ドイツW杯以外のロングボール、ボールロスト

April 11, 2008

いま発売されているサッカーダイジェスト誌4/22号に、ちょっと面白いデータがのっている。
別にこの雑誌の著作権をおかすつもりはないので、元データをここにひきうつすつもりは毛頭ない。買って読もうと、知らん顔しようと、それは人の自由。だが買って読む価値はありそうな気がする。

掲載されているのはJリーグ1部に所属する18チームのデータ。
パス数にはじまり、突破の頻度、切り替え、コンパクトさなどを
「数値」で比較できるようになっている。

この「数値での比較」というところが使いやすい。例えば、見た目がロングパスばかり蹴っているように見えるチームが、データで見ると印象と違ったりしているのが、なかなか面白いからだ。

ただ、残念なことに、 数値にはロングパスのデータもあるのだが、ロングパスのグロスの「本数」はあるが、全パス数に占める「ロングパス率」が表示されてない。
そこで、独自に算出してみることにした。


何度もとりあげているが、このブログには
ドイツW杯で独自に計算してみた「ロングパスの比率」がある。
http://blog.livedoor.jp/hadakano_ousama/archives/50402001.html

パス「本数」は、チームのキャラクターを示すにはあまり向いていない。例えば、そのチームが弱くて、いつも押し込まれてポゼッションが下がっていれば、自然とパス本数が減ってしまう。


ところが、「本数」ではなく、「率」になると、
とたんにチームのキャラクターが如実に数字に浮かび上がってくる。

例えば、FWシェフチェンコへの放り込みサッカーのウクライナは
ロングパス率がとても高く、
逆に、繋ぐサッカーのアルゼンチンは、
ロングパス率がかなり低い。

両国のロングパス率は、約10%程度の差しかない。
だが、そういう、ほんの数%の差が、サッカーの質をわけていることは
ドイツW杯でも立証ずみだ。
http://blog.livedoor.jp/hadakano_ousama/archives/50402001.html

さて、サッカーダイジェスト誌のデータをもとに
独自に、Jリーグのトップ18チームの「ロングパス率」を算出してみる。

Jリーグ各チームのロングパス率が、A代表でいうと、どんな国にあてはまるのか、いちおう書いてはあるが、
「鹿島とウクライナのサッカーには共通点が多い」などという意味には、単純にはならないので、気をつけてほしい。 FIFAとサッカーダイジェスト誌で、「ロング」「ショート」といったパスの定義すら、同じかどうかもわからない。比較しうるのは、せいぜいJリーグのチーム同士、程度だ。


ロングパス率(各項目とも、ロングパスの高い順)
33%以上  該当なし
26-33%  札幌、鹿島(ドイツW杯でいうなら、ウクライナなど)
24-26%  京都、磐田、神戸(ドイツ、イングランドなど)
22-24%  新潟、清水、大宮、大分(イタリア、日本など)
19-22%  千葉、東京V、柏、川崎、浦和、名古屋(アルゼンチン、フランスなど)
19%未満  G大阪、横浜(ブラジル、スペイン)


6つのカテゴリーに分けてみて、これに、各チームのプレイエリアの広さ、フォーメーションをかけあわせて考えると、いろいろと面白いことがわかってくる。






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April 05, 2008

このひどい試合を、どうまとめたものだろうか。

結論から先にいうなら
バーレーン戦は
サッカーのゲームとして、ゲームになっていない。

この程度のパスのデータを見ただけでも
パスが分散せず、全く回っていない。
ここ数年にないほど、ひどい試合である。

パス回数のベスト3位をみてもらうとわかる。
ゴールキーパー川口が3位に名前をつらねている。
パス回数のデータで、キーパーが3位とは、なにごとだろうか。
こんなことは、勝ち負け以前の問題だ。


いちおう、この試合でゲームメイカーと目される
中村憲、山瀬という2人の選手のパスの中身をみてみる。

中村憲はパス回数は中村・中田並みの回数をこなした。
ゲームの局面に可能な範囲でかなり顔を出したことになる。
パス回数だけをみるかぎり最低限の仕事、とはいえる。
だがパス成功率74.5%。パスの中身がよくない。
これはドイツW杯の中田英や宮本に近い数字で、
けしてほめられたものではない。

さらに、問題なのは山瀬。
途中交代したとはいえ、パス回数がわずかに14しかない。
もし1試合通して出場していも、60回には及ばなかっただろう。
これではとてもとてもゲームメーカーにはなれない。
パス成功率85.7%が高いように思われるかもしれないが、
これくらいの数字はドイツのオーストラリア本戦でも
坪井、福西といった選手たちが記録している数値であって
山瀬のパス本数自体の少なさをとても補えない。
ゲームメーカーとしては明らかに失格である。


総じて、バーレーン戦ではパス数やパスの分散ぶりをみるかぎり、
「ゲームをつくる」という行為が不在のまま、
ワールドカップ予選の本番に臨んでしまった岡田ジャパン。

正直なところ、日本のサッカーの問題をドイツW杯で指摘して
オーストラリア戦の中田英の放り込みサッカー以降
ブログを続けている自分にとっては
日本代表のサッカーが後退していく、この現実、
むしろ「悪しき先祖帰り」している現実を目の当たりにして
寒々しい現状としかいいようがない。



岡田氏が抱えこんでいる古い日本のサッカーの問題点と
ドイツW杯で中田英がみせたあのサッカーには
どこか共通の部分、共通の先祖があると感じさせるものがある。
チームのまとまりを無視するかのような、
無謀な放り込みサッカー、である。

それはけして、セリエの華やかさなどとはなんの関連もない。
やはり、というか、2006年の段階で
中田英のサッカーセンスの「古くささ」に
日本サッカーは気づいておくべきだった。






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April 04, 2008

日本代表監督が岡田氏にかわり、バーレーン戦で敗れた。
この試合はいったいどんな試合だったのか。


以前にオシム氏が日本の代表監督に就任した直後に
ジーコジャパンのオーストラリア戦を
「ロングボールによるロスト」
http://blog.livedoor.jp/hadakano_ousama/archives/50318995.html
「ボールの分散」
http://blog.livedoor.jp/hadakano_ousama/archives/50319053.html
の2点について、トリニダード・トバゴ戦と比較してみたことがあった。

データが十分ではないが、
ここでは「ロングパス率」「ボールの分散」というカタチで
オーストラリア戦(ジーコ)、トバゴ戦(オシム)、
そしてバーレーン戦(岡田)の3試合を
可能な範囲で近付けて比較してみたい。

●バーレーン戦、日本のロングパス率は『28.2%

まずはロングパス率について、
オーストラリア戦(ジーコ)と、バーレーン戦(岡田)を比較してみたい。
サッカーダイジェスト誌4月15日号の21ページに、
パスの長さ別のパス本数が掲載されているので
流用させていただくことにした。

しかし、ひとつ困ったことがある。パスの長さの分類が
ダイジェスト誌と、FIFA統計では異なっていることだ。

ドイツW杯のFIFA統計では
ロング、ショートの2カテゴリーだが
サッカーダイジェスト誌は、パスの長さを15m、30mを区切りに、
ショート、ミドル、ロングと、3つに分類しており、調整しなければならない。
http://fifaworldcup.yahoo.com/06/jp/w/stats/detail.html?section=ta&sort=PSL


サッカーダイジェスト誌、というか、おそらくOPTAデータだが
バーレーン戦データは、
ショート188(54.2%)、ミドル121(34.9%)、ロング38本(11.0%)
となっているが、
強引にFIFAのデータにそろえるために
ミドル121本の半分を便宜的にロングパスに加え、計算すると
日本のロングパス率は『28.2%』となる。

この「ミドルの半数をロングとみなす」という操作は、
一見、無根拠すぎるようにも思われるかもしれないが、
ロングパスが飛び交ったバーレーン戦の実際の試合内容を考えるなら
半数をロングに加える程度では
むしろ控え目なくらいだといっていいと思う。

●バーレーン戦のロングパス率は、『ウクライナなみ』

ドイツW杯オーストラリア戦の日本のロングパス率は『23.4%』だが、
これはイタリア、スイス、サウジといったグループに属していた数字。
だが、さらに、もしこのチームに中田がいなかったら、
おおよそ20.8%になって
ポルトガル、メキシコレベルのポゼッションぶりを発揮していたことは
すでに下記のコラムで述べた。
http://blog.livedoor.jp/hadakano_ousama/archives/50410124.html

当ブログでかつて
2006ドイツW杯本戦 全出場国のロングパス率をオリジナルに算出した。
http://blog.livedoor.jp/hadakano_ousama/archives/50402001.html
岡田ジャパンのバーレーン戦の『28.2%』という数字は
バーレーン戦の日本のロングパス率が、アフリカ諸国や、
ロングパスが多いことで知られるウクライナに匹敵することを意味する。

およそ4.5本に1本(中田英のいない場合5本に1本)のロングパスだったのが、
およそ3.5本に1本に増加したことになる。
率でいうと23.4%(中田英のいない場合20.8%)だったのが、
28.2%』に増加したのである。

●おそらく実態は、ウクライナを越え
 3本に1本以上がロングパスという事態


控え目な意味で、ミドルレンジのパスの半数ををロングパスに加えただけで
この数字である。
実際には、おそらくロングパス率は軽く30%を越え、
パスの3本に1本以上がロングパス、という
近年の日本にはないほどの異常事態だったはずだ。


これは少なくとも、ドイツW杯に出場した国では
ほとんどありえない数値である。


そして、この試合、
サッカーダイジェスト誌のカテゴリーでいう30m以上のロングパス成功率が
あまりにも惨澹たるものであったことを記事は伝えている。
38本中、24本が成功せず、パス成功率は40%を大きく割り込んだようだ。

まだ実測していないが、バーレーン戦のボールロストの総数は
これまでにない数字になるのは、間違いなく、
あえてオーストラリア戦のボールロスト数を合計して比較するまでもないだろう。
http://blog.livedoor.jp/hadakano_ousama/archives/50010148.html


中田英が精度の悪いロングフィードを繰り返して
試合を壊したドイツW杯から約2年。
あれから日本のロングパスは、改善するどころか、
かえって質の悪いロングパスの本数が異常に増え、
サッカーが質的に大きく低下してしまっている。

この責任を、
岡田監督はどう受け止めているのだろうか。






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March 15, 2008



今日の浦和戦で、ストイコビッチは
監督としての最初の勝利を手に入れた。
しかも、上質の勝利。
特に守備の統率は見事だと思う。
全般的なプレス、ディフェンスラインのコントロール、
ボランチの守備貢献、無駄にファールしない守備の徹底などなど。
監督就任してまもないとは思えない出来だったと思う。
勝利がほぼ決まってからも攻撃の手はゆるめず、
しかもロスタイムの選手交代まで集中力を切らさず
試合をコントロールしようとしていた。

以前、このブログで
中田サッカーの欠陥証言 6 ドラガン・ストイコビッチ
http://blog.livedoor.jp/hadakano_ousama/archives/51250982.html
というコラムを書いたが、そのとき
ストイコビッチの基本発想にある
試合終了間際の数分間の弱さ」「ロングボール
という点について指摘した。
今日の試合は、まさしく
かねてからのストイコビッチの発言、そのままのサッカーだった。

攻撃時のボールのつなぎも、もちろん
無駄にロングボールを蹴るなどというシーンは
まったくといっていいほどなく、
サッカーというものの「面白さ」をみせつけるゲームをしてみせた。

さらに愁眉はロスタイム。
2点勝っていて勝利は間違いないというのに、
彼は、この試合、最後まで残してあった交代枠を、
時間消費のためにわざわざ使い、
FW玉田を杉本にかえ、浦和の反撃の勢いを殺してみせた。
そこまでの選手交代もソツのないものだ。


言葉ではなく、サッカーで語る。
これが、私のサッカー。
そんな試合だった。






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February 04, 2008

「ロングボール、フィジカルに頼ったサッカーはしたくない」
こんど名古屋グランパスに監督として復帰したストイコビッチは
就任初日にこんな言葉を残した。
http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/grampus/news/200801/CK2008012902083160.html



実は、ふりかえってみるとストイコビッチは
日本サッカーにおける
「試合終了間際の数分間」「ロングボール」の意味の大きさについて
これまで何度も発言をしていて、
その2つが、日本のサッカーの「古い体質」と大いにかかわることを
ずいぶん前から指摘し続けている。



例えば、2006年ストイコビッチは
ドイツワールドカップの前に、対戦相手についてこんなふうに言って、
オーストラリア戦については「ボールを高くあげるパス」を戒め、
クロアチア戦については、「試合終了間際」が鍵になることを指摘している。

http://tochu.tokyo-np.co.jp/00/soccer/20051211/spon____soccer__000.shtml
(前略)
「オーストラリアは空中戦に強いので、常に芝の上をはうようなグラウンダーのパスをつなぐことが重要。カウンターアタックも鍵。ウルグアイとのプレーオフを見る限り、オーストラリアは相手のカウンター攻撃に対する対処が遅れるときがある。

クロアチアのクラニチャル監督はまったく敵を恐れず、攻撃的なサッカーを仕掛ける指揮官だ。常に攻撃的に戦ってきたことが、欧州予選で無敗という、素晴らしい戦績につながった。しかし、私は彼らの弱点を知っている。90分間、集中力が続かない。現役時代、私がプレーしたユーゴスラビア代表もそうだったが、これは伝統というべきか…。

逆に日本は最後の最後まで、集中力が続く。いままで何度も最後の1分でゴールを決め、試合結果をひっくり返した。もしも残り20分を切った時点でリードされていたとしても、勝負をあきらめてはいけない。」



ここで「日本は最後の最後まで、集中力が続く」とピクシーがいうのを
額面どおりに、良い意味にだけ受け取ってはいけない。

この記事で彼が言う「日本の集中力」、というのは
FWの得点力不足が常に指摘され続けたドイツワールドカップ予選で
負けてはいけない格下チームにすら、なかなか点が入らずにいて
残り数分で何度もようやくゴールが生まれて
辛勝してきた自転車操業の経緯のことを指しているのである。

もちろん、ドイツワールドカップの結果は知っての通り。
ピクシーの思いとはまったく逆の形になった。
日本はオーストラリア戦で、
中田英が高いロングボールをむやみに蹴り続けて
ボールを相手にプレゼントし続け、
守備陣が試合終盤に根負けして
みすみす決勝進出を逃した。



この「最後の数分間の弱さ」という問題は
なにも旧ユーゴ代表やクロアチアだけの問題ではなく、
むしろ「ドーハの悲劇」から
オーストラリア戦の「残り8分での3連続失点」にいたるまで、
日本サッカーのずっと変わらず抱え続けてきている問題であることは
日本サッカーファンなら誰でもよく知っている。

それにストイコビッチ自身、
例えば、グランパスエイトでの現役時代に
こんなことをいっている。

99年のJリーグ名古屋vs横浜戦のことだ。
この試合、名古屋は2点先制されながら猛烈に反撃し、
ロスタイムに3点目をもぎ取って劇的に逆転、
試合終了、と、思われた。
が、GK川口からのロングボールを城に決められて同点にされ、
さらに延長後半、横浜にVゴールを決められ、
壮絶な再逆転負けをくらった。

この脱力するような試合後のインタビューで
「これが日本のサッカーだ。終了間際の2、3分に点が入る。理解できない」
と、名古屋のサッカーの弱点としてではなく、
日本サッカーの「最後の数分間の弱さ」を嘆いたのが、
ほかならぬ、10年前のストイコビッチ自身なのだ。



グランパスといえば、ピクシーが引退を決めた前後に9番をまかされたが
結局FC東京に移籍した福田健二は、こんなことを言っている。
http://www.pia.co.jp/hot_sports/hone/1016.html
「(ベンチスタートの多い自分が)試合に出たとしても後半の残り10数分。
ロングボールを多用する大味なサッカーをしている中で、
ボクの役割はヘディングで競るだけ。
このままじゃ、ヤバイ、下手くそになるって焦りました」

この発言からわかるのは
試合終了間際になれば、横浜に限らず、名古屋自身も含め
ロングボールを多用した大味な放り込みサッカーを展開するのが
日本のサッカーのお約束だったということだ。

ストイコビッチの現役時の映像などにも、
はるか後方、しかも背後から来たロングボールを、
あの神業のような足のトラップで足元に納めてゴールするシーンなどがある。
(もちろん、あれなどはストイコビッチだからできる芸当で
 日本人FWには到底マネできる仕事ではない。
 同じ放り込みでも、前線にピクシーがいるからできること、というのがある)

名古屋を去った福田は結局このあと日本サッカーからも去って
スペイン2部でサッカーをすることになるのだが
どこかで日本のサッカーに見切りをつけたのだろう、
復帰の噂がありながら、あれから日本には戻ってきていない。



こうした日本のサッカーの大味さを前提に
「これが日本のサッカーだ。
 終了間際の2、3分に点が入る。理解できない」という
ピクシーの99年の発言を考えるなら、この発言が
終了間際になると放り込みをやりだす日本の攻撃側の雑さ、大味さ、
そして試合終盤の放り込みの繰り返しに根負けして
失点してしまう日本の守備側の脆弱さ、
その両面に向けられた言葉だと考えないと、
ストイコビッチが「これが日本のサッカーだ」とまで
強く発言した意図が理解できない。

ドイツW杯のオーストラリア戦は
「試合終了間際の数分間の弱さ」「ロングボール」という
「ドーハの悲劇」以降もあいかわらず連綿と続く
まったく同じ問題を、そのまんま体現した試合だった。

1−0で勝っている試合にもかかわらず、試合終盤になって、
司令塔気取りでロングボールばかりの放り込みを始めた中田英と、
そのボールを簡単に拾い、
執拗にカウンターで逆襲を仕掛けてくるオーストラリアの
ねちっこい攻撃に根負けした日本の守備陣。

それは、ストイコビッチが10年前から指摘している
日本の「古い弱いサッカー」でしかなかった。


ロングフィードをゴールする
グランパスエイト時代のストイコビッチ。
(3分50秒あたりと、4分20秒あたりの2つ)
ピクシーのボレー技術の高さ。


European Champion Clubs' Cup 1988/89から。
ACミラン相手にゴールするピクシー。
上の動画ととてもよく似たプレー。


3分45秒あたり、背後からのボールを
トラップしてゴールするピクシー。
それにしても、ボレーが上手い。
このボレー技術の高さがロングフィードへの対応力を生む。







引用記事の全文は、ここをクリック→続きを読む

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November 27, 2007

つい先日、ユーロ2008でイングランド代表は
予選ラウンドでクロアチアに敗れて本大会出場に失敗したが、
FWマイケル・オーウェンが
イングランド代表の「ロングボール病」について、こんなコメントを出した。
http://news.livedoor.com/article/detail/3403098/

「今回の予選敗退について分析するとすれば、
やはり“恐怖心”が大きなファクターだった。(中略)
代表レベルでは、プレーの99%くらいはメンタル面に左右される。
恐怖心に負けると、イージーなプレーを選びがちになる。
僕らの場合は、前線にロングボールを蹴り込むプレーが増えるんだ。
今後はメンタル面の強化についても対応しなければならないだろうね」

かねてからプレミアのサッカーはいわゆる「放り込み」といわれてきた。
ただ、少しずつではあるにしても、
「ロングボール病」からの脱却は図られてはきた。
それでも残念ながら、ドイツW杯といい、ユーロ2008といい、
いざとなると、イングランド代表はやはり放り込みになり下がってしまう。
彼らの古臭い「ロングボール病」はいまだに完治しているわけではないのだ。

オーウェンはメンタル面を強化せよ、という。
しかし、内面が強化されれば、
内側に巣食ったままの「古臭さ」も簡単にぬぐされるのか。
そうはいかない。
強いメンタルをもちながら古臭いサッカーしかできない選手こそ、
むしろチームにとっては、とてつもなくやっかいな癌細胞となるはずだ。
ちょうど中田英のように。



ヘビーな試合になればなるほど無策にロングボールを蹴ってしまうという
この単純にして、不治の病でもある悪い癖は
なにもイングランドだけの伝統ではない。

当ブログではかつてFIFA統計から、
2006ドイツワールドカップ本戦出場各国のロングパス率を算出した。
http://fifaworldcup.yahoo.com/06/jp/w/stats/detail.html?section=ta&sort=PSL
http://blog.livedoor.jp/hadakano_ousama/archives/50402001.html
それによると中堅以下の国々のほとんどでロングボールが多用され、
それらの国すべてが決勝リーグに進出できなかった。

「ロングボール病」のなかなか直らないイングランド同様、
日本のサッカーも、さまざまな欠陥をもともと抱えていたが
ドイツW杯の予選に至る過程で徐々に改良を加え、選手を入れ替えて
ポゼッションを高めるサッカーなどへ転換をはかって
コンフェデなどでそれなりの最終型を整えて、本番を迎えたはずだった。



しかし、中田英がスタメンに加わってから、
ドイツ本番にむけて築かれていたサッカーはねじれ、壊れていき
本番ではさらに、オーストラリア戦の
中田英の無意味なロングボール多用とパスミス連発で
すべてが灰燼に帰したことは、この1年間でほぼ結論が出た。

もともとディフェンスとの至近距離での1対1が苦手なだけでなく
故障による長期のブランクがあり、所属チームでは長い長いベンチ生活。
よくよく考えてみれば、サッカーの現場にいなかった中田英が
とてつもなく古臭く、ひとりよがりなサッカーしかできないのは
当然のことだった。






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March 17, 2007

●後半開始の選手交代の意味

前半終了時、トルコのプレスで日本のシステムは
中央がつぶれ、だいたいこんな布陣に変質している。

 小野 西澤 三都主
中田英
       稲本
         明神
  ↑戸田↓
中田浩  宮本  松田
     楢崎

誰がどんな仕事をするのかが曖昧で、連係もひどい。
そこでトルシエは、
前半終了時に右サイドにいた三都主、稲本をはずし
本職のFW鈴木と、攻撃的MF市川を投入した。

後半開始早々のこの選手交代は、
前半開始時に故意に左に片寄せていた攻撃の比重を
右にシフトして、変化をつけたことにはなる。

いってみれば左をあきらめ、
三都主をあきらめたということだ。

しかし前半終了時のシステムの迷走ぶりからいえば
緊急の課題といえば、三都主の良し悪しではなく
機能していないシステムを根本から立て直すことだったはず。

孤立状態になって下がり気味の西澤を、高めの位置に戻し、
位置づけが曖昧だった小野や明神に、明確な役割を与え、
荷の重過ぎた戸田の守備にも、ゆとりをもたせる。
機能していないシステムを立て直す必要があった。

だがトルシエの選手交代は残念ながら
そこまでの機能を果たすほどの狙いはない。


●後半開始から、後半15分まで

   鈴木  西澤
 小野  中田英(9) ↑市川↓(8)
   明神  戸田
中田浩  宮本  松田
     楢崎
(カッコ内は後半のみのボールロスト回数)

後半の大半の日本のボールロストは、2列目の選手たちの
「攻撃精度の低さ」「プレスに対する弱さ」から起こっている。

トルコDFによる日本の2列目でのボール奪取は
ここでも効果的だ。
日本のMFが、トルコ側に背を向けてボールを受け、前を向く瞬間
足元からボールをかき出されるケースも続発した。

特にボールロストを多発させたのは、
2列目の中田英、市川だ。

前を向けない、ボールが収まらない、
パスやクロスのミス、精度の低さ、
相手選手にパスしてしまう、ボールがキープできない、
味方同士の呼吸があわない、などなど。

これでは決定的な得点シーンなど生まれてこない。

後半開始からの選手交代で右サイドにシフトした日本の攻撃だが、
後半の中田英と市川のボールロストの多さでわかるとおり、
早々とトルコのプレスで潰され、意味をなしていない。

後半も機能しなかった中田英はいうに及ばず
右のサイドラインぞいを上下する市川も
ボールを持つたびにプレッシャーを受け
行き場を失う場面が、いくつも映像に残っている。
出場時間の短さを考えると、
市川のボールロストは多すぎる。

この右サイドでのミス多発は
後半41分の森島投入までおさまらなかった。


●後半中盤から41分森島投入まで

後半中盤はこんな感じ。
ボールをキープできない市川が下がり気味になり
2トップのどちらかが下がり気味、
中田英は前半同様にサイドに追いやられる。

   ↓鈴木  西澤
        中田英(9)
 小野      ↓市川(8)
   明神  戸田
 中田浩  宮本  松田
      楢崎
(カッコ内は後半のみのボールロスト回数)

日本の後半の攻撃サイドであるはずの
中田英、市川で起こったボールロストは17回を数える。
ミス多発地域にされ、うまく機能していないのは言うまでもない。

トルコ側にしてみれば、誰が投入されようと
執拗に中田英を追い回して、おいやることができれば、
2列目中央を支える選手はいなくなるために、
トルコ側の守備は日本のサイドからヒョロヒョロと上がってくる
アーリークロスだけ警戒していればいいことになる。

実際、後半中盤の時間帯、中央からの攻め手を失った日本は
精度の低いクロスからボールロストを何度も味わう。
クロスを蹴った、というより、
トルコのプレスにより蹴らされたというほうが正しい。

●森島投入から試合終了まで

    鈴木   西澤
↑小野   森島  ←中田 
    明神  戸田↑
 中田浩  宮本  松田↑
      楢崎

前半終了前のシステムのカオス状態が
この試合で初めて、ようやく収拾されたのは森島投入による。

森島投入で、右サイドのボールロスト多発地帯が整理され
中央2列目が安定することで、システムの骨組みも明確になる。

その証拠ともいえるのが、右サイド松田のオーバーラップだ。
松田が、この時間になって初めて
長い時間オーバーラップしたまま、前線に留まることができたのは
この終了間際になってようやく右サイドにゆとりができたことの
なによりの証拠だ。

だが、森島投入は遅過ぎた。
ゲームオーバー。
日本は負けるべくして負けた。






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February 20, 2007

2002年6月18日
日韓ワールドカップ 日本対トルコ戦
後半ボールロスト(仮)
(仮としたのは、詳細な時間が表示できなかったため。
 また前後半通じて2例ほど、ロストした選手の背番号が完全には
 確認しづらいケースがある)

後半
(プレッシャー加味せず、非常に単純な集計)
0回 宮本
1回 森島、楢崎
2回 
3回 明神
4回 戸田、松田、小野、西沢
5回 中田浩、
6回 
7回
8回 市川
9回 中田英

5回 ロングボールでのロスト






詳細データはここをクリック→続きを読む

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February 19, 2007

このトルコ戦の日本の布陣はサイトによって
3-4-1-2とか、3-4-2-1とか、さまざまに書かれていて、面白い。
3-6-1と書いているところまである。

三都主のポジションをどう見るかによって
そういう違いが起きる部分もあるだろうが
そのことはトルコ戦の日本の布陣を考える上で
あまりたいした問題ではない。
(よほど明神や小野の位置のほうが微妙だと思うが
 それはまずは置いておこう)

そんなことより、トルコ戦で問題なのは
日本のシステムがトルコのプレスで壊れてしまい、
流動化し続けたことだ。

監督トルシエの指示でシステムが変わったのではない。
流動化するのをトルシエが適切に処理できずに
右往左往して試合を終えたのである。



そもそも、サッカーは流れのスポーツ。
ひとつの試合を、3-4-1-2と決めつけるとか
1枚こっきりのシステム図で説明できてしまうような試合もなかなかない。

試合途中で布陣をかえるのに慣れたチームでは、なおさらだ。
3-4-1-2と1試合全部の流れが追えるわけでもない。

ましてトルコ戦は、輪をかけて流動的な試合だ。
スターターの位置だけでは試合全体の流れを追うことはできない。


このブログでは、トルコ戦の日本の布陣について
「前半は、左右非対称の3-4-1-2でスタートしたが、
 トルコのプレスに屈して変則的な流動化を起こし
 後半は、左右対称の3-2-3-2。
 ただし、3-2-3-2がうまく機能しだしたのは試合終了間際」と、考える。



トルコ戦は、トルシエがそれまでに試したことのない布陣を
いきなり試した、と、決まり文句のように言われるけれども
どうだろう。
「左サイドは攻撃、 右サイドは守備」という
左右非対称のバランスという意味でいうなら
トルコ戦はスターターが違うだけで、むしろ典型的なトルシエ的布陣だ。



●前半タイムゾーンA(試合開始直後から15分まで)
中田浩をはじめとする
DF陣のボールロストが繰り返された時間帯

 三都主  西澤
      中田英
  小野      明神
    稲本  戸田
↑中田浩  宮本  松田
      楢崎

タイムゾーンAのボールロストは、
中田浩をはじめDF陣から多く発生している。
中田浩→三都主ロングパスと、戸田・宮本のルーズボール処理ミスが典型。

中田浩のパスミスからの失点が注目されがちだが、
トルコ側が、ボール奪取への意識の高さから
中田浩のミスを見逃さなかっただけのことだ。

そもそも中田浩がボールを持たされたのが
小野からのバックパスだったことからも、
トルコのプレスの強さを物語っている。

また、この時間帯、中田浩の意識のピントは明らかに守備でなく
前線、とくに三都主をめがけたフィードを意識し続けていた。

日本の布陣がそもそも左を攻撃専用サイドとしてガンガン使う構成で、
最初からトルコの3-5-2の弱点をつく狙いだろうし、
当然といえば当然だが、トルコのSHは本当にタフで
日本のロングパスはほとんど功を奏してない。
トルコのサイドの裏をつこうという試みは開始わずか15分ほどで
その芽を摘み取られてしまった。

余談だが、中田浩の大きなミスは
後半にもひとつあったことも忘れずにおきたい。
失点にならなかっただけで、前半の失点シーンは繰り返されかけた。
(今はどうか知らないが)この当時の中田浩は本当に注意力に欠けた選手で
ボール奪取意識の高いトルコ相手にDFとして使える選手ではなかった。


●前半タイムゾーンB(15分から30分まで)
システムの流動化の始まり。
トルコのプレスから右サイドで日本選手がゲームから消されていく。

     西澤
三都主↓ 
 小野   ↑中田英↓
  ↑稲本  明神
     戸田
中田浩  宮本  松田
     楢崎

中田英のボールロストが多発する時間帯だ。
トルコの早いプレスに対応できない中田英は
マーカーをかわすことができない。

判断の遅さ、パス精度のなさ、
ボールが足につかないなど、細かく見れば理由はいろいろだが、
要は、寄せの早い相手に対応する能力がない、ということだ。
ゴールに背を向けてボールを受けて前を向いた瞬間に奪われる、
競り合いに負ける、などして
ボールを失うシーンが映像にいくつも残されている。
やがて1対1に負け続けて徐々に追いやられた中田英は
ゲームから消えてしまう。

タイムゾーンCのデータで見ても、中田英が試合から消えたことがわかる。
あれだけボールを持ちたがる選手が、
タイムゾーンCではボールロストのデータから消えているからだ。
この選手の場合それは、
この時間帯にボールを触っていないことを意味する。

トップ下のプレーヤーが消えることは、FW西沢の孤立を意味する。
小野は小野で、渋滞した左サイドにいて
中田浩と三都主の間で居心地の悪そうなプレーに終始して
本来の良さを発揮できずに機能を失っている。
また徐々に稲本と明神の位置が逆転しはじめ、明神もゲームから消えていく。

機能不全の始まりだ。
現地で試合を見ていないのであくまで想像だが、
おそらく映像に映っていないオフザボールの場面では
日本選手同士で位置や仕事がかぶるシーンが多発していたのではないだろうか。

●前半タイムゾーンC(30分から前半終了まで)
システム全体が流動化した時間帯。

タイムゾーンBで中田、明神がゲームから消えたことで、
ボールの動いた瞬間瞬間に
トップ下、トップ、中盤の底と、
システムにそれぞれポッカリと穴があいた、非常に曖昧な状態。

    ↓西澤↓
  小野    三都主
 中田英 
       稲本↑
         明神↓
  ↑戸田↓
中田浩  宮本  松田
     楢崎

<トップ下の穴>
三都主が左から右へシフトして
日本の攻撃は当初の左サイドメインではなくなる。
右サイドからセンターラインを越し、そこから中央に持ち込む展開も生まれるが
だが、いかんせん、持ち込んだあとの展開先がなく、
ボールをロストしてしまう。

というのも、2列目で中田英が
センターからサイドに開き気味に追いやられてゲームから消え、
トップ下を誰が支えるのかが、はっきりしなくなったからだ。
2列目を支えるキープレーヤーが曖昧なために
トップ下にポッカリと穴があく。

<トップ下の穴が、トップの穴を生む>
孤立した実質ワントップの西沢は下がってきてボールを受けようとする。
この下がる西沢と、
右へシフトした三都主、2列目中寄りに上がってきた小野、
3人の間でボールのやりとりが頻繁に発生するのだが、
この3人、びっくりするくらいに、パス交換の呼吸があわない。

この3人が並んだ位置にボールが入った瞬間は、トップ不在だから
2列目から先へ、ボールのもっていきどころがない。
2列目の誰か、例えば三都主などがドリブルしたりするが、
ほとんど失敗に終わってしまう。

こうした結果が、 2列目でのロスト多発になっている。

息のあわない同士をスターターに選んだトルシエも悪いが
西沢が2列目中央に並んで、もがいている姿が哀れだ。
日本のトップ下が機能していないこと以外のなにものでもない。



ちなみにこの時間帯、稲本と明神の位置が逆転。
よくそれまであったように、明神が自分の意志でポジションをかえ
ボランチやDFラインに入った、というだけなら話は簡単なのだが、
実際には、明神はゲームから消えた形になった。

明神が十分機能してない、とする理由は
トルコに日本の2列目を何度か突破された瞬間、
日本側の対応者は戸田しかいないというシーンが多発していることだ。
前半終了前、戸田の手前のバイタルには
広大なスペースが生まれてしまっている。

広大なエリアの守備に追われた戸田は
トルコの執拗な速攻を防ぐため、この時間帯にファウルを連発している。

戸田のプレーがラフすぎるという批判はよくあった。
しかし、ボールロストからこの試合の
日本のシステムの崩壊を追ってみる立場でいうと
この試合、この時間帯については、
トルコのプレスからの速攻に対抗して
むしろよく踏ん張った、というべきだと思う。






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February 13, 2007

トルコ戦前半のボールロストにはドイツW杯にない特徴がいくつかある。
これが後半のメンバーチェンジの伏線になっていくと思うわけだが
とりあえず、まずは前半のボールロストの特徴を2つだけ見ておこう。

1●ロスト回数の多さ
トルコ戦のボールロストは前半だけで、
ドイツW杯でいうなら、クロアチア戦前半の約2倍、
クロアチア戦1試合分に相当する。

  トルコ戦 前半     53回

  オーストラリア戦 前半 35回
  クロアチア戦 前半   28回
  ブラジル戦 前半    32回

激しい試合だった、と、
中身のない言葉でコトを済ますのでは、何も見ていないのと同じだ。
原因はトルコの効果的なプレッシャーだ。はっきりしている。

トルコのセノール・ギュネス監督は試合後、こう言っている。
「キックオフからわれわれは
 日本の非常に強いサイド攻撃に対してゲームを支配した。」
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/topics/trou059.html
(注/引用文の『対して』という部分だが、
 サイド攻撃に『対抗して』、または『抑え込んで』という表現でないと
 意味がハッキリしないが、引用元は『対して』と曖昧になっている)

日本には自由にパス回しさせない、そんな
トルコの強い強い意志が試合を支配していた。
ただボールが頻繁に行ったり来たりしただけではない。

それがわかるのは
次のような前半のボールロストの典型的な場面だ。

中盤で中田英がトルコゴールに背を向けてボールをもらう。
すると、背後でトルコ選手が素早くはりつく。
中田英が前を向いた瞬間、
狙いすましてトルコ選手が足元からボールをかきだす。
これに似たシーンは中田英以外に何例も映像に残っている。

ちなみに、この中田英が前を向けない、という悪癖は
この試合に限ったことではない。
むしろこのシーズン前後、多くの関係者の証言がある。

レンツォ・ウリヴィエリ(元パルマ監督 00-01 4位)
「相手のディフェンスと中盤の間、やや開き気味の位置から
 内に入りながらフリーでボールを受ければ、
 ゴール正面に近い絶好のポジションで前を向くことができる。
 (中略)しかし、中田にそれを求めるのは誤りだった。
 彼は本来トップ下のプレイヤーではなかったからだ。
 私はもっと早くそれに気つくべきだった」
ピエトロ・カルミニャーニ(元パルマ監督 01-02、04-06 10位、16位、11位)
「ゴールに背を向けたままボールをキープして
 攻撃をスローダウンさせてしまう彼のプレーが、私は好きではなかった。」
マウリツィオ・ヴィシディ
「ゴールに背を向けてのプレーが多く
 ボールを持ってもなかなか前を向けない。」
(以上 http://blog.livedoor.jp/attacking2/archives/51191124.htmlより)

リスクを犯して攻撃してボールを失うのではなく、
むしろ、日本はバイタルで、中盤で、
ボール回し、ルーズボール処理などで次々にボールを失っている。
高い位置から日本のボール保持者へ瞬時に
間合いを詰めてくるこのトルコの守備感覚は
ドイツW杯の3試合の相手チームよりも強いプレッシャーを
日本のプレーヤーに与え続けた。

中田浩のパスミスだけがトルコ戦のトピックのように思われがちだが
トルコ選手の側に、ボールを持った相手に
早く、強く詰めるという意識が徹底されていたことが
中田浩のパスミスを見逃さなかったといったほうが正しい。


2●時間経過とともに、ロスト選手が変わる

次に、トルコ戦前半で興味深いのは
ボールロストを繰り返す選手が時間を追って違ってきている点だ。

説明のために、前半45分を3つのタイムゾーンに分けてみたい。
 タイムゾーンA 試合開始から15分あたりまで
 タイムゾーンB 15分から30分まで
 タイムゾーンC 30分から前半終了まで

この3つで、ロストを繰り返す選手はこうなる。
 タイムゾーンA 中田浩はじめとするDFと、中田英
 タイムゾーンB 中田英をはじめとするMF
 タイムゾーンC 西沢、三都主、小野

ロスト位置が時間とともに
DFからMF、さらにFWへと移動していくのがおわかりだろうか。

これが、日本がトルコをだんだん押しこむことに成功したとか、
そういう意味なら問題ないが、試合をみればわかる。
前線の選手がだんだん後ろに追いやられ、
中盤でプレーしてボールを失うようになってきていることなどが原因だ。
例をあげれば、孤立したFWの西沢が
中盤に下がってきてプレーし、ボールをロストするような
そういうシステム崩壊が起こっているだけのことだ。

このシステム崩壊を招いた大きな原因のひとつは、ほかでもない。
トップ下に陣取っているはずの中田英がゲームから消えたことだ。
このことは次の記事で見ていきたいと思う。






hadakano_ousama at 01:23|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

February 12, 2007

2002年6月18日
日韓ワールドカップ 日本対トルコ戦
前半ボールロスト(仮)
(仮としたのは、詳細な時間が表示できなかったため。
 また2例ほどロストした選手の背番号が完全に
 確認しづらいケースがある)


前半
(プレッシャー加味せず、非常に単純な集計)

1回 
2回 戸田、宮本、稲本、楢崎
3回 
4回 明神、松田
5回 
6回 中田浩、小野
7回 西沢
8回
9回 中田英、三都主

7回 ロングボールでのロスト (中田浩、三都主で3本ずつ)






詳細データはここをクリック→続きを読む

hadakano_ousama at 23:03|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

February 11, 2007

最近知人と、トルコ戦の話になった。

ドイツワールドカップのルーツを探る意味で、
時間をみつけてはシドニーや日韓W杯の試合を見直していて
ちょうどトルコ戦のまとめが終わりかけていたから
わざとさりげなく話題に混ぜてみたわけで、
偶然にトルコ戦の話になったわけではなく
ある種の誘導尋問といったほうがいいだろう。
意地の悪い話だ。

その人がいうには「中田英の活躍した、あの試合でしょ」と、言う。
どの試合のことをトルコ戦と勘違いしているのかはわからない。
試しに2002年以降にトルコ戦を見直してみたことがあるかどうか、
聞いてみると、一度も見たことはないと、彼は言う。

人間の印象とか記憶というものは面白いものだ。

試合そのものの、90分のフラットな情報は脳に残りにくい。
むしろ、テレビのスポーツダイジェストの得点シーン、
スポーツ新聞の見出しなどの「ハイライト」が
繰り返し、繰り返し、脳に流し込まれることで
「ハイライト」が、その試合のリアルな「90分」の代用品として
その試合のラベルとして貼られ、固定されていく。

映画『マトリクス』で、幻影を見ている
カプセルの中の人間のようなものだ。



このブログを始めるきっかけになったのは
ボールロストをしつこく数えるという原始的な方法だが
いい点がひとつだけある。

ロストを数える作業そのものが、
あまりにも単調で、めんどくさいことだ。

ほんのわずかなシーンを
果てしなく巻き戻ししなければならないことはザラにある。
というか、むしろ、それが普通だ。

背番号がみえにくい場合もある。
誰のミスか、特定するのが容易でない場合もある。
前後を何度も見直して、運がよければ
その位置にいた選手を特定できたりする。
この繰り返しが何時間も続く。

ロストをカウントするのが目的なので
得点シーンなどは真っ先に早送りしないと先に進めない。
華麗なフェイントも、鮮やかなドリブルも
疲れからだんだんどうでもよくなっていき、早送り。
試合のなんとも地味な部分だけを
充血した目でひたすら追いかけていくハメになる。

90分の印象はどんどんコマ切れにされ
結果的に「ハイライト」の印象縛り、
試合に貼付けられたラベルから、多少ながら
脳が開放されるという寸法だ。



まぁ、そんなわけで
地味でダルいカウント作業が再開してしまったわけだ。
トルコ戦を皮切りにドイツW杯の過去に溯ってみようかと思う。
知人の、脳にかぶせられたラベルを少しづつ剥がしていければ幸いだ。






hadakano_ousama at 05:12|PermalinkComments(0)TrackBack(0)