【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」 前編

501: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/28(土) 23:32:29.57 ID:8e/6w9oAO
酷いのが出来上がった……没にしたやつの方がマシだったかも……

・大鳳『チョコレートがあったから食べてみた』、投下します

駆逐艦三人を生け贄に召喚されたのはただの酔っ払いです

引用元: ・【艦これ】大鳳「出入り自由な鎮守府」 



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502: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/28(土) 23:33:04.14 ID:8e/6w9oAO
――――食堂。

「あら? コレは……」

 鎮守府の皆で仲良く食べるようにと設けられた、お菓子やティーパックなどの共有スペース。大鳳も良く持ち寄って補充しており、今日も幾つかのパーティーパックを補充しようとやって来たところだ。
 そこに幾つかのギフト用らしきお菓子の箱が、封を切られた状態で置かれているのを彼女は見つける。“お土産です”と綺麗な字で書いた紙が、上には乗せてあった。

「また赤城が何処かへ行っていたのね……あの人、ほとんど鎮守府に居ないんじゃないかしら」

 月に一度の監査日と、秘書艦日。この二つの時以外は大抵鎮守府を抜け出しており、帰って来る度に加賀からアイアンクローを受けているのを、大鳳も良く目にしている。

(ちょうど良かったわ。甘いものが欲しかったし、このチョコを一つ貰おうかしら)




 ――注意、この商品にはアルコールが含まれている為、お酒に弱い方はご遠慮下さい。

「――ヒック」

503: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/28(土) 23:33:33.71 ID:8e/6w9oAO
――――提督執務室。

「広島焼き美味いな」

「そう言ってもらえるとぶち嬉しいんじゃ」

「提督! 非常事態よ!」

 この日の秘書艦は浦風、当然彼女か加賀以外は暗黙の了解で近付かない。しかし、それにも関わらず、飛鷹は執務室へと息を切らせて飛び込んだ。

「どうした、そんなに息を切らせて」

「飛鷹さん、非常事態って何がじゃ?」

「浦風も居るならちょうどいいわ、手伝って!」




「大鳳が酔っ払って手が付けられないの!」

504: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/28(土) 23:36:44.85 ID:8e/6w9oAO
――――鎮守府内、大広間。

「如月と弥生を返すっぴょん!」

「天津風は私と遊ぶんだから離してよー!」

「ふふっ、卯月と島風も後でいーっぱい可愛がってあげるわね」

 声を荒げる二人。視線の先には如月・弥生・天津風を両腕で抱き締める大鳳の姿。その顔は、熟れたトマトのように真っ赤だ。

「髪が痛んじゃうからあまりキツく抱き締めないでよ、もうっ!」

「何か、今日の大鳳さん、怖い……」

「島風、離れなさい! 今日のこの人何か危ないわっ!」

 抵抗する三人の力が弱いのか、今の大鳳の力が強いのか、拘束は一向に解けない。何時もならばこんな真似は決してしないが、今日の彼女は正気を完全に失ってしまっていた。

「姉さん!」

「大鳳!」

「あら、提督に浦風、ごきげんよう。こっちに来て一緒に楽しみましょ」

「な、何なんじゃ……?」

「飛鷹、どういうことか説明してくれ」

「彼女、物凄く酔っ払いやすくて、何ていうかこう、理性が完全にぶっ飛んじゃうのよ……」

 以前に自分が受けた仕打ちを思い出し、飛鷹は顔を青ざめさせる。その一件以来大鳳を酒から遠ざけていたのだが、チョコレートまでは彼女もチェックしていなかった。

「で、あの状態か……」

「如月の髪の毛、艶々してて触り心地いいわねー。肌も手入れされてて気持ち良いわ」

「ちょ、ちょっとあんまり触らないで下さる?」

「弥生も可愛いわ」

「こしょばさ、ないでっ、下さい……」

「うふふふふっ」

「何時もの貴女は優しくて好きだけど、今の貴女は大っ嫌いよ」

「そういう事を言う子はお仕置きね」

「きゃっ!? お腹撫でないで!」

「如月も弥生も嫌がってるぴょん! 離さないとうーちゃん怒るぴょん!」

「天津風は私の友達なんだから返してよー!」

「あ……あんなん姉さんやない……」

 頼りになる優しいお姉さんというイメージを強く持っていただけにショックが大きく、浦風は涙目で大鳳を見つめる。酒のせいとはいえ、今の彼女の行動は行き過ぎていた。

「全力の大鳳を抑えるとなるとかなりキツいな……そういえば、長門と天龍は来てないのか?」

「コテンパンにやられて、あそこで文月と暁達に慰められてるわよ」

505: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/28(土) 23:38:33.97 ID:8e/6w9oAO
「あの二人が駆逐艦娘守ろうとして負けるって大概だな……。加賀は今日赤城を追いかけるって外出してるし、大和と武蔵は?」

「二日酔いで部屋でぶっ倒れてるらしいぴょん」

「何やってんだよアイツ等……利根は?」

「今動いたら姉としての威厳が保てなくなるって断られたよ、酷いよね!」

(筑摩がまた張り切って作ったのか……)

「言っとくけど、木曾も大井に追い掛けられてて姿隠しちゃってるわよ。龍田も風邪で寝込んでるらしいし」

 飛鷹が執務室に走ってきたのは、他に頼る相手が尽きたからだった。島風がまだ残っているが、暴走大鳳に餌を与えるようなモノで、救出には向いていない。
 コレで万事休すかと思われたが、切り札がまだ彼等には残っていた。

「姉さん! 何やっとるんじゃ!」

「浦風、貴女もこっちに来て私と楽しみましょうよ」

「嫌じゃ! みんなに酷い事しよるようなそがぁな姉さん、大っ嫌いじゃ!」

「――うらかぜが、わたしを、キライ?」

 大鳳の動きが止まる。一番自分になついており、姉さんとまで呼んでくれている浦風に嫌いと言われたことが、吹き飛んでいた理性を呼び起こす。

「そうじゃ! 嫌いじゃ!」「嫌われる? 浦風に?」

「嫌いじゃ嫌いじゃ大っ嫌いじゃ!」

「浦風、ストップ! ストーップ!」

 提督に宥められ、浦風は気持ちを徐々に落ち着けていく。
 その一方で、大鳳は余程ショックだったのか既に拘束を解いており、三人は卯月と島風と共に離脱していた。

「浦風に、嫌われた……ふふっ、うふふふふ……うわあぁぁぁぁぁん!」

「今度は子供みたいに泣き出しちまったか……」

 床にペタンと座り込み、大鳳は大声で泣き始める。流石にその姿を見て責める者はおらず、提督も事態を収拾する為に浦風の背中を軽く叩いて前へと押し出す。

「浦風、慰めてやれ。さっきのは本心じゃないだろ?」

「……うん。――姉さん、うちはいつもの姉さんが大好きなんじゃ。だから、ほんに嫌っとるんやないし、泣かんでえぇんよ」

「……ホントに?」

「うちのこと見付けてくれよった時から、うちは姉さんが大好きじゃ」

「……うん、私も浦風大好きよ」

「完全に落ち着いたみたいだな」

「今度からあの子が酔ったら浦風にお願いするわ」

「浦風が危ない気もするがな……」




――――私、昨日何してたの……?

 ――――知らん方がえぇこともあるよ、姉さん。

514: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 10:40:33.28 ID:vIlG+LNAO
・夕立『最高に素敵なパーティーがしたいっぽい!』、投下します

駆逐艦は一応全員未成年扱いってことで

515: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 10:42:06.22 ID:vIlG+LNAO
――――提督執務室。

「提督さん、夕立、お願いがあるっぽい」

「叶えられる範囲でならいいぞ、言ってみろ」

「私、皆と素敵なパーティーがしたいっぽい!」

「パーティー? 料理とかを大量に作ってか?」

「うん、たまにはみんなで集まって楽しいことしましょ」

「パーティー、か……」

(食事は鳳翔と間宮と料理得意な奴に頼めば量は揃えられる。飲み物も酒を含めて用意出来ん事もないし、事前に言っておけばスケジュールも何とかなるな……)

「――よし、いいぞ、最高のパーティーをしようじゃないか」




 ――最高に素敵なパーティーが始まるっぽい?

516: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 10:43:31.02 ID:vIlG+LNAO
――――鎮守府内、大ホール。

 普段は特に使われる事もなく、一時的に荷物を置くのに使われていた場所。だが、今はしっかりと本来の用途として使われていた。
 きらびやかな装飾と、所狭しと並べられた料理の数々。それらを見つめる夕立の表情は、実に嬉しそうだ。


「提督さん、ホントにホントに素敵っぽい!」

(まさか、今日のうちに準備するとはな……)

 夕立の話を聞いてすぐ、提督は内容を加賀へと伝えていた。準備や手間を考えると、なるべく早い方が良いと思ったからだ。
 だが、まさかその日の昼のうちに全ての段取りを整え、夜にパーティーを開く程迅速に行動するとは、流石に彼も考えてはいなかった。

「夕立の提案に皆乗り気でしたので、手伝って頂きました。夕立、私も貴女の提案は凄く良いと思うわ」

「そう言ってもらえると、夕立とっても嬉しいっぽい!」

「全員の予定とかはどうしたんだ?」

「そんなものはどうとでもなります。ここの艦娘達は全員、楽しい事の為ならば協力を惜しみませんから」

 手の空いていた者は全員、パーティー会場の準備と料理の用意。そして、すぐには手が空きそうに無い者の手伝いへと走り回って協力していた。
 まだ出撃や遠征をしていた頃、一部採算度外視で普段交流の無さそうな艦娘同士を組ませ、提督は遠征へと送り出していた。それが、こんな場面で功を奏する。

「夕立、早く開始の音頭を取ってよ。皆、今か今かと待ち望んでいるよ」

「私は何もしてないっぽい?」

「言い出したのはお前だろ」

「んー、分かったっぽい!」

 時雨と提督に促され、夕立はパーティー会場の前方に置いてあるマイクスタンドへと走っていく。全員の視線が彼女へと集まり、グラスを手にその瞬間を待つ。

『皆! 料理はちゃんとあるっぽい!?』

「あるので早くお願いします!」

「赤城さん、もうすぐですから我慢して下さい」

『飲み物は持ったっぽい!?』

「持ったぞ」

「持ってるわよ」

「那智さんも千歳お姉も徳利で乾杯はダメだって!」





『じゃあ、最ッッッ高に素敵なパーティーしましょ!』

517: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 10:45:14.97 ID:vIlG+LNAO
 開始と同時、料理と飲み物に一斉に手が付けられ、それぞれ好き勝手に盛り上がり始める。
 料理を食べる者、互いの料理のレシピを交換する者、酒を酌み交わす者、ビンゴゲームで盛り上がる者、芸を披露する者、思い出話に花を咲かせる者。全員に共通しているのは、“楽しんでいる”ということだけだ。

「期待には沿えたか?……って言っても、俺は何もしてないんだがな」

「提督さんが居るから、皆今を目一杯楽しめるっぽい。夕立、提督さんのことだーい好きっ!」

「俺も、常に明るくて元気な夕立が大好きだぞ」

 笑い声が響き合うパーティー会場を眺めながら、二人は飲み物を片手に手を繋ぎ合う。そして、どちらからともなく歩き出し、会場を回り始めた。

「夕立、私が作ったボルシチを食べてくれ」

「二人とも、自動蕎麦打ち機で蕎麦を作ってみたから、食べて後で感想聞かせてね?」

「やっぱりパーティーならカレーだよねー」

「ちょっと鈴谷! わたくしの用意した神戸牛カレーに使いましたの!?」

「ほら、夕立もじゃんじゃん飲め飲めー!」

「ちょっと隼鷹! 駆逐艦の子達にお酒はまだ早いわ!」

「そ、そんなにいっぱいは夕立食べれないっぽいー!」

「向こうで何人か動きがおかしい奴が……ひょっとして酒飲ませたのか!?」

「い、いちにんまえろれでーならワインぐらい飲めるんらから!」

「大潮! おっきな魚雷、撃っちまーす!」

「連装砲ちゃんがいっぱい見えるよ、天津風!」

「そうね、島風も三人居るわね」

「誰かそいつ等が酒飲むの止めろ!」

「ゆーうーだーち!」

「し、時雨? 何か顔が赤いっぽい?」

「このジュース美味しいから、夕立も飲みなよ」

「何か凄く甘い匂いがするっぽい」

「果物が入ってるみたいだね。甘くて美味しいから、さぁ、飲んで」

「ちょっと待て時雨、それ果実酒かなんかだろ! 夕立飲むな!」

「はいはーい、提督にはコ・レ」

「村雨まで酔ってんのか!? 一升瓶なんからっぱ飲み出来るかっ!」

「てやんでぇーい! あたいの酒が飲めねぇってのか!?」

「涼風も酔ってるっぽい?」

「だぁーっ! もう収拾がつかん!」




 賑やかな宴は、日付が変わる間際まで続いた。

518: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 10:45:43.40 ID:vIlG+LNAO
――――提督私室。

「すっごく楽しかったっぽい!」

「俺は死ぬほど疲れた……」

「えへへ、夕立も実はかなり眠いっぽい」

 ベッドに仰向けで体を投げ出した提督の上に、夕立は覆い被さる。暖かな温もりが疲れた身体には心地好く、そのまま頭を撫でているうち、彼は意識を手放した。

「――寝ちゃったっぽい?」

 撫でる手が止まり、寝たのを確認すると、夕立は提督の顔へと自分の顔を近付けていく。

「また皆で、素敵なパーティーしましょ。お休みなさい、提督さん」

 ――ちゅ。

 唇が触れる程度のキス。それで満足し、ギュッと身体にしがみつきながら、夕立もまた深い眠りへと落ちていく。
 彼女の最高に素敵な1日は、こうして終わりを迎えるのだった。




――――提督さん、また次もパーティーがしたいっぽい!

 ――――ま、毎回はちょっと無理だからな……?

526: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 15:42:20.41 ID:vIlG+LNAO
・那珂『皆ー! 那珂ちゃんだよー!』、投下します


527: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 15:43:23.96 ID:vIlG+LNAO
――――ライブステージ。

「皆ー! 今日も那珂ちゃんのライブに来てくれてありがとー!」

 ――那珂ちゃーん! 今日も可愛いよー!

 ――頑張ってチケット取ったよー!

 ――に! よん! じゅういち!

「今那珂ちゃん解体した人はー主砲で撃っちゃうよー?」

 ――俺だよー! 撃ってー!

「じゃあ撃って欲しい人が居るみたいだからー……一曲目、『貴方の機関部を狙い撃ち』、いっくよー!」

 爆破演出とサイリウムと照明の光の中、ライブが始まった。
 那珂は歌いながらダンスやステップでステージ上を華麗に舞い、時折改造した主砲や副砲で観客席へと紙吹雪や水を発射する。
 そのパフォーマンスの多彩さと、最後まで息切れもせず全力で動けるタフさが、彼女の持ち味だった。

「まだまだ声出るよねー!」

 ――おー!

「那珂ちゃんはー?」

 ――皆のアイドルー!

「海は那珂ちゃんのー?」

 ――ライブステージ!

「二曲目、『艦隊のアイドル』、いっくよー!」

528: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 15:44:37.27 ID:vIlG+LNAO
 ――ライブ中盤。

「皆、疲れてきたー?」

 ――まだまだいけるよー!

「じゃあまだまだいっくよー!」

 ――おー!

「――ちょっと待った!」

 会場に響き渡る、那珂ではない誰かの声。すぐに照明が、その声の主を照らし出す。
 ステージを支える柱の上、夜風にマフラーをたなびかせ、彼女はそこに悠々と立っていた。

「夜戦忍者、参上!」

「現れたね夜戦忍者! 那珂ちゃんのライブは邪魔させないんだから!」

「やれるものならやってみなよ!」

 ――アレ、川内ちゃんか?

 ――あの子、可愛いしカッコイイ!

 演出だと即座に理解し、観客席も大いに沸き立つ。こういった突発的なサプライズイベントがあるのも、彼女のライブが人気な理由の一つだ。

「ていっ! せやぁっ!」

「きゃあっ!?」

 柱の上や機材の上を飛び回りながら、川内はクナイらしきものを放つ。それに合わせて、ステージの至るところに仕込んだ火薬により、爆発が起こっていく。
 演出とは分かっていても、その臨場感はかなりのものだ。

「那珂ちゃんは、絶対に、ライブを成功させるんだからぁ!」

「コレで終わりだよ!」

 ステージの骨組みを地面に見立てて蹴り、川内は中央に居る那珂の元へと突撃した。
 全員が見守る中で二人の姿が交差し、再び巻き起こる大爆発。煙で観客席からステージが一度見えなくなり、観客はどうなってしまったのかと固唾を飲んで見守る。
 ――そして、煙が晴れていくと同時、再び曲が流れ始める。

「戦わなくても敵とだって分かり合える。だって那珂ちゃんには――この、笑顔があるから! 『無敵のスマイル』、いっちゃうよー!」

 ――おー!

 再び姿を見せたステージ。そこには、衣装チェンジを済ませた那珂と、その背後にピッタリと張り付いて立つ川内の姿があった。
 歌い始めると二人は鏡合わせの様に踊り出し、観客を魅了する。間奏ではそれぞれに独自のダンスも見せ、那珂だけでなく川内の名前も歓声に混じり始めていた。
 ――そして、楽しいライブにも終わりの時が近付く。

「次の曲が今日のラストだよー!」

 ――えー?

 ――もっと聞きたーい!

「ありがとー! でも、また必ず皆に歌声を届けるから、最後にこの曲を聞いてね!」




――――『静かな海で、貴方と共に』。

537: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 17:28:36.98 ID:vIlG+LNAO
・瑞鳳『卵焼き作ったよ』、投下します

538: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 17:30:20.17 ID:vIlG+LNAO
――――鎮守府、中庭。

「提督、お弁当作ったから食べてね」

「――瑞鳳、コレ、二人分か?」

「ううん、そっちは提督用で、こっちが私用」

(瑞鳳のは普通の弁当箱で、俺はこの重箱を一人で食えと……?)

「ねぇ、早く開けて食べてくれない?」

「あ、あぁ……」

(まぁうまけりゃ何とか食べられ――)

「おい、瑞鳳」

「なぁに?」

「何だこの黄色一色の弁当は! 他の色はどうした!」

「重箱が黒と赤でしょ」

「側なんかどうでもいいわ! 中身の話だ中身の!」

「二段目と三段目も見てから、そういうことは言ってよね」

「じゃあ見てやる。二段目は――やっぱり黄色いじゃねぇか!」

「ちゃんと中にほうれん草入れたよ?」

「だから、そういう問題じゃ、ない!」

「三段目は大丈夫だから安心して」

「本当だろうな? じゃあその三段目はっと……そうだな、色は増えたな。――錦糸卵かけたご飯ってやっぱりほとんど黄色じゃねえか!」

「だってしょうがなかったのよ、賞味期限切れかけなの忘れてたんだもん……」

「はぁ……まぁお前の卵焼きは甘くて美味いから好きではあるが、流石にこりゃ作りすぎだろ」

「しっかり食べてね」

「分かったよ、食うよ、食えばいいんだろ……」

「じゃあ私も、頂きます」

「――ミートボールにハンバーグが見えるのは、俺の気のせいか?」

「き、気のせいよ? ほら、あーんしたげるから卵焼き食べて、ね?」

「……あーん――うん、美味い」

「でしょ? 卵焼きだけは自信あるんだから」

「何か格納庫に卵焼き詰め込みたくなってきた」

「何でよ!?」

539: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 17:30:46.57 ID:vIlG+LNAO
「いや、なんとなく」

「たまに提督って変なこと言うよね」

「ひたすら卵焼きを食わされる俺の身にもなれ」

「はい、あーん」

「あーん――こうすりゃ俺が納得すると思ってないか?」

「美味しいでしょ?」

「美味い」

「はい、こっちのほうれん草入りも美味しいわよ」

「だからそれで納得すると――」

「あーん」

「あーん――ほうれん草入りもイケるな」

「ちょっと軽くほうれん草に味付けしてあるのよ」

「……納得してないからな?」

「はい、あーん」

「あーん」




――――次は肌色とピンク色のモノが食いたい。

 ――――タラコと明太子マヨネーズ?

――――ふざけてると噛むぞ。

543: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 22:11:02.64 ID:vIlG+LNAO
湯船で頭が少しスッキリしました

・夕張『提督で実験』、投下します

544: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 22:11:29.98 ID:vIlG+LNAO
――――工廠。

(不安だ……)

「提督、準備はいいかしら?」

「良くないけど、いいぞ」

「じゃあスイッチオン!」

 夕張の手により、スイッチがオフからオンへと変えられた。モーターの駆動音のようなモノが提督の耳に届き、確かに起動していることを知らせる。

「夕張、本当に大丈夫なんだよな?」

「大丈夫。だって私が作ったんだもの」

「いや、お前普通に失敗もしてるだろうが」

「細かい事を気にすると老けちゃいますよ?」

「実験で寿命がグンと縮まりそうではあるな」

 夕張の作ったパワードスーツなるものを身にまとい、現在進行形で身の危険をひしひしと感じている提督。ストレスで若干寿命ぐらい縮んでいるかもしれない。

「それでそれで? 着心地はどう? 違和感は無い? このリンゴ持てる? 握り潰せる? 二つに割れる?」

「がっつきすぎだ。着心地は悪くないし、違和感は多少あるが気になる程じゃない。リンゴは――持てる。コレ、握り潰せるのか?」

「出力的には十分可能――な、はず」

「断言しろよ開発者。とりあえずやってみるぞ。――よっ!」

「はうっ!?」

 提督が手に力を入れた瞬間、リンゴは綺麗に手からすっぽ抜けた。そして、見事に夕張の顔面へと直撃する。

「大丈夫か?」

「大丈夫じゃないし痛いに決まってるわ……」

 涙目で訴える夕張の額は、少し赤くなっていた。かなりの勢いで直撃したのがよく分かる。

「滑りが良すぎやしないか、コレ」

「滑り止めのコーティングを後でしておきます」

「――で、早速危ない訳だが、続けるのか?」

「そうねー……ポチっと」

「おい待て夕張、今何を押した? 急に身体が動かなくなったんだが」

「起動実験と動作実験は済んだし……」




――――“操作実験”を試してみても、いいかしら?

545: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/29(日) 22:12:53.06 ID:vIlG+LNAO
 “操作実験”、提督はそんな実験については一言も聞かされていなかった。確かな事は、今夕張の顔が物凄く笑顔ということだけだ。

「説明しろ、手短に」

「私の命令に絶対服従」

「よし、脱ぐ」

「優しく私を抱き締めて」

「脱ーがーせーろー!」

 提督の意思とは関係無く、パワードスーツは命令に従い夕張を抱き締める。問題があるとすれば、“優しく”という部分が命令から完全に抜けているということ。

「くっ……苦し……でも、提督をしっかり感じられて……ちょっと良い気持ち……」

「危ない方向に目覚めるんじゃない! さっさと命令を取り消せ!」

「離、して」

 命令に従い、パワードスーツは夕張を離す。――遠くへと。

「きゃっ!?」

「夕張っ!?」

 工廠に山のように積まれた部品や工具の中へと、凄まじい落下音と破砕音を伴いながら、夕張は吸い込まれていった。いくら大丈夫だとは分かっていても、目の前で重たいものの下敷きになってしまうのを見て、心配しないはずもない。

「夕張、大丈夫かっ!?」

「ちょっと命令認識設定ミスったかなぁ……」

 流石に練度の高さのお陰か、多少服や肌が汚れているものの、特に怪我もしていない夕張が荷物の下から這い出てくる。ずっとパワードスーツの問題点について考えているのか、頭の埃すら払う気配もない。

「夕張、おーい」

「もう少し音声認識の精度と感度を上げれば……」

「話聞けメロン」

「メロンって言わないで!」

「ようやく反応したか」

「私だってメロンとまではいかなくても綺麗な形してるって自分では思って……」

「そういうの今はいいから脱がせろ」

「――キス、してちょうだい」

「お前ちょっとは懲りるって事を覚えろよ! 絶対に頭突きの流れだろコレ!」

「……私とは、嫌?」

 少し瞳を潤ませ、夕張は提督を見つめている。そして、この時になって初めてようやく気付く。

(……動けるようになってる?)




――――キスも実験するのか?

 ――――コレは失敗も成功も無く、きっといつでも良い気持ち……。

551: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 17:56:33.16 ID:miSLO2sAO
・五十鈴+潜水艦s『本気で鬼ごっこ』、投下します

五十鈴は優しいお姉さん、何も問題はない

552: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 17:57:15.46 ID:miSLO2sAO
――――海。

 ツインテールの髪を海面に揺らめかせながら、彼女は海にその身を任せ、空を見上げていた。その口元は、微かに何かを唱えるように動き続けている。

「――99、100。さぁ、あの子達はどこへ行ったのかしら?」

 百を数え終わり、彼女は身体を起こして索敵を開始する。その目は、獲物を狩る獣のそれと似ていた。
 いつまでも負けたままではいられないと、申し込まれた本気の勝負。五十鈴対潜水艦娘で繰り広げられる、鬼ごっこ(狩り)が、今幕を開ける。

553: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 17:57:53.47 ID:miSLO2sAO
~鬼ごっこのルール説明~

・制限時間は五時間。

・艤装は使用禁止(イクのみ魚雷発射禁止という条件で魚雷所持)

・範囲制限は五十鈴の初期待機位置から三キロ(出たら自動的に負け)

・“捕縛”(触れるだけではダメ)されたらアウト、全員が捕縛されたら勝負終了

・負けた方が勝った方の願いを一つ叶える

554: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 17:58:38.90 ID:miSLO2sAO
――――海中。

(ここにずっと隠れてれば見付からないはずよね……)

 イムヤは岩影に潜む選択肢を選ぶ。目立つ髪の色を隠す為、岩に擬態出来る布で身体を隠す念の入れようだ。

(いくら五十鈴さんでもここまですれば見落として――?)

 急に布越しに影が差し込み、大きな魚でも通ったのかとイムヤは顔を上げる。
 ――そして、二つの視線が、バッチリと合わさった。

(……っ!?)

 気付いた時には、全てが遅かった。既に身体に回されようとしていた二つの腕にしっかりと抱き締められ、一人目の犠牲者は静かに勝負から姿を消すのだった。

555: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 17:59:24.19 ID:miSLO2sAO
――――海中、海藻の中。

(ここなら簡単には見付からないでち)

 ゴーヤは生い茂る海藻の中に身を潜め、やり過ごそうと試みる。やはり目立つ髪の色がネックになるが、ちょうど手近にあるモノを利用して、更なるカモフラージュを図った。

(ちょっと海藻がヌメッとして気持ち悪いよぉ……でも、五十鈴さんに勝ちたいでち)

 不快感に堪え、制限時間いっぱい我慢することを、ゴーヤは決意する。

(んー、何かお腹の辺りがくすぐったいでち……)

 腹部に触れている海藻を払い除けようと、ゴーヤは腕を振る。
 ――その腕は、海藻とは思えない肉感のある何かに触れ、振り切れずに腹部の辺りで止まった。

(――海藻巻きのゴーヤは、きっと美味しくないでち……)

 後ろから引き寄せられる感覚に抗うことも出来ぬまま、二人目の犠牲者は身体に巻いた海藻と共に、何処かへと姿を消した。

556: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 18:00:40.04 ID:miSLO2sAO
――――海上。

「うーん、やっぱ泳ぐのって気持ち良いよねー」

 シオイは潜水艦だ。確かに潜水艦だ。だが、彼女は普通にクロールで逃げていた。
 今回は双方とも、艤装を装備しているわけではない。なので、純粋に泳いで逃げるというのも、有効な手段の一つとなっている。

「今回は五十鈴さんに勝ちたいなー。皆もまだ無事だといいんだけど」

「貴女で三人目よ?」

「――えっ?」

 海中から海面へと腕が二本飛び出し、シオイの身体をガッチリと捕らえる。真下から奇襲を受けるという貴重な体験を手土産に、三人目の犠牲者もまた、あっさりと勝負から脱落した。

557: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 18:02:33.76 ID:miSLO2sAO
――――海中。

 四方を見渡せる場所。周囲に障害物も無く、近付くには必ず姿を見せなければいけない位置で、イクは五十鈴を待ち構えていた。

(五十鈴さんの裏を掻くのは無理なの。それなら爆雷で攻撃されない今回は、正々堂々見晴らしの良い場所で待ち構えるのがベストなのね)

 潜水艦娘はその特性として、息を止めていられる時間が異常に長い。それに加えて、勘の異様に鋭いイクならば、鬼が接近する前に必ず気付けるという寸法だ。

(絶対に勝ってみせるのね!)

 意気込みは十分。準備も万端。
 ――但し、それは敵にも同じことが言えた。

(――な、何なのっ!?)

 大きく、海面と海中に揺らぎが発生する。見上げるイクの頭上には、大鯨を心配して鎮守府近海を回遊している鯨の姿があった。

(何か嫌な予感が――)

 イクの勘は正しく働く。背筋に感じた嫌な感覚に従い、後ろを確認した彼女が見たものは、優しく笑う鬼の手を広げた姿。

(この人に、どうやったら勝てるのね……)

 四人目の犠牲者は、柔らかな彼女の胸の中で敗北感にうちひしがれながら、勝負から脱落した。

558: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 18:03:06.67 ID:miSLO2sAO
――――海上。

 ハチは、本を読む為に海上に居た。小さなボートの中にすっぽりと身を収め、下手な小細工をせず、波に身を任せて漂うという逃げ方だ。

(どうせ五十鈴さんには考え読まれてるし、無駄な労力をはっちゃんは使いたくないし……)

 なるようにしかならないという考えの元、彼女はのんびりとただただ海を漂う。確かにこの方法ならば、五十鈴の裏を掻ける可能性があった。

「――逃げなくていいの?」

「近付かれた時点で、はっちゃんの負けだもの」

「そう……じゃあ」




 ――つ・か・ま・え・た。

559: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 18:03:34.77 ID:miSLO2sAO
――――海上。

「うふふ、ほら、早く逃げないと捕まるわよ?」

「ひいぃぃぃぃっ!?」

 鬼ごっことは本来こういうものだ。鬼から逃げるという行為無くして、鬼ごっこは成立し得ない。
 ――しかし、追われる方が本当に怯えている場合、鬼の姿がずっと後ろに見えているというのは、相当な恐怖を伴う。

「後はまるゆだけよ、必死に逃げなさい」

「も、もう、無理……」

「あら、だらしないわねぇ」

 余裕を見せる五十鈴とは違い、ただ泳ぐだけというのが苦手なまるゆは、既に満身創痍だ。泳ぐのをやめて動きを止めた獲物へと、鬼はゆっくりと近付く。

「勝負に負けたらどうなるか、分かってるわよね?」

「うぅ……はい……」

「じゃあ改めて――つ・か・ま・え・た」




 所要時間、二時間四十七分。五十鈴の圧勝により、鬼ごっこ終了。

560: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 18:04:21.90 ID:miSLO2sAO
――――鎮守府内、長良型私室。

「――五十鈴、何してるの?」

「抱き枕を抱いているだけよ?」

「あの、それ……」

「名取、触れない方がいい」

「五十鈴姉ちゃん、マジパナイ」

「私は何も見てない私は何も見てない……」




――――今日から六日間は良い夢が見られそうね。

 ――――五十鈴さん、胸に顔が埋もれてちょっと苦しいわ……。

565: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 22:32:42.41 ID:miSLO2sAO
若干タイトル変更

・羽黒改二『司令官さん、あの、私、改二になってみました』、投下します

夕張と明石は久々の仕事で張り切りました

566: ◆UeZ8dRl.OE 2014/06/30(月) 22:33:22.95 ID:miSLO2sAO
――――提督執務室。

「あ、あの……」

「ん? どうした羽黒、早く入れ」

「司令官さん、私……改二に、なりました」

「――は?」

 部屋へと恐る恐る入る羽黒。改二になったことを簡単に証明する手段として、彼女は艤装を装備してきている。それは見る者に若干威圧感を与える程、以前より兵器感を醸し出していた。

「何で今、改二になったんだよ」

「あの、もっと自信を付けたいって思って、神通さんに相談したんです」

(そこに行ったか……)

 普段は自分同様に大人しい雰囲気の神通。しかし、戦闘では鬼神とでも呼ぶべき迫力を見せていた彼女に、羽黒は密かに憧れていたのだ。
 そう言う彼女自身も決戦では獅子奮迅の大活躍を見せていたのだが、自信を持っているかどうかという点では、確かに劣っていた。

「それで、彼女に話を伺ったら、改二になった時に気持ちが更に引き締まったと聞いたので」

「で、改二になったと」

「はい、か、勝手な事してごめんなさい……」

「いや、別に怒ってはないさ。それでお前は自信を持てたんだろ?」

「は、はい! 以前よりも少し背筋が伸びた気がします!」

 艤装の重さを支えるのに猫背だとしんどいからではないか、そう思いつつも、提督は黙って頷いて返した。

「あの、司令官さん。まだまだ臆病な私ですが、ずっとお側に置いて下さいますか……?」

「あぁ、当たり前だ」

「――今日は、勇気を出してみますね」

 羽黒は提督の元へと歩み寄り、抱き締めようと腕を伸ばす。目を合わせる事すら出来なかった頃と比べると、考えられない程の進歩だ。
 それに応える為に、提督は椅子から立ち上がった。

「司令官さん、好きです」

「引っ込み思案はコレで卒業だな……好きだぞ、羽黒」

 二人は抱き合い、そのまま良い雰囲気になる――はずだった。

「は、ぐろ……くるし、しぬ……」

「えっ!? あ、あの、ごめんなさい! まだ改二になったばかりで力加減が分からなくって……」

「な、慣れていけば大丈夫だ、気にするな……」

「うぅ……司令官さんともっと仲良く出来るはずだったのに……」

 落ち込む羽黒を見ながら、やはりどこか放っておけないという保護欲のようなものを掻き立てられ、提督は優しく頭を撫でるのだった。




――――羽黒、とりあえず艤装外して来ないか?

 ――――はい、実はコレ少し重くって……。

568: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/01(火) 10:47:40.64 ID:QSbwxHUAO
・まるゆ『白いスク水が一番落ち着きますよ?』、投下します

569: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/01(火) 10:49:06.43 ID:QSbwxHUAO
――――鎮守府内、プール。

「ふむ、悪くないのぅ」

「サイズが少し小さいですね」

「私もちょっと、胸が……」

「あの、私は潜水母艦ですよお?」

「何で俺まで……」

 同じ水着を着用した五人。彼女達にそれを手渡した者もまた、同じ水着を着用している。

「お似合いですよ、皆さん」

 この鎮守府内で唯一、陸軍指定の白スク水を着ていたまるゆ。彼女は前々から一人だけ違う水着であることに、少し寂しさを感じていた。
 そこで今回、各サイズを何枚か支給してもらい、白スク水の布教へと乗り出したのだ。

「妾は黒より白を好んで着ておる。コレは肌触りも良い、気に入ったのじゃ」

「そうですね、白は着ていて気持ちが良いです」

「こっちの方が目立たない……かも?」

「黒も白も鯨さんの色なので、私は好きですよお」

「まぁ、白もありだな」

「そうですよね、白もいいですよねっ!」

 予想以上の好感触であった事に喜び、まるゆはキラキラとした笑顔を五人に向ける。
 初春と浜風は元々白という色を好んでおり、潮は以前に漣から黒い下着を“何か●●い”と言われたことで、黒を敬遠中。大鯨は黒も白も好きで、木曾は自分を慕うまるゆとお揃いで満更でもないといった感じだ。

「他の皆さんも着てみてくれるといいんだけど……」

 他にも着てくれそうな艦娘が居ないか、まるゆは次のターゲットを頭に思い浮かべる。
 常にサラシの褐色艦娘、僕っ娘ドイツ艦娘、睦月型の美容担当艦娘、改二で白服に変わった艦娘、良いところを広めてくれそうな重巡艦娘、肌を露出した姿を見た事が無い最強空母艦娘。

(皆が白スク水を着たら、今よりもっと私に親近感が湧いて、もっと仲良くなれるはず!)

 微かな期待に胸を膨らませつつ、まるゆは様々なサイズの白スク水を手に、鎮守府内を走り回るのだった。




~続く?~

588: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/01(火) 18:43:26.10 ID:QSbwxHUAO
・愛宕『提督、しっかり見て選んで下さいね?』、投下します

589: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/01(火) 18:45:35.36 ID:QSbwxHUAO
――――女性用水着売り場。

(居心地悪いなやっぱり)

「提督、コレなんてどうかしらー?」

「淡い水色か……うん、いいんじゃないか?」

「じゃあ試着するからちょっと待ってて下さる?」

「まぁそうなるよな……分かった、なるべく早く頼む」

「はーい」

 ――三分後。

「ぱんぱかぱーん!」

「お前わざとだろ、絶対にそれサイズ小さいぞ」

「提督が揉むからまた大きくなったのかしら」

「口を閉じてサイズを変えてちゃんと選べ」

「こんな場所で口を塞げですってー? もうっ、提督ってば大胆ねー」

「そっち方向に無理矢理結び付けんな。いいからさっさと選べ」

「はーい」

 ――更に十分後。

「ぱんぱかぱーん」

「お前ちょっとは真面目に選べ! 帰るぞ!」

「だって小さいのはダメって言ったじゃない」

「だからって手でずっと押さえてなきゃいけないようなのを選ぶ奴があるか!」

「提督、ここで触りたいって気持ちは抑えて下さいね?」

「その上手くもない返しには触れないでおいてやるから、さっさと次を選んでこい」

「はーい」

 ――五分後。

「今度はライムグリーンか、サイズも今回は大丈夫そうだし、爽やかな感じがしていいと思うぞ」

「うふふ、見てると興奮します?」

「残念ながら俺は足派だ」

「じゃあこの密かに持ってきてたロングパレオをこうして――はい、コレでどうかしら?」

「さぁ買って帰るぞ、用事は済んだな」

「あら、感想をまだ聞いてないわ」

「ちょっと待て、試着室からそのまま出てくるな、っていうか抱き着くな!」

「ちゃんと感想を聞かせて下さるなら、離れてあげるわよ?」

「……グッと魅力が増した、コレでいいか?」

「……うふふっ」

「おいコラ愛宕、離すって約束を――」

「あー足がもつれたわー」

(わざとらしいセリフで試着室に引きずり込む気かっ!?)




――――タンクが大きいと紐がほどけやすいのよねぇ……もう一度結んで下さる?

 ――――その前に退け、タンクに埋もれて前が見えん。

595: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/01(火) 23:04:57.31 ID:QSbwxHUAO
・高雄『コレは提督の執務の範疇です』、投下します

596: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/01(火) 23:06:28.42 ID:QSbwxHUAO
――――提督執務室。

「提督、どうでしょうか?」

「いや、どうと言われても困るんだが……」

 高雄の差し出してきた書類に目を通した後、提督はそれをどう処理しようかと思案に耽る。 今、彼が読んでいたのは艦娘からの嘆願書であり、鎮守府の活動を円滑に維持していく為の貴重な糧だ。観光に訪れる客のマナーから、日常生活の中の些細な問題まで、様々な内容のものが毎日執務室へと寄せられている。

「――なぁ、一つ聞きたいんだが、コレ書いたのお前か?」

「いえ、そのような内容のものを書いた覚えは無いわ」

(視線がさ迷ってる時点でバレバレだろ……)

「“提督は秘書艦娘に対してですら、スキンシップは必要最低限に抑えようとしておられるように見受けられます。早急に改善されますようお願い申し上げます”……俺に四六時中仕事もせず、秘書艦娘にベタベタしろってことか?」

「えぇ、その通り――いえ、私には何とも」

(黒確定)

「でも、提督があまり自分から触れて下さらないのは事実だわ」

「そうか?」

「秘書艦娘ともっと親交を深めるというのも、提督の大事な執務の一つではありませんか?」

 そんな執務あるか、等と言うだけ無駄な事は提督も分かっている。下手に何か言えば即夜戦に突入しかねないことも、身に沁みて理解していた。

(妥協点を探ってなんとか切り抜けるしかないか……)

「具体的にはどうすればいいんだ?」

「肌と肌を重ね合いましょう」

「お前と摩耶を足して2で割りたくなってきた」

 手が触れ合うだけで顔を真っ赤にして罵倒してくる摩耶と、真顔でド直球な要求をしてくる高雄。どちらもどう扱うべきか悩むという点においては、提督の中では大差なかった。

「それがダメでしたら……書類を書きながらキスなどもいい感じね」

「集中出来んわ!」

「では、書きながら身体に触れて頂くだけでも構いません」

「まぁ、それぐらいなら……」

「では、こちらの書類をお願い致します」

「――なぁ高雄」

「はい」

「何で服を脱いでいってるんだ?」

「?」

「首傾げてんじゃねぇよ、別に脱ぐ必要は無いだろうが」

「……一生の不覚ね、今まで気がつかなかったわ。まさか、提督が服を脱がせたい派だったなんて」

「夜にならなくても扱いに困るとか勘弁してくれよ……」




――――分かったわ。提督は着衣の方がお好きなのですね?

 ――――違う!

600: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/02(水) 13:13:49.43 ID:jq8hZkgAO
・加賀『たまには甘えてみようと思います』、投下します

601: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/02(水) 13:15:49.73 ID:jq8hZkgAO
――――提督執務室。

「――ほら、お茶」

「ありがとうございます」

 いつもならば自分の仕事だと頑なにさせようとはしないのだが、この日は珍しく提督が茶を淹れていた。それというのも、部屋に入ってきて早々“疲れました、労って下さい”と彼女が要求した為だ。

「ここに座って下さい」

「労えって奴の上に乗っていいのか?」

「早急にお願いします」

 膝を叩いて早くしろと訴える加賀に苦笑しながら、提督は彼女の上に腰を下ろす。それを待ちわびていたかのように、すぐに後ろから手が回され、彼は強く抱き締められた。

「加賀が甘えてくるなんて珍しいな」

「……何か問題?」

「いや、ちょっと可愛いと思った」

「……」

 背中に頭がグリグリと擦りつけられ、提督は今の彼女の顔が赤いであろうことを想像して笑みを浮かべた。

「甘えるぐらいで疲れが取れるなら、いくらでも甘えてくれて構わないからな?」

「……はい」

 更に強く抱き締められたことにより、心臓の鼓動が提督へと伝わるようになる。そのリズムは、少し速い。

「一つ、聞いていいか?」

「えぇ」

「俺からのスキンシップを増やしたら、お前は嬉し――」

「限り無く気分が高揚して疲れなど消え失せます」

「そ、そうか……」

 一応念のために確認してみただけだったのだが、加賀の反応は予想を上回っていた。無言のプレッシャーを背中に感じつつ、提督は手を後ろへと伸ばす。。

「いつもありがとな、加賀」

「……頭を撫でられるというのも、悪くないものですね」

「撫でといてなんだが、子供扱いするなとか、髪が乱れるとか言わないのか?」

「この心地好い感覚の為なら、誇りや羞恥心など捨てます」

「おい、捨ててどうする」

「ふふっ、冗談です。貴方の前以外で、このような姿は見せません」

「そうだな、締まりの無い顔してるし」

「そんな顔はしていませんが?」

「じゃあ見せ――」

「お断りします」

「そうか、キスしてやろうかと思ったんだが、顔が見れなきゃ無理か」

「……そういうことでしたら、どうぞ」

(――赤面してる加賀、いいな)

「あまり、ジッと見ないで頂けますか……?」

「断る」

「……仕方の無い人ですね、貴方は」

「今更だろ?――ん」

602: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/02(水) 13:16:16.64 ID:jq8hZkgAO
――――夕飯は肉じゃがを作って下さい。

 ――――(昼から搾られた俺に夕飯作れとか鬼か……)

604: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/02(水) 17:03:47.16 ID:jq8hZkgAO
・ながもん『何!? 敵が現れただと!?』 、投下します

※戦闘は雰囲気ですので深く気にしないで下さい

605: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/02(水) 17:05:05.27 ID:jq8hZkgAO
――――鎮守府内、某所。

「最近はすっかり大人しくなったけど、私は以前に追いかけ回された事を忘れちゃいないわ」

「あの痛み、悪くはなかった。だが、度が過ぎてはいた」

「この谷風さんを気絶する程抱き締めるなんざぁ、許しちゃおけねーってもんだ!」

「あたしに気安く触れていいのは提督だけだ」

「捕ってきた蟹、全部ぐちゃぐちゃに潰された……」

「アタシが炬燵で気持ち良く寝てたの、無理矢理引き摺り出しやがった」

「じゃあ皆“対長門報復作戦”、開始するわよ!」

――――鎮守府近海。

(何故今になって近海の警備を私が……いや、提督が何の意味もなく私に命令を出すはずもないか。深く考えるのは止しておくとしよう)

『長門ー聞こえるかー?』

「提督か、何だ? 相変わらず海は穏やかそのものだぞ」

『近海に偵察機を飛ばしていた瑞鶴からの通信の内容を伝える。“深海棲艦らしき存在を確認、至急現場へ向かわれたし”』

「深海棲艦だと!? 分かった、最大戦速でその場所へ向かう! 提督、発見したポイントは何処だ!?」

『二時の方角、距離は約10000だ』

「了解!」

606: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/02(水) 17:07:06.72 ID:jq8hZkgAO
――――謎の深海棲艦確認地点。

(――アレか!)

「今までどうやって生き延びていたのかは知らんが、このビッグセブンである長門が居る限り、鎮守府には近付けさせんぞ!」

 ――(来たわね、皆、作戦通りに行くわよ!)

 ――(((((了解!)))))

(……? 見た目も珍妙だが、動きもただの駆逐艦の群れにしては奇妙だな……)

「それに――思わず抱き締めたくなる衝動に、胸が熱くなる」

 ――(動きが止まったわ、今よ!)

 ――(魚雷、発射!)

「あの動き、統率の取り方……そうか、非常時に私がしっかりと自分達を守ってくれるのかを確かめたかったのだな……いいだろう! 日々の鍛練の成果をとくと見るがいい!」

 ――(魚雷が迫る中を真っ正面から突っ込んできたですって!?)

 ――(しかも前よりめっちゃ速いよ!?)

「一番手前に居るのは誰だ? 光を反射するという事は眼鏡をかけているな?――望月か。そっちは長波だな」

 ――(……バレてね?)

 ――(文月と電と雷と若葉を後ろ姿だけで見分けるぐらいだからな……このぐらいの変装じゃ、すぐに見破られてもおかしくないか)

「バレたって何だっていいわ、砲撃よ、砲撃!」

「波による誤差修整よし、回避行動パターンBと認識、対象の膝に照準固定――発射」

「ぬぅっ!? この精密な射撃、若葉もそこに居るな?」

「装甲が厚い、一撃では無理か……」

「私達の砲撃じゃ数十発必要、多分」

「動きが止まりゃいいの! 魚雷次弾装填、全艦発射するわよ!」

「がってん!」

「いっくよー!」

「陽炎型の一番艦というだけはあるな、統率力と指揮の的確さは見事なものだ。――だが、このビッグセブンを侮ってもらっては困るな!」

「ちょっと、魚雷無視して撃つ気!?」

「回避間に合わない、絶対」

「帰りは全員背負ってやるから安心していいぞ。――全主砲斉射、てーいっ!」

「こんのバカ長門ぉぉぉぉっ!」



 ――――発射直後の魚雷が数発、主砲の着弾の衝撃で爆発。残りは全て至近弾を狙っていたこともあり、駆逐艦娘六名は中破状態で気絶。
 帰投時には全員を背負っていたこともあり、長門はキラキラしていたという……。




――――次こそは絶対に懲らしめてやるんだから!

 ――――(入渠までさせたってのに、陽炎がキラキラしてるのは何でだ……?)

617: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:00:04.87 ID:yf/e0vRAO
・那智『貴様も酒ぐらい飲めるようになれ』、投下します

618: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:00:42.53 ID:yf/e0vRAO
――――提督私室。

「飲め」

「いや、だから俺は酒に弱いと言ってるだろ」

 目の前に突き出された盃を押し返すと、それがまた押し返される。このやり取りが先程から既に十数回、テーブルを挟んで繰り返されていた。

「コレはそこまで度数が強くはないし飲みやすい、飲め」

「度数が弱いにしても、なみなみと注がなくてもいいだろう」

「ちびちびと飲めばいい」

「……はぁ、分かったよ」

 強引に押し切られ、提督はとうとう盃を手にした。そして、躊躇いがちに口を付ける。

「――美味いな、コレ」

「千歳と色々な酒を飲み歩いて、ようやく見付けたんだ。貴様と二人で飲めそうな、この酒をな」

「……悪い、手間かけさせた」

「そう思うならしっかりと今日は付き合ってくれ。貴様とこうして飲める日を、私は楽しみにしていたんだからな」

 盃を傾けながら、那智は目を細める。その言葉の全てが彼女の包み隠さぬ本心だと、優しげな横顔が語っていた。

「飲み過ぎて酔ったら、ちゃんと介抱してくれよ?」

「安心しろ、酔わなくなるまで鍛えてやる」

「安心出来んぞ、それ……」

 ゆっくりと、ゆったりと、提督のペースに合わせて、那智は盃を傾けていく。今彼女が楽しんでいるのは、酒の味というよりはこの一時だ。
 一言二言、言葉を交わし、また口を付ける。まるで飲みきるのを惜しむかの如く、盃を傾ける速度は一向に変わらない。

「司令官」

「何だ?」

「酒を、少しは好きになれたか?」

「……あぁ」

「そうか」

「那智」

「何だ?」

「今度、鳳翔のところに二人で飲みに行かないか?」

「喜んで付き合おう」

 そこで一度、会話が途切れる。ちょうど二人の盃に注がれた酒は、無くなっていた。

「――司令官、もう少し飲まないか?」

「……さっきの半分ぐらいにしてくれ」




――――頭が痛ぇ……。

 ――――私を放置して寝た報いだ。

619: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:03:58.28 ID:yf/e0vRAO
・榛名『改二改造可能者への通達……?』、投下します

若干メタなので今回はキャラが一部言動おかしいです

620: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:06:45.83 ID:yf/e0vRAO
――――提督執務室。

「――って訳で、有事の際に改造してたんじゃ遅いから、月末に一斉に改二になれる者は改造しろって上からのお達しだ。何か問題はあるか?」

「いえ、榛名は特に問題ありません」

「そうか、ならもう下がって――」

「Hey、榛名ー! 改二決定おめでとデース!」

「私も自分の事の様に嬉しいです!」

「おめでとう榛名、改二になったらまたデータを取らせてね」

「ドアを壊すなよお前等……」

「お姉様方も、霧島も、ありがとうございます。これからも、榛名は頑張ります」

「コレで金剛型sister'sは皆改二って事デース」

「榛名はどんな風になるんでしょうね?」

「主砲を全て取り払って対空砲火特化型とかどうかしら?」

「それならいっそ装甲も薄くして超軽量型戦艦を目指してみるネー」

「あの、金剛姉様も霧島も、榛名の改二改造後の艤装を予想して遊ばないで下さい……」

「主砲から牛乳が出るとかどうですか?」

「艤装から凄い臭いするぞ、それ」

「出すならやっぱり紅茶がいいデース」

「拡声器になってて声で攻撃とか、面白いんじゃないかしら」

「……」

「カレーが出るっていうのもいいかもしれませんね」

「海汚れるからその系統から離れろよ」

「じゃあいっそ霧島と合体出来るようになるとかどうネー?」

「それは素敵ね、とても良いと思いますよお姉様。榛名もそう思わない?……榛名?」

「――勝手な! 妄想は! 許しませんっ!」

「っ!? 榛名、ちょっと落ち着くデース!」

「ヒェーッ!?」

「改二にならなくともこの戦闘力……月末が楽しみね」

「誰かさっさと止めろ! 部屋が壊れる!」

「榛名は……榛名はそんな変な改造、絶対に許しません!」




――――榛名さんの改造、どうします?

 ――――色々試してみたいわね。ちょうど対空ミサイルもあるし、積んじゃいましょう。

621: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:10:18.61 ID:yf/e0vRAO
・加賀&第六駆逐隊『やるからには本気でいきます』、投下します

622: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:10:53.93 ID:yf/e0vRAO
――――演習場。

「本当にやるのね?」

「暁達だって一人前の艦娘よ。ちゃんと加賀さん相手でも戦えるんだから!」

「本気でいくよ、手加減は無用だ」

「この雷様の力を見せてあげるわ!」

「加賀さんに勝ってみせるのです!」

「……分かりました」




――――挑んで来たからには、全力で相手をしてあげます。

623: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:11:36.66 ID:yf/e0vRAO
 四対一、数の上では第六駆逐隊が有利。しかし、武蔵に一度着任時に黒星を付けられて以降、全勝無敗の加賀に挑むのは、かなり厳しいものがある。
 だが、彼女達も無策で挑んだ訳ではない。

(雷とヴェールヌイは対空砲、電はあの消音砲、暁は――バルジ?)

 既に涙目の暁を先頭に、雷とヴェールヌイがその後ろに続き、電が最後尾。単縦陣の短期決戦狙いで、多少の被弾は覚悟しての初霜愛用小型バルジを使用、そう加賀は推測する。

「では、大和の合図に合わせて開始します」

「一人前のレディーである暁は、いつでも準備出来てるわ」

「暁、足がガクガク震えてるよ」

「もう、だらしないわねぇ。そんなんじゃ勝てないわよ?」

「こ、コレは武者震いなんだから!」

「皆で頑張るのです!」

 審判役である大和の合図を、五人は待つ。短期決戦を目的としている場合、開始直後にどれだけ素早く動けるかが重要となる。




 ――そして、空へと向けて轟音と共に、開始の合図が発射された。

624: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:12:11.59 ID:yf/e0vRAO
「突撃ー!」

「Ура!」

「一気に決めちゃうわ!」

「近付く手間が省けて助かります」

「ひっ!?」

「雷!」

「言われなくても分かってるわ、撃てー!」

 開始早々、加賀へと突撃する暁達。だが、加賀もまた暁達の元へと最大戦速で向かっていた。

「いいいい一人前のレディーは怯えたりなんかしないんだから!」

「まさか艦載機を発艦させずに突撃してくるとは思わなかったよ」

「とにかく撃つわ!」

 ヴェールヌイと雷は、連装砲を暁の後方から撃ち続ける。
 それを意にも介さず、加賀は速度を落とすこと無く距離を詰めていく。二人からの砲撃は激しく、徐々に両者が距離を詰めるごとに、彼女も回避行動を取らざるを得なくなっていった。
 そうまでして、最大戦速で敵に突っ込むという空母らしからぬ行動をした彼女の目的は――。

「――捕まえました」

「だ、だずげでぇ……」




 ――暁、加賀により捕獲。

625: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:13:37.12 ID:yf/e0vRAO
「ちょっと、捕まえるなんて反則じゃないの!」

「ルールにそんなことは書いてありませんが?」

「確かに、書いてはいないな」

「そうでもしないと――」

「きゃんっ!?」

「っ……暁、ごめんなさいなのです」

「あの子は一筋縄ではいきそうにありませんので」

 背後から音もなく迫った砲撃を、加賀は暁のバルジで受け止める。奇襲が失敗に終わり、電はまた移動を開始した。

「躊躇わずに姉を撃つ芯の強さ、やはり侮れません」

「撃たせたのは加賀じゃないか」

「手近に居たもので、つい」

「これぐらい……へっちゃ……ら……」

「暁!?」

「気絶してしまったわね……仕方ありません。このまま担いで続けます」

 中断して暁を大和に預けるという選択肢もあるが、加賀はそのまま暁を背負って演習続行を決意する。そして同時に、空母としての行動も開始した。

「全機発艦、速やかに殲滅します」

「艦載機を狙う? それとも加賀さん?」

「暁みたいに捕まるのは避けたいな。距離を取りつつ、艦載機を狙うよ」

 連装砲ではなく広角砲に攻撃手段を切り替え、後退しながら二人は艦載機を狙う。加賀の航行速度よりも早く、当たれば一撃で大破する攻撃の雨を降らせるそれらの方が危険だからだ。
 艦載機の操作に集中出来ないよう、電が断続的に加賀を狙い撃っている事もあり、二人は無事に加賀から距離を取ることに成功する。
 ――だが、武蔵に化物とまで言わしめた彼女の本領が発揮されるのは、ここからだった。

「――お疲れ様、雷、ヴェールヌイ。次に期待しています」

626: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:15:50.21 ID:yf/e0vRAO
「っ!? いったぁーい! 今のどこから!?」

「雷!? くっ……」

 二人が後退した方向から、加賀の艦載機が姿を現す。気付かれぬ様に細心の注意を払いながら、十機程回り込ませていたのだ。
 反応に遅れた雷は轟沈判定、ヴェールヌイは直前に気付き、被害を中破に留める。

「二人とも、大丈――はにゃあ!?」

「優しい貴女なら、この瞬間に足を止めると思っていたわ。電、次は一対一でやりましょう」

 姉二人を気にかけた瞬間を狙われ、電も轟沈判定を受ける。コレで、残ったのは中破のヴェールヌイだけだ。

「不死鳥の通り名は流石ね。でも、コレで終わりです」

「最後に一矢ぐらいは報いさせてもらうよ」

「そう……なら、最後まで全力で相手をしてあげるわ」

 残る艦載機を全てヴェールヌイへと向けて飛ばし、加賀は勝負を終わらせようとする。
 ――しかし、最後の最後で一つの誤算が生じた。




「今よ! 響!」

627: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:16:54.73 ID:yf/e0vRAO
(気絶していたはずではなかったの……?)

 ずっと肩に担がれていた暁。彼女は今、加賀にしがみつきながら両手で目隠しをして、艦載機の操作を妨害するという荒業に打って出ていた。
 すぐに目隠しを振りほどく事は出来たものの、その一瞬で、ヴェールヌイは連装砲を加賀へと向けて放っていた。

(回避は……間に合いませんね)

 被弾を覚悟し、彼女は艦載機の操作を優先する。
 結果、連装砲が加賀へ着弾した直後、流星改の雷撃がヴェールヌイを捉えるのだった。



 ――加賀、小破。第六駆逐隊、全員轟沈判定。よって、此度の演習は加賀の勝利とする。




「あの時既に気絶判定を受けていたので、最後の妨害は反則です。少し、暁にはお仕置きが必要なようね」

「お、お仕置きなんて別に暁は怖くないわ」

「お尻を提督が見ている前で百回叩きます」

「そ……そんな一人前のレディーとして恥ずかしいお仕置きは嫌ー!」

628: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:19:51.64 ID:yf/e0vRAO
・加賀『先を越された……? そんな、馬鹿な……』、投下します

629: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:20:18.01 ID:yf/e0vRAO
――――提督執務室。

「結婚して下さい」

「……は?」

「ウェディングドレスか白無垢、提督が好きな方を着ます。ですから、結婚しましょう」

 熱でもあるのかと言いたくなるような発言を朝から繰り返す加賀に、提督は頭を抱える。原因は間違いなく、北上と大井の件だ。

「あのな加賀、アレはごっこ遊び――」

 全てを言い切る前に、提督の頭の横で破砕音が響く。彼はブリキのオモチャにでもなったかのように、ゆっくりと顔を横に向けた。

(拒否したら、次は俺がこうなるってか……?)

 椅子の背もたれに開いた穴。それは、綺麗に加賀の拳の形になっていた。

「ウェディングドレスと白無垢、どちらがよろしいですか?」

「……ウェディングドレスで頼む」

630: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:20:47.13 ID:yf/e0vRAO
――――結婚式場、控え室。

 スタッフの人間に白い目で見られながら、提督は再びタキシードへと袖を通していた。

(そりゃあ違う女を取っ替え引っ替え連れてくるわ、参列客も居ないわ、神父や神主すら不要なんて客はこういう目で見られるよな……)

「提督、料理が見当たらないのですが……」

「あるかそんなもん。っていうか何しに来た赤城」

「加賀の準備が出来ましたので、呼びに来ました。料理が無いのでしたら、私はコレで」

「お前、加賀のウェディングドレスが見たかっただけなんだろ?」

「……とても綺麗でしたよ。チャペルで待ってますから、行ってあげて下さい」

「あぁ、待たせたら怖いしすぐ行く。じゃあまたな」




「――加賀がウェディングドレスなら、私は白無垢でしょうか?」

631: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:22:12.72 ID:yf/e0vRAO
――――チャペル。

 扉を開き、提督は中へと入る。早足に来たので、少し息は上がっていた。

「悪い、待たせた」

「いえ、思いの外ウェディングドレスで歩くのに手間取ったので、私も今来たところです」

「そうか」

 会話だけを聞けば、いつもと変わらない雰囲気が二人の間に流れているかのように思える。だが、お互いがお互いの姿をしっかりと見ようとしていない時点で、ぎこちないことこの上なかった。

「えっとな、加賀」

「はい」

「その、何だ。一緒に居た時間が無駄に長いと、こういう時に気恥ずかしさが増すな」

「わざわざそういう事を口にしないで下さい」

「――なぁ、ずっと聞きたかったこと、聞いていいか?」

 提督の声音が、急に真剣なものへと変わる。加賀もそれに倣い、黙って頷いた。

「お前は、何で秘書艦日制を受け入れたんだ?」

「……貴方が、提督だからです」

「俺が、提督だから?」

「提督として生きる貴方を、私は愛しています。提督という肩書きの無い貴方のことも、愛しています。――そして、あの鎮守府で皆に囲まれて幸せそうにしている貴方を支えることが、私の生き甲斐であり、幸せです」

 一人の男と一人の女としてずっと過ごすよりも、今のこの関係の方が幸せだと、加賀は口にする。
 誰かが欠ければずっと翳りを残していたであろう幸せならば、これからも全員で今まで通り共に居ることが、最良の選択である。そう、彼女は考えたのだ。

「ですから、今回の件も先をこされたからといって、彼女達を恨んだりはしていません。むしろ、提督を喜ばせてくれた事に感謝しています」

「昔は張り詰めた弓みたいな顔ばっかしてたのに、本当に優しく笑うようになったよな」

「今でも感情表現は苦手です。ですが、思わず笑みを浮かべてしまうような小さな幸せを、たくさん見付けるようになりました」

「今の加賀は、綺麗より可愛いと思う機会が増えた」

「可愛いはやめてください」

「――ウェディングドレス姿は、綺麗だぞ」

「タキシードが可哀想ですね」

「照れ隠しに俺を攻撃するのやめろ」

「……あの」

「何だ?」

「指輪を、お願いします」

「……あぁ」




――――私は、生涯貴方と共に居ることを誓います。

 ――――俺も、生涯お前達と共に居ることを誓う。

――――愛しています、提督。

 ――――愛してるぞ、加賀。

632: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 00:22:41.36 ID:yf/e0vRAO
――――翌週。

「赤城さんが白無垢を着て待っています」

「ちょっとは期間を置けぇぇぇ!」

641: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 20:34:38.94 ID:yf/e0vRAO
・龍驤改二『何でや! 改二って希望に溢れてたんちゃうんか!?』、投下します

提督がもう色々ありすぎて遠慮なくなり始めてます

642: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 20:35:05.71 ID:yf/e0vRAO
――――工廠。

「何でなん!? 何でこうなるん!?」

「私に言われても……ほら、結構いいんじゃない?」

「私も良いと思いますよ」

「違う……うちの求めてたんはこんなん違う!」

「あっ龍驤!」

「行ってしまいましたね……」

「まぁ、提督が慰めてくれるわ、きっと」

「そうですね、お任せしちゃいましょう」

643: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/04(金) 20:36:12.86 ID:yf/e0vRAO
――――提督執務室。

「キミ、ちょっと話聞いてよー」

「誰だお前」

「うちに決まってるやんか!」

「冗談だ冗談。しっかしお前もかよ、改二になるなら事前に言っとけ。羽黒の時も司令部に対して事情でっち上げるの大変だったんだからな……」

「そんなことより、今のうち見てキミはどう思うん?」

「今の龍驤か? そうだな……前より幼い印象が強くなった気がする。まぁ、可愛いぞ」

「そう、そうなんよ。何で改二で綺麗系にシフトチェンジしてくれんかったんや……」

「おい人が可愛いって言ってやってんのにスルーか」

「まぁ、まな板言われんのはもうしゃーないって諦めもついたんよ? せやから、改二で貧 綺麗系知的美人キャラ目指そ思てたっちゅうのに……何なんこの童顔、完全に逆方向やないか!」

「お前は改造を何だと思ってんだ」

「美容整形とかオシャレの一種やろ?」

「確かに艤装にも変化があるし、迷彩施したり目の色変わった奴も居たが、断じて違う!」

「そんな目くじら立てて怒鳴らんでもえぇやないの。ちょっとした冗談や冗談。あんまり怒ると老けるで?」

「それはここで提督してる限り老けるって言いたいんだな?」

「キミ、老けた方が渋なってえぇかもしれんよ」

「そりゃどうも……。なぁ龍驤、ちょっとこっち来い」

「何?」

「あら、よっと」

「ちょっ、何すんの!」

「前々から一度こうしてみたかったんだ。うん、中々抱き心地いいぞ」

「なぁ、流石にこの扱いはなんぼなんでも怒るよ?」

「もっと秘書艦娘へのスキンシップを増やせっていう嘆願書があってな、お前は必要無いってんなら離れてくれて構わない」

「い、嫌っちゅう訳やないんやけどね……ちょっちコレは恥ずかしいわ」

「頭もついでに撫でるか」

「キミ、今のうちの話聞いとった?」

「ん? 嫌なら退いていいぞ?」

「――うち、やっぱ女の魅力無い?」

「何言ってんだ。胸は二の次だし、足は健康的だし、髪もサラサラだし、抱き心地もいいし、場を盛り上げる陽気さと皆への気遣いが出来る優しさを持ってる。お前のことを俺は、魅力的な女性だってちゃんと認識してる」

「ちょっちその評価、キミの趣味に偏りすぎてるんやない?……まぁでも、ちゃんとうちのこと見ててくれて、ありがとぅ」




――――髪、ほどいていいか?

 ――――キミ、髪も好きやったんやね。

668: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/05(土) 13:27:18.31 ID:NlR3N4fAO
・朝潮『待てと言われましたから』、投下します

ずっと街で待たせるパターンも考えましたが、今回はこちらのパターンで……

669: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/05(土) 13:28:01.29 ID:NlR3N4fAO
――――提督執務室。

「朝潮、待て」

「それは御命令ですか?」

「あぁ」

「はい、了解しました」

 提督からの命令に従い、朝潮は手に持ったスプーンをテーブルに置いて待つ。意図はどうあれ、命令に彼女が背くはずもない。
 だが、それ故に少し心配もされていた。

(多少は気を抜くようになったが、やっぱりどっか固いな……)

 戦いも終わり、今まで以上に砕けた態度を取る艦娘も増えてきている中、朝潮は未だに“御命令ですか?”という返しを多用する傾向にある。それが例え命令であってもそうでなくても、断る気が無いにも関わらず、だ。
 そして、今のように間宮アイスが溶けていくのを見つめながらも、彼女は決して何も言わない。

(こっちとしては、ちょっとぐらいワガママ言ったりしてくれる方が嬉しいんだがなぁ……)

「……」

(……流石に見てて胸が痛くなってきた。もう溶けてるし、アレは俺が食べて新しいの用意してやるか)

「朝潮」

「はい、何でしょうか」

「意地悪言って悪かったな。間宮には俺から言っとくから、新しいの貰って来て食べていいぞ」

「意地悪、だったのですか……?」

 そんなこととは露程も思っていなかった朝潮は、心底意外そうな声を出す。提督の行動には全て意味があると思っている彼女からすれば、今回のコレが意地悪だという発想そのものが無かったのだ。

「アイス食うの待てなんて、普通言わないだろ」

「溶けたアイスがどんな味なのかを、私に教えて下さろうとしているものだとばかり思っていました」

「お前は少しでも俺を疑ったり、ワガママを言おうという気は無いのか?」

「ありません」

(根が真面目で良い子なんだがな、本当に……)

 キッパリと言い切られ、提督はどうしたものかと頭を掻く。それを見て、朝潮は頬を染めながら躊躇いがちに口を開いた。

「あの、司令官……」

「何だ?」

「アイスを貰って来ますので、執務机で一緒に食べて頂いてもよろしいでしょうか?」

「――あぁ、いいぞ」




――――(甘えはしてくれるってことか)

 ――――(司令官の膝の上で間宮さんのアイス……幸せです)

672: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/05(土) 18:57:23.82 ID:NlR3N4fAO
・那智『司令官、頼む』、投下します

673: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/05(土) 18:59:00.78 ID:NlR3N4fAO
――――妙高型私室。

「どうだ、何とかなりそうか?」

「分からん。そもそも何で雨漏りの補修を明石じゃなくて俺に頼むんだよ」

「他にも色々作業が立て込んでいて、こちらへの対応は時間がかかると言われてしまった」

(そういえば、夕張も一緒に点検して回ってるって言ってたな……。俺もこれぐらいの補修は何とかやってみるか)

「司令官、ここもだいぶ老朽化してきた。コレを期に全面改築も視野に入れておいた方がよいのではないか?」

「そうだな……いくら台風が直撃したとはいえ、雨漏りまでするとなると安全面が心配だ。ちょっと後で加賀や明石と相談してみる」

「――すまない」

「何で謝るんだよ、雨漏りしたのはお前のせいじゃないだろ」

「今回の台風の一件の対応に追われて、あまり貴様が休めていないと聞いている。本来ならば秘書艦として、今は休ませてやるべきなのだが……」

「そんなことなら気にしなくても大丈夫だ。たまには頼りになるところを見せんと、お前達に愛想を尽かされるかもしれんしな」

「……女の評価を気にするような軟派な男の方が、私は嫌いかもしれんぞ?」

「慣れないことした上に嫌われるとか踏んだり蹴ったりだな、おい……とりあえず、屋上行くとするか」

「私も行こう、任せっきりは性に合わん」

 ――屋上。

「うげっ……かなりデカイな、このヒビ」

「位置的に私達の部屋の真上だな。雨漏りが酷かったのも頷ける」

「こりゃ補修しても一時しのぎにしかならんなぁ……やっぱりいっそ建て替えるか」

「建て替えの間、私達の住む場所はどうするつもりだ?」

「空母寮と駆逐寮に割り振る。元々広めに作ってあるから何とかなるだろ。新しい寮が出来たら、残りの古い寮も同じ様に建て替えていけばいい」

「そうか、なら私は千歳のところにでも世話になるとしよう」

「じゃあ話も決まったところで、一時しのぎの突貫工事やるとするか」

「あぁ、手早く済ませてしまおう」




――――どうだ、少しは疲れが取れそうか?

 ――――(風呂で疲れは取れるが、横に那智が裸で居る時点で気持ちは休まらん……)

678: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 14:54:27.66 ID:NWgQzl/AO
間違えて青葉を先に書いちゃいました……電の話は夜には書き上げて来ますので、申し訳無いのですがもう暫くお待ちください

・青葉『司令官、取材旅行手伝って下さい!』、投下します

679: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 14:55:11.22 ID:NWgQzl/AO
――――提督執務室。

「司令官司令官、ちょーっと青葉の取材に付き合ってもらえますか?」

「それは構わないんだが……そのスーツケース、何だ?」

「嫌ですねぇ司令官。女の子の荷物をチェックしたいなんて、青葉困っちゃいます」

「いや、そういう問題じゃなくてだな……」

「大丈夫です、問題なんて一つも無いです。加賀さんと明日と明後日と明明後日の秘書艦娘の子達には土下座して許可得ちゃいましたから」

「おいコラ聞き捨てならない問題と事態が増えてるぞ」

「細かいことは後でちゃんと説明しますから、今はタクシーにレッツゴーです。このままだと飛行機に乗り遅れちゃいますから」

「飛行機!?」

「いやーやっと海外での取材許可が下りたんですよ。青葉、感激です」

「待て待て待て待て! 海外に行くのは流石にマズイだろ!?」

「――司令官、こういう時に相応しい言葉を、青葉は初雪から借りたゲームで教えてもらいました」




――――大丈夫だ、問題ない。

 ――――いや、それダメフラグだからな?

680: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 14:55:48.96 ID:NWgQzl/AO
――――イタリア。

「着きました!」

「着いちまった……」

「司令官、取材するなら何処が良いと思いますか?」

「行くなら定番の観光名所でいいだろ。俺もお前もイタリア観光なんか初めてなんだし」

「そうですね、じゃあ早速出発しちゃいます!」

「はぁ……ってコラおい青葉! スーツケースを置いて行くんじゃねぇ!」

――――ローマ。

「それで、取材ってどんな記事書くんだ?」

「“カップルで行くイタリア旅行! 青葉、体験して来ちゃいました!”ってタイトルですよ?」

「……俺を連れてきたのはそういうこ嫌な奴とイタリアまで来て腕組んで歩きたいんだな?」

「何でそう一々回りくどい言い方をするんですか、もう! ストレートに言ってくれてもいいじゃないですか!」

「つまらん事を聞くからだ」

「うー……」

「唸るな。ほら、ジェラートでも食いに行くぞ」

「司令官の注文するの一口下さいね?」

「そっちのもくれるならな」

681: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 14:57:08.33 ID:NWgQzl/AO
――――広場。

「有名映画のあそこでは飲食禁止されてるし、この辺で落ち着いて食うか」

「ほうへふね」

「……美味いか? ブラッドベリージェラート」

「はい、とっても」

「一口で半分ほど食べられてるのは気のせいだよな? なぁ、青葉」

「し、司令官? もしかして結構ジェラート楽しみにしてました?」

「そんなことはないぞ? だから、そっちのを一口寄越せ。一口で口に含める限界まで食ってやる」

「確実に半分以上青葉のストロベリージェラート食べる気じゃないですか!?」

「取材に付き合ってやってんだ、それぐらいは――ってコラ、急いで自分のを食うな!」

「ほへは青葉のれふ」

「ほー、そうかそうか……じゃあ青葉が食べたジェラートの味は、青葉から直接教えて貰うとするか」

「っ!?」

 ――ちゅる、ちゅぱ、じゅる。

「――ぷはっ! な、ななな何するんですかいきなり!?」

「ん、甘くて美味いなストロベリーも」

「甘くて美味いな、じゃありませんよ! 青葉に取材する時はせめて事前にアポを取って番号をお確かめの上、改めてご連絡下さいっていつも言ってるじゃないですか!」

「動揺し過ぎて言ってる事が滅茶苦茶になってるぞ。それに、カップル用の記事書くならこういうのもありだろ」

「そ、それは、そうでしょうけど……」

「――四日間、きっちり取材に協力してやるからな?」

「程々でいいです。というか、程々にして貰わないと青葉が持ちません」

682: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 14:59:51.00 ID:NWgQzl/AO
コピペ失敗、修正しました

>>680
――――イタリア。

「着きました!」

「着いちまった……」

「司令官、取材するなら何処が良いと思いますか?」

「行くなら定番の観光名所でいいだろ。俺もお前もイタリア観光なんか初めてなんだし」

「そうですね、じゃあ早速出発しちゃいます!」

「はぁ……ってコラおい青葉! スーツケースを置いて行くんじゃねぇ!」

――――ローマ。

「それで、取材ってどんな記事書くんだ?」

「“カップルで行くイタリア旅行! 青葉、体験して来ちゃいました!”ってタイトルですよ?」

「……俺を連れてきたのはそういうことか」

「そういう理由で連れて来ちゃいました。それとも、他の男の人を連れて来た方が良かったですか?」

「即却下」

「なら、ちゃんと取材に協力して下さいね」

「……腕でも、組むか」

「組みます! 組んじゃいます!」

「そんなに引っ張ってお前は俺を投げ飛ばしたいのか? はしゃぎすぎて取材忘れないように気を付けろよ」

「大丈夫です。青葉はコレでも一応プロの記者ですから」

「取材にかこつけて俺と海外旅行を満喫しようって奴が何言ってやがる」

「むぅ……青葉と旅行、司令官は嫌なんですか?」

「お前は嫌な奴とイタリアまで来て腕組んで歩きたいんだな?」

「何でそう一々回りくどい言い方をするんですか、もう! ストレートに言ってくれてもいいじゃないですか!」

「つまらん事を聞くからだ」

「うー……」

「唸るな。ほら、ジェラートでも食いに行くぞ」

「司令官の注文するの一口下さいね?」

「そっちのもくれるならな」

683: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 15:02:49.84 ID:NWgQzl/AO
――――真実の口。

「あ、青葉の腕がー!」

「帰ったら明石に言えば治る」

「ちょっとはノって下さいよ……」

「傷口を縛って焼けばいいのか?」

「さぁ次に行きましょー」

――――コロッセオ。

「絶対に戦ったら生き残れませんよね」

「武器と盾がまず持てるかどうかだな」

「でも、司令官は青葉が守っちゃいますから大丈夫です」

「頼むぞ、ソロモンの狼」

「ワレアオバ、ワレアオバ」

「おいやめろ。……まぁ、何があっても生き延びてやるさ」

「じゃあ司令官の取材ノートを後三百冊書くまで死なないで下さいよ?」

「流石に寿命の場合は勘弁してくれないか?」

――――トレヴィの泉。

「司令官、青葉の目にはコインが三枚見えちゃってますよ? 気付いてないとでも思ってました?」

「じょ、冗談だから腕を捻り上げるな! ちゃんと二枚投げる、投げるって!」

「冗談でもやって良いことと悪いことがありますよぉ……」

「ほら、拗ねてないで投げるぞ」

「えいっ」

「そんなヤケクソに……」

 ――誰かの投げたコインが突き刺さったぞー!

 ――み、水が漏れてきてないか!?

「撤収」

「皆はまだこちらに気付いてないみたいですね」

「気付かれてたまるかっ!」

684: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 15:03:23.16 ID:NWgQzl/AO
――――ホテル。

「流石に動き回ったから疲れたな……」

「青葉もクタクタです……」

「――なぁ青葉、足マッサージしてやろうか?」

「遠慮します拒否します全力でお断りします」

「おいそこまで嫌がられると流石に傷付くぞこっちも」

「だって司令官、足触る時の手付きがいやらしいんですよ」

「そんなことは多分ない」

「……じゃあ、明日お願いします」

「ん、了解」

685: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 15:04:13.55 ID:NWgQzl/AO
――――ピサの斜塔。

「傾いてますねぇ」

「こっちが傾いてる感覚に陥るな」

「何か見てると段々首が痛くなってきちゃいました」

「そりゃずっと首を傾けてるからだろ」

「後、青葉はお昼にピザが食べたいです」

「……奇遇だな、俺も食いたい」

――――ベネツィア。

「日本の船渡しとかとはまた違った風情があるな」

「何かこうしてると不思議な気分になりますね。青葉達は自分で水の上を移動するのが当たり前になっちゃってますから」

「そのうち慣れるさ」

「――司令官」

「何だ?」

「酔っちゃいました、肩貸して下さい」

「艦娘がこんなので船酔いってあり得んだろ……」

「いいから貸して下さいよ」

「十分一万」

「青葉の温もりプライスレスです」

「無料ならじっくりと味わうとするか」

「そういう意味で言ったんじゃありませんよっ!」

「街並み、綺麗だな」

「司令官の横に可愛い女の子も居ますねぇ」

「そっちは後でいくらでも見れるから今はいい」

「……それはそれで困っちゃいます」

686: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 15:05:11.83 ID:NWgQzl/AO
――――日本。

「青葉、着いたぞ」

「……」

「何だ、どうした?」

「……腰、痛いんですよ」

「知らん、俺のせいじゃない。さっさと鎮守府に帰って土産配るぞ」

「司令官の鬼! 悪魔! あることないこと鎮守府新聞に書いちゃいますからね!」

「いいから早く来い、やっぱり何日も鎮守府から離れてると落ち着かん」

「……もう、次があっても付き合ってくれませんか?」

「――ドイツなら考えてやる」

「言いましたね? 言っちゃいましたね? 青葉、ちゃんと聞きましたよ? 是が非でも次はドイツ取材にします!」

(また来年もか……まぁ、悪くなかったしたまにはいいか)




――――あっ……ツーショットばっかり撮ってて記事に使えそうな写真が……。

 ――――やっぱり取材忘れてたんじゃねぇか!

690: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 17:38:25.53 ID:NWgQzl/AO
・電『こ、混浴、ですか……?』、投下します

691: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 17:39:23.31 ID:NWgQzl/AO
――――温泉宿。

「司令官さん、どうしてここを選んだのですか?」

「露天で混浴って探して適当に」

「こん、よく?」

「一緒に入るってことだ」

「こん浴……混浴……っ!?」

 意味から混浴という字に行き着く。納得して頷く。硬直。赤面。こういう反応は純粋に可愛いなと、提督もそれを見ながら頷いた。

「こっ、混浴なのです!?」

「言ってなかったか?」

「電は何も聞いてないのです。そういうことは先に言って欲しかったのです」

「別に問題はないだろ」

「女の子には色々準備というものがあるのです!」

「はいはい、次からは気を付けるから背中を叩くな。ほら、温泉行くからついてこい」

「き、緊張しちゃいます……」

「少し歩くし、今から緊張してたら着く前に疲れるぞ? 転ばないように手繋ぐか?」

「手……繋ぎたいのです」

692: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 17:41:09.70 ID:NWgQzl/AO
――――沢沿いの露天風呂。

(出てこないな、電……)

「――お待たせしちゃいましたか?」

「女の子には色々準備があるんだろ? 男は基本早いから仕方無いさ」

「コレならあんまり恥ずかしくないのです」

「変な奴が居たら困るし、その辺はちゃんとチェックしてるに決まってるだろ」

 脱衣場で湯着を着用し、二人は合流する。提督も電の性格を考慮して、なるべく露出はしなくて済む混浴を選んでいたのだ。

「とりあえず入るか」

「はいなのです」

 周囲の景色を楽しみながら、二人は露天風呂へと身体をゆっくりと浸からせる。

「――ふぅ、良い感じだな」

「とっても温かくて気持ち良いのです」

「他に客も居ないし、寛げていい」

「司令官さんと二人っきり、嬉しいのです」

「こっち、来るか?」

「あの……その……はいなのです」

 一人分程空けていた距離を詰め、電は提督の横にピッタリとくっついた。鳥の囀りや木々の揺れる音を聞きながら、二人は暫しそのまま無言で過ごす。

「――電」

「何ですか、司令官さん」

「人、来たっぽい」

(胸の大きいお姉さんが二人なのです……)

「男じゃなくて良かったな」

「……あまり、良くはないですね」

「?」

「何でも無いのです!」

 ――わーあの子凄い可愛い!

 ――兄妹かな?

(やっぱり、電は妹に見えちゃうのですね……)

「――電、今はコレで我慢しろ」

「はにゃっ!? し、司令官さん!?」

 ――えっ?……今、頬にキスしてなかった……?

 ――見間違いじゃないの?

(司令官さんに、司令官さんに頬にキスされたのです……はぅっ)

「端から見たら犯罪者になんのか俺はやっぱり……ん?」

「はにゃー……」

「逆上せてる!? おい、しっかりしろ電! 電ー!」




――――司令官さん……大好き……なのです……。

 ――――(また来ような、次はお前が大きくなった時に)

695: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 20:06:28.67 ID:NWgQzl/AO
・曙『クソ提督と観覧車』、投下します

高校一年生程度の曙をご想像下さい

後、鈴谷は善意で教えただけです

696: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 20:08:33.43 ID:NWgQzl/AO
――――提督執務室。

「クソ提督!」

「曙、ノックはしなくていいがドアはゆっくり開けろ。誰かにぶつかったらどうする」

「あっ、うん、ごめん」

「よし。で、何だ?」

「行きたいところあるから連れてって」

「行きたいところ?」

「――大阪、行きたい」

――――大阪。

「何で大阪に来たかったんだ?」

「鈴谷さんにオススメの場所聞いたのよ」

「鈴谷に? 何のオススメだよ」

「べ、別に何だっていいじゃない」

(デートスポットに決まってんでしょこのクソ提督!)

「まぁ、行きたい場所があるならとりあえずそこに行くか。方向はどっちだ?」

「えっと、多分こっち」

「多分ってお前なぁ……。とにかく行くぞ」

「あっ……うん」

(手、今日はちゃんと何も言わずに繋いでくれた。えへへっ)

――――梅田、某観覧車。

「ここに、来たかったのか……?」

「クソ提督、ここ知ってるの?」

「まぁ、一応な」

(鈴谷、お前バレたら漣達にシメられるぞ絶対に……)

「早く乗るわよ、ほら」

「あっちょっと待て曙、今券買うから!」

697: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/06(日) 20:09:00.12 ID:NWgQzl/AO
――――観覧車内。

「へー結構眺めいいじゃない」

「かなりの範囲見渡せるからな」

「クソ提督は、前にも誰かと乗ったことあるの?」

「家族と昔乗ったには乗ったが、もう十年以上前の話だ」

「ふーん……そっか」

「それがどうかしたのか?」

「ううん、別に。――そろそろ、一番上ね」

「そうだな」

「あの、ね? クソ提督……その……」

(……定番っちゃ定番だし、曙がそれを望んでるなら、いいか)

「曙、こっち向け。そんなに時間無いぞ」

「えっ――んっ!?」

 ――ちゅっ、ちゅぱ。

「っ……んぅ……っはぁ、はぁ……ふぅ」

「おっと、大丈夫か?」

「大丈夫じゃ、ないわよぉ……頭、ボーっとするし……このっ、クソ提督ぅ……」

「そんだけ勢いの無いクソ提督は初めて聞いたな」

「……て」

「ん? どうした?」

「――もっと、して?」




――――写真も撮ってもらえるけど、いるか?

 ――――いるに決まってんじゃない! そんなの聞くんじゃないわよ、このクソ提督!

704: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/07(月) 10:06:12.46 ID:FPCLCHCAO
・翔鶴『二人寄り添いながら』、投下します

705: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/07(月) 10:07:27.95 ID:FPCLCHCAO
――――トロッコ列車。

「紅葉が綺麗ですね、提督」

「あぁ、綺麗だ」

 少し煤の臭いを感じながら、二人は窓の外の景色を眺める。赤と黄色の織り成す自然の芸術が、まるで絵画のように枠の向こうに広がっていた。

「私は昔から海とドックの内装ばかり見ていましたから、こういう景色がとても新鮮で、外出がいつも楽しみなんです。提督、色々な場所へと連れてきて下さって、本当に感謝しています」

「そう言ってもらえて何よりだ」

「今度、瑞鶴とも来てみたいわ」

 そう口にした彼女の横顔に、以前のような危うさは何処にも見受けられない。シスコンな部分は残っているものの、病的という程のものでは無くなっていた。

「――提督?」

「ん? 何だ?」

「この方が写真を撮って下さるそうですよ」

 ――撮った写真は後で販売も致しますので、良ければ是非。

「じゃあ旅の思い出にもなるし、撮ってもらうか」

「では、折角ですしこうしましょう」

 翔鶴は提督の腕に自分の腕を絡め、肩へともたれかかる。写真は口実であり、単純に彼女がそうしたかっただけというのは、その素早い動作から明白だ。

 ――撮りまーす……はい、ありがとうございましたー。

「――撮り終わったぞ」

「出来れば、このままずっと……いけませんか?」

「いけない理由が見当たらないな」

「ふふっ、“ここは譲れません”」

「加賀のマネか?」

「はい、瑞鶴もよくマネしていますよ。加賀さんに知られたら怒られそうですけど」

「口では怒ってても、多分内心喜んでると思うぞ。後、アイツが増えたみたいに感じるからやめてくれ」

「帰ったら、そうお伝えしておきますね」

「よし、願いを一つ叶えてやる。だからそれだけは絶対にやめろ」

「――何でも、いいの?」

 提督の腕にかかっている力が、急に強まる。彼女の胸の感触がより鮮明に感じられようになったが、今はそれどころではない。

「何でもは無理だ、叶えられる範囲でな」

「……でしたら、今日1日は私だけを見て下さい」

「……あぁ、元からそのつもりだ」

 窓から見える景色の様に赤く染まった翔鶴の顔を見ながら、提督は駅に着くまでの残りの時間を楽しむのだった。




――――提督、今、他の女性を見ていませんでしか?

 ――――翔鶴、痛い、血が止まる、見てない、見てないって!

708: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/07(月) 20:41:05.03 ID:FPCLCHCAO
・綾波『天然さんってよく言われますねー』、投下します

709: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/07(月) 20:42:22.42 ID:FPCLCHCAO
――――隣町。

「――? ここはどこでしょー?」

 ずっと雲を見ながら小一時間程歩いていた綾波。人にはぶつからず、障害物も全て避け、辿り着いたのは隣町。
 周囲に駅やバス停も見当たらず、とりあえずは来た道を戻ろうと振り返る。

「……綾波、どっちから来たんでしょうか」

 目の前には十字路。無意識に歩いていた為、来た方向など彼女は全く覚えていない。

「ちょっと困りましたねー」

 さして困ったようにも聞こえない声を出しながら、まずは真っ直ぐ行ってみようと綾波は歩き出す。

(あっそうだ。何方かに道を聞いて教えて頂きましょう)

 最初に見かけた人物に声をかけようと決め、ちょうど曲がり角を曲がってきた男性へと、彼女は少し早足で近付いた。

「あの、少々お尋ねしたいことがあるのですがー」

 ――何? どうしたの?

――――鎮守府。

「――また綾波が消えた?」

「うん、雑誌読んでる一瞬の間に」

「まぁ何時もの事だし、アイツなら心配いらないだろ」

「そりゃそうだけど、最近はちょっと違う問題があってさー……」

「失礼します。敷波、綾波が戻ってきたわ」

「そうか。良かったな、敷波――敷波?」

(これだけ帰りが早いってことは、またっぽいな……)

710: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/07(月) 20:44:22.66 ID:FPCLCHCAO
――――鎮守府入口。

「皆さん、ありがとうございましたー」

 ――いいよいいよ、気にしないで。

 ――また何かあったら駆け付けるから。

 ――困った時はそこにかけて、次に迷った時はすぐに車で迎えに行くよ。

「ありがとうございます。でも、知らない人の車には乗らないように言われていますから」

「そもそも知らない奴について行くんじゃないわよ。まーたこんなに男引き連れて帰って来て」

「あっ敷波、ただいまー」

「ただいまーじゃない! 毎回毎回勝手にどっか消えて、ちょっとは探すあたしの身にもなりなさいよね。っていうか携帯どうしたのよ」

「充電、切れちゃってました」

「はぁ……まぁ、いいや。そこの人達、この子ちゃんと保護者兼彼氏居るから、大人しく諦めて」

 ――綾波ちゃん彼氏居たの!?

 ――とてもそんな風には……。

 ――でも、食事に誘ったらいいって言ったよね?

「そういえばそうでした。敷波、この方が美味しいお店を教えて下さるそうなんです。司令官をお誘いして今度一緒に行きませんかー?」

「綾波、アンタねぇ……」




――――コレ持って出歩け、明石に作らせた発信器だ。俺か敷波がすぐに迎えに行く。

 ――――司令官は心配性なんですねぇ。

714: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/08(火) 01:31:58.00 ID:qfeTAvyAO
・電『二人で散歩なのです』、投下します

715: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/08(火) 01:32:32.10 ID:qfeTAvyAO
――――並木道。

「司令官さん、銀杏(いちょう)が綺麗ですね」

「銀杏(ぎんなん)食いたい」

「帰ったら茶碗蒸しをお作りしますから、今は花を見てくれませんか?」

「花を見ても腹は膨れん」

「身も蓋も無いことを言わないで欲しいのです……」

 少しからかいすぎたと、提督は電の頭を二、三度軽くポンと叩く。そして、ある事に気が付く。

「電、また背伸びたな」

「最近、暁が頭を頻繁に押さえに来るのです」

「とうとう三人に抜かれたからな、アイツ……」

「――ようやく、司令官さんの胸の辺りですね」

 電は前へと回り込み、自分の頭の上に置いた手を水平に提督の身体へと持っていく。以前にこうした時は鳩尾辺りだったので、約五センチ以上は伸びている計算になる。

「女の子は電ぐらいの時期が一番伸びやすいし、この調子なら俺の肩までぐらいはすぐに伸びると思うぞ」

「よく食べて、よく動いて、よく寝るのです」

「頼むから抜かさないでくれよ? 何人か俺より高い奴いるし、これ以上増えられると流石に悲しくなる」

「大丈夫なのです。電は司令官さんに抱き締められたらすっぽり埋まる程度の身長を目指しているのです」

 それは狙ってどうにかなるものなのかと心の中でツッコミを入れながら、提督は電とズレかけた歩調を合わせる。後ろ向きに歩くのを注意しようかと考えるも、銀杏の花が舞う中で満面の笑みを自分に向ける少女を見ていると無粋に思えてきて、彼は口を噤(つぐ)んだ。

「少しずつ、少しずつ、司令官さんと目線の高さが合ってくるのが、電はとても嬉しいのです」

「……そうか」

「はいなのです」

 真っ直ぐに向けられる好意。それは重くはなく、ただ優しく、暖かい。
 ――ふと、視界の端に良さそうな屋台を見付け、提督はその存在に気付いていないであろう少女に伝えようと口を開く。

「――なぁ、あそこにクレープの屋台があるけど、食べるか?」

「クレープ! 食べたいので――はにゃっ!?」

「電!?」

 方向転換をしようとして失敗し、足をもつれさせた電。それを助けようと、提督は必死に手を伸ばして支えようとするのだった。




――――司令官さん? 大丈夫ですか?

 ――――(コイツの身体能力忘れてた……俺が滑って転ぶとか情けねぇ……)

724: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/09(水) 07:58:39.13 ID:3B1H+fKAO
・あきつ丸『提督殿、儚いでありますな』、投下します

725: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/09(水) 07:59:41.98 ID:3B1H+fKAO
――――海辺。

「提督殿、どっちが長く線香花火を落とさずいられるか勝負であります」

「何か賭けるのか?」

「勝ったら抱き締めるであります。負けたら抱き締めていいであります」

「それじゃ賭けになってないだろ……」

「不満でありますか?」

「別に賭けなくても後でしてやるから、今は普通に楽しめ」

「了解であります」

 同時に火を着け、線香花火の放つ小さな音と光を、暫し無言で二人は楽しむ。

「――――あっ」

「お前のが先に落ちたな」

「……提督殿」

「何だ?」

「儚いでありますな、線香花火というのは」

 あきつ丸は下を向いており、提督からは帽子に隠れたその表情を窺い知る事が出来ない。しかし、その声音から何を考えているか推察することは可能だった。

「――火を着けなきゃ、湿気ってそのまま捨てられる。自分の役目を全う出来るっていうのは、儚いか?」

「それは、名誉なことだと思うであります」

「風ですぐに落ちたり、上手く燃えなかったりもするが、それも役目を果たそうとした結果だ。俺は、線香花火を儚いとは思わない」

「……提督殿は、やはり変わっているでありますな」

「俺は至ってまとも――いや、まともじゃないな」

 鎮守府の現状を鑑みると、どう考えても提督はまともとは言い難い。その事実を改めて意識し、眉間に皺を寄せる彼を見て、あきつ丸は少し苦笑しながら口を開く。

「憲兵のバイトをしていると、記録として“轟沈”や“死亡”という単語を目にする機会が多くなったであります。彼女達の中には、命の灯火を踏みにじるように消された者や、名誉を汚された挙げ句、役目とは無関係な死を与えられた者も居たであります」

「……だろうな」

「自分は……自分は今、幸せであります。しかし、彼女達の事を考える度、どうしようもなく胸が痛む……」

「――だから、お前は憲兵を続けているんだろ? なら、それ以上気に病むな。必死に悲しみを減らそうと努力してるお前が笑えないんじゃ、意味がない」

「提督殿……」

「ほら、まだまだ花火はあるんだからやるぞ。湿っぽいのはコレで終わりだ」

「――了解であります」




――――負けたので抱き締めていいであります。

 ――――もう既に抱き着いてんじゃねえか……。

726: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/09(水) 11:38:02.39 ID:3B1H+fKAO
・衣笠『提督、私って遅れてる……?』、投下します

727: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/09(水) 11:38:28.24 ID:3B1H+fKAO
――――提督執務室。

「衣笠、悩みってのは何だ?」

「青葉にね、“衣笠のセンスや使う言葉は一昔前のでちょっと古いんですよねぇ”って言われたの。ねぇ、提督もそう思う?」

「あぁ、古い」

「即答!?」

「アフターファイブなんて言葉、俺の世代ですら基本的に知らんぞ。そもそもお前、どっからそんな言葉知ったんだよ」

「艦娘になった時から何故か知識として頭の中にあったんだけど……」

(そもそも艦娘自体が謎だから良く分からんが、コイツだけ時間軸間違えて情報を与えられたのか?)

「チョベリバとかナウいも死語?」

「使うな、絶対に使うな」

「……提督、こんな子は嫌い?」

「そんなことで嫌う訳無いだろ。まぁ、記事書く時に使わないように気を付ければ、特に問題はないんじゃないか?」

「そうよね、死語っぽいのを使わなければいいだけの話よね。ありがと、提督」

「話がそれで終わりなら、そろそろ昼飯作ってくれ」

「はーい」

728: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/09(水) 11:39:39.83 ID:3B1H+fKAO
――――同日、夕方。

「――ふぅ、ご馳走さん」

「どう? 美味しかった?」

「あぁ、美味かった。うちは料理できる艦娘が多くて助かる」

「提督が喜んで食べてくれるからだよ。あなたに“美味しい”って言ってもらう為なら、皆張り切っちゃうもん」

「そんなに舌が肥えてる訳でもないし、大抵美味いって言うぞ?」

「もっともーっと喜んでもらいたいの。皆飽きられないようにレシピ改良したり、メニュー自分で考えたりしてるんだからね」

「……衣笠、試作した料理って自分で普通食べるよな」

「うん、それがどうかしたの?」

「腹、少し出てきてないか?」

「ちょっ、あの、触るのはいいけど、お腹はつままないでくれます……? 提督こそデスクワークばっかりだから、ちょっとお腹が出て――ない」

「結構運動してるからな、むしろ前より痩せた」

「へー、そうなんだ。っていうか提督、そろそろお腹つまむのやめてよね」

「あぁ、すまんすまん」

「最近ずっと記事書くのに部屋に籠ってたし、コレはきっとそのせいなんだからね!」

「別に悪いとは言ってないだろ、その程度なら普通だ」

「――提督。運動、付き合ってくれる?」

(……痩せる一方だな、こりゃ)




――――どう? ボン、キュッ、ボンのナイスバディーでしょ?

 ――――それも死語だ。

745: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/09(水) 22:05:44.28 ID:3B1H+fKAO
・駆逐艦s『あえて長門に自分から抱き着いてみる』、投下します

どっかの猫と鼠の関係っぽく……

746: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/09(水) 22:06:11.89 ID:3B1H+fKAO
――――鎮守府内、某所。

「今度こそ、今度こそ長門を……!」

「アンタもよぅやるなぁ、そんなに構ってもらえんくなったんが不満なん?」

「素直じゃないわねー陽炎ってば」

「黒潮も村雨もちょっと黙ってて」

「あの、私は別に仕返しとかはしたくないので、もう部屋に戻ってもいいでしょうか……?」

「私も、部屋でゲームしたい……」

「ダメよ、アンタ達にも協力してもらうわ」

「具体的にはどうするん?」

「作戦はこうよ、まずは完全に油断させる為に――」

747: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/09(水) 22:06:42.32 ID:3B1H+fKAO
――――鎮守府内、廊下。

(毎日見回りだけというのも、案外疲れるものだな……)

「――あの、長門さん」

「む? 磯波が私に話しかけてくるなど珍しいな。まさか、駆逐艦娘を狙う不審者が現れたのか!?」

「いえ、あの、その……えいっ」

(――何、だと……?)

「ひ、日頃の感謝の気持ちです」

「あ、いや、私は当然の事をしているに過ぎない」

(磯波は自分から抱き着いてくるような、積極的な子では無かったはず……ようやく、ようやくこの長門の思いが通じたのか)

「私も、えいっ」

「む? 初雪もか?」

「うん」

(二人も私に自分から……胸が熱いな)

「長門はん、うちも感謝してるんよ」

「はいはーい、村雨も感謝してるわ」

「お前達……」

「長門さん、大好きです」

「長門さん、好きです」

「長門はん、好きやで」

「長門さん、好・き・よ」

「――この長門、今改めてこの場で誓おう。生涯お前達は私が守る!」

(私達が成長しても、この調子なんでしょうか……?)

(ちょっと、怖い)

(陽炎はこんなんのどこがえぇんやろなぁ)

(そろそろかしら? こっちはスタンバイOKよ!)

「よし、今日はお前達を何処かに食事に連れていって――」

「長門! 覚悟ぉぉぉぉぉっ!」

「ふんっ!」

「……アレ?」

「陽炎、感謝の意を素直に表せない故の後頭部へのジャンピングニー、しかと受け止めたぞ」

「えっ、いや、そんなつもりじゃ……」

「思えば、お前とは何度も楽しい追いかけっこをしたものだ。今、お前から感謝されるというのは、とても胸が熱くなる」

「私は楽しくなんて無かったわよ! 大体何よ、最近は文月ばっかり構ってて、全然私達を追いかけなくなったじゃない!」

「陽炎、本音出とるでー」

「そうか……寂しい思いをさせて済まなかったな、今度は陽炎も一緒に出掛けようじゃないか。無論、追いかけっこもまたやろう」

「べ、別に私は寂しくなんて無いわよ。……ただ、ちょっと最近つまんなかったってだけ」

(私、何のために付き合わされたんでしょうか……)

(部屋、戻ろ)

(青葉さんに教えに行っちゃおっかな)

(何や面白い事になったなぁ、暫くは面白くなりそうや)

748: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/09(水) 22:07:19.44 ID:3B1H+fKAO
――――ちょっとアンタ仕事はどうしたのよ!?

 ――――武蔵に代理を頼んだ! 今日はお前達と追いかけっこだ!

――――真面目に働けバカ長門! こっち来んなぁぁぁぁ!

752: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/10(木) 02:36:41.81 ID:GPhG0WGAO
・ビスマルク『いいから誉めなさい!』、投下します

753: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/10(木) 02:37:43.53 ID:GPhG0WGAO
――――提督執務室。

「提督、また売り上げが伸びたわ」

「そうか、頑張ってるなビスマルク」

「――それだけなの?」

 物凄く不満気なビスマルク。出撃や演習、遠征も無くなった今、彼女が提督に求めているモノを得る為には、店を繁盛させて利益を上げるのが一番だ。
 その努力の成果報告をさらりと流されたとあっては、黙って話を終わらせられるはずもない。

「この私が毎日朝から晩までパンを焼いて、新しいメニューを試行錯誤しながら寝る間も惜しんで頑張ったのよ?」

「ちゃんと寝ろ、身体壊したらどうする」

「ごめんなさい、毎日八時間は睡眠を取るようにするわ」

「ん、ならいい」

(ちゃんと今でも、体調の心配はキッチリしてくれるのね……)

 過去に張り切り過ぎて体調を崩した時の事を思い出し、ビスマルクは目の前の想い人を見つめながら笑みを浮かべる。

「――ってそうじゃないわ。それだけ頑張ったのよ? もっと他に何か無いの?」

「何かって、何だ?」

「誉めなさい」

「頑張ったな」

「足りないわ」

「偉いぞ」

「言葉だけで済ませる気?」

「なら、具体的にどうして欲しいか言え」

 提督もバカではない。最初からビスマルクが何を求めているのかは分かっている。
 それでもこうやってわざと分からないフリをしているのは、仕事が無くて単純に手持ちぶさたなのと、彼女の反応を楽しんでいるからだ。

「そうね、誉める時は頭を撫でるのがドイツ軍では一般的だったわ」

(真顔でとんでもない嘘吐くなコイツ……)

「どうしたの? 早く誉めなさい」

「犬を飼うってのは、こんな気分なのかもしれんな」

「犬の話なんか今はどうでもいいわ」

「分かってるからちょっと待て――ほら、コレでいいのか?」

「……Sehr gut.」

「そうか、そりゃ良かった」

 とても幸せそうに目を瞑りながら、ビスマルクは明日からまた働く為の活力を補給する。その姿を見て、提督もまた頑張ろうという活力をもらう。
 お互いに幸せな時間は、そのまま一時間程続くのだった。




――――それじゃあ次はご飯を食べさせてね?


 ――――(やっぱり犬っぽいな……)

755: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/10(木) 11:00:31.13 ID:GPhG0WGAO
・那智&足柄『どういう方向性になるか』、投下します


756: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/10(木) 11:02:06.53 ID:GPhG0WGAO
――――居酒屋鳳翔。

「妙高姉さん、改二になって前より綺麗になってたわね」

「そうだな、羽黒も改二になって更に可愛らしくなった」

「……私達も改二に、いつかはなれるはずよね?」

「……そう願いたいものだ」

「那智姉さんは改二でどうなりたい?」

「私か? 特にコレといってないが……強いて挙げるとすれば、火力を重視した改造だと有難い」

「それは何でなの?」

「自分が一番姉妹艦の中で火力が高い事を、羽黒が気にしていてるというのを耳にしたのでな」

(あの子ってば、そんなこと気にする必要無いのに……)

「足柄、お前はどうなんだ?」

「私? 狼っぽくなれたらいいわね」

「四足で航行するのか?」

「流石にそれはちょっと嫌だわ……」

「――お前には、装甲重視の改造が最適だな」

「どうして?」

「もし仮にまた戦いが始まったら、お前は必ず突撃する。……私も妙高姉さん程ではないが、心配性になってしまったようだ」

「那智姉さんも前から心配性よ」

「ふっ……そうかもしれんな」

「――もう一杯、どうですか?」

「頂こう」

「私も頂くわ」




――――二人とも改二になったら、次は四人で飲もう。

 ――――いいわね、今から楽しみだわ。

757: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/10(木) 19:15:29.71 ID:GPhG0WGAO
・夕立改二『今度は大鳳さんと提督さんも連れて、ぽいもの探すっぽい!』、投下します

758: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/10(木) 19:16:05.62 ID:GPhG0WGAO
――――提督執務室。

「提督さん提督さん、一緒にぽいもの探すっぽい!」

「……どういうことだ?」

「言葉通り、そのままの意味です」

 説明を求める提督の視線に、大鳳は説明など不要だと返す。事実、わざわざ説明するまでもないことだ。

「そうか。後、何で大鳳が一緒なのかも気になったんだが、それも説明はしてもらえないのか?」

「前に探すのに付き合ったから、今回も一緒に回ろうと誘われたんです。夕立の秘書艦日だから遠慮しようかとも思ったのだけど……」

「大鳳さんも一緒の方が楽しいっぽい!」

 二人の腕を引っ張り楽しそうにしている夕立。その笑顔を見て、大鳳が断れるはずもない。

「まぁ当の本人が良いって言ってるんだし、三人で行くか」

「三人寄ればもんじゃ焼きっぽい?」

「使う場面を間違えているし、それを言うなら文殊の知恵よ?」

759: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/10(木) 19:17:58.74 ID:GPhG0WGAO
――――鎮守府内、廊下。

「男の子っぽい」

「僕は女の子だよ」

「そうだぞ夕立、レーベはウィッグを付けてメイド服を着たら間違えようが無いぐらい可愛い――」

「わー! わー! その話はやめてよ! 絶対に内緒にしてってあんなにお願いしたのに酷いよ!」

「隠す必要も無いだろ」

「レーベ、顔真っ赤っぽい」

(写真は無いのかしら……)

――――工厰。

「ガラクタ置き場っぽい」

「ガラクタって言わないでよ。廃棄に困った危険物を置いてるだけなんだから」

「なおさら悪いわ!」

「夕張、いい加減処分したら?」

「運ぼうとすると、五月雨ちゃんが何故か必ず遊びに来ちゃうのよ……」

「五月雨はドジっ娘」

(夕立が言い切ったですって!?)

――――空母寮。

「まない――むぐっ?」

「傷を抉るのはやめてやれ。お前も十分大きい部類に入る」

(AはセーフAはセーフAはセーフ……)

「……キミ等、考えてる事丸分かりやで?」

――――???

「……何かのコレクション部屋っぽい?」

「ここはダメだ。他の場所に行こう」

「えぇ、その方が良さそうだわ」

「――見たのね?」

「っ!? 大鳳、後は任せた。夕立、来い!」

「逃げるっぽーい!」

「二人とも待って! 私を置いていかないで!」

「別に逃げなくても何もしないわ。ただ、少し中で話をするだけよ」

「だ、誰か助けてぇぇぇ……」

760: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/10(木) 19:19:18.05 ID:GPhG0WGAO
――――提督執務室。

「はぁ、はぁ……ふぅー……夕立、良い子だからあの部屋で見たモノは忘れろ。アレは加賀の数少ない趣味だから」

「分かったっぽい」

(大鳳、すまん。今度埋め合わせはするから許せ……)

「んーと、んーと……」

「ん? どうした夕立、何を悩んでるんだ?」

「――提督さんは、お日様っぽい」

 夕立は提督の服を掴みながら、顔を見上げる。いつもの無邪気さは成りを潜めており、少し大人びた顔をしていた。

「何で俺がお日様っぽいんだ?」

「一緒に居るとね、胸の奥の方が暖かいの。それにね、提督さんが居ると皆笑顔になるの」

「……そっか、ありがとな、夕立」

「? 提督さんがお礼を夕立に言うのはおかしいっぽい?」

「いいんだよ、言いたいんだから」

「変な提督さん」

「変とか言うとギュッとしてやらんぞ?」

「それはひどいっぽい! おーぼーっぽい!」

(頬を膨らませて怒るとか、まだまだ子供っぽいな)

 まだまだ幼く、少女と呼ぶのが相応しい夕立。しかし、その無邪気さ故に、提督が彼女をよりいとおしく感じているのも確かだ。

「撫でたりギュッてして欲しいっぽいー!」

「ちょっ、待て、本気で叩くな! どっちもしてやるから!」

「ホント? えへへ、提督さん大好き」

(太陽か……それなら俺より、夕立の方が似合うと思うんだがな)

 胸に頭を擦り付けている夕立の頭を撫でながら、提督はそんなことを考えるのだった。




――――二人とも、私を置いて逃げるなんて酷いわ!

 ――――夕立は提督さんに従っただけっぽい?

  ――――(意外に元気そうだな)

767: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/12(土) 11:27:58.08 ID:nJpOTjaqO
・那珂『生ライブ? テレビ放送?』、投下します

遅くなった上にライブ要素少なくてすいません……

768: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/12(土) 11:29:46.39 ID:nJpOTjaqO
――――提督執務室。

「提督! ビッグニュースビッグニュース!」

「お前ちょっとは自分の声量考えろ。耳がキンキンする……」

「そんなことより凄いんだよ! 那珂ちゃんのライブが生中継されるんだよ!」

「もう知ってる。ここの最高責任者である俺が知らないとでも思ったか?」

「あっ、加賀さんが基本的に取り仕切ってるから忘れてた」

「人をお飾りみたいに言うな。で、それだけ言いに来たなら帰れ」

「もう、分かってるク・セ・に。今日は那珂ちゃんが提督だけのアイドルになる日だよ、きゃはっ」

「……疲れるから今日はアイドル引退してみないか?」

「そんなことしたら那珂ちゃんのアイデンティティーが崩壊しちゃうよ!?」

769: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/12(土) 11:30:48.12 ID:nJpOTjaqO
――――ライブステージ。

「皆ー! 今日も来てくれてありがとー!」

 ――今日も可愛いよー!

 ――神通ちゃんはー?

 ――川内ちゃんは今日出るのー?

「二人は今日ちょっと色々忙しいから難しいかなー?」

 ――那珂ちゃんだけとか失望しました、那珂ちゃんのファン辞めます!

「那珂ちゃんのライブなのに!?」

 ――嘘だよー! 那珂ちゃん最高ー!

「ありがとー! でねでね、今日は何とねーテレビ中継が来てるんだよー!」

 ――ホントだ、撮影機材あるじゃん。

 ――那珂ちゃん生ライブ中継おめでとー!

「これも皆の応援のお陰だよ、ありがとー! それと、今日はまだ後もう一つ知って欲しい事があるの」

 一般観客席とは少し離れた位置にあるVIP席。そこに座る人物が那珂の合図と共に、巨大なスクリーンへと映し出された。

「ライブを見てくれてる皆ー! この人が那珂ちゃんの提督だよー!」

(こんな演出あるなんて俺は聞いてないぞ!?)

 鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で、スクリーンに映る提督。かなり間抜けだ。

「提督に酷いことする人はー那珂ちゃん許さないぞー?」

(そんな大々的にアピールされたら街中で刺されそうで怖いんだがなぁ……)

 ――羨ましいぞこの野郎ー!

 ――爆発しなくていいから那珂ちゃん大事にしろー!

 多少の妬みはあるものの、提督への声援が飛び交う。最初から理解してこの場にいる者しか居らず、彼に何かすれば那珂が悲しむと正常に判断できているからだ。

「じゃあ那珂ちゃんのファン第一号の紹介も終わったところで、一曲目いっくよー! 『艦娘だって恋がしたい!』」

(ファン第一号とかやめろぉぉぉぉっ!?)

770: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/12(土) 11:32:17.92 ID:nJpOTjaqO
――――ライブ中。

(俺、提督だったはずだよなぁ……)

「皆ー! まだまだ行くよー!」

「おー!」

 ――おー!

「次の曲は『シスターズ』だよ! お姉ちゃん達ステージに来てー!」

 最初に出ないようなトークがあったが、テレビ局からの要望で急遽出るハメになり、二人がステージに上がる。

(会場の熱気が更に増したな、アイツ等もやっぱり人気あるのか……)

「夜戦忍者参上ー!」

「よろしくお願いします」

 挨拶もそこそこに、曲が流れ始める。
 三人同時にステージに上がるのはこの曲だけであり、会場も大いに盛り上がる。

(流石だ、息ピッタリだな)

「川内お姉ちゃん、神通お姉ちゃん!」

「任せて!」

「行きます!」

 照明の落ちた暗いステージ上。
 唯一の光源である神通の探照灯の光の中で、川内と那珂がダンスを披露する。

(……ライブステージの拡張、考えんといかんな)

 新しい生き方をしっかりと見付けた三人。その輝く笑顔を見ながら、提督は明石へ頼む拡張工事の計画書を頭の中で組み立てるのだった。



――――次は二千人入るからな。

 ――――ホントに!? 提督ありがとー!

――――だから声のデカさを考えろ!

771: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/12(土) 12:32:19.56 ID:ibY6TAvIO
飛鷹『短冊にかける願い』、投下します

772: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/12(土) 12:33:06.88 ID:S5gMUgkN0
――――鎮守府中庭。

「短冊か……何を書いていいものやら」

「別に悩まなくても、提督の願いをそのまま書けばいいじゃない」

「そういう飛鷹はどうなんだよ、書くこと決まってんのか?」

「私はとっくに決まってるわ」

「教えろ」

「自己紹介の時に出雲丸って二度と言い間違えませんように」

「それ、短冊に書く願い事か……?」

「何を書こうと私の勝手でしょ、文句ある?」

「もっと美味い酒が飲みたいとか、もっと宴会したいとか、色々あるだろ」

「隼鷹も私も、そんなこと短冊に願ったりしないわよ」

「さっきのも大概だとは思うがな」

「私のを気にする暇があったら、提督は自分の短冊に何を書くか早く考えたらどう?」

「……実は決めてるんだが、あまりお前等に見られたくない」

「へぇー、書いたら見せて」

「お前人の話聞いてたか?」

「聞いてたわよ? でも、どうせ皆提督のはチェックするし、隠しても意味ないって」

「はぁ……分かったよ。その代わり、俺もお前等の見ていいってことだよな?」

「乙女の秘密覗き見るとか最低ね」

「提督だからいいんだよ」

「それ、どんな理屈よ……」

「――よし、書けた」

「●●●な事とか書いてないわよね?」

「そんなもん短冊に飾れるかアホ! 見たきゃ勝手に見ろ」

(‘全員が幸せでいられますように’、か……。提督らしいわね)

「見たら返せ、飾るついでに全員のを見てくる」

「はいはい、行ってらっしゃい」

(私のは後から飾るし、これなら見られなくて済むわね)




――――‘提督の願いが叶いますように’。

776: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/13(日) 03:26:21.89 ID:38ozNYD+O
・メカ夕張『私が秘書艦?』、投下します

777: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/13(日) 03:30:11.54 ID:38ozNYD+O
――――提督執務室。

「おはよう夕張」

「おはようございます、提督」

「――また実験か?」

 眉間に皺を寄せ、提督は目の前に居る相手からドアへと視線を移す。しかし、一向にそれが開かれる気配はない。

「メカ夕張、夕張はどうした?」

「マスターは連日の徹夜で体調を崩し、今は自室で寝ておられます」

「……お前がここに居るのは、心配をかけさせない為か?」

「いえ、ついでだから提督と一日過ごして、データを収集してこいと仰せつかりました」

 その返答を聞き、提督は執務机に顔を埋めそうな程ガックリと項垂れ、深く溜め息を吐いた。

「そんな事を頼む余裕があるなら、本当にただの寝不足なんだろうな」

「はい、明石様もそう仰っていました」

「次の秘書艦日は説教してやらんといかんな。一応秘書艦も立派な仕事だってこと、アイツ忘れてんだろ……」

 提督と一日一緒に過ごすだけが、秘書艦日ではない。ちゃんと業務補佐という役割もあるのだ。

「提督は、私が仕事を補佐するのではご不満でしょうか?」

「いや、不満とかそういう訳じゃない。ただ、ちょっと段取りが狂ったからムカついただけだ」

「マスターに、ですか?」

「あぁ、せっかく人が買って来たってのに、渡すタイミング逃したんでな……」

 提督の手には、綺麗に包装された箱が握られていた。中には、緑のリボンが入っている。

「――メカ夕張、そのリボンって夕張のを貰ったのか?」

「はい、マスターの物です」

「そうか、じゃあコレはお前にやる」

「よいのですか? コレはマスターへ贈る予定の物では……」

「来ない奴に渡すぐらいなら、来てる奴にやる。命令だ、受け取れ」

「――はい、了解しました」

778: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/13(日) 03:31:36.38 ID:38ozNYD+O
――――翌日、工厰。

「どうだった?」

「提督の事はよく分かりませんでした……。ただ、不明なバグのようなものが、胸の機関部に発生しています」

「へー……じゃあ、徹夜でメンテナンスした甲斐はあったわね」

「このバグは、メンテナンスに何処か不備があったからなのでは?」

「ううん、そうじゃないわ。むしろ成功の証だわ」

「よく分かりませんが、おめでとうございます、マスター」




――――乙女回路なんて、本当に出来ちゃうものなのね。

790: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/14(月) 08:28:07.85 ID:0ZAjRSSAO
・青葉『青葉のカモフラージュは完璧です!』、投下します

791: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/14(月) 08:28:35.16 ID:ADx9lknA0
――――深夜、街中。

(これで準備はバッチリですね)

 歩道と車道を隔てる生け垣の中で、青葉は張り込みの準備を終える。
 夜明けにもまだ少し早く、辺りは静寂に包まれていた。

(こうしてると、昔の作戦を思い出しちゃいます)

 服と肌が露出している部分を全て迷彩模様に塗り、更にその上から枝や葉で装飾。
 パッと見ただけでは、そこに青葉が居ることなど分かろうはずもない。

(ではでは少し仮眠を取って、来るべき時に備えましょう)

 体育座りのような体勢で、彼女は浅い眠りについた。目的の人物が現れるであろう時間は昼だ。

――――昼、同場所。

(事前リサーチが確かならば、今日現れるはずなんですが……)

 ジッと息を潜め、自分が生け垣に居ると悟られないよう、細心の注意を払う。
 待っているのは警戒心の塊のような人物の為、他の誰かにバレた時点で作戦は失敗となる。

(あの噂が本当だとすると、取材のしがいがありそうですねぇ)

 青葉がこれだけの事をする値打ちのあるスクープの対象というと、自然と候補が絞られてくる。

(――来た来た、来ましたよ!)

「……」

 普段と変わらぬ表情で、周囲を注意深く観察しながら歩く、私服姿の最強の正規空母。
 髪を下し多少印象は変わっているが、それは間違いなく彼女の待っていた目的の人物だ。

(……)

 距離はおよそ二十メートル、気付かれればお仕置きコースは避けられない。
 青葉は額から頬へと嫌な汗が伝うのを感じ、生唾を飲み込む。そして、その緊張から解放される瞬間が遂に訪れた。

(――よし、店に入りました!)

 写真にその様子を収め、突入するタイミングを見計らう。
 加賀が店に入って三分後、意を決して彼女はその店の中へと飛び込んでいくのだった。

「ども、恐縮です、青葉です。加賀さんの御趣味についての取材申請に来ました!」

「……貴女の事ですから、ここで口を封じても既に写真のデータなどはどこかへ送ってあるのでしょうね」

「ご理解がお早くて助かります。でも、青葉は皆さんに加賀さんの可愛い一面を知ってもらいたいだけで、脅す気はこれっぽっちもありませんよ?」

「――そう、ならそこまで完璧にカモフラージュした努力に免じて、取材に協力してあげるわ」

「ありがとうございます!」




――――ぷちねんどろいど、お好きなんですねー。

 ――――集めて並べていると、気分が高揚します。

794: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/15(火) 10:30:09.20 ID:9/tiIpi2O
・第六駆逐隊『流れるプール』、投下します

暁は黒のセパレート
響は白のモノキニにパレオ
雷はトップがビキニタイプで下はホットパンツ
電はビキニにシャツ

795: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/15(火) 10:31:05.51 ID:mKlivWrN0
――――プール。

「いーい? 三人とも、ちゃんと暁からはぐれないようにするのよ?」

「了解。飛び込み台へ行ってくる」

「ちょっと泳いできまーす」

「ウォータースライダーに行ってくるのです」

「ちょっと! いきなりバラバラに行動しないでよ!」

「冗談だよ」

「暁を置いて行くわけないじゃない」

「一緒に回るのです」

「べ、別に一人だと寂しいとか思ってないんだから……」

(自分から暴露してるね)

(暁には私がついていてあげないとダメね)

(四人でプール、いっぱい遊ぶのです!)

――――飛び込み台。

(ここここ怖くなんてななななないんだから!)

 ――暁、怖かったら降りてきてもいいよ。

 ――そうよ、失敗したらケガしちゃうわ!

 ――意地を張っちゃダメですよ?

「ひ、響が飛び込めたんだから暁だって!」

 五分後、降りれなくなり係員に下まで連れてきてもらいました。

――――ウォータースライダー。

「電、二人でアレに乗って滑ろう」

「はいなのです」

「暁は私と乗りましょ」

「一人前のレディーは一人でも大丈夫だけど、雷がそう言うならそうするわ」

――――滑降中。

(いい感じだな、嫌いじゃない)

(とっても楽しいのです!)

(後ろから悲鳴が聞こえたけど、大丈夫なのかしら……)

(早く下に着いてー!)

――――流れるプール。

「少しここでゆっくりしよう」

「プカプカ浮いているだけでも楽しいのです」

「――アレ? 暁は?」

「……流されているうちに、どうやらはぐれたみたいだ」




「三人ともどこよぉ……暁を一人にしないでよぉ……」

816: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/15(火) 22:18:12.96 ID:9/tiIpi2O
・一航戦『流しそうめんとは流さなければいけないのですね』、投下します

メカ夕張のは乙女回路と乙女プラグイン両方頭に思い浮かべてました

817: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/15(火) 22:19:52.03 ID:9/tiIpi2O
――――鎮守府、食堂裏手。

「流しそうめんは位置取りが重要と聞きました」

「では、私は提督の隣に」

「よし、他の奴等はあっちの自動流しそうめん装置で食え。ここはもうダメだ」

 上流に陣取った赤城を見て、提督は早々に他の集まっているメンバーを別の所に避難させた。
 それを見て彼女はすぐに場所を移動し、加賀と彼を挟むように陣取る。

「お前なぁ……」

「何か問題がありますか?」

「俺にも食えるようにしろ」

「失礼ですね、私だってちゃんとマナーは守ります」

「マナーもですが、飲食の上限料金も守って下さい」

「次七桁食ったらグラビア写真な」

「グラビア……? キャビアとは違うのですか?」

 食の為なら本気で脱ぐかもしれないと思い、提督はそれ以上口にするのを止める。
 ふと視線を移せば、間宮がそうめんを大鯨とポリバケツで運んで来るのが見え、改めて一食の量の多さを彼は痛感した。

「あのまま食べたいですね」

「ポリバケツからは流石にやめてください、せめてタライで」

「タライなら守れるのか、お前等の誇りは……」

「流しますよー!」

「一航戦赤城、食べ尽くします!」

「一航戦加賀、食べさせます」

「どっちも待て、二重の意味でゆっくり食わせろ」

 開始の合図と共に聞こえた、不吉な二つの言葉。
 提督の心からの願いは無視される定めらしく、二人の視線は既に流れてくるそうめんにロックオンされている。

(彩雲で上空から偵察し、最適な箸の角度を計算――ここだわ!)

「水飛沫を上げながらすくうなアホ! お前は鮭捕るクマか!」

「提督、口を開けて下さい」

「加賀は俺の箸を妨害してすくうのをやめろ」

「間宮さん、早く次をお願いします」

「口を開けないと無理矢理ねじ込みますよ? あーんして下さい」

「コレ、流しそうめんの意味あんのか?」

「楽しいですよ。はい、私も提督に食べさせてあげますね」

「お前は頼むから自分で食べてくれ。何か毛糸の玉みたいになってるけど、それどうやってすくったんだよ……」

「――頭にきました」

「痛っ!? 足を踏むな、足を!」

「食べてくれないと足を踏むクセがあるの、ごめんなさいね」

「もぐもぐ、次をすくったのでこちらをどうぞ」

「俺にも流しそうめん気分を体感させろー!」

818: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/15(火) 22:21:14.11 ID:9/tiIpi2O
――――教訓、そうめんで人は殺せる……。

 ――――喉に詰まらせるなんて、咀嚼力の鍛え方が足りませんよ提督。

  ――――(たくさんあーん出来たので満足です)

831: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:19:54.49 ID:rieXlzg7O
提督『鎮守府が全壊の危機』、投下します

もっと泥酔成分多くした方が良かったかも…

832: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:20:25.90 ID:rieXlzg7O
――――提督執務室。

(あのメンバーで宴会をさせたの、やっぱり失敗だったかもしれんな……)

 珍しく執務室に一人の提督。秘書艦である電が今、その宴会の様子を見に行っている為だ。

「待機組と戦艦と大鳳……そもそも大鳳が居る時点で不安だ……」

 ノンアルコール以外は飲むなと厳命した為、彼女が自分から飲むことはまず無いが、飲まされる可能性はある。
 女同士で積もる話もあるからと押し切られ許可したものの、今になって提督の胸に不安が込み上げて来ていた。

「――提督!」

「どうした大鯨、宴会の給仕やってたんじゃないのか?」

 慌てた様子で執務室に飛び込んできた大鯨。今日の宴会で食事や酒を用意しているのは彼女だ。

「そ、それが――」




「“艦娘殺し”を皆さんが飲んじゃったんです!」




 “艦娘殺し”、明石と間宮が共同で醸造した酒。それを飲んだ艦娘は必ず、気分が高揚しながら酔っ払ってしまう。

833: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:20:54.38 ID:rieXlzg7O
――――宴会場、跡地。

「何だ、こりゃ……」

 百人は優に入る宴会場があった場所。今は、爆弾で木っ端微塵に吹き飛ばされたかの如く、跡形も残っていない。

「あの、すいませんすいません! わたしが間違えてお酒出しちゃっせいでこんなことに……」

「いや、お前のせいじゃないから気にするな。許可した俺の責任だ……」

「皆さん、何処に行ってしまったんでしょうか?」

「さぁな――大鯨、もしもの場合を考えて、お前に頼みたいことがある」

「は、はい。何でしょうかあ?」

834: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:21:29.13 ID:rieXlzg7O
――――半壊した駆逐艦寮。

「全員無事か!?」

「あぁ提督さんか。姉さんがまた暴走しとったけど、ほれ、この通りじゃ」

「ふへへー……うりゃかじぇー……」

「……まぁ、何も言うまい」

 浦風の膝に頭を乗せ、幸せそうに眠る大鳳。
 流石に起こす気にはなれず、提督は踵を返し、違う場所へと向かおうとする。
 その背を追い、一人の駆逐艦娘が走りよった。

「司令官」

「ヴェールヌイか、どうした?」

「さっき電らしき人影が工厰に向かうのを見かけたよ。司令官と一緒に居ないということは、見間違いじゃなさそうだ」

「工厰……? 分かった、すぐに行ってみる」

「私も協力するよ。大鳳以外は一筋縄じゃいかないメンバーみたいだしね」

「頼む」

「了解」

835: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:22:00.08 ID:rieXlzg7O
――――工厰。

「夕張、メカ夕張! どこだ!」

「――司令官、あそこだ」

 工厰の隅の方で、メカ夕張にもたれて目を閉じている夕張。二人がやってきたのに気付き、メカ夕張が軽く頭を下げる。

「夕張は大丈夫なのか? 一体何があった」

「マスターは気絶しているだけです。それよりも、早く皆さんを止めて下さい」

「どういうことだい?」

「全員艤装を持ち出して、鎮守府最強決定バトルロワイアルをしようと仰っていました」

「模擬弾でか?」

「いえ、皆さん出撃用の実弾フル装備です」

(明日この鎮守府、更地になってたりしないだろうな……)

「メカ夕張は夕張を頼む。ヴェールヌイは鎮圧出来そうな素面のを探して来てくれ」

「分かった、なるべく早く集めて合流する」

836: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:22:59.96 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府、某所。

「Burning love!」

「司令も、金剛お姉様も、わらしのなんらからー!」

「駆逐艦娘こそ世界の宝だ!」

「あら、あらあら、今日は何だかまた爆発しちゃいそうだわ」

「お前等ー! 止まれー!」

 最初に見付けたのは四人。全員顔が赤く、誰の目にも酔っている事は明白だ。
 既に戦闘は始まっていた事を示すように、周囲の施設の壁は抉れ、地面も陥没しているところが多々見受けられる。

「テートクゥ、ワタシのloveを受け止めてplease!」

「気合い! 入れれ!……うっ、気持ち悪い……」

「駆逐艦娘だけでなく提督も私の胸に飛び込んで来るのか……胸が熱いな!」

「一緒に私と爆発しましょ?」

(……酔っても変わらん奴等は裏表が無いと喜べばいいのか?)

「とにかく正気に戻れ!」

 効果があるかは分からないが、提督は明石のところから持ってきた高速修復材を、近寄ってきた四人にぶちまける。
 ダメで元々というヤツだ。

「――こういうplayをテートクは望んでるネー?」

「ひぇーベタベタで気持ち悪い……脱ぎます!」

「万全のコンディションで抱擁をしてくれという事だな、このビッグセブン長門に任せろ!」

「こんなんじゃ私の第三砲塔の疼きは止められないわよ?」

(やっぱりダメか……)

 全く効果無し。それどころか、さっき戦闘で負ったダメージを回復して更に元気になり、提督へと千鳥足で迫る。

「バトルロワイアルしてんなら俺を狙うな!」




「その通りにゃのれす」

837: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:23:35.37 ID:rieXlzg7O
「Shit!」

「ひぇー!」

「くっ……」

「きゃっ!」

 四人は続けざまに膝に被弾してフラつく足元が余計にフラつき、膝をついて足を止めた。
 そして、その弾を撃った艦娘が物陰から現れる。

「――電?」

「司令官しゃん、電は電なのれす」

(やっぱり電も飲まされるか何かしたみたいだな……)

「司令官しゃんはいにゃずまがまもりゅのれす」

「大丈夫か? 目が据わってるし呂律が回ってないぞ?」

「らいじょーぶ……なの……れす」

「電!?」

 糸が切れたように崩れ落ち、地面に座り込んだ電。
 慌てて駆け寄った提督に聞こえてきたのは、規則正しい寝息だった。

(他の奴等も電みたいにすぐ寝てくれるといいんだが……)

 ゾンビのように匍匐(ほふく)前進してくる四人に若干恐怖を覚えながら、彼は電を背負ってその場から離脱した。

 金剛・比叡・長門・陸奥、途中で力尽きて地面で朝を迎える。
 電、提督に送り届けられ、自室で翌朝目覚める。
 この場での被害、施設が二つ中破、地面に陥没が十数箇所。

838: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:24:33.60 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府外、公道。

「あははははは! 私はっやーい!」

「しぃぃぃぃまぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぜぇぇぇぇっ!」

「っ!? 天津風!?」

「今すぐ止まって戻らないと一週間かけっこ禁止!」

「それだけはやだよぉ……戻るからかけっこ許してよぉ……」

「ほら、明日朝辛くなるから帰るわよ」

「……急に止まったら気持ち悪くなってきた……」

「もう、しょうがない子ねぇ……」

 島風、天津風により保護される。
 被害、特に無し。

――――鎮守府内、某所。

「ビスマルク、寝てるね」

「何で裸なのかしら……まぁ、いいけど」

「まだ……まだやれるわ……」

(……胸、大きいなぁ)

(顔に当たって邪魔ね)

 ビスマルク、レーベとマックスにより保護される。
 被害、特に無し。

839: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:25:24.67 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府内、広場。

「ふふふ……うふふふふ……」

「扶桑姉様が二人見える……あぁ、三人に増えたわ」

「日向ー私達って八十八機も積めたっけ?」

「何を言っている、時代は航空戦艦なのだから当たり前だ」

「そっか、そうだよね」

 試製晴嵐が無秩序に空を舞い、クレーターを広場に大量に作成していく。
 酔っ払って目視が定まっておらず、四人に被弾が無いことを幸いと言ってよいのかは、難しいところだ。

「時雨、広場が穴ぼこだらけっぽい」

「四人とも既に制御出来てないみたいだし、寝かせて連れて帰ろう」

「一番先に、誰から運ぶ?」

「艤装があって四人とも運びにくいわね」

「てやんでぃ! このぐらい一人で――ぐえっ!?」

「涼風! 今助け――きゃあっ!?」

 航空戦艦四名、白露型により保護される。
 被害状況、広場に無数のクレーター、五月雨と涼風が扶桑と山城の下敷きになり大破。

840: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:25:59.36 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府、裏山。

「二人とも、そのぐらいにしなよ」

「提督も心配なさっています」

「那珂ちゃん抜きで目立つなんて、皆ズルいなぁ」

「榛名には負けたくないわ!」

「榛名も霧島には負けません!」

 互いに拳を振り抜いた方向にある木々を叩き折りながら、霧島と榛名は姉妹喧嘩のような戦いを繰り広げる。
 砲を使わない辺りまだマシなのだが、戦艦の本気の殴り合いに割って入るのが難しいことに変わりはない。

「コレで、終わりよ!」

「勝つのは、榛名です!」




「見事なクロスカウンターだったね」

「明日、木を植えないと……」

(ライブでバトル要素取り入れたら盛り上がるかな……)

 榛名・霧島、川内型により保護。
 被害状況、裏山が一部滅茶苦茶。

841: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:28:22.23 ID:rieXlzg7O
――――鎮守府内、演習場だった場所。

「……やっぱりコイツ等が最後か」

「どうするんだい、司令官」

「とりあえず、気絶させるしか無いんじゃない?」

「利根姉さんが本気なら、私にはちょっと手に負えません……」

「加賀さん居る時点で厳しいって、私達空母の中で唯一張り合えそうな赤城さんはまた居ないし……」

「木曾も珍しくはしゃいでるねぇ」

「ふふ、明日はお仕置きね」

 跡形もない演習場。まだこの場で戦おうとしているだけ救いはあるのかもしれないが、流れ弾で施設が既に三つ全壊している時点で、あまり意味がない。

「全員腕を上げましたね」

「加賀、少し足元がフラついているのではないか?」

「それは武蔵もです。何だか小刻みに揺れていますし」

「大和よ、お主も酔っれおるからそう見えるのじゃ。吾輩はじぇーんじぇん酔っ払ってなどおらぬじょ!」

「あはははは! 大井姉の気持ちが今は分かる! 魚雷はいいな!」

 五人が酔っているのは紛れもなく確かだ。
 それにもかかわらず、砲撃や雷撃、艦載機の制御、回避といった行動は全員まともだから質が悪い。

「とりあえず、やれるだけやってみてくれ。アイツ等もそんなに無茶はしないはずだ」

『了解!』

 ――五分後。

(本当にコイツ等酔ってんのか……?)

 集まったメンバーは全員大破し、明石のところに一時撤退。更に施設が二つ半壊、一つ全壊という大惨事を目の当たりにして、提督は頭を抱える。
 酔い潰れるのが先か、鎮守府が全壊するのが先か、そんな考えも頭を過り始めた時、自分の後ろから歩み寄る者が居ることに彼は気付いた。




「――提督、お呼びになられましたか?」

842: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:28:50.95 ID:rieXlzg7O
「すまん、店を優先させてやりたかったんだが、ご覧の有り様でな……」

「いえ、頼って頂けるのでしたら嬉しいです」

「とりあえず、加賀だけでも止めてくれ」

「了解しました」

 いつもの和服姿のまま艤装も付けず、鳳翔はゆっくりと地雷源のような戦場へと、足を踏み入れる。

「こんなに壊してしまって、明日から明石さんが大変そうね……」

 特に避ける素振りも見せず、一直線に加賀の元へと彼女は向かう。そして、声が届く範囲へと到達した。

「――加賀」

「っ!? 鳳翔、さん……?」

「何を、しているのかしら?」

「いえ、これは、その……」

 一気に酔いも覚め、加賀は赤かった顔を青くする。以前に暴走した時、こってり絞られたのを思い出したのだ。
 他の四人も攻撃の手を止め、二人のやり取りをぼんやりと眺めていた。

「別に戦うのは止めません。でもね、鎮守府を壊すのはダメ。そこの四人も、ね?」

「むっ……すまん」

「申し訳ありません……」

「すまぬ……」

「悪かった……」

 加賀の姿を見て冷静さを取り戻し、四人も素直に謝罪する。

「じゃあ今日は解散にしましょう。提督、それでいいですか?」

「あぁ、修理は朝からやらせる方向でいいだろ。どうせこの状況じゃ明日は一般解放は無理だ」

「明日は二日酔いの人も多そうですし、間宮さんと大鯨とあっさりした朝食を作りますね」

「何から何まで悪いな」

「いえ、それでは私はコレで――加賀、貴女は後始末だけはしておくのよ?」

「……はい」

843: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 01:29:18.91 ID:rieXlzg7O
 ――最終報告。
 “艦娘殺し”を飲んだ者は全員、翌日割れるような頭痛に見舞われながら、電以外は破壊した施設等の復旧や再建に従事。
 涼風、五月雨、ヴェールヌイ、五十鈴、瑞鶴、筑摩、北上、大井は高速修復材で即全快しており、翌日には加害者へと嫌みを言ってからかっている姿が見受けられた。
 最終被害は、施設六ヶ所全壊、八ヶ所半壊、壁などにヒビが二十七箇所、地面の陥没三十八箇所。
 明石の試算によると、“三日徹夜でどうにかなる”被害である。




――――鳳翔が居てくれて助かったよ。

 ――――私は少しお説教をしただけですから。

853: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 22:58:59.92 ID:TTMw/vTXO
・瑞鶴『提督さんとまったり』、投下します

854: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/18(金) 23:00:39.42 ID:TTMw/vTXO
――――提督執務室。

「提督さん、お茶、好き?」

「何が特別好きとかはないが、瑞鶴の入れた茶は好きだな」

「動物とかだと何が好き?」

「猫と犬と熊とハムスターと兎」
「……動物?」

「深く詮索するな」

「じゃあ、加賀さんは好き?」

「お前と同程度以上には」

「ふーん、一日一回以上会わないと気が済まないんだ」

「加賀は薬物か何かか?」

「だって最近お茶淹れたら必ず笑うから、毎日楽しみなんだもん」

(加賀と翔鶴で取り合いが発生してなくて助かったな……)

「最近は金剛ともよく一緒にお茶するんだー」

「アイツ、紅茶から鞍替えしたのか? この間は普通にティータイムはやっぱり大事ネーって言いながら紅茶飲みまくってたが」

「私がお茶淹れる時は、抹茶ロール頬張りながら緑茶をティーカップで飲んでたよ?」

「何ともアンバランスだな、そりゃ」

「“ティーには変わり無いデース”だって」

「まぁ、本人がそれでいいならいいんだろうな……」

「そういえば提督さん、さっきの続きなんだけど――ツインテール、好きなの?」

「何でそんなこと聞くんだ?」

「さっきからずっと私の髪で遊んでるから、好きなんじゃないかなーって思って」

「……引っ張っていいか?」

「流石に提督さんでも引っ張ったら爆撃するから」

「冗談だ」

「それで、ツインテールは?」

「ツインテールに限らず、髪は見るのも触るのも基本的に好きだ」

「……変態さん?」

「変態はやめろ、別に変な趣味はない。たまに洗いたくなるが」

「――それぐらいなら、いいよ?」




――――提督さん、満足してくれた?

 ――――目隠しがなけりゃ最高だったんだがな……。

862: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/19(土) 23:28:16.47 ID:4FpW0qugO
・電『猫ちゃんを飼うのです』、投下します

イアイアハスター、黄金の蜂蜜酒を飲む球磨

863: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/19(土) 23:29:00.57 ID:4FpW0qugO
――――提督執務室。

 ――にゃー。

(……何で猫が執務机に座ってるんだ?)

「お前、どっから入って来たんだ?……って聞いても分かるわけないよな」

「司令官さん、大変なのです!」

「どうした電、そんなに慌てて。何かあったのか?」

「“提督”が居ないのです!」

「お前、熱でもあるのか? 俺ならちゃんと――ん? 今、提督って言わなかったか……?」

 ――にゃーお。

「あっ提督、ここに居たのですね。コラ提督、部屋から勝手に出てっちゃめっなのです!」

「あー、念のために確認しておくが、コイツの名前は?」

「提督ですよ?」

「何で、提督なんだ?」

「“司令官”って名前にしたら、ややこしくなってしまうのです」

(いや、そういう意味で聞いたんじゃないんだが……)

 ――んにゃー。

「っとと、書きかけの書類で遊ぶのは止めろ、こっちの書き損じやるから。世話はどうしてるんだ?」

「部屋で皆で世話してるのです。たまに文月や三日月なんかも遊びに来て、面倒を見てくれてます」

「まぁ、ちゃんと世話出来てるならいい」

「提督、今日は電は司令官さんとお仕事なのです。部屋で暁に遊んでもらうのです」

 ――ふしゃー!

「痛っ!? 何で引っ掻かれたんだよ、今……」

「多分、司令官さんに電が取られると思っているのです……」

(猫のヤキモチか、可愛いもんだが痛いもんは痛いな……)

 ――ふー!

「とりあえず、先に部屋に連れていってくれ。このままだと生傷が絶えそうにない」

「はいなのです。提督、部屋に一緒に戻るのです」

 ――にゃーん。

「――ふぅ、猫は一匹居れば十分だ」

 ――猫じゃないにゃ。

「っ!?」




――――はわわ、司令官さん傷だらけなのです!

 ――――心配するな、飼い猫にやられただけだ……。

866: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/21(月) 01:29:25.57 ID:bo6kX3vsO
・提督『研修って……何の研修だよ』、投下します

867: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/21(月) 01:29:54.30 ID:bo6kX3vsO
――――提督執務室。

「今日はあの子達をよろしくお願いします」

「それぞれの要望に合わせて研修させてるから、俺は特に何もしないし、君もゆっくりしてってくれ」

「あの、良ければ色々と話を聞かせてもらえませんか? 特に艦娘の子達と円滑にやっていく為の秘訣とか、上手な逃げ方とか……」

「逃げ方?……苦労してるようだな、そっちも」

「好かれているのはとても嬉しいんですけど、女性とお付き合いした経験が一度も無い僕には、ちょっと刺激が強過ぎる事がチラホラと……」

「慣れろ、そのうち着替えを見ながら仕事が出来るようになる」

「えぇー……」

(試してみようかしら)

(司令官の前で着替えて気付かれなかったら悲しくなるし、私はやめとこ。司令官にまで影が薄いって言われたら立ち直れないし……)

868: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/21(月) 01:30:28.35 ID:bo6kX3vsO
――――畑。

「――そうね、連作障害なんかもあるにはあるけど、聞いた感じだと大丈夫そうよ?」

「アイツもそう言ってたにゃ。他に何か気を付けることってあるにゃ?」

「気を付けること……潮風は害になりやすいから、ちょっとその辺は気を付けた方がいいかもしれないわね」

「位置によっては確かに潮風が直接吹き抜けてるかもしれないにゃ。帰ったら対策考えてみるにゃ」

「お役に立てた様で良かったわ。あっそうだ、みかん食べる?」

「大好物にゃ、頂くにゃ。ありがとうにゃ」

(うちの多摩は柑橘類ダメだったけど、この子は好きなのね……)

「コレ、すっごく美味しいにゃ」

「良かったら苗とかと一緒に箱で送りましょうか?」

「是非お願いするにゃ!」

(ふふ、畑仲間が出来てちょっと私も嬉しいかも)

――――食堂。

「――茄子ならごま油でさっと炒めるだけでも美味しいですし、肉のはさみ揚げにウスターソースをかけるのもいいですね」

「変わったメニューやレシピは考えねぇんですか?」

「どちらかというと馴染みの味を求められる事が多いので、今作れるものをより美味しくする方向で考えてます」

(飽きられないように変えるんじゃなく、とことん改良……私もちょっとその方向で暫くやってみるとしましょうかねー)

「まぁ例え変わったメニューを作っても、必ず感想と改良点を聞かせてくれる方が居るので、問題は無いんですけど」

「……なんとなく誰だか見当がついちまいますね」

「食べる量に目が行きがちですが、舌も確かなんですよ?」

「うちの三人は美味しいって言うだけで、特に感想はくれないんで結構悩んじまいます」

「美味しいも立派な感想ですし、愛情込めて作ればきっと大丈夫です」

「……そうですね、このまま胃袋ガッチリ掴んどきます」

「頑張ってね、応援してるわ」

869: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/21(月) 01:30:58.12 ID:bo6kX3vsO
――――休憩スペース。

「リリアン編みも結構楽しいクマ」

「うん、編んでると落ち着くし」

「球磨、ゲームしよ」

「さ、最新ゲーム機だクマ! やるクマやるクマー。名取、今度来たらまた一緒に編物するクマ」

「いいよ、じゃあまた遊びに来た時に一緒にね」

「分かったクマー」

「球磨、何したい? 色んなのあるよ?」

「初雪のオススメは何だクマ?」

「P4U」

「じゃあそれやるクマ。……コントローラーのボタン配置が良く分からないクマ」

「やってれば、慣れる」

「分かったクマ、じゃあこのクマ使うクマ」

870: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/21(月) 01:31:31.12 ID:bo6kX3vsO
――――鎮守府、入口。

「今日はありがとうございました」

「またいつでも来てくれ」

「鳳翔さん、また来るにゃ」

「えぇ、またね」

「次はお互いに一品作って披露しませんか?」

「いいわね、新料理を何か考えておくわ」

「名取も初雪もまた来るクマー」

「次は一緒に帽子作ろうね」

「良い勝負だった、またやりたい」

「……球磨君のは、研修なの?」

「細かいことはいいんだクマ」

「いいからさっさと帰るにゃ」

「晩御飯は間宮さん直伝の料理にしますねー」




――――アイツ等変わってるけど、仲良くていい関係築けてるな。

 ――――……私達も大概だと思いますよ?

879: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/21(月) 21:57:16.87 ID:rEEmLWGMO
・蒼龍『飛龍には負けてられない』、投下します

880: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/21(月) 21:57:42.05 ID:rEEmLWGMO
――――提督執務室。

「改二になっちゃいました」

「なっちゃいました、じゃないだろ。飛龍は聞いてたが蒼龍の改造は聞いてないぞ?」

「だって、飛龍だけ改二ってズルいじゃない!」

「ズルいってなぁ……」

「何か鉢巻きしてカッコ良くなってるし、艦載機は強化されてるし、運も良いし、真面目に料理したら私より上手いし、まともに選べば服のセンスもいいし……」

「ストップ、後半はもう色々関係無いぞ」

「とにかく、二航戦は一緒じゃないとダメなんです!」

「分かったからちょっと落ち着け。――飛龍、そろそろ出てきたらどうだ?」

「そうですね」

「飛龍!? 何でここに!?」

「改二のお披露目は蒼龍と一緒にしますって、前もって提督に言ってあったからだけど?」

「“蒼龍なら勝手に改二になって提督に会いに来るから、その時に一緒に”って言われてな。本当に勝手に改二になるとは思ってなかったが……」

「何もわざわざ待たなくても良かったじゃない」

「“二航戦は一緒じゃないとダメ”だから、ね」

「うっ……そ、それは優劣が付くのが嫌って意味だってば!」

「じゃあ何で蒼龍も鉢巻きしてるの?」

「うぐっ……これは、その、私も頭部を守る為に……」

「ふーん……なら、私は外そうかな」

「何で外しちゃうのよ!?」

「私は蒼龍より運が良いもの」

「運が良くても当たる時は当たるじゃない」

「いい加減、正直にお揃いが良いって言えば?」

「べ、別にそんなこと思ってないわよ」

「私はお揃いにしたいけど」

「ひ、飛龍がそう言うなら――きゃっ!?」

「この胸の大きさとか」

「ちょっと飛龍、揉まないでよ!」

「どうせ提督が夜に揉むなら、今私が揉んでもいいじゃない」

「あー、そういうのは自室でやれ。後、絶対に夜戦するって決めつけるのはやめろ」

「ヤダ、ヤダヤダ! 私そういう趣味はないってば!」

「私もそんな趣味無いわよ」

「飛龍、あんまりからかいすぎるな。後でお前に対する愚痴だか自慢だかを聞く時間が増える」

「自慢なんてしてたの?」

「してない! 絶っっっ対にしてない!」

「何時も背中預けると安心――」

「アレは酒の勢いだから忘れてって言ったじゃないの!」

「無理だな」

(そろそろお暇しようかな、これ以上邪魔したら悪いし)

881: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/21(月) 21:58:11.37 ID:rEEmLWGMO
――――蒼龍、何で袖掴んでるの?

 ――――今日は三人で飲むから。

  ――――頼むからおとなしく飲んでくれ、お前等若干酒癖悪いから。

882: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/23(水) 00:22:03.83 ID:VHlVrA35O
・天津風『旦那様へ愛を込めて』、投下します

883: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/23(水) 00:22:32.00 ID:VHlVrA35O
――――提督執務室。

「今日は――天津風が秘書艦か、アイツならゆっくり出来そうだな」

 天津風は駆逐艦娘の中では比較的大人しめで、尽くすタイプに分類される。
 仕事を手伝い、休憩すればお茶を淹れ、会話も疲れない程度のペースを保つ。
 島風の保護者的存在だけあって、提督にもその母性的な面を見せており、優しく支えてくれる存在だ。




 ――だが、提督は肝心な事を忘れていた。

「あなた、島風を泣かせてたみたいだけど、覚悟はいい?」

(ヤバい、島風の一件忘れてた……)

884: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/23(水) 00:23:05.11 ID:VHlVrA35O
 ――二時間後。

「じゃあ、もう島風を泣かせないでね?」

「分かった、二度と泣かせないと約束する……」

 二時間に及ぶ説教を乗り越え、提督は机に突っ伏す。
 島風の事となると例え彼相手でも、彼女は容赦がない。

「あら、もうこんな時間。あなた、お昼ご飯にしましょうか」

「あぁ、頼む……」

「少し待っていて」

 ――十分後。

「ちょっとさっきはキツく言い過ぎたから、その……張り切ってみたわ」

「なぁ天津風、十分でどうやってこれだけの量作ったんだ?」

「島風程じゃないけど、私も速いもの」

「いや、速力は調理には関係無いと思うんだが……」

 間宮も常軌を逸した調理の速さだが、天津風もまた速かった。
 天津飯、麻婆茄子、青椒肉絲、小籠包、生春巻き、ゴマ団子、杏仁豆腐。
 先に下準備を済ませていたとしても、この量を短時間で作るのは至難の技だ。

「愛情を込めれば、料理も早く仕上がるのよ。ほら、冷める前に食べて」

「そうだな、冷めちゃ勿体無い。いただきます」

「じゃあ私も、いただきます」

「――うん、今日のもやっぱり美味いな」

「当たり前じゃない、あなたに不味い物を食べさせられないわ」

「毎日こう美味いものばかり食ってると、食い過ぎて太りそうだ」

「その時は島風とかけっこでもして痩せてね」

「全身筋肉痛で仕事にならなくなるから、それは勘弁しろ」

「マッサージしてあげるから大丈夫よ」

「そもそも太らなければいい話だがな」

「――お代わり、よそいましょうか?」

「……太らせたいのか?」

「食後に私達と少し運動すれば問題ないわ」

「運動って何を――今、私“達”って言わなかったか?」

「執務室に籠りっぱなしだと身体に悪いし、食べたら私と島風を含む駆逐艦娘達と、鬼ごっこしてもらうから」

「いや、朝出来なかった書類仕事があってだな」

「夕方から着手しても問題ない書類でしょ?」

「どうしてもやらなきゃいかんか?」

「島風が、鬼ごっこ楽しみにしてるわ」

「……はぁ、了解だ。お代わり」

 “抵抗は無意味だ、諦めろ”、という意味の言葉を聞き、提督は観念して目の前の食事を平らげていく。
 島風という理由を付けてはいるものの、単純にデスクワークが続いていることを考慮しての申し出なのは、彼にも分かっていた。

(――ありがとな、天津風)

 心の中で感謝しながら、提督は完食するのだった。

885: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/23(水) 00:23:31.50 ID:VHlVrA35O
――――じゃあ早速家族サービスしてね?

 ――――島風は俺とお前の子供になるのか?

――――近いものじゃないかしら。

 ――――……否定しないと俺が危ない人間になるから、否定しとく。

891: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/23(水) 21:02:37.61 ID:M+56R+e0O
・鳥海『図書館ではお静かに』、投下します

892: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/23(水) 21:03:06.01 ID:M+56R+e0O
――――図書館。

 秘書艦日でもなく、姉のダイエットに付き合う予定もなく、一日オフな鳥海は図書館へと来ていた。

(今日は何を読みましょう)

 恋愛小説や戦術書、テーブルゲームの必勝法、ダイエット本、栄養学の本に、男性を落とす百の方法。
 実に様々な本を手に取り、読んでいる彼女。今日も何か良い本はないものかと本棚を眺める。

(コレは前に読みましたし、こっちのシリーズはあまり趣味じゃありませんでしたし――あっ、今日はこれにしましょう)

 手にしたのは、とある鎮守府の提督が書いた『彼女達との七日間』という本だ。
 艦娘に人気の小説で、新米提督と艦娘が打ち解けるまでの七日間の騒動が描かれている。

(席は、あそこがいいですね)

 席へと座り、早速読み始める鳥海。平日の昼間ということもあって、館内は人気も疎らで静寂に包まれていた。

(――私も着任したての頃は、司令官さんと少し言い争ったこともありましたね)

 鳥海は、問題を起こして他の鎮守府から送られてきた訳ではなく、提督に建造された艦娘だ。
 その着任は、高雄型の中では一番早かった。

(この提督みたいに無愛想では無かったけれど、いまいち信用出来なかったんですよね……)

 本の中では常にしかめっ面の提督が、駆逐艦娘から怯えられていた。
 一方、鳥海の記憶の中にある着任当初の提督の印象は、“頼り無さそう”だった。

(作戦は定石から外れてましたし、勘で回避行動をとりますし、ずっと寝てましたし……)

 型破りと言えば聞こえはいいが、艦娘からしてみれば命を預けるのに信用できない言動や行動は、不安の種でしかない。

(――でも、誰よりも艦娘を大事に考えていてくれたんですよね)

 本の中の艦娘は六日目にして気付く。生活環境や食事、疲労のチェックに余念が無く、しかめっ面なのは常に考え事をしていたからなのだと。
 七日目には細やかなパーティーをして、初めて提督が笑みを見せて艦娘達と打ち解け合い、話は終わりを迎える。

「一気に読んでしまいましたね。まだ時間はありますし、次は何を――?」

 ――たまには本を読め、読書の秋だ。

 ――アタシは本なんか読まないっつってんだろ!

(はぁ……摩耶姉さんってば)

 聞こえてきた姉の怒声に大きく溜め息を吐き、鳥海はそちらへと歩み寄っていくのだった。

893: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/23(水) 21:03:35.78 ID:M+56R+e0O
――――摩耶姉さん、図書館では静かにして下さい。司令官さんも、デートなら姉さんが好きそうな場所を選んで下さいね。

 ――――はっ!? で、デートじゃねぇし!

  ――――図書館でぐらい静かなコイツを見れると思ったんだがなぁ……。

895: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/24(木) 04:22:19.92 ID:G5434DwBO
・日向『キミ、まだ居たんだ』、投下します

896: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/24(木) 04:22:59.62 ID:G5434DwBO
――――明け方、提督執務室。

「あっ……キミ、まだ居たんだ」

「お前こそ、こんな時間に何のようだ。まだマルゴーサンマルだぞ」

「私の事は気にしなくていい。それより、何でこんな時間に執務室で仕事をしているんだ?」

「重要書類を一つ書くの忘れてたのに寝る直前に気付いて、戻って来て今まで書いてたんだよ」

「昨日の秘書艦はどうした」

「今頃俺の部屋で爆睡してるよ、昨日大はしゃぎで遊びまくってたからな」

 そう答えると、提督は大きく欠伸をしかけ、日向の目を気にして噛み殺す。

「一睡もしていないのか?」

「まぁな」

(だから、コレ書いたら寝るつもりだったんだが……)

 既に執務室に来ている今日の秘書艦を前に、寝たいとは言い出せるはずもない。

「悪いが日向、コーヒー淹れてくれ」

「断る」

「――何?」

「断る、と言った」

「そうか、お茶汲みなんぞ頼んですまなかった。自分で淹れ――うおっ!?」

 断られたことに若干驚きつつも、自分で淹れようと提督は立ち上がろうとした。
 だが、立ち上がるより前に身体が浮き上がり、彼は狼狽(うろた)える。

「……何してんだよ、日向」

「ふーん、軽いな」

 戦艦である日向が提督を抱き上げるのは、至極簡単だ。
 だからといって、この状況が恥ずかしいことに変わりはない。

「降ろせ、流石に怒るぞ」

「分かった」

「――いや、コレはコレで何でだよ」

「膝枕を知らないのか?」

 降ろされたのは日向の膝の上。提督を見下ろす顔は、加賀よりも無表情だ。

「今この体勢はヤバイから起き――ぐおっ!?」

「まぁ、起きようとしたらそうなるな」

「なるんじゃなくて、してんだろうが……」

 起きようとした提督の額を、肘が捉える。手加減はしていても、その一撃はかなり痛い。

「で、本当に何やってんだよ」

「寝不足は良くないぞ」

「一日ぐらい寝なくても大丈――ぐえっ!?」

「寝不足は、良くないぞ」

「物理的に寝かせるのは、やめろ……」

「なら、このまま大人しく寝るといい」

「……分かったよ、二時間ぐらいしたら起こしてくれ」

 抵抗を諦め、提督は目を瞑る。
 予想以上に疲れが溜まっていたのか、彼が寝息を立て始めるのに、そう時間はかからなかった。

897: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/24(木) 04:23:34.50 ID:G5434DwBO
(――良く寝ているな。全く、先に仕事を片付けて、二人でゆっくり過ごそうと思っていたのに、キミという男はいつもいつも……)

 朝から日向が来ていたのは、二人の時間を多めに作ろうという意図があってのことだった。
 徹夜で寝不足状態の提督と一日過ごすなど、彼女にとっては不本意極まりない。

(まぁ、こうして膝枕も出来たし、よしとしようか)

 少しだけ笑みを浮かべ、日向は書類を書きながら提督の頭を撫でるのだった。




――――おい日向! もう昼じゃねぇか!

 ――――良い天気だし、外に行かないか?

――――あのなぁ、書類が……終わってる?

 ――――ロクマルを積む事は出来ないが、ラジコンで飛ばして見せてやるぞ。

901: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/24(木) 22:18:47.56 ID:k2ckvLOxO
・島風&天津風『連装砲くんと連装砲ちゃん』 、投下します

902: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/24(木) 22:20:00.78 ID:k2ckvLOxO
――――島風&天津風、私室。

「天津風、連装砲くんピカピカだね」

「連装砲ちゃんも綺麗になったじゃない」

「喜んでくれてるかな?」

「えぇ、きっと喜んでくれてるわ」

「連装砲ちゃんは、私の最初のお友達。ずーっと一緒に居たお友達」

「連装砲くんは、私の大切なパートナーだった」

「お話しは出来なかったけど、いつも一緒に遊んでくれた」

「島風と喧嘩して落ち込んでたら、励ましてくれた」

「連装砲ちゃんは、幸せだったのかな?」

「幸せだったに決まってるじゃない」

「……そうだね」

「さぁ、行きましょうか。今日もかけっこのコーチするんでしょ?」

「最近は教える子が増えて大変だよ……」

「全国大会に出た子が恩師に島風の名前を出しちゃったんだもの、それも仕方無いわ」

「私は誰かに教えるより自分が走りたいよー天津風ー」

「はいはい、また長良さんと私が付き合ってあげるから」

「やったー! 天津風大好きー!」

「全く……こんなに大きくなっても島風は子供ね。連装砲ちゃんに笑われるわよ?」

「天津風より胸大きいもん」

「しぃまぁかぁぜぇ?」

「あはははは」

「コラ、待ちなさーい!」





 ――終戦から十数年。世界は未だに平和を保てていた。

 ――艦娘達の兵装は使われることもなく、一部を残して廃棄、もしくは博物館に飾られることとなった。

 ――そして、連装砲ちゃんと連装砲くんもまた、役目はもう終わったと告げるように、ある日突然動くことを止めた。

 ――彼等は今、子供達が元気に走り回る鎮守府の遊技場を見守るように、並んでひっそりと佇んでいる。




――――連装砲ちゃん、今日も世界は平和だよ。

 ――――明日も、明後日も、きっと平和。

――――だから、ゆっくり休んでね。

 ――――お休み、連装砲ちゃん、連装砲くん。

925: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/26(土) 07:09:28.53 ID:hEaA7AqHO
・赤城『提督と鎮守府脱走』、投下します

926: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/26(土) 07:09:54.40 ID:hEaA7AqHO
――――提督執務室。

「提督、今日は――?」

 秘書艦日を心待ちにしていた加賀。彼女が執務室に入ると、何時もは必ず出迎えてくれる提督の姿がない。

(まだ部屋で寝ている……? いえ、そんなはずはないわ)

 前日の秘書艦である大鳳と、加賀は廊下ですれ違っている。つまり、提督も起きているということだ。

(御手洗いかしら……ん?)

 執務机の上に置かれた手紙らしき紙に気付き、彼女はそれを手に取る。

「“加賀、提督を今日は借りますね。返して欲しかったら私のクレジットカードを返して下さい”……ふふ、犯人は赤城さんですか」




『全艦娘に通達。提督を赤城さんが拉致しました。捕らえた者には幼少時代の提督のアルバムの閲覧を許可します。必ず私の前に彼女を連れてきなさい、以上』

927: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/26(土) 07:10:21.50 ID:hEaA7AqHO
――――街。

「赤城、今すぐ戻れ」

「嫌です。コレは加賀が私のクレジットカードを没収したお返しなんですから」

「個人的な恨みなら俺を巻き込むのはやめろ、後で俺まで何されるか分かったもんじゃない……」

 提督と腕を組みながら、引っ張るように歩く赤城。
 加賀のお仕置きを平然と耐えられる彼女と違い、別の意味で後が怖い彼は、気が気ではない。

「大体、毎度毎度鎮守府を抜け出しては食べまくって帰ってくるお前が悪いんだろ」

「食べねば戦えませんよ?」

「何と戦ってるんだお前は……」

「それは秘密です」

 笑って誤魔化す赤城。加賀が無表情ならば、赤城は感情表現が豊か故に真意を掴ませないタイプだ。

「お前と加賀って、色合い逆だよな」

「色合いですか?」

「赤城は理性的で、加賀は感情的だろ。赤と青のイメージからしたら逆だ」

「食欲に忠実だとは良く言われますが、理性的と言われたことはありませんね」

「お前が本気で怒ったところを、俺は見たことないぞ」

「提督の前では怒らないだけです。怒ると赤城さんは怖いです、と加賀に昔言われましたので」

(加賀が怖いと感じるって、何やったんだ……?)

 鳳翔以外で加賀に怖いと言わせるものがあったことに、提督は驚く。
 彼女がそう言うということはつまり、赤城を怒らせてはいけないということだ。

「そんなことより、せっかく街に出たんですからデートしましょうか」

「そろそろ鎮守府に――」

「最近良く出歩くので、提督に予備の靴を見繕って欲しいです」

「おい、ちょっとは人の話を聞け」

「――私とデートは、嫌ですか?」

「……俺は拉致されただけだからな、加賀にはちゃんとそう言え」

「提督が無理矢理私の事を連れ出して……」

「リアルに死ぬからやめろ」

「冗談です。提督はちゃんと私が守りますから」

「最初から連れ出されなければ、至極安全だったと思うんだが」

「じゃあ――」

 ――ちゅっ。

「今日一日付き合って頂くお礼です。足りないでしょうか?」

「……靴でいいんだな?」

「はい、後出来れば洋服も」

「食べ物は今日は良いのか?」

「今日は食べ歩きがしたいわけではないので」

「明日は槍でも降るかもしれんな」

「そういうことを言うとグラビアに出ますよ?」

「俺が許可する訳無いだろ」

「独占欲ですか?」

「黙れ食欲魔神」

928: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/26(土) 07:10:48.75 ID:hEaA7AqHO
――――靴屋。

「草履か?」

「普通に運動靴です」

「まぁ草履はこんなところには売ってないだろうしな」

「いざというときに動きやすい靴はどれでしょうか?」

「履いてみて馴染むのが一番だろ、幅や奥行きってのはサイズだけじゃ分からん」

「そうですね、試し履きを――という時間は無さそうです」

「どういう……摩耶っ!?」

 提督と赤城の視線の先には、ガラス越しに店内を覗き込んでいる摩耶。その視線が、バッチリと交差する。

 ――見付けたぜ、大人しくアタシに捕まりな!

「さて、逃げましょうか」

「いや、大人しく捕ま――んぅ!?」

 ――なっ!? おいコラ! 人が見てる前で何てことしてやがんだ!

 摩耶が見ているにも関わらず、赤城は提督へとキスをする。それも、かなり濃厚なものだ。

「――コレで、共犯ですね」

「このアホ! 余計に帰りにくくなっただろ!」

「そんなことより、逃げなくてもいいんですか?」

「とりあえず、心の準備が出来るまでは逃げる。だから今は摩耶を何とかしろ」

「了解しました、提督」

 言うや否や、赤城は店から飛び出していく。

 ――摩耶、少し寝ていて下さいね。

 ――そう簡単にやられるかってんだ!

 ――買ってきた高級プリンを愛宕に食べられて、暫く拗ねていたそうですね?

 ――な、何でそれを!?

 ――動揺しすぎです。

 ――あぐっ!?……クソ、が……。

(摩耶、プリン好きだったのか。今度買ってやるとしよう)

「提督、今のうちに行きましょう」

「コレ、帰ってから余計に拗れたりしないよな?」

「次は服がいいですね」

「だから無視して引っ張るのはやめろ、今更だが腕に胸が当たってるぞ」

「? 胸なんてただの脂肪ですよ?」

「アイツが聞いたら泣いて荒れるぞ、それ」




「――それは、うちのことを言ってるん?」

929: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/26(土) 07:11:14.83 ID:hEaA7AqHO
「貴女も来たんですね」

「赤城、加賀がカンカンに怒っとるよ。はよ帰らんと知らんで?」

「報酬は何です?」

「鋭いなぁ、ホンマ。――“提督の幼少時代の写真”や」

「ちょっと待て、何でそんなものをアイツが持ってやがんだ?」

「ご実家に挨拶に伺ったと加賀から聞いていましたが、知らなかったんですか?」

「聞いてねぇよ。何を勝手に挨拶なんぞしてやがんだ……」

「とにかく、キミのちっこい頃の写真はうちが貰うで! 赤城、大人しく捕まりや!」

「仕方ありません――まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板まな板」

「そ……そないに連呼せんでもえぇやないかぁぁぁぁぁ! 赤城のアホぉぉぉぉっ!」

「……今のは流石に胸が痛んだぞ」

「龍驤は胸ばかり気にしすぎなんです。女性の価値は胸ではありませんよ」

「そう言いながら押し付けるのはやめろ」

「加賀の胸と私の胸、どちらがお好きですか?」

「俺は足と髪の方が好きだ」

「それなら、足と髪で考えて下さいね」

「……次に行くか」

「無視はいけないんじゃなかったですか?」

「命の危険がある質問に答えられるわけないだろ!」

930: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/26(土) 07:11:47.73 ID:hEaA7AqHO
――――服屋。

「提督、選んで下さいますか?」

「そっちのサマーセーターにロングスカート」

「少し、派手ではないでしょうか」

「コレで派手ってどういうことだよ」

「あまり目立たないようにしたいので」

「お前ならどこに居ても目立つだろ。黒髪長髪で何かを食べてなきゃ清楚な美人、食べてたら……まぁ、人によっては可愛く見える」

「そう言われると、流石に気分が高揚します」

「何で加賀の真似してんだよ」

「……可愛いと言われたのは、初めてなんです」

「照れてるお前を見るのは、俺も初めてだな」

「コレからも提督の前ではたくさん食べますね」

「程々に頼む」

「――もうそろそろいいだろうか?」

「律儀に待っていてくれた事には感謝しますが、私は帰りませんよ」

「那智まで来たのか、あんな写真目当てに……」

「私は貴様の写真の為に来たんじゃない。赤城を連れ戻せと命令を受けたから来たまでだ」

「真面目ですね」

「最近の赤城は不真面目が過ぎるのではないか?」

「真面目なだけでは出来ないこともありますよ」

「ここで問答をしていても仕方無い。帰らないと言うなら無理矢理連れて帰るまでだ」

「――なぁ赤城、いい加減帰らないか?」

「……そうですね、これ以上は鎮守府の皆に迷惑がかかりそうですし、今日はこのぐらいで帰ることにします」

「そうして貰えると私も助かる」

「写真は那智の物です、良かったですね」

「あぁ――いや、別に写真はどうでもよくてだな……」

(はぁ……ようやく帰れる。加賀の怒りはどの程度なのやら)




 提督、一ヶ月のお小遣いカット。赤城、一ヶ月の外出禁止が言い渡される。
 なお、帰るまでに机が四つ大破した模様。




――――赤城さん、外出禁止と言ったはずですが?

 ――――やることがありますので、今回は二、三日ですぐに戻りますよ。

――――たまには鎮守府に居て下さい。

 ――――私は私の為すべきことをします。では、行ってきます。

――――……全く、困った人ですね、赤城さんは。

936: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/27(日) 23:12:09.79 ID:qGnavP0TO
・提督『大鯨が発注量間違えた』、投下します

937: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/27(日) 23:12:43.33 ID:qGnavP0TO
――――食堂。

「――で、大食い対決って訳か」

「加賀は巻き込まれたって顔してるわね」

「大和と武蔵は呼ばれた理由が分かってないな」

「鳳翔は……何だか楽しそうだわ」

「赤城と間宮は当然乗り気か」

 提督とこの日が秘書艦日だった大鳳は、大鯨からの連絡を受け食堂へと来ていた。
 発注量を間違えてしまったから、処理する為の大食い対決を開催する。
 そのような発想をする辺り、間宮もこういう催しをするのが嫌いではないということだ。

「赤城だけで良かったんじゃないか?」

「面白そうだから対決にしましょうって、鳳翔さんが言い出したみたいです」

(加賀が拒否出来なかったのはそれが理由か……)

「さぁさぁ賭けるならまだ間に合うで! 赤城と加賀が勝つか、大和と武蔵が勝つか、一口1間宮アイスや!」

「見物客は大半が駆逐艦と……長門か」

「浦風保護してきます」

「大丈夫だろ、文月と陽炎が相手してるし」




 ――料理対決、コレより開始します。

938: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/27(日) 23:13:14.71 ID:qGnavP0TO
「豚カツですか……」

「下処理がしっかりとされていて、油もしつこくないですね――お代わり」

「武蔵、どうしたんですか?」

「……揚げ立て、か」

 加賀は普通のペースで、赤城はいつものペースで、大和は一口一口ゆっくりと、武蔵は少し冷ましながら食べ進めていく。
 大鯨が間違えたのは肉の発注。豚カツはまだまだ最初の小手調べに過ぎない。
 三皿分を早々に完食した赤城の前には、別のメニューが運ばれてきた。

「チキン南蛮丼です」

「鶏の下拵えは間宮さんで、タルタルソースは私が作りました」

「良い匂いですね、では早速いただきます」

(赤城さん一人でやはり良かったのでは……)

「加賀、しっかり食べて下さいね?」

「……はい」

 加賀も三皿目に手をつけ始め、黙々と食べ進めていく。赤城が速すぎるだけで、彼女も十分に速い。

「美味しいですね」

「味は当然申し分ない。しかし、熱いな……」

「武蔵が猫舌だったなんて、今まで知らなかったです」

「誰しも苦手なものの一つや二つあるものだ」

 大和と武蔵は、ようやく二皿目に手をつけ始める。

 ゆっくりと食べる大和と、冷ましながら食べている武蔵では、速度的な面において一航戦の二人に勝ち目は無い。

「こりゃ勝負にならないんじゃないか?」

「早食い対決ではないですし、最後に多く食べていれば――」

「お代わりお願いします」

「……一対三にした方が良かったんじゃないかしら」

「あぁ、俺もそう思う」




 ――現戦果。

 加賀、豚カツ三皿完食。赤城、豚カツ三皿とチキン南蛮丼三杯完食。

 大和、豚カツ二皿完食。武蔵、同じく二皿完食。

939: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/27(日) 23:14:38.39 ID:qGnavP0TO
 ――開始から一時間。

「流石にそろそろ限界なのですが……」

「まだまだ作ってますから頑張って下さいね」

「あの、ですから限界と――」

「すき焼き、食べないんですか?」

「……はい、いただきます」

(胃薬を後で貰いに行かないと……)

「このステーキ、胡椒が効いていて美味しいです。噛んだら口の中に肉の旨味がジワッと広がって、箸が進んでしまいます」

「すき焼き……」

「玉子で少し熱さが和らぐな」

「まだ武蔵は食べられそうですか?」

「加賀に勝つまでは手を動かす、赤城は知らん。あんな食欲の権化と張り合ってなどいられるか」




 ――現戦果。

 加賀、豚カツ&チキン南蛮丼三杯完食、すき焼き一杯目に挑戦中。赤城、すき焼き三杯を平らげサーロインステーキ五百グラムへ挑戦中。

 大和・武蔵、共にすき焼き一杯目に挑戦中。

940: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/27(日) 23:15:59.91 ID:qGnavP0TO
 ――開始から一時間半経過。

(これ以上は……て、提督の前で醜態を晒すわけには……)

「豚しゃぶもタレによって味わいが違っていいですね」

「自慢のタレです、何にでも応用が利くんですよ」

「私のお店にも少し分けてもらっているんです」

「鳳翔さんのお店……焼き鳥ですね?」

「ふふ、正解です。また食べに来て下さいね」

「では今日の夜にでも」

 苦しそうにしている加賀の横で、談笑しながら食べ続ける赤城。そのペースは全く衰えてはいない。

「武蔵……大和は……もう……」

「意地を見せるのだ大和……この鍋を空にすれば、加賀には勝てる……」

「ごめんなさい……先に、いき……」

「くっ……私だけでも、加賀に……」

 ――更に三十分後。

「手羽先もカラッと揚がっていてジューシーです。幾らでも食べられますね」

「まだまだありますからどうぞ」

「味噌カツも食べますか?」

 加賀は既にリタイアしており、食べているのは赤城だけだ。その箸は、一向に止まる気配を見せない。

「加賀に……勝った……か……」

 一方の武蔵は、食べていたすき焼き鍋を完食し、先にリタイアした大和の横に倒れ伏す。
 これで勝負は決着したのだが、まだまだ赤城の挑戦は続く。その箸が止まったのは、更に一時間後の事だった。




 ――最終戦果。

 加賀、豚カツ三皿、チキン南蛮丼三杯、すき焼き一杯半。

 大和、豚カツ三皿、チキン南蛮丼三杯、すき焼き一杯半。

 武蔵、豚カツ三皿、チキン南蛮丼三杯、すき焼き二杯。

 赤城、豚カツ三皿、チキン南蛮丼三杯、すき焼き三杯、サーロインステーキ千五百グラム、豚しゃぶ三皿、手羽先三皿、味噌カツ三皿、牛角煮三皿、しょうが焼き三皿。




――――流石に一日動けません……。

 ――――鳳翔さんのところに行ってきますね。

――――武蔵、体重が……。

 ――――明日道場で……うっ……加賀、私にも胃薬をくれ。

951: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/29(火) 20:24:08.71 ID:JTOA8/PmO
・天龍田『些細で大きなすれ違い』、投下します

952: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/29(火) 20:24:35.14 ID:JTOA8/PmO
――――天龍&龍田私室。

「ねぇ天龍ちゃん、ここに置いてあったシュークリーム知らないかなぁ?」

「シュークリーム? あぁ、美味かったぜ」

「――二つとも、食べちゃったの?」

「甘いものがちょうど欲しくってなぁ、代わりに冷蔵庫にエクレア買ってきといたからよ」

「……天龍ちゃんのバカ」

「勝手に食って悪かったって、でもちゃんと代わり買って来ただろ?」

「どうして一言聞いてくれなかったのー?」

「俺と龍田のだと思ったから一つだけ食うつもりだったんだよ。でも食べたら美味くってさぁ、つい二つとも食っちまったぜ」

「……だって、美味しく作ったもの」

「アレ、龍田が作ったのか? そういやぁお菓子はまだ作ったことねぇな、今度教えて――」

「勝手に食べちゃうような天龍ちゃんには教えたくないかなぁ」

「だから悪かったって言ってんだろうがよ」

「私忙しいからもう行くねーエクレアはいらないから二つとも天龍ちゃん食べておいて」

「あっ、おい龍田! チッ、何だってんだよ龍田の奴、たかだかシュークリームぐらいであんなに怒りやがって……ん?」

(待てよ、今日って確か――)

「龍田の秘書艦日か……?」

953: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/29(火) 20:25:05.42 ID:JTOA8/PmO
――――提督執務室。

(何だこの重苦しい雰囲気は……)

 提督の横で仕事を黙って処理している龍田。その顔はいつも通り微笑みを携えているのだが、肌に突き刺すような刺々しい空気を放っていた。

「龍田、何かあったのか?」

「どうしてそんなことを聞くのー?」

「どうしてっていつもと様子が違うぞ」

「気のせいじゃなーい?」

「……そうか」

(天龍と喧嘩でもしたのか? このままだと息が詰まるな)

「龍田、甘いものでも――っ!?」

「甘いものが、どうしたのー?」

「いや、何でもない……」

 甘いもの、と口にした瞬間、龍田からどす黒いモノを感じて、提督はその先を続けるのをやめた。

(地雷は甘味系か……)

「お昼は何がいいかなぁ?」

「龍田に任せる」

「はーい」

 障らぬ神に祟り無し、提督は今回の件に関しては直接関与することを諦めるのだった。

954: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/29(火) 20:25:37.95 ID:JTOA8/PmO
――――翌日、天龍&龍田、私室。

「……」

「……」

 無言の空間。龍田は部屋の掃除をしており、天龍はベッドに転がっていた。
 普段ならば昨日は提督と何をしたとか、夕飯は何がいいとか、そういった会話を楽しんでいる時間だ。

(切っ掛けが無いと言い出しづれぇなぁ……)

 天龍は、前日に龍田が出ていった直後に、自分のしてしまった過(あやま)ちに気付いていた。
 二つあったシュークリームのうち、一つは確かに天龍のものだったのだが、一つは提督にあげる為のものだったのだ。

(――よし!)

「龍田!」

「なぁに?」

「き、昨日はよ、その、何だ、俺が悪かった」

「何の事ー?」

「シュークリーム二つとも食っちまった事だよ。アレ、提督に食わせるつもりだったんだよな?」

「……テーブルにメモも無しに置いといた私も悪かったの、昨日はつい怒っちゃってごめんねー?」

 謝るタイミングを失っていたのは龍田も同じで、天龍の謝罪を聞いて彼女も同様に謝る。

「じゃあお互いコレでも食って水に流そうじゃねぇか」

「――シュークリーム?」

「間宮に教えてもらったんだよ、上手く焼けなくて苦労したぜ」

「天龍ちゃん……」

「ほら、食えよ」

「うん、いただきまーす」




――――天龍ちゃん、ケーキ一緒に作らない?

 ――――いいぜ、生クリームはこの前作ったら任せろよな。

956: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/29(火) 23:44:54.02 ID:JTOA8/PmO
・暁『レディー修行から帰ってきたわ!』 、投下します

957: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/29(火) 23:45:28.91 ID:JTOA8/PmO
――――提督執務室。

「司令官、レディーとして成長してきたわ!」

「そうか、そりゃ良かったなー」

「もうっ! ちゃんと聞いてったら!」

「じゃあ具体的にどう成長したんだ?」

「お昼にお子様ランチじゃないハンバーグを食べさせてくれたら、見せてあげるわ」

「ハンバーグ……じゃあ大鯨に頼んで作っといてもらうとするか」

「ソースはデミウルゴスにしてちょうだい」

(デミグラスって言いたかったんだろうが、凄い間違いしやがったな……)

――――昼食。

「ほら、ハンバーグだ」

「見てなさい、暁だって何時までも子供じゃないんだから」

 持ち方は上出来、ナプキンも首につけ、暁はハンバーグへと挑む。フォークを軽く刺し、ナイフでゆっくりと切っていく。。
 そして、小さく切り分けたハンバーグを口へと運んだ。


「――どう? どう? 一人前のレディーに見えた?」

「練習したのは良く分かった。音もあまり立てなかったし、ハンバーグ食べるだけならレストランでも恥ずかしくは無いと思う」

「ふふーん、暁はもう一人前のレディーなんだから当然よね」

「――だがな、口元にソースをベッタリ付けてるのはどう見てもレディーじゃないぞ」

「こ、コレはちょっと失敗しただけなんだから!」

 暁は即座に口の周りを拭くが、綺麗に拭けずに余計にソースが広がっていく。

「ほら、じっとしてろ、拭いてやるから」

「うぅー……せっかく練習したのに……」

「慣れてないんだから仕方無いだろ。そのうち綺麗に食えるようになるさ」

「ホント……?」

「あぁ」

「――司令官、テーブルマナーがちゃんと出来る様になったら、お洒落なレストランに連れて行ってくれる?」

「テーブルマナーなんぞ知らんから断る」

「そこは連れていってくれるって言ってくれてもいいじゃないのよ!」

「ファミレスでいいだろ」

「もう知らない! 司令官のバカー!」

「行っちまったか――テーブルマナーに詳しい奴って誰か居たっけなぁ……」




――――お茶を習ってみたわ。

 ――――(ダマだらけだな……)

966: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/31(木) 03:24:36.75 ID:bVQB/rshO
・由良『暑い……』、投下します

967: ◆UeZ8dRl.OE 2014/07/31(木) 03:25:04.64 ID:bVQB/rshO
――――長良型、私室。

「暑い……」

「暑いって言うと余計暑くなるからやめなさい」

「由良、アイス食べる?」

「食べる、ありがと」

「でも、確かにコレは中々キツいわね」

「壁に穴開けたら、涼しくなるかな?」

「蚊とか虫が入るからやめなさい」

「そういう問題じゃないと思うんだけど……はい、由良」

「ありがと、名取」

「それにしても――由良、貴女いくら暑いからって下着姿は感心しないわ」

「着たら、暑い」

「お腹出して寝たら、風邪引いちゃうよ」

「あっちの三人は、いいの?」

「長良と鬼怒は引きそうにないし、阿武隈は二人に挟まれて暖かそうだから大丈夫よ」

「私も、大丈夫」

「タンクトップでもいいから着ようね、ほら」

「――やっぱり、暑い」

「我慢しなさい」

「アイス、もう一つ食べたい」

「ダメだよ由良、お腹冷えちゃうから」

「じゃあ、少しだけクーラーかけて、ね、ね?」

「仕方無いわねぇ、由良が寝入るまでだけよ?」

「うん」

「このクーラー、早く明石さん直してくれるといいんだけど……」

「強しか出来ないなんて、本当に不便よね」

「――クーラー、涼しい」

「そう、なら早く寝ちゃいなさい」

「うん、お休みなさい。わがまま言って、ごめんね?」

「暑いのが苦手なのは仕方無いよ、気にしないで」

「妹のお願いも聞いてあげられないほど、狭い心は持ってないわ」

「……寝る」

「お休みなさい」

「お休み、由良」




――――太陽って、単装砲で撃ち抜けたりしない?

 ――――ちょ、ちょっと無理かな……。

――――出来たとしても人類が絶滅するわよ?


次回 【艦これ】提督「鎮守府として色々不味いことになった」