一冊ずつ書評することもないと思って、読んだ本を三冊まとめて紹介する。

 1.「リストのチカラ」 (堀内浩二;ゴマブックス株式会社)
 2.「チャート・図解のすごい技」 (ジェラルド・E・ジョーンズ;夏目大訳;日本実業出版社)
 3.「図で考える人は仕事ができる」 (久恒啓一;日本経済新聞社)

以上の本を読んだ。

1.は、重要な事、関係有ること、構成要素を列挙する知的努力の大切さをとく。列挙するだけでなく、重み付けをしたり、時系列や手続き順に並べたり、余分なものは削除したりする工夫も大切である。大切なことをリストしておいて、メモしたり、頭に叩き込んだりして役立てる。そういう努力が人生の差別化につながるという話。

2.は、読んで仰天した。主としてグラフの利用によるイメージの詐術の紹介なのだが、われわれは、日常言語に潜む誤解や錯覚や空想や時代錯誤や偏見や先入観につねに振り回されて、現実を適切に捉えることができないわけだが、それは、日常言語にかぎらず、図形、象徴、距離感、標識、映像、方向観念、色彩、安定感など、あらゆるイメージについても、誤解や錯覚や偏見や先入観の原因があらゆる場合に潜んでいて、結局、われわれは、言語を操る左脳だけでなく、イメージや情緒を機能させる右脳の側でも現実の把握に混乱と誤解と不適切な態度をとり続けていて、しかもそれをたいてい自覚できないし、自分の失敗や誤解の原因にも無知なまま生活していることを見事に説明しているのである。内容は簡単で親切な本だが、その指摘することは、カントやソシュールの哲学と同じくらい重要で深刻である。興味を持たれた読者にはぜひ読んでもらいたいと思う。

3.は、図解、図式化で判断が容易になるというコロンブスの卵みたいな話。丸で囲まれたキーワードと何種類かの用意された矢印、あるいはベン図の利用だけで、文章や箇条書きではわかりにくいこと、誤解しやすいことが説明が容易になるという思考の整理術の本である。1.の列挙の努力とその順序決定、さらに、内容の簡潔化とこの本の図解思考を組み合わせるとさらに生産的かもしれない。以前、紙に十字を書いて、縦軸と横軸を振って、自分の気にかけていることがその十字のどの象限のどのあたりの位置にあるかを考え、さらに、空いている象限にはどんなことが当てはまるかを考えて埋めていくと思考に膨らみができて、問題解決に役立つという、マトリックス思考というのに出会ったことがあるけれど、これも、そんな感じだが、思考の図式化は、我流で良いという大雑把なものである。たぶん、どんな対象でも独自に自分の流儀で図式化すれば良いという、この本の主張を、工場の工程管理に合理的に用いることができるように、図式化の体裁を鮮明に整えたものが、有名なQC7つ道具や新7つ道具なのだと思う。この本を読んで感心したら、もっと優れた手段を組織化した、QC7つ道具の使い方の本を読んでみると良いかもしれない。得られるところは大きいと思う。

どんな知識を得るか、ではなく、知識を整理して、それを道具として使い倒し、さらに、他人への説得術としても有効にしていく、知識の一般論に関する書物は案外少ない。QC7つ道具くらいまで道具が洗練されてしまうと、扱いが上手になるのも大変だし、適用する対象もずいぶん限定されてしまう。敷居の低い知識の整理術として、この三冊の本を紹介させていただいた。