2 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:20:34 ID:o5swmwm.

ウォール・ローゼ南方面駐屯地。

今日最後の講義を終え、訓練兵たちはそれぞれ講堂を後にしていく。

クリスタも皆と同じように講義棟の廊下を歩いていた。

使用されていない教室の中へ何気なく目をやった時、あることに気づいた。

クリスタ「あれって、もしかして・・・。」


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3 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:21:10 ID:o5swmwm.

ガラッ。

クリスタ「お邪魔します。・・・勝手に入って大丈夫かな?」

教室内には、布のかけられた大型の物体があり埃をひどくかぶっていた。

バサッ。

布をはぐると埃が舞い上がり、うっかり吸い込んでしまった。

クリスタ「ゲホッ、ゲホッ。・・・・やっぱり、ピアノだ。」

そこには古いグランドピアノがあった。

布を被せてあったおかげで、ピアノ自体の汚れはさほどひどくなさそうだ。

4 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:21:44 ID:o5swmwm.

クリスタ「よいしょっと。」カパッ。

蓋を開けると、濃い象牙色に変色した鍵盤が現れる。

クリスタ「ちょっとだけ弾かせてもらっちゃお・・・。」

椅子の高さを調節する。

クリスタ(ピアノに触るの久しぶり。うふふ、嬉しい。)

椅子に腰掛け、そっと演奏し始めた。

5 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:22:17 ID:o5swmwm.

クリスタ(音のずれがひどいなぁ。随分、長い間、放置されてたのね。かわいそうな子。)

ピアノの音色が講義棟に流れた。

クリスタ(お母様が好きだった曲・・・。今頃、どうしてるかな・・・。)

ちょっとだけ。そのつもりが、気づけば夢中になって弾いていた。

6 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:22:52 ID:o5swmwm.

ガラッ

クリスタ「!!」ビクッ

マルコ「ピアノ弾いてたのクリスタだったのか。」

クリスタ「ご、ごめんなさい・・・。」

マルコ「何で謝るの?
    
    マクダウェルの『野ばらに寄す』。すごく素敵だったよ。」

8 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:23:27 ID:o5swmwm.

クリスタ「!! 本当?うれしい。マルコもピアノ弾けるの?」

マルコ「クリスタほどじゃないけど、ちょっとだけね。

    でも、このピアノ、音が狂いまくってるね。」

クリスタ「そうなの。綺麗な音で歌わせてあげたいのに・・・。」

9 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:24:05 ID:o5swmwm.

マルコ「よし。今度の休みに調律道具借りてくるよ。」

クリスタ「マルコ、調律できるの?」

マルコ「僕のおじさんが調律師でさ。調律のやり方、教えてもらったんだ。」

クリスタ「すごい!あっ、でも、その前にこのピアノ弾いてもいいか許可もらわないと。」

10 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:24:40 ID:o5swmwm.

マルコ「じゃあ、今から一緒にキース教官のところへ行こう。」

クリスタ「一緒に行ってくれるの?」

マルコ「ああ。ちゃんとしたクリスタの演奏、聴きたいからね。」ニコッ

クリスタ「ありがとう。」///

11 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:25:32 ID:o5swmwm.

「休日および自由時間になら好きにするがいい。」

キース教官は意外にもあっさりと許可をくれた。

クリスタ(優等生のマルコが一緒にお願いしてくれたから・・・。)

マルコ「良かったね。」

クリスタ「うん。マルコのおかげだよ。ありがとう。」

マルコ「いやいや。僕は何もしてないよ。じゃあ、次の休日だね。」

12 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:26:09 ID:o5swmwm.

数日後。講義棟。

ガラッ。

マルコ「お待たせ~。」

ユミル「マルコ、おせぇよ。クリスタ待たせんな。」

クリスタ「こら、ユミル。そんなこと言わない。

     わざわざ調律の道具取りに帰ってくれてたんだから。

     本当にありがとう。」

13 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:26:41 ID:o5swmwm.

マルコ「いいよ、いいよ。ちょっと家に用事もあったし。ついでだから。

でも、意外だな。ユミルもピアノに興味あるんだ。」

ユミル「んなわけないじゃん。私が興味あるのはクリスタだけ。

    大切なクリスタを男と二人きりになんてさせたくないからね。」

クリスタ「ちょっと!マルコに失礼だよ。」

14 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:27:19 ID:o5swmwm.

ユミル「ほら、さっさと調律しな。女神クリスタの演奏を私は早く聴きたいんだよ。」

クリスタ「もう!ユミル!あなたは黙ってて。

     ごめんね。何か手伝えることある?」

マルコ「じゃあ、鍵盤のふたと天屋根はずすから、そっち側持ってくれる?」

クリスタ「分かった。・・・うんしょ。」


16 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:28:11 ID:o5swmwm.

マルコ「重いから気をつけてね。・・・そっと床に置こう。

    次に手前のパネルを外して・・・。」

クリスタ「ユミル、勝手に調律道具いじっちゃダメだよ。」

ユミル「この二股に分かれてるの何だ?」

マルコ「それは音叉。それを叩いて出る音と真ん中のラの音を合わせるんだ。」

17 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:28:49 ID:o5swmwm.

ユミル「ラって何だ?」

クリスタ「この鍵盤から出る音のことだよ。」ポーン

ユミル「ふーん。他の音はどうやって合わせるんだ?」

マルコ「音叉で合わせたラの音を中心に1オクターブ下のラ、1オクターブ上のラを合わせるんだ。

    他の音は自分の耳を頼りに調整していくんだ。」

18 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:29:31 ID:o5swmwm.

ユミル「??? よくわかんないけど、マルコは耳がいいのか?」

マルコ「僕はそんなに良くないよ。

    普通の人よりはちょっとだけ音感があるくらいで。

    ピアノを小さいころからやってると絶対音感っていう、

    すべての音をドレミファソで答えられる特殊能力がつく人もいるみたいだけど。

    僕はそんなに一生懸命、練習しなかったからね。残念ながら絶対音感はないんだ。」

19 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:30:22 ID:o5swmwm.

ユミル「クリスタはあんの?」

クリスタ「単音だったらね。和音だと三つぐらいまでなら問題ないけど、不協和音とかは厳しいかな。」

マルコ「それでもすごいよ。じゃあ、クリスタ、音合わせるの手伝ってね。

    ええと、チューニングハンマーをこのピンにはめて・・・。」

20 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:31:04 ID:o5swmwm.

―1時間後。

マルコ「よし、できたかな。試し弾きするから、おかしな音がないか聞いててね。」

クリスタ「いいよ。」

ユミル「マルコが弾くのかよ。」

マルコ「まぁ、そう言わないで。いくよ・・・」

21 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:31:51 ID:o5swmwm.

大きく息を吐き身体の力を抜くと、鍵盤に置いた指を動かし始めた。

クリスタ(・・・シューマンの『トロイメライ』。

     子どものころを思い出す郷愁を誘うメロディー。

     優しく柔らかい音色。マルコらしいな。)

22 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:32:27 ID:o5swmwm.

マルコ「ふぅ~。久しぶりに弾いたよ。音のずれは大丈夫そうかな?」

クリスタ「ええ、ばっちり。それより、マルコ、すごく上手で驚いたよ。」

マルコ「そう?そんなに難しくない曲だからね。」

クリスタ「そんなことないよ。簡単な曲ほど上手に聴かせるの難しいもん。

     特にこの曲、演奏者の感性がそのまま出るから。

     私はマルコの弾き方、好きだよ。」

23 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:33:07 ID:o5swmwm.

マルコ「ははは。そんなに褒められると照れちゃうな///」

ユミル「・・・・」グスッ

クリスタ「あれ?ユミル涙ぐんでる。」

ユミル「う、うるさい///」グスッ

クリスタ「楽しかった出来事とか家族のこととか、優しい記憶が浮かんでくる曲だから。

     ユミル悪ぶってるけど、本当は純粋なんだね。」

ユミル「ちがうし。」ゴシゴシ

24 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:33:58 ID:o5swmwm.

マルコ「でもさぁ、ピアノって庶民の家庭には高級品だよね。

    僕はおじさんが調律師だったおかげで、おじさんの家にピアノがあって練習できたけど。

    クリスタの家って裕福なんだね。」

クリスタ「!! ううん、ぜんぜんそんなことないよ。えーとね、ピアノは・・・その・・・。」

ユミル「・・・・。」

25 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:34:35 ID:o5swmwm.

クリスタ「・・・親戚の家に・・・たまたま置いてあって・・・。」タジタジ

ユミル「ほらっ!そんなのどうでもいいから、次はクリスタ弾いてよ。」

クリスタ「う、うんっ!」

マルコ「おっ、楽しみ。何弾いてくれるの?」

ユミル「私のためだけに演奏してくれるよな。」

26 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:35:12 ID:o5swmwm.

クリスタ「うーん、何にしようかな。

     さっきマルコが『トロイメライ』弾いてくれたから・・・。うん、決めた。」

クリスタは流れるような指さばきで弾き始めた。

ピアノから音が溢れ、流れ、教室中を満たした。

27 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:35:45 ID:o5swmwm.

マルコ(・・・これはすごいぞ。リストの『愛の夢 第三番』。

    何度か他の人の演奏を聴いたことがあるけど、こんなに透明感のある音は初めてだ。

    常に流れるアルペジオを粒の揃った音できれいになめらかに弾きつつ、

    左手、右手、交互に出てくるメロディーを芯を持った音できっちり出してくる。

    素人の僕にだって分かる。彼女は本物だ。)

28 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:36:23 ID:o5swmwm.

ユミル(ちょっとちょっと、何かヤバイんだけど。ものっそい指動いてるんだけど。

    なのに微笑んで余裕で弾いてて。クリスタ、まじすげぇよ。

    ・・・めっちゃきれいな曲だな。弾いてるクリスタは女神そのものじゃん。

    ずっと聴いていたい・・・)

29 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:37:07 ID:o5swmwm.

クリスタ「むぅー・・・。久しぶりだと指がうまく回らないなぁ。」

マルコ「すごいよ!!感動したよ!!」

ユミル「やるじゃん。」ナデナデ

クリスタ「えへへ、ありがとう。『トロイメライ』って確か‘夢’って意味でしょ。

     だから夢つながりでこの曲にしてみたの。」

30 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:37:53 ID:o5swmwm.

マルコ「夢か・・・。クリスタって、もしかしてピアニストになることが夢だったんじゃない?」

クリスタ「!?とんでもない。私って手が小さいから・・・。

     でも、子どもの頃はピアノの先生になるのが夢だったな。」

マルコ「そんなに上手なのにもったいないよ。

    たくさんの人に君のピアノを聴いてもらうべきだよ。

    どうして兵士になんかなろうと・・・。」

31 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:38:52 ID:o5swmwm.

ユミル「まぁ、人にはそれぞれ事情があるじゃないの。詮索するのは野暮だよ。

    でも、ピアノの先生って夢はここでも叶えられるんじゃないか?」

クリスタ「えっ?」

ユミル「生徒集めて、ここで教えればいいじゃん。クリスタ先生。」

32 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:39:37 ID:o5swmwm.

マルコ「そうだよ。自由時間と休日はここ使っていいんだし。

    クリスタがピアノを教えるって言ったら、みんな喜ぶよ。(主に男子が)」

クリスタ「・・・私なんかが教えていいのかな・・・。」

マルコ「もちろんだよ。自信持って。」

33 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/21(金) 20:40:09 ID:o5swmwm.

ユミル「じゃあ、クリスタピアノ教室の生徒募集のポスター書こうぜ。」

クリスタ「そうだね・・・。

     それで、もし教えて欲しいって人が来れば、やってみようかな。」

マルコ「大丈夫。みんな飛びつくから。(主にラのつく人が)」

ユミル「早速ポスター作って、食堂の掲示板に張ろう。」


50 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:41:03 ID:KX3C4stk

―その日の夕食時間 食堂

掲示板には一枚のポスターが新しく貼られていた。

『クリスタピアノ教室 生徒募集 

 ピアノの先生はじめました。

 興味のある方は自由時間に講義棟・旧教室へお越し下さい。』

51 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:42:03 ID:KX3C4stk

ザワザワ、ガヤガヤ

ベルトルト「ライナー、掲示板見た?」

ライナー「ああ。もちろんだ。」

ベルトルト「・・・やるんだな。」

ライナー「クリスタの個人レッスンだ。

     ここは戦士として責任を果たさなくてはならない。」

ベルトルト「それなら僕も・・・。」

52 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:42:37 ID:KX3C4stk

ライナー「いや、お前はいい。責任を果たすのは俺一人で十分だ。」

ベルトルト「ずるいぞ、ライナー。」

ライナー「何とでも言え。ここは譲れん。」

ベルトルト「別に、定員があるわけじゃないんだからいいだろう?」

ライナー「生徒が増えれば、一人当たりのレッスン時間が短くなる。

     俺はできるだけ長くクリスタと二人の時間を過ごしたい。」

ベルトルト「でも、僕らだけじゃなさそうだよ。レッスン希望者。」

53 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:43:26 ID:KX3C4stk


―別のテーブル

アルミン「ピアノかー。ちょっと弾いてみたかったんだよね。」

エレン「ピアノって何だ?」

ミカサ「私も知らない。」

アルミン「指を使って鍵盤を押さえて音をならす楽器だよ。

     といっても本で仕入れた情報で、僕も実物は見たことはないけど。」

54 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:44:00 ID:KX3C4stk

エレン「へぇ~。どんな音がするんだろうな。」

アルミン「エレンも興味ある?じゃあ、一緒にレッスン受けようよ。」

エレン「俺はいいよ。兵士に必要な技術じゃなさそうだし。」

ミカサ「そう。エレンはもっと立体機動術を私から学ぶべき。」

55 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:44:36 ID:KX3C4stk

アルミン「でもピアノで演奏する曲って、外の世界から持ち込まれたものがほとんどなんだって。

     昔、外の世界の人たちがどんな音楽を楽しんでいたのか僕は知りたいんだ。」

エレン「外の世界の音楽か・・・。

    習うつもりはないけど、ちょっとだけのぞいてみようかな。」

ミカサ「エレンが行くなら私も行こう。」

アルミン「それじゃあ、明日の自由時間、みんなで行ってみよう。」

56 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:45:10 ID:KX3C4stk

―翌日、自由時間

ガラッ

アルミン「お邪魔します。」

クリスタ「あっ、アルミンたちも来てくれたんだ。どうぞ、入って。」ニコッ

ユミル「予想以上にいっぱい来たな。」

マルコ「クリスタの人徳だよ。」

57 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:45:50 ID:KX3C4stk

エレン「なんだ、いつものメンバーほとんど来てるじゃないか。」

コニー「俺は珍しそうだから見にきただけ。」

サシャ「美しい音楽はお腹が満たされると聞きましたので。」

ジャン「そりゃ心だろ。

    俺はガキの頃ちょっと習ってたことがあるんでな。お前らを笑いに来ただけだ。」

アニ「私は暇つぶし。」

58 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:46:20 ID:KX3C4stk

アルミン「じゃあ、レッスン希望は僕とライナーとベルトルトだけかな。」

ライナー「エレンとミカサは?」

エレン「俺らも見学。」

ミカサ「エレンに従うだけ。」

ライナー「そうか。」

ライナー(よし、三人で収まったか。これ以上増えるなよ。)

59 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:46:52 ID:KX3C4stk

マルコ「もう、来ないかな?じゃあ、クリスタ先生どうぞ。」

クリスタ「先生だなんて/// えっと、ピアノをはじめて見る人は?」

ジャン以外「はーい」

クリスタ「うん。ほとんどだね。

     それじゃあ、どんな音がするか、とりあえず弾いてみせるね。」

60 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:47:38 ID:KX3C4stk

ユミル「クリスタ待ちな。さっき、ジャンも弾けるって言ってただろ。

    ジャンに弾かせてみようぜ。」

ジャン「はぁ?なんでだよ。」

ユミル「ジャンはいつも口ばっかりでかいからな。弾けるなんてどうせ嘘だろ。」

61 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:48:11 ID:KX3C4stk

ジャン「何言ってんだ。俺はトロスト区のモーツァルトと呼ばれた男だぞ。

    家には足踏みオルガンしかなかったけどな。

    弾いてやるから耳かっぽじって聴いとけ。」

マルコ「曲は?」

ジャン「ベートーベンの『エリーゼのために』だ。」

クリスタ(モーツァルトじゃないんだ。)

62 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:48:51 ID:KX3C4stk

ジャン「よし、いくぞ。」

ピロリロリピロリラ~♪

ユミル(これ、昨日と同じピアノか?こんなイヤな音だっけ?)

クリスタ(そんな叩きつけないで。荒いタッチだなぁ。ピアノがかわいそう。)

マルコ(いるんだよね。エリーゼ弾ければピアノが上手なつもりの人。

    ノンレガートのゴツゴツしたエリーゼ。ある意味、斬新だな。

    あっ、展開部入らず演奏終わっちゃった。そこからがいいところなのに。)

63 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:49:44 ID:KX3C4stk

ジャン「はぁはぁ・・・。どうだ。」ドヤ

コニー「すげー。なんかいっぱい音がでるな。」

サシャ「どういう仕組みなんでしょうか?でも、ちっともお腹が満たされません。」

アルミン「鍵盤を下ろすと後ろに張ってある弦が弾かれるのか。なるほど。」

64 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:50:23 ID:KX3C4stk

エレン「なんで息が荒いんだ?」

ミカサ「ピアノと戦ってたんでしょう。目が血走ってたし。」

ライナー「ピアノとは相当の覚悟を持って臨まなければならないのか。」

ベルトルト「自分とピアノ。負けることのできない戦い・・・か。」

アニ「・・・くだらない。」

65 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 20:50:57 ID:KX3C4stk

ジャン「ちょっ、お前ら俺の演奏に感想はないのか。」

サシャ「はじめて聴くものなのでよく分からないです。」

コニー「ピアノを弾いてる人間見んのも初めてだから、

    手で弾くのが正しいのかどうかさえ分からん。」

ジャン「正しいよ!!」


68 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:26:28 ID:KX3C4stk

マルコ「まぁまぁ、じゃあ次はクリスタで。

    クリスタの演奏を聴いたら、みんなジャンの評価もできると思うから。」

ユミル「ささっ、クリスタ先生どうぞ。折角だから、さっきジャンが弾いた曲やってよ。」

クリスタ「えっ?いや、でも、それは・・・。」

69 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:27:11 ID:KX3C4stk

ミカサ「そうしてくれた方が判断しやすい。」

エレン「ピアノ勝負か。おもしろそうだな。」

ジャン「いいぜ。俺も正直なみんなの感想聞きたいし。」

ユミル「なっ、ああ言ってるし、やっちゃいな。」

クリスタ「うう・・・。しょうがないな・・・。」

椅子に座り、しばらく目を閉じ集中する。

教室にクリスタのピアノの音が流れ出すと、そこにいる全員が息を呑んだ。

70 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:27:45 ID:KX3C4stk

マルコ(やっぱりすごいな。

    昨日、クリスタに簡単な曲ほど上手に弾くのは難しいって言われたけど、その通りだな。

    音数が少なければ少ないほど、弾き手の技術の優劣がはっきり出る。

    ジャンは譜面に書いてある音符を、鍵盤の上で音に変換してるだけ。いわば、作業だ。

    クリスタは一音一音に意味を持たせて、まるで物語を紡いでいるようだ。

    喜び、切なさ、苦しみ、悲しみ、彼女の生み出す音はすべてを演じ表現する。まさに演奏だ。
    
    ジャンには悪いがすべてにおいて比べ物にならないよ。)

71 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:29:49 ID:KX3C4stk

アルミン(うわぁ。きれいな音だな。悲しげなメロディーが胸に迫ってくる。)

アニ(音に洗われて心がきれいになっていくみたい・・・。)

ユミル(切なげなクリスタの表情・・・。胸がきゅんきゅんする。)

ベルトルト(僕にはクリスタの背中に天使の羽根が見えるよ。)

ライナー(足元のペダルになりたい。)

72 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:31:16 ID:KX3C4stk

クリスタ「・・・ふぅっ。ピアノってこんな音だよ。」

パチパチ パチパチ

コニー「すげぇよ。俺、よく分かんないけど、なんか体がビリビリッて震えたよ。」

サシャ「ジャンの時と違って、お腹、じゃなくて胸がいっぱいになりました。ごちそうさまです。」

ミカサ「そもそもジャンと同じ曲なの?クリスタの方が長い曲だった。」

マルコ「えーと、ジャンは曲の途中までだったから・・・。」

73 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:32:06 ID:KX3C4stk

エレン「何だよ。最後まで弾けねぇのかよ。」

ジャン「うっせぇ。楽譜があれば弾けんだよ。あんな長いの全部覚えられるか。」

アニ「クリスタはばっちり覚えてたけどね。」

ジャン「はっ、弾けもしない奴らに文句言われたくないね。」


75 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:32:51 ID:KX3C4stk

ライナー「だが、ジャン。クリスタに比べるとお前の腕前は・・・。」

ジャン「言われなくても分かってるよ。

    クリスタに比べたらゴミみたいな演奏だったって。

    でも、言っとくけど、クリスタと比べるからヘタクソなだけで、

    俺の演奏自体はそんなに悪くなかったはずだ。

    クリスタが別格すぎるんだよ。」

76 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:34:27 ID:KX3C4stk

クリスタ「ううん、そんなことないよ。

     私がジャンよりちょっとだけ多く、今まで練習をしてきただけだから。

     今からピアノ再開すれば、あっという間に私より上手になるよ。」

ジャン「本当か?」

77 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:36:48 ID:KX3C4stk

クリスタ「うん。そもそもピアノって女の人より男の人の方が向いてるんだ。

     身体能力の高さや体格の良さは、表現の幅を広げるのに有利だから。

     有名なピアニストも男の人の方が圧倒的に多いしね。」

マルコ「感受性豊かで繊細な表現は、なかなか男性には難しいけど、

    豪快で力強い演奏は女性には向かないからね。」

78 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/22(土) 22:37:51 ID:KX3C4stk

エレン「じゃあ、あれか。男の身体能力を持った女が一番うまくなるのか?」

マルコ「もしくはその逆。女性の心を持った男性。

    実際にピアニストにはゲイが多いらしいし。」

ユミル「それって・・・ミカサとライナーじゃんw」


83 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:33:57 ID:k6wKB2Zo

ライナー「おいおい、俺はゲイじゃないぞ。」

ミカサ「アルミン。私、今、褒められているの?馬鹿にされているの?どっち?」

アルミン「褒められてるよ・・・多分。」

サシャ「じゃあ、ミカサも習ったらいいじゃないですか。きっと上手になりますよ。」

ミカサ「エレンがやらないことは私もやらない。」

84 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:34:56 ID:k6wKB2Zo

コニー「なぁなぁ、ちょっとピアノ触ってみてもいいかー?」

クリスタ「いいよ。自由に音出してみて。」

エレン「俺も俺も。」

アルミン「僕も触ってみたい。」

ポーン♪ポロン♪ピロン♪

コニー「おおっ、簡単に音出んじゃん。」

クリスタ「鍵盤を押さえるだけで音が出るから。簡単でしょ?」

85 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:35:34 ID:k6wKB2Zo

アルミン「ふむふむ。左の方へ行くと低い音。右の方へ行くと高い音になるのか。」

エレン「鍵盤一つ一つ音がちょっとずつ違うんだな。ポーン♪

    ・・・あっ、これはさっき聴いた音。この隣がこの音で・・・ポーン♪

    3つ隣がこの音で・・・ポーン♪7つで1セットか・・・ポロロロロン♪」

コニー「エレン、お前さっきから何ぶつぶつ言ってんだよ。」

エレン「いや、よくわかんないんだけど、何かがわかるような・・・。」

コニー「はぁ?大丈夫か?」

86 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:36:19 ID:k6wKB2Zo

エレン「・・・左から順番に白いのと黒いのを交互に右端まで押さえていって・・・」ピロピロピロピロ♪

クリスタ(エレン、半音階なんて弾き始めてどうしたのかな?)

マルコ(もしかして・・・音を確認してる・・・?)

エレン「よしっ。大体分かったぞ。」

アルミン「えっ?」

エレン「ちょっと椅子座らせて。

    ジャン、お前がさっき弾いてた曲ってこれだろ?」ピロリロリピロリラ♪

ジャン「何!?」

87 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:36:54 ID:k6wKB2Zo

マルコ「エレンすごいじゃないか!!

    一本指打法だけど、右手、左手ちゃんと音をとれてる。」

アルミン「まさか、ジャンの押さえた鍵盤を1回見ただけで記憶したの?」

エレン「えっ?お前らわかんないの?さっきこの音してたじゃん。」

コニー「わかんないのって、わかんねぇよ。」

88 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:37:39 ID:k6wKB2Zo

クリスタ「ちょっとエレン。

     ピアノの鍵盤を見ないように後ろを向いて立ってくれるかな?」

エレン「ん?いいけど。」

クリスタ「今から弾く音を聴いてね。」

クリスタ(まずは単音の旋律で・・・)ポーン♪ポーン♪ポーン♪

クリスタ「エレンこっちに来て、今聴こえた音を出してみて。」

エレン「いいよ。」ポーン♪ポーン♪ポーン♪

89 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:38:15 ID:k6wKB2Zo

クリスタ「ありがとう。また後ろ向いててね。じゃあ次ね。」

クリスタ(今度は三和音。ト調の主和音、下属和音、属和音。)ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪

クリスタ「また、今の音、出してみて。」

エレン「いいけど。」ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪

クリスタ「次いくね。」

エレン「はいはい。」クルッ

クリスタ(次もいけるかな?嬰ハ短の属七、減七、導七の和音。)ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪

クリスタ「どうぞ。」

エレン「こうだろ。」ジャーン♪ジャーン♪ジャーン♪

90 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:38:53 ID:k6wKB2Zo

クリスタ「すごい!!全部正解だね。エレン、絶対音感があるよ!!」

エレン「何だそれ?」

クリスタ「音を聴いただけで、それが、どの音程か分かる能力だよ。」

エレン「そんなの、聴けば分かるんじゃないのか。」

マルコ「普通の人は分からないんだよ。

    子どもの頃から音感を鍛えないと、なかなか身につかないんだけど・・・。

    エレンは天性の絶対音感保持者なんだ。」

91 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:39:35 ID:k6wKB2Zo

クリスタ「エレン、ぜひ、ピアノを弾いて。

     神様が与えてくれた才能を無駄にしてはいけないわ。」

エレン「そんなこと言われてもなぁ。あんまり興味ないし。」

アルミン「エレン、一緒に習おうよ。そんな才能があるなんてすごいよ。

     僕なんてちっとも音分かんなかったし。」

エレン「アルミンでも分かんなかったのか?ミカサは?」

ミカサ「音は音。何を理解するというの?」

アルミン「ねっ、君は特別なんだよ。」

92 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:40:15 ID:k6wKB2Zo

エレン「そうか・・・。」

エレン(・・・ピアノだったらミカサを越えられるかもしれないのか?

    一つぐらいミカサに勝てるものが欲しい・・・。)

エレン「よし。俺、ピアノやってみる。クリスタ、俺にも教えてくれ。」

クリスタ「良かった。こちらこそよろしくね。」

93 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:40:53 ID:k6wKB2Zo

ミカサ「エレンがやるなら・・・。クリスタ、私も習いたい。」

エレン「お前はいいよ。何でも真似するなよ。」

ミカサ「でも・・・。」シュン

クリスタ「いいじゃない。ミカサもきっと上手になるから。一緒にがんばろうね。」

ミカサ「うん。」

ジャン「ミカサもやるのか・・・。俺もやっぱり教えてくれよ。クリスタ先生。」

クリスタ「もちろんだよ。」

94 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:41:40 ID:k6wKB2Zo

ユミル「ってことは、

    生徒はライナー、ベルトルト、ジャン、アルミン、ミカサ、エレンの六人だな。」

クリスタ「それじゃあ、レッスンは一時間ずつね。

     月・ライナー、火・ベルトルト、水・ジャン、木・アルミン、金・ミカサ、土・エレンで。

     レッスン時間以外は、このピアノでみんな自由に練習していいからね。

     教本まだ用意できてないから、楽譜の読み方とか手のフォームとか

     基本的なことからはじめるね。
 
     レッスンはもちろん無料だけど、新しい教本や楽譜が必要になった場合は、

     申し訳ないんだけど、自費でお願いするね。」

95 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:42:23 ID:k6wKB2Zo

ライナー「了解した。」

ベルトルト「レッスン料とらないなんて、本当にいいの?」

クリスタ「うん。私、先生させてもらえるだけで嬉しいから。気にしないでね。」ニコッ

マルコ「それじゃあ、今日はもう遅くなったし解散だね。」

クリスタ「えーと、明日は火曜日だから、ベルトルトだね。

     自由時間になったらこの教室に来てね。」

ベルトルト「うん。わかったよ。」

96 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:43:23 ID:k6wKB2Zo

ユミル「はーい、撤収、撤収。」

「おつかれー」ガラガラ ピシャッ

ピアノの片付けに残ったクリスタとマルコ、ユミルを残し、皆、宿舎へ帰っていった。

マルコ「教本どうするの?」

クリスタ「うーん。やっぱり楽しくないと続かないからなぁ。

     『バイエル』とか使いたくないなぁ・・・。」

97 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:44:12 ID:k6wKB2Zo

マルコ「ちょっと難しくても、気に入った曲に挑戦する方が楽しいかもね。」

クリスタ「そうだよね。みんなには何か一曲選んでもらうとして・・・。

     あとは『ル・デリアトゥール』使って、基本的なテクニックを身につけてもらおうかな。」

マルコ「うん。それでいいんじゃない。」

98 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:44:55 ID:k6wKB2Zo

クリスタ「マルコ、今度の休みって空いてる?」

マルコ「いいよ。楽譜買いに行くんでしょ。付き合うよ。」

ユミル「もちろん、私も付いていくし。」

マルコ「僕の家にも、いくらか楽譜あるからそれも持って来るよ。」

クリスタ「マルコにはお世話になりっぱなしでゴメンね。ありがとう。」

99 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:45:37 ID:k6wKB2Zo

マルコ「ん~、じゃあ、お礼に一曲弾いてくれない?」

ユミル「おい、調子にのんな。」

クリスタ「いいよ。そんなのでお礼になるなら。」

マルコ「やった。」

クリスタは椅子に腰掛け鍵盤に手をかけた。

クリスタ(訓練で疲れたみんながよく眠れますように・・・。)

♪~♪~~♪♪♪~~~♪~~~

100 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:46:11 ID:k6wKB2Zo

マルコ(ショパンの『ノクターンOp.9-2』。静かな夜にぴったりだ。

    甘く感傷的な主題が少しずつ形を変えながら何度も繰り返される。

    左手の伴奏形はかなり音が飛ぶけど、決して雑にならず、

    テヌートが嫌味にならない絶妙なバランスで効いている。

    ・・・あぁ、心が穏やかになる。)

101 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/23(日) 16:46:52 ID:k6wKB2Zo

クリスタ「・・・ふぅ・・・。少しはお礼になったかな?」

マルコ「十分すぎるくらいだよ。今日はいい夢が見られそうだよ。」

ユミル「もう1回聴かせてよ~。」

クリスタ「うふふ。また今度ね。それじゃ、蓋をしめて・・・。」

マルコ「天屋根閉めて・・・と。」

クリスタ「おやすみなさい。」

マルコ「うん。また明日ね。」


113 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 13:58:26 ID:oKsu4Sd.

―次の休日。

小雨が降りしきる中、マルコは傘をさし宿舎前に立っていた。

クリスタ「遅くなってゴメンね。待った?」

マルコ「ううん。雨降っちゃったね。あれ?ユミルは?」

クリスタ「ユミル風邪ひいてて、あまり体調良さそうじゃなかったから、

     この天気だし、無理やり置いてきちゃった。」

マルコ「そっか。ひどくなると大変だもんね。それじゃあ、行こうか。」

クリスタ「うん。」

二人は駅馬車の停留所に向かって歩き出した。

114 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 13:59:11 ID:oKsu4Sd.

マルコ「レッスンは順調?」

クリスタ「うーん。一回ずつしかやってないから。ライナーはまだ見れてないし・・・。

     でも、アルミンとミカサはさすがだよ。音符の読み方すぐ覚えちゃった。

     一つ教えたら十以上のことを理解してくれるからすごく楽。」

マルコ「あの二人、座学の成績ずば抜けてるもんね。」

115 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 13:59:50 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「ベルトルトはとっても真面目。アルミンもだけど、私の言ったこと全部メモしてるの。

     一生懸命覚えようとしてくれてて、嬉しくなっちゃった。

     手がね、とっても大きくて、指が意外にほっそりと長くて。

     本物のピアニストの手みたいなんだよ。ちょっとうらやましいかな。」

マルコ「ピアノに向かっているベルトルトは様になりそうだ。」

116 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:00:27 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「そうなの。かっこよくてびっくりしたよ。

     ジャンはね、楽譜はばっちり読めるんだ。

     でも、オルガンで練習してきたせいもあって、タッチが荒くって・・・。

     そこをどうにか直せたら、きれいな演奏ができると思う。」

マルコ「ジャンは何でも器用にこなすから、教え方が良ければすぐに直るよ。」

117 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:01:00 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「うん。私、がんばるよ。

     エレンは・・・、もう、無理に楽譜を読ませないことにした。

     音符の読み方説明してたら、顔が?マークだらけになっちゃって。

     エレンの場合、音ありきだから。とりあえず耳で聴いて覚えてもらって。

     音と音符を結びつけるのは慣れてきてからでいいかなぁって。」

マルコ「ははは、エレンらしいね。」

118 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:01:37 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「でも、エレンすごいんだよ。

     私が『きらきら星』弾いたら、すぐに音とって演奏してね。

     もちろん、指使いはめちゃくちゃだから、一から教えたけど。

     するとね、すべての調に移調して弾き始めて、びっくりしたよ。」

マルコ「エレンがどんな弾き手になるのか今から楽しみだね。」

クリスタ「もっと早くピアノ始めてたら、間違いなく神童だって騒がれてたと思う。

     ちょっと遅かったけど、それでもエレンの才能に気づいてあげれて良かった。」

119 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:02:14 ID:oKsu4Sd.

停留所に着くと、二人は駅馬車に乗り込んだ。

馬車の天井を覆う幌に雨粒が落ち、ボタボタという音が響く。

クリスタ「雨粒の音・・・。」

マルコ「ショパンの前奏曲『雨だれ』みたいだね。」

クリスタ「途切れなく続く変イ音がまるで雨粒の落ちる音に聴こえるんだよね・・・。

     だけど私、この曲聴くとものすごく不安になるんだ。」

120 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:02:52 ID:oKsu4Sd.

マルコ「そう?しっとりと穏やかな曲じゃない?

    中間部は嬰ハ短調に転調して、暗く激しい感じになるけど。」

クリスタ「最初は雨粒の音なんだけど、転調してからは不気味な足音に聴こえて。

     ささやかで幸せな生活を送っていても、後ろから悪魔の足音がどんどん近づいてきて、

     気づいたときには手遅れで絶望する・・・。そんなイメージかな。」

121 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:03:32 ID:oKsu4Sd.

マルコ「おもしろい解釈だね。

悪魔の足音か・・・。今の僕たちからすれば巨人の足音ってところかな。

    だけど、最後は足音が一旦途切れ、また明るい変ニ長調に戻る。

    絶望の後には救いがあるよ。」

クリスタ「前向きだね。マルコらしい。そっか、救いか。

     私は最後の長調で、天国に召されたのかと思ってた。」

122 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:04:06 ID:oKsu4Sd.

マルコ「ぷぷっ、クリスタ、後向きすぎるでしょ。」

クリスタ「もう、笑わないでよ。けっこう真剣に考えてたんだから。

     ・・・でも、嬉しいな。訓練兵になったら音楽の話なんてできないと思ってたから。

     マルコがいてくれて良かった。」ニコッ

マルコ「///。僕も楽しいよ。

    訓練兵になる前も、友達とこんなに深く音楽のこと話すことなかったから。」

123 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:04:48 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「友達か・・・。
  
     私はね、周りに同年代の子がいなくて・・・、友達って呼べる人がいなかった。」

マルコ「そうなんだ・・・。」

クリスタ「だから、毎日、毎日ピアノを弾いてたの。

     ピアノを弾いてたら、悲しいとか寂しいとか、そういうの忘れられるから。

     だけど、訓練兵になってみたら、周りとどう接していいかよく分からなくてね。

     そんな時、なぜかユミルが絡んできて・・・。

     随分と彼女には助けられてるんだ。突飛な言動にはたびたび困らせられるけど。

     私にとって、ユミルは初めての友達なんだ。

     あっ、これユミルには内緒ね。すぐ調子に乗っちゃうから。」シー

マルコ「ははっ、分かったよ。

    あっ、街に着いたみたいだ。降りよう。」

124 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:05:28 ID:oKsu4Sd.

二人は書店、楽器屋をめぐり、めぼしい楽譜を買い集めていった。

クリスタ「とりあえず必要な楽譜と教本は揃ったかな。」

マルコ「それは良かった。それじゃ、そこのカフェでお茶にしよう。

    雨の中、随分と歩いたから疲れたんじゃない?」

クリスタ「うん。街に出てくるの久しぶりだから、ちょっと人混みに疲れちゃった。」

125 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:06:02 ID:oKsu4Sd.

店に入り、マルコはカフェオレを、クリスタは紅茶を注文した。

クリスタ「マルコってここの街、詳しいんだね。本屋さんの場所とかよく知ってたし。」

マルコ「あっ、言ってなかったけ。ここ、僕の地元なんだ。僕の家もすぐ近くだよ。」

クリスタ「知らなかった。でも、すごく助かったよ。マルコのおかげで買い物が早く済んだから。」

マルコ「それはそれは。お役に立てて光栄です。クリスタ姫。」

クリスタ「うふふ。もう、姫なんてやめてよ。」

126 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:06:42 ID:oKsu4Sd.

マルコ「ははは。

    ところで、クリスタってさ・・・、好きな人いるの?」

クリスタ「!?」///

マルコ「えっと、突然変なこと聞いてごめんね。

    クリスタって男子にすごく人気があるからさ。ちょっと気になって。」

クリスタ「私って、人気あるの?」

マルコ「うん。告白とかされない?」

クリスタ「全然されない。むしろ、男の子たちから話しかけられることがほとんどないよ。

     ちょっと寂しいくらい。」

127 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:07:23 ID:oKsu4Sd.

マルコ(そうか。クリスタにはいつもユミルがべったりだしな。

    ライナーたちも影で盛り上がるばっかりで、本人目の前にしたら固まってるし。)

クリスタ「私って男の子たちに嫌われてるのかな・・・。」シュン

マルコ「そんなことない。僕は好きだよ。」

クリスタ「えっ・・・?」///

マルコ「・・・あっ。」///

128 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:07:54 ID:oKsu4Sd.

マルコ(まずい。早く何か言わないと・・・。)
    
マルコ「う、うん。そう、友達としてね。

    クリスタ優しいし、趣味合うし、友達としてって意味で・・・。」///

クリスタ「そ、そうだよね。もう、やだな・・・、マルコってば・・・。」///

クリスタ(はぁー、びっくりした。そうよ、友達、友達。)

129 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:08:28 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「マルコのほうこそ好きな子いないの?」

マルコ「僕?僕は・・・、いないかな・・・。」

クリスタ「そっか。私ね、一度でいいから、恋してみたいんだ。

     ピアノの曲って恋愛をテーマにしたものが結構あるでしょ。

     私、恋したことないからうまく表現できなくて・・・。」

マルコ「難しいよね。僕は子どもの頃、好きだった子いたけど片思いで終わったから。

    恋の喜びを表現しろって言われても、どう弾いていいのかさっぱりだよ。」

130 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:09:11 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「片思いって、・・・ふられたの?」

マルコ「ううん。告白すらしなかったよ。

    僕の友達もその子のこと好きでさ。

    争ってまでどうこうなりたかったわけじゃないし、自分の気持ちは胸に閉まっといたよ。」

クリスタ「マルコって欲がないよね。訓練の時も、一歩引いて他の人に譲ってることがあるから。」

131 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:09:48 ID:oKsu4Sd.

マルコ「うーん・・・。

    欲がないってわけじゃなくて、人と競争したり、ぶつかったりするのが苦手なんだ。

    自分が諦めることで、物事がスムーズに流れるんなら、それでいいやって思っちゃう。」

クリスタ「その気持ち、私も分かるな・・・。

     でも、それって、マルコの優しさでしょ。立派だと思うけど・・・。」

132 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:10:28 ID:oKsu4Sd.

マルコ「優しさなんかじゃないよ。僕は臆病だから。争いを避けて自己防衛してるだけだよ。

    欲しいものを欲しいって言える人間の方がよっぽど強くて立派だよ。」

クリスタ「だけど、どうしても譲れないものができたらどうするの?」

マルコ「んー、その時になってみないと分からないなぁ。

    欲しいって言える勇気があればいいけどね・・・。

    あっ、雨が止んだみたい。そろそろ出ようか。」

クリスタ「うん。」

133 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:11:12 ID:oKsu4Sd.

店を出る。

クリスタ「奢ってもらっちゃった・・・。ありがとう。」

マルコ「いいよ、それぐらい。

    ちょっと家に楽譜取りに行って来るから、その辺のお店で時間潰してて。」

クリスタ「わかった。」

クリスタは目に付いた一軒の雑貨屋に入った。

クリスタ(あっ、これとかユミルにいいかも。おみやげに買って帰ろう。)

134 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:11:49 ID:oKsu4Sd.


―女子宿舎

クリスタ「ただいま~。ユミル調子はどう?」

ユミル「遅い!!今、何時だと思ってんだよ!!」

クリスタ「えっ?午後4時だけど。」

ユミル「こんな遅くまで病気の私を置いて、マルコと二人でどこ行ってたんだよぉ~~~。」

クリスタ「楽譜買いに行っただけだって。しかも全然遅くないし。

     でも、だいぶ調子良さそうだね。良かった。」

135 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:12:58 ID:oKsu4Sd.

ユミル「・・・何もされてない?何か変なこと言われたり、変なとこ触られたりしてない?」

クリスタ「もう!いい加減にしてよ。マルコはそんな人じゃないから。怒るよ。」

ユミル「あぅぅ・・・、だってさ・・・、心配だから・・・。」

クリスタ「はいはい。あっ、これユミルにおみやげ。」

ユミル「これは・・・、髪留め?」

クリスタ「うん。ユミル、だいぶ髪伸びてきたじゃない。

     これだとシンプルで訓練の邪魔にならなそうでしょ。

     髪の毛切るんだったら、必要ないけど・・・。」

136 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:13:37 ID:oKsu4Sd.

ユミル「クリスタ、ありがと~。絶対、髪切らないし。まじ大好き。結婚してくれ!」ムギュ~

クリスタ(・・・僕は好きだよ・・・か。)///

ユミル「あっ、真っ赤になってる。ほんとクリスタはかわいいよ。」

クリスタ(・・・やだっ、私ってば何思い出してるの・・・。)///

137 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:14:13 ID:oKsu4Sd.

―男子宿舎

マルコ「ただいま。あー、疲れた・・・。」ガシッ!!

マルコ「!?」

ベルトルト「さぁ、マルコ、そこに座ろうか。」

マルコ「え、ええと・・・。」

ライナー「今日は、お前とゆっくり話がしたくてな。」

マルコ「いや・・・、そんな、ぜんぜん、話すことないデス・・・。」

138 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:14:57 ID:oKsu4Sd.

ベルトルト「今日はユミル、一緒じゃなかったみたいだねぇ。」

ライナー「クリスタと二人きりでお出かけ・・・って、まるでデートだな。」

マルコ「そ、そんなつもりじゃないし。やだな、二人とも笑顔が怖いよ。」

ベルトルト「時間はたっぷりあるから、クリスタの一挙一動、すみずみまで聞かせてもらおうかな。」

ライナー「まずは、クリスタの匂いについて語り合おうか・・・。」

マルコ(だれか助けて・・・。)

こうして長い夜は更けていった。

139 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:15:47 ID:oKsu4Sd.

―月曜日、自由時間

クリスタ「ライナーは今日が初めてのレッスンだね。」

ライナー「ああ。」

クリスタ「じゃあ、とりあえず、演奏する時の姿勢から確認するね。

     まずは、椅子の高さを合わせるよ。ちょっと座ってみて。」

ライナー「ああ。」

140 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:16:23 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「・・・・うん。はい、立っていいよ。

     椅子の高さはね、鍵盤に手を置いたときに、手首と肘がほぼ水平になるように調整するの。

     かなり椅子下げなくちゃ。やっぱりライナーって大きいね。」ニコッ

ライナー「ああ。」

クリスタ「・・・よいしょ。これぐらいの高さかな。もう一度座ってみて。」

ライナー「ああ。」

141 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:17:04 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「それで、両手を鍵盤に置いてみて。

     ・・・うん。椅子の高さはばっちりだね。今度からは自分で調整してみてね。

     ほら、肩の力を抜いて、リラックスして。」ポンポン

椅子の後ろに立ち、ライナーの両肩をクリスタは優しくたたく。

ライナー「ああ。」

142 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:17:49 ID:oKsu4Sd.

クリスタ「手の力も抜いて。指は伸ばさず軽くボールを握ってるような形で・・・。」

ライナーの後ろから、クリスタは腕を伸ばし、ライナーの手の形を整える。

ライナー(・・・俺の平常心もそろそろ限界だ・・・。

     大きいねって、クリスタさんが言ったから、毎週火曜はピアノ記念日。

     あぁ、めちゃくちゃいい匂いがする。ピアノ最高。)スーハースーハー

クリスタ「ほら、そんなに背中を丸めないで。背筋を伸ばして・・・。」サスサス

ライナー「む、無理・・・。」

クリスタ「顔赤いし、調子悪そうだけど大丈夫?」

143 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/25(火) 14:18:33 ID:oKsu4Sd.

ライナー「す、すまん。ちょっと手洗いに・・・。」

クリスタ「あっ、うん。行ってきていいよ。」

ガラッ。

前屈みのまま教室を出て行くライナー。

クリスタ「お腹の調子が悪かったのかな・・・。」

一人残された教室でクリスタは呟いた。


156 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 13:55:20 ID:0GgHq1/w

―火曜日、自由時間

クリスタ「ト音記号の音符は読めるようになったかな?」

ベルトルト「うん。頑張って覚えてきたよ。」

クリスタ「よかった。じゃ、今日はヘ音記号の音符の読み方をやるんだけど、

     その前に、はいっ、これ教本。」

ベルトルト「これ、何て書いてあるの?」

クリスタ「『ル・デリアトゥール』。指の基礎練習の本だよ。

     運動する前の準備体操みたいなものかな。

     毎日、10分でもいいから、ちゃんとした指の形でその本に取り組むと、

     あっという間に上手になるよ。」

157 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 13:55:55 ID:0GgHq1/w

ベルトルト「そうなの?」

クリスタ「うん。騙されたと思ってやってみて。

     あっ、もちろん今からその本の使い方も指導するから。」

ベルトルト「わかった。」

クリスタ「それとね、その本だけじゃおもしろくないから、

     みんなには自分で練習曲を一曲選んでもらおうと思って。

     初心者でもがんばれば弾けそうな楽譜をいろいろ用意したよ。」バサッ

ベルトルト「うわっ、たくさんあるな。」

158 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 13:56:43 ID:0GgHq1/w

クリスタ「どんな曲がいいかな~。

     最初だし、やっぱり、ゆったりめの曲じゃないと難しいよね・・・。」

ベルトルト「クリスタに任せるよ。僕、よく分からないし。」

クリスタ「わかった。ベルトルトに似合いそうなのは・・・。

     これ、どうかな?ちょっと弾いてみるから聴いててね。」

♪~~♪~~♪~♪♪~~~

ベルトルト(優しく穏やかで、どこか懐かしい・・・。

      クリスタが僕のために選んでくれた曲だ。すごく嬉しい。)

159 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 13:57:22 ID:0GgHq1/w

クリスタ「こんな感じの曲だけど、どうかな?」

ベルトルト「うん。気に入ったよ。ぜひ、その曲を弾けるようになりたいな。」

クリスタ「よかった。」

ベルトルト「何ていう曲?」

クリスタ「シューマンの『見知らぬ国と人々について』」

ベルトルト「不思議な曲名だね。」

160 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 13:58:07 ID:0GgHq1/w

クリスタ「この曲はね、『子どもの情景』っていう曲集の中の一つでね。

     子供の心を描いた作品なんだ。

     でも、子ども向けってわけじゃなくて、大人が遠い日々を思い出しながら弾く感じ。
     
     子どもの頃持っていた、まだ知らない世界への憧れとか不安とか、

     そういう気持ちを表した曲かな。」

ベルトルト「なるほど。だから、初めて聴く曲なのに、懐かしさを感じるんだね。」

161 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 13:58:43 ID:0GgHq1/w

クリスタ「うん。優しい温もりに包まれる曲。

     もの静かで穏やかなベルトルトにぴったりだと思うよ。

     それにね、この曲、ベルトルトの手の大きさを活かせるんだ。

     左手の伴奏部分がね、小さな手だと音が途切れちゃうの。

     私はペダル踏んでごまかしてるけど、

     やっぱりちゃんと音をつないで弾いた方がきれいだから。」

ベルトルト「難しそうだけどできるかな?」

クリスタ「大丈夫。最初は片手ずつゆっくり練習するから。」

162 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 13:59:41 ID:0GgHq1/w

ベルトルト「よろしくね。

      それより、ライナーはどんな曲選んだの?

      昨日はライナーのレッスンだったよね。」

クリスタ「うふふ。気になる?」

ベルトルト「うん。やっぱり、クリスタの選曲?」

クリスタ「そうだよ。

     戦士にふさわしい格好いい曲を弾きたい、って言うからこの曲を勧めたの。」

♪♪~♪♪♪~~

163 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 14:00:23 ID:0GgHq1/w

ベルトルト(重々しくて悲しいメロディー。だけど壮大で心に響く・・・。)

クリスタ「こんな曲。」

ベルトルト「確かに格好いいね。何ていう曲?」

クリスタ「ヘンデルの『ハープシコード組曲第4番 ニ短調 サラバンド(HWV437)』」

ベルトルト「長くて覚えれない・・・。」

164 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 14:00:58 ID:0GgHq1/w

クリスタ「ごめんごめん。ヘンデルの『サラバンド』でいいよ。

     ヘンデルさんって人、『サラバンド』っていう曲をたくさん書いてるから、

     他の曲と区別するために色々と題名に付いてるんだ。

     でも、この『サラバンド』が一番有名だよ。」

ベルトルト「そうなんだ。ライナーの無骨な感じが出てて、良い選曲だと思うよ。」

クリスタ「うふふ。ありがとう。

     それじゃ、レッスン始めようか。まずは先週のおさらいから・・・。」

165 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 14:01:51 ID:0GgHq1/w

―水曜日 自由時間

ジャン「だからさ、簡単なんだけど『おぉ~、すげぇ』って言われる曲が弾きたいんだって。」

クリスタ「難しい注文だなぁ。」

ジャン「もちろん、エレンよりイカした曲ってのが前提で。」

クリスタ「エレンはまだ曲決めてないし。

     ジャンはピアノ経験あるから、曲の難易度がちょっと高くても大丈夫そうだけど。」

166 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 14:02:34 ID:0GgHq1/w

ジャン「難しい曲は勘弁してくれ。俺は地道に練習する気ないんでね。

    初見で弾ける程度で、ドラマチックで疾走感があって、心が震える曲。」

クリスタ「もう、無理ばっかり。

     疾走感って言ったら、それなりに速い曲になるよ。」

ジャン「速弾きなら自信がある。

    ただ譜読みが大変なやつとか、音飛びが激しいのは面倒くさい。」

167 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 14:03:29 ID:0GgHq1/w

クリスタ「うーん。ハチャトゥリアンの『少年時代の画集』って使ったことある?」

ジャン「ない。」

クリスタ「その中の『エチュード』って曲なんだけど・・・。」

♪♪~♪♪♪♪~♪♪~

ジャン(やべぇ、これ超かっこいい。

    譜面を見る限り難易度はそんなに高くないのに、なんだこの緊迫感。

    胸騒ぎがして、何ともいえない焦燥感にかられる。

    無機的で冷たい感じの曲なのに、心がどんどん熱くなるぜ。)

168 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 14:04:29 ID:0GgHq1/w

クリスタ「・・・ふぅ。どうかな?」

ジャン「この曲に決めた。絶対、エレンには弾かせないでくれ。」

クリスタ「それは約束できないよ。エレンだって弾きたいって言うかもしれないし。」

ジャン「頼む。この曲だけは。」ペコリ

手を合わせ、頭を下げるジャン。

クリスタ「しょうがないなぁ。わかったよ。

     そのかわり、練習は真面目にしてね。」

ジャン「サンキュ。」

169 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 14:05:08 ID:0GgHq1/w

ジャン(これで、ミカサに格好いいとこ見せれるぜ・・・。)

クリスタ(エレンは教えなくても、ジャンの演奏聴いたら、

     勝手に覚えて弾いちゃうだろうな・・・。)

クリスタ「じゃ、レッスン始めよっか。」

ジャン「あぁ。ばっちり弾けるように頼むぜ。」


172 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:13:10 ID:0GgHq1/w

―木曜日 自由時間

クリスタ「はい、これ。アルミン専用の教本。用意しておいたよ。」

アルミン「ありがとう。」

クリスタ「でも、本当にいいの?基礎から始めたら、あんまり楽しくないよ。」

アルミン「うーん、楽しさは求めてないって言ったら嘘になるけど、

     どうせ習うなら本格的な技術と知識を身につけたいからね。」

クリスタ「うふふ。アルミンは偉いね。

     それじゃ、その『バイエル』と『プレインベンション』を練習しつつ、

     楽典もしっかり教えるからね。」

173 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:13:49 ID:0GgHq1/w

アルミン「うん。よろしくお願いするよ。

それと・・・、クリスタ、曲の作り方って知ってるかな?」

クリスタ「えっ?」

アルミン「ほら、ここにある曲は全部、壁の外から来たものでしょ?」

クリスタ「そうだけど・・・。」

174 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:14:26 ID:0GgHq1/w

アルミン「巨人のいなかった時代、人々は音楽を生み出していた。

音楽だけじゃなく文学や絵画、いわゆる芸術を楽しんでいたんだ。

     だけど、巨人が出現して壁の中に閉じこもってからは、

     生きることに精一杯で、新しいものを創造する余裕がなくなった。

     巨人への恐怖が、人間から自由な発想力を奪い去ったんだ。

     人は思考して初めて人といえる。

     何も考えずただ生きるのは、エレンじゃないけど、家畜と一緒だと思う。

     今、人類は本来の人間らしい文化的な生活から、随分後退しているんだ。

     僕はそれが悔しい。巨人なんて関係ない。人間らしく生きたい。

     だから、僕は壁の中で新しい音楽を作ってみたいと思ったんだ。」

175 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:15:19 ID:0GgHq1/w

クリスタ「すごいよ、アルミン!新しい音楽か・・・。考えたこともなかった。」

アルミン「だけど、いざ曲を作ろうと思っても、どうすればいいのかさっぱりでさ。

     偉そうなこと言ったけど、今の僕にはできそうにないんだ。

     だから、クリスタ、僕に作曲方法を教えて欲しい。」

クリスタ「ごめんなさい・・・。

     作曲には、和声楽とか楽式論とか、音楽理論の知識が必要になると思うんだけど・・・。

     私、そういうの、あまり詳しくなくて・・・。教えれないんだ・・・。」シュン

176 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:16:04 ID:0GgHq1/w

アルミン「そっか・・・。気にしないでよ。

     壁に閉じこもって百年。誰もやらなかったことをやろうとしてるんだから、

     そんなに簡単なことじゃないってのは覚悟してるから。」

クリスタ「先生なのに・・・。本当にごめんね・・・。」

アルミン「やだなぁ。そんなに落ち込まないでよ。

     大丈夫。本でも調べながら試行錯誤してみるよ。」

クリスタ「うん・・・。ありがとう。」

アルミン「それじゃ、今日もレッスンお願いするよ。」

177 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:16:46 ID:0GgHq1/w

―レッスン後

アルミンは宿舎へと歩いていた。

アルミン(クリスタのこと困らせちゃった。レッスン中、ずっと元気なかったし。

     自信なくさせたかな。うーん、どうしよう・・・。

     あ、マルコがいる・・・。)

アルミン「おーい、マルコー。」

マルコ「やあ、アルミン。どうしたの?今日は確かピアノの日だっけ。」

アルミン「そうだよ。今終わって宿舎に帰るところ。」

マルコ「そう。どうだった?今日のレッスン。」

アルミン「それが―――――」

178 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:17:31 ID:0GgHq1/w

―旧教室

クリスタは窓枠に座り、夜空をぼんやり眺めていた。

クリスタ(ダメだなあ・・・私。

     アルミン、せっかくやる気出してくれてるのに、

     それに応えることができないなんて。先生失格・・・。)

179 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:18:16 ID:0GgHq1/w

ガラッ

マルコ「お邪魔するよ。」

クリスタ「マルコ・・・。」

マルコ「アルミンから大体話は聞いたよ。

    音楽理論か~。弾き手にはあまり必要な知識じゃないからね。

    勉強してなくて当たり前だよ。」

クリスタ「でも、先生やる以上、何でも教えてあげられなくちゃ。」

180 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:19:09 ID:0GgHq1/w

マルコ「アルミンには音楽理論、僕が教えるよ。

    和声学の基本ぐらいなら分かるから。

    だから、クリスタは実技の方をしっかり見てあげてよ。」

クリスタ「それじゃ、ダメだよ。

     ろくに生徒の質問に答えられない、マルコには頼りっぱなし。

     これじゃ、おままごとの先生じゃない。

     やっと、この場所で自分ができることを見つけたの。

     いい加減にはしたくないの。」

181 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:19:55 ID:0GgHq1/w

マルコ「ん~、それじゃあ、アルミンとクリスタと僕、三人で一緒に勉強しようよ。

    音楽理論について、僕ももっと学びたいし。」

クリスタ「でも・・・、それって、やっぱりマルコの迷惑になる・・・。」

マルコ「迷惑じゃないよ。何でも一人でしようとしないで。

    困ったときは誰かに頼ればいいよ。」

クリスタ「だけど・・・。自分のことは自分で・・・。」

182 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:20:39 ID:0GgHq1/w

マルコ「はぁ・・・。」

大きな溜息をつくと、マルコはピアノに向かい、椅子を鍵盤の中心より右にずらした。

その左隣にもう一脚、椅子を置いた。

マルコ「クリスタ、こっちに来て座って。」

クリスタ「えっ?」

マルコ「いいからさ、右側に座ってね。僕は左側。」

クリスタ「?」

183 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:21:39 ID:0GgHq1/w

マルコ「パッヘルベルの『カノン』弾ける?」

クリスタ「うん。」

マルコ「いつもより1オクターブ上で弾いてくれるかな。」

クリスタ「いいけど・・・。」

♪~~♪~~♪~~♪~~

教室に、明るく落ち着いた旋律が流れる。

クリスタ(もともとピアノ曲じゃなくて、四重奏の室内楽の曲だから・・・。

     ピアノだともの足りないな・・・。)

184 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:22:21 ID:0GgHq1/w

オスティナート主題が四回繰り返されたところで、

マルコは鍵盤に手をかけ演奏に加わった。

音が交差し、一瞬で華やかになる。

クリスタ(すごい!寂しく頼りなかった音が、マルコの音にしっかり支えられる。

     マルコの弾く通奏低音が演奏に深みを増し、右手は私の弾く主題を追いかけて・・・。

     音が絡み、縺れ、一体となって流れていく。なんて心地いいんだろう。)

185 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:23:09 ID:0GgHq1/w

演奏が終わると、クリスタはうっとりと甘美な余韻に身をゆだねていた。

クリスタ「音に包み込まれて、まだ頭がふわふわしてる。」

マルコ「連弾は初めて?」

クリスタ「うん。ずっと一人で弾いてたから。」

マルコ「そっか。」

クリスタ「マルコの音と調和して、弾いててすごく気持ちよかった。」

マルコ「うん。」

クリスタ「一緒に弾くのがこんなに楽しいなんて知らなかった。」

マルコ「ね。一人よりずっといいでしょ。」

クリスタ「・・・あっ。」

186 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:23:54 ID:0GgHq1/w

マルコ「何でもかんでも自分一人で抱え込もうとしないでさ。

    困ったときはお互い様だし。」

クリスタ「・・・うん。」

マルコ「僕じゃ頼りないかもしれないけど。」

クリスタ「そんなことないよ。でも、マルコすごいね。

     さっきの『カノン』、即興で合わせたの?」

マルコ「即興というか、『カノン』は和音進行が最後まで変わらないから、

    和音を適当に分散させてれば、何とかなるんだよ。」

187 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/27(木) 15:24:33 ID:0GgHq1/w

クリスタ「うーん、和声学ってやっぱり大事なんだね。」

マルコ「でもさ、古い音楽理論にこだわる必要はないと思うんだ。

    アルミンは新しい音楽を作りたいって言ってるんでしょ。

    昔ながらの手法じゃなく、自由な発想で作ればいいんだよ。

    音楽なんだから、楽しまなくちゃ。」

クリスタ「そっか。そうだよね。

     ありがとう、マルコ。気が楽になったよ。」

マルコ「よかった。

    それじゃ、今日はもう遅いから宿舎に戻ろう。」

クリスタ「うん。また明日ね。おやすみなさい。」


195 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:05:41 ID:7SVZy61U

―金曜日 自由時間

ミカサ「うぅ・・・、ぐすっ・・・。」

クリスタ(どうしよう・・・。泣かせちゃった・・・。)

クリスタ「ね、もう1回やってみよ。

     たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん・・・。」

「たん」で手を叩き、「うん」は手を握る。

ミカサ「たん・うん・たたん・うん・たん・たたん・・・

    やっぱり、できない・・・、うぅ・・・」グスッ

196 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:06:23 ID:7SVZy61U

クリスタ(まさか、ミカサがリズム音痴だったなんて。しかも重度の。)

クリスタ「大丈夫。慣れたらすぐにできるようになるから、ね?」ナデナデ

ミカサ「こんな簡単なことができないなんて・・・。

    これじゃ・・・、ひっく、エレンを守れ・・ひっく・・ない・・・」シクシク

クリスタ「リズムが取れなくても、エレンのこと守れるから。」ナデナデ

197 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:07:07 ID:7SVZy61U

ミカサ「私・・・、ピアノに向いてない・・・。」グスッ

クリスタ「そんなことないよ。

     楽譜の読み方あっという間に覚えたし、手のフォームだって一番きれい。

     打鍵も安定してるから、音だって初心者と思えないぐらいしっかり出てるよ。」

ミカサ「でも・・・、リズム・・・。」

クリスタ「誰にだって苦手なことはあるよ。最初から何でもできる人なんていないよ。」

198 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:07:50 ID:7SVZy61U

ミカサ「私は何でもできる。今までは何でもできてた。・・・でも、できない・・・。

    自分をうまくコントロールできない・・・。こんなこと、はじめて・・・。」

クリスタ(ミカサにとって、初めての挫折なのね・・・。

     いつも気丈なミカサが落ち込んでる。・・・ちょっとかわいい。)

ミカサ「エレンにはできることが、私にはできない。そんなのダメ。

    すべてにおいて常にエレンの先を歩いていないと、彼を守ることができない。」

199 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:08:56 ID:7SVZy61U

クリスタ「・・・ねぇ、どうしてエレンを守ろうとするの?」

ミカサ「家族だから。」

クリスタ「家族か・・・。でもさ、家族って助け合うものじゃないの?

     ミカサばっかり頑張る必要ないと思うけど・・・。」

ミカサ「エレンは・・・、私が支えないと生きていけない。」

クリスタ「それ、エレンに失礼だよ。エレン、赤ちゃんじゃないんだから。

     ミカサはエレンのお母さんのつもりなの?」

200 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:09:35 ID:7SVZy61U

ミカサ「・・・そう、私はおばさんにエレンのことを頼まれた。

    だから、私が母親代わり・・・。」

クリスタ「母親じゃ・・・、恋人になれないよ?」

ミカサ「!?」///

クリスタ「ミカサのこと見てたら分かるよ。エレンのこと好きなんでしょ。」

ミカサ「な、何を言っているの?私は家族であって、好きとか・・・そんなんじゃ・・・」///

201 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:10:10 ID:7SVZy61U

クリスタ「じゃあ、たとえば私がエレンの恋人になってもいいの?」

ミカサ「それはダメ。絶対に。」

クリスタ「どうして?ミカサはエレンのこと好きじゃないんでしょ?」

ミカサ「そんなわけ・・・ない。でも、家族の好きであって・・・。」///

クリスタ「いつまでもそんな風に自分の気持ちごまかしてたら、エレン誰かにとられちゃうよ?」

ミカサ「それは嫌・・・。」

202 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:10:48 ID:7SVZy61U

クリスタ「ね、そろそろ母親をやめたら?

     このままだと、エレンはミカサのこと母親のような存在としか思わないよ。

     男の子なんだもん。守られるより、守りたいはず。」

ミカサ「・・・そうかな・・・。」

クリスタ「うん。そうだよ。だから、ミカサは頑張り過ぎないでいいの。

     ちょっとくらいできないことがあっても大丈夫。

     むしろ、エレンのこと頼るくらいの気持ちでいいんじゃないかな。」

クリスタ(って、昨日マルコに言われたことをまねてみる。)

203 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:11:33 ID:7SVZy61U

ミカサ「頼る・・・。」

クリスタ「エレンね、音感だけじゃなくってリズム感もすごくいいの。

     リズム打ちの練習、つきあってもらったら?」

ミカサ「・・・そうする。」

クリスタ「よかった。・・・それじゃあ、ミカサの練習曲決めようかな。」

ミカサ「うん。」

クリスタ「今回は、リズムが簡単なのにしようね。

     シンコペーションのリズムが無くて、ミカサの良さをいかせる曲・・・。」ゴソゴソ

204 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:12:09 ID:7SVZy61U

クリスタ「うん。これにしよう。バッハの『平均律クラヴィーア曲集第一巻 1番 プレリュード』」

ミカサ「?」

クリスタ「この本、結構難しいんだけど、このプレリュードだけは初心者でも大丈夫。」

ミカサ「楽譜見せて。」

クリスタ「いいよ。譜読みしてみて。」

ミカサ「・・・・・・・・。」

クリスタ「ハ長調だし、ミカサだったら初見で弾けるかも。」

205 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:12:45 ID:7SVZy61U

ミカサ「ちょっと弾いてみる・・・。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~

クリスタ(ミサカすごいな。もう鍵盤感覚が身についてる。習い始めたばかりなのにね。

     一音、一音、打鍵も深く、まだ教えてないのにレガート奏法が自然とできてる。

     タッチの良さは天性のものね。譜読みも早くて正確。やっぱり頭いいんだなぁ。   

     まだぎこちないけど、的確に16分音符を刻んでいく。

     直していくところはたくさんあるけど、

     ミカサの感情を抑えて淡々とひく弾き方はこの曲に合ってるかな。)

206 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:13:27 ID:7SVZy61U

パチパチパチパチ

クリスタ「初めてなのに、すっごく上手だよ。」

ミカサ「本当?」

クリスタ「うん。どう、この曲?」

ミカサ「いろんな感情がすぅっと溶けて消えて・・・。心が静かになる。

    すごく落ち着く。私、この曲練習したい。」

クリスタ「よかった。じゃあ、レッスン続けよう。」

ミカサ「うん。」

207 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:14:01 ID:7SVZy61U

―レッスン後

クリスタが帰った後の教室で、ミカサは一人手を叩いていた。

ミカサ「たん・うん・うん・うんたん・うん・たたん・うん・・・」

ミカサ(こんなことができないなんて悔しい・・・。情けない・・・。)

ミカサ「たん・ったたん・うん・うん・たん・うん・たたん・・・」

ミカサ「・・・何度やってもできない・・・。」シュン

208 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:14:40 ID:7SVZy61U

ガラッ

エレン「ミカサいる?」

ミカサ「!?なぜ、ここへ?」

エレン「いや、なんかクリスタがとにかく行けって・・・。」

ミカサ(クリスタのお節介・・・。)

エレン「なんだ、これ?小さな子どものためのリズム練習?」

エレン(そういえばクリスタ、何があっても絶対に笑うなって言ってたな・・・。)

209 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:15:24 ID:7SVZy61U

ミカサ「練習中・・・。」

エレン「ふーん。たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん・・・か。

    簡単じゃん。なんでこんなの練習すんだよ。」

ミカサ「簡単じゃない。私は・・・それができない。」シュン

エレン「えっ?マジで?」

ミカサ「・・・」コクン

エレン「ちょっとやってみせろよ。」

210 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:16:01 ID:7SVZy61U

ミカサ「わかった・・・。

    たん・・・うん・うん・・うん・たん・うん・たたん・・・」

エレン(ぷぷっ。ミカサがカクカクしてる。やばい、おもしれぇw)

ミカサ「たたん・うん・うんたん・うん・うん・たん・・・」

エレン(でも、笑っちゃいけないんだよな。はぁー、深呼吸・・・)

エレン「ミカサ、落ち着け。俺のあとに真似してみろよ。」

ミカサ「うん。」

211 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:16:42 ID:7SVZy61U

エレン「たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん」

ミカサ「たん・うん・うん・うん・たん・うん・たん・うん」

エレン「たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん」イラッ

ミカサ「たん・うん・たたん・うん・うん・たん・うん・うん」

エレン「たん・うん・うん・たん・たん・うん・うん・たん」イライラッ

ミカサ「うん・うん・たん・うん・たたん・うん・うんた・たん」



213 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:17:46 ID:7SVZy61U

エレン「あー、もう!お前、わざとだろ!真面目にやれよ!」

ミカサ「そんな!?私は真剣にやっている・・・。」

エレン「だって、こんなの誰でもできるだろ!」

ミカサ「それが、私にはできないの!!・・・うぅ・・・うぁぁぁぁん・・・」

ガラッ

ミカサは泣きながら教室を走って出て行く。

214 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/30(日) 20:18:37 ID:7SVZy61U

エレン「おっ、おい。」

エレン(冗談抜きでできないのか・・・。あのミカサだぞ。

    なんでも器用にこなし、いつも俺の前を行くあのミカサが・・・泣いてた。

    できないって泣いてた・・・。)

エレン「うーん、明日なんて謝ろう・・・。」

一人残された教室でエレンは頭を悩ませた。


221 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:34:58 ID:QXJcmXFc

―土曜日 自由時間

クリスタ「エレンの馬鹿!鈍感!アホ!」ポカポカ

エレン「そんな叩くなよ。だから、反省してるって。」

クリスタ「ミカサ、昨晩、ずっと宿舎で泣いてたんだから!」ポカポカ

エレン「今日、ちゃんと謝ったんだからいいだろ。」

クリスタ「よくないよ。ミカサ、ずっと元気ないじゃん。

エレンは不器用だから、できない人の気持ちがよく分かるでしょ。」

エレン「ちょっ、ひどくないか?それ。確かに俺は不器用だけど・・・。」

222 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:35:36 ID:QXJcmXFc

クリスタ「立体機動の姿勢制御訓練、最初はエレン、ボロボロだったじゃない。

     あの時ミカサはどうしてくれた?」

エレン「あれはベルトの装備の欠陥で、俺が無能なわけじゃない。」

クリスタ「そんなことはどうでもいいの。

     できないエレンのこと、ミカサは笑った?馬鹿にした?怒った?」

エレン「・・・うまくいくようアドバイスしてくれて、練習につきあってくれた。

    それでも結果のでない俺に、一緒に兵士になるのやめようって・・・。」

223 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:36:11 ID:QXJcmXFc

クリスタ「その時エレンはどんな気持ちだった?」

エレン「そりゃ、惨めだったよ。情けなかったよ。

    誰でも簡単にできることが自分にはできないんだからな。」

クリスタ「そう。ミカサはまさに今その気持ち。

     しかも装備の欠陥とかっていうベタなオチはないの。

     自分の感覚は他の人と交換できないから。

     正直ね、あそこまでひどいリズム感は矯正が難しい・・・。

     彼女は生涯、リズム音痴という理由のない悲運に見舞われてしまうの。」

エレン「そんなにひどいのか・・・。」

224 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:36:46 ID:QXJcmXFc

クリスタ「うん。治すには相当の努力が必要だと思う。

     リズム感なんて生きていくのに必要のないものだけど、

     ミカサの中では一生、できないことへの劣等感が残っちゃう・・・。」

エレン「俺は不器用だけど、努力して何事も人並み以上にはできるようにしてきた。

    負けず嫌いだからな。ミカサも涼しい顔してるけど、本当は俺と同じで負けるのが嫌いだ。

    悔しいだろうな・・・。」

225 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:37:28 ID:QXJcmXFc

クリスタ「ね、ミカサだって完璧じゃない。苦手なこともある普通の女の子なんだよ。

     少しは優しく接してあげようよ。」

エレン「普段の俺って、ミカサに冷たく見えるのか?」

クリスタ「うーん、冷たいっていうか・・・そう、ミカサの前では反抗期の子どもみたい。」

エレン「何だそれ。」

クリスタ「本当は大好きで甘えたいんだけど、自立心が邪魔をして素直になれないって感じ。」

エレン「おいっ、誰が、大好きで甘えたいんだよ。俺はそんなんじゃねぇ。」///

クリスタ「そうなの?そういう風に見えるんだけどなぁ。」

クリスタ(赤くなった・・・。少しはミカサに脈あるのかな・・・。)

226 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:38:27 ID:QXJcmXFc

エレン「はぁー。もういいよ。わかったよ。ミカサに優しくすればいいんだな?」

クリスタ「そうそう。お願いね。それじゃ、レッスンはじめよっか。」

エレン「おう。」

クリスタ「エレンはとにかくたくさん曲を弾いていこう。

     数をこなせば基本的な指使いとか身についていくから。考えるより身体で覚えよう。」

エレン「そのほうが得意だぜ。」

227 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:39:01 ID:QXJcmXFc

クリスタ「あっ、その前に。これから弾く曲の主旋律だけ覚えて。」

エレン「何の曲?」

クリスタ「エレンの練習用ではないんだけど。ミカサともっと仲良くなるための曲・・・かな?」

エレン「はぁ?」

クリスタ「いいから、いいから。ちゃんと聴いて覚えてね。」

228 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:39:38 ID:QXJcmXFc

―日曜日  

休日でゆっくり眠っている仲間たちを起こさないようにベッドを抜け出し、

クリスタは身支度を整えると、掃除道具を持って講義棟へ向かう。

クリスタ「ピアノの教室のお掃除しなきゃ。レッスン室はきれいじゃないとね。」

講義棟に入ると、ピアノの音が聞こえてきた。

クリスタ(誰か練習してるのかな?)

旧教室の前まで来ると窓から中を覗く。

クリスタ(あっ、マルコだ。)

229 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:40:21 ID:QXJcmXFc

ガラッ

クリスタ「マルコ、おはよう。」

マルコ「おはよう。早起きだね。」

クリスタ「私はここの掃除しようと思って。昼前からみんな練習しに来るでしょ。その前に。」

マルコ「偉いね。僕も掃除手伝うよ。」

クリスタ「いいよ、いいよ。マルコは弾いてて。

     マルコだってみんなに遠慮して、こんな朝早くから弾いてるんでしょ。」

230 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:41:04 ID:QXJcmXFc

マルコ「遠慮ってわけじゃないけどさ。僕も練習しないとみんなにすぐ追い抜かれそうで。

    ほら、ほうき貸して。二人でやったほうが早く終わるよ。」

クリスタ「ううん。私がマルコのピアノ聴きたいの。楽しくお掃除できる曲をお願いします。」

マルコ「はは、掃除の曲か。難しいね。うーん・・・。

    では、ほうきを持ったお姫様。ワルツを一曲いかがでしょうか?」

♪♪♪~♪♪♪♪♪♪♪~~♪♪♪~~

231 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:41:41 ID:QXJcmXFc

クリスタ(ウエーバーの『舞踏への勧誘』。舞踏会の様子を表したちょっとした物語。

     序奏部は、ダンスを申し出る紳士と、その誘いを受ける淑女との間で交わされる会話。

     マルコの柔らかく丁寧なタッチは、上品で礼儀正しい男性をイメージさせる。

     主部はダンスの開始。華やかなワルツが突然始まり、舞踏会の様子が展開していく。

     何度も同じ旋律が繰り返され、二人は優雅に華麗に踊り続ける。

     やっぱり男の人はいいなぁ。あの音量や迫力は私には出せないよ。)

232 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:42:15 ID:QXJcmXFc

クリスタはワルツのステップを軽く踏んでみる。

クリスタ(一度だけお父様に連れて行かれた舞踏会を思い出すな。

     絢爛な舞踏場に華美に着飾った女の人たち。ここの生活からは程遠い世界。

     あの頃はまだレイス家の後継者になる可能性があったから、

     子どもの私にいろんな男の人がダンスを申し込んできた。

     卑屈で、品定めするような男たちの視線。すごく嫌だった・・・。

     曲の最後は冒頭の序奏部が穏やかに繰り返され、紳士と淑女が別れの挨拶を告げる。

     そして、静かに舞踏会の幕が閉じる・・・。)

233 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:43:19 ID:QXJcmXFc

クリスタ「あっ、聴き入っちゃって全然掃除してなかった・・・。」

マルコ「ははは。それじゃ、僕は机とか窓とか拭いていくから、クリスタは床掃いてね。」

クリスタ「結局、手伝わせちゃったね。ごめん。」

マルコ「謝らないでよ。この部屋使ってるのクリスタだけじゃないんだから。」フキフキ

クリスタ「ありがとう。でも意外だったな。マルコがこの曲弾くの。」サッサッ

マルコ「そう?庶民の僕には似合わないかな。確かにワルツなんて踊れないけどね。」フキフキ

234 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:44:09 ID:QXJcmXFc

クリスタ「そういう意味じゃなくて。豪華できらびやかな感じがね、マルコっぽくない。」サッサッ

マルコ「はいはい。僕は地味で目立たない男だよ。」フキフキ

クリスタ「違うって。マルコっぽくないけど、演奏はすごく良かったって言いたいの。

     マルコの人柄からは想像できない、明るく華やかな音でびっくりしたよ。」サッサッ

マルコ「褒められてるのかな、それ。」フキフキ

クリスタ「褒めてるよ。」サッサッ

235 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:44:50 ID:QXJcmXFc

マルコ「でもクリスタ、僕に遠慮しなくなったね。言いたいことはっきり言うようになった。」フキフキ

クリスタ「うーん、マルコって話しやすいから、つい。ダメかな?」サッサッ

マルコ「ダメじゃないよ。むしろ嬉しい。」フキフキ

クリスタ「よかった。気を遣わずに話できる人、あんまりいないから。」サッサッ

マルコ「みんな個性的だからね。打ち解けるには時間がかかるかも。」フキフキ

236 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:45:31 ID:QXJcmXFc

クリスタ「ねぇ、さっきの曲なんだけどさ。」サッサッ

マルコ「うん。」フキフキ

クリスタ「舞踏会が終わってさよならした後、紳士と淑女はどうなったんだろうね。」サッサッ

マルコ「そうだなー。どういう目的でダンスに誘ったかにもよるんじゃない?」フキフキ

クリスタ「うーん。たまたま見つけた綺麗な女性を気まぐれで誘ったのかな。」サッサッ

マルコ「それだったら、その場かぎりでバイバイだね。」フキフキ

237 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:46:26 ID:QXJcmXFc

クリスタ「でも、踊ってる最中に恋が芽生えて盛り上がって、こう・・・」サッサッ

マルコ「こうって何w」フキフキ

クリスタ「じゃあ、マルコはどう思うのよ。」サッサッ

マルコ「僕は、前から気になっていた淑女にやっとダンスを申し込めた紳士かなって思う。

    誘いにのってくれた嬉しさが、あの大音量のワルツで表現されてるんじゃないかな。」フキフキ

238 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:47:14 ID:QXJcmXFc

クリスタ「じゃあ、舞踏会の後は・・・。」サッサッ

マルコ「住所交換して手紙でも書いたかな。」フキフキ

クリスタ「あはは。急に堅実になるんだ。」サッサッ

マルコ「手の早い紳士と尻の軽い淑女じゃ、物語が台無しだよ。」フキフキ

クリスタ「///。・・・マルコもはっきりと言うようになったね。」

マルコ「うん。僕もクリスタに遠慮しない。」

クリスタ「ふふっ。掃除終わったね。あっ、もうこんな時間だ。マルコ、教室からいそいで出るよ。」

マルコ「えっ?何で?」

クリスタ「いいから。理由は後で。早く早く。」

239 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:47:59 ID:QXJcmXFc

―数分後

ガラッ

ミカサ「クリスタ・・・いない。練習見てくれる約束してたのに。」

トコトコトコ、ポスッ

ミカサ「仕方がない。一人で練習しよう。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~

240 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:48:44 ID:QXJcmXFc

ガラッ

ミカサ「!?」

エレン「よ、よう。」

ミカサ「・・・・・・。」ウルウル

エレン「ちょっ、いきなり、泣くなって。昨日も謝っただろ。この間は本当に悪かったって。」

ミカサ「・・・・・・。」ウルウル

エレン「あー、もう、ごめんって。」ナデナデ

ミカサ「・・・・うん///」ニコッ

エレン「うっ。」///

エレン(しおらしいミカサ・・・、カワイイとか思っちまった・・・。)

241 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:49:41 ID:QXJcmXFc

エレン「今、練習してる曲聴かせろよ。」

ミカサ「エレンが望むなら。ただ・・・、あまり上手ではない・・・。」

エレン「みんなそうだろ。始めたばかりだし。」

ミカサ「わかった。では、聴いてて・・・。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~

242 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:50:24 ID:QXJcmXFc

エレン(なるほどな。クリスタが俺に教えた曲の意味がやっと分かった。)

エレン「ミカサ、ストップ。」

ミカサ「?」

エレン「ちょっと座らせてもらうぞ。」ヨイショ

ミカサ(エレンが同じ椅子に・・・。身体の右側がエレンと密着)///

エレン「あっ、これじゃ弾きにくいよな。悪い。もうちょい離れるわ。」

ミカサ(せっかくのエレンの温もりが・・・)シュン

243 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:51:06 ID:QXJcmXFc

エレン「今のもっかい最初から弾いてくれ。」

ミカサ「うん。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~

エレン(よし、ここで入る。)

エレンの右手が演奏に加わる。

ミカサ(・・・私の弾くプレリュードにエレンの奏でるメロディーが調和する。

    モノクロだった世界が突然鮮やかになったみたい。すごくきれい。

    エレンの音と私の音が混ざり合い一体となる。気分が段々高揚する・・・。)

244 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:51:44 ID:QXJcmXFc

エレン「一緒に弾くのって結構楽しいのな。」ニコッ

ミカサ「ハァ、ハァ・・・」///

エレン「ミ、ミカサ?」

ミカサ「お願い。もう1回しよ・・・。」///

エレン「い、いいけど。」

♪♪♪♪♪♪♪♪~

245 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:52:29 ID:QXJcmXFc

―その頃、教室の窓の外

マルコ「のぞき見は良くないよ。」

クリスタ「だって、エレンがちゃんとミカサに優しくするか気になるんだもん。」

マルコ「でも、考えたね。グノーの『アヴェ・マリア』か。

    バッハの『プレリュード』をそのまま伴奏に使って作られた曲だから、

    エレンでもすぐに合わせられる。」

246 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:53:14 ID:QXJcmXFc

クリスタ「この前、マルコが連弾してくれたでしょ。

     あの時、すっごく楽しくて気持ちよかったから、仲直りさせるにはもってこいかなって。」

マルコ「そう。また連弾しよっか。」

クリスタ「うん。あっ、二回目の演奏が終わったね。

     うふふ。ミカサってば目が潤んでる。頬も赤く染めちゃって。そんなに感動したのかな。」

マルコ「ははは。見つめ合っちゃって。エレンも楽しかったんだろう・・・って、あっ///」

クリスタ「あっ///」

247 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/02(火) 15:54:02 ID:QXJcmXFc

マルコ「ク、クリスタ、ここを離れよう。今すぐに。」///

マルコはクリスタの手を引いて、慌ててその場を離れる。

クリスタ「う、うん。」///

マルコ「友人のああいうところは見ちゃいけない。」///

クリスタ「・・・手の早い紳士と尻の軽い淑女・・・」///

マルコ「そんな風に言っちゃダメだから。」///

クリスタ(マルコの手、大きくて温かい。胸がドキドキするのはあの二人のせいだよね。

     それとも・・・。)

二人は真っ赤になったまま歩き続けた。


254 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 18:55:51 ID:Cn7xKjg6

サシャ「おや、マルコにクリスタじゃないですか。おててつないで仲良しさんですね。」

クリスタ「あっ」パッ

マルコ「や、やぁ、サシャ。」パッ

サシャ「朝ごはんもう食べました?」

クリスタ「ううん。私たちはこれから。」

サシャ「じゃ、一緒に行きましょう。

    それより、クリスタって最近ユミルと一緒じゃないですね。」

クリスタ「そうなのよ。休日も自由時間もふらっとどこかへ行っちゃって。」

255 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 18:56:24 ID:Cn7xKjg6

サシャ「喧嘩でもしたんですか?」

クリスタ「そんなことないよ。一緒にいる時は相変わらずべったりくっついてくる。」

サシャ「どこ行ってるんでしょうね。」

クリスタ「聞いても教えてくれないし。ねぇ、マルコ知らない?」

マルコ「さぁ・・・、僕も知らない。」

マルコ(知ってるけど・・・ユミルに口止めされてるからなぁ・・・。)

256 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 18:57:03 ID:Cn7xKjg6

サシャ「今日のみなさんのご予定は?」

マルコ「僕はアルミンと作曲の勉強。」

サシャ「作曲ですか?」

マルコ「そう。新しい曲を作ろうとしてるんだ。ぜんぜん進んでないけどね。」

サシャ「何だか、おもしろそうです。私も見に行っていいですか?」

マルコ「いいけど・・・、つまんないと思うよ。」

257 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 18:57:40 ID:Cn7xKjg6

サシャ「構わないです。最近みなさんピアノにはまってて、相手してくれる人いないんですよ。」

クリスタ「サシャもピアノ弾いてみる?」

サシャ「いえいえ、とんでもない。私みたいな田舎者にはもったいないです。」

クリスタ「そんなことないよ。」

サシャ「その・・・、じっと座っとくのが苦手なので・・・。勘弁です。」

マルコ「ははは、サシャらしいね。じゃ、朝ごはん食べたら一緒に曲考えよう。」

クリスタ「私も加わっていいかな?」

マルコ「もちろん。」

258 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 18:58:19 ID:Cn7xKjg6

―朝食後 食堂

アルミン「今日はここでやるんだ。ピアノで音出さないと考えにくくないかな。」

マルコ「いやー、ほら、みんな休日は練習でピアノ使うから。邪魔しちゃ悪いなって。」

マルコ(エレンとミカサがまだあの教室にいるかもしれないし・・・)

アルミン「そうだね。ここでできることをすればいっか。」

サシャ「はい、質問。アルミンはどんな曲を作ろうとしてるんですか?」

アルミン「それがさ・・・。なかなかイメージが沸かなくて。

     とにかくみんなが楽しめる曲を作りたいんだけど・・・。」

259 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 18:58:55 ID:Cn7xKjg6

サシャ「でも、ピアノの曲なんですよね?」

アルミン「一応ね。ここにはピアノしかないし。」

サシャ「私、ピアノ弾けないから楽しめません。」

アルミン「いや、聴いて楽しむとか・・・。」

サシャ「私の村にはピアノありません。」

アルミン「・・・・。」

260 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 18:59:29 ID:Cn7xKjg6

クリスタ「確かに、サシャの言うとおりだわ。ピアノなんて一部特権階級の娯楽品。

     みんなが楽しむのは難しい。」

マルコ「そうなると・・・、他の楽器?」

アルミン「他の楽器も入手困難だしね。」

クリスタ「うーん・・・。」

261 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:00:05 ID:Cn7xKjg6

サシャ「あの、私、歌なら歌えますよ。」

アルミン「!?そうだ、その手があった。」

マルコ「盲点だった。サシャ、偉いよ。」

クリスタ「サシャ、天才だよ。」ギュッ

サシャ「私もクリスタにぎゅってされて嬉しいです。でも、歌がどうかしましたか?」

262 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:00:43 ID:Cn7xKjg6

アルミン「楽器がなくても楽しめる音楽。それが歌なんだよ。」

クリスタ「歌詞とメロディーさえ覚えれていれば、貧富の差なんて関係なく楽しめる。」

マルコ「歌詞があったほうが曲のイメージ考えやすいしね。」

アルミン「じゃあ、歌詞から考えよう。」

サシャ「何の歌にしましょうね。・・・お肉の歌がいいです。」

アルミン「食品は自重して。」

サシャ「はい、すみません・・・。」

263 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:01:17 ID:Cn7xKjg6

マルコ「まぁ、処女作だしさ。楽しんでもらう対象を全人類とか大きくしないで・・・。」

クリスタ「自分たちの身近なところで・・・。」

アルミン「訓練兵団・・・の歌?」

サシャ「大賛成です。私みんなで歌いたいです。きっと楽しいですよ。」

マルコ「訓練兵団の歌なら、歌詞に仲間の思いを入れたいね。」

アルミン「うん。作曲は僕とマルコがやるとして、歌詞はみんなで作りたいな。」

クリスタ「うふふ。なんだか楽しくなってきた。」

アルミン「それじゃ、今日の夕食後、みんなに集まってもらうように声をかけとこう。」

264 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:01:51 ID:Cn7xKjg6

―夕食後 旧教室

アルミン「そういうわけで、みんなに訓練兵団の歌の歌詞を考えてもらいたい。」

ライナー「突然、そんなこと言われてもな。」

コニー「オレ、歌とか興味ねぇし。」

アニ「馬鹿馬鹿しい。」

ジャン「アルミンとマルコで勝手に作ればいいだろ。巻き込むな。」

265 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:02:29 ID:Cn7xKjg6

マルコ「まぁ、そう言うなよ。この歌が完成すれば、壁内初の快挙になるんだ。

    みんなでいい歌詞を考えて、歴史に残る歌にしたいじゃないか。」

アルミン「歌の出来次第では、ずっと訓練兵団で歌い継がれるかもしれない。

     そうなれば、僕たち104期生の魂は永遠に残るんだよ。」

エレン「なんかそれカッコいいな。」

マルコ「兵士を目指した以上、いつ死ぬかわからない。

    だから少しでも自分たちが生きた証をこの世界に残していこうよ。」

ベルトルト「生きた証・・・か。」

ジャン「悪くねぇな。」

266 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:03:13 ID:Cn7xKjg6

ライナー「だが、どうやって作る?俺には詩のセンスなんてないぞ。」

コニー「作文とかマジ勘弁。」

ミカサ「私は言語力が欠如している。」

サシャ「とりあえず、みんなが今思っていることを言葉に出してみましょうか。」

クリスタ「うん。黙ってても仕方ないしね。」

ユミル「何でもいいのか?」

アルミン「何でもいいよ。訓練兵生活を思ったとき、パッと頭に浮かんだことを言葉にするんだ。

     それを繋げていけば、歌詞っぽくなると思う。」

クリスタ「私、書記やるね。出された言葉、黒板に書いていくから。」

267 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:04:02 ID:Cn7xKjg6

マルコ「じゃ、僕から右回りで。歌いだしは訓練兵の歌ってかんじで。」

アルミン「うん。」

エレン「ああ、いいぜ。」

マルコ「いくよ。・・・歌え、兵士の歌を」

アルミン「人類への忠誠を胸に」

ミカサ「大切な家族を」

エレン「駆逐してやる」

アニ「つまらない」

ベルトルト「故郷へ帰る」

ライナー「戦士として責任を果たし」

コニー「父ちゃん、母ちゃん、見返したい」

サシャ「おいしいご飯と」

ユミル「女神クリスタ」

ジャン「あぁ、憲兵団になりたいなっと」

268 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:04:56 ID:Cn7xKjg6

マルコ「ははは・・・、カオスだね。」

アルミン「まぁ、予想はしてたけど・・・。」

クリスタ「でもさ、使えそうな言葉はあるよ。忠誠とか家族とか故郷とか。

     その調子でどんどん言ってもらおうよ。」

アルミン「そうだね。じっと考えてても浮かばないからね。」

マルコ「じゃあ、二順目いくよ。」

269 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:05:43 ID:Cn7xKjg6

―2時間後

コニー「もう、何も浮かばねぇ。」

アニ「疲れた・・・。」

ベルトルト「何周したんだろう・・・。」

ライナー「30周はいってるな。」

マルコ「たくさん言葉が出たね。そろそろいいかな。」

アルミン「うん。みんなの言葉をまとめたら大体こんな感じかな。

     クリスタ、黒板に書いてくれる。」

クリスタ「わかった。」カキカキ

270 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:06:29 ID:Cn7xKjg6

さぁ歌おう 兵士の歌を
人類への忠誠を 家族への愛を

壁の向こうに世界がある
我らは恐れず進み行く

壁の向こうが我らの故郷
祖先の大地を取り戻せ

我らは気高き訓練兵団
戦え それが自由への道


272 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:07:40 ID:Cn7xKjg6

クリスタ「書けたよ。」

マルコ「うん。いいんじゃない。」

コニー「漢字が多いな。ひらがなふってくれ。」

ジャン「たくさん言わせた割に短いな。」

アルミン「使える言葉はほんのわずかしかなかったよ。」

ユミル「クリスタって言葉、入ってないじゃん。」

クリスタ「入りません。」

サシャ「パァンについても触れられてませんね。」

アルミン「触れません。」

273 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:08:16 ID:Cn7xKjg6

エレン「駆逐・・・。」シュン

ミカサ「・・・・。」ナデナデ

ジャン「エレン、お前、ふざけんなっ。」

マルコ「まぁまぁ。落ち着いて。」

ライナー「男らしくて俺は結構気に入ったぞ。」

ベルトルト「壁の向こうが故郷ってところが、すごくいい。」

アニ「・・・短くていいんじゃない。」

274 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:08:53 ID:Cn7xKjg6

アルミン「みんな協力してくれてありがとう。頑張って曲を付けるよ。」

ジャン「イカした曲、期待してるぜ。」

サシャ「早くみんなで歌いたいです。」

マルコ「遅くまでありがとう。今日は解散で。」

クリスタ「あっ、みんな3ヶ月後にピアノの発表会やるから。そのつもりでいてね。」

ライナー「そんなものやるのか。」

クリスタ「うん。やっぱり目標があった方が練習し甲斐があるでしょ。」

アルミン「じゃあ、この歌も完成させて、そこで披露できたらいいな。」

クリスタ「うふふ。楽しみにしてる。」

275 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:09:39 ID:Cn7xKjg6

アルミン「それじゃあね。」

「おつかれー」

それぞれ宿舎に帰っていく。

クリスタ「さてと、私たちはお片づけ。」

ユミル「黒板消すぞー。」

クリスタ「あっ、ちょっと待って。」

マルコ「大丈夫。ちゃんとノートに書いたから。」

クリスタ「ありがとう。ユミル消していいよ。」

276 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/03(水) 19:10:17 ID:Cn7xKjg6

マルコ「椅子と机を整理して・・・・。」

ユミル「うわっ、手がチョークの粉だらけになった。」

クリスタ「今日はたくさん書いたり消したりしたから・・・って、ユミル怪我してるの?」

ユミル「ん?」

クリスタ「左手の指先、ほとんどの指に絆創膏貼ってるじゃない。」

ユミル「あぁ、これ?乾燥して逆剥けしちゃってさ。水仕事はヤダねぇ。」

クリスタ「そうなの?左手だけ・・・。」

マルコ「ほらほら、片付いたし僕たちも戻ろう。」

ユミル「もうすぐ消灯時間だしな。早く帰ろうぜ。」

クリスタ「う、うん。お疲れ様。」


291 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:29:28 ID:KFJ4fsHc

―3ヵ月後 旧教室

ワイワイ ガヤガヤ

マルコ「予想以上に大盛況だね。」

クリスタ「うん。立ち見までいる。内輪でこっそりやるつもりだったんだけど・・・。」

マルコ「ジャンが宣伝しまくってたからね。俺様のピアノを聴きに来いって。」

クリスタ「ベルトルト、大丈夫?顔色悪いし、冷や汗かいてる。」

ベルトルト「だ、だだ大丈夫。し、心配してくれて、あ、ありがとう・・・。」ブルブル

ライナー「しっかりしろ、ベルトルト。お前はやる時はやる男だ。」

292 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:30:10 ID:KFJ4fsHc

クリスタ「そんなに緊張しないで。いつも通りに弾いたらいいんだよ。

     一番真面目に練習してたんだから。この手はちゃんと弾き方を覚えてるよ。」ギュッ

クリスタはベルトルトの両手を握る。

クリスタ「大丈夫だから、ね?」ニコッ

ベルトルト「・・・うん。」///

ライナー「・・・クリスタ、俺も激しく緊張してる。」

クリスタ「・・・しょうがないなぁ。はい、ぎゅっ。」ニコッ

ライナー(発表会終わったら、正式にプロポーズしよう・・・心の中で。)

ジャン「俺の手も握ってくれよ。クリスタみたく上手く弾けるように。」

クリスタ「いいよ。いつも通り自信を持って。」ギュッ

アルミン「僕も。クリスタの手って、なんかご利益ありそうだね。」

クリスタ「ふふっ。そんなものないよ。・・・頑張ってね。」ギュッ

293 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:31:41 ID:KFJ4fsHc

エレン「俺も、うわっ!」グイッ

ミカサ「エレンは私が。」ギュゥッ

エレン「痛いってば。力入れすぎ。指が折れちゃうだろ。」

クリスタ「はい、サシャも。特別出演ありがとう。」ギュッ

サシャ「たくさん練習しましたから、期待してて下さいね。」

ユミル「私も友情出演させてくれよな。」

クリスタ「えっ!?」

ユミル「はい、クリスタ用の伴奏譜。練習なしで弾けるだろ。」

クリスタ「・・・これって。ユミル、あなた!?」

ユミル「いいから。とにかく、ぎゅっ。」ムギュゥ

クリスタ「そんなに抱きしめないで。苦しいよ。」

294 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:32:15 ID:KFJ4fsHc

ユミル「どっかプログラムに組み込んでよ。でも、最後のトリとかは嫌だからな。」

クリスタ「うん、うん・・・。ユミルと一緒に演奏できるなんて。・・・嬉しいよぉ。」ウルウル

ユミル「馬鹿。泣くのは演奏終わってからにしろ。」ナデナデ

クリスタ「うん。」グスッ

マルコ「そろそろ開始時間だね。始めようか。」

クリスタ「待って。その前に、マルコにも。」ギュッ

マルコ「ありがとう。」///

295 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:32:49 ID:KFJ4fsHc

クリスタ「では・・・、コホン。」

クリスタ「みなさまお忙しい中お集まり下さいまして、誠にありがとうございます。

     これから第1回クリスタピアノ教室発表会を行います。」

パチパチパチパチ

クリスタ「1番、ライナー・ブラウンさん ヘンデル作曲『サラバンド』」

ライナー「おう。」

スタスタスタスタ ペコリ

ライナー(クリスタ、俺の魂の咆哮を君に捧げよう。)

♪♪~♪♪♪~~

296 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:33:41 ID:KFJ4fsHc

マルコ(うわっ、いきなりff。確か、pで厳かに始まる曲なはず。

    この後、盛り上がっていく部分どうするんだろ・・・。)

クリスタ(それでいいよ、ライナー。小さくまとまった演奏は似合わない。

     これは豪胆で無骨なライナーの『サラバンド』。)

ジャン(カッコいいな・・・、ちくしょう。)

エレン(超兄貴・・・。)

ユミル(ププッ。ライナーに熱い視線送ってんの野郎ばっかりじゃねぇか。男にはもてもてだな。)

297 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:34:20 ID:KFJ4fsHc

ライナー「・・・」ペコリ

「うおぉぉぉぉぉ」パチパチパチパチ

「アニキ・アニキ・アニキ・アニキ・・・・」

クリスタ「ライナーらしくて、すごく良い演奏だったよ。」

ライナー「本当か?」

クリスタ「うん。この歓声が聴こえない?」

ライナー「・・・随分野太い歓声だな。」

エレン「アニキコールすげぇな。」

アルミン「ライナーは頼りになるから、入団当初から男子に人気あるしね。」

ライナー「複雑な気分だ・・・。」

298 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:34:59 ID:KFJ4fsHc

クリスタ「コホン、静粛にして下さい。

     2番、ベルトルト・フーバーさん シューマン作曲『見知らぬ国と人々について』」

ベルトルト「じゃ、じゃあ行ってくるね・・・。」

ライナー「ぶちかましてやれ。」

サシャ「ファイトー。」

スタスタスタスタ ペコリ

ベルトルト(いつも通り、いつも通り・・・。)

♪~~♪~~♪~♪♪~~~


300 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:35:42 ID:KFJ4fsHc

マルコ(うん。優しく柔らかく、けれど深い音。短期間で随分練習したのが分かる。

    アーティキュレーションを忠実に守った、まるで教科書のような演奏。

    ライナーとは対照的だな。)

クリスタ(緊張で若干硬さは残ってるけど、落ち着いて弾けてる。

     教えたことも全部できてる。すごいよ。

     ただ、もう少し楽しそうに弾いてくれたらな・・・。)

ライナー(どこか哀愁の漂う曲だな。俺たちの故郷が目に浮かぶ・・・。)

サシャ(子どもの頃お母さんが歌ってくれた子守唄を思い出します・・・。)グスッ

ユミル(ベルトルさんよ・・・。弾いてる姿、カッコいいじゃねぇか。)

301 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:36:40 ID:KFJ4fsHc

ベルトルト「・・・」ペコリ

「きゃぁぁぁぁぁぁ」パチパチパチパチ

クリスタ「お疲れ様。人前での演奏はどうだった?」

ベルトルト「すごく緊張したけど・・・、自信がついたよ。」

クリスタ「うん。女の子たちの目がハートになってたよ。」

ベルトルト「や、やだなぁ・・・。」///

ジャン「つーか、何?この黄色い歓声。」

マルコ「ベルトルトが実はイケメンだってことに、女の子達、気が付いたんでしょ。」

ジャン「ちっ、おもしろくねぇ。」

302 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:37:22 ID:KFJ4fsHc

マルコ「はは。次はジャンだよ。ジャンもモテてこいよ。」

ジャン「俺はミカサ一筋だ。他の女子はどうでもいい。」

クリスタ「続きまして・・・。3番 ジャン・キルシュタインさん。

     ハチャトゥリアン作曲『少年時代の画集』より『エチュード』」

スタスタスタスタ ペコリ

ジャン「ミカサ、お前に捧げる。」

ミカサ「・・・・・」イラッ

♪♪~♪♪♪♪~♪♪~

303 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:38:02 ID:KFJ4fsHc

マルコ(駄目だよ、ジャン。自分の彼女でもない子にそんなこと口に出して言ったら。

    しかも大勢の前で。みんなドン引きだよ。巻き込まれたミカサが可哀想だよ。
 
    これじゃ、いくら良い演奏をしても評価されない・・・。)

クリスタ(演奏は申し分ない。技術、表現力、どちらも合格点。

     ただ、会場が悪い意味で静まり返った。次の人が弾きにくくなっちゃったよ。

     もう、ジャンの馬鹿。)

304 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:38:52 ID:KFJ4fsHc

ジャン「・・・・ふぅっ。ミカサ、俺のこと少しは見直したか?」ドヤァ

ミカサ「・・・・ちっ。」

マルコ「ジャン!お辞儀してさっさと下がる。」

ジャン「あ?ああ。」ペコリ

パチ・・・パチ・・・

マルコ「はぁー。もう、お前って奴は・・・。」

ジャン「何、怒ってんだよ。」

マルコ「見なよ。このまばらな拍手。」

305 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:39:38 ID:KFJ4fsHc

ジャン「俺の演奏、そんなに酷かったか?結構うまく弾けたと思ったんだが。」

クリスタ「演奏はすごく良かったの。完璧だったの。ただ、演奏以前に問題があるの。」

ジャン「はぁ?分かんねぇな。」

マルコ「ジャン、後でゆっくり話そう。」

ジャン「何なんだよ、ったく。」

エレン「ジャン、すげーカッコ良かったぞ。お前、意外とやるんだな。見直したぜ。」

ジャン「てめぇに褒められてもな・・・。まぁ・・・、サンキュ。」


307 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:41:02 ID:KFJ4fsHc

サシャ「私たちの出番はいつですか?」

アルミン「僕たちは大トリ。お楽しみは一番最後までとっておくんだってさ。」

サシャ「責任重大ですねー。緊張するので、今のうちにとっておいたパァン食べときます。」モシャモシャ

クリスタ「はいっ。次は4番 ミカサ・アッカーマンさん。バッハ作曲『プレリュード BWV846』」

マルコ「ミカサ、ごめん。なんか空気悪くて・・・。」

ミカサ「気にしない。私はエレンが聴いてくれさえすればいい。」

スタスタスタスタ ペコリ

♪♪♪♪♪♪♪♪~


309 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:44:34 ID:KFJ4fsHc

マルコ(以前聴いた時より、ずっと進化している。

    ダンパーペダルを使用しない、指ペダルだけの奏法で、ここまで音を美しく響かせるなんて。

    それぞれの指が独立して機能している。動かしにくい薬指と小指を完全にコントロールしてる。

    初心者には見えないよ。これでリズム感さえあれば・・・ね。)

クリスタ(硬質で洗練された音。やっぱりミカサはすごいな。

     もっと上級者向けの曲を弾かせたかったけど、リズム感を治してあげれなかった。ごめんね。)

ジャン(美しい・・・。ピアノを弾くと美人度がさらに上がるな。)

エレン(ふぁー。この曲、聴きすぎて飽きてんだよなー。)

310 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:45:31 ID:KFJ4fsHc

ミカサ「・・・・」ペコリ

パチパチパチパチ パチパチパチパチ

クリスタ「すごい拍手だよ。今までで一番良い演奏だったよ、ミカサ。」

ミカサ「ありがとう。」

マルコ「エレン、連弾しなくて良かったのか?」ヒソヒソ

エレン「ん?あー、あれね。いやさ、連弾するとミカサに変なスイッチ入るからここじゃ無理。」ヒソヒソ

マルコ「そ、そうなんだ。」ヒソヒソ

マルコ(ここのところ、グノーの『アヴェ・マリア』がやたら聴こえてきたんだけど・・・。

    エレン、スイッチ押しまくってたんだね・・・。)

311 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:46:28 ID:KFJ4fsHc

エレン「よし!次は俺の番だ。」

ミカサ「期待している。」

クリスタ「次は5番 エレン・イェ―ガーさん グリーグ作曲『小人の行進』」

ジャン「ぷっ。随分可愛らしいタイトルだなw」

サシャ「メルヘンを感じますね。」モシャモシャ

エレン「言ってろ。俺の駆逐ソングだ。」

アルミン「確かに、巨人から見れば僕らは小人だしね。」

マルコ「ほら、おしゃべりしてないで早く。」

スタスタスタスタ ペコリ

♪♪♪♪♪♪♪♪~

312 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:47:16 ID:KFJ4fsHc

ジャン(ちょっ、可愛らしさのかけらもねぇ。)

ライナー(随分と邪悪な小人だな。)

ベルトルト(小人が大群で進撃してくる。)

サシャ(あっ、途中からメルヘン入りました。)モシャモシャ

ミカサ(ここは、私とエレンの幸せだった子ども時代の回想シーン。)

アルミン(で、また進軍するんだね。エレンらしい曲だよ。)

マルコ(そこまで難易度の高い曲じゃないけど、随分とテンポを上げてるな。

    指示速度の倍速ぐらいの勢いじゃないか?

    それでも中間部はテンポ緩めて曲想を変えてる。緩急のバランスが丁度いい。

    それにしても、短期間でよくここまで精度を高めたな。

    どんなに速くても決してミスがない。すべての音を外さずにちゃんと出せてる。

    やっぱりピアノに関しては非凡な才能を持ってるね。)

313 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:48:31 ID:KFJ4fsHc

エレン「・・・・・」ペコリ

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」パチパチパチパチパチパチ

クリスタ「うん。すごく興奮した。エレン、最高だよ。」

ジャン「お前、ずりぃぞ。なんだそのカッコいい曲。」

ライナー「ジャン、曲の問題ではないだろう。腕だ。」

ベルトルト「僕らとはすでに別格だね。」

ミカサ「とても高揚した。良い演奏だった。」

エレン「そんなに褒めるな。照れるだろ。」

314 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:49:19 ID:KFJ4fsHc

アルミン「次は誰?」

クリスタ「マルコだよ。」

ユミル「おっ、マルコも弾くのか。そりゃ、楽しみだ。」

ベルトルト「そういえば僕たち、マルコが弾くの聴いたことないね。」

ライナー「言われてみればそうだな。」

ジャン「なんか偉そうに解説とかしてるけど、実は大したこと無いんじゃねぇ。」

ユミル「バーカ。ジャンよりは間違いなく上手いぜ。」

ジャン「あん?弾けねぇやつは黙ってろよ。」

アルミン「まぁまぁ、落ち着いて。とりあえず聴こうよ。」

クリスタ「次は6番 マルコ・ボットさん シベリウス作曲『樹の組曲』より『樅の木』」

スタスタスタスタ ペコリ

♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪~


316 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:50:28 ID:KFJ4fsHc

クリスタ(目に浮かぶのは深い冬空と雪の情景。そこに凛として立つ樅の木。

     流れるようなアルペジオに始まり、主題の旋律は緩やかにじっくりと響きを楽しんで。

     樅の木の周囲を舞う風のようなアルペジオに、私の心も遠くへ流されていく。

     情感を込めて弾く曲、やっぱり上手だな。冬を耐え、春を待ちわびる樅の木・・・。)

ジャン(ぐっ、何だこの大人の男の雰囲気は。こんなの俺の知ってるマルコじゃねぇ。)

ライナー(ムーディーだ。極上のムーディーだ。)

ベルトルト(男の哀愁と人生の苦悩がつまってるよ。)

ユミル(くぅー、相変わらずぐっとくるぜ。)

317 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:51:42 ID:KFJ4fsHc

マルコ「・・・・」ペコリ

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ

クリスタ「さすがだね。みんな魅了されたよ。会場が良い意味で静まり返った。」

マルコ「ミスらなくて良かったよ。次は、クリスタの番だね。」

クリスタ「えっと、私とユミルの二重奏に変更で。」

マルコ「ユミル、練習間に合ったんだね。良かった。」

クリスタ「知ってたの?」

マルコ「以前、ユミルにヴァイオリンを手に入れたいって相談を受けてね。

    地元のヴァイオリン工房を紹介したんだ。そこで弾き方も教えてもらってたみたい。」

クリスタ「ひどいなぁ。私だけ仲間はずれにして・・・。」

ユミル「ほら、拗ねんな。驚かせようと思って内緒にしてただけだろ。」

318 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:52:33 ID:KFJ4fsHc

マルコ「曲は?」

クリスタ「これ。」ペラッ

マルコ「了解。」

ユミル「ちょっとチューニングするから。クリスタ、ラの音ちょーだい。」

クリスタ「うん。」ポーン

ライナー「あれって、ヴァイオリンか?」

ベルトルト「うん。ユミル、演奏できるのかな。」

ジャン「けっ、そばかす女にゃ似合わねぇよ。」

サシャ「みなさんすごい特技があるんですねぇ。」モシャモシャ

アルミン「いい加減食べるのやめようよ。僕たちこの次だよ。」

319 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:56:05 ID:KFJ4fsHc

マルコ「えー、こほん、次は7番 クリスタ・レンズさんとユミルさんの二重奏で。

    マスネ作曲『タイスの瞑想曲』」

クリスタ「テンポは?」

ユミル「アダージョぐらいで。」

クリスタ「わかった。」

♪♪♪♪♪♪♪~ ♪♪♪♪♪♪♪~

クリスタの伴奏から曲は始まり、ユミルのヴァイオリンが美しく歌いだす。

時々、お互いに目配せしながら、ゆったりとした演奏が続く。

320 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:56:43 ID:KFJ4fsHc

マルコ(歌劇『タイス』の間奏曲。自由気ままに好き勝手生きている娼婦タイスと

    それを更正させようとする修道士の話。修道士に改心を勧められたタイスが、

    正しい道を歩むべきかどうか葛藤するシーンで流れるのがこの曲だ。

    それをユミルは知っているんだろうか・・・。いや、考えすぎかな。)

ベルトルト(美しい音だな。ヴァイオリンの音ってこんなに響くんだ。)

ジャン(くそっ、ユミルのこと、綺麗だとか思っちまったじゃねぇか。)

サシャ(はぁー。ユミル格好いいですね。いつもと違います。気品に満ち溢れています。)

ミカサ(意外。でも、とても素敵。)

ライナー(ユミルどいて。クリスタがよく見えない。)

321 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:57:34 ID:KFJ4fsHc

演奏が終わると、二人は顔を合わせ微笑んだ。

クリスタ・ユミル「・・・・」ペコリ

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ・・・

クリスタ「うふふ。」

ユミル「へへ。」

マルコ「今日、一番の拍手だね。ユミルやるじゃないか。」

ユミル「まぁな。クリスタに恥かかすわけにはいかないし。」

322 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:58:21 ID:KFJ4fsHc

クリスタ「すっごい楽しかった。ありがとうユミル。」

ユミル「別に。借りを作ったままにしときたくなかったし。」

クリスタ「借りって?」

ユミル「髪留め。」

クリスタ「あははっ。あんなことで、こんなに頑張ったの?じゃ、また買ってこなきゃ。」

ユミル「調子にのんな。」

サシャ「・・・あの、この最高潮に盛り上がってる中で歌うんですか?」

アルミン「そうみたいだね。」

サシャ「うぅぅぅ・・・。お腹が・・・。」チラッ

アルミン「大丈夫だよ。サシャも意外性では負けてないから。」

323 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/05(金) 23:59:12 ID:KFJ4fsHc

クリスタ「次は、本日最後のプログラムとなりました。

     8番 アルレルト作曲『訓練兵団の歌』。独唱、サシャ・ブラウスさん

     伴奏、アルミン・アルレルトさん。」

サシャ「呼ばれてしまいました。」

アルミン「ほら行こう。」

エレン「頑張れよ。」

ミカサ「楽しみにしてる。」

324 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/06(土) 00:00:08 ID:gKn5zThU

スタスタスタスタ ペコリ

アルミン「演奏を始める前に少しだけ・・・。

     これから演奏するのは、僕の大切な仲間の思いが込められた歌です。

     僕はこの歌を、仲間の思いを、大事にしたい。伝えたい。

     できることなら、この駐屯地の訓練兵全員で歌いたい。

     作曲は初めてだから、正直自信はない・・・。

     だけど、ここにいる全員が納得するまで作り直す覚悟はあります。

     ・・・聴いて下さい。僕たちの歌を。」


326 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/06(土) 00:00:54 ID:gKn5zThU

♪♪♪♪~♪♪~

アルミンのピアノに合わせ、サシャは歌った。のびやかな歌声が教室中に響いた。

ジャン(おいおい。芋女のくせにめちゃくちゃ歌うめぇじゃねぇか。)

ミカサ(サシャらしい明るく澄んだ歌声。耳に心地いい。)

ライナー(人は見かけによらないもんだな。)

クリスタ(行進曲風かと思ったら、予想に反してすごくメロディアス。

     キャッチーなサビに、語感を大切にした旋律。親しみやすい歌だわ。)

327 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/06(土) 00:01:54 ID:gKn5zThU

アルミン・サシャ「・・・・」ペコリ

「・・・・・・・・」シーン

アルミン「・・・・・・」ギリッ

サシャ「だ、だめでしたか・・・・・?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」パチパチパチパチパチパチ

アルミン「えっ?」

「いいぜ。その歌気に入った。」

「私も歌いたい。」

「歌詞、教えてくれよ。」

「ここに来てない奴らにも教えないとな。」

鳴り止まない拍手の中、観客席から次々に声が上がった。

328 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/06(土) 00:03:03 ID:gKn5zThU

アルミン「うぅ・・・、みんな、ありがとう・・・。」グスッ

サシャ「良かったです・・・ぅ、ぅ、うえぇぇぇぇん・・・」

クリスタ「サシャ、あなたが歌ってくれたおかげよ。ありがとう。」ムギュゥ

サシャ「びぇぇぇぇん・・・。優しくしないで・・・ひっく、ください。

    涙が、ひっく、止まらなく・・・なります・・・」グスッ

マルコ「アルミン、やったな。壁内初の快挙だ。」

アルミン「うん。ぐすっ、僕一人じゃできなかった。みんながいたから・・ぐすっ・・・」

329 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/06(土) 00:03:57 ID:gKn5zThU

エレン「お前はすげぇよ、やっぱり。」

ミカサ「アルミンはできる子。」ナデナデ

ジャン「ちょっ、アルミン、ふざけんな。」

ライナー「ジャン、お前のその反応、いい加減飽きたぞ。」

ジャン「ふんっ。今日、良いとこ無かったの俺だけじゃねぇか。」

ベルトルト「まぁまぁ。今日は全員、アルミンとサシャに持ってかれたよ。」

ジャン「ちっ、しょうがねぇか。」

その後、旧教室では「訓練兵団の歌」の大合唱がしばらく続いた。

彼らは歌うことの喜びを知り、人生を楽しむことを思い出した。

330 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/06(土) 00:04:42 ID:gKn5zThU

―その頃、教官室

キース「休日にわざわざご足労頂き、ありがとうございます。」

ザックレー総統「訓練状況を視察したかったのだが、平日はなかなか自由が利かなくてな。」

キース「事前に来訪をお伝え下されば、休日返上で訓練を実施致しましたが・・・。」

ザックレー「よい。訓練兵にも休みは必要だ。まぁ、そんなにかしこまるな。

      今日はキースと久しぶりに飲もうと思ってな。いい酒を持ってきた。」

キース「はっ、ありがたく頂戴します。」

331 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/06(土) 00:05:23 ID:gKn5zThU

ザックレー「それより、先程から何か聴こえるのだが・・・。ピアノの音か?」

キース「訓練兵の中にピアノが弾きたいという物好きがおりまして。

    余暇には自由に使用する許可を与えております。」

ザックレー「ふむ・・・。最近、貴族連中から兵士の教養の無さを批判されてな。

      話相手にも遊び相手にもならん、と。

      奴らは身辺警護を務める兵士を道化か何かと勘違いしとるらしい。

      腹立だしいことこの上ないが、奴らの資金がなければ兵団が存続できないのも、また事実。

      憲兵団を希望する訓練兵には、ピアノを習わせるのも一つの手だな。」

332 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/06(土) 00:06:01 ID:gKn5zThU

キース「しかし、憲兵団の希望者は多く、ピアノ一台では間に合わないかと。」

ザックレー「貴族連中の屋敷には、使われてないピアノなどゴロゴロしとるだろう。

      もらい受けるよう交渉させよう。他の訓練兵駐屯地にも配備せねばな。」

キース「兵士にも教養が求められる時代ですか・・・。」

ザックレー「はっはっはっ。わしらは早く生まれて良かったのう。」


339 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:19:32 ID:UTdaBkeE

―旧教室 
 
発表会の熱気も冷め、静まり返った教室でクリスタ達は後片付けをしていた。

クリスタ「とりあえず、大成功かな。」

マルコ「うん。ライナーたちすごくピアノ上手になったね。それにユミルも。相当練習したでしょ?」

ユミル「ああ。なかなかまともな音が出なくてな。なんだあの頑固な楽器。もう二度と弾かねぇ。」

クリスタ「そんなこと言わないでよ。私、ユミルともっといろんな曲やりたいのに。」

ユミル「んー、じゃあ、キスしてくれたら考えてやるよ。」ニヤニヤ

クリスタ「いいよ。」シレッ

ユミル「・・・こう、恥ずかしがるとかさ、そういう反応が欲しいんだけど・・・。」

340 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:20:55 ID:UTdaBkeE

クリスタ「ふふっ、ユミルの扱い上手になったでしょ。

     それより、アルミンの曲ってマルコも作るの手伝ったんでしょ?」

マルコ「メロディーはアルミン一人で考えたよ。僕は伴奏譜に手を貸しただけ。」

ユミル「じゃ、作曲アルミン、編曲マルコってとこか。アルミン一人の手柄にしていいのかよ。」

マルコ「ははっ、そんな大したことはしてないから。僕の名前なんて出さなくていいよ。」

ユミル「アルミンに遠慮してんのか?」

マルコ「いや、本心で思ってるよ。」

341 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:21:31 ID:UTdaBkeE

ユミル「いい人ぶってんじゃねぇよ。なんか、お前のそういうところ見てるとイライラすんだよ。

    後ろに下がって人に譲ってばっかりで。そんな生き方楽しいか?この偽善野郎。」

クリスタ「ちょっと、ユミル。いきなり何言い出すの。」

マルコ「いいよ、クリスタ。ジャンにも同じようなこと言われてるから。

    そうだね。僕はいい人でいたいんだ。その方が周囲との軋轢を生まないから。

    偽善と呼ばれようが、僕はこういう生き方しかできない。強くないからね。」

ユミル「・・・喧嘩にもならん。つまんねぇ男だな。」

342 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:22:14 ID:UTdaBkeE

マルコ「そういうユミルだって、本当はいい人になりたいんだろう?

    今日、なぜ『タイスの瞑想曲』を演奏したんだ?」

クリスタ「?」

ユミル「はっ、意味はねぇよ。綺麗な曲だから。それだけだ。」

マルコ「確かに綺麗な曲だね。ただ、たくさんあるヴァイオリン曲の中で、敢えてあの曲をユミルは選んだ。

    もっと簡単で華やかな曲もあったはずだ。・・・『タイス』の物語、本当は知っているんだろう?」

ユミル「・・・ああ、そうだよ。ヴァイオリン工房の親父がつまんねぇ話、聞かせてくれたよ。

    だが、勘違いすんな。この曲を選んだのは、お前らへの警告だ。」

マルコ「警告?」

ユミル「タイスを改心させようとした修道士が最後どうなったか知ってるよな?

    タイスに深入りし過ぎて堕落の道を辿るんだよ。つまり、私に深く関わるなってことだ。」

343 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:22:50 ID:UTdaBkeE

クリスタ「ユミル・・・。」

ユミル「・・・気分わりぃ。先に宿舎戻るわ。」

ガラッ ピシャッ

クリスタ「近づいたと思ったらすぐに離れていく・・・。友達と思っているのは私だけなのかな。」

マルコ「そんなことないよ。何とも思ってない人のためにヴァイオリンなんて練習しない。

    ただ、素直に生きれない何かを抱えているんだろう。それが何なのかは分からないけど・・・。」

クリスタ「どうすればユミル、心を開いてくれるかな。」

マルコ「放っとくしかないよ。ユミルが自分からそうしたいと思うまで。」

クリスタ「うん・・・。ユミルを信じて待つよ・・・。」

344 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:23:34 ID:UTdaBkeE

―数日後 訓練場

キース「整列!!朝っぱらからお前らウジ虫野郎につきあってるんだ。ビシッとしろ。」

一同 ビシッ

アルミン「キース教官!」ハイッ

キース「何だ、アルレルト訓練兵。」

アルミン「訓練を始める前にキース教官のために歌いたいと思います!!」

キース「・・・・なぬっ?」

345 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:24:16 ID:UTdaBkeE

アルミン「せーの・・・」

そこにいる訓練兵全員が一斉に歌いだした。

青空の下、大音声が響き渡る。

キース(これは何事だ。新手のボイコットか?何を企んでいるアルレルト。)

キース(だが、なかなか良い歌だ。連帯感のない訓練兵が、歌うことで一致団結している。)

346 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:25:09 ID:UTdaBkeE

キース「何だ、この歌は?」

アルミン「訓練兵団の歌であります。」

キース「何だ、それは?」

アルミン「訓練兵有志で作った訓練兵のための歌であります。」

キース「なぜ歌った?」

アルミン「歌うことで士気が高まります。」

キース「こんな馬鹿げた計画を考えた豚野郎はお前一人か?」

アルミン(まずい、怒らせたか?)

アルミン「はっ。自分一人の一存であります。」

347 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:25:50 ID:UTdaBkeE

キース「そうか・・・。では、アルレルト訓練兵に命じる。

    毎朝、集合時にこの歌を全員に歌わせろ。一人の脱落者も出すな。」

アルミン「はっ。ありがとうございますっ!!」

キース「今日は訓練を始める前に、お前たちに伝えることがある。

    憲兵団を希望するものは教養を身に付けろ、と上からの通達があった。

    近日中に新たに2台のピアノがこの駐屯地に配備される予定だ。

    音楽だけが教養ではない。よって無理強いはしない。

    だがピアノの技能が、多少、点数に考慮されることは覚えておけ。」

348 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 00:26:34 ID:UTdaBkeE

ザワザワ ザワザワ

「教養って、何だよそれ」

「兵士だろ?俺達。関係ねぇじゃん」

「ますます憲兵団が遠のいちまう。」

キース「黙れ!!これ以上無駄口を叩く奴は演習場50周だ。」

シーン・・・

キース「では、今日の訓練を開始する・・・」

キース(理不尽なことは重々承知だ。だが上の決定には逆らえない・・・。)

352 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:35:49 ID:UTdaBkeE

それから数日後に2台の中古ピアノが搬入され、使用されてない他の教室にそれぞれ設置された。

憲兵団を希望できるのは成績上位10名のみ。

しかし、まだ訓練期間の半ば。定着しつつある成績順位を何とか覆したい。

その思いで憲兵団を目指す者は躍起になって、クリスタに教えを請いにきた。

クリスタだけでは手が足りず、見かねたマルコも先生役を買って出た。

そんなある日―――

353 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:36:33 ID:UTdaBkeE

アニ「ねぇ、ライナー、ベルトルト。私にもピアノを教えてよ。」

ライナー「俺達が?無理だ。教えられるほどの技術は持ってない。」

ベルトルト「クリスタかマルコに習ったほうがいいよ。」

アニ「あの二人、忙しそうで。私まで世話になったら、なんか悪いかなって。」

ライナー「しかし、いくら憲兵団に入りたいからって、お前がそんなことを言い出すとは意外だな。」

ベルトルト「うん。ピアノなんてくだらないって一蹴するかと思ってた。」

アニ「仕方ないじゃないか。憲兵団にはどうしても入りたいし。それに・・・」

ライナー「それに?」

アニ「お前らが弾いてるのを見て、ピアノも悪くないって思ったんだよ。」

354 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:37:08 ID:UTdaBkeE

ベルトルト「見に来てくれてたんだ、発表会。」

アニ「一応ね。」

ライナー「しかしなぁ。俺は教えるって柄じゃないし。」

アニ「基本的なことだけでいいんだ。後は自分で何とかするから。」

ベルトルト「いいよ。僕が教える。」

ライナー「ベルトルト?」

ベルトルト「ライナーよりは基礎はしっかり身についてると思うから。

      触りぐらいしか教えれないけど、それでよければ。」

アニ「うん。頼むよ。」

ライナー(珍しいな。ベルトルトが自分から前に出るのは・・・。)

355 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:37:59 ID:UTdaBkeE

―講義棟

マルコ「クリスタ、これからレッスン?」

クリスタ「うん。マルコも?」

マルコ「そう。何だか忙しくなったね。」

クリスタ「私は生徒が増えて嬉しいよ。でも、またマルコのお世話になっちゃった。ごめん。」

マルコ「ははっ、いいよ。あまり話したことのない女子と仲良くなるチャンスだと思ってる。」

クリスタ「そういえば、マルコの生徒って女の子ばっかり。」

マルコ「レッスン希望者募ったら、なぜか女子ばかりだった。」

クリスタ「ピアノ男子ってモテるんだよね。ピアノ女子は全然なのに・・・。」

マルコ「違うでしょ。男子はみんなクリスタに教えてもらいたかったんだよ。僕じゃなくて。」

356 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:38:36 ID:UTdaBkeE

クリスタ「そうなのかな。確かに生徒の男子率は高いかも。

     そうそう。ピアノの置いてある教室増えたから、分かりやすいように教室に名前つけたよ。

     講義棟の奥から順番に第一、第二、第三音楽室ね。教室の入り口にプレートかけたから。」

マルコ「了解。じゃ、第一、第二がレッスン用で、第三を開放するんだね。」

クリスタ「うん。あっ、もう、第三音楽室が賑わってる。」

マルコ「あれは、ライナーとその仲間たち・・・。」

クリスタ「発表会終わってから、ライナー大人気だね。」

マルコ「うん。男子しかいないけどね。それにしてもすごいな。10人以上に囲まれてる。」

クリスタ「何やってるんだろう?」

マルコ「ちょっと覗いてみようか。」

357 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:39:24 ID:UTdaBkeE

―第三音楽室

ライナー「よし、お前ら。今日はみんなで歌をうたうぞ。」

「『訓練兵団の歌』か?」

「アニキの伴奏で?くぅー、しびれるぜ。」

「みんな、盛り上がろうぜ。」

ライナー「馬鹿野郎。俺達にふさわしい、もっと魂の震える歌だ。」

「そんな歌が存在するのか?」

「教えてくれよ、アニキ。」

「頼むぜ、一発、ぶちかましてくれよ。」

358 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:40:04 ID:UTdaBkeE

ライナー「モーツァルト大先生作曲『俺の尻をなめろ』。お前ら俺の後に続け。」

俺の尻をなめろ~♪ (俺の尻をなめろ~♪)

陽気にいこうぜ~♪ (陽気にいこうぜ~♪)

・・・・・・・・♪

・・・・・・♪

359 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:40:44 ID:UTdaBkeE

―教室の外

マルコ(輪唱・・・。)

クリスタ(あんなに生き生きとしたライナー初めて見た。)

マルコ「ぷぷっ・・・、あはははっ。僕も混ざろうかな。楽しそうだ。」

クリスタ「ふふふっ。ライナーって面白いね。」

マルコ「でも、そろそろ行かないと。」

クリスタ「うん。生徒さんが待ってたら悪いしね。」

360 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:41:57 ID:UTdaBkeE

―第二音楽室前

ミーナ「マルコ遅いよー。」

マルコ「ごめん。こんなに早く来てるとは思ってなくて。」

クリスタ「ミーナもピアノ習い始めたんだ。」

ミーナ「うん。マルコのレッスン、女の子にとっても評判いいんだよ。」

クリスタ「そうなんだ。」

ミーナ「親切で丁寧で、何より優しい。マルコ株急上昇中だよ。」

マルコ「ははっ。冗談でもそんなに褒められると嬉しいね。」

ミーナ「冗談じゃないよー。本気でマルコのこと狙ってる子もいるんだよー。」

マルコ「はいはい。時間がもったいないから、早くレッスン始めよう。」

ミーナ「うん。じゃあね、クリスタ。」クスッ

ガラッ ピシャッ

361 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/07(日) 15:42:28 ID:UTdaBkeE

クリスタ(・・・・なんか

     ・・・・よく分かんないけど

     ・・・・すっごく

     ・・・・おもしろくない。)

371 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:36:27 ID:WQO9vPj.

―食堂

コニー「サシャ、お前はどうすんだ?」

サシャ「何がですか?」

コニー「ピアノだよ。憲兵団入りたいんだろ?」

サシャ「うーん。まだどの兵団にするかは決めてませんが、ピアノはやりません。」

コニー「何だよ。憲兵団は希望しないのか?ピアノ弾けなきゃ入れないんだろ?」

アルミン「そんなことはないんだよ。

     キース教官の意図がよく分からなくて、先日、僕とマルコで教官に詳細を尋ねたんだ。

     そしたらね、ピアノが配備されたけど、別にピアノである必要はないんだって。

     お偉いさんを楽しませる一芸を、何か身につければいいらしいよ。」

372 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:37:12 ID:WQO9vPj.

コニー「何だそりゃ。芸人になれってのか。」

サシャ「なので私は、歌い手さんになることにしました。」

アルミン「サシャは歌が上手だからね。」

コニー「ずりぃ。俺はどうしたらいいんだよ。」

サシャ「身軽な身のこなしを生かして軽業師とかどうですか?」

コニー「おっ、それいいな。」

アルミン「うーん。教養を感じさせる芸じゃないと駄目だって教官が言ってたよ。」

コニー「どんな芸だよ、ソレ。」

373 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:37:57 ID:WQO9vPj.

アルミン「みんなそれが思いつかないから、とりあえずピアノを習ってるんだよ。」

サシャ「私と一緒に歌いますか?」

コニー「人前で歌うとか、勘弁してくれ。」

サシャ「そうえいばコニーも私と同じ狩猟の民でしたよね。」

コニー「そうだ。お前ほど田舎者じゃねぇけどな。」

サシャ「・・・口笛とか指笛って得意じゃないですか?」

コニー「得意だぜ。・・・でも、それって芸なのか?」

サシャ「何でも極めれば一流の芸になります。」

アルミン「笛か・・・。いいかもしれない。

     でも、さすがに口笛や指笛では貴族のお偉いさんは満足しないかもね。」

374 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:38:32 ID:WQO9vPj.

コニー「ほら、やっぱダメじゃん。」

サシャ「良いアイディアだと思ったんですけど・・・。」

アルミン「簡単に吹けそうな笛、探してみようよ。」

サシャ「楽器の笛ですか?」

アルミン「うん。」

コニー「楽器はイヤだ。俺には向かん。」

サシャ「でも、憲兵団入りたいんですよね?このままだと入れないかもしれませんよ。」

アルミン「歌うか吹くか、さぁどっちを選ぶ。」

コニー「何でその二択しかねぇんだよ。」

サシャ「だったら自分で考えて下さい。私達はもう知りません。」

コニー「・・・・・あー、もう!いいよ、吹くよ。吹けばいいんだろ。」

375 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:39:22 ID:WQO9vPj.

―男子宿舎

マルコ「ただいまー。」

ジャン「おう、遅かったな。」

マルコ「今日は3人もレッスン見たからね。疲れたよ。」

ジャン「俺も今日ピアノのレッスンだったんだけどよ、クリスタがマジ機嫌悪くてびびったわ。」

マルコ「クリスタが?」

ジャン「ああ。ずっとイライラしててよ。練習してない俺も悪いんだけどさ。初めて怒鳴られた。」

マルコ「レッスン前、話したときは普通だったけどなぁ・・・。」

376 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:40:04 ID:WQO9vPj.

ジャン「情緒不安定。生理中だな。」

マルコ「そういうこと言うな。」

ジャン「マルコ、クリスタ襲うんだったら今日だぜ。●●●してもガキはできねぇ。」

マルコ「最低だな、お前。」

ジャン「だってよ、マルコ、クリスタのこと好きだろ。」

マルコ「ああ、好きだね。仲間として。」

ジャン「はぁ?そんなん聞いてんじゃねぇだろ。最近やたら一緒にいるじゃねぇか。」

377 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:40:39 ID:WQO9vPj.

マルコ「ふぅー・・・。ジャン、何かあった?今日はやけに絡んでくるね。」

ジャン「話逸らすなよ。」

マルコ「ミカサ絡み?エレンとミカサ、近頃良い雰囲気だもんね。付き合い始めてたりして。」

ジャン「なっ、そうなのか?」

マルコ「さぁ、知らないけど。でも、ジャンが最近やさぐれてんのはあの二人のせいだろ?」

ジャン「そうなんだよ。今日だって、あいつら俺の目の前で・・・」ウダウダウダウダ・・・

マルコ(ジャンは扱いやすくて助かる。

    でも、傍から見ても僕がクリスタに好意を持っているようにみえるのか・・・。

    それはマズイな。彼女の迷惑になるかもしれない。もっと普通にしてないと。)

378 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:41:34 ID:WQO9vPj.

―女子宿舎

クリスタ「・・・ただいま。」ギュッ

椅子に座り本を眺めているユミルの背中に、クリスタは抱きついた。

ユミル「・・・珍しいな。クリスタから抱きついてくるなんて。何かあったか?」

クリスタ「・・・自己嫌悪中。」

ユミルの肩に顔を埋めて呟いた。

ユミル「じゃ、気の済むまでそうしてろ。」

ユミルは本を眺めたままだ。

379 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:42:18 ID:WQO9vPj.

部屋の片隅では、ミーナたち女子が集まってガールズトークに花を咲かせていた。

かしましい話し声は嫌でもクリスタの耳に入ってくる。

女子A「だからさ、こう自然に手とか肩とか触れてくるじゃない?」

ミーナ「そりゃ、教えてるんだから触れもするでしょ。」

女子B「そうそう、あんただけじゃないからね。私だって触られたもん。」

女子A「いやいや、あれは絶対、私に気がある。めっちゃ優しく微笑んでくれるし。」

女子C「ばかじゃない?誰にだって笑ってるっつーの。」

女子B「ていうか、今までノーマークだったのに、なに急に熱あげてんの。」

380 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:42:56 ID:WQO9vPj.

女子A「よくよく考えたらさ、マルコって成績優秀で憲兵団行くのほぼ確定してるし。

   まぁ見てくれはパッとしないけど、将来性あるじゃん。」

ミーナ「その上、真面目で性格が良いからね。」

女子C「はははっ。理想の結婚相手ってわけ?」

女子B「気が早くねー?」

女子A「訓練期間中にしかチャンスはないでしょ。どうせ私ら憲兵団入れないんだから。」

ミーナ「言えてるー。私も頑張っちゃおうかな。」

女子A「えー、ミーナも狙ってんの?ズルくない?後から言うなんて。」

ミーナ「冗談だよぅ。そんな怒んないでよ。」

381 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:43:34 ID:WQO9vPj.

クリスタ(うるさい、うるさい、うるさい・・・)ギュゥゥゥゥ

ユミル「ぐえっ、クリスタ苦しい。締まってるって。」

382 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:44:13 ID:WQO9vPj.

女子B「でもさマルコもいいけど、ベルトルトの方が私はタイプだなー。」

女子C「だよね、だよね。あの寡黙な感じがたまらないよね。」

女子A「今日さ、私見ちゃったんだよねー。」

ミーナ「何を?」

女子A「ベルトルトとアニが音楽室に二人きりでいるとこ。」

女子B「うっそ、マジ?」

女子A「マジで。」

女子C「ちょっ、アニ、ざけんなよ。あいつ女子とは全然絡もうとしないくせに。」

女子B「男には媚売るんだ。サイアク。」

女子A「ちょっと優秀でカワイイからって調子乗ってんじゃない?」

女子C「ちっ、出来の悪い私らとは違いますってか。ただのビッチじゃん。」

383 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:44:52 ID:WQO9vPj.

クリスタ「ちょっと、あなたたち「おいっ!!うるせぇ!!」

クリスタの声を遮ってユミルは怒鳴った。

ユミル「さっきからキャンキャンうぜぇんだよ。発情期のメス犬か、お前ら。

    そんなに男が欲しいんなら、ウダウダ言わずにとっとと股開いて来い。」

ミーナ「そんなつもりじゃ・・・///」

女子A「はぁー、何かシラけるね。他の部屋行こ。」

女子B「そだね。ほらっ、ミーナも行くよ。」

ミーナ「う、うん・・・。」

384 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:45:35 ID:WQO9vPj.

ガチャ パタン

クリスタ「・・・ユミル、ありがとう。でも、もう少し言い方が・・・。」

ユミル「はっ、もっと上品に怒れって?いいんだよ。ああいうクソ女にはあれぐらい言って。」

クリスタ「・・・・。ねぇ、ところでさっきから何読んでるの?」

ユミル「これ?クリスタの日記。」

クリスタ「!?ちょっと、何、勝手に人の日記読んでるのよ!!」

ユミル「そこに落ちてたから。」

クリスタ「落ちてません!しまってました!もう、早く返して!」

385 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:46:33 ID:WQO9vPj.

ユミル「はい、返す。つーか、クリスタの日記ってぜんぜん面白くねぇな。

    出来事ばっかり並べて、主観がほとんど入ってねぇじゃん。報告書みてぇ。」

クリスタ「人の日記勝手に読んどいて、さらにダメ出し?ありえないから。」

ユミル「はいはい、ごめんよ。・・・そろそろ寝るわ。っふぁー・・・」

クリスタ(・・・ユミルが盗み見るのを想定して、当たり障りの無い日記にしといて良かった。

     でもアニのこと庇ったりして、悪ぶってるけど本当は優しくて仲間思い・・・。

     早く素直になればいいのに。)

386 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:47:21 ID:WQO9vPj.

―数日後 食堂

コニー「ジャ、ジャーン♪えっへん、皆の衆、コレが何か分かるか?」

エレン「木の棒。」

ミカサ「使い方によっては人を殺せるモノ。」

ベルトルト「吹き矢?」

ライナー「おいおい、そんな卑猥な道具こんなところで出すな。」

ジャン「えっ?マジで?そういう道具?」

ユミル「ダメだろ。アニの持ち物勝手に持ってきちゃ。」ニヤニヤ

ジャン「!?アニ・・・」///

アニ「馬鹿だろ、あんた。」

387 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:48:11 ID:WQO9vPj.

クリスタ「あれは・・・横笛?」

マルコ「うん。ファイフかな。」

コニー「さすがマルコ。大正解だ。」

アルミン「この前の休日に僕とコニーとサシャで街に出掛けて買ってきたんだ。」

サシャ「コニーは憲兵団に入るため、ウォールローゼの笛吹き男になりました。」

コニー「言っとくけど好きで吹くわけじゃないからな。致し方なくだ。」

アルミン「楽器屋のおじさんが、これが一番簡単だよって勧めてくれて。

昔、外の世界では軍隊の行進とかに使われてたんだって。」

388 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:48:54 ID:WQO9vPj.

エレン「へぇー。じゃあ俺達も行進の時にコニーに吹いてもらおうぜ。」

アルミン「でもね、行進にはファイフとドラムが必須なんだって。」

ミカサ「ドラム?」

アルミン「太鼓みたいなやつ。ドラムでリズムをとってファイフを吹くらしいんだけど。」

コニー「ドラムってめっちゃ高ぇの。俺らの財布じゃ買えねぇよ。」

389 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:49:32 ID:WQO9vPj.

サシャ「なので、代わりにこれを買ってきました。じゃーん♪」

エレン「なんだ、これ?」

ライナー「お前ら、いい加減にきわどいグッズを昼間から出すのはやめろ。」

ユミル「あぁ、それ?昨晩アニが使ってたやつか。」ニヤニヤ

ジャン「!?アニ・・・」///

アニ「だから馬鹿だろ、あんた。」

ベルトルト「でも見たことの無い形だな。なんだろう。」

クリスタ「・・・カスタネットと」

マルコ「トライアングル。」

390 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:50:20 ID:WQO9vPj.

サシャ「そうでーす。はい、アルミンはトライアングルをどうぞ。」

アルミン「え?え?」

サシャ「いきますよー。」

サシャ  タン・タン・タン♪

アルミン チーン♪///

サシャ  タン・タン・タン♪

アルミン チーン♪///

サシャ「アルミン、恥ずかしがっちゃ駄目ですよ。コニーのためです。はい、もう1回。」

ミカサ(かわいい・・・)

アニ(二人ともナデナデしたい・・・)

ジャン(なごむ・・・)

391 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:51:03 ID:WQO9vPj.

サシャ「こんな感じです。さぁこれに合わせてコニーよ、吹くのです。」

コニー「スマン。まだ吹けん・・・。」

サシャ「えー!?そんな、がっかりです。」

コニー「だってよー、買ってまだ数日しか経ってないんだぜ。吹けねぇよ。」

エレン「どんな音かぐらい聴かせてくれよ。」

コニー「だから、いくら吹いても音が出ねぇんだよ。」

ライナー「ちょっとやって見せてみろ。」

コニー「いいけど・・・。スフゥー・・・、スフゥー・・・」

ジャン「あははは、何だよソレ。全然駄目じゃん。」

アルミン「吹き方にコツがいるって楽器屋のおじさん言ってたね。」

コニー「ちくしょ、何で鳴らないんだよ。」

392 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:51:45 ID:WQO9vPj.

サシャ「・・・ちょっとコニー、笛貸して下さい。」パシッ

コニー「え?」

サシャ ピーーー ピッピーーー♪

コニー「うそ!?何で音出るんだよ。」

ベルトルト「サシャ、すごいね。」(間接キスしたね)

ジャン「ちゃんと音出んじゃん。」(ナチュラルに間接キスしたな)

アルミン「コツが分かるの?サシャ。」(恥ずかしくないのかな?間接キス)

サシャ「草笛です。草笛の時の唇の形です。」

コニー「こ、こうか?」

サシャ「うーん。口を軽く閉じて、唇を前に突き出して、さらに横に軽く引く・・・。」

コニー「うー・・・こう?」

サシャ「そうです。ではファイフをどうぞ。吹いてみて下さい。」

393 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:52:32 ID:WQO9vPj.

コニー ピピーーー ピーピッピー♪

コニー「やった!音が出たぜ。ありがとな、サシャ。」

サシャ「お役に立てて嬉しいですよ。」

コニー「へへへっ。やる気が出たぜ。」ピーーー ピッピッピーー・・・♪

ミカサ「無邪気ね。」

ユミル「笛吹き男っつーより、笛を吹く少年だな。」

アニ「楽しそうでいいんじゃない。」

394 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/09(火) 22:53:02 ID:WQO9vPj.

アルミン「あとはちゃんと音程が出せるようになるだけだね。」

サシャ「コニーが上手になったら、行進の時、一緒に演奏しましょうね。」

アルミン「えっ?本気で言ってるの?」

サシャ「もちろんです。私、カスタネットのプロを目指します。

    だからアルミンは、トライアングルのスペシャリストになって下さい。」

クリスタ「ふふっ、かわいい軍楽隊の誕生だね。」

アルミン「・・・マルコ。お金貸してくれない?ドラム買いたい。

     トライアングルで行進とか恥ずかしすぎるよ・・・。」

マルコ「ははっ、だよね。みんなにカンパお願いしてみよっか。」


403 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:49:58 ID:WqODutTw

―第二音楽室

マルコ「じゃあ、今日はここまでね。」

女子A「えー、もうちょっと教えてよー。今日は私で最後のレッスンなんでしょ?」

マルコ「ごめんね。レッスン時間は一人1時間って決めてるから。みんな平等にね。」

女子A「ぶぅー・・・。」

マルコ「ほら、拗ねないの。また来週ね。」

女子A「だったらー、マルコのピアノ聴かせてよ。」

マルコ「えっ?」

女子A「マルコが弾くんだったらレッスン時間に入らないでしょ?

    私、マルコの演奏大好きなんだ。弾いてほしいなぁ。」

404 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:50:30 ID:WqODutTw

マルコ「・・・・悪いね。今日はちょっと無理。」

女子A「えー、なんでー?」

マルコ「訓練でちょっと指を痛めちゃってさ。ごめんね。」

女子A「・・・そっか。しょうがないよね。また今度聴かせてね。」

マルコ「うん。じゃあね。もう暗いから気をつけて宿舎に帰ってね。」

女子A「送ってほしいなぁ、なんて。」チラッ

マルコ「はははっ、ここの片付けあるから。待たせたら悪いから、ね。」ニコッ

女子A「わかったよ。それじゃあ、おやすみなさーい。」エヘヘ

マルコ「お疲れさまー。」

405 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:51:00 ID:WqODutTw

ガラッ ピシャッ

マルコ「・・・・・・・・・・ハァァァァァ。」

椅子に座り、背もたれに身体をあずける。

マルコ(あーーーー、もう無理。あの子、すっごい苦手。

    だけど、波風を立てたくないから、嫌いな子にも優しくするし笑顔も向ける。

    ピアノの先生なんて、みんな平等に扱わないと、どんな陰口叩かれるか分からないからね。

    僕は精一杯やってるよ。必死にいい人、演じているよ。

    ・・・ただ、ピアノだけは駄目なんだ。大切な人のためだけに弾きたいんだ。

    それぐらいのわがまま、許してくれよ・・・。)

406 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:51:30 ID:WqODutTw

片づけを終え、マルコは教室を出る。

マルコ(・・・ピアノの音が聴こえる。クリスタまだレッスンしてるのかな?)

第一音楽室の前まで来ると足を止めた。

教室の窓から中を覗くと、今までに見たことのない真剣な表情でピアノに向かうクリスタが見えた。

マルコ(全調のスケール・・・。地味だが技術の向上と維持には欠かせない基礎練習。

    見えないところでちゃんと努力してるんだな。偉いよ。

    ・・・邪魔しちゃ悪いから帰ろう。)

407 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:52:08 ID:WqODutTw

踵を返した時、声をかけられた。

クリスタ「誰かいるの?」

マルコ「ごめん、手を止めさせる気無かったんだけど・・・。」

クリスタ「マルコかー。・・・あぁ、良かった。そんなところに立ってないで入って来てよ。」

ガラッ

マルコ「どうしたの?」

クリスタ「講義棟って広いし古いでしょ。暗くなってから一人で教室にいるの苦手なんだ。」

マルコ「おばけとか幽霊とか出そうで?」

クリスタ「そう。ちょっとした物音や影なんかでビクッてなっちゃう。」

マルコ「はは。僕も怖がりだからその気持ち分かるよ。」

408 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:52:39 ID:WqODutTw

クリスタ「でも今日は夜空が明るいからまだマシかな。」

マルコ「本当だね。あっ、満月だ。」

クリスタ「というわけで、一曲どうぞ。」

マルコ「ぷっ、何それ。練習中だったよね。」

クリスタ「ちょっと休憩。ゆっくり星空を眺めたい気分なの。」

マルコ「まぁ、いいけどさ。」

椅子に座り、弾き始める。

♪♪~♪~~♪♪♪~~

409 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:53:16 ID:WqODutTw

クリスタ「ドビュッシーの『月の光』・・・」

窓枠に腰掛け、夜空を見上げながらつぶやく。

マルコは演奏の手をやすめず話しかけた。

マルコ「何か嫌なことでもあった?」

クリスタ「ううん・・・。」

マルコ「そう・・・。」

黙りこんだ二人の間にはゆったりとしたピアノの音だけが流れる。

夜の静けさに雫が一滴一滴落ちていくかのような繊細で甘美な旋律。

ゆるやかに螺旋を描きながらどこまでも下降していくメロディー。

儚げで幻想的な月の光。

410 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:54:08 ID:WqODutTw

音に煽られ、気持ちが高ぶる。

お互いに募る思いはあった。すぐにでも吐き出したかった。

しかし思いを口にすることで、二人の間だけでなく仲間達との関係も壊れてしまうことのほうが怖かった。

あまりのもどかしさにクリスタは焦れた。

クリスタ「マルコの選曲はずるい・・・。」

マルコ「だって、月夜だから。」

クリスタ「ベートーベンのソナタ『月光』でもいいでしょ。」

マルコ「えー、悲壮感漂わせるの?」

411 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:54:39 ID:WqODutTw

クリスタ「そのほうがマシ。中途半端に甘い雰囲気作らないでよ。」

マルコ「ははっ、期待した?」

クリスタ「何をかな?」

マルコ「さぁ、何だろうね。」

クリスタ「・・・・・ふぅー、もういいよ。明日はカンパお願いするんだよね。」

マルコ「うん。みんなが一斉に集まる夕食の時にでも声をかけようかなって。」

クリスタ「協力してくれるかな・・・。」

マルコ「分からない。でも、やるだけやってみよう。」

412 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:55:11 ID:WqODutTw

―その頃 

講義棟の外には怒りに肩を震わせる人影があった。

女子A(指に怪我してるとかやっぱウソじゃん。マジむかつく・・・)

413 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:55:50 ID:WqODutTw

―翌日 食堂

アルミン「というわけで、軍楽隊に賛同して下さる方はカンパをお願いします。」

マルコ「今からバケツを回すので、協力してくれる方はお金を入れて下さい。」

ライナー「お前ら頼むぞ!」

ライナーの仲間たち「おう、アニキ!!」

エレン「ははっ、ライナーはすげぇな。」

ミカサ「人望があるのね。」

414 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:57:08 ID:WqODutTw

アニ「ベルトルトも女子のとこ、お願いに行ったら。」

ベルトルト「えっ、なんで?」

サシャ「そうですよ。ベルトルトが行けばお金がいっぱい集まります。」

ベルトルト「でも、女子は苦手で・・・。」

ジャン「しょうがねぇ、俺が行ってくる。」

コニー「お前は行くな。」

ジャン「なんでだよっ。」

415 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:57:51 ID:WqODutTw

ライナー「ところでユミル。お前はヴァイオリンどうやって手に入れたんだ?高いんだろ、あれ。」

ユミル「訓練兵になる前に小金は結構貯めてたからな。それでも足りない分は身体で払った。」

ライナー「身体でって、お前・・・。」

クリスタ「もうユミル、勘違いされる言い方しないの。

     ユミルはね、休日にヴァイオリン工房で雑用係として働いて返したの。」

ライナー「兵士のアルバイトは禁止だが、お前にしてはまともな判断だったな。」

ユミル「盗んだとでも思ってたか?ライナーさんよ。」

ライナー「お前ならやりかねんからな。・・・いや、今のお前はやらないな。」

ユミル「何だそりゃ。」

416 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:58:32 ID:WqODutTw

アルミン「あっ、バケツが戻ってきた。」

エレン「いくら入ってんだ?」

マルコ「えーと・・・。うん。ドラムが三個ぐらい買えそうだね。」

サシャ「やったーーー!みなさんご協力ありがとうございます!」

ミカサ「私たちもお礼を述べねば・・・」

エレン「だな。」

一同「ありがとうございました!!!」

「軍楽隊、期待してるぜ。」

「オレの金、無駄にすんなよ。」

「楽しみにしてるからねー。」

417 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:59:04 ID:WqODutTw

アルミン「みんな・・・。僕は良い同期に恵まれて幸せだよ・・・。」グスッ

ミカサ「うん。期待に応えなくては。アルミンならきっとできる。」ナデナデ

エレン「集まった金、誰が持っとく?」

ジャン「男子寮はやめといた方がいいぜ。手癖の悪いやついるからな。」

コニー「部屋が散らかってるしな。失くしそうだ。」

クリスタ「分かった。それじゃ、私が預かっとくね。」

ライナー「クリスタなら安心だな。」

ベルトルト「うん。賛成だ。」

418 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 18:59:42 ID:WqODutTw

マルコ「次の休日に、みんなで街の楽器屋さんへ行こう。」

サシャ「みんなで!?遠足みたいですね。」

コニー「やっべ。こんな大人数で遊ぶの初めてだ。何持って行こう。」

ジャン「間違ってもボールとか虫取り網とか持ってくるなよ。」

コニー「釣竿は?」

ジャン「どこ行く気だ?」

アルミン「ははは。楽しみだね。」

エレン「街出るの久しぶりだぜ。」

ミカサ「私が誘うと断るのに・・・。」シュン

419 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:00:19 ID:WqODutTw

アニ「私はパス。」ガタッ

ライナー「相変わらずつれねぇな。どこ行くんだ?」

アニ「散歩。」スタスタスタ

クリスタ「アニも一緒に来ればいいのに・・・。」

ベルトルト「気にしなくていいよ。もともと団体行動が嫌いだから。」

ユミル「いいんじゃね?いろんな奴がいて。」

サシャ「じゃあ早速、どこのお店でご飯食べるかプランを立てましょう!!」

コニー「お前は食い物しか頭にないのか、芋女!!」

ワイワイワイワイ

420 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:00:50 ID:WqODutTw

―別のテーブル

ミーナ「あっちのグループ、楽しそうだね。」

女子A「は?うちらと一緒じゃ、つまんないって?」

ミーナ「そ、そんなこと言ってないよ・・・。」

女子B「うざいよね。人から金とってさ。自分らだけ盛り上がって。」

女子C「だよね。目障り。」

ミーナ「そうかな・・・。」

女子A「・・・ねぇ、ミーナ。お願いがあるんだけどさ。」

ミーナ「何?」

女子A「ここじゃ、何だから外で話そ。」

421 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:01:21 ID:WqODutTw

―講義棟の裏

アニ(ライナーの奴、すっかり仲間意識持っちゃって。大丈夫かあいつ・・・。

   それにしても怪しい奴がいないか巡回するのも飽きたね・・・。

   よくよく考えたら、なんで私だけ?ライナーとベルトルトも働けよ。

   ・・・・・ん?あれは・・・。)

422 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:01:53 ID:WqODutTw

ミーナ「お願いって何?」

女子A「ミーナ、うちらって友達だよね。」

ミーナ「う、うん。」

女子B「うちらが相手してやんなかったら、ボッチだもんな。」クスクス

女子C「ズッ友だよねぇ。」

ミーナ「うん・・・。」

女子A「お願いっていうのはね―――――」

423 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:02:28 ID:WqODutTw

―翌日 女子宿舎

ミーナ(体調が悪いって訓練さぼっちゃった。医務室抜け出してきたけど大丈夫かな・・・。)

ミーナ(・・・うん、誰もいないね。クリスタの持ち物はここの棚かな・・・。)

ゴソゴソゴソゴソ

ミーナ(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・

    私だって本当はこんなことしたくない・・・・・・・・。)

424 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:03:04 ID:WqODutTw

アニ「ねぇ。」

ミーナ「!?」ビクッ

アニ「私は訓練サボってるだけで、あんたが何しようと関係ないんだけどさ。」

ミーナ「あ、あの・・・。」オドオド

アニ「私はずるくて嫌なヤツだけど、それでも人間ではいたいわけ。

   あんたは本当に家畜以下になりたいの?」

ミーナ「・・・・!!」

アニ「じゃあね。私は何も見てないから。」スタスタスタスタ

ミーナ(・・・・・・・・・・・)

ミーナ(・・・・・・私、何をしようとしていたんだろう・・・。

    人の言いなりになって、それで何を得ようとしていたんだろう・・・。)

ミーナ「・・・ぅぅ・・ひっく、ううぅぅ・・・・うわぁぁぁぁん・・・」

425 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:03:54 ID:WqODutTw

―翌日 食堂

賑やかに朝食を食べる声が響く中、ミーナは一人でテーブルに座っていた。

ミーナ(お金を盗めないって言ったら、やっぱりハブられちゃった・・・。

    もう私には友達がいない・・・。独りでご飯食べるとか、死ぬほどイヤだよ・・・。

    明日からはトイレで食べよう。惨めだけど、独りでいるとこ見られるよりいいや。

    でもこれでよかったんだ。恥ずかしい人間になるよりボッチの方がマシだよね・・・。)

426 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:04:31 ID:WqODutTw

アニ「ここ、空いてる?」

ミーナ「!? う、うん。」

ミーナ(昨日のこと責められるのかな・・・。アニ、みんなにバラしちゃったかな・・・。)

アニ「何、堅くなってんのさ。」

ミーナ「あ、あの、ごめんなさい・・・。」

アニ「何のこと?私はここでご飯食べたいだけ。」

ミーナ「・・・・・・・・・・ありがとう」グスッ

427 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:05:09 ID:WqODutTw

サシャ「おやおや?ミーナが泣いてますね。アニにパァン盗られましたか?あっ、ここ座りますよ。」

アニ「サシャじゃないんだから、そんなことしないよ。」

コニー「おっ、ミーナが泣いてる。サシャ、また人の飯奪ったんだろ。ここ座るぜ。」

サシャ「人聞きが悪いですね。ミーナはアニに泣かされたんです。」

コニー「おいおい、アニ。寝起きで機嫌が悪いからって蹴り入れるこたないだろ。そりゃ泣くわ。」

アニ「あんたが蹴られたいようだね。」ガタッ

コニー「うわっ、ちょっと、マジ勘弁。」ガタッ

クリスタ「うふふ。朝から賑やかだね。私もここ座ろうっと。」

ミーナ(クリスタ・・・)グスッ

428 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:05:57 ID:WqODutTw

クリスタ「おはようミーナ。・・・って、どうしたの?コニーがいたずらした?」

コニー「オレじゃねぇし。」

クリスタ「大丈夫?」ヨシヨシ

ミーナ「・・・うぅ・・ひっく・ごめんね・・・ひっく、ごめんね・・・。」グスッ

クリスタ「??? 何で謝ってるの?ほら泣き止んで。」ヨシヨシ

コニー「しょうがねぇな。そんなに謝るんならミーナ軍楽隊に入れ。そしたら許してやる。」

クリスタ「許すって、ミーナが何かしたの?」

コニー「知らん。」

サシャ「でも軍楽隊に入ってくれたら嬉しいです。仲間が増えます。」

ミーナ「仲間・・・。」

サシャ「そうです。壁内一の軍楽隊を目指しましょう。」

429 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:06:33 ID:WqODutTw

ミーナ「でも・・・、私なんか・・・。」

アニ「やってみたら?馬鹿が多いけど退屈はしないよ。」

クリスタ「一緒にがんばろうよ、ミーナ。」ニコッ

クリスタはミーナの手を握った。

クリスタの手は優しく温かかった。

ミーナ「・・・・・うんっ。よろしくね。」ニコッ

サシャ「では、新しい仲間にスープで乾杯です。」

コニー「こぼれるからやめとけ。」

430 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:07:05 ID:WqODutTw

アニ「じゃ、私もう行くわ。」ガタッ

アニは食器を片付けに席を立つ。

途中、あるテーブルの前で止まった。

アニ「ねぇ、あんた。」

女子A「・・・なんか用?」

アニ「今日の対人格闘術の訓練、私と組んでくれない?」

431 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:07:43 ID:WqODutTw

―休日 

アルミン「こんにちはー。」

店主「おぉ、訓練兵の坊主。また来たのか。」

エレン「へぇ、ここが楽器屋か。見たことのないモノがいっぱいだな。どれどれ・・・」

ミカサ「エレン、勝手に触っては駄目。」

マルコ「ドラムはどこかな?」

クリスタ「ピアノ譜、置いてないかな・・・。」

コニー「おっ、ファイフまだあるじゃん。もっといっぱい買おうぜ。」

432 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:08:16 ID:WqODutTw

ジャン「そういえば、アニとユミルは?」

サシャ「一生懸命お誘いしたのですが、面倒くさいって断られました。」

コニー「ミーナは?」

サシャ「もちろん誘いましたよ。でも、私なんかがってものすごく遠慮して来なかったです。」

コニー「なんだよ、それ。」

クリスタ「まだ私たちに慣れてないから緊張するんじゃない?」

ジャン「ははっ、確かにな。ライナーとか普通の女はビビっちまうよな。」

ライナー「それでいい。どうでもいい女に周りをうろちょろされたら面倒なだけだ。」

ベルトルト「それにしても、天井低いな。頭ぶつけそう。」

433 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:08:55 ID:WqODutTw

※ ※ ※ ※

店主「今日は何が欲しいんだ?」

アルミン「軍楽隊に使うドラムです。」

店主「マーチング用のドラムだったらその辺だ。値段もいろいろだからな。じっくり見て決めるといい。」

アルミン「ありがとうごさいます。」

コニー「へぇ、太鼓っつっても、いろいろあるんだな。」

アルミン「どれがいいかなぁ・・・。」

434 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:09:30 ID:WqODutTw

※ ※ ※ ※

クリスタ「あっ、これカワイイ。」

ミカサ「何?」

クリスタ「ちっちゃめのオカリナ。」

サシャ「うわー、綺麗な装飾がしてありますね。」

ミカサ「インテリアにもなりそうね。」

クリスタ「うん。自分のとユミルにもおみやげで買って帰ろう。」

435 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:10:11 ID:WqODutTw

※ ※ ※ ※

ジャン「珍しいもんだらけだぜ。」

マルコ「うん。僕も初めて見るものがたくさんある・・・って、これは!!」

ベルトルト「どうしたの?」

マルコ「おじさん。これって、もしかしてビューゲル?」

店主「坊主よく分かるな。そうだ、ビューゲルだ。」

ジャン「なんだそれ?」

店主「いわゆる軍隊ラッパさ。昔、軍隊で命令の伝達に使われてたらしい。」

ベルトルト「へぇ。軍楽隊に組み込めるかな?」

店主「いや。ビューゲルは出せる音程が限られてるから演奏には向かない。

   行軍時や日常生活の号令としてしか使えんよ。」

436 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:10:52 ID:WqODutTw

ジャン「教官の怒鳴り声よりはラッパのほうがいいな。おっさん、これいくらすんだ?」

店主「これは非売品だ。もう壁内じゃ製造されとらんからな。」

ジャン「そこを何とかさぁ、頼むよ、おっさん。」ペコリ

マルコ「僕からもお願いします。」ペコリ

ベルトルト「僕からも」ペコリ

店主「・・・お前ら、今日ドラム何個買うんだ?」

マルコ「ええと、三個です。」

437 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:11:24 ID:WqODutTw

店主「じゃあ、おまけでビューゲル、付けてやるよ。

   ここにあっても埃をかぶるだけだしな。楽器は音を出してこそ価値がある。

   そいつに命を吹き込んでやってくれ。」

ベルトルト「やった。」

ジャン「ホントにいいのかよ?」

店主「ああ。お前ら将来、立派な兵士になるんだろ?先行投資だ。」

マルコ「ありがとうございます。」

438 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:12:03 ID:WqODutTw

※ ※ ※ ※

ライナー「こ、これは!?」

エレン「何だこれ?」

ライナー「こんなけしからんものが売っているとは・・・、ここの店主できる。」キラン

エレン「おーい、店主のおっさーん。」

店主「呼んだか。」

エレン「これって鞭みたいだけど、楽器なのか?」

店主「ああ。昔、外の世界にあったドイツってところの民族楽器だな。

   ゴアスルシュノイツェンっていう立派な楽器だ。まぁ、ただの牛追い用の鞭だがな。」

439 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:13:17 ID:WqODutTw

ライナー「親父、これを一つは自分用に、一つはプレゼント用で包んでくれ。」

店主「若造のくせに、お主なかなかやるな。」キラン

ライナー「親父さんには叶いませんよ。」ニヤリ

エレン「軍楽隊に鞭って必要なのか?」

ライナー「いや、これはあくまで個人的趣味だ。」

エレン「? プレゼントって誰にやるんだよ。」

ライナー「アニに決まってるだろうが。」

エレン「そんなもんもらってもアニは喜ばねぇだろ。」

ライナー「馬鹿野郎。『こんなもんいるか!!』って怒ったアニが、すかさず鞭でオレをパシーン。

     最高じゃないか。」ハァハァ

エレン「変態だな。」

ライナー「お前も一つどうだ。ミカサにプレゼントしてみろよ。」

エレン「そんな殺傷能力の高そうなもんでミカサに叩かれたら、俺の身体がちぎれちゃうだろ。」

440 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:14:17 ID:WqODutTw

―街の公園 

サシャ「やっぱり、大人数で一緒に入れるお店ありませんでしたね。」モグモグ

アルミン「しょうがないよ。でもおいしいサンドウィッチ屋さん見つけたし。」モグモグ

ミカサ「木陰が気持ちいい。」モグモグ

エレン「外で食べるほうが気分いいぜ。」モグモグ

ベルトルト「でも、随分と買い込んだね。」モグモグ

マルコ「ドラム3台と追加でファイフ11本。おじさん、かなり値引きしてくれたから。

    なんとか軍楽隊が形になりそうだよ。」モグモグ

441 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:15:00 ID:WqODutTw

ライナー「そんなに買ったのか。演奏する奴いるのか?」モグモグ

クリスタ「募集するの。きっとやってみたい人がいるはず。もし応募がなかったら・・・。」モグモグ

マルコ「ライナー軍団に頼めるかな?」モグモグ

ベルトルト「ははっ、軍団なんだ。」モグモグ

ライナー「俺が頼めばやってくれる男たちだが・・・・、むさ苦しいぞ。」モグモグ

ジャン「ライナーがそれ言うか。」モグモグ

442 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:15:39 ID:WqODutTw

ベルトルト「でもさ、ビューゲルは誰が吹くの?」モグモグ

アルミン「うーん。日常生活の号令で使うんだったら、時間に正確な人かなー。」モグモグ

マルコ「起床ラッパとか、誰よりも早起きできる人じゃないと無理だねー。」モグモグ

エレン「早起きかー。そういやダズって早起きじゃね?」モグモグ

ジャン「そうそう。年寄りかっていうぐらい早起きだな。」モグモグ

ライナー「奴がゴソゴソする音でこっちまで目が覚める。」モグモグ

マルコ「毎日、心配なことが多すぎて早く目が覚めるらしいよ。」モグモグ

ジャン「ダズに任せるか。」モグモグ

マルコ「余計、心配ごとが増えるんじゃないかな。まぁ、頼むだけ頼んでみようか。」モグモグ

443 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:16:17 ID:WqODutTw

コニー「あー、公園来るんだったら、やっぱボール持ってくりゃよかった。」モグモグ

ジャン「お前、まだそれ言ってんのか。」モグモグ

コニー「だってよー、あそこにいる奴、いっぱいボールくるくる回して楽しそうなんだよー。」モグモグ

ジャン「馬鹿。ありゃ、大道芸人のジャグリングだ。ああやって芸を見せて金稼いでんだよ。」モグモグ

コニー「俺もやってみてぇな。小遣い稼ぎになるし。」モグモグ

ベルトルト「じゃあ、ファイフ吹いてみたら?上手に演奏したらチップもらえるかも。」モグモグ

コニー「やだよ。恥ずかしい。」モグモグ

ライナー「おいおい、恥ずかしがってちゃ軍楽隊できないだろう。」モグモグ

コニー「みんなと一緒だったら平気だ。一人は無理。」モグモグ

444 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:16:57 ID:WqODutTw

ベルトルト「サシャは偉いよね。大勢の前で一人で歌ったんだから。」モグモグ

ジャン「羞恥心、田舎に忘れて来たんだろ。」モグモグ

コニー「なぁ、サシャ。ここで歌えって言われたら歌えるか?」モグモグ

サシャ「もちろんです。私は歌い手さんです。時と場所は選びません。」モグモグ

ライナー「すでにプロ意識を持ってるな。」モグモグ

ジャン「それじゃあ、歌ってみろよ。小銭稼げるかもしれねぇぜ。」モグモグ

マルコ「やめなよジャン。芸人みたいな真似、サシャにさせるなよ。」モグモグ

コニー「だって俺ら芸人にならなきゃいけねぇんだろ。」モグモグ

マルコ「だとしても、今はまだしなくていい。」モグモグ

サシャ「マルコは優しいですね。でも大丈夫です。私、歌うの好きなんです。」ヨイショ

445 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:17:41 ID:WqODutTw

エレン「おっ、マジで歌うのか?」モグモグ

サシャ「はい。この前クリスタに教えてもらった歌が、今日はぴったりなんです。」

アルミン「なんて歌?」

サシャ「えと、ヘンデルの『ラルゴ』です。」

ジャン「チップ集めるものは・・・、この袋でいっか。」

ミカサ「サシャ、がんばって。」

サシャ「はい。聴いてて下さいね。」

サシャは人がたくさんいる方へ少し歩みを進めた。

446 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:18:49 ID:WqODutTw

サシャ「みなさーん!!今から歌いますねー!!」

振り返る人々。

サシャは大きく息を吸い歌いだした。


Ombra mai fu     こんな木陰は今までなかった
di vegetabile,    愛しくて 心地よくて
cara ed amabile,   そして優しい
soave piu       緑の木陰


サシャの歌声に人々は集まった。

歌い終わると、歓声と拍手が起こった。

「よっ、姉ちゃん、うまいじゃねぇか。」

「いい声してるね。」

「初めて聴いたよその歌。すごくいい歌だね。」

用意した袋に、次々と硬貨が投げ込まれる。

447 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:19:42 ID:WqODutTw

サシャ「お騒がせしてすいません。ありがとうございました。」ペコリ タッタッタッタ

エレン「すげぇな、サシャ。」モグモグ

サシャ「いやー、緊張しちゃいました。」

ジャン「どこがだよ。」モグモグ

サシャ「みなさんへの感謝の気持ちを込めました。伝わりましたか?」

コニー「ありゃ、何語だ?まったく分からん。」モグモグ

サシャ「壁の外の昔の言葉らしいですよ。

    大体の意味はクリスタから聞いたんですけど、簡単にまとめると・・・」

ジャン「まとめると?」モグモグ

448 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:20:24 ID:WqODutTw

サシャ「みなさんのことが大好きです!!って感じです。」

ミカサ「ふふ、サシャかわいい。」

コニー「お前そんなことよく平気で言えるな。こっちが照れるわ。」///

ベルトルト「サシャは真っ直ぐだね。」

ライナー「ああ。初めて女子から告白された。」///

ジャン「俺もだ。」///

エレン「お前らの脳内は快適だな。」

アルミン「クリスタ、歌詞の意味ってあれで合ってるの?」

クリスタ「うーん、ちょっと違うけど・・・。でも正解。」

コニー「小銭ばっかだけど、けっこう入ってんじゃん。何かおごれよ。」

サシャ「駄目です。帰りにケーキ買って、ミーナと一緒に食べるんです。」

449 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/12(金) 19:21:03 ID:WqODutTw

アルミン「・・・ねぇマルコ。サシャがちょっと歌っただけでチップがもらえたね。」

マルコ「そうだね。」

アルミン「・・・・・・・」

マルコ「・・・・・・・」

アルミン「・・・・多分、同じこと考えてるよね。」

マルコ「・・・・ああ、資金はあるに越したことはない。」

アルミン「やるしかないね。」

マルコ「寄付金集めのチャリティーコンサート。」


456 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:12:13 ID:0/6DCNKs

後日、アルミンとマルコは軍楽隊の設立とチャリティーコンサート実施の許可をキース教官に申請した。

軍楽隊の設立は認められたが、コンサートに関しては兵士の対外活動になるので中央の承認が必要らしい。

「軍楽隊の出来次第では中央に申請してやってもいいぞ」とキース教官は温情を見せた。

なお、ビューゲルは日常生活の号令にのみ使用が許可された。

「壁外でラッパなんぞ吹いたら巨人に居場所を知らせるようなもんだろう。」

優秀な二人が意外と抜けていることに、キース教官は苦笑いした。

二人は礼を述べると教官室を後にした。

457 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:12:57 ID:0/6DCNKs

アルミン「とりあえず軍楽隊を形にしないとね。」

マルコ「ああ、すべてはそれからだ。」

アルミン「僕、隊員募集のチラシ作って食堂の掲示板に貼っとくね。」

マルコ「僕も周りに声かけてみるよ。訓練兵団の軍楽隊だから仲間内だけでやるわけにはいかない。

    今まであまり接点の無かった人たちにも参加してもらいたいね。」

アルミン「うん。自分達だけで盛り上がるのは良くないね。周りを巻き込んでいかなくちゃ。」

458 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:13:37 ID:0/6DCNKs

―男子宿舎

ジャン「ダズ、頼む。ビューゲル吹きになってくれよ。」

ダズ「お、俺にはできない・・・。そんな責任のある役・・・。」

エレン「ダズしか適任がいないんだよ。なぁ、頼むよ。」

ダズ「なんで、急にラッパなんだよ。今まで通りカンカンカンって鐘の合図でいいじゃないか。」

コニー「そんなんカッコいいからに決まってるだろ。」

ダズ「だったらコニーが吹けばいいじゃないか。」

コニー「俺だって吹きてぇよ。でも早起きできん。」

ベルトルト「一番早起きのダズにやってもらえると僕たちすごく助かるんだけど。」

ダズ「これ以上、俺に負担をかけないでくれ。今の生活に付いていくのにいっぱいいっぱいなんだよ。」

459 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:14:22 ID:0/6DCNKs

ライナー「ふぅー。ダズ、お前ここの生活楽しいか?」

ダズ「楽しいわけないだろ?万年落ちこぼれで、毎日教官にはどやされる。

   男子からはグズの厄介者扱いを受け、女子からはいるだけでキモいって言われる。

   開拓地に送られたくないから仕方なくここにいるだけだ。」

ライナー「だったら、ビューゲルを吹いてみろよ。お前にしかできない特技を身に付けろ。

     そうすれば周囲のお前への評価も変わってくる。少しはここの生活を楽しもうとしろ。」

ダズ「そんな・・・、ラッパが吹けたところで何も変わらない・・・。」

460 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:15:07 ID:0/6DCNKs

エレン「決めつけんなよ。少なくともここにいる俺たちはお前のこと尊敬する。」

ダズ「・・・尊敬・・・」

ベルトルト「自分のためでなく他人のために何かできる人は立派だよ。」

ダズ「・・・立派・・・」

コニー「何よりラッパが吹けるってカッコいいじゃん。憧れるぜ。」

ダズ「・・・憧れ・・・」

ジャン「どうだ、やってくれるか?」

ダズ「う、うん。俺、頑張ってみるよ。」

461 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:15:38 ID:0/6DCNKs

コニー「よっしゃ!!じゃあ、早速吹いてみろよ。」

ダズ「できるかな・・・いくよ・・・  フスゥー・・・」

コニー「はははっ。やっぱそうなるよな。俺も最初はファイフ、ぜんぜん鳴らなかったし。」

ダズ「や、やっぱり俺には無理なんじゃ・・・。」

ジャン「心配すんな。吹き方にコツがあるんだろ。マルコとアルミンが帰ってきたら聞いてみようぜ。」

ライナー「何事も最初からはうまくいかないさ。大丈夫。お前ならできる。」

462 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:16:18 ID:0/6DCNKs

―数日後 第三音楽室

軍楽隊員に応募したメンバーの初顔合わせが行われていた。

アルミン「こんなにたくさん集まるとは思わなかったよ。みんなありがとう。」

ミーナ「誰も来ないんじゃないかって心配してたのに・・・、嬉しいよ。」

サシャ「むさ苦しいライナー軍団を召集しなくてもよくなりました。」

コニー「うーんと、ひぃ、ふぅ、みぃ・・・・、俺たち除いて12人か。すげぇな。」

トーマス「なんかお前ら一生懸命だからな。手伝ってやりたくなった。」

サムエル「カンパ出したし。俺にも軍楽隊に参加する権利はあるよな?」

アルミン「もちろんだよ。」

ナック「俺らこれといった趣味もないからさ。自由時間はヒマしてんだ。」

ミリウス「ここには娯楽が何もないからな。面白そうなことには食いつくぜ。」

サシャ「そうです。みんなで合奏するのは絶対に楽しいはずです。」

463 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:16:58 ID:0/6DCNKs

アルミン「ドラム3人、ファイフ12人の構成なんだけど希望の楽器ある?」

ハンナ「私はファイフやってみたい。」

フランツ「俺はドラムで。俺のビートがハンナのメロディーを支えるんだ。」

ハンナ「フランツ・・・///」

コニー「馬鹿夫婦・・・。」

アルミン「他のみんなは?」

「どっちでもいいぜ。」

「良くわかんないし。」

「アルミンが決めてくれよ。」

アルミン「分かった。じゃあ、ドラムは結構重たいから男子の方が良さそうだね。

     フランツとトーマスと僕がドラムで。他のメンバーはみんなファイフで。」

トーマス「了解。」

ミリウス「かまわねぇぜ。」

464 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:17:50 ID:0/6DCNKs

サシャ「ちょっと待って下さい。ファイフって全部で12本しかないんですよね。

    ここには16人います。ドラムの人除いても1人余ります。」

ミーナ「あっ・・・、じゃあ、私は外してもらっても・・・。」

サシャ「駄目です!!それは絶対許しません!!」

コニー「珍しいなアルミン。計算間違えたか。」

アルミン「間違いじゃないよ。サシャには特別な役をやってもらおうと思って。」

サシャ「特別な役・・・ですか?」

アルミン「うん。僕ね、いろいろと軍楽隊について古い資料を調べたんだ。

     それで分かったんだけど、軍楽隊にはドラムメジャーっていう指揮役が必要なんだって。」

サシャ「指揮・・・。具体的には何をするんでしょう?」

アルミン「軍楽隊の先頭で、メジャーバトンっていう杖を振って演奏を指揮したり隊を先導したり。

     一番目立つ花形のポジションだよ。」

465 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:18:33 ID:0/6DCNKs

サシャ「そんな重要な役割、私なんかでいいのでしょうか?」

アルミン「サシャだからお願いしたいんだ。だって緊張しなそうだから。」

コニー「ははっ、確かにな。先頭で杖振るとか、恥ずかしくって俺はできん。」

ミーナ「メジャーバトンっていうモノは用意してあるの?」

アルミン「それがまだ無いんだ。キース教官にお披露目するまでには用意しないと。」

サシャ「そんなの無くていいですよ。買ったら多分高いでしょうし。どっかで棒きれ拾ってきます。」

ミーナ「そんな。棒っきれじゃ格好がつかないよ。」

サシャ「いいんです。見た目よりバトン技術で勝負してやります。」

コニー「なぁ、アルミン。メジャーバトンってどんな形なんだ?」

アルミン「僕も本で見ただけだから正確には分からないんだけど、

     1mくらいの細長い棒で片側に装飾がある、いわゆるメイスって呼ばれるものらしい。」

コニー「ふーん・・・・。」

アルミン「じゃあ、練習を始めよう。ファイフ隊はコニーとサシャに音の出し方を教えてもらって。

     ドラム隊は僕とスティックの持ち方から練習しよう。」

466 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:19:20 ID:0/6DCNKs

―数日後 自由時間 講義棟

マルコ「ドラムの音がする。今日も軍楽隊、頑張ってるね。」

クリスタ「アルミンの行動力ってすごいよね。作曲の次は軍楽隊まで作ろうとするんだもん。」

マルコ「うん。彼の前向きでひたむきな姿勢に仲間が自然と集まってくる。

    1人じゃできないことでも仲間がいれば可能になる。

    自分の能力を冷静に判断して、足りない部分は素直に人に頼れるところがアルミンの強みだね。」

クリスタ「うん。素直さか・・・。見習わないとな。

     でもさ、仲間が集まるのはアルミンだけじゃないよね。・・・ほら、声が聞こえてきた。」

マルコ「ぷっ、本当だ。今日もやってるのか。ちょっと覗いて見ようか。」

467 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:19:58 ID:0/6DCNKs

―第二音楽室

ライナー「よーし、お前ら。今日も歌って気分爽快すっきり寝るぞ。」

「腹から声出すぞー」

「軍楽隊の音に負けてらんねぇな」

「アニキ、今日は何の歌で?」

ライナー「俺の届ける最高のパーティーチューン。

     モーツァルト第二弾『俺の尻を舐めろ、きれいにきれいにね』。お前ら俺の後に続け。」

さぁ俺の尻を舐めろ~♪ (さぁ俺の尻を舐めろ~♪)

きれいに美しく舐めあげろ~♪ (きれいに美しく舐めあげろ~♪)

・・・・・・♪

・・・・・♪

468 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:20:59 ID:0/6DCNKs

―教室の外

マルコ「はははっ、相変わらず楽しそうだね。」

クリスタ「ふふふっ、前より人数増えてるし。すごい迫力。」

マルコ「うん。毎日こうやって歌っているからかな。上手くなってるね。」

クリスタ「ちょっとした合唱団みたい。ライナーってバリトンの結構いい声してるよね。」

マルコ「確かによく響くし声量もすごいね。・・・男性合唱か。いいかもしれない・・・。」

クリスタ「何が?」

マルコ「ほら、チャリティーコンサート。開催は軍楽隊の出来次第なんだけどさ。

    アルミンは間違いなくキース教官に認められる軍楽隊を作る。

    だから、コンサートでやる演目の案を早めに考えとこうと思って。」

469 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:21:44 ID:0/6DCNKs

クリスタ「そうだね。準備は早い方がいいね。」

マルコ「アルミンは今手いっぱいだから。僕たちで考えないと。」

クリスタ「そっか。お客様に喜んでもらえる演目だよね・・・。」

マルコ「できるだけ訓練兵のみんなにステージに立ってもらいたいんだ。

    軍楽隊とライナー合唱団は出演依頼をしてみるよ。ただ他の人たちも何かで出演できれば・・・。」

クリスタ「予算をかけずに団体でできるパフォーマンスか・・・。ダンスとか?」

マルコ「僕もそれを考えたんだけど。ファイフの音色で踊ればいいかなって。

    ただ僕はダンスに詳しくないから。どんな踊りが相応しいのか分からないんだ。」

クリスタ「うーん。集団で踊るダンスは私も分からないなぁ・・・。」

470 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:22:14 ID:0/6DCNKs

マルコ「だから、この前行った楽器屋さんで聞いてみるよ。あそこ民族楽器がたくさん置いてたから。

    民俗音楽って踊るための曲が多いし。おじさん何か良いダンス知ってるかもしれない。」

クリスタ「うん。分からないことは素直に人に頼ろう。私も楽器屋さん一緒に行くよ。」

マルコ「ありがとう。それよりクリスタ、そろそろレッスンじゃないの?」

クリスタ「あっ、いそがなきゃ。でも、マルコは?ライナーに教室占領されてるけど・・・」

マルコ「今日はレッスン無しなんだ。なぜか生徒が急に減ってね。」

クリスタ「ふふっ、マルコ人気は一瞬だったんだね。」

マルコ「そうだよ。僕の人生でおそらく、最初で最後のモテ期はあっという間に終わったよ。

    ほら、早く行かないと。生徒さん待ってるよ。」

クリスタ「うん。それじゃあ。」

471 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:22:51 ID:0/6DCNKs

―男子宿舎

アルミン「疲れたー。腕がパンパンだよ。」

エレン「お疲れー。」

ジャン「ほらっ、ダズ、もう1回やってみろ。」

ダズ「う、うん。」 プォ~~~♪

アルミン「ダズ、すごいじゃないか。音、出るようになったんだ。」

ダズ「口の形とか息の出し方とか、いろいろ試してみたんだ。」

マルコ「あとは今のアンブシュアを保ったまま、息を出す速さを変えるんだ。」

ベルトルト「アンブシュアって?」

マルコ「唇の形のことらしいよ。僕もよく知らないけど格好つけて言ってみた。」

ダズ「息を出す速さを変えるのか・・・」 ポォ~♪プゥ~♪パァ~♪

エレン「おー、音が変わった。今のはド、ミ、ソだ。」

472 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:23:29 ID:0/6DCNKs

マルコ「ビューゲルにはバルブが付いてないからね。

    音程を吹き分けるには、息の速さやアンブシュアを変化させるしかないんだ。

    でも出せる音は下から言うと、ド・ソ・ド・ミ・ソ・シ♭・ドだけだから。」

アルミン「自分のさじ加減なんだね。」

マルコ「うん。とにかくどう吹いたらどの音になるか身体で覚えるしかないね。」

ダズ「頑張るよ。こんな俺でも人に認めてもらえそうなものが見つかったんだ。

   ビューゲルの練習始めてから少し前向きになれたよ。」

ジャン「良かったじゃねぇか。どんな場所にいても人生楽しまなきゃ損だからな。」

ダズ「ああ。お前らのおかげだ。感謝するよ。」

ライナー「礼はちゃんと吹けるようになってから言え。」

473 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:24:21 ID:0/6DCNKs

アルミン「それより、コニーは隅っこで何やってんの?」

ジャン「あいつ、ここんとこ毎晩小刀でなんか削ってんだよ。」

エレン「今日はヤスリをかけてるな。」

ベルトルト「話かけても気付かないぐらい集中してるんだよ。」

マルコ「コニーがあんなに夢中で何かに取り組むの珍しいから、あえて放置してる。」

アルミン「ふーん。何だろうね。」

コニー「・・・・・できたーーーー!!!」

ベルトルト「!?びっくりした。急に大声出すなよ。」

コニー「ああ、すまん。あまりの完成度の高さについ興奮しちまってな。」

エレン「何、作ってたんだ?」

474 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:25:00 ID:0/6DCNKs

コニー「じゃーん♪これ、何だと思う?」

ジャン「棒。」

エレン「ツルツルの棒。」

ベルトルト「超大型マッチ棒。」

ライナー「おまっ、ふつう手作りするか!?そんな夜のお楽しみ道具。」

ジャン「マジかっ!!・・・・って長すぎだろう。もう俺は騙されねぇ。」

ライナー「ふっ、甘いぞジャン。たとえば食堂のテーブルの下での使用を想像してみろ。」

ジャン「・・・・・すごくイイ。///」

エレン「お前ら想像力が豊かだな。」

アルミン「これって・・・、もしかしてメジャーバトン?」

コニー「そうだ。さすがに棒切れじゃ格好つかないからな。」

マルコ「へぇ。よくできてるじゃないか。先端の楕円体とか上手に削ったね。」

コニー「小刀の扱いは得意だ。」

アルミン「サシャ、きっと喜ぶよ。世界に一つしかないメジャーバトンだ。」


476 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:25:54 ID:0/6DCNKs

ジャン「・・・コニーお前、これ何を削って作ったんだ?」

ベルトルト「長さといい質感といい・・・、どっかで見たことあるな。」

マルコ「まさか・・・。」

コニー「ん?対人格闘の棒術で使うやつを一本だけ拝借した。」

アルミン「拝借って・・・、許可とったの?」

コニー「いや、勝手に取ってきた。一本ぐらい構わんだろ。」

エレン「駄目だろ。不足があったら備品管理係が教官にどやされるぞ。」

ベルトルト「盗ってから数日経ってるから、すでに手遅れかもしれないけど。」

アルミン「今からでも教官に正直に話すべきだよ。」

コニー「えー、やだよ。怒られたくねぇし。せっかく作ったのに取り上げられたらどうすんだよ。」

477 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:26:29 ID:0/6DCNKs

ジャン「コニー、お前馬鹿だろ。盗んだもんプレゼントされて喜ぶ女がどこにいるんだよ。」

コニー「別にプレゼントとかそんなんじゃねぇし。」

アルミン「でも元が盗品と分かったらサシャ悲しむよ。」

コニー「・・・そうか・・・。あーーー、どうすりゃいいんだよ。」

ジャン「明日、俺が一緒に教官のところ行ってやるよ。事情を説明すりゃ分かってもらえるだろ。」

コニー「いいのか?ジャン。」

ジャン「ああ。恋する男の気持ちは痛いほど分かるからな。」

コニー「だーかーらー、そんなんじゃねぇって。」

478 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:27:07 ID:0/6DCNKs

―女子宿舎

ミーナ「唇が痛いよー。」

ハンナ「私も。口の周りの筋肉がつりそうだよ。」

クリスタ「二人ともお疲れ様。ファイフに慣れるまで大変そうだね。」

サシャ「でも、すごく上手になってますよ。ちゃんと曲に聞こえるようになりましたから。」

ミーナ「あはは。最初はひどかったもんね。」

ハンナ「サシャも棒切れ回すのすごく上手になったね。」

サシャ「はい。たくさん練習しました。おかげで手が豆だらけです。」

クリスタ「でも、いつまでも棒切れで練習するわけにはいかないよね。」

サシャ「大丈夫です。今度もっと形のいいやつ森で探してきます。」

479 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:27:51 ID:0/6DCNKs

クリスタ「どっかで安く売ってないかな・・・。そうだ、今度街でるから探してみるね。」

ユミル「また街に行くのか?」

クリスタ「うん。」

ユミル「誰と?」

クリスタ「マルコとだけど。」

ミーナ「二人で?」

クリスタ「今のところ。」

ハンナ「それって、デート?」

クリスタ「違うよ。何か楽しいダンスを知らないか楽器屋さんに行って尋ねるの。」

ミーナ「ダンス?」

クリスタ「うん。ほらチャリティーコンサート開きたいなって話を前にしたでしょ。

     できるだけたくさんの仲間にステージに立ってもらいたいんだ。

     それで何かいいダンスはないかなって探してるの。そういうダンス知らないかな?」

480 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:28:30 ID:0/6DCNKs

ハンナ「うーん、踊ったことすらないよ。」

ミーナ「私も。ダンスって見たことがない。」

クリスタ「そっか・・・。」

ユミル「楽しいかどうかは知らんが、踊りを教えてくれるババァなら心当たりあるぜ。」

クリスタ「ほんと?」

ユミル「ちょっと前までヴァイオリン工房に通ってただろ。

    そこのオヤジのお袋さんってのが、大昔から壁外にあった踊りってのを伝承してるらしい。

    オヤジはヴァイオリンのことフィドルって変わった呼び方するし。

    多分どっかの民俗の末裔なんだろうな。」

481 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:29:01 ID:0/6DCNKs

クリスタ「ユミル、一緒に街へ行ってくれない?工房のおじさん紹介してよ。」

ユミル「私とクリスタの二人ならいいぜ。」

クリスタ「イジワル言わないでよ・・・・。」シュン

ユミル「・・・まぁ、マルコに教わった工房だしな。しょうがない。三人で行くか。」

クリスタ「ありがとう。ユミル大好き。」ギュッ

ユミル「うんうん。訓練兵卒業したら結婚しような。」ナデナデ

482 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:29:46 ID:0/6DCNKs

―翌日 訓練終了後 

夕焼け空の下、コニーとジャンは演習場を走っていた。

ジャン「ちっ、何で俺まで処罰されんだよ。」

コニー「わりぃな、ジャン。でもお前が庇ってくれたからメジャーバトン取り上げられずに済んだ。

    ありがとな。」

ジャン「ああ、一生オレ様に感謝しろよ。」

コニー「営倉行きも覚悟してたけど、意外と教官優しかったな。」

ジャン「そうか?飯抜き50周だぜ。鬼だろ。」

コニー「ジャンも優しいんだな。もっと自己中な奴だと思ってた。」

ジャン「はっ、これが憲兵団行きに響いたらどう責任とってくれんだよ。」

コニー「それが分かってて付き合ってくれたんだろ。お前、いい奴だ。」

483 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:30:32 ID:0/6DCNKs

ジャン「はっ、野郎に褒められても嬉しくねぇよ。」

コニー「ミカサにもお前の良さが伝わるといいな。」

ジャン「うっせぇよ。それよりコニー、お前やっぱりサシャが好きだろう。」

コニー「何でだよ。」

ジャン「何日もかけて木の棒削るなんて、そんなめんどくせぇこと普通しねぇだろ。」

コニー「サシャには世話になってるからな。ありがとうの代わりだ。」

ジャン「礼なんて口で言えば済むだろ。ほら認めちまえよ、好きだって。」

コニー「もー、さっきから何なんだよ。お前、恋バナ好きの女子かよ。」

ジャン「俺は報われない片思い野郎を1人でも増やしたいだけだ。」

コニー「お前サイテーだ。やっぱり全然いい奴じゃねーな。」

484 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:31:09 ID:0/6DCNKs

ジャン「コニー、お前は自分で気付いてないだけでサシャのことが好きなんだよ。」

コニー「何回もしつけぇよ。洗脳する気か。」

ジャン「ああ、走り終わるまでずっと言ってやる。お前はサシャが好き。」

コニー「違う。うっとしいな、俺もう先行くし。」ダッシュ

ジャン「あっ、待ちやがれ。お前はサシャが好きなんだよ。」

コニー「好きじゃねぇ。」

ジャン「好きなんだ!!!」

コニー「好きじゃねぇ!!!」

ジャン「大好きだ!!!!」

コニー「やめてくれ!!!!」

485 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:31:46 ID:0/6DCNKs

―演習場の外れ

アニ「なにアレ?」

ミカサ「ジャンが大声で好きだと叫びながら、コニーを追いかけている。」

サシャ「夕焼け空の下、青春ですね。」

ミーナ「思わず何かに目覚めてしまいそう・・・・・・ハッ、だめだめ。」ブンブンブン

ユミル「ノーマルだろうがゲイだろうが本人の自由だ。放っとけ。」

クリスタ「そうだね。コニー、頑張って逃げてねー。」

486 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:32:33 ID:0/6DCNKs

―翌日 第三音楽室

ガラッ

コニー「よう。」

サシャ「あっ、コニー。珍しく早いですね。今日も練習頑張りますよ。」

コニー「サシャあのさ・・・・・、コレやる。」

コニー(あいつらご丁寧にラッピングしてリボンまで付けやがって・・・。渡しづれぇ。)

サシャ「何ですか?おお!これは噂に聞くプレゼントってやつですね。」

コニー「いいから早く開けろよ。」

サシャ「食べられる物だといいですねー。じゃ、遠慮なく。」ビリビリビリ

コニー(豪快に破いたな。ラッピングしてもサシャの前じゃ意味ねぇっての。)

487 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:33:19 ID:0/6DCNKs

サシャ「・・・・・・・・」ウルウル

コニー「サ、サシャ?」

サシャ「・・・・初めてです。」グスッ

コニー「何が?」

サシャ「食べ物以外を人から頂くのは・・・。」グスッ

コニー「お前の場合、ほぼ奪ってるけどな。」

サシャ「食べ物は食べたら無くなります。」グスッ

コニー「そりゃそうだ。」

サシャ「・・・でも、このバトンはずっと残ります。」グスッ

コニー「食えないしな。」

サシャ「・・・一生の宝物ですよ。コニー、ありがとうです。」ニコッ

コニー「あ、ああ。」///

コニー(涙目で微笑むとかカワイすぎるだろうが・・・、ハッ、やべぇ、ジャンに洗脳されてる)

488 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:34:00 ID:0/6DCNKs

サシャ「でも、こんなのよく見つけましたね。どこで売ってたんですか?」

コニー「へへん、オレ様の手作りだ。」

サシャ「すごいです!コニーって意外と器用なんですね。」

コニー「ガキの頃から小刀で木を削って遊んでたからな。」

ガラッ

ミーナ「二人とも早いねー。」

サシャ「あっ、ミーナ見てください。コニー作のメジャーバトンです。」

ミーナ「うそ!?わー、すごい上手。コニーやるじゃん。」

コニー「だろ?もっと褒めてくれ。」

サシャ「うん。コニーは偉いです。」

ミーナ「このバトンがあれば、立派なドラムメジャーに見えるね。」

サシャ「駄目ですよ。宝物だから使いません。大事にしまっておきます。」

ミーナ「えっ?」

コニー「お前なぁ、オレが作った意味ねぇじゃん。ほら、出せよ。使えよ。」グイグイ

サシャ「いーやーでーすー。」グイグイ

489 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:35:06 ID:0/6DCNKs

―休日

ユミル「オヤジ、邪魔するぜ。」

オヤジ「おぉ、ユミル久しぶりだな。元気しとったか。」

クリスタ「ここがヴァイオリン工房か・・・。木の優しい香りがする。」

マルコ「おじさん、お久しぶりです。」

オヤジ「マルコじゃないか。そうそう、ユミルにこの工房紹介してくれてありがとうな。

    ぶっきらぼうだが真面目に働くいい娘だよ。」

ユミル「ふんっ、おだてても二度と手伝わねぇからな。」

オヤジ「はっはっはっ、あいかわらず素直じゃないな。ところで今日は何の用だ?」

490 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:35:57 ID:0/6DCNKs

ユミル「前にオヤジのお袋さんが、どっかの踊りを継承してるとかって話してただろ。」

マルコ「そのダンスがどんなものなのか知りたくて。」

オヤジ「また、珍しいものに興味持ったな。まぁお袋は喜ぶが。それより、そちらのお嬢さんは?」

クリスタ「クリスタと言います。マルコたちと同じ訓練兵団に所属してます。」

オヤジ「こんな可愛い娘さんに兵隊やらせとるのか。世の中どうかしとるのぉ。

    まぁ、わしが嘆いてもどうにもならんがな。

    三人とも付いておいで。この工房の奥が住居で、そこにお袋はいるから。」

491 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:36:35 ID:0/6DCNKs

ガチャッ

オヤジ「お袋、お客さんだ。自慢のダンスを教えて欲しいんだとさ。」

婆さん「まあまあ、よく来なすった。ささっ、そこの椅子にかけんしゃい。」

オヤジ「じゃあ、わしは仕事に戻るから、後は好きに話聞いてけ。」

マルコ「ありがとうございます。」

パタン

クリスタ「お邪魔します。」

ユミル「久しぶりだな婆さん。」

婆さん「おお、元気そうじゃないか。もう工房では働かんのか?」

ユミル「代金の分はきっちり働いたからな。もうゴメンだ。」

マルコ「あの、突然の訪問ですみません。

    今日訪ねたのは、お婆さんが知っているダンスについて伺いたくて。」

婆さん「そうか、そうか。関心な若者もおるんじゃのぉ。

    話せば長くなるが――――――――」

492 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:37:12 ID:0/6DCNKs

お婆さんの話は想像以上に長かった。

要約すると、

・お婆さんはケルト系民俗の末裔でアイリッシュステップダンスなるものを継承している。

・このダンスは足を踏みならすタップダンスのようなもので、多人数で踊るのに向いている。

・代々一族で受け継いできたが後継者がおらず、自分の代で潰える覚悟をしていた。

・受け継いでくれる若者がいるなら喜んで教えたい。

マルコたちの探しているダンスにぴったりと当てはまった。

493 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:37:48 ID:0/6DCNKs

マルコ「ではダンスメンバーが集まったら、講師をお願いできますか?」

婆さん「もちろんじゃ。踊りと言ってもハードじゃからな生きのいい奴らを集めてくれ。

    あとは・・、そうじゃのぉ、リードダンサーとして美男美女が1人づつ欲しいのぉ。」

ユミル「むちゃ言うな婆さん。踊り手集めるだけでも大変だっつーの。」

婆さん「ほれ、そこのお嬢さんでもええんじゃぞ。」

クリスタ「いえ、私は・・・、他にやることがあってダンスはできないんです。すみません。」

婆さん「そうか、残念じゃのぉ。」

マルコ「できるだけ努力はしてみます。こちらの準備が整ったら、また改めてお願いに伺います。」

ユミル「じゃあな、婆さん。くたばるなよ。」

クリスタ「貴重なお話ありがとうございました。失礼します。」ペコリ

婆さん「気をつけてなー。」

494 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:38:35 ID:0/6DCNKs

工房を後にし、帰路につく。

ユミル「あはははは、美男、美女って誰だよ。私らの団にそんなんいたか?」

クリスタ「ユミル笑いすぎ。」

マルコ「うーん、きれいな子はいるけど、踊ってくれるとは限らないしね。」

ユミル「へー、誰だよ。きれいな子って。」

マルコ「・・・アニとか?」

ユミル「ヒュ~♪お前、ああいうのがタイプなんだ。意外だな。」

マルコ「違うよ。一般的に見てきれいだってこと。」

クリスタ「そうだよね。アニは金髪碧眼で象牙のような白い肌。おとぎ話に出てくるお姫様みたい。」

ユミル「お前、なに自画自賛してんだよ。その通りだけど。」

クリスタ「えっ?」

マルコ「ははっ、クリスタも金髪、碧眼、白い肌だろ。」

クリスタ「やだ、そんなつもりで言ったんじゃないのに・・・///」

495 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:39:21 ID:0/6DCNKs

ユミル「クリスタはきれい系っていうよりカワイイ系だな。アニとは全然違うし。」

クリスタ「でもアニはきれいだよ。美女の部類に入るよ。」
    
ユミル「けど、あいつは踊らねぇよ。」

マルコ「やっぱりそう思うよな。」

ユミル「集まった女の中から一番まともなの選べばいいじゃん。」

クリスタ「私アニに頼むだけ頼んでみる。もしかしたら引き受けてくれるかもしれないし。」

ユミル「やるだけ無駄じゃね。それより美男はどこにいんだよ。」

マルコ「・・・ジャンとか。」

ユミル「美男って分かってるか。見目麗しい男だぞ。」

496 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:39:57 ID:0/6DCNKs

マルコ「いや、ジャンなら頼まなくても自分から名乗りを上げてくれそうだから、楽かなーって。」

ユミル「だったらベルトルさんに頼めよ。まだそっちのが男前だ。」

マルコ「ベルトルトは絶対に断るって。性格的に人前で踊るとか向いてないよ。」

クリスタ「声かけてみようよ。勝手に決め付けるのはよくない。」

マルコ「そうだね・・・。一応頼んでみるよ。」

クリスタ「そうそう。軍楽隊のお披露目って明日だよね。」

マルコ「うん。今日は猛特訓してると思う。帰ったら様子見にいこう。」

クリスタ「じゃあ、何か差し入れ買って帰らなきゃ。」

497 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:40:43 ID:0/6DCNKs

―演習場

マルコ「おつかれー。頑張ってるね。」

サシャ「あっ、マルコにクリスタ。」

アルミン「ちょっと休憩しようか。僕もうクタクタだし。」

フランツ「俺も。ちょっとドラム降ろしたい。肩痛い。」

ミーナ「私も。喉かわいちゃった。」

サシャ「しょうがないですねぇ。はーい、みなさん休憩でーす。10分後に開始しまーす。」

クリスタ「ふふっ。サシャが仕切ってるんだ。」

サシャ「そうですよ。なんたってドラムメジャーですから。」

マルコ「コニー製のメジャーバトンちゃんと使ってるんだ。」

サシャ「はい。コニーがもう一本作る約束してくれたんで、心置きなく使ってます。」

コニー「いつになるか分からんがな。」

マルコ「もう備品盗むなよ。」ヒソヒソ

コニー「わかってるよ。」ヒソヒソ


499 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:41:31 ID:0/6DCNKs

クリスタ「これ、みんなに差し入れ。召し上がって下さいな。」

サシャ「何ですかコレ?」

クリスタ「氷砂糖。体力回復には甘いものが一番。」

サシャ「どれどれ・・・パクッ、!!あんまーーーーい!おいしいーーーー!」

コニー「オレにも寄こせ。」

サシャ「はい、どうぞ。みんなに配って来ますねー。」

アルミン「砂糖なんて貴重なのに。高かったでしょ。気を使わせてごめんね。」

クリスタ「いいの。マルコと割り勘だし。みんな頑張ってるから少しでも役に立ちたかったの。」

マルコ「今日は最終調整かな。」

アルミン「うん。隊形変化の確認と歩き方や姿勢を統一する練習してた。」

500 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:42:32 ID:0/6DCNKs

クリスタ「結局、何の曲を演奏することになったの?」

アルミン「『ブリティッシュ・グレナディアーズ(The British Grenadiers)』っていう昔の行進曲。

     あと『忘れえぬ乙女(the girl I left Behind Me)』っていう行進曲も。」

クリスタ「すごいね。二曲も仕上げたんだ。」

アルミン「うん。一曲じゃ短くてなんかマヌケでさ。

     リピートしようかとも思ったんだけど、どうせならもう一曲挑戦しちゃえって。」

クリスタ「練習見学していいかな?聴いてみたい。」

アルミン「もちろんだよ。むしろおかしな所がないかチェックしててね。」

マルコ「了解。しっかり見とくよ。」

サシャ「はーい、みなさん休憩終わりですよー。位置について下さーい。」

それぞれが配置につくのを確認すると、サシャのメジャーバトンが振られた。

501 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:43:07 ID:0/6DCNKs

♪♪♪~~♪♪~~♪♪~

クリスタ「・・・・すごいね。きっちり動きが揃ってる。」

マルコ「うん。移動しながらって難しいはずなのに、少しも演奏がおろそかになってない。」

クリスタ「これなら明日は大丈夫そうだね。」

マルコ「問題は・・・、ダズのビューゲルだけかな・・・。」

502 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:43:53 ID:0/6DCNKs

―男子宿舎

ジャン「ダズ、びびってんじゃねぇよ。」

ダズ「やっぱり俺には無理だよ・・・。」ガクブル

エレン「大丈夫だって。ちゃんと吹けてるし。」

ダズ「でも、みんなの前で、・・・・キース教官の前で吹くんだろ・・・。」ガクブル

ベルトルト「軍楽隊の行進開始の合図にビューゲル吹くって約束したんだろう?」

ダズ「あれはアルミンとコニーが勝手に決めたんだよ。俺は知らない。」ガクブル

エレン「知らないって無責任だな。ダズが了解してんの俺見たぞ。」

ダズ「俺は押しの強い人間には弱いんだよ。簡単に押し切られるんだよ。」ガクブル

ジャン「じゃあ、何のために練習してたんだよ。自己満足のためか?

    違うだろ。お前を馬鹿にしてきた連中を、見返してやりたいんだろうが。」

ダズ「そうだ。俺だってやればできるって所を見せたくて努力したんだ。

   でも、大勢の前で吹くことを考えたら震えが止まらないんだよ・・・・。」ガクブル

503 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:44:37 ID:0/6DCNKs

ライナー「ダズ、お前格好つけようとしてるだろ。」

ダズ「えっ?」ガクブル

ライナー「ノーミスで完璧に吹いたところでダズはダズだ。

     逆を言えば、ボロボロの演奏で終わったとしてもダズなんだよ。

     お前はお前以上でもないし以下でもない。気負うな。」

ダズ「・・・・・・」

エレン「ライナー、俺にはお前の言ってる意味がよく分からん。」

ジャン「俺もだ。なんかの哲学か?」

ライナー「俺の持論だが、ありのままの自分をさらけ出せってことだ。

     他人がどう思おうが関係ねぇ。これが自分なんだと開き直れ。

     丸裸の俺を見やがれこの野郎ってな。」

エレン「最終的には裸見せたいだけじゃん。」

ジャン「お前はコニー並の馬鹿か。喩えだろうが。」

504 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:46:34 ID:0/6DCNKs

ベルトルト「でも、ダズの不安とか緊張、僕も分かるよ。」

エレン「そういえばベルトルトも発表会の時、ガクブルしてたもんな。」

ベルトルト「うん。でもクリスタが、いつも通りにやればいいって手を握ってくれて。

      あれでかなり気持ちが楽になったよ。」

ライナー「そうだったな・・・。しょうがねぇ、ダズ、俺が抱きしめてやる。」

ダズ「いや、意味が分からないし。」

505 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:47:09 ID:0/6DCNKs

ライナー「遠慮するな。俺の熱い抱擁を受けやがれ。」ムギュゥゥゥ

ダズ「うわぁぁぁぁ!!ギブ・・・ギブ!!!マジで背骨が折れる!!」

ジャン「ちっ、ダズ、俺も抱きしめてやるよ。」ムギュゥゥゥ

ダズ「ちょっとやめろよ!!」

ベルトルト「あはは。僕も。」ムギュゥゥゥ

ダズ「だから何でだよ!!」

エレン「そんなん仲間だからに決まってんだろ!!」ムギュゥゥゥ

ダズ「!?・・・・・やめろよ、ホントに・・・」グスッ

ライナー「なっ、震え止まっただろ。心配すんな。なるようにしかならん。」

ダズ「ああ。明日、ありのままの俺を見ててくれ。」

506 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:48:02 ID:0/6DCNKs

―翌日 演習場

アルミン「キース教官。先日お話した軍楽隊が無事仕上がりました。今から披露させて頂きます。」

キース「出来如何によっては廃止するかもしれんぞ。それでもやるのか?アルレルト訓練兵。」

アルミン「出来次第では、こちらの要望を飲んで下さる約束をしています。」

キース「いいだろう。貴様の作った軍楽隊見せてみろ。」

アルミン「はっ。」

軍楽隊のメンバーは配置につき楽器を構えた。

サシャの合図でダズのビューゲルが青空に鳴り響く。進軍ラッパの号令音。

甲高い響きの余韻が消えると、軍楽隊の行進が始まった。

軽快なリズム。楽しげなファイフの調べ。

無駄の無い統制のとれた動きに、見ていた訓練兵たちは釘付けになった。

507 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/18(木) 00:48:42 ID:0/6DCNKs

演奏が終わると、大きな拍手と歓声が起こった。

アルミン「キース教官。判断をお願いします。」

キース「・・・この軍楽隊はまだ上を目指せるのか?」

アルミン「はっ。楽器の数を増やすことによって、さらに迫力のある演奏が可能になります。

     しかし、楽器を購入する予算が必要であります。」

キース「そうか・・・。アルレルト訓練兵。

    貴様の作った軍楽隊を104期訓練兵団軍楽隊として正式に承認してやる。

    活動の場は今のところ無いが、そのうち必要とされるかもしれん。

    資金集めについては追って連絡する。以上だ。」

アルミン「はっ、ありがとうございます!!」

わぁぁぁぁぁぁぁ

軍楽隊員から喜びの声があがった。

ある者は肩を組み、ある者は抱き合い、込み上げてくる嬉しさを分かち合った。

壁内初の軍楽隊が誕生した瞬間だった。

521 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:07:03 ID:.R5NlSlU

―訓練終了後 第三音楽室

トーマス「いやー、終わった終わった。」

ナック「これでしばらくはのんびりできるぜ。」

サシャ「何言ってるんですか。のんびりしている暇はないですよ。」

サムエル「そうなのか?」

サシャ「そうです。今度はステージの上で披露するんです。まだ決まってないですけど。」

ミリウス「マジかよ。アルミンの野望は底知れねぇな。」

ナック「じゃ決まったら教えてくれ。その時は練習に参加するから。俺はしばらく休む。」

ミーナ「駄目だよ。勝手に休んじゃ。せっかくファイフ隊の息が揃ってきたんだから。」

トーマス「まあまあ。連日の猛特訓でみんな疲れてるんだ。休息も必要だよ。」

522 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:07:38 ID:.R5NlSlU

フランツ「だけど、教官に認められて良かったじゃないか。一歩前進だ。」

ハンナ「うん。みんな頑張ったもんね。特にフランツのドラム音は私の心に響いたよ。」

フランツ「ハンナの奏でるファイフも僕には一際輝いて聴こえたよ。」

ハンナ「やだ、フランツったら。」///

サムエル「音揃えてんだから、どれが誰の音とか分からないだろうが。」

コニー「馬鹿夫婦は放っとこうぜ。でも、みんな同じメロディーを吹かなくてもいいかもな。」

ミリウス「どういうことだ?」

コニー「うーんと何て言えばいいのかな、ファイフ隊も分かれて別々の音を出すっていうか・・・。」

ミーナ「メロディーパートを分けてハーモニーにしたいんだね。」

コニー「そうだ。よく分からんが多分それ。」

523 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:08:13 ID:.R5NlSlU

ナック「面倒なこと言い出すなよ。今のままでいいじゃねぇか。」

サシャ「ナックは消極的ですね。軍楽隊、嫌になりましたか?」

ナック「そうじゃねぇけど。なんつーか、そこまで頑張る必要があるのかなって。

    俺は暇つぶしで軍楽隊に参加しただけで、音楽に対して元々興味も熱意もないから。」

トーマス「冷めてるなぁ。みんなから拍手もらって何とも思わなかったのか?」

ナック「そりゃ褒められたら嬉しいよ。だが努力した割りに、得られた達成感は少なかった。」

ミリウス「まあ、俺ら冷やかし程度で入隊したからな。お前らと温度差があるのは確かだ。」

サシャ「そんな・・・。みんな楽しんでくれてると思ってました・・・。」

ナック「サシャは、はしゃぎ過ぎなんだよ。周りを見ずに突っ走りやがって。」

サシャ「ごめんなさい・・・。」

サムエル「お前そんな言い方はないだろう。サシャは一生懸命やってるだろ。

     引っ張ってくれる奴がいないと、俺らなんかまとまんねぇよ。」

ナック「あれー、随分とサシャを庇うんだな。」

サムエル「お前の言い草が気に食わないだけだ。」

524 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:09:30 ID:.R5NlSlU

ミリウス「俺は何のために軍楽隊やってるのか分からなくなってきた。」

コニー「何のためって、俺は憲兵団に入るためだが。」

ミリウス「コニーは憲兵団狙える位置にいるからな。だが俺たちはどう転んでも10位以内は無理だ。」

ナック「夢見すぎなんだよ、アルミンは。優秀な奴は他人も自分と同じようにできると勘違いするからな。

    あいにく俺は出来の悪いダメ人間なんでな。アルミンの期待する駒にはなれん。」

ミーナ「駒だなんて・・・。アルミンはそんなふうに私たちのこと思ってないよ。」

ナック「そりゃ、ミーナはアルミンたち成績上位者と仲良いからな。

    ちょっと前までは、おバカ女たちとつるんでたのに。

    劣等生のお前がどういう手を使って取り入ったのかは知らんがな。」

ミーナ「!?・・・・ひどいよ・・・そんなふうに私のこと見てたんだ・・・」ジワッ

トーマス「ナック、いい加減にしろよ!軍楽隊に不満があるならはっきり言えよ!

     ミーナに八つ当たりするな!」

ナック「言っていいのかよ。お前らの友達ごっこを壊さねぇように今まで我慢してきてやったのに!」

フランツ「まぁまぁ。二人とも落ち着いて。ナックは疲れてイライラしてるだけだよ。」

525 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:10:12 ID:.R5NlSlU

ハンナ「喧嘩はやめてよ。今日はおめでたい日なんだから。仲良くしようよ。」

ナック「仲良く?冗談じゃねぇ。何でもかんでもアルミンのやつ勝手に決めやがって。

    ステージで演奏?聞いてねぇっての。」

ミリウス「少しは俺らの考えも聞いてほしいよな。偉そうに指図して何様だよ。」

コニー「あーーーー!!!もう、面倒くせぇ!やる気のない奴は辞めちまえ!」

サシャ「!?コニー、何を言ってるんですか。そんなのダメです。」

コニー「いいんだよ。軍楽隊に入るのも辞めるのも本人の自由だろ。

    楽しくないんだったら辞めればいい。」

ナック「ああ。そうさせてもらう。」ガタッ

ミリウス「俺も・・・・。」ガタッ

ミーナ「ちょっと二人とも待ってよ。」

526 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:10:49 ID:.R5NlSlU

ガラッ

アルミン「遅くなってごめん。ダズにお礼言いたくて探してたらこんな時間になっちゃった。」

ナック「・・・・・」スタスタスタ

ミリウス「・・・・・」スタスタスタ

アルミン「ねえ、二人ともどうしたの?どこ行くんだよ。」

コニー「放っとけ。」

アルミン「放っとけって・・・・何かあったの?」

フランツ「あの二人ちょっと調子悪いみたいでさ。今日は帰るって。」アセアセ

ハンナ「そうそう。明日になったらきっと元気になってるよ。」アセアセ

トーマス「お前ら、ごまかしてもしょうがないだろ。」

サムエル「・・・あの二人、軍楽隊を抜けるって。」

アルミン「そんな!?急になんで?」

サシャ「・・・・私がいけないんです。みんなのことちゃんと見てなかったから。ごめんなさい。」

サムエル「サシャはちっとも悪くないだろ。あいつらが勝手すぎるんだ。」

アルミン「本当に何があったんだ?詳しく話してくれないか。」

527 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:11:27 ID:.R5NlSlU

―第二音楽室

マルコ「そういうわけでさ、男声合唱団としてステージで歌ってもらいたいんだ。」

ライナー「俺は構わんが・・・・、お前らはどうだ。やる気あるのか?」

「アニキと一緒ならどこででも歌うぜ。」

「でっかい花火打ち上げてやるぜ。」

「伝説に残るステージにしてやる。」

ライナー「だそうだ。出演、受けてやるよ。」

マルコ「まだ日程は決まってないんだけど・・・。

    というか開催できるかどうかも不確定で申し訳ないんだけどさ。

    合唱の練習だけは始めてもらっていいかな?準備は早いに越したことはないから。」

ライナー「まあ、いつもここで歌っているからな。問題ないだろう。」

マルコ「ありがとう。助かるよ。」

ライナー「しかし男声合唱団って何か堅いな。

     ステージデビューするからには、それっぽいチーム名が欲しいところだ。」

マルコ「ははっ、それはライナーたちで自由に決めていいよ。

528 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:12:16 ID:.R5NlSlU

ライナー「お前ら、何か良い呼び名を思いつかないか?」

「ライナー合唱団とか?」

「ライナー・ブラウンと愉快な仲間達ってどうよ。」

「ライナー部隊?ブラウン一家?」

ライナー「おいおい、俺の名前を入れる必要はないぞ。こう、男らしい感じの何か・・・。

     そうだ。お前ら、俺たちは何だ?」

「俺たちは・・・・」

「そうだった、いつもアニキが言っている。」

「俺たちは戦士だ。」

ライナー「正解だ。戦士の合唱団だ。・・・マルコ、これをカッコ良く言い換えてくれ。」

マルコ「えっ?無茶ぶりするなぁ・・・。うーん・・・・。」

ライナー「どうだ?男のロマンが溢れた感じで頼む。」

529 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:14:53 ID:.R5NlSlU

マルコ「・・・メンネルコール・デス・クリーガーズ(Mannerchor des Kriegers)とか・・・。」

「やべっ、超かっこいい。」

「意味はまったく分かんねぇけど、何か強そうだ。」

ライナー「どういう意味だそれ?」

マルコ「そのまんま。メンネルコールが男声合唱団のことで、クリーガーズが戦士たち。

    壁外に昔あったドイツって国の言葉。」

ライナー「前々からマルコは頭の良い奴だと思ってたが、壁外の言葉まで話せるのか。」

マルコ「話せないよ。壁外から伝わってきた歌曲ってドイツ語で書かれたものが結構あるんだ。

    だから、たまたま知ってただけ。」

530 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:15:38 ID:.R5NlSlU

ライナー「そうか。・・・‘メンネルコール・デス・クリーガーズ’、ちょっと長いな。

     よし。お前ら、俺たちは今日から‘デス・クリーガーズ’だ。文句のある奴いるか?」

「あるわけないだろ。」

「アニキの意見に従うだけだぜ。」

「俺たち、デス・クリーガーズ!!」

ライナー「そうだ。略して‘デスクリ’。マルコ、協力感謝する。」

マルコ「まぁ、ライナー達が気に入ったんならいいけどさ・・・。」

ライナー「あとはステージで歌う曲決めないとな。俺たちの十八番は『俺の尻を舐めろ』だが。」

マルコ「うん、知ってる。でも、それ以外にしような。」

531 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:16:22 ID:.R5NlSlU

―女子宿舎

クリスタ「アニ、お願い。リードダンサー引き受けて。」

アニ「だからさあ、何回頼まれても私はやらないから。」

クリスタ「アニしかいないの。一生のお願い。この通り。」ペコリ

アニ「いい加減諦めてよ。頭下げても無駄だから。」

クリスタ「だって運動神経の良い美人ってアニしかいないんだもん。」

アニ「ミカサに頼めば?」

ミカサ「・・・私はリズム感がないので、ダンスには向かない。」

アニ「サシャは?」

クリスタ「サシャは軍楽隊で手一杯なの。」

アニ「じゃあ、クリスタが自分でやればいいでしょ。」

クリスタ「私は伴奏とか他に役目があって・・・。

     自分ができないことを人に頼むのは心苦しいんだけど、アニだけが頼りなの。」

532 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:17:09 ID:.R5NlSlU

アニ「そもそも何でダンスなんかやるのさ?得意な奴でもいるの?」

クリスタ「ううん。みんな素人だよ。提案したマルコの意図は詳しく知らないけど・・・。

     私ね、訓練兵になって周りを見て思ったんだ。

     ここにいるのは、他人を追い落としてでも憲兵団入りを目指すギスギスした人たちと、

     無気力で将来を悲観した人たちばかりだなって。

     もちろん中には立派な志のある人たちもいるけど・・・、そういう人は僅かだよね。

     何かの縁でせっかく同期になったんだから、もっとみんな仲良くなれたらいいなって。

     一緒に何かを成し遂げたらきっと楽しいだろうなって。」

アニ「ご立派だね。あいにくと私は人生を悲観してないし、他人と馴れ合う気もないから。」

クリスタ「アニはそれでいいの?私アニが笑っているとこ見たことないよ。」

アニ「大きなお世話。無愛想なのは生まれつきだよ。」



534 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:17:41 ID:.R5NlSlU

クリスタ「ねぇ知ってる?人間は笑うことを神様から許された唯一の動物なんだって。

     こんな世の中だけど、私は人間らしく笑っていたいんだ。」

アニ「・・・・人間らしく、ね。」

ミカサ「いい加減引き受けてあげたら。気持ちの問題だけで、できない理由は無いんでしょう?」

アニ「・・・・はぁ、アンタたち面倒くさい。ちょっと散歩に行ってくる。」

ガチャ バタン

クリスタ「逃げられちゃった。」

ユミル「だから言ったろ。アニは絶対に引き受けないって。」

クリスタ「でも、私も諦めないもん。」

ユミル「クリスタ・・・・、お前頑固だな・・・・。」

535 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:18:51 ID:.R5NlSlU

―翌朝 食堂

ミカサ「アルミン、どこか調子が悪いの?顔色が優れない。」

アルミン「・・・・何でもない。大丈夫だよ。」

エレン「昨晩、宿舎戻ってきてからずっとこの調子なんだよ。コニーも珍しく黙りこんでるし。

    軍楽隊で何かあったのか?」

ミカサ「そういえばサシャたちも元気がなかった。問題があるなら話して、アルミン。」

アルミン「心配してくれありがとう。でも、これは僕の問題だから・・・。」ガタッ

ミカサ「待って、アルミン。」

エレン「ミカサ、そっとしといてやろうぜ。」

ミカサ「でも・・・。」

エレン「今は話したくないんだろ。見守ってやろうぜ。」

536 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:19:26 ID:.R5NlSlU

―食堂掲示板前

マルコ「ダンサー募集のポスター貼ったよ。」

クリスタ「たくさん集まるといいな。それよりマルコはベルトルトに声かけた?」

マルコ「いや、まだだけど。クリスタは?」

クリスタ「アニにはやっぱり断られたよ。でも、まだまだアタックするんだ。」

マルコ「あんまりしつこいと嫌われるよ。」

クリスタ「うーーー、嫌われたくはないな。でも、もう一押しな気もするんだ。

     なんだかんだ言ってアニって優しいじゃない?」

マルコ「そうだね。でもその優しさにつけこんで、無理強いしちゃ駄目だよ。」

クリスタ「うん。気をつけるよ。」

537 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:20:11 ID:.R5NlSlU

―対人格闘訓練中

ユミル「なあ、アニ。今日は私と組まないか?」

アニ「やだ。」

ユミル「何でだよ。」

アニ「だって今まで一度も組んだことないじゃないか。何か裏があるに決まってる。」

ユミル「裏ねぇ、そりゃあるよ。じゃなきゃ、わざわざアニなんか誘わねぇし。」

アニ「一応聞いてあげる。どんな裏?」

ユミル「私が勝ったらリードダンサーやれ。アニが勝ったらクリスタを黙らせてやるよ。」

アニ「私にメリットがほとんどないじゃないか。」

ユミル「アニは強いだろ。ハンデをくれてやったと思え。」

アニ「はっ、馬鹿らしい。そんな勝負乗るわけないでしょ。」スタスタスタ・・・

538 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:21:01 ID:.R5NlSlU

ユミル「逃げんなよ。私はクリスタに早くお前のこと諦めさせたいんだよ。」

アニ「・・・どういうこと?」

ユミル「あいつ頑固だからな。ケジメをつけてやらないと、いつまでもうるさいぞ。」

アニ「あんたはクリスタが私に纏わりついているのが気に入らないんだね。」

ユミル「そうだ。だからアニの得意な分野で敢えて勝負を挑んでやってんだ。」

アニ「・・・しょうがないね。受けてやるよ。」

ユミル「さすが、アニ。じゃ場所変えようか。教官の目の届きにくいところへ。」スタスタスタ

アニ「どこでもいいけど。どうせ一瞬で終わるから。」スタスタスタ

ユミル「・・・この辺りだな。人が多くて目立ちにくい。」

アニ「ルールは?」

ユミル「何でもあり。で、降参するか再起不能になった方が負け。」

アニ「くたばる前に降参してね。」

539 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:21:42 ID:.R5NlSlU

ユミル「はいはい。・・・・じゃ、始めようか。」

ユミルが構えた瞬間、アニは左くるぶし目掛けて足払いにも似た蹴りを放つ。

ユミル(アニの得意技。計算通り・・・・)

ユミルはバックステップして蹴りをかわした。

アニから視線を離さないようさらに数歩下がり、

自分の後ろで棒術の訓練をしていた兵士から、使用していた棒を奪う。

ユミル「ちょっと借りるよ。」

「お、おい」

アニ「汚いね。」

ユミル「何でもありって言っただろ。」

アニ「わざわざここまで連れてきたのもそれが目的?」

ユミル「ああ。まともにやっても勝てる気がしないからな。」

540 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:22:28 ID:.R5NlSlU

アニはユミルを見据えつつ周囲を窺った。棒を使用している兵士は近くにはもういなかった。

棒の長さは約1m。ただでさえリーチ差があるのに、棒を持たれてはアニが圧倒的に不利だった。

ユミル(突きは間違いなく捕られるな。かといって打ちや払いが当たる間合いには入ってこないしな。)

アニ(棒の間合いにさえ入らなければ問題ない。けどこれじゃ膠着状態から抜け出せない。)

睨みあったままの二人の不穏な空気に周囲が気付き、ざわつき始めた。

ユミル(ちっ、騒がれる前に終わらせたかったが・・・。しょうがねぇ。)

アニ(・・・・来るっ。)

ユミルは大きく一歩間合いを詰めた。

踏み出したユミルの右足が地面に着地するのと同時に狙いを定めたアニのローキックがはいった。

アニ(くっ・・・・・)

しかし、アニが蹴っていたのはユミルの右足ではなく、地面につきたてられた棒だった。

ユミルは棒を軸にし、そのままアニ目掛けて後ろ回し蹴りを放った。

とっさにに両腕で頭をガードするアニ。

しかし片足立ちだったため、2mほど吹っ飛び地面に横倒しとなった。

541 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:23:05 ID:.R5NlSlU

ユミル「もらった!!」

頭上高く掲げた棒を、アニに向かって振り下ろした。

ガキッッッ!!!!!

ライナー「~~~~~~~ッッ!!」

ユミル「!?ライナー、何で割り込んでくるんだよ!!」

ユミルの渾身の一撃を右前腕でモロに受けとめ、ライナーは悶絶しのた打ち回った。

アニの方を見ると、クリスタが守るようにアニに覆い被さっていた。

アニを庇いに飛び出したクリスタを守ろうとライナーも出てきたのだろう。

ユミル「クリスタ!?お前そんなところにいちゃ危ないだろ。」

クリスタ「ユミルひどいよ。自分だけ武器もって一方的に・・・。こんなの訓練じゃないよ。」

ユミル「いや、訓練じゃないんだけどさ・・・。」

クリスタ「もう勝負はついてたじゃない!あんなのただの暴力だよ!ユミルの馬鹿!!」

ユミル「クリスタ・・・。」ショボン

542 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:23:42 ID:.R5NlSlU

クリスタ「アニ、大丈夫?」

アニ「ああ、私はね。それよりライナー心配してやってよ。」ヨイショ

ライナー「骨は折れてなさそうだ・・・俺も大丈夫だ。」

クリスタ「ちゃんと医務室行って診てもらお。私も一緒に行くから。」

ライナー「あ、ああ。」

クリスタ「庇ってくれてありがとう。ライナーは優しいね。」ニコッ

ライナー「いや、当然のことをしたまでだ・・・///」(結婚しよ)



次回 クリスタ「ピアノの先生はじめました」 後編