第23回塾を、予定通り、6月28日(金)19時より、箱崎水族館喫茶室を会場に開催しました。今回の講師は、わざわざ熊本から、阿蘇火山博物館の学芸員、吉川美由紀さんにおいでいただきました。お話しのテーマは、「はくがく連携とぼうさい、フィールドと博物館をむすんだ活動」です。吉川さんは、学校教育と連携した博物館活動に積極的に取り組まれており、年間に50校以上の学校と、延べ1000人を超える子どもたちを対象に、教材の開発やプログラムの実践をされています。最初のPPTの写真も、子どもたちが地面を触って、地表の温度を確かめている写真からのスタートでした。そこの地面は触ると暖かく約50℃近くもあります。子どもたちは、触って確かめるという行動から、その土地への理解を深めていきます。総合的な学習の時間で取り組んだこの交流学習は、地獄谷温泉のある南阿蘇の吉岡地区の子どもたちと、地熱の高い地域にすむことの意味を考え、地域の特性を知り、地学的な興味関心や安全、防災意識の涵養にまで発展させていく工夫が凝らされていました。
DSC_0377 ところで、吉川さんが博物館にとって学校連携が必要だと感じたのは、一度、この博物館が10年ほど前に閉館する危機を迎えたことからでした。お客様に利用していただかなければ博物館は維持していけない。その時に、ずっとなくならないものは何か、つぶれないためにどうしたらいいのかと考えたとき、それが「学校を相手にすればいい」ということだったそうです。博学連携ワークショップなどにも積極的に参加し、学校と博物館が連携して学習するにはどのような工夫やノウハウを養う必要があるのかを学んでいったとのことです。そして、地学系の博物館としてある阿蘇火山博物館は、地域の学校と共に阿蘇の土地のことを学ぶために活動しようと考えたそうです。
DSC_0379 やがてお話しは、吉川さんが博士論文を書くにいたった経緯やその内容についての紹介となりました。研究の目的は、九重火山地帯の地熱発電(八丁原)のマグマの位置をつきとめることにありました。地震計の測定値を元に解析を進めていくなど、その研究の内容や地熱発電について詳しく説明をしていただき、阿蘇や九重といった地域が温泉や発電など、火山のエネルギーを活かした土地であることを理解しました。
 その後、お勤めの阿蘇火山博物館の紹介となりました。館では、館内でのミュージアムツアーなどの解説活動だけではなく、屋外体験学習として阿蘇中岳や阿蘇杵島岳をトレッキングしながら地域の自然や地形、火山活動などについて学ぶプログラムなども展開しているとのことでした。
 続いて仕事として開発した教材の紹介となりました。風船と小麦粉を使ってカルデラが生成される仕組みを学んだり、マグマの噴火のメカニズムを知るためにコーラ飲料を使って火砕流の仕組みを作る、ココアと小麦粉の層を重ねて地層をつくり断層について考える判りやすい様々な実験教材を開発されたそうです。
 また、湯だまりクッキングと称して、阿蘇火口の湯だまりに、豚肉や野菜、チーズなどの食材を漬け込んで、それらの素材がどのように変化するかの実験にもチャレンジ。このような面白く興味深い実験などを通して、普段はちょっとわかりにくい火山について、理解や関心を寄せてもらうことが、阿蘇火山博物館のミッションだと彼女は言います。また個人的には、火山の学習者や研究者を増やしていくのが目標だそうです。
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 火山学者が減り高齢化が進んでいるのも、「このままでは火山学会がつぶれるのでは?」という、彼女にとっては危機感を募らせる1つです。そのために、より火山に興味をもって学んでもらう人を育てるかが危急のテーマでもあります。
 火山に関する知識やデータを、数字の羅列だけでは火山に理解を深めることはできない。そこで彼女は、Cullings and Frenzen(2007)の手法を取り入れた解説(生活の経験から言葉の置き換えをする)の導入を積極的に取り組むようにしました。そうすることで、より火山を身近に感じ、理解を深めることができるようになったそうです。
 前述した湯だまりの実験では、豚肉はミイラのように干からび、チーズは表面が白く固まったそうで、それは湯だまりで「脱水症状」が起きていることの証拠でもあり、「化学やけど」の一種を体感してもらうことができたと言います。それらを体験したり、解説を聞いたお客様から「面白い!」とか「うそぉ~」などといった感嘆の声があがったそうです。火山を身近に感じる実験も、新しい解説方法の試みも大成功で、お客様の確実な反応を実感したそうです。
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 さて、次なるお仕事振りの紹介は学校との連携でした。内容は、火山と環境シンポジウムを地域の子どもたちと、総合学習で取り組んだ様子を紹介いただきました。専門家の研究者の講演を真剣に聞き、子どもたちの研究発表会では、子どもも大人も楽しい演劇をしたり、地球の誕生46億年の年表を使っての解説活動なども行われました。またパネルディスカッション式のQ&Aコーナーでは、子どもたちから積極的に手が挙がり、研究者や専門家はどう答えればわかりやすく伝えることができるか、逆に鍛えられたそうです。このシンポジウムは、新聞やテレビなど多くの報道にも取り上げられ、大盛況で、大きな成果をあげたそうです。
 さて次に、お話しは防災教育についてへと移りました。それは、噴火の記憶データベース作りのプロジェクトで、子どもたちによる噴火の記録調べの学習を進めることで、子どもたちが学んだことを家に持ち帰って話しをしたり(調査では80%の子どもがそうしていた)することで、地域を巻き込んでの防災教育へと発展していったとのことです。この活動には、市や教育委員会、指導者なども巻き込み、地域の防災意識を高めていくことに貢献しました。災害はいつどこで起きるか判らない、知識は防災につながる、しかし、学校教育との連携では、教科や単元の中で扱えない内容や言葉もあって、1つの壁(しばり)を感じながらも、学習の自由度の高い総合学習を活用して、防災教育に取り組んでいったとのことです。このほか、JSTのサイエンスパートナーシップのプロジェクト(約1年間をかけたプログラム)の紹介などもあり、本当に積極的に地域の学校との連携を進めている阿蘇火山博物館の活動を改めて知ることができました。
 DSC_0392今回の塾に参加された皆さんからも多くの質問が出て、地元の子どもと他県から来た子どもの差や違いはあるか? 3.11以降の子どもは不安を抱えていないか、学校のカリキュラムの変化を感じたか? 防災意識教育の在り方はどうしているのか? 地域を巻き込むコツは? などなど、多くの反響がありました。
 最後に、やはり「本人が楽しいこと」「教える本人が好きなこと」「話し方にコツが必要で、サプライズを持ち込むこと」「生活に馴染みのあるものを使うこと」など、博物館教育に求められるヒントをいただいた気がしました。また、自然災害と向き合うのは大変だが、ちょっとエッセンスを加えることで、地域の力になっているとおっしゃったのが印象的でした。
 

 さて、次回24回の塾は、事務局が7、8月が多忙を極めるため、ちょっと2ヶ月のおやすみをいただき、次回は9月の開催であること、また会場の箱崎水族館喫茶室が、箱崎神宮の夏祭り「放生会」が終わらないと空きがないとのことなので、9月後半を予定しています。詳細が決まりましたら、またこのブログページなどでお知らせします。次回もふるってご参加下さい。