1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 12:17:49.86 ID:6kZdO9Cp0
~病院、消灯後~

恒一「うーん、深夜の病院ってなんかこう、冒険心をくすぐられるよねー」

   「これもまた入院中にしか味わえない貴重な体験ってやつかな?」

   「病院それ自体のムードもさることながら、看護婦さんに見つからないかどうかっていうギリギリの緊張感がたまらないよ」ワクワク

   「普段自分が行かないフロアを探索したり、楽しみは尽きないねー」

   「というわけで来ましたるは入院患者フロア!」

   「わざわざ僕の病室とは別のフロアってことは病状がまったく違うのかな?」

   「僕の気胸は命に関わるようなものじゃないけど……こう、もっと重い病気とか」

   「……おお、なんか幽霊とか格段に出やすそうじゃない?」ワクワク

トコトコトコ……

恒一「とは言ったものの、いたって普通の入院病棟って感じだなあ」キョロキョロ

   「やっぱりそう上手くは――」

――グ……ゥ……ア……

恒一「幽霊の呻き声きたー!」

引用元: 見崎「子供のような心を持った榊原君?」恒一「ワーイ!」キラキラ 





4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 12:20:24.12 ID:6kZdO9Cp0
――クル……シィ……タスケ……

恒一「なんて悲痛な女性の声なんだ……さぞや無念を残して逝ったに違いない」グスン

   「声はあの病室からみたいだな……よし、こういっちゃんいきまーっす」ガチャリ…

   「さて幽霊ちゃんは、と……」キョロキョロ

   「お、あのベッドかな? それじゃあカーテン、オープン!」

シャッ――……ッ!!

未咲「ぐ……ぅ……はぅ……」ゼェゼェ

恒一「なんと、普通にもがき苦しんでる女の子だった」

   「無念を残して逝った女の子なんていなかったんだね、良かった良かった」

   「それにしても苦しさのあまりナースコールボタンを押すどころじゃないのかな?」

未咲「た、たすけ……くっ……」ビクビク

恒一「ここで見かけたのも何かの縁だね、もう大丈夫だよ」ヨシヨシ

   「よーし、こういっちゃんボタン16連打しちゃうぞー」

ポチポチポチポチポチポチポチポチ……!!!

恒一「さて、ナースさんにこんなとこ歩き回ってるの見つかったらどやされちゃう、さっさとかーえろっと」スタコラッサッサー

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 12:25:46.16 ID:6kZdO9Cp0
~病室~

水野姉「今度はペン使って何をやってるんですかワクワク少年?」

恒一「ペンの真ん中を指で挟んでこう、上下に揺らすとくねくね曲がって見えるじゃないですか?」ユラユラ

   「これって何でなんですかね!」ユラユラ

水野姉「んー、目の錯覚……かなあ」

    「ひとまずそれは置いといて、お客さんだよー」

    「じゃああとはよろしくー」

スタスタ……ガララ――ピシャ

恒一「へえ、まさかお客さんが3人も!」

   「まだ知り合いなんてこっちには家族くらいしかいないはずなんだけど……」

   「キミたちは誰? どうして僕に会いにきたの?」キラキラ

   「あと3人中2人もメガネだなんて田舎は視力が良くなるっていうのは迷信だったのかな、どう思う?」

風見「さ、さあ……?」タジ…

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 12:32:19.11 ID:6kZdO9Cp0
風見「えっと、僕たちは榊原くんが転校してきた夜見山北中学の3年3組の生徒です」

恒一「ああ、それで来てくれたんだねなるほどー」

風見「それで僕は風見、こっちは桜木さん、2人でクラス委員をしています」

恒一「へー、クラス委員とメガネには何か因果関係があるのかな?」

風見「た、たまたまじゃないですかね」タジタジ

   「……それでこっちは対策係の赤沢さん、3人でクラスの代表としてお見舞いにきたんです」

恒一「たいさくがかり?」ピク

赤沢「……転校してきたんでしょう?」

桜木「えっと、本当は月曜から出てくるはずだったのが急な病気でって聞いて――

恒一「ねえ、対策係ってなに?」キラキラ

桜木「え、と……」アセ

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 12:39:00.49 ID:6kZdO9Cp0
恒一「東京じゃそんな係なかったけど、こっちだと珍しくないのかな」

   「いったい何を対策するの? すごく興味あるなあ」

   「しかもクラス代表でお見舞いに来るってことは今日のコレも対策の一環なの?」

   「僕転校してきたばかりで対策されちゃうんだね、どうすればいいのかな?」ワクワク

風見「……赤沢さん」

赤沢「はあ……もうこの際ここではっきり説明しておくしかなさそうね」

恒一「やったー!」

赤沢「……対策係は3年3組にまつわるある現象について、対策を立案、実行する係なの」

恒一「ある現象? なになに? 早く教えてよー」

赤沢「オカルトめいた話できっとすぐには信じてもらえないと思う」

   「でも今からする話は冗談とかじゃないから、真面目に聞いてね」

   「最初から順を追って話すわ、アレは26年前のことよ――」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 12:45:50.20 ID:6kZdO9Cp0
恒一「へー、死者が紛れ込んだクラス、かあ」

赤沢「もちろん信じられないのは無理もないわ、でも――」

恒一「僕すっごいところに転校してきちゃったんだねー」

桜木「……えっと、もしかして、信じてくれるんですか?」

恒一「わざわざ3人も押しかけてクラスぐるみのドッキリを仕掛ける、なんてのも面白そうではあるけどね」

   「でもそれ以上にその話を信じたほうが面白そうじゃない!」

赤沢「面白いって……人が死ぬのよ?」

恒一「そうならないための対策係でしょ?」キラキラ

赤沢「そ、そうだけど……」

恒一「ただ、そのいないものになった生徒の名前が聞けないのが困ったなあ」

   「すっごく気になるよ気になり過ぎて気胸が再発しちゃいそうだよ」

風見「ごめん、決まりごとだから話せないんだ」

   「登校してきてからクラスの雰囲気とかで察してもらえたら嬉しいな」

恒一「うんわかった、それも含めて楽しみにしてるね」ワクワク

   「それじゃまた学校で!」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 12:50:57.79 ID:6kZdO9Cp0
~昼間、病院~

恒一「お、タイミングよくエレベーターがきてるぞ」

   「はいはい乗りまーす!」

スタタタタ……ガション

ウィ――……ン

恒一「あ、キミが開けるボタン押しててくれたのかな?」

   「ありがとうね眼帯っ子ちゃん」

見崎「……」

恒一「その持ってる人形可愛いね、キミのお友達?」

   「人形は良いよねー僕もたくさん持ってるよソフビ人形」

見崎「……」

恒一「その制服は夜見山北中学かな、僕も今度そこに転校するんだよ」

   「ところで院内着じゃないってことは患者さんじゃないみたいだし、眼帯っ子ちゃんはお見舞い?」

見崎「……見崎鳴、眼帯っ子ちゃんじゃない」

   「あと、少し静かにしてくれると嬉しい」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 12:56:54.04 ID:6kZdO9Cp0
恒一「ごめんねキミがあんまりにも僕の好奇心を刺激するものだから」

   「話に夢中になってたら自分の階のボタン押すの忘れちゃってたよ」

   「6Fかあ、ここが鳴ちゃんのお見舞い先なのかな?」

   「ちなみに僕は5Fだよ!」

見崎「……届け物があるの、愛しい私の半身がそこで待ってるから」ユラ…

トコトコ…トコトコ…トコトコ……

恒一「……ふぅん」

   「届け物ってあの人形かな?」

   「愛しい私の半身――かなり好奇心をくすぐられる響きだよね!」

   「よし、着いてこーっと」コソコソ

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:02:02.76 ID:6kZdO9Cp0
~病室前~

恒一「あれ、ここってこの間僕が忍び込んだ病室だ」

   「これは余計に好奇心がくすぐられる展開だね」

   「覗き見る以外の選択肢が見当たらないよ」ソロー…

見崎「これ、あなたが欲しがってた人形よ」ソッ

未咲「わあ!ありがとう鳴ちゃん!」ギュッ

見崎「あなたが喜んでくれて私も嬉しい」

   「それに未咲が無事でいてくれて……本当に心配したんだから」

   「もしかしたら私のせいで……3組の災厄で未咲がなんてことになったら……」プルプル

未咲「鳴ちゃん……? もう、心配性だなー」クス

   「私はもうこの通り大丈夫だよ、だから安心して?」ナデナデ

見崎「……うん」コクコク

   「それにしても未咲を助けてくれた男の子って誰だったのかしら」

未咲「それが分からないんだよね、院内着を着てたから患者さんには間違いないんだけど……」

見崎「そう……分かったらいつかちゃんとお礼をしなきゃ」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:07:54.77 ID:6kZdO9Cp0
恒一(あの2人そっくりだし、きっと双子の姉妹なんだろうなあ)

   (それにしても美しい姉妹愛を見せてもらったよ、ありがとう鳴ちゃん)グッ

   (だけど3組の災厄がどうのって……鳴ちゃんも3組なのかな?)

   (いないもの対策をしてるから大丈夫って赤沢さん言ってたけど……)

   (本当に大丈夫なのかな)

   (災厄始まっちゃったら対策しても効果ないんじゃなかったっけ?)

   (うーん、ちょっとこれは赤沢さんに聞いてみる必要があるかも)

   (……まあいいや、これ以上覗き見してるのは鳴ちゃんたちに悪い)

   (今日のお楽しみはおしまいにしてもう帰ろーっと)

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:12:09.86 ID:6kZdO9Cp0
~退院後、自宅リビング~

怜子「もう体調の方は大丈夫?」

恒一「ええ、もうばっちり」

   「それにしても、まさか胸に穴が開いたような気分っていうのを実体験できるとは貴重な経験でした」キラキラ

怜子「そ、そう……」

   「えっと、話は変わるけど夜見北での心構えの方は覚えてるかな?」

恒一「クラスの決め事は守ること、それと公私の別はきっちりつけること、でしたっけ」

怜子「うんそれで合ってるわ」

   「親戚だからってフランクに接したりしたら他の生徒に示しがつかないからね」

恒一「それは、怜子さんも僕に対して公私使い分けて接するってことですか?」

怜子「ええ、もちろんよ」

   「三神先生モードで、あくまで教師としての態度で接するからそのつもりでね」

恒一「なるほど……わかりました」ニヤリ

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:16:41.20 ID:6kZdO9Cp0
~朝、学校廊下~

――カツカツカツカツ……

久保寺「とにかく皆と仲良くしてください」

    「もしも何かあれば私なり、副担任の三神先生にでも遠慮なく相談してください」

恒一「はい、よろしくお願いします」ペコッ

怜子「こちらこそよろしくね」キリッ

恒一(なるほど、これが三神先生モードってやつか)

   (確かにいつもの怜子さんとは別人みたいだ)

   (公私の別はきっちりと)

   (言い出した本人がそれを守れなかったら、面目丸つぶれだよね)

   (きっと何をされようとも三神先生モードを貫こうとするはずだ)

   (僕のちょっかいにどこまで耐えられるか……)

   (じっくりと見せてもらいますよ怜子さん、いや三神先生!)ワクワク

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:22:13.18 ID:6kZdO9Cp0
~教室~

恒一「父の仕事の関係でこちらにやってきました」

   「今は祖父母のところに行き遅れのアラサーと住んでいます」

   「えっと、どうぞよろしく!」

怜子「……」プルプル

久保寺「……3組の新しい仲間として仲良くやっていきましょう」

    「お互いに、助け合い、みんな一緒に頑張って」

    「来年の3月にはみんな一緒に健やかに卒業できるように」

    「では榊原くんはあそこの席に」

恒一「はーい」チラッ

怜子「……」キリッ

恒一(流石は怜子さん、これくらいじゃ動じないか)

   (ますますこれから先が楽しみになってきたぞー!)ワクワク

   (あ、病院で会った眼帯っ子ちゃん……鳴ちゃんだっけ)

   (やっぱり同じクラスだったのかー)トコトコ

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:27:34.71 ID:6kZdO9Cp0
~昼休み~

猿田「東京とこっちではどうかのう?」

恒一「自動販売機の下にカブトムシとかいっぱいいるし面白いよ!」

綾野「でもさぁいいよね東京!」

   「夜見山みたいな田舎町って最近ますますパっとしないしさぁ」

勅使河原「だよなーおもしれぇコトもねぇしなー」

恒一「あっちはあっちで確かに面白いね」

   「けど自動販売機の下にコガネムシくらいしかいないんだ」

猿田「そういうものって大事かのう?」

綾野「いいなー東京暮らしとかしてみたいなー!」

恒一「興味があるなら行ってみたらいいんじゃないかな」

   「自分の気持ちに素直なのが一番だよ!」

風見「君ならではの意見だろうね」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:32:17.64 ID:6kZdO9Cp0
王子「そういえばお父さんが大学教授なんだってね? それでそんなに好奇心が強いのかな」

恒一「あれ、なんで父さんのこと知ってるの?」

桜木「大体のコトは知ってますよ、三神先生から聞きましたから」ニコッ

勅使河原「どうせだったら三神センセーが担任だったら良かったのになあ……美人だし、キリッとしてるし、なあ!」

望月「うんうんうん!」コクコク

恒一「へー、みんな三神先生のことそういう風に見てるんだねー」

綾野「おやおや、こういっちゃんは綺麗なおねーさんはお好みではないのね?」

榊原「そんなわけじゃないけど、んーとね……あ、話変わるけどこれはとある親戚のお姉さんの話でね?」

   「その人は職場ではキリッとカッコよくしてる癖にさ、プライベートではヘソ出しのピチピチカットソーなんか着てドヤ顔で歩き回ってるんだ」

   「もう来年には30になる未婚女性がだよ?」

   「しかもいつでも同じ服、たぶん何着も同じの持っててそれをローテーションしてるんだ」

   「どれだけヘソ出したいんだよって話だよねまあ三神先生とはなんも関係ないんだけど」

勅使河原「うわー……」

桜木「それは……」

望月(それはそれで!)グッ

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:38:01.12 ID:6kZdO9Cp0
恒一(さて、これで明日から怜子さんを見るみんなの目が変わるはずだ)ワクワク

   (……あれ?)

   (さっき鳴ちゃんが座ってた机、ボロボロだ)

   (いつの間にかいないし、今のところクラスの誰かと会話してるとこも見てない)

   (もしかして彼女がいないもの、なのかな?)

   (ああ話したい! 話しかけて今どんな気分なのか問い詰めたい!)

風見「ど、どうしたの? そんな身もだえして……」アセ

恒一「ああいや、好奇心が猫とクラスメイトを殺しかけてただけだよ」

   「そういえば対策係の赤沢さんは? ちょっと聞きたいことがあったんだけど」

風見「ああ、今日はお休みみたいだよ」

恒一「そっかー、それじゃ仕方ないや」

   「じゃあこれから僕はちょっと校内探検してくるから話はまた今度しようね」バイバーイ

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:42:53.63 ID:6kZdO9Cp0
~自宅リビング~

――ガララッ!! バタバタバタ…!

怜子「ちょっと恒一くん何よあの自己紹介は!」クワッ

恒一「いや、ああいうのって掴みが大切じゃないですか」

   「だから少々エスプリに富んだ自己紹介をと思いまして」

怜子「だからって――

恒一「いやーおかげさまで友達ももうたくさんできました」

   「これもすべて怜子さんのおかげです、やっぱり怜子さんは頼りになるなあ!」

怜子「……」

   「……はあ、もういいわ」

   「明日からも夜見北の心得はしっかり守ってよね?」

恒一「ええ、もちろんですとも!」

   (明日からの学校生活、ますます楽しみだなあ)

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:47:29.64 ID:6kZdO9Cp0
~美術室~

カキカキカキ――……

恒一(今日も赤沢さんは休みかー、災厄について色々話したいのになあ)

怜子「――なんですか、これは」

恒一「……?」チラッ

望月「あの、レモンを」

怜子「これが?」

望月「レモンの叫びです」ドヤァ

怜子「これでいいと思うわけ?」

望月「僕にはこのレモンがこう見えるんです」

怜子「……」ハァ

   「授業の趣旨には合わないけど、でもいいわ」

   「けどこういうことは美術部だけでね」

望月「はい、すみません」

恒一(なるほど望月くん、そのアイデア借りさせてもらうよ)カキカキ…!!

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:51:17.58 ID:6kZdO9Cp0
怜子「!」

   「な、なんですかこれは……」プルプル

恒一「あの、メロンを」

怜子「こ・れ・が?」

恒一「デカメロンの●ぎです」

望月「? どれど……ッ!?」ブッ

   (三神先生の裸婦画……!?)ダラダラ

恒一「僕にはこのメロンがこう見えるんです」キリッ

怜子「……」ワナワナ

   「こんなもの没収です! 没収っ!」バッ ビリビリ!

恒一「ああ! 僕の芸術が!」

怜子「真面目にやりなさい!」プンプン

恒一「はーい」

   (顔真っ赤にしちゃって可愛いところもあるんだなあ)

望月「……あのさ榊原くん、あとでボクにさっきのもう一回描いてくれないかな?」モジモジ

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 13:58:03.51 ID:6kZdO9Cp0
~夜、自宅リビング~

――ガララッ…ドタドタドタ……!!

怜子「恒一くん!美術の時間のあれはなによ!!」クワッ

恒一「デカメロンです」

怜子「タイトルを聞いてるんじゃない!」

恒一「教師という仮面をかぶったマスクメロンです」

怜子「微妙に上手いこと言ってるんじゃないわよ!」バンッ

恒一「芸術にセクシャルは付き物じゃないですか」

   「仮にも芸術家ともあろう怜子さんがそれを否定するんですか?」

怜子「ぐぬぬ……」

恒一「ちなみに望月くんに複写したのをあげたらとても喜んでいました」

怜子「きゃああああああ!!??」ワタワタ

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:03:29.96 ID:6kZdO9Cp0
恒一「冗談です」

怜子「ホントでしょうね……」ガク

   「はぁ、もう良いわ……疲れたからもう寝る……」ヨロヨロ

恒一「はい、おやすみなさい怜子さん」

トテトテトテ……

レー「ドーシテドーシテー」バサバサ

恒一「うんうん、疑問は人生のスパイスだよね」

   「よっこいしょっと」ガタッ

レー「ドーシテドーシテ!」バッサバッサ

恒一「どーしてどーして!」ヘイヘイ!

   「……ふぅ」

   「怜子さんが想像以上に反応を示してくれて楽しいぞ」

   「けど学校での仮面はまだ剥がせないかー、今後どう攻めたら落とせるかなあ……」

   「まあ今日のところは明日以降のお楽しみってことにしとこうかな」ワクワク

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:10:00.70 ID:6kZdO9Cp0
~後日放課後、下駄箱~

恒一「お、赤沢さんだ。おーい」ブンブン

赤沢「恒一くんじゃない、帰りにわざわざ呼び止めるなんてなに?」

恒一「いや、災厄の件で対策係である赤沢さんに聞きたいことがあってね」

   「ちょっと個人のプライベートに水虫の足で踏み込むような内容だから教室では話せなくって」

赤沢「そういうことか……じゃあ校舎裏へ行きましょう、そこで話を伺うわ」



~校舎裏~

恒一「ありがとうね赤沢さん」

赤沢「対策係として話を聞かないわけにはいかないじゃない、当然のことよ」

恒一「ずっと気になってモヤモヤしてたからこうして話ができて嬉しいよ」

   「ただ、さっき言ってたプライベートな話の前に確認したいことがあるんだけど良いかな?」

赤沢「ええどうぞ」

恒一「今年って災厄の被害者は出てないんだよね?」

赤沢「もちろんよ」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:14:42.48 ID:6kZdO9Cp0
赤沢「4月の時点では机も椅子も足りてたから、恒一くんが来ることになった5月から現象の条件が整ったの」

   「だから災厄が始まるとしたらこれからだけど……」

   「まあこの私がいないもの対策も実施したし、まず安心していいわ」ドヤァ

恒一「うーん……」

赤沢「私の対策はカンペキよ、安心して」キリッ

恒一「……言いにくいんだけど、前提からして間違ってるかもしれないよ」

赤沢「どういうこと?」

恒一「4月の時点で犠牲者が出てるかもしれないってこと」

赤沢「そ、そんなはずはないわ!」

   「クラスの誰も欠けてないし、家族が不幸にあったなんて話も聞いてないっ」

   「それは先生方に確認もしてるし間違いない、揺るぎない事実よ!」

恒一「でも僕はとあるクラスメイトに生き写しの人間が死に掛けているのをこの目で見てるんだ」

   「入院してたときの話でね、幸い命は助かったけどけっこう危険だったみたいだよ」

赤沢「そんな……」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:20:45.06 ID:6kZdO9Cp0
恒一「もちろんたまたま似てたってことも考えられるよ」

   「けど僕には双子にしか見えないくらいそっくりだった」

赤沢「……」

恒一「いないもの対策っていうのは、災厄が始まることを抑えるおまじないなんだっけ」

   「病室で話してもらったときに詳しくルールとか聞かせてもらったから覚えてるよ」

   「災厄が始まってしまったら、もういないもの対策をしても効果がないんだよね?」

赤沢「ええ、そうよ……」

恒一「4月中に災厄が始まっていたとすると、別の対策に切り替えないとまずいかもしれない」

赤沢「……その」

恒一「うん?」

赤沢「その病院で見かけたっていうクラスメイトは、誰なの?」

   「そう、そうよ……私が問いただせば全部すっきりするわ!」

恒一「んー……そこがまた問題でね、うかつに訊くわけにもいかないんだよ」

赤沢「どういうこと?」

恒一「いないものにどうやって質問するか、これはまた面白い課題かもしれないね」ワクワク

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:27:35.50 ID:6kZdO9Cp0
赤沢「まさか、いないものか……」

恒一「どうする赤沢さん?対策係としてなにかこう、ズバッと打開策とか出てこない?」キラキラ

赤沢「う……」

恒一「自ら立候補して対策係になったくらいだもんね」

   「きっとものすごい手腕を発揮してくれるんだろうなー楽しみで仕方ないよ!」ワクワク

赤沢「えっと、その……対策係って私だけじゃないし?」

   「ほら、多佳子も大切なパートナーだから私1人のアイデアで動くのも、ね?」

恒一「……」ジー

赤沢「……」アセアセ

恒一「それもそうだよね!流石赤沢さんは気配りのできる有能な対策係だなあ」

赤沢「」ホッ

   「ま、まあね? そりゃ私くらいの対策係になればこれくらいお手の物よ?」

恒一「うん、ワクワクするような解決策を楽しみにしてるね、それじゃあ!」

トテトテトテ……

赤沢「はぁ……とりあえず多佳子に電話で相談しなきゃ……」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:33:17.93 ID:6kZdO9Cp0
~昼休み、教室~

恒一「ねーねー赤沢さーん」トコトコ

   「解決策、どうなった?」ワクワク

赤沢「……」

恒一「赤沢さん?」

赤沢「ふっふっふっ」

   「この対策係赤沢泉美を舐めてもらっちゃ困るわ」

   「こんな問題ちょちょいのちょいよ!」ドヤァ

恒一「わー流石赤沢さんだよ!」

   「それで、どうやって解決したの?」キラキラ

赤沢「それは……」

杉浦「単純に私に思い当たるフシがあっただけよ」ヒョコ

赤沢「ちょっと多佳子!」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:38:10.95 ID:6kZdO9Cp0
恒一「思い当たるフシっていうのは具体的に言うと?」

杉浦「泉美に言われて思い出したんだけど、小学校の頃他のクラスにそっくりな子がいてね」

恒一「そっくりっていうのは、あの子に?」

杉浦「……誰かは言わないし言えないわ」

   「とにかく、それで卒業アルバムを確認したの」

   「そしたら確かに瓜二つだけど、苗字も名前も違ってた」

恒一「離婚とか家の事情で苗字が変わることはあっても、名前は変わらないよね」

   「となるとそっくりな別人がいるのは確かなのかー」

   「……うん、これはすごいワクワクする展開だよ!」

赤沢「そこまで分かればあとはカンタン」

   「あとは恒一くんの情報を信用して、多佳子がお母さんにカマをかけるだけよ」

   「『そういえばあの子入院してたんだって? もし本当ならお見舞い行きたいんだけど』」

   「小さな田舎町だし主婦の情報網はちょっと異常なくらいだから、それで本当のところが分かるはずよ」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:43:51.98 ID:6kZdO9Cp0
恒一「すごいや!流石対策係だよ!」キラキラ

赤沢「これくらい当然よ」ドヤァ

杉浦「今日あたり帰ったらそれとなく訊いてみるわ」

   「分かり次第2人には教えるわね」

赤沢「お願いね多佳子」

恒一「じゃあそっちは杉浦さんに任せるとして……」

   「赤沢さんはもし災厄がすでに始まってたときの新対策を考えなきゃだね!」

赤沢「」

恒一「きっとまた鮮やかに解決法を考え出すんだろうなあ」ワクワク

赤沢「ま、まあね? 期待してくれても構わないけどほどほどにね?」

   (多佳子が小学校の頃見かけてたという偶然に助けられた上に、案自体彼女に全部丸投げしてたなんて言えないわ……)

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:49:43.05 ID:6kZdO9Cp0
~翌朝通学路~

――タタタタッ

恒一「まずいよまずいよー!」ハァハァ

   「『カンニング用のペーパーを作るとその作業自体がテスト勉強になる』」ハァハァ

   「それを確かめるために徹夜で実践してみたら途中で寝ちゃって大遅刻だよー!」ハァハァ

――タタタタッ

   「まさか転校して最初のテストすっぽかすなんて!」ハァハァ

   「怜子さんがどんな反応するのか楽しみなようで怖いよ!」ハァハァ

   「ついでにこの猛ダッシュで気胸が再発しないかドキドキだよ!」ハァハァ

――タタタッ……ピタリ

   「はぁ……どうせもう間に合わないんだ、諦めて発想を逆転させよう」ハァハァ

   「遅刻してもしょうがないと思わせるだけの何かがこの通学路であればいいんだ」ハァハァ

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:53:16.73 ID:6kZdO9Cp0
恒一「老婆を背負って送りました、とか、妊婦さんを助けてました、とか」ハァハァ

   「うん、そんなセリフ言える機会そうそうないぞ」ハァハァ

   「そんな言い訳を堂々とする自分を想像しただけでワクワクしてくるよ」ハァ…

   「ようやく息も落ち着いてきた……」

   「よし、老婆や妊婦はいないかな?」キョロキョロ

  
ブロロロロ――……!!!!


恒一「む、あんなところに!」

   「おあつらえ向きに暴走トラックと轢かれそうな女性が!」

   「命がけの人助けだなんて胸の高鳴りが抑えられないぞ!」

   「うおぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」ダッ


キキィイイイイイイイイ――……!!!!

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 14:59:59.53 ID:6kZdO9Cp0
~職員室~

恒一「そんなわけで人助けをしていたら遅刻してしまいました」キリッ

怜子「警察の方から事情は聞いたわ」

   「身体を張って人命救助だなんて、私は教師としてこんな生徒を持てて誇らしい」

恒一「いえいえ、当然のことをしたまでです」キリッ

   「でもまさか桜木さんのお母さんだとは知らなかったので、彼女の感謝の押し売りに少々戸惑いました」

怜子「まあそこは素直に受け取っておきなさい」

   「……ところでね、恒一くん」

恒一「はい、なんでしょうか」キリッ

怜子「警察の方から聞いた事故の時間、2時間目のテストの最中のはずなんだけど?」

恒一「」

怜子「……」

   「……まあ3時間目以降は考慮してあげるわ」

恒一「さっすが怜子さん!」

怜子「み・か・み・せ・ん・せ・い!」

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:03:49.54 ID:6kZdO9Cp0
~職員室外廊下~

――ガララ


恒一「失礼しましたー」ペコリ


――ピシャッ


恒一(まあ、赤点で追試だなんてこれも貴重な経験だよね!)

赤沢「――恒一くん」

恒一「あれ、赤沢さんに杉浦さんじゃない」

杉浦「お手柄だったわね」

恒一「それほどのことでもないよ」

   「ところでなんでわざわざ待っててくれたの?」

杉浦「分かり次第話す、っていう約束だったでしょう?」

   「やっぱり藤岡未咲という子は入院してて、しかも先日病状が悪化して緊急手術してるみたい」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:06:22.67 ID:6kZdO9Cp0
恒一「やっぱりアレは見間違いじゃなかったのかー」

赤沢「まあ待ちなさい、この話には続きがあるんだから……多佳子、続けて」

杉浦「うん」

   「主婦の情報網は伊達じゃなくてね、まあこれは確証のない噂話みたいなものなんだけど」

   「……どうやらあの2人は姉妹で、片方が里子に出された子みたいなの」

   「2人で仲良く遊んでる姿がどう見ても仲の良い双子にしか見えないって、井戸端会議で話題になったこともあるそうよ」

恒一「まああれだけそっくりならそりゃ噂にもなるよね」

   「どうする赤沢さん、まだ根拠のない噂話っていうレベルだけど僕的にはクロだと思うなあ」

赤沢「……正直、噂話だけだったら動くには足りない」

   「でも、今日のこと……ゆかりのお母さんとあなたというクラス関係者2人もの命が危険に晒された」

   「これは災厄が始まっていると考えるに足る、充分な根拠だと思うの」

恒一「それじゃあ?」ワクワク

赤沢「ええ、対策係としていないもの本人への接触を許可するわ」ドヤァ

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:13:10.65 ID:6kZdO9Cp0
~工房M~

見崎「……まさか対策係であるあなたから話しかけてくるとは思わなかった」

  「いいの、これ」

  「私はいないものなのに」

赤沢「すでに災厄が始まっているなら今更よ」

  「単刀直入に訊くわ、見崎さん」

  「あなた、双子の姉妹がいるわね?」

見崎「……!」

杉浦「その反応、やっぱり……」

見崎「どうしてそれを……」

恒一「ごめんね鳴ちゃん、僕苦しそうにしてる鳴ちゃんにそっくりな子を見ちゃったんだ、入院中に病院で」

見崎「……そう、あなただったのね」

恒一「鳴ちゃん正直に答えて欲しい、4月から災厄は始まっていた……そうだね?」

見崎「……」

  「……わからない……でも、私の半身が4月に死にかけているのは、事実」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:16:58.40 ID:6kZdO9Cp0
赤沢「……!」

恒一「そう、ごめんねプライベートなこと聞いちゃって」

見崎「……」

赤沢「あなた今までどうして黙って――

恒一「赤沢さん」

赤沢「……ッ」

杉浦「泉美……」

恒一「これだけ確認できれば十分だよ、今日はもう失礼させてもらおう?」

   「じゃあね、鳴ちゃん」

   「いないものはたぶん今日までだから、明日から改めてよろしくね」

   「今まで話せなかった分色々お話しようね」ワクワク

見崎「……」

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:20:59.72 ID:6kZdO9Cp0
~夜、自宅リビング~

恒一「そういえば怜子さん」

怜子「んー?」

恒一「見崎」

怜子「」ビクッ

恒一「……」

怜子「恒一くん、決まりごとは――」

恒一「鳴ちゃん」

怜子「」ビクッ

恒一「……」

怜子「恒一くん!本当にやめ――」

恒一「が、いないものじゃなくなるそうですよ」

怜子「……え?」

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:25:46.13 ID:6kZdO9Cp0
怜子「そんな、すでに4月から災厄が……」

恒一「だからいないもの対策なんて無意味だったみたいです」

   「少なくとも鳴ちゃんをいないものにしていても効果がなかった」

   「ついでに言うと今日の命からがらの救出劇も災厄のしわざかも……」

   「というのが赤沢さんの見解です」

   「まさか僕も災厄のターゲットになってたなんて驚きですね!」ワクワク

怜子「恒一くん、それ笑い話にならないわよ……」

   「もしもう災厄が始まってしまってるなら、いつ自分が死ぬか分からないってことなのよ?」

恒一「死後の世界ってどうなってるんですかねー」

   「ちょっと興味ありません?」キラキラ

怜子「……なんか恒一くんがちょっと羨ましくなってきた」ハァ

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:29:13.32 ID:6kZdO9Cp0
~病院待合室~

恒一「うーん、病院ってなんかやっぱり非日常的でいいよね!」

   「なにか面白いものないかなーっと」キョロキョロ

   「……ん?」

――ギギギ……

   「なにやらあのエレベーターから悔しそうな声がするぞ」

――ギギギ……

   「悔しいのう悔しいのう」

――ギ…ギィ……

   「ううむ、エレベーターから響く悲痛な声……」

   「むむむ……やはりこれはミステリー、いやホラーですな!」ワクワク

看護婦「榊原さん、榊原恒一さーん、診察室2番へどうぞー」

恒一「はいはーい」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:33:58.80 ID:6kZdO9Cp0
~病院受付~

恒一「会計終わったらこの後どうしようかなー」

   「みんなが授業受けてる中、1人自由の身だなんてワクワクしちゃうよね!」

水野姉「お、ワクワク少年じゃないですかー」トコトコ

    「最近カラダの調子はどう?あと何かワクワクは見つかったかな?」

恒一「体調はバッチリですよ、この間も遅刻して全力で走りましたけど問題なしでした!」

水野姉「こらこら……」

恒一「ワクワクの方は……なんとこの病院で心霊現象を見かけたかもしれません」キラキラ

水野姉「おお、ホラー少年に転向ですかな?」

恒一「なにやらエレベーターから悔しそうな声が響いてくるんです」

   「ギギギ……ギギギ……って、これって絶対幽霊のしわざですよね!」

水野姉「んー……単純にこの病棟古いからなあ、もしかしたら調子悪いのかも」

    「そんなんじゃ患者さんも怖がるだろうし、一応点検してもらうことにするね」

恒一「もし何も異常なかったらきっと幽霊ですよ!」ワクワク

水野姉「はいはい」クスクス

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:40:14.96 ID:6kZdO9Cp0
~帰路、工務店前~

恒一「お、随分おっきなガラスだなあ」

   「この間なにかで読んだけど、ガラスって液体って説があるんだっけ?」

   「こんなカチンカチンなのに液体だなんて……不思議だなあ」ツンツン


――グラッ……


恒一「あ」


バリ―――ン!!!!


恒一「」

綾野「あ、お仲間はっけーん!」ヤッホー

   「こういっちゃんもバックレ――ってどしたのこのガラス!?」

恒一「……このままここからバックレたい気分だよ」

店主「なんじゃこりゃー!?」ドタドタ

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:44:36.00 ID:6kZdO9Cp0
~工房M~

恒一「ってことがあったんだよ」

見崎「そう」

恒一「今日が風の強い日で助かったよ」

   「突風で倒れたんだと勘違いした店主さんに逆にお詫びの菓子折りもらっちゃった」

   「栗饅頭食べる?」

見崎「たべる」

恒一「はい」ヒョイ

見崎「ありがとう」モグモグ

恒一「なんで栗饅頭ってこんな美味しいんだろうね!」

見崎「栗も饅頭もおいしいんだから、必然」モグモグ

恒一「そっかー、鳴ちゃんは頭がいいなあ」モグモグ

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:50:50.17 ID:6kZdO9Cp0
見崎「ところで今日はなんでここにきたの?」

恒一「病院帰りで暇だったからね」

   「この間お邪魔したときはじっくり見れなかったけど、ここの人形もう1度見たいって思ってたんだ」キラキラ

見崎「そう、こういうの好きなんだ」

恒一「むしろ嫌いなものがないかな、何にだって何かしら魅力はあるからね」

見崎「そう……」

恒一「むしろ鳴ちゃんこそなんでここにいるの? いないものじゃなくなったはずだよね?」

見崎「うん、きっと今日のホームルームで赤沢さんがそのことについて発表すると思って」

恒一「うんうん」

見崎「いないものとして自由にできるのは今日までだと思ったら、つい」

恒一「やーい鳴ちゃんのサボりんぼー」

見崎「……」ヒョイヒョイパクパク

恒一「あー! 僕の栗饅頭がー!」

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 15:56:25.32 ID:6kZdO9Cp0
見崎「ごちそうさま」

恒一「お粗末さまー」

   「ほっぺたパンパンにして食べてる鳴ちゃんの姿を見てるのは楽しかったよ」

見崎「……」

恒一「そういえば前から気になってたんだけど」

見崎「なに」

恒一「鳴ちゃんっていつも眼帯してるよね」

   「しかも僕が入院中に会ったときからしてたけど、随分長い物もらいだね」

   「お医者さん変えたほうがいいんじゃない?」

見崎「物もらいじゃない……」

恒一「じゃあファッション?」

見崎「ちがう、榊原くんもしかして私のことそういうヘンな子だと思ってる?」

恒一「いや、そうだったら面白いなって」

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:00:42.43 ID:6kZdO9Cp0
見崎「……これはね、見えなくて良いものを見えないようにするための、眼帯」

恒一「なにそれ!すっごい気になる!」ワクワク

見崎「この眼帯の下、見てみる?」

恒一「いいの?やったー!」

見崎「……やっぱやめようかな」

恒一「そんなあ」

見崎「冗談、今眼帯はずすね」

――シュル……パサ……

恒一「おー緑色の目だ!これどうなってるの?」ワクワク

見崎「これは、義眼」

恒一「そうなんだ、すっごいよくできてるねー」キラキラ

見崎「……あんまり見つめないで、恥ずかしいから」

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:05:42.71 ID:6kZdO9Cp0
恒一「義眼って動くの?こう、右見ようとしたときとか」

見崎「……こんな感じ」キョロッ

恒一「あー義眼の方はあんまり動かないんだね、なるほどー」

   「涙とかは出るの?」

見崎「涙は眼球じゃなくてまぶたの涙腺から出るから、出るよ」

恒一「そっかーあとは――

見崎「ごめん本題に移ってもいい?」

恒一「初めて義眼っていうの見たから興奮しちゃったよ、ごめんね」

   「眼帯が見えなくていいものを見ないための物ってことは……」

   「その義眼が見えなくていいものを見せちゃうってこと?」

見崎「……」コクリ

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:09:03.89 ID:6kZdO9Cp0
恒一「現代の科学技術ってすごいんだね、義眼でちゃんと見られるんだ!」キラキラ

見崎「ちがう、科学の力じゃない……」

恒一「どういうこと?」

見崎「この義眼は、普通の景色を見ることはできない」

恒一「つまりつまり?」ワクワク

見崎「この目はね、死の色が見えるの」

恒一「すごいね! それって何色?」キラキラ

見崎「……もうちょっと疑うことを覚えてもいいと思う」

恒一「嘘なの?」

見崎「いや……本当だけど……」

   「そこまで素直に受け入れられると流石の私も戸惑いを隠せないというか……」

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:14:18.33 ID:6kZdO9Cp0
恒一「で、何色なの?もったいぶらずに教えてよー」ワクワク

見崎「普通に見える色では表現できない色なの」

恒一「そっかーどんな色なのか知りたかったなあ」ハァ

見崎「ごめんなさい」

恒一「鳴ちゃんが謝ることじゃないよ、むしろこんな素敵なこと教えてくれてありがとう」

見崎「素敵?」

恒一「うん、こんなに胸が高鳴ったのは10円玉の鳳凰にオスメスの区別があるってことを知って以来だよ!」

見崎「そう……」

恒一「ところで死の色が分かるっていうのは、具体的にどういうことなの?」

   「死体とか遺影がカラフルに見えるとか?」

見崎「ちょっと違うかな、死に近いものから色がついて見えるの」

   「病気や怪我で死に近づくほどはっきりと、濃く」

   「もちろん死者も、ね」

119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:19:25.77 ID:6kZdO9Cp0
恒一「死者って、もしかしてクラスに紛れ込んだ死者も分かったりするの?」キラキラ

見崎「今まで眼帯を外して教室に行ったことがないの」

   「だから確証は持てないけど……たぶん」コクリ

恒一「すごいや死者がわかるかもしれないなんて!」ワクワク

見崎「けど、死者が分かってもどうすることもできないよ」

恒一「それでも何も知らないよりは知ってた方が良くない?」キラキラ

見崎「……単純に興味本位でしょ」ジトー

恒一「すごいねその義眼、心まで読めちゃうんだ」

見崎「榊原くんが分かりやすいだけ」

恒一「そんなことないと思うけどなー」

120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:21:56.90 ID:6kZdO9Cp0
恒一「明日学校で確かめてみようよ」ワクワク

見崎「……」コクリ

恒一「やったー!」

見崎「……榊原くんは」

恒一「うん?」

見崎「榊原くんは不気味に思わないんだね」

恒一「なにを?」キョトン

見崎「この目……作り物で、しかも死が見えるなんて」

恒一「他の人にない力があるなんてカッコいいと思うよ?」

見崎「そう……」

恒一「それにその目すっごく綺麗だし、眼帯で隠してるのもったいないと思うなあ」

見崎「……」

恒一「それじゃまた明日学校でね!」

見崎「……ばいばい、命の恩人さん」

123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:27:26.79 ID:6kZdO9Cp0
~夜、自宅リビング~

ガラ――ドタドタドタッ……!

怜子「恒一くん!」クワッ

恒一「お帰りなさい怜子さん、いやー今日はすごいニュースがありまして」

怜子「そんなことはどうでもいいの! なによコレ!」ズイッ

恒一「ああ、今朝のうちに携帯と入れ替えておいたテレビリモコンですね」

怜子「やっぱり恒一くんのしわざだったのね……」プルプル

恒一「携帯電話があると、いつどこにいても繋がっていて監視されてるような気分になりませんか?」

   「怜子さんにはぜひ今日1日自由の身を満喫してもらおうという粋な計らいだったのですが……」

   「もしかしてお気に召しませんでした?」

怜子「もしかしなくても召さないわよ!」

   「バッグからテレビリモコン取り出して呆然としてるとこを久保寺先生に見られたのよ!」

   「あの久保寺先生が鼻水噴出す瞬間なんて見られるの最初で最後でしょうね!」ワナワナ

恒一「うわーそれは見たかった」

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:33:43.99 ID:6kZdO9Cp0
怜子「はぁ……」

   「怒鳴ったらどっと疲れた……」

レー「レーチャンゲンキダシテレーチャン」

恒一「れーちゃんげんきだしてれーちゃん」

怜子「うっさいわね誰のせいよ誰のっ!」クワッ

   「……もういいや……お風呂入って寝る……」トボトボ

恒一「ええ、湯冷めしないよう気をつけてくださいね」

   「おやすみなさい怜子さん、良い夢を」

怜子「また急にそうやって優しくして……」

   (もしかして、現象のことで思いつめないように色々してくれてる、とか?)チラッ

恒一「いやーそれにしても久保寺先生の噴出す瞬間見たかったなあ」キラキラ

   「……ん?なんです?」キョトン

怜子「なんでもない……」ハァ

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:39:30.63 ID:6kZdO9Cp0
~朝、教室~

――ガララッ

恒一「おはよー」

綾野「おはよーこういっちゃん」

勅使河原「おう、おはよう!」

恒一「鳴ちゃんはもう来てる?」

勅使河原「いんや、まだだ」

     「それにしてもいないものじゃなくなったっつーのがまだ違和感あるわ」ポリポリ

     「昨日からいきなりだもんなあ」

望月「しょうがないよ、今までずっとそれで通してたんだもの」

綾野「まー仲良くしていい友達が増えるってのはイイコトだよー」

勅使河原「だな!」

129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:41:22.25 ID:6kZdO9Cp0
――ガララッ

勅使河原「おっと、噂をすれば」

恒一「おはよー鳴ちゃん!」

見崎「……おはよう」

恒一「眼帯つけたまま来たんだ?」

見崎「うん、今日1日かけてこっそり観察することにする」

恒一「そっかー楽しみにしてるね!」

綾野「なになに? なんの話ー?」

恒一「それはねー……」

見崎「だめ、ないしょ」

勅使河原「なんだよ2人だけの秘密かー? くっそー甘酸っぱいな!」

望月「ていうか2人っていつの間にか仲良くなってたんだね」

見崎「栗饅頭のおかげ、かな」

望月「?」

131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:46:18.64 ID:6kZdO9Cp0
~放課後、工房M~

恒一「で、どう?わかった?」

見崎「……」コクリ

恒一「おお!」ガタッ

見崎「興奮しすぎ」

恒一「これはさすがにワクワクせずにはいられないよ」キラキラ

見崎「……」

   「あなたにとってはつらい事実になるかもしれないけど、構わない?」

恒一「嫌いなものがないように、つらいことだって僕にはないよ」

   「なんだって何かしら良いことがあって、僕はそれだけで楽しんでいけるんだ」

見崎「……そう」

恒一「それで、いったい誰が死者なの?」ワクワク

見崎「それは――

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:53:40.36 ID:6kZdO9Cp0
~自宅リビング~

ガララッ――トテトテトテ……

怜子「ただいまー」

恒一「お帰りなさい怜子さん、今ビール持ってきますね」

怜子「気が利くじゃない、どういう風の吹き回し?」

恒一「いえいえ、いつも世話になっている甥として生徒として当然の行いですよ」

怜子「そこまで言われると、逆になにかあるんじゃないかって勘繰っちゃうんだけど?」

恒一「そんなまさかー」トテトテ

   (ほんとそんなまさか、だったなあ)

   (怜子さんが死者だったなんて)

   (記憶も改竄されるっていうのは本当だったんだなあ)

   (怜子さんが死んだなんて全然覚えがないや)

   (けど1度死に別れてる人とまたこうして会えるなんて、お得だよね!)

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 16:58:44.23 ID:6kZdO9Cp0
恒一「はい、どうぞ」

怜子「ん、ありがとうね」

――プシュッ

怜子「んくっ……んくっ……んくっ……」

恒一「……」ジー

   (死者も飲食するんだなー)

   (ってことは出すものも出すんだろうなー)

   (死者の出した排泄物を栄養にして育った植物とかって、死者が消えたらどうなるんだろう)

   (枯れるのかな? それとも育たなかったことに改竄されるのかな?)

   (うーん、興味が尽きないぞう)

怜子「――ねえ?」

恒一「はい?」

怜子「そんなに見つめられると、なんか飲みにくいんだけど」

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:01:23.95 ID:6kZdO9Cp0
恒一「すみません見惚れてまして」

怜子「もう、嘘ばっかり」

恒一「怜子さんへの興味が募ってるのは本当です」

怜子「おだててどうする気? そんなことで美術の成績は上げないぞー」

恒一「そんなんじゃないですよ、僕は本気です」ジ…

怜子「……もう、年上をからかうんじゃありません」

恒一「……」ジー…

怜子「ちょ、ちょっと……」ドギマギ

恒一「……怜子さん」

怜子「な、なに?」

恒一「今日ってトイレ行きました?」

怜子「」

142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:06:22.37 ID:6kZdO9Cp0
~自室~

恒一「なにも引っ叩かなくてもいいのに……」ナデナデ

   「それにしても怜子さんが死者、かあ」

   「確かにそれなら机と椅子が足りてた4月から犠牲者が出たのも分かる、かな」

   「今度職員室に忍び込んで机の数確かめてみなきゃ」ワクワク

   「それにこれまで以上に怜子さんの反応を色々見てみなきゃなー」

   「死者と触れ合える機会なんて今後もうないだろうし」

   「もうなんか怜子さんのこと考えるだけで胸がドキドキするよ!」

   「あとはそうだなー、災厄に全力で対抗するのも楽しそうかも」

   「桜木さんのお母さんを助けることが出来たんだから、きっと抗えるはずだよね」キラキラ

   「うーん、明日からますます楽しみだなー!」ワクワク

145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:11:19.65 ID:6kZdO9Cp0
~教室、授業中~

久保寺「擬人法というのはつまり人でないものを人に見立て――」ゲッソリ


恒一(とりあえず、職員室の机が1組だけ付け足したように新品になってるのは確認した)

   (つまり増えたのは教師で、鳴ちゃんの言うとおり怜子さんなんだろうなー)


久保寺「ここで気をつけて欲しいのは――」ゲッソリ


恒一(うーん、怜子さんが死者だっていうのは秘密にしておいた方がいいかな)

   (赤沢さんなんかに知らせたりしたら調子に乗って対策されちゃいそうだし)

   (せっかくの観察対象なんだから邪魔はさせないようにしなきゃ)


久保寺「ちなみに噂が1人歩きするというのは――」ゲッソリ


恒一(かといって災厄に対して何も対策を高じないのはもったいないよね)

   (死者を観察する機会が今だけなように、災厄に立ち向かえるのも今だけなんだから!)ワクワク

149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:17:21.87 ID:6kZdO9Cp0
恒一(さて、どうしたものかなー)ワクワク

   (それにしても久保寺先生顔色悪いなー、ちゃんとご飯食べてるのかな?)

   (真面目を絵に描いたような人だし、きっと災厄のことで神経質すり減らしてるんだろうなあ)

   (あの歳で独身というときっと寂しい食事風景なんだろう、奥さんいれば多少はマシだろうに……)グスン

   (この際怜子さんとくっ付けば……いやいや1年で成仏しちゃうんじゃ久保寺先生報われないか)

   (もういっそこのクラスの担任辞めれば気苦労なく過ごせるだろうに)

   (ってそうだ、久保寺先生をいないものにしちゃうのはどうだろう!)

   (生徒が増えたら生徒をいないものに、教師が増えたなら教師をいないものに)

   (うんうん、我ながら冴えてるぞ)

   (けどどうやって説得したものかなー……)

151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:22:02.70 ID:6kZdO9Cp0
~昼休み、屋上~

恒一「ってことを授業中に思いついたんだけどどう思う?」

見崎「……災厄が始まったらいないものを作っても意味ないんじゃなかった?」

恒一「鳴ちゃんじゃダメだったのは、増えたのが教師なのに生徒で数合わせしようとしたからかも」

   「だから教師の久保寺先生をいないものにするのは、鳴ちゃんの時とはちょっとアプローチが違うんだ」

   「もちろん効果がないかもしれないけど、そうだと決めつけるのはもったいないと思うよ」

見崎「……たぶん」

恒一「うん? なになに?」

見崎「たぶん、久保寺先生に事情を話していないものになってもらうこと……」

   「せめて長期休暇を取ってもらうことくらいなら可能だと思う」

恒一「おお!その根拠は?」ワクワク

152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:25:53.53 ID:6kZdO9Cp0
見崎「彼にも死の色がうっすらだけど見えた」

   「きっと3組の重圧で精神的に追い詰められて死を考え始めてるんだと思う」

   「そこを自分がいないものに仕立て上げた生徒に同じ目に合って欲しいと言われたら……」

恒一「なるほど、そこに付けこむんだね!」

見崎「そういう人聞きの悪い言い方は、嫌い」プイ

恒一「ごめんごめん、ほら栗饅頭あげるから許して?」

見崎「……うん」モグモグ

恒一「けどそれなら確かになんとかなりそうだね」

   「よーし、久保寺先生を説得していないものにしちゃおう!」ワクワク

見崎「……」ジー

恒一「もうないよ?」

見崎「……」プイ

156: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:29:29.15 ID:6kZdO9Cp0
~放課後、屋上~

久保寺「こんな所まで呼び出して、何の用ですか?」

    「対策について話したいことがある、とのことでしたが」

見崎「――それじゃあ単刀直入に」

   「実は先生にいないものになって欲しいんです」

久保寺「……先日までのことは申し訳ありませんでした、当て付けたくなる気持ちも分かりますしかし――

見崎「先生? 最近死ぬことを考えていませんか?」

久保寺「……続けてください」

見崎「ここから先はオフレコで」

久保寺「……約束しましょう」

見崎「……じゃあ、続けます」

   「実は今年の死者、クラスメイトではなかったんです」

久保寺「……どいうことですか?」

見崎「死者は教師の方、ということ」

158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:31:50.64 ID:6kZdO9Cp0
見崎「4月の時点で教室の机は足りていました」

   「それじゃあ、職員室は?」

   「他のクラスに副担任は?」

   「今年から美術部が再開した理由は?」

久保寺「……なんと」

見崎「ええ、そういうこと」

   「そこで増えたのが教師なら教師をいないものにしてみては、と」

   「久保寺先生も死ぬほど思いつめてるようですし、しばらくお暇を取ってくれませんか?」

久保寺「しかし……」

見崎「これもクラスのためなんですよ、先生?」

   「なにせ涙を飲んで愛する生徒をいないものにした先生なんだから」

   「きっと自分を同じ立場に追い込める人だと、私はそう信じてます」クス

久保寺「……君には負けました、良い機会だと思ってゆっくり休むことにしましょう」フッ

160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:35:54.04 ID:6kZdO9Cp0
~自宅リビング~

怜子「――急でびっくりしたけど、久保寺先生しばらく療養されることになったわ」

恒一「あー、確かに最近目に見えてやつれてましたもんね」

   「生真面目な人だったからきっと心が折れてしまったんですよ」

   (ある意味僕が鳴ちゃんにへし折らせたんだけどね、死亡フラグを)

怜子「そうね……3組の担任っていうのはそれだけで死と隣り合わせなんだもの」

   「しかも生徒の命まで預かる立場、彼のことは責められないわね……」

恒一「そういう怜子さんだって同じ立場じゃないですか」

   「しかもこれから久保寺先生に代わって担任にもなるわけでしょう?」

   「無理しないでくださいね、何かあれば相談に乗りますから」

怜子「ありがとう、恒一くん……」

恒一「いえいえ良いんですよ」

   (ひゃっほーう、これで観察がさらにしやすくなったよ!)

   (怜子さんをホームルームのたびに拝めるなんて胸が高鳴るね!)ドキドキ

161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:37:41.80 ID:6kZdO9Cp0
~教室、ホームルーム~

怜子「――というわけで、久保寺先生に代わりまして今日から私が担任となります」

   「これから卒業まで、皆さん改めてよろしくね」

勅使河原「よろしくお願いしまーす!」

望月「やったぁ……」グッ

猿田「それにしても急な話ぞな」

赤沢「……さては逃げたわねあのメガネ」ギリッ

綾野「えー! くぼっち見損なったなあ……」

小椋「……マジさいてー」

見崎(クラスのための人柱になったのに、不憫な先生)

恒一(……さて、これで現象が今後どうなるかな?)ワクワク

   (それに公私の別をどこまで分けられるかの実験も平行しないとなー)ワクワク

164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:42:17.43 ID:6kZdO9Cp0
~美術室、授業中~

怜子「本日は粘土細工を行います」

   「皆さん思い思いに自由に、3次元の芸術に文字通り触れてみましょう」

恒一(おー、これは純粋に好きな分野だ!)

   (造形って楽しいよね)ワクワク

   (まさにワクワクを形にするって感じだ)

   (けど今回は楽しいだけで満足しちゃいけない)

   (怜子さんの反応を得られるような何かをしないと)

   (もう一種の義務感だよね!)

   (んー、怜子さんの裸婦像じゃありきたりだしなあ)

   (……よし!)

コネコネコネコネ……

165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:44:18.99 ID:6kZdO9Cp0
望月「こ、これは……!」ハァハァ

恒一「さすが望月くんお目が高い」

   「これはそう、我が家に住みつくアラサー女のプライベート姿だ!」

   「個人的にこの露出したヘソのラインの再現に心血を注いでみたんだけど、どう?」

   「あと分かるかな、このジーンズのウエストにちょっと乗った肉具合とか」

望月「わかるよぉ……ヘソ出しぴちぴちカットソーがすごいよぉ……」ハァハァ

勅使河原「これが前言ってたアレかー……」

綾野「これは確かに……」

怜子「きゃあああああああああああああ!!!!????」

――ドグシャァア!!

恒一「ああ!?僕の芸術がー!?」

望月「ボクの三神先生がああ!?」

怜子「真面目にやりなさい!!」


多々良「見崎さんは何作ってるんですか?」

見崎「栗饅頭」コネコネ

170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:49:31.29 ID:6kZdO9Cp0
~自宅リビング~

ガララ――トテトテトテ……

怜子「……」

恒一「お帰りなさい、初担任の1日はどうでしたか?」

怜子「おかげさまで肩の力もスットーンと抜けたわ……」

恒一「それはなにより」

怜子「というか何よあの無駄な再現度……」

   「思わず勢いで潰しちゃったけどクオリティ高すぎでしょ……」

恒一「一応そっち系の高校に進学できたらと思ってますからね」

   「あとは普段からよく見つめているので簡単に再現できたんだと思いますよ」

怜子「またそういうことを……」

恒一「本当ですよ、その証拠に……」ジー

怜子「な、なによ」モジモジ

恒一「少し太ったこともすぐに分かるわけです」

怜子「」

172: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 17:56:05.25 ID:6kZdO9Cp0
~怜子自室~

怜子「はあ……恒一くんにはペース狂わせられっぱなしだなあ、思わず小突いちゃった」

   「でも彼のおかげで気が紛れてる部分はあるし、その点は感謝しないといけないのかな」

   「じゃなきゃ今頃私だって久保寺先生みたいに心が折れてたかもしれない」

   「……」

   「だとしても今日の美術のアレはないでしょ!」

   「そんなにウエストに肉ついてないし!」

   「……ない、よね?」

   「……」ムニ…

   「きょ、今日はなんとなく腹筋してから寝ようかな、うんそんな気分」

   「……あと、クラス担任になったからには災厄を止める手がかりをなんとしても見つけないと」

   「明日あたり千曳先生のところに伺ってみなきゃ」

   「……さーて、腹筋腹筋っと!」

175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:01:22.89 ID:6kZdO9Cp0
~昼休み教室~

恒一「うーん、今後の災厄への対策は何がいいかなあ」

   「万が一いないもの対策が意味なかったと仮定すると、うーん……」

赤沢「……」ソワソワ

恒一「赤沢さん」

赤沢「!」

恒一「に頼るのはなんとなく今回はやめておこうかな」

赤沢「……」

恒一「よーし、ここは斬新な発想に期待して勅使河原に相談してみよう」ガタッ

トコトコトコ…

赤沢「……なんで私じゃなくて勅使河原なのよ」ムー

杉浦「あら泉美、何か対策思いついてたの?」

赤沢「これっぽっちも思いついてないけど頼られなかったら頼られなかったでなんだか悔しいじゃない!」

杉浦「毎回フォローのために無茶振りされる私の身にもなってね?」

177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:05:03.33 ID:6kZdO9Cp0
恒一「というわけで勅使河原なんかない?」

勅使河原「いきなりだなー」

恒一「もし何か良いアイデア出たら豪華景品プレゼントしちゃうよ!」

勅使河原「よっ!太っ腹!」

      「ちなみにその景品って?」

恒一「カブトムシのつめ合わせに三神先生ブロマイドとか……」

勅使河原「うわビッミョー……」

望月「!」ガタタッ

恒一「まあ何か思いついたらいつでも連絡ちょうだいよ、待ってるから」キラキラ

勅使河原「あんまオレに期待のまなざし向けられてもなー……まあ気長に待っててくれ」ハハ

望月「……」

180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:10:59.31 ID:6kZdO9Cp0
~第2図書室~

恒一「というわけで今度は千曳先生にお知恵を拝借しに来ました!」

千曳「今日は先客万来だね、さっきも三神先生が同じ用件でいらしたところだよ」

   「もう彼女には情報を伝えてあるから近々クラスで発表されると思うんだが……」

恒一「今知りたいです!」

千曳「……まあ隠すことでもないしね、構わないよ」

   「今まで災厄が止まった年はあるにはあるんだ、15年前のことなんだが」

恒一「それでそれで?」ワクワク

千曳「8月の始めに合宿に行った先で神社に参拝していてね」

   「そのタイミングで災厄がピタッと止んでいるんだよ」

恒一「それじゃあ?」キラキラ

千曳「ただし同様のことを行っても他の年では効果がなかったんだ」

恒一「うーん……ということは合宿に行った先で参拝以外の何かをしてて、それが効果あったってことなんですかね」

千曳「その可能性は高いね、あるいは人数とかの要素が関係しているのかもしれない」

恒一「なるほど大変参考になりました、それでは」ペコリ

181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:12:26.63 ID:6kZdO9Cp0
~教室~

恒一「というわけで千曳先生からヒントはもらえたけど、まだまだアイデア募集中だよ」

勅使河原「15年前かー、うーん……やっぱりオレにはわからん!すまん!」

恒一「まあのんびり気長に待ってるから、思いついたら夏休み中にでも電話で教えてね」

赤沢「……だからなんで私に頼る発想がないのよ」プルプル

杉浦「はいはい帰りにイノヤでハワイコナでも飲みましょうねー」

望月「……」


~教室、帰りのホームルーム~

怜子「8月の上旬に2泊3日の合宿を行います」

   「強制ではありませんがこれは大切な行事です、できるだけ参加するように」

恒一(千曳先生の言ってた通りすぐに発表になったなー)

   (怜子さんも災厄を止めるために一生懸命だろうね)

   (けどもし自分が死者だって分かったらどんな気持ちになるのかな)

   (……あれ? なんでだろう、こんな興味深い問題なのに全然ワクワクしないぞ)

   (うーん、疲れてるのかな……)

183: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:17:34.60 ID:6kZdO9Cp0
~後日昼休み~

望月「あの、榊原くん」モジモジ

恒一「どうしたの望月くん?」

望月「えっと……例の災厄対策のアイデアについての景品って、まだ有効だったりする?」

恒一「んーとね、ごめん、まだカブトムシは取れてないんだ」

望月「そっちじゃなくって、その……ブロマイドの方なんだけど」ゴニョゴニョ

恒一「ああ写真ならあるよ、何せ実家だからそりゃもう腐るほどねー」

望月「そうなんだ!」パァッ

   「実はね、災厄を止めた15年前のことについて重要な情報を掴めたかもしれないんだ」

恒一「すごいや望月くん!」

望月「ここで話すのもなんだし、放課後にイノヤってカフェで話せたらと思うんだけどどうかな?」

恒一「うん分かった、それじゃ一度帰って写真の方も何枚か見繕って持っていくね」

望月「うんうん! それじゃまた後でイノヤでねっ」


赤沢「……」ニヤリ

186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:22:55.04 ID:6kZdO9Cp0
~イノヤ~

ガチャ――カランカラン

恒一「えーっと望月くんは、と」キョロキョロ

赤沢「――あ、あら恒一くんじゃない、ぐ、偶然ね?」シレッ

恒一「赤沢さんだ、ほんと偶然だねー今日はどうしてここに?」

赤沢「えっと、たまたま……ほら、私ここの常連だから?」ドヤァ

恒一「へーそうなんだー」

赤沢「そ、そういう恒一くんの方は、今日はどうしてここに?」ソワソワ

恒一「うん、今までに1度だけ災厄を止められた年があったらしいんだけどね」

   「そのことについて望月くんが情報を何か得たらしくて、それを聞かせてもらうために今日はここに来てみたんだー」

赤沢「へ、へー? それは初耳ねー?」ソワソワ

   「けど聞いたからには対策係としては聞き逃せないわね」ウンウン

   「せっかくこうして偶然めぐり合わせたんだし、これも何かの縁だと思って同席させてもらおうかしら」チラッ

恒一「うん、別に良いんじゃないかな」

赤沢「まあ対策係だし当然の権利というか? 義務よね? うんうん」ホッ

188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:27:48.40 ID:6kZdO9Cp0
ガチャ――カラランカララン

恒一「望月くんこっちこっちー」ブンブン

望月「うわなんか赤沢さんもいる……」

赤沢「なによいたら悪いわけ?」

望月「まあ良いけどね……」

恒一「ささ、座って座って」

   「それで情報っていうのはなに?早く教えてよー」ワクワク

望月「わざわざここに呼んだのには理由があってね」

   「その災厄に関する情報っていうのが、ここで働いてるボクのお姉さんから得たものだからなんだ」

赤沢「ちょっと待って、あなたご家族に現象について話したの?」ギロ

望月「」ギクッ

   (まさか怜子さんのブロマイド欲しさに危険を冒しただなんて言えない……)

189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:31:41.40 ID:6kZdO9Cp0
望月「ま、まあもう災厄は始まっちゃってるみたいだし、今更かなと思って……」

   「とにかく本人から直接聞いてもらうのが良いと思って今日は来てもらったんだ」

   「――というわけでお姉さん、話してもらってもいいかな?」

智香「ユウヤくんのお友達ね、姉の智香っていいます」ペコリ

   「えっと、何から話せばいいかな……」

   「うちには松永克己さんっていう常連さんがいるんだけどね」

   「その人が夜見北の3年3組出身だっていうのがこの間たまたま分かって」

   「それで酔ってる彼に思い切って尋ねてみたの」

   「『松永さんの年はある年だったのか』って」

恒一「そしたら、どうだったんです?」ワクワク

智香「確かにこう言ったのよ」

   「『あの年の呪いは俺が……みんなを助けたんだよ俺が!』」

   「『だから伝えなきゃと思って残したんだ、アレを……』」

恒一「うわー、そのぼやかしっぷりがまたいかにも重要な手がかりっぽいです」キラキラ

190: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:33:59.33 ID:6kZdO9Cp0
智香「ただあの人まったく覚えてなくって……あの後いくら聞いてもそんなこと言ったか? って言うばかりで」

恒一「そんな重要なこと忘れるなんてあり得ないし、記憶の改竄でも受けてるのかな?」

赤沢「なんにしろ気になるわねこの話……松永という人が災厄を止め、その手がかりをどこかに隠した?」

恒一「どうせなら松永さん本人に直接聞いて確かめてみたいね! 連絡先とか知りませんか?」

智香「ごめんなさい、どこに住んでるかまでは分からないの」

望月「ねえ榊原くん、三神先生って松永さんの同級生じゃなかったっけ?」

恒一「望月くん冴えてるよ!帰ったらさっそく聞いてみなきゃ」

望月「まあ三神先生ことについてならこれくらい常識だよ」ドヤァ

   「ところでその、情報についての報酬のことなんだけど……」モジモジ

恒一「ああ写真だったね、はいコレ」ピラッ

望月「わあ!ありが……なにこれ?」

恒一「怜子さんの子供の頃の写真だよ、僕らと同じくらいかもうちょっと下かな?」

望月「恒一くん……分かってない! ぜんっぜん分かってないよ!」バンッ

   「ボクが欲しかったのはね! 夢中なのはね! 今の熟しかけてる三神先生なわけ! わかる!?」

赤沢(うわあ……)ドンビキ

194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 18:39:17.60 ID:6kZdO9Cp0
~夜、自宅リビング~

怜子「へー……そんな重要な事実がわかったんだ」

恒一「そうなんです、なので望月くんのリクエストに応えるために写真撮らせてもらってもいいですか?」

怜子「そんなむしろ知りたくもなかった事実について話してないわよ!」

   「私が言ってるのはマツが災厄を止める手がかりを隠したって方!」

恒一「ああ、そんなこともありましたね」

怜子「はぁ……」ガクリ

   「もう、私のためにわざわざ情報かき集めてきてくれてるんだって感心してたのに」

恒一「僕は自分の好奇心に素直なだけですよ」

怜子「ええどうやらそうみたいね」ジトー

   「……とにかくマツには私の方から連絡入れておく、会いに行くときは私も付いていくから」

恒一「はい、お願いしますね」

   (死者が夜見山から出たらどうなるのか、これも楽しみだなあ)ワクワク

200: さるってましたすみません 2012/05/02(水) 19:01:04.75 ID:6kZdO9Cp0
~自宅前道路~

恒一「今日は怜子さんモードなんですねー」

怜子「あくまで三神先生は学校関係でだけだからね、今日はあくまでプライベートってこと」

恒一「そっかー、それじゃあまり反応は楽しめないかもですね」ウーム

   (仕方ない、今日は純粋に死者としての怜子さんを観察するかな)

   (……そうだ! 死者と排泄についての関係について今日は調査してみよう)

怜子「……なんでツムジ押してるの」

恒一「ほら、ツムジ押されると下痢になるって言いません?」

怜子「それはむしろ逆ですー」フフン

   「頭にはお腹の調子を良くするツボがあってね、下痢を治すために押してたのが誤解されるようになったの」

   「だから下痢にはなりません残念でしたー」

恒一「……じゃあこっちで」

怜子「やっ、ちょ……オヘソに指挿しちゃダメ、んっ」

勅使河原「おーい!」トコトコ

望月「なにやっとるか榊原ぁあああ!!」ダダダッ

205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 19:09:25.72 ID:6kZdO9Cp0
恒一「お、勅使河原くんたち来たみたいですね」キュポン

怜子「色々と助かったわ……」ハァハァ

ブロロロロ……――キキッ

赤沢「待たせたようね」キリッ

恒一「勅使河原くんたちも今来たとこだし問題ないよ、それより……そっちは大丈夫?」チラッ

中尾「……うぷっ」オロロロロロ

杉浦「だいじょうぶ?」サスリサスリ

赤沢「なんか車に弱かったみたいね」

恒一「車酔いかあ……そうだ」キュピーン

   「中尾くんちょっと頭貸してー」

中尾「……あぁ?」ヨロヨロ

恒一「――えいっ」

中尾「あがががががががが」

208: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 19:15:33.70 ID:6kZdO9Cp0
中尾「」ビクンビクン

恒一「怜子さん嘘ついた! 中尾くんのツムジ押したら倒れちゃったよ!」

怜子「下痢に効くとは言ったけど車酔いに効くなんて言ってません!」

望月「でもツムジ押されたくらいで倒れるなんておかしくない?」

杉浦「……ちょっと待って、よく見たら頭になんか思いっきりコブがあるわ」

   「車酔いが酷かったのももしかしたら頭をぶつけたせいだったのかも」

中尾「」ビクンビクン

怜子「頭部の怪我は命に関わるわ」

   「しかもその様子だとけっこう深刻かも……」

杉浦「先生、どうしましょう?」

210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 19:21:40.89 ID:6kZdO9Cp0
怜子「せっかくここまで来てくれた中尾くんには悪いけど……」

   「そうね、このまま赤沢さんの車で病院に連れて行っちゃいましょう」

赤沢「となると……そっちの車に5人は厳しそうね」

   「仕方ないわ、多佳子と勅使河原はそのまま病院に付き添ってあげて」

杉浦「分かった、こっちは任せて」

勅使河原「え」

怜子「それじゃお願いね、こっちも行くわよー」

望月「はぁーい」キャピキャピ


バタン、ブロロロロロ――……


杉浦「ほら泉美たちはもう行っちゃったんだし、さっさと中尾くんを車に運んじゃって」

勅使河原「オレの海……」グスン

213: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 19:28:23.09 ID:6kZdO9Cp0
~隣町、リゾートホテル~

怜子「なんかマツったら急なお客さんで出ちゃってるみたい」

   「しばらく時間つぶさないと会えそうにないかも……」

赤沢「うーん、困ったわね」

望月「そ、そしたらさ……」モジモジ

   「せっかくここまで来たんだし、海に行って時間をつぶすのは、どう?」モジモジ

恒一「さっすが望月くん! 夏と言ったら海だよね!」

   「昨晩こっそり破廉恥な水着をバッグに忍ばせてた怜子さんは良いとして、2人は水着持って来てる?」

怜子「なっ」カァ…

赤沢「対策に抜かりはないわ」ドヤァ

望月「えへへー」

恒一「大丈夫そうだね」

   「それじゃみんなでまずは更衣室に行こうか!」

215: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 19:34:18.02 ID:6kZdO9Cp0
望月「2人とも出てくるの遅いねー」

恒一「女性の着替えには時間がかかるものだからね、この待ち時間は存分にワクワクしておこう」

トテトテトテ……

望月「お、出てきた」

   「三神先生は、と……パーカー着ててよく水着見えないや」シュン…

赤沢「待たせて悪かったわね、ちょっと色々問題があって……」

怜子「……」

恒一「うん?何かな?」ワクワク

怜子「何かなじゃないっ……また恒一くんでしょ!」ワナワナ

恒一「あれ? お気に召しませんでしたかスクール水着、略してスク水」

   「せっかく夜なべして『3-3 みかみ』ってゼッケンまでつけたというのに……」

怜子「なにが哀しくて29にもなってスク水なんてもの着なくちゃいけないのよ! いったい誰が得するっていうの!?」

恒一「僕の隣で激しく身悶えてる彼は無視ですか」

望月「三神先生のスクール水着、想像しただけでもう……」ビクンビクン

赤沢「誰も私の水着姿には関心がないのね……」

218: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 19:41:12.63 ID:6kZdO9Cp0
恒一「それで、もしかして新しいの買っちゃいました?」

   「スクール水着はまず着ないだろうと思って一応元の破廉恥なヤツも持って来てたんですけど」

   「僕の悪戯で散財させるわけにはいけないので、その分はちゃんと立て替えさせてもらいますよ」

怜子「……」

恒一「怜子さん?」

赤沢「あのね、恒一くん……その、出てくるのに時間がかかったのは水着買ってたからじゃなくて……」

   「その、なんていうか……勇気?みたいな」アハハ…

恒一「まさか……」キラキラ

怜子「……はやく私の水着返して今すぐ着替えてくるからー!」

   「ってちょっとやめてやめてパーカーのジップ下げようとしないで!」

   「ちょ、ほんとに恥ずかしいんだからやめてぇえええええ!!!」

望月(やめなよ榊原くん三神先生嫌がってるじゃない)

   「榊原くん頑張って!もうちょっと!」

赤沢「望月くん、本音と建前を間違えてるわ」

220: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 19:46:37.86 ID:6kZdO9Cp0
~浜辺~
怜子「はぁ……泳ぐ前からへとへと……」

恒一「結局着替えて着たんですね、いやー見たかったなあ怜子さんのスクール水着姿」

怜子「本気で言ってる?」

恒一「正確にはそんなマニアックな姿になってモジモジしてる怜子さんを観察したかった、です」

   「なのである意味それは達成できました、ありがとうございます」キラキラ

怜子「もー……この歳にもなってあんなもの着るとは思わなかったわ……」

恒一「……歳なんて気にしてたら、もったいないですよ」

   「人との出会いが一期一会であるように、行いもまたその瞬間瞬間を大切にしなくては」

   「やりたいことはやらなきゃ、楽しまなきゃ、きっと後で悔やむことになります」

怜子「良いコト言ってるようで悪いけど、私がスクール水着着たいこと前提にして話さないでくれる?」

恒一「あははー」

   (怜子さんは自分が死者だと知ったらどうするのだろう……残り数ヶ月かそこらで消えてしまう仮初めの命)

   (知らないままで日常を何気なく過ごしいつの間にか消えていく方が良いのか)

   (それとも終わりを知った上でそれまでを全力で駆け抜けた方が良いのか)

   (幸せってなんだろうね、分からないや)

223: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 19:52:24.35 ID:6kZdO9Cp0
怜子「ちなみに赤沢さんと望月くんは?」

恒一「望月くんなら砂に埋めておきました、赤沢さんはじゃんけんで負けて飲み物の買出しに行っています」

怜子「そう」

――ザッザッ……

松永「怜子か?久しぶりだな」

怜子「マツじゃない、随分おっさんになっちゃって」

恒一「この人が松永さんですか? 例の災厄を止めたっていう」ワクワク

松永「いかにも俺が松永だが……その記憶がまったくないんだよなー」ハァ

   「なにやら酔った勢いで口走ったらしいが、自分でもよくわからん」

恒一「うーん、やっぱり記憶の改竄を受けてるってことなんですかね」

   「それがたまたま望月くんのお姉さんに訊かれたときには解けていた、と」

   「その時って確かあのお店で飲みながら話してたんですよね、けっこう酔ってませんでした?」

松永「あんときゃベロベロに酔っ払ってたな、単純に覚えてないのはそのせいかもしれん」ハハハ

恒一「ふむふむ……なるほど」キュピーン


望月「――おーい出してよぉ……」

224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 19:59:21.90 ID:6kZdO9Cp0
恒一「怜子さん、今日はここで1泊しましょう!」

怜子「ええっ? どうして?」

恒一「松永さんが望月くんのお姉さんに口を滑らせたときは酩酊していました」

   「そしてシラフになってからは昔のことも話したときのことも覚えていない」

   「これはアルコールが記憶の蓋をこじ開けてくれるのかもしれません」

怜子「なるほど……」

恒一「どうせこのままじゃ何も聞き出せないでしょうし、飲酒状態の松永さんに質問するというのは1つの手だと思うんです」

   「ただ、松永さんは今は仕事を抜けて来てくれてるのでしょう?」

松永「うんそうだな、この後また仕事に戻らなきゃならん」

恒一「となると今お酒を飲んでもらうわけにはいきません、仕事終わりの松永さんとお酒を飲みつつお話するのがベストかと」

   「深夜の飲酒運転は危険ですし、今日はこちらに泊まって明日帰宅する……というのが僕の案です」

   「いかがでしょう?」

怜子「確かにそれが良さそうね……マツは迷惑じゃない?」

松永「ああ構わんよ、久しぶりに級友と酒飲みながら話せるなんてむしろ願ったりだ」ハハ


望月「――あのぉ……」

227: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:06:04.84 ID:6kZdO9Cp0
怜子「ただ明日海の日よね、こんな飛び込みで部屋空いてるかな?」

松永「あー、ウチのフロントに電話でちょっと確認してみるから待っててくれ」

――ザッザッ……

怜子「それにしても恒一くん……あなた、案外色々考えてるのね」

恒一「一番楽しくなりそうな展開になるよう頭を巡らせてるだけですよ」

怜子「楽しく、かー」

   「こんな状況も楽しめちゃうあたりが恒一くんよね」フフ

恒一「こんな状況だからこそ、ですよ」

怜子「うん、そうだね……」


望月「――そろそろ泣きますよ……?」

229: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:11:01.24 ID:6kZdO9Cp0
――ザッザッ……

松永「良かったな、キャンセルがあったらしくて部屋空いてたぞ」

   「ただ空室はひと部屋で和室タイプだけど構わないか?」

恒一「一緒に教師という保護者がいるんですから問題ないでしょう、泊まっちゃいましょう!」

怜子「まあいっか、じゃあ赤沢さんと望月くんに親御さんへ連絡させないとね」

恒一「お、ちょうど良く赤沢さんが帰ってきた」

   「赤沢さーん、今日こっち泊まっていくからー!」

赤沢「はぁ!? 着替えとか何も持ってきてないんだけど!」

松永「部屋着の貸し出しはしてるしコインランドリーも完備してるから大丈夫だよお嬢ちゃん」

赤沢「お嬢ちゃんじゃありません、対策係の赤沢です」キリッ

松永「これは失礼、いやあ今年の3年3組はみんなしっかりしてるなあ」ハハ

怜子「まあね、私の教え子ですから」フフ


望月「――出してってばぁ……」グスン

232: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:16:14.48 ID:6kZdO9Cp0
恒一(その後泣きべそをかいた望月くんを掘り起こしてあげ、みんなで部屋へと向かった)

   (その途中怜子さんの携帯に着信があり、中尾くんの無事が知らされた)

   (家を出るときに階段から落ちて頭をぶつけていたそうで、一見そうは見えなかったがそれなりに深刻な状態だったようだ)

   (正直彼のことなど忘れかけていたみんなもこの報告で改めて安堵することができ、目先の事態へと問題はシフトした)

   (そう、部屋は和室タイプでひと部屋のため、泊まるとなると雑魚寝するしかないのである)

   (男女混合ということもあり、どのように布団を敷くかでひと悶着もふた悶着もあった)

   (主に『こんな熟女趣味のショタの隣なんてごめんよ!』という赤沢さんと)

   (『三神先生の隣で眠りたい別になにもしないよただ眠るだけだから!』というショタ月の意見である)

   (しかしそれも怜子さんの鶴の一声で決着がついた)

   (『私と恒一くんは親戚だし隣でも問題ないわね』)

   (というわけで赤沢さん・怜子さん・僕・望月くんという並び順で雑魚寝することが決まり)

   (拗ねる望月くんを尻目に目くるめく酒池肉林の夜がやってきたのである)

236: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:22:00.25 ID:6kZdO9Cp0
~ホテル客室~

赤沢「すみません、こんなワガママに付き合ってもらってしまって」

松永「いや良いんだよ、OBとして後輩諸君の役に立てるなら何よりだ」

恒一「ささ、どうぞ先輩」トクトクトクト……

松永「いやー悪いね、おっとっとっと」

恒一「ささ、怜子さんもどうぞどうぞ」トクトクトクト……

怜子「恒一くんったら気が利くじゃない、ありがとう」

   「んくっんくっんくっ……ぷはぁ! えーっと、マツとは15年ぶりだっけ?」

松永「そっかーもうそんなになるんだなあ」ゴクゴク

   「……いや、もっと最近会ってなかったか?」

怜子「そうだっけ?」

恒一「あれれ松永さん、グラス乾いてますよ?ほらどうぞどうぞ」トクトクトクト……

松永「おお悪い悪い、んー仕事終わりの酒は美味いねぇ!」

怜子「そうやって酔っ払って別な女の子と間違ったんでしょ?」

松永「あはは、そんなはずはないと思うんだけどなあ」ポリポリ

238: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:26:43.92 ID:6kZdO9Cp0
  ・
  ・
  ・
恒一(怜子さんはもう潰れちゃってるや、弱いなあ)

   (望月くんがこっそり添い寝してるのは見ないフリをしてあげよう)

   (……さて、松永さんの方も酔いがそろそろ回ってきた頃かな?)

恒一「そういえば松永さんたちの代も15年前に合宿に行ったんですよね、どうでした?」

松永「えーっと……俺たちの代は……ありゃ酷かった……」ヒック

赤沢「何があったんです!?」ガタッ

松永「何が……何かがあったんだ……そう、俺がみんなを守った……」ヒック

赤沢「どうやって――

恒一「赤沢さん、焦っちゃダメだよ」

赤沢「むぅ……私が対策係なのに……」

恒一「うんうん、赤沢さんの車のおかげで中尾くんは助かったし、立派に働いてるよ」

赤沢「ほ、ほんと……?」エヘヘ

恒一「だから今は黙っててね」

赤沢「」

240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:31:33.87 ID:6kZdO9Cp0
恒一「さて、松永さんはそれを伝えようとして、何かを隠しましたね?」

松永「あ、ああ……隠した……」ヒック

恒一「何を、いえどこに隠しましたか?」

松永「あれは……えっと……ダメだ、思い出せない」ウー…

恒一「無理しなくて大丈夫ですよ、きっと思い出せます」

   「あれ? ほらグラス持つ手が止まってますよ、ささもう一口」

松永「んくっんくっ……ぷはぁ……」

   「そうだ、教室だ……そこに隠したんだアレ、を……」ドサッ ングォー…ングォー…

恒一「ありがとうございました、おやすみなさい松永さん」ワクワク

赤沢「……」

恒一「もう喋ってもいいよ?」

赤沢「いいの? しゃべってもいいの? 私無能じゃない?」ウルウル

恒一「うん赤沢さんは無能じゃないよ、じゃあその有能っぷりを発揮して一緒に部屋を片付けようね」

赤沢「まかせてー!」

244: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:36:58.76 ID:6kZdO9Cp0
恒一「さて松永さんも彼の部屋に連れて行ったし、僕らも寝ようか」

   「望月くん? 充分楽しんだでしょ、そろそろ自分の布団行こうね」ドゲシッ

望月「あいたっ」

   「うーん寝てた寝てたー」テカテカ

   「あれなんでこんな所に寝てたんだろうおかしいなー」テカテカ

恒一「はいはいおやすみおやすみ」

   「みんな布団入ったね? じゃあ電気消すよー」

――カチッ

恒一(さて、教室というのはきっと彼の通っていた旧3年3組だよね)

   (今は旧校舎の2F以上は立ち入り禁止になってるんだっけ、忍び込まなきゃだなー)

   (さて、メンバーはどうしようかな、あまり災厄に深入りするのは危険だろうけど……)

   (松永さんの話を聞いてた赤沢さんと狸寝入りしてた望月くんの2人だけにしとこうかな)

   (他のみんなには分かった内容を吟味してから伝えることにした方が良さそうだ)

   (うーん旧校舎探検、そして隠された秘密! 考えただけでドキドキするぞ!)

――ドキドキ……

246: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:41:43.54 ID:6kZdO9Cp0
恒一(あれ、でもこのドキドキはなんか違うな……)

   (ワクワクするドキドキじゃない、もっとこう……なんだろう)

怜子「う……んー……」ゴロン

恒一(もしや怜子さんが隣に寝てるからドキドキしてるのかな?)

   (これはアレだね、死者が隣に横たわってるという事実が生存本能をヘンな風に刺激しちゃってるに違いない)

   (それで心拍数が上がってるんだね、そーかそーか)

   (……)

   (そう言えば赤沢さんが病院で言ってたけど)

   (死者の手って冷たいんだっけ?)

   (ホントなのかな?)

   (やっぱり迷信なのかな?)

   (……)



――ギュ

249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:47:00.10 ID:6kZdO9Cp0
~朝、リゾートホテル前~

怜子「それじゃマツ、ありがとね」

松永「いいってことよ、そんじゃ気をつけて帰れよ」

恒一「ありがとうございました」ペコリ

バタン――ブロロロロロロ――……

恒一「さて、帰り道にさっそくこんな話で悪いんだけど」

   「松永さんの話を頼りにこのメンバーで旧校舎探検に行こうと思うんだ、2人はどうかな?」

赤沢「ええ、有能な対策係としてもちろん尽力するわ」キリッ

望月「ボクは松永さんが教室に何か隠したって話してたときにぐっすり寝てたから何のことか分からないけど、うん大丈夫だよ」

恒一「確か美術室って旧校舎の1Fにあったよね?」

望月「うん」

恒一「それじゃあ集合場所はそこで構わないかな?」

怜子「美術部は夏休み中活動がないから大丈夫なはずよ、みんな気をつけてね」

赤沢「怜子さんこそ安全運転でお願いしますね……」

250: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:50:28.67 ID:6kZdO9Cp0
~自宅リビング~

ガララ――……

怜子「はぁ、ただいまー」

恒一「おかえりなさい怜子さん」

怜子「恒一くんもね、おかえりー」

恒一「運転お疲れさまでした」

怜子「いいのよ、昨日先に酔い潰れちゃってマツから情報聞き出すの任せっきりにしちゃったし」

   「……ところで、私が寝てる間にヘンなことしなかったでしょうね?」

恒一「」ビクッ

怜子「あ、その反応やっぱり何か悪戯したんでしょ!」

   「スクール水着の次は今度は何!?」

   「アレ以上の恥辱とかもう死んじゃうからね!」

恒一「えっと……」

   (もう死んでますけどね、とか言ってみたい)

252: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:53:48.63 ID:6kZdO9Cp0
怜子「なにしたの、怒らないから言いなさい?」

恒一「もう怒ってるじゃないですかー」

怜子「屁理屈こねないの!」

恒一「はーい」

怜子「で、なにしたの?」

恒一「いや、その……悪戯ってほどのことでもないんですが……」

怜子「だったら言えるでしょ、ほら」

恒一「その……手を」

怜子「手を?」

恒一「握りました」

怜子「……え?」

恒一「誤解しないでください、他意はないんです」

怜子「……えっ?」

恒一(ただ死者の手が本当に冷たいのか確かめたかっただけなんです)

254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 20:58:41.94 ID:6kZdO9Cp0
怜子「……えっ? えっ?」

   (他意はないって……手を繋ぎたくなる理由なんてひとつくらいしか……)

恒一「それじゃおやすみなさい怜子さん」スタスタ…

怜子「うん? おやすみ?」

   「……えっ?」

   「……もしかしてそういうことなの?」

   「災厄を止める手がかりを求めて一生懸命なのももしかして私のためとか?」

   「ちょっかい出してくるのもそういう感情の裏返し的な?」

   「それでついつい寝てるところを手を繋いじゃった的な?」

   「……」

   「……いやいやいやいや」

   「例えそうだったとして、なんで私こんなに動揺してるの」

   「ちょっと待ってよ29歳、なんでちょっと嬉しくなっちゃってるの」

レー「レーチャンドーシテー」

怜子「ほんとにどうしてよ怜子……」

259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:03:06.61 ID:6kZdO9Cp0
~自宅玄関~

恒一「それじゃ行ってきまーす」

怜子「旧校舎は古くなってて危険だからね、気をつけるのよ?」

恒一「分かってますって」

怜子「あとこれ傘ね、雨降りそうだし」

恒一「ありがとうございます」

   「……それにしても、なんか海から帰って以来やけに優しくないですか?」

怜子「そ、そんなことないんじゃないかなー?」アセアセ

恒一「……」ジー

怜子「……」ポリポリ

恒一「うん、それじゃ行ってきますね」

怜子「気をつけて行ってらっしゃい」

ガララ――…ピシャッ

怜子「……」

   「……理津子姉さん、こんなダメな妹でごめんなさい」ハァ

263: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:08:18.19 ID:6kZdO9Cp0
~通学路~

恒一「ふんふんふーん」テクテク

   「お、煙草の自動販売機の灯りに釣られてミヤマクワガタが!」

   「これだから田舎はやめられないよね!」

   「ミヤマげっとー……っと逃げられた」

   「むむむ、自動販売機の下に……」

   「んー……手じゃ届かないや」

   「でもどーしてもミヤマは捕まえたい、どうしよう」

   「……そうだ、傘があるじゃないか!」

   「これを逆に持って、自販機の下に差し込んでフックの部分で引っかけるようにしてっと」

   「あれ?」グイグイ

   「なんかヘンなとこに引っかかったぞ?」グイグイ

   「んー……えいっ!」ブチィ……!

――ヴゥゥゥン……

   「あ」

266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:12:16.98 ID:6kZdO9Cp0
~学校昇降口前~

赤沢「あら恒一くん、そんなに逃げるように走ってきてどうしたの?」

恒一「いや……ちょっとね」ハハ…

赤沢「あんまり無理すると病気再発しちゃうわよ、あまり軽率な行動は控えたほうが良いわ」

恒一「うん、今後は気をつけるよ色々と……」

赤沢「?」

トテトテトテ……

綾野「やっほーお2人さん」

赤沢「彩に由美じゃない……ああ、そういえば今日は演劇部の集まりがあったんだっけ」

小椋「ああ、じゃないってば」

綾野「用事あるって言って休んだのにまさかデートだったとはねー? ふーん」

赤沢「ち、違うわよ、これは対策係の仕事の一環で……」

小椋「はいはいそういうコトにしといたげるわ」

綾野「それじゃごゆっくりー、デートの感想は合宿の時にでもゆっくり聞かせてね?」ニシシ

赤沢「違うってばー! もー!」

269: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:17:09.82 ID:6kZdO9Cp0
赤沢「はぁ……すっかり誤解されてしまったわ……」トボトボ

恒一「まあ下手に災厄に関する秘密が広がらなくって良かったじゃない」トコトコ

   「家族に話さない決まりっていうのも『知れば知るほど危険になる』可能性があるからなんでしょ?」

赤沢「まあそうなんだけど……」

恒一「あえて誤解されることでみんなを災厄から守る、なんて有能な対策係なんだろうなー」

赤沢「ま、まあね!」

恒一「今日もその有能っぷりに期待してるよ」キラキラ

赤沢「任せておいて! すっごい活躍しちゃうから!」

恒一「うん、よろしく頼んだよ」

   「……さて美術室前に着いたわけだけど、もう望月くん来てるかな?」

赤沢「ドアの隙間から灯りが洩れてるってことはもう来てるはずよ」

   「待たせたわね望月くん、さあ旧校舎へ対策に行きましょう!」

――ガララッ!!

見崎「……へぇ、旧校舎?」

赤沢「」

274: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:22:30.13 ID:6kZdO9Cp0
~旧校舎3年3組~

見崎「ふーん、旧校舎の2Fから上ってこんな感じなんだ」キョロキョロ

恒一「わー! 今にも抜け落ちそうな床とか割れたガラスとか、なんかすっごいよ!」キラキラ

   「やっぱり秘密の隠し場所といったら壁の中とか床板の下とかかな?」ワクワク

見崎「後輩のために残したもの、ってことだからもっと見つけやすいところだと思う」

恒一「そっかー流石は鳴ちゃんだねー!」

望月「ねえ、なんで見崎さんも探検に参加してるの?」

赤沢「……やむを得ない事情があったのよ」

恒一「さて、それじゃあ手分けして探そうか」

   「見つけた人にはご褒美に黒糖饅頭あげちゃいまーす」

見崎「」ガタッ

望月「ねえねえ、三神先生の写真はないの?」

赤沢「あなたたち真面目に探しなさいよ?」

278: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:26:02.71 ID:6kZdO9Cp0
~一方その頃とある路地~

ブロロロロ――……キキィ……

――ガチャ…バタンッ!!

運ちゃん「さーて、煙草でも買おうかなっと」

     「ん? なんだこの自販機、ランプついてねぇぞぉ?」バンバン

     「ったく、電源でもイカレてんのかぁ?」

     「故障とか使えねえなーもぉー」トボトボ

――ガチャ……ドッコイショ

     「……って、うぉっと危ねぇ!」

     「サイドブレーキ入れ忘れてたじゃねーか」

     「たまたま自販機壊れててすぐに戻ってきたから助かったぜ」

     「今後は気をつけねーとなー……」

     「さて、仕事の続きにでも行くか」

ブロロロロロ――……
  ・
  ・
  ・

281: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:30:21.24 ID:6kZdO9Cp0
見崎「まだ見つからないみたいだけど……あの中、見た?」

恒一「なるほどロッカーかー、さっそく開けて見てみよう!」ガチャ…ッ

   「お、天板になんか引っ付いてる! すっごい引っ付いてる!」

赤沢「分かったからさっさと剥がしなさいよ」

恒一「おっけー」ベリッ

望月「『将来このクラスで理不尽な災いに苦しめられるであろう後輩たちに』?」

赤沢「アタリね……ガムテープで厳重に包装してあるけど、これもさっさと剥がしちゃいましょう」

見崎「ちょっと待って、私が場所を指定したんだからご褒美は私のもの」

恒一「そういえばそうだね、はい鳴ちゃん口開けてー」

見崎「あーん」

恒一「美味しい?」

見崎「うん」モグモグ

赤沢「あー! もうちゃっちゃと剥がしなさいよ!」ベリィッ!!

望月「あ」

カセット「」テープビローン

285: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:35:17.61 ID:6kZdO9Cp0
~自宅リビング~

恒一「というわけで内容は聞けず終いだったのですが、彼が残したものはカセットテープでした」

怜子「ほんとにもー、赤沢さんは……」ハァ

   「それで? 望月くんがテープは直してくれるんだっけ?」

恒一「はい、ただし条件があって……」

怜子「条件? なにそれ、修理費とか?」

恒一「いえ、怜子さんの写真と交換だそうです」

怜子「」

恒一「なのでこれから撮らせていただいても構いませんか?」

怜子「……もー、うちのクラスはヘンな子ばっかり」ハァ

恒一「心中お察しします」

怜子「なんで他人事なのよ! あなたを筆頭にだからね!?」

286: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:38:26.59 ID:6kZdO9Cp0
恒一「はいはい、撮りますよー」

――カシャ

   「もう一枚いきますねー笑顔お願いしまーす」

――カシャ

怜子「もう……」ハァ

   (それにしても、望月くんにカンタンに写真あげるってことは……)

   (やっぱりこの間の件は私の勘違いなのかな?)

   (普通想い人の写真なんて恋敵にあげないよね)

   (そっかあ、勘違いかー……)ムー

   (ってなんでちょっとショックがってるの!?)ガタッ

   (理津子姉さん私ったらダメな妹でごめんなさいー! もうイヤー!!)ブンブン

恒一(ホントに怜子さんは見てて面白いなあ)

289: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:42:34.02 ID:6kZdO9Cp0
~合宿1日目、合宿所ゲート~

赤沢「ねぇテープは持ってきてくれた……?」コソリ

望月「うん、ちゃんと持ってきたよ」コソコソ

赤沢「もう内容は聞いたりしてみた?」コソリ

望月「ううん、1人で聞くのが怖くて、まだ……」コソコソ

赤沢「そう……それじゃあ後で4人で対策しましょう」ドヤリ


恒一「すごいや、なにこの合宿所カッコイイ!」キラキラ

千曳「地元の大企業が使ってた保養所を寄付してくれたそうでね」

   「まあ学校側は持て余してるみたいだけれど」

恒一「僕は興奮を持て余しそうです!」

千曳「……そのようだね」


見崎「お饅頭はおやつに含まれない……」モグモグ

怜子「含まれます!」

292: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:47:08.82 ID:6kZdO9Cp0
~合宿所エントランス~

怜子「では明日にはみんなで神社にお参りに行って、クラスの無事を祈願しましょう」

   「夕食まで時間があるのでそれまで自由行動にします」

   「では皆さん、解散です」

恒一「うーん、こんな洋館探検しないわけにはいかないけどまずはテープからだよなあ」

見崎「それじゃあ……1人部屋だし私の部屋にくる?」

赤沢「ええ、お邪魔させてもらうわね」

   「……望月くん、そっちは三神先生の部屋よ」

望月「あっれー間違えちゃったよー」テヘヘ

恒一「……」

赤沢「カセットレコーダーはある?」スタスタ

望月「うん、ちゃんと持ってきてるよ」トコトコ

見崎「……榊原くん?」

恒一「ううんなんでもないよ! あー解決策を知るのが楽しみだなあ!」トコトコ

見崎「……」トテトテ

293: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:50:58.03 ID:6kZdO9Cp0
~見崎の客室~

望月「……じゃあ、再生するよ?」

恒一「ぽちっといっちゃってぽちっと!」ワクワク

赤沢「対策係として許可するわ」ドヤァ

見崎「……」モグモグ

望月「……どうでもいいや」カチッ

キュルル……キュルルルル………

テープ『…………えっと……俺の、俺の名前は……松永克己……』

赤沢「よかった聞けるようになってて……」グスン

見崎「聴こえない黙ってて」モグモグ

テープ『俺がこんなテープを残そうと決めたのには、ふたつの意味があるんだ……』

    『1つはオレの……俺自身の罪の告白……』

    『もう1つの意味は……後輩であるキミたちに、アドバイスを伝えたい……』

恒一「……」ワクワク

296: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:54:59.28 ID:6kZdO9Cp0
テープ『死者を死に還すんだ……それが始まってしまった災厄を止める方法だ……』カチッ

恒一「……」

望月「……名前、分からなかったね」

見崎「それはつまり改竄がテープにまで起こってるということ」

望月「じゃあ、これ本物ってこと……?」

   「……死者を死に、か……いったい誰が死者なんだろう」

見崎「……それが分かったら」

望月「な、なに……?」

見崎「殺すの?そのもう1人を」

望月「そ、それは……」

見崎「……とりあえずこの情報は私たちで秘密にしておいた方が良いと思う」

   「知ったらみんな疑心暗鬼になって危険なことになるかもしれないから」

   「それで良いよね、榊原くん?」

恒一「……」

赤沢「……もう喋ってもいい?」

301: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 21:59:50.27 ID:6kZdO9Cp0
見崎「さて、2人には他言しないように言い含めて帰ってもらったけど、どうする榊原くん?」

恒一「……」

見崎「死者を死に還せば災厄は止まるそうだけど、これは榊原くんの興味をそそらない?」

恒一「いや、すごい気になるよ……でも……」

見崎「したくない?」

恒一「うん……どうしてだろ」

   「そうするのが手っ取り早くて、しかも確実で……」

   「死者を死に還す経験なんて今後もうない体験だろうに……」

   「全然胸がときめかない、むしろ締め付けられるんだ……」

見崎「……榊原くんって、子供だよね」

恒一「わがまま、かな」

見崎「ううん、そういうことじゃなくって」

恒一「……じゃあ、どういうこと?」

見崎「自分の好きって気持ちに気付けないあたり、子供だなって思うの」

303: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:03:24.22 ID:6kZdO9Cp0
恒一「好き? 誰を?」

見崎「三神先生を」

恒一「……そう、なのかな……よく分からないや」

見崎「さっきエントランスで望月くんが三神先生の部屋に行こうとしたとき、ちょっと嫌な気分になったでしょう」

恒一「……うん、なったかも」

見崎「三神先生が担任になったとき、嬉しくなかった?」

恒一「それは、死者を観察しやすくなるからで……」

見崎「今までだってホームルームでは久保寺先生の隣に一緒にいたでしょう、変わったのは肩書きだけ」

   「それなのに担任になって嬉しいと思ったの、榊原くんは」

恒一「……」

見崎「それに三神先生に色々ちょっかい出してた」

恒一「……反応を見るのが楽しかったんだ」

見崎「知ってる? 子供って好きな女の子にちょっかい出すんだよ」

306: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:07:11.54 ID:6kZdO9Cp0
恒一「そっか……僕は怜子さんが好きなのか」

見崎「うん、私が栗饅頭を好きなくらい」

恒一「それはよっぽどだね」

見崎「よっぽどだよ」

恒一「……どうすれば良いのかな」

見崎「榊原くんらしくない、こういう状況もワクワク楽しんじゃうのがあなたでしょう?」

   「自分がしたいようにすれば良いと思う」

恒一「鳴ちゃんは反対じゃないの? 自分が災厄に巻き込まれるかもしれないんだよ?」

見崎「あなたには未咲を助けてもらってるから、これはそのお返し」

   「それに今のところ災厄で死者はまだ出ていない」

   「これから被害が出ないとも、もちろん限らない」

   「けど、災厄に立ち向かうことにさえ楽しみを見出せるのが榊原くんでしょう?」

   「もう少しそんな榊原くんを貫いてみても良いと思う」

309: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:10:36.75 ID:6kZdO9Cp0
恒一「鳴ちゃん……」

見崎「もちろん災厄で死者が出たら、その時は私は未咲を守るために動く」

   「きっと三神先生を死に還す」

   「そうならないよう、榊原くんは頑張って」

恒一「うん、頑張るよ……!」グッ

見崎「そのために私も出来る限り協力はするつもり」

恒一「……協力って?」ワクワク

見崎「私のこの義眼のこと、忘れた?」

   「死の色が見えるこの瞳があれば、死の危険にある人は手遅れになる前に分かるの」

   「もちろん事故とかの予知はできないけど、高林くんの心臓の危険や中尾くんの脳挫傷なんかはこれで大丈夫」

恒一「さっすが鳴ちゃん!」キラキラ

見崎「今日から眼帯をするのをやめる」

   「卒業までの数ヶ月、オッドアイ鳴ちゃんをよろしく」ビッ

311: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:14:49.72 ID:6kZdO9Cp0
恒一「卒業まで、か……」

見崎「そう、卒業まで」

   「結局は死者は卒業と同時に死に還る」

   「それまでの時間を無駄だと思うなら、やっぱり――」

恒一「無駄だなんて思わないよ」

   「前にも言った通り、僕は何にでも良いところがあるんだって思ってる」

   「怜子さんが死者で、あと数ヶ月で還ってしまうのだとしても」

   「本来それは絶対になかったはずの数ヶ月なんだ」

   「それがこうして一緒に過ごせて、しかも恋なんてものまでできちゃってる」

   「僕は今、とても幸せだよ」

見崎「そう……じゃあ問題は、死者本人の方だね」

恒一「うん、怜子さんに伝えるかどうか……」

312: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:16:59.67 ID:6kZdO9Cp0
恒一「もちろん死者を死に還したら災厄が止まるなんてことは言えないよ」

  「この場合の伝えるかどうかっていうのは、怜子さんが死者であることをってことね」

見崎「うん、わかってる」

   「消滅するまでの期限を自覚させるべきか、それとも知らずに過ごさせるべきか」

   「そういうことでしょう?」

恒一「話が早くて助かるよ、そんな鳴ちゃんに胡桃饅頭をあげちゃう」

見崎「うん、くるみも美味しい」モグモグ

恒一「なら良かったよ」

   「……どっちの方が幸せ、なんて本人じゃないと分からないことだからなあ」

   「かと言ってそれを聞いたら答えを伝えるようなものだし、困った困った」

見崎「……」モグモグ

   「答えが出ないなら、きっとそれがあなたの答え」

   「もし万が一言うべきだと思うタイミングが来たら、その時に榊原くんの口から伝えれば良いと思う」

恒一「……うん、そうかもね」

317: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:19:35.99 ID:6kZdO9Cp0
恒一「やることが決まったら俄然ワクワクしてきたぞー!」

   「まずは!」

見崎「私の義眼で」

恒一「死を察知して対応!」

   「そして!」

見崎「榊原くんの行動力で」

恒一「身の回りの危険を排除!」

   「さらに!」

見崎「榊原くんの恋心を」

恒一「怜子さんに伝え――え?

見崎「……」

恒一「……」

見崎「……告白も経験のうち」

恒一「ぐぬぬ」

320: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:23:10.01 ID:6kZdO9Cp0
見崎「榊原くん、あなたはあと数ヶ月しか時間が残されてないってことを知っている」

   「それを無駄にしてもいいの?」

恒一「……よくない」

見崎「三神先生があなたの気持ちを知らないままでいてもいいの?」

恒一「……よくない!」

見崎「三神先生に自分のこと好きになってもらわなくていいの?」

恒一「よくない!」

見崎「望月くんに三神先生取られてもいいの?」

恒一「ありえない!」

見崎「なら行ってらっしゃい」

恒一「……明日じゃダメ?」

見崎「ほんと子供なんだから」

322: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:26:37.23 ID:6kZdO9Cp0
~合宿所館内~

恒一「というわけでまずは館内の見回りといこう!」

   「僕は危ない場所を確認するから鳴ちゃんはその義眼でビシッとみんなをチェックしてね」

見崎「……」コクリ

トテトテトテ……

恒一「さてまずはエントランスから……おー、豪華そうなシャンデリアだなあ」ワクワク

   「あれ? シャンデリアで圧死するのってオペラ座の怪人だっけ?」

見崎「分からない」

恒一「そっかー、けどここは火災のときなんかには気をつけた方が良さそうだね、うん」

   「ちなみにあそこで怜子さんと話してる千曳先生はどう?」

見崎「まったく問題なし、そもそも災厄のテリトリー外だから彼は」

恒一「そういえばそうだったね、じゃあ次行こっかー」テクテクテク


怜子「……」

千曳「……三神先生?」

怜子「い、いえなんでもありません、それで――」

323: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:30:50.51 ID:6kZdO9Cp0
~西館~

恒一「こっちは男子がいる方だったかな」テクテク

見崎「確かそう」トコトコ

恒一「男子なら遠慮はいらないね、ひと部屋ずつ突入していこう!」ワクワク

   「たのもー!」

――バターン!!

高林「」ビクッ

前島「な、なんだ!?」

恒一「ううん、気にしないでー」

見崎「うん、大丈夫」

   「一瞬だけ高林くんの色が濃くなったけど」

恒一「そっか、ならよかった! またね!」

――バターン ガチャリ

高林「な、なんだったんだろう……」

前島「さ、さあ?」

328: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:34:26.20 ID:6kZdO9Cp0
恒一「もいっちょたのもー!」

――バターン!!

見崎「む、あれは危険」ビシッ

辻井「え?」

和久井「ぼ、ぼく?」ケホケホ

恒一「ねーねー和久井くん、調子悪かったりしない?」

和久井「ちょっと喘息の症状が軽くだけど出てるくらい、かな」ケホケホ

恒一「それって危険だったりはしない?」

和久井「うん、薬があるから――あれ、からっぽだ」

辻井「え、それってマズいんじゃないの?」

和久井「発作が起きたらちょっと危ないかも、先生に言ってくるよ」ケホ トコトコ…

恒一「これで安心かな」

   「それじゃー辻井くんまたあとでね!」

――バターン ガチャリ

辻井「急に現れて病気を指摘して去っていく……なんだったんだ?」

331: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:37:33.67 ID:6kZdO9Cp0
~合宿所エントランス~

恒一「けっきょくあの後どの部屋回っても異常はなかったね」

   「女子棟の東館はさすがに全部任せちゃったけど、大丈夫だった?」

見崎「綾野さんが義眼に興味しんしんでちょっと鬱陶しかった」

   「あと松井さんたちの部屋はある意味異常だった、邪魔して悪いことをした」

恒一「うん? とにかく問題はなかったなら良かったよー」

   「和久井くんは千曳先生に連れられて1度薬を取りに戻ったみたいだね」

   「このまま何事もないといいんだけど」

見崎「何事もなかったら、明日頑張ってね?」

恒一「……覚悟を決めておくよ」ハァ


ツカツカツカ……


怜子「みんなー、もう夕食の時間よー!」

332: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:40:31.25 ID:6kZdO9Cp0
恒一「え、もうそんな時間なのか」

見崎「時間が経つのは早い、そのぶん明日になるのも早い」

恒一「ぐぬぬ」

怜子「……」

   「……2人とも、早めに食堂に行くようにね」

ツカツカツカ……

怜子「こら勅使河原くん!」

   「そんなところで油売ってないで早く食堂行っちゃいなさい!」

勅使河原「えぇー! あの2人とオレ対応ちがくないっすかー!?」

見崎「……へぇ」

恒一「鳴ちゃん? 行くよー?」

見崎「……いま行く」トコトコ

334: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:44:18.21 ID:6kZdO9Cp0
~夕食後~

恒一「いやー美味しかったね!」

望月「高林くんのお婆ちゃんが作ってるんだって?」

高林「うん、満足してもらえたみたいで僕も嬉しいよ」

中尾「そんなことよりこの後男子で枕投げ大会しようぜ!」

風見「中尾は頭怪我したばかりだろ、無茶するなよ」

勅使河原「じゃーさ、女子も誘ってみんなでトランプやろうぜ!」

猿田「てっしーやらしいぞなー」

勅使河原「うっせー! じゃあお前不参加なー!」

猿田「それはフェアじゃないぞな!」

高林「僕のセリフ取らないでくれよ」

ワイワイ
ヤンヤヤンヤ


見崎「……」スッ

トコトコトコ……

337: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:47:47.88 ID:6kZdO9Cp0
~消灯後、恒一・望月の客室~

望月「それにしてもトランプ大会は白熱したねー」

恒一「うん、そうだねー」

望月「……」

恒一「……」

望月「……もしかして、災厄の止め方についてとか考えてる?」

恒一「あ、忘れてた」

望月「榊原くんは相変わらずマイペースだなあ、もう」

恒一「……あのさ、望月くん」

望月「うん、なに?」

恒一「望月くんは怜子さんのことが好きなんだよね、どれくらい好き?」

望月「うわー、改めて面と向かって聞かれると恥ずかしいなあ」ポリポリ

338: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:50:13.70 ID:6kZdO9Cp0
恒一「実はさ、僕もついさっきある人に対して抱えた気持ちに気付いたばかりなんだ」

   「ただイマイチよくわからない、恋ってどういうものなのかな?」

望月「うーん、難しく考えるからダメなんじゃないのかな」

   「絵と同じだよ、自分のパッションをただぶつける」

   「それが筆を用いるのか言葉を用いるのか、ぶつけるのがキャンパスなのか人間なのか」

   「違いはそれだけじゃないのかな」

恒一「……望月くんって実はすごいんだねえ!」キラキラ

望月「実はって、酷いなあ」

恒一「とにかく勇気もらえたよ、ありがとうー」

望月「どういたしまして、ところで榊原くんの好きな人って誰なの?」

恒一「……写真はもうあげられなくなっちゃうかもなー」ボソリ

望月「え? なに?」

恒一「おやすみー!」

望月「えーなんて言ったの気になるよー! 教えてってばー!」ユサユサ
  ・
  ・
  ・

340: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:53:17.85 ID:6kZdO9Cp0
~合宿2日目、合宿所ゲート~

怜子「さて、ではこれから一緒に神社へと向かいましょう」

   「皆さん、準備は良いですね?」

ハーイ!
オッケーデース!

千曳「先頭は僕が、最後尾には三神先生がそれぞれ着くから何かあれば声をかけるように」

   「それじゃあ、出発だ!」

テクテクテク……

  トコトコトコ……

 スタスタスタ……


恒一「鳴ちゃん、道中ももし色が見えたらすぐに教えてね」テクテク

見崎「……」コクリ トコトコ


怜子「……」テクテク…

341: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:56:48.74 ID:6kZdO9Cp0
~夜見山神社~

千曳「よし、もう清掃はあらかた済んだだろう」

   「それじゃあみんなで一列に並んで、一緒にクラスの無事を祈願しよう」

   「……みんな、用意はいいかな?」

   「じゃあ鐘を揺するよ」


――カシャランガシャラン……パンパン!!


クラス「……」

怜子「……」

恒一(災厄で誰1人欠けることなく、怜子さんと無事に卒業できますように)


千曳「……よし、これで良いだろう」

   「みんな下山するよ、帰り道もくれぐれも気をつけて」

ハーイ!
ヨッシャ カエルゾー!

343: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 22:59:53.98 ID:6kZdO9Cp0
~合宿所エントランス~

千曳「みんなお疲れさま、良くやったよ」

   「夕食の時間まで部屋でゆっくり休むと良い」

怜子「それでは夕食まで自由時間とします、解散」

見崎「……何事もなく1日が終わりそうね?」

恒一「わかってるよ、大丈夫」

見崎「そう、なら良かった」

   「それじゃあまた夕食で――

綾野「ねーねー鳴ちゃん、その綺麗な目ちっとだけ見せてー」

見崎「……しつこい人は嫌い」プイ

綾野「じゃあさじゃあさ、部屋でカントリーマァム食べない?」

見崎「……たべる」

綾野「よーし、じゃあ行こー!」テクテク

見崎「……」トコトコ


恒一「さて、僕も部屋に戻るかー」

346: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:04:23.95 ID:6kZdO9Cp0
~夕食後、恒一・望月の客室~

望月「榊原くーん、またみんなでトランプ大会やるみたいだけど一緒に行かない?」

恒一「今日はちょっと食べすぎちゃって……部屋でもう少しゆっくりすることにするよ」

   「僕の分まで望月くんは楽しんできてね」

望月「うん分かった、お大事にねー?」

バタン――ガチャリ……

恒一「……ふぅ」

   「みんなはカードゲーム中、かあ」

   「これはチャンス……だよね」

   「ドキドキが止まらないけど、これは悪くないドキドキだ」

   「ワクワク以上のときめきがあるなんて知らなかったなあ」

   「怜子さん……」ドキドキ

   「――よし!」ガバッ

348: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:07:44.27 ID:6kZdO9Cp0
~怜子の客室~

――コンコン


恒一「三神先生、僕です榊原です」

   「少々お話があるのですがよろしいでしょうか?」


――ガチャリ


怜子「……いいわ、どうぞ」スッ

恒一「では……失礼します」トコトコ…


ギィ――……バタン、ガチャリ


怜子「……」

恒一「……」

351: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:11:24.36 ID:6kZdO9Cp0
恒一「あの――

怜子「……随分仲が良いのね?」

恒一「はい?」

怜子「見崎さんと」

恒一「……そうでしょうか?」

怜子「合宿所にきてからずっと一緒」

   「館内を一緒に探検して回ったり、参拝に行くときも一緒だった」

   「1日中どころか合宿2日通してずーっとずぅーっと一緒だった」

恒一「は、はあ……言われてみればそう、かも?」

怜子「そうです!」

恒一「は、はい、そうです!」

怜子「……」

恒一「……あの?」

353: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:15:13.96 ID:6kZdO9Cp0
怜子「なによ?」

恒一「何を怒っていらっしゃるんで……?」

怜子「……」

恒一「……」

怜子「……はぁ」

恒一「なんかすみません」

怜子「ううん、恒一くんが謝ることじゃないから」

恒一「あ……」

怜子「なに?」

恒一「その、榊原くんじゃなくて恒一くんって」

怜子「あ」

恒一「どうやらついに仮面を剥ぐことができたようですねー」

怜子「もう……恒一くんには負けたわよ……」クス

354: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:18:02.48 ID:6kZdO9Cp0
恒一「けど僕としては三神先生モードが解除されてよかったです」

怜子「どうして?」

恒一「これからしようとしている話は、三神先生という教師にではなく怜子さんという1人の女性にすることだからです」

怜子「え……それって……」

恒一「自分自身この気持ちに気付けたのはつい最近、というか昨日でして戸惑ってもいるのですけどね」

   「でも自分に正直になることにしました」

   「怜子さんにも自分に正直でいて欲しいと思っています」

怜子「……」

恒一「負い目とか同情とか世間体とかもろもろ取っ払って、ありのままの怜子さんで応えてください」

   「それが否定であっても、僕は自分のこの告白を後悔したりはしません」

   「この気持ちを抱えたまま風化させてしまいたくはないから」

   「……怜子さん、好きです」

   「僕を生徒でも甥でもなく、1人の男として見てはくれませんか?」

358: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:21:08.93 ID:6kZdO9Cp0
怜子「……もう」

恒一「……」ゴクリ

怜子「……恒一くんには負けたって言ったでしょ」

恒一「そ、それって……?」

怜子「……とっくの前から意識しちゃってたよ」

恒一「つ、つまるところ……?」

怜子「……はっきり言わないと、だめ?」

恒一「はい、お願いします」

怜子「……私も……その……すき」

恒一「……」

怜子「……恒一、くん?」

恒一「「レーチャンドーシテレーチャンドーシテ!」バッサバッサ!

怜子「ぴゃあっ!?」

361: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:23:12.02 ID:6kZdO9Cp0
恒一「すみません興奮しすぎて前後不覚に」

怜子「それだけ喜んでくれたってことだろうから許すけど、雰囲気ぶち壊しよ」

恒一「ほんとにすみません」

怜子「もう許したってば」

恒一「ありがとうございます」

怜子「……」

恒一「……どうかしました?」

怜子「それ」

恒一「はい?」

怜子「敬語は禁止、夜見北での心得に追加します」

恒一「えっと……?」

怜子「ただし公私の別はつけること、ね」クス

恒一「わかりまし……わかったよ怜子さん」

怜子「それでよし!」エヘヘ

364: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:27:29.72 ID:6kZdO9Cp0
~夜見山北中学~

見崎「……1年間お疲れさま」

恒一「鳴ちゃんこそ、ありがとうね」

見崎「ううん、良いリハビリになった」

   「もう今後は眼帯しない生活を続けていけそう」

恒一「そっか、そう言ってくれて良かった」

見崎「……本当にお疲れさま」

   「1人の犠牲者も出さずに卒業を迎えることが出来たのはすごいことだと思う」

恒一「まあ何度か危なかったけどね」ハハ

見崎「けど、無事にあなたは走り抜いた」

恒一「うん」

見崎「……」

恒一「ねえ鳴ちゃん」

見崎「なに、榊原くん」

恒一「彼女は、幸せだったかな?」

367: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:31:17.83 ID:6kZdO9Cp0
見崎「ええもちろん」

恒一「随分はっきりと断言するんだねー」

見崎「だって彼女、全部知ってたから」

恒一「え?」

見崎「自分が死者だってこと、卒業と同時に消えてしまうこと」

恒一「……どうして?」

見崎「私が合宿1日目の夜に話したから」

恒一「……そっか、そうだったんだ」

見崎「そうでもしないと、期限を自覚しないと、彼女は自分の気持ちに正直になれなかった」

   「榊原くん風に言えば死者だからこそ正直に生きれた1年間、だったのかな」

   「ああ、もちろん死者を死に還せば……っていうのは話してないから安心してね」

   「だから彼女は後悔しない生き方をあの日からしてきたはず」

   「幸せだったはずよ」

恒一「……そっか」

370: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:33:22.32 ID:6kZdO9Cp0
見崎「あなたこそ後悔はしてない?」

恒一「ひと欠けらだってしてないよ」

   「僕はあの人を愛し抜けた、それだけで充分だよ」

見崎「そう……」

恒一「みんなは……卒業式会場を出たとたんに忘れちゃったみたいだね」

見崎「うん、誰も彼女がいないことを不思議がっていない」

   「……そしていつか、あなたもそうなってしまう」

恒一「残念だけど鳴ちゃんの期待には応えられないよ?」

見崎「榊原くん、あなたは1年間の災厄じゃ飽き足らず、これからの人生も忘却と戦い続けるつもり?」

恒一「あははそんな大げさなものじゃないよ、ただ僕の魂が彼女を忘れない、それだけだよ」

見崎「そう」

恒一「うん、そう!」

374: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/02(水) 23:37:44.17 ID:6kZdO9Cp0
恒一「それにしても望月くんに渡さず終いだったこの写真、我ながら良く撮れてるなー」

見崎「ええ、良い笑顔ね」

恒一「ただねー個人的にはもうちょっと下のアングルから撮るべきだったと反省してるんだ」

   「そうすればオヘソがちゃんと写ってカンペキだったはずなんだけど――

勅使河原「おうサーカキ!」ポンッ

     「2人してこんな所で何やって――ってあれ?」

     「そんな何も写ってない写真なんか持ってなにやってんだ?」

     「望月がまたカメラ持ってきたから今からみんなで写真撮るんだ、早く来いよー」タタタタ…

恒一「うん、すぐ行くよー!」

   「……それじゃあ、行こうか鳴ちゃん」

見崎「ええ」

恒一「――卒業おめでとう、怜子さん」



おしまい