モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part2 前編

501: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:16:59.49 ID:wmn36UnO0
海老原菜帆投下します

引用元: ・モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part2 



【メーカー特典あり】 THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER for the NEXT 02 ステップ&スキップ(ジャケ柄ステッカー付)
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502: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:17:57.42 ID:wmn36UnO0
「この和菓子美味しですよ~~」モグモグ

『こっちの和菓子も美味しいですよ~』モグモグ

両手に別々の和菓子を持ちながら交互に食べながら、一人の女性は歩いていた。

だが、不思議な事に独り言を言ってる感じなのに、まるで交互に別の人が喋ってる感じだ。

503: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:19:12.63 ID:wmn36UnO0
「それにしても、ベルちゃん」モグモグ

『な~に~?菜帆ちゃん?』モグモグ…ゴキュン

一つの身体で二つの声が喋る。

「私には悪魔とかよくわからないけど、ベルちゃんなら私を乗っ取ることは可能じゃないですか~?」モグモグ

『そうですね~。けど、私には私のやり方があるんですよ?すぐ本性現したりしませんよ? 私はじっくり様子を見る方ですから。うふ』モグモグ

他人から見れば、ただの独り言だが実際は違う。

一つの身体に二つの魂が入ってるのだ。

504: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:20:26.65 ID:wmn36UnO0
「そうですか~。それより次は何を食べに行きましょうか~?」

『なんで、普通に流しちゃうんですか?怖がってくださいよ?食べちゃいますよ?』ムクーモグモグ

……っと、まあ、人間の方は肝が座ってるのか?はたまた天然なだけなのか?マイペースである。

一方の暴食を司る悪魔ベルゼブブは頬を膨らませながら、残りの和菓子を食べていた。おい、それでいいのか?悪魔?

505: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:21:39.53 ID:wmn36UnO0

「流してないですよ?だって、私はいずれベルちゃんに乗っ取られるんでしょ?なら、今を楽しまないと」

「それに」
『それに?』

自分の中にいる悪魔に彼女は微笑む。

「美味しいモノってワクワクしません?」

506: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:22:19.91 ID:wmn36UnO0
『……うふ。そうですね。ワクワクしますね』

そこで、ベルセブブは確信する。私はこの人間と相性がいいと。

グ~~~っとお腹が悲鳴をあげ、二人は次の目的地へ向かう。

507: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:22:59.09 ID:wmn36UnO0
「それで、次は何処へいきますか?ハンバーガー食べにいきます~?」

『ドーナッツもいいですよ?あそこの新作美味しいみたいですし~』

「じゃあ、両方買っちゃう?」

『そうしましょう』

彼女達は今日も食べる。

508: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:23:57.68 ID:wmn36UnO0
「そういえば魔界の食べ物は美味しいですか?」

『美味しいのもありますよ?けど、私は宇宙や地底、異界の食べ物も気になります~』

「じゃあ、全部制覇しましょ~」

『うふ。そうですね~』

だって

 

510: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:25:22.11 ID:wmn36UnO0

 








美味しいモノってワクワクしません?










終わり

511: @設定 ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:27:48.46 ID:wmn36UnO0
海老原菜帆(17)/ベルセブブ

職業・高校生/暴食を司る悪魔
属性・暴食
能力・なんでも食べれる。あとはまだ不明。

『暴食』を司る悪魔『ベルゼブブ』と肉体の共有をしている高校生。

本人的には身体を奪われようが、なんだろうが美味しいモノが食べれればそれでいいらしい。

ベルセブブも目立った動きはせず、カースも作らず、菜帆と一緒に食べ歩きばかりしている。

なんだかんだで二人共、お互いを信頼している。

だから自分達の食べ歩きを邪魔する奴は例え暴食のカース、暴食のカースドヒューマンでも容赦はしない。

いずれは二人で地上、魔界、地底、宇宙、異界全ての美味しいモノを食べる事を目標にしている。

暴食の証はなんなのか不明。

512: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/27(木) 11:30:47.42 ID:wmn36UnO0
以上です。

二人で一人の肉体っていいよね!

そして、ただ未知なる美味しい食べ物を食べたいが為に地上に来たベルセブブちゃん。マジカワイイ
菜帆ちゃんは更にカワイイ。駄肉最高!

560: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/27(木) 21:04:29.68 ID:hI+6LmRIo
乗っ取ったのかどうか不明なのは奏と雪菜だったと思う
他の悪魔は誰かしら依代となる人間がいるっぽい

575: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:30:51.15 ID:brROdEI00
投下します。

576: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:31:21.47 ID:brROdEI00
ベルフェゴールとの戦いに敗れたユズは、一旦彼女の知る最も安全な場所である世界の狭間の魔力管理塔へ杖にすがりつくようにして歩きながら帰ってきた。

扉を開くと同時に倒れる。何とか力を振り絞り、棚に置いてあった彼女をデフォルメしたかのような二体の人形に魔力を注いだ。

するとまるで生きているかのように動き出し、ユズの頭上へ飛んできた。

白い鎌を持った個体が癒しの魔法を使い、黒い鎌を持った個体が魔法で彼女をベッドへ運ぶ。

「…ありがと。」

「「みーっ!」」

それらは彼女の作った使い魔だ。いざという時の為に回復魔法を記憶させておいてよかったと安堵し、眠りについた。

577: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:31:51.69 ID:brROdEI00
暫くして、目を覚まし、再び使い魔に今度は濃い魔力を注ぐ。

ユズはベッドから起き上がると使い魔に指示を出す。

「地下から魔術書を…何でもいいから4冊もってきて!片方はサタン様への報告書を書いて!」

「「みっ!」」

白い鎌は地下へ、黒い鎌は紙と羽ペンを持ってきた。

塔の二階へ上り、様々な道具を出し入れしながらサタンへの報告書の内容を告げ、使い魔が紙に書いてゆく。

ベルフェゴールと遭遇したこと、人間に憑依していたこと、敗北したこと、竜帝の娘と思える少女と姫が接触していたこと…

「『…以上がユズの報告です。』…終わり。送っておいて。」

「みー!」

使い魔が黒い鎌を報告書に向けると、テレポートの魔法か、一瞬で報告書が消えた。

578: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:32:27.15 ID:brROdEI00
「っと…ここに入れてあるはず…あった!」

それとほぼ同時に、塔の大道具入れから大きなノコギリを取り出した。

杖に跨り、塔の中央に鎮座するクリスタルの周りを飛び回り、不必要だと判断した部分を切り取る。

魔力を纏ったノコギリは綺麗にクリスタルを切る。

塔のクリスタルはもちろん普通の宝石ではなく、魔力そのものだ。

魔力の流れ自体は、塔の窓を水門のように使うことで管理する。しかし、濃さはそれでは管理できない。

魔力の流れが濃いときはこのクリスタルに一部の魔力を流し、逆に薄いときはクリスタルの魔力を開放することで魔力の濃さを管理できているのだ。

濃い魔力を吸収しすぎて不自然な形になったクリスタルは塔の壁を破壊しかねない。そうすれば大変なことになる。だから時々削るのだ。

579: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:32:56.26 ID:brROdEI00
…しかし、ユズの目的はそれだけではなかった。

地面に落ちたクリスタルをさらに握りこぶし程のサイズにする。

魔力そのものであるクリスタルは管理人以外が触れてしまえば霧散してしまう。

だからどんなに加工しても特に意味はないはず…なのだが彼女はこのクリスタルのいい使用方法を知っていた。

「みぃ!」

「あ、遅かったねー…いや、逆に丁度良かったかな?」

丁度白い鎌の使い魔が4冊の魔術書を持ってきた。

すぐにそれらを開き、クリスタルをそれぞれの上に浮かせる。

共鳴するかのようにお互いが輝き、魔術書の文字が光を放ち、クリスタルに注がれていった。

火、風、水、雷属性の基本的な魔術書と、4つのクリスタルが4組全てそうなっていた。

こんな管理塔にある魔術書は、もちろん普通の本ではない。

属性・使用種族・世界ごとに分けられた、異世界・平行世界を含むすべての世界で使用された魔術・魔法が記され続けている、魔術専用アカシックレコードのようなものだ。

その内容はユズには読むことができない。しかし、こうして魔術書の方から知識を植え込んでもらうことで、物体に魔術を記憶させることができる。

暫く待ってクリスタルを外す。

赤、黄緑、青、黄色。それぞれの属性にしっかり染まっている。

それらを均等に並べると、杖を構える。

『管理者の名のもとに、使い魔の肉体を生成する。生まれよ、新たな偽りの命よ。』

杖から放たれた4本の光線がクリスタルを直撃する。

すると、それぞれ赤い鎌、黄緑の鎌、青い鎌、黄の鎌をもった使い魔がクリスタルのあった場所に誕生した。

「「「「みー!」」」」

「赤、黄は大罪の悪魔を探して。見つけたら刺激せず白に連絡。」

「「みー!」」

「黄緑、青は姫様の監視。随時黒に報告して。姫様に危機が迫ったら敵を攻撃してもいいよ。」

「「みー!」」

「カースは見つけ次第破壊。いいね?」

「「「「みー!」」」」

「よーし、いってこーい。」

ユズが杖を振ると、4体の使い魔は消えた。

580: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:33:40.35 ID:brROdEI00
「さて、アタシも…。」

ユズはノコギリを片づけ、使用した魔術書を持って地下に降りる。

地下には大量の魔術書が入った本棚がまるで円を書くように並べられている。

ユズはその本棚の中央に椅子を置き、座る。

『死神の力を用いて、我が肉体と魂の繋がりを断ち切らん。再び繋がりが戻るその日まで。』

ユズは肉体と魂を切り離した。

魂だけの状態で椅子に座る肉体に杖を振る。

一斉に魔術書が本棚を飛び出し、それぞれが光を放ってユズの脳に、肉体にその内容を刻んでゆく。

ベルフェゴールとの戦いで無力さを思い知ったユズは生きながら魔術書となることを決めた。

決してクリスタルの魔力を全て肉体に注ぎ、世界を操れるほどの力を手に入れるわけでもなく、誰かに頼るわけでもなく、自分の使える能力と権威を考えた結果だ。

補助魔術も操作魔術も自分はまだまだ。その結果がきっとあの敗北なのだろう。

…だから、自分にできる全てを使ってできる、最高の強化をした。

あくまでも、自分の力で勝ちに行くつもりなのだ。

581: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:34:05.18 ID:brROdEI00
魂のユズが発動を見届けると、一階に戻る。

まだだ。魔術だけでは勝てない。

「…ちょっと出かけてくるよ。しばらくお願いね。何かあったら連絡して。すぐ行くから。」

「「みっ!」」

ユズは白と黒に魔力の管理を託した。

これで大丈夫。鎌と杖とちょっとした小道具を持って、ユズは扉を開き、世界の狭間に身を投げた。

落下先は魔王の鍛錬でよく連れてこられた場所。

地獄の修行場とも呼ばれる場所。練武の山だ。

ユズは持ってきた杖と小道具…二つの魔力の宿った宝石のついたブローチを掲げて詠唱する。

『時の管理者よ。空間の管理者よ。我が名はユズ。魔力管理者の権限に置いて、この空間を支配し、時の流れを歪めることを許せ!』

天空から光が降り注ぎ、練武の山は彼女の管理下となる。

時間を歪め、空間を切り離す。この山はもともと緩い管理だからこそできる事だ。

この空間の時間はその他の空間の何倍も遅くなった。

地面から意思を持たない魔物が次々に湧いてくる。

ユズは大地を蹴ってその魔物達を切り裂いてゆく。

魂だけで活動することは、単純に言えば防具を捨てているのと同じ事。

一撃でもくらえば致命傷になる。だからこそユズは俊敏に、尚且つ冷静に切り捨てる。

終わりが来るのかさえ分からない、ユズ一人の鍛錬が始まった。

582: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:34:35.77 ID:brROdEI00
ぷちユズ
職業:使い魔
能力:クリスタルが記憶した魔術の使用

ユズをぷちどるにしたような見た目の使い魔。
人格は幼い子供の様だが、下された命令はしっかりこなす。
…でも暇なときはバドミントンしてるよ!
クリスタルの欠片を核に生まれ、クリスタルの色が鎌の色に反映されている。
合体してユズのような見た目にもなれる。
その場合の見極め方は、白い星の刺繍のコートか、金の太陽と銀の月の刺繍のコートかである。

属性は
赤・炎
青・水
黄緑・風
黄・雷
黒・操作
白・回復

583: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:35:13.09 ID:brROdEI00
続けて投下します

584: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:35:55.50 ID:brROdEI00
竜族と魔族の戦争。そもそも始まりは何だったのか、知っている悪魔はもうほとんど生きていない。

そして、竜族と魔族はかつてはライバルのような関係だったと知っている悪魔はもうほとんどいない。

…ましてや、お互いの長である、竜帝と魔王が親友だったと、知っている者はもう本人以外いない。

かつて魔界を襲った危機を相手に二人で先陣に立ち、勝利をおさめ、お互いがお互いの種族の王となってもその関係は続いていた。

お互いに部下や自らの力を磨くことを好み、手合せと称した決闘も行い、いつも引き分けに終わっていた。

…ある日、竜帝がおかしくなった。まるで理性など無くしたかのように凶暴になり、その力に煽られた若い竜達がとある魔族の集落を滅ぼした。

魔族は怒り狂い、竜族も王が狂いだしたのが原因か、全ての竜が暴れ出した。

お互いにお互いを迫害し、殺し、呪う。

それが戦争の始まりだった。

585: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:36:31.45 ID:brROdEI00
魔王はユズから送られてきた報告書に目を通していた。

そこに、扉を開いて一人の女性が入ってくる。

黒いチョーカーを付けた、ただならぬ雰囲気を纏った女性だ。

「…すまない、今回も成果は得られなかったよ。」

魔王を相手に唯一敬語を使わない魔王の部下。

「…仕方のない事だ。貴様が気にすることではない。キバよ。」

「おっと、一応マナミと呼んでもらわないと困る。誰が聞いているか分かったものではないだろう?」

「盗聴の類、魔術であろうと機械であろうと、我が見逃すと思うか?『竜帝キバ』。」

彼女はかつて…戦争の原因であり、一人の妻と娘をもった竜帝だった。

586: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:37:01.73 ID:brROdEI00
…戦争が始まったばかりの頃、魔王はある女を拾った。

見た目は全く魔族に見えず、人間かと思ったが、その体内の年齢の割には異常な量の魔力を感じ取り、保護した。

そして…長い戦いの末、魔王がかつての戦友の命を奪い、帰ってきた魔王城で死神たちから報告があった。竜帝の魂が見つからないと。

魔王もその部下も探したが、竜帝の魂とその子竜にいたっては亡骸すら見つからなかった。

そしてその晩、彼女は魔王の間にやってきて魔王を驚愕させる一言を放った。

「サタン、私が竜帝だ」と。

何をふざけているのかと魔王が珍しく怒り狂ったように彼女を掴み上げ、その首に竜族しか持ち得ないはずの、憤怒を司る生物、竜帝の証であるルビーのように光る逆鱗を見つけた。

魔王はいったん開放すると、何度も彼女に問いかけ、彼女は何度も答えた。

そして、魔王は目の前の彼女がかつての親友だと確信した。

翌日から、彼女は魔王の側近となった。他の誰も彼女の真の姿をしらないまま。

587: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:37:28.61 ID:brROdEI00
彼女は戦争に関する殆どの記憶を失っていた。…いや、知らないと言った方がいいのだろうか。

彼女の竜としての最後の記憶は何かに襲われた事。

それから竜帝はこともあろうに人間の女性となっていたのだ。

しかも、竜帝の肉体が死ぬまで記憶はさらに曖昧なものだった為、自らが竜であることすら忘れていた。

そして現在彼女は、魔王の呪いを解呪する方法を必死で探していた。

親友に死の呪いをかけたのが己と知って、世界中を探し回っている。

588: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:38:07.73 ID:brROdEI00
「ユズが管理塔の魔術書を漁っても解呪方法など見つからなかった。我は死ぬのだ。諦めろ。」

「…ユズが調べられるのは魔術の範囲だ。…まだ方法はあるはずだ。」

「相変わらずあきらめの悪い奴だ。…聖水でも使う気か?このレベルの呪いを解ける聖水、我が死ぬぞ。」

「…」

マナミが黙ったのを見て、サタンが続ける。

「…それよりも聞け、我が娘と貴様の娘が接触した。…生きていたのだな。」

「!?」

驚愕する。殆どの記憶を失っていても、娘の記憶はしっかりあるのだから、親として反応してしまう。

「…言わぬ方がよかったか?」

「…いや、生きていると聞けて良かった。」

「そうか。貴様も母性があるな。」

「そういう性別を使ったジョークは止めろと何回も言っているだろう?」

「ふん、今の貴様ほどからかって面白いものはいないからな。そして…ユズはベルフェゴールに負けたようだ。」

「そんなに強いのか?」

マナミが問いかける。彼女には他の大罪の悪魔の知識は殆どない。

「…たった一つの弱点以外ほぼきかぬ。」

「弱点があるのか。なら何故…ああ、君はそういう悪魔だったな。」

マナミがあきれたように溜息をつくが、サタンは笑って答える。

589: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:38:46.44 ID:brROdEI00
「フハハ、相手の体質を見て対策方法を編み出せない程ユズも愚かではないだろうからな。」

「…それで、その弱点は?」

「一度戦争で死んでいるのだから、竜族の誰かは知っていると思っていたが…まぁいい。」

サタンが手を振ると植木が現れる。

「僅かではあるが、自らの傷を再生できる魔界の樹木だ。これをベルフェゴールと見立てよう。」

再び腕を振ると、ナイフがどこからともなくあらわれ、傷を木に負わせた。

しかし、その木はその僅かな傷を癒し、元の綺麗な木に戻った。

「これが自己再生能力。ベルフェゴールのは遥かに上位の再生能力だがな。しかし、致命的な弱点がある。」

『地よ、我が魔の力を受け、魔の地となれ。その呪いの名は【死の癒し】!毒を薬に、薬を毒に!呪われた土地となり、性質よ反転せよ!』

魔王の手から呪いが放たれ、その木の付近が呪われる。

すると、分かりやすい異変が起きた。木が異常なスピードで枯れ始めたのだ。

「…なるほど、反転か。自動自己再生能力者にとってこれは恐ろしいな。」

「そうだ。全てのベルフェゴールは死の癒しによってその魂を抵抗することもできない苦しみによって散らしてきた。怠惰故に逃げる事も間に合わずにな。」

「…」

「だが…いま奴は人間に憑依しているようだ。故に、知っていたにしろ、知らなかったにしろ…ユズは魔術を使えなかった。」

590: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:39:21.42 ID:brROdEI00
フン、と報告書を燃やす。そこにマナミが問いかけた。

「…人間に憑依?」

「そうだ。元の人間の意識を完全に乗っ取っている。」

「…そうか。それは分かりやすいのか?」

「ああ、ユズは元は魂を狩る死神。そういう物には敏感だ。」

「大罪の悪魔は肉体をどうしているんだ?憑依というのは魂のみで行う物だろう?」

「さぁな。人間界に持ってきているか…魔界に放置してあるのかもしれん。そもそも肉体と魂が曖昧な者がいたらこんな考察、意味がないがな。」

そこに、いつもの配下が慌てて入ってきた。

「大変ッス!練武の山がなんかものすごい霧に覆われてるッス!」

「…ほう。ユズか。」

「わかるのかい?」

「そんな芸当ができる悪魔、魔力管理人であるユズ位だ。そうか、山籠もりか…。」

嬉しそうにクククと笑うサタン。そしてマナミに一つの提案をした。

591: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:39:56.56 ID:brROdEI00
「そうだ、貴様にしばらく人間界に留まる許可をやろう。」

「…ユズの変わりに?」

「いや、ユズは任務を放置するような奴ではない。…気まぐれだ。そこで我の呪いを解呪する方法でも探していればいい。」

「…ありがたく行かせてもらおう。」

マナミは真意を察してはいたが…どうするかはまだ悩んでいた。

取りあえずは親友の解呪だ。他の全てよりも、何よりも優先してしなければならない。

マナミは魔力で構成した竜の翼で、人間界へ向かって飛び出した。

592: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:40:39.73 ID:brROdEI00
マナミ(真名・竜帝キバ)(人間名・木場真奈美)
職業:魔王サタンの側近(人間?)
属性:憤怒の化身
能力:魔力による竜の肉体の生成、竜言語魔法

かつて魔界を揺るがした大戦争。その発生直前まで竜帝だった魂。
肉体を追い出されたらしく、その魂は人間の女性の肉体に宿っていた。
マナミという名は拾われた際にサタンに名付けられたもの。
その肉体がもともと誰かの物だったわけではなく、竜帝の魂を閉じ込めるために作られた器のようだ。
竜帝の肉体が死んだあと、竜帝の証であるルビーの逆鱗が人間であるにも関わらず出現。
それと同時に竜帝としての記憶を取り戻した。
性格はそれほど変わっていないが、口調や仕草は完全に人間の性別に寄っている。
憤怒を司る生物、竜であるが、サタンと同じく感情を制御している。
また、人間の肉体ではあるが、魔力が人間のそれではないのと、肉体を魔界基準で鍛え上げた結果、人間と言っても誰も信用しないレベルの強さを得ている。
能力は魔力で竜の翼や爪などを作る事。竜帝の名に恥じない頑丈さと攻撃力の高さを誇る。
取りあえず娘には合わせる顔がないようで、今はサタンの呪いの解呪法を探している。

593: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/28(金) 00:42:08.45 ID:brROdEI00
以上です。そういえば戦争の理由書いてないなーと思ったのと、竜も憤怒だっていうことを考えた結果がこれだよ!
取りあえず木場さんの魂をどーのこーのした相手は特に考えていません

597: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:03:35.09 ID:NznJkVc10
この機に乗じて投下

ナターリア分が思った以上に少なくなっちゃったヨ……

598: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:04:22.68 ID:NznJkVc10
地底世界アンダーワールドの『夜明け』は、地上時間にして午前6時きっかりに設定されている。

かつて地底に放逐された人々が、太陽の存在しない閉鎖された世界で生きていくためには、
やはり太陽の光が必要だった。
地上に降り注ぐ熱と光でもって、生命を育むためのエネルギーを得なければならない。
そこで、、根本的解決にはなりえないにせよ、少なくとも向こう数百年の間をどうにかできる手段として
考案され実行に移されたのが、人工太陽建設計画だった。

その計画は乱暴に言ってしまえば、アンダーワールドの天頂付近の岩盤に巨大な照明を
取りつけようというもので、地下世界の住人達四半世紀の歳月をかけて全長6キロメートル、
直径1キロにもなる巨大な円筒型の照明ユニットを最終的には10基製造し、『天蓋』へ設置した。
光量も熱量も本物の太陽には遠く及ばないものの、光の届かぬ暗黒の地底に昼夜が生まれた。

だが、かつての屈辱の歴史の所産である人工太陽を見上げる大人達の胸中は穏やかならざるものだった。

自分達の親の世代が地上人との戦争に敗れたことで、自分達までもが地底へと追いやられた。
地上人は光溢れる豊かな世界を独占し、我々アンダーワールドの民はこの息苦しい穴ぐらで
一生を終える宿命を背負わされたのだ!

いつか地上へ帰りたい。
たとえ自分達の世代にできなくとも、子や孫の世代に、あの太陽の輝きを享受させたい!

アンダーワールドの支配者達が抱く思いは、一番最初の世代から連綿と受け継がれている。
地上人への復讐。そして、光溢れる世界への帰還。

それは祖父から父へ、父から子へ、ずっと受け継がれてきた地上世界への郷愁の念だった。

600: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:05:12.37 ID:NznJkVc10
――――――――――

その日、後世の人が歴史的会合と称する密会が、アンダーワールドの一角にて行われていた。

「地上人と取引をする時代が来るとは、私の祖父や曾祖父は想像もせなんだろうな」

褐色の肌の偉丈夫が、朗々たるバリトンで語りかける。
それを受けて、目鼻立ちの整ったスーツ姿の青年がこう応じた。

「それほどまでに状況が激変したということです。これからの時代は、地上とアンダーワールドが
 互いに手を取り合っていかなくては、生き残れないでしょう」

椅子に浅く腰かけて得々と語る男の顔は、実年齢以上に若く見える。
若くして巨大な財閥の当主となった男のこと、ルックスの維持も仕事のうちと承知しているのか、
それとも己にのみ忠実であらんとする強欲さがこの男を若く見せるのか。

とはいえ、それだけではあるまい。
アンダーワールドの支配者『オーバーロード』は、目の前の青年の本質を測りかねていた。

「対カース用新型兵器の共同研究……我がアンダーワールドのテクノロジストを2000余名動員しろとは、
 最初に聞かされたときは驚いたものだ」

「ですがお互いに利益のある取引でしょう? その見返りとして、あなたは異界の技術を得るのですから」

「確かにな。魔法や魔術など、くだらんオカルトかと思っていたが」

「世界が違えば、そこには私達の知らない理がある。それだけの話です」

601: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:05:59.36 ID:NznJkVc10
例えば、地上とアンダーワールドのように。
そう言外に含ませ、青年――サクライの眼差しに狡猾な光が差し込む。

「それにわたくしどもにしましても、自然災害のような怪物や侵略者などは頭が痛い存在です。
 ですが、ああいう連中がいてくれるからこそ、経済が回っているのもまた事実です」

「貴公は何を言いたいのだ」

「戦争根絶は確かに人類の悲願かもしれませんが、失業と貧困の抑制も為政者の務めでしょう?」

「ふん……それはまた露骨な言いようだな?」

「それにオーバーロード。貴方にとっても、市民の意向をまったく無視することは難しいのでは?」

直截な物言いに、オーバーロードは鼻白まざるを得なかった。

サクライの言う通り、一般市民や労働者階級である『シビリアン』を無碍に扱う政策は取れない。
そうした政権は例外なく短命で終わっているし、私利私欲ばかりを追求するような人間は
オーバーロードの座につくことはできない。
貴族階級の『ジェントルマン』ばかりを優遇してシビリアンに革命など起こされれば、
アンダーワールドはたちまち崩壊してしまいかねない。

それにアンダーワールド軍の大部分がシビリアンからの志願兵で構成されていることを考えれば、
シビリアンの支持を失いかねない選択肢を取ることの愚かしさは自ずと知れる。

「双方にとって都合のいい敵役が現れてくれた……とでも言うつもりか?」

「国家間で戦争をやるよりはマシな選択でしょう。収支のバランスが取りづらくなりますからね」

602: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:06:36.95 ID:NznJkVc10
オーバーロードは鼻息ひとつを返事にし、その件について明確な意見を述べることを避けた。

(この男……ゲーム感覚で世界を動かしているつもりか? 頭でっかちのボンボンめ)

内心で吐き捨てながらも、この人を人と思わぬ図々しさを危険視する頭も働いた。
ただ傍若無人なだけの若造と断じるには時期尚早だと、彼の第六感が囁いていた。

オーバーロードとサクライの『交渉』――作り笑いを貼り付けた顔を突き合わせながらの会合は、
予定調和的な妥協点を見出した上でお開きになった。

それは地上とアンダーワールドが初めて、協力を約束するものだった。

お互いの内心はどうあれ、2000年以上の時を経て、地上と地底のふたつの世界が交わったのだ。
この会合それ自体は非公式なものであったものの、後世の歴史家はこの一事をひとつのターニング
ポイントであるとして重要視するのである。

604: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:07:23.14 ID:NznJkVc10
――――――――――

オーバーロードは数人の護衛を伴って、地上車に乗って密会の場を後にした。

運転席についた護衛の一人は、ダッシュボードのパネルに触れてオート・ドライビング・モードに
切り替える。これでハンドルもペダルもレバーも一切触らなくても、自動で目的地まで走っていくのだ。

地上車と道路とを相互リンクさせた自動運転システムも、有害物質や排煙を出さない無公害エンジンも、
アンダーワールドでは500年以上前に開発されて普遍化したものだ。

アンダーワールドは地上人が忘れ去った古代文明のテクノロジーを保全し、発展させ続けた。
地底という過酷な環境下で種を保存し繁栄していくためには、技術が必要だったのだ。
限られた水源を有効活用するための浄水設備、工場から排出される煤煙を吸収し清浄化する
空気清浄設備など、人間が安楽に住まうための環境を整備する技術が。

しかし技術の発達と医学の進歩は、同時に人口の増加と資源の枯渇をもたらす。
いみじくもサクライが言ったように、失業と貧困の抑制はまさしく為政者の義務だ。
だが、ここ100年のアンダーワールドは増えすぎた人口によって逼塞しつつあるのも事実だ。

その結果が人口比におけるスカベンジャーやアウトレイジの増加であり、治安の悪化であり、
地上世界への人材の流出でもあった。

暮らしに余裕のあるジェントルマンやシビリアンはまだいい。
しかし貧困層の下層民である彼らは、生きるために盗み、殺し、地上へ逃げようとする。

挙句にアンダーワールドに見切りをつけた一部のテクノロジストまでも地上へ出て行ってしまう始末だ。

この状況を放置すれば、遠からずアンダーワールドは崩壊する。

605: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:07:54.31 ID:NznJkVc10
(それを防ぐためには、一刻も早く地上を取り戻さなければならん)

アンダーワールド人による地上への帰還。
それは表向きには2000年前の祖先の過ちを雪ぐことであり、故郷に帰るということだ。
だが、資源の獲得と生息圏の拡大という意義も厳然として存在する。
オーバーロードとして考えなければならないのはアンダーワールド人を幸福にするということであって、
後者をこそ念頭に置かなければならない。

地上の『異変』以来、何もかもが変わりつつある。
サクライの言うように状況は激変し、時代は移り変わっていく。
この変わってしまった世界で生き残るために、誰もがあがき続けなければならないのだ。

(時代は変わる。確かにそうだ。
 2000年もの時が流れれば、人間はこの過酷な環境に適応する。
 その証拠に、我々の目は強い光に弱くなったし、呼吸器は粉塵に強くなった。
 私も、私の父も、祖父も、そのまた祖父も、あの天頂に埋め込まれた人工太陽が当たり前なのだ。
 アンダーワールド人は、太陽のない世界を故郷と思うようになって久しいのではなかったか。

 ……だが、地上奪還という2000年前の祖先達の妄執は今、実体を得ようとしている。
 ならば、この時この時代に地上を取り戻すことこそ、私の為すべきことではないのか?)

彼が考えを巡らせているうちに、地上車はオーバーロードの邸宅のガレージに滑り込み、
「目的地に到着しました」という定型句を再生した。

この地上車に搭載されたOSの合成音声のサンプリング元は、300年前の女性だと聞いたことがある。
その時代に生きた彼女もやはり、この地底こそ故郷と感じていたのだろうか。

606: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:08:39.95 ID:NznJkVc10
オーバーロードが邸宅の執務室に戻ると、小さな影が彼の胸に飛び込んできた。

「パパッ!」

彼と同じ褐色の肌と黒い瞳を持った少女――ナターリアは、人工太陽など相手にならない明るい笑顔を見せた。
彼女の笑顔に匹敵しうるものがあるとするなら、それはきっと地上の太陽に他ならない。

「よしよし、ナターリア。相変わらず甘えん坊だなぁ」

大きな手で愛娘の頭を撫でると、くすぐったそうな声が漏れた。

「ンッ……エヘヘ。パパ、お仕事お疲れサマ!」

「おいおい……また地上の言葉を勉強していたのか? お前にはまだ早いぞ」

「イイノ! ナターリア、日本語勉強してスシ食べに行くンダ!」

「オーバーロードの娘が地上の料理を好き好んで食べるのか?
 ……まあ、ダメとは言わんが、あまりおおっぴらにそういうことは言うんじゃないぞ」

「ナンデ?」

「そりゃあ勿論、スシが地上のものだからだろう。アンダーワールドのものなら誰も文句は言わんさ」

「ム~、スシおいしいのに……ミンナ、スシ食べれば考え方変わるヨ!」

「ハハハ、そうだといいな」

607: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:09:27.17 ID:NznJkVc10
下手くそな日本語で喋る娘に、オーバーロードも流暢な日本語で会話を交わした。
勉強はほとんど独学でしているだろうに、精一杯日本語を披露しようとする娘に応えたのである。

「語学もいいが、他の勉強は大丈夫だろうな?」

「ウ……実はナターリア、スーガク苦手だヨ……」

「そうなのか? ああいうのはパズルみたいなものだろう。難しく考えすぎちゃダメだぞ」

「スーガクよりはスポーツの方が好きダナ! ナターリアはダンス得意だヨ!」

それはオーバーロードがわずかな間だけ、地底の最高権力者から、一人の父親に戻る瞬間だった。

オーバーロードの称号は自分という個人を縛り、自分の言葉を失わせ、時に悪を為さしめる。
けれど自分がその重みを引き受けたのは、愛する娘によりよい世界を手渡してやろうという
純粋な思いがあるからこそだった。

地上。光溢れる豊かな世界。
追放者の末裔である自分達が、いつか帰る世界。
願わくば、この愛する娘に生きて欲しい世界。

掛け値なしにそう思う感性は、オーバーロードが地底で生まれ育ったからではなく、
彼がナターリアの父親だからだ。
娘の幸せを願わない父親など、存在する意味があるのだろうか。

そして、人が誰かのために敢えて悪徳を為すことの理由など、それで充分ではないだろうか。

ナターリアがいるからこそ、オーバーロードは一人の男として、その名に押し潰されずにいられる。
それが将来、何千何万の地上人を殺すことになるのだとしても……。

608: ◆kaGYBvZifE 2013/06/28(金) 01:13:39.02 ID:NznJkVc10
ナターリア
14歳
アンダーワールドの最高権力者『オーバーロード』の娘。
あまり地上人に対して偏見はなく、その証拠に地上の食文化に興味津津。
日本語を勉強してるけど片言でしか喋れない模様。

オーバーロード
40歳
アンダーワールドの最高権力者。
娘や、娘と同じ世代の人々にためにも幸福な時代を作りたいと考えている。



アンダーワールドの描写をちょっとしてみた
サクライPとオーバーロードの似てるような正反対なような妙な父親像と言ったら

615: ◆cAx53OjAIrfz 2013/06/28(金) 01:38:49.26 ID:Ak15JZFx0
本日は晴天なり 投下します

鷺沢さんだしたけど、微妙に違うとかあったら是非ガンガン言ってほしい

616: ◆cAx53OjAIrfz 2013/06/28(金) 01:40:23.61 ID:Ak15JZFx0
世の中で地下世界で歴史的交渉をし、カースが地上で暴れまわっている頃。
Пは家でごろ寝しながら、いつも通り神様の新聞を読みあさっていた。

П「カース同士での内輪もめか!上級カース同士での屋上の死闘」

П「カース同士で屋上乱闘後、命からがら生き延びる事例発生、皆さん屋上に注意して下さい…」

П「世界的大企業の主ロリコン疑惑、何でもとある場所にて12歳の実の娘と擬似SMプレイ疑惑」

П「3チビカーストリオ街を練り歩くも、町の人々にすらスルーされる」

П「中には小学生だと思ったという者も、写真が……アラヤダ可愛い」

П「黄衣の王元トップアイドルに取り付く、本人の証言によれば可愛い女の子に取り憑きたかった、今では満足しているとの事(※要出典)」

П「……世の中スゴイ平和すぎて、副業依頼来ないんじゃー」

読んでいた何時もの新聞をゴミ箱に放り投げ、新調したライフル、カンプピストルにため息を付く。

思っていた以上に銃の整備が面倒、茄子に投げることも出来ずに少し嫌な気分になる。

今日は3件犬の探索依頼が来た、ので全部この街の探偵事務所に投げた。

きっと大忙しで商売繁盛なのだから、感謝くらいはしてくれるだろう。

その時、外からチャイムを鳴らす音が聞こえた。

誰だろうか?また犬探しならケツ蹴り飛ばしてやろうか。

文香「すみません……鷺沢というものですが……依頼したいことがありまして……」

П「はぁ、取り敢えず中へどうぞ」

よくわからないが、民族衣装風の意匠感じる服を着た女の子がやってきた。
涼しげな顔だが、ただ単にポーカーフェイスというだけで、長い髪の下では汗をダラダラ流していた。
名前は鷺沢文香という名前らしいが……

文香「実は……依頼したいことがあるんですが……」

П「何のご依頼ですかね?」

文香「私を匿ってもらえませんか?」

П「ホァ?」

617: ◆cAx53OjAIrfz 2013/06/28(金) 01:42:41.97 ID:Ak15JZFx0
思わず変な声が出た、何を言ってんだコイツ。
そしてスゴイ暑そう、というか熱気がガンガンこっちに飛ぶのでイソイソと冷麦茶を出す、一気飲みされた。
おのれおかわりか、だが少しは頭は冷えただろう。

文香「私……実は能力者なんです……」

П「そうですか、私も能力者です」

また麦茶を一口、そんなに疲れたのかコイツ。
それにしても口下手なのか、話が要領を得ない。
こういう時は女子トーク力に優れた茄子を連れてきたほうがいいのだろうか。

文香「後出来れば……茄子さんも連れて来て頂きますか」

П「ん?!」

何で知ってんだコイツと疑問が思い浮かぶが、取り敢えずまるごとバナナを食べていた茄子を呼びつけることにした。

茄子(ムグムグ……ゴクン)「あ!巫女さん」

П「何だ、知り合いか?」

文香「いえ……」

茄子「だって、持ってるじゃないですかアカシック・レコードを読み込む本」

П「ホ?」

思わず変な声が出た、アカシック・レコード?

茄子「所謂世界のすべてを記されている、という本ですねーまあ、Пさんにはあまり意味が無い本ですよ」

П「そんな大層な本なのにか?」

そう言っている横で、文香が丈夫そうなハードカバーの本を取り出す。
奇妙なことに本に文字は書いておらず、ページを捲っても何も文字が書いていない。

618: ◆cAx53OjAIrfz 2013/06/28(金) 01:44:15.85 ID:Ak15JZFx0
П「何も書いてないじゃないか」

茄子「だってПさんは読む能力が無いじゃないですか」

П(イラッ)

茄子「いいですかー?アカシック・レコードは言うならば人生の攻略本ではなく、人生を第三者、詰まり神様の視点から紐解く歴史書なんです」

茄子「言うなれば、それを読むということはそれを認める、という事は未来は変わらないと言うことになりますね?」

П「まあ、それもそうだな」

茄子「ですがコレには深い間違いがあるのです、実はアカシック・レコードは拒否ができる」

文香「本当ですか……!」

何で微妙に嬉しそうなんだ、こいつ。

茄子「何故なら、アカシック・レコードは昔から信心深い敬虔な使徒にしか読めないと書いてありますね、コレはそれぞれの宗派の神が仕組んだ罠なのです」

茄子「鷲沢さんは、既に未来の部分を読みましたか?」

そう言うと文香は、静かに頭を横に振る。

文香「いえ……何回かは読もうと思ったのですが……」

茄子「今から先の事を読む、コレがアカシック・レコードの罠の発動キーです」

茄子「まずこの本の存在を知った時点で、人間には2つの道が残されます、信じるか、信じないか」

茄子「そこで神様は巧妙な罠を張りました、読むことは信じることという罠です」

茄子「一応神様と同等の能力、もしくはそれ以上の力があれば乗り越えることが出来るのです」

茄子「ですが大抵の人間には、この罠、いうなれば神様の力に対向する手段がない」

619: ◆cAx53OjAIrfz 2013/06/28(金) 01:45:43.53 ID:Ak15JZFx0
П「随分嫌な神様じゃないか、具体的にはどうなるんだ?」

茄子「『自分の意思で行動した』という自由意志を気付かれないように奪われ、神の傀儡になるっていうのが一般的ですね」

文香「まるで……洗脳ですね……」

茄子「そこでПさんの『心』の力、運命書き換え能力です」

П「あれ?そんな大層な能力だったか?」

ふうヤレヤレという顔でコチラを見てくる茄子、このアマ味噌漬けにするぞ。

茄子「良いですか?Пさん、あなたは言うなれば神様の意思を踏みにじり、やろうと思えば神様をも殺す事ができる能力を持っているんです」

П「回数制限があるけどな」

茄子「普通なら善業を積めば、神様を殺しても問題ないってのが破格の条件なんですよ?」

茄子「99.999999999%失敗しても、0.0000000001%の可能性がアレばこれから起きる事象を好きにできる、それがあなたの能力です」

茄子「世の中の出来事は無限に分岐していきます、そしてアカシック・レコードに書かれているのは、世界の分岐の一番大きい可能性の歴史」

茄子「それを根本から覆せてしまう、いうなれば全知全能と名のついた神様の威光を真っ二つに出来るのですよ」

そう言って誇らしげにドヤ顔の茄子、だから何でお前がドヤ顔なんだ。

620: ◆cAx53OjAIrfz 2013/06/28(金) 01:47:24.50 ID:Ak15JZFx0
そんな能力の人間のもとに好き好んでいるんだから、コイツも大概変人だなと思いつつ文香に向き直る。

П「へぇー、所で鷺沢さんとやら、誰に追われてるの?」

文香「何でも……アカシック・レコードによると……櫻井財閥とかいう企業……だそうで……」

П「へぇ、暇なのかね」

文香「それが……私の能力が欲しいらしくって……」

П「んでその企業は何処にあるの?そこ全部に隕石落と……事故で落ちればいいわけだろ?」

文香「……とてもじゃないけど、場所は多いから……」

茄子「それじゃあこうしましょう、貧乏神をあなたにつけます」

一瞬の間の後脳が混乱した、貧乏神をつける?何で?
世間一般的には、ここから茄子が敵に回るとかそんな感じは無かったはずだし、はてさてどういうことか。

茄子「あ、驚かないでくださいね、貧乏神は確かに引っ付いた人を不幸にすると言いますが、それは誰もお供えをしないからなんです」

茄子「なので、これから家に神棚を頼んで作って起きますので、神棚に味噌をお供えして下さい、多分見てないうちに減ります、そしたらまた追加して下さい」

П「へぇ、するとどうなるんだ?」

茄子「文香さんには特に効果が無いかもしれませんが、文香さんの能力を狙うもの、また攻撃意思を決めたもの全員がやることなす事並べて『全部失敗』ます」

П「それは恐ろしいな」

茄子「自分か他人を不幸にする、それ故に貧乏神は不幸の象徴、と言われているんですよ」

621: ◆cAx53OjAIrfz 2013/06/28(金) 01:49:40.94 ID:Ak15JZFx0
何でお前がどや顔なんだ、と思いつつ文香の方に向き直る。

П「一応俺も『鷲沢文香の自由を誰も妨げられない』と保険をかけておく」

文香「ありがとうございます……それで謝礼ですが……」

と聞いた当たりで、吹っかけてやろうかと思ったが、どうせアカシック・レコードである程度俺のことは読んできているのだろうから用意はあるはず。
となると、俺が面白く無い。

П「これから暫く夜の給仕手伝いを、茄子と手分けしてよろしく」

え、という顔をしてコチラを見る文香、恐らく少し重いくらいの金を持ってきてたんだろうが、それも無駄骨に終わって少し愉快。

П「グヘヘヘェ、オラァ他人が予想外にビックリして、嫌そうな顔をするのがでぇすきなんだァ」

文香「……まあ、そういうことなら……それに……Пさんの側にいたそうが安全そうだし……」

П「……」

そう言ってコチラの方を向いて、ニコリと笑う。
あ、コイツ無口で口下手なだけで、負けず嫌いで……俺が苦手なタイプだ。
そう考えると、意外と今回の報酬は失敗だったのかもしれない、畜生、腹いせに櫻井財閥の会社に隕石落としてやろう。

茄子「良かったですねーПさん、ハーレムですよ!ハーレム!」

俺は無言で茄子の腹を抓った、やっぱり俺は女が苦手だ。

622: ◆cAx53OjAIrfz 2013/06/28(金) 01:51:19.27 ID:Ak15JZFx0
貧乏神

背後霊みたいなもの、人に取り付き味噌を捧げないと不幸にするが。
味噌を毎日差し出すと、『人に攻撃意思を見せたもの、付け狙うものを絶対失敗させる』というご利益を出す。
実際は取り憑いた人間が失敗続きになって、貧乏になったという事から貧乏神と呼ばれている。
なので金を貪ったりはしない、年寄りなので味の濃いのが好きで味噌をそのまま食べるのが趣味。

隕石

1日に約23個陸に落ちているらしい、だが大抵は空気中で焼き切れる。
そして、たまに大きいのも大抵は海上に落ちるという。
一発の威力は小型でも、TNT数十~百キロクラスとか。
これを悪用出来れば、それはもう酷いことになるでしょう。
『これから毎日会社を焼こうぜ?』

627: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:06:15.38 ID:C39k2TaNo

──とある街中──

二人組の覆面男が、大きな袋を抱えて銀行から飛び出してきた。どうやら銀行強盗であるらしい。
手には銃を持っているため、周囲の人間は迂闊に近寄れず、ヒーローかGDFの登場を待つしかなかった。

強盗「よし! とっととずらかるぞ!」

弟分「へい兄貴!」



「そこまでだ!!」



強盗らが逃走用に用意したと思われるバンに乗り込もうとしたその時、ビルの谷間に二人を制止する声が響いた。

強盗「な、なんだ!?」

弟分「兄貴! あそこ!」

強盗を含め周囲の人々が声の主を探していると、ある雑居ビルの上に馬に跨った人影を見つける。

「その方らの悪行、この目でしかと見届けたぞ!」

強盗「なにモンだ!」

「悪党相手に、名乗る名などない!!」

628: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:07:13.85 ID:C39k2TaNo

弟分「お、お前は……!」



仁美「天知る地知る瞳知る……武辺者ヒトミが居る限り、この世に悪は栄えない!!」ババーン!



弟分「誰だー!?」

野次馬「(自分で名乗ってるし……)」

強盗「おい、なんだかよくわからんが、今の内に逃げるぞ!」

弟分「へい!」

周囲の人間がざわめく中、ビルの上の人影が長ったらしい口上をぶっている間に強盗らは逃げていってしまった。


仁美「──さあ、この朱槍の錆となりたくなくば、神妙にお縄につけい!」

『おい! おい仁美!!』

ヒトミと名乗った少女が跨る馬が、彼女に話しかける。
話しかけるといっても、念話の類であるが。

仁美「んもうなによ松風! 今良い所なのに!」

松風『その松風っていうのヤメロっつってるだろ!』

松風『お前がワケのわからんことをぶつくさほざいてる間に、奴ら逃げっちまったぞ』

仁美「……エ? あああっ! アタシの登場シーンを無視するとは!!」

仁美「松風! 追いかけるよ!」

松風『やれやれ……』

松風と呼ばれた馬は、地上30メートル程の高さを一息に飛び降りると、逃げていった強盗の車を追いかけるのだった。

629: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:08:51.27 ID:C39k2TaNo

弟分「あ、兄貴ィ! さっきの奴が追いかけてきますぅ!」

強盗「へっ、高速に乗っちまえばこっちのもんだ」

強盗「いくら馬に乗ってるとはいってもさすがに追い付けまい!」

仁美「待て待て待て待てぇーい!」ドドドド

弟分「う、うわああ! 追い付いてきやがったぁ!!」

強盗「な、何だってんだ一体!? もっと飛ばせ!!」

弟分「これでも180km/hくらい出てんですよぉ!」

仁美「丹羽仁美! 推して参るーっ!!」


強盗「チッ……こいつは出来れば使いたくなかったが、仕方ねぇな!」

そう言うと強盗は後部座席からサブマシンガンを取り出した。
慣れた手つきで動作を確認する様子を見るに、どうやら素人ではないらしい。

強盗「てめえに恨みはねえが……死にな!!」

仁美「むっ!!」

強盗は銃を構え仁美に狙いを定めると、躊躇いなく引鉄を引いた。
仁美は銃を向けられている事に気づくと、手に持った長柄を高速で回転させる。
勝利を確信した強盗の予想に反し、撃たれた銃弾は全て弾き落とされてしまった。

仁美「飛び道具とは……卑怯なり!!」

強盗「ばっ、化け物めぇ!」

仁美「冗談! むしろアタシは化け物を狩る側よ!」

そうこうしている内に強盗と仁美の距離はどんどんと縮まり、ついに目と鼻の先にまで近づいた。

630: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:09:27.15 ID:C39k2TaNo

仁美「覚悟おぉーっ!!」

仁美は手に持った槍を大上段に振りかぶると、思い切り振り下ろす。

強盗「うわあああぁぁ!」

弟分「ひいいいいぃぃ!」

仁美の槍によって強盗らの乗っていたバンは、真ん中から縦に真っ二つに両断される。
制御を失った車はその場でスリップを起こし、道路脇の防音壁に激突した。
衝撃で中の強盗は気を失ってしまったようだ。

仁美「銀行強盗、討ち取ったりーっ!!」

黒煙を上げる車の傍で、仁美は勝どきを上げるのだった。

631: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:10:27.00 ID:C39k2TaNo

気絶した強盗を簀巻きにしてGDFに引き渡した仁美は、帰宅の途についていた。
街中を歩いていると、突然松風が何かに反応を示す。

松風『!? おい、仁美! 俺を外に出せ!』

仁美「エ? いきなり何言ってんの?」

松風『魔族の反応だ! どういうこった、魔王様は人間界にはあまり干渉しないってぇ話だったが』

仁美「魔族? まあいいや」

松風の話を聞いた仁美が槍を振りかぶると、穂先から黒いモヤが現れ馬の形を作った。

仁美「じゃ、案内してよ」

松風『こっちだ』


「んー、思ってたより見つけるのは簡単じゃないか……反応があっても、的外れの小物ばっかりだもんなー」

松風『あいつだ』

松風が反応したのは、人間にしか見えない少女だった。

仁美「ん? 魔族って人間と同じ見た目なの?」

魔族と言われても松風しか知らない仁美が疑問に思うのは当然だ。

松風『いや、そうとは限らねぇんだが……おいアンタ!』

「ん?」

632: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:12:08.87 ID:C39k2TaNo

当の少女は松風の念話に反応し振り返った。
やはり普通の人間では無さそうだ。

「柚に何か御用? ……って、シャドウメア!?」

自分を柚と呼んだ少女は松風の正体をも知っているらしかった。
どうやら魔族の一員に間違いないようだ。

松風『やっぱり、アンタ悪魔だったか……その雰囲気は死神か?』

ユズ「んー、昔は死神をやってたこともあったけど、今はちょっと違うかな」

松風『魔王様は人間界への不要な干渉はお許しにならない筈だが、どういうこった?』

ユズ「詳しくは言えないけど、その魔王様の密命を受けてここにいるんだよ」

松風『魔王様から!? どうやら、長い間魔界に帰らねえ間に、色々変わっちまったみてえだな』

ユズ「話が済んだならもう行ってもいい? アタシこれでも忙しいんだよね」

松風『そうつれないこと言うなよぉ! 久々に同郷のモンに会えて嬉しいんだよ』

ユズ「えー?」


松風の発言にユズは思案する。
正直、一秒でも時間が惜しいくらいだが、まだ日は高いので大罪の悪魔連中も現れないだろう。
それなら少しくらいは、この人間界に縛られているらしい魔族に付き合ってやってもいいだろう。

ユズ「じゃあ、どっかで座ろうか……ところで、そちらのあなたは何者?」

松風とユズのやり取りを見ていた仁美は、正体を聞かれて素直に答えた。

仁美「アタシは退魔士の仁美、一応この松風の主」

松風『だから松風って呼ぶな!』

ユズ「退魔士? ……シャドウメアの主?」

633: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:14:12.90 ID:C39k2TaNo

──何処かの公園──

ユズと仁美はその辺りの自販機で買ったお茶を飲みながら話し込んでいた。
松風は人目に付きやすいため、再び封じ込められている。


ユズ「ふーん、じゃあ、魔族は敵ってこと?」

仁美「アタシの祖先は魔族と戦ってたみたいだけど、ここ最近は見なくなったって」

仁美「アタシも松風以外の魔族を見たのは柚っちが初めてなんだよね」

ユズ「その割に、アタシを狩ろうとはしないんだね」

ユズ「(ただの人間にやられるとも思わないけど……)」

仁美「まあ、悪さしてないのに退治するのは気が引けるし……」

松風『ちなみに俺は、悪い人間に騙されてこいつの祖先と契約させられる羽目になったんだがな』


二人の話に松風が割って入る。

仁美「なによそれー、あなたが暴れてたからしょうがなく退治したって聞いてるけど?」

松風『人間の方から召喚してきて、んでこっちは契約通りの仕事をしたから代価を求めたら』

松風『「そんなの聞いてなかったー」って……んで退魔士がしゃしゃり出てきて俺のことボコってきてよぉ』

松風『よく悪魔が邪悪だとか言えるわ! お前ら人間の方がよっぽど邪悪だわ!』

仁美「そりゃあなたが代価の事教えないのが悪いんでしょうが!」

仁美「どうせ後になって突然魂寄越せとか言い出したんでしょ」

松風『だって聞かれてねーし』

仁美「人間の取引には説明義務ってのがあるの!」

松風『俺ァ人間じゃねぇよ!』

634: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:16:10.48 ID:C39k2TaNo

ユズ「(なんだかんだで仲良いのかな……? 魔族は大抵人間を見下してるものだけど)」

ちょっとした皮肉の応酬を聞きながらユズは思った。


松風『ま、お前が押っ死ねば晴れてこのクソッタレな契約も解消されるワケだがな』

仁美「100年くらい生きてやるから!」

松風『お前みたいな跳ねっ返り娘が退魔士なんて続けてもどうせすぐくたばるのがオチだよ』

仁美「なにをーっ!」


二人が本格的に言い争いを始めようとしていると、何処からともなく悲鳴が聞こえてきた。
カースの反応ではないため、人間の悪人か宇宙犯罪者の類だろう。

仁美「っ! 行くよ! 松風!!」

松風『チッ……しょうがねえな!』

仁美「いきなりで悪いけど、アタシらは行かないと! またね柚っち!」

松風『久しぶりに悪魔と話せて楽しかったよ、機会があればまた会おうぜ!』


ユズ「(魔王様の言う、人間と魔族の共闘か……)」

ユズ「(あの二人を見ていると、それも夢じゃないって……そんな風に思えるな)」

遠のく二人の背中を眺めながら、ユズはそんなことを考えるのだった。

635: @設定 ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:18:18.21 ID:C39k2TaNo

丹羽仁美(18)

職業:学生・時々退魔士
属性:かぶき者もどき
能力:人並み以上の身体能力

ヴァンパイアハンターとも呼ばれる魔族専門の退魔士の末裔。
時代劇好きが高じて歴史に興味を持っており、古代の武将や城が好物。
また、度々時代がかった言い回しを使う。
本業は異形の者を狩る事だが、勧善懲悪モノの時代劇の影響により、
人々に害をなす存在は進んで倒す、いわゆるヒーローのような立ち位置にいる。
ちなみに、彼女が振るう得物は先祖代々受け継がれてきたハルバード。


松風

職業:仁美の使い魔
能力:全速力でも延々と走っていられる

光りを通さない漆黒の体毛と、闇の中で光る真紅の目が特徴の、シャドウメアと呼ばれる馬型の魔族。
仁美からはある有名な武将の愛馬である『松風』の名前で呼ばれているが、本人は嫌がっている。
かつて人間界に現れて暴れていた際、仁美の祖先に敗れ主従の契約を結ぶことになってしまった。
その契約の効力は、丹羽の血筋が途絶えるまで有効。
普段は仁美の持つ槍に封じられているため、戦闘の際に外に出て走り回れるのが嬉しいらしい。

636: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/28(金) 02:20:37.10 ID:C39k2TaNo
投下終わりです

いつかアヤカゲとセンゴク☆ランブ結成して欲しくて書いた
ただ最近の敵役の強さ的にどこまで通用するか…

638: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:29:42.39 ID:UtHR4tILo
「・・・はぁ、またダメだった・・・」

夕暮れ時の公園を、とぼとぼ歩く少女が一人。

「もうこれで九件目かぁ・・・いよいよ後がなくなっちゃったよ」

アイドルになりたい、と息巻いて家を飛び出したまでは良かったが、両親が折れる条件として提示したのは、「受けるオーディションは十件まで、それで駄目なら戻ってこい」というものだった。

「十件ぽっちで拾ってもらえるほど甘い業界じゃないとは思ってたけど・・・実際目の当たりにするとヘコむ・・・はぁ」

後が無い焦りと緊張で、数をこなせばこなすほどアピールが下手くそになっているのを自分でも感じるくらいだ。

このままでは次のオーディションも良い結果は残せそうにない。

「・・・あーダメダメ、こんな悪いイメージ持ってちゃ上手くいくものも失敗しちゃうよ!気合入れなおさないとッ!!」

ふんす、と心機一転、次こそ合格だッ、と気合を入れたその瞬間のこと。ふっ、と少女の真上から影が差す。

「・・・ん?」

日が暮れるにはまだ早いよね、っていうか周りまだ夕日が照らしてるし。何事かと上を見上げると、

「わわわっ、どいてどいてえええええええっ!!!」

「え、ええええええええええええっっ!!!」

親方、空から女の子が!!いや、親方って誰よ!?

「「ふぎゅっ!!?」」

哀れ少女は突如現れた謎のもう一人の少女の下敷きに。

「ちょっと伊吹、何やってんすか・・・うわっ、ホントに何やってんすかっ!!?ちょ、大丈夫っすか!?」

二人が目を回した所に、飛んできた少女の様子を見にきたらしい少女が血相を変えて駆け寄って来た。

640: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:31:04.46 ID:UtHR4tILo
「ほんっとーにゴメン!!大丈夫!?たんこぶとかできてない!?」

「だ、大丈夫ですから・・・俯いて歩いてたアタシも悪いんだし・・・」

「まったく、チョーシ乗って無茶な跳び方するからこうなるんっすよ・・・えっと、忍ちゃんでしたっけ?遠慮なく怒っていいっすからね?」

アイドル志望の少女は、工藤忍。空から降って来た少女は、小松伊吹。その様子を見にきた少女は、吉岡沙紀。

ひとまず自己紹介を終えたあと、伊吹がひたすら謝りたおし、忍がそれをなだめ、沙紀が伊吹をつつく、という光景がしばらく続いていた。

「・・・この辺にしときましょうか、キリがないっす。それで、忍ちゃんはなんで俯いてたっすか?」

と、沙紀が話を切り替えようと話題を振った。静かに目を伏せ、忍がそれに答える。

「え、っと・・・アタシ、アイドルを目指して、上京してきたんです。でも、両親に『十件目までに事務所が決まらなかったら諦めろ』って言われてて・・・さっき、九件目で、落ちたんです」

「ふーん・・・崖っぷち、ってワケだ」

伊吹に改めて口にされ、忍がぎゅっと拳をにぎる。意識させてどうすんっすか、と沙紀がぺしり。

「痛っ。・・・でもさ、それって考えてみれば絶好のチャンスじゃん?」

「チャンス、っすか?」

641: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:31:34.05 ID:UtHR4tILo
訝しげな眼で聞き返す沙紀に、伊吹は得意げな笑みを浮かべて答える。

「そ、大チャンス。後が無いってことはさ、言い換えれば『力を残しておく必要がない』ってコトでしょ?思う存分全力でアピールできるんだし、これ以上ないチャンスじゃん?」

前向きすぎるでしょソレ、と沙紀がツッコミを入れるが、その言葉は不思議と忍の胸を打った。

(・・・そっか。今まで、多分心のどこかで『失敗しても次があるし』って、無意識に力を抜いちゃってたのかもしれない)

「・・・ありがとうございます。なんか、ちょっと気分が楽になりました」

そう言って微笑む忍を見て、沙紀と伊吹が思わず口を噤む。

「あ、あれ?どうか、しましたか・・・?」

何か変なこと言っちゃったんだろうか、そう思ってうろたえる忍に、

「・・・いや、良い笑顔するなぁ、と」

「ソレ見せれば、次は絶対受かるって!良かったじゃん、チャンスとそれを活かせる武器、どっちも持ってるんじゃん忍ッ!!」

「わ、わあっ」

しみじみ呟く沙紀と、思いっきり抱きついてくる伊吹。

「って、冷たっ。うわ、忍めっちゃ体温低いじゃん!?」

「・・・あ」

しまった、と忍の顔が青ざめる。そうだ、ここは故郷みたいに『受け入れられる』場所じゃない、もっと警戒するべきだったのに・・・

642: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:32:57.01 ID:UtHR4tILo
「ん、ホントだ。ひやっこくて気持ちいいっすねー」

「どーなってんのコレ、凄い冷え性?いや、それでもここまで冷たくはなんないか」

「・・・え、あれ」

気味悪がられてしまう、と身構えた忍だったが、二人の反応は先ほどまでと至って変わらず、平静そのものだった。

「あ、伊吹伊吹、忍のほっぺた凄いやわらかいっすよ」むにっ

「んーどれどれ・・・おーホントだ、お餅みたい」むにゅー

「うぇ、わ、ひゃめへーっ」

しばらく茫然としていた忍だったが、二人にほっぺたをいじられ始めると、我に返ってじたばた抵抗する。

「あっはは、そんな暴れないでよ忍ー」

「うりうり、こうっすか?これがいいんっすか?」

「ひゃっ、はらひへっ、ふはいほおーっ」(やっ、離してっ、ふたりともーっ)

しばらくそのままほっぺをおもちゃにされ、ようやく解放された忍は頬をさすりながら二人を問い詰める。

「変だと思わないの?これだけ身体が冷たいって、異常でしょ?」

「んー、つってもアタシそういうの慣れっこだしねー」「えっ」

「今のご時世、ちょっと変わってるくらいじゃそこまで驚くほどでもないっすし」「えっ」

どうしよう、聞いてたのと違う。都会だと『アタシたち』みたいなのって受け入れられないっておばあちゃんたち言ってたのに。

643: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:33:38.84 ID:UtHR4tILo
「っていうか、人に言えない秘密くらいは誰でも持ってるもんでしょ?アタシも地上生まれじゃないし」

「・・・ん、地上?」

「あー、伊吹は地下の出身らしいんっす。昔に地底に潜っていった人たちの子孫だとかで。つっても、アタシ以外は誰も信じてないみたいっすけど」

「・・・喋っちゃったら、『人に言えない秘密』じゃないんじゃ」

「細かいことはいーのよどうでも。要は聞いた相手が気にするかどうかでしょ?アタシは忍が何者でも気にしない。っていうか、さっきの笑顔見たらそんなんどーでも良くなるって」

「っすね。あれにやられないヤツがいたら、それこそどうかしてるっすよ」

「それは・・・」

ぼそりと忍がつぶやくと、周囲の気温ががくりと下がる。

急な肌寒さに伊吹と沙紀が身を震わせると、忍の姿が見当たらない。


「・・・アタシが『妖怪でも』、同じこと言える?」


ぞっとするほど冷たい声が、二人の背後から聞こえた。振り向くと、いつの間にか和服姿になった忍が、周囲に雪をちらつかせながら立っていた。

644: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:34:20.23 ID:UtHR4tILo
「おー、早着替え?やるじゃん忍ー」

「見た感じ雪女さんっすかね。いやー、なかなか和服も似合うっすね、忍」

「あっれー」

おかしい、なんでこの人たちこんなに順応性高いの。

「言ったっしょー、慣れっこなんだって。アタシもこんなことできるし」

そういった伊吹は、その場でジャンプすると、『空中を蹴り上げて』さらに跳び上がる。

「よっ、ほっ、とっ」

二度、三度、空中で『まるでそこに足場でもあるように』自由自在に跳び回る。

「・・・どうやってるの、あれ」

「伊吹いわく、『空気を固める能力』らしいっす。足場を作って、あぁやって跳び回るんっすよ。アレを取り入れたダンスは結構見ものっすよ」

気前よくバク転まで決めて着地する伊吹。忍が呆気にとられていると、

「じゃー次は沙紀の番ね」「ん、了解っす」「まだ何かあるの!?」

傍らに置いてあった鞄からスケッチプックとペンを取り出すと、さらさらとイラストを描いていく沙紀。

「・・・よし、出来た。見てるっすよ・・・」

ものの数十秒で犬を描きあげた沙紀が、その絵を忍と伊吹に向けてみせる。すると、

「・・・わ、え、動いた!?」「相変わらずやるもんだわねー」

なんと描かれた犬の絵が動きだし、ページの中を駆け回りだしたのだ。

「『描いた絵を動かす能力』。普段はもっとでっかいキャンバスにでかでかと描くんっす。結構な迫力で評判良いんっすよ」

骨を描き足して絵の犬にあげながら、沙紀は誇らしげに胸を張る。

645: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:35:19.07 ID:UtHR4tILo
「・・・なんか、都会って結構寛容なの?」

「都会でなくても、今の時代これくらいはフツーでしょ、フツー」

「変に身構えることないんっすよ。忍は気にしすぎっす」

わしゃわしゃ、と二人がかりで頭を撫でられ、少しくすぐったそうにする忍。

「そうだ、良かったらダンス見てあげようか?アドバイスできるトコあるかもしんないし!」

「ストリートのダンスとアイドルのダンスはまた別モノだと思うっすけどね・・・」

「こら沙紀ー余計な茶々入れるなー」

初対面で、なおかつ自分の正体を打ち明けて、それでもここまで親身になってくれて。

(・・・次のオーディション、負けられない。私だけじゃない、この二人のためにも)

ここまでしてもらって、すごすご田舎に引き返したんじゃ、申し訳が立つ筈がないじゃないか。


「アタシッ!!」「ぅわ」「ひゃっ」

「アタシ!絶対、次のオーディション、受かってきますッ!!だから、その時は・・・またここに、二人に会いに来てもいいですかッ!!?」


忍は、大声で宣誓する。それを聞いた二人は。


「・・・当然っす」「なんだったら、十一件目以降もサポートしてあげるわよ?」


微笑みを浮かべる沙紀と、少し意地悪を言って、それでも優しい目で見つめる伊吹。

「・・・ありがとう、二人ともっ。アタシ、がんばってくるからッ!」

その二人の姿に勇気をもらい、忍は笑顔で決意を新たにする。




数日後、泣きながらやってきた忍が「合格した」と二人に伝えると、「「紛らわしいことするんじゃない」」とくしゃくしゃになるまで撫でくり倒されるのだが、それはまた別のお話。

646: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:36:55.99 ID:UtHR4tILo
忍ちん和服も似合いそうだよなーとか、生まれが違っても育まれる友情っていいよね、とかそんな感じで
いぶきちSRおめでとう!

続いて、悪魔二柱をどうぞ

647: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:37:29.39 ID:UtHR4tILo
「・・・んふふー、美味しいです~♪」

「・・・ホント、幸せそうに食べるのね」

とある喫茶店の奥まった席に、二人の少女の姿があった。

いくつも並べられたケーキをかわるがわる頬張り、そのたび幸せそうな吐息を漏らす少女は、海老原菜帆。

その向かいに座り、菜帆が幸せそうに食べる姿を見て微笑んでいるのが、速水奏。

『菜帆ちゃん菜帆ちゃん、次はこっちなんかどうですか~?』

「相性ばっちりみたいね。安心したわ、ベル」

『えぇ、ばっちりですよ~。アスモちゃんもひとくち、どうですか~?』

片や、『暴食』を司る悪魔『ベルゼブブ』とその依り代。片や、『色欲』を司る悪魔『アスモデウス』。

それが、一見普通の高校生に見える少女たちの正体である

648: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:37:56.44 ID:UtHR4tILo
基本的に他の悪魔との接触を嫌うアスモデウスだが、今代のベルゼブブとは妙にウマが合った。

『強欲』のマンモンと『傲慢』のルシファーは、どこまで行っても自分本位で、他者に興味が無い。他を惹きつけてこその『色欲』とは反りが合うはずもない。

『怠惰』のベルフェゴールも、己を磨くことに興味がない者にこちらが興味を持てようはずもない。

『嫉妬』のレヴィアタンに至っては、向こうからして敵愾心を隠そうともしないのだ。もう何年も顔すら見ていない。

そして『憤怒』のサタン。衝動を抑えて生きるなど、何が楽しいというのか。気に入る気に入らない以前に、『そもそも考え方が理解できない』。

その考えに則れば『暴食』と『色欲』は最悪の相性ではないのか、と思うのが普通だろう。

しかし、よく食べるということは『豊穣の証』と捉えることもできる。豊かであればこそ、生物はより多くの子を成すことができ、それによって繁栄していく。

そうした『多産の象徴』としては、ふくよかな女性が頭に浮かぶことが多いだろう。すなわち、『色欲』と『暴食』は、程度さえ考えれば決して相性が悪くはないのだ。

お互いをベル、アスモちゃん、と呼びあい、たまにこうして顔を合わせてお茶をする。そんな関係が何年も前から続いていた。

649: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:39:01.70 ID:UtHR4tILo
「魔界の食べ物に飽きたから出てくる、って聞いたときはちょっと驚いたけど。菜帆さん、だったかしら?ずいぶん好相性な人間がいたものね」

『あ~、アスモちゃんちょっと意地悪な目してる。だめですよ~、菜帆ちゃんは私のですっ。あげませんよ~』

「心配しなくても取らないわよ。ただちょっと残念なだけ」

依り代の少女、菜帆から漂う17歳とは思えない色気に、もう少し早く見つけていれば、とアスモデウスが悔しさを感じるのも無理はないだろう。

きっと彼女とも相性は悪くない。『力を与えるのに調度いい相手』だったろう。

『それにしても、やっぱりアスモちゃんは大変ですね~。ぜんぶ自分自身で動かなきゃいけないなんて』

・・・そう、決して『依り代』としてではない。

「仕方ないわよ、『そういう力』なんですもの。私自身に『相手を惹きつける』のだから、自分が前にでるのは当然でしょ?」

考え方の他に、他の大罪の悪魔とアスモデウスとの大きな違いは、ここにあった。

憑依することができない訳ではないが、色欲の権化たるアスモデウス自身でなければ、発揮される『魅力』はどうしても本人よりも数段劣ってしまう。

そのため、人間界に居る六柱の中で、彼女だけは『悪魔の本体』がこちら側に居ることになる。

『ベルフェちゃんが追い払ったらしいけど、死神さんがいつ戻ってくるかはわからないしね~』

「気づかれたら、真っ先に私が狙われるでしょうね。一切手加減する必要がないんだもの、全力で」


それでも、彼女には負けるつもりは無かった。

視線を自分に釘づけにして、あらゆる攻撃を一点に惹き寄せて、その攻撃はカースでも盾にしてやりすごせば良い。

「自由に動き回れない戦いって、面倒らしいわよ?」

『怖い話ですね~』

視界が動かせないだけでも、十分な枷になる。『色欲』と相対するとは、そういうことなのだ。

650: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:39:38.05 ID:UtHR4tILo
「・・・さて、私はそろそろ行くわ。ベルの元気そうな姿も見れたことだし」

『え~、もう行っちゃうんですか~?』

「そうですよ~、ケーキひとつも食べてないじゃないですか~。美味しいですよ~?」

二人がかりで引きとめられるが、やんわり手をあげて断る。

「しばらく前に『分けてあげた』子、すっかり浄化されちゃってね。新しい子を探しに行きたいの」

『むむむ、そういうことなら引きとめるのも悪いですね~。行ってらっしゃ~い』

「がんばってくださいね~」

「・・・ふふっ、あなたにもそう言ってもらえるなんて嬉しいわ。それじゃ、また会いましょう」

コーヒーの代金をテーブルに置いて、今度こそアスモデウスはその場を立ち去る。



(・・・まだ完全に同化はしていない、か。試す価値はありそうね)

店を出て、大通りへと歩きだしながら、彼女は『菜帆』を改めて品定めする。

(『暴食』と一体化しながら、『色欲』の欠片を注ぎ込まれる。ふたつの『罪』を背負った人間は、一体どうなるのかしら?)

完全な一体化に至る前ならば、恐らくそれは成功するだろう。しかしアスモデウスは、その結果世界がどうなるのかには、やはり全く興味が無い。

(・・・ふふっ、お気に入りの子を取られたとき、ベルはどんな顔をしてくれるのかしら・・・うふふっ)

築き上げられた信頼関係から、相手を奪い去る。そうして訪れるだろう絶望に歪んだ『友』が浮かべる表情を思うと、ゾクゾクとした感覚に愉悦が止まらない。

色欲の悪魔の思う『友情』は、やはりどこまでも歪んだものなのだった。

651: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:41:44.62 ID:UtHR4tILo
以上でごぜーますよ

いかん、奏さんが思った以上にド外道になってしまったww
うっかり『人間界での姿』って設定に書いちゃったらこうなったでござる

652: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/28(金) 02:43:28.51 ID:UtHR4tILo
おっと、学祭三人娘の設定張り忘れてた

工藤忍(16)

職業:アイドル候補生
属性:妖怪/雪女さん
能力:吹雪を起こしたり気温を下げたり

北国の妖怪と人間の共生する郷からやって来た雪女さん。
幼い頃からあこがれていたアイドルになるため奮闘中。
上手くいかずに落ち込んでいたときに出会い励ましてくれた沙紀と伊吹を慕っている。

小松伊吹/イブキ(19)

職業:ストリートパフォーマー
属性:アンダーワールド出身/元ジェントルマン
能力:空気の圧縮凝固

アンダーワールドの貴族の生まれだが、地底の作りものの空に嫌気がさし、コネを駆使して地上へ抜け出してきた。現在はストリートパフォーマーとして活動中。
空気を圧縮して固めることができる能力をもっており、それを足場にしたアクロバティックなダンスが得意。
ただし、あくまでその場に固めるだけなので戦闘能力は皆無。足止めにはなるか。
凛から偏光コンタクトを譲ってもらっており、普段は偏光グラスは使わない。

吉岡沙紀(17)

職業:高校生、兼、ストリートパフォーマー
属性:一般人
能力:描いた絵が動きだす

描いた絵を動かすことができる能力を活かしたパフォーマーをやっている高校生。
伊吹とはお互いに失敗したところを遠慮なくつっ突きあえるライバルさん。
あくまで平面上で動き回るだけなので、こちらも戦闘向きの能力ではない。落とし穴とか描くとハメられはする。

660: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 15:56:20.66 ID:sqGpDf7DO
この時間に人いないかもしれないが投下します

木場さんお借りします!もしなんか矛盾とかありましたら指摘お願いします!

661: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 15:57:00.23 ID:sqGpDf7DO
マナミ「やはり、まだ手掛かりはないか」

龍帝キバ…いや、木場真奈美は魔王サタンの呪いの解呪方法を探していた。

自分のせいで彼は死にそうなのだ。速くしないといけない……

必死で探すがまだ見つからない。

マナミ「虱潰しに探すしかないか」

頭を片手で抑えながら、そうぼやいていた。

662: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 15:58:17.72 ID:sqGpDf7DO





『~~~~~~~』

「暴風よ!大いなる我が力に従い、全てを薙ぎ払う驚異で、死神の鎌の如く、我が敵を斬り裂け!サイクロンスライサー!!」






663: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 16:00:21.64 ID:sqGpDf7DO

マナミ「!?」

龍言語魔法と魔術の詠唱。

マナミが龍の翼を出し防ぐのと、黒炎の渦と暴風の凶刃がぶつかり合ったのは同時だった。

664: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 16:01:28.92 ID:sqGpDf7DO
マナミ「……誰だ?」

???「やっぱりこの程度では傷一つつかないわね。わかるわ。そして、妬ましいわ」

真奈美が翼で身を固めながら、睨むようにその声の主を睨んだ。

そこには、二匹の蛇がいた。恐らくは先程の攻撃はこの蛇がやったのだろう。

だが、真奈美に一つの疑問がうかぶ。

---何故?何故コイツは龍言語魔法を使える?

だが、この蛇と言葉から正体はわからないが、誰かを理解した。

665: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 16:02:37.68 ID:sqGpDf7DO
マナミ「レヴィアタンか……」

レヴィアタン「ええ、そうよ。だけど、私が誰かわからないのね」

マナミ「訳をわからないことを言うな。まるで、私がお前を知ってるみたいだな?そして、お前は私の事を知ってるみたいだな」

そう言いながら爪を具現化させ、警戒する。

恐らく、この蛇を操ってる本体がいるはずだが、その姿が見えない。

それに嫉妬を司る悪魔に龍言語魔法など使えない筈だ。そもそも龍族でない魔族には使えない筈……

666: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 16:04:13.21 ID:sqGpDf7DO
レヴィアタン「わかるわ。忘れるはずもないわ!!もっとも妬ましく、憎いお前らを…貴様を……!!」

レヴィアタン「龍帝……キバ!!例え姿が変わろうが、忘れはしないわ!龍族と魔族で呪われた子と言われた私を受け入れてくれ、憧れた貴方達を。……だけど、貴様らのせいで私は……≪私≫は!!」

蛇は吠える。もっとも妬ましく憎いモノの一人!龍帝に!!

667: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 16:05:34.59 ID:sqGpDf7DO
マナミ「!?……お前はまさか……」

レヴィアタン「だけど……今は貴様を殺さないわ」

思い当たる節があるのか、真奈美の顔は驚きを隠せていなかった。

思い当たる節があるのだ。
昔、魔族からも龍族からも虐げられてた一人の混血を…

それと同時にドロリと二匹の蛇が溶けていく。

レヴィアタン「お前らの希望を消し、絶望に叩き込む。それが私の復讐よ。もっとも妬ましく憎い……憧れてた貴方達への…」

668: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 16:06:59.74 ID:sqGpDf7DO







わ か る わ ね ?








669: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 16:09:48.96 ID:sqGpDf7DO
水面に走る波紋が如く、そう言い残し、レヴィアタンの気配は完全に消えた。

マナミ「待て!くっ…気配が完全に消えた?いや、それより希望を消す?まさか……」

痕跡が完全に消えたその場所を見ながら、木場真奈美は嫌な予感をぬぐいきれなかった。

思い浮かべるは自分の我が子と友人の娘。


また少しずつ、蛇は這い寄ってくる。


終わり

670: @設定 ◆I2ss/4dt7o 2013/06/28(金) 16:13:41.36 ID:sqGpDf7DO
川島瑞樹/レヴィアタン(肉体年齢28)

職業・悪魔(悪魔と龍の混血)
属性・嫉妬を司る悪魔
能力・呪詛 魔術 龍言語魔法 蛇操作

七つの大罪の一つ『嫉妬』を司る悪魔『レヴィアタン』の人間での姿。正確には、中学教師・川島瑞樹の肉体を無理矢理乗っ取ったもの。

見た目は美しい女性だが、その本性は邪悪。
人間の劣等感や羨望に漬けこみ、嫉妬心を掻き立てる言動をもちいて、争いを起こす人間達の姿を見るのが趣味である。

カースを産み出す事は勿論。呪詛をもちいて嫉妬心を掻き立て人間、カースなどを暴走させる。

どうやら、魔王と龍帝に深い嫉妬と憎しみを抱いてるようだ。
彼らの希望……昼子と薫をジワリジワリと狙う。

現在はエンヴィー……加蓮が残した未完成の嫉妬のカースを暴走させ、その様子を観察しているだけにとどめている。
だが、死んだはずの龍帝キバの気配を感じ取り、少しだけ抑えてたモノが外れ、手を出しに行ってしまう。

どうやら、そのカースに昼子と薫を狙わせようとしてるようだ。

嫉妬の証は、不明。

686: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:51:29.30 ID:KMB3nsRgo
次のレスから投下します

687: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:53:17.59 ID:KMB3nsRgo
聖は望月家の自室で思い澄ましていた。
光を心を救った、ヒカリ。

それは木漏れ日のような優しき暖かさを持った少女。
「高森藍子」についてだ。

聖「(負の感情を……浄化する能力……)」

聖「(感じた……希望の息吹を……)」

聖「(あの能力は、彼女本来が持つ能力…?)」

聖「(それとも……誰かに授けられた能力…?)」

聖「(私にも…わからない…)」

聖「(…けれど)」


『必ず守るから』


―――優しく、そして力強い意思

―――彼女ならきっとヒカルと共に

―――この世界を導いて…

688: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:54:10.16 ID:KMB3nsRgo
黒猫(雪美)「…すぅすぅ」

藍子の優しき能力を間近で感じ取っていたせいだろうか。
雪美は望月家に戻るなり、猫の姿に変化し安心したように眠っている。

そんな姿を見て、聖は願った。
ささやかだけど、確かな。
未来の世界でも、そんな幸せが存在していることを。

こんこん。
自室のドアが叩かれる音がする。

聖「…どうぞ」

がらっ…

礼子「調子はどうかしら?」

聖「だいぶ…良くなりました…」

この日、聖は雪美のわがままで人間の本分である学業を放棄し学校を欠席していた。
欠席の理由を「この世界」での母親である礼子には体調不良と伝えている。
まさか猫がワガママを…なんて理由にもならない。
何故なら礼子は普通の人間だからだ。

聖「ペロと一緒に……薬局にも行けましたし……」

けれど、実はこの「薬局」というのは外に出るために使った口実。
実際はヒカルの危機を感じ取り、その場所へ向かうために望月家を出たわけだ。
しかし、手ぶらで帰宅するわけにもいかないので一応薬局にも出向き、栄養剤を購入してから帰宅した。

礼子「それなら良かったわ」

礼子「今日は精力のつくジューシーな料理を作ってあげるから…」

礼子「きっと明日には元気に学校へ行けるわよ♪」

精力のつく料理…
ニンニクやウナギだろうか?
ニンニクもウナギもあまり好きな方では無い…

聖「……楽しみ、です」

けれど、聖の聖女たる性格ゆえか。
礼子に批判をあげることは出来なかった。

689: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:55:00.08 ID:KMB3nsRgo
―――その翌日、とある学校の屋上にて

人間界での「三好紗南」ことベルフェゴールは今日も変わらずフェンスに寄りかかってゲーム機の画面と見つめ合っていた。
しかし、昨日までとは少し違う。
それはゲームをプレイしてる屋上の場所だ。

昨夜、ベルフェゴールはサタン直属の死神であるユズからの襲撃を受けた。
自分にはもう関わるなと、念を押してはおいたが彼女の目的は自分の魂を狩ることだ。
同じ場所に留まっていては、いつまたゲームの邪魔をされるかわかったものじゃない。
わりとお気に入りの場所だったのだが、二度と見つからないように仕方なくこうして別の学校の屋上へと移ってきたわけだ。

雪菜「襲撃を受けたのはわかったけど、なんでまた学校の屋上なのぉ?」

今日もまたベルフェゴールが携帯ゲームをプレイしてる姿を眺めている「井村雪菜」ことルシファーが疑問を呈する。

紗南「良いじゃんさー。あたしがどこでゲームしてようが」

紗南「てかさー、ルシファーさんはなんで今日もあたしに会いに来てるの?」

紗南「なんかフラグ立っちゃってる?」

雪菜「うふ♪あなたの魔力なら、私の考えていることぐらいわかるでしょ?」

対象相手の思考の読み取り。
魔力によって対象の情報を獲得することが出来るベルフェゴールには造作も無いことだが、面倒だから正直自分の口から手短に用件を伝えて欲しいのが本音だ。
しかしゲームを一人静かに再開するには、それを伝えるよりも自身が思考を読み取った方が早いと判断し、仕方なくルシファーの思考を読み取る。

すると間もなくして二つの情報が、ゲーム機の画面に表示された。

690: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:56:09.61 ID:KMB3nsRgo
紗南「……1つは用件でもなんでもないね」

ベルフェゴールが面倒くさそうに息を吐く。

雪菜「そんなことないわよぉ!」

そんなベルフェゴールの締まらない態度にルシファーはわざとらしくふくれ面を見せる。
しかしベルフェゴールはそんなルシファーに見向きもせずに言葉を続ける。

紗南「あたしさ、天使様にだって興味無いんだよ?」


―――天使様


本来「三好紗南」が通っているはずの中学校に転校してきた望月聖のことだ。
ベルフェゴール達、悪魔とは因縁を持つ存在だがベルフェゴールはルシファーに指摘されるまで、その存在が自身のすぐ近くにあったことすら知らなかった。
最も、知ったところでルシファーみたいにちょっかいかける気も無いのだが。


紗南「そんなあたしがさ~」

紗南「―――お姫様なんてバグに興味を示すと思う?」

雪菜「―――情報は多い方が良いでしょっ♪」

偶然か否か。
ベルフェゴールが新たなお気に入りの場所を探して辿り着いた学校の屋上。


―――それは悪姫ブリュンヒルデが学生として通っている中学校の屋上だった

691: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:56:58.90 ID:KMB3nsRgo
紗南「試す気にもならない攻略情報なんていらないよ」

雪菜「まぁ、サタンの娘ってだけで「怠惰」を司る貴女からすれば興味の対象外よねぇ」

その通りだ。
努力や鍛錬を謳うサタン、ましてやその娘など「怠惰」からすれば致命的なバグ。
不愉快なこと極まりない。

雪菜「けど、そんな貴女が今回サタン直属の死神に襲撃されたっていうんだから面白いわよね♪」

雪菜「真逆に生きているからこその宿命かしらねぇ♪」

ルシファーはまるで愉快とも言わんばかりの態度だ。

紗南「たのしそーでなにより」

紗南「あたし、さっさとゲームしたいから次の用件行くよっ」

ルシファーのその態度に苛立ちを覚えたのか、はたまたやはり面倒だから相手にしないだけなのか。
ベルフェゴールはルシファーの言葉を軽く流して次の話へと進める。
二つ目の情報だ。

雪菜「あ、そうそう。重要なのはそっちの方なんだけどぉ、どうかしら?」

ルシファーは悪びれる様子も無くベルフェゴールに問いかける。

紗南「まっ、このぐらいの協力プレイならしても良いよ」

雪菜「あっ、ホントぉ?」

雪菜「うふ…話せるわねぇ、ベルフェゴール♪」

紗南「けど、終わったらもう帰ってよね?」

雪菜「わかってるわよぉ♪」

692: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:57:37.36 ID:KMB3nsRgo
ルシファーの二つ目の用件。
重要とは言うが、この用件はベルフェゴールの話を聞いて、その場で思いついた頼み事。
本来はブリュンヒルデとベルフェゴールの接近に興味を持って、この学校に訪れただけだった。

紗南「7492045+P」

ベルフェゴールが魔力を集中させコマンドを唱える。
目の前の対象の情報や一部の情報のみの再生には必要は無いが、ベルフェゴールはコマンドを唱えることで一度「見た」対象の情報の「全て」を再生することが出来る。
その能力によって、再生された対象の情報。


―――それは昨夜ベルフェゴールと相見えた死神、ユズの情報だった


ゲーム機の画面にはユズの全身像が映し出され、その能力、性格、喋り方、軌跡に至っては昨夜ベルフェゴールを襲撃し敗北したことまでもが事細かに記されていた。
ベルフェゴールはダウンロードを完了すると同時に、その画面をルシファーに向かって差し出す。

雪菜「ふんふん…」

ルシファーはその画面をまじまじと見る。
すると何かを確認したあと、その一瞬でまるで謀をめぐらしたかのような表情しながら肩にかけているポシェットの口を開いた。

紗南「もう良いの?」

雪菜「容姿と性格と喋り方がわかれば充分よぉ♪」

ルシファーがポシェットの中に手を入れる。
中から取り出された物、それはピンクのルージュ。


―――そして「傲慢」の証である、手鏡だった

693: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:58:30.59 ID:KMB3nsRgo
雪菜「たったそれだけの情報があれば女の子は素敵に大変身ってね♪」

そう言い終わると同時に、ピンクのルージュを唇に引き、その姿を手鏡に映し出す。
手鏡に姿を映し出した瞬間、恐らく瞬きをする間も無いほどの時間だったであろうか。


「その魂狩らせてもらうよ!なーんて!へへっ♪」


―――手鏡に映し出され、その場に存在していたのは「死神ユズ」の姿

―――ではなく「死神ユズ」に「メタモルフォーゼ」した「ルシファー」の姿だった


紗南「あたしの前で声や喋り方まで再現しないでよー」

ユズ(雪菜)「うふ…貴女のその不満気な反応見る限り、今回の変身(メイク)もキマってるってことでいいかしらぁ♪」

ルシファーは普段の喋り方をしながら、ユズの姿で満足気に笑う。

ルシファーの頼み事。
それは死神ユズについての情報を自身に提供してもらうことだった。

紗南「キマってるかどうかは自分が一番よくわかってるんじゃない?」

ユズ(雪菜)「こういうのは他人の意見が大切なのよぉ」

ユズ(雪菜)「でもぉ…」

ルシファーは自身の服に付いていたバッチを手に取り、魔力を送る。

694: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:59:19.25 ID:KMB3nsRgo
ユズに変化したルシファーは彼女の服装までもを完全再現していた。
その服には、いつも彼女が身につけてい二つのバッチまでもがしっかりと付いている。
しかし、ユズの持つバッチはただのバッチでは無い。
彼女の武器である杖と鎌を持ち運びやすくする為にバッチにしたもの。

自身が所持する武器の変化は、その術者の魔力を込めたからこそ。
他の者がユズのバッチに触れても、それはただのバッチでしかない。
解除するには術者の魔力が必要であり、見た目だけの「虚飾」の存在には不可能である。


―――しかし


ユズ(雪菜)「―――私になれない姿なんて存在しないんだけどね♪」


―――あろうことか、ルシファーが手にしたバッチはユズが所持していた、鎌そのものへと変化をした

―――ルシファーの「メタモルフォーゼ」

―――それは自身の見た目を変化させるだけでなく、その変化の対象の性質さえも手にする能力。


紗南「納得の出来ってことね」

紗南「けど、その姿、あたしからのレビューは酷評だよ」

紗南「満足したなら早く帰ってくれない?」

これでルシファーの用件は終わりだ。
それが済んだのなら、ベルフェゴールからはもう話すことも無い。
ましてや、ゲームの邪魔をした死神の存在の姿が視界に映るのは不愉快だ。
一刻も早くゲームだけに集中したいからこそ、ルシファーにそう言い放つ。

695: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/28(金) 23:59:53.46 ID:KMB3nsRgo
ユズ(雪菜)「へへっ♪わかってるってば♪」

ルシファーはわざとらしくユズの喋り方で、ベルフェゴールの言葉に応える。
流石のベルフェゴールもその態度に思わず眉間に皺を寄せてしまう。

すると、ルシファーは変化を解除し「井村雪菜」の姿へと戻る。

雪菜「ただの冗談じゃなぁい♪そんな怖い顔したらお肌に悪いわよぉ♪」

雪菜「これでもちゃんと感謝してるのよぉ♪メイクのレパートリーを増やしてくれてありがとっ!」

別に感謝されてるされてないはどうでもいい。
死神に化けて何を企んでいるのかとかも興味が無い。
早く帰って欲しい。

紗南「…間違っても、死神さんの姿になって、あたしに会いに来ないでよねっ」

紗南「能力使わないと、あたしだって本物か偽物か見分けがつかないんだから」

雪菜「うふ…わかってるってば♪」

雪菜「それじゃあ、またね!」

ルシファーはその場から姿を消す。
気配が完全に消えたのを確認して、ベルフェゴールは深くため息をついて…

紗南「なんだかあたしの運のポイント、低くなってる気がするなぁ…」

そう小さく呟く。

696: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/29(土) 00:00:37.32 ID:buJMpOHeo
ベルフェゴールがそう呟いてしまうのも無理は無い。
少し前までは静かに学校の屋上でゲームをして1日を過ごすだけの毎日だったのに、それが急変してしまったからだ。

以前のお気に入りの屋上には、望月聖が転校してきて…
ゲームショップで魔力を使用したら死神に目を付けられ…
あまつさえ新たに移動してきた屋上は忌み嫌うサタンの娘、悪姫ブリュンヒルデが生徒して通う中学校の屋上…

紗南「(お姫様がいるってことは、死神さんの監視下でもあるかもしれないしね…)」

紗南「(見つかるのも時間の問題っぽいなぁ…)」

紗南「(まぁ、またマップ移動するのは面倒だし、ギリギリまで粘るつもりだけどね)」

紗南「(乱入お断りの警告もしておいたし!)」

紗南「(けど、それでもまたあたしのゲームの時間に乱入してきちゃったその時は、気は進まないけど…)」


―――データの破損

―――それぐらいされても文句は言えないよね?

697: ◆lbKlS0ZYdV.M 2013/06/29(土) 00:01:42.76 ID:buJMpOHeo
おわりです

雪菜さんがユズちゃんに変身出来るようになりました
これをどう悪用するのかは自分でもまだ考えてないので、どなたか拾ってくれても嬉しいです

705: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:32:31.59 ID:xoJnpUrmo


「強欲の王…見つけましたぁ~♪」

イヴは遥か上空、自身の操る箒の上から夜の闇の中、河川敷に佇むきらびやかに飾られた泥を見下ろす。

「最近は裕美ちゃんに何でも投げちゃってますからぁ…」

「たまには所長らしいこともしなくちゃですよねぇ~♪」

そう言ってイヴは指先を遥か上空へ向ける。

『氷よ!寄り集まりて塊になれぇ~♪』

魔法で生み出された氷塊はカースの遥か上空で少しずつ、少しずつ大きくなる。

「そろそろですねぇ…」

強欲の王をまるまる覆えるくらいまで大きくなった氷塊が重力から解き放たれ落下する。

『ギギャッ!』

突然空から降ってきた氷塊が強欲の王をへと迫る。

706: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:33:55.70 ID:xoJnpUrmo
氷塊が強欲の王に当たる直前、強欲の王から猛烈な勢いの水が吹き出し、氷塊の勢いを緩める。

『キエタクナイ!ゼンブ、ゼンブワタシガノミコム!』

「凄いですねぇ~、カースがどこで魔法とテレポートなんて覚えたんでしょう~♪」

氷塊を避けてなお、右へ左へ転々とワープを続ける強欲の王を見てポツリと呟くイヴ。

「当たったとしてもあのくらいじゃあのカースは消せないと思うよ?」

「…初めて見るお顔ですね~♪」

いつの間にか箒に腰掛けるイヴの隣にはふわりと宙に浮いた少女が居た。


「それにしてもそれなりにおっきい魔力の反応って思ったら人間かぁ…ちょっとがっかりかな?」

練武の山から戻ってきたユズはガッカリしていた。

「…七罪かと思ったけど魔法使い…カースの方は力試しにはちょっと物足りない獲物だしやっぱり…」

「ユズ的には貴女のほうが気になるかな?」

ユズはちらりと隣のイヴを見やる。

707: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:35:15.16 ID:xoJnpUrmo
「ねぇねぇ、ユズと手合わせしてくれないかな?」

「そうですねぇ~」

「こう見えて私、人に教えるのって大得意なんですよぉ~♪」

「そっか、うん、じゃあユズがちゃちゃっとこのカース処分してくるから♪」

人間がユズに教えるようなことがあるのだろうかと若干疑問に思いながらもユズは軽快に答える。

ユズはふわりと地上に降り立つと鎌を強欲の王へと向ける。

『ワタシノモノ!ゼンブ!ゼンブ!!』

「ちょっとこの後アタシ約束があるから一撃で終わらせるよー!」

ユズは強欲の王に杖を向けて魔力を吹き飛ばす。

すると異変に気づいたカースがにわかに慌て出す。

『ワタシの!マリョク!ミズノチカラモ!!!ナイ!!ナイ!!!』

「はい、これでテレポートも魔法もおしまいっ♪」



   「ねぇ、これで貴方はただのカースだよね?」

708: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:36:43.49 ID:xoJnpUrmo
『業火よ!大いなる我が力に従い、罪人の魂すら焼くその身で我が障害となる者の骨すら残さず焼き尽くせ!ヘルフレイム!』

ただ少し堅いだけのカースを炎は無慈悲に、躊躇なく飲み込み、蹂躙し、後には熱によって砕けた大量の核と少し大きめの僅かに光を放つ核だけが残されていた。

「はい、おしまいっ♪」

ユズは鎌柄で躊躇なく唯一光を放っていた核を砕く。

「これで私と手合わせしてくれるよねっ?」

「いいですよぉ~♪」

イヴはこの光景を見ても特に驚きもせず答える。

709: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:37:33.79 ID:xoJnpUrmo


「ルールは相手に参ったって言わせるまででいいかな?」

「はい~♪」

「手加減はするけど死なないでね?魔法使いサン?」

「どんと来いですよぉ~死神サン?」

「今は死神じゃないんだけどね…そういうのって分かるの?」

「…秘密ですぅ~♪」

『へへへっ♪』 『あはっ♪』

二人は笑い声を零す。そして

『火炎よ!大いなる我が力に従い、その高温の身を槍に変え、我に刃向うことの愚かさを我が敵の身に焼き付けよ!フレイムスピア!』

『氷よ!寄り集まりて塊になれ!』

炎の大槍と突如現れた巨大な氷塊がぶつかり合う。

710: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:38:12.02 ID:xoJnpUrmo
「凄いね!ただの魔法なのに中級とはいえ、魔術を防いでみせるなんて!」

ユズは炎の槍に半ば貫かれながらも主人を守りきった氷塊を見て感嘆する。

「魔力量にはちょっと自信があるんですよぉ~♪」

「へぇ」

ユズはにやりとして杖に手を掛けようとして……やめる。

「…いいんですかぁ~?」

イヴが砕けかけた氷越しにユズを見ながら言う。

「フェアじゃないかなって思っただけだよ♪」

「それならしょうがないですねぇ~♪」

「うん、しょうがないね!」

ユズは楽しそうに答える。

711: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:40:19.76 ID:xoJnpUrmo
『火炎よ!暴風よ!大いなる魔力管理者である我の力に答え、自然の理を読み解きその身を重ね、紅蓮の炎を更に激しく吹き散らせ!フレイムストーム!』

遠慮無く管理者の特権、複合魔術を唱える。

「…初めて見る魔術ですねぇ~♪」

それはそうだ、私しか使えないんだからとユズは苦笑いを浮かべる。

「う~ん、やってみましょうかぁ~」

『意思持つ箒よぉ~♪』

イヴはそう言って箒に乗り込み炎の竜巻を避けながら竜巻をくるりと覆うように飛ぶ。

「一体何を見せてくれるのかなっ!」

期待に目を輝かせるユズ。

『魔力変換!全部自然に還ってくださいねぇ~♪』

すると、イヴが箒で竜巻を囲むように通った後が光の魔法陣となり竜巻が消滅し、足の高い草の生えた草原になる。

712: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:41:23.01 ID:xoJnpUrmo
「あはは!期待以上だね!次いくよー!」

「皆、ゴーッ!」

『みー!』

ユズの掛け声と共に使い魔が放たれる。

黄緑のぷちユズが風に乗って一直線に箒に乗ったままのイヴに襲いかかる。

『付与!雷の加護よぉ~♪』

イヴは真っ直ぐに飛んできぷちユズに乗っている箒の先端を突きつける。

黄緑のぷちユズが慌てて方向変換しようとするも軽間に合わず箒の先端にぶつかる、すると箒の先端から激しくスパークが弾け、ぷちユズがたまらず落下する。

イヴは地上に降り立ち箒から降り、虚空に手をかざす。

「ブリッツェン、ゴー♪」

魔法陣が現れ、そこから鼻垂れトナカイが現れる。

『主人よ、これはまたとんでもないのと戦ってるな…』

「ただの手合わせですよぉ~♪」

『……そうか…』

ブリッツェンはなぜか焼け野原だったりなぜか一部分だけ円形に草原になっている光景を見て諦めた。

……考えるだけ無駄だと。

713: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:42:00.39 ID:xoJnpUrmo
「ブリッツェンはこの子達の相手をお願いしますねぇ♪」

『…承った』

「私の魔力も有限ですから私だけじゃどうしようも無くってぇ♪」

「しょうがないなぁ、みんな、そこの…えと……何?」

『…トナカイなんだがな…』

「……ご、ごめんね?み、みんな!そこの『トナカイ』の相手してあげて!」

強調されても虚しいものだと嘆息するブリッツェンだが恐らく限りなく表情に変化が無いのでイヴ以外は気が付かない。

「ブリッツェン、ふぁいとっ!」

主人の優しさが身に染みるブリッツェンであった。

714: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:43:29.78 ID:xoJnpUrmo


「今回はね、魔術の実験なんだ、私がどこまで魔術書をコントロール出来てるかのね」

「だから、次で見せてあげるよ、新しい複合魔術!同属性の複合魔術!」

『業火よ!大いなる我が力に従い、罪人の魂すら焼く業火を槍に変え我が障害となる者の骨すら残さず貫き、焼き尽くせ!ヘルフレイムスピア!』

火炎の海が荒れ狂い業火の中から火炎の槍が無数に飛び出してくる。

「これは…どうしようもないですねぇ…」

イヴはこちらに迫りながら荒れ狂う炎の壁から時折飛んでくる炎の槍を氷を付与した箒で叩き落としながら呟く。

「…参りましたぁ♪」

イヴはルール通り降参のサインをして微笑む、すると荒れ狂っていた炎がスッっと消える。

荒れ狂っていた炎の止んだ後に僅かに残った炎に向かって杖を突き出して魔術をかき消すユズ。

715: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:44:27.06 ID:xoJnpUrmo
「…うん、楽しかった!ありがとうね!」

「私も初めて見る魔術が沢山あって新鮮でしたぁ~♪」

「そう言ってもらえると嬉しいかな!」

ユズはスッキリした顔で微笑みながら言う。

「またお願いしてもいいかな?」

「私で良かったらいつでもいいですよぉ~♪」

「私が居る場所はぁ……」

「大丈夫、大丈夫♪貴女……え…と…」

「イヴですぅ~♪」

「そっかそっか!アタシはユズ、イヴさんの魔力の波長はもう覚えたから後でアタシから会いに行くから!」

「はい~♪」

そう言ってユズは夜の暗闇を滑るようにして飛んでいった。

716: ◆yIMyWm13ls 2013/06/29(土) 00:45:31.09 ID:xoJnpUrmo


「…で、その結果がこの惨状なの…?」

裕美は目の前の焼け野原と一部溶解している河川敷のフェンスを見ながら呟く。

「…え、えへっ♪」

「えへっ♪じゃないよイヴさん!」

「ひ、人払いの魔法はきちんと掛けたんですよぉ…?」

『元ある形に戻れっ!』

「…人が起きだす早朝までに直せるかなぁ…これ…」


裕美の受難は終わらない。

722: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 03:22:19.45 ID:UcMbyIaYo
各方面で色々動きがある中、日常っぽいの投下するよー!
奈緒ちゃんとみくにゃんお借りしてますー

723: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 03:22:56.07 ID:UcMbyIaYo
「もーお姉ちゃんってば、心配しすぎだよー」

「しすぎて困る心配なんてないの。それに急がなくても映画館は逃げないって」

週末。普段は家で過ごしてもらっている――心苦しくはあるが、お母さん達に相談するのも憚られたし、転入の手続きとかで面倒が起きてもアタシでは対処できないだろう――莉嘉を連れて、二人で映画館に向かっていた。

最近よくCMを見かけるアニメ映画に興味津々らしく、繋いだ手を引っ張って、早く早くと急かしてくる。

もしもまた事故にあったら、と考えてしまって、莉嘉と出歩くときはいつも手を繋いでいる。莉嘉は過保護だとちょっと不満そうだが、これだけはどうあっても譲る気はなかった。

「映画館が逃げなくても、ゆっくりしてたら映画始まっちゃうじゃーん」

「まだまだ時間あるってば。むしろ早くつきすぎてもヒマでしょ?」

しばらく前に別の映画を見に行ったとき、張り切りすぎて一時間も前に到着してしまって、近くの喫茶店で時間を潰すことになったのを忘れたとは言わせないよ?

724: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 03:23:40.94 ID:UcMbyIaYo
「むー、そんなことない、も・・・ん・・・・・・ッ!?」

頬を膨らませてぶーたれていた莉嘉の表情が突然曇ったのは、そんな他愛ない会話をしていた時だった。

急に立ち止まり、不安そうな目で周りを見渡す莉嘉。

「・・・莉嘉?どうしたの?」

「・・・っ、あ・・・お、ねえちゃん・・・」

ぎゅっ、と手を強く握り、体にしがみついてくる莉嘉。その視線の先を追うと、変わった服装の――失礼な言い方だとは自分でも思う――女の子がいた。

大きなヘッドホン、左手にはギプス。アタシたちの後ろから、こっちに向かって歩いてくる。

「・・・ん?」「・・・あ」

目が合った。それはそうだろう、前を歩いていた人がいきなり立ち止まって自分のことをまじまじ見つめてきたら気にもなる。

「・・・ッ!!」「え、ちょっ、莉嘉ッ」

と、突然莉嘉が手を離すと、その女の子にむかって飛びかかった。

725: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 03:24:38.93 ID:UcMbyIaYo
「うわっ、いきなり何すんだっ!?」

ひょい、とそれをかわす女の子。その拍子にヘッドホンがずり落ち、その下にあったものが見えた。

「・・・ネコ耳?・・・いや、そうじゃなくって!莉嘉ッ、いきなり何、やって・・・」

「なっ、ネコミミじゃねえ、虎だッ!・・・って、お・・・?」

一瞬あっけにとられたが、すぐに我に帰って莉嘉をたしなめる。そして、律儀に突っ込みを入れてくれたネコ耳(トラ耳?)少女と共に、莉嘉の姿を見て言葉を失った。


「・・・フーッ、フーッ・・・!!」

まるで野生の猫がするような威嚇のポーズを取る莉嘉。その手首から先が、鋭いツメを備えた猫・・・いや、こっちこそ虎か、のソレに変わっていた。いつの間に生えたのか、ご丁寧に耳まで変わっている。


「・・・ッ、うああああっ!!」

大声をあげ、トラ耳少女に再び襲いかかろうとする莉嘉。

「なッ、莉嘉っ、やめなさいっ!!」「ったく、何なんだよさっきからッ!!」

アタシの声が聞こえていないのか、静止も聞かずに飛びかかる莉嘉と、身構えるトラ耳少女。

726: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 03:25:28.83 ID:UcMbyIaYo
「――――あーもう、こんな昼間っから、しかも街なかで何やってるのにゃっ!!」

その間に、いきなりもう一人、ネコ耳を生やした少女が現れた。

瞬きする間に、本当に突然現れた少女は、莉嘉の振りおろそうとしたツメをこともなげに受け止め、そのままくるりと背後に回って、莉嘉をはがいじめにしてしまった。

「っく、離せッ、んッ、ううううううっ!!」

「だーもう落ち着くにゃこのじゃじゃ馬子猫!!怖いのはわかるけど、あの子はにゃんもする気はないにゃ!!」

じたばた抵抗する莉嘉ともみくちゃになりながら、なんかにゃあにゃあ言いながらそれをなだめようとするネコ耳少女。

「・・・・・・えっと、とりあえず、妹がご迷惑を・・・」

「え、あぁ、うん・・・・・・え、何なんだコレ・・・」

短時間でいろんなことがありすぎて、呆気にとられたアタシとトラ耳少女は、うーにゃーうるさい二人をしばらく黙って眺めていた。

727: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 03:25:56.80 ID:UcMbyIaYo
とりあえず落ち着いて話をしよう、と近くの公園のベンチにやってきたアタシたちは、お互いに一通り自己紹介をした。

トラ耳ギプスの女の子は、神谷奈緒。ネコ耳のにゃあにゃあ言ってた子は、前川みくと言うそうだ。

「・・・で、莉嘉チャンだったかにゃ?いくらなんでもいきなり襲いかかっちゃ駄目にゃよ?奈緒チャン、別に悪い子じゃにゃいんだから」

「・・・みくは、アタシ見ても怖がらないんだな」

「全く怖くないわけじゃないにゃ。にゃんかすっごいのが中にいるのはわかるけど、奈緒チャン自身が悪い子に見えにゃいから平気なのにゃ」

そう言って、尻尾をふりふり屈託なく笑うみく。猫の獣人らしい――聞いたことはあったが、実際会うのは初めてだ――みく曰く、悪いこと考えてる人はなんとなくわかるらしい。

猫の獣人ってみんなそうなの、と聞いてみると、これは修羅場くぐってきたみくの特技にゃ、とドヤ顔で答えられた。

「・・・なんか、そうやって受け入れてくれたヤツ、久し振りだ」

奈緒ちゃんの方は、「あんまり人に話すことじゃないから」と多くのことは教えてくれなかったが、『普通』の人間ではないらしい。

莉嘉やみくが言うには、「中に何かがいる」らしいんだけど、アタシにはさっぱり何のことやら。動物のカン、みたいなもんなのかな。

「ふふん、みくはフレンドリーな猫チャンなのにゃ♪・・・んで、問題はにゃ」

色々苦労してきたらしい奈緒ちゃんとみくのあいだに仄かな絆の芽生えを感じながら、アタシたちは一斉に莉嘉の方を見る。

728: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 03:26:40.92 ID:UcMbyIaYo

「・・・莉嘉チャン、いい加減、手もとに戻すにゃ」

「・・・どうすればいいか、わかんない」


どうやら、莉嘉の居た世界は『獣人が住む世界』だったらしく、莉嘉は虎の獣人なのだという(みく調べ)。

虎と猫の違いって何なの、と聞いてみると、フィーリングだから説明しろっていわれても無理にゃ、と目を逸らされた。イマイチ頼りないなぁ。

奈緒ちゃんの中に居る『何か』から危険を感じて、本能的に爪を出してしまったみたいなのだが、そもそも自分が獣人だったことも忘れていたこともあって、なかなか戻らない。

「あー、アタシ離れてた方が良いか?本能的にビビってるっていうんなら、アタシが近くにいるとマズいんじゃ・・・」

「・・・ううん、だいじょうぶ。奈緒さんが怖い人じゃないっていうのは、アタシもわかったから」

嘘をついている風には見えないし、しばらく話しているうちに奈緒ちゃんに対する苦手意識は克服したみたいだった。

それでも元に戻らないってことは、記憶喪失の弊害は思ったより深刻らしい。

「・・・んー、だったらこう考えてみるにゃ。その手のまま、美嘉チャンと手を繋ぐ。するとどうなるにゃ?」

「えっと・・・お姉ちゃん、爪で怪我しちゃう?」

「そうにゃ。莉嘉チャン、それは嫌にゃ?」

「・・・うん」

「だったら、元の手をイメージするのにゃ。また手を繋げるように・・・」

「・・・あっ」

729: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 03:27:15.10 ID:UcMbyIaYo
すっ、と、瞬きをする間に、莉嘉の手が元通りに戻った。ほっと一息、胸をなでおろすと、莉嘉が飛びついてくる。

「やった、やったよお姉ちゃん、アタシの手、元に戻ったよっ」

「わかった、わかったからはしゃがないの。ちょっ、くすぐったいってば」

ぐりぐり、と頭を押しつけて甘えてくる莉嘉。みくと奈緒ちゃんの微笑ましそうな視線が余計にくすぐったい。

「みく、ありがとうね。多分アタシだけだったら莉嘉を止められなかったし、元に戻すこともできなかった」

「にゃんのにゃんの、同じネコ科の獣人のよしみにゃ。・・・そうにゃ、良いこと考えたにゃ!」

ぴこん、と猫耳と尻尾を立てて手を叩くみく。良いこと?

「みくが莉嘉チャンの先生になってあげるにゃ!爪の出し入れの他にも色々と、覚えておいて損はないはずにゃ!」

「あー、確かに。でも良いの?みくも色々やることあるんじゃ・・・」

「まぁその辺はお互いに時間のあるときを話しあえ、ば・・・あれ、時間?」

はて、と首をかしげて腕時計を見るみく。次の瞬間、ぶわっ、と尻尾の毛が逆立った。

730: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 03:27:41.96 ID:UcMbyIaYo
「に゛ゃっ!?ヤッバいにゃ、完璧に遅刻にゃぁ!!み、美嘉チャン、とりあえず連絡先だけ教えてにゃ!!」

「え、あぁうん、ちょっと待って・・・・・・ハイ」

鞄から手帳を取り出し、メモに携帯の番号を書いて千切って渡す。

「サンキューにゃ!!みくこれからお仕事だから、終わったらまた連絡するにゃぁぁぁぁぁ・・・!!」

そう言い残して、みくは猛ダッシュで去って行った。残されたアタシたちはしばらくぽかんとしていたが、

「・・・あれ、時間と言えば。あ、あー、もう上映開始時間とっくに過ぎてる・・・」

隣で時計を見た奈緒ちゃんがそう呟くと、アタシたち姉妹もはっとする。

「どーしよお姉ちゃん、アタシたちのももう始まっちゃってるよー!!」

「・・・次の時間まで、どっかでお茶してよっか。えっと・・・次、13時15分からかぁ」

スマホで上映時間を調べて呟くと、ぴく、と同じくスマホをいじっていた奈緒ちゃんが反応する。


「・・・もしかして、『キサラギ』?」

「え、奈緒さんもアレ見に行くんだったの!?」


どうやら、お目当ての映画が一緒だったみたい。

一緒に時間を潰して、隣のシートで映画を観終わるころには、二人はお互いに「奈緒ちゃん」「莉嘉」で呼びあうくらいに仲良しさんになっていた。

733: ◆UCaKi7reYU 2013/06/29(土) 05:37:41.45 ID:4FjSBN4f0
シュークリーム。

種類によって様々だが、柔らかい生地の中に甘いクリームが入った洋菓子。

日本でも馴染みが深く、おやつにはちょうどいい物だ。

『シュークリームが食べたいにゃ、飛びっきり甘いのがいいにゃ』

『むふふ…日菜子も最近食べてませんからぁ、お願いできますかぁ?』

『シフトが一緒の子からきいたんだけど最近、近くに専門店ができたらしいにゃあ』

『日菜子も愛梨さんから聞きましたあ♪凄く評判がいいそうですよぉ』

と、ある日いきなりこんなことを同居人二人に切り出された最後の一人であるのあは

、少し考えた後、

『……行ってくるわ』

『むふふ、ありがとうございますぅ♪』

『さっすがのあチャン、話がわかるにゃあ!……ところで今日の晩御飯は何にするにゃ?』

『オニオンサラダとあさりの味噌汁と鯖の塩焼きよ』

『ゼッタイおっことわりだにゃ!!』

こんな会話をしたのが昼前である。



734: ◆UCaKi7reYU 2013/06/29(土) 05:41:30.62 ID:4FjSBN4f0
『ああ、食べたい食べたい食べたいです?……』

「でもお財布忘れてきましたから?……」

そして午後、しっかりシュークリームを買いに来て、手頃な値段で美味しそうなのを六個ほど購入したのあは、店の入り口でガラスに張り付いている謎の人物と遭遇していた。

『菜帆ちゃん、やっぱりここは手っ取り早く襲っちゃいましょうよ??』

「でも?、そうしたら二度とこれなくなっちゃいますよ?……」

明らかに、一人のはずなのに聞こえる声は二つで。

それで口にする事は同じこと。しかも物騒な言葉まで聞こえてくる訳で。

更に言えば、途中からこちらの方……正確には、シュークリームが入ってる袋を凝視されている始末。

「………………………………」

考える。

「………………食べる?」

『え!いいんですかぁ!?』

「ありがとうございます?♪」

………声をかけた途端、袋ごと丸々取られてしまった。


735: ◆UCaKi7reYU 2013/06/29(土) 05:43:38.30 ID:4FjSBN4f0
『早くたべましょうよ?!』

「そうですね?、早速いただきましょうか?」

「……待ちなさい」

『?…どうしましたぁ?』

「何かありましたか??」

「何故私まで連れていこうとしてるのかしら?」

『??』

「おかしいですかぁ?」

……どうやら、なかなか厄介な相手に絡まれたようだった。



ーーー数分後



『うわ、甘い、甘過ぎですよこれ?』

「こっちはちょうどいい感じですよ?」

「………甘いわね」

海老原菜帆とベル。

結局、そう名乗った奇妙な二人組と一緒にのあはシュークリームを食べることになった。

『んくんく…やっぱり甘いものにはこれが合いますね?』

「ですね?」

ついでに飲み物まで買わされたが、早々にのあは諦めた。


736: 波線つかえないのか… @日菜子 2013/06/29(土) 05:51:53.42 ID:NIt+LkBT0
「はむっ…そういえば、記憶喪失なんですかー?」

「…ええ」

『うーん、ベルフェちゃんなら何か分かるかなぁ?』

「でも、アスモさんの話だと協力してくれなさそうですよー?」

『だよねー…うん、美味しい美味しい♪』

「でもー、私たちで何か出来ることがあったら、手伝いますよー、ねーベルちゃん!」

『えええ!?……うー、菜帆ちゃんが言うなら…あーでも…』

「大丈夫ですよー、のあさん料理できそうですし、きっと美味しい手料理を食べさせてくれますよー」

何か勝手に話が進んでいる気がする。

『うーん……菜帆ちゃんがこういう時は当たるからねー…うん、特別にだからねー!だから美味しいものよろしくね、のあちゃん!』


737: oh…酉が… ◆UCaKi7reYU 2013/06/29(土) 05:57:11.89 ID:4p2dftfg0
「……ありがとう」

それでも、不思議と嫌悪感を感じない。

…後日、みくに言ったら、

『それが友達ってやつだにゃ!』

と、得意気な顔で言われたのだが、割愛。

「んぐんぐ…はぁ、それじゃあそろそろ戻りましょうかー」

『お財布持って今度こそ食べ歩きだよ菜帆ちゃん!』

「ですねー。あ、その前にびぴっとしちゃいましょー」

二人の意見が固まると、菜帆がスマートフォンを取り出してきた。

ニュアンスから察するに、赤外線によるデータ通信だろうと思い、最近日菜子に持たされたスマートフォンを取り出す。

「ぴぴっと……もう一回ぴぴっと……はい、これで大丈夫ですよー」

『何かあったらよんでねー、ギブアンドテイクならばっちし手伝うよー』

「…ええ、任せなさい」

「じゃーそれではー」

『またねー!』


738: ◆UCaKi7reYU 2013/06/29(土) 05:59:18.72 ID:4p2dftfg0
…そうして、この奇妙な『友達』達は帰っていった。

「……帰りましょう」

その前に、またシュークリームを買わなければ。











「……………………………………………」


ほとんど売り切れだった。




続く?


739: おまけ ◆UCaKi7reYU 2013/06/29(土) 06:04:12.60 ID:4p2dftfg0
「流石に相手が悪かったみたいですねぇ」

とある河川敷に、その少女は居た。

「魔力管理人に魔法使い、ですかぁ……なかなか面白いことになってますねぇ、むふ♪」

今も、そちらを見れば氷と炎がぶつかりあっている。

「ちょっと早いですけど、一応ノルマは満たしてますよねぇ、王子様?」

「……そうですねぇ、こればかりは生まれないとどうなるかわかりませんからねぇ……むふ、むふふ♪」

「強欲な王様が集めた『七罪』、全て混ざりましたからぁ、さしづめ……えーと?」

「……むふふ、そうですねぇ♪それがいいと思いますよぉ♪」




「ーーー『原罪』……むふふ♪」




そう、わらう少女の後ろには、七色のグラデーションに幾何学模様の、普通ならあり得ないはずのカースの核が横たわっていた………


740: @ 設定 ◆UCaKi7reYU 2013/06/29(土) 06:07:38.56 ID:4p2dftfg0
「原罪の核」

『強欲の王』の核をベースに、七罪全てのカースの核が何らかの力により融合して誕生したカースの核。
何が生まれるかは不明だが、核自体の硬度は通常のカースの核とは比べ物にならないくらい硬くなっている。


741: ◇UCaKi7reYU 改め ◆AXT/uuswxI 2013/06/29(土) 06:15:00.12 ID:4p2dftfg0
投下終了。

毎回投下するたびにミス連発するの直したいorz

という訳で、のあさんに友達ができる+以前上がっていた原罪ネタを使わせて頂きました、何かあればスルーでも大丈夫です;

そして酉をどうするべきか…大丈夫そうなら戻しますが…うーん

748: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 09:57:30.43 ID:jcXQN6pqo
 今回の敵は蛇だった。
 八つの目を持つ、冗談のような大きさの蛇。
 しかしよく見るとその表面は細かく蠢き、無数の蛇の群体であることが分かる。

 拓海はいつも通り、変身からの先制ドロップキックを放つが、バラリと解けてかわされる。
 カミカゼは着地しながら内心で毒づく。
 細かく、多く、素早い。肉弾戦を主とするカミカゼにはやりにくい相手だ。

 鋭い突きを放つが、軽くかわされる。それどころか、蛇が腕を這い上がり締め上げてくる。

カミカゼ「ぐうっ」

749: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 09:58:04.94 ID:jcXQN6pqo
 蛇を引き剥がそうと掴むが、なかなかうまくいかない。
 それどころか次から次へと蛇が這い上がろうとするので、カミカゼは一旦飛びのいて距離をとり、蛇の胴を引きちぎって難を逃れた。
 蹴りも同様にして反撃され、カミカゼは迂闊に攻撃をすることができなくなる。

 蛇が体の一部を分けて体当たりしてくる。かわすために動くと、足元に這いよってきた蛇がその足の下に潜り込み、故意に踏み潰されて泥の体でカミカゼの体勢を崩す。
 すかさず先ほど動かなかった本体が突っ込んでくると、今度はかわせずに弾き飛ばされ、地に伏せる。

 カミカゼが息を整える間も無く、四方八方からやってきた蛇は四肢に胴に這い、巻き付き、締める。
 カミカゼは苦悶の声を上げてのたうち、腕を脚を地に叩きつけて蛇を潰し、どうにかこうにか再び立ち上がる。
 勝てなくとも他のヒーローが駆けつけるまでの時間稼ぎはしなければ……カミカゼは逃げることなく蛇と対峙し続けた。







 あれからどれだけ経っただろうか。
 今日に限ってよほど忙しいのか、はたまたカミカゼが居ると知って任されたか、一向に加勢するものは現れなかった。
 数えるのも馬鹿らしくなるほどに転ばされ、締められ……肩で息をし、足を引きずるようになったカミカゼは、もはや初撃の体当たりすらかわせない。

 これで止めとするつもりなのか、蛇は大口を開けて突進してくる。
 丸呑みにするようにして覆いかぶさり、そのまま息の根を止める腹積もりなのだろう。

750: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 09:58:46.77 ID:jcXQN6pqo
カミカゼ(くそがっ! こんなとこで死ぬわけにはいかねえんだよ、何か無いのか!)

 その時、焦るカミカゼの脳裏に一つのイメージが湧き上がった。
 考える暇は無い。カミカゼはそのイメージのままに動く。
 腕を交差させて鎖骨の辺りに触れる。肩の装甲が開いて、中からライトが顔を出した。

カミカゼ「ギガフラッシュ!!」

 強烈な光が辺りを包んだ――



 パリン、と音を立ててライトが割れると光は消え、眼前にまで迫っていた蛇は跡形も無く蒸発していた。
 余波に巻き込まれてアルファルトまで融けて煌々と赤く輝き、標識やガードレールが変形しているのは見ないことにした。

拓海「……あっ」

 変身を解き、帰ろうとして拓海は気づく。
 そこにはボロボロになったばかりかライトが弾けとんだバイク。
 戦闘が長引いたためすっかり日が暮れ、街灯が灯っている。

 無灯火で走って切符を切られるヒーローを想像する。
 ……拓海は痛む体でバイクを押して帰った。

751: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 09:59:14.20 ID:jcXQN6pqo
 それから三日後、拓海は普段よりもバイクを速く走らせていた。
 蛇と戦った日、バイクの破損で美世に文句を言われた。
 戦いの後に歩き通しとなった上、帰り道に何度もナンパされて気が立っていた拓海はついつい強く言い返し、そのまま喧嘩になった。

 喧嘩のことを思い出すと湧き上がる腹立たしさと、まだ仲直りができていないことのモヤモヤした感情が、バイクの速度を上げさせる。
 見えてきたカースは割かし小さかった。人と同程度といったところか。
 まあ、大きくとも小さくともやることは変わらない。

 いつもより強烈なキックが、いつもより軽いカースを吹き飛ばし、着地を決めて名乗りを上げようというところで、カミカゼの目にはそれが映った。
 水平に飛んでいくカースの向かう先、交差点から人が飛び出し、ぶつかり、巻き込んで転がり、そのまま爆発した。

??「ナナちゃーん!?」

 マスクの下で、拓海の顔面にはだくだくと汗が流れた。

752: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 09:59:42.47 ID:jcXQN6pqo
 時間を少々遡る。

菜々「今回も付近に居るアイドルヒーローはナナ達だけです!」

夕美「最近こういうケース多くない?」

菜々「それはまあ、皆さん各所に散らばってますから。アイドルの仕事が多いのはいいことなんですけどね……あ! 反応が急激に移動します! 逃がしませんよ!」

 言うが早いか菜々は交差点へと躍り出た。ウサミン星の問題を先延ばしにしていることへの罪悪感故か、最近の菜々はヒーロー活動に今まで以上に積極的な感がある。

夕美「ナナちゃん、急に飛び出すとあぶな……」

 夕美の忠告は間に合わず、飛んできたカースが菜々に激突した。

菜々「へぶっ!?」

 ごろごろと、カースと共に転がっていく菜々。
 夕美から十分に離れた位置で、それは唐突に爆発した。

夕美「ナナちゃーん!?」

 悲鳴を上げて菜々の元へと駆け寄る。
 幸い菜々に目立った外傷は無かったが、目を回して「ウサミン星が見える……」としきりに呟いている。
 夕美がカースの飛んできた方を確認しようと振り返ると、そこにはすぐそばまでやってきて変身を解き土下座している拓海の姿があった。

753: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 10:00:14.16 ID:jcXQN6pqo






 とあるビルの一室、椅子に座る拓海の向かいにはスーツの男が一人。

男「えーと、カミカゼ改め向井拓海さん、はじめまして。僕はアイドルヒーロー同盟でプロデューサーとしてアイドル活動のサポートをしている者です」

 名刺を差し出す。

男「早速本題に入らせて貰いますけどね、今回貴方のやったことで菜々に怪我は無かったものの、大事をとって検査入院ということになってしまいました。
  カースとの戦闘も撮れず、仕事の予定もキャンセルすることになって、結構な損失が出ています。貴方にその損失を埋めるだけの賠償はできますか?」

拓海「いや……無理だ」

男「でしょうね、正直言うと支払い能力は初めから期待していませんでした。
  かといって損失を埋めなくていいというわけでもありません、ではどうすればいいか分かりますか?」

拓海「……臓器売るとか、風呂に沈めるとか」

男「まさか、今時ヤクザだってそんなことはそうそうしませんよ」

拓海「じゃあどうしろってんだよ」

男「アイドルをやってみませんか?」

拓海「は? ……アタシがか?」

男「他に誰が居るというのですか。在野の人気ヒーローがうちでアイドルになってくれれば、補填なんてすぐに終わるでしょうね。
  あ、一応断ることもできますけど、その場合法廷で争うことになりますよ。
  今すぐに決めろとは言いませんが、決心がついたら名刺の連絡先に一報下さい」

754: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 10:00:54.25 ID:jcXQN6pqo
 用件を告げ終わると、拓海は早々に返された。どうすべきか考えつつ歩いて行くと、いつの間にか美世のガレージに辿り着く。
 僅かばかり迷った後に足を踏み入れると、美世はいつも通り作業中だった。
 そういえば喧嘩の最中だったことを思い出し、美世に背を向けて座る。

拓海「……なあ、美世」

美世「……なに?」

 美世の手が止まる。

拓海「その、なんだ。こないだは悪かった、気が立っててよ、つい強く言い過ぎちまった」

美世「ありゃ、今回は随分折れるのが早かったね。やっぱやらかしちゃって凹んでるの?」

拓海「おま、知ってんのかよ!?」

 座ったまま振り返ろうとした拓海を、美世が後ろから抱き締める。

美世「そりゃ、誰かさんがいつもより飛ばしてたのは、あたしとの喧嘩が原因だったみたいだしね」

 ぐりぐりと、拓海の頬を人差し指で捏ねながら言う。

美世「それに、拓海があそこに所属するなら当然スーツのこととか聞かれるでしょ? あっちはもう調べてたらしくてさ、あたしのとこにも話がきたよ」

拓海「お前もアイドルにってか!? やらかしたのはアタシだけだろ、美世に責任は……」

美世「あーるーでーしょー? 喧嘩の原因はあたしにもあったんだから」

拓海「でも、お前は今の仕事が……」

美世「なに、全部一人で抱えちゃう気? 相棒だと思ってたのあたしだけ? ちょっとくらい頼ってよ」

拓海「……わりぃ、あと、ありがと」

美世「じゃ、決まったことだし早速連絡入れよっか」

 こうして、アイドルヒーロー向井拓海とメカニックアイドル原田美世が誕生することとなった。

    了

755: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 10:01:41.39 ID:jcXQN6pqo
――次回予告――

美世「アイドルになることが決まった拓海とあたしは、慣れないレッスン毎日クタクタ。
   でも、疲れ果てた状態でも分かるくらい露骨に夕美ちゃんに避けられてる。
   やっぱり菜々ちゃんの件で嫌われてるのかな?

   次回の特攻戦士カミカゼは、
   『先輩、後輩』です!
   覚悟、完了!」

――この番組は、株式会社DeNAとアイドルヒーロー同盟、ゴランノスポンサーの提供でお送りしました――

756: @検索 ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 10:05:30.63 ID:jcXQN6pqo
拓海と美世の所属が正式にアイドルヒーロー同盟に


・ギガフラッシュ
 肩装甲に格納されているライトから熱と光を放ち前方を焼き払う大技
 ライトが壊れるので一変身に一度限りの切り札である

 メガス○ッシャーをモチーフにしたかったけど胸装甲を手で開くのは女としてどうなの……ということで今の形に

757: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/06/29(土) 10:06:52.71 ID:jcXQN6pqo
投下終了

Q.どうしてカミカゼが倒した時だけ爆発するの?
A.特撮補正

764: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 17:08:53.83 ID:UcMbyIaYo
京都。古来より霊的な力を多く有するが故に、それを狙う妖怪どもの暴れまわることの多い街。

『・・・ったく、えらく気前の良い歓迎会だなァ、えェ?』

「到着して早々に・・・いや、これも修練、そう考えましょう」

その外れに、両手に収まらない数の『鬼』の群れと対峙する少女が一人。

『相変わらずクッソ真面目だこって。そんなんだからいつまでたってもちんちくりんのまんまなんだよ』

「なっ、今背の話は関係ないでしょうが!!それに珠美はちびっこちゃうし!!」

この場に居る下級の鬼どもには、言葉を理解し操る程の知能を持つものはない。ならば、彼女は一体『何』と言葉を交わしているのか。


『ま、それに関する口論は後回しだわな。・・・オウ珠美、ちゃっちゃと片付けるぞ』

「・・・ですね。この程度で、『小早川のお嬢さま』の手を煩わせるのも忍びないです。一気に決めますよ、西蓮(さいれん)」

―――声は、少女の背に負われた『太刀』から発せられていた。


自身の体の半分以上の大きさの太刀を、事もなげに抜き放ち構えるは、妖怪退治屋『脇山家』八代目当主、珠美。

ぎらり、と刀身から妖しい輝きを放つ意志持つ刀は、かつて人の身にありて『鬼』と恐れられた武人の魂を宿す妖刀、西蓮といった。

765: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 17:09:48.21 ID:UcMbyIaYo
はるばる九州より、このところ妖怪どもの活動の活発化した京都で修練を積むためにやって来た二人は。


「・・・ふっ!!」

『・・・何でぇ、京都の妖怪っつーのも大した事ァねぇんじゃねえか?』


一跳び、一振りで、殴りかかって来た数多の鬼を撫で切りにして見せた。

鬼たちは、自身が斬りつけられた事にも気付かないまま、妖気の塵となって消えていく。

『・・・・・・まァ、馬鹿じゃねェのも一匹いたみたいだがなァ』

ただ一匹、離れた場所に胡坐をかいて鎮座していた、10mはあろう群れの長を残して。

豆粒ほどの小娘風情、どれほどの物かと楽観視していた長であったが、瞬きする間に群れの鬼が尽く姿を消すのを見て考えを改めたらしい。

ずしん、と大地を揺るがす衝撃とともに立ち上がると、巨体に見合わぬ俊敏な動きで拳を珠美に叩きつけにかかる。

ぐらり、と立ち上がる際の地響きで体勢を傾いだ珠美に、この一撃を避けられようはずもない。群れの長たる自分にかかれば、『退治屋』とてこの程度よ。


「――――――えぇ、全く。大馬鹿者も居たものです」


そう呟く声が、長の頭上から降り注ぐ。

馬鹿な、と天を振り仰げば、曇天を背に大太刀を構え中空に躍り出る少女の姿。


『あァ、手前ェの腕を駆け上がられたことすら気付かねェたァよ。よくそれで群れの長なんぞ務まったモンだ』


重力という『至って常識的な力』を味方につけ、ぐんぐんと落下速度を増しながら『常識を超越した存在』たる鬼に肉薄する少女と大太刀。

ぐっ、と一層強い力で珠美が柄を握りなおし、大きく振りかぶると――――――


「『 ち ぇ す と ぉ ぉ ぉ ぉ ォ ォ ォ ォ ォ オ オ オ オ オ オ オ ッ ッ ッ ! ! ! 」』


裂帛の雄叫びと共に一閃、振り下ろす刃は、鬼の巨体を真っ二つに引き裂いた――――――

766: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 17:10:29.87 ID:UcMbyIaYo
「―――やぁ、お手紙にあった以上の技の冴え、お見事です」

いつの間にやら、番傘を片手にその様子を見ていた紗枝は、思わずそう漏らした。

九州の退治屋の筆頭である脇山の家から手紙が届いたのは、一週間ほど前のこと。

『この度家督を次代に譲ることとなったが、未だ16の若輩ゆえ、京都で実践修行をさせたい。ついては、小早川の補佐役としてこき使ってやって欲しい』との内容に、紗枝は正直なところ助かった。

七大罪の悪魔が活発に行動しだした影響か―――京都に居る紗枝には知る由のないことではあったが―――京都でも妖怪の襲来が頻繁に起こるようになっていた。

一体一体は紗枝にとっては取るに足らない小物ばかりではあるが、あまりにも件数が多い。

たまにふらっと周子が遊びにきても、おちおちお茶のみ話もしていられないのだ。人手が増えれば、ある程度はそちらと分担することで少しは楽になるだろうか。

「これは、思った以上に上手いこと事が運ぶかもしれませんなぁ・・・」

『少し』どころではない。荒削りではあるが、そこそこの大物も任せて問題ないくらいの人材がやって来たようだった。



『・・・・・・おゥ珠美、いい加減立たねえか?さっきからそこでお嬢じーっとこっち見てンぞ』

「・・・ちゃ、着地の衝撃で、足が、痺れて・・・・・・・・・いたい」

「・・・・・・あらぁ」

『締まらねェなァオイ・・・』

・・・問題、ないだろうか。

767: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/29(土) 17:11:09.76 ID:UcMbyIaYo
脇山珠美(16)

職業:妖怪退治屋
属性:剣士
能力:剣術(一撃必殺系)

表向きは剣道家として知られる九州の妖怪退治屋『脇山家』八代目当主。
ただし、西蓮の所有の為に肩書だけを継いだ形であり、実務面は先代である父が担っている。
紗枝ほどではないがかなりの才覚を秘めており、特に剣術に関しては自身の身の丈の2/3ほどもある大太刀の西蓮を手足のように扱うほど。
現在は修行の一環として京都で紗枝の補佐をしている。

西蓮(さいれん)

かつて『鬼』と呼ばれた武人の魂が宿った、刃渡り1m弱もあるかなり大ぶりな妖刀。
かなり荒っぽい性格で珠美とは口喧嘩が絶えないが、『当主しか振るう事が許されない』という決まりのために先代に無理を言って家督を譲らせるなど実力は認めており、実戦になると息はピッタリ。
鋼の如き強い意志が反映された『決して欠けず、曲がらず、折れない』という特性を持ち、妖怪の体をも豆腐のように易々と切り裂く。

772: ◆kaGYBvZifE 2013/06/29(土) 18:33:58.43 ID:1MvFx/XA0
「それで、依頼とは?」

時計の針は午後5時を回り、俄かに光量の落ち始めた人工太陽の下、一組の男女が
アンダーワールド首都のカフェの個室で向かい合っていた。
二人の纏う雰囲気は間違っても恋人達のそれではなく、一定の緊張を保って互いの腹を探り合う
ビジネスのものと見えた。完全防音のVIPルームを選んでいるのも機密保持のためだ。

「例のはぐれウサミンと、能力者の女……ご存じでしょう」

「ある程度はね」

女は、スラックスを履いた長い足を組んで紅茶のカップを口に運ぶ。

アンダーワールドは農耕には向かない土地だが、大規模な植物工場によって安全な食料の供給が
行える。この格別の芳香を漂わせるダージリンも工場産のものだ。
遺伝子組み換えによる品種改良と内部環境の完璧な調整によって、ものによっては地上産よりも
高品質な代物を生産することも可能である。

ただし、紅茶のような嗜好品は生産コストの問題からかなり値が張る。
ある程度以上の安定した所得のある者でなければ、紅茶を嗜む趣味は楽しめないだろう。

「どこの組織にも属さず、地上にはびこるカースを浄化していると聞いている。結構なことだと思うが?」

「市井の者の感性からすればそう感じられるでしょう……いえ、失礼」

己の失言を自覚してか、男は慌てて非礼を詫びた。
目の前の女性がシビリアンではないことを失念していたのだ。

773: ◆kaGYBvZifE 2013/06/29(土) 18:34:41.59 ID:1MvFx/XA0
「構わない。私もシビリアンの理屈で語るべきでなかったのは了解しているよ。似合わないからね」

カップをソーサーに置いて、女は意地の悪い笑みを浮かべる。

「……それで? 貴方がたは、この無法者のアウトレイジに何を依頼したいのかな」

アンダーワールドの『アウトレイジ』――アイの瞳に、切り込むような光が差す。

高度な科学技術を発展させ、地底に一大文明を築いたアンダーワールドといえど、よろずダーティな仕事を
請け負うフリーランスの傭兵が廃業に追い込まれることはなかった。

どんなに有能で清廉潔白なオーバーロードの治世であろうとも、地方自治権を認められたジェントルマンと
領民のシビリアンの摩擦は絶えることがなかったし、利権亡者の評議員が対抗勢力の中心人物の暗殺を
依頼することも多々あった。

同業者に縄張りを荒らされたスカベンジャーが不届き者にきついお灸を据えてくれと言ってきたり、
アウトレイジの集団――地上ではギャングとかヤクザとか言ったか――同士の抗争に介入することも
少なからずある。

アウトレイジは市民権を持たず都市に住むことを許可されていないが、彼らは都市の登録IDを持たない分、
非常に身軽な身体とも言える。
そうした人間は悪事を働くのに向いているし、他人の悪徳を肩代わりしてやることで、平均的な
シビリアンと同等かそれ以上の収入も得ることができる。
真面目に働いたところでろくな仕事はないし、市民権とシビリアンの身分を買うまでに何年かかることか。

アウトレイジであるアイがこうして紅茶を嗜むことができるのは、彼女が傭兵として成果を挙げて
いるからに他ならないのだ。

774: ◆kaGYBvZifE 2013/06/29(土) 18:35:32.90 ID:1MvFx/XA0
「単刀直入に言えば、その女――奥山沙織を捕らえて頂きたい。できるだけ無傷で」

「……ふむ、生け捕りにしろと? 暗殺ではなく」

「それが出資者の意向ですから」

「出資者、ね……」

「ウサミン星人は殺してしまっても構いません。ですが宇宙船は可能ならば拿捕してください」

カースを浄化する能力を持つ人間と、それを支援するウサミン星人。
この二人を邪魔者扱いしている勢力がこの依頼を持ちこんだことは疑いない。
実際のところ、そんな連中は掃いて捨てるほどいるだろうが、殺さず生け捕りというのが依頼者の
内心の単純ならざる部分だろう。

……さて、どこの誰が金を出しているのやら。

在野の能力者が目障りな『同盟』か、それとも例の『財閥』か?
カースを生み出している存在がいよいよ本腰を入れたという見方もできる。
宇宙船も手に入れて欲しいというところを見ると、異星人の技術を求めている勢力かもしれない。
ひょっとすると、依頼者はアンダーワールドの誰かだろうか。

とはいえ、目の前の男は単なるメッセンジャーにすぎない。
重要な事柄は一切聞かされていないはずで、徒労に終わるのが目に見えていることを敢えて試みる
ような趣味はない。

それに、詮索好きはこの世界では長生きできない。
好奇心に殺される猫になるつもりは、アイにはなかった。

775: ◆kaGYBvZifE 2013/06/29(土) 18:36:31.51 ID:1MvFx/XA0
「報酬の提示額は悪くない。この仕事、受けさせてもらおうか」

「それは重畳……地上行きの手筈はこちらで整えますので、追って連絡させて頂きます」

アイが結論を出せば、あとはとんとん拍子だ。
いくつかの契約事項を確認して契約書にサインをし、男はさっさと個室を出て行った。

紅茶や個室の代金は向こう持ちだし、慌てて部屋を出る必要はない。
アイはぬるくなった紅茶で口内を湿らせ、椅子の背もたれに体重を預けた。

「さて……今度の任務は人攫いか。まあ、やりようはいくらでもある」

すべては報酬次第。今回の報酬額は危険を冒すだけの価値を感じるに足るものだ。

聖者が命じるなら模範者にも調停者にも救世主にもなろう。
悪魔が命じるなら詐欺師にも人攫いにも掠奪者にもなろう。
それが傭兵というものだ。
今回の依頼者がたまたま悪党であり、軋轢を望む者であり、戦いを呼ぶことをよしとする者だった。
ただそれだけのことである。

テーブルの上に置かれた資料に手を伸ばす。フィルムに似た質感を持つフォトシートには、奥山沙織の
全身像が映し出されている。
とびきりの美女というわけではないが、素朴で暖かい雰囲気を持っている女性だった。
少し手を加えるだけで化けるだろう。こういう女性に限って、見違えるほどの変化をするものだ。

アイはターゲットの姿を見てそのような感想を抱きながらも、

「君も、運がなかったものだな」

と、形ばかりの同情を示して見せるのだった。

776: ◆kaGYBvZifE 2013/06/29(土) 18:44:16.21 ID:1MvFx/XA0
東郷あい
23歳
アンダーワールド出身。アウトレイジ(ならず者)の傭兵。本名はアイ。
フリーランスの傭兵で、カネさえ積まれればどこの勢力にもつく。ただし裏切りは許さない。
体内に埋め込まれたコンバットモジュールをナノマシンで神経に接続しており、
戦闘時には反射神経と脳の思考速度を極限まで高めることができる。falloutのVATSみたいなもん。

出資者
不明というかぶっちゃけどこに設定しても構いません。
在野のヒーロー気取りを鬱陶しく思っている同盟が仕組んだことにしてもよし、
沙織の精神同調能力を浄化ではなくカースの活性化に利用したい大罪の悪魔やカースドヒューマンにしてもよし。


中立っぽい立ち位置にしてみたヨー
ナターリアがスシ食べたさにあいさんを護衛に雇う話とか考えたけど結局別々になったのは内緒だ

786: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/29(土) 22:41:49.26 ID:PvX4pCEIO
投下します

787: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/29(土) 22:42:39.13 ID:PvX4pCEIO
コンビニのアルバイトの帰り、北条加蓮は悩んでいた。

北条加蓮……嫉妬のカースドヒューマンだったが、きらりに浄化され、病気もそれと一緒に消え去った。
本来なら、そこで死ぬ運命なのだが……

偶然にも、戦闘中に奈緒の血液を飲んだ事により核が浄化されても死なずにすんだのだ……

788: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/29(土) 22:44:01.46 ID:PvX4pCEIO
だけど、命は拾ったが、問題は色々山積みだ。

特に問題なのは二つある。

一つは、嫉妬の蛇龍。自分が作った大型カース。
だな、アレは本来動くはずないのに、誰かが未完成のまま目覚めさせたのだ。

二つ目は…………

789: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/29(土) 22:44:59.06 ID:PvX4pCEIO
加蓮「パパもママも心配してるかな………そうだった…私は見捨てられたんだった…」

家にも病院にも帰れない事だ。

彼女はカースドヒューマンになってから、両親も病院も、重病人が生きれないと思い、諦め、死亡届けを出したのだ。

つまり彼女は死人扱いされている。

現在はエンヴィーの時から住まわせて貰っているとある女子寮で寝泊まりしているから、家には困らないのだが……

それでも寂しいものはある。

790: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/29(土) 22:46:40.53 ID:PvX4pCEIO
加蓮「そういえば、涼に休んでた分シフト出てもらった事、お礼言ってなかったな……」

エンヴィーだった時から、一緒に働いてるアルバイト仲間である松永涼。

この機会だし、友達になりたいなと思う。

エンヴィーの時だけではなく、病に患ってたときから友達がいなかった加蓮にとっては、それは結構思いっきりな考えである。

791: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/29(土) 22:47:31.32 ID:PvX4pCEIO
加蓮「………きらりやネバーディスペアの三人とも友達になりたいな。ナチュルスターの二人とも……」

自分を嫉妬の呪縛から解き放ってくれた4人と何回も交戦し自分を説得した2人の顔を思い出す。

だけど、断られたらどうしよう……沢山迷惑かけちゃったし……

昔の加蓮なら悩むだけで、終わっていた。

加蓮「……よし!」

けど、今は違う。もう病に蝕まれてもない、嫉妬の呪縛に絡みつかれていない。

今、自分に必要なのは一歩踏み出す覚悟だ!

792: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/29(土) 22:50:15.96 ID:PvX4pCEIO
加蓮「私……頑張って友達を作らないと!!どうせなら、同じ女子寮の人達とも友達になってみたいな」

加蓮「そうと決まったら友達を作ろう!目指せ100人!!」

…………なんだろう。ちょっと悲しくなってくる……

だが、彼女は挫けない!

エンヴィーの時みたいにコンビニに来る仲良しグループやカップルを見て舌打ちをするような生活はもうしない!
羨ましがらず、自分で友達を作るんだ!

頑張れ加蓮!負けるな加蓮!!頑張ってぼっちから脱出して友達を沢山作るんだ!!!


『加蓮は友達が少ない(むしろいない)』
終わり

793: @設定 ◆I2ss/4dt7o 2013/06/29(土) 22:55:54.77 ID:PvX4pCEIO

北条加蓮(16)

所属・フリーター
属性・人間
能力・黒い泥の操作。翼や蛇の形の触手。槍や盾の形にも変化できる。

元は病弱な少女だったが、彼女の多くの人への嫉妬により、引きつけられてきた徐化されてない核と一体化したことにより、カースドヒューマンになった。

が、きらりのお陰で浄化され、奈緒の血を飲んだ事により浄化されても死なずにすんだ。

普段はアルバイトをして生活していて、Пの女子寮に住んでいる。

戸籍上では北条加蓮は失踪扱いされてるが、両親は届け出を出していない。
何故なら両親は彼女の病気で長くないのをわかっていて、彼女を見捨てたのだから……
そして、死亡届けも出され、完全に死人扱い。

現在、友達を作ろうと頑張ってる。

794: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/29(土) 22:57:48.16 ID:PvX4pCEIO
以上です。

どうしてこうなった!(困惑

エンヴィーだった頃の闇落ち加蓮から残念な加蓮になっちゃった!!

誰か加蓮の友達になってください!

798: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:21:04.04 ID:dpNaH5Eq0
投下します

799: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:21:36.72 ID:dpNaH5Eq0
相変わらずベルフェゴールが屋上でゲームをしている。

そこに、再び屋上に降り立った人影。そちらに目を向けると、敵意を丸出しにして立ち上がった。

「…見逃してあげるって言ったよね?」

その人影は、先日倒して見逃した、サタンの配下の死神だった。

「邪魔するなら今度こそ容赦はしないよ?」

「そっちこそ、前と同じアタシだと思ったら大間違いだよ?」

『みーみー!』

ユズの背後から6体の使い魔も飛び出してくる。

「ふぅん…今度は数で押すつもり?でもそれって根本的な解決にはならないよね?どんなに攻撃しても無意味なんだよ。わかってるの?」

「いいや違うよ。有効な攻撃もあるんだ。修業で身に着けたからね!」

「ハァ…いくらサタンさんの直属でもたった数日の修行で出来ると思ってるの?」

ベルフェゴールは嘲笑うように体内の無限に湧き続ける魔力を開放させる。

「―そんな勇者みたいなこと、できるわけないじゃん!」

800: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:22:19.13 ID:dpNaH5Eq0
「…残念だけど、『数日』レベルじゃないんだなぁ…赤、黄、黒!青、黄緑、白!合体!」

『みっ!』

聞こえないレベルのつぶやきの後、使い魔に命令を下す。

その隙にベルフェゴールが思考を読み取る。

「…はぁ!?狂ってるよ、あたし達を倒すために時間を歪ませて『数年』修行するとか!」

理解できない。やはりサタンとその部下の思考は理解できない。

「「「勝手に言ってなよ♪」」」

そしてそこには3人のユズがいた。

801: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:22:57.23 ID:dpNaH5Eq0
「…魔術は詠唱がめんどくさいんだけどなぁ…『冷気よ、大いなる我が力に従い、音すら凍らせるその身で我が平穏を奪う愚か者を永久の眠りへ送り込め!ヘルブリザード!』」

ベルフェゴールがその魔力を攻撃に使用する。魔力が多ければ魔術に注ぎ込める魔力が多くなり、極めれば「今のは上級魔術ではない…初級魔術だ」が可能となる。

つまり無限ともいえる魔力の持ち主であるベルフェゴールの上級魔術は普通の悪魔の魔術とはレベルが違う。

暴風のような吹雪が3人のユズに襲い掛かる。

しかし、3人とも別の方向へ飛び、吹雪を避けると鎌を振る。

『魔力変換!無害な風となれ!』

3人のユズが3角形の頂点となって魔法陣を空中に作り、吹雪の温度が常温へと戻る。

「無駄だよ!どんな魔術でもあたしには効かない!」

「「きかないっよたらきかないよ!」」

再びベルフェゴールはゲーム画面でユズの情報を読み取る。…それらしき文は『生ける魔術書となった』くらいか。

「はぁ…魔術書?意味わかんない…」

「じゃあ、わからないままでいいんじゃない?」

802: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:23:44.58 ID:dpNaH5Eq0
…ユズは肉体に不可視ではあるものの呪文を刻まれた生ける魔術書だ。それも普通の魔術書ではなく管理塔のアカシック魔術書だ。

魔術書となった利点としてわかりやすいのはもちろん魔術の詠唱を覚えなくていい事や、簡単な物なら無詠唱でいい事だろう。

そしてもう一つは、付近で発動する魔術の種類がある程度分かることだ。

魔術レベル、属性、発動者、攻撃範囲、発動タイミング…それらが理解できる。

あくまで魔術だけで魔法は基本的に専門外ではあるが、魔術使い相手にさらに強くなった。

803: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:24:22.46 ID:dpNaH5Eq0
『ピリヘイオムスト!異世界の加速魔術を合成し使用する!』

そして3人のユズがベルフェゴールがどこかで聞いたことのある加速魔術を唱え、そのまま一人が鎌を振りかぶって突進してくる。

「っ!」

間一髪で回避するものの、そのスピードはあまりにも異常だ。

言葉を発する暇もなく、もう一人が突撃する。

なんとかそれもギリギリで回避する。『アレ』を使う暇もない。

「『アレ』、使えないみたいだね?」

にこにこ笑いながらユズが言う。

『アレ』とはユズを破ったあの時に使用した術だ。

位置入れ替え。単純に言ってしまえばそんな術。

しかし、持っている武器、行っている運動、構え等も入れ替えるため、攻撃の当たる瞬間に入れ替えれば、相手に相手の行おうとした攻撃を当てることができる。

しかし、今回は使う暇があっても意味がない。人間の肉体であんなスピードの相手と入れ替われば大怪我をするのは目に見えている。

そして、ベルフェゴールは完全に3人のユズに囲まれた。

そもそも突撃した2人は攻撃を当てる気など全くない。目的は背後に回る事。

つまり…

「奥の手その一!」

『合唱魔術・三角陣形結界の発動を宣言する!』

再び3人を頂点に魔法陣が形成される。最初からこれが狙いだったのだ。

804: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:25:07.67 ID:dpNaH5Eq0
『夜の闇をさまよう魂よ、この結界の理により、全ての存在が肉体と魂の繋がりを失い、汝と等しく魂の存在へ成り果てる。デルタオブソウル!』

さすがに危機感を持ったのか、魔法陣から逃れようとするも、結界と外の間に見えない壁が発生し、妨害する。

そして無慈悲にも魔術が発動し、三好紗南の肉体から2つの魂が飛び出した。

一つは意識を失った三好紗南本人。そしてもう一つが魂の姿になっても彼女の姿を取り続けるベルフェゴールだ。

もちろん、ユズとその使い魔も魂の状態だが、ユズは魂の姿にもう慣れている。しかし、憑依する時しか魂の姿にならなかったベルフェゴールはもたつく。

使い魔に指示をだし、三好紗南の魂と肉体を結界の外へ運ぶと鎌を構えた。

「なにこれ、チートすぎ…非戦闘魔族にここまでやる…?」

「チートじゃないよ…これが、貴方の嫌った鍛錬の結果だよ♪」

『死神の力を用いて、汝と現世の繋がりを永久に断ち切らん!』

ユズの振った鎌がベルフェゴールに当たると、人魂のような形になり、ユズの手元に収まった。

「他の奥の手を使うまでもなかったね。」

805: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:25:51.83 ID:dpNaH5Eq0
魔界

ユズはすぐさまその魂をサタンの下へ連れてきた。

「ユズ、よくやった…ところでベルフェゴールよ。貴様は敗北し、現世との繋がりを失った。ほぼ死者の魂と同じだ。この意味が分かるか?」

「わかるわけないじゃん!あたし法律とか詳しくないから!」

未だに少女の姿のままのベルフェゴールは、死の癒しの呪いがかかった地面に着くか着かないかの位置に涙目で吊るされている。

「ならば言ってやろう。貴様は死者の魂と同様に裁かれ、最弱魔物の肉体で罪の重さの分だけ強制労働させられるのだ…!」

「う、嘘でしょ!?嘘って言ってよ!ねえ!?あたしの罪は軽いよね!?」

必死に叫ぶ。怠惰の彼女にとって強制労働という言葉は恐ろしいものだ。

806: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:26:50.54 ID:dpNaH5Eq0
「…それを裁くのはその専門の『役職持ち』だ。キヨラ、入っていいぞ。」

「はーい♪」

黒いナース服の悪魔が入ってくる。大きな注射器が目立っているが、彼女自身から強者の雰囲気が出ている。

カルテのようなものを取り出すと、ベルフェゴールの罪状を読み上げた。

「えー…『契約・許可無しで人間界に滞在した罪』『カースを生み出した罪』『契約していない人間に憑依した罪』『契約していない・指定されていない人間の評価を変えた罪』『ゲームデータを窃盗した罪』…他にもありますね。」

「そ、そんなに!?」

「大罪さんたちの中では軽い方ですよ?…うふ、まずは教育です♪その為には…ちょっと痛いけど我慢してね~♪」

キヨラと呼ばれたその悪魔が、吊るされたベルフェゴールに注射器を突き刺す。

採血をするようにピストンを引くと、奇妙な色の液体がベルフェゴールから採られていた。

「な…何それ…?」

「うふふ、貴方が分かりやすい言い方でいうとね、経験値を奪っているの。レベル1になるまでね♪」

「え…?」

言い終わるのと同時に注射器が抜かれる。中の液体はキヨラが手をかざすと彼女の中に溶け込んでいった。

「いやだ…返せ!経験値ドロボー!」

「悪い子だった貴方がいけないのよ?」

ベルフェゴールはカースを生み出そうとするが、核がビーズレベルの極小な物が1個出てきただけだった。

逃げ出そうとするも、地面には死の癒しの呪い。そうでなくても、急激に身体能力が激減し、思う様に動けない。

「あ…ああ…」

「さあ、更生施設に行きましょうね~♪そこで勤労の素晴らしさを教え込んであげますから、他の悪魔さんの下で…数百年程度は働いてお金を稼いで、生まれ変わってくださいね!」

「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

無力な悪魔となり、キヨラに引きずられていくベルフェゴールの叫びが、ただ魔王城に響き渡った。

807: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:27:31.75 ID:dpNaH5Eq0
「…サタン様、処刑じゃないんですか?」

ずっと魔王の傍で見ていたユズが問う。

「処刑して魂が散れば新たなベルフェゴールが生まれるだけだ。ならば無力化して管理下に置いた方がいい。」

「…他の大罪の悪魔にもああするつもりですか?」

「無論。人間の使者と同列に扱われるのだ、これほどの屈辱もあるまい。」

「…すぐに他の奴らも狩ってきますから!」

「ああ、期待しているぞ、ユズ。」

「もちろんですよ!…何回でも何度でも、アタシは戦います!」

「…無茶はするなよ?」

魔王の最後の言葉を聞いたか聞かないかのタイミングで、ユズは杖に跨り、通常の飛行よりも速いスピードで、人間界へ飛んでいった。

808: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:28:13.87 ID:dpNaH5Eq0
キヨラ
職業:魔界更生施設職員
属性:オシオキナース
能力:経験値奪取、回復魔術、死の癒し

魔界を揺るがす大戦争で数少ない役職持ちの生き残りの一人。
罪人の魂を更生し、魔界で強制労働させる施設の職員。
魔界では珍しい、回復専門の魔術師。だが死の癒しも使えるため、全く戦えないわけでもない。
職員の証である注射器さえ刺されば相手を無力化し、自身を強化できる。…しかし、基本的に罪人にしか使わない。
『魔王より強い』『逆らうと恐ろしい』等の噂があるが、本人は否定している。
…しかし、今まで数々の重罪人すら更生(洗脳?)してきたので、結構信憑性はある。

魔界更生施設
基本的に罪人の魂を更生する施設。特例で悪魔の更生も行う。
ここで罪人たちは最弱の魔物の体に魂を入れられ、労働の素晴らしさを叩きこまれる。
その後は魔界の召使いを欲しがる悪魔に引き取られ、食事を必要としない肉体で1日20時間勤務を安賃金で働くことになる。
悪魔にとってここに送り込まれることは処刑よりも恐ろしい事である。

809: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 00:29:33.27 ID:dpNaH5Eq0
以上です
清良さんが思ったより出せなかった…
ベルフェゴールの強者感が出せないよ!
あ、紗南ちゃんが解放されました。

811: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/30(日) 00:41:20.22 ID:fN5gdfMJo

──ある日のGDF本部──

司令「さて、今日君達に集まってもらったのは、ある重要な任務のためだ」

椿「(重要な)」

詩織「(任務?)」

司令「極秘のプロジェクト故に、詳細は伏せねばならないが」

司令「現在我々は、とある"協力者"らと共に、対カース用装備の開発を進めている」

椿「(またぼかすような言い方……)」

司令「今回は、君達にその試作品の評価試験を行ってもらいたい」

司令「博士、どうぞ」

司令の合図で、白衣姿の男性が部屋に入ってくる。
恐らく、その対カース用装備とやらの開発に携わっている人間だろう。

812: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/30(日) 00:42:35.54 ID:fN5gdfMJo

博士「どうも、ご紹介に預かりました、龍崎です」

博士「私の方から、今回皆さんに試していただく装備の説明をさせて頂きます」

博士「これらの装備が実戦配備されれば、カース対するGDF陸戦部隊の戦闘力は、120%程向上するとの見込みです」

そう言うと博士は双眼鏡と、望遠鏡の様な物を取り出し、目の前の机の上に置いた。


博士「今回試作品として用意された装備は二点、一つ目はこの『CSG』カーススキャンゴーグルです」

博士「従来の戦法では、カースの弱点である核を直接狙う為に、"面"での攻撃を必要としました」

博士はホワイトボードに図を書きながら説明を続ける。

博士「面での攻撃を続け、カースの全身のドロドロを吹き飛ばした後、露出した核を狙うというものです」

博士「カースは不定形の泥で構成されており、弱点である核の位置も個体によってバラバラで──」

博士「核の位置を探る為には、カースに全身にくまなく攻撃を加える必要があり、結果、時間と弾薬を浪費してしまう」

博士「……というのが、この戦法の問題点でした」

博士の説明を聞きながら、三人は本題に入ってくれという顔をしているが、気にしてはいけない。


博士「そこで、このCSGの出番です」

博士「このCSGは、カースの体表のドロドロを透過して、核を直接視認出来るようになるという装置です」

博士「この装置により、攻撃前に核の位置を確認しておけば、"点"での攻撃でカースを撃破することが可能になるということです」

博士が一呼吸置いたのを見て、椿が疑問を投げかける。

椿「しかし博士、点での攻撃が可能になるとはいっても、核を露出させるためにはやはりある程度の時間と弾薬が必要になります」

椿「戦闘力が120%向上というのは……あまりにも……」

813: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/30(日) 00:44:10.90 ID:fN5gdfMJo

椿の発言を受け、博士は頷きながら答える。

博士「もっともな疑問ですね……そこで、二つ目の装備の出番です」

続いて、博士は金属の細長い物体──一発の銃弾を取り出した。

博士「CSGにて位置が判明した核に、露出させるというプロセスを経ずに攻撃を可能にするための装備」

博士「それがこの『12.7mmウサミン弾』です」

椿「12.7mm……」

詩織「ウサミン弾……?」


博士「今回開発されたこの銃弾は、弾頭が特殊な金属──我々は『ウサミニウム』と呼称していますが、それで出来ています」

博士「以前あなた方が制圧した異星人の施設から採取されものです」

以前制圧した施設と言えば、あのうさ耳が隠れていた研究所らしき場所の事だろう。

博士「この金属を使用することにより、弾頭は重量の割に非常に優れた低伸性を発揮し、また飛翔距離も───」

椿詩織志保「(話が長いよ……)」


博士「あーだこーだ」

椿「……」

博士「うんぬんかんぬん」

詩織「……」

博士「どうたらこうたら」

志保「……zzz」

博士の説明を聞いてもよく分からない三人は、適当に聞き流すほか無かった。
10分ほど話していただろうか、長ったらしい説明が済み、いよいよ、一番知りたかった部分を聞けることになった。

814: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/30(日) 00:45:26.65 ID:fN5gdfMJo

博士「つまり、この弾頭はカース表面のドロドロに運動を阻害されることなく核まで達する事が可能で」

博士「一定以上の硬度を持つ物体──この場合はカースの核ですが、これに当たるとマッシュルーミングを起こし」

博士「それまでの運動エネルギーを余すことなく目標に伝え、その結果」

博士「カースの核を、粉微塵に粉砕することが出来る……という訳です」

つまり、CSGとやらで核を見つけて、この銃弾で狙えばいいというだけの話である。


博士「ただ、このウサミニウムですが、物質の組成を調べたところ、地球上では精製できない金属であることが分かっています」

博士「従って生産性の観点から……口径の問題もありますが、選抜射手か狙撃手の方にのみ配備という形になってしまいます」

博士「あしからずご了承ください」

椿「その点については、私達にとっては特に問題ありません」

椿「ね? 詩織ちゃん?」

詩織「ええ……一発の銃弾でカースが吹き飛ぶ様が見られるのが、今から待ち遠しいわ」

博士「それでは、皆さんのご健闘を、お祈り申し上げます」

椿「我々にお任せください!」


椿詩織「……」チラッ

志保「……zzz」

詩織「締まらないわね……」

博士「……」

815: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/30(日) 00:46:32.91 ID:fN5gdfMJo

──数日後──

三人は対カース用装備の実地試験のために、とある市街地へと来ていた。
既に街中では大型のカースが暴れており、三人は攻撃配置に付く。

志保「はてさて、CSGとやらはどんなもんかなーっと」

志保が双眼鏡型のCSGでカースを覗くと、モノクロの視界の中でカースの左わき腹の辺りに白い塊を見つけた。

志保「おぉーこりゃすごいですねー、核の位置がまるわかりじゃないですか!」

椿「これは……確かにすごい装備かもしれません」

詩織『こちらでも確認したわ、左わき腹ね』

詩織の方は望遠鏡型──ライフルのスコープとして利用できるタイプである。


三人が、新兵器の能力にはしゃいでいると、通信が入った。

椿「──了解しました……二人とも、民間人の避難が完了したそうです」

志保「それじゃ、始めますか!」

詩織『二人に合わせるわ』

椿「よしっ、行きますよ!」

816: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/30(日) 00:48:53.02 ID:fN5gdfMJo

椿と志保が、ロケットランチャーを担いで路地から飛び出す。
数百メートル先に居るカースが、二人に気づいて近寄ってきた。

志保「私の合図で!」

椿「了解!」

志保「3,2,1…てっ!」

二人がカースの両足目がけロケットランチャーを放つ。

志保「命中確認!」

カースの両足は吹き飛び、体制を崩して倒れ込む。
しばらくは動きを封じられるだろう。

椿「再生まで十数秒ってところですね……詩織ちゃん!」

詩織『任せて……』


詩織の通信の声が途切れた直後、
二人の目の前で20メートルはあろうかというカースが、岩場に打ち付ける波しぶきのように弾け飛んだ。
数秒遅れて射撃時の銃声と思われる残響音が響いてくる。


椿「」

志保「」

想定はしていたものの、実際目の前でそれが起こると、二人は思わず硬直してしまった。

817: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/30(日) 00:51:17.78 ID:fN5gdfMJo

詩織『どうだったかしら?』

椿「え、えっと……」

志保「言葉に……出来ない……」

どうやら、核自体も粉々になってしまったようだ。
呪いの塊をも物理的に粉砕する銃弾に、身震いする。


椿「こ、これは確かに……私達の攻大アップですね……」

志保「特大アップくらい、いってそうです……」

詩織『よく分からないけど……評価試験は無事終了ってところかしら』

椿「……そうですね、帰還しましょう」

志保「この成果なら、あの博士も喜ぶでしょうね!」


三人は新しくカースに対抗する手段を得て、ご満悦で基地に帰るのだった。
この調子でいけば、地上からカースを駆逐できる日も遠くはないかもしれない……なんてことを考えながら。

818: ◆lhyaSqoHV6 2013/06/30(日) 00:54:56.91 ID:fN5gdfMJo
投下終了です
今回の設定まとめ

・対カース用装備第一弾が配備されました
・この事により、GDF陸戦部隊の戦力がアップしました
・第二弾、第三弾と続くかも?
・カースドヒューマン、ボス格のカースに対しての効果は不明です


あと、瀬名さんと槙原さんおめでとう!

 
824: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:37:12.32 ID:qtlmZdnAO
宇宙人、異世界人、古代遺跡など諸々の影響によりこの世界は歪みきっていた。
その歪みに呼応するようにある存在が目立つようになっていく――『アクマ』と呼ばれる存在が。
『アクマ』は様々な姿――時に神話の神々ような、時に魑魅魍魎のような、時に人間を陥れる悪魔のような――で我々の前に姿を現す。
そんな、人類と『アクマ』との関係は敵になり、味方となるそのような曖昧な関係だ。
そして人類側が『アクマ』の力を使う場合二つ――『アクマ使い』と『アクマ憑き』呼ばれる存在が。
『アクマ使い』は『アクマ』と交渉をし対価を払い専用の機器――一般的にCOMPと呼ばれる――を使い召喚し使役する存在。
対して『アクマ憑き』と自分の波長の合う『アクマ』の力をその身に宿した存在である。
この話はある『アクマ使い』の男と『アクマ憑き』の少女の話である。

825: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:41:11.17 ID:qtlmZdnAO
東京都の某所にある廃ビル群の中、一つの古びた探偵事務所――鳴神探偵事務所内で一人の男が依頼書に目を通している。
この探偵事務所が担当している事件は主に怪奇事件――それも『アクマ』絡みの――ばかりだ。
当然ここの所長である男――名をサマナーPと言う――業界でも屈指の『アクマ使い』である。
さて男が目を通した依頼書には強力な『アクマ憑き』が出現したとの報告がありその報告に彼は眉間にシワをよせながら眺める。
『アクマ憑き』は『アクマ』を身体に宿してその力を行使するが力を制御をするのが難しく、精神が未発達の場合力が暴走し易く最悪魂を『アクマ』側に持っていかれる可能性もある。
彼は軽く溜め息を吐くと仕事着に着替え何かあった時――大抵『アクマ』との戦闘――準備を整えると仕事をする為、事務所を後にしていった。

826: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:43:19.22 ID:qtlmZdnAO
一方その頃、これまた東京都の某所マンションで一人の女性――佐久間まゆと言う名で人気読者モデル――が一人の男性――名前はマコト、まゆの恋人で浮気癖がかなり酷い――を詰めよっていた。
と、コレだけ見れば浮気した男性を女性が問いただしている図に見えるだろう。
――女性の――佐久間まゆの下半身が大蛇――取り憑いた『アクマ』の影響による――を思わせる禍々しいモノ出なければ、だが。

827: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:45:46.04 ID:qtlmZdnAO
まゆ「うふふ、マコトさぁん……ちゃんと話を聞いてますかぁ?」

マコト「ああ、ま、まゆ、は、話は聞いているよ、うん聞いているよ」

まゆ「そぉですかぁ……では聞きまけどぉ……
   なぜ私という女がいながらぁ、他の女性と付き合っているんですか?」

マコト「え!? そ、それは、その……」

まゆ「わかってるんですよぉ……あなたがコトノハさぁんとセカイさぁんと付き合ってるのはぁ」

マコト「し、仕方ないんだ! あっちがその、しつこく言い寄ってくるから、その断り辛くて……」

まゆ「相変わらず押しに弱ぁいですね、マコトさぁんは……」

マコト「で、でも、き、君の事は愛してるよ!」

まゆ「……マコトさぁんがそう言うのはぁ、わかっていましたぁ」


828: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:47:46.60 ID:qtlmZdnAO
マコト「わ、わかってくれるんだね!?」

まゆ「でもぉ、マコトさぁんは本当に私の事を愛しているんですかぁ?……仮にもし愛しているのとしてもぉ、マコトさぁんは他の女性の告白は断れないでしょ?――その子を悲しませたくないからぁ……」

マコト「うっ……」

まゆ「そうやってぇ、マコトさぁんが無責任に他人の愛を受け入れていく姿にはぁもう耐えられないんですぅ――だからねぇ、一緒に行きましょう……誰の手も届かぬ二人だけの世界へ……」

???「それ以上はやめておきな嬢ちゃん――『人』として超えちゃいけないラインを超えたくなければ」(まゆにAttack)

まゆ「あっ……」

サマナーP「……クー・フーリン、その男を頼む……俺はこの子に憑いている『アクマ』を調べる……」

COMP『――アナライズ開始』

クー・フーリン「あいよ!マスター」

まゆ「私のぉ、邪魔をしないでくださぁい!」(サマナーPにアギダイン)

サマナーP「ケルベロス……」

ケルベロス「フン!(サマナーPへの攻撃をブロック)――ソノ程度ノ炎、地獄ノ業火ニ比ベレバマダ生ヌルイハ!」

829: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:50:34.98 ID:qtlmZdnAO
まゆ「どうしてぇ!?私はぁただぁ、マコトさぁんをぉ愛しているぅだけなのに、どうしてぇ邪魔をするのぉ!?」

サマナーP「……ティタニア、アテナ……足止めを」

ティタニア「了解――正直、女としてそこまであんな男に愛情をそそげるアナタが羨ましいわ」(ザンマ)

アテナ「ハァ!――あの男は私の父親に似て女癖が悪る過ぎるからホント死ねばいいと思っているけど、その罪を純粋な心を持っているアナタには負わせたくないわ」(デスバウンド)

まゆ「う……マコトさぁんを、マコトさぁんを一番愛しているのはぁ、私なんですぅ!私が一番マコトさぁんを愛しているんですぅ!」

COMP『……アナライズ完了、取り憑いている『アクマ』は鬼女 キヨヒメ、火炎・精神無効、氷結弱点』

サマナーP「(……氷結弱点か)……ジャック・フロスト、出番だ」

ジャック・フロスト「ヒーホー!――特大級、いくホー!」(ブフダイン)

まゆ「……!?ぐ……こんな所でぇ立ち止まぁるわけにはぁ……私はぁ……マコトさぁんと一緒にぃ……」

830: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:52:38.10 ID:qtlmZdnAO
サマナーP「……もういい、君の負けだ」

まゆ「赤の他人がぁ……勝手な事をぉ……言わないでくださぁい……!」

サマナーP「……アレを見てもか?」

まゆ「え……?」

マコト「よ、寄るな、ボ、ボクはまだ死にたくない、死にたくないんだ!」

サマナーP「……少なくともあの男には、君の愛を受け入れるだけの器はない」

まゆ「そんな……」

サマナーP「……だがいつかは君のその愛を受け入れる人が現れるだろう――その時改めて恋をすれば良い」

まゆ「……一つアナタのお名前をぉ、お聞きしてもよろしいですかぁ?」

サマナーP「……サマナーPだ」

まゆ「……ありがとうぅ、ございますぅ……(パタン)」

サマナーP「(……気絶したか)――そこの君、立てるか?」

マコト「あ、はい、あ、ありがとう――」

サマナーP「なら……歯を食いしばれ!」(鬼神 ヒダカ・マイ直伝、右ストレート)

マコト「――グェ!?」

サマナーP「……あの子に対する慰謝料替わりだ、取っておけ……!」

831: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:54:49.97 ID:qtlmZdnAO
~後日談~

まゆ「サマナーPさぁん、朝ご飯ですよぉ」

クー・フーリン「……マスター」

サマナーP「……何か用か、クー・フーリン」

クー・フーリン「結局マスターが預かる事にしたんだな――佐久間まゆの事を」

サマナーP「……ああ」

クー・フーリン「裏切るなよ?」

サマナーP「……そのつもりだ」

クー・フーリン「ならいいんだ……おっと、今日の『アイドル発掘』が始まってるな、どれどれ――」

司会者『今日ご紹介するアイドルはこの子――ルイ・サイファーさんです、よろしく~!』

ルイ・サイファー『私はアイドル、ルイ・サイファー……今後ともよろしく……』

一同『……』


一同『閣下、なにしてるの!?』


おわり?

832: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:56:10.54 ID:qtlmZdnAO
佐久間まゆ
職業:元読者モデル、現在助手
属性:アクマ憑き
能力:火炎・精神無効、氷結弱点
元読者モデルで現在はサマナーPの助手をしている。
元彼のマコトが種族:外道なため反動でサマナーPにべったりしている。
取り憑いているアクマ、鬼女 キヨヒメは強力な火炎魔法とデバフ系スキルの使い手で攻撃と支援の両方を任せられる。

サマナーP
職業:探偵
属性:アクマ使い
能力:数々のアクマを使役できる
鳴神探偵事務所所長をしている凄腕のアクマ使い。
基本的にあまり喋らないがキメる時にはキメるタイプ。
長年、アクマ使いとして活動している為交渉や戦闘がかなり上手。
ちなみに好きな食べ物は大学イモである。

833: ◆C/mAAfbFZM 2013/06/30(日) 01:58:31.53 ID:qtlmZdnAO
アクマ紹介

幻魔 クー・フーリン
みんなのアニキ

魔獣 ケルベロス
元花屋の飼い犬……なわけない(たぶん)
妖精 ティタニア
夫とは家庭内別居中

女神 アテナ
父親が婚活サイトを利用しているのを見てドン引きした

妖精 ジャック・フロスト
事務所内のマスコット

鬼女 キヨヒメ
浮気をしたらアギダインです

外道 マコト
765プロとは関係ありません

アイドル ルイ・サイファー
特技・メギドラオン

837: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:16:56.70 ID:4FEhiDu0o
ふぇぇ、アンダーワールドの人の書くサクライPがカッコよすぎるよぉ
そんな知的な会話書けないよぉ

昨今の桃華ちゃまのニート生活の様子投下します

838: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:18:40.88 ID:4FEhiDu0o
 

その日、マンモンたる彼女は露骨に機嫌が悪かった。


桃華「・・・・・・・。」

サクライP「・・・・・・やはり、例の能力者ですか?」

桃華「Pちゃま、その件についてはもうよろしいと言ったはずですわ。」

サクライP「失礼しました。」

桃華「・・・・・・神が相手では分が悪すぎますもの。」


櫻井有する能力者の組織は「アカシックレコードの読み手」を追っていたが、

その実行部隊が次々と失踪することとなる。

対策を打たれたのだ。

それも神によって。

839: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:20:30.30 ID:4FEhiDu0o
サクライPの必死の調査によってわかった事は三つ。

1.彼女を追えば、何らかのアクシデントが起こって探索・追尾不能となる。

2.彼女を憎めば、何らかの事故が起こって病院送りになる。

3.それらは神の仕業である。

これだけの事を調べ上げるのに、彼自身”偶然の不幸な事故によって”三度ほど死に掛けた。

持ち前の貪欲さで九死に一生を得てきたそうだ。


桃華(それでも、手が無いわけではありませんでしたけれど・・・・・・。)

桃華(神とはこの世の摂理、云わばルールのようなもの。)

桃華(ルールを破らなければ、干渉しない。干渉できない。)

桃華(つまり、この場合わたくし自身が「正面から堂々と」「平和的に話し合い」に向かえば失敗しないはずですわ。)


しかし、それを実行したところで。それを突破したところで。

その先にはアカシックレコードの所有者とそれを匿う「神をも使役する者」が居る。

次はどんな手を使われるかわかったものではない。

今の桃華は彼らの気紛れによって生かされてるようなものである。

ならば、手出しなどできるはずがない。


と言うわけで、『強欲』たる彼女はとりあえずそれを諦めざるをえなかったのである。


桃華(いずれは神も手にするつもりではありますが、流石に時期尚早すぎますし・・・・・・。)

桃華(ほかに選択肢などありませんもの。)


桃華「触らぬ神に祟り無しですわ。」

840: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:22:01.01 ID:4FEhiDu0o
桃華「ですから、あの件はもうよろしいですの。」


桃華「それよりも当面の問題は。」

サクライP「キングオブグリード・・・・・・でございますか?」

桃華「・・・・・・そうですわ。よくも・・・・・・よくもわたくしの・・・・・・!」


櫻井桃華の機嫌がすこぶる悪い理由。

その理由に「アカシックレコードの入手が困難になった事」が少し。

残り大半が、「キングオブグリードのその後」についての怒りである。


サクライP「今も探索を続けておりますが、依然足取りがつかめぬ状況で。」

サクライP「手がかりは皆無と言っていいでしょう。」

サクライP「ただ一つ、『少女を見た。』と言う証言以外には。」

桃華「でしたら、十中八九その少女ですわね。」

桃華「キングオブグリードの、その”核”を持ち去ったのは。」


キングオブグリードが死神によって討伐されたあの時。

櫻井財閥もまた、キングオブグリードの『核』の回収を行おうとしていたのだ。

後に『原罪』と呼ばれる、その『核』を。

841: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:24:38.02 ID:4FEhiDu0o
『原罪』を作り出した、キングオブグリードは『強欲』のカースであった。

例え、その由来に彼女が全く関わっていなかったとしても、

元が『強欲』のカースの核であったならば、

『強欲』たる彼女にとっては、彼女の所有物なのだ。


しかし、その『核』は櫻井財閥が回収する前に奪われた。

第三者によって、その場から持ち去られていたのだ。


故に、『強欲』特有のジャイアニズムを持つ彼女はブチ切れ寸前な訳である。


サクライP「問題なのは、『核』を入手したと思われるその少女の所属する勢力が未だにわからないことです。」

サクライP「我々人類、そして地底人では無いことは確かでしょう。」

サクライP「その二つであるならば、私は苦労せずにその足取りを知ることができるでしょうから。」

桃華「それでは、異世界か宇宙と言う事になりますの?」

サクライP「あるいは、全く別の勢力かです。」


桃華「・・・・・・いずれにしても、アレをわざわざ欲しがるのは厄介な勢力に違いありませんわ。」

桃華「Pちゃま、必ず見つけ出してくださいな。」

サクライP「はい、貴女様の仰せのままに。」

842: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:29:21.03 ID:4FEhiDu0o
そこまで話して、彼女は一息付く。


桃華「ふぅ・・・・・・少し気分を変えたいですわ。」

桃華「Pちゃま、紅茶を頂けるかしら。あと、テレビをつけてくださる?」


サクライPは手元のリモコンを操作して、部屋にあるテレビの電源を入れた後、

席を立つと、慣れた手つきで紅茶を入れ始めた。


テレビの中では、

鎌を持った黒いフード付きコートの少女が、

巨躯なる『強欲』の化身に立ち向かう姿が映し出されていた。


桃華「綺麗に撮れてますわね。」

サクライP「現地で能力者達が撮った映像ですから。」


本来なら人払いの魔法によって映る筈のなかった映像。

しかし、その映像はそこにあった。


今頃は、どのチャンネルどの時間帯でも、

『強欲の王』討伐のニュース映像が映される。


テレビの中で死神ユズは業火を繰り出し、

死の鎌の一撃をもって『強欲の王』を打倒す。


サクライP「この結果も、残念でございましたか?」


紅茶を彼女に手渡しながら、サクライPは問う。

結局、『キングオブカース』は何の結果も出せず、何の抵抗も出来ず、

まるでただのやられ役の様に崩れ去ってしまった。


彼女は紅茶を一口飲んだ後、

桃華「まさかですわ♪」

上機嫌に、否と答えた。

843: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:31:05.04 ID:4FEhiDu0o
桃華「『キングオブグリード』は確かにやられ役でしたけれど、」

桃華「おかげで、こうして死神ちゃまの実力をほんの少しでも見せて頂く事ができましたのよ♪」


サクライP「『憤怒』の魔王の刺客、死神ユズでしたね。」

サクライP「なるほど、確かにこれは驚異的な力でありましょう。」


桃華「まだまだ本気は隠しているみたいですけれど・・・・・・」

桃華「もし彼女が本気を出して戦えば、わたくし達七罪の悪魔全員が」

桃華「負けはしなくとも、無事では済まないですわね。」

桃華「もちろん、正面から真っ当に正攻法で戦った場合ですわよ♪」


サクライP「心得ております。」


桃華「ですけど、あの魔王に対する評価は改めないといけませんわね。」

桃華「本当に、こんなにも見事な人材を隠し持っていたなんて思いませんでしたわ!」


サクライP「高評でございますね。」


桃華「当然ですわ、特にわたくしは死神ちゃまの強さ以上にその成長速度が気に入りましたのよ♪」

844: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:33:23.02 ID:4FEhiDu0o
サクライP「あの死神は確かベルフェゴールに一度敗北していたのでしたね。」


桃華「あの子はその敗北から立ち上がり、そして新たな力を手にして戻ってきたのですわ。」

桃華「この短期間に結果を出すために、時間まで歪ませて・・・・・・。」

桃華「それは、よほどの『渇望』が無ければ成し得ない事ですのよ。」

桃華「ウフ、ゾクゾクしますわねっ!」

死神ユズのその力への渇望に『強欲さ』を感じ取り、彼女は打ち震える。


サクライP「なるほど、貴女様が気に入った理由はわかりました。」


桃華「このままでは本当にわたくしも殺されてしまうかもしれませんわね♪」

言葉とは裏腹に、その顔には笑みが浮かんでいた。


サクライP「そうはなりません。私がこの身にかえても貴女様をお守り致します。」

桃華「期待してますわよ、Pちゃま♪」


桃華「わたくしにとってPちゃま達が居ることが、死神ちゃまに対するアドバンテージ。」

桃華「死神ちゃまは、わたくし達『大罪』を処する権利を持っているみたいですけれど。」

桃華「わたくしを守る、Pちゃま達の命をどうこうする権利はありませんもの♪」


『寿命を迎えるわけでも無い人間を自身の判断で殺めることはできない。』

それが死神ユズに課せられたルール。

845: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:35:40.18 ID:4FEhiDu0o
桃華「ウフ、そう・・・・・・死神ちゃま。わたくしは人間を使いますのよ。」


テレビの画面では死神と魔法使いが戦っていた。

ニュースのテロップはこうだ。

『敵か、味方か。黒いローブの死神。』


サクライP「偏向報道。」

サクライP「古典的な手ではありますが、効果は十分でしょう。」

サクライP「本来ならば『強欲の王を討った英雄』が、『正体不明の死神』に早変わりです。」


テレビの映像は、財閥が用意したものならば。

テレビの報道はすべて、財閥の息がかかっている。


桃華「『キングオブグリード』は民衆にとって恐怖の対象でしたわ。」

桃華「そんな恐怖を、黒い一撃に切伏せるそのお姿。」

桃華「それは恐怖を超える恐怖ですわ。」


桃華「そして、魔法使いと戦ってるその姿。」

桃華「業界のヒーローリストに載ってる魔法使いと、」

桃華「リストには無い、正体不明の死神。」

桃華「なぜ、死神はヒーローを”襲っている”んですの?」

桃華「その姿は民衆にはどう映るのかしら。」

846: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:37:16.01 ID:4FEhiDu0o
サクライP「とは言え、件の魔法使い。」

サクライP「イヴ・サンタクロースの証言があれば、この程度の風評はたちどころに消えてしまうでしょう。」

桃華「わかってますわ。あとは”彼女”がわたくしの意図を汲んでくれれば、磐石なのですけれど。」


その時、画面が切り替わる。

『緊急ニュース』

そして画面に映るものを見て、桃華はにんまりと笑う。


そこには、カースを操り、人を襲わせる死神ユズの姿があった。


サクライPが席を立つ。


サクライP「それでは私は失礼します。『人類の敵』を討伐するために財閥も動かねばなりませんので。」

桃華「頑張りなさい、Pちゃま♪」


桃華「死神ちゃま。わたくし達と同じ魔の存在であるあなたは、その事にもう少し気を配るべきでしたのよ。」


桃華「さあ、死神ちゃま。これで貴女も『キングオブグリード』『嫉妬の蛇龍』と同じくして、」

桃華「『人類の敵』ですわ。」

桃華「もう大っぴらに活動することも、人ごみに隠れることもできませんわね。」


桃華「そして次の相手は、あなたが狩るべきカースでも大罪でもなくて・・・・・・」

桃華「人々を守護する、正真正銘のヒーロー達ですわよ。」

847: ◆6osdZ663So 2013/06/30(日) 02:38:35.55 ID:4FEhiDu0o

おわり

なぜ桃華ちゃまは神にばかり縁があるのか。
それと井村さんの能力超悪用してみました。
ユズちゃんごめんね。
途中まで人払いの魔法のこと忘れて普通に映像撮ってたのは内緒。

860: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/30(日) 04:25:34.94 ID:RyN6o5lyo
 投下するよー!!

861: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/30(日) 04:27:00.13 ID:RyN6o5lyo
夜の街、ビルの合間を縫って飛び交う影二つ。

『ウォアアアアアアアアッッ!!』「っ・・・くっ、『隠密万華鏡』ッ!」

片や、人の負の感情の具現化した怪物、『嫉妬』を司るカース。手当たり次第に暴れまわり、周囲をなぎ払う。

片や、『成敗』と書かれた面頬で顔を隠し、ニンジャヒーロー『アヤカゲ』を名乗る忍びの少女、浜口あやめ。分身を作りだし、カースの攻撃をやり過ごす。

カースの猛攻を前に防戦一方を強いらているあやめだが、しかし決して相手に好き勝手を許しているわけではない。

攻撃を避けながらも確実に人通りの少ない場所へカースをおびき寄せ、相手の動きを観察し、隙を窺っているのだ。

(核の位置の見定めは済んでいる。次に隙を見せたとき、そこを突けばそれでお仕舞いです―――)

ひらりひらりと舞うが如く跳び回るあやめに、すでにカースの攻撃は掠めることすらできなくなっていた。

しかし、相手の属性は『嫉妬』。その見事な動きに、カースの攻撃はさらに苛烈さを増していく。

「っ、ふっ!!・・・やはり、『嫉妬』は一番やっかいですね・・・ッ!」

相対する相手が強ければ強いほど、自身と相手との力の差に自ら『嫉妬』の感情を生み出し、力を増していく。

『自らの糧となる感情を自ら賄う』という点において、これほど厄介なカースも存在しないだろう。

862: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/30(日) 04:27:30.55 ID:RyN6o5lyo
『オオオォォアアアアアアアァァァァァ・・・・・・ア、アッ!?』

「っ・・・ん?」

拳を思い切り振りかぶり、突きを放たんとカースが身構えた、その瞬間であった。『なんとも不自然なタイミングで』、カースが突如動きを止めたのだ。

(何でしょう?誰か他のヒーローの手助けか何か・・・?いえ、ともかく好機!ここで仕留めてしまえば・・・ッ)

一瞬訝しむあやめだが、すぐに気を取り直し、疾風の如きスピードでカースへと肉薄する。


―――身体能力に恵まれ、忍びの技を会得し、数多の悪と闘ってきたあやめだが、本来の彼女は中学生である。

―――そして幸か不幸か、彼女はこれまで、『それ』と相まみえた経験が、奇跡的に一切なかったのだ。


『―――ア、ヒ、ヒヒッ、ヒャハハハハハハハハハハッッ!!』

「・・・えっ、わ、ぁあぁっ!!?」

―――故に、彼女は対処法を知らない。どころか、自分が何をされたのかも、理解が一泊遅れてしまう。

突如カースの背中から出現した触手・・・本来、『色欲』の特性として発揮されるそれに、あやめは足を奪われ、宙吊りにされてしまった。

863: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/30(日) 04:28:36.62 ID:RyN6o5lyo
「っ、このっ、何、をッ!?」

それでも修羅場をくぐった事は数知れず、すぐさま手にした忍者刀で触手を切り落とさんとするあやめ。しかし、カースが刀を持つ手の自由を奪う方が一手早かった。

どんどんと数を増す触手に絡められ、あやめは逆さ吊りのまま手足の自由をすっかり奪われてしまう。

(こ、この体勢はマズいです・・・頭に、血がのぼっ、て・・・)

修行の成果か、平衡感覚こそ失わないあやめだったが、今はそれが余計に辛い。頭がくらくらして、意識が鈍る。

『ヒヒッ、ハッ、ヒャハハハハッ』

狂ったような嗤い声を上げながら、尚も触手を生み出し続けるカース。身体を這いずりまわる触手が、あやめの正体を隠す面頬をずり下げんと力を込めた。


「そぉおりゃぁあああああああああああああッ!!!」


―――その、瞬間だった。

何者かが、あやめに意識を向けすぎて、周囲への警戒が散漫になっていたカースを、背後から一刀両断する。


「・・・まだ幼い少女に、こんな変態ちっくで特殊すぎるプレイを強要するとは不届き千番!!そこに直れッ、アタシが直々に成敗してくれるわー!!」

『・・・いや、今しがた核ごとぶった斬っただろうが』

べしゃり、と地面に落下した(不幸中の幸いか、カースの触手が上手いことクッションになってくれた)あやめの目に映ったのは、ド派手な甲冑に陣羽織まで羽織り(何故かそこだけ西洋風の)大槍を掲げる少女と、漆黒の毛並みと妖しい光を放つ紅い目をした喋る馬の姿だった。


―――後に趣味の話で意気投合した彼女らは『戦国乱舞』なる名を名乗り、コンビで活動を始める。それにより松風、もといシャドウメアの気苦労が増すことになることは、この時の三人は知る由も無かった。

864: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/30(日) 04:29:17.34 ID:RyN6o5lyo



「うん、『カースに注ぎ込む』練習はこのくらいでいいかしら。・・・あの子でさえなければ、『嫉妬』と『色欲』の相性、悪くは無いのよね」


「さて、さっさと行かないと。すぐに倒してくれたお陰で足はつかないとはいえ、万が一バレたら相手するのも面倒だし」


「・・・ふふっ、もうすぐ。もうすぐで、調整も完璧になるわ。それまで、楽しみに待っててね、ベル・・・うふふっ♪」



865: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/30(日) 04:30:36.70 ID:RyN6o5lyo
というわけで、センゴク☆ランブを引き合わせつつ、アスモデウスさんの企みもちょっと進めてみました
・・・さて、こっからどうするかな(何も考えてないなんて言えない)

867: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/30(日) 05:40:40.72 ID:RyN6o5lyo
現在の大罪悪魔の動向ざらっとまとめ

・強欲/マンモン(桃華):財閥の力を使い、ユズの行動の自由を奪う(キングの核取られたり文香がつかまらなかったりで不機嫌)
・傲慢/ルシファー(雪菜):ユズの姿を真似、マンモンの計略に乗っかる
・色欲/アスモデウス(奏):菜帆に力を注ぐための準備中
・嫉妬/レヴィアタン(瑞樹):龍帝キバと魔王サタンへの復讐のため暗躍中(現在のターゲットは昼子と薫)
・暴食/ベルゼブブ(菜帆):とりあえず食べ歩き
・怠惰/ベルフェゴール:ゲームオーバー

見返してみると改めて柚ぽんの立場がヤバい・・・仁美が味方についてくれればワンチャンあるかな?

877: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 16:56:01.09 ID:6+IqpHijo


「来たんだね」

私の周囲にたむろしていたカースたちが次々と核だけになり落下してカチン、カチンと音を鳴らす。

「大量のカースが現れた地点を探せば見つかると思ってた…」

「待ってたよ、ウサミン星人」

空を見上げるとそこにはホログラム投影された一人の少女。

『――――――……♪』

「初めまして、『歌姫』、カースを浄化するあなたも凄く興味深いけど――」

「―今はあなたの後ろにあるやつのほうが興味あるかな?」

「うん、テクノロジストの血が騒ぐよ」

リンはホログラムの背景のように空に浮かぶ宇宙船を見て呟いた。

878: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 16:57:01.05 ID:6+IqpHijo


「き、君はいつの間に私の宇宙船に入り込んだんだ…?」

私の前には一人のウサミン星人。心なしか怒っているように見える。

「うわっ、思ったより重いねこれ」

しかしながら私はそれどころではない。目の前には歌姫が着ていた不思議な服、というよりもスーツと言ったほうがいいのだろうか。

「ねぇ、これなんて言う名前なの?」

「……ニューロ・インターフェース・スーツだ…」

「凄い凄い、うわっ、スカートの中結構メカメカしいんだね」

直接足を傷つけないように工夫された電子部品を見て楽しくなってくる。

やっぱりこうじゃなくちゃね。

アンダーワールドじゃこうは行かない。あそこでは遊び心も工夫も足りない。

「まぁ、ただのアイドル衣装ではないからな」

「……そうではない、君は一体いつの間に宇宙船に…」

ハッとして我を取り戻すウサミン星人。

879: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 16:58:45.87 ID:6+IqpHijo
「『歌姫』だってこの宇宙船に住んでる訳じゃない気がしたからね」

「だから彼女を降ろす時にテレポーターに彼女に気づかれないように後ろから飛び込んだだけだよ?」

「…無茶苦茶な…!テレポーターの存在に気づいていたのか?」

「『歌姫』にはウサミミがないからかな?なら帰るところくらいあると思って探らせてもらったよ」

「…ははっ、それはそうだな」

「だよね」

私は困惑していたウサミン星人の顔が綻んだのを見て安心する。

「君は一体なんなんだ?」

「特に何をする訳でもないのになぜ私の宇宙船に…?」

ウサミン星人は心底不思議そうな顔で私に尋ねる。

881: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:00:51.24 ID:6+IqpHijo
「私は…うん、ただの通りすがりのテクノロジストだよ?」

「…テクノロジストとは何だ?」

「もっとも、私が何年も前に捨てた故郷での…だけどね」

「…そうか」

「私が興味あるのは『歌姫』と宇宙船、危害を加える力も意味もないよ」

「そのようだな、本当に君には『歌姫』とは違って特になんの力もないようだな」

ウサミン星人には能力の有無を調べる手段でもあるのかと驚嘆する。

「…手厳しいね、私だって持てるなら欲しいけどね?」

「私も『歌姫』の肩代わりが出来るならいつでもしてやるさ」

「…そんな渋い声で歌われて浄化されたらカースもなんとも言えない気分だろうね」

「……違いないな」

882: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:04:34.95 ID:6+IqpHijo
私はなぜか演歌を熱唱する目の前のウサミミを想像する。

「…ないね」

「そんなにないか…」

ウサミン星人のウサミミが垂れ下がる。

その姿を見て自然と笑いがこみ上げる。

「一回目はウケるけど三回目から飽きられるタイプかな?」

「そ、そうか…」

「まぁ、とにかく私が見たいのはこの宇宙船だって分かってくれたかな?」

883: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:07:11.80 ID:6+IqpHijo
「ははっ、…珍妙な友人が出来たものだ…軽く案内くらいは構わないかもしれないな」

「…へぇ?」

…友人か…思ったよりフレンドリーなウサミン星人だ……。

「着いて来るといい、今から私が喋ることは一人言だ」

そう言って歩き出すウサミン星人。

「そういう事情なの?」

「なに、技術の漏洩をあまり堂々とすると上から睨みが来るからな」

「宇宙人も面倒なんだね?」

「君たちほどじゃないさ」

「私はそういうの捨てたから…」

「いつまで経ってもしがらみというのは追いかけてくるものさ」

884: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:07:57.43 ID:6+IqpHijo
「へぇ、大人なんだね?」

「はは、これでも様々なものに揉まれてきたからな」

「様々なものって?」

「私たちの故郷にも色々あると言うことさ」

「…聞かないでおいてあげるよ」

「それはありがたいな」

「しかしなぜ君は、歌姫が居ない時に来たんだ?」

「その口ぶりだと大分私たちのことは分かっているのではないのか?」

「…彼女が居る時にいきなり私が来たらあなたはどうする?」

「歌姫を守るために……」

そこまで言いかけてウサミン星人は得心する。

「君を攻撃しただろう…でしょ?」

「…その通りだ」

苦笑いを浮かべるウサミン星人。

885: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:09:46.18 ID:6+IqpHijo
「それとね、私はリン、君なんて名前じゃないんだ?」

「そうか、リン、最初は君を変な闖入者程度にしか思っていなかったが思った以上に頭が回るようだ」

「…あはは、本当に失礼だね」

…変な闖入者自体は修正する気ないんだね。

その時だった。

銀色の軌跡が光の線を放ちながら迫ってきたのは。


「危ない!」

私はウサミン星人を思い切り突き飛ばす。

「ぐっ!」

バランスを崩して倒れたウサミン星人の首のあった場所を銀色の閃光が通り過ぎる。

886: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:11:15.44 ID:6+IqpHijo
「外してしまったか」

「まぁいい、ウサミン星人は殺してしまっても構わないと聞いているしテレポーターを無理やり動かすよりは簡単な仕事だろう?」

私の前にはナイフをだらりとぶら下げるように持つ女。

でもそれよりもその女が首から下げている物……。

「特殊偏光グラス!?」

なぜアンダーワールド人がウサミン星人を狙う!?

「なんで地上侵略を狙うアンダーワールド人がウサミン星人を…?」

「おや、君は私たちについて詳しいようだね?」

「詳しいも何も…!」

私はアンダーワールド人だと口走りそうになる口を閉じる。
そうか、私はまだ偏向コンタクトレンズのお陰でアンダーワールド人だとバレてない…!

887: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:11:59.64 ID:6+IqpHijo
私はウサミン星人を庇うように立つ。

「私の目的はウサミン星人、邪魔さえしなければ君を殺しはしないさ」

「リン、退くんだ!ヤツの狙いは私だ!」

後ろでウサミン星人がなにか叫んでいるが無視する。

「…アウトレイジが言う不殺ほど信じられないものもないよ?」

「はははははっ!」

女は楽しくてたまらないといった風に笑う。

「いやぁ、君は本当に何者なんだい!特殊偏向グラスだけじゃなくて私たちの身分制度ことまで知っているなんて!」

どうせこんなこと任されるのはアウトレイジとあたりをつけただけだが当たったみたいだ。

「……」

私は沈黙を貫く。

「…喋らないのかい?なら……」


   「君も死んでしまうね?」

888: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:13:13.13 ID:6+IqpHijo
瞬く間に女の手が閃きナイフが私に向けられれる。

でも、充分だ、私がポケットに手を入れる時間さえあれば。

『炎よ!』

その瞬間女と私を隔てるように炎の壁が生まれる。

「くっ!」

女は燃え盛る激しい炎を目視して目を痛めたのか慌てて首から下げていた特殊偏光グラスを掛ける。

「アンダーワールド人は目が弱いんだから光には注意しないとねっ!」

「リン、逃げるぞ!」

私の手を引くウサミン星人。

「うんっ!」

私は魔力を使いきって光を失った魔法のビー玉を投げ捨てて走りだす。

889: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:14:48.73 ID:6+IqpHijo


私たちはバタバタと盛大に足音を鳴らしながら走る。

「リン!これからどうする気だ!」

「地上に出れるレベルの資金とか援助があるようなアウトレイジなんて聞いたこと無いよ!」

「アウトレイジとはそもそもなんなんだ!」

「…無法者!アンダーワールドの暗部!」

「…ア、アンダーワールドだとっ!?」

説明している時間はない……!

890: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:16:19.59 ID:6+IqpHijo
「ふぅ、君たちには驚かされるな…」

ありえない跳躍力で後ろから床を跳ねるように迫ってくる女

「『コンバットモジュール』…!?取り付けるの高いのに…!」

「ウサミミ!私のショルダーバッグに小型化したプラズマバスターがあるからっ!」

「ウ、ウサミミだと!?」

心外なあだ名を付けられて不服そうなウサミン星人をスルーする。

「大体なぜそんなものを持って……!」

困惑するウサミン星人、改めウサミミに残り少ないビー玉の入った巾着だけを取り出してバックをウサミミに放り投げる。

「後で頼んでビー玉の追加分貰いに行かなくちゃかな!」

何か手土産でも持って…なににしよう…?

891: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:17:44.13 ID:6+IqpHijo
『水よ!』

水流が女目掛けて飛んでいく。

「…遅いっ!」

ふわりと水流を避けながら壁を蹴って女はこちらに飛んでくる。

「これでいいのかっ!」

ウサミン星人がプラズマバスターを女に向け放つ。

「…ふっ!」

今度は床を蹴りプラズマバスターを避ける、女はそのまま天井にナイフを突き立てぶら下がった後に華麗に着地する。

「…君は本当になんなんだ?」

女は心底不思議そうな顔で訪ねてくる。

「なんだろうね?」

「…友人って言ってくれた人を放っとくのも気分が悪いからね、それに……」

まだ宇宙船の中、見せて貰ってないしね?

892: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:18:39.32 ID:6+IqpHijo
「…どちらにせよ能力者がウサミン星人を守っているなどと聞いた覚えはない」

…能力者?何のこと……?

「炎を生み出し、水を操る…どちらにせちよクライアントからの情報にはないイレギュラーのようだね」

あぁ……そうか……。


――この女はビー玉の力を能力と勘違いしてるんだ。

……なら…。

「…緊急のサインは出したよ、もうじきここに沢山の仲間がここに転送されてくるだろうね?」

今だけは嘘吐きになろう。

「……どちらにせよ今回は退かせて貰うよ、クライアントに報告しなくてはいけないからね?だが……」


   「次はないよ?」

そう言って女は微笑み立ち去っていった。

893: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:19:54.74 ID:6+IqpHijo
「な、なんとかなったね、ウサミミ…」

私は床にへたりこむ。

「リ、リン!私はウサミミ呼び決定なのか…?」

だってウサミミだし…。

「それよりウサミミ、あの女が帰ってくるまでに『歌姫』を保護しなきゃ!」

いつあの女が帰ってくるかも知れない。

「あぁ…そしてその後は…」

……その後…?



「宇宙船の掃除だな……」

魔法で生み出した水流により水浸しになった船内を見てウサミミはぼやいていた。

894: ◆yIMyWm13ls 2013/06/30(日) 17:20:33.88 ID:6+IqpHijo
終わりです。

なぜ凛ちゃんと奥山さんじゃなくて凛ちゃんとウサミン星人Pで書いたのか分からない(困惑)

896: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 17:22:33.39 ID:dpNaH5Eq0
「嵌 め ら れ た !」

『みー!?』

魔力管理塔に飛び込むなりユズは叫びながらベッドに飛び込んだ。

その周りを使い魔が心配そうに飛び回る。それさえ気にせずユズは心の底からの一言を叫んだ。

「アタシが何したっていうのさー!!!!」

897: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 17:23:26.28 ID:dpNaH5Eq0
ベルフェゴールを更生施設送りにし、意気揚々と人間界に戻り、偶然近くにいたカースを倒そうとしたら何故か武装した人間達に銃を乱射されたのだ。

「死神!何が狙いだ!」

「撃て!カースを生み出す死神を殺せ!」

「誤解だよ!死神じゃないし!カースも生んでないし!」

取りあえず逃げ出し、大罪の悪魔を探そうと飛んでいたら正義のヒーローを名乗る、光を放つ少女に襲われた。

「平和を脅かす悪の死神め!ブライト・ヒカルが相手だ!」

「死神は悪い神じゃないから!それ以前になんでー!?」

その他にも様々な人間に襲われ、おかしいと気付いた。

人間に擬態し、偶然見たテレビでやっていたのは彼女に化けた何者かがカースを使役している映像。

『死神の格好をした謎の少女!強力な能力でカースを生み出し、我々を恐怖の渦へ…!彼女の目的はなんなのか!GDF、アイドルヒーロー同盟は彼女の目撃情報を…』

「…え?」

顔面蒼白になり、慌てて管理塔へ避難してきたのだ。世界の狭間にあるだけあって、到着できるのは杖の加護があるユズだけだから避難所としてはもっとも理想的だ。

…ちなみに今のところほぼ無傷である。心以外。

898: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 17:24:21.43 ID:dpNaH5Eq0
「絶対大罪の悪魔の仕業だ…どうしよう、サタン様に報告して一時的にでも他の死神を…駄目…普通の死神はあいつらには勝てない…」

どうしろと。頭が痛くなる。

「権力持ちの人間に取りついたのかな…?じゃあ強欲か高慢とかかな…?ああ…気付かれるなんて…ドジったぁ…」

何回も行った世界が間違っていないか確認して、やっぱり目的の人間界で。

…対処方法がないこともない。時の管理者に掛け合って時間を巻き戻してもらうとか、世界中に自分が安全であると洗脳するとか。

だが、時間を巻き戻しても犯人が分からなければまた同じことが起こるだろうし、そんな洗脳したら一気に重罪を背負うことになる。

「取りあえず姫様が無事ならまだいいや…」

半場ヤケクソ気味に呟く。

アタシじゃない。アタシじゃない。それでもアタシはやっていない。

899: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 17:25:28.51 ID:dpNaH5Eq0
「…人の噂も何日かで終わるんだ…よし、引きこm…隠れてよう。監視と捜索はぷちがして…」

『み!?みみー!みっみみー!』

「ちがうよ、怠惰じゃないよ。アタシはちょっと…うん、疲れたんだよ…。仕事はするから安心して。」

目が死んでる。

そもそも魔族だから長く生きているだけで精神はほぼ15歳の少女なのだ。免罪で指名手配は精神的にきつすぎる。

「…許さん…こんなことした悪魔、キヨラさんにオシオキされて一生無給料で働けぇ…うぅ…」

「…みー?」(どうしよう?)

「…みぃ」(とりあえずご主人様に頼まれたお仕事しようか。)

「みー、みみぃ!」(悪い悪魔探しと、お姫様の観察!)

『みー!』

取りあえず6体の使い魔たちは塔を飛び出した。

900: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 17:26:19.27 ID:dpNaH5Eq0
「…」

むくりとベッドから起き上がり、新しい使い魔を2体作ると塔の3階へ上る。

プラネタリウムのような、他の階とは違った雰囲気の部屋。

「絶対サタン様の手は借りない…なら…!」

自身の肉体に刻まれたのは今まで誰かが使ってきた魔術。同属性の複合魔術すら、歴代の管理者の誰かが使った物。

地下が過去の魔術の記録庫なら、ここは未来の魔術を生み出すための研究室。

「今のうちに…新たな魔術を作るまで…!」

自然や宇宙の理が星のように刻まれたその部屋は、新たな魔術を生み出そうとする管理人を歓迎するように煌めいた。

901: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 17:29:54.99 ID:dpNaH5Eq0
合体して二人のユズとなった使い魔が空を飛ぶ。

「お姫様の学校、どっち?」

「あっち!…多分!」

「あ、でもあそこにカース!」

「あはは、本当だ!倒そっか♪」

「「倒しましょったら倒しましょ♪」」

『合唱魔術の発動を宣言する!』

『大いなる我が力を用いて、星空・宇宙の理を読み解き、天空より光よふりそそげ!ヘブンズスターライト!』

合唱魔術の名に恥じない、歌うような詠唱。

それらが無慈悲にカースを破壊した。

その日から『死神は双子ではないか?』という噂が流れることになるが…それがどう世界に影響するのだろうか。

902: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 17:31:10.37 ID:dpNaH5Eq0
ユズちゃんが籠城を始めました。
よっぽどのことがない限り出てきません。…働いてるし鍛錬してるから引き籠りじゃないよ!
そのかわりぷちユズが基本的に人間界では行動中です。
ぷちユズは合体していてもいいし、していなくても大丈夫です。

ぷちユズ(合体)
基本的に3体で1人。アホの子。見た目は殆どユズそのもの。
クリスタルが記憶した魔術が使用でき、合体したことで属性に縛られず、管理者用魔術以外は大体使える。
魔力はクリスタルの物を使用しているが、3連結なので尽きることはめったにない。
喋ることができるがどこかチグハグ。感情入力が上手くいかなかったのか、いつも楽しそう。
死亡する程のダメージを食らうか、洗脳系の攻撃を食らうと自動的にクリスタルが砕け消滅する。

魔力管理塔
世界の狭間、様々な世界の魔力の流れの中央に浮かび続ける塔。
その為直接ワープすることは不可能で、一旦狭間に行ってから探す必要がある。
管理人である杖の持ち主は加護により塔への道のりが分かるが、それ以外の存在は永久にたどり着けない。
行こうとしても世界の狭間から道を踏み外し、異世界へ落ちるか、最悪の場合世界の衝突に巻き込まれて死んでしまう。
そもそも世界の狭間に入る事すら困難だったりする。

各階の構成
1階2階
吹き抜け。巨大なクリスタルが鎮座している。
一階部分は生活スペース、二階部分は魔術道具置き場になっている。

3階
プラネタリウムのような神秘的な空間。
魔術を意図的に開発する為の理想的な空間を保ち続けている。
別に管理人でなければ魔術を作れないわけではない。

地下
過去の魔術が記され続ける魔術書が大量に置いてある記録庫。
ここにある本は何があっても決して傷つくことはない。

903: ◆zvY2y1UzWw 2013/06/30(日) 17:32:17.20 ID:dpNaH5Eq0
作業BGM・「僕じゃない」の結果がこれだよ!
まぁ絶対安全地帯があれば誰でも引き籠るよね…ということで

907: ◆IRWVB8Juyg 2013/06/30(日) 18:43:43.34 ID:qjPUF47mo
島村卯月、頑張ります!
投下

908: ◆IRWVB8Juyg 2013/06/30(日) 18:44:29.06 ID:qjPUF47mo
     ワイワイ…

卯月「むむむ……どうしよう……」

茜「卯月ちゃん、どうしたの?」

卯月「あっ、茜ちゃん。この前だされた課題が実はあと1ページ残ってて……すっごい難しいの」

茜「課題……? かだ……あーっ!!!??」

卯月「」ビクッ

茜「う、うわぁぁぁ!! どうしよう卯月ちゃん!!! 私すっかり忘れてた!!!!」

卯月「あ、茜ちゃんも? 珍しいね……いつもきちんとやってくるのに」

茜「うん、出された日がちょうど探索の重要な……はっ!!!!」

卯月「探索?」

茜「う、ううん!! なんでもないよ!!!! なんでもないよ!!!!!」

卯月「そう……かな? うーん、それならいいんだけど」


茜(あ、あぶなかったー。内緒にしなきゃダメって言われてたの忘れちゃってた!)

卯月(茜ちゃん……何か悩み事かな? 嘘をつくとき、いつもより声が大きくなるもんね……)

909: ◆IRWVB8Juyg 2013/06/30(日) 18:45:37.07 ID:qjPUF47mo
  キリーツ
      レーイ
         チャクセーキ……


茜「……」プシュゥ…

卯月「うぅ……また宿題が増えちゃった……」

茜「う、卯月ちゃん……」

卯月「茜ちゃん、いっしょに勉強する……? 1人だと難しいよね」

茜「うーん……そう、したいけど……その、用事が……」

卯月「用事って?」

茜「それはっ……えっと、その……と、友達!!」

卯月「友達?」

茜「うん! 友達のお手伝いしないといけないんだ!! ご、ごめんね! じゃあまた!!!」

    タッタッタッタッタ……


卯月「あ、ちょっと茜ちゃん………いっちゃった。大丈夫かなぁ」

卯月「はぁ……課題どうしよう……うーん……」

910: ◆IRWVB8Juyg 2013/06/30(日) 18:46:29.53 ID:qjPUF47mo
――商店街

卯月(……むむう。参考書でもあったら簡単にとけるかも! って思ったのに)

卯月(流石にないかぁ……でもここ、なんだかノスタルジックな感じで素敵かも!)

卯月(今度調べものの課題とかが出たらここに来るのもいいかも……)

卯月(……あ。そういえば世界史でレポート書く練習を含めて好きな歴史上の人物について調べてこいって言われてたっけ?)

卯月「……うーん。でも……………多すぎて何が何だかわからないや」

卯月「学校の図書室で誰について調べるか決めてから来た方がいいかな……あとは……」

卯月「………実はこういうところに、神秘の本があったりとかして。それで剣と魔法のファンタジーに」

卯月「……もう、なってるか。えへへ、でも流石にそんな本はないよねー」


      「こ、この本買います!」
               「あ、はい……350円になります……」


卯月(よーし、じゃあ今日は早めに帰って……あぁ、帰って課題やらなきゃいけないんだった……)

911: ◆IRWVB8Juyg 2013/06/30(日) 18:47:29.58 ID:qjPUF47mo
卯月「はぁ……どうしよう……」

卯月「いっそ、学校が壊れて…………って、そんなのダメダメ!」

卯月「うー、でも終わらせられる気がしないよぅ……答えがわかる能力とか目覚めないかなぁ……」

卯月「……うん。ないない! 私は私のまま頑張らなきゃ!」

卯月「そうだ。課題を終わらせたら最近できたっていうあのお店のケーキ食べにいこうっ!」

卯月「美味しいって評判だし、モチベーションが高いとなんとかかんとかがいいってテレビで聞いたし!」

卯月「よーし、島村卯月! 自分へのごほうびのためにがんばるぞーっ!」

    ワイワイ   ザワザワ…
      ガヤガヤ

卯月「……ってあれ? なんだろうあの人だかり……」

卯月「うーん、うーんっ……あっ! 何かの撮影かな?」

卯月「わー、かっこいい! ドラマかな……えへへ、ラッキーかも」

912: ◆IRWVB8Juyg 2013/06/30(日) 18:47:58.17 ID:qjPUF47mo
卯月「でもよく見えないなぁ……ふぅ、仕方ないから帰ろうかな」

卯月「課題やらなきゃいけないもんね。よーし、島村卯月、ファイトッ!」

卯月「おーっ!」


          ドカァァァァン!!

卯月「どかーん?」

卯月「……最近のドラマって爆薬も使うのかな?」

卯月「そんなわけないよね。まさか……」

             「危ないぞ君、早く逃げるんだ!」
    「うわぁぁぁぁ! カースだ!」     「怪我人は!? さっきの子は大丈夫なのか!?」
         「ヒ、ヒーローを呼べ!」                   「そんなことより逃げるんだよ! お前死にたいのか!?」


卯月「……! た、大変だぁ! えーっと、こういう時って機動警察だっけ、アイドル同盟だっけ」

卯月「電話、電話……うわーっ、電池が切れてる!? どうしよう、だ、誰か呼んでこなきゃ!」


   タッタッタッタ……

        「こ、これ以上急ぐのはつらいんですけど……!」
          「で、でも……さっき逃げてきた人たちの感じだと誰か襲われて身代わりになってるから……急がなきゃ……!」

913: ◆IRWVB8Juyg 2013/06/30(日) 18:48:28.68 ID:qjPUF47mo
卯月(人を呼びにいって、戻ってこようとしたらさっきの場所が植物だらけに……)

卯月「……ナチュルスターかな? うわぁ、すごい」

卯月「本当に木が生えたりするんだ……わぁ……」

卯月「………能力かぁ。やっぱりいろいろ大変なんだろうなぁ」

卯月「私は持ってない、けど。でも……持ってる人は持ってる人で……」

卯月「……うん。私は私で頑張らなきゃ!」

卯月「さて……と……」グゥゥゥ…

卯月「………その前にコンビニとかにいって、ちょっとだけおやつ食べようかなぁ……」

914: @設定 ◆IRWVB8Juyg 2013/06/30(日) 18:51:22.31 ID:qjPUF47mo
島村卯月(17)  

所属:高校生
属性:人間
能力:特になし……?

いわゆる『普通』の女の子。
不思議と事件に巻き込まれないが、不思議や非日常なこと自体には興味を持っている。
交友関係は広いし、遠出も大好き。大きな事件や事故とは入れ違い気味になることが多い。
運がいいとも悪いとも言えないが……

実は神の奇跡も悪魔の誘惑にも干渉されない『普通力』とでもいうべきあるがままでいるという能力があったりする。
呪われることもなければ、奇跡が起こることもありえない。

925: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:42:47.70 ID:/ZpwRJzhO
投下します

何か設定に矛盾があったらお願いします

926: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:43:29.39 ID:/ZpwRJzhO
ある悪魔の話をしよう。

その悪魔は、龍族と魔族の間に産まれた。

だが、周りの魔族や龍族はきみわるがった。何故なら魔族にも龍族にもある筈の翼と角がなかったからだ。

コイツは呪われてる。

きっと、俺たち龍族に災いをもたらす。

きっと、俺たち魔族に災いをもたらす。

殺せ。この災いをもたらす奴を殺せ!!

927: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:44:47.10 ID:/ZpwRJzhO

そう言って、殺される筈だった悪魔を救ったモノたちがいた。

龍帝キバと魔王サタンである。

彼らは、自分を受けいてれてくれた。

魔族と龍族は、お互いに鍛錬しあい、共に強くなっていく間柄だった。

自分も彼らみたいになりたい。そして鍛錬にいそしむ日々だった。

いつかはあの人達と肩を並べて戦いたいと……

だが、いくら鍛錬しても彼らには追いつけない。
憧れた二人は更に上にいく。
頑張っても頑張っても頑張っても、二人へは届かない。

だが、それはまだ妬みには--嫉妬にはならなかった。

あの日が来るまでは……

928: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:46:03.69 ID:/ZpwRJzhO
ある悪魔の話をしよう。

それはいつもと変わらない日々の筈だった。

突然、龍帝キバが魔族を殺したのだ。

それを、聞いて耳を疑った。

---キバ様がそんな事をする筈がない!なんかの間違えだ!!

---誰かがキバ様を嵌めようとしているのだ!

---すぐにキバ様がなんとかしてくれる!


だが、事態は更に悪化する。若い龍達もが魔族を殺し始めたのだ。

お互い、止まる事ない憎しみの連鎖は戦争へと変わった。

両方の血を引く、この悪魔にとって、地獄でしかなかった……

929: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:47:29.40 ID:/ZpwRJzhO

アイツは龍族の血を引いてる!裏切り者だ!殺せ!!

アイツは魔族の血を引いてる!裏切り者だ!殺せ!!

やはりアイツが災いを呼んだんだ!!殺せ!!

龍帝さまが狂ったのはアイツのせいだ!殺せ!!

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

魔族と龍族の戦争で、この悪魔を助けてくれるモノはいなかった。

930: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:48:52.03 ID:/ZpwRJzhO
ある悪魔の話をしよう。

日々鍛錬をし、鍛えられた魔術や龍族言語で自分に向けられる殺意を振り払いながら、一つの希望にかけていた。

---サタン様なら、キバ様を止められる。

---サタン様なら、この争いを止めてくれる。

---サタン様なら、私を助けてくれる。

そんな願いをこめ、ボロボロになった身体を引きずりながら

悪魔は、憧れる二人の王の戦場へ向かった。

931: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:50:29.65 ID:/ZpwRJzhO
だが、絶望は終わらない。

見てしまったのだ。死んでしまってる龍帝を。

見てしまったのだ。無抵抗の龍妃さまとその娘に、躊躇いもなく殺そうと呪文を唱えた魔王を。

それは、この悪魔にとって一方的な殺戮に見えてしまったのだ。

932: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:51:25.67 ID:/ZpwRJzhO




どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?とうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?とうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?とうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?とうして?ドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテドウシテ






933: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:53:21.64 ID:/ZpwRJzhO
その場を必死で逃げた。きっと、自分も殺される。そう感じたから。

そして、思った。

なんでだ!?なんでなんだ!?どうして殺し合いをするんだ!!何故躊躇いもなく!!
お前らは友人じゃなかったのか!?どうして!!
お前らのせいで、沢山死んだ!!関係ない魔族や龍族も死んだんだ!!
私の父は死んだ!!私の母も死んだ!!魔族と子をなしたから!龍族と子をなしたから!同族に殺されたんだ!!

憧れたお前らは何処へいった!?
私を助けてくれたお前らは何処へいった!?

私はいくら頑張ってもお前らに追いつかなかったのに、お前らはなんで私の届かない所へいってしまう!?

934: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 22:55:26.91 ID:/ZpwRJzhO
なんでだ!?

憎い……憎い!!憎い憎い憎い憎い憎い!!!!!

妬ましい……妬ましい!!妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい!!!!!

許さない!!絶対に許さない!!!魔王サタン!!龍帝キバ!!!

それは自分に流れる龍の血……憤怒の化身の影響なのか、わからない。

だが、それは反転した。

憧れが妬みと憎しみに変わる。

935: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 23:00:08.56 ID:/ZpwRJzhO
ある悪魔の話をしよう。

そこから復讐の始まりだった。

その日から悪魔は更に努力した復讐の為に、だが魔王は更に上だ。
妬む。

自分では彼の部下には勝てない。
妬む。

まるで龍族との鍛錬した事を忘れ、幸せそうに暮らす魔族たち。
妬む。

自分達が勝者だと生き残りの龍族達を殺し勝者の余韻を味わう魔族たち。
妬む。

力を身につける為に、先代のレヴィアタンを見つけた。

嫉妬の証の能力は、今まで見た聞いた感じた魔術や攻撃などへの絶対防御。

だが、対策はある。それはその場で嫉妬の悪魔とその先代が知らないモノをその場で編み出し、一撃で仕留める。

その悪魔は勝利した。だが最後まで足掻いた先代のレヴィアタンの力が妬ましかった。

嫉妬の証はもっとも嫉妬に囚われてるこの悪魔を選んだのは必然だった。

936: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 23:01:04.39 ID:/ZpwRJzhO
そして、時は流れ、魔王の娘ブリュンヒルデが人間界へいった。

自分も人間界へいき、彼女が通う中学の教師の身体をうばった。

幸せそうで、才能のある彼女を妬む。妬む。妬む。

龍帝の娘が生きてたのが、わかった。
もっとも憎く憧れて妬んだ奴の娘。幸せそうで妬む。妬む。妬む。

この二人が魔族と龍族の希望だと思うと更に嫉妬が膨れ上がる。

937: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 23:02:10.46 ID:/ZpwRJzhO







ある悪魔の話をしよう。







938: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 23:03:47.99 ID:/ZpwRJzhO
-----------

川島瑞樹---レヴィアタンは眠りから覚めた。

懐かしい夢を見た。私がまだ幸せだったころ。

そして、私の妬みと憎しみの復讐の始まり。

嫉妬に呑まれ歪んでいく、自分がわかるわ。

だけど、私は止まらない。

939: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 23:05:58.98 ID:/ZpwRJzhO
テレビを付けるとニュースがやってる。
それは、あの男の部下が討伐対象になったことだ。

恐らく、マンモンとルシファーの仕業だろう……アイツらも妬ましい。お陰で魔王の娘を殺すのも遅れるだろう。
きっと警戒して魔王の娘の護衛が誰か来るだろう……余計なことをして…

嫉妬の蛇龍も、ヒーローにより殆ど破壊されてしまった。
まだ少し小さくなってしまったが、生き残ってる。コレはまだ利用できる。

瑞樹「わかるわ。まだ時期じゃないのね」

私自身には動けるだけの魔力しかいれてない。その代わり私が呼ぶ蛇達に私の魔力を分担させている。そうすれば、キバを襲撃したよようにできるわ。

940: ◆I2ss/4dt7o 2013/06/30(日) 23:07:03.23 ID:/ZpwRJzhO
それに……

瑞樹「ふふふ。貴女はまだ若いわよ≪瑞樹≫」

部屋の隅にあいてある宝石が光る。そこには少女の魂が泣きそうな顔でいた。

≪本物の川島瑞樹の魂≫だ。

魂を肉体に一つに止めて、魔力を人間並の最低限にしてるから、人間だと錯覚させていたのだ。

それに彼女は万が一ばれても、負けないように≪嫉妬の証≫を呼び出せる。

瑞樹「ふふふ。安心して、ちゃんと教師はやってあげるから」

今日もレヴィアタンはいつも通りに先生をやる。

魔王の娘と龍帝の娘の隙を伺いながら。


終わり

954: ◆kaGYBvZifE 2013/07/01(月) 02:09:08.34 ID:xyiBXDNU0
小梅ちゃん投下

なんか色々雑だけど龍崎博士、お許しください!

955: ◆kaGYBvZifE 2013/07/01(月) 02:10:26.99 ID:xyiBXDNU0
夕日が高層ビルの後ろに隠れると、あっという間に夜の闇が街を包みこんでいく。
無機質な街灯や猥雑なネオンの光が混然一体となって、街の夜を無遠慮に飾りつける。
行き交う人の流れは昼夜を問わず絶えることがなく、車のエンジン音やクラクションが耳障りな
BGMとなって、どこからか吹き寄せる風と共に街をざわめかせた。

経済特区ネオトーキョーの夜は、本来訪れるべき暗闇と静寂を恐れるかのように雑然としている。

十年前、東京湾を埋め立てて建設されたこの都市は、企業に対する各種優遇措置によって
進出と投資を促す一方、大学や民間の研究機関によってサイバー技術の研究が行われてきた。
都市機能のすべてがコンピュータで管理されネットワーク接続されており、その高い利便性も手伝って
外部から多くの人間が移住し、ネオトーキョーは急速な発展を遂げた。

ネオトーキョーで開発された高性能な義肢や人工臓器は内外の注目を集めていたが、同時に人体実験や
人身売買、強制労働などの黒い噂が絶えず巷間に流布してもいた。

多くは噂の域を出ず、真面目に検証しようとしたところで一笑に付される類のものだったが、
ネオトーキョーにおける若年層の行方不明者が他の同規模の都市と比べて高いとする統計データも
また存在しており、その手の陰謀論の一定の根拠となりえた。

そして、ネオトーキョーを事実上支配している企業が『ルナール・エンタープライズ』である。

ネオトーキョー成立間もなくこの都市に端を発した小さな家電メーカーはここ数年で急成長し、
いまや東アジアにおける各種サイバネティックス製品の受注率トップを占める巨大企業にまでなった。
一介の家電メーカーがサイバー産業の雄に成りあがった背景にはあの櫻井財閥の影があったと
囁かれているが、真偽のほどは定かではない。

956: ◆kaGYBvZifE 2013/07/01(月) 02:11:21.92 ID:xyiBXDNU0
そのルナール社もネオトーキョーの支配者たるの例に漏れず、噂の火種に事欠かない企業だったが、
噂の質においては他の企業と一線を画していた。

曰く、ルナール社のCEOが近年魔術に傾倒し、悪魔を召喚しようとしている。
曰く、既に悪魔は召喚されていて、ルナール社の私兵として使役されている。
曰く、ルナール社は魔界とのコネクションを得ていて、悪魔と交易をしている。

というように、かの企業の周辺には常に『悪魔』の名がついて回った。
ルナール社傘下の子会社においても、午前0時に不気味な映像が流れる映画館であるとか、
そうしたオカルトじみた風聞がついて回っていた。

先進科学の申し子であるサイバネティックスを扱う企業に『悪魔』の名は実にミスマッチだが、
中小零細の家電メーカーにすぎなかったルナール社が急成長したのはまさに悪魔との取引の結果では
ないかというオカルト好きの意見もあり、冗談半分に『悪魔の企業』と呼ばれるに至っている。

しかし、『異変』以来の世界の在りように、人々は悪魔の噂を思い出していた。
世界中で現れる異能。地上に訪れる異邦人達。
ヒーロー、侵略者……そして悪魔。
まさか本当に悪魔は存在していたのか。ならば、ルナール社は本当に……?

誰も本気で信じようとはしないが、漠然とした不安と形容しがたい恐怖を心のうちに抱えた。

その噂についてルナール社はノーコメントを貫いたが、そのきっぱりとした否定をしない姿勢も、
噂話に付き合って道化を演じて見せる度量の大きさというよりは、本当に悪魔と通じているのではないか
という不気味さを演出するのだった。

957: ◆kaGYBvZifE 2013/07/01(月) 02:12:36.74 ID:xyiBXDNU0
――――――――――

少女は狭い路地裏に小さな身体を滑り込ませ、入り組んだ路地を迷うことなく駆けていく。

横向きにならないと通れない隙間を通り、突き当たりに吹き溜まるゴミ箱を足場にして
フェンスを乗り越え、誰もいないバスケットコートに降り立つ。突然の闖入者に驚いた野良猫が
慌てて飛び退いた。

少女はコートの真ん中で立ち止まって荒い息を整える。病的なまでに白い肌を紅潮させ、手首が隠れても
まだ余るほど長いパーカーの袖で額の汗を拭った。
ネオトーキョーに吹き付ける生ぬるい風が、汗まみれの身体を撫ぜた。

「に、逃げ切った……かな……?」

少女はこの区画に一度ならず訪れているので、迷わず逃げるルートを定めることができた。
その上、こういう場所は違法改造のサイバネ義肢を取りつけた不良や、モヒカン頭のならず者の溜まり場に
なっていてもおかしくないところだが、今日は運がいい方だ。
得体の知れない連中に追いかけられているのを無視すれば、の話ではあるが。

ようやく息がつけるようになった頃、早く家に帰ろうと足を踏み出すと、足元に黒光りする短剣が
突き刺さった。

面食らった少女が顔を上げると、コートを囲むフェンスの支柱の上にふたつの影があった。

958: ◆kaGYBvZifE 2013/07/01(月) 02:13:04.62 ID:xyiBXDNU0
ひとつは、漆黒の装束に身を包み、口元を仮面で隠した大柄な人間。

もうひとつは、全身を銀色の鱗で覆った、トカゲともイグアナともつかない六本足の爬虫類。

彼らは獲物を追い回す猟犬のように、決して少女を見失うことなく、執拗に、そして着実に距離を詰めていた。
まるで疲れ知らずの機械のようでもあり、事実、少女を始末するという指令のみを遂行するマシーンだった。

「もう逃げられんぞ。貴様は袋の鼠だ」

人工声帯から発せられる声が、作り物の違和感を伴って少女の鼓膜を震わせる。

「我らが『儀式』を見てしまったのが運の尽き。ここで死ぬがいい」

男が左腕に装着した端末に触れると、六本足の怪物が甲高い鳴き声を上げてフェンスから降りる。

「う……!」

怪物は、大型犬ほどもある威容に思わず後退りする少女を、巧妙にコートの隅まで追いつめていく。
高い知能ゆえか、男が操作する端末で細かい指示がなされているのか、少女にはわからなかったが、
自分が危機に瀕していることは嫌でも理解できた。

大きな口に生え揃った鋭い牙を光らせ、怪物がじりじりと迫る。

959: ◆kaGYBvZifE 2013/07/01(月) 02:14:19.61 ID:xyiBXDNU0
「やれ、ニーズホッグ」

男の指が端末の画面をひと撫でし、最後の指令を下す。
指令を受けた怪物――ニーズホッグは、少女に飛びかかった。

(……っ!!)

その瞬間、少女の内奥に『何か』が脈動した。
自分の中から何かが抜け出る感覚。ぐんと引っ張られるような圧力を感じ、寒気にも似た違和感が
全身の肌を粟立たせる。

心身を凍らせるほど冷たく、自分も周囲も焼き尽くすほど熱く激しい衝動。
怒り、憎悪、恐怖……言葉はあっても、いずれにカテゴライズすべきか判然としない。
ただ、自己の生命を守るためだけに、『それ』は現れた。

ニーズホッグの牙が少女の肌を食い千切ろうと迫った刹那――彼女から抜け出た『それ』の拳が
怪物の横っ面を強かに打ち据え、折れ砕けた牙の破片を撒き散らしながらニーズホッグが吹き飛ぶ。

少女は一瞬の出来事を茫然と見送って、『それ』の後ろ姿を注視する。

「あ、あの子……また……!」

少女と同じくらいの身長の、人型の『それ』は、少女を守るように立ちはだかった。

その姿を見て、男も顔色を変える。

「貴様ッ……! まさか、『ゴースト』を扱えるというのか!?」

960: ◆kaGYBvZifE 2013/07/01(月) 02:15:31.99 ID:xyiBXDNU0
忌々しげに叫ぶ男は、すぐさま端末に触れて操作を行う。
すると吹き飛ばされてフェンスに叩きつけられたニーズホッグの身体から銀色の燐光が漏れ出し、
やがてその身体が光の粒子と化して虚空へ消えていく。
ニーズホッグが完全に消え失せたことを確認すると、男はひりつく悪意を滲ませた目を少女に向ける。

「まさか『ゴースト』を持った奴だとはな……ここは引いた方が身のためと見た。
 覚えていろッ! 小娘ッ!」

そう言い残し、男はフェンスから隣のアパートの屋根へと飛び移り、瞬く間にネオトーキョーの
夜の中へと飛び去って行った。

少女が危機が去ったことを知覚すると、少女のそばに立ちつくしていたもの――『ゴースト』も
また消え失せ、少女の内奥へと戻って行った。
欠けていた何かが満たされる感覚に、少女は安堵感を覚えてその場にへたり込んだ。

とはいえ、危険がなくなったわけではない。
当分はあの連中に狙われるであろうことは疑い得ず、また戦わなくてはならないかもしれないのだ。
少女の内奥にいる『あの子』は、少女を守ってはくれるが……

「ど、どうして……こんなことに、なったん……だろ……」

趣味の心霊スポット巡りの一環として廃工場に忍び込んだのが、すべての元凶だった。
工場の奥で怪しい黒装束の連中が『儀式』を行い、先程のような怪物を生み出し――いや、
召喚しているところを見てしまったのだ。
急いでその場から逃げ出したが、忍者のような男に追い詰められ、その結果『あの子』を
外に出してしまった。

ひょっとしたらもうこの街にはいられないかもしれない。
家族にも危険が及ぶかも――どうしたらいい? どうしたら……。

繰り返し呟く自分の声が頭の中に染み入り、出口のない思考をますます混濁させていく。

しかし、『あの子』は何も応えてはくれない。
どうやら彼女は、少女――白坂小梅の苦悩を肩代わりしてはくれそうになかった。

961: ◆kaGYBvZifE 2013/07/01(月) 02:20:37.85 ID:xyiBXDNU0
白坂小梅
13歳
ネオトーキョー在住。ゴーストを宿した少女。
心霊スポット巡りをしていたところ、怪しい集団の悪魔召喚の儀式を目撃してしまい追われる身に。
自分のゴーストを『あの子』と呼んでいる。

あの子
白坂小梅のゴースト。どっちかというと近距離パワー型。

【ゴースト】
人間の心の奥底に仕舞い込まれた特殊能力が具現化したもの。
多くの人はその存在に気付かずにいる。
小梅はゴーストの存在を自覚してはいるものの制御するには至っていない。

962: ◆kaGYBvZifE 2013/07/01(月) 02:27:30.65 ID:xyiBXDNU0
経済特区ネオトーキョー
東京湾を埋め立てて建設された都市。
ネオトーキョーに進出した企業や研究機関によってサイバー技術が目覚ましい発展を遂げたが
その栄光の陰には常に黒い噂がついて回っている。
生体コネクターをインプラントしたハッカーがいたり違法サイバネ義肢を装着したモヒカンの野盗がいたりする。

ルナール・エンタープライズ
ネオトーキョーを支配する巨大企業。
ここ数年の間に急成長し繁栄を極めているが、その陰には櫻井財閥の存在があるという。
悪魔召喚を研究していると噂されており、私兵としてサイボーグ忍者トルーパー軍団がいるとかいないとか。
ちなみに「ルナール」はフランス語で「狐」の意。



ちょっくらオカルティックでサイバーパンクでニンジャな舞台を設定してみましたけどどうでしょう
超能力者とかもいるかもわかりません

 
978: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/07/01(月) 14:15:03.63 ID:07ERDFmNo
G3かな子編~菜帆さんと遭遇~
はーじまーるよー

979: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/07/01(月) 14:15:49.34 ID:07ERDFmNo
 オーブンを開けると熱気と一緒に甘い香りが立ち上る。
 カップケーキを取り出すと、竹串を刺して中まで焼けているのを確かめる。
 一つ味見に齧りつく――うん、美味しい!

 こんな体になってからも、お菓子作りはやめてない。
 むしろ前より頻繁になったくらい。
 以前は体重を気にしたりもしたけど、今はお菓子のほうがずっと大事。

 作ったお菓子は二人にも振舞う。
 好みが少し違うから、文句が挙がることもあるけれど、幸せな時間は三人で共有したいから。
 でも……

980: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/07/01(月) 14:16:23.25 ID:07ERDFmNo
法子「ぎ も゛ぢ わ゛る゛い゛……」

 今日の法子ちゃんはずっとこんな感じ。
 天気が良かったから公園でシートを敷いて待ってたんだけど、やってきた法子ちゃんを見て無理やり帰そうかとも思ったくらい。
 大丈夫と言い張って聞かないからそのまま居させてるけど、さっきからロクに食べてない。

 せっかくドーナツも作ってきたのに手を付けようともしないなんて、かなり深刻な事態かもしれない。
 みちるちゃんも、食べながらだけど心配してる。
 そうして法子ちゃんに注意が向いていたとき、不意に後ろから伸びてきた手がドーナツを掴む。

981: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/07/01(月) 14:16:52.96 ID:07ERDFmNo
??「食べないなら貰ってもいいですか~」

 声のした方を見ると……同い年くらいかな? なんかちょっと色っぽい人が返事も待たずにドーナツをかじってた。

??「ん~っ、美味しい! これ手作りですか? 上手なんですね~」

??『ちょっと菜帆ちゃん? 良いって言ってくれるまで待たないと~』

 その人を窘める誰かの声、それを聞いたとたん思わず座りなおしてしまった。
 なんでかは良く分からないけど、そうしなければならないと感じた。

982: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/07/01(月) 14:17:21.61 ID:07ERDFmNo
法子「う゛ぇ゛っ」

 法子ちゃんが吐いた。なんでこのタイミングで……
 ゴトッと音をたててそれは地面に落ち……え?
 法子ちゃんが吐いたのは七色の、多分カースの核だった。何これ?

法子「あー、吐いたらすっきりした」

 法子ちゃんが回復したのはいいんだけど、コレどうするの?
 手をこまねいていると、さっきから居た人が核を拾って――齧った。

??「……硬くて噛めない~」

法子「人が吐いたもの食べようとしないで!?」

 顔を真っ赤にして怒る法子ちゃんかわいい、じゃなくて。
 ああもう何が何だか。

983: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/07/01(月) 14:17:50.96 ID:07ERDFmNo
法子「って、誰?」

 そういえば知らない人だった。

菜帆「私? 私は海老原菜帆っていうの~」

ベル『そして私はベルゼブブ。暴食を司る悪魔よ~』

 あ、悪魔!?
 私たちは竦み上がってしまう。

菜帆「あー、ベルちゃんったら怖がらせちゃって。いけないんだ~」

ベル『別にそんなつもり無かったのに~』

 なんか凹んでる。
 そんな様子を見てると怖がったのが馬鹿みたいに思えて、私は笑っちゃった。

ベル『あっひどいー、笑わないでよ~』

 こうして良く分からない流れで打ち解けた私たちは、四人(五人?)でお菓子を食べた。

984: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/07/01(月) 14:18:18.15 ID:07ERDFmNo






菜帆「今日はごちそうさま~」

ベル『ごちそうさま~』

 菜帆さんたちは食べ終えるとすぐに居なくなっちゃって、私たちは三人で片づけをする。

みちる「そういえばこの核? どうする?」

法子「その辺に捨てちゃってもいいんじゃないかな」

かな子「何か使い道が出てくるかも知れないから、取っておかない?」

みちる「じゃあ任せた」

かな子「えっ」

法子「あたしも、吐いたもの持ってるのはイヤかな」

かな子「あっ」

 ……言いだしっぺの法則って、あるよね。

つづく

985: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/07/01(月) 14:18:47.89 ID:07ERDFmNo
??「原罪とは、要するに『人が知恵を持った罪』ですよねぇ。

   ――ねぇ、王子様?

   彼女が生んだ原罪は、一体『誰』が知恵を持った罪なんでしょうねぇ。

   ……むふふ♪」

986: ◆Nb6gZWlAdvRp 2013/07/01(月) 14:20:07.48 ID:07ERDFmNo
よからぬフラグを建てつつ投下終了

なんか菜帆さんたちが必要以上にのんびりしちゃった感