまだ誰かいるんだろうな。今日は疲れたし、さっさと帰ろう」

147: 6.観察眼 2014/04/05(土) 21:13:34.40 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「誰かの消し忘れかな? つけっぱなしだと後で怒られるし、消しに行こう」

・・・・・・・・・

 ガラッ

杏香「ん?」

碇「あっ、杏香ちゃん」

 部室をあけるとミーディングで使うテレビがつけてあり、それには録画した去年の秋季大会予選の俺たちの試合様子が流れていた。

杏香「碇先輩か……忘れ物か?」

碇「いや電気ついていたから消し忘れかなって……何をしているの?」

杏香「スコアをつける練習だ。これからは私がやらないといけないからな」

 そう、マネージャーの仕事というのは単に練習の手伝いをするだけではない。
 試合のスコアブックをつけるのもマネージャーの仕事である。

148: 6.観察眼 2014/04/05(土) 21:15:55.32 ID:cYsA9Bbw0

杏香「しかしただ眺めているだけではわからなかったが、こういうふうに改めて観察してると面白いものだな」

碇「まあ、スコアをつけるのが楽しい人もいるぐらいだしね」

杏香「それもあるが……あ、このバッター内角を狙っているな」

碇「え?」

杏香「前の打席より足幅が狭まっている。それに、バットも心もち短く持っているしな引っ張るつもりだろう」

 それは自分たちの試合だから覚えていた。たしか俺はこのとき須田君に外角にストレートを要求して、

 『キーン!』

杏香「うん、見事に相手の裏をかいた配球だな」

 ショートゴロに打ち取ったんだった。

杏香「次の打者は……前の打席よりバッドがねているな。この前の打席の様子からしておそらく変化球待ちだろう」

碇「きょ、杏香ちゃん……」

杏香「ん? なんだ?」

碇「杏香ちゃんは相手の待ち球がよめるの?」

杏香「よめるというか、一番起こりうる確立が高いものを予測しているだけだ。
   これは録画だからじっくり相手の様子が見られるし、前の打席の様子と比べられるからな」

 『カキーン!』

 変化球でせめた須田君の球は綺麗にセンター前へとはこばれた。

碇「きょ、杏香ちゃんって……」

A.すごいね
B.嫌なやつだね
C.キャッチャーにむいているかもね

149: 6.観察眼 2014/04/05(土) 21:17:33.27 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「すごいね」

杏香「そうか? データはそろってるし、それなりに経験を積めば誰でもできると思うのだが。
   それより、今の変化球攻めはなかったんじゃないか?」

碇「……はい、すみません」ドヨーン

 杏香の好感度が1下がった。


B
碇「嫌なやつだね」

杏香「……そうかもな。言い換えてみれあ人の粗探しが上手いようなものだからな」

碇「違う違う、相手チームにとってはって話だよ」

杏香「そうか、それなら褒め言葉だな」

 杏香の好感度が1上がった。

150: 6.観察眼 2014/04/05(土) 21:19:14.99 ID:cYsA9Bbw0

C
碇「キャッチャーにむいているかもね」

杏香「……おそらく無理だろうな」

碇「え? どうして?」

杏香「これは客観的に相手を見られるからとれる戦法だし、第一私のリードじゃ効率ばかりを考えすぎてピッチャーに窮屈を強いてしまう」

碇「そんなこと……」

杏香「いいんだ。自分のことだから自分が一番わかっている。
   それでも私はその戦法しかとれないんだ。なにしろ堅物の愚か者だからな」

碇「……だったらピッチャーだね」

杏香「え?」

碇「杏香ちゃんがピッチャーで俺がキャッチャー。そして杏香ちゃんがサインを決める。
  そうすれば誰にも窮屈な思いをさせなくてすむんじゃない?」

杏香「……ふふ、たしかにそれは面白そうだな」

 杏香の好感度が3上がった。

151: 7.桃の木の精 2014/04/05(土) 21:23:31.51 ID:cYsA9Bbw0

杏香「碇先輩は桃の木の精の話を知っているか?」

碇「桃の木の精? いや、知らないけど」

杏香「そうか」

碇「それがどうかしたの?」

杏香「いや、なぜかふと思い出してな」

碇「ふーん、どんな話なの?」

杏香「私も誰から聞いたのかは忘れたのだが、たしかどこかにある桃の木にいつも女の子がいてその女の子が桃の木の精である。
   という話なのだが……」

碇「桃の木か……木じゃないけど、桃に関する噂なら知っているけどなあ」

杏香「近くの街でたまに目撃されるピンク色のヒーローのことか?」

碇「うん。女性のようだがマスクをとらないから実は中身は男なんじゃないかといううわさがあるやつ」

152: 7.桃の木の精 2014/04/05(土) 21:26:09.69 ID:cYsA9Bbw0

杏香「ピンク色のヒーローの存在は間違いなく確定的のようだが、それも考えてみれば不思議なうわさだな」

碇「何が?」

杏香「女性のようだが男なんじゃないかというところがだ。
   もし最初からピンク色のヒーローを男だと疑っているなら女性のようだがという言葉はつかないだろう。
   つまり、最初の方はピンク色のヒーローが女性だと匂わせるようなことがないとおかしい」

碇「そう言われればそうだね。まあ、どちらにしても異性であると疑わられるのは本人にとっては気分がよくないだろうけど」

杏香「それはそうだろうな……はっ、まさか!」

碇「どうかした?」

杏香「桃の木の精の正体がピンクのヒーローじゃないだろうか?」

碇「……どういう意味?」

杏香「桃の木の精というのが暗示的にピンク色のヒーローを指していて、
   女の子が桃の木の精というのはそのヒーローが本当に女の子であることをいっているんじゃないだろうか」

153: 7.桃の木の精 2014/04/05(土) 21:29:42.04 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・

モモコ「くしゅん……何かわらわのことをすごい勘違いされた気がする……」

・・・・・・・・・・・

桃井「くしゅん」

「あれ? ピンク風邪ひいたか?」

桃井「おかしいわねえ。風邪なんてひいたことないけど」

・・・・・・・・・・・

碇「さすがにそれはないんじゃ……」

杏香「いや、これなら合点がいく。おそらく桃の木の精の噂を流したのもピンクのヒーローだろうな」

碇「どうして?」

杏香「碇先輩の言ったとおりだ。本当は女の子なのに中身が男であるという噂が流されているのに怒り心頭に発したんだ」

杏香「しかし直接の否定じゃ弱いからこのように遠まわしで伝えることで気付いた者に説得力を持たせられる。
   急がば回れという考えで遠回しで伝えているのだろう」

A.それ本気で言ってる?
B.さすがにそれは考えすぎだよ
C.もしそうだとしたら夢がないよ

154: 7.桃の木の精 2014/04/05(土) 21:32:58.60 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「それ本気で言ってる?」

杏香「もちろんだ! よし! 決めたぞ碇先輩。私はこの夏、桃の木の精を探す」


B
碇「さすがにそれは考えすぎだよ」

杏香「そうか? よし! 決めたぞ碇先輩。私はこの夏、桃の木の精を探す」


C
碇「もしそうだとしたら夢がないよ」

杏香「そうか? 二つの都市伝説が実は一つのことを指しているというのは面白い話だと思うが」

碇「たしかにそうだけどさ、それだと噂が別の噂を消すためにつくられたみたいなものじゃないか。
  都市伝説とかってそういう合理性からは切り離してつくられるものじゃない?」

杏香「たしかにそうかもしれないが……よし! 決めたぞ碇先輩。私はこの夏、桃の木の精を探す」



碇「ええ!?」

杏香「安心してくれ。ちゃんと先輩たちの夏が終わった後にするから、マネージャーとしての仕事をさぼるつもりはない」

碇「いや、そこを心配したわけじゃないけど……まあ本人がやりたいならいいか」

・・・・・・・・・・・・

須田「……」

 杏香の好感度が3上がった。

155: 8.嫌われるわけ 2014/04/05(土) 21:37:19.92 ID:cYsA9Bbw0

 杏香ちゃんの作戦から一ヶ月がたった 。
 たしかに杏香ちゃんの作戦はそれなりに効果的で、今では俺が動かなくなっても彼女が言わなくなっても、
その前と同じぐらい皆真面目に練習に取り組んでいる。

 ガラッ

杏香「これが今後一ヶ月の野球部のスケジュール表です。
   持って帰ってもいいですが一人一枚ずつしかないので、なくさないようにしてください」

 ガラッ、スタスタスタスタ

二年生部員「相変わらず無愛想な女だな」

一年生部員「あいつ、俺たちのクラスで委員長してるんですけど、ちょー規則に厳しくておかげで俺らのクラス、違反者出まくりっすよ」

 だけど、それは結局杏香ちゃんがいなくても杏香ちゃんが口を出す前と同じ状況にしただけで、
部活内での彼女自体の評価が良くなったわけではない。

碇「このままじゃいけないよな……」

156: 8.嫌われるわけ 2014/04/05(土) 21:39:17.81 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・

杏香「また呼び出してなんのようだ? 前の問題は解決したはずだが」

碇「してないよ……たしかに杏香ちゃんが言わなくなっても皆練習を真面目に取り組むようになった。
  でも、結局は皆杏香ちゃんの陰口を言い続けているじゃないか」

杏香「はははは、それはいい! 日々の不満をそれで発散してくれるなら大いに悪口を言ってもらいたいものだ」

碇「気にならないのか?」

杏香「あたりまえだ。聞こえない悪口など言われてないのと同じだからな」

碇「でも部活でそんなこと言われると分かった状態でそんな状態で三年間過ごすのは辛くない?」

杏香「三年間? ……ああ、そういえば普通はそうか。誰にも言ってないし」

碇「ん? どういう意味?」

杏香「……碇先輩になら言っても大丈夫か? よし! 碇先輩、私がこれから話すことを他の人に言わないと約束できるか?」

A.約束する
B.約束しない

157: 8.嫌われるわけ 2014/04/05(土) 21:42:12.42 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「約束する」

杏香「話の内容も聞いていないのに約束するという言葉を私は信じない。
   まあ、約束しないという言葉はそのまま信じるがな」

碇(それって約束するもしないも同じことじゃないか)


B
碇「約束はできない」

杏香「こんなときは嘘でも約束すると言うべきだと思うが……
   まあいい、どうせ知られたところで大した支障にもならんから教えよう」

碇(実は教えたかっただろうなあ)

158: 8.嫌われるわけ 2014/04/05(土) 21:46:18.66 ID:cYsA9Bbw0

杏香「……私はな、そのうちこの野球部のマネージャーを辞める」

碇「……え?」

杏香「安心してくれ。碇先輩が引退するより後になるし、別にマネージャー業や陰口が嫌になって辞めるわけではない」

碇「じゃあ、どうして?」

杏香「どうしてもなにも元々野球部のマネージャーになったのは生徒会に入るためだったからなんだ」

杏香「昔からここの学校の野球部が強いことは知っていたからな。
   そこのマネージャーとなれば個人で成績を残していなくても実績としては充分だ」

碇「いきなり野球部に入ったのはそういうわけだったんだ。でもそれだと今の状況だと尚更難しいんじゃない?」

杏香「どうしてだ?」

碇「いや、だってその……杏香ちゃん野球部ではあまり好かれていないから。
  生徒投票でなる生徒会役員には難しいんじゃ……」

杏香「ふふ、逆だよ碇先輩。嫌われているからこそ野球部は私に入れざるを得なくなる。
   碇先輩考えてみろ、私が生徒会選挙に落ちるってことは私が野球部のマネージャーといて居続けることになるんだぞ」

碇「!」

杏香「たとえ誰も私が生徒会に入ったら野球部を辞めること知らなくても、生徒会に入ればそれなりに時間がとられるのは誰でもわかる。
   そしてそれに気付いた野球部は間違いなく一致団結して私を当選させにいく。野球部から私を追い出すために」

碇「……そんな簡単にいくのかな?」

杏香「いくさ。絶対にうまくいく。囚人は合理的に考えるがゆえに一番愚かな行動をとることはすでにわかりきっているんだ。
   それに碇先輩は勘違いしているかもしれないが、私は別に全ての人に嫌われているわけじゃないぞ?
   これでもバレンタインはそれなりにチョコをもらってきたほうなんだ」

碇(それは誇らしげに言うことじゃないと思うんだけど……)

杏香「私は生徒会に入れて計画達成だし、野球部は私を追い出せて幸せになる。
   まさしくwin-winの関係というわけだな。 もちろん碇先輩も私に投票してくれるよな?」

A.投票する
B.投票しない

159: 8.嫌われるわけ 2014/04/05(土) 21:49:44.26 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「投票するよ。杏香ちゃんならきっと学校を良くしてくれると思うし」

杏香「ふふ、任せてくれ。きっとこの高校に最高の校風をつくってみせる」

 杏香の好感度が1上がった。


B
碇「残念だけど、投票できないよ」

杏香「困ったな。碇先輩なら投票してくれると思ったのだが……理由を聞いてもいいか?」

碇「生徒会選挙は学校を良くする人を選ぶためのものじゃないか」

杏香「そのことに私では力不足とでも?」

碇「そうじゃなくて、俺はまだ杏香ちゃんが選挙に出るって聞いただけじゃないか。
  所信表明や公約を聞いてないのに投票することなんてできないよ」

杏香「……そうだな。私としたことが初めて人に計画を話して興奮していたのかもしれん」

杏香「立候補前に票を固めておくことは普通の選挙では当たり前だがこれは生徒選挙だ。
   せめて形だけでもフェアにやらないとな」

杏香「ありがとう、そして待っていてくれ。きっと碇先輩が私に投票したくなるような所信表明と公約をつくってみせる」

碇「う、うん。頑張ってね」

杏香「ふふ、任せてくれ。きっとこの高校に最高の校風をつくってみせる」

碇(偉そうに言ってみたものの、これは余計なことをしたかも)

 杏香の好感度が3上がった。

160: 8.嫌われるわけ 2014/04/05(土) 21:52:34.99 ID:cYsA9Bbw0
碇「今日も居残り練習して遅くなっちゃった。もう皆帰っただろうな。
  あ、また部室の電気がついてる。前は杏香ちゃんがいたみたいだけど今日もいるのかな?」

A.様子を見に行く
B.そのまま帰る


B
碇「さすがに今日は行かなくていいか。帰ろう」


161: 8.嫌われるわけ 2014/04/05(土) 21:57:39.87 ID:cYsA9Bbw0

碇「せっかくだし、ちょっと話して帰ろう」

・・・・・・・・・・・・・・・

 ガラッ

碇「杏香ちゃん、お疲れ様」

杏香「ん? 碇先輩か。お疲れ様。今日も残っていたのか?」

碇「杏香ちゃんのほうもね。今日はどうしたの?」

杏香「ああ。スコアをつける練習だ」

碇「えっ? この前の練習試合のときスコアのほうはちゃんとつけれていたと思うけど」

杏香「それはそうなんだがな、あの日はスコアをつけるのにいっぱいいっぱいで他のことまで気が回らなかったんだ」

杏香「うちのチームは試合経験が少なくてどうしても回ごとのベンチでのすごし方が他のチームに比べて問題あると思う」

杏香「それをなおすためにはマネージャーである私がスコアを片手間にチームに呼びかけなければなるまい。
   だから回数をこなしてスコアをつけるのに慣れようとしているんだ」

碇「頑張るね」

杏香「そうか? マネージャーの仕事としては当然のことだし、むしろ遅すぎると思うのだが……」

碇「そうかもしれないけどさ、普段のマネージャーの仕事もやって、
 今もこうして遅くまで残って仕事を覚えてくれるなんてなかなかできることじゃないよ」

碇「そう考えると杏香ちゃんは十分に頑張っていると思う」

162: 9、やらねばならぬこと 2014/04/05(土) 22:01:25.64 ID:cYsA9Bbw0

杏香「頑張っている、か……碇先輩、あなたは鏡に映った自分が笑えるか?」

碇「え?」

杏香「ときどき、自分自身からこういう声を聞くことはないか。
   ・・・どんなに努力しようと、すべては結局ムダなのだと」

碇「!」

杏香「どんなに努力したところで失ったものが返ってくるわけではないし、どれほど努力しようとこれからの未来なんて限られている」

杏香「若さは無限の可能性を秘めていると言う言葉を聞くが、それはきっと無限の可能性全てを得られるということではなく、
  無限の可能性からわずかな実現できそうなやつを手探りで選び取れという意味なのだろうな」

杏香「そして、その選び取った可能性が実現できる範囲の外にあるなら今私たちがこうして努力を重ねることなんて無意味に等しい。
   ……いや、それ以上に今の努力を虚しく思うだろう。・・・ではなぜ私たちはこんな苦しみを続けている?」

A.ムダなんかじゃない
B.・・・考えたこともなかった
C.先のことなんて気にしない

163: 9、やらねばならぬこと 2014/04/05(土) 22:03:20.33 ID:cYsA9Bbw0

A
碇「ムダなんかじゃない」

杏香「なぜそう思う?」

碇「今の自分に後悔してないからだよ。
  周りから愚かに見えようとも、たとえ結果がついてこなくたって、自分自身が否定しなければムダなわけないじゃないか」

杏香「……なるほど。所詮価値の違いは視点の違い……たしかにそうかもな……」


B
碇「・・・考えたこともなかった」

杏香「先輩がそう答えるなんて意外だな……いや、私がそう勝手に決めつけていただけか……」


C
碇「先のことなんて気にしない」

杏香「先輩らしい答えだな。だがやらない理屈をこねているよりとりあえず行動を起こすほうがずっと前向き、か……」

164: 9、やらねばならぬこと 2014/04/05(土) 22:08:49.43 ID:cYsA9Bbw0

碇「杏香ちゃん?」

杏香「・・・私に関して言うなら、「やらずにはいられない」からだ。
   目の前にゴミが落ちていればゴミ箱に捨てねば気がすまん」

杏香「正しいからでも、カッコいいからでもない。
   ただ、やらねばならないと思ってしまったから、やるんだ」

杏香「たとえ鏡に映ったおのれの姿がどんなにこっけいであろうとも・・・やらねばならん。」

碇「……生徒会に入るのもやらなければいけないことなのかい?」

杏香「そうだ。私の目的はこの学校に最高の校風をつくることだからな」

碇「意固地になってるんじゃない?」

杏香「……何?」

碇「前に杏香ちゃんは生徒会に入るために嫌われているみたいに言ってたよね?
  けど今の俺には君が皆に嫌われたから生徒会に入るように見えるよ」

杏香「……では全ては私の嘘だったと? 実は私は何も考えてなくと?
   私はたまたま嫌われたから意地をはって生徒会に入るという話をでっちあげたかわいそうなやつだといいたいのか?」

碇「そうじゃない。杏香ちゃんは賢いからおそらく生徒会のことも今の状況もはじめから考えていたんだろうさ。
  でもそれは半面は上手くいきすぎて、もう半面は上手くいかなかったんだ」

碇「皆、杏香ちゃんの計画通りに君を疎み、嫌い、恐れるようになった。だけどその想定に反して君の心は悪評に耐えられなかったんだ」


165: 9、やらねばならぬこと 2014/04/05(土) 22:11:31.92 ID:cYsA9Bbw0

杏香「勝手な想像だな。そんな証拠はどこにある?」

碇「努力がムダなんかじゃないかって聞いている時点で今の自分の状況に後悔してるって言っているようなもんじゃないか!」

杏香「……」

碇「鏡花ちゃんは今になって目標に対する意思や決意が鈍った。
  だけどもう周りの状況を目標達成のために変えてしまって後戻りはできない」

碇「だから今の杏香ちゃんは生徒会に入ろうとしている。
  それは君の言う「やらずにいられない」じゃなくて、「それ以外できない」という逃げなんじゃ……」

杏香「碇先輩っ!」

 俺の言葉を杏香ちゃんにしては珍しく大声で遮られる。
 いつも対面していた時は必ず強い意志を感じていた杏香ちゃんの目は顔を伏せられ見えなかった。

杏香「……それ以上はもう、やめてくれ…………お願いだから、やめて………………」

碇「杏香ちゃん……」

 顔を上げないのは俺の言ったことを否定できない悔しさからか、それとも……

杏香「…………今日はもう帰る。すまないが碇先輩、電気のほうは頼んだ」

 スタスタスタスタ

碇「……泣いていたのかな?」

 杏香の好感度が3上がった。

166: 10.買い物は映画の後で 2014/04/05(土) 22:14:50.86 ID:cYsA9Bbw0

碇「ふう、今日の練習も疲れたなあ。だけど明日は久々のオフだ。ゆっくり休むぞ」

杏香「キャプテン」

碇「あ。須田さん」

杏香「お願いがあります」

碇「何?」

杏香「明日街のスポーツ店に部活の用品を取りに行くんですけど、一人で運ぶのは難しい量になりそうで……」

A.わかった、俺も一緒に行くよ
B.わかった、他の一年に手伝わせる
C.須田君は……

A
碇「わかった、俺も行くよ」

杏香「いえ、別にキャプテンに来てくれというわけでは……」

碇「いいって、どうせ明日は暇なんだし」

杏香「ありがとうございます」

167: 10.買い物は映画の後で 2014/04/05(土) 22:16:30.57 ID:cYsA9Bbw0

B
碇「わかった、他の一年に手伝わせる」

杏香「ありがとうございます」

碇「おーい、一年」

一年生部員's「はい」

碇「実はかくかくしかじかなんだけど、誰か明日……」

一年生A「あ、俺明日補修があって!」

一年生B「お、俺も俺も!」

一年生C「明日は父ちゃんに一回帰ってこいって言われてて……」

碇「……お前ら都合よすぎないか? はあ、しかたない。俺が行くよ」

碇(まあ、杏香ちゃんを苦手とする気持ちはわかるけどな)

 杏香の好感度が1上がった。


C
碇「須田君は……」

杏香「却下だ……じゃない、無理です」

碇(杏香ちゃんが素に戻ったぞ……須田君……)ドヨーン

杏香「兄が一緒だとどうせ一人でマニアショップに行くのでできれば他を」

碇「じゃあ俺が行くよ」

杏香「ありがとうございます」

 杏香の好感度が1下がった。

168: 10.買い物は映画の後で 2014/04/05(土) 22:19:05.98 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・

 約束当日、俺は人気のない公園にいた。
 閑散としているところで男女の密会なんて弾道があがるようなシチュエーションだが、残念ながらそれはない。
 というか、そこを選んだのは俺じゃなくて杏香ちゃんであった。
 そしてその理由は下手に人目のつくところで野球部の誰かに見られ、変な噂がたつと困るからといういかにも彼女らしい理由だった。

碇「約束の時間まで後五分だ」

「……先輩」

碇「姿が見えないけどまさか杏香ちゃんが遅刻するわけないよな……」

杏香「碇先輩!」

碇「は、はい!? って、きょ、杏香ちゃん!?」

杏香「そうだが、なんで驚いているんだ?」

碇「いや、だって眼鏡が……」

 分厚い眼鏡と前髪で隠れていた杏香ちゃんの顔はかなりレベルが高く、正直今までで一番ドキッとした。

169: 10.買い物は映画の後で 2014/04/05(土) 22:20:42.21 ID:cYsA9Bbw0

杏香「ああ、そういえば碇先輩に眼鏡を外した姿を見せるのは初めてか。
   印象がちょっと変わるっているかもな」

碇「変わるっていうより、別人だよ……眼鏡なくても見えるの?」

杏香「ああ、問題ない。あれは伊達だからな」

碇「えっ? 嘘?」

杏香「本当だ」

碇「どうしてそんなことを?」

杏香「父からの言いつけでな。私の素顔が周りに知れ渡るとちょっとまずいらしい。
   小さいころはよくわからなかったが、最近になってわかったよ。こういうことだった」

 杏香ちゃんは自身の長い髪を持ち上げてポニーテールみたくまとめる。
 するとそこにいたのは……

碇「神条、紫杏……?」

 世間に疎い俺でも知っている有名人、神条紫杏だった。

170: 10.買い物は映画の後で 2014/04/05(土) 22:25:50.86 ID:cYsA9Bbw0

碇「……杏香ちゃんって神条紫杏の親戚だったの?」

杏香「わからない。碇先輩も知っているとおり私にはもう肉親の可能性がある親族はいないからな。
   だが、これで私が素顔を出せない理由がわかるだろう?」

碇「……」

 神条紫杏。若くしてジャジメントの日本支社の最高責任者に就き、さらにオオガミとジャジメントを合併させ、ツナミグループという名の世界最大の財閥を立ち上げた超敏腕女社長というのが数年前までの彼女の評価だった。

 しかしツナミのその後のジャジメントが行っていた悪事が明るみに出たとき、それらは全て神条紫杏の代から存在し続けていたものと報道なされ、彼女は評価は誰もだうらやむ高嶺の華のから魔王と呼ばれ恐れられるようになるほどにまで落ちた……いや、反転した。

 だから杏香ちゃんのお父さんが杏香ちゃんに眼鏡をかけるようにさせたのもおそらくそういう世間の目から杏香ちゃんを守るためだと容易に想像がつく。
 あの人は本人自ら言ったように決して善人ではなかったし、むしろ悪人だったけれども裏切るようなことはしなかった。

 杏香ちゃんは俺が納得したのがわかったのか手を離し再び髪を垂れ流す。

杏香「安全面でいえば本当は眼鏡もかけるべきなんだろうが、野球部の誰かに見つかるとも限らないしな。
   髪を下ろしておけばまあわからないだろうということで、眼鏡だけは外した」

杏香「さて、説明はそんなところだ。行こうか碇先輩」

碇「う、うん」

 いつもと違う顔を見せる杏香ちゃんに俺はドキドキしながらもついていった。

171: 10.買い物は映画の後で 2014/04/05(土) 22:27:34.81 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・・

碇「……まだ店が開いてない?」

杏香「すまない。どうやら曜日によって開く時間が異なっているようだ。
   今日は後二、三時間したら開くそうなんだが……」

碇「うーん。じゃあ映画でも行く?」

杏香「映画?」

碇「うん。映画なら時間的にも丁度だと思うし」

杏香「……いや、やめておこう」

碇「えー、どうして?」

杏香「私たちは遊びに来たわけじゃないからな。
   罪を犯した囚人が互いに罪を黙秘するよう示し合わせればいいのかもしれないが、そもそも罪を犯さなければ囚人になることはない。
   一緒に映画館にいるところを他の誰かに見られたらまずいからな」

172: 10.買い物は映画の後で 2014/04/05(土) 22:29:58.67 ID:cYsA9Bbw0

碇「そうかもしれないけどさ、だったら残った中途半端な時間をどうやって潰す?」

杏香「うっ……」

碇「だいたい、こうなったのも杏香ちゃんのせいだし」

杏香「そ、それは……悪いと思っている」

碇「本当に?」

杏香「本当だ!」

碇「じゃあ、お詫びに映画を一緒にみようか」ガシッ

杏香「へ? ちょ、ちょっと、碇先輩、引っ張るな!」

碇「大丈夫、大丈夫。俺のわがままだから、映画の代金は俺がおごるからさ」

杏香「そういう問題じゃなくてだな……」

・・・・・・・・・・

 見た映画の内容はよくある勧善懲悪もの。
 一般人だった主人公とヒロインの前に正義の味方が表れ、なんやかんやで正義の味方は死ぬものの、
主人公とヒロインが見事悪の親玉を改心させたという話だった。

173: 10.買い物は映画の後で 2014/04/05(土) 22:33:07.58 ID:cYsA9Bbw0

・・・・・・・・・・

碇「お、面白かったね……」

杏香「……ああ、面白かった…………」

碇(どうしよう、物語終盤からずっと機嫌が悪いぞ……やっぱり映画に誘ったのは失敗だったか……?)

杏香「面白かった……だが、気にくわん」

碇「え?」

杏香「脚本家はいったいどういうつもりであのキャラはああいう扱いにしたんだ?」

碇「あのキャラって……」

A.主人公
B.ヒロイン
C.正義の味方
D.悪の親玉


A
碇「主人公?」

杏香「たしかにあの優柔不断さには腹がたったが……そうではない」

碇「じゃあ何が気にくわなかったのさ?」

杏香「それは……いや、やめておこう。わざわざ文句を言うために見たわけじゃないからな。碇先輩行こう、店がもう開いてる」

碇「……わかった」

 杏香の好感度が1上がった。


B
碇「ヒロイン?」

杏香「たしかにあの終始悲劇のヒロインぶっている姿には腹が立ったが……そうではない」

碇「じゃあ何が気にくわなかったのさ?」

杏香「それは……いや、やめておこう。わざわざ文句を言うために見たわけじゃないからな。碇先輩行こう、店がもう開いてる」

碇「……わかった」

 杏香の好感度が1上がった。

174: 10.買い物は映画の後で 2014/04/05(土) 22:36:19.64 ID:cYsA9Bbw0

D
碇「悪の親玉?」

杏香「たしかにあれほど悪事を重ねていたのに鞍替えしたとたんいいやつ扱いされたのは腹が立ったが……そうではない」

碇「じゃあ何が気にくわなかったのさ?」

杏香「それは……いや、やめておこう。わざわざ文句を言うために見たわけじゃないからな。碇先輩行こう、店がもう開いてる」

碇「……わかった」

 杏香の好感度が1上がった。


C
碇「正義の味方?」

杏香「そうだ! 彼は報われてないじゃないか!
   せっかく世のため人のため、真面目に善を積み重ねてきたのに結局は志半ばで死に、その結末すら知ることはできない。
   ……そんなのあんまりじゃないか」

碇「……でも、それは」

杏香「ああ、わかってる。絶対のピンチに頼れる仲間がいなくなる。
   物語を面白くするものとしては最高のスパイスだろう。私だってそれでどきどきしたさ。
   でも、だからこそ、そんな真面目で良い人が報われる結末があってもいいはずじゃないか……」

碇「……」

杏香「……すまん。熱くなりすぎたな。碇先輩、ありがとう。
   楽しかったよ。これは本心だ」

碇「……それならよかったよ」

 杏香の好感度が3上がった。

・・・・・・・・・・・・

「あ、あれはミス紫杏!? クシュン!
 どうしてあのメスザルが生き、クシュン…ていクシュン…これは調べクシュン…るひつよクシュン。ああ! もう!!」

176: 11.囚人のジレンマ 2014/04/06(日) 08:52:32.14 ID:fMl1l5P60
碇「ねえ、杏香ちゃん」

杏香「なんだ?」

碇「杏香ちゃんってたまに囚人がなんとかって例えするよね。あれってなんなの?」

杏香「ああ、あれは……碇先輩は囚人のジレンマというゲームをしっているか?」

碇「うーん、名前くらいは聞いたことあるような……」

杏香「これは司法取引のシナリオがあるアメリカが発祥のゲームで、信頼と合理性が試されるいろいろと面白いゲームだ」

杏香「このゲームでは囚人A、囚人Bが別々に捕まっていて警察にそれぞれこう言われる。
   『もし、お前らが二人とも黙秘したら二人とも懲役2年だ。
    しかしどちらか片方が自白すればそいつはその場で釈放、代わりに黙秘したほうの懲役が十年になる。
    だが両方とも自白したら二人とも自白すれば懲役5年だ』と」

杏香「そしてこのときの囚人の行動を考えるゲームだ。ゲームの意味はわかったか?」

碇「う、うん……なんとなく」

杏香「本当か? では聞くが合理性のみを考えた場合、囚人Aは黙秘と自白どちらをしたほうがいい?」

碇「え、えっと……」

A.黙秘
B.自白

177: 11.囚人のジレンマ 2014/04/06(日) 08:55:57.86 ID:fMl1l5P60

A
杏香「違う、自白だ。うーん、私の説明の仕方が悪かったか?」

碇「いや、杏香ちゃんの説明というより作者が……」

*本当にすみません。囚人のジレンマはwikiに普通にあるので知りたい人は調べてね*


B
碇「じ、自白……?」

杏香「そうだ」

碇(ほっ、あってて良かった)



杏香「囚人Aが黙秘をすればAは最低でも2年、最高で10年懲役に服さなければならない。
   逆に自白をすれば服す期間は最低で0年、最高でも5年だから、どちらが得なのかは明白だな」

碇「自白するほうが良いってこと?」

杏香「合理性のみで考えるならそうなる」

杏香「だが考えてみろ、二人とも自白するなら懲役五年になるが二人とも黙秘すれば懲役は二年ですむ。
   このゲームでは禁じ手とされているが、もし囚人たちが相談できるなら二人とも黙秘しようという話になると思わないか?」

178: 11.囚人のジレンマ 2014/04/06(日) 08:59:26.37 ID:fMl1l5P60

碇「たしかにそうだけど……杏香ちゃんはそうはならないと考えているんだよね?」

杏香「ふふ、わかっているじゃないか」

杏香「たとえ囚人たちは相談したとしても取り調べをバラバラに行えば疑心暗鬼に陥って自白する囚人が間違いなく出てくるだろう。
   人々が己の利権を考えるために合理的に愚かな選択肢を選ぶ。私はこの話のそんなところが興味深くてたまに使ってしまうんだ」

杏香「まあ、この話はそんなことを言う話ではないから私の使い方はいわば誤用なんだけどな。自覚はしてる」

 ここで杏香ちゃんの話は終わったと思ったがどうやら一息をついただけのようでまだまだ話は続きそうだ。

杏香「囚人のジレンマについておもしろい話が一つある。
   この話はゲームと言ったが、実際に囚人を黙秘するか自白するかパターンをプログラムして競う大会があった。
   そしてその初代大会で優勝したのがなんと、しっぺ返しを基本にしたプログラムなんだ」

碇「しっぺ返しってあのしっぺ返し……?」

杏香「ああ。相手の行動をそのまま返すあのしっぺ返しだ」

杏香「相手が前回黙秘したなら黙秘し、前回自白されたなら自白し返す。
   つまりの前回の行動をそのままやり返す戦法が見事このゲームを制したんだ。
   まあ最近はさすがに負けるらしいが今でも強力な戦法の一つらしい」

179: 11.囚人のジレンマ 2014/04/06(日) 09:01:34.17 ID:fMl1l5P60

碇「そんな単純な手が?」

杏香「そうだ。そしてそんな単純な手が強いという事実に教訓めいたものを感じないか?」

杏香「……人生、全ての人を信じ黙秘する聖人よりも、自己の利権だけを求めて裏切り自白し続ける悪人よりも、
  やられたらその場でやり返し、後には決して引きずらない。
   あるいみ子供のような生きることこそ一番幸せに近い、のかもしれない」

碇「……そうかもね」

杏香「……もし」

碇「え?」

杏香「もし碇先輩と私がこの囚人の状態におかれたら、碇先輩はどうする?
   私を信じて黙秘するか? それとも自白するか?」

碇(この場合、黙秘する=信じる、自白する=信じられないということかな?)

A.黙秘する
B.自白する
C.状況による

180: 11.囚人のジレンマ 2014/04/06(日) 09:02:47.62 ID:fMl1l5P60

A
碇「黙秘する……かな」

杏香「いいのか? 私みたいなやつを信じて」

碇「杏香ちゃんだから、だよ」

杏香「……そうか。なら私も、もしものときは碇先輩を信じよう」


B
碇「自白するかな。悪いことしたならちゃんと償わないと」

杏香「そういう話じゃないんだが……まあいいか」


C
碇「状況しだいかも。杏香ちゃんは?」

杏香「自白する」

碇「えっ?」

杏香「悪いが碇先輩、私はこういうときに逃げの選択肢を選ぶ輩を信用できないんだ。
   あいまいな言葉を言うやつほど、何かをしでかしたときにあいまいな言葉を盾に逃げるからな」

碇「そ、そう……」

181: 12.須田の警告 2014/04/06(日) 09:04:34.51 ID:fMl1l5P60

碇「須田さん、頼んでいた備品についてなんだけど……」

杏香「そのことなんですけど、キャプテンちょっとこっちに来てもらってもいいですか?」

碇「わかった」

 スタスタスタスタ

一年生部員「キャプテン、よくあんな女の呼び出しにいちいち付き合っていられるっすよね。
      もしかして付き合ってるんすかね?」

二年生部員「キャプテンに限ってそれはないだろ。あの女、愛想の一つもふりまかねえし。
      それよりお前は早く準備しろ」

一年生部員「は、はいっす」

須田「……」

182: 12.須田の警告 2014/04/06(日) 09:06:33.94 ID:fMl1l5P60

・・・・・・・・・・・・・

碇「ふう……今日も練習頑張ったぞ」

須田「碇君」

碇「ん、何だい? 須田君」

須田「最近、おいらの妹と仲が良いでやんすね」

碇「へっ……そ、そうかな? 普通だと思うんだけど」

須田「隠さないでいいでやんす。
   二人きりになると昔の呼び方に戻していることもおいらは知っているでやんす」

碇「うっ……」

碇(まさか須田君にばれているとは……)


183: 12.須田の警告 2014/04/06(日) 09:07:47.75 ID:fMl1l5P60

須田「付き合っているでやんすか?」

碇「いや、まだそこまでいってないけど……」

 なるべく言葉を濁しながら返しを考えていく。
 須田君のことだ、おそらくキャプテンとマネージャーなんて不謹慎でやんす。なんて言うかもしれない。
 そう考えて返答も決めていたのだけれど、それは裏切られることになった。

須田「……やめたほうがいいでやんす」

碇「今度須田君が欲しがっていたプラモデルあげるから皆には……えっ?」

須田「碇君がだれと付き合おうとそれは自由でやんす。
   ……けど、おいらの妹だけはやめたほうがいいでやんす」

碇「須田君、それって……」

A.やきもちかい?
B.心配してるの?
C.……わかった。言うとおりにするよ


次回 パワポケ「私立NIP高校?」(彼女全データ版) 後編