勇者「長老、なんかこの剣喋ってない?」長老「なんじゃと」聖剣「……」 その5

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:03:07.02 ID:DezdFWsX0
王城


ガラガラ……

女騎士「う……くっ……」

女騎士「今のは……?」



19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:03:54.77 ID:DezdFWsX0
魔法使い「いたた……」

女騎士「魔法使いさん!」

魔法使い「やっと死霊騎士を追い込めたと思ったのに、急に壁が……」

魔法使い「一体何があったというの」

女騎士「それは私にも……」

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:05:08.29 ID:DezdFWsX0
女騎士「死霊騎士はどこへ……」

女騎士「……」

女騎士「……」


女騎士「……っ!?」


女騎士「姫! 姫は!?」

魔法使い「……見当たらない……もしかして今の崩壊に巻き込まれて……!?」

女騎士「そんなっ!」

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:05:55.27 ID:DezdFWsX0
王城、外壁沿い


ズリ…ズリ…


死霊騎士「はぁ……はぁ……!」

死霊騎士「今のは一体……」

死霊騎士「妖術師か……?」


死霊騎士「……いや、違うな。奴ならこんな方法は選ばない」

死霊騎士「……今動ける者で考えられるのは……あの男か」

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:06:51.95 ID:DezdFWsX0
死霊騎士「…………がはっ……!!」

死霊騎士「はぁ、はぁ……!」

死霊騎士「奴め……どう言うつもりだ」

死霊騎士「城への攻撃に俺を巻き込むとは……!」

死霊騎士「だから奴は……はぁ、信用ならんのだ」

ズリ…ズリ…

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:07:50.82 ID:DezdFWsX0
死霊騎士「はぁ、はぁ……」

死霊騎士「…………む?」


姫「……」


死霊騎士「……」



死霊騎士「……この国の姫か」

死霊騎士「先の爆発に巻き込まれたか。気を失っているな」

死霊騎士「……」

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:11:58.94 ID:DezdFWsX0
王都、上空

バサッ!!

勇者「はぁ、はぁ……近づいてきたな」

勇者「主よ! とりあえず城に空いてるあの穴の方向へ……!」

主「キィーーーー!」

バサバサッ、バサバサッ!


勇者「なっ……! 急にどうしたっていうんだ、主よ」

勇者「……ん?」

勇者「………………あれは……!!」

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:13:06.90 ID:DezdFWsX0
「キィーーーー!!」

バサッ!!


死霊騎士「!」


スタッ

勇者「……」


死霊騎士「……貴様は」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:14:55.38 ID:DezdFWsX0
姫「……」


勇者「……お前、その人に何をした?」

死霊騎士「……」

勇者「気を失ってるみたいだけど。それをやったのはお前か?」


死霊騎士「……ふん」

チャキッ


勇者「ッ!」

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:18:52.78 ID:DezdFWsX0
勇者「お前……!!」

死霊騎士「安心しろ。この小娘はまだ生きている」

死霊騎士「貴様は……主君に剣を向けられ牙を剥く……その反応を見るに、この城の騎士か?」

死霊騎士「いや、貴様からはどうにもそういった騎士の類の匂いは感じられない」

死霊騎士「その腰の装備を見るに剣士であることはわかるが、何者だ?」

勇者「……」


死霊騎士「……まあ、俺にとってはどうでも良いことか」チャキッ

姫「……」


勇者「……ッ!!」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:21:04.02 ID:DezdFWsX0
勇者「……」

勇者「……」

勇者「……その剣を降ろせ。いや、降ろしてくれ」

死霊騎士「……」

勇者「そのひとに手を出すのは、やめてくれ」

死霊騎士「……」

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:23:40.68 ID:DezdFWsX0
死霊騎士「……一つ、条件がある」

勇者「条件……?」

死霊騎士「貴様にとっては違うようだが、俺にとって、この小娘の命はどうでも良いものだ」

死霊騎士「死のうが生きようが頓着はしない。王族とは言え、王でないのなら興味は無い」

死霊騎士「貴様の反応次第では見逃してやっても構わんのだ」

勇者「……」

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:30:37.42 ID:DezdFWsX0
勇者「……」

死霊騎士「そう睨むな。戦に綺麗も汚いも無いとはいえ、俺も好き好んでこのやり方を選んでいる訳ではない」

死霊騎士「だが、俺はこの戦いにおいて私情は挟まん。使える物はすべて使わせてもらう。それだけの話だ」

勇者「……お前の言う、条件ってのは?」



死霊騎士「この王都に存在する、聖女とやらの居場所を教えろ」

勇者「!」

死霊騎士「先の光からも、この王都に聖女がいることはわかっている。不在という訳ではあるまい」

勇者「聖女だって……?」

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:33:16.04 ID:DezdFWsX0
勇者(何であいつの名前がここで出てくるんだ?)

勇者(そもそもこいつ、聖女に会ってどうするつもりなんだ……?)



勇者「……知らない、と言ったら?」

死霊騎士「この小娘を斬り、次に貴様を斬る。情報が引き出せないのならそれで良い」

死霊騎士「小娘にも、貴様にも利用する価値はなく、そして生かしておく理由もなくなる」

死霊騎士「ただそれだけの話だ」

勇者「…………」

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:41:52.54 ID:DezdFWsX0
勇者「……俺は…………」


勇者(どうすればいいんだ?)

勇者(奴の剣の切っ先は今も姫に向けられている。下手に動くことはできない)

勇者(聖女は今、教会で休んでいる……筈だよな)

勇者(きっと今頃、神父さんに介抱されてることだろう)

勇者(そもそもこいつは、聖女に会って何をするつもりなんだ?)

勇者(この物騒な雰囲気からして、ロクな目的じゃない気はするが……)

勇者(……)



聖剣「>>40」

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:45:40.70 ID:9E3S7KwoO
●●●●には夢が詰まってる

42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:50:59.43 ID:DezdFWsX0
聖剣「●●●●には夢が詰まってる」

勇者「……」

43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 22:51:25.20 ID:DezdFWsX0
勇者「……」

勇者「…………」

勇者「この状況で●●●●って……お前……」


死霊騎士「何を言っている」

勇者「何でもないぞ」

45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 23:02:32.52 ID:DezdFWsX0
勇者(落ち着け……落ち着け……!!)

勇者(聖剣の言葉の意味を考えなければ)

勇者(●●●●……●●●●……)

勇者(●●●●には夢が詰まっている……か)


勇者「……」


勇者(まるで意味がわからんぞ)

46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 23:05:48.81 ID:DezdFWsX0
勇者(語呂的に小っちゃいと●●●●を掛け合わせた意味な気はするが……)

勇者(胸……胸……胸かぁ……)

勇者(…………)

勇者(……聖女の胸は大きかったな)

勇者(この戦いが終わったらアレをああする訳だけど、さすがの俺も少しアレだ)

勇者(対して、姫の胸は……)

チラッ


姫「……」


勇者「……」

47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 23:08:03.88 ID:DezdFWsX0
勇者(……)

勇者(まあ、大きくは無いが……)


死霊騎士「貴様……先ほどから黙りこくってどういうつもりだ?」

死霊騎士「まさか、妙なことを考えてはいないだろうな」


勇者「!!」

48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 23:12:57.40 ID:DezdFWsX0
勇者「この状況で妙なこととか考える余裕があるわけないだろ。一国の姫君の命がかかってるんだぞ。俺のことを何だと思ってやがる」

勇者「俺は滅茶苦茶真剣に考えてるし。せっかく人が真面目に答えを出そうと頑張ってる時に変な言いがかりをつけてくるのはやめてくれないか? お前、さすがに性格悪すぎるぞ」


死霊騎士「……」

死霊騎士「…………」

50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 23:28:57.25 ID:DezdFWsX0
死霊騎士「……目が泳いでいるが」

勇者「そんなことないし」

死霊騎士「……」


死霊騎士「しかし……真剣に考える、か」

死霊騎士「貴様、聖女について何かを知っているのか?」

勇者「!!」

51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 23:29:47.60 ID:DezdFWsX0
死霊騎士「これ以上遊んでいる時間はない。これが最後の問いだ」

死霊騎士「聖女の情報を吐け。吐かなければこの小娘を殺し、貴様を殺す」

勇者「……!!」


死霊騎士「……」

勇者「……」

死霊騎士「…………」

勇者「…………」



死霊騎士「……どうやら答える気は無いようだ」チャキッ

勇者「ッ!!」

52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 23:30:45.89 ID:DezdFWsX0
勇者「ま、待てっ!!」

死霊騎士「……」


勇者(●●●●には夢が詰まっている……)

勇者(夢は、守るべきもの……)

勇者(聖女は…………)

勇者(姫は…………)

勇者(聖剣の、安価の意味は…………)


勇者(……………………)

54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/28(水) 23:32:03.65 ID:DezdFWsX0
勇者「……わかった」

死霊騎士「……」

勇者「お前の言う通り、確かに俺は聖女の居場所を知っている」

死霊騎士「……ほう?」



勇者「聖女の居場所を教える。だから、その剣を降ろしてくれ」

死霊騎士「……」

69: ◆XoiMTUEsXEGh 2018/11/29(木) 21:12:05.24 ID:7Yq0axiA0
勇者「聖女の居場所は……」

勇者「……」


死霊騎士「……どうした。言うと決めたのであれば早く言え」

死霊騎士「俺もそう気が長い方ではない」

死霊騎士「あまりに遅いと、虚言を繕う時間を稼いでいると見てこの女を斬るぞ」


勇者「……!」

70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:13:48.68 ID:7Yq0axiA0
勇者「……教会だ」

勇者「聖女は今、この王都の教会で身を休めている」

死霊騎士「……」



死霊騎士「教会……」

勇者「聖女の居場所は答えた……これで十分だろ」

勇者「早く姫から離れてくれ」


死霊騎士「……そうだな。情報の提供には感謝しよう」

死霊騎士「だが、それを飲むことはできない」

勇者「!!」

71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:14:33.71 ID:7Yq0axiA0
勇者「お前……約束が違うぞ!」

死霊騎士「貴様が正直に答えている保障はどこにもないのでな」

死霊騎士「教会には行かせてもらうが、コレは預かっていく」

ガシッ

姫「……」


勇者「!!」

73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:16:06.24 ID:7Yq0axiA0
勇者「俺は嘘なんか吐いてない! 本当に聖女の居場所を答えた!!」

死霊騎士「そう言いながら、平然と嘘を吐くのが人間だ」

勇者「……!」

勇者「……元から姫を解放するつもりはなかったってのかよ……!」

ギリリッ……!


死霊騎士「そう睨むな。貴様の言うことが真実であるとわかれば、その時点でこの女は放してやる」

死霊騎士「もし嘘であったなら」

死霊騎士「……この先を言う必要はあるまい」

バッ!


勇者「この野郎……!!」

74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:17:47.92 ID:7Yq0axiA0
王都、市街


死霊騎士「……はぁ、はぁ…………」

死霊騎士「教会……そこに、聖女が……!!」

死霊騎士「…………」


「キィーーーー!!」バサッ!


死霊騎士「!」

75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:19:04.42 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「鳥……」

死霊騎士「あの男、空から俺を追って来くるか」

死霊騎士「……当然ではあるか。俺が奴を疑ったように、奴にとっても俺が本当にこの女を解放するという保障はどこにもない」

死霊騎士「この小娘の命など、俺にとっては何の価値もない」

死霊騎士「故に、殺すことに拘るつもりはないのだがな」


死霊騎士「……」

死霊騎士「……ふん、好きに追うがいい」

77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:22:24.46 ID:7Yq0axiA0
教会前


死霊騎士「はぁ、はぁ……!」

死霊騎士「教会……」


死霊騎士「……まさか死霊の身となってから、この建屋の門を潜ることになろうとはな」

死霊騎士「……」

78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:24:18.78 ID:7Yq0axiA0
バン!!


死霊騎士「……」


氷の魔女「む?」



メロンパン職人「……」

79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:25:35.67 ID:7Yq0axiA0
氷の魔女「……ほう」

氷の魔女「これはまた仰々しい客が来たものだ」

氷の魔女「次から次へと落ち着きのない……わたしが言えた口でもないが、ここは神の家ではなかったのか?」

死霊騎士「貴様は……まさか、氷の魔女か?」

氷の魔女「そうだとしたら、どうする?」

死霊騎士「何故そのような袋に入っている」

80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:26:39.46 ID:7Yq0axiA0
氷の魔女「……」

氷の魔女「…………」

氷の魔女「………………ところで、このような場所に何の用だ?」

氷の魔女「ここは貴様のような魔物とは特に無縁の場所と思うが」


死霊騎士「……」

82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 21:58:08.44 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「……聖女はどこにいる」

氷の魔女「聖女だと?」

死霊騎士「我々がこの王都に来た目的だ」

死霊騎士「本来ならば貴様も担うべき役割だった筈だ。俺の問いに答えろ」

氷の魔女「……」

83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 22:02:21.71 ID:7Yq0axiA0
氷の魔女「ふふっ。これは……」

死霊騎士「……何がおかしい」

氷の魔女「お前も聖女が目的か。死霊の騎士よ」

死霊騎士「お前も、だと?」

氷の魔女「いやなに、つい先ほども聖女を狙い現れた男がいてな」

死霊騎士「……」

氷の魔女「聖女ならばここにはいないぞ。既に、フードの……わたしの封印を解いたあの食えない男が攫って行った後だ」

死霊騎士「!!」

氷の魔女「一足遅かったようだな、死霊の騎士。まあ、奴もお前の同胞なのだろうがな」

84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 22:04:17.60 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「奴が……」

死霊騎士「……」


死霊騎士(……既に聖女を手に入れたと言うのならば良い)

死霊騎士(奴も我々と目的を同じくして動いている)

死霊騎士(既にここを後にしていると言うのなら、魔将軍殿のもとへ連れ帰っている筈だ)

死霊騎士(気に入らん男だが……そこだけは信用してやってもいい)

死霊騎士(……だが。)

86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 22:07:59.62 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士(ならば何故、奴はあの場面で俺を巻き込み城を攻撃した?)

死霊騎士(無駄なことはしない男だ。王都に攻め入る際も、暗躍はしても自らの動きは最低限としようとしていた)

死霊騎士(聖女を手に入れるために城を攻撃する必要はあったのか?)

死霊騎士(……俺を攻撃するためか?)

死霊騎士(奴は俺を……魔将軍殿の配下であるこの俺を、消そうとでも考えていたと言うのか?)

死霊騎士(……やはり、あの男は……!!)

87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 22:21:09.20 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「…………」

死霊騎士「……ふん」


姫「……」ドサッ


氷の魔女「なんだこれは」

死霊騎士「……用済みの荷だ。興味もない」

死霊騎士「邪魔なのでな。ここに捨ておくことにする」

死霊騎士「聖女を奪えたと言うのなら、俺もこの都市に用は無い」

死霊騎士「王の首を獲れなかったのは一つ惜しいが……俺も万全ではないのでな。ここは一度退かせてもらう」

氷の魔女「そうか」

88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 22:22:20.87 ID:7Yq0axiA0
氷の魔女「止めはしない。お前に用もない。お前もわたしに用がないのなら、立ち去るが良い」

死霊騎士「……」


死霊騎士「……」

氷の魔女「……どうした。行かぬのか」


死霊騎士「氷の魔女。我らの下に付く気はないか?」

氷の魔女「……」

90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 22:33:05.76 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「貴様ほどの者を埋れさせているのも勿体のない話だ」

死霊騎士「一度失態を犯したとは言え、その力にはまだ利用価値がある」

死霊騎士「その無様な姿も、人間に敗れ封印されているのだろう」

死霊騎士「我らの下に来るならば、今ここで解放してやらんでもない」

氷の魔女「……」

93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 22:41:10.09 ID:7Yq0axiA0
氷の魔女「……」

死霊騎士「……」


氷の魔女「お前は馬鹿なのか。わたしのことを舐めすぎだ」

死霊騎士「……」

94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 22:43:37.64 ID:7Yq0axiA0
氷の魔女「勘違いされては困る。わたしは確かにお前たちに力を貸してやろうとしていたが、お前たちの配下になったつもりは一度もない」

氷の魔女「何よりわたしは命令されるのが嫌いだ。誰の下にもつく気はない」

氷の魔女「……お前は運が良いな」

氷の魔女「もしもわたしに力が戻っていたなら、今この場でその霊魂ごと氷漬けにして、海に流して魚の餌にでもしてしまっているところだ」


死霊騎士「……」

99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 22:56:38.48 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「……なるほど。貴様の答えはよくわかった」

死霊騎士「魔女よ。こちらの側に付かぬと言うならそれで良い」

死霊騎士「……だが、その立ち位置。いつまでも通せるものとは思うなよ」

ジャキッ


氷の魔女「……このわたしに剣を向けるか」

100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:00:29.74 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「いずれ、我らの王が復活する」

死霊騎士「この先、人と魔族の対立はより激しくなるだろう」

死霊騎士「その際……人にも付かぬ、魔族の側にも付かぬ。そのような半端者と相容れることはない」

死霊騎士「邪魔なだけだ」

氷の魔女「……」


死霊騎士「この程度で貴様を殺せると思ってはいないが……」

死霊騎士「俺も、今回は思うように事が進まず苛ついている」

死霊騎士「不死の女とて肉は斬れる。それでこの気が紛れるか、試してみるのも一興か」

101: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:02:34.37 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「まずはその首を落とし、その次はどうしてやろうか」

死霊騎士「不死者とはどこまで刻んでも生を維持できるものなのか」

死霊騎士「良い機会だ。この俺が見定めてやろう」

チャキ……


氷の魔女「……!!」

102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:04:16.02 ID:7Yq0axiA0
バン!!



死霊騎士「!」

氷の魔女「!」



勇者「はぁ、はぁ……!!」

104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:44:33.35 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「……貴様か。小僧」


勇者「お前……姫はどうしたっ?」

死霊騎士「……そこにいる。俺にとってはもうどうでも良いものだ」

死霊騎士「連れて行くなら好きにすると良い。今なら見逃してやる」

勇者「姫っ!」タタタッ

105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:45:54.08 ID:7Yq0axiA0
姫「……」

勇者「良かった……無事か……」


勇者「……ついでに聞くが、聖女はどうした」

死霊騎士「答える義理はないな」

勇者「……」

106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:46:48.85 ID:7Yq0axiA0
勇者「あいつにも無事でいて貰わなきゃ俺が困るんだが」

勇者「……まあいいや。お前が姫を解放したってんなら、話は早い」

勇者「これでようやく、俺も剣が振るえる」

勇者「後悔するなよ。後で返せって言われても、姫は渡してやらないからな」


死霊騎士「貴様のような小僧が俺に挑むだと……?」

死霊騎士「……構わないが。命が惜しくないようだな」

死霊騎士「拾えた筈の命を、わざわざ捨てに来るとはな」チャキッ

107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:48:11.27 ID:7Yq0axiA0
勇者「……」

勇者「……」


勇者「……ん?」


勇者(なんだ? あの物陰)

勇者(……下に、何か転がってるのか?)


勇者「……」


勇者「……」


勇者「床に何かが、拡がって……」


勇者「……血?」

108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:49:06.53 ID:7Yq0axiA0
勇者「誰が……!」

勇者「あれは、誰の血だ……!?」

バッ!



メロンパン職人「……」



勇者「……」

109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:49:56.46 ID:7Yq0axiA0
勇者「……」


勇者「…………」


勇者「……………………!!!」




勇者「……これやったの、お前か?」

死霊騎士「何の話だ」

勇者「……」

110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:51:18.45 ID:7Yq0axiA0
勇者「メロンパン職人……」

勇者「……まだ、息はあるな」

勇者「……」

勇者「……もうちょっとだけ頑張ってくれ」

勇者「すぐに医者まで連れてってやるからな」

111: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:53:36.10 ID:7Yq0axiA0
勇者「……」シャラン


死霊騎士「ようやく剣を抜いたか」

死霊騎士「俺も万全とは行かないが……貴様のような小僧一匹捻る程度、造作もない」

死霊騎士「身の程を弁えないということが、時にどうなるか。その身に––––––––」


死霊騎士「––––––––ッ!!?」



ギィィィィィィン!!!

112: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:55:11.37 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「き、貴様……!!」

ギリギリ……!!

勇者「時間がないんだから、ごちゃごちゃ喋ってるなよ」


ギィン! ガァン! ガギィン!

死霊騎士「はぁ、はぁ……!!」

勇者「……ッ!!」


ギィィィン!!


死霊騎士「ぐっ……!」ズザァッ!

死霊騎士「貴様、一体……」

113: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/29(木) 23:56:29.86 ID:7Yq0axiA0
死霊騎士「はぁ、はぁ……!」


死霊騎士「ッ!!!」


死霊騎士「その剣は……!!」

115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/30(金) 00:03:50.54 ID:gtpdgAPq0
死霊騎士「…………」

死霊騎士「……そうか……そう言うことか」

死霊騎士「…………」


死霊騎士「忌々しい聖剣め……!! またも我らの前に立ち塞がるか……!!」

ギィィン!


ズザァッ!

死霊騎士「……小僧と侮るのはもうヤメだ」

死霊騎士「その聖剣の担い手だけは生かしておく訳にはいかん」

死霊騎士「この俺の手で……この場で確実に葬ってやろう!!」


勇者「……ッ!!」


ガギィィィン!!

143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 11:16:17.28 ID:c4asM/mw0
少し前


タタタッ…

傭兵「……」

傭兵「王城までもうすぐか」

傭兵「勇者はもう辿り着いている頃だろうか」

傭兵「……」


タタタッ

144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 11:16:45.53 ID:c4asM/mw0
「キィーーーー!!」バサッ!

傭兵「!」



傭兵「あの鳥は……主か?」

傭兵「上に乗っているのは勇者と思うが……教会の方向へと引き返しているな」

傭兵「……何があった?」

145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 11:17:37.54 ID:c4asM/mw0
王城、崩壊部


女騎士「姫……姫っ!」

女騎士「どこにいるのですか! 返事をしてくださいっ!」

魔法使い「はぁ、はぁ……この辺りは調べ尽くしたけれど……」

魔法使い「瓦礫の下になっていないのがわかったのは幸いかしら」

魔法使い「でも、ここまで探して見つからないとなると……」

女騎士「……もしかして、城の外に……?」



「キィーーーー!!」バサッ!

女騎士「!」

魔法使い「!」

146: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 11:18:06.26 ID:c4asM/mw0
魔法使い「……何あの、大きな鳥」

女騎士「あれは……勇者さんの鳥!!」

魔法使い「勇者の……?」

魔法使い「王城から離れていくように飛んでいるみたいだけど」

女騎士「……」

147: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 11:21:18.25 ID:c4asM/mw0
教会


ギャリィィィン!!


勇者「……ッ!!」

死霊騎士「ぐっ……!!」


ギリギリ……!


勇者「おおッ!!」

死霊騎士「……ぬぅッ!!」


ガァン!!


ズザァッ!

148: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 11:23:14.23 ID:c4asM/mw0
死霊騎士(聖剣……)

死霊騎士(今の俺の状態では一太刀でも浴びるのは不味い)

死霊騎士(一撃一撃は確かに重い……)

死霊騎士(だが、それまでだ)

死霊騎士(重いだけで、受け切れないわけではない)

死霊騎士(耐えて、機を伺えば……!!)

149: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 11:23:54.86 ID:c4asM/mw0
勇者「はぁ、はぁ」

勇者(聖女の聖言の影響か。こいつ、なんか弱ってるみたいだ)

勇者(おかげで何とか押せてはいるけど、こっちの当てたい攻撃が通らない)

勇者(力任せに行ってもいなされる……)

勇者(……訓練場で女騎士を相手にしてた時に近い感覚だ)

勇者(技量の差ってやつか)

勇者(認めたくないけど、あいつの方が俺よりも上手だ……!)

150: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 11:25:32.31 ID:c4asM/mw0
勇者(……けど)

勇者(今は弱音なんか吐いてる場合じゃない)


勇者「……」チャキッ

死霊騎士「……」


勇者「今さら無い物ねだりをしたって仕方ない」

勇者「今は、俺が持ってる全部を使ってお前を倒さなきゃいけないんだ」


勇者「……聖剣よ! 俺を導いてくれ!」

勇者「あいつを倒す方法を!」


聖剣「>>155」

155: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 11:32:55.37 ID:MKGpRwJWo
スカートめくりの要領で

158: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:22:24.42 ID:c4asM/mw0
聖剣「スカートめくりの要領で」

勇者「……スカートめくりだと?」

159: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:23:32.50 ID:c4asM/mw0
勇者(スカートめくりって、あのスカートめくりか)

勇者(女の子のパンティを見るために、こう。ペラッと)

勇者(……それがこの戦いに何の関係があるって言うんだよ)

ギィン!


勇者「おい、お前!」

死霊騎士「何だ」

勇者「スカート履いたことってあるか?」

死霊騎士「……貴様は俺を馬鹿にしているのか?」

ガギィン!!


勇者「くっ!」

160: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:29:16.28 ID:c4asM/mw0
勇者(確かにスカートめくりの要領とは言ったが、相手のスカート履いたことの有る無しは関係なかったか)

勇者(スカートめくりの要領って……何だ?)

勇者(パッと見、重要そうって思うのは敵の不意を突くって辺りか?)

勇者(……いや、それだけの話じゃないか)

勇者(もっとその裏を読め)

勇者(安価の真意を深く掘り下げるんだ……!)

ガギィン!


勇者(こっそり相手に忍び寄り、思い切りよく下から上へと手を振り上げる)

勇者(大切なのは、踏み込みの速さ……間合いの管理……機を伺い、何事にも動じない精神力)

勇者(そして……この体を動かすその心、か)

勇者(……)

ガァン!

161: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:30:32.87 ID:c4asM/mw0
ズザッ!

勇者「……」


勇者「…………」


勇者「………………」


勇者「…………––––––––」チャキッ



死霊騎士「!」


死霊騎士(奴の醸す雰囲気が変わった……?)

死霊騎士(先ほどまでの、勢いに任せた荒々しい剣とは違う)

死霊騎士(奴に、何があった……?)

162: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:31:23.47 ID:c4asM/mw0
勇者「……」


勇者(集中だ……集中しろ……)

勇者(俺にスカートめくりの経験はない。けれど、イメージだけはできるだけ正確に思い浮かべるんだ)


勇者(奴の腰回りにスカートの姿を幻視しろ)

勇者(死霊騎士はスカートを履いている……あいつはスカートを履いた可憐な女の子だ……)

勇者(白い膝裏、眩しい太もも。そして膝上15センチのスカート……)

勇者(俺は今、見たいんだ。そのスカートをめくった)

勇者(その先にある、神秘の領域を……!)


勇者「………………」ギンッ!


死霊騎士「ッ!!」

163: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:32:44.84 ID:c4asM/mw0
死霊騎士(……あの目は何だ?)

死霊騎士(この俺が……どこか悍ましさすら感じている……!)


死霊騎士(こちらの隙を伺っているのか)

死霊騎士(獲物の隙を見逃さず、一刀のもとに斬り伏せる……そのような、確かな鉄の意志を秘めている)

死霊騎士(……ああいう目をした手合いは厄介だ。それが聖剣の使い手ともなれば)

死霊騎士(この俺と言えど僅かな隙を見せればやられる、か)


死霊騎士(……)

ジャキッ

164: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:33:24.22 ID:c4asM/mw0
勇者「…………」


死霊騎士「…………」



勇者「…………」


死霊騎士「…………」



ジリ……ジリ……!

165: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:35:42.45 ID:c4asM/mw0
勇者「…………」


死霊騎士「…………」






ガチャッ!

傭兵「勇者!」




死霊騎士「ッ!? 新手か!?」


勇者「…………」

166: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:36:15.42 ID:c4asM/mw0
勇者「––––––––隙を見せたな?」


勇者「……!!」

––––––––ザッ!


死霊騎士「!! 貴様、いつの間に––––––––!!」


勇者「…………」

死霊騎士(この男、視界の下に潜り込むように!?)



ズバッ!!

167: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 13:36:52.28 ID:c4asM/mw0
死霊騎士「…………」

ドサッ


勇者「……」


勇者「……スカートめくりに必要なのは、小手先だけの技術なんかじゃない」

勇者「最も真価を問われるのは、機会を見逃さない眼力。そして失敗を恐れない勇気」

勇者「何より、それを見たいと思うその心こそが大切なんだなって」

勇者「……俺、この戦いで学ばされた気がするよ」

––––––––キンッ


傭兵「君は何を言っているんだ」

169: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:12:16.63 ID:c4asM/mw0
死霊騎士「グ……グオオオオ……!!」


勇者「!」

死霊騎士「認めん……認めんぞ……!!」


勇者「浅かったか……!」

勇者(スカートめくり風な斬り方に拘り過ぎたか……?)

170: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:12:49.99 ID:c4asM/mw0
ブワッ!!


勇者「!!」

傭兵「これは……!」

勇者「死霊騎士の鎧から……黒い何かが抜け出ていく……!」

傭兵「……勇者、気を付けろ。あの黒い霧……一所に集まり始めている」



シュゥゥゥゥ……!!

巨大死霊『聖剣の勇者……貴様だけはぁ……!!』



勇者「……」

171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:13:56.51 ID:c4asM/mw0
勇者「いや、デカすぎだろ。どう見てもあの鎧に収まる容量超えてるってば」

傭兵「そんなことを言っている場合か! ここは一旦退くぞ!」

勇者「……それは出来ない」

傭兵「何を……!」

勇者「この教会には姫が……メロンパン職人がいる」

傭兵「!」

172: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:14:49.41 ID:c4asM/mw0
勇者「メロンパン職人の奴、怪我してるんだ」

勇者「傭兵、俺があいつを引き付けてる間に姫とメロンパン職人を安全な所まで運んでくれないか」

勇者「出来ればそいつは、治療を受けられる場所まで運んでもらえるとありがたい」


勇者「……頼めるか?」

傭兵「……」

173: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:17:28.90 ID:c4asM/mw0
傭兵「君ひとりで奴を相手にすると?」

勇者「ああ」

傭兵「……大丈夫なのか?」

勇者「やってみれば何とかなるだろ」

傭兵「……」


傭兵「…………はぁ。」

174: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:18:16.13 ID:c4asM/mw0
傭兵「どの道、私の剣では奴に傷を付けることは叶わないだろうな」

傭兵「わかった。奴のことは君に任せる」

傭兵「姫とメロンパン職人は私が責任を持って安全な場所まで運んでおこう」

傭兵「メロンパン職人には応急でも手当てが必要みたいだ。君にその心得は無さそうだしな」

勇者「……ありがとう。二人を頼む」

175: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:19:31.37 ID:c4asM/mw0
巨大死霊『––––––––勇者ァァァ!!!』


傭兵「!」

勇者「行けっ!!」


傭兵「……ッ」


タタタッ……

176: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:21:01.86 ID:c4asM/mw0
ドォン!! ドゴォン!!


勇者「はぁ、はぁ……!」

巨大死霊『オオオオオオオオオオオ!!!』


ドガァン!!

パラパラ……


勇者「はぁ、はぁ……何だ、お前。でっかくなってから攻撃が随分と大振りになったな」

勇者「周りのことも見えてなさそうだし、冷静も失ってる」

勇者「さっきの騎士姿の時の方がよっぽど強そうに見えてたぞ」


巨大死霊『黙れぇ!!!』


ドォン!!

178: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:43:39.78 ID:c4asM/mw0
パラパラパラ……!

巨大死霊『はぁ、はぁ……潰れたか?』



「キィーーーー!!」

バサッ!


巨大死霊『!!』


巨大死霊騎士『上か!!』

勇者「うおおお!!」


ズバッ!!

179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:44:14.97 ID:c4asM/mw0
巨大死霊『グオオオオ……!!』


勇者「はぁ、はぁ……」

勇者「そのデカさだと、聖剣の長さじゃ深い所まで届かないか」

勇者「……主よ!!」

勇者「突撃だ。あいつの上から頭目掛けて、そのまま急降下してくれ!」

主「キィ……!」

バサッ!

180: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:45:15.03 ID:c4asM/mw0
勇者「……」


巨大死霊『ウオオオオオオ!! 勇者ァァァ!!』


勇者「……これで最後だ」

勇者「その頭っから、ぶった斬ってやる……!」

勇者「主よ!」


主「……!」


バササッ!!

181: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:46:21.01 ID:c4asM/mw0
––––––––ビュン!!

主「…………!!!」

勇者「…………!!!」


巨大死霊『オオオオオオオオオオオ!!』ガバッ!!


勇者「…………今だ!!」

勇者「主!! 聖剣に!!」

主「––––––––!!」


カッ!!


巨大死霊『何っ!?』

182: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:47:01.95 ID:c4asM/mw0
勇者「おおおおおおッ!!!」

聖剣「––––––––」メラメラ


巨大死霊『この……聖剣がぁ……!!』

巨大死霊『……勇者ァァァ!!!』


勇者「ッ!!!」



ズバァァァァァン!!!

183: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:48:45.26 ID:c4asM/mw0
巨大死霊『……が……はっ……!?』

巨大死霊『………………勇、者……!!!』


シュゥゥゥゥゥゥゥ……!!



勇者「……倒したか」

184: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/01(土) 14:49:35.69 ID:c4asM/mw0
勇者「……」


勇者「……」


勇者「…………」


勇者「……………………」



勇者「––––––––着地のこと考えてなかった」


べちゃっ!!

192: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:12:17.73 ID:yO+A1uqQ0
某所

フードの男「戻りました」

魔将軍「……」

193: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:12:56.50 ID:yO+A1uqQ0
魔将軍「それが貴様の言っていた……」

フードの男「えぇ。王都の聖女。今は気を失っていますがね」


聖女「……」


フードの男「死霊騎士殿と妖術師殿が上手い具合にやってくれたのでね。何とか私の方で回収することができました」

魔将軍「……」

194: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:13:42.55 ID:yO+A1uqQ0
魔将軍「……奴らはどうした」

フードの男「……」

魔将軍「聖女は奴らが持ってくるものと思っていたのだがな。何故貴様だけがここにいる」

フードの男「彼らは……」


フードの男「恐らく、聖剣の勇者の手により討たれたものかと」

魔将軍「!」

195: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:15:23.34 ID:yO+A1uqQ0
魔将軍「聖剣の、勇者だと?」

フードの男「貴方の知る勇者とは別物です。人間の命は魔族ほど長くはない。頭に『今代の』と付きましょう」

魔将軍「今代の……」

フードの男「人はすぐに死ぬ。聖剣だけが世に残る」

フードの男「聖剣が残っていれば新たな勇者が選ばれる。新たな勇者が選ばれたのがこのタイミングと言うのは、まるで我らの動きが見透かされているようで少し面白くありませんがね」

フードの男「私も彼らの最期を見届けた訳ではない。ただ、彼らが勇者を引き付けてくれたおかげでこうして無事に目標のものを回収できたのです」

魔将軍「……」

196: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:16:58.33 ID:yO+A1uqQ0
魔将軍「……あの二人が、か」

フードの男「心中、お察しします。彼らは今や、かつての魔王様に仕えた数少ない生き残り……今の軍の中でも貴重な古参の者達」

フードの男「今回の働きから見ても、真の忠臣と言えるものでした」

フードの男「彼らは、貴方にとっても……」


魔将軍「黙れ」

197: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:18:03.52 ID:yO+A1uqQ0
魔将軍「知ったような口を利くな。貴様に我らの何がわかる」


フードの男「……これは失礼」

198: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:21:56.39 ID:yO+A1uqQ0
フードの男「では話を戻しましょう。聖女についてです」

魔将軍「……このような人間の女が、とはな。実物を見ると、より眉唾に感じる話だ」

フードの男「しかし、その力は本物です」

フードの男「事実、王都にて勇者が妖術師殿と死霊騎士殿を追い詰めた、その鍵を握っていたのがその聖女」

フードの男「歴代の聖女の中でも高い力を持つという噂も本物です」

魔将軍「……『神の声を聞く力』を持つのだったか」

フードの男「えぇ。これまでには確認されていなかった例です」

フードの男「神の声など、特殊な祭具を用いたところで確実に聞けると言うものはそうない」

フードの男「それを自力で……生れながらにして聞き取ることができるなど、規格外に過ぎる」

199: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:25:12.15 ID:yO+A1uqQ0
フードの男「神の声なぞ、聞こえたところで本来理解できるものではない」

フードの男「聞き取る力。そしてそれを理解し、読み取ることのできる力」

フードの男「一個の人間にそれだけの容量があると言うこと事態、本来ならば到底信じ難いことなのです」

フードの男「何の祭具も無しにこのような力。歴代の聖女どころか人間、魔族全体を見渡してみても持つ者はおりますまい」

魔将軍「……」

200: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:28:49.47 ID:yO+A1uqQ0
フードの男「ひとまず、この聖女は貴方の下へ預けておきましょう」

フードの男「人間達が奪い返さんと襲ってきても、今の魔族にとって、ここほど安全な場所はそうない」

魔将軍「……貴様は?」


フードの男「個人的な用事を済ませに。少し南の方へ」

魔将軍「南だと?」

フードの男「なに、大した用ではありません。すぐに済ませて戻りましょう」

魔将軍「……」

201: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:30:04.36 ID:yO+A1uqQ0
魔将軍「……待て」

フードの男「!」


魔将軍「行くのは構わん。だがその前に、その王都で会ったという聖剣の勇者についての情報を可能な限り詳細に開示しろ」

魔将軍「聖女の扱いについても下準備が要るだろう。……あの妖術師がいないのだ。ここに残っている術師だけでは心許ない」

フードの男「……慎重ですね」

202: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:30:35.40 ID:yO+A1uqQ0
魔将軍「当然だ。……かつての聖剣の勇者に対して、我らもどこか侮りがあった。たかが人間とな」

フードの男「……」

魔将軍「今回はそのような油断はしない。失敗は許されないのだ。備えを重ねるに越したことはないだろう」


魔将軍「それと、魔王様の棺の件についてもだ」

魔将軍「貴様は情報を小出しにし過ぎる。真に我らの信用を得たいのであれば、ここでお前の知る全てを晒していけ」

フードの男「……」

203: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:52:15.73 ID:yO+A1uqQ0
勇者「……」


勇者「……」


勇者「……むっ」


ムクリ

204: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 16:59:55.29 ID:yO+A1uqQ0
勇者「ここは……?」

勇者「病室っぽいな……」

勇者「……」

勇者「俺、あの後、着地失敗して気を失ってたのか」



「目を覚ましたか。勇者よ」


勇者「!」

205: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 17:00:36.19 ID:yO+A1uqQ0
勇者「その声は……!」

勇者「どこだ? どこにいる……?」

キョロキョロ


「……下だ」


勇者「!」

206: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 17:01:59.85 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「……」


勇者「……」


勇者「……なんでそんなところに転がってるんだ?」

ズタ袋「望んでこうなったわけではない」

208: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 17:10:57.14 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「あの女騎士め……ベッドが足らぬと言いわたしをこのような所に放っていった」

ズタ袋「敵とは言え、わたしを誰だと思っている?」

ズタ袋「何も地べたに放り捨てて行くことはないだろうに……!」

勇者「……」

209: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 17:13:06.65 ID:yO+A1uqQ0
勇者「お前、なんかちょっと全体的に小汚くなってないか?」

勇者「埃っぽいと言うかなんというか」

ズタ袋「……お前たちがわたしを近くに残していることを忘れて散々暴れ回ってくれたからな」

ズタ袋「お前。傭兵にメロンパン職人と姫を運ばせたくせに、わたしのことは忘れていたな?」

勇者「……あっ」


勇者「いや、お前ならほっといても大丈夫かなって」

ズタ袋「……ふん」

210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 17:15:03.29 ID:yO+A1uqQ0
勇者「……そうだ! 姫は!? メロンパン職人はどうなった!?」

ズタ袋「……」


勇者「あれからどれくらい経ったんだよ」

勇者「メロンパン職人のやつ、なんかすげえ怪我してたみたいなんだけど」

勇者「と言うか、王都は無事なのか? 下級悪魔は全部倒せたみたいだけど、残りの敵は?」

ズタ袋「……そういっぺんに捲し立てるな」

212: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 17:28:29.54 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「メロンパン職人ならそこのベッドで寝ているだろう」

勇者「!」


メロンパン職人「……」


勇者「……」


勇者「良かった。生きてたんだな」

ズタ袋「奴にとっては取るに足らん人間だったのが幸いしたのだろう。殺すまでもないと言ったところか」

勇者「奴……」


勇者(死霊騎士のことか?)

213: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 17:30:25.08 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「ついでにあの教会の神父も運ばれていたか」

ズタ袋「あとは…………他は知らん。面倒な。そもそも何故わたしに聞くのだ」モゾモゾ

ズタ袋「わたしは今から寝る。他のことは適当な連中にでも聞いておけ」

勇者「寝るってか。まだ夜じゃないぞ」

ズタ袋「……知ったことか。わたしと話したいのであればせめてこの袋の汚れを落とせ」

勇者「拗ねるなよ……」

215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 18:11:20.99 ID:yO+A1uqQ0
……

……

ガチャッ

姫「勇者さま!」

勇者「! 姫……」

姫「目を覚ましたと聞いて来ました。ご無事で何よりです」

勇者「お、俺はいいんだけど……姫は大丈夫なのか? 包帯巻いてるみたいだけど」

姫「そんなに大した怪我ではありませんので」

勇者「そうなのか……けど、無事で良かった」


女騎士「本当は、まだ出歩かせるわけには行かないんですけどね。勇者さんが目覚めたと聞いたらどうしてもと」

勇者「女騎士……」

216: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 18:12:18.22 ID:yO+A1uqQ0
勇者「とりあえず、あれからどうなったか聞いてもいいか?」

勇者「死霊騎士と戦ったところまでは覚えてるんだけど、それからどうしてこうなってんのかさっぱりなんだ」

姫「……」

女騎士「では、私から……」

217: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 18:13:51.11 ID:yO+A1uqQ0
……

……

女騎士「––––––––という訳で、聖女様の聖言により王都を襲った悪魔達は壊滅

女騎士「首謀者と思われる死霊騎士は勇者さんの手で倒され、今回の襲撃は終わったと見て良いと思われます」

勇者「……なるほど」

女騎士「……ただ、」

勇者「?」

女騎士「……」

勇者「なんだよ」

女騎士「聖女様が……」

勇者「……」


女騎士「……聖女様が、行方不明なんです」

勇者「!?」

218: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 18:24:22.51 ID:yO+A1uqQ0
勇者「聖女が行方不明って……え、何。どういうこと?」

女騎士「……そのままの意味です。教会にも、どこにも。聖女様の姿が見当たらないのです」

勇者「……聖女のやつ、逃げたのか!?」

女騎士「お、落ち着いてください、勇者さん。聖女様は聖言の発動まで力を尽くしていたと聞いています」

女騎士「逃げただなんて人聞きの悪い……それこそどういうことですか」

勇者「いや、だっておかしいだろ!」

219: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 18:24:58.67 ID:yO+A1uqQ0
勇者「これが落ち着いてられるかよ! あの戦いが終わったら●を●●せてもらう約束だったんだぞ! まさかそれが嫌で行方を眩ましたっていうのか!?」


女騎士「……」

姫「……」

ズタ袋「……」

220: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 18:46:17.74 ID:yO+A1uqQ0
姫「……お、女騎士……これは……」

女騎士「……」


女騎士「……こほん。落ち着いてください、姫」

女騎士「例え勇者さんの言うことが本当だったとしても、あの聖女様が混乱の残る王都を置いて個人的な理由で行方を眩ますとは思えません。きっと、何か事情があったのでしょう」


女騎士「それはそれとして勇者さん。後で話があるので覚えておくように」

勇者「……あっ。」

221: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 18:47:30.69 ID:yO+A1uqQ0
女騎士「ひとまず、この様子では勇者さんも聖女様の居所について心当たりはないみたいですね」

姫「そう、ですね……」

勇者「俺が最後に聖女を見たのは教会だな。聖言の発動が終わって倒れちゃったんだよ」

勇者「あれからてっきり、教会で休んでるもんだと思ってたんだが……」

ズタ袋「……」

222: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 18:48:08.12 ID:yO+A1uqQ0
女騎士「神父さんやメロンパン職人さん……その時教会に残っていたお二人は何者かの手により重傷を負ったみたいなんです」

姫「もしかしたら、お二人なら何か事情を知っているのかもしれないですね」

勇者「二人が目を覚ますのを待つしかないか」


ズタ袋「……」

224: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 18:50:53.32 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「……勇者」

勇者「ん? なんだよお前。寝てたんじゃなかったのか」

ズタ袋「ひとり、誰かを忘れていないか?」


ズタ袋「お前が教会を後にして、メロンパン職人と神父以外で、その後の教会の様子を知っている者だ」

勇者「俺が教会を出て、その後を知っている者……?」

勇者「……………………」


勇者「……あっ!!」

ズタ袋「気付いたか」




勇者「そういやあの時、傭兵が残ってたな」

ズタ袋「……お前、わざとか?」

ズタ袋「わざと間違えてわたしをからかっていないか?」

226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 19:45:24.08 ID:yO+A1uqQ0
勇者「お前、その時の様子見てたっていうのかよ」

ズタ袋「全部見ていたぞ。メロンパン職人に手をかけ、聖女を攫っていくさま。すべてな」


勇者「……」

姫「そ、そんなっ……聖女さまが攫われた……!?」

女騎士「その者とは一体……!!」

227: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 19:46:55.09 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「……ふ。まさかタダで教えてもらえると思っていないだろうな」

女騎士「!」

姫「!」

勇者「……」


ズタ袋「何度も言わせるな。わたしはお前たち人間とは敵対する立場にある氷の魔女だぞ」

女騎士「……!」


ズタ袋「わたしの持つ情報を知りたければ、そうさな……見返りとして」


勇者「いやもういいよ、この流れ。どうせ対価がどうのこうの言うんだろ」

ズタ袋「!?」

229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 19:48:57.72 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「むぅ……。わかっているようだな」

女騎士「た、対価……?」

姫「……あの伝承の氷の魔女から要求される対価……わたしたちで払えるものであればいいのですが」


ズタ袋「では、対価の話を……」

勇者「言っておくけど、めんどくさいやつはナシな。姫と女騎士も、そんな深刻に考えないでいいぞ」

ズタ袋「!?」


勇者「あんまりめんどくさい話だったらメロンパン職人とか神父さんが起きてから事情を聞けばいいんだし。二人とも、やられた奴の顔くらい見てるだろ」

女騎士「た、確かにそうですけど……」

ズタ袋「……この……!!」

230: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 19:50:24.83 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「し、しかし、このことを知っているのはわたしだけだぞ!」

ズタ袋「メロンパン職人も神父も、下手人の顔を覚えているかわからぬのだぞ!」

勇者「じゃあお前、そいつがどこに行ったかまでわかってるのかよ。聖女の居場所とかさ」

勇者「まさか顔だけ見たとか言われても俺たちにはどうしようもないし、そんなのメロンパン職人達だって見てるはずだ」

勇者「お前がどこまで知ってるかくらい先に教えてくれよ」

ズタ袋「…………」

231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 19:50:57.36 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「……服装とか」


勇者「……で?」


ズタ袋「……口調とか」


勇者「……それで?」


ズタ袋「むぅ……」

233: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 19:54:21.68 ID:yO+A1uqQ0
ズタ袋「…………顔は、よく見えなかったな。奴は顔を隠している」

勇者「顔がわからないってことがわかったってか?」

ズタ袋「後は……そうさな。何を考えているのかわからん食えぬ男よ」

勇者「……」

ズタ袋「わたしに王都の襲撃を指示したことから魔王軍の手の者かと思っていたが、どうもそう単純な話という訳ではなさそうだ」

ズタ袋「死霊騎士達とは雰囲気が違う。言動を見るに、どうにも魔王軍の者と動きを揃えている様子が見えんと言うか、なんというか……」

勇者「なるほど」

ズタ袋「……」



勇者「教えてくれてありがとうな」

ズタ袋「…………あっ!!」

234: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 19:56:34.26 ID:yO+A1uqQ0
姫「氷の魔女さんに王都の襲撃を指示って……」

女騎士「えぇ。この間、勇者さんたちが北の都市から帰ってきた時のお話に出てきた、魔女の封印を解いた例の男のことかと」

勇者「厄介だな……そいつのことは、魔女もよくわからねえって言ってたし。これ以上こいつに聞いても出てくる情報は何もないだろうな」


ズタ袋「謀ったな、勇者!!」

勇者「お前が勝手に話してくれたんだろう」

235: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/02(日) 20:00:35.65 ID:yO+A1uqQ0
姫「とにかく、このことは……」

女騎士「はい。すぐに王に報告した方が良いかと」

姫「聖女さま……ご無事だと良いのですが」

女騎士「敵の狙いは何なのでしょう……」



勇者「ちなみに相手の行き先とかまでは聞いてたりしないか?」

ズタ袋「……知らん!!」

245: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:26:36.96 ID:+0Rfh0kJ0
……

……


王城


王「勇者殿、よく来てくれた」

王「まずは今回の一件、礼を言わせてもらおう」

王「王都の民を。そして私の娘を守ってくれてありがとう」

勇者「王様……」

246: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:27:21.61 ID:+0Rfh0kJ0
勇者「俺なんかに頭を下げないでください、王様。俺はその場その場でやれることをやっただけです」

勇者「それに、まだ全部解決した訳じゃないみたいだし……」

王「……うむ。勇者殿の話は女騎士を通して報告を受けている」


王「……聖女殿が、連れ去られたそうだな」

勇者「……」

247: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:28:02.41 ID:+0Rfh0kJ0
王「それと、敵の首魁が発していた言葉……これは勇者殿だけでなく女騎士や魔法使いの報告にもあったのだが」

王「『魔王』と。奴らは確かにそう言っていたのだな?」

勇者「はい」

王「……ふむ」


勇者「魔王ってあの魔王ですよね。古の勇者の話に出てくる、この聖剣に倒されたっていう」

王「少なくとも、私はそれ以外に魔王と呼ばれる者の心当たりは無いな」

249: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:29:20.47 ID:+0Rfh0kJ0
王「勇者殿とその他敵と接触した者達の証言を合わせて考えるに、奴らの狙いは聖女殿だったのではないかと私は考えている」

勇者「聖女が?」


王「今回の魔物の群れの襲撃は計画的なものと見て良いだろう」

王「同時にあれだけの数の魔物を動かし襲撃して来たこともそうだが」

王「事前に隻腕の悪魔の身体の一部を王都内に潜ませ、先の襲撃に合わせるように暴れさせ」

王「王都の結界の破壊については入念な下調べがあったのであろうことも魔法使いから聞いている」

王「奴らは、何らかの目的のために聖女殿を必要としていて、今回の大規模な襲撃を前々から企てていたのだろう」

勇者「……」

250: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:30:41.23 ID:+0Rfh0kJ0
勇者「確かにあいつら。下級悪魔たちは聖女の所ばかりに群がってたな……」

勇者「俺はてっきり、あの特別な聖言ってやつを警戒して聖女を潰しに来たものだと思ってたんだけど」

勇者「実際、効き目バツグンだったみたいだし」

王「……聖女殿の特別な聖言についてはこの王都においても知る者は少ない。魔物どももその効果については知らなかった筈だ」

勇者「……最初から聖女そのものが狙いだったってことか」

251: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:31:20.34 ID:+0Rfh0kJ0
勇者(おかげで聖女の●を●●なくなってしまった)

勇者(俺があのとき、聖女のもとを離れちゃったのが不味かったのかな)

勇者(いや、でもそれだと姫のことは守れなかったし……)

勇者(……どうすれば良かったんだ)


勇者「……」



王「……勇者殿」

勇者「!」

252: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:32:18.65 ID:+0Rfh0kJ0
王「今回の件はこの国の貴族達……そして私にも責がある」

王「勇者殿一人に押し付けるつもりはない。むしろそなたは良くやってくれていた」

王「聖女殿を守れなかったのは。至らなかったのは私達でもあるのだ」

王「そう自分ばかりを責めるような顔をしないでくれ」


勇者「……」

253: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:33:10.41 ID:+0Rfh0kJ0
王「兎にも角にも、先の戦いは魔王を主と仰ぐ一派……奴らからの宣戦布告と取って良いだろう」

王「今までは潜伏していたようだが、これを機にまた派手に動くことがあるかもしれない」

王「こちらは見ての通り、先の襲撃で都全体が疲弊してしまっている」

王「王都の立て直しと奴らへの対策……これから忙しくなることだろう」

王「勇者殿。また、そなたの力を借りても良いだろうか」

王「奴らに対抗するには、きっとその聖剣とそなたの力が必要になる筈だ」

勇者「……」


勇者「もちろんです。このままじゃ俺、安価達成できないし」

勇者「これ以上あいつらに好き勝手させるわけにはいかない」

254: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:35:40.44 ID:+0Rfh0kJ0
勇者「俺は難しい話はよくわかんないけど……大昔の魔王がどうとか言って暴れるような連中が、今の平和な時代に出て来たんだ」

勇者「丁度それと同じタイミングで俺はこの聖剣に話しかけられた」

勇者「古の勇者が魔王を倒してからこの時代になるまで。国のド田舎の台座でずーっとダンマリ決め込んでた聖剣が、初めて次の自分の使い手を選び出した」

勇者「そこにはきっと、何か意味があると思うんです」

勇者「俺は、あいつらを何とかするためにこいつに選ばれたんだって……なんか、そんな気がするんです」

王「勇者殿……」

255: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:36:47.32 ID:+0Rfh0kJ0
王「協力、感謝する」

王「その力、ありがたく頼らせてもらうとしよう」

256: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:38:55.26 ID:+0Rfh0kJ0
王「まずは奴らの手から聖女殿を取り戻したい」

勇者「それは俺も同じこと考えてたんですけど……あいつ、無事なんですかね?」

王「ただ始末することが目的ならば、わざわざ生かしたまま攫い出す必要もあるまい」

王「恐らく何か……良からぬこととは思うが、何かに利用するために聖女殿が必要だったのだと思う」

王「それを達成するまでは下手に手出しはしないと考える」

257: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:55:20.18 ID:+0Rfh0kJ0
王「だが、時間的な猶予がどのくらいあるかもわからん」

王「年単位で掛かるものなのか。一月掛かるものなのか。はたまた明日には済んでしまうものなのか」

勇者「とにかく一刻も早く助け出さなきゃってことですか」

王「そういうことだ」


勇者「……そうと決まれば話は早いや」

勇者「一丁行ってきますよ。聖女のやつを、助けに」

258: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:55:51.75 ID:+0Rfh0kJ0
勇者「それで、俺はどこに行けばいいんです?」

王「わからん」

勇者「……ふぇ?」

259: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/03(月) 23:56:32.80 ID:+0Rfh0kJ0
王「手掛かりがないのだ。奴らもあの規模で軍を持っているとなるとどこかに拠点があるはずなのだが」

王「勇者殿は今回接触した敵から、何か居所に関する情報を得ていたりはしないか?」


勇者「………………」

260: ◆XoiMTUEsXEGh 2018/12/04(火) 00:04:49.29 ID:zWrtadso0
勇者「……何もないです」

王「……そうか」



勇者「まさかいきなり行き詰まるとか考えてなかったんですけど」

勇者「なんか、こう、ないですかね。行き先を決めるための情報みたいなの」

王「うぅむ……」

261: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/04(火) 00:05:42.94 ID:zWrtadso0
王「最近で言えば……王都の北側と東側で魔物の動きが活発化していたという報告がある」

王「北の動きは例の氷の魔女に関するものだろう」

王「西と南の方では特に動きは見られていない」

王「何かがあるとすれば東の方だろうか……」


勇者「…………」

262: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/04(火) 00:07:08.49 ID:zWrtadso0
勇者「これだけの情報じゃあ何とも言えないな……」

勇者「どうするよ聖剣」

勇者「俺は、どう動くべきだと思う?」


聖剣「>>265」

265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/04(火) 00:09:53.80 ID:vJYAJPeuO
ブラジャーを探せ

267: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/04(火) 00:15:41.03 ID:zWrtadso0
聖剣「ブラジャーを探せ」

勇者「……」

聖剣「……」

勇者「……」


勇者「…………えぇ……」



勇者「ブラジャーを探すことに何の意味があるって言うんだよ」

王「? 勇者殿、どうかしたか」

勇者「……何でもありません」

293: ◆XoiMTUEsXEGh 2018/12/06(木) 00:34:57.44 ID:EWO6hTSy0
王城、廊下


勇者「ブラジャーを探せか……」

勇者「……うーむ」


テクテク

295: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:38:44.36 ID:EWO6hTSy0
女騎士「……あ。勇者さん、謁見が終わったんですか?」

勇者「ああ。主とソレ、預かっててくれてありがとな」

女騎士「いえ、このくらいなら。騒いだり周りに迷惑を掛けたりしない、手間のかからないよいこだったので助かりました」


主「キィ」

ズタ袋「……」

296: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:43:27.28 ID:EWO6hTSy0
女騎士「それで……お話はどうでしたか?」

勇者「王様は今回の襲撃が聖女を狙ってのものなんじゃないかって考えてるみたいなんだよな」

勇者「奴らが何をしたくて聖女を攫ったのかまではわからないけど、放っておくわけにもいかない」

勇者「とりあえず今後の方針としては聖女を助け出すのが先決ってことになった」

女騎士「……当てはあるのですか? 彼らの根城がどこにあるのかもわからないですし、一体聖女様がどこにいるものか」

勇者「そうなんだよな……まずは情報を集めなきゃなんだけど」


勇者(安価もあるしな)

勇者(ブラジャー、ブラジャー……ブラジャーを探せって、なぁ……)

297: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:44:39.57 ID:EWO6hTSy0
勇者(……)



勇者「……」ジーッ

女騎士「……」


勇者「……」ジーッ

女騎士「……?」


勇者「…………」ジーーーーッ

女騎士「…………」

298: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 00:46:14.36 ID:EWO6hTSy0
女騎士「ど、どこ見てるんですか……」ササッ

女騎士「さっきから妙な視線を感じるんですけど」

勇者「……あっ、悪い。少し気になることがあって、考え事をしてた」

女騎士「考え事……?」

勇者「うん」

女騎士「……まさか変なことを考えてないでしょうね」

勇者「変なことじゃないし」

299: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 01:04:05.07 ID:EWO6hTSy0
勇者(別に、誰のブラジャーとか指定があるわけじゃないんだよな)

勇者(ならわざわざリスクを冒してまで知り合いのブラジャーを狙う必要もないか)

勇者(……何なら普通に店で売ってる市販品とかでも良いのでは?)


勇者「まあ、今日のところはもう帰ることにするよ。探し物もあるし、ちょっと街の様子も見に行きたい」

女騎士「そうですか。……探し物とは、何か聞いても?」

勇者「な、なんだよ。別にやましいことは何もないぞ」

女騎士「やましいかどうかは聞いてないんですが」

300: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 01:05:46.68 ID:EWO6hTSy0
女騎士「単に、何か私に協力できることはないかと思っただけです」

勇者「協力……」

女騎士「えぇ」

勇者「……」



勇者「……………………いや、やっぱりいいよ。自分で探す。あんまり邪魔するのも悪いし、お仕事頑張っててくれな」

女騎士「そうですか」

301: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 01:33:23.51 ID:EWO6hTSy0
王都、市街


勇者「今回の件は規模の割に無関係な市民への被害は少なかったって聞いたけど」

勇者「こうして歩いてると建物とか結構壊されてるのがわかるよなぁ」

勇者「閉まってる店多いみたいだけど。下着屋さん、開いてるかな……」



ザワザワ……


勇者「……ん?」

303: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 01:48:45.53 ID:EWO6hTSy0
勇者「なんだあそこ。人だかりが出来てるみたいだけど」


勇者「なぁ、何かあったのか?」

野次馬「ん? ああ。なにやら、ここの宿屋が襲撃されたみたいでな」

勇者「襲撃……昨日のか」

野次馬「それがどうにもわからないんだと」

勇者「?」

304: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 01:49:55.57 ID:EWO6hTSy0
勇者「わからないって、どういうことだよ」

野次馬「今日になるまで宿屋の主人は意識を失ってたみたいなんだが、どうも気を失う前後の記憶がないらしい」

勇者「記憶が?」

野次馬「もしかしたら何か魔法の類を掛けられて記憶を操作されてる可能性もあるそうなんだ」

野次馬「タイミングもタイミングだし、ここは宿屋だ。今回の事件に絡んだ関係者がここで何かを企んでたんじゃないかって噂になってる」

勇者「……ふむ」

305: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 01:51:12.98 ID:EWO6hTSy0
勇者(調べる価値はありそうだが……)


勇者「単に宿屋の主人が滑って転んで頭打って記憶が曖昧だってだけってことはないのか?」

勇者「ここまで物騒な噂まで流れといて実はそんなマヌケな話だったら拍子抜けなんだけど」

野次馬「ははは。噂なんてのは大概そんなもんだろう」

野次馬「ただ。状況を見るに、俺はこれ、相当怪しい案件だと思ってるよ」

勇者「……へぇ」

306: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 01:55:39.74 ID:EWO6hTSy0
勇者「そう思う理由ってのを聞いてもいいか?」

野次馬「ああ。ここは襲撃の方法が方法なんだ。他にも襲われた場所はあるけど、ここは他と違って少し特殊みたいでな」

勇者「特殊……」


野次馬「ああ。どうも建物の内部で火を放たれた形跡があるらしい」

勇者「……」


勇者「……火?」

308: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 01:56:43.55 ID:EWO6hTSy0
勇者(……あれ? よく見るとこの建物、なんか見覚えがあるような……)


勇者「……」


勇者「…………」


勇者「……………………」



~回想~

聖剣『燃やせ』



勇者「…………あっ」

309: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 01:57:21.05 ID:EWO6hTSy0
野次馬「どうした?」

勇者「な、なんでもない」

311: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 02:02:07.00 ID:EWO6hTSy0
野次馬「話を続けるぞ。……こっから先は俺の推理だから確証はないんだが」

勇者「お、おう」

野次馬「まずこの件に関しては不自然なことが多いんだ」

野次馬「今回襲撃して来た魔物の中に火を吐いたりするような奴はいなかったらしいじゃないか」

野次馬「そんな中、この宿屋だけが火を放たれてる。そして、驚くことに消火しようとした形跡もあるらしい」

312: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/06(木) 02:04:18.85 ID:EWO6hTSy0
野次馬「これは恐らく、今回の一件に絡んでる奴がこの宿屋を利用していて。その痕跡を消すために屋内に火を放ち、顔を見られた宿屋の主人の意識を奪って、記憶を操作して逃亡したんだろう」

野次馬「消火した跡があるのは、火が表に出て、これから自分が起こそうとしている事件の前に下手に目立ってしまうのを避けるため。俺はそんな風に睨んでるね」


野次馬「どうだ? 陰謀の臭いがしてきただろ?」

勇者「あ、ああ」


野次馬「多分……いや、絶対この件は王都の襲撃に関係してると思うね。タイミングがタイミングだし」

野次馬「騎士の連中もこの件に関しては優先して捜査を進めているらしい。犯人が捕まると、もしかしたら今回の真相に近づけるかもしれないな」


勇者「……………………」

330: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:34:55.74 ID:K8h5Iox70
病室


メロンパン職人「……」

メロンパン職人「…………」


メロンパン職人「……うぅん」

331: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:35:42.52 ID:K8h5Iox70
メロンパン職人「……」ムクリ

メロンパン職人「……ここは?」


戦士「ん? 目が覚めたかよ、隣のやつ」

メロンパン職人「あなたは……」

戦士「お前と同じ、今回の騒動の怪我人だよ。お互い、よくもまあ生きてたもんだな」

メロンパン職人「…………」


メロンパン職人「……あっ!!!」

332: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:37:23.39 ID:K8h5Iox70
メロンパン職人「聖女様は!? 聖女はどこにっ! ……アイタタタタ」

戦士「急に大声出すんじゃねえよ。こっちの傷にも響くだろうが」

メロンパン職人「えぇと……俺が生きてるってことは」

戦士「……今回の魔物の襲撃は無事解決したらしいぜ。なんでも、噂の聖剣の勇者サマが親玉をやっつけてくれたんだとさ」

メロンパン職人「勇者さんが……」

メロンパン職人「じゃ、じゃあ聖女様は!? 無事に助け出されたんでしょうか」

戦士「聖女様だぁ? ……そういや何も聞いてねえな」

戦士「つーか、助け出されるってなんだよ。聖女様に何かあったのか?」

メロンパン職人「……」

333: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:41:56.03 ID:K8h5Iox70
メロンパン職人「勇者さんに話を聞かないと……」


ガチャッ

勇者「メロンパン職人……あっ、目を覚ましたのか」

メロンパン職人「勇者さん!」

戦士「!」

334: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:43:07.28 ID:K8h5Iox70
メロンパン職人「勇者さん、大変なことがっ!」

勇者「ああ。大変なことが起きている。とても深刻な事態だ」

メロンパン職人「……と言うことは聖女様は、やっぱり……」

勇者「うん……聖女? それもあるけど今は置いとくとして」

メロンパン「はい?」

勇者「俺たち、お尋ね者になっちゃうかもしれない」

メロンパン「……」


メロンパン職人「えっ」

335: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:44:19.67 ID:K8h5Iox70
勇者「いやさ。俺たち、この街の宿屋を一件燃やしただろ?」

メロンパン職人「……たち?」

勇者「なんかそれが今回の事件の黒幕だって話が広まって、騎士達が全力で調査してるみたいなんだ」

勇者「俺たちがやったってバレたらまずい。どうしたらいいと思う?」

メロンパン職人「どうもこうも、アレは大体勇者さんが悪いと思うんですが」

勇者「騎士さんたちの捜査ってどのくらいなんだ? 俺捕まっちゃったりする?」

メロンパン職人「さぁ……俺もそんな経験ないし、ちょっとどうなるかわからないですね」

勇者「他人事みたいに言ってるけどお前も共犯なんだからな」

メロンパン職人「納得行かないんですが」


戦士「……これが噂の勇者サマってやつか」

勇者「!」

336: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:45:09.05 ID:K8h5Iox70
勇者「……お前は?」

メロンパン職人「俺と同じ、今回の騒動の怪我人みたいです」

戦士「けっ」

勇者「……」


勇者「今の話、聞かれてしまったようだな」

メロンパン職人「ちょっ。なに物騒な目をしてるんですか!」

戦士「……」

337: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:49:14.88 ID:K8h5Iox70
メロンパン職人「そんなことより、大変なんです! あの時勇者さんがお城に向かって行ったあと、聖女様が悪い奴に攫われちゃったんです!」

メロンパン職人「俺、目の前で見ていたのに、何もできなくて……それで……」

勇者「ああ。氷の魔女から聞いてる。頑張ってくれたんだよな、お前」

メロンパン職人「……」

勇者「すまないな。俺、そこに駆けつけられなくてさ。聖女、そのまま連れて行かれちまったらしい」

メロンパン職人「そんな……」

勇者「けど、終わったことをくよくよしてても仕方ないからな。連れてかれたんなら連れ戻せばいいだけの話だろ?」

勇者「必ず助け出すぞ。俺たちの手で」

メロンパン職人「勇者さん……」

勇者「聖女には俺も用があるんだ。このまま奴らの好きにさせるつもりはない」

338: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:50:49.73 ID:K8h5Iox70
勇者「それはそれとして、お前この辺の服屋知らない?」

メロンパン職人「服屋?」

勇者「さっき街中歩き回ったんだけど全然見つからなくてさ。見つけた服屋も今日は休業とかで閉まってて」

メロンパン職人「うーん。俺もいくつか店は知ってますけど、そこが開いてるかどうかはわかりませんよ」


メロンパン職人「ちなみに何を買おうってんです?」

勇者「ブラジャーを探してるんだ」

メロンパン職人「へぇー。ブラジャーですか」



メロンパン職人「……なんですと?」


戦士「ぶっ!?」

339: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:51:35.56 ID:K8h5Iox70
戦士「げほっ、ごほっ! ……イテテテテテテ」


勇者「なんか隣の奴うるせえな」

メロンパン職人「いやいや、下手したら俺もああなってたんですけど。正気ですか?」

勇者「俺はいつだって正気だよ」

メロンパン職人「そういえばこういう人でした」

350: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:08:16.11 ID:tRHf/nEt0
ガチャッ

傭兵「……む」


勇者「お?」

メロンパン職人「あっ」

戦士「……」

351: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:09:59.51 ID:tRHf/nEt0
傭兵「少し気になって様子を見に来たが……なんだ、元気そうじゃないか」

勇者「ああ。ありがとうな。メロンパン職人、お礼言っとけよ。死にかけのお前を助けてくれたのは傭兵なんだからな」

メロンパン職人「えっ、そうなんですか」

傭兵「別に大したことはしていない。ただ運んだだけだからな」

メロンパン職人「いえいえそんなっ。ありがとうございました」

傭兵「礼はいい。姫を運んだ時に、城から貰うものは貰っているからな」

352: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:10:39.99 ID:tRHf/nEt0
戦士「……チッ。こんなところで嫌な顔を見ちまったな。相変わらず金、金、金か」

傭兵「君は……そうか。君もここで治療を受けていたのか」

戦士「そう言うお前は大した怪我もなく元気そうだな。上手いこと立ち回って貰えるもんは貰ったってか」

傭兵「……」


勇者「なんだこいつ。かんじ悪いな。知り合いなのか?」

傭兵「ちょっとしたものだ。気にするな」

353: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:11:59.19 ID:tRHf/nEt0
戦士「で、今度はその有名な聖剣の勇者サマに取り入ってうまい汁を吸おうってのか? 本当、そういう所気に入らないぜ」

勇者「……お前、こいつと何があったのかは知らないけど。ちょっと言い過ぎだぞ」

戦士「なんだよ、もう取り入り済みか。こんな状況で女の下着を探し回ってるようなヤツだもんな。適当に、何か物で釣られたか」

勇者「お前……!」

354: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:12:58.86 ID:tRHf/nEt0
傭兵「勇者。あまりムキになるな。いつものことだし、私は気にしていない」

勇者「だってよ」

傭兵「まあ、この男も普段はここまで噛み付いてはこないのだがな。……大方、敵にやられてしまい拗ねているのだろう」

傭兵「病室にいては体を動かして発散することもできない。色々溜まっているのだろうな」

勇者「ふーん」

戦士「てめぇ……!」



傭兵「それより、女の下着を探し回っているとは?」

勇者「……ちょっとしたことだから気にするな」

355: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:17:24.66 ID:tRHf/nEt0
傭兵「気にするなと言われてもな。君には前科が……」

メロンパン職人「前科?」

勇者「あーあー。それよりもだ!」

勇者「傭兵、聖女について何か心当たりはないか?」

傭兵「聖女……?」

勇者「うん。あのとき俺たちが教会を離れた隙に、敵に攫われちゃったんだってさ」

傭兵「……初耳だな。そんな大事、私の耳にも入ってきていないが」

356: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:20:08.23 ID:tRHf/nEt0
傭兵「いや、大事だからこそか。この王都の状況で、市民を余計に混乱させるようなことは広められないということか」

勇者「うーん。参ったな。これであの時教会にいた面子は全員何もわからないってことになるのか」

勇者「少しでも手掛かりが欲しかったんだけどな」

傭兵「手掛かりか……」


傭兵「人探しについてなら、私にひとつ心当たりがあるが」

勇者「!」

358: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:25:23.36 ID:tRHf/nEt0
勇者「心当たりって? 情報なら、今は何でもほしいんだけど」

傭兵「霊能者というものがいるらしい」

勇者「霊能者?」

傭兵「私も直接関わったことはないから信用できると言い切れるわけではないが。ある筋では有名な者らしい」

勇者「……おばけと会話できたりするのか? けど、それって聖女が死んでないと役に立たないんじゃないか」

傭兵「それは霊媒師という分類だな。今回頼るとするならば別の能力になるだろう」

359: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:25:55.62 ID:tRHf/nEt0
傭兵「透視、千里眼と呼ばれる力があるらしい」

傭兵「なんでも、遠く離れた人や物を見通すことのできる能力だとか」


勇者「……つまり」

傭兵「ああ。手掛かりもなく行方不明になった人間を、もしかしたら見つけ出すことができるかもしれない」

360: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:27:03.34 ID:tRHf/nEt0
勇者「その霊能者ってのはどこにいるんだ? 王都にいる?」

傭兵「そう自称するだけの能力者なら数いると思うが……私が聞いたその霊能者は南の都市にいるらしい」

傭兵「私も直接会ったことはないからな。仕事の中で話を聞いた程度だ」

勇者「どんな仕事だよ」

傭兵「別に……私は仕事で王都を離れることも多いのでね。雇われで手広く動いていればそういった話を聞く機会が多いというだけの話だ」

361: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:28:00.56 ID:tRHf/nEt0
勇者(あんまり王都に長居して、宿屋のことで騎士さんたちから詮索されるのも不味いしな)

勇者(ちょうどいいし、これは頼ってみるか)


勇者「……よーし。決めた。南の都市、行ってみようか」

勇者「メロンパン職人、怪我の具合はどうなんだよ」

メロンパン職人「えっ。俺も行っていいんですか?」

勇者「……? 何言ってんだよ。来ないのか?」

メロンパン職人「……」

メロンパン職人「俺は……」

362: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:28:34.18 ID:tRHf/nEt0
勇者「?」

メロンパン職人「い、いえ。何でもないです。えぇと。傷自体は治癒師さんのおかげでもうほとんど塞がってるみたいなんですよね」

メロンパン職人「あとは体力さえ戻れば大丈夫って言うんで、外に出るならあと二、三日ってところでしょうか」

勇者「じゃあそれくらいに出発しようか」


傭兵「……待て」

363: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:30:52.37 ID:tRHf/nEt0
勇者「うん?」

傭兵「霊能者が遠くのものを見通す力を持っていると言っても、何も無しに好きなものを見つけることができるほど便利というわけでもないらしい」

勇者「……と言うと?」

傭兵「探す相手の、縁のある物が必要だ」

勇者「縁……」

364: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:31:24.53 ID:tRHf/nEt0
勇者「縁かぁ……」

傭兵「ああ」


勇者「……」

傭兵「……」



勇者「……縁って? つまりどういうこと?」

傭兵「……」

365: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:34:16.21 ID:tRHf/nEt0
傭兵「例えば、君に深い縁のある物と言えば、その聖剣。他にも、普段身につけている衣類なんかは単純でいいんじゃないか?」

傭兵「要は、探す個人を特定するために、その関わりの深い物を辿って手掛かりにするというわけだ」

勇者「なるほど? メロンパン職人を探すならメロンパン職人の靴下とか持ってけばいいってことか」

傭兵「そうなるな。依頼に行くのなら、聖女に縁のある何かを持って行く必要があるだろう」

勇者「……」

勇者「……へー」

366: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:35:42.88 ID:tRHf/nEt0
勇者「出発まであと三日か……」

勇者「……」


勇者「傭兵、ちょっと頼みがあるんだけど」

傭兵「?」

367: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:36:58.22 ID:tRHf/nEt0
某所


聖女「……」

聖女「……」

聖女「…………ここは……?」

368: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:38:35.92 ID:tRHf/nEt0
ジャラ…

聖女「鎖……」

聖女「……」


聖女「これって……もしかして私、捕まっている……?」

369: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:39:51.22 ID:tRHf/nEt0
聖女「勇者さんのイタズラとか、そういうわけではないですよね?」

聖女「……」


聖女「……ゆ、勇者さーん」

聖女「隠れているのなら、返事をしてほしいのですけど」

聖女「……」

聖女「もしもーし……」


シーーーーン……


聖女「……」

370: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:45:27.07 ID:tRHf/nEt0
聖女「だ、誰かいませんかー……」

聖女「ここ、どこなんですかー……」


シーーーーン……


聖女「……」

聖女「……も、もしかして、誰もいない……?」



声「>>373」

375: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:50:42.39 ID:tRHf/nEt0
声「いないかも」


聖女「! 主の声……」


聖女「……えっ。誰もいないんですか」

聖女「そ、それは困るんですけど……」

376: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 21:53:00.94 ID:tRHf/nEt0
聖女「……」

聖女「けど、主の声が聞こえると言うのは少しほっとしました」

聖女「……いくら勇者さんでも、さすがにこんな悪ふざけはしないですよね……」

聖女「それに……辺り一面から感じるこの禍々しい気配」

聖女「今回王都を襲撃した者たちの関係でしょうか」

聖女「……これは……少し、気持ちが悪くなりそうですね……」

397: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:05:16.58 ID:rrYK+byP0
……

……


病室


勇者「じゃあ、俺は出発の準備してくるから。お前はちゃんと休んで早く治せよ」

メロンパン職人「準備……?」

勇者「いろいろあるんだよ。じゃあな」

ガチャッ

398: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:06:20.88 ID:rrYK+byP0
メロンパン職人「行ってしまいましたね」

メロンパン職人「傭兵さん、さっき勇者さんに何を言われていたんです?」

傭兵「……うぅん。頼まれはしたが……まあ、君には言わない方がいいだろうな」

メロンパン職人「?」

傭兵「では、私もこれで失礼する」

ガチャッ

399: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:08:36.98 ID:rrYK+byP0
バタン


メロンパン職人「うーん。気になる」

戦士「……なあ、勇者ってのは何なんだ?」

メロンパン職人「何とは」

戦士「お前は聖剣の勇者ってのの仲間なんだろ。けど、なんか戦える奴って感じはしねえし。ただのパン屋だろ」

戦士「勇者本人もこんな状況でブラジャー探してるとかよくわからない奴だし。傭兵なんかとつるんでやがるし」

戦士「……つーか、宿屋を燃やした? 騎士に追われてる?」

戦士「どういう流れがあってそんなことになるんだよ。ただの犯罪者じゃねえか」


メロンパン職人「……むむむ」

401: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:12:03.39 ID:rrYK+byP0
勇者「そうだ、忘れてた」ガチャッ

戦士「!?」

メロンパン職人「ゆ、勇者さん。……何を忘れたんです?」

勇者「ちょっとな」



勇者「用があるのはそこの奴だ」

戦士「……俺?」

勇者「うん。お前」

402: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:14:13.22 ID:rrYK+byP0
勇者「先に行っておくが、これは決してお前が悪いわけじゃないんだ」

勇者「だけど、こっちとしては聞かれたくないこと聞かれちゃったわけだしな」

戦士「……」

勇者「これはもう、しょうがないだろ」

戦士「な、なんだよ……」

403: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:15:12.04 ID:rrYK+byP0
勇者「俺だって本当はやりたくないんだぜ? でもしょうがないんだよ。わかってくれ」

ジリジリ…


戦士「ま、まさか、口止めか!? こんなところでやろうってのかよ!」

戦士「ここは病室で、俺は怪我人だぞっ!」

戦士「お前、聖剣の勇者ってやつじゃないのかよ!」


勇者「大丈夫。痛くしないから。大人しくしてくれればすぐに終わるから」

404: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:15:38.25 ID:rrYK+byP0
……

……


戦士「……………………ばぶぅ」



勇者「じゃ、メロンパン職人。あとのことは任せたぜ」

メロンパン職人「どうしてこうなるんですかね」

406: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:39:28.34 ID:rrYK+byP0
夜、聖女の家


勇者「ここが聖女の家か」

勇者「……」

407: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:40:23.56 ID:rrYK+byP0
勇者「……」

勇者「……」

勇者「……うーむ」ソワソワ…


勇者「確かに立派な家だけど。もっとこう……聖女!って感じの雰囲気を想像してたんだけどな」

勇者「家は結構普通なんだな」


傭兵「……君は何を言っているんだ」

勇者「あっ。傭兵、来てくれたか」

408: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 21:42:27.80 ID:rrYK+byP0
傭兵「夜のこんな時間に、人の家の前で独り言をブツブツ言うのは控えた方がいいと思うが」

勇者「……目立ってたか?」

傭兵「ああ。それと、変にソワソワするのもやめた方がいい。率直に言って怪しいぞ」

勇者「……そうか」


傭兵「まあいい。とにかく、ここに用事があるんだろう?」

勇者「ああ。俺ひとりで行くより、お前が一緒にいてくれた方が話が通じやすいだろうからな」

傭兵「……どうだか」

409: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 22:00:02.65 ID:rrYK+byP0
勇者「たのもーっ!」


??「はい…………どちら様で?」

勇者「こんな時間にすみません。俺、勇者という者です」

??「! あなたが……」

勇者「攫われた聖女の件で、ちょっとお話があって来ました」

??「……聖女様の」

410: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 22:02:23.68 ID:rrYK+byP0
??「そう言われてしまえば、こちらに断る理由はありませんね」

??「……どうぞ、お入りください」

勇者「ありがとう。……えぇと、アンタは?」

メイド「この屋敷のメイドです。聖女様は不在ですが……彼女がいつ帰って来てもいいように、今は屋敷の管理をさせてもらっています」

勇者「……そうか」


メイド「そちらの方は?」

傭兵「ただの付き添いだ。気にしないでくれ」

メイド「はぁ」

412: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 23:29:17.18 ID:rrYK+byP0
メイド「どうぞ、お茶です」スッ

勇者「どうも」

傭兵「……」

413: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 23:30:15.51 ID:rrYK+byP0
メイド「勇者様。聖女様についてのお話とのことですが」

メイド「……もしかして、あの聖剣の勇者様が聖女様を探してくださっているのですか?」

勇者「うん。王様からお願いされてる。そんなお願いが無くたって、聖女は助けるつもりだけどな」

メイド「まぁ……!」

414: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 23:32:20.83 ID:rrYK+byP0
メイド「北の都市の件。それから今回の王都襲撃の件。勇者様のご活躍は聞き及んでいます」

勇者「……おう?」


メイド「勇者様は今、この王都でもっとも頼れる方と思います。その勇者様が聖女様を探してくれると言うのなら、これ以上心強いことはありません」

メイド「どうか、聖女様をお願いします」

メイド「聖女様を心の拠り所としている民は少なくありません。……私にとっても、大切な方なのです」

メイド「どうか……!」


勇者「あ、ああ。……うん。任せてくれ」

415: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 23:33:34.52 ID:rrYK+byP0
勇者「……」



勇者「……」ソワソワ…


メイド「?」


傭兵「……」

416: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 23:34:25.28 ID:rrYK+byP0
傭兵(……勇者。どうした)ヒソヒソ

勇者(ど、どうって。別に……。何でもないし)ヒソヒソ

傭兵(……それにしては挙動不審のようだが)

勇者(べ、別に?)

勇者(こうやって、あんまり知らない誰かにストレートに褒められたり頼られたりすることってあんまりなかったから、なんかちょっと不思議な感覚でムズムズするだけだし)

勇者(こんな時どう反応したらいいのか、ちょっと迷っただけだし)

勇者(別に大したことないし)

傭兵(……)

417: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 23:48:35.38 ID:rrYK+byP0
メイド「それで、今日はどのようなご用件で?」

メイド「私などでご協力できることであれば良いのですが……。私は聖女様のもとで働かせてもらっていますが、何の力も持たないただのメイドなものですから……」

勇者「うん。実はさ……––––––––」



勇者「––––––––と言うわけで、聖女と縁のある物を探してるんだよ」

メイド「縁……霊能……。そういうことですか」

勇者「あいつを探すための手掛かりが何もないからさ。ちょっと眉唾かもしれないけど、何もしないでジッとしてるよりはマシだろ? まずはそこを頼ってみようと思うんだ」

勇者「それで、本人の自宅なら何かしらあるんじゃないかって思ってさ」

メイド「なるほど」

418: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 23:57:31.82 ID:rrYK+byP0
メイド「そういうお話なら私もお力になれると思います」

メイド「少し、見繕ってきますね。聖女様に無断で私物を漁るのは気が引けますが、状況が状況ですからね」

メイド「勇者様たちは私が戻るまで、ここで少々お待ちを––––––––」


勇者「あっ。待って」

メイド「え?」

419: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/14(金) 23:59:10.66 ID:rrYK+byP0
勇者「俺も探す」

メイド「……はい?」


勇者「俺も探す」

メイド「……」


勇者「聖女の私物漁り。俺にも手伝せてくれよ、メイドさん」

メイド「……もうちょっと別の言い方はできないのでしょうか」

420: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/15(土) 00:13:43.35 ID:oJlKcab40
メイド「……いえ、しかし。いくら勇者様と言えども、あまり勝手に動かれては……」

勇者「ダメなのか?」

メイド「……その。勇者様は男性ですし。聖女様は女性ですから」

メイド「男性がみだりに女性の部屋を物色するのは良くないことだと思います」

勇者「今、そんな体面を気にしてる場合じゃないだろ。聖女の一大事なんだぞ」

メイド「……うーん」

421: ◆XoiMTUEsXEGh 2018/12/15(土) 00:15:12.08 ID:oJlKcab40
メイド「……でも……やっぱり……」

勇者「今こうしている間にも聖女にはピンチが迫っているかもしれない。一刻も早く。そしてより確実に聖女のもとへ辿り着ける物を探すためにも、俺に協力させるべきだと思わないか?」

メイド「…………」


勇者「それにほら、俺は聖剣に選ばれた勇者だし。そういうの探すのが実は得意だったりするかもしれないぞ?」

メイド「…………うぅ……」


傭兵(それは今関係あることなのだろうか)

426: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/16(日) 17:42:15.15 ID:B3+UgR5q0
勇者(なかなか頑固だな、この人)

勇者(物腰低いし、押したら行けるかと思ったけど、案外上手く行かないもんだな)

勇者(できればここで上手いこと家探しして聖女のブラジャーを見つけられたら安価も達成できて万々歳なんだが)

勇者(……どう動こうかな。ここは女性である傭兵をうまく使えるだろうか)

勇者(問題は、ブラジャーを探すことを了承してくれるかどうかだけど)

勇者(……もうちょっと押してみて、自ら探せるように頑張ってみるのもアリか?)


聖剣「>>428」

428: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/16(日) 17:52:56.32 ID:ygJBkLfq0
押し倒せ

436: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 00:45:18.94 ID:2J0szMGo0
聖剣「押し倒せ」

勇者「……えっ」


聖剣「押し倒せ」

勇者「……」


勇者「押すって、そういうあれかよ」

437: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 00:46:09.38 ID:2J0szMGo0
勇者「……」

メイド「……」

勇者「…………」ジーーーーッ……

メイド「な、何でしょうか」


勇者「……」


勇者(この人を押し倒すのか?)

438: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 00:49:50.68 ID:2J0szMGo0
勇者(いやいやいや、それはさすがにアレじゃないか?)

勇者(今日初めて会う、初対面の女の人だぞ? ここでいきなり押し倒すの?)

勇者(俺どんだけ危ない奴なんだよ)

勇者(…………まあ、安価だから仕方ないけど)


勇者(仮に押し倒そうとしたところで隣にいる傭兵が黙って見ているモンだろうか)

勇者(ここに来て、こいつを連れて来てしまったことがアダになったか……?)


傭兵「……?」

439: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 00:52:37.80 ID:2J0szMGo0
傭兵「はぁ……話が進まないな」

勇者「!」

傭兵「ここは流石にメイドの言うことが一理あると私も思う」

傭兵「メイドも、いくら聖剣の勇者とは言え主人が不在の家を今日初めてあったばかりの男に好き勝手されたくない気持ちがあって当然だろう」

傭兵「ここは素直に君が折れるべきと思うが」

傭兵「大体、君が自ら聖女の部屋に入りたがることに何か理由はあるのか?」

傭兵「ここで筋の通った理屈を出せないのなら、私も君の側には付けないな。常識的に考えて」


メイド「傭兵さん……」


勇者「ぐぬぬ……」

440: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 01:08:55.86 ID:2J0szMGo0
勇者「……」

勇者「…………」

勇者「………………」


勇者「……わかった」

メイド「!」

勇者「俺は大人しくしていることにするよ。ただし、一つお願いがあるんだ」

メイド「お願い……? ど、どんな?」

勇者「傭兵も一緒に付き添わせてもらっていいか?」

傭兵「……私が?」

441: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 01:10:02.47 ID:2J0szMGo0
メイド「ええと……どういうことでしょうか」

勇者「いや、ホラ、こっちからお願いしに来てるんだし何も手伝わずに黙って見てるのも気が引けるからさ」

勇者「それに、俺と違って傭兵は女だから、メイドさんが気にしてるようなことは起こらないんじゃないかな」

メイド「じょ、女性なのですか……!?」

442: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 01:14:51.00 ID:2J0szMGo0
傭兵「……何か?」

メイド「い、いえ……その、物々しい装備をしているので、てっきり……」

傭兵「……はぁ……。まあ、実際によく間違われるし、紛らわしい格好をしている私も悪いが」

メイド「その……決して悪い意味ではないのです」

メイド「むしろ、素敵な方だなぁと」

傭兵「……む?」

メイド「な、なんでもありません」

443: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 01:16:58.77 ID:2J0szMGo0
傭兵(……勇者、どういうつもりだ)ヒソヒソ

勇者(ど、どうって……何がさ)ヒソヒソ

傭兵(物を探すくらい、最初から最後までメイドに任せても問題ないだろう。なぜここまでして出張ろうとする)

勇者(……)

傭兵(挙句、私のことまで巻き込んで……何かメイドに言えない探し物でもあるのか?)

勇者(……さすが傭兵。鋭いな)

444: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 01:28:36.50 ID:2J0szMGo0
勇者(お前の言う通り、俺には探し物があるんだ)ヒソヒソ

傭兵(やはり……)ヒソヒソ

勇者(今後のためにも、どうしてもここで見つけておきたい物なんだ。これがないと後々大変なことになる)

傭兵(……)

勇者(だけど、それをメイドさんが素直に引き渡してくれるとは思えない。自分の手で探すしかないと思っていたんだ)

勇者(傭兵の力で何とかできないか? 頼むよ、もうお前だけが頼りなんだ)

傭兵(……はぁ)

445: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 01:29:44.91 ID:2J0szMGo0
傭兵(どうしても必要と言うのなら仕方ない。私に出来る限りのことはしてみよう)ヒソヒソ

勇者(! 助かる)ヒソヒソ

傭兵(それで、どんな品を探しているんだ? 聖女の捜索に必要な物であるならば、主人のため、メイドもある程度は協力してくれるとは思うが)

傭兵(それで尚、協力が見込めない物とは想像が付かない。どんな物だ?)

勇者(ああ。ブラジャーだ)

傭兵(そうか、ブラジャーか)


傭兵(……)

傭兵(…………)


傭兵「……は?」

ギロッ

勇者「ひっ」ビクッ

447: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 01:49:50.77 ID:2J0szMGo0
メイド「あ、あの……どうかされましたか?」

傭兵「……いや、気にしないでくれ」

傭兵「それより、お茶をもう一杯いただけないだろうか」

メイド「お茶を……? あの、失礼ですが、お二人とも今出ているカップに手を付けていないようですが……」

傭兵「……勇者」

勇者「えっ?」

傭兵「……」グイッ

勇者「ちょっ、待っ……」


勇者「熱っづぁ!!?」

448: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 01:50:51.45 ID:2J0szMGo0
ビチャビチャ


メイド「まぁ大変!」

傭兵「連れが粗相をしてすまない。悪いが、何か拭くものを持ってきてくれないだろうか」

メイド「すぐにお持ちします!」

バタバタ……


勇者「お前、めちゃくちゃだな!!」

傭兵「君に言われたくない」

449: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 02:11:47.84 ID:2J0szMGo0
傭兵「それで、一体どう言う了見だ」

勇者「な、何が」

傭兵「真剣な顔でどうしても必要と言うから何かと思えばブラジャーなどと……!」


傭兵「君の目的を考えれば、探すのがそんなものである必要はないだろう! 私に何をさせるつもりだ!」

勇者「だって安価なんだもん……」

傭兵「はぁ?」

勇者「……何でもない」

450: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 02:16:00.86 ID:2J0szMGo0
勇者「け、けど、ブラジャー、必要なんだって!」

勇者「別にそれが聖女の物である必要はないのかもしれないけど……」

勇者「傭兵から霊能の話を聞いてピンと来たんだ!」

勇者「聖女と縁のあるものが必要だって時に「ブラジャーを探せ」だぜ?」

勇者「これが偶然に思えるか!? いいや違うね! 俺はあの時、運命のような物を感じたよ!」

勇者「ああ、きっとあの安価はこの時のためにあったんだって」

傭兵「??」


勇者「俺に必要なブラジャーは聖女のブラジャーなんだ! ここは譲れないと思う」

傭兵「さっきから言っていることが一ミリも理解できないのだが、もしかして私のせいなのか……?」

451: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 02:24:44.72 ID:2J0szMGo0
メイド「お手拭きをお持ちしました」

勇者「ありがとう」フキフキ


メイド「それと、聖女様と縁のある物。そろそろお探ししましょうか。……傭兵さんであれば、ご一緒しても大丈夫と思います」

メイド「傭兵さんは、変なことはしなさそうですし……」

傭兵「!」

勇者「よし」

452: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 02:25:17.67 ID:2J0szMGo0
メイド「では、行きましょうか。聖女様のお部屋はあちらです」

傭兵「あ、ああ……」


勇者「……傭兵」

傭兵「……」


勇者(頼んだぜっ)バチンッ

傭兵(下手糞なウインクやめろ)

453: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 02:30:03.06 ID:2J0szMGo0
その頃


戦士「うえーーん!! うえーーん!!」

メロンパン職人「あぁっ、戦士さん……良い子だから泣き止んでくださいよぉ……」ガラガラ


看護師「かわいそうに……きっと怪我のショックで頭が……」

455: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 05:02:56.28 ID:2J0szMGo0
……

……


勇者「……」

勇者「……」

勇者「…………」


勇者「…………」ズズズ…


勇者「……お茶、旨いな」

456: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 05:03:33.15 ID:2J0szMGo0
勇者「……………………暇だ」


勇者「聖女の部屋は入っちゃいけないらしいけど」

勇者「他のところなら俺が見ても問題ないのでは?」

勇者「……あと、押し倒すの安価、どうしよう」

勇者「……」

キョロキョロ


勇者「うーむ」

457: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 05:05:24.60 ID:2J0szMGo0
勇者「そういやこの家。メイドさんは居たけど、親御さんはいないのかな」

勇者「俺、聖女のことはよく知らないんだよな。有名人らしいけど。俺、村にいた頃はそんなの興味なかったしなぁ」

勇者「メロンパン職人なら何か知ってたりすんのかな」

458: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 05:07:24.14 ID:2J0szMGo0
聖女の部屋


傭兵「……」

メイド「どうしましたか?」

傭兵「いや。聖女の部屋と言うから、一体どんなものかと身構えていたのだが」

傭兵「……普通だな」

メイド「王都の皆様には公務で表に出ているお姿ばかり印象に残っているかもしれませんが……そうですね」

メイド「聖女様も、お家に居る時くらいは肩の力を抜いて、普通の女の子でいましたよ」

メイド「ほら。このぬいぐるみ、可愛らしいでしょう。御両親が健在の頃に贈られた物で、今でも聖女様の宝物らしいですよ」

傭兵「……確かに。これは市民の中にある聖女のイメージとは少し違う一面かも知れないな」

459: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 05:08:14.90 ID:2J0szMGo0
メイド「……あの。これ、持って行ってしまうんですか?」

メイド「聖女様との縁という意味では、かなり強めの物とは思いますが」

傭兵「……」


傭兵「いや、別の物にしよう。これは我々のような、剣を持つ者の手でおいそれと触って良い物ではないように思う」

傭兵「……道中、汚してしまっても悪い」

メイド「…………ありがとうございます」

460: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 05:09:52.79 ID:2J0szMGo0
……

……


勇者「おっ、戻ったか」


傭兵「ああ」

メイド「これがお役に立てれば良いのですが」

勇者「どれどれ……」


勇者「……」

勇者「…………」



勇者「…………何これ」

傭兵「リボンだ」

461: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 05:10:45.96 ID:2J0szMGo0
勇者「……話が違うんだが」

傭兵「何を言っている。縁を辿るためならばこれで十分だろう」

勇者「そうじゃなくてっ」


勇者(俺、ブラジャーがいいって言ったよね?)ヒソヒソ

傭兵(馬鹿か君は。私がそんなもの持ってくるわけがないだろう)ヒソヒソ


勇者「話が違うんだが!」

傭兵「その下着への拘りは何なんだ!」

462: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/17(月) 05:24:01.51 ID:2J0szMGo0
メイド「あの……これじゃダメでしたか? 聖女様が長く使っていた物なので良いと思ったのですが」

勇者「ああ、うん。着眼点は悪くない。普段身に付けてる物を選んだのはいいと思う」

勇者「けど、ちょっと惜しいんだよな。布は布でも、俺が求めていた布はこれじゃない」

メイド「はぁ」

傭兵「君はまだそんなことを……」

傭兵(この男……私に言われるまで霊能のことすら知らなかった癖によく言う……)

483: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:14:04.31 ID:eAlVoCwl0
勇者「やっぱりここは俺が直々に調べるべきだと思う。……ちょっと失礼しますね」ズィッ

メイド「あっ。ちょっと」

勇者「いいからいいから」

メイド「だ、だめですよ……」

勇者「少しだけ。ちょっとだけ見させてくれればそれで終わると思うから」

メイド「うぅ……」


傭兵「……はぁ」

484: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:14:42.61 ID:eAlVoCwl0
傭兵「いい加減にしないか。メイドが困っているだろう」

勇者「それを言うなら俺だって困ってるんだかしお互い様だと思う」

傭兵「別に君が困るようなことは何もないように思うが」

勇者「困るんだよ」


勇者「大体、傭兵が俺のお願い通りの物を持って来てくれていればそれで済んでた話なんだってば」

傭兵「誰がそんな物を持ってくるか!」

485: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:15:12.26 ID:eAlVoCwl0
傭兵「そもそも。そもそもだ。そんな物を手に入れたともして、一体何に使うつもりなんだ。ロクな使い方が思いつかないぞ」

勇者「使うってお前……まさか俺が使うわけないだろ! 変態か俺は! 俺はただ聖女のブラジャーが欲しいだけなんだよ!」

傭兵「それを要求している時点で立派な変態だということに気づけ!」

勇者「なにおう……!」


メイド「ブラジャー……?」

勇者「……あっ!」

486: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:16:04.02 ID:eAlVoCwl0
メイド「……まさか、勇者様が探そうとしていた物って……」

勇者「ち、違う」


勇者「俺はただ、聖女のブラ……ブラ………………聖女が無ぁ事だーといいなって思っただけなんだ」

メイド「さすがに無理があるのでは」

487: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:18:19.45 ID:eAlVoCwl0
メイド「何なんですか本当に……。私、勇者様が何を考えているのかわかりません」

メイド「はっきり言って不審です。最初は聖剣の勇者というだけで信用してしまっていましたけど。本当にこんな人に聖女様の私物を渡してしまって良いのかと迷ってしまっています」

勇者「う……」


勇者「……」

勇者「……」



勇者「たすけて傭兵」

傭兵「ここで私に振るのか」

488: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:19:03.62 ID:eAlVoCwl0
傭兵「はぁ……」

勇者「……」

傭兵「……」


傭兵「まあ、メイドの気持ちはわかる。私だってこの男が何を考えてこんなことを言っているのか理解できん」

勇者「!?」


傭兵「理解できない者に対して恐怖心を持つのも、不信感を抱くのもよくわかる。こんな奴に主人の物を渡したくないというメイド気持ちは、きっと正しいものなのだろう」

勇者(あわわわわ)

489: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:19:42.64 ID:eAlVoCwl0
傭兵「……だが、短い付き合いではあるが私なりにこの男を見てきたつもりだ」

傭兵「ここで聖女の下着を求めていたことはまったくもって意味がわからないが。この男なりに善かれと思って、考えがあっての物なのだろう」

傭兵「この男は変人の部類に入るが、悪人でないことだけは保証しておこう」

傭兵「信用するかどうかの判断は君に任せる。だが、あの聖剣に選ばれたということ。そしてもし私の目を信じてくれるのであれば、ここは協力してほしい」

傭兵「聖女を助け出すには、きっとこの男の力が必要だ」


メイド「……」


勇者「お前……」

490: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:21:11.36 ID:eAlVoCwl0
メイド「……わかりました。私、今日の言動だけ見ていると勇者様はいまいち信用できないけれど……」

メイド「傭兵さんのことは信用します。傭兵さんが勇者様に対してそこまで言うのなら……」

メイド「……言うのなら……はい。信じてみようと思います」


勇者「! あ、ありがとう……」

傭兵「……」

491: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:21:42.05 ID:eAlVoCwl0
メイド「……」

傭兵「……」

勇者「……」




勇者「じゃあ早速ブラジャーを」

メイド「!?」

傭兵「君は空気を読むと言うことを知らないのか」

492: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:22:40.99 ID:eAlVoCwl0
メイド「信用するとは言いましたけど! 言いましたけども!!」

メイド「そんなのダメに決まってるじゃないですか!」

勇者「何でだよ! 話が違うじゃん! 俺のこと信用するって言ったじゃん!」

メイド「信用するから、この聖女様の私物を持って行ってくださいって話です! ブ……ブラジャーを持って行っていいだなんて一言も言ってません!」

勇者「ぐぬぬ……」


勇者「傭兵! 何か言ってやってくれ!」


傭兵「私もブラジャーはダメだと思う」

494: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:24:46.43 ID:eAlVoCwl0
勇者(ダメだ、この二人。こっちの話がまるで通じてない)

勇者(どうしてわかってくれないんだ)


勇者(赤ちゃん魔法は傭兵に一度かけてるからもう通用しないだろうし。メイドさんだけにかけてもな)

勇者(どうすれば……)

勇者(……)

勇者(…………)


勇者(!)


勇者(……そうだよな。俺がどうすればいいかなんて。俺がどう動けばいいかなんて。その答えはもう出ているじゃないか)

495: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:25:47.04 ID:eAlVoCwl0
勇者(原初を思い出せ。俺が迷った時に道を指し示してくれるのは、いつだってこいつだったじゃないか)

勇者(俺、だんだん安価に小慣れて来たからって、実行のタイミングばかり考えて小手先の話術に頼ろうとしていなかったか?)

勇者(それが通じてないって言うんなら、もうやることは一つだろうが)



勇者「……」


傭兵「……勇者?」

メイド「…………?」

496: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:27:16.59 ID:eAlVoCwl0
メイド「あの、勇者様?」

勇者「……」


勇者「ごめんメイドさん! 押し倒す!!」バッ!!

メイド「!?」


勇者「うおおおおおお!!」

メイド「きゃあああ!?」


傭兵「はぁ……」

497: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:27:54.15 ID:eAlVoCwl0
傭兵「……何のつもりだ」サッ

勇者「! すまん、傭兵。ここは退いてくれ」


勇者「俺、メイドさんを押し倒さなきゃならないんだ」

傭兵「……いや、本当に何のつもりなんだ。まるで意味がわからないのだが」

499: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:31:28.39 ID:eAlVoCwl0
勇者「邪魔をするって言うのなら……たとえ傭兵だとしても!!」バッ!!

傭兵「……」




パシッ

勇者「へ?」

傭兵「……」


ヒュッ––––

クルンッ


ズダァン!!

500: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 01:34:27.97 ID:eAlVoCwl0
勇者「…………かはっ……」

ピクピクッ……



メイド「すごい……男の人を、こんな簡単に投げ飛ばしちゃうなんて」

傭兵「……別に大したことではない。勢いに任せて雑に突っ込んで来るだけなら、いくらでも対処のしようはある」


傭兵(そもそもこの男は、剣を使った魔物との戦いはともかく、対人の経験は少ないようだ)

501: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 02:00:26.14 ID:eAlVoCwl0
翌朝


勇者「……」

勇者「…………」

勇者「……………………」




勇者「ブラジャー!!!!」ガバッ!!


メロンパン職人「うわびっくりした」

502: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 02:01:41.80 ID:eAlVoCwl0
勇者「はぁ、はぁ……!」

メロンパン職人「目覚めて早々何言ってるんですか。まーた変な夢でも見たんです?」


勇者「……はっ、ここは……!?」

メロンパン職人「病院ですけど」

503: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 02:02:40.24 ID:eAlVoCwl0
メロンパン職人「昨日、傭兵さんが意識を失った勇者さんを運んで来てくれたんですよ」

勇者「……」


メロンパン職人「また転んで頭打って気絶したんですって? なんか前にも似たようなことがありましたね」

メロンパン職人「傭兵さんには感謝しないと。勇者さん、足元には気をつけてくださいよ」

勇者「……」

504: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 02:11:01.56 ID:eAlVoCwl0
メロンパン職人「あっ。それと傭兵さんから勇者さん宛ての荷物と手紙を預かってるんですけど」

勇者「……貸してくれ」

メロンパン職人「はい」


スッ

505: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 02:13:57.03 ID:eAlVoCwl0
手紙『聖女のリボンは無事に借りることができた。これで今回の依頼は達成したことになるだろう』

手紙『これを持って霊能者のもとへ行けば聖女の居場所を辿ることが出来る筈だ。君が拘っていたブラジャーである必要はないと思われる』

手紙『決して変な考えは起こさないように。メイドには暫くの間、屋敷に警備を雇うことを勧めておいた。下着の件は諦めろ』

手紙『それと、この依頼達成の報酬の件だが。××の酒場の××に話を通せばわかる筈だ。金額は––––––––。』

手紙『––––––––ともあれ、君が無事に聖女を助け出せることを陰ながら応援している』



勇者「……」


勇者「……おのれ傭兵……!」クシャッ

507: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/23(日) 02:19:01.24 ID:eAlVoCwl0
メロンパン職人「ふぁーあ……眠い。」

メロンパン職人「昨日は勇者さんが運ばれてくるわ戦士さんの夜泣きがひどいわでよく眠れなかったんですよね」

メロンパン職人「今から寝ますんで、しばらく起こさないでくださいよ……」




看護師達「ヒソヒソ……ヒソヒソ……」

周囲の患者達「……ヒソヒソ……ヒソヒソ……」


戦士「……なんだか周りの俺を見る目がおかしい気がする」

515: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/24(月) 23:56:08.78 ID:YnsLUe670
教会


ガチャッ

勇者「たのもーっ」

神父「ああ、勇者さん」

勇者「あれ? 神父さん。怪我はもう大丈夫なのか」

神父「ははは……一瞬で気絶させられちゃいましたけど、怪我自体は大したことなかったですからね」

神父「教会を長く空けるわけにもいきませんし、他にも怪我人は大勢いましたから。病院に甘え過ぎるのも良くないと思いまして退院してきました」

勇者「そっか」

516: ◆XoiMTUEsXEGh 2018/12/25(火) 00:02:06.75 ID:L5Pu5nTY0
神父「それにしても……」

勇者「ん?」

神父「派手に壊れましたね、建物。天井も無くなってるし講堂もめちゃくちゃだ……」

勇者「…………ごめんなさい」

神父「いえ、勇者さんを責めているわけではないんです。頭を下げないでください」

517: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:06:01.73 ID:L5Pu5nTY0
神父「ところで、今日はどのような用件で?」

勇者「あー。実は昨日、ちょっとした野暮用で主とズタ袋の面倒が見ることができなくて。ここに預けていたんだ」

勇者「神父さんがいない間に勝手に使わせてもらっちゃった。ごめんな」

神父「いえいえ。それくらいなら構いませんよ。どうせこんな状態じゃ人も来ないですし」


神父「ところで、その当人達は?」

勇者「無事だった部屋に入れさせてもらってる。本当は昨日用事が終わったら迎えに来るつもりだったんだけどな……」

518: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:20:22.43 ID:L5Pu5nTY0
勇者「失礼します」ガチャッ

主「キィ」

勇者「主よ。お迎えが遅くなってしまって申し訳ない」


ズタ袋「……」

519: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:21:04.94 ID:L5Pu5nTY0
勇者「……」

ズタ袋「……」

勇者「……」

ズタ袋「……」


勇者「じゃ、行きましょうか」

主「キィ」


ズタ袋「待て」

520: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:22:58.38 ID:L5Pu5nTY0
勇者「何だよ。お前、起きてたのか」

ズタ袋「……」

勇者「こんな時間に起きてるなんて珍しいな。まだ結構早い時間だぞ?」

ズタ袋「……」

勇者「……あっ。それとも、もしかして今から寝るとこだったのか?」

ズタ袋「……」

522: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 00:23:43.12 ID:L5Pu5nTY0
ズタ袋「……わたしに何か一言ないのか」


勇者「?」


ズタ袋「鳥だけに謝って、わたしには何もないのか」

勇者「……」




勇者「起こしちゃってごめん?」

ズタ袋「違う!」

525: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 04:56:11.02 ID:L5Pu5nTY0
街中

勇者「……」テクテク

主「……」バサバサ

ズタ袋「……」ムスッ



勇者「……なんか袋の中からでもわかるくらいの不機嫌オーラを感じるんだが」

ズタ袋「……」

526: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 04:57:55.92 ID:L5Pu5nTY0
勇者「……や、悪かったって。やむにやまれぬ事情があって、昨日はあの後帰れなかったんだよ」

ズタ袋「……」

勇者「拗ねるなよ」

ズタ袋「拗ねてなどいない」


ズタ袋「すぐに戻ると言った癖に、教会のあの硬い床に置かれたまま鳥とふたりきりでずっと放置され続けていたのが腹立たしいだけだ」

勇者「拗ねてるじゃねえか」

527: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 05:07:00.54 ID:L5Pu5nTY0
ズタ袋「お前にわかるか? 何もない部屋で身動きも取れぬ状況で、いつ燃え出すとも知れぬ危ない鳥と取り残されて待ち続けるわたしの気持ちが」

ズタ袋「床も硬いしお尻も痛い。最悪だ」

勇者「……クッションは?」

ズタ袋「あんな安物、長時間座り続けてぺしゃんこだ。馬鹿者」

勇者「ご、ごめんなさい……」

528: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 05:34:31.34 ID:L5Pu5nTY0
テクテク

……

……


勇者「……おっ。開いてる開いてる」

勇者「昨日は閉まってたけど、今日から再開したんだな。よかった」


ズタ袋「……どこだ?」

勇者「服屋だよ」

ズタ袋「服屋?」

勇者「うん」

ズタ袋「……」

529: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 05:38:42.53 ID:L5Pu5nTY0
ズタ袋(……まさか服を贈ってわたしの機嫌を取ろうというつもりか?)

ズタ袋(甘いにも程がある。その程度で機嫌を直すなど、人間の小娘ではあるまいし)

ズタ袋(わたしを誰だと思っているのだ)

ズタ袋「……」


ズタ袋「…………」


ズタ袋「………………」


モゾモゾ


氷の魔女「ぷはっ」スポッ

530: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 05:39:18.92 ID:L5Pu5nTY0
氷の魔女「……ふむ」

氷の魔女「見たところ普通の店のようだが」

勇者「? まあそうだな」


氷の魔女(このような普通の店で何を買うつもりか。また安物を差し出してくるようなら突き返してやる)


勇者「と言うかお前、人目のあるところで袋から頭を出すなよ。目立っちゃうだろ」ガシッ

ズタ袋「もがもが」

531: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 05:40:07.72 ID:L5Pu5nTY0
勇者「主よ。俺はこの店に用事があるので少し表で待っててください」

勇者「今度こそすぐに戻りますので」

主「キィ」


ズタ袋「……」

532: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 05:43:17.50 ID:L5Pu5nTY0
……

……

ズタ袋「……」

ズタ袋「…………」

ズタ袋「………………」



ガチャッ

勇者「いやー。よかったよかった。買いたい物が買えた」

ズタ袋「……」

533: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 05:44:50.46 ID:L5Pu5nTY0
勇者「王都がこんな大変な状況でも、すぐに店を開けてくれるんだな。商人さんってたくましい。ありがたいもんだ」

ズタ袋「……何を買ったのだ」

勇者「ん? 何だよ、急に」

ズタ袋「聞いて悪いか」

勇者「別に悪くはないけど。お前って、俺の行動に口出ししたり何かを聞いたりってほとんどないだろ」

勇者「珍しいなと思っただけだよ」

ズタ袋「……ふん」

534: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/25(火) 05:45:24.53 ID:L5Pu5nTY0
ズタ袋「して、何を買ったのだ」

勇者「……まあ、別に隠すような物でもないから言ってもいいんだけどさ」

ズタ袋「……」



勇者「ブラジャーだよ」

ズタ袋「!?」

564: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:27:49.58 ID:js2wTqMQ0
王城


勇者「たのもーっ」

主「キィ」バサッ


門番「……む。勇者殿か」

勇者「王様に用があるんだけど。通してもらっていいかな」

門番「ああ。今、門を開けるから待っていてくれ」

565: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:30:40.73 ID:js2wTqMQ0
勇者「……うん?」

門番「どうした?」

勇者「いや、やけにあっさり通してくれるんだなって」

門番「?」


勇者「門番さんって、俺が門を通ろうとするといつもごちゃごちゃ言ってくる印象があったからなんか不思議でさ」

門番「君は私を何だと思っているんだ」

566: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:31:29.49 ID:js2wTqMQ0
門番「……まあ、あれだ。初めて会った時の不審者じみた君はともかく、今の君は王都を守った聖剣の勇者だからな」

門番「王様の許可も出ている。城に通すことに何の問題もない」

勇者「へぇ」


門番「何だ、止めてほしかったのか」

勇者「そんなわけないだろ」

567: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:35:44.14 ID:js2wTqMQ0
勇者「それはそうと……この前の魔物襲撃の時、門番さんは大丈夫だったのか?」

門番「ああ。……身体は無事だったんだが」

勇者「だが?」

門番「襲撃前後の記憶が少し曖昧でね。魔物の不意打ちで頭でも打ったのかもしれない。門の傍の茂みで気を失っていたみたいなんだ」

勇者「記憶が曖昧って。それ、大丈夫なのかよ。何で気を失ったのかも覚えてないのか」

門番「うーん……どうも気を失ったのは襲撃の直前くらいらしいんだがね。いつも通りここで門を見張っていたことまでは覚えているんだが……」

568: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:36:21.59 ID:js2wTqMQ0
勇者「ふむ……襲撃の直前か……」

勇者「………………うん?」


回想

門番『こんな時間に軽々しく姫と合わせる訳にはいかない。今日の所は大人しく帰りたまえ』

勇者『この……!! 赤ちゃんになぁれ!』ぺかーっ

門番『ばぶぅ』

勇者『とりあえず、門番さんは物陰に隠しておいて……』ガサガサ

勇者『……行くぞ!』




勇者「…………あっ」

569: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:37:37.86 ID:js2wTqMQ0
門番「本当は医者にもう少し休んだ方がいいと言われたんだが、身体は元気だったからね。皆が大変なこの時期に休んでもいられないだろう」

勇者「そ、そうか」

門番「とはいえ、原因不明の気絶だったのは事実だし、王都がもう少し落ち着いたら休みを取って精密な検査でも受けてみようと思う」

勇者「そ、そうだな。そうした方がいいと思う。身体は大事だもんな。養生してくれよ」

門番「ああ」



勇者「けど、きっと大丈夫だぜ。検査してもきっと何も出てこないだろうし、門番さんは何も心配しなくていいと思う」

門番「? そうか。根拠はよくわからないけど励みになるよ。ありがとう」

570: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:39:58.50 ID:js2wTqMQ0
王の間


王「勇者殿、よく来てくれた」

勇者「王様。報告があるんです」

王「報告?」

勇者「うん。今後の動きについて」

571: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:40:55.54 ID:js2wTqMQ0
……

……


勇者「––––––––と言うわけで、南の地方を目指そうと思うんです」

王「なるほど」

572: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:44:06.97 ID:js2wTqMQ0
王「しかしその霊能者とやら。私は聞いたことがないのだが、信用できる人物なのかね」

勇者「さぁ。これを俺に教えてくれたやつも直接会ったことはないみたいだから、なんとも」

勇者「ただ、こんな時にてきとうなことを教えてくるような奴じゃないので。その点で言えば信用できるかなって思ってます」

王「ふむ……」

勇者「他に聖女を探す手がかりもないし、聖剣も何も言ってこないからひとまずはそこを頼りにしようかと」

573: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:46:44.00 ID:js2wTqMQ0
勇者「何もしないでジッとしてるよりは、少しでも可能性のある方向に進みたいと思ってます」

王「……わかった。勇者殿には霊能者を頼りに動いてもらおう」

王「私の名で書状を作っておく。霊能者との交渉で役に立つかはわからないが、何も持たないよりはマシだろうからな」

勇者「とんでもない。王様の書状とか、めちゃくちゃ心強いです」


王「勇者殿が南に行っている間、私も他に方策がないか探ってみよう」

王「そちらの線が上手く行くといいのだがな」

574: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 20:58:39.87 ID:js2wTqMQ0
廊下

勇者「王様が書状作ってくれてる間、少し時間が空いたな」

勇者「……」

勇者「……」


勇者「……書状って作るのにどのくらい時間かかるんだろ」

勇者「……こう、でっかい判子をバーンって押してさ。結構チョロいと思うんだけど」

勇者「……」



勇者「……暇だな。誰か適当に時間潰しの相手をしてくれる人でもいないものか」

聖剣「>>577」

577: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/07(月) 21:23:17.32 ID:E/dIEPvh0
メロンパン職人なら暇っしょー
あいつ連れてナンパでもいかね?

583: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 18:42:56.91 ID:dLiVpvSN0
聖剣「メロンパン職人なら暇っしょー
あいつ連れてナンパでもいかね?」

勇者「……」


勇者「ほぁっ?」

584: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 18:45:03.90 ID:dLiVpvSN0
勇者「ナ、ナンパだって?」

勇者「なんだかやたらと軽いノリな気もするけど、これは提案なのか?」

勇者「こんな形の安価は初めてなんだが……」

聖剣「……」


勇者「うーん……」

聖剣「……」

勇者「むむむ……」

聖剣「……」

勇者「……」



勇者「……まあ、中途半端は良くないよな」


585: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 18:45:58.71 ID:dLiVpvSN0
……

……


王「よし。書状が出来た」

王「勇者殿を呼んでくれ。遅くなってすまないと」

騎士「えっ」

王「ぬ?」


騎士「勇者殿なら先ほど城を出て行かれましたよ?」

王「……」


王「なんだと」

586: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 18:59:34.99 ID:dLiVpvSN0
病室

勇者「たのもーっ」ガチャッ


メロンパン職人「くかー、くこー、くかー……」


勇者「おいメロンパン職人。ナンパに行くぞ」

メロンパン職人「くかー……むにゃむにゃ……」


勇者「起きろってば。おいっ」

メロンパン職人「……むむぅ」


勇者「おっ。起きたか?」

メロンパン職人「……」




メロンパン職人「……ぐごごごご……くかー、くこー、くかー……」

勇者「……」

587: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 19:01:44.95 ID:dLiVpvSN0
メロンパン「くかー、くこー、くかー」

勇者「……なあ、メロンパン職人」

メロンパン「むにゃむにゃ……聖女さまぁ……」

勇者「……」



勇者「聖女がすっぽんぽんでお前のメロンパン食べたいって言ってたぞ」

メロンパン職人「マジっすか!!」ガバッ!!

588: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 19:05:35.65 ID:dLiVpvSN0
勇者「おはよう」

メロンパン職人「……あっ。おはようございます、勇者さん」


メロンパン職人「あれ? 聖女様は?」

勇者「何言ってんだお前。聖女がここにいるわけないだろ。どんな夢を見てたんだよ」

メロンパン職人「……あれぇ?」

589: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 19:15:16.31 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「と言うか勇者さん、急にどうしたんですか。まだ出発の日じゃないでしょう?」

メロンパン職人「俺、昨夜眠れなかったから起こさないでくださいって言いましたよね? もうちょっと寝かせてほしかったんですけど」

勇者「いや、急用ができたんだ。今から外に出るぞ」

メロンパン職人「急用……?」

メロンパン「それって俺、必要なんですかね」

勇者「いいからいいから」グイグイ

メロンパン職人「わっ、わっ、ちょっと!」


メロンパン職人「せめて着替えさせてもらいたい!」

590: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 20:38:11.15 ID:dLiVpvSN0
街中


勇者「というわけで、これからナンパを始めたいと思います」

メロンパン職人「何がというわけなんですかね」

591: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 20:39:23.97 ID:dLiVpvSN0
勇者「どうせメロンパン職人なら暇っしょー」

メロンパン職人「入院してた怪我人なんですけど」

勇者「怪我自体は治ってるっしょー」

メロンパン職人「いやまあそうなんですけど」

勇者「ならナンパでもいかね?」

メロンパン職人「何故そうなるのか」



メロンパン職人「というかその喋り方、なんか腹立つんでやめてもらえませんか」

勇者「……ごめん」

592: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 20:50:06.89 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「そもそも、どうしてナンパなんですか? アンタそういうキャラでしたっけ」

勇者「……メロンパン職人のリハビリにちょうどいいかなって思って」

メロンパン職人「もしそれを本気で言っているのだとしたら凄い余計なお世話なのでやめていただきたいんですけど」


勇者「ごちゃごちゃうるさいな。俺だって書状を待つまでの間のちょっとした時間潰しのつもりがこんなことになっちゃって戸惑ってるんだぞ。そんな中お前だけ病室で一人ゆっくり昼寝してるとか許せるかよ。巻き込ませろ」

メロンパン職人「あっ……書状とか事情はよくわからないけど、それは本気で言ってますね」

594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 21:02:06.12 ID:dLiVpvSN0
勇者「この辺は今の王都の中でも人通りが多いし、かわいい子も見つかるだろう」


勇者「さて。ナンパするぞ」

メロンパン職人「うぅ……どうしてこんなことに……」

勇者「うるさいな。ナンパするぞ」

メロンパン職人「はぁ」


勇者「ナンパするぞ」

メロンパン職人「わかりましたってば」

595: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 21:05:01.67 ID:dLiVpvSN0
勇者「……」


メロンパン職人「あっ。さっそく女の子が歩いてきましたね」

勇者「お、おう」


勇者「……」

596: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 21:08:34.39 ID:dLiVpvSN0
女A「……」テクテク


勇者「……」

メロンパン職人「……」


勇者「……」

メロンパン職人(……あれ? 声掛けないのかな?)



女A「……」テクテク ……


勇者「……」

メロンパン「あっ。行っちゃった……」

597: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 21:09:20.98 ID:dLiVpvSN0
女B「……」テクテク


勇者「……」

メロンパン職人「……」



女C「……」テクテク


勇者「……」

メロンパン職人「……」



女D「……」テクテク


勇者「……」

メロンパン職人「……」

598: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 21:11:06.77 ID:dLiVpvSN0
勇者「……」

メロンパン職人「……あの」

勇者「ん?」

メロンパン職人「しないんですか、ナンパ」

勇者「……な、なんだよ急に。するに決まってるだろ、ナンパ」

メロンパン職人「ふーん」

599: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 21:14:26.51 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「あっ。また来た。結構かわいいですよ、あの子」

勇者「お、おぉ」


メロンパン職人「こっちに来ますよ」

勇者「……うん」

600: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 21:16:57.04 ID:dLiVpvSN0
女E「……」テクテク


勇者「………………………………………………………………」



女E「……」テクテク……



勇者「……ふぅ……」

メロンパン「……いや、何をやりすごしたような顔して汗拭ってるんですか。行っちゃったんですけど」

601: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 21:28:25.74 ID:dLiVpvSN0
勇者「う、うるさいな。タイミングってモンがあるんだよ、タイミング」

メロンパン職人「……」

勇者「今はそれを見定めているんだよ」

メロンパン職人「……」


メロンパン職人「さてはアンタ、初めてのナンパでビビって声が掛けられないとかいうんじゃないでしょうね」

勇者「!!」

602: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 21:29:36.33 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「いやぁ、まさかなぁ。あの勇者さんがナンパしようと自分から誘って来ておいて、いざとなったら緊張して女の子に声を掛けられないとか」

勇者「……」

メロンパン職人「そんなおのぼりさんみたいなことを言うはずがないですよね」

勇者「そ、そうだぞ。俺に限ってそんなことがあるはずないだろう」

メロンパン職人「なんかめっちゃ目が泳いでるように見えるんですけど」

勇者「……」

603: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 22:16:30.97 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「……あっ、また来ましたよ」

勇者「!」


女F「……」テクテク


メロンパン職人「するんでしょ、ナンパ」

勇者「お、おぉ」

メロンパン職人「ちゃっちゃと行って来てくださいよ」

勇者「わかってるって」

604: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 22:24:23.09 ID:dLiVpvSN0
勇者「……」

女F「……」テクテク

勇者「あのっ!!」

女F「えっ」


勇者「お……」

女F「……」

勇者「……」

女F「……」


勇者「俺とお茶っ!!」

女F「……オレトーチャ……?」

605: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 22:25:09.24 ID:dLiVpvSN0
女F「な、何なんですか、いったい……」

勇者「……あー。……えっと……」

女F「?」


勇者「すみません、人違いでした」

女F「そうですか」


テクテク……



勇者「……」

メロンパン職人「……」

606: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 22:26:15.10 ID:dLiVpvSN0
勇者「……」

メロンパン職人「……」

勇者「なあ、メロンパン職人」

メロンパン職人「はい」

勇者「……ナンパって、実は仕掛けること自体、誰も幸せにならない行いなんじゃないか?」

メロンパン職人「……はい?」

607: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 22:44:53.30 ID:dLiVpvSN0
勇者「だってさ。考えてもみろよ」


勇者「ロクに知りもしない通行人を相手に突然呼び止めて『お茶しない?』って言ったとしてさ。その時点で相手は自分がナンパされていることを察するわけだろ。
ナンパしていることを察されるってことはつまり、こちらが『貴女に対して興味があります』ってことも察されるわけだ。でもさ? 俺とその子はそれまで一度も喋ったことがないんだし、
その子の性格とか内面のことを何も知らないわけで。俺がその子のことを知らないことはその子も知っているわけで。つまりナンパを仕掛けた時点で
『私は貴女の内面を知りもせず外見だけで興味を持って声を掛けました』ってことも同時に伝わり、間接的に『私は外見だけで人を判断する不誠実な男です』
というネガティブアピールに繋がってしまうわけだ。そんな男を相手に色良い返事を返す女の子がいたとして、それはそれでどうなのよ。こっちは不誠実な男なんだぞ?
OK出しちゃあダメだろう。付いて行っちゃダメだろう。危なっかしくて見てられないよそんな女の子。そんなの誰も幸せになれないと思うしそもそも恋愛ってそういうもんじゃないだろう。
人を好きになるのってそういうことじゃないと思う。内面も外見も、相手の綺麗な部分も汚い部分も知った上で『お嬢さん、俺とお茶しないかい?』と言うからこそ真に心が伝わるわけで、
『あら、奇遇ね。ちょうど私も貴方とお茶がしたいと思っていたの』という返事をもらうことができると思うんだ」


メロンパン職人「お、おぉ?」

608: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 22:45:33.69 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「……つまり?」

勇者「ナンパするような男は不誠実だと思うし、それに応える女の人もちょっとどうかと思う」

メロンパン職人「人のことを突然叩き起こして『ナンパしようぜ!』って誘ってきたのはいったいどこの誰なんですかね」

610: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 22:58:44.61 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「じゃあ、帰りましょうよ。俺だってもともと乗り気だったわけじゃないし、そもそも眠たいし……」

メロンパン職人「勇者さんもやりたくないのならナンパなんてする意味ないじゃないですか」

勇者「それはできない。ナンパを成功させるまで眠ることはできないと思え」

メロンパン職人「あれだけペラペラと御託を並べたあとにどうしてそんな真逆な結論が出るんですかね」

611: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 23:01:03.58 ID:dLiVpvSN0
女G「……」テクテク


勇者「……」

メロンパン職人「……」



女H「……」テクテク


勇者「……」

メロンパン職人「……」



メロンパン職人「帰っていいですか?」

勇者「ダメぇ!!」

612: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 23:16:08.59 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「はぁ……姫様とか女騎士さんとかとは割とフランクに話せるくせに、どうしてこんなところで怖気づいちゃうんですか?」

勇者「ち、違う……俺は怖気づいてなんか……」

メロンパン職人「そもそもあの聖女様を相手に平気でセクハラするような勇者さんが不誠実がどうのこうの言ってナンパできないのって、なんかおかしくないですか」

勇者「……」

613: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 23:27:26.24 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「ねえ」

勇者「……」

メロンパン職人「……」

勇者「……」

メロンパン職人「……」


勇者「違うんだよぉ……そういう知り合いとアレするのは平気だけど、初対面の女の子に最初からそういう目的でアレするのはちょっと違うんだよぉ……」

メロンパン職人「変なところでピュアだなこの人」

614: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 23:31:04.47 ID:dLiVpvSN0
勇者「うるせえな。もう開き直るから言うけど、俺はもともと辺境出身の田舎者なんだ。都会の知らない女の人を相手にナンパ目的で近づくのが怖くて何が悪い」

メロンパン職人「本当に開き直りましたね」

勇者「というかさ。俺に対していろいろ言ってくれてたけど、そういうお前はどうなんだよ」

メロンパン職人「お、俺ですかっ?」

勇者「メロンパン職人ってあれだろ。王都生まれの王都育ち。生まれながらのシティボーイじゃないか」

メロンパン職人「シティボーイ……」

616: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 23:39:59.21 ID:dLiVpvSN0
メロンパン職人「こほん。ま、まあそうですね。……けど……」

勇者「さっきは色々文句言ってくれたみたいだしな。俺みたいなかっぺと違って、その辺り慣れっこなんじゃないか? そこのところどうなんだよ」

メロンパン職人「うっ。」



メロンパン職人「ま、まぁ? できなくはないですけど?」

メロンパン職人「ただ、今はちょっと怪我してるし本調子では……アイタタタ……刺された傷が……」

勇者「お前怪我自体は治ってるって言ってたじゃねえか」

メロンパン職人「……そういえばそうでした」

617: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/01/08(火) 23:41:22.68 ID:dLiVpvSN0
勇者「決まりだな。まずはお前がナンパやってみてくれよ。それを手本にして俺もやってみるからさ」

勇者「なんならそのまま成功してくれちゃっても構わないぞ。安価的に、お前がやってくれても多分達成になると思うし」


メロンパン職人「……安価的に?」

勇者「そこは気にするな」

661: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/02(土) 23:56:24.33 ID:+6TrjHUH0
……

勇者「ほら、来たぞ。ちょうど良さそうな女の子」

メロンパン職人「!」

勇者「早く行けよ」

メロンパン職人「で、でも……」


勇者「でももだってもない。ここまで来といてうじうじするんじゃないよ。男らしくないぞ」

メロンパン職人(自分だってつい数分前まで泣き言いってた癖に……)

662: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/02(土) 23:57:46.41 ID:+6TrjHUH0
勇者「まさか、今さら出来ませんとか言うんじゃないだろうな」

メロンパン職人「ぐぬぬ……!」


メロンパン職人「ええい、やりますよ。やればいいんでしょ、やってやりますよ」

勇者「おっ」

メロンパン職人「俺だってこれでも王都育ちの都会っ子なんですよ。田舎育ちの勇者さんとは積んできたものが違うんです」

メロンパン職人「パン屋の呼び込みで知らない女の人に声掛けることだってありましたし、声を掛けることに羞恥心なんてありません。場数も鍛え方も違うんですよ」

勇者(なんか腹立つ言い回しをしてくるなこいつ)


メロンパン職人「そこで見ていてください。生粋のシティボーイのナンパってやつを、かっぺの勇者さんに見せてあげますよ」

勇者「……ああ! 期待しているぞ」

663: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/03(日) 00:13:33.99 ID:ZxyYpB/tO
女「……」テクテク


メロンパン職人「そ、そこの人っ」

女「? 私ですか?」

メロンパン職人「は、はい。少しお時間良いですか?」

女「……ごめんなさい、用事があるので」

テクテク

メロンパン職人「……」


メロンパン職人「ま、待って!!」



女「はぁ……何なんですか? 私、急いでるんですけど」

メロンパン職人「え、えーと……うーんと……」


メロンパン職人(……そうだ!)

664: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/03(日) 00:15:48.81 ID:D5JoDNGT0
少し遠くから

勇者「……おっ。何だメロンパン職人のやつ。すぐにフラれて戻って来そうな雰囲気だったけど、引き止めてから意外と粘ってるじゃないか」

勇者「……ここからじゃ聞こえないけど、女の人と何か話し込んでるな」


メロンパン職人「––––––––」

女「––––––––。––––––––」



勇者「……なんだ、結構良さげな雰囲気じゃないか」

勇者「ここでまさかのナンパ成功か……?」

665: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/03(日) 00:21:13.88 ID:D5JoDNGT0
メロンパン職人「––––––––。」

女「––––––––。」

メロンパン職人「––––。––––––––」ペコリ

女「––––。」テクテク




勇者「…………あれっ?」

勇者「良い感じの雰囲気なのに。何であいつ、女の人と別れてこっちに戻って来てるんだ?」

666: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 00:22:49.63 ID:D5JoDNGT0
メロンパン職人「勇者さーーん!」タタタッ

勇者「……」


メロンパン職人「やりましたよっ! 俺!」

勇者「お、おう。やるじゃんメロンパン職人」

勇者「実は内心無理だと思ってた。見直したよ」

勇者「でも何でこっちに戻って来ちゃったんだ? もうちょっと話してこれば良かったのに……」


メロンパン職人「メロンパン1個買ってもらえました!」

勇者「……ただのパン屋じゃねえかっ!!」

667: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 01:17:55.61 ID:D5JoDNGT0
勇者「はぁ……ダメなのか。まさかこんなところで躓くのか。男ふたりで王都に居て、ナンパの一つもできないとかマジかよ」

メロンパン職人「勇者さんは声も掛けられないし、俺はただパンを売り込んできただけですからね……」

勇者「……おう。確かにその通りだけど、お前よく自分で言えたな、それ」


??「––––––––ねぇ、そこのあなた」

668: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 01:19:36.42 ID:D5JoDNGT0
勇者「はぁ……とにかく、これじゃあ『ナンパをしてきた』だなんて言えないよな。失敗でもいいから、そろそろ俺も腹を括るか……」

??「……ねぇ。」

勇者「よし、決めたぞメロンパン職人。俺は次にあそこの角を曲がってきた女の子に声をかける。どんな子だとしても絶対声を掛けるぞ」

??「ねぇってば。」

勇者「俺は勇者。勇気の者だ。こうやって自らルール定めることで自分を追い込み奮い立たせる作戦だ。……結構行けそうな気がするぞこれ」

メロンパン職人「ゆ、勇者さん……!」

勇者「ん?」

メロンパン職人「うしろ、うしろ」

勇者「何だよ、俺は今あの曲がり角から目を話すわけには……」クルッ


袴の女「あっ。漸くこっち向いてくれた」

勇者「!?」

669: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 01:20:19.21 ID:D5JoDNGT0
勇者「え、えーと……」

袴の女「ふむふむ……」

勇者「……」

袴の女「……」


勇者「な、なに? 俺に何か用ですか」

袴の女「……もうちょっとよく見せて」

ガシッ

勇者「はわっ!?」

670: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 01:21:17.27 ID:D5JoDNGT0
勇者(顔、近っ……!)

袴の女「…………」

ジーーーーッ…


勇者(なにこれ、何だこれ。ちょっと恥ずかしいんだけど)

勇者(まさか逆ナンってやつなのかしらっ)

勇者(……それにしては、なんだか雰囲気がおかしいような気もするけど)


袴の女「……」

671: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 01:25:26.12 ID:D5JoDNGT0
袴の女「あなたみたいな人、初めて見た」

勇者「……え?」

袴の女「大抵の人は、よく見えなくても先が大体一本筋なの。私はまだ未熟だから、霞んで見える時もあるけど」

袴の女「けど、あなたの場合はそうじゃない。先がよくわからない。いくつもあるように見えたり、ブレていたり、見えなかったり……」

袴の女「こんな人、初めて見た」


勇者(何言ってんだこいつ)

672: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 01:26:26.99 ID:D5JoDNGT0
勇者「よ、よくわからないけど、一旦落ち着いてくれ。あと顔が近い」

袴の女「ごめんなさい」


勇者「さっきの話はよくわからなかったんだが。とにかくだ」

袴の女「うん」

勇者「君は俺とお茶がしたいってことでいいのか?」

袴の女「!」


袴の女「……何を言っているの?」

勇者「……」

673: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 01:27:57.56 ID:D5JoDNGT0
袴の女「でも、あなたに興味はある」

勇者「!」

袴の女「ついでに心配でもある」

勇者「し、心配っ?」

袴の女「あなたの先がどうなるのか見えないの。どうしてなのかはわからない」

袴の女「あなたはそんな自分を心配に思わない?」

勇者「…………」


勇者(あ、これダメなやつだ。逆ナンは逆ナンでも、壺買わされるタイプのやつだ)

674: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 01:31:09.29 ID:D5JoDNGT0
勇者「……先が見えないくらいでいちいち怖がってられないよ。そんなの、誰だってわからないんだから」

袴の女「でも、」

勇者「俺はそんなのよりも壺が怖い」

袴の女「……壺?」


勇者「じゃあ俺はこれで。行くぞ、メロンパン職人」

タタタッ…


メロンパン職人「あっ、待ってくださいよ勇者さん!」



袴の女「あっ……」

677: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 01:49:56.52 ID:D5JoDNGT0
勇者「はぁ、はぁ……」

メロンパン職人「はぁ、はぁ……いきなり走り出してどうしたんですか。今の子、結構可愛いかったのに」

勇者「ばっかお前、あの子の話の内容聞いてなかったのか? 俺らみたいなのがああいうのに身を任せて一緒に喫茶店にでも入ったら、きっと出る頃には怪しい宗教に入信してるか大きな壺を抱えてるに決まってる」

勇者「俺は嫌だぞ。主ひとすじと決めてるからな」

メロンパン職人「そういうもんですかね」



勇者「そんなことよりナンパだナンパ。王都は人が多いからな。これ以上変なのに絡まれない内にさっさと済ませちまおう」

勇者「もう誰でもいいし、失敗してもいいや。大事なのは結果じゃなくてナンパをすることそのものだからな」

メロンパン職人「そんなもの重要視してる人初めて見たんですけど」

678: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 02:18:14.70 ID:D5JoDNGT0
コツ、コツ、

勇者「! 女の子の足音だ」

メロンパン職人「わ、わかるんですか勇者さん」

勇者「俺が今日何時間、道行く女性の足音を聞いてきたと思っている? それで何度目を瞑り、歯噛みしてきたと思っている?」

勇者「この足音は絶対女の子だ。多分俺らと同じくらいの年齢。じきにその曲がり角からやってくるだろう」

勇者「そして俺はその子に声を掛ける。そう決めた。今決めたんだ」

メロンパン職人「で、でも……」

勇者「止めてくれるな、メロンパン職人。その子の顔を見てしまったら、きっと俺は何かと理由をつけて声を掛けるのを躊躇うに決まっている」

勇者「たまにはいいだろ、こういうのも。さっきの話じゃないが、先が見えなくても前に進まなきゃいけない時ってのは必ず来るもんだ」

勇者「……そこで見ていてくれ、メロンパン職人。俺のナンパ道ってやつを」

メロンパン職人「勇者さん……」

679: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 02:21:16.69 ID:D5JoDNGT0
コツ、コツ…

勇者「……」


バッ!

女の声「きゃっ!」

勇者「おっと、危ない。大丈夫かなお嬢さん」

女の声「ご、ごめんなさい。私、少し余所見をしていたみたいで……」

勇者「それはお互い様だよ。こちらこそすまないね。……少し、空を見ていてね」

女の声「…………はぁ? 空? ……というか、あなた……」

勇者「ああ。先日の一件のような、僕達人間にとってどんなに暗い出来事があったとしても変わらない、綺麗なものがこんな身近にあるんだなって……」

女の声「……」

680: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 02:21:52.33 ID:D5JoDNGT0
勇者「ところで、ここで会ったのも何かの縁だし。お詫びの意味を込めてお茶でも––––––––」



女騎士「……」

勇者「……」

681: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 02:23:14.08 ID:D5JoDNGT0
女騎士「何やってるんですか」

勇者「お茶……目なギャグ。こんな感じの、思いついたんだけど、どう思う?」


女騎士「人にペットとズタ袋を預けて、お城に王様を待たせておいて。いいご身分ですね」

勇者「ごめんなさい」

686: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 23:10:01.95 ID:D5JoDNGT0
王城

勇者「書状は無事に貰えたけど……王様、ちょっと不機嫌だったな」

メロンパン職人「そりゃそうでしょう」

メロンパン職人「俺は急に病室から連れ出されたから事情は知りませんでしたけど、一国の王を待たせて何やってんですかアンタ」

687: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 23:14:16.57 ID:D5JoDNGT0
姫「何をしていたのですか? 勇者さま」

勇者「あ、いや、それは……」


女騎士「空を見ていたそうですよ」

姫「空?」

勇者「……おまっ、それはっ」


女騎士「何でしたっけ。『僕達人間にとってどんなに暗い出来事があったとしても変わらない綺麗なものが––––』」

勇者「それはダメだろお前! やっちゃいけないことってあるだろうが!!」


姫「??」

689: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 23:39:26.21 ID:D5JoDNGT0
メロンパン職人「……そう言えば、主と氷の魔女は?」

勇者「あっ、そうだよ女騎士。主とズタ袋、玉座まで連れて行けないからってお前に預けてた筈だけど。何で一緒にいないんだ?」

女騎士「……勇者さんを探しに行く必要があったので置いて行っちゃいました」

勇者「置いて行った? どこに」

女騎士「馬小屋です」

勇者「……はぁ!? お前、魔女はともかく主をそんな所に……!」

勇者「あれほど丁重に扱えって言ったじゃないか!」

女騎士「仕方ないじゃないですか。王様との約束を放ってどこかに行ってしまった勇者さんが悪いです」

勇者「ぐぬぬ……」

690: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/03(日) 23:39:56.34 ID:D5JoDNGT0
馬小屋

馬「ヒヒーン」

主「キィキィ」


ズタ袋「……臭い」

694: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/04(月) 02:09:21.56 ID:5UDSMQcP0
翌日

勇者「聖女のリボンは手に入れた。王様の書状も持った。市販のブラジャーも手に入れた」

勇者「あとは明日のメロンパン職人の退院を待って、霊能者のもとへ出発するだけな訳だが」

勇者「今日一日予定が空いてしまったな」

勇者「……」

勇者「うーん。まあ、こんな日もあるか。今日は一日ゆっくりしていよう」

勇者「それとも、出発前に誰かに挨拶でもして来るか?」


聖剣「>>696」

696: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 03:06:05.51 ID:+IWQDhlRo
女に逆らうな

700: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 18:56:56.49 ID:5UDSMQcP0
聖剣「女に逆らうな」

勇者「……」

勇者「……何これ。警告?」



勇者「とにかく今日一日は女の子に逆らっちゃいけないってことか」

勇者「……割と楽勝なのでは?」

702: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 19:10:40.75 ID:5UDSMQcP0
主「キィキィ」

勇者「あ、おはようございます、主よ」

勇者「今日も神々しいお姿ですね」

主「キィ」


ズタ袋「……」

勇者「お前は……まだ寝てんのか」

ズタ袋「……」

703: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 19:13:33.21 ID:5UDSMQcP0
勇者「はぁ。メロンパン職人は病室だし、話し相手もいない」

勇者「……メシでも食いに街に出掛けてくるかな」


勇者「……」


勇者「……ん?」

ズタ袋「……」

勇者「……」クンクン

勇者「……」


勇者「なんか臭くね?」

ズタ袋「!」

704: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 19:16:33.64 ID:5UDSMQcP0
勇者「ズタ袋、お前、なんか臭うぞ」

ズタ袋「……」

勇者「具体的に言うと、お前の方から馬の●●●とかの臭いがする」

ズタ袋「……誰のせいだと思っている」

705: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 19:40:53.43 ID:5UDSMQcP0
ズタ袋「昨日馬小屋に置き去りにされていたからな。小屋の臭いが袋にこびり付いてしまった」

ズタ袋「このわたしを鳥と一緒に獣畜生の小屋に放置するとは。お前もあの女騎士も、わたしをいったい誰だと思っているのだ」

勇者「……ごめんな。いつもその小汚い袋に入ってるから、なんかもうそう言う奴なんじゃないかって」

ズタ袋「お前……!!」

706: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 19:41:53.59 ID:5UDSMQcP0
ズタ袋「いくら敵対者とは言え、もっと丁重に扱わぬか」

ズタ袋「そもそもわたしをこの袋に入れたのはお前だろう……」

ズタ袋「……よりによって、臭いなどと……これはわたしのせいじゃないのに……」


勇者「わ、悪かったって。●●●みたいな臭いってのは少し言い過ぎたよ」

ズタ袋「二度も言うな」

710: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 22:54:58.21 ID:5UDSMQcP0
勇者「しかし、もっと丁重にって言ってもな……」

勇者「……」

勇者「……あっ」



回想

聖剣『女に逆らうな』



勇者「……」

711: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 22:55:36.24 ID:5UDSMQcP0
ズタ袋「大体、わたしとて好きでこのような袋に入っている訳では……」ブツブツ

勇者「……」


勇者「なぁ、ズタ袋さん」

ズタ袋「……」

勇者「ああ、いや、氷の魔女さん」

ズタ袋「……」

勇者「……拗ねるなよ」

ズタ袋「……ふん。聖剣の勇者が、馬小屋の臭いの染み付いた小汚いズタ袋に何の用だ」

勇者(めんどくせぇ)

712: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 23:03:06.50 ID:5UDSMQcP0
勇者「いや、うん。昨日一日馬小屋に放置してたのは悪かったって。」

ズタ袋「……」

勇者「臭いでからかったのも悪かったって」

ズタ袋「……」

勇者「ほら、俺も色々と失念してたけど、お前って本当は凄い奴じゃん。伝説の魔女じゃん」

ズタ袋「……」

713: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 23:04:15.39 ID:5UDSMQcP0
勇者「お前は確かに人間の敵かもしれないけどさ。俺に魔法についてのアドバイスくれたり、聖女を攫った奴の情報をくれたり、実はお前のおかげで助かってることも色々あった」

ズタ袋「……」

勇者「最近の扱いが悪かったのは認めるよ。ごめんな、氷の魔女」

ズタ袋「勇者……」



ズタ袋「どういう風の吹きまわしだ……気持ち悪いぞ、お前……」

勇者(こいつ……!)

715: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 23:27:58.16 ID:5UDSMQcP0
勇者「……こほん。まあ、俺にもそういう日もあるって話だ」

ズタ袋「むぅ……」


勇者「なぁ、お前さ」

ズタ袋「……?」


勇者「風呂、入ったりするか?」

ズタ袋「!」

716: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 23:28:50.74 ID:5UDSMQcP0
ズタ袋「本当にどうしたというのだ。お前、本当にあの勇者か……?」

勇者「いやほら、馬小屋に置いてけぼりにしちゃったのは完全に俺の落ち度だし、その臭いも落としたいだろ」

ズタ袋「……」

勇者「ついでにそのズタ袋も洗っておいてやるからさ」

ズタ袋「……むぅ」

717: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 23:29:48.78 ID:5UDSMQcP0
ズタ袋「……わたしは風呂が嫌いだ」

勇者(子供かよ)

ズタ袋「だが……そうさな。この臭いを落としてしまいたいのも事実」

ズタ袋「お前がそこまで言うのなら、入ってやらないこともない」

勇者「お、おう。それじゃあ決まりだな––––––––」

ズタ袋「だが、条件がある」

勇者「……なんだよ、めんどくせぇな」


ズタ袋「めんどくさいだと?」

勇者「な、なんでもないです」

718: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/04(月) 23:30:29.96 ID:5UDSMQcP0
勇者「で、条件って?」

ズタ袋「風呂は広い方がいい」


勇者「……」

ズタ袋「お前のような貧乏人が使うような狭苦しい風呂場は御免だ」


勇者「……」

ズタ袋「あと、わたしは熱いお湯が苦手だ」


勇者「……」

ズタ袋「体温よりも高い温度の風呂には入らないぞ」


勇者(川にでも放り込んでやろうかな……)

721: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/05(火) 00:09:47.44 ID:xmiX0vA30
勇者「……しっかし、どうしたもんかな。まさかそこらの銭湯に入れるわけにもいかないし」

勇者「温度を個人の自由で調節できて、広くて高級そうなお風呂」

勇者「拘束を外すわけにもいかないし、かと言って一人で入れたとしても何もできないよな」

勇者「まさか俺が洗ってやる訳にもいかないし……」

勇者「うーむ」

勇者「……」

722: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/05(火) 00:10:21.30 ID:xmiX0vA30
王城


勇者「––––––––と言うわけで、魔女を風呂に入れてやってほしいんだけど」

女騎士「あなたは私を何だと思っているのでしょうか」

723: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/05(火) 00:11:25.93 ID:xmiX0vA30
勇者「頼むよ。条件に合致する風呂場が王宮の風呂くらいしか思い浮かばなかったんだ」

女騎士「だからって、何で私が……」

勇者「弱ってるとは言え、まさか拘束した氷の魔女を一般の銭湯に入れる訳にもいかないだろ。事情を知ってる奴に面倒を見てもらえるのが一番いいし、そうなると頼れそうなのもお前しかいないんだ」

女騎士「でも……」

勇者「言っとくけどお前も同罪だかんな。昨日馬小屋なんかに置いてきたから、臭いがこびり付いて不貞腐れてるんだよあいつ」

女騎士「むむむ……」

724: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/05(火) 00:24:47.61 ID:xmiX0vA30
女騎士「はぁ……同罪と言われても、元はと言えば勇者さんが帰ってこなかったのが原因なんですけど」

勇者「……」

女騎士「……」


女騎士「……貸し一つですよ」

勇者「!」

女騎士「夜になると私たち以外に使用する人も多いですし、昼間の内に入れてしまいましょう」

勇者「おう。ありがとうな。お前に頼んでよかったよ」




勇者「あ、風呂の温度は人肌以下でな。湯舟は一番広いやつで頼む。それと、拘束したままだからお前がちゃんとお前が洗ってやるんだぞ。後で拗ねられても面倒だからちゃんと丁重に扱ってやってくれよな」

女騎士「……くっ」

744: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/10(日) 01:45:38.56 ID:OdCfMSVX0
王城、風呂場


カポーン


女騎士「……」

氷の魔女「……」

745: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 01:46:15.35 ID:OdCfMSVX0
氷の魔女「……縄は外さないのか」

女騎士「それはまあ。仮にも捕虜ですし、あなたはあの氷の魔女なんですから。そのくらいは我慢してください」

氷の魔女「ふん」

女騎士「……お風呂、嫌いなのでしょう。手早く済ませてしまいますよ」

746: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 01:51:27.75 ID:OdCfMSVX0
シャカシャカ シャカシャカ

女騎士「それにしても珍しいですね。お風呂が嫌いな女性って初めて見たかも知れません」

氷の魔女「……わたしは基本的に熱いものや汗をかくことが嫌いだ」

女騎士「お風呂はその汗を流すために入るものですが」

氷の魔女「わたしが普段着ている衣は、このわたし自ら魔法をかけた特殊な衣だ。今回のような外的な要因がなければ、風呂に入って汗を流す必要などない」

女騎士「そういうものですか」

シャカシャカ シャカシャカ



バシャァ

氷の魔女「あっ、こら。目に入る。かける前に一言いわぬかばかもの」

女騎士「子供ですか……」

747: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 02:05:55.23 ID:OdCfMSVX0
ゴシゴシ ゴシゴシ

氷の魔女「本当に面倒な……こんなもの、臭いの件がなければ誰が入るものか」

女騎士「でも、流している間は気持ち良くないですか? 私は結構好きですけど」

氷の魔女「わたしにとっては不要なものだ。必要以上に入りたがる輩の神経もわからん」

女騎士「人間は必要なものだけで生きるわけではありませんから」

氷の魔女「王都も、氷で包んでしまえば汗もかかず風呂も要らず過ごしやすくなるだろうに」

女騎士「それはそれでお風呂の需要が増えそうですけど……と言うか、他ならぬあなたが言うと冗談に聞こえないのですが」

氷の魔女「好きに受け取るがいい」

750: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 02:23:21.47 ID:OdCfMSVX0
氷の魔女「むっ」

女騎士「どうかしましたか?」


氷の魔女「背中が痒い」

女騎士「……ここですか?」

ゴシゴシ


氷の魔女「違う。右だ」

女騎士「……こっちですか」

ゴシゴシ


氷の魔女「もう少し上だ」

女騎士「……こうですか」

ゴシゴシ


氷の魔女「ばかもの。行き過ぎだ」

女騎士「……」

ゴシゴシ



氷の魔女「……む。良い感じだ」

氷の魔女「お前は察しは悪いが筋は悪くないな」

女騎士「どういう筋ですか」

751: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 02:40:17.82 ID:OdCfMSVX0
王城、洗濯場


ゴシゴシ

勇者「……おぉ、汚れが面白いくらいに落ちていく」

勇者「やっぱ王城で使ってる洗剤は一味違うな」

勇者「……」ゴシゴシ


姫「勇者さま、こんなところに居たのですね」

勇者「ん。姫ですか」

752: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 02:42:11.79 ID:OdCfMSVX0
姫「洗い物ですか?」

勇者「魔女のズタ袋ですよ。中身はいま女騎士と風呂に入ってる」

姫「なんだか珍しい組み合わせですね」

勇者「頼めるのが女騎士くらいしかいなかったんだ。……じゃなくて、いなかったんですよ」

姫「……別に、言い直すくらいならそのままでも良いですよ。敬語じゃなくてもわたしは気にしませんし、苦手なのでしょう、勇者さま」

勇者「そうは言ってもなぁ……って、初めて会った時にもそんな話したんでしたっけ」

姫「覚えていましたか。さすがに周りの目があるときは示しがつかないのである程度は……ですけど。今は二人だけですし」

754: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:22:23.84 ID:OdCfMSVX0
勇者「と言っても、俺も器用な方じゃないからなぁ……」

姫「と言うと?」

勇者「タメ口に慣れちゃうと周りに人がいる時、ふとした拍子に出てきちゃってまずいと思うんですよ」

姫「そうですか……」

勇者「はい。だからこのままで」

姫「……なら、仕方がありませんね」


勇者「……」ゴシゴシ

姫「……」


勇者「……」ゴシゴシ

姫「……はぁ」


勇者(むむ?)

755: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:23:11.66 ID:OdCfMSVX0
勇者「あの……姫?」

姫「はい」

勇者「もしかして、敬語。実は嫌だったりするんです?」

姫「そ、そんなことはありませんが。……どうしてそう思うのですか」

勇者「いや、なんとなく。敬語が嫌というか……タメ語がいいんですか?」

姫「なんとなくって……」

勇者「だって急に黙っちゃうし。なんかしょげてるように見えたし」

姫「……」

756: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:23:59.79 ID:OdCfMSVX0
姫「……わたしも自覚はなかったのですが、実はそうなのかもしれませんね」

姫「立場が立場ですから。気安く接してくれる同年代の方というものがわたしにはいないのです」

勇者「まあ、誰だって命は惜しいですからね」

姫「……そのような言い方は心外です。それだとまるでわたしが怖い人みたいじゃないですか」

勇者「ご、ごめんなさい」

757: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:25:03.12 ID:OdCfMSVX0
姫「街を出て冒険にも行けない。それどころか一人でお城を出て、街に行って、お友達を作ることも出来ない」

姫「それも王族の勤めで、仕方のないことであるとわかってはいるのですけどね」

勇者「……」


姫「でもほら、勇者さまと初めてお会いした時。気さくにお話してくれたでしょう」

勇者「気さくというか……まあ、そうですね」

姫「そのあと一緒に隠れながら大臣の部屋へ向かったり。住み慣れたお城での出来事なのに、まるで冒険に出かけたよう高揚感があったのを覚えています」

勇者(確かに。チャケてたもんな、この人)

758: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:26:04.15 ID:OdCfMSVX0
姫「わたしにも……お友達、というのが居たらこういうものなのかな、と。少し思いました」

勇者「……」


勇者(お姫様に不自由なんてないと思ってたけど)

勇者(王族にも王族の悩みがあるってことなんかな)

759: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:26:47.93 ID:OdCfMSVX0
勇者「……うーん」

勇者「わかった。お友達になりましょう、姫」

姫「!」

勇者「二人のときは敬語は抜き。その代わり、俺がつい公衆の面前でタメ口漏らしちゃったら姫がフォローするってことで」

姫「い、いいのですか?」

勇者「良いも悪いも。今日の俺は女の子に逆らわないって決めてるんだ。姫がそうしたいならそうしようと思う」

勇者「むしろ俺なんかでいいんですかって感じなんだけど」


勇者「……本当に大丈夫ですよね?」

姫「大丈夫です!」

760: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:38:08.19 ID:OdCfMSVX0
その後


女騎士「お風呂、ぬるかったんですけど……」

氷の魔女「言っておくがあれより熱い湯に入る気はないぞ、わたしは」

女騎士「はぁ」

761: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:39:02.88 ID:OdCfMSVX0
女騎士「勇者さん、今上がりましたよ––––––––」



姫「こうですか?」ゴシゴシ

勇者「だー、違うって。そんなんじゃ汚れが落ちない。もっとこう、腰に力を入れて」

姫「……こうですか?」ゴシゴシ!

勇者「それじゃ強すぎ。服に変な癖がついちゃうって」

勇者「こう、力を込めて、かつその中にさり気ない優しさをだな……」

姫「なるほど。洗い物というのは奥が深いのですね……」


女騎士「………………」

762: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:51:39.95 ID:OdCfMSVX0
姫「あ、女騎士」

勇者「ふぇっ?」


女騎士「……」

勇者「お、おう。女騎士……。ありがとな、魔女の面倒見てくれて」

女騎士「……何をしているんですか?」

勇者「え、えーと。……ズタ袋も洗い終わったし。洗い場を借りたお礼に、溜まった洗い物を洗っておこうと思ってだな」

女騎士「……それで?」

勇者「と、隣で姫が暇そうにしてたから。『洗ってみる?』って……」

女騎士「……」

勇者「……」


姫「勇者さま、この汚れがなかなか落ちません。何かコツを教えてもらえませんか?」ゴシゴシ

勇者「姫、ちょっと空気読んで」

763: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 04:53:16.32 ID:OdCfMSVX0
勇者「……そ、そうだっ。ズタ袋、乾かしに行かないとなー」

女騎士「……」

勇者「それじゃ、俺はこの辺で……」


女騎士「一国の姫に、何をさせているんですかあなたは!!」

勇者「ごめんなさい!!」

767: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 17:22:35.02 ID:OdCfMSVX0
……

……


勇者「めちゃくちゃ説教された」

氷の魔女「どうでも良いな」

768: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 17:23:10.23 ID:OdCfMSVX0
氷の魔女「それはともかく勇者、袋はどうした」

勇者「ん。洗い終わったからいま干してるよ。乾くまではもう暫くだな」

氷の魔女「ふむ。……む?」


氷の魔女「ならばその間わたしはどこに入ればいいのだ」

勇者「どこに入る必要もないだろ。乾くまではそのままでいいよ」


氷の魔女「……」

勇者「何でちょっと据わりが悪そうにしてるんだよ」

769: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 17:58:16.52 ID:OdCfMSVX0
……

……

勇者「––––––––と言うわけで、明日には王都を出ようと思ってる」

姫「明日ですか」

女騎士「事情は陛下から聞いています。……上手く行くと良いですね」

勇者「うん。まあ揃える物は揃えたし、あとは行けばなんとかなるだろ」

勇者「さっさと聖女の居場所を突き止めて、助けるついでに敵の親玉もやっつけるだけだ」

姫「敵……古の魔王を主とする魔族の集団、ですね」

勇者「王都を襲って来たあいつらは魔王様魔王様って言ってたけど、本物なのかね。魔王が生きてたのって御伽噺になるほどの昔の話なんだろ?」

女騎士「魔族は長命ですからね。私達も直接対面しましたけど、あれは崇拝というよりも忠誠……。あの死霊騎士は、かつての魔王に仕えていたことがあるような物言いをする男でした」

770: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 18:03:11.22 ID:OdCfMSVX0
女騎士「実像のない相手に向けるような忠ではなかったと思います。おそらく、本物の……」

勇者「……そんな奴らが、聖女なんか攫って何の用だって言うんだろうな。きっとロクでもないことなんだろうけど」

女騎士「……」


姫「勇者さま……無事に帰って来てくださいね?」

勇者「……」

姫「せっかく出来たお友達が、今日でお別れだなんて嫌ですよ」

勇者「……」

771: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 18:07:51.78 ID:OdCfMSVX0
勇者「……大丈夫」


シャラン…

勇者「この聖剣は、魔王だって倒したことのある剣だ。魔王の配下なんかには負けないだろう」

勇者「もしまた魔王が現れたって、1回やって出来たんだし、2回目だって倒せるだろ、たぶん」


勇者「それに……」

姫「それに?」


勇者「今日の俺は女の子には逆らえないらしいからな」

勇者「姫が帰って来いって言うのなら、それに逆らうわけにはいかないだろ」

774: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 21:26:03.67 ID:OdCfMSVX0
翌日

勇者「おはよう」

メロンパン職人「おはようございます」

主「キィ」

ズタ袋「……」

775: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 21:26:42.38 ID:OdCfMSVX0
勇者「お前、退院したからには体はもう大丈夫なんだよな」

メロンパン職人「お陰様で。昨日はゆっくり休めましたからね」

メロンパン職人「……昨日は」

勇者「なんだか含みのある言い方だな」

776: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 21:28:59.88 ID:OdCfMSVX0
勇者「まあいいや。とりあえず目的をおさらいするぞ」

勇者「攫われた聖女を探すために、南の地方の霊能者の力を借りに行く」

メロンパン職人「千里眼だか透視だか……俺もよくわかりませんけど、そんな力があるんですよね」

勇者「うん。これを教えてくれた傭兵曰く、探すためには聖女の所縁の品が必要らしい」

勇者「だから、聖女の自宅を訪問してこれを借りてきた」ピローン

メロンパン職人「聖女様のリボン……」



メロンパン職人「というか、聖女様のお宅訪問って……そんな羨ましいイベント、どうして俺抜きで済ましてるんですか」

勇者「だってお前連れてくとめんどくさいことになりそうだったんだもん」

メロンパン職人「ナンパに付き合わされた俺の方が万倍めんどくさい思いをしたと思うんですけど」

777: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 21:52:21.20 ID:OdCfMSVX0
勇者「で、霊能者に聖女見つけてもらって。そのまま助け出してついでに敵を倒して王都に戻る。こんな感じで行こう」

メロンパン職人「急に端折りに来ましたね」

勇者「仕方ないだろ。どこにいるのか見当もつかないんだし。見つけてから先は知らん」


メロンパン職人「霊能者さんの居場所はわかるんですか?」

勇者「傭兵から聞いた話だと、南の都市からちょっと外れた村に住んでるらしい。変わり者で、あんまり表には出たがらないとか何とか」

メロンパン職人「如何にもって感じですね」

メロンパン職人「とりあえず、ひとまずは南の都市を目指すってことですか」

勇者「そういうことだ」

778: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 21:55:32.62 ID:OdCfMSVX0
勇者「それじゃあそろそろ出発しようか」ヨイショット

メロンパン職人「……えっ。勇者さん、どこに行くんですか」

勇者「……はぁ……お前はおばかさんかよ。さっき南の都市だって言っただろ。早く街を出るぞ」

メロンパン職人「えっ。徒歩で行くんですか」

勇者「……」


勇者「えっ」


メロンパン職人「めっちゃ遠いですけど。馬車とか使わないんですか」

勇者「なにそれ、しらない」

779: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 22:03:47.74 ID:OdCfMSVX0
勇者「……馬車とか。そんなん出てんの」

メロンパン職人「当たり前じゃないですか」

勇者「……北の都市だって結構遠かったけど、俺ら徒歩で行ったじゃん」

メロンパン職人「そりゃああのときは北の都市の状況が状況でしたし、民間の馬車も止まってたと思いますよ。今は救援物資のやりとりとかで活発に動いてると思いますけど」


メロンパン職人(そもそも俺、北の都市に連れてかれるとは思ってなかったけど)

780: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 22:07:52.34 ID:OdCfMSVX0
メロンパン職人「それに、勇者さんも東と南の方は魔物の動きも大人しいって話くらいは聞いたことあるでしょう。普通に平和ですからね、あの辺」

勇者「……」

メロンパン職人「南の都市とか、海も近いし観光名所ですし。普通に馬車が出てるに決まってるじゃないですか」

勇者「……」



勇者「チッ。どうせ俺は世間知らずのかっぺですよ」

メロンパン職人「こんなので拗ねないでほしいんですけど」

781: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 22:17:02.10 ID:OdCfMSVX0
メロンパン職人「けど、参ったなあ。今からでも取れるかな」

勇者「?」

メロンパン職人「あそこの行き来、結構多いんですよね。本当なら前日にでも取れれば良かったんですけどね。当日で席が空いているかどうか」

勇者「……うーむ」

782: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 22:21:31.23 ID:OdCfMSVX0
……

……


勇者「たのもーっ」

馬車屋「いらっしゃい。どちらまで?」

勇者「南の都市に行きたいんだけど」

馬車屋「……今日かい?」

勇者「うん。今日」

馬車屋「悪りぃなぁ、兄ちゃん。今日の分はもう全部売れちまったんだよ」


勇者「……」

メロンパン職人「……」

783: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 22:26:51.55 ID:OdCfMSVX0
馬車屋「南の都市からちょっと離れた隣都市行きならまだ空いてるんだが、どうするよ」

勇者「隣都市……。それって、南の都市まで距離どのくらいあるんだ?」

馬車屋「そうさなぁ……徒歩なら、男の足で丸一日ってところかね」

メロンパン職人「うぅん。少し遠いですね」

メロンパン職人「どうしますか、勇者さん。一旦そっちに行くのも有りとは思いますけど」

784: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 22:31:13.21 ID:OdCfMSVX0
勇者(うーむ)

勇者(馬車があるんなら、王都から徒歩で行くのはちょっと怠い)

勇者(隣都市まで行って、そこから歩いて行くのはまあ有りかもしれん)

勇者(それとも、やっぱり南の都市行きに乗れないかもうちょっとゴネてみるか……?)


聖剣「>>787」

787: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/10(日) 22:46:52.68 ID:XJih4zgzo
キィーーー!!

789: 寝れん ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/11(月) 01:59:52.21 ID:F50P4AfK0
聖剣「キィーーー!!」


勇者「!」

790: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/11(月) 02:00:21.33 ID:F50P4AfK0
聖剣「……」

勇者「……」



勇者「?」

791: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/11(月) 02:01:53.66 ID:F50P4AfK0
勇者「びっくりしたんだけど」

勇者「急にどうしたんだよこいつ」



馬車屋「で。どうするんだい兄ちゃん」

勇者「あ、うん」

792: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/11(月) 02:10:39.88 ID:F50P4AfK0
勇者「……俺たち、ちょっと急いでるんだ。何とかならないかな、南の都市行き」

馬車屋「何とかっつってもなぁ」

勇者「雑用でも何でもやるからさ。頼むよ。何なら、客席じゃなくても馬車の端っことかに座らせてもらえれば十分なんだ」

馬車屋「……」


馬車屋「兄ちゃん、腰に剣付けてるけど。戦えるのかい」

勇者「!」

793: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/11(月) 02:17:15.23 ID:F50P4AfK0
馬車屋「さっきの雑用でも何でもやるって言葉に嘘がないんなら、まあ席は用意できんこともない」

勇者「何をすればいいんだ?」

馬車屋「なに、簡単だ。馬車の護衛をしてくれりゃいい」

勇者「護衛?」

794: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/11(月) 02:20:44.55 ID:F50P4AfK0
馬車屋「うちの馬車たちは、まあ十数台でまとめて移動をするんだが。いくら平和な地方への移動っつっても万一魔物に襲われてお客さんに怪我人でも出られちゃ敵わねえ」

馬車屋「南の方に行くのにそんな大袈裟な、と思うかも知れんが……ほら、最近何かと物騒だろう。ついこの間の魔物の襲撃とかよ」

馬車屋「全部の馬車に護衛が付けられりゃそれもいいんだが、護衛だってタダじゃねえ。特に、事件も何も起きてない南に行くのにいちいちそんな金割いてちゃ商売にならねえんだ」


馬車屋「本来ならお客さんにこんなことは頼めないし、専門の業者に依頼することなんだが……」

勇者「ここに丁度良さげな輩がいると」

馬車屋「どうだい、引き受けてくれるってんなら席を空けてやる。少なくてもいいなら、多少の報酬をやっても構わない」

勇者「……」

811: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/16(土) 20:49:30.51 ID:jhZPKtAE0
勇者「よーし、乗った。要は馬車が危ない目にあったとき何とかすればいいんだろ?」

勇者「そのくらい任せてくれよ」

馬車屋「兄ちゃん威勢が良いねぇ。ま、払う分はしっかり働いとくれよ。サボったら叩き出すからな」

812: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/16(土) 20:50:50.99 ID:jhZPKtAE0
馬車乗り場


勇者「すげぇな。何台あるんだこの馬車」

メロンパン職人「十台以上はありますね。実は俺もこの手のやつに乗るのは初めてなんで少しワクワクしてますよ」


勇者「で、俺たちはどの馬車に乗ればいいんだ?」

馬車屋「アンタらに乗ってもらうのはそっちのやつだよ」

813: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/16(土) 20:57:32.16 ID:jhZPKtAE0
勇者「へぇ。結構立派じゃんか」

メロンパン職人「あ、この荷物も乗せてもらえますか?」

馬車屋「あん? 何だこりゃ。ズタ袋?」

メロンパン職人「乗せるスペースありますかね」

馬車屋「屋根の上でもいいってンなら括り付けておくぜ」

ズタ袋「!」

勇者「ああ。それでいいよ。適当にやっといてくれ」

ズタ袋(こいつ……!)

814: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/16(土) 20:59:29.04 ID:jhZPKtAE0
馬車屋「何入ってんだこれ……」

ズタ袋「……」

馬車屋「……ま、何でもいいか」


馬車屋「よっこらせ」

ガシッ


馬車屋「……重っ」

ズタ袋「!?」

815: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/16(土) 21:01:46.92 ID:jhZPKtAE0
メロンパン職人「勇者さん、お客さん達も集まってきたみたいだし、そろそろ俺らも乗りましょうよ」

勇者「それもそうだな。それじゃあ失礼して……」


馬車屋「あー、待て待て待て」

勇者「?」

816: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/16(土) 21:02:25.47 ID:jhZPKtAE0
勇者「なんだよおっさん。今さら乗れませんとかは勘弁だぞ」

馬車屋「乗るのはその馬車でいいんだが、兄ちゃん達の席はそっちじゃないぞ」

勇者「?」

馬車屋「そっちはお客さん側。兄ちゃん達の席はそこだ」


勇者「……」

メロンパン職人「……」

817: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/16(土) 21:04:01.57 ID:jhZPKtAE0
勇者「席じゃないじゃん」

馬車屋「そこにあるだろ」

勇者「……これただのステップじゃん」

馬車屋「座れりゃそこは席だろう」

勇者「……」

馬車屋「わはは。まあそんな顔すんなって。最悪、雨が降ったら屋根の下には入れてもらえるようにはしとくからよ」

820: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/17(日) 01:04:52.04 ID:kkmvXfHl0
馬車

ガタゴト、ガタゴト、

勇者「と言うわけで乗せてもらった訳だけど」

メロンパン職人「乗り心地最悪ですね……」

勇者「尻が痛くなったら立った方が楽そうだな」


メロンパン職人「屋根の上の魔女さんは大丈夫ですかね」

勇者「……ちょっと様子見てみるか」

821: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 01:09:13.79 ID:kkmvXfHl0
屋根の上

ガタゴト、ガタゴト、


縛られたズタ袋「……」


勇者「……」

メロンパン職人「……」


縛られたズタ袋「……何の用だ」


勇者「……」

メロンパン職人「……」


縛られたズタ袋「わたしを笑いに来たのか?」


勇者「い、いや……」

メロンパン職人「……」


勇者「……なんか、ごめんな」

ズタ袋「……ふん」

822: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 01:13:30.05 ID:kkmvXfHl0
主「キィキィ」バサバサ


勇者「あっ、主だ」

メロンパン職人「屋根の上にいないと思ってたらそんなところに」

勇者「まあ、主にとっては狭苦しい車内で大人しくしてるよりは、こうして飛び回ってた方が良いんだろうな」

メロンパン職人「王都にいる間はあまり自由に飛ばせてあげられませんでしたしね」

勇者「羽を伸ばすってやつだな。主が楽しそうで、俺も嬉しいぞ」

主「キィキィ」

823: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 01:23:59.43 ID:kkmvXfHl0
ガタゴト、ガタゴト、

勇者「おぉ、見てみろよ二人とも。王都がもうあんなに小っちゃく見えるぞ!」

メロンパン職人「本当だ……馬車が隊列組んでるおかげで後ろが見えませんでしたけど、ここからだとよく見えますね」

勇者「ここに登ると景色も楽しめるしな。風も当たって気持ちがいい」


縛られたズタ袋「外が見えないわたしに対する嫌味か、お前たち」

勇者「ご、ごめん」

824: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 01:27:33.84 ID:kkmvXfHl0
勇者「……あっ」

メロンパン職人「どうしたんですか、勇者さん」

勇者「いやぁ、なんだか見覚えのある光景が見えたなと思ってさ」

メロンパン職人「見覚え? 勇者さん、この辺りに来たことあるんです?」

勇者「ああ。故郷の村を出て、王都へ向かってる途中にな。この辺を通ったんだよ」

メロンパン職人「へぇ……」



メロンパン職人「あれ? 勇者さん、西の出身じゃありませんでしたっけ。どうして南の方を通ったんです?」

勇者「……ん。まあ、いろいろあったんだよ」

825: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 01:33:08.79 ID:kkmvXfHl0
主「キィキィ」バササッ

勇者「む。主よ、休憩ですか」

主「キィ」

勇者「メロンパン職人。主の食事を用意してくれ」

メロンパン職人「はいはい……勇者さんも食べます?」

勇者「いただこう」

826: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 01:38:05.09 ID:kkmvXfHl0
縛られたズタ袋「……」


勇者「ほら、お前の分だよ」

縛られたズタ袋「……む。」

勇者「いま縄解いてやるから」

縛られたズタ袋「……」

ゴソゴソ


氷の魔女「ぷはっ」

827: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 01:40:24.89 ID:kkmvXfHl0
氷の魔女「……別に、わたしは物を食べなくとも死ぬことはないぞ」

勇者「そう言うなよ。景色もいいし、せっかくみんな同じところで食べてるんだからお前も食べろよ。旨いぞ」

勇者「メロンパンしかないけど」

氷の魔女「……ふん」

828: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 01:45:34.51 ID:kkmvXfHl0
メロンパン職人「そう言えば、さっきの話で思ったんですけど。俺、勇者さんが旅に出てからの話って聞いたことないんですよね」モグモグ

勇者「そうだっけ」モグモグ

メロンパン職人「そもそも、俺は北の都市に行くまでは勇者さんってパン屋だと思ってましたし」


勇者「はぁ? 何があったらそんな勘違いが起こるんだよ」

メロンパン職人「そこは自分の胸に手を当てて考えてみてほしいんですけどね」

829: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 01:50:04.03 ID:kkmvXfHl0
勇者「……まあ、暫くやること無さそうだし。話してもいいけど」

メロンパン職人「おっ。いいですね。聞きたいですよ俺」

主「キィ」

氷の魔女「……」


勇者「そうだなぁ。まずは俺が故郷の西の村で聖剣に選ばれた時からだな––––––––」



––––––––––––––––。

––––––––––––。

––––––––。

837: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 18:27:53.06 ID:kkmvXfHl0
……

……


御者「えー、南の都市行きのお客様達に申し上げます。今日の運行はここで終了です」

御者「今夜はここの水辺周りでキャンプとします」


勇者「あれ? 馬車、止まっちゃうのか?」

メロンパン職人「お馬さん達もずっと走り続ける訳にはいかないですからね。どこかで休ませてあげないと。予定だと、三日くらいは掛かるみたいですし」

勇者「へぇ、三日。……徒歩で行かなくてよかったな」


メロンパン職人「あ。あっちで焚火を始めるみたいですよ。俺らも行ってみましょうか」

838: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 18:29:14.78 ID:kkmvXfHl0
ワイワイガヤガヤ…

勇者「うわ、人結構いるじゃん」

メロンパン職人「そりゃあ南の都市に行く人達ですからね。なんとなく身なりの良い人も多いでしょう」

勇者「? 確かにそうみたいだけど。何でそうなるんだ?」

メロンパン職人「何でって、そりゃあ……」


乗客A「おっ。兄ちゃん達、見ない顔だね」

勇者「あっ。どうも」

839: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 18:30:00.56 ID:kkmvXfHl0
乗客A「アンタらも南の都市へ観光かい?」

勇者「観光?」


メロンパン職人「言ったじゃないですか、勇者さん。南の都市は観光名所なんですよ。海も見えるし綺麗なところで人気らしいですよ」

勇者「へぇ」

840: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 18:32:44.38 ID:kkmvXfHl0
乗客A「なんだ、違うのかい」

勇者「うん。まあ、ちょっとあっちの方に野暮用があるんだ」

乗客A「んー。……仕事か?」

勇者「そんなもんです。と言うか、この馬車に乗ってる間も護衛の仕事してるんだけどな」

乗客A「そりゃあご苦労さんなことだなぁ」


勇者「そういうアンタは?」

乗客A「俺はまあ、観光とは言ってるけど、実際はちょっとした避難みたいなもんも兼ねてるかな」

勇者「避難?」

841: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 18:33:29.56 ID:kkmvXfHl0
乗客A「北の都市はあんなんになっちまったし、一番安全だと思ってた王都でも先日の一件があっただろう?」

乗客A「金はあっても死んじまったらおしまいだ。情勢が落ち着くまではどっかで隠遁でもしようかと思ってなぁ」

勇者「なるほど」


乗客A「兄ちゃん、護衛なんだってな? 俺達に危険が迫ったらしっかり守っておくれよ」

乗客A「まあ、こっちの方だとそうそう危険なんかにゃ出くわさねえとは思うけどな」

842: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 18:42:53.74 ID:kkmvXfHl0
メロンパン職人「あ、ところで、メロンパンいかがですか」

乗客A「メロンパン?」


勇者「お前……こんな所でまで何やってんの」

メロンパン職人「俺も一応護衛って名目で雇われてるわけですけど」

メロンパン職人「戦えないじゃないですか、俺」

勇者「うん」

メロンパン職人「勇者さんばかりに働かせて何もしないってのは申し訳ないので。俺には俺の出来ることを、少しでもやっておこうと思ったんです」

勇者「それでパン配りか」

843: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 18:45:23.13 ID:kkmvXfHl0
乗客A「へぇ。なかなか殊勝な心構えの青年じゃないか。そういうことなら俺も一つ貰っておこうかな」

メロンパン職人「どうぞどうぞ」


乗客A「……」モシャモシャ

メロンパン職人「いかがですか」

乗客A「うん。まあ、いいんじゃないか」

メロンパン職人「そうですか! 喜んでもらえて良かったです」


メロンパン職人「じゃあ勇者さん、俺、他の人にも配って来ますんで!」

勇者「おう。いってら」


タタタッ




勇者「で、どうよ実際」モグモグ

乗客A「……不味くはないが、旨くもないなぁ。兄ちゃんはどうよ」モシャモシャ

勇者「もう慣れたよ」

844: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 22:29:45.81 ID:kkmvXfHl0
御者「お、いたいた。」

勇者「うん?」

御者「アンタ、今日飛び入りで入ったっていう護衛の人だろ」

御者「番の時間を決めるからちょっとこっちに来てくれよ」

勇者「夜の番のことか」

御者「そうそう。アンタ達以外にも雇ってる人がいるからな。交代で見てもらうから、その辺り決めておきたいんだ」

勇者「わかった」


勇者「そんじゃ、おっさん。俺行くから」

乗客A「おう。気ぃ付けてな」

845: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 22:41:50.44 ID:kkmvXfHl0
……

……

御者「八、九、十––––––––……これで全員集まってもらえたかな」

御者「えー、ここに集まった皆さんは全員、今回の馬車団の護衛として来てくれてる人たちです」

御者「皆別々の馬車に乗ってるから、揃っての顔合わせは今回が初めてになるかな」

御者「短い間だけど、協力し合ってお客様の安全な旅路を守ってください」

846: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 22:46:46.41 ID:kkmvXfHl0
勇者「ざっくり、馬車一台につき一人くらいってところか?」

メロンパン職人「そうですね。俺たちは二人で一つに乗ってますけど」

勇者「どれどれ。どんな奴らが集まってるんだろう」

847: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 22:48:14.44 ID:kkmvXfHl0
剣士「……」

槍使い「……」

斧戦士「……」

弓使い「……」

老人「……」

僧侶「……」

モヒカン「……」

ピエロ「……」


勇者「……」

メロンパン職人「……」



メロンパン職人「ちょっと待って、今変な人が居た気がするんですけど」

848: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 22:54:58.35 ID:kkmvXfHl0
勇者「変な人? 誰のことだよ」

メロンパン職人「いやいやいや。この場にそぐわない格好の人が一人いるでしょう。ほらあの人」

勇者「そぐわないって……ああ、あの人か」

メロンパン職人「絶対おかしいでしょ。一人だけ場所間違えてる感がすごい」

勇者「そうかなぁ。人は見かけによらないってよく言うぜ? ああ見えて実は結構強いのかも」

メロンパン職人「や。強さとかそう言うアレじゃなくて」



勇者「相手が老人だからって簡単に人を見くびるのは良くないと思うぞ」

メロンパン職人「違くて!」

849: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 23:33:24.38 ID:kkmvXfHl0
剣士「やあ。そこのお二人さん」

勇者「!」

剣士「これから見張りのチームを決めたいと思うんだけど、ちょっといいかな」

勇者「構わないぞ」

850: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 23:34:15.67 ID:kkmvXfHl0
剣士「さて、みんな聞いてくれ」

剣士「御者さんはもう戻られた。後のことは護衛の僕たちで自由に決めてやっていいと言われている」

剣士「自由に、とは言っても、仕事を雑にこなすようなことがあってはいけないよね。ルールを決めてしっかりやって行こうか」

剣士「とりあえず、夜の見張りの件だけど。せっかくここに集まったのが十人なんだし、半分ずつ別れて二交代でやろうと思うんだけど、どうだろうか」


槍使い「それでいいんじゃねえか?」

斧戦士「異議はない。好きに決めてくれ」

モヒカン「……ケッ」



剣士「肝心のチーム分けだけど……そうだな。そこの君」


勇者「……ん? 俺?」

851: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 23:35:09.34 ID:kkmvXfHl0
剣士「そう、君だよ君。名前は何て言うのかな」

勇者「勇者だ」

剣士「勇者君だね。僕は剣士。よろしく」

勇者「ああ。よろしく」


剣士「見たところ、得物は僕と同じ剣ということでいいのかな?」

勇者「うん。俺は剣しか使えないぞ」

剣士「そうかい」

852: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 23:36:24.47 ID:kkmvXfHl0
剣士「ここに集まった人達は丁度よく、ほとんどみんな得物がバラバラなんだ。バランスの良いチームを作るためにも、君と僕は分かれてチームを組んだ方がいいと思うんだ」

勇者「ふむふむ」

剣士「僕が片方のチームのリーダーをやろう。君にはもう片方のリーダーをお願いしてもいいだろうか」

勇者「……リーダーぁ??」

853: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 23:38:55.08 ID:kkmvXfHl0
勇者「俺、そんなガラじゃないんだけど。そもそもリーダーって何をするんだよ」

剣士「なに、簡単だ。リーダーと言っても場の仕切り役を全部やれと言ってる訳じゃない。ただ、僕と一緒に組み分けの起点役になってくれればいいと思ってね」

勇者「起点」

剣士「そう。起点」

854: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 23:42:31.48 ID:kkmvXfHl0
剣士「僕が一人を指名する。次に勇者君が一人を指名する」

剣士「そうして、一人ずつ欲しい人材を自分のチームに入れて行くようにすれば、バランスの良いパーティが出来るんじゃないかなと思ってさ」

剣士「各々が好き勝手に決めるよりは、そうした方が良いと思うんだ」

剣士「どうだい? もちろん勇者君が嫌なら無理にとは言わないけれど」

勇者「……まあ、別に断るような程のことでもないか」

855: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/17(日) 23:50:57.08 ID:kkmvXfHl0
勇者「それでいいよ、剣士。俺なんかでいいんならな」

剣士「そうか! いやぁ、引き受けてくれて良かったよ!」

剣士「見てくれればわかると思うけど、ここに集まってくれてる人たち、武闘派な人が多そうでね。話が通じやすい人がいてくれて良かった」

勇者「そうか。俺はお前みたいなしっかりした仕切り役がいてくれて良かったと思ってるよ。面倒かけるな」

剣士「あはは。こういうのは向き不向きがあるからね。たまたま僕がちょっと向いてたってだけの話だよ」

883: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/19(火) 19:00:21.97 ID:Gn7YCFtY0
剣士「よーし。それじゃあ組み分けを始めようか」

剣士「まずは勇者君から先に指名をどうぞ」

勇者「そうだなぁ……」

884: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/19(火) 19:01:07.00 ID:Gn7YCFtY0
勇者(一人ずつ交互に指名していくんだったか)

勇者(って言っても、ちゃんと働いてくれる奴だったら誰でもいいと思うんだよな、俺)

勇者(パーティのバランスとか、よくわかんねえし)

勇者(よく考えたら俺、その辺ど素人だったわ)

885: ◆XoiMTUEsXEGh 2019/03/19(火) 19:02:04.40 ID:Gn7YCFtY0
勇者「うーむ」キョロキョロ


槍使い
斧戦士
弓使い
老人
僧侶
モヒカン
ピエロ
メロンパン職人

886: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:03:20.29 ID:Gn7YCFtY0
勇者(一人目は誰にしようかな?)


聖剣「>>888」

888: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:08:55.19 ID:tKtogdVjo
ピエロ

890: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:14:33.16 ID:Gn7YCFtY0
聖剣「ピエロ」

勇者(……)

891: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:15:18.27 ID:Gn7YCFtY0
勇者「じゃあピエロで」

剣士「えっ」

ピエロ「……」




メロンパン職人(……えっ)

892: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:17:08.63 ID:Gn7YCFtY0
勇者「? 何でお前が不思議そうな顔してるんだよ」

剣士「あっ、いや別に……その、いいのかなって」

勇者「? 何が?」

剣士「……ごめん。何でもないよ」


勇者「まあいいや。とにかく、俺が一人目に指名するのはピエロだ」

ピエロ「……」

893: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:20:20.32 ID:Gn7YCFtY0
勇者「よろしくな、ピエロ」

ピエロ「……」


勇者「……」

ピエロ「……」

勇者「……」

ピエロ「……」






ピエロ「……」ニコッ





勇者「ピエロも喜んでくれてるみたいだな」

剣士(ちょっと怖いんだけど、彼……。まあいいか)

894: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:26:23.22 ID:Gn7YCFtY0
剣士「それじゃあ僕の番だね」

剣士「僕は……そうだね。僧侶さんを指名するよ」

僧侶「わ、私ですか。」

895: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:27:28.92 ID:Gn7YCFtY0
剣士「うん。僕は剣士だから、敵に近づいて斬ることしかできない。バックアップをしてくれる君のような人が同じパーティに居てくれると、安心して前に出て戦うことができるんだ」

僧侶「剣士さん……」

剣士「力を貸してもらえるとありがたい。どうかな、僧侶さん」

僧侶「は、はいっ。私、お役に立てるようにがんばりますね」

剣士「ありがとう。それじゃあ、これからよろしくね」

僧侶「こちらこそ、よろしくお願いしますっ」

896: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:30:05.29 ID:Gn7YCFtY0
勇者(剣士のやつ、いろいろ考えてるんだなぁ)

勇者(俺も見習った方がいいのか)


剣士「じゃあ次は勇者君の番だね」

勇者「お、おう」

897: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:31:11.85 ID:Gn7YCFtY0
勇者(二人目は誰にしようかな……)


槍使い
斧戦士
弓使い
老人
モヒカン
メロンパン職人


聖剣「>>899」

900: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:36:42.14 ID:Gn7YCFtY0
聖剣「ピエロ」


勇者「……」



聖剣「・・・ろ、老人」


勇者(こいつ、またピエロを指名しようとしてなかったか?)

901: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:37:20.78 ID:Gn7YCFtY0
勇者「じゃあ俺はそこのお爺さんを指名するぜ」

剣士「えっ」

老人「……」



メロンパン職人(…………えっ)

902: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:40:42.89 ID:Gn7YCFtY0
勇者「何だよ、また何か言いたそうな顔しやがって」

剣士「う、うーん……君が指名したんだから、僕から何か言うってことはないんだけれども……」

勇者「?」

剣士「……ごめん。忘れてくれ」

903: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:47:53.84 ID:Gn7YCFtY0
勇者「俺は馬鹿だから、敵に近づいて斬ることしかできない。年の功でバックアップしてくれる爺さんみたいな人が同じパーティに居てくれると、安心して前に出て戦うことができるんだ」

老人「……」


剣士(あれ……? それ、さっき僕が……)



勇者「力を貸してもらえるとありがたい。どうかな、爺さん」

老人「……」

904: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:49:04.86 ID:Gn7YCFtY0
勇者「……」

老人「……」


勇者「……」

老人「……」


勇者「……」

老人「……」

905: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:49:54.33 ID:Gn7YCFtY0
勇者「……爺さん?」

老人「ほぇ?」

906: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 19:51:32.49 ID:Gn7YCFtY0
勇者「大丈夫か?」

老人「何がじゃ」

勇者「俺のパーティ入ってくれる?」


老人「ぱーちー?」

勇者「うん」

老人「……」

907: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:00:06.76 ID:Gn7YCFtY0
老人「酒はあるか?」

勇者「さ、酒?」


老人「……」

勇者「……」


老人「ぱーちー?」

勇者「パーティ」


老人「……」

勇者「……」



老人「酒……」

勇者「……」

908: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:00:59.05 ID:Gn7YCFtY0
勇者「わ、わかった。俺は持ってないけど、馬車にいる人達が持ってたら譲ってもらえないか聞いてみるよ」

老人「なら入るぞ」

909: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:12:05.38 ID:Gn7YCFtY0
剣士「こほん。……そ、それじゃあ僕の番だね」

剣士「斧戦士さんを指名したいかな」

斧戦士「……俺か」

剣士「前衛職が僕一人というのも心許ないし、もう一人居てくれると心強いと思うんだ。後衛に僧侶さんも居てくれるし、斧戦士さんには僕に欠けているパワーの面を補って、一緒に戦ってもらえると嬉しい」

斧戦士「……構わない」

斧戦士「むしろ……」チラッ



勇者「……」

ピエロ「……」

老人「……」



斧戦士「喜んで入らせてもらおう」

剣士「ありがとう」

910: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:16:04.60 ID:Gn7YCFtY0
勇者「次は三人目だな。誰にしようか……」


槍使い
弓使い
モヒカン
メロンパン職人


聖剣「>>912」

912: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:16:31.20 ID:7AvvclRso
パス

918: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:23:45.09 ID:Gn7YCFtY0
聖剣「パス」

勇者「……」

919: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:26:18.77 ID:Gn7YCFtY0
勇者「……パスだ」

剣士「えっ」


剣士「ど、どういう意味かな?」

勇者「俺は今回の番はパスしようと思う」

剣士「パス……」

勇者「次も剣士が指名してくれていいぞ」

剣士「えーと……勇者君がいいと言うのなら、僕も断る理由は無いんだけれど……」


剣士「ほ、本当にいいのかい?」

勇者「男に二言はないからな」

920: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:32:48.42 ID:Gn7YCFtY0
剣士「じゃあ……弓使いさん、いいかな」

弓使い「お、おう」

剣士「前衛は僕と斧戦士さん。後衛からのサポートは僧侶さん。後衛から遠距離で攻撃ができる弓使いさんが居てくれるとバランスが取れると思うんだ」

弓使い「任せてくれ」


弓使い「……正直、こっちに呼ばれてホッとしてるよ。あっちに指名されたらどうしようかと思ってたからな」

剣士「……う、うーん」

921: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:35:06.67 ID:Gn7YCFtY0
剣士「次、勇者君の番だけど……どうする?」

勇者「……」


槍使い
モヒカン
メロンパン職人


聖剣「>>923」

923: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:37:15.74 ID:uXWqxAnHO
モヒカン

926: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:43:59.07 ID:Gn7YCFtY0
聖剣「モヒカン」



勇者「モヒカンで」

モヒカン「……ケッ。まるで俺が余り物みたいじゃねえか」

勇者「まあそう言うなよ」


勇者「前衛職が俺一人というのも心許ないし、もう一人居てくれると心強いと思うんだ。後衛に爺さんも居てくれるし、ピエロも何かしてくれるだろうから、モヒカンには俺に欠けているパワーの面を補って、一緒に戦ってもらえると嬉しい」

モヒカン「それさっき剣士の野郎が言ってたことのパクリじゃねえか」


勇者「……」

モヒカン「……」


勇者「前衛職が俺一人というのも心許ないし、もう一人居てくれると心強」

モヒカン「わ、わかった! もう何も言わねえよ!」

928: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:48:50.01 ID:Gn7YCFtY0
剣士「えーと……次は僕の番だけど……」


剣士(率直に言って、槍使いさんを指名したい)

剣士(メロンパン職人って何なんだ、いったい……指名する訳ないじゃないか)

剣士(けど……)

チラッ



老人「酒はまだか?」

勇者「もうちょっと待って」

モヒカン「大丈夫かよこの爺さん」

ピエロ「……」



剣士(ここで槍使いさんを僕のパーティに取ってしまって、勇者君のパーティは大丈夫なんだろうか)

931: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:56:30.50 ID:Gn7YCFtY0
剣士「……」

勇者「? どうしたんだ、剣士」

剣士「い、いや……」

勇者「……」

剣士「……」


剣士「ぼ、僕もパスしようかなぁ……って」

勇者「!」

932: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:57:18.71 ID:Gn7YCFtY0
勇者「なんでだ?」

剣士「ほら、勇者君、さっきパスしたじゃないか。僕も一回パスすればそれでおあいこでしょ?」

剣士「こういうのって、公平に決めてこそ意味があることだと思うんだ」

勇者「ふーん……」

934: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:58:16.11 ID:Gn7YCFtY0
勇者(よくわからないけど、剣士がそう言うならそれでいいか)

勇者(残りは……)



槍使い「……チッ」

メロンパン職人「……」



勇者(……ふむ)

聖剣「>>336」

936: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 20:59:54.89 ID:lYQKxHBpo
メロンパン職人!!!!

938: 安価ミスった。936ってことで…… 2019/03/19(火) 21:06:43.12 ID:Gn7YCFtY0
聖剣「メロンパン職人!!!!」



勇者「おーいメロンパン職人、こっち来いよ」

メロンパン職人「ゆ、勇者さぁん……」

勇者「うわ、お前なんて顔してんだよ」

メロンパン職人「だってぇ……俺、勇者さんなら最初に選んでくれると思ってたのにぃ……」

勇者「どうせ余ったんだし、いいだろ」

メロンパン職人「酷い!!」



剣士「よろしくね、槍使いさん」

槍使い「俺が最後まで余ったってのは気に食わねえが……ま、あっち行くよりはマシか」

943: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 21:17:27.50 ID:Gn7YCFtY0
剣士「……えー。と言うわけで、この組分けで護衛持ち回りをしていこうと思います」


剣士
僧侶
斧戦士
弓使い
槍使い

勇者
ピエロ
老人
モヒカン
メロンパン職人


剣士「……公平に決めた結果だからね?」

勇者「そうだな」

946: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 21:24:41.77 ID:Gn7YCFtY0
剣士「これからこの馬車団が目的地に着くまで。短い間かもしれないけれど、仲間として頑張っていこう」

オー‼︎



剣士「早速だけど、勇者君。今晩の順番はどうしようか。僕らは前でも後でも、どちらでも良いよ」

勇者「そうだなぁ。正直、俺もどっちでも……」


老人「勇者」

勇者「ん?」

947: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 21:25:52.40 ID:Gn7YCFtY0
勇者「何だよ爺さん、今ちょっと忙しいから後で……」

老人「酒はまだか?」

勇者「……だから酒は後でって」

老人「話が違うんじゃが」

勇者「や、だからこの話が終わったらね」

老人「……ぱーちー」

勇者「……うん」

老人「約束を破るのか?」

勇者「……」

948: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/03/19(火) 21:29:09.15 ID:Gn7YCFtY0
勇者「ごめん剣士。先、お願いしてもいいか?」

剣士「う、うん。……頑張ってね」

勇者「……」



老人「酒……」

勇者「わかったから! 今取りに行くから!」