2019年08月16日

日記と雑記、大学講師の話とか、文化と流行と断絶、これからのことなど

はてさて無事に芝居屋風雷紡の幕も開き、ほっと一息。
あさま山荘立てこもり事件を、過去にあった様々なドキュメンタリーとは違う視点から描き出した作品。こうだった可能性もあるのかも、そしてその感覚は現代にも続く日本人の醜さなのかも、と思いながら稽古を積み重ねてきて、お客さんという多くの日本人にご覧いただいて、ようやく結実しました。
あさま山荘をモチーフにしているけれど、「見る/見られる/見られている/見られていることを知っている」といった、僕が作品創りを行う際に意識してしまう感覚をそこここに散りばめました。
今週日曜までと、公演期間は大変短うございますが、ご興味ありましたらぜひぜひお越しください。
公演情報

そして雑記。


・大学講師の話

4月から、母校日本大学芸術学部演劇学科で2年生の劇作実習を受け持っておりますが、
思っていた以上に、学生が劇作家や脚本家を知らない。いや知っている学生もいる。
でも平均すると知らない度が高い。いや、それが悪いってんじゃなくて。

たとえば三谷幸喜さんはさすがにみんな知ってたけど、
ケラさんのことを知らない人がたくさんいて。
演劇に片足突っ込んじゃったら触れずにはおれないくらいの存在だし、
知ってて当然、くらいの気持ちで授業で触れたところ、
「ケラリーノ・サンドロヴィッチってどこの国の人なんですか?」と、
僕が学生だった20年前にも既にだいぶ使い古されていた(そしてギャグとしても成立していた)質問が飛んできたのです。
この質問が良い悪いじゃなくて。

(以下、敬称略で進めます)
たとえば僕は、つかこうへいの熱狂に触れていません。戯曲を読んだ程度です。
唐十郎をはじめとするテント芝居についても経験と知識は同じくらい。
大学生だった当時の感覚としては、野田秀樹や鴻上尚史、渡辺えり(当時は“えり子”)はちょっと古い感じ、太田省吾や斎藤憐はもっと古臭くて、井上ひさしと別役実は生きる化石。
松尾スズキやケラ、三谷幸喜や平田オリザがブイブイ言わせ(今もブイブイ言わしてる)、坂手洋二や永井愛やマキノノゾミがゴリゴリとストレートプレイを作っていた(今も精力的に作っている)2000年前後、僕は適度にミーハーな学生で、『演劇ぶっく』や『シアターガイド』に載っている劇団に憧れ、またそれらの雑誌や媒体に掲載されることを夢見る浅薄皮相な若造でした。
きっと僕らも現役の時は、先生方が「知ってて当然でしょ」と思っていた作家さんのことを全然知らなかったのでしょう。

それで良いんだと思います。
1990年代まで続いた小劇場バブルから脱却した2000年前後、既に演劇は細分化の道を進んでいました。鐘下辰男氏がこれを危惧していたことを最近読み返した『悲劇喜劇』で知りました。その時代に演劇に触れた人なら誰もが知り、誰もが観たがる芝居、そういった共通言語が薄れていく、デクレッシェンドしていく。この流れは止まるどころか、テクノロジーの進歩とGAFAの進攻により、より進んでしまった。演劇に限った話じゃないですが。

それで良いんだと思います。
彼らは、僕が知っている演劇の知識よりも、もっと違うたくさんの分野の知識を持っていて、そういうものを繋ぎ合わせたり組み合わせたり外したりしながら、新しい演劇を創っていってくれるんだろうと期待します。
彼らに僕が伝えられるのは知識ではなく経験です。経験知。つまり、古い知識。
僕の知っている古い知識を彼らに伝えて、彼らがそれを利用して(捨てるも含む)、乗り越えて、省みて、自分たちの経験をどんどん創っていく、そのための踏み台を提供できたらなと、思いながら毎週喋っています。


・連想した、文化と流行と断絶の話

「みんな違ってみんな良い」というマジックワード(欺瞞)みたいで気持ち悪いですが、
文化=流行ではない。流行したものが文化として残るだけ。
そして流行自体の規模が凄く小さくなっているのだけれど、喧伝するメディアと拡散するSNSがあるから、さも凄まじい流行のように扱われる。ここ数年の「流行り」って、大山鳴動してネズミ2匹、くらいの印象。ネズミが数十匹居た場合は、タピオカミルクティーよろしく無闇に行列が延び、無闇に類似店が跋扈し、数日のうちに閑古鳥が鳴き始める。

しかしこの文化の流れに国が逆行しているのは面白い(哀しい)ですね。
国家主義的に他国との分断を演出し、国民を愛国的に全体化させようとして、
同時に決定的な国民の分断を作ってしまっている矛盾。
現在進行形の、あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展」もそうだし、
ヘイトスピーチとしばき隊の関係性とかモロそれですよ。
「俺はお前の意見、嫌だなあ」だけなら良いんだけど。
「俺はお前の意見、嫌だからお前も嫌だ」とか、
「俺はお前の意見、嫌だからお前が黙れ」とか、
「俺はお前の意見、嫌だからお前が黙れ黙らないなら殺す」とか。
リベラル派を気取って「議論が必要でしょ!」なんて言ってる平和主義者ですら、「ヘイトスピーチをしてる人たちは歪んだ皇国史観に基づいて戦前回帰しようとしてる馬鹿どもだから彼らの意見は無視して良い」くらいに思ってるんじゃないだろうか。
どっちもどっち、になってきてしまったなあ。
難しいなあ。


・記録

6月22日〜24日は、大阪IKSALON表現者工房にて、拙作『あなただけ元気』のリーディング版を演出しました。滞在制作楽しかったなあ。ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。またやりましょう。それから、数年ぶりにインディペンデントシアター相内さんともお会いできて、お話しできたのも嬉しかったなあ。インディペンデントシアターは1Stが移転してしまったので、初めての大阪公演の思い出の劇場は今はもうなくなってしまったわけですが、代わりに移転後の新劇場見てきました。楽しい空間で、何かやりたくなっちゃうよねどうしても。

7月4日〜7日には、新大久保のR'sアートコートにて、『スマホ連動”ヒロイン体験 朗読劇” from 100シーンの恋+ 〜スイートルームで悪戯なキス〜』タイトル長い!!の脚本と演出を務めていました。ゲーム原作の舞台化は初めて。そして実際にゲーム同様マルチエンディングを楽しめるような仕組みを組み込んでみましたけれどもお楽しみいただけましたら幸いです。どうだったのかな。劇中でのスマホ連動という試みは、今のご時勢にリンクした楽しさがあり、また、映像との連動など、自分の中の演劇の可能性が広がったとてもありがたい公演でした。そして若くて活きの良い俳優たちと、古い友人で信頼する俳優西川康太郎とのクリエイションが、楽しくないわけがなく。こういう座組みならまたやりたいなと心から思える公演でした。携わってくださった皆様、本当にありがとうございました。


・育児

合間を縫うようにして、育児してます(主に妻が頑張ってくれているのを時々少し手伝う程度には)。娘は1歳半を過ぎ、いくつか意味のある言葉も喋るようになってきました(主に「やだ」)。親の食べているものを食べたがり、扱っている道具を嬉しそうに奪いたがります。僕は家族が美味しいものを食べられるようにカリカリ書いてあくせく働いています。
という文章を書いていたのが2ヶ月ほど前ですが、この2ヶ月の間に、喋る言葉の数が8倍増しました。細胞分裂のスピードと同じくらい、どんどんどんどん吸収していっているのでしょうね。ほんと面白い。

そんな感じです。



【これから】
8/24に東中野でDJ(共演者が凄いメンツ!!)、
10月に劇と暮らしという企画が動き出して秋冬に本番、
2020年2月にはまた大阪での面白そうな企画が進行していて、
3月には冠プロデュースさんへの新作書き下ろし、
4月には劇団トローチさんへの新作書き下ろしそして演出が控えています。

こんな具合なもので、箱庭円舞曲の育休が明けるのは、
早くても2020年5月以降であります。
お待ちくださっている皆様、恐れ入りますが、ゆるゆるとお待ちいただけましたら幸いです。
ではでは。

hakoniwa_enbukyoku at 18:30│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote  

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