「銭」というのは、もとは、農具の一種で、鋤(すき)みたいなものだったらしい。なぜか知らないけれど、銅貨がいつの間にか、「銭」と呼ばれるようになったようである。どちらも大切な財産だったから、言葉が転用されるようになったのかもしれない。転用されるようになった根拠はよくわからないらしい。


「賎」というのは、小さな貝殻がたくさん、渦高く集まっているような感じの状態で、それが、「卑しい」の意味に転じたようである。


古い昔の中国では、貝殻を通貨に使っていた文化圏があって、そこでは、小さな貝殻は価値があまりなかったのだろうと思う。


とにかく、「賎」というのは、価値のないものがたくさん集まっている状態から転じて、「卑しい」の意味になったようである。


この、「銭」と「賎」という文字には、特に呪術的な意味はないようである。どちらも形声文字で、へんが意味を表し、つくりは、発音を表すだけの文字のようである。字源も、篆書くらいまでがせいぜいで、甲骨文字や金文までさかのぼれないようである。


そして、意外だけれど、この二つの文字の間には、意味上、語源上のつながりも希薄なようである。こういうふうに、文字の出現に重要な原因らしいものもなく、なんとなく意味形成されてできた漢字というのも、あることはあるようなのである。