東京都板橋区で昨年5月、放火された邸宅の焼け跡から、不動産賃貸業の瀬田英一さん(当時74歳)と妻の千枝子さん(当時69歳)の遺体が見つかった殺人放火事件で、犯人は、防犯センサーが設置されていない金網フェンスを乗り越え、瀬田さん宅に侵入した疑いが強いことが、警視庁幹部への取材でわかった。

 同庁は、犯人が、事前に瀬田さん宅の構造を把握していた可能性があるとみて捜査している。事件は25日で発生から1年を迎える。

 ◇フェンスの泥◇

 板橋区弥生町の瀬田さん宅の敷地は約2000平方メートルに上り、高さ約2メートルのコンクリート塀と約1・5~2メートルの金網フェンスで囲まれている。4か所の出入り口のうち正面の2か所には、人の侵入を感知する赤外線センサーが設置され、残りの2か所は施錠されていた。

 しかし、同庁幹部によると、事件発生直前の昨年5月24日夜から25日未明にセンサーが反応したような形跡はなく、裏門近くの金網フェンスの上から、足をかけた際に付着したとみられる泥が検出された。フェンスには、よしず(すだれの一種)が立てかけられ、その一部が折れていた。何者かが足をかけた時に折れたとみられ、同庁は、侵入経路になった可能性が高いとみている。

 ◇消えた権利証◇

 瀬田さんは24日夜は自宅で過ごしており、午後10時30分過ぎ、千枝子さんが車で帰宅した。1階居間付近から出火したのは約2時間後。2人は刃物で刺されるなどして、ほぼ同時刻に死亡したと推定される。

 当時、家の中には多額の現金が保管されていたとみられ、タンスが開き、居間にあったキャビネットはカギが壊され、中身が空になっていた。同庁が親族から話を聞いた結果、キャビネットには多数の不動産の権利証や指輪が入っていた可能性が高く、犯人が持ち去った疑いが浮上している。

 ◇手つかずの札束◇

 千枝子さんと2人暮らしだった瀬田さんは、自宅周辺に広大な土地を所有し、近所や東京・池袋の飲食店で知り合った客に飲み物を振る舞うなど、資産家であることを隠そうとしていなかった。このため同庁は、金銭目的の犯行とみているが、2人の殺害場所とみられる居間の隣の居室の布団の下から現金約1000万円が手つかずの状態で見つかるなど不審な点も多い。

 夫妻は普段、自宅に親族や友人を招くことが少なかったが、遺体には犯人に抵抗した際の傷が付いていなかった。同庁は、事情を知った人物の可能性もあるとみているものの、放火によって物証の多くが焼失し、捜査は難航している。

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