クリスタ「ピアノの先生はじめました」 前編

543 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:24:19 ID:.R5NlSlU

―自由時間 第三音楽室

ミーナ「やっぱり来ないね。」

トーマス「まぁ、あんなふうに出て行ったんだ。顔出すのは気恥ずかしいだろう。」

ハンナ「本当に辞めたのかな・・・。せっかく上手になったのに・・・。」

フランツ「悲しまないでくれ、ハンナ。僕が説得してみせるから。」

ハンナ「フランツ・・・頼もしいわ。」///

サムエル「説得ねぇ。今日あいつらと話してみたけどさ、戻る気は無いってはっきり言われたよ。」

コニー「もういいじゃねぇか。新しい団員募集しようぜ。」

アルミン「それは駄目だ!!」

コニー「何でだよ。」

アルミン「新しい団員を迎えたら、ナックとミリウスの戻ってくる場所が無くなってしまう。」

コニー「そんな場所必要ねぇじゃん。あいつら戻ってくる気がねぇんだから。」


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544 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:24:58 ID:.R5NlSlU

トーマス「アルミンは二人に戻ってもらいたいんだな?」

アルミン「うん。僕のせいだから。僕が辞めたら二人は戻って来るかな・・・。」

コニー「お前、何言ってんだよ!!冗談じゃねぇぞ!!」

アルミン「うん。分かってる。みんなを巻き込んでおいて逃げるわけにはいかないよね。

     最後の1人になっても僕は軍楽隊を続ける責任がある。

     ただ・・・、僕はつくづく指揮官向きじゃないことを痛感したよ。」

ミーナ「アルミン・・・。」

アルミン「僕は一度目標を持ったら周りが見えないくらい集中しちゃうから。

     軍楽隊を成功させるための計画や手段ばかりに気を取られて、

     一番大切な仲間のことを考える余裕がなかった。」

サシャ「アルミンだけのせいじゃないですよ。私だって・・・。」

アルミン「僕は自分が指揮官向きじゃないって分かってたから逃げたんだ。

     ドラムメジャーの役、サシャに押し付けて・・・。

     サシャだって指揮官向きじゃないのにね・・・。ごめん。」

サシャ「謝らないで下さい。私、ドラムメジャーに任命されて嬉しかったんですから。」

545 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:25:35 ID:.R5NlSlU

サムエル「結局、気の回るまとめ役が不在だったってのが根本的な問題なんだな。」

トーマス「でもさ、不満の出ない組織なんてないよ。何にでもケチつける人間はいるよ。」

アルミン「そうだとしても、みんなの意見に耳を傾けるべきだったんだ。

     僕が軍楽隊を作ったのは、たくさんの人に音楽に触れてもらいたかったからだ。

     辛い訓練生活を少しでも楽しくできればって、それだけなんだ。

     だから、嫌な思いをさせたまま軍楽隊を辞めさせるわけにはいかないよ。」

コニー「もう!辛気臭ぇな。ごちゃごちゃ難しいこと話やがって。俺をのけ者にするな。」

ミーナ「うん。ここで私たちが暗くなっても仕方がないよ。

    二人が戻ってきてくれるのを信じて待とうよ、ね。」

サシャ「・・・そうですね。じゃあいつも通り練習を始めましょう。」

546 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:26:22 ID:.R5NlSlU

―演習場の外れ

アニ(夜の散歩は気持ちいいね。

   最近は出歩いてるやつも少ないし、そろそろ見回りやめてもいいかな。)

♪~~♪♪~~♪~~

アニ(何の音だろう・・・。ファイフ?でも、もっと低くこもった音・・・。)

音のする方へ歩みを進めると、ユミルが積み上げられた資材の上に座っていた。

アニ「あんた、こんな夜中にそんなところで何してんのさ。」

ユミル「そりゃお互い様だろ。」

アニ「それ何?」

ユミル「これ?クリスタにもらったオカリナ。

アニに謝るまで部屋に戻ってくるなって追い出されてさ。暇つぶしのお供に持ってきた。」

アニ「じゃ、私を待ってたんだ。」

ユミル「そ。アニは夜になるといっつも徘徊してるから、外にいれば必ず会えると思ってさ。」

アニ「徘徊って・・・、ただの散歩なんだけど。」



548 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:27:13 ID:.R5NlSlU

ユミル「散歩ねぇ。まぁ、宿舎に居たくない気持ちは分かるぜ。

    頭の悪い女どもがやたらハイテンションできゃぴきゃぴ騒いでるからな。

    次から次にくだらないことしゃべり続けて、何が面白いんだか。」

アニ「そういう子が普通だろ。一般的に見たらアンタや私の方がおかしいんだよ。」

ユミル「意外と寛容だな。じゃ、その広い心で私のことも許してくれ。スマン。」

アニ「何に対して謝ってるの?」

ユミル「知らん。ただアニに謝らないと野宿することになる。」

アニ「クリスタに説明すれば?何を賭けてたか。」

ユミル「はっ、そんなん格好つかねぇだろ。いいんだよ。悪者扱いは慣れてるから。」

アニ「今日の勝負だけど・・・」

ユミル「あれは無効だ。邪魔が入ったからな。」

549 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:28:11 ID:.R5NlSlU

アニ「・・・あんた本気で棒を振り下ろす気だった?」

ユミル「さあな。振り下ろしたところでアニは避けてただろ?」

アニ「どうだろうね。・・・でも楽しかったよ、あんたとの勝負。」

ユミル「それはどうも。・・・そうそう、この紙にサインしてくんない?」

アニ「なんで?」

ユミル「ちゃんとアニに謝罪した証明もらってこいってさ。」

アニ「ぷっ、あはははは。あんたどこまでクリスタの尻に敷かれてんだよ。」

ユミル「・・・・お前、ちゃんと笑えんじゃん。」

アニ「!?う、うるさいな。ほらサインしてやるからその紙よこしな。」

ユミル「ああ。頼むわ。」

アニ 「・・・・・」カキカキカキ

アニ「はい、これでいい?」

ユミル「サンキュ。」

アニ「じゃ、私もう行くから。

   ・・・・あとクリスタに伝えてくれない?リードダンサー引き受けてもいいって。」

550 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:29:13 ID:.R5NlSlU

―翌日 食堂

マルコ「やっぱり駄目?」

ベルトルト「うん。ごめん。人前で踊るとか僕には恥ずかしくてできないよ。」

マルコ「気にしないで。人には向き不向きがあるから。」

ジャン「しょうがねぇなぁ。リードダンサーっての、俺が引き受けてやるよ。」

マルコ「いや、ジャンには頼んでないし。」

ジャン「何だよ。運動の得意なイケメンを探してんだろ?俺の他に該当する奴いるか?」

マルコ「ふぅー、結局こうなるんだよね。いいよ、ジャンにお願いするよ。」

ジャン「任せとけ。」

クリスタ「みんなおはよう。マルコ、リードダンサー決まった?」

マルコ「おはようクリスタ。たった今ジャンに決まったところだよ。」

クリスタ「そっか。女子のリードダンサーはアニで決定だよ。」

マルコ「本当?よく引き受けてくれたね。」

クリスタ「うん。なぜか昨晩あっさりと了解してくれた。」

ジャン「じゃあ俺はアニと踊るのか・・・・。ボロボロにされそうだな。」

551 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:29:51 ID:.R5NlSlU

ベルトルト「・・・・ごめん。やっぱり僕がリードダンサーやりたい。今更で悪いんだけど。」

マルコ「えっ?」

ジャン「もう遅ぇよ。俺に決定したんだから。」

ベルトルト「うん。申し訳ないと思ってる。でも譲ってくれ。」

ジャン「何だよ。あんなに無理だっつっといて。」

ベルトルト「なんだか無理じゃない気がしてきたんだよ。なんでかなー。あははは・・・」

ジャン「・・・・まっ、いいぜ。相手がミカサだったら死んでも譲らんがアニだもんな。

    自分から怪我しに行くことはねぇか。」

ベルトルト「ありがとう。ジャン。」

ジャン「そのかわり、後でゆっくり話を聞かせてもらうからな。」ニヤリ

ベルトルト「ぐっ・・・・」

クリスタ「やった。絶対引き受けないと思ってた二人が揃ったね。」

マルコ「これならお婆さんも納得してくれそうだ。あとは他のダンサーが集まるのを待つだけだね。」

552 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:30:35 ID:.R5NlSlU

―第一音楽室

クリスタ「エレンにはコンサートの時、ソロでピアノ演奏してもらいたいんだ。」

エレン「それなんだけどさ・・・。ミカサってステージに立てるのか?」

クリスタ「えっ?」

エレン「軍楽隊、ダンス、男だらけの合唱団、みんなどこかに関わってるだろ?

    でも、ミカサはどこにも属してない。リズム音痴だからって遠くから見てるだけだ。

    俺達ばっかり楽しんでミカサが置いてけぼりになってる。何とかしてやりたいんだ。」

クリスタ「うふふ。エレン、ミカサに優しくなったね。」

エレン「そうか?変わったつもりはないけど。」

クリスタ「変わったよ。・・・・でもミカサか。私も気になってたんだ。

     彼女の得意なことで、ステージで披露できそうなものを考えないとね・・・。」

553 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:31:09 ID:.R5NlSlU

エレン「ミカサの他にもやること決まってない奴っているのか?」

クリスタ「うーんと、ジャンかな。」

エレン「ユミルは?」

クリスタ「ユミルはヴァイオリン担当予定。」

エレン「マルコは?」

クリスタ「マルコは今回は裏方に徹するんだって。

     全体を把握している人間がステージ裏には絶対に必要だからって。」

エレン「そっか。・・・ミカサとジャンの二人でできることって何だ?」

クリスタ「エレンは、ミカサとジャンが組んでもいいの?ジャンはミカサが好きなんだよ?」

エレン「いいのって、なんか悪いのか?」

クリスタ(・・・エレンとミカサの関係ってよくわかんない。)

554 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:32:07 ID:.R5NlSlU

―数日後 教官室

キース「アルレルト訓練兵、ボット訓練兵。

    貴様ら発案のチャリティーコンサートの実施が中央にて承認された。

    三ヵ月後、ウォールシーナ南端エルミハ区、王立公園内、野外ステージにて開催しろとの通達だ。」

アルミン「内地での開催でありますか?」

キース「ウォールローゼ内よりも内地のほうが圧倒的に富裕層が多いからな。

    実施するなら寄付金が集まりやすいところで、という上層部の配慮だ。」

マルコ「しかし、エルミハ区はこの駐屯地から少々離れています。

    開催にあたっての準備が困難かと思われます。」

キース「エルミハ区の憲兵団支部が全面的に支援してくれるそうだ。

    ただし、集めた寄付金の7割を憲兵団に渡すことが条件だ。」

アルミン「そんな。半分以上も・・・・。」

555 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:32:49 ID:.R5NlSlU

キース「アルレルト訓練兵。何か不満があるのか?今なら開催自体を白紙に戻すことも可能だが。」

マルコ「いえ、問題ありません。その条件で開催させて頂きます。」

アルミン「マルコ・・・。」

キース「では、こちらも開催の方向で調整していく。

    貴様らは観衆の前で恥をかかぬよう、しっかりと芸に磨きをかけろ。

    貴様らの評判が、兵団の評価に直結すると思え。」

アル・マル「はっ!!」

キース「それと軍楽隊に仕事をやろう。

    一週間後、トロスト区で新たに設置した壁上固定砲の竣工式が執り行われる。

    そこで演奏してほしいと、駐屯兵団からの依頼だ。

    貴様らの初仕事だ。しっかりやってこい。」

アルミン「・・・・はっ!!」

556 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:33:30 ID:.R5NlSlU

二人は教官室を後にした。

アルミン「7割も持っていかれるなんて・・・。」

マルコ「そのかわり堂々と準備は丸投げできる。

    会場設営って人手がたくさんいるし、結構な肉体労働だからね。

    それに、僕らだけでは舞台設備がまともに用意できないよ。

    どんな公演でも開催しようとすると、それなりに経費がかかるんだ。

    残念だけど僕らには資金がない。出演するだけで3割ももらえるんだ。好条件だよ。」

アルミン「マルコは前向きだね。・・・僕も前を見るしかないな。」

マルコ「ああ、軍楽隊の初仕事だ。でもアルミン、あまり嬉しそうじゃないね。どうかした?」

アルミン「・・・隊員が二人辞めたんだ。

     僕は二人がいつでも戻ってこれるように、このことは隊内部だけの秘密にしてた。

     でも、もう隠し切れないし、二人のことを待っている時間は無くなった。」

マルコ「一週間後か・・・。今から隊列の編成やり直すのは大変だ。」

アルミン「うん。でもやるしかないんだ。僕は逃げないって決めたんだ。」

557 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:34:16 ID:.R5NlSlU

―第三音楽室

ミーナ「今日もやっぱり来ないね。」

トーマス「もう一週間以上か・・・。本当に戻ってくる気ないんだな。」

コニー「もういい加減あきらめろよ。」

サムエル「まぁ、そう言うなって。あいつら練習来ないで何やってんだろうな。」

フランツ「宿舎にチェスセット持ち込んで、二人でずっと指してるよ。」

ハンナ「フランツ、ちゃんと説得してるの?」

フランツ「もちろんさ。‘あの時は思わず頭に血が上って悪かったな'って言ってたよ。」

サシャ「じゃあ戻ってくればいいのに。」

フランツ「あいつら素直じゃないからな。何かきっかけを作ってやらないと戻り辛いんだろ。」

トーマス「きっかけねぇ・・・。」

558 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:35:10 ID:.R5NlSlU

ガラッ

アルミン「お待たせ。みんな、僕たちの初仕事が決定したよ。」

コニー「ナニっ?」

ミーナ「仕事って?」

アルミン「駐屯兵団からの依頼でさ。トロスト区の壁上固定砲の竣工式で演奏して欲しいんだって。」

サシャ「いつですか?」

アルミン「一週間後。」

サムエル「えらい急だな。」

ハンナ「どうするの?二人欠けたままだよ。」

ミーナ「今から新しい隊員加えても絶対間に合わないよ。」

アルミン「そうだ。だから今からドリル・フォーメーションを変更する。

     ここにいる14人でやるしかないんだ。」

559 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:35:57 ID:.R5NlSlU

フランツ「いいのか?あいつらの復帰に一番こだわっていたのはアルミンだろ?」

アルミン「僕たちは正式な訓練兵団軍楽隊だ。団に属している以上、上官からの命令は絶対だ。

     どういう状況であれ、任務の遂行が最優先だ。」

サシャ「・・・アルミン、自分で気付いてますか?すごく辛そうな顔してますよ。

    そんな顔じゃ、楽しい演奏はできませんよ。」

アルミン「・・・サシャも人のこと言えないよ。」

サシャ「・・・・・」グスッ

560 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:36:30 ID:.R5NlSlU

サムエル「しょうがねぇな。俺が今からナックとミリウスの野郎、連れてきてやるよ。」

トーマス「何か策があるのか?」

サムエル「ああ。だからお前ら、フォーメーションの変更とかせずに、いつも通り練習しててくれ。」

アルミン「サムエル・・・。」

サムエル「俺たち仲間だろ。信じろ。」

トーマス「それじゃ、俺もついて行こう。」

サムエル「あの二人が戻ってきても、何事も無かったかのように振舞ってやってくれ。

     じゃあ、行って来る。」

561 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:37:20 ID:.R5NlSlU

―第二音楽室

マルコ「右腕の打撲痕なかなか引かないね。まだ痛む?」

ライナー「触るとまだ痛むがな。だが、この痕を見るたびにクリスタは優しく声をかけてくる。

     痕が消えかけたら・・・・マルコ、同じ場所を棒でしばいてくれないか。」

マルコ「嫌だよ。馬鹿言ってないで早く治せよ。骨に異常がなくてラッキーだったんだから。」

ライナー「そうだな。やっと訓練にも支障が出なくなってきたしな。それより今日は何をするんだ?」

マルコ「今日はベートヴェンの『交響曲第9番』の第4楽章で歌われる『歓喜の歌』を練習するよ。」

ライナー「それもステージで俺たちが歌うのか?」

マルコ「これは出演者全員で最後に歌ってもらう予定。

    デスクリ以外は練習する時間ないから主旋律を歌ってもらって・・・。

    デスクリは主旋律以外のパートを担当してもらいたい。」

562 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:38:04 ID:.R5NlSlU

ライナー「いいぜ。この前、声の高さでパート分けしたばかりだしな。」

マルコ「うん。でもこれは混声4部合唱だから・・・・。第一テノールの人は?」

「なんだ?俺たちだけど。」

マルコ「ファルセット・・・えーと、裏声で歌える?」

「裏声って・・・こうか?  アァァァァァ♪」

マルコ「そうそう。第一テノールには、本来女性が歌うアルトパートを歌って欲しいんだ。」

「ずっと裏声か?きついな・・・。」

マルコ「ずっとじゃなくていいよ。地声ででない音程のとこだけで。」

「それなら大丈夫だ。」

ライナー「俺も裏声には自信があるぞ。」

マルコ「ライナーは裏声よりもっと重要な仕事がある。この曲、歌いだしはバリトンの独唱なんだ。」

ライナー「独唱って、俺のソロか?」

マルコ「ああ。ライナーにしかできない役目だよ。」

ライナー「グループでデビューして、いきなりソロ活動か・・・。ファンに叩かれそうだな。」

563 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:38:42 ID:.R5NlSlU

ガラッ

トーマス「お邪魔しまーす。」

サムエル「練習中、失礼する。」

マルコ「トーマスとサムエル。どうしたんだ?軍楽隊も練習中だろ?」

ライナー「お前らデス・クリーガーズに鞍替えか?大歓迎だ。」

サムエル「違うって。」

トーマス「ライナー、ちょっとマルコ借りてもいいかな?」

ライナー「構わんが・・・・、ちゃんと返せよ。今は俺たちの講師だ。」

トーマス「分かってるよ。」

マルコ「何か急用?」

サムエル「軍楽隊の危機を救うためにどうしてもお前の力が必要なんだ。」

マルコ「・・・・脱退者の件かな。」

トーマス「知ってるなら話が早い。とにかく付いて来てくれ。」

サムエル「詳しくは歩きながら説明する。」

564 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:39:19 ID:.R5NlSlU

―男子宿舎

ミリウス「いい加減、チェス飽きたな・・・。」

ナック「ああ。」

ミリウス「・・・ヒマだなぁ。」

ナック「ああ。」

ミリウス「・・・こんなに時間って持て余すもんだっけ?」

ナック「ちょっと前まで馬鹿みたいに忙しかったからな・・・。感覚がおかしくなったんだろ。」

ミリウス「自由な時間が無くてストレス感じてたはずなのにな。

     自由になってみたものの、やりたいことが一つも無かった。」

ナック「まぁ、俺らって最初からこんな感じだったし。元に戻っただけだ。」

565 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:40:18 ID:.R5NlSlU

ガチャ

トーマス「よう、お前ら元気してるか?」

ナック「・・・・何だよ?説得しても戻る気ないって言ってあるよな。」

サムエル「説得なんてもうしない。今日はお前らとチェスで遊ぼうと思ってな。」

ミリウス「隊の練習は?」

トーマス「サボり。」

サムエル「練習に参加するのも欠席するのも自由だからな。休みたい時は休む。」

ナック「なんだ、説教かよ・・・。」

トーマス「違うって。本当にお前らとチェスで勝負しに来たんだ。

     お前らが勝ったら、一ヶ月間洗濯、掃除、水汲みなんかの雑用を全部代わりにやってやる。

     俺らが勝ったら、お前らは軍楽隊に戻る。どうだ?」

ミリウス「・・・それでマルコを連れてきてるのか。」

マルコ「はは・・・、よろしくね。」

566 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:41:00 ID:.R5NlSlU

サムエル「ああ、こっちはマルコが指す。」

ナック「ずりぃだろ。頭脳戦で勝てるわけがない。そんな勝負受けねぇよ。」

トーマス「駒落ち戦でもか?」

マルコ「えっ?」

トーマス「こっちはハンデとして二駒落としてやるよ。」

マルコ「ちょっと聞いてないよ?チェスで駒落ちなんてありえないから。絶対に勝てない。」

ナック「二駒も落としてくれるのか。随分馬鹿にされてんだな。いいぜ、受けてやるよ。」

マルコ「おいおいおいおい。勝手に決めるなよ。」

サムエル「大丈夫だ。マルコなら勝てる。」

マルコ「お前らチェスやったことあるのか?」

トーマス「いや、全然。でもなんとなくルールは知ってる。」

サムエル「俺もそんな感じだ。」

567 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:41:52 ID:.R5NlSlU

ナック「ほらマルコ、右手、左手どっちだ?」

マルコ「もう、どうなっても知らないからな・・・・・。右手で。」

ナック「・・・黒ポーンだ。じゃ、俺が先攻だな。」

ナックは白い駒をマルコは黒い駒を盤上に並べていく。

マルコ「で、どの駒を落とせばいいの?」

ナック「クイーンとビショップ。」

マルコ「ふざけんな。」

ナック「冗談。落としてくれるんなら何でもいいぜ。」

マルコ「じゃ、両端のポーンで。」

ナック「はじめるぜ・・・・」コトン

マルコ(チェスで勝って、軍楽隊にもどるきっかけを作ってやってほしいって話だったのに)コトン

ナック「・・・・」コトン

マルコ(・・・・負けないように尽くすしかないな。)コトン

568 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:42:46 ID:.R5NlSlU

トーマス「へぇー、チェスって16駒で戦うんだ。」

ミリウス「お前、そんなことも知らないで勝負しかけてきたのか。」

トーマス「いや、たったの16駒だぜ、16駒。」

サムエル「そのうち2駒も落とすんだもんな。これは大打撃だなー。」

ナック「・・・何が言いたいんだよ。」コトン

トーマス「ん?言葉通りだよ。14駒しか無いと大変だなぁって。」

マルコ(ポーン、ナイト、ビショップを進めてきたか。

    ・・・‘ルイ・ロペス'。序盤戦のがちがちの定石だな。さて、どうしよう・・・)コトン

サムエル「ナック、お前さ自分のこと‘駒'だって言ってただろ。」

ナック「ああ、言ったさ。俺だけじゃなくお前らも駒だがな。」コトン

サムエル「そうだ。俺たちは駒にすぎない。ただナックは大きな勘違いをしてる。」

マルコ(とりあえずビショップの動きをルークでピンしとこう・・・)コトン

ナック「勘違いって何だよ。」コトン

569 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:43:43 ID:.R5NlSlU

サムエル「お前はアルミンがプレイヤーだと思ってるだろ。」

ナック「ああ。俺たちは軍楽隊という盤上でアルミンに遊ばれている駒だ。」

マルコ(反対のビショップは完全にクィーン取りにきたな。ポーンが一歩も動かせない・・・)コトン

サムエル「そこが間違いなんだ。アルミンも駒の一つにすぎないんだよ。」

ナック「・・・・は?」コトン 

ミリウス「じゃあ、誰がプレイヤーなんだよ。」

マルコ(しかし・・・なぜ定石通りに動くんだ?こっちは両端のポーンが無いんだぞ・・・。)コトン

サムエル「プレイヤーはいないんだ。」

ミリウス「だったら、俺たちは誰に従ってたんだよ。」

トーマス「最初から誰も命令なんてしてないんだよ。俺たちは自分の意思で軍楽隊に入ったんだ。

     誰かに強制されたわけじゃない。」

サムエル「誰も動かしてくれない駒は、自分で考えて動くしかないだろ。

     前進するのも、立ち止まるのも、諦めて盤上から降りるのも、すべて自分の責任だ。」

570 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:44:30 ID:.R5NlSlU

ナック「・・・・・」コトン コトン

マルコ(・・・キャスリング。攻めてこないな。仕方ない、こっちから仕掛けるか。)コトン 

ミリウス「じゃあ、アルミンな何なんだよ。あいつが軍楽隊を作ったんだろ?」

ナック「・・・キングだろ。」コトン パシッ

サムエル「本人にそのつもりはないだろうけどな。俺たちが勝手にキングだと思ってる。」

マルコ(・・・ポーンを取られたか。クィーンががら空きなのは見え透いた罠だよな。

    ・・・でも、ナックは・・・・・賭けてみるか。)コトン パシッ

トーマス「でもな、哀れなキングだ。周りの駒が進まないから身動きがとれない。」

ナック「・・・・・」コトン パシッ

サムエル「うちのクィーンは自由奔放すぎるしな。」

トーマス「まっすぐ進むことしか知らないお馬鹿なルークはうるさいし。」

サムエル「優しすぎるビショップ夫婦は不満のある奴をなだめるのに精一杯だ。」

マルコ(チェックのチャンスを敢えて避けてナイトを取った。これで確信したよ。

    最初から勝つ気は無いんだ・・・。)コトン パシッ

571 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:45:29 ID:.R5NlSlU

ミリウス「じゃあ、サムエルとトーマスは何の駒なんだよ。」

トーマス「俺たち?もちろんナイトだよ。」

ナック「けっ、そんな柄かよ。」コトン パシッ

サムエル「ナイトが二人揃ってお迎えに上がってんだ。素直になれよ。」

マルコ(駒の取り合いになってるけど・・・。ま、いっか。考えるのが馬鹿らしくなってきた)コトン パシッ

ナック「やなこった。」コトン パシッ

ミリウス「クィーンが迎えにきたら考えたかもな。」

サムエル「何!?お前もクィーン狙いなのか?」

ミリウス「狙いってわけじゃないけど、普通に可愛いじゃん。」

マルコ(・・・なごやかな雰囲気だね。もうチェスで勝負する必要無いんじゃ・・・。)コトン パシッ

サムエル「だよな。可愛いよな。ちょっと天然なところがツボすぎる。」

ナック「やめとけ。お前じゃ釣り合わねぇよ、成績が。」コトン パシッ

マルコ(でも普通に勝っても二人のためにならないな・・・。うん、この手でいこう。)コトン パシッ

572 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:46:24 ID:.R5NlSlU

サムエル「そうなんだよ。お馬鹿そうなのに、めちゃくちゃ優秀なんだよ。」

ミリウス「そのギャップがいいんだろ?」

サムエル「よく分かってるな。ミリウスとは話が合いそうだ。」

ナック「トーマスは気になる女子いないのか?」コトン パシッ

トーマス「今のとこ、いないかな。」

サムエル「うそつけ。何かとミーナに絡んでるくせに。」

マルコ(へー、そうなんだ。)コトン パシッ

トーマス「それは、その、打ち合わせとかあるから話してるだけで・・・。」

ナック「お前はドラムでミーナはファイフだろ。打ち合わせることあんのかよ。」コトン パシッ

マルコ(よし、これでおしまい。)コトン

マルコ「ステイルメイト。引き分けだ。」

ナック「へっ?」

サムエル「引き分けって・・・。そんな勝負のつき方あるのか?」

573 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:47:11 ID:.R5NlSlU

マルコ「チェスの試合で引き分けは珍しくないよ。

    チェックされてない状態で有効な指し手がなくなると、引き分けになるんだ。」

ナック「ステイルメイトに持ち込むのは自分が不利な状況の時だろ。

    マルコの方が優勢だったのに、なんでわざわざ引き分けにすんだよ。」

マルコ「じゃあナックはどうしてわざわざ僕を優勢にしたのかな。」

ナック「ちっ・・・、お前、面倒くせぇな。」

マルコ「引き分けの場合どうするか決めてなかったよね。」

トーマス「そうだな。どうしようか。」

サムエル「よし、ナックとミリウスに任せる。お前ら軍楽隊に戻るのか?戻らないのか?」

ミリウス「そんなこと言われても、な・・・。」

ナック「・・・自分の意思で決めろってことか。」

サムエル「そうだ。強制的に連れ戻しても、お前らまた不満爆発させて同じこと繰り返しそうだからな。」

トーマス「お前らがどちらを選ぼうと自己責任において自由だ。」

574 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:48:01 ID:.R5NlSlU

ミリウス「・・・戻るよ。こんなふうに誰かに自分のこと望まれたことないから。」

ナック「・・・そうだな。誰からも期待されない生き方をしてきたもんな。

    だけど、俺たちのこと必要としてくれる仲間ができたんだ・・・。軍楽隊に俺も戻る。」

サムエル「ふぅー、肩の荷が下りたぜ。絶対にお前ら連れ戻すって偉そうな口叩いて出てきたからな。」

トーマス「あっ、そうだ。一週間後に初仕事だから。トロスト区で演奏するんだって。」

ナック「なっ!!そんな話聞いてねぇよ。」

トーマス「うん。アルミンを含め、みんな今日知った。」

サムエル「はははっ、しばらく練習で忙しいぞ。チェスなんかやってる暇無くなったな。」

ミリウス「さっきの駒の話だが、お前らがナイトなら俺たちは何だ?」

サムエル「あ?ポーンに決まってるだろう。」

ナック「ちっ、やっぱ捨て駒かよ。」

575 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:48:46 ID:.R5NlSlU

マルコ「でもプロモーション(昇格)できるのはポーンだけだ。

    生き方次第でナイトにもクィーンにもなれる。お前ら二度と盤上から落ちるなよ。」

ナック「・・・・マルコ、くせぇよ。」

マルコ「えっ?」

ミリウス「うん。今のセリフはかっこつけすぎだな。」

マルコ「格好つけた気はないんだけど・・・。」

トーマス「マルコは顔に似合わず時々キザなこと言うからな。」

サムエル「実は俺もたまにひいてる。」

マルコ「お前らまで・・・。もう頼まれても二度と手は貸さないからな。」

トーマス「ははっ、冗談だって。今回はありがとう。ホントに助かったよ。」

マルコ「・・・ま、僕がいなくても二人は戻っただろうけど。

    とにかく軍楽隊の初仕事だ。必ず成功させてくれよ。」

576 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:49:32 ID:.R5NlSlU

―第三音楽室

サシャ「サムエルたち遅いですね。」

コニー「本当に連れて来れんのかよ。」

アルミン「うん。僕は信じてるよ。みんな、ナックとミリウスが戻ってきても普通にしといてね。」

フランツ「了解。」

577 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:50:11 ID:.R5NlSlU

ガラッ

トーマス「遅くなってスマン。」

サムエル「俺らも練習に加わるぞ。」

ナック「・・・・。」

ミリウス「・・・・。」

ミーナ「ファイフ隊はこっち。今、パート分けしてたとこ。」(帰ってきた!!)

ハンナ「ナックとミリウスは今まで通りのメロディ吹いていいから。」(良かったぁ・・・)

ナック「あ、ああ。わかった。」

ミリウス「これが新しい楽譜か・・・。」

アルミン「僕がちょっと手を加えたんだ。主旋律より3度下の副旋律を加えたんだ。」

    (戻ってきてくれてありがとう・・・。)

コニー「・・・・・・」ウズウズ

サシャ「・・・・・・」ウズウズ


579 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:51:02 ID:.R5NlSlU

サムエル「俺はどっち吹くんだ?」

ミーナ「サムエルは下パート。一週間しか時間がないけど頑張ろうね。」

アルミン「やれるだけやってみよう。無理そうだったら元の譜面に戻せばいいだけだから。」

コニー「・・・・・・」ウズウズウズウズ

サシャ「・・・・・・」ウズウズウズウズ

フランツ「トーマス、ダブルストロークの練習しよう。」

トーマス「えー、俺苦手なんだよな・・・。」

フランツ「だから練習するんだろ。・・・・連れ戻してくれてありがとう。」ヒソヒソ

トーマス「俺一人の力じゃないけどな。」ヒソヒソ

コニー「だーーーー!!!もう!!!」

サシャ「みなさん、なんで普通にしてられるんですか!!!」

アルミン「コニー?サシャ?」

580 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:52:05 ID:.R5NlSlU

サシャ「嬉しいの我慢するとか私には無理です。ナック、ミリウス。ずっと待ってたんですよー!!」

コニー「お前ら・・・お前ら・・・本当に良かった!!!」

フランツ「コニーは二人の復帰に積極的じゃなかったのに・・・。」

コニー「俺が辞めちまえって言って二人が出てったのに、そのこと誰も責めないだろ。

    俺、言いすぎたって、悪かったって思ってんのに・・・

    誰も怒ってくんないから態度変えれないだろ!!!」

ミーナ「もう、変な意地張って。」

アルミン「うやむやにした方がナックとミリウスの気が楽かなって思ったけど・・・。

     僕だってすごく嬉しいんだ。もう、はっきりと言うよ。

     ナック、ミリウス、戻ってきてくれてありがとう!!!」

サシャ「おかえりなさいです!!!」

ナック「あ、ああ・・・・ちくしょう・・・なんか照れくさいな。」

ミリウス「うん・・・。でも、こんなに喜んで迎えてくれる。戻ってきて正解だったな・・・。」

581 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:53:00 ID:.R5NlSlU

―演習場

ジャン「ミカサと共演か。願っても無い役回りだな。感謝するぜ、クリスタ。」

クリスタ「どちらかと言うと競演だけどね・・・。」

エレン「あっ、来た来た。ジャン遅ぇよ。」

ジャン「は?何でエレンがいるんだよ。さてはお前もミカサと共演する気か?」

エレン「共演つったら共演かもしんねぇけど、俺は直接ミカサと絡まないから。」

ジャン「そうなのか?てめぇと同じ舞台に立つのは気に入らんが・・・ミカサのためだ。我慢してやる。」

エレン「ミカサはすでに準備して待ってるぜ。お前も早くしろ。」

582 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:53:38 ID:.R5NlSlU

ジャン「そうか、ミカサは・・・・って、あいつ何持ってるんだ?」

エレン「サーベル。模造刀だけどな。」

ジャン「なぜ?」

クリスタ「はい、ジャンのサーベル。」

ジャン「お、おう。」パシッ

ミカサ「時間がもったいない。ジャン、用意ができたなら早くこっちへ来て。」

エレン「ミカサは二刀流だが、ジャンももう一本持つか?」

ジャン「いや・・・、なんとなく状況は理解できた。だが一つ教えてくれ。」

クリスタ「なあに?」

ジャン「俺はコンサート当日まで五体満足でいられるのか?」

583 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:54:17 ID:.R5NlSlU

― 一週間後 トロスト区壁門前広場

大勢の観衆を前に、壁上固定砲竣工式が行われていた。

軍楽隊は式が行われている簡易舞台の袖で自分達の出番を待っていた。

サムエル「この門の向こうには巨人がぞろぞろいるんだろうな。」

ミーナ「こんなところで大きな音出して大丈夫かな。巨人が集まってきたらどうしよう・・・。」

トーマス「大丈夫だよ。新たに10門も壁上固定砲増設したんだ。

     式典の最後に一斉射撃するらしいし。的がたくさんあった方がいいんじゃない?」

コニー「それにしても竣工式ってのは退屈だな。お偉いさんのつまんねぇ話ばっかりで。」

ナック「あんなに中身の無い話を延々とできるってある意味すげぇよな。」

ハンナ「街の有力者たちの自己アピールの場になってるね。」

サシャ「早く終わってくれませんかねぇ。お腹空いてきました。」

ミリウス「でもさ、よく結成したての得体のしれない軍楽隊なんか出そうと思ったよな。」

フランツ「きっと駐屯兵団の上層部に変人でもいるんだろう。」

アルミン「みんな静かにしようよ。駐屯兵団の人たちが睨んでるよ。」

584 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:55:19 ID:.R5NlSlU

主賓たちの挨拶がひと通り終わり、進行役の兵士からアルミンに合図が送られる。

アルミン「みんな出番だ。サシャ、頼むよ。」

サシャ「はい。お任せ下さい。」

サシャは隊列の先頭に立った。

サシャ(セットアップ)

メジャーバトンで支持を出す。一斉に楽器を構える隊員たち。

サシャ(マークタイム)

バトンを動かすとドラムのリズムで足踏みが始まる。

8拍の足踏みの後、ファイフの演奏が加わり隊は前進し始めた。

先頭でくるくるバトンをサシャは回す。

サシャに導かれ、軍楽隊は広場の中央へ移動する。

サシャ(たくさんの人が見てくれてます。なんだかわくわくしますね。)

サシャはバトンを高く放り投げた。

585 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:56:32 ID:.R5NlSlU

フォーメーション変形の合図。

ドラム隊を中央に残し、ファイフ隊は左右に分かれていく。

統率のとれたまったくズレの無い動きに、観衆から感嘆の溜息がもれる。

サシャは次から次に合図を送る。

マークタイム、ライトピンウィル、フォワードマーチ、レフトスピン・・・

規則正しい動きで、隊は変形を繰り返し観衆の目を楽しませた。

そして最初の陣形に再び戻る。

サシャはメジャーバトンの両端を持ち両手を高く掲げる。

それを合図に隊の動きは一斉に止まり、演奏は無事に終了した。

パチパチパチパチパチ・・・・

会場から送られる惜しみない拍手、歓喜の叫び、賞賛の声。

すべてが混ざり合い怒涛のように隊員たちに押し寄せた。

込み上げてくる喜びを必死に押さえサシャは一礼をし、隊員たちを引き連れ待機場所に戻った。

586 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/22(月) 22:57:09 ID:.R5NlSlU

コニー「な、なぁ・・・、叫んでもいいか?」ウズウズウズウズ

サシャ「私も早く大声出したいです。」ウズウズウズウズ

アルミン「僕もだよ。でも式が終わるまで我慢しなきゃ。」ウズウズウズウズ

ミーナ「あっ、一斉射撃始まるみたい。」ウズウズウズウズ

トーマス「あれ撃ったら終わりだよな。」ウズウズウズウズ

ナック「早く撃ちやがれ。何カウントダウンとかしてんだよ。」ウズウズウズウズ

フランツ「5・・・」ウズウズウズウズ

ハンナ「4・・・」ウズウズウズウズ

サムエル「3・・・」ウズウズウズウズ

ミリウス「2・・・」ウズウズウズウズ

アルミン「1・・・」ウズウズウズウズ

全員「発射!!!・・・・やっったぁぁぁぁぁぁ!!!!」

砲撃の轟音の中、ありったけの大声で叫んだ。

初仕事の成功が嬉しかった。それ以上に大衆に受け入れられたことが誇らしかった。

迷い、悩み、苦しんだ分、隊員たちの喜びは大きかった。


594 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:43:46 ID:UHAfT/RA

―休日 第三音楽室

ダンサー募集に応じたメンバーを集め初ミーティングが開かれていた。

その中には例のお婆さんの姿もあった。

駐屯地への部外者の立ち入りは通常禁じられているが、キース教官は特例として認めてくれた。

ベルトルト「この教室使っていいの?いつも軍楽隊が練習してるけど。」

マルコ「今日は練習休んでみんなで遊びに行くんだって。たまには息抜きしないとね。」

ベルトルト「そっか。初仕事成功したって言ってたし。打ち上げでもするのかな。」

マルコ「そうかもな。」

クリスタ「わざわざご足労頂きありがとうございます。」

婆さん「いやいや、ダンスを受け継いでもらえるならこれぐらいどうってことない。

     ユミルが迎えに来てくれたしの。」

ユミル「ったく、手間のかかるババァだぜ。」

クリスタ「そんなこと言わないの。せっかく来て下さったんだから。」

595 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:45:06 ID:UHAfT/RA

マルコ「全員揃ったみたいだね。そろそろ始めようか。」

パン、パン。手を叩き注意を引く。

マルコ「みんなせっかくの休日なのに集まってくれてありがとう。

    全員で20名。こんなに手を挙げてくれるとは思ってなかった。嬉しいよ。

    まずは、みんなにダンス講師を紹介するよ。えーと・・・、何てお呼びしましょうか?」

婆さん「婆さんのままでええよ。それじゃあ軽くこれから教えるダンスについて説明しようかの。

    わしが教えるのはアイリッシュ・ステップ・ダンス。わしの一族に伝わる古いタップダンスじゃ。

    通常はタップ音を出すために専用の靴を履くんじゃが・・・。」

マルコ「みんな、今から配るこのブーツに履き替えてくれ。」

アニ「・・・いつものブーツと変わらないけど。」

ベルトルト「何か違うのか?」

マルコ「キース教官に支給品ブーツの予備を特別に譲ってもらった。通常のブーツと違うのは靴底だ。

    つま先と踵部分に金属の鋲を打ちこんだんだ。その部分で床を踏みならせば音が出るはずだ。」

596 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:46:50 ID:UHAfT/RA

アニ「・・・本当だね。すごく響く。」カッ カッ

ベルトルト「でもいつものブーツよりちょっと重たいな。」カッ カッ

マルコ「ごめん。でも筋力アップには効果的だ。」

ベルトルト「ははっ、そうだね。自主トレになっていいかも。」

婆さん「みんな履きかえたようじゃの。それじゃあ、わしが軽く手本を見せようかのう。

    実際のダンスを見んことにはイメージが沸かないじゃろう。よく見とくんじゃぞ。」

カタタ カタタ カタタ タタタ・・・・

ユミル(おいおい、ババアおかしいだろ。なんだその機敏な足さばき。老人の動きじゃねぇぞ。)

アニ(速い。瞬発力と足の筋力が必要ね。)

クリスタ(それぞれの動作は単純だけど、ステップの組み合わせを変えてリズムに変化を出してる。)

ベルトルト(身体の軸がまったくぶれない。体幹が強くないとこうはいかないな。)

婆さん「ゼェゼェ・・・・・。こんな感じじゃ。」

マルコ「お婆さん大丈夫ですか?無理なさらないで下さい。」

婆さん「ハァー・・・。年寄りにはやはりきついのぅ。まぁお主らは若いから大丈夫じゃろ。」

597 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:48:14 ID:UHAfT/RA

ユミル「しかし、足の動きが尋常じゃなかったぜ。対照的に上半身はまったく動かさないんだな。」

婆さん「それにはな、理由があるんじゃ。大昔、わしの祖先の国は他国に占領されとってな。

    自分たちの伝統的なダンスや音楽が禁止されたんじゃ。

    しかし何とか後世に伝えようとしてな。

    窓の外から監視する兵隊に見えぬよう足だけでステップを踏んだんじゃ。」

クリスタ「それで上体をほとんど動かさないんですね。」

婆さん「そうじゃ。そこまでして守ってきた伝統文化が消えてしまうのがわしゃ悲しくてのぅ。

    わしの民族だけじゃない。巨人のせいで、今まで人類が培ってきた多くの文化が失われたじゃろうて。」

ユミル「工房のおっさんて婆さんの息子だろ?教えりゃいいだろ。」

婆さん「もちろん伝えたさ。せがれの一人息子・・、わしのたった一人の孫にもな。」

クリスタ「お孫さんが継承されてるなら、ひとまず安心ですね。」

婆さん「・・・死んだよ。駐屯兵団に所属しとってな。845年の巨人侵攻の際に命を落としたよ。」

アニ「・・・・・・・」

ベルトルト「・・・・・・・」

598 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:50:39 ID:UHAfT/RA

クリスタ「・・・・ごめんなさい。軽率なことを言ってしまって・・・。」

婆さん「気にせんでええ。孫がいなくなったのは悲しいが・・・。

    代わりにこんなにたくさんの弟子ができた。長生きして良かったわい。」

ユミル「婆さん、辛気くせぇよ。みんな暗くなっちまっただろ。ほらさっさと踊り方教えろよ。」

婆さん「おお、そうじゃったの。ダンスは楽しくせんとのう。それじゃあ、基本のステップからいくぞ。」

婆さん「まずは気をつけの姿勢。背筋をまっすぐ。視線は正面。」

一同  ピシッ

婆さん「かかとを上げた状態でその場で足踏み。」

一同  カッ カッ カッ カッ

婆さん「ほれ、もっと音を出すことを意識して。元気よく!」

一同  カッ カッ カッ カッ

599 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:51:50 ID:UHAfT/RA

婆さん「今のがステップとよばれる動作じゃ。では次の動きにいくぞ。

    右足を1回ステップしてつま先をそのまま床につけておく。かかとを下ろすんじゃないぞ。」

一同  カッ

婆さん「そのまま右足かかとを下ろして床を突く。」

一同  タッ

婆さん「今やったのがヒール・ドロップ。この二つを組み合わせたのが基本動作じゃ。

    それじゃあ、やってみようかの。右足、左足交互にステップス&ヒール・ドロップス。」

一同  カッ タッ カッ タッ・・・・

婆さん「ほっほっほっ。ぎこちないのう。最初は誰でもそんなもんじゃ。

    ゆっくりでええから慣れるまで練習しなされ。」

ユミル「あんましゆっくりしてる時間は無いんだけどな。」

婆さん「大丈夫じゃ。みんな若い。すぐできるようになる。

    それより頼んでおいたリードダンサーは用意できとるのか?」

600 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:53:30 ID:UHAfT/RA

マルコ「ええ。苦労しましたけど・・・。アニ、ベルトルトこっちに来てくれ。」

婆さん「ほっほー。こりゃあ、またエラい別嬪さんを連れてきたな。わしの若い頃そっくりじゃ。」

アニ「・・・・・」

婆さん「そう恐い顔するでない。で、こっちは鼻筋の通った美青年か。

    憂いを湛えた眼差しが乙女心をくすぐるじょ。」

ベルトルト「ど、どうも・・・。」

婆さん「しかし身長差がありすぎかの・・・。まっ、ええか。どうにでもなるわい。」

アニ「・・・今更で悪いんだけど、やっぱりリードダンサー・・・ううん、ダンス自体降りさせて。」

ユミル「はぁ?何言ってんだよ。お前がやるっつったからダンス計画が動き始めたんだよ。」

クリスタ「そんな無責任な態度、アニらしくないよ。何か問題があるの?」

アニ「・・・お婆さんの大切なダンスを引き継ぐ資格、私には無いから・・・。」

ベルトルト「アニ・・・・。」

601 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:54:29 ID:UHAfT/RA

ユミル「?わかんねぇな。婆さん、踊るのに資格がいるのか?」

婆さん「そんなもん無いわい。・・・アニとか言ったな。お主が何を考えとるのかは知らん。

    しかしな、若いうちは逃げずに何でもやってみなされ。

    人生どんなことでも無駄になることは無い。必ず得るものがある。」

アニ「・・・でも・・・」

ベルトルト「アニ、一度引き受けたんだ。途中で投げ出したらみんな迷惑するだろ。最後までやるんだ。」

アニ「ベルトルト・・・。」

ベルトルト「ここで急に抜けたら変に思われるだろ」ヒソヒソ

アニ「・・・分かった。ごめん、突然おかしなこと言って。ちゃんとやるよ。」

クリスタ「良かったぁ。もう!焦っちゃったじゃない。」

ユミル「ホント、しっかりしてくれよ。」

婆さん「それじゃあ、リードダンサーの二人には特別メニューで厳しく指導じゃ。」

602 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:56:04 ID:UHAfT/RA

―演習場

ジャン「ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・・・、ちょっと休憩させてくれ。」

ミカサ「仕方ない。ジャンが動けないと練習にならない。ちょっと休もう。」

ジャン「ゴクゴクゴク・・・ふぅーーー。しかしミカサ、お前の心肺機能はどうなってんだ?」

ミカサ「特に異常はないけど。何かおかしい?」

ジャン「いや、異常だろ。5分間全力で剣振り回して、呼吸が少しも乱れない人間はいねぇよ。」

ミカサ「ジャンの鍛え方がぬるいだけ。」

ジャン「そうなのか?お前と変わらない訓練メニューこなしてるだろ。」

ミカサ「エレンは私に追いつくため、私の倍は自主的にトレーニングしてる。ジャンもそれぐらい努力すべき。」

ジャン「出たよ。口を開けばエレンかよ。剣舞の練習してる時ぐらいエレンって言うな。」

ミカサ「なぜ?」

ジャン「俺が悲しくなる。」

ミカサ「・・・わかった。口には出さないよう努力する。」

ジャン「心では思うわけね。」

ミカサ「そこは自由にさせて。」

603 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:56:48 ID:UHAfT/RA

ジャン「・・・・お前さぁ、俺の気持ち分かってるよな。」

ミカサ「ジャンの気持ちなんて知らない。」

ジャン「相変わらず冷てぇな。」

ミカサ「ジャンの気持ちを直接聞いたことが無いから分からない。」

ジャン「めちゃくちゃ態度に出してんだけど。」

ミカサ「私は他人の感情を察するのが苦手だから。」

ジャン「・・・はっきりと言葉にすればいいんだな。」

ミカサ「それだと私でも理解できる。」

ジャン「・・・俺が正直な気持ちを言ったら、お前は何か変わるのか?」

ミカサ「変わらない。」

ジャン「だよな。まだ口に出すのは早いっつーことだ。」

604 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:57:57 ID:UHAfT/RA

マルコ「おーい。練習おつかれさまー。」

ミカサ「・・・マルコ。」

ジャン「あれ?お前今日ダンスで忙しいとか言ってなかったっけ?」

マルコ「僕がいなくても大丈夫そうだから抜けてきた。ミカサとジャンの方が心配だから。」

ミカサ「心配させるようなことは何も無い。ジャンとはうまくやっている。」

マルコ「本当?良かった。ジャンが失礼なことしてミカサ怒らせてたらどうしようって気になっちゃって。」

ジャン「お前は俺を何だと思ってんだ。一応、常識人のつもりだぞ。」

マルコ「どこが。寮では失礼極まりないだろ。」

ミカサ「丁度いい。マルコも練習付き合って。相手がジャン一人だと存分に力が揮えない。」

マルコ「えっ?」

ジャン「そうだお前、今度のステージ何も出ないらしいな。ずるくねぇか?」

マルコ「仕方ないだろ。誰が裏方仕切るんだよ。」

ジャン「それでも少しぐらい出ろ。ちなみに剣舞は五分弱で終わる予定だろ?」

ミカサ「それくらいの時間ならステージ裏を離れてもきっと問題ない。」

605 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:58:50 ID:UHAfT/RA

マルコ「いやいや。ジャンの邪魔をするわけにはいかないし・・・。」

ジャン「俺とミカサの会話に割って入らなけりゃ邪魔じゃない。」

マルコ「いや、でも、剣術とか僕には向いてないから。勘弁してくれよ。」

ミカサ「逃げちゃ駄目。マルコは憲兵団に入りたいんでしょ?」

マルコ「そうだけど・・・。」

ミカサ「なら対巨人の技術より対人の技術をもっと磨くべき。

    この世界の悪は巨人だけじゃない。人類の中にも救いようの無い極悪人が大勢いる。

    マルコには、そういう悪党どもから弱者を守る力を身につけてほしい。」

ジャン「だそうだ。どうするマルコ?弱っちいまま憲兵団に入るのか?暴漢がいても見て見ぬふりをするのか?」

マルコ「はぁ・・・、分かったよ。僕も強くならないとね。」

ジャン「よし。それじゃあ2対1だ。ミカサ覚悟しろよ。」

ミカサ「これでやっと本気を出せる。」

606 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 00:59:27 ID:UHAfT/RA

マルコ「立ち回りとか打ち合わせしないの?」

ジャン「疾走感と緊張感のある激しい斬り合いをよろしくってクリスタに頼まれてんだ。

    事前に動き決めたら生ぬるい感じになるだろ?五分間何も考えずガチで攻める。」

マルコ「そんなの危ないって。模造刀でも当たると怪我するよ。」

ジャン「大丈夫。俺はすでに痣だらけだ。」

マルコ「全然、大丈夫じゃないし。」

ミカサ「予想外の動きをしなければ大きな怪我はさせない。」

ジャン「とにかく休みなく切りかかれ。ミカサに反撃する余裕を与えるな。」

マルコ「もう、どうにでもなれ・・・。」

ミカサ「では、いつでもかかってきて。」

607 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:00:30 ID:UHAfT/RA

―第一音楽室

クリスタ「遅くなってごめんね。」

エレン「ダンスの方はもういいのか?」

クリスタ「うん。ユミルに任せてきた。」

エレン「俺も後でのぞいてみよ。アニとベルトルトがダンスって、あいつら大丈夫なのか?」

クリスタ「人のこと心配してる余裕は無いよ。エレンには超難曲に挑戦してもらうから。」

エレン「超難曲?」

クリスタ「うん、これ。ハチャトゥリアン『剣の舞』シフラ編曲版。まぁ、譜面見てよ。」

エレン「・・・・・俺が楽譜読むのすっげー苦手なの知ってるよな。」

クリスタ「うん。」

エレン「こんなの一生かかっても読めねぇよ。なんだよこれ。音符が多すぎてやたら黒いぞ。」

クリスタ「そうなんだよ。音が多いんだよね。ピアノだけでオーケストラの音を再現しようとしてるから。」

エレン「オーケストラってなんだよ?」

クリスタ「うーん、簡単に言うと楽器の種類が多い軍楽隊。」

608 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:01:24 ID:UHAfT/RA

エレン「ふーん。よく分かんねぇけど、いつもみたいにお手本で弾いてくれ。」

クリスタ「ごめん。私も完璧に弾けないんだ。」

エレン「なっ!?そんなもん俺に弾かせようとすんな。」

クリスタ「私の手の大きさじゃ無理なんだよ。だから音を削って弾くね。

     でもエレンにはちゃんと譜面通りに弾いてもらうから。」

エレン「分かったよ。とりあえずどんな曲なのか聴かせてくれ。」

クリスタ「うん。エレンに聴かせるために私も久しぶりに本気で練習したよ。いくよ・・・。」

♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪・・・・

エレン(・・・・・左手がおかしい。オクターブ以上で跳躍する和音の高速連打って・・・。

    左手の動きが速すぎて残像が見える。右手は右手で意味わからん。もはや人間の指とは思えない。

    音は聴き取れるけど、どうやって弾けばいいのかさっぱり検討がつかねぇ・・・。)

クリスタ「ハァハァハァ・・・・・・、こんな感じだよ。」

エレン「これはもうピアノ演奏を超えた何か別物だな。」

609 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:01:57 ID:UHAfT/RA

クリスタ「うん。体育会系ピアノ曲って呼ばれてるから。スポーツに近いかも。エレンにぴったりでしょ。」

エレン「いや、全然弾ける気がしないんだけど。ピアノに初めて敗北した気分だ。」

クリスタ「ね、余裕無くなったでしょ。期限は3ヵ月。ミカサのために仕上げるよ。」

エレン「そうだな。俺が弱音吐いてる場合じゃねぇな。クリスタばっちり指導してくれよ。」

クリスタ「うん、今回はスパルタでいくから覚悟してね。」

610 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:02:40 ID:UHAfT/RA

―駐屯地近くの街

サシャ「嬉しいですね。軍楽隊のみんなでお出かけなんて。」

ミーナ「うん。私、駐屯地から出るの久しぶりだよ。」

トーマス「しかも、今日は打ち上げすんだろ?久しぶりに酒が飲める。」

ハンナ「でもこんな大人数で入れるお店よく見つけたね。」

フランツ「それはこいつのおかげだ。」

隊員A「僕の実家が酒場やっててさ。小さな店だけど貸切で使っていいって。」

アルミン「ありがとう。すごく助かるよ。一般のお店だと僕たち騒ぎすぎて他のお客さんに迷惑かけそうだから。」

ミリウス「それでまだ昼間だってのに店に向かってるわけだ。」

アルミン「門限があるからさ。日が高いうちからお酒飲むのもどうかと思ったけど、しょうがないよね。」

ナック「いや、すごくいいぜそれ。まだ働いてる奴がいる時間に飲むビールは、優越感に浸れて最高にうまい。」

コニー「相変わらずひねくれてんな。」

611 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:03:11 ID:UHAfT/RA

サムエル「ん?あれは・・・・。」

ミリウス「どうした?・・・・ああ、物乞いか。」

フランツ「ウォールマリアが崩壊してから、よく見かけるようになったね。」

トーマス「ウォールローゼ内に避難してきた難民の多くは、例の領土奪還作戦で命を落としたけど・・・。

     召集されなかった人たちも定職にありつけないでいるからね・・・。」

アルミン「・・・・・」ギリッ

サシャ「アルミンどうかしましたか?顔が恐いですよ。」

アルミン「・・・ううん。何でもない。ほら、もうすぐ店に着くよ。」

612 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:03:56 ID:UHAfT/RA

―酒場

サシャの乾杯で始まった打ち上げは大いに盛り上がり、程よく酒の回った団員達は上機嫌だった。

アルミン「ボクはね、思うんだよ。この世の中はおかしいんだよ。」ヒック

トーマス「おう、おかしいよな。アルミンの言うとおりだ。・・・・って何がだ?」ウィー

アルミン「王政のもとで僕らは暮らしてるわけだ。高い税金だって納めてる。

     なのに一般庶民には国から何の恩恵もないじゃないか。僕らの金はどこへ消えたんだよ。」

サムエル「オレら兵士は税金免除だろうが。何言ってんだよ。」ヒック

アルミン「あはははは。そうだった。ボク払ってないや。よし、ビールおかわり。」ヒック

ナック「オレらの給料に市民の血税は消えてんだよ。税金泥棒って罵られてもしょうがねぇ。」

アルミン「ああそうだ。ボクは税金で生きている。でも国家予算の何%が軍事費に割かれてんだよ。」ヒック

ミリウス「そんなの知るか。」ウィー

アルミン「なんで議会は情報公開しないんだ。国の財政が不透明すぎるんだよ。」ヒック

トーマス「なんだ?アルミンは今度は政治家を目指すのか?」ヒック

アルミン「そうだ!ボクは王政を廃止して社会保障制度の充実した民主主義国家を作りたい・・・のかな?」ヒック

サムエル「お前物騒なこと言うなよ。憲兵団に聞かれたらしょっ引かれるぞ。」ヒック

613 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:04:48 ID:UHAfT/RA

ナック「ははは。軍楽隊の次は革命軍でも作るのか?アルミンの野望はホント底知れねぇな。」ウィー

トーマス「頼むからこれ以上話を大きくしないでくれ。オレらはもうついていけん。」

アルミン「・・・・革命か・・・手始めに何をすべきか・・・ブツブツ・・・」ヒック

ミーナ「アルミン、考えちゃ駄目!!誰かアルミンを止めて!」

サシャ「しょうがないですねぇ。私の出番ですか。」モグモグ

サムエル「サシャは飲んでないのか?」ヒック

サシャ「はい。お酒飲むとお腹がふくれてご馳走が食べれなくなります。もったいないです。」モグモグ

コニー「俺とサシャは食べるの専門。」モグモグ

ハンナ「コニーも飲まないの?」

コニー「おう。俺は酒が嫌いだ。なんでそんなマズイもん飲まなきゃならんのだ。」モグモグ

ナック「お子様だな。」

コニー「うるせぇ。無理して大人ぶって何が楽しいんだよ。」モグモグ

614 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:06:40 ID:UHAfT/RA

サシャ「じゃあここらで、ご意見箱に寄せられた皆さんの投書を発表しまーす。」

コニー「何だそれ?」

サシャ「前に説明したじゃないですか。みんなの疑問、要望、不満など何でも書いて入れていい箱です。」

ハンナ「不満爆発させる人が二度と出ないように設置したんだよね。」

ナック「ちっ、俺らが悪ぅございましたよ。」ヒック

サシャ「けっこう投書があったので持って来ました。さぁアルミン。みんなの率直な意見に答えて下さい。」

アルミン「いいよー。何でも答えちゃうよー。」ヒック

サシャ「では一つ目。‘アルミンの話つまらねぇ'・・・・ごめん。次いきましょう。」

アルミン「いいって。みんなの率直な意見でしょ。アハハハハ、つまんないかー・・・、うっさいわ。」ヒック

ミーナ「アルミン、かなりお酒入ってるね・・・。」

トーマス「いいんじゃない?たまには、こういうアルミンも。」ヒック

615 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:07:17 ID:UHAfT/RA

サシャ「次は‘仕事引き受けたけど軍楽隊に謝礼って出たの?' おぉ、まともな質問です。」

アルミン「お金?そんなもん出ませんから。

     仕事が無事終わったら、ご満悦なキース教官にセクハラまがいのハグされるだけだから。」ヒック

コニー「アルミン、お前にばっかり苦労をかけて悪ぃな。」モグモグ

ナック「たった一人で教官室に入っていくお前の背中は男だったぜ。」ヒック

サシャ「じゃあ次。・・・・‘彼女欲しい'」

アルミン「ボクも欲しい。はい、次。」ヒック

サシャ「・・・・‘彼氏欲しい'」

アルミン「今の二人で付き合えばー。」ヒック

トーマス「ははは、誰だろうねー。あんなこと書いたの。・・・もう一杯おかわり。」ヒック

ミーナ「ほ、本当よねー。・・・私もビールおかわりしよっかな。」

616 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:08:03 ID:UHAfT/RA

サシャ「まともな投書が少ないですね。次は・・・‘ハンナ結婚しよう'・・・・」

ミリウス「フランツか。」ヒック

ナック「フランツしかいねぇな。」ヒック

トーマス「フランツ・・・。お前なぁ、独り身に見せつけて楽しいか。」ヒック

サムエル「頼むから見えないトコでイチャイチャしてくれ。お前らのこと嫌いになるぞ。」ヒック

フランツ「ごめんごめん。ちょっとサプライズしたくてさ・・・・・。」テレテレ

コニー「お前・・・、もしかしてこれマジなのか?」モグモグ

フランツ「・・・・・うん。本気のプロポーズ。」テレテレ

アルミン「イヤイヤイヤイヤ、ぜんぜんダメでしょ。こんなシチュエーション認めないから。」ヒック

トーマス「そうだぞ。こんな衆人環視の中でプロポーズって・・・・お前、自信あんだろ。」ヒック

サムエル「断られないと踏んでこの暴挙に出たな。許さん。」ヒック

コニー「いや、結婚て・・・・・早くねぇか?」モグモグ

ナック「だな。・・・・・できちゃったとか?」ヒック

アルミン「できちゃったのーーーー!?」ヒック

617 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:08:50 ID:UHAfT/RA

サムエル「つーか、やることはやってたんだ・・・・・。いやん、生々しい。」ヒック

ミーナ「もう、あんたらうるさい!!ハンナ、どうなの?赤ちゃんいるの?」ヒック

ハンナ「ぷっ・・・、あははははは。ないない、赤ちゃんとか絶対ないから。」ヒック

ミーナ「じゃあ、どうしてフランツはプロポーズなんかしたのよ。」ヒック

フランツ「いや、訓練中に命を落とすこともあるっていうしさ・・・。

     後悔しないように、言いたいことは今のうちに全部言っておこうと思って。」

ハンナ「ふふふ。フランツらしいね。」

フランツ「返事は?」

ハンナ「あとで・・・・・二人きりの時に、ね。」

ナック「うわー。今晩やる気ですわ。」ヒック

サムエル「返事はどう考えてもOKじゃねぇか。おもしろくねぇな。」ヒック

ミリウス「ちくしょう、オレも言いたいこといってやる。」ヒック

トーマス「だな。黙ってても何も始まらないしな。オレも言うぞ。」ヒック

618 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:10:15 ID:UHAfT/RA

ミーナ「まぁ結婚するのは数年先だろうけど。とにかく二人の幸せを願って乾杯しよ。」ヒック

アルミン「そうだね。ほら、みんなグラスを持って・・・」ヒック

かんぱーい!!!

トーマス「ほら、コニーも一杯ぐらい飲めよ。」ヒック

コニー「えー、まじぃもん。やだよ。」

ナック「祝福してやれよ。冷てぇ野郎だな。」ヒック

コニー「うう・・・、しょうがねぇな。」ゴクゴクゴクゴク・・・

トーマス「おお、一気飲み。」ヒック

コニー「・・・・・苦ぇ。」

ナック「苦いのはガキだからだ。」ヒック

コニー「うっせぇ。」

   (そういえばサシャの姿がねぇな。)キョロキョロ

619 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:10:46 ID:UHAfT/RA

コニー(あ、こっそりドア開けて、店から逃げ出してやがる。ずりぃ。)

コニー「ちょっと便所。」ガタッ

トーマス「おお。店の奥の右手にあるぜ。」ヒック

コニー「サンキュ。」(なんか退屈だ。俺も抜けよ。)

620 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:11:28 ID:UHAfT/RA

―街の大通り

タッタッタッタッ・・・

コニー「おい、勝手に抜け出してんじゃねぇよ。」ハァハァハァ・・・

サシャ「ギクッ!?ばれちゃいましたか。」

コニー「いや、気付いてるのは俺だけだったけど・・・、自由すぎるだろ。お前幹事だろ?」

サシャ「すみません・・・。でも苦手な空気になってきたので・・・。」

コニー「苦手って?」

サシャ「私、恋バナとかあんまり好きじゃないんです・・・。」

コニー「まあ俺も好きじゃねぇけど。他人が誰とくっつこうがどうでもいい。」

621 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:12:13 ID:UHAfT/RA

サシャ「うーん・・・、そうじゃなくて・・・。何でみんなと一緒じゃダメなんですかね。」

コニー「は?」

サシャ「どうしてコンビになろうとするんでしょうか。」

コニー「コンビって・・・、なんか違うだろ。」

サシャ「分かってますよ、私だって。でも二人だけよりみんなと一緒のほうが楽しいですよ。」

コニー「そんなん言ってるとガキ扱いされ、うわっ!!」ペタン

サシャ「!?大丈夫ですか?急に尻もちなんかついて。」

コニー「うぐぐ・・・、足に力が入らん・・・・。クラクラするし・・・。」

サシャ「・・・コニーお酒飲みました?」

コニー「出てくる前に一杯だけ一気飲みした。」

サシャ「で、走ってきたんですね。そんなことしたら酔いが回って当然です。」

コニー「飲まなきゃいけない雰囲気だったんだよ。」

622 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:13:10 ID:UHAfT/RA

サシャ「はぁ・・・・しょうがないですね。・・・ほらっ。」ヨッコイショ

コニー「なんだ・・・その構えは・・・。」

サシャ「おんぶです。早く乗ってください。」

コニー「やめろよ。勘弁してくれ。」

サシャ「だってこんな大通りの真ん中に放っておくわけにはいかないです。邪魔になります。」

コニー「・・・這ってでも自分で道の隅っこ行くから放っておいてくれ。」

サシャ「もう!!もたもたしてたら強制的に抱っこしますよ。」グイッ

コニー「いやだ!!やめてくれ。おんぶのがまだマシだ。」ジタバタ

サシャ「暴れたらもっとアルコール回りますよ。おとなしくして下さい。・・・ほら、乗って。」

コニー「うう・・・・///」ヨイショ

サシャ「意外と重たいですね。小柄だからもっと軽いと思ってました。」ドッコイショ

コニー「チビで悪かったな。」

サシャ「そんなこと言ってませんよ。ちゃんと筋肉ついてるんですね。」

コニー「そりゃあな。あんだけ訓練すれば。・・・どこに向かってるんだよ。」

623 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:14:14 ID:UHAfT/RA

サシャ「公園です。ほら、前にエレンやクリスタなんかとみんなで行った。ここから近いんですよ。

    そこで時間潰してから店に戻る気だったんです。」

コニー「そうか。・・・面倒かけてスマン。」

サシャ「気にしないで下さい。明日のパン期待してますから。」

コニー「いいぜ、パンぐらいやるよ。その代わり誰にも言うなよ。」

サシャ「何をですか?」

コニー「俺をおぶって街を歩いたとか・・・///」

サシャ「そんなに恥ずかしいことですか?」

コニー「恥ずかしいよ。さっきからすれ違う奴らの視線がいてぇよ。」

サシャ「じゃあ見なきゃいいです。目をつぶってて下さい。」

コニー「・・・・・・やべぇ。眠い・・・。」

サシャ「ふふ。おんぶで寝ちゃうとか本当に子どもみたいですね。」

コニー「・・・ああ、俺はガキだ・・・・・。何か悪いか・・・。」

624 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:15:05 ID:UHAfT/RA

サシャ「ぜんぜん悪くないですよ。私も子どもだから。今が楽しいから、ずっと子どもでいたいんです。」

コニー「ふぁ~・・・オトナになったらなったで、楽しいことはあるんじゃねぇの・・・」ウトウト

サシャ「そうかもしれませんが・・・、コニーはオトナになりたいんですか?」

コニー「・・・なりたくなくったって勝手になっちまうだろ・・・」ウトウト

サシャ「みんな急いでオトナになろうとします。でもオトナになった先には何があるんでしょう。」

コニー「・・・じじばばになって死ぬだけだ・・・」ウトウト

サシャ「じゃあ、やっぱり子どものままでいいです。」

コニー「・・・変に若作りしたババアになるなよ・・・そんなサシャは嫌だかんな・・・・」ウトウト

サシャ「あはは。歳をとっても一緒にいる気ですか。」

コニー「・・・すぅー・・・すぅー・・・」

サシャ「・・・寝ちゃいましたか。もう公園着きましたよ。」

625 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:15:45 ID:UHAfT/RA

あの日みんなで休んだ木陰にコニーをそうっと降ろした。

コニー「・・・うぅん・・・」ゴロゴロ

サシャ「寝心地悪そうですね・・・。」

サシャは樹の幹にもたれて座り、コニーの頭を膝に乗せた。

サシャ「パン一週間分ですよ。」

風がそよぎ頬を撫でていく。木々のざわめきと野鳥のさえずる声に安らぎを覚えた。

サシャ「・・・お腹いっぱいで私も眠いです・・・。コニー起こして下さいね・・・。」

座ったままサシャは眠りについた。

626 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:16:25 ID:UHAfT/RA

―数時間後

飲み会を終え、みんなそれぞれ帰途につく。

終了間際になってからやっとサシャとコニーの不在に隊員たちは気付いた。

それぐらいみんなできあがっていた。

「どうせあいつら帰ってるよ」そう言われ、アルミンも二人のことを気にかけつつ夕焼け空の下、帰り道を急いだ。

627 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:17:23 ID:UHAfT/RA

コニー「おい、サシャ起きろ!!」

サシャ「んーー?朝ですかぁ・・・?まだ暗いですよぉ・・・。」

コニー「もう暗いんだよ!!寝ぼけてんじゃねぇ!」

サシャ「・・・・・・はぅあっ!!今、何時ですか?」

コニー「時計持ってないから分かんねぇ。やべぇよ。門限。」

サシャ「と、とにかく急ぎましょう・・・・・って足が痺れて立てません!!」

コニー「あぁ、俺がずっと頭乗っけてたみてぇだからな。じゃあな。おれ先行くわ。」

サシャ「ちょっ!!ひどいですよ!恩を仇で返しますか!?コニーの人でなし!!」

コニー「何とでも言え。怒ったサシャよりキース教官の方が100万倍怖いんだよ!!」ダッシュ

628 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:17:59 ID:UHAfT/RA

サシャ「ほ、ほんとに行っちゃいました・・・・・。

    こんクサレが!!散々世話掛けちょってから。なんちこしきい奴じゃろうか。」プンプン

足の痺れが治ってから駅馬車の停留所に向かう。

結局そこで馬車を待っていたコニーと合流。車中でサシャはコニーを散々罵倒した。

無事に駐屯地へ帰ったものの、門限には間に合わず二人は揃ってキース教官にこってり絞られた。


630 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:23:34 ID:UHAfT/RA

―数日後 第二音楽室

ライナー「O Freunde, nicht diese Tone・・・・♪」

マルコ「いい感じ。独唱パートはアカペラの予定だからもっと自由に歌っていいよ。」

ライナー「そうか。じゃあもっと俺らしさを出していいんだな。

     しかし、まったく歌詞の意味が分からんからな。表現しづらい。

     ・・・・・実はものすごく卑猥な内容だったりするのか?」

マルコ「しないよ。でも歌詞の内容説明してなかったね。ごめん、忘れてた。

    えーと、ライナーの歌いだしのソロパートは・・・・。

    簡単に言うと‘お前らもっと楽しくて気持ちいい歌をうたおうぜ'って仲間に呼びかけてる。」

「それっていつものアニキじゃん。」

「この曲はアニキのこと歌ってんのか?」

ライナー「いやぁ、まいった。まさかベートーベンにパクられちまうとはな。」

マルコ「ははっ、確かにライナーにはまり過ぎてる。」

631 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:24:10 ID:UHAfT/RA

ライナー「で、その後の合唱部分はどういう意味なんだ?」

マルコ「この後の歌詞はかなり難解。合唱部分はシラーっていう人が書いた詩が元になっててね。

    昔あったフランスっていう国の革命の精神を歌ってるらしいよ。

    確か・・・自由、平等、博愛だったかな。」

ライナー「革命ソングか。過激だな。そんなのステージで歌っていいのか?」

マルコ「直接的な表現は無いから大丈夫。

    ベートーベンって人も憲兵に捕まらないようにかなりオブラートに包んだみたい。

    本当は‘自由賛歌'って詩なんだけど、‘歓喜の歌'ってあいまいな題名に変えてるし。」

ライナー「そうか・・・。いつの時代も表現の自由は制限されるんだな。」

マルコ「どんな体制にだって不満を持つ人間は出てくるからね。

    誰かが放った何気ない一言が社会を大きく揺るがすかもしれない。

    為政者としては火種が燃え広がる前に、元から絶ちたいんだろう。」

632 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:24:47 ID:UHAfT/RA

ライナー「しかし壁の中では体制を覆そうとかって危険な輩は見かけんな。民衆は不満だらけだろうに。」

マルコ「情報自体を規制して知識を与えず、民衆が賢くなることを避けてるんだ。

    何も知らなければ、世の中はこういうものなんだって諦める。

    それに巨人がいるからね。人々の目は外側に向けられて、内側への関心は弱まる。」

ライナー「意外だな。マルコが体制に批判的とは思わなかった。」

マルコ「別に批判してるわけじゃない。単なる現状認識だよ。僕も諦めてる人間だから。

    ただ、規制された中でもそれなりに楽しく生きることはできる。

    現状に不満をこぼすより、今をどう生きるか前向きに考えた方が有意義だよ。」

ライナー「はは。さすが‘王に掘られたい'って宣言するだけはあるな。」

マルコ「そんなこと言ってない!・・・でも、ライナーこそどうなんだよ。

    訓練兵卒業後どうするつもりなのか、ライナーから聞いたことがない。」

ライナー「俺か?まぁ、その時の状況次第だな。・・・俺は生き方を選べないんでな・・・。」

マルコ「・・・ライナー?」

633 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:25:46 ID:UHAfT/RA

ライナー「いや、何でもない。それより練習だ。もう一曲も仕上げないとな。えっと何だっけ?」

マルコ「ヴェルディの歌劇『アイーダ』で歌われる『凱旋行進曲』。」

ライナー「それそれ。勝利の歌なんだろ?俺たち兵士にぴったりだ。」

マルコ「混声合唱の曲だけど、男声だけでも歌えるから。むしろその方が迫力あるし。」

ライナー「『アイーダ』とかって劇はさぞかし血沸き肉踊る話なんだろうな。」

マルコ「ははっ、正反対。悲恋物だよ。」

ライナー「なに?それはガチ泣きできるレベルの悲しい話なのか?」

マルコ「えっ?それは人によると思うけど・・・。」

ライナー「よし、聞かせてくれ。」

マルコ「いいけど・・・なんで?」

ライナー「自分より報われない男の話を聞くと元気出るだろ?」

634 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:26:29 ID:UHAfT/RA

マルコ「けっこう嫌な奴なんだな・・・。まぁ、話を知ってたほうが歌いやすいかな。

    ざっくり言うと・・・。身分を隠して潜入してきた敵国のお姫様と恋に落ちた兵士の話。」

ライナー「ベタだな。で、どういうオチだ?」

マルコ「二人揃って生き埋めにされる。」

ライナー「極端だな、おい。」

マルコ「もちろん途中に色々あるけど。

    兵士は祖国を裏切ってお姫様を助けようとして失敗。そして生き埋めの刑に処せられるんだ。」

ライナー「やっぱりベタだな。だが俺にはできん。」

マルコ「そうかな。ライナーならやりそうだけど。以前クリスタのこと身体張って守ってたし。」

ライナー「クリスタのためなら俺の命ぐらいくれてやる。しかし祖国は裏切れない。」

マルコ「?意外と愛国心が強いんだな。」

635 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:27:05 ID:UHAfT/RA

ライナー「そういうマルコはどうなんだ。」

マルコ「僕?」

ライナー「ああ。‘王に掘られる'か‘クリスタに掘られる'か。どっちを選ぶんだ。」

マルコ「・・・どっちも遠慮する。」

ライナー「意外と愛国心が無いんだな。」

マルコ「・・・ぷっ、あはははは。真面目な顔して何言ってんだよ。さあ、練習を続けよう。」

636 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:27:54 ID:UHAfT/RA

―第三音楽室

ユミル「今日も教室、占領しちまって悪いな。」

アルミン「ああ、それは構わないよ。軍楽隊は外でも練習できるから。

     でもダンスは床の上じゃないと靴の音がでないんでしょ?」

ユミル「そうらしいぜ。あっ、そうそう軍楽隊にプレゼント。」

アルミン「何これ?」

ユミル「見ての通り楽譜だよ。ダンスの曲、軍楽隊に頼むわ。」

アルミン「『ブライアン・ボルーのマーチ』?」

ユミル「そ。婆さんが言うには大昔からあるアイリッシュの曲だとよ。」

アルミン「ヴァイオリンパートもある。ユミルも弾くんだ。」

ユミル「弾きたくねぇんだが、アイリッシュダンスにフィドルは欠かせないって婆さんがうるさくってな。」

アルミン「フィドルってヴァイオリンのこと?」

ユミル「そうらしいぜ。それから、ダンスに合わせて編曲が必要になるだろうって。

    その時はアルミンよろしくな。」

637 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:28:37 ID:UHAfT/RA

アルミン「わかった。とりあえず軍楽隊で練習してある程度形になったら、ダンス隊と合流するよ。」

ユミル「悪ぃな。おっ、ダンスの練習終わったみてぇだな。」

アルミン「でもさ、ベルトルトとアニが踊ってるのもびっくりだけど、ユミルが仕切ってるのも意外すぎだよ。」

ユミル「仕切ってねぇし。ダンス教えてくれる婆さんとちょっと親しいんでな。

    それを理由にクリスタに押し付けられてんだ。ホントいい迷惑だぜ。」

アルミン「ははは。ユミル、最近丸くなったね。」

ユミル「は?うるせぇよ。調子にのんな、このチビが。」

アルミン「・・・ご、ごめん。」

ユミル「さてと・・・大体撤収したかな・・・ん?・・・お前らまだここに残るのか?」

アニ「そう。もう少し練習したいから。」

ベルトルト「ちゃんと片付けるから先帰ってていいよ。」

ユミル「じゃ、頼むわ。お疲れー。ほらアルミンも帰るぞ。」

アルミン「う、うん。それじゃあ、がんばってね。お先に。」

638 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:29:33 ID:UHAfT/RA

ガラッ ピシャッ

アニ「じゃあ、ダブルタイムステップから。いくらやってもあんたとタイミングが合わない。」

ベルトルト「アニ、あのさ・・・。」

アニ「何?無駄口叩いてる時間は無いんだけど。」

ベルトルト「どうしてそんなに一生懸命なの?」

アニ「おかしい?たまには真面目にやったていいでしょ。」

ベルトルト「・・・お婆さんへの罪滅ぼしのつもり?」

アニ「・・・何言ってるの?そんな気はないから。」

ベルトルト「・・・もう無理なんだよ。何をしたって僕たちは許されることはないんだ。」

アニ「そんなの分かってる。・・・分かってるから。」

ベルトルト「・・・そもそも何でアニはリードダンサーなんか引き受けたの?」

アニ「別に・・・。そういうベルトルトだって引き受けてるじゃない。」

ベルトルト「僕は・・・アニが引き受けたって聞いたから・・・。」

639 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:30:12 ID:UHAfT/RA

アニ「私の監視?私が裏切るんじゃないかって疑ってんの?」

ベルトルト「違うよ!僕は・・・アニが心配なんだ。」

アニ「あんたに心配されるようなことは何もないけど。」

ベルトルト「これまでアニは他の訓練兵と関わるのを極力避けてただろ?

      なのに最近のアニはおかしいよ。自分から他人に近づくような真似するなんて。」

アニ「だったらライナーの方がおかしいじゃない。変な集団作って馴れ合って。

   あいつ、自分の目的忘れてんじゃないの?」

ベルトルト「ああ。ライナーはおかしくなってる。でも、あいつには僕がいつも付いていられる。

      けど、アニはそうはいかないだろ?同郷だっていうのも隠してるんだ。

      僕とアニがいつも一緒にいたらみんな変に思うよ。」

アニ「私もあんたと一緒にいるのはご免だわ。」

640 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:31:01 ID:UHAfT/RA

ベルトルト「茶化さないでくれよ。僕はアニにみんなと深く関わって欲しくないんだ。

      仲良くなればなるほど、後で辛い思いをするのはアニだから・・・。」

アニ「・・・もう手遅れだよ。」

ベルトルト「アニ・・・。」

アニ「・・・宿命みたいなものをさ。ずっと‘これでいいんだ'って諦めてた。

   でも、最近‘これでいいのか'って・・・疑うようになってきた・・・。」

ベルトルト「駄目だ!しっかりしてくれよ。故郷に帰るんだろ?それが一番大切なことだろ?」

アニ「分かってる。もう後には引けないことも。

   ・・・けどさ、少しでいいから普通の人間らしく笑って過ごしてみたかったんだ・・・」

ベルトルト「そんなの幻想だよ。」

アニ「・・・幻を見ることすら許されないの?」

641 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/07/28(日) 01:31:42 ID:UHAfT/RA

ベルトルト「ああ、そうだ。僕らは必ず彼らに憎まれることになる。頼むから自分で傷口を広げないでくれよ。」

アニ「・・・・。」

ベルトルト「僕だって不安なんだよ。本当に理解しあえる仲間がここには三人しかいないのに・・・。

      二人とも裏切ったらどうしようって。僕一人になったらどうしようって。」

アニ「・・・情けない男だね。絶対に裏切ったりしないから安心しな。」

ベルトルト「アニ・・・、信じていいんだね。」

アニ「あんたこそ裏切んじゃないよ。」

ベルトルト「もちろんだよ。アニ・・・ありがとう。」


650 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:02:25 ID:xfo.m0uA

―数日後 第一音楽室

エレン「だぁぁぁぁぁぁ!!無理!!!」

クリスタ「無理じゃない!!投げ出したら負けだよ!!」

エレン「鍵盤を目で確認する暇がまったくねぇよ!!

    左手だけで2オクターブも跳んで不協和音の高速連打とか、音外すなって言う方が無理!!」

クリスタ「だから身体で覚えるの!目をつぶってても狙った鍵盤に指が行くようにするの。

     何百回でも何千回でも繰り返してミリ単位の距離感を身体に叩き込む!」

エレン「くっそ・・・。出さなきゃいけねぇ音は分かるのに、手が動かん!!」

クリスタ「ほら、弾きにくい部分だけ繰り返して。私が隣でうるさく言ったってできるようにはならないんだから。

     エレンが頑張るしかないんだよ。」

エレン「ピアノでこんなに肉体を酷使するとは思わなかった。腕が筋肉痛だ。」

クリスタ「日常生活で使わない筋肉動かすからね。あと、エレンは無駄に力が入りすぎなんだよ。」

エレン「脱力しろって言うんだろ?でもテンポ上げるとどうしても力んじまう。」

651 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:04:03 ID:xfo.m0uA

ガラッ

マルコ「どう?調子は。」

エレン「マルコか・・・・。もうさ、マルコ弾いてくれよ。俺できねぇわ。」

マルコ「ははは。残念。僕もそれ弾けないから。」

クリスタ「こら!逃げない!エレンが弾かないと意味ないでしょ?」

マルコ「エレンが言い出したんだろ?ミカサと一緒にステージ立ちたいって。」

エレン「別に一緒じゃなくても良かったんだよ。ただ、何もすることの無いミカサが可哀想でさ。」

マルコ「おかげで僕が今、可哀想なことになってるよ。」

エレン「そういや着替えてるの見たけど、マルコとジャン痣だらけだったな。ミカサも怪我してるのか?」

クリスタ「ミカサはいつも通りきれいな身体してたよ。」

エレン「ははっ、さすがミカサだ。」

マルコ「もうさ、女の子相手だと思わず僕もジャンも本気で斬りかかってるんだけど・・・。

    二人がかりで掠ることもできないんだ。逆に返り討ちにあってボロボロだよ。」

エレン「なんかスマン・・・。」

652 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:05:19 ID:xfo.m0uA

マルコ「いいよいいよ。僕たちが不甲斐ないだけだから。でもミカサの身体能力は驚異的だね。」

エレン「だろ?人間離れしてんだよ、あいつ。」

クリスタ「ほら、みんな巻き込んでるんだからエレンも泣き言いわないで頑張るの。」

エレン「はぁー、分かったよ。でも難しすぎだろ、これ。」

マルコ「だね。『剣の舞』、よりによってシフラ編曲版だから。何でこんな難易度高いの選んだの?」

エレン「俺は選んでねぇし。クリスタに勝手に決められた。」

クリスタ「だって嬉しかったんだもん。エレンがミカサのために何かしようとするのが。」

マルコ「嬉しいのは分かるけど、この編曲じゃなくてもさ。通常版の『剣の舞』じゃ駄目なの?」

エレン「なにっ?もっと簡単なバージョンがあるのか?じゃあそっちに変更してくれよ。」

クリスタ「マルコ、余計なこと教えないでよ。」

マルコ「ごめん。でもピアノ初心者のエレンに無謀な挑戦させてるからさ・・・。」

653 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:06:23 ID:xfo.m0uA

クリスタ「もう初心者じゃないし。それにエレンは特別なの。

     ピアノの先生として、エレンの才能を限界まで引き出したいの。」

エレン「とっくに限界超えてるよ。」

クリスタ「もう!!やる気出してよ。男の子でしょ。好きな子のために頑張りなさいよ!」

エレン「は?何言ってんだ。好きな子って誰だよ。」

クリスタ「え?」

マルコ「ん?」

クリスタ「えっと・・・ミカサ。」

エレン「そりゃあ幼馴染だし嫌いじゃないけど。」

クリスタ「んーっと・・・今二人はどうなってるの?」

エレン「どうって?」

クリスタ「恋人同士じゃないのかな・・・?」

エレン「何でそうなるんだよ。」

654 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:07:47 ID:xfo.m0uA

クリスタ「じゃあ何なの。好きじゃないのになんで・・・なんで・・・あんなこと・・・。」

エレン「なんだよ。」

クリスタ「だから・・・あの・・・・、その・・・・」///

エレン「だから何?」

クリスタ「えっと、ね・・・・・マルコ、パス。」///

マルコ「はぁー・・・。ごめんエレン。僕ら偶然見ちゃってさ。その・・・二人がキスしてるの。

    悪気は無いからね。すぐに立ち去ったし。」

エレン「見られたのか。・・・まぁしょうがねぇか、この教室だしな・・・。」

クリスタ「どうしてあんなことしたのよ。」

エレン「何でクリスタに説明しなきゃならねぇんだよ。やだよ、恥ずかしい。」

マルコ「・・・雰囲気に流された、かな?」

エレン「そう、それ。何ていうか、そういう雰囲気になって、しなきゃいけない感じがして・・・・した。

    好きとか嫌いとか、はっきり言って何も考えてねぇよ。」

655 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:08:39 ID:xfo.m0uA

クリスタ「それはエレンが、でしょ。ミカサはきっとエレンの恋人になりたいはずだよ。」

エレン「そうなのか?一緒にピアノ弾いてると、あいつキスして欲しそうにするから何回かしたけど。

    別にミカサは何も言ってこないぞ。」

クリスタ「!?・・・最低。自分の気持ちがはっきりしないのにそんなことして。しかも何度も。」

マルコ「まあまあ。僕らが口を挟むことじゃないよ。」

クリスタ「駄目。そうやって関係をはっきりさせないで、遊ぶだけ遊んで飽きたらポイッ。

     捨てられて文句を言う女の子に‘彼女だなんて一度も言ってねぇだろ’って冷たく突き放す。

     最初から責任回避して女の子を弄ぶゲス野郎とエレンは同じだよ。」

マルコ「ク、クリスタ?」

エレン「ひどい言われようだな。」

クリスタ「だって、世の中そんな男ばっかりだって、男を信用しちゃいけないってユミルが言ってたもん。」

マルコ(ユミルの奴、クリスタを男性不信にする気か・・・。)

656 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:09:45 ID:xfo.m0uA

エレン「うーん・・・。キスしかしてないんだけど、それって弄ぶって言うのか?」

クリスタ「どこまでしたかじゃなくて気持ちの問題。好きじゃないのにそんなことしちゃいけません。」

エレン「いや、好きじゃないっていうか・・・・むしろ好きなんだろうけど、でもそこまでじゃないっていうか・・・」

クリスタ「はっきりしないなぁ。」

エレン「俺とミカサは家族として育ったからな。改めてミカサのことどう思ってるか聞かれてもよく分かんねぇよ。」

マルコ「はっきりさせなくてもいいんじゃない?」

クリスタ「マルコ?」

マルコ「逆にはっきりさせた方がいろいろと波風が立って大変だと思うよ。」

エレン「だよな。別に周りに迷惑かけてるわけじゃないし。今まで通りの関係でいるのがベストなんだよ。」

クリスタ「何よ二人して。ミカサが可哀想でしょ。」

マルコ「だってねえ・・・、エレン、ミカサに‘好き’とか‘付き合って’とか言われたことある?」

エレン「ない。」

657 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:11:18 ID:xfo.m0uA

マルコ「ほらね。ミカサも今の状態で構わないんだよ。」

エレン「俺ら訓練で忙しいしな。恋人とか言ってる場合じゃないだろ。」

クリスタ「もう!どうして男の子は何でも曖昧にしようとするのよ。」

エレン「何で女子はすべてに白黒つけたがるんだよ。グレーでいいだろ。」

クリスタ「やだ。女の子ははっきりしたいの。ちゃんと好きって言ってもらいたいの。」

エレン「それはクリスタの意見だろ。」

クリスタ「ちがうもん。一般論だもん。」

エレン「はぁ・・・。仮に俺がミカサに告って恋人同士になったところで、俺は何も変わらないし。」

マルコ「エレン達に対する周囲の反応は変わるだろうけど。・・・それが嫌なんだろ?」

エレン「そうなんだよ。面倒くせぇだろ。冷やかされたり気を遣われたりするの。

    それに今は男同士でわいわいやってる方が楽しいしな。俺はこのままでいたいんだよ。」

クリスタ「ミカサに悪いと思わないの?」

エレン「いやさ、俺だってこのよく分からん状態に後ろめたさは感じてんだぜ。」

658 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:12:40 ID:xfo.m0uA

クリスタ「むぅー・・・、納得できないなぁ・・・。」

マルコ「しょうがないよ。男と女は考え方が基本的に違うから。

    女の子と違って恋愛の優先順位はそんなに高くないんだよ。」

エレン「そうそう。俺は巨人の駆逐、男の友情、睡眠、飯、あといろいろあって、ミカサの順だな。

    調査兵団に入って巨人を駆逐するまで他のことは後回し。」

マルコ「もう少しミカサの順位あげようよ。」

クリスタ「もういいよ。ミカサにはジャンを勧めるから。きっとジャンはミカサが一番だから。」

エレン「怒るなよ。」

クリスタ「別に怒ってないし・・・。ほら、練習しよう。とにかくこの曲仕上げてもらうから。」

エレン「はいはい。マルコもちょっと見ててくれ。お前のアドバイスも欲しい。」

マルコ「いいけど。でもあんまり役にたたないと思うよ・・・。」

♪♪♪♪♪♪・・・・・

クリスタ「ストップ。やっぱり和音、外してるじゃない。通し練習はいいから左手だけやろうよ。」

エレン「えー、部分練習はつまんねぇからヤダ。」

クリスタ「文句言わない。それじゃいつまで経っても弾けないよ。」

659 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:14:26 ID:xfo.m0uA

マルコ「・・・そこまで正確さ求めなくていいんじゃない?」

クリスタ「マルコは黙ってて。」

エレン「ぜひ続きを話してくれ。」

マルコ「・・・もともと不協和音なんだ。音を外したところで誰も分かんないよ。

    右手のメロディーさえしっかり弾けてればミスしたなんて思われない。」

クリスタ「すべての音には意味がある。譜面通りに弾かないのは作曲者への冒涜。そう習わなかった?」

マルコ「でも編曲版でしょ、これ。編曲版をさらにエレンが編曲したって考えれば?」

クリスタ「そんな適当な・・・。」

マルコ「適当でいいんだよ。勢いさえあれば。本番はエレンが弾いてる前でミカサが暴れるんだ。

    観客はそこまで演奏を気にしないと思うよ。」

エレン「そっか適当でいいのか。よし、何か気が楽になった。サンキュ、マルコ。」

660 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:15:50 ID:xfo.m0uA

クリスタ「もうっ!何なのよ。二人して何もかも誤魔化そうとする。」

マルコ「そんなつもりはないけど・・・。」

クリスタ「何でも曖昧にしてぼやかしてはっきりしない!もう、私知らない。」

エレン「クリスタ?どこ行くんだよ。」

クリスタ「いい加減な人は嫌い。今日のレッスンは終わり。」

ガラッ ピシャッ

エレン「・・・何であんなに機嫌悪いんだ?そんなに悪いこと言ったかな、俺。」

マルコ「生真面目な性格だから。適当なのが許せないんだろう。」

エレン「嫌いだってよ。」

マルコ「はは、嫌われちゃったね。」

エレン「楽譜通りに弾かないのってそんなに怒ることなのか?」

マルコ「うーん・・・、そのことよりむしろ僕らの態度に怒ってるね。」

661 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:16:47 ID:xfo.m0uA

エレン「やる気が無いから?」

マルコ「そう、ピアノも恋愛も。」

エレン「ピアノは分かるが、なんで恋愛にやる気出さなきゃなんねぇんだよ。」    

マルコ「クリスタは恋に憧れてたから。

    彼女にとってはどちらも大切で譲れない気持ちがあるんだろうね。

    自分の描く理想の恋愛とエレンたちがあまりにもかけ離れていたからがっかりしたんだよ。」

エレン「ったく、自分の願望を人に押し付けるなよ。」

マルコ「まぁ、僕は普通の女の子らしくて可愛いと思うよ。ここには変にすれた女の子たくさんいるから。」

エレン「なんか分かったような口ぶりだけど、マルコは恋愛経験豊富なのか?」

マルコ「いや全然。でも恋愛小説は片っ端から読んだよ。いつ何が起こるか分からないからね。」

エレン「けっこう気持ち悪いな。」

マルコ「ああ、自覚してる。」

エレン「ぷっ、ははは・・・。お前って真面目なだけじゃないんだな。

    とにかくクリスタのフォローしといてくれよ。機嫌が悪いままじゃ困るから。」

マルコ「そうだね。もう、レッスンしないとか言い出したら大変だ。後で謝っとくよ。」

662 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:17:41 ID:xfo.m0uA

―第二音楽室

サシャ「私も歌の練習まぜて下さい。」

ライナー「構わんが。軍楽隊はどうした?」

サシャ「今日はダンス隊と合同で練習してます。ダンスの曲の時、私は用無しなんです。」

ライナー「ははっ、確かにダンスやってる奴らの前でバトン振り回したら邪魔なだけだな。」

サシャ「そうなんです。だから今日はデスクリに加えて下さい。」

ライナー「おっ、そのチーム名ちゃんと浸透してるのか。」

サシャ「はい。でも格好悪いですね。口にするのが何か気恥ずかしいです。」

ライナー「放っとけ。」

サシャ「そうそう、私もステージで一曲歌うんですよ。」

ライナー「ソロか?」

サシャ「はい。アルミンとマルコが私にぜひ歌って欲しい曲があるって。」

663 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:18:23 ID:xfo.m0uA

ライナー「どういう曲だ?」

サシャ「えーとですね、楽譜の隅にメモったんですよ。長くて覚えれなくて・・・・・・、あった。

    プッチーニ作曲 歌劇『ジャンニ・スキッキ』より『私のお父さん』です。」

ライナー「そういや、お前の親父さんは健在なんだっけ。」

サシャ「はい。娘の私が言うのは何ですが、なかなかダンディーなちょい悪オヤジなんですよ。

    食べ物のことで怒られてばっかりでしたけど。」

ライナー「ははっ、食い意地が張ってるのは昔からなんだな。その曲は父親への感謝の歌ってわけか?」

サシャ「歌詞の意味は聞いてません。とにかく楽しそうにのびのびと歌えばいいからって。」

ライナー「・・・サシャ、はめられてるんじゃないか?」

サシャ「えっ?」

ライナー「多分その歌は、あの二人が口にするのもはばかられる猥褻な言葉のオンパレードだ。」

サシャ「いやいや。あの二人に限ってそんな曲選びませんよ。」

ライナー「分からんぞ。何もしらないサシャが卑猥な歌をうたってる姿をこっそり楽しむ気だ。」

サシャ「そんな!?」

664 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:19:28 ID:xfo.m0uA

ライナー「あいつらだけずるいな・・・。俺も歌詞の意味教えてもらおう。」

サシャ「ちょっとやめて下さいよ。みんな変態ですか。」

ライナー「ははは、冗談だ。訳の分からん言語でエロいこと言われてもな。まったくそそられん。」

サシャ「・・・ライナーはセクハラ親父です。」

ライナー「まぁ内容はともかく、内地の豚野郎どものハートを掴んで寄付金を搾り取れってことだろ。」

サシャ「そ、そうなんですか?」

ライナー「‘ねぇーパパぁ、サシャ今月の生活費足りないんだ’って上目遣いで言えば大丈夫だ。」

サシャ「何が大丈夫なんですか。絶対イヤですよ、そんなことするの。」

ライナー「だって『私のパパさん』だろ。間違いなくそういう歌だ。」

サシャ「パパさんじゃなくてお父さんです。本当にライナーは10代の若者ですか。

    40過ぎの中年オヤジみたいなこと言わないで下さい。」

ライナー「馬鹿野郎。俺が中年オヤジだったら、もっとエスプリの効いたえげつない会話をする。」

サシャ「何で偉そうなんですか、まったく。・・・とにかく勝手に練習させてもらいますから。」

ライナー「そうつんけんするな。発声練習ぐらい付き合えよ。」

665 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:20:37 ID:xfo.m0uA

―第三音楽室

アルミン「えーと・・・、冒頭はドラムとベルトルトのステップの掛け合いで・・・・」

ユミル「で、途中からアニ登場で・・・フィドルが加わるっと・・・、どのタイミングで入ればいいんだ?」

アニ「ステージの中央辺りまで私が来たら弾き始めて。」

ユミル「ステップに合わせなくていいのか?」

アニ「それは大変でしょ。音に合わせる方が簡単じゃない?」

アルミン「じゃあ、ユミルの出だし部分は2小節ほど序奏をつけ足した方がいいね。」

ユミル「そんなことできんのか?」

アルミン「いきなり息を合わせるのは難しいだろ。フィドルの音が先にあった方が入りやすい。

     ちょっとだけ楽譜いじってみるよ。」

アニ「悪いね。」

666 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:21:31 ID:xfo.m0uA

ユミル「フィドルのパートが終わったら、全員登場って訳か。」

アルミン「うん。そこからドラム、ファイフ、フィドルの合奏。それで終了。」

アニ「了解。」

ユミル「そういえばベルトルさんは?」

アルミン「あっちでコニーにダンス教えてる。コニーもタカタカしてみたいんだって。」

667 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:22:31 ID:xfo.m0uA
※  ※  ※  ※

コニー「けっこう難しいもんだな。」カッタ カッタ・・・

ベルトルト「最初はね。でも慣れればどうってことないよ。機敏な動きは得意だろ?」

コニー「でも気をつけの姿勢のまま足だけバタバタさせるのってやりにくいな。

    ついつい上体を動かしちまう。」カッタタ カッタタ・・・

ベルトルト「ははっ、コニー流のステップダンスだね。」

コニー「ベルトルトってでかい図体してるのに意外と器用だよな。ダンスもこなしちまうとは。」カッタッタ・・・ 

ベルトルト「身体動かすのは得意だから。運動に関しては何でも人並みにこなす自信はあるよ。」

コニー「そういやベルトルトは憲兵団入りたいんだっけ。」タッカッタ タッカッタ・・・

ベルトルト「そうだよ。コニーもだろ?」

コニー「そうだ。でも、もし成績が10位以内に入れなかったらどうすんだ?」カッタッタッタ カッタッタッタ・・・

ベルトルト「いや、それはありえないし。」



669 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:23:43 ID:xfo.m0uA

コニー「何だよ、その自信は。・・・まあ順当に行けば確実に10番内だがな。

    けどよぉ、怪我して長期間休むってこともあるだろ?そうなったら順位は下がるぜ。」カタタッカタタッ・・・

ベルトルト「うーん、憲兵団入れなかったら・・・兵士自体、辞めるかもな・・・。」

コニー「そうか。じゃあさ、俺とお前の二人とも憲兵団に入れなかったら・・・・

    一緒に旅回りの芸人になろうぜ。俺がファイフ吹いて、お前が踊る。」カタッカタッカタッカタッ・・・

ベルトルト「えー、やだよ。」

コニー「そう言うなって。俺さ、今まで自分が育った村からほとんど出たことなくってよ。

    いろんな所へ行ってみたいんだ。壁の内側っていってもけっこう広いからな。」カタッタ カタッタ・・・

ベルトルト「・・・『見知らぬ国と人々について』」

コニー「は?何言ってんだ。」カタタタッカッタ カタタタッカッタ・・・

ベルトルト「いや、コニーの話聞いてたらピアノの発表会で弾いた曲思い出してさ。」

コニー「そういや、お前そんな曲弾いてたな。」カッタタタカッタタタタ・・・

670 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:25:17 ID:xfo.m0uA

ベルトルト「うん。あれからもうすぐ一年か・・・。でも、すごく昔のことのように感じるよ。」

コニー「だな。一年後に俺がファイフ吹いてるなんて誰も想像できなかったろうな。」カタタッタタ・・・

ベルトルト「ははっ、本当だよね。僕もダンス踊る日が来るなんて夢にも思わなかったよ。」

コニー「人生どう転ぶか分かんねぇな。けど今から一年後っつったらもう卒業してんのか。」カタタタ カタタタ・・

ベルトルト「なんだかあっという間だね。」

コニー「一年後の俺はどうしてんだろうな・・・」カッタタカッタタ・・・

ベルトルト「・・・誰も未来は予想できないよ。」

コニー「そうだよな・・・って、ごまかすなよ。なぁ、もしもの時は一緒に旅芸人になろうぜ。」カッタタカッタタ・・・

ベルトルト「僕には無理だって。」

コニー「じゃあ、兵士辞めてどうする気だ?もう帰る場所は無いんだろ?」カッタカッタカッタ・・

ベルトルト「あるよ!!!」

コニー「!?うわっ・・・びっくりしたー。急に大声出すなよ。こけるじゃねぇか。」

ベルトルト「ご、ごめん。・・・そうだった、僕の村は今じゃ壁外だからね・・・」

671 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:25:50 ID:xfo.m0uA

コニー「いや、俺のほうこそ悪いこと言っちまったな・・・スマン。」

ベルトルト「いいんだよ。気にしないで。・・・それが僕の現実だから。」

コニー「ベルトルトは強いな。・・・もし自分の村がそんなふうになったらって思うと俺は耐えられねぇよ。」

ベルトルト「強くないよ。・・・ただ何があったとしても生きるしかないだろ?」

コニー「だな。・・・よし、俺も。この先何があっても絶対に生きてやる。」

ベルトルト「ああ。コニーは大丈夫だ。」

コニー「・・・で、旅芸人は?」

ベルトルト「しつこいよ。」

672 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:26:38 ID:xfo.m0uA

―夜 講義棟

マルコ(クリスタは嫌なことがあるとピアノに向かう。だから今日も一人で弾いてるはずだ。)

♪~♪~~♪♪♪~♪♪~

ピアノの音がする方へ足を運ぶ。第一音楽室の窓から仄かな明かりがもれている。

マルコは教室の前まで来たがドアを開けるのを躊躇った。

マルコ(ドビュッシーの『夢』か・・・。幻想的でどこか神々しく神秘的なメロディー。

    美しく儚く、アンニュイな曲想。夢の世界を漂う不安定さを感じさせ心が波打つ。

    ・・・そうえいば、この教室から始まったんだ。クリスタの『夢』を叶えるために。)

演奏が終わり、ドアを開ける。

673 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:27:53 ID:xfo.m0uA

ガラッ

マルコ「こんばんは。入ってもいいかな。」

クリスタ「・・・・」プイッ

マルコ「はは・・・、勝手にお邪魔するよ。」

マルコは窓際に置いてある椅子に腰掛けた。

マルコ「あのさ、今日は悪かったよ。余計な口出しして・・・」

クリスタ「・・・・・」

♪♪ ♪♪~ ♪♪ ♪♪~

クリスタは無言のまま突然、鋭い音を響かせ弾き始めた。陰鬱で嵐のように吹き荒れるメロディー。

マルコ(うっ、まだ怒ってるなー。これってショパンの『ピアノソナタ第二番 葬送』だよな。

    死ねばいいのにっとか思われてるのかな・・・・・。さすがにへこむ。

    でも第一楽章からちゃんと弾いてくれたからまだマシなのかな。

    いきなり第三楽章の「葬送行進曲」弾かれたら僕は立ち直れないよ・・・。)

674 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:28:57 ID:xfo.m0uA

しばらくの間、絶望と激昂の入り混じった激しい音の濁流が教室を満たした。

マルコ(でも、どんな曲を弾かれても、クリスタのピアノが好きだって思う自分が悲しい・・・)

急にクリスタは手を止めた。

クリスタ「ぷっ・・・・あははははは。」

マルコ「クリスタ?」

クリスタ「冗談だよ。そんな暗い顔しないで。」

マルコ「怒ってるんじゃないの?」

クリスタ「んー・・・、そりゃあね、気に入らないことはあるけど。ピアノを弾いたら頭が冷えたかな。」

マルコ「そっか、良かった。」

クリスタ「どうも私は頑固な性格らしくって。融通が利かないってユミルによく指摘されるんだ。」

マルコ「まっ、誰にでも譲れないものはあるよね。」

クリスタ「そっ。ピアノに関しては口を挟まれるとついカッとなっちゃう。」

マルコ「・・・ごめん。」

675 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:29:49 ID:xfo.m0uA

クリスタ「ううん。私が熱くなりすぎてた。エレンを何とかしなきゃって勝手に思い込んでて。

     本人にしてみたら大きなお世話だったよね。」

マルコ「確かに、ちょっと厳しい先生になってたね。」

クリスタ「それにね、一番大切なことを忘れかけてた。」

マルコ「大切なこと?」

クリスタ「そう。ピアノを楽しむこと。ステージを成功させようとか、エレンに格好つけさせようとか。

     くだらない見栄を張ろうとして私が一番ガチガチになってた。

     楽しくないと音楽じゃないのにね。」

マルコ「うん。演奏者と聴衆が一緒に楽しんでこそ本当の音楽だ。」

クリスタ「だから私も譜面に囚われないで、エレンには自由に弾いてもらうことにする。」

マルコ「ははっ、180度方向転換か。思い切ったね。」

クリスタ「そう、女の子は潔いのです。男の子と違ってね。」

マルコ「・・・やっぱりそっち。」

676 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:30:46 ID:xfo.m0uA

クリスタ「そうだよ。何で男の子は、はっきりしないんだろうって腹が立った。

     恋人未満の曖昧な態度をとり続けるエレンはズルイなぁって、逃げてるなぁって・・・。

マルコ「女の子はそう感じても仕方ないか。」

クリスタ「でもね、考えてみたらエレンって馬鹿正直でしょ。

     ミカサに対していい加減な約束はできないから保留にしてるのかなって思った。」

マルコ「うーん、エレンはそこまで深く考えてはなさそうだけど・・・。

    でもさクリスタの言う通りだよ。後先考えず簡単に付き合う男の方が無責任だと僕は思う。」

クリスタ「うん。・・・でもね、恋人じゃないのにキスするのは許せない。」

マルコ「しょうがないよ。その場の勢いとかさ。多分いろいろあるんだよ。」

クリスタ「何よそれ。少しは自制しようよ。」

マルコ「無理。だって男の子だもん。」

クリスタ「・・・ぷっ、あははははは。マルコっぽくない。だもんって・・・ふふふっ・・・」

マルコ「そこまで笑わなくても・・・。」

677 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:31:53 ID:xfo.m0uA

クリスタ「よく分かんないけど男の子ってそういうものなんだ。」

マルコ「人によるけどね。」

クリスタ「マルコは?」

マルコ「・・・そういうこと聞くかな。」

クリスタ「どうなのかなって思って。」

マルコ「僕は・・・手の早い紳士にはなりたくない、かな。」

クリスタ「ふふっ、懐かしいね。ここでワルツ弾いてくれたんだよね。」

マルコ「あれから一年が経つのか。あっという間だ。」     

クリスタ「・・・一年経っても紳士から手紙が一つも来ないので、淑女は大変ご不満です。」

マルコ「クリスタ・・・。」

クリスタ「なんちゃって。・・・言ってみただけ。」

マルコ「・・・・・紳士はとても臆病なので手紙を書く勇気がありません。

    ・・・代わりにピアノを弾くことにしました。」

クリスタ「マルコ?」

678 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:33:08 ID:xfo.m0uA

マルコは立ち上がり、ピアノに近づいた。

ピアノの椅子に座っているクリスタの後ろに立ち、鍵盤に手を伸ばす。

身体は直接触れないものの、クリスタの背中に覆いかぶさる形になる。

クリスタ「ちょっと・・・近すぎなんだけど」///

マルコ「あっ、ごめん。適当に弾くから椅子座らなくてもいいかなって。」

クリスタ「適当って・・・。ひどくない?」

マルコ「いや適当っていうかピアノ曲じゃないからさ。うろ覚え。」

クリスタ「そんな曲ここで弾くかな。・・・なんかがっかり。」

マルコ「まぁまぁ・・・。」

♪~♪~~♪~♪~~

679 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:34:06 ID:xfo.m0uA

明るく軽快な前奏。楽しげな旋律を奏でながらマルコは口を開く。

マルコ「知ってるよね、このアリア。名曲だから。」

クリスタ「・・・うん。」

マルコ「・・・そういうことなんだ。」

クリスタ「・・・・・・」///

マルコ「でも、クリスタは何も言わないで。」

クリスタ「・・・どうして?」

マルコ「僕はさ、憲兵団に入ることが最優先なんだ。それまでは無責任な約束はできないから。

    もし僕が無事に卒業して憲兵団に入れたら、その時返事を聞かせて欲しい。」

クリスタ「・・・気が変わるかもね。」

マルコ「・・・・・・そうなったら仕方がない。諦めるよ。」

クリスタ「違う、マルコの。」

マルコ「・・・いや、それはないから・・・」

680 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:35:21 ID:xfo.m0uA

クリスタ「ふふっ、マルコ知らないんでしょ。」

マルコ「何を?」

クリスタ「このアリアを歌っているのは浮気しまくる少年だって。」

マルコ「あっ・・・・・そうだっけ?」

クリスタ「もう!だからうろ覚えで弾かないでよ。」

マルコ「はははっ、ごめん。まあ、作品背景は気にしないでよ。」

クリスタ「気にするよ。・・・・・・卒業したらもう一度ちゃんとした曲弾いてね。」

マルコ「・・・うん。リベンジさせてよ。」

若さと瑞々しさに溢れたメロディーに包まれて二人は微笑んだ。

モーツァルト『フィガロの結婚』より「恋とはどんなものかしら」。

恋に目覚めた少年が、心の苦しみを愛する女性に切実に訴える。


Voi che sapete Che cosa e amor, 恋ってどんなものなのか 貴方は知ってるよね
Donne vedete S'io l'ho nel cor. 僕の胸が苦しいのは恋のせいかな ねぇ、教えてよ

681 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/02(金) 00:36:35 ID:xfo.m0uA

それからしばらくは怒涛のように忙しい毎日が過ぎていった。

軍楽隊、合唱、ダンス・・・、それぞれの役割を果たすべく訓練の合間を縫って練習に励んだ。

マルコとアルミンはステージ設営の打ち合わせなど事務方の仕事もあり多忙を極めた。

月日はあっという間に流れ、ついにチャリティーコンサート当日を迎えた。


688 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:02:48 ID:INT1qdbE

―エルミハ区

街についた一行は乗ってきた馬を厩舎につなぎ、会場となる王立公園を目指し大通りを歩いていた。

ジャン「馬で飛ばして三時間か。結構疲れるぜ。

    マルコとアルミンは打ち合わせで何回かこの街来たんだろ?ご苦労だったな。」

アルミン「僕らは駅馬車で来てたから。時間はかかったけど疲れはしなかったよ。」

マルコ「今日は人数が多いからさ、特別に兵団の馬の使用を許可してもらったんだ。」

ジャン「そういや、ドラムとかでっかい荷物はどうしたんだ?」

アルミン「軍楽隊の楽器は後から荷馬車で届く予定だよ。」

ジャン「さすがアルミン。ぬかりねぇな。」

ベルトルト「・・・僕らのコンサートのポスターがいたる所に貼られてるね。・・・恥ずかしいな。」

マルコ「憲兵団が気合を入れて宣伝してくれたんだろう。」

アルミン「人がたくさん来たほうが寄付金は多く集まるからね。

     寄付金が多ければ多いほど憲兵団の取り分も増えるから・・・。」

689 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:03:48 ID:INT1qdbE

コニー「すっげーな、おい。道が全部レンガか石畳だぜ。地面が恋しくならねぇのかな。」

マルコ「この方が土ぼこりがたたないからね。」

コニー「これじゃ、ガキんちょが遊べねぇよ。Sケンとかケンパとか線が引けないから無理じゃん。」

エレン「ははっ、懐かしいな。俺たちもよくやった。」

アルミン「うん。日が暮れるまで外で遊んでたね。」

ジャン「はっ、田舎もんだな。大きな街じゃガキは通りで遊ばねぇんだよ。」

コニー「つってもジャンの家はトロスト区だろ。ここの奴らと比べたらお前も田舎もんだ。」

ジャン「村出身の奴に言われたくねぇよ。」

サシャ「じゃあ、街の子のジャンに質問です。建物の窓の内側に時々布がぶら下がってます。あれは何ですか?」

ジャン「布?・・・・・・本当だな。洗濯物か?」

クリスタ「あれはカーテンだよ。」

サシャ「カーテン?」

クリスタ「太陽の光を遮ったり、部屋の中を見られないように目隠しに使うの。」

690 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:05:18 ID:INT1qdbE

エレン「へぇー、俺も初めて見た。」

ミカサ「私たちの住んでいた地区では見たことがない。」

ジャン「内地は潤ってんな。あんな風に無駄に使える布なんか俺らにはねぇよ。」

ライナー「ああ、身体を隠すのに精一杯だ。稀にそれすら叶わない時もある。」

ベルトルト「それは個人的な事情だよね。」

サシャ「クリスタはもの知りですね。もしかしてクリスタのお家にはカーテンがあったんですか?」

クリスタ「えっ・・と・・・無いよ、そんなの・・・。」

ユミル「サシャと違ってクリスタは勉強熱心だからな。本にでも書いてあったんだろ。」

クリスタ「そう!本で知ったの。」

サシャ「もしかして内地の名物とかも知ってますか?」

クリスタ「名物って・・・・・食べ物で?」

サシャ「もちろんです。折角内地に来たんだからここでしか味わえない物を食べたいです。」

ユミル「ばーか。そんなことしてる暇はねぇよ。公演終わったら即撤収だ。」

691 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:08:35 ID:INT1qdbE

サシャ「そんな・・・!?アルミン、少しは自由時間とれないですか?」

アルミン「ごめんね。早く引き揚げないと今日中に帰れなくなるから。」

サシャ「あぅぅぅ・・・・残念です。」

ミカサ「またみんなで来ればいい。今度はちゃんとした旅行として。」

サシャ「そうですね!二度と来れないってわけじゃないですもんね。」

アルミン「それいいね。訓練兵卒業したらみんなで一緒に旅行しようか。」

ジャン「卒業旅行か・・・、悪くねぇ。」

コニー「俺も、俺も。」

マルコ「ライナーたちも、もちろん参加するよな。」

ライナー「ああ、楽しみだな。」

ベルトルト「・・・・・う、うん。」

692 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:09:27 ID:INT1qdbE

アニ「馬鹿馬鹿しい。私はごめんだよ。」

エレン「んな冷てぇこと言うなって。卒業したらみんなバラバラになっちゃうだろ。

    簡単には会えなくなるぜ、きっと。」

アニ「別に会わなくてもいいし。」

エレン「お前は良くても、俺が会いたいんだよ。」

アニ「・・・・・・アンタさぁ、もう少し自覚した方がいいよ。その天然タラシっぷり。」

クリスタ「うん。隣で聞いててドキッとしちゃった。」

ユミル「ほらほら、ミカサが恐い顔してるぞ。」

693 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:10:13 ID:INT1qdbE

エレン「? 何か悪いこと言ったか、俺。」

ミカサ「別にかまわない。エレンはそういう人。誰にでも優しくできる。」

エレン「じゃ、怒るなよ。」

ミカサ「・・・エレンは私にも会いたい?その・・・卒業したあと・・・」

エレン「卒業後もどうせお前は俺に付いて来るんだろ。嫌でも毎日顔合わせる。」

ミカサ「・・・・・うん。」ニコッ

ジャン「だあぁぁぁぁぁ!!!お前らなんなの?頼むから俺の前でイチャイチャすんな。」

マルコ「ははっ。エレンは何で普通にあんなこと言えるんだろうな。」

ライナー「何も考えてねぇからだろ。」

694 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:11:56 ID:INT1qdbE
※  ※  ※  ※  ※

ミーナ「ハンナ、置いてかれちゃうよ。ほら、早く。」

ハンナ「ごめん、ちょっと待って。」

ミーナ「さっきからキョロキョロして何か探してるの?」

ハンナ「探してるっていうか、歩いてる女の子の服装とかお店で売られてる洋服のチェックしてるの。」

ミーナ「へぇ、お洒落に興味あるんだ。」

ハンナ「うん。自分で服作る時の参考にしようと思って。」

ミーナ「作るって・・・、ハンナ洋裁できるの?」

ハンナ「えっ?ミーナできないの?」

ミーナ「無理無理。ボタン付けるのがやっとだよ。」

ハンナ「じゃあ今まで着てた服は?」

ミーナ「ほとんど古着だよ。新品は高くて買えないもん。」

ハンナ「でしょ。買うと高いから自分で作るんだよ。」

ミーナ「すごーい。私にも作ってよ。」

695 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:12:40 ID:INT1qdbE

ハンナ「いいよ。気に入った服地を持って来たら。でも今は手元にミシンがないから時間かかっちゃう。」

ミーナ「じゃあ全部手縫いで作るの?」

ハンナ「そうだよ。それしか方法がないから。」

ミーナ「うーん、ミシン欲しいね。」

ハンナ「ミシンがあったらなあ。スカート一枚くらい半日で作れるのに。」

ミーナ「すごっ。職人みたい。」

トーマス「おーい、お前ら早く来いよ。」

フランツ「ほら、話しこんでないでさっさと歩く。」

ミーナ「フランツがうらやましい。」

フランツ「なんで?」

ミーナ「私もハンナみたいな家庭的な子お嫁さんに欲しい。」

フランツ「ははっ、ミーナも頑張れよ。嫁さんに欲しいって言ってもらえるように。」

ミーナ「だってさー、不器用だし、頭もそんな良くないし、顔だってぱっとしないし・・・。

    私って取り柄がないもん。」

696 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:13:42 ID:INT1qdbE

ハンナ「そんなことないよ。ミーナはとっても優しい性格してるじゃない。」

トーマス「そうそう。それに趣味は人それぞれだからさ。

     きっとミーナみたいな目立たない子がツボの男もいるって。」

ミーナ「フォローになってないし。ぜんぜん嬉しくないよ。」

フランツ「でも人の好みって不思議なんだよなぁー。・・・・・おーいダズ、ちょっとこっち来てよ。」

ダズ「何か用?」

フランツ「お前、彼女できただろ。」ボソッ

ダズ「なっ、なんでそれを知ってるんだよ」///

トーマス「マジで!?」

ミーナ「うそ!?」

フランツ「夜こっそり宿舎抜け出して、女の子と会ってるの見かけたんだ。」

ダズ「えへへ・・・」///

トーマス「ぐぁっ・・・・・なんだろう、この敗北感・・・・・」

ミーナ「ちょっ、相手はどんな子よ。もしかして目が悪いの?」

ダズ「ひどいなぁ。ごく普通のカワイイ子だよ。」///

697 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:14:47 ID:INT1qdbE

ハンナ「どういうきっかけなの?」

ダズ「ほら俺、毎朝起床時間にビューゲル吹いてるだろ。そしたら、毎日ご苦労様って声掛けられて。」///

フランツ「へぇー、で仲良くなったんだ。」

ダズ「うん。すごくいい子なんだ。」///

トーマス「・・・俺がビューゲル吹けばよかった・・・」

ミーナ「・・・ファイフじゃ誰も食いついてこないのに・・・」

フランツ「ダズの良さが分かるんだ。よっぽど人間ができてる子なんだろうな。」

ハンナ「フランツ、さらっと失礼なこと言わないの。」

ダズ「いいんだ。その通りだから。ビューゲル吹いて本当に良かったって心から思うよ。」

トーマス「くっそ・・・、誰だよ相手。教えろよ。」

ダズ「やだよ。秘密だ。」

ミーナ「なんで。」

ダズ「だって・・・、俺の彼女だなんてバレたら、きっと恥ずかしい思いをするだろ・・・」

ハンナ「ダズ・・・。」

トーマス「お前・・・・・悲しいな。そんなふうに自分のこと思うなよ・・・。」

698 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:15:38 ID:INT1qdbE

ダズ「いいんだ。自分が嫌われてるの分かってるから。彼女まで俺と同じ目で見られたら可哀想だろ。」

ミーナ「相変わらず卑屈だなぁ・・・。」

ハンナ「彼女が秘密にしたいって言ってるの?」

ダズ「ううん。でも周りから余計なこと言われたくないから・・・。頼むからこのことは内緒にしておいてくれよ。

   俺なんかに彼女ができたって知られたら、余計いじめられちまう。」

フランツ「分かったよ。誰にも言わない。」

トーマス「幸せになれよ・・・。お前は幸せになるべきだ・・・。」

ダズ「へへ・・・、ありがとう。」

ミーナ「・・・ダズに負けてられないね!私もがんばる。ハンナ、私に洋裁を教えて。」

ハンナ「いいけど、急にどうしたの?」

ミーナ「女子力アップしてモテモテになってやるんだから。」

トーマス「・・・別に頑張らなくても今のままでいいけどなぁ・・・」

ミーナ「何か言った?」

トーマス「いや、何でも。」

フランツ「そんなことより今日の心配しようよ。おっ、すぐそこが会場みたいだ。」

699 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:16:42 ID:INT1qdbE

―王立公園

サシャ「広いですねー。あっ、大きな噴水がありますよ。」

クリスタ「花壇のお花もきれいに手入れされてるね。薔薇のアーチまである。」

ミカサ「舗道は全部、幾何学模様のモザイクが敷き詰められてる。」

エレン「でっかい池まである。後でボート乗りてぇな。」

コニー「なんかさ、きれいに整いすぎてて不自然だ。

    たくさん木を植えて森っぽくしてあるけど俺はここ好きじゃねぇな。」

ジャン「仕方ねぇだろ。人工的に作ってあんだから。しっかし金のかかった公園だな。」

エレン「おっ、広場が見えてきた。」

ライナー「立派な舞台だな。おっ、ちゃんとグランドピアノが用意されてるな。」

ベルトルト「椅子並べすぎじゃない?観客どれだけ来るの。」

アニ「今は11時か・・・。何時から始まるんだっけ?」

ベルトルト「えっと、15時開演だったかな。」

アニ「そう・・・。この客席が全部埋まったら圧巻だろうね。」

ベルトルト「・・・・考えただけで緊張するからやめてよ。」

700 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:17:38 ID:INT1qdbE

サシャ「みなさん見てください!!広場の周りに食べ物の屋台がいっぱい出てます!!」

ライナー「おっ、酒も売ってるな。」

コニー「今日は祭りでもやってるのか?」

ベルトルト「祭りじゃなくてさ、僕らを肴に一杯やる気なんだろう。・・・気が滅入るな。」

ジャン「・・・ちっ、見世物にされる気分ってあんまりよくねぇんだな。

    ・・・サシャ、だいぶ前のことだが公園で歌わせて悪かったな・・・・。」

サシャ「ふふっ、気にしてないですよ。でも、お詫びに何かおごって下さい。」

ジャン「気にしてねぇんだろ?」

サシャ「はい。でもおごって下さい。」

ジャン「気にしてないのに?」

サシャ「おごって下さい。」

701 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:18:25 ID:INT1qdbE

ジャン「・・・・・・しょうがねぇ。何が欲しいんだよ。」

サシャ「さすがジャンです。そうですねぇ、色々あって迷いますねー。」

ミカサ「サシャ待って。自由行動はアルミンの許可をとってから。」

ジャン「だそうだ。残念だったな。」

サシャ「そんな・・・。あれ?アルミンはどこ行ったんですか?」

エレン「マルコと一緒に憲兵団の担当者に挨拶してくるって先に行った。」

ミカサ「多分ステージの裏側にいると思う。私たちも行きましょう。」

702 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:20:09 ID:INT1qdbE

―ステージ裏

マルコ「すみません。何から何まで準備して頂いて。」

憲兵A「仕事だからな。気にするな。」

アルミン「えっと、お願いしていた小物類はどちらに?」

憲兵A「ああ、募金箱とかか。もうすぐ他の者が届けに来る。」

アルミン「ありがとうございます。」

憲兵A「とりあえず、飯でも食ってゆっくりしてろ。」

マルコ「リハーサルしても構いませんか?」

憲兵A「好きにしろ。俺はこれから休憩時間だから。二時間ぐらいで戻る。」

マルコ「はっ。了解です。」

703 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:20:50 ID:INT1qdbE

二人はステージ裏から外に出る。

エレン「よう、ご苦労さん。どうだった?」

アルミン「大丈夫。問題ないよ。」

サシャ「アルミン!!すごくお腹が空きました。昼食の許可を下さい。」

アルミン「うん。みんなお昼にしよう。」

マルコ「12時からリハーサルするから。他の参加者にも伝えてくれ。」

704 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:21:42 ID:INT1qdbE

―公園のベンチ広場

サシャ「おいしいです!!屋台でこんなご馳走があるなんて!!」モグモグ

コニー「サシャは何食ってんだ?」モグモグ

サシャ「ガレットです。なんと、生ハムが入ってるんですよ。」モグモグ

ジャン「ちっ、一番高いヤツ選びやがって・・・。」モグモグ

サシャ「ありがとうございます。」モグモグ

コニー「うまそうだな。俺にも一口くれよ。」モグモグ

サシャ「いやですよー。コニーは何食べてるんですか?」モグモグ

コニー「俺?ドルネケバブ。なかなかスパイシーでいけるぜ。」モグモグ

サシャ「お肉入ってるんですか?」モグモグ

コニー「おう。多分羊肉だ。」モグモグ

705 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:22:28 ID:INT1qdbE

サシャ「じゃ、交換しましょう。・・・はい。」

コニー「いいぜ。・・・ほれ。」

サシャ「パクッ・・・おお!!これもおいしいです。羊の臭みがまったくありません。」モグモグ

コニー「パクッ・・・やっべー、生ハム初めて食ったぜ。うめぇな、これ。」モグモグ

ジャン「なぁ、お前ら。何で平気で食いかけのもの交換できるんだよ。」モグモグ

サシャ「ジャンは潔癖症なんですか?」モグモグ

ジャン「いや、そうじゃなくてよ・・・」モグモグ

コニー「別にうつる病気持ってないし平気だ。」モグモグ

ジャン「そうか・・・。俺にもお前らみたいな純真な頃があったんだろうな・・・」

サシャ「ジャン?遠い目をしてますよ。」モグモグ

コニー「ジャンも交換したいのか?」モグモグ

ジャン「いや、結構だ。」

706 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:23:15 ID:INT1qdbE
※  ※  ※  ※  ※

エレン「それにしてもすごい屋台の数だな。」モグモグ

アルミン「憲兵団がさエルミハ区中の屋台を集めたんだ。高い出店料をとってね。」モグモグ

ミカサ「それでこんなに多いのね。」モグモグ

アルミン「そうなんだ。憲兵団は全て金儲けにしようとする。」モグモグ

マルコ「まぁ、そう言うなよ。こうやってイベントを開くと人が集まってお金が動く。

    少しは経済の活性化に寄与できたんじゃない?」モグモグ

アルミン「でもさ、金持ちから金持ちへお金が動くだけじゃないか。貧困層には何の恩恵もないよ。」モグモグ

マルコ「経済活動が停滞してるよりはマシさ。大金をタンスにしまい込んでるのが一番タチが悪い。」モグモグ

エレン「お前らさ、そんなつまんねぇ話しておもしろいのか?」モグモグ

ミカサ「つまらないけど大切な話。エレンも参加すべき。」モグモグ

マルコ「だからさ、貯蓄するだけして動いてないお金を、表に引っ張り出さなきゃいけないんだよ。」モグモグ

アルミン「表に出したところで、また金持ちのところへ行くだけだよ。」モグモグ

707 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:24:27 ID:INT1qdbE

マルコ「そんなことはない。お金が動くってことは消費するってことだ。

    つまり、需要と供給の関係ができる。供給するためには新たに雇用が必要になる。

    そうすればウォールマリア内に溢れる失業者も少しは減るんじゃないかな。」モグモグ

アルミン「金持ちがお金を使いたくなる娯楽がないのが問題なのかな・・・。」モグモグ

マルコ「そう。地下街にあるくらいだ。でもそんなところ一部の人間しか遊びにいかないだろ?」モグモグ

エレン「ウォールマリアにカジノでも作ればいいんじゃね?」モグモグ

アルミン「治安が最悪になりそうだね・・・。でもウォールマリアに何か作るってのはいい考えだ。」モグモグ

マルコ「そう、何でもいいんだよ。富裕層がわざわざ出向いてお金を落としたくなるようなモノなら。

    あとは世の中の気分だね。もう少し明るくならないとさ、景気は上向かない。」モグモグ

アルミン「で、僕らの出番ってわけ?音楽で世の中を明るくするの?」モグモグ

マルコ「ははっ、そこまでは考えてなかったけど。でも、そうなったらいいな。」モグモグ

アルミン「マルコは前向きだね。体制に不満はないの?」モグモグ

708 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:25:30 ID:INT1qdbE

マルコ「僕はさ、今の体制の枠組みの中でできることをやれば現状はよくなると思う。」モグモグ

アルミン「僕は枠組みを壊さないと良くならないと思ってる・・・」モグモグ

マルコ「壊すって?」モグモグ

アルミン「クーデターでも起こして、体制をぶっ壊してやろうかと。」モグモグ

マルコ「ははっ、革命か・・・・・・冗談だろ?」

アルミン「うん、冗談・・・。

     でも僕は・・・僕の両親を殺した今の体制をやっぱり許すことができないんだ・・・。」

ミカサ「アルミン・・・。」

エレン「・・・平気そうな顔してたけど、お前やっぱり引きずってたんだな・・・。」

マルコ「・・・アルミン、お前は軍のトップを目指せよ。」

アルミン「マルコ?」

マルコ「ただの訓練兵じゃ何の力もない。何を言っても無駄だ。

    けど中央に意見できるくらい影響力のある人間になれば、体制を変えられるかもしれない。」

709 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:26:30 ID:INT1qdbE

エレン「なるほどな・・・。じゃあ、俺は調査兵団の団長を目指すぜ。」

ミカサ「私はエレンとアルミンを支えよう。」

アルミン「そんなトップだなんて・・・僕には無理だよ。」

エレン「諦めたらそこで終わりだろ。やれるとこまでやってやろうぜ。」

アルミン「・・・随分長い道のりだね。」

ミカサ「でも、挑戦する価値は十分ある。」

エレン「マルコはもちろん憲兵団のトップ目指すんだろ?」

マルコ「ははっ、僕はそんな大それた野望は持ってないよ。」

アルミン「人を焚き付けといてそれはないよ。」

エレン「マルコも上を目指そうぜ。そして、俺たちが世の中を変えるんだ。」

アルミン「うん。・・・そこの頃にはみんなお爺ちゃん、お婆ちゃんになってるだろうけど。」

ミカサ「ふふっ、人生をかけて追いかける夢。素敵だと思う。」

マルコ「おっ、そろそろ12時がくるね。リハーサル始めよう。」

710 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:28:13 ID:INT1qdbE
―ステージ裏

訓練兵一同が揃う。

アルミン「えーと、楽器類は・・・・・届いてるね。良かった。」

マルコ「憲兵団に頼んだ備品も用意されてるね。じゃあ、各自準備をしてくれ。

    観客が来る前にリハーサルを済ませよう。」

出演者たちはそれぞれ用意を始める。

バタバタ ゴソゴソ

マルコ「ここにタイムスケジュール貼っとくから。大まかな動きはそれで確認して。

    分からないことがあったら直接聞いてくれ。」

アルミン「舞台に直接出ない人は客席から見ててね。おかしな所がないかチェックして欲しい。」

ジャン「おっ、サーベルここにあった。はいよ、ミカサ。」

ミカサ「ありがとう。・・・・って、これ!?」

ジャン「どうかしたか?」

ミカサ「いつもの模造刀と違う。・・・本物の剣・・・。」

711 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:29:02 ID:INT1qdbE

ジャン「はっ?そんなわけねぇだろ。」ビュン ガスッ

木製の柱に向かって軽く振った剣は見事に突き刺さる。

ジャン「・・・・・・・!?」

ミカサ「言ったでしょ。本物だって。」

ジャン「マルコーーー!!!!」

マルコ「うるさいな、大声出して。何?」

ジャン「お前、この剣本物じゃねぇか!!軽く振って柱にぶっ刺さったぞ!!」

マルコ「えっ!?そんなわけ・・・・。本当だ刺さってる・・・。」

ジャン「模造刀じゃねぇのかよ!?」

マルコ「いや、憲兵団の担当者には模造刀を用意して欲しいって依頼したはずだ。」

アルミン「トラブル発生?」

マルコ「備品の依頼書の控えある?」

アルミン「ちょっと待ってね・・・・・・あった、これだ。」

マルコ「・・・・ちゃんと模造刀になってるね。担当者が戻って来たら確認しよう。」

712 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:29:49 ID:INT1qdbE

ミカサ「練習で使用していた剣は?」

マルコ「極力積荷を減らすために持ってきてないんだ。ごめん。迂闊だった。」

ジャン「どうすんだよ。」

マルコ「・・・剣舞はリハーサル無しで。」

ジャン「ぶっつけ本番かよ!」

マルコ「仕方ないだろ・・・。もし模造刀が用意できなかったら演技自体中止だ。」

ジャン「ふざけんな!!あんなに練習したのに!!」

マルコ「命の危険を冒してまでやることじゃない。」

ミカサ「・・・とにかく担当者が来るのを待ちましょう。それからどうするか決めればいい。」

ジャン「・・・くそっ。」

713 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:30:23 ID:INT1qdbE
リハーサルは剣舞を除き滞りなく進んだ。

時間は14時。開演まで一時間を切ったところでやっと憲兵団の担当者が戻ってきた。

マルコ「すみません。依頼させて頂いた備品に不備があったのですが・・・。」

憲兵A「何だ?」

マルコ「模造刀を用意して頂くよう依頼書には明記したのですが、実際に届いたのは本物のサーベルです。」

憲兵A「そうか、それはすまなかったな。」

マルコ「今から用意して頂けないでしょうか?」

憲兵A「うーん、もう時間がないだろ。お前らで何とかしろ。」

マルコ「そんな!?」

憲兵A「文句あるのか?たかが訓練兵のお遊びだろ。手伝ってやってるだけでもありがたいと思え。」

マルコ「・・・・分かりました。自分たちで考えます・・・・」

714 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:31:05 ID:INT1qdbE
―ステージ裏

コニー「うっひょーーー。すっげー人が集まってきたぜ。」

ユミル「開演30分前でこれか。満席になるな、こりゃ。」

クリスタ「みんな楽しみにしててくれたのかな。嬉しいな。」

ベルトルト「・・・・頼むからこれ以上お客さん来ないでくれ・・・・。」ブルブル

アニ「・・・びびりすぎ。しっかりしなよ。」

ライナー「ははっ、ベルトルトは相変わらずだな。」

ベルトルト「・・・こんなたくさんの人見たことないよ・・・」ブルブル

ライナー「アニ、ベルトルトの緊張を解く方法を教えてやる。耳をかせ。」

アニ「何だい、それ?」

ライナー「ヒソヒソヒソヒソ・・・・」

アニ「・・・・蹴られたいの?」

ライナー「ふざけてるわけじゃねぇよ。出番になってもベルトルトがあれじゃ困るだろ?

     一応お前には最終手段を教えとこうと思ってな。」

アニ「はっ、くだらない・・・。」

715 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:32:43 ID:INT1qdbE

アルミン「あっ、マルコが戻ってきた。」

ジャン「どうなったんだ?」

マルコ「・・・・すまない。剣舞は中止だ。」

ジャン「はぁ・・・なんなんだよ。ったく、俺の3ヵ月間を返せよ。」

エレン「じゃ、俺は?」

マルコ「エレンには演奏してもらう。」

エレン「そうか・・・仕方ねぇな。ミカサたちに怪我させるわけにはいかねぇもんな。」

ミカサ「・・・・・・・・」シュン

ジャン(クソッ・・・ミカサが落ち込んでるじゃねぇか。ミカサだって一生懸命練習したんだ。

    それがエレンのためってのは気に食わないが・・・。)

マルコ「クリスタ、プログラムの変更がある。」

ジャン(ミカサいいのか?エレンと一緒の舞台に立てるのを楽しみにしてただろ・・・。)

クリスタ「えっ?急だね。どうしたの?」

ジャン(お前の思いはそんなものなのか?・・・・・・・・違うだろ!!!)

716 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:34:07 ID:INT1qdbE

マルコ「ちょっと手違いがあって・・・。エレンの独奏で。剣舞は『やるぜ!!!』

マルコ「ジャン?」

ジャン「ミカサと俺の二人でやる。マルコは見学しとけ。」

ミカサ「・・・・ジャン。」

マルコ「何言ってんだよ。そんな危険なこと舞台の上でやらせるわけにはいかないだろ。」

ジャン「ミカサが怪我をすることはまず無い。練習でも無傷だ。」

マルコ「・・・ジャンは練習でさえ傷だらけじゃないか。」

ジャン「あんなのかすり傷だ。」

マルコ「今日はかすり傷じゃ済まないから言ってんだよ!!!」

ジャン「いいんだ。俺は大怪我したって。ミカサを舞台に上げてやりたいんだよ。」

マルコ「ジャン・・・・お前馬鹿だろ・・・・。」

ジャン「できるだけ舞台の上を血で汚さねぇようにするからよ。・・・頼む、やらせてくれ。」

717 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/03(土) 15:34:51 ID:INT1qdbE

エレン「俺はどっちでも構わねぇけど。」

ミカサ「ジャンに覚悟があるなら・・・・・私もやらせてほしい。当てないように細心の注意を払うので。」

アルミン「緊張感ありすぎだね・・・。」

クリスタ「エレンには『剣の舞』じゃなくって、リストの『死の舞踏』弾いてもらえば良かったかな・・・。」

マルコ「クリスタ!」

クリスタ「ごめん・・・。つい、頭に浮かんじゃって・・・。」

ジャン「で、やっていいのか?」

マルコ「・・・・・ああ。ただし絶対にミカサの間合いには入るな。迫力とか無くていいから。

    ・・・・とにかく怪我だけは避けてくれよ。」


危険と不安をはらみつつ舞台の幕が切って落とされた。


728 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:11:49 ID:LhRLEI82

※  ※ ステージ上 ※  ※

マルコ「本日は私たちウォールローゼ南方面駐屯地・訓練兵団のチャリティーコンサートにご来場頂き、

    誠にありがとうございます。

    この会場で皆様にお会いできますことを団員一同、心より楽しみに練習に励んで参りました。

    若さの溢れる瑞々しいステージを最後までごゆっくりお楽しみ下さい。

    なお、演奏の合間に募金箱を持った団員が、皆様の座席の間を回らせて頂きます。

    訓練兵団の文化的活動にご理解頂ける方は、ご支援の程よろしくお願いいたします。     

    最後になりましたが、本日のコンサートの開催にあたり、惜しみないご協力を頂きました

    憲兵団のみなさまに心より御礼申し上げます。     

    それでは、皆様大変お待たせ致しました。チャリティーコンサートの開演です。」

超満員の会場にビューゲルが高らかに鳴り響く。ざわめいていた会場に一瞬沈黙が訪れる。

サシャ「さあ、いきますよ。」

サシャを先頭に軍楽隊がステージに上がる。

729 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:13:28 ID:LhRLEI82

大観衆を前にしても隊員達は皆落ち着いていた。

初仕事としてトロスト区の民衆の前で演奏した経験が自信に繋がっていた。

楽しく軽やかな行進に、観客は心を躍らせた。


※  ※ ステージ裏 ※  ※

クリスタ「スタートは好調だね。観客の反応がいい。」

マルコ「人前での演奏に慣れてる軍楽隊を最初にして正解だったね。」

クリスタ「マルコも開会挨拶ご苦労様。」

マルコ「ちょっと堅苦しすぎたかな。・・・やっぱり挨拶はクリスタにやってもらいたかったよ。

    女の子が舞台に上がった方が華があるでしょ。」

クリスタ「ふふっ、私は無理だよ。人前で話すの恥ずかしいもん。」

アニ「しかしわざわざ憲兵団への礼を入れるかな。あれはマルコ流の担当者への皮肉?」

マルコ「そんなんじゃないよ。手伝ってもらったことには変わりないから。

    それに今回のステージの主催は憲兵団になってるし。一応さ、礼儀だよ。」

730 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:15:07 ID:LhRLEI82

アニ「相変わらずお利口さんだね。じゃあこのステージが成功したら憲兵団の手柄ってわけ?」

マルコ「そうなるかな・・・。」

アニ「あんたさぁ、自分が憲兵団に入りたいからって尻尾振ってんじゃないの?」

ベルトルト「アニやめなよ。こんな時に噛み付かなくてもさ・・・。」ブルブル

マルコ「いいんだベルトルト。そう思われても仕方のない状況だから・・・・。

    でもさアニも憲兵団に入りたいんだろ?角が立たない方が都合が良いと思うけど。」ニコッ

アニ「・・・・・・やっぱりあんた苦手だわ。」

マルコ「ははっ、僕はそうでもないよ。」

アニ「・・・・・ちっ。」

ベルトルト「なんでみんな無駄話する余裕があるんだよ・・・」ブルブル

マルコ「えっと・・・、この後の司会はクリスタに任せていいんだよね。」

クリスタ「・・・・・・うん。」

マルコ「あれ?本当は司会するの嫌だった?」

クリスタ「司会が嫌ってわけじゃなくて・・・・・・・・あんまり目立ちたくないの。」

731 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:15:54 ID:LhRLEI82

マルコ「そうえいば、今回はソロで演奏するのも頑なに拒否してたね・・・・・。」

クリスタ「・・・・・・・・」

マルコ「・・・・分かった。無理に司会しなくていいよ。手の空いてる人で回すから。」

クリスタ「・・・わがまま言ってごめんね。」

マルコ「いや、僕が勝手に押し付けちゃったから。悪かったね。」

ライナー「おいマルコ、俺達の出番は次でいいのか?」

マルコ「ああ、そろそろ準備しといて。・・・・・・・・合唱の伴奏は大丈夫だよね?」

クリスタ「うん。隅っこでピアノ弾くぐらいなら・・・・。」

マルコ(・・・クリスタの様子がおかしい。まるで人に見られることを恐れているようだ・・・)

マルコ「ライナー、思いきり存在感を示してくれよ。観客の目を全部集めるんだ。」

732 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:16:27 ID:LhRLEI82

ライナー「もちろんだ。俺たちの歌声で全員昇天させてやる。」

クリスタ「ふふっ、期待してるよ。」ニコッ

ライナー「おう。///」

マルコ「それより、ジャンとミカサ見なかった?」

ライナー「あぁ、あいつらならユミルと一緒にすぐそこの林で木を切ってたぞ。遊んでる場合じゃねぇのにな。」

マルコ「・・・刃こぼれさせようとしてるのか?・・・・・ってユミルも次出番だよ。」

クリスタ「あっ、そうだった。呼んで来るね。」

マルコ「お願い、急いでね。」

733 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:17:07 ID:LhRLEI82

※  ※ 広場片隅の林 ※  ※

ミカサ「ユミルに言われた通り、樹の皮剥がして剣で傷つけてみた。」

エレン「うおっ、なんかネバネバした汁が出てきたぞ。」

ユミル「こぼさないように早くその液体を集めな。・・・ほれ、袋やるから。」

エレン「サンキュ・・・・って、これで剣の切れ味本当に悪くなるのか?」

ユミル「知らん。」

ジャン「おい、お前が助けてやるって言うから、こんな意味不明な作業してんだろうが。」

ミカサ「効果が不明なのなら時間の無駄。その辺の岩でも叩き割ったほうが効率的。」

ユミル「バーカ、んなことしたらお前の手首がいっちまうだろ・・・・・・ちょっと待ってろ。」ゴソゴソ パカッ

ユミル「・・・・これ、何か分かるか?」

ミカサ「・・・琥珀色の・・・・ガラス玉?」

ジャン「宝石かなんかか・・・にしてはでかいな。石ころぐらの大きさあるし。」

ユミル「これは‘ロジン’っつってなヴァイオリンの弓に塗ったくる、まぁ滑り止めみたいなもんだ。

    これを塗らなきゃヴァイオリンは音がまったく出ない。」

734 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:17:58 ID:LhRLEI82

エレン「それがどうした。何か関係あんのか?」

ユミル「大ありだ。お前らが傷つけたのは松の木だ。ロジンの原料は松の樹液、いわゆる松ヤニってやつだから。」

ミカサ「ではこの樹液を刃に塗れば切れ味が悪くなるの?」

ユミル「生松ヤニをそのまま塗っても意味がねぇよ。・・・・・・やっぱ、樹液集めるの時間かかるな。

    ・・・・精製して純粋なロジン作るわけじゃねぇからいっか・・・・。」

ジャン「何ブツブツ言ってんだよ。」

ユミル「松の幹に液体が流れたような白っぽい塊がくっついてるだろ。お前ら、あれを集めな。」

エレン「うーんと、これか?・・・うわっ、ベトベトして気持ち悪ぃ。」

ジャン「オレ無理だわ。こんな巨大カマキリの卵みてぇなもん触れねぇ。」

ユミル「文句言ってねぇでさっさと採れよ。できるだけたくさん集めろ。」

ミカサ「これも松ヤニ?」

ユミル「そうだ。分泌したばかりの松ヤニは無色透明の粘っこい液体なんだが、時間が経つとそうなる。」

ジャン「こんなの直接手で触って大丈夫なのか?」

ユミル「さあ?普通は軍手はめるがな。」

ジャン「おいっ、かぶれたらどうすんだ。」

735 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:19:29 ID:LhRLEI82

ミカサ「そんなこと気にしてる場合じゃない。急がなければ。」

ジャン「クソッ・・・・・・・・・・ネチョ、ひぃぃぃぃぃ、やっぱ無理!!」ゾワワワ

エレン「ったく、情けねぇな。ほら、だいぶん集まったぞ。」

ユミル「じゃあ、そうだな・・・・・・ここのタイル張りの歩道の上にまとめて置いてくれ。」

ミカサ「分かった。」

ユミル「袋に溜まった樹液も上からぶっかけろ。」

エレン「おう。」

ジャン「何をする気だ?」

ユミル「燃やすんだよ。えーと、マッチは・・・あった。・・・・・点火。」シュッ

エレン「うおっ、一気に燃え上がった。」

ユミル「生松ヤニには油分が含まれてるからな。」

ミカサ「・・・茶色っぽい液体が流れ出てきた。」

ユミル「これが‘ロジン’の原形だ。本来の作り方とは全然違うが、まぁ問題ないだろ。」

ジャン「これを刃に塗りつけるのか?」

ユミル「そうだ。そいつは冷めるとすぐ固まるからな。半日ほっとくとガラスみたいになる。」

736 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:20:11 ID:LhRLEI82

エレン「半日も待ってられねぇよ。」

ユミル「分かってねぇな。ガラスになったら意味がないだろ。」

ミカサ「ガラスだと刃がぶつかり合った時に砕け散って危険。」

ユミル「塗って二時間ぐらいで適度な弾力のある天然樹脂のコーティングになる・・・・・はずだ。」

ジャン「マジか?」

ユミル「さあ、やったことないからな。知らん。」

ジャン「お前はさっきから何なんだよ!本当は適当なこと言ってんじゃねぇのか?」

エレン「二時間ってそんな時間もねぇよ。」

ユミル「だから早く塗れってば。で、できるだけ振り回して乾燥させろ。」

ミカサ「とにかく急いで塗りましょう。できるだけ厚めに。」ベチャ

エレン「ああ。4本全部やるのか?」ベチャ

ジャン「失敗作が出たら困るからな。一応全部塗っとこうぜ。」ベチャ

ユミル「言っとくがコーティングしたからって気休め程度だからな。

    軽く触れる程度なら斬れないが、深く入ればザックリいく。」

737 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:21:04 ID:LhRLEI82

エレン「ユミルは意外と物知りだな。こんな知識どこで仕入れたんだ?」ベチャ

ミカサ「ヴァイオリン工房で教わったの?」ベチャ

ユミル「そうだ。お前らも兵団の中に引きこもってないで一度世間に出て働いてみな。案外楽しいぜ。」

ジャン「うっせぇよ。・・・・・・だが、サンキュ。」

ミカサ「ありがとうユミル。すごく助かる。」

ユミル「礼はいらないよ。親切でしたわけじゃないし。見返りを期待してるからな。」

エレン「何だよ。金でも取る気か。」

ユミル「金?ははっ、そんなもんじゃ面白くないだろ。お前らには・・・・そうだな・・・・。」

ジャン「ふざけんな。オレは何もしねぇぜ。」

クリスタ「おーい!!ユミルーーー!!」

ユミル「おっ、クリスタ。・・・・何か用かーーー!!」

クリスタ「もう出番が来るよーー!!早く来てーーー!!」

738 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:21:38 ID:LhRLEI82

ユミル「わかったーー!!今行くーーー!!」

ミカサ「舞台に出るの?」

ユミル「そうらしい。じゃあな。松ヤニ塗りたくれよ。・・・・・・・・・何させようかなー♪」スタスタスタ

エレン「はは・・・・一番助けてもらっちゃいけない奴の手を借りちまったな。」

ジャン「何言われても放っとけ。」

ミカサ「ほら、無駄口叩かずに手を動かす。」ベチャ

739 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:22:22 ID:LhRLEI82

※  ※ ステージ上 ※  ※

演奏が終わり、軍楽隊は喝采を浴びていた。一同はステージ中央に整列し客席に向かって敬礼をする。

アルミンは一歩前に出ると観客に向かって口を開いた。

アルミン「私達は訓練兵団所属の軍楽隊です。一年前に結成されたばかりの、兵団の新たな試みの一つです。

     かつて壁の外では軍隊の中には軍楽隊というものが必ずと言っていい程、存在していたそうです。

     しかし壁内に人類が閉じこもってからは軍楽隊は消滅してしまいました。

     人類が築いてきた文化を取り戻すべく、私たちは立ち上がりました。

     音楽を通して少しでも皆様の心を明るくすることができたなら、これ以上の幸せはありません。

     ご清聴を心より感謝致します。」バッ

740 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:22:54 ID:LhRLEI82

再度敬礼すると、サシャの合図で隊は行進しながら舞台を去っていく。再び起こる拍手。

沸いた客席の間を募金箱を持った回収担当の訓練兵が回っていく。次々に投げ入れられる金、金、金。

それを見て満足げに口角を上げる憲兵たち。

客席の後方で今回のイベントの社会的有用性を検証する中央上層部の面々。

特別席のパラソルの下では貴族連中がワインを片手に清談を交わす。

あらゆる思惑が交差しもつれ合い、客席のボルテージは上がっていく。

741 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:23:43 ID:LhRLEI82

※  ※ ステージ裏 ※  ※

クリスタ「遅くなってごめん。間に合った?」

マルコ「大丈夫。今、寄付金集めてるところだから。」

ユミル「まったく、最初から言っとけよな。ここにいろって。」

クリスタ「タイムスケジュールぐらい自分で確認しなさいよ。」

マルコ「あっ、アルミン。お疲れ様。締めの挨拶までしてくれて助かったよ。」

アルミン「ひゃぁぁぁぁぁ、ドキドキしたよーーーーー!!」ギュッ

マルコ「!? ア、アルミン?」

ユミル「戻ってきた途端マルコに抱きついた・・・。なんだ、お前らできてんのか?」ニヤニヤ

クリスタ「それは無いから。」

ユミル「何でだよ。」

クリスタ「無いったら無いの。」

アルミン「ちょっと待ってね。しばらくこのまま・・・・・・」ギュゥ

マルコ「ははっ、落ち着いた?アルミンでも緊張するんだな。」ポンポン

742 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:25:03 ID:LhRLEI82

アルミン「平気かなって思ってたけど、あれだけの大観衆前にしたらさすがに足が竦んじゃったよ。」

マルコ「うん。でも立派な演奏だったよ。」

アニ「・・・・・ねぇ、アルミン。」

アルミン「あっ、アニ。何か用かな?」

アニ「あのさ・・・・人に抱きつくと本当に落ち着くの?」

アルミン「えっ?・・・・あっ、変に見えたかな。別にマルコが好きとか、そんなんじゃないからね。」

アニ「いや、そういう話じゃなくてさ。・・・・・・抱きつくと安心するの?」

アルミン「うーん・・・、子どもっぽく思われるかもしれないけど、人の温もりって安心するよ。」

アニ「相手は誰でもいいの?」

アルミン「そりゃあさ、マルコなんかより可愛い女の子の方がいいけど。

     抱きついても許してくれる子なんて僕にはいないし・・・・・。」

マルコ「なんかで悪かったね。」

アニ「そう。ありがとう、もういいわ。」

743 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:25:47 ID:LhRLEI82

アルミン「・・・もしかしてアニも緊張してるの?だったら僕が抱きしめてあげるよ。」

アニ「・・・・」シュッ バシッ

アルミン「はぐっっっ・・・・!!」

アニ「調子にのるな。」スタスタスタスタ

マルコ「・・・・・・アルミン、チャレンジャーだな。」

アルミン「ってて・・・・・。軽い冗談なのに本気で蹴られた。」

マルコ「何だかいつもよりテンション高いね。」

アルミン「うん。ステージの熱気のせいかな。すごくハイな気分だよ。」

マルコ「ははっ、舞台酔いしたんだよ。

    ・・・・軍楽隊のみんな!!まだ出番が残ってるけど、とりあえずご苦労様!!」

サシャ「ダズのことも忘れないで下さい。」

マルコ「あっ、もちろんダズもご苦労様。ビューゲル良かったよ。」

ダズ「へへっ。・・・ありがとう。」

サシャ「ダズはいつも皆のために頑張ってくれてますから。偉いですよ。」

ダズ「サシャ・・・・///」

744 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:27:13 ID:LhRLEI82

トーマス「・・・・・・・今の見たか?ミーナ。」ヒソヒソ

ミーナ「・・・・・・・うん、ばっちり見た。」ヒソヒソ


マルコ「じゃあ、ライナー軍団は舞台にあがってくれ。」

ライナー「デスクリと呼びやがれ。」

マルコ「ははっ、ごめん。やっぱそれ恥ずかしい。・・・・クリスタとユミルも頑張ってね。」

クリスタ「うん。ミスらないように気をつけるよ。」

ユミル「あっ、マルコ。ミカサたちの出番できるだけ後に回してやってくれ。

    それが無理なら、できるだけ引き伸ばしてくれよ。」

745 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:27:49 ID:LhRLEI82

マルコ「ミカサたちに何かあったの!?」

ユミル「いや、怪我とかじゃないから安心しな。ちょっと時間が必要なんだよ。」

マルコ「よく分からないけど・・・・・・了解した。

    サシャ、悪いんだけど順番変更。ライナーたちの後に歌ってくれるかな。」

サシャ「いいですよ。ライナーたちの二曲目に私も加わってますから。そのまま舞台いたらいいですか?」

マルコ「うん。区切りを入れずそのまま続けよう。クリスタとユミルもそのつもりで頼むね。」

クリスタ「わかった。」

ユミル「いいぜ。・・・・・無理言って悪ぃな。」

746 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:28:34 ID:LhRLEI82

※  ※ ステージ上 ※  ※

サシャ「おまたせしました。次は訓練兵団が誇る男声合唱団『デス・クリーガーズ』の登場です。

    ヴェルディ作曲 歌劇『アイーダ』より『凱旋行進曲』、

    ビゼー作曲 歌劇『カルメン』より『闘牛士の歌』二曲続けてお楽しみ下さい。」

サシャが舞台袖に引き揚げるのと交代に屈強な男たちが姿を現す。

声のパートごとに別れて並ぶと、ライナーの合図で一斉に敬礼をする。

ざわつく客席。男ばかりで合唱すること自体を珍しく感じるのだろう。

ライナーたちには奇異なものを見るような視線が投げかけられた。

そんな中、ステージの端でクリスタとユミルは演奏を始める。

♪♪♪~♪♪♪~

勇ましく壮大な前奏が流れる。ヴァイオリンの唸るように長く尾を引く余響。ピアノの小気味良い行進のリズム。

伴奏の勢いが頂点に達する所でライナーたちは一斉に歌いだす。

フォルティシモの大音声が大気を振るわせ、衝撃が客席に走る。一瞬にして観客たちの目の色が変わった。

747 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:29:10 ID:LhRLEI82

Gloria all'Egitto, ad Iside♪ Che il sacro suol protegge♪~~~

聴衆はもちろん歌っているライナーたちでさえ、言葉の意味はさっぱり分からない。

歌詞に振られたカタカナを丸暗記しただけだ。

だが観客は興奮した。言い表し難い感動に襲われ鳥肌が止まらなかった。

意味など分からなくいい。本能のままに感じればいい。

そう、これが俺たちの音楽だ。

748 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:29:59 ID:LhRLEI82

※  ※ ステージ裏 ※  ※

アルミン「すごい迫力だね。」

サシャ「そうですよ。教室で歌ってるの聴くと耳がやられます。」

アルミン「ライナー軍団って今何人いるの?」

サシャ「えーと、40人ぐらいです。」

アルミン「着実に増えてるし。でもたった40人でこの声量はすごいね。」

マルコ「身体の大きさや肺活量が声量には影響するから。

    女子で換算したら100人分ぐらいの声の大きさはあるんじゃないかな。」

アルミン「へぇ。でもさサシャもデスクリだっけ、それに加入したの?」

サシャ「いえいえ、入りませんよ。歌の練習させてもらってたら、なぜか一緒に歌うことになってました。」

マルコ「サシャはすごいよ。むさ苦しい男連中に囲まれても全然平気なんだから。」

サシャ「はい。今では仲良しさんですよ。みなさんの下ネタに突っ込み入れまくりです。」

マルコ「サシャがいるのにライナーたち普通にそういう話するから。居心地悪かったよね。ごめん。」

サシャ「気にしてませんよ。むしろ男子のエロトーク聞けて面白かったです。」

749 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:30:43 ID:LhRLEI82

アルミン「あはは、ひかないんだ。でもライナーたちもさすがに話す内容セーブしてたんでしょ。」

マルコ「・・・・・僕がドン引きするくらい濃かったよ。」

サシャ「・・・・はい。えげつなかったですね。」

マルコ「あいつらサシャの反応見て楽しもうとしてたんだよ。とんだセクハラ集団だ。」

サシャ「大丈夫です。そんな手には屈しません。それに男の集まりっていいなって思いましたよ。」

アルミン「どうして?」

サシャ「すごくお馬鹿な話や下ネタばかりなんですけど、悪意がないっていうか・・・・・。

    他人のことをいじったりからかったりしても、決して悪口は言わないんですよね。」

マルコ「ライナーの影響だね。」

アルミン「うん。ライナー、人の悪口とか大嫌いだから。」

サシャ「ただのセクハラ親父じゃないんですね。」

マルコ「あれだけ人が集まってくるんだ。ちゃんと理由があるんだよ。」

750 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:32:16 ID:LhRLEI82

アルミン「それよりさ、二曲目ってどうして『闘牛士の歌』なの?」

サシャ「私がソロで歌うって言ったらライナーが俺にもソロやらせろって言い出しまして。

    ステージ最後の合唱で独唱パートあるのに欲張りです。」

マルコ「ライナーって声の音域がバリトンだから。

    バリトンが主役の曲で、なおかつサシャも加えてみんなで盛り上がれる曲探したらこれになった。」

アルミン「ふーん。さっきリハーサル見たけど、お芝居っぽくしてなかった?」

サシャ「そうなんです。気をつけのまま歌っても面白くないので動きを加えてみました。」

マルコ「演出は自由にしてもらったよ。やってる本人たちが楽しくないとね。観客も楽しくないでしょ。」

サシャ「おっ、そろそろ終わりそうですね。」

マルコ「サシャの出番だね。例のスピーチも頼むね。」

サシャ「はい。お任せください。」

アルミン「頑張って。」

751 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:33:11 ID:LhRLEI82
※  ※  ※  ※

トーマス「・・・・・ねぇミーナ。さっきのダズだけどさ、サシャを前にして顔赤らめてたよね。」ヒソヒソ

ミーナ「そうそう、しかもサシャがダズを褒めてた。」ヒソヒソ

トーマス「もしかして・・・・ダズの彼女って・・・・」ヒソヒソ

ミーナ「いや、それは無いでしょう・・・・」ヒソヒソ

トーマス「わかんねぇぞ。あのサシャだ。常人には理解できないセンスをしていても不思議じゃない・・・」ヒソヒソ

コニー「お前ら何コソコソ話してんだよ。」

ミーナ「あっ、コニー。・・・・・何でもないよ、えへへ。」

コニー「うそつけ。俺にも教えろよ。」

トーマス「・・・コニーだったら知ってるかも。サシャと仲良いし。」ヒソヒソ

ミーナ「・・・でも、ダズの彼女のことは秘密なんでしょ。」ヒソヒソ

トーマス「・・・ダズの名前出さなきゃいいんだろ。」ヒソヒソ

コニー「だからヒソヒソ話すんのやめろよ。」

752 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:33:48 ID:LhRLEI82

トーマス「ごめんごめん。コニー、あのさ聞きたいことがあるんだけど・・・・。」

コニー「何だよ。」

トーマス「・・・・サシャって最近、彼氏できた?」

コニー「はぁ?何だそれ。」

ミーナ「知らないんだったらいいの。変なこと聞いてごめんね。」

コニー「知らねぇけど・・・・・・。あいつ彼氏できたの?」

トーマス「いや、何となくそうなのかなって・・・・・。ごめん。忘れてくれ。」

コニー「忘れてくれって・・・・。変なやつらだな・・・・。」

ミーナ「ダズ本人に聞くのが一番てっとり早くない?」ヒソヒソ

トーマス「そうだね。聞きに行こう。」ヒソヒソ

コニー「まーた、コソコソする。・・・・それよりサシャはどこだ?」

ミーナ「多分、今ステージ出てるよ。」

コニー「そっか。・・・・・見に行ってやろうかな。」

753 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:34:41 ID:LhRLEI82

※  ※  ※  ※

コニー(サシャに彼氏?ありえねぇな。)スタスタ

コニー(だってあいつ自分でそんなもんいらねぇって言ってたよな。)スタスタ

コニー(・・・・でも何でそんな話がでるんだ?本当にできたのか?)スタスタ

コニー(・・・・だったら相手は誰だよ。サシャと仲がいいのは・・・)スタスタ

コニー(アルミン?軍楽隊で一緒だしな。んー、でもなんか違うよな・・・・)スタスタ

コニー(じゃあエレンとか?・・・無いな。それともジャン?・・・もっと無いな。)スタスタ

アルミン「あっ、コニーも見に来たの?今ステージめちゃくちゃ面白いよ。」

コニー「おう。何やってんだ?」

アルミン「ライナーとサシャがさお芝居しながら歌ってんだ。迫真の演技だよ。」

コニー「ふーん。どれどれ・・・・・・ぷっ、何だありゃ。」ゲラゲラ

マルコ「笑うなよ。真剣なんだから・・・・・・ぷっ、でもライナー顔キメすぎ・・・ぷぷっ・・・」

754 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:35:24 ID:LhRLEI82

アルミン「あははっ・・・・顔面演技がすごいね。」

コニー「サシャもよくあの距離で噴出さないで歌えるよな・・・・・・って結構近いな。」

マルコ「闘牛士役のライナーがカルメン役のサシャを口説くシーンにしたんだって。」

コニー「だって、ってマルコの指導じゃないのか?」

マルコ「違うよ。ライナーがやってみたいってさ。観客も楽しんでくれてるし大成功だ。」

コニー「ライナーが・・・・。」

コニー(・・・・・・サシャの彼氏って・・・・・・ライナー?)

舞台袖から再度覗く。目に入ってきたのはサシャの肩を抱き寄せるライナーの姿。

コニー(・・・・・・・・・・・見たくねぇ。)ズキン

コニー「・・・・・・もういいわ。」クルッ タッタッタッ

マルコ「コニー?」

アルミン「行っちゃったね。どうしたんだろう。もう飽きたのかな。」

755 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:36:09 ID:LhRLEI82

※  ※  ※  ※

ミーナ「ねぇねぇ、ダズ。」

ダズ「何だよ。」

トーマス「ダズの彼女って・・・・・・もしかしてサシャ?」

ダズ「は?違うよ。何言ってんだよ。」

トーマス「あっ、やっぱり。・・・そうだよね、ははは、ごめんね。」

ミーナ「じゃあ何でサシャにお礼言われて頬染めてんのよ。気持ち悪い。」

ダズ「気持ち悪いって・・・・。そんなの勝手だ。可愛い女の子に話しかけられたら照れるだろ。」

ミーナ「じゃあ何で私と話してる時は平然としてるのよ。」

ダズ「そりゃあ・・・・・・・あんまり可愛くないから?」

ミーナ「あはは、そっかー可愛くないかー・・・・・・・・・・殴っていい?」

756 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:36:48 ID:LhRLEI82

※  ※ 広場片隅の林 ※  ※

エレン「おっ、いい感じに固まってきたぜ。」ビュン

ジャン「だぁぁぁぁ、もういい加減、剣振るの疲れたぜ。」ビュン ビュン

ミカサ「それはジャンが二本も振ってるから。一本こちらに貸して。」ビュン

ジャン「ミカサには渡さねぇよ。おいエレン、お前が持てよ。・・・ほいっ。」ポン

エレン「うっ、わ・・・・危ねぇな。急に投げるなよ。」

ジャン「すまんね。コーティングしてあるから大丈夫だと思ってよ。」ビュン

ミカサ「斬れるときは斬れるってユミル言ってたでしょ。気をつけて。」ビュン

ジャン「はいはい。悪かったよ・・・・・・って、あれはコニーか・・・?」ビュン

ミカサ「コニーね。」ビュン

エレン「おーい!コニー!暇なら手伝ってくれ!」ビュン ビュン

コニー「・・・・・お前ら見ねぇと思ったらこんなとこで何やってんだ?」

ジャン「剣の刃に細工してんだ。これで斬れにくくなるんだとよ。」ビュン

エレン「ホイ、一本頼むわ。適当に振ってくれ。」ビュン

757 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:37:45 ID:LhRLEI82

コニー「いいけど・・・・・・」ビュン

ジャン「でな、さっきの話なんだけどよ。」ビュン

エレン「お前がカマキリが苦手って話か。」ビュン

コニー(・・・・・・サシャの彼氏がライナーだったら安心だな。)ビュン

ジャン「そうだ。ガキの頃によ、公園で捕まえたカマキリを虫かごに入れて飼ってたんだ。」ビュン

ミカサ「可愛らしい時期もあったのね。」ビュン

ジャン「まぁな。捕まえたカマキリに名前つけたりしてよ。」ビュン

コニー(・・・ライナーはいい奴だ。優しいし頼りになる。)ビュン

エレン「それはねぇな。虫に名前つけるとか。」ビュン

ジャン「うるせぇよ。で、大事に育てたカマキリ君と遊ぼうと思って虫かごから出したんだ。」ビュン

ミカサ「・・・・・・どうせうっかり潰したとかでしょ?」ビュン

コニー(・・・・身長も高いしな。サシャとお似合いだな。)ビュン

ジャン「正解。でもそれでカマキリが嫌いになったわけじゃねぇんだよ。」ビュン

エレン「じゃあ何だよ。」ビュン

758 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:38:39 ID:LhRLEI82

ジャン「潰れたカマキリの腹から、うねうねした超長い虫が出てきたんだよ。」ビュン

エレン「きもっ!!」ビュン

コニー(・・・・でも舞台の上のあいつら見たら胸が痛くなったな。)ビュン

ミカサ「ただの寄生虫でしょ。」ビュン

ジャン「冷静だな。虫とか平気なのか?」ビュン

ミカサ「山育ちだから。」ビュン

コニー(・・・・・なんでだろうな。ライナーでいいじゃねぇか・・・・・)ビュン

エレン「・・・・・コニー?お前何で泣いてんだ?」

ミカサ「静かだと思ったら・・・・・どうしたの?」

ジャン「お前、泣くほど舞台が恐かったのか?」

コニー「えっ?あれっ・・・ははっ・・・おかしいな・・・・・」ポロポロ

エレン「何かあったのか?」

759 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:39:26 ID:LhRLEI82

コニー「いや・・・さ、ライナーのこと考えてたら胸が痛くなってよ・・・・」ポロポロ

ジャン「・・・・・・」

ミカサ「・・・・・・」

エレン「・・・・・・」

コニー「何で黙るんだよ・・・・やっぱ変かな・・・・」ゴシゴシ

ジャン「・・・・・・変っていうか・・・・・な。」

エレン「お、おう・・・・・・まぁいろいろあるよな・・・・。」

ミカサ「泣くほど思いつめてるのね・・・・」

コニー「あーーー、かっこ悪ぃとこ見られちまったな。すまん、忘れてくれ。」

ジャン「あ、ああ。」

エレン「まぁ・・・、頑張れよ。」

ミカサ「・・・無理しないでね。」

760 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/07(水) 02:40:09 ID:LhRLEI82

コニー「俺、ちょっと顔洗ってくるわ。ほい、剣返す。」

エレン「ああ。手伝ってくれてサンキュ。」

コニー「じゃあな。」スタスタスタ・・・・

ジャン「・・・・・・」

エレン「・・・・・・」

ミカサ「・・・・・何も見なかった。何も聞かなかった。いい?」ビュン

ジャン「そ、そうだな。それがコニーのためだな。」ビュン

エレン「でもライナーって・・・・、アルミンならまだ分かるけど・・・。」ビュン ビュン

ミカサ「エレン、分からないで。お願い。」ビュン

エレン「いや、言ってみただけだろ。顔恐ぇよ。」ビュン

ジャン「しっかし、この緊急時にとんでもない爆弾落として行きやがったな。集中できねぇよ。」ビュン


765 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:05:20 ID:seQXF4U2

※  ※ ステージ上 ※  ※

舞台で演じられるのは俗にまみれた狂騒歌劇。

圧倒的な雰囲気に客席は呑まれ気持ちが昂っていく。

闘牛士になりきって、ライナーは威厳に満ちた深みのあるバリトンで観客に歌いかける。

Apostrophes, cris et tapage♪    わめけ、叫べ、足を踏みなれせ
Pousses jusqu'a la fureur!♪    もっと興奮しろよ
Car c'est la fete du courage!♪   今日は戦士のお祭りだろ

ライナーを取り囲んだ男達は勇ましい掛け声で盛り上げる。

Toreador, en garde! Toreador! Toreador! ♪ さあ進むんだ 闘牛士よ 
Toreador, Toreador. L'amour t'attend. ♪  恋がお前を待っている

舞台はクライマックス。ライナーはサシャの肩に手を置き猛る情熱のまま歌い続ける。

サシャも負けじと空気を突き抜けるような鋭い声を張り上げる。

艶を含んだ狂おしいヴァイオリンの音色が空に舞い上がり、演技は終焉を迎えた。

洪水のような拍手と歓声が押し寄せる中、ライナーたちは敬礼し舞台を後にした。

766 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:08:52 ID:seQXF4U2

※  ※ ステージ裏 ※  ※

マルコ「お疲れ様。さすがだね。安心して見ていられたよ」

ライナー「ふぃー・・・・・ビールねぇのか?」

アルミン「駄目だよ。まだ出番あるんだから。はい、タオル」

ライナー「おっ、サンキュ」フキフキ

マルコ「公演終わったらみんなでビールで乾杯しよう。屋台で売ってたから」

アルミン「勝手に先に飲まないでよ」

ライナー「分かったよ。・・・・にしても、ユミルの奴ヴァイオリン上手くなったな。

     技術的なことはよく分からんが、あいつの奏でる音が心臓に突き刺さってきたぜ」

アルミン「僕も思った。なんだかんだ言って練習続けてたんだね」

マルコ「そうみたい。照れくさいのか教えてくれないけど」

ライナー「あいつのヴァイオリンはなんつーか悲哀を感じるんだよな」

767 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:09:47 ID:seQXF4U2

マルコ「楽器の音は演奏者を反映するって言うからさ。過去にいろいろあったのかもね。」

アルミン「ユミルの過去か・・・。今度聞いてみようかな。簡単には教えてくれなさそうだけど」

ライナー「やめとけ。詮索されたくないから、ああやって意地張って生きてんだろ。放っといてやれ」

アルミン「そっか・・・、そうだよね。あまり話したくない過去って誰にでもあるよね」

マルコ「・・・過去か・・・・

    ・・・・・・僕はさ、みんなといると時々自分の存在が居た堪れなくなる」

アルミン「マルコ?」

マルコ「僕はみんなと違って平穏無事に過ごしてきたから、人に話したくないような辛い過去がない。

    ウォールマリアが陥落してみんなが苦しんでいた時、僕は何をしていた?

    温かい家の片隅で見たこともない巨人の恐怖に震えていただけだ。

    みんなが開拓地で強制労働させられてた時は?・・・・・僕は友達と遊んでた。

    みんな重荷を背負って生きてるのに僕の背中は軽いんだ。情けないくらい軽いんだよ」

ライナー「・・・・ボンボンの同情か?」

768 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:10:33 ID:seQXF4U2

マルコ「違う。同じ人間なのに何でこんなに差がつくのか・・・。

    壁一枚隔てただけで人生の明暗が分かれることが許せないし悔しいんだ」

ライナー「かつての内地にいた人間に何が分かる。お前が何を言っても上から目線の哀れみにしか聞こえん」

マルコ「・・・・・!」

アルミン「ちょっと、ライナー・・・」

ライナー「だが、お前は口先だけの男じゃないよな。世の中の不条理に立ち向かう勇気がお前にはあるのか?」

マルコ「・・・・ああ。僕は僕のできることをやるつもりだよ」

アルミン「これから僕ら小さな反旗を翻すから。ライナー見ててよ」

ライナー「これから・・・・?」

アルミン「サシャにさ託したんだ。僕らの思いを短いスピーチにして」

ライナー「おいおい、サシャ任せかよ。情けねぇな。自分達で言いやがれ」

マルコ「うーん、僕たちよりサシャの方が反感買わないかなって。キャラ的に」

アルミン「ステージの流れもあるしね・・・。サシャが快諾してくれたから、つい甘えちゃった」

ライナー「まっ、お前らが何をするのかじっくり見学させてもらおうか」

769 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:11:32 ID:seQXF4U2

※  ※ ステージ上 ※  ※

興奮さめやらぬざわつく会場。寄付金回収班が客席を回る。

ステージ上ではサシャが次の演目の準備にとりかかる。

サシャ「二人ともお疲れ様です。次もよろしくお願いしますね」

ユミル「次はサシャか。面倒くせぇな。なんかさあ、私とクリスタだけ舞台にいる時間長くねぇか?」

クリスタ「そんなこと言わないの。伴奏担当なんだから。仕方ないよ」

サシャ「それでですね。クリスタにお願いがありまして」

クリスタ「何?」

サシャ「私、歌う前に短いスピーチ入れるんですけど、後ろで何か弾いて貰っていいですか?」

クリスタ「・・・・・サシャが前に立ってお話してる間だよね」

サシャ「はい。激しくなくて優しい曲なら何でもいいです。シーンとした中で話すのは緊張するので」

クリスタ「・・・・えっと・・・・・」

ユミル「・・・・・・心配すんな。何があっても私が守ってやるから」ヒソヒソ

クリスタ「ユミル・・・・?」

770 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:12:19 ID:seQXF4U2

サシャ「・・・・駄目ですか?」

クリスタ「・・・いいよ。大丈夫、任せといて」

サシャ「良かったです。お願いしますね」

クリスタ「サシャも頑張ってね」

サシャ「はい。では行って来ます」スタスタ

クリスタ「・・・ユミル・・・・あなた何か知ってるの?」

ユミル「ん?何のことだ?」

クリスタ「さっきの耳打ち」

ユミル「は?いつも言ってることだろ。守ってやるって。なんだ、もっと言って欲しいのか」ニヤニヤ

クリスタ「・・・・言わなくていいよ」

    (・・・ユミルはごまかすのがうまいから、本当のところは分からない・・・・)

ユミル「遠慮すんな。」

771 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:13:03 ID:seQXF4U2

クリスタ(ここはウォールシーナでも南端の街だから平気かと思ってたけど・・・・・

     特別席は中央の有力貴族らしき面々が陣取ってる。わざわざ憲兵団がご機嫌伺いで招待したんだわ・・・・

     私に面識がなくても向こうは私のことを知っているかもしれないし・・・

     本当は今すぐ舞台の上から逃げ出したい。でもみんなのために責任を果たさなくちゃ・・・)

ユミル「黙り込んでどうした。弾く曲決まったのか?」

クリスタ「あっ、そうだった。優しい曲ね・・・・・・・うーん・・・・よし決めた」

ユミル「何の曲だ?」

クリスタ「ふふっ、秘密」

サシャ「えー、こほん。ただ今より次の演目に移らせて頂きます」

クリスタ(集中、集中・・・・・・・

     ・・・・ここは私の故郷にいつもより少しだけ近い・・・・・

     ・・・・もう二度と会えないけど・・・・・安否さえ分からないけど・・・・

     ・・・・あなたの喜ぶ顔がまた見たいです・・・・・)

♪♪♪~~♪♪♪~~

772 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:13:51 ID:seQXF4U2

サシャ「これから皆様に披露させて頂くのはプッチーニ作曲 歌劇『ジャンニ・スキッキ』より『わたしのお父さん』です。

    幸いなことに私には優しい父がいます。今は離れて暮らしてますが、父の存在は私の心の支えです。

    しかし私たちの所属するウォールローゼ南方面駐屯地には家族を・・・・両親を無くした者がたくさんいます。

    ウォールマリアの崩壊とその後行われた領土奪還作戦。

    そのために両親と住む家を失った彼らは必然的に開拓地へ送られました。

    そして志願可能年齢を迎えると世論に背中を押され兵士になる道を選ばざるをえませんでした」

サシャ「決して恨み言を言ってるのではありません。私たちは兵士であることに誇りを持っています。

    しかし、兵士か生産者かの二択しかない人生はあまりに悲しすぎませんか?

    私は自ら・・・・・といいますか、父の勧めで兵士に志願しました。

    けれど両親を失った訓練兵の大半は生きていくために仕方なく志願しています。

    もっと人生に別の選択肢があれば兵士を選ばなかったかもしれません」

773 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:14:35 ID:seQXF4U2

サシャ「開拓地には現在も孤児がたくさんいます。

    こうやって私が話している今も、幼い孤児たちは開拓地での過酷な労働に小さな身体で今も耐えています。

    少しでも哀れに思われましたら孤児たちを労働から解放するよう呼びかけて下さい。

    彼らに兵士以外の選択肢を用意してあげて下さい。

    ・・・・・たいへん長くなってしまい申し訳ありません。ご清聴感謝致します。

    では、最後まで聞いてくださった皆様へ、感謝の気持ちを込めて歌います・・・・」

♪ ♪ ♪ ♪~~

774 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:15:18 ID:seQXF4U2

※  ※ ステージ裏 ※  ※

マルコ(スピーチの時に流れていたのは・・・・・あの教室で一番最初にクリスタが弾いていた曲。

    マクダウェルの『野ばらに寄す』だ・・・・クリスタにとって特別な曲なのかな・・・・)

ライナー「なるほど。・・・本当にちっぽけな反旗だな」

マルコ「ライナー・・・」

ライナー「あれで世の中が変わると思ってるのか?」

マルコ「・・・すぐには無理だよ。でも社会に問題提起することぐらいしか今の僕らにはできないから」

アルミン「とにかく内地の人間に訴えたかったんだ。そんな機会は今日しかないから」

ライナー「孤児の問題をか?」

アルミン「僕のいた開拓地には幼い孤児がたくさんいてさ。

     どうして両親を失ったのか理解できないまま、泣きながら働かされてたんだ。

     僕やミカサ、エレンは農作業の合間を縫ってそんな子たちに読み書きを教えてた。

     僕は兵士の道を選んだけど、あの子たちには自由に生き方を選ばせてあげたいんだ」

775 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:16:04 ID:seQXF4U2

ライナー「確かに俺たちのいた開拓地も孤児で溢れていたな・・・・

     過酷な労働環境と食料不足で衰弱していくガキどもを嫌というほど見た・・・・・」

アニ「・・・ねぇ、マルコ」

マルコ「あっ、アニ。どうしたの?何か用?」

アニ「あんたさ、サシャにあんなこと言わせて大丈夫なの?」

マルコ「うーん・・・・大丈夫じゃないだろうね。開拓地制度を公衆の面前で批判したから」

アルミン「開拓地は憲兵団の管轄だからね」

マルコ「今頃、憲兵団の担当者は激怒してるんじゃないかな」

アニ「分かってて何でわざわざ・・・・」

憲兵A「・・・・・・・ボット訓練兵!!」ズンズンズンズン

マルコ「・・・・やっぱり来たね」ボソッ

アルミン「・・・・うん」ボソッ

776 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:17:03 ID:seQXF4U2

憲兵A「お前ら一体何を考えている!?」

マルコ「はっ!何のことでしょうか」

憲兵A「今のスピーチだ!今日は中央のお偉いさん連中が視察に来てるんだ。知ってるだろう。

    その面前でわざわざ開拓地制度を・・・・憲兵団を批判するとはいい度胸だな」

マルコ「批判したつもりはありません。現状を報告したまでです」

憲兵A「お前が勝手なことをしたせいで俺の面目は丸つぶれだ。上官になんて報告すればいいんだ」

マルコ「それは申し訳ありません」

憲兵A「舞台上で話していいのは、事前に検閲を通った原稿内容に限ると言ってあったろう。

    勝手なことをした以上コンサートはここで中止だ。お前も訓練兵団側の責任者として処分を受けるんだな」

マルコ「あれ?おかしいですね。検閲を受けた内容しか話していませんが」

憲兵A「何だと?」

アルミン「これが今日のスピーチの草稿です。Aさんのサイン、日付、検閲印が押されています」

憲兵A「見せてみろ・・・・・・・・・ちっ、本当に押してやがる」

777 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:18:01 ID:seQXF4U2

アルミン「先程のスピーチはその草稿の28枚目下段部分に書いてあります」

憲兵A「・・・・・・・・・」

アルミン「草稿が長すぎたので、抜粋してスピーチに使用しました」

憲兵A「しかし・・・・こんな内容を許可するはずはない・・・・」

マルコ「覚えていなくて当然です。目を通していないんですから。

    事前に草稿を提出した際、Aさんは始めの2、3ページを読んだだけで検閲印を押して下さいました。

    けれどこの検閲印は草稿のすべてが許可されたことを示します」

憲兵A「・・・・初めからそれが狙いか。こんな無駄に分厚い草稿作りやがって・・・・」

マルコ「僕は検閲を通った内容をスピーチにしただけです。作意はありません」

憲兵A「・・・・・なぜこんな手の込んだことをするんだ?」

マルコ「僕たちは真剣なんです。コンサートを通じて少しでも明るい世の中に変えていきたいんです。

    あなた方にはただのお遊びに見えるかもしれませんが」

憲兵A「ちっ・・・・・・・俺の負けだ。コンサートは続けろ。だがこれ以上問題を起こすな」

マルコ「はっ!」

778 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:19:14 ID:seQXF4U2

憲兵A「・・・・・お前みたいなご立派な志を振りかざす奴は組織に入ると叩き潰される。

    せいぜい今の内に夢を見ることだ・・・・・・

    じゃあな、俺は上官方への言い訳考えるのに忙しいんでな。せいぜい頑張れ」スタスタスタスタ

マルコ「・・・・・・・・・・はぁー、危ない危ない」

アルミン「何とか切り抜けたね」

マルコ「うん。やる気はないけど意外といい人で助かったよ」

アニ「・・・あんな喧嘩売るような真似して。憲兵団に入れなくなったらどうすんのさ」

マルコ「ん?大丈夫。あの人は下っ端だよ。新人採用に口を出せるような立場にはいない。

    まぁ、もし僕が憲兵団に入ったら疎まれるのは間違いないだろうけど」

アニ「・・・・・尻尾振ってたわけじゃないんだ」

マルコ「さあ?僕には尻尾が無いからね、どうだろう」

アニ「・・・・・・・掴めない奴だね。やっぱり苦手だ」

マルコ「ははっ。それよりサシャの次がダンス隊の出番だけど・・・・ベルトルト大丈夫?」

アニ「ほら、あそこで体育座りして震えてる」

マルコ「・・・うわっ、顔面蒼白じゃないか。・・・・・・参ったな」

779 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:20:09 ID:seQXF4U2

アニ「ベルトルトが出ないって訳にはいかないか・・・・」

マルコ「そりゃあね。リードダンサーだし」

アニ「・・・・ダンス自体中止ってどう?」

マルコ「却下。ここまできてそれはないでしょ」

アニ「・・・・・しょうがない」スタスタスタ

マルコ「アニ?」

アニ「何とかしてみる。じゃあね」スタスタスタ

ライナー「ほう、ついにアニが動いたか」ニヤリ

マルコ「何だよそれ」

ライナー「気にすんな。独り言だ。

     それよりマルコ。今サシャが歌ってる曲ってどんな内容なんだ?

     さっきのスピーチの流れ的には父親への感謝の歌ってところか・・・」

アルミン「ははっ、やっぱりそう思うよね。でも全然ちがうんだよ」

マルコ「‘パパ私好きな人ができちゃった。結婚させてくれなきゃ川に飛び込んで死んでやる’

    って、キラキラした笑顔で幸せそうにサシャは歌ってる」

780 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:21:13 ID:seQXF4U2

ライナー「ぶっ、歌詞の意味教えてやれよ」

マルコ「サシャに聞かれなかったから・・・・・・まぁいいやって」

アルミン「教えたところできっと楽しそうに歌うよ、サシャは」

ライナー「しかし『私のお父さん』っていう題名から選曲しただけか・・・・・

     腹黒いマルコのことだからもっと含みがあるのかと思ったぜ」

マルコ「含みはあるよ。腹黒くはないけど」

アルミン「なんかね『ジャンニ・スキッキ』っていう歌劇の曲らしいんだけど・・・・

     この劇の内容がね、まさに僕たちなんだって」

ライナー「どういうことだ?」

マルコ「ずる賢い男が知恵を絞って、強欲な富豪連中から金を巻き上げる話なんだ。僕らにぴったりだろ?」

ライナー「やっぱり腹黒いじゃねぇか」

アルミン「うん。マルコってさ知り合った頃は初々しい純朴少年だったのに、最近変わったよね」

ライナー「ああ、きっと心も身体も汚れちまったんだな・・・・・」

アルミン「そっか・・・・いつまでも綺麗なままでいようって約束したのに・・・・」

マルコ「汚れてないし、そんな約束もしてないよっ」

781 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:22:04 ID:seQXF4U2

アルミン「ははっ、冗談だよ。でもなんていうか・・・・・・頼もしくなったね」

ライナー「そうだな。入団当初よりずっと男らしくなった」

マルコ「そうかな。でも変わったのは僕だけじゃないよ」

ライナー「そうか?アルミンは相変わらず可愛いらしいぞ」

アルミン「そういうライナーは入団した時からごつかった」

マルコ「ははは、見た目じゃなくってさ」

ライナー「精神的にだろ。確かにクソガキみてぇなわがまま言うやつは減ったな」

アルミン「あと半年もすれば兵団を卒業するんだ。いつまでも子どものままじゃいられないよ」

マルコ「みんなと一緒にいられるのも残りわずかか・・・・・寂しいね・・・・・」

782 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:23:02 ID:seQXF4U2

※  ※ 広場片隅の林 ※  ※

ミカサ「・・・・さっきのカマキリの話だけど」ビュン

エレン「まだカマキリ引っ張るのかよ」ビュン

ジャン「うるせぇ、てめぇは黙ってろ。何だミカサ?」ビュン

ミカサ「・・・・幼い頃にカマキリが蝶を捕食してるのを見た」ビュン

ジャン「そうか・・・・・・で?」ビュン

ミカサ「世の中の残酷さを思うたびに脳裏にその光景が浮かんでくる」ビュン

エレン「・・・・・」ビュン

ミカサ「私にとってカマキリは残酷な世界の象徴。あまり好きではない」ビュン

ジャン「巨人に食われ支配される世界か・・・・・・」ビュン

エレン「俺はおとなしく食われる気はねぇよ」ビュン

ミカサ「でも圧倒的捕食者の前では人間なんてちっぽけなものよ」ビュン

ジャン「・・・・なぁミカサ、さっきカマキリの中に寄生虫がいたって話しただろ」ビュン

ミカサ「ええ」ビュン

783 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:23:49 ID:seQXF4U2

エレン「いや、キモいからもうその話やめてくれよ」ビュン

ジャン「嫌なら聞くな。耳でも塞いでろ。・・・・・あの寄生虫のこと詳しく知ってるか?」ビュン

ミカサ「知らない」ビュン

ジャン「あれを初めて見たときは気持ち悪くてしょうがなかったんだが・・・・

    あれが何なのか気になって調べたことがあるんだ」ビュン

エレン「わざわざ調べんなよ」ビュン

ジャン「あれはハリガネムシっつってな、水中で生まれて最初は小さな生物に寄生するらしい。

    で、それを食ったより大きな生物に宿主を乗り換える。

    食物連鎖を繰り返して最終的にカマキリの腹の中に落ち着く」ビュン

エレン「おい、人間にも寄生するのか・・・・」ビュン

ジャン「しないらしいぜ。だから安心してカマキリ食えよ」ビュン

エレン「誰が食うか」ビュン

ミカサ「それが何?」ビュン

ジャン「ああ、俺が言いたいのは・・・・ハリガネムシはカマキリをコントロールするって話だ」ビュン

ミカサ「コントロール?」ビュン

784 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:25:35 ID:seQXF4U2

ジャン「そうだ。奴らは水中で産卵するからな。水の苦手なカマキリを水場へ導き死のダイブをさせる」ビュン

ミカサ「そんなことが・・・・」ビュン

ジャン「本当らしいぜ。昆虫界の頂点にいるつもりのカマキリも実は他の生物に支配されてたってわけだ」ビュン

ミカサ「・・・・・ジャンは巨人も実は何者かに支配されてるって言いたいの?」ビュン

ジャン「ああ、そう思いたいね。やつらは得体が知れなさすぎる。人間を攻撃する理由も不明だ。

    何者かにコントロールされてイヤイヤ人間食ってるって考えた方が、まだかわいく思える」ビュン

ミカサ「・・・・ジャンも色々と考えてるのね」ビュン

ジャン「いや、さっき思いついただけなんだが・・・・。どうだ俺の説は?」ビュン

ミカサ「壮大ね。小説にしたら面白いんじゃない?」ビュン

ジャン「やっぱ信憑性はねぇか」ビュン

785 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:26:19 ID:seQXF4U2

エレン「じゃあ俺が壁外調査に出たら、巨人の腹かっさばいてハリガネムシがいねぇか確認してやるよ。」ビュン

ジャン「・・・・・・。そーだな。巨人の腹にいるんだ。超特大のハリガネムシだから気をつけろよ」ビュン

ミカサ「エレンは理解力が残念・・・・」ビュン

エレン「何だよ・・・・・・・ってあそこにいるのベルトルトか?」ビュン

ジャン「ああ・・・・一緒にいるのはアニか・・・・・」ビュン

ミカサ「あんな所で何してるのかしら・・・・・」ビュン

786 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:27:06 ID:seQXF4U2
※  ※  ※  ※  

ベルトルト「何?急に外に連れ出して」ブルブル

アニ「あんたが緊張しすぎだから。気分転換に散歩するの」

ベルトルト「はは・・・・ありがとう」ブルブル

アニ「どう?少しはマシになった?」

ベルトルト「ごめん・・・・無理・・・・」ブルブル

アニ「はぁー、しっかりしなさいよ」

ベルトルト「そんなこと言われても・・・・身体が勝手に震えるんだよ・・・・」ブルブル

アニ「・・・・・ちょっと止まって」

ベルトルト「・・・・何?」ブルブル

アニ「・・・・・・やっぱりあんた背ぇ高すぎ」

ベルトルト「何をいまさら・・・・・・・・」ブルブル

アニ「そこの切り株に座ってよ」

ベルトルト「いいけど・・・・」ブルブル ポスッ

787 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:28:12 ID:seQXF4U2

アニ(・・・・・・前からはキツいな)

ベルトルト「何?そんなにじろじろ見ないでよ」ブルブル

アニ(・・・・・後ろからか)スタスタ

ベルトルト「アニ?」ブルブル

アニ(でもこんなんで本当に震えが止まるのか・・・・?)ギュゥゥゥ

ベルトルト「突然のスリーパーホールド!?」ブルブル

アニ「馬鹿。技なんてかけてないだろ」ギュゥ 

ベルトルト「ア、アニ・・・・?///」ブルブル

アニ「しばらく黙ってて・・・・」ギュゥ

ベルトルト「う、うん・・・・・///」ブルブル

アニ(背中広いね・・・・・・お父さんみたい・・・・・)

ベルトルト(ナニコレ!?意味が分かんないよ・・・///)ブルブル ドキドキ

788 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:29:55 ID:seQXF4U2

アニ(首筋からほのかに漂うシトラス系の香り・・・。ぷっ、コロンつけてる!?)プルプル

ベルトルト(アニ・・・何を考えてるの?なんで背中で震えてるの?///)ドキドキ

アニ(ちょっと何色気づいてんのさ。・・・・まぁベルトルトも年頃の男子だから仕方ないか)

ベルトルト「ねぇ・・・・、もうしゃべってもいい?///」ドキドキ

アニ「うん」

ベルトルト「・・・・いつまで抱きついてるのかなぁ///」ドキドキ

アニ「あんたの震えがとまるまで」

ベルトルト「・・・・じゃあしばらく時間がかかるかな///」ドキドキ

アニ「・・・・・もう震えてないじゃん」

ベルトルト「・・・・・あとちょっとだけ///」ドキドキ

アニ「・・・・・はぁ、じゃあ後10秒ね」

ベルトルト(背中に当たる柔らかい感触・・・・。アニって結構胸あるよね・・・・///)ドキドキ

アニ「・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・はい、終わり」

789 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:30:49 ID:seQXF4U2

ベルトルト「・・・ありがとう。これなら舞台に上がっても大丈夫そうだよ」

アニ「良かった。じゃあ戻りましょ」スタスタ

ベルトルト「あのさアニ・・・・」

アニ「何?」

ベルトルト「その・・・・・震えてるのが僕じゃなくて他の男でもアニは抱きしめてあげたの?」

アニ「さあね。相手によるんじゃない?」

ベルトルト「・・・・そっか、そうだよね、はは・・・・・」

アニ「・・・・・・けどあんなに長い時間はしない」

ベルトルト「!?」

アニ「ほら、もたもたしてたら先に行くよ」

ベルトルト「う、うん・・・・///」

790 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:31:44 ID:seQXF4U2

※  ※  ※  ※

ジャン「・・・・・・ここにいると衝撃的な出来事に遭遇するな」ビュン

エレン「そうだな。何もここまで来て背後からの技の練習しなくてもいいよな」ビュン

ミカサ「エレンは純粋」ビュン

ジャン「・・・・・・まあ、ある意味アニの必殺技かもしれん」ビュン

エレン「必殺技か。俺も今度アニに教えてもらおう」ビュン

ミカサ「駄目。エレンには私が教えてあげる」ビュン

エレン「ミカサも必殺技できるのか?」ビュン

ミカサ「できる。ここにいる誰よりも上手にできる」ビュン

ジャン「どっからくるんだ。その根拠の無い自信は・・・・・・」ビュン

ミカサ「何なら今から披露してもいい」ビュン

エレン「本当か?」ビュン

ジャン「頼むから俺の前ではやめてくれ・・・・・・・泣くぞ」ビュン

791 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:32:46 ID:seQXF4U2

※  ※ ステージ裏 ※  ※

マルコ「サシャ、お疲れ様。すごく素敵だった。もう立派な歌姫だね」

サシャ「ふふふ、そんなに褒められると照れますよ」

アルミン「スピーチもありがとう。サシャの明るさのおかげで観客に嫌なイメージを与えずに済んだ」

サシャ「あれでよかったんですかね。客席が静まり返っちゃって焦りましたよ」

アルミン「それだけみんなサシャの話に耳を傾けてくれたんだ。大成功だよ」

サシャ「大成功ですか。それを聞いて安心しました」

マルコ「あっ、クリスタとユミルもお疲れ様」

ユミル「あーーーあちぃ」

クリスタ「はい、お水。ユミル今日は大活躍だね」

マルコ「そうだね。舞台に上がる時間はユミルが一番長い」

ユミル「ほんと意味わかんねぇよ。なんで私が一番働かなきゃなんねぇんだよ」

クリスタ「それだけ頼りにしてるんだよ」

ユミル「頼られても迷惑なだけだ」

クリスタ「えっと・・・次は?」

792 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:33:41 ID:seQXF4U2

マルコ「本当はエレンたちなんだけど・・・・・・ダンスを先にしてもらうことにしたよ」

ユミル「おっ、何でエレンたちを後回しにするのか理由も聞かないで決めたのか?

    私が大ほら吹いてるかもしれねぇのに」

マルコ「ははっ、ユミルはそんな無駄なことはしないよ。超のつくぐらいの合理主義だから」

ユミル「ちっ・・・でも今からでも止めたほうがいいと思うぜ」

マルコ「ユミルもやっぱりそう思う?ジャンの勢いに押されてつい許可してしまたけど・・・後悔してる」

ユミル「一応さ軽く触れるぐらいでは斬れないように刃を加工させたけど・・・・・

    ジャンとミカサに何かあった時、お前じゃ責任とれねぇだろ」

マルコ「・・・・だよね。ジャンたちが戻ってきたらもう一度話してみるよ」

サシャ「あれ?コニーがいないです。次は軍楽隊が演奏しなきゃいけないのにどこいったんでしょう?」

ライナー「俺が探してきてやるよ、カルメン」

サシャ「おぉ、頼りになる闘牛士さん。よろしくお願いします」

マルコ「アニとベルトルトは・・・・・・・・あっ、戻ってきた」

793 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:34:43 ID:seQXF4U2

アニ「・・・・ごめん。私たちが待たせてた?」

マルコ「そんなことはないよ。それに今は休憩時間だし」

アニ「そう、良かった」

マルコ「ベルトルトは・・・・・・・大丈夫そうだね」

ベルトルト「ああ。任せてくれよ。僕今なら空も飛べる気がするよ」

マルコ「はは、すごいやる気だね。何か良いことでもあった?」

ベルトルト「うん・・・・///」

アニ「はぁ・・・・・単純な男だね」

794 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:35:30 ID:seQXF4U2

※  ※ 広場片隅の林 ※  ※

ジャン「そうそうカマキリっていえばよ・・・」ビュン

エレン「またカマキリかよ。他に話すことねぇのか」ビュン

ジャン「バーカ。てめぇと揉めねぇで穏やかに話ができるネタが他にあるのかよ」ビュン

エレン「俺とお前の間にはカマキリしかねぇのかよ」ビュン

ジャン「何もねぇよりマシだろうが」ビュン

ミカサ「・・・・・あれはコニー」ビュン

エレン「・・・・・反対側からライナーが来た」ビュン

ジャン「おいおい・・・・・・・いきなりクライマックスか!?」ビュン

795 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:36:33 ID:seQXF4U2

※  ※  ※  ※

ライナー「おっ、コニー発見」

コニー「・・・ライナー・・・何か用か?」

ライナー「お前の出番だからサシャの代わりに探しにきたんだよ」

コニー「・・・サシャの代わりか・・・」

ライナー「どうした?元気ねぇな」

コニー「ははっ・・・・やっぱりそうなんだな・・・・・」

ライナ「コニー?」

コニー「・・・サシャはいいやつだ。優しいし、おもしれぇし、気が利くし・・・・」

ライナー「そうだが・・・・?」

コニー「いつも太陽みたいに笑ってて、一緒にいるとポカポカ心が暖かくなって、幸せな気分になって・・・」

ライナー「お、おう・・・・」

コニー「俺の陽だまり返せよ!!」

796 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:37:33 ID:seQXF4U2

ライナー「お前・・・・・・・何か盛大に勘違いしてないか」

コニー「・・・・何をだ?」

ライナー「いや・・・・・・お前の頭の中でサシャと俺ってどうなってんだ?」

コニー「なんでわざわざ言わせんだよ。ムカつくな」

ライナー「いいから言ってみろよ」

コニー「・・・・付き合ってんだろ」

ライナー「誰ネタだ?」

コニー「誰っていうか・・・・・・・俺がそう判断した」

ライナー「・・・やっぱりお前の状況分析には誤認が多いな」

コニー「なんだよ、偉そうに」

ライナー「完全なるお前の判断ミスだって言ってるんだ。馬鹿野郎」

コニー「・・・・ん?そうなのか?・・・・付き合ってないのか?」

ライナー「そうだ。ったく、どこで勘違いしたのか知らんが・・・・。他の奴らには話したのか?」

コニー「いや、話してねぇよ。・・・・・・そっか違ったのか。良かった良かった」

797 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:38:24 ID:seQXF4U2

ライナー「・・・・コニー、さっき俺に言ったことそのままサシャに言ってこい」

コニー「何でだよ」

ライナー「あれは立派な愛の告白だ」ニヤリ

コニー「なっ!?そんなじゃねぇし///」

ライナー「認めちまえよ。サシャが好きだって」

コニー「ちげぇし。友達とられたのがちょっと悲しかっただけだ///」

ライナー「友達ねぇ・・・」ニヤニヤ

コニー「もう、その顔やめろよ///」

ライナー「まぁ、がんばれや少年」ポンポン

コニー「頭ポンポンすんなよ。背が縮むだろ!」

ライナー「おっとすまん。やっぱりサシャより身長は高くねぇとな」

コニー「だから違うってば!!///」

ライナー「分かった分かった。とにかく戻ろうぜ。そろそろ次が始まるだろう」

コニー「やべっ、急がねぇと。オレ待ちとか勘弁してくれよ」

798 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:39:23 ID:seQXF4U2

※  ※  ※  ※

ジャン「・・・・・結局どうなったんだ、あれ?」ビュン

ミカサ「・・・・・真っ赤な顔してコニーがライナーに何か訴えてた」ビュン

エレン「・・・・・でライナーがコニーの頭をポンポンと」ビュン

ジャン「これは・・・・・コニーが告ってライナーがOKしたってことか?」ビュン

ミカサ「ええ・・・・・・新たなカップルの誕生ね」ビュン

エレン「祝福してやらなくちゃな」ビュン

ジャン「いや・・・・・俺たちの胸にしまっとこうぜ」ビュン

ミカサ「そうね・・・・まだまだ同性愛者はマイノリティ。偏見をもたれたら可哀想」ビュン

エレン「そうなのか?そんな奴はオレがぶっ飛ばしてやる」ビュン

ミカサ「あの二人が自らカミングアウトするまで触れちゃ駄目」ビュン

ジャン「デリケートな問題だしな」ビュン

エレン「なんか・・・・・もやもやするな」ビュン

799 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:40:15 ID:seQXF4U2

※  ※ ステージ上 ※  ※

三台のドラムに囲まれてベルトルトは立っていた。

ダカダカダダン ダンダダン・・・・    タカタカタタン タンタタン・・・・

ドラムの変則的リズムをタップで再現する。

だんだんと速度を上げていくドラム音。ベルトルトのステップも激しさを増す。

複雑さを極めた足捌きに観客は息を呑んだ。

ステップにつられて速まる鼓動、焦燥感。

会場の熱をもった緊張感がピークに達した時、アニがステージに登場する。

それに合わせユミルのヴァイオリンが激しくもの悲しい音色が奏で始める。

ドラム隊はステージ端に下がり、舞台中央にはベルトルトとアニの二人だけ。

曲にドラム音を加えるようにステップを踏み続ける。

800 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:40:59 ID:seQXF4U2

ベルトルト(こんなに大勢のお客さんに見られて恥ずかしいはずなのに、

      アニが隣にいるって思うだけで安心する。アニがいれば僕は何でもできる)

アニ(ちょっと・・・・飛ばしすぎだよ。少し落ち着けっての)

ヴァイオリンの旋律が一旦終了したところで、ファイフの演奏に合わせてダンス隊が全員ステージに上がる。

横一列に整列し、揃って敬礼。それを合図に始まる大合奏。

ダンサーたちの動きは細部に渡るまでシンクロした。

膝を曲げる角度、足を浮かせる高さまで全てが機械仕掛けの人形のように揃った。

小気味よいステップ音を響かせ観客を魅了する。

遠い遠い昔の記憶。抑圧された人々のダンス。百年以上の時を経て今、会場に蘇った。

801 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:41:45 ID:seQXF4U2

※  ※ ステージ裏 ※  ※

サシャ「あそこまで動きが揃うと圧巻ですね。背筋がゾクゾクッてします」

クリスタ「アニすごく綺麗。やっぱり華があるね。リードダンサーやってくれて本当に良かった」

マルコ「ベルトルトもすごいね。あんなに晴れやかな顔してる彼を見るのは初めてだ」

ライナー「ああ。ベルトルトがあそこまでフレキシブルな動きをするとは予想外だ」

エレン「よっ、ステージはどんな感じだ」

サシャ「あっ、エレン。なんだかとってもお久しぶりな感じがします。今までどこにいたんですか?」

エレン「裏の林。そこでずっとサーベル振ってた。あーーー腕がだりぃ」

クリスタ「駄目だよエレン。次ピアノ弾くのに。ちょっと腕見せて」

エレン「ん、ほらよ」

クリスタ「腕まくるね・・・・・・・・・。やだ、パンパンに張ってるじゃない。指は動く?」

エレン「指ねぇ・・・・曲げ伸ばしがぎこちねぇな」

クリスタ「エレンの馬鹿。マッサージしてあげるからこっち来て」

ミカサ「私も手伝おう」

クリスタ「うん。お願い」

802 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:42:41 ID:seQXF4U2

ライナー「ジャン、お前ら何してたんだ?」

ジャン「うっ・・・ライナー・・・」

ライナー「何だ?変な顔をして」

ジャン「いや、何でもねぇ・・・・。俺らは裏の林でサーベルをコーディングしてたんだ」

ライナー「コーティング?」

ジャン「溶けた松ヤニ塗ったくってな、天然樹脂加工の刃が完成したわけだ」

サシャ「なんだかすごそうですね。見せてください」

ジャン「いいぜ。・・・・見ろ、これが俺のパワーアップしたサーベルだ」

ライナー「アップしたらまずいだろう」

ジャン「そうだった。パワーダウンしたサーベルだ・・・ってなんかかっこ悪ぃな」

サシャ「おお!刃の部分が琥珀色してます。触ってもいいですか?」

ジャン「いいぜ。ちょっと触ったぐらいじゃ斬れねぇが気をつけろよ」

サシャ「はい。・・・・・・表面がプニプニしてますね」

ライナー「弾力があるな。・・・・しかしこれは・・・・すぐ剥げるだろ」

803 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:43:41 ID:seQXF4U2

ジャン「ああ。試しにさっきミカサと剣同士をぶつけてみたんだ。刃がぶつかった部分はすぐに剥げる」

ライナー「危険だな・・・。剣舞中は数え切れないくらい剣を交えるんだろ?あっという間にツルッパゲだ」

ジャン「でも無いよりはマシだ」

マルコ「ジャン」

ジャン「おっ何だマルコ?見てくれよこの剣。カッケーだろ」

マルコ「・・・・やっぱり中止しよう」

ジャン「は?」

マルコ「今更で悪い。でも・・・・やっぱりお前たちの身の安全を第一に考えたいんだ」

ジャン「・・・・やだね」

マルコ「ジャン・・・・・頼む」

ジャン「俺は何を言われてもミカサと一緒に舞台に立つって決めたんだ」

マルコ「責任者は僕だ。決定には従ってもらう」

ジャン「・・・なぁマルコ。兵士になった以上いつ死ぬか分かんねぇだろ。

    俺は巨人に食われて死ぬより、ミカサに斬られて死ぬほうを選びたい」

マルコ「なんでここで死のうとしてんだよ。やめてくれよ」

804 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:45:38 ID:seQXF4U2

ジャン「うっせぇな。大丈夫だよ。サーベルもコーディングしたし。簡単には斬られねぇよ」

マルコ「・・・・・・じゃあ、そのサーベルで僕を斬りつけてみろよ」

ジャン「は?」

マルコ「安全なんだろ?怪我しないんだろ?だったらここで僕を斬って証明しろよ!」

ジャン「マルコ・・・・・落ち着けよ」

マルコ「それができないんだったら中止だ」

ジャン「ちっ・・・・お前ずりぃ・・・・・そんなんできるわけねぇだろ」

ミカサ「ジャンができないのであれば私がやろう」スッ

ジャン「へっ?」

マルコ「ちょ、ちょっとミカサは勘弁してくれよ・・・・・」

ミカサ「マルコ、あなたは弱い。そしてとても臆病。そこで指をくわえて見てればいい」

マルコ「ミカサ・・・・」

ミカサ「でもそれが正しい。あなたは私たちの責任者、言ってみれば指揮官。指揮官は先陣に立ってはいけない」

805 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:47:07 ID:seQXF4U2

ジャン「何があってもお前のこと恨んだりしねぇからよ」

ミカサ「私の技術を信じて欲しい」

マルコ「はは・・・・・・もう好きにしてよ」

サシャ「あっ、ダンス終わりましたね。すごい拍手ですよ」

ジャン「じゃあ行ってくるわ」

マルコ「・・・・・・・・」

ジャン「そうそう、万が一俺に何かあった時はオレ様秘蔵の官能小説、お前に譲ってやるよ」

マルコ「・・・・・・・・」

ジャン「俺んちの自分の部屋に置いて来てるんだがな。本棚の最上段にある文学全集。

    あれはカバーだけで中身はマニア垂涎のお宝本だ」

マルコ「・・・・・・・・・」

ジャン「もしお前がその本取りに行くようなことがあったら・・・・クソババアによろしく伝えといてくれ」

マルコ「・・・・・・・・・」

806 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:48:14 ID:seQXF4U2

ジャン「よし、やってやるか」スタスタ

マルコ「・・・・・・待てよ!!」

ジャン「何だよ、まだ止める気か?」

マルコ「僕もやるよ」

ジャン「お前・・・・」

マルコ「そんな悲しい官能小説じゃ抜けないだろう?」

ジャン「ぶっ・・・・・アハハハハハ・・・・・お前最高」

マルコ「剣は?」

ジャン「・・・・ほら、予備だ。・・・・ミカサ!マルコも参加するってよ。いつも通りの二刀流にしてくれ」

ミカサ「了解した。・・・・覚悟はできてる?」

マルコ「ああ、大丈夫だ」

807 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/09(金) 23:49:10 ID:seQXF4U2

クリスタ「マルコ・・・・。考え直してよ。ミカサがさっき言ったじゃない。指揮官は先陣に立っちゃいけないって」

マルコ「ごめん。僕は・・・・・・指揮官である前にジャンの友人でいたいんだ」

クリスタ「・・・・・・バカ」

ジャン「よし、今度こそ出撃だ」スタスタ

マルコ「ああ。お手柔らかに頼むよ、ミカサ」スタスタ

ミカサ「容赦しない」スタスタ

マルコ「えっ!?」スタスタ

ミカサ「冗談。練習通りにするのが一番安全だと思う」スタスタ

ジャン「だな。慣れてるやり方のほうが怪我は少ないだろう」スタスタ

マルコ「練習通りって・・・・・・・ノープランかよ!!」スタスタ


814 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:36:59 ID:evye66GM

※  ※ ステージ上 ※  ※

マルコ「ここからの眺めはやっぱり圧巻だね」

ジャン「ヒュー♪テンション上がるぜ」

ミカサ「浮き足立たないで」

エレン「まあ頑張れよ」

ジャン「てめぇもな」

サシャ「次はハチャトゥリアン作曲『剣の舞』オリジナルヴァージョンのピアノ独奏です。

    曲にちなんで訓練兵団の精鋭が剣舞をご披露します。どうぞお楽しみ下さい」

観客席から期待に満ちた視線が送られる。その重圧をごまかすように話し続ける。

マルコ「ははっ精鋭だって。はじめて言われた」

ジャン「まあ俺はそう呼ばれて当然だがな」

ミカサ「集中して・・・・曲が始まる」

エレン「いくぜ」

♪♪♪♪♪~~~

815 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:37:41 ID:evye66GM

静まりかえった会場に突然落ちる雷のように落ちる衝撃的な不協和音。

それと同時にミカサたちも動き始める。

爆破音のように激しい音の渦の中、ミカサたちは呼吸すらままならない速さで激しく剣を切り結ぶ。

マルコ(くっ・・・・・・少しでも止まったらやられる)ギィン!! ギィン!!

ジャン(・・・・・くそっミカサの奴、相変わらず涼しい顔して捌きやがって)ギィン!! ガギィン!!

ミカサ(・・・・・コーディングが・・・・・刃の中央部分はもうボロボロね)ギィン!! ギィン!! ギィン!!

琥珀色と本来の剣の色でまだらになった刀身。剣を交えれば交えるほど危険が増していく。

マルコ(・・・・エレンの編曲いいな。耳障りな音を極力削って、自分なりに和音を構築してる・・・・・って危ねっ!!)シュッ!!

マルコの頬を掠めた剣先。一瞬冷やりとする。しかしコーティングが残っていたおかげで切り傷はできていない。

ジャン「マルコ!!何ぼうっとしてんだよ!!」ギィン!!ギィン!!

マルコ「悪い!僕は・・・つくづく音楽・・・・・バカだよ」ギィン!!ギィン!!

ジャン「は?」ギィンギィン!!ガギィン!!

マルコ「こんな時・・・だってのにエレンの・・・・演奏解説してた」ギィン!!ギィン!!

ジャン「ははっ・・・・余裕だな」ギィン!!ギィン!!

816 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:39:02 ID:evye66GM

ミカサ「お願いだから集中して。うっかり斬ってしまう」ギィン!!ギィン!!ガギィン!!

マルコ「くっ・・そ・・・・・」ギィン!!ギィン!!

ジャン「はっ・・・マルコ押されてんぞ」ギィン!!ギィン!!

マルコ「なん・・・・でミカサは・・・・こんなに強い・・・・・んだよ」ギィン!!ギィン!!

ジャン「女相手に男二人で・・・・勝てねぇなんて・・・情けねぇ・・・・・・・よなっと」ガギィン!!ガギィン!!

マルコ「ああ・・・・格好つかない・・・・・よっ」ギィン!!ガギィン!!

ジャン「だよな・・・・・・・・・・ふぉっ!!」ガギィィン!!! ザシュッ!!

ジャンの剣が大きく弾かれた。間髪を容れずミカサは横薙ぎに剣を払う。あまりの速さに防御が間に合わない。

マルコ「ジャン!!!」ギィン!!ギィン!! ギン!!

ミカサ「大丈夫。肉まで達してない」ギィン!!ガギィン!!

ジャンの上着は切れ目が入り、完全に切り離されなった布が無様にぶらさがり揺れている。

ジャン「マジかよ・・・・・」ギィン!! ギィン!!

マルコ「洒落に・・・ならない・・・・・・よっ」ギィン!!

817 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:39:59 ID:evye66GM

死を意識し体中に痺れるような戦慄がはしる。

生まれて初めて真剣と対峙する緊張と恐怖でアドレナリンが大量に分泌される。

高まる動悸。激しくなる呼吸。滴り落ちる汗。

観客のざわめきもピアノの音も遠くに掻き消え、心臓の鼓動だけが耳の奥底で鳴り響く。

ジャン・マルコ「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

獣のような咆哮をあげ無我夢中で斬りかかる。

死にたくない

死にたくない!!

死にたくない!!!!

理性は消えうせ本能のみが肉体を支配する。

加速度的に激しさを増す斬り合いに、ジャンとマルコの服には無数の裂け目が刻まれていく。 

白いシャツに血が滲む。だが痛みは感じない。

真っ白な意識の中ひたすらに剣を振る。

818 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:41:10 ID:evye66GM

どれぐらい時間が経過しただろう。ミカサが大声で何か訴えている。

しかし強い興奮状態にある二人の耳には届かない。

ずっしりとした重量感のあるサーベル。いつも使用していた模造刀の比ではない。

重みに両腕が疲弊する。段々と柄を握る手の力が弱まってくる。

その時、マルコの振り下ろそうとした剣が汗ですべって手から離れた。

一瞬にして我に返るマルコ。目に映る情景がスローモーションのようにゆっくり進んでいく。

宙を浮く剣はミカサの顔面を目掛けてゆるやかな軌道を描き、

ミカサの振り抜いた切っ先は一直線にマルコの喉下を抉ろうとしていた。

819 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:42:28 ID:evye66GM

「予想外の動きをしなければ大きな怪我はさせない」

練習中にミカサが言った言葉が頭をよぎる。

マルコの目には不気味に輝く鈍色の刃が、死のカウントダウンをしながら迫ってくるのがはっきり見えた。

マルコ(ごめんミカサ。予想外の動きをしてしまったね)

急速に冷えた頭で人生最期の時を覚悟した。

刃が喉を切り裂く。その寸前・・・・

バタンッ!!!

何かが倒れる音と同時にミカサが視界から消えた。

ジャン・マルコ「!?」

820 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:43:22 ID:evye66GM

エレン「っって・・・・・・お前らいい加減にしろよ!!!もう演奏終わってんだよ!!!」

舞台上にはエレンに横抱きにされ倒れこんだミカサの姿があった。

エレンは演奏が終わっても戦い続ける三人を不審に思い側に近寄り、制止するタイミングを計っていた。

マルコの剣が手から離れ危険と判断したエレンは、咄嗟に後からミカサの腰を掴み渾身の力で引き倒したのだった。

そして床に垂直に突き刺さるマルコが手放した剣。

無様な幕引きに観客は複雑な表情を浮かべ、事の成り行きを静かに窺っている。

エレン「ミカサ、大丈夫か?」

ミカサ「うん・・・・・///」

マルコ「終わってたの・・・・?」

ジャン「全然気付かなかった・・・・・」

821 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:44:10 ID:evye66GM

ミカサ「私は何度も言った。でもあなたたちは聞いてくれなかった」

マルコ「それは・・・・・本当に申し訳ない」

ジャン「悪かった・・・・」

エレン「とりあえず挨拶して舞台降りろ、ってアルミンがカンペ出してる」

マルコ「そうだった。ここステージの上だよ・・・・」

エレン「しっかりしろよ」

マルコ「ああ・・・。とにかく下がろう」

会場に漂う微妙な空気。

一同は並んで敬礼すると逃げるように舞台袖へ消えた。

822 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:45:07 ID:evye66GM

※  ※ ステージ裏 ※  ※

ジャン「ミカサすまん。完全に自分を見失ってた」

マルコ「僕も。エレンが機転をきかせてくれなかったら、ミカサに大怪我を負わせるところだった」

ミカサ「気にしないで。マルコの落とした剣は私なら避けれたはず。

    ただ私の振り抜いた剣は勢いがつきすぎて急には止めれなかった」

アルミン「反省会は後にしてよ。まだ公演は続いてるんだから。舞台を進行させないと・・・・」

エレン「次で最期か?」

アルミン「うん。全員参加の大合唱。でもジャンとマルコは休んでてよ」

ジャン「何でだよ。俺はピンピンしてるぜ」

アルミン「自分の姿をよく見てみなよ」

ジャン「姿?・・・・・・うわっ、服ボロボロじゃねぇか」

マルコ「血も滲んでるし・・・・。いつの間にか傷だらけだ」

823 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:46:18 ID:evye66GM

ミカサ「すまない。あなたたちが本気で向かってくるので加減が難しかった」

ジャン「謝んなよ。お前はなんも悪くねぇんだから」

マルコ「ああ、この程度で済んですごくラッキーだよ」

アルミン「後は僕に任せて。じゃあ行ってくるね」

マルコ「うん、悪いね・・・・・・頼んだよ」

ジャン「会場を盛り下げちまってすまねぇ・・・・頑張ってこいよ」

アルミン「じゃあみんな用意して!!舞台に出るよ!!」

クリスタ「・・・・マルコ」

マルコ「あっ・・・・・」

クリスタ「はい、救急箱。手当は自分たちでしてね。私も伴奏役あるから」

マルコ「ありがとう・・・・・・・格好つけて出たくせにさ・・・・情けないよね・・・・」

クリスタ「・・・・文句は後でいっぱい言わせてもらうから」

マルコ「・・・・・・」

クリスタ「・・・・・でも本当に無事で良かった・・・・・」グスッ

マルコ「うん・・・・・」

824 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:47:04 ID:evye66GM

※  ※ ステージ裏 ※  ※

ジャン「ってーな・・・・・もっと優しく消毒しろよ」

マルコ「悪い。ライナーの声やっぱり響くなぁって感心してたらさ・・・・」ポンポン

ジャン「・・・・合唱始まったんだな。俺も歌の練習させられたのによ。不参加とはな・・・・」

マルコ「まぁね、フィナーレは全員でステージ立ちたかったけど・・・・しょうがないよね」ポンポン

ジャン「あんまり痛くはねぇんだが傷は深そうか?」

マルコ「どの傷も皮膚の表面を切ってるだけ。ミカサはやっぱりすごいね。

    あの状況で剣の軌道を完璧にコントロールしてたんだから」ポンポン

ジャン「ああ・・・・それに比べて俺らは本当に情けねぇよな・・・・・」

825 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:48:25 ID:evye66GM

マルコ「うん・・・・。真剣と対峙して僕は初めて死の恐怖ってものを知ったよ。頭がパニック状態になって・・・・

    あれほど死にたくないって思ったことは一度もないね」ポンポン

ジャン「俺もさ、ミカサに斬られて死ねるなら本望だって思ってたけど・・・・全然本望じゃなかったぜ。

    死ぬのがこんなにも恐ろしいなんてな・・・・・。やっぱり俺は生きていてぇんだよ」

マルコ「うん・・・・・・生きような。この先何があっても生き抜こうな」ポンポン

ジャン「もちろんだ。俺とマルコが組めば敵無しだ・・・・・・ミカサは別として」

マルコ「ははっ。・・・・うん。大体消毒できたかな」

ジャン「ガーゼは?」

マルコ「そんなに傷が深くないから貼らなくていいだろ。面倒だし」


827 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:49:45 ID:evye66GM

ジャン「はぁ・・・・野郎の手当なんざいい加減なもんだよな。・・・・・交代してやる。上脱げよ」

マルコ「分かった。・・・・・ジャン着替え持ってきてる?」ヌギヌギ

ジャン「んなもんねぇよ」

マルコ「僕もだよ。ボロボロの服で帰るしかないのか・・・・」

ジャン「いっその事、上半身裸で帰っちまうか」ポンポン

マルコ「やだよ。上着だけ誰かに貸してもらうよ」

ジャン「素肌にジャケットか。ワイルドだな」ポンポン

マルコ「何も着ないよりはマシだろ?」

ジャン「まあな。・・・・・・・・・・それよりだ」ポンポン

マルコ「何?」

828 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:51:11 ID:evye66GM

ジャン「さっきのクリスタ、あれはどういうことだ?どうしてお前が無事で涙ぐんでんだよ」ポンポン

マルコ「さぁ・・・・なんでだろうね?」

ジャン「しらばっくれんじゃねぇよ」グリグリ

マルコ「いっ!?ちょっ・・・やめてくれよ、痛いって」

ジャン「じゃあ正直に話せよ。付き合ってんのか?」

マルコ「付き合ってないよ」

ジャン「嘘つくな」グリグリ

マルコ「いっ・・・た!本当だってば!!」

ジャン「お前さぁ、ずるくねぇ?

    マルコは俺の恋愛事情を全部知ってるくせに、俺はマルコのそういう話これっぽっちも知らないんだぜ?」

マルコ「それはジャンが勝手にべらべらしゃべるからだろ」

ジャン「マルコだからしゃべってんだよ。他の奴にはそんな話しねぇし」

マルコ「ジャン・・・・」

829 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:52:23 ID:evye66GM

ジャン「親友だろ?誰にもバラさねぇからよ。いい加減教えろ」ポンポン

マルコ「・・・・・・付き合ってないのは本当だよ」

ジャン「ふーん・・・・で?お前はクリスタが好きなのか?」ポンポン

マルコ「はぁー・・・・・・そうだよ」

ジャン「じゃあ今すぐ告れよ。さっきのクリスタの様子は間違いなくお前に気がある」ポンポン

マルコ「・・・・告白っていうか・・・・・・すでに僕の気持ちはクリスタに伝わってるよ・・・・」

ジャン「マジか!意外と積極的だな・・・・・・・で、クリスタの返事は?」ポンポン

マルコ「・・・・その、返事はしないでって・・・・・」

ジャン「・・・・は?」

マルコ「返事は・・・・訓練兵団を卒業するまでしないでって頼んだ・・・・」

ジャン「意味分かんねぇ」

830 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:55:15 ID:evye66GM

マルコ「いい加減な付き合いはしたくなかったから・・・・。憲兵団に入れるまでは保留しようかなって」

ジャン「お前さぁ・・・・何でそんなとこまでごまかすんだよ・・・・。本当はそんな理由じゃねぇだろ。

    単に周りに遠慮してるだけだろ」ポンポン

マルコ「・・・・やっぱりジャンにはバレたか。・・・・僕はさ、今のままで十分満足してるんだよ。

    クリスタがいてジャンがいて他にもたくさん仲間がいて・・・・。この状態を壊したくないんだ」

ジャン「壊すって・・・・馬鹿だな、お前。ライナーにでも気を遣ってんのか」ポンポン

マルコ「やっぱり・・・・僕は臆病なんだよね・・・・。人と争いたくないし嫌われるのが恐い」

ジャン「じゃあ何でクリスタに言ったんだよ。最期まで黙っとけよ」ポンポン

マルコ「・・・・卑怯かな」

ジャン「ああ。クリスタ狙ってる奴らを出し抜いて、何食わぬ顔で先約入れてよ。

    それじゃあ他の奴がいくら勇気を出して告ったって、クリスタはお前との約束を気にして了承できねぇだろ」

マルコ「返事をもらう約束はしたけど・・・・・僕と付き合う約束はしてないよ・・・・」

831 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:56:08 ID:evye66GM

ジャン「あーーー、もう!!俺はそういう曖昧な態度が大嫌いだ。すげぇムカつくぜ」グリグリ

マルコ「いっ・・・・て!!」

ジャン「俺なガキの頃、昆虫好きでよ・・・・・・・って今日は虫の話ばっかしてんな」

マルコ「ジャン・・・・?」

ジャン「いいから黙って聞け。・・・・家の近所に昆虫専門店があってよ。しょっちゅう覗いてたんだ」

マルコ「・・・・めずらしいねそんな店」

ジャン「だろ?露店だったけどな。・・・・そんなある日俺はその店で運命の出会いをした。

    堂々とした風格、絶妙な長さとそり具合の角、黒光りする体躯。まさに理想のカブトムシだ。

    俺はその黒いダイヤに一目で夢中になった」

マルコ「・・・・・・」

ジャン「すぐに店のおっさんに売ってくれって声をかけた。だがな一足遅かった。もう売れたって言うんだぜ。

    そのカブトムシが入っているケースをよく見ると売約済みの札がかけられてた」

マルコ「・・・・・・」

832 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:56:58 ID:evye66GM

ジャン「でもよ、諦め切れなくて毎日毎日そのカブトムシに会いにいった。売約済みのままずっと店頭にいたんだ。

    買うって言った奴がなかなか金持って引き取りに来なくてな・・・・・ホント何考えてんだか」

マルコ「・・・・・・カブトムシは高いからね」

ジャン「店のおっさんは手付金もらってるらしくって律儀にそいつを待ってんだ。

    だが俺はいつか売約済みの札が消えるんじゃねぇかって期待してた。

    あのカブトムシがフリーになったら今度は俺が一番に名乗りをあげるんだって・・・・」

マルコ「・・・・・・」

ジャン「最初はとにかくカブトムシを自分の物にしたくって店に通い詰めてた。

    だけど毎日見てると段々とそいつが可哀想に思えてきてな・・・・

    ガラスのケースの中、一人ぼっちで来るか来ないかわかんねぇ奴を待ってるんだぜ」

マルコ「・・・・・カブトムシに感情移入しすぎだよ」

833 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:58:02 ID:evye66GM

ジャン「うるせぇな。俺にはそう見えたんだよ。

    俺はそのカブトムシが欲しくて欲しくてたまらなかったはずなのによ・・・・・

    俺にチャンスが来てないか確認するために通ってたんだが・・・・

    そのうち無事に迎えが来たかどうかを心配して通うようになってた」

マルコ「・・・・・・結局そのカブトムシはどうなったの?」

ジャン「それがな、ある日突然その昆虫屋が店じまいしやがってよ。カブトの行方は未だ知れずだ」

マルコ「・・・・・・作り話?」

ジャン「お前なぁ、俺がこんなに一生懸命思い出話してやったのに疑うのかよ」

マルコ「いや、出来すぎかなって。いろいろと」

ジャン「実際にあった話だ。多少脚色しちまった部分はあるが・・・・

    で、マルコは俺の話を聞いてどう思ったよ。自分のやってることが最低だって自覚したか?」

マルコ「まぁ・・・・ジャンの言いたいことは分かった。けど僕にどうしろって言うんだよ」

834 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 00:59:07 ID:evye66GM

ジャン「そりゃあお前、すぐに引き取るか、売約自体をキャンセルするかの二択しかねぇだろ」

マルコ「じゃあ僕は三択目にするよ」

ジャン「はあ?」

マルコ「僕はお店に手付金を払ってないからね。店のおじさんは律儀に僕を待つ必要はない。

    売約札をいつ取るかはおじさんに任せるよ」

ジャン「それずるくねぇ?完全に人任せじゃん。

    それに今の会話ではカブトムシがクリスタで売約した奴がマルコだろ?・・・・おっさんって誰?」

マルコ「そうだな・・・・・・ユミルとか?」

ジャン「ぶっ・・・・くくくっ・・・・お前ひでぇな・・・・ユミルのおっさんか・・・・」ゲラゲラ

マルコ「いや、ふざけてないから。そんなに笑うなよ。ほらユミルってクリスタの保護者みたいだろ?」

ジャン「まぁ確かにいつもべったりくっついてるが・・・・。お前はユミル任せでいいのかよ」

マルコ「それは困るな。すぐに売約札叩き折ってカブトムシを店の奥にしまい込むだろうから」

ジャン「ははは、確かにな」

835 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 01:00:49 ID:evye66GM

マルコ「それにクリスタはガラスケースの中に閉じ込められてないし。何を選ぶかは本人の自由だよ。

    カブトムシとクリスタを一緒にするな」

ジャン「悪ぃ悪ぃ。けどよ以前やったピアノの発表会でお前『樅の木』弾いてただろ?」

マルコ「そうだけど?急になんだよ」

ジャン「あん時のお前の演奏、ムードたっぷりに甘く歌い上げやがって。ありゃ女を口説く弾き方だ」

マルコ「今ごろになって駄目出し?」

ジャン「ちげぇよ。お前のピアノは甘ったるいんだ。甘い匂いに誘われたクリスタはカブトムシみたいなもんだ」

マルコ「強引に持ってくるなぁ・・・・・。だがジャン、樅の木にはカブトムシは生息しない」

ジャン「マジ?そういや、クヌギやコナラでしか捕ったことねぇな」

マルコ「はぁ・・・・思いつきで適当に話すなよ。

    ・・・・・・・あっ、訓練兵団の歌が始まった。これで本当に最期だ・・・・」

ジャン「やっとか。あー、今日一日すっげー長く感じたぜ」

マルコ「ははっお疲れさま」

ジャン「お前もな」

836 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 01:02:03 ID:evye66GM

マルコ「よし。みんなが戻ってきたら、まずはミカサカブトにもう一度謝ろうな」

ジャン「ぶっ、なんだ?ミカサカブトって」

マルコ「だってジャンの作り話、ミカサへの思いそのまんまじゃないか。カブトムシにミカサを完全に重ねてただろ」

ジャン「だから作り話じゃねぇって。・・・・・・ミカサは・・・・やっぱり重ねちまったかな」

マルコ「ジャン・・・・・・・僕は応援してるから。どんなに望みが薄そうでも」

ジャン「うるせぇよ」

トントン トントン

マルコ「ん?ノックする音?」

ジャン「入り口の方からしたな。誰か来たのか?」

マルコ「見てくるよ」スクッ スタスタスタスタ

ジャン「悪ぃな」

837 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/13(火) 01:02:45 ID:evye66GM

マルコ(あっ・・・・上半身裸だ・・・・・)スタスタスタスタ

マルコ(まっ、いっか・・・・・・)スタスタスタスタ

マルコ(入り口に来たけど・・・・・誰もいないな・・・・・)キョロキョロ

マルコ(ん?何か置いてある・・・・・・・)

マルコ(小さな花束・・・・ブーケってやつか・・・・・)

マルコ(メッセージカードが添えられてる・・・・・どれどれ・・・・?)


842 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:29:01 ID:oo.Gbr0E

※  ※ ステージ上 ※  ※

大合唱が終わり観客席から歓声と拍手が巻き起こる。

アルミン「たくさんの拍手ありがとうございます。

     ただ今の演奏をもちましてチャリティーコンサートを終わらさせていただきます。

     途中、不手際があり、大変お見苦しい所をご覧に入れてしまい申し訳ありませんでした。

     なんとか無事に今日の舞台を終え、私たち訓練兵団一同、晴れ晴れしい気持ちでいっぱいです。

     今日皆様から頂いた拍手が今後の訓練の励みになることと思います。

     御来聴有難うございました」

一同整列して一斉に敬礼を捧げる。

再び波のように押し寄せる拍手。

ひとまず安堵の表情を浮かべアルミンは一礼した。

843 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:29:42 ID:oo.Gbr0E

※  ※ 広場 ※  ※

舞台が終了した後も片付けや荷物の搬送手続き等、みな忙しく動き回った。

帰り支度を終え広場に集合するころには、観客席は先程までの熱気が嘘だったかのようにガランと静まり返っていた。

店じまいをしていた屋台から無理を言って人数分の飲み物を買う。

憲兵団に挨拶しに行ったアルミンとマルコの帰りを今か今かと待っていた。

アルミン「ごめん、お待たせ」

エレン「遅ぇよ」

マルコ「寄付金の集計に手間取っちゃって。・・・・・・・ほらジャン。シャツ貰えたよ」ポイッ

ジャン「おっ、サンキュ。助かるぜ」

マルコ「兵士が裸ジャケットなんかで街を歩くなってさ。外見だけは気にするらしい」

コニー「なぁなぁ、いくら稼いだんだ?」

アルミン「びっくりするくらい結構な金額だよ。後日、明細と一緒に駐屯地まで届けてくれることになった」

844 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:30:17 ID:oo.Gbr0E

サシャ「やりましたね。みんなでご馳走食べ放題じゃないですか」

アルミン「はは・・・・お金の使い道は帰ってから全員で相談しよう」

ライナー「ああ。とりあえず乾杯しようぜ。いつまで待たせやがる」

ベルトルト「ほら、アルミンとマルコの分」

アルミン「ありがとう」

マルコ「じゃあみんな今日はお疲れ様。そしてありがとう!!!」


かんぱーーーーーーーい!!!!

845 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:30:55 ID:oo.Gbr0E

ライナー「くぅぅぅ・・・・たまらん。一仕事終わった後のビールは格別だな」

サシャ「おじさん臭いですよ」

ライナー「まぁそういうなよ、陽だまりちゃん」ニヤリ

サシャ「は?何ですかそれ?」

コニー「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ライナー余計なこと言うなよ!!」

サシャ「うわっ、何ですかコニー。急に飛んできて」

ライナー「俺が何かまずいこと言ったか?」ニヤニヤ

コニー「ぐっ・・・・・・・・ライナーはサシャと絡むの禁止だ」

サシャ「おお!なぜか禁止されました」

ライナー「そりゃ無理だ。サシャはなかなか良いケツしてるからな」

サシャ「本人を目に前にしての大胆な発言、さすがセクハラオヤジです」

コニー「ケツって・・・・・!?ライナー、てめぇ触ったのかよ!!」

ライナー「まさか、眺めてるだけだ。 ・・・・・触ってもいいのか?」

サシャ「駄目に決まってます」

846 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:31:44 ID:oo.Gbr0E

コニー「何でライナーはサシャの前では素なんだよ。他の女子の前では岩みてぇに黙ってんのに」

ライナー「おいおい、それを俺に言わせるのか?サシャの前だぞ」

コニー「なっ!?やっぱりお前サシャのこと・・・・・・・」

ライナー「ああ、そうだな」

コニー「くっそ・・・・・・・さんざん人のことからかっといて」

ライナー「サシャのことは妹のように思ってるな」

コニー「へ?」

サシャ「妹ですか。・・・・・・・妹のお尻を変な目でみるのはどうかと思いますよ」

ライナー「それもそうだな。・・・・・・・・・・じゃあ娘か?」

サシャ「娘のほうがもっと問題です」

コニー「何だよそれ。意味分かんねぇよ」

847 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:32:29 ID:oo.Gbr0E

ライナー「まあ、あれだ。俺は正統派のお嬢様タイプが好みなんでな。

     サシャは女のわりにさっぱりした性格してるだろ?気楽に話せるんだよ」

サシャ「暗に恋愛対象外だって言い放ちましたね」

ライナー「対象に入りたいのか?」

サシャ「永久に外でお願いします」

コニー「なんだ・・・・。ただの友達ってことか」

サシャ「そうですよ。みんな友達・・・・・・・いえ大切な仲間ですよ」

ライナー「それじゃあ、俺は女神の顔でも拝みに行くとするか。

     ・・・・・ぼやぼやしてっと陽だまりが他のやつに占領されるぞ、コニー」スタスタスタ・・・

コニー「なっ!?それ言うなよ、もう」

サシャ「行っちゃいましたね。・・・・・さっきから陽だまり陽だまりって何ですか?」

848 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:33:29 ID:oo.Gbr0E

コニー「何でもねぇよ」ゴクゴクゴク

サシャ「あっ、コニー。それお酒なんじゃ?」

コニー「ちげぇよ。瓶の見た目はビールっぽいが中身は激甘の炭酸水だ」

サシャ「よかったです。また倒れられたら面倒ですから」

コニー「あん時は・・・・・・世話かけて悪かったな」

サシャ「かまいませんよ。そんなことより、ソレ私にも一口下さい。飲んでみたいです」

コニー「えー、ただでやるのか?」

サシャ「私のはオレンジジュースです。交換しましょう。はい、どうぞコニー」

コニー「お、おう・・・・・・・・・ほらよ」

サシャ「ありがとうです。では味見です」ゴクゴクゴクゴク

コニー「お、おい。全部飲むなよ」

849 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:34:04 ID:oo.Gbr0E

サシャ「プハーーーッ。甘くておいしいですよ。・・・・・コニーは飲まないんですか?」

コニー「い、いや・・・・えーと・・・・・」

サシャ「オレンジジュースは嫌いでしたか?」

コニー「そうじゃねぇけどよ・・・・・・なんつーか・・・・・」

サシャ「?」

コニー「なんか・・・・・・すげぇ恥ずかしいんだよ」///

サシャ「オレンジジュース飲むのがですか?」

コニー「・・・・・・・・この瓶に口つけるのが」///

サシャ「ふーん・・・・・変なコニーですね」

850 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:35:04 ID:oo.Gbr0E

※  ※  ※  ※

アルミン「冷やりとする場面もあったけど無事に終わって何よりだね」

マルコ「僕がすべて台無しにするところだった。反省してるよ」

アルミン「けど真剣持ったミカサ相手によくやったよ。僕は絶対ごめんだね」

マルコ「そう?相手がミカサだからこの程度の傷で済んだんだ。彼女には感謝してるよ」

アルミン「ミカサもエレンに助けられて嬉しそうだったし・・・・・・結果オーライかな?」

マルコ「はは。・・・・・でもさ、ここまでトントン拍子で事が進んだから足元が浮ついてたのかも。

    模造刀さえ持って来とけばこんな騒ぎにはならなかった。肝心なところで詰めが甘いんだよ、僕は」

アルミン「まぁ、今回のステージはいい経験になったよね。運営を通して今の僕らの実力が見えてきた。

     足らなかった部分は今後の課題にすればいいよ」

851 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:35:54 ID:oo.Gbr0E

マルコ「ああ。・・・・・・・僕達はこれからだ」

アルミン「うん。期待してるよ。未来の名指揮官殿」

マルコ「ははっ・・・・・じゃあアルミンは名参謀かな」

アルミン「やだなぁそんな目標はないよ・・・・・

     でもさ、そんなふうにに呼ばれる歳になったら、今日の出来事は良い思い出になってるんだろうね」

マルコ「・・・・・何十年たっても忘れないだろうな。訓練兵団で過ごした日々は・・・・・」

アルミン「うん。この瞬間の全てが一生の宝物になるんだ。

     こうやって何気なくマルコと会話してることも、将来きっと懐かしく思い出すんだよ」

852 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:37:17 ID:oo.Gbr0E

マルコ「そうだね・・・・・・・なんだかしんみりしてきたな・・・・・」

アルミン「ごめんごめん。とにかく今日はお疲れ様。一番の目的だった寄付金集めは大成功だよ」

マルコ「本当にみんなよくやってくれたよね。感謝しなきゃ。・・・・・・・・あっ、いけない」

アルミン「どうしたの?」

マルコ「クリスタにちょっと用があって・・・・・・どこいるかな・・・・・?」

853 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:37:57 ID:oo.Gbr0E

※  ※  ※  ※

ユミル「クリスタ、私今日すっげー頑張っただろ?」

クリスタ「うん。ユミルは偉いよ」

ユミル「じゃあご褒美にキスしてくれ」

クリスタ「イヤ」

ユミル「ケチ」

クリスタ「ふふ。・・・・・いつも守ってくれてありがとう。大好きだよ」ギュッ

ユミル「クリスタ・・・・」///

クリスタ「ねぇ・・・・・ユミルってヴァイオリンすごく上手になったよね」

ユミル「まぁな。そんな柄じゃ無ぇが、練習だけは続けてたし」

854 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:38:42 ID:oo.Gbr0E

クリスタ「・・・・・・今度はチェロ弾いてみない?」

ユミル「はぁ?」

クリスタ「私ね、ユミルってすごくチェロも似合うと思うの。次はチェロとピアノの二重奏したいなぁ」

ユミル「勘弁してくれよ」

クリスタ「やだやだ。チェロ弾いてよー。お願い」ギュゥゥ

ユミル「お前・・・・・・・ほんっとずりぃな・・・・・・・」ナデナデ

855 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:39:39 ID:oo.Gbr0E

※  ※  ※  ※

ジャン「ミカサ、本当にすまなかったな」

ミカサ「もういいって言ってるでしょ。

    それに・・・・あなたたちのおかげで私は久しぶりにエレンに守られた。・・・・すごく高揚した」///

ジャン「はぁ・・・・・結局お前に格好いいとこ見せられなかったな」

ミカサ「そんなの最初から期待してないから」

ジャン「そうか・・・・・」

ミカサ「けど・・・・・ジャンのおかげでエレンと一緒の舞台に立てた。ありがとう」

ジャン「かまわねぇよ。ミカサが喜んでくれたならそれでいい」

856 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:40:15 ID:oo.Gbr0E

ミカサ「・・・・・・ジャンは優しい」

ジャン「おっ、ようやく気付いたか」

ミカサ「その優しさは私にではなく他の女の子へ向けたほうがいい。それがあなたのため」

ジャン「・・・・・・・俺はお前にまだ何も言ってねぇだろ。勝手に返事すんなよ」

ミカサ「ジャン・・・・・・」

ジャン「おっと、あれはベルトルトとアニ。ん?エレンも一緒か」

ミカサ「エレンのことだから余計なことを言っているかもしれない・・・・・・」

ジャン「アニにぶん投げられる前に止めた方がよさそうだな」



858 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:41:03 ID:oo.Gbr0E

※  ※  ※  ※

エレン「だからさぁ、さっき林でベルトルトにかけてた絞め技、俺にも教えてくれってば」

ベルトルト「な、なんのことかなぁ」ダラダラ

アニ「人違いじゃない?」

エレン「いや確実にアニとベルトルトだった。見たの俺だけじゃねぇし」

ベルトルト「ほ、他には誰が見たのかな」ダラダラ

エレン「ミカサとジャンだけど」

アニ「ふーん・・・・」

エレン「ミカサはアニよりあの技上手にかけれるって豪語してたぞ」

アニ「だったらミカサに教えてもらいな」

859 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:42:26 ID:oo.Gbr0E

ジャン「おう!!お前ら元気か?」

エレン「何だよジャン。突然来て」

ミカサ「さぁエレンここから離れましょう」

アニ「ねぇ・・・・・・あんたたちは何も見てないでしょ?」

ジャン「あ、ああ。もちろんだ。俺は今日に限って目が悪いんだ」

ミカサ「アニとベルトルトが何をしようが私には関係ない。むしろ見せつけられて非常に不愉快」

ジャン「ばっ・・・・お前、喧嘩売るな」

アニ「そう。関係ないなら黙ってて」

ミカサ「私たちは見なかったことにしてもいい。

    でも何も無かったことにはしないで。・・・・・・ベルトルトが可哀想」

ベルトルト「!!」

860 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:43:16 ID:oo.Gbr0E

アニ「あんたはエレンのことしか頭に無いと思ってたけど・・・・・他人のことでもお節介焼くんだね」

ミカサ「アニの態度が良くないと思っただけ」

アニ「・・・・・・そんなことは言われなくても分かってる」

ミカサ「そう。・・・・・では、私も何も見なかったことにする」

エレン「なぁ、一体何の話してんだ?」

ジャン「てめぇには一生分からねぇだろうな。・・・・・・・・・お、マルコとアルミン」

アルミン「みんなお疲れ様」

エレン「おう。アルミンもな」

861 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:44:17 ID:oo.Gbr0E

マルコ「ジャン・・・・ちょっと頼みがある」ヒソヒソ

ジャン「なんだ?」ヒソヒソ

マルコ「クリスタに用があるんだけどユミルがべったりでさ。何とか引き離せないかな」ヒソヒソ

ジャン「なるほどな・・・・・。分かった。でも後でちゃんと話聞かせろよ」ヒソヒソ

マルコ「いいけど・・・・ジャンが期待してるような話はできないと思うよ・・・・・」ヒソヒソ

ジャン「おーーーい!!!ユミルー!!!」

ユミル「なんだーー!!」

ジャン「ちょっとこっち来いよ!!」

ユミル「用があるんならてめぇが来い!!」

ジャン「俺たちに礼になんかさせるんだろ!!今言わねぇと聞いてやらねぇぞ!!」

ユミル「ちっ、分かったよ!!」スタスタスタ

862 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:45:13 ID:oo.Gbr0E

ジャン「ほら、マルコ今のうちだ」ヒソヒソ

マルコ「さすがジャンだ。感謝するよ」ヒソヒソ 

エレン「おい、ジャン。何でわざわざ言うんだよ。放っときゃユミル忘れたかもしれないだろ」

ジャン「はぁー分かってねぇな。ユミルに考える間を与えたらとんでもないこと言い出すぞ。

    思いつきで言わせた方がきっとマシだぜ」

ミカサ「そうかしら・・・・・・」

ユミル「お待たせ。お前らそんなに礼がしたいのか。関心関心」

ジャン「よし、今から10数える間に要望を言え。それを過ぎたら聞いてやらねぇ」

ユミル「おいっ、待てよ」

863 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:46:03 ID:oo.Gbr0E

ジャン「10」

ユミル「ちょっと」

ジャン「9」

ユミル「何でこんな条件がつくんだよ」

ジャン「8」

エレン「おっ、思いつかないか」

ジャン「7」

ユミル「うるせぇな。今考えてんだよ」

ジャン「6」

ミカサ「そのまま黙ってて」

ジャン「5」

ユミル「んーーーーと・・・・」

ジャン「4」

エレン「へへっ、あと少し」

864 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:46:51 ID:oo.Gbr0E

ジャン「3」

ユミル「えーーーーと・・・・」

ジャン「2」

ユミル「あーーーー、もう!!」

ジャン「1」

ユミル「お前らヴァイオリン工房で働けよ!!!」

ジャン「は?」

エレン「何だそれ?」

ミカサ「意味が分からない」

ユミル「早急にチェロって楽器が必要になったんだよ。あの工房は弦楽器全般の作製をしてたからな。

    チェロの代金分お前ら働け」

865 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:47:48 ID:oo.Gbr0E

ジャン「おいおい。俺らがちょっとバイトしたとこで買えるような代物なのかよ」

ユミル「いや、全然足らんだろうな。だから‘ちょっと’じゃなく‘ずっと’だ」

エレン「そんなの割りに合わねぇよ」

ミカサ「やっぱり思いつきのほうがとんでもなかった」

ユミル「まぁ、そういうな。あそこの仕事は意外と楽しいぞ。うまい飯食わせてくれるし」

エレン「バイトには興味あるけどよ・・・・・・いつまでって期限が無ぇとな」

ミカサ「そう。私たちもそんなに暇ではない」

ユミル「そうだな・・・・卒業するまでの半年間でどうだ。その間都合のつく日だけ行ってくれたらいい」

ジャン「十分長ぇよ」

866 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:48:35 ID:oo.Gbr0E

ユミル「そうそう。工房でヴァイオリンの弾き方教えてもらえるからついでにジャンも習えよ」

ジャン「はぁ?何で俺が」

ユミル「どうせピアノじゃエレンに勝ち目ないだろ?ヴァイオリンの方がミカサにアピールできるぜ」

ジャン「・・・・そうか。そうだな。よし、俺はバイトするぜ」

エレン「ヴァイオリンか・・・・。何か面白そうだな。俺も習ってみるか・・・・」

ジャン「ふざけんな、てめぇは黙ってピアノ弾いてろ」

ミカサ「エレンがやるなら私もヴァイオリン挑戦してみよう」

ジャン「ミカサはぜひ挑戦してくれ。ヴァイオリンを奏でる姿はきっと絵になる」

ユミル「じゃ、三人ともタダ働きよろしくな」

867 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:49:40 ID:oo.Gbr0E

ライナー「おい、お前ら」

エレン「おっライナー。・・・・・・・・・なぁ突然の質問で悪いが聞いていいか?」

ライナー「何だ?」

ジャン「ばっ・・・・エレン、黙っとけって言ったろう」

ミカサ「ライナーが傷つくでしょう」

ユミル「?」

エレン「だって、すっげーもやもやするんだよ。はっきり本人に聞いたほうが楽だ」

ライナー「だから何だよ」

エレン「ライナーって・・・・・・コニーと付き合うことになったのか?」

ライナー「は?」

868 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:50:25 ID:oo.Gbr0E

ユミル「ぶっ・・・・ぎゃははははははは、マジかよ、ぷぷぷ・・・・・」

ライナー「いや、さっぱり意味が分からないんだが・・・・」

エレン「じゃあ違うんだな」

ライナー「当然だ。・・・・・・何でそう思ったんだ?」

エレン「いや、何となく・・・・・・」

ライナー「何となくでホモ扱いか・・・・・・」

ユミル「まぁ仕方ねぇよ。ライナーのホモ疑惑は以前からあるんだし」

ライナー「それは主にユミルが広めてるよな・・・・・。なぜそんな嫌がらせをする」

ユミル「はっ、分からねぇか?お前がクリスタを狙ってるのがバレバレだからだよ」

869 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 12:51:06 ID:oo.Gbr0E

ライナー「はっ、クリスタ!そうそう俺はクリスタを探してたんだよ」

ユミル「ん?・・・・・クリスタがいねぇな。どこ行ったんだ?」

ライナー「まさか迷子に?それとも誘拐か?」

ユミル「おい、手分けして探すぞ。お前らも協力しろ」

ジャン(マルコ・・・・・さっさと用件済ませろよ)


874 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:48:46 ID:oo.Gbr0E

※  ※ ステージ裏 ※  ※

クリスタ「こんなところまで連れてきて・・・・・・何の用かな」

マルコ「ちょっと待ってね・・・・・・この箱の中に隠したんだよね・・・・・・あった」ゴソゴソ

クリスタ「?」

マルコ「はい。これクリスタに」スッ

クリスタ「・・・・・野ばらのブーケ。マルコから?」

マルコ「ごめん。僕からじゃないんだ・・・・・」

クリスタ「なんだ・・・・・・がっかり」

マルコ「時間が無くてさ・・・・・。今度ちゃんと用意するよ」

クリスタ「もういいです。恋人でも無い人にそんなわがままは言いませんから」プイッ

マルコ「拗ねないでよ・・・・。それよりさ、そのブーケに付いてるメッセージカードを見てごらん」

クリスタ「えっと・・・・・あっ、ここね・・・・・・・・・!?」

875 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:50:07 ID:oo.Gbr0E


『野ばらに寄せて 貴女に幸多からんことを』


見覚えのある筆跡。野ばらの香りに呼び起こされる幸せだった日々。

クリスタ「・・・・・・・・・・」ジワッ

マルコ「何となく人前では渡しちゃいけないような気がして・・・・・・・」

クリスタ「・・・・・・・うん・・・・・・ありがとう・・・・・・・」ポロポロ

マルコ「ここの入り口に置いてあったんだ。だから贈り主は見ていない」

クリスタ「・・・・・・・うん・・・・・・・・・」ポロポロ

マルコ「宛名は書いてないけど野ばらの花束って珍しいから・・・・・。

    きっと誰かがクリスタのために用意したのかなって・・・・・・・」

876 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:51:24 ID:oo.Gbr0E

クリスタ「・・・・ひっく、ごめん・・・・・・ちょっとだけ、ひっく、泣かせてね・・・・・・・」ギュッ

マルコにしがみつき、胸に顔を埋めた。

クリスタ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん・・・・・・・」

クリスタは小さな子どものように大声で泣いた。

泣き止むまでマルコは優しくクリスタの肩を抱き髪を撫でた。

マルコ(ピアノの技術、ワルツのステップが踏めること、時折垣間見せる庶民らしからぬ言動、そして今日の態度。

    ・・・・・クリスタは内地の令嬢に違いない。でもそのことは秘密・・・・か。何か事情があるんだろうね)

877 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:52:23 ID:oo.Gbr0E

クリスタ「・・・・・久しぶりだな・・・・・・・こんなに泣いたの」グスッ

マルコ「ははっ、着替えたばかりの僕のシャツも涙でぐしゃぐしゃだ」

クリスタ「やだ、私ったら・・・・・ごめんなさい・・・・・」

マルコ「いいよ。すぐに乾く」

クリスタ「・・・・・・もうちょっとこのままでいていいかな・・・・・・」

マルコ「うん・・・・・・・でもいいのかな?恋人じゃない男に抱きついて」

クリスタ「マルコの意地悪・・・・・」

マルコ「さっきのお返しだよ」

878 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:53:31 ID:oo.Gbr0E

クリスタ「分かった。・・・・・・じゃあ離れる」スルッ

マルコ「駄目」ギュッ

クリスタ「・・・・・マルコ?」

マルコ「僕は今すごく後悔してるよ」

クリスタ「何を?」

マルコ「手の早い紳士にはなりたくない、なんて格好つけるんじゃなかったって」

クリスタ「・・・そ、そうなんだ・・・・・・・・」///

マルコ「でも言ったからには守らないと」

879 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:54:48 ID:oo.Gbr0E

クリスタ「・・・・・・えっとね・・・・・・・」///

マルコ「ん?」

クリスタ「・・・・・私も今だけは尻の軽い淑女でもいいかな・・・って・・・・・」///

マルコ「・・・・・・・・・・」

クリスタ「ちょっと黙らないでよ・・・・・・・恥ずかしいんだから・・・・・・」///

マルコ「・・・・・・・・・・前言撤回。ごめん、もう無理」///

クリスタの顔に手を添える。

ゆっくりと唇と唇の距離が縮まっていく・・・・・・

880 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:56:20 ID:oo.Gbr0E

ユミル「おーい!!!クリスターーー!!!いねぇのかーーーー!!!」ズカズカズカ

クリスタ・マルコ「!?」ビクッ!!

ライナー「ったく、どこ行っちまったんだ、俺の女神は」ズカズカズカ

クリスタ「あ、あの・・・・私はここにいるよ」

ライナー「おっクリスタ。おーーーーい!!!お前らクリスタ見つかったぞ!!!」

ユミル「クリスタ!!やっと見つけた。探してたんだぜ・・・・・・・・何でマルコがいるんだよ」

マルコ「い、いや・・・・・ちょっと忘れ物がないか確認してたんだ・・・・・・ね、クリスタ」

クリスタ「そ、そう。みんなバタバタしてたからね。落し物が無いかチェックしてたんだ」

ユミル「・・・・・・嘘くせぇな」

クリスタ「本当だってば」

881 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:57:32 ID:oo.Gbr0E

ジャン「こんなとこにしけ込んでたのか。・・・・・やらしぃなぁ」ニヤニヤ

マルコ「なっ!?ジャン」

ジャン「大丈夫だ。みんなには余計なことは言ってねぇよ」ボソッ

アルミン「早く撤収しなきゃいけないのに。何やってんだよ、マルコ」

エレン「自分勝手だぞ、マルコ」

コニー「誘拐犯はお前だったのか、マルコ」

ベルトルト「クリスタに何かあったんじゃないかって心配したじゃないか、マルコ」

ライナー「本当に何かしたんじゃねぇだろうな、マルコ」ゴゴゴゴゴ・・・・

マルコ「してないしてない・・・・・・・・っていうか全部僕のせい?・・・・いや、僕のせいか」

882 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 22:59:06 ID:oo.Gbr0E

ミカサ「クリスタ・・・・・・その花束」

クリスタ「えっ、ああ、コレね・・・・」

サシャ「きれいな花ですね。なんていう花ですか?」

アニ「野ばら。珍しいね。花束にするなんて」

サシャ「おぉ、アニはお花に詳しいんですか?」

アニ「別に詳しくは無いけど・・・・・その花は故郷の野山によく咲いてたから」

ミカサ「真っ白で可憐な花ね。クリスタにぴったり」

クリスタ「ふふ、ありがとう」

883 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 23:01:50 ID:oo.Gbr0E

アニ「野ばらの花言葉知ってる?」

クリスタ「ううん」

アニ「‘痛みから立ち上がる’・・・・花なんて興味無いんだけどさ。その言葉だけは強く印象に残ってね」

クリスタ「そう・・・・・・・。ありがとうアニ」ウルッ

サシャ「クリスタ!?急に泣かないで下さいよ。花言葉が気に入りませんでしたか?」

ミカサ「確かにロマンチックな言葉ではない」

ユミル「つーか、誰にもらったんだ?その花束」

クリスタ「えっ・・・・えーと・・・・・・・その・・・・・・」

884 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 23:03:05 ID:oo.Gbr0E

ユミル「言えねぇのか?」

サシャ「誰ですか?興味あります」

ミカサ「隠すと余計あやしまれる。正直に話すといい」

クリスタ「・・・・・えっとね・・・・・・・・・マルコ」(ごめん)

マルコ「僕!?・・・・・・・・・・そうそう、僕があげたんだ。アハハ・・・・」

ライナー「お前・・・・・・やっぱりクリスタ狙ってんのか」ゴゴゴゴゴ

ユミル「無害そうなツラしてよぉ、騙されたぜ」ゴゴゴゴゴ

ジャン「ぎゃはははは。マルコ頑張れよ。カブトムシ争奪戦の役者が揃ったぜ」

マルコ「おもしろがってないで助けろよ」

ジャン「もう無理だ」

885 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 23:03:57 ID:oo.Gbr0E

コニー「カブトムシって何だ?」

ジャン「おっ、聞きてぇか俺の昆虫ネタ」

エレン「また、虫の話かよ・・・・・もう飽きたぜ」

アルミン「もう、みんな早く帰ろうよ」

ワイワイ ガヤガヤ・・・・

サシャ「あはは、なんだか賑やかになりましたね」

クリスタ「うん。ふふふ・・・・・」

クリスタは野ばらのブーケをそっと胸に抱きしめる。

886 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/08/15(木) 23:05:23 ID:oo.Gbr0E

お母様・・・

あの家を追い出され捨てられて、私はこの世界に絶望していました。

自分は生きる価値の無い人間だと思ってました。

でも、ここには私を必要としてくれる仲間がいます。

私のことを好きだと言ってくれる人がいます。

だから心配しないで。私はもう大丈夫。前を向いて歩いていけます。

・・・・それにね、子どもの頃話した私の夢・・・・・叶える事ができました。

褒めてくれますか?お母様。

ヒストリアはピアノの先生になれました。


~終わり~