1: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/20(水) 07:28:53.03 ID:uNh/Z3x+o



提督「AL/MI作戦が発令されてからもう何日も経ったな……AL方面とMI方面にほとんど艦娘達が出払ったからか鎮守府が酷く静かだ」

提督「さらに二方面に多数の艦娘達が動いたことを切欠に、深海棲艦が大本営を直接叩く動きが有るのではないかと予測されたため、残った艦娘達に緊急で鎮守府近海に出撃してもらった」

提督「ただでさえ二方面作戦で静かだった鎮守府が余計静かに……初期のスカスカな鎮守府を思い出すぞ」



※亀の歩みのような更新速度
  ついでに書き溜めなんて食えないものはほとんどないよ!
※オリジナル設定だったり自己解釈が多分に含まれている模様
※スレ立て自体が初の初心者なんでお手柔らかに頼みます


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408487323

引用元: 提督「釣りをしてたら何故か釣れた」空母棲姫「……」【艦これ】 




3: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/20(水) 07:45:12.85 ID:uNh/Z3x+o


提督「そういえば、あの時まではこういう場合いつも釣りをしていたな。それで獲った魚を調理して…………」

提督「……ミッドウェー、か……久しぶりに釣りをするか。おーい、妖精達ー」




  ――――――――――しばらくして――――――――――  




チャポン…


提督「ふー……釣具の場所を確認しただけであそこまで驚かれるとは。いや、理由は重々承知しているが」

提督「しかし、まさか全員出払っているとは思わなかった。鳳翔さんも居ないとは……緊急だったからと榛名に任せたのが不味かったか」

提督「まあ、あの時と違ってこの辺りにはもう深海棲艦が出てくることはないから問題はないか。鳳翔さんが居ないのが残念だったが」



4: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/20(水) 07:49:03.75 ID:uNh/Z3x+o




クイクイッ


提督「お!かかったな」


ググググ……


提督「ぐ…………中々に手ごわいな。大物か?」


グググ……


提督「しかし!しばらく釣りをしていなかった程度で釣れぬ道理はない!トゥオォォォォオ↑!」



グググ……ザバァ!


提督「さて、復帰初めての魚は食えるか…………」

空母棲姫「…………」ポタポタ

提督「…………」

空母棲姫「…………」

提督「…………」




















空母棲姫「…………おい」


チョキン


提督「リリース」


ボチャン!!



5: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/20(水) 07:56:55.44 ID:uNh/Z3x+o



提督「はぁ……復帰早々で魚を逃してしまうとはな。私も腕が鈍ったか」

提督「まあいい。続きをするとしよう」





ヒュッ!…チャポン…


提督「次は逃がさないようにしないとな」

空母棲姫「……」ザバァ…

提督「…………」

空母棲姫「……おい」

提督「……なんだ?今忙しいんだ。殺すのはせめて魚が釣れてからにしてくれ」

空母棲姫「この辺りニ鎮守府ハあるのか?」

提督「それを答えたところで何の意味がある。お前のような輩に教える義理はない」

空母棲姫「私ハ、探している。そこノ提督ヲ殺すつもりハ無い。教えてくれないか?」

提督「断る……っと、かかったな」

空母棲姫「…………そうか」










6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/20(水) 08:01:28.93 ID:uNh/Z3x+o



提督「ふむ、中々」

空母棲姫「……ふぅん」

提督「さて、釣れたことだし好きにしろ」

空母棲姫「そんなことハどうでもいい。鎮守府ハどこだ?」

提督「さあ。どこにあるのやら」

空母棲姫「教えてくれ。私ハこの辺りニあったはずノ鎮守府に用ガある」

提督「知らないな。さっさと殺せばいい」

空母棲姫「おあいにく様、人ヲ[ピーーー]趣味ハ持ち合わせていないのでな。第一、私にはそれほどの力等ない」

提督「それはまた酔狂なことだな。お前は見たところ姫級の化け物だろうが。信じてくれる人間がどこにいる?」

空母棲姫「化け物…………あまり私ハ実感していないガ、正常ナ人間から見たらそうなっているのか……」

提督(深海棲艦共は自覚していないのか?……いや、今までの傾向を顧みるとある程度は自覚しているはず。フェイクだろうな)

空母棲姫「まあいい。信じてくれる人なら当てガある」

提督「その鎮守府の提督とか言うなよ?」

空母棲姫「そうだが?」

提督「あんな場所にいる提督が深海棲艦と知り合いなはず無いだろ……」

空母棲姫「そのはず……けれど、そこニ行かなければならない。私ニとって大切な何かヲ置いてきてしまった、そんな気ガするから」

提督「大切な何か……ねぇ。まあ、どうであれ教えられないのは変わらない」

空母棲姫「…………時間ハあまりないんだ。頼む」

提督「無理だ」

空母棲姫「何故?」

提督「その鎮守府の提督は私だからだ。お前のような奴は一度も見たことがないんだよ。あぁ、先に言っておくが前任の提督も居ない。良かったな、一人提督を殺せるぞ。それ以上の被害はないだろうが」

空母棲姫「…………提督……お前が?」

提督「信じられないと?」

空母棲姫「いや。信じるしかないのだろうガ、私ノ記憶とは随分印象ガ違うト思ってな」

提督「まだ白を切るか」

空母棲姫「お前、目ガ死んでいるとか言われなかったか」

提督「ないな」

空母棲姫「…………もういい。今日ハ帰らせてもらう。お前ハ明日モ暇ならここヘ釣りニ来い」

提督「誰がそんな命令を受けると言うんだ」

空母棲姫「好きニしろト言ったのはお前だろ。私ノ好きなようニ指示している、それだけノこと」

提督「もし、断ったらどうする?」



7: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/20(水) 08:05:12.87 ID:uNh/Z3x+o



















空母棲姫「………………エ?」

提督「…………おい」

空母棲姫「…………アッ、ガ!ガンバレバ深海ニヒキズリコメルヨ!…………タブン」

提督「もういい!分かったから帰れ!明日来ればいいんだろ?」

空母棲姫「ソ、それでこそ提督ダ。マた来い」




ボチャン!!




提督「はぁ……何なんだか。とりあえず、助かったというべきか。いや、ある意味泥沼に嵌まったのかもしれん。なんであんな奴の言うことを聞く必要があるんだ」


16: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/21(木) 12:53:38.52 ID:SfCPiiNoo


    ――――――――――執務室――――――――――  



提督「AL方面の進歩はどうなっているんだ?電」

電『今のところ順調なのです。でも、本当にこんなに少ない人数で大丈夫なのでしょうか……』

提督「なに、ALにいた深海棲艦がMI方面に集結している以上、相手も同じようなもの……それに、他の鎮守府からも艦娘が来る予定だ。協力して敵を殲滅してくれ」

電『……不安はありますけど、了解なのです』

熊野『お、遅くなりましたわ……』

電『はにゃー!?』

提督「ん?雪風はどうした」

電『び、びっくりしたのです』

熊野『仮設基地の増設中なのですけれど、今そちらの現場監督をしていますわ。夜目が利くのは彼女ですし』

提督「予定とは随分違うな。何かあったのか」

熊野『ええ。妙ななりをした深海棲艦に妨害されてしまって。雪風と夕立が追い返したのだけれど、仮設基地を端から壊していたようでして食料や資材が……はぁ』

電『あ、鈴谷。熊野が今いるのです。変わりますか?……え、別にいいのですか』

提督「となると、まず食糧問題が出るな……他の鎮守府の奴らも事態の把握はしているだろうが、すぐに解決できるわけではないだろう」

熊野『なんとか制圧しながらでも数日は持ちますわ。それまでにどうにかして補給物資をこちらに寄越すようにしてくださいな』

提督「ああ、分かった。遠征に出ていた奴らに頼んで出来る限りの物資をそっちに輸送する」















提督「……では、今日は切り上げる。お疲れ様」

電『では、通信『熊野はプニキ派なのですか!ありえないのです!時代はロビカスなのです!』え?』

熊野『蹴りますわよ、鈴谷』

提督「……鈴谷は何故こうも残念なんだ」

熊野『全くですわ……プニキ以外あり得ないのにロビカスを選ぶ辺りが特に』

提督「私が言いたいのはそういうことではないのだが」

電『えっと…………通信終了。司令官、熊野、お疲れ様、なのです』

熊野『んんっ!……ではまた。今度はもう少し良い報せが出来るように精進致しますわ。通信終了』


ブツン

17: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/21(木) 12:56:35.93 ID:SfCPiiNoo

提督「はぁ……妙ななりをした深海棲艦か。鈴谷のせいで色々台無しになったが、これは辛い戦いになるかもしれないな」

提督「後は榛名の連絡待ちだが……確か榛名が趣味で作ったダミーの基地にも通信機器はあるはず。いい加減通信が入ってもおかしくないが」

彩雲妖精「よっす、提督。榛名から手紙だ」

提督「窓台に着艦するのはやめてくれないか?というより、何故着艦出来る」

彩雲妖精「腕を磨いているんでな。へへっ、昔とは機体も腕も違うんだよ」

提督「……まあいい。何故手紙なんだ」

彩雲妖精「それは手紙を見た方がはえーぞ。説明したくねぇし」

提督「面倒なことになったのは予想できるな」







提督へ

不味いことになりました。私たちが使う予定だったアインスちゃん(ダミーの基地)が見事に破壊されていました。恐らく、付近に敵艦隊が潜んでいるのでしょう。

というより、一部は見つけました。殲滅しましたが、まだ敵勢力の全容は分かりません。通信機器は持ってきていないので、こういう形でしかやりとりできないと思います。

指示をお願いします。



PS.

ツヴァイちゃんが無事だったのでそちらで活動を行います

クレーンが無いので辛いです。明石で我慢してましたが、アインスちゃんのクレーンが恋しい。


18: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/21(木) 12:59:55.58 ID:SfCPiiNoo


提督「説明したくない理由は分かった。榛名が発狂してるんだな」

彩雲妖精「クレーンが吹っ飛んだ時のあいつの顔はやばかったぜ。正直俺は笑いそうだった」

提督「そうなると、余程のことがない限り無茶をするだろう。とりあえず、全員あちらに居るのは都合が悪い。榛名に付いていける艦娘以外はこちらに戻るようにしなければ」

彩雲妖精「敵の数が未知数なのは考慮しないのか?」

提督「他の鎮守府から補給物資の支援ついでに精鋭を送るよう手配した。数日であちらに着くはずだ。その中で練度の低い娘が居てもな……」

彩雲妖精「へぇへぇ。まあ、分かったぜ。んじゃ、残る奴らを紙にでも書いてくれ」

提督「ああ、分かっている」











彩雲妖精「んじゃ、行くとすっか。また来る」

提督「ああ、最後に榛名に言付を頼まれてくれないか?」

彩雲妖精「んあ?愛の告白は受付ねぇぞ。そういうのは直接言ってくれ」

提督「殴るぞ。また変なこと戦っている最中に叫ばないよう伝えてほしいだけだ」

彩雲妖精「いいじゃねえかよ。あいつの叫び、俺は好きだぜ?」

提督「お前は面白おかしくて好きなだけだろう」

彩雲妖精「ばれたか」





ブーン!!……




提督「…………もう、発艦に関しては突っ込まないでおこう。明日に備えて寝るとするか」


20: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/22(金) 00:33:24.78 ID:isO2ZbExo


    ―――――次の日―――――




空母棲姫「………遅い」

空母棲姫「空ノ雲ヲ追うのももう何度目なのか考えたくない」

空母棲姫「……髪ノ毛邪魔」










空母棲姫「船ノ動く音ガ聞こえる……来たか」

提督「何をしているんだ、お前は。どざえもんと間違われるぞ」

空母棲姫「………遅かったな」

提督「何故立たない?お前達なら海の上を立つくらい出来るだろう」

空母棲姫「昨日言っただろう。私には力がないト。海ノ上ハ立てない」

提督「……そうかい。船に上がれるほどの力はあっても、海の上には立てないと」

空母棲姫「純粋な力とは別口だから。それニ、あれハ火事場ノ馬鹿力みたいなものだと思った方ガ良い。何ガ言いたいかト言うト……」

提督「…………」

空母棲姫「フ、船ニ上がるのヲ、手伝って…………ほしい」



提督「…………」

空母棲姫「……憐れみニ満ちた顔デこちらヲ見るのはやめてくれ」


21: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/22(金) 00:39:36.29 ID:isO2ZbExo



提督「それで、お前はどうするんだ?」



ヒュッ!チャポン…



空母棲姫「鎮守府ノ場所ヲ教えてくれ」

提督「それは無理だと昨日言ったはずだろう」

空母棲姫「知っている。だから、ここデお前ノ様子ヲ見ている」

提督「…………それで意味があるのか?」

空母棲姫「……分からない。けれど、お前ガ私ノ求める提督だとしたらそれだけでも意味ガあるト思っている」

提督「随分とあやふやなんだな」

空母棲姫「文句ならあやふやな私ノ記憶ニ言え。私ハ悪くない」

提督「結局自分のせいだろう、それは」





グググ…ザバァ!!




提督「ふむ。昨日とは違って一発目はちゃんと釣れたな」

空母棲姫「昨日ハ私ヲ釣っただろう」

提督「いや、あれは釣り上がる前に切れただろう。ああいうのはノーカンだ」




ヒュッ!




空母棲姫「糸ヲ切ってなかったか?意図的ニ」

提督「意図的のいとを糸に掛けたつもりか?面白くないぞ?」

空母棲姫「その発想ニ行き着くのは良くない」

提督「行き着いて何が悪い」

22: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/22(金) 00:46:53.74 ID:isO2ZbExo



空母棲姫「認めろ。私ヲ釣ったト。現実ハ変わらない」

提督「あーはいはい。分かった。釣ったな。糸を切ったけどお前を釣ってしまったな」

空母棲姫「ふっ……」ドヤァ…



クー……



空母棲姫「」

提督「…………」

空母棲姫「……………………ク、クー」

提督「…………なあ、腹減っているのか。まさか」

空母棲姫「ソ、ソンナコトハナイゾ。ズット待ッテイテ実ハオ腹ガ空イテ仕方ナイトカ、ソンナコトアルハズモナイ」

提督「おい、サラッと飯を要求していないか?それは」

空母棲姫「ソノ発想ハ悪クナイ。ダガ、私ハ別ニ要求シテハイナイ」

提督「ふむ。そうか」

空母棲姫「フッ……マタ勝ッテシマッタ」

提督「……ああ、そういえば私も飯はまだだった。準備するか」

空母棲姫「…………エ?」

提督「お前は……ああ、さっき腹はなったけど別に腹は空いていないんだったな」

空母棲姫「エ?え?」

提督「残念だったな。今回釣った魚は美味いんだが……いやぁ、本当に残念だ」

空母棲姫「……じ、実ハお腹ガ少し空いてきた気ガするなー。アハハハハ」

提督「そうかそうか。でも、空いたところで別に要求してはいないんだよな」

空母棲姫「へ?いやそんなことは」

提督「現実は変わらないんだよな。別に飯など欲しくないという主張、認めざるを得ない」

空母棲姫「…………さっきノ意趣返しカ?」

提督「さて、なんのことやら」

空母棲姫「……グヌヌヌ」







24: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/22(金) 00:54:07.17 ID:isO2ZbExo













空母棲姫「…………」

提督「おいおい、そんなに泣くほどのことではないだろう……」

空母棲姫「…………泣いてなどいない」

提督「……そうかい。それで、結局食べるのか?」

空母棲姫「…………食べる」

提督「最初から素直にそう言えば良かったものを。ほれ」

空母棲姫「ん……」

提督「はー……しかし、深海棲艦と飯を食うことになるとはな。世にも奇妙な出来事だ」

空母棲姫「…………」

提督「ん?どうしたんだ」

空母棲姫「……これ、鱗ハ入っているのか?」

提督「いや、鱗は取ったはずだ。入っていたのか?」

空母棲姫「…………そうか。すまない、別ニ鱗ハ入っていなかった」

提督「分かった。もしも入っていたら、すまないが除けて食べてくれ」





『んー……美味しいです!』

『けれど、底には鱗がすごい量ですよ』

『ああ、すまない。あまりこういうことは得意ではなくてな、精進するよ』

『あの……無理は禁物ですよ?司令官さん』




提督(…………)

25: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/22(金) 00:56:15.32 ID:isO2ZbExo

空母棲姫「おい」

提督「ん?ああ、どうした?」

空母棲姫「おかわりハあるか?」

提督「もう食べたのか」

空母棲姫「何か問題でも?」

提督「いや、別にない。お前が太っても責任は取らないが」

空母棲姫「太る…………胸ガ太らないことヲ祈る」

提督「そこは太る扱いは受けないだろう……それに、祈っているということは」

空母棲姫「よし、おかわりヲ頂く」

提督「……そうなるよな」














提督「結局、全部食ったのか」

空母棲姫「美味かった。また食べたいものダ」

提督「それはどうも。まあ、気が向いたらだな」

空母棲姫「…………あ」

提督「?」

空母棲姫「すまない。急いで帰る必要ガ出てきた」

提督「ああ、分かった」




ボチャン!!




提督「…………今回、何も言われなかったな。明日はここにくるのは無理だろうし、ちょうどよかった」

34: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/28(木) 03:51:49.99 ID:gmbVPtAlo


私は、誰かと一緒に居る

私は、誰かと話している

私は、誰かにちょっといたずらをする

誰かが笑って、私も笑って

そうして、どこかに帰るんだ

…………それは、どこ?

何かが見える


……鎮守府


私が探している、鎮守府



突然世界が歪んで、近くに居た誰か達が消えて

何かは融けて



私は一人、取り残された

ワタシハヒトリ、セカイカラハガレオチタ









ああ、夢なのか

けれど、あそこにきっとあるのだろう

きっと……


35: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/28(木) 03:53:15.94 ID:gmbVPtAlo



「うー……もうくたくたー。ドラム缶持って後何回往復すればいいのよー…………」

「流石にローテーション無しで輸送し続けるのは酷だね……」

「…………引きこもりたい」

「おいおい、まだミッドウェーに居る奴らが満足して戦う分には程遠いんだぜ!気合入れてけよ!」

「んー……天龍ちゃんには悪いけど私もいい加減ゴロゴロしたいかなぁー」



ワイワイガヤガヤ……



提督「すまないな、休みなしで鼠輸送任務を請け負ってもらって。だが、お陰で輸送船が到着した。後はこれを雪風達のところまで輸送すれば、MI方面の問題はどうにかなるだろう」

「これが終われば休んでいい……?」

提督「ああ、完全に休みをとれる保証はないが、出来る限り要望が通るようにする」



ザワザワ…………



提督「では、輸送船の積み込み作業が完了するまで自由にしていてくれ」



36: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/28(木) 03:58:22.58 ID:gmbVPtAlo



空母棲姫「…………」チャプ…

空母棲姫「…………まさか、なんとなくデ鎮守府ヲ見つけることガ出来るとは思わなかった。だが見つけた以上、あいつニ何日モ私ヲ放置したことヲ後悔させてやる」

空母棲姫「しかし、建物ノ近くには人ガ多いな。どうやってあいつヲ見つけようか」



タッタッタ……ズザー

アイター!!



空母棲姫「……ん?」

妖精「うぅ……痛いよぉ」

空母棲姫「…………おい、大丈夫か?」

妖精「あ、はい。だいじょぶです。おかまいな……」

空母棲姫「……あっ」

妖精「…………はれ?」

空母棲姫「アー、えーと……」

妖精「もしかして……新しい艦娘さんですか!?」

空母棲姫「!?……ア、ああ、そうダ。せっかくだからト少シこの辺りヲ探索していてナ、うん」

妖精「そうだったんですね!……あ。さっきはお見苦しい所を見せてごめんなさい……」

空母棲姫「いや、お前ノ方ハ大丈夫なのか?身体よりもずっと大きい物ヲ運んでいるようだガ」

妖精「だいじょぶです!それに、妖精は力持ちなんですよ!このくらい……」チラチラッ

空母棲姫「…………私ガ持っていこうか」

妖精「そんな!悪いですよ」

空母棲姫「社交辞令ハ良い。ああ、マントとかないか?顔ハ隠したい」

妖精「えへへへ……えっと、確かこっちの方に……あ、ちょっと待っててください!」












空母棲姫「……よし、これデ顔ハほとんど見えないはず。後ハ目立たないようニするだけ」

妖精「気になったんですけど、どうして顔を隠すんですか?」

空母棲姫「…………」

妖精「……えっと?」

空母棲姫「……キ、気ニしないデ。アまり話したくなイ」

妖精「あ、はい。なんかごめんなさい」

空母棲姫「ハ、早く行くぞ」


38: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/08/28(木) 04:15:31.97 ID:gmbVPtAlo




妖精「……それでですね、私はここの入渠ドックの担当として新しく配属されてきたんですよ!」

空母棲姫「大変だったんだな」

妖精「でも、これでようやく妖精らしいお勤めが出来るから良かったです」

空母棲姫「ふふ、そうだな。これからモ頑張れ」

妖精「…………ここ何日かはずっと他の妖精たちの手伝いばかりですけど」

空母棲姫「……だからこんなものヲ運んでいたのか」

妖精「重かったら変わりますよ?」

空母棲姫「いや、平気だ。というより、変わる気ハないだろ」

妖精「えへへ……」














出撃クマー!



空母棲姫「…………」

妖精「あ、そろそろ下ろしてください。他の人……それも艦娘さんにずっと手伝ってもらったなんて知られたら私怒られそうですし。あ、でもでも助かりましたよ!ほんとに!」

空母棲姫「…………」

妖精「あ、あの……このことは秘密にしてもらえます?」

空母棲姫「…………」

妖精「あの……」

空母棲姫「! ああ、分かった。私達だけノ秘密だ」

妖精「ありがとうございます!よいしょっと……では!」










空母棲姫「…………しょっぱい」

空母棲姫「……帰ろう。なんだか、今ハあいつノ顔ヲ見たくない」



41: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:36:43.63 ID:2uUkn5CQo



提督「そろそろ時間だが、大丈夫か?」

電『はい、こちらは問題ないのです』

熊野『す、少しお待ちになって。今日こそは雪風がくるはず……』

『雪風はまただめっぽい。他の鎮守府の娘達と色々と作戦を練っててそれどころじゃないって』

提督「夕立か。久しぶりだな」

夕立『ふふ、お久しぶり!』

電『夕立、元気にしてましたか?』

夕立『んー……夕立はいつでも元気っぽい!電の方はどう?』

電『こちらもいつも通り、元気にやれているのです!』

夕立『良かったー。あ、熊野は休んでていいよ。疲れてるでしょ?』

熊野『……では、お言葉に甘えて。おやすみなさい、二人とも』

提督「ああ、おやすみ」

電『おやすみなさい』

夕立『それで、今日の報告はもう終わったっぽい?』

提督「いや、まだだが」

夕立『…………熊野待って!やっぱり代わってー!』

電『諦めて夕立が報告すればいいのです。いつもそうやって逃げるのは夕立の悪い癖ですよ』

夕立『うー……』

電『第一、このくらいのことはできるでしょう?ずっと一緒に活動してましたし』

提督「まあ、久しぶりなんだ。こういう時くらいはちゃんと報告してくれ」

夕立『……分かったぽいぽーい』

提督「拗ねるな、子供か」

夕立『駆逐艦ぽーい』


42: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:38:01.37 ID:2uUkn5CQo



提督「ふむ。AL方面は、新型の駆逐艦に苦戦しながらも、ある程度は制海権を得ることができたか。順調に事が進んでいるな」

電『なのです』

提督「それで、MI方面はどうなった?夕立」

夕立『電達みたいにはうまくいってないかなぁ……物資が来るのが遅かったのもあるけど、今まで以上に深海棲艦の連携が取れているのが原因かも。突撃することも出来ないし、全員相手にしていたら間違いなく弾薬が先に尽きちゃうよ』

提督「分かっていたことだが、厄介だな……」

夕立『それの対応策を今回は探しているみたい。でも、ずっといい案が出なくて……仮設基地を使って複数地点から同時制圧するのも、あの姫級さえ邪魔しなければできたと思うんだけど』

提督「ままならないな…………なあ、輸送船の方はどうなっている?」

夕立『んーと……基地に物資を全部移した後、妖精達が縮小処理をして基地に入れてたっぽい』

提督「そうか……うーむ」

電『その輸送船を改造して仮設基地の案みたいに複数地点から同時制圧する、なんて言いませんよね?』

提督「それができればいいが、基地には艦娘用の入渠ドックぐらいしかないのがな……明石がいればよかったが、榛名達の方に居るから無理だろう」

電『明石が居たらこの案を使う気だったのですか……』




夕立『確か、他の鎮守府に所属している人の中に居たよ?明石なら』

提督「よし、もし他に案がなければ改造する案を採用して構わない。そう雪風に伝えておいてくれ」

電『反応早いのです、司令官。もう少し考えてください』

提督「このままだと攻めきれずに作戦が失敗する可能性が十分にあるからな。ならば、できることをしておくだけだ」

電『はぁ…………失敗したらどうするんですか』

提督「そこは夕立の方に聞いてみればいい。夕立、失敗したらどうする?」

夕立『失敗なんて絶対させないよ!』

電『……分かりました。夕立、気を付けてくださいね。後、無茶はダメ、なのです』

夕立『はーい。……もっと頑張らなきゃ!』


43: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:40:35.08 ID:2uUkn5CQo


提督「では、今回はこれで終わるが、何かあったら連絡を頼む。特に、夕立の方は動向を把握しておかなければならないから早めにしてくれるとありがたい」

夕立『あ、提督にちょっとだけプライベートな話があるの!少しだけ時間をちょうだい!』

提督「?……ああ、分かった」

電『電が聞くのは都合が悪い内容かもしれないですし、切りますね。通信終了、司令官、夕立、お疲れ様なのです』

夕立『お疲れ様!』

提督「お疲れ様」



ブツッ




夕立『じゃあ、早速だけどいい?』

提督「ああ、なんだ?」

夕立『オ 』

提督「我慢しろ。というより、私にそういう話題を出されても困る」

夕立『んふ。……と、こんな冗談は置いといて。雪風のことなんだけど』

提督「冗談でもやめてくれ。それで、なにかあったのか?」

夕立『もし、この海域で深海棲艦によって死んだはずの人を視たらどうすればいいか聞かれたの』

提督「……どういうことだ」

夕立『それが分からないから聞いているんでしょ!』

提督「…………ふむ。深海棲艦が艦娘とは切っても切れない関係にあるため、そういうことがあるのかもしれないとは言われている」

夕立『でも、死んじゃった艦娘は深海棲艦にならなかったっぽい』

提督「そうだな。だから私にもどうすればいいか分からない。ちなみに、その死んだ人は誰だったんだ?」


44: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:42:27.63 ID:2uUkn5CQo


夕立『…………教えてくれなかった。けど、多分……提督も知ってる人……っぽい』

提督「……心当たりがないんだが」

夕立『私達だって知っている人で……』

提督「それはありえない。雪風は別のものでも見ているのだろう」

夕立『で、でも!』

提督「すまないが雪風に誰かを教えてもらってからだ。憶測で判断するものではない」

夕立『でも…………うぅ』

提督「…………もし、もしもの話だ。あいつらが深海棲艦として徘徊しているのなら、私は彼女達を討つと思う。私達の平穏が脅かされるのだし、なによりお前たちを彼女達と同じようにはしたくないから」

夕立『……辛いだけだよ?』

提督「ああ、そうかもしれない」

夕立『もし、失敗したら?』

提督「失敗することは考えるなよ。失敗なんて絶対させないんだろ?」

夕立『……辛くてどうしようもなかったら?』

提督「そのときは仲間を頼れ」

夕立『……提督が言えたことじゃないっぽい』

提督「どこがなんだか……」

夕立『ふふ、どこでしょー』

提督「おい、煙に巻くなよ」

夕立『自分で考えるがいいっぽい……もう切るね―』

提督「おい」



ブツン







提督「…………はぁ、夕立め。帰ってきたら頭をくしゃくしゃに撫でてやる」

45: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:44:37.06 ID:2uUkn5CQo


空母棲姫「今日モこない、か」

空母棲姫「……ならばこちらから向かってやろうか」

空母棲姫「……ん?ああ、ようやく来たか」





提督「よう」

空母棲姫「よう、じゃない。随分ト放置してくれたものだな」

提督「私もそう何度もここにこれる訳ではないからな。そのあたりは許せ」

空母棲姫「許せるものか。私ノ貴重ナ時間ガなくなったんだぞ」

提督「いや、こちらにも時間の制約はあるのだが」

空母棲姫「お前ノ都合ハ知らん。最初ニあった時から時間ガないト言ったはずだろう?」

提督「…………はぁ。とりあえず、船に上がるか?」

空母棲姫「そうする。早く手ヲ貸せ」

提督「少しは頼んでいる素振りを見せてくれ、っと」

空母棲姫「私ガ上なのだからな。当然だ」ドヤァ…

提督「それは新しいジョークか?笑えないのだが」


46: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:46:21.04 ID:2uUkn5CQo


空母棲姫「それで、今日ハ釣りヲしないのか」

提督「ああ。お前が来ているかの確認と、少し気分転換がしたかっただけだからな。また居なかったらすぐに帰っていたのだが」

空母棲姫「ん?お前、ここニ来ていたのか?」

提督「深海棲艦が目の前に居るからな。どんなにポンコツでも用心するに越したことはない」

空母棲姫「私ハ毎日ここニ居たガ、お前ハこなかったぞ……」

提督「時間が合わなかっただけだろう。流石にずっとは居ないからな」

空母棲姫「…………ああ、そういうことカ。うん」

提督「何に納得しているのか分からないが、まあいい」

空母棲姫「ところで、ポンコツとは誰ノことなんだ?」

提督「お前以外に誰が居る」

空母棲姫「私ガポンコツ?……面白くないぞ」

提督「ただの事実だからな。面白くはないだろう」

空母棲姫「ム……。どこにポンコツノ要素ガある?」

提督「脅しが脅しと呼べるようなものではなかったところに始まり、妙に締まらないところがな……深海棲艦の特徴がなければ、正直一般人と間違えかねない」

空母棲姫「…………」

提督「こんなところだ。何か言うことはあるか?」

空母棲姫「…………ギャ、ギャップ萌え……そう!これハギャップ萌えトいうものヲ実践しているニ過ぎない!」

提督「いや、無理があるぞそれは。というより、どこでそんな言葉を知ったんだ」

空母棲姫「フ、フフフ。今までノ振る舞いハ、私ノギャップ萌えノ研究ノ為ニ行っていたのだ!なので私ハポンコツではない!絶対!」

提督(一番のポンコツ要素はこの辺りに原因があるんだがな……最初に感じた深海棲艦特有のおぞましさがほとんどないぞ)


47: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:48:07.93 ID:2uUkn5CQo


空母棲姫「――ということデ、私ハお前ノ主人なのだ。分かったか」

提督「悪い、興味がなかったから聞いていなかった。何の話をしていたんだ?昼飯の話か?」

空母棲姫「……私ガご飯以外ノ話ハしないとでも言いたいのか」

提督「そろそろ昼飯時だからな。話題にしてもおかしくないと思っただけだ」

空母棲姫「むぅ……他にも話題ガあるはずだ。鎮守府ノ話とか」

提督「あぁ……一番の目的は場所に関してだったな」

空母棲姫「話ハ」

提督「しない」

空母棲姫「……ここデ終わるから困る」

提督「教えるつもりはないから仕方ないだろう」

空母棲姫「だが!もし私ガ鎮守府ノ場所ヲ知ったとしたら、どうする?」

提督「よし、切るからそこに直れ」

空母棲姫「切れるものなら切って―――」

提督「ほう……では遠慮なく」

空母棲姫「冗談ダゾ、ウン。ダカラ早クドコカラトモナク出テキタ刀ヲ仕舞ウンダ」

提督「…………お前、仮にも姫級だろう。反応が深海棲艦とかけ離れていないか?」

空母棲姫「コ、怖イモノハ誰ニデモアル……!」

提督「そうは言うが、こんな玩具ではイ級を殺すのが限界だからな。姫級相手なら傷一つ付ければ御の字だろうし」

空母棲姫「怖イモノハ怖イ!モウイイダロ!」

提督「分かった分かった……だからあまり叫ばないでくれ」












空母棲姫「はぁ……最悪ノ気分」

提督「あんな質の悪い嘘を吐くのが悪い」

空母棲姫「……もし、本当ノことだったらどうするつもり?」

提督「普通に探した上で見つけることが出来たとしたら、鎮守府に居る大体の艦娘が気付くからそれ以前の問題になる。が、どんなケースであれ容赦なく殺すだろうな」

空母棲姫「…………そうか」

提督「……湿っぽくなってしまったな。どうだ、塩むすびだが食べるか?」

空母棲姫「お前モなんだかんだデご飯ノ話ばかりしている気ガする……勿論食べるが」

提督「まあ、当たり障りのない話題ではあるからな。それに、相手に合わせればそんなものだろう」

空母棲姫「そこはかとなく馬鹿ニしていないか?」

提督「してない。ほれ」

空母棲姫「……冷たいな」

提督「クーラーボックスに入れていたからな。当たり前だ」

空母棲姫「ふーん」


48: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:51:05.78 ID:2uUkn5CQo








提督「…………」

空母棲姫「…………なあ」

提督「もう塩むすびはないぞ」

空母棲姫「お前ガ食べている物ヲ見れば分かる。問題ハお前ガ食べている物ダ」

提督「ん?羊羹だが」

空母棲姫「なんでそんな食べ物ガある。食べさせろ」

提督「断る」

空母棲姫「むー…………」

提督「やはり間宮羊羹は格別だな」

空母棲姫「うーー…………」

提督「……しかし間宮アイスも捨てがたい。確かクーラーボックスに二人分あったはずだし、これを食べたらアイスも頂いてしまおうか」

空母棲姫「!……い、良いんだな?アイス貰っても?食べるよ?」

提督「…………まあ、一人分だけなら食っていいぞ」

空母棲姫「やったー!…………ハッ」

提督「…………腹ペコポンコツ姫だな」

空母棲姫「コ、コレハチガクテ!コレハ……コレハ……チガウンダ!」

提督「落ちつけ、別に馬鹿にしてはいない」

空母棲姫「ウゥ……深海デ穴ヲ掘って入りたい」

提督「とりあえず、アイスが溶けるぞ」

空母棲姫「……食べる。あ、甘い」



49: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:53:42.58 ID:2uUkn5CQo




空母棲姫「美味しかった」

提督「もう少し味わって食べるべきだと思うが……余計なお世話か」

空母棲姫「アイスハ良いな、甘くて。後ハ羊羹なる物ヲ食べたいのだが」

提督「早いと思ったら羊羹も食う気だったのか。この腹ペコポンコツ姫は」

空母棲姫「グ……耐えろ、私。羊羹ヲ食べなければアイスト比べられない」

提督「お前の好みを知るための甘味ではないのだが」

空母棲姫「いいから食べさせろ。一口デいいから頼む」

提督「嫌だ」

空母棲姫「頼む!」

提督「いや、本気でこれは渡したくない」

空母棲姫「食わせてくれないとお前ノ分ノアイスヲ食べる!」

提督「ん!?いつの間に……浅ましいなおい!流石にやめろ!」

空母棲姫「フッフッフ……アイスノ命ガ惜しければ羊羹一切れ寄越すんだ」

提督「私がアイスを諦めたらどうするんだ」

空母棲姫「全力デお前ガ羊羹ヲ食べるのヲ阻止する。ついでニ奪う」

提督「はぁ……元々全部私の甘味だったのだが」

空母棲姫「それハ感謝している」

提督「そう思っているのなら羊羹に目線を向けるな。私を見ろ」

空母棲姫「ヤダ」

提督「はー……。とりあえず、クーラーボックスに戻してくれ。今すぐには食えないしな」

空母棲姫「羊羹は?」

提督「やるから早く戻せ」

空母棲姫「フフ、やはり勝ってしまった」


50: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:56:13.87 ID:2uUkn5CQo



空母棲姫「それが羊羹……ふふふ」

提督「私が最後の一切れを食った時、隅でさめざめと泣いていた奴とは思えないな」

空母棲姫「あれハ全面的ニお前ガ悪い。まさかまだあるとは思わないだろ」

提督「アイスに関しては教えたが、羊羹については話していなかっただけだ。それに、こうやってわざわざ切る必要があるしな」

空母棲姫「なんで切っていないんだ?」

提督「あらかじめ切った分で我慢できなくなった時用だからだ。ほれ」

空母棲姫「そうか。あーむっ……」

提督「うお!?指ごと食うな!」

空母棲姫「ん。歯ハ立ててない……」

提督「そういう問題ではないが…………どうせ聞いてはいないな」

空母棲姫「…………」

提督「どうだ?」

空母棲姫「…………ああ、美味しい」

提督「感動で泣くほどか。よくそんなに涙を流せるな」

空母棲姫「今、泣いていたのか。気付かなかった」

提督「おいおい」

空母棲姫「…………うん。アイスより羊羹ノ方ガ好きだな」

提督「そうか。だが、羊羹はもうやらんぞ」

空母棲姫「なあ、お前ハ羊羹トアイス、どちらガ好みなんだ?」

提督「唐突だな……勿論羊羹の方が好きだ。だが、お前にやる甘味はもうないからな」

空母棲姫「……アイスノ方ガ好きだと思ったガ、外れたか。それと、もう一切れくらいサービスしろ」




51: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/07(日) 18:59:57.29 ID:2uUkn5CQo


提督「はあ、疲れた。もう少し自重してくれ」

空母棲姫「負けた……」

提督「羊羹一切れで大仰だぞ…………ん?通信か。なんだ――分かった、すぐ戻る」

空母棲姫「次こそハ絶対ニ羊羹ヲ……」

提督「おい、沈んでいるところ悪いがもう戻らないとならない。帰れ」

空母棲姫「私ガ付いて行っても……帰るから心配するな、うん。だから刀ヲ仕舞って」

提督「お前が居なくなるまで見ているからな。だから早く帰れ」

空母棲姫「むぅ……また来い」

提督「余裕があればな」








ボチャン!!




提督「…………よし、用心して撒けるようにはしておく必要があるが、行くとするか」

提督「――――ああ、雪風か?――そうか。あの案で行くのか。ああ、分かった。ゆそうせんの―――――」




















空母棲姫「…………あいつには悪いガ、私モ大切な何かヲ探している。殺されるかもしれないが、鎮守府ニ向かうしか解決する方法ハ無い」

空母棲姫「あいつハどうやら別ノルートヲ使って帰るようだな。なら、先ニ向かってあいつガ付く前ニどうにかするしかない。……よし、行こう」


60: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/26(金) 18:44:44.91 ID:Ept5Ijt1O
小話 深海棲艦


全く、酷い有り様ね

そう一人ぶつぶつと呟きながら女性が歩く

歩く先々に鉄、鉄、鉄…………

よくもまあここまでこちらが攻め込まれたものだと鉄塊を一瞥して座り、大きく息をついた

こいつらにとって物理的な死とはさして重要なことではない。が、こうもあっさり潰されてしまうと癪に障るのも確かだ

そう思いながらゆっくりと身体を癒やす。元々静かな所で過ごしていた女性は、この静かな時間をどうしても嫌いになれなかった







休息を取り、身体の傷が粗方治ったところで冷静に状況を把握する

飛行場は制圧された……自分も強大な艦娘の魂の楔を放棄せざるを得なかった……新たなカードを切らなければならないが、生憎といってそんなものはない

女性はそこまで考えてため息をついた。いわゆる、詰みのような状態ではないか

こうなってしまうと、この海域を放棄するしかない。艦娘達が海域を浄化すれば、鬼であろうと姫であろうとただでは済まないのは深海棲艦にとって共通のことであり、最も忌避したい事象だ

が、今自分がこうして深海に逃げた以上、妨害する者はいても、浄化を中断できる艦は居ない……となると

この海域から離脱するしかない、そう結論づけた彼女から再びため息がこぼれた

61: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/26(金) 18:48:14.20 ID:Ept5Ijt1O

渋々といった様子で、女性は海域から離脱する最低限の準備を始める

離脱したところで捕捉、そのまま撃沈。などといったことになってしまっては、わざわざここから離れる意味がない

まだ殺したりないと、身体が、魂が訴えかけているのだ。まだ使える奴を囮にして逃げればどうとでもなる

思考を逃走方法にシフトさせながら、浄化されていない深海棲艦の残骸を無理やり形にしていく

そういった作業をしながら歩き、やがて艦娘だったであろう何かがちらほら見かけるようになった

どちらも消耗止むなし、というほどの激戦を繰り広げた以上、当たり前のことである

しかし、女性にとってこれこそ夢見た光景の一つだった

えもいえぬ快感を覚えながら、彼女は『綺麗に死んだ』艦娘の遺体に触れ、ぽつりと呪詛を投げ掛ける

62: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/26(金) 18:50:38.54 ID:Ept5Ijt1O





────我が同胞よ……起きなさい





63: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/26(金) 18:54:48.44 ID:Ept5Ijt1O

粘度の高い液体を叩きつけたような音と共に、遺体の表面がぶくぶくと泡立ち、やがて深海棲艦へと姿を変えた

戦艦……時間稼ぎには丁度いい。後は空母か

残骸が駆逐艦になったことを確認し、女性は再び同じような状態の遺体を探し始めた




そうして女性は集まった深海棲艦に指示をだし、海域を脱出し始める

大体の深海棲艦には艦娘を殺すという意思以外存在しない。こういった捨て駒にするには都合が良い……が、面白くない。こちらに噛み付いてくれるような存在でなければ切り札とならないではないか

ぶつぶつとまた呟きながら女性は海域を駆け抜けていく








──────ないと


ふと、声が聞こえ、女性は現実に引き戻された

妙な感覚を抱きながらも、女性は声が聞こえた方向を見る

白い肌、白い髪、そして────


「ふふふ…………」


64: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/09/26(金) 19:01:47.27 ID:Ept5Ijt1O

嗚呼、こんなに面白いことはない

女性は嗤う

こんなに面白い存在が居るなんて

狂気に狂喜を重ねて

これから起きることはきっと素敵なことになる……楽しみだわ

そうして、声を掛けた





この間ぶりね────





67: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:10:57.77 ID:fwhlE+39o



チャプチャプ…




空母棲姫「…………見たところ、あいつガ乗っている船ハない。先ニ私ガ着いたのか」

空母棲姫「……よし。妖精ノ居た場所ニ行って捜索するか。前回ハあの妖精ノ手伝いデそれどころではなかったしな」

空母棲姫「しかし、あのドックノクレーンヲ見ると何故だか…………ん?なんだあれハ?人か?人だとして、何故あんなところニ居るんだ。整備ヲしている様子でもないのに」

空母棲姫「…………まあいい。なんであれ、ああいった人ガ多く居そうな場所ハリスクガ高い。まだ探していない場所ガ多い今、あそこニ行くことハないだろう。気ニする必要ハないか」

空母棲姫「……?……妙な感覚だ。見られた?…………考え過ぎだな。行くとしよう」





       ―――――――――――――――――――――     






空母棲姫「…………ここニ隠してたマントハ……あった。さて」


バサッ


空母棲姫「私ノ大切な何かハどこニあるのか……まあ、今までノことヲ考えるト見て回るだけでも成果ハあるはず……」

「すみません」

空母棲姫「…………」

「あの、道に迷ってしまったのですけれど」

空母棲姫「…………いや、私ハ」

「誰に聞いても執務室に辿り着けなくて……案内してもらおうにも皆さん忙しそうでしたのでどうしても声を掛けれなかったのです」

空母棲姫「あ、ああ」

「そうして案内してくれそうな人を探してたらこんなところに……うぅ。おねがいします、私を執務室まで連れて行ってください」

空母棲姫「…………ソ、それは……」

「……も、もしかしてお仕事中でしたか。え、えっと、ごめんなさい!」

空母棲姫「だ、大丈夫だ。案内する、うん」

「ほ、本当ですか!?」

空母棲姫「と、とりあえず、案内図ハ持っていたりするのか?」

「ええ。何回見てもさっぱりな物ですけど」

空母棲姫「……ああ、ここニあるのが執務しつっ!」

「だ、大丈夫ですか!?」

空母棲姫「グ……大丈夫だ。案内するのに支障ハない」

「ほ、本当に大丈夫なんですか……先に医務室の方に行った方がいいんじゃ……」

空母棲姫「心配するな。これハ……タダノ持病ノようなものだ。頭痛以外特ニないから気ニしないで」

「せめて休んでは」

空母棲姫「休むより動いた方ガ気ガ紛れる。早く行くぞ」

「あぅ…………はい」


68: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:12:16.20 ID:fwhlE+39o


空母棲姫「…………」

「…………」

空母棲姫「……おい」

「はい、なんでしょうか」

空母棲姫「お前ハどうしてここニ来たんだ?」

「それは勿論、艦娘として来ましたよ」

空母棲姫「それハ分かる。私ガ言いたいのは、どうしてここニ来るニ至ったか経緯ヲ知りたいトいうこと」

「は、はぁ……別に構いませんけど、何故そのようなことを聞くのですか?」

空母棲姫「…………気ニなっただけだ。深い意味ハない」

「そ、そうですか……ええと、ありがちですけど普通に訓練学校を卒業したらここに行くように指示されたからです」

空母棲姫「…………嫌だとは思わなかったのか?」

「嫌じゃなかったですよ。……何故そのようなことをおっしゃるのでしょうか?」

空母棲姫「あれト戦う以上ハ死ガ付き纏う。友モ同期モ生き延びる程減っていく。ここハそういう嫌なところだ」

「…………」

空母棲姫「訓練学校ト同じ感覚デ過ごさない方ガ良い」

「…………ありがとうございます」

空母棲姫「別ニ…………っ!」

「大丈夫ですか!?」

空母棲姫「ク……頭ガ…………」

「こんなに頻繁に頭痛が起きるなんておかしいです。医務室に……」

空母棲姫「今ハ執務室ニ行かないト駄目だ……グゥ……」

「そうは言ってもこれで6回目ですよ。流石に…………」

空母棲姫「……別ニおかしいことじゃない……時々こうやって頻繁ニ来ることガある…………多分」

「……え、えっと?多分??」

空母棲姫「…………治まってきた」

「あの、先程多分とか言ってませんでしたか?」

空母棲姫「…………言ッテナイ。サア行コウ」

「あぁ!いきなり早足で行かないでください!」

69: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:13:25.07 ID:fwhlE+39o


「むー……釈然としませんよ」

空母棲姫「ウ、うるさい。しつこいト嫌われるぞ」

「そうは言っても……」

空母棲姫「着いた。ここガ執務室ノはず」

「あ、ここだったんですね」

空母棲姫「さて、早くここから出ないと……」ボソッ

「すみませーん」ガチャ

空母棲姫「!?」

「あれ?誰もいませんね」

空母棲姫「あ、危ないところだった……」

「そんなところで縮こまってどうしたんですか?入らないのですか?」

空母棲姫「流石ニ入るつもりは…………」

「あ、もしかしてこれからどこかに行く予定でしたか?」

空母棲姫「いや、そういえばここニ用ガあるのヲ思い出した」

「……そうですか」


70: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:14:38.28 ID:fwhlE+39o


空母棲姫「む…………」

「…………何故誰も居ないのでしょうか」

空母棲姫「ふむふむ…………」

「部屋を間違えた……訳ではないようですし」

空母棲姫「案内ヲ私ガするまで皆忙しそうデ声ヲかけることガ出来なかった。それだけ提督モ忙しいト言える」

「そうなんですか……」

空母棲姫「この勲章ハなんだ……いくつモあるが……」

「あ、あの」

空母棲姫「なんだ?」

「……どうして執務室を物色しているのですか」

空母棲姫「…………」

「用事が関係しているのでしょうか……でも、それにしてはなんだか無作為ですし……」

空母棲姫「…………」

「それにこんな室内でもマントを外さないですし、医務室に行くのを嫌がりますし……もしかして」

空母棲姫「…………コ、コレハ」

「実はここに来たばかりの艦娘さんですか!?」

空母棲姫「」ズルッ

「そうなると私と同期になるのでしょうか……でも、色々と知っているようですし先輩になるのかもしれません……むむむ」

空母棲姫「……前にも拍子抜けすることガあったな、うん。あの妖精ハ元気ニやっているのだろうか」

「妖精……さん、ですか。どんな子なんでしょうか」

空母棲姫「ああ、最近ここニ配属されたらしい。入渠ドックノ担当ト言っていたから機会ガあったら話ヲしてみたらどうだ?」

「はい!……あ、それでどうして物色していたのですか?」

空母棲姫「あー…………気ニなる物ガあったらトつい」

「あー、たしかにこういうところはついつい気になりますよね。悪いことだとは思いますけど」

空母棲姫「まあ、そういうことだ」

「ふふ……」


71: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:15:47.65 ID:fwhlE+39o


空母棲姫「しかし、案外気ニなるものハ少ないな」

「そうでしょうか?私は色々気になりますけど」

空母棲姫「個人的な問題だ。さて、後ハ執務机だけだガ……こうも書類ばかりでは探しにくいものだ」

「勝手に動かしたりするのは良くないことですよね」

空母棲姫「ばれたら面倒なことニなるのは間違いない」

「じゃあ、触らないようにします」

空母棲姫「ああ。そうした方ガ良い」

「あ、あそこに飾ってある勲章って珍しい物ですよね」

空母棲姫「そうなのか」

「そうですよ。たしか……きゃっ!」

空母棲姫「大丈夫…………ゲ」

「あはは……何かに足が引っ掛かって…………あ」

空母棲姫「…………」

「…………あの、これ……どうしましょう」

空母棲姫「いや、私ガ知るはずモないだろう……」

「う、うぅー……とりあえず、戻すだけ戻しておいた方が良いですよね」

空母棲姫「そうだな…………ん?」

「どうしました?」

空母棲姫「書類ノ山ノ中ニこの写真立てガあったみたい」

「写真立て……どんな写真が入っているんですか」

空母棲姫「それは…………」


72: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:16:44.60 ID:fwhlE+39o


『もう少し詰めてくれ。全員が写らないのだが』

『提督さん。カメラの位置を変えた方が早いと思うよ』

『全くです』

『そうは言うがな。あまり顔が分からない写真になっては困るだろう?』

『提督の意見も一理ありますね』

『というわけだ。だから、――は――に近づいてくれ』

『…………』

『私は普通に詰めてるよ!でも、――さんが』

『――さん、詰めた方が良いと思いますよ』

『なのです』

『……ですが』

『……どうせなら、みんなもっと近づきましょう!』

『良いねぇ。――っちナイスアイディアー』

『詰めちゃいます!』

『えっと……―も詰めちゃいます!』

『んふ、――さん達も早く早くー』

『そうですよ。みんなくっついていますし恥ずかしがらずに。ささ』

『――さ』

『さん付けはやめてくださいね?お母さん扱いされる歳ではないですし』

『……分かりました。』

『この鎮守府の人は楽しい人ばかりですね』

『……まあ、一つ二つ癖のある奴ばかり来てしまったからな。――や――さ……――とか、な』

『―ちゃんと――さん位ですか?普通だと思う人は』

『いや、――よりかは――の方が普通だろうな』

『そんな!――は普通ですよ!?』

『褒められたっぽい?』

『司令、早く写真撮ってください!――さんがこっちを見て訴えかけてきてます!』

『おっと、すまない。――は』

『『『かわいい!』』』

『!?』











カシャッ


73: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:17:38.42 ID:fwhlE+39o






――――――――――見ぃつけたぁ






74: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:19:17.61 ID:fwhlE+39o



空母棲姫「グ…………アゥ」




カタンッ




「ま、また頭痛ですか!?」

空母棲姫「ま、まずい。時間ガ、ない……つぅ」

「それはどういう」


コツ…コツ…コツ…


「あ……これは提督の足音でしょうか」

空母棲姫「絶体絶命か……どうすればいいんだ……」

「提督に見つかると何か問題があるのですか?」

空母棲姫「……ああ。勝手ニ出歩くなト……言われている」

「そうですか……」

空母棲姫「ク……くそ……」

「…………窓から出てください」

空母棲姫「いきなり何ヲ」

「いいから早く。もうすぐ来てしまいます」

空母棲姫「グ……どういう……ことだ」

「私を信じてくれませんか?」

空母棲姫「それ……ハ」

「…………」

空母棲姫「疑問ガ残って仕方ない……ガ、今ハ……信じるしかない」

「ありがとうございます。さあ」

空母棲姫「頭痛ガ酷いのに簡単ニ言うな……」



ガチャ



空母棲姫「!?」

「また、会いましょうね」ボソッ



バンッ!!




空母棲姫「…………エ?」

空母棲姫「今……私ハ執務室ニ居たはずなのに、何故窓ガそこニ……」


75: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:21:35.55 ID:fwhlE+39o




妖精「なんでこんな物運ばないといけないんですかー!?」

「榛名姉さんがこの時間帯に運んでほしいと言ってたんだよ」

妖精「でもエアマットですよ?」

「なんか考えがあるんだろ。俺たちが考える必要はねぇよ」

妖精「ふえぇー……」




ヒューン




「ぐえっ!」

妖精「ぎゅにゅ!」

空母棲姫「……グ、ウゥ。クッションニなるものガあって助かった」

妖精「く、クッションじゃないですよ!」

空母棲姫「…………妖精か」

妖精「……あ、あの時の艦娘さん!」

空母棲姫「丁度いい。このマントヲ……持っておいてくれ」

妖精「わぷ……」

空母棲姫「…………」










妖精「…………ぷはっ。待ってくださいよぉ……あれ?居ない」

「キュー……」


76: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:23:39.88 ID:fwhlE+39o


提督「今日は風が強い方だったが……それにしても見事に散らばっているな」

「ええ、本当に一瞬の出来事でした」

提督「はぁ…………まあ、そのまま外に書類が飛んで行かなかったことが不幸中の幸いだ」

「そうですね」

提督「手伝ってくれるか?榛名」

榛名「はい、榛名は大丈夫ですよ」

提督「しかし、どのくらいの強さで吹いていたのか気になるな」

榛名「それはもう………本当に……本当に唐突に、そして強い風でした」

提督「そうか……ん?」

榛名「どうしました?」

提督「…………いや、なんでもない。気にしないでくれ」

榛名「…………分かりました。気にしないでおきますね」

提督(何故これが表側になっている……風のせいか?)


77: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:25:50.49 ID:fwhlE+39o


提督「……そういえば、鳳翔さん達と一緒にここに着いたのか?」

榛名「途中までは一緒でしたが、榛名一人で帰ってきました。少し危なかったので……」

提督「…………それさえなければ、榛名はまともだとはっきり言えるのだが……」

榛名「私は普通です!」

提督「普通の人間はクレーンを愛でたり、趣味で基地を作らないぞ」

榛名「むー……じゃあ鳳翔さんに決めてもらいましょう」

提督「鳳翔さんに審議してもらう以前の問題なのだが……」

鳳翔「私がどうするのですか?」

提督「あ、ああ。鳳翔さ――」

鳳翔「さん付けは止めてくださいといつも言っていますよね?ねえ、提督」

提督「す、すまない。気を付けてはいるのだが、どうも他の鳳翔さんと、な」

鳳翔「もう……!気を付けてくださいね」

榛名「ふふ……」

鳳翔「ああ、それと榛名。貴方にも同じことが言えます。どうしてさん付けしてしまうんですか」

榛名「え、えーとそれはですね……」

鳳翔「それと、貴方の趣味は私には理解できませんので悪しからず」

榛名「久しぶりの地獄耳……」

鳳翔「…………それは年増と言いたいのですか?私が行き遅れて余ったおばさんだと言いたいのですか?……ねえ!?ねえ!?」

榛名「だ、誰もそんなこと言ってませんよ」

鳳翔「ふ、ふふふふふ…………」

提督「榛名」

榛名「…………なんでしょうか」

提督「ご愁傷さま」










鳳翔「的にしましょうか」ニッコリ


78: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/02(木) 06:29:19.50 ID:fwhlE+39o



提督「ああ、そうだ。鳳翔、榛名を連れていく前に聞かなければいけないことを忘れていた」

鳳翔「そうですか。まあ、良いでしょう」

榛名「……なんですか?笑うつもりなら一人の時にしてください」

提督「いや、あそこでの成果は現状どうなっているかの確認だ」

榛名「ああ、そういうことですか」

提督「それと、いつあちらに行くか、機材はどうするか等の確認も必要か」

榛名「とりあえず、今日はここに留まります。他の鎮守府の方々が来てくれたおかげですね」

提督「そうか。今日はここに居るのなら、他の内容は後で聞かせてもらうぞ」

榛名「そうですね。では、榛名はお休みを」

鳳翔「頂けると思いましたか?」

榛名「…………ですよね。付き合います、はい……」


84: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/11(土) 02:27:25.36 ID:fiezqGFkO
小話 艦娘


「近代化改修ってさ……なんでこんな形式になったんだろーね」

「急にどうしたのですか?」

「いや、艤装がカードになるのってなんか不思議じゃん。しかも、そのカードは僕達触っちゃいけないし、改めて思うと気になってさ」

「…………不良品の回収が面倒だったから、それを自分達で処理させるようにしたかった、とかでしょうか。カード化については妖精の技術だとしか……」

「んー。まあ、確かに開発で作られる適性無しや、艦名を発見できてない研究不足の艤装は大量にあっても邪魔だし、そこはなんとなく納得できるよ。でも、触っちゃいけない理由にはならないんだよね……」

「うーん……触ったら近代化改修に影響する、とかはどうでしょう」

「やっぱり、そのあたりが妥当な理由かなー……後で妖精さん達に聞いてみよっか」

「そうですね」










「ん?ああ、詳しくは知らないよ。とりあえず僕達以外に触らせないようにするように教えられてたから、それを守ってるだけだね」

85: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/11(土) 02:32:14.64 ID:fiezqGFkO

「えー……触ったらどうなるか知らないの?」

「知らないよ。触らせなきゃ何も起きないんだし、それで良いじゃんか」

「禁止されてることって気にならない?」

「気にならない。面倒そうな口ぶりだったし、こういうのは大抵碌なことにならないからね」

「ちぇー……つまんないなぁ。じゃあ、カードにはどうやってんの?」

「そりゃまあ、感覚で」

「感覚で烈風とか46cm三連装砲を作るもんね、知ってた。わざわざカードにする理由は?」

「これも先達は教えてくれなかったなー……ま、さっきと同じような感じだったから、これ以外の方法は碌な結果にならなかったんだと思う」

「そっか…………」

「そろそろ大淀のところに戻った方がいいんじゃない?彼女に仕事ほっぽって来たんだし、いい加減にしないとまた正座させられるよ?」

「あれはスカートの中に手を突っ込んだからで、仕事を丸投げしたくらいなら問題ないと思う」

「いやいやいや……何してんのさ」

「だって、あのスカート……どう考えても誘ってるとしか思えないだろ?つまりそういうことさ」

「それを大淀に言ってみたらどうよ」

「分かりきったことだから言えるはずないだろー」

「へぇー…………詳しく聞かせてもらえますか?提督」

「…………あれ?大淀さん、なななんでここに居るのでしょうか?」

「勿論、提督がいきなり居なくなったので探しに来たのですよ」

「あ、あはははは。それは悪いことをしました。じゃあ、戻りますか」

「……そうです、ね!」

「いだだだだ……!曲がらない!それ以上は曲がらないから!」

「妖精さん、火急の用事があるので、これにて失礼させていただきますね」

「ああ、うん……提督、南無」


ズルズル……


「粉バナナ!妖精が僕を陥れる為に仕組んだ罠だぁ……──」









「はぁー……しかし、この話題が出てくるとはねぇ。確か、詳しく話した時の提督は────」

86: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/11(土) 02:39:54.01 ID:fiezqGFkO



「殺されたんだよなー……」

「…………あーやだやだ、忘れよう。いい気分が台無しだ」

「間宮んとこ行こっと」


88: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/27(月) 04:13:20.21 ID:aRdI87Eko


榛名「うぅー……だいぶ絞られました」

「あはは……お疲れさま」

榛名「貴方もなんだかんだ言って参加してたじゃないですか、瑞鶴」

瑞鶴「だって、面白いくらい鳳翔の矢に当たらないんだもん。分かってはいたけど」

榛名「こちらからすれば嫌がらせ以外の何物でもないですよ……」

瑞鶴「ごめんごめん。あの人に睨まれるとどうしても、ね」

榛名「もう……!」

瑞鶴「はい!この話はおしまい!お風呂入りにいこ?」

榛名「この後提督に報告する必要が……」

瑞鶴「そんなの後々!どうせ今日はここに居るんだし、今までの疲れを癒しておいて明日以降の戦いに備えとこう!ね?」

榛名「それはここに来た時すぐに済ませておきましたし……」

瑞鶴「クレーンにしがみついてただけで身体の疲れがとれる訳ないでしょ。心はともかく」

榛名「そんなことはないです!榛名はクレーンさえ……いえ、機械類……こ、工廠さえあれば戦えます!」

瑞鶴「趣味に走らないで、おねがいだから。榛名はいつもここから脱線しちゃうし」

榛名「え、えっと…………ごめんなさい……?」

瑞鶴「とにかく、これからが榛名は大変なんだから早くお風呂に行って、早く寝る。おっけー?」

榛名「お、おっけーです」

瑞鶴「じゃ、いこっか!」

榛名「あぁ!引っ張らないでください!ちゃんと付いていきますから!お風呂入りますから!」

89: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/27(月) 04:14:20.69 ID:aRdI87Eko






鳳翔「――ということです」

提督「なるほど。そして今から瑞鶴が風呂に誘う、と。しかし、榛名がどこか思いつめているのは私も分かってはいたが、鳳翔達も気にしていたのだな」

鳳翔「勿論ですよ。基地での一件以降、彼女は何かを感じています。私達にはそれを知る術はないですし、教えてもらえるとも思っていません。それでも、少しの時間くらいそれを忘れてほしかったのです」

提督「それで、あんな形になったと言いたいのか?」

鳳翔「……ふふっ、どうでしょうか」

提督「さん付けにいらついた」

鳳翔「あまりしつこいと嫌われてしまいますよ、提督」

提督「ビンゴか」

鳳翔「……このくらいは貴方も、彼女も分かってくれるでしょう?」

提督「はぁ…………榛名に矢は当たったか?」

鳳翔「いえ、途中で瑞鶴も参加しましたが全部避けられました」

提督「そうか。まあ、あいつも多少は気が紛れただろう。鳳翔はもう入浴は済ませたのか?」

鳳翔「これからですよ。では、瑞鶴達のところに行ってまいります」

提督「ああ。早くいってこい。風邪を引かれたら困るしな」

90: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/27(月) 04:17:34.60 ID:aRdI87Eko


瑞鶴「あ゛~…………生き返るー」

榛名「んー…………」

瑞鶴「やっぱり運動後のお風呂は格別ね」

榛名「数日ぶりにちゃんとしたお風呂に入りますよ……私」

瑞鶴「あははは。あっちは入渠ドックをお風呂代わりにしてたもんねー。ほんとはもう少し大きい……えっと、なんだっけ?」

榛名「アインスちゃんです。あちらにはここみたいにちゃんと大浴場も備え付けておいたのです……あそこで入るの、実は結構楽しみにしてたのですよ……うぅー」

瑞鶴「どうどう……今は広々と使える状況を楽しもう、ね?皆が帰ってきたら大分狭くなっちゃうし」

榛名「……むー」プクプク…

瑞鶴「あ、それやると鳳翔に怒られちゃうよ」

榛名「……いいんです。少し悪いことをしたい気分なので」プクプクー…

鳳翔「あまり長々としないでくださいね」

榛名「分かってまーす……」プク…

瑞鶴「あれ、いつの間に?」

鳳翔「ふふっ、油断大敵です」






ザバー……





榛名「……はぁー」

鳳翔「おじさんみたいな溜息はしない方がいいですよ」

榛名「瑞鶴の溜息よりかはずっとマシです」

鳳翔「ああ、そうでしたね」

瑞鶴「え!?なんで私に飛び火するの!?」

榛名「瑞鶴ですし」

鳳翔「瑞鶴ですから」

提督『瑞鶴だからな。ああ、コーヒー牛乳はいつものところに仕舞っておく。風呂上がりに飲むなり、自室に持ち帰るなりしてくれ』

瑞鶴「ちょっま……えぇー」

91: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/27(月) 04:19:28.44 ID:aRdI87Eko


瑞鶴「もー……」

榛名「ふふふ」

瑞鶴「笑わないでよ!鳳翔も!」

鳳翔「す、すみません……ふふ」

瑞鶴「むむむむー」

榛名「ふー…………良い気分転換になりました。二人とも、ありがとう」

鳳翔「……」ニコリ

瑞鶴「……どういたしまして、かな。ここは」

榛名「よいしょっと……」

鳳翔「私は先に上がりますね」

瑞鶴「あれ、珍しい。鳳翔がこんなに早く出るなんて」

鳳翔「どうやら榛名は貴方に何か話があるようですから、邪魔者は退散しようかと思いまして」

瑞鶴「別に鳳翔が聞いても支障は無いんじゃないの。もう話をする気満々だったようだし」

榛名「そ、そんなに分かりやすいですか?」

鳳翔「とても分かりやすいです」

瑞鶴「まあ、付き合い長いしなんとなく分かるよ」

榛名「隠してたつもりだったんですけどね……ばれてしまっては仕方ありません」

瑞鶴「それで、なんの話?」

榛名「ええと、鎮守府周辺の警備に当たっていたのは瑞鶴ですよね?」

瑞鶴「うん。私が戻ってからはずっとそうだよ」

榛名「……鳳翔さ」

鳳翔「はいはい。眉間に拳を入れられたくないのなら黙っててくださいな」

榛名「…………」

瑞鶴「わざわざ手で口を塞ぐ必要はないと思うよ?」

鳳翔「では、あまり長々と入らないように。早めにお願いしますよ」

92: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/10/27(月) 04:22:01.72 ID:aRdI87Eko

榛名「…………」

瑞鶴「…………」

榛名「…………」

瑞鶴「いや、喋ろうよ!もう鳳翔居ないじゃない!」

榛名「いえ、どうでもいいことですけど、確か鳳翔はコーヒー牛乳好きでしたよね。もしかしたら、取られちゃったかな、と」

瑞鶴「ほんとにどうでもいいわね!今ので完全に真面目な話をする雰囲気じゃなくなったじゃない!」

榛名「瑞鶴のも取られたかもしれません……」

瑞鶴「コーヒー牛乳から離れてお願いだから!」

榛名「まあ、流石にそういうことはないですよね…………あ、それでですよ」

瑞鶴「…………」

榛名「……どうしてふてくされているんですか」

瑞鶴「ふてくされる理由に心当たりはあるでしょ」

榛名「いえ、あのですね。はい……すみません」

瑞鶴「はー…………ん。それで、どういうことを聞きたいの?」

榛名「最近、特に異常はないかな、と」

瑞鶴「別にいつも通り、異常なんて見つからなかったわ。この辺りはだいぶ前からこんな感じなのに、いきなりどうしたの?」

榛名「…………」

瑞鶴「黙らないでよ、気になるじゃない。もしかして、私をからかってる?」

榛名「……誰も聞いていないですね」

瑞鶴「榛名?」





榛名「実は、普通に入られているようです。深海棲艦に」

95: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/11/24(月) 05:14:34.27 ID:IotfdUdbo


――――空を眺めていた

雲が面白い形をしている。なんとなく甘味が食べたくなってきた


「――お姉ちゃん」


不意に声を掛けられる。振り返りたいが、そんな気持ちとは裏腹に私は空を眺め続ける。これは……


「どうしたの?」

「どうして――を置いて居なくなったの?」


名前にノイズが掛かる。妙に耳触りの悪い音だ


「……何も聞かされていないのですか?」

「…………何も聞いてない」

「……」


…………どこか噛み合っていない内容。私は空を見上げるのを止め、腕を組んで何か考えだした

少し唸るような声が漏れ、そして


「分かりました」


などと言いだした


96: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/11/24(月) 05:15:22.68 ID:IotfdUdbo


「お姉ちゃん?」

「あなたはもう少し私を頼らないようにしましょう」

「え……?」

「もう私の後だけをついて行くことは無理ですからね」


そうして一人納得しうんうん、と頷く私

すると突然手が腹部に回ってきた。抱きつかれたらしい


「嫌……それは出来ない。どうしてそんなことする必要があるの」


…………まるで乳離れが出来ない子どものようだ。酷く不安定で、今にも壊れてしまいそうな気がする


「必要なことですよ。艦隊行動を常に一緒に出来るはずがないですし、私がまた異動した時に勝手に追いかけられても困ります」

「でも!」

「それに、あなたのために言っていますけど、私のためでもあるんです」

「…………どうして?」

「大切な妹が成長して、喜ばない人は居ないんですよ」

「……分かんないよ。そんなこと」


少女がそう言うと、私は抱きついてる彼女を優しく振りほどき、彼女の方を向き、目の高さに合わせて屈んだ


「いつか分かる日が来ます。だから、約束しましょう。ね?」


そして、頭を撫でる。撫でられている方は不服そうにしていたが


「…………分かった」


渋々といった様子で答えた


97: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/11/24(月) 05:16:34.13 ID:IotfdUdbo


――それにしても、大分具体的な内容だ。少し前はこんなにはっきりとはしなかったのだが


「――」

「……ん」

「「ゆーびきりげんまん」」


唐突にグニャリ、と景色が歪む

夢の時間が終わりを告げるのだろうか

そんな私を無視して時間は進み、指切りを終える


「さて、こんな場所にずっといるのも何ですし食堂にでも行きましょうか」

「……うん」

「お話、終わったっぽい?」

「あら、待たせてしまいましたか?」

「多分一番待ってるのは――――だと思うよ」

「そうですか。――、早く行ってらっしゃい」

「…………分かった」


少女が私を離れると、周りが黒に変わっていく

そんな中、私はぽつりと呟いた


「あなたは――――」


98: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/11/28(金) 04:00:38.79 ID:prf0kth2o

空母棲姫「――ぷはぁっ!」

空母棲姫「…………約束、か」

空母棲姫「それにしても、この雨……あいつらノ臭いガする」

「私達はそんなに臭うのか?」

空母棲姫「!?」

「あーあー、そんな怖い顔しないでくれ」

空母棲姫「ぐぇ……!グ、お前ハ……」

「ほら、うっかり首を折り損ねてしまった」

空母棲姫「どこがダ……私ヲ弄んでいるだけだろう」

「お前は面白くないからな……ツマラナイ。戦艦棲姫の奴と殺りあえればそれが一番なんだが」

空母棲姫「何故私ヲ……!」

「陸に上がったんだろ。何をしてたのかなんてどうでもいいが、それが決定打。はい、終わり」

空母棲姫「……あいつノ捕捉ト重なったト言うのか……!」

「はー…………本当にこいつを殺せばこいつが私よりも強くなるのか?ミッドウェーの奴カマかけてるんじゃないだろうな」

空母棲姫「! ハ、離せ!」

「ま、いいか。つまらないが殺っとこう」

空母棲姫「ウぐぐぐ……!」





「…………何か来たか。まあ、どうせ爆撃で沈む。ああ、ツマラナイ」

99: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/11/28(金) 04:02:22.52 ID:prf0kth2o


瑞鶴「提督。流石に今日みたいな日は見回りしないで良いよ」

提督「とは言っても、頭数が足りない以上はどうしようもないだろう。他の人とは違い、私なら駆逐艦程度ならばどうにか相手取れるしな」

瑞鶴「鳳翔も私も、なんだったら最近来た龍鳳も限界まで索敵範囲を広げるから……!」

提督「現時点で十分に無理をしているだろうが。これ以上は展開しても逆に未帰還機が出てくる。それに、もしもの時に全員索敵以外出来ないなんてことになっては大変だからな」

瑞鶴「…………もー。死んだらどうするの?」

提督「死ぬ前に助けてくれるだろう?」

瑞鶴「そりゃそうだけど……ここじゃ滅多に汚染された雨なんて降らないのに、前触れもなく降ったんだよ。しかも、かなり雨が強いし」

提督「だが、そんな状況だからこそこうする必要がある。雨が降らなければこんな話になっていない以上、余計にな」

瑞鶴「こ、こんなことになるなら榛名を行かせなきゃよかったのに…………」

提督「…………それは言うな」


100: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/11/28(金) 04:03:50.28 ID:prf0kth2o

「じゅ、準備出来ましたぁ……ふう」

瑞鶴「ちょっと遅かったね。とりあえず、気を抜くと艦載機のコントロールが出来なくなるから注意して。いつもと同じように艦載機を出すのも厳禁よ?」

「了解です!……それにしても、本当に唐突ですよね。まるで、誰かが操っているような、そんなタイミングでしたし」

提督(誰かが操っている……か。いや、あの腹ペコポンコツ姫に出来るとは思えない)

瑞鶴「鬼とか姫とか、もしくはそれに准じた深海棲艦なら出来るかもしれないわ。でも、それなら榛名も私達もそいつらが雨を降らす前に気付いてるはずだからあまりその線は考えてないかな」

「じゃあ、何故慌ただしく索敵するのでしょうか?提督なんて本当はこういうことする立場ではないですよね」

提督(しかし、しかしだ。もしもあいつがこれの原因ならば色々と辻褄が合う。これで鎮守府を確認できるだろう……ならば)

瑞鶴「この雨、降っている間ずっと深海棲艦の臭いと気配がするでしょ?これのせいで深海棲艦は紛れ込みやすくなるの。そんで私達の状況とか知られると面倒なのよ」

「今は、私と瑞鶴先輩、鳳翔先輩だけ……そういうことですか」

瑞鶴「そ。他の人はAL方面の応援とか他の重要地点へ移動とかでここを開けちゃったし、それがばれると深海棲艦が押し寄せてくるかもしれないわ。そいつら七面鳥打ちにするのは楽しいけど、今回ばかりはそれは避けないとね」

「七面鳥、ですか……七面鳥?……誰が……私の?いいえ!精鋭たちです!訂正してください!」

瑞鶴「あ……ミスった。この子のげきおこポイントうっかり触ってたかぁ」

「いくら瑞鶴先輩でも許せません!言っていいことと悪いことがあるんですよ!大体――」

瑞鶴「ストップストップ!それより提督が何故こんなことするかを話そうか!」

「そうやって私達を馬鹿にしたことをはぐらかそうとしないでください!提督の話なんて後で出来ます!」

瑞鶴「あー!あー!聞こえなーい!提督ー!なんか言って!」



ブロロロロロ……!



提督「すまないがこれ以上は時間が惜しい。行かせてもらうぞ」

瑞鶴「ちょ、まって!」

「提督!瑞鶴先輩が私達を馬鹿にしたんですよ!ちゃんと話を聞いてください!」

提督「瑞鶴!何かあったら無線で連絡を頼む!龍鳳!この雨の中を索敵するには辛い場面が多いだろうが、協力してくれ!」



ロオオオオォォォォ……



瑞鶴「あーもー!龍鳳行くよ!」

「七面鳥とか言ったの謝ってください!!」

103: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/05(金) 23:08:03.48 ID:PGy2L38Uo


提督「そろそろあいつの居る辺りか……今のところは深海棲艦の影も形もないが、さて……」

瑞鶴『提督!気を付けて!そのあたりで一つ偵察機が落とされたみたい!』

提督「瑞鶴か。相手は分からなかったのか?」

瑞鶴『視認する前に落とされた!今急いで装備変えてるところだからそこからすぐに離れて!』

提督「どういうことだ?この辺りにお前が焦るほどの深海棲艦の気配はしないのだが」

瑞鶴『でも彩雲妖精も私もコントロールを失っていない状況で落ちたのよ!やばいのがいるのかもしれない!』

提督「……ふむ、分かった。今から――」


ゾクッ!


提督(! この感覚……あの時と同じ……いや!あの時よりもやっかいな奴が居るのか!)

瑞鶴『……今の音…………!提督、艦載機が来てるよ!』

提督「空母級か……」



…メ……ズメ…



提督(どこから声がしているんだ……)

瑞鶴『なんでもいいから早く対空用の装置使って時間を稼いで!』

提督「もうとっくに起動している!」



…ズメ……シズメ…



瑞鶴『なんでそれ起動してるのに装置は対空射撃始めてないのよ!妙な声と音が無線越しでもはっきり分かるくらい近づいてるはずなのに!』

提督「この雨の影響か……いや、これには対策してあるはず……何が……」



シズメ……シズメ……!!



提督(考えろ……深海棲艦達の言葉は深海からでもこちらに届く……妙なことを言う奴らばかりだった。……まさか!)

提督「下か!瑞鶴!無線から耳を離しておけ!」

瑞鶴『下からぁ!?そんなこと出来る奴なんて――』

104: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/05(金) 23:11:11.18 ID:PGy2L38Uo


けたたましいエンジン音。そして、爆発音。身体がどうにかなりそうな程の重力を感じながら、提督は舵を取る。先程彼が居た場所には水柱が上がっていた

魚雷か何かだろうか。なんであれそんなものに当たっていたら、船もろとも木端微塵になるのは間違いない


瑞鶴『~~!うっさい!』

提督「無茶を言うな。だから耳を離しておけと言っただろう」

瑞鶴『分かってる!後、まだ来てるみたい!』

提督「……そう簡単に逃がすはずがない、か」



シズメ……



先程とは違い、明らかに聞こえてくる声。それに対して出来る限り遠ざかるように動かす

こちらの船のエンジン音と雨音、そして怨念のこもった声以外には聞こえない。奇妙な状況だ。追ってくる艦載機の姿形もないのに襲われていると誰が思うだろうか

こんなことを試そうと思い、実践する奴の顔が見てみたいものだ。そう、提督は呟いた


瑞鶴『いきなりこんな場面で褒めないでよ』

提督「お前もやっていたがお前じゃない」

瑞鶴『相手を、よ。私だってふてくされる時はあるからね』

提督「まず、褒めてはいないんだが……頭が痛くなりそうだ」


105: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/05(金) 23:12:51.82 ID:PGy2L38Uo

そんなやり取りを交えながら数分。瑞鶴があることに気付く


瑞鶴『……ねえ、もしかして誘導されてない?』

提督「どういうことだ」

瑞鶴『さっきの状況とか考えるとさ、提督もっと死に目に合うはずだよね。あっちの方がもっと早いと思うし』

提督「勘弁してくれ。この時点で十分に合っていると思うのだが」

瑞鶴『後、私の艦載機が落ちた地点に近づいてない?』

提督「そのはずは――な!?」

瑞鶴『まさか……』

提督「やられた。航路が完全に乱されていた上に海図も滅茶苦茶になっている」

瑞鶴『あー!まだそっちに行くまで結構あるのに!』



シズメ……!!



提督「泣きっ面に蜂とはこのことか……瑞鶴、悪いが全力で頼む」

瑞鶴『了解!……もうっ!』


通信が乱雑に切られた後船の速度を上げ、逃げる。エンジンが悲鳴を上げるが提督は無視して速度を上げ続けた

しかし、今度はそれでも声が響いてくる


シズメ!!……シズメ!!


106: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/05(金) 23:17:51.62 ID:PGy2L38Uo


提督(く……完全に手玉に取られている。遊ばれているのか……!)

提督(それに瑞鶴の言った通り、誘導されている……何故こんなことをするかは知らないが、空母相手にまともに太刀打ちできるはずがない)

提督(どうにかして瑞鶴たちの到着まで時間を稼がなければ……)

提督「……ん?あの姿は……まさか本当にあいつが……」

提督「…………どういうことだ。あいつと同じ姿の奴がもう一人いる」


唐突のことで提督の意識が空母棲姫の方へ向く。その隙を『彼女』が許すはずもなかった

いや、ここまで手を抜いていたことを考えれば、この辺りで戯れるのを止めたとも言える




提督の船の進路に突然猫の形をした艦載機が海中から姿を現した


提督「なっ……!」


とっさに左に舵を取り、避けようとするがその先には怨嗟の声

更に無数の声がこちらを追いかけてくる


提督「――――」





そして艦載機が船と衝突し、爆発した

更におまけと言わんばかりに追いかけてきた艦載機はその爆発に自ら突っ込んでいき、連鎖的に爆発が起きていく



爆発が収まった後、残ったのは船の残骸だけだった

109: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/12(金) 00:42:24.66 ID:PmZjsxd2o

空母棲姫「お前……今ノ船ハ……!」

「どうかしたのか。あんな玩具、気になることなど無いだろ」

空母棲姫「あの船ニは人ガ乗っていた……」

「知ったことじゃないな。そんなものに気を掛ける意味はない」

空母棲姫「ふざけるな!」

「ふざけるな、か。ふふ、お前こそふざけているんじゃないのか」

空母棲姫「何ヲ!?」

「私たちを作るようなことをしておいて、最後には使い捨てる奴らだ。その憎悪はさぞかし深い。私たちからすればヒトなど殺す以外の選択肢はない」

空母棲姫「…………」

「まあ、私にとってはどーでもいいんだが。ツマラナイものなんて、死んでも関係ない。消えたところで気付きもしない存在だぞ?」

「そんなものを気に掛けるお前はとても愚かだ。本当にふざけている」

空母棲姫「グ……!お前ニ言われる筋合いハない!」

「怒っているのか。もしかして、あれに見知った存在でも乗っていたのか?フフフ……」

空母棲姫「!?」

「図星か?残念ながら、私の索敵範囲に入ったのが運の尽きだ。フフ、しかし妙な動きだったなぁ。こちらに一直線に来ていた。まるで、誰かを待たせているような感じだったぞ?」

空母棲姫「そんな……私ノせいだト言うのか?」

「さあ、それはもう分からないな、フフフ。死人に口なし、ね」

空母棲姫「ソんなハずない!!オ前ガ……!」

「フフフ……」

110: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/12(金) 00:46:41.13 ID:PmZjsxd2o

空母棲姫「……私ハ、誰カヲ殺してしまうようナことなんて望んでイナイ!!」

「まあ、そうかもしれないな、フフ」

空母棲姫「オ前ノせいダ!オ前ガ居なければこんナことニならナかっタ!」

「そう。それで、どうする?何かのために一矢報いるか?私に持ち上げられているこの状況では無駄死にだけどな」

空母棲姫「オ前エエェェェ!!」

「そんなんじゃ届かないなぁ。もっと私を憎めよ?殺したくて殺したくて堪らないのだろう?」

空母棲姫「ガアアアアアァァァァァ!!」

「アハハハハ!あー、楽しいなぁ。フフフ……」

空母棲姫「フザケルナ フザケルナ フザケルナァ!オ前ハ……絶対……!」

「おっと、しまった。手が滑った」

空母棲姫「!コロス!!」

「フフフ……」











「…………」

空母棲姫「…………う、ア。ああ」

「…………はぁ、もしかしたら、と思ったが。駄目か。呑まれていれば、絞り粕みたいな奴でも殴られた場所が痛いはずだったんだが」

空母棲姫「駄目だ……殺すな。一度でも本気デ殺そうトしたら戻れなくなる……。私ハそんなことヲするためニここニ来た訳じゃない」

「もういい。萎えた。最後くらい印象になるようなことをしてほしかったんだがな」

空母棲姫「私ハ、私ハ……提督ニ…………何かヲ……」

「死ね。過去に囚われた哀れな遺物」

113: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/15(月) 03:41:59.61 ID:aoeSscoZo

空母棲姫とよく似た女性はそう吐き捨て、空母棲姫に止めを刺そうと殴りかかる

そして、空母棲姫の顔は木端微塵に――


「…………」


吹き飛んだ。そう予知していた彼女だったが、結果は違った

拳は空母棲姫ではなく、何か無機質な物に当たった

そして、ヒトが居た。本来水上に浮かんでいられるはずがない存在が、だ


提督「ぐ……腕が折れるかと思ったぞ」

「さっきのヒトか?死んだと思ったが」

提督「悪いが、そう簡単に死ねるほど柔な鍛え方はしていない」

「ふぅん……水上を浮くことが出来るヒト…………艦娘、とは違う。となると、提督か?」

提督「…………」

「まあ、気にすることではないか。どうせすぐに死んでしまう」

提督「おい、ポンコツ姫」

空母棲姫「抑えろ……抑えろ……」

提督「……羊羹でも食べるか」

空母棲姫「私ノ分ヲ寄越せ…………ハッ!?」

「…………」

提督「ようやく気付いたか。こいつは何なんだ?」

空母棲姫「危ない!」

提督「ぬぉ……!」

114: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/15(月) 03:45:21.98 ID:aoeSscoZo

空母棲姫が提督を引っ張り女性との距離を取ろうとする。その時、女性の拳が空を切り、提督達は紙吹雪のように吹き飛んだ

そのまま二人は水上を水きりのように跳ね、2、3回したところでようやく転がり、そして起きあがった


提督「ゲホッゲホッ!……さっき防いだ時はまだ運が良かっただけか。アレをまともに受けていたら死んでいたな」

空母棲姫「…………生きていたのか」

提督「ああ、往生するにはまだ早いからな。それに、死んだら鎮守府の仲間達に合わせる顔が無い」

空母棲姫「そうか。……良かった」


そのまま二人は彼女から出来る限り距離を取ろうと水上を駆け出す




「はぁ……避けるなよ。ただでさえ殺る気が起きないのに、しぶとく生きていられても困るのだが」


空母棲姫「……あいつノことだが、私にも分からない。だが、私ヲ殺すためニここヘ来た」

提督「お前達にも仲間割れなんてあるのか」

空母棲姫「仲間、そういう意識ハ恐らく無い。艦娘ヲ効率的ニ殺すためニ一時的ニ手ヲ組む、程度ノ認識しかない」

提督「では、何故お前を殺そうとしているんだ?やる気が無いのに加えて、仲間意識から来る制裁でないならこういったことをするとは思えないのだが」

空母棲姫「…………」

提督「思い当たりがないのか?」

空母棲姫「きっと、分からない」

提督「いきなり何を……」

空母棲姫「私ヲ殺して、私ト殺しあうため」

提督「…………頭でもおかしくなったのか?」

空母棲姫「……そうかもしれないな。今すぐニ休みたい」

提督「なら、この状況を何とかしないといけないな。私の仲間達が来れば、追い返すくらいはできるはず。それまでにどうにかして生き延びなければ」

115: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/15(月) 03:47:37.30 ID:aoeSscoZo

提督「幸い、この位置からなら奴の攻撃手段は艦載機のみだろう。ならば、この雨を利用して逃げるしかない」

空母棲姫「どう逃げるんだ」

提督「潜る。先程の私のように気付けなくなるのなら、それ以外に方法はない」

空母棲姫「私ハどうにかなるガ、お前には無理じゃないか?」

提督「無理かはやってみてからだ。私には艦の適正自体はある。常人よりかは何倍も息は持つだろう」

空母棲姫「……良く分からないガ、分かった」


「全く……愚かだ」


女性の足元から巨大な艤装が顔を出す。それに座ると彼女は髪をかきあげた

それが合図だったのだろう。艤装の一部分が赤く光り、そして彼女の後ろから砲撃音が轟く


提督「!?」


反射的に刀を出し、振りぬくと耳障りな音が響き渡る

それが砲弾だと視認したその瞬間、提督は身体を捻った

そして耳を劈く音。刀はまるでガラス細工のように砕け散り、砲弾はそのまま提督を穿つと言わんばかりに突き進む

しかし、身体を捻ったことによって間一髪、提督の横を通り過ぎて行った


提督「くっ……気をつけろ、まさかのほうげ……き……」


空母棲姫の方を向き、そしてあの女性の方向を見やる。吹っ飛んだことによって離れていた距離もあっという間に詰められており、彼女の姿が目視出来た

その艤装らしきものには砲塔が二つ……


提督「くそっ!……おい、大丈夫か!?」


それを確認した提督は、少しずつ沈んでいく空母棲姫の身体を抱き上げ声を掛ける。しかし、彼女の反応はない

116: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/15(月) 03:50:04.19 ID:aoeSscoZo

「あまり私の手を煩わせるな」


提督が振り返ると、先程までこちらに向かってきていたはずの女性が目の前に立っていた

ふと、目が合う。まるでゴミを見るかのようだ。そして、一切の興味を持っていないのだろう


「おい、ヒト。それを置いて行け。今なら見逃してやる」

提督「悪いが、それはできない相談だ」

「何故だ?お前は確か……提督だろ?それに執着するのは理解できんな」

提督「それはお前たちにも言えることではないのか?こんなポンコツ姫、放っておいても問題ないはずだが」

「まあ、問題ないな」

提督「ならば――」

「だが、私がツマラナイ。ツマラナイのは嫌だ。どんな奴もすぐに毀れるし、話にならない」

提督「それがどういう――」

「だが、そんな生活もそいつを殺せば終わる。毀して毀して毀し合うことが出来る……ああ、昂る」

提督「……頭がいかれているな、お前」

「深海棲艦と居る奴も同じようなもの、そうだろ?」

提督「お前みたいに話の繋がりが見えない薬物中毒者みたいな奴と一緒にするな」

「ふぅん…………有象無象が言うわね。まあ、こちらの事情を知らなければそんなものか」

提督「知りたくもないことだな」

「……はぁ。今すぐ失せろ。飽きてきた」

提督「……私の答えは変わらない。断る」

「……そう。命はいらない、か。吹けば飛ぶような存在がそうやって粋がるのは理解できないな。作業が増えて面倒だ」


そう言うと、女性は提督の首を狙う

彼は全くこの速さについてこれないのか酷くゆっくりと動いている

そして、そのまま手刀で振り抜く

117: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/15(月) 03:50:44.58 ID:aoeSscoZo

女性は提督の死を確信していた

この状態で誰も邪魔をする存在は居ない

索敵内に一匹何かが入ったり出たりと良く分からない存在が居るが、それが何かできる訳ではない

艦載機も来ている気配が全くない

しかし、女性は満たされない。面白くも、スリリングでもない。これは完全に作業なのだ

何が死のうと、こちらに向かってくるのは同じような脆弱な存在

例え、艦娘でもそれが変化することはない

今、もしもここで自分が窮地に陥るようなことは起きないのか

もしも、このタイミングで自分と同程度の敵が現れたらどうなるのだろうか

そんなことばかりを考えるが、現実は変わらない

そして、今回もそうなのだろう

唯一楽しみなのは、この二人を処分した後同程度の存在が出来ることくらいか

ああ、ツマラナイ――

118: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/15(月) 03:52:03.70 ID:aoeSscoZo

最初はひどく驚いた

何故、あんな所に居たのか。どうして、存在に気づくことが出来なかったのか

そして、自分の死を確信した

しかしあの姫は、深海棲艦らしからぬことを言い放った

それどころか、どこか人間のように振る舞ってきた

そのまま流されるように言うことを聞いてしまったが、あの時点でなんとなく悪い奴だと思えなくなってしまったのかもしれない


そして、少しの間一緒に居ただけで共に居ることに抵抗を感じなくなった

まるで足りなくなった物が戻ってきたような感覚

けれど同時に、あの頃の記憶が蘇ってきてむなしさも覚えた

もう戻ることのない時間だと分かっている

それでも、どこか同じものを持っているのかどうしても思い出が蘇るのだ

そう。良く……似ている。とても――




『提督――』




だからなのだろう。だからこそ、あの瞬間に助ける以外に選択肢がなかったのだろう

逃げるべきだった。本来ならば、深海棲艦の勝手な潰し合いでしかなかったのだから。鎮守府の仲間に悲しい顔をさせる訳にはいかないのだから

けれど、あの時の出来事と重なってしまったらもう止まらなかった

もう、繰り返したくは、なかった




「――――今なら見逃してやる」




また、あの時のことを思い出した

この言葉が、選んだ結果を示すのだろう


もしも、もし戻れるのなら――――選択肢は決まっている

たとえ死が待っているとしても、それを覆す訳にはいかないのだから

119: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/15(月) 03:56:50.08 ID:aoeSscoZo

グチャリとした感覚が女性の手に伝わる

そして、息巻いていたヒトの首が空へ飛んでいった

彼女は心底つまらなそうにため息をつく

そして手に付いた血を払うと、空母棲姫を掴む


「さよなら」


そのまま彼女の胸を貫き、艤装の口に放った

艤装は彼女を頭、胴体、足を三つに食いちぎり、一つずつすり潰すように食らっていく

「ちくわ大明神」そう彼女は思うとまた一つため息をついた




ぼちゃり、と提督だった物がクレーンって良いものだと思いませんか?海に落ちて沈んで行った


end

127: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/16(火) 00:54:53.05 ID:SVtPRq9io

グチャリとした感覚が女性の手に伝わる

そして、息巻いていた提督  が空へ飛んでいった

彼女は心底つまらなそうにため息をつく

そして手に付いた血を払うと、空母棲姫を


「    」


そのまま彼女の を  、艤装の口に放った

艤装は彼女を 、  、rrorを三つに食いちぎり、一つずつすり潰すようにrrorっていく

「ちくわ大明神」そう彼女は思うとまた一つ   をついた


ぼちゃり、と       「クレーンって良いものだと思いませんか?」海に落ちてrror行った


enrror

128: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/16(火) 00:55:55.69 ID:SVtPRq9io


グチャリとした感覚が女性の手に伝わるerrorマッシュポテトを作っているのだ

そして、息巻いていた提督がerror美味さで空へ飛んでいった

彼女は心底errorにerrorをつく

そして手に付いたerrorを払うと、空母棲姫のerrorを掴む


「    」

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そのまま彼女のerror、艤装の口に放った     error
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艤装はerrorerrorerrorじゃがいもの皮をきれいに分け、一つずつすり潰すようにerrorっていく

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「クレーンって良いものだと思いませんか?」
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129: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/16(火) 00:57:08.23 ID:SVtPRq9io

「…………」

榛名「どうなんですか?」

提督「……榛名、お前敵に対してもそういうことを聞くのか」

榛名「いえ、別にしたことないです。それより、提督はなんであと一歩のところで死ぬところまで来ているんですか?死んでましたよ?」

提督「いや、まだあそこで奇跡的に避けていたはずだ」

榛名「ええそうですね。私が割りこまなければ見事に裂けていましたよ。それで、その首が空の彼方へ飛んでいく羽目になってましたね」

「…………どこから来た?いや、いつからここに居た?」

榛名「どこからと言うのなら、ここから微妙に離れた所から。いつからと言うと、たった今、としか言えませんね」

提督「まあ、ここで来たのは純粋にありがたい。が、どうやってここに来た?」

榛名「え、えーと…………キシン流的な感じでちょっとホァイと……」

提督「はぁー……あんまり艤装を壊すようなことをしないでくれ」

榛名「あ、それは約束しかねます。後、ずっと気になってましたけどその子……」

提督「……それは、だな――」

「……いい加減、手を離せ」

榛名「それはできない相談、で、す、ね!」


榛名はそう言いながら、女性を背負い投げの要領で思い切り空へ放り投げた

そのまま主砲を向け、一発、二発と彼女に撃ち込む

そして、命中。女性は自由落下し、ぼちゃりと落ちる

しかし、榛名には彼女が今の砲撃を気にも留めていない様子が確認できた

140: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/22(月) 07:37:39.55 ID:yKRJ6QCno

榛名「今のを防ぎますか……」

提督「……どうする?」

榛名「提督はその子を抱いたままその場を動かないで下さい」

提督「……分かったが、逃げた方が榛名は楽にならないのか?」

榛名「動かれたら、恐らく守りきれなくなります。それなら、まだ動かないでいてくれた方がマシです」

提督「それほどの相手だったのか……」

榛名「……あの様子を見る限り、まだ手を抜いています。きっと」

提督「…………何を考えているのかさっぱり分からないな」

榛名「私たちとは考え方が違いますからね……来ます」


榛名が女性へと動き出すと同時に小さな水柱がいくつも上がり、そこから艦載機が飛び出てくる

その数は先程提督の乗っていた船に向かってきた数を優に超えていた

更に、水中から奇襲されたことを考慮すれば、今確認できる数よりも提督達に向かってくる艦載機は多いのだろう


榛名「ふー……」


深く息を吸う。その間に改めて各武装の状態を確認していく


榛名「はー……」


息を吐く。敵艦載機が近づいてくることを感じながら、武装の確認を終えた

主砲が、副砲が、機銃が艦載機へと向く。脚部艤装の主機が熱くなるのを感じながら砲撃を開始した

141: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/22(月) 07:38:38.58 ID:yKRJ6QCno

艦載機の残骸が墜ちてくる。大小様々な孔があり、装甲は見事に剥がれていた


「…………」


海の中、女性は妙な感覚を覚えていた

艦載機は一つ一つ動かしたりせず、ある程度の数毎にリーダーに位置する艦載機を決めて、それを主軸に攻撃を仕掛けている

しかし、あの艦娘の砲撃は確実にそれを撃ち抜いていく

そのままでは全体の行動が乱れるため、他にリーダーを作るのだが、その一瞬の隙に彼女は他の艦載機を機銃で器用に核部分を破壊して墜としていくのだ

数分で、空へと放った『猫』はどんどん数を減らしている


「……なら、海からは?」


漏れ出そうになる感情を抑えながら、女性は誰に向けるでもなく呟く

そのまま提督達の方へと艦載機を差し向ける

空の艦載機ばかりに気を向けていると、提督達が海からの奇襲で死ぬことになるという算段だ

もし気付いたとしても、下手を打てば空と海の同時攻撃で提督達もろとも死ぬ可能性もある

そんな事態をどう回避するのだろうか


「フフ……」

142: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/22(月) 07:41:44.73 ID:yKRJ6QCno

海からの奇襲は、すでに榛名は予知していた

砲と機銃をフルに稼働してもここの艦載機全ては対処しきれない状況、そして砲身を提督方面に向けるためにはこれ以上身体をずらす訳にもいかない

そんな状態だが、榛名はここから提督に向かっている艦載機を全てをどうにか出来ると分かっていた


榛名「主砲!」


右側下部武装の46cm砲が水中の艦載機が居ると思われる方へと向く


榛名「砲撃――」


機銃が艦載機の核を撃ち抜き、副砲が破壊する


榛名「開始!」


そして、46cm砲弾が水中の艦載機へと放たれる

その46cm砲による砲撃が始まる寸前に、一瞬だけ榛名は脚部艤装の機能を停止させた

本来、脚部艤装の役割は艤装を装着している艦娘が沈まないようにするために存在する訳ではない

砲撃の反動によりバランスを崩すといった事態を防ぎ、そして戦艦クラスの艦娘にとっては吹き飛んでしまうことが無いようにする代物だ

それの機能を一瞬でも機能を停止させるということは――――

沈む感覚が現れた瞬間、砲撃の反動によって榛名の身体は宙へと浮き上がる。浮き上がると言うより、吹き飛ぶと言うのが正しいが

彼女の浮き上がった先には、砲と機銃ではどうしても処理しきれなかったリーダー格と目星を付けていた艦載機がこちらを討たんと魚雷を発射しようとしていた

本来は彼女は水上に居るはずで、手が届くほどの位置には居なかった。しかし、今は艦載機の目の前に居て、手が届く

榛名は艦載機の猫を象ったと思われる部分を掴み、ぐしゃり、と握りつぶした

そのまま、旋回していた艦載機に魚雷が当たるように投げる

着水と同時に艦載機が盛大に爆発する。そのまま、一瞬コントロールを失った艦載機が次々とその爆発の被害を被っていく

運が良いのか悪いのか、爆発によって吹き飛んだ艦載機の残骸が別の艦載機の爆弾や魚雷に当たり、連鎖するように爆発して被害がどんどん広がっていった


榛名「ピタゴラ・スイッチ……っと、早く水中の方を片づけないといけませんね。さっきので時間を稼ぎましたが、それでもかなり提督に近づいているんでしょうし」

146: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/29(月) 04:06:28.43 ID:iiZtDLgXo

提督「…………動くな、と言われたが、やはりうっすらとあの猫みたいなやつが見えるとぞっとする。榛名は今どのあたりだ……」



バシャアァァァン!!



提督「ぶっ!――今のは榛名の砲撃か……」



ザバァ…



「…………予想以上だ」

提督「…………」

「まさか、一瞬のうちに空と海の航空部隊に対して同時に打撃を与えてくるとは思わなかった。しかも、空の方はもう壊滅と言える状況か」

「恐らく海の方も――――」



ドゴォン!! バアァァァン!!



「こうやって毀してくるのだろうな」

提督「全く……艤装を壊すようなことをするなと言ってすぐこれだ……」

「……今すぐにでも殺せる範囲に居るのに、よくそんな態度でいられるな」

提督「動くなと言われたのならば仕方ない。私には信じて待つしか選択肢が無いのだから」

「その結果は死、よ?」

提督「それをあいつが許すはずがない」

「惚れてでもいるのか?全く理解できないな」

提督「ただの事実、だ」

「…………そう」

147: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/29(月) 04:07:11.93 ID:iiZtDLgXo

女性は再び、提督達を殺そうと動き出す

先程失敗したが、今の状況で防がれることはない。少なくとも、彼女はそうなると分かったからだ

艦載機に指示を出し、そして発艦させる

そのまま


「…………反応が速いな」


榴弾の放射により艦載機はバラバラになった

女性は辺りを見回すが、誰も居ない


榛名「こちらですよ?」


声が聞こえた時にはもう遅く、女性が振り返った瞬間には榛名の肘がもろに入っていた

今まで味わったことのない鈍痛によろめく女性をしり目に、榛名は主砲を向ける

そのまま、至近距離で撃つ

硝子の削れるような音が響く。砲弾が女性に着弾する前に艤装による機能により、彼女を守るための障壁が現れたからだ

だが、その障壁を貫いているのか砲弾はほんの少しずつ彼女の方へと近づいていく

148: ◆.Em5oVk1MAsD 2014/12/29(月) 04:08:16.93 ID:iiZtDLgXo

榛名「それ、先程防いだ砲弾と同じと思わない方がいいですよ」


微笑む榛名、それに対して女性は艤装が暴れることで返事をする

女性の艤装の上に乗っていた榛名は先端に位置していたため、思い切り上下されることによって投げだされる形になった

そのまま頭から噛み千切ろうと艤装が大きく口を開く

しかし、榛名にはそうしてくることが分かっていた

投げだされた時停止していた脚部艤装を再び起動する準備をし、主砲の装填が終わったことを確認する

今にも食われてしまうところで脚部艤装が起動すると、一瞬で足が水面の方へと動いた

女性の艤装の先端に足が着く。そして、脚部艤装によって驚異的な力が働き無理やり口を閉じさせた

流れるように榛名が砲を向ける。女性はようやっと先程の砲弾を弾いたところだった

左上部主砲から砲撃。それに連動するように艦載機が射線に飛び出してくる

女性は複数の艦載機を出し、それを盾にするつもりだった。だが、砲弾が当たった艦載機から弾子が放射線状に広がる

光が女性の視覚を遮り、艦載機の装甲を熔かし、核を焼きつくす。更に、発艦を行っていたと思われる一部の箇所に損害を与えた

続けざまに榛名は左下部主砲による砲撃を行う。それに対し、女性は障壁を張り続けることで対抗する

しかし、女性の思い描いた未来と違いその砲弾は障壁に食らいつき、そして障壁をじりじりと削りながら突き進んでいく


「……いつの間に砲弾を換装した?」


初めて女性の表情に変化があった。不意打ちにあったためか驚愕の色が見える


榛名「貴方のいい加減な読み方ではそうなりますよね」


そんな彼女に対して榛名は飄々とした態度で返事をした

151: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/01(木) 02:46:29.18 ID:b/cbSttRo

そのままもう一撃加えようとする榛名

女性は先程の砲弾の弾道をずらし、艤装を海の下へ沈めてそのまま距離を離そうとする

しかし、榛名の方が一枚上手だった


「!?」


がくん、と何かに引っ掛けられる感覚と共に女性はバランスを崩す

榛名の方を見ると、彼女が鎖のようなものを引いているのがちらりと見えた


榛名「貴方には何度か出しぬかれてますし、これでようやくやり返せましたね」

「……錨か?」

榛名「ええ、その通りです。これを貴方の艤装に突き刺しておきました」

「そんなものを艦娘が使っているとはな」

榛名「個人的にしっくりくるんですよ。こういう時に使えますし、明石に頼んで艤装の内部に仕込んでもらいました」

「船の真似ごとか」

榛名「深海棲艦からすればそういうことになるかもしれません、と!」


榛名が錨を女性の艤装から乱暴に抜き取りながら砲撃体制に入る


「それにしても、私はお前と初対面のはずだが。何かお前にしたか?」


女性が艦載機を発艦させ、射線を遮るように飛ばす

152: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/01(木) 02:47:43.38 ID:b/cbSttRo

榛名「ええ、確か三回ほど。かなり一方的ですが」


砲撃、それに対応する艦載機。榛名と女性の間で爆発が持続的に巻き起こる

女性は艦載機を貫きそのまま向かってくる砲弾を障壁で弾き、その中で障壁を貫く弾はギリギリのところで回避する

榛名は榛名で攻撃の合間を縫ってくる艦載機の爆撃に対して障壁で耐えながら砲撃を続ける


「フフ……酷いな。逆恨みじゃないか」

榛名「ええ、この事態を作った貴方を恨まないはずがないんです。それが、逆恨みでも」

「今回のことで恨んでいるのならまだ分かる。だが、後二回は全く分からんぞ?」

榛名「教える必要がありますか?」

「……いや、必要ない」


大きく跳躍する女性。それとともに艦載機が全滅し、女性が居たところに砲弾が通り過ぎていく


「覚えるつもりはないからな」


砲弾が通り過ぎたと同時に、女性の艤装が大きく口を開いて榛名を食わんと飛び出した


153: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/01(木) 02:49:37.25 ID:b/cbSttRo


榛名の視界がグロテスクなもので覆われる

そのまま口が閉じる前に、榛名は艤装の口元を掴み抵抗する

しかし、女性の艤装はかなりの力を持っており徐々に口が閉じていく

榛名の抵抗も空しく、身体のバランスを崩した結果、上半身が口の中に入り




榛名「『――艤装がそのまま食いちぎった』……なんて、そんな読みで私を殺せるとは思わないでください」


154: あけてしまいましたね…  ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/01(木) 02:52:32.88 ID:b/cbSttRo


ごん、と金属同士がぶつかり合ったような音が聞こえた時には、女性は自分自身の艤装に激突していた

続けざまに砲撃音。艤装に命中したのか嫌な音が響く


「今の状態で回避できる要素があるのか……」

榛名「艤装の機能を余すことなく使えばこのくらいどうとでもなります。それより、艤装は大事にした方がいいですよ?」


壊れたら、貴方を守るものが無くなりますし


そう榛名が呟くのと同じくらいのタイミングで、艤装の装甲が剥がれ落ちた

そのまま砲弾が貫通していたらしく、艤装から先ほどとは違う音が聞こえてくる

おまけと言わんばかりに、榛名はもう一度砲撃を行う

女性、及びその艤装は空中で今も動いているのだが、彼女の砲撃は先程撃ち込んだ場所に寸分違わず着弾した

艤装内部をガリガリと削り、貫いていく。おそらくこのまま女性ごと貫くのだろう

撃ち抜かれて自分が死ぬ、という未来を見て、女性は酷く驚き








「フフ……フフフ……」





嗤った







女性が落ち、水柱が出来上がる。そのまま艤装ごと沈んでいく

艤装が見えなくなったところでようやく榛名は安堵し、ため息をついた

157: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:43:18.49 ID:5oTnaPEzo

榛名「ふう……相手が全力を出す前に止めを刺すことが出来て良かった。気取られないようにするのが大変でした」

提督「おーい、もう動いて大丈夫かー?」

榛名「あ、はーい!大丈夫でーす!」






提督「ようやくと言った方がいいのか?とにかく、心臓に悪かったぞ」

榛名「あはは……こちらもかなり厳しかったです」

提督「圧倒していなかったか?」

榛名「あの人、最後の最後まで本気で相手してこなかったんですよ?油断しているうちに殺せなかったら不味かったかもしれません」

提督「お前なら相手の実力を完全に把握した上でねじ伏せたと思ったが、そこはどうなんだ?」

榛名「分かったのは、私に対して『とりあえず来たからいつも通りに殺そう』という感情と、本気でこちらに向き合って殺し合う気が無かったことくらいですね。つまり、手を抜いていることしか分かりませんでした」

提督「そんな不安定な力ではなかったはずだろう?」

榛名「……未来を予知すると言っても、今の相手の実力を基に次に想定できる攻撃全てに予測を立てて、それによって自分が、相手が、その他の環境がどうなるかを疑似的に体験する、というだけです。未知の実力分を加えるのは無理ですよ」

提督「ああ、そうだったか……規格外過ぎて穴があることに今まで気付かなかった」

榛名「まあ、相手が本来の実力を隠すのが上手かったのもあります」

提督「それで良く相手が強いと判断したな」

榛名「最初の手刀を止めた時は結構ギリギリでしたし、その時点で手を抜いていることは分かっていたんです」

提督「……ああ、なるほど。あの時、あの姫級が手を抜いている状態にも関わらず、榛名が居ても私が死ぬ未来を見たのだな」

榛名「はい。その後、直接対峙した時大きく三回ほど予測を立てましたが、そのどれもが提督が死ぬ未来がありました。全部に芋料理を突っ込んだ上で、そんな未来はお断りさせてもらいましたが」

158: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:43:59.07 ID:5oTnaPEzo

提督「そ、そうか……まあ、あの姫級は榛名が倒した。終わった以上、早く瑞鶴達と集合するとしよう」

榛名「そうですね。それに、その人を看病しないといけないですし」

提督「……榛名、こいつのことだが」

榛名「今はその人がどうこう言う以前の問題です。そういうのは彼女を入渠ドックに入れてから聞きます」

提督「…………すまない」

榛名「良いんですよ。提督がずっと気に掛けていたのは分かりますから」

榛名「気にしていたのは私もですし……」ボソ…

提督「今妙なことを言わなかったか?」

榛名「何でもないデース!」

提督「…………分かった」

榛名「…………」

提督「…………」

榛名「……ええと、その子を連れていくのは決まりですけど、何か考えがありますか?」

提督「……布を被せておく」

榛名「布を持っているんですか?この人を隠しておけるような大きさの布を」

提督「……ではどうするべきなんだ。私の荷物は全部海の藻屑だぞ」

榛名「という訳で、ポンチョを着せましょう」

提督「おい。そんな物を持っているのに何故私に聞いた?」

榛名「一応聞いた方がいいと思いまして……ポンチョの中に髪の毛隠すのが面倒ですし」

提督「はぁ……ところで、瑞鶴達にはどうやってごまかす?」

榛名「えぇと、多分顔を見せずに艦娘だと言い張ればいけます。ついでに大破していることも付け加えれば確実に入渠ドックに入れますね」

提督「……この雨を利用して艦娘と誤認させるのか」

榛名「鳳翔さんに気付かれるかは運ですけど、大丈夫でしょう」

榛名(…………雨が無くともどうにかなると思いますけどね)

159: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:44:25.03 ID:5oTnaPEzo

提督「よし、着せたぞ。早く行くとしよう」

榛名「はい!ていと――」



フフッ……勝ったと、思っているのか?……可愛いなぁ



榛名「!?」

提督「――な!?」

提督(身体が……動かないだと。それに、なんだ……この感覚は。まるで、蛇に睨まれた蛙になってしまったかのようだ)


提督が硬直した間に、榛名は未来を予知していた。しかし、それを見た榛名は驚愕した

榛名が無事なら、提督が死ぬ。もしくは、提督が無事なら、榛名が死ぬ。いくつか分岐があるが、彼女が見ることが出来る範囲にはどちらかが一方しか選択肢が無かったのだ


――――ほんの少し、ほんの数瞬気付くのが遅れた……!


その事実に自分を嫌になる榛名だったが、それでも自身の行うことは変わらない


榛名「走って!!」

提督「!」


榛名の怒声により、完全に固まっていた提督が走り出す

それと同時に、沈んだはずの女性の艦載機が海中から飛び出してくる

榛名が提督を庇うように弾幕を張るが、先程までの艦載機とは全く動きが変わっていた

一機一機が確実に榛名の選択肢を阻害し、確実に死へと導いてくるのだ

160: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:45:19.41 ID:5oTnaPEzo

爆撃を障壁で防いだ瞬間に雷撃が飛んでくる。それを脚部艤装のオンオフを切り替えて、浮こうとする力を利用し、跳躍してかわす

しかし、いくらかわしてもまた爆撃が行われ、また、下手に障壁を張ればそれを破壊して榛名に大打撃を与えられる雷撃が行われる

そして、榛名の意識が攻撃機に移っている隙だった

爆撃を防ぎ切り、障壁を解除した一瞬を狙って一機の戦闘機が榛名の右腕に噛みついてきた

本来は首を食いちぎられていたが、それには気が付いていたため実際は榛名が右腕で防いだ、と言う方が正しいが

しかし、それだけで終わらない。続けざまに艦爆と艦攻が攻撃を仕掛けてくる

噛みつかれている痛みを耐えながら、榛名はすれすれのところで避ける

が、爆発による水しぶきに紛れて、装甲がドロドロになりながらも三機が榛名に向かってきた


榛名「う……」


現状の艦載機の動きを踏まえて、改めて未来を見るが、その先の結果は変わらない。むしろ、更に追いつめられてしまうことが分かってしまう

それに、相手がこちらの行動を積極的に潰して行く様子を踏まえると、今の状況で確実に殺してくるのだろう

そこまで考えると、榛名は右腕に噛みついていた戦闘機を処理しようと


榛名「――っつぅ……!」


左腕で叩きつぶした。歯を模した装甲が右腕の肉を裂き、骨まで達するのを感じ、激痛で声が漏れ出る。が、それを気にしている時間は榛名には無かった

主砲で爆撃を行おうとする艦載機を撃ち落とし、機銃でこちらに突撃してくる艦載機の内、一機を蜂の巣にする

更に、こちらに突撃してくるニ機の内片方を副砲で撃ち抜く

しかし、榛名はこの砲撃でどちらも落とす手筈でいた。彼女からすれば、読み負けたと言う他ないだろう

後ろに退くにも、艦爆が爆撃準備を完了させている。榛名の障壁もそろそろ限界を超えて壊れてしまう以上、無理に動くことはできない

そして、46cm砲の反動を利用した移動方法も、女性に読まれている。少なくとも、この状況を打開するには先の三機を全て破壊する必要があったのだ

161: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:47:10.57 ID:5oTnaPEzo

ドロドロになりながらも榛名へ突っ込んでいた艦載機は口を開き、彼女の命を喰らおうとする

それに対して、榛名はまともに動かなくなった右腕を盾にすることで対処した

一度噛まれた時よりも、更に深く噛みつかれたらしい。グチャリ、と肉が噛み千切られ、先程噛まれて柔らかくなった部分が血と共に海面へと落下する

そして、骨が砕ける音が聞こえてきた


榛名「――――!」


飛び出そうになる悲鳴を歯を食いしばって無理やり抑える。そんな状態でも、今噛みついている艦載機の口内から爆弾と思われる物体を確認した

どんなに爆撃を上手く避けたとしても、噛みついた艦載機が離すことはない。そして、それの爆発に巻き込まれ、航行不能になるまでのダメージを受け、最悪の場合は即死する。これが女性が榛名に押しつけようとする未来だった

ただ、榛名はその程度のことで死を受け入れるほど物わかりの良い艦娘ではない

後ろから急降下してくる艦載機を見て、榛名が賭けに出る

脚部艤装の機能を停止し、全ての46cm砲で雷撃を行おうとする艦載機に向けて一斉に放つ

身体が車に轢かれたように吹き飛ぼうとする。それに対して、噛みついている艦載機が爆発に巻き込もうと全力で抵抗する

そして――――




榛名の腕がぶつりと、もげた



肉の裂ける感覚、そして遅れて激痛がやってくる。爆風に煽られ、焼けつくような痛みが右腕を襲う

しかし、爆弾が榛名に当たることはなく、そして先程まで噛みついていた艦載機は爆発に巻き込まれて海へと落ちていった

そのまま榛名は、全砲門による射撃の反動の勢いで、何回も水面を跳ねながら提督の近くまで吹き飛んだのだった

162: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:48:17.22 ID:5oTnaPEzo

提督「榛名!?」

榛名「いっ痛ぅー…………危うく死ぬところでした」

提督「!……右腕はどうした?」

榛名「死ぬ代わりにあの人にあげましたよ。死なないなら安いですし」

提督「出血は?」

榛名「先程焼かれたので多分止まってます……ととっ」


榛名が立ち上がると、目の前から女性が姿を現す


「ああ、良かった。やはり、死なないのか」

提督「……!」

「もしかしたら死んでしまうと少し不安になってしまったが、お前はそれでも死なないでいてくれるのだな」

榛名「貴方のためではありません。提督達のため……そして、榛名自身のためです」

「それにしても、だ。榛名、貴様は本当に『運』が良い」

榛名「……偶々ですよ」

「そうかそうか。貴様は、私の艦載機が連鎖して爆発したことも、空中で全く同じ箇所に砲弾が命中したことも偶々だと言いたいのか」

榛名「…………種は割れている、ということですか」

「まさか、本気の私が『運』で負けるとは思わなかったぞ。フフフ」

提督「負けたとは思えないような顔で良く言うな」

「はぁ……失せろ。今は有象無象に構っている暇などないのが分からないのか?」

提督「?…………榛名」

榛名「分かっています。貴方は、この子を狙っていたのではないのですか?」

「ああ。そうだったな」

榛名「だった?」

163: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:50:11.26 ID:5oTnaPEzo

「そいつを殺せば、私を満足させる深海棲艦が生まれるとミッドウェーは言っていた。でも、分かるでしょう?そんな不確定なことを信じるよりも、今目の前に居る私を満足させる存在が居るのなら、その相手と殺し合った方が良いと」

榛名「その、ミッドウェー……とやらのことは良いのですか?」

「ああ、あんな奴の言葉よりも私が感じたことの方が重要に決まっている」

榛名「では、提督達のことはもう狙わないのですね」

「そうだな。貴様が満足させてくれるのなら、だが」

榛名「……そうですか」

「しかし、今の状態ではまだ足りない。いや、今の貴様でも十分に私を楽しませてくれるのは確かだが……死んでしまうのが分かりきっているのはツマラナイな」

提督「何を根拠に言っているんだ……」

榛名「…………」

「恐らく、貴様の燃料と弾薬は零に等しいのだろう?」

榛名「…………」

提督「……榛名、それは本当か?」

榛名「……ええ、確かにほとんど空と言っても良いですね」

「生命力を弾薬代わりにしていながら、それでも平然としているあたり、化け物だな」

榛名「榛名は普通です」

「フフ……そうか。普通、ね」

提督「そんな状態で倒すつもりだったのか?」ヒソ…

榛名「ちょっと想定外でした。あの人の艤装を破壊すれば、死ななくとも沈んで水面に上がれなくなると踏んでいたのですが……」ヒソ…

提督「確かに、艤装はある程度壊れているが、機能しているようだぞ」ヒソ…

榛名「そうなんですよね……完全に基地型と間違えました」ヒソ…

提督「確かに、あれだけの数を出してくるのは基地と変わりないな……この状態、どうやって切り抜ける?」ヒソ…

榛名「……私に良い考えがあります」ヒソ…

164: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:52:04.03 ID:5oTnaPEzo

榛名「一つ、提案があります」

「何だ?見逃せ、とかではないだろうな」

榛名「はい。榛名達を見逃してほしいです」

提督「おい」

「……それは無理だ。貴様で満足できなくなる」

榛名「でも、今の状態では貴方が榛名を殺すのが目に見えています。それは、貴方の口癖で言う、詰まらないになると思いますよ」

「ふむ……」

榛名「本当の意味で、貴方は殺し合いがしたくありませんか?今の状況では、どんなに榛名が奮戦したところで茶番と同じです。貴方が求めたものはそんなくだらない感覚ですか?」

「…………」

榛名「万全の状態なら、貴方を殺すこともできます。だから、今は見逃した方がいいです。そうでしょう?化け物さん」

提督「榛名……無理がないか?」ヒソ…

榛名「いえ……大丈夫です」ヒソ…

「そうだな。嗚呼、それもそうだ。なら、貴様の思惑に乗ってやるとしよう」

提督「…………本当に、こいつらの考えていることは分からん」

榛名「では、数日後に会いましょう」

「場所は……」

榛名「貴方が破壊した基地の近くでいいですよね」

「……まさか、あの辺りに居たのか。妙に艦娘共が居ると思ったが、まさかこちらの動向に気付かれているとはな」

榛名「本当ならそこで深海棲艦を撃退するつもりでしたが、先に襲撃されるとは思いませんでしたよ」

「なら、話は早い。いずれ出会うのならば、気にする必要はなさそうだな」

榛名「ええ、どうせすぐに会うことになります。その時まで精々引き籠っていてください」

165: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:53:49.60 ID:5oTnaPEzo

「嗚呼、楽しみだ……」

榛名「後、二ついいですか?」

「二つか……なんだ?」

榛名「あの時、確実に貴方に止めを刺したはずですけど、あの砲撃をどうやって避けたんですか?」

「……あの時か。まさか、『運』で負けるとは思わなかったなぁ……フフフ。嗚呼、今思い出してもゾクゾクする……!」

榛名「『貴方が絶対に死ぬ』ように未来を捻じ曲げたはずです。貴方の『運』にも勝って、為す術もないと思ったのですが」

「簡単なこと。貴様の『運』はまるで針のようだったが、それなら通さなくするまで『運』を行使すればいい。ただ、それだけだ」

榛名「…………私、これでも自分がだいぶ他の艦娘と一線を画する存在だと自負していたんですけど、貴方を見るとそうは思えなくなりますね」

「なんだ?怖気づいたのか」

榛名「まさか。そのくらいで榛名は逃げません」

「フフフ……それで、もう一つは?」

榛名「貴方のその艤装……壊れたのは確認したのに、何故動くんですか」

「これか。見ての通り、私の艤装はこれが本来の状態ということ。貴様は枷を外したに過ぎない」

榛名「なら、その艤装は何なんですか。元々は、何かを基に模したものでしょうか?」

「……三つ目の質問に答えるとは言ってない」

榛名「……これはうっかりしました」

「…………貴様の迎えが来るようだな」

榛名「ええ、そうですね。さっさと消えてください」

「言われるまでもない」






―――――――――――――――

166: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/16(金) 01:55:23.00 ID:5oTnaPEzo

瑞鶴「やっと見つけ……えぇ!?なんで榛名が怪我してるの!?彩雲妖精の面白くない冗談だと思ったのに!」

彩雲妖精「冗談にもならねぇこと言うかよ!」

榛名「あははは……ちょっと色々とあったんです」

提督「そうだな。今日だけで何度死ぬかと……」

鳳翔「詳しく聞かせてもらえますか?」

提督「…………後日、改めて話す。今はこの子を急いで入渠ドックに入れなければならない」

榛名「そうでした!早くその子を運ばないといけません!酷い怪我ですし!」

鳳翔「怪我に関しては榛名もそうですよね」

瑞鶴「本人が平気そうにしてるから気にしないでおこう……」

鳳翔「肘の辺りから先が無いのにですか……」

瑞鶴「そこはもう見ないでおこうよ。それより、早く鎮守府に戻らないと。提督、背中に乗って」

提督「だが、この子は」

瑞鶴「二人くらい、ちょっと頑張ればどうにかなるから!ほらほら!」

提督「……分かった」

瑞鶴「しっかり捕まっていてね!」

榛名「怪我してるので私も瑞鶴に運んでもらいたいかなー……なんて」

瑞鶴「死んでも動きそうな人は運ぶ必要ないよね。今もピンピンしてるし」

榛名「鳳翔……の方は」

鳳翔「榛名は艤装を付けていますし、一緒に沈んでしまいそうですね」

榛名「デスヨネー……頑張ります」

170: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/18(日) 21:18:45.26 ID:O7ld7FPdo

あの時の夢の少し後なのだろうか、それとも全く別の日のことなのか……それは分からないが、私はまた空を見上げていた

けれど、何かに気付いたのか視線が海へ、そして振り返った


「誰かしら?」

「榛名です!矢をこちらに向けないでください!」

「はぁ……」

「隣、良いですか?」

「嫌ですけど」

「え?駄目なんですか」

「答える前に隣に座る人とは仲良くなれそうもないわ」

「会ってそんなに経ってないじゃないですか。これから仲良くしましょう?」


どこかで見覚えのある人が私に話しかけてくる

ああ、そうだ……私が鎮守府に入り込んだ時に声を掛けてきた人にそっくりなんだ


「貴方、本当に馴れ馴れしいわね。流石、金剛型の艤装に適性があるだけあるわ」

「そんなに褒めないでください」

「……皮肉っているのが分からないのですか」

「貴方が辛辣なことを言うのは知ってますしね。それに、とても厳しくて、訓練も死人が出かねないくらい過激だったとか」

「それがどうしたの?」

「いえ、何故そんな訓練をしているのかと。まだまだ艦娘と艤装が少なくて、出来る限り艦娘の死者は出さないよう指示が出ているのに無視するのはどうしてですか?」

「そんな配慮をして、何になるの。そんな綺麗事を言ったところで、深海棲艦とは命のやりとりになるのは変わりません」

「ただ厳しいのであれば、ここに来ることもなかったと思います。ですが、資料を見る限り、貴方のそれは訓練とは呼べませんよね」

「あの程度のことで泣きごとを言う子は、まず艦娘に向いてないわ。轟沈して深海棲艦になるくらいなら、その前に解体されるなり陸で死んだ方がマシだと思うけれど」

「練度の高い人ですら辛いというのに、練度が低い人に全く同じ内容を行うのは殺しと変わりないと思いませんよ?」

「練度が有ろうと無かろうと、深海棲艦とやり合うのなら殺しに近い訓練になるのは当たり前です」

171: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/18(日) 21:20:15.16 ID:O7ld7FPdo

…………私、なのか?なんというか、怖い


「ですが――」

「貴方、そもそもどうしてここに来たのかしら」

「……どうしてそんなことを?」

「別に良いでしょう?それに、貴方は自分のことを話さないでいるつもりかしら?」

「む……分かりました!榛名は訓練学校を出てからここに来ました。それで、一人の艦娘として深海棲艦から皆を守りたいです」

「それだけ?」

「え?」

「他に何か理由はないの?命令されたからここに来たというのですか?」

「ですから、深海棲艦から大勢の人を守りたいって」

「それは艦娘になった人間が皆抱くことです。貴方の考えは?」

「え、えぇと…………」

「何も考えてないのですね」

「そんなことは……」

「いえ、意地悪が過ぎましたね。ごめんなさい」

「…………」

「それと、一つアドバイスよ。貴方、艦娘を辞めた方がいいわ」

「は、はぁ」

「貴方みたいな学生のようなノリで生き残れるとは思えないの。だから、悪いことは言わない。うっかり死ぬ前に解体されて、陸で平穏な日常に戻ることを勧めるわ」

「そんなことは分からないじゃないですか」

「いいえ、貴方みたいな子を沢山見てきましたが、そのほとんどが死んだり、生きたまま沈んで行きました」

「…………」

「練度の高い艦娘ですら死んでいくのに、貴方のような人間が混ざったら余計に死者が増えるだけ。そして、それは私達を不利にする。私達……いえ、国を守るために艦娘になったはずなのに、寧ろこちらの足を引っ張るなんて本末転倒も良いところよ」


なんというか、何故私はこんなに榛名……という人にこんなに辛く当たるのだろうか

彼女が顔を伏せてしまった。私はそれを一瞥して一言


「だから、そんな考えなら大人しく陸に居て。邪魔です」

172: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/18(日) 21:21:30.74 ID:O7ld7FPdo

容赦のない一言。私ならへこんで、そのまま艦娘を辞めてそうだ

そんなことを考えていると、榛名が震えだした


「あら、ごめんなさいね。けれど、これは一つの事実です。泣いても変わりません」


彼女を見て、謝罪になっていない謝罪をする私

榛名は、どう思っているのだろう。泣いているのか


「ふっく……うふふふ。あっはははは!」

「……何が可笑しいのかしら?」


泣くどころか笑っていた。何故笑ったの……

その様子を見て、私は苛立ったのだろう。殺意を彼女に向ける


「いえ、すみま……くふふ……」

「…………」

「お、思ったよりもペラペラと喋るのでびっくりしました。資料にはそんなこと一切書いてなかったどころか、まともにコンタクトを取れなかったって書いてあったので……」

「貴方、ぶっ飛んでるわね。頭を医者に診てもらった方が良いわ」

「それは貴方も同じですよね?」

「言うわね。今から私の訓練でも受けてみたいのかしら」

「嫌です」

「それなら、そのうるさい口を閉じていて下さい」

「…………貴方は」

「…………」

173: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/18(日) 21:23:01.15 ID:O7ld7FPdo

あっという間に矢を取り出し、鏃を榛名の首元に突き付ける。それを見ながらも


「優しいんですね」


榛名は優しい笑みを浮かべるのだった


…………なんだろう。どこかで聞いたことがあるような

どこかでこんなやり取りをしたような……

……ああ、頭が痛い


「別に、そんなはずないわ。どうしてそう思ったのかしら?」

「何かと棘のあることを言っていましたが、詰まるところ、仲間に死んでほしくない、居なくならないでほしいってことですよね」

「何を根拠にそんなことを……」

「榛名の勘です!」

「…………そう」


毒気を抜かれたのか、ため息をつきながら矢を矢筒に戻す


「ほっ……」


そんな私を見て、榛名は安堵した

174: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/18(日) 21:23:55.43 ID:O7ld7FPdo

『―――――――』


何か、妙な声が聞こえてきた

同時に私が目覚める時間が来たのだろうか、視界が霞んでいく

そんな中でも誰かがこちらにやってくるのがなんとなく見えた


「あ、――さん達が来てますね。行きますよ!――さん!」

「……あの、引っ張らないで欲しいのだけど」

「どこに行くんですかー!あ、食堂ですか。――さん食堂ですよ!」

「聞こえているわ。黙っていてくれないかしら」


榛名に手を引かれながら誰かの元に向かう


「全く…………」


その呟きは何を意味したのだろうか

私には……余り分からない

177: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/31(土) 19:02:50.57 ID:UXGB/t3So

「――――!」


誰の声なの……。いや、それよりも私はあの後どうなったのだろう

今意識があるから、死んだ訳ではないようだが、いかんせん見覚えのない場所だ

それに、知らない……茶髪の小さい子が目の前に居る


「――――!」


寝起きだからか、何を言っているのか良く分からない

ぼんやりと、何処か遠くに居るような、そんな感覚

ようやく顔が認識できる位に視力が戻った時、彼女は何かを構えていることに気付いた

それはとてもよく切れそうな刃物で、こちらに向けて…………え?


空母棲姫「ピャア!!」


危ない危ないあぶにゃい!人は切られたら死んでしまう!

というか、年端もいかない子がそんな容赦なくこっちを切りつけないで!


「…………は?」


え、なんでそんな目でこちらを見るの?怖いんだけど


空母棲姫「取りあえず、ソレ、下ろして」


ナイフを突き付けられたら話も出来ない、当たり前だよね


「嫌だけど」


構えなおすのやめて!心臓に悪すぎる!

というか、それ持ってじりじりと部屋の端まで追いたてないでほんとに!

178: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/31(土) 19:03:40.18 ID:UXGB/t3So


空母棲姫「ソンナ物騒ナ物ヲイキナリ向ケルノハイケナイ。他人ダシ」

「…………他人?他人だと今更言うんですか。今の今まで私にとって最悪なことを思い出させてきたのに、そんなふざけたことを言うの?……ふざけんな」

空母棲姫「知ラナイ!ソンナコト知ラヌイ!」

「お前は、絶対に殺す。どこへ逃げても、地の果てまで追いかけて殺す!」


話を聞いてくれないいいぃぃぃ!

どうすればいいの!助けて誰か!私、今怖すぎて呂律がまともに回らないんだけどぉ!


「…………」


こっちに向かって駆け出してきてナイフを突き出してきたあぁぁぁ!



ズドォン!!



危ない危ない……すんでのところで、何とかかわせた……いやいやいや!ナイフが刺さった時の音じゃないだろうあれは!

ちょっとした砲撃音じゃないの!?


「……髪が、切れた……?」


茶髪の女の子が呟く。確かに、髪の毛が今ので多少切れてしまったが、そんなに驚くことだろうか

人を切るのには戸惑わないのに、髪の毛は気にする。どういうことなんだ


空母棲姫「落ちつこう落ちつこう、ナ?」

「…………落ちついてるから」


そのまま、ずずいとこちらの目の前まで近づいてくる。私よりもずっと小さいが、威圧感はその小さな体躯からは想像もできないくらい強い

飲み込まれてしまいそうな感覚に陥りながら、目と目が合う



?…………どこかで見たことがあるような目だ。記憶に関係している……のか?

179: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/31(土) 19:04:23.86 ID:UXGB/t3So

「…………」

空母棲姫「…………」

「私のこと、分かりますか?」

空母棲姫「いや。分からない。どこかデ見た気ハするから、関わりガあるかもしれないけれど……」

「…………そう、ですか」


茶髪の子はそう言って、突き刺さったナイフをその姿勢のまま引き抜く


空母棲姫「刃ハこちらニ向けないでくれ、頼むから」

「いや、抜く時にそんなことを気にしてられないですから……怖いんですか?」

空母棲姫「シヌホド怖イナ」

「……なんというか、下手に記憶があるよりも、無い方が似ているのは皮肉以外の何物でもないですね」

空母棲姫「何ノ話だ?」

「いえ、こちらの話です」


何か知っているのだろうか……それなら聞いた方が良いのかもしれない


空母棲姫「すまないガ、何か知っているのなら教えてくれ。私ハ、自分ガ誰なのかモ分からないんだ」

「…………私は、あなたを知りませんよ?」

空母棲姫「記憶ガ何とか言っていただろう?その記憶ヲ使ってわたs……いや、あいつハ何ヲしたのかヲ教えるだけデ良い。頼む」

「……………………」

180: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/31(土) 19:04:53.05 ID:UXGB/t3So

彼女は目を伏せ、押し黙ってしまう

身長差のせいでその表情は私からは一切見えなかった



『いい加減、諦めて私にそれを渡せ……!』

……私、か。そんな大層な物ではないだろう。それに、私はこれ以外全部お前に取られたんだ。これ位私が持っていても良いでしょう?

『ふふ、ふ。笑えるな。今出ているのなら、あの化け物に殺されるだけだぞ?』

お前もお笑いだな。私を捕捉した時点で取り込めるはずなのに、それを一切しないなんて。いや、出来ない、か。随分弱っているんじゃない?

『…………』

目の前の子にでも痛めつけられでもしたのか?

『……黙れ。脆弱な存在が』

そういえば、私が今いる場所、本当はお前が顕現するつもりだったのだろうが、どうやら私が出てきてしまったみたいね

そう考えると、お前も脆弱な存在の仲間入りなのかもしれないわね?

『同じだと思うな』

そうだったかもしれない。だけど、今は拮抗するぐらい私達は弱っているのが現状よ

『私こそが……私だ』

はぁ……記憶もない奴相手にそんなにむきにならないでほしいわ



「分かりました。掻い摘んで話します」


『私』が突っかかってきたのを適当にあしらっていると、茶髪の子が意を決した顔つきで話しかけてきた

良く見ると、ほんのりと目元が赤くなっている……なんとなく分かっていたが、嫌な思い出を話すよう強要したようで申し訳なくなった

181: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/31(土) 19:06:07.95 ID:UXGB/t3So

「私に見せてきた記憶……それは、あなたによく似た人が私のお姉ちゃ……姉……正確には姉妹関係ではなかったけど、そういった存在だって」

空母棲姫「……アレガ、か?」

「はい。それで、私の秘密や、良くないとこ、逆に姉の秘密とか、そういったことを全部知ってて、そして私との約束も知っていました」

空母棲姫「…………それハ凄いな」

「人ごとなんですね」

空母棲姫「私ハそんなことヲ覚えていないからな……残念ながら」

「でも、何か違うんです。あくまで、その情報を引き出したような……そう、辞書を引いて調べている印象しかなかったんです」

空母棲姫「知識ガあるだけだった、トいうことか」

「それが通じなくなったら、その知識を使って私を色々と苦しめてきました。姉はそんなことをしない、優しい人なのに」

空母棲姫「残念ながら深海棲艦ニとって、優しさハ無縁ノ物だ」

「……あなたは優しさとか、分かっているんですね」

空母棲姫「必要ないト切り捨てられたからな。少なくとも、その記憶には不都合だとか言っていた気ガする」

「あなたは……切り捨てられた存在なんですか?」

空母棲姫「恐らくそう。あいつノ話ヲ信じるのなら、だが」

「…………だからですか」


何処か納得した表情を見せた。それがどういう意味かは分からないけど


空母棲姫「…………なあ、その姉ノ艦名ハ?」








「――赤城、です」

182: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/31(土) 19:07:01.21 ID:UXGB/t3So

赤城……アカギ?


空母棲姫「…………」

「何か感じましたか」

空母棲姫「分からない。アカギ……うーん」

「……そうですか」

空母棲姫「私ノ記憶ニ関係ガない……ん?君ハなんでそういうことヲ聞いた?」

「…………嫌でも分かりますよ。あれも、あなたですよね」

空母棲姫「隠したつもりだったが、ばれてしまったか」

「え、あれで隠したつもりだったんですか?」

空母棲姫「ハ?…………嘘デショ」

「あははは……そういえば、私を見た時に見覚えがあるって言ってましたよね」

空母棲姫「ア、ああ」

「――雪風」

空母棲姫「?」

雪風「私の艦名です」

空母棲姫「ユキ、カゼ」

雪風「はい、雪風です」


雪風と聞いた私はあの時の記憶が浮かび上がってきた。あの化け物に襲われる前に蘇った記憶だ

誰かが私をおねえちゃん、と呼んでいた、あの記憶

183: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/01/31(土) 19:08:17.28 ID:UXGB/t3So

空母棲姫「…………」

雪風「……何か感じました?」

空母棲姫「……私ハ誰なんだろうな」

雪風「?」

空母棲姫「君ガ……雪風ガ言うに、私ハ『アカギ』トいうことニなる。けれど、私自身ハそんな実感ガ沸かないのよ」

雪風「…………」

空母棲姫「名前ヲ知れば、全てヲ思い出すト思ったのに、恐らく間違いない名前ヲ聞いてもなにも分からない。なら、本当ニ誰なんだろう。そう思ってしまう」

雪風「……私から見たら、十分に似ているし、本人だと感じたよ」

空母棲姫「『お姉ちゃん』にか?」

雪風「…………うん」

空母棲姫「……そう言われるト、少し救われる気ガする。ありがとう」

雪風「でも、お姉ちゃんもちょっとドジなところがあったけど、取り繕うのはここまで下手じゃなかったかな……」

空母棲姫「…………エェー」









――――――――――――

――――――――

―――――



186: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/02/12(木) 08:37:47.47 ID:9+g9yqyKo

榛名「ラララランランラン~フーフーフフーフーフー……」

空母棲姫「ブハァ!」

榛名「あ、起きましたね。調子は如何ですか?」

空母棲姫「こ、ここハどこだ?」

榛名「入渠ドックですよ。怪我が酷かったので、とりあえずここに連れてきたんです」

空母棲姫「誰かト思ったら、あの時ノ新人……か」

榛名「はい!数日ぶりです!」

空母棲姫「ここガ入渠ドックということハお前モどこか負傷したのか?」

榛名「ええ、そうですね」

空母棲姫「…………なあ、榛名」

榛名「……えっと、何故私の名前を?」

空母棲姫「夢ノ中デ、私ハお前ノことヲ榛名ト呼んでいた。それだけだ」

榛名「は、はあ。そうですか」

空母棲姫「話ヲ戻そう。負傷したトいうが、それハどこ?」

榛名「鎮守府の見回りでちょっとヘマしまして……艦娘である私が怪我人だったのは幸いでした」

空母棲姫「あいつハどうしたんだ?」

榛名「あいつとは?」

空母棲姫「余りくどいト友達ヲ無くすぞ。しらばっくれるな」

榛名「…………そうですね、失礼しました。貴方に良く似た方ですよね?」

空母棲姫「ああ、あの化け物ハどうした?」

榛名「追い返しましたよ?」

空母棲姫「…………ということハ、ここハ天国カ。はぁ、私ガ誰か分かる前ニ死んでしまったなんて……」

榛名「まあ、修復中は天国かと思えるくらいリフレッシュ出来ますよね。それでですね……」

空母棲姫「死んでいるのなら、記憶ノ一つヤ二つ、返してほしいのだけれど。神様ハ案外ケチね」

榛名「貴方があの方に狙われることはなくなりました」

187: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/02/12(木) 08:39:14.33 ID:9+g9yqyKo

空母棲姫「フフ……死んでいれば狙われようガ無いでしょう。何故お前ガそんなことヲ言うのかハ知らないが、私ヲ笑わせないでほしいわ」

榛名「あの、真面目に話を聞いてくれませんか」

空母棲姫「真面目ニ聞ける訳ないでしょう!あんなやつヲ追い返せる奴ガいるとは思えないのよ!」

榛名「そうは言っても……あ」



ベリベリベリッ!!



榛名「型を外すのが遅れましたか……やっぱり高速修復材を入れると、この辺りの間隔が読みにくいです」

空母棲姫「何ヲしている……皮膚ガベロンベロンニ剥がれて筋ガ見えているぞ……」

榛名「あぁと、ごめんなさい。型を取っていたんですよ」サッ

空母棲姫「どういうこと?」

榛名「右腕が千切れ飛んでしまったので。入渠ドックで治すのは良いんですけど――」

空母棲姫「その前ニ、何故右腕ガ無くなった?」

榛名「……あの化け物さんと対峙した時に少々死に掛けまして。その時の代償、と言えば良いでしょうか。やはり、貴方達を守りながらだと辛いものがありますね」

空母棲姫「アイツト戦ってその程度デ済んだのか!?」

榛名「ええ、どうにかしないと死んでましたし」

空母棲姫「どういうことだ……まさか、本当ニ追い返したの!?」

榛名「だから、そう言ったじゃないですか」

空母棲姫「もしそうだったトして、何故私ガここニ居る……文句ヲ言いながらも指示ニ従うはずだったのに」

榛名「その指示に従う意味がなくなったんですよ。私、榛名と戦って」

空母棲姫「…………ハァ?」

榛名「こう見えて、結構強い方です!……なんて。話を戻しますね」

空母棲姫「エ、ええ。お願いするわ」

188: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/02/12(木) 08:40:14.25 ID:9+g9yqyKo

榛名「治すのは良いんですけど、何もなしに右腕を以前のように治そうとするとそれはもう酷いことになるんです。腕の大きさが不自然になったり、指が足りないくらいはまだマシな方で、酷い時にはあらぬ方向に曲がったり、血管が皮膚の上に飛び出たりと笑えないことになります」

空母棲姫「それヲ防ぐためノ物か」

榛名「そういうことです。まあ、血管やら神経やらは妖精に手伝ってもらわないと元通りになるか怪しいですけど」

空母棲姫「…………その型ヲ外したトいうことハ、治ったのか?」

榛名「一応のところはそうなりますね。本当は神経がちゃんと指のつま先まであるか妖精に見てもらう必要があるのですが…………」


妖精「ふひぃー、疲れました。入渠ドック担当なのに、どうして他の部署の仕事をしないといけないんですかー……しかも力仕事」ダルーン…


榛名「こういうことなので、自分で見ています」

空母棲姫「あいつハ……あの時ノ妖精か」

榛名「見つかったのがあの子で良かったですね。深海棲艦をまともに知ってる妖精に見つかっていたら榛名と会う前に死んでいましたよ」

空母棲姫「お前ガけしかけた訳ではないのか?」

榛名「あの時はツヴァイちゃんのところに行ってましたから。初めて会ったのはあの時です」

空母棲姫「たしか、私ガマントヲ取りニ行った場所カ」

榛名「その前に会っていたじゃないですか。正確には目と目が合った、ですけど」

空母棲姫「そんなことハなかったはず……」

榛名「ドックのクレーンで私がクレーン分を摂取していた時に、泳いでいましたよね。あの時がっつり目が合いましたよ」

空母棲姫「エ……アア!そういえば誰かニ見られた感覚ガしたわ!って、なんであんなところニいたのよ!」

榛名「あそこは榛名の特等席ですから!眺めも良いですよ?」

空母棲姫「ソウイウコトジャナイ!」

189: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/02/12(木) 08:42:16.09 ID:9+g9yqyKo

榛名「まあ、好きだからあそこに居たので、特に深い意味はないです」

空母棲姫「……釈然トしないな」

榛名「そう言われても、事実ですから」

空母棲姫「変な奴だ、お前ハ」

榛名「良く言われます」

空母棲姫「あの時点デ気付いたのなら、私ヲ始末すべきだ。なのにそれヲせず、それどころか私ヲ鎮守府ニ招き入れるなんて……おかしいトしか言えないわ」

榛名「私がおかしいのは別にいいですけど、貴方も十分に不思議ですよ」

空母棲姫「…………どういうこと?」

榛名「貴方と目が合うまで、私も貴方の存在に気付かなかったんです。本来なら、誰もが気付くはずの位置に居たはずなのに」

空母棲姫「……フフッ、どうやら私ノ方ガ一枚上手だったようだな。深海棲艦ヲ見つけられないなんて、慢心したら駄目だということね」

榛名「…………そうですね。普通の深海棲艦だったら、そういうことになります」

空母棲姫「……エ?エエ?」

榛名「貴方は、なんといいますか……臭いがしない。深海棲艦だという感じがしません。勿論、姫級はその辺りの隠蔽がすごく上手ですよ?ですが、貴方はそういう次元ではないんです。まるで……」

空母棲姫「……艦娘みたい、か?」

榛名「…………」

空母棲姫「それなら、余計ニ私ヲ殺すべきだった。もしも、私ガ鎮守府ヲ破壊するつもりだったら――――」

榛名「貴方がそんなことをするはずないです!絶対に!」

空母棲姫「!?」

榛名「――あっ……ごめんなさい。突然叫んでしまって」

空母棲姫「…………知っているのか」

榛名「いえ、榛名は――」

空母棲姫「だからあの時ニあんなことヲ聞いたのか……?」

榛名「…………」

空母棲姫「教えろ。私ハ誰なんだ」

榛名「…………」

空母棲姫「言え。知っているんだろう?」

190: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/02/12(木) 08:43:17.50 ID:9+g9yqyKo

榛名「分かりません」

空母棲姫「嘘でしょう?」

榛名「分からないんですよ。本当に」

空母棲姫「なら、何故あんなことヲ聞いた?どのくらい前かは全く分からないガ、あの時ノ質問ト似たようなことヲ私トお前ハやり取りしたのだろう?」

榛名「それでも、私には分かりません。いえ、それのせいで逆に分からなくなったのかもしれません」

空母棲姫「どういうことだ?」

榛名「私だって分からないことは沢山あるってことです。だから、貴方が見つけてください。私ではどうあがいても憶測の域を出ないですから」

空母棲姫「……答えニなっていないぞ」

榛名「口で説明しにくいのですよ。きっと、まともな方法でこうなった訳ではないのでしょうけど」

空母棲姫「はぁ…………」

榛名「力になれず、申し訳ありません」

空母棲姫「……いや、私モ少し短気だった。名前ヲ教えてもらったところで、私ノ記憶ガ戻る保証ハなかったしな」

榛名「そうなのですか」

空母棲姫「…………そういえば、私ハずっとここニ居たのか?雪風……ニ会ったのだけれど」

榛名「えぇと、どうやってMI方面を往復するのですか?」

空母棲姫「……雪風ノ方ハ置いといて。ずっと居たのかどうか教えてくれ」

榛名「さ、さあ。少し寝てたので分かりません」

空母棲姫「……そうか」

榛名「何故そのようなことを?」

空母棲姫「特ニ意味ハない。昔ノ夢でも見てたんだろう」

榛名「…………」

191: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/02/12(木) 08:45:50.02 ID:9+g9yqyKo

空母棲姫「もう上がっていいか?服ヲ着たまま風呂ニ浸かるのは余り好きではないんだが」

榛名「あぁと、少し待ってください!」

空母棲姫「なんだ?」



ザバァ…



榛名「ん……腕は回る。右手も動くし、出血もない。握力は…………」

空母棲姫「そういった確認程度なら、私ガ先ニ上がっても良いでしょう?」

榛名「高速修復材に浸かりすぎても良いことないですから。それに、刃物を振り回したりするので」

空母棲姫「モウ少シオ風呂ニ入リタクナッタナー。アー、良イ湯ダー」

榛名「…………は、はぁ」

空母棲姫「サア、早クソレヲ振リ回スノヲ終エルンダ」

榛名「分かりました」



ヒュンヒュン ブン ブン



榛名「貴方は……あとどのくらいの時間が有りますか?」

空母棲姫「今ハ何時だ?」

榛名「19時、でしょうか」

空母棲姫「…………もう一日持つか怪しい所だな。奴らノ言葉ヲ信じるのなら、だけど」

榛名「奴らとは、あの女性だけではないということですか?」

空母棲姫「あの化け物ハ勘定ニ入るかは怪しい所だな」

榛名「では、他にいるんですね」

空母棲姫「……確か、ミッドウェー。後…………」

榛名「後?」

空母棲姫「戦艦棲姫トミッドウェーハ呼んでいたか。でかい怪物ヲ携えた、黒髪ノ奴だ」

192: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/02/12(木) 08:47:55.94 ID:9+g9yqyKo

ガァン!!



空母棲姫「ひっ…………イキナリドウシタンダ!?」

榛名「!……すみません、すっぽ抜けました」

空母棲姫「危ナイカラヤメテ」

榛名「…………」

空母棲姫「……何度か艦娘ト戦ったト聞いたが、知っているのか?」

榛名「……ええ、そうですね」

空母棲姫「後その刀ハ刃引き位しておいてくれ」

榛名「あはは……刃はちゃんと潰していますよ。よいしょっと」

空母棲姫「ふう…………じゃあ、上がるトするか」



ザバァ…



榛名「……ほんと、どちらなんでしょうね」ボソ…

空母棲姫「?」

榛名「とうっ!」

空母棲姫「ぐぅ……止めろ!」

榛名「抱きついても良いじゃないですか」

空母棲姫「いきなり抱きつかれても困る――」

榛名「もしも、貴方が私の考えている人ではなかったとして、それでも私は貴方がここに来てくれたこと……とても感謝しています」ボソ…

空母棲姫「ハ?」

榛名「きっと、貴方と会うのはこれで最後になると思うので、一つだけ」ボソ…

空母棲姫「オ、おい」

榛名「空母寮一階の一番奥の部屋……恐らく提督は物置とか言って避けると思いますが、そこに入ってみてください。何か思い出す鍵があるかもしれません」ボソ…

空母棲姫「…………」

榛名「…………」

空母棲姫「……分かった」

193: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/02/12(木) 08:50:14.46 ID:9+g9yqyKo

榛名「…………」

空母棲姫「ナ、なあ。いい加減離してくれないか」

榛名「嫌です」

空母棲姫「恥ずかしいのだけれど」

榛名「嫌でーす」

空母棲姫「そうハ言うが……」

提督「榛名……お前は何をやっているんだ」

榛名「いきなり入ってくるなんて……提督の●●●」

提督「別に風呂に入っていた訳ではないだろう」

榛名「ヘン  」

提督「おい」

榛名「えーと、えーと……」

空母棲姫「漫才か?」

提督「そのつもりはないのだが……」

榛名「濡れてるところを見て興奮したいんですよね!」

提督「もう乾いているだろう……お湯とは違うんだぞ」

榛名「じゃあ、私達がスケスケになっているところを妄想しているんです!」

提督「どうしてそうなる。意味があるのか?」

榛名「なんで興奮してくれないんですか!」

提督「どうして興奮できると思っているんだ」

空母棲姫「お前ら漫才するのヤメロ」

榛名「漫才ではありません!」

提督「だから漫才はしていない」

空母棲姫「…………頭ガ痛くなってきた。それニ、なんとなくイラつくわ」

202: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/03/19(木) 14:21:40.42 ID:1/CO6+XZo

     ――――――執務室――――――



鳳翔「…………そんなことがあったのですか」

提督「その時に一緒に居たのが彼女だ。彼女が居なければ、私は死んでいた可能性もあった」

空母棲姫「…………」

鳳翔「そうですか……」

空母棲姫「…………」

鳳翔「少し、気になることが」

提督「なんだ?」

鳳翔「何故、あの方は一言も喋らないのですか?それに、顔を隠しているのはどうしてでしょうか」

提督「どうやら、そういったことに不得手らしい。それに、彼女は訳ありのようでな……むやみに姿を晒すと私達の不利益に繋がる、と言えば納得してもらえるか?」

鳳翔「ですが……」

提督「……鳳翔らしくないな。どうしたんだ?」

鳳翔「!…………すみません。ですが、初めて会ったとは思えなくて……」

提督「そうなのか」

鳳翔「はい。それに、確認しなければならない衝動に駆られるんです。どうしようもなく」

提督「……そうか」

鳳翔「……少し、夜間訓練を行ってきます」

提督「流石に休んでくれないか?」

鳳翔「問答無用で撃ち抜いて確認しても良いなら休みますよ」

提督「抑えることはできないのか?」

鳳翔「無理です」

提督「…………分かった。余りやりすぎないでくれ」

鳳翔「善処しますね」

提督「では――」

空母棲姫「すまない」

鳳翔「!」

提督「…………」

空母棲姫「訓練、見せてもらっても良いか?」

鳳翔「……構いませんが、色々と物騒な物が飛んでくるかもしれませんよ?」

空母棲姫「どうにかなる……多分、恐らく、きっと」

鳳翔「…………では、準備してきますので失礼します」

提督「ああ、分かった」

203: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/03/19(木) 14:23:08.80 ID:1/CO6+XZo

バタン



提督「…………」

空母棲姫「…………」

提督「……どうして鳳翔の訓練を見たいなんて言った?」

空母棲姫「……時間ガ無いト言ったことヲ覚えているか?」

提督「あぁ、言っていたな」

空母棲姫「つまりハそういうことよ」

提督「他には無いのか?」

空母棲姫「……強いて言うなら、彼女ガ私ヲ初めて会った気ガしないト言ったことガ気ニなった」

提督「……あれは鳳翔の気のせいだろう。余り深く考えるな」

空母棲姫「私モ鳳翔ト同じような気持ちヲ抱いた。お前ノようニ気ノせいには出来ない」

提督「…………」

空母棲姫「悪いな。私ハ、自分ガ何者なのか知りたい。だから、どんな可能性でも思い出せるのならそれニ懸けたいの」

提督「……分かった。私も付いていく」

空母棲姫「……てい!」

提督「!?」

空母棲姫「そんな不安な顔ヲするな。私ガそんなニ不安か?」

提督「…………」

204: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/03/19(木) 14:24:19.79 ID:1/CO6+XZo

『…………はぁ』

『ていっ』

『んあ!?』

『ぷっ!ふふふ……デコピンでそんな声出さないで下さい』

『そうは言うがな……』

『不安ですか?』

『…………ああ。何せ、偵察として艦隊を指揮しなければならないからな。しかも、ここに所属している艦娘を処理するためか知らないが、私達はほぼ捨て駒みたいな扱いだ』

『偵察自体、死亡率が高いですから、提督が不安になるのも分かります』

『一人、二人の轟沈、それに自分が死ぬことも覚悟しておくか……』

『……ていっ!』

『!?』

『私では……いえ、私達が一緒では不安ですか?』

『い、いや』

『だったら、そんな後ろ暗いことではなくもっと明るく行くべきです。全員で必ず生還する、とか』

『そう言ってもなぁ……』

『そんな不安な顔しないでください。私達は必ず生きて帰ってくるんです!』

『気持ちで負けていたら、生き残れない。だから、その……』



『ああくそ!分かった!全員で生きてここに戻って来よう!これでいいか!?』




空母棲姫「どうした?」

提督「……そうだな、お前は何をしでかすか分からないから不安だ」

空母棲姫「ムッ!ソンナコトナイ!」

提督「ポンコツなのは確実だからな」

空母棲姫「グヌヌヌ……」

提督「さて、私達も訓練場に向かうとするか」

205: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/03/19(木) 14:25:09.54 ID:1/CO6+XZo

提督「そういえば、榛名に何かしたのか?」

空母棲姫「いや。何故そんなことヲ聞く?」

提督「あいつが出る前に少しな……ああいったことをするのは久しぶりだ」

空母棲姫「何故伏せた?言えないことヲしたノ?ネエ?」

提督「……まあ、少なくとも言おうとは思わないことではあるな。ただ、如何わしいことではない」

空母棲姫「てっきりそういうことヲしているト思ったのだけれど。していても別ニ良いト思うぞ」

提督「もししていたら?」

空母棲姫「ムカつくからヤメロ」

提督「さっきと言っていることが矛盾していないか?」

空母棲姫「…………ソ、ソンナコトナイヨ」

提督「嘘をつくな」

空母棲姫「……グヌヌ」

提督「ぐぬぬ、ではないだろうに……」

空母棲姫「……アッ、そういえばあの時ノ話なんだが」

提督「はぁ……いつの話だ」

空母棲姫「榛名トお前ガ私ヲ入渠ドックデ待っているようニ言ってくる前ニ教えたことよ」

提督「ああ……お前がドックから出たいと駄々をこねて榛名に引きずられたあの時の少し前か」

空母棲姫「嫌な覚え方スルナ!それニ榛名ガ筋ノ通らないことヲ言って無理やり引きずっただけだ!」

提督「お前が一緒に付いてくる時に言ったことの方が筋が通っていないと思うぞ?雲がお菓子みたいになっているかもしれない、とか」

空母棲姫「時間ガ無いト言った!」

提督「それに関しては榛名が言っただろう。急がば回れ、と。色々見るには流石にもう暗い。それに、明日ある祭りのために町の方も今はどこも休みだ。榛名以外の艦娘に見つかるのもあの時点では避けたかった」

空母棲姫「ムムムムー……!」

提督「そんな怖い顔するな。美人が台無しだ」

空母棲姫「……私ハ美人なのか?」

提督「その部類だと思うぞ。まあ、残念美人だが」

空母棲姫「お前褒めたいのか貶したいのかどっちかニシロ!」

提督「ふっ……」

空母棲姫「!」

提督「……どうした?」

空母棲姫「…………いや、ナンデモナイ」

空母棲姫(……懐かしい、笑顔……?でも、何かが違う……どうして)

206: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/03/19(木) 14:26:57.51 ID:1/CO6+XZo

提督「それで、その時に話した内容がどうかしたのか?」

空母棲姫「ん。あの時、私ハ本当ノことヲ言った。そして、お前達ハ信じた。だから私ハ嘘ヲついてない!」

提督「……そうか。ああ、そこを右に曲がるぞ」

空母棲姫「ふふん。またまた私ノ勝ちだな」

提督「確か、あの時居たお前に似た女性は、お前の身体を基に構成された存在……という話だったよな」

空母棲姫「そう。アレハどうやら自分を象るのに手間取っていて、私ガ来るまでハその存在ハだいぶ脆かった。その時ノ私ハ力が強かったらしく、私ノ姿なら存在ガ安定することヲアレハ確信したっと」

提督「そして、見た目に関してはある程度似るという結果になったと。艤装の本来の姿をわざわざ隠す意図ははっきりとは分からないが、あの女性についてはそういうことだったか」

空母棲姫「そうね。私ノ勝利ガ確実デ、気分ガ高揚してくるわ」

提督「内容自体は信憑性が高い気がするが、それはお前が直接見た訳じゃなく他の深海棲艦だと言っていたな?」

空母棲姫「そうね」

提督「そうなると、お前が嘘をついていなくともその深海棲艦に内容を歪められる可能性があるのだが」

空母棲姫「ふっ……甘い。間宮羊羹より甘くないけど甘いわね。私ハ納得している!だからさっきモ嘘ヲついていない!」

提督「客観的に見たらそれは意味がないぞ。それに、この話で嘘をついていないからといって先程のことが嘘だとは限らないだろう?」

空母棲姫「……」

提督「甘いのはお前の頭の中だったな」

空母棲姫「…………フ、フフフ……」

提督「どうした?」

空母棲姫「私ハ深く傷付いた。お詫びノ間宮羊羹ヲ食べなければこの傷ハ治りそうもない」

提督「正論を言ったまでだが。それに、先程のことは嘘をつこうとそこが問題ではなかったはずだ」

空母棲姫「ウルサイ!この怒りハ間宮羊羹でしか収まるところヲ知らない!」

提督「やけ食いする気か馬鹿」

空母棲姫「バカって言う方がバカなのよバーカ!」

提督「自分にも返ってくるテンプレをどうも。あと少しで着くぞ」

空母棲姫「バカ!アホ!ケチ!ドケチ!間宮アイスモ食べさせろ!」

207: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/03/19(木) 14:31:11.39 ID:1/CO6+XZo

提督「おいふざけるな!アイスまで要求するか普通!」

空母棲姫「船デ堪能した分じゃ満足できない!」

提督「十分私の甘味を食い荒らしただろうが!」

空母棲姫「提督なんて職業ニ就いているならこの位ハ大したことないでしょう!?」

提督「金に余裕があったところで甘味の供給量には限度がある!横須賀鎮守府に区分されてはいるが、ここは島だぞ!」

空母棲姫「そういってもこの周辺海域にはイ級すら存在しない位浄化されている!なら大丈夫じゃないの!」

提督「おあいにくさま、作戦海域を優先している以上はこちらにはほとんど回ってこない!何よりも――――」

瑞鶴「はい、そこで大声で喧嘩するのストーップ」



パシッパシッ



空母棲姫「ニャッ!?」

瑞鶴「ほら、あの人が二人に向かって射ってきた」

提督「…………すまない、瑞鶴」

瑞鶴「うわー、これ紙を丸めてたのか。先端よくこんなに尖らせたなぁ。なんだかんだ言って鳳翔も二人を待ってたのかな」

空母棲姫「ヨ、よく掴んだわね。今の」

瑞鶴「紙媒体にしては早いと思うよ?普通に掴めるけど。あ、矢羽は間宮券だ。はい」

空母棲姫「ア、ありがとう」

提督「今までの会話、全部聞こえていたのか?」

瑞鶴「まさか。大声で二人が叫び出した内容しか聞こえてないよ。鳳翔は集中してたし、私は龍鳳に睨まれててそれどころじゃなかったし」

提督「そ、そうか……」

瑞鶴「あ、私からも間宮券を渡しておくね。これで甘味を食べるがいー」

空母棲姫「……いいのか?」

瑞鶴「私あんま甘味に良い思い出ないし……それなら美味しく食べてくれる人にあげた方がいいと思って、ね」

空母棲姫「やった」グッ!

208: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/03/19(木) 14:33:03.94 ID:1/CO6+XZo

提督「良いのか?今月分の甘味だろう?」

瑞鶴「提督みたいに甘味は食べれないからね。それに、私のストックを消化してくれるなら助かるって間宮も言ってたし」

提督「なら、鳳翔のは?」

瑞鶴「あの人は『間宮間宮五月蠅い。これあげるからさっさと黙ってこっちに向かえ』って意味で括りつけたんじゃないかな?」

提督「……怒っているのか」

瑞鶴「怒っていないけど、怒らせたいなら騒げばいくらでも怒ってくれるよ」

提督「なるほど。案外怒っていないところか」

瑞鶴「たぶんねー」

空母棲姫「これデ間宮羊羹と間宮アイスが4つずつ……エヘヘ」

提督「おい、行くぞ」

空母棲姫「…………今ノ聞いたか?」

提督「何か聞いたか?」

瑞鶴「私の記憶には何もないかな」

提督「そういうわけで、私達は何も聞いていない」

瑞鶴「そうそう。えへへ……ってかわいい声は聞こえなかったし聞いてないよ」

空母棲姫「……聞いているじゃない」

瑞鶴「はいはい行こうねー」

空母棲姫「ムー……」

209: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/03/19(木) 14:34:31.02 ID:1/CO6+XZo

鳳翔「…………」



ストンッ!



空母棲姫「…………」

瑞鶴「連れてきたよ」

提督「……中々喋りにくい雰囲気だな」

鳳翔「…………あまり大声で喧嘩しない方が良いと思いますよ。余計なことを聞かれても黙っているような文化はここには無いのですから」

空母棲姫「……弓道か?」

瑞鶴「ぷっ、あはははは!弓道かぁー」

鳳翔「瑞鶴、笑うことはないでしょう。実際、弓道の射法八節等に則って射っていたのですから」

瑞鶴「ごめんって。その辺り全然知らないし」

鳳翔「貴方の場合は覚えるつもりが無い、ですよね」

瑞鶴「うん、そうだね」パシッ!

空母棲姫「!?」

瑞鶴「サラッと人に向けて射ってこないでよ。この人びっくりしてるじゃん」

鳳翔「それならもう少し真面目に取り合って下さい。その態度のせいで何度もいざこざが起きたのをもう忘れましたか?」

瑞鶴「う……分かってますーぷっぷくぷー」

鳳翔「…………」

提督「こんな時に喧嘩はするなよ。間違いなく私達も巻き込まれる」

鳳翔「…………」プクー

空母棲姫「いつもノことか?」

提督「一応頻度は低いとフォローは入れておく」

空母棲姫「フォローニなってないのだけれど……」

瑞鶴「もう二人居た時はもっと酷かったよ」

空母棲姫「……オゥ」

210: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/03/19(木) 14:35:45.66 ID:1/CO6+XZo

鳳翔「瑞鶴……それは」

瑞鶴「分かってるって。つい口に出しちゃっただけだから」

鳳翔「……それなら良いですけど」

空母棲姫「…………その二人について、教えてくれないか?」

鳳翔「…………」

提督「…………」

空母棲姫「ド、どうしてこっちヲ睨む?無理なのか?」

瑞鶴「うん、無理だからだよ」

空母棲姫「どうし」

瑞鶴「それ以上詮索しない方が良いよ。大人しく訓練を見ていて、ね?」

空母棲姫「ワ、ワカッタヨー」

提督「……はぁ」

鳳翔「…………では瑞鶴、本格的に訓練をしましょう」

瑞鶴「はいはい」

213: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/04/20(月) 05:01:51.10 ID:IYbEzZNio

訓練場はさほど大きくなく、集団で何かを行うには不便な面が目立つ。また、構造が弓道場に類似して造られていた。そのため、ほぼ空母の練習場所と化している


瑞鶴「私が勝ったら間宮で奢ってね」

鳳翔「提督達が見ているのにそういう賭けごとは無しにしましょう」


艤装を装着しながらそんな話をする二人。その内容を聞いたのか、龍鳳が「鳳翔先輩に賭けまーす」と言いだし、誰と懸けるのやら、と鳳翔は呆れる他なかった

鳳翔からすれば、顔を頑なに見せない女性がどういう存在かを自分なりに知る方が重要なのだ

彼女を見るたびに妙な感覚が襲う。それが、居なくなった彼女達の幻想を追っているようでならなくて、自分でも分かる位に焦っている

死人と出会ったみたいだ

それを、瑞鶴は察しており、また鳳翔もそのことは分かっている


空母棲姫「あの二人ハ足ニ艤装ヲ付けないのか?」

提督「空母の馬力で動かれるとここが泥まみれになる。第一、水は張ってあるが、水位は無いに等しいぞ」

空母棲姫「……すぐ下ニ土ガある。ここハどういう意図デ作られたんだ」


空母棲姫が手を入れ、肘に届かない辺りまで突っ込んだところで引き上げながら提督に投げ掛ける

提督は、この鎮守府設立時には艦娘がここまで送られてくることは無いはずだったからだと答えた

当時は駆逐艦が二人、それ以降は軽巡洋艦が一人来れば十分と話が付けられていた

自分も適性を買われ、この地位に祭り上げられるように就いたがそれ以上の戦力は上層部の目の敵にされるだけと判断し、その結論に納得していた

この一帯の海域はある程度の浄化がされており、よほどのことがない限り駆逐艦で対処できない深海棲艦は現れないだろうと予測が立てられていたのも納得した要因の一つだった

そこまで話して一つため息を吐く。空母棲姫が何か引っかかると思案していると、提督は話を続けた


提督「少なくとも、今のように空母の訓練のような用途ではなかったな。それに、資源は深海棲艦が現れた時、輸送艦の護衛以外の使用を控えておかなければならなかった。それほど資源が回ってこなかったということだ」

空母棲姫「それガこの訓練場か……」

提督「ああ。時化ればどうしても動きが鈍くなる。低予算でそれを再現し、また、どんな不安定な状態でも一定の実力を発揮するために、こんな奇妙な施設が造られた」

空母棲姫「…………意味ハあまりなさそうだな」

提督「そうだな。結局、波にのまれる感覚とは違った感じだとか二人は言っていた。だからと言って全く意味のない物でもなかったが」

空母棲姫「そうか……二人?」

提督「電と夕立。あいつらは……まあいいだろう。関係のないことだ」

214: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/04/20(月) 05:02:26.46 ID:IYbEzZNio

電と夕立――そう聞いた時、空母棲姫の脳裏にはある光景が浮かんだ

茶髪の子と金髪の子が笑いながら、雪風はほんの少し頬を膨らましながら何かを食べている

多分、茶髪の子が電で、金髪の子が夕立なのだろう。彼女はなんとなくそう思った

彼女達を見ていると榛名が空母棲姫の隣に座り、瑞鶴が反対に座る

榛名が甘そうな何かを食べながら空母棲姫に話しかける。ただ、話していることが分かっただけで、何を話しているのかは彼女には全く分からなかった

瑞鶴は空母棲姫を見ながらけらけらと笑っている

空母棲姫はそんな彼女達を見て笑いながらも、イラついていた




空母棲姫「なあ……」

瑞鶴「――ふっ!」

鳳翔「――!」


この記憶がどこか不自然な気がした彼女は、提督に二人のことを聞こうとする。しかし、気がついた時には鳳翔と瑞鶴が訓練を始めていた

どちらも矢を放っては激しく動き、矢はどちらが先に射ってもある距離で矢がぶつかり合い落ちる

非常に動きにくく、滑りやすいはずだが、二人はそれを感じさせずに動いていた


空母棲姫「…………」


こうなってしまうと下手に提督とは話をしない方が良い。なんとなくそう思った彼女は一旦先程の光景のことは置いて、二人の訓練を見ることにした

なにより、自分は鳳翔の訓練を見たいと心から思い、言ったのだ。ここで目の前の記憶だけに囚われて他の思いだせる何かを逃す訳にはいかない

215: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/04/20(月) 05:04:18.79 ID:IYbEzZNio


瑞鶴「なんかいつもより遅くない?」

鳳翔「貴方こそ、いつもより雑な動きが多いですよ?」


ステップを踏み、撃ちあいながら徐々に距離を縮めていく二人は、まるで世間話をするかのように指摘しあっている

傍から見ればそんなことは一切感じないが、どうやらこの二人にとっては随分違うようだ

そして二人の距離が殴り合える位置に来たところで、火花が散った


瑞鶴「さっき、鳳翔は弓道っぽいことしてたけどさ」

鳳翔「それがどうしましたか」

瑞鶴「私達が弓道と同じことをしてたらとっくに死んでるよね」

鳳翔「そうです、ね」

瑞鶴「こういうことが、日常的に起こるし」

鳳翔「悠長に構える余裕も、ないですしね」

瑞鶴「弓道と同じだ、とか言ったら、逆に弓道に失礼かな」

鳳翔「だからと言って、笑い飛ばすのはないです」

瑞鶴「うぇ……まだ怒ってる」

鳳翔「当たり前です」

瑞鶴「……おかんだ」

鳳翔「はいはい」


何度も火花が散り、その度に一歩踏み込んでは下がるを二人は繰り返す

そんな状況ですら、二人は平然と話をしている

216: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/04/20(月) 05:05:37.89 ID:IYbEzZNio

提督「いつも通りだが、火花以外はまともに見えたものではないな」

空母棲姫「…………」


先程から見えている火花の原因は単純で、二人が弓と矢を使って切り合いに近いことをしているからである

空母棲姫も提督と同様に火花以外見えていなかったが、そのことを察していた

それどころか、彼女は誰に聞かずとも、こんな訓練をしている意味を理解していた


いや、最初から分かっていたのだろう。何故なら――


そこまで考え、答えを導き出そうとするが、それで出るはずもない

思わずため息が出そうになり、空母棲姫は咄嗟に手を使って抑えた


提督「どうした?調子でも悪いのか?」


提督がその様子を見て空母棲姫に近づこうとするが、反射的に空母棲姫は提督から少しばかり離れる

その瞬間に矢が二本、提督に向かって飛んでくる。当たるかと思うほどギリギリだったがそれらは提督を通り抜け、壁に刺さった

しかし、そんなことを気にも留めずに提督は空母棲姫の様子を見ようとする

自分がこういったことをした場合、普通に当ててくるのだろう、と空母棲姫は直感した

彼女らは反射でこちらに射っているが、艦娘以外に関しては意識的に外すように気を付けている。しかし、空母棲姫は艦娘として扱われている為、そのような配慮は一切されない

おぼろげでも記憶があったことに助けられたと空母棲姫は心底思った



―――――――――――

―――――――――

――――――

217: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/04/20(月) 05:06:58.07 ID:IYbEzZNio

瑞鶴「……ふー。私の勝ち、かな」

鳳翔「……この位にしておきましょうか」

瑞鶴「そうだね」

空母棲姫「……ヤ、ヤット終ワッタ、のか?」

提督「そうなるな。どうだった?」

「い、痛いです……」

空母棲姫「ナ、何とも言えない」


瑞鶴が鳳翔の首元に矢を軽く当てたところで二人は動きを止める

そこでようやく、空母棲姫の緊張の糸が緩まった

何せ飛んできたものは矢だけではない。二人が唐突に銃を出して撃ち、それを弾いた弾が空母棲姫に襲いかかったり、撃墜された練習機が勢いよく龍鳳の頭部に直撃したりしたのだ

空母棲姫にとってはどれも死に至りかねないので、途中から完全に避けること以外頭から抜けていた


空母棲姫「それよりも、お前ガあそこまで動じないことノ方ガ怖い」

提督「慣れだな。ただ、いつもはもう少し見ている側に配慮しているはずなのだが……」

空母棲姫「余裕有りすぎないか?」

提督「空母の本分は航空戦だ。至近距離における深海棲艦の対処で精一杯では話にならないだろう」

空母棲姫「台風みたいな状況ヲ作りだしているのにか?」

提督「姫級を相手すると仮定するとどうしても、な」

空母棲姫「……姫ヲ相手ニするのが前提、ね。何故なのかしら」

提督「お前は知らなくても良いだろう」

空母棲姫「……ムー」

提督「それよりも、鳳翔達の訓練で何か感じたことは有るのか?」

空母棲姫「…………」

鳳翔「…………」

提督「あー……鳳翔、こいつの顔を覗きこむ勢いで見つめてやるな。後、顔に泥が付いているぞ」

鳳翔「ん……すみません、提督」

空母棲姫「……ムムム」

218: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/04/20(月) 05:08:07.85 ID:IYbEzZNio

瑞鶴「ちょっと本気でやっちゃった。いつもより結構雑に弾いちゃったけど、そっちは大丈夫だった?」

提督「龍鳳に練習機が頭部に入った以外は平気だな」

瑞鶴「あぁ……だからそこで寝てたのね」

空母棲姫「色々ト怖かったぞ」

瑞鶴「あれで怖がったら深海棲艦を相手に出来ないわよ?」

鳳翔「海上で行った時の方が弾幕も厚いですし、動きも変わりますが先ほどよりも何倍もの速さで動く必要がありますしね。まだ控えめです」

空母棲姫「ぶっ飛んだ話だ……」

提督「それで、訓練を見ての感想は?」

空母棲姫「ああ……」

空母棲姫「……」

鳳翔・瑞鶴「「……」」

空母棲姫「…………見ていて、お腹ガ空きそうニなった」

瑞鶴「ぶっ!」

鳳翔「……はぁ?」

提督「このポンコツは…………」

空母棲姫「シ、仕方ないだろ……本当ノことだし」

瑞鶴「あっはははは!可笑しいって!見ていて、お腹が空きそうに……って!」

空母棲姫「フ、二人ハあんなニ激しい運動?ヲしてお腹ガ空かないのか?」

鳳翔「多少はそうですね。少し夜食を摂って――」

空母棲姫「そう!その夜食ハなんだろうト思ったらついお腹ガ空きそうニ……!」

提督・鳳翔「「…………」」

瑞鶴「――――!」ダンダンダンッ!

222: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/05/20(水) 12:55:58.48 ID:nA2mVY40o

空母棲姫「フー……どうにか凌いだな」

提督「アレのどこが凌いだというんだ。鳳翔は呆れてものも言えなくなっていたぞ」

空母棲姫「それデ、ご飯ガ食べたくなったんだが」

提督「寝てろ」

空母棲姫「何か食べ物ガあるだろう?」

提督「無い。明日の為に用意した物ばかりだったからな」

空母棲姫「明日?」

提督「それより、何の感想も抱かなかったことを誤魔化すにしてももう少しマシなことを言ってくれ」

空母棲姫「…………ああ、気ヲ付ける」

提督「それとだな……」

空母棲姫「何だ?」

提督「お前は海に戻らないのか?」

空母棲姫「……戻る必要ガ無くなったト言えば納得してくれるかしら」

提督「あの時の姫級の興味を榛名が引いたからか?」

空母棲姫「それモあるかもしれないガ、違うな」

提督「どういうことだ」

空母棲姫「…………話したくない」

提督「……私がどうとか言っていたが、それが関係しているのか?」

空母棲姫「ア……それハ忘れてた」

提督「もう突っ込まんぞ、私は」

空母棲姫「そうね……その件モ榛名ト同じくどうにかしてくれる子ガ居るから、トいうのもある」

提督「まだあるのか?」

空母棲姫「そう。それガ話したくないこと」

提督「何故言えないのか聞かせてもらえるか?」

空母棲姫「……イヤ」

提督「そうか」

空母棲姫「流し気味だな」

提督「聞けるとは思ってないからな」

223: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/05/20(水) 12:56:45.70 ID:nA2mVY40o

提督「さて、戻らないとなると面倒だ。これ以上は私もお前の相手をしていられないから、入渠ドックで妖精と暇つぶしでもしていてくれると助かるのだが」

空母棲姫「ヤダ」

提督「…………これだからな」

空母棲姫「時間ガない奴ガそんなことするはずないでしょう?」

提督「ハァ……まあ、昼間に動き回られるよりかはマシか。行くとしたらどこだ?」

空母棲姫「……じゃあ、空母寮ニ行く」

提督「止めろ。死ぬつもりか」

空母棲姫「何故?」

提督「これ以上鳳翔達に接近すると殺されかねん」

空母棲姫「なら、許可ヲ貰えば良いだろう」

提督「そうは言うがな……」

空母棲姫「なら、間宮は?」

提督「この時間はやっていない」

空母棲姫「……ん?ソ、そう。やっている気ガしたノだけれど」

提督「明日の都合で早仕舞いしたからな。仕方ない」

空母棲姫「なら、空母寮だな。そうなると」

提督「……別のところには行かないのか?」

空母棲姫「せめて、一階だけでも見たい」

提督「…………」

空母棲姫「……駄目?」

提督「……分かった。どうにかする」

空母棲姫「フフフ……勝ったな」

提督「ただ、一階は物置になっている。二階の瑞鶴の部屋を覗くだけにしてくれ」

空母棲姫「他ハ駄目なのか」

提督「駄目だ。汚されると面倒だからな」

空母棲姫「別ニ覗くだけじゃ汚れな――」

提督「お前の血で廊下が汚れるんだ」

空母棲姫「…………エ?私死ぬ前提?」

提督「ああ、死ぬ前提だ。恐らく鳳翔はお前が深海棲艦だと感付いている。それに、余計なことをしそうだから尚更だな」

空母棲姫「」

提督「私としてもそんなことで死なれたら困る。くれぐれも下手なことはするなよ」

空母棲姫「ワカッタヨ、ウン」

226: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:00:26.16 ID:EkNhDP2+o

  ――――――空母寮――――――



空母棲姫「あれガ空母寮か。思ったよりこじんまりトしている」


提督と別れ、空母棲姫は一人空母寮に向かっていた。彼女はなんとなくで歩いていたが、記憶と関連があるのか、あっさりと空母寮を発見した

二階建てのそれは、今まで鎮守府を巡った中で先の訓練場と同じか狭いか位の面積で、ドックや倉庫、執務室や間宮があった建物群と比べて規模の小ささが窺える

ドアの近くに到着し、空母棲姫は深呼吸をする


空母棲姫「スゥー……ハァ……よし、覚悟した」


彼女にとって、残念ながら一階の“物置”なる場所には行かなければならない。勿論、榛名のアドバイスのこともあるが、それ以上に、この建物を見た時に思ったのだ



部屋に戻らないと、と

その部屋がどこなのか、どこにあるのかなど空母棲姫は知らないが、そう思い、今身体がそこへ行こうとしている

そして、それが自分が何者なのか、何の為にここに来たのか分かる鍵……あるいは答えがあるのだろう


ドアを開ける。外側に鍵穴が付いていない為入れない可能性も考慮したが、どうやらそんなことはないようだ


空母棲姫「いい加減セキュリティヲどうにかしても良いト思う」


ぽつりとそんなことを零す。自分を落ちつかせるために独り言を呟いたのだが、余り意味がない

心臓が早鐘のように打ち、これ以上平静を保っていられる自信が空母棲姫にはなかった

嫌でも身体が走ろうとする。ばれてしまっては元も子もない為それを抑えているが、あんなことを言われなければこの狭い廊下を全力で走っていただろう


一歩、一歩、音を殺して進む

向かう先は一階、奥の部屋

227: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:01:04.61 ID:EkNhDP2+o

空母棲姫「…………」


部屋の前に着き、改めて空母棲姫は入口の方へ顔を向ける。そこには誰も居ない。更に階段の方を見ても人は居なかった

誰も居ないことを確認した彼女は、ゆっくりとドアノブへと手を伸ばす

焦る気持ちを抑え、それでも出来る限り早く

そして、ドアノブを掴み、回そうと――


『人の殺し方……ですか?』

『うん。それって深海棲艦にも通じるところがあると思うし』


空母棲姫「…………!?」


『これだから貴方は……もう少しデリカシーを覚えなさい』

『分かってる。それで、どうなの?癖とか結構ありそうだけど』

『瑞鶴――』

『はぁ。そうですね……やはり、胴には確実に一つ入れました』

『頭とか撃たないんだ』

『確実ですから。その後、私は獲物を持った腕に一つ入れて、抵抗手段を奪いましたね』

『鳳翔さ……に瑞鶴、そういった話はこれ以上しないで欲しいわ』

『はーい』

『……そうですね』


唐突に流れ込む記憶。それと同時に気付いてしまった

鳳翔が、居る

228: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:02:02.11 ID:EkNhDP2+o

空母棲姫(不味い……玄関側ニ居る鳳翔ノ方なんて見ていられない)


既に鳳翔は弓を構え、矢をつがえているのだろう。僅かにそれらしい音が聞こえてきた

空母棲姫自身の身体能力はさほど高くはないことを踏まえると、そちらを振り向く辺りで一、二発撃ち抜かれるのは確実だ


空母棲姫(記憶ヲ頼りニして掴むしかない……!?)


そう結論付けた彼女は、ドアノブを回し切り、ドアを開けようとする

その時、風切り音が聞こえた


空母棲姫(記憶から察して……ここ!)


空母棲姫が記憶をたどり、鳳翔が射ったであろう場所へ左手で掴みに行く

棒状のものを掴んだ感触を実感し、矢を止めるために彼女は力を込める

すると、火事場の馬鹿力とでも言うのか、それが身体に刺さる前に止めることが出来た


空母棲姫「よし!」


矢を投げ捨て、そのまま身体を部屋へと飛び込むように侵入

乱暴にドアを閉め、内鍵を掛け、入ってすぐ右にあった箪笥を使ってバリケードを作る

そこでようやっと、彼女は大きく息を吐いた


空母棲姫「絶対ではないガ……まあ、少しハ保ってくれるかしら」


絶体絶命の状況に変わりはないが、それでも彼女にとっては知ることが出来るか出来ないかの方が重要だ

229: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:02:42.97 ID:EkNhDP2+o


空母棲姫「……ん?ああ、くそ。鳳翔ノ奴、同時ニ 二つ矢ヲ射っていたのか。右肘ニ孔ガ出来てるじゃない」

空母棲姫「結局、あいつノ言った通り部屋ヲ血デ汚してしまったな」



空母棲姫「…………」

空母棲姫「これガ血なら、どれだけ気ガ楽か……」

空母棲姫「痛みモ無い、カ」


空母棲姫「…………今ハこの部屋ノ方ガ重要だ、私」

230: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:04:23.47 ID:EkNhDP2+o

この部屋を改めて見渡して、気付いた

本当に、最後に見た時のままだった。雪風の私物が無くなっていることを踏まえると、その時よりも綺麗なのかもしれない

二段ベッドに二つの机、ラジオにテーブル。先程の箪笥も動かさなければあの時のままだったはずだ

……懐かしい

今の現状なんて取るに足らない出来事だ。身体が、心が、忘れてしまったものを求めている

それはどこにあるのか……


空母棲姫「机ノ上」


……そうだ。机に日記を入れていたんだった

ここに居た人達にもほとんど見せたことのない、見られるのも少し抵抗がある、そんな日記がある


右側の机の引き出しを開けていく。しかし、それらしいものは見当たらない

…………ああ、そうだ。鍵付きの引き出しの中にいつもしまっていた

鍵は確かこれの中に……あった

大事に飾ってあった小さめのぬいぐるみのチャックを開けて、予備の鍵を取り出す


空母棲姫「知らないはずノことヲ知っているなんて、何度体験しても慣れたものではないな」


そう、なんとなく呟きながら鍵を開ける

カチャリ、と

どうやら記憶は間違っていなかったようで、いとも容易く開けることが出来た


空母棲姫「物ノ配置ハ変わっていない。けれど、部屋ハ清潔ニ保っている……」


……なんなんだろう、この気持ちは。悲しい、辛い、嬉しい、色々とないまぜになって仕方ない

今はこの感情に振り回されないで、日記を読まければ

231: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:06:49.19 ID:EkNhDP2+o

日記は何冊もあり、全てを合わせると10冊近くあった

書かれている日はまちまちで、とても短く書かれている日もあり一冊で何カ月も書かれていた

その内、比較的長く書かれている内容はすぐに情景が浮かんできた

……笑っていた

皆笑顔でいた。勿論、ほぼ全員に少々問題があって、その部分で衝突が起きたりもした。陸で艤装を使って物騒な喧嘩をしたこともあった

でも、最後にはちゃんと笑っていた


空母棲姫「……」


最後はどんな内容が書かれているのだろうか。怖いけれど、知らないといけない

私に繋がるのだから


日記を適当に読み、日付が新しいものを探す

232: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:07:50.52 ID:EkNhDP2+o

『○月○日

終わったと思ったけど、運良く助かった
新しい艤装は中途半端に壊された程度では沈みきらないのでしょう
~~~~~~~
流石にあの施設も、今は私に構う余裕はないでしょうし、暫くはここに留まらせてもらいましょう
とにかく、あの人には感謝しています
でも、釣針は痛かった』



『○月△日

あの人は提督でした。若い
艦娘計画の前身、それの適合者で、現在それは提督の適性代わりになっているそうです
長らく外に出れない状況が続いたので、あの計画が頓挫していたことには驚きました
それと、提督の平均年齢の低下っぷりにも』




空母棲姫「…………これハ古い日記か」

233: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:09:40.70 ID:EkNhDP2+o

『△月☆日

雪風達と島の開拓作業をした
どうやら人が少数だけど移り住むとか――――』


空母棲姫「違う」


『●月□日

電ちゃん、夕立ちゃん、榛名さん、鳳翔さん、雪風、瑞鶴さん、北上さん、加賀さん、そして提督との記念撮影
最近分かってきましたが、加賀さんはからかうととても可愛らしい反応をしてくれます
……雪風との写真もこれで最後になるのかな……なんて――――』


空母棲姫「違う」


『○月◇日

最近ここにも結構人が集まる機会が増えてきた気がします
勿論本土程ではないけれど、浄化から3年も経つと魚の汚染も無くなり、漁業はしやすいそうです
網が破られる心配もだいぶ減るし、何より深海棲艦に出会うリスクも減ったと、おじさんが笑っていました
浄化が上手くいってよかった。無駄に鱗が固くなりますからね……骨格も歪ですし、食べれる身が減って――――』


空母棲姫「違う」



『△月○日

加賀に日記の存在がばれました
アイスで手を打ちましたが、恥ずかしいですね
まあ、これはまだマシですが――――』


空母棲姫「……違う」





『☆月☆日――――』


『●月△日――――』



空母棲姫「違う……違うの」

234: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:14:39.40 ID:EkNhDP2+o



『――――雪風と夕立が喧嘩をした。建物の一部の壁に穴が――――』


『――――電との話し合いはとても心地いいです。落ちつきがあると――――』


『――――鳳翔達と賭けをした。結果は鳳翔の一人勝ちで、彼女の経歴にはある意味納得――――』


『――――榛名は明石と意気投合しそう。彼女が艦娘になる気がなかったかは分かりませんが――――』


『――――北上と下見です。初めての催しである以上、私達も監修に行くべきだと説得して食べ物の――――』


『――――雪風とまったりと過ごした。久しぶりなのでいつもより雪風がべったりと――――』


『――――瑞鶴はどうも目が離せないんですよね。改翔鶴型への試験体って、雪風も似たような――――』


『――――やはり、過去の赤城の記憶のせいか、加賀と一緒にいるとしっくりきます。でも、甘味は羊――――』


『――――提督には感謝しています。同時に、こんな事態になってしまって申し訳ないです――――』





空母棲姫「…………」

ペラッ…

空母棲姫「…………これガ、最後ノ日記、最後ノ……ページ」

235: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:19:31.02 ID:EkNhDP2+o

『□月☆日

南方海域への強襲から何年も経ち
何度か深海棲艦と小競り合いを繰り広げていましたが、ようやく大本営がガダルカナル島周辺海域の本格的な奪還作戦を発令しました

南方強襲作戦を切欠に始まってしまった偵察を任されることにはもう慣れましたが、今回は少し気を引き締めなければなりません
あの辺りはあり得ない状況で天気が変わったり、唐突に辺りが真っ暗になり夜戦という形で深海棲艦と相対することが多々ありました
しかも、それがガダルカナル島に近づくほど酷くなっている
恐らくですが、私達が見たこともない敵がいるのでしょう

そしてそれを私達は観測、大本営に情報を発してこちらが最善手を取れるようにする必要がある
南方強襲時のような、潜水艦で相手を消耗させつつ本隊で叩く、といったことをするには出来うる範囲で最善のルートを確立しなければ出来ないのだから
後、汚染にも気を付けないと……ただでさえ恨み、辛み、嘆き、怒りが頭に残り私達の動きが阻害されるのに、あそこは今まで経験したことのない位に穢れている
今回は念入りに調べる必要がありそう

犠牲は少なくいかないと、15年前のように再び制海権を失い、無駄な努力で終わってしまいかねない
もうあんなことは嫌なのだから



数日後には出る。だから、挨拶回りをしっかりしてこないと』

236: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:23:18.15 ID:EkNhDP2+o


『――――ふぅ』

『……まだ寝ないのかしら?』

『そうですね……眠れない、と言った方が良いでしょうか。貴方もですか?』

『えぇ。ずっと横になっていたけれど、どうにも……』

『私の机の明かりが気になって眠れなかった、とかでしょうか?』

『それはないわ』

『では、お腹の虫が鳴ってしまって仕方ないとか?』

『ありえません』

『今日、アイスを雪風に食べられてしまった』

『怒ってません』

『賭けに負けたせいでデザートを鳳翔に取られてしまった?』

『電に分けてもらいました』

『では…………』

『…………』

『……やっぱり、怖いですよね』

『ええ、怖いわ。何度経験しても、それを拭えることはないのだから』

『……今回の作戦、どう見ます?』

『……予測は当てにならないでしょうね。今までにない程の穢れに始まり、未知数な要素が多すぎる。今思うと、南方海域に居た姫級との戦いは深海棲艦らにすればまだ序の口だったのかもしれません』

『私達、死に物狂いだったんですよね……あの時点で』

『…………出し惜しみをしなければ、全ての深海棲艦をなぎ倒した上で南方棲戦姫を討てたと思いますが』

『今ならば言えること、ですね。あの時は初めて行った、大規模な、そして本格的な深海棲艦への反攻でしたから。あの時点でなら、貴方はそういったことを認めないし、まず言わないのでは?』

『昔は勿論、今現在でも言うか怪しい所ね。本当は、誰も死んでほしくないもの』

『会話が出来れば、違ったかもしれなかったんですけどね』

『…………』

237: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:25:15.51 ID:EkNhDP2+o

『…………この話はもうやめましょうか。私達は生きて帰る。それだけですから』

『……そうね。どうせなら、この沈んだ気分をどうにかできる話でもしたいのだけれど』

『そうですね……祭りは色々と見て回れて良かったですけど、まだまだ回ってない屋台が有るんです。貴方はどうでしたか?』

『貴方が歌っている間に全ての屋台を回っておきました。中々有意義なひと時だったわ』

『じゃあ、来年は加賀に案内を頼みますね。美味しい食べ物を売っている屋台とか、珍しい物を売っている屋台とか、是非教えてください』

『どうせなら、提督も誘いましょう。あの人にだって楽しむ権利は有るのですから』

『ふふ……じゃあいっそのこと、来年は皆で一緒に回りましょうか。貴方のお勧めの屋台、期待していますよ?』

『…………責任重大ですね』

『別にそこまでのことじゃないですから、緊張しないでください』

『いえ、大丈夫です。それに、あの時のレポートが残っているので任せてください。この私、加賀が誇りをかけて、是非とも回りたい屋台をピックアップしましょう』

『あの、そこまで真剣なことでは――』

『何を言っているの?これは当たり前のことなのだから、気にする必要はないわ』

『…………お腹、空いているんですか?』

『みゃっ!?』

『可愛い鳴き声ですね』

『う……そ、そうではなくて、ですよ。お腹は空いてはいません』

『では、小腹が空いた?』

『そう…………ではない、訳でもないですけど』

『ふふ……じゃあ、私はもう寝ますね』

『…………からかったんですね』

『さて、どうでしょう』

『もう……』

『ぁふ……貴方と話してたら緊張が解れたのか、眠気が来ました。感謝していますよ』

『……ふあぁ。明日がっつり食べることにします』

『私もそうします。おやすみなさい』

238: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/06/09(火) 03:28:22.11 ID:EkNhDP2+o


そうして、私は戦いに赴いた

その戦いの記憶の詳細はまだはっきりとは思い出せていないが、それでも確信できることがある

いや、嫌でも自覚してしまうと言った方が良いのか

もしかしたら、提督という男と出会った時から分かっていたのかもしれない

でも、改めて分かってしまうと、どうしようもなく虚しくなってしまった












私はガダルカナル島周辺海域に向かい、そこで沈んだ




245: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:23:45.93 ID:6zRVV+GHo

キィ…ガチャガチャッ ダンッ!



瑞鶴「よいしょっと……窓からこうやって侵入するのも久しぶりだなぁ」

空母棲姫「…………」

瑞鶴「やっ。鳳翔がごめんね。あの人だって必死だからさ」

空母棲姫「…………」

瑞鶴「どうしたの?ベッドに座ってうなだれてるなんて」

空母棲姫「お前ハ……」

瑞鶴「私が?」

空母棲姫「自分ガ死んでいたトしたらどうする?」

瑞鶴「…………」

空母棲姫「そして、自分ガ嫌悪していた存在ニなっていたトしたら……どうする?」

瑞鶴「……なんか思い出せたの?」

空母棲姫「全てではないガ、一応ハ」

瑞鶴「そっか……うん!良かったんじゃない?」

空母棲姫「どうだろうな……良いとは思えないことガ大量ニあった」

瑞鶴「例えば?」

空母棲姫「それよりも、私ノ質問ニ答えてくれ」

瑞鶴「んー。嫌悪していた存在、ねぇ……死ぬんじゃない?それか気にしないけど」

空母棲姫「何故?」

瑞鶴「……そういうのに私が疎いの、思い出せてない感じかな」

空母棲姫「そうだったか?」

瑞鶴「『兵士としても兵器としても難あり』って言われてこっちに来たしね」

空母棲姫「…………ああ、そういえばそうだった。改翔鶴型ガ関係しているとかだったか」

瑞鶴「そうそう。色々あったんだよ」

246: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:27:02.63 ID:6zRVV+GHo

空母棲姫「……なぁ、瑞鶴」

瑞鶴「ん?」

空母棲姫「いつから気付いた?」

瑞鶴「深海棲艦だってこと?」

空母棲姫「ああ」

瑞鶴「うーん……一応榛名から聞かされてたから、最初からかな?でも、実際見たらびっくりしたなぁ。深海棲艦だって感じ取れなかったし、今だって艦娘だって言われれば納得しそうになっちゃうな」

空母棲姫「似たようなことヲ榛名ニ言われたな」

瑞鶴「だって、普通は気付くものよ?えーと……その辺りの説明は私は正直詳しくないんだけど、艦娘と深海棲艦は近いけど遠い……だっけ。繋がりは一応あるんだよね」

空母棲姫「…………現在の艦娘ハ、深海棲艦とは別であり、太平洋戦争デ戦った艦娘とも厳密には別だった。とかか?」

瑞鶴「そんな感じのがあったね」

空母棲姫「……それデ、最初から知っていたのに何故私ヲ殺さなかった?」

瑞鶴「榛名に殺すなって言われたからだよ」

空母棲姫「言われてなかったら殺していたのか」

瑞鶴「うん。深海棲艦は深海棲艦でしかないし、例えば、貴方が私の仲間だったとしても大したことじゃないでしょ」

空母棲姫「随分あっさりト言うな」

瑞鶴「深海棲艦には知り合いは居ないし、死人がどうこう出来る訳ないもの」

空母棲姫「……それガ正しい判断ね」

瑞鶴「でも、私は榛名に色々釘刺されちゃったから何もしないよ」

空母棲姫「自分ノ意思デ動いても良いんだぞ…………ん?そういえば、お前ガ話ヲ聞いただけデ深海棲艦だと判断するとは思えないのだが。感じ取れなかったト言っていたはず……何故?」

瑞鶴「あれ?わざとじゃないんだ。気付いてないの?」

空母棲姫「何がだ?」

瑞鶴「今、フード被ってないから顔が丸見えだよ」

空母棲姫「…………ウ、嘘でしょ?アッ……」

瑞鶴「今頃被っても意味ないし、熱そうだからそのマント脱いだら?」

空母棲姫「……ヤダ」パサッ

247: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:28:21.90 ID:6zRVV+GHo

空母棲姫「これから、どうすればいいんだろうな」

瑞鶴「どういうこと?やることあるからここにいるんでしょ?」

空母棲姫「ああ、やることハあった。けれど、探し求めた結果ハ良い物ではなかったし、何ヲすればいいのか分からなくなってしまったんだ」

瑞鶴「……そっか」

空母棲姫「ああ」

瑞鶴「何かしたいこと、ないの?」

空母棲姫「…………分からない」

瑞鶴「分からないことはないでしょ。何の為にここに来たのよ」

空母棲姫「自分ノ記憶ノ為ダ。そして、その結果ハお前達だって分かっているだろう」

瑞鶴「……死んだってこと?でも、貴方は生きてるじゃない」

空母棲姫「生きている、か。フフ……確かニ私ハ生きている。ガ、それハ深海棲艦ノ私ダ。私じゃない」

瑞鶴「…………良く分からないけど、全部思い出したんじゃないの?」

空母棲姫「全てノ記憶ガしっかりト思い出せる訳ではない。点ト点ノような状態なのか、記憶ガあるのは分かっても、それガ私ノ記憶だと認識できないの」

瑞鶴「うー…………ボタンの掛け違え?」

空母棲姫「……まあ、そんなものだな」

瑞鶴「じゃあ、必ずしたいことはあるよ」

空母棲姫「何故?」

瑞鶴「だって、ボタンを掛け違えただけなら戻せるじゃない」

空母棲姫「……例え話ヲお前ノ口から聞くト、妙な違和感ヲ覚えるな」

瑞鶴「そんなこともあるって」

空母棲姫「…………人ハ歩むことヲ止めない。止まっている私ガ置いていかれるのは当たり前トいうことね」

瑞鶴「カッコつけてもどう反応すればいいのか分かんないんだけど」

空母棲姫「ウルサイ。単純ニ感傷ニ浸っていただけだ。これだから……」

248: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:29:11.18 ID:6zRVV+GHo

瑞鶴「そうだ。したいことに繋がるかは分からないけど、聞いていい?ずっと気になってたことだし」

空母棲姫「…………なんだ?」ムスッ

瑞鶴「貴方は誰?」

空母棲姫「……は?」

瑞鶴「貴方は誰って聞いた――」

空母棲姫「そういうことではない。質問ノ意図ガ分からないノだが」

瑞鶴「何って…………私は貴方のことを知らないからよ」

空母棲姫「榛名ノ話から分かるだろう?」

瑞鶴「あー……ええと……人間なのか艦娘なのか、それとも深海棲艦なのかとか貴方から直接聞かないとなー、って」

空母棲姫「それ、意味ガあるのか?」

瑞鶴「私にとっては意味あるよ」

空母棲姫「そうハ言うガ……はぁ、分かった。言う、言えば良いんでしょう」

瑞鶴「うん!お願い!」

空母棲姫「そんないい笑顔デ見るな。……私ハ、艦娘だった」

瑞鶴「今は違うの?」

空母棲姫「不本意ながら、今ハ深海棲艦だ」

瑞鶴「……それって見た目のこと?」

空母棲姫「そうだ。それ以外ニあるのか?」

瑞鶴「そうじゃなくて、私は貴方は誰なのか、が聞きたいんだけど」

空母棲姫「お前何ガ……!もしかして、私ノ心ヲ指しているのか?」

瑞鶴「……多分?」

空母棲姫「自分デ聞いているんだろうが。私ニ聞くな七面鳥」

瑞鶴「個人的には七面鳥は照り焼きが食べたくなるわね」

空母棲姫「これハ皮肉デあって、好みハ聞いてないのだけれど」

瑞鶴「それされたのは私じゃないもの。皮肉にもならないと思うよ」

249: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:30:42.25 ID:6zRVV+GHo

瑞鶴「それで、貴方は誰?」

空母棲姫「…………艦娘だ。私ハ艦娘だと思っているし、そうだと信じたい」

瑞鶴「どこにいる艦娘なの?」

空母棲姫「ここよ」

瑞鶴「私深海棲艦みたいな見た目の艦娘は知らないし、鎮守府内には居なかったんだけど」

空母棲姫「沈んだからな。何故、こうして瑞鶴トまた話せているのかハ分からないガ、見た目ハ今とは違う。殴るぞ」

瑞鶴「殴るならそこの壁にして。どこで沈んだの?」

空母棲姫「よくモまあズバズバト……ガダルカナル島周辺海域だ」

瑞鶴「鉄底海峡臭いわね。あそこは嫌よ」

空母棲姫「……そうだな。あそこハあいつ含めて嫌いだ」

瑞鶴「いつ頃沈んだの?」

空母棲姫「それハお前達ガ詳しいはず」

瑞鶴「いつ頃?」

空母棲姫「…………分からない。ただ、夜中ではなかったト思う」

瑞鶴「じゃあ、なんで沈んだの?」

空母棲姫「何故…………敵ニ攻撃ヲ受けたからじゃないの?」

瑞鶴「さあ?」

空母棲姫「いい加減知っていることヲ隠さないで欲しいのだけれど」

瑞鶴「私達は事の顛末を皆知らないんだよね。姫級の攻撃を受けて艦隊が事実上機能停止して、命からがら逃げだしたらしいから具体的にどうなったか知らないんだ」

空母棲姫「囮、か。それト、らしい、ト言ったな?何故だ?」

瑞鶴「私は別行動してたんだ。作戦海域よりも西から妙に攻撃を受けてたから、それの調査へ電と一緒に行ってたのよ」

空母棲姫「二人だけでか?」

瑞鶴「一応他の鎮守府から補助は受けたけど、そうね」

空母棲姫「それデいいのか?」

瑞鶴「私はそれでいいかな。それにしても、思い出したにしては沈む辺りの記憶がスカスカじゃない?」

250: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:31:08.84 ID:6zRVV+GHo

空母棲姫「…………そうだな」

瑞鶴「沈んだのが誰かも分からないのかな?自分だー、とか、そう言う言葉じゃなくて」

空母棲姫「……赤城、もしくハ加賀だ」

瑞鶴「そっかー」

空母棲姫「それデ?」

瑞鶴「一つ言うとしたら、合ってるけど違うってこと。あそこで囮になったのは一人だけじゃない」

空母棲姫「…………二人ガ囮ニなったのか?」

瑞鶴「そ。赤城と加賀の両名がその場に残って応戦。その後の詳細は不明……と」

空母棲姫「…………駄目だ、思い出せない。もしかして、あいつノせいか……?」

瑞鶴「あいつ?榛名が追い払った深海棲艦?」

空母棲姫「いや。アレとは別ニもう一人居る」

瑞鶴「……MIに居る夕立から赤城と加賀に似た姫級と交戦しているって聞いたけど、もしかしてそいつ?」

空母棲姫「恐らく。あいつハ、私ノ殆んどヲ奪っていった。力、知識、思い出、感情……私ニ残っていたのは深海棲艦ニとって不要な物だけだった」

瑞鶴「なんか面倒な相手ね」

空母棲姫「ただ、奪われたことデ助かった面モあるから複雑な気分だ。見つからずニいられたのは存在ガ希薄ニなったからだろうし」

瑞鶴「そのせいで今も苦労しているんだけどね」

空母棲姫「……泣いていい?」

瑞鶴「どうぞ?」

空母棲姫「…………」

251: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:31:36.80 ID:6zRVV+GHo

瑞鶴「もう泣いてない?」

空母棲姫「うるさい。とっくニ泣きやんだ」

瑞鶴「にしても、こう言った後って大体泣かない人ばかりなのに、ちゃんと泣く人も居るんだね」

空母棲姫「私ノ心ハそれデボロボロだぞ」

瑞鶴「まあ、泣く時は無理をしている時らしいし、自分のことが分かって良かったじゃん」

空母棲姫「そういうことガ……もういい。言っても余り意味ガ無いんだったな」

瑞鶴「そうかな?」

空母棲姫「しかし、あの問答ニ意味ガ有ったのか疑問だ」

瑞鶴「そんなに深い意味はないよ。強いて言うなら、貴方が迷ってる人の顔と同じ顔をしてたから」

空母棲姫「……まあ、迷っていたガ」

瑞鶴「そう言う人は周りが見えないって聞いたし、その対処方法は教えてもらったんだ。だから、試してみたのよ」

空母棲姫「対処トして上手くいってるかは分からないのか?」

瑞鶴「分からない!」

空母棲姫「…………」

瑞鶴「相手の考えてることが分かったら凄いじゃん?私全然分からないもの」

空母棲姫「今私ガ抱いている気持ちヲ言うぞ。殴っていいか?」

瑞鶴「そんなことを考えてたの?」

空母棲姫「たった今、瑞鶴ノせいデな」

瑞鶴「そ、そうなんだ。ごめん」

空母棲姫「はぁ……となると、問答ノ結果ハ何も分からないままか」

瑞鶴「え?」

空母棲姫「ん?」

瑞鶴「まず、貴方は結局赤城か加賀か分からないってこと。次に、自分が沈んだ場所は大体分かっているようだけど沈んだ原因は覚えていないこと。それどころか、その戦いのことをすっぽり忘れていそう。この辺りは分かったけど」

空母棲姫「…………」

瑞鶴「赤城だとかは貴方しか分からないことだけど、ガダルカナルについては色々提督に聞いた方が良いと思うよ」

空母棲姫「…………」

252: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:32:37.87 ID:6zRVV+GHo

瑞鶴「大丈夫?」

空母棲姫「……痛い」

瑞鶴「急に殴りかかってくるんだもん。反射的に防いだ勢いでやり返しちゃった私がいけないけど、いきなりそういうことはしないでね」

空母棲姫「ムー……」

瑞鶴「でも、なんでそんなことしたの?」

空母棲姫「いや、怒らない奴ハ居ないト思うぞ。今モ殴れるのなら殴っているところだしな」

瑞鶴「あ、あはは……ごめん」

空母棲姫「……まあ、さっきノ内容ヲ聞いたおかげか少しハやることガ出来たト思う。そこハ感謝しないでもない」

瑞鶴「冷静じゃなかったもんね。加賀も激情家なところがあったけど、流石に貴方ほどそれを隠すのは下手じゃなかったよ」

空母棲姫「そんなことハ…………無いト思いたい」

瑞鶴「そうだったら質問してる途中で気付いてほしかったなぁ」

空母棲姫「グヌヌ……」

瑞鶴「…………疲れてる時は休まないと、ね。探し物だって上手くいかないし、見逃すはずがないことを見逃しちゃうよ?」

空母棲姫「…………そのようね。目ノ前ノ事実ニ囚われて、考えることヲ怠っていた。少し、休んだ方ガ良いのかもしれない」

瑞鶴「どのくらい休んでないの?」

空母棲姫「そうだな…………約一年。なんて――」

瑞鶴「何で生きてるのよ!」

空母棲姫「じょ、冗談だぞ!」

瑞鶴「……本当のところはどうなのよ」

空母棲姫「気絶ヲ含めなければ、半日過ぎている程度だ」

瑞鶴「案外普通ってとこかー。でも、気絶してたんだし、寝た方が良いかも」

空母棲姫「そうするべきだろうな……本当なら」

瑞鶴「眠らないの?どうして?」

253: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:34:02.98 ID:6zRVV+GHo

空母棲姫「……眠ってしまった後、もしも残された時間ガ無くなったら、私ハ恐らく消える。どうしてここニ向かったのか、何故私ガここまで鎮守府ニついて知っているのか……色々ト知りたいことガ分からないままニなる。そう思うと、本当ニ休んでいいのか、ト不安でな」

瑞鶴「焦りすぎじゃない?残った時間?がいつ無くなるのか分かるの?」

空母棲姫「一日切っているト言っていいでしょうね」

瑞鶴「それなら余計に休むべきね。さっきみたいに見失うわよ」

空母棲姫「だが、あいつらハ間違いないト――――」

瑞鶴「その時間が正しいかなんて分かんないじゃん。あいつら、ってのは知らないしどうでもいいけど」

空母棲姫「それでも、なんとなく分かるのよ。自分ノ身体ガ徐々ニ死ヘと向かっているって」

瑞鶴「それでも、よ。……それに、貴方がここの鎮守府の赤城か、それとも加賀ならさ、残された時間を伸ばすくらいの無茶は普通に出来るはずだし」

空母棲姫「そんな力、持っている訳ガないだろう。どうしてそんなことヲ聞く?」

瑞鶴「信じてるから」

空母棲姫「…………」

瑞鶴「それ以上でもそれ以下でもないよ」

空母棲姫「…………ハァ。本当ニ、調子ガ狂うな」

254: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:35:11.67 ID:6zRVV+GHo

瑞鶴「それで、休むの?」

空母棲姫「ああ、そうする」

瑞鶴「うんうん。休息は大事ってね」

空母棲姫「出来たらここデ寝たいガ……」

瑞鶴「良いよ。どうせ今ここに居るのは私と鳳翔だけだし」

空母棲姫「あのフワフワした子ハここニ居ないのか?」

瑞鶴「龍鳳かな?ここ数週間、あの子は間宮の方で寝泊まりしてるよ。明日の為にしばらく間宮のお手伝いをする為にね」

空母棲姫「そういえば……明日何か有るのか?一度聞いたガ、はぐらかされてしまってな」

瑞鶴「明日?明日はお祭りをするのよ」

空母棲姫「祭り……」

瑞鶴「そんなに人は多くないし、あくまで目的は鎮魂なんだけどね。この島にしては、数少ない大きめのイベントだから、いっそお祭りにしてしまえ、って」

空母棲姫「…………」

瑞鶴「気になる?」

空母棲姫「まあ、気ニなるな。色々ト」

瑞鶴「そっか。うん……それなら行った方が良いよ。場所は鳥居が有る所に向かえば分かるはず」

空母棲姫「そうさせてもらう。でも、今ハ寝ることニするわ」

瑞鶴「んじゃ、私は出るかな」

空母棲姫「…………ねえ」

瑞鶴「ん?」

空母棲姫「瑞鶴ハ私ガどちらだと思う?」

255: ◆.Em5oVk1MAsD 2015/07/18(土) 01:38:07.60 ID:6zRVV+GHo

瑞鶴「……どうでもいい!」

空母棲姫「ド、どうでもいいって」

瑞鶴「どっちであろうと貴方なのは変わらないじゃない。私にはどっちにも取れるし」

空母棲姫「強いて言うならどちらか言ってくれないか?」

瑞鶴「えー……どっちにも似てるし、どっちとも言えない感じもあるから、無理」

空母棲姫「…………瑞鶴モ駄目か。榛名モ分からないト言ったが、何故なんだろうな」

瑞鶴「だって、私達は基本的に艦娘か深海棲艦か位しか分からないもの。榛名でも不確定要素に加えて深海棲艦の要素と艦娘だったナニカの要素が入り乱れるみたいだから、断言は多分無理なはずよ。それに……」

空母棲姫「それニ?」

瑞鶴「いくら私達が言っても、貴方が理解して、納得するかは別だから。私が加賀だと言っても、貴方が赤城だと思っているのならどうしようもないし」

空母棲姫「そういうものか?」

瑞鶴「そういう領域よ。面倒くさいけど」

空母棲姫「…………混ざっているのか?」

瑞鶴「深海棲艦は殆んどが怨念のキメラみたいなものらしいわ。姫級はそれほど混ざってはいないけど、それでも判別は出来たもんじゃないって」

空母棲姫「……自分デ知るしかない、か」

瑞鶴「そうなるわね」

空母棲姫「ありがとう」

瑞鶴「どういたしまして」



ズズッ ガタガタッ キー…パタン



空母棲姫「…………何か忘れていないか?私」