1: ◆9XpzEnji0IAe 2012/07/14(土) 21:05:07.19 ID:hq8hIMBZ0
3: ◆9XpzEnji0IAe 2012/07/14(土) 21:05:51.83 ID:hq8hIMBZ0
【前回のあらすじ】
とある梅雨時の放課後。
SOS団の根城・文芸部室にて、ひょんなことから長門と二人きりになったキョン。
暇つぶしもとい学術的好奇心を満たすため、長門をべた褒めして猫っかわいがりしてみることに。
足をモジモジさせる長門。簡単なセリフを噛む長門。気持ちジト目で見つめてくる長門…。
話の流れで、そんな風にして高濃度のかわいさをまき散らす長門と図書館デートをすることに。
キョンは無事長門を満足させられるのか。
一方、その話を聞いた朝倉も、いつもの弁当の見返りに遊園地へ連れて行くようキョンに要求。
胃袋をがっちり掴まれてやまない●●野郎キョンは、これも二つ返事で了承する。
朝倉はキョンのエスコートで女心を満たせるのだろうか。
とある梅雨時の放課後。
SOS団の根城・文芸部室にて、ひょんなことから長門と二人きりになったキョン。
暇つぶしもとい学術的好奇心を満たすため、長門をべた褒めして猫っかわいがりしてみることに。
足をモジモジさせる長門。簡単なセリフを噛む長門。気持ちジト目で見つめてくる長門…。
話の流れで、そんな風にして高濃度のかわいさをまき散らす長門と図書館デートをすることに。
キョンは無事長門を満足させられるのか。
一方、その話を聞いた朝倉も、いつもの弁当の見返りに遊園地へ連れて行くようキョンに要求。
胃袋をがっちり掴まれてやまない●●野郎キョンは、これも二つ返事で了承する。
朝倉はキョンのエスコートで女心を満たせるのだろうか。
10: ◆9XpzEnji0IAe 2012/07/14(土) 21:08:11.27 ID:hq8hIMBZ0
キョン「長門、お前ってさ、ほんとかわいいよな」
【第3部】‐長門が本より好きなもの‐【長門編】
‐金曜日 キョン自室 Skype起動中‐
あちゃ☆くら『―――っていうわけで、明日は長門さんをよろしくね、キョンくん』
キョン「ああ、わかってるさ。相談に乗ってくれてありがとな、朝倉」カタカタ
あちゃ☆くら『ちゃんと楽しませてあげてね。不満を言わない子だからって変なことしちゃだめよ』
キョン「わかってるって。俺が長門がいやがるようなことなんかするわけないだろ」カタカタ
あちゃ☆くら『それは知ってるけど…やっぱり心配だもの。長門さんってすごくかわいらしいし』
キョン「まるで姉か、いっそ母親だな…あんまり人の心配ばっかしてると老けるぞ」カタカタ
あちゃ★くら『 キ ョ ン く ん ? 』
キョン「…星が…黒く…!」カタカタ
16: トリつけないほうがいいの? 2012/07/14(土) 21:12:22.89 ID:hq8hIMBZ0
あちゃ★くら『あんまり変なこと言うと、‐禁則事項‐を‐禁則事項‐して、‐禁則事項‐しちゃうわよ?』
キョン「す、すまん。謝るからまず名前を戻してくれ。星の色ひとつで纏うオーラが違うんだよお前は」カタカタ
あちゃ☆くら『もう…とにかく、明日は失敗しないようにね。長門さんいっぱい練習してたんだから』
キョン「? なんの練習だ?」カタカタ
あちゃ☆くら『あなたと話す練習、よ。おはようとかありがとうとかお腹すいたとか』
キョン「おおうマジか。え、いやウソだろ」カタカタ
あちゃ☆くら『ホントよ。「練習相手としてあなたのぬいぐるみを貸与して欲しい」って言われたし』
キョン「ひゃーかわええ! ぬいぐるみ相手に無表情で挨拶の練習する長門かわええ! …あ、鼻血」カタカタ
あちゃ★くら『おい』
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:15:40.72 ID:hq8hIMBZ0
キョン「おっとすまん。ちょっと想像したら鼻血出そうになってな。実際に出たわけじゃない」カタカタ
あちゃ☆くら『当たり前でしょ。ほんとだったら気持ち悪すぎるもの』
キョン「おい貴様、口のきき方に気をつけろ。俺が傷ついたらどうする」カタカタ
あちゃ☆くら『ほんとのことでしょ?』
キョン「まあ否定はしない」カタカタ
あちゃ☆くら『はぁ…もうなんかいいや。疲れたから私もう寝るね』
キョン「おう、今日はありがとな。俺ももうそろそろ寝るわ。 おやすみ、またな」カタカタ
あちゃ☆くら『はい、頑張ってね。 …おやすみなさい』
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:18:30.21 ID:hq8hIMBZ0
‐翌土曜日 駅前にて 待ち合わせの30分前‐
キョン「…長門はまだ来てないな。いつもの癖で早く来すぎたか」キョロキョロ
「どうしたもんかな…喫茶店でも入って時間潰すか。 よし、そうしよう」
???「やぁ、もしかしてそこにいるのはキョンじゃないか?」
キョン「ん? …おお、佐々木じゃねえか。ひさしぶり」クルッ
佐々木「久しぶり。君がこんな時間に駅前で佇立して憚らないということは、誰かと待ち合わせかい?」
「察するに、相手は涼宮さんだと忖度する次第だが、どうだろう?」ニコッ
キョン「はずれだ。今日は別の奴だよ。お前こそどうしたんだ」
佐々木「くっく、『今日は』ときたか。全く、ご同慶の至りだね。羨望の極みだよ」
「ボクはというと、休日を利用して知人と友誼をはからんと待ち合わせさ。相手はご存じ橘さんだ」
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:22:24.71 ID:hq8hIMBZ0
キョン「ああ、お前んとこの超能力少女か。どうだ、あいつ。例の一件でだいぶ凹んでたろ」
佐々木「そうだね。一時は随分憔悴して心身に変調を来していたようだけど、最近は持ち直してきている」
「今日もそのリハビリの一環、と言っても差し支えないかもしれないね」
キョン「友達思いの佐々木様々だな」
佐々木「くっく、そう見えるかい? だとしたら光栄だね。ボクも彼女を友人だと思っているからね」
「彼女の復調の一助となれれば嬉しい限りだよ」フフッ
「…そうだ、キョン。件の橘さんのことでひとつ折り入って頼みたいことがあるのだが」
キョン「いいが、正直言って俺なんぞにお前の力になれそうなことなんて、そうそう無いと思うぞ」
佐々木「キョン、謙遜は美徳だが行き過ぎれば刃になる。そんな言葉でボクらの絆に刃を立ててくれるなよ」
「で、だ。相談というのはだね、良ければ今日の橘さんとの会合についてきてもらえないだろうか」
「そうしたら、君のご友人共々コーヒーの一杯もご馳走するに吝かではないが、どうだろう」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:28:03.46 ID:hq8hIMBZ0
キョン「俺はいいが…連れがなんて言うかだな。とりあえず理由を聞かせてくれ」
佐々木「それなんだがね、キョン。さっきも言った通りボクは橘さんを友人だと思っている」
「何しろ彼女は明るく社交的で、加えて同じ年頃の同性でもある。面白い経歴の持ち主でもあるしね」
「本当に尊敬に値する人物だと思う。 ん、だが…ただ、ね」
キョン「なんだよ」
佐々木「邪推しないで欲しいんだが、彼女と二人きりでいると時々疲れてしまうんだよ」
「彼女は常識的だし相応の良識も持ち合わせているが、未だに神権の移譲をねらっている節がある」
「油断するとまた祀り上げられないとも限らないからね、その分気を張って疲れてしまうんだ」
キョン「やれやれ、意地になってるってわけか」
佐々木「かもしれないね。レゾンデートルの崩壊が彼女を駆り立てるのかもしれない」
「ただ、錦の御旗の先に括られて振り回されるのは御免被りたいしね。それで君に、となったわけだ」
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:30:45.19 ID:hq8hIMBZ0
キョン「しかしなぁ。とにかく連れに訊いてみないと。今日もそいつに誘われてのことだしな」
「…お、噂をすればだ。 …おーい! 長門!」フリフリ
佐々木「おや、これは少し意外だったね。連れというのは長門さんのことだったのかい」
キョン「ああ。 …オッス、長門」ヨッ
長門 「…」コクリ …チラッ
キョン「ああ、ついさっき偶然ここで会ったんだよ。こいつも待ち合わせらしい」
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:33:26.49 ID:hq8hIMBZ0
佐々木「おはようございます、長門さん。お久しぶりですね。その節はお世話になりました」ペコリ
「お体の加減はよくなりましたか?」ニコッ
長門 「…」コクリ
キョン「それでだな、長門。ちょうど今話してたんだが今日は…っておい、なんだよ俺の裾つかんだりして」
長門 「…」ギュッ
佐々木「…」ジッ
「………くっく、キョン、やっぱりさっきの話はなかったことにしてくれないか」クルッ
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:35:40.19 ID:hq8hIMBZ0
キョン「? いや、俺はいいが、お前はいいのか?」
佐々木「ああ、そのほうがいいだろうね。君もボクも、なにより長門さんが、ね」チラッ
長門 「…」
キョン「…? よくわからんが、お前がそれでいいなら」
佐々木「ああ、すまないね。 …くっく、というかキョン、君はもう少しデリカシーを意識すべきだね」
「まぁとにかくそういうことだから、ボクのことは気にせず行くといい。用事があるのだろう?」
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:38:11.43 ID:hq8hIMBZ0
キョン「あ、ああ、よくわからんが…じゃあ行くか、長門」
長門 「…」コクリ
佐々木「ああ、それじゃあまたね、キョン。 長門さんも、またいずれ」ニコッ
長門 「…」チラッ …スタスタ
キョン「悪いな、佐々木。また連絡する。それじゃな!」タタッ
<…長門! ちょっと待ってくれよ …スタスタ
佐々木「…それにしても長門さんが、ね………ふう、私もあまりうかうかしていられないかなぁ…」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:43:08.49 ID:hq8hIMBZ0
‐市立図書館 ゲート前‐
キョン「お前とここに来るのも久しぶりだな。お前のカード作って…いや、朝比奈さん誘拐事件以来か?」
長門 「…」
キョン「まぁいいや。とりあえず入ろうぜ。図書カードは持ってきたか?」
長門 「…」コクリ
<ガー
キョン「ふぅ、ここはエアコン効いてて涼しいな。生き返るぜ。 …今日はどんな本読む予定なんだ?」クルッ
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:46:15.86 ID:hq8hIMBZ0
長門 「…」
キョン「…長門?」
長門 「…あなたは」
キョン「俺? あ、ああそうか。俺も何か読むもん決めないとだめだよな。寝てるわけにもいかんし」
「しっかし、どうしたもんかな…そうだ、長門、何かおすすめとかないか」
長門 「希望があれば検索する」
キョン「そうだな…じゃあ、小説本がいいな。難しいのより、エンターテインメント色の濃いやつで」
「軽妙な会話劇なんかあったりするとなおいいかもしれん」
長門 「…こっち」コクリ …スタスタ
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:51:01.44 ID:hq8hIMBZ0
‐現代小説コーナー‐
長門 「これを」ゴソゴソ …スッ
キョン「…陽気なギャングが…おもしろそうだな。サンキュー」
長門 「同名で映画化もされている」コクリ
キョン「へぇ。それにしてもお前もこういうの読むんだな。翻訳小説ばかりだと思ってたが」
長門 「朝倉涼子に勧奨された」
キョン「なるほどね…」
「それにしても映画か、気が向いたら観てみるのもいいかもしれないな。その時はどうだ、一緒に」
長門 「…了解した」コクリ
キョン「ああ、よろしくな。 よっし、それじゃ次はお前の本探しに行こうぜ」
長門 「…」コクリ …スタスタ
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:54:40.53 ID:hq8hIMBZ0
‐洋書コーナー‐
キョン「これはまた…しかも原本ばっかりか。なんか本物の魔導書の一冊くらい紛れ込んでそうだな…」
長門 「…」ゴソゴソ …スッ
キョン「お、もう決まったのか。それじゃ閲覧室に行くか。貸してくれ、持ってやる」
長門 「…いい」フルフル
キョン「遠慮するなって、重いだろ」ヒョイッ
長門 「…」
「………感謝する」
キョン「うっし、行こうぜ」スタスタ
長門 「…」コクリ …スタスタ
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 21:58:07.33 ID:hq8hIMBZ0
‐ブラウジングルーム‐
キョン(…で、読み始めたはいいが…)チラッ
長門 「…」モクモク
キョン(黙々と読んでるな…まぁ、嬉しそうだしいいか。長門が選んでくれたコレもおもしろいし)
(しかし…やっぱりこいつが本を読んでる横は落ち着くな…少し眠くなってきた…)
長門 「…」モクモク
キョン(…おっと、いかん。朝倉にも言われたじゃないか、俺が寝てどうする)フルフル
長門 「…」チラ
キョン「…ん? どうした?」
長門 「…退屈?」クビカシゲ
キョン「いいや、そんなことはないぞ。むしろお前こそどうだ。退屈じゃないか?」
長門 「へいき」フルフル
キョン「俺もお前が楽しいならそれで十分だ」
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:06:18.85 ID:hq8hIMBZ0
長門 「…」コクリ …モクモク
キョン(また読み始めたか。 …実際、退屈ではないんだが、読みなれてないせいで少し疲れたな…)
(…そうだ、ちょっと休憩がてら“アレ”でも行ってくるか。長門もまだしばらくかかるだろう)
キョン「すまん、長門。ちょっと外の空気吸ってくるよ。しばらくしたら戻るから、待っててくれ」
長門 「同行する」パタン
キョン「いいって。すぐに戻るから。 なんかあったら連絡してくれ」スクッ
長門 「…了解した」コクリ
キョン「じゃ、行ってくる」スタスタ
長門 「…」ジー
「…」
長門 「………」シュン
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:18:40.23 ID:hq8hIMBZ0
‐30分後‐
キョン「悪い、長門。少し遅くなった」タタタ
長門 「いい。…それは?」
キョン「あ、ああ。ちょっとな。気にしないでくれ」
長門 「…」ジー …コクリ
キョン「悪いな。…ところでお前は? もう読み終わったのか?」
長門 「先ほど新しい本を取ってきた」コクリ
キョン「へぇ。こんどは翻訳か。どれどれ?」
「………『嵐が丘』に、『ラヴクラフト全集』…」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:20:03.87 ID:hq8hIMBZ0
長門 「…」
キョン「…なぁ、長門。勘違いだったら悪いんだが―――」
長門 「…」
キョン「―――もしかして、俺が席外したこと怒ってるのか?」
長門 「…」
キョン「…」
長門 「…」
キョン「…悪かった。せっかく誘ってくれたのに、抜け出たりなんかして。本当にすまん、この通りだ」
長門 「…」コクリ
「…次は私も同行する」ジッ
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:21:26.04 ID:hq8hIMBZ0
キョン「ああ、すまんな」
長門 「いい」フルフル
キョン「すまん…」
「そうだ、長門。腹空かないか。一度出て何か食いにいかないか。それからまた戻ってくりゃいい」
長門 「了解した。貸し出し手続きをしてくる」パタン
キョン「ああ。そうだ、さっきの詫びによければ奢るぞ。なんかあるか?」
長門 「特に希望はない」フルフル
キョン「了解。まぁ適当に目についた店に入るか」
長門 「…」コクリ
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:30:25.15 ID:hq8hIMBZ0
‐駅周辺 イタリア料理店‐
<ガヤガヤ
キョン「…ん、うまいなここ。この冷製パスタなんか最高だ。長門、そっちはどうだ?」モグモグ
長門 「…」モグモグモグモグモグモグ
キョン「気に入ったみたいだな。そうだ、そっちのサラダ分けてもらっていいか。チーズ載ってるやつ」
長門 「…」コクリ …ズズイ
キョン「はは、わざわざ取ってもらわなくても、ちゃんと自分で食えr…」
長門 「…」ジー
キョン「(フォークを突き出したまま見つめられている…)え、えーと…あ、あーん?」カパッ
長門 「…」コクリ …ズズイ
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:31:43.07 ID:hq8hIMBZ0
キョン「…ん、旨いな。やっぱトマトとモッツァレラチーズは仲良しだな。トニオの言ってた通りだ」モグモグ
長門 「…?」
キョン「いやこっちの話だ。というか漫画の話だ」
(…と、ついごまかしてしまったが、これはいわゆる『はい、アーンして』だよな…)
(思ってたのと少し違うが、それにしてもなんというか…)チラッ
長門 「…?」クビカシゲ
キョン(…これはいいものだ! 長門だと、普段とのギャップで魅力度36%増しだな)
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:32:36.89 ID:hq8hIMBZ0
長門 「…」コクリ …ズズイ
キョン「ん? あ、いやおかわりを視線で催促したわけでは…」
長門 「…」ジー
キョン「い、いただきます(軽く首傾げつつ無表情でフォークを捧げ持つ長門がかわいすぎるな…)」モグモグ
長門 「…」カチャカチャ
「…」ズズイ
キョン「さ、サンキュー。でももう腹いっぱいだからそろそろいらn…」
長門 「…」ジッ
キョン「い、いやぁうまそうだなぁ! いただきまーす!」アーン
(…ええい!こうなりゃ長門が飽きるまで食ってやる! こういう長門は希少価値があるしな)
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:33:28.20 ID:hq8hIMBZ0
‐駅前周辺‐
キョン「…うっぷ。(あのあとひたすら長門のアーンして攻撃を正面から受け続けて…)」
(最初はかわいかったが、最後はもう、わんこそばでもやってるような気分になっちまった…)
(…ま、でも長門が楽しそうだったからいいか。機嫌も治ったみたいだしな)チラッ
長門 「…」
キョン「…さて、どうする? また図書館に戻るか? それか本屋巡りでもいいぞ」
長門 「…では、書店巡回を希望する」コクリ
キョン「うっし、じゃあ行くか!」
長門 「…」コクリ
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:34:45.28 ID:hq8hIMBZ0
‐書店A‐
キョン「…ふぅむ。いつも思うが、本屋ってこんなに仕入れてほんとに売れんのか」
長門 「近年は経済不況などの煽りもあり、厳しい経営を強いられている店舗が多い」
キョン「まぁそうだよな。ネットもあるし。でもやっぱこの、本屋独特の空気ってのもいいもんだよな」
長門 「…」コクリ
‐書店B‐
キョン「ふと思ったんだが、書店によってやっぱ品揃えって違うのか?」
長門 「違う。無論漫画や新書等、最大公約数的な品揃えはあるが、仔細は店舗によって異なる」
「この書店は近隣一帯の学術書の需要に応えている」
キョン「なるほどね…俺も大学生にでもなったら、こういう店に入り浸るようになるのかね…」
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:36:36.53 ID:hq8hIMBZ0
‐古書店C‐
長門 「…」ジー
キョン「どうした。何か気になる物でもあったか」
長門 「この洋書の購入を検討している」
キョン「よければ買ってやろうか。そんなに高くなさそうだし」
長門 「…」フルフル
キョン「ん、そっか。気が変わったら言えよ」
長門 「…」コクリ
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:38:05.14 ID:hq8hIMBZ0
‐古書店D‐
キョン「へぇ~お前の言った通り店によって品揃えって違うんだな」
長門 「そう。先ほどの古書店は洋書、こちらの古書店は絶版SF小説を専門に取り扱っている」
キョン「ふぅん…っておい! この文庫本一冊で8000円だと!? ちょっと高すぎやしないか!?」
長門 「海外の絶版文庫などには往々にしてそのような価格高騰が見られる」コクリ
キョン「はぁ~…見る人が見れば宝の山なんだろうが…」
長門 「そう。現に転売目的で書店を巡回する者もいる。一般に“せどり”と呼ばれる行為」
キョン「あ~やっぱいるのかそういうの。本じゃないが、おかげで俺もア○ゾンで3D○LL予約し損ねたしな」
長門 「…」
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:39:49.00 ID:hq8hIMBZ0
…。
……。
………。
‐光陽園駅前公園一角のベンチ‐
キョン「ふぅ、さすがに歩き回って少し疲れたな。長門はどうだ? 足痛くなってたりしないか?」
長門 「へいき」コクリ
キョン「そうか…それにしても、今日一日で一体何冊の本を眺めたことやら」
長門 「…」
キョン「…そうだ。長門、これ」ガサッ
長門 「…?」
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:41:33.93 ID:hq8hIMBZ0
キョン「開けてみてくれ」
長門 「…」コクリ …ガサガサッ
「…これは?」
キョン「プレゼントだ。せっかくだし、いつも世話になってる礼にお前の好きそうな本を買っておいたんだ」
「さっき図書館を抜け出したのもそれ買うためでな…すまなかったな」
長門 「いい。…しかし」
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:42:39.40 ID:hq8hIMBZ0
キョン「しかしもカカシもなしで行こうぜ。せっかくお前のために買ってきたんだからさ」
長門 「…受け取る理由がない。あなただけが私に一方的に恩義を感じるのは不当」
キョン「そう言うなって。単なる気持ちだ。受け取ってくれないと、俺も困る」
長門 「………そう」
キョン「ああ」
長門 「…」
「…」
長門 「………ありがとう」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:45:27.81 ID:hq8hIMBZ0
…。
……。
………。
キョン「ふがっ…んぅ?」
長門 「…」モクモク
キョン(ここは…ああ、公園のベンチか。そういやあの後長門が早速読み始めて…)
(そうか、それで俺はその横でぼんやりしてるうちに寝入っちまったのか。悪いことしたな…ん?)
キョン「…カーディガン」
長門 「…起きた?」
キョン「ああ、すまなかったな。 えーと、このカーディガン、お前がかけてくれたのか」
長門 「…」コクリ
……。
………。
キョン「ふがっ…んぅ?」
長門 「…」モクモク
キョン(ここは…ああ、公園のベンチか。そういやあの後長門が早速読み始めて…)
(そうか、それで俺はその横でぼんやりしてるうちに寝入っちまったのか。悪いことしたな…ん?)
キョン「…カーディガン」
長門 「…起きた?」
キョン「ああ、すまなかったな。 えーと、このカーディガン、お前がかけてくれたのか」
長門 「…」コクリ
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:46:23.07 ID:hq8hIMBZ0
キョン「サンキュー。ん~…しかし、もうこんな時間か。1時間くらい寝ちまったのか。悪いな、長門」
長門 「いい」
キョン「すまん。…なんだ、お前もう半分くらいまで読んじまったのか。気に入ってくれたか」
長門 「…」コクリ
キョン「そっか、なら贈った甲斐があるな。どうせだから読み終わるまでここでゆっくりしてくか?」
長門 「いい」フルフル
キョン「そうか。じゃあもう帰るか?」
長門 「…」
キョン「どうした?」
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:47:20.06 ID:hq8hIMBZ0
長門 「…あなたには、感謝している。この本も」
キョン「(…? いきなりどうしたんだ?) あ、ああ」
長門 「だから、これは私の我が儘。それもうまく言語化できない。でも聞いて」
キョン「…?」
長門 「私という個体は、あなたと二人で、またこうして本を読む機会を得たいと考えている」
キョン「え~と、今度またここで読書でもしようってことか?」
長門 「そう。 …そこで、あなたにこの本を預かってほしい」
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:48:18.72 ID:hq8hIMBZ0
キョン「これ、俺がさっき渡した奴じゃないか。まだ読み終わってなかったんじゃないのか?」
長門 「そう。だから預けておく」
キョン「…? すまん、寝起きのせいか、少し理解しづらい。どういうことだ?」
長門 「残りはまたここで読みたい」
「―――またこうして、あなたと二人で」
キョン「…つまり、それまで自分で持ってたら我慢できずに読んじまいそうだから、ってことで…いいのか」
長門 「…許可を」
キョン「ああ、わかった。じゃあそれまでこれは俺が預かっておく。続きはまた今度、な」
長門 「…そう。」
60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:49:21.37 ID:hq8hIMBZ0
‐キョン自室‐
キョン「…ふぅ。今日は歩き回ってつかれたな」
「ええと、長門から預かった本は…そうだ、俺も少し目通してみるか」パラパラ
「ん? おっと…栞が抜けちまった。あぶねえ、中断位置わからなくなるとこだった」
キョン(…ん。そういえば。栞か。確か前にもこんなことが…)オソルオソル
<ペラッ
キョン「…はは、やっぱ長門って、ほんとかわいいよな」
『光陽園駅前公園にて待つ。 またいつか』
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/14(土) 22:49:54.04 ID:hq8hIMBZ0
長門から預かった本。長門に贈った本。
とりあえず、次までに俺もあいつが栞を挟んだところくらいまでは目を通しておこうと思う。
そうしておけば、次はあいつの隣で居眠りをせずに済むだろうから。
そうしておけば、あいつのことをもう少し長く眺めていられるだろうから。
おわり
コメントする
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。