訓練というよりむしろ合宿でした。

隊員が正式発表になってからの初めて隊員が全員集合するイベントです。
全部で60名ほどが参加の4泊5日。

今回の観測隊はどんな観測をやるのか,ということで地学,生物,超高層大気,雪氷,海洋などそれぞれの観測内容から始まって,観測や設営のための物資の調達・輸送の手順,通関の手続き,しらせ船内での生活,危険予測,昭和基地での生活,といった講義がずらずらと並び,それが終わると実際にそれらのオペレーションをどういう順番でどういうふうにどのくらいの時間をかけてやるかという打ち合わせ,あとは救急救命講習といったメニュー。

動きが少なく実に写真でお伝えしにくい内容です(笑)。



そんな訓練の中,心動いた出来事がありました。

こういう合宿の常として,毎朝のラジオ体操とジョギングがあるんですが,
このジョギング,先頭集団はけっこうな全力ぶり。意地の張り合いです。
初日,アラサーですが隊の中では若い方の僕もうっかりその集団に入ってしまって引くに引けなくなり,トップ集団のまま完走。
走り終わったぼくの足,生まれたての子馬のようにぷるぷるしてました。
あまりに全力だったので食欲がなくなって朝飯食えんわ講義眠いわで,もう散々でした。

ジョグ2日目,しんどいのはもうヤだと思ってだらだら走ったんですが,3日目はまたがんばりました。
周りを走ってるのは富士登山マラソン完走とかホノルルマラソン完走とか,そういうアスリートな方々なんですが,意地でも彼らについて行こうと必死で走ったらこれが意外についていけてしまって(いやめちゃくちゃしんどかったですけど,かつ彼らマジ本気ではないんでしょうけど),そう,意外とついていけるものだったんです。これがまずちょっとした驚き。

その日の午後,オリエンテーリングがありました。
チームの中で二人ペアを組んで制限時間内にチェックポイントをまわり,チームごとの平均点の高さを競う,というチーム戦です。ぼくらのチームも当然優勝を狙っていくんですが,ぼくは班のリーダーと組ませてもらい,個人優勝も同時に狙うことに。全部のチェックポイントをまわって最短時間でゴールすることが目標です。ご存知だと思いますが,ぼくは基本的に闘争心が薄いので別にトップにならなくていいやと思ってしまう癖があり,最後まで出し切ることは少ない性格です。そんながんばらない僕ですが,全然立ち止まってくれない先輩に必死でついて行った結果,そのまま一時間半トレイルラン的に走り通し(実は半ベソで)有言実行のトップでゴールを果たしました。

なんだ,僕,実は走れるんじゃないか。

いつももうダメ疲れた息も続かんと思って走るのをやめてきたけど,あれは実は全然限界じゃなかったのか,ということに気づかされました。自分で勝手に自分の可能性を閉じてきていた自分が勿体なくて腹立たしくてでも優勝したことは嬉しくて,なんかもうよくわからないごちゃごちゃした変な気分になりました。

これは何も走ることに限らず,実は日々の研究生活でも全く同じじゃないのかな。
もっとやれるんじゃないのか僕は,という可能性を,身を以て示してしまったわけです。




上り坂を駆け上り,ぜーはーぜーはー息をしながら,
しんどいっすね,休みませんかー?と言った時に先輩から言われた言葉。

「上り坂で差がつくからねえ」。

なるほどなあ,と思いました。そうやってこの人は進んでるのか,と。
僕は常々その先輩をすごいなーと思ってるんですが,彼を支えている哲学に触れた気がしました。


後で二人になった時に,あの言葉,響きましたよー,と伝えると,
ああ,と笑って,あれには続きがある,と言ってにこにこ笑いながら
「登りきった後の平地でさらに差がつくんだよ」。
とだめ押し。


それって走りっぱなしじゃないですか!しんどいなあ。
でも先に進む人はそうやって進んでいくんですよね。


大事にしたい言葉がひとつ増えました。

というわけで,今日も上り坂を越えた先まで走り通していきましょう。