1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 20:56:58.13 ID:f+Ff0htI0

 日が沈みかけた中学校の屋上。

 僕は幽霊と出会った。

少年「幽霊?」

 長い髪をたなびかせて、夕陽を背に彼女は笑った。

少女「そうね、幽霊」

 僕と同じくらいの年に見えるけど、その笑顔はどこか大人びていた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1397217417

引用元: 少年「君は誰?」少女「私は幽霊」 



幽霊の歴史文化学 (二松学舎大学学術叢書)

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3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 20:57:42.81 ID:f+Ff0htI0

少女「あなたはいいの?」

少年「なにが?」

 少女が校庭を指差す。サッカーをしている同級生が見えた。

少年「僕は、友達いないから」

少女「そう。寂しいの?」

 少女の言葉が深く突き刺さる。

4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 20:58:29.17 ID:f+Ff0htI0

少年「別に」

 僕は強がった。

少年「君ほどじゃないよ」

少女「……寂しさは人と繋がったことが無ければ分からないわ」

少年「でも、君は幽霊だろう? 足もないし」

少女「……」

5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 20:59:10.12 ID:f+Ff0htI0

少年「君はどうして屋上にいるの?」

少女「きっとあなたと同じ理由よ」

少年「ふーん、君は弱虫なんだね」

少女「あなたもね」

少女「……あなたはまだ戻れると思うけど」

少年「無理だよ。自分じゃどうしようもないことってあるんだ」

少女「出来ないと思い込んでるからね」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 20:59:52.34 ID:f+Ff0htI0

少年「君はどうして幽霊になったの?」

少女「そうね。怖かったからかもしれない」

少年「なにが?」

少女「人が」

少年「そっか」

7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:00:43.34 ID:f+Ff0htI0

少年「そろそろ帰るよ」

少女「じゃあね」

少年「君はどうやって帰るの?」

少女「分からない」

少年「一緒に帰る?」

少女「途中までなら」

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:04:05.65 ID:Eq7arIy+0

翌日

少年「あ、またいたんだ」

少女「また来たの?」

少年「屋上、好きなの?」

少女「嫌いよ。私はここで幽霊になったから」

少年「じゃ、また一緒に帰る?」

少女「一緒に帰ってもまたここに連れ戻されるわ」

少年「でも、一緒に帰ろう」

少女「……うん」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:06:39.89 ID:PtNsiaZg0

翌日

少女「また来たの」

少年「うん。他に話す人いないからね」

少女「だから幽霊と話すの」

少年「正直、誰でもいいんだ」

少女「本人に言うことではないわ」

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:07:56.43 ID:PtNsiaZg0

少女「授業はいいの?」

少年「うん、机無かったから」

少女「いじめられてるの?」

少年「そうだね」

少女「まあ、誰にも見向きもされないよりはマシかもね」

11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:17:27.65 ID:IjtPRsFO0

少女「やり返さないの?」

少年「やり返しても無駄だから」

少女「勇気がないのね」

少年「君にはあるの?」

少女「無いから幽霊になったの」

12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:19:09.20 ID:IjtPRsFO0

少年「どうして幽霊になったの?」

少女「また? 人が怖かったの」

少年「それだけ?」

少女「……私も元々いじめられてたの」

少年「やり返さなかったの?」

少女「勇気が無いからね」

13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:26:28.89 ID:Jskuafci0

翌日

少年「やあ」

少女「またサボり?」

少年「君に言われたくないけど」

少女「私は幽霊だから」

少年「ずるいなあ」

14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:32:58.54 ID:fX7g+JQJ0

少女「羨ましいなら代わってもいいわ」

少年「やだよ」

少女「いじめもなくなるわよ」

少年「代わりに君がいじめられるつもり?」

少女「別にいいけど」

少年「僕が良くない」

15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:42:58.53 ID:PfI7tkkV0

翌日

少年「やあ」

少女「そんなびしょ濡れでどうしたの?」

少年「池にカバンを放り込まれてね」

少女「ひどい」

少年「本当だよね」

少女「ハンカチ使う?」

少年「いや、いい」

少女「そっか」

16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:43:33.50 ID:PfI7tkkV0

少年「君はどんないじめをされてたの?」

少女「身体的な特徴を馬鹿にされたり、物を隠されたりね」

少年「そっか」

少女「今はもう何もされないけど」

少年「幽霊だからね」

17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:44:08.69 ID:PfI7tkkV0

少年「明日は学校休みだけど何してるの?」

少女「べつに。何もしない」

少年「ここにいるの?」

少女「さすがにいないわ」

少年「そうなんだ」

18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:51:47.71 ID:Eq7arIy+0

週明け

少年「やっぱりここにいたんだ」

少女「来たくて来てるわけじゃないけどね」

少年「君はどうして学校にいるの?」

少女「そうね。……ここが地獄だからじゃない?」

少年「地獄だから?」

少女「何もないより地獄の方がいいから」

少年「よく分からないよ」

19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:52:26.44 ID:Eq7arIy+0

少女「あなたは死にたいと思わないの?」

少年「死ぬのは怖いから」

少女「きっと一瞬よ。私がちょっと背中を押すだけで死ぬの」

少年「君には無理だよ」

少女「そうね」

21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 21:58:18.47 ID:rDHXYstm0

少年「君は幽霊だけど死にたいと思うの?」

少女「幽霊だからね。消えてしまいたいと思うこともあるわ」

少年「消えちゃうの?」

少女「幽霊だっていじめられっ子だって死ねば消えるわ」

少年「いじめっ子も?」

少女「そうね」

22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 22:06:08.37 ID:OhyhJVgs0

翌日

少年「今日は可愛らしいね」

少女「もう、お気に入りの服を汚される心配が無いからね」

少年「そっか。いじめられっ子よりもいいかもね」

少女「どうかな」

少年「泥をぶつけられたり、カレーを頭からかけられたりしないからね」

少女「そうね」

23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 22:06:48.22 ID:OhyhJVgs0

翌日

少年「今日は可愛らしいね」

少女「もう、お気に入りの服を汚される心配が無いからね」

少年「そっか。いじめられっ子よりもいいかもね」

少女「どうかな」

少年「泥をぶつけられたり、カレーを頭からかけられたりしないからね」

少女「そうね」

24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 22:07:58.82 ID:OhyhJVgs0
ミスです

少年「ねえ、どうやったら幸せになれるのかな」

少女「そんなこと考えてるうちはなれないわ」

少年「考えなきゃいいの?」

少女「違うわ。大事なのは一歩踏み出す勇気よ」

少年「自分には無いのに?」

少女「無いからよ」

26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 22:20:53.99 ID:Jskuafci0

翌日

少女「遅かったね」

少年「服を隠されてね。探してたんだ」

少女「そっか」

少年「君は僕がいない時はどうしてたの?」

少女「1人でずっとここにいた」

少年「1人で?」

少女「幽霊だから」

少年「そっか」

27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 22:24:18.52 ID:fX7g+JQJ0

少女「いじめのこと、お父さんお母さんに言わないの?」

少年「言えないね」

少女「なんで?」

少年「悔しくて、怖いから」

少女「意気地なしね」

少年「お互いね」

28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 22:32:15.49 ID:OhyhJVgs0

少年「君の家はどっちにあるの?」

少女「あっちの方」

少年「僕の家と反対方向だ」

少女「何もない家だけどね。会話一つないし。私が帰らなくても何も変わらない」

少年「最低だね」

少女「ね」

29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 22:38:27.34 ID:Ga7gV17/0

翌日

少年「やあ」

少女「どうしたの、その顔」

少年「ちょっと殴られただけ」

少女「大丈夫?」

少年「いたっ、触らないで」

少女「手も擦りむいてる。後でちゃんと消毒しなさい」

少年「……うん」

30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 22:45:48.88 ID:9tvU6gQ40

少女「あなたはどうして屋上に来るの?」

少年「だって君と話せるのはいじめられっ子の僕だけだから」

少女「そうね、ありがとう」

少年「それに僕とちゃんと話してくれるのも君だけだから」

少女「そうね」

31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 23:02:42.52 ID:KVOMeuSn0

少女「私はあなたがいなければここから出ることもできないわ」

少年「……」

少女「でも、もし、迷惑をかけているなら。もうあなたの前には現れない」

少年「迷惑じゃないよ」

少女「そう言ってくれると思った」

少年「それにしてはホッとした顔だったけど」

32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 23:03:51.77 ID:KVOMeuSn0

翌日

少女「辛そうな顔をしてる」

少年「君は、死ぬのは怖い?」

少女「ううん、どうせ幽霊だから。生きててもいいことなんてないし」

少年「僕もないよ。でも、怖いんだ。死ぬのも、生きるのも」

少女「なら、2人でいっちゃう?」

33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 23:08:14.51 ID:JwByW5MU0

少年「いいの?」

少女「うん」

少年「でも」

少女「いいの」

少年「そっか」

34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/11(金) 23:15:31.73 ID:KAtLrk4t0

翌日

 新聞にはこう記されていた。

『○○中学校で生徒2人が飛び降り自殺! 少年の遺書によると、少年は日常的に暴行などのいじめを受けていた。また、もう1人の少女も不自由な体でありながら屋上に放置されるなどのいじめを受けていた模様。これについて○○中学校長は……』
 

37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/04/12(土) 05:05:23.96 ID:PsZexpky0

ifルート書くか悩みましたが、当初書こうと思ってたのがバッドエンドなのでこれで終わります。

幽霊とは子供達が考えた無視の対象の事を指しています。少女が屋上に連れて行かれてから無視が始まります。

車椅子の少女は自力では屋上から出ることは出来ませんでした。