前回 千早「『弓と矢』、再び」 

4 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/18(土) 22:17:11 S.BkRviM
春香「おはようございまーす!」

電話『とぅるるるるる、とぅるるるるる!』

大海「音無さんっ! 電話が鳴り止みません!」

小鳥「一つずつ処理しましょう! はい、こちら765プロです!」

大海「もしもし、765プロです…ひゃっ! ご、ごめんなさい! 事務所の決定でして、こちらからは何も…」

春香(私が事務所に来ると、小鳥さんと大海さんが電話の応対に追われていた)

大海「あ、春香ちゃん! 助けてください~」

春香「えっと…」

大海「電話に出てくれるだけでいいですから!」

春香「…お仕事、頑張ってくださいね!」タタッ

大海「そんなぁ!」 


アイドルマスター 如月千早 1/8スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア
ファット・カンパニー(Phat Company) (2018-04-21)
売り上げランキング: 101,138
5 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/18(土) 22:55:00 S.BkRviM
P「やっぱり、警察に届け出るのが一番手っ取り早い気がするが」

律子「相手の規模がわかりませんし、相手は『スタンド使い』…それに、警察が絡むと後々面倒なことになると思いますよ」

P「だよなぁ…うーん、どうしようか」

律子「私の『ロット・ア・ロット』でも探してみますが…虱潰し、となると時間はかかるでしょうね…」

P「待てよ…? 犯人は別の事務所にも来てるんだよな? だったら…」

春香(他の部屋では、プロデューサーさんと律子さんが例の車について話し合いをしている)

春香(私達の持つ手がかりは、美希が撮った車の写真と、電話番号。それと…)

春香(情報を聞き出そうにも、『偽物』達は砂になって消えてしまう。だから私達はこれだけでどうにか犯人を見つけなければならない)

春香(これらの手がかりは大人であるプロデューサーさんや律子さんの方が有効に使えるだろう…だから、私が個人的にできることはほとんどなくなってしまった) 


7 :   :2014/10/18(土) 23:23:01 S.BkRviM
春香(昨日…765プロに攻めて来た『偽物』達を倒し、プロデューサーさん達に全てを話した後)

春香(あの後、私は家に帰った。もう大海さんのところにお世話になる必要もないからね)

春香(私の『偽物』…あの子は私を完璧に演じていたようで、家族は何事もなかったかのように私を迎え入れてくれた)

春香(説明する手間が省けたとは言え、『自分の知らない自分が生活していた』という事実に、私は薄ら寒いものを感じていた…)

亜美「あ、はるるんおはよー」

春香「おはよ、亜美」

春香(律子さん…それと亜美は、昨日は仕事で外出中だった)

春香(もしかしたら、仕事場にも『偽物』達が来たかもしれない…と考えたけど、そんなことはなかったみたい)

亜美「ねー、ほんとにみんな…連れて行かれちゃったの?」

春香「…うん」

春香(でも、他のみんな…伊織、やよい、真、雪歩、真美、あずささん、貴音さん…765プロのアイドルの半分以上が行方不明となってしまった) 


8 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/18(土) 23:38:24 S.BkRviM
春香「千早ちゃんは…」キョロキョロ

千早「いるわ」

春香「あ、おはよ千早ちゃん。ケガは大丈夫だった?」

千早「ええ、骨までは達していなかったし…切り口が綺麗すぎると、思ったよりは重傷ではなかったみたい」スッ

春香(千早ちゃんの右腕には、包帯が固く巻かれていた)

千早「力を入れると傷口が開くから、右腕は使えないけれど」

亜美「あんまムリしない方がいいと思うよ」

響「やよいがいればよかったのにね、『ゲンキトリッパー』で傷を埋めて貰えばすぐにでも動かせるぞ」

春香「とりあえず、よかった…のかな」

美希「ねぇ、みんな。今日はなんで集まったの?」

春香「なんでって…」

美希「言われたから来たケド…こうして事務所に来る必要、ないって思うな」 


9 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/18(土) 23:51:08 S.BkRviM
春香(765プロは…活動を停止した)

春香(アイドルの半分が行方不明になってしまったことと…残った私達の安全を確保するために…決まったことだ)

亜美「うん、亜美も思った。仕事がないなら、集まらなくてもいいんじゃん?」

美希「昨日みたいに、『偽物』達が攻めて来るカモ…いや、ゼッタイ来ると思うの」

春香(美希の言うことはもっともだと思う。失敗したとわかって、大人しく引き下がるとはとても思えない)

春香(また、この765プロを襲ってくるはず。万全な状態で…)

春香「でも、私は…こうして集まってた方がいいと思う」

亜美「なんで?」

春香「バラバラになってたら、それこそ危ないよ。誰がいつ襲われるか、襲われたのかもわからない」

春香(私が『偽物』と『入れ替わっ』たのは、ライブの後、一人でいる時だった) 


10 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/19(日) 00:05:01 f2u3litc
千早「私もそう思うわ。一人でいる所を襲われた方が危険でしょう」

響「それに、律子の『ロット・ア・ロット』もあるからね。事務所にいた方が、何かあった時にわかると思うぞ」

美希「うーん、言われてみればそうカモ」

亜美「そんじゃ、亜美達にできることは…兄ちゃんやりっちゃん達が車の持ち主を見つけるのを待つだけか」

シーン…

春香「ところで亜美、『スタートスター』は使えないの?」

亜美「使えるなら、とっくに使ってんだけどね」

響「真美達…連れ去られたみんなは、少なくともこの町にはいない…ってことか」

春香(みんな…今、どこにいるんだろ…?)

………

……

… 


11 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/19(日) 00:21:08 f2u3litc
やよい『う…!』ドサッ

真美『やよいっち!』

真『逃げるんだ、真美! こいつはヤバい…!』ギギギ

ハルカ『逃がすと…思う? 無駄だよ、無駄』

ハルカ『「アイ・リスタート」』ドォン


……

………

真美「まこちん! やよいっち!」ガバッ

真美「…あれ? 夢…?」

真美「じゃない。どこだろ、ここ…」キョロキョロ

真美(ホテル? の、部屋の中かな?)

真美「そうだ。765プロに、たくさんのアイドル達が来て…車に乗せられて…」

真美「真美達は、ユーカイされたんだ!」 


12 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/19(日) 00:34:00 f2u3litc
真美「そんで、ここに閉じ込められて…うぅ、ゲームでよく見る展開!」

真美「もしかして…こっから脱出しなきゃいけないとか…それか、殺し合いなんかさせられちゃったりとかしちゃったりする感じ!?」バッ

自分の体中をまさぐる。

真美「うーん。バクハツする首輪とかついてるかも? って思ったけど、そういうのはないみたいだね」

真美「部屋の中に、何かないかな」キョロキョロ

・ ・ ・

真美「…改めて見ると」

真美「なんか、すっごく…セレブっぽい部屋じゃない? ベッドもフカフカだったし…」

真美「まず、目立つのはこのでっかいテレビ! これでゲームしたら大バクハツじゃない!?」

真美「このソファ! 『ダメ人間にする』とか言ってネットで見たことあるやつじゃん!」ボフッ

真美「わっ、冷蔵庫に飲み物がギッシリ!」ガチャ 


13 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/19(日) 00:46:26 f2u3litc
真美「他には、なんかないかなー」ゴソゴソ

真美「…これは」

真美「ゲーム機だ! うわっ、このでっかいテレビでゲームできちゃうの!?」

真美「携帯ゲームもある! しかもこれ、今度パパに頼もうと思ってた新型だ!」

真美「うーん、誰のものかわからないけど、ちょっとくらいなら…」スッ

ピタ…

真美「や…真美はユーカイされたんだ。まず、ここがなんなのか調べないと」

真美「カーテン開けて、外は…」シャッ

真美「うーん、森しか見えない…ここ、森の中なのかな…?」

真美「結構、高いなぁ…こっからは降りられなさそうだね」 


14 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/19(日) 00:51:59 f2u3litc
真美「こっちの部屋は…」ガチャ

真美「お風呂とトイレか。ほんと、ホテルみたい」

真美「お風呂でっかいな~。泡とかブシューって出るんじゃない? これ」

真美「っと、ダメダメ。調べないと」

真美「このドアは…出口? 開くのかな」

ガチャ

真美「ありゃ、あっさり開いちゃった」

キョロキョロ

真美(外は…ふつーに、ホテルの廊下って感じ。ドアが並んでる)

真美(他の部屋には、誰かいるのかな? みんなは…)

バタン!!

真美「あっ!? しまった!」 


15 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/19(日) 00:57:06 f2u3litc
真美「うあうあー! どーしよ、カギ持ってないから入れないよー!」グッ

取っ手を掴むが、ビクともしない。

真美「うぅ、ちかたない。ゲームとかいっぱいあったけど、真美の目的はダッシュツであって…」

真美「…? あれ、これって…」

部屋のドアノブの上に、黒いパネルが設置してある。

真美「………」ペタ

パネルに、人差し指をくっつけた。

カチャ

真美「………」グッ

ギィ…

指紋認証が作動してロックが解除され、ドアノブを引くと、扉が開いた。

真美「真美の指で、開いた…」

真美「真美の部屋なんだ、ここ…」 


16 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/19(日) 01:28:11 f2u3litc
真美(こんな部屋貰っちゃっていいの? ラッキー!)

真美(…って思わないって言うと、嘘になるけど…)

真美(それ以上に…気持ち悪い…!)

真美(真美のためにこんな、めっちゃお金かかってそうな部屋を用意するなんて…なんで!? 何のために!?)

真美「!」ハッ

真美(そっか…真美達をユーカイしたのは、あの『偽物』達だ)

真美(今までの『真美』はあの『偽物』がやるから、本物の真美達はここで暮らせって…そういうことなんだ!)

真美「でも、なんかそれって悪の組織! って感じじゃないね」

真美「ろーやとかに捕まえたりゴーモンとかしてるんじゃないかって思ったのに」

真美「とりあえずいおりんも…みんなも、無事なのかな?」

真美「亜美は…『スタートスター』が使えないってことは、近くにはいないみたいだけど」 


17 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/10/19(日) 02:07:10 f2u3litc
コンコン

………

真美「返事がないなぁ。誰か、中にいないのかな」

クゥー…

真美「お腹空いた…」

真美「みんな、食べ物探しに行ったのかも。どっかにあるかな…」チラ…

ゴゴゴゴゴゴ

真美(真美の部屋…これが真美一人のものっていうのは、ちょこっと王様気分だけど)ガチャ

指紋認証で鍵を解除し、部屋に入る。

真美(ここには誰もいない。一人じゃなにも面白くなんてないよ)ゴソゴソ グイ

テレビの下の棚を漁り、新型ゲーム機をポケットに突っ込む。

真美「よし、行こ」タタッ 



24 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/22(土) 23:18:59 aXb81BMI
ピンポン♪

グーン…

エレベーターのドアが開く。

真美「よっと!」スタッ

真美「ここが一階かぁ。誰かいるかな?」キョロキョロ

真美「ん! あっちからいい匂い!」

ザワザワ

真美「人の声も聴こえるし…行ってみよう!」タッ 


25 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/22(土) 23:28:32 aXb81BMI
ザワザワ

真美(ここは…食堂、かな? テーブルとかイスがいっぱい並んでる)

「うまうま」モグモグ

真美(ご飯食べてる女の子がいっぱいいる。雑誌とかテレビで見たことある人も)

真美(真美と同じで、ここに連れて来られたアイドルかな?)

真美(誰かに話聞いてみよ、765プロのみんなを見なかったかどうかも…)

グゥ~

真美(うぅ、その前にご飯にしよ…)

真美「ねーねーそこのおねーちゃん。ご飯ってどうすればもらえんの?」

「へっ? えっと、あっちのカウンターで直接頼めば作ってもらえるけど」

真美「そっかー、ありがと!」タタタ 


26 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/22(土) 23:39:16 aXb81BMI
「いらっしゃいませ」スッ

カウンターの奥で、能面のような表情の女性が軽くお辞儀をする。

真美(このお姉ちゃん…)

(ここの職員ってことは、この人も765プロに攻めて来たあいつらの仲間なのかな…?)

「何にいたしましょうか」

真美(ま、いっか。真美に攻撃とかはしてこないっしょ。するなら、そもそもこんなところには連れて来ないハズだし) 


27 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/22(土) 23:40:06 aXb81BMI
真美「何があんの?」

「希望があれば何でも作りますよ」

真美「んーと…じゃあ、オムライス!」

「かしこまりました」

しばらく待っていると、カウンターの奥から、オムレツの乗ったチキンライスが差し出される。

「」スッ

奥の人が、ナイフでオムレツに切れ目を入れる。

ドロォ

チキンライスの上でオムレツがパカっと開き、半熟の中身がドロドロと溢れ出す。

「どうぞ」

真美「おお、うまそー!」 


28 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/22(土) 23:49:31 aXb81BMI
ガタン

バッ

席に着くと、テーブルの上に置いてあるケチャップを手に取る。

真美「オムライスにケチャップたっぷりかけて~」ギューッ

パクッ

真美「うむうむ、ほのかなバターの香りがなんとも言えなくて…ライスとの組み合わせ…相性が…なんとも言えない、うまい!」

シーン…

真美「………」

真美「あのさ、ここの料理美味しいね!」バッ

「え…は、はぁ…」

真美(む~…なんか、美味しいのにあんまり楽しくない…)

「………」モグモグ

「…………」ズーン…

真美(よく見てみると…周りのみんな、あんまり楽しそうじゃないなぁ)

真美(いきなし知らない所に連れて来られて、怖がってんのかな) 


29 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 00:04:20 hoZqGgjo
??「真美」

真美「?」クルッ

横から声をかけられ、振り向く。

貴音「真美も、ここにいたのですね」

真美「あっ…お姫ちーん!」ガバッ

席を立ち、飛びつく。

貴音「おっと」ガシ

真美「ああ、よかったぁ…みんなともう会えないんじゃないかって思ったよ…」

貴音「私も…真美に会えてよかったです」スッ

テーブルの上からナプキンを拾い、真美の口を拭いた。

真美「会えてよかったって、他のみんなは?」

貴音「いえ。先程から捜索していたのですが、見つけられたのは真美だけです」

真美「あ、そうなんだ…」

貴音「ふふ、真美は賑やかなのですぐわかりましたよ」 


30 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 00:22:14 hoZqGgjo
貴音「真美は今まで、どこにいたのですか?」

真美「んっとね、自分の部屋にいたよ。さっき起きたばっかり」

貴音「なるほど」

真美「お姫ちんは、どれくらい前から起きてたの?」

貴音「2時間ほど前でしょうか。皆を捜し大浴場、娯楽場と回り、この食堂に落ち着きました」

真美(娯楽場? ゲーセンかな?)

貴音「皆は、どこへいるのでしょう…」

真美「もしかしたら、真美みたいにまだ起きてない人もいるのかも」

貴音「そうならいいのですが」

真美「しばらくここで待ってようよ。オムライスもまだ途中だし」

貴音「そう言えば、ここにいてわかったことがひとつ…」

真美「え、わかったこと?」

貴音「ここの料理人は腕利きのようです」

真美「たはっ」ガクッ 


31 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 00:25:20 hoZqGgjo
「あ、あの!」

真美「ん?」

「765プロの双海真美ちゃんに四条貴音さんですよね…?」

真美「あ、うん! そだよ」

貴音「私達になにか?」

「こ、これって、なにかの番組の企画でしょうか!?」

真美「へ? 番組の企画?」

「私、怪しい人達に攫われて、気がついたらここにいて…でも、誘拐だとしたらこんな待遇おかしいじゃないですか!」

真美「えっと…」

貴音「申し訳ございません、私達もなにも聞かされていないのです」

「う…そ、そうなんですか」

貴音「ですが、何か危害を加えるような意思は感じられません」

真美「だから、安心していいと思うよ」

「…ありがとうございます」 


32 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 00:33:42 hoZqGgjo
真美「今の子も『スタンド使い』なのかな?」

貴音「だと思います。しかし…」

真美「?」

『きゃああああああっ!!』

ザワッ

真美「今の…悲鳴!?」

貴音「向こうの…玄関の方向ですね」

ゾロゾロ

真美「うわ、みんな野次馬根性あるなぁ」

貴音「我々も行きましょう」 


33 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 00:48:25 hoZqGgjo
ザワザワ

「………」グッ

「うーっ、うーっ…」

玄関に着くと、女の人が職員らしき人物に押さえつけていた。

真美「助けないと…!」

貴音「待ってください、真美」

真美「お姫ちん?」

「ちょっと、何やってんの!?」

「こ、怖い…」

ザワザワザワザワ

周りの野次馬達が騒ぎ立てる。

職員「いいか!」

シーン…

一瞬で静まり返った。 


34 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 01:02:07 hoZqGgjo
職員「この女は、脱走を企てた!」

真美(あの人知ってる、Sランクアイドルグループ、魔王エンジェルのとう…なんとかさんだ)

貴音(東豪寺麗華…? 彼女のような大物アイドルも、ここに連れて来られていたのですね)

麗華「なにが脱走よ、ちょっと外の空気でも吸おうと思っただけじゃない!」

職員「だとしてもだ! 我々の許可、監視なく外に出ることは許されない!」

麗華「チッ、いつまで触ってんの、放しなさいよ!」

職員「反省の色が見られないな…」

ズッ

真美「! スタンド…」

ガッ!!

麗華「う! ………」ガク

職員のスタンドに拳を叩き込まれ、麗華は気絶した。 


35 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 01:11:05 hoZqGgjo
「な、なにあれ…?」

「何か出た…」

「あれは…」

ザワザワザワ

真美「あれ…? みんな、スタンドのこと知らないの…?」

貴音「…見える以上、『スタンド使い』ではあるのでしょうが」

真美「スタンドを見たことがない? 自分で使ったこともないのかな?」

貴音「スタンドは、戦おうとする強い精神が必要なものです」

貴音「彼女達は、恐らく『スタンド使い』と戦う機会がなかった。使う必要もなかったのでしょう」

真美「そっか、真美達ははるるんがいたからこうやってスタンドを使えるけど、そうじゃなかったら…」

真美「ここに連れて来られた時も、何がなんだかわからないうちに捕まっちゃったんだろうね。765プロにもいっぱい『偽物』が来てたし」

貴音「中には、扱える…あるいは無意識に扱っているような人もいるのでしょうが、そうでない者も少なくないようですね」

職員「静かに!」 


36 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 01:15:19 hoZqGgjo
職員「諸君の生活は保証する! 望むものがあればそれも用意する!」

麗華「………」

職員「しかし、この者のように脱走や反乱を企てるなら…」

職員「えーと…」ゴソゴソ

ピラッ

ポケットの中から紙を一枚取り出し、見る。

職員「そうだ、3日間、独房に入ってもらう!」

「独房…? どこかに閉じ込められるの!?」

「それより、脱走は許さないって…もしかして、ずっとここで暮らせってこと!?」

「そ、そんなわけないでしょ? 番組のドッキリよ! そのうち出られるわよ!」

ザワザワ

ザワザワ ザワザワ 


37 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 01:30:51 hoZqGgjo
黒服「」ザッ ザッ

二人の黒服がやってきて、麗華をどこかに連れ去っていく。

真美「やっぱり、あいつら真美達をここから出す気はないようだね」

真美「『偽物』と入れ替えさせて、本物はここで一生暮らせって…そういうことなんだよ」

貴音「それより、真美」

真美「?」

貴音「今、気になる言葉が聞こえましたね。独房とか」

真美「うん。ここの部屋みたいなフカフカのベッドなんかないよ、きっと」

貴音「もしかしたら、765プロの皆がいるかもしれません」

真美「あ、そっか! みんな、こんなところでじっとなんてしてられないもんね」

真美「いおりんなんか、『この伊織ちゃんをこんな狭いところに押し込むなんて!』とか言って何回も捕まってそうだし!」

貴音「そうでなくても、先程の麗華嬢など、ここから出ようとする者…我々に協力してくれる者はいるでしょう」 


38 : 『マイルド・スノー』その1 :2014/11/23(日) 01:41:56 hoZqGgjo
真美「それじゃ、さっきの黒服を追いかけよう!」

貴音「尾行ですね。しかし、敵は大勢います。気づかれないよう」

貴音「まず、そこの職員の目を誤魔化す必要がありますし、外にも見張りがいるでしょうから…私の『フラワーガール』で…」

真美「いや、大丈夫だよ。待っててお姫ちん」

貴音「?」

真美「あああああああああああ!!」

ザワッ

真美「やだよ!! 一生ここに閉じ込めるん気なんだ! おうちに帰してよっ!!」

………

「いやあああああああっ!!」

「出して、帰して!!」

「嫌っ! なんでこんなことに…!!」

真美が叫ぶと、蜂の巣をつついたように騒ぎが大きくなる。 


39 : 『マイルド・スノー』その1/おわり :2014/11/23(日) 01:47:08 hoZqGgjo
ギャーギャー

職員「お、落ち着いてください! 騒ぐな! お前達も独房に入りたいか!」ズズッ

「さっきの変なので押さえつける気よ!」

「やめて! あああああっ!」

貴音「これは…」

真美「さ。お姫ちん、ドアの前に」

タタッ

「何事だ、騒がしい!」ウィーン

自動ドアが開き、外で監視していた職員が建物の中に入ってくる。

貴音「」スッ

真美「」ススッ

それと入れ替わるように、二人はこっそりと外に出た。 



46 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 15:14:25 .Z531Mro
ガサッ ガサ

黒服が、森の中を進んでいく。

貴音「真美、足下に気をつけてください」

真美「なんか踏んだりして音出しちゃったら、バレるもんね」

二人は木の陰に隠れながら、その後を追跡していく。

真美「それにしても…ここって、どこなんだろ?」

貴音「どこかの山奥…ですかね」

真美「どこかって?」

貴音「どこか、としか」

真美「ま、そうだよね。全然見たことない場所だし。とりあえず、今はみんなを捜そっか」

貴音「そのためにも、あの者達を見失うわけにはいきませんね」 


47 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 15:32:21 .Z531Mro
しばらく後をつけていると、コンクリートの壁が見えてきた。

ギィ…

黒服達は、壁の根元にある扉を開け、その中に入っていった。

バタン

貴音「これが牢獄…なのでしょうか」

真美「結構でかいね。3階建てくらい?」

貴音「それほど多くの者の収容を想定しているのでしょうか? それとも…」

真美「なんでもいいよ、おっじゃましまーす」キィッ

真美が扉を開け、中に飛び込んでいく。

貴音「真美、気をつけて」スッ

バタン!!

貴音「!」

真美「え?」

二人が中に踏み込んだ瞬間、扉が勢いよく閉まった。 


48 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 15:39:50 .Z531Mro
ゴゴゴゴゴ

真美「んーっ、開かない…」グググ

貴音「真美、下がってください」

ヒュ

ドォォン

『フラワーガール』が扉を叩いた。

真美「やったか!?」

シュゥゥ…

貴音「固い…」

ヒュン

ガァン!

横の壁を殴りつけるが、びくともしない。

貴音「壁も…『フラワーガール』で破壊できないとなると、かなりの強度ですね」 


49 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 15:50:31 .Z531Mro
真美「これって、まさか、閉じ込められちゃった!?」

貴音「」キョロキョロ

建物の中を見渡す。

貴音「ここは、牢獄…には見えませんね」

真美「そだね、3階建てだと思ってたけど、上の方までずっと吹き抜けになってるし」

真美「並んでるのも、オリじゃない。棚かな?」

カッ カッ

棚の一つに向かって歩いていく。

貴音「ふむ、箱が並んでいますね。中身は…美容品ですか」

真美「こっちには服が置いてあるよ、こんないっぱい」

貴音「倉庫…?」 


50 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 16:03:06 .Z531Mro
真美「あいつらもここに入ってったよね? ろーや目指してたんじゃないの? なんでこんなところに…」

貴音「それは、恐らく…」

??「そう!」

二階の棚の陰から、黒服の一人が姿を現す。

??「ここに来たのは、お姫ちん達を閉じ込めるため」スチャ

そう言いながら、サングラスを外す。

真美「!」

真美(遠くからじゃよくわかんなかったけど、あの顔は…)

亜美「そして…叩きのめすためだよ」

貴音「亜美? いや…」

真美「『偽物』…」ギロッ

アミ「おっと、真美なら『ワープ』できないからわかるよね?」

真美「『スタートスター』で調べるまでもないよ。本物の亜美じゃあないなんて、一目見ればわかる」

貴音「やはり、我々の追跡に気づいていたようですね」

アミ「そりゃ、あんな音立てながらじゃね。耳はいいんだよ、アミ達」 


51 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 16:13:52 .Z531Mro
真美「んっふっふっ」

アミ「? 何笑ってんのさ、真美」

真美「ちょっち安心したんだよ」

アミ「安心?」

真美「『偽物』がここにいるってことは、亜美は入れ替わってないってこと…無事だってことだよね?」

アミ「んー、そうタンジュンなことでもないんだけどね」

貴音「?」

アミ「向こうじゃ色々と苦戦してるみたいでさ、まだ、765自体が落ちてないらしいんだよ」

貴音「ほう」

真美「おおっ、まだみんな頑張ってるんだ!」

アミ「でさ、せっかく捕まえた真美やお姫ちんも…こうして大人しくしないで、出てくるからさ…」

アミ「やっぱ、765プロはテッテー的に叩いておかないとダメだと思うんだよね、アミは」

貴音「………」 


52 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 16:21:50 .Z531Mro
真美「魔王エンジェルのお姉ちゃんは?」

アミ「他の人に運ばせたよ」

貴音「他の人…ですか」

アミ「今、倉庫の裏口から出て行ったところじゃないかな?」

貴音「なるほど。では…」

貴音「貴女をすぐに倒して追いかければ、間に合いそうですね」

ゴゴゴゴゴ

アミ「いいや、アミ達には勝てないよ!」

マミ「そう、マミ達二人にはね!」バッ

アミの後ろから、もう一人の黒服が飛び出してくる。

真美「真美の『偽物』…!?」

貴音「もう一人も潜んでいましたか」 


53 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 16:31:55 .Z531Mro
真美「二人で来るってことは、『スタートスター』みたいに二つで一組のスタンド!?」

マミ「違う違う、二人じゃないと使えないようなケッカン品と一緒にしないでよ」

真美「ケ…ケッカン品!?」

アミ「アミのスタンドはどんなものも破壊するさいきょーのホコ!」

マミ「マミのスタンドはどんな攻撃も効かないさいきょーのタテ!」

アミ・マミ「「いわば、さいきょーのホコタテ!」」

貴音「では、互いに攻撃したらどうなるのですか?」

マミ「おっと、その手は食わないぜダンナ!」

アミ「そう、さいきょーとさいきょーが一緒になればもっとさいきょーなのさ!」

マミ「しかも、こっちにとって怖いのはお姫ちんだけ。真美は、亜美がいなけりゃ役立たずだもんね?」

真美「む…」

アミ「さぁお姫ちん、二対一でアミ達に勝てるかな!」

貴音「二対一、ですか…」 


54 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 16:40:29 .Z531Mro
アミ「行くよ、アミのさいきょーのスタンド!」ズズズ

吹き抜けの柵から身を乗り出し、スタンドを出す。

頭部が巨大なレンズになっており、腹部から大砲の筒が飛び出している。

アミ「そして喰らえッ、アミのさいきょーの攻撃!!」コォォォォォ…

レンズが周囲から光を吸い込み、スタンドの体が輝きだした。

真美「! ヤバいよお姫ちん、何かチャージしてる!」

貴音「………」

アミ「『デイブレイク…』!」カッ

貴音「『フラワーガール』」

ヒュォッ

『フラワーガール』が、貴音の下から一瞬で、アミの目の前まで距離を詰める。

アミ「え?」 


55 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 16:41:45 .Z531Mro
アミ「何…」

ボギャ

アミ「ぐびゃ!」ドヒュゥゥーッ

マミ「は」

殴り飛ばされ、アミの体はマミの横を飛んでいき…

バギャア!!

後ろの棚に叩き込まれた。

アミ「うぐっ ぐぅぅ…」

マミ「………へ?」

真美「」ポカン

貴音「確かに…」

貴音「これで二対一ですね」 


56 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 16:48:07 .Z531Mro
マミ「………」クルッ

アミ「」ピクピク

マミは振り返ってアミを見たが、動けそうもなかった。

貴音「さて、これで最強の矛とやらはなくなったわけですが」

マミ「!」バッ

向き直ると、『フラワーガール』が目の前に迫っていた。

貴音「貴女にも…倒れてもらいます」

ヒュッ

マミに向かって真っ直ぐと突きを繰り出す。

マミ「くっ…『マイルド・スノー』ッ!!」

ボスッ!!

貴音「ん!」

グ グググ

マミ「はーっ…」

『フラワーガール』の拳は、『雪』の盾に阻まれていた。 


57 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 17:06:19 .Z531Mro
真美「あれは…あれが真美の『偽物』のスタンド…?」

マミ「『マイルド・スノー』」

貴音「」スッ

ドスゥ!!

もう片方の手で、雪の盾を殴る。

ググ…

貴音(破れない…)

グリグリ

貴音(力を加えるほどに固まり、強固になる…雪のような性質を持つスタンド…)

マミ「………」ス…

サッ!

雪が攻撃を防いでいるうちに、棚の陰に隠れていった。 


58 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 17:15:39 .Z531Mro
真美「引いた…?」

貴音「なら、深追いする必要もないでしょう。我々も、裏口に向かい…」

『フラワーガール』を下げようとするが…

貴音「…!」

真美「お姫ちん?」

グググ グググ

貴音「手が…『雪』に覆われている…!? これでは動けない…」

貴音(押さえつける力が強い…これを振り払うには、射程距離が遠すぎる)

真美「お姫ちん、大丈夫!?」

貴音「真美、こちらは私がなんとかします! 追跡を!」

真美「あ…うん!」ダダダ

倉庫の奥に向かって走っていく。 


59 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 17:46:15 .Z531Mro
ス…

貴音「!」

『フラワーガール』の手を覆っていた雪が、離れ…

ヒュン ヒュヒュン

次々と、真美の方へと向かって行く。

貴音(何…)

真美「へ?」

貴音(本体を先に倒すか…いえ、隠れられてはここからでは正確な場所が分からない…)

貴音「『フラワーガール』!」ギュオン

『フラワーガール』がすぐさま雪を追い抜き、真美の前に立ちはだかった。

ビタ! ビタ ビタッ

貴音「く…」

雪が、スタンドの体を埋めるように張り付いていく。 


60 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 18:01:18 .Z531Mro
グググ

『フラワーガール』がどんどん雪に覆われていく。

貴音「ぐっ」ドサッ

貴音が膝を着いた。

貴音(重い…ぶつかった衝撃などはほとんどありませんが、質量に押し潰される…)

真美「お姫ちん!」

貴音「真美…行ってください」

真美「でも…」

貴音「私達には多くの仲間が必要です…まずは、牢獄の場所を突き止めることが重要なのです」

貴音「例え私が敗れても、それさえわかっていれば…真美さえ無事なら、ちゃんすはある」

真美「………」クルッ

タタタ

真美は『フラワーガール』に背を向け、走った。 


61 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 18:08:10 .Z531Mro
ガシッ!!

棚からスコップを見つけ、手に取る。

真美「」グッ

貴音「真美…!?」

真美「『スタートスター』!」

再び、雪に覆われた『フラワーガール』の前に立つと…

真美「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」ズバッ ズバッ

『スタートスター』が、スコップで雪をかき出していく。

ズボッ

貴音「………」バラッ

『フラワーガール』が薄くなった雪の層を突き破り、払った。 


62 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 18:44:05 .Z531Mro
真美「」タッタッタッ

真美が、貴音の下へ戻ってくる。

貴音「真美、何を…」

真美「バーカ、お姫ちんのバーカ!」

貴音「ば…馬鹿…?」

真美「なんとかするって、全然なんともなってないじゃん!」

貴音「それは…それより真美、何故戻って来たのですか!」

真美「お姫ちんが、真美をかばったからだよ!」

貴音「はい…?」

真美「お姫ちんが真美に行けって言ってくれた時、真美を信じて送り出してくれたんだと思った」

真美「でも、なんでさ! 真美の前に立って攻撃受けて、そんなのピンチになるに決まってんじゃん! 真美にはあれくらいも防げないって思ったの!?」

貴音「ち、違…」 


63 : 『マイルド・スノー』その2 :2014/11/30(日) 18:44:50 .Z531Mro
真美「ねぇ、真美ってそんなに頼りない? お姫ちんも、亜美がいなきゃなんもできないって思う!?」

貴音「真美、落ち着いてください…」

真美「落ち着いてないのはお姫ちんの方だよ!!」

貴音「は…」

真美「真美を逃がして…それからどうするつもりだったのさ」

貴音「…捕まる、でしょうね。しかし私が独房に放り込まれたとしても、真美がいるなら脱出できるかもしれません」

真美「それまでに、お姫ちんが何されるかなんてわかんないじゃん!」

貴音「私は平気です。覚悟は…しております」

真美「なんでそんな弱気なのさ! 負けることなんて考えちゃダメじゃん!」

貴音「私とて負けたいなどとは思っておりません! ですが、あのスタンドは…」

貴音「あの雪のスタンドには私の攻撃が通用しませんでした…そして集まれば『フラワーガール』を押さえ込むほどの力…」

貴音「私でも確実に勝てるかどうかはわかりません…それならば、二人とも捕まるという最悪の事態だけは避けなければ…」

真美「二人でも、あいつに勝てないってそう思ってるの?」

貴音「それは…」 


64 : 『マイルド・スノー』その2/おわり :2014/11/30(日) 18:47:50 .Z531Mro
真美「勝とうよ」

貴音「………」

真美「『ワープ』できなくて、ちょっち頼りないかもしんないけどさ…なんにもできないわけじゃないよ」

貴音は、『フラワーガール』を見る。

貴音(真美は…雪に押し潰されそうだった『フラワーガール』を助け出してくれた)

貴音(今の『すたぁとすたぁ』は無能力…しかし無力ではない、ですか)

真美「もっと真美のこと、頼ってよ。仲間なんだからさ」

貴音「…時間がありません。すぐに彼女を倒し、目的を遂げなくては」

真美「………」

貴音「真美」

真美「ん」

貴音「行きましょう。そうですね、二人ならばきっとできます」

真美「もち! 気合いフルパワーでやっちゃうもんね!」 


68 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 00:23:34 wePvZUL6
プルプル

真美「! 真美がかきだした雪が…」

ビュバ!

真美「うわ、飛んできた!」

貴音「『フラワーガール』」ヒュ

ガシ!

『フラワーガール』が、真美の服を掴み…

真美「わわわっ」ポーイッ

ボフッ

近くの棚に積まれている布団まで、投げられる。

貴音「」ガシッ

ボスッ

『フラワーガール』は真美が放したスコップを空中で空中で掴み、『雪』を受け止めた。 


69 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 00:28:57 wePvZUL6
ボスッ ボササッ

みるみるうちに雪が集まってきて、スコップの先がどんどん白くなっていく。

真美(あっ!)

貴音「く…」グッ

真美(お姫ちんが押されてる…)

真美(また真美を助けようとして…もう!)バッ

貴音「」サッ

真美(へ?)

立ち上がろうとしたが、貴音が目で制止する。

貴音「」スッ

真美(口に指を当てて…喋るなってこと?) 


70 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 00:36:34 wePvZUL6
貴音「………」ググググ

グバァ!

ガラン ガラッ

圧力に耐えられず、いや『フラワーガール』が自分からスコップを手放し、地面に滑るように転がっていった。

真美「………」

貴音「よし」ボソ

スゥ

貴音が『フラワーガール』を仕舞う。

ズバババ!

スコップに取り憑いていた『雪』が、『フラワーガール』のいた場所に飛びかかるが…

スカッ

そこには何もなく、空を切った。 


71 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 00:48:25 wePvZUL6
ズム…ズム…

『雪』は所在なさげに彷徨い始める。

貴音(相手は上の階、しかも棚の陰に隠れている)

貴音(この『雪』には、律子のスタンドのように目がついているようには見えない。どうやって我々の位置を確認しているのか知りたかったのですが)

ウロウロ

貴音(この様子だと、スタンド自体に探査能力はない…そして、見えない場所にいる本体が得ることのできる情報と言えば)

真美(音だ! 真美達が動く音を聞いて、あいつは攻撃してきてるんだ)

真美(あんまり、正確にわかってる感じじゃないけど。量にものいわせて、それっぽい場所にどんどん叩き込んでくるつもりだ)

真美(今のお姫ちんの動きで、あいつは真美達の場所をパーペキに見失ったみたいだけど)

ズモモモ…

真美(でも、こっからどうすんのさお姫ちん!? 真美達はこっから動けないし、あの『雪』は真美達を捜してる! 触られたら、もしかしたら場所だってバレちゃうかもしんないよ!) 


72 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 00:55:36 wePvZUL6
真美(相手からこっちが見えないって言っても、こっちからも見えないんじゃ…)

ガシッ

真美「あれ?」

再び、真美が『フラワーガール』に身体を持ち上げられる。

貴音「よろしいですね、真美?」ボソ

真美「え、ちょっとタン」

ギュン!!

真美「ひああああああ!!」

『フラワーガール』は真美を抱いたまま、凄い勢いで二階まで移動していった。

真美「うぅ…」

ゴゴゴ ゴゴゴ

真美(そっか、『フラワーガール』に乗ってけば真美は音もなく上まで来れる)

真美(真美が見つけるんだ、あいつの姿を! そんで、お姫ちんに教える!) 


73 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 01:04:14 wePvZUL6
スゥ…

『フラワーガール』は、ゆっくりと幽霊のように前方に向かっていく。

真美(あ、ちょっとダメダメ。ぶつかっちゃうよ)スッ

棚に衝突しないよう、真美が軌道修正しながら棚の間の通路を通る。

真美(さーてと。かくれんぼの時間だよん、んっふっふ~)

真美(おっと、棚ん中に隠れてるかも。ダンボールとかも気をつけて見なきゃ)

真美は見回してマミの姿を捜す。

一つ、二つと順番に、並行にいくつも並んでいる棚を隅々まで舐め回すように見ていく。

真美(次の棚が最後か。行き止まりだね、そこの棚の陰に…いる!)

『フラワーガール』を操作しながら、二階の一番奥にある棚の陰を覗き込んだ。

真美「そこだっ!」バッ

・ ・ ・ ・

しかし、そこには誰もいなかった。 


74 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 01:10:55 wePvZUL6
真美「…あり?」

真美(見逃した? いや、音はしなかった…こっから逃げたとしても、足音がしないなんて…)

真美(もしかして、あれは真美の『偽物』じゃなくて…忍者!?)

ズゥン!!

真美「わ!?」

下の階から、地鳴りの音が聴こえた。

真美「な、なに今の音は…? 下の階から…」

ゴロ…ゴロゴロゴロ

真美「何か転がってる…? 『雪』、転がる…まさか…」

真美「ヤバい、お姫ちんっ! スタンド戻して!」ドンドン

『スタートスター』で『フラワーガール』の肩を叩くが、反応はまるでなかった。 


75 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 01:24:41 wePvZUL6
マミ「んっふっふ~。よ~しよし、上手くいったかな~?」

吹き抜けになっている倉庫のさらに上、三階。そこにマミはいた。

マミ「お姫ちんの場所はわかんないけど、一階からは動いてない…だったら、『マイルド・スノー』の大雪玉で一気に押し潰しちゃえばいいんだ!」

マミ「倉庫の中荒らしちゃうから怒られちゃうかもしんないけど…ま、今更だよね~」

ズズゥン…

マミ「ん、部屋にコロコロするやつかけるみたいに、隅々まで雪玉で潰し終わったみたいだね」ヒュルルル

『雪』が、マミのもとに戻ってくる。

マミ「これでお姫ちんは片付いたはず。『本物』の真美はほとんど無力…もうラクショーっしょ」

マミ「うーん…でも、下がどうなってるかわかんないし、念のためもう2、3回かけよっかな?」

??「それには及びませんよ」

マミ「はっ!?」クルッ

ドグォ!!

真美「お…」

グ…ググ…

咄嗟に出した『雪』の盾が、襲来者の拳を防いだ。 


76 : >>75 最後の「真美」は「マミ」の間違いです :2014/12/07(日) 01:30:08 wePvZUL6
ズモモ

シュバッ

『雪』で捕らえようとすると、すぐに引いていった。

マミ「な、何奴…!?」

貴音「なるほど、さらに上に登っていたのですね」

真美「真美が見つけられないわけだ」

マミ「ぬわ、なんでっ!? どうやって!?」

真美「ふつーに、階段登って」

マミ「そーじゃなくて、いつの間に!? ここに近付いてくる音はしなかったのに!」

真美「聞こえるわけないっしょー。雪玉ゴロゴロする音に棚が倒れる音…二階にいた真美までうるさく聞こえてたよ?」

貴音「あれほどの音の中ならば、気づかれず堂々と行動できます」

マミ「はっ、そっか! しまった!」 


77 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 01:39:27 wePvZUL6
貴音「『フラワーガール』」ヒュン

マミ「わわっと!」

ガッ!!

貴音「む…やはり、防御が固い…」

マミ「ふふん…お姫ちんの『フラワーガール』でも、マミのさいきょーの盾…」

マミ「『マイルド・スノー』は、壊せないみたいだね」

真美「そだね」ダッ

マミ「!」

『フラワーガール』の攻撃を防ぐマミの横から、真美が向かってくる。

貴音「そのスタンド…伊織の『スモーキー・スリル』と少々似ておりますが、彼女のように器用なことはできないと見ました」

真美「真美の『スタートスター』! パワーはちょっち足りないけど、スピードは充分! 倒れるまで叩き込むッ!」 


78 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 01:45:22 wePvZUL6
マミ「く…」

バッ

『フラワーガール』に対するガードを残したまま、マミは奥の棚に逃げ込む。

真美「隠れても無駄無駄無駄無駄ァ! そっちは証明写真、行き止まりだよッ!」

貴音「正真正銘…ですか?」

真美「そう、それ!」ダダダ

真美は鼠を追い込む猫のように、奥に駆け込んでいく。

「はっ…」

マミの姿を捉えると同時…

真美「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃWRYYYYYYYYYYYYYYY」ズバン バババババドババババババ

真美「やっ!!」ギュオッ

「おぶっ!!」グシャ

ドゴン!!

ラッシュを叩き込み、ブッ飛ばした。 


79 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 01:54:07 wePvZUL6
サラ…サラサラ…

真美「わお、砂になった…!?」

貴音「!」

『フラワーガール』の手元から、『雪』が消える。

貴音「ふぅ…どうやら、これで決着がついたようですね」

真美「うえー。さっきまで喋ってたのが、目の前で砂になられると、なんか…」

貴音「彼女達は、『敗北』を認めると砂になってしまうのです。人が呼吸をせねば生きていけぬように、食事を摂らねば生きていけぬように…それが、彼女達の在り方なのでしょう」

真美「そういうもの、ってこと?」

貴音「はい、なので真美が気に病むことはありませんよ。兎に角…」

真美「うん…うん! 真美とお姫ちんで掴み取った勝利だね!」 


80 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 02:00:01 wePvZUL6
「まだだよ」

真美「へ?」

貴音「何?」

ダダダダダ

棚の奥から、雪崩が起きた。

真美「な、なんじゃー!?」

貴音「く、『フラワーガール』!」バッ

マミ「やめときなよー、お姫ちん。もうそろそろ限界っしょ?」

棚の上からひょこっと、マミが顔を出した。

真美「え…なんで!? 今、砂になったはずじゃ…」

マミ「ああ、あれ? マミじゃないよ、アミだよ。気失っても砂になんなかったからね、連れてきたんだけど…」

マミ「まさか、こうやって役に立ってくれるとは思わなかったよー。んっふっふ~」

真美「…!」ギリッ 


81 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 02:07:50 wePvZUL6
真美「亜美は、双子でしょ…」

マミ「双子? そっちはそうかもしんないけどさ、マミにとってはぜーんぜんカンケーないんだよね」

真美「それでも…『偽物』でも、亜美を身代わりにするなんて…!!」

マミ「何怒ってんの? アミを倒したのは、そっちの真美じゃん」

ドドド ドドド

貴音「真美、怒る気持ちはわかります。ですが、その前に目の前の脅威をどうにかしなくては」

真美「…う、うん。わかった…」

ドドドド

貴音(雪の津波とでも言うべきでしょうか。これで下の階まで押し流すつもりでしょうね)

貴音「すぅ、はぁ…」

タラ…

貴音の額から、汗が滑る。 


82 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 02:17:52 wePvZUL6
貴音「『フラワーガール』」ヒュ

ドドドドド

ズボッ!!

『フラワーガール』の腕が、迫り来る雪の壁を貫いた。

貴音(この雪の津波、規模が大きい分…密度は薄い)

だが、それだけだ。雪崩は止まる事なく迫り続け、『フラワーガール』ごと押し出そうとする。

貴音(今の私に、これを突破できる力は、もう既に残されていないようですね…)

真美「うりゃ!」ドス

バシィッ

真美「駄目だ、『パワー』が違いすぎる…!」

真美も『スタートスター』で壁を突破せんとするが、逆に腕を弾かれてしまった。 


83 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 02:30:54 wePvZUL6
マミ「それそれ、流されちゃえー!!」

ズザザザザザ

雪の壁が、真美と貴音をどんどんの手前の吹き抜けの方へと押していく。

真美「うぅ、ヤバい…!」

真美(このままだと、柵通り越して落とされる…こっから落ちたら、直で一階…ただじゃ済まない…!)

真美(もう、ダメだ…!)

貴音「真美」

真美「…お姫ちん?」

貴音「この『雪』には逆らえない…もう、落ちるしかない…そう思っているのですか」

真美「…悔しいけど…その通りだよ。もう、どうしようもない」

貴音「真美。弱気にならないでください、負けることなんて考えてはいけません」

真美「………」

貴音「勝ちましょう。二人ならば、きっとできます」ニコ

二人は、宙に放り出された。 


84 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 02:37:26 wePvZUL6
真美「うあああああああ!!」

真美(落ちる、死ぬ! どうにか…しなきゃ!)

貴音「真美、スタンドを!」

真美「!」ドォン

『スタートスター』を出し、貴音の方に手を伸ばす。

ガシッ

貴音が『スタートスター』の手を取ると…

グッ!!

貴音は『フラワーガール』で、三階の柵を掴んだ。

ズドドドドド

雪崩が、下の階へとなだれ落ちていく。

貴音「ぐ…」ググ

一緒に流されそうになるが、貴音は必死に、柵と真美から手を放そうとしなかった。 


85 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 02:48:44 wePvZUL6
真美「よし、こっから二階に…」

真美は、下の階へと飛び移ろうとするが…

貴音「待ってください、真美」

真美「ほぇ?」

貴音「もしもここで三階に上がれなければ、もう奴は上の階に登らせるような真似はしないでしょう」

貴音「まず階段を潰してくる…そしてどこへ行こうとも、なりふり構わず押し潰してきます」

真美「じゃあ…どうすんのさ」

貴音「こう…するのです!」グイッ

真美「わーっ!?」グイン

遠心力をつけ、真美の体が上の階まで引っ張り上げられた。 


86 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 02:55:41 wePvZUL6
真美「いた!」ドサ

三階の床に尻をつく。

マミ「あ…? なんだ、戻って来たんだ」

真美「くっ」クルッ

マミなど眼中にないかのように、真美は振り返って柵に捕まっている貴音に手を伸ば

真美「お姫…!」

そうと、して

貴音「………」

その手が、空を掴む。

『フラワーガール』が花弁を閉じ、『つぼみ』になった。

真美「ち…ん…」

身体を支えるものがなくなった貴音は、下へと落ちていった。 


87 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 03:00:52 wePvZUL6
真美「………」ヘタッ

真美は、その場に崩れ落ちた。

マミ「お姫ちんは…助からなかったみたいだね?」

ヒュルルルォ

下の階から、落ちていった『雪』がマミの下へ戻ってくる。

マミ「それにしても、お姫ちんも…真美を助けてどうするつもりだったんだろ?」

真美「お姫ちん…」

マミ「どーせ真美なんて、もっかい落として終わりなのにさ」

真美「………」ムクッ

真美は、立ち上がった。

マミ「ありゃ、まだやる気あるんだ? 一人じゃあ何もできないクセに」

真美「何もできない…?」 


88 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 03:09:00 wePvZUL6
マミ「だって、そうじゃん。いちおーコンビってことになってたけど、マミなんてアミがいなくてもゼンゼン戦えんのにさ」

マミ「真美は亜美がいないと何もできない、お姫ちんに助けてもらわなきゃ、何もできないじゃん」

真美「そうだよ」

ゴ

マミ「ん?」

真美「真美ってば、しょっちゅー寝坊してさ…亜美や、ママに起こしてもらわないと遅刻しまくっちゃうし」

真美「にーちゃんやピヨちゃんにだって、いっぱいめーわくかけて、りっちゃんにいっつも怒られてるし」

真美「アイドルの仕事でも…ポカやっちゃって、みんなに助けてもらっちゃうことだって、いっぱいある」

マミ「へー、そーなんだ。そういうキオクもあるけど、真美自身から聞くとピチピチ新鮮だねー」

マミ「マミは『完全なアイドル』だからそういうことなんてしないし、よくわかんないけど」

真美「でもさ。それって、そんなに悪いこと?」

ゴゴ 


89 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 03:19:53 wePvZUL6
真美「メンドーなこと全部、人に押し付けるのとかは悪いかもしんないけどさ」

真美「真美が寝坊してたら、亜美やママが起こしてくれる」

真美「亜美が寝坊してたら、真美が起こしてあげる」

真美「誰かとお菓子を分けたら、美味しいね、って言い合える」

真美「それって、そんなに悪いこと?」

ゴゴゴゴ

真美「はるるんの『ジ・アイドルマスター』だって、みんなで力を合わせて勝ったんだ」

マミ「………」

真美「一人で最強より、一人で完全より…」

ゴゴゴゴ ゴゴゴ

真美「真美は、そっちの方がいい」

マミ「ふーん、あっそ…」 


90 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 03:21:31 wePvZUL6
マミ「それで? ひとりぼっちの真美は、やっぱり何もできないんだよね~」

真美「一人じゃあない」

マミ「?」

真美「真美がここにいるのは…お姫ちんが、助けてくれたから、引っ張り上げてくれたから」

真美「真美は…」

真美(さっき、お姫ちんの手を掴めなかったあの時…)

貴音『………』

真美(お姫ちんは、言ってた。声は出さなかったけど、確かに真美には聞こえた)

『頼りにしてますよ、真美』

真美「真美は、お姫ちんの想いを背負ってる! だから、真美は一人じゃあない!」

マミ「…よくわかんないなぁ」 


91 : 『マイルド・スノー』その3 :2014/12/07(日) 03:31:35 wePvZUL6
マミ「なんか背負っちゃってるみたいだけど」

ドバァ!!

先程と同じ…いや、それ以上の大量の『雪』が、真美へと襲いかかる。

マミ「それごと流しちゃえばおしまいっしょ?」

ドドド ドドド

真美「行くよ、『スタートスター』」ズゥン

マミ「そんなスタンドで、何ができんのさ!」

真美「うりゃあ!!」ズドッ

左手を開き、押し出すように雪の壁へと突き出した。

ドドドドドド

真美「く…」

襲いかかる巨大な力の波に、真美は歯を食いしばり、その場で踏ん張っている。

マミ「ほらほら、そんなんじゃお姫ちんの二の腕だよ真美!!」 


92 : 『マイルド・スノー』その3/おわり :2014/12/07(日) 03:32:34 wePvZUL6
真美「負けない…!」

ズ ズズ ズズ

マミ「ん?」

マミ(なんか…目の錯覚? 『スタートスター』の手が、でかくなってるような…)

ズズズズズズ

マミ(いや、気のせいじゃない! 『スタートスター』の体が左手に飲み込まれて…)

真美「輝け! 『スタートスター…!!」

マミ(巨大な、『手』に…!?)

ズォォォォォォォ!!

ドドドドドド

・ ・ ・ ・

シュゥゥゥゥ…

雪崩が収まった。

『手』も、その背後にいた真美も、その場から一歩も動いていなかった。

真美「…ジェミー』」 


93 : >>1 ◆CKAtMuT12w :2014/12/07(日) 03:34:05 wePvZUL6
スタンド名:「マイルド・スノー」
本体:フタミ マミ
タイプ:遠隔操作型・不定形
破壊力:D~B スピード:C 射程距離:B(20m程度) 能力射程:B(20m程度)
持続力:B 精密動作性:D 成長性:C
能力:大気中の水分を固めて作り出される、「雪」の性質を持ったスタンド。
凝縮すれば攻撃の衝撃をすべて散らしてしまう鉄壁の盾となる。
スタンド自体にはあまり殺傷力はないため、重さや圧力で押し潰したり、押し流したりして攻撃する。
「雪」のようではあるが触っても冷たくなく、常温。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ 


99 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 01:46:39 bmyZBzA.
ズゥゥン…

マミ「変わった…」

ギュ!!

真美の前に立ちはだかる『左手』が、塞き止めていた『雪』を握りしめ…

真美「うりゃぁ!!」ビュッ

できた雪玉を、棚の上のマミに投げつける。

マミ「………」

バサッ

真美「ありゃ」

ヒュルル…

雪玉はマミの目の前で崩れ、細かい雪となって彼女の周囲に舞い始めた。 


100 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 01:51:34 bmyZBzA.
マミ「当たり前じゃん、これはマミのスタンドなんだよ?」

マミ「余程気が動転してるか、余程のマヌケじゃなければこんなのにやられるはず…」

グッ

話してる間に、目の前に巨大な拳が近づいてきている。

真美「うりゃっ!!」ゴッ

マミ「『マイルド・スノー』」

ヒュッ ヒュルルル

ドグゴ!

雪が盾となり、『ジェミー』の攻撃を防ぐ。

真美「!」

マミ「でかくなった分、速度は遅いね。こんなのは見てから対応できる」 


101 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 02:00:27 bmyZBzA.
ズモモ

真美「わわっ」ヒョイ

拳が『雪』に覆われようとしていたので、自分の近くまで引っ込めた。

マミ「んっふっふっふ~、どうしたの? ン? 負けないんじゃなかったの!?」

マミ「スタンドが変わったから…それで何か変わんの!? マミのさいきょーの盾は破れないッ!!」

ビシャッ

・ ・ ・ ・

マミ「…ん?」

『雪』の盾の一部が、弾丸となって真美の足下に飛んだ。

マミ(あれ…? 攻撃なんてするつもりじゃなかったんだけど…何?)

ビュン ビュビュン

ベチャ! グチャ グチャッ

マミ「えっ、えっ!?」

『雪』はマミの意思とは関係なく、勝手に攻撃…ではなく、次々と真美のいる方に引っ張られていく。 


102 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 02:05:20 bmyZBzA.
真美「破れたね」サクッ

地面に落ちた『雪』を踏みつける。

マミ(『雪』の盾が…盾に、穴が空いた!)

真美「『スタートスター・ジェミー』!!」ドギュン

マミ「うあああっ!!」

ぽっかり空いた穴に向かって、拳が飛んでくる。

マミ(ガードするには『雪』が足りない…ヤバいっ)

ヒョイッ

マミは、奥の棚へと飛び移った。

ゴォォォォ

真美「んっ」ビタッ

マミの目の前で、『左手』が止まる。 


103 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 02:12:55 bmyZBzA.
マミ「ふぅ…っ」

真美「………」

マミ「その…『ジェミー』? あんまり『射程距離』は長くないね。1mかそんくらい?」

マミ(マミの『マイルド・スノー』は遠くからでも攻撃できる。このまま近づかせなきゃ大丈夫…)

真美「」ス…

チャキ

マミ(ん!?)

『ジェミー』が手で銃を作るように、人差し指をマミに向けた。

マミ(あの手…指先に、穴が…)

ドギュン!!

マミ「うげっ!?」

『ジェミー』が指から、弾を打ち出してきた。 


104 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 02:19:09 bmyZBzA.
マミ「マ、『マイルド・スノー』ッ」

ダスッ!

残された『雪』をかき集めて、弾から身を守った。

マミ「く~っ、そっちも遠くから攻撃できんのか…油断タイヤキ…」

ズルッ

マミ「あ!?」

かき集めた残りの雪が、『ジェミー』の後方へと飛んでいってしまう。

マミ「こ、このスタンド…この能力は…」

真美「いくよん」ビッ

ダン!

中指を立て、そこから一発の弾丸が放たれる。

マミ「うぐ!」ドス

その一発が、マミの胸へと命中した。 


105 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 02:32:48 bmyZBzA.
マミ「ぐあーっ、やられ…」ググ

マミ「って、あんま痛くない…」

ズル!

マミ「うお!?」

足が滑る。棚から落ちそうになったが、天板を掴んでとどまる。

マミ「う…」プルプル

しかし、『完全なアイドル』である彼女も自分の全体重を指だけで支えることはできず、今にも指は離れそうだ。

マミ「こ、この…このスタンド…」グググ

真美「」グッ

真美は上半身をひねりながら、左手で拳を作っている。

マミ「このスタンド、『引っ張る』能力だッ! マミの身体が…『引っ張ら』れるッ!!」ググググ

ズルッ

指が、離れた。 


106 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 02:39:32 bmyZBzA.
マミ「うあああああああああああああ!!」

ガン ガンッ

マミの身体が、棚の角にぶつかりながら、真美の方へと飛んでいく。

ガッ

真美は、膝を落とし…

真美「うりゃあっ!!」

ボゴォ

マミ「うげぇ!」

振りかぶるように、その『左手』でマミの全身を撃ち抜く。

ギュルルルルルル

ギャン! ガン ゴン ガン ガン

ドグッバァァーン!!

自分の身の丈ほどもある拳に殴り飛ばされ、マミは回転しながらブッ飛んでいった。 


107 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 02:54:23 bmyZBzA.
マミ「が、がふ…」ズル…

奥の壁からずり落ちる。

マミ「ぐ…双海真美…許さな…」

真美「おろ、まだ平気そうだね」

マミ「!?」グンッ

『ジェミー』に殴られた効果で、また身体が『引っ張ら』れる。

真美「じゃ、もいっぱつ」グッ

先ほどと同じように、構えた。

ゴォォォォォ

マミ「マ…『マイルド・スノー』ォォォッ!!」

真美「無理無理、守るための『雪』を集めるより、こっちが殴る方が…」グッ

カウンターを合わせるボクサーのように、一歩踏み込む。

真美「早い!」ヒュッ 


108 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 03:04:25 bmyZBzA.
ズルッ

真美「はれ?」フワ…

殴ろうとした瞬間、真美の足が床の『雪』に取られ、体が宙に浮いた。

真美「ぎゃっ!」グギャ!

そのまま、鼻から地面に叩き付けられる。

マミ「おお…っと」ヒュン

マミは真美の上を、柵の上を通り過ぎて、吹き抜けから下に落ちようとしている。

真美「!」

マミ「思ったよりはけっこー、強かったよ真美」

マミ「でも、そのスタンドはあくまでも『近距離パワー型』」

マミ「そっちは弾も届かない下の階からでも、こっちにはいくらでも攻撃手段はある」

真美(雪崩に大雪玉…量さえあれば、このスタンドに射程距離はあんま関係ない…)

真美(このまま下に行かれたら…まずい! かも!) 


109 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 03:07:59 bmyZBzA.
真美「『スタートスター・ジェミー』!」ゴウッ

マミ「………」ヒュルルルル

マミの周りに、『雪』が集まっていく。

真美「」バラッ

『ジェミー』は吹き抜けから下に向かって、『4』を作るように構える。

真美「はっ!」

ダン ダン ダダダン

人差し指、中指、薬指、そして小指から一発ずつ、弾が飛ぶ。

マミ「………」

ヒュン ヒュヒュン

弾は4発すべて、マミの横を抜けあらぬ方向に飛んでいった。 


110 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 03:13:15 bmyZBzA.
真美「………」

マミ「射的は慣れてない? 全然狙いが定まってなかったけど」

ゴォォォ

下から、何かが飛んでくる。

ォォォォォォォ

『ジェミー』の弾を当てられた缶が、勢いよくマミに向かい打ち上げられている。

ドボォ

しかし、それはマミが背中に出した『雪』の盾に防がれた。

真美「!」

マミ「当たると…思った? わざと外した、なんてバレバレだよ。これが狙いだったんでしょ?」ヒュルル

ガシャ ガシャン

缶は勢いを失い、真下に落ちていく。

ズルッ

真美「………!」

マミは、そのまま雪の上を滑って二階へと降りていった。 


111 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 03:20:05 bmyZBzA.
シャン

シャンシャンシャン

真美「うあ、これは…」

頭上に、大量の『雪』が集まってきている。

真美(これを落として、真美を押しつぶす気…!?)

真美(その前に、倒す…! …大丈夫!)ヒョイッ

三階の柵の下から身を出して二階を覗き込み、視線と一緒に『ジェミー』の指を向ける。

真美(どこだろ…?)

真美(また、どこかに身を潜めてるのかな…こっからじゃわかんない)

シャンシャンシャンシャン

真美「…………」

カサ…

ドォン!!

何かが動く音を聞くと同時、弾を撃った。 


112 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 03:27:38 bmyZBzA.
ズダン!

弾は地面にぶつかった。

マミ「ふ、んふふ…」

カサ…カサカサ…

音は、破れた包装紙が風で揺れているだけのものだった。

ゴゴゴゴゴ

マミ「ゲームオーバーだよ真美! 『雪』は集まった!」

ドボォォォォ

真美を、三階の全てを落ち潰そうと、空から『雪』の滝が降り出した。

マミ「そっから下まで、頭から落ちてみる!? まだ助かるかもよ!?」

真美「………」ボソ

マミ「え、何?」

真美「『引っ張る』」 


113 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 03:34:26 bmyZBzA.
真美「」ズルリ

ギュン!

真美は三階の床から降りると、地面に着陸しようとする飛行機のように、斜め方向で二階へと落ちてきた。

ズズゥゥン…

マミ「何!?」

真美「『ジェミー』の能力は、『引っ張る』んだからさ~」

真美「地面とか、壁とか…動かないものに打ち込めば、真美自身を『引っ張る』こともできる」ギュッ

ミシ…

ギュォォ

『ジェミー』の拳を握りしめながら、真美が突っ込んでくる。

マミ「うっ、く…」

真美「『雪』はないよ! 食らえ、『スタートスター…」

バァァァァン

その時。倉庫三階の床が、抜けた。 


114 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 03:39:54 bmyZBzA.
真美「なっ…」

マミ「ふふっ、こんなことはやったら後で怒られるから、したくなかった…『雪』の圧力で、三階ごと壊して埋めるなんてね」

マミ「でも、これでマミの勝ちだ! 三階が落ちてきてもマミは耐えられる…その上の『雪』は、マミのスタンド!」

マミ「この二重の圧力に、真美は耐えられない!」

真美「く…『スタートスター・ジェミー』!!」バッ

真美を守るように、手のひらを上に向ける。

ドザアァッ

真美「う…うお…」

マミ「あははっ、いくら『パワー』があったってねぇ、こんなもんを防ぎきれるスタンドなんてないよ!!」

メキ…メキメキ

上からかかってくる重量で、二階の棚も潰れ始めている。

マミ「さぁ、潰れろ! 潰れてしまえッ、真美ッ!!」 


115 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 03:43:25 bmyZBzA.
ビシ ビシビシビシ

ガラァァン

真美「わ!?」

そして、二階も抜け…

ズドドドドドド

ズズゥゥゥゥン…

その上から、膨大な『雪』が辺りを埋め尽くし、倉庫は白く染まった。

シン…

ズボッ

雪原から、腕が生える。

マミ「あーっはっはっはっは!!」ズルルッ

そこから、マミが上に這い出てきた。 


116 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 03:51:28 bmyZBzA.
マミ「終わった! 『本物』よりも、私の方が上だった!」

マミ「や、マミの方が上だ! 上なんだ!」

「んぎ…」

マミ「んん~?」

「んぎぎ…ぎぎ…」

マミ「雪の下から声が聞こえるね。生き埋めになってんのかな?」

マミ「そだなぁ、『許してください、出してください』って言えば出してあげるよ? 牢屋行きだけど! あはは!」

「………」

マミ「え、何? 聞こえないよ?」

「下はあなただと、そう言ったのです」

声は、地面からではなく背後から聞こえた。 


117 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 04:00:47 bmyZBzA.
マミ「は…」クルッ

ドドドド

貴音「これで…王手、と言ったところでしょうか」

ドドド

マミ「お…お姫ちん!? なんで…」

貴音「私は一階にいたので、二階より上が瓦礫になる前に離れることができ…」

貴音「降り注ぐ雪には『フラワーガール』で穴を空け…ここまで上がって来れました」

マミ「ど、どうして…」

貴音「貴女の『雪』のスタンドです。あれが、私の落ちた真下に敷いてあったので、落ちても大した怪我は負いませんでした」

貴音「そして、先ほどの降雪…量は多いですが、範囲が広いだけに集中している訳ではありませんでした」

貴音「それならば、私の『フラワーガール』は簡単に貫通させられます」

マミ「違う! 聞きたいのはそんなことじゃあない! お姫ちんの体力はもうなかった、『フラワーガール』は使えないはずだよ!!」 


118 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 04:04:33 bmyZBzA.
貴音「この倉庫、私達の生活に必要な物資はなんでも揃っていますね」

マミ「え?」

貴音「もちろん、食品の缶詰なんかも…」ポトン

カラン

マミ「缶…詰…?」

真美『はっ!』ダン ダン ダダダン

マミ『当たると…思った? わざと外した、なんてバレバレだよ。これが狙いだったんでしょ?』ヒュルル

マミ「あ、あれは…あれは、マミに攻撃しようとしたんじゃあなくて…」

マミ「真下に落ちたお姫ちんの所に、この缶詰を落とすために…!!」

「そゆこと」フフン

雪の下から、得意げな声が聞こえた。

貴音「缶詰というものはあまり口にしたことはなかったのですが、これがなかなか…」 


119 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 04:07:24 bmyZBzA.
真美「確かに真美は、一人じゃあ何もできない。でも…」

マミ「う…」

真美「二人いれば、なんでもできる」

真美「みんながいれば、もっとなんでもできる!!」

貴音「さて…貴女の頼みの綱の『マイルド・スノー』は足下にあります…が」

マミ「………」

貴音「………」

マミ「『マ…」ゴゴゴ

地面から、雪の柱が競り上がろうとするが…

ヒュオッ

スッ

マミ「イルド…」

マミ「すっ」ズグバァ!!

ドサッ

目にも留まらぬ速さで、マミは『フラワーガール』に切り捨てられた。 


120 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 04:14:11 bmyZBzA.
サラ…サラサラ

スゥ…

マミが砂になり、『雪』は融けるように消えていった。

真美「うんせ!」ガッシャァァァ

真美の上に積まれていた瓦礫を、『ジェミー』で一気に押しのけた。

貴音「ぐれぇとな相手でした」

真美「でも、真美達のコンビーフの勝ちだね!」

貴音「先ほどの缶詰でしょうか?」

真美「や、そうじゃなくて…えっと…ま、いっか」 


121 : 『マイルド・スノー』その4 :2014/12/15(月) 04:27:27 bmyZBzA.
真美(それから…)

真美「ふーっ、ごちそうさま」

貴音「………」

真美(あの後、連れてかれた人達の姿はもうなかったし、足跡も残ってないしで、追っかけることはできなかった)

真美(だから、お姫ちんと相談して…この、ホテルみたいなとこに戻ってきて、今晩ご飯を食べてる)

真美(結構人多いし、そんな長い時間外にいたわけじゃないから、こっそり戻ってきても気づかれなかった)

真美(そして、帰ってきてからも探してみたけど…765プロのみんなは、真美とお姫ちん以外はやっぱしここにはいないみたい。どこにいるんだろ?)

真美(ここのことは、ちょくちょく調べてみるつもりだけど…真美達は…しばらくは、ここにいるしかないのかなぁ…)

真美「お姫ちん、ここのご飯美味しいよね! しかもタダだし、なんでも作ってくれるし!」

貴音「………」

真美「はぁー、でもキュークツだよね…一生ってのはやだなぁ。みんなもいないし…」

貴音「………」

真美「お姫ちん?」 


122 : 『マイルド・スノー』その4/おわり :2014/12/15(月) 04:32:25 bmyZBzA.
貴音「これだけ…なのですか…」

真美「へ?」

貴音「夕食は、これしか出してもらえないのですか…!」

真美「うーん、でも食べられるもの、今ここの食堂に残ってるので全部らしいし」

真美(ジムイン? ショクイン? のねーちゃん達が倉庫がメチャメチャになってるのを話してた)

真美(あの真美の『偽物』達をやっつけたから、真美達がカンケーあるってことはバレてないっぽいけど…)

真美(倉庫には缶詰もそうだし、その他にも色々食べ物が置いてあって…それは、全部ダメになっちゃったから、おかわりする分なんてないのだ)

貴音「一体、何故…昼は、昼はあんなにも食べさせてくれたではありませんか…!!」

真美「お姫ちんが食べたら、すぐ全部なくなっちゃうよ!」

To Be Continued... 


123 : >>1 ◆CKAtMuT12w :2014/12/15(月) 04:35:25 bmyZBzA.
スタンド名:「スタートスター・ジェミー」
本体:双海 真美
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:A スピード:C 射程距離:E(1m) 能力射程:C(10m)
持続力:D 精密動作性:C 成長性:B
能力:真美の体を覆えるほどの巨大な「左手」のスタンド。
指先から「ジェミー弾」と呼ばれるテニスボール大の弾を打ち出し、弾に触れたものや、拳で殴ったものを「引っ張る」。
以前の「スタートスター」と比べると速度は遥かに劣るものの、パワーはメチャメチャ上がっている。
そのため衝撃にはかなり強いが、ダメージがあれば、真美の左手に返っていく。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ 




129 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 16:28:30 7ePRPCpU
響「もう、これしかない…」

千早(我那覇さんが、ぽつりと呟く)

亜美「何言ってんのさ、ひびきん!」

響「いいや、決めた! 自分、行かなきゃ」

亜美「そんなの、ゼッタイ駄目だよ!」

千早(亜美が我那覇さんにしがみついて、押さえつける)

響「止めないでほしいぞ、亜美!」

千早(しかし、我那覇さんはそれを振り払って歩き出してしまった)

亜美「だから、そんな服やよいっちには似合わないって!」

響「そんなの、亜美の思い込みでしょ! 今買ってくるぞ!」

千早(…私達は、デパートで買い物をしていた) 


130 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 16:40:19 7ePRPCpU
亜美「もー、やよいっちはそんなハデな服全然持ってないんだし、合わないって!」

響「やよいにはきっと似合うぞ!」

亜美「ひびきん、やよいっちを自分のペットみたいに思ってんじゃないの?」

響「確かにやよいはかわいいけど、そこまでは思ってないぞ! だいいち、家のみんなに無理矢理服着せたりもしたことないし!」

千早(みんながいなくなってしまって、プロデューサー達が捜索をしている)

千早(私、春香、美希、我那覇さん、亜美…私達も何かできないかと、集まってみたけれど…)

千早(結局、有効な手は何も思いつかず。私達にできることは、彼らに任せて待つことだけと、結論が出てしまった)

美希『ねぇねぇ、そろそろやよいの誕生日だよね?』

千早(そんな時、美希がそんなことを言った。確かに、もう1週間もしないうちにその日が来る)

千早(…高槻さんの行方は未だわかっていない。けれど…)

美希『後でゼッタイ必要になるの。プレゼントがないと、やよいガッカリするでしょ?』

千早(戻ってきた時のため…そのために、みんなでプレゼントを買いに行こうと、そう決まった) 


131 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 16:48:34 7ePRPCpU
響「とにかく、自分はこれをプレゼントするぞ! もう決めたもんね!」フンッ

亜美「ま、やよいっちならなんでも喜んでくれると思うけどね…亜美はしーらないっと」

響「それじゃ、店員さーん! ラッピングお願いしまーす!」

千早「ふふ…」

美希「ちーはやさん!」ギュッ

千早「ひゃッ!? み、美希! いきなり背中から抱きついてこないで!」

美希「あれ? それって…リボン? それ、やよいへのプレゼント?」

千早「いえ、これは…」

美希「春香に?」

千早「ええ、そうよ」

美希「春香の誕生日も、すぐだもんね。一緒に買っちゃった方がお得なの」

千早「うん…」 


132 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 16:56:23 7ePRPCpU
春香「響ちゃん、それやよいにあげるの?」

響「そ! きっと似合うと思うぞ」

春香「ふむふむ。それなら私は、それに合ったパンツを探してみましょうか」

亜美「よーし、もうこの際だ、みんなでやよいっちをオシャレにしちゃおっか!」

ワイワイ

千早「パンツ…? た、高槻さんに下着を…?」

美希「いやいや、下着じゃなくて下に履くものなの。千早さんの履いてるデニムとか」

千早「デニム…? 美希、これはジーンズというのよ」

美希「千早さんには今度、ちゃんと教えなきゃダメかもね…もったいないの」

千早「は、はぁ…」

美希「そういえば…」

千早「?」

美希「最近の春香、リボンしてないよね」

千早「…ええ。だから、と思ったのだけれど…」 


133 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 17:05:52 7ePRPCpU
美希「なんでだろうね? もう大海のフリする必要もないのに」

千早「『偽物』にリボンを引き裂かれてたから…それでかしら」

美希「そんなの、自分の家に帰れば他のがあるはずだし。ゼンブなくなってたとしても、買えばいいし…リボンがないと春香だってわかんないの」

千早「そ、そんなことないでしょう?」

美希「春香に直接聞いてみたら?」

千早「聞けないのよ、なんだか…」

千早(『アイ・ウォント』が戻ってきて…表面上は、いつも通りだけれど)

千早(でも、瞳の奥底はどこか冷たくて…なんだか、半年前の…あの時の春香に、戻ってしまったような感じがして)

千早「………」

美希「うーん。もしかしたら、みんなが戻ってくるまではつけない、とか決めてんのかもね」

千早「………」

美希「じゃ、誕生日の頃ならちょうどいいかも。ミキもプレゼントはリボンにしよっかな、千早さんのとは色違いの」 


134 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 17:20:01 7ePRPCpU
………

……


亜美「よしよし、これでばっちしだね!」

響「みんなが帰ってきたら、他のみんなのプレゼント選びも手伝わないとね」

春香「ね、ね、千早ちゃん」

千早「ど、どうしたの? 春香」

千早(荷物が少し多いと気づかれたかしら…? いえ、でもリボンだけだし…)

春香「ずっと美希とプレゼント選んでたよね?」

千早「え、ええ。美希は服選びのセンスがいいから」

春香「なんか、話し込んでたし…何話してたの?」

千早「いえ、大したことではないわ。誕生会のことや、いなくなってしまったみんなのことよ」

春香「割と、大したことだと思うけど…むむ、なんだかジェラシー」 


135 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 17:27:37 7ePRPCpU
美希「そう言えば…千早さんと響は一人暮らしだからいいとして…亜美、春香、今日出てきて大丈夫だった?」

亜美「ほぇ?」

春香「何が?」

美希「家の人に外出ちゃ駄目、とか言われなかった?」

春香「別に、そういうことは言われてないけど…何かあったの?」

美希「んーとね。今日、ミキが外に出ようとしたら、お姉ちゃんに止められたの。何か危ないことしてるんじゃないかって」

亜美「え、まさかスタンドのことバレちゃった!?」

美希「そこはバレてないっぽいけど、お姉ちゃん心配性だから。765プロのこととか調べて、ヘンなことが起きてるんじゃないかって思ったらしいの」

千早「…実際、起きているのよね…変なこと」

響「あ、でもそういうことだと、亜美のところは大変なんじゃないのか!? 真美が帰ってきてないから!」

亜美「ああ、それね…」 


136 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 17:57:45 7ePRPCpU
亜美「みんながいなくなっちゃった日、亜美はりっちゃんと一緒にいたんだけど」

春香「二人は外回りだったから無事だったんだよね」

亜美「兄ちゃん達から電話来た後、一緒にうちまで来てね」

律子『報告遅れてすみません。この度、765プロでは合宿を行うことになりまして…』

亜美「って、合宿ってことにして後からママ達からサインもらったんだ。だから、そんなに心配してないと思うよ」

美希「へぇ、うちにも来てもらおっかな」

春香「合宿…ね。そういうことにしておけば、私達がいなくなっても不自然にはならないね」

響「え…別に、自分達はあんな奴らに負けたりしないぞ」

春香「そういうことじゃないよ。今、765プロは休止中だし…」

春香「それに、みんながどこに行ったかがわかったら、そこに乗り込まなきゃいけないでしょう?」

響「あ…そっか! ピヨ子にみんなのエサやり頼まなきゃ…」 


137 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 18:31:33 2P3oMEyo
電話『とぅるるるるるるる』

千早「あら…電話だわ」ピッ

亜美「千早お姉ちゃん、着メロ設定とかしないの?」

千早「もしもし」

P『千早…無事か?』

千早「プロデューサー。ええ、何事もありません。どうしました?」

P『…車の持ち主がわかった』

千早「! 本当ですか」

美希「ちょっと待って、千早さん」ヒョイ

千早「み、美希?」

ポチ

P『なんだ、みんなもそこにいるのか?』

美希「はい、これでみんなに聞こえる」 


138 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 18:40:06 2P3oMEyo
春香「プロデューサーさん? どうしたんですか」

P『ああ、今千早には言ったが…車の持ち主がわかった』

亜美「車って…」

美希「ミキが撮ったやつだよね」

響「なんでわかったんだ?」

P『他の事務所も同じように襲われていてな…「スタンド使い」から逃げて避難している人達と連絡を取って、それでわかったんだが』

千早「そんなこと、どうだっていいでしょう。誰なんですか、その持ち主というのは」

P『あれは高木社長のものだ』

千早「! 高木社長…」

春香「………」

P『社用ではなく、個人で持っていたものらしい。複数人の証言がある、確かだと思う』 


139 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 18:50:37 2P3oMEyo
響「でも、高木社長って…」

亜美「そうだよ、社長は、あの時死んだハズじゃ」

美希「…『偽物』」

響「え?」

美希「あの時、死んだのは『偽物』だとしたら…本物の社長は、今も生きているとしたら?」

亜美「そ、そんなことありえないって! だって、あの時…」

千早「ありえないと、断定する方が難しいのではないかしら」

亜美「千早お姉ちゃん?」

千早「『偽物』は、血が出ない…と言うことは、息もしないし脈もない。死んだふりをすれば、誰も生きていると気づかないわ」

響「そう言われてみると…なんか、変な気がしてきた…」

千早(私が見た、あの後ろ姿…あれは、高木社長だったの…?) 


140 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 19:02:04 2P3oMEyo
P『高木社長が生きている…それは正しいと思う』

亜美「兄ちゃん」

P『これは律子が見つけたものなんだが』

千早「何かあるのですか?」

P『ああ。海外のサイトに、高木社長の写真があってな」

千早「写真、ですか」

P『いや写真だけじゃあない、日本でアイドル事務所をやっていることや、海外研修に来たということが書かれていた』

P『しかも、日付は1年前から最近まで毎日…つまり、社長はその間ずっと海外にいたってことだ…』

亜美「1年前から…!?」

P『俺達が社長が死んだのを見たのは半年前だ、これは明らかにおかしい』

美希「やっぱり、途中から『偽物』と入れ替わってたってことだね」

響「じゃあ、この出来事は高木社長がやっているってことなのか!?」

千早「恐らく…そう、でしょうね」

亜美「…信じらんない」 


141 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 19:17:50 2P3oMEyo
美希「でも、これではっきりしたね。敵は、高木社長なの」

春香「………」

響「プロデューサー、高木社長の居場所は?」

P『…それが、わからないんだ』

響「わからない?」

P『ああ…足取りが掴めないんだ。自宅を訪ねてみたが、本人もいない、車もない、手がかりになるようなものもない』

P『わかるのは、少し前に社長が海外から戻ってきたってことくらいか…』

春香「………」

亜美「でも…あんな大勢のアイドルがいなくなってるんだよ? なんかないの?」

P『交通機関は律子がスタンドで監視しているし、本人はまだこの近くにいるはずなんだ。今、全力で…』

春香「ちょっと待ってください」

千早「春香?」 


142 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 19:24:50 2P3oMEyo
亜美「どったのはるるん?」

P『何だ、春香?』

春香「本当に、犯人は社長なんでしょうか」

P『何?』

千早「他に、犯人がいるということ…?」

春香「って言うか…高木社長を疑うんなら、もっと怪しい人がいるんじゃないかなーって」

美希「なんでそう思うの?」

春香「なんで…って言うか、これ」スッ

春香が、自分の携帯の画面をみんなに見せる。

響「これは…高木社長…!?」

春香「私の『偽物』から取り上げた携帯のカメラに残ってたんだよね。日付は…」

千早「水瀬さんが『偽物』だと判明した1週間前…!?」

亜美「え、なになにどゆこと?」 


143 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 19:37:01 2P3oMEyo
P『な、なんだ? 何を話しているんだ?』

春香「この高木社長、どう見ても記念撮影って感じじゃあないよね…倒れてだらんとしてるし、頭が切れてるのか、ちょっと血も出てる」

響「ちょ、ちょっと…なんでそんな写真があるんだ!?」

春香「私が言いたいのは、それ…なんでこんな写真があるんだと思う?」

千早「な、なんでって…」

春香「まず、この社長は本物。『偽物』だったら、血は出ない」

美希「ここ…事務所の廊下だよね」

亜美「待ってよ、その日、亜美も事務所にいたけど社長なんか見なかったよ!?」

千早「一週間前…確か、真達が言ってたわ。『偽物』と発覚する一週間前には、水瀬さんは入れ替わっていたって」

千早「…! 水瀬さん…そう言えば、番号を残していたわ…あれは春香の携帯電話から…」 


144 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 19:48:34 2P3oMEyo
春香「社長は、きっと海外にいて、何も知らなかったんだよ。だから事務所に来た」

春香「高木社長が犯人だったとして、死んだと思われているのにわざわざ自分から姿を見せにくるなんてマヌケでしかないからね」

亜美「えーでもでも、社長が事務所に来たら来たで、誰か気づくっしょ?」

春香「それは私も悩んだんだけど…社長だし、みんなを驚かそうと思ってこっそり入ってきたんでしょ」

亜美「あー、なっとく…」

春香「そして、以前から事務所にいた私の『偽物』に襲われた。多分…伊織と一緒に」

春香「その中で伊織は一度この携帯を奪った。そして、この写真を撮った」

千早「『アイ・リスタート』が相手…水瀬さん、死にものぐるいだったでしょうね…」

春香「伊織が『偽物』と入れ替わるのと一緒に、社長も連れて行かれた。だから、亜美達が社長を見ることはなかった」

春香「ってのが、私の意見」

美希「なんかよくわかんないケド、とりあえず社長は犯人じゃあないってコト?」

春香「うん、私はそう思う」 


145 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 19:53:08 2P3oMEyo
響「えーと春香、思ったんだけど…」

春香「何?」

響「社長が犯人じゃないとしてさ、じゃあ誰が犯人なの?」

千早「春香、もっと怪しい人がいると言っていたわね。心当たりがあるの?」

春香「そもそも、なんで社長は海外に行けたの?」

千早「え?」

春香「なんで、私達はそのことを知らないの?」

亜美「それは、社長が『偽物』と入れ替わってたからっしょ?」

春香「違うよ。社長がいなくなるんだよ? 765プロに話がいかないのはおかしい」

亜美「?」

春香「社長は、なんで私達に何も言わないで海外に行っちゃったの?」

亜美「あ…それは確かにそうかも」 


146 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 20:04:08 2P3oMEyo
春香「プロデューサーさん、社長は海外研修に行ってたんでしたっけ?」

P『あ、ああ…どうやらそうらしい』

春香「その海外研修の話はどこから来たのかな…?」

美希「そういう話って、けっこー偉い人が持ってくるよね?」

春香「誰か、社長に話を持ちかけた人がいるはずだよね」

千早「そしてそれは、社長よりも…」

春香「多分、急な話だったんでしょう…私達が入れ替わったことにも気づかないくらいに」

響「強引だなぁ、社長みたい…」

春香「社長はきっと、私達にはその人から話が行くと思っていたはず。だから、誰も話を聞いていなかった」

亜美「その人、って765プロの人だね。亜美達も知ってる…」

P『春香、まさか…』

春香「ええ、いるでしょう? 一人、思い当たる人が」 


147 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 20:10:53 2P3oMEyo
P『! そうか、まずい…』

千早「どうしたんです?」

P『あれが社長の車だとわかった時、あの人も訪ねたんだ…車は置いてなかったが…』

P『荷物をまとめて…遠出の準備をしていた! この町から出て行くつもりだ!』

美希「あまり遠くまで行かれると、律子の『ロット・ア・ロット』でも追えないかも…」

亜美「そんなら、急がなきゃ! 逃げられちゃったら終わりだよ!」

P『律子、出るぞ! それと、スタンドを…』

響「よし、自分達も!」

春香「うん。行こう、みんな!」

………

……

… 


148 : 『ある日の風景』その2 :2014/12/21(日) 20:20:03 2P3oMEyo
グッ…

「ふむ…スーツケースが閉まらないな」

「…うーむ、こんなに多くはいらないか。必要なものは向こうにあるし、財布と携帯電話と…後は少しで充分だな」

「いかんいかん。これからと思うと、ついつい張り切りすぎてしまう」

「気がかりは…765プロか。皮肉なものだ、あそこだけが最後まで落ちないとは」

「まぁ、いい。残った事務所あれ一つだけだ、『複製』だけでもどうにでもなるだろう」

「それよりも、早くしなければ…順二朗のことに気づいた以上、私に辿り着くまでそこまで時間はかからないだろ」

『かがやいたー♪ ステージーにーたーてばー♪』

「む? 『複製』から着信か。なんだ、こんな時に…」ス… 


149 : 『ある日の風景』その2/おわり :2014/12/21(日) 20:28:47 2P3oMEyo
ピタ…

「待て、これは天海君の携帯電話だ…彼女の『複製』は倒されたはず、と言うことは…」

「ふーむ、天海君が携帯に残っていた番号からかけているのか。なら、これは…」

春香「出る必要はないですよ。もう、わかりましたから」

「!」クルッ

男が振り向くと、部屋の外に携帯を持った春香達が立っていた。

千早「この番号からかかるということは、やっぱり…貴方なんですね」

千早「貴方が、『偽物』達を使って…皆を連れ去って行ったんですね…!!」

「…ああ、そうだよ如月君。全て私がやっていることだ」

春香「お久しぶりです。高木順一朗…会長」

順一朗「1年と…しばらくぶりだね。天海君」 



155 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:36:37 yNetfD42
キキーッ

律子「っと!」バタン

家の前に車を停めると、その中から律子が飛び出してきた。

律子「急いでください、プロデューサー!」

P「ちょ、ちょっと待て…今エンジンを…」

プロデューサーがシートベルトを外しているうちに、律子は家の中に踏み込んでいく。

バンッ

律子「はぁ、はぁ」

美希「あ、律子…さん」

部屋に足を踏み入れると、アイドル達と…その男がいた。

順一朗「おや、君達も来たのかね」

律子「『高木』…」

P「『順一朗』…!」タッ

数秒遅れて、プロデューサーが部屋に入ってくる。 


156 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:39:15 yNetfD42
P(半年前…高木社長が死んだ、そう思っていた時…)

………

順一朗『そうか、順二ちゃんが…』

順一朗『私が社長に戻るか…そうしたいのは山々だが、私も私でこっちで投げ出せない仕事が山積みでね。すまない、そちらには戻れない』

順一朗『君には負担をかけてしまうことになるが…何か困ったことがあるなら、いつでも連絡くれたまえ』

………

P(経営方面は不慣れだった俺は、会長には何度も助けられた)

P「信じられない…」

順一朗「………」

P「本当に…あなたなんですか」

千早「信じようが信じまいが」ザッ

千早が、プロデューサーをかばうように前に立つ。

千早「これが私達の辿り着いた答えです。プロデューサー」 


157 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:40:14 yNetfD42
律子「こちらに戻っていたんですね」

順一朗「あぁ。こちらに用事があったからね」

律子「全国を回っていたそうですが…充分な成果は得られましたか」

順一朗「あぁ…もう、用は済んだよ」

律子(高木順一朗、高木順二朗社長の従兄弟…いえ、765プロの元社長と言うべきかしら)

律子(小鳥さんも、アイドル達も、プロデューサーも、順二朗社長も、そして私も…元を正せばみんなこの人によって集められた)

律子(つまり、765プロという事務所を作った人物…!)

順一朗「せっかく訪ねてきてくれたのだ…どれ、お茶でも淹れてこよう」ス…

春香「動かないで」

順一朗「………」ピタ

春香「そのまま、そこの椅子にでも座っててください」

順一朗「………」

順一朗は、言われるままに椅子に腰掛ける。 


158 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:42:18 yNetfD42
順一朗「君達の活躍は…」

響「!」バッ

順一朗の声色が変わる、それに反応して、アイドル達は警戒の態勢をとった。

順一朗「いつでも見て、聞いていた。仕事をしていても、離れた地にいても。日々名を広げていく君達を、自分のことのように誇らしく思っていた」

順一朗「そして『スタンド使い』としても…私自ら出向いたとは言え、こうして私のことを突き止めた。素晴らしい…」

春香「………」

順一朗「本当に、素晴らしい…君達は…」ス…

順一朗は目を閉じ、座ったまま天井を仰ぐ。大きく息を吐きながら、顔を降ろし…

順一朗「765プロは、もういらない」

目を開くと同時、そう告げた。 


159 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:43:25 yNetfD42
ズズッ

美希が、『リレイションズ』を出した。

ゴゴゴゴゴ

美希「いらないとか、言うだけならなんだっていいケド…」

美希「その前に、765プロのみんなを返して」

亜美「真美は? みんなは無事なの!?」

春香「もし何かあったら、無事はちょっと保証できないです」

順一朗「ふむ…君達は一つ勘違いをしているな」

千早「…勘違い? あの『偽物』達は貴方が差し向けたのでしょう?」

順一朗「確かに、『弓と矢』を様々な事務所に送ったのも、彼女達を君達のところにやったのも私だ」

順一朗「だが、これだけは信じてほしい。私は、君達に危害を加えるつもりはなかった」

P「なかったって…現にみんな傷ついてるじゃあないですか! 千早なんて、ほら! 腕に包帯巻いて!」 


160 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:45:37 yNetfD42
順一朗「私も、彼女達を100%統制できていたわけじゃあない。いや、ある程度統制した上で、それでも手段が強引になってしまったのも認める」

順一朗「それでも、私は君達を痛めつけることが目的ではないし…そうなってしまったのは私としても申し訳なく思う」

順一朗「もっと穏便に済むと思っていたのだがね…君達が想像以上に強かったと言うべきか。天海君の件で、皆鍛えられたのだな」

春香「………」

美希「傷つけるのが目的じゃないなら、じゃあ、目的っていうのはやっぱり、美希達を『偽物』と入れ替わらせるコト?」

順一朗「簡単に言えば、そうなる」

響「それで、自分達を偽物と入れ替えて、どうするつもりなんだ? それに、何の意味があるんだ?」

千早「…『完全なアイドル』」

亜美「ほぇ?」

順一朗「ほう、如月君はもうわかっているようだね」

千早「いえ、わかったわけではありませんが…『偽物』達は、自身のことをそう呼んでいた。それが気になって」 


161 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:47:49 yNetfD42
律子「完全な…アイドル」

美希「それ、ミキも聞いた。なんなの? カンゼンなアイドルって」

順一朗「君達はいつまでアイドルを続けるつもりかね?」

千早「はい?」

美希「質問を質問で返さないで欲しいって思うな」

順一朗「いや、これが重要なことなのだ。すまないが、先に答えてくれたまえ」

亜美「そんなこと言われても…先のことなんてわかんないよ」

春香「私は、できることならずっとやりたいですけど」

順一朗「ずっととは、いつまでだ? 10年? 20年?」

春香「へ?」

順一朗「まさか、50年とはいかないだろう」

美希「50年って、春香おばあちゃんになっちゃうの」

響「春香だけじゃなくみんなおばあちゃんだぞ…」 


162 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:50:22 yNetfD42
順一朗「私はこの業界に飛び込んで、これまで数えきれないほどのアイドルを見てきた」

順一朗「私がプロデューサーとして手がけた中から、ほんの一握りの星が、あの舞台で輝き…そして消えていった。その日々のことは、昨日のように覚えている」

P「………」

順一朗「しかし、今…あの輝きはない。今なお芸能界にしがみついている者がいても、今なお輝いているとしても、それはあの時の輝きではない」

美希「うーん…それはそうかもしんないケド」

順一朗「今、この時代にこそ、あのアイドルが必要だ…そう思っても、あの日の少女はもうどこにもいない」

P「はぁ…」

順一朗「しかし、だ。君、ちょっと来てくれたまえ」スッ

プロデューサーを指差す。

P「へ? お、俺ですか?」

順一朗「そう、君だ。こっちに来てくれ」

P「えーと…」チラッ

アイドル達の顔を、順番に見回す。 


163 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:51:49 yNetfD42
順一朗「心配するな、何も人質に取ろうというわけじゃあない。第一…」

春香「………」

響「………」

美希「………」

千早「………」

亜美「む~ん」

ゴゴゴゴゴ

順一朗「この距離で、君達を相手に人質など取っても無駄だ」

P「…わかりました」ス…

律子「気をつけてください」

プロデューサーは警戒しながら、順一朗のもとへ近づいていく。 


164 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:55:03 yNetfD42
美希(千早さん、何か妙な動きをしたら…)

千早(わかってるわ)

P「で…何故、俺を?」スタ

順一朗「それはな…」スッ

キラリ

プロデューサーが前に立つと、順一朗は鋏を取り出し…

P「な…」

響「あぶないっ!」

千早「『ブルー…」

チョキン

プロデューサーの髪の毛の、ほんの先端を切った。

千早「…え?」 


165 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 22:56:51 yNetfD42
順一朗「うむ、これでいい。ありがとう」パラ…

P「は、はぁ…」

プロデューサーが頭を押さえながら、手前に戻ってくる。

千早(な、何…? プロデューサーの髪の毛を切った? 一体、何のために…)

順一朗「さて」スッ

どこから取り出したのか、順一朗はペンライトのような棒を握っている。

ジ…

その棒の先から光が出て、先程切り取った髪の毛に照射される。

美希「? …??」

順一朗「次は…」バッ

今度は、棒を誰もいない壁に向けた。

ジ…ジジ…ジジ

1mほどの横長の光が、地面から少しずつ上に競り上がっていく。 


166 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:00:50 yNetfD42
律子「な、なに…なにやってんの…?」

亜美「いや…なんか、出てきてるよ!」

ジジ…ジジジジ

光が通り過ぎた部分から、空間に印刷しているかのように、立体が現れる。

千早「こ、これは…」

順一朗「よし」キュッ

出力が終わり、棒を仕舞う。そこにあったのは…

p「………」

P「お、俺…だ…」

本物と寸分違わない、プロデューサーの体だった。 


167 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:03:12 yNetfD42
順一朗「これが私のスタンド、『アイ・ディー・オー・エル』だ。能力は、人や物の記憶から『複製』(コピー)を造り出すこと」

順一朗「DNAには生物の記憶が詰まっている。彼の髪の毛を使い、今の彼と同じ『複製』を作った」

春香「これで、私達の『偽物』…いえ、『複製』を作り出していたんですね」

順一朗「そう。そして、これが重要なのだが…こうして元さえあれば、私は何度でも『複製』を作り出せる」

順一朗「そして、『複製』は…歳を取ることがない…寿命もない。何かアクシデントでもない限り、永遠に同じ姿で居続ける」

千早「…!」

順一朗「そう。だから…『完全なアイドル』」

順一朗「所詮、アイドルは一過性のものだ。流行で、経年で、事故で…すべてのアイドルは、いずれ消える」

P「………」

順一朗「しかし、私の造った『複製』は消えない。例え私が死のうとも、永遠にこの世に残り続ける」

順一朗「私は素晴らしいアイドル達一人一人を、永遠に、この世に残したいのだ」 


168 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:05:28 yNetfD42
亜美「かいちょーが何をしたいのかは、わかったけど…」

亜美「でも、なんで『弓と矢』をバラ撒く必要があったの? なんで、亜美達を『スタンド使い』にしたのさ!」

響「それに、自分達を『複製』と入れ替わらせる理由にもなってないぞ」

美希「そうだよ、そっちでカッテに『複製』を造ってればいいって思うな」

順一朗「順番に話す。それを…彼の『複製』を見てくれ」

P「俺の『複製』?」

p「………」

春香「そう言えば、さっきから動かない…」

千早「…なんだか、全く生気が感じられないわ。と言うより…」

律子「まるで、人形みたい…」 


169 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:08:28 yNetfD42
順一朗「人形か…その通りだ」

律子「え?」

順一朗「その『複製』には精神がないのだ」

P「精神が…ない?」

順一朗「そう。ただ『複製』しただけでは、見た目くらいしか再現できない。所詮、それは彼と同じ姿をした人形に過ぎない」

千早「いえ…でも、だったら…あの『偽物』…『スタンド使い』達は、一体…」

順一朗「そこで出てくるのが…『矢』だ」

春香「『矢』…」 


170 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:11:04 yNetfD42
順一朗「この『弓と矢』は人を選び、才能を引き出す」

律子「ちょっと待ってください。そもそも、あなたはどうやってその『弓と矢』を手にしたんですか?」

順一朗「さぁ、いつだったか…確か、10年…20年…もっと前か? 私がプロデューサーとして活動していた頃だ」

順一朗「その時、私は当時担当していたアイドルを探していてな…彼女はいなくなった時、いつもある公園にいた」

順一朗「そこで…何故あんな場所に落ちていたのか? 誰かが落としたのか? わからないが、その公園で私は『矢』を拾ったのだ」

順一朗「そして…そのアイドルの引退が決まった日だろうか、自分で『弓と矢』の形に修復し、家に飾っていたそれから、私は一つの才能を得た」

律子「それが…『アイ・ディー・オー・エル』」

順一朗「そうだ。そして、そこまで昔ではないか…少し前の話だ」


……

……… 


171 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:13:40 yNetfD42
私はこの世界に関わっているうちに、だんだん消えていった…消え行くアイドル達のことを考え、彼女達のことを…彼女達が輝いていた軌跡を、どうにか世に残したいと…そう考えるようになった。

その想いを振り払うように765プロを立ち上げたが、君達の才能を見ていたらと、その想いは消えるどころか、尚更強くなった。

順一朗『ふぅ…』ジジジ…

しかし、私がアイドルの『複製』を造ろうとした時、そこの彼のように…精神を持たない人形しか造ることはできなかった。

順一朗『私が世に残したいのは、こんな人形じゃあない! 歌って踊れる…「アイドル」だ!』

私は、どうにかして精神を持つ『複製』を造ることは出来ないかと…仕事が終わると毎日のように、人形を作り続けていた。

そんな、ある日のこと…

ヒュッ

ドスゥ!!

順一朗『うっ!? な、なんだ!? 何が起きた!?』

自分で試したわけじゃあない。それは、たまたま…

いや、と言うよりは、まるで…『弓と矢』が自分の意志で動いたかのように、私の造った人形のうちの一体を貫いたのだ。 


172 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:17:40 yNetfD42
スタンドは精神力が具現化したもの。精神を持たぬ人形が得ることはない…

得たところで…精神がないのだ。『矢』で貫かれようが、何の意味もない…

私はその時まで、そう思っていた。

しかし、彼女は…

『………』キョロキョロ

自分の意志で首を動かし、立ち上がり、歩いてみせ…

『おはようございます!』

そして、私に話しかけてきたのだ…

順一朗『あ、ああ…あああああ…』ボロボロボロ

私はしばらくの間、赤ん坊のように泣きわめいていた…涙が止まらなかった…

この時…私が長年抱いてきた想いは、とうとう遂げられたのだと…

私は自分のやってきたことは、間違っていなかったのだと…そう思った… 


173 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:20:32 yNetfD42
………

……


順一朗「そう…スタンドは精神の力…」

順一朗「『複製』がスタンドを持った時…知性の方がスタンドに引っ張られて、『複製』は精神を得たのだ」

春香「それで、他の人形にも『矢』を?」

順一朗「いいや、そう上手くはいかなかった。成功したのは最初だけでな…私が自分で試してみても、人形は『矢』で貫かれた瞬間、砂となって消滅してしまうのだ」

響「え? それじゃ、あのたくさんの『偽物』達はどうやって造ったんだ…?」

順一朗「簡単な話だ。要は、『複製』がスタンドを持ちさえすればいいのだ」

・ ・ ・ ・

響「…ん?」 


174 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:22:34 yNetfD42
順一朗「逆転の発想だ、『複製』したアイドルが『スタンド使い』になれないのなら…」

ゴゴゴゴ

順一朗「本物を『スタンド使い』にしてから『複製』しまえばいい…そうだろう?」

ゴゴゴゴゴ

千早「な…」

律子「なんですって…!?」

順一朗「まず、自分で試してみた。君達も順二ちゃんとして接してきた彼だが…あれは私の『複製』だ」

P「あ、あの社長は、あなたの…!?」

順一朗「結果は…言うまでもないだろう? 君達の方が、彼と接してきた時間は長いはずだ」

亜美「上手くいってたんなら、別に殺す必要なかったじゃん! あれで亜美、胸がすっごくキューってなっちゃったんだかんね!」

順一朗「殺す? …ああ、彼が『矢』に触れて死んでしまったのは偶然だよ。砂にはならなかったが、あれで精神が失われてしまったようだ」

順一朗「しかし、彼がやるはずだったことは、天海君がやってくれたし…医者に死んでいると診断された以上、そのままにするほかなかった」 


175 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:30:01 yNetfD42
春香「ちょっと待ってください…『複製』にスタンドを与えるため…?」

順一朗「?」

春香「それだけのために…」

春香「ただ、それだけのために…事務所に『弓と矢』を送り込んで、アイドル達を『スタンド使い』にしたっていうんですか…!?」

順一朗「そうだが?」

春香「くっ…」グッ

千早「…春香?」

春香は、拳を壊れそうなくらい強く握りしめていた。

順一朗「今はわからなくてもいい。だが、いずれわかる日は来る」

順一朗「そして、これは君達のためにもなるのだ」 


176 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:38:31 yNetfD42
美希「ねぇ、一ついい?」

順一朗「何かね?」

美希「さっき、エイエンにこの世に残るとか言ってたケド…ミキが戦ってきた『複製』って、けっこーカンタンに消えちゃったよ?」

千早「そうよ、彼女達は多少頑丈だけれど…『負け』を認めると、すぐに砂になってしまうわ」

順一朗「ああ、そうだな。これには私も参ったよ…『負け』を認めると、魂の力は非常に弱くなってしまう…結果、彼女達は精神を失い、体を保てなくなってしまう」

順一朗「そんなものはテレビの前には出せないし、私の死後、精神が失われてしまったら二度と元に戻すことはできない」

響「そうだぞ、会長の計画は、最初から終わってるんだ!」

順一朗「そこで、私は考えた…『負け』るのが駄目なら、彼女達が『負け』ない環境を造ればいい」

響「は…?」 


177 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:48:24 yNetfD42
順一朗「もしも全てのアイドルが『複製』に…同じ『仲間』になったら」

順一朗「すべての『複製』(アイドル)が同じ意思を持ったら…そこには、勝者も敗者もいない。それなら、彼女達が消滅することもないだろう?」

順一朗「だから私は、すべてのアイドルを『複製』に変えることにした」

律子「そ、そんな、馬鹿な話…!」

P「みんな『複製』にして、勝ち負けもないなんて…」

P「上手く言えないけど…なんか違いますよ、それ」

千早「プロデューサー」

順一朗「そうかね? では、何故競う必要がある? 何故、潰し合わなければならない? みんなそれぞれ素晴らしいものを持っているのに」

P「競い合ったから、戦ったから…頑張ったからこそ、今の皆があるんだ! 会長が手がけてきたアイドルだって、そうでしょう!?」

順一朗「それは、そうかもしれない。しかし、今や彼女達は完成されたアイドルだ」

順一朗「その『複製』ならば…それは既に完成されている。競い合う必要はない」 


178 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:53:59 yNetfD42
亜美「そうだとしても、アイドルとして出てくるのは『偽物』でしょ!? 本物の亜美達とは違うよ!」

順一朗「そうかね? 本当に、心の底からそう言えるのかね?」

亜美「ふぇ…?」

順一朗「ファンが求めているのは『偶像』としての君達だ」

順一朗「入れ替わりが起きたことや、諍いを起こしたことによる綻びはあっただろう。しかし、それさえなければ君達も入れ替わりには気付かなかったはずだ」

順一朗「事実、君達は順二ちゃん、天海君や水瀬君が入れ替わったことに気付かなかったじゃあないか」

亜美「う…」

順一朗「確かに彼女達は、君達自身ではない。しかし、アイドルとしての君達を完璧に演じることは出来る」

美希「だから、大人しく入れ替われって、そう言うの?」

順一朗「そうしてもらえるとありがたいのだがね。待遇は保証するぞ」

響「待遇は保証するって…どこに連れて行かれるんだ? みんなもそこにいるの?」

順一朗「個人的に、施設を作ったのだ。娯楽はなんでもあるし、望むものはなんでも用意する」

順一朗「あまり大声では言えないが、『アイ・ディー・オー・エル』を使えば金などいくらでも手に入るのでね」 


179 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/17(土) 23:59:11 yNetfD42
亜美「その施設に…亜美達を閉じ込める気?」

響「自分達に、ずっとそこで暮らせって言うのか!? 冗談じゃない!」

順一朗「しばらくはそうなるかもしれないが、数年…『複製』のことが社会的に認知されるようになったら君達も社会に戻れる。そこで、好きなことをするといい」

律子「社会的に認知って、そんなの、されるわけないでしょう!」

順一朗「いいや、されるよ律子君。どんなにスタンド、『複製』を気味の悪いものと思っても、人は皆求めているのだ。永遠に変わらないものを。俗世と切り離された偶像を」

律子「………」

順一朗「さて、私の考えていることはこれでわかってもらえただろうか。で、どうかね? 大人しく来る気は?」

春香「断ります」

順一朗「ふむ」 


180 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:05:30 l5lrJmH.
春香「私は自分でアイドルになりたいから…だから、この道を選んだんです。それだけは、譲れない」

美希「ミキも、自分でキラキラしたものを見たいからアイドルやってるの。おとといきやがれなの」

千早「そうね…」

響「今のアイドルとしての自分の居場所は、自分で掴み取ったものだ。他の奴になんて、あげられない」

亜美「そんなことより、さっさとみんなを返せー!!」

順一朗「…まぁ、わかってもらえるとは私も思っていないさ」

律子「わかっていないのはあなたの方でしょう、会長」

順一朗「?」

律子「あなたは5人…私も含めれば、6人の『スタンド使い』に囲まれています。『大人しく来る気は』…なんて、聞ける立場じゃあないんですよ」

ゴゴゴゴ ゴゴゴ

律子「あなたのスタンドは…戦闘用じゃあないでしょう? 終わりです、これで。あなたの理想も何も」

順一朗「まさか…」 


181 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:07:06 l5lrJmH.
順一朗「まさか私が、何の対策もせずベラベラと喋っているだけだと…本当にそう思ったのかね?」ゴゴゴ

P「がっ…!?」バタン!

千早「!」

突然、千早の後ろにいたプロデューサーが倒れた。

千早「プ…プロデューサー!?」

ヒュン

千早(え?)

何かが千早の視界の隅を掠め、部屋の中に飛び込んでいった。

順一朗「さて」スクッ

順一朗は、平然と椅子から立ち上がる。

美希「逃がさないの、『リレイションズ』ッ!」ドオッ

美希がスタンドで、順一朗に向かって攻撃しようとするが…

ガッ!!

美希「!?」

何者かに、受け止められた。 


182 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:15:20 l5lrJmH.
美希「なのなのっ」ヒュヒュッ

?「ふっ」ガガッ

順一朗の前に立った何者かは、スタンドの腕だけで、美希の攻撃を捌いている。

千早(小さい…子供?)

千早(美希の『リレイションズ』の拳に当たらないよう、腕の部分を捉えている…)

千早(あれは…何者なの? あれも、『複製』…)

?「大丈夫ですか、高木さん」グググ

千早「………え」

その子供の顔を見ようとして、千早は、信じられないようなものを目にした。

順一朗「ああ…君のお陰でな」

?「それは、何よりです」ググ

千早「『優』…!?」

それは記憶の中の、自分の弟と同じような姿をしていた。 


183 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:19:22 l5lrJmH.
響「優? 優って…」

春香「確か、千早ちゃんの弟の…」

千早「いえ…違う。優は死んだ…優の『複製』なの…? いえ、でも…」

優「はっ!」ヒュゴ

美希「むっ!」バッ

少年のスタンドの攻撃に、美希は大きく一歩飛び退く。

キョロキョロ

優「みなさん、初めまして。そして…千早さん」ペコ

少年は辺りを見回すと、丁寧にお辞儀をした。

順一朗「紹介しよう、これがさっき話した、始まりの『複製』…」

順一朗「そして私の造った最強の三体のうちの一人だ」 


184 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:23:40 l5lrJmH.
千早「ま、待って…あなたは一体…」

優「僕は高木さんの護衛です。今は貴女とは何も話すことはありません…が…」

優「天海春香さん」クルッ

春香「え、私?」

優「『複製』のハルカさんは、あなたが倒したんですか?」

春香「…そうだけど?」

優「そうですか…残念です。彼女には、色々よくしてもらいましたから…」

順一朗「『アイ・リスタート』は4番目だが…『アイ・ウォント』に負けるとは思っていなかったのだがな…」

順一朗「しかし、私がアイドル事務所にばら撒いた『矢』の『複製』を持っているわけでもない…一体どうやって倒したのだ?」

優「………」

千早(怒っている…)

千早(やはり、『複製』…私の記憶の中のあの子とは違うわね。あの子が怒る時はもっと感情的になっていたわ) 


185 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:28:00 l5lrJmH.
律子「この子一人で、私達全員と戦うつもりですか?」

春香「最強って言ったけど…それは、みんな倒せるくらい?」

響「美希」

美希「んー…ちょっと待って」

亜美「亜美よりコドモみたいだけど、エンリョなくやっちゃうよ~ん」

ザッザ

全員で、二人を取り囲むように並ぶ。

順一朗「ふむ」

優「いえ、流石に6人の『スタンド使い』相手に正面からやりあえるほど強くはありません」フルフル

目を閉じて、ゆっくりと首を左右に二回振る。

優「ですが…」ス…

目をうっすらと開け、その場にしゃがみ込む。

ドォン!!

『アイ・ウォント』、『インフェルノ』、『リレイションズ』、『トライアル・ダンス』、『スタートスター』…5つのスタンドが一斉に襲いかかった。 


186 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:32:15 l5lrJmH.
順一朗「うむ…これは…」

ゴォォォォォォ

攻撃が、目前に迫る。

優「『ブルー・バード』」

・ ・ ・ ・

少年の横に、765プロの全員が見覚えのあるスタンドが、出現した。

響「こ、このスタンドはッ…!!」ドォッォ

美希「千早さんの…『ブルー・バード』!?」ゴォォォ

千早「同じ…スタンド…?」ヒュゥゥ

ブオンッ!!

律子「!?」フワッ

次の瞬間、順一朗と少年以外の体が、一斉に宙に浮き上がった。 


187 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:41:09 l5lrJmH.
亜美「な、なに…なんでっ!?」

律子「触れられてすらいないのに…私達全員の体を『軽く』した…!?」

優「違います。部屋の『重量』を『奪い』…この部屋の空気を『重く』しました」

順一朗「よっと」グッ

順一朗は、腕の中にスーツケースを抱えていた。

優「順一朗さんの体が浮かないギリギリ、僕も同じくらいの『重量』を残して」

律子「空気を…気体を『重く』…? ですって…」

響「うぐ…体が浮いて、思うように動けないぞ…」バタバタ

美希「『リレイションズ』まで浮いちゃって…パワーが出ないの」モゾモゾ

みんな天井に張りつけられ、思うように動けないでいる。

順一朗「おっとっと…ふぅ、この歳で抱えたまま歩くのは少し厳しいなぁ」スタスタ

優「我慢してください」スタスタ

二人は、涼しい顔で出口へと歩いていく。 


188 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:47:00 l5lrJmH.
春香(『六感支配』…)ズ…

春香(いや、駄目か…私達がこうして動けない以上、気休めにしかならない)

順一朗「それでは諸君…また近いうちに会おう、はっはっは!」

優「早く行きましょう」

少年は急かすように、順一朗の背中を押す。

ドサッ!!

優「………」クルッ

何かが落ちる音がして、少年は振り向いた。

千早「………『ブルー・バード』」スクッ

片膝をついていた千早が、立ち上がった。

優「千早…さん」

千早「天井から『重量』を『奪った』」

優「『同じスタンド』…『同じ能力』」 


189 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:53:12 l5lrJmH.
優「順一朗さん、先に行っててください」

順一朗「ああ…そうさせてもらうよ」ガララッ

スーツケースを押しながら、順一朗は去っていく。

千早「待って…!」

優「通しません」スッ

順一朗追おうとする千早の前に、少年が立ちふさがる。

律子「千早…!」

美希「千早さん」

亜美「千早お姉ちゃん!」

響「千早っ!」

春香「千早ちゃん」

千早「行くわよ…」スッ

優「………」ス…

お互い、向き合って構えた。 


190 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 00:55:41 l5lrJmH.
千早「はぁっ!!」ゴォッ

千早が『ブルー・バード』で殴り掛かるが…

優「………」パシッ

千早「!」

少年の『ブルー・バード』が腕を掴むと…

フワ…

『重量』を千早の方に『与え』ると、顔の高さまで全身が浮いた。

グイッ

千早「きゃ…」フラッ

空中で、今度は『重量』を『奪い』ながら、腕を引いた。千早の『ブルー・バード』が手前に引っ張られる。

優「んあっ!!」ズダン!!

千早「うっ…!!」バキャア!

ザザザザッ

そのままの流れで蹴りを鎖骨の辺りに叩き込まれ、千早はスタンドごとブッ飛ばされた。 


191 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 01:01:06 l5lrJmH.
千早「ごほっ、ごほ…」

千早は膝をついて、咳き込んでいる。

千早(速く、強い…そして正確…私の『ブルー・バード』より、全てにおいて上…)

優「それは本来のスタンドじゃあないですからね…こんなものでしょう」スタッ

千早の目の前に立つ。

千早「う…『ブルー…」

優「………」スッ

スタンドを構えようとするが、それよりも早く少年は千早の耳元に顔を近づけた。

優「………」ボソッ

千早「え?」

優「では」クルッ

スタスタ

千早の耳元で何かを囁くと、少年はそれ以上は何もせず去っていった。 


192 : 『弓と矢』と高木順一朗 :2015/01/18(日) 01:07:18 l5lrJmH.
春香「おお~う」フワ…

しばらくし、『重く』された空気が部屋の外の空気と混ざってくるにつれ、みんなゆっくりと地面に降りてきた。

律子「あれが、『ブルー・バード』…めちゃくちゃやってくるわね…」

響「むー、次会ったら勝つ!」

亜美「うむ! 亜美も次は本気でやっちゃうからね!」

千早「………」

美希「ねぇ、千早さん」

千早「え? な、何かしら、美希」

美希「最後、あの子供なんか言ってなかった?」

千早「それは…」

千早は、先程少年に言われた言葉を思い出していた。

優『話したいことがあります。明日、一人でまたここに来てください』

千早「なんでも…ないわ」フルフル

美希から目を反らし、ゆっくりと首を左右に二回振った。

To Be Continued… 


193 : >>1 ◆CKAtMuT12w :2015/01/18(日) 01:09:04 l5lrJmH.
おっと、今回の分はこれで終わりです

スタンド名:「アイ・ディー・オー・エル」
本体:高木順一朗
タイプ:特殊・道具型
破壊力:なし スピード:なし 射程距離:E(1m) 能力射程:E(1m)
持続力:A 精密動作性:A 成長性:完成
能力:高木順一朗が持つ、すべての始まりのスタンド。
ペンライトのような形状をしており、光を照射したものに宿った記憶の中から「複製」を作り出す。
生物も「複製」できるが、ただ「複製」しただけでは精神が失われてしまう。
「精神」を定着させるためには、精神を引っ張るための力…「スタンド」が必要となる。
だからこそ、順一朗はアイドル事務所に「弓と矢」を送り込み、アイドル達を「スタンド使い」にしていた。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

スタンド名:「ブルー・バード」
本体:「優」
タイプ:近距離パワー・標準
破壊力:C(E~A) スピード:A 射程距離:C(12m) 能力射程:C(12m)
持続力:C 精密動作性:B 成長性:C
能力:もう一つの「ブルー・バード」。姿は千早のものとほぼ同じだが、仮面をつけていない。
体格が一致している優は、その性能をフルに引き出すことができ、性能は千早のものを全ての面で上回る。
「気体」も含め、周囲のあらゆるものの「重量」を自由自在に操ることができる。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ 


200 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:13:32 zu4Ow1Do
千早(高木会長を取り逃がし、私達は全ての手がかりを失った…)

千早(765プロも、また襲撃されるかもしれない。あるいは、『複製』が直接自宅に来るかもしれない)

千早(そうなれば、そこから入れ替わるかもしれないし、また、家族にまで危害が及ぶ可能性かもしれない。アイドルのみんなは、自宅待機を言い渡された)

千早(けれど、私は…)

『話したいことがあります。明日、一人でまたここに来てください』

千早(その言葉の通り、一人で高木会長の家まで来ていた…)

優「…………」

千早が辿り着いた時、彼は既にそこに立っていた。

優「あっ!」

パタパタパタ

向こうも千早の存在に気がついたのか、少年は無邪気な顔をして駆け寄って来る。

優「千早さん、こんにちは! 来てくれたんですね!」

千早「…ええ、こんにちは」

千早(敵意は…感じられない。気を許すわけにはいかないけれど…)

千早(でも、この子が『スタンド使い』で…昨日、高木会長の護衛として、私達の前に立ちはだかった『複製』だったなんて、とても思えない…) 


201 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:14:20 zu4Ow1Do
千早(それにしても…)

優「ああ、来てくれてよかった…すみません、こんな形で呼び出してしまって。他にいい方法が思い浮かばなくて」

千早(こうして見ると、本当に、あの子によく似ている…)

優「千早さん?」

千早「えっ? な、何かしら?」

優「なにやらぼーっとしていたみたいなので…」

優「あっ、調子がよくないとか? も、もしかして、昨日の僕の攻撃が…」

少年はあたふたしている。

千早(得体の知れない『複製』だと思ってたけれど…なんだか、急に年相応の子供に見えてきたわ)フッ

その姿を見て、千早は一息つく。

千早「いえ、そういうわけではないの。えーと…あなたのことは、何と呼べばいいのかしら?」

ユウ「僕の事は、ユウと呼んでください」

千早「…じゃあ、ユウ君」

ユウ「はいっ」 


202 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:15:10 zu4Ow1Do
千早「今日、私を呼んだ目的は何? あなたは、自分を高木会長の護衛と言った…いわば、敵同士でしょう」

ユウ「え、えーと…それは…」ソワソワ

千早「?」

少年はしばらく、落ち着かない様子だったが…

バッ

意を決したように目を瞑ると、勢いよく頭を下げた。

ユウ「千早さん! 僕と、デートしてください!」

・ ・ ・ ・

千早「…はい?」

ユウ「あっ…違います! デートと言っても、恋人同士でするようなものとわけではなくて…」バタバタ

千早(別に、そんなことを気にしているわけではないのだけれど…)

ユウ「ただ、一日…今日一日でいいんです、僕と一緒に遊び回ってください!」

千早(………) 


203 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:16:11 zu4Ow1Do
千早(意図が読めない。この子は一体何が目的で、私と遊びたいだなんて言っているの…?)

千早(しかし…私達は、全ての元凶である高木会長を逃がしてしまった。そして彼の行方も知れない)

千早(今、手がかりはこの子しか…今までを考えれば、『複製』が口を割るとは思えないけれど…それ以外に、ない)

ユウ「駄目ですか…?」

千早「いえ、わかったわ。それでいいなら」

ユウ「あ…!」パァッ

千早(この笑顔…)

千早(昨日は、あくまでも淡々としていたのに…どうして今日はそんな、あの子みたいな顔を見せるの…?)

千早「………」

ユウ「千早さん…? やっぱり、どこか体調悪いんじゃ…」

千早「いえ…大丈夫よ。それより、どこか行きたいところでもあるかしら?」

ユウ「そうですか…? それなら…」 


204 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:16:56 zu4Ow1Do
ユウ「わーっ!」

ズンッ ズンッ

柵から身を乗り出す少年の目の前を、大きな象がのっそりと横切る。

ユウ「わーっ、わーっ! でっかぁ…!」

千早(ユウ君が行ってみたい、と言うので私達は動物園に来た。のだけれど…)

ユウ「でっかい! 凄い! でかいですよ、千早さん!」

象を指差し、顔をしきりに千早と象に往復させながら、興奮気味に言う。

千早「象を見たのは、これが初めて?」

ユウ「本とか、記憶の中ではありますけど…実際に見たのは、これが初めてです! うわーっ!」

千早「ふふっ…」

千早(なんだか、おかしい…あんなに目を輝かせて、本当に子供みたいね) 


205 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:17:41 zu4Ow1Do
ユウ「はーっ、すごかったー」

千早「ユウ君は、動物園に来たことはないの?」

ユウ「ありません。高木さんに連れて行ってもらったのは、アイドル関係のことばかりでこういうところは初めてです」

千早「あら、アイドル関係と言うとライブかしら? 会長がそういうところに連れて行くなんて、意外ね」

ユウ「僕は他の『複製』と違って…えっと、多少は、表に出ても大丈夫ですから」

千早(『複製』は、実在のアイドルの姿をしているから…表に出れば、パニックになるかもしれない。でも、優はこの世にはいないから…)

ユウ「あっ、あの! それより、千早さんは動物園にはよく来るんですか?」

千早(あ…私、また暗い顔していたかしら…駄目ね、この子といるとどうしてもあの子のことを思い出してしまう…)

千早「ええ、まぁ…気分転換になるし、時々」

ユウ「じゃあ、次の順路に何がいるかもわかりますか!?」

千早「知っているけれど…内緒よ。次見てのお楽しみ」

ユウ「う~っ…それじゃ、早く行きましょう!」タッ

千早「ふふ、そんなに急がなくても逃げたりしないから大丈夫よ」

千早(でも、なんだか…どこか懐かしくて、楽しくて…こういうのも、悪くないわね) 


206 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:18:26 zu4Ow1Do
ユウ「さあ願いを願う者達 手を広げて 大地蹴って 信じるなら」

千早(ユウ君は動物園を堪能した後、今度はカラオケに行きたいと言ってきた)

千早(そして今、この子の歌を聞いているのだけれど…)

ユウ「翔べ 海よりも激しく 山よりも高々く」

千早(上手い…)

ユウ「今 私は風になる 夢の果てまで」

千早(声質の違いはあるけれど、私と比べても見劣りしないのでは…?)

ユウ「ヒュルラリラ もっと強くなれ」

千早(優は、こんなに歌は上手くはなかったはずだけれど…)

ユウ「ヒュルラリラ 目指す arcadia ………」

パチパチパチ

曲が終わると、千早が拍手をした。

千早「凄い、上手いじゃないユウ君。驚いたわ」

ユウ「ありがとうございます! 千早さんにそんなこと言ってもらえるなんて、夢みたい…」 


207 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:19:13 zu4Ow1Do
ジャラジャラジャラ

ユウ「あれ…?」

画面が切り替わり、スロットのように数字が回転している。

千早「えーと、これは今の歌に点数をつけてくれるのよ」

ユウ「え、そうなんですか!? わぁ、何点出るか楽しみ…」

『72点』バンッ

ユウ「え…?」

千早「あっ、ほらユウ君、これはあくまでも機械による採点で…そういうものなのよ」

ユウ「…採点は切りましょう。でも、その前に…」ポチポチ

少年が手元のパッドをいじると、カラオケのスピーカーから『inferno』のイントロが流れ出す。

ユウ「はい、どうぞ千早さん」

千早「えっ、ちょっと…私が歌うの?」

ユウ「僕だって千早さんの歌聴きたいし、そのために来たんですから。それに、千早さんの点数も低かったら、機械が悪いんだって納得できます」

千早「もう…」 


208 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:20:33 zu4Ow1Do
千早(それから…たっぷり歌った後、本屋に寄り、ユウ君は数冊の本を買っていった)

千早(私は少し疲れたので、休憩しようと言って二人で私の知っている喫茶店に入った)

ユウ「見てください、この雑誌、千早さんが表紙ですよ!」サッ

少年が、テーブルに買ったばかりの雑誌を置く。

千早「この間、撮影したものね。今、765プロは休止中だから…新しい写真が載るのは、これが一番最後かしら」

ユウ「大丈夫。またすぐに載るようになりますよ」

千早「それは、私の『複製』が?」

ユウ「あ… ………いえ、千早さんは…」

「メロンのデラックスパフェお待たせしました~☆」ゴトッ

少年の言葉に挟まれるように、目の前におっきなパフェが置かれた。

ユウ「あ、えっと…」

千早「いいわよ、食べてしまって」

ユウ「…すみません。いただきます」

千早(わざわざ、言うようなことではなかったかもしれない…)

千早(でも、私達の立場はあくまでも敵同士…それは、忘れてはいけない) 


209 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:21:42 zu4Ow1Do
千早「そう言えばあなた、食事を摂っても大丈夫なの?」

千早(血が出ない…と言うことは、食べることに関しても問題はあると思うのだけれど…)

ユウ「ええ。食べる必要はありませんけど、味覚はちゃんとありますから。美味しいものは美味しいと感じますよ」

千早(それだけの問題なの…? まぁ、本人がいいと言っているのならいいのでしょうけど)クイッ

そう思いながら、テーブルに置かれたコーヒーを口に運ぶ。

ユウ「んぐんぐ…」ヒョイヒョイ

少年はがっつくように、パフェを食べている。

千早「………」

ユウ「どうかしました? 僕の顔に何かついていますか」

千早「……ふぅ。ちょっと、動かないで」スッ

キュッ

千早はナプキンを取ると、手を伸ばし、少年の口を拭いてあげる。

千早「はい、取れた。口にクリームがついてたわ。たっぷり」

ユウ「あ…す、すみません」

恥ずかしそうに目線を下げてから、スプーンを丁寧に口に運んだ。 


210 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:23:38 zu4Ow1Do
千早(わからなくなる…昨日の、あの兵隊のような『スタンド使い』のユウ君と、今私の前で無邪気にパフェを食べるユウ君…)

千早(昨日のあなたと、今のあなた…どっちが本当のあなたなの…?)

ユウ「ふぅ、ごちそうさま…」

千早「…そろそろ、話してもらおうかしら」

ユウ「え?」

千早「あなたの目的。なんのために、私を誘ったの?」

ユウ「………」

少年は、空になったパフェの容器を見つめている。

千早「今日は…正直言って、楽しかったわ」ギュゥ

下唇を軽く噛む。

千早「そう、まるで…あの子が帰ってきたみたいで」

ユウ「! 本当ですか!」

千早「…?」

千早(何かしら…今の言葉が、そんなに嬉しいの…?) 


211 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:24:44 zu4Ow1Do
ユウ「あの…千早さん」スッ

少年は姿勢を正し、真剣な…昨日見たような、冷たさも感じるような目で千早を見る。

千早「…何かしら」

ユウ「僕を、弟にしてください」

ゴゴゴゴ

ゴゴゴゴゴ

千早「それは、あの子の代わり…ということ?」

ユウ「そう取ってもらって構いません。千早さんが言ってくれたように、今日は、代わりとしては…上手くやれたつもりです。自分でも驚くくらい…」

千早「…なるほど、納得したわ。最初から、それが目的だったのね」

ユウ「そ、それは違いますっ」ズイッ

千早「!」ビクッ

急に身を乗り出して来られて、千早の体が後ろに傾いた。 


212 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:26:26 zu4Ow1Do
ユウ「私、ちはやちゃんの…」

千早「…ちはやちゃん?」

ユウ「あ…」ハッ

少年は乗り出していた体を席に戻し、顔を背ける。

ユウ「い、いえ。僕、千早さんのファンですから…一緒に、こういうことしてみたかったんです」

必死になって訴える。『複製』でなければ、顔は真っ赤になり、汗は滝のように流れていたのだろう。

千早「そう、なの…?」

ユウ「はい。確かに、この話をするためにこうして誘いました…でも、最初からとか、それだけと言うのは違います」

ユウ「だから、僕も…自然に、優君のように出来たんだと思います」

千早「…わかった、そのことは信じるわ」

ユウ「あ…!」

少年の顔がぱぁっと明るくなる。

スッ

しかし千早は、それに静止をかけるように少年に手のひらを向けた。

千早「でも、それとこれとは話は別よ」 


213 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:29:28 zu4Ow1Do
千早「優の代わりとして受け入れろなんて…無理よ。母も私も、あなたを見ればきっとあの子を思い出すから」

ユウ「思い出しても、何も問題はありません。だって、僕が優なんですから」

千早「違う…」

ユウ「違いません。もしも…姿も、記憶も、性格も…なにもかも、優君を完全に再現できるのなら…それは、優君本人と変わらないのではありませんか」

千早「本人と…変わらない…」

千早(………)

ユウ「千早さんだって、春香さんが『複製』のハルカさんに変わっていたことには気がついていなかったでしょう?」

千早(そういえば、以前…春香と一緒に、小さな子と親を探しまわったことがあった)

千早(時期を考えると、あの春香は『複製』だったのでしょうけど…あの時は、そんなことには気付かなくて…)

千早(その陰では765プロが…いえ、アイドル業界自体が危機に陥っているなんて、思ってもいなかった…)

ユウ「高木さんは、ある場所で本物のアイドルの皆さんを保護しています。あの人の理想は…貴女達を傷つけるためのものではありません」

千早「確かに…彼女達は、『演じる』能力は高いのかもしれない。春香も、水瀬さんも、私達は入れ替わっていたことに全然気づかなかった…」

千早「疲れることも老いることもないのなら、確かに『完全なアイドル』としてふさわしい存在なのかもしれない…」

千早「そして、あなたも…完全な優を再現できる…のでしょうね、きっと」 


214 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:30:22 zu4Ow1Do
ユウ「なら…!」

フルフル

千早「でも、やっぱり駄目よ」

期待するような少年の声を、両断するように首を振り、千早は言った。

ユウ「どうして…」

千早「完全に再現できるから、入れ替える…? 結局、それは私たちのやってきたことを、私たちが積み上げてきたものを、他人に渡すということでしょう」

千早「その積み上げてきたものこそが、人間よ。それがなければ、もうただの生物としてのヒトでしかない」

千早「例え本人に危害が加わらないからと言って、そんなことは許されないわ」

千早「それに…いくら表面を真似ることができたって、誰かが他人の代わりになるなんて、できっこない。絶対に」

ユウ「僕も、ですか」

千早「ええ」スッ

ためらいもせず、頷く。

千早「私の弟は、たった一人、あの子だけよ。あなたじゃあない」 


215 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:32:00 zu4Ow1Do
ユウ「………」

ユウ「やっぱり…僕は、誰にもなれないんですね」

千早「…?」

ユウ「でも…それは嫌だ。認めてもらいます。どうあっても…」キッ

千早「!」

ゴゴゴゴ

少年が、千早のことを睨みつける。

ユウ「そう、僕達は同じスタンドを持った同士…お互い譲れないなら、やり合うしかないんだ」

ゴゴゴゴゴゴ

千早(やり合う…スタンドで、『ブルー・バード』を使って戦うつもり…?)

千早(何故、この子は…ここまで、優の代わりになることを望んでいるの…?)

千早(いえ…そもそも、何故この子はアイドルではなく優の姿をしているの…?) 


216 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:32:41 zu4Ow1Do
スッ

少年が、席から立ち上がる。

ユウ「店の中でやりあうわけにも行かないですね。外に出ましょう」

ユウ「今度は、貴女も『インフェルノ』で…本気で来るはずですよね。僕も本気で行かせてもらいます」

千早「本気も何も…私は今こんな状態よ」スッ

ユウ「!」

袖をまくって、包帯の巻かれた右腕を見せる。

千早「あなたが怪我をしている私に勝ったところで、何も納得なんてしないわ」

ユウ「………」

千早「それに…せっかく楽しかった一日なのに、それを台無しにしてしまうようなことはしたくない…」

ユウ「…そうですね」フッ

カタン

少年から戦意が消え、椅子に座った。

千早(これで、戦いは避けられた…いえ、先延ばしになっただけね)

千早(ユウ君が望んでいるなら、この子の言う通り、私達はいずれ戦わなければいけない…) 


217 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:33:14 zu4Ow1Do
ユウ「千早さん。ペン、貸してくれますか?」

千早「? ええ」

言われるがままに、胸ポケットに入れていたボールペンを渡す。

ユウ「では…」スッ

パラパラ

ユウは書店の紙袋から、地図帳を取り出し、関東地方のページを開く。

ユウ「見てください。神奈川の港から、船で1時間くらいでしょうか…」ススス

神奈川の海岸から、太平洋側にペンをなぞっていく。

ユウ「ここです。この島に、高木さんも…連れて行かれたアイドルの皆さんも、います」キュッ

その先にある島の一つに、丸印をつけた。

千早「島!? 高木会長はそんなものを所有しているの…!?」

ユウ「長年の蓄えもありますし、芸能事務所の社長をやるくらいですからね。『アイ・ディー・オー・エル』もありますし」 


218 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:34:17 zu4Ow1Do
ユウ「どうぞ。これは持っていってください」スッ

少年は地図帳を閉じると、千早に差し出した。

千早「待って、どうしてこんなことを教えてくれるの…? あなたは高木会長の味方でしょう」

ユウ「高木さんが向こうに行った以上、僕もあっちに行かなければなりませんから。一日だけ、ワガママを許してもらったんです」

ユウ「『複製』はアイドルとして表舞台に立つことになりますが…僕は、アイドルではないですから」

ユウ「今は、護衛として使ってもらえていますが…高木さんの理想が叶った後、僕は用済みになるでしょうね」

ユウ「そうなったら…この世に、僕の居場所はなくなる…」ギュッ…

自分の体を抱きすくめる。

ユウ「それだけは、嫌だ…一刻も早く、貴女の弟として、僕だけの居場所を手に入れなければならない」

ユウ「だから、貴女には島に来てもらわなくてはならない。決着をつけ、僕が居場所を得るため」

千早「居場所…それが、そんなに大事なものなの…?」

ユウ「それは、千早さんが一番よくわかっていると思いますが」

千早「………」

ユウ「僕は諦めない。必ず、貴女に僕の存在を認めてもらいます」 


219 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:35:54 zu4Ow1Do
ユウ「千早さん。今日は、ありがとうございました。もう、高木さんの下へ行かなければならないので…僕は、これで」スッ

少年は伝票を持って立ち上がると、千早に背を向けて歩き出す。

千早「優君」

ユウ「はい?」クルッ

千早が呼び止めると、上半身だけ振り向いた。

千早「今日、一緒に過ごして…楽しかったわ。とても」

ユウ「…僕も、楽しかったです。本当に」

カランカラン

会計を終えると、少年は店から出て、やがてその姿は見えなくなった。

千早(ユウ君…)

千早(地図帳を買っていた…最初から、こうなることをわかっていたの…?)

千早(…高木会長の居場所はわかった。早く、皆に伝えなくては) 


220 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:36:35 zu4Ow1Do
春香「じゃあ、会長は…みんなは、この島にいるんですね?」

律子「ええ、恐らく…でも、ここ以外ないと思うわ」

千早「………」

千早が事務所に来ると、みんな事務室に集まっていた。

大海「はいっ! みなさん、拡大地図用意できましたよ!」バッ

大海が壁に拡大図を貼る。ちょうど、千早が地図帳で見たものと同じような図面だ。

P「お、千早。来たか、遅かったな」

千早「プロデューサー、これは一体…」

P「順一朗会長が犯人だってわかっただろう? それで、会長に身辺について調べていたら、2年前に島を買っている事がわかったんだ」

美希「ほら、ちょうどこのあたりだって」ピッ

千早「あ…」

美希が指差した場所は、少年が丸印をつけた部分と一致していた。

P「どうした、千早?」

千早「…いえ、なんでもありません」スッ

千早は、持っていた紙袋を背中に隠した。 


221 : 『蒼い鳥』その1 :2015/02/01(日) 02:37:39 zu4Ow1Do
小鳥「ほら、この写真。霧に囲まれて、中がどうなってるのかよくわからないのよ」

響「うわぁ、いかにもって感じだな…」

千早(疑っていたわけではないけれど…あの子の言っていたことは、本当だったのね…)

亜美「それにしても、千早お姉ちゃん遅かったよねホント。何やってたの?」

千早「何やってたのって…むしろなんで、皆集まっているのかがわからないのだけれど」

P「え? メール送っただろう? それ見て来たんじゃないのか」

千早「メール…? あ…」

千早が携帯電話を見ると、確かに事務所集合のメールが送られていた。

千早「気がつかなかった…」

亜美「気がつかなかった? 何やってたのかな~ん? なんかアヤシーですぞ?」

千早「………」

ユウ『…僕も、楽しかったです。本当に』

千早(もう一度…あの子に会わなくては)

千早(決着をつけるため、なんかじゃなくて…あの子のために、何かしてあげなくては) 


222 : 『蒼い鳥』その1/おわり :2015/02/01(日) 02:39:11 zu4Ow1Do
美希「相手の居場所がわかった以上、乗り込むしかないの!」

P「音無さん、大海さん、申し訳ないんですが…」

小鳥「わかってますよ。事務所のことなら、私達が頑張ります」

大海「あと、みんなの家族や響ちゃんのペットのことも! 任せてくださいっ!」

響「デリケートな子もいるから、ちゃんとやってよね?」

P「出発は明日だ! 俺はスタンドを使えない、みんなに任せることになってしまうが…えーと…律子、頼む」

律子「みんな! この先何があるかわからないわ、準備と覚悟だけはしっかりしておくように!」

亜美「ラジャー!」

響「覚悟なら、とっくにできてるぞ!」

美希「そうそう。律子…さんこそ大丈夫?」

律子「あんたね…」

春香「行こう、みんなを…765プロを、取り戻すために」

千早「…ええ、そうね」

P「よし! それじゃあ明日の朝ここに集合…765プロ、出発だ!」

「「「はいっ!!」」」 




229 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:43:15 bUYu/DSM
ブロロロロロ…

響「んーっ、潮風が気持ちいいーっ」

千早(船の穂先が、海を切り分けていく。私の長い髪が風に揺られている)

亜美「兄ちゃん、こんなの運転できたんだね」

P「ああ、昔事務所が暇だった頃に免許取ったんだよ。まさかこんな形で役立つとは思ってなかったけどな…」

千早(私達…残っていたアイドル達とプロデューサーは、中型のモーターボートを借り、神奈川の港から例の島に向かっていた)

ゴゴゴゴ ゴゴゴ

海上に、ドームのような白い塊が見えてくる。

春香「霧が凄いですね…あれが?」

P「そう、みたいだな」 


230 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:46:00 bUYu/DSM
亜美「おお…! なんかゲームのラストダンジョンっぽい! めっちゃ燃えてきた!」

律子「ゲームと一緒にしてんのはともかく…地図と照らし合わせてみても、あれで間違いないわね」カタカタカタ

律子は左手の地図を見ながら、右手でノートパソコンのようなスタンドのキーボードを叩いている。

春香「律子さん、中はどうですか?」

律子「ふー…」フルフル

ため息をつきながら、首を振る。

律子「駄目ね…『ロット・ア・ロット』で偵察しようと思ったけど、近くに出しても中に出しても、すぐ破壊されてしまうわ。何かある…」

律子「あの『霧』が、中に入ろうとする者を排除するバリアになっているんだわ。だから、どうなっているのか誰もわからないのね」

亜美「真美があの中にいると思うんだけど、『スタートスター』も届かないね。ま、最初はちゃんと正面から入らないとね!」

P「最初って、次なんてないと思いたいが…」 


231 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/02/26(木) 03:46:35 pKWmRrPc
見てるぞ支援 


232 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:47:21 bUYu/DSM
亜美「あの『霧』もスタンドなのかな?」

P「スタンドってのは『スタンド使い』にしか見えないんじゃないのか?」

春香「島を覆うくらいですから、プロデューサーさんにも見えるほど存在感があるのか…あるいは『霧』自体はスタンドじゃあないのかもしれません」

律子「美希。『リレイションズ』で遠くの方まで見てくれない?」

美希「むにゃ…」

律子「って、寝るな! こんな時に!」

美希「んー…? もう着いたの…? あふぅ…」ゴシゴシ

美希は目を擦り、ゆっくりと両手を伸ばしている。

律子「はぁー…こんなんじゃ使い物にならないわね…」 


233 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:48:15 bUYu/DSM
P「なぁ、近づいても大丈夫なのか…? 律子のスタンドが近づいただけで破壊されてるんだろ…?」

春香「大丈夫じゃなくても… ………」

春香「逃げ帰る選択肢なんて、私達にはありませんよ」

P「春香…」

律子「プロデューサー、怖じ気づいたのなら帰ってもいいですよ」

亜美「ほらほら兄ちゃーん、ここにきんきゅー用のボートがあるよん」

P「これに乗って帰れってか!?」

響「危ないなんて、当たり前だろ。でも、みんなを助けるためにはそんなこと言ってられないぞ!」

美希「すぅ…」

亜美「なんかあっても、亜美達でなんとかするからさ!」

千早「プロデューサー。構いません、行ってください」

P「…わかった。突入するぞ!」

ブロロロロ… 


234 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:49:14 bUYu/DSM
千早(あの中に、きっとあの子もいるのでしょうね…もしも、もう一度会ったら…)

千早(………)

千早(いえ、やめましょう。765プロの…アイドルの皆を助け、高木会長を止める…まずは、それが一番優先すべきことよ)

ゴゴゴゴ

千早(そのためにもまずは、この『霧』を突破しなくてはならない)ス…

千早は、ボートの先端に立った。

千早「『インフェルノ』」

千早(霧というものは、蒸気が冷やされて発生するもの)

コォォォォォォ…

ユラ…

千早の周囲が、熱で揺らめいていく。

千早(なら、熱を『与え』てやれば…) 


235 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:49:59 bUYu/DSM
ゴゴゴゴ ゴゴゴ

『霧』の壁が、目前に迫る。

千早「はぁっ…!!」

ズパァン!!

『インフェルノ』が拳を叩き込むと、大きな穴が空いた。

律子「よし!」

バァァーン

ボートが、厚い霧の壁を突破する。

ス…

響「内側も、結構霧っぽいな。今の壁よりは全然薄いけど」

美希「ん…」

春香「ほら美希、もう着くよ。起きて」 


236 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:50:44 bUYu/DSM
カッ!

ユラ…

響「…ん?」

何かが衝突し、船体が僅かに揺れた。

律子「プロデューサー、どこかぶつけました?」

P「え? そ、そうなのかもな…ぶつかるようなものはなかったと思うんだが」

亜美「ここまで来たら、ちょっとくらいぶつけちゃってもへーきだって」

ヒュン!

響「………」

響「ねぇ、霧の中で何か…飛んでないか?」

千早「飛んでる…? 鳥かしら…」

ブゥゥーン…

千早「確かに…何か、いる…」

P「? そうなのか、ここからじゃ見えないな…」

響「…スタンドかっ!?」 


237 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:51:23 bUYu/DSM
ビス!

亜美「わっ!?」

ガガガガガガガガ

霧の中から飛んでくる小さな何かが、次々とボートに降り注いでくる。

P「うおおおおおおおおおおおお!? 何だ!?」

春香「美希! 起きて、美希!」

律子「こ、これは…もしかして、私の『ロット・ア・ロット』を破壊していたのは…」

ガッ! ガガガッ!

P「あああっ、借りたボートに傷が…!」

響「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」 


238 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:52:06 bUYu/DSM
ビュ!

千早「…そこ!」パシッ

『インフェルノ』の手が、降ってくるうちの一つを掴み取った。

千早「これは…『花びら』…? 刃のように鋭く尖っている…」

ヒュン! ガガ! ガガガガ!

千早「くっ!」ビッ!

降り注ぐ刃が、船体だけでなく、千早の体も切り裂いていく。

千早「花びらのようなスタンドが…」

千早「霧の中から襲いかかってくる…!!」 


239 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:53:29 bUYu/DSM
律子「『ロット・ア・ロット』!」

ブゥン

ドス! ゴガッ! ガガッ

船の周囲に設置された無数の箱形の衛星が、攻撃を受け止める。

律子「これで少しは…」

グゥゥーン

律子「!」

箱に収まった『花びら』は、ひとりでに脱出し…

ガガガッ! ガガ!

律子「きゃああっ!!」

再び、衛星を避けてボートへ降ってくる。

律子「意思を持って向かってくる…私の『ロット・ア・ロット』と同じ、群体の『遠隔操作』スタンドだわ!」 


240 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:54:44 bUYu/DSM
響「ドラァ!」バゴン

響が蹴り飛ばすと、『花びら』は脆く崩れ去るが…

ズガガガガガ

響「わっ!」

おかまいなしに、他の個体がどんどん攻撃してくる。

響「パワーは大したことないけど、数が多すぎるぞ!」

グラグラグラ

『花びら』が船体にぶつかるごとに、揺れが少しずつ大きくなっていく。

P「こっ」グラグラ

P「このままじゃあ、島に辿り着く前に沈むぞ…!」

バッ!

亜美「んっふっふ~、ここは亜美の出番のようだね」

亜美が、仁王立ちして右腕を天に突き上げた。

千早「あ…亜美? 何を…」 


241 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:55:22 bUYu/DSM
亜美「『スタートスター…」

ス…

ヒュンヒュン

亜美「あり?」

しかし、亜美が何かするより先に、『花びら』はすべて、空に向かって飛んで行ってしまった。

春香「『アイ・ウォント』」

亜美「はるるん…?」

春香「『触覚支配』。スタンドがたくさんあっても、本体はひとつだけのはず」

春香「そして、落ちてくる、ってことは重力に従って動いてきているってこと。だったら、その感覚を逆にしちゃえば…」

ゴォォォォォ…

春香「花びらは逆方向に飛んで行く」 


242 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:56:25 bUYu/DSM
響「ふぅ…」

律子「手荒い歓迎ね…岸に着く前にこれだなんて、骨が折れそうだわ」

響「ここから泳いでいくことになるかと思ったぞ」

千早「でも、これからはより困難が待ち受けているはず…」

律子「そうね。行きましょう」

亜美「いやー、それにしてもはるるんは頼りになりますなー」

春香「亜美、なんか怒ってない?」

亜美「べっつにー。怒ってないよーだ、ぶーぶー」

P「よし、もう着くぞ。みんな準備してくれ」 


243 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 03:58:50 bUYu/DSM
ザアァァァ…

木の枝が、風で音を鳴らしている。765プロが上陸したのは、深い森の中だった。

キー キー

響「動物の鳴き声が聞こえるぞ」

千早「何故、こんなところに?」

律子「ここがいいのよ。今ので、私達が来たことはバレているでしょうけど…この中なら、少しは見つかるまでの時間は稼げる」

春香「これから、どうするんですか?」

律子「まずは私の『ロット・ア・ロット』で島を調べ尽くして、捕まったみんなの居場所を探り出すわ」

P「それから、俺がその近くまで運ぶ。みんなには、いくつかのチームに分かれてもらうことになるかもしれない」

春香「島を調べ尽くす…かぁ。考えてみればとんでもないスタンドですよね、それ」

律子「あんたには言われたくないわ」 


244 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 04:00:00 bUYu/DSM
響「亜美、『スタートスター』で真美のところまでワープできないの?」

亜美「うーん…なんか、上手くいかないんだよねー。真美のスタンドが『スタートスター』じゃないのかも」

響「…? どういうこと?」

亜美「どういうことって、そのままの意味だよ」

響「???」

亜美「そっかー、真美もそうなのかー」

響「ねぇ、亜美。なんか隠してるでしょ? さっきもなんかやろうとしてたしさー」

亜美「んっふっふ~。さーてどうでしょう」 


245 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 04:00:39 bUYu/DSM
響「いいじゃん、教えてよ~」

亜美「それは後でのお楽しみ、秘密兵器ってことで!」

響「秘密兵器…? あ、そうだ。美希…」クルッ

響が、首を振って美希の姿を探す。

響「………」

キョロキョロ

ゴゴゴ ゴゴゴ

響「ねぇ、みんな…」

春香「ん? どうしたの、響ちゃん」

響「…美希は?」

ゴゴゴゴ 


246 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 04:01:21 bUYu/DSM
春香「あれ…そういえば、さっきからいないね。どうしたんだろ」

千早「春香、美希のことを起こしていたわよね?」

春香「起こした…と思ったんだけど…うーん、もしかしたら起きてなかったかも」

亜美「じゃあ、ボートの中で寝てるんじゃない? 着いたってことわからないでさ」

P「ありそうだな…」

律子「まったく、しょうがないわねあの子は…私が行ってやりたいけど…」カタカタ

律子は木を背もたれにして、キーボードを叩いている。

P「俺が連れてくるよ」

千早「私も行きます、プロデューサー。単独行動は危険です」

P「ここから目の届く範囲だろ? 単独行動だなんて大げさな。大丈夫だって」

千早「そうですか…?」

P「ああ、それより律子が調べ終わるまで見てやっててくれ」タッタッタ

プロデューサーが、岸に泊めてあるボートの方へと走っていく。アイドル達は、その背中を見送っていた。 


247 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 04:02:50 bUYu/DSM
千早「プロデューサー…大丈夫かしら」

亜美「兄ちゃん、危なっかしいからねー」

響「………」

春香「響ちゃん? どうしたの、まだ不安そうだけど」

響「ねぇ、春香…美希は本当に…ただ、寝ているってだけなのか…?」

春香「でも、敵の気配もないし…何かあったら、気付きますよね? 律子さん」クルッ

春香は振り返って、木の根元で『ロット・ア・ロット』を操作しているであろう律子に呼びかける。

シィーン

そこには、誰もいない。

春香「…律子さん?」

ゴゴゴ ゴゴゴ

春香「律子さんは…どこ行ったの?」 


248 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 04:03:27 bUYu/DSM
バッ!!

四人は示し合わせたように、自分達の背中をくっつけるように立つ。

千早「攻撃を…受けている…ッ…!」

春香「いつの間に…全然気付かなかった」

響「美希も…律子も、やられちゃったのか!?」

亜美「りっちゃん! ジョーダンやめてよ、つまんないよ! ほら、早く出て来なよ!」

シィーン…

返事はない。

亜美「うああ…! りっちゃんがやられたー! どーすんのさこれ!」

千早「落ち着いて亜美!」

響「で、でも…律子の『ロット・ア・ロット』ってそこら中監視してるんだろ!? それなのに気付かないって…」

春香「案外、近くのものは目に入らないものだからね。敵は思ってるより近くに…気付かないうちに、首元まで忍び寄ってるのかも」

響「うぎゃー! 怖いこと言わないでよー!」 


249 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 04:04:18 bUYu/DSM
千早「敵は私達のことを認識していると思って間違いないわね。そして、何らかの方法で姿を隠している…」

亜美「はるるん! 『アイ・ウォント』でなんとかしてよ!」

春香「え、私?」

亜美「敵は、こっち見てんだよね? 相手の目をくらませたりできないの? それか、でっかい音出して耳をキーンってさせるとかさ!」

響「そうだぞ! 相手が叫び声でも上げれば、どこにいるのかわかる!」

春香「うーん、さっきの『花びら』はスタンド自体が見えてたから『触覚支配』が使えたけど…」

春香「相手がどこにいるのか、誰なのかもわかんないんじゃあね…ちょっとイメージしづらいかなぁ」

亜美「じゃあ、どうすんのさ!?」

春香「…どうしよう」

亜美「おーまいがーっ!!」 


250 : 『765プロ上陸!』 :2015/02/26(木) 04:05:06 bUYu/DSM
春香「とにかく、こうやって死角を作らなければ攻撃されることは…」

千早「……!」

バッ

千早が、何かに気付いて顔を横に向けた。

響「ち、千早? どうした?」

千早「私達に攻撃できない…なら、敵が狙うのは…プロデューサーが危ないわ…!」

亜美「ああっ! 駄目だよ千早お姉ちゃん! 勝手に動いたら!」

千早「…! そ、そうね。こんな状況だからこそ落ち着かないと…」

響「そうだ、こんな時だからこそ残った4人で…」

・ ・ ・ ・

響「春香が…いないぞ…」

亜美「え…い、今の一瞬で!?」

千早「そ、そんな…春香が…!?」

ゴゴゴ ゴゴゴゴ

響「ねぇ…ヤバいんじゃあないのか、これ…!」 


251 : 『765プロ上陸!』/おわり :2015/02/26(木) 04:06:17 bUYu/DSM
………

???「わぁぁっ! すっごーい、私! こんなに上手くいっちゃうなんて!」

???「えへへっ、一番ヤバい春香さんは倒しちゃったし、あとは3人!」

???「よーしっ、この調子でぎゅぎゅーんってやっちゃうぞぉ♪」 



256 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:39:02 vjzDRVEw
ゴゴゴゴゴ

*響「春香が…消えた…!!」

亜美「ちょこっと目を離しただけなのに!?」

ゴゴゴ

千早「…春香! まだ近くにいるなら返事をして!」

シーン…

千早「く、返事がない…」

響「美希も律子も春香も、気づかないうちにやられちゃったのか!?」

亜美「誰にも気づかれないで、みんな消しちゃった…? そんなことができるスタンドあんの!?」

千早「あろうがなかろうが、この状況は現実だわ…!」 


257 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:40:13 vjzDRVEw
千早「どうする…? このまま手を打たなければ全滅よ…」

響「って言っても、相手の能力もわかんないんじゃどうすればいいかわかんないぞ!」

千早「とにかく言えることは、互いから目を離してはいけないということね…」

亜美「はっ」

響「そうだ、離れてたら危ないぞ!」

バッ!!

三人で背中を合わせる。人数が減ったため、一人でより広い範囲をカバーしなければならない。

千早「私が目を離さなければ、春香は…くっ」

亜美「そんなん今言ってもしょーがないじゃん!」
*
千早「そうだわ、プロデューサーは…」

*響「プロデューサーには悪いけど、そっちを構ってる余裕はないぞ…」

千早「…そうね。ここで私たちが全滅したら、全てがそこで終わってしまうかもしれない…」 


258 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:41:19 vjzDRVEw
ザァァァァァ…

響(静かだ…)

キー キー

*響(木の揺れる音とか、動物の鳴き声とか…そんなのしか聞こえない…)

亜美「ねぇ、敵なんか本当にいんの!?」

響「いないなら、美希も律子も春香もどこに行ったんだよ…!」

亜美「ドッキリだったりして! ミキミキは船にいるし、りっちゃんとはるるんは隠れてんだよ!」

千早「敵の本拠地に乗り込んだ直後だというのに、もしも本当にそんな真似をしたというのなら…戻ってきた瞬間に火を点けるわ」

亜美「うげ…千早お姉ちゃんの前じゃあんまふざけない方がよさそうだね…」

響「千早の前じゃなくても、こんな状況でふざけてる場合じゃないだろ!」

亜美「でもこんな静かだし、敵の気配なんて全然…」

ボトッ

亜美「ほぇ?」

上の方から何かが落ちてきて、亜美は視線を落とした。 


259 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:43:51 vjzDRVEw
「シュルッ」チロッ

亜美「うぎゃっ!?」

ヘビが亜美の足元で、舌を出していた。

響「亜美!?」

「シャー」クワッ

亜美「うわわわわわ…ス、『スター…」

響「亜美、ステイだ!」

亜美「は!?」ピタッ

スタンドで攻撃しようとしたが、響の声で手が止まる。

「シュルルルル…」

ヘビは亜美の足元を通り抜け、森の中に消えて行った。

響「ヘビは動かないものは見えないから。じっとしてれば平気だぞ」

亜美「うぇー…いきなりでちょービビったー…」 


260 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:48:46 vjzDRVEw
亜美「はっ…千早お姉ちゃんは!?」

響「あっ、しまった…千早っ!!」

ゴゴゴ

亜美「そんな…」

ゴゴゴゴゴ

亜美「そんな、千早お姉ちゃんまで…!」

ゴゴゴゴゴ

千早「いえ…ここにいるわ」

亜美「ありゃ、ブジだったんだ」

千早「…もしかしたら、敵はもう行ってしまったのではないかしら」

響「そうかな…? まだ自分達が残ってるのに?」

千早「けれど、こっちの戦力は大幅に削られたわ…特に律子が潰されたのは大きい…あの霧が邪魔とはいえ、『ロット・ア・ロット』は皆の居場所も、高木会長の居場所も知ることができるスタンド」

千早「相手にしてみれば、なんとしても優先して潰しておきたかったはずでしょう」

響「目的は達成した…ってわけか」

亜美「えー、それってつまり勝ち逃げされたってこと!?」 


261 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:49:23 vjzDRVEw
???「違いますよぉ」

・ ・ ・ ・

千早「!?」バッ

三人が一斉に振り向くが、そこには誰もいない。

亜美「どこから!?」

響「上だ!」

響がいち早く気づき、斜め上を指差す。

リョウ「はぁ~い♪ みなさん、おっはよー!」

指差す先を見ると、枝の上に立っていた。

響「秋月涼…!?」

千早「の、*『複製』…」

亜美「なんで涼ちんの『複製』がこんなところにいんの!? 本物と入れ替わったんなら、876にいるはずじゃ!?」

リョウ「876の事務所は、今はちょっとおやすみ中なの。なんか、事務所がゴゴゴーって動いちゃったから大変みたい」

響「ああ…」

亜美「りっちゃんがそんなこと言ってたね」 


262 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:51:47 vjzDRVEw
千早「貴方が*春香達を…?」

リョウ「はいっ! 私の『シークレット・コーラル』でぇ、ちょちょいのポイポイってやっちゃいました♪」

響「『シークレット・コーラル』…? それがスタンドの名前なのか?」

リョウ「あっ、知りたい? でーもナ・イ・ショ、乙女のヒミツなんだからぁ♪ えへっ♪」

亜美「…ねぇ、なんかあの人メッチャおかしくない?」

千早「ええ…私の知っている秋月さんとは全然違うわね…」

響「今は普通に男として活動してるはず…だよね…」

リョウ「うーん、確かにホンモノの秋月涼はちょっとナヨってしてて女の子っぽいけど、イケメン目指してる男のコだけど…」

リョウ「でも、だからって私までその通りやる必要はないでしょう? だからぁ、昔の涼みたいに女の子アイドルとして活動することに決めたの!」

亜美「そういう問題なの…?」

響「なんのための『複製』なんだ…?」

リョウ「こっちの方が可愛いし、いいでしょ? りゅんりゅん♪」 


263 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:52:31 vjzDRVEw
響「でも…『複製』だから、体は男…だよな…?」

リョウ「もー、そうかもしれないけど、なんでそういうこと言うかなぁ? 私、女の子だよ?」

千早「………」

亜美「本物の涼ちんはもっとフツーに女の子らしかったのに…」

千早「そうね…秋月さんが女性アイドルとして活動していた頃は、しっかりと女性として振舞っていたわ…」

響「原型がないぞ…どっちかと言うと、変な時の真みたいだ…」

リョウ「えぇーっ? もう、みなさんったらひっどーい! 怒っちゃうぞーぷんぷん!」

亜美「うあうあー千早お姉ちゃん、なんだかすっごいキモいよー!」

千早「私に振らないで…どうしたらいいのかしらこれは…」 


264 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:53:22 vjzDRVEw
響「………」グ…

千早たちが困惑する中、響は膝を曲げ…

リョウ「私としてはぁ、このままみなさんにも全滅してもらえばー」

ズダッ!!

言葉の途中で、飛び出した。

千早「! 我那覇さん!?」

ダダダン!!

木の幹を蹴り、目にも留まらぬ速さでリョウのいる場所まで突っ込んでいく。

リョウ「もー…」スッ

リョウは不満そうな顔をして、木の陰に姿を消した。 


265 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:54:12 vjzDRVEw
ガッ!

・ ・ ・ ・

響が枝の上に立つと、もうそこには誰もいなかった。

バッ

木の裏側を覗き込む。

響(いない…)

響(いや、そもそもこの裏に足場になるような枝すらない…どこに行ったんだ…?)

響「二人とも! あいつが消えた瞬間は見えた!?」

千早「いえ…木の陰に隠れて、そのまま…」

亜美「そっちの裏っ側にいないの!?」

響(これがあいつの『シークレット・コーラル』ってやつの能力なのか…?)

響(でも、どうやってこの一瞬で姿を消したんだ…? それに、どうやってみんなを消した…?)

響(姿や音を消すスタンド…? いや、それだけなら春香の『アイ・ウォント』の方が上だ…みんな、なんとかする手段はある)

響(亜美の『スタートスター』みたいにワープできるスタンド…? でも、葉っぱや枝を踏む音とか、何の音も聞こえないのはおかしいぞ)

響(わかんない…) 


266 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:56:24 vjzDRVEw
響(わかんないと言えば、なんであいつはわざわざ姿を現したんだ?)

響(あのまま敵はいないと思わせた方が、やりやすいと思うんだけど…)

亜美「ひびきん!!」

響「ん!?」クルッ

呼ばれて、下の方を見る。

シーン…

響「千早は…?」

そこには最初から千早なんていなかったかのように、木が立ち並んでいるだけで…

亜美「………」

亜美の表情だけが、彼女が消えてしまった事実を物語っていた。

ゴゴゴゴゴ

響(そんな、千早まで…?)

響(これで、残りは…自分と亜美の二人だけ…)

響(ここまで来ても、まだ敵の攻撃の正体が掴めない…! ヤバい、ヤバすぎるぞこれ…!) 


267 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:57:17 vjzDRVEw
響「亜美!」スタッ

枝の上から、飛び降りる。

響「何があったんだ?」

亜美「わかんない…まさか、千早お姉ちゃんが亜美より先に狙われるなんて…」

響「くっ、自分が飛び出して行っちゃったから…」

亜美「………」

響「千早までやられちゃって…一体、あいつの能力はなんなんだ…?」

亜美「………」

響「亜美…?」

亜美「わかんないよ、何にも」

響「ど、どうしたんだ…?」スッ

亜美「近づかないで!」

響「!?」ビクッ

亜美に手を伸ばそうとしたが、声を張り上げられ、動きを止めた。 


268 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:58:13 vjzDRVEw
亜美「ワケわかんないよ! みんないなくなっちゃうし…! もうやだ!!」

響「あ、亜美! パニックになっちゃダメだぞ! ほら、落ち着いて…」

ダッ!

亜美は返事をすることなく、響から逃げるように駆け出す。

響「あっ…!」

ダダダダッ

響に背中を向けたまま、木々の間を走り抜けていく。

響「ちょ、ちょっと何やってるんだ!」タッ

その後ろ姿を追いかける。

響「止まれ、亜美! そんなの、攻撃してくださいって言ってるようなもんじゃないか!」

響(見失っちゃダメだ、自分が見失ったら亜美がやられ…)

ス…

亜美の姿が、森の中に消えていく。

響「亜美ッ!!」ダッ!

後を追うように、響は跳んだ。 


269 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:58:50 vjzDRVEw
ドグォ

ガサガサッ

木が、大きく揺れている。

響「…は!?」

リョウ「え…」

響の目に入ってきたのは、木の幹に磔にされているリョウの姿だった。

亜美「………」ググ…

亜美の背中から伸びた一本の腕が、リョウの腹に突き刺さっている。

響(今、何が起こった…?)

リョウ「ううっ…な、なに…?」

響もリョウも、状況を理解できずに固まっている。わかっているのはただ一人…

亜美「かかったね」

亜美だけだった。 


270 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 19:59:33 vjzDRVEw
亜美「さーて、捕まえた」

リョウ「くっ!」サッ

リョウが左手を挙げるが…

亜美「っとぉ!」ニュゥー

リョウ「あっ…!?」ダン!

亜美の背中から出た二本目の腕が、リョウの腕を、何かする前に木に押し付ける。

響(あれは… 『スタートスター』の腕? にしては…)

亜美「んっふっふー、逃がさないよん。さーらーにー」

ヒュン ヒュン

また二本、腕が出現する。

リョウ「四本…!? まず…」グイッ

身をよじった。

亜美「オラオラオラオラオラオラ」ヒュン ヒュヒュン ヒュ

リョウ「うっ、あああああああ!!」ズドドガガガバキ

四本の腕による高速のラッシュが、リョウの体に叩き込まれた。 


271 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 20:01:46 vjzDRVEw
リョウ「う………」

ドサッ

幹からずり落ちる。

亜美「よし」クルッ

ス…

背中を向け、スタンドを仕舞った。

リョウ「う…く…」プルプル

響「! 亜美、まだそいつ倒れてない!」

リョウ「これくらいで私に勝ったつもりですか…!」グオッ

亜美の無防備な背中に向かって手を伸ばすが…

リョウ「え…」フワ…

その手が亜美に届く前に、体が浮いた。 


272 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 20:02:21 vjzDRVEw
亜美「『ブッ飛ばす』」

リョウ「うわあああああああああ!!」

ドヒュゥゥゥゥゥ

リョウの体は、亜美の反対側へと『ブッ飛ば』されていった。

リョウ「ぐがっ! ぎゃっ!」ガン! ゴン!

『ブッ飛ば』されながら、骨と樹木がぶつかる音が辺りに響く。

シン…

・ ・ ・ ・

響たちの視界から外れたところで、突如その音は止んだ。 


273 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 20:03:18 vjzDRVEw
亜美「ありゃ、また消えちゃった」

響「………」

亜美「ひびきん、今あいつが出てくるところ見えた?」

響「あ、いや…」

亜美「そっかー。やっぱ、テッテーして他の人に見えないようにしてるっぽいね」

響「ねぇ、亜美…さっきのスタンドはどうしたんだ?」

亜美「ああ、『サニー』のこと?」

響「『サニー』?」

亜美「そ。『スタートスター・サニー』」ズッ

亜美の背中から、四本の『右腕』が伸びる。

亜美「イカスっしょ?」 


274 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 20:05:04 vjzDRVEw
響「いつの間に、こんなの使えるようになったんだ?」

亜美「えーと、先月だったかな? いやもっと前? 覚えてないや」

響「アバウトだな…」

亜美「でも、メチャメチャ強いよ? 今もああやってバーンってダメージ与えたし!」

響「そうだ、どうやってあいつに攻撃したの? あいつ、何やってるのかわかんないのに」

亜美「えっとね、『サニー』には二種類のモードがあるんだけど…まず、亜美が殴ろうと思った場所に一斉に攻撃する『乱打モード』」ガン!

近くにあった木を叩くと、枝が揺れ、ひらひらと葉っぱが落ちてくる。

亜美「オラオラオラオラ」ビシュシュシュ

空から落ちてくる葉に、空中に滅茶苦茶に突きを放つ。

ピシッ ピシィ

亜美「これが『サニー』の『乱打モード』、そんでもって…」

ヒュン!!

響「わわっ!?」

『右腕』が触れた葉が、カッターのように飛んだ。

亜美「『サニー』は触れたものを『ブッ飛ばす』」 


275 : 『シークレット・コーラル』その1 :2015/03/17(火) 20:10:24 vjzDRVEw
亜美「それと、もう一つ…」ビンッ

四本の腕がアンテナのように立つ。

亜美「ひびきん、ちょっとこっち来てもらっていい?」

響「ん? 何?」スッ

ヒュン!!

響「わ!?」

響が亜美の方に近づくと、『サニー』が響に殴りかかってきた。

響「な、何するんだ!!」タッ

飛びのいて攻撃を躱す。

亜美「これが亜美に近づいた敵を勝手に攻撃してくれる『自動攻撃モード』」

亜美「『自動攻撃モード』の時亜美の周りに来たら、今みたいに誰だろーと攻撃するから、ひびきんも近寄らないでね」

響「そ、そういうことは先に言って欲しいぞ…」 


276 : 『シークレット・コーラル』その1/おわり :2015/03/17(火) 20:16:45 vjzDRVEw
響「さっき近づかないでって言ってたのはそういうことだったの? 取り乱したフリしてカウンターを狙ってたんだな…」

亜美「そそ! どうだった、亜美の名演技?」

響「ヤケになっちゃったのかと思って、ちょっと焦ったぞ」

亜美「んっふっふ~。ま、本当は千早お姉ちゃんが消えちゃう前に倒したかったんだけど…」

亜美「とにかくあいつが亜美に攻撃してきたら、この『サニー』で逆にボコボコにしちゃうよん」

響「でも亜美、それってつまり…」

響「亜美に攻撃させるために、さっきみたいに身を投げ出していくってことじゃないのか…!?」

亜美「他はみんなやられてるんだよ? あいつ倒すには、それしかないっしょ」ザッ

亜美は一人、堂々と前に出て歩き出す。

響(自動攻撃…確かに、これならどこから来ても攻撃できるけど)

響(でも…これで、本当に大丈夫なのか…?)

響(まだ、あいつの攻撃手段がわかったわけじゃあないんだぞ) 


277 : >>1 ◆CKAtMuT12w :2015/03/17(火) 20:19:35 vjzDRVEw
スタンド名:「スタートスター・サニー」
本体:双海 亜美
タイプ:近距離パワー型・群体
破壊力:C スピード:A 射程距離:E(1~2m程度) 能力射程:C(10m)
持続力:D 精密動作性:E 成長性:B
能力:背中から出た四本の「右腕」で、殴ったものを「ブッ飛ばす」亜美のスタンド。
亜美の意思で全ての腕が攻撃する「乱打モード」と、射程距離の中に踏み込んで来たものを自動的に攻撃する「自動攻撃モード」の二種類の形態を持つ。
「自動攻撃モード」の状態では自分でスタンドを操作することはできない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

途中で*が入ってますが新調したPCのバグみたいなものなので、気にしないでください… 


284 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 21:47:48 3Nu/AhEU
リョウ「はぁーっ、はぁーっ…」

リョウ「何だったんだ…? 今のは…」

リョウ「亜美さんがあんなスタンドを持っているなんて、情報になかったよ…真美さんと一緒じゃなければ能力は使えないと思ったのに」

リョウ「射程距離内に入ったら自動攻撃か…僕のスタンドとの相性は最悪だ…」

プラン

『ブッ飛ば』さ*れ、木に叩きつけられた腕が、折れ曲がっている。

リョウ「………」

ゴキ!

もう片方の手で無理矢理曲げ、まっすぐにした。

リョウ「ま、いっかぁ…何度『ブッ飛ば』されても負けなければいいだけだよね」グッ パッ

直した手を握り、広げる。

リョウ「だってぇ、能力までバレたわけじゃあないし…」

リョウ「私の『シークレット・コーラル』が負けたわけじゃないんだから♪」 


285 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 21:57:50 3Nu/AhEU
亜美「あっちから出てくる気配はないね」

亜美「んじゃ、亜美逹の方から行くか。かくれんぼの始まりだよ~ん」

響「ちょ、ちょっと待って亜美」

亜美「ほぇ? 何?」

響「あいつ、まだ近くにいるのか…? 春香達を倒して、引き上げてるかもしれないぞ」

亜美「逃げないよ」

響「え?」

亜美「だってさ、今亜美の『サニー』で『ブッ飛ば』されて…」

亜美「それで逃げるのってもうフツーに『負け』じゃん。あいつら、『負け』を認めたら消えちゃうんでしょ? だから逃げない」

響「あ、なるほど…それは確かにそうかも」

亜美「『サニー』は射程距離内に入れば自動的に攻撃する…隠れててもね。出てこないならこっちから探せばいい」

亜美「なんも問題ないよ」

響「本当に何も問題はないのか…? 心配だぞ…」 


286 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 22:05:31 3Nu/AhEU
亜美「って言うかさー、気をつけなきゃダメなのは亜美よりもひびきんっしょ?」

響「なに?」

亜美「別にバカにしてるわけじゃなくて、はるるん達だってやられてんだよ? 亜美は『サニー』があるからいいけど」

響「む…」

響(そりゃ相手の能力がわからない以上、対抗できるのは亜美だけだけどさ…)

ヒュ

ドゴォ

亜美「!」

響「!」

『サニー』の腕が近くの木を叩いた。

亜美「そこかっ…!」

響「あっ、亜美…!」

バッ

亜美「おらぁ!」ドヒュ

裏側に回り込みながら、拳を一斉掃射する。 


287 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 22:14:20 3Nu/AhEU
ゴォッ

亜美「あり?」

しかし、そこには誰もおらず…

ゴゴ

リョウ「………」

ゴゴゴゴ

リョウが、亜美の背後に立っている。

ズッ

亜美の後頭部へと手が伸びるが…

バキィィン!

リョウ「な…!?」

亜美「うおっ!?」

響「っとぉ…!」

その腕を、響が思い切り蹴り上げた。 


288 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 22:24:47 3Nu/AhEU
リョウ「く…」タッ

リョウはすぐさま、後方へ飛びのいて木陰へと体を隠す。

響「ドラァ!!」ドォ

隠れた方角に向かって追撃を繰り出すが…

・ ・ ・ ・

響「………」

やはり、もうそこにリョウの姿はなかった。

響(まただ…一瞬見失ったら、煙のように消えちゃう…)

亜美「あのさ、ひびきん…」

響「もうっ、危なっかしいなぁ…! もうちょっとでやられるところだったぞ!?」

亜美「う…」

響「『自動攻撃』があっても、そうやって切り替えてたら危ないだろ!」

亜美「でも、今そこにあいつがいて、チャンスだって思ったから…」

響「そうかもしれないけど、それで亜美がやられたら終わりなんだぞ!?」

亜美「うぅ…ごめんなさい…」 


289 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 22:36:28 3Nu/AhEU
響「…亜美、もう一回だ。『サニー』であいつのいる場所を探そう」

亜美「ほぇ?」

響「あいつがどうやって出たり消えたりしてるのかは知らないけど、『サニー』で『ブッ飛ば』してやるのが一番手っ取り早いでしょ?」

亜美「でも、それだと今みたいなことなるんじゃ…」

響「だから、亜美は深追いしなくていい。あいつが姿を現したら…」

響「自分が『トライアル・ダンス』の身体能力で攻撃を叩き込む」

亜美「…!」

響「自分がいるんだ、あんまり一人で無茶やらないでほしいぞ」

亜美「ひびきん…」

響「こうなったらもう、自分も腹を括るから! 亜美、任せたぞ!」

亜美「オッケーひびきん! サポートよろ!」 


290 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 22:48:07 3Nu/AhEU
リョウ「やっぱり、キョロキョロ警戒されてたら簡単にはいかないなぁ」

リョウ「響さんも、もう春香さんや千早さんのようにはいかなさそうだし…」

リョウ「それにしても、亜美さん一人なら、さっきので決着してたのになぁ」

リョウ「響さんがいる以上、やっぱり能力がバレるくらいやらないと倒せなさそうかも」 

リョウ「ま、でも…あの『サニー』さえ倒せば、響さんなんてどうにでもなるし」

リョウ「残りはたった二人、一人ずつプチプチくん潰すみたいに片付けちゃいますよ~♪」 


291 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 23:00:37 3Nu/AhEU
亜美「………」

亜美「ダメだ、『サニー』が反応しない! 遠くには行かなくても、ヒョイヒョイ動かれたら見つけらんないよ!」

響「あいつはそんな速く動けないはずだぞ」

亜美「え?」

響「スタンドは精神力…こうやってコソコソ隠れて戦うような奴のスタンドはパワーもスピードも弱いはずなんだ」

響「自分たちとまともにやりあえるなら隠れる必要なんてないし、自分たちより速いならそれで戦えばいいだけでしょ?」

亜美「でも、ミキミキもりっちゃんもはるるんも千早お姉ちゃんもあいつにやられちゃったんだよ…?」

亜美「それに、すぐ出たり消えたりしてるじゃん! おかしいよ!」

響「うん。だから、きっとあいつの『スタンド能力』が何か関係してるはずだぞ」

亜美「その『スタンド能力』ってのはなんなの?」

響「それはわかんないけど…木だ」

亜美「木?」 


292 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 23:07:06 3Nu/AhEU
響「ほら、あいつは消えるのも出てくるのも木の陰からでしょ?」

亜美「それは…スタンド能力をバラさないためじゃないの?」

響「そうかもしれないけど、あいつは能力を隠すことにこだわってる…同じ事だぞ」

亜美「んー?」

響「そして、千早。千早も木に寄りかかってて、それで姿を消した…」

響「だから自分はさっきから木の近くにはあまり近づいてない」

亜美「! それじゃ…」

響「どこの木陰に隠れてるのかはわかんないけど…木の周りを探していけばどこかにあいつはいるはず」

亜美「でも…」

ズラーッ

亜美「ここは森っしょ!? 木って言ったってメチャメチャいっぱい並んでんじゃん! 亜美がこれ一つ一つ探すの!?」

響「一つ一つって、そんなことしてたらあいつも逃げるし捕まえられないぞ」

亜美「だよね!?」 


293 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 23:16:18 3Nu/AhEU
亜美「じゃあ、どうすんのさ!」

響「亜美、自分が見てるからちょっと『サニー』の『自動攻撃』を解除してくれる?」

亜美「? ほい」スッ

亜美の背中に張っていたサニーの腕が曲がる。

響「よし」ガシッ

亜美「え?」

響は、亜美の体を抱え上げると…

グルン

響「ドラァ!!」ブオン

亜美「うぎゃーっ!?」ギュン!!

一回転しながら、思い切り投げ飛ばした。 


294 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/21(火) 23:30:55 3Nu/AhEU
ゴォォォォォ

亜美の目の前に、木が迫ってくる。

亜美「ちょ、ちょっ…ぶつかるって…!」

響「殴れっ!」

亜美「お、おらぁ!!」ダスッ

グン…

ダシュゥ!!

亜美「うあ!?」

『サニー』で木を殴ると、攻撃の反動で、亜美の体が反対方向に『ブッ飛ぶ』。

響「やっぱり、これで自分の『トライアル・ダンス』みたいに飛んで移動できるな」

亜美「な、なるほど…! よし、飛んでる途中に『自動攻撃』にしておけば…!」ヒュン

ガッ

立ち並ぶ木の一つを、『サニー』の腕が叩いた。

亜美「よし、そこか…って、うあー!?」ヒュン

『サニー』の能力により、亜美の体が反対方向に『ブッ飛ん』だ。 



297 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/22(水) 23:37:51 67tkgejw
リョウ「ふふ…」

亜美が飛んでいく様子を、リョウは木の傍から見ている。

リョウ「亜美さんが飛んできたのはちょっとビックリしたけど、空中じゃあ自分の体をコントロールできない」

響「亜美っ! くぅっ…」タッ

『サニー』が殴った場所に向かって、響が走ってくる。

リョウ「私の居場所がわかったところで、来れるのは響さん一人…それなら、私のスタンドで…」

ガシィ!!

リョウ「え?」

亜美「………」

リョウ「亜美さんの背中から出た4本の『手』が、木にぶつかる前に受け止めた…?」

リョウ「あの手は触れたものを『ブッ飛ばす』…つまり…」

亜美「おらぁ!!」バチンッ

ドヒュゥゥゥン!

リョウ「飛んできた…!! まずい…」 


298 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/22(水) 23:45:21 67tkgejw
リョウ「………」

亜美「いた! 木の裏に隠れてた!」

響「………」

響(やっぱり、何かがおかしい…)

響(ただ木陰に隠れてるだけなら、どうして何も気配なく隠れられるんだ…?)

響(そして、亜美が近づくと見つかる…それまで、完璧に隠れていたのに…)

響(まるで、自分から出てきてるみたいに…)

亜美「行くよ、ひびきん!」

響「ん! …う、うん!」

響(考えるな…さっき決めたでしょ、とにかく…今はやるしかない!)

亜美「オラオラオラオラ」ズバババババ

響「ドララララララ」ヒュン ヒュヒュヒュン

リョウ「うぶっ…!」メキャオ

響の蹴りと亜美の拳打のラッシュが、左右からリョウへと叩き込まれた。 


299 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/22(水) 23:54:24 67tkgejw
リョウ「きゃあああああああああ」ゴォッ

ドガン!

リョウの体は再び『ブッ飛ば』され、木に叩きつけられる。

リョウ「う」ゴキン

ドサァ

その衝撃で首が折れ、地面に落ちる。

亜美「うぇ…」

響「お、終わった…?」

リョウ「4発…」フ…

響「!?」

リョウはふらりと立ち上がり…

ゴキン!

リョウ「えっへへ~」

自分の頭を掴むと、強引に首を直した。

響「ちょ、ちょっと…」 


300 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/23(木) 00:06:19 nuqYQZRo
リョウ「駄目だなぁ。ダメダメダメダメ。そんな攻撃じゃ、私は倒せないぞっ♪」

響「普通の人間なら死んでるところだぞ…」

亜美「『複製』だって言っても、ちょっとカタすぎない!? なんでこいつ、こんなにガンジョーなのさ!?」

リョウ「別に、私だけが特別頑丈ってわけじゃないですよ?」

響「なに?」

リョウ「他の『複製』が消滅したのは自分たちを保っているもの…『精神』が揺らいでしまったから、つまり『負け』を認めたからです」

リョウ「そうでなければ、元々『複製』はこれくらい丈夫にできてるんですよ」

リョウ「ま、徹底的に壊そうとすれば体の方の破壊も可能かもしれないけど~」

響「………」

亜美「う~…」

リョウ「二人ともそこまで本気では攻撃してこない…お優しいですね♪ リョウ、キュンキュンしちゃいそう♪」

リョウ「でも…」

響「!」

リョウ「そんな精神…そんなスタンドじゃあ、私に負けを認めさせることなんて絶対にできない」

リョウ「つまり~、私に勝つことはできないってことですよっ♪」 


301 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/23(木) 00:24:39 nuqYQZRo
亜美「亜美達が勝てない…?」

リョウ「ええ、だって未だに私のスタンド能力すらわかってないんでしょ?」

亜美「わかんないけどさ…」

亜美「でも、わかんなくても『ブッ飛ばす』! そうすりゃカンケーない!」タッ

亜美がリョウへと突っ込んでいく。

リョウ「………」グッ

響「! 亜美、そいつ手に何か握って…」タッ

響も、亜美のフォローに向かう。

リョウ「ほいっと」ブンッ

ザバァッ

亜美「わ!?」バッ

その瞬間リョウが手の中に握っていた砂を亜美達の顔に向かって投げつけ、二人の目が閉じる。

響「す…砂…?」

亜美「あ…」

一瞬目を閉じた隙に、リョウの姿は再び消えていた。 


302 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/23(木) 00:47:44 nuqYQZRo
響「うがー! こんなのであいつを見失っちゃうなんて…」

響「なんかあいつの思うように動かされてる感じがするぞ…!」

亜美「勝てない…」

響「ん?」

亜美「ねぇひびきん。ひびきんも、あいつには勝てないって思う?」

響「ちょ、ちょっと亜美…何弱気になってるんだよ」

響「確かに、あいつのスタンドは得体が知れないけど…でも、勝たなきゃ駄目だぞ! いなくなったみんなだって、助けられない!」

亜美「まー、そりゃそうだよね」

響「亜美…?」

響(亜美…どうしたんだ? もしかして、本当に弱気になってるんじゃ…?)

響(ただでさえあいつを倒す手段が見えないのに…そんなになってちゃ、勝てるものも勝てなくなるぞ)

響(それに、木から離れてれば安全ってわけでもない…あいつのあの自信、何もせず隠れているだけなんて思えない) 


303 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/23(木) 00:54:08 nuqYQZRo
パラ パラ

響「…?」

亜美の頭の上から砂が落ちてきた。

響「ねぇ、亜美…」

ヒュン ヒュン

響「え!?」

亜美「ん?」

ビシィ!!

『サニー』の4本の腕が、上の方へ向かって勝手に攻撃を繰り出した。

「ギッ ギッ」

「シュル…ルル…」

よく見ると、虫やヘビなどの動物が亜美の頭上に落ちてきている。

リョウ「4発…」

響「!」

どこかから、リョウの声が聞こえる。 


304 : 『シークレット・コーラル』その2 :2015/04/23(木) 01:03:34 nuqYQZRo
リョウ「『自動攻撃』ができるのは、その腕の本数だけ」

響(こいつ…態度はふざけてるようにしか思えないのに…)

リョウ「1本1本は、一度攻撃したら連続しては攻撃できない」

響(よく見てる…亜美の『サニー』を攻略するために…こんな手を使ってくるなんて…!)

リョウ「だからぁ~まずこうやって虫とかを使って引っ掛けてあげれば~」

亜美「あげれば…なに?」

ヒュ

リョウ「え?」

ドス ドスゥ!

リョウ「うべぇ!?」

亜美の攻撃圏内に現れたリョウの腹に、2本の腕が突き刺さった。

リョウ「あああああああああああ!?」

ドシュバン! ガガガッ!!

ブワァ…

リョウの体は転がりながら『ブッ飛び』、砂煙が上がる。 


305 : 『シークレット・コーラル』その2/おわり :2015/04/23(木) 01:05:08 nuqYQZRo
響「あ、亜美…それ…」

亜美「ん…」

ヒュン ヒュン

6本の腕が、亜美の背後で動く。

亜美「『スタートスター・サニー』」

亜美「ねぇ、ひびきん。勝てないとか言われたらさー、すっごくムカムカしない?」

響「へ?」

亜美「するっしょ?」

響「う、うん…すっごくムカつくぞ」

亜美「勝つよ。亜美、負けんの大っ嫌いだかんね」 




316 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/26(日) 23:24:12 X1S6VCtE
リョウ「ぐ…う…」

ザザ…

砂煙がリョウの姿を覆い隠そうとする。

響「このまま見失ったらまた厄介なことになりそうだな」

亜美「そだね。だから…」

グッ

6本の『サニー』が手の中に石を握る。

亜美「ここで倒す」

亜美「オラオラオラオラオラオラ」ドッドド バババ

腕を次々振り抜くと、石がリョウへ向かって『ブッ飛んで』いく。

ビュオッ!!

リョウ「う…!」

リョウには命中しないものの、石が生み出す風圧が、砂の幕を吹き飛ばした。 


317 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/26(日) 23:43:07 X1S6VCtE
リョウ「っ…!」バッ

近くの木に向かって手を伸ばすが…

キキィッ

響「遅いぞ」

リョウ「響さんっ…」

数メートル離れた地点から響が一瞬で現れ、目の前に立ちはだかった。

グ…

響「ドラァッ!!」ダムッ!

身をかがめてから、弾丸のように突っ込む。

リョウ「ぐふっ…!」ゴキャ

ドギュゥゥン

ぶつかった衝撃で、リョウの体が浮き上がった。 


318 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/26(日) 23:50:32 X1S6VCtE
響「亜美!」

亜美「おっけー」グッ

リョウ「う…」

その着地点には、亜美が待ち構えていた。

リョウ「うわあああああああああ」

亜美「オラオラオラオラオラオラオラ」ヒュン ヒュオン

リョウ「ああああああああ」ガスガスガスガス

6本の腕で、突き上げるように拳を叩きつける。

リョウ「きゃ…」フワ…

ドヒュゥゥゥゥン

リョウが、空に向かって『ブッ飛んで』いった。

リョウ「うぅっ、何もできない…攻撃が速すぎる…!」

リョウ「でも…このまま『ブッ飛んで』いけばむしろ逃げられ…」

ダン!

リョウ「え?」 


319 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/26(日) 23:57:51 X1S6VCtE
響「うおりゃああああああ!」ダダダダダ

リョウ「なっ…なんだぁーっ!?」

リョウが近くから聞こえた足音に目を向けると、響が木を垂直に走って登ってきていた。

タッ

『ブッ飛ぶ』リョウを追い抜き、木を蹴って飛ぶと…

響「ドラァ!!」ヒュ

リョウ「ぶ…!」ドギン

ゴゥォォン…

空中で円を描くように蹴りを繰り出し、地面へと撃ち墜とした。

クルクル スタッ

響はそのままの勢いで、他の木の枝へと飛び移る。

響「………」チラ…

リョウ「あ…うぉ…あが…」プルプル

下の方を見ると、リョウがゆっくりと体を起こしていた。

響「まだ起き上がれるのか…タフだな…」 


320 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/27(月) 00:25:24 b9QA3EIY
響(にしても…)

響(こいつはなんで、こんなボコボコにされてるのにスタンドを出さないんだ…?)

響(スタンドが戦闘用じゃないからって、どうして何もしない…? こうも一方的にやられてていいのか…?)

響(こいつのスタンドは…なに?)

亜美「んっふっふ~。さーて、大人しくりっちゃん達をかいほーすれば手荒な真似はしないぜ~」

亜美「って、なんか悪役みたいなセリフだこれ!?」

リョウ「………」

亜美「…みんなを逃す気はないようだね」

亜美「じゃ、ちかたないね。倒せばスタンドの能力は消える」グッ

亜美が背後の木を、6本の腕で掴んだ。

グッ グググ ギシッ

響「…! ちょっと待て、亜美!」

亜美「おらぁっ!!」バッ

ドギュン!!

放すと、亜美はリョウに向かって『ブッ飛んで』いく。 


321 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/27(月) 00:49:15 b9QA3EIY
ゴォォォォォォ

ぐんぐんと距離が縮まっていく。

リョウ「………」

リョウは、諦めてしまったかのように全く動かない。

亜美「オラ…」

目と鼻の距離まで近づき、亜美が攻撃しようとした瞬間…

リョウ「かかりましたね」ガッ

ガパン!!

亜美「!?」

リョウが、地面を捲りあげた。

ォォォ…

その下には、ポッカリと穴が空いている。

リョウ「『シークレット・コーラル』」

響「な…亜美ッ!」 


322 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/27(月) 00:54:07 b9QA3EIY
亜美「サ、『サニ…」

リョウ「遅いですよぉ」

パタン…

動く前に、巨大生物が口を閉じるように、地面が元通り閉められる。

亜美は、その中へと飲み込まれていった。

リョウ「はい、おしま~いっ♪」

・ ・ ・ ・

響「な」

バンッ

リョウは近くの木の幹を、ドアのように開くと…

パタン…

その中に入り、扉を閉めた。

シン…

ゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴ 


323 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/27(月) 01:03:54 b9QA3EIY
響「っ…亜美!!」ダッ

ガリガリ

亜美が閉じ込められた辺りの地面を引っ掻くが…

響「はぁ、はぁ」

土が覗くばかりで、亜美は出てこない。

響「亜美ー!」

返事はない。

響「美希ー! 千早ー! 春香ー! 律子ー!」

誰の声も、返ってこない。

響「うぅ…自分だけになっちゃったぞ…」

響(あいつの能力はわかった…ああやってドアみたいに木や地面を『開けて』、その中に自分や他人を閉じ込める…)

響(そしてたぶん、あいつはその中でも動ける…いろんな場所から出たり消えたりしたのはそのためだ)

響(春香達は、あいつの空間に引きずり込まれて何もできず閉じ込められたんだ…!!) 


324 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/27(月) 01:15:44 b9QA3EIY
響「う…」バッ

振り向く。

響「あっ、ああっ」バッ バッ

辺りを見回す。

響(あいつは空から魚を狙う鳥のようにどこからでも自分を襲ってくる…!)

響(駄目だ…今あいつがどこにいるのか、どこから出てくるのか一人じゃあ全くわからない!)

響(亜美のような『自動攻撃』がなければ、必ず死角ができる…一人じゃあ、絶対にあいつには勝てない…)

響「………」 


325 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/27(月) 01:41:16 b9QA3EIY
ゴゴゴ

ゴゴゴゴ

リョウが地面の中から、響の姿を見つめている。

リョウ『えへへっ、こんなに上手く行っちゃうなんて』

リョウ『私の「シークレット・コーラル」…能力はバレちゃったけど、もうこれで私の勝ちだよね』

リョウ『この能力の前にはいくら速く動けても、何の意味もない』

リョウ『響さんの身体能力を上げるスタンドなんて、何の役にも立たない!』

リョウ『動ける速さは地上を歩くより遅いから、一番困っちゃうのはその場から逃げられちゃうことだったんだけど…』

リョウ『私がいるってわかったら、二人とも躍起になっちゃって…うーん、大成功♪』

響「………」

リョウ『逃げないなぁ、まだ戦うつもりなのかなぁ? それとももう諦めちゃったのかな?』

リョウ『ま、いいやぁ。さ、木の中に引きずり込んであげますよー♪ これでぜ・ん・め・つ♪ ふふっ』

ズッ!

響の死角にある木の中から、後頭部に向かって手を伸ばした。 


326 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/27(月) 01:43:27 b9QA3EIY
「シャァァァーッ!!」

ガブゥッ!!

リョウ(え?)

響の首の辺りからヘビが顔を出し、リョウの指に噛み付いた。

ガリガリガリ

リョウ「え、え…!?」

「フシュゥ!!」

スパァン

コロン

指が一本食い千切られ、石ころのように地面を転がる。

リョウ「ぎゃ…ぎゃおおおおおおおおん!?」ドサッ

たまらず、リョウは木の中から飛び出す。

リョウ「ゆ、指が! 僕の指が…!」ブンブンブン

ヘビを振り払おうと必死に手を振るが、食いついて離れない。 


327 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/27(月) 01:56:54 b9QA3EIY
リョウ「ぎゃぅ…! な…何なの、このヘビは…!?」

響「ま、来るよね。自分一人相手なら簡単に倒せるだろうから」

リョウ「ひ、響…さん…」

響「ま、そんなこと自分にだってわかってるさ。だから、自分一人でどうにかしようとするのをやめた」

「シュルルルル…」

響「今、こいつは『トライアル・ダンス』が取り憑いて興奮状態にある。少しでも動くものがあれば、すぐに反応して…」

「グゥゥッ」ギュゥゥ

リョウ「痛い! 痛い痛い!」

響「一度噛みついたら、食いちぎるまで離さない。例え、木の中に戻ってもね」

リョウ「く…」

響「せいっ!!」ヒュッ

リョウ「うわっ…!」ガッ

ドサッ

リョウは地面へと手を伸ばすが、響の蹴りで仰向けに倒れされる。

響「どっちにしても、木とか地面とかに入らせたりしないけど。スタンドがついてなくても、これくらいはできるぞ」 




332 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/04/28(火) 00:14:14 TpvBXsLg
リョウ「こんなことで…響さんのスタンドで、私の『シークレット・コーラル』を破るだなんて…」

リョウ「あと少しで私の勝ちだったのに…!」

響「違うさ。自分が破ったわけでもないし、あと少しで勝ちだったわけでもない」

響「亜美だ。『スタートスター・サニー』にお前は危機感を覚えて、自分に能力を見せてでも倒そうとした」

響「その時点で、もうこうなることは決まっていたんだ」

リョウ「くっ…ぐうっ…!」

響「さてと、みんなを逃がしてもらうぞ?」

リョウ「ふっ…ふふふっ、あはっ、えへへへへへっ」

響「?」 

リョウ「いえ…この島、結構広くてですねぇ…物資を運ぶため、地下にいくつもベルトコンベアが通ってるんですよ」

響「…何の話?」

リョウ「も~響さんったらニブチーン! 決まってるじゃあないですかァ~私の『シークレット・コーラル』で地下に落として、もうみんな散り散りバラバラだって!!」

響「な…」

リョウ「そして行き着く先には他の『複製』が待ち構えている…試合に負けて勝負に勝つってやつですね! あははははは」

響「………」 


333 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/05/10(日) 01:01:57 iovnPJwA
リョウ「ふふ、ショックですか? でも、心配しなくても大丈夫! だって…」

ガバン!!

ォォォォォォ

地面が5mほど、左右から畳返しのようにひっくり返され、響に向かって倒れていく。

リョウ「隙を見せましたね、『シークレット・コーラル』…地面の中に飲まれちゃえっ!!」

響「………」

ズゥゥゥン…

大地の板が、響が立っていた辺りを押し潰した。

「シャ…」

シュルシュル

リョウの手から、大人しくなったヘビが離れていく。

リョウ「………」キョロ…

周囲を見回すが、響の姿はない。

リョウ「終わった…」

リョウ「えへへ高木さん、見てくれましたか? 私が765プロのみんなを一気に片付け…」 


334 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/05/10(日) 01:08:50 iovnPJwA
「てないぞ」

リョウ「!」サッ

背後から声が聞こえると同時、すぐさま木に向かって手を伸ばすが…

響「ドラァ!!」ヒュ

リョウ「ぎゃ…!」ドスゥ!!

響の槍を突き出すような蹴りが、リョウの手を幹に釘付けにした。

リョウ「ど、どうして…」

響「遅すぎるぞ。そんなんじゃあ自分の『トライアル・ダンス』は捕まえられない」

リョウ「どうして…諦めないんですか…! どうせこの先、たった一人で切り抜けることなんて出来やしないのに…!!」

響「一人じゃあない」

リョウ「はい…?」

響「確かに、今ここには自分しかいない。でも、一人じゃあないんだ」

リョウ「なにを、わけのわからないことを…」

響「わからないのか? お前はそれに負けたんだぞ」 


335 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/05/10(日) 01:19:23 iovnPJwA
リョウ「負けてない…私はまだ、負けてなんかない…」

響「…この状況でか? もう隠れることも自分を閉じ込めることもできないでしょ」

リョウ「隠れる? 閉じ込める? うふふっ、私のスタンドがそれだけの能力だと思いますか」

響「………」

リョウ「おおお『シークレット・コーラル』ッ!!」ダンッ

グニャ

響「!」

リョウが地団駄を踏むと、地面が競り上がり、木が手前に倒れてくる。

リョウ「このまま私もろとも押し潰す…! 逃げようとすれば、私はあなたの死角から今度こそ必ず追い詰める…!!」

響「そっか、逃げられないのは自分も同じか…」

リョウ「なにを落ち着いているんですか、この状況で! さぁ、どうす…」

ドグシャ

リョウ「うぶ!?」

言いかけたリョウの体に、蹴りが叩き込まれる。 


336 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/05/10(日) 01:25:49 iovnPJwA
響「どうするって、そんなの簡単だぞ。この地面が競り上がってるのも、スタンドの能力なんでしょ?」

リョウ「う…」ス

ヒュ

リョウ「おぶ…!」ドンッ

リョウが何かしようとする前に、次の蹴りが突き刺さっている。

響「だったら潰される前に、お前を倒してスタンドを止めればいい」

リョウ「ぎゃ…」

リョウ「ぎゃおおおお」

響「ドララララララララララララララララララ」ダン ドンダンダンダンダンダンダン

リョウ「ぎゃおおおお」グチャゲシャボギャ

リョウ「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」ドグォドボォダンドォ

倒れてくる木に叩きつけるように、リョウの体を蹴り上げていく。

響「ドラァッ!!」ドグン!!

リョウ「んっ」ブァサァ!!

最後の一撃を撃ち込むと、リョウの体は霧散して消えていった。 


337 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/05/10(日) 01:31:23 iovnPJwA
ドドドドド

響「………」

ズ… ズズ

響「お、木が元通り立ち上がってくぞ」

響「みんなは…」キョロキョロ

シン…

亜美達の姿を探すが、何の音も聞こえてこない。

響「…あいつの言う通り、もう散り散りになっちゃったのか」

響「ここから、自分だけで進まなきゃか…なんだかんだ言って、やっぱりちょっと心細いかも…」

「おーい!!」

響「?」クルッ

P「ああ、いたいた! 探したぞ!」

響「あ! プロデューサー!?」

声に反応して振り向くと、木の間からプロデューサーが走ってきていた。 


338 : 『シークレット・コーラル』その3 :2015/05/10(日) 01:34:14 iovnPJwA
P「勝手に進まないでくれよ、置いてかれたのかと思ったぞ…」

響「プロデューサー、無事だったんだな!」

P「無事…? 何かあったのか…?」

P「…みんなはどうしたんだ?」

響「実は、敵の『複製』のスタンドに襲われて…」

P「なんだって!?」

響「そいつは倒したけど、亜美も、千早も、春香も、律子も、美希も…」

美希「ミキも?」

響「うん、みんなどこかに連れてかれて…」

響「…………………」

美希「どしたの?」 


339 : 『シークレット・コーラル』その3/おわり :2015/05/10(日) 01:35:02 iovnPJwA
響「美希!? なんでここにいるんだ!?」

P「え? だから…船でグースカ寝てたぞ? だから俺が戻って呼びに行ったんじゃあないか」

響「は…」

美希「それで、どこかって? どこ?」

響「…………」

To Be Continued… 


340 : >>1 ◆CKAtMuT12w :2015/05/10(日) 01:42:32 iovnPJwA
スタンド名:「シークレット・コーラル」
本体:アキヅキ リョウ
タイプ:特殊型・同化
破壊力:E スピード:C 射程距離:E(直接触れられる距離) 能力射程:B(30m程度)
持続力:A 精密動作性:C 成長性:C
能力:壁や床をドアのように『開く』ことのできる、リョウのスタンド。
自分自身がその中に入ったり、他人やものを中に閉じ込めることができる。ただし、気体や自分の質量を下回る物体の中に入ることはできない。
入り込んだものの中で、リョウは自由に動くことができるが、それ以外の者は全く身動きが取れない状態になる。
物体の固さや本来の形状などおかまいなしに開くことができるため、地形を変えるような使い方もできる。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

お待たせして申し訳ありません、今回分はこれで終了です。次回は…とりあえず火曜ってことで 



348 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 00:37:07 eml6EQaU
美希「さてと…」

美希「それじゃ、早く進も? 会長を倒しに行くの」

P「待て待て美希、みんないなくなったんだぞ、闇雲に進んでも危険だ」

美希「だから、なの。いつまでもこんなとこいても仕方ないって思うな」

響「さっきまで寝てた奴の台詞とは思えないぞ…」

P「何があるかわからないんだ、お前達にまで何かあったら…」

美希「ミキ、プロデューサーよりは強いから大丈夫だと思うよ。響もいるし」

P「そりゃ、俺はスタンドなんて使えないし見えないけど…それとこれとは話が違う」

P「お前がいくら強かったとしても、何も考えないまま進んでたらいつか絶対に捕まる」

響「美希ー、自分もそう思うぞ」

美希「んー…それじゃ、どうすんの?」

P「まず、いなくなったみんなと合流しよう。6人でも、あの会長の護衛1人に太刀打ちできなかったんだ。みんな一緒じゃないと、きっと高木会長には勝てない」

美希「じゃ、それで」

P「それでってなぁ…」 


349 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 00:40:55 eml6EQaU
美希「でも、それなら律子…さんを最初に見つけるのがいいって思うな」

P「そういえば、律子のスタンド…で探せるって言ってたな。でも、それならここに衛星を飛ばしてきてもおかしくないはずだが…」

響「この霧のせいかもしれないぞ。…たぶん、これのせいで律子の『ロット・ア・ロット』が壊されたりして上手く使えないんだと思う」

P「それならいいんだが…律子は無事なんだろうか。心配だな」

美希「プロデューサーが一番心配なのは千早さんでしょ?」

P「…は?」

美希「違うの?」

P「違うと言うか…あいつのことも心配だけど、なんでそこで千早が出てくるんだ…?」

美希「だってプロデューサー、千早さんのこと好きだよね?」

P「ああっ!?」ビクッ

響「美希、そんなはっきり言っちゃ駄目でしょ」

P「ちょ、ちょっと待てお前達…何か変な勘違いをしてるんじゃあないか…? あいつはアイドルで俺はプロデューサーだぞ!」

響「あー、うんうん。そうだよなー。わかってるぞー」

美希「あふぅ…ジョーダンなの」

P「お前らなぁ…」 


350 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 00:46:20 eml6EQaU
美希「ま、いいや。早く行こ」

P「ああ、しっかりな」

響「プロデューサー、船で待ってるつもりなの?」

P「ん? そのつもりだが…何か駄目か?」

響「駄目じゃあないけど、一人でいると危ないと思うぞ」

美希「プロデューサーが『複製』に見つかったらすぐやられちゃうの」

P「……………」

P「…すまん、俺も一緒に着いていっていいか」

美希「どうぞなの」

P(情けない話だが…こうしてアイドルに守ってもらわないと島にいられない…俺には心配することしかできないのか…)

P(しかし、千早や律子も確かに気にかかるが…)

P(散り散りに連れて行かれたみんな…そして、以前の事務所襲撃で捕まったみんな…無事だろうか…)

………

……

… 


351 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 00:52:40 eml6EQaU
やよい「あずささん、待ってくださーい!」

あずさ「あら」

煉瓦で舗装された道を進んでいたあずさが、足を止め、やよいの方へと振り向いた。

やよい「うぅー、先にぐんぐん行かないでほしいかも~」

あずさ「ごめんなさいね、やよいちゃん。ちょっと考え事してて」

やよい「考えごと、ですか?」

あずさ「ええ。私達が今使ってるホテル…あそこには、765プロのアイドルは私とやよいちゃんしかいなかったわよね?」

やよい「はい。でも、他の皆さんもあの時捕まってましたよね? どこに行っちゃったんでしょう…」

あずさ「他にも、あそこのような施設があるかもしれないって思って、外出許可を貰って出てきたわけだけど…」

やよい「えへへ、こんなことしてるってバレたら係の人に怒られちゃいますね」

あずさ「でも…向こうに見える建物、ホテルとちょっと違うわよね?」ピッ

ゴゴゴゴゴゴ

あずさが指差す煉瓦の道の先には、大きな塀がそびえ立っていた。 


352 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 01:05:42 eml6EQaU
二人が塀の側まで辿り着くと、高い高い白い壁の底部に、扉が一つあるだけだった。

あずさ「うーん、やっぱりホテルではなさそうね」

やよい「窓とかもついてないし…ちょっと、違うかも」

あずさ「でも、扉があるってことは中に何かあるかもしれないわね」

やよい「えーっと…」グッ

やよい「んんーっ」ググーッ

やよいは両手でドアノブを握ると、力一杯引っ張った。

やよい「はぁっ、駄目ですあずささん、この扉鍵がかかってますよ!」

あずさ「大丈…」

ビーッ ビーッ ビーッ

あずさ「あら? 何かしら、この音」

やよい「あっ! これです!」

二人の腕には金属製の腕輪がつけられていて、そこから警報音が出ている。 


353 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 01:14:07 eml6EQaU
あずさ「えーっと、確か…『昼までには戻ってこい』って言われて、これをつけてもらったのよね」

やよい「きっとわたし達が戻らないから、鳴ってるんだと思います!」

あずさ「でも、まだお昼にはちょっと早いような…」

ビー ビー…

音が鳴り止む。

あずさ「消えた…今のは『警告』ってことなのかしら」

やよい「うぅ~、また鳴る前に戻らないとダメかも…」

あずさ「そうね。ここにはまた来ればいいし、一旦戻りましょう」

やよい「はい…」

あずさ「煉瓦の道を通っていけば大丈夫よね?」

やよい「あっ、あずささん! 煉瓦の道は途中までですよ!」

あずさ「あ、そうだったわね…どこから入ったんだったかしら」

やよい「大丈夫ですよ、あずささん!」

あずさ「やよいちゃん、覚えてるの?」 


354 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 01:18:53 eml6EQaU
やよい「わたしもあんまり覚えてないけど…じゃーん!ジャラッ

やよいが、あずさに見せびらかすように袋を取り出した。中には豆が詰まっている。

あずさ「この豆は…?」

やよい「食堂で貰ってきたお豆さんです! 来た道を見てください!」

あずさ「あっ、豆が落ちてるわ」

やよい「ここに来るまでに、落としてきました! これを辿っていけば、元の場所に戻れます!」

あずさ「あらあら、それなら安心ね。やよいちゃんはしっかりしてるわね~」

やよい「えへへ…この前、弟達に本を読んであげたんですけど、それをちょっと真似してみたりして!」

やよい「拾って洗って煮れば、食べられるし!」

あずさ「そうね~。それじゃ、この豆を辿っていきましょ」

やよい「はいっ!」

二人は、落ちている豆を辿って煉瓦の道を引き返し始めた。 


355 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 01:22:41 eml6EQaU
やよい「あっ!」

あずさ「どうしたの、やよいちゃん?」

しばらく歩いていると、やよいの足が止まった。

やよい「豆が途切れてます! ここからは、脇道に出ましょう!」

あずさ「うふふ。道案内、お願いするわねやよいちゃん」

やよい「はいっ!」ザッ

やよいが脇道に一歩足を踏み出すと*…

「グワッグワッ」カプカプ

「グエッグエッ」モグモグ

その先で二匹の鳥が、道に落ちてる豆を次々咥えて喉奥に流し込んでいた。

やよい「って、はわっ! 鳥さんに食べられちゃってます~っ!」

あずさ「まぁ、絵本の通りね~」

やよい「そんなこと言ってる場合じゃあないですよ~っ!」 


356 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 01:37:11 eml6EQaU
やよい「こらっ! それはエサじゃないですよっ!」

「クエー」バサッバサッ

「キー」スイーッ

やよいが両腕を広げて叱りつけると、鳥は馬鹿にしたように平然と飛び立っていった。

やよい「あぅ~っ、これじゃ帰れませんー!」

あずさ「そうね、うーん…どうしましょう」

やよい「早くしないと、腕輪が鳴っちゃいます!」

あずさ「鳴ったら、どうなるのかしら?」

やよい「…どうなるんでしょう?」

あずさ「いいことは、なさそうよね。まず、これをなんとかしましょう」

やよい「え?」

あずさ「『ミスメイカー』」ズッ

フォン フォン

全身が夜空のような模様をした紫色の巨人が、あずさの傍に現れる。 


357 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 01:53:07 eml6EQaU
ズズ…

胴体と変わらないほどの大きな両腕を伸ばし、あずさとやよいの腕についている腕輪に指先で触れる。

カチッ!!

『0』の数字が書かれたデジタル時計のようなプレートが、その上に浮かんだ。

あずさ「腕輪を『眠らせ』たわ。少なくとも、『眠って』いる間この腕輪の機能が使われることはない」

やよい「あ、あの…あずささん…?」

あずさ「外すことも出来るかもしれないけど…そうすると、戻る時に*困っちゃうかもしれないから」

やよい「その、スタンド…」

あずさ「『ミスメイカー』? 触れたものに『カウント』をつけて、『ゼロ』になると『眠らせ』て機能を停止させる能力だけど…やよいちゃんには、教えたことあったわよね?」

やよい「はい、それは知ってます! 今、なんかいきなり『ゼロ』になって出てきましたよね!?」

あずさ「あ、そのことね。前は生物も物体も同じような感覚でやってたから、どっちも『91秒』かかってたんだけど…」

あずさ「物体には、元々意識がないから。意識ごと『眠らせ』ようとするんじゃあなくて、機能だけを『眠らせ』ることを意識したら、すぐに『眠らせ』ることが出来るようになったの」

やよい「えーと…? よくわかんないけど、物はすぐに『眠らせ』られるんですよね? すごいです!!」 


358 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 02:10:54 eml6EQaU
やよい「でも、どうやってホテルまで戻りましょう…」

あずさ「………」

あずさ「やよいちゃん。このままみんなを探さない?」

やよい「へ?」

あずさ「私も戻れるなら戻りたいけど、たぶん、いっぱい時間かかっちゃうだろうし…また、迷っちゃうかもしれない」

あずさ「だったら、このまま探すのを続けた方がいいと思う」

やよい「………」

あずさ「もしやよいちゃんが怒られるようなことがあったら、代わりに私が謝るわね」

やよい「あっ、あの! そこまでしてもらわなくてもだいじょーぶです!」

あずさ「やよいちゃん」

やよい「そうですよね、やっぱり、みんなを探す方が大事です!」

やよい「あずささん、もし怒られちゃったらいっしょに謝りましょう!」

あずさ「ふふ、ありがと。いっしょなら、ちょっと安心ね?」

やよい「えへへ…はいっ!」 


359 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 02:19:04 eml6EQaU
あずさ「それじゃ、さっきの場所に戻りましょう。『ミスメイカー』なら鍵も開けられるから」

やよい「はい!」

ザッ

やよい「?」

あずさ「あら?」

塀のある方角、あずさ達から離れた場所で、何者かが脇道から煉瓦の道路に入ってくる。

やよい「誰でしょうか? 声かけて、いいですか?」

あずさ「そうね~。危ない人かもしれないから、気をつけてね」

やよい「すみませーん! どなたですかー!」

やよいが大声で呼びかけるが…

ザッザッ

やよい「あう…」

やよいの声が聞こえないかのように、そのまま先へと進んでいく。 


360 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 02:22:07 eml6EQaU
やよい「うーん、聞こえてないんでしょうか?」

あずさ「結構、離れてるから…あら?」

???「………」ザッ ザッ

先を歩く人物は、肩に何かをぶら下げている。

あずさ「何か…担いてるみたいね。やよいちゃん、見える?」

やよい「はい。わたし、目はいいですから。あれは…」

あずさ「何が見える?」

やよい「えーっと…青い…髪? 人でしょうか、あれは…」

ゴゴゴゴゴ

千早「………」

???「………」ザッザッ

やよい「千早さん…!?」

あずさ「え!?」 


361 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 02:32:11 eml6EQaU
あずさ「千早ちゃん…言われてみれば、あれは確かに千早ちゃんだわ。じゃあ、それを抱えているあの人は…?」

やよい「あれは…」

ピタ…

その時、先を行く人物は足を止め…

???「うふふ…」クルッ

長い髪を揺らしながら、あずさ達の方を振り返った。

やよい「あの顔は…」

あずさ「………」

アズサ「ふふふふふ」

やよい「あずささん…!?」

あずさ「はい? 何かしら、やよいちゃん?」

ザッザッ

あずさとやよいの姿を確認すると、あずさと同じ顔をした長髪の女性は、前を向いて再び歩き出した。 


362 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 02:35:32 eml6EQaU
あずさ「やよいちゃん? どうしたの?」

やよい「あの人、あずささんですよっ!」

あずさ「…? ?? …?」

やよい「あずささんと同じ顔をしてたんです! 髪型も、昔のあずささんみたいで…!」

あずさ「私のそっくりさんかしら? 世の中にはそっくりさんが3人いるって言うけど、こんなところで会うなんて思わなかったわ」

やよい「あずささんの『偽物』ですよっ!!」

あずさ「え、あの人がそうなの…?」

やよい「はい、わたし伊織ちゃんの『偽物』に会ってますし…あずささん、ここに連れて来られた時に見てないんですか?」

あずさ「うーん、会ってないわね。あの時は響ちゃんに会って、突然気を失っちゃったから…」

やよい「それ、響さんの『偽物』ですよ!」

あずさ「あ、そうなのね~。響ちゃんはあの時間は仕事中だって聞いてたから、変だと思ったけど」

やよい「でも、ほんとにそっくりですよね。あのあずささんも…」

あずさ「………」

やよい「………」 



364 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 02:46:09 eml6EQaU
タッ!

二人は同時に、アズサの背中に向かって走り出した。

あずさ「やよいちゃん。あれは私の『偽物』なのよね」

やよい「はい。それで、その『偽物』が千早さんを連れて行こうとしてるってことは…」

あずさ「あの千早ちゃんは本物かもしれないわ…!」

アズサ「ふふ」カツ カツ

二人の足音を耳にして、アズサは歩くペースを上げた。

あずさ「やよいちゃん、『ゲンキトリッパー』を…」

やよい「もう行かせてます、でも…」

ウー ウッウー

分裂した『ゲンキトリッパー』の進むスピードは、アズサの歩く速度と同じくらいだった。

やよい「うぅー、『ゲンキトリッパー』のスピードじゃ追いつけないかも…伊織ちゃんや貴音さんのスタンドなら、びゅびゅーんって行けるんですけど」

あずさ「距離が離れすぎてるわね。もっと近づかないと」

あずさ「あっちは千早ちゃんを抱えている。その分、走るのはこっちの方が速いから追いつけるはずよ」

やよい「はい!」 


365 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1 :2015/06/03(水) 03:00:00 eml6EQaU
タタタタタ

走るごとに、アズサとの距離がぐんぐん縮まっていく。

やよい「もうちょっと…! 千早さん、待っててください…!」

アズサ「ふふ、元気ねやよいちゃん…」

やよいの方が、あずさの少し先を走っている。

アズサ「『ゾーン・オブ・フォーチュン』」ブオン

やよい「!」

アズサの近くに、全身の至る所から棘が生え、鎖やロープなどが腕に巻きつけられている、過剰な装飾がなされた人型のスタンドが出現する。

あずさ「これが彼女の…私の『偽物』のスタンド…」

あずさ「『ミスメイカー』とは全然違う形なのね」

アズサ「えいっ」ス…

アズサのスタンドが両腕を上げると…

ダンッ!!

地面の煉瓦に振り下ろし、叩きつけた。 


366 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その1/おわり :2015/06/03(水) 03:04:49 eml6EQaU
やよい「!」バッ

やよいは、飛んでくるであろう攻撃に身構えるが…

やよい「…? なんにも起こらない…」ス…

煉瓦には何の変化もなく、やよいは構えを解いてそのままアズサを追いかけようとする。

あずさ「! やよいちゃん、待って…!」

やよい「へ?」カチリ

やよいが『ゾーン・オブ・フォーチュン』の手が触れた辺りの地面を踏むと…

ガン! ガガンッ

やよい「わっ!?」グラッ

煉瓦が剥がれ、ひとりでに道の両脇に積まれていく。やよいはそれに足を取られ、体勢を崩した。

アズサ「こんなところで何をしてるのかなって思ったけど…やっぱり、ここから出ることを諦めてないのね~」

アズサ「そのためには、仲間が必要…千早ちゃんを餌にしたら、思った通り追いかけてきたわ」

アズサ「うふふ♪ だったら、もう反抗する気も起きないほどに痛めつけてあげるわね~♪」

ガラガラガラ!!!

道脇に積み上がった煉瓦が、やよいに襲いかかるように崩れだした。 


367 : >>1 ◆CKAtMuT12w :2015/06/03(水) 03:11:09 eml6EQaU
スタンド名:「ミスメイカー」
本体:三浦 あずさ
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:A スピード:D 射程距離:E(3m) 能力射程:C(10m)
持続力:B 精密動作性:C 成長性:E
能力:生物だろうが物体だろうが「91秒」で「眠らせ」る、あずささんのスタンド。
触れたものには「カウント」がつき、「カウント」の数字がゼロになるとその対象は「眠る」。
「眠らせ」たものは一時的にその機能を停止し、能力を解除することで再び動き出す。
既につけた「カウント」に触れていると数字は早く減っていき、また、意識のない物体であれば「91秒」を待つことなく一瞬で「眠らせ」ることが可能。
胴体と同じくらいに巨大な両腕は非常に高いパワーを誇るが、本体であるあずささんののんびりとした性格を反映したように、スピードはそれほど速くはない。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

お待たせしました。続きは明日書きます(明日書くとは言ってない) 



371 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/12(金) 00:38:49 PRh.AEU.
ガラ ガラガラ

崩れてきた煉瓦は、やよいを押し潰そうとしながら、元の板状の形に戻ろうとする。

グォォォォォォォォ

やよい「わーっ!」バッ

やよいは頭を守るように腕を被せ、体を丸めた。

やよい「………?」チラ…

煉瓦が襲ってこないので、顔を上げると…

あずさ「………」グググ

『ミスメイカー』が両腕を広げて、倒れくる煉瓦の壁を押し留めていた。

やよい「あずささん! あ、ありがとうございます」

あずさ「いいえ、お礼なんて大丈夫よ~」

グッ!!

『ミスメイカー』の腕が、少しずつ壁に押されている。

やよい「!」

あずさ「だって、まだ助かったわけじゃないもの…!」 


372 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/12(金) 00:40:14 PRh.AEU.
やよい「あずささんの『ミスメイカー』でも止められないんですか…!?」

やよい「あっ、でも能力で『眠らせ』れば!」

あずさ「いいえ、やよいちゃん…もう『眠らせ』てるの。でも…」

ゴゴゴゴ

あずさ「この壁は止まらない! それに、力も凄く強いわ…! 『ミスメイカー』で抑えているけど、長くは保たないわ!」

やよい「わわっ、大変ですっ」

ピョコッ ピョンッ

やよいの背中に乗っていた『ゲンキトリッパー』の分体が、壁へと飛び跳ねていく。

やよい「んしょっ!」バッ

ウー ウウーッ

やよいが立ち上がって抜け出しているうちに、『ゲンキトリッパー』は煉瓦の隙間へと入り込み…

ドジャァァーン

隙間を『くっつけ』、壁の動きを止める。 


373 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/12(金) 00:42:57 PRh.AEU.
やよい「『くっつけ』ました! けど…」

ミシッ…

やよい「すぐに倒れてくるかも…あずささん、早く!」

あずさ「ええ!」タッ

『ミスメイカー』の手を放し、あずさもその場から脱出した。

バタァァァン

直後、煉瓦が倒れ込み、元の石畳に戻る。

やよい「危なかったです~」

あずさ「あのスタンドの能力かしら」

やよい「どんな能力なんでしょう…」

あずさ「うーん、そうねぇ…」

アズサ「………」スーッ

やよい「…追いかけながら考えましょう!」 


374 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/12(金) 00:48:07 PRh.AEU.
タッタッタ

アズサ「そーれっ」ドンッ

アズサが『ゾーン・オブ・フォーチュン』で地面を殴りつける。

あずさ「!」バッ

やよい「!」ババッ

それを見て、二人はそれぞれ左右に広がり、ルートを変えた。

あずさ「さっき、あのスタンドが触れた場所をやよいちゃんが踏んだら煉瓦が襲ってきた…」

やよい「あそこを踏んだら危ないかも!」

タタタ

アズサ「あらあら~、避けられちゃったわね~」

やよい「?」

チラ…

アズサの様子に何か違和感を覚え、やよいはあずさの方を見た。

ザワザワ

道を挟んで左方、脇に立ち並ぶ木が揺れている。 


375 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/12(金) 00:58:08 PRh.AEU.
アズサ「そこを踏まなければ…大丈夫だって、思ったかしら~?」

やよい「あずささん!」

あずさ「?」

カチリ

・ ・ ・ ・

ビュ!!

木の幹から、一本の枝があずさに向かって槍のように伸びてきた。

あずさ(触れてないのに、木が襲いかかってきた…)

あずさ(だめ、『ミスメイカー』じゃ間に合わ…)

ビタン

その時、あずさの足が地面にピタリと『くっつい』て止まった。

あずさ「え? きゃっ!」バタン!

そのままの勢いで、あずさは膝をついて倒れる。

ギュォン!

鋭く伸びた枝が、あずさの頭上を貫いていく。 


376 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/12(金) 01:03:22 PRh.AEU.
アズサ「あら…」

やよい「あずささん! 大丈夫ですか!」

あずさ「ええ、ありがとう。『ゲンキトリッパー』のお陰でお団子にはならずに済んだわね…」

やよい「どういうことなんでしょう、あんなところに触ってないはずなのに」

あずさ「わからないわ。一つだけ言えるのは…」

千早「………」

アズサ「ふふっ」

あずさ「だからって追いかけないでいると、千早ちゃんを連れてかれちゃうってことよね」 


377 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/12(金) 01:14:58 PRh.AEU.
ゴゴゴゴゴ

二人がアズサを追いかけていると、白い壁が目の前まで迫ってきて来た。

アズサ「うふふ」

ガチャ

アズサは扉を開け放し、壁の向こうへと進んで行く。

タタッ

あずさとやよいはためらうことなく、その後に続いていった。

あずさ「! これは…」

リンゴン リンゴン

木馬がきらびやかな屋根の下で回っている。

ゴォォォォォ…

高所を走るレール、ゆっくり回転する観覧車、コーヒーカップ、サーキット場…

やよい「わぁ…」

あずさ「まぁ」

壁の中は、遊園地だった。 



379 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/12(金) 11:56:18 PRh.AEU.
やよい「誰もいませんね」

あずさ「ここにお客さん来るのかしら?」

アズサ「お客さんは、あなた達よ~」

カチリ

あずさ「あっ!」クルッ

通ってきた扉の方から聞こえてきた起動音に、あずさ達が振り向く。 

あずさ「扉が…」

やよい「消えちゃいました…!」

アズサ「その入り口は私のスタンドの能力で作ったもの。役目を終えれば自動的に消えるわ」

あずさ「あなたの『スタンド能力』…?」

アズサ「私のスタンド『ゾーン・オブ・フォーチュン』は…触れたものを『罠』に変える。それが能力」

やよい「!」

あずさ「!」

アズサ「ふふっ、『どうしてバラすのか?』って不思議そうな顔ね~」

アズサ「だって…今ここにいる時点で、もう既にあなた達は私の『罠』に嵌っているんだもの」 


382 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:22:36 CG5W8bPw
やよい「もう罠にはまってる…?」

あずさ「つまり、ここに閉じ込めた時点で目的は達成されている…」

あずさ「この遊園地全体があなたの『罠』…ってことかしら?」

アズサ「うふふ、よくできました。その通りよ~」

やよい「だったら、『罠』を仕掛ける前に『くっつけ』ちゃいます!」バッ

ウッウー ウーウー

『ゲンキトリッパー』の分体が、アズサに向かっていく。

ズァァァァァ

カチリ

ブシュゥゥゥゥーッ

しかし、アズサの手前で石造りの地面から噴水が上がり、『ゲンキトリッパー』が跳ねあげられた。

やよい「わっ!?」

あずさ「『罠』が起動した…」 


383 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:25:20 CG5W8bPw
あずさ「何故…? そのスタンドは、どこも触ってないのに…」

アズサ「一つ言い忘れたけど、『罠』は一度仕掛ければ『射程距離』で能力が解除されることはないわ」

あずさ「能力の『射程距離』がとても広いのね」

アズサ「少なくともこの島の中なら、ね」

あずさ「…島?」

やよい「えっ!? 島だったんですか、ここって?」

アズサ「そんなこと言ったかしら~?」

あずさ「聞き間違いかしら…」

やよい「確かに聞きましたよ!」

アズサ「うふふ」

やよい「うふふじゃありませんっ!」

アズサ「ま、ここがどこだって関係ないと思うけどね」

アズサ「だって、『ゾーン・オブ・フォーチュン』の『罠』が張り巡らされている以上…」

アズサ「あなた達がこの遊園地から出ることはできないのだから」

ゴゴゴゴゴゴゴ 


384 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:28:23 CG5W8bPw
あずさ「いいえ、出る方法はあるわ」

アズサ「?」

あずさ「目の前のあなたを倒せばいい。『射程距離』で解除されなくても、スタンドを止めれば能力も解除されるでしょう?」

アズサ「ふふ、なるほどね。でも、私の周りにはまだ『罠』が仕掛けてあるかもしれないわよ~?」

タッ

アズサ「あら」

あずさがためらうことなくアズサへと向かって走っていく。

あずさ「少なくとも、今やよいちゃんの『ゲンキトリッパー』が通った場所…そこには『罠』は仕掛けていない」

アズサ「そうね~。でも、そこからじゃスタンドを飛ばしても届かないわよ?」

あずさ「えいっ!」バッ

走り幅跳びのように、その場で踏み切る。

ズズッ

あずさ「『ミスメイカー』!」

空中で、紫の巨人が巨大な腕を振りかざした。 


385 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:31:24 CG5W8bPw
あずさ「例え地面に『罠』を仕掛けてあったとしても…」

あずさ「踏まなければ、踏む前に攻撃すれば…!」

ゴッ!!

『ミスメイカー』の腕が、アズサに向かって振り下ろされる。

あずさ(頭に触れれば…いえ、どこでもいい。どこだろうと『眠らせ』さえすればもう逃げられない!)

アズサ「えっと、もう一つ言い忘れてたけど」

カチリ

ドボン!!

床から、石が砲弾のように打ち上がる。

あずさ「え…?」

アズサ「別に、『罠』は触れられなくても発動できるの。私が見える範囲なら」

やよい「あずささんっ!」

ドス ドス

あずさ「うっ!!」ドサァ!!

石に弾き飛ばされ、あずさは地面に落ちた。 


386 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:32:56 CG5W8bPw
アズサ「うふふ…」クルッ

スタスタ

アズサはそれを見ると、千早を連れたまま遊園地の奥へと歩いていった。

やよい「あずささん、大丈夫ですか!?」

あずさ「うん…なんとか、ね」

やよい「今治します!」

あずさ「えーと…そうね、お願いするわ」

やよい「はいっ」

ピョコピョコ

あずさの傷口に小さなやよいのスタンドが入り込み、埋めていく。

やよい「あっ、あずささんの『偽物』はっ!」バッ

アズサ「ふふ」

やよい「あっ、よかった…まだ追いつけそうなところにいます!」

あずさ(………) 


387 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:34:24 CG5W8bPw
やよい「行きましょう! 『罠』なんて、私の『ゲンキトリッパー』で全部使わせちゃいます!」

あずさ「待ってやよいちゃん。『ゲンキトリッパー』を使う必要はないわ」

やよい「へ? でも、そのまま行こうとしたら、そこらじゅうにもういっぱいいーっぱい『罠』が仕掛けてあるから…」

あずさ「それはないわ」

やよい「へ?」

あずさ「『罠』同士は近くに仕掛けられないか、あるいは個数か…何かしらの制限はあるはずだから」

やよい「な、なんでわかるんですか?」

あずさ「だって、何の制限もなく本当にそこらじゅうに『罠』を敷きつめられるのなら…」

あずさ「私たちはとっくに『再起不能』させられているだろうし…彼女がああやって千早ちゃんを連れていく意味がないもの」
*
あずさ「荷物になる千早ちゃんを置いて、自分はさっさと園外に出てしまえばいい。そして『罠』を起動! それで勝ちよ」

やよい「あ…」

あずさ「そうしないってことは、千早ちゃんを解放したら、その方法で100%私たちを始末できる自信がないってこと」

あずさ「つまり、能力を無制限に使えるわけじゃあない」

やよい「それなら、あんまりムダ使いできないかも…」

あずさ「そうね。だから千早ちゃんを連れて、私たちをさらに誘き出そうとしているのよ」 


388 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:35:38 CG5W8bPw
アズサ「………」テクテク

やよい「どこかに向かってるみたいですけど、追いかけていったら…」

あずさ「恐らくその先には大量の『罠』が仕掛けているでしょうね」

やよい「じゃあ、その先の『罠』を『ゲンキトリッパー』で…」

あずさ「待ってやよいちゃん」

やよい「うぅ~、なんですかあずささん?」

あずさ「さっきのはやっても無駄だから待ってと言ったけど…今度はやってはいけないわ」

やよい「なんでですか?」

あずさ「いくらダメージが分散されると言っても、もしも全て…いえ8割でも潰されればやよいちゃんは死んでしまうかもしれない」

やよい「え…」

あずさ「それくらいのことはやってくる…あるいは起こりうる相手だということよ」

あずさ「ここは、彼女を倒すことに集中しましょう。倒せばどの道『罠』は全て解除される」

やよい「…はい、わかりました」 


389 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:38:27 CG5W8bPw
タタタッ

アズサ「あら、まっすぐ向かってきわね」

あずさ「ええ。考えた限りあなたがこの道でそれほど多くの『罠』を仕掛けているとは思えなかったから」

アズサ「そうね。あなた達の話してたことはだいたい正解よ」

やよい「あれ、聞こえてたんですか?」

アズサ「私たち『複製』…『完全なアイドル』は感覚に優れているから」

あずさ「『複製』?」

やよい「『複製』って、どういうことですか!? あずささんのことを機械とかでガーってやってできたんですか!?」

アズサ「そんなこと言ったかしら~?」

あずさ「聞き間違いかしら…」

やよい「確かに聞きましたよ!」

アズサ「あら~?」

やよい「あら~? じゃありませんっ!」 


390 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:40:16 CG5W8bPw
アズサ「まぁ、私のことなんてどうでもいいわ」

やよい「どうでもよくないですよっ」

アズサ「それより…」ズッ

『ゾーン・オブ・フォーチュン』が、アズサの中に戻っていく。

あずさ「どこかに『罠』を仕掛けたわね」

やよい「どこから…」

カチリ

グワッ!!

コーヒーカップの柵が触手のように伸び、背後から二人の足を掴もうと襲い掛かる。

ビタッ

が、その直前で動きが止まった。

やよい「来ても…大丈夫です、『くっつけ』て止めました」

ウー ウー

二人の後ろを追いかけるように、『ゲンキトリッパー』の大群が走っている。 


391 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:41:35 CG5W8bPw
アズサ「わからないのよね~。そこまでわかっていたのに、どうして遊園地の入口を探して逃げようだとか思わなかったの?」

アズサ「もちろんそこにも『罠』は仕掛けてあるけど、こっちに来るよりは賢いと思わなかった?」

あずさ「えっと、ごめんなさい…何を言いたいのかがよくわからないわ」

アズサ「そうよね~。だから私もここに来たんだけど」

カンカンカン

アズサが階段を登っていく。

あずさ「………」カンッ

あずさもその後に続いていこうとするが…

あずさ「…やよいちゃん?」クル

振り向くと、やよいは階段の下で立ち止まっていた。

やよい「あ、あの…あずささん、ここって…」

あずさ「あ…」

あずさ(やよいちゃんは高いところが苦手だったわ…この先は…) 


392 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2 :2015/06/19(金) 23:42:50 CG5W8bPw
カチリ

あずさ「あら?」ガシッ!

やよい「へっ!?」ガシッ!!

二人の足が、床に固定された。

ガタガタガタガタ

やよい「えっ、えっ!?」

階段がエスカレーターのように、ひとりでに動いて二人を上まで運んでいく。

あずさ「『ミスメイカー』で止め…」

アズサ「ふふ、もう遅いわ」

ドザァ!!

あずさ「きゃ!」

やよい「はわっ!」

二人が運ばれた先は、ジェットコースターの…最後部座席だった。 


393 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その2/おわり :2015/06/19(金) 23:46:07 CG5W8bPw
キリ…キリキリキリ

二人を乗せたコースターが、ゆっくりと動き出す。

やよい「えっ、えっ…」

あずさ「………」ジ…

あずさは先頭に目を向ける。横になっている千早と、こっちを向いて座っているアズサの姿が見えた。

アズサ「さぁ、ここからが本番よ…」

アズサ「アトラクション、楽しんでくださいね♪」 


394 : >>1 ◆CKAtMuT12w :2015/06/19(金) 23:50:05 CG5W8bPw
スタンド名:「ゾーン・オブ・フォーチュン」
本体:ミウラ アズサ
タイプ:近距離パワー型・標準
破壊力:C スピード:D 射程距離:E(1m程度) 能力射程:A(数km)
持続力:A 精密動作性:C 成長性:C
能力:触れたものを何だろうと「罠」にするアズサのスタンド。
「罠」は直接触れるかアズサの意思で起動し、一度発動すると、元の形に戻る。
一度設置した「罠」は相当離れても、消えたりせずその場に残る。
ただし、「罠」を設置するためのスタンド自体の射程距離は短い。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

今回はこれでようやく終わりです。
今後は出来次第書けた分を投下する方式にしようと思います、どうしても進まなければ自分で指定するかもしれませんが… 



397 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/06(月) 02:56:56 WxxCwp7A
ゴゴゴゴゴ

キリキリキリ

レールの底にあるチェーンリフトが、コースターを押し出している。

やよい「駄目っ、駄目ですっ、このままじゃ…」

アズサ「うふふ、やよいちゃんはもういっぱいいっぱいみたいね~」

アズサ「もちろん、この先のレールにもたーっぷり『罠』があるわ。無事に抜けられるかしら~?」

あずさ「いえ、抜ける必要なんてないわ」

あずさ「やよいちゃん、『ゲンキトリッパー』を。出る前にローラーを『くっつけ』て止めちゃいましょう」

やよい「あっ…! そ、そうですね! それじゃ、今…」

アズサ「もちろん…あなた達が座っているそこにも『罠』は仕掛けてある」

カチリ

ガン! ギン!

あずさ「うっ!?」

やよい「わっ!?」

ジェットコースターの安全レバーが、二人をシートに挟み込んだ。 


398 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/06(月) 03:00:24 WxxCwp7A
アズサ「大人しくしててね。少なくともこのコースターが坂道を登り始めるまでは」

やよい「『ゲンキトリッパー』が…出せませんっ…!」ググッ

あずさ「『罠』自体が『スタンド能力』だから…押さえ込まれちゃうのね」ググ

あずさ(いち、に…先頭まで、座席がいっぱいだわ…そして、恐らくそのほとんどに『罠』が仕掛けられているでしょう)

キリキリ…

あずさ(このままジェットコースターがびゅーんって落ち始めたら、一番前を目指すのはちょっと大変かもしれないわ)

あずさ(…その気になれば、このレバーが上がった瞬間、レールに降りて逃げることはできなくもない。やよいちゃんの『ゲンキトリッパー』を使えば安全にレールの上に落下できる)

あずさ(でも…)チラリ

コースのちょうど中間あたりに、足場と、隣接した階段が見える。

あずさ(緊急用の出口がある。あそこで降りられたら、私たちが降りて下から向かおうにも間に合わない…間に合ったとしても『罠』が仕掛けられているはず)

アズサ「うふふ」

あずさ(あの人もそれをわかって、ああやって一番前に座ったまま何もしないのね)

ゴゴゴゴゴゴ 



401 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/09(木) 02:50:23 QgOyp3R6
やよい「うぅ、止まってください~…怖いです~っ!!」

あずさ(やよいちゃん…高いところが怖いのね、かわいそうに…降ろしてあげたいけれど)

あずさ(でも…)

あずさ「やよいちゃん」ギュ

やよい「え…?」

あずさが、やよいの手を握った。

あずさ「聞いて。もし、このコースターから逃げられたとしても、この園内には『罠』が仕掛けられているってことはあの人が言ってたわよね」

やよい「は、はい…」

あずさ「それを解除しない限り、私たちは無事に出ることはできないわ」

あずさ「何より、千早ちゃんを助けられない」

やよい「………」

あずさ「千早ちゃんを助けて、私たちがここから出るには、ここであの人を倒すしかないわ」

あずさ(やよいちゃんの力がなければ…きっと勝てない)

あずさ(二人じゃないと、あの人を倒すことはできない) 


402 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/09(木) 02:52:53 QgOyp3R6
やよい「………」

あずさ「怖いのはわかるわ。私も…怖いから」ブルブル

やよい「!」

あずさの手が震えている。

あずさ「ふふ…ダメね。こういう時、ちゃんとお姉さんらしくできたらいいんだけど」

やよい「あの…あずささん」

あずさ「うん」

やよい「私、やっぱり怖いし、何もできないかも…」

あずさ「何もできないなんてないわ」

やよい「でもっ、私だって千早さんを…みんなを、助けたいです!」

あずさ「そうよね。私も同じよ」

やよい「気合入れて、バババーって行きましょう!」

あずさ「ええ、頑張りましょう。二人なら、ぜったい勝てる」 


403 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/09(木) 03:10:57 QgOyp3R6
やよい「でも、やっぱりちょっと高いところは怖いです…落ちそうだし…」

あずさ「大丈夫よ。このレバーに掴まってれば、落ちることはないから」

ガンッ!!

レバーが上がった。

やよい「あの、あずささん」

キリキリキリ

コースターはどんどん坂を上がっていく。

あずさ「やよいちゃん、大丈夫よ」

やよい「レバー、上がっちゃいましたけど…」

あずさ「大丈夫よ。大丈夫…落ち着いて」

キリキリキリキリキリキリキリキリ

やよい「あっ、あっ、落ちちゃいますよっ」

あずさ「やよいちゃん、落ち着いて。う~んと…」

あずさ「そうだわ、レバーが上がったから『ゲンキトリッパー』は出せるはずよ。足元を『くっつけ』ましょう」

やよい「あっ! は、はいっ!」ズズッ 


404 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/09(木) 03:42:03 QgOyp3R6
ゴォォォォォォォォォ

『くっつけ』るのが間に合わず、ジェットコースターが落下を始めた。

あずさ「きゃあああ…!!」ゴォォォォォォォォォ

やよい「わーっ!! やっぱりムリかもーっ!!」ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

フワ…

やよい「あっ!」ガシッ

体が少しずつ浮き始め、二人は必死にコースターの縁に掴まる。

アズサ「あらあら~、大変そうね~」

アズサはレバーを降ろした先頭座席で、あずさ達を眺めている。

あずさ「く…」ズッ

グッ!

『ミスメイカー』が二人の体を座席に押し込む。

ピタ…

座席の底に仕掛けた『ゲンキトリッパー』により、足が『くっつい』た。 



406 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/14(火) 10:26:59 vTfd6.EQ
ゴォォォォォォォ

やよい「うぅぅぅぅっ…!」

ジェットコースターがカーブする度に、体に重力がかけられる。

あずさ「…やよいちゃん、もういいわ。私の『ゲンキトリッパー』を解除して」

やよい「えっ?」

あずさ「ここにいるだけじゃあ、彼女は捕まえられない」

ガッ

背もたれの上に足をかける。

あずさ「私が、一番前まで行くわ」

やよい「そんな、危ないですよっ!」

あずさ「ええ、危ない…だから、やよいちゃん。後ろの席から私を手伝って」

やよい「そんなこと…」

ポンッ

下を向くやよいの頭に、手を置く。

あずさ「お願いね」 


407 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/14(火) 10:30:26 vTfd6.EQ
ドクン ドクン ドクン

あずさ「ふぅ…」スッ

ピタ…

やよい「………」

あずさ「ありがとう、やよいちゃん」

ゆっくり、慎重にコースターを移動していく。

アズサ「そんなゆっくりで…私のところまで着くのはいつになるのかしらね~」

あずさ「ゆっくりでも、近づいていけばいつか辿り着くと思うの。方向は間違ってないから」ス…

トンッ

言いながら、あずさは前のシートに足を着いた。

アズサ「わかってる? 『くっつけ』ながら向かってくるってことは…」

カチリ

あずさ「!」

アズサ「私が仕掛けた『罠』から逃げる暇がなくなるってことよ?」 


408 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/14(火) 10:32:32 vTfd6.EQ
バガッ

コースターの中心が広がり、ドーナツのように穴が空く。

やよい「あ…!!」

ズズッ

あずさ「きゃ…!」グラッ

シートも手前の方に引っ張られ、足を取られる。

あずさ「っ!」ガシィ!!

前のシートの背もたれを掴み、橋を作るような体勢で踏みとどまった。

ゴォォォォォォォ

あずさ「う…」

目の前でレールが流れている。

アズサ「頑張るわね~。そこからどうするの?」

あずさ「何も…しないわ」

ズズズズ…

あずさ「一度起動した『罠』は、しばらく経てば元に戻る…でしょう?」 


409 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/14(火) 23:29:44 vTfd6.EQ
ガシッ ガッ

あずさ「ふぅ、ふぅ」

走るジェットコースターの上を、あずさは慎重に進んで行く。

アズサ「一つ、いい?」

あずさ「…なにかしら?」

アズサ「どうして、そこまでする必要があるの?」

あずさ「そこまで…っていうのは、どういうこと?」

アズサ「私達の目的は『完全なアイドル』としてあなた達の代わりをし、アイドルとしてのあなた達を永遠に残すことよ」

アズサ「あなた達を傷つけることが目的じゃあない…あなた達がそうやって向かってくるからそうせざるを得ないだけ」

あずさ「………」

アズサ「この島で不自由なことはできる限り対処するし、いつまでも閉じ込めておくつもりはない。私たちの存在が受け入れられるようになれば、あなた達は自由に生きられるわよ」

あずさ「でも…私は…」

アズサ「運命の人を見つけたいのよね? だからアイドルを始めた」

アズサ「でも、それなら私が代わりに探すわ。あなたの記憶を持っているんだもの。きっと見つけられる。そして、あなたがその人と結ばれた後も、アイドルとしての三浦あずさはこの世に残り続ける」

アズサ「いいこと尽くめじゃない? こんな死ぬような思いをしてまで逆らう必要が、どこにあるの?」 


410 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/14(火) 23:43:39 vTfd6.EQ
あずさ「確かに…結果だけ見れば、いいことばかりに思えるわね」

アズサ「でしょう?」

あずさ「でも、それだけよ」

アズサ「? それがすべてでしょう?」

あずさ「違うわ。それは結局、与えられただけ。そうなった時点で、もう私の夢じゃなくなっちゃうわ」

アズサ「…?」

あずさ「やっぱり…あなたは私とは違うわね。私の記憶を持っているみたいだけど、持っているだけ」

あずさ「夢は、自分で掴み取ってこそ自分のものになる。自分にとって、価値があるものになるのよ」

アズサ「そのために、痛い目に遭うかもしれないのに?」

あずさ「痛いのは、嫌だけど。譲れないものもあるの」

あずさ「夢を叶えた時に、ちゃんと胸を張っていたいから」

アズサ「理解できないわね…」

あずさ「あなたは生まれた時からすべてを持っていた。だから、わからないのね」

あずさ「理解できなくてもいい。いくら、夢見がちだって言われても…」

あずさ「私は、私の夢を、くだらないものにされたくはない」 


411 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/14(火) 23:49:06 vTfd6.EQ
アズサ「…やよいちゃんは?」

やよい「えっ?」

アズサ「『複製』が稼いだギャラは、ちゃんとやよいちゃん本人に入るようになるわ」

アズサ「それだったら、別にやよいちゃんがわざわざアイドルのお仕事する必要はなくなるわよ?」

やよい「家はちょっと貧乏で大変かもですけど…」

やよい「何もしてないのに、お金だけ貰うなんて、そんなのよくないですよ!」

アズサ「でも、家計のためにアイドルをしているんでしょう?」

アズサ「それに、ここまで地位を築いてきたのはやよいちゃん本人。そのご褒美みたいなものよ、ちょっとくらい楽をしたっていいんじゃない?」

やよい「わたし、たしかにお仕事して、家族を助けられたらって思ってますけど…」

やよい「でも、みんなの前で歌って踊って、それでワーって拍手とかしてもらえるのが嬉しくって、楽しくって、ドキドキするんです!」

やよい「それが、好きだから…じゃなかったら、わたし…アイドルやってません!」

アズサ「ああ、そう…」 


412 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:00:46 hhdz25L6
カチリ

あずさ「!」

グゴオ

あずさが踏んだシートが勢いよく隆起する。

ゴォォォォォォ

あずさ「んっ!」バッ

上の方で交差しているレールが目の前に迫ってきたが、かがんで潜り抜けた。

アズサ「………」スッ

やよい「! あずささん! あの人、何かやろうとしてますよ!」

アズサ「『ゾーン・オブ・フォーチュン』ッ!!」ピタッ

カチリ

アズサが足元のレールに触れ、新たな『罠』を仕掛けた。

ザン!

やよい「なんっ…!?」

アズサのスタンドが触れた部分が、柱のように変形してせり上がり、コースターの隙間に入り込んだ。 


413 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:05:21 hhdz25L6
ギギギギギギギ

あずさ「ゆ、揺れる…!」

ギッギギギギギ

あずさ「この軋み方…駄目だわ、切り離される…!」

フラッ

あずさ「え?」

あずさの足が、シートから離れた。

あずさ「『ゲンキトリッパー』が…やよいちゃん!?」

やよい「あ………」

ブチン!!

コースター同士を接続している金具が切れ…

ブワッ

あずさ「きゃああああああああああああああああああああああ」

やよい「うわあああああああああああああああああああああ」

後部座席は横向きに弾け飛び、二人は宙に放り出された。 


414 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:13:06 hhdz25L6
あずさ「やよいちゃん…!」バッ

やよい「っ!」

ガシッ!!

『ミスメイカー』が空中で手を伸ばし、やよいがそれに掴まる。

アズサ「もう、どうにもならないわね~」

アズサ「二人仲良く…ぺっちゃんこになっちゃいなさい!!」

あずさ「いえ、まだよ…」

ドドドドド

吹っ飛ばされた軌道上には、レールが走っている。

あずさ(このレールを掴んで上に登れば…コースターはこのレールを通る、彼女は先頭にいる! 『ミスメイカー』のパワーなら迎え撃てるわ…!)

あずさ「『ミスメイカー』…! レールを掴んで…!!」バッ

スカッ

しかし、『ミスメイカー』が伸ばした腕は数センチの差で空を切った。

あずさ「あ…」

あずさ(届…かない…駄目…だわ…) 


415 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:17:22 hhdz25L6
ヒュォォォォォ

二人はコースターからどんどん離れるように落ちていく。

アズサ「ほら…逆らおうとするかこうなるのよ」

アズサ「これに懲りたら、もう大人しくしてなさい? 生きてたら、だけど」

あずさ(落ちる…もう、どうしようも…)

ワラワラ

あずさ「え?」

ウーウー ウッウー

あずさ「これは…!」

『ミスメイカー』の腕に、小さなスタンドが次々『くっついて』いく。

やよい「あずささん!」

あずさ「やよいちゃん…!?」

やよい「これで、どこかに…!」

あずさ「…!」 


416 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:19:18 hhdz25L6
アズサ「『ゲンキトリッパー』を腕につけて、『くっつけ』られるようにしたのね~」

アズサ「でも、それが何? もう『くっつけ』られる場所なんてどこにもないわよォ~ッ」

あずさ(確かに、もう手の届く場所なんてない…『くっつけ』ようにも、『くっつけ』るような場所なんてない)

あずさ(それでも…)

やよい「あずささん…!!」

あずさ(諦めたりなんて、ぜったいにしない…!!)

あずさ「『ミスメイカー』!!」バッ

横に向かって、思い切り両手を広げた。

ゴォッ

アズサ「!?」

その後ろから何かが近づいてくる。

ォォォ

オオォォォォォォォォ

アズサ「回転…ブランコ…!?」 


417 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:20:48 hhdz25L6
ピタ

『ミスメイカー』の指先が、空を駆ける回転ブランコの鎖に『くっつい』た。

アズサ「な…何ですってェェェーッ!?」

グゥゥーン

あずさ「くぅぅ…!」

やよい「うぅぅぅぅ…!!」

アズサ「で、でも! そんなものに指先だけくっつけたところで、遠心力に振り回されるだけよ!」

あずさ「『ミスメイカー』…!!」

カチ!!

鎖の触れている部分に、『0』のパネルが表示される。

あずさ「『眠って』!!」

ブチブチブチ

鎖が、繋ぎ止めるという機能を停止し、緩んだ。

ブワッ

二人は腕に『くっつい』た回転ブランコごと、再び宙に放り出される。 


418 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:22:53 hhdz25L6
ゴォォォォォォォ

ちょうど、コースターの移動先に向かって飛んでくる。

アズサ「嘘よ…」

アズサ「こんなの、嘘に決まってる…!!」

あずさ「はっ!」バッ

ズガァン!!

腕にくっついた『ブランコ』を地面に叩きつけるように、先頭の一つ前のシートに落ちた。

カチリ

メキメキメキメキ

シートが肉食動物のように口を開け、ブランコを捕食する。

あずさ「着いたわ。射程距離内に」

アズサ「…………」

あずさは噛み砕かれたブランコの上に乗って、アズサを見下ろしていた。 


419 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:25:05 hhdz25L6
やよい「っとと」

ウッウー ウーウー

その下ではやよいがバラバラになったブランコを『くっつけて』いる。

あずさ「さぁ、千早ちゃんを返してくれるかしら?」

アズサ「まだよ…まだ、『ゾーン・オブ・フォーチュン』で直接攻撃すれば…」

あずさ「………」

アズサ「ウシャァッ!」バ

あずさ「『ミスメイカー』」グオッ

アズサ「ぐぶっ…」ドボォ

アズサのスタンドの攻撃が当たるよりも前に、その腹に『ミスメイカー』の腕がめり込んだ。

あずさ「『罠』を張って戦うスタンド…それ自体はあまり強くないのね」

アズサ「あっ!!」ブワッ

ヒュルルルルル

ガコン!!

『ミスメイカー』の拳に打ち上げられたアズサは、コースターの一番後ろのシートに落ちて叩きつけられた。 


420 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:26:15 hhdz25L6
アズサ「あ…ぐ…」

やよい「やりました! 倒しましたよっ!」

あずさ「ふぅ…」チラ…

千早「………」

先頭の座席に横たわっている千早を見る。怪我などはない。

やよい「終わったから、早く降りましょう。地面に着きたいです~っ…」

あずさ「待っててね。千早ちゃんが起きたら、『ブルー・バード』で軽くして…」スッ

眠る千早の肩に手を置く。

カチリ

・ ・ ・ ・

あずさ「…え?」

シュルシュル

ガシィ!!

千早の手足が、あずさの全身に絡みついた。 


421 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:28:20 hhdz25L6
あずさ「っ…!?」ガクッ

両手両足を固定され、あずさは座席の下へと倒れる。

やよい「あずささん!? え、え…!?」

アズサ「『ゾーン・オブ・フォーチュン』は…」グ…

やよい「!」バッ

やよいが振り向くと、後部座席で、アズサが体を起こしていた。

アズサ「触れたものを『罠』に変えるスタンド…」

あずさ「触れた…もの」

アズサ「そう…! 千早ちゃんだって例外ではないわ!」

あずさ(身動きが…取れない)

千早「ぐっ…こ、これは一体…!?」

あずさ「目を覚ましたのね、千早ちゃん…見ての通りよ」 


422 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:31:11 hhdz25L6
アズサ「さぁ、仕上げよ!」

カチリ

ギギギ…

前方のレールが変形し、発射台のように空に向く。

アズサ「これからコースターごとコースから外し…墜落させる…!!」

アズサ「私は『完全なアイドル』…これくらいの高さから落ちてもなんともないけど、あなた達はどう…!?」

やよい「ど、どうしましょう…!?」

あずさ「千早ちゃん、『ブルー・バード』を出せない…?」

千早「駄目です…! 腕が、自分のものでないように動きません…」

あずさ「そう…だったら、やっぱり…やよいちゃん」

やよい「!」

あずさ「まず、私たちの体をコースターに『くっつけ』て。やよいちゃん自身もね」

やよい「は、はい…」

あずさ「そうしたら、『ゲンキトリッパー』でローラーをくっつけてコースターを止めて」

やよい「あっ、そっか、止めればいいんだ…!」 


423 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:36:32 hhdz25L6
アズサ「うふふ、止める…ね、そんなことはできないわ」

やよい「え…?」

アズサ「もちろん、ローラーにだって『罠』を仕掛けてあるッ! 起動した瞬間、ローラーは座席から外れる!!」

アズサ「『くっつけ』て止めたところで、勢いまでがなくなるわけじゃあない! そのままこの座席は真っ逆さまよ!!」

あずさ「………」

アズサ「『ゲンキトリッパー』でローラーを止める? いいでしょう、やってみるといいわ」

アズサ「その瞬間、『罠』が起動するッ! 逃れることはできないッ!」

千早「『ブルー・バード』さえ…出せれば…!!」

やよい「どうしましょう、あずささん…!?」

あずさ「…構わないわ、やって。やよいちゃん」

千早「え!?」

アズサ「話を聞いていたの!?」

あずさ「ええ、聞いていたわよ~。いいから、やっちゃって、やよいちゃん」

やよい「…はいっ!! わかりましたっ!」

アズサ「ふん…それじゃ、これで終わりね、『ゾーン・オブ・フォーチュン』ッ!!」 


424 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:41:02 hhdz25L6
ギッ!

ガガガガ…

ピタァ…

発射台となったレールの直前で、ジェットコースターが止まった。

やよい「………」

あずさ「………」

千早「………」

アズサ「と…止まった…」

アズサ「何故!? ど、どうして…どうして、『罠』が起動しないの!?」

あずさ「あなたのその『罠』だけど…」

アズサ「はっ!?」

カチ…

ローラーの上に、プレートが浮かんでいる。

あずさ「私が『ミスメイカー』で、『眠ら』せたから。だから、起動しないの」

アズサ「は…………は!?」 


425 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:44:34 hhdz25L6
アズサ「な、何!? あ、ありえないわ…!!」

あずさ「ありえないって、何が?」

アズサ「そもそも! あなたは千早ちゃんに押さえ込まれて『ミスメイカー』を出すことなんてできないはずでしょう!?」

あずさ「そうね…今は」

アズサ「今…?」

あずさ「あなたを飛ばしたすぐ後かしら。千早ちゃんに触れる前に、触れておいたの」

アズサ「そんな、嘘よ! そんなの、わかるわけがないわ!!」

あずさ「わかるわ。だって、そこしかないでしょう?」

アズサ「え…」

あずさ「私たちが集まったところでまとめて片付けようとするなら…『罠』を仕掛けるとしたら、ここに仕掛けるしかないのよ」

アズサ「………………」

あずさ「まさか、千早ちゃんにまで『罠』を仕掛けてあるとは思わなかったけど」

千早「あ…」シュルシュル

『罠』が解除され、千早の手足がほどけていく。

あずさ「それじゃ、みんな。降りましょうか」 


426 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:50:13 hhdz25L6
アズサ「まだ、まだ…まだよッ!! まだ私は負けていない!!」ダッ

アズサが後部座席から、前の方に向かってくる。

あずさ「………」

ピタ…

アズサ「ん!? あ、足が…『くっつい』て…!」

やよい「『ゲンキトリッパー』、捕まえましたっ」

アズサ「やよいちゃん…!!」

あずさ「さて…『ミスメイカー』の能力は『眠ら』せることよ」

あずさ「能力を解除すれば…起きるわ」

ガギンッ!!

シートがローラーと切り離され、打ち上げられた。 


427 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3 :2015/07/15(水) 00:51:18 hhdz25L6
ゴォォォ

アズサ「ふふ…これで勝ったつもり…?」

アズサ「さっきも言ったけど、これくらいの高さなんて、私たち『複製』には…」

フワフワ

アズサ「って…風船みたいに浮いてる…?」

千早「『ブルー・バード』…」

千早「コースターを『軽く』しました。空気よりも、もっともっと…」

アズサ「し、しかも『くっつい』てるから離れられない…」

アズサ「ちょ、ちょっと…あ~れ~」

アズサはコースターごと浮いたまま、どこかへと飛んで行った。 


428 : 『ゾーン・オブ・フォーチュン』その3/おわり :2015/07/15(水) 00:54:54 hhdz25L6
三人は、レールの上に座っている。

あずさ「千早ちゃん、ここに来てたのね~。私たちが捕まったあの場には、千早ちゃんはいなかった気がするけど」

千早「ええ。皆を助けるために、残りの皆でこの島に来たんです」

千早「助けに来たつもりが、助けられてしまいましたが…」

あずさ「でも、こうして無事でよかったわ」

千早「あずささんと、高槻さんも…無事なようで安心しました」

あずさ「あ、その前に…」

千早「?」

あずさ「まずは『軽く』して、下まで降ろしてもらえるかしら? やよいちゃんが…」

やよい「………」グッタリ

千早「あ…は、はい。そうですね」

To Be Continued… 


429 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/15(水) 01:43:15 hhdz25L6
やよい「ふぅーっ…やっと落ち着きましたぁ…」

あずさ「よしよし、頑張ったわねやよいちゃん」ナデナデ

戦いが終わり、三人は遊園地のベンチに座っていた。

あずさ「それで、千早ちゃん」

千早「はい、なんでしょうかあずささん」

あずさ「ここ、島のどの辺りかわからない?」

千早「私に聞かれても…私も、ここに来たばかりですし」

あずさ「そうよねぇ」

やよい「やっぱり、元の場所に戻ることはできないんでしょうか…」

千早「…寮みたいな場所だったかしら。そんなところに戻る必要はないわ」

やよい「え?」

千早「この事件を起こしたあの人を倒せば、それで全て終わる」

やよい「あの人、ですか?」

あずさ「何か知ってるのね、千早ちゃん。話してくれるかしら?」

千早「それは…わかりました、話します」 


430 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/15(水) 01:56:29 hhdz25L6
あずさ「まさか、高木会長が…」

やよい「信じられないです…」

千早「あの人は誰よりもアイドルに対して真っ直ぐだった。だからこそ…ああなってしまったのかもしれない」

あずさ「とにかく、会長を止めるべき…なのよね」

千早「ええ。恐らく、島のどこかにはいるはずなのですが」

千早「…この霧さえなければ、律子が『ロット・ア・ロット』ですぐに見つけてくれると思うのだけれど」

やよい「そういえば、さっきのあずささんの『複製』、千早さんをどこに連れて行こうとしたんですかね?」

あずさ「確かに…そう、よね」

あずさ「うーんと、私たちが来た方角からコースターの非常出口の方角を考えると…あっちの方向かしら」

やよい「そっちじゃなくて、あっちだと思います」

千早「行きましょう。その先に、何かあるかもしれない」

………

……

… 



433 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/16(木) 01:42:58 CiiZdutA
ザワザワ

島の施設、その中の一つがざわめいている。

「765プロのアイドル達がこの島に乗り込んできたらしい」

「三浦あずさと高槻やよいが外出したまま戻ってきてないそうよ」

「数名は確保したけど、星井美希と我那覇響が…」

ゴゴゴゴゴ

その陰で、職員達の会話を聞いている人物がいた。

雪歩「………」

雪歩だ。

タッタッタ

雪歩は見つからないように、施設のある一室に向かう。

ガラッ

雪歩「真ちゃん!」

真「お、雪歩」ガーッ

扉を開くと、その中で、真が一人エアロバイクを漕いでいた。 


434 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/16(木) 01:51:25 CiiZdutA
真「よっと」タンッ

エアロバイクの上から飛び降りる。

雪歩「はい、水」

真「ありがと」

グビッグビッグビッ

真「ぷは…」

雪歩からペットボトルを受け取ると、一気に飲み干した。

真「で、どうだった?」

雪歩「うん。真ちゃんの言った通り、みんな動いてるみたい」

真「そっか。思ってたより早かったな」グイッ

真「んーっ…」グーッ

真は肩にかけたタオルで汗を拭うと、体を伸ばした。

真「みんなが動き出したのなら、ボクもじっとしてはいられないな」 


435 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/16(木) 01:55:16 CiiZdutA
真「お待たせ」

シャワー室から、トレーニングウェアから着替えた真が出てくる。

真「さ、まずはここから出ようか」

雪歩「でも…どうやって出るの?」

真「ん?」

雪歩「なんか、ピリピリしてるみたいだし…入り口にもいっぱい職員の人がいるよ。出ようとしたら、すぐ捕まっちゃうよ」

真「わざわざ出入り口から出る必要はないよ」ピキピキ

真は右手に『ストレイング・マインド』を纏わせると…

真「オラァッ」

近くの壁を殴り、ブチ抜いた。

パラパラ

真「よっと」

壁に人が通れるくらいの大きな穴が空き、真はためらわずにそこをくぐった。

真「さぁ。誰か来る前に行こう、雪歩」

雪歩「う、うん…」 


436 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/16(木) 02:47:16 CiiZdutA
ガサッ

真と雪歩が、二人で森の中をかき分けながら進んで行く。

雪歩「真ちゃん、これからどうするの?」

真「んー、どうしようか。まずは誰かと合流したいところなんだけど」

雪歩「ここって、牢獄…ってのがあるんだよね。真ちゃんも暴れて捕まってた」

真「う…ま、まぁ本当のことだけどさ」

雪歩「そこに行けば、誰か捕まってるんじゃないかな」

真「…あそこに閉じ込められたら、出ることは不可能だよ」

雪歩「え」

真「あの牢獄の番人…あのスタンドはヤバすぎる。どうしようもなさでは春香の『アイ・ウォント』以上かもしれない」

雪歩「そ、そんなに…?」

真「前まではしばらくすれば帰してもらえたけど」

真「今の騒ぎじゃ、765プロが全員捕まらない限りは出してもらえないだろうな…」

真「だからこそ、今まで大人しくしてたんだよね。いざって時に捕まったままじゃ話にならないから」

雪歩「真ちゃんがそこまで…」 




439 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/21(火) 22:25:48 fdCZ3chQ
真「とにかく…あそこは後回しにするしかない。ボク達だけじゃあ絶対に勝てない」

雪歩「真ちゃん…」

真「だから、まずは残ってるみんなと合流しよう」

雪歩「う、うん。そうだね、まだ捕まってない人もいるらしいし…」

真「美希と響は無事なんだよね?」

雪歩「それと、あずささんとやよいちゃんも見つかってないみたい」

真「そっか。それじゃ、まずはその誰かと合流するのを目指すか…」

雪歩「うん」

真「ボク達だけじゃあどうにもならないかもしれないけど…」

真「みんな一緒なら、誰が相手だって勝てる。…たぶんね」

雪歩「…うん、そうだね」

雪歩(でも…)

雪歩(その『みんな』の中に、私って入っているのかな)

雪歩(私は、自分でスタンドを使うこともできないのに…) 


440 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/21(火) 22:36:29 fdCZ3chQ
ザッザッザッ

真「うーん…」キョロキョロ

真が雪歩の先を歩きながら、周囲を見渡している。

雪歩「…ねぇ、真ちゃん」

真「ん? なんだい、雪歩」

雪歩「誰かと合流するって言ったけど…どうやって合流するつもりなの…?」

真「え、それは普通にこうやって探し回るつもりだけど」

雪歩「真ちゃん…それで、見つかるの…?」

真「見つかるまで歩こう」

雪歩「………!」

真「それが一番手っ取り早いと思うんだ」

雪歩「そ、そう…かな…?」

雪歩(だ、大丈夫…なの…? もっと、いい方法があるんじゃ…)

雪歩「………」

雪歩(うぅ、何も思いつかない…! ダメダメな私…) 


441 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/21(火) 22:48:41 fdCZ3chQ
雪歩「ふぅ、ふぅ…」

真「雪歩。少し、休もうか?」

雪歩「ううん、大丈夫。これくらいでへばってたらアイドル失格だよ」

真「…そっか、じゃあ行こうか」

雪歩(何もできないなら…せめて、真ちゃんの足を引っ張らないようにしなくっちゃ…)

真「ん?」

タタタ

しばらく歩いていると、真が何かを見つけ、駆けていく。

雪歩「真ちゃん?」

真「建物だ…こんな森の中に」ピタ…

真は壁に手をつく。

真「………」スッ

耳をくっつける。

真「中で金属がぶつかるような音がする」

雪歩「え!」 


442 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/21(火) 23:41:44 fdCZ3chQ
真「…よし。中に入ろうか」

雪歩「え!? 危ないんじゃないかな…回り込んで行った方がいいんじゃ…」

真「いや。このまま回り込んでも遠回りだ、それに中に誰かいるかもしれない」

雪歩「そう…なの? そうかもしれないけど…」

ピキピキ

バガン!!

『ストレイング・マインド』で壁をブチ抜く。

真「進もう」

雪歩「………」

雪歩(なんだろ…ちょっと強引だなぁ真ちゃん…) 


443 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/24(金) 19:54:03 Zcl6kEOI
雪歩「ここは…」

カン! カン! カン!

ジ…ジジジ…

真「工場…かな。作ってるものは…」

雪歩「椅子とか、鉄骨とか…だね。何に使うんだろう」

真「ここに誰か、隠れてたりしないかな」ザッザッ

雪歩「あ! 待って、真ちゃん…!」

真「っと、ごめん。足元に気をつけて…」クルッ

バチッ

・ ・ ・ ・

真の視界の隅で、何かが光る。

雪歩「?」

ガッ

シュバァ

真が、ベルトコンベアの上から鉄の棒を拾い上げ、雪歩の顔面に向かって投げた。 


444 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/24(金) 21:00:19 Zcl6kEOI
雪歩「は…」

バチィ!!

雪歩「きゃ…!?」

雪歩の目の前で、『電撃』が弾けた。

カランカラン

シュゥゥゥ…

鉄の棒が地面に落ちる音が、室内に響く。棒は溶けたようにひしゃげていた。

雪歩「な、何…?」

真「…出てこい」

シーン…

呼びかけるが、返事はない。

真「………」キョロ

キョロ

工場内を左右に大きく見渡す。人影は見当たらない。 


445 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/24(金) 21:12:31 Zcl6kEOI
ゴウンゴウンゴウン…

機械は何事もないかのように作業を続けている。

真「機械の陰に隠れてるのか…?」

バリバリバリ

真の背後のベルトコンベアで、金属を『電撃』が伝ってくる。

雪歩「真ちゃん!」

真「!」ピキピキ

雪歩の声に反応すると、腕に『ストレイング・マインド』を纏い…

真「オラァッ!!」バキィィィッ

振り向きながら、裏拳でベルトコンベアを粉砕した。

パリッ

…しかし、真の腕には僅かに『電撃』が流れている。

バリバリ

真「うあああああ!?」バリバリバリバリ

その『電撃』が腕で増幅し、迸った。 


446 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/24(金) 21:18:30 Zcl6kEOI
雪歩「ま、真ちゃんッ!!」

真「大丈夫…腕が少しコゲただけだ」シュゥゥウゥ…

真は、煙が立ち上る腕を抑えている。

雪歩(これって、『スタンド攻撃』…? でも、どこから…)

ゴウンゴウンゴウン

雪歩(隠れるなんていっぱいある…ここで、姿を現さずにああやって『電撃』だけで攻撃してこられたら…)

真「雪歩。危ないから、ちょっと外に出てくれない?」

雪歩「え、でも…」

真「いいから」

雪歩「う、うん…」

壁にあいた穴から、雪歩が工場の外に出る。

雪歩(私は…『スタンド使い』…だけど、自分でスタンドを操れるわけじゃあない…)

雪歩(私がここにいても、真ちゃんの足手まといにしかならない…) 


447 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/24(金) 21:25:44 Zcl6kEOI
雪歩(でも、真ちゃん…相手が見えないのに、どうやって戦うつもりなの…?)

真「ふーっ…」ピキピキピキ ビキッ ビキ

真の全身が、『ストレイング・マインド』の黒い鎧に覆われる。

カシャン ガシャン

タッ!!

すぐ近くで動く機械の一つに突っ込んでいくと…

真「オラァッ!」バッキャァァァァァンン

思いっきり、殴り飛ばした。機械はバラバラになって、部品が宙に舞う。

雪歩「え…!?」

真「オラオラオラオラオラオラオラオラ」バンッ ドンッ バキバキッ メキャッ バキャン

工場の中のものに片っ端から殴りかかり、どんどんブッ壊して地面を平らにしていく。

パリパリ

途中、どこかから『電撃』が襲いかかってくるが…

真「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」ベキッ バキバキバキ メシャッ バキャン バギャア

真に届く前に、破壊された欠片ごとブッ飛んでしまう。 


448 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/24(金) 21:30:18 Zcl6kEOI
真「よし」

バァーン

工場の床に、機械の残骸だけが散らばっている。

真「これでもう、隠れる場所はない…そうだろ?」

ドドドドド

ユキホ「ふーん…」

ドドド

雪歩と同じ姿をした『複製』が、そこに立っていた。

雪歩「わ、私が…いる…」

真「雪歩の『偽物』か」

ユキホ「『偽物』って呼ばれ方は…」

ユキホ「あんまり好きじゃないなぁ。なんだか、そこにいる本物さんに劣ってるみたいだから」

雪歩「えっ…?」

ユキホ「そうでしょう? なんでもかんでもダメダメダメダメ…今もそうやって外から見てるだけの人に」

雪歩「………」 


449 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/24(金) 22:09:58 Zcl6kEOI
真「こそこそ攻撃してきたヤツの台詞とは思えないな」

ユキホ「別に。スタンドは有効に使ってこそでしょう?」

真「で? 雪歩の『偽物』がこんなところで何をしてるんだ」

ユキホ「………フー」

物憂げにため息をつく。

ユキホ「もうわかってるだろうし、わからなくても知ったところでどうでもいいから言うけど…」

ユキホ「今、ここの外から確保に失敗した765プロのアイドルが来ている」

雪歩「!」

ユキホ「そして…それを知ってか知らずか、確保済みなのに勝手に動き回ってる人もいるみたいだし」

真「………」

ユキホ「たかが数人だけど…集まると厄介なことになるかもしれない。だから、私たちが散らばって確保に来てるってわけ。今度は好き勝手できないようにね」

真「知ったところでどうでもいい、っていうのは…」

ユキホ「決まってるでしょう。真ちゃん達は、ここで私に倒されるからだよ」

真「………」

ゴゴゴゴゴゴゴ 


450 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/24(金) 22:29:24 Zcl6kEOI
雪歩「真ちゃん…」

真「雪歩は下がってて。ボクが戦う」

雪歩「う、うん」

ユキホ「そうやって、真ちゃん一人に戦わせるつもり?」

雪歩「…!」

真「なんだ、ボク一人じゃあ不満かい?」

ユキホ「………」

真「かかってきなよ」クイッ

ユキホを指差すと、その指を引いた。

ユキホ「言われなくても…」

バチッ!!

真「!」

ユキホの体から火花が散る。 


451 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/24(金) 23:07:57 Zcl6kEOI
ユキホ「これが私のスタンド『コスモス・コスモス』。能力は…」パリッ

バチバチッ

壁に通っている鉄製のパイプに、『電気』が走っていく。

ユキホ「『電流』を流す。そして…」

バリバリバリ

その途中で、『電撃』が、爆発するように広がった。

ユキホ「拡散する…それだけ」

真「………」

シュゥゥゥゥ…

広がった後の鉄パイプが、溶けてひん曲がっている。

ユキホ「それだけだけど、鉄が熱でねじ切れるくらいのパワーはあるよ」

ユキホ「真ちゃんの『ストレイング・マインド』でも、流されたら無事じゃあ済まないかもね」

真「………」ザッ

パキッ

足を開き、腰を落とす。関節から割れるような音が鳴った。 



456 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/31(金) 23:43:15 GssFUmHo
タッ

壁際のユキホに向かって、真は跳ぶように真っ直ぐ突っ込んでいく。

ユキホ「………」ス…

パチッ

ユキホはそこから一歩も動くことなく、右手を上げた。指先から、火花が散る。

ユキホ「『コスモス・コスモス』」ヒュッ

床に振り下ろした。

バチバチバチ!!

ユキホの足元から真に向かって、『電撃』が亀裂のように地面を走ってくる。

真「うお…!」タッ

大きく跳び上がって、躱す。

真(そうか、『電気』のスタンド…ってことは)

バリバリィッ

真のちょうど真下で、『電撃』が爆発する。

真(電気が伝わる限り、この工場全体が射程距離か…!!) 


457 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/07/31(金) 23:53:16 GssFUmHo
真「ぐっ!」ピシ!

火花が『ストレイング・マインド』の表面にかすり、僅かにヒビが入った。

真「っと」スタッ

ユキホ「………」パリ

着地し、再び向かっていくが、ユキホは指を向けたまま何もしてこない。

真(『電撃』は、連続しては撃てないらしい…チャージする時間が必要なんだろうか)

ユキホ「………」

真(恐らく、撃てるようになるまでそうは時間はいらないだろう…なら)タッ

走り幅跳びのように踏み切り、ユキホに飛びかかる。

真「『電気』を通る物体のない空中からなら…!」

スッ

ユキホ「甘いよ」

バチィッ!!

今殴りかかろうと言う瞬間、目の前で火花が弾けた。 


458 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/08/01(土) 03:47:12 vrM7i.e6
ドッ

ゴロゴロゴロ

その衝撃で真は吹き飛ばされ、床を転がった。

ユキホ「ふぅ」

真「………」シュゥゥゥゥ

真が身につける『鎧』から、煙が立ち上る。

ユキホ「空気にだって電気は通るんだよ? 雷は空気を通って地上に落ちるでしょう?」

ユキホ「まぁ、金属に比べれば通る距離なんて『静電気』みたいなものだけど。近くから撃てばこんなものだよ」

真「………」

雪歩「真ちゃん!」

ユキホ「さてと。次はあなただよ」ジロッ

雪歩「ひっ!?」ビクッ

ユキホ「その怯えた態度…本当にイライラするなぁ。こんなのが私の元って考えるだけで虫唾が走るよ」

ユキホ「殺すなとは言われてるけど…」

ユキホ「それ以外なら、何やってもいいんだよ? アイドルとして『再起不能』にすることも」 


459 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/08/01(土) 03:59:44 vrM7i.e6
ガシャ!

ユキホ「………」クルッ

金属が擦れる音に、ユキホは目を向ける。

真「待てよ…」ユラ…

見ると、真がゆっくりと起き上がっていた。

真「ボクはまだ倒れちゃあいないぞ…!」

ユキホ「ふーん…」

真「雪歩!」

雪歩「!」

真「こいつはキミに強い殺意を抱いている…ボクが戦っているうちに逃げるんだ」

ユキホ「ふふっ」

真「何がおかしい?」

ユキホ「だって、真ちゃん。スタンドも扱えないあの子が一人で逃げたところで、一体何の意味があるの? いずれ捕まるだけだよ」

真「それは…」

ユキホ「萩原雪歩だって、それくらいわかってる。だから、逃げない。逃げられないんだよ、一人になるのが怖いから」 


460 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/08/01(土) 04:14:13 vrM7i.e6
雪歩「わ、私は…」

ユキホ「そうでしょ? 私はあなたの記憶を持ってるんだよ、だからわかる。だから、何もできないくせにそこにいる」

雪歩「私…は…」

真「おい、おまえ…」

ユキホ「それと…一人になるのが怖いってのは、真ちゃんにも当てはまるよね」

真「!」

ユキホ「中から、聞こえてたよ。強引にここを行こうって、ここに誰かいるかもしれないって入ってきたんだよね」

ユキホ「どうして? 萩原雪歩の言ったように、遠回りすればよかったのに。私みたいに、敵がいるかもしれないのに」

ユキホ「慌てちゃって…そんなに早く、誰かと合流したかったの?」

真「う…」

ユキホ「ま…それもそっか。765プロが攻められた時、みんななすすべもなく捕まっちゃったんだもんね」

ユキホ「それもこれも、みんな一人でいたから。バラバラだったから」

真「ううう…」

ユキホ「ねぇ。一人で戦うのって、そんなに怖い? 一人になるのって、そんなに怖い?」

真「うわあああああああああ!!」 


461 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/08/01(土) 04:25:24 vrM7i.e6
ユキホ「焦るよね…萩原雪歩がやられたら、真ちゃんは本当に一人になっちゃうから」

ダッ

色んなものを振り払うように、真がユキホの方へと向かってくる。

ユキホ「真ちゃんのスタンド。いくらパワーが強くたって、近づけさせなければいいだけだよね」ヒョイ

ユキホ「『コスモス・コスモス』」ジジッ

金属片を拾い上げ、『電気』を通す。

ユキホ「はい」ヒュッ

それを、真に向かって投げた。

コォォォ

真(殴ってブッ壊す……いや、ダメだ! あの小さい金属片に詰まった『電流』を、モロに流されることになる…!)

真「く…!」タッ

横っ飛びで、躱す。

バチチィッ!!

真「ぐあっ…!」ガリ ガリ

金属片から放出される爆発するような『電撃』が、鎧を削った。 


462 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/08/01(土) 04:32:28 vrM7i.e6
真「はぁ、はぁ」ガシャン

その場に、膝をついた。

真(威力が強い…! 『ストレイング・マインド』のガードも、お構いなしかっ…!)

真(しかも発動も、攻撃自体もとにかく速い! このままじゃ…)

ユキホ「もう一個」ポイッ

フワ…

放られた金属片が、真へと迫る。

真(やられ…)

ヴンッ…

その時。真の視界の横から、金属棒が飛んできた。

カンッ!

棒が、金属片とぶつかる。

バリバリバリ!!

カラン

移動してきた『電撃』によって折れ曲がり、地面に落ちた。 


463 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/08/01(土) 04:40:36 vrM7i.e6
真「…え?」

ユキホ「…何のつもり?」

雪歩「………」

ユキホ「萩原雪歩…!!」

棒を投げてきたのは、雪歩だった。

真「ゆ、雪歩…? なんで…」

ユキホ「なんで、工場の中に入ってきたの? 怖くないの? 怖いでしょう」 

雪歩「怖いよ…」

雪歩「でも、私が何もできなくて…そのせいで真ちゃんが傷つくのを見ている方がよっぽど怖いよ…!!」

真「…!」 


464 : 『コスモス・コスモス』その1 :2015/08/01(土) 04:44:11 vrM7i.e6
ユキホ「真ちゃんが傷つくのが怖い、ね…」

ユキホ「でもさ。それって真ちゃんの方にも言えることだよね?」

ユキホ「それが嫌だから、何もできないあなたには外にいてもらってたのに…身勝手だとは思わないの?」スッ

話しながら、ユキホは床に向かって手を伸ばす。

真「オラァッ!!」ドヒュゥウウウ

届く前に、真はユキホに金属片を投げつける。

ユキホ「………」サッ

カイン!!

ユキホはたやすく避け、金属片は後ろの壁にぶつかった。しかし、攻撃は中断されている。 


465 : 『コスモス・コスモス』その1/おわり :2015/08/01(土) 04:52:37 vrM7i.e6
真「…雪歩」

雪歩「…ごめんね、真ちゃん。勝手な真似して」

真「ううん、こちらこそ。情けない姿を見せちゃったね」

ユキホ「大変だね。スタンドも使えないその子に出しゃばられると、邪魔でしょう?」

真「そう、思うかい?」

ユキホ「…?」

真(ボクは何を焦っていたんだ…何を勘違いしていたんだ。これじゃ、あの『ファースト・ステージ』と同じじゃあないか)

真「雪歩の『偽物』。悪かったね、手を抜いてて。ここからは、本気で行くよ」

ユキホ「手を抜いてた…? そうは見えなかったけど」

真「すぐに…」ス…

真が両腕を前に出すと…

ギッ!!

鎧の背中が、大きく割れた。

真「わかるよ」 


466 : >>1 ◆CKAtMuT12w :2015/08/01(土) 04:54:23 vrM7i.e6
スタンド名:「コスモス・コスモス」
本体:ハギワラ ユキホ
タイプ:一体化型・発動
破壊力:A スピード:A 射程距離:D(電流の届く範囲) 能力射程:D(電流の届く範囲)
持続力:D 精密動作性:E 成長性:C
能力:ユキホの体から発する「電流」のスタンド。
どんな生物も、その身体ではごく僅かで微弱な「電気」が流れている。
血の流れていない「複製」も、体を動かすためには脳からの電気信号が必要であり、例外ではない。
「コスモス・コスモス」はその「電気」を体内で限りなく増幅させ、攻撃に転換する。
一度体内から放たれた「電撃」は、一度だけユキホの意思で拡散する。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ 



475 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/08/16(日) 17:12:04 n.zhK5FE
ギギギギギギギ

全身を覆っていた鎧が、音とともに少しずつ両腕に集まっていく。

ユキホ「これは…」

ギギギギ

蝶が蛹から羽化するように、真の姿が露わになっていく。

ギッ!

やがて真の両腕が、巨大な黒い手甲に覆われた。

ギギギ

両手の指を、人差し指から波打つように、感覚を確かめるように曲げる。

真「『ストレイング・マインド… ………」

ググ…

ギッ!!

拳を握りこむと、軋む音が鳴った。

真「『チアリングレター』」 


476 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/08/16(日) 17:40:47 n.zhK5FE
ユキホ「『チアリングレター』…それが本気の表れ? 私にはガードを下げたようにしか思えないけど」

真「………」タッ

ユキホ「動きも…全身に纏ってるわけじゃあないから、こっちに向かってくる速度が遅くなってるよッ!」バチッ

バリバリ

真に向かって、『電撃』が走っていく。

真「オラァ…!」グァン!!

バッキィィィーン

真は腰を落とし、拳でアッパーをかますように地面をすくい上げた。

ユキホ「!?」

ジッ!

機械の残骸が打ち上げられ、地面を走る『電撃』が真の前で途切れる。

真「『電気』が通る道をなくせば、ここまで攻撃は届かないだろ…!」

パラパラ

真がすくい上げた鉄の破片が、宙に舞っている。

ユキホ「…その防ぎ方は間違いだね」 


477 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/08/16(日) 18:06:13 n.zhK5FE
バチィッ!!

攻撃が途切れた場所で、『電撃』が拡散する。

ヒュン ヒュン

その衝撃で、真が打ち上げた鉄の破片が手榴弾のように飛散した。

ユキホ「ほら! そうやって腕だけに鎧を集めたら…!」

バババババ

真に襲い掛かった破片が、彼女の周囲から消えた。

・ ・ ・ ・

真「集めたら…なに?」バラッ

ガシャン

真が手を開くと、掴み取った破片が落ちた。

ユキホ「………」チラッ

雪歩「ふーっ…」

真の後方では、雪歩がユキホの方を見据えながら足元の瓦礫をどかしていた。 



486 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:35:19 4w8ua6Vk
ユキホ「………」ジ…

雪歩の立っている位置から自分の位置までを、視点で辿り、足元を見る。

グオッ

雪歩「!」

視界の隅から、真が懐に向かって潜り込んできた。

真「たっ」ヒュッ

ユキホ「っと…!」バッ

すくい上げるようなアッパーを、飛び退いて躱す。

パチッ

真「!」ババッ

ユキホの指から火花が走るのが見えると、真はすぐさま離れていった。

ユキホ「………」

真「どこを見ているんだい?」

ユキホ「…やっぱり、まずは真ちゃんからか」 


487 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:36:12 4w8ua6Vk
スッ

ユキホが真に向かって人差し指を向ける。

真「!」タッ!

それに反応して、真は横に大きく跳んだ。

ユキホ「………」スゥ…

真「!」

逃げる真の姿を、ユキホは指で追っていく。

キキッ

真「オラァッ」ダッ

真はブレーキをかけると、ユキホに飛びかかった。

ユキホ「逃げきれないと判断したのはいいけど、向かってきたのは失敗だったね」

バチッ

ユキホ「『コスモス・コスモス』」

バリバリバリ

ユキホの指から放たれた『電撃』が、空中で拡散しながら真へと襲いかかる。 


488 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:36:57 4w8ua6Vk
真「オラァッ」グオッ

バッチィィィィン!!!

真は正面から殴りつけ、拳と『電撃』がぶつかり合う。

真「ぐあっ!?」グオッ

ガシャン!!

衝撃で真は弾き飛ばされ、背中から地面へと叩きつけられた。

ユキホ「…!」

真「くっ、なんてパワーだ…!」バッ

すぐに起き上がり、ユキホの射程距離から外れる。

ユキホ(なんてパワー…?)

ユキホ(それはこっちの台詞だよ、『コスモス・コスモス』とまともにぶつかりあって無事でいられるのがまずおかしい…) 


489 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:37:43 4w8ua6Vk
ユキホ「とは言っても…」

ダダダ

真はジグザグにステップを踏みながらユキホへと近づいていく。

ユキホ(『硬化散弾銃』を除けば、真ちゃんのスタンドは基本的に近づかなければ攻撃することはできない)

ユキホ(どういう形であれ、最終的には私に向かってくる)

タッ

真が再びユキホの射程距離内へと踏み込んだ。

ユキホ(私は魚が網にかかるのを待つように、近づいてきた真ちゃんを狙えばいい)スッ

バチバチッ

ユキホ(この距離なら逃げられない、入った!)

真「うおおおおお」グォォ

真は前方に向かって手を広げ…

真「だっ!」パシィ!!

ユキホ「は…?」

宙に放たれた『電撃』を、拡散する前に握り潰した。 


490 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:39:02 4w8ua6Vk
ジッ…

ギッ ピシッ パキッ

真「うぐっ…!」ビリビリ

『チアリングレター』の手の中で『電撃』が増幅し、僅かにヒビが入った。

ユキホ「………」

真「ふーっ…」パリッ

ダッ!!

体の痺れを振り払うように、すぐさま突っ込んでいく。

雪歩「やった…これで『電撃』は出せない、真ちゃんのチャンスだよ!」

真「オラァァァッ!!」ドォォ

『コスモス・コスモス』を撃ち終わったユキホに、真の拳が迫り来る。

ユキホ「………」パリッ

真「え!?」ビクッ

バチバチィッ!!

しかし、それが命中する前に、ユキホの体から宙に向かって『電撃』が走った。 


491 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:40:15 4w8ua6Vk
真「くっ!」バッ

真は自分の体をかばうように両腕を交差させ…

バチィッ!!

そこに『電撃』が叩きつけられた。

真「うおおおおおおおおお」ビキビキビキッ

『チアリングレター』のヒビが広がっていく。

ドサァ!!

その場に尻餅をついた。

ユキホ「連続しては撃てない…誰がそんなこと言ったの?」

ユキホ「『コスモス・コスモス』は私の体に溜まった『電流』を放出するスタンド。溜められる『電撃』の量には限りがあるけど、それ以内なら何回でも撃てる」

ユキホ(ただ…出力を抑えたとはいえ『コスモス・コスモス』を握り潰して止めるなんて)

ユキホ(二発目も、しっかりと防がれた…ガードを空けたと言っても、隙ができたわけじゃあない…か)

真「………」ギギッ

ユキホ(『チアリングレター』を完全に破壊するには今と同じ出力であと2発…いや、3発ってところかな)

ユキホ(最大出力なら1発で破壊出来るかもしれないけど、外したら…あれも一撃必殺のスタンド、慎重に行こう) 


492 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:40:52 4w8ua6Vk
雪歩「真ちゃ…」フラッ

雪歩は真の方へと近づこうと金属の床に足を踏み出すが…

バチィッ!!

雪歩「っ…!!」

その手前で『電撃』が弾ける。

ユキホ「あなたはそこでじっとしてて。ご主人様から『ステイ』を言い渡された犬のようにね」

雪歩「う…」

ユキホ(こうして出てきたところで、あなたに出来ることなんて、ほとんどないでしょう?)

ユキホ(出しゃばってこないで怯えて隠れていればいいのに) 


493 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:43:05 4w8ua6Vk
真「………」

ユキホの目が雪歩に向いているのを、真は座りながら眺めていた。

真「『ファースト・ステージ』」ボソッ

FS「…呼ンダカ、菊地真」ズズ

真が呟くと、彼女の体を盾にして、ちょうど雪歩には見えないように、瓦礫の中から白い頭が生えてくる。

真(『ファースト・ステージ』…雪歩の意思とは全く無関係に行動する自立型のスタンド)

真(雪歩にスタンドのことを教えようとする者を無差別に攻撃するというはた迷惑なヤツだった)

真「いたのか。さっさと出てこいよ。お前の能力なら、あんなスタンド楽勝だろ」

真(能力は、こいつが受けたダメージを、触れることで相手に『返す』…)

真(自動操縦型であり雪歩に攻撃が帰ってこないため、こいつ自身がダメージに対しほぼ無敵。それに加えてこの能力…ボクもこいつには酷い目に遭わされた)

FS「知ッテイルダロウ? 私ハ、雪歩ニ姿ヲ見セラレナイノダ」

真(欠点は雪歩のスタンドにも関わらず、雪歩が見える範囲に現れることはできないということだ)

真(雪歩を守るために存在しているのに、雪歩の前には決して現れない…矛盾したスタンド) 


494 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:45:16 4w8ua6Vk
真「雪歩はスタンドのことを受け入れた、もうそんなルール守る必要はないだろう」

FS「ソウハ イカナイ。『萩原雪歩ヲすたんどカラ遠ザケル』…ソレガ私ガ生マレタ理由ダカラダ。私自身ガ ソレヲ破ルワケニハイカナイ」

真「役立たず…」

FS「役立タズカ…ソウカモ シレナイナ」

FS「私ニハ 何モナイ…水瀬伊織ニ存在ヲ否定サレ、天海春香ノ事件モ終ワッタ。モウ私ハ空ッポダ…『すたんどノヌケガラ』」

FS「出テ行ッタトコロデ…今ノ私ニハ アノ『こすもす・こすもす』ハ 倒セナイ」

真「…なぁ、『ファースト・ステージ』。雪歩のあの姿を見たか」

FS「萩原雪歩ノ事ハ見ナクテモ ワカル」

真「どう思う」

FS「…危険ダ。出テキテ ホシクハナイ」

真「ああ、そうだね。ボクも危険だと思う」

真「でも、それは雪歩に戦う手段がないからだ。戦う手段がないから、ああやって危険でも出てくるしかないんだ」

FS「………」 


495 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:45:52 4w8ua6Vk
真「『ファースト・ステージ』。今の雪歩に何かが必要だとしたら、それは雪歩を危険から遠ざけることなんかじゃあない」

FS「ナラバ、私ハ ドウスレバ…」

真「もう、わかってるだろう?」

FS「ソレハ…」

真(………)

真はヒビの入った『チアリングレター』を見つめる。

真「『ファースト・ステージ』、もしボクが… ………いや」

真「行ってくるよ」

FS「菊地真…?」

真はユキホに向かって再び走り出す。 


496 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:46:27 4w8ua6Vk
真「うおおおおっ」

ユキホ「おっと、やっと来たね…待ってたよ。私の『コスモス・コスモス』も既に充電完了している」パチッ

バリバリバリ

3本の『電流』がバラバラに真に向かっていく。

真(1本だけを引きつけて…)タタタ

バチィッ!!

3本の『電流』のうちの1本に近づいていくと、真の近くで拡散する。

真「たっ!!」ダッ

真はそれを横に大きく跳んで躱した。

ユキホ「そこだよ」クイッ

バリバリバリ

残った2本の『電流』が一斉に、真を追いかけるように曲がった。

真「何!?」

ユキホ「その体勢じゃ逃げられないんじゃない?」 


497 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:47:25 4w8ua6Vk
真「………」ギギギ

グッ

真は右腕を地面につけ…

ダヒュン!!

腕の力だけで跳ねた。その勢いで真の身体は半回転し、足が天井に向く。

ユキホ「そうやって避けるのも計算通り」スッ

真「!」

既にユキホは標準を真に定めている。

ユキホ「空中じゃ避けられない」

真(しまっ…)

ブラン!

真「!?」

ユキホ「なに?」

その時、天井からクレーンのアームが降りてきた。 


498 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:48:02 4w8ua6Vk
真「これは…」

雪歩「真ちゃん!」

真「雪歩…!?」

雪歩が壁のレバーを操作し、クレーンを下ろしていた。

ユキホ「長さがちょっと足りないみたいだね」

クレーンのアームは、天地が逆になっている真の膝ぐらいに位置している。

ユキホ「関係ない、このまま撃つ…『コスモス・コスモス』ッ!!」

ガッ!!

ユキホ「!?」パリッ

真「………」グ…

足に纏っている鎧の形が手のように変化し、クレーンのアームを掴む。

真「おおっ」グオッ

バリバリ

上体を起こし、躱す。宙に放たれた『電撃』が、空に溶けていった。 


499 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:48:53 4w8ua6Vk
真「ふっ!」タッ!!

真は振り子の要領で勢いをつけ、ユキホの方に翔ぶ。

ギッギッ

真「おおおおおおおおおおお」

『チアリングレター』を腕に戻し…

真「オラァァァ」ビュ

ユキホ「…!!」

バッキィィィィィン!

ユキホの片腕を、拳で粉々にブッ飛ばした。

雪歩「あ…!」

真「よし…!」

パリッ

・ ・ ・ ・

着地した真の指に、『電撃』が走っている。 


500 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:50:22 4w8ua6Vk
真「なに…」

ユキホ「…『コスモス・コスモス』」

真「うわあああああああ!!」バリバリバリバリ!!

真の腕で、『電撃』が拡散する。

雪歩「真ちゃん!?」

ユキホ「『コスモス・コスモス』は私の体に流れる『電流』を増幅させるスタンド…」

ユキホ「つまり、私の身体には常に『電流』が流れている…それに触れるってことは、こういうことだよ。真ちゃん」

真「く…」ピキピキピキ

『チアリングレター』全体にヒビが走っていく。

ユキホ「さぁ、わかったでしょう? 真ちゃんじゃ私には勝てない。よくて相打ちだよ」

タッ

真「オラァ!」ブンッ

ユキホ「!?」バッ

ためらわず、ユキホに殴りかかる。すんでのところで躱した。 


501 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:51:19 4w8ua6Vk
ユキホ「なっ…何考えてるの…!?」タタッ

真「………」ダダダダ

逃げるユキホを追いかけていく。

ユキホ「何も… ……… 何も考えてないの…!?」

真「オラオラオラオラ」ゴォッ

ユキホ「く…ああああっ!!」

バリバリバリバリ!!!

ユキホは残った片腕で、地面に大量の『電撃』を流した。床に『電撃』が迸り、破片を吹き飛ばしていく。

真「うおっ」バッ

雪歩「きゃ…!」

直撃でないのでヒビが大きくなることはなかったものの、その勢いで真の身体もユキホの近くから飛ばされた。

ユキホ「はぁ、はぁ、はぁ…」

真「なんだ。『完全なアイドル』ってのは案外ビビリなんだね」

ユキホ「くっ…! …!!」

真(精神的にボクが追い詰めている…勝てる!) 


502 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:53:14 4w8ua6Vk
真(雪歩は戦う手段もないのに精一杯頑張った…せめてこいつは、このままボクが倒す!)

真「ふっ!」ガンッ!!

足を思い切り地面に叩きつけると、瓦礫の中から、金属棒が飛び出した。

ガシッ

真「オラァッ!!」ドヒュゥ

それを空中で掴み取ると、ユキホに向かって投げつけた。

真「ふっ!」タッ

真も一緒になってユキホの方へ突っ込む。

ユキホ「………」

ゴォォォォォォォォォ

ユキホ「うっ!」ドスッ

金属棒は、そのままユキホの肩に突き刺さった。

真「…何!?」ピタッ

それを見て、真は足を止める。 


503 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:53:57 4w8ua6Vk
真(今のは食らうような攻撃じゃあない! 避けることも、『電撃』で弾くこともできたはずだ!)

真(なんで、避けなかった…!?)

ユキホ「考えたね、真ちゃん」ス…

近くのパイプに手を伸ばす。

真(なんだ? パイプに『電流』を流すつもりか…?)

ユキホ「その、一瞬の隙が欲しかったの」

・ ・ ・ ・

真「…!!」バッ

振り向きながら、パイプの先を目で辿る。

ゴゴゴゴ

雪歩「う…」

その先には、雪歩がいた。服がねじ切れたパイプに引っかかっている。

真(さっきの…『電撃』の衝撃でか…?) 


504 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:54:48 4w8ua6Vk
ゴゴゴゴゴ

真(追い詰めたと思った…)

真(いや、事実そうだ…だけど、だからこそ何をするかわからないんだ…)

真(相手は765プロのみんなと違うんだ、ボクはそれを考えなければいけなかった)

雪歩「うぅ…」

雪歩は先程の衝撃でどこかにぶつけたのか、頭を押さえている。

真(雪歩に、離れろと呼びかけないと…いや)

ユキホ「『コスモス…」バチッ

真(間に合わないか…!?)

真「オラァッ!!」ヒュッ

パリィン

壁の方に飛び込み、拳で殴りつける。パイプが砕け散った。 


505 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:55:22 4w8ua6Vk
雪歩「あっ!」バッ

直後に、雪歩が起き上がり、壁から離れるが…

バリバリバリ

しかし、真の腕は既にパイプに触れている。

真「うっ!」ビリィッ!!

パイプを伝ってきた『電撃』が、そこに触れている真の身体に流れた。

雪歩「…え」

真「………」ピリッ

真が、自分の手を見つめた。

真「…ごめん、雪歩」

ユキホ「『コスモス』」

真「うっ…うお…ああああっ!!」

バリバリバリ

真の体から、拡散した『電流』が溢れ出す。 


506 : 『コスモス・コスモス』その2 :2015/10/12(月) 01:55:56 4w8ua6Vk
雪歩「ま」

バリバリバリバリィッ

ドサッ

真の体が浮いたと思うと、肩口から地面に落ちていった。

真「………」シュー

シュー シュー

体の所々が黒く焦げ、煙が上がっている。

雪歩「真、ちゃん…?」

真「………」スゥ…

雪歩「…!」

真の両腕から、『チアリングレター』が消えた。 


507 : 『コスモス・コスモス』その2/おわり :2015/10/12(月) 01:57:11 4w8ua6Vk
ユキホ「これで、真ちゃんは片付いた」

雪歩「い…」

雪歩「いやああああああああああああああああああああ」

ユキホ「さて、次はあなたの…」

雪歩「あああああああああああああああああああああああああああああああ」

ユキホ「あんまり大声出さないでくれないかな…耳障りだよ」 


508 : >>1 ◆CKAtMuT12w :2015/10/12(月) 01:58:09 4w8ua6Vk
スタンド名:「ストレイング・マインド・チアリングレター」
本体:菊地 真
タイプ:近距離パワー型・装着
破壊力:A スピード:A 射程距離:なし 能力射程:D(5m)
持続力:C 精密動作性:B 成長性:D
能力:最強の硬度と最強の破壊力を持つ、真のスタンド。
本来の真のスタンドは全身を纏う鎧だが、それを一部に集中することで何者にも破壊されない質量と、正確な動きを得た。
基本的には手甲のように両腕に装着する他、足や身体のごく一部など、様々な場所に出すこともできる。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ

スタンド名:「ファースト・ステージ」
本体:萩原 雪歩
タイプ:自動操縦型・自律
破壊力:D スピード:D 射程距離:A(ほぼ無限) 能力射程:A(ほぼ無限)
持続力:E 精密動作性:D 成長性:C
能力:雪歩を守るためだけに存在する自立行動スタンド。
雪歩のスタンドに対する未知への恐怖心から発現し、雪歩にスタンドについて話すことをスイッチとして出現し、話した者を追跡していた。
しかし、雪歩がスタンドのことを認識したことで未知への恐怖心は薄くなり、また「ファースト・ステージ」本人にも以前のような強い意思がなくなったため、現在、能力は著しく劣化している。
殴ることで、自分に蓄積したダメージを、与えた相手に「返す」。返したダメージは、「ファースト・ステージ」からは消え、回復してしまう。
A:超スゴイ B:スゴイ C:人間並 D:ニガテ E:超ニガテ 



511 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 22:49:01 HWTxx6q.
グッ グッ

ユキホが肩に突き刺さった金属棒を引っ張っている。

ユキホ「…片手じゃあ抜けないか」スッ

諦めて、手を放した。

ユキホ「腕は…まぁ、仕方ないか。一本で済んだだけマシだね」

真「………」シュー シュー

倒れる真の体から煙が立ち昇っている。

雪歩「あっ、あああっ…!」

雪歩(あぁ、私だ…私のせいだ…真ちゃんは私を助けようとして…)

ユキホ「さて、かわいそうだけど…いや全然かわいそうだとは思わないけど」

ユキホ「あなたも一応765プロだし、見逃すわけにもいかないよね」

雪歩「………」グッ

ベキッ

雪歩は壁のパイプを掴み、熱で曲がった部分をもぎり取る。

ユキホ「…?」 


512 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 22:49:48 HWTxx6q.
雪歩「………」ス…

両手でパイプを構え、ユキホに向けた。

ユキホ「なに、それ。そんなので私に勝てるとでも思ってるの?」

雪歩「思ってない…」

その姿勢は堂々としたものではなく、腰が引けている。

雪歩「真ちゃんがやられたんだもの、私が勝てるわけがない…」

ユキホ「だったら、なんでそんなもの持って向かってこようとするの? 逃げたらいいんじゃない?」

雪歩「嫌だ…」

ユキホ「手が震えてるよ。怖いんじゃあないの?」

雪歩「怖いよ…でも、ここで真ちゃんを置いて逃げたりしたら、私はずっとダメダメなままになっちゃうから…」

ユキホ「………」

雪歩「そっちの方がずっとずっと怖いから」

ユキホ「そう…」パリッ

ユキホの体から火花が飛ぶ。 


513 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 22:50:33 HWTxx6q.
ユキホ「だったらダメダメなまま終わっていきなよッ!! 『コスモス・コスモス』ッ!!」

雪歩「…!!」

バチバチバチィッ!!

指先から放たれた『電撃』が、真っ直ぐ雪歩へと向かっていく。

雪歩「はぁー…っ」グッ

握り締め、じっと見据える。

雪歩(叩き落として…『電撃』が手元に流れてくる前に放す…)

ジジジジジジ

雪歩(できるわけがない…でも、やらなきゃやられる…!)

ス…

横から伸びてきた手が、雪歩の持つパイプを取り上げる。

雪歩「え?」

「萩原雪歩、ソンナモノヲ振リ回スノハ貴女ニハ似合ワナイ」

パァン!!

その手は雪歩の前に出て、『電撃』を薙ぎ払った。 


514 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 22:51:28 HWTxx6q.
雪歩「!」

ユキホ「!?」

カラン カラン

鉄パイプが衝撃で弾き飛ばされ、床に転がる。

?「大事ナノハ…萩原雪歩…」

ドドドド

?「立チ向カオウトスル ソノ『意志』デス」

雪歩「あなたは…」

FS「ソレガアレバ、私ハ戦エル」

ドドドドドドド

モデルのようなすらっとした体型をした、雪のように白い人型が、雪歩の目の前に立っていた。

雪歩「スタ…ンド…!?」

ユキホ「これが『ファースト・ステージ』…?」

FS「………」グッ

スタンドは自分の手を見つめて、感触を確かめるように握りしめた。 


515 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 22:52:27 HWTxx6q.
雪歩「あ、あの…あなたは…」

FS「初メマシテ、萩原雪歩。言ワナクテモ、貴女ナラバ理解デキルデショウ」

FS「私ハズット貴女ト共ニイマシタ。貴女ノ中デ、ズット貴女ノ事ヲ見テイマシタ」

雪歩「あなたが…私のスタンド」

FS「ソウデス。ソシテ今…貴女ノ『意志』ニヨッテ生マレ変ワッタノデス」

雪歩「私も、戦えるんですか」

FS「貴女ガ ソレヲ望ムノナラ」

雪歩「でも、どうすれば…?」

FS「すたんどハ感覚デ動カスモノ…アルイハ『命令』シテクダサイ。ソウスレバ、私ハ動キマス」

雪歩「それじゃあ…あの人をなんとかしてくれますか…?」

FS「ナントカ…デハアリマセン、萩原雪歩」

雪歩「え」

FS「菊地真ヲ助ケヨウトシタヨウニ…アノ『複製』ニ 立チ向カオウトシタヨウニ…モットハッキリト、明確ナ意思ヲ持ッテ戦ウノデス!」

雪歩「あっ、あっ、あの…あの人に、攻撃して! 私のスタンドさん!」

FS「ALRIGHT* 了解シマシタ」 


516 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 22:53:19 HWTxx6q.
ドドド

雪歩のスタンドがユキホへと向かっていく。

ユキホ「………」

FS「シャァッ」ヒュッ

スッ

振り下ろされた腕を、ユキホは事も無げに躱した。

FS「!」

ユキホ「『コスモス…」パリッ バチバチ

ユキホの体に『電撃』が迸り、肩に突き刺さった鉄の棒に集まっていく。

FS「ウシャア」グオッ

構わず攻撃に行こうとするが…

ピク…

FS「ヌ…」

しかし、その手を直前で止めた。 


518 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 22:55:03 HWTxx6q.
ユキホ「コスモス』」

バシュゥ!!

肩から、『電撃』の銃弾が発射される。

FS「チィッ」バッ

退いて攻撃を避けようとするが…

バリバリバリバリ!!

FS「オオッ」ビリッ

『電撃』が空中で一気に拡散し、衝撃を食らう。

雪歩「きゃっ…!」ビリビリ

そして、スタンドが受けた『電撃』の衝撃が雪歩にも伝わった。

ユキホ「失った片腕…真ちゃんが刺してくれたこれが代わりになってくれそうだね」

ユキホ「ううん、それ以上かな? 集中してるからか空中に撃ってもそれほど抵抗を受けない」

FS「ヌ…」シュゥゥゥ…

直撃は避けたが、白いボディが少しコゲついている。

ユキホ「そして『ファースト・ステージ』…真ちゃんと比べたらパワーもスピードも足りなすぎる。何の威圧感もない」 


519 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 22:56:25 HWTxx6q.
雪歩「だ、大丈夫…?」タタッ

雪歩がスタンドへと駆け寄る。

雪歩「ちょっとビリっときたけど…」

FS「チッ、ボケナスガ…」

雪歩「えっ?」

FS「『ぱわー』モ『すぴーど』モ 以前ノ水準マデ戻ッタダケカ…シカモ、コレハ…」

雪歩「あ、あの…スタンド…さん?」

FS「オット、失礼。貴女ノ清ラカナ耳ニ 口汚ナイ言葉ヲ聞カセテシマッテ…申シ訳アリマセン」

雪歩「え、えっと、あの…それより、攻撃は…」

FS「結論カラ言ワセテモラウト…『無理』デス」

雪歩「ええっ!?」

FS「私ノ『ぱわー』ト『すぴーど』ハ 人間ヨリ少シ上ト イウ程度…アノ クソッタレ野郎ニ決定打ヲ与エルコトハ デキマセン」

雪歩「で、でも何かしないと…もう一回攻撃して!」

FS「貴女ノ命令デモソレハ聞ケナイ 萩原雪歩」

雪歩「どうして…!?」 


520 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 22:58:11 HWTxx6q.
FS「モウ一度私ガ行ッタ所デ 『電撃』ヲ喰ラウノガ『おち』デス。今マデナラ、ソレデモ ヨカッタノデスガ…」

FS「私ハ『遠隔操作』ノすたんどトシテ 生マレ変ワリマシタ。ソノコトデ、私ト貴女ノ間ニ繋ガリガ出来テシマッタ。他ノすたんどト同ジヨウニだめーじモ共有スル」

雪歩「えっと…それって、つまり?」

FS「簡単ニ言ウト、私ガ死ネバ 貴女モ死ンデシマウノデス。困ッタ事ニ」

雪歩「死…」サァァ

FS「他デモナイ貴女ノ頼ミ、出来ルコトナラ私モ聞イテ アゲタイノデスガ…」

雪歩(せっかくスタンドが使えるようになったのに…これじゃあ、何にもできない…)

FS「萩原雪歩…ソレジャア、駄目デス。ソウヤッテ怯エラレテハ 私モ本来ノ『ぱわー』ヲ発揮出来マセン」

雪歩「で、でも…発揮したところで、あの人を倒すことはできないんでしょう…?」

FS「イイエ、萩原雪歩。私ハ、貴女ヲ守ルタメニ生マレタ『すたんど』。ソノタメナラ、ナンダッテ出来マス」

雪歩「なんでも…? 嘘だよ、現にこうやって追いつめられてるじゃない…!」

ユキホ「思わせぶりにスタンド出して、もう終わり?」

ユキホ「だったらさっさと眠っちゃいなよ、『コスモス・コスモス』!!」

バチバチ

雪歩「ひ、『電撃』が…」 


521 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:00:51 HWTxx6q.
バチバチバチ

『電撃』が宙に広がりながら、雪歩に襲いかかってくる。

FS「萩原雪歩、命令ヲ」

雪歩(命令…何を? どうすれば…)

雪歩(今、どうすればいいかなんて、決まってる)

雪歩「躱さないと…!」

FS「ALRIGHT*。ソレナラ『可能』デス」

雪歩「え?」

ヴォン

ユキホ「なに?」

雪歩の足元に、ぽっかりとマンホール大の『穴』が開く。

雪歩「きゃっ」スポン

逃れようとする間もなく、雪歩はその『穴』の中に落ちた。

バチバチバチ

そして『電撃』が、その上を通り過ぎていった。 


522 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:01:45 HWTxx6q.
ユキホ「萩原雪歩が…地面に空いた『穴』に入った…!?」

雪歩「………」

真っ暗な空間の中に、雪歩の体が浮いている。

雪歩「こ…これは…!」

天井の『穴』を見上げる。そこから、外の様子が見えた。

FS「地面ニ『穴』ヲ空ケマシタ。何ガアロート、奴ハ コノ中ニハ手出シ出来マセン」

スタンドも、雪歩と一緒に『穴』の中に入ってきている。

ユキホ「避けた? なら…」バッ

雪歩「!!」

ユキホが『穴』の真上に立つのが見えた。

ユキホ「その『穴』に直接ブチ込んであげる!」バチバチ

雪歩「うぅ…!」

今すぐにでも自分に向かって『電撃』が放たれようとしているが、『穴』の中に逃げ場はない。唯一の逃げ道も塞がれている。

雪歩(一時的に『穴』の中に逃げたって…意味なんてない! やられる…) 


523 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:05:05 HWTxx6q.
バチバチバチ!!

ユキホの撃った『電撃』が、『穴』の中に撃たれ…

FS「大丈夫デス」

ジッ…ジジジジ

雪歩「え…!?」

雪歩の体をすり抜け、『穴』のさらに奥の方へと吸い込まれていった。

雪歩「………」

FS「何ガアロート、ト言イマシタ」

FS「コノ『穴』ノ中ハ貴女ノ領域。コノ『穴』ノ中ニ存在スルモノハ全テ 貴女ノ物デス、萩原雪歩。無論私モ含メテ」

FS「奴ガコノ『穴』ノ中ニ攻撃シテモ、貴女ニ命中スルコトハナイ」

ユキホ「う…どうなったの? こっちからじゃあ見えない…」

ユキホ「スタンドの能力を生み出した『穴』が消えないってことは…」

雪歩「…私がどういう状態なのか、見えてないの?」

FS「エエ。穴コチラカラハ 見エルシ 聞コエマスガ、アッチニハ届キマセン。まじっくみらート同ジデスネ。真ッ暗ナ『穴』ニシカ見エナイハズデス」 


524 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:08:27 HWTxx6q.
ヴォン…

雪歩達は『穴』の中に入ったまま出てこない。

ユキホ「…そこにずっと籠もってるつもり?」

スッ

ユキホ「それなら、出てくるまで待ってあげる。出てこないことにはそっちから私に攻撃もできないでしょう? 出てきたところで同じことだろうけど」

FS「フム…」

雪歩「…『穴』がここにあるから、ああやって待ち伏せてるんだよね」

FS「萩原雪歩?」

雪歩「だったら…」

ツーッ

ユキホ「!?」

ズズズズズ

ユキホ「『穴』が…滑るように移動していく…!?」

雪歩(できた…!) 


525 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:09:32 HWTxx6q.
FS「アア、萩原雪歩…貴女ハ最高デス」

雪歩「え?」

FS「イエ…ソノ調子デス、萩原雪歩。『すたんど』ハ『直感』デ操ルモノ。貴女ハ モウ、立チ向カウタメノ手段ヲ知ッテイル」

雪歩「あの…ところでスタンドさん…」

FS「何デショウカ」

ピタ…

雪歩「なんでさっきからずっと私の背中にぴったりくっついてるの…?」

FS「私ハ 貴女ノ『すたんど』、背後ニ立ツノハ当タリ前デス」

雪歩「最初はくっついてなかったよね? それに、これって立つとは言わないんじゃ…」

FS「ソノ…コウシテイルト 落チ着クノデス。駄目…デスカ?」

雪歩「い、いえ…駄目じゃあないけど…」

雪歩(なんだろう、スタンドってこういうものなのかな…? みんなこんなこと言ってなかったけど…) 


526 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:10:23 HWTxx6q.
ズズズ

『穴』は地面から壁に伝って動いていく。

ユキホ「あの『穴』…」

ユキホ「追いかけて撃ってもいい。けど、恐らく私の攻撃は届かない…『コスモス・コスモス』には容量がある、無駄にするわけにはいかない…」

ツーッ

ユキホ「………」

『穴』はユキホの動きを伺うようにゆっくりと移動している。

ユキホ「ずっとそこに籠ってるつもり…?」

ユキホは『穴』から目を離すと、ある場所を目指して歩いていく。

ユキホ「なら、それでもいいよ」スッ

雪歩「…?」

ユキホがしゃがんだ。その足元に何かが転がっているのが見える。

ユキホ「真ちゃんに何をされてもいいのならね」

真「うぅ…」

雪歩「!」 


527 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:12:25 HWTxx6q.
ユキホ「仕方ないでしょう? あなたに手を出せないなら、真ちゃんを『再起不能』させることくらいしか私にはできないから」

ユキホ「やれることからやる…当然のことだよ」

雪歩(私がこの中に隠れてたら、真ちゃんを…)

雪歩「スタンドさん、真ちゃんもこの中に入れ…」

FS「ソレハ『無理』デス。コノ中ニ存在デキル生命体ハ雪歩、貴女ダケデス。他ノ生物ハ コノ空間ニ入ルコトスラ出来ズ追イ出サレマス」

雪歩「それじゃあ、真ちゃんが…!」

FS「菊地真ヲ…助ケタイノデスカ? 萩原雪歩」

雪歩「当たり前だよ!」

FS「ソレハ、何故? 菊地真ニ 助ケラレタカラ?」

雪歩「貸し借りなんかじゃあなくて…私が嫌だから!! 真ちゃんに何かあったりしたら!」

雪歩「そうしなきゃいけないんじゃあなくて、私がそうしたいから!」

FS「ソレデイイ、萩原雪歩」

雪歩「え?」

FS「強ク想ッテクダサイ、萩原雪歩。貴女ノ ソノ想イガ、私ヲ強クスル」

FS「貴女ガ誰カヲ守リタイト言ウノナラ! 私ハ ソノタメノちからト ナリマショウ!」 


528 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:14:31 HWTxx6q.
ユキホ「ん…?」

シュルシュルシュル

ユキホ「もしかして、先に真ちゃんを『再起不能』にさせる必要もないのかな」

ユキホ「『穴』が小さくなっていく…いつまでもその中にいるとまずいんじゃあないの?」

雪歩「きゃっ」ドサッ

『穴』が完全に閉じると、雪歩とスタンドが壁から飛び出してきた。

ユキホ「『穴』はしばらくすると消える…そして、消えると追い出される。いつまでもその中に籠ってることはできないみたいだね」

雪歩「………」

FS「行クゾ」タッ

そう言うと、スタンドは明後日の方向へと走っていく。

ユキホ「なに、あれ? あなたのスタンド、逃げちゃったけど」

雪歩「追いかけた方がいいと思うよ」

ユキホ「ふっ…それより本体のあなたを始末した方が早いでしょう!!」ダッ

真が倒れてる地点から、雪歩の方に走っていく。

雪歩「…いいんだね、それで」 


529 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:15:32 HWTxx6q.
FS「フッ」シュルッ

ヴォン

スタンドが地面に触れると、そこに『穴』が空いた。

ユキホ「はああっ!!」バチバチッ

それを気にも留めず、ユキホは雪歩に向かって『電撃』を放つ。

クルッ

雪歩「えいっ」トン

雪歩は振り向いて、壁を人差し指で突く。

ヴォン

ユキホ「!」

すると、こちらにも大きな『穴』が空いた。

スポン

雪歩の体は、そのまま作り出した『穴』に吸い込まれた。

シュゥゥゥ…

そして雪歩を追いかけるように、『電撃』も『穴』の中に入っていく。 


530 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:17:56 HWTxx6q.
ユキホ「また『穴』…それなら、消えるまで待…」

シュバ!!

雪歩「たっ」スタッ

ユキホ「なっ…!?」

雪歩が、スタンドの空けたもう一方の『穴』から飛び出してきた。

ユキホ「『穴』同士で…移動できるの…!?」

雪歩「あなたは、私が気に入らないんだよね。本当は、真ちゃんより私の方を始末したくて仕方なかったんだよね?」

雪歩「でも、あなたには私を捕まえることは…できないよ」

ユキホ「…!」 


531 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:18:36 HWTxx6q.
ユキホ「スタンドを使えるようになったからって…調子に乗らないで」

ダッ!!

『射程距離』に入ろうと、ユキホが走って近づいてくる。

雪歩「………」

ユキホ「今ある『穴』は私から見て手前…つまり僅かに私の方にある…飛び込もうとしたらそこに『電撃』を叩き込む!!」

スッ

雪歩が地面に空いた『穴』から、向かって来るユキホから離れた。

ユキホ「また『穴』を作るつもり…? それなら、その前に仕留める! 本体だろうとスタンドだろうと!」

ユキホ「私の『コスモス・コスモス』のスピードを舐めないで…!」

雪歩(わかる…)

雪歩(私がやるべきこと…進むべき道が…見える!)

ユキホ「『コスモス・コスモス』!!」パリッ

『射程距離』に入ったのか。雪歩が出てきた『穴』の手前あたりで、ユキホが立ち止まる。

雪歩「そこですっ!」

その瞬間、雪歩は叫んだ。 



533 : 『コスモス・コスモス』その3 :2015/10/22(木) 23:23:00 HWTxx6q.
ヴォン

ユキホ「!?」

バリバリバリバリ

ユキホ「きゃあああああああああああああ!?」

『穴』の中から『電撃』が吹き出し、ユキホを襲った。

ユキホ「かはっ…」ダンッ ダムッ ダスッ

その衝撃でユキホはブッ飛び、地面に数度叩きつけられる。

雪歩「ふぅ…」

ユキホ「な…なんで…私が『電撃』でダメージを…」フラッ

FS「オット…立テルノカ。『複製』ト イウヤツハ無駄ニ丈夫ナノダナ」

ユキホ「コ…『コスモス・コスモス』は…私のスタンド…の…はず…それに、今の威力は」

FS「コノ『穴』ニ入ッタ瞬間、モウソレハ 貴様ノモノジャアナクナル」

FS「ソレガ二発分ダ。テメーノ一発分ジャア 足リナイ」

ユキホ「うぅぅ…」ビリビリ

FS「貴様ノ攻撃…『返サセ』テ、モラッタ。ドンナ気分ダ?」 


534 : 『コスモス・コスモス』その3/おわり :2015/10/22(木) 23:23:32 HWTxx6q.
雪歩「これが…」

FS「エエ、ソウデス萩原雪歩。『穴』ニ吸イ込ンダ相手ノ攻撃ヲ『返ス』」

FS「相手ガ悪意ノ刃ヲ向ケルノナラ…ソレヲ相手ニ刺シ『返シ』テヤリマショウ」

FS「ソレガ私ノ…イヤ貴女ノ能力」

雪歩「あの、スタンドさん」

FS「ハイ。ナンデショウカ」

雪歩「あなたの名前は?」

FS「私ノ名ハ『ふぁーすと・すてーじ』…イエ」

FS「萩原雪歩、貴女ハ 新タナ一歩ヲ踏ミ出シタ…私ノ名前ハ…」

FS「『ふぁーすと・すてっぷ』デス!!」

雪歩「『ファースト・ステップ』」

FS「サァ、萩原雪歩。奴ヲ、倒シマショウ!」

雪歩「うん…うん、『ファースト・ステップ』! 戦おう、一緒に!」 



539 : 『コスモス・コスモス』その4 :2015/11/11(水) 22:31:05 uEuBDvYk
雪歩「行こう、『ファースト・ステップ』」

FS「ソノ前ニ、萩原雪歩。一ツダケ…」

雪歩「? 何?」

FS「雪歩…ト呼ンデモ イイデショウカ」

雪歩「はい?」

FS「イエ、出過ギタ真似ヲ シマシタ…申シ訳アリマセン、忘レテクダサイ」

雪歩「え、えっと…それくらいなら、別にいいけど」

FS「ホントウニ!?」ズイッ

雪歩「う、うん…」

FS「デ、デハソノ…ユ…雪歩」

雪歩「はい」

FS「ヨシ…」グッ

雪歩「あの…?」

FS「イエ。行キマショウ、雪歩」 


540 : 『コスモス・コスモス』その4 :2015/11/11(水) 22:33:45 uEuBDvYk
ユキホ「ぐぐ…」シュゥゥゥ…

グラッ

ユキホの足元がふらついている。

ユキホ「私の『コスモス・コスモス』を…」

ユキホ「『穴』に撃ち込んだ攻撃を『返す』! ですって…?」

雪歩「うん。これでもうあなたの攻撃は私には届かない、全て『返す』よ」

ユキホ「調子に乗らないで」

FS「調子ニ乗ッテイルノハ貴様ダ。ヨクモ雪歩ニ 好キ勝手言ッテクレタナ、土下座シロ土下座」

ユキホ「私たち『複製』は『スタンド使い』としての訓練を積んでいる」

ユキホ「765プロの他のアイドルは『弓と矢』の事件で鍛えられた…だから私たちと戦える。でも、あなたは今やっとスタンドを使うことを自覚したばかり」

雪歩「………」

ユキホ「あなたに何が出来るの! さっきまで怯えて震えてたあなたに!」

雪歩「…私は」

ユキホ「?」 


541 : 『コスモス・コスモス』その4 :2015/11/11(水) 22:39:19 uEuBDvYk
雪歩「みんなが春香ちゃんを止めようとしていたあの時、やっぱり外側から見ている事しか出来なかった」

雪歩「怯えて震えている…そうだね。ずっと、それしかできなかった。蚊帳の外は嫌だって…そう言っていたのに」

ユキホ「………」バチッ

タッ

姿勢を低くして、雪歩へと向かってくる。

FS「私ノ役目ハ雪歩ヲ守ルコト…ズット ソウ思ッテイタ。ダガ違ウ」

FS「私ハ雪歩ト共ニ戦ウ、私ガ雪歩ノ刀トナル。雪歩ト一緒ニ戦ウ! ソノタメニ 生マレテキタ!」

雪歩「そう、一緒…」スッ

ゆっくりと手を上げ、前に向ける。

ユキホ「そこに『穴』を作れる壁はない!」バチィッ!!

肩から伸びる棒の先端から、『電撃』を放つ。

ウォン…

・ ・ ・ ・

雪歩「みんなと一緒に、私も…戦う」

ユキホ「空中に…『穴』が…!?」 


542 : 『コスモス・コスモス』その4 :2015/11/11(水) 22:49:15 uEuBDvYk
雪歩の前方に空けられた『穴』に、『電撃』が吸い込まれていき…

雪歩「『返し』て、『ファースト・ステップ』」

FS「ALRIGHT*」ヴォン

バチバチバチ

『ファースト・ステップ』が空中に手を伸ばすともう一つ『穴』が開き、そこから『電撃』が飛び出す。

ユキホ「『コスモス・コスモス』ッ!」バチッ

パァァァン

ユキホはそれに自分の『電撃』をぶつけ、相殺する。

シュゥゥゥ…

ブオッ

発生した煙の中から、『ファースト・ステップ』が飛び出してくる。

ユキホ「!」

FS「ウシャア」ブオン

ユキホ「たっ」ザッ

後ろに傾きながら、『ファースト・ステップ』の拳を躱す。 


543 : 『コスモス・コスモス』その4 :2015/11/11(水) 22:56:27 uEuBDvYk
ババッ

ユキホはそのまま跳び退いて間合いを取った。

FS「チ…素早イ ヤローダ」

ユキホ(萩原雪歩のスタンド、私の『電撃』がことごとく『返さ』れる…)

ユキホ(迂闊に攻撃はできないし、今のように守るため撃ち尽くせばそこを狙われる)

ユキホ(今のが真ちゃんだったら…『ファースト・ステップ』よりもパワーもスピードも数段上だったら…)

雪歩「引く気がないのなら…あなたを倒す」

ユキホ(見ている…)

ユキホ(何、その目は…? さっきまで、ペットショップから知らない家に連れてこられたばかりの子犬みたいな顔してたくせに…)

雪歩「………」

ユキホ(目が据わってる…追いつめられてからの、この精神力…)

ユキホ(これが…これが、本当にさっきまで隅っこで震えていた、あの萩原雪歩なの…!?)

ユキホ(私の中にあるのは、内側から見た『記憶』でしかない…これが、外から見た萩原雪歩…)

ユキホ(それが今、スタンドを得た…意思が明確な形となって襲ってくる…!) 


544 : 『コスモス・コスモス』その4 :2015/11/11(水) 22:59:18 uEuBDvYk
ユキホ「でも…それが何? その程度で私に勝てるとでも…?」

雪歩「………」

FS「引カナケレバ好都合ダナ。攻撃ハ全テ『返ス』」

ユキホ「やってみなよ…」

パリッ

ユキホの体に『電流』が戻ってくる。

ユキホ「うあああああっ!」ダッ

闇雲とも言える勢いで、ユキホが突っ込んでくる。

ユキホ「えいっ!」バチバチッ

肘の先のなくなった腕を、『電撃』を纏わせながら振るってくる。

雪歩「んっ!」バッ

雪歩はそれを難なく躱すが…

ユキホ「ふっ!」グオッ

雪歩「うっ」ドス!

もう片方の腕が、雪歩のボディに叩き込まれる。 


545 : 『コスモス・コスモス』その4 :2015/11/11(水) 23:02:56 uEuBDvYk
ヴォン…

ユキホ「………」

しかし、そこには『穴』が浮かんでいた。ユキホの拳が『穴』の中に刺さっている。

雪歩「そこっ」ヴォン

ヒュ

『穴』を開く。そこから拳の形をしたエネルギーの塊が飛び出し、ユキホに襲いかかる。

バキッ

雪歩「!」

ユキホはそれを避けるそぶりすら見せず、体で受け止めた。

ユキホ「これしきで怯むと思った…?」ズッ

バチバチバチッ

『電撃』を発しながら、雪歩へと手を伸ばす。

雪歩「きゃ…!」ヒュン

作ったばかりの『穴』に飛び込む。自分の体より小さな『穴』に、雪歩の体が吸い込まれていった。

ユキホ「へぇ…」パチッ 


546 : 『コスモス・コスモス』その4 :2015/11/11(水) 23:12:51 uEuBDvYk
ズルッ

ズズズ

『穴』は空中から地面へと落ち、ユキホから離れるように移動する。

ユキホ「『穴』ができたのはあくまでも空中…じゃなきゃあ入ることもできない」

ユキホ「今の状況でそうしたってことは、自分自身には『穴』は開けられないみたいだね」

ユキホ「それにもう一つ『穴』を作れば、『返せ』たはずなのに…そうはしなかったってことは二つより多くは出せないんでしょう?」

ニュ

雪歩「………」

ユキホの射程距離の外に着くと、雪歩が『穴』から出てくる。同時に、『穴』が消えた。 


547 : 『コスモス・コスモス』その4 :2015/11/11(水) 23:16:19 uEuBDvYk
雪歩「はぁっ…」

FS「大丈夫デスカ」

雪歩「大丈夫じゃ…ないかも、怖いよ…」

雪歩「アイドルのオーディションとは違う、直接敵意を向けられて本気で私を倒そうとしてくる…」

FS「雪歩…」

雪歩「でも、みんなこの怖さに向き合ってきたんでしょう。私一人だけ泣き言なんて言ってられないよ…」

FS「………」キュン

FS(雪歩…決意ニ燃エル貴女ノ瞳ハ ナント美シイノデショウ…)

FS(ソレヲ間近デ見ラレルコトノ、ナント幸セナコトカ)

FS(アア、コノ感動ヲ誰カニ伝エタイ…共有シタイ…)

雪歩「『ファースト・ステップ』」

FS「ア、ハイ。ナンデショウカ」

雪歩「私たちであの人に…勝とう」

FS「Yeah. OK, Yukiho. ALRIGHT*!」 


次回 千早「『弓と矢』、再び」その2  後編