◆ユメ
大変寒い土地に家族旅行で来ている車の窓に有珠山の荒涼とした山肌が広がる。記憶とは違う、赤々としたエアーズロックのような色の非結晶質の鉱物が荒々しく固まったように見える。その場所から母が叔母(故人)に電話している。「そっちに行くのは苦手と」いうようなことを答える弱々しい声が聞こえる。
ホテルに到着する。父と私以外の人物が家族から消える。お風呂に入りに行こうと部屋から出て、延々ホテルの中で迷子になる。同じ場所や同じ通路をなんども通り、従業員からここは来てはいけない場所だと咎められ、長時間途方にくれ、やっと部屋に戻れそうだと思った時点で靴を履いていないことに気づく。どこかのロッカーに入れっぱなしで、もうそれがどこかもわからない。
一転、夜。星野源のライブがあるから一緒に行こうと妹に誘われる。妹なのだが、私の娘の姿をしている。透明プラスチックのケースのような座席が音楽に合わせて揺れる仕掛けになっている。しかも野外ステージだそこいらじゅう雪と火山灰がふりつもり、灰白色のせかいだ。「キャベツの歌」という歌があって、内容はお金のないときはレンチンしたキャベツとモヤシとメンマに焼肉のたれをかけて食べると焼肉食ってる気分になるという歌で、演奏中はその通りのメニューがラップに包まれて振舞われる。さすがホテルのディナーショーだなーと思った。なかなか美味しかった。演奏が終わって幕が降りても、ピアノの移動を人任せにせず何やかんやと作業をしているので星野源なかなかいい奴だと思った。妹は帰り道も歌ったり踊ったりで大はしゃぎだ。ホテルの部屋に戻るまではまた一苦労だった。まず浴衣とスリッパの格好で雪の中を長距離歩かなくてはいけない。それから入り組んだ建物の中を抜け、階段を登ったり降りたり段差を越えたり、延々と続く。妹は元気だなあと思う。ついに越えられないような段差の前でへたり込んだ時、皆の宿泊している部屋の窓が見えて、亡くなった叔母が20代くらいの姿で手を振っている。くたびれて通路の途中に置かれた椅子に座っているとかべに窪みがあってそこから伝声管が伸びて来て父の声で早く部屋に戻るようにという。もう一つの壁の窪みにはガラス瓶があってラベルの字には羊の脳の中国酒漬けと書いてある。ちょっと興味を引かれたがホコリをかぶつていたので触らなかった。