┌────────────────┐
 │ これは――「呪い」を解く物語。   ..│
 └────────────────┘

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              ._______| |ヽ ヽ_ヽ.∨ /__.ゝ ー’ノ___゙、`'   / ___
               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〉 ./ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ }   ./  ̄ ̄ ̄
                                  / ./.               ヽノ
                                     ̄


 ――この物語に奇跡なんてない。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376310543

引用元: ・【咲安価】 京太郎「……変、身ッ」 良子「出番をプリーズ」 17クール目【ライダー】 



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19: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/12(月) 23:59:52.89 ID:IqggtYq4o
【朝】

京太郎(淡が……彼女、か)

京太郎(……)

京太郎(昨日の告白、完全にプロポーズみたいだったよな……)

京太郎(ヤバイ恥ずかしい)


 これから先も隣に居てほしいとか。
 それは、彼氏彼女の関係で使う台詞ではない。
 もう、いい年した男女が結婚する前に使う言葉であろう。

 何とか、格好をつけてみようと――彼女の前で無様を晒したくない――思い、考えた言葉であったが。
 なるほど確かに、淡の云うとおりどこかズレた告白だったろう。
 気持ちは伝わったのだから、まあいいが……。


京太郎(……弁当、淡の分も作っちまったけど)

京太郎(どうしようこれ……いきなり重いとか、思われねーかな?)

京太郎(一応、アイツが嫌いなものは作らないで置いたんだけど……うーん)

京太郎(ああ、悩むな……なんつーか、これ)


 一人で、弁当箱の前で悶絶する。
 持っていくべきか、持っていかないべきか。
 戦闘でどのメダルを使うかよりも、京太郎は悩んでいた。

 初めての経験であった。

 あの日、全てが砕かれてから――以前とは異なり、新しく得たもの。
 勿論、人の輪。交流のある人々も、新しくこちらに来てから手に入れたものであろう。
 だが、恋人がいるというのは、初めての経験である。

 なんて――。


京太郎(戦友ってのも、初めてだな)


 それだけではない。
 ライダーとして戦う内に育まれた絆。戦友。
 これも、以前の生活には存在しなかったものである。

 そう思うと、ある意味……。

 自分は過去から、新しい世界へと進もうとしているのかもしれない。

20: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 00:14:30.60 ID:1pCuTjFNo

京太郎(まあ、そんなこと言ったら……姉役とか、師匠とか)


 神代小蒔。
 江口セーラ。


京太郎(こっちが先輩面できる相手とか、殺されかけたり脅し合ったり同じとこ目指したりの関係とか)


 新子憧。
 白水哩。鶴田姫子。


京太郎(利害一致の関係だったり、バックアップとフォローをしてくれる関係だったり)


 鴻上光生。
 対木もこ。


京太郎(柄にもなく説教したり、命を助けたり)


 内木一太。
 小走やえ。鷺森灼。末原恭子。花田煌。江崎仁美。安河内美子。


京太郎(なにより――)

京太郎(命の恩人で、運命共同体って奴は……初めてだった)


 カザリ。アンク。


京太郎(……)

京太郎(殴って、連れ戻す……連れ戻したい)

京太郎(俺が、何とか……お前らの渇きを癒す方法を見つけてやる)

京太郎(だから……頼むから、最後の一線だけは超えないでくれ)

京太郎(そうなったら……)

21: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 00:21:31.64 ID:1pCuTjFNo

 平穏な日常。
 それは、二人を取り戻して、助けてこそ――成り立つものだ。

 常に気を張っていては戦えない。
 故に京太郎は、その時までは束の間の日常を謳歌すると決めた。

 しかしそれでも、忘れはしない。心の内には灯っている。
 カザリとアンクを連れ戻す事を。彼らの欲望に終止符を打つ事を。


京太郎「……」


 或いはこの時、気付いていたのかもしれない。
 こんな日常が終わりを告げるその時が、近づいているという事に。


京太郎(弁当、どうしよう……?)

22: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 00:22:38.59 ID:1pCuTjFNo

1:持っていく (昼食時のメンバーが淡に固定されます)
2:やめておく (昼食時、淡以外のメンバーとも交流可能です)

↓5

30: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 00:42:53.29 ID:1pCuTjFNo
>>27の選択:1

 いつも通り、教室に入る。
 そこそこに言葉を交わすだけで、特段深い付き合いをしているものはいない。
 だが、それも改めてみようかと思える。

 前に進む事は、足を止めるほど恐ろしい事ではない。
 確かにその先に、怖い事が待ち受けている事だってあるだろう。
 だからと言って、怖がって立ち止まるのは勿体ない。

 かつて、神代小蒔に言われた事。
 それを、戦いのみならず――日常生活でも活かしてみるのもいいかもしれない。
 そう、思えていた。


京太郎(……?)

京太郎(騒がしいな……)


 ちょっとした人だかりができていた。
 その中心に目を向けると――そこに居たのは。


京太郎「優希か……!?」

優希「YES,I AM!」


 片手に持ったタコスを咥えつつ、チッチと指を振る片岡優希。

 人の輪ができていたのは、なるほど。これが理由か。
 どうやら、テラーの呪縛から解放されると同時に、登校を決意したらしい。
 なるほど。まあ、学校に通いたいと思うのが人情であろう。

 そして、クラスメイト達は物珍しい闖入者に興味津々……という訳だ。

31: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 00:53:19.06 ID:1pCuTjFNo

京太郎「なるほど……なんつーか」

京太郎「遅れてきた主役登場って……感じだな」

優希「うむ、流石は京太郎。よくわかってるな!」

京太郎「この場合はチャイム寸前に遅れてきた俺が主役って意味だけどな」

優希「……むむむ、なるほど」

優希「しかし、この人気っぷりから見て……どーみても主役はこの優希ちゃんしかいないじぇ!」

優希「京太郎、お前は今何人から挨拶をされたんだ?」

京太郎「……」

優希「私ははっきり見ていた……0人だ! お前から挨拶する以外に、誰からも声を掛けられなかった!」

優希「そんな人望が無い奴は主役には程遠い……ちゃんちゃら笑えるじぇ」


 痛いところを突いてくる。
 確かに京太郎、人間関係はおよそ両手の指で数えられるくらいしかない。

 ……尚。

 さりげなく校内でも有名な美少女ばかりと話している姿が目撃されている為、
 そのあたりを若干羨まれていたり、妬まれていたり、なんだこんな顔も出来るんだな……と思われている。


京太郎「……で、お前がここに居るって事は」

優希「染谷先輩は今日はお休みだじょ」

優希「新道寺の三人の治療があるからな」

京太郎「ああ、なるほどな……」

32: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 01:02:37.06 ID:1pCuTjFNo

 若干、顔に翳りを落とす優希。
 どうやら、あの三人の中に――片岡優希の中学時代の先輩がいたらしい。
 猶更、助けられてよかったと思う。

 そして、優希と彼女――花田煌が戦わなくて、よかったとも。


優希「それで、話があるんだけど……いいか」

京太郎「おう! ……そろそろHR始まるけど、それまでになら」

優希「ああ、別に長い話じゃないんだじょ」


 鞄をサイドにかけ、教科書を取り出す。
 そう言えばそろそろ、学期末試験であるな……とノートを広げる。
 この学園、中間考査がなく、学期末の一本勝負。

 それ故、落とすととても辛い事になる。


優希「皆が戦ってる中、悪いと思うけど……なんていうか」

京太郎「なんだよ」

優希「そろそろ……私も、昔みたいに麻雀が打ちたいんだ」

優希「まだ、戦いがあるのは分かってるし――油断もしちゃいけないって分かってるけど」

優希「それでも……なんていうか……」

京太郎「先の事を、そろそろ考えたい?」

優希「……簡単に言うなら、そのとーりだじぇ」


 なるほどな、と教科書から顔を上げる。

 彼女は彼女なりに、未来の事を考えているらしい。
 確かに、言う通りであった。
 戦いは終わってはいないが、そろそろ、終わりが見えてきた。

 ミュージアムがいなくなった以上、ガイアメモリは生産されない。
 未だにイマジンはいるし、グリードの事もある。
 それでも、以前よりはずっとマシになったであろう。

 特に、もう戦いに参加する機会のない優希にとっては……。


京太郎「おう、わかった」

京太郎「俺もそんなに詳しくないけど……案内してやるよ」

京太郎「その代わり、今度コーヒーでも奢れな」

優希「さっすが京太郎だじぇ!」

優希「任しとけ。私が絶品のコーヒータコスを奢ってやるじょ!」

京太郎「……なんだよ、珈琲タコスって」


33: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 01:04:16.65 ID:1pCuTjFNo


【判定が入ります】


34: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 01:07:24.84 ID:1pCuTjFNo
判定
1~20:京太郎の異常性が露見
21~40:だいぶ不味い弁当
41~70:嗅覚が駄目でも、弁当としては問題なかった
71~99:宮守勢と遭遇

偶数ゾロ目:ラブコメしろよオラァ
奇数ゾロ目:対木もこと遭遇

↓5

46: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 01:16:27.66 ID:1pCuTjFNo
>>39の判定:77

もこたんの策士ぶり


判定
1~20:憧、爆破
21~40:それもすべてナスカって奴の仕業なんだ
41~70:体調異変に言及。放課後呼び出し
71~99:わたしがヒロインになる。あなたの大切なものになる

偶数ゾロ目:あわあわ、もこ
奇数ゾロ目:「もう――待ちきれなくなっちゃって」


↓5

55: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 01:31:40.43 ID:1pCuTjFNo
>>51の判定:84

京太郎「さーて、淡の奴はいるかなっと……」


 弁当を片手に、屋上に向かっているときだった。
 唐突なる、立ちくらみ。

 体内で――ナニカが暴れた。


京太郎(――ッ!?)


 視界が揺れる。
 階段から、転げ落ちそうになる。

 見えるすべてが味気ない――醜い世界へと、変貌を遂げていた。

 この感覚は、憶えている。
 ミュージアム。そして、財団Xとの戦いを終わらせたあの日に発生した、出来事。
 また、淡に時計を渡そうとしたときにも、これがあった。


 単なる疲れだと思った。
 疲れだと、思い込もうとした。

 だけれども今、否応なく現実を突き付けられる。

 紫のメダルが暴れて、その直後にこれが起きたのであれば。
 畢竟、その原因は紫色のコアによるものとしか、言いようがないのだ。


京太郎(~~~~~~~~ッ)

京太郎(静まれ……静まって、くれ……ッ!)


 こんな姿を、淡には見せられない。
 彼女は心配してしまう。絶対に、京太郎の身を案じる事になる。
 そしてどうなるか。

 京太郎に戦わせまいと、彼女が戦ってしまうのか。
 それとも、紫のメダルを取り除かれてしまうのか。

 どちらかは、判らない。
 ただ、どちらにしても――この先の戦いにおいて、それは致命的になる。


京太郎(頼む……ッ! 頼む、ぜ……!)


 しかし、呼びかけに対する返答はない。
 そのまま、どんどんと視界がノイズに包まれていく。

 その気味の悪さに、膝を付いて手すりに寄りかかる。

 そこへ――

56: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 01:33:51.40 ID:1pCuTjFNo

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     人    >、/: : : : : :|: : : :|: : : ヽ: : :
     ': : : :> 、  l. r―-、 |: : : :|: : : : :l: : :i
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    | ∨|: : 代_ ノ   7 リ: :ハ `マ //l: |
      ’|\ト :::::::    l   レ' ∧  ∨l/ |/
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          マ<L⊥、レイ √フ
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59: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 01:39:49.29 ID:1pCuTjFNo

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60: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 01:47:57.40 ID:1pCuTjFNo

 こんな姿を、誰かに見られたくなかった。
 見られたとしても、それを淡の耳には入れたくない。
 彼女に知れてしまう事も、避けなければならない。

 故に、この場を離れなくては――。

 その一心であった。
 そこで、京太郎が彼女に縋りついてしまった要因は二つ。


 一つ目は彼女が、コアメダルの研究者であるという事。

 つまり、自分の身に起こっている異常を把握されても、何の問題もない。
 それどころかある種、頼れる存在であるのだ。
 ひょっとしたら、この現象について、何かしらの心当たりがあるかもしれないとも思えた。

 そして二つ目。

 どう言う訳か知らないが、京太郎は、彼女を見た途端に安堵してしまったのだ。
 心なしか、メダルのざわめきも薄れた気がする。
 立ち上がるだけの状態に、なれた。
 今なら、彼女が隣にいる間なら、他人に異常を知らせずに場所を移せる。
 そう考えたが故、京太郎は対木もこに助けを求めた。


もこ「――わかった」

もこ「誰かに知られたくない、って事でいい?」

京太郎「あ、あ……」

京太郎「悪い、ホント頼んだ……」


 そのまま、もこに寄りかかる形で降る。

 平静を取り繕うとする京太郎と、――彼からは見えないが――微笑むもこ。
 肩にかけられた手を、愛おしげに抱きすくめている。


 苦痛を悟られぬがために、京太郎は勤めて平常な顔に振る舞った。
 勿論、到底隠しきれるものではないが……。

 彼と交流の少ないものならば、それは。
 仲良く肩を抱き合って、どこかに行こうとしている風に、見えたであろう。


61: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 02:08:14.47 ID:1pCuTjFNo

  ◇ ◆ ◇


もこ「……落ち着いた?」

京太郎「ああ……悪い、ありがとうな」


 校舎裏、壁に寄りかかる形で京太郎は息を漏らした。
 学ランの下の肌着はすっかりと湿っていて、ワイシャツが肌に張り付く。
 唐突に己の身に降りかかった異変に、驚愕を隠せない。

 京太郎が落ち着くまで静かに見下ろしていたもこは、
 もう良いと判断したのだろうか、京太郎のすぐ隣に腰を下ろした。


もこ「……いつから?」


 そして、即座に切り出してきた。
 勘が鋭いと思った。鋭すぎると、思えるほどに。


京太郎「……少し前から」

もこ「そう」

京太郎「……もしかして、もこには」

京太郎「俺の躰に、何か異常が出るって……心当たりがあったのか?」

もこ「……」

もこ「……王の最後を考えて、ひょっとしたらと思ってた」

もこ「なにか、悪い影響があるんじゃないか――って」

京太郎「……」


 王の最後=欲望の加速の末、周囲もろとも石化。

 つまり故に、京太郎の体に害が合ってもおかしくないと……。
 そう、もこは判断したらしい。

62: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 02:12:12.54 ID:1pCuTjFNo
1:「石化って……なんだよそれッ! なんで、その事を――ッ!」
2:「……いや、多分それじゃない。俺の躰に……」
3:「……そう、ですか」
4:「……治す手段の、心当たりは?」

↓5

68: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 02:28:26.41 ID:1pCuTjFNo
>>67の選択:3

京太郎「……そう、ですか」


 カザリから以前、王によって封印されたとは聞いていた。
 だが、石化という言葉を耳にしたのは、今が初めてであった。

 つまりは――。

 カザリは自分に、それを打ち明けてはくれなかったのだ。
 オーズとして戦えば、いずれその事に向かうという事を知らせず……。
 京太郎の事を、使い潰すつもりだったのだ。


京太郎(……)


 怒りと言うより、悲しみが勝った。
 やはり自分は、彼に対して、何ら踏み込む事が出来なかったのであろうか。
 多少なりとも通じ合えたとは思ったが――心を許しては、くれていなかった。

 ならば、あの離別というのは。

 初めの内から決められていた、必然であったのかもしれない。


 「どうして」と、呟いていた。

 どうしてその事を、自分に教えてくれなかったのだろうか。
 どうしてその事を、自分に伝えてくれなかったのだろうか。
 どうしてその事を、自分はこんな形で知ってしまったのだろうか。

 それが――悲しい。
 ひたすらに、悲しい。


 裏切られたと言うよりも、やはり、初めから仲間として見做されていなかった。

 そんな事実が明らかになった事が……。
 今、己の体を蝕むこの異常事態より、衝撃的であった。


京太郎(……やっぱり)

京太郎(俺は……お前にとって、最初からそんな程度だったのか……?)

京太郎(なあ、カザリ……)

69: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 02:41:53.88 ID:1pCuTjFNo

もこ「……大丈夫?」


 そんな言葉と共に、柔らかい感触。
 対木もこが、京太郎の頭を抱きしめていた。

 己には、淡がいる。
 こうして、弱っているところを慰められるのはありがたいが……。
 それでも何と言うか、ある種これは裏切りに思えた。

 押し返そうと、腕に力を籠めようとする。
 だが、今度はあの感覚が襲ってきた。
 体内を蝕む――虚無へと向かう/全てを価値のないものに変えようとする――あの、狂い。

 視界がブレた。
 思わず、吐き出しそうになる。


もこ「わたしが、一緒に考えてあげる」

もこ「わたしが、あなたを治すのを手伝ってあげる」

もこ「貴方は皆を守ってきた――だから、こんな仕打ちは酷い」

もこ「でも、安心して?」

もこ「わたしがあなたを、たすけてあげるから」


 静かに、耳元で囁かれる言葉。
 そうして彼女が唇をよせるのは、声が小さいからだろうか。
 京太郎を説き伏せるように、甘い声が、沈んでいく。

 だがそれは、些か的外れだ。

 京太郎が感じた痛みは、そちらではない。
 確かに、辛いのだ。現に、こうして視界が歪んでいくのは、不快でしょうがない。
 だけれどもそれ以上に、心が痛んだ。


京太郎「……悪い、それは、助かる」

京太郎「でも……」


 ――こうやって抱きしめられるのは、違う。

70: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 02:47:54.55 ID:1pCuTjFNo

 違うのだと、告げようとする。告げようとした。
 “それ”は違うし、“これ”も違う。
 だから離れてくれと――そう言いたかった。

 だけれども、言えなかった。
 戸惑いと恐怖が勝ったのだ。京太郎の内なる、心細さが。


 自身に異変が起きている。
 それを、カザリが知らせてはくれていなかった。
 こんな姿を、誰かに見せるわけにいかない。特に、淡には。


 そして――己の内で構成された理論。

 視界に、ガタが来た。
 次には、嗅覚にガタが来たのだ。

 後者は、ひょっとしたら思い違いでは……と言う程度のものであったが、
 ここに来て、己が身にただならぬ事態が起きているとなれば、あの差異も、異常に含まれると感じた。
 そして、これらは五感だ。

 視覚が狂った。嗅覚が歪んだ。

 なら次には――どの器官が、壊れるのだろうか。


 そう思うと。

 己に伝わる彼女の体温を、引きはがせなくなった。
 剥がすと同時に、永遠に失われてしまうのではないか。
 単なる杞憂かもしれないが、瞬間的に弱った今の心では、それが現実のものとなってしまう風にも思えるのだ。

 だから京太郎は、頭に回されたもこの腕を、その体温を、放せずにいた。
 自然と、彼女の服の裾を掴んでしまっている。


京太郎(……どうしてなんだ、カザリ)

京太郎(やっぱりお前は……俺の事を……)

京太郎(俺は……)


 不安を封じ込めるように、その手に力が籠った。

71: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 02:58:00.11 ID:1pCuTjFNo

京太郎「……本当に、悪い」

もこ「……別にいい。それだけされる理由が、あなたにはある」


 そのまま、どれくらい経っただろうか。
 心が一旦の落ち着きを取り戻すまで、袖を強く握りしめてしまっていた。
 そこだけが手汗に濡れて、若干、様を変えていた。

 女の子の洋服を汚してしまったと、先ほどまでの悩みとはまた別種の後悔が訪れる。


京太郎「……」

もこ「……安心して」

もこ「わたしのほうでも、研究を進める」

もこ「異常を治せるように……少しでも食い止められるように……」

京太郎「……ああ、すまん」

もこ「あなたはそれまで――なるべく戦わないようにして」

もこ「それで、体がどうなるか判らないから」


 戦うなと言われても、すぐには頷けなかった。
 自分がやらねばならぬときだって、あるだろう。
 勿論、仲間を信頼していた。
 何かあったときに、誰かに頼れとも言われていた。

 ただ、それはそれとして。

 仲間に戦いを押し付けて、自分が黙っているというのには……。
 何もしないというのに、耐えられるかはまた別の問題だった。


京太郎「……」


 そんな京太郎の歯切れの悪さに気付いたのだろう。
 もこが、京太郎の瞳を覗き込んでくる。


もこ「……戦っちゃだめって言っても、頷けない?」

京太郎「……状況によるとしか、言いようがない」


 誰かが助けを求めていて、それをどうにかできるのが自分しかいないのなら。
 そこでは、自分が戦わなければならない――だろう。
 見捨てた後悔は、降り積もる。

 その中に足を埋めるのは、避けたかった。

 こればかりは、京太郎自身の為にも、譲れない事である。

72: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 03:06:55.76 ID:1pCuTjFNo

 合わせた瞳から、そんな京太郎の気持ちを理解したのであろう。
 やれやれと、もこが溜め息をついた。


もこ「……それは分かった」

もこ「でも、さっきのを見るに――誰かに心配させたくないのも、本当でしょ?」

京太郎「……ああ」

もこ「だったら――この事は、この異変の事は内緒にしてて」

もこ「それで余計な心配をさせて、戦いに支障がでるのは……嫌でしょ?」

もこ「あなたにとっても、わたしにとっても」

京太郎「……そうだ、な」

もこ「わたしのほうで――なんとか探ってみる」

もこ「そうすれば、杞憂で終わるかもしれない。解決策が早く見つかるかもしれない」

もこ「だから、この事は……しばらくは二人だけの秘密にしよう?」


 それは、願ってもない事だった。
 京太郎の事を案ずるあまり、戦いに集中できずに敗れる。
 京太郎の代わりに戦って、傷ついてしまう。

 それは――嫌だ。嫌だった。

 皆の腕は、信じている。信頼している。
 だけれども――だからこそ、余計な懸念材料を持ち込んでしまうというのは、憚られる。
 万が一というのが、ありえるかもしれないのだから。


 故に京太郎は、もこの提案に、乗った。


京太郎「……解った」

京太郎「このことは、ここだけの話にしよう。その方が……俺もいい」

もこ「わたしに、任せて。なんとか早く……治せるように、止められるようにするから」

京太郎「ああ……本当に、悪い。頼んだ」

もこ「……」

もこ「……だから、それまでは」

もこ「他の人とあまり、交流もしないでおいて」

もこ「連絡を取るのは大事だけど――顔を合わせるのは、なるべく避けてくれる?」

京太郎「……ああ」

京太郎「誰かの目の前で、さっきみたいな事になったら……誤魔化しがきかないもんな」

もこ「……そういうこと」

73: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 03:13:55.89 ID:1pCuTjFNo

 こうして――ここだけの。
 秘密の話と言うのが、出来上がっていた。


京太郎(……悪いな、淡)

京太郎(でも――俺はこんな姿を、お前に見せたくないんだ)


 折角幸せになれると思った矢先に、これだ。

 彼女の目を曇らせたくない。これ以上傷つけたくない。泣かせたくない。
 彼女が戦う事を、止めはしない。
 だって、それぐらいの実力はあるし――何より、そうして背中合わせに戦う事が、信頼だと知ったのだから。

 でもこれは、別だった。

 これは、京太郎の身に起きた異変だ。
 戦いではない。受けるのは肉体の傷ではなく、心への打撃だ。
 淡に、余計な心配をかけたくない。
 彼女の笑顔を、あの、自分が引かれた彼女の笑いを――潰したくなかった。


 それともこれはある種の、意地だったのかもしれない。


京太郎「……なあ」

もこ「なに?」

京太郎「よかったら……弁当が二つあるんだけど、食べてくれないか?」

もこ「……いいの?」

京太郎「ああ……」

京太郎「俺の味覚とかに……異常が出てないか、確かめてほしいんだ」

もこ「……そう」

もこ「わかった。それじゃあ、誰かに食べさせるわけにもいかないもんね」

京太郎「……ああ。どうなるか、判らないしさ」

もこ「――いただきます」


74: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 03:22:54.45 ID:1pCuTjFNo


           | ̄l\     .| ̄l\
      | ̄l`|  | | ̄ ̄ ̄ ̄|  |  \
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    [二二二|  | |        |  | [二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二]\lヽ
    `l []l[] .|  | | 日日日 |  | | 田田 田田 田田 田田 田田 田田 田田 |   \l
    [二二二|  | |        |  | [二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二]   |i-i-i-i-i、
    `l []l[]. |  | | 日日日 |  | | 田田 田田 田田 田田 田田 田田 田田 |     |二二二]\
    [二二二|  | |        |  | [二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二]   | 田田 |  |
    `l []l[] .|  | | 日日日 |  | | 田田 田田 田田 田田 田田 田田 田田 |     l二二二]  |
    [二二二|  | |        |  | [二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二]   | 田田 |  |
    `l []l[]. |  | l| ̄| ̄|ニl .|  | | 田田| ̄| ̄| 田田 田田 田田 田田 田田 l     l二二二]  |
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               |  |  |           |  | |スマートブレイン学園|
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75: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 03:23:36.54 ID:1pCuTjFNo

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                         ,′          ヽ           \三三三ニ=-
                   /     _/ │  ∧          .     | ニ二  -=ニ\三三三ニ=-   うー
.                /    / /│ '|  |\  :.       :. i   |\        ̄`丶三三三
           __/      / /  │/│  |   :. |\       :.   |             \三三  きょーたろー、来ないなぁ……
         _/´/ /    /| \| | |  |  |│ ::.     |   八   ー―‐=ニマ三\  マ三
       厂| |∨//    人 レl   | ト-|  |  |│ ::.     │ \ \       `マ三)  }三
__,,...  -┤│レ/゙∨   /\l |_|斤テ外八 ^ト--|/--│              ー=ニ二 `マ  /_三
       ││|{ {.  /  ∧ンリ 乂ツ   \|斗テ外、.|       卜、        丶、______ く_三三
       | ∨\八  {  /  Y::/::/  ,    乂)ツ 》│    | /\       \≫==≪\ マニ三
__,,,... -‐ヘ_ \,,>\∨廴_,人          ::/::/ / リ│  │  >ー──=ミ〃    `ヽ∨ニ三
          ̄    \__,))       ヽ      ∠/_7  イ /⌒)丿    \_ノ{ -‐~‐- }ノ三三
                      ≧=‐   -=≦ / ∧|/ / ,.二二二二∨|\___/| ̄ -=
                                 / /  厂∨ / -――=マ 〉|      |
                               ((⌒´     ∨ 〈       ∨/l.     │
                                           `ーヘ      ∨|     │
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87: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 21:24:10.64 ID:LmU+oIa1o

京太郎「悪い……本当に、なんか色々と……」

もこ「……別に。わたしも、好きでやってるから気にしないで」


 ぱたんと閉じられた弁当箱。
 その中身は、本来収まるべきであった相手の元には届いていない。
 その事は残念だった。申し訳なかった。

 だが、仕方がないのだ。
 淡に、この事を知られてはならない。異常を気付かせてはならない。


 こと、戦いに関してであったら京太郎は打ち明けていただろう。
 一人きりで抱え込む事は危険であると諭されていたし、
 また、今の自分自身、誰かと共闘する事への恐れはなくなっていた。
 正確に言うのなら、怖れはあるが、それ以上に相手への信頼が勝っている。

 だが……これは、戦いについてではない。
 丁度良いたとえを上げるので在れば、ゼロノスカードと同じだ。

 戦いで傷付くか否か、それは確定的な事ではない。
 戦ったものが必ずしも瑕を受けると決まっていない以上、そこには余地が存在する。
 相手の実力ならば大丈夫であるかと見極める。
 そして、その材料の元に“信じる”という判断を下す。
 そんな、余地が存在しているのである。

 だが、京太郎のこの異変と、ゼロノスカードについては違う。

 ゼロノスカードは、変身するたびに確実に消費され、淡についての記憶を消耗する。
 オーズの力は、確実とは言えないが……もこの言葉に従うなら、いずれ破滅を齎す。

 その二つには、結末が用意されているのだ。
 そこに余地はない。都合のいい出来事などない。
 遅いか早いかの違いだけで、最終的にそれが終焉へと収束すると、決まっている。


 故に京太郎は、淡に戦わせたくはなかった。
 京太郎の身に起きた事を知った淡も、同様のことを考えるだろう。

 事実として京太郎は、なるべく淡が変身する事なく過ごせるようにしようと、考え行動していた。
 逆の立場となったら、彼女もそうする。


 それでも彼女は、京太郎に打ち明けた。
 自身が進んだ先には滅びが待っていると、勇気を出して打ち明けたのだ。
 ならば、何故京太郎もそれをしないのか。

 するべきではないか――と考えたが、頭を振った。


 まず第一に、彼女と自分の条件が違うのだ。

 彼女のすべき事は、『ライダーを守る事』。
 未来を崩壊させない為に、ライダーを死なせないようにするのが、彼女に与えられた使命だった。
 淡自身の心情はともかくとして、それが彼女の戦う理由である。

 でもこれは、別に淡でなくても成立する話だ。
 神代小蒔であったり、江口セーラであったり、新子憧であったり、白水哩と鶴田姫子であったり……。
 誰かが、代われる事であった。

 更に言うのであれば、皆が一人一人気を付ければ、達成できる事だ。

88: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 21:37:31.80 ID:LmU+oIa1o

 一方の京太郎がすべき事/したい事は『カザリとアンクとの決着をつける事』。
 彼らを取り戻す事、或いは説得をする事。……ともすれば、殺害する事。
 それは、京太郎抜きでは進まない事だった。
 誰かに任せる事は、できない。

 責任は自分にあるし、主体も自分でなければならない。
 彼らに誓った。自分に誓った。
 その結末を決定するのは――あくまで自分と彼らであった。

 他人に任せたらカザリたちの説得などおおよそ不可能であろうというのもあるし、
 万一の――考えたくない最悪の――事が起きた場合、
 “どうにか”出来るのは、オーズ(紫のメダル)の力を持つ、自分しかいなかった。


 だから、自分と彼女では状況が違うのだと、京太郎は心中で呟く。
 或いはこれは、ただの言い訳に過ぎないのかも知れない。

 淡に知られたくない。
 こんな姿を見せたくない。
 それを理由に無理をさせたくない。
 手に入れた力を失いたくない。

 そんな――保身すらあったのかもしれない。
 考えても、答えなど出るはずもないが……。


京太郎「それで……どうだった?」

もこ「……おいしかった」

京太郎「そうか……。なら、よかった」


 いつ狂うとも知れないが……。
 それでもまだ完全に、狂ってはいないのだ。
 まだ、時間がある――。


もこ「とにかく、なるべく戦わないようにして」

もこ「わたしの方でも、色々探ってみるから……それまでは」

京太郎「……ああ。善処は、するよ」

京太郎「ありがとうな……」

もこ「……どういたしまして」


 互いに頭を下げて、別れる。
 昼休みはそろそろ、終わりそうであった。


89: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 21:48:15.58 ID:LmU+oIa1o


 ――ああ、なんて嬉しいのだろうか。


 彼と心を通わせた。
 彼に頼られた。
 彼に抱きしめられた。
 彼の手料理を食べた。

 ああ、今日はなんて最高の日なのだろうか――。


 もっとも、味なんて、判らないが。
 この体は既に、五感というものを失っている。
 それでも世界はこんなにも“醜い(ウツクシイ)”し、彼は一段と、輝いている。


 彼が頼るのはわたしだけでいい。それ以外は要らない。
 全てを奪って、奪い尽くして――わたしに溺れさせる。わたしだけを頼りにさせる。
 そうして、彼の唯一に自分がなったときに……。

 全てを壊して、虚無へと導いてあげよう。

 きっと彼は目覚めるはずだ。
 彼が自分と同じならば、喜んでくれるはずだ。

 これまで信じていたものが全て虚構だったと知ったとき、彼はどうするだろう――?


 ああ、楽しみで仕方がない。

 弱った彼を踏みにじるのには、心が痛む。
 心底気の毒で、止めてあげたいほど。
 本当に純粋に、彼の支えになってあげたいとまで思える。

 ――でも、だからこそいい。それだからいい。

 そうやって、わたしの中で育っていく彼への愛情を、全て無に帰す事が……。
 何よりも、虚無的な快楽を齎してくれるだろう。
 その時を想像しただけで、鳥肌が立つ。絶頂しそうになる。


もこ(ふふふ、ふふふふふ……あははははははは)

もこ(待ってて――わたしがあなたを、“壊して(アイシテ)”あげるから……!)

もこ(わたしの手で目覚めさせてあげるから……! この、最高の欲望に……!)

もこ(あははははは、あはははははははは!)

90: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 22:02:24.76 ID:LmU+oIa1o

 ……放課後になった。
 授業はほとんど、耳に入らなかった。

 オーズの力と、その代償。

 その事が、頭にこびりついて離れない。


優希「どうしたんだ、京太郎?」

京太郎「……いや、なんでもない」

優希「そうか? なんか様子が変だったけど……」

京太郎「いや、なんつーか暫く休んでたからな……追いつくのに苦労しそうだと思ってさ」

優希「……ああ」

優希「それは私も一緒だじぇ……あー、憂鬱だ」

優希「こうなったら数絵ちゃんの力を使って――」

京太郎「いや、それは駄目だろ」


 危ないところだった。
 この事実は、気付かれてはならないのだから。

 ……と。

 電話が鳴った。
 着信元は、大星淡。


91: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 22:07:16.37 ID:LmU+oIa1o
1:電話に出る
2:電話に出ない

↓5 &出る場合、判定


1~20:淡(……なんて、もうドアのところに居るんだけど)
21~40:淡(……私、なんかしたっけ?)
41~70:淡(むぅ……きょーたろーのバカ)
71~99:淡(また、何か大変な事にでもなってんのかな)

奇数ゾロ目:もこ「噂を流しておいた」
偶数ゾロ目:淡「……ゴメン。ちょっと、私の方も用事があって」

100: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 22:38:38.77 ID:LmU+oIa1o
>>96の選択:1 判定:82

 ……出ない、理由なんてないだろう。

 その方が不審がらせてしまうし、何より、淡が哀しむ顔を見たくはないのだ。
 直接顔を合わせるわけにはいかないが、こうして電話する位なら、いい。


京太郎「……もしもし?」

淡『やっほー』

淡『貴方の隣の、淡ちゃんだよー』

京太郎「……えっ」


 マジかと思って、周囲を見る。
 が、いない。
 そこに居るのは、こちらの電話に口を噤む優希だけだ。


淡『あははっ。その分だと、引っかかったー?』

京太郎「完全に、引っかかった」

淡『ふーむ。やっぱりきょーたろーは間抜け、と』

淡『それとも、何か私が隣にいると都合が悪かったりした?』


 溜め息を漏らすのもつかの間、心臓を鷲掴みにされたかの如く総毛立った。
 勘が鋭いと言おうか。
 それとも、この発言はこちらにカマをかけようとしているのか。

 一瞬、言葉に詰まる――が、


淡『なーんてね』

淡『じょーだんだってば、じょーだん』


 すぐさま、そんな愉快そうな声が返ってくる。

101: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 22:54:39.82 ID:LmU+oIa1o

京太郎「……淡」

淡『なにー?』

京太郎「今日の昼は……その、悪かった」

淡『べーつーにー』

淡『約束とかしてなかったし、仕方ないって』


 そう言うが、どこか淡は不満そうだ。
 まあ、当然だろう。
 逆の立場で、付き合った次の日に待ちぼうけ食らわされたら、思うところがあるはずだ。

 もっとも、彼女の言うように……約束などはしていないのだが。

 それでも、自分と彼女が出会う場所と言うのは、決まっていた。
 食事を共にするときは、屋上。
 恋愛関係になったのなら昼飯ぐらい一緒に食べようと思ってもしかるべきだし、
 それなら、屋上に向かうのが自然だろうから。


淡『約束と言えば……』

淡『今日、一緒に帰らない?』

京太郎「……」


 優希に、目を向ける。
 案内すると言ってしまった手前、ここでハイソウデスカと投げ出せない。
 彼女が出来たから、それまでの人間関係をほったらかしにするのはどうかと思える。
 勿論、恋人を蔑ろにするのも、同じくらい不味いが……。

 それに――何より。
 今、淡と顔を合わせる訳にはいかなかった。

 思った以上に、淡は勘が鋭いのだ。
 麻雀が強い――勝負ごとに強い人間は、総じてそうなのだろうか。
 (……いや、咲の事を考えるに、そうとは思えない。)
 とにかく、直接顔を合わせるのは不味いと思えた。


京太郎「……悪いな。ちょっと、優希に校内を案内する約束してるんだ」

淡『ふーん』

淡『もう、浮気?』

京太郎「ちげーよ! 違うから!」

淡『でもさぁ……』

淡『告白されて次の日に、別の女の子と放課後過ごすって言われたら不安になるでしょ?』

京太郎「……ああ」

京太郎「もう、その……なんつーか……あの……」

京太郎「お前一筋だって――ああもう、言わせんな恥ずかしい」

淡『うん、知ってた』

京太郎「なら言わせるなよ!」

102: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 23:10:08.02 ID:LmU+oIa1o

優希(……)

優希「おい、京太郎……まだか?」

優希「あんまり待たせると、暴れるじょ!」

京太郎「あー、分かった! 分かったから!」

淡『分かったって何がー? やっぱり一緒に帰るって事ー?』

京太郎「ちげえよ、そっちじゃねえ!」


 ひとしきり声を上げて、肩息を吐く。
 そのおかげかは知らないが……多少、気が楽になる気がした。


淡『ま、別にいいけどさー』

淡『それなら、明日はどう? 朝とか一緒に行かないー?』

京太郎「それも……」

京太郎「……」

京太郎「なんつーか、勝手で悪いけどさ」

京太郎「ライダーの事が色々解決するまでは……そういうの、控えたいんだけどいいか?」

京太郎「本当に、勝手だとは思うけど……」

淡『……』

淡『へー、ふーん、ほー』

淡『それなのに、解決してないのに告白したんだ』

淡『へー』

京太郎「……それを言われると」


 痛い。

 我ながら、相当無理がある言い訳だと思った。
 他にもっとなかったのかと、悔やまれる。
 例えば――ドクターとオーズの事について話があるとか、グリードを探すとか。

 もう遅いし……。
 それでも後者の事を言ったら、ついてくると言い出され兼ねないのだ。

 やっと結ばれたと思ったのに、何故こんな、浮気の言い訳を考えるような事をしているのか。
 我ながら、疑問である。
 そして、本当に申し訳なかった。


淡『まあ、きょーたろーがその辺、変に真面目だって事は知ってるしさ……』

淡『いいよ。分かった。我慢してあげる』

京太郎「……悪い」

淡『ただし! 戦いが終わったら、その分、存分に私に付き合う事!』

淡『それぐらいは別にいいよね?』

京太郎「言われなくても……つーか、こっちからお願いしたいぐらいだ」

103: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 23:28:41.59 ID:LmU+oIa1o

京太郎「……それじゃあ、な」

淡『うん、じゃーね』


淡『……あ』

京太郎「なんだ? なんか、あったか?」

淡『うん、あった』

淡『えーっと……』

京太郎「」

淡『大好きだよ、きょーたろー』

淡『あんまり無理をしない事!』

淡『あと、何かあったら相談する事!』


 『以上!』……と。
 嵐のような勢いで言いたいことだけ言うと、電話が切れた。

 ああ、と天を仰ぐ。

 そんな思いやりをしてくれる彼女だからこそ。
 優しい彼女だからこそ。
 疑ったりはしない彼女だからこそ、余計な心配は――させたくないのだ。


京太郎(……悪いな)

京太郎(流石に、解決の目途が立つまでは……)

京太郎(これから、俺にどんな事が起こるのか把握するまでは……言えそうにない)

京太郎(悪い……)


 スマートフォンの画面を消して、ポケットにしまう。
 彼女の思いやりが、痛かった。
 黙っているというのは――エゴであるが――やはり、心苦しい。

 でも、それ以上に……。


優希「……おい、顔がニヤけてるじぇ」

京太郎「ん、あ……マジか」


 嬉しかった。

 そうして、心配されるという事が。案じられるという事が。
 そして自分を、信じてくれるという事が。

104: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 23:29:57.12 ID:LmU+oIa1o


【判定が入ります】


105: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 23:36:58.64 ID:LmU+oIa1o

判定
1~20:氷漬けになった宮守麻雀部
21~40:ヤミーの気配を感知
41~70:姉帯豊音と麻雀部
71~99:襲われる姉帯豊音

偶数ゾロ目:&アンク・カザリ
奇数ゾロ目:&アンク・カザリ、もこ


↓5

112: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/13(火) 23:58:06.07 ID:LmU+oIa1o
>>110の判定:87

 姉帯豊音は――ちょっと長身である事と特殊な力を持つ事を除けば、至って普通の少女だ。

 勿論、この場合の普通と言うのは、その境遇までを含めてのものではない。
 感性が、という話だ。

 麻雀が強いから、切った張った、運分天分のやりとりをしているから――。
 だから、精神的にタフであるとか。度胸が強いとか。常に冷静で在り続けられるとか。
 或いは、その恵まれた体躯故に少なくない腕力を持ち、それに比例して、相応の自信を持っているとか。

 そんな要素は、ない。
 至って普通の、少女であった。


 だから、怖いものは怖い。
 恐ろしければ身が竦むし、怖がれば膝が笑う。
 絶望的な事態ならば、涙を浮かべる。

 そんな少女であった。


 故に――。


豊音「……あ、あ」


 今の自分の身に起きている事を、夢であると思い――。
 それからこの現実感に、夢などではないと思い至り――。
 きっと何かの悪ふざけや誰かの企みであると思い込もうとし――。

 それでも消せない恐怖に、その場にへたり込んだ。

 或いはここに、他に友人がいたのならば彼女は立ち上がっただろう。
 恐怖を押し殺し、友を助けるために全力を尽くしただろう。

 しかし、この場には自分の他に――化け物しかいない。


ユニコーンヤミー「お前の夢は何だ……?」


 豊音に、いまにも手が届きそうな距離に迫る、幻獣の化け物。
 紫色の鬣を翻し、一角獣を模したかの如き鎧に身を包んだ怪人。
 そいつは、言葉と共に豊音の頭に触れた。


豊音(私の――夢――?)


 それは、果たして――。

113: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 00:03:09.40 ID:hNTFeN0Vo
     \ー―――‐`         }                        ......:ニ三ニ::......
       \         --- 、 __ノ_⌒ヽ                  ....::´:::::::::::::::::::::::::::::::::::`::...、
      /⌒    /     /    Y^ ,                ..:´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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.  /  / /   / _/_/イ_/,  、__/ ∧                  l::::::::!::::::ト:/!/ !/  l:::| ',::!',斗 l:::::!::::::::!
  | /./ /   /´/|/´-l/   // /`^ヘ |   | l|            !:::::::|::::/|/`≧ /    !/ ≦ミ::| l:::::|::::::::!
 八{ /  j/ ll ∧ :|芹苧豕 /l/苧豕, ∧|   | l|           |:::::::|:::::〃ん ハ    〃ん ハ 》 .!:::|::::::::|
   / イ / Ν/-、| | 乂_ソ}/   ヒソノ∧八 リノ           .   !:::::::!:::::! 辷フ     辷フ   |::::!:::::::l
.     {  | \、_jノ        、   ,   ∨               ,::::::|:::(!               |::::!:::::::!
     \八  厂〕ト       _  人  i|\)               ∧::::l::::l       _       .,':::;:::::::!|
        )/(\ノ/}>   ´ イi:i:ト、)ノ /               . ',::!:::|      (  )      イ::/::::/ '
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         ⊂ニ=---、__〉\:i:i:i:|  \                .  V .ー‐ーー_}  ニ .!ー''"" /
         /:i:i⊂ニニヽ \{\ |:i:i:i|   } ̄ |                   .,/"ノ    |` ヽ、
.         /:i:i:i:i:i:iノ  {   \_,|:i:i:i:\     |               r. . ''": /  ヽ、 ,イ   ', "''. .、
       / ̄て二...__......_   `゙<:i:i\  ノ             /!: : : : : |__ イハ_// 、 _ }: : : : :}ヽ
        |      ∨:i:i:i:i:i:> .     ̄ ̄ `ヽ           /  .!: : : : : : :',  >.//〈、 /: : : : : : ! ヽ
        |      ∨:i:i:i:i:i:i:i:i:i:> .        ',            /   |: : : : : : : <//八//>': : : : : : : |  ヾ
.       /|      ∨:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i> ..    }


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.     / /     l|       ヽ              i:::::::::::::::::i:::::::! ヽ:::::::::ヽ:::::::::ヽ::::';:::::i
    / ′ i|/  /|   ハ  ヽ     |          ハ::::::::从ハ::::ハ ヽー―' ー-'‐┤:::!:::::',
    ,′   斗―l |  |l  ─ 、 l| |  |          l:::┬' _ノ       \    }::::}::::::ハ
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   |  |i _| l| 八|_ \|  ハ/ハ/| ;_ |          /:::j::::{ ,zzx }    ==z,、  ;:::':::::::::::j
   |  |l (_|八/う心    fiう心ヾj /__)l|          /ノ:/::人"_ノ      ,,,,,,, /:/::::::::::::j
      |i   ト弋)ツ    弋)ツノムイ  |       .   レ::/:::::::ハ''''''   `       /:/:::::::::::::::!
.    V  ∧}  ,,   '    ,,  ,_/|  |ヽ         ∨:::∧::::ゝ   r   フ  .ィ::イ::::::i::::::レ
     〉 / 八    vー ,     / ∧ V         /i:::::{ ヽ::::::::> _   ´{ハ:ハレ´ ̄
.    / /|   >..       イ   ∧ :.          V:ゝ {      ハ    〉' \_
    ′,'八  __>ー< リl    ∧ :             {    ..イ ヽ  ィ  }}:.:.:.:.:.:7ヽ
   { (  / :::::::/:/  }_/´  /:\ノ/ | |               ィ:.:.:.:.://∧_,へ\ } }:.:.:.:.:.:!
    ー/::::::/:/ / |  /::::::::::\ ノノ           / ハ:.:.:./ィヘヘ  } //ヽ,j:.:.:.:.:.{
     {:::::/::::/  ´|L_/ヘ /::::::::::::::::: \            /  i:.:ヽ:.´:.ヘ マ、  // /:.:.:.:.:.:.:.:.!
     |:ノ::::/ ̄ ̄| ヽ  /::::::::::::::/:::::::::ヽ          / i  }:.:.:.:\:.ヘ マ、//,ィ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:{
    /::|:::::::|_/ /  | /:::|:::::::::/::::::::::::::::::::.        ノ   ヽ/:.:.:.:.:.:.:.:.:┼V7ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!

114: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 00:33:30.49 ID:hNTFeN0Vo

 皆がいる、その場所であった。


 姉帯豊音は孤独だった。
 同年代や、近しい若者がいない村落。
 その中で豊音は、一人で育った。

 小さな集落特有の、仕来たり――。

 そんな制約の中で彼女は土地を離れられず、一人ぼっちだった。
 交通の便も悪い。生活にも不便が多い。交流する相手もない。
 そうした雪に閉ざされた生活から――彼女は解き放たれた。

 気の合う仲間を得た。同じ高みを目指す友を得た。心落ち着く居場所を得た。
 それから紆余曲折あったものの、今も、ともに来ている。

 その場所が、豊音の夢であった。
 その場所そのものが、そこに居る仲間たちが、豊音の夢であるのだ。


ユニコーンヤミー「……ふん」


 そしてヤミーは、豊音の夢を鼻で笑った。
 或いはそもそも、興味を抱いていなかったのかもしれない。それか、嫌悪しているか。

 相手がどんな思いを抱いているかは知れないが、そこは豊音にとって、最も大切な場所だ。
 それ目掛けて――手が伸ばされる。魔の手が。


豊音(あ……やだ)

豊音(それだけは……やめてよ……嫌だよー)


 そうして同時、理解する。
 この怪物が、己の夢目掛けて――次に何をするのかを。

 戦慄した。拒絶した。悲鳴を上げた。

 だけれども、止まる筈がない。
 己の夢が、壊れていく音が聞こえる。ホンの数瞬の後にそれは、現実となるだろう。
 友人の笑顔が消えていくのだ。消されてしまうのだ。

 避けようがない。己の手などでは、止められない破滅。
 それこそ、都合よく表れる正義のヒーローや奇跡に頼むしかないだろう。
 だが……。


豊音(今まで、自分から何もしなかった……助けてもらってばっかりだった……)

豊音(だから、今度は……)

豊音(私の場所は、私が護るんだよー!)


 姉帯豊音は、それをしなかった。
 祈るより先に、願うよりも先に、嘆くよりも先に――。

 泣き出しそうになる心を抑えて、その両手を突き出した。


ユニコーンヤミー「うおぉぉっ!」


 その身に衝撃を受けて、跳ね飛ばされるユニコーンヤミー。

115: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 00:34:41.00 ID:hNTFeN0Vo

 ユニコーンヤミーが弾き飛ばされたのは、豊音が持つ巨躯に由来する、尋常ならざる膂力によるもの――


京太郎「ナイスパンチっす」


 ――だけではない。

 豊音が手を突き出すのに合わせて、金髪の少年が跳び蹴りを叩き込んでいた為だ。
 器用に空中で体勢を整えての、着地。
 拳を突き出した形になった豊音の隣に、降り立った。

 何事かと思う豊音を、軽く抱き起す。
 そして流れるように豊音の体を一瞥すると、怪我の有無を確認。
 何事もないと確かめると、ハンカチを手渡し――言った。


京太郎「あ、手が汚れてるんでハンカチ使ってください」

豊音「えっと……あ、うん」


 そのまま、少年は背を向ける。
 その手には長方形のオブジェクト。そして、数枚の輝く――メダル。


京太郎「そんで……優希、その人を頼んだ」

優希「りょーかいだじぇ!」


 あまりの事態に頭がついて行かない豊音を余所に、彼は呼びかけた。
 浮かんだ疑問を口に出す間も、疑問が言葉になる間も与えない。

 ただ、安心していいのだと。
 この少年に任せていいのだと。

 先ほどまでの凍えついた心が、融解するのを感じていた。

116: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 00:44:49.64 ID:hNTFeN0Vo


          /   /     |   | |   | |  :       l :l   |  |   :|   | |
       / /    |    |__ | |   | |  |  :   l :l:  /|  |   :|   | |
.      ///     |    |\ |‐\八 |  |  |    |__,l /-|‐ :リ   リ  | |
     /  /   - 、     :|   x===ミx|‐-|  |:`ー /x===ミノ//  /  :∧{
       /    | .八   _/ {::{:::刈`|  |  l:  /´{::{:::刈\,_|  イ  /ー―‐ ..__
.      / /  人|/ \{^ヽ 乂辷ツ八 |\| /' 乂辷ソ ノ^l/ } :/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: `「⌒:.   貴方の勇気のその分――あとは、俺が引き継ぎます
.       //  /.:.:.:::l、   :    ー‐   \{  | /  ー‐    j/ /}/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.
     / _,/:.:.:.:.:.:.:. \ !           j/        ′/:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.
        / :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::ハ_,          ノ            ,___/{:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.∧
.    /:.:.:.:.:.:.:.:::.:.:.:.:::.:. ::.::圦                       / j/l/.:.:′:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.∧
.   /.:.:.:.:.:.:.:.:   _,ノ⌒ヽ::|  、    、      _  -‐'     /:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:/:.:.::/:.:
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 ' 〃         |   |  | |   ト,  :     /| /| /|    '  ∧|
/ / .'   ,:  ' Ⅵ |_'. |  | |   | l   |     ' }/ }/ :  /  .イ `\
{/ /   / /  / {  |  Ⅵ≧!、,|   | 、 |   _/ム斗七    /:. / }'
 '   ,イ / | { 从 | イ  {::しメ∧   l  Ⅵ   イ {::し刈 `ヽ'  ' }/       ――変、身ッ!
'  / /イ Ⅵ :.  Ⅵ    Vzり \  、 }  /  Vzり   }/  /
/        | 从   |            \ ∨/        ,  /
       _∨∧ :.             ` \           ,:_ノ> 、_
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117: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 00:50:56.38 ID:hNTFeN0Vo
【オーズ タトバコンボ】 須賀京太郎
技能:57
HP:52/52
スタミナ:51/51
気力:82/82
ATK:40
DEF:40

(レンジ:至近距離~近距離)
・タトバコンボ:タトバコンボ時、スタミナ消費半減。
・欲望の王:戦闘ダメージゾロ目にて、グリードよりコアメダルを奪取
・メダジャリバー:レンジを近距離に変更。DEFが40以下の相手に対する与ダメージ+2
・メダガブリュー:『至近距離~近距離』にて、与える全てのダメージに秒数のどちらか大きい方を上乗せする。ゾロ目の場合は両方を加える(33なら6。00なら20)
           コンマゾロ目時、コアメダルを砕く
★カンドロイド:カンドロイドの使用が可能。複数のカンドロイドを同時に使用する事も
★オーズバッシュ:使用時の判定成功にて、レンジを『~超遠距離』に変更したうえで敵すべてに固定HPダメージ20。DEFを無視する。セルメダルを3枚消費
★王を統べる力:戦闘時【王を統べる力】を選択にて戦闘・撤退・追撃・奇襲判定+10。コンボ以外でのメダルを使用
           また、持つメダルによって、レンジも変更される。(至近~遠距離)
★コンボチェンジ:使用宣言時、次ターンより発動。
           メダルが揃っているとき、以下のコンボを使用可能。コンボチェンジの度にスタミナを固有値10消費
★スキャニングチャージ:使用宣言時、戦闘判定-10。
                判定成功にて、『ATK+オーズのスキルによる戦闘補正+秒数の合計+コンマの合計』の固定HPダメージ。DEFにて減衰可能
★グランド・オブ・レイジ:使用宣言時、戦闘判定-10。
               宣言時の判定成功にて、『ATK+オーズのスキルによる戦闘補正+秒数の合計+コンマの合計+コンマ(大)』の固定HPダメージ
               ゾロ目の場合は両方を加える(33なら6。00なら20)が、コアメダルを砕く。DEFにて減衰可能。セルメダルを1~4枚消費
               セルメダルの消費枚数分、戦闘判定からマイナスの代わりにダメージ増加(最大+3)。全てのフォームで使用可能

《ガタキリバコンボ》
 ATK:45 DEF:45
・毎ターンの消費スタミナ+5。レンジ:至近~中距離
・昆虫の王:戦闘判定+25。相手撤退判定-10。敵の数的優位を無効化(判定値が自分以下の相手にはダメージを与えられる)
★ガタキリバキック:使用宣言時、戦闘判定-10。判定成功にて、『ATK+25+秒数の合計+コンマの合計』の固定HPダメージ。DEFにて減衰可能

《シャウタコンボ》
 ATK:45 DEF:45
・毎ターンの消費スタミナ+5。レンジ:至近~中距離
・水棲の王:戦闘判定+10。10以下の戦闘ダメージを無効化。消費スタミナが10以上の場合、10とする(コンボによる+5を含む)
★オクトバニッシュ:使用宣言時、戦闘判定-10。判定成功にて、『ATK+10+秒数の合計+コンマの合計』の固定HPダメージ。DEFにて減衰可能

《サゴーゾコンボ》
 ATK:50 DEF:50
・毎ターンの消費スタミナ+5。レンジ:至近~超遠距離
・重量の王:戦闘判定+5。相手全員の戦闘判定-5。相手スタミナ消費+5。相手の撤退判定-15。相手の【飛行】を打ち消す
・重量の王:与える最終ダメージが10以下の場合、10として扱う。(ただしこれにはメダル効果を含む)
★サゴーゾインパクト:使用宣言時、戦闘判定-10。
                判定成功時及び、敗北時も相手との判定差が10以内にて、『ATK+5+秒数の合計+コンマの合計』の固定HPダメージ。DEFにて減衰可能

《タジャドルコンボ》
 ATK:50 DEF:50
・毎ターンの消費スタミナ+5。レンジ:至近~遠距離
・大空の王:戦闘・追撃・撤退判定+15。飛行を得る
★ギガスキャン:使用時の戦闘判定-13。判定成功にて手持ちのコンボ中の最大値のATK分固定HPダメージを与える。DEFによる減衰が不可能
          その際、その戦闘判定に於いては使用されたメダルの効果を発生させる。(現在ここでプトティラを構成するメダルの使用は不可能)
★プロミネンスドロップ:使用宣言時、戦闘判定-10。
                判定成功にて、『ATK+15+秒数の合計+コンマの合計』の固定HPダメージ。DEFにて減衰可能

《プトティラコンボ》
 ATK:55 DEF:55
・レンジ:至近~遠距離
・恐竜の王:戦闘判定+15。飛行を得る
・欲望の破壊者:コンマゾロ目時、またはダメージゾロ目時に相手のコアメダルを破壊する
・メダガブリュー:与える全てのダメージに秒数のどちらか大きい方を上乗せする
★ブラスティングフリーザ:使用宣言時、戦闘判定-10。判定成功にて、『ATK+15+秒数の合計+コンマの合計』の固定HPダメージ。DEFにて減衰可能
★ストレインドゥーム:使用時の戦闘判定-10。判定成功にて90の固定HPダメージを相手に与える。DEFによる減衰が可能
              使用時にセルメダルを1枚使用。最大で4枚使用可。
              使用数の上昇につき、使用時の戦闘判定のマイナス値を増加(最大3)。また、増加枚数×3威力を上昇させる(最大99)

※タトバ以外からでもスタートできます
※メダジャリバーは胴体がトラ・パンダメダルの場合のみ使用可能
※メダガブリューは、カンガルーが胴体の場合、グローブにて持てない事で使用不可能

※現在の所持メダル タカ×1、クジャク×1、コンドル×1、クワガタ×2、カマキリ×2、バッタ×2、トラ×1、チーター×1
              サイ×2、ゴリラ×1、ゾウ×2、シャチ×2、ウナギ×1、タコ×2
              プテラノドン×2、トリケラトプス×2、ティラノザウルス×1、パンダ×1、カンガルー×1
※メダルの効果については>>7
※現在のセルメダル枚数――70枚

121: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 01:08:02.93 ID:hNTFeN0Vo

         VS


【ユニコーンヤミー】
欲望値:200
技能:37
HP:48/48
スタミナ:48/48
気力:60/60
ATK:45
DEF:45

(レンジ:至近距離)
・ヤミー:ダメージを受けるごとに、HP・スタミナそれらの上限値をマイナスしていく
・ヤミー:HP・スタミナの補正値(コンマの部分)を親の欲望値と同値とする。
     また、欲望値の10分の1、ATK・DEF・戦闘補正に+ (+20)
・ヤミー:ダメージを受けるたびにそれと同じ枚数のメダルを掃き出し、戦闘終了と同時に、欲望値の値の分、メダルを吐き出す
     ただし、紫のヤミーについてはこれは適応されない。手に入れられるメダルは1枚のみ
・虚無の欲望:クリティカルまたは相手ファンブルまたは戦闘相手との判定差が20以上、ダメージが20以上の場合
         欲望から生まれた技術や方法により変身するライダーの、変身を解除する
・虚無の欲望:このヤミーは、欲望の結晶の力(通常のコアメダルの力)により撃破されない
・煙幕:HPがゼロになった場合、撤退判定へと移行。その際のスタミナは最大値として扱う

123: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 01:12:48.21 ID:hNTFeN0Vo
>レンジを判定します
>蹴り飛ばしたため、超遠距離は除外されます

>判定をお願いします

1~3:至近距離
4~6:近距離
7~9:中距離
0:遠距離

>↓3

129: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 01:17:15.42 ID:hNTFeN0Vo
>>126の判定:8(中距離)

【ユニコーンヤミー】                  【オーズ タトバコンボ】 須賀京太郎
技能:37                        技能:57
HP:48/48                      HP:52/52
スタミナ:48/48           VS      スタミナ:51/51
気力:60/60                     気力:82/82
ATK:45                        ATK:40
DEF:45                        DEF:40

>現在のレンジは【中距離】

>須賀京太郎のスタートフォームを選択してください
>他には、【ウェザードーパント】となる事が可能です

>↓3

137: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 01:31:48.23 ID:hNTFeN0Vo
>>132の選択:ウェザー


 ――それは、一瞬の逡巡であった。


 己の身を崩壊させる、コアメダルの力。オーズとなる弊害。
 このままそれが進んだのなら、自分はどうなってしまうのだろうか。

 異形のものに、なりたくない……。

 そんな気持ちが、頭をよぎったのだ。
 確かにその時、京太郎の手は止まった。


ユニコーンヤミー「ふん!」


 そして、その隙を見逃すヤミーではなかった。
 先ほどの意趣返しとばかりに、京太郎に飛び蹴りと叩き込む。

 飛び出したプトティラコンボにより、事なきを得た。
 しかしその分、体勢が崩れてしまった。オーズドライバーを、取り落した。

 そのままヤミーは、京太郎に背を向ける。
 目指す先は、姉帯豊音と――先ほどの少女。


京太郎(――ッ!)


 オーズドライバーを拾う?
 ――いや、それでは間に合わない。

 ならば、どうするべきなのだ。
 自分の迷いのせいで、みすみすヤミーに逃亡を許した。
 それは京太郎の弱さ。人間の弱さ。

 そしてそのまま、ヤミーは少女に向かうだろう。
 弱さが故に、京太郎は更なる後悔を積み重ねる事となるのだ。
 己の躰が変質するという恐怖を、少なからず意識してしまったが故に。

 何が、勇気を引き継ぐと言うのか。
 自覚はしていたが、自分はとんだ臆病者だ。
 その事に、臍を噛んだ。己が迷ったがゆえに、怪物を止める機会を逃したのだ。


 ……であるが、故に。

 後悔に、それ以上の後悔を重ねないと決めているが故に。


京太郎(――――!)


 今度は、化け物に姿を変える事を躊躇はなかった。

 倒れた拍子に飛び出した、彼にとっての運命のメモリ。
 人体を汚染し、精神を歪曲し、人生を崩壊させる悪魔の道具。
 使用した人間を、異形の怪物へと変貌するドーピングアイテム。

 須賀京太郎は、ウェザーメモリをタップした。


140: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 01:46:56.21 ID:hNTFeN0Vo


                 ┌───────────────────────────────────┐
                 │   /     ,     /   /   / /             |   |  :.   .   :.          │
                 │       /     /   /    '    |   |     |   |  i|   |    .        │
                 │     イ        '   /|    /|  l   |   |     |   |  l|   |    |         ..│
                 │   // /      |   | {   ' :.     |   |     }   |  l|   |   {       .....│
                 │    ' 〃         |   |  | |   ト,  :     /| /| /|    '  ∧|         . │
                 │   / / .'   ,:  ' Ⅵ |_'. |  | |   | l   |     ' }/ }/ :  /  .イ `\  .    ...│
                 │   {/ /   / /  / {  |  Ⅵ≧!、,|   | 、 |   _/ム斗七    /:. / }'       .. │
                 │    '   ,イ / | { 从 | イ  {::しメ∧   l  Ⅵ   イ {::し刈 `ヽ'  ' }/       .      │
                 │   '  / /イ Ⅵ :.  Ⅵ    Vzり \  、 }  /  Vzり   }/  /  .  γ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 └───────────────────────────── l     来いッ――
                                                             ヽ、_______________
                                   | ̄|.
                                   |  |
                                ____,|  Lニ= ┐
                                |___  __..  |  「 / rー;
                                   |  |  | |  |/ |/ /\
                                    | |   ||     /.. -''"
                                    V   |/     /'"

                 ┌─────────────────────────────────────┐
                 │   .ヽヽヽヽ、              ./7 ,,ヾヽ          ,,,,-‐‐''''''二二'''‐-,_    ......│
                 │    ヽヽヽ.ヽ、            // /./ j ヽ        /´ ,-/ニ──-ヽ ヽ iヽ    .│
                 │     ヽヽ.ヽ ヽ           / / ///./_j .ヽ       ヽヽミ─-二二─ 二イ    ....│
                 │      ヽヽ.ヽ ヽ         .//// // / .j ヽ /、      ヽ_ ̄''''''''''''''''_,/    ......│
                 │       ヽ ヽ ヽ .ヽ       // / /./ /  j  ∨ ヽ      ヽ ̄''''''''''''''''´フ       .│
                 │        ヽ ヽ ヽ .ヽ     ,-//// / /   j    ヽ      ヽ ̄二_'''''''/       ..│
     |\     /\     / |   //  /.ヽ ヽ  ヽ .ヽ  .// // //    .j ∧   ヽ      j二__二/       . .│
   _|  \/\/   \/\/ |∧/ ///  ヽ ヽ  ヽ ヽ ////./ ///      i .j.ヽ   ヽ     jヽ_,,,/         ....│
   \                     /   ヽ ヽ  ヽヽ// / / / /      `''  i   ヽ    /`-‐'´           .│
   ∠    ――《WEATHER》ッ!   >   .ヽ .ヽヽ/_/// / /./          ヽ   ヽ  /、` フ´              ..│
   /_                 _ \     ヽ .〉 /// // /           ヽ   ヽ/ヽ、`i            ....│
    ̄ / /∨| /W\  /\|\  .|  ̄     ヽ/  /,/ /,/            ヽ____ヽ_j                .│
     //   |/     \/     \|.──────────────────────────────────┘

141: 1 ◆8jPvMHBjirCD 2013/08/14(水) 01:56:11.44 ID:hNTFeN0Vo
【ウェザー・ドーパント】 須賀京太郎           【ユニコーンヤミー】
技能:71(52)                        技能:37
HP:56/56                         HP:48/48
スタミナ:53/53                VS     スタミナ:48/48
気力:82/82                        気力:60/60
ATK:40                           ATK:45
DEF:35                           DEF:45


>京太郎の方針は【通常方針】です
>ウェザー・ドーパントとユニコーンヤミーの距離は【中距離】です

 ウェザー:71+コンマ+15+気力  VS  ユニコーン:37+コンマ+20+気力


>このレスにて、ユニコーンのコンマ
>直後にて、須賀京太郎のコンマ

>↓5 須賀京太郎の方針・行動コマンド・精神コマンドをお願いします

143: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 01:56:49.38 ID:hNTFeN0Vo
……あ、タンマ

145: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 01:59:33.01 ID:hNTFeN0Vo
京太郎の技能値間違えてたねん

ただしくは……

>技能:76(57)
>HP:57/57
>スタミナ:57/57

こうなります、ハイ
ちなみにヤミーのATKとDEFには、既に上乗せしてあるんで45っす。65じゃないっすから

146: 1 ◆tes/UpIBzMyZ 2013/08/14(水) 02:01:39.43 ID:hNTFeN0Vo
仕切り直しで


【ウェザー・ドーパント】 須賀京太郎           【ユニコーンヤミー】
技能:76(57)                        技能:37
HP:57/57                         HP:48/48
スタミナ:54/54                VS     スタミナ:48/48
気力:82/82                        気力:60/60
ATK:40                           ATK:45
DEF:35                           DEF:45


>京太郎の方針は【通常方針】です
>ウェザー・ドーパントとユニコーンヤミーの距離は【中距離】です

 ウェザー:76+直後コンマ+15+気力  VS  ユニコーン:37+GMコンマ+20+気力


>このレスにて、ユニコーンのコンマ
>直後にて、須賀京太郎のコンマ

>↓3 須賀京太郎の方針・行動コマンド・精神コマンドをお願いします

153: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 02:14:53.38 ID:hNTFeN0Vo
>>146の判定:43 >>147の判定:67 >>150の選択
>#通常方針距離を詰める気力20
>通常方針、距離を詰める、集中20

ウェザー:76+67+15=158
ユニコーン:37+43+20+20=120
ダメージ:(0+5)×1.5+38/5+40-45=11

>温存方針にて6のダメージ!
>京太郎はスタミナを4消費! ユニコーンヤミーはスタミナを4消費、気力を20消費!


【ウェザー・ドーパント】 須賀京太郎           【ユニコーンヤミー】
技能:76(57)                        技能:37
HP:57/57                         HP:42/48
スタミナ:50/54                VS     スタミナ:44/48
気力:82/82                        気力:40/60
ATK:40                           ATK:45
DEF:35                           DEF:45


>京太郎の方針は【温存方針】です
>ウェザー・ドーパントとユニコーンヤミーの距離は【中距離】です

155: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 02:25:54.94 ID:hNTFeN0Vo

 高らかに歌い上げる気象の記憶によって、須賀京太郎の姿は変化を遂げた。

 体色は、雲を思わせる白。
 侍を連想させる、後頭部の髷と手甲・足甲。
 首回りから肩までを覆う、風神の風袋。
 対して背中には、雷神の稲妻太鼓。
 腰に巻き付いた金色の竜が、彼の仮初のベルトを作り出す。

 これは――仮面ライダーではない。
 須賀京太郎と引き合うメモリが作り出した、一体の怪人。
 ウェザー・ドーパントである。


京太郎「ふ――ッ!」


 京太郎が手を翳すとともに生み出される冷気。
 それが、ユニコーンヤミーの体を弾き飛ばす。


京太郎(なん――て、パワーだ……!)

京太郎(俺の躰が、作り変えられていくのが分かる……)

京太郎(どんどんと……変わっていくのが……!)


 その適合値が故に。
 京太郎はまさに、この地球上に起こり得るすべての天候を統べるものとなった。
 元来、オーズならば各コンボごとにしか使用できない天象気象。
 それを今、京太郎のこの身は、一心に背負っている。

 力の欲望に、心が飲まれそうになる。

 気を抜けばすぐにメモリの力に飲み込まれ、ただの暴力の化身と化してしまうだろう。
 まさに現実の天象が、意識を持たない自然体の暴力であるように。
 京太郎は、一個の暴風となろうとしていた――。


京太郎(気を……確かに、持て……ッ)

京太郎(俺がすべき事は……人を、護る事だろうが……!)

159: 1 ◆b5mOwxFQlPfh 2013/08/14(水) 02:29:48.24 ID:hNTFeN0Vo
【ウェザー・ドーパント】 須賀京太郎           【ユニコーンヤミー】
技能:76(57)                        技能:37
HP:57/57                         HP:42/42
スタミナ:50/54                VS     スタミナ:44/48
気力:82/82                        気力:40/60
ATK:40                           ATK:45
DEF:35                           DEF:45


>京太郎の方針は【温存方針】です
>ウェザー・ドーパントとユニコーンヤミーの距離は【中距離】です

 ウェザー:76+下3コンマ+15+気力  VS  ユニコーン:37+GMコンマ+20+気力

>このレスにて、ユニコーンのコンマ
>下3にて、須賀京太郎のコンマ

>↓3 須賀京太郎のコンマ・方針・行動コマンド・精神コマンドをお願いします

164: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 02:41:08.11 ID:hNTFeN0Vo
>>159の判定:24 >>163の判定・選択:09
>#距離詰め馬さん温存爆発
>距離を詰める、温存爆発

ウェザー:76+9+15+30=130
ユニコーン:37+24+20=81
ダメージ:(10)×1.5+51/5+40-45=21

>ユニコーンヤミーに21のダメージ!
>京太郎はスタミナを1消費! 気力を30消費!
>ユニコーンヤミーはスタミナを2消費、気力を20回復!


【ウェザー・ドーパント】 須賀京太郎           【ユニコーンヤミー】
技能:76(57)                        技能:37
HP:57/57                         HP:21/48
スタミナ:49/54                VS     スタミナ:42/48
気力:52/82                        気力:60/60
ATK:40                           ATK:45
DEF:35                           DEF:45


>京太郎の方針は【温存方針】です

>ウェザー・ドーパントとユニコーンヤミーの距離は【中距離】です

165: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 02:42:11.11 ID:hNTFeN0Vo
ノーウェイ、ノーウェイ。元へ

>京太郎の方針は【通常方針】です

>ウェザー・ドーパントとユニコーンヤミーの距離は【中距離】です

167: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 02:47:34.48 ID:hNTFeN0Vo

 ウェザー・ドーパントの起こす真空刃が、ユニコーンヤミーの表層を切り刻む。
 意を決して距離を詰めようとするヤミーであったが、無駄だ。
 あまりに苛烈に撃ち出される竜巻は、その主の元へと何も寄せ付けない。

 舌打ちに似た唸り声を一つ、ユニコーン・ヤミーが地を打った。
 放たれる木石の散弾が、ウェザー・ドーパント目掛けて殺到するが――。


京太郎「……無駄だぜ」


 その体の周囲を覆う、積乱雲。
 その高密度且つ高温の雲の壁が、迫り来る散弾をあらぬ方向へと弾き飛ばす。
 あまりの高密度故に発生した摩擦熱で燃え尽きる木片が、空中で瓦解した。


京太郎「そんで……オラァ!」


 ウェザー・ドーパントが、地を踏みしめる。
 先ほどの冷風が温まる事によって起こした結露。
 それを伝道する深紅の稲妻は、ユニコーン・ヤミーを容赦なく攻め立てる。

 これが、適合率95%。
 これが、天候の記憶。
 これが、最強にほど近いドーパント。

 須賀京太郎はまさに今、ひとつの自然災害へと姿を変えていた。


京太郎(……ッ)

京太郎(本当に、なんつーかこのメモリは……やばい、な)

京太郎(恐ろしく強いけど、その分、持って行かれそうになる)

京太郎(気を――強く、持て……!)

京太郎(こいつを上手く使いこなせれば……)

京太郎(俺に出来る事は……やれることは、増えるんだから……!)

169: 1 ◆03YYG6LwcYvR 2013/08/14(水) 02:50:37.29 ID:hNTFeN0Vo
【ウェザー・ドーパント】 須賀京太郎           【ユニコーンヤミー】
技能:76(57)                        技能:37
HP:57/57                         HP:21/48
スタミナ:49/54                VS     スタミナ:42/48
気力:52/82                        気力:60/60
ATK:40                           ATK:45
DEF:35                           DEF:45


>京太郎の方針は【通常方針】です
>ウェザー・ドーパントとユニコーンヤミーの距離は【中距離】です

 ウェザー:76+下3コンマ+15+気力  VS  ユニコーン:37+GMコンマ+20+気力

>このレスにて、ユニコーンのコンマ
>下3にて、須賀京太郎のコンマ

>↓3 須賀京太郎の方針・行動コマンド・精神コマンドをお願いします

178: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 02:58:05.58 ID:hNTFeN0Vo
>>169の判定:20 >>172の判定・選択:90
>#距離詰め気力30温存方針
>距離を詰める、集中30、温存方針

ウェザー:76+90+15=181
ユニコーン:37+29+20+30=116
ダメージ:(3+7)×1.5+65/5+40-45=23

>ユニコーンヤミーに23のダメージ!
>京太郎はスタミナを18消費! 気力を20回復!
>ユニコーンヤミーはスタミナを1消費、気力を30消費!


【ウェザー・ドーパント】 須賀京太郎           【ユニコーンヤミー】
技能:76(57)                        技能:37
HP:57/57                         HP:0/48
スタミナ:31/54                VS     スタミナ:41/48
気力:62/82                        気力:30/60
ATK:40                           ATK:45
DEF:35                           DEF:45


>HPゼロにより、煙幕の効果発動
>撤退判定へと移行します!

179: 1 ◆4.CdJKvSR0cV 2013/08/14(水) 03:01:59.42 ID:hNTFeN0Vo
ウェザー(追撃判定):31+下3コンマ+気力+15+10=
ユニコーン(撤退判定):48+GMコンマ+気力+10=


>下3、須賀京太郎のコンマ・消費気力をお書きください

187: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 03:13:24.28 ID:hNTFeN0Vo


>1#気力30消費するしかないでしょうが!
>気力30消費

ウェザー(追撃判定):31+84+62+15+10=202
ユニコーン(撤退判定):48+42+30+10=130

>ユニコーン・ヤミーはにげだそうとした
>しかし、京太郎からは逃げられない


>ユニコーン・ヤミー、撤退失敗。HPゼロにより、撃破

>オーズはセルメダルを1枚、戦闘技能+1

189: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 03:22:29.10 ID:hNTFeN0Vo

 自らのフリを悟ったユニコーン・ヤミーの行動は、迅速だった。
 身体から、紫色の煙幕を発生。
 そのまま、煙幕に紛れて逃げようと――


京太郎「おいおいおいおい」

京太郎「どこに行くってんだよ、なぁ……!」


 ――試みたその企みは、儚く吹き飛ばされた。


 ウェザー・ドーパントが操る暴風。
 それが一瞬のうちに、彼の逃走の為の最大の武器を、奪い尽くした。
 逃げるなんて夢は見させないと。
 そう言いたげに、夢へと落ちようとする瞼の砂を、払い飛ばす。

 ついで、加えられる一撃。
 強力な竜巻が、ユニコーン・ヤミーの体を貫いた。


ユニコーン・ヤミー「ぐぅ……!」


 本来ならば、この一撃で消滅していたであろう。
 しかし相手は、オーズではない。今はウェザー・ドーパントだ。
 ガイアメモリも、ある種何かしらの欲望が結晶となったものとも、言える。

 その所為か判らないが――或いは気力などというものが存在するとして――ヤミーは、耐えた。


 ならばせめてと、ヤミーは突撃を繰り出す。
 せめて、一矢報いる。一つでも欲望を無に帰すのだ。
 それはもう、己の固有の能力によらずとも良い。
 ただ、命を奪い去ってしまえばいいのだ。

 その対象は、先ほどの少女。大小二人の少女。
 互いを庇う事もできずに、ぼんやりと立ち尽くす少女。

 殺ったと思った。
 あの、憎きドーパントも……彼女たちへの流れ弾を恐れてか、攻撃を繰り出せずにいる。


 そのまま、二人の肉体を、ヤミーの角は突き破る。

190: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 03:24:34.93 ID:hNTFeN0Vo

                        /三三三三三三二ニ>
                       {三三三 x≦三三≧x
                       ノ、三三/三三三三\\
                      |  |三/三三三三三三 |`
                      ノ__ |三三三三<二ヾミミ}
                    /、__>^ヾ────'´
              __,x─' ̄´     ̄`ヽ、
            x<´  x────、    \                思い通りになった――――と、思ったのか?
.         /    i´.__   _,───‐`ヽ、
.        /      ∨/人`ヽ'     ____ノ   _/ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ─、__
.       /  __/`ヾ  | ゞ─'‐イ_,─' ̄ ̄    | ,‐'´  ̄`y'´ ̄ ̄ヽ、 `  }   \
      /  i´:::::::::::::|  ヾ、_/  \\      |´  /  .i       ̄ヽ .|   \
.      |   ヘ::::::::::::::|     /|    ∨|      .|__  `ヽ  ソ.       ノ 7    ヘ
     __|__  `-t::::::::|    |::{.     |//ヾ、__ノ::| __ノ/       / /       }
    (_)()_|    ヘ:::::::|_.   ヘ::`i    ∨/////////77/       ,x‐'´         |
    (_)():::::::)    }:::::::::>   ヘ:::|    }//////////     ,x‐'´            |
    (_)() ̄ノ |   |::::::::/.    ヘ::|    |////////      /   _____     ノ
    \r' ̄). |  /:::::::ノ    _ノ:::>   ///////     /  _,x-'´      _ ̄`ヽく_
       ̄|´ |.  |:::::::/   /:;;;;:/   }./////     /  /         ////7\   \
       |__: |  |::::::i.   /'´_/|    |///ノ─、  /  /       _////////∧   .\
         \ |::::ノ  iヽノ:::::::∨  ノ//{´ ̄\\_  /       _/////////////∧   |. ヘ
          \|:::∨ |::::::::::::::::∨ |///./`ヽ、__\ヘ ./. ,イ    /////////////////∧__ノ ノ }
            \:\|::::::::::::::::人:|、///: : : |: : \∨/ノ   //// ̄ ̄ ̄ ̄`iヾ、////∧‐'´  |
       _, へ、    `ヾ、;:::::::::/|:|: `: rイ: : : :ノ: : : : // ||  ////::::ヘ::::::::::::::::::::::::|:::::::\///∧  .|
     //: :`\ / ̄ ̄>` ̄: :|ヾ/: |ソ: : /    | |  ヽヽ///::::::::::::ヘ::::::::::::::::::::::|:::::::::::::ト、//リ.  |
.   //:::::x─、/ゞ;;;;;;;;;ノ|:;イ: : ::/: 」: : /: : ´    |    .|::イ::::::::::::::::::::::ヘ:::::::::::::::::|   ::::::|| i//|: : :|
   //:x─く: /`ヘ:::::::;;ノ/::|::ヾ彡,ヘ、二__\/ヾ: :;─'´|\   |::|:|::::::::::::::   \: : : : :|     | ∨:|: :∧
  .//_{:;─ {: : : : }:´∨: : |ヾ': /:::::::::::|:::::::/`─': : : :|∨ ̄ ̄|::|:ヘ:::::::::::::     i: : : {     |  |:|:/ ヘ
 //{:::_ヘ::::: ト、: : |:::ノ、: : : \|::: ◎ ヘ/  ,- =、: : |: \__,|::|::::ヘ::::::::::::    |: : : |     | ∨: :. }
./:||::|ヽ: : .ヘ_:::. }:::i |   `y─‐、__: ::ノオミ、_`二彡_ノノ: : :\: |::|:::::::\::::::: : : :   |: : : : : :     .ト、: :/
.|::||::{;;;;\:::::|`V::::`´:::::::::|(:::::::::::_ノ∠/::|::\__//二二ミ`ヽ\  `i: : : : :   ',: : :l: : :     |ノ/
| ∧ヽ::::::::ヽ':ヾ:;;ゞ-;;;;;;;;イ7777{ヘ.l   }::|: ::/    // ,‐‐、: |:|{⌒ヾ、  ヘ: : : : :  |  |: :    |::: K
∨∧`ヽ──'´////ノ//// {リノ: : : :|::|: ::|  ◎: : | | ゝ 彡ノノヾ:::::`\  ヘ     |  |    |  .| `i


191: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 03:34:16.18 ID:hNTFeN0Vo

 しかし、手ごたえはなかった。
 代わりに与えられたのは、強烈な握撃。
 ウェザー・ドーパントの右手が、ユニコーン・ヤミーの喉を圧迫していた。


京太郎「こんな事もあろうかってな……仕掛けさせてもらったぜ。念のため」

京太郎「ただ逃げ出すだけなら、まだ分かる」

京太郎「俺に向かってくるのも、判る」

京太郎「でもな……お前はひょっとしたら、弱い方に向かうかも知れない」


 その卑劣な行為に憤怒するが如く、自然とウェザーの指に力が入る。
 もがくが、抜け出せない。
 ただただ、喉笛に指先が食い込んでいく。


京太郎「あの煙を晴らすついでに、お前の向きをほんのチョッピリだけ変えた」

京太郎「そんでもって、蜃気楼で――偽装させて貰ったぜ」

京太郎「俺と彼女たちの位置をな」


 幻影が、晴れる。
 浮かび上がっていたウェザー・ドーパントの姿は掻き消え。
 そして、何もないと思われていた場所から現れる、二人の少女。


京太郎「温度と密度……湿度に、入射角と反射角だったか?」

京太郎「勉強になったか? この世で最後の……勉強に」


 これで終わりだと、人間で言う気道に当たる部分――更には、頸椎が握りつぶされる。
 その苦痛に、呻く間もない。
 掌から襲い来る高温のエネルギーが、ユニコーン・ヤミーの体を、焼き尽くした。

192: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 03:34:52.99 ID:hNTFeN0Vo


【判定を行います】


194: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 03:38:54.32 ID:hNTFeN0Vo
ガイアメモリ使用により、京太郎の汚染度上昇

↓3 コンマの合計値汚染度上昇


&姉帯豊音判定
1~20:襲われたショックが後を引く
21~40:正直エグすぎて引く
41~70:「なにこれ! ちょーかっこいいよー!」
71~99:「あの……あ、ありがとう……!」

偶数ゾロ目:そりゃあ惚れるやろ
奇数ゾロ目:化け物が化け物を殺してる

↓5

202: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 03:44:53.44 ID:hNTFeN0Vo
何故判定を直後にしなかったのか、悔やまれる

>>197の判定73=7+3=10
汚染度が10%上昇!

>>199の判定:80
おめでとう。これ序盤ならフラグやったでー


                 .. ----  .
             .  ≦        ミ  .
              /    . . . . . . . . . . . .   \
         /  . . . : : : : : : : : : : : : : : : . . . . ヽ
        . ....: : : : ..:.:./.::.:.. ..:..:..\ ..:.. ヽ: : : ∨‘,
          / ./../..:.:.:./:./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:..:Vヽ: . ∨ハ
       / \′:.:.:.:.':.:′:.:.:.:.: |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.Vハ:....ノ i
        / .7T..ト....:.:i :i| :i:.:.:.:.{:.|、:{:.:.:.:.:ハ:.:.:.:ト::.i一:. . |  わた……ウェザーこそが最強の相棒なのです!
      ′/..:|..:|、:.:./|:.|{ :|:.:.:.:.ト:{ \:.、:.:.:/ : ヽ:|:.:.. i: .|
      : / ..:i|..:{:.\ |:ハ:{、:.:.:.廴__ 斗<:.:|::.:.:.|:.:|:.:.. |: .
.      |:il .:.::ii:八:{::{ |≧十\:∨ ,.     `|:.:.:..ト:|:.:.: |: .{
.      |:|!..:.::,| ..:.トド\ _,   `  z.、__レ|::.:.:.|´j:.:.:..|: .   ( \    / ) {_.}_} r‐
      ,|:{ .::/l| .:小≧==' '^     ´` ̄´`!:.:.: |' }:.:.:..|: . {   \ \/ /    _| |_/ )
     八| :ハ| .:.:{:.i xxx   ,     xxx |:.:.:.:|_,}:.:.:..|: . .i    .>  /    (__  __ ヽ  __
       (__) | .:. 八            |:.:.:.:}V:.:.:..:: . . {   / 〃        | |  ) } (_  ヽ
      .イ   i! .:.:| :i::..     丶 ノ     ,:.:.:./:i::.:.:. :i: . .   { {____.     | |  (_ ノ    )  }
     〃{   .}: :.:.{ :|::::i:>...      イ/.:.:/i:,′:.::.八 : .l  乂 ___ )    ._ノ         (__ノ
     {:i.:{   ハ:.:.:V :::|l:.:.:.}:.r } ̄ __ ノ/:.:./:./:.:.:.:. ::i{: . . {
.    八从 ,: .∧ :.{:::::リ::::::ノ 入_/'i{  /ィ /::/:.:.:.:. /::{:. . . .
       ∨ .:.:.:.\V‐≦ムイ  /》___.ノイ 7:.:.:.:. /廴:.. . .八
       /;..:.:.:.:.:./ \}!  r‐〉ォ´ ̄  }ノ /::.:.:.:./  , ヽ: .∧
.      /:/ .:.:::::/  ノ{{   '介′   i{ ./::.:.:.:./  /  ∨. ∧
     ノイ ..:.:.:./! く 廴. / .|乂 __人/::.:.:.:./   /    i: : . .:.
    __ノ/ ..:..::厶}/  \ ノ{ /j__ 斗-/::.:.:.. / i /      {: : . ∧

205: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 04:00:10.55 ID:hNTFeN0Vo

 体から、ガイアメモリを引き抜く。
 それが齎す全能感。多幸感。高揚感。
 ともすれば、これのおかげでオーズの力の弊害を受けずに済むからという理由ではなく――。
 ただ純粋に、この力を振るいたいという衝動にすら駆られる。

 このままメモリを使い続けたら、取り返しのつかないところまで進む。

 それを、京太郎は実感した。
 かつて自身が倒した/守った、小走やえのように。


京太郎(……どっちにしろ、直であんまり使い続けるのはやばいだろうな)


 ふう、と息を吐く。
 手の内で輝くウェザーメモリ。
 自分こそが、京太郎の真に使うべき/使われるべき道具であると、呼びかけてくる気がした。

 頭を振って、ポケットにメモリを押し込む。
 その瞬間、それは訪れた。


豊音「うわああああああああああん」

京太郎「おぶぅ……っ」


 全身で感謝と安堵を表したのだろう。
 姉帯豊音は、変身を解除した須賀京太郎目掛けて飛びついた。
 もし彼女が片岡優希ほどの身の丈であるならそれは微笑ましい光景になるだろうし、
 或いは、新子憧や大星淡ほどであったのならば、ある種のロマンスを感じさせただろう。

 だが……。


 ――それは、少女というにはあまりにも大きすぎた。

 ――大きく、(おもちが)分厚く、重く、そして(感情表現が)大雑把過ぎた。

 ――それは、正に八尺様だった。


 そのあまりの質量×加速のボディーアタックを受けた京太郎は。
 先ほどまでの戦いはどこへやら。
 受け止めきれずに、大きく弾き飛ばされて強かに背中を打った。

 だが、放さない。
 姉帯豊音からは逃げられない。

 抱き着くのが失敗したと見るや(いや、或いは彼女の中ではこれも成功したと見なされていたのかもしれない)……。

 豊音は京太郎の腕を掴んで、ぶんぶんと大きく感謝の意を表した。


豊音「あの……あ、ありがとう! ありがとう!」

豊音「ちょー怖かったけど、ちょーかっこよかったよー!」

豊音「ありがとう! 助けてくれて、ありがとう!」


京太郎(ひぎぃ……!)

京太郎(肩、外れちまうぅぅぅぅぅ……!)
 

206: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 04:18:05.12 ID:hNTFeN0Vo

 なんて悶着が合ってから。
 やたらと不機嫌そうな優希と、非常に上機嫌な姉帯豊音の傍らで、京太郎は肩を回した。


京太郎「それで……ええと、姉帯先輩でしたっけ」

豊音「豊音って呼んでくれてもいいんだよー?」

京太郎「いや、一応先輩ですし……まあ、そのあたりは」

豊音「……そっか」


京太郎(あんまり深入りするつもりないから、呼ばなくていいかと思ったけど……)

京太郎(何かスゲー小動物虐めてるような罪悪感が湧くぜ)

京太郎(うう……いやいや)

京太郎(でもこの人の胸が顔に当たって……大きかったなぁ……)

京太郎(――じゃなくて、違う! そうだ、こう、まあ、えっと……)

京太郎(……名前呼ぶくらいはいいか)


 寂しそうにしている彼女を見ると、とても心が痛い。
 身体は大きいのに、その感情表現が子供の用に純粋だからだろう。
 結局京太郎は、折れた。


京太郎「それで……豊音先輩」

豊音「うん、なにかなー?」

京太郎「今日見た事は、内緒にしてもらえますか?」

豊音「えーっと……それは、ヒーローのお約束ってやつかな?」


 子供の頃、テレビで見てたんだーと。
 そう笑いながらジェスチャーをする彼女は、微笑ましい。


京太郎「そんなようなものです」

京太郎「ただ……もし、何かあったら、俺に連絡を下さい」

京太郎「これ、メールアドレスです」

豊音「えっと……赤外線?」

京太郎「バーコードリーダーでお願いします……って、判ります?」

豊音「えーっと……うーんと……」


 携帯を片手に、首をかしげる豊音。
 彼女の手にかかれば、タブレットでも普通のスマホに見えるなぁ……などと思いつつ、
 今にも噛み付かんばかりに唸りを上げる優希を、宥める。

207: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 04:25:49.35 ID:hNTFeN0Vo

京太郎(助けられた――それは、いい。間に合って、本当に良かった)


 豊音の様子を眺めつつ、胸を撫で下ろす。
 この分なら、怪物に襲われたというショックも薄いだろう。
 日常生活に戻って、この先気に病む事はなさそうである。

 もっとも、ショック故に逆に振りきれてハイテンションになってしまっているというのも考えられるが、
 先ほどから見るに、どうにもこれは彼女の素らしい。
 裏表なく、表情豊かで天真爛漫な性格なのだろう。

 それは素直に、嬉しい事だ。
 しかし……。


京太郎(だけどあれ……今の、ヤミー)

京太郎(これは……誰のヤミーなんだ……?)

京太郎(獣のヤミーだから、カザリのヤミーでもありそうだけど……)

京太郎(なんとなく――違うって気がする。これは、カザリのヤミーとは思えない)

京太郎(確実とは言えないけど……)

京太郎(セルメダルが1枚しか落ちなかったあたりが、特に怪しい)


 新たに、謎が生まれた。

 残るグリードは、カザリとアンク。
 メズールとガメルは、京太郎が殺害した。
 ウヴァは、何者かにメダルを砕かれていた。

 グリードは元来、5体しかいない。そう聞いていた。

 ならば――このヤミーの親は、誰なのだろうか。


京太郎(……鴻上会長がまた何かやらかしたって考えても、ある意味しっくりくる)

京太郎(まあ、それはないにしても……だ)

京太郎(あの人に、聞いておいた方がいいかもしれないな)


 今、この場面で直面する新種のヤミー。
 その事実に、どことなく不安を感じずにはいられない。

 雨が降らなければいいと、京太郎は空を見上げて、思った。


 

208: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 04:26:25.05 ID:hNTFeN0Vo


【判定が入ります】



209: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 04:33:35.16 ID:hNTFeN0Vo
判定
1~20:「これなら――うん、もういいわね」
21~40:「あはは――丁度いい、生贄が見つかったわ」
41~70:「やっぱり――貴方(ナスカ)じゃないと、相手にならないかな?」
71~99:「もう少し、確かめてみようかな。ああ……でも、信じてるわ――」

偶数ゾロ目:ロストドライバーの開発に
奇数ゾロ目:カザリ+アンクに接触

↓5

215: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 04:47:42.59 ID:hNTFeN0Vo
>>214の判定:30

                 -‐=====‐-
                 /二二二二二二二\     __
                /二二二二二二二二二\  / }
             /二二二二二二二二二二二∨   {_
               /二二二二>''"´ ̄     ____,,.斗<二ニ=‐┐
           /二>'''"´    ,.. -=ニ二二二二二二二二二>''"´
            |/ ,,... -=ニ二>''":::::::{\\:::::::::::::::∨二>'"
.            斗<二二|:l:|_,ノ ':::\:::::::. _\∨:::::::::::|´
          <二二|:::::|::::::|从 _ \:::\:::\刈|∨::::::: |
      ∠二二二二|:::::|l:::l:|_/γ心` \::i\:::\|::l∨:::: ト.
      --――━━┥::八从^ 乂ツ   ,\ \:::\:::::::::|:::.        ← (生贄に選ばれる音)
                |::::::::|:::l∧ ,,,        Χ::::\:::|:::::.
                |::::::::|:::|⌒::.、   ~ー'^~ ..:i:: \:::}::|::::::::.
                |::::::::|:::|::::| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|:::\:::::\
            /:::::::/::/::/|                  |:::::::::\:::::\
              /:::::::/::/: -- 、                ┴- 、___:\:::::\
           /::::/´/  ̄\)           /二、  ∨\∨:::∧
.          /:::/ニニ{ /二二)          (__ \  |ニニ|:|:::::::::::.
         /:::::|ニニニ{ ´ ィ^'´              |{ヽ  ∧ニ|:|::::::::::::::.
.        /:::::: |ニニ/∧   」                  |{  /ニ}ニ|:|:::::::::::::::|
       /::/:::: lニニiニニニ二|_________|ニニニニ{ニ|:|::::::l::::::::|
.      /::/:::: : lニニl二二二二二\二ニ∨ニ二二二二二二〉ニ::|::::::l::::::::|

217: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 05:00:53.58 ID:hNTFeN0Vo

もこ(……さようなら)


 対木もこは、先ほど生み出したヤミーの親――父親の遺品の残骸を、火にくべた。

 これは、もこにとっての現実。夢を封じる存在。
 父親がいたからもこは、ほぼすべての夢と呼べるものを捨てる事となり、
 また、一切の夢と言うのを見なくなったのだ。夜以外には。

 そんな、ある種悪夢の象徴ともいえる遺品を、荼毘に付す。
 同時に、自分の心の中の何かが――削がれていく気がした。


もこ(あれが――ウェザーメモリかぁ)

もこ(うん……あれは、邪魔よ。邪魔なの)

もこ(あれがあったら、彼は“虚無(ワタシ)”に近付けない――)

もこ(あんなものが存在したら、彼は本当の悦びを知る事ができない)

もこ(だから……)


 もこは、手の内のナスカメモリを握る。
 こいつが……この持ち主が、余計な事さえしなければ……。
 今頃京太郎は、紫色のメダルを使っていたというのに。

 もっと、自分の傍に来てくれていたというのに。

 まったくもって、邪魔だった。
 もこの内なる意識が、紫色のコアと同調して唸りあげる。
 この、泥棒猫め――と。


もこ(あなたが、取り返してこなきゃ駄目。ちゃんと責任をもって)

もこ(それで、死ぬべきものをちゃんと殺さないと)

もこ(今、庇ったから生き残った……それはおかしい)

もこ(新たな誕生の子羊として、生贄にならないとおかしい)


 それから、姉帯豊音を睨む。

 あれは、生きていちゃ駄目だ――いや、違う。
 死ななければならない。
 京太郎の虚無の誕生を祝うために、死ななければならないのだ。

 まずは、発火剤だ。

 もっと益々、京太郎を虚無に追い詰めていく。
 そのときこそは、より京太郎に近しいものを破壊していくと決めていた。
 だから、最初の導入。着火としては、適度なものを生贄捧げるのだ。

 あの女は、実に、丁度良いだろう。


もこ「あはは――丁度いい、生贄が見つかったわ」



 少女は、どこまでも濁ったが故に純粋な色となった瞳で――。
 曇天の空を見上げて、実に愉快そうに、笑いを零した。

224: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 19:17:56.27 ID:6Zuccwo2o
判定
0~20:神代小蒔とイマジンズ
21~40:江口セーラと麻雀部
41~70:新子憧と伊達明
71~99:白水哩と鶴田姫子

偶数ゾロ目:カザリとアンク
奇数ゾロ目:???

↓3

228: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 19:25:23.33 ID:6Zuccwo2o



  Interlude「神代小蒔の現在――いかにして彼女はイマジンたちと出会い、戦うようになったか。そしてその後」



229: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 19:42:31.03 ID:6Zuccwo2o

 ふう、と小蒔は息を吐いた。
 ミュージアム、財団Xと雌雄を決する戦いから三日。
 彼女の表情は暗かった。


(……私じゃ、力不足なのでしょうか)


 神代小蒔が参加できなかった、その戦いに於いて。
 須賀京太郎は、まさに獅子奮迅の働きを見せた。

 プトティラコンボとブラカワニコンボにて、囚われた江崎仁美を助け出し――。
 タジャドルコンボとガタキリバコンボにて、財団Xの黒幕・仕掛け人を打破し――。
 サゴーゾコンボとシャウタコンボにて、ミュージアムの首領を打ち取り、結社を崩壊させた――。

 その身に宿したメダルの力を完全に活用しての、縦横無尽の大活躍。
 彼が居なければ、この作戦は成功しなかっただろう。
 それほどまでに、須賀京太郎=仮面ライダーオーズの力と言うのは、強力無比であった。


 初めは――と、思う。

 初めの彼は本当に弱かった。
 言うには憚られたが、仲間内の誰よりも力がない存在であったのだ。
 勿論、自分も強いとは言えないが……それでも。

 彼の事をケアしなければならないと、どことなく思っていた。
 あの年頃の少年と触れ合うのは初めてであり、兄弟も居ない為に。
 なんとなく、自分がお姉さんだ……と思っていたのだ。

 そうはいっても、やはり小蒔だって弱い。イマジンの力が無ければ戦えない。
 そんな力が無いもの同士、一緒に強くなろう――と思っていた。
 彼と二人で色々と、強くなる為の特訓だって行った。

 弱いからって諦める理由にはならないというのは、小蒔が真実感じている事。

 だから立ち止まらずに、共に進んでいきたいと思っていたのだ。
 いたのだ。
 そして結果、今、須賀京太郎は強くなった。
 あの状態の彼を相手にして食い下がれるのは、江口セーラか大星淡ほどだろうか。

 小蒔はその輪に、入れない。

230: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 19:49:11.84 ID:6Zuccwo2o

 置いて行かれたのも、それが理由だろうかと思う。
 直接そうとは言われはしなかったものの、やはりそうなのではないかと思えてならない。
 彼は優しいから言葉を選んでいたが、きっと、小蒔は戦力外に近かった。

 だからと言って、ここで立ち止まる理由にはならない。
 元々麻雀を打っていたときだって、小蒔の実力は高くなかった。
 その身に有する特異な技能が故に、勝ち残れる程度である。

 だから、弱い事に文句は無かった。
 弱いと言うのは、可能性だ。
 まだ強くなる先があるという事であり、進めるというのは、どんな自分にもなれるという事だ。

 故に、弱さは問題ではない。
 追い越されてしまったのならば、再び追いついて、追い抜いてあげればいいだけだ。

 そう、判ってはいた。
 頭で理解しているのだが、それとは別に――。


(なんというか……寂しいなぁ)


 年下だと思っていた少年に。
 自分がしっかりしてあげなきゃと思っていた少年に。
 弱さに嘆いて、強さを目指そうとしていた少年に。

 置いて行かれた事が、追い越されてしまった事が――。

 何と言うか、嬉しい反面、寂しかった。

 彼の成長は実に喜ばしいところである。
 あの努力が報われて良かったというのもあり、強くなったんだねと目を細めたくなる。
 でも、そんな彼と遠ざかってしまったのは、僅かながらにもの寂しい。

231: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 19:53:49.76 ID:6Zuccwo2o

 また別に――それとちょっと、思った。

 こう、最初の頃は自分と色々仲良くしてたのに、最近冷たすぎやしないかと。
 ……いや、二日前一緒にお菓子を食べたのであるが。
 こう、そういうのではなく――なんというかもっと、信頼関係と言うか相談と言うかなんというか……。
 そう言うのが足りない気がする。

 懐いていた犬が、自分以外に向かっていくような。
 そんな面白くなさが、あった。


 すっかりと、敵を倒せるのは当たり前……みたいに。
 怪人をやっつけては、女の子を助けている。
 助けられた女の子の中では、京太郎=ヒーロー像が確立するだろう。

 それは……ちょっと違うなぁと言いたい。

 本当はそんなにスマートに決めきれる少年ではなかったし。
 余裕綽々風に振舞っているが、実際内心では色々悩んでいたり。
 鷹揚な態度こそ表しているが、内面ではきっとやはり戦いに緊張がある筈なのだ。

 元々の彼を知っているから猶更、最近の彼を見るとどうにも引っかかるものがある。
 「昔はあんなに可愛かったのにねぇ……」という奴だろうか。
 こう、元々の彼を知っている自分がいて、今、昔の彼を知らないで彼と知り合う女の子がいる。

 なんだかちょっと面白くないのである。面白くないのである。


(……って、駄目ですよね。駄目です。こういう考え方は!)


 頭を振るう。

 折角彼が成長したのだ。それを喜んでやらねばどうするのか。
 そして、負けていてはならない。追いつかねばならないのだ。

 なんて思ったって――その、やはり寂しい。

 試しにちょっと頬っぺたを膨らませてみる。
 うん、今の気持ちを表しているようで実にしっくりきた。


236: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 20:26:14.46 ID:6Zuccwo2o
姫様ルートなら
お姉さんぶろうとする姫様としっかりものの京太郎と見せかけて、
何かあったら芯の部分で強い姫様と勇気を貰う京太郎って、玄とおねーちゃんみたいな関係

セーラなら、
別に過去との因縁とかそういうのが無いのに体張るかっこいいセーラが京太郎をフォロー
で、恋愛面だと真逆の乙女モード発動

憧なら、
感性が一般的な憧ちゃんがヘタレだったり、覚悟決めたり、ツッコミいれたり、
放っておくと自壊に向かいそうな京太郎を繋ぎ止める感じ

舞姫なら、
互いに共犯関係と言うか、復讐者同士……みたいな関係を維持しつつ、
お互いが「こいつは危ういよなぁ……」と、互いのリカバリーに走る関係


ってのがルートでした。全部没だけど
優希? ああ、タコスでも食ってるといいと思います。ハイ

238: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 21:16:35.50 ID:6Zuccwo2o

 自分は、仲間内――永水――で頼りない存在とされていた。
 勿論、神を下ろすという能力が故に……その力を頼りにされるのも、
 或いは、本家の姫として、ある種の線引きの上に敬われているというのもある。
 尤も、皆はそのラインが故に足を止める事なく、手を差し伸べて友人となってはくれているものの……。

 小蒔にとって、ある関係だけは存在していなかった。
 小蒔自身が変な負い目を受けずに、「何とかしてあげたいな」と思う事。
 嫌な言い方になるが、自分がしっかり者とみなされる相手との関係だろうか。

 まあ、つまりは……頼られたかったのだ。
 自分の方が年上で、大人で、色々知っているししっかりしているんだ……と。
 そんな風に、ある種の先輩風を吹かす相手が、いなかった。

 仲間内でもストッパーになったり、苦言を呈したりすることはあった。
 だけれども、心のどこかでは思わなくはなかったのだ。
 これは、自分の立場があるから――従ってくれているのではないか、と。

 それは、霞たちに対する侮辱であろう。
 きっと、小蒔が小蒔の立場でないとしても彼女たちは、受け入れてくれるはずだ。
 そこまで、繋がりの薄い関係ではない。
 また、彼女たちの人間性がそんな妙な“しがらみ”や“おべっか”だけとは、対極と位置しているというのも知っている。


 それでも――だ。

 それでも心のどこかで、思ってしまう事はあった。
 きっと弱くて、卑劣で、彼女たちを裏切った考えであろう。
 でもやはり、そんな疑念を抱かずに入れるほど、小蒔は大人ではなかったのだ。

 それから、モモタロスたちと出会った。


239: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 21:31:31.13 ID:6Zuccwo2o

 あの騒動の事は、今でも覚えている。
 悪霊騒ぎの一件として、解決を頼まれたのだ。

 そんな事を言われても、自分たちは専門家ではない。
 力はある。だけれども力があるのと、正しい結末に至るのは別の問題だ。
 本家で選別された問題ならともかく、直接自分たちが判断を下すのはあまりにも重い。
 それほどまでに、他人の人生に、小蒔たちは責任が取れないのだ。

 それでも――と、頼まれた。
 相談に乗ってくれるだけでいい。多少なりとも、気が軽くなればいい、と。
 それでも渋った。散々ばら、皆は渋った。
 本家を離れたこんな土地で、すべき事ではないと。

 未確認生命体の事件もあった。
 悪霊という形にみなされているだけで、現実は彼らシリアルキラーかも知れない。
 だから、相談に乗る事さえ危険かもしれない……と。

 それでも、果たして、その相談事を受け入れる事となった。
 それが始まり。それが、小蒔のビギンズナイト。


 悪霊と思われていた存在――イマジンと。
 それと戦う、電王という存在との。

 出会いと、幕開けであった。


 その事件の過程で、悪霊――と相談されたのはイマジン。
 そのイマジンは契約を行い、暴れまわった。
 小蒔たちにもその刃が届かんとしたところで、間に入ったのはモモタロスたちだった。

 戦う力を持たない小蒔と、戦う力を持たないモモタロス。
 本来ならマレビトである彼らは実体を持たない。
 契約を果たす事で、彼らは仮初の体を与えられてこの世に顕在する。

 別の世界から来て、帰れなくなったモモタロス。
 こちらの世界の住人ではない。
 別に、付き合う必要などないのに。こちらの事に責任はないのに。

 それでも、彼らは戦おうとした。
 本来の電王への変身者がおらずとも、彼らはイマジンとの戦いを選んだ。


 その姿を見て――小蒔は自分がその代わりになると決意した。
 彼らの手助けをすると、決めたのだ。
 自分に出来る事があるならと、戦いに向かう事にした。

 そうして、まずは初戦を突破した。
 問題は、そこからだった。

240: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 21:52:28.58 ID:6Zuccwo2o

 戦いは終わった。一先ず事件は解決したのだ。

 一旦、物事が収束してくると、余計な考えが浮かんでくる。
 有り体に言うなら、小蒔は卑屈になっていた。

 結局こうしてモモタロスたちが自分に話しかけてきたのも、頼りにしてきたのも、それは小蒔の特質ゆえ。
 やはり、自分は“それ”抜きでは語られない存在なのか、と。
 大事なのは“神降し”であったり、“特異点”であったり――。
 そこに小蒔自身の事などは、含まれていないのではないかと、考えてしまったのだ。


 それから、やはり危険ではないか――という話が持ち上がった。

 霞たちの懸念も尤もであろう。
 自慢ではないが、小蒔は運動が苦手だ。
 泳ぐのはそれなりにできるが、走るのは不得意。ましてや戦いなど猶更。

 でも、求められるのならば、応えようとは思っていた。
 時間が壊される事は少なからず小蒔たちにも影響を与えるであろうし、あの、未確認生命体の事件が起きた直後だった。
 同様の存在が起こす騒乱に対する、義憤に燃えていた。
 そこだけ見れば、小蒔が断る余地はなかったのである。小蒔自身の心情的にも、状況的にも。

 それでも霞たちは異を唱えた。
 更に言うなら、小蒔に頼った本人――モモタロスたちもそうであった。
 誰もが、小蒔の身の安全を考えてくれた。

 イマジンが起こす事態はそれこそ、未確認生命体と比肩するほどであり、
 卑屈な考え方からするなら、小蒔が傷付いて“役目”を全うできなくなるそれよりも、リスクが高い。
 それでも皆は、小蒔を第一に考えた。

 “やる力があるからやらなければならない”。

 そんな義務など、要らないと言った。
 義務感にに囚われて本質を見失う事こそが危険であり、なによりも小蒔が大事なのだと。


 そんな彼らの思いやりに、小蒔は己の内に存在していた卑屈さを、ただの思い込みだと知った。
 また、思い至った。
 何かの力があって、それを頼りにされる事は寂しい事ではないと。
 その力が切っ掛けとなって、新たな縁と巡り合う事もある。
 その力を言い訳に、勝手に壁を作る事こそが、勿体ないのだと。


 それから――小蒔は戦った。現在を改変しようとするイマジンと。
 その過程で、皆ともっと打ち解けられた気がする。
 余計な負い目など、ほとんど感じなくなっていた。

 それでも、小蒔には……ある関係だけが、なかった。


 その関係を齎したのは――ある少年だ。
 たまたま選ばれてしまった、居合わせてしまった、オーズの装着者。

 須賀、京太郎である。

 そんな京太郎は、小蒔にとって初めての相手であった。
 

241: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 22:10:11.33 ID:6Zuccwo2o

 初めてであった。
 人を見て――その人となりを知って。
 もういいのだと、言って上げたくなる人物は。
 その先の幸福を、願い続けてならない人物は。

 小蒔の知る人たちは皆、前を向いている人間だった。
 自然と、善き方向へと向かう。善き方向を目指す。
 小蒔がいる・いないでの不都合があったとしても、誰もが“幸せ”というものを理解している。

 だけれども――彼は違った。


 彼はたった15歳の、小蒔より年下の少年だ。

 だけれども、どこまでも彼は疲れ切っていた。
 時々覗く、年相応には見えない、草臥れた表情。
 確かに小蒔の知る石戸霞もある意味、年相応ではないだろう。どこがとは言わないが。

 でも――それとも違う。

 どれだけの、どれほどの人生を送ったというのだろう。
 少年とは思えぬほどの、諦めた顔。乾いた口に、過去の重さを思わせる背中。
 笑いながら張り詰めて、身構えながら疲れていた。
 とても、年下とは思えないほど――無邪気さとはかけ離れた、佇まい。

 これは、駄目だと思った。

 それから、助けてあげたいと思った。
 彼の力になってあげたい。
 15歳の少年が持つものではないほどの、翳りを見せる雰囲気。

 せめて年相応に笑えるようになって欲しい。
 涙を堪えたり、笑いを捨て去ったり、喜びを押し殺したりしてはならない。
 そんなのは、間違っている。


 小蒔は彼の、力になってあげたかった。
 だから自分が年上として、彼を支えてあげなければと思った。
 頼りにしてくれと思った。される人間になろうと、思った。


 そんな風に、憔悴し切って幸福や安寧から遠ざかろうとするものを見るのは、初めてだった。
 ましてやそれが年下の少年であるなんて……。

 故に、小蒔は京太郎のお姉さんになってあげようと考えた。
 そんな関係と言うのは真実、初めてであろう。

242: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 22:16:44.79 ID:6Zuccwo2o

 そう、だから今彼が楽しそうにしているのは喜ばしいのだ。
 喜ばしいのである。
 喜ばしいのだけど……。


(なんというか……寂しいです)


 分かっちゃいるのだけれど。
 確かにそれは自分の望み通りなんだけど。
 非常に喜ばしい事で、祝福すべき事なんだけれど。

 お姉さんは寂しいのです。

 前みたいに、無理して誰かに頼ろうとしないのではない。
 きっと本当に、自分でどうにかする余裕があるから、頼らないのだ。
 余裕が出たなら、彼はもっと笑えるようになるだろう。
 それこそ小蒔が望んだ通り、年相応の人生を送る事ができるようになるはずだ。


 ……。


 ……でも。でもですよ。

 それとこれとは、またちょっと話が別なんじゃないだろうか。
 そう、頭で分かっていても心はまた別だ。
 嬉しいんだけど、やはり寂しいのである。非常に寂しいのである。


(今頃……どうしているんでしょうか)


 ちょっと空を見上げて、溜息を漏らす。


 祝福すべき事で、喜ぶべき事だ。
 それは理解している。
 嬉しい反面つまらないとか、そういうのが、彼にとって申し訳ない事を。 

 でも……。

 それでもなんというか……お姉さんは寂しいです。寂しいのです。


                                           ――了

243: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 22:19:37.15 ID:6Zuccwo2o
……さて

で、このまま残りの(ルート入らなかった人の)イントルードやる?
それとも、本編進めるかね?

245: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 22:24:52.58 ID:6Zuccwo2o
判定
0~20:今まで助けられた人たち
21~40:江口セーラと麻雀部
41~70:新子憧と伊達明
71~99:白水哩と鶴田姫子

偶数ゾロ目:カザリとアンク
奇数ゾロ目:???

↓3

249: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 22:27:48.21 ID:6Zuccwo2o
>>248の判定:07
セーラ「……」
憧「……」
哩&姫子「……」

姫様と淡に優しいコンマ神

252: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 22:35:29.74 ID:6Zuccwo2o

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判定:
1~20:「京セラの新刊まだかな」
21~40:「……プリン食べたい」
41~70:「……淡と仲良くしてるのかな」
71~99:「かっこよかった」

奇数ゾロ目:「……咲」
偶数ゾロ目:そりゃあ惚れるやろ

↓5

258: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 22:43:20.22 ID:6Zuccwo2o
【悲報】宮永照腐敗完了

263: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 22:50:06.08 ID:6Zuccwo2o
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   /.:′|.:.:.:.:|.:.:.:|'⌒  \.:.{    ,.斗==ミ|.:.:.}:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.    あの怪物騒動から考えるに淡と京太郎はかなり中が良さそうだし、それに嫉妬したセーラが
  ./.:.i{.:. |.:.:.:.:|:.:.:.|      \  " 乂ソ |.:./.:.:.:ハ.:.:.:.:.:.:.:.:.   京太郎を攻める……いやないなやっぱりない。セーラは攻められてこそのセーラだからそれはない。
.  / .:八:.:{.:.:.:.:ト.:i:.| 斗=气      ´ "" }/ }/ |!.:.:.:.:.:.:.丶  だからやるとしたら、ここからセーラが京太郎を誘惑しようとして迫るんだけど……
 .:.:.:.:.:.:.:.:.イ.:.:i|::乂〃 Уソ             リ.:.:.:.:.:.:.:.:|   「やっぱり京太郎には淡って女友達がいるからノンケ」ってヘタレになって決めきれないところに
./.:.  '"   |i:.:.リ.:.:.:ハ ´""  ′        __/::}.:.:.:.:.:|:.:.|   「先輩、俺をそう言う風に見てたんですか……たまげたなぁ」って、軽く言葉攻めしてノンケアピールをして
´      |i:/.:.:.:.:.:::::::.             /:::::i|::/.:.:.:.:.i|.:.:|   それを聞いたセーラが「それでも俺いつの間にかお前の事が」って言って、京太郎が笑って
        /.:.:.:.:.:.:.:.:.:込、    ´ '      イ:::::::リ/.:.:.:.:.:八:i|   「じゃあどうして欲しいんですか? 同性の後輩をそんな目で見る変態な先輩は」って、おもむろにワイシャツを……)
      i:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:|:::::::.....       /|::::::/.:.:.:./  :リ
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               l_/::::::_l:イ|\::::::::|:\::::〉|::::::::::|::::::.  ……おい、早くツモれ
                八:::::::´:::l八|   ̄ =苧芹|::::::::::|:::::::
               |`¨Τ=苧芹     V_ノ |::::::::::|:::::::|
               |::::::::::. V_ノ        l:::::/|:::::::|
               |::::::::∧    '       イ::::::|:::::::|
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               |::::::::::|::::::::::Τ    ∨|:::::::|:::::::|
               |::l:::::::|:::/У     り:::::: l―┴ 、
               |::|:: 斗{/-、 , -/|::::::::::|   /-、
            ┌‐  ̄    |´ ̄ ̄/  :|::::::::::|--//
               ∧  \    |  /    .::::::::::///    |
              { `ト  \   l /   . -=/:::::::/´ /     {
           ノ |二ニ=- {  -=ニ二/:::::::::{  /      \
          /  /\二二ニ、∠二ニ= i::::|::::::|         }

267: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 22:55:44.56 ID:6Zuccwo2o



 Interlude「The people with no name」



269: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 23:07:00.33 ID:6Zuccwo2o

「……ふう」


 牌譜の整理から、頭を上げる。
 空が段々と曇ってきていた。これではこの先遠からず、雨が振るだろう。
 やれやれと、肩を回す。
 ずっと座って打ち続けていたのだ。いい加減、肩が重い。気圧のせいもあるかもしれないが。

 気圧の所為と言えば、髪の毛の纏まりも悪いのだ。
 特に片側だけが、放っておいても渦を巻く。昔はどうにかしようと試みたが、今はもうどうもしてない。
 それどころか、これもファッションの内であると思う事にしていた。そう開き直っていた。

 小走やえは空を見上げて、溜息を漏らす。


 空を見るたびに、奇妙な気持ちに襲われる。
 それは歓喜と恐怖だ。
 歓喜と言うか、一種の爽快感と言うか――。また、空を飛びたいと、身体が疼く。

 奇妙な話だ。

 “また”――などというのが、おかしい。
 人の身である自分が空を飛んだことなどないというのに、何故そんな感情を抱くのだろうか。
 風を切る音。雲を突き抜ける感触。街を見下ろす感覚。
 それらが想起されるのである。

 どうにもリアリティがある。それがますます、奇妙である。
 疲れているのかなと、目薬を射して頭を振る。


270: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 23:14:22.33 ID:6Zuccwo2o

 スマートブレイン学園には、様々な学校の麻雀部が集められていた。
 そしてその生徒たちは皆、基本的に元の高校での麻雀部と同じコミュニティを形成するようになっている。
 やえのように――そうでないものは、総合的な麻雀部に所属する事となった。

 そこには問題があった。

 スマートブレイン学園がいくらマンモス校と言っても、この地区の出場枠は1つ。
 それ故に、レギュラーメンバーとして大会に出られるのはただの5人。

 各高校であった麻雀部のコミュニティを集めたメンバーとした集団たちと、
 元の学校のメンバーを揃えられず、この学校での――いわばあぶれもの――を集めたスマートブレイン学園麻雀部。
 その中で、学内の大会を行って出場する5人を決定事となっていた。

 やえは、その学園の麻雀部に所属。
 見事、現段階でレギュラーの座を勝ち取ったが、寄せ集めの集団。誰もが必死な集まり。
 いつその座が変わるとも知れず、居残り続けるには多大な労力を必要とする。

 維持するのも、楽ではない。
 それ故こうして、ひたすらに麻雀を打っているのだ。以前よりも、なお。


 しかし、ここでもう一つ奇妙な事がある。

 これが不思議と、苦にならないのだ。
 以前はそうした生活の内に、少しずつ倦んでいって、ストレスを溜めていた。
 そうだったと――漠然と記憶している。

 だというのに近頃は、それもない。
 確かに麻雀が好きだと言うのはある。色々思うところがあるが、好きである。
 それでも、好きな麻雀をしていたのは以前と同じであるのだ。
 それで、以前は追い詰められていた。でも今は、そうでもない。

 レギュラーになったからだろうか、と考えてみる。

 確かにしっくりきた。
 後輩の前でやたらと気取った先輩面をしたり、と自分にはそういう面がある。
 だから、レギュラーになって益々心を固めたというのは、あるのかもしれない。
 前みたいに、他にある道に目を向けようと――逃げようと――しなくなったのだ。
 当面は、麻雀一本で行こうと思っている。

271: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 23:27:18.89 ID:6Zuccwo2o

(……考えてもしかたないか。馬鹿らしいし)


 今は悩んでいない。確かに辛いが、逃げ出したいと言うほどでもない。
 だから――それでいいじゃないか。麻雀に集中できるのだ。

 ふう、と鞄を手に取った。
 そろそろお開きの時間であろう。

 やるものはまだ残るだろうが……やえは、帰る事に決めた。
 余計な事を思い浮かべてしまうあたり、集中力に欠いているのだろう。
 この分では、練習をしたって身になりはしないのだから。


(……そういえば)


 奇妙な事と言えば、もう一つ。
 時々、夢を見るのだ。奇妙な夢を。

 空を飛ぶ蜂の化け物に囚われた自分。
 それに打ち込まれた毒だかが作用して、とにかく息苦しく、耐えがたいほどの苦痛が訪れる。
 誰か、助けてくれと叫ぶ。
 これほど苦しいのならいっそ、殺してくれと。


 そこに――少年が現れるのだ。金髪の少年が。
 出会った覚えはない。
 小学生の時分から、そもそも麻雀漬けの毎日である。出会いなどあるわけない。

 そんな話した事もない少年が。
 自分目掛けて、手を伸ばすのだ。その手を離さない……掴んで見せる、と。
 その夢の中で、少年は叫ぶ。


 ――あなたの痛みも、苦しみも……俺が止めてみせる!


 そうして、やえの悪夢は終わりを告げる。
 この夢を見た後には、何故だか、安堵するものだ。
 同じぐらい……大切な何かを忘れているようで、胸が痛むが。

272: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 23:33:35.08 ID:6Zuccwo2o

(王子様に助けてもらうとか……ちょっと、ねぇ……)


 いい年して、と思う。
 どんな少女趣味だとも思う。確かに憧れるが。

 そして、この話には続きがある。

 夢を見た後に気が付いたのだが、この少年、実在するらしい。
 食堂や売店で、何度か見かけた。
 その度に女性と会話している。どうやら、相当軟派な気質なのか。

 夢の中の彼とは若干イメージが異なるようで、勝手に穢された気がしている。
 尤もそれはただのやえの思い込みであり、現実の彼にとっては逆に申し訳ない話だが。


 話しかけてみようか――と思った事が何度か。
 でも一体、どう言えばいいのだろうか。

 「夢の中であった事があるんです」とか言おうものなら、相当な電波さんである。
 ……いや、見知らぬ少年をヒーローにする夢を見る時点で、大概だけど。

 そう思うと、躊躇われた。
 また同時に、別に話しかけなくてもいいかと思っている。


 本当の彼がどんなものなのかは知らない。
 だけれども自分は、夢の中で戦う彼に勇気づけられ、前に進む力を貰っている。
 何とも乙女チックで、知人が聞いたら爆笑間違いなしであるが……。

 それで、いいのではないだろうか。
 変に話を広げなくてもいい。暴こうとしないでもいい。追求しなくてもいい。
 兎に角今の自分は、前に進もうとしているのだから。


「……帰ろうかな」


 ふう、と改めて空を見上げる。
 雨が降らなければ、いいのだが……。


273: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/14(水) 23:48:59.56 ID:6Zuccwo2o

「憧、またバイト先から?」

「あ、うん……ごめん」


 新子憧が携帯を片手に席を立つのを、卓から身を乗り出して、ジャージの少女が覗き込む。
 それに付随して、黒髪の少女が頑張ってと手を振った。
 携帯電話に耳を当てながら、申し訳なさそうに部室を後にする新子憧。

 必然、お開きになる流れである。

 掃除をしようと皆が立ち上がる。
 それを見計らって、鷺森灼は、夏なのにマフラーを巻いた厚着の少女――松実宥に話しかける。


「また……怪人がらみ?」

「そう……なのかな……。憧ちゃん、無理しないといいけど……」


 元・阿知賀麻雀部。
 その内の三人――新子憧、鷺森灼、松実宥はある共通点を持っていた。


 人ならざる怪異。
 ヤミー。イマジン。ドーパント。
 それらの怪人と接触する機会があった、というものだ。

 鷺森灼、松実宥――共にイマジンとの元・契約者だ。

 鷺森灼は、風に吹き飛ばされてしまった思い出のネクタイを探す事を条件に。
 松実宥は、寒さをどうにかする為に。

 それぞれ、イマジンと契約してしまっていた。


 それから彼女たちは、仮面ライダーと出会った。
 鷺森灼、松実宥ともに、命の危機を助けられたのだ。

 灼は、激昂したイマジンに殺されそうとなったところを。
 宥は、彼女の願いを湾曲して燃え盛るビルに閉じ込められたところを。

 仮面ライダーオーズ=須賀京太郎と。
 仮面ライダーバース=新子憧に、助けられた。

274: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 00:09:31.19 ID:Il5qAD/Po

 正確に言うのであれば、松実宥はそれより前に、須賀京太郎に助けられていた。
 変な男に絡まれているときに、彼が間に割って入ったのだ。
 あの時は恐ろしかったが……。


「なら、須賀君も……?」

「その可能性は、高……」


 松実宥がマフラーの裾を握りしめるのと同じく、灼もスカートの裾を掴む。

 イマジンという化け物に襲われた自分を庇って倒れた彼。
 それから、どんな形でもよいから、彼の力になろうと思った。
 あまり話すのは得意ではないが、色々と情報を集めて……。

 その先に、彼が再び傷付き倒れたと知ってから。
 退院後の一度を除いて、彼と顔を合わせてはいない。


 理由は至極明快であった。

 松実宥も、京太郎に助けられたらしい。
 変身した憧とタッグを組んだ仮面ライダーオーズに。
 その時の京太郎の様子を、彼女から聞く機会があった。

 宥曰く、「怖がっていた」そうだ。

 そのまま宥に名前も告げず、碌に言葉も投げかけずに、去っていく。
 その背中は、何かに怯えている風であった――と。


 そんな宥の言葉から、灼は察した。
 宥の人物眼には、一目置いていた。
 彼女はこう見えてもしっかりしているのだ。であるが故に、信用できた。

 彼女の見たとおりであるならば、須賀京太郎は、人と関わる事を避けようとしている。
 バイトで怪人と戦っていると打ち明けた新子憧――灼は同じ境遇という事で宥から聞いた――とは異なり、
 彼は、自分一人で背負いこもうとする。

 思えば、灼が話しかけているときもそうであった。

 彼は、自分を遠ざけようとしていた。
 京太郎に関わる事で、関わった人間に被害が及ばないように。
 そう願っての行動であろう。
 彼は、助ける/助けられる以上の関係に踏み込む事を忌諱していた。
 いや、その関係の中でも――接触は必要最小限に止めようとしている風にも、見えた。

275: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 00:22:05.77 ID:Il5qAD/Po

 極力、リスクを下げる為に関わらない。
 そういうスタンスと言うのは、判る。
 でも、彼のそれはスタンスと言うよりは……もっと別の何かであると、思えた。

 ある種、強迫観念じみている。
 言ってしまうのなら、呪いのようなものだった。

 何が彼をそうまで追い詰めてしまったのか。
 その事を、灼は知りたいと思った。
 彼は恩人であった。ともすれば、それ以上の感情を抱いていると言ってもいい。


(でも……)


 だからと言って、彼にそう求めるわけにはいかない。

 憧という共に戦う仲間はいる。
 また、他にも見た。ボウガンを使うライダーとか、神代小蒔という巫女であったりを。
 彼は決して、孤独ではないだろう。

 それでもきっと彼は――灼を庇ったあの時のように、単身何かに向かっていくタイプだ。
 誰かに辛い思いをさせるのならば、自分一人で抱え込む。
 そうして鋼のように、嵐の中に身を投じていく男なのであろう。

 そんな彼の、余計な荷物になりたくない。

 そう思ったが故、灼は、彼に近付く事を止めた。
 ただでさえきっと、己のもの以上に抱え込むだろう少年。
 そんな彼に、必要以上に何かを負わせたくはなかった。


 願わくば――。

 彼のそんな、呪いが解けているといい。
 ヒーローとしてではなく、少年として、その生活を全うしてほしい。
 そしていつか、余裕がでたのなら、自分のところにでも来てくれればいい。

 それまでは……。


(私は私の道を全うする……。だから、そっちも……)


 彼から得た勇気で。立ち向かうその不屈さで。諦めない気高さで。
 自分は、自分に出来る道を進んでいくだけであろう。
 それこそが、自分に出来る、彼への精一杯のお礼なのだ。


 空を見上げる。
 雲行きが、怪しかった。

276: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 00:43:19.91 ID:Il5qAD/Po

(……どうしてるんやろ)


 機嫌が悪くなった空模様を眺めながら、末原恭子は思いを馳せる。

 自分を助けてくれたヒーロー。
 仮面を纏った王子様。
 頼りになる年下の少年。

 仮面ライダー=須賀京太郎に。


 この街に暮らす以上、仮面の戦士という存在を耳にした事はある。
 だけれども、そんなものを信じるほど恭子は子供ではなかった。
 己の身に、その異常が振りかかるまでは。

 巨大な、人間大のゴキブリ男。

 末原恭子が遭遇したのは、そいつだ。
 外見からくるあまりの醜悪さに加えて、そいつ自身から発せられる、粘り気を帯びた雰囲気。
 恭子は恐怖した。そのまま、その場にへたり込んだ。

 思いに反して動かない体を引きずり、逃亡を図る。
 じわじわと嬲るように追い詰めてくるゴキブリ男に、とうとう彼女が行き止まりまで追いやられた時。
 それは――仮面ライダーは、来た。


 そこからは、あまりの早業であった。

 恭子の眼には映らないほどの速度でゴキブリに攻撃を加えると、そのまま叩きのめした。
 彼の発するあまりの圧力に、助けられた自分が恐怖するほど。
 ならば対するゴキブリにとっては一入であり、その身の因果をなぞるように、悲鳴を上げて逃げ出した。
 ただ違うのは、自分には助けが入って、あのゴキブリにはそれがなかった事であろうか。

 因果応報という奴だ。


278: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 00:57:28.31 ID:Il5qAD/Po

(なんか、無茶してへんとええけど……)


 考えながら、頭を掻く。

 あれから彼と、会ってはいない。
 恭子自身、麻雀部でやる事が多かったと言うのもあるが……。
 何度か、お礼に、勇気を振り絞って一年生の教室を覗きに行った。

 それでも彼には出会えなかった。
 幾人かに訪ねてみたものの、暫く休学するらしいという返答のみ。
 詳しい事情を訊いてみたが、それにも答えは無かった。

 どうやら彼は、そこまで誰かと親しくはしていないらしい。
 それなりに誰とでも付き合う。
 だが、その休学の事情を知る者が一人もいないほど――浅いのだ。

 その事に恭子は、眉を寄せたのを覚えている。


 思えば彼は、自己評価が低かった。
 恭子を家に送ろうとする際も、自分のような不審者にそれを知らせていいのかと問いかけてくるほど。
 それほどまでにこちらの安全を考えているのかとも思えたが、
 それ以上にあれは――あの目は、己自身を信じていない、過小評価をしている眼であった。


(なんていうか……難儀な奴やなぁ。もっと、誇ってええんやないんか?)


 彼自身がどう思っているかはさておき、彼はまぎれもなくヒーローだと。
 彼に助けられた恭子は、思う。

 その目が間違っているとは思わない。

 だって――。
 自分自身が恐ろしいのに戦いに出て、人を助けて、誰かの恐怖を拭う。
 そんな存在が、ヒーローでない筈がないのだ。


 ヒーローの条件がどんなものだとか、恭子は知らない。
 また、その事について論じるつもりもない。それはどうだっていい。
 だけど、思っている事はあった。これがヒーローであると、そう感じる指針のようなものはあった。

 恭子の考えるヒーローは、実に単純だ。

 誰かを勇気づけられるもの。
 誰かを励ますもの。
 誰かに、まだ挫けてはならないと思わせるもの。

 それこそが、ヒーローなのだ。

 だから――。


(私はあんたのことを、ヒーローだと思っとるからな)


 彼はヒーローであった。
 彼は、まぎれもなくヒーローである。

 きっと今だって、誰かの心の支えになるべく、戦っているのだろう。

 曇天の空を見上げながら、末原恭子は思いを馳せた。


279: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 01:10:10.57 ID:Il5qAD/Po

(やっぱり京セラでは京太郎攻めなのは確定しているけどここは敢えて若干の変化球を投げておきたいところ
 あの怪物騒動から考えるに淡と京太郎はかなり中が良さそうだし、それに嫉妬したセーラが
 京太郎を攻める……いやないなやっぱりない。セーラは攻められてこそのセーラだからそれはない。
 だからやるとしたら、ここからセーラが京太郎を誘惑しようとして迫るんだけど……
 「やっぱり京太郎には淡って女友達がいるからノンケ」ってヘタレになって決めきれないところに、
 「先輩、俺をそう言う風に見てたんですか……たまげたなぁ」って、軽く言葉攻めしてノンケアピールをして、
 それを聞いたセーラが「それでも俺いつの間にかお前の事が」って言って、京太郎が笑って、
 「じゃあどうして欲しいんですか? 同性の後輩をそんな目で見る変態な先輩は」って、おもむろにワイシャツを……)

「……おい、早くツモれ」

(でもそう考えるのも良さそうだけどやはり京太郎鬼畜攻めというかセーラへの菊攻めは素晴らしいんだけど、
 ここはやっぱりホ 特有の純愛でやっぱりヘテロよりホ が純愛ってソクラテスは素晴らしい事を言った――じゃなくて、
 私もたまには京太郎とセーラの純愛が見たいというか、やっぱり純愛は素晴らしいホ は最高だって分かんだね……でもなくて、
 ここは、淡っていう女友達がいる京太郎をノンケだと思ったセーラが、自然と身を引いていく感じになって、
 でも抑えきれずにラブレターとか出しちゃって、それでも結局告白の場に向かう事ができずに、
 あとあと京太郎からこんな事があったんだよって言われた時に罪悪感を感じちゃって、
 でも京太郎の喋り方に、淡は彼女じゃないのか、自分にもチャンスはあるのかと考えてまた自己嫌悪しちゃって……)

「おい、照。なあ、おい」

(そんなセーラが少しずつ自分から遠ざかっていく事に寂しさを感じた京太郎は、
 ある日淡に迫られるんだけどなんとなく咄嗟に拒絶してしまって、自分自身への違和感を抱いて、
 そこでようやく気持ちを自覚して、セーラの元へと向かっていく。もう走る。確実に走る。
 息が上がって喉が乾いた京太郎にアイスティーを出したセーラに向かって京太郎は、
 「やっぱりどうしても、俺は先輩の事しか考えられないんです」って、自分が好意を抱いていることをカミングアウト。
 仲がいい先輩に対していわばマイノリティーであるホ をカムアウトした京太郎は、
 二度とセーラの前に顔を出さないようにしようと思うんだけど、
 そこはセーラが追いかけて、雨が降る中、幸せなキスをして二人は結ばれる――って)

「おい!」

「……分かった」


 丁度自分が今したラブストーリーにぴったりの天気だな、と。
 手配を整理しながら、宮永照は窓の外へと目をやった。


280: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 01:27:26.45 ID:Il5qAD/Po

(ホ はせっかち……じゃなくて、菫はせっかちだな)


 ふう、と渋谷尭深が入れたお茶を啜る。
 熱い。これは熱い。ちょっと熱いんじゃないだろうか。
 熱いのは京太郎とセーラの仲で十分である。セーラの中温かいなりぃ……。

 なんてのはともかくとして、「ふー」「ふー」と冷ましつつ、部室を見回す。


 今ここにいるのは、自分を含めて4人。
 渋谷尭深。亦野誠子。弘世菫。そして自分――宮永照、だ。
 そこに、いるべきもう一人の姿はない。

 大星淡。

 自分たち、元白糸台高校の攻撃的チーム――虎姫の一員である。
 彼女は一か月以上前、この部室に顔を出さなくなった。
 あまりにも唐突だった。全員が驚愕した。


 中学の頃、事情があってインターミドルに出ていないと言った彼女は、麻雀に貪欲だった。
 「絶対安全圏」「ダブリー」と名付けた、二つのオカルトを駆使して他者を蹴散らす。
 圧倒的強者。麻雀の申し子であったのだ。

 彼女はきっと、麻雀を好きだったろう。
 照の後をついて、いつも笑っていた。
 未確認生命体の事件によってインターハイが延期と言われた時、最も憤慨していたのは淡だ。

 そんな彼女の、突然の退部宣言。

 異常であった。流石の照も、驚愕に声を上げるほど。
 恐らく、この部室の誰よりも――彼女は純粋に、インターハイを楽しみにしていた。
 妙な柵などは何もない。単純に自分の実力を露わそうと、考えていたはずだ。


 それなのになぜ。

 部長である弘世菫は、何度も彼女の元まで足を運んだ。
 彼女がいなければ、定員割れをしてしまって、『元・白糸台』としてのグループを結成できなくなるからではない。
 あれは、本心から心配していた。

 あれほど楽しんでいた淡の、唐突の引退だ。
 それが尋常なる事態ではないとは、誰もが思うだろう。
 故に、菫は淡の元へ向かったのだ。なにか私生活で困りごとはないのか――と。

 それでも、結果は芳しくなかった。

 せめて部室に顔を出してくれと言ったが、それも受け入れられなかった。
 「気が向いたら」とだけ。
 その「気が向いたら」は、今日この日まで実現していない。

 このチームは、淡抜きになってしまっていた。

281: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 01:50:14.04 ID:Il5qAD/Po

(そのあたり――その後からか。菫は機嫌が悪いし)


 そういえば、それは確か……いつだったか。
 いつだったかは忘れたが、乱暴にドアを開けて、椅子にどっかりと腰を下ろした菫は吐き捨てた。

 ――淡は麻雀より、男を取ったのだと。

 憤懣やるせないといった菫の様子に怯える誠子と、慌てる尭深。
 どういう事かと、聞いてみた。
 すると、菫は言った。淡が、男とねんごろにしているのを見た――と。


 色々と暈されていたが、菫がそう判断するに足る何かを、見てしまったらしかった。
 そうでなければ少なくとも、憶測などで誰かを口悪く言わない。
 そんな菫が言うのだから、きっと真実なのだろう。

 ……が。

 照は思った。
 確かに、それもあるだろう。淡が、あの須賀京太郎と楽しげに言葉を交わしているのを見た。
 互いにきっと、憎からず思っているはずだ。残念ながら(京セラ的な意味で)。

 でも、それだけではないのだ。
 それがあの怪物。あの、蝶がごとき怪人だ。


 あの時の事を思い返す。

 やけにあの二人は、手馴れていた。
 怪物が出たと言うのに怯え・慌てもせず、ある種の冷静さを持っていた。
 余程、そういう場面に出会う事が多いのであろう。
 彼らはそういう心構えを――『覚悟』をしている人間だった。

 そして、避難した先での淡からの口止め。
 それにより、照は確信した。淡が部活に出られない理由はこれだ……と。


 須賀京太郎と先に出会ってから、その戦いに身を投じたのか。
 身を投じている矢先に、須賀京太郎と出会ったのか。

 どちらが先かは知らない。
 ただ、どちらにしても淡の様子がおかしかったのはあの怪物たちとの戦いで、
 須賀京太郎と親密になってのも、その戦いが理由であろう。

282: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 02:06:50.43 ID:Il5qAD/Po

 そんなのどちらでも、よかった。

 兎に角、淡が顔を出さない事には理由があったのだ。
 麻雀そのものを、嫌いになった訳ではない。
 その戦いさえ終われば、彼女は再び部活に顔を出すだろう。

 その時、菫の説得ぐらいはしてあげようと思う。


(……)


 それともう一つ。

 菫の言葉によるなら、大星淡は相当切羽詰まった様子であったらしい。
 取り付くシマもなく、持ち前の愛嬌や溌剌さも失って、打ちひしがれた目を向ける。
 そんな状態で、退部を告げていた。
 きっと、よほど戦いが不満であったのだろう。それか、恐ろしかったのか。
 兎に角、良い感情など欠片も抱いていなかった。それほどまでの状況だったのだ。

 そんな淡が、少なくとも笑いを取り戻せた。
 その事実に、宮永照は胸を撫で下ろす。
 巻き込まれただけでも、不幸な宿命を背負わされてしまっただけだとしても。

 その中で何かしら、やりがいや楽しみ……或いは笑顔を浮かべる事が出来る何かを見つけられたのなら。
 それは、幸福であるのだと思う。


 その幸福を淡にもたらしたのは、須賀京太郎だ。

 正直なところ、彼の人となりはよく知らない。
 もしもあの本が彼の性格を反映させていると言うのであれば、
 明朗で面倒見がよく、それでもどこか抜けているお調子者で、でも何かに真剣に打ち込めるというところか。

 まあ、所詮はフィクションであるし……。
 彼が本当にそんな人間かどうかは分からないが。

 少なくとも、淡が懐くほどの人間なのだ。
 悪人ではないと思いたい。自分に、プリンを譲ってくれもしたし。


 そう言えば、あの時の彼はどこか辛そうであった。
 あれも、戦いの運命に身を投じる事となったからであろうか。
 淡も京太郎も、どちらも戦闘の因縁に負を背負わされていたのだ。

 そんな二人が――。

 笑えるようになったのならば、それはきっと良い事なのだろう。
 今、どうなっているかは分からない。
 これから先、どうなるのかも判らない。

 でももしかしたら、いつかきっと――また、淡がこのメンバーに加わる日が来るのではないか。

 そう、照は信じたかった。


(……淡の事を、お願い)


 折り重なる雲に覆われた灰色のキャンバスを目に映して。
 自分の思いが届いてくれればいいと、宮永照は思った。

283: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 02:11:22.62 ID:Il5qAD/Po
ということで、今までの被害者各員(モブは含めない)
小走先輩、アラチャー、末原さん、おねーちゃん、てるてる、すばら、美子、仁美、豊音

結構助けて、いい具合に揃ってきましたねぇ

287: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 02:20:26.01 ID:Il5qAD/Po
>次の視点を判定します

判定
0~20:未来の大星淡
21~40:江口セーラと麻雀部
41~70:新子憧と伊達明
71~99:白水哩と鶴田姫子

偶数ゾロ目:カザリとアンク
奇数ゾロ目:???

↓3

292: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 02:24:26.39 ID:Il5qAD/Po
あわあわ、またコンマ操作しやがった……なんだこれは……

293: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 02:28:52.36 ID:Il5qAD/Po
……で


判定
1~20:正直、京太郎を見ていると辛い
21~40:この世界の自分には、幸せになって欲しい
41~70:交わした約束、忘れないよ
71~99:この世界の誰も殺させない

偶数ゾロ目:あちらの世界での、京太郎との出会い
奇数ゾロ目:カードを相当数使用した、大星淡(大)

↓3

299: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 02:35:37.65 ID:Il5qAD/Po
>>296の判定:70
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=oxHHijDieYo


300: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 02:37:00.42 ID:Il5qAD/Po



 Interlude「ある世界線の記憶」



301: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 02:49:37.33 ID:Il5qAD/Po

「俺は、仮面ライダーオーズ――須賀京太郎だ」


 先ほどまで淡の前で見せていた、超人的な姿はそこにはない。
 怪物の爆散。同時に零れ落ちるメダルの山。
 街灯に反射するそれは――淡には、満天の星空に見えた。

 その中で、手を差し伸べる金髪の少年。

 戸惑う自分に向けられる、困ったような笑み。
 あの、戦いの中の――淡が身震いを憶えるほどの姿はない。
 彼は、優しい少年だった。

 どう続けていいものかと悩んだ彼は、こう言った。


「なんていうか……よろしくな?」


 これが彼女にとっての、始まりだった。
 思い返すには近く、手を伸ばせないほど遠い場所。
 既に失われてしまった世界の、記憶である。


 助け起こされた淡は、スカートを払って少年に問いかけた。
 自分に襲い掛かった先ほどのアレは、なんなのか。
 オーズとは何か。どうして少年がそれに姿を変えるのか。
 それから、何故自分を助けてくれたのか。

 見れば、少年の躰にはいくつもの傷があった。
 そして、淡が取った手は、恐怖に震えていた。

 助けられたのもあるが……。
 それ以上に、おかしな男だと思った。
 自分だって戦いが怖い癖に、戦いに飛び込んでいくのだから。

 余程の事情があるか。
 それとも何も考えてないか。
 頭が半分くらい壊れているのか。

 失礼だが、そこまで思っていた。
 とても強そうには見えない。勝負事とは、無縁そうな穏健な風貌なのだ。


 という、淡の問いに対して、少年は困っていた。
 事情を打ち明けるのを、躊躇っているようであった。
 ただ、最後の質問にだけは――彼ははっきりと答えた。


「目の前で誰かが襲われてたら……助けない理由なんてないだろ?」


 自分だって怖いくせに。
 でも、その答えには――好感が持てた。

302: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 02:58:52.27 ID:Il5qAD/Po

「っていう訳なんですけど……話しても、いいんですかね?」

「んー……まあ、しゃあないやろ。知らん方が危ないって事もあるし、ここまで来たらな」


 その少年、京太郎は。
 淡にその場を立ち去る事を求めた。そして、今日見た事を忘れるようにも、と。
 それに淡は、異を唱えたのだ。

 そんな危ない怪物がいるなら、教えてくれ。
 事情が分からなければ、また出会うかも知れない。
 自分の知人だって危ないかもしれない。少しでも知りたい。

 そう、食い下がっている時であった。
 その場に新たに訪れた、一人の少女(最初は少年だと思った)。
 京太郎の戦いの師匠にあたるというその少女――江口セーラは、淡の主張を受け入れた。


 この街には、今二つの危機がある。

 一つはドーパント。
 ガイアメモリと呼ばれるガジェットを用いて、人間が怪物に様変わりするもの。
 その持ち主には、生体コネクタと言われる入れ墨が刻まれている事。

 一つはヤミーとグリード。
 八百年の眠りから目覚めたその怪物たちは、人間の欲望を喰らうのだと言う。
 その怪物が人にメダルを投じる事で生み出される怪人が、ヤミー。
 鳥・獣・昆虫・水棲生物・重量系動物。
 さまざまな種類のヤミーがいるのだと、知った。

 前者は注意できるが、後者は注意不可能だ。
 せめて、様子がおかしな人間には近寄らないようにする事。
 事実、事前対処というのは難しいと言っていた。


 ならば、と淡は提案した。

 それなりに自分は顔が広い自信がある。
 その方面で何か協力はできないか、と。
 淡としても、ライダーの傍に居た方が安心できるし、京太郎たちも探索の手が多い方がいいだろう、と。

 セーラは難色を示した。
 京太郎など、最後まで渋っていたほどだ。

 それでも最終的に、淡は、彼らの協力者となった。

303: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 03:11:53.25 ID:Il5qAD/Po

 それから、色々な戦いがあった。
 淡が知らない戦いだってある。当然、危ないからと遠ざけられたのだから。
 詳しい事情を話されなかった事も多い。
 それでも京太郎たちの手伝いをしていたし、なんとなくの状況は把握していた。

 そう言えば一時、こんな事もあった。


「……なによ、これ」

「何やけったいなオカルト持ちか……」

「ふふーん」


 新子憧=仮面ライダーバースの装着者。
 江口セーラ=仮面ライダーアクセルの変身者。
 須賀京太郎=仮面ライダーオーズの資格者。

 彼らと、卓を囲む機会があったのだ。
 どうせなら普段自分は一般人と見られて軽んじられているところもあるし……。
 ここらで盛大に一発、自分だって凄いのだと見せようとしていたのかも知れない。

 実際、渋い顔をする憧と目の色を変えるセーラを見て、淡はほくそ笑んだ。
 どうだ、と思った気がした。何がとは言わないが。
 それから、当の須賀京太郎に目を向けた。
 彼の反応が、一番気になるのである。

 だけれども……。


「……ん、どうかしたのか?」


 彼は、非常に涼しい様子だった。
 すわ、彼は淡の絶対安全圏を無効化する能力でも持っているのかと感じた。
 男子でその手の能力を有する者は数少ない。
 いたとしても、大概は表舞台に出ない。インターハイなどよりも、早い段階でプロにスカウトされるか。
 それとも地下に潜るか、である。

 京太郎は、オーズに変身するものであるし。
 その手のオカルトを保持していても、何らおかしくないのかと考えたが……。
 真相は、実に単純明快であった。


「いや、5シャンテン6シャンテンとか……いつも通りだし」


 彼は、常時淡の「絶対安全圏」を喰らっているのと同じ配牌だと言う。
 なんだそれと思った。
 これほどまでに不運な奴が、この世に居るのかとも驚いた。

 しかしそれでも、彼は変わらない。
 手配がどうであろうとも、オーズで戦う時と同様、諦めずに進んでいた。

 ……尤も、仲間内で打つ時は普通に最下位であったが。

304: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 03:24:05.30 ID:Il5qAD/Po

 本当に、色々な戦いがあった。
 過酷だっただろう。凄惨を極めただろう。
 戦いが終わるたびに、傷を作って戻ってくる京太郎。

 また彼と、生きて再会できるのか。
 会話を交わす事が出来るのか。
 笑いあう事が許されるのだろうか。

 戦いに赴く彼らを、淡は常に気が気でない気持ちで見守っていた。
 心細かった。
 どうして自分が、直接的に彼らの力になれないのかと、恨んだりもした。


 あるとき、江口セーラが重傷を負った。

 曰く、京太郎に不死身を分けてやったそうだ。
 淡は、セーラに縋り付いて泣いた。
 待つ事しかできない己を、呪ったりもした。


「……ま、そーゆーなって。お前が待ってるって考えたら、やっぱり力になるんやから」


 実に気障ったらしい台詞だったが、京太郎が言うよりも、セーラが言う方が様になっている辺りが不思議だ。
 次の麻雀なら負けないと、彼女は笑う。
 打つ為にも、早く回復させないとな……とも。
 そして事実、セーラの回復は早かった。これには、淡も驚いた。


 ある時は、新子憧が傷付いて帰ってきた。
 グリードの総攻撃により、バースの鎧を通してもなお、少なくないダメージを受けたのだ。
 同じ女として他人事とは思えないほど、背中に刻まれた瑕が痛々しかった。

 それでも憧は、笑うのだ。


「あたし自身が、やりたくてやってるから……気にしなくていいって。心配かけて悪いとは思うけど」


 そんな風に。
 彼女が戦う理由は、鴻上財団と交わした何らかの契約によるもの、らしい。
 そのあたり、無償で戦うセーラや京太郎と違うのだと、どこか引け目を感じている風だった。

 そんな事はないと、淡は言う。
 どんな理由だろうと、誰かを守ろうと戦っている事には変わりがないと。

 憧は、困った風に笑ってから、照れくさそうにしていた。

305: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 03:46:39.87 ID:Il5qAD/Po

 その戦いの果てに、世界の全てが崩壊する。
 宙に浮かんだ、巨大なオブジェクト。
 世界をメダルとして吸い上げる悪魔の器。

 京太郎たちからの呼びかけで、人々の非難は完了していた。
 それを手伝った淡は今、京太郎と二人きりだ。

 京太郎と淡の眼前には、その世界を滅ぼす欲望の器。


 勝てないと思った。
 この、あまりにも絶望的な光景に。
 絶対に、生き残る事は不可能だと思えたのだ。

 戦いは熾烈を極めた。
 メダルを取り戻していくグリードを相手に、京太郎たちは苦戦を強いられたのだ。
 傷付いていく仲間たち。加速する戦禍。齎される破壊。

 ましてやそれに、ほぼ全てのメダルを取り込んだ器が相手など――。


 絶対に、無理だと思っていた。
 勝てるはずがないと。生き延びられるはずがないと。

 だから、淡は――これまで決して口にしなかった事を口にした。

 この言葉を出してしまったのならば、京太郎とは決別するだろう。
 彼は絶対に肯んじない。それに頷きはしまい。
 それでも、それでも淡は言いたかったのだ。
 彼に、死んでほしくないと。生きてほしいと。


「無理だよ……あれは、絶対に無理だってば」

「……」

「あんなのと戦ったら、きょーたろーは……死んじゃうって」

「……」

「だから、ねぇ……逃げよう? どこかに、逃げようよ」

「……」

「きょーたろーは、もう、十分に戦ったから……これ以上戦わなくてもいいよ」

「……」

「それに……世界を喰い尽くすなんて嘘かも知れないし、きっと、ある程度したら収まるって……」

「――淡」


 彼は悲しそうに微笑んで、オーズドライバーを取り出した。
 やはり、止まらない。止まる筈がない。
 言ったところで、彼は戦いを止めないなどとは分かりきっていた。
 だからこそ、自分は惹かれたのだ。


「俺が戦わなくてもいいかもしれない……そうだったら、いいなとは思う。
 でもさ、それでも俺は……戦う。ここで逃げる事なんて、できないんだ」


 ――プテラ! ――トリケラ! ――ティラノ!
 ――プットティラーノ・ザ~ウル~ス!


「……ごめんな」

306: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 03:59:16.03 ID:Il5qAD/Po

 結局のところ――須賀京太郎は、生き残った。
 その身に宿したメダルの力を失い、オーズとしての能力を無くして。

 これで平穏に戻れると、淡は安堵した。
 だが、京太郎は止まらなかった。

 ヤミーとグリードの脅威はなくなった。
 ミュージアムも、その根を絶たれた。
 でも、だからと言って、全てが平和になった訳ではないと。


「……なんていうか、こういう性格なんだよな」

「ふーん」

「付き合わせちまって、悪い……」

「別に謝らなくてもいいよ。好きでやってるんだから…………京太郎の事が、ね」

「そう言ってくれると、ありがたい――って、ええ!?」

「……あれ、もしかしてー、気付いてなかったのー?
  あれだけ『逃げよう』って言うって、そーゆー意味って解らなかったの?」

「……マジかよ。おったまげた」


 それでも、淡と彼は結ばれた。

 また彼が、危険に向かって行ってしまうと言うのなら。傷付いてしまうと言うのなら。
 それ以外のところで彼を癒せばいいし、それならそれで思い出を作っておいた方がお得だと思ったのだ。
 終始渋っていたが、結局折れた。

 それから、淡は幸せだった。

 色々なところに遊びに行った。
 二人で星を見に行った。
 銀時計をプレゼントして貰った。
 正式に、男女の関係になった。

 彼は未だに忙しそうではあるものの、幸福な毎日だった。

 このまま、年を取っていくのだろうと――そう考えていた。
 そんな矢先の、出来事であった。


307: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 04:13:05.42 ID:Il5qAD/Po

「なんで……こんな事が……」


 空に浮かぶ、黄色の球体。
 その発光体が、空間を埋め尽くしていた。
 同時に、景色が様変わりをする。

 あったはずのビルが消えて、ある筈のない建物が浮かんでくる。
 次の瞬間には、それこそが正しいものだと思えてしまっていた。
 何かが、書き換えられていた。

 欲望の器に負けずとも劣らないその現象に、淡は震えた。


「……大丈夫だ。仮面ライダーが、ここにいる」

「きょーたろー……」

「言ったろ? お前を、護ってやるってさ」


 あの時と同じ優しい笑みを浮べて、須賀京太郎はベルトを装着した。
 ロストドライバー。
 オーズの力を手放すにあたって、片岡優希から受け継いだ、京太郎の新たな力だった。

 そして、京太郎はメモリをタップする。
 叫びを上げる、“地球の囁き(ガイアウィスパー)”。
 切り札の名を持つ、京太郎の運命がそこにはあった。


「……変身」

 ――《JOKER》!


 その眼前には――雲霞の如き、怪人の大群。
 京太郎を封じ込まんと……殺しつくさんと、大量の敵が、そこにはいた。
 今度こそ、生き延びられるはずがないと思った。
 それでも、京太郎は笑うのだ。

 辛い時こそ、苦しい時こそ歯を食いしばって笑う。

 それが本当に大事な事なのだと、彼は言っていた。

308: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 04:25:31.95 ID:Il5qAD/Po

「淡……逃げてくれ。俺が道を作る」

「やだ……! そんなの、絶対嫌! きょーたろーなら、分かるでしょ!?」

「ああ、判る……判るよ。でもな……俺は逃げられない。逃げたくない。
 俺がライダーだからじゃない……。俺は、お前に死んでほしくないんだ。生きていてほしいんだ」


 そう言うと、彼は飛びかかってきた怪物を打った。
 あまりの威力に、弾き飛ばされる怪物。
 周囲を取り囲むその人垣に、亀裂が入った。

 それでも淡は、逃げられなかった。
 京太郎に言われても、この場を離れたくなかったのだ。
 そんな淡を守りながら、京太郎は怪物たちを薙ぎ倒す。

 人の身に出せる、その限界までの高ぶりを見せる技能。
 足手まといを抱えても、京太郎の方が圧倒的に強い。
 一つの旋風と化し、怪人を蹴散らす京太郎。

 鎧袖一触。
 歴戦の兵。引き合う運命のメモリ。
 それは、雑多な怪人を一切寄せ付けない。


 このままなら、ひょっとして――と。
 淡がそんな期待を抱いたその時だった。
 そいつは、現れた。


「……ああ、なるほどな」


 小さく呟く京太郎。
 紫色の、恐竜じみた怪物。
 見ただけで、全身が凍りつく。それだけの圧力を、放っているのだ。

 あれが、こいつらの主犯格だ。

 あれこそが、この惨状を生み出している存在だ。

 そしてあれは――。

309: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 04:30:03.62 ID:Il5qAD/Po

「淡」

「……な、に?」

「こいつは、俺が止める。だから……逃げてくれ。
 俺の分も――生きてくれ。お前は、幸せになってくれ」


 京太郎が死んで、幸せになれる訳がない。
 そう、淡は首を振った。
 愛するものを失って、その痛みが消えるわけがない。
 ましてやこうして遺されたのなら、立ち直れる筈がなかった。

 そんな淡に、京太郎は困ったような声を出した。
 それから、「じゃあ、言い換えるぜ」と言葉を区切り、淡の手をとった。


「また――会おう。絶対に、生きて再会しよう」


 「約束だ」と呟いて、京太郎は淡に背を向ける。
 それが叶わぬ事だなんて、判っていた。
 でもそれでも――と、思う。

 京太郎は仮面ライダーだ。
 彼が約束を違えた事など、無い。
 この場で淡という足手まといがいるよりは、彼一人の方が、切り抜けられる確率は高いだろう。

 故に淡は、足を踏み出した。

 どんなに絶望的な闇の中であったとしても、仮面ライダーという光は輝く。
 だからきっと、京太郎は約束を破りはしないだろう。
 ここで殺されてはならない。彼の重荷になってはならない。

 そんな一心で、淡はその場を後にした。

310: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 04:49:43.02 ID:Il5qAD/Po

「……嘘吐き」


 ついぞ、約束が果たされる事は無かった。
 崩壊する世界で、淡はゼロライナーと出会う。
 自分たちに襲い掛かった存在。その正体。

 イマジンと言う怪物。世界を改変する敵。
 そのイマジンによって破壊されてしまった世界から来たというゼロライナー。
 唯一の解決手段。戦う手段。

 この世界は遠からず崩壊する。
 生き残りは、已のところでゼロライナーに拾い上げられた淡だけ。
 過去を書き換えられて、この世界は消えてしまう。


 淡は決意した。

 彼との約束を守るために。
 恐怖を殺して、戦う事を選んだのだ。
 イマジンを止める。それしか、手段はなかった。

 時のレールが動き出す。
 淡は、過去へと跳んだ。


「私が……守る。今度こそは、私がきょーたろーを守る」


 そこで、誤算があった。
 淡が過去へと跳んだ事、そして、デンライナーが来てしまった事。
 それにより、世界線がズレてしまったのだ。

 どうあがいても、彼とは再会できない。
 ともすれば――もしもチケットを消費しつくしたのであれば、淡も消滅するだろう。
 それでも、交わした約束があった。誓った思いがあった。


「きょーたろーの護った世界を壊させない。平和を壊させない。その為に、私は戦う」


 その為に、大星淡は戦い続ける。
 自分の未来に辿り着かないとしても……。
 この世界は、京太郎が護った世界と同じだ。京太郎が愛した世界と同じだ。

 過去の自分がいる。過去の京太郎がいる。過去の仲間がいる。

 あの時はただ、見ている事しかできなかったけど。
 ただ守られるばかりで、何もできなかったけど。
 今度は、護れる力がある。須賀京太郎を、仲間を、世界を……。


「絶対に、貴方を救ってみせる」


 あの未来のように、イマジンに囲まれて果てる事があってはならない。
 あのイマジンは――直感ではあるが、京太郎と同じものだと思った。
 ゼロライナーの持ち主は、過去のライダーが死んだために未来が変わったと言っていた。
 きっと、あのイマジンは、仲間が死んでしまった方の京太郎なのであろう。

 そんなものは、作らない。
 絶対に、京太郎の心を守って見せる。

 淡は、己の恋人である京太郎と他でもない自分自身に――そう約束した。


                                                   ――了


311: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 04:53:22.44 ID:Il5qAD/Po
という訳で、以上
なんとかセーラと憧の出番を作ってはみたものの、舞姫は……
未来淡に関しては中の人つながりだと思って許してほしい。私は謝らない

それじゃあ、お付き合い感謝
おやすみー

323: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 22:57:17.19 ID:WJEaX9zko
【選択】

1:江口セーラ
2:新子憧
3:白水哩&鶴田姫子

↓3


330: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 23:03:09.50 ID:WJEaX9zko
>>326の選択:2にて「新子憧」
ちょいお待ちを
あ、書くのに時間かかるから気軽に雑談とかしててオッケーなんで、まあ


……ひたすらダーク系の小ネタを書き続けるスレを立ててもいいよなぁ

331: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 23:05:45.09 ID:WJEaX9zko



  Interlude「憧のお・し・ご・と」



333: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 23:23:09.16 ID:UF5+m38So

「はい、はい、はい……了解でーす♪」


 須賀京太郎はスマートフォンを持っているらしいが、新子憧は未だに折り畳み型携帯である。
 なんというか、タッチして操作するという事が面倒そうだと言うのがあるが、一番の理由は可愛いからだ。
 スマートフォンにストラップを付けるのと、ガラケーにストラップを付けるの。
 断然、後者の方がいいと思う。

 なんてことはともかく、新子憧は電話を切った。

 電話の相手は鴻上ファウンデーション。そこのドクター、対木もこ。
 戦いが一段落したという事で、バースのメンテナンスを行っていたのだ。
 不具合が無いか軽く検診するかというより、今回は割と大がかりな分解を含めた検査である。


 まずは、ここ最近戦ってきた相手が、相当な強さを持っていたという事。
 その分、深刻なダメージを刻まれてはいないか――一見判別しにくい部分にも――というのと、
 やがて来たるべきグリードとの戦いに向けて、調整を行おうというのだ。

 なるほど確かに、その通りだ。

 肝心の戦いで、どこかしらの不調により十分な実力を発揮できない。
 それどころか、それが原因で重大な負傷をするなど、避けたいものであった。
 最低限のメンテナンスは、マニュアルに従って自分もできるようにはしているものの、やはり専門的な事となれば門外漢。
 そのあたりは、ドクター=対木もこに任せっぱなしだ。


「……ふう」


 携帯を畳み、息を漏らす。

 すっかりと自分もこの戦いに――戦いの運命に適応してしまった。
 初めのうちは、戦いたくなかった。戦うなんて怖すぎた。
 今もまだ怖いが、それでも受け入れる事はそう難しい事ではなくなっている。

 絶対に嫌だし、そうなりたくなんて無いが……。
 万が一絶望的な戦いに直面したとしても、タフなジョークを飛ばして笑えるだろう。
 色々な意味で、慣れ始めていた。

334: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/15(木) 23:41:38.45 ID:jDX6Q2JLo

 戦闘の最中、とにかくタフなジョークを言おうと思っているのは、ある男の影響だ。

 どんな時でも冗談と諧謔で笑い飛ばせれば、体が軽くなる。
 余計な力が抜けてリラックスすると、パフォーマンスが大きく変わる。
 というのは、その男の談。

 その時は半信半疑であったが、今では実感している。
 余計な緊張が無い方が、仕事量は大きくなるのだ。幾度かの戦いを通して、それは確認できた。


 その男とは――伊達明。

 戦場を巡る医者であり、比類なき程の能力を持った名医であり、
 仮面ライダーバース=新子憧のサポート役であり、教育者であり、師匠であり――。

 憧の“債権者”である。


(……本当に、グリードと戦う事になるのかな)


 溜め息を漏らした。

 鴻上光生の読みでは、グリードとオーズが争う事は避けられない。
 また、憧自身にも……あれだけやらかしたグリードたちが、今更すんなり元の鞘に収まるとは思えなかった。
 それがどの程度の諍いになるのかは分からない。
 京太郎の望む、「一発殴り飛ばして連れ帰す」程度なのか。それとも命がけの死闘なのか。

 ……まあ。
 願わくば、前者であって欲しかった。

 須賀京太郎との付き合いは、長いとも短いとも言えない。
 彼と共闘してからの長さでいうなら短いし、顔を合わせてからという意味なら長い。
 一応、オーズのサポートが任務である以上、彼の戦闘行動について把握はしていたが……。
 果たして本人が、どういう思いを抱えて戦っているとか、そのあたりについては無関知だった。

 それでもまあ、最近になって戦いを共にする間に、色々と分かってきた。


 まず須賀京太郎は、格好つけしいだ。
 それから、穏やかそうながらお調子者で、その癖変なところで神経質と言うか真面目。
 ポジティブかと思えば、ネガティブとも言える。

 思うところは色々ある。

 だけど、評価は決まっていた。
 結局あいつはお人好しで――悪い人間ではないのだ。
 実際、人を守るために戦っている以上、そんな憧の判断に間違いないだろう。



335: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 00:05:54.98 ID:uQgLdnn3o

 で、グリードと戦う事になったとして……。
 そんな悪い奴ではない須賀京太郎が、一体どんな状態になるか。
 その事が憧にとって、気がかりだった。

 須賀京太郎の詳しい事情なんてのは知らない。
 別に無理に打ち明けて貰おうなんて思わないし、人の過去に関してそこまで憧は頓着を持っていない。
 もし彼が相談してくるなら聞くだろう。そんなぐらいだ。


 だけれども――。

 彼が、その外見に/年齢に不相応なほどの過去を持っていると言うのは、なんとなく感づいていた。
 元々、どことなくおかしな人間だと思った。
 平常そうにしていながら、行動がどことなく狂っているのだ。

 異常なまでの自己犠牲。異常なまでの献身。異常なまでの闘志。

 死にかけの一歩手前まで行っても、まだ立ち上がる。
 理不尽な契約を持ちかけられようとも、不平を漏らさず人助けを優先する。
 裏切られて傷つけられても、まだ、相手に手を伸ばそうとしている。

 こんなのは、よほどの聖人か。それとも狂人か。
 そんな風に思っていた。そして、不気味な存在だとどことなく憧は警戒していた。
 憧の持っていたこれまでの常識には、こんな人間はいなかったのである。


 だけれども――。

 憧は知った。
 彼は聖人でも狂人でもない。ただの常人であると。
 特別な精神性などない。
 天に選ばれた存在でもなければ、特殊な才能を身に宿してもいない。
 英雄の如き勇気も、勇者の如き清廉さも持たない。

 常人だった。
 常人であるからこそ傷付き悲しみ、それをどうにかしようと足掻きだした。
 割り切れてなどいない。飲み込めてなどいない。精神が完成してなどいない。
 須賀京太郎は年相応の、少年である。

 そんな、少年だからこそ。
 彼は年相応ではなくなってしまったのだ――。


 新子憧は知ったのだ。ある場面に立ち会う事があったから。
 彼が抱え込んだ過去を。背負い込んだ罪を。受けてしまった呪いを。

 宮永咲という少女。憧たちと同じく、ライダーであった少女。

 その少女との因縁――おそらくは彼女を喪失した事だろう――が、
 ただの少年だった須賀京太郎の心に、深い影を落とした。

 抱えきれない哀しみを持った時、耐えきれない痛みを受けたとき。
 人の精神と言うのは容易く変容する。
 超人ならば或いは耐えられるかもしれないが、彼は超人ではない。

 ただの、年相応の少年であったが故に――。
 彼はその、年相応の少年でなくなることを、余儀なくされたのだ。
 

336: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 00:23:26.50 ID:L9WdETxKo

 そこにどんな事情があったのか、憧は知らない。
 ただきっと、少年が身に受けるにはあまりにも重すぎるものだったのだろう。
 だから、須賀京太郎の心は変質した。変質してしまったのだ。

 あの出来事に立ち会ってから、それまでの須賀京太郎の像は変わった。

 得体の知れない、聖人じみた/狂人じみた精神性の持ち主ではない。
 ただ、謝る相手を失ってしまって、それでも何とか謝ろうとしているだけの哀れな少年だ。
 涙を流す事を忘れて、代わりに血を流し続ける。
 どうやって謝っていいかが分からないから、そんな自傷行為/自罰行為に耽る。

 そして、自分がそんな状態にあると正しく理解できてはいない。

 それだけの少年だった。


 最近はそれでも、そんな状態から立ち直りつつあるのだろう。
 まあ、それはよかったんじゃないかと思う。
 見ていて気分がいいものではないし、流石に同年代の少年が嘆き続けているというのに同情する。

 立ち直れるなら、それに越した事はないだろう。
 憧からはあまり手助けらしい手助けはできないが、それでも何かあったのなら、力ぐらいは貸してやってもいいか。
 それぐらいに、須賀京太郎の事を憎からず思っている。


 そんな京太郎が――。回復の兆候にある京太郎が――。

 グリードと戦う事になったのなら。
 完全に刃を交えて、決別しか選択肢がない状態になったのなら。
 どうなってしまうか、という事である。


(治りかけのところに瑕を受けるんだから……きっとまた、大変な事になるよね)


 傷口を余計に抉る事になる。

 その痛みに、彼は耐えられるのだろうか。


 耐えられるとも思うし、耐えられないとも思う。
 言ってしまえば、どうなるかは憧にもわからないのだ。

 彼は少なからず成長している。
 以前はどうだったかは知らないが、今の彼と以前の彼が同じ結論に至るとは限らない。

 また、憧を含め――彼には共に命を懸けあう仲間がいる。
 それはきっと、ただの関係よりも濃密だ。
 憧としては、それと友人は同列である。どちらが上でも下でもない。
 ただ、それぞれ関係に差異がある。それは当たり前だ。

 でも京太郎にとってはどうなのだろうか。

 願わくば――それが彼の持つ以前の人間関係とは異なるもので、彼の支えであってほしい。

338: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 01:15:16.37 ID:WIT4da+xo

 ……なんてのは。

 憧の自己保身も含まれた、願望である。
 憧の戦う理由は、彼を間接的にでも傷つけてしまうものであるから。
 憧が幸福になる為には、少なからず彼の(心の)犠牲が含まれてしまうから。

 だから、彼の心が少しでも傷付かなければいい。
 傷付いても、立ち直ってくれればいい。
 立ち直るような環境に居てくれればいい。

 それは、純粋な願いではなかった。
 純粋に彼の事を思いやっての望みではなかった。


(でも、グリードと戦えないと……あたしは……)


 憧には、借金がある。
 もしも――絶対にありえない選択肢だが――体を売ったとしても、到底返済など出来ない額。
 この年で憧は、債務者であった。

 未確認生命体による、日本各地でのテロ行為。

 それによって――憧の姉は、重傷を負った。
 普通の医者では、到底治療できる見込みがなかった。
 いや、可能ではあっただろう。だけれども、他にも全国で被害を及ぼしていたため、医者の数が足りなかった。


 このままでは、手遅れになってしまう――。


 そう判断した新子家は、可能な限りの人脈を使って、新子望の治療の手立てを模索した。
 日本国内では、慢性的に医者の数が足りない。
 重症者数だって多い。順番がいつ回ってくるのかさえも不明。
 このままでは、よしんば入院できたとしても恢復に至る前に死亡してしまう。

 治療費がいくらかかるとしても。
 新子家は、望の治療を優先した。

 尚――その時の執刀医が、伊達明であった。



339: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 01:38:10.91 ID:WIT4da+xo

 そして当然ながら、その治療と引き換えに。
 新子家は、多額の借金を負う事となった。

 足元を見られたとは思っていない。
 彼はその医療費に相応の、素晴らしい手術を行ったのだから。
 むしろ、渡航費などを考えるのならば、逆に安いほどだった。


 そんな折、憧の家を訪れたのが鴻上光生。
 自宅に眠る橙色のコアメダル――コブラ・カメ・ワニ――を求めてきた。
 引き換えに資金援助をすると、言っていた。
 二つ返事で飛びつきたいほどだった。

 効果も判らぬ古術品よりも、今を生きる人間の命である。
 当然父親は、その話に乗るだろうと思った。
 だけれども彼は、それを渋ったのだ。

 その埋蔵品にどれほどの価値があるかなんて、憧は知らない。
 しかし、こんな状況にあっても――おいそれと持ち出していいものではなかった、ようだ。
 憧は悩んだ。憤った。

 そんな何かも分からないものより、姉の命を助けるにかかった借金。
 憧は現実を見ていた。
 得体のしれないものなどは認めこそすれ、目指そうなどと、思ってはいなかったのだ。


 しかし同時に、頭の片隅では理解していた。

 あの未確認生命体。それは確実な超常現象だ。
 であるがゆえに、この、メダルも何かしらの曰くを持っていても不思議ではない。
 故に憧は、一旦契約を保留とした鴻上光生の元へと向かい、問いかけた。


 そこで知った。

 オーズという存在。
 コアメダルという存在。
 セルメダルという存在。

 欲望を形とした、いくつもの概念を。


340: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 03:40:24.74 ID:WIT4da+xo

 そして、新子憧は再会した。
 姉の手術を担当した、伊達明と。


 手術かと問うてみたが、答えは「NO」であった。
 医者である筈の伊達明が、何故そのような場所に居るのか不明だった。
 或いは人体実験なんてものでもやっているのかと、そんな想像すら浮かんだ。

 などと当惑する憧に目掛けて、明は何事もないかのように笑う。
 そして人差し指を立てて、こう言ったのだ。


「新子ちゃん。俺、こんだけ……稼がなくちゃならないのよ」


 百万円か、ともすれば一千万円かと思った。
 だけど実際は違ったのだ。
 一億円。
 明は一億円を稼ぐために鴻上ファウンデーションと、何らかの契約を取り交わそうとしていたのだ。


 それを聞いたときに憧の頭を過った事は一つである。

 何故、彼がそんな額を稼ごうとしているのか。
 どんな契約の内容ならば、それほどの額を出すのだろうか。
 それと、先ほど説明されたオーズとはどんな関連があるのだろうか――ではない。


 “都合がいい”。

 実に都合がいいものだと、憧は思った。


 彼女が――彼女の家が負った多額の借金。
 その借金に由来する手術に携わった伊達明。
 伊達明が契約を交わそうとしている、鴻上光生。
 鴻上光生が求めているメダルを持つ、自分。
 そして、メダルを手放せない自分の家。

 この状況は、実に憧にとって、都合がよかったのだ。
 

341: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 04:05:26.90 ID:WIT4da+xo

 そう考えてからの行動は早かった。
 憧は、明が交わそうとしている契約内容について質問。

 未確認生命体。或いはドーパント。
 それか、ともすればいずれ目覚めかねないグリードに対する措置としてのバース。
 オーズがコアメダルを利用するとしたら、バースはセルメダルを利用する。
 そんな、バースとして戦う事が、明には求められていたのだ。

 その装着者として、憧は志願した。
 勿論、万全のトレーニングとバックアップを要求した上で、だが。
 加えて憧が交渉材料として差し出したのは、橙のコアメダル。


(思えば……我ながら、随分吹っかけたわね)

 
 彼女が持ちかけた契約はこうだ。


 第一に、新子憧が仮面ライダーバースに変身して戦う。
 加えて、必要なそのとき(憧が良いと判断したとき)には、爬虫類のコアメダルを提供する。

 代わりに、憧はバースとして戦うに当たって十分な教育を受ける。
 その際の教育者が伊達明。彼への教育費用として、鴻上ファウンデーションは1億円支払う事。
 そして第二に、鴻上ファウンデーションは新子家の借金を返す事。

 それらの費用は全て先払い……という形だ。
 我ながら、実に欲張りな契約を持ちかけたと思う。変に度胸があったもんだ。
 だが結局――鴻上光生はそれを、受け入れた。


 ちなみにこんなにややこしい契約となっているのは……。
 伊達明に、まずは憧の家の借金を肩代わりしてもらい、
 それから、その借金の分も含めて彼が得ようとしていた金額を支払う――という形だから。
 まず、明に五千万を立て替えてもらった。
 その上で、五千万を返済+一億円の支払いを、鴻上ファウンデーションにさせようと言うものだ。

 本来ならこの一億円は、憧には関係ないものである。
 何故、わざわざ背負ってしまったのかには二つの理由。


342: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 04:12:29.71 ID:WIT4da+xo

 一つ目――。

 伊達明が一億円で契約をしようとしていたところに、自分が後から乗り込んだ。
 コアメダル+明より五千万低額なら、憧と契約を交わした方がお得である。
 だけれども、渋られる可能性がある。明と先に契約を結ぼうとしていた――とか。
 或いは明が、異議を申し立てたりするかもしれない。

 そう言うぐちゃぐちゃしたのが面倒だから、鴻上が頷きさえすれば後腐れない形の契約を取ろうと思った。
 額は増えてしまったが……そもそも、五千万などという普通では返しきれない借金である。
 ここで契約の機会を逃したり、或いは、ケチがついたりしたのならば、憧たちには返済の手段がなくなる。
 多少強引だとしても、この契約を逃すわけにはいかなかったのだ。


 二つ目は――。

 これは、ちっぽけな感傷のようなものだ。
 五千万という多額になった場合、大方の人間はそんな事は知らないと首を振るだろう。
 だが、憧にはそうはできなかった。
 そうしてしまったら、借金を返せたとしても、自分は幸せにはなれないだろうと思ったのだ。

 明は、姉の恩人に当たる。
 大好きな姉だ。よく頼り過ぎてしまっていた姉だ。明は、そんな姉の命を助けてくれた。
 勿論そこにあったのは親切心などではなく、プロとして患者を治療する契約に他ならない。
 それでも、やはり姉の恩人である事には変わりない。

 そんな明が、一億円を必要としている。
 どんな理由だかは知らないが、彼の性格からするに、態度はアレでも真剣そのものだ。
 それを、後から来た自分が奪い取る。
 恩人である明に対して、後ろ足で砂をかける行為をする事となるのだ。


 それは、憧の中ではアウトのラインだった。
 超えてはならない一線に当たる。
 借金が云々以前の問題だ。人間としてそれが許されるか否かの、基盤となる部分。

 そこを超えてしまったのならば、憧は人間ではなくなってしまう。
 少なくとも、自分自身納得はできないだろう。
 姉が助かり、家族の債権が消えて、全てが元通りになるとしても――。

 憧は幸福になれなくなる。

 いずれそんな“負い目”は憧の中で芽吹き、体に入ったガラスの破片が如く、心臓に到達するだろう。
 そうなったとき、自分たちは崩壊するだろう。
 ただ借金を負うよりも、後味の悪い、気持ちが悪い形でバラバラとなる。


 憧は不幸になりたくなかった。幸福でありたい。
 憧は打算的である。ちゃっかりしている。
 だからと言って、悪人ではなかった。彼女なりの、納得と言う倫理基準がある。

 だから多少なりとも泥をおっ被さったとしても、彼女は『納得』と『この先不幸にならない事』を選択した。

 それが、新子憧がバースとして戦う理由である。

343: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 05:05:56.05 ID:XVII6Q68o

 憧の強い欲望を評価すると、鴻上は言った。
 欲望とか、年頃の乙女に対して失礼な言葉だ。自分は純情であるのに……。

 ……閑話休題。

 とにかく、それが新子憧の戦う理由であった。
 この事を知っているのは、憧を除けば鴻上光生と伊達明の二人だけ。
 それ以外の誰にも、打ち明けていない。


「なんか、あたしだけが自分の為に戦ってるって……やっぱり言えたもんじゃないわよね」


 再度、溜め息を漏らした。

 自分は、他のライダーたちの尻馬に乗っている存在だ。
 皆が無償で戦っているところに飛び乗って、自分の取り分を稼いでいる。
 なんとも、情けないものだ……そのあり方が、皆に比べて、賤しすぎる。

 伊達ならハッキリと割り切れるだろう。
 そして、実に正当な――聞いた人間を納得させる理論を展開するはずだ。
 だけれども、憧には割り切れない。上手い言葉も考えつかない。

 自分は皆とは違う。
 そんな、どこか劣等感じみたコンプレックスが浮かんでくる。


「……どうしよ、あたし」


 鴻上は憧の無理な要求を通した。
 だからと言って、契約をなあなあで通す事はしないだろう。
 キッチリと、憧のすべき事を――対価を求めてくるはずだ。

 だから、憧はグリードと戦わなくてはならない。
 ヤミーを生み出してくれた方が、憧にとっては喜ばしいのだ。
 それが契約の履行条件に近付くから。

 でも、それを望むと言うのは、やはり……。


 きっと、賤しい存在となってしまう。
 この先の人生に瑕を作る。後々への禍根を遺す。心によくないものが残る。
 納得できない事は、後への悪凶を齎すのだ。

 それは理解している。
 理解しているが……。


「……はぁ」


 いざ実際、戦いに終わりが見えてくると同時に……憧は悩み始めていたのだ。

 このままグリードと京太郎が深く争わなければいい、という良心。
 何とかヤミーを倒して、稼がなければならないと思う保身。

 その間で、板挟みにされていた――仲間に打ち明ける事など出来ずに。

344: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 05:15:10.63 ID:XVII6Q68o

「お金……稼がないと」


 或いはもっと誰かと親密になれたのならば。
 こんなジレンマを相談できたのだろうか。

 既に、自分一人だけが自分の利益に戦っているという“負い目”がある。
 胸が痛い。立つ瀬がない。申し訳ない。
 そんな奴が、何を仲間面して皆の輪に入れようか。

 己が酷く矮小で、汚らわしい存在であるとさえ思えてくるのだ。


「……はぁ」


 どうしたらいいのか、憧には判らなくなっていた。

 ただ敵がいるから倒しているうちは、よかった。
 きっと戦いが進めば憧の借金返済も進んでいくし、平和にもなっていく。
 世の中が、全体の流れが良くなると思っていたのだ。

 だけれども今は、違う。
 憧は己ひとりだけ、停滞してしまっている気がした。
 終わりに近づいた流れに出来た渦に、片足を囚われているような。


 だから、せめて――。


「あたしはともかく……誰かの為に戦うあんたは、幸せになってよね」


 報われるべき人間は、報われなければならない。
 そうでなければ理屈に合わない。理に適ってない。理不尽である。
 だから、京太郎は幸せに進んでほしい。

 勿論、憧だって幸せを放棄しない。

 こんなに苦しい状況となっていたとしても。
 憧は、憧自身……自分に出来る範囲内で、精一杯幸福を目指そうと思っているのだから。


 部室に顔を出して、気晴らしに麻雀を行う。
 着信があった。対木もこから言伝された研究員の伝言。
 バースのオーバーホールが終わったので、引き取りに来てくれとの事だった。


(……雨、降りそうね)


 自分の心中を映したかのごとき空を見上げて、新子憧は深い息を漏らした。


                                                 ――了

358: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 23:02:05.82 ID:XZ8QOW7yo



 Interlude「変身学生 江口セーラ」



359: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 23:31:37.01 ID:XZ8QOW7yo

「あー、書類仕事とか面倒やなー」


 どうして自分がこんな事をしているのだろうと、江口セーラは伸びをする。
 元来的には、自分は前線配置。
 担当と言うのは戦闘であり、あくまでも警察の非公式、或いは民間協力者となっている。

 そんな自分が何故書類担当なのか。涙が出る。
 考えたりチマチマするのは嫌いだ(苦手ではない)。書類書きなど猶更。
 こういう地道で地味な作業に、自分は向いていないのだ。


「フン。口を動かしてないで、さっさとやれ」

「笛吹のおっさんは細かいなぁ……神経質やと、禿げるで」

「なっ」


 実質的な上司に当たる笛吹警視をからかうように笑って、書類に向き直る。
 憂鬱である。激しく面倒だ。
 それでも頼まれて、これが必要な事だと判っている以上、江口セーラは投げ出さないのだが。

 そんな彼女の人となりを知っているからか、笛吹直大も、眼鏡を直して口をつぐむ。

 本気でやる気がない訳ではない事。
 あまり口うるさく言わなくても、彼女は本質の部分で真面目である事。
 そして――そもそも彼女には、民間人であるのに協力させてしまっている事。
 (笛吹の感性からするなら、これはよろしくない事態であった)。

 それらが彼の追撃を止めさせたのだ。


360: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/16(金) 23:44:10.11 ID:XZ8QOW7yo

「ミュージアムが潰れても、まだまだガイアメモリ犯罪は終わらへん……か」

「既に生産された分が、裏で取引されている。忌々しい事だが……この間の一斉逮捕のどさくさに紛れて、横領した人間もいるようだ」

「……なんちゅーか、難儀なもんやな」


 横領犯については目下捜索中であると、笛吹警視は不機嫌そうに額を抑える。
 法と秩序を守る筈の警察官がそのような事をするなど、彼の中では到底許されざる事であろう。
 嘆かわしいと、唸っていた。

 そんな事をした犯人は着実に追い詰められて、相当の恐怖をする事になる筈だ。
 警視庁キャリア組、その肩書きに恥じないほどの優秀さを持つ笛吹直大を敵にするのだから、当然だ。
 まあ、自業自得である。セーラの知った事ではなかった。


「そんで、メモリがどんな効果だか纏めればええっちゅー事やったよな」

「ああ。出来るだけ詳しく、適切に。我々警察官で、対処ができるほどの情報が欲しい」

「そんな面倒な事せんでも……俺がおるやん? 別にわざわざ、生身で危険な事をせんでも――」


 そう、セーラが呟いたところだった。
 ドン、と。笛吹が机を強く叩いたのだ。
 予想だにしなかった事に、セーラは身を跳ねさせた。


「本来は、それは、我々警察官の任務だ!」

「……そんなに怒鳴らんでもええやないか」

「これは、民間人が……ましてや学生が関わっていい事態ではない! 現状のままでいい筈がないだろう!」


 激昂する笛吹を尻目に、セーラは内心、「お堅いなぁ……」と漏らした。
 自分とさほど変わらぬ慎重の笛吹警視が声を荒げるのを、頭の後ろで腕を組んで眺める。
 彼の付き人同然となっている筑紫に目を向けるが、黙ったまま。

 長くなりそうだし、止めてくれないかと訴えてみるが……。
 答えはノーコメント。
 黙って彼の話を聞けという事らしい。筑紫も、笛吹と同じ考えなのだろうか。

361: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/17(土) 00:33:43.48 ID:J7WKRNbCo


「そもそも警察官というのは、自らが治安の維持にあたると志願して職業を選んでいる。
 我々は皆、多かれ少なかれ、決心してここにいる。
 正義を守るため……この街や市民をを守るため……自分の生活を守るため……何かを守る為に、警察に入っている」


 故に、と笛吹は続ける。


「国民の生活を守るのは、市民の安全を守るのは……我々警察官の職務だ。
 “それ”は、我々がしなければならない。我々がやらなければならない。
 我々が誰かに頼り切ってはならない。我々が誰かに任せ切ってはならないのだ!」


 だから、と笛吹は言った。


「今、戦う力がないからと言って諦める理由にはならない……。
 ましてや、部外者の女子高生に丸投げするなどというのは、以ての外だ!」


 その為に、笛吹は情報を欲していた。
 仮面ライダー一人に背負わせるのではなく、自分たち警察官が戦えるように。
 単に、唯一対抗する力を持っているからという理由で、民間人に戦わせてはならない。

 今は勝てなくてもいい。現実的に見て、それは然るべきである。
 だが、それで「仕方ない」などという言葉は決して吐くつもりもない。
 その言葉を言ってしまった時点で、警察官は、警察官としてのプライドを失ってしまうのだから。
 そんな事は許されない事であった。


 江口セーラには、江口セーラの人生がある。
 彼女は本来、職業という面から見るなら……社会的な面から見るのならば、庇護されるべき立場である。
 仮面ライダーというのは彼女の肩書であって、職業ではない。
 職業と言うのは責任を求められる。責任があるからこその職業だ。
 その職務を遂行すると決心したその時から、責任は発生する。
 それは選んだ自由への対価だ。

 江口セーラは選んだのかもしれない。
 でも彼女への見返りはない。責任と対になる概念がない。
 いわばボランティアも同然だった。プロフェッショナルである自分たちとは異なる。
 そんな少女に何かを背負わせ続けるという事は、笛吹にとっては我慢のならない事であった。

362: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/17(土) 00:48:05.72 ID:J7WKRNbCo

「ふーん、ま、分かったわ」


 つまりさっきから書類を急かしているのは、セーラを一刻も早くこれらの件から遠ざけようと思ってなのだろう。
 言い方は傲慢、或いは高圧的に聞こえるが……こちらを思いやっての事。
 なんだかむず痒いと、セーラは苦笑する。

 それでも――と。
 それだからこそ――と。
 セーラは思うのだ。

 確かに、江口セーラにはライダーである事への因縁はない。

 誰かのように、悪の組織に攫われた訳ではない。
 セーラしか変身する資格を持っているという訳でもない。
 未来の自分に頼まれたとか、そういう契約でライダーをやっているとか……。
 他に替えが効かないほどの特異な資質を有している訳ではない。

 セーラがライダーである事に、特殊な事情など存在していないのだ。
 (後からガイアメモリへの精神耐性というものを聞いたが……以前は知りもしなかったし、テラーを倒した今、特段の意味はない)
 しかしセーラはそれでも、戦っている。


 その理由は、実に単純だ。

 この笛吹たち警察官にしてもそう。
 或いは京太郎や哩などもそう。

 その誰もが、セーラにとっては死んでほしくない人間であるのだ。


 一緒に仕事をしていれば、笛吹たちの人となりが分かる。
 先ほどの言葉にしてもそうだ。彼らは皆、熱い思いを胸に仕事に当たっている。
 そんな人間を――心地いい人間を目にして、「手助けしたい」と思う事は自然であろう。

 自らの躰のみならず、その尊厳を破壊された。
 更には友人や仲間を囚われるといった苦境に於かれた白水哩と鶴田姫子。
 そんな辛い境遇の人間を前にして、「何か力になりたい」と思う事は何ら不思議ではない。

 人の痛みを止める為に、自らが痛みを背負う。
 過ぎてしまった何かを取り戻すために、怯えながらも今で足掻き続ける須賀京太郎。
 放っておけばどこかで果ててしまいそうな人間を、「護りたい」と思う事は当然の事だ。

 だから、セーラは戦っている。
 自分の心に従って正直に、ライダーとして戦っていた。

363: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/17(土) 01:05:42.96 ID:J7WKRNbCo

 別に際立った過去なんてなかった。
 特段、常人離れした思考回路を持っている訳でもない。
 自分がやれなければ、他にやるものがいないという事もない。

 それでも、セーラはライダーとして戦っている。

 自分が好ましいと思った、この街とそこに住む人々を守るために。
 この都市や住民を穢そうとする、我慢ならない悪人相手に。


 そこには特殊な事情なんてない。

 普通に。一般的な人間として。自分がやりたいから、誰かを守りたいから――戦うのだ。
 江口セーラは、普通の人間だ。
 それでも彼女は、仮面ライダーなのだ。


「……ま、そこまでおっさんが言うなら素直に従っとくわ」

「フンッ! それとだから、私はおっさんなんて年じゃないと何度言ったら――!」

「女子高生からしたら、二十歳超えはみんなおっさんかおばさんって相場が決まっとるわ」

「ぐっ」

「それに確か、笛吹さんは31歳やろ?」

「そうだが……」

「なら完全におっさんやん。三十路やアラサーはもう色々辛い年齢やって」

364: 1 ◆B6xkwd67zxGJ 2013/08/17(土) 01:21:02.08 ID:J7WKRNbCo

 年相応に見えんけどな、と鞄を手に取り立ち上がる。

 まあ、休ませてくれると言うのならそうしよう。
 幸いにして、あれほどの大事件があったばかりなので、ガイアメモリ犯罪に目立った動きはない。
 笛吹ならば、そういう時こそ油断せずに準備をしておくもの……と言うだろうが、
 まあ、今日のところは許してもらおう。

 最近、碌に部活に参加できていないのは確かだ。
 これは笛吹の言う通り、江口セーラの生活を台無しにしてしまっていると言っても過言ではない。
 ライダーにかまけて、仲間の心を踏みにじる。
 それをやってしまったら、本末転倒に違いない。


「ところで思ったんやけど……」

「何だ?」

「わざわざ俺が書類に纏めんでも、口頭で伝えたらええやん」

「……。……確かに、そうだったな」


 警察のお仕事というのにはどうにも書類が絡むようで、ついその癖に従ってしまったとか。
 なんというか、肝心なところで間抜けてるなぁ……と思う。
 実は可愛いもの好きらしいし、ブラックコーヒー飲めないらしいし。
 愛嬌があると言えば、あるのだろう。


「それじゃあそういう事で……とりあえず俺、今日は帰るわ」

「部外者はさっさと失せろ」

「江口さん、くれぐれもお気をつけて」

「はは、そっちこそな」


 鷹揚に笑って、警察署を飛び出す。
 途中すれ違った警察官に、会釈をする。
 すっかりと顔見知りになっていた。表向きは――スマートブレイン学園の情報提供者、だったか。

 いずれは本当にそうなるかもしれない。
 彼ら誇り高き警察官がいるのならば、近いうちに自分はお役御免となるはずだ。
 それは、とても喜ばしい事である。ライダーの力が必要なくなると言うのは。


(あいつも――そうなったら、ええけどなぁ……)


 グレー一色の空を見上げて、セーラは思う。
 須賀京太郎も、自分と同じように、いつの日かその力を必要とされる事がなくなればいいと。


 
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