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新しい緊急クエストが実装されたと聞いたので、
ソロプレイ用のハンターで行ってみることにした。
難易度はベリーハード、ブロックはソロプレイ推奨だ。

その緊急クエストの名は、『平穏を引き裂く混沌』と言う。

市街地を舞台に、次々と出現するエネミーを倒しまくって
ひたすら撃破ポイントを稼ぐという、単純明快なクエストだ。
ロックベアやキャタドラン、トランマイザーなど、
特定の惑星にしか生息しないはずのボスもどんどん出てくる、
というのが大きな魅力らしい。

私が降り立ったフィールドには、すでに7人のアークスがいた。
定員の12人には及ばないが、決して少なすぎる人数でもない。
彼らは全員ソロだったけれど、ある程度まとまって
行動しているようだったので、私も集団に加わることにした。

私を含め、8人になった集団。しかし、全員がソロであり、
そもそもここはひとりで黙々とやりたい人が集う
ソロプレイ推奨ブロックであるので、会話はほぼない。
せいぜい、ボスの出現情報とか、蘇生や回復のお礼とか、
あるいは誰かのレベルアップに対する祝福の言葉とか、
そういうのがたまにポツポツとあるくらいである。

その最低限のコミュニケーションしかない雰囲気を
さみしい、物足りないと思う人もいるだろうけれど、
私はむしろ、ソロプレイ推奨ブロックのこの感じが好きである。
基本的には単独行動を好むし言葉もかわさないけれど、
誰かが困っていたり、逆に誰かにいいことがあったりすれば、
まあ、協力したり声をかけたりすることもやぶさかじゃないぜ、という、
ソロプレイヤー同士ならではのゆるい仲間意識が感じられるからだ。

ソロプレイヤーは、ひとりで戦うことに慣れているからこそ、
逆に誰かがそばにいてくれることのありがたみもよく知っている。
だから、いざというときの助け合い精神は、おそらく人一倍強い。
実際、私はこのクエストで、とあるボスとの戦闘中に
二回ほど戦闘不能に陥ってしまったのだけれど、
二回とも、複数の人がドドドッと駆け寄ってきてくれて、
ムーンアトマイザーやレスタで全快させてくれた。

「ありがとう!」

私がそう言うと、彼らは「いいってことよ」と言わんばかりに、
さりげなく私にシフタやデバンドをかけてくれた。
言葉はなくても、やさしさが伝わってくる瞬間である。


そして、クエスト終盤。
ソロプレイヤー同士の絆というか、やさしさというか、
そういうものがより強く感じられた、ある事件があった。

「E-4にタガミカヅチ出現!」

おお、タガミカヅチ!
ウワサには聞いたことがあったけれど、遭遇するのは初めてだった。
くわしいことは知らないけれど、たしか、けっこう珍しいボスで、
かなり強いらしい。そして、倒すと大量の経験値が得られるらしい。
そんなエネミーだったと思う。自信はないけれど。

8人はすぐにタガミカヅチを取り囲み、戦闘を開始したが、
直後、ひとりが赤黒い球体に身を包まれ、フッと消えてしまった。

ファンジだ!

消えたのは、私をムーンアトマイザーで蘇生させてくれた
男性フォースだった。どこだ?彼はどこに連れ去られた?

すぐにマップを確認すると、ファンジを示すマークはA-2にあった。
現在地からは対角線上。しかも道は直線ではない。
急いで走っても、明らかに片道1分以上はかかる。

――どうする?

マルチパーティーエリアにおける一般的な慣習としては、
複数のエマージェンシートライアルが同時に発生した場合、
目の前のことから順番に片付けていくのがセオリーである。
今回のケースでいえば、とりあえず7人でタガミカヅチを倒し、
その後、ファンジにとらわれた男性フォースを助けに行くという流れだ。

――でも。

私はタガミカヅチをほかの人たちにまかせ、
フィールドの西端であるA-2に向かって駆け出した。


いま、男性フォースの心境は、いったいどんなものだろう?
私の想像が正しければ、彼はあきらめかけているはずなのだ。

ちょうどタガミカヅチが出現したタイミングで、
運悪く、自分だけかなり遠くに連れ去られてしまった。
パーティーを組んでいれば仲間が助けに来てくれるかもしれないけど、
いまの自分はソロ。みんな戦闘に必死だろうし、助けは来ないだろう。
仮に、自力でファンジを破壊して脱出できたとしても、
そのころにはタガミカヅチも倒されてしまっていて、
刃を交えることも、経験値の入手も叶わない可能性が高い。
しかたないことだけど、さみしいな。残念だな。

私もソロプレイが多いから、過去にほぼ同じ経験がある。
私のときも、ボスの出現と自分がファンジに捕らわれるタイミングが
運悪く重なってしまって、当然ながら、助けは来なかった。
おおげさに叫んで助けを求めるわけにもいかないから、
なんとか自力でファンジを破壊してみんなのもとへ戻ろうとした。
でもけっきょく、私はファンジ内部で思ったより多くの敵に囲まれてしまい、
戦闘不能に陥り、あきらめてひっそりとキャンプシップに戻ったのだ。

誰が悪いわけでもない。よくあることだ。しかたないことだ。
でも、私はそのとき、ものすごくさみしかった記憶がある。
たくさんの人がいるはずのマルチパーティーエリアで、
これ以上ないほどの孤独を味わった記憶がある。

できることなら、彼にはあの感覚を味わってほしくない。
タガミカヅチなんて、PSO2を続けていればそのうちまた遭遇できる。
でも、彼をファンジから助けることは、たぶん、いましかできない。


マップを見ながらA-2に向かって走っていた私だが、
ふと、後方から、私を追ってくる人物がひとりいることに気づいた。

カメラをぐるっと回転させて確認すると、
ランチャーにまたがって高速移動する女性レンジャーの姿があった。
そうか。彼女もまた、私と同じ地点をめざしているんだな。
頼もしい。ふたりもいれば、ファンジを思ったより早く壊せるかもしれない。

やがて私と女性レンジャーはA-2地点にたどり着き、
ファンジへの攻撃を開始する。捕らわれの男性フォースは生きていたが、
多くのダーカーに囲まれており、防戦一方といった様子であった。
危なかった。でも、とりあえず、間に合ってよかった。

予想以上の数のダーカーに邪魔されながらも、
何分かかけて、なんとかファンジを壊す。
赤黒い檻が崩れ、ついに男性フォースが解放される。

「ありがとう」

男性フォースがお礼を言う。よかった。無事でよかった。
ホッと息をつく私である。

しかし、女性レンジャーの集中はまだ途切れていなかった。

「急ぎましょう」

そう言って、彼女はまたランチャーに飛び乗り、来た道を戻り始めた。
男性フォースと私も、急いでそれを追いかける。
そうだった。タガミカヅチだ。ファンジを壊しただけでは、まだ終わりじゃない。
タガミカヅチのところまで戻って、8人全員がその場にそろった状態で
討伐に成功してこそ、フォースの彼を本当の意味で助けたと言えるのだ。

でも、間に合うか?
私たちは、ファンジを壊すのに少し手間取ってしまった。
そして、タガミカヅチがいた場所まで走って戻るには、1分ちょっとかかる。
必死に走っているあいだに、タガミカヅチが倒されてしまう可能性も――

そう心配していた私だけれど、数十秒後、驚いた。
タガミカヅチのもとに、30秒くらいで戻れてしまったのだ。

なぜかと言うと、フィールド東端、E-4にいたはずのタガミカヅチが、
フィールドのほぼ真ん中であるC-3のあたりまで移動していたからである。

理由はわからない。タガミカヅチは俊敏なエネミーだから、
単純に、長い距離をたまたまピョンピョン移動してきたのかもしれない。

でも、ひょっとしたら。
ずっとタガミカヅチと交戦していた人たちも、
ファンジに捕らわれた男性フォースのことを気にかけていて、
さらに「急ぎましょう」という女性レンジャーの発言で状況を察して、
私たちがタガミカヅチとの戦闘に早く復帰できるように、
フィールドの真ん中までタガミカヅチを誘導してくれたのかもしれない。

ずいぶん都合のいい想像だけれど、可能性は高いと思う。
なんせ、ここはソロプレイ推奨ブロックだ。
言葉による積極的なコミュニケーションは苦手だけれど、
いざというときの助け合い精神は人一倍強いという、
ちょっと不器用なやさしさを持った人が集まる、ソロプレイ推奨ブロックだ。



最終的に、私たちは8人全員でタガミカヅチを討伐し、
ウワサ通りの大量の経験値を、みんなで取得することができた。

「ありがとう」

男性フォースが、もういちど、こんどはみんなに向けてお礼を言った。
すると、近くにいたテクターが、さりげなく彼にシフタとデバンドをかけた。
「いいってことよ」と言わんばかりに。私もマネして、彼にレスタをかけた。


決して人口が多かったり、
目に見えて活気があったりするブロックではないけれど、
私は、こんなソロプレイ推奨ブロックが好きだ。