伯柔記

柔術ブログ「伯柔記」書いてます。自分で言うのも何なのですが、深く切り込んだことを書いています。暇な時でも読んでもらえれば光栄です。 感想や間違いがあれば、どしどしコメント下さい。

今年のライトフェザーはシセロコスタが表彰台を独占したそうな。アブソリュート決勝のブシェシャとレアンドロ・ロも試合を行わないで決着した。

そのためライトフェザーは準決勝2試合と決勝。アブソリュートは決勝が不戦(紳士協定)だった。

筆者がどうしても納得いかないのがムンジアル決勝という世界最高の舞台で同門同士の不戦が散見されることだ。

棄権するしないは選手の自由であって選手に非はないが、紳士協定ありきのトーナメントというのは柔術というコンテンツにとって不利益だ。

ムンジアルはスポーツとしてこれをやっている限り、UFCファイトパスなど巨大な市場にも入ないなし、大手マスメディアでも取り上げられないと思っている。

そもそもなぜ不戦が起こるかというと、ムンジアルはアカデミー対抗戦という意味合いが強いからだ。

ムンジアルのトーナメント表を決めるブラケット会議も有力アカデミーが集って決定している。
そして同門同士であれば基本的には対戦せずに、事前に決められた選手に勝利を譲る。
そうすることによって無駄な労力を費やさずに次戦に駒を進め、チームポイントに貢献できる。

これはアカデミー間で出稽古や(ついこの前まで)帯の認定などが行われるなど、アカデミー間のつながりが強いJBJJF系統のアカデミーにはない習慣だ。

ムンジアルは基本的に個人競技ではあるが、同時にチームスポーツの要素も兼ねており、結果的に不戦が起こりうる。

ただしNsブラザーフットのレアンドロ・ロとアリアンシのブシェシャは違うアカデミーにもかかわらず不戦だった。徐々にではあるがアカデミーを超えたつながりも強くなっているのかもしれない。

この不戦というのは柔術がスポーツとして、歴史を歩む上で足枷となり取り除いていく必要がある。
先日、情熱大陸で5連覇を目指す湯浅麗歌子が放送された。
仮にだが、これが紳士協定によって5連覇を達成したり、失敗したとしたら視聴者はどう感じるただろうか。
スポーツの大会として違和感を覚える。

そもそも多くの人がなぜスポーツを観戦するのかというと、勝敗という簡潔な形で答えが出るからだ。

普通の人間の人生はスポーツのように単純ではない。ビジネスの世界や子供の成長みたいなものは短期的にも勝敗という二極の答えが出るとも限らない。

それがことスポーツや映画ならば試合開始や上映から終了までの短期の間に答えが生まれる。
普通の人生にはないそういった部分にスポーツの魅力はある。

もしも、この先柔術にテレビ中継が入っているとした、トーナメント全試合ではなく準決勝以上など限られた試合になるはずだ。
決勝戦不戦となれば、クライマックスの一番美味しい部分を捨てることになる。


その上、レアンドロ・ロとブシェシャの紳士協定も結局「普段から練習で肌を合わせている仲なのに試合でガチになってもしょうがない」という考えから起こっている。
世界一の決勝が練習の延長というのはスポーツメディアのコンテンツとして全く成り立たない。

よく柔術は経験者でなければ理解できないから、メディアで取り上げられないという事をいう人がいるが、その前にそもそも練習の延長になっしってしまうのであれば見せるべきものでもない。

おそらくUAEはこの部分を問題視しており、ワールドプロでは決勝戦は異国対決となるようにトーナメントを組んでいる。UAEでは国営でいち早くから柔術が放送されていることも関係あるだろう。
 
柔術家はどうしても柔術の外側に目を向けようとしない。

柔術界の薬物蔓延問題でも「みんながやってるからフェア」という意見が生まれるのも柔術家たちが薬物を使うことが、一般社会からどう思われるか理解しないからだ。

柔術も一般の人たちからどう見られるスポーツに成長すべきかか考える時が来ている。

ただしこれが難しいのは試合を棄権するもしないも選手の自由であって、紳士協定を無理やり禁止しても結局フレンドリーマッチで済ませればいい話だ。

また本当に怪我で棄権しなければならない選手もいるはずだ。

IBJJFは不戦を回避するために、UAEJJFのように対策を講じる必要がある。国別対抗戦にするのもひとつの手段だろう。
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湯浅麗歌子が情熱大陸に出演した

地上波でタレントが柔術を行なったことなら何度かあったが、特定の選手に対して特集が組まれたのは初めての事だと思う。

情報解禁が結構直前で筆者も含めて驚いた人も少なくなかっただろう。

今はほとんどテレビも見なくなり情熱大陸を見たのもすごい久しぶりだった。

湯浅麗歌子のコピーは「女子力高めな28歳」

湯浅が現在4連覇中の世界王者で5連覇へむけて動き出すところから、連覇に失敗しインタビューを受けるところで番組は終わる。
印象的だったのは湯浅の孤独感だ。

いくら4連覇中の世界王者といえど、試合会場に同体するコーチの姿はなかった。

そして決勝で破れたあと体育館の裏へ行きうずくまった時も、ついてきた人も声をかける人もおらず遠くからカメラが撮影しているだけだった。

これはMMAの世界ではちがう。MMAでは小さい大会でもセコンドがいるし、選手も相部屋ながら控室もある。

湯浅の場合は日常の生活でも自らミシンでスポンサーのパッチを貼り付け、自炊し指導に向かう。

目指しているムンジアルも賞金もなく自費渡航とされていた。(実際には今年から優勝賞金が与えられる)

これは柔術やっている人間なら知っているか、知らなくとも薄々は知っている情報だ。
しかしいざテレビで放送されると、どこか孤独な世界王者に見えた。

しかしこういった演出は湯浅麗歌子本人からすれば不本意で孤独さ以上に柔術への情熱や楽しさを伝えたかったようだ。
スポーツの楽しさみたいな記事は日本の社会にはありふれている。

柔術は楽しいとか、頭を使うなどといった宣伝文句は柔術特有のものではなくスポーツや文化の世界ではいくらでも目にすることができる。

テレビという不特定多数の大衆へ向けたメディアは、格闘技の世界王者でも初音ミクが好きで美容院に行く。
世界王者でも孤独に地味に暮らしているといった意外性を売り出したいのだ。

柔術家の多くはどっぷり柔術の世界に使って柔術にしか生き甲斐を見い出せないような人間だ。

しかしそういった柔術家といった存在はごく僅かで、一般の人の目からは柔術が特別なスポーツには映らないだろう。

一般の人には柔術世界王者も女子力が高く一方で孤独に戦っているとでも書かなければ注目は集めない。

柔術家からすれば、なぜそこしか伝わらないんだ?と思うかもしれないが、柔術が特別な存在なのは柔術家の間だけのことだ。

柔術を伝える難しさを感じた放送だった。
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湯浅麗歌子と共に今年、陥落した王者の一人にあげる事ができるのがブルーノ・マルファシーニだ。
ルースター級であるブルーノは橋本知之や芝本幸司ら日本人との対戦も多い。そして2013年には100万円の賞金マッチ、ガロ・カルナヴァルでも来日しており日本でも馴染みのある選手だ。

ブルーノは2014年から昨年までムンジアル5連覇。そして通算優勝回数は10回。この10回という数字はブェシェシャの13回に次いでホジャーの10回と並ぶ2位タイの記録。

しかし特筆すべきはブシェシャ、ホジャーが階級・無差別の合わせ技なのに対してが、ブルーノの場合は全て階級で成し遂げたということだ。
ブシェシャは13回中6回、ホジャーは10回中3回が無差別級の優勝回数だ。

2007年から2018年までの間(2度優勝できなかったとは言え)ブルーノが如何に長期政権築いていのかがわかるだろう。



ここまでのブルーノのムンジアルでの戦績を見てみよう。年数の右は当時の年齢

2006年 20歳
準々決勝 フェリッペ・コスタ Pt4×2負け

2007年 21歳 
決勝 本間祐輔 一本勝ち

2008年 22歳 
準決勝 カイオ・テハ 一本負け


2009年 23歳
決勝 カイオ・テハ ad勝ち

2010年 24歳
決勝 カイオ・テハ ad勝ち

2011年 25歳
決勝 カイオ・テハ pt4×2勝ち


2012年 26歳
決勝 カイオ・テハ レフ判勝ち


2013年 27歳
決勝 カイオ・テハ pt4×2負け


2014年 28歳
決勝 ジョアオ・ミヤオ レフェリー判勝ち


2015年 29歳
決勝 ジョアオ・ミヤオ AD勝ち

2016年 30歳
決勝 カイオ・テハ AD勝ち

2017年 31歳
決勝 カイオ・テハ AD勝ち

2018年 32歳
決勝 ホドネイ・バルボーザ 一本勝ち
2019年 33歳 準決勝
準決勝 マイキー・ムスメシ pt10×8負け

ブルーノのムンジアル黒帯初出場はブラジル開催最終年の2006年だ。この年こそベスト8だが翌2007年のムンジアル米国開催初年に初制覇する。

その決勝初進出時の対戦相手はなんと本間祐輔!まだポイント資格も存在せずブラジルよりも渡航しやすい米国とあって多くの日本人が出場した年だった。
その米国開催初年の王者ブルーノの初決勝対戦の相手が本間祐輔とは気づかなかった。

そして長年のライバル、カイオ・テハとの初対戦が翌年のムンジアル。カイオとはムンジアルで9回。パン選手権で3回も対戦している。
ブルーノのライバルをあえて上げるならカイオではあるが、戦績的にはブルーノの9勝3敗だ。ブルーノは多くの選手から腕十字で一本勝ちを奪っている中でカイオは僅差の決着が多い。それだけにカイオも凄いことは凄いがブルーノと拮抗したライバルというよりも2番手という印象が強い。


ブルーノの大きな特徴として2011年のムンジアルを以降は競技生活の焦点をムンジアルに絞っている事だ。
レオジーニョやコブリンヤのように選手生活晩年に向かって試合数が減る選手はいるが、ブルーノの場合、当時まだ25歳で選手として全盛の頃に焦点をムンジアルのみ絞った。

ブルーノもかつてはノーギ大会やワールドプロにも出場していたが、2011年のムンジアル以降はほとんど出場せず、基本的には春にパン選手権に出場し6月にムンジアルというルーティーンを繰り返している。これが10回王者ブルーノ式ムンジアル調整方ということだろう。

2016年に至ってはムンジアル以外はメタモリスでジェフ・グローバーと対戦する以外試合には出場しなかった。

近年はすごいペースで試合に出場する選手がいる。IBJJFもUAEJJFも大会を増やす傾向にある上、プロ大会も増えてきたためだ。
またIBJJFやUAEJJFはポイントランキングを設けているために、そのポイントを稼ぐために多くの大会に出場する選手は少なくない。

多くのトップアスリートの照準はムンジアルに向けられているが、ブルーノの場合はノーギにもプロ大会にもほとんど出場しておらずかなり極端だ。


ブルーノはまだ若かったが10回優勝という節目でムンジアルでやることはやり尽くし、晩節を汚さずに引退表明をした。MMA転向を表明したものの昨年のムンジアル以降は9月に試合を行って以来戦線から遠のいている。
ここまでMMAは3戦全てを1R一本勝ちしているが、MMA選手として躓いているのだろうか?MMAで成功すれば柔術とは比較にならない経済的なメリットがあるはずだが。

今年ムンジアルに突然復帰したが若き王者マイキーに負けてしまった。ブルーノは今33歳。世代的にはまだ全盛のルーカス・レプリと同世代に当たる。マイキーに一度は敗れたものの翌年のムンジアルではマイキーに雪辱を晴らすこともできるかもしれない。しかし10度も栄冠に輝いたブルーノがムンジアルでやり残したことはもうない。

アスリートとしてまだエネルギーがあるなら、マイキーへのリベンジよりも一度は目指したMMAでの成功を見てみたい。
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