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いつものように『誰でも楽しく』のパーティーにふらりと参加し、
冒険をひとしきり楽しみ、キャンプシップで雑談していると、
パーティーリーダーが「みなさん、もしよかったら
うちのチームに入ってみませんか?」と発言した。



パーティーリーダーを、仮にLさんと呼ぼう。

そのパーティーは4人パーティーで、偶然にも、
Lさん以外の3人は『所属チームなし』の状態だった。
おそらく、Lさんからすれば、「勧誘がうまくいけば、
チームメンバーが一気に3人も増える!大チャンスだ!」
という塩梅で、私たち3人を勧誘してくれたのだと思う。

そのパーティーは、戦闘も会話も充実した楽しいパーティーだったし、
Lさんも、視野と調整力に秀でたすばらしいリーダーだった。
きっと、Lさんが所属するチームもいいチームなのだろう、と容易に想像がつく。

しかし、私はチームには所属しないと決めているので、
真っ先に「すみません、私は遠慮しておきます」と返事をした。

もちろん、せっかくのお誘いを断ることに申し訳なさはあるけれど、
今回は、私以外にもふたり、同時に勧誘されている人がいる。
私みたいに「チームには絶対に入らんぞ!」なんて
偏屈な考えを持っている人はかなり希少なはずだから、
まあ、ふたりのうち、少なくともひとりは「じゃあ、入ってみます」と言うだろう。
それなら、勧誘したLさんも、それなりに救われるはずだ。

ところが、残るふたりの口から出てきた言葉は驚くべきものだった。

「すみません、俺も遠慮しときます」
「僕もいいです」

ええええ!?なんで断っちゃうの!?
Lさん、いい人だよ!チームだって、きっといいチームだよ!

いや、まあ、自分が真っ先にズバッと断っていることをふまえると、
私がふたりに「なんで断っちゃうの」と言うのもヘンなのだけれど、
予想が外れてかなり驚いてしまった。あるんだな、こんなこと。

ふたりがなぜ勧誘を断ったのかはわからないけれど、
こうなってくると、心配なのはLさんのハートである。
理由はどうあれ、バース・掛布・岡田のバックスクリーン3連発よろしく、
3連続でノーをつきつけられてしまったLさんの精神は、
はたして正常に保たれているのだろうか?

「わかりました~。
 でも、こんなに立て続けに言われると、ちょっとヘコむw」

うーん、そりゃそうだよな。
いくら誘い慣れ、あるいは断られ慣れしていたとしても、
さすがにこれは、自信を失っちゃうよな。心中お察しします。
心なしか、背中を丸めるLさんがマウンド上でうなだれる
槙原投手とダブって見えた私である。

「私のチーム、そんなにダメかな~……w」

たぶん、半分くらいは冗談で、もう半分くらいは
ホントにちょっとヘコんでしまっているのだろう。
すると、「僕もいいです」と言ったハンターの青年が、
傷心のLさんをフォローするためか、勧誘を断った真意を話した。

「僕、もうすぐ自分でチームを立ち上げる予定なので」

おお、そんな理由が!いやはや、なんと立派な志であろうか。
自分でチームを作るのなら、ほかのチームに入るわけがない。
そりゃあ、断るのもあたりまえだよな、と深く納得する私である。

「なるほど~。それはしょうがないw」

おお、どうやらLさんも納得した様子である。
バックスクリーン3連発に意気消沈の槙原投手であったが、
そのうち1発の理由がハッキリわかって、心の傷が少し癒えたようだ。

すると、「すみません、俺も遠慮しときます」と言っていた
ブレイバーの男性キャストも、話の流れに乗って理由を話し始めた。

「俺は、ちょっと前まではチームに入ってたんだけど、
 人間関係のゴタゴタに巻きこまれて、めんどくさくなっちゃった。
 だから、しばらくはひとりでのんびりやっていきますw」

おお、やっぱり彼にも、それなりの理由があるようだ。
私はチームに所属したことがないのでよく知らないけれど、
たしかに、チーム内でのもめごととか、ちょっとした意見の対立とか、
そういうことが起きて困っている人の話は、ときどき聞く。
彼のような経緯でチームを脱退するケースも、
おそらくは、そんなに珍しくないのだろう。

「なるほど~。それもしょうがないよね~」

ほら、Lさんも納得した。やっぱり、よくあることなんだろうな。
バックスクリーン3連発に意気消沈の槙原投手であったが、
そのうち2発の理由がわかったことで、ほぼ立ち直りかけているようだ。


しかし、こうなってくると当然、
槙原投手が気にするのは、残る1発の理由である。

「ちなみに、ふらさんにも、なにか理由がおありなんですか?」

ああ、やっぱり。聞かれると思った。なんて答えようかな。
先のふたりのように、なるべく短い言葉で説明しようとするならば、
「私の価値基準、およびそこから導かれるプレイスタイルにおいては、
チームに入ることによるメリットがなく、逆にデメリットがあるから」という
感じなのだけれど、これではいまいち答えになっていない気がする。
かといって、適当にごまかしてしまうのも、ちょっと失礼にあたる気がする。

うーん。まあ、せっかくの機会だ。
パーティーは冒険を終え、すっかり雑談ムードだから、
少しくらい長話になってしまってもたいして問題はないだろうし、
このパーティーには、すでに自分のチームを持つLさんもいるし、
これから自らの手でチームを立ち上げようとする青年もいる。
私みたいな考えの人がいる、ということも、できれば彼らに知ってほしい。

「ちょっと昔話をしますが、いいですか?」

そう前置きして、私は自分がチームに入らないと
決めている理由を、きちんと話してみることにした。



――7年前。

私は、PSO2の前身であるPSUのそのまた前身、
『ファンタシースターオンライン ブルーバースト』(PSOBB)をプレイしていた。

いまとなってはずいぶん昔のオンラインゲームだけれど、
PSOBBは、PSO2と同じようにパーティープレイが盛んであり、
やはり同じように、チーム機能があった。
そのころの私は、なんとなくチームに入っておらず、
いまと同じように、その日の気分で、適当なパーティーに入ったり、
黙々とソロで任務をこなしたりして遊んでいた。

私には、よくパーティーに誘ってくれるフレンドがひとりいた。
ある日、どういう話の流れだったかは忘れてしまったけれど、
その人は「ふらさんって、すごくパーティーに誘いやすい」みたいなことを言った。
私が「ありがとう。でも、どうして?」と聞くと、その人はこう答えた。

「ほかにもフレンドは何人かいたけど、みんなチームに入っちゃった。
 そしたら、チームで冒険する予定が入っているかもしれないし、
 そうでなくても、チームチャットの邪魔になっちゃ悪いから、
 ついつい気を遣ってしまって、誘えなくなっちゃった」

それを聞いたとき、私はあることを確信した。
この人は、すごく気弱な人だ。おそらく、自分にあまり自信がない人だ。
いろんなことに、いろんな人に気を遣いすぎて、損してしまうタイプの人だ。

でも、私は、こういう気弱な人こそが、
本当はとてもやさしい人であることを知っている。
こういう自分に自信を持てない人こそが、
じつはとてもおもしろい人であることを知っている。

私は、そういう不器用な人が大好きだ。
私は、そういう人とこそ、友達になっていきたいのだ。

自分から積極的にどんどん友達をつくっていける人は、とてもかっこいいと思う。
けれど、世のなかは、そんなかっこいい人ばかりじゃない。
自分に自信がなくて、あるいは相手に気を遣いすぎてしまって、
けっきょくなにもできず、疲れたり、損をしたりしてしまうばかりの
「かっこ悪い人」が、少数派ではあるけれど、この世には確実にいるのだ。

でも私は、そんな「かっこ悪い人」こそ、本当は「かっこいい人」なのだと思う。
私は、そういう人たちにとって、少しでも「接しやすいヤツ」でありたいと願う。

だから、私はチームには入らないと決めた。
私が、私の大好きな人たちと出会い、親交を深めていくためには、
『所属チームなし』でいたほうが、きっと可能性が広がるはずなのだ。



「へえ、なるほど~。その発想はなかったw」

私の長話に、納得したような、ピンときていないような、Lさんの微妙な反応である。
まあ、そりゃそうだと思う。自分でも、よくわからん考え方だと思うもの。

ともあれ、バックスクリーン3連発の理由を
すべて明らかにできた槙原投手は、すっかり元気を取り戻し、
私たちは全員フレンド登録をかわして、パーティーを解散した。


チームに所属する理由もしない理由も人それぞれだろうけれど、
私は、自分の頭の上に表示されている『所属チームなし』という文字を
とても気に入っているし、なんなら、ちょっと誇りに思っている。

私は、どこにも属しません。
だから、目の前のあなたとの時間に、つねに全力を尽くします。

そういう意思表示のつもりもあるのだけれど、
いつか誰かに、なんとなくでもそれが伝わるといいな、と思う。