勇者と魔王がアイを募集したFINAL+ 中編

674: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 04:59:45.11 ID:eTzK2S8d0
696

--魔法王国、過去--

魔導長「――それは本当なの? 黄金王国の参謀長さん」

参謀長「はい。にわかには信じられないでしょうけど」

魔導長「……少し前に可愛い教え子から似たような内容の手紙をもらったの……最初はついに頭がいっちゃったのかとおもったけど……」

魔導長は参謀長の顔を観察する。

魔導長「貴方はつまらない嘘はつかないしなの」

参謀長「理解して貰えるのならありがたい。ではこれを」

そういって参謀長は布に包まれた大きな杖を渡した。

魔導長「杖?……これは、魔杖……」

参謀長「えぇ。研究員が貴女用に改造したスペシャルな杖です。これを貴女にさしあげます」

魔導長「……こんなものを渡して何が目的なの?」

参謀長「数日後に東の王国でいざこざが起きます。そこできっと魔王側が誰かを送り込んでくると思います。そいつを貴女に倒して欲しいのです」


675: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 05:00:41.65 ID:eTzK2S8d0
697

--魔法王国、過去--

魔導長「! 魔王側!?」

参謀長「えぇ。魔王側が誰を送り込んでくるかは確定してませんが、まぁこいつかこいつかこいつでしょうね。それぞれの対策手段をこの紙に書いておきましたので、魔杖のスコープで敵がどいつなのか確認したらこの紙通りに対応していください。ま、十中八九こいつでしょうけど」

そう言って見せたのは腹黒の特徴が書かれた紙。



--草原の果て--

ばしっ! ばしししっ!!

腹黒「!? これは結界か!? 魔法を封じる結界を魔力球にして撃ち込んだのか……?! く、誰だこんな手の込んだまねを!!」



--魔法王国、過去--

魔導長「……でも、もしその話が本当だとしたら、私の魔法でも撃ちぬけるか心配なの」

参謀長「大丈夫ですよ。その杖は無属性の攻撃力を二倍にする特性に改造されてます。それに私のこの護符を使えばなんなくいけるはずですよ」



--魔法王国、上空--

ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!

魔導長が圧縮している魔力球の数は七つ。

676: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 05:02:07.16 ID:eTzK2S8d0
698

--草原の果て--

腹黒「くそっ!! ふざけやがって! この俺をなめるなぁあ!!」

びしししししっ!!

腹黒はなんとか結界を破壊しようとするのだが、中々壊すことができない。



--魔法王国、過去--

参謀長「この腹黒を視認してもすぐに攻撃しちゃだめです。こいつは保険をかけて分身をどこかに隠しているでしょうから」

魔導長「分身?」

参謀長「えぇ、私でも保険をかけますから当然でしょう。まぁ、私にはそこまでの能力が無いのでマネ出来ませんが、もし伝説の魔法使いである彼だったならば。30個ぐらいの分身を作り出しておくんじゃないでしょうかね。そして戦場に送るのは20個程度、後は戦場に出さずに様子見って所ですか」

魔導長「……」

参謀長「でも今の彼なら一体分身を作ったら満足しちゃうんじゃないでしょうかねぇ。老いるのも嫌ですが、化物になるのも考えものです」



--魔法王国、上空--

ばぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢぢ!!

七つの魔力球が互いに干渉し合い、強烈なスパークが発生する。

魔導長「レベル5魔法を連発するようなら……二分割で間違いないなの!」

677: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 05:02:39.55 ID:eTzK2S8d0
699

--魔法王国、上空--

ぎゅごごごごごごごごごごごごごごごごご!!



--草原の果て--

腹黒「はっ!? く、くそ、狙ってやがる……くそ! くそくそくそ!! 一体誰がこんなまねをおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」



--魔法王国、上空--

魔導長「あんたの子孫なの」

バヂッ

魔導長「――奥義、神星光破壊砲」


ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

678: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/03/24(火) 05:03:20.65 ID:eTzK2S8d0
700

--東の王国--

じじっ

通信師「! 東の王様、第二王子は無事助け出しました」

ピエロ「ふぇ!? ふ、ふふぉふぁ!!」

東の王「……」

……ズズゥン……

そして地響きが城にまで到達する。

剣豪「……東の王」

東の王「あぁ……」

剣豪「賭けは、俺の勝ちみたいだぜ」

東の王「……あぁ」

東の王は困ったように、

東の王「そのようだな」

笑った。

693: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 02:44:25.27 ID:2kZh58720
701

--東の王国--

むくり

ユー「……」

ぽりぽりと頭をかきながら起き上がるユー。

ユー「……」

辺りを見回すが、ユーはなぜ自分がこんな所にいるのかわからない。

ガタン

ベッドから降りようとして転んでしまうユー。

がちゃっ

ハイ「あ、ユーさん! 目が覚めたんですか!?」

ユー「……?」

扉を開けて入ってきたハイは、近づいてユーに肩を貸す。

ハイ「良かった。一ヶ月も目を覚まさなかったもので心配しましたよ」

ユー「……!?」

694: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 02:48:45.48 ID:2kZh58720
702

--東の王国--

むしゃりむしゃりばくばくむしゃむしゃ!!

ハイ「凄い食べっぷりですね……。まぁ一ヶ月何も食べて無かったんだから当然ですか」

しゃりしゃり

ハイは剥いたりんごをお皿に載せる。

ハイ「……お体の方は大丈夫ですか? やはり色々と無理をされてるみたいですね」

ユー「……」

ハイ「知り合ってからずっと私のサポートをしてくれてましたし、魔王クラスとの連戦に度重なるルートの使用……無理がこない方がおかしいというものです……」

ユー「……」



ユーは気にするなとばかりにサムズアップ。

ハイ「そうもいきませんけど……はい」

ハイは困ったように笑うしかない。

それよりこの一ヶ月間に起きたことを教えて欲しいとユーはジェスチャーでハイに伝えた。

695: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 02:53:24.81 ID:2kZh58720
703

--東の王国--

ハイ「さてどこから話すべきでしょうか……あ、そうですね、ではユーさん達が戦っていた腹黒さんについてからにしましょう」

ユー「!」

その時ユーは思い出した。十代目と共に腹黒と戦闘したのだが、最終的に策にはまり敗北してしまったことを。

ハイ「ま、私達がこうして生きていることからわかるように、勝ったのは私達です。腹黒さんは援軍の皆さんが倒してくれました。ユーさんと十代目さんが追い込んでくれたおかげですね」

援軍? とユーが聞きたげな顔をする。

ハイ「はい、実は盗賊さん達が色々裏でやってくれていたんです。私達が代表君や竜子ちゃん達を説得してる間に、人造勇者さんや魔法王国の人たちと話をつけてくださっていたんです。それで私達の助けになるようにと援軍が来てくれたわけです」

ふむふむと頷くユー。

ハイ「……っと、ユーさんが一番気になっているのは魔王達の動向ですよね?」

こくりと頷くユー。

ハイ「実は……おかしいことにあれから魔王達は一切動いていないんです」

ユー「!」

ハイ「ユーさんは倒れてしまうし、絶好の機会だったはずなんですが……逆に不気味で仕方ないんです」

ユー「……」

ハイ「私が知っている前回とはもう完全に違う流れになっています。この流れがもし、ビィによる人類の必敗パターンなのだとしたら……」

ユー「……」

ハイ「あ、あは……そんな暗くなるようなことばかり話していても仕方ないですね。行きましょう。他の人たちにもユーさんの顔を見せてあげなくちゃ」

696: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 02:56:18.85 ID:2kZh58720
704

--東の王国--

がちゃり

ユー「!」

盗賊「おー! 起きてきたかユーくん。久しぶり! 覚えてるかな?」

勇者「! 彼が始まりの勇者……」

赤姫「……」

ツインテ「あ、ユーさん。体の方は大丈夫なんですか?」

ぱたぱたと近寄ってきて上目遣いで心配そうな顔のツインテ。

フォーテ「気遣うお姉ちゃんの慈愛の深さには女神もびっくりだよね!!」

ポニテ「むしゃむしゃ」

アッシュ「……揃ったか。てか食いながらやるなポニテ」

部屋の中にはくつろいで人狼をやっている盗賊達がいた。

ユー「くつろぎ過ぎやろ」

ハイ「喋った!?」

697: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 02:59:08.38 ID:2kZh58720
705

--東の王国--

盗賊「やー、でもこれで本格的に計画を練ることが出来るね。ユー君は我らの戦いに必要不可欠な存在だから」

勇者「別に今までだってちゃんと練ってたけど……って、あーっ! 私また殺されてる! ひどい! なんでいつも私からなの!?」

狼に殺されて半泣き状態の勇者。

盗賊「狼からしたら美味しそうに見えたんだろうなぁきっと。じゅるり」

赤姫(盗賊吊るそうぜ)

ツインテ・こくり

アッシュ・こくり

ポニテ・こくり

ユー「……」

ハイ「あはは……すいませんユーさん、この一ヶ月間あまりに平和だったもので……」

赤姫「じゃあ盗賊チェック」

ぺらり

赤姫「! 狂人かよ!」

698: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:00:37.14 ID:2kZh58720
706

--東の王国--

ぎぃ、がちゃ

レン「はー、やーっと終わったにゃー。ハイー、ご飯お願いにゃー、もうお腹がぺこちゃんにゃ……あれ? もう起き上がって大丈夫なのかにゃ? ユー」

そこにくたびれたレンが現れる。

ハイ「先ほど目を覚まされたんですよ。今ご飯作りますね」

ツインテ「あ、ボクも手伝います」

ツインテは立ち上がって台所へと向かう。

アッシュ「……今回はここまでだな。ノーゲームということで……ツインテはなんだったんだ?」

ぺらり

アッシュ「! ツインテが狼かよ!」

ポニテ「可愛らしい顔して中身は狼……恐ろしい娘ッ!」

699: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:03:29.04 ID:2kZh58720
707

--東の王国--

トントントントン

アッシュ「そういえば入ってくるなり終わったとか言ってたな? 例の作業が終わったのか?」

レン「そうにゃよ。マントルに書いた魔法陣。今日で全て書き換え終わったにゃ。ってか今朝出かけるときに今日で終わるだろうって話をしたはずにゃ」

勇者「よくやったわ。予想より随分時間はかかったけれど、これでやっと修行に移れる」

レン「か、完成させるだけならいつでもできたのにゃ。ただ時間に余裕があったからいいもんにしようとじっくり時間をかけたせいでこうなったのにゃ。で、修行ってなんにゃ?」

勇者「えぇ、貴方達のために作っておいた修行の場所、修練の塔に入ってもらうわ」

盗賊「あ、あー……そういえばそんなの作ってたなぁ」

赤姫(完全に忘れてたなこいつ)

ポニテ「修練の塔? それなんなのママー」

勇者「文字通り修行の場所よ。入ればわかるわ」

レン「あー……レンの作業が終わるまで待ってたってことはレンも入ることになるんにゃね。ご飯食べてからでもいいにゃ?」

701: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:08:15.79 ID:2kZh58720
708

--東の王国--

レン「むしゃむしゃ。ツインテとハイの料理はとってもおいしーにゃぁ」

ツインテ「ありがとうレンちゃん。まだたくさんあるからおかわりしてね」

フォーテ「フォーテも! フォーテもお姉ちゃんの料理食べるのっ!」

ツインテ「フォーテちゃんはさっきみんなと一緒に食べたでしょ? そんなに食べてたら夕飯食べれなくなっちゃうよ」

アッシュ(その理屈だとこの時間に食ってるレンはどうなるんだろうってことがどうでもいいくらいエプロン姿のツインテ可愛いな)

ポニテ「むしゃむしゃ」

そして当たり前のように食ってる歩にて。

ハイ「ではちょっといいですか? 少しミーティングがしたいです」

勇者「その話はここにいるメンバーだけでいいの? 東の王とかは?」

ハイ「この話は今ここにいるメンバーだけで大丈夫です。もう軍師さん達や一部にはお伝えしたこと話ですから」

アッシュ「ふむ。聞こう、話せ」

ツインテのエプロン姿をちらっちら見ているアッシュ。

フォーテ「」

それをおちょなんさんばりの凄まじい形相で睨んでるフォーテ。

702: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:24:30.78 ID:2kZh58720
709

--東の王国--

ハイ「はい。話は、なぜこんなにも長い期間魔王側が攻めてこないのかってことについてです。一ヶ月前の戦いでトリガーは腹黒さんを送り込んできました。とんでもなく強い相手だったようですが、それでもユーさん達の活躍により腹黒さんを倒すことに成功しました。とはいえ一時的にこちらの勇者二人が行動不能に陥りました。本来ならその隙に次々と魔王を送り込んで来てもいいはずですよね?……でもしてこなかった」

アッシュ「簡単だ。捨て駒だったんだろう、奴は」

ハイ「はい。私や軍師さん達もその意見でした。魔王を一体使ってまで、私達がどう対応するのか見定めたかったんだと思います」

ポニテ「魔王が捨て駒とか……豪勢な使い方するねー」

ハイ「前回(アイ募三部)の戦いではトリガーは魔王を捨て駒にするような行動をとりませんでした。と考えると腹黒さんを送り込んできたのは別ルートの私、ビィってことになると思います。ビィは、何度も繰り返して戦い抜いた実績があるようです。そのループの中で、最も対応に困ったのが腹黒さんなんだと思います」

盗賊「対応に困る……それは……人間的にってことかい?」

ぱかん!

勇者に殴られる盗賊。

ハイ「……戦闘でです。で、それに我々がどう対応したか……それさえわかれば、今後こちらの動きが最後まで読めてしまうのかもしれないんです」

ツインテ「!!」

アッシュ「……数え切れないほど繰り返した戦いの記憶か……。確かにそれでこちらの行動が全て読めるようになるんなら安い対価だ」

ポニテ「なんで全部の魔王で突っ込んでこないのかって思ったけど、なるほどね。下手に全魔王で突っ込むより断然勝率高いもんね」

ハイ「はい。ぶっちゃけ全部で来られても最後私ら勝ちましたしね勇者さんの機転で」

勇者「///」

てれてれしてる勇者。

盗賊「ループ前の勇者だからお前ではないんだぞ貧ちゃん?」

703: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:28:59.16 ID:2kZh58720
710

--東の王国--

レン「腹黒の件はわかったにゃ。で、こんなに長い間何も仕掛けてこないことについては、何か感づいたことでもあるのかにゃ?」

ハイ「それなんですが……私達が腹黒さんに犠牲無く勝ったからだと思います」

勇者「確かに私達側に死者は一人も出なかったわ。もちろん奇跡的にだけど」

※この場合の死者というのは蘇生不能にまで陥ることを言っています。

ツインテ「奇跡でもなんでも完全勝利してしまった。だから警戒してるってことですか? 魔王側が?」

ハイ「そこまでは……わからないです。でも、この期間は何か意味があるんだと思うんです。でないと対魔王魔法陣の完成やその他もろもろの私達の準備を黙って見ているわけがない」

勇者「その通りだと思うわ。ビィか、あるいはトリガーのなんらかの思惑なんでしょう」

ポニテ「でも……もしこっちの動きが全部わかっちゃってるんだったら……私達がこれからやることも全部通用しないんじゃ……?」

ハイ「かもしれません……実は一ヶ月くらい前からそのことを軍師さんと参謀長さんと代表君に話したんです。そしてこちらも相手の裏をかくべく、これからのことを三人にシミュレーションしてもらってるんです」

フォーテ「しみゅれーしょん?」

ハイ「はい。トリガー陣営がこれから行うであろう手を片っ端から、詰め将棋のように」

704: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:32:35.90 ID:2kZh58720
711

--東の王国、地下--

参謀長「だぁからぁ! 銀蜘蛛がここに来た場合はその防御力と質量兵器を使って攻めてくるわけだからぁ!」

代表「いやいやそもそもおかしいでしょう。聞いた通りの情報ならここは銀蜘蛛じゃなくてヤミを使った方がいいわけです。あれは死なないんですから」

軍師「ぐごー……」

参謀長、代表「「寝るな!!」」

すぱぁん!!

竜子「おら飯もってきてやったぞ。うわくさっ! すっぱこの部屋!!」



--東の王国--

勇者「シミュレーション……膨大な時間がかかってるわね。そしていまだに討論してるみたいだし……使い道あるのかしら」

ハイ「時間によって考えることも推移してますから……なので何が言いたいかって言うと、私達はこれから敵の裏をかき続けなくちゃいけないってことです。まぁ、裏をかこうと思っていること事態が敵の思惑通りなのかもしれませんが……」

盗賊「ふむ……しっかり考えた作戦だろうとなかろうと、どちらにせよ敵に全部ばれてるかもしんないなら、なんも考えないで戦ったほうが時間はぶけていいよね」

赤姫(なんでこいつは最後まで抗おうとしてる人の努力がわからないのか)

705: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:34:18.12 ID:2kZh58720
712

--東の王国--

勇者「言いたいことはわかった。ならなおのこと急がなくちゃね」

そういって勇者は立ち上がる。

勇者「ポニテ、ツインテ、アッシュ、レン、そしてハイ。これから貴方達には修練の塔に入ってもらう」

ハイ「さっき言ってた修練の塔、ですか。そこでこれから修行を?」

勇者「えぇ。ま、ぶっちゃければ精神と時の部屋みたいなそんな感じの塔よ」

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ(((ぶっちゃけ過ぎている!)))

勇者「裏をかくにせよ何にせよ、まずはそこでのパワーアップは必要だわ。でないと完全勝利は無理なのよ」

ハイ(勇者さんがそこまで言うなんて……一体どんな精神と時の部屋なんだ)

盗賊(俺そんな凄いもの作るの手伝った記憶無いんだけど……)

フォーテ「っていうかフォーテの名前がそこに無いんだけど!? フォーテもお姉ちゃんと一緒にパワーアップしたいしたい!!」

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ(((それ以上強くなってどうすんの!)))

706: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:35:41.74 ID:2kZh58720
713

--東の王国、廊下--

すたすたすたすた

鬼姫「お、みんなでどこ行くっスかー? ピクニックスか?」

何かのモンスターの手足をむしゃむしゃしながら歩いている鬼姫とすれ違う。

アッシュ「違う、これから修行に行くんだ」

ポニテ「てかピクニックって」

鬼姫「えー!? 修行いいなー! あたしも修行行きたいっスー。アッシュ君と一緒に修行したいっスよー」

アッシュの腕に自分の腕を絡める鬼姫。

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン(((あんたもう最強クラスじゃん!)))

ハイ(あ、アッシュ先輩に近い……)

聖騎士「ぶるぅぁああああ……修行ぉだとぉぉ……? この我もぉ、まぁぜぇるがぁあいいいいいいいいいいい!!!!」

窓に張り付いてぶるぅあぁああ言ってる聖騎士。

ツインテ、アッシュ、ポニテ、レン、ハイ(((ツッコミが間に合わない!)))

707: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:38:56.67 ID:2kZh58720
714

--東の王国、外--

勇者「修行バカばっかいるからとにかくここを離れるわよ。ぴゅーーい」

ばさっばさっ!

グリフォン「サーイエッサー! お久しぶりであります教官殿!!」

ばさー!

空からグリフォンが舞い降りる。

ポニテ「おっひさー!」

勇者「ではこの子達を失われた王国まで届けてくるわ。その間の留守しっかり頼むわよ、盗賊」

盗賊「あぁ、任せとけ。ここにはユー君とか五柱とかフォーテちゃんとか凄いのいっぱいいるからな! 彼らならきっと大丈夫だ!」

勇者「人任せにするなよ」

完全に他人事な盗賊だった。

勇者「……じゃあ、行って来るから」

盗賊「おう、心配すんな。しっかりやってこい」

ばさっ、ばさっ、ばさっ!!

フォーテ「うえぇええええ!! お姉ちゃんが行っちゃうよおおおおおおおおおお!!」

地面が漆黒の闇へと変わり、盗賊が少しずつ地面に埋まっていく。

708: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:42:06.67 ID:2kZh58720
715

--空--

ばさっばさっ!

ハイ(しかし修練の塔、か……確か前の時に一度だけ名前を聞いたような気がするけど、どんな場所かわからないからな……でも勇者さんがここまで自信満々に言うくらいなんだからきっと凄いところなんだよね? そんな場所で先輩達が修行を積んだら魔王側もただじゃすまないと思うんだけど……妨害は無いみたい……もしかして、何度繰り返してもこの修練の塔のイベントは発生しなかったのかな?)

ハイはグリフォンの背中で考えている。

ハイ(……ありえるかも。特別なイベントとイベントが偶然合わさることで発生するようなイベントだったとしたら。例え何度繰り返しても取りこぼしちゃうイベントとか……)

びゅごおおおおお!!

勇者「風属性移動速度上昇魔法レベル4」

アッシュ「やるな。さすが先代勇者……移動速度上昇魔法レベル4!」

グリフォンに魔法をかけあってどんどん飛行スピードを速めている二人。

ギュン!!

グリフォン「ぎゃふぁっ! か、風で息ができないで、あります!」

ポニテ「羽ばたくの止めろよ」

レン「っていうか今までアッシュがかけてた移動速度上昇魔法って、もしかして毒属性なのかにゃ? 毒のスピードアップってどういうことなのかにゃ?」

ハイ「ど、ドーピングもほら、一種の毒みたいなところあるじゃないですか。だから多分……それかと」

※アッシュの補助魔法は無属性でやってます。

709: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:43:36.12 ID:2kZh58720
716

--失われた王国、入り口--

ばさっばさっ

占師「ほっほっ。やってきたねぇみんな。待っておったよ」

失われた王国に着くと出てきたのは占師。

ポニテ「おばあちゃん、やっほー!」

占師「はいはいやっほー」

ぱんぱんぱん

ポニテ、占師「「いぇーい!」」

と手を合わせる二人。

トサッ

占師「おーおー、勇者ちゃんもやっほー」

勇者「いきなりだけどお婆ちゃん、時間が無いの。さっそく修練の塔を使わせて頂戴」

占師「ほっほっ、わかってるよ。さぁみんなついてきなさい」

……ざり

ハイ「?」

その時ハイは何かの物音を感じて背後を見た。

ハイ(気のせい……かな?)

710: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:45:13.66 ID:2kZh58720
717

--失われた王国、修練の塔入り口--

占師「ほっほっ。ついたついた」

ひゅおおおおおお

ツインテ「これが……修練の塔……」

アッシュ「なんだかデザインが……」

ポニテ「芸術が爆発しそう……」

レン「ぱくりにゃ」

ふよふよふよ

ぴっち『お、ツインテ様達だっぴ。やっと来たのかっぴ』

ツインテ「あっ、ぴっちちゃん! お久しぶりです!」

ぱっち『ぱっちもいるっぱ。お久しぶりっぱツインテ様』

ふよふよふよ


レン「修練の塔の周りに妖精がいっぱい飛んでるにゃ。これも修行に必要なのかにゃ?」

占師「うむ。時間に関することをするには妖精の力を借りるのが一番だからねぇ」

711: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:46:53.12 ID:2kZh58720
718

--失われた王国、修練の塔入り口--

ポニテ「時間に関する……? わー、なんだか本格的にそれっぽい! 部屋の中の一年が外の一日相当になりそう!!」

ハイ(……あれ?……妖精は確か時間を遅める方、だったよね? つまりそれはどちらかというと部屋の中の一日が外の一年になる浦島方式だったような)

占師「気づいたかね運命の子よ」

占師はそっとハイの肩に手を置いた。

占師「だがきっとハイちゃんが考えていることとも違うよ。これは時間を早めたり遅くしたりするもんじゃないんだ。時間旅行の一種なのさ」

ハイ「時間、旅行……?」

占師「そうさ。そこでみんなは確実に強くなる。あの人らの修行を受ければ、ね。さ、時間がもったいないよ。入った入った」

占師は入り口を指差す。

占師「行ってらっしゃいみんな。そしてそこで、誰が5人目の勇者なのか、答えを出しておいで」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「」」」

占師「修行が終わる頃にはきっと、答えがでてるはずだから」

712: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:49:17.89 ID:2kZh58720
719

--失われた王国、修練の塔入り口--

ツインテ(勇……者)

アッシュ(……俺としたことがすっかり忘れていた)

ポニテ(私達そういや、誰が勇者になるか勝負しながら旅してたんだったっけ……)

三人はお互いの顔を見つめあった。

ハイ(! 世界を救うには五人の勇者が必要……確かそんな話をしていましたね)

ハイは勇者の顔を見る。

ハイ(勇者の力を持つのは、勇者さん、十代目さん、ユーさん、そして僭越ながら私……つまり後一人足りない……)

ハイはツインテ達を見る。

ハイ(後一人がここにいる……そうか、確かに修練の塔は必要なはずだ……最後の一人を見つけるために……勇者が五人集まらないとバッドエンドを覆せないって、そう言ってましたもんね)

アッシュ「……ふん、今更だな。俺は……この中の誰が勇者であろうと構わん」

首を鳴らしながらアッシュが入っていく。

ツインテ「……そうですね。でも……修行怖くないといいんですが……」

おどおどと入っていくツインテ。

ポニテ「……五年ぶりくらいの最初の設定思い出した気がするよー、なっつかしー……まぁいいや! 行って来るね! ママ! お婆ちゃん!」

手を振りながら入っていくポニテ。

713: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/04/28(火) 03:52:45.97 ID:2kZh58720
720

--失われた王国、修練の塔入り口--

レン「なるほど、そういうことなのにゃ……こうなりゃなんとしてもレンの力でツインテを勇者にしないとにゃ」

   ぴしっ

ハイ「」

どんっ

レン「ぶっ! 何立ち止まってるのにゃハイ。さっさと塔の中に入って欲しいのにゃ」

勇者「? どうしたのハイ。後は貴女達だけよ?」

その時になって、ようやくハイは気づいた。

ハイ「し、しまった……これ、だったんだ」

勇者「?」

バッ!

ハイは後ろを振り返る。

ハイ「!」

すると失われた王国の入り口辺りに一匹のガーゴイルがいるのを見つけた。

ガーゴイル「……にや」

ハイ「勇者さん!! 急いで東の王国へ戻りましょう!!」

勇者「!? ちょ、何を言ってるのハイちゃん! 貴女はここで修行をつけるのが先」

ハイ「ビィは、ずっとこの時を待ってたんですよ!! ビィはループの中で修練の塔に入ったことがあるんです!!」

勇者「……え?」

ハイ「ビィは勇者候補の三人がいなくなるのを待っていたんです!!」



--東の王国、近隣--

ダーク牧師「情報来ました。どうやら修練の塔とやらに三人が入ったようです」

ビィ「オッケーでーす。あそこは一度入ったら簡単にはでてこれないですからねぇ。ではでは~……」

ビィの後ろには

銀蜘蛛「」

桃鳥「」

茶肌「」

ヤミ「」

蝿男「」

ウェイトレス「」

脳筋「」

ザンッ!!!!

魔王が勢ぞろい。

ビィ「ラストバトル~始めちゃいましょうか★」

724: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:08:29.65 ID:z91gI7+v0
721

--東の王国--

ドォン!! ドゴオォオン!! パラパラ……

参謀長「……どうやら来たようですね」

軍師「そのようだぜぃ」

代表「ふ……勇者さん達が出かけて手薄になったこのタイミングでの襲撃……」

三人はくいっと眼鏡をあげる。

参謀長、軍師、代表「「「予想通り!!!!」」」

バンッ!!

隈を作った三人は一斉に立ち上がり、作戦会議室から外に出た。

軍師「プラン55発動だぜぇい!!」

725: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:09:41.70 ID:z91gI7+v0
722

--東の王国、A--

ドォオン!! ドドドオンン!!

ダーク牧師「ふははは! どうです?……三強などとうに凌駕したこの最強の力!!」

ガーゴイル1「ぐぎゃああああーーー!!」

ガーゴイル2「ぎゃぐがあああああ!!」

モンスターを指揮するダーク牧師と、それに対峙する完全装備の兵士達。

東兵士「魔族やモンスター共をここで食い止めろ!! 人々に指一本でも触れさせるなーーー!!」

南兵士「おうとも!! 我らの武芸見せてやる!!」

わー!! わー!!

ダーク亜人王「多国籍軍ですか……人種の差を乗り越え手を取り合う……美しい光景だ。だが」

ずんっ!! ドガーーーーン!!

北兵士「がわーっ!?」

ダーク亜人王が四股を踏むとそれだけで数十人の兵士達が吹き飛んだ。

ダーク亜人王「――もう遅い。今更遅い! お前達には死しか残されていないのだ!!」

726: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:10:54.26 ID:z91gI7+v0
723

--東の王国、A--

??「そいつはどうかな!」

ザシャアァア!!

ダーク亜人王「! 貴方は……」

ダーク亜人王の硬い肌を槍がなでた。

槍兵「ちっ、傷一つつかねぇかよ。本気でやったんだがなぁ……」

虎男「亜人王……様」

ざんっ!

西兵士「!! 三強方が来て下さった!! 皆、ここが踏ん張り時だぞーー!!!」

おおおーーー!!

影月「……やれやれぇ、これまた骨の折れそうな相手やっちゃな。わいの人生いっつもこんなんやで」

ぽろん

吟遊詩人「皆も皆で大変なはず。文句ばかりじゃいけないですよ~」

影月「まぁ……そうやな」

ダーク牧師「……魔族化した私達を、たったこれだけの人数で止められるとおもっているのですか? はっ! 笑わせてくれる。メインディッシュの前に、遊ばせてもらうとしますかぁ!」

727: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:11:24.27 ID:z91gI7+v0
724

--東の王国、B--

オオオオオオオオオオオオオ……

ケンタウロス「……うーん、ちょーっと……分が悪い、かな……」

ダーク鬼亜人「……」

ダーク先生「確かにコレは……厳しいね」

B地点で三体の亜人を待ち構えていたのは、

フォーテ「あはははっ! きたきたーっ、三人もきたー! これなら僕の準備運動にもってこいだねっ!……せめて僕の体温まるまでは壊れないでねっ……?」

邪悪な笑みを浮かべるフォーテ。

ケンタウロス「退却を提案するわ」

ダーク鬼亜人、ダーク先生「「異議なし!」」

728: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:12:28.33 ID:z91gI7+v0
725

--失われた王国、修練の塔入り口--

ひゅおおおおお……

勇者「……ポニテ達三人がいなくなるのを、待っていた……」

勇者はハイの言葉を口に出して繰り返した後、

バッ!

勇者「雷属性攻撃魔法、レベル3!」

バシィィィィィー!!

ガーゴイル「!」

背後の物陰に隠れているガーゴイルに向けて魔法を放った。

ばりばりばりばりばりーーー!!

ガーゴイル「ぐ、ぐぎゃああああああああああああああ!!」

どすん、ぷすぷすしゅぅーー……

勇者「……確かにあの三人は私達の切り札となる存在だけど……でもトリガーがそこまであの子達を警戒するものかしら。いなくなるのを待たずに攻めてくるんじゃ……」

ハイ「前回もトリガーはツインテ先輩達のことを警戒していました。なにせ、あの魔王になった勇者さんを直接送り込んできたんですから」

勇者「!……ハイちゃん、なぜそれを今言うの?」

ハイ「え?」

勇者「その情報をなぜ今まで黙っていたの? ハイちゃんらしくもない……」

ハイ「……あ」

729: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:14:36.77 ID:z91gI7+v0
726

--失われた王国、修練の塔入り口--

ハイ「あ、あれ? 確かに、なんで? 私……」

勇者「!……そういうことか。グリフォン!」

ばさばさー!

グリフォン「イエス! マム!!」

勇者(……私達全員の思考が少しずつ狂わされてる……腹黒の捨石作戦には他にも狙いがあったということか……あいつが死んだ時に思考撹乱系の魔法が発動するようにしかけられていたんだ……)

バッ!!

勇者はグリフォンに飛び乗った。

勇者(大体私達が本拠地として計画していたのはこの失われた王国だったのに……なんで、東の王国なんかにしてしまったんだろう……!!)

ハイ「ゆ、勇者さん」

レン「なにやらピンチっぽいにゃね」

勇者(どうする……ハイちゃん達を連れて行くべきか否か。出来ることならハイちゃん達にもパワーアップして欲しい。けど)

ハイ「勇者さん、私達も連れてってください!」

レン「!」

ハイ「とても嫌な予感がします……今私達が行かなきゃ全てが終わってしまうような……」

勇者「ハイちゃん……」

ハイ「パワーアップも何もかも世界が残っていてこそです! 滅ぼされた後に修行を終えたって何も残りません!」

勇者「!」

ハイ「それに……ビィを倒せるのは、多分私だけです」

勇者「……」

ハイの真っ直ぐな瞳を見た勇者は迷わなかった。

勇者「……わかった。乗って」

勇者はハイ達に手を伸ばす。

ハイ「はい!」

730: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:15:35.02 ID:z91gI7+v0
727

--東の王国、A--

ダーク亜人王「ぬうううううううううううううあっ!!」

ドオオオオオオオオオオン!!

ダーク亜人王の掌底打ちを交わした槍兵、しかしその攻撃は後ろの城壁へと命中し、

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

槍兵「! おいおい嘘だろ……?」

虎男「!! 城壁が破壊された……がお」

影月「……やー、めちゃくちゃ硬いわいでも、あれはさすがに受けたくないでぇ……」

ひゅんひゅん!! ききん!!

雨のように降り注ぐ矢の援護射撃、だがダーク亜人王に傷一つつけることもできない。

吟遊詩人「歌で威力は強化しているんだが……きついね」

731: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:17:54.48 ID:z91gI7+v0
728

--東の王国、近隣--

どおおん! どごごおおおん!!

モンスターと人間達の戦争を遠くから見物している魔王達。

桃鳥「たーまやー。うふふ。中々楽しい見世物だな、って、私思っちゃいます」

銀蜘蛛「イーヨネーーー、ハヤクボクモマザリタイヨオォー」

脳筋「はっはっはっ。あの中には強い奴がいるんだろうなぁ」

ゴオオオオオオオオ!!

その時脳筋の眼に飛び込んできたのは東の王国の上空で竜騎士達を先導し、モンスターを撃退している聖騎士の姿。

脳筋「……いたなぁ、とびっきり強いのが」

ヤミ「……」

ウェイトレス「? どうかしたの? ヤミ君」

何かを考えるようにしているヤミに話しかけるウェイトレス。

ヤミ「……数万体のモンスターと数十人の魔族からなる我らが軍団が相手だと言うのに、人間共は戦力を出し渋っている気がしてな」

ウェイトレス「ほう……」

ウェイトレスは目を細めて東の王国を見る。

ウェイトレス「確かに。ギリギリおし止めておける程度の戦力しか出されてないかも。私達が直ぐ傍に控えてるからそれに備えてるのかな?」

ヤミ「ふっ……」

ヤミは笑う。

ヤミ「それは浅はかにもほどがある」

ウェイトレス「ばっかだねぇ……そんなんじゃすぐ終わっちゃうのに」

732: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:18:51.17 ID:z91gI7+v0
729

--東の王国、A--

どがががががぁああん!!

槍兵「ちぃ! おい、大丈夫か虎男!」

虎男「ぐ……問題ないがお……」

槍兵「問題ないわけあるかよ! もろに受けちまって!」

ダーク牧師「仲間の心配とは余裕ですねぇ!!」

槍兵「!」

ガーゴイル「ぎゅるるるあああああああああああ!!」

サッ!!

槍兵は繰り出されたガーゴイルの攻撃をすんでのところで避けた。

ダーク牧師(……妙ですね……なぜかあちらさん、攻撃らしい攻撃をしてこない……?)

どがぁああん!!

ダーク亜人王(何か他に狙いがあるのか?)「むんっ!!」

ドガガガガガガアアアアアアアアアアン!!

影月「ぐほっ!? つ、つーーー!! 堪忍してぇや! ごっついったいわー!」

733: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:20:01.84 ID:z91gI7+v0
730

--東の王国、B--

フォーテ「え? おじちゃんがあの災厄の鬼亜人なの? なーんだ。この程度だったのかぁ。がっかりー!」

ダーク鬼亜人「……」

フォーテは闇から生やした死者の腕で魔族達を捕らえていた。

ケンタウロス「……魔族が三体がかりだというのに……本物の化物か……」

オオオオオオオオオオオオオオオ

フォーテ「結局準備体操にもならなかったなぁ。ふぁああぁあ」

フォーテは退屈そうにあくびをする。

ダーク先生(? 止めを刺さないのか?)

フォーテ「むにゃむにゃ……これ以上遊んじゃったら死んじゃうし、早く始めてくれないかなー」

フォーテは頬を膨らませた。

734: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:21:02.59 ID:z91gI7+v0
731

--東の王国、C--

ぴぃいいん……

参謀長率いる沢山の兵士達が、青色に光る魔法陣を囲んでいる。

参謀長「――では、準備はよろしいですか?」

通信師「はい。いつでもいけます」

魔導長「こっちも大丈夫なの」

兵士達も皆頷く。

参謀長「……了解です。それでは、『魔族化解除魔法、発動!!』」

ヴン!!



--東の王国、A--

ズンッ……!!

ダーク亜人王「」

ダーク牧師「……な、んだ……この感覚は……?」

……しゅうう

槍兵「いててっ……ふぅ……やっと始まったみたいだな」

735: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:22:45.43 ID:z91gI7+v0
732

--東の王国、B--

ぎぎぎ……

ケンタウロス「!! あ、頭ん中がかき回される!!」

ダーク先生「だ、だだだ、だが……ふ、不思議な感覚です……」

しゅうぅうう……

フォーテ(おわー。邪気が消えていく……魔族を味方に引きずり込んじゃうなんて、面白いことを考え付く人がいたもんだよねーっ)



--東の王国、C--

ばちっ、ばちちっ

参謀長「ふう……」

魔導長「手ごたえはあったけど、様子はどうなの?」

通信師「今調べています。少々お待ちを……」

通信師は耳に手を当てて探っている。

736: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:24:44.77 ID:z91gI7+v0
733

--東の王国、A--

ダーク亜人王「ぐ、うぐ……!!」

ずんっ、ずずんっ!!

亜人王は頭を抱えながら暴れていた。

虎男「亜人王様!! どうかお気を確かにがお!! 貴方はとてもお強い方がお!! 魔王の呪縛など簡単に振り払ってしまえるがお!!」

たたっ

亜人王に駆け寄る虎男。

しゅうううぅううう

ダーク亜人王「ぐ!……この……ふざ、けたまね、をおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

虎男「!!」

亜人王は咆哮し、腕を振り上げた。

ぶおん!!

槍兵「あぶねえ避けろ!!」

影月「あかん! まにあわへん!!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!








虎男「……はっ……はっ……」

しゅぅうう……

ダーク亜人王「ふー、ふー……よくも……よくも魔王どもめ!」

亜人王の拳は地面をたたき砕いていた。

槍兵「……ち。なんだよ、驚かしやがって」

ダーク亜人王改め、亜人王「……すまなかった虎男……魔王どもに利用された不甲斐ない私を許しておくれ」

虎男「あ、亜人王様!!」



--東の王国、C--

通信師「……成功です! 魔族化した皆さんは解放されました!!」

737: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:25:40.92 ID:z91gI7+v0
734

--東の王国、C--

わーわー!!

疾風「ふー……とりあえずひと段落やんな」

魔導長「……」

魔導長は椅子にこしかける参謀長をじっと見つめていた。

魔導長(魔族に変えられてしまったのなら、戻してしまえばいいだなんて……いくら準備期間があったからっておいそれと出来ることじゃないの)

魔導長は水の入ったコップを手に歩み寄っていく。

魔導長「はい。どうぞなの」

参謀長「あぁ、どうも。やれやれ、歳を取ると魔力の捻出も中々骨が折れます」

魔導長から渡された水を飲む参謀長。

魔導長「またまたー。全然若い外見してるなの。お父さん」

参謀長「いやいや、これでも相当歳をくって……え?」

738: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:27:55.25 ID:z91gI7+v0
735

--東の王国、A--

しゅうう……

ダーク牧師改め牧師「く……こんな形で利用されるなんて……屈辱です」

魔族達はすっかり正気に戻っているようだった。

槍兵「いや、しかしこりゃすげぇな……あの魔族が丸々俺らの仲間になっちまうなんて……」

槍兵は強力な力を発している魔族達を見て言った。

吟遊詩人「仲間になるというよりは、元の心を取り戻した、というべきかな~」

亜人王「……奴らの呪縛から解き放ってくれて礼を言う。姿こそ元には戻らないが、贅沢は言っていられない」

虎男「亜人王様……!」

ドスンドスン!

オルトロス「ぐああああああああああああああ!!」

そこに兵士数名を咥えたオルトロスが現れた。

槍兵「! っと、どうにかなったのは魔族だけでモンスターはそのままだ! 気を抜くなよお前ら!」

亜人王「私に任せろっっ!!」

どがあああああああああん!!

オルトロス「げひゅん!?」

亜人王の一撃で絶命し、崩れ落ちるオルトロス。

ずずずうーーーん。

槍兵「う、お……ワンパンかい……」

亜人王「これからは、共に戦おうぞ、人の子らよ!!」

739: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:30:41.13 ID:z91gI7+v0
736

--東の王国、近隣--

ずずーーん、どかーーーん

ウェイトレス「……」

桃鳥「ありゃ……魔族が奪われちゃいました……完全に形勢逆転しちゃってます」

蝿男「ひ、ひひ! お、面白いことを考え付く奴が、い、いるなぁあ」

ビィ「くすくす」

それを見てなおにやにやしているビィ。

ウェイトレス「……ビィ、あんた最初からこれわかってたの?」

ビィ「はい。わかってました★ ぜーんぶっ」

ウェイトレス「……だったら何か対抗策を打ったり出来たんじゃないの? せっかく作った魔族が全部あっち側に戻っちゃったのは少し痛いんじゃない?」

ビィ「そんなことないですよ。魔王である皆さんさえいれば何の問題も無いのです。全て私のプラン通りですよ」

桃鳥「! うおー、凄いですー。これすらもプラン通りだったのですかー! さすがと言わざるを得ません」

ビィ「えぇ、全ては……磐石なバッドエンドのために」

ウェイトレス「……」

740: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:31:29.77 ID:z91gI7+v0
737

--東の王国、B--

どかーん! どかかーーーん!!

ケンタウロス「よくも今までこきつかってくれたねぇ魔王共!!」

バルルルルル!!

ゴブリン「ぎゃーーーーー!!」

モンスター達を一掃していく元魔族達。

鎧兵士「うーむ……圧巻だ」

弓兵士「楽ちんだ」

どかーんどかかーん!!

フォーテ「こらこら気を抜いちゃだめーっだよ? おじちゃん達ー。本当の戦いはこれからなんだからさっ」

弓兵士「お、おうすまんフォーテちゃん。確かに油断しておった。肝に銘じるよ」

フォーテ「……」

フォーテは頬杖をつきながらビィ達がいる方向を見ていた。

フォーテ(さーて、もうすぐかな? うふふ……楽しみだなぁ)

フォーテの下で闇が蠢いている。

741: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:33:33.44 ID:z91gI7+v0
738

--修練の塔、一階--

ぴちょーん

ツインテ「う、うぅん……」

ポニテ「あ、ツインテちゃん起きた? おはよー!」

ツインテ「ポニテさんおはようございます……ここは」

ポニテ「忘れちゃった? 修練の塔だよ?」

ツインテ「! そ、そうでしたすみません、ボク頭が回ってなくて……あれ? なんでボク気を失って……」

アッシュ「時間の流れとやらに飲まれたんだろう。俺らも差はあれど気を失っていた」

ツインテ「アッシュ君……」

ツインテはきょろきょろと辺りを見回した。

ツインテ(……不思議な場所)

ツインテ達がいる一本の道以外は、全てジャングルのような原始的な場所だった。

アッシュ「……しかし来んな」

ツインテ「え?」

アッシュ「レンやハイだ。俺達がここに着てから随分と時間が経っている。なのにまだきやしない」

ポニテ「……外で何か不足の事態が起きたのかもね」

アッシュ「……だな」

742: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:35:30.02 ID:z91gI7+v0
739

--修練の塔、一階--

ツインテ「不測の事態、って……?」

アッシュ「わからん。だが、悠長に構えていていいはずがない。時間は有限だ。あいつらを置いて進むか待つか。選ばなくてはな」

ポニテ「私は……進んだ方がいいと思う。何かトラブルが起きてるんなら、さっさと強くなってとっとと帰還するのが一番だよ。出口は無いみたいなんだし」

アッシュ「珍しく意見が合うな。俺も同感だ。ただでさえここは時間の流れが掴めん。ぼーっとしてると何もかも手遅れになる可能性がある」

アッシュとポニテはツインテの顔を見る。

ツインテ「……ですね。ボクもそう思います。もしかしたら仲間と合流できないのも修行の一環なのかもしれませんしね」

アッシュ、ポニテ「「……それは考えていなかった」」

なるほどと頷くアッシュとポニテ。

アッシュ「……しかしこの三人パーティか。懐かしいな」

ポニテ「ふふっ、だね。私達の原点だよね」

ツインテ「……はい」

ツインテは立ち上がってアッシュ達の傍へ歩いていく。

ツインテ「……でも懐かしんでばかりもいられません。行きましょう。アッシュ君、ポニテさん」

アッシュ「おう」

ポニテ「うん」

ざっ!

743: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/12(火) 04:37:24.59 ID:z91gI7+v0
740

--修練の塔、一階--

ぎっ、ぎいぃいい……

鉄で出来た扉を開くツインテ達。

???「ヤァ、キミタチガソウナンダネ」

ツインテ「!?」

そこにいたのは……

???改め銀蜘蛛「マッテタヨー。ミライノユウシャノタマゴタチー」

アッシュ「こいつ……魔王の一人の銀蜘蛛か!?」

シャッ!!

瞬時に戦闘モードに入るアッシュ。

ポニテ「待って待ってアッシュ君。あれから魔王の気配はしないって」

アッシュ「何?……本当だ」

銀蜘蛛「魔王ダナンテ、失礼シチャウナーマッタク」

ドシン、ドシン

銀蜘蛛はゆっくりとツインテ達の方へと歩いていく。

銀蜘蛛「ボクハ銀蜘蛛。約束二従ッテ、君達二稽古ヲツケテアゲルカラネッ」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「……え?」」」

749: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:26:56.62 ID:gO3Zz8G30
741

--東の王国--

ドスンドスンドスンドスン!!

ミノタウロス「ぶもおおおおおおおおお!!」

侍「こいつで、最後でござる!」

ザンッ!!

ミノタウロス「ぶ、ぶもおおおおおおおおおおおおおおお!!」

どしーーーん!!

侍「……ふ、またつまらぬものを斬ってしまった」

侍は刀についた血をはらって鞘に収めた。

賢帝「どうやら目の調子はだいぶよくなったようねぇ……」

侍「賢帝殿……」

賢帝は怪我人達を背負いながら現れる。

侍「おかげさまでこの通りでござるよ」

賢帝「あー、もったいないわぁ。手負いの貴方は本当に美しかったのに……」

と舌なめずり。

750: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:27:26.14 ID:gO3Zz8G30
742

--東の王国--

侍「拙者も性癖については中々のものがあると自負しているでござるが、賢帝殿には勝てそうもないでござるなぁ」

賢帝「そうかしらん? 気に入った男に永遠に消えない傷を残したくなるなんて、普通の思考じゃなぁい?」

侍「……」

賢帝「ま、今はそんなことを言ってる場合じゃないからねぇ。勝たなきゃ趣味もクソもないんだもの。それに……」

オオオオオオ

フォーテ「あ! 気持ち悪いおじちゃんだっ! 何してるの!? また悪いことしてるの!? フォーテ怒ってもいいの!?」

賢帝「ひゃあっ!? な、ななな何も悪いことなんてしてないわよっ!? だから近寄らないで頂戴許して頂戴いいいいいいいっ!!」

侍(なんかなつかれてる……うらやま……恐ろしいでござる……)

侍は体をくの字に折り曲げた。

751: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:27:56.28 ID:gO3Zz8G30
743

--東の王国--

しゅうぅううう……

参謀長「あらかた片付いたみたいですね。いやはやこの程度で我々を切り崩せるとでも思っていたんでしょうか。見くびり過ぎですね」

代表「大量のモンスター達をこうも簡単に処理できるなんてね。味方になった魔族の力のおかげもあるけれど、人間のここぞという結束力はやはり強い」

軍師「とはいえこれはあくまで前菜……メインディッシュはこれからだぜぃ」

参謀長「えぇ、そろそろ魔王が動く頃でしょう。ここからが正念場です!」



--東の王国、近隣--

銀蜘蛛「ネェネェビィチャン。ボクタチモソロソロイキタインダケド、ダメカナ?」

茶肌「我が血が、滾る」

遊びたくてそわそわしている子供のような魔王達。

ビィ「そう、ですねぇ……えぇ、いいですかね。頃合です★ 行ってもらいましょうか」

銀蜘蛛「!! ヤッター!! ネェ、ダレカライッテイイノ!? ヤッパリナンバー的二ボクカラダヨネ? ネッ!」

脳筋「はっはっー。こういう時のためのじゃんけんだろ。平和的に後腐れなく決めようぜ」

桃鳥(魔王が平和的って……)

わいわい

ビィ「いえ? 皆さん全員に行ってもらいたいと思います」

752: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:28:29.82 ID:gO3Zz8G30
744

--東の王国、近隣--

ざわっ!!

脳筋「なっ……それは、まじか?……まじなのか?」

桃鳥「最初からそうしたらいいのに今までなぜかやらなかった魔王による一斉攻撃……それをこのタイミングで……!」

ウェイトレス「それ……トリガーはいいと言ってるの?」

ビィ「はいもちろん。トリガーさんの許可をちゃんともらってますよー★」

ヤミ「面白い……」

茶肌「ならば、競争だ、一番、多く、獲物、狩る」

蝿男「ひ、ひひ……行きたくねー……」

銀蜘蛛「ナンデモイーヤ! アバレラレルナラネ!!」

ビィと七体の魔王が東の王国を見つめる。

ビィ「それでは~? 攻撃開始デス★」

753: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:29:21.88 ID:gO3Zz8G30
745

--修練の塔、一階--

ドガガガガアーーーーーーン!!

アッシュ「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」

銀蜘蛛「ンモー、ゼンッゼン駄目ヨ駄目駄目ー。ソンナツヨサジャダレモマモレナイゾー?」

ポニテ「はぁ、はぁ……つ、強過ぎる……なんなのこのお化け蜘蛛……」

ツインテ「じ、次元が違う強さです……フォーテちゃんとはまた違ったベクトルの」

銀蜘蛛「エッヘン!」

と銀蜘蛛は腕を持ち上げてポーズを取る。

ポニテ「あーもうちょっと休憩ー! ツインテちゃん何か食べ物ほしー」

ツインテ「あ、はい。何か探してきますね」

アッシュ「おいポニテ、休憩なんかしてる場合か。ただでさえ俺達には時間が無いんだぞ」

ポニテ「そんなこと言ったってさーあー? 休む時はきっちり休まないとちゃんとした修行の意味無い、って魔導長お姉ちゃんとかに教わったんだもん」

アッシュ「ケースバイケースだ。それは時間がある時に有効な手段だ。時間が無いのなら効率が悪かろうが突き進むしか無いだろう」

がさがさ

ツインテ「あ、なんかリンゴっぽい食べ物がありましたー。アッシュ君もこれで大丈夫ですか?」

アッシュ「うん」

754: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:30:13.78 ID:gO3Zz8G30
746

--修練の塔、一階--

むしゃむしゃ

ポニテ「ちょっとすっぱいねこのリンゴ」

アッシュ「こいつ! ツインテがせっかく取ってきてくれたリンゴにケチをつけやがった!」

ツインテ「あはは」

銀蜘蛛「マダコノ星ニ植エテマモナイカラ順応シキッテナイノカモネー。僕モミヨウミマネデヤッチャッタカラナー」

ツインテ「え……このリンゴ、銀蜘蛛さんが植えたものなんですか?」

銀蜘蛛「ソーダヨー。アソコニハエテルノモソッチニハエテルノモ、ゼーーンブボクガウエタンダ。アトカラオリテクル、オーナー達ノタメニ」

マァ、オリテコナカッタンダケド、と銀蜘蛛は寂しそうに呟く。

ポニテ「……」

しゃり

ツインテ「……大体の話は赤姫さん達から聞いています。この星を人間達が住みやすい場所になるよう、テラフォーミングするのが貴方のお仕事だったとか」

銀蜘蛛「ソッカー、キイテルノカー。ジャア人外少女チャンノコトハ聞イテルノカナ?」

ツインテ「はい……ほぼ駆逐された先住種であるもこもこの生き残り。貴方に殺されないように人間の姿に擬態した少女」

アッシュ「その少女が一人では不憫だと感じたお前が彼女の仲間を増やす為に旅にでたことも聞いている」

銀蜘蛛「……エッ、人外少女チャンテ、モコモコダッタノ……?」

ポニテ「うわ、気づいてなかったパターンや……」

755: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:31:13.55 ID:gO3Zz8G30
747

--修練の塔、一階--

ポニテ「そんでセーブデータから解凍された人間達とまぐわりまくって色んな亜人種が生まれたんだったよね? さすがはボツネームが 乱ちゃんなだけはあるよねー」

銀蜘蛛「ソンナコトマデシッテルノカ……ドンナナイヨウデミライニツタワッテイルノカ……ナンダカコワイヤ」

銀蜘蛛は腕で顔らしき部分を隠す。

銀蜘蛛「……デモ、ボクガ解凍シタ人間達ハ、コウシテ子孫ヲノコシテ、何千年モ後モイキテクレテイルミタイデ、ナンダカ、スコシウレシクナッタヨ」

きゅいー

銀蜘蛛は三人の顔をじっくりと見ていく。

銀蜘蛛「……サァ、ソロソロ再開シヨウカ。修練ノ塔ハマダマダアルミタイヨ。ココデ足踏ミシテラレナイヨネ?」

アッシュ「……あぁ。どうやら俺達は歴代勇者の全員を超えなくちゃあいけないみたいだからな」

ポニテ「はぁ。ママもめちゃくちゃなことを考えるよなぁ……」

ツインテ「銀蜘蛛さん……」

銀蜘蛛「サァヤルヨ。未来ノ勇者候補達」

756: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:32:05.54 ID:gO3Zz8G30
748

--修練の塔、一階--

チュドドドドドドドドドド!!

アッシュ「ちぃ!!」(あのガトリングとかいう武器、威力と速度と量が半端じゃない!)

ビィー!

ポニテ「づっ!」(それすら撹乱するためだけに使ってて本命はレーザーとかワイアーだって言うんだから、もう!)

ボシュルルル!

ツインテ「!! ミサイルですよ皆さん!」

ドカーーーン!!

銀蜘蛛「ホレホレドウシタノー? ヤッパリ次ノ階層ニハイケナイカンジナノカナー?」

アッシュ「ぬかせぇ!」

バッ!

銀蜘蛛「!」

土煙に塗れて後ろに回り込んだアッシュはナイフの一点に魔力を集約し全力で振り下ろした。

ガキーン!

銀蜘蛛「ザーンネーンデーシター」

ギュイ

アッシュ「!!」

小型のガトリングがアッシュの方を向き弾丸を放つ。

バルルルル!

757: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:32:52.72 ID:gO3Zz8G30
749

--修練の塔、一階--

チチチチチチギィイイン!!

アッシュ「あっ、ぶねぇ!!」

すたっ!

銀蜘蛛「オッ、アノ距離アノタイミングデ全部フセイダカー! ヤルジャナイ!」

アッシュ(うるせぇ……クソ、硬くて攻撃が全く入らん……)

ポニテ(本体の動きが遅いのが唯一の救いだけど……)

ツインテ(強力かつ多彩な攻撃手段と堅固な防御力……これをどう突破するべきなんでしょうか……)

銀蜘蛛「ソッチカラコナイナラ、コッチカライコウカナー」

ガシャン、ガシャン

アッシュ「……」

ポニテ「……」

アッシュ「……なぁポニテ」ポニテ「ねぇアッシュ君」

二人の言葉が重なる。

ポニテ「あはっ。もしかして……同じこと考え付いちゃったかな?」

アッシュ「あぁ、恐らくな」

ニヤッ

アッシュとポニテが不適に笑う。

ツインテ「えっ? えっ?」

アッシュ、ポニテ「「これが。唯一の突破手段!!」」

758: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:33:39.42 ID:gO3Zz8G30
750

--東の王国--

ズズゥウウウウン!!

城壁が轟音を立てて次々と倒されていく。

東の憲兵「っ!! こ、これが、これが……」

ギュイーン! ドキューン! ドガアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

爆煙の中をゆっくりと歩いてくる七つの影。

東の憲兵「これが、魔王!!」

ガシャン!!

銀蜘蛛「サテト、人間達ノボスガイルノハアソコカナ?」

ウィーン

銀蜘蛛は東の王国の城にレーザーキャノンの砲塔を向けた。

ギャヂヂヂヂヂヂヂ

そしてエネルギーを溜め始める。

銀蜘蛛「サァ、キタナイハナビデモミヨウカナ」

バヂ

忍隊長「させるものか」

バッ!!

屋根を飛んで現れたのは砂漠の風の隊長の一人、忍隊長。

759: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:34:25.71 ID:gO3Zz8G30
751

--東の王国--

ウェイトレス「なーんだ。これだけ暴れたらもっといっぱい押し寄せてくるかと思ったけど、君一人?」

しゅぴっ!

忍隊長「!?」

ウェイトレスが指を曲げただけで忍隊長の体が糸によってしばりあげられてしまう。

脳筋「みたいだな。強い奴の気配がぜんっぜんしない。もしかして残りの主力はここを諦めて逃げちまったのか?」

ギシギシ

忍隊長「は、はっ! そんなわけが、ある、まい!」

ウェイトレス「じゃあどんなわけなのか説明してくれるかなー?」

ギシシシシッ!!

忍隊長「ぐぶっ!!」

細く強靭な糸が忍隊長の体に食い込んでいき、全身から血が滴り落ちていく。

ぽたたたっ

ヤミ「おい、首も絞めているぞ。あれでは何も喋れまい」

ウェイトレス「おっとー」

760: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:35:55.77 ID:gO3Zz8G30
752

--東の王国--

しゅる

忍隊長「がはっ! はーっ! はーっ!」

ウェイトレス「……で、残りのお仲間さん達はどこ? ニンジャさん」

忍隊長「はー、はー……ふ、ふふ」

忍隊長は、笑う。

ウェイトレス「?」

忍隊長「皆は……お前達の墓場で待っている。首を長くしてな」

桃鳥「……どういうことです?」

忍隊長「奥義!!」

忍隊長は全ての魔力を解き放った。

かっ!

ウェイトレス「は? その程度の魔力で私達に何かしようってかい? そんなんじゃ糸すら切れないよ?」

忍隊長は両手を地面へと向けた。

忍隊長「アカム!!」

ヤミ「……なに?」

ウェイトレス「……そういうこと!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

761: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:36:55.94 ID:gO3Zz8G30
753

--東の王国--

ドガッガゴゴガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

忍隊長の魔力を受けた地面が隆起し、地形が広範囲にわたって変化していく。

ゴガガガアアアアアアアアアアアアアアアン!!

忍隊長「貴様らは……行き着いた先で、人間をなめすぎたと思うことになる、だろう」

がくり

ウェイトレス「こいつ、最初から私達の分断が目的だったのね。自分の魔力を出し切ってまで……」

ズズズズン!!

七体の魔王達は少しずつ動かされていく。

ドカァン! 

脳筋「ふん! こんなものは砕いて進めばいいだけの話、どわ!」

ゴゴゴゴゴ!

生き物のように地面が流動し、魔王の足場を安定させない。

ウェイトレス(これ、地形変化ってだけじゃない。前もって色んな人間の色んな術式が込められてる……幻覚や移動速度上昇やワープの概念……へぇ。ここに私達全員が来るって読んでたってこと?)

ヤミ(愚かな。それでも我らが本気を出せば簡単に吹き飛ばせてしまえるレベルの子供だましだ……)



--東の王国--

軍師「今だぜぃ! 魔王弱体魔法陣、発動だぜぃ!!」

ズンッ!!

762: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:37:34.01 ID:gO3Zz8G30
754

--東の王国--

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

ヤミ「! なんだ……? この感覚は……」

桃鳥「ステータスが一段階……いや、二段階くらい下がっちゃってます……?」

茶肌「小賢しい……」

銀蜘蛛「ウオーナニコレー! チョータノシー!!」

脳筋「……どうやっても俺達を分断するってか。やるねぇ……」

桃鳥「ふふ。アトラクションみたいで面白いですって私思っちゃってます。いいですよ、楽しそうですし、その作戦に乗ってあげちゃいます」

ヤミ「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

魔王達は地形変更に身を委ねた。

蝿男「お、おれは一人いやだ!! と、飛んでるのに平衡感覚が狂わされてるし!!」

763: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:38:57.71 ID:gO3Zz8G30
755

--対銀蜘蛛領域--

ゴゴゴ……

銀蜘蛛「フィー! ナガサレチャッタナガサレチャッタ!! サーテ、ボクノアイテニハドンナコガデテクルノカナー??」

テンテン「私達さ」

ドン!!

銀蜘蛛を取り囲んでいるのはテンテン、ウーノ、ドゥーエ、トーレ、義足の五名。

銀蜘蛛「アッチャー、テンテンサンダッタカー……ヤー、オヒサシブリテンテンサンー! メチャクチャブリダヨネー」

テンテン「あぁ……」

チャキ

テンテンはすぐさま銀蜘蛛に銃口を向ける。

銀蜘蛛「ヤダナー、ロクニカイワモナシニ戦闘ニハイッチャウノー? ボクタチスウセンネンブリナンダヨー?」

テンテン「……闇に囚われた我が友人よ。今その戒めから解き放ってやる」

銀蜘蛛「ヤレヤレ、キクミミモタズカー。シャーナイ、ヤリマスカ……デモ」



銀蜘蛛「ホントウニ、キミタチダケデヨカッタノ?」

銀蜘蛛のアイカメラが赤く光る。銀蜘蛛から凄まじいプレッシャーが放たれる。

764: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:39:48.35 ID:gO3Zz8G30
756

--対銀蜘蛛領域--

ズズズズズ

ウーノ(ありえないですわ……こんなプレッシャー、機械兵士が放つものではありません)

ドゥーエ(これが魔王化って、ことなんだね……)

トーレ(……開放してあげます。我が同胞よ)

義足「さぁ、始めるよ!」

ギュン!!

テンテン達四機が一斉に銃を構える。

ガパッ!!

すると銀蜘蛛も全ての武装を展開し、テンテン達に狙いをつけた。

銀蜘蛛「カカカ、カンタアアアアンンンンニニニイイハアア、コワレレレレナアアアイデエエエネエエエエエ?」

ドバアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーー!!

765: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:40:20.50 ID:gO3Zz8G30
757

--対銀蜘蛛領域--

ギュンギュン! ピキュン! ガキーン、ドゴオオオオン!!

高速で飛び回るテンテン達と、地上でそれを迎撃する銀蜘蛛。

ギンギンギンギン!!

義足(嘘だろ……あれで本当に弱体化してるのかよ……テンテン達の高出力レーザーが全然効いて無いじゃないか)

銀蜘蛛「アハハハハー! カユイヨカユイヨテンテンサーーーーーーン!!」

ドビーー!!

テンテン「!」

ドガアアアアアン!!

銀蜘蛛の放つレーザーがテンテンの右肩をかすめた。

ウーノ「テンテンさん!」

テンテン「大丈夫だ。支障はない」

キュンキュン! パキーン!!

テンテン「戦闘続行だ!」

766: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:41:08.33 ID:gO3Zz8G30
758

--対銀蜘蛛領域--

ガガガガガガガ!! チギィン! ドオオン!!

ドゥーエ「きゃあぁ!!」

ウーノ「ドゥーエちゃん!」

義足(凄まじ過ぎる戦いだ……こんな戦いに参加するのがなんで俺なんだ、って思わなくもないけど……)

チュドーンチュドドーン!!

義足(今は僕にしか出来ないことなんだ。あーだこーだ言ってられない!)

ドガァアーン!!

テンテン「! 義足! 大丈夫か!?」

義足「あ、あぁ……頭をかすめていっただけだ……」

テンテン「ふぅ……気をつけてくれお前がいなくなったら……包帯女と私が悲しい……」

義足「……あぁ、そうだね。死ぬにしてもなるべく原形保つように死ぬよう努力するよ」

767: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:42:17.91 ID:gO3Zz8G30
759

--対銀蜘蛛領域--

ガアアアアアアアアン!! ビービー!!

義足(とはいえ、攻撃範囲が広すぎる……! テンテン達が攻撃パターンを分析して少しでも時間が作れるようにしてくれてるけど)

ドキューンバキューンズバババババ!!

義足(近寄れない……俺の射程距離まであまりに遠過ぎる……)

銀蜘蛛「アノモノカゲニカクレテルニンゲンガカナメナノカナー? ソッチヲコウゲキシテミタイケド、ソレガデキナイヨウニ、ゼツミョウナトコロヲコウゲキシツヅケテクルネー! オモシロイ!」

テンテン(本来の銀蜘蛛の装甲は凄まじいものだった。強固な防御力に加え、ありとあらゆる状態異常を無効化にする最強の外壁。……だが魔王化に伴い色んな機能が失われたようだな)

ズガガガガキィン!!

テンテン(とはいえそれでも硬すぎる。弱体化を受けてなおこの硬さだ……勝負は一瞬だぞ、義足!)

義足(命をかけて、どこまでいけるのか)

カッシィイン

義足は緑色のカートリッジを義足に差し込んだ。

義足「風属性移動速度上昇魔法、レベル4!」

ドンッ!!

義足は雨霰と降り注ぐ弾丸の嵐に突っ込んでいった。

768: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/19(火) 04:43:12.13 ID:gO3Zz8G30
800

--対銀蜘蛛領域--

銀蜘蛛「オヤオヤ! ソイツハアマリニムボーーーースギッ!!」

バルルッ!!

トーレ「させません!!」

ドガガガアアーーーン!!

割って入ったトーレが銀蜘蛛の掃射をその身に受けた。

トーレ「ぐ、煙幕弾、発射!」

ぼひゅっ!!

銀蜘蛛「アヤヤ、モクモク……デモソンナノレーダーデ」

テンテン「遅い!」

ズガアアアアアアアアアアン!!

テンテンはレーザーブレードを展開し、銀蜘蛛に急降下攻撃。

銀蜘蛛「グ、テンテンサンミーッケ!!」



そこでやっと、義足が自分のスキル範囲内に入った。

義足「食らえ、スキル、D・V・D!!」

775: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:14:30.94 ID:gs7LM7dT0
801

--対銀蜘蛛領域--

ザッ

魔王銀蜘蛛の射程範囲内に飛び込んだ義足は全身全霊をこめて叫んだ。

義足「DいいいいいいいいいいVいいいいいいいいいいいいいDいいいいいいいいいいいいいい!!」

銀蜘蛛「……ハイ?」

ひゅぅううぅう……

ウーノ(敵の装備を強引に引き剥がす禁断のスキル、D・V・D。その修得者は例外なく変 の歴史に永遠にその名を刻まれるという……)

テンテン(頼んだぞ義足。鉄壁の銀蜘蛛を倒すにはお前の力が必要なんだ!)

義足「おっ!」

銀蜘蛛「ヨクワカラナイケド、トリアエズシンデチョ」

ガシャッ

銀蜘蛛の肩に取り付けられたレーザー砲台が義足を狙う。

テンテン「させるものかっ!」

ドガァアアン!!

それをテンテンが妨害する。

776: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:15:22.11 ID:gs7LM7dT0
802

--対銀蜘蛛領域--

ガガァアン!! ギィガアァアン!!

銀蜘蛛「ワッカラナイナ~テンテンサン。アノウツクシク、ホコリタカカッタテンテンサンガ、ボクヲタオスタメニアンナノニタヨルナンテ」

ドビュー!

テンテン「こちらも昔のようにはいかんのだ。頼れられるものには頼らせてもらう。それと……」

ガガァアン!!

テンテン「義足をあんなの呼ばわりするな!!」

ガギィン、ギギギギギイギギギギギギーーーーン!!

ドゥーエ「が、GAGA……」

半壊し、上半身だけになったドゥーエの元にウーノが降り立つ。

スタッ

ウーノ「少しだけ待っていてねドゥーエちゃん。私達がきっとなんとかしてみせますから!」

777: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:17:27.47 ID:gs7LM7dT0
803

--対銀蜘蛛領域--

義足「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ガショッ、ガショッ、ガショッ!!

義足はありったけの魔力カートリッジを義足に差し込んで魔力を補充し、その全てをスキルにまわしていた。

ポタポタッ

魔力の許容オーバーから鼻や眼から血が流れ出している。

義足(だ、というのに、まだ銀蜘蛛には届ききっていないのか!)

ぶるぶる 

銀蜘蛛(! センサーガ異常ヲ感知? ナルホド、アノ人ノシワザカナ)

テンテン(銀蜘蛛の防御壁を侮っていたつもりは無いが……これでもまだ力不足だったのか……?)

義足「すー……」

義足は深呼吸をして、そして、

義足「    だよ!! 早く!!」

と叫んだ。

778: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:19:24.50 ID:gs7LM7dT0
804

--対銀蜘蛛領域--

銀蜘蛛「……ハイ?」

ウーノ「……」

発言に驚き硬直する銀蜘蛛。

銀蜘蛛「カワイソウニ……キデモクルッタ……」

ギシッ

銀蜘蛛「……!? カ、カラダガウゴカナイッ!?」

テンテン(!! ついに来たか!!)「やれ、義足ッ!!」

義足「    だよ、早くぅウウウウウウウウウウウウウウウ!!」

銀蜘蛛「ハ、ハイ…」

スッ

銀蜘蛛の意思とは関係なくアームが動いていく。

銀蜘蛛(ナ、ナニコレハ……ナンナノコノ動作……)

779: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:21:55.68 ID:gs7LM7dT0
805

--対銀蜘蛛領域--

テンテン「ぎ…銀蜘蛛さん」

ガチャっ、ズシーン!

肩についていた砲台が落ちる。

銀蜘蛛「テ…テンテンサンヤッパリヤメマショウ。コンナコト…ネ」

ウーノ「ダメよ!! だったらこのドゥーエちゃんくっつけて直してよ!」

ガシャン!

ウーノは上半身だけになったウーノの髪を掴んで持ち上げて見せた。

義足「D・V・D!! D・V・D!!」

ギギ、ギギギ……!

銀蜘蛛「ソ、ソンナ、バカナ! コンピーターウィルスナノコレ!? ナンデ、アームガカッテニ……アッ……アーッ!!」

バシャン!!

銀蜘蛛は分厚い装甲をパージし、中身がむき出しになってしまう。

780: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:24:54.91 ID:gs7LM7dT0
806

--対銀蜘蛛領域--

ウーノ「! 今です! 全門斉射ーー!!」

ビーーーーーーー!! バシュバシュバシュドキューーーーーーーーーン!!

銀蜘蛛「!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

銀蜘蛛「d! gああああああああaaaあああ亜あ!!!」

ウーノ「効いてる! これならいけます!!」

義足「へ、へへ……これで一矢……報いた、ぜ」

ぽたぽた……

義足「やるもんだろ? 包帯、女」

どさり

テンテン「! 見事だ義足……見たか銀蜘蛛。お前はたった一人の人間によって窮地に陥ったのだ!」

銀蜘蛛「ニ、人間ナドイルモノカ……人間ハトウノムカシニホロンダンダ!」

テンテン「――お前が残したものだろう!? 自分で否定してどうするのだ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

テンテンの高出力レーザーがむき出しになった銀蜘蛛を攻撃する。

バヂバヂバヂイイイイイイイイイ!!

銀蜘蛛「ギャアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

781: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:27:12.03 ID:gs7LM7dT0
807

--対銀蜘蛛領域--

しゅうぅううう……ガッシャン

ウーノ「やりました! これで……ッ!?」

ドギャアアアア!!

爆煙の中から飛び出してきた銀蜘蛛が、細くなったアームでウーノを串刺しにする。

バリバリッ!!

ウーノ「づっ……! まだ動けたんですか……! ふん!」

ヒュッ

ウーノは怯むより先に反撃したのだが、銀蜘蛛はそれをあっさりとかわした。

ウーノ「!……く、重い装甲が無くなったことで前より数段速くなっている……!」

銀蜘蛛「儀、ギギギギギギ!!」

テンテン「だが、それも最後の抗いだ。銀蜘蛛のダメージは既に致命傷だ。長くはもたん」

銀蜘蛛「フフフフ……サ、サスガテンテンサン、オミトオシカ……タシカニ、カナリヤバイ。自己修復機能ジャ、ナオセソウニナイモノ」

がしゃん

銀蜘蛛「ダカラ……セメテスコシデモオオク……ミチズレニ、スルネ!」

ガショッ!

銀蜘蛛の背中のハッチが開く。

782: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:29:40.48 ID:gs7LM7dT0
808

--対銀蜘蛛領域--

ウーノ「!! それはまさか!」

銀蜘蛛「ソ、ソノマママサカ、ダヨ」

ウーノの眼球に映る危険の文字。それは最悪の兵器だった。

テンテン「ふん……撃ちたければ撃てばいい」

ウーノ「えっ!?」

意外な一言にウーノは驚きの声を上げる。

テンテン「だがお前がそれを発射する前に、私のこの剣がお前を貫く」

ブォン

テンテンはレーザーブレードを展開し、銀蜘蛛へと向ける。

銀蜘蛛「……ナニヲイイダスカトオモエバ……ソンナ宣言スルマエニコウゲキシタライイノニ……ナンダカテンテンサン、ニンゲンポクナッタネ」

テンテン「そういうお前はただのありふれたロボットになったな」

783: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:33:54.53 ID:gs7LM7dT0
809

--対銀蜘蛛領域--

銀蜘蛛「……ボクハロボット、ダ。ロボットデナニガワルイノサ」

ギシッ

銀蜘蛛「……」

テンテン「……」

しばし見詰め合う二人。

ガシャッ!

先に動いたのは銀蜘蛛。背中の核ミサイルを装填しようとした瞬間、

ボッ!!

テンテンがブースターに火を入れた。

ギュオオオオオオオオオ!!

銀蜘蛛(……オソイヨテンテンサン、マニアワナイヨソンナソクドジャ)

……ィィィィン!

銀蜘蛛「!?」

ボロッ

高速で接近するテンテンの右腕と両足が一瞬で消え去った。残っているのは首と胸とブースター、それにレーザーブレードを持った左腕のみ。

テンテン「モード、背水の陣!!」

ギュンッ!!

銀蜘蛛(! ジブンノカラダヲエネルギーニヘンカンシテ、ソノスベテヲ加速ニマワ)

ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

銀蜘蛛「」

次に銀蜘蛛が気づいたのは、自分が切り裂かれた後だった。

784: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:35:25.02 ID:gs7LM7dT0
810

--対銀蜘蛛領域--

ボボボボボッ!!

全てを加速に費やしたテンテンは一瞬で数キロ進み、止まることも出来ずに地面に激突した。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!



ガランッ、ガラガラ……

銀蜘蛛「gi……」(……アノ一瞬デ信管モダメニサレチャッテル……サスガダナ)

ギギ……ガシャン

銀蜘蛛は崩れるように地面に倒れこんだ。

バチッ、バチチッ

銀蜘蛛「ヤ、ッパリ……テンテンサンハ、カッコイイヤ……」

ボロ……

ウーノ「……」

そして、砂のようになって消えていった。

785: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:36:50.64 ID:gs7LM7dT0
811

--修練の塔、一階--

しゅぅううぅう……

銀蜘蛛はひっくり返った亀のように倒れていた。

ツインテ「な、なるほど……! 装備剥がしスキルとは……さすがアッシュ君にポニテさん! こういう場面を想定してそのスキルを習得していたんですね!」

アッシュ「い、いやぁ……」

ポニテ「あ、あはは……」

顔をそらしてツインテ達の方を見ない二人。

銀蜘蛛「アテテテ。アー……ナンダカアッサリマケチャッタナァ。ヨイショット」

ガシャッ

銀蜘蛛が反動を利用して起き上がる。

銀蜘蛛「ウーン、君達ニオシエルコトハ、モウナニモナイネ!!」

アッシュ「何を教えたというんだ何を!」

786: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:41:04.11 ID:gs7LM7dT0
812

--修練の塔、一階--

銀蜘蛛「オシエタトイウカ、キヅイテモラッタッテイウカー」

ガッショガッショ

銀蜘蛛「ドンナツヨイテキデモ、カナラズジャクテンハアル。ソノコトニキヅケタナラ、ドンナテキトタタカッテモコウリャクホウヲアミダセルハズサ」

スッ

銀蜘蛛はアームで三人の頭に小さな花を乗っけた。

銀蜘蛛「キミタチハ卒業! 卒業オメデトウ!」

ツインテ「銀蜘蛛さん……」

ガショッ

銀蜘蛛「デハデハ二階ヘノ階段ハコチラトナッテオリマス」

きゅい

銀蜘蛛が指差した場所には上へと続く階段があった。

ポニテ「うぇ!? なんでそこに階段があんの? 見落とせるような場所じゃないのに……」

銀蜘蛛「不思議空間ナメンナヨー。サァ、イッタイッタ。君達ニハ時間ガナイッテイウノニ、マダマダ修行ガヒツヨウナンダカラ」

アッシュ「……ふん、では急がせてもらう。行くぞツインテ、ポニテ」

アッシュはすたすたと先を行ってしまう。

787: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:44:00.31 ID:gs7LM7dT0
813

--修練の塔、一階--

ポニテ「あっ、待ってよーアッシュ君! じゃあ、ありがとね銀蜘蛛ちゃん!」

たたたっ

ポニテもすぐにその後を追った。

ツインテ「……」

銀蜘蛛「ホラ、ドシタノ。君モハヤクオイキナサイヨ」

ツインテ「……あの」

銀蜘蛛「?」

ツインテ「銀蜘蛛さんの魔王でいた期間って、そんなに長く無いらしいんです」

銀蜘蛛「」

ぴた

ツインテ「きっと魔王に至るまでに、ひどい負の感情に苛まれて苦しむことになると思うんです。でも、すぐに開放しに来てくれる次の勇者さんが来てくれると思いますから……絶望しても希望を捨てないで下さいね」

ツインテはそっと銀蜘蛛むき出しになったアームに触れる。

ツインテ「ボク達は貴方の分まで頑張ってきます。それではお世話になりました」

ツインテはぺこりと頭を下げて小走りでアッシュ達を追った。

銀蜘蛛「……」

ぷしゅー

銀蜘蛛は胸のハッチから玩具の王冠を取り出して眺める。

銀蜘蛛「……アノコタチノミライガ、アカルイモノデアリマスヨウニ」

788: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:45:11.98 ID:gs7LM7dT0
814

--修練の塔、ニ階--

桃鳥「やっほー。貴方達が噂の勇者候補さん達ですね。私は桃鳥ちゃんです、って私思っちゃいます」

アッシュ「……」

ふわふわと飛んでいる桃鳥を見たツインテ達は嫌なことを思い出した。

アッシュ「……そういや……桃鳥がいたんだったな……」

ポニテ「……うん」

アッシュ「桃鳥の対処だけは……代用効かないんだよな?」

ツインテ「そうですね。呪いの槍以外じゃ突破は無理かと……」

アッシュ「じゃあこれ、詰んでないか?」

桃鳥「あっ、詰んでますねー。ボス戦に必須なアイテム持ってくるの忘れた的な感じになっちゃってますねー」

ポニテ「あんのクソ猫ーーー!! 今頃何してんだよーーーー!!」


--空--

ばっさばっさ

レン「すぴー」

ハイ「この状況でよく寝れますね……」

勇者「今のうちに休んでおいた方がいいのは確かなんだけど、よく寝れるよね……神経図太いっていうか」

レン「ツインテしゅき」

789: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:47:28.35 ID:gs7LM7dT0
815

--対桃鳥領域--

ゴオオオオオ……

桃鳥「今ので終わりですか? それじゃあ」

弓女「終わりじゃ、ねーよっ!!」

射王「効果付与、炸裂!」

ヒュヒュン!  ドガアアアアアアアアアアアアン!!

二本の矢が桃鳥に命中し、桃鳥の体は爆発四散。
しかし、

きゅいん

桃鳥「――終わり、ですか?」

賢者「うーん……これは……厳しい……」

賢帝「んもう! 呪いの槍の使い手が来るまで耐えるだけだなんて、やになっちゃうわん!」

射王、賢帝、賢者、鯱隊長、盾兵、弓女、斧女、ダーク城門兵A、ダーク城門兵B、フォーゼ、オーズ、符術師、キバ、犬娘。
と、そうそうたるメンバーが桃鳥を前にして構えていた。
だが、

射王「決め手がねぇ……こいつぁシビアだねぇ」

鯱隊長「み、水……こひゅー」

790: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:49:33.42 ID:gs7LM7dT0
816

--修練の塔、ニ階--

ごおおおおお

ポニテ「ん、そういえば実際に桃鳥ちゃんが攻めてきた時は、誰が対応して呪いの槍を使う作戦になってたんだっけ? 槍兵の人は確か違うんだよね?」

アッシュ「あぁ、槍兵には他の仕事があるからな。桃鳥にはレンが呪いの槍を撃つことになってたはずだ。実際にサキュバスを除く我々側には使い手が二人しかいないからな。貴重だ」

ツインテ「うぅ……そんな大事な技持ちがいないんじゃ、やっぱりここ突破無理じゃないですか……」

じわじわ

ポニテ「大丈夫、多分これ負けイベだから。負けたらムービー始まるよきっと」

ツインテ「何言ってんですかーポニテさん……ムービーってなんですかぁー」

桃鳥「どっこい! 始まらないんだなぁこれが!」

じわじわ

少しずつ体力ゲージを削られていくツインテ達。桃鳥との戦闘は既に始まっていた。

ポニテ「なす術も無く、回復することもできず、毒でじわじわと体力を削り取られる気持ち、今ならわかるわー」

アッシュ「クソゲーだわ」

ツインテ「どうせならワンパンで倒して欲しかったです」

桃鳥「勝とうとしてくださいよ」

熱過ぎて思考が段々と狂って行く三人だった。

791: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:51:47.75 ID:gs7LM7dT0
817

--修練の塔、ニ階--

ボンッ

その時ツインテのリボンが吹き飛んだ。

アッシュ「お、久々に人格チェンジか?」

ポニテ「なんだかめっちゃ懐かしいよね。リアルに何年ぶりかな?」

しゅぅううう……

ツインテ「おい、てめぇら……何諦めてんだ! あぁん!?」

髪型はストレート。攻撃専門のツインテである。

アッシュ「いや……だがこれは無理だろ。いくらなんでも無理だろ」

ポニテ「おうち入ろうとしたらドアが無かったようなもんだよ。無理無理」

ツインテ「てめぇら……さっきの階層でクソ蜘蛛から何を学んだんだよ!!」

ポニテ「……硬いことはいいことだ?」

アッシュ「……蜘蛛なんか脱がしてもなんも嬉しくない、やっぱり脱がすなら美少女に限る?」

ツインテ「駄目だこいつら早くなんとかしないと!」

792: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:54:18.82 ID:gs7LM7dT0
818

--修練の塔、ニ階--

ツインテ「いいか? あいつは、どんな奴にも弱点があるという考えを持って戦えと教えてくれたわけだ」

アッシュ「それはわかっている。だが今回はその弱点が俺達じゃなんとも出来ないものだったって話だ」

ポニテ「世の中ケースバイケースだよねー。相性いいのをぶつけりゃことは全て上手くいくんだし、実際の魔王との戦闘でも私達が担当するわけじゃないんだし、ここは不戦勝突破という方向で話を進めるのが吉だよねー」

ゴゴッ!

ツインテの鉄拳が二人を殴打する。

アッシュ「あ、ありがとうございます!」

ポニテ「ま、魔力体になり損ねるスピード……ツインテちゃんも中々やるねぇ……」

ツインテ「ちっ! いい加減眼を覚ましやがれぼんくら共! いいか!? じゃあその相性のいい奴が真っ先に潰されてたらどうすんだよ!」

アッシュ「!」

ポニテ「!」

ツインテ「奴らも考えて行動してくるんだぞ? あっちにとって不都合なものを野放しにしておくと思うのか!?」

ポニテ「……トリガーなら」

793: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 03:58:31.82 ID:gs7LM7dT0
819

--修練の塔、ニ階--

ツインテ「この修行を終えて現実世界に戻ったら俺らしか残ってなかったらどうする……? 仲間たちが全員死んでて魔王が生き残ってたら、誰が魔王達を倒すんだ……?」

ポニテ「や、やだなぁツインテちゃん縁起でもない……っていうか私達三人で魔王全部は無理だから、どうするっていう話じゃ……」

しかしツインテの表情は険しい。

ポニテ「……」

桃鳥「話終わりました? そろそろ体力三分の一切っちゃうと思うんですけど。そしたら残り時間は十分も無いと思うんですけど」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

アッシュとポニテが真面目な表情になり桃鳥の方を向いた。

アッシュ「俺達たった三人で全ての魔王を倒す……? はっ、御伽噺もいいとこだ」

ポニテ「本当に……そんなことが出来ちゃうんなら、インフレ起きすぎ最強過ぎるでしょ」

汗を垂らした後、にやりと二人は笑った。

アッシュ「……最強か。いい響きだ。俺にふさわしい単語だ」

ポニテ「ふー……しゃーない、やれるだけやってみようか。諦めるの本当は嫌いだしさっ!」

794: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/05/26(火) 04:01:18.23 ID:gs7LM7dT0
820

--修練の塔、ニ階--

しゅうぅうう……

桃鳥「と言ってもそう簡単に上手く行くわけも無いんですよね~」

アッシュ「ぐ……」

ポニテ「うぅ……私達の修行の成果が……」

ツインテ「くそ、ただ回復力に特化してるだけじゃねぇね……」

ぱたぱた

桃鳥「そりゃぁ……これでも私、歴戦の勇者なのでっ」

可愛くダブルピースの桃鳥。

アッシュ「……どんな技も実戦で使って研磨していくもんだ。今俺は自分の力が魔王戦においてあまり役に立たないもんだと悟ったぞ」

ポニテ「んー……私もかも。てか三年前の戦いのほとんどが対人戦だったの結構響いてるよね。完全にそれを想定しちゃってるもん」

アッシュ「全く忌々しい。こいつを突破するには過去の一部を切り捨てる必要があるな」

ポニテ「うん……奥義も変える必要があるかも」

ツインテ(お? 調子出てきたか?)

しゅぅうう……

ポニテ「……しかしもうちょい早くから本気になりたかったよね」

アッシュ「……追い詰められてからじゃなきゃ本気になれないタイプなんだ」

801: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 22:40:05.84 ID:bsAMWkTe0
821

--修練の塔、ニ階--

じわじわじわじわ

ツインテ「じゃあお前ら。どうすればあのクソ鳥を突破できるようになると思う? 一人一個ずつ言え」

桃鳥「クソ鳥!? 今私のことクソ鳥って言いました!?」

アッシュ「そうだな……あいつは呪いの槍でワンパン攻略可能としか聞かされていなかったからな……。他には何が有効なのか、そしてその中で俺達に出来ることはあるんだろうか……」

うーん

悩む三人。

じわじわ……

ポニテ「クッソ熱い……こうも熱いんじゃ考えられるもんも考えられないよー。ポニテちゃんギブー」

アッシュ「火の精霊が最初にダウンしてどうする! ってか普段からあんま考えてないだろこのアホの娘は……」

ポニテ「考えてるもん! えーっとー! 桃鳥ちゃんの奥義は確か、このフィールド内の回復力を全部奪って自分のものにする、ってやつだよね?」

アッシュ「あぁ。俺らは一切回復できないのにあいつはどんな傷でも一瞬で完治してしまう。さらにこのフィールド内にいる敵はじわじわと焼かれていく」

ポニテ「うーん。このじわじわくるやつ、火そのものになれる私でも駄目だったよ。耐性も意味無いみたい」

ツインテ「時間はかかるけど絶対に殺すマン系奥義か」

じわじわ

桃鳥「あと残り三分くらいなんだけど……」

802: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 22:42:43.71 ID:bsAMWkTe0
822

--修練の塔、ニ階--

ポニテ「あ、ねーねー。この技って地形変化なんだっけ?」

アッシュ「確かそんな説明を受けたな。賭博師の奴と同じく通常とは違った地形変化なんだろうけど」

ポニテ「ふむ。それってさ、解除とかって出来ないの?」

アッシュ「……どうなんだツインテ」

ツインテ「地形変化を解除するには、現使用者の精神が乱れている状態で、同等以上の魔力で上書きすれば可能だ」

アッシュ「ほうほうほう」

ポニテ「ふむふむふむ」

ザッ!

再び立ち上がるアッシュとポニテ。

アッシュ「恐らく大丈夫だろうが、一応援護頼むぞ」

ポニテ「はーい、まっかせてー」

桃鳥「後一分」

803: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 22:46:01.09 ID:bsAMWkTe0
823

--修練の塔、ニ階--

アッシュ「ふん、もはや30秒もいらん」

ダンッ!

桃鳥「!」

シュシュッ!

桃鳥が反応出来ない速さで後ろに回りこむアッシュ。

アッシュ「奥義、ポイポイポイズン」

ずちゃっ

そして毒を垂らしたナイフで切り付けた。

ぴっ

桃鳥「つっ、そんな傷、一瞬でなお、っぎっ!?」

びくんっ!!

桃鳥の体が激痛のあまり跳ねる。

桃鳥「なっ、ななななッ!?」

アッシュ「回復遅延と超絶激痛の効果を持つ毒だ。遅延させていてもどうせ直ぐ回復しちまうんだろうが、少しは違うだろ?」

桃鳥「はっ、はっ……」

桃鳥の傷は完全に完治、毒も無くなる。

アッシュ「だが、痛みを感じたことには、変わりないよな……?」

スパパパパパッ!

桃鳥「ギャッ! あぎゃっ!! ぎぎぃいい!!」

ツインテ「ふむ。ダメージより痛みに特化した攻撃か……。なるほど、アッシュの野郎、クソみたいな技だけは優秀だな。火力が高くてもこういう芸当はできねぇからな」

ポニテ「これは鬼畜ですわ」

804: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 22:48:28.47 ID:bsAMWkTe0
824

--修練の塔、ニ階--

ぐにゃり

桃鳥が展開した空間が歪む。

ツインテ「精神が揺らいだ。解除……いやこのまま分捕るか」

ぱきぃん

ツインテのリボンが復活し、ツインテはツインテール状態のツインテとなる。非常にややこしい。

ツインテ「上書きします。絶対回復領域!」

ぱぁああああ

回復できないフィールドはツインテの回復フィールドに上書きされる。

きらきらきらきら

アッシュ「ふぅ……この心地……やはりツインテの魔力は最高だな。力が漲ってくるようだ」

ポニテ「ひゃぁー気ー持ちいいぃ! 冷暖房まで完備してるもんねツインテちゃんのこれは」

ずざ……

桃鳥「はぁ、はぁ……ぐ、まさかこんな手を使ってくるなんて……でも私だって一度解除されたくらいじゃへこたれませんよ……?」

ザッ

桃鳥「ひっ!」

アッシュ「――とはいえだ、まだこいつを倒す手段を見つけたわけじゃあない」

ポニテ「だねー。あくまで相手の攻撃手段を攻略したに過ぎないからねー」

アッシュとポニテが桃鳥の前に立ちふさがる。

桃鳥「……あ、あの」

アッシュ、ポニテ「「にやり」」

805: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 22:51:42.97 ID:bsAMWkTe0
825

--修練の塔、ニ階--

10分後。

ずざざー

アッシュ「……ふぅ。こうなってくるとただのサンドバッグだな」

ポニテ「回復力はあるけど火力は低い……ほんと色んなこと試せて便利な体だよねー!」

アッシュ「あぁ。次はこれを試させてらおう。いや、本当にいい訓練になる。この後も不死者と戦わなくちゃならないしな」

桃鳥「や、やめて! もう十分修行ついたから! 次の階層に行っていいから!」

がたがたと涙を流しながら怯えている桃鳥。

ポニテ「えー? 何をおっしゃいますー。まだまだ試したい技があるんだよー」

アッシュ「ねー?」

ツインテ「は、はわわわ……これはいくらなんでも可哀想なのですよ」

にたにたと笑う二人を見ながらツインテはがくがくと震えている。

アッシュ「不死者は精神を焼き切るのがセオリーっぽいな。よし、最後にこれを試そう」

桃鳥「上に行ってくださいお願いしますなんでもしますから!!」

806: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 22:53:39.39 ID:bsAMWkTe0
826

--修練の塔、ニ階--

桃鳥「うえーん怖いよー。私修行つけてくれって頼まれただけなのにーー!! 善意で協力してるのにーー!!」

ツインテの胸で泣きじゃくる桃鳥。

ツインテ「す、すみません。アッシュ君たちも切羽つまってて……悪気は無いんですよ。あのコレ、下の階で取ってきたリンゴで作ったアップルパイです。よかったら食べてください」

アッシュ「ち、泣くとは軟弱者よ」

ポニテ「うむ。勇者の風上にも置けぬやつよ」

ツインテ「……」

無言で二人を威圧するツインテ。

ポニテ「ひっ、ひぃ! わ、わた、私先行ってるね!」

すたたたたた

アッシュ「お、おい卑怯だぞぞぞ、俺も行く!」

桃鳥「ひぐっ、アッシュ君」

アッシュ「ん……? なんだ」

桃鳥はアッシュを呼び止めた。

桃鳥「ぐすっ……最後に一つだけ教えてあげる。力を使いこなしてないのは、君だけだったからね」

アッシュ「!? なっ……なんだと?」

807: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 22:57:02.31 ID:bsAMWkTe0
827

--修練の塔、ニ階--

アッシュ「おいお前! 力を使いこなしていないというのはどういうことだ!」

詰め寄るアッシュ。

ツインテ「あ、アッシュ君! 怒鳴らないで下さい!」

アッシュ「はい!」

桃鳥「……戦ってて思ったんだけど……その毒も、その眼も、他者から授かったものだよね? 君の本質じゃ、ないよね?」

アッシュ「……何?」

ツインテ「そういえば……ハイさんが言ってましたね。アッシュ君は勇者因子と毒属性と人殺しスキルを組み込まれたホムンクルス……だとか」

アッシュ「……」

アッシュは、ハイがこのメンバーのみに打ち明けたアッシュの秘密を思い出していた。

アッシュ(……最初の頃はハイを疑っていたが、今は信頼する仲間だ……あいつの言っていることは正しいのだろう。だとすれば確かにどれも元々は俺の力じゃない……)

スッ

桃鳥「借り物じゃない君の力。それに気づけば、きっと君はもっと強くなれる」

桃鳥はそっと近づいてアッシュの手を握る。

アッシュ(……暖かい)

桃鳥「頑張って」

808: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 22:58:45.47 ID:bsAMWkTe0
828

--対桃鳥領域--

ドォンン!!

桃鳥「くっ、まどろっこしいですね」

ぐにゃり

鯱隊長「! 今だ! 奥義、ウォーターワールド!!」

どっぽーーーーん!!

鯱隊長は桃鳥の地形変化を上書きして水の世界に変えてしまう。

賢者「複数保護魔法、レベル4」

賢帝「同じく」

ぽぽぽぽ!!

賢者と賢帝は魔力で作った泡で仲間達を保護する。

賢者「さぁ、今のうちに皆さんの体力を回復ですよ!」

ごぽん……

射王(……今のところはみんなの連携でなんとかなっている。しかし)

桃鳥「ごぼ、ごぼぼぼ!」(よぉーくもやってくれましたねぇー! 火の鳥を水に落とすとか最低です!)

射王(――決めきれない。かろうじて凌いでいるだけだ。やはり呪いの槍持ちが現れるのを待つしかない)

809: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:00:34.53 ID:bsAMWkTe0
829

--対桃鳥領域--

バサッ

その時直上に

射王(ん……?)

グリフォン「くぇーーーーー!!」

レン「水属性と土属性を循環させて……」

射王「!!」

グリフォンに乗ったレンが現れた。

射王「賢者さん!!」

賢者「! あれは……よし、わかった!! 水属性拘束魔法レベル4!!」

ぎゅるる!!

賢者は全ての水を桃鳥の周囲に集めて圧縮、

ぼぎょん!

鯱隊長「ちょっ! 俺の水! ぴちーーーーーーーーーー」

符術師「お! 始めるのか!? ならばドロー! そして当然のように引いてしまうのだ!! 来い、デッドラ!!」

デッドラ「ぎゃおおおおおおおお!!」

召喚されたデッドラの眼から放たれる光が、桃鳥を水ごと石に変えてしまう。

ビシビシビシッ!!

810: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:02:23.97 ID:bsAMWkTe0
830

--対桃鳥領域--

ビキーーーーン!!

桃鳥「こ、こん、な、状態、異常、すぐに」

ぴきっ

桃鳥「……あ、あれ? かい、ふくが、遅い?」

ぴきぴき

キバ「すいませんー。貴女の回復力、少しだけ吸収させてもらってますー」

桃鳥「!!」

フォーゼ「うぉらぁ! 俺らも……ぐ……ち、魔殺モード使い過ぎたかこるぁ……」

オーズ「ばたんきゅー」

弓女「あんたらは十分やってくれたって、休んでろ。後は……」

ダーク城門兵A「やいやいやい! 私らをお忘れかにゃん?」

ダーク城門兵B「魔族化して我らを操るとは最低な奴らだぴょん! 今こそ我ら南の王国の城門兵の力、見せてやるぴょん!」

きゅぴん!

賢者「あっ! カットインだ! 懐かしい!」

811: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:03:56.21 ID:bsAMWkTe0
831

--対桃鳥領域--

ダーク城門兵A、B「「あ、合体奥義ィ! 滅殺猫うさ砲オオオオオオオオオオ!!」」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

桃鳥「っ! この程度のダメージ、消耗にもなりませんよ? って私おも」

ぱきぃん

その時眩い光が辺りを包み込む。

レン「……出来たにゃ。禁具、賢者の石」

ピキーーーーン!

射王「……何? 呪いの槍を作っていたのでは無いのか……?」

桃鳥「……よくわからないけど、それ危険そう……なので、貴女から倒させてもらいます!」

バサッ!!

レン「練成、槍」

ボッ

レン「×1000」

ボボボボボボボボボボボ!!

桃鳥「!?」

812: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:05:02.39 ID:bsAMWkTe0
832

--対桃鳥領域--

桃鳥(一瞬でこれだけの数を……)「火属性妨害魔法、レベル4!!」

ぼふぅん!

桃鳥が使った魔法は蜃気楼のような現象を引き起こす魔法だった。

レン「やっぱり回避系の技持ってたかにゃ。そりゃそうにゃよね」

桃鳥(なんとなく今までの経験上嫌な気がします。ここはとりあえず回避しながら)

スッ

レンが腕を向けると、

ドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュドヒュ!!

槍が四方八方に降り注いだ。

盾兵「お、おいおい見境無しかい? みんな! 俺の盾の下に! 物質強化魔法、レベル4!!」

どいーーーん

盾兵は自分の盾に魔法をかける。すると盾が巨大になって、全員をカバーできるようになった。

813: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:07:03.45 ID:bsAMWkTe0
833

--対桃鳥領域--

ガガガガガガガ!! ドスッ!

桃鳥「っ! ……なんだ、呪いや効果どころか返しすらついていないただの槍……慎重になって損でした。こんなもので私を削れると……思っているのですか!?」

バサッ!!

桃鳥は回避するのをやめ、レンに向かって飛翔する。

レン「――練成、変換、呪いの槍」

きぃん

賢者の石が光ったかと思うと、

桃鳥「?……え……え」

ドンッ

桃鳥に刺さった槍だけが、呪いの槍へと変化した。

桃鳥「ッ!! この、見覚えのある銀の槍は……!」

ボロッ

桃鳥の体が崩れ始める。

桃鳥「そ、そんな……」

レン「残念。これがレン流の呪いの槍の使い方なのにゃ」

レンは可愛らしくウィンク。

814: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:08:01.76 ID:bsAMWkTe0
834

--修練の塔、三階--

ザンッ!!

茶肌「よし、鍛錬、開始する」

アッシュ「参りました」

ポニテ「ごめんなさい」

ツインテ「助けてください」

がばっ!

茶肌を見るなり土下座する三人だった。

茶肌「さぁ、かかってこい」

アッシュ「駄目だ聞いてやしねぇ!!」

ポニテ「どーすんの!? あの人が持ってる槍、呪いの槍と一緒なんでしょ!? かすっただけで寿命持ってかれちゃうじゃん!! 寿命は元に戻せないんだよ!?」

ツインテ「しゅ、修行中に死んじゃいますうぅ……」

三人はわんわん泣いている。

茶肌「修行だから大丈夫、こい」

アッシュ「大丈夫じゃねぇわ!!」

815: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:09:26.51 ID:bsAMWkTe0
835

--修練の塔、三階--

茶肌「心配するな。さすがに呪いの槍を、修行には使わない。これ、ただの槍」

ツインテ「え!?」

ポニテ「やった! 気が利くねー!! それなら全然いいよ!!」

アッシュ「……ふぅ……まぁ俺は最初から見抜いていたわけなんだが」

ツインテ(でも……あの槍を使えない茶肌さんは……失礼だけどあまり怖くないような)

茶肌「来ないのか? では、俺から行く」

スッ

アッシュ「?」

ズルッ……

アッシュ「……ッ!?」

アッシュが気づいた時には、

ツインテ「ごふっ!?」

三人の体には五つの穴が開いていた。

ぶしゃあああああああああああああああああ!!

茶肌「駄目だ。遅すぎる」

816: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:11:10.62 ID:bsAMWkTe0
836

--修練の塔、三階--

アッシュ「う、ん……!?」

ツインテ「あ、気がつきました? アッシュ君」

鼻と鼻がくっつきそうなそうなほど近くにあるツインテの顔に驚くアッシュ。

アッシュ「あ、ああぁああああ、ああ、あ、あぁ……」

ツインテ「よかったっ」

ふわり

アッシュ「いい匂いだなぁ……」(すまない、恩にきる)

ポニテ「おいそんなことやってる場合かよ。さっさと起きろよ。心の声逆にしてんじゃねーよ」

げしげしとアッシュの脇腹をつま先でけり続けるポニテ。

アッシュ「いっつ、いって!……そうか。俺達はあっさりとやられて……」

茶肌「はー……お前達、心構え、駄目。戦士失格」

アッシュ「……」

茶肌「攻撃の反応、遅い。最初から強化魔法、かけるべき」

817: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:12:15.87 ID:bsAMWkTe0
837

--修練の塔、三階--

茶肌「お前達、驕りある。どんな敵、倒せると」

ツインテ「……」

茶肌「甘い。俺達には通用しない」

ズズズッ

茶肌のプレッシャーが三人を襲う。

アッシュ「!」

シュバッ!

誰よりも速くナイフを抜いて構えたアッシュと少し遅れたポニテ。

ツインテ「あっ、わ」

ツインテは後ずさりするのみ。

茶肌「当たれば、死ぬ。蘇生、無駄。それを理解して挑め。でないと修行、無駄になる」

ずぽっ

茶肌は地面に刺していた槍を抜き取った。

茶肌「次、行くぞ」

818: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:13:06.93 ID:bsAMWkTe0
838

--修練の塔、三階--

アッシュ「移動速度上昇、れ」

ズンッ!!

アッシュ「ぎっ!!」

魔法の詠唱も終わらぬうちにアッシュは喉を貫かれる。

ポニテ「精霊化!」

茶肌「スキル、魔力切り」

ズバァアァ!!

ポニテ「ぎゃぁああ!!」

ツインテ「アッシュ君ポニテさん!!」

茶肌「スキル、三段突き」

ボボボッ!

本命の突きと、回避するだろう場所を予測して放つ二度の突き。ツインテは最初の突きすら避けることが出来ず、再び全滅した。

819: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:14:11.11 ID:bsAMWkTe0
839

--修練の塔、三階--

しゅぅう……

ポニテ「うぅ……また何も出来ずに終わっちゃった……」

アッシュ「くそ……くそッ!」

茶肌「俺、倒すのに、条件無い」

ツインテ「……?」

茶肌はいきなり喋りだす。

茶肌「他の勇者、条件ある。だが、俺、無い」

アッシュ「……」

茶肌「つまり、単純に、俺より強ければいいだけ」

茶肌は三人を指差した。

茶肌「お前達、単純に弱いだけ」

820: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/01(月) 23:17:46.89 ID:bsAMWkTe0
840

--修練の塔、三階--

ツインテ(そ、そうは言っても単純に強過ぎなんですよこの人……未強化状態だと目でも追えない……)

ポニテ(おまけに本気で戦うとしたら一撃必殺の呪いの槍があるんでしょ? この時の勇者はどうやってこいつ倒したんだっけ……?)

アッシュ(腹黒の戦法は俺達には出来ない。しかもこの状況下なら腹黒でさえ無理だろう……)

ぎりッ

アッシュは奥歯を噛み締める。

アッシュ(だがそれは呪いの槍持ちの場合だ。俺達は普通の槍を使っている茶肌にすら勝てない……!)

ツインテ「……でも、この階層の修行は、単純に強くなれそうですね」

ツインテはのんびりとした声で二人に話しかけた。

ポニテ「……あ、そうなる、のかな?」

アッシュ「いやいや体術が少しばかり強化されたところで敵う相手じゃない……それに俺とポニテはもう、そこまでノビシロが……」

ポニテ「うーん……かもね。私ら三年間の修行で既に完成に近い、かも」

あははと困ったように笑うポニテ。

ツインテ「? そうなんですか?」

ポニテ「そうなんだよねぇこれがー。だてに五柱の魔導長お姉ちゃんの修行を受けてないっていうかさー」

ツインテ「……ポニテさんのことはボクではわかりませんが、アッシュ君は先ほど桃鳥さんに言われたじゃないですか」

アッシュ「……?」

ツインテ「力を使いこなしていない、アッシュ君の本質は違うものだ、って」

アッシュ「ッ!」

ポニテ「え、そんなこと言われたの?」

ツインテ「はい。とりあえず、その本質がなんなのか見極めてみませんか? それでも駄目なら、またみんなで考えればいいんですよ」

ツインテはふんわりと笑う。

アッシュ「……俺の、本質」

茶肌「そんな時間あるの?」

825: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 03:55:22.23 ID:enfutgtt0
841

--修練の塔、三階--

アッシュ「てゆうかちょっといいか? いっちゃあなんだが勝つだけならそんなに難しく無いんだ」

ツインテ「え? そ、そうなんですか? アッシュ君」

ポニテ「……あ! そっか! スキル人殺しだ! あれがあるじゃん!」

アッシュ「あぁそうだ。奴は魔王では無く人間なんだ。機械だとか常時再生しまくる火の鳥とも違う。ただ強いだけなんだ」

ツインテ「なるほど……いくら強くても人間ならアッシュ君のあの力で……え、じゃあなぜそれを真っ先に使わなかったんですか?」

アッシュ「勝つだけなら、と言っただろ? 出てきた敵を倒してただけじゃ何の修行にもならんからな」

ツインテ「! 凄いですアッシュ君! そこまで考えた上で手も足も出さずにぼっこぼこにされてたんですね!!」

アッシュ「う、うん……」

ポニテ「悪意は無いんだろうけどそれはちと辛いよツインテちゃん」

826: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 03:56:53.70 ID:enfutgtt0
842

--修練の塔、三階--

アッシュ「……けどまぁ、このままじゃ埒があかない。他に攻略手段も無いだろうから使うとしよう」

茶肌「……」

チャキ

再びアッシュ達が臨戦態勢になったのを見計らって茶肌は槍を構えた。

アッシュ「……」

ポニテ「……? あれ? アッシュ君使わないの? あの人は待ってくれたりはしないと思うから早めに使った方がいいと」

ヒュッ!

ポニテ「思うよっ!?」

ギィイイイイン!!

一瞬で距離を詰めてきた茶肌による激烈な打ち込み。

茶肌「」

しかしそれをアッシュはナイフで防いでいた。

アッシュ「ん、ん?」

827: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 03:58:40.74 ID:enfutgtt0
843

--修練の塔、三階--

チギィン!

ポニテ「び、びっくりした……なんだもうスキル使ってたんだ? それならそうと早く言ってよー!」

アッシュ「……いや、使ってないぞ。現に少し反応が遅れたし、腕もしびれたままだ」

ぽたっ

よく見るとアッシュの腹部から血がたれていた。

茶肌(……ギリギリ、即死じゃなくなるレベルで、防いだ……?)

ツインテ「いや、それでも十分凄いことですよ! でもあのスキルを使わずにだなんて……一体どんな力を使ったんでしょうか」

アッシュ(……これは、何だ? 俺の本質、なのか?)

828: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:00:44.93 ID:enfutgtt0
844

--対茶肌領域--

キィン! ギィガァン!! シギィン!!

何も見えない白い霧の中で打ち合う音が聞こえる。

槍兵「ははー! 本当はこんな小細工無しでやりたかったんだけどなぁあんたとはよぉ!」

ギィン!

槍兵「っ! だが常時呪いの槍ってんじゃあ、こうでもしないと勝負にならねぇからなぁ!!」

ギガァン!

魔剣使い「口数が多いですよ槍兵さん!」

ギギギィン!!

茶肌「む!」

槍兵と魔剣使いによる攻撃をあっさりと捌いていく茶肌。

ガガガガガガガガガッガィイイイン!!

槍兵(潜入長の奥義で感知機能がほぼ無効化されてるっつーのにこの実力。まったくもったいねぇ……もったいねーぜ!!)

茶肌(得物が、眼前に来るまで、わからない、これは、面倒だ)

潜入長(うぅう……は、早く勝負を決めてください……私これ長時間無理ですよぉ……)

通信師(槍兵さん、茶肌の位置はもう少し右です)

829: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:02:19.10 ID:enfutgtt0
845

--対茶肌領域--

ギギギギギッギイイイイイン!!

茶肌(ッ! 乱打技で、一気に蹴散らす!)

スッ

茶肌が技の構えを取ろうとすると、

十代目「地形効果、地震」

グラララッ!

茶肌「むっ!」

十代目「さらに、隆起」

ドガァアン!!

茶肌「むむ!!」

足元を崩されてしまって構えることすら出来ない。

ヒュッ

茶肌「!」

ギィイイン!!

十代目(ッ! それでもこちらの攻撃を見切るのか!! さすがだ茶肌!)

830: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:05:16.54 ID:enfutgtt0
846

--対茶肌領域--

バシュッ!!

??「通信師さん。完了しました。兵達を下げてください」

通信師(! 皆さんお疲れ様でした。準備が完全に整ったそうです)

槍兵(おっ。思ったより早かったな。もうちっと遊びたかったんだが……おーけい)

魔剣使い(了解です)

ババッ!

前線で戦っていた者達がテレパシーを受け取って散開する。

うぅうう……

茶肌(……攻撃が、止んだ? なぜだ?)

潜入長(も、もう無理です! いいんですよね!? 奥義解除しますよ!)

ばしゅぅうううう……

茶肌(霧が、晴れていく……トラブルか? む)

しゅぅうう……

霧の中に一人の人間が立っている。

茶肌「……」

じりっ

茶肌は槍を構え少しずつ近づいていく。



ザッ

??改め秘書「貴方も、お疲れ様でした」

ズバンッ!!

831: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:09:53.53 ID:enfutgtt0
847

--対茶肌領域--

茶肌「ガッ!?」

ブシューーーー!!

最速の魔王ですら反応出来ない秘書の斬撃が茶肌の右腕を斬りおとした。

茶肌(み、見えなかった……この、俺が)

槍を左手に持ち替えて反撃しようとするのだが、

ズバズバズバン!!

続けざまに放たれた秘書の斬撃により、茶肌の槍が切り刻まれた。

茶肌「!!」

秘書「――すみません、私は人間には無敵なんですよ」

茶肌「!!」(この霧に、惑わされていた。俺は、知らない間に、人間に変えられていた!!)

黒づくめの少女「……」

ドンッ!!

霧でわからないようにさせられていたのだが、茶肌を中心とした結界魔法が黒づくめの者達によって発動させられていた。

しゅうぅうう……

茶肌「く……こんな、幕切れ、か」

秘書「……多勢に無勢でだまし討ち……。卑怯だと思ってくれて構いません。これが私達が生き残るための戦略です」

ドシュッ!!

秘書のナイフが茶肌の心臓を突く。

茶肌「……いや、卑怯だと、思わない」

ぼろ……ぼろろろっ

茶肌「そう、戦って、勝てばいい。己が、信念のために。ただ、それだけ、だ」

ぼろっ!

茶肌は遠い過去を思い出すかのようにして砂になった。

832: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:13:13.24 ID:enfutgtt0
848

--修練の塔、三階--

ツインテ「あ、アッシュ君……」

アッシュ「はぁ、はぁ、はぁ……」

血まみれのアッシュはナイフを構え、茶肌と対峙している。

茶肌「……」

ポニテ(……凄い……私とツインテちゃんのサポート付きだけど、茶肌さんの攻撃を防げるようになってきてる……!)

ツインテ「これは、一体……眼がなれたとかそういうことでは無い、ですよね……?」

ぽたぽたっ……

ポニテ「うん、違うと思う。なんだか……アッシュ君の動きが少しだけ茶肌さんの動きに似てきた気がする」

アッシュ「……はぁ。やめだやめだ。今はこんくらいが関の山だ」

どかっ

アッシュは大きく息を吐き出すと地面に座り込んだ。

茶肌「む?」

ツインテ「え!」

アッシュ「なぁ茶肌。今回はここで終わりってことにしてもらえないか。なんとなく俺の本質ってやつに気づけた気がするんだが、今はこれが限界みたいだ。いっぱいいっぱいなんだ」

茶肌「……」

アッシュ「わざわざ殺さなきゃ次に進めない、ってわけでも無いだろう? それともあんたが死ぬまで戦うのか?」

グルン

アッシュの目玉が裏返る。

833: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:15:38.27 ID:enfutgtt0
849

--修練の塔、三階--

茶肌「何か、掴んだみたいだな……いいだろう、行け。お前達の覚悟、見せてもらった」

スッ

茶肌は次の階層への階段を指差した。

茶肌「俺が教えられることは、ここまでなんだろう。行くがいい」

ぽかーん

ポニテ「な、なんだか煮え切らないというか……本当にこれでいいのだろうか……」

アッシュ「得るものは得た。十分過ぎる結果だぜ」

アッシュは立ち上がりお尻についた砂を払う。

ツインテ「……そうですね。出来れば誰も倒さない方がいい結果ですよね」

ツインテはそう言うとアッシュと茶肌に回復魔法をかけた。

ぽう

アッシュ「すまんなツインテ。と、そうだ」

スッ

アッシュは茶肌へと向かっていく。そして手を差し出した。

アッシュ「強かったよ。握手お願いしてもいいか?」

茶肌「……うむ。お前も、いい戦士、だった。アッシュよ」

がしっ

834: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:16:34.29 ID:enfutgtt0
850

--修練の塔、四階--

ぎし、ぎし

ポニテ「しっかし珍しいこともあるもんだねー。アッシュ君から握手を求めに行くなんて。昔のアッシュ君なら考えられなかったかもー」

アッシュ「俺も成長したということだ。それに……くっくっ」

ツインテ「? なんだか考えがある、って感じの顔ですね」

ポニテ「いやらしい顔。ツインテちゃんの裸でも想像してるんじゃないの?」

アッシュ「馬鹿者! そ、そんなの想像してたら鼻血でてるわ!!」

ツー

ツインテ(ボク男なのに……)

腹黒「はぁ。緊張感が足りませんよ皆さん」

ツインテ、アッシュ、ポニテ「「「!?」」」

四階につくなり、

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

腹黒のレベル4魔法が八度直撃し、ツインテ達は全滅した。

835: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:18:48.80 ID:enfutgtt0
851

--修練の塔、四階--

しゅぅううう……

黒焦げになったツインテ達を見て嘆く腹黒。

腹黒「全く、この程度で全滅ですか。水属性蘇生魔法、レベル4」

ぱぁああああ!!

ツインテ「う、うぅん……」

アッシュ「はっ、夢か……なんてな。ちっ、四階はこいつか……確かに緊張感が足りなかったか」

ポニテ「だ、ね。しかしこの人はねー……どう突破したらいいんだろう」

腹黒「こらこら突破することが目的なのですか? 自らを高め、この中の誰が勇者なのか、それを見極めるのが本来の目的なのでは?」

ツインテ「はっ! 完全に忘れてました!」

アッシュ「……そうは言ってもな。正直言うときつ過ぎるんだよ、歴代の勇者達相手に勝つこと以上のことを求めるのは」

ポニテ「だよねぇ。体力は回復できても精神的な擦り切れは残ってるし」

腹黒「……はぁ。全然駄目ですね貴方達。後継が来るからと楽しみにしてみれば……」

腹黒は頭を抱えてしまう。

腹黒「私は魔王じゃ無いんですよ? 勇者と言えど、ただの一人の人間。それに三人がかりで戦いを挑んで話にもならない、っていうのは少々恥ずかし過ぎやしませんか?」

アッシュ「……」

ポニテ「……むかつくほどぐうの音もでない正論だね」

836: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:20:36.64 ID:enfutgtt0
852

--修練の塔、四階--

アッシュ「言ってくれるな……ならこっちも手段を考えたりはしない。たった一人に負けて泣くがいい! スキル、人殺し!」

ぐるん! 

ポニテ「いいぞアッシュ君やっちまえーーー!! ゴーゴー!」

腹黒「変化魔法、種族変化・魔族、レベル1」

ぼぅ!

アッシュがスキルを使った瞬間、腹黒は自分の種族を魔族に変化させた。

アッシュ「! 対応してきたか! ならばモード反転!」

腹黒「封印魔法、スキル封印レベル4」

きゅいいぃん……

アッシュ「……」

ポニテ「……あ、れ?」

腹黒「はぁ――貴方達を止める手段などそれこそいっぱいありますよ。さぁどうしました? もう終わりですか?」

ポニテ「さすが千種の魔法の使い手……魔導長お姉ちゃんから教わった通りだね!」

ツインテ「色々封印されちゃうんじゃ打つ手が無いんじゃ……」

837: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:22:55.64 ID:enfutgtt0
853

--修練の塔、四階--

ボッ、ボボボッ! ドガァアアン!!

腹黒「防御力、速力低下魔法、レベル4」

ぎゅぅううん

アッシュ「ぐっ!」

腹黒「火属性対単体攻撃魔法レベル1」

ボッ!

アッシュ「ぎゃ、ぎゃああああああああああああああああああああ!!」

腹黒「ほら! デバフ対策も甘いですよ? 魔法防御が下がっていればレベル1魔法でも大ダメージになりえるんです。バフデバフはバカにできないんですよ?」

しゅぅう……

アッシュ「ぐ、ぐぅ……」

腹黒「若い人は何かと攻撃魔法を重視しがちで、基礎的なことの重要さがわかっていないんですよ。まぁ意外と歴戦の戦士でもわかっちゃいないんですがね。くどくどくどくどくど……」

ポニテ(意外と小うるさいお母さんタイプだった……)

腹黒「――というわけでわかりましたか? わかりましたね? はい、じゃあもう次の階に行っていいですよ」

ツインテ「……え!?」

838: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:26:13.79 ID:enfutgtt0
854

--修練の塔、四階--

腹黒「え、ではありません。私が気づいた貴方方の弱点は全て教えたつもりです。このまま何時間やってても私に勝つことなどありえないですし、時間の無駄は省くものです。いつまでもダラダラダラダラとやったところで何にもいいことなんてありませんよ」

ポニテ「なんか腹黒キャラっていうか普通に毒舌キャラになってる!!」

ツインテ「うぅ……なんだかとっても心が痛いです……」

腹黒「――それに、もう魔王になったという私は倒されたと聞いています。私を今更研究しても意味ないでしょう」

ツインテ「……腹黒さん」

腹黒「……っと忘れていました」

すたすた

腹黒はアッシュに近づいて肩に手を置いた。

ぽん

腹黒「これでよし。さ、行きなさい。貴方方が歩む道は(お前らが弱いせいで)とても険しい道でしょうが、それでも頑張ればきっと開けますよ」

腹黒はしょうがなさそうに笑ってみせる。

ツインテ「あ、ありがとうございます腹黒さん。お世話になりました」

腹黒「いえ礼はいりません。それより各人、注意したことを忘れずに。この私が修行をつけてやったのですから絶対にハッピーエンドを勝ち取ってくださいね」

839: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:30:02.28 ID:enfutgtt0
855

--対ヤミ領域--

ざわざわざわざわ

まるでそこはコンサート会場のようだった。

バヂッ

ヤミ「……魔王の俺すら縛り付ける強力な束縛効果か……だがそれが一体何になる。数分もすればこんなもの」

ジャンッ、ダラララ

番犬がドラムを叩く。

ブラ「後数分でも構いません。それで、決着はつくでしょうから」

ヤミ「……何?」

ブラ「貴方様だけは……倒したくありません。私達の大切なお方ですから……だから、なんとしても正気に戻っていただきます」

ヤミ「何を言うかと思えば……俺は正気だ。お前達とかかわりを持った覚えも無い」

ブラ「――正気だとおっしゃるのなら私達の歌を聞いてください。本当に正気ならば、何も感じないはずです。それで駄目なら私達を食べるなり好きにしてくださって構いません」

ズキッ


   「さぁ、私を食ろうてくださいまし」



ヤミ「ふん……歌だと? 下らぬ……そんなもので俺の心が震えるとでも?」(なんだ? 今の感覚は……)

ブラ「震わせてみせます……絶対に。行きますよ! みんな!」

メイド、ちびメイド、番犬「「「おおーー!」」」

840: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:31:28.10 ID:enfutgtt0
856

--対ヤミ領域--

ジャジャジャジャーン

吟遊詩人「……」

なぜか竪琴からギターみたいな音が出ている吟遊詩人の演奏。

ヤミ(大方歌唱による洗脳をあの男の力で増幅させるつもりなのだろう。くだらん。お前達の洗脳など、俺に通用するものか)

ブラ「ら~ら~らら~ら~らら~ら~」

ヤミ「……」

ブラ「らんばだだばっだっだっだばーばー」

ヤミ「……」

しかし、ヤミは次第にブラの歌に耳を貸すようになっていく。

ブラ「~~~~~~」

ヤミ(なん……だ……この懐かしい感覚は……)



  褐色肌の少女「よかった……でもこれでやっと私は救われる」

  ヤミ「?」

  褐色肌の少女「さぁ、私を食ろうてくださいまし」

  ヤミ「!?」

  褐色肌の少女は自分から手を広げ、ヤミを待った。



ヤミ「づ!……? 今の、映像、は」

841: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:31:59.06 ID:enfutgtt0
857

--対ヤミ領域--

 ヤミ「そうか。ならお前を喰うのは延期だ」

 褐色肌の少女「!!?」

 ヤミ「お前が人生を謳歌し、楽しくて嬉しくて気持ちよくて最高の幸福を感じている最中に食ってやる」

 褐色肌の少女「!!!!」

 ヤミ「お前をこれ以上無いほどに幸せにしてやるよ」



ヤミ「ぐ……」



 ブラ「できました。どうぞ召し上がってくださいまし皆さん」

 ブラは料理をテーブルに並べていく。
 シチューやサラダ、ホンオフェ等、質素ながらも暖かな料理の数々。



ヤミ「う、っぐ!」



 アッシュ「俺の仲間を襲うような素振りを見せたら」

 ヤミ「」

 アッシュ「俺が殺す」

 ヤミ「……ふはは」

 ヤミはにやりと笑う。

 ヤミ「……お前では俺を倒すことは不可能だ」



ヤミ「ぐ、あっぁあ」



 中学生メイド「私達、の、この町、を……」

 ブラ「……あ」

 ざっざっざっ

 中学生メイド「守って……下さい、でございます」

 中学生メイドは震えながら右腕を上げる。

 ぱしっ!

 ヤミ「任せろ」

 ヤミはその手を力強く握り締めた。




ヤミ「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

842: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:32:41.07 ID:enfutgtt0
858

--対ヤミ領域--

ジャンッ!

ブラ「はー、はー、はー……」

ヤミ「……」

歌い終えたブラ達は、途中からぐったりとして動かなくなったヤミを見つめていた。

メイド「ヤミ、様……」

番犬「ヤミ様」

ブラ「は……は……」

ヤミ「……」

ブラ「ヤミさ」

ぶちっ!

吟遊詩人「! まずいねぇ~拘束魔法が解除されたか……」

スッ

ヤミは無言で立ち上がった。

ブラ「ヤミ様……」

ヤミ様「……」

ガッ!!

843: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:34:05.21 ID:enfutgtt0
859

--対ヤミ領域--

メイド「!? ブラッ!!」

番犬「!! くそ! これでも届かなかったバウか!?」

ヤミは



ヤミ「――また、失ってしまうところだった」

ブラに抱きついた。

ブラ「! ヤミ……様?」

ヤミ「俺は……馬鹿者だ……こんな良い配下達を、忘れてしまっていただなんて……」

メイド、番犬「「!!」」

ブラ「ヤミ……様……」

ヤミ「お前達のおかげで洗脳は解けた。全て思い出した。迷惑をかけたな」

ヤミは、にこりと笑った。

踊子「はぁ、はぁ……もう歳ですかね」←実はバックダンサーとして参加していた。

844: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/09(火) 04:36:03.22 ID:enfutgtt0
900

--対蝿男領域--

賭博師「確率操作は俺にまかせろー」

剣豪「必中」

蜂隊長「必中ぶーん」

狐男「必中こん」

侍「必中でござる」

蝿男「クッソwwwwwww完全に対策されてウェーーーイwwwwwww砂になるーーーーwwwww」



--修練の塔、五階--

アッシュ「必中」

ポニテ「必中」

ツインテ「必中」

蝿男「君達必中スキル持ってましたっけ?wwwwwwウェーーーイwwwww」

859: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 00:47:45.90 ID:ZH434hgV0
901

--修練の塔、六階--

ツインテ「……」

ヤミ「……」

気まずそうに眼を逸らしているツインテとヤミ。

ポニテ「ねーねーねー、階層違うくない? ヤミっち蝿の前の勇者だよね? なんで蝿の後なの? おかしいよね? なんで?」

ヤミ「……」

アッシュ「おう、なんとか言えや。眼をそらすなや。わしらが許しても読者の皆さま方が絶対に許さへんのやぞ」

ヤミ「……」

ヤミは観念したかのように眼を瞑り、

ヤミ「……ました」

ポニテ「あぁん?」

アッシュ「おぉん? もっかい言ってみいやぁ!」

ヤミ「間違いましたっっ! 階層間違えました!! ごめんなさいっ!!」

ツインテ(ヤミさんのせいじゃなかったのに謝らされてる……ひどい)

860: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 00:48:47.08 ID:ZH434hgV0
902

--修練の塔、六階--

ガガガガ!! ギィーン!!

ヤミ「スキル、威圧」

ガウゥン!!

ポニテ「! ぐっ!! か、顔をあげることもできないいいいいいい!!」

にゅる

地面に這い蹲るポニテを闇から伸びた手が襲う。

ドガガガガガガ!! ボヒュッ

ポニテ「あぶな、精霊化間に合ったー……ってか闇を操る感じがどうもフォーテちゃんを彷彿させちゃって怖いね。ね、ツインテちゃん?」

ツインテ「……」

その台詞はツインテの耳に入らなかったようだ。ツインテは汗を垂らしながらアッシュの後ろ姿を見ている。

アッシュ「……」

ツインテ「凄い……あのヤミさんと一人だけ渡り合ってる……」

861: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 00:49:42.87 ID:ZH434hgV0
903

--修練の塔、六階--

ヤミ「スキル、威圧!」

ガウゥン!!

アッシュ「」

シュイン!!

ヤミがスキルを放つ一瞬早く、アッシュはヤミの視界から消えた。

ヤミ「! これはタイミングを狂わされている……?」

バッ!!

そして現れたのはヤミの直上。

ぎゅる……

ポニテ「!? えっ!?」

アッシュ「呪いの槍(半)」

ツインテ「の、呪いの槍ぃ!?」

862: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 00:52:18.16 ID:ZH434hgV0
904

--修練の塔、六階--

ズギャル!!

アッシュが放った呪いの槍がヤミを貫いた。

ヤミ「!!」

しかし、

ずる……

ヤミ「……」

ヤミはなんとも無かったかのように槍を引き抜いた。そしてヤミの手の中で砕け散る呪いの槍。

ぱきぃーん

ポニテ「お、お? 見た目は似てたけど呪いの槍じゃなかった……のかな? あ、あはは。そりゃそっか。アッシュ君が作れるわけないもんね!」

ツインテ「でもあの感じ……凄く本物っぽかったんですけど……といいますか、もしそれで寿命を削りきっちゃってたらそれはそれで問題な気も」

アッシュ「……」(まだ俺の生成の精度が低いっていうのもあるんだろうが、やっぱりこいつは単純に呪いの槍が効かない)

ズズズ……

ヤミの足元で闇が蠢いているのを見て確認するアッシュ。

アッシュ(例え生物じゃなくとも物には物の寿命がある。こいつに呪いの槍が効かないのは生物でも物でも無い、別の何かだということか? それとも桃鳥とはまた違った不死性があるのか……)

しゅぴぃん

アッシュはナイフを引き抜いた。

アッシュ「ならばこれしか攻略の手段はないだろうな」

863: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 00:53:53.67 ID:ZH434hgV0
905

--修練の塔、六階--

ヤミ「……」

アッシュ「……」

じり……

ヤミ「……次の階に行くがいい」

ポニテ「……え゛っ!?」

ツインテ「え、えっ? な、なんでですか? まだボク達は何も……」

アッシュ「……」

カシャン

アッシュは黙ってナイフを収めると次の階へと向かった。

ポニテ「あ、ちょっ!」

すたすたすた

ポニテ「……もう、なんだか蚊帳の外って感じだよ!」

ツインテ「……」

ヤミ「どうした? 早く行くがいい。あの男は既に気づいたぞ。俺の攻略法をな」

ツインテ「……はい」

すた……

ツインテは一歩だけ進み、そして振り返った。

864: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 00:59:31.14 ID:ZH434hgV0
906

--修練の塔、六階--

ツインテ「あ、あのですねヤミさん。実はボク達は……貴方からしたら遠い未来に、会うことになるんです」

ヤミ「……ほう。それで?」

ツインテ「その……そもそもここは特殊な空間みたいですし、ここでのことを覚えていられるのかわからないですけど……」

ヤミ「前置きはいい」

ツインテ「に、人間を……諦めないで欲しいんです」

ヤミ「……」

ツインテ「ヤミさんにとって、とてもとても辛いことが起きると思います。それは激しい憎しみを生んでしまうでしょう……でも、諦めないで欲しいんです。いつかヤミさんを理解してくれる人が現れますから」

ヤミ「……何を言うかと思えば」

ヤミは鼻で笑う。

ヤミ「――我は人間を諦めたりはしないさ」

ヤミは確信しているかのように笑う。

ツインテ「……はい、そうですよね。差し出がましいことをしました。じゃあ、ボクも行きます。稽古をつけてくださってありがとうございました」

たたっ

ツインテはぺこりと頭を下げて二人を追った。

865: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:03:12.21 ID:ZH434hgV0
907

--修練の塔、階段--

カツカツカツカツ

ポニテ「でも凄いねぇアッシュ君。何さっきのあの動き。なんかまた一人だけ壁超えちゃった?」

アッシュ「いや……ただ自分がどんなものなのかに気づいただけだ」

ポニテ「うぉう……アッシュ君の癖にかっこいいこと言っちゃってまぁ……そうだアッシュ君さー、ヤミっちをどうやって倒すつもりだったの? あの人、私からしたらどうしようもない化物だったんだけど」

アッシュ「なに簡単なことだ。外が不滅なら中を壊せばいい。すなわち」

ポニテ「すなわち?」

アッシュ「精神攻撃だ」

ポニテ「……ふむ。なるほど一理あるね……えげつないけど」

アッシュ「何を言いやがる。蝿男だってそうやって倒したはずだ。それ以外の突破方法は考えられん」

ポニテ「んー。あの回避コンボの中に精神攻撃をするやつがあったってこと?」

アッシュ「もしくはそれと同等の機能をする何かだ。例えば願いを一個叶える、とかな」

ポニテ「ドラゴンボールかよ」

※蝿男は回避999コンボを達成すると条件を無視して敵を倒す効果が発動します。

ポニテ(……にしても、ツインテちゃんと私がほとんど役に立てないくらいの相手ばっかだってのに、一人でほとんどの勇者と渡り合ってる気がするよアッシュ君。もしかして……勇者は……)

866: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:05:38.32 ID:ZH434hgV0
908

--修練の塔、七階--

じゃん!

ウェイトレス「おっす! 待ってたぞ勇者候補達! とりあえずご飯用意しといたから食べるといいのさ!」

アッシュ「遠慮させてくれ! 腹は全然減ってないんだ! さっさとやろうじゃないか!」

ウェイトレス「そう急かすなよ少年。ほれそこの女の子。この特性シチューおにぎりを食らえぇい」

がぽっ

ポニテ「もぐっ!……むしゃ……お、おろっ!?」

りばーす。

ツインテ「きゃー!? ぽ、ポニテさんが戻しちゃいましたよ!?」

アッシュ「馬鹿な!! あのごみでも美味しくいただけるポニテが吐いただと!? ありえない!!」

ぼっ

ツインテ「あぁ! 危険を感じて精霊化しちゃってます!?」

ぼぼぼっ

アッシュ「お、おい! 体が千切れてるぞ! 維持出来なくなってきてるじゃないか! 体を纏めろポニテ!」

ウェイトレス「ねぇ、私も感情が無いってわけじゃないのさよ?」

ぼぼっ

ポニテ「ふぅ……あ、危ないところだった。助かったよみんな……」

ふよふよ

ツインテ「わー! 頭に△つけちゃってますーぅ!! これじゃ精霊化どころか幽霊ですよっ!」

867: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:07:03.84 ID:ZH434hgV0
909

--修練の塔、七階--

コキコキッ

ウェイトレス「さてお腹も満たされたところだし、いっちょやるかい?」

ポニテ「満たされた……? 元からあったものまで無くなったよ……!」

ぐきゅるるるるるるるる!!

あらぶるポニテのお腹。

ウェイトレス「おいで、お前達」

ぴんっ

ウェイトレスが糸を弾くと、一瞬で六体の魔王人形が出現する。

ザザザザザザンッ!

銀蜘蛛人形「……」

桃鳥人形「……」

茶肌人形「……」

腹黒人形「……」

ヤミ人形「……」

蝿男人形「……」

868: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:12:36.97 ID:ZH434hgV0
910

--修練の塔、七階--

ツインテ「き、聞いてはいましたけど、全員揃ってるところ見るのは壮観ですね……」

ポニテ「こんなので戦いを挑まれちゃうとか魔王も可哀想だね……ってなんでさりげなく蝿男までいんだよ! ウェイトレスさんに対応する魔王は蝿男のはずでしょ!?」

ウェイトレス「あはははー! ばれたかー。実はこいつだけマネキンでしたー」

ばったりと倒れる蝿男人形。

ウェイトレス「ちなみに説明しておくと、私の能力は魔王の骨を媒介にしてこいつらを操ること。君達にとって朗報と呼べるのは、この人形達は勇者以外でもダメージを与えられる、ってことかな。後はこいつらが本物だった時よりちょっと弱体化してるってこと」

ポニテ「いや……でもどう考えても最強だよね? 無敵バリア無くて弱体化してるからって、手放しで喜べないんだけど」

アッシュ「お決まりの再生怪人は弱い、なんていうのも当てはまらないしな」

ツインテ「一体ずつ倒して丸腰にしてから脳筋さんは戦った、って聞きましたけど……目の前で同時展開された場合はどうしたらいいんでしょうか……」


869: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:14:25.29 ID:ZH434hgV0
911

--修練の塔、七階--

ドガアアアアーーーン

銀蜘蛛に頭部を踏み潰されるポニテ。

しゅる

しかしポニテは精霊化してその攻撃を避ける。

ヒュッ!

茶肌人形「スキル、魔力切り!」

そこをつめていた茶肌人形が追い討ちをかける。

ポニテ「ッ、何度も食らうか! 精霊化解除!」

バンッ!

茶肌人形「!」

ガシイイイ!!

茶肌の槍を素手で掴み、即座に血で作った大剣を茶肌に叩き込んだ。

ズバシャア!!

茶肌人形「グッ……!」

ツインテ(凄い! ポニテさんも魔王レベルの攻撃に順応し始めた!)

アッシュ(あれがもし呪いの槍だったなら……例え実体だろうが精霊体だろうが、触れた時点で消滅していたがな)

870: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:15:37.61 ID:ZH434hgV0
912

--修練の塔、七階--

ギギギン!! ギギィン!!

銀蜘蛛人形とナイフで渡り合うアッシュ。

ウェイトレス「あれ? 一番最初にやっちゃえると思った子が一番頑張ってるね」

ギィン!

アッシュ「ちっ!」

ナイフが弾かれて体勢を崩したアッシュを銀蜘蛛人形の銃口が狙う。

がしゃこっ

アッシュ(こいつに毒は利かん! だが)

ビュッ!

アッシュは銃口目掛けて毒液を飛ばす。

パシャッ!

銀蜘蛛人形「!……カヤクガシケッチャッタ」

ウェイトレス「ほう、あんな特殊な能力でよくやるねー……」

871: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:16:52.17 ID:ZH434hgV0
913

--修練の塔、七階--

アッシュ「はぁ、はぁ……!」

ギギン、ギギギギギン、ギギギギギギギギギギギギン!!

銀蜘蛛人形「ギ、ギ……!」

ポニテ「アッシュ、君……?」

ツインテ「アッシュ君! 銀蜘蛛さんはアッシュ君と相性が悪いですよ! こっちに下がってください!」

アッシュ「あああああああああああああああああああああ!!」

ビシッ

ウェイトレス「……あんなナイフじゃ一点に力を集中させたとしても銀蜘蛛の装甲を破れるわけがない。わけが……ないのに」

アッシュ「ああああああああああ!!」

ビシビシビシッ、ズバァアアアア!!

銀蜘蛛人形「!?」

アッシュのナイフが、銀蜘蛛の右足を切断する。

872: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:17:52.40 ID:ZH434hgV0
914

--修練の塔、七階--

ズズーーーン!

ツインテ「!? う、そ」

ポニテ「えぇーー!?」

腹黒人形「ちっ、土属性対単体攻撃魔法」

それを見ていた腹黒人形がアッシュに向かって魔法を唱える。

腹黒人形「レベル5」

ボギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

ツインテ「!! アッシュ君ッーー!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ポニテ「うわ!! アッシュ君の防御力じゃあんなの受けたら一たまりも……あわっ!?」

桃鳥人形「余所見してる場合ですかー?」

ぼひゅぼひゅ!!

ツインテやポニテにも魔王人形の攻撃が再開される。

873: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:19:29.68 ID:ZH434hgV0
915

--修練の塔、七階--

ぼふっ!

腹黒人形「!」

砂煙の中からボロボロになったアッシュが現れた。

ずしゃっ

アッシュ「はぁ、はぁ……」

腹黒人形(だが生きている……ミンチにするつもりだったんですがね……)

ウェイトレス(いやーありえないでしょどう考えても。腹黒の対単体攻撃魔法レベル5を食らったのにさ……。もしあの程度で済む奴がいるとしたら銀蜘蛛くらいしか……はっ!)

ウェイトレスは何かに気づいて切断された銀蜘蛛の足を見た。

ツインテ「アッシュ君! よかったです。一度全回復させますからこっちに来てください!!」

しゅる……

しかしアッシュの体は既に再生し始めていた。

ツインテ「あ、あれ?」

アッシュ「こっちは大丈夫だツインテ。それより少しだけ待っててくれ」

ツインテ「え……」

ズバン!!

腹黒人形「    がッ」

一瞬で距離を詰めたアッシュがナイフで腹黒人形を両断する。

アッシュ「――こいつらの数を減らしたら助けに行く」

874: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:21:09.48 ID:ZH434hgV0
916

--修練の塔、七階--

ぶしゅーーーー!!

ウェイトレス(防御力、回復力、速力……どれも人の域じゃあ無いね……こいつは気になる。スキル、観察眼)

きゅいーん

ウェイトレスの眼が光り、アッシュの実態を暴く。

アッシュ「止めだ!」

ズバッ!!

腹黒人形「ぐはっ!!」

ウェイトレス「……ふーん……なるほどね。それが君の本質、ってわけか」

ズババッ!!

茶肌「がはっ……」

ツインテ「凄い……! 一人で二体も……」

ウェイトレス「『保存』ってとこかな。力をその身に蓄えて自らのものとする力。使いこなせてないところを見ると最近気づいたって感じ?」

ウェイトレスは続いてツインテとポニテに視線を送った。

ウェイトレス「あっちの二人も少しずつ人形に対応してきているし……保存、再生、霊化、ね……面白い三人組だわ」

ウェイトレスはにこりと笑う。

875: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:24:15.94 ID:ZH434hgV0
917

--修練の塔、七階--

シュン

ツインテ「あれ?」

ウェイトレス「ここまででいいよみんな。おつかれさま」

ウェイトレスは残る人形を引っ込めた。

ウェイトレス「ふー。やるじゃん君達。人形全部使ってる私と渡り合うなんて、中々出来ることじゃないよ?」

ポニテ「ほんとそれ! やー、私もここでの修行の成果なのかしらないけど、また強くなっちゃってるみたいなんだよねー!」

ツインテ「……確かにポニテさんも強くなっている気がしますけど、それ以上にアッシュ君が異常な気が……」

アッシュ「……」

アッシュはぼーっと自分の掌を見ている。

ウェイトレス「ま、つっても? 私が本気だしたらそっこーでかたがついちゃうんだけどねー」

ツインテ「あはは……」

ポニテ「ぐぅ……正直全員に襲い掛かられたら、勝てる気がしないという事実……」

アッシュ「――そうか?」

ウェイトレス「」

ツインテ「え、アッシュ、君」

アッシュ「俺は、負ける気がしないぞ」

ギン!

アッシュの瞳には力が宿っていた。

ポニテ「あ、アッシュ君がなんかさっきから強そう!?」

876: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:26:39.21 ID:ZH434hgV0
918

--修練の塔、七階--

ウェイトレス「へー、これはこれは……」(ふふ、面白くなってきた……!)

ウェイトレスはアッシュを見てにやにやしている。

ウェイトレス「じゃあ生意気な口を叩く君には、最後にこいつをお見舞いしてやろうか! 来な! 赤姫!!」

ばぁああああああん!!

ウェイトレスが呼び出したのは天使。

ウェイトレス「この赤姫はさっきの魔王人形達とは違った強さだよ? 君達に――」

ズバン!!

話が終わる前にアッシュは天使を両断する。

ず、ずずーーーん!!

ツインテ「う、うそ……」

ポニテ「お、おいおい……アッシュ君、君って奴は一体どこまで……」

ウェイトレス「……」(さすがにちと予想外……)

アッシュ「……なるほど。ようやくわかった。これが俺の、俺達の力なのか……」

877: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:29:18.28 ID:ZH434hgV0
919

--修練の塔、七階--

しゅうぅうう……

ツインテ「……やっぱり、これはもう決定的ですね」

ポニテ「……」

ツインテとポニテはアッシュの力を目の当たりにしたことで悟った。

ツインテ「勇者は、アッシュ君だったんだ」

ポニテ「く、悔しいけど、ここまでの力を見せられたら……」

ウェイトレス「え? おいおい違うでしょ。そうじゃないって」

ツインテ「え?」

ウェイトレスは天使に回復魔法をかけながら三人に話しかけた。

ウェイトレス「その少年は今まで使いきれてなかった自分の力に気づけたおかげでここまで戦えるようになっただけよ」

アッシュ「……」

ウェイトレス「一つは保存。彼が保有する固有の能力。君達の再生や霊化と同じようなね」

ツインテ「保存……あ、いやそうだとしてもこの差はあまりに……一つは?」

ウェイトレス「もう一つは、限られた人物のみが持つとされる伝説のスキル」

ウェイトレスは人差し指を立てる。

ウェイトレス「主人公補正さ」

878: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/19(金) 01:32:52.57 ID:ZH434hgV0
920

--修練の塔、七階--

ツインテ「主人公」

ポニテ「補正?」

思いがけない単語にきょとんとしている二人。

ウェイトレス「数多の物語を進めていく力、無理なことでもどうにかなっちゃう最上位のスキル。私も昔は持ってたんだけどなぁ……そしてそれは君達の中にもあると思うよ」

アッシュ「そういう名前だったのか」

ウェイトレス「おや知らなかったのかい?」

アッシュ「知るわけがあるまい。強敵との戦いの中で、偶然気づけたに過ぎないんだ」

ウェイトレス「ふーん?」

ツインテ「主人公補正……? そ、そんな凄いのが私達の中にもあるんでしょうか……」

ポニテ「……」

ポニテはぎゅっと服を掴んだ。

ポニテ「それは、どうやって使えるようになるの?」

ウェイトレス「主人公というものは気づいたらなっているものだよお譲ちゃん」

ポニテ「ッ……」

ツインテ「ポニテ、さん?」

ポニテ「私……勇者になれなくてもいい。でも、主人公に、なりたい!」

ポニテはいつになく真面目な表情で宣言する。

アッシュ「――違うなポニテ」

ポニテ「アッシュ君……?」

アッシュ「勇者にもなるんだ。夢は諦めちゃいけない」

ポニテ「だからさっきからかっこよすぎるから!!」


888: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:06:47.24 ID:yjHduDlz0
921

--対ウェイトレス領域--

ズゥン……

ウェイトレス「つ……ヤミっちにかけてたココノロイトが破られちゃったかー……私のスキルを打ち破るほどの何かをしたのかな? それとも…

…私の精神の安定が崩れたせいかな?」

ギシッ、ギリギリ……

ウェイトレスは見えない糸によってがんじがらめにされていた。

人形師「ほっほっほ~。これほどの面子で一斉にかかって、押さえ込むのがやっととは……恐ろしい女性ですね~」

北の王「弱音吐くんやないで人形師~。ちょっとでも油断したらあの化物どもが解き放たれてまうんやから」

銀蜘蛛人形「……」

ギギシ、ギシッ

人形師、ダーク牧師、鷲男、調教師による操作系魔法とスキルを使って、ウェイトレスの人形へ干渉し、主導権の綱引きをすることで人形の動きを封じていた。

東の王「……」

ウェイトレス(王の言なんて私にゃほぼ効かないけど……複数がけされるとさすがにきついね)

姫「今だやっちまえーい! ほっほー!」

更に今は東の王、西の王、北の王、姫、参謀長、軍師、代表の王の言(&系列のスキル)がウェイトレスの行動を封じている。

889: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:10:16.01 ID:yjHduDlz0
922

--対ウェイトレス領域--

召喚士「攻撃役がオイラ一人だけなのは役割分担がおかしいと思うのでやんす」

人形師「仕方ありませんよぉ~貴方くらいしか手が空いてないんですもの~」

召喚士「まるで暇人のような言い方でやんすねぇ」

人形師「さぁやっちゃってください~。召喚士の攻撃が通れば我々も攻撃に参加できるようになるのですから~」

召喚士「そうでやんすね……。ではいくでやんすよ」

ウェイトレス(来る)

ギシッ

ウェイトレスは王の言を跳ね除けようともがくのだが、

東の王「動くな!」

ズゥン!

東の王のスキルがウェイトレスの動きを止める。

ウェイトレス「ぎっ……東の王さん……あんたこっち側じゃなかったっけ?」

東の王「悪いな。俺は人間以外にはなれなかった……悪いが裏切らせてもらうよ」

890: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:12:25.72 ID:yjHduDlz0
923

--対ウェイトレス領域--

召喚士「召喚、黄金鷹でやんす!」

バサッ!

黄金鷹「ぎえーーーー!!」

バサッバサッバサッ!!

黄金鷹の巻き起こす風がウェイトレスを切り刻む。

ブシュブシュブシュー!!

召喚士「おう! 思ったより柔らかいでやんすな。これなら以外と楽ちんに終わるかもでやんす」

ブシュッ!

ウェイトレス「づっ!」(……まぁ私本体はそこまで強いわけじゃないからねー……)

ダーク牧師「! 気を緩めましたね! スキル、人形奪い!!」

ウェイトレス「! しまっ!!」

ぼしゅるっ

ダーク牧師はウェイトレスから銀蜘蛛人形のコントロールを奪い取った。

891: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:14:50.27 ID:yjHduDlz0
924

--対ウェイトレス領域--

銀蜘蛛人形「ぎ、ぎぎ……」

ダーク牧師「これで私も攻撃に回れます! ははは、見ましたか。魔王から人形を奪って見せた我が実力を!」

ウェイトレス「くっ」(……なーんてね。並の人間にそいつを使いこなせると思ってるのかなー? しかも君はもう片方の腕で桃鳥の分も担当している。気を抜いたら逆に二つの主導権を失うことになるよ……?)

ダーク牧師「銀蜘蛛! 攻撃です!!」

銀蜘蛛人形「ぎぎぎ」

バルルルルルッ!!

銀蜘蛛人形はガトリングをぶっ放し、ウェイトレスや他の人形を手当たり次第に攻撃していく。

がくがくがく!

ダーク牧師「ッ!!」(なっんて重さだ、制御できない!……ウェイトレスはこんな重いものを五体同時に操っていたというのか……!)

892: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:17:38.81 ID:yjHduDlz0
925

--対ウェイトレス領域--

ドシュドシュッ!!

銀蜘蛛の放つ弾丸がウェイトレスの太ももを貫通する。

ブッ!

ウェイトレス(づぅ! 狙いが段々定まるようになってきてるね。並みの人間じゃなかった、ってことか……にしても王の言系スキルによる束縛も剥がせそうにないし、これはちょっと本格的にまずいかも)

人形師「! もらいましたよ~! あらよっと」

しゅばっ!

人形師はウェイトレスから腹黒を奪うことに成功する。

召喚士「よっしゃ、これを待ってたでやんす! 行くでやんすよ人形師!」

人形師「了解しました召喚士~」

ゴオオオオオ!!

召喚士が操る黄金鷹と人形師が操る腹黒の同時攻撃がウェイトレスを襲う。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ウェイトレス「!? がはっ!! こ、これは!?」(火力がおかしい!? これは、タッグスキルによる強化かね……いや、まずいよこれ何発も受けてらんない)

ズガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ウェイトレス「ッッッ!!」

ボブシャッ!!

ウェイトレスの右腕がはじけ飛ぶ。

ウェイトレス(まーずい)

893: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:20:42.27 ID:yjHduDlz0
926

--対ウェイトレス領域--

ブピュ、ブシュシュッ

ウェイトレスの血が地面を濡らしていく。

ずっ

調教師「! やった取りました! ヤミの主導権を奪いました!」

鷲男「私も茶肌、確保しましたよ?」

しゅる

ダーク牧師「こっちもです……! ふふ……勝ちましたよこれは。奴は丸腰だ!」

ウェイトレス「……」

全ての魔王人形を奪われたあげくその身はズタボロ。更にウェイトレスは王の言により動くことすらままならない。

西の王「……だが油断するな。それでもそいつは魔王なのだ。例え一片の肉片になろうとも最大級の危険であることには変わりない」

北の王「そうでっせ。このお嬢さんにはまだ奥の手の天使っちゅー人形があるはずやし」

ウェイトレス(はー……やれやれ。心の隙すらないってか。これは厳しいーなー……)

ぴく

その時千切れたウェイトレスの右腕がかすかに動いた。

894: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:23:12.01 ID:yjHduDlz0
927

--対ウェイトレス領域--

ビュンッ!!

そしてそれは高速で飛び回り人形師に向かっていった。

カサササササササ!!

東の王「! 切り離した自分の腕を、操作しているのか!?」

西の王「いや、現在奴の行動は制限しているはず……! ということは自動で動くようにあらかじめ仕組んでいたのか!」

北の王「思考能力無い奴に王の言は効きまへんで! あの千切れた腕にわしらは無力や!」

ウェイトレス(ふふふ、人形師のおじーちゃん。貴方が見えないところで色々サポートしてるのはわかってるよ。だから、貴方さえ倒しちゃえばこっちのもんさ!)

召喚士「人形師を守るでやんす!」

召喚士が黄金鷹に迎撃するよう命じるのだが、

ヒュッ!

腕は攻撃をかわし、すり抜けてしまう。

ババッ!!

人形師「!!」

召喚士「あっ」

ズギャッ!!

895: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:24:29.84 ID:yjHduDlz0
928

--対ウェイトレス領域--

人形師「」

ズボギャッ!!

ウェイトレスの右腕はその強靭な力で体を縦に引き裂いた。

ダーク牧師「ご、ぶっ」

間に割って入ったダーク牧師の体を……。

ウェイトレス「うっ、そ」(まじか、予定狂っちゃうなぁ)

ダーク牧師「っづ! 今だ! 奴をやれーーーーーー!!」

召喚士、人形師「「!」」

バッ!!

二人は申し合わせることなく瞬時に攻撃に移る。

ウェイトレス「……おいおい。君はそんな体になっても二体のコントロール返さないっていうのか?」

ズギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!

ウェイトレス「――そんなに頑張られちゃうんじゃあ……負けるしかないじゃん」

896: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:26:03.30 ID:yjHduDlz0
929

--対ウェイトレス領域--

ボロッ……

上半身だけになったウェイトレスが砂になっていく。

ダーク牧師「……」

ボロロッ

ダーク牧師もまた、砂になり始めていた。

召喚士「ぼ、牧師……あんた……なんてことやってくれるでやんすか」

人形師「すいません貴方のおかげで命拾いしましたよ~」

北の王「おい誰か早く回復魔法かけてやってーな!」

わーきゃー!

ウェイトレス「……無駄よ。魔族はそうなっちゃったらもう終わり。後は消えるだけ」

ダーク牧師「ふ……だそうです」

ボロボロボロッ

人形師「!……」

897: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:27:55.84 ID:yjHduDlz0
930

--対ウェイトレス領域--

西の王「残念だ……せっかく魔族の呪いから解放されたというのに……」

調教師「……」

ボロッ

ダーク牧師「ふん、変な同情はやめてください。僕がこうなったのは全部自分がやってきたことの結果なんですから。後悔はしていませんよ」

ダーク牧師は集まってきた人たちに顔を見られたくないのか顔を背ける。

召喚士「牧師……」

ボロボロッ

ダーク牧師「……むしろ後悔するのは逆ですよ。どうです? 私は、凄く優秀だったでしょう?」

鷲男「へ……?」

右半身しか残っていない牧師が最後に問いかけた。

ダーク牧師「どうだったかと聞いているんですよ、北の王国の皆さん。あの時私を三強に加えなかったこと、後悔しましたか?」

898: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:30:28.87 ID:yjHduDlz0
931

--対ウェイトレス領域--

召喚士「……」

召喚士達はかつての牧師との出会いを思い出していた。そして何ゆえ彼を三強に迎えなかったのかも。

ギュ

人形師は崩れかけた牧師の右手を握る。

人形師「えぇ……まさかここまで出来る男だとは思いませんでした。存分に後悔しておりますよ~、何せ、いまだにこの老いぼれが三強の座に居座るくらい、後続の育ちが悪いのでね~……」

召喚士「……生まれ変わったらまた審査を受けにくるといいでやんす。また審査してやるでやんすよ。その時までオイラ達頑張って残っとくでやんすから」

二人の言葉を聞いた牧師はにやりと口元だけ笑う。

ダーク牧師「…………ふ……もう三強に興味なんて、ない、です……そんなもの、妹に、ゆず、る」

ボロッ……

ダーク牧師は砂となって消えた。



--対桃鳥領域--

レン「ん……今、なんか変な感じが……」

899: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:32:58.99 ID:yjHduDlz0
932

--修練の塔、八階--

アッシュ「……」

ポニテ「……」

ツインテ「あ、あのお二人とも……? 次は脳筋さんとの戦いですから……あの……」

全く喋らない二人に気まずさを覚えたツインテがおろおろと話しかける。

アッシュ「大丈夫だツインテ、心配しなくていい」

ポニテ「そうだよツインテちゃん。きっとツインテちゃんが思っているようなことじゃないから安心して」

ツインテ「え? あ、そ、そう、なんでしょうか。あ、あはは……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

ザンッ!!

脳筋「はっはー。よく来たな未来の勇者候補達」

腕を組み仁王立ちでツインテ達を出迎えた脳筋。

ツインテ「あ、お邪魔します脳筋さん!」

ぺこり

ツインテはいたたまれない空気を壊してくれたことに感謝してのお辞儀だった。

脳筋「さっそくだが、俺はお前達に何かを語って諭してやることができん。不器用なので戦いの中で教えてやることもできん」

ツインテ「……え?」

ドンッ!!

脳筋は地面を踏みしめる。

脳筋「結局の所、俺は自分の好きなように戦うことしかできん。さぁお前ら気持ちよくやろうぜ」

900: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:37:46.42 ID:yjHduDlz0
933

--修練の塔、八階--

ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

脳筋が構えるや否や、ポニテは精霊化する。

ポニテ「アッシュ君、ごめんだけど、今回は手を出さないで」

アッシュ「……ほう?」

ポニテ「脳筋さんはシンプルに強いタイプの人間だから、アッシュ君がスキル人殺しを使ったら一瞬でかたがついちゃうもの」

ツインテ(確かに……)

脳筋「はっはー。わからねぇぞ? そんなに簡単にやられてやるつもりはねぇからなぁ俺」

アッシュ「……ああ言ってるが?」

アッシュは脳筋を顎で指して問う。

ポニテ「……私もこれだ、っていうものをこの修行で掴みたいんだよ。いいでしょ?」

アッシュ「……」

ポニテの真っ直ぐな視線がアッシュを捕らえる。

アッシュ「……あぁ、お前のパワーアップは俺とて望むところだ。だがここに来るまでにかなり時間を食っちまった。だから三分だけだ。それを過ぎたら俺も戦いに加わる。いいな?」

ポニテ(三分……私が全力で戦える時間じゃん……)「おっけー」

ツインテ「あ、あの」

二人のやり取りを見てあうあうしているツインテ。

ポニテ「ごめんツインテちゃん。ツインテちゃんもちょっと手を出さずに待ってて欲しいの。だってこの人は」

脳筋「まぁー、いいだろ。俺もタイマンは好きだ。挑戦者はもっと好きだ」

ゴキッ、バキッ

ポニテ「ママが戦った人だから」

901: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:39:18.87 ID:yjHduDlz0
934

--修練の塔、八階--

ひゅぅうう……

ポニテ「……」

脳筋「どっからでもいいぞ。かかってきな」

脳筋は人差し指二本で来いよのジェスチャー。

ポニテ「じゃあ、お言葉に甘えて……!」

ドンッ!!

炎の魔力を爆発させて猛スピードで突っ込んでいくポニテ。

キイイイイン!

脳筋(速いな)

ボヒュッ

脳筋はポニテの進行方向に高速のジャブを放つ。

ポニテ「!?」

ヒュッ

そこを通過したポニテの体がボロボロに。

902: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:41:44.07 ID:yjHduDlz0
935

--修練の塔、八階--

ポニテ「あッ!!」(真、空か! 私のこの姿を見て一瞬で、真空を作り上げることを考え付いたの!?)

脳筋(……何で今俺ジャブしたんだろう?)

脳筋は考えるより体が先に動くタイプだった。

ボッ!!

ポニテ「!?」

脳筋の強烈の拳が精霊化しているポニテの頭部をすり抜けていく。

ぼひゅっ

ポニテ(ぶ、物理攻撃なんて、効かない、よ)

効くはずが無い。
だがその凄まじい攻撃を間近で感じたことで、ポニテの心の中に恐怖が生まれた。

ポニテ(もし、あれが当たったら)

アッシュ「! あのバカ!」

ゆらっ

脳筋「ッ」

精神が揺らいだことで精霊化が不完全になったその瞬間を

ポニテ(私は、ママにも、アッシュ君にも、勝てない)

ドギャッ!!

脳筋は見逃さない。

903: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:44:11.39 ID:yjHduDlz0
936

--修練の塔、八階--

ボキボキボキ!!

ポニテ「   」

どぶしゃあぁああーーー!!

ツインテ「ポニテさん!!」

アッシュ「バカが……」

ドチャッ、ボシュッ

血を吐き出し、炎が体から離れていく。

ツインテ「今のポニテさんの体が実体なのか精霊体なのか……見分けがつかないです」

どちらでも無い状態。それは本当に危険な状態になったことを意味する。

ぐぐっ

ポニテ「ゆ、油断したぁ……」

だがポニテは起き上がった。

ぼ、ぼぼっ

そしてポニテから流れ出した血を掌に集めた。

ポニテ「いたた……やぁー、駄目だね。私も何かを考えながら戦うってのは、相性悪いのかも」

ずずず

ツインテ(精霊化による自己修復。回復魔法いらずですね)

904: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:46:46.11 ID:yjHduDlz0
937

--修練の塔、八階--

ひゅんひゅんひゅん、じゃきぃーん!

ポニテは炎で作った剣と血で作った剣を持って構えた。

ポニテ「ねぇ脳筋さん……さっきのは準備運動だった、ということでいいかな?」

脳筋「あぁ、別に構わないぞ。楽しい戦いが出来るのなら。さぁ、来い」

ポニテ「うん……へへ。なんだか久しぶりに、私もちゃんと楽しめそうだよ」

ポニテはにっこりと笑う。

ボッ!!

そしてポニテは再び爆発的な加速で接近し、剣を振り下ろす。

脳筋「ふんっ!」

ぎいいいいいいいん!!

ポニテ(っ、魔力で覆ってるとはいえ、私の渾身の一撃を素手で防がれるのはさすがにショックだなー!)

ぼぼぼぼぼっ、ぎぎぎぎぎぎぃん!!

ポニテの双剣が乱れ舞う。

905: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:48:35.82 ID:yjHduDlz0
938

--修練の塔、八階--

ギギギボッ!

斬撃を弾きかわし、脳筋が拳を放つ。そしてその拳はポニテの体をかすった。

ポニテ「ッ!」

脳筋「……む?」

ポニテ(今当たった……今度は私、完璧に精霊化してるはずなのに!)

脳筋「なるほど、腰をぐっといれて最後にほわっとやると、実体が無いやつにもこの拳が当たるのかな?」

ポニテ(……最悪だ。むちゃくちゃな感じで魔力体にダメージを与える手段を見つけ始めてる……)

脳筋は戦いの最中に魔力体への対処法を身につけようとしていた。

ポニテ(成長するのは私達だけじゃない。そんなのは知ってるけど、まさかこんな強いやつがまだ強くなるとか、卑怯だよ!)

ボボボッ!!

脳筋が放った拳は完全に対魔の拳だった。

906: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:50:51.74 ID:yjHduDlz0
939

--修練の塔、八階--

ヒュッ!!

脳筋「!」

ポニテ「なら、実体に戻って受け止めてやるっ。そっちの方がいくらか痛くないからねっ!!」

どぎちっ!!

ポニテは左腕をクッションにして脳筋の拳を受け止めた。

ポニテ「ごふッ!!」

べきごき!!

左腕は粉砕され、衝撃は殺しきれずポニテの口から血が漏れる。

ポニテ「ッ、ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

シュン!

間髪いれずに至近距離から放たれたポニテの血剣。

バキャッ!!

脳筋「遅い!」

それを軽々と砕かれ、ポニテの胸部に追撃の拳が入った。

907: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:53:14.00 ID:yjHduDlz0
940

--修練の塔、八階--

ポニテ「……」

しゅうぅうううう……

ツインテ「ポニテさんッ!……すいません、ボク約束守れません! 治療、させてもらいますから!」

たたたっ

脳筋の一撃を食らった衝撃でふっとんだポニテの下に走り寄った。

ポニテ「あ、あー……いたたた……」

ツインテ「水属性回復魔法、レベル4」

ぽわぁあ……

アッシュ「……丁度三分だ。俺がやる。いいな? ポニテ」

ザッ、ザッ、チャキ

アッシュがナイフに手をかけて歩き出す。

ザッ、ザッ、ザッ

ポニテ「……私、わかっちゃった」

ツインテ「え、わかったって、何がですか?」

ポニテは、にこりと笑いながら言った。

ポニテ「私の、役割が」

908: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/23(火) 03:55:09.40 ID:yjHduDlz0
941

--修練の塔、八階--

アッシュ「……」

ザッ、ザッ

ポニテ「かんっぺきに負けたから諦めがついたのかな……。なんか憑き物が落ちた、っていうか。なんか視野が広くなった気がするよ。あ、ありがとうツインテちゃん。もう大丈夫だよ」

ツインテ「ポニテさん……」

すっ

ゆっくりと起き上がるポニテ。

アッシュ「……」

ザッ、ザッ

ポニテ「そして、誰が勇者なのかもわかっちゃった」

ツインテ「!? えっ!?」

ポニテ「考えれば……すぐにわかったことだったのにね」

ザッ、ザッ、ザッ

脳筋「お、次の相手は君か? 少年」

アッシュ「……あぁ」

ツインテ「ポニテさん、勇者が誰なのかわかったんですか?……やっぱりそれって、アッシュ君、てことですよね?」

ポニテ「……ううん、違うよ」

915: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:33:32.15 ID:J/aOswhR0
942

--修練の塔、八階--

ひゅんひゅん

アッシュ「……」

アッシュは一通りナイフを振り回した後構える。

アッシュ「じゃあ、行くぞ最強」

脳筋「来ぉい少年!」

ズバッ!!

アッシュ「……」

ポニテ「!!……かー……簡単に終わらせてくれちゃってさーもー!」

ぬる

脳筋「んー……全く見えなかったぞ。天晴れだ少年」

ぶしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

ズズーーーン

脳筋を一撃で沈めたアッシュ。

アッシュ「ツインテ、蘇生魔法頼む」

ツインテ「あ、はい!」(スキル人殺しとタイミングブレイクって、最強の組み合わせな気がします……)

916: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:35:12.18 ID:J/aOswhR0
943

--対脳筋領域--

ズガガーン、ズガガガガーーン!!

脳筋「はっはっはっ。中々やるなぁ!」

ドガガガガガ!!

鬼姫「づっ!! これでも効かないっすかぁ!」

竜子「くっそがぁあぁ! ちったぁ痛そうにしやがれ!!」

ガガガドゴバキガガガガ!!

鬼姫と竜子相手に余裕を見せる脳筋。二人からの攻撃をほぼ捌き、たまに入ったとしても表情を崩さない。

脳筋「……もっと遊んでいたいんだが、後ろに控えてる人たちもやっかいなんで、なっ!」

ドゴゴォ!!

鬼姫「うっぷ!!」

竜子「げはぁっ!!」

脳筋「君らはここまでだ」

今度は脳筋の膝と拳が二人にヒット、なすすべもなく吹き飛ばされてしまう鬼姫と竜子。

ひゅーん、どがぁあああん!!……ぱらぱら

脳筋「さぁ次は誰だ? 兄貴か? それとも亜人王か!?」

遠くから眺めている聖騎士と眼が合った脳筋。

聖騎士「……まぁだぁ、その時ではない愚弟よぉ……」

聖騎士の指がせわしなく動いている。

勇者「……?」

917: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:36:25.66 ID:J/aOswhR0
944

--対脳筋領域--

サキュバス「ちょっと! みんなで一斉にかかればいいじゃない! なんで順番待ちなんてしてんのよ!?」

ワーウルフ「大勇者と戦うメンバーは近接戦闘特化型ばかりですからね。連携を取るにも少人数が限度ってとこでしょうか」

サキュバス「そもそもなんで近接ばっか、って……脳筋の常時発動スキル、脳みそ筋にくんか。あれがあるとチーム戦しずらいし搦め手あんま効かないもんね」

わいわい談義している魔族二人。

勇者「……洗脳が解かれたから当たり前のようにこっち側にいるけど、いいの? 元々あいつの仲間だったんでしょ?」

サキュバス「はぁ? なぁーに言ってんのよど貧 ちゃん。確かに私らはあいつについていくって言ったわ。でもその約束をしたのはあいつじゃない」

勇者(また胸の話してる……)

ワーウルフ「彼は大勇者は大勇者でも別ルートの大勇者ですからね。似て非なるものです。私達の仲間ではありません」

勇者「……」

サキュバス「でも、送ってあげたいとは思うよ。仲間達の元にさ。だからあんた達に力を貸すつもり」

918: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:38:23.62 ID:J/aOswhR0
945

--対脳筋領域--

ガガァン!!

包帯女「おっもた~~!」

熊亜人「げほっごほっ……たったの一撃で動けないクマ……」

変化師「お、お前達、一旦下がれ!」

虎男「ここは我輩に任せるがお!」

どがぁあん!!

包帯女と脳筋の間に割って入った虎男が鉄山靠で脳筋を弾き飛ばす。

脳筋「おぉ、亜人の格闘家か。亜人王みたいだな、強そうだ」

ドガンッ!!

虎男「がっ!!」(な、なんという一撃!! こんなやつとあの二人は五分間も戦っていたのかがお!?)

虎男は横目で鬼姫と竜子を見る。

変化師「す、スキル! 身体変化 象の腕!!」

脳筋「象ねぇ、怖いな」

パチン

変化師「!? ぶっ!!」

接近する変化師の額が指パッチンによる遠距離攻撃で割られてしまう。

919: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:39:59.92 ID:J/aOswhR0
946

--対脳筋領域--

ズシャッ!!

変化師「ふ~~~~~~~~!!」

脳筋「!」

しかし変化師は踏みとどまり再び突進。

ドドドドドドドド!!

脳筋「おぉ、ガッツがあるねぇ、好きだぜそういうの!!」

ドゴオン!!

脳筋「のっ!」

虎男「まだ、こっちは終わってないがおよ?」

虎男の拳が脳筋の背中をぶったたいた。

脳筋「……ほー、さっすがぁ!」

変化師「うおおおおおおおおおおおおお!!」

虎男「せいやああああああああああああ!!」

ドガガガァアン!!

脳筋が二人の拳を受け止めると地面が砕ける。

脳筋「――よし、ちっと本気で殴るぜ」



虎男「」

ドグシャアアアアアアアアアアアア!!

脳筋のパンチを受けた虎男は全身から血を吹き出してぶっ飛んだ。

920: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:44:36.43 ID:J/aOswhR0
947

--対脳筋領域--

護皇「……ここまでか。変化師、虎男拾って下がるぜよ」

ザッ

護皇が立ち上がり古びたマントを放り捨てた。

変化師「ぐ、ぐ……し、しかし、おで……おでまだ……」

護皇「? お前さんももう限界のはずだぜよ? 悪いことは言わねぇぜよ」

変化師「ッ」

ぎり

変化師は拳を握り締めた。

変化師「で、でも!! こいつは闘士おじさんが戦って勝った相手なんだ!! お、おでは、おでは!!」

変化師はドクドクと額から血を流しながら叫ぶ。

脳筋(闘士? あぁ、あのマッチョか)←人のこと言えない

変化師を見て護皇はにやりと笑う。

護皇「……超えたいのか……ぜよ」

シャーマン「ふっ……男たるものそうでなくてはな、変化師」

スッ

観戦していたシャーマンが立ち上がる。

シャーマン「先に私がでる。いいだろう? 護皇よ」

護皇「……シャーマン」

921: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:47:51.31 ID:J/aOswhR0
948

--対脳筋領域--

シャーマン「スキル、憑依」

ボッ

そしてシャーマンは誰かを憑依する。

むき、むきむきむき!!

変化師「!! そ、その筋肉は!!」

ザッ、ザッ、ザッ

シャーマン『……そ、そうだ。おでだ』

変化師「と、闘士おじさん!!」

シャーマン越しに見える闘士の姿に変化師は涙を浮かべた。

脳筋(顔は女性なのに体だけすげぇことになってんな……)

空気を読んで言葉には出さない脳筋。

シャーマン『い、行くぞ変化師。お、おで達の時代を超えたタッグだ!!』

922: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:51:39.04 ID:J/aOswhR0
949

--対脳筋領域--

筋隊長「んんんん奥義、デッドリフトーーー!!」

ぎゃいーーーん!!

変化師「!」

シャーマン『……これは?』

変化師とシャーマンの全ステータスが上昇する。

筋隊長「ふはははは聞かせてもらったぞ筋肉達よ!! これは些細な手助けと言うやつさ!!」

崖の上でポーズを取っている筋隊長。

変化師「ち、力が漲る……闘士おじさん!」

シャーマン『う、うむ……』

筋隊長「さぁマッチョ達よ! 筋肉が全てであることを見せてやれぇいい!!」

脳筋(あれ? 俺もパワーアップしてるような気がする)

筋隊長の奥義はフィールドにいる筋肉タイプの能力を全上昇させるものだった。

923: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:52:43.01 ID:J/aOswhR0
950

--対脳筋領域--

変化師「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ぼこぼこぼこ!!

はちきれんばかりの筋肉が上半身の衣類を破いてしまう。

シャーマン『は、はあああああああああああああああああああああああああ!!』

ぼこぼこぼこ!!

同上。

護皇「    丸見えじゃねーの!!」

脳筋「……これは流れ的に俺も破いておいた方がよさそうだな。はぁ!!」

ぼこぼこぼこ!!

サキュバス「……熱い戦いだわ」

ワーウルフ「えぇまったく」

勇者「何が!?」

924: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:54:52.73 ID:J/aOswhR0
951

--対脳筋領域--

ドガァン! ドガアアアアアアン!!

脳筋「ん、二人になったら動きがまた変わったなー!」

ヒュボッガガァアン!!

脳筋の一撃を完全に防ぐシャーマン。

脳筋(防御系か。にしてもよく止めたなぁ)

シャーマン(お、重い……! 右腕がしびれっぱなしだ。でも)

変化師「ぬわーーーー!!」

ドガァアアン!!

変化師の飛び蹴りが脳筋の脳天に直撃する。

脳筋「ぐっ」

ふらっ

脳筋が初めてバランスを崩す。

シャーマン、変化師「『い、今だ!!』」

きぃいいいいん!!

シャーマンの左手と変化師の右手がそれぞれ光を放つ。

シャーマン、変化師「『す、スキル! ホ アッパーーー!!』」

ドガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

聖騎士「っ!!」

勇者「……」

925: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 21:59:22.96 ID:J/aOswhR0
952

--対脳筋領域--

脳筋「ぐっ!!」

ズズーーーン!!

竜子「! あいつを地面に倒しやがった!」

鬼姫「凄いっすね……これがホ のなせる技っすか」

変化師「はぁ、はぁ……や、やった」

シャーマン『……う、うむ。よし引くぞ、変化師。十分だ』

変化師「え」

むくり

脳筋「やー、いいパンチだったよお二人さん。いてて」

変化師「こ、こいつ!」

シャーマン『ひ、引くぞ変化師。お、おで達のやれることはやった。誇りを見せることはできたんだ』

変化師「お、おじさん!」

シャーマン『ま、魔王を倒すのは勇者の仕事だ。な? ゆしゃさん』

そう言ってシャーマンは振り返り勇者を見た。

虎男「実はずっと放置されたままがお」

線上にいた虎男からは眼を逸らした。

926: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 22:01:39.03 ID:J/aOswhR0
953

--対脳筋領域--

シャーマン『……』

勇者「……うん、そうだね闘士」

勇者が大剣を携えて一歩進む。

聖騎士「むぁてぇ小娘ェ……」

がしっ

聖騎士「次に奴とやるのはぁ……俺のぉ、はずだがぁあ?」

勇者「ごめん、譲って欲しい」

聖騎士「! ならぬぅ! ならぬならぬならぬならぬぅうううううううう!! 奴に引導を渡すのは兄でぇある我の役目だぁ! それゆえにぃ我はこの作戦に参加してやったのだぁ……!」

勇者「……ごめん、聖騎士」

聖騎士「約束を違えるか小娘ぇえええええ!!」

???「――約束か。それなら私にもあるのだ、聖騎士」

ザッ

聖騎士「む! きさま……」

???改めミイラ「遠い昔にした、約束がな」

927: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 22:03:11.20 ID:J/aOswhR0
954

--対脳筋領域--

勇者、ミイラ、ヴァンパイア、サキュバス、ワーウルフの五人が聖騎士の前に立っている。

ミイラ「大勇者が魔王になってしまったら、私が倒すと約束したのだ」

聖騎士「ぐ、む……貴様ら」

勇者「最後の戦いに挑むために、誰の犠牲も出さずに勝利しなくちゃいけない。そのために貴方の力は必要だと思ったし、最愛の弟に最後を与えたいという貴方の気持ちもわかってるつもり……」

聖騎士「ならば!!」

勇者「でも、ずっと隣で見ていて気づいたの。貴方は……脳筋にだけは全力で戦うことが出来ない、って」

聖騎士「!!」

勇者「死なれちゃ困るのよ。だから私達に任せて見守っていて」

ザンッ!!

勇者達が一列に並ぶ。

勇者「貴方の意思、受け継ぐから」

聖騎士「う、っぐぅう……!!」

ぽたぽた

聖騎士は強く拳を握り締めている。

928: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 22:05:42.86 ID:J/aOswhR0
955

--対脳筋領域--

ズルズル

白ワニ「勇者……」

勇者「お母さん……危ないから下がってて、って言ったのに」

白ワニ「最後にエールを送りに来ました。貴方にも」

ミイラ「……ふん」

勇者「心配しなくても大丈夫。私ならやれるわ……お……お父さん……と一緒だし」

ミイラ「!!」

それを見た白ワニは笑ったように見えた。

白ワニ「そう、なら安心だわ。それならいってらっしゃい」

勇者「うん」

ズルズル

白ワニは尻尾を振って後ろに下がっていく。

ミイラ「な、なぁ勇者。今なんて」

勇者「行くぞみんな!」

サキュバス、ワーウルフ、ヴァンパイア「「「おう!!」」」

ミイラ「今なんて……」

929: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 22:09:07.11 ID:J/aOswhR0
956

--対脳筋領域--

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ

脳筋「やっと来たか。随分と揉めてるみたいだったな」

サキュバス「待ってくれるなんて随分やさしいじゃない?」

脳筋「トリガーに呼び出された身ではあるが、どうせやるなら楽しくやりたいからな」

ニィっと脳筋が笑う。

ザッ、ザッ

勇者「脳筋のスキル対策は?」

ヴァンパイア「私が中和している。効果があるのはこのパーティメンバーだけだがな」

勇者「十分」

ジャキッ!!

勇者を筆頭に五人が構える。

勇者「九代目勇者と」

ミイラ、ヴァンパイア、サキュバス、ワーウルフ「「「八代目勇者パーティ推参!!」」」

勇者「行くわ」

脳筋「来い。下水道の少女」

ザッ
ガキィイイイイイン!!

930: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 22:14:08.59 ID:J/aOswhR0
957

--対脳筋領域--

ギンギンギンギイン!!

勇者、ミイラによる高速の斬撃が脳筋を襲う。

ひゅおん!

脳筋「うっお! これはつれぇー! お譲ちゃんの一撃は今の俺には効き過ぎるからなぁ! おっと!」

ギギィイイン!!

ミイラ「どうした、隙だらけだぞ?」

勇者の攻撃に対応して出来た隙をミイラは見逃さない。

脳筋「っづ~、相変わらず手厳しいなぁ相棒」

勇者「お父さん次来る!」

ミイラ「今なんて!?」

連携している勇者とミイラを眺めながらヴァンパイアは涙を零す。

ヴァンパイア(おぉ……友よ……お前が本当に求めていたものに、やっと出会えたのだな……)

ひゅばっ!!

たまらず距離を取った所、

ドガァアン!!

狼フォルムのワーウルフに追撃され、

サキュバス「氷属性対単体攻撃魔法、レベル4」

ドバッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

サキュバスの魔法攻撃を受けてしまう。

931: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 22:15:55.54 ID:J/aOswhR0
958

--対脳筋領域--

脳筋「あー……やっぱ俺の仲間はつえーな」

バキバキバキ!!

中から氷を破壊する脳筋。

脳筋「よっ!」

ドヒュン!!

そして巨大な氷塊を勇者達に向かって投げつけた。

ヴァンパイア「水属性防御魔法、レベル4」

ばっしゃああああああああああああああん!!

ヴァンパイアが作り上げた巨大な水の盾が攻撃を防ぐ。

脳筋「……なんだよチームワーク抜群じゃん」

ヒュッ

勇者「当たり前だ」

ザンッ!!

勇者の一振りが脳筋の右腕を切断する。

勇者「私達の思いは一つなんだから」

ミイラ(そこは親子だからとか、って、言ってくれないかなぁ)

932: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 22:18:53.11 ID:J/aOswhR0
959

--対脳筋領域--

ザンザンザーーーン!!

一つ二つ三つと脳筋の体に斬撃の後が残る。

勇者(もらった、これで、最後!!)

脳筋「……へ」

サキュバス「! その動きはカウンターよ!! 避けなさい!!」

ボッ!!

勇者「!!」

ミイラ「」

ドグアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ヴァンパイア「大剣士!!」

勇者「お、父……さん」

咄嗟に間に入って防御したミイラ。
防御に使った剣は砕け散り、上半身の左半分が吹き飛んでしまう。

ミイラ「そうだ。私がお前の だ!」

933: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/06/29(月) 22:21:42.03 ID:J/aOswhR0
960

--対脳筋領域--

ミイラ「その剣をよこせ! 勇者!!」

勇者「! はい!」

ぶんっ!

まだ攻撃の反動で動きが鈍い脳筋を見て、ミイラは攻撃された勢いで回転し、

ズガッッ!!!!

ミイラ「――約束の時だ。友よ」

脳筋「」

受け取った大剣で脳筋の首元を貫いた。

脳筋「……おせーよ、相棒」

ぼろっ

脳筋の体が崩れていく。

ミイラ「すまない……本当に長い間待たせた……許してくれ」

脳筋「――いいさ。約束、ちゃんと守ってくれたんだしな」

にかっ

脳筋は笑いながら消えていった。

945: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:22:48.05 ID:N7EBkv090
961

--修練の塔、八階--

しゅいぃん

ツインテ「どうでしょう? これで大丈夫なはずですが、まだどこか痛む場所ありますか?」

ぐっぱっ

脳筋「いや、大丈夫だ。サンキューなお譲ちゃん。その歳で大賢者レベルの回復魔法とは大したもんだ。将来が実に楽しみだ」

ツインテ「だ、大賢者さんって、そこまで大それたことはできませんよ」

謙遜しながらも照れるポニテ。

ポニテ「さーてと、これで全部の勇者を倒せたわけだ。帰り道はどこかなー?」

アッシュ「……」

ポニテ「どうしたのアッシュ君。えらく真面目な顔しちゃって」

スッ

アッシュは無言である方向を指差した。

ポニテ「何? 美味しそうなものでもみっけたの?……あれ?」

そこにあったのは、更に上へと続く階段。

アッシュ「どうやら勘違いしていたようだ。俺達の修行相手は、遠い過去の勇者だけではないみたいだな」

946: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:24:07.88 ID:N7EBkv090
962

--修練の塔、八階--

ツインテ「え……だって脳筋さんの次は、ポニテさんの……」

ツインテはちらりとポニテの横顔を見る。

ポニテ「……」

アッシュ「これもあの人が考えた修行なんだろう。行くぞ」

すたすたすた

ポニテ「……だね」

ふー、っと息を吐くポニテ。

ポニテ「若い頃のママか。ちょっとだけ楽しみかな」

ツインテ(今も十二分に若過ぎるんですけど。過去の勇者さんとなるとどんなことになっちゃうんでしょうか)

がんばれよー、と手を振って送り出す脳筋。

947: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:26:24.26 ID:N7EBkv090
963

--修練の塔、九階--

ポニテ「……」

アッシュ「……」

ツインテ「……え、えーと」

勇者「すー、すー……」

九階で待ち受けていたものは、気持ちよさそうに布団で寝ている勇者の姿だった。

勇者「うーん、むにゃむにゃ。凄い谷間できたー」

アッシュ「うーん、この緊張感の無さ」

ツインテ「どう、したらいいんでしょうか。というかポニテさんのお母様、今と全く変わらない若さですね」

ポニテ「ママの若作り!!」

勇者「ひゃわっ!?」

がばっ!!

大声に驚いて飛び起きる勇者。

勇者「あー、ごめんごめんねお腹空いたよね? それともオムツかな? よーしよし」

寝惚け眼でごそごそと手でさぐりながら慌てている勇者。

勇者「……はぅっ!?」

そしてそれを三人に見られていることに気づく。

ツインテ「あ、あはは……」

948: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:28:34.18 ID:N7EBkv090
964

--修練の塔、九階--

ことん

身なりを整えた後、みんなに牛乳を出す勇者。

アッシュ(牛乳て)

勇者「ご、ごほん。えー……さっきはごめんね。子供の夜鳴きが凄くてさー、えへへ」

ポニテ(それって私、のことだよね……?)

勇者「あー、話は聞いてるよ。修行をつけに来たんだよね? 未来の勇者候補達」

ツインテ(っ、やっぱり勇者さんが最後の修行相手……)

勇者「それはそれとして……」

勇者はきょろきょろと三人の顔を見る。

勇者「君達は未来から来たってことだけど、一体何年後くらいから来たんだ?」

949: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:32:57.15 ID:N7EBkv090
965

--修練の塔、九階--

アッシュ「……」

こと

アッシュは象さんのイラストが描かれたコップを置く。

ポニテ(さりげなく全部飲んでる)

アッシュ「それを答える前に一つ聞きたい……あんたの娘はいつに生まれた?」

ポニテ「」

勇者「ちょっと前よ、ニヶ月前。旦那がいい名前つけようと考え続けてるせいで、まだ名前も付けてないんだけど……それが関係あるの? というか子供の性別言ったっけ?」

ツインテ(ニヶ月前……)

アッシュ「……だとするなら17年ほど後ということになるか」

勇者「ふーん。結構近い未来なのね。だとすると……」

じーっとツインテの顔を見ている勇者。

ツインテ「あ、あの、何かボクの顔についてますか……?」

勇者「君……一目見た時から思ってたんだけど、もしかして賢者と踊子の子だったりする?」

ツインテ「!? わ、わかっちゃうんですか!?」

勇者「嘘ー! やっぱり!?」

ぱんっと手を叩く勇者。

勇者「目元とか髪質が二人にそっくりだよ、君。よく似てる」

ツインテ「髪質はお母さんと似てるんですよね!?」

必死になってしまうツインテ。

950: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:44:31.09 ID:N7EBkv090
966

--修練の塔、九階--

勇者「でもそっか。賢者と踊子がね……気づかなかった。二人はそんな関係だったんだ」

ツインテ「……勇者さんの知るお父さんとお母さんは、あまり仲が良くなかったんでしょうか?」

勇者「うぅん、そんなことない。みんな互いに信頼しあった仲間だったもの。仲が悪いなんてこと無いよ。ただ私がそういうのにうといのもあってね、気づかなかっただけだから」

ツインテ「は、はぁ……そうなんですか」

勇者「……君を見てるとわかるよ、二人はいい親になれたんだって。幸せになってくれたなら嬉しいな。私のせいで……二人には迷惑かけちゃったし」

ツインテ「!?」

勇者「恨まれちゃってるかなー」

がたっ!

ツインテ「と、とんでもないですそんなこと!! むしろ、お父さんとお母さんは勇者さん達に対して責任を感じてました!! 恨むなんてありえないですよ!!」

身を乗り出して大声でまくしたてるツインテ。

勇者「び、びっくりしたー……」

ツインテ「ご、ごめんなさい。で、でも本当にそんなことないですから。お二人のことは大事な人だと思ってるはずです」

アッシュ「……現に俺達の時代だとあんた達は仲良さそうだぞ」

ツインテ「そ、そうです! この前だってみんなでバーベキューとかしたんですから!」

勇者「……そっか。それならよかった」

951: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:47:29.67 ID:N7EBkv090
967

--修練の塔、九階--

勇者「で、こっちの君は……あー……この達磨にされそうな感じ……受付さんの子供かな?」

勇者はかつて受けた攻撃を思い出して、自然と斬られた場所を押さえてしまう。

アッシュ「達磨にされそうってなんだ!……お母様が受付だというのは、合ってるが……」

勇者「へー、受付さんもねー! へー!」

まじまじとアッシュを見ている勇者。

アッシュ「……なんだ、何がそんなにおかしいんだ」

勇者「いや? ただ未来は思ったより平和なのかな、って思って」

勇者はにこりと笑う。

ツインテ(平和……どうなんでしょう……)

アッシュ(ゴーレム事件、西の王国での出来事、もこもこ、亜人解放戦争、闇競売……と。色々と問題だらけな気がするがな)

ポニテ(今だって人類の存亡をかけた戦いの真っ最中だしね……)

952: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:49:59.12 ID:N7EBkv090
968

--修練の塔、九階--

勇者「で、最後に残ったこの子は……」

びくっ

ポニテは体が反応する。

アッシュ「……?」

アッシュだけポニテの異常に気づく。

ポニテ(……ハイちゃんやお母さん達から聞かされた……私は、純粋な人間じゃない……なら身体的特徴も、受け継がれてるのかわからない……)

ガタッ!!

ポニテ「そ、そんなことよりほら! のんびり話してる時間なんてないんだから! 早く修行つけちゃってよ!!」

にこりと無理して笑うポニテ。

勇者「……そう、ね。じゃあ、始めますか」

953: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:52:13.51 ID:N7EBkv090
969

--修練の塔、九階--

勇者「では、私は君達にある魔法を授けようと思う」

ツインテ「魔法……」

アッシュ「ようやく、というか、やっとそれっぽいものが来たな」

ポニテ「今まで歴代の勇者達と殴りあうだけだったからなー」

ツインテ「あはは……修行らしいと言えば修行らしいですけど」

勇者「でも、その前に」

ポニテ「?」

勇者「君達にはまだ足りないものがある」

アッシュ「足りないもの? 実力か? 今までの修行で不十分なのか?」

勇者「違うわ、実力とは関係ない」

ツインテ「勇者、因子……ですか?」

勇者「確かに君達にはそれも無いわね。でも違う」

アッシュ(さりげなく無いって言った)

ポニテ「マ……じゃ、じゃあ何が足りないの?」

勇者「覚悟よ」

954: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 00:57:00.15 ID:N7EBkv090
970

--修練の塔、九階--

アッシュ「覚悟だと……?」

勇者「勇者とは、人と星の命運を背負う者。全てを背負う覚悟を持った者……」

勇者は語る。

勇者「なりたいからなる、素質があるからなる……それだけじゃ駄目なのよ。全部背負う覚悟を持って勇者にならなくちゃ、本当の勇者にはなれないんだ。私は……それを身をもって知った……君たちに、その覚悟がある?」

アッシュ「覚悟だと……? そんなもの、俺達はとうの昔に背負っている」

胸をはって言い切るアッシュ。

勇者「本当にそう? 全員とも?」 

アッシュ「!」

振り返ると、不安げな表情のツインテとポニテ。

アッシュ「ツインテ、ポニテ……」

ポニテ「正直、修練の塔に来てさ、自信が欠けちゃったかも……」

ツインテ「ボクも、ボクなんかで全てを背負える自信無いです……」

アッシュ「ッ!!」

955: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:07:15.03 ID:N7EBkv090
971

--修練の塔、九階--

勇者「……どうやら覚悟があるのは、君だけみたいだね」

アッシュ「お前ら……ここまで来て何を言ってやがる! 諦めるのか!? 勇者になることを! 破るのか!? 勇者になろうという誓いを!」

ツインテ「……」

ポニテ「……」

アッシュ「俺達ならいつか勇者になれると、その想いは一緒だったんじゃないのか!? それをお前ら!!」

ポニテ「……ぷ」

ツインテ「くす」

アッシュ「夢を諦め……え、え?」

くすくすと笑っている二人。

アッシュ「え、え!? なぜ笑う!!」

ポニテ「だって、ね」

ツインテ「笑っちゃ悪いです。真面目なんですからアッシュ君は」

ポニテ「ごめんごめん、だってあんなだったアッシュ君が随分熱くなっちゃったなぁって思ってさ。ってかツインテちゃんも笑ってるじゃん」

ツインテ「え、えへへ……」

アッシュ「な、なん?」

ポニテ「はー……全てを背負う自身が無くなっちゃったのは、一人で背負う場合の話ね」

ポニテは笑う。

ツインテ「ボクは元からですけどね。ボクなんかじゃ全部背負うのはとても無理な話です。ですが、お二人が力を貸してくださるのなら……ボクも、背負ってみたいです」

ツインテも笑う。

956: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:09:49.71 ID:N7EBkv090
972

--修練の塔、九階--

勇者「……」

アッシュ「ちっ……余計なシリアス入れやがって。俺は最初からそのつもりで、俺達、と言ったんだ。馬鹿め……!」

勇者は険しい表情で三人を見ていていたのだが、

勇者「ぷっ、あはははははは」

堪え切れなくなって声を出して笑い始めた。

アッシュ「な、何がおかしいんだあんたも! 俺が何か間違ったことでも言ったか!?」

ツインテ「ゆ、勇者さん?」

勇者「あはは!」

ポニテ「どうしたの?」

勇者はお腹を抱えて笑っている。

勇者(あはは。私なんて、どうしようもなくて嫌々勇者になったって言うのに……盗賊だとかこの三人は、資格が無くても、何があっても……目指すんだね)

くすっ

勇者「――勇者を」

957: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:12:03.52 ID:N7EBkv090
973

--修練の塔、九階--

勇者「――よし。さんざん笑ったことだし、いよいよ魔法を授けちゃうか。あ、覚悟はわかったからいいよ。君達なら大丈夫でしょ」

ポニテ「か、軽いなぁ……」

アッシュ「ぐ、ぐ……?? 全く意味がわからん……子が子なら親も親だ」

ツインテ「あはは……」

勇者「じゃあ……私の魔法を見て盗んでね」

アッシュ「盗む? 教えてくれるんじゃないのか?」

勇者「ん、一から教えて出来るのかな。これまがりなりにも禁術の一つだし」

ツインテ「き、禁術ですか……」

ポニテ「うほっ! 最後に習得する魔法が禁術とか、なんかどきどきするね!」

アッシュ「教えるのは難しくて盗むのは楽とか、言ってることがよくわからんのだが」

勇者「私は育成に向いてるタイプじゃないからね。ねっからの戦士だから、背中を見せて語るしかないのよ」

ぼおおおお

勇者は魔力を溜め始めた。

勇者「正確には私のこれは改良版なんだけどね、じゃあ行くよ!」

958: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:14:18.22 ID:N7EBkv090
974

--対ビィ領域--

ひゅおおおおおぉぉおお

ビィと対峙しているのはハイ、ユー、盗賊、フォーテ、もこもこ、魔導長、疾風、迅雷、魔法使い、人造魔王。

ザザッ

ハイ(! 通信師さんからのテレパシー……)

盗賊(ほう、予定通り全部の魔王倒せたみたいだな。やるなーみんな)

ビィ「……あーらら~。全員余すことなく負けちゃったみたいだねぇー。残っ念★」

おどけて笑うビィ。

魔導長「! この子、私達のテレパシーを傍受したの……?」

ハイ「……違います魔導長さん」

ざっ

ハイ「……ビィ、貴女最初からこうなるって、わかってやってたんですね?」

フォーテ「さいしょからわかってた? どーゆーことー?」

ハイ「このビィは……最初から魔王を全滅させるために作戦を立てていたんですよ」

魔導長「!?」

959: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:17:58.01 ID:N7EBkv090
975

--対ビィ領域--

迅雷「!! そんな! 魔王側の人間がそんなことをするはずが……!」

ビィ「すっごぉい。全部わかっちゃってたんですか? ハイちゃん」

迅雷「!!」

ハイ「いえ……うっすらと考えていただけです。でも今の貴女の態度で確信しました」

盗賊「しかし、それが本当だとすると……もしかしてビィちゃんって俺達の仲間だったりするのか? やー、それなら早く言ってよー。おじさん可愛い子が増えるなら大歓迎さ!」

魔法使い「後で勇者に言うぞ」

盗賊「勘弁してください」

ビィ「んふ」

ビィは両手で自分の顔を隠している。

ハイ「――ビィは私達側じゃ無いですよ。ただ、魔王側でも無かったってことです」

にやり、とビィの顔が歪む。

ビィ「うん★ だってビィはぁ……あの人達のこと、大っ嫌いだったんですもの……。強くて強くて、何度挑んでも勝てないぶっ壊れの忌々しい奴ら……あはは、いー気味です!」

ぼぉう……

フォーテの放つものとはまた違った邪気が周囲を埋め尽くしていく。

ビィ「――人も魔王も等しく滅んでしまえばいいんですよ。どうせハッピーエンドなんて無いのだから★」

960: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:20:16.16 ID:N7EBkv090
976

--対ビィ領域--

ゴゴゴ

ゴゴゴゴゴ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ユー「!」

疾風「な、なんて魔力や! こんなん魔王すら凌いどるやないか!」

迅雷「魔導長!!」

魔導長「……でもあれは、魔王でもないのに、なぜこんな力が……」

ビィ「レベルアップ条件同時達成、レベル3、ネクロマンサー」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

盗賊「ネクロ、マンサー?」

ハイ(私と職業が違う)

ビィ「……うふ。絶望の顔が見たいから教えてあげますー。ネクロマンサーにはね? ある特性があるんですよ。それはぁ」

どがごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

ビィが一歩を踏み出しただけで、大地が砕ける。

ビィ「死んだ仲間の分だけ強くなる、というものです」

ボッ

ビィが放った魔力球が人造魔王を吹き飛ばす。

人造魔王「ま゛!?」

ドギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

961: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:23:21.50 ID:N7EBkv090
977

--対ビィ領域--

ゴゴゴゴゴ……

魔法使い「く! 人造魔王が吹き飛ばされた!」

盗賊「あれ? ネクロマンサーって、確か鷲男さんもそうだったよな。じゃあ鷲男さんもここまで強くなれたってこと? そんなら鷲男さん呼んで来て俺らも一時的に死のうぜ」

ハイ「ッ、仲間の数が違うんですよ。私達は自分含めて五人まで。それが仲間、パーティです。ですが魔王側ならそのルールが無い」

魔導長「……ちょっと待ってなの……ならそれはどこまで含まれるなの?」

ビィ「無論全部ですよ、魔導長さん★」

魔導長「!?」

いつの間にか魔導長の横に出現していたビィ。

疾風、迅雷「「!? 魔導長!!」」

ビィ「そのために、モンスターも魔族も魔王も全部突っ込んだんですから」

ボッ!!

魔導長も黒い魔力球を食らってしまう。

ビィ「貴方達が倒しやすいようにお膳立てまでしてあげて★」

962: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:25:37.43 ID:N7EBkv090
978

--対ビィ領域--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

盗賊「む、むちゃくちゃな強さだ……これやばい」

ビィ「あっははははははは!! すっごおいパワー!! 」

ビリビリビリビリ!!

ハイ「きゃあああああああああああああ!!」

魔力を放出しただけで吹き飛ぶハイ達。

魔法使い「ちっ、化物め。だがこっちにだって規格外がいる!!」

とんっ

フォーテ「お姉ちゃん、この前のお返しさせてね?」

ビィ「!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

不意打ちで放つフォーテの攻撃が、ビィを地平線の果てまで吹き飛ばした。

……ドゴオオオオオオオオオン

盗賊「すっ、さまじいな……俺場違い過ぎて本当笑う」

ハイ「それ……私だって一緒ですよ」

ユニコーン「ひひーん」

963: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:27:21.74 ID:N7EBkv090
979

--対ビィ領域--

フォーテ「……」

フォーテは吹き飛ばした方向を見続けている。そして、

フォーテ「……困った。これでも全然だ」

ハイ「え?」

オオオオオオ

フォーテは不利を感じ取り、闇の中から何かを取り出した。

ズズズズルルヌチョ

狐娘「いや、あの……いまさら私らを出されてもまともに戦える気がしないコン」

ズルル

風水師「わしの拳……効くアルかな……」

ズルル

占星術師「でも……フォーテちゃんが私達を必要としてくれるなら、精一杯やるしかないのよ」

ズルル

花師「……ですね」

盗賊(誰だこいつら)

魔法使い「誰だこいつら」

964: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/06(月) 01:30:58.51 ID:N7EBkv090
980

--対ビィ領域--

魔導長「げほっ、ごほっ!」

疾風「大丈夫かぁ? 今回復魔法かけたるからな!」

魔法使い「……人造魔王に魔導長が一撃でノックダウンとは恐ろしい奴だ……だがそれでもフォーテちゃんなら」

フォーテ「……フォーテ、一人じゃ勝てない」

魔法使い「!?」

フォーテ「あのお姉ちゃん、強い……だから、一人じゃ無理なの。力を貸して」

ハイ(あのフォーテちゃんが助力を頼むなんて!!)

花師「……ふ。フォーテが無理だと思う相手に私達が加わったところで何の役にも立てる気がしませんが……喜んで」

狐娘「はぁ。仕方ないコン。やれるだけやるコン。やらなきゃどの道人類エンドだしコン」

風水師「フォーテと連携をとれるのは、わしらだけアルからな!」

占星術師「星も言ってるなの」

四人は力強く頷いた。

フォーテ「みんな……ありがとう」

ぶちぶちぶちぶち!!

ハイ「!!」

ビィ「でも――みんな死んじゃいましたねー」

突然現れたビィが四人の首を引き千切った。

973: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:39:07.73 ID:WEOGsgg60
981

--対ビィ領域--

フォーテ「」

ドッ

胴体から離れた首が地面に落ちる。

フォーテ「う、わああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

スッ、ドギャッ!!

激昂しビィに迫るフォーテだったが、ビィは攻撃をかわし、黒い杖で殴って逆に吹き飛ばした。

フォーテ「ッッ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

ビィ「……すっごぉい。あのチートなフォーテちゃんを倒すのがこんなにも簡単だなんてー★」

盗賊「お、おいおい……まっずいぜぇこれ!」

迅雷「!!」

ダダッ!!

盗賊と迅雷が武器を構えて走る。

974: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:42:20.34 ID:WEOGsgg60
982

--対ビィ領域--

盗賊「はぁ!」

迅雷「やぁ!!」

ビィ「うふん★」

チギギギギギギイン!!

盗賊(っ、スピード強化してる状態でこれかい!)

迅雷(! 全力で、二人ががりでいってるのに全て防がれてしまう!)

ザンッ!

魔法使い「ならば三人だ!」

バチッ!!

魔法使いは雷の魔法で剣を作り出し、二人に加勢する。

ビィ「悪いけどー、何っ人っいてもっ、おんなじなんですよねーっ★」

ズオォッ!!

盗賊「!」

迅雷「ッ!」

魔法使い「づっ!」

ビィが魔力を発生させると三人が吹き飛んだ。

魔導長「ッ! 無属性対単体攻撃魔法」

疾風「二重属性対単体攻撃魔法」

ギィイイン!!

それを見た魔導長たちが魔法の溜めに入った。

魔導長、疾風「「レベル4!!」」

ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

ビィ「……氷属性攻撃魔法レベル1」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

975: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:43:54.36 ID:WEOGsgg60
983

--対ビィ領域--

ギャギャギャギャギャギャギャ!!

魔導長「! 二人のレベル4魔法に」

疾風「レ、レベル1で押し返すなんて、いくらなんでもむちゃくちゃや!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアン!!

魔導長(つっ、まださっきのダメージが! これ以上押し込まれると支えきれないなの!!)

バッ!!

鬼姫「救援に来たっすよー」

竜子「こっちは終わったから手伝いに来てやったぜ!!」

ドガガァアン!!

鬼姫と竜子の拳と蹴りがビィを直撃する。

ハイ「!! 竜子ちゃん!!」

ビィと魔導長と疾風の魔法はあらぬ方向へと飛んでいった。

976: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:45:46.64 ID:WEOGsgg60
984

--対ビィ領域--

ビィ「はぁ……」

ミシッ

鬼姫「ッ」

竜子「っでー……!」

ビィ「知ってますよ。そろそろ皆さんがここに集まってくることは」

ぽたぽた……

鬼姫(拳が砕かれてる……防御力が高過ぎる、ってことっすか?)

竜子(それとも見えないくらいの速さで迎撃したか……っち、こいつもか。さっきの脳筋に自信を折られたばっかだってのによぉ!)

ガガァン!!

再び繰り出す拳と蹴り。だが

ビィ「あれ? いいんですかー? このままじゃ四肢全部使えなくなっちゃいますけど?」

ブシュッ!

今度は攻撃した腕と足が捻じ切られてしまう。

竜子「ッが!!」

ダーク亜人王「どいていろ少女達」

どすどすどすどすどす!!

聖騎士「竜人モオオオオオオオオオオオオオオド!!」

だだだだだだだだだだ!!

ビィ「――次から次へと、楽しいけど少し面倒くさいですねー★」

977: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:47:21.11 ID:WEOGsgg60
985

--対ビィ領域--

ドガァアアン!!

亜人王が繰り出す拳にビィも杖を突き出した。

ビキキッ!!

ダーク亜人王「ぬおお!?」

ぶしゃああああああああああああああああああああ!!

その衝撃で真っ二つに分かれる亜人王の右腕。

ダーク亜人王(ま、まさかここまでとは!!)

ダダダダダダ!!

聖騎士「どぉけぇ亜人王ぉぉぉ!! 後はぁ、我がぁあああああああやるうううううううううううう!!」

ビィ「はぁ、ゆっくり楽しみたいんですけど……もう、いっぺんにやっちゃいますかねー」

ズンッ!!

聖騎士の攻撃を受けながらビィが魔力を圧縮し始める。

ババチッ!!!!

ビィ「雷属性範囲殲滅攻撃魔法」

ハイ「!! まずいです!! 皆さん逃げ」

ビィ「レベル3」

カッ!

978: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:48:29.44 ID:WEOGsgg60
986

--対ビィ領域--

ッッッドギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

聖騎士「こぉいつぅ! 迷わず自分ごと範囲に入れてぇ撃ちよったあぁああ!!」

バリバリバリバリ!!

聖騎士の強靭な外皮がぼろぼろと剥がれていく。

竜子「! 冗談じゃねぇ何が範囲殲滅だ! 範囲レベルの広さじゃねぇか!」

もこもこ「障壁張るもきゅ! 後ろに来るもきゅよ!!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

もこもこ「あ、これ無理もこ」

バリバリバリバリバリィイイイイ!! 

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

979: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:52:11.09 ID:WEOGsgg60
987

--対ビィ領域--

しゅうううう……

ビィ「けほっこほっ。さすがに自分の魔力だと多少痛いんだよね~」

ぱんぱん

そう言いながら焦げ付いた服を手で叩くビィ。

ハイ「う……」

一方ハイ達は、ほとんどが地面に蹲り、動かない。

ハイ「く、そ……!」

その中でボロボロになりながらも立ち上がろうとするハイ。

ビィ「あら、まだ立ち上がれるんですかハイ。まぁそりゃそうですよね。ユーさんが盾になってくれたんですから」

ユー「……」

ハイ「! ユーさん!」

ハイが顔をあげると、目の前で仁王立ちをしているユーが。

ユー「……ッ!」

ダッ!!

そしてユーは血だらけのままビィに向かっていく。

980: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:54:07.29 ID:WEOGsgg60
988

--対ビィ領域--

ダダダダダダ!!

ビィ「そんなになってもまだ頑張れちゃいます? さっすがユーさん★」

ガギィイイイイン!!

ユーの攻撃を人差し指で止めるビィ。

ユー「ッッ!!」

ビィ「あはは必死な目ですね★」

ガガガガギィン!

ハイ(……レベル4の魔王なら、勇者因子を持つユーさん達に任せればいい……それ以外のレベルならフォーテちゃんで対応すればビィを倒せる……できる限り温存してトリガーとの戦いに備えよう、そう思ってたのに……)

ギィンギィンギィン!!

ビィ「やっぱり……さっきの結構痛かったみたいですね。動きが随分にぶいですよ?」

ユー「ッ」

ガガガガッガガガギィン!

ユーの攻撃を苦も無く受け続けるビィ。

ハイ(全てを凌駕する通常職……これじゃあ、打つ手が無いよ……)

981: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:55:47.84 ID:WEOGsgg60
989

--対ビィ領域--

ザッ

盗賊「……おいおいハイちゃん、なんて顔しちゃってるんだよ君は。まだ何も終わっちゃいないんだぜ?」

ハイ「はっ!」

ハイが振り向くとそこには傷だらけの盗賊が立っていた。

ぽん

そして盗賊はハイの頭に手を置いた。

盗賊「この戦いは甲子園で例えたら準決勝なわけだ。燃え尽きるにはまだまだ早い」

ダッ!!



魔導長「いてて……っぐ……助かったなの……」

魔導長は参謀長に頭を下げた。

参謀長「いえ、ここで戦力を失うのは痛手ですからね。あれと戦うためにも駒は多い方がいい」

魔法使い「……感謝する」

参謀長の防御魔法と回復魔法で難を逃れた二人。

魔導長「ありがとう――お父さん」

参謀長「聞こえません」

982: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 02:59:01.69 ID:WEOGsgg60
990

--対ビィ領域--

盗賊「おおっらぁ!!」

ギギギィイイン!!

盗賊とユーの攻撃を同時に受けて笑うビィ。

ビィ「痛いです~。今の2ダメージくらい食らっちゃいましたかもー」

渾身の一撃をノーガードで受けておいてビィは嬉しそうに言う。

ユー「ッ……」

盗賊「お、そうか。今のビィちゃんは無敵の魔王じゃないからちゃんとダメージ入るんだ! おほほ、これはいい。無敵じゃないなら勝つ方法もありそうですわ!」

ユー「!」

冷や汗をかいていたユーが盗賊の顔を見た。

ビィ「……そこは……ちょっとしか削れてなくてショックを受けるとこじゃないんですかねぇ」

盗賊「いやいや、俺の力なんてたかが知れてる、今更ショックなんて受けないよ。むしろ俺みたいなのがビィちゃんのライフを少しでも削れたんだ」

バッ!

勇者「はああああああああああ!!」

ビィ「!」

ハイ「! 勇者さん!」

ギイイイイイン!!

盗賊「他の奴ならもうちっと食らわせられんだろ?」

983: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:02:55.83 ID:WEOGsgg60
991

--対ビィ領域--

ビィ「……」

ザザーー

勇者「ごめん、遅くなった」

盗賊「いーや完璧さ。つーか勇者いつもこうだよな。なんか絶妙のタイミングでしか現れない、みたいなスキル持ってんじゃないの?」

勇者「そんなマイナススキル持ってない。仲間がピンチの時しか行けないなんて最悪じゃない」

盗賊「……まぁ既に胸にマイナススキル抱えてるし、そう何個も持ってはいないか」

勇者「胸がマイナススキルってどういうこと!?」

わーきゃー

ビィ「……」(やっぱりこの人は面倒。命を懸けた戦いの中で、普通ーにお話しちゃってるもの。そしてその最中に私は彼らを襲うことが出来ない……シリアスキラー+主人公体質。最悪の組み合わせです)

ババチッ!!

勇者「!」

ビィ「……やれやれこの惨状が見え無いんですか? すっごい強い人達が軒並み虫の息なんですよ? 少しは絶望してくれないとつまらないんですけど」

ビィが魔法を放とうとした瞬間、

ズガッ!!

ユーが斬りつける。
だが、

バキッ!!

ビィ「おいたするお手手はばーいばい★」

ぶぶちっ!!

ユー「~~!」

両腕を一瞬で切断されてしまう。

984: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:04:50.14 ID:WEOGsgg60
992

--対ビィ領域--

ボジョジョジョッ

勇者「ッ! 盗賊、時間稼いで!」

ダダダダッ!!

盗賊「はっ!? 俺が!? 無理でしょ!! 俺がビィちゃんとやんの!?」

ずる

ビィ「――そうですよ、勇者さんも私と遊んでくださいよぉ★」

勇者「!」

勇者の真横にいきなり現れたビィ。

フォン、ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!

勇者(あっぶな!)

ビィ(わぁお、アレに反応しちゃうなんて大した反応速度……まぁ知ってたんだけど)

体勢を崩した勇者に追撃を加えようとするビィ。

盗賊「ちっ、奥義共有、カブトの型。スキル、KAGEROU」

ぐにゃああああああ!

985: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:06:40.56 ID:WEOGsgg60
993

--対ビィ領域--

勇者「」

ビィ「」

盗賊が使ったスキルによって時間が停止する。さすがのビィも静止したままだ。

盗賊「これ使っても実際は0,01秒も稼げないけど、俺に出来るのはこれしかないしな」

がばっ

盗賊は勇者を抱えてユーの所に連れて行く。

盗賊「これでよしと。ん、あと3秒……か。うし!」

たたた、くい

盗賊は時間停止の残り時間を使い、ビィのスカートを  ってみる。

わぁお

盗賊「どれどれ、ラスボス級の女の子は一体どんなものを……え、穿いてない系!? なんかノー  の人多くない!?」

ああああああゃにぐ

盗賊「あ、時は動き出します」

勇者「! 良くやったわとうぞ……く?」

まだ見てる盗賊。

ビィ「……この行動は今までで初めてでした」

986: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:09:40.27 ID:WEOGsgg60
994

--対ビィ領域--

盗賊「一ついいかなビィちゃん」

ビィ「? 別に構いませんよ盗賊さん。遺言ですか? 聞いてあげましょう?」

盗賊「では、こほん……スカート   した時にノー  だと凄く悪いことしてる気分になるので次からは何か穿いといて下さいね!」

ビィ「……スカート   は十分悪いことだし、貴方くらいの大人だと普通に犯罪なんですけど~」

バチッ

ビィは盗賊の頭部目掛けて魔力球を放とうとする。

十代目「はあああああああああ!!」

ドガァアアン!!

しかしそれの軌道を変えられてしまう。

盗賊「あっぶね!!」

ビィ「ん、もう。また乱入ですかー」

バァン!

十代目「……十代目勇者、十代目。参上」

ズギャアアアアアアアアアアアアアン!!

十代目の鋭い斬撃がビィにヒットするのだが、ビィはノーリアクション。

ビィ「こんなこと何万回繰り返したって倒せやしないのに」

987: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:10:58.91 ID:WEOGsgg60
995

--対ビィ領域--

勇者「水属性回復魔法レベル2」

ぱぁああ

ユー「……!」

勇者の回復魔法によってユーの腕は元通り。

勇者「よし、ユーさんもう一度行きますよ!」

ユー「!」

ダッ!!

勇者とユーも戦闘に参加する。

ギギギギギギギン!!

ビィ「……勇者さんに十代目さんにユーさん(+盗賊さん)。勇者三人、勢ぞろいですね★」

ハイ(ッ、あの四人相手でも全然余裕じゃない!)

ギャギィン!!

ビィ「……でも、三人揃ってもこの程度なんですよ?」

ドギャギャッ!!

勇者「!!」

ビィの指が勇者の胸部を突き破った。

勇者「ギッ!?」

ビィ「もう、あなたたち、全員終わってることに気づいてほしいです」

ズオオオオオオオオオオオオオオオ大!!

ビィは漆黒の魔力を吹き出した。

ビィ「まだ私、100分の1も力出して無いんですから」

988: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:12:01.93 ID:WEOGsgg60
996

--対ビィ領域--

魔法使い「どいてろ! 勇者共!!」

勇者「ッ……?」

バチバチバチ!!

ビィ達から離れた場所で魔法使い、魔導長、参謀長が魔力を溜めていた。

盗賊「逃げるぞ!」

バッ!

盗賊は勇者を抱えてその場から離れる。

十代目「!」

ユー「!」

シュバッ!!

同じようにユーと十代目も離れる。

魔法使い「出し惜しみは、無しだ!」

魔導長「ここで全滅しちゃったらどの道次は無いからね、なの!」

参謀長「いたし方ありませんね!」

ギュギギギギギギギギギイイイイイイイイイイイイイイイ!!

ビィ「へぇ……」

989: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:13:16.42 ID:WEOGsgg60
997

--対ビィ領域--

ビィ「全く無駄なことが好きな人達ー。まぁそれに付き合うのも楽しいんだけどねー★ 蟻の必死な抵抗を見てるみたいでさっ」

魔法使い「ぬかせ、雷属性対単体攻撃魔法、レベル5!」

魔導長「奥義、星光破壊砲!」

参謀長「三属性複合攻撃魔法、レベル5!」

ッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

盗賊「っちょっ!!」

ギャウ!!

三人の強力な魔法が大地と衝突する。

ドッゴオオオオオオオオン!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

盗賊「あんなの三発も……もしビィちゃんが耐えてくれなかったから逆に星が終わるぞ……」

勇者「げほっ」

盗賊「っ、とりあえず回復魔法できる奴の所に行かなきゃな」

990: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:14:52.78 ID:WEOGsgg60
998

--対ビィ領域--

ばぁあん!!

魔法使い「」

ビィ「あははははははっ★ 凄い一撃でも撃ったつもりですかぁ? この程度なら気合いれるだけで簡単にかき消しちゃえるんですよぉ?」

しゅうぅう……

参謀長「……参った……ありゃ今の火力でも数千回繰り返さないと勝てませんね……」

魔導長「……ぐ」

ビィ「んふっ。お返しです★」

ギィン!

ビィ「火属性範囲攻撃魔法、レベル4」

ボオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

盗賊「!! まずい!!」

ゴガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

オオオオオオオオオオオオオ!!

ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

ビィ「あははははっ! 燃えちゃえ燃えちゃえですー!!」

ドガァアアアアアアン!!

大地が融解し、爆心地はドロドロの地獄と化していく。

991: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:17:23.01 ID:WEOGsgg60
999

--対ビィ領域--

ゴオオオオオ……

魔導長「はぁ、はぁ、はぁ……!? お、お父さん……お父さん!」

どろ

参謀長「……空間転移の魔法、使ったんですけどね。敵の攻撃の規模が思った以上に広くて……転移後に、一瞬防御を張るのが遅れました」

ぼたっ

参謀長の左半身が溶けていた。

魔導長「お、父さん!」

ビィ「あらららら。これなら直撃して死んでた方が苦しまずにすんだんじゃないですか?」

魔導長「!?」

ずる

ビィはいとも容易く防御魔法の中に進入してくる。

魔導長「よく、も゛っっ」

ぶちっ

ビィ「ほら、どっちでも結果は一緒だったのに」

ビィは魔導長の首を引き千切り、

ズンッ

参謀長の心臓を貫いた。

992: Qw0 ◆7b3JfpIY/2 2015/07/14(火) 03:20:40.84 ID:WEOGsgg60
1000

--対ビィ領域--

ゴオオオオ……

カブト「あれは、化物過ぎる……」

ハイ「はぁ、はぁ、はぁ……」

ユー「……」

攻撃の一瞬前に現れたカブトは時間を停止させ、ハイや盗賊達を連れて逃げていた。

盗賊「正直かなり辛いな……ここで戦ってたやつのほとんどがあの火の海の中だ……」

ボオオオオオオ

勇者「ぐ……」

カブト「……他の場所で魔王と戦っていた者達も、少しずつここへ集まっていた。この攻撃に巻き込まれているものも少なくは無いだろう」

盗賊「……」



ゴゴゴゴ……

ビィ「さぁて、ここの人たちはあらかた倒しちゃったしメインディッシュはまだ無事みたいだし」

ビィは遥か遠くにいる召喚士達を見つけた。

ビィ「うふっ。先に散らばってるのを一体一体処理してこうかな★」

引用元: 勇者と魔王がアイを募集したFINAL+