つづき。

二日目は硫黄岳山頂でのサンプリング。
特別に許可を得て(許可なしでは入山できません)ヘルメット&ガスマスク装備で登ります。


昔は自動車が走ってた道ですが、今は使われなくなってこの状態。
胸まである草わけてぐんぐん進む背中を、追いかけます。見失わないように。

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雲どんより。晴れたらいいなー。


晴れた!
登山道の途中にある石畳。麓に向けて線状の浅い溝があるのわかります?

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木馬道(きうまみち)、というやつです。
硫黄島では昭和 39 (1964) 年まで硫黄を採掘してたのですが、山で採った硫黄を木製のそりみたいなのに載せてこの舗装の上を運んでたんだって。そのそり(木馬)で削られてできたのがこの溝というわけです。

山側へはこんなかんじ。
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山肌に石垣があるの、見えますかね?
急峻な斜面を登るために緻密な石組みで道を造ってあるのです。
山頂のほうまでこれが続いていて、見上げるとマチュピチュみたいですよ。
この石垣を通って、あの山の山頂へ向かいます。

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火山ガスのせいでコンクリの柱も溶けて、礫や鉄骨?がむき出しになってしうんです。

石組みにそっくりの、美しいテフラジェット堆積物(たぶんね)もあります。
淘汰がよくて礫支持、火山灰のマトリクス少なし。
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スケールは左下、リュックがちらり。


崩れかけた道路を歩くこと2時間。

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このあたりまで来ると、標高 600 m ちょいでしかないのに植生がほとんどありません。
火山ガスのせいで植物が育てない死の世界です。

最後のガレ場をなんとか登りきると山頂、そこは別世界です。
斜面にへばりつくように作られた登山道からは想像できないほどフラット。
もとは鉱山だった場所なので、削っちゃったんでしょうね。
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網目状になった噴気孔からばんばん噴気。硫黄しゃっきしゃき。
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生きてる/死んでる噴気孔が入り乱れて不思議な光景が広がります。

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山頂はガスがかなりきつく、マスクなしでは呼吸が全くできません。

(この記事読んで、こっそり行ってみたいと思った人いると思うけどやめてくださいね。
酸素ボンベ無しで深海に潜るようなものです。島には病院も無いので、まともな手当もできません。)

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こんなお化けも居ます。硫黄のチムニーちゃん。かわいくてたまらない!
この広い噴気地帯のなかにこの2本だけしかありませんでした。
網目状の割れ目っぽい硫黄のやつらとは形態が違うので、でき方も違いそう。
あんましよくわかりません。謎。

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「どうやってできたかが分からないものが目の前にある」ってこの無力感、いいよね!
というわけで、かわいくてたまらないこの子を回し蹴りで派手に折りとってお持ち帰りですボキィィ。

まずはレントゲンとって内部構造を観察します。そんで切断してエリアごとに化学分析。
どうやってこのカタチが出来たのかをっていう成長史を明らかにできるかもしれません。
もちろん歴史火薬追跡のための元データとしても使います。



頂上サンプリングの極めつけはジェット噴気孔。
山頂の東側斜面に直径 20 m くらい?の噴気孔があり、そこからものすごい陽炎と轟音をたてて気流が立ち上っています。その轟音は 50 m 先からでも聞こえてくるほどの、腹に響いてくるような重低音。ときおり風に乗って50 度くらいはありそうな熱風が襲ってきます。これはマジでやばい。写真で伝わらないので載せませんが、これがこの薩摩硫黄島でいちばん見る(感じる)べきものだと僕は思ってます。地球ってこういうエネルギーを持ったやつなんだよってのを、そういう球の上に僕らは生きてんだよってのを、なるべく多くの人に感じてほしいんです。論理的な説明は全くできんのですが、これを感じることは「生きる」ことと直結してるような気がするのです。危険すぎるので今は立ち入り禁止ですが、なんとか一般の人でも体験できるような体制を整えたーい!と思ってます。


硫黄岳の火山地質諸々について詳しく知りたくなった方はこちら。
活火山データベースby産総研。
今は道が崩れてしまって降りられない火口の中の様子も載ってます。



そんなわけで、今回もたっぷりサンプリングしちゃいました。
満足満足。



鹿児島に戻ってきて硫黄島の歴史について調べてみてるんですが、どんどん面白くなってきました。
今回のターゲットである「硫黄」をめぐって、硫黄島はたびたび歴史の舞台になっていたのでした!
確認できたいちばん古い記載はなんと 800 年以上も昔のもの。その書物とは、やんごとない読者の皆様も幼少のみぎりからお読みあそばした、あの「平家物語」なのです!へけけ!

祇園精舎の鐘の声が聞こえてきたところでまた来週につづきます。