1: ◆C2VTzcV58A 2019/07/23(火) 00:38:12.29 ID:KAncrXbZO
ある日の事務所


飛鳥「………」ペラ

心「………」

飛鳥「………」ペラ

心「はぁ………」

飛鳥「………」

心「はぁ~~~~」

飛鳥「………」ペラ

心「はぁ~~~~~~~~ぁぁぁぁ!!!!」

飛鳥「ガノンドロフの真似なら他所でやってくれないか」

心「あ、やっと反応してくれた!」

飛鳥「話がしたいなら普通に声をかけてくれ。ボクは文香さんと違って、読書中に周囲の音が聞こえなくなることはないんだから」

心「えー? だってはぁとから話しかけたらかまってほしいみたいじゃん」

飛鳥「何一つ偽りない事実だろう。寂しがり屋め」

心「はぁとウサギは寂しいと死んじゃうの……助けて?」

飛鳥「はぁ」

心「ドキッとした? キュンってした?」

飛鳥「そういうことはPにでも聞いてくれ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1563809892

引用元: 佐藤心「プロデューサーとの距離を縮めたい!」 



2: ◆C2VTzcV58A 2019/07/23(火) 00:39:30.91 ID:KAncrXbZO
心「あ、そう! そのプロデューサーのことを話したかったの」

飛鳥「Pのこと?」

心「プロデューサーって、はぁとのこと、女としてどう思ってるんだろうって……」

飛鳥「直接聞けばいいじゃないか」

心「そんな簡単な話じゃないの! ぶーぶー☆」

飛鳥「まあ、そうだろうと思ったよ」

心「乙女心はフクザツで、直接聞いた言葉だけじゃ全部を信じられないの。面と向かって、『はぁと、愛してる』って言われても、それを素直に信じ切っていいのかな、なんて」

飛鳥「信じるも何も言われたことないだろう」

心「なんで知ってるの?」

飛鳥「逆に何故見栄を張ったんだ」

心「マジな話すると、プロデューサーにそれとなくそういうこと聞いても、受け流されるか『プロデューサー的模範解答』しか返ってこないの……」

飛鳥「そうだろうね。彼なら、恋愛方面ではっきりとしたことは言わないだろう」

心「わかってるんだけどねー。うん」

飛鳥「しかし、はっきり拒絶されるよりはマシなんじゃないか? 『心さん、手のかかる妹としてしか捉えられないんですよね……』とか言われるよりは」

心「うわ言いそう! あいつめっちゃ言いそう! ていうか飛鳥ちゃんPの声真似うまくね?」

飛鳥「『俺と一緒に、トップアイドルを目指してみませんか』」

心「似てる似てる♪」

飛鳥「褒められると悪い気はしないな」

心「んー……ね、ねぇ飛鳥ちゃん。一回だけでいいから、プロデューサーっぽく『はぁと、愛してる』って言ってみてくれない?」

飛鳥「『はぁと、愛してる』」

心「……お、お~~~~~」



心「なんかコレジャナイ感」

飛鳥「急に梯子を外すのはやめてくれないか」

心「さっきまでは似てると思ってたんだけどな~~」

飛鳥「愛情に嘘は通用しない、といったところか……おや?」




梨沙「し、知らなかったわ……飛鳥とハートさんがそんな関係だったなんて……!」ガーン


飛鳥「フッ、どうやら面倒な場面を見られてしまったようだ」

心「飛鳥ちゃん飛鳥ちゃん、多分その言い方誤解を加速させるからやめとき?」

3: ◆C2VTzcV58A 2019/07/23(火) 00:43:04.37 ID:KAncrXbZO
心「まあぶっちゃけると、プロデューサーとの距離を縮めたい! ってことね♪」

梨沙「なるほどねー」←誤解が解けた

飛鳥「今以上に距離が縮まれば、彼の気持ちというのも自然と見えてくるだろうしね。向こうがはっきり言葉にしない以上、こちらが察することができるように近づいてくのが得策というわけか」

心「さっすが飛鳥ちゃん! 恋の伝道師☆」

梨沙「伝道師なの?」

飛鳥「一度として恋を伝えた覚えはないとだけ言っておこう」

心「というわけで、みんなの知恵を借りたいぞ☆ なんかないかな?」

飛鳥「と、言われても……お弁当でも作ってくる、とか?」

梨沙「王道ね。料理のできる女アピールをしながらエヅケしていく作戦よ!」

飛鳥「キミ、餌付けの意味を知って言っているのかい」

心「お弁当作りはもうやったことあるんだよねー」

梨沙「あ、そうなんだ。どうだった?」

心「おばあちゃんの味がするって言われた」

飛鳥「喜んでいいのかどうか微妙なラインだな……」

梨沙「そんなことないわ! 実家の味に近いってことは相性バッチリじゃない♪」

心「し、師匠……!」

飛鳥「梨沙の前向きなところは、時折誰かに力を与えてくれるね」

心「師匠、なにかいい案はありますでしょうか!」

梨沙「………あるわ!」

心「!」

飛鳥「へぇ」

梨沙「この雨が多い季節だからこそできる作戦がひとつ! それは……」

心「それは?」

飛鳥「それは?」

梨沙「それは――」


4: ◆C2VTzcV58A 2019/07/23(火) 00:43:55.08 ID:KAncrXbZO
その日の夕方



P「さて、そろそろ帰るか」

心「あ、プロデューサー? もう帰るの?」

P「はい。これ以上雨が強くなってもいけないので、早めに帰ろうかなと。心さんはまだ帰らないんですか?」

心「あー……帰ろうと思ってるんだけどさ。持ってきた傘、傘忘れた子に貸しちゃって……折り畳みあるからいいやって思ってたら、今日の鞄には折り畳み入れてなかったんだよねぇ」

P「つまり、今は傘を持ってないってことですか」

心「そゆこと」

P「そうですか。困ったな、俺も傘は一本しか持ってきてなくて」

心「えっと……もしよかったらなんだけどさ。傘、入れてくれない?」

P「え、それって……」







梨沙「相合傘をすれば、お互いに仲良くなれるに違いないわ!」

飛鳥「いい考えだね。梅雨の時期ならではの作戦で、即効性も見込める」

梨沙「でしょ? アタシってやっぱり恋愛の才能があるんじゃないかしら♪」

飛鳥「かもしれないな……ただ」

梨沙「ただ?」


5: ◆C2VTzcV58A 2019/07/23(火) 00:45:18.00 ID:KAncrXbZO
P「心さん、肩濡れてないですか」

心「大丈夫大丈夫☆ ていうか、プロデューサーこそ肩濡れてない? もっと真ん中寄らないとダメだぞ~」

P「いや、俺は大丈夫ですから」

心「水臭いこと言わずに、ほら♪ はぁととくっついて、すべすべお肌に触れてみな~?」








飛鳥「わざわざ尾行してふたりの様子をうかがう必要はあるのか?」

梨沙「だって気になるじゃない。それに、探偵みたいで楽しいし!」

飛鳥「探偵、か」

梨沙「そーいう飛鳥は、なんでついてきてるのよ。アタシ、別にひとりでも平気だけど」

飛鳥「知的好奇心さ」

梨沙「言い方変えただけでアタシと同じじゃない」

飛鳥「さぁ、どうだろうね」

梨沙「あんぱん食べる? 牛乳もあるわよ」

飛鳥「今はコーヒーの気分だ」

梨沙「コーヒー牛乳もあるけど」

飛鳥「いいチョイスだ。いただこう」

6: ◆C2VTzcV58A 2019/07/23(火) 00:46:19.86 ID:KAncrXbZO
心「ほらほら、いい加減観念しろ~? くっついちゃえよ、プロデューサー☆」

P「いえ、だから俺は……って、危ない!」

心「えっ」


バシャーンッ!


P「うわ、結構濡れちゃったな……」

心「トラックが水たまりを跳ねて……水からかばってくれたの?」

P「ええ、まあ。心さん、濡れてないですか?」

心「うん、おかげさまで。ありがとな♪」

P「どういたしまして」

心「……それと、どさくさ紛れにやっとはぁとに密着してくれたな☆」

P「え……あ、いや。これは」

心「あれれ~? プロデューサー、赤くなってるぞ~~? ひょっとして、はぁとにくっついて照れちゃってる~?」

P「う」

心「このこの~、可愛いやつめ♪」

P「ぐ………そ、そういう心さんだって顔真っ赤じゃないですか」

心「なっ!? お、お前それ言うか普通! デリカシーってもんがあるでしょ!」

P「知りませんよ! 先にからかってきたのはそっちじゃないですか!」

心「なにおう――」







飛鳥「………」

梨沙「なんかよくわかんないけど、仲良さそうね」

飛鳥「あぁ。ボクは、もう引き上げるとするよ」

梨沙「え、もういいの? ここからがいいところじゃない?」

飛鳥「もう十分さ。依頼は完了した」

梨沙「依頼って……まあいいわ。アタシはもっと見ていくから」

飛鳥「そうか。ボクはこれから、いきつけのカフェに行って報告書を仕上げるとしよう」

梨沙「報告書?」

飛鳥「探偵には、事件を記録する報告書がつきものだろう?」

梨沙「え、なんか楽しそう」

7: ◆C2VTzcV58A 2019/07/23(火) 00:47:43.97 ID:KAncrXbZO
飛鳥「季節限定のケーキをいただきながら、ゆっくり向き合うことになるだろうね」

梨沙「ケーキ……」

飛鳥「……どうする?」

梨沙「アタシも行く!」

飛鳥「フフッ、色気より食い気だな」

梨沙「両方あるのよ! 食べないとおっきくなれないし!」

飛鳥「そうか。それは失敬したね」

梨沙「ほら、そうと決まったら早く行くわよ!」

飛鳥「あぁ」


飛鳥「………」チラ






心「……おい、黙ってないでなんかしゃべれよ☆ 気まずいじゃんか」

P「心さんこそ、そういうの得意でしょう」

心「なーにー? それははぁとがいつもやかましいってことかー?」

P「そうは言ってないですよ」

8: ◆C2VTzcV58A 2019/07/23(火) 00:48:30.87 ID:KAncrXbZO
飛鳥(ひとつ、なんとなく理解ったことがある)

飛鳥(悩んでいたのは事実だろうけど。きっと心さんは、『今は』Pとの関係を本気で前に進めるつもりはないのだろう)

飛鳥(だからこそ、子どもであるボクらに相談を持ち掛けた。もっと適任な大人の女性達が、うちの事務所にはいたというのに)

飛鳥(まあ、それが明確な意図をもってのものかは理解らないけれど。おそらく、無意識なんじゃないだろうか)

飛鳥(それと……なんにせよ、こういった相談を打ち明けられる時点で、ボクらは信頼されているということもまた事実だ)



飛鳥(彼女が悩んでいたのも真実。ボクらを頼ったのも真実。Pと一線を越えられないのも真実)

飛鳥(それは、彼女がアイドルとしての自身に課した枷。しゅがーはぁとという名の、呪いの仮面だ)

飛鳥(だから、これ以上の尾行は無駄だと悟ったんだ)

飛鳥(……ただ、まあ)



9: ◆C2VTzcV58A 2019/07/23(火) 00:49:19.74 ID:KAncrXbZO
心「………」

P「……心さん、もっと寄ってください」

心「うん……」

 




梨沙「あのふたり、いつの間にかくっついてるわね。歩幅もぴったり」

飛鳥「だから言っただろう。『プロデューサーとの距離を縮めたい』という依頼は果たしたと」

梨沙「そういう物理的な距離の話なのかしら」

飛鳥「さぁね。ただ、もし心の距離が縮まらないなら……せめてそのくらいの意趣返しはしてやらないと、こっちの気が済まないだろう」

梨沙「なんかまた難しいこと言ってるわね……まあいいわ。詳しくはカフェで話しましょ!」

飛鳥「あぁ」

梨沙「それにしても、あのふたり……いつ雨がやんでることに気づくのかしら?」

飛鳥「顔の火照りが落ち着くころには、気づくといいね」




おしまい